平成24年12月20日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成24年ワ第3604号不正競争行為差止等請求事件口頭弁論終結日平成24年9月13日 判決 原告株式会社マツモト自動車 同訴訟代理人弁護士高村順久 同清水敦 同清水俊順 同高村至 同髙尾慎一郎 同清水優 同高江洲ひとみ 被告株式会社パドックス 同訴訟代理人弁護士岩谷敏昭 同上村裕是 同伊田真広 同訴訟代理人弁理士柳野隆生 同森岡則夫 同補佐人弁理士関口久由 同中川正人 同柳野嘉秀 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告(1) 被告は,別紙商品目録記載2の商品を譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し,輸出し,輸入し又は電気通信回線を通じて提供させて 事実及び理由第1 当事者の求めた裁判 1 原告(1) 被告は,別紙商品目録記載2の商品を譲渡し,引き渡し,譲渡若しくは引渡しのために展示し,輸出し,輸入し又は電気通信回線を通じて提供させてはならない。 (2) 被告は,前項記載の商品及びその製造に供する金型を廃棄せよ。 (3) 被告は,原告に対し,5000万円及びこれに対する平成24年4月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (4) 被告は,朝日新聞全国版,読売新聞全国版及び毎日新聞全国版の3新聞及びスタイルワゴン,ワゴニスト及びスタイルワゴンクラブの3雑誌上に,別紙謝罪広告記載の謝罪文を,その表題及び原被告の各商号は4号活字,その他は8ポイント活字で,引続き2回掲載せよ。 (5) 訴訟費用は被告の負担とする。 (6) (1)から(3)までにつき仮執行宣言 2 被告主文同旨第2 事案の概要 1 前提事実(当事者間に争いがない又は弁論の全趣旨により認めることができる。)(1) 当事者原告は,自動車,自動車部品及び自動車付属品の販売,修理,賃貸,加工等を目的とする会社である。 被告は,自動車用タイヤ及びホイルの販売等を目的とする会社である。 (2) 原告商品原告は,平成22年3月1日から,別紙商品目録記載1の自動車用ホイール(商品名「ジェイジェイクロモ」。以下「原告商品」という。)を販売している。 (3) 被告の行為被告は,平成23年6月ころから,別紙商品目録記載2の自動車用ホイール(商品名「ロクサーニベルテックス」。以下「被告商品」という。)を販売している(なお,被告が被告商品を製造しているか否かについては争いがある。)。 2 原告の請求原告は,被告の行為が,不正競争防止法(以下「法」という。)2条1 。以下「被告商品」という。)を販売している(なお,被告が被告商品を製造しているか否かについては争いがある。)。 2 原告の請求原告は,被告の行為が,不正競争防止法(以下「法」という。)2条1項3号の他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡などする行為又は同項1号の他人の商品表示として需要者の間に広く認識されている原告商品の形態からなる商品表示と同一若しくは類似の商品表示を使用した商品を譲渡などする行為に当たるとして,法3条に基づき,被告の行為の差止め及び被告商品等の廃棄を,法14条に基づき,謝罪広告の掲載を求めるとともに,法4条本文及び5条2項に基づき,5000万円の損害賠償及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日(平成24年4月20日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている。 3 争点(1) 法2条1項3号に基づく請求に関する争点ア被告商品は,原告商品の形態を模倣したものであるか (争点1-1)イ原告商品の形態は,商品の機能を確保するために不可欠な形態に当たるか (争点1-2)(2) 法2条1項1号に基づく請求に関する争点ア原告商品の形態は,同号の商品表示に当たるか (争点2-1)イ原告商品の形態は,商品表示として需要者の間に広く認識されているか(争点2-2)ウ被告商品の形態は,原告商品の形態からなる商品表示と同一又は類似の商品表示であるか (争点2-3)エ被告の行為は,原告商品と混同を生じさせる行為であるか(争点2-4)(3) 差止め及び廃棄請求の可否 (争点3)(4) 損害額 は,原告商品と混同を生じさせる行為であるか(争点2-4)(3) 差止め及び廃棄請求の可否 (争点3)(4) 損害額 (争点4)(5) 謝罪広告請求の可否 (争点5)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1-1(被告商品は,原告商品の形態を模倣したものであるか)について【原告の主張】以下のとおり,被告商品は,原告商品の形態を模倣したものである。 (1) 原告商品の形態原告商品の形態は,別紙図面1のとおりであり,以下の構成を備えるものである(括弧内の符号は,別紙図面1の記載に対応する。)。 ① ディスク中心部からリムに向けて放射状に10本のスポークが設けられている。 ② 各スポークが「Y」字状である。 ③ 各スポークのリム側は,二叉の縦長「Y」字状(1b)である。 ④ 各スポークのディスク中心部寄りの基部は,やや末広がり状(1a)である。 ⑤ 各スポークのリム寄りの二叉部には涙滴状の孔が設けられている(2)。 ⑥ 各スポークの背面側には浅い凹みが形成されている。 ⑦ 各スポークの左右肩部には段が設けられている(4)。 ⑧ 縦長「Y」字状の各スポークの直線部中央には細溝が形成されている(5)。 ⑨ 各スポーク間に形成される孔は,弾丸状に形成されている(6)。 ⑩ ホイール中心部のセンターボア周りにボルト用の穴(大穴)と排水用の穴(小穴)が同心円上(状)に穿設されている。 ⑪ 飾りボルトが各スポーク間に2個ずつ配設されている(7)。 ⑫ 各スポークが黒色塗装され,正面側頂部は表面研磨されることにより,全体が黒色と銀色のツートンカラーとされている。 (2) 被告商品の形態被 が各スポーク間に2個ずつ配設されている(7)。 ⑫ 各スポークが黒色塗装され,正面側頂部は表面研磨されることにより,全体が黒色と銀色のツートンカラーとされている。 (2) 被告商品の形態被告商品の形態は,別紙図面2のとおりであり,以下の構成を備えるものである(括弧内の符号は,別紙図面2の記載に対応する。)。 ① スポークの数が10本である。 ② 各スポークが「Y」字状に配置されている。 ③ 各スポークがリム側において二叉の縦長「Y」字状である。 ④ 各スポークのディスク中心部は,やや末広がり状である。 ⑤ 各スポークのリム寄りの二叉部には涙滴状の孔が設けられている。 ⑥ 各スポークの背面側には浅い凹みが形成されている。 ⑦ 各スポークの左右肩部には段が設けられている。 ⑧ 各スポークの直線部中央には細溝が形成されている。 ⑨ 各スポーク間に形成される孔は,正面視で「弾丸」状であり,その周縁は略「V」字状に縁取られている。 ⑩ ホイールのディスク中心部に大穴・小穴が同心円上(状)に穿設されている。 ⑪ 飾りボルト(ピアスボルト)が各スポーク間に2個ずつ配設されている。 ⑫ 各スポークが黒色塗装され,正面側頂部は表面研磨されることにより,全体が黒色と銀色のツートンカラーとされている。 (3) 被告商品が原告商品の形態を模倣したものであること以下のとおり,被告商品の形態は,原告商品の形態と実質的に同一のものであり,これに依拠して作り出されたものである。 ア実質的同一性があること原告商品と被告商品の各形態は,基本的構成態様である前記(1)及び(2)の各①,②,⑩,⑪において共通であり,具体的構成態様である同③から⑨まで及び⑫においても共通である。 特に,原告商品の形態における最大の特徴は,同⑦,⑧, 的構成態様である前記(1)及び(2)の各①,②,⑩,⑪において共通であり,具体的構成態様である同③から⑨まで及び⑫においても共通である。 特に,原告商品の形態における最大の特徴は,同⑦,⑧,⑫の構成によりホイールとしての強度を保ちながら,実際よりも細身のスポークを演出している点にあるところ,被告商品は,これらの構成の点で原告商品と全く同一である。 なお,原告商品は,2ピース構造(リム部分が深い形態)であるのに対し,被告商品は,1ピース構造(通常はリム部分が浅い構造)である。しかしながら,被告商品は,マルチピース(2ピース,3ピース)構造にみえるように,リム部分が深い形態を採用している。 このように,被告商品の形態は,原告商品の形態と実質的に同一のものである。 イ依拠性があること被告は,ホイール業界に携わるものとして,原告商品が専門雑誌等で数多く取り上げられ,斬新なデザインのホイールとして好評を博していることを熟知していた。 また,被告の関連会社が原告商品を販売していたことからも,被告は,原告商品の販売が好調であることを認識していた。 上記アのとおり,被告商品の形態が原告商品の形態と実質的に同一であることからしても,被告商品が原告商品に依拠して作り出されたものであることは明らかである。 【被告の主張】以下のとおり,被告商品は,原告商品の形態を模倣したものではない。 なお,原告は,法2条1項3号の「商品の形態」として原告商品の一部であるディスクの形態のみを主張しているところ,ディスクは独立して譲渡等の対象となる部品又は商品ではないから,同号の「商品」には当たらない。 また,原告は,同号の「商品の形態」として,単独の商品ではなく,サイズ及び色彩が異なる多数のシリーズ商品を挙げている。これは,「商品 象となる部品又は商品ではないから,同号の「商品」には当たらない。 また,原告は,同号の「商品の形態」として,単独の商品ではなく,サイズ及び色彩が異なる多数のシリーズ商品を挙げている。これは,「商品の形態」ではなく,商品シリーズの抽象的な形態又はコンセプトに対する保護を求めるものであって失当な主張である。 (1) 原告商品の形態原告商品の基本的形態は,A リムとB ディスクから構成され,C 別個に成形された当該リムA及びディスクBが溶接されている,というものである。なお,Cの構成は,当業者間で「2ピース構造」と呼ばれるものである。 前記【原告の主張】(1)は,Bの構成に係る形態のみを取り上げ,A及びCの各構成に係る形態を欠いており,相当ではない。 上記AからCまでの各構成に係る各具体的形態は,以下のとおりである。 ア A(リム)の形態① リム外周面のウェルは,幅が狭く,インナーに偏っている。 ② リムのフランジは,その立上りが滑らかで,光沢感に優れる。 ③ 銀色である。 ④ リム径が20インチである。 イ B(ディスク)の形態原告商品のディスクの形態は,以下の図のとおりである(なお,後記① から⑫までの説明のうち括弧内の符号は,以下の図に記載された符号に対応する。)。 ① ディスク中心部からリムに向けて放射状に10本のスポーク(1,1,…1)が設けられている。 当該10本のスポーク(1)の正面側頂部では,銀色長短2種類の「X」字状装飾面(x1,x2)が形成され,5組計10本とされている。 当該「X」字状装飾部(X)は,点対称図形ではない。 ② 各スポーク(1)が「Y」字状(1b)である。 ③ 各スポークのリム側は,二叉の縦長「Y」字状である。 当該二叉をなす各スポークのリム側の正面側 「X」字状装飾部(X)は,点対称図形ではない。 ② 各スポーク(1)が「Y」字状(1b)である。 ③ 各スポークのリム側は,二叉の縦長「Y」字状である。 当該二叉をなす各スポークのリム側の正面側頂部では,「X」字状装飾面(x1,x2)の先端が片矢印状に尖っている。 ④ 各スポーク(1)のディスク中央部寄りの基部は,やや末広がり状(1a)である。 当該各スポークのディスク中央部よりの基部の正面側頂部では,「X」字状装飾面(x1,x2)の先端が片矢印状に尖っている。 ⑤ 各スポークのリム寄りの二叉部には涙滴状の孔(2)が設けられている。 ⑥ 各スポーク(1)の背面側には矩形状の浅い凹みが形成されている。 ⑦ 各スポーク(1)の左右肩部には段(4)が設けられている。 ⑧ 縦長「Y」字状の各スポーク(1)の直線部中央には細溝(5)が形成されている。 ⑨ スポーク(1,1)間に形成される孔(6)は,弾丸状に形成されている。 ⑩ ディスク中心部のセンターボア周りにボルト用の穴(大穴)と排水用の穴(小穴)が同心円上(状)に各5個穿設されている。 当該ディスク中心部では,隣り合うスポーク(1,1)のセンターボア側広がり部の長さ及び広がり角度が交互に変えられている。 当該ディスク中心部では,ボルト用の大穴は短い「X」字状装飾面(x2)の1組の片矢印状先端の間で挟まれ,排水用の小穴は長い「X」字状装飾面(x1)の1組の片矢印状先端の間で挟まれている。また,ボルト用の大穴及び排水用の小穴によって長短の「X」字状装飾面のディスク中心部寄り先端付近が切り欠かれることのないように配置されている。 ディスク中心部側の長短の「X」字状装飾面の先端は,センターキャップへ向かって緩やかに下降傾斜している。 センターボア側広がり部(r2,r2)の 近が切り欠かれることのないように配置されている。 ディスク中心部側の長短の「X」字状装飾面の先端は,センターキャップへ向かって緩やかに下降傾斜している。 センターボア側広がり部(r2,r2)の間の溝は,V字状である。 センターボアキャップには,黒色背景で,周辺部に,小さな赤い文字で「 」及び小さな白い文字で「´」と表記されている。 ⑪ 飾りボルト(7)が,各スポーク(1,1)間において,スポーク寄りに2個ずつ配設されている。 ⑫ 各スポーク(1)が黒色塗装され,正面側頂部は表面研磨されることにより,全体が黒色と銀色のツートンカラーとされている。 ウ C(2ピース構造)の形態① 別個に成形された当該リムA及びディスクBが溶接されている。 ② 当該溶接位置は,リムの深さが深めになるように設定されている。 (2) 被告商品の形態被告商品の基本的形態は,a リムとb ディスクから構成され,c 当該リムa及びディスクbはもともと一体的に鋳造されている,というものである。なお,cの構成は,当業者間で「1ピース構造」と呼ばれるものである。 前記【原告の主張】(2)は,bの構成に係る形態のみを取り上げ,a 及びcの各構成に係る形態を欠いており,相当ではない。 上記aからcまでの各構成に係る各具体的形態は,以下のとおりである。 ア a(リム)の形態① リム外周面のウェルは,幅が広く,リム幅の略中央に位置している。 ② リムのフランジは,その立上りが略直角で,原告商品より光沢感が劣る。 ③ 黒色である。 ④ リム径が19インチである。 イ b(ディスク)の形態被告商品のディスクの形態は,以下の図のとおりである(なお,後記①から⑫までの説明のうち括弧内の符号は,以下の図に記載さ る。 ④ リム径が19インチである。 イ b(ディスク)の形態被告商品のディスクの形態は,以下の図のとおりである(なお,後記①から⑫までの説明のうち括弧内の符号は,以下の図に記載された符号に対応する。)。 ① ディスク中心部からリムに向けて放射状に10本のスポーク(11,11,…11)が設けられている。 当該10本のスポーク(11)の正面側頂部では,隣り合うスポークに跨る銀色1種類の「V」字状装飾面(v)が形成されている。 当該「V」字状装飾部(V)は,略点対称図形である。 ② 各スポーク(11)が,「Y」字状(11b)である。 ③ 各スポークのリム側は,二叉の縦長「Y」字状である。 当該二叉をなす各スポークのリム側の正面側頂部では,「V」字状装飾面(v)の先端が平坦である。 ④ 各スポーク(11)のディスク中心部寄りの基部は,やや末広がり状(11a)である。 当該各スポークのディスク中心部よりの基部の正面側頂部では,「V」字状装飾面(v)の先端が(ボルト穴による切欠きを除き)矢印状である。 ⑤ 各スポークのリム寄りの二叉部には略二等辺三角形の原告商品の孔よりも径方向及び周方向の長さが約2倍大きい孔(12)が設けられている。 ⑥ 各スポーク(11)の背面側にはY字状の浅い凹みが形成されている。 ⑦ 各スポーク(11)の左右肩部には段(14)が設けられている。 ⑧ 縦長「Y」字状の各スポーク(11)の直線部中央には原告商品の細溝よりも約2倍幅の広い細溝(15)が形成されている。 ⑨ スポーク(11,11)間に形成される孔(16)は,弾丸状に形成されている。 ⑩ ディスク中心部のセンターボア周りに,ボルト用の穴(大穴)と排水用の穴(小穴)が同心円上(状)に各5個穿設されている。 当 (11,11)間に形成される孔(16)は,弾丸状に形成されている。 ⑩ ディスク中心部のセンターボア周りに,ボルト用の穴(大穴)と排水用の穴(小穴)が同心円上(状)に各5個穿設されている。 当該ディスク中心部では,隣り合うスポーク(11,11)のセンターボア側広がり部の長さ及び広がり角度が(ボルト穴による切欠きを除き)同じである。 当該ディスク中心部では,ボルト用の大穴が隣り合う「V」字状装飾面(v)にそれぞれ掛かるように配置され,排水用の小穴は隣り合う「V」字状装飾面(v)の間に配置されている。また,ボルト用の大穴によって「V」字状装飾面のディスク中心部寄り先端付近が円弧状に切り欠かれている。 ディスク中心部側の長短の「V」字状装飾面の先端は,センターキャップに向かって緩やかに下降傾斜し,センターボアキャップ直近では反転して上昇傾斜している。 センターボア側広がり部の間の溝は,平坦である。 センターボアキャップは,中央では黒色背景,周辺では銀色背景である。中央部には大きく銀色でエンブレム,「」及び「」の文字が表記され,周辺部には銀色背景内に銀色の大きな文字で「」「 !"#$ $」と表記されている。 ⑪ 飾りボルト(17)が,各スポーク(11,11)間に,略均等間隔で2個ずつ配設されている。 ⑫ 各スポーク(11)が黒色塗装され,正面側頂部は切削されることにより,全体が黒色と銀色のツートンカラーとされている。 ウ c(1 ピース構造)の形態① 当該リムa及びディスクbは,もともと一体的に鋳造されている。 ② 当該溶接位置は,リムの深さが浅めになるように設定されている。 (3) 被告商品が原告商品の ウ c(1 ピース構造)の形態① 当該リムa及びディスクbは,もともと一体的に鋳造されている。 ② 当該溶接位置は,リムの深さが浅めになるように設定されている。 (3) 被告商品が原告商品の形態を模倣したものではないことア実質的同一性が認められないこと(ア) 共通点被告商品の形態は,以下の点において,原告商品の形態と共通するものである。① ディスク中心部からリムに向けて放射状に10本のスポークが設けられている。② 各スポークが「Y」字状である。③ 各スポークのリム側が二叉の縦長「Y」字状である。④ 各スポークのディスク中心部寄りの基部がやや末広がり状である。⑤ 各スポークの左右肩部に段が設けられている。⑥ 縦長「Y」字状の各スポークの直線部中央には,細溝が形成されている。⑦ スポーク間に形成される孔が弾丸状である。⑧ ディスク中心部のセンターボア周りに,ボルト用の穴(大穴)と排水用の穴(小穴)が,同心円上(状)で各5個穿設されている。⑨ 飾りボルトが,各スポーク間に2個ずつ配設されている。⑩ 全体が黒色と銀色のツートンカラーである。しかしながら,以上の点は,いずれも従来の商品に見られる極めてありふれた形態である。 (イ) 相違点被告商品の形態は,以下の点において,原告商品の形態と相違するものである。 ① リム外周面のウェルの幅及び位置原告商品では幅が狭く,インナーに偏っているのに対し,被告商品では幅が広く,リム幅の略中央に位置している。 ② リムのフランジの立上り方原告商品では滑らかであるのに対し,被告用品では略直角である。 ③ リムのフランジの光沢感原告商品の方が光沢感に優れる。 ④ リムの色原告商品では銀 いる。 ② リムのフランジの立上り方原告商品では滑らかであるのに対し,被告用品では略直角である。 ③ リムのフランジの光沢感原告商品の方が光沢感に優れる。 ④ リムの色原告商品では銀色であるのに対し,被告商品では黒色である。 ⑤ リム径の大きさ原告商品は20インチであるのに対し,被告商品は19インチである。 ⑥ ディスクの正面側頂部における装飾面の形状原告商品では「X」字状であるのに対し,被告商品では「V」字状である。原告商品は,「%!」,すなわち「染色体」をコンセプトとし,ディスクの正面側頂部にX染色体を表す「X」字状装飾面を造形しており,この「X」を全てのデザインの基本的出発点としている。これに対し,被告商品は,「『V』字状の粗メッシュを均等に回転展開した結果得られる点対称の斬新なメッシュスポーク」をコンセプトとし,「V」を全てのデザインの基本的出発点としている。 ⑦ ディスクの正面側頂部の装飾面が点対称となっているか否か被告商品では略点対称であるのに対し,原告商品ではそうなっていない。 ⑧ 各スポークのリム側の正面側頂部における装飾面の先端形状原告商品では尖っているのに対し,被告商品では平坦である。 ⑨ 各スポークのディスク中心部よりの正面側頂部における装飾面の先端形状原告商品では片矢印状であるのに対し,被告商品では矢印状である。 ⑩ 各スポークのリム寄りにある穴の大きさと形状原告商品では小さな涙滴状であるのに対し,被告商品では大きな略二等辺三角形である。 ⑪ 各スポークの背面側にある浅い凹みの形状原告商品では矩形であるのに対し,被告商品ではY字状である。 ⑫ 縦長「Y」字状の各スポークの直線部中央にある細溝の幅被告商品の方が,原告商品よ 各スポークの背面側にある浅い凹みの形状原告商品では矩形であるのに対し,被告商品ではY字状である。 ⑫ 縦長「Y」字状の各スポークの直線部中央にある細溝の幅被告商品の方が,原告商品よりも約2倍大きいものである。 ⑬ ディスク中心部の形態隣り合うスポークのセンターボア側広がり部の長さ及び広がり角度,ボルト用の大穴が装飾面の「X」字又は「V」字装飾面に掛かっているか否か(ボルト用の大穴により「X」字又は「V」字装飾面が切欠かれているか否か),「X」字又は「V」字状装飾面の先端がセンターキャップへ向かう傾斜,センターボア側広がり部の間における溝の形状,センターボアキャップのデザインが異なる。 原告商品のディスク中心部では,「X」字状装飾面にボルト用の大穴が掛からず,センターボアを中心として比較的大きな黒色の五芒星形が視認される。これに対し,被告商品では,「V」字状装飾面にボルト用の大穴が掛かるため,切欠き部が形成され,原告商品に見られるような五芒星形はない。 なお,被告商品のディスク中心部側にある長短の「V」字状装飾面の先端がセンターボアキャップ直近で反転上昇傾斜している点は,センターボアキャップがより奥に押し込まれ安定しているイメージを創出する視覚的効果があり,原告商品と著しく異なる印象を与えるものである。 このように,原告商品及び被告商品のディスク中心部の形態は,著しく相違している。 ⑭ 飾りボルト2個の配設位置各スポーク間において,原告商品ではスポーク寄り,被告商品では略均等間隔に配設されている。 ⑮ 1ピース構造と2ピース構造原告商品が2ピース構造であるのに対し,被告商品は,1ピース構造である。 ⑯ リムの深さ原告商品の方が被告商品よりも深い。 (ウ) 原告商品と被告商品の形態が特 1ピース構造と2ピース構造原告商品が2ピース構造であるのに対し,被告商品は,1ピース構造である。 ⑯ リムの深さ原告商品の方が被告商品よりも深い。 (ウ) 原告商品と被告商品の形態が特徴的な部分において相違すること原告は,前記1【原告の主張】において,原告商品のデザインにおける最大の特徴として,以下の3点を上げている。 ① 10本ある各スポークの中心部に細溝を設けたデュアルスポークデザインとしている点② 各スポークの左右肩部に段差を付けている点③ スポークを黒と銀(表面研磨)のツートンカラーとしている点しかしながら,上記の点は,従前から市場に極めて多数存在する形態であり,原告商品の形態上の特徴ではない。特に②の点について,需要者又は取引者は,銀色に輝く「X」字状装飾部に注意を引かれるから,その奥の小さな段差に着目することはあり得ない。この点は些細なバリエーションにすぎず,原告商品の形態上の特徴ではない。 ホイールの需要者が最も着目する部位は,「ホイールの顔」であるディスクのうち特にその中心であるディスク中心部であって,当業者も「中心部」について多様なデザインをしている。 したがって,その他の原告商品の部位と比較すると,ディスク中心部が原告商品の最大の特徴である。 また,原告商品が2ピース構造であるのに対し,被告商品は,1ピース構造である点においても相違する。2ピース構造は,リムの深さを1ピース構造のホイールより深くすることを可能とするものである。そして,原告商品が2ピース構造であり,リムが深い点及びリムの光沢が優れる点は,従来から同種商品にみられる形態であるとはいえ,その余の特徴と比較すれば相対的に重要な特徴である。 (エ) 小括前記(ア)のとおり,被告商 ,リムが深い点及びリムの光沢が優れる点は,従来から同種商品にみられる形態であるとはいえ,その余の特徴と比較すれば相対的に重要な特徴である。 (エ) 小括前記(ア)のとおり,被告商品の形態と原告商品の形態が一致する点は,いずれも従来から見られるありふれた形態である。これに対し,前記(イ)のとおり,被告商品の形態と原告商品の形態には多くの相違点がある。特に,前記(ウ)のとおり,原告商品の形態のうち,顧客に対する訴求力を相対的に強く有するのは,ディスク中心部,リムの深さ・光沢,2ピース構造であるところ,これらの点において,被告商品の形態は原告商品の形態と相違する。 イ依拠性がないこと被告商品の形態は,以下の図で示すワーク社製「ヴァリンツァシュバートSC5」から示唆を得て作り出されたものである。 被告商品のデザインを担当したデザイナーの P1 は,上記商品に表れた,荒い「V」字状のメッシュを均等に回転した結果得られる,点対象の斬新なメッシュスポークタイプの意匠として,被告商品の意匠を作成した。 当該意匠製作における具体的なイメージの展開は,以下の図で示すとおりである。 したがって,被告商品は,原告商品の形態に依拠して作り出されたものではない。 2 争点1-2(原告商品の形態は,商品の機能を確保するために不可欠な形態に当たるか)について【被告の主張】以下のとおり,原告商品の形態は,同種の商品が通常有する形態である。このことは,商品の機能を確保するために不可欠な形態にも当たるということと同義である。 (1) 同種の商品が通常有する形態の意義法2条1項3号により保護される商品形態は,必ずしも独創的な形態であることを要するものではない。しかしながら, たるということと同義である。 (1) 同種の商品が通常有する形態の意義法2条1項3号により保護される商品形態は,必ずしも独創的な形態であることを要するものではない。しかしながら,同種の先行商品に全く同一の形態のものが存在しない場合であっても,すでに市場に広く見られるいくつかの商品形態を単に組み合わせただけであり,組み合わせること自体も容易な商品形態は,「同種の商品が通常有する形態」であるから,保護されない。 (2) 原告商品の形態が同種の商品の通常有する形態であることアスポークタイプのホイールでありながらメッシュタイプのホイールであるかのような印象を与えること原告は,上記の点について原告商品の形態の特徴である旨主張するところ,同様の特徴を備えた自動車ホイールは,アルミホイールのアフターパーツ市場が始まった30年以上前から散見され,平成20年ころ発行されたカタログにも多数掲載されている。 イその他の原告商品の形態における特徴原告は,その他の原告商品の特徴として,以下の点を挙げている。 ① 各スポークリム側の二叉の縦長「Y」字状② ディスク中心部寄りのやや末広がり形状③ 各スポーク間に形成された砲弾状の孔④ デュアルスポークデザイン⑤ 各スポークの左右肩部に設けられた段差⑥ 各スポークの黒とシルバーのツートンカラーしかしながら,これらの構成は,前記アのカタログだけを見ても極めて多数の同種商品に見られるものであり,これらのありふれた構成を組み合わせて原告商品の形態に至ることは極めて容易である。 ウ原告商品の形態と酷似する先行商品が存在すること前記イ①ないし⑥の全ての特徴を備えた同種の先行商品も多数存在する。 【原告の主張】 は極めて容易である。 ウ原告商品の形態と酷似する先行商品が存在すること前記イ①ないし⑥の全ての特徴を備えた同種の先行商品も多数存在する。 【原告の主張】以下のとおり,原告商品の形態は,同種の商品が通常有する形態ではない。 (1) 前記【被告の主張】(2)イに対する反論原告商品は,10本の各スポークをデュアルスポークとし,各スポーク左右肩部に段差を設け,下地を黒,頂部をシルバーのツートンカラーとすることにより細身のスポークを演出したものであり,すでに市場に広く見られるいくつかの商品形態を単に組み合わせたものではない。 (2) 前記【被告の主張】(2)ウに対する反論被告が挙げる先行商品は,いずれも原告商品の基本的形態である構成要素の一部を具備するにとどまり,原告商品の基本的形態である構成要素の全てを具備したものは存在しない。 これらの先行商品の全体的な形態は,原告商品と全く異なっており,各部位を組み合わせること自体も容易なものではない。 3 争点2-1(原告商品の形態は,法2条1項1号の商品表示に当たるか)について【原告の主張】自動車のホイールの外周部と中心部をつなぐ中間部分のデザインについて,必然的な形態というものは存在しない。 この点に関する原告商品の形態は,前記1【原告の主張】(1)のとおりのものであり,独自性,個別的識別機能を有するものである。 また,後記4【原告の主張】の宣伝等の結果,原告商品の形態は,原告の商品表示として,一般的に周知のものとなっている。 したがって,原告商品の形態は,法2条1項1号の商品表示に当たる。 【被告の主張】商品の形態は,機能の発揮や美感を高めるために適宜選択されるものであり,本来的には出所表示機能を有しない。ごく例外 ,原告商品の形態は,法2条1項1号の商品表示に当たる。 【被告の主張】商品の形態は,機能の発揮や美感を高めるために適宜選択されるものであり,本来的には出所表示機能を有しない。ごく例外的に,ある商品の形態が他の商品と比べて顕著な特徴を有するものであり,それが長期間にわたって特定の者の商品として排他的に使用され又は短期間であっても強力な宣伝広告等を伴って大量に販売されることにより,その形態が特定の者の商品であることを示す表示であると,需要者の間に広く認識されるに至った場合に限り,法2条1項1号の商品表示として保護されることがあるにすぎない。 前記2【被告の主張】のとおり,原告商品の形態における最大の特徴として原告が挙げる点は,当該特徴を備えた商品が従前から市場に多数存在しているか又は些細な特徴にすぎないものである。 したがって,原告商品の形態は,他の商品に比べて顕著な特徴を有するものではないし,後記4【被告の主張】のとおり,原告商品の形態が原告の商品であることを示す表示として需要者の間に広く認識されるに至ってもいない。 よって,原告商品の形態は,法2条1項1号の商品表示には当たらない。 4 争点2-2(原告商品の形態は,商品表示として需要者の間に広く認識されているか)について【原告の主張】以下の広告宣伝等の結果,原告商品の形態は,原告の商品表示として需要者の間に広く認識されている。 (1) 専門雑誌による特集等原告は,平成22年1月に幕張メッセで開催された東京オートサロンにおいて,原告商品を発表し,同年3月1月から販売を開始した。 上記発表は,東京オートサロンの特集雑誌等で紹介され,原告商品も特集記事で取り上げられた。 その後も,原告商品は,専門雑誌等(スタイルワゴン,ワゴニ を発表し,同年3月1月から販売を開始した。 上記発表は,東京オートサロンの特集雑誌等で紹介され,原告商品も特集記事で取り上げられた。 その後も,原告商品は,専門雑誌等(スタイルワゴン,ワゴニスト及びスタイルワゴンクラブ等)において定期的に取り上げられ,エンドユーザーにも原告の商品であると認知されている。 (2) 自社広告原告は,自社広告において,原告商品を平成22年新作ホイールのイメージリーダーとして中心的に取り扱っており,この自社広告は複数の著名な雑誌に掲載されるなどした。 (3) 販売業者による広告原告商品は,複数の販売業者による広告にも掲載されており,被告の関連会社の広告にも掲載されていた。同社は,ホイールに関して日本有数の取扱量を誇る業者であるところ,数あるホイールの中から原告商品を選択して広告に掲載していたことからすれば,被告自身も原告商品がエンドユーザーに周知されていることを認めていたものである。 【被告の主張】原告商品が平成22年3月1日に販売された後,被告商品が販売されるまでには約1年3か月間しか経過していない。 原告が主張する宣伝広告等において,原告商品は,その他大多数のホイールの中の単なる一商品として小さく掲載されているのみであり,特集記事と称するものも,いわゆる「提灯記事」にすぎない。 そもそも原告商品の販売数量は極めて少なく,原告商品の形態は,商品表示として需要者の間に広く認識されているものではない。 5 争点2-3(被告商品の形態は,原告商品の形態からなる商品表示と同一又は類似の商品表示であるか)について【原告の主張】前記1【原告の主張】のとおり,被告商品の形態は,原告商品の形態と実質的に同一のものである。 特に,スポークの中心部に細溝を設けてデュアルスポーク 商品表示であるか)について【原告の主張】前記1【原告の主張】のとおり,被告商品の形態は,原告商品の形態と実質的に同一のものである。 特に,スポークの中心部に細溝を設けてデュアルスポークデザインを採用し,その各スポークの左右肩部に段差をつけて,黒色と銀色を基調としたツートンカラーとすることにより細身のスポークを演出している点において,全く同一のものである。 その結果,商品から受ける全体的な印象は共通であるから,被告商品の形態は,原告商品の形態からなる商品表示と同一又は類似の商品表示である。 【被告の主張】前記1【被告の主張】のとおり,被告商品の形態は,原告商品の形態と著しく異なるものである。 6 争点2-4(被告の行為は,原告商品と混同を生じさせる行為であるか)について【原告の主張】被告商品は,原告商品と販売地域や客層が共通である。 被告商品は,原告商品と比較すれば,品質(精度,重量,剛性などに関するホイールとしての性能)や質感(高級感)の点で劣るものであり,価格も低い。 しかしながら,自動車用ホイールを選ぶ際には,主にホイールが醸し出すイメージに重点が置かれ,そのイメージはホイールの形態によるところが大きい。 前記1【原告の主張】のとおり,被告商品の形態は,原告商品の形態と酷似しているから,品質や価格に違いがあるとはいえ,なお混同を生じさせるおそれがあるものである。 【被告の主張】前記5【被告の主張】のとおり,被告商品の形態は,原告商品の形態と著しく異なるものであり,現に出所の混同が生じたこともないから,被告の行為は,原告商品と混同を生じさせる行為ではない。 7 争点3(差止め及び廃棄請求の可否)について【原告の主張】被告は,中国で被告商品を製造し,日本国内に輸入して販売してい ないから,被告の行為は,原告商品と混同を生じさせる行為ではない。 7 争点3(差止め及び廃棄請求の可否)について【原告の主張】被告は,中国で被告商品を製造し,日本国内に輸入して販売している。 よって,原告は,被告に対し,被告商品の譲渡,貸渡し,譲渡若しくは貸渡しのための展示,輸出又は輸入の差止め及び被告商品の廃棄を求める。 被告商品は金型を用いて製造され,この金型さえあれば,すぐに侵害行為を再開することができるから,この金型は侵害行為を組成した物(法3条2項)に当たる。 よって,被告商品の製造に用いる金型の廃棄も求める。 【被告の主張】被告商品を中国から日本国内に輸入して販売していることは認めるが,その余は否認する。 8 争点4(損害額)について【原告の主張】被告は,平成23年6月から平成24年3月末までの間に,少なくとも5000個の被告商品を販売した。 被告商品1個当たりの利益は1万円を下らないから,被告は,被告の行為により少なくとも5000万円の利益を受けた。 よって,原告は,被告の行為により5000万円の損害を受けたものと推定される(法5条2項)。 【被告の主張】否認又は争う。 9 争点5(謝罪広告請求の可否)について【原告の主張】原告は,ホイールやエアロパーツについて統一的なイメージを提供すること,個々の商品の意匠にこだわることによって,ブランドイメージを維持し,顧客からの信用を得ている。 原告が扱う商品の形態は,いわば原告の営業の命綱であるところ,被告の行為は,単に原告に経済的な損失を及ぼしただけでなく,原告が築き上げたブランドイメージを傷つけ,顧客の原告商品に対する信用を損ねるものである。 したがって,原告の営業上の信用を回復するためには, 為は,単に原告に経済的な損失を及ぼしただけでなく,原告が築き上げたブランドイメージを傷つけ,顧客の原告商品に対する信用を損ねるものである。 したがって,原告の営業上の信用を回復するためには,原告商品のデザインを模倣したことについての謝罪が必要であるから,原告は,被告に対し,法14条に基づき,別紙謝罪広告記載の謝罪文の掲載を求める。 【被告の主張】否認又は争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(被告商品は,原告商品の形態を模倣したものであるか)について法2条4項によれば,「商品の形態」とは,需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感をいう。また,同条5項によれば,「模倣する」とは,他人の商品の形態に依拠して,これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいう。 以下に詳述するとおり,被告商品と原告商品を対比して観察した場合,知覚によって極めて容易に認識することができる差異があり,実質的に同一の形態であるということは困難である。 (1) 原告商品の形態と被告商品の形態アはじめに原告の主張は,要するに,原告商品と被告商品の各ディスクにおける表面の形態が実質的に同一であるから,商品全体の形態も実質的に同一である旨をいうものである。 そこで検討すると,当該各形態は,以下のとおりであると認めることができる。 なお,被告は,ディスク面だけでなく,リムや双方の構造の溶接形態も対比すべきであると主張する。しかしながら,いずれの点も一見しただけでは,その違いが需要者や取引者にとって容易に看取できないだけでなく,後述のとおり(後記(3)),ディスクの表面の形態が実質的に同一であるとはいえないこと る。しかしながら,いずれの点も一見しただけでは,その違いが需要者や取引者にとって容易に看取できないだけでなく,後述のとおり(後記(3)),ディスクの表面の形態が実質的に同一であるとはいえないことからすれば,それ以上にリムの形態や,リムとディスクの溶接形態を検討する必要はない。 イ原告商品におけるディスク表面の形態当該形態は,以下の図のとおりである(なお,後記①から⑪までの各説明のうち括弧内の符号は,以下の図に記載された符号に対応する。)。 これによれば,原告商品は,原告が主張する形態(前記第3の1【原告の主張】(1))を有していることが認められる。 また,被告は,原告商品の形態について,前記第3の1【被告の主張】(1)のとおり主張するところ,原告商品は,被告が主張する上記形態を有していることも認められる。 ウ被告商品におけるディスク表面の形態当該形態は,以下の図のとおりである(なお,後記①から⑪までの各説明のうち括弧内の符号は,以下の図に記載された符号に対応する。)。 被告商品は,原告が主張する形態(前記第3の1【原告の主張】(2))を有していることが認められる。 また,被告は,被告商品の形態について,前記第3の1【被告の主張】(2)のとおり主張するところ,被告商品は,被告が主張する上記形態を有していることも認められる。被告が主張する形態は,原告の主張する形態と矛盾するものではなく,原告の主張する形態よりも詳しいものであり,その部分が原告商品の形態との相違点となっている(後記(3))。 (2) 原告商品と被告商品の対比(異同)ア共通点被告商品と原告商品の各ディスク表面における形態は,以下の点で共通することが認められる。① ディスク中心部からリムに向けて放射状に10本 (2) 原告商品と被告商品の対比(異同)ア共通点被告商品と原告商品の各ディスク表面における形態は,以下の点で共通することが認められる。① ディスク中心部からリムに向けて放射状に10本のスポークが設けられている。② 各スポーク(スポークの本体であり,正面側頂部を切削することによって生じた銀色の装飾面をいうものではない。)が縦長「Y」字状である。③ 各スポークのリム側が二叉である。④ 各スポークのディスク中心部寄りの基部がやや末広がり状である。⑤ 各スポークの左右肩部に段が設けられている。⑥ 縦長「Y」字状の各スポークの直線部中央には細溝が形成されている。⑦ スポーク間に形成される孔が弾丸状に形成されている。⑧ ディスク中心部のセンターボア周りにボルト用の穴(大穴)と排水用の穴(小穴)が同心円上(状)に各5個穿設されている。⑨ 飾りボルトが各スポーク間に2個ずつ配設されている。⑩ 全体が黒色と銀色のツートンカラーである。イ相違点被告商品と原告商品の各ディスク表面における形態は,以下の点で相違することが認められる。 なお,前記(2)アのとおり,ディスク面についての相違点を検討する。 ① ディスクの正面側頂部における装飾面の形状が,原告商品では「X」字であり,各スポークにあるのに対し,被告商品では「V」字状装飾面であり,隣り合うスポークに跨っている。 ② 各スポークのリム側の正面側頂部における装飾面の先端形状は,原告商品では尖っており,被告商品では平坦である。 ③ 各スポークのディスク中心部よりの正面側頂部における装飾面の先端形状は,原告商品では片矢印状,被告商品では矢印状である。 ④ 各スポークのリム寄りにある穴の大きさ及び形状は,原告商品では小さな涙滴状であるのに対し,被告 心部よりの正面側頂部における装飾面の先端形状は,原告商品では片矢印状,被告商品では矢印状である。 ④ 各スポークのリム寄りにある穴の大きさ及び形状は,原告商品では小さな涙滴状であるのに対し,被告商品では大きな略二等辺三角形である。 ⑤ 縦長「Y」字状の各スポークの直線部中央にある細溝の幅は,被告商品の方が原告商品よりも約2倍大きいものである。 ⑥ 隣り合うスポークのセンターボア側広がり部の長さ及び広がり角度,ボルト用の大穴が装飾面の「X」字又は「V」字装飾面に掛かっているか否か,「X」字又は「V」字状装飾面の先端がセンターキャップへ向かう傾斜,センターボア側広がり部の間における溝の形状,センターボアキャップの形態が異なる。 ⑦ 飾りボルト2個の配設位置が,各スポーク間において,原告商品ではスポーク寄り,被告商品では略均等間隔に配設されている。 ウ対比判断(ア) 共通点証拠(乙11の1・2)によれば,株式会社三陽ジャパンは,遅くとも平成21年11月25日以前に,以下の図(同社のホームページに掲載されたもの)の商品(商品名「&&%」のブラックSPTポリッシュ色)を販売したことが認められる。 上記商品は,前記アの被告商品と原告商品の各ディスク表面における形態の共通点のうち,少なくとも①,④,⑥,⑧,⑩を備えるものであることが認められる(なお,原告は,上記商品が上記共通点のうち③,⑤についても備えていると主張するものの,③について,二叉に分かれているとまでは確認することができず〔このため,涙滴状もしくは略二等辺三角形の孔も確認できない。〕,⑤について,段差の存在も確認できない。)。 また,証拠(乙12)によれば,遅くとも,平成21年までに,以下の2つの図の商品が販売され のため,涙滴状もしくは略二等辺三角形の孔も確認できない。〕,⑤について,段差の存在も確認できない。)。 また,証拠(乙12)によれば,遅くとも,平成21年までに,以下の2つの図の商品が販売されていたことも認められる。 これらの商品は,上記共通点のうち②,③を備えるものであることが認められる。 さらに,証拠(乙13の1~10)によれば,原告商品の販売開始前から,上記共通点⑤を備える自動車用ホイールの意匠公報が発行されていたことが認められる。 共通点⑨(飾りボルト)が2ピース構造の同種商品にありふれた形態であることについては,当事者間に争いがない。 なお,原告は,原告商品の形態における最大の特徴が上記共通点のうち⑤,⑥,⑩の構成である旨主張する。しかしながら,上記のとおり,これらの構成自体は同種商品に見られる構成であるから,これらの構成を備えているというだけで法2条1項3号による保護の対象となる形態であるとはいいがたい。したがって,これらの点において共通するからといって実質的に同一の形態であるということはできない。 また,後記(イ)のとおり,原告商品と被告商品の各ディスク表面における形態には,一見して識別することのできる明らかな相違点があることからすれば,そもそも上記の共通点があることのみをもって実質的に同一の形態であるとはいえない。 (イ) 相違点前記イの相違点④,⑤,⑦は,それ自体として,それほど大きな印象を与えているとは認められない。 しかし,前記イの相違点①から③まで及び⑥は,互いに相まって異なる印象を与えているということができる。 これらの相違点は,各ディスク表面の各スポークの正面側頂部を研磨して形成された銀色の装飾面の形状が商品全体に異なる印象を与えているということがで って異なる印象を与えているということができる。 これらの相違点は,各ディスク表面の各スポークの正面側頂部を研磨して形成された銀色の装飾面の形状が商品全体に異なる印象を与えているということができ,特に商品全体の印象に大きく影響すると認められる中心部の形態において異なる印象を与えるものである。 以下,詳述する。 前記(2)イによると,原告商品について,次の特徴点を指摘することができる。 すなわち,原告商品は,各スポーク上に2本の弯曲した細く長い装飾面を背中合わせにして,「X」字状を形成している。「X」字は2種類ある。すなわち,ディスク面の中心付近に,ボルト用の大穴5個と排水用の小穴5個が,円を描くように交互に配列されているところ,排水用の小穴を跨ぐ「X」字状装飾面(x1)は,リム側と比べて中心側の足が広がっておらず,足は長く中心部付近まで伸び,長い「X」字を形成している(その結果,むしろ,「Y」字とも見える形状となっている。)。これに対し,ボルト用の大穴を跨ぐ「X」字状装飾面(x2)は,リム側よりも中心側の足が広がり,「X」字の中心側の足が,排水用の小穴を跨ぐ「X」字の足のところで止まり,短い「X」字を形成している。 このように,原告商品は,ディスク表面上に長短2種類の「X」字状装飾面(x1,x2)を看取することができるものである(相違点①)。 また,長短の「X」字の先端は,いずれも片矢印状で尖っており,鋭利な印象を与える(相違点②,③)。特に,中心部に向けられた長い「X」字の先端は,5対の松葉の先端が中央に集中しているように,先端が特に強調されている上,短い「X」字の足の上に重なるような印象を与えている。 これらの結果,原告商品から受ける全体的印象は,鋭利で繊細,かつ重層的な(装飾面が重層し,下 中しているように,先端が特に強調されている上,短い「X」字の足の上に重なるような印象を与えている。 これらの結果,原告商品から受ける全体的印象は,鋭利で繊細,かつ重層的な(装飾面が重層し,下層部に五芒星の形態を窺うことができる。)ものとなっている。 一方,前記(2)ウによると,被告商品について,次の特徴点を指摘することができる。 すなわち,被告商品は,隣り合うスポーク上に,同スポーク間に形成される弾丸状の穴の周囲に沿って,細長い装飾面(v)が10個の「V」字を形成し,円を描くように均等に配列されている(「V」字の下が中心部側,上がリム部側に位置するように配列されている。また,「V」字の下側が隣接し,上部が離れて二叉となっているため,2つの「V」字の片側ずつが合わさり「Y」字を形成しているように見える〔前記(2)ウ〕。)。 「V」字も2種類あるが,左右反転させると同一形状となる。すなわち,ディスク面の中心付近に,ボルト用の大穴5個と排水用の小穴5個が,円を描くように交互に配列されているところ(配列の状況は,原告商品と同じである。),ボルト用の大穴は隣り合う「V」字状装飾面(v)にそれぞれ掛かるように配置され,排水用の小穴は隣り合う「V」字状装飾面(v)の間に収まるように配置され,ボルト用の大穴により「V」字状装飾面のディスク中心部寄り先端付近が円弧状に切り欠かれている(相違点⑥)。 その結果,被告商品は,1種類の「V」字又は「Y」字を看取することができるにすぎない(相違点①)。 また,「V」字状装飾面の先端は,リム側が矩形であり,中心部側も「V」字の下端であり,鋭利ということはなく,切り欠き部の存在も,むしろ,ボルトを取り囲むように,隣り合う「V」字がまとまり,よりその先端が鈍い印象を受ける(相違点②, ム側が矩形であり,中心部側も「V」字の下端であり,鋭利ということはなく,切り欠き部の存在も,むしろ,ボルトを取り囲むように,隣り合う「V」字がまとまり,よりその先端が鈍い印象を受ける(相違点②,③)。 これらの結果,被告商品から受ける全体的印象は,より均質で単層的なものとなっている。 さらに付言すると,各ディスク表面を全体として対比観察した場合,そもそも原告商品と被告商品とでは装飾面の構成要素の単位が異なっており,これにより全体から受ける印象も明確に異なっているものというべきである。すなわち,上記のとおり,原告商品の装飾面は,各スポークに設けられた長短2種類のX字を組み合わせた形態であることが一見して明らかである。これに対し,被告商品の装飾面では,基準となる構成要素のまとまりが必ずしも一見して明らかなものではない。例えば,ボルト用の大穴(又は排水用の小穴)からリム側に延びるスポークの溝を挟んで2つのV字がひとまとまりとなり,これらを組み合わせた形態のようにも見ることができる(第3の1【被告の主張】(3)ア(イ)相違点⑦は,このことをいうものと解される。)。 これらの相違点は,原告商品と被告商品とを対比して観察した場合に一見して明らかに看取することができるものであって,需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって極めて容易に認識することができる差異である。これらの差異による結果として,商品全体から受ける印象も明確に異なるものとなっている。 (ウ) 小括前記(ア)及び(イ)で検討したところからすると,原告商品と被告商品の各ディスク表面の形態が実質的に同一のものであるということはできない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,法2条1項3号に基づく原告の請求には理由がな 商品と被告商品の各ディスク表面の形態が実質的に同一のものであるということはできない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,法2条1項3号に基づく原告の請求には理由がない。 2 争点2-2(原告商品の形態は,商品表示として需要者の間に広く認識されているか)について証拠(甲4~甲83の1・2)によれば,平成22年3月以降,自動車用品に関する複数の月刊誌において,原告商品を紹介する1~4頁の記事や,原告商品に関する2又は4頁の自社広告及び他社による原告商品を含む商品広告が掲載されたものと認めることができる。 しかしながら,月刊誌に数頁の紹介記事や広告が掲載されたからといって,そのことのみをもって,商品表示として需要者の間に広く認識されているなどとは到底いうことができない。上記各雑誌の発行部数,販売地域等に関する主張立証も全くない上,上記各雑誌には,原告商品以外にも被告商品を含む多数の同種商品が掲載されている。 他に,原告商品の販売数量,売上高,同種商品の市場における原告商品の市場占有率など,この点に関する原告の主張を裏付ける主張立証は全くない。 したがって,原告商品の形態が,商品表示として需要者の間に広く認識されているとは認めることができないから,その余の点について判断するまでもなく,法2条1項1号に基づく原告の請求にも理由がない。 3 結論以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求にはいずれも理由がない。 よって,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官山田陽三 裁判官松川充康 裁判所第26民事部 裁判長裁判官山田陽三 裁判官松川充康 裁判官西田昌吾
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