平成11(行ウ)60 難民の認定をしない処分等取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成14年8月30日 大阪地方裁判所 警察関係
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判決文本文20,693 文字)

主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告が原告に対し,平成11年2月9日に告知した平成11年1月29日付けの難民の認定をしない処分を取り消す。 2 被告が原告に対し,平成11年5月19日に告知した出入国管理及び難民認定法第61条の2の4に基づく異議の申出は理由がない旨の平成11年5月19日付け裁決を取り消す。 第2 事案の概要本件は,エチオピア連邦民主共和国(以下「エチオピア」という。)国籍を有する原告が,出入国管理及び難民認定法(以下「法」という。)61条の2第1項に基づいてなした難民の認定申請(以下「本件難民認定申請」という。)について,被告が,平成11年1月29日付で,難民の認定をしない処分(以下「本件処分」という。)をなし,さらに,本件処分に対して原告が法61条の2の4に基づいてなした異議の申出について,同11年5月19日付けで,被告が原告の異議の申出に理由がない旨の裁決(以下「本件裁決」という。)をなしたことにつき,原告が,本件処分及び本件裁決はいずれも違法であると主張して,その各取消しを求めた事案である。 1 前提となる事実(争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実)(1) 本件処分に至る経緯ア原告は,昭和47年2月19日,旧エチオピア国領現エリトリア国において出生した,エチオピア国籍を有する外国人である。 イ原告は,平成9年3月12日,エチオピア国内務省からエチオピア旅券を取得し,同日,エチオピアからの出国査証を取得した上で,同年4月2日,アディス・アベバ空港から出国した。 ウ原告は,平成9年4月30日,新東京国際空港に到着し,東京入国管理局成田空港支局入国審査官から,法別表第1の3の表に掲げる「短期滞在」の在留資格及 4月2日,アディス・アベバ空港から出国した。 ウ原告は,平成9年4月30日,新東京国際空港に到着し,東京入国管理局成田空港支局入国審査官から,法別表第1の3の表に掲げる「短期滞在」の在留資格及び在留期間90日の上陸許可を受けて本邦に上陸した。 エ原告は,平成9年5月9日,在本邦オーストラリア連邦(以下「オーストラリア」という。)大使館において,オーストラリアの難民人道査証による同国への移住申請(以下「本件移住申請」という。)を行った。 オ原告は,平成9年5月26日,三重県松阪市所在の株式会社やな川水産において水産加工員として稼働中のところを,名古屋入国管理局(以下「名古屋入管」という。)入国警備官に,法24条4号イ(資格外活動)該当容疑で摘発され,同日,名古屋入管主任審査官が発付した収容令書により,名古屋入管収容場に収容された。 カ名古屋入管入国審査官は,平成9年5月27日,名古屋入管入国警備官から原告の引渡しを受け,同日,原告に対し審査を実施した結果,原告が法24条4号イに該当する旨認定し,原告にこれを通知したところ,原告は,同日,口頭審理の請求を放棄をする旨の文言の入った調書に署名押印し,名古屋入管主任審査官は,同日,原告に対し,退去強制令書を発付し,引き続き原告を名古屋入管収容場に収容した。 なお,原告は,平成9年6月2日,名古屋入管から入国者収容所西日本入国管理センター(以下「西日本センター」という。)へ移収され,引き続き,西日本センターに収容された。 (2) 本件難民認定申請及び本件処分等ア原告は,平成10年8月5日,被告に対し,法61条の2第1項の規定に基づき本件難民認定申請を行った。 イこれに対し,大阪入国管理局(以下「大阪入管」という。)難民調査官が,同年10月8日及び同月13日,原告から事情聴取を行うなど に対し,法61条の2第1項の規定に基づき本件難民認定申請を行った。 イこれに対し,大阪入国管理局(以下「大阪入管」という。)難民調査官が,同年10月8日及び同月13日,原告から事情聴取を行うなどの調査を行ったが,その結果,被告は,平成11年1月29日,本件難民認定申請は,法61条の2第2項所定の期間(以下「申請期間」という。)を経過してなされたものであり,かつ同項ただし書の規定を適用すべき事情も認められないとして,本件処分をし,同年2月9日,原告にその旨通知した。 ウ原告は,平成11年2月12日,被告に対し,本件処分を不服として法61条の2の4の規定に基づき,異議の申出を行ったので,大阪入管難民調査官が,同年2月19日,原告から事情聴取を行うなどの調査を行った。その結果,被告は,同年5月19日,本件難民認定申請が申請期間を経過してなされたものであり,かつ同項ただし書きの規定を適用すべき事情も認められないので,本件処分に誤りはないとして,原告の異議の申出には理由がない旨の本件裁決をし,同日原告にその旨通知した。 エ在本邦オーストラリア大使館移民多文化関係省首席移民官は,平成11年2月5日付けで,原告に対し,本件移住申請について,原告が難民人道査証の発給基準を満たしていないため認められなかった旨通知した。 なお,原告は,平成11年6月9日,仮放免許可により,西日本センターから出所した。 2 争点(1) 法61条の2第2項が申請期間を60日以内と定めることが難民の地位に関する条約(以下「難民条約」という。)及び難民の地位に関する議定書(以下「難民議定書」という。)に反し無効か(2) 本件難民認定申請において,法61条の2第2項ただし書所定の「やむを得ない事情」が存するか(3) 原告の難民該当性(4) 理由不備の違法 3 争点に関 「難民議定書」という。)に反し無効か(2) 本件難民認定申請において,法61条の2第2項ただし書所定の「やむを得ない事情」が存するか(3) 原告の難民該当性(4) 理由不備の違法 3 争点に関する原告の主張(1) 争点(1)についてア原告が,難民条約及び法に定める「難民」に該当することは明らかなところ,法における難民認定とは,事実の確認行為であり,創設的行為ではない。したがって,そこには自由裁量の余地がなく,その点で,法務大臣の広範な自由裁量に委ねられている出入国管理行政と性格を異にし,さらに,難民条約は難民の受入れを締結国には義務付けておらず,難民認定することと,これを受け入れるか否かは全く別の問題である。 イ法61条の2第2項は,実体審査に入る前に満たすべき要件と解釈され,現にそのように運用されている。一般にこれは「60日ルール」と称され,この規定により,日本において難民と認定されるためには,難民に該当するほか,やむを得ない事情がない限り,60日以内に難民認定申請を行わなければならないという要件まで充足しなければならないこととなり,難民条約及び難民議定書で規定された難民の概念に,新たな「時間的制約」を加えるに等しいものである。 ウ本来,法は,2条3号の2において,難民概念につき,難民条約及び難民議定書の難民概念を採用しているにもかかわらず,その難民について,60日ルールという時間的制約によって,法自体が,難民を難民と認定しないという自家撞着に陥っている。 エ難民条約及び難民議定書を批准したわが国としては,加盟国としてこの条約の遵守義務を負っており,さらに,憲法98条により,難民条約及び難民議定書自体が,わが国の国内法として,法(入管法)に優位する効力を有すると解されるところ,法61条の2第2項は,法に優位する難民条約及 遵守義務を負っており,さらに,憲法98条により,難民条約及び難民議定書自体が,わが国の国内法として,法(入管法)に優位する効力を有すると解されるところ,法61条の2第2項は,法に優位する難民条約及び難民議定書に規定された難民の定義の変更を図るものであり,難民の定義を定めた難民条約1条及び難民議定書1条,さらに難民の定義については留保も許されないとする難民条約42条に違反するものであり,また,60日ルールによって難民を難民と認定しないことによって,難民条約及び難民議定書によって保護された難民自身の権利,例えば難民条約33条が規定するノン・ルフールマンの原則,すなわち,どの国家も,いかなる方法をもってしても,難民を迫害を受ける場所へ送還することは許されないという原則を否定することになるのであって,これが難民条約及び難民議定書に違反することはいうまでもない。 オ被告の主張に対する反論(ア) 被告は,難民認定手続は,締約国の立法政策の問題であり,難民条約及び難民議定書違反の問題が生じる余地はない旨主張するが,60日ルールが,単に難民認定申請者に対して60日以内の申請を促す訓示規定と解されるならともかく,当該ルールを遵守しない難民認定申請者に対し,難民認定の実体的審査そのものを行わないことは,単なる手続規定を超え,難民の定義を独自に狭く変更するものであり,やはり,難民の定義を定める難民条約等に違反するものである。 (イ) また,被告は,60日ルールの合理性について,通常,難民条約で定める難民に該当する者は,その恐怖から早期に逃れるため速やかに他国の庇護を求めるものである等と主張するが,その主張自体,例外的場合に当該難民を無視する点で問題であり,かつ,実際には,60日ルールを含めた難民認定制度の存在及び内容自体が広く知られているわけではないし, を求めるものである等と主張するが,その主張自体,例外的場合に当該難民を無視する点で問題であり,かつ,実際には,60日ルールを含めた難民認定制度の存在及び内容自体が広く知られているわけではないし,難民の中には,母国の状況を見守ったり,母国に対する裏切りであるとか,親族の迫害を恐れる等の考えから,難民申請を躊躇することもあるし,難民認定のための資料を収集する期間が必要な場合もあるなど,難民それぞれに様々な状況が存するのであり,速やかに難民申請をしなかった事実も,難民該当性に関する一つの要素として判断すれば足りるのであり,60日ルールを遵守しなかったことの一事を持って難民非該当と判断できるものではない。そして,難民に該当する者が申請期間内に難民認定申請をしないケースはほとんど考えられないとの被告主張は論証されておらず,かつ妥当でもない。 (ウ) さらに,被告は,60日ルールによって難民認定されない者について,ノン・ルフールマンの原則に違反するという事情は,当該外国人に対して在留特別許可を与えるか否かの判断に際し,積極的事情として考慮されるから,難民認定申請の如何に関わらず,迫害にかかる申立てについて十分に検討されるし,迫害にかかる申立てをしたものの在留特別許可が認められずに退去強制されることが確定した外国人の送還先については,難民の認定を受けているか否かにかかわらず,ノン・ルフールマンの原則に違反しない地域に送還することになるとして,60日ルールの妥当性を主張する。 しかしながら,本来ノン・ルフールマンの原則は,難民認定の効果ないし目的であり,難民条約及び難民議定書は,難民に対して庇護を与えることまで規定しておらず,迫害国への送還の禁止がほとんど唯一かつ最大の難民に与えられる効果であって,難民認定の判断は,迫害国への送還禁止の前提であり, 民条約及び難民議定書は,難民に対して庇護を与えることまで規定しておらず,迫害国への送還の禁止がほとんど唯一かつ最大の難民に与えられる効果であって,難民認定の判断は,迫害国への送還禁止の前提であり,実際は難民認定の判断と,迫害国への送還禁止は同時かつ一体的に判断がなされることが予定されている。したがって,法において難民認定制度を規定する以上,この制度の中でノン・ルフールマンの原則についても判断することが予定されているはずであって,在留特別許可や退去強制の執行段階で,ノン・ルフールマンの原則を考慮することを予定して,法が難民認定制度において60日ルールを規定したとは考え難く,むしろ,難民認定手続という特別かつ慎重な手続で一括判断させる方がはるかに合理的である。 そして,実際の運用としても,在留特別許可手続や退去強制の執行段階で,難民であるから特定国に送還するなとの主張があったとしても,既に難民不認定となっている以上,不認定後の特別な事情が主張されない限り,当該段階で,別途ノン・ルフールマンの原則の判断はなされていないはずである。 以上のとおり,仮に在留特別許可を与えるか否かの判断がなされる場合であっても,難民不認定となった者について,ノン・ルフールマンの原則の検討はなされていないというべきである。 また,在留特別許可は,法50条に規定されているとおり,退去強制手続における法務大臣の裁決の際に「特別に在留を許可すべき事情」がある場合に初めて検討されるのであり,その前段階である入国審査官の認定,特別審理官の判定の際には,退去強制事由の有無しか判断されない。そして,これらの退去強制手続の内容を当該外国人が認識していることはほとんどなく,通常退去強制事由があるとの認定を受けた段階で異議の申出もなさず,結局,在留特別許可を与えるべきかの判断の されない。そして,これらの退去強制手続の内容を当該外国人が認識していることはほとんどなく,通常退去強制事由があるとの認定を受けた段階で異議の申出もなさず,結局,在留特別許可を与えるべきかの判断の対象ともならない。 加えて,60日ルール違反を含めて難民不認定となった者については,わが国は難民として扱わないのであるから,退去強制の送還先の決定に際しても,難民に適用されるノン・ルフールマンの原則は,少なくとも不認定の後特段の事情が生じない限り判断されるはずがなく,「迫害にかかる申立てをしたものの在留特別許可が認められず退去強制される外国人」について,ノン・ルフールマンの原則が適用されるとは考えられない。 原告については,60日ルールによって難民性の判断がなされず,かつ退去強制手続において異議申出をなしえなかったから,別途ノン・ルフールマンの原則の適用も検討されず,エチオピアを送還先とする退去強制令書が発付されたものであり,難民認定の申請をした原告に対し,難民性の判断も,ノン・ルフールマンの原則の適用の検討も行わなかったことは,難民条約及び難民議定書が締約国であるわが国に課した難民の迫害国への送還禁止の前提としての難民認定の義務に違反するものである。 (2) 争点(2)についてア法61条の2第2項ただし書の「やむを得ない事情」には,病気,交通の途絶等で60日以内に申請することができなかった場合のほか,本人が第三国向け出国を希望していたために難民の認定をしなかったが,最終的に本邦に定住する意思を固めて難民の認定申請をするようになった場合も含まれると解される。 イそして,原告が本件難民認定申請をなすに至った経緯は以下のとおりである。 (ア) 原告は,オーストラリアには原告のいとこのaが滞在しており,また相当数のエチオピア人が滞在しているため と解される。 イそして,原告が本件難民認定申請をなすに至った経緯は以下のとおりである。 (ア) 原告は,オーストラリアには原告のいとこのaが滞在しており,また相当数のエチオピア人が滞在しているため,エチオピアを出国する時点から,オーストラリアに移住するつもりであった。 (イ) そこで,原告は前記前提となる事実記載のとおり,日本に入国して,本件移住申請を行ったが,原告はこれを難民認定申請であると理解していた。 原告は,名古屋入管に収容された後も,オーストラリア大使館に進行状況を確認するため何度も手紙を書き,また直接電話を掛けたが,その返事は,「待つように」「調査中」というものであった。 (ウ) その後,b神父は,原告がオーストラリアに難民申請をしているが手続が進行していないと聞き,オーストラリアのNGO組織に問い合わせたところ,オーストラリアへの移住は容易ではないこと,UNHCR(国際連合難民高等弁務官事務所)の難民認定が必要なことを知り,又同神父はUNHCRに問い合わせて,UNHCRは日本にいる者についてはその者が日本国政府に難民認定申請をしなければ,支援をしないことを知った。原告はこの事実を伝えられ,又UNHCRのc法務官が西日本センターに来ると聞き,平成10年7月下旬ころ,UNHCRに電話をしたところ,同法務官は電話に出られず,UNHCR職員は,まず,原告が日本国政府に対して難民認定申請をする必要がある旨説明した。 (エ) そこで,原告は本件難民認定申請をしたものであり,本件難民認定申請の理由は,オーストラリアへの移住が認められるUNHCRの認定を受けるためであり,同時にオーストラリアへの移住が認められない場合は,日本国に定住することを決意し,日本国の難民認定そのものを受けるためであった。 ウ以上の経緯のとおり,原告は,オーストラリ 認定を受けるためであり,同時にオーストラリアへの移住が認められない場合は,日本国に定住することを決意し,日本国の難民認定そのものを受けるためであった。 ウ以上の経緯のとおり,原告は,オーストラリアへの移住申請手続を行い,これがなかなか進まないことから,これを有利に進めるのに必要だとされるUNHCRの難民認定を得るため,及びオーストラリアへの移住が認められない場合には日本で定住するとの意思を固めて本件難民認定申請を行ったのであって,本件難民認定申請は,第三国への出国移住を真摯に希望している場合にはまずその結果を待ち,第三国への出国移住が期待できる限りは,日本に定住するかどうかの意思を決定するのは困難であったという,上記ア記載の解釈が前提とする事情が存した場合に該当するから,原告には,本件難民認定申請について,法60条の2第2項に規定する「やむを得ない事情」があったというべきである。 エ被告の主張に対する反論(ア) 被告は,原告が本邦入国から60日以内に,日本国への難民認定申請を行う意思があったのにこれをしなかった旨主張するが,原告は当初からオーストラリアに庇護を受ける意思があり,現にオーストラリアへの移住申請(原告の理解では難民認定申請であった。)を行っていたのであり,法務省に行こうとしたのも,念のため手続を確認するつもりであり,結局場所が分からなかったのも,日本に難民認定申請をする意思がその時点でなかったからに他ならず,原告は当初日本への難民認定申請の意思はなかったものである。 (イ) また,被告は,原告が本邦に定住する意思を固めて本件難民認定申請をしたとは認められない旨主張するところ,たしかに,原告は,第一次にはオーストラリアでの庇護を求めて,それが認められない場合には日本での定住を求めるとの点で予備的な意思といえるかも知れない 認定申請をしたとは認められない旨主張するところ,たしかに,原告は,第一次にはオーストラリアでの庇護を求めて,それが認められない場合には日本での定住を求めるとの点で予備的な意思といえるかも知れないが,難民として受け入れられずに迫害を受ける恐れがある本国に送還される危険に直面している者が,予備的な手続をすることが非難されるいわれはない。 あえて,法的にいえば,本件難民認定申請当時の原告の意思は予備的仮定的であったが,オーストラリアへの移住申請が拒否されたことを知らされた平成11年2月5日,原告の日本定住の意思は確定的になり,これにより本件難民認定申請時にあった瑕疵は治癒されたというべく,これは,オーストラリアに対する移住申請が拒否されて直ちに日本に対して難民認定申請を行った場合(これは前記ア記載の「やむを得ない事情」がある場合である。)と実質的に相違はなく,やはり「やむを得ない事情」があったというべきである。 (3) 争点(3)についてア入管法第2条3項の2及び難民条約によれば,難民認定申請の対象となるべき「難民」とは,「人種,宗教,国籍若しくは特定の社会集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために,国籍国の外にある者であって,その国籍国の保護を受けることができないもの又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの(後略)」をいう。 エチオピアは,1991年7月以降,エチオピア人民民主革命戦線(EPRDF)が政権を握っており,その中心はティグレ族によって構成されているティグレ人民解放戦線(TPLF)である。これに対し,原告はオモロ解放戦線(OLF)に所属しており,OLFはエチオピア南部に居住するオロモ族の分離独立を要求している。エチオピアで って構成されているティグレ人民解放戦線(TPLF)である。これに対し,原告はオモロ解放戦線(OLF)に所属しており,OLFはエチオピア南部に居住するオロモ族の分離独立を要求している。エチオピアで内戦が始まった1992年6月,OLFが政府と対立するようになってからは,OLFのメンバーが逮捕・拘置されることが急増した。OLFを含む反政府政党は,1995年の選挙をボイコットし,1998年6月には,紛争によってオロモ族,ゲデオ族,グジ族の者が合計3000名死亡している。そして,オロモ人自治区では,EPRDFがOLFに対抗させるために組織させたオロモ民族民主同盟(OPDU)とOLFとの紛争が続いている。 イ原告は,1991年ころからOLFに所属し,EPLF(エリトリア人民解放戦線)の関する情報収集を担当していたところ,1993年4月,政府高官30名が爆破された事件の犯人の疑いがあるとして治安警察によって逮捕された。原告には全く身に覚えはなく,事件の存在自体も知らなかったが,原告がOLFのメンバーらしいという理由だけで逮捕されて3か月以上も拷問を受け,1994年の4月か5月ころに釈放されるまで拘束されたのである。なお,原告は,釈放時に,治安警察から,国外に出ることを禁止され,さらに「このような問題が起こるならば,あなたの命に責任を持てないよ。」と忠告された。 原告は,釈放後,d首相のガールフレンドであったeという人物の仕事を手伝っており,エジプトに行って化学物質やカセットを輸入していた。その際,原告は,エジプトへ行く機会を利用してOLFの資金で医薬品を買付けて密輸入し,アディスアベバの市場で転売してその利益をOLFの活動資金に充てていた。原告のこのような活動はOLFにとって非常に重要であるとともに,EPRDFが原告に対して迫害を加える理由とな 買付けて密輸入し,アディスアベバの市場で転売してその利益をOLFの活動資金に充てていた。原告のこのような活動はOLFにとって非常に重要であるとともに,EPRDFが原告に対して迫害を加える理由となるものである。 その後も,現エチオピア政府当局は,OLFに対する警戒を強め,多数のOLFメンバーを逮捕・拘置しており,原告の知り合いのメンバーも逮捕され,また,d首相が逮捕されたことから,eと関係が深かった原告には危険が及ぶと考えられた。 ウ以上のような,エチオピアの政治状況及び原告の活動等に照らせば,原告が「難民」に該当することは明らかである。 (4) 争点(4)について原告は,本件難民の認定をしない処分に対して異議の申出をしたものである。異議の申出がなされた以上,異議に理由がないと判断する場合には難民認定をしない処分の理由よりもさらに詳細に理由を付加すべきことは当然のところ,本件裁決ではそれがなされていない。したがって,本件裁決には理由不備の違法がある。 4 争点に関する被告の主張(1) 争点(1)についてア難民条約及び難民議定書は,難民の認定手続についてはなんら定めていないから,どのような手続を定めるかについては締約国の裁量に委ねられていると解すべきところ,国家は,その国の事情に応じた法律を制定しうるのであるから,仮に難民認定手続について外国の法制度と異なることがあったとしても,それは締約国の立法政策の問題であって,難民条約及び難民議定書に違反する問題が生じる余地はない。 そして,法61条の2第2項が,本邦に上陸した日(本邦にある間に難民となる事由が生じた者にあっては,その事実を知った日から60日以内に難民の認定の申請を行わなければならないと定めているのは,難民となる事実が生じてから長期間経過後に難民の申請がなされると,その当 民となる事由が生じた者にあっては,その事実を知った日から60日以内に難民の認定の申請を行わなければならないと定めているのは,難民となる事実が生じてから長期間経過後に難民の申請がなされると,その当時の事実関係を把握するのが著しく困難になり,適正かつ公正な難民認定ができなくなること,迫害を受ける恐れがあるとしてわが国に庇護を求める者は,速やかにその旨を申し出るべきであること,わが国の国土面積,交通・通信機関,地方入国管理官署の所在地等の地理的,社会的実情からすれば60日という期間は申請に十分な期間と考えられることなどを理由とするものであり,しかも,法61条の2第2項ただし書は,申請期間の例外として,「やむを得ない事情」があるときは,60日の申請期間経過後の申請を認めており,法務大臣は,申請期間経過後の申請に対しては,かかる「やむを得ない事情」の有無について判断するのであって,以上のとおりの法61条の2第2項の規定は,内容的にも何ら不合理ではない。 また,法の定める「難民」とは,難民条約1条及び難民議定書1条の規定により難民条約の適用を受ける難民をいうところ(法2条3号の2),上記各規定によれば,「難民」とは「人種,宗教,国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために,国籍国の外にいる者であって,その国籍国の保護を受けることができないもの又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの及びこれらの事件の結果として常居所を有していた国の外にいる無国籍者であって,当該常居所を有していた国に帰ることができないもの又はそのような恐怖を有するために当該常居所を有していた国に帰ることを望まないもの」をいうのであって,そこにいう「迫害」」と にいる無国籍者であって,当該常居所を有していた国に帰ることができないもの又はそのような恐怖を有するために当該常居所を有していた国に帰ることを望まないもの」をいうのであって,そこにいう「迫害」」とは,「通常人において受忍し得ない苦痛をもたらす攻撃ないし圧迫であって,生命又は身体の自由の侵害又は抑圧」を意味し,また,「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」というためには,「当該人が迫害を受けるおそれがあるという恐怖を抱いているという主観的事情のほかに,通常人が当該人の立場に置かれた場合にも迫害の恐怖を抱くような客観的事情が存在していることが必要であると解されている。 したがって,難民条約及び難民議定書で定める難民に該当する者は,その恐怖から早期に逃れるため速やかに他国の庇護を求めるのが通常であり,わが国の地理的・社会的実情に照らせば,このような者が難民認定の申請をすべきか否かについての意思を決定し入国管理官署に出向いて手続を行うには,60日という申請期間は十分と考えられるから,速やかに難民であることを主張して保護を求めなかったという事実自体,その者の難民非該当性を物語っているというべきであって,実際上は,難民条約に定める難民に該当しながら,申請期間内に難民申請をしないというケースはほとんど考えられないというべきである。 以上のとおり,法61条の2第2項の規定が難民条約1条,42条,難民議定書1条に違反するものでないことは明らかである。 イ原告は,法61条の2第2項がノン・ルフールマンの原則に背き,難民条約及び難民議定書に違反する旨主張するが,外国人を本邦外に退去させるか否か,また,退去させるとしてどの地域を送還先として指定するかは,難民の手続とは別個の手続である退去強制手続において判断されるものであって,仮に難民 違反する旨主張するが,外国人を本邦外に退去させるか否か,また,退去させるとしてどの地域を送還先として指定するかは,難民の手続とは別個の手続である退去強制手続において判断されるものであって,仮に難民条約に定める難民が,法61条の2第2項に定める申請期間の制限によってわが国において難民の認定を受けることができなかったとしても,このことをもって,当該外国人が直ちに本国に戻ることを余儀なくされたり,本国に送還されることにはならない。 すなわち,退去強制手続において迫害に係る申立てをした外国人から,法49条1項に基づく異議の申出があった場合には,法務大臣は,当該外国人の退去強制が著しく不当であるか等について判断した上で,当該外国人に在留特別許可(法50条)を与えるか否かを決しているのであって,当該外国人について,退去強制するとすれば迫害を受ける国に送還せざるを得ない,すなわちノン・ルフールマンの原則に違反するという事情は,当該外国人に対して在留特別許可を与えるか否かの判断に際し,積極的事情として考慮されるのであるから,難民認定申請の如何に関わらず,迫害に係る申立てについては十分に検討されている。 さらに,迫害に係る申立てをしたものの在留特別許可が認められず,退去強制されることが確定した外国人の送還先については,難民の認定を受けているか否かにかかわらず,法務大臣が,日本国の利益又は公安を著しく害すると認める場合を除き,ノン・ルフールマンの原則に違反しない地域に送還することになる(法53条3項)。 したがって,法61条の2第2項に定める申請要件を満たしていない難民認定申請について,難民該当性についての実体判断をすることなく難民不認定処分をする取扱いをしたとしても,それをもって,当該外国人が,直ちに難民条約に定める難民が本国に戻ることを余儀なくさ いない難民認定申請について,難民該当性についての実体判断をすることなく難民不認定処分をする取扱いをしたとしても,それをもって,当該外国人が,直ちに難民条約に定める難民が本国に戻ることを余儀なくされたり,本国に送還されることに該当することにはならず,難民条約及び難民議定書によって保護された権利を否定することにもならない。 (2) 争点(2)についてア法61条の2第2項が申請期間を60日と定めているのは,上記被告の主張(1)ア記載のとおりであるところ,同項ただし書は,申請期間の例外として,申請期間の経過に「やむを得ない事情」があるときは,申請期間経過の申請を認めており,被告は,申請期間後の難民認定申請に対してはこの「やむを得ない事情」の有無についても判断する。 ところで,上記「やむを得ない事情」とは,申請期間を60日と定めた法の趣旨からすると,本邦に上陸した日又は本邦にある間に難民となる事由が生じた場合にあってはその事実を知った日から60日以内に難民認定の申請をする意思を有していた者が,病気,交通の途絶等の客観的事情により物理的に入国管理官署に出向くことができなかった場合のほか,本邦において難民認定の申請をするか否かの意思を決定するのが客観的にも困難と認められる特段の事情がある場合をいうものと解すべきである。 例えば,申請者が,本邦において難民としての保護を求めるよりも,第三国において難民としての保護を求めることを希望し,その目的で第三国への入国申請等具体的な手続を行っている場合において,結果的にこれが認められず,その時点で既に申請期間が経過し,あるいは,期間満了が切迫していたような場合には,第三国への入国申請が認められなかったときから本邦における難民認定の申請に要すると認められる合理的期間内に申請がなされれば,同条項ただし書にい 経過し,あるいは,期間満了が切迫していたような場合には,第三国への入国申請が認められなかったときから本邦における難民認定の申請に要すると認められる合理的期間内に申請がなされれば,同条項ただし書にいう「やむを得ない事情」があったものと認める余地がある。もっとも,この場合でも,上記合理的期間とは,同条項本文で本来の申請期間が60日に限定されていることとの均衡上,これを最大限緩やかに解するとしても,60日を超えないと解すべきである。 イそこで,本件難民認定申請に,法61条の2第2項ただし書にいう「やむを得ない事情」があったかどうかについて検討するに,原告は,「本邦に上陸した日から60日以内に難民認定の申請をする意思を有していた者」に該当せず,かつ「病気,交通の途絶等の客観的事情により物理的に入国管理官署に出向くことができなかった場合」に該当しないことは明らかである。 そして,原告は,本件移住申請をなしたことが,「申請者が,本邦において難民としての保護を求めるよりも,第三国において難民としての保護を求めることを希望し,その目的で第三国への入国申請等具体的な手続を行っている場合において,結果的にこれが認められず,その時点で既に申請期間が経過し,あるいは,期間満了が切迫していたような場合」ないし「本人が第三国向け出国を希望していたために難民の認定申請をしなかったが,最終的に本邦に定住する意思を固めて難民の認定申請をするようになった場合」に該当する旨主張するが,本件難民認定申請がされた時点では,本件移住申請が認められないとの通知はされていないほか,原告は,本件難民認定申請時点で本件移住申請を有利に進めるという意図のほかに本邦に定住する意思を固めていたとは認められず,上記各場合に該当するとは認められない。 加えて,上記各場合が「本邦において難民認 ,本件難民認定申請時点で本件移住申請を有利に進めるという意図のほかに本邦に定住する意思を固めていたとは認められず,上記各場合に該当するとは認められない。 加えて,上記各場合が「本邦において難民認定の申請をするか否かの意思を決定するのが客観的にも困難と認められる特段の事情がある場合」に該当するとされるのは,諸外国においては,既に第三国で難民としての保護を受けている者については難民としての保護を与えないことを原則としている国もあるところ,本邦及び第三国において難民としての保護を受けることを希望する者が,仮に本邦において難民認定の申請をしてこれが認められたときには,もはや当該第三国において難民としての保護を受けられないおそれがあるため,このような事態を憂慮して,やむを得ず申請期間内に本邦における難民認定申請をしないということも考えられることから,このような場合には「本邦において難民認定の申請をするか否かの意思を決定するのが客観的にも困難と認められる特段の事情がある場合」と評価し得ることによるものである。 しかるに,本件移住申請と本件難民認定申請との間には法的な関連がなく,本邦で難民認定申請をしたことを理由として本件移住申請が認められないという関係に立つものではないから,原告において,本件移住申請が認められなくなることを憂慮して,申請期間内に本件難民認定申請をしなかったという事情は認められない。 したがって,本件難民認定申請について法61条の2第2項ただし書所定の「やむを得ない事情」があるとの原告の主張は失当である。 (3) 争点(3)についてエチオピアの一般的状況については概ね認めるが,その余の点については不知。 (4) 争点(4)について法61条の2の4に基く異議の申出について,法務大臣が裁決をするに当たっては,行政不服審査法48 エチオピアの一般的状況については概ね認めるが,その余の点については不知。 (4) 争点(4)について法61条の2の4に基く異議の申出について,法務大臣が裁決をするに当たっては,行政不服審査法48条及び41条1項に基づき,理由を附して行う必要があるところ,行政不服審査法が,理由附記を要求している趣旨は,決定機関の判断を慎重ならしめるとともに,審査決定が審査機関の恣意に流れることのないように,その公正を保障するためと解される。したがって,異議の申出に理由がないと判断する場合の理由附記の程度としても,法務大臣の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するに足りる程度のものであればよく,原告の主張は,異議に理由がないと判断する場合には難民認定をしない処分の理由よりもさらに詳細に理由を付すべきことは当然であるとの前提自体に誤りがあり,失当である。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)について(1) 難民条約及び難民議定書は,難民の認定手続についてはなんら定めておらず,当該手続をどのように定めるかについては締約国の裁量に委ねられていると解すべきところ,国家は,その国の事情に応じた法律を制定しうるのであるから,仮に難民認定手続について外国の法制度と異なることがあったとしても,それは締約国の立法政策の問題であるといえる。 ところで,法61条の2第2項の趣旨は,被告主張のとおり,難民となる事実が生じてから長期間経過後に難民の申請がなされると,その当時の事実関係を把握するのが著しく困難になり,適正かつ公正な難民認定ができなくなること,迫害を受ける恐れがあるとしてわが国に庇護を求める者は,速やかにその旨を申し出るべきであること,わが国の国土面積,交通・通信機関,地方入国管理官署の所在地等の地理的,社会的実情からすれば60日という期間は申請に十分な期間と してわが国に庇護を求める者は,速やかにその旨を申し出るべきであること,わが国の国土面積,交通・通信機関,地方入国管理官署の所在地等の地理的,社会的実情からすれば60日という期間は申請に十分な期間と考えられることなどから定められたと解するのが相当であるところ,このような法61条の2第2項の趣旨及び内容に照らせば,法61条の2第2項は,もっぱらわが国における難民認定に関する手続を規律する規定であって,難民条約及び難民議定書に定める難民の定義を実体的に変更したり,当該定義をわが国が留保したりする趣旨の規定であるとは解されないことは明らかであり,そうすると,立法政策の問題として,当該規定の一定の合理性がある限り,わが国の立法裁量の範囲内にあるものとして,難民条約及び難民議定書違反の問題は生じないというべきである。 そして,法61条の2第2項の趣旨は上記のとおりと解されるところ,このような趣旨を手続に反映させることはもとより当然許されるところであり,さらに申請期間を60日と設定したこと,やむを得ない事情がある場合には申請期間徒過にかかわらず申請を認める余地を残していることなど,法61条の2第2項の規定内容には合理性があることは明らかであるから,当該規定は,わが国の立法裁量の範囲に属するものとして,難民条約及び難民議定書に違反するとは認められない。 原告のこの点に関する主張は,手続と実体を混同するものであって,採用できない。 (2) また,原告は,難民条約1条及び難民議定書1条に定義される難民が,本邦入国後直ちに難民申請をするとは限らず,難民それぞれに様々な状況が存するのであって,これらの事情は難民該当性判断の一要素として考慮すれば足りるのに,法61条の2第2項所定の申請期間の不遵守によって一律に難民非該当と判断するのは不当である旨主張するとこ 々な状況が存するのであって,これらの事情は難民該当性判断の一要素として考慮すれば足りるのに,法61条の2第2項所定の申請期間の不遵守によって一律に難民非該当と判断するのは不当である旨主張するところ,上記説示のとおり,法61条の2第2項が申請期間を定めていることについては合理性があり,しかも,当該合理性は,上記のとおり,難民の定義から導かれる難民の性質とも基本的に合致するといい得るうえ,当該規定は,やむを得ない事情がある場合にはなお難民認定の申請を認める構造になっており,やむを得ない事情の有無の判断において,難民申請者の個別具体的事情がしんしゃくされる機会があることに照らすと,この点に関する原告の主張も採用できない。 (3) さらに,原告は,法61条の2第2項所定の申請期間を定めることが,難民条約33条に定めるノン・ルフールマンの原則等の難民の権利を否定する結果になり,難民条約及び難民議定書に違反する旨主張するが,仮に難民条約に定める難民が,法61条の2第2項に定める申請期間の制限によってわが国において難民の認定を受けることができなかったとしても,法は,難民認定手続とは別途の手続である退去強制手続において,ノン・ルフールマンの原則に配慮した規定を設けていることが認められる。 すなわち,法は,退去強制手続において,迫害に係る申立てをした外国人から,法49条1項に基づく異議の申出があった場合には,法務大臣は,法50条に基づき,当該外国人の退去強制が著しく不当であるか等について判断した上で,当該外国人に在留特別許可を与えるか否かを決することができ,この場合,ノン・ルフールマンの原則に違反するという事情は,当該外国人に対して在留特別許可を与えるか否かの判断に際し,積極的事情として考慮され得るといえるし,さらに迫害に係る申立てをしたものの在留 この場合,ノン・ルフールマンの原則に違反するという事情は,当該外国人に対して在留特別許可を与えるか否かの判断に際し,積極的事情として考慮され得るといえるし,さらに迫害に係る申立てをしたものの在留特別許可が認められず,退去強制されることが確定した外国人の送還先については,法53条3項により,難民の認定を受けているか否かにかかわらず,法務大臣が,日本国の利益又は公安を著しく害すると認める場合を除き,ノン・ルフールマンの原則に違反しない地域に送還することになる旨規定しているのであって,法が定めるこれらの諸規定に照らすと,難民認定手続によって難民と認定されるか否かにかかわらず,法は全体として,ノン・ルフールマンの原則に適合するよう定められていると解され,そうとすると,法61条の2第2項が申請期間を定めていることが,直ちにノン・ルフールマンの原則に違反するとは到底言えず,この点からも,法61条の2第2項が,難民条約及び難民議定書に違背するとは認められない。 なお,原告は,法の運用実態や原告の個別処遇を挙げて,法61条の2第2項の申請期間の定めがノン・ルフールマンの原則に反する旨主張するが,上記説示のとおり,法は全体としてノン・ルフールマンの原則に適合するよう定められているのであり,法の難民条約適合性は,このような法の全体構造との対比において検討されるべき問題であって,原告が主張する上記のようなことがらをもって,法の条約適合性の判断要素として考慮するのは不適切であって,採用できない。 (4) 以上によれば,法61条の2第2項の定めが,難民条約及び難民議定書に違反するとは認められない。 2 争点(2)について(1) 法61条の2第2項ただし書は,申請期間の例外として,申請期間の経過に「やむを得ない事情」があるときは,申請期間経過の申請を認めている 書に違反するとは認められない。 2 争点(2)について(1) 法61条の2第2項ただし書は,申請期間の例外として,申請期間の経過に「やむを得ない事情」があるときは,申請期間経過の申請を認めているところ,上記「やむを得ない事情」とは,本邦に上陸した日又は本邦にある間に難民となる事由が生じた場合にあってはその事実を知った日から60日以内に難民認定の申請をする意思を有していた者が,病気,交通の途絶等の客観的事情により物理的に入国管理官署に出向くことができなかった場合のほか,本邦において難民認定の申請をするか否かの意思を決定するのが客観的にも困難と認められる特段の事情がある場合をいうものと解される。 そして,「本邦において難民認定の申請をするか否かの意思を決定するのが客観的にも困難と認められる特段の事情がある場合」とは,「申請者が,本邦において難民としての保護を求めるよりも,第三国において難民としての保護を求めることを希望し,その目的で第三国への入国申請等具体的な手続を行っている場合において,結果的にこれが認められず,その時点で既に申請期間が経過し,あるいは,期間満了が切迫していたような場合」又は「本人が第三国向け出国を希望していたために難民の認定申請をしなかったが,最終的に本邦に定住する意思を固めて難民の認定申請をするようになった場合」を含むと解される(法61条の2第2項ただし書の「やむを得ない事情」をこのように解釈する限度では,原・被告に実質的な争いはなく,当裁判所も上記のとおり解するものである。)。 ところで,上記のように解釈する根拠は,諸外国においては,既に第三国で難民としての保護を受けている者については難民としての保護を与えないことを原則としている国もあり,本邦及び第三国において難民としての保護を受けることを希望する者が,仮に 外国においては,既に第三国で難民としての保護を受けている者については難民としての保護を与えないことを原則としている国もあり,本邦及び第三国において難民としての保護を受けることを希望する者が,仮に本邦において難民認定の申請をしてこれが認められたときには,もはや当該第三国において難民としての保護を受けられないおそれがあるため,このような事態を憂慮して,やむを得ず申請期間内に本邦における難民認定申請をしないということも考えられることから,このような場合には「本邦において難民認定の申請をするか否かの意思を決定するのが客観的にも困難と認められる特段の事情がある場合」と評価し得るからであると解されるからである。 そうであるとすると,申請者が,本法において難民としての保護を求めるよりも,第三国において難民としての保護を求めることを希望している場合であっても,本邦において難民認定を受けたことが第三国において難民としての保護を受けるにあたって不利益とならない場合には,「本邦において難民認定の申請をするか否かの意思を決定するのが客観的に困難と認められる特段の事情がある場合」とは認められないというべきである。 (2) これを本件についてみると,前記前提となる事実記載の経緯及び原告の主張に照らすと,原告が「本邦に上陸した日から60日以内に難民認定の申請をする意思を有していた者」に該当しないことは明らかであり,かつ前記前提となる事実記載の経緯に照らすと,原告が「病気,交通の途絶等の客観的事情により物理的に入国管理官署に出向くことができなかった場合」に該当しないこともまた明らかである。 そして,原告は,オーストラリアでの庇護を求め,その後本件難民認定申請をしているところ,本件移住申請と本件難民認定申請との間には法的な関連がなく,本邦で難民認定申請をしたことを た明らかである。 そして,原告は,オーストラリアでの庇護を求め,その後本件難民認定申請をしているところ,本件移住申請と本件難民認定申請との間には法的な関連がなく,本邦で難民認定申請をしたことを理由として本件移住申請が認められないという関係に立つものではないことは当事者間に争いがない。 (3) 以上の認定・説示によれば,原告が本件難民認定申請をなした際,原告に「本邦において難民認定の申請をするか否かの意思を決定するのが客観的にも困難と認められる特段の事情」が存したとは到底認め難く,ほかに本件難民認定申請が法61条の2第2項本文が定める申請期間を徒過したことがやむを得ない事情があったと認めることもできない。 3 争点(4)について法61条の2の4に基く異議の申出について,法務大臣が裁決をするに当たっては,行政不服審査法48条及び41条1項に基づき,理由を附して行う必要があるところ,行政不服審査法が,異議申立に対する決定につき理由を附記すべきものとしているのは,処分庁の判断を慎重ならしめるとともに,その判断が恣意に流れることのないように,その公正を保障するためと解されるから,その理由としては,請求人の不服の事由に対応してその結論に到達した過程を明かにしなければならないと解するのが相当である。 これを本件についてみると,証拠(甲2)によれば,本件裁決の理由として「貴殿からの難民認定の申請は,法61条の2第2項所定の機関を経過してなされたものであり,かつ,同項ただし書きの規定を適用すべき事情も認められない。」との理由が附記されていることが認められ,これによれば,原告が本法に上陸した日から60日以内に難民申請を行わなかったとの事実を認定したうえで,法61条の2第2項を適用して,本件異議申立を却下したことは明らかであるから,その結論に到達し ,これによれば,原告が本法に上陸した日から60日以内に難民申請を行わなかったとの事実を認定したうえで,法61条の2第2項を適用して,本件異議申立を却下したことは明らかであるから,その結論に到達した過程を明らかにしているということができる。 よって,本件裁決には理由不備の違法はなく,適法である。 第4 結論以上のとおり,法61条の2第2項は難民条約及び難民議定書に違反せず,かつ,本件難民認定申請は,同項本文に定める申請期間を徒過してなされ,徒過したことについて,同項ただし書にいう「やむを得ない事情」は認められない。 そうすると,原告について難民の認定をしない旨の本件処分は適法である。 また,本件裁決に理由不備の違法があるとは認められず,ほかに本件裁決に固有の瑕疵があるとも認められないから,本件裁決は適法である。 したがって,原告の本件各請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第二民事部裁判長裁判官三浦潤裁判官黒田豊裁判官中島崇

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