令和3年2月16日判決言渡令和元年(行ウ)第624号情報公開非開示決定処分取消請求事件 主文 1 処分行政庁が令和元年9月12日付けで原告に対してした,「『A市立病院 相談役に関する住民監査請求(A監29号)について,監査委員が保有するいっさいの文書』のうち,要件審査表を除く文書」を非公開とした決定を取り消す。 2 被告は,原告に対し,1万円及びこれに対する令和元年9月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,これを40分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 主文第1項と同旨 2 被告は,原告に対し,5万円及びこれに対する令和元年9月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,A市情報公開条例(昭和61年A市条例第28号。以下「本件条例」 という。)に基づき,請求する行政情報の名称又は内容を「A市立病院相談役に関する住民監査請求(A監29号)について,監査委員が保有するいっさいの文書。」(以下「本件請求対象行政情報」という。)とする行政情報公開請求を行った原告が,処分行政庁から,令和元年9月12日付けで,本件請求対象行政情報のうち「要件審査表を除く文書」を非公開とする旨の処分(以下 「本件処分」という。)を受けたことから,本件処分は違法であり,損害を被 った旨主張して,処分行政庁の属する被告を相手として,本件処分の取消しを求めるとともに,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償金5万円及びこれに対する本件処分後の日である同月18日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割 消しを求めるとともに,被告に対し,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償金5万円及びこれに対する本件処分後の日である同月18日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 関係法令の定め関係法令の定めは,別紙のとおりである(なお,別紙で定義した略称等は,以下の本文においても同様に用いるものとする。)。 2 前提事実(証拠等を掲げていない事実は当事者間に争いがない。)⑴(1) 原告は,令和元年8月29日,処分行政庁に対し,本件条例に基づき, 請求する行政情報の名称又は内容を「A市立病院相談役に関する住民監査請求(A監29号)について,監査委員が保有するいっさいの文書。」(本件請求対象行政情報)とする行政情報公開請求を行った(乙3)。 ⑵(2) 処分行政庁は,上記⑴(1)の公開請求について,令和元年9月12日付けで,本件請求対象行政情報のうち,①要件審査表について,一部を公開し, その余を非公開とする決定を行うとともに,②「要件審査表を除く文書」について全部を非公開とする旨の決定(本件処分)を行い(甲1,2),同月17日,上記①及び②の処分結果が記載された各通知書(以下,上記②の処分結果が記載された通知書を「本件通知書」という。)を原告に交付した。 ⑶(3) 本件通知書には,以下の記載がある(甲2)。 ア 「行政情報の件名」欄の記載「『A市立病院相談役に関する住民監査請求(A監29号)について,監査委員が保有するいっさいの文書』のうち,要件審査表を除く文書」イ 「公開しないこととする根拠規定及び当該規定を適用する理由又は不存在の理由もしくは存否を明らかにしないこととした理由」欄の記載 「A市情報公開条例第7 ち,要件審査表を除く文書」イ 「公開しないこととする根拠規定及び当該規定を適用する理由又は不存在の理由もしくは存否を明らかにしないこととした理由」欄の記載 「A市情報公開条例第7条第6号アの非公開情報に該当し,公開するこ とにより,監査に係る事務に関し,必要な情報の収集が困難になるなど,正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし,若しくはその発見を困難にするおそれがあり,将来の監査事務の公正かつ円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため。」⑷(4) 原告は,令和元年12月11日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 3 争点⑴(1) 本件処分の適否(特に,本件通知書の記載が本件条例12条1項所定の理由の提示の要件を充足するか否か)⑵(2) 本件処分の国家賠償法上の違法性の有無及び損害額 4 争点⑴(1)(本件処分の適否(特に,本件通知書の記載が本件条例12条1項 所定の理由の提示の要件を充足するか否か))に関する当事者の主張(原告の主張)⑴(1) A市情報公開条例施行規則(平成14年A市規則第12号)は,決定通知書の様式として「行政情報の件名」を記載することとしているところ,本件条例2条2号の定義によれば,「行政情報」とは,文書や写真,電磁的記 録などの公文書を意味するのであるから,条例の規定を自然に解釈すれば,上記様式における「行政情報の件名」欄には,対象文書名が記載されるべきである。したがって,非公開決定に理由の提示を要求する本件条例12条1項は,具体的な文書の件名を請求者に通知することを実施機関に義務付けるものというべきであり,実施機関である処分行政庁は,原告に対し,非公開 とした文書の個別具体的な件名を通知する義務があったというべきである。 書の件名を請求者に通知することを実施機関に義務付けるものというべきであり,実施機関である処分行政庁は,原告に対し,非公開 とした文書の個別具体的な件名を通知する義務があったというべきである。 本件請求対象行政情報の中に非公開となり得る情報があることは,原告もある程度予想していたが,文書名が分からなければ,非公開としたことの適否を判断することは不可能であり,訴訟や不服申立てをすることも困難である。 なお,被告は他の自治体の例を掲げるが,これらはいずれも,文書名自体 が非公開情報に当たるとされたか,対象文書の件名が実質的に請求人に通知されたか,文書不存在のため文書の特定自体が不可能であった事例であり,本件とは事情が異なる。 したがって,本件処分は,本件条例12条1項に反し違法である。 ⑵(2) 本件請求対象行政情報として存在すると想定される文書(住民監査請求 書や市の主張書面など)についても,廃棄されている可能性を否定することはできないところ,対象文書が通知されなければ,これらが実際に存在しているかどうかを知ることもできないのであるから,本件処分は,事実上の存在応答拒否といえる。 原告が公開を求めた本件請求対象行政情報は,高い公益性を持つ手続であ る住民監査請求に関する文書であり,存否の回答によって即座に非公開情報を公開することにならないのは明らかであるから,本件処分は,本件条例10条を誤って適用したものであり,違法である。 (被告の主張)⑴(1) 理由の提示について ア住民監査請求による監査は,監査委員が行う事務に当たる。そして,住民監査請求による監査は,事実を正確に把握し,その事実に基づいて評価,判断を加えて監査委員の合議により決定するものであるところ,本件請求対象行政情報 る監査は,監査委員が行う事務に当たる。そして,住民監査請求による監査は,事実を正確に把握し,その事実に基づいて評価,判断を加えて監査委員の合議により決定するものであるところ,本件請求対象行政情報には,監査事項の詳細な情報や,監査手続に関する情報があり,これらを公開すれば,適正かつ公正な評価,判断の前提となる事実の 把握が困難になるなどのおそれがあり,将来の監査事務の公正かつ円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがある。 それゆえ,処分行政庁は,本件請求対象行政情報のうち要件審査表を除く文書について,本件条例7条6号アに該当するものとして非公開としたものであるところ,本件通知書は,前記前提事実⑶(3)イのとおり,公開し ないこととする根拠規定として同号アを掲げ,同号アに該当することの理 由として,「公開することにより,監査に係る事務に関し,必要な情報の収集が困難になるなど,正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし,若しくはその発見を困難にするおそれがあり,将来の監査事務の公正かつ円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため」と明示している。 以上によれば,本件通知書の記載は,本件条例12条1項の求める理由の提示の要件を充足するものといえる。 イ原告は,本件処分について,文書の個別具体的な件名を通知する義務に違反する旨主張するが,非公開決定に理由の提示を要求する本件条例12条1項は,特定した文書名の列挙まで求めるものではない。行政情報の単 位は,管理状況,事務処理方法,内容,その時々の処理目的等によって変動し得る概念であって,複数の意思決定文書群(なお,本件請求対象行政情報のうち要件審査表を除く文書の数は,作成者ごとに分類,計上すると3件である。)を対象とした情報公開請求に対する 目的等によって変動し得る概念であって,複数の意思決定文書群(なお,本件請求対象行政情報のうち要件審査表を除く文書の数は,作成者ごとに分類,計上すると3件である。)を対象とした情報公開請求に対する公開,非公開等の処分における対象文書の記載の仕方は種々あり,本件通知書における表記も許 容される範囲内というべきである。本件通知書の記載によって,不当な不利益処分がされたり,不服申立ての便宜が失われたりするものとはいえない。 他の自治体の取扱いをみても,非公開決定等の対象文書について,本件通知書と同様の表記方法によった例がある(B県情報公開審査会情報公開 答申第53号,C県情報公開審査会答申第80号,D県情報公開・個人情報保護審査会答申第23号に係る各事案)。 ⑵(2) 本件条例10条違反の主張について本件処分が本件条例10条に違反する旨の原告の主張は争う。本件処分は,行政情報の存否そのものを明らかにした上で,本件条例7条6号アに該当す ることを理由にこれを非公開としたものであり,本件条例10条を適用した ものではない。 5 争点⑵(2)(本件処分の国家賠償法上の違法性の有無及び損害額)に関する当事者の主張(原告の主張)⑴(1) 前記4(原告の主張)のとおり,本件処分は違法であり,非公開とした 文書の具体的な件名を明らかにしなかった処分行政庁の行為は,原告の知る権利を侵害するものである。他の自治体の運用をみても,情報公開請求の手続における非公開決定や一部非公開決定の際,具体的な文書名を請求人に明示するのが一般的な運用であることは明らかであり,被告の情報公開制度がこれと特段異なるという事情はない。 そうすると,処分行政庁が,本件処分の際,本件請求対象行政情報のうち要件審査表を除く文書に が一般的な運用であることは明らかであり,被告の情報公開制度がこれと特段異なるという事情はない。 そうすると,処分行政庁が,本件処分の際,本件請求対象行政情報のうち要件審査表を除く文書につき,どのような文書を特定したのかを明らかにしないで非公開としたことは,国家賠償法1条1項の適用上違法というべきである。 ⑵(2) 上記違法行為により,原告は,要件審査表を除く本件請求対象行政情報 の存否及び文書名を知ることができず,本件条例によって保障された知る権利を著しく侵害され,これを回復するために本件訴訟を提起することを余儀なくされ,多大な労力と時間を浪費し,また経費の支出を強いられた。これによって原告が被った損害は,5万円を下らない。 (被告の主張) 争う。本件処分は適法であり,原告は損害を被っていない。 第3 当裁判所の判断 1 争点⑴(1)(本件処分の適否(特に,本件通知書の記載が本件条例12条1項所定の理由の提示の要件を充足するか否か))について⑴(1) 本件条例12条1項は,実施機関が公開請求に係る行政情報の全部又は 一部を公開しないときは,書面によりその理由を示さなければならない旨規 定し,さらに,この場合において,当該理由の提示は,公開しないこととする根拠規定及び当該規定を適用する根拠が,当該書面の記載自体から理解され得るものでなければならない旨定めている。 一般に,法令が行政処分につき理由を提示すべきものとしている場合に,どの程度の提示をすべきかは,処分の性質と理由の提示を命じた各法令の趣 旨及び目的に照らしてこれを決定すべきであるところ,本件条例が上記のように非公開決定をしたときに書面によりその理由を併せて示すべきものとしているのは,同条例に基づく行政情報の公開請求制度が,市政 旨及び目的に照らしてこれを決定すべきであるところ,本件条例が上記のように非公開決定をしたときに書面によりその理由を併せて示すべきものとしているのは,同条例に基づく行政情報の公開請求制度が,市政について市民の知る権利を保障するとともに,市が市政に関し市民に説明する責務を全うし,もって参画と協働による公正で透明なまちづくりに資することを目的と するものとされていること(同条例1条)に鑑み,非公開の理由の有無について実施機関の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに,非公開の理由を公開請求者に知らせることによって,その不服申立てに便宜を与える趣旨に出たものというべきである。このような理由の提示制度の趣旨に鑑みれば,非公開決定をしたときに提示すべき理由としては,公開 請求者において,本件条例7条各号所定の非公開事由のどれに該当するのかをその根拠とともに了知し得るものでなければならないというべきである(最高裁平成4年(行ツ)第48号同年12月10日第一小法廷判決・裁判集民事166号773頁参照)。 ⑵(2) そこで検討するに,本件通知書には,「行政情報の件名」として, 「『A市立病院相談役に関する住民監査請求(A監29号)について,監査委員が保有するいっさいの文書』のうち,要件審査表を除く文書」との包括的な記載があるのみであり(前記前提事実⑶(3)ア),本件通知書の「公開しないこととする根拠規定及び当該規定を適用する理由又は不存在の理由もしくは存否を明らかにしないこととした理由」欄にも,前記前提事実⑶(3)イの とおりの記載しかなく,本件通知書は,具体的な文書名や,例えば参考人の 陳述聴取書といった文書の類型によって,本件請求対象行政情報のうち要件審査表を除く文書としてどのような文書があるかを とおりの記載しかなく,本件通知書は,具体的な文書名や,例えば参考人の 陳述聴取書といった文書の類型によって,本件請求対象行政情報のうち要件審査表を除く文書としてどのような文書があるかを明らかにするものではない。また,本件通知書には,非公開とした文書の作成者,当該文書に記録された情報の内容や性質,当該文書の入手方法といった事項についての記載もない(甲2)。 処分行政庁が,どのような根拠に基づき本件条例7条6号アの非公開事由に該当する旨判断したのかは,通常,非公開とした文書の名称や類型,作成者,記録された情報の内容や性質,当該文書の入手方法といった文書の基本的な情報が明らかにされ,これらと関連付けられた支障の内容等が示されることによって,了知することが可能となるものといえるところ,上記のとお り,本件通知書は,非公開とした文書について,文書名や作成者等当該文書の基本的な情報を明らかにしておらず,他に,本件通知書上,処分行政庁がいかなる事情から当該文書が公開されることにより監査事務の遂行に対する支障が生じるおそれがある旨判断したのかを了知するための手がかりとなるような記載もない。 以上によれば,本件通知書の記載からは,非公開とされた文書について,本件条例7条6号アの非公開事由に該当するとされたことは明らかであるものの,当該文書が公開されることによりなぜ監査事務の遂行に支障が生じるおそれがあるのかが明らかでないといわざるを得ず,非公開とされた文書が同号アに該当することの根拠を了知し得るものということはできない。した がって,本件通知書の記載には,理由の提示として不備があるものといわざるを得ない。 ⑶(3) 被告の主張についてア被告は,非公開決定に係る理由の提示について,文書名を明らかにする した がって,本件通知書の記載には,理由の提示として不備があるものといわざるを得ない。 ⑶(3) 被告の主張についてア被告は,非公開決定に係る理由の提示について,文書名を明らかにすることまでは必要ない旨主張する。この点については,確かに,文書の個別 具体的な名称まで明らかにしなくとも,当該文書の作成者や概括的な記載 内容,監査委員による当該文書の入手方法等の情報を明らかにすることによって,当該文書を公開することにより監査事務に支障が生じるおそれがあるとする根拠が明らかとなる場合はあり得る。しかしながら,本件通知書には,上記のような情報に関する記載もなく,「行政情報の件名」として「『…監査委員が保有するいっさいの文書』のうち,要件審査表を除く 文書」という包括的な記載しかないのであるから,被告の上記主張は,前記⑵(2)の結論を左右するものとはいえない。 イ被告は,他の自治体にも非公開決定等の対象文書について本件処分と同様の表記方法によった例がある旨主張し,証拠(乙8~10)を提出するが,他の自治体に同様の取扱いをした例があることによって直ちに前記⑵ (2)の結論が左右されるものではなく,また,これらの事例が本件に適切でないことは後記2⑴(1)ウのとおりであるから,被告の主張を採用することはできない。 ⑷(4) 以上によれば,本件処分は,本件条例12条1項に反し違法であるから,その余の点について判断するまでもなく,本件処分は取り消されるべきであ る。 2 争点⑵(2)(本件処分の国家賠償法上の違法性の有無及び損害額)について⑴(1)ア上記1のとおり,処分行政庁による本件処分における理由の提示は,本件条例12条1項に反するものであるところ,条例に基づく公文書の非公開決定に取り消し得べき瑕 の有無及び損害額)について⑴(1)ア上記1のとおり,処分行政庁による本件処分における理由の提示は,本件条例12条1項に反するものであるところ,条例に基づく公文書の非公開決定に取り消し得べき瑕疵があるとしても,そのことから直ちに国家 賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく,公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と上記決定をしたと認め得るような事情がある場合に限り,上記評価を受けるものと解するのが相当である(最高裁平成17年(受)第530号同18年4月20日第一小法廷判決・裁判集民事220号165頁参照)。 イそこで検討するに,本件通知書には,前記1⑵(2)のとおり,文書名や文 書の類型,文書の作成者,記録された情報の内容や性質,文書の入手方法等,処分行政庁がいかなる事情から当該文書が公開されることにより監査事務の遂行に対する支障が生じるおそれがある旨判断したのかを明らかにする記載が一切ないのであるから,本件通知書の記載によっては本件条例7条6号アに該当することの根拠を了知し得えないことは,本件通知書の 体裁自体から明らかであったといえる。また,他の自治体における取扱いをみても,本件通知書のように,文書名すら明らかにせず包括的な記載にとどめ,非公開事由の有無の判断に資する事情を一切記載しないという取扱いが,一般的なものであったともいえない(甲4~7〔枝番を含む。以下同じ。〕)。 そうすると,処分行政庁は,本件通知書の記載では理由の提示として不十分であることを十分認識し得たというべきであるから,本件処分については,職務上の注意義務を尽くすことなく,漫然と理由の提示に不備のある処分をしたものと認められる。 したがって,処分行政庁が本件処分をしたことは,国 認識し得たというべきであるから,本件処分については,職務上の注意義務を尽くすことなく,漫然と理由の提示に不備のある処分をしたものと認められる。 したがって,処分行政庁が本件処分をしたことは,国家賠償法1条1項 の適用上,違法というべきである。 ウこれに対し,被告は,他の自治体にも非公開決定等の対象文書について本件処分と同様の取扱いをした例がある旨主張し,証拠(乙8~10)を提出する。 しかしながら,これらのうちC県教育委員会による情報公開の事例 (乙9)においては,部分公開決定に係る通知書自体において,文書名そのものは記載されていないが,対象となる文書の種類,内容,性質等が相当程度明らかにされている上(甲7〔1枚目〕),そもそも個人に関する情報及び法人等情報を除き,公開決定がされており,請求人は,当該決定の効果として対象となる文書の閲覧又は謄写を受け,文書名を 知ることができる立場にあったから(なお,同決定については,別に対 象文書を特定した対象公文書一覧が作成されているが,これが請求人に交付されたものとは認められない〔甲7,乙11〕。),理由の提示として不備があるとはいえない事例であったと考えられる。そうすると,上記事例があるからといって,本件処分につき処分行政庁に職務上の義務違反がないということはできない。 また,D県教育委員会による情報公開の事例については,文書不存在を理由として非公開決定がされた事案であって(甲8の2,乙10),当該非公開決定の理由を前提とすると,そもそも文書名等を示した上で非公開事由該当性に係る行政庁の判断根拠を明らかにする場面ではないから,本件処分とは事案が異なるといわざるを得ず,上記事例があるか らといって,本件処分につき処分行政庁に職務上の義務違反が で非公開事由該当性に係る行政庁の判断根拠を明らかにする場面ではないから,本件処分とは事案が異なるといわざるを得ず,上記事例があるか らといって,本件処分につき処分行政庁に職務上の義務違反がないということはできない。 さらに,B県監査委員による情報開示の事例について検討すると,確かに,公文書非開示決定に係る通知書には,「…監査に関する文書一式(具体的にどの様な監査が実施されたのかが判るもの)」との記載しかなかっ たものと認められる(乙8)。しかしながら,B県情報公開審査会は,上記事例に係る答申において,上記通知書における理由の提示の適否については判断していないものの,「審査結果を説示するためには本件公文書を構成する各文書を特定する必要がある」として,対象となる文書を復命書,会議資料,議事録,参照資料等の四つの文書群に分類した上で,非公開情 報該当性の検討を行い,その上で,文書を特定してその一部を開示すべきこととしており(乙8〔7,8,14頁〕),上記通知書の記載方法を積極的に是認したものとはいい難い。以上の点に加えて,B県監査委員による上記通知書のような記載方法が一般的であることをうかがわせる証拠はなく,むしろ,相当程度具体的に文書の類型等を明らかにする他の事例が 複数あると認められること(甲4~7,乙9)なども考慮すると,B県監 査委員による上記の事例があるからといって,本件処分につき処分行政庁に職務上の義務違反がないということはできない。 ⑵(2) 原告は,本件処分により,適切な理由の提示なく公文書の公開を妨げられないという利益を侵害され,本件訴訟を提起せざるを得なくなり,これによって精神的苦痛を受けたといえる。情報公開請求権の性質に加え,本件処 分は理由の提示に不備があるものとして違法 公開を妨げられないという利益を侵害され,本件訴訟を提起せざるを得なくなり,これによって精神的苦痛を受けたといえる。情報公開請求権の性質に加え,本件処分は理由の提示に不備があるものとして違法であること等本件に現れた一切の諸事情を考慮すると,その精神的苦痛を慰謝するための金額としては,1万円が相当というべきである。 以上によれば,原告の国家賠償請求は,1万円及びこれに対する本件処分後の日である令和元年9月18日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,その余は理由がない。 結論以上によれば,原告の請求は,主文第1項及び第2項の限度で理由があるから,これらを認容し,その余は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官森英明 裁判官小川弘持 裁判官三貫納有 (別紙) A市情報公開条例(「本件条例」) (目的) 一条 この条例は,A市(以下「市」という。)の情報公開に関し必要な事項を定めることにより,市政について市民の知る権利を保障するとともに,市が市政に関し市民に説明する責務を全うし,もって参画と協働による公正で透明なまちづくりに資することを目的とする。 (定義) 二条 この条例 もって参画と協働による公正で透明なまちづくりに資することを目的とする。 (定義) 二条 この条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。 ⑴(1)実施機関 (略)監査委員(略)をいう。 ⑵(2)行政情報 実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書,図画,写真,フィルム及び電磁的記録(括弧内略)であって,当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして,当該実施機関が保有しているものをいう。 (行政情報の公開を請求できるもの) 五条 何人も,この条例の定めるところにより,実施機関に対して行政情報の公開を請求することができる。 (行政情報の公開義務) 七条 実施機関は,公開請求があったときは,公開請求に係る行政情報に次の各号のいずれかに該当する情報(以下「非公開情報」という。)が記録されている場合を除き,請求者に対し,当該行政情報を公開しなければならない。 報(以下「非公開情報」という。)が記録されている場合を除き,請求者に対し,当該行政情報を公開しなければならない。 ⑴(1)~⑸(5)略 ⑹(6)市の機関又は国若しくは他の地方公共団体が行う事務又は事業に関する情報であって,公にすることにより,次に掲げるおそれがあるもの。 ア 監査,検査,取締り又は試験に係る事務に関し,正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし,若しくはその発見を困難にするおそれ イ~エ 略 オ アからエまでに掲げるもののほか,当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ ⑺(7)略 (行政情報の存否応答拒否) 十条 実施機関は,公開請求に対し,当該公開請求に係る行政情報が存在しているか否かを答えるだけで,非公開情報を公開することとなるときは,当該行政情報の存否を明らかにしないで,当該公開請求を拒否 けで,非公開情報を公開することとなるときは,当該行政情報の存否を明らかにしないで,当該公開請求を拒否することができる。 (公開請求に対する決定等) 十一条 実施機関は,公開請求に係る行政情報の全部又は一部を公開するときは,その旨の決定(以下「公開決定」という。 )をし,請求者に対し,その旨並びに公開をする日時及び場所を書面により通知しなければならない。 実施機関は,公開請求に係る行政情報の全部を公開しないとき(括弧内略)は,公開しない旨の決定をし,請求者に対し,その旨を書面により通知しなければならない。 (理由付記等) 十二条 実施機関は,前条各項の規定により公開請求に係る行政情報の全部又は一部を公開しないときは,請求者に対し,当該各項に規定する書面によりその理由を示さなければならない。 この場合において,当該理由の提示は,公開しないこととする根拠規定及び当該規定を適用する根拠が,当 い。この場合において,当該理由の提示は,公開しないこととする根拠規定及び当該規定を適用する根拠が,当該書面の記載自体から理解され得るものでなければならない。
▼ クリックして全文を表示