平成17(ワ)7598 操業差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成20年9月18日 大阪地方裁判所
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判決文本文136,626 文字)

判決 主文 第1請求 第2事案の概要 争いのない事実等 (1)当事者等 (2)本件Y社施設の概要等 (3)本件4市組合施設の概要等 (4)化学物質に対する現状の規制・指針等 (5)杉並中継所・杉並病・原因裁定 (6)仮処分決定 (7)単位・用語等の説明 争点 争点に対する当事者の主張 (1)争点(1)(原告らに,本件Y社施設について,操業を差し止めるための訴えの利益が認められるか。)について 【被告Y社の主張】 ア健康被害の不存在 イ代表訴訟性 【原告らの主張】 (2)争点(2)(本件Y社施設から排出されるVOC等によって,原告らに受忍限度を超える健康被害が発生したか。)について 【原告らの主張】 アVOC等の有害化学物質の排出 (ア)廃プラの危険性等 (イ)本件Y社施設の危険性等 (ウ)D意見書による裏付け (エ)原告らを含む周辺住民の健康被害の多発 (オ)臭気調査による裏付け (カ)被告Y社の調査に対する反論 イVOC等の有害化学物質の到達・曝露 (ア)17年環境調査,18年環境調査 (イ)D6月調査について (ウ)原告ら臭気調査 (エ)府市合同調査に対する反論 (オ)大気拡散論に対する反論 ウ被告Y社由来のVOC等による健康被害の発生 (ア)原告Bの健康被害の訴え (イ)E疫学調査の信用性等 (ウ)C調査による裏付け (エ)小括 エ杉並中継所との比較 オ受忍限度 (ア)廃プラのリサイクルの問題点 (イ)本件Y社施設の公共性の問題点 (ウ)本件 ウ)C調査による裏付け (エ)小括 エ杉並中継所との比較 オ受忍限度 (ア)廃プラのリサイクルの問題点 (イ)本件Y社施設の公共性の問題点 (ウ)本件Y社施設の建設,操業経過の問題点 カまとめ 【被告らの主張】 アVOC等の有害化学物質の排出に対する反論 (ア)廃プラの危険性に対する反論 (イ)大気環境調査に基づく本件Y社施設の安全性 (ウ)D意見書の信用性について イVOC等の有害化学物質の到達・曝露に対する反論 (ア)拡散・希釈 (イ)府市合同調査による安全性 (ウ)府市継続調査による安全性 (エ)D調査に対する反論 (オ)原告ら臭気調査に対する反論 ウ被告Y社由来のVOC等による健康被害の発生に対する反論 (ア)原告らの症状について (イ)E疫学調査の信用性 (ウ)C調査の信用性 エ杉並中継所との比較等 (ア)廃棄物の組成の違い (イ)杉並以外の処理施設について (ウ)公害等調整委員会の裁定について (エ)TVOCについて オ受忍限度 (ア)廃プラのマテリアルリサイクルの公共性 (イ)本件Y社施設の公共性 (ウ)本件Y社施設の建設,操業経過の問題点 カまとめ (3)争点(3)(本件4市組合施設から排出されるVOC等によって,原告らに受忍限度を超える健康被害が発生したか,発生する蓋然性があるか。)について 【原告らの主張】 ア専門委員会報告の信用性 (ア)発生リスクの過小評価 (イ)活性炭による除去の過大評価 (ウ)バックグラウンド濃度設定の不適切性 イ現実の稼 【原告らの主張】 ア専門委員会報告の信用性 (ア)発生リスクの過小評価 (イ)活性炭による除去の過大評価 (ウ)バックグラウンド濃度設定の不適切性 イ現実の稼働による危険性 (ア)有害化学物質の発生 (イ)専門委員会の報告をも上回る排出 (ウ)被告4市組合に対する反論 (エ)杉並中継所との比較 ウ受忍限度について (ア)廃プラのリサイクルの公共性について (イ)本件4市組合施設の公共性について (ウ)本件4市組合施設の建設,操業経過について エまとめ 【被告4市組合の主張】 ア専門委員会の報告の信用性 (ア)発生リスクの過小評価に対する反論等 (イ)活性炭による除去の過大評価に対する反論等 (ウ)バックグラウンド濃度設定についての反論 イ現実の稼働による危険性 (ア)被告4市組合大気汚染物質調査の報告書及び被告4市組合TVOC分析調査の報告書の信用性等 (イ)本件4市組合施設の安全性 (ウ)杉並中継所との比較 (エ)拡散・希釈による安全性等 ウ受忍限度について (ア)廃プラリサイクルの公共性について (イ)本件4市組合施設の公共性について (ウ)本件4市組合施設の建設,操業経過について エまとめ (4)争点(4)(本件Y社施設,本件4市組合施設,第2京阪道路等の施設から排出されるVOC等の複合汚染によって,原告らに受忍限度を超える健康被害が発生したか,発生する蓋然性があるか。)について 【原告らの主張】 【被告Y社の主張】 【被告4市組合の主張】 第3争点に対する当裁判所の判断 争点(1)(原告ら 害が発生したか,発生する蓋然性があるか。)について 【原告らの主張】 【被告Y社の主張】 【被告4市組合の主張】 第3争点に対する当裁判所の判断 争点(1)(原告らに,本件Y社施設について,操業を差し止めるための訴えの利益が認められるか。)について 差止請求の判断基準について 認定事実 (1)本件2施設の概要 ア本件2施設の周辺状況について (ア)本件2施設周辺の地形条件 (イ)本件2施設周辺における,揮発性有機化合物(VOC)の大気中への排出源となり得る他の施設の分布状況 イ本件Y社施設及びその運営の概要等 (ア)製品の原材料 (イ)処理状況 (ウ)人員(平成20年5月16日現在) ウ本件4市組合施設の概要等 (ア)取扱物 (イ)処理状況 (2)発生関連 ア化学物質についての知見 イ本件Y社施設からの化学物質の発生に関する各種調査及び調査結果等 (ア)17年環境調査について(乙A4) (イ)18年環境調査について(乙A13) (ウ)19年環境調査について(乙A58) (エ)19年NMHC測定(乙A44) (オ)被告Y社臭気調査(乙A59) ウD意見等 (ア)前提数値(甲A30) (イ)D意見(甲A23,32,35,証人D) エ本件4市組合施設からの化学物質の発生と調査等 (ア)専門委員会報告書(甲A3) (イ)被告4市組合大気汚染物質調査(丙A57) (ウ)被告4市組合TVOC分析調査(丙A58) (3)到達・曝露関連 ア拡散・希釈について (ア)一般的知見 被告4市組合大気汚染物質調査(丙A57) 被告4市組合TVOC分析調査(丙A58) (3)到達・曝露関連 ア拡散・希釈について (ア)一般的知見 (イ)19年予測調査(乙A14) (ウ)20年予測調査(乙A61) (エ)接地逆転層に関するV意見(甲A129) イ調査結果等 (ア)府市合同調査(乙A56の1) (イ)府市継続調査(乙A56の2ないし5) (ウ)D調査(甲A24,31,35) (エ)原告らを含む周辺住民による臭気調査(甲A130) (オ)被告Y社臭気調査(乙A55,59) (4)結果・因果関係関連 ア原告らによる健康被害の訴え等 (ア)原告ら (イ)原告らを含む本件2施設周辺住民(甲A73ないし75,114,123ないし126) (ウ)被告Y社従業員等 イ疫学調査 (ア)一般的知見(乙A57,63) (イ)E疫学調査(甲A12,13,26) ウシックハウス類似の症状 (ア)シックハウス(シックビルディング)症候群に関する一般的知見(甲A117ないし119) (イ)C調査(甲A117,123ないし126) (5)比較されている杉並中継所(甲1012,丙A37) (6)受忍限度関係 ア廃プラにおけるマテリアルリサイクルの公共性に関連する事情 (ア)リサイクル自体の公共性に関する立法動向 (イ)合同会合取りまとめ(甲A45) (ウ)再商品化製品の品質基準値 (エ)経済的要因 イ本件2施設の公共性について (ア)本件Y社施設について 合同会合取りまとめ(甲A45) 再商品化製品の品質基準値 経済的要因 本件2施設の公共性について 本件Y社施設について 本件4市組合施設について 争点(2)(本件Y社施設から排出されるVOC等によって,原告らに受忍限度を超える健康被害が発生したか。)について (1)はじめに (2)有害化学物質の発生について ア理論上及び現実における有害化学物質の発生について イ人の健康に影響を及ぼす程度の化学物質の排出の有無について (ア)VOCの排出総量(TVOC)とその危険性について (イ)D意見(甲A23等)について ウ周辺住民の健康被害の多発について エ悪臭の発生について (ア)悪臭に関する規制等の状況 (イ)本件Y社施設周辺における悪臭の認知状況 オ17年環境調査ないし19年環境調査の評価について (ア)各調査の手法の相当性について (イ)各調査の前提となる操業状況,ベール保管状況及び換気状況 (ウ)各調査の結果を踏まえた判断 カ小括 (3)有害化学物質の到達・曝露について ア17年環境調査及び18年環境調査の結果について (ア)全国平均値の検討 (イ)D6月調査について (ウ)接地逆転層の形成について (エ)原告ら臭気調査について イ被告らの反論について (ア)拡散・希釈論について (イ)府市合同調査及び府市継続調査(以下,両者を併せて「府市合同調査等」という。)の信用性等について ウ小括 (4)被告Y社由来の有害 拡散・希釈論について 府市合同調査及び府市継続調査(以下,両者を併せて「府市合同調査等」という。)の信用性等について 小括 被告Y社由来の有害化学物質による健康被害の発生について 前提 各調査の結果の検討 (ア)E疫学調査について (イ)C調査について (ウ)原告B等の症状について 小括 杉並中継所との比較 受忍限度の判断 ア侵害行為の態様等 イ公共性等 ウその他の事情について 小括 結論 争点(3)(本件4市組合施設から排出されるVOC等によって,原告らに受忍限度を超える健康被害が発生したか,発生する蓋然性があるか。)について (1)発生・排出 ア理論面における有害化学物質の発生 イ有害化学物質の大量排出をいう原告らの主張の検討 (ア)専門委員会の報告をも上回るTVOCの排出について (イ)既知の有害化学物質の危険性について (ウ)VOC100物質の危険性について (エ)小括 杉並中継所との比較 小括 (2)到達・曝露について (3)本件4市組合施設由来の有害化学物質による健康被害 (4)受忍限度の判断 ア侵害行為の態様等 イ公共性等 ウ対策等 エその他 小括 結論 争点(4)(本件Y社施設,本件4市組合施設,第2京阪道路等の施設から排出されるVOC等の複合汚染によって,原告らに受忍限度を超える健康被害が発生したか,発生する蓋然性があるか。)に 論 争点(4)(本件Y社施設,本件4市組合施設,第2京阪道路等の施設から排出されるVOC等の複合汚染によって,原告らに受忍限度を超える健康被害が発生したか,発生する蓋然性があるか。)について 結論 - 1 -主文 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求 被告株式会社Yは,寝屋川市大字ab番ほか21筆に設置している廃プラスチック処理及びパレット等製造工場の操業を行ってはならない。 被告北河内4市リサイクル施設組合は,寝屋川市大字ac番ほか3筆の地上に設置している廃プラスチックの選別・圧縮梱包処理施設(北河内リサイクルプラザ,建築面積2063平方メートル)の運転を行ってはならない。 第2事案の概要本件は,大阪府寝屋川市の東部地域に居住又は勤務する原告らが,被告株式会社Y(以下「被告Y社」という。)が設置する施設(以下「本件Y社施設」という。)及び被告北河内4市リサイクル施設組合(以下「被告4市組合」という。)が設置する施設「リサイクルプラザかざぐるま」(以下「本件4市組合施設」という。また,本件Y社施設と合わせて「本件2施設」という。)が操業してプラスチックの処理等を行うことにより有毒化学物質が排出され,それによって健康被害を受けている(又は健康被害を受ける蓋然性がある)として,被告らに対し,人格権に基づき,本件2施設の操業の差止めを求めている事案である。 争いのない事実等(証拠の記載のない事実は,当事者間に争いがないか,当裁判所に顕著である。)(1)当事者等ア原告ら等原告らは,大阪府寝屋川市の東部地域に居住又は勤務している者である- 2 -ところ,原告らの居住等する場所(以下「本件地域」という。)と本件2施設との 著である。)(1)当事者等ア原告ら等原告らは,大阪府寝屋川市の東部地域に居住又は勤務している者である- 2 -ところ,原告らの居住等する場所(以下「本件地域」という。)と本件2施設との位置関係は,別紙1「原告らの居住地及び所有農地の分布図」(甲A1)のとおりである(なお,別紙1記載の番号は,別紙当事者目録記載の原告番号に対応する。)。 なお,「廃プラ処理による公害から健康と環境を守る会」(以下「守る会」という。)は,元々「二つの廃プラスチック処理工場建設に反対する自治会,住民の会」という名称であったが,本件2施設周辺の住民自治会等が,本件2施設の建設,操業による有害物質の排出から住民の健康と周辺環境を守ることを一致点にして結成した会であり,原告らのうち,原告Aが代表を務め,原告Bが常任幹事を務めている。 イ被告Y社被告Y社は,平成15年7月31日にリサイクルプラスチックを原料とした物流パレット等の再生製品の製造及び販売を目的として設立された株式会社であって,平成18年以降,「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(平成7年6月16日法律第112号)」(以下「容リ法」という。)に基づく指定法人である財団法人日本容器包装リサイクル協会(以下「容リ協」という。)における再商品化事業者として登録されている。 なお,パレットとは,フォークリフトなどの荷役機械を利用した貨物の仕分け,積込み作業などを合理化,省力化するために使用する,貨物等を乗せる荷台のことをいう。 ウ被告4市組合被告4市組合は,平成16年6月1日,大阪府下の枚方市,寝屋川市,四条畷市及び交野市の4市(以下「北河内4市」という。)により設置された地方自治法上の一部事務組合であり,北河内4市がそれぞれ収集した一般廃棄物のうち,容リ法に規定するペット 下の枚方市,寝屋川市,四条畷市及び交野市の4市(以下「北河内4市」という。)により設置された地方自治法上の一部事務組合であり,北河内4市がそれぞれ収集した一般廃棄物のうち,容リ法に規定するペットボトル及びプラスチック製容- 3 -器包装廃棄物(以下「廃プラ」という。)を受け入れてこれを選別・圧縮・梱包し,特定事業者又は指定法人に引き渡す業務を行う者である。 (2)本件Y社施設の概要等ア施設の概要(乙1056)本件Y社施設は,平成16年9月に建設が完了した,被告Y社が容リ法に基づき設置した施設であって,容リ協が規定する再商品化適合物に合致する廃プラのみを容リ協から取得した上で,同廃プラを加工し再商品化している施設であって,年間1万2000トンの廃プラ処理能力を有している。 イ所在地等(乙1056)本件Y社施設は,大阪府寝屋川市大字ab番ほか21筆の土地(敷地面積は合計1万0508平方メートル。)上に設置されており,作業棟,事務所棟及び水処理設備で構成され,作業棟の周辺には運搬車両の通路が設置されている。 ウ作業工程本件Y社施設における作業工程には,パレットを製造する工程として,解砕工程,選別工程,破砕工程,洗浄工程,比重選別工程,脱水工程,乾燥工程,減容工程及びパレット成型工程があり,インゴット製品を製造する工程として,選別工程後のPS(ポリスチレン)インゴット工程があるほか,本件Y社施設で使用された水を処理する工程として水処理工程が,不要なプラスチック残渣を圧縮梱包する工程として残渣処理工程がある。 各工程の概要は,次のとおりである。 (ア)解砕工程解砕工程においては,ベール状に圧縮梱包された廃プラを解砕機に投入して,廃プラを圧縮梱包前の状態に解きほぐしている。 なお,解砕時には,加熱もせず,摩擦熱も生じないので温度 である。 (ア)解砕工程解砕工程においては,ベール状に圧縮梱包された廃プラを解砕機に投入して,廃プラを圧縮梱包前の状態に解きほぐしている。 なお,解砕時には,加熱もせず,摩擦熱も生じないので温度上昇はし- 4 -ない。 (イ)選別工程aロールスクリーン選別工程解砕工程において解きほぐされた廃プラを,エプロンコンベア上を移動させて,ロールスクリーンを通過させることにより,廃プラに付着した小さな砂やほこりを除去している。 b廃プラの選別工程(a)平成18年4月の本格操業時までは,手作業による選別工程のみを採用し,作業員が,ベルトコンベアで運ばれてくる解砕された廃プラの中からポリプロピレン(以下「PP」という。),ポリエチレン(以下「PE」という。)及びポリスチレン(以下「PS」という。)を視認して,手で選別して取り出す作業を行っていた。 (b)平成18年4月の本格操業時以降は,PP及びPEを選別する工程として,近赤外線を利用して行う光学選別機を導入し,光学選別機の精度を上げるための手作業による準備作業,光学選別機による選別後の手作業による異物除去作業を行う光学選別機工程を採用するとともに,PSを手作業によって取り出す手選別工程を併用している。 (ウ)破砕工程破砕工程においては,選別工程で選別されたPP及びPEを破砕機で破砕している。破砕機に投入されたPP及びPEは,直径40ミリメートルのメッシュの穴を通過できるまで,固定刃と回転刃により破砕されることになっており,直径40ミリメートル以下のフレーク状切片となる。破砕に伴う発熱によっても,破砕直後の廃プラの切片の温度は約40度前後であり,破砕機本体の外周部の温度は50度前後である。 (エ)洗浄工程- 5 -洗浄工程においては,破砕工程で破砕された廃プラの切片を,水 熱によっても,破砕直後の廃プラの切片の温度は約40度前後であり,破砕機本体の外周部の温度は50度前後である。 (エ)洗浄工程- 5 -洗浄工程においては,破砕工程で破砕された廃プラの切片を,水(室温)を用いて洗浄機(フリクションウォッシャー)で洗浄することにより,廃プラの切片に付着している食品残渣等の汚れを除去している。 (オ)比重選別工程比重選別工程においては,洗浄工程を経た廃プラの切片を比重分離機の水槽に入れ,PP及びPEとその他の物の比重差を利用して,水槽内で浮遊物(PP,PE等)と沈殿物(ポリエチレンテレフタラート(以下「PET」という。),ポリ塩化ビニル(以下「PVC」という。),ポリ塩化ビニリデン(以下「PVDC。」という。)とに分離し,PET,PVC等を除去している。 (カ)脱水工程脱水工程においては,比重分離機の水槽内で浮遊している廃プラの切片が,水槽の出口に配置されたスクリューコンベアでメカニカルドライヤー(脱水装置)に搬送され,メカニカルドライヤーのドラムが高速回転することによって発生する遠心力によって,廃プラを脱水している。 (キ)乾燥工程乾燥工程においては,脱水された廃プラの切片を,乾燥用ヒーターの熱風で乾燥させている。 なお,熱風は90度から最大200度にまで設定することができるが,温度センサーがあり,サーモスタットが作動するため,設定温度以上にはならないようになっている。 (ク)減容工程減容工程においては,乾燥した廃プラの切片を減容機(ペレットミル)に投入し,リングダイ(金型)を回転させて,リングダイの内部にあり回転するローターの圧力により減容し,減容した廃プラは,リングダイに直径15ミリメートルの大きさで開けられた無数の穴から押し出- 6 -される。 なお,減容時の廃プラの温度は約70 イの内部にあり回転するローターの圧力により減容し,減容した廃プラは,リングダイに直径15ミリメートルの大きさで開けられた無数の穴から押し出- 6 -される。 なお,減容時の廃プラの温度は約70度である。 (ケ)パレット成型工程a減容した廃プラをカッターコンパクターに投入し,回転羽根でかき混ぜることにより熱を起こし,温度を上げて水分を気化させ,乾燥させた上,押出機に供給する。 なお,カッターコンパクターには,一定の温度(約120度前後)よりも高温にならないように自動制御されており,カッターの温度を計測して120度を上回ると自動的に冷却水をかけて温度を下げるシステムがある。 b押出機では,電気ヒーター(設定温度は240度ないし260度。)で廃プラの温度を約250度まで上げて溶融させる(これを上回って加熱することはなく,温度も自動制御されている。)。押出機を通過する時間は20秒前後である。 c押出機で溶融した廃プラは,成型機に繋がったインジェクターユニット(射出部)に送られ,インジェクターから射出されて成型機の金型に注入され,1万5000キロニュートンで加圧され,パレットにプレス成型される。 d押出機内にはベント(脱気孔)が2か所あり,不純物等の除去を行っているが,ベントにはベント部分で発生した水蒸気等を吸引する装置があり,吸引した蒸気等は排水設備に送られ,水に溶け込ませた上,後記(シ)の水処理を行っている。 (コ)PSインゴット工程PSインゴット工程においては,選別工程で選別されたPS及び発泡スチロールをインゴット機に投入し,320度の湿潤高温熱風(1気圧)を炉内(炉内温度は150度前後になる。)に注入して溶融し,イ- 7 -ンゴット製品を製造する。 なお,PSインゴット工程には,圧力をかける工程はなく,また,インゴ 20度の湿潤高温熱風(1気圧)を炉内(炉内温度は150度前後になる。)に注入して溶融し,イ- 7 -ンゴット製品を製造する。 なお,PSインゴット工程には,圧力をかける工程はなく,また,インゴット機には白金触媒によるスチレン等の浄化機能がある。 (サ)残渣処理工程a残渣処理工程においては,選別工程において不要とされたプラスチック残渣を油圧式圧縮機において圧縮した上,鉄線で自動結束する。 残渣にかかる圧力は8.5㎏/㎠,圧縮率は16.7倍である。 b結束した残渣は,廃棄物処理業者に譲渡し,その業者が固形燃料化及び焼却熱利用等の処理をしている。 (シ)水処理工程(乙A7)本件Y社施設においては,清掃用などの散水,比重選別,切片の洗浄等の工程で水が使用されるが,使用された水は,全体の約3分の2が本件Y社施設内で循環・再使用され,残り3分の1は,水処理施設に送られて浄水処理された上,公共用下水に放流している。 なお,本件Y社施設から放流されている水は,公共下水の放流基準値を下回っており,環境基準を満たしている。 (ス)脱臭装置(乙A12,48)被告Y社は,平成18年8月1日,本件Y社施設内において,押出機及び成型機からの排気を,施設内の他の空気とは別に強制排気する排気系統を設けた。この排気系統は,吸引部を押出機ベント孔,成型機の射出部(インジェクション)排気口(2か所)及び押出機フィルター部の各上部の4か所に設け,そこから吸引した排気を,活性炭層を通過させて臭気源物質を活性炭に吸着させることで臭気源物質を低減させる,処理風量毎分100立方メートル(毎時6000立方メートル)の脱臭装置を経由させ,15.3メートルの高さにある排気口から排出するというものである。 - 8 -なお,被告Y社は,上記脱臭装置の活性炭を,毎年1回の割合で定 メートル(毎時6000立方メートル)の脱臭装置を経由させ,15.3メートルの高さにある排気口から排出するというものである。 - 8 -なお,被告Y社は,上記脱臭装置の活性炭を,毎年1回の割合で定期的に交換している。 エ操業開始時期・操業状況被告Y社は,平成17年4月,本件Y社施設において,試験操業を開始し,1日約10トンの廃プラの処理を行っていたが,平成18年4月,本格操業を開始して1日24時間操業により約30トンの廃プラの処理を行っている。 また,本件Y社施設への廃プラの搬入量は,平成17年度は3903トンであったが,本格操業を開始した平成18年度は1万1257トン,平成19年度は1万0253トンと増加しており,パレットの製造量は,試験操業中の平成17年度は16万5028枚であったが,本格操業を開始した平成18年度は22万0125枚,平成19年度は27万6665枚と順次増加している(甲A71,弁論の全趣旨)。 オ排気処理状況(ア)試験操業時(乙A6)試験操業時の本件Y社施設においては,施設内の空気を,何らの処理をすることなく,壁面の窓を通じて自然換気させ,さらに,壁付換気扇(羽根径600ミリメートル,1台当たり風量7000㎥/時)18台を適宜運転して強制排気させていた。 (イ)脱臭装置設置以降(乙A48)本件Y社施設においては,平成18年8月以降も,排気処理過程を経ない上記換気扇等による換気が基本となっているが,前記ウ(ケ)bの押出機及び同cの成型機からの排気については,全部を強制排気とし,前記ウ(ス)の脱臭装置(処理風量6000㎥/時)を通過させた上で15. 3メートルの高さにある排気口から排気している。 (3)本件4市組合施設の概要等- 9 -ア施設の概要本件4市組合施設は,平成19年12月31日に竣工した 000㎥/時)を通過させた上で15. 3メートルの高さにある排気口から排気している。 (3)本件4市組合施設の概要等- 9 -ア施設の概要本件4市組合施設は,平成19年12月31日に竣工した,北河内4市がそれぞれ収集した一般廃棄物のうち,容リ法に規定するペットボトル及び廃プラを受け入れて,これを選別・圧縮・梱包する施設であって,1日あたり53トンの処理能力(1日11時間稼働を前提とする。)を有している。 イ所在地,敷地面積等の基本情報本件4市組合施設は,寝屋川市大字ac番ほか3筆の土地(敷地面積は合計4866平方メートル。本件Y社施設の北側道路を挟んだ向かい側)上に設置されており,処理棟及び管理棟が設置されている。 ウ作業工程本件4市組合施設における作業工程には,選別工程,圧縮梱包工程が存在する。 各工程の概要は,次のとおりである。 (ア)選別工程選別工程においては,まず,粗選別機により軽量プラスチックと重量プラスチックに選別され,次に,作業員が,ベルトコンベアで運ばれてくる廃棄物から,視認して手を用いてペットボトル,廃プラ及び異物とに選別する作業を行っている。 (イ)圧縮梱包工程圧縮梱包工程においては,選別工程において選別された廃プラを圧縮機によって6回程度の圧縮を繰り返して,1個・1㎥・約250キログラムのベールを作成し,ポリエチレン製の袋で包み,ポリプロピレン製のひもで結束し梱包している。 本件4市組合施設において使用されている圧縮機の最大圧縮力は66t/㎡(ただし,1個・1㎥・300キログラムのベールを前提とす- 10 -る。),圧縮装置の最大速度は208ミリメートル/秒であり,また,実際における圧縮平均速度は,約117ミリメートル/秒である(圧縮機の主押し部が約1.5メートルを約13秒で移動する速度であ -る。),圧縮装置の最大速度は208ミリメートル/秒であり,また,実際における圧縮平均速度は,約117ミリメートル/秒である(圧縮機の主押し部が約1.5メートルを約13秒で移動する速度である。)。 エ操業開始時期被告4市組合は,平成20年2月1日,本件4市組合施設の操業を開始した。 オ排気処理状況被告4市組合は,活性炭装置吸着により本件4市組合施設から排出される空気を浄化するとともに,エアカーテン,高速シャッター及びスチールシャッターにより,本件4市組合施設内の空気が活性炭吸着装置を通ることなく施設外に漏洩することを防止する装置が設けられている。 なお,被告4市組合は,本件4市組合施設における活性炭を定期的に交換することを予定している。 (4)化学物質に対する現状の規制・指針等ア大気汚染防止法上の有害大気汚染物質大気汚染防止法上の有害大気汚染物質とは,継続的に摂取される場合には人の健康を損なうおそれがある物質で大気の汚染の原因となるもの(ばい煙及び特定粉じんを除く。)をいい(同法2条13項),該当する可能性のある物質として234種類,そのうち特に優先的に対策に取り組むべき物質(優先取組物質)として,次の22種類が指定されている。 (ア)アクリロニトリル(イ)アセトアルデヒド(ウ)塩化ビニルモノマー(エ)クロロホルム(オ)クロロメチルメチルエーテル(カ)酸化エチレン- 11 -(キ)1,2-ジクロロエタン(ク)ジクロロメタン(ケ)水銀及びその化合物(コ)タルク(アスベスト様繊維を含むもの)(サ)ダイオキシン類(シ)テトラクロロエチレン(ス)トリクロロエチレン(セ)ニッケル化合物(ソ)ヒ素及びその化合物(タ)1,3-ブタジエン(チ)ベリリウム及びその化合物(ツ) )ダイオキシン類(シ)テトラクロロエチレン(ス)トリクロロエチレン(セ)ニッケル化合物(ソ)ヒ素及びその化合物(タ)1,3-ブタジエン(チ)ベリリウム及びその化合物(ツ)ベンゼン(テ)ベンゾ[a]ピレン(ト)ホルムアルデヒド(ナ)マンガン及びその化合物(ニ)六価クロム化合物イ環境省管理局長通知等環境省管理局長通知「環管大発第050617001」(以下「環境省通知」という。)は,揮発性有機化合物(以下「VOC」という。)が光化学オキシダント及び浮遊粒子状物質の生成の原因となる前駆物質の一つであることを指摘し,日本国の工場等においては,現在,約200種類のVOCに該当する物質が広く使用されていると推計されるところ,関係者の理解を容易にするため,VOCに該当する主な物質として,平成12年度における排出量推計結果に基づき排出量の多い順番に100種類の物質の名称を記載している。 なお,記載されている100種類の物質には,9番としてノルマルブタ- 12 -ン,10番としてイソブタン,53番としてエタノールが記載されている。 ウVOC及び総揮発性有機化合物(以下「TVOC」という。)の室内環境基準(ア)厚生労働省は,室内空気質の指針値及び暫定目標値として,次のように定めている(以下,単に「指針値」及び「暫定目標値」というときは,厚生労働省の定めるVOCに関するものを指す。)。 aホルムアルデヒド100μg/㎥bトルエン260μg/㎥cキシレン870μg/㎥dパラジクロロベンゼン240μg/㎥eエチルベンゼン3800μg/㎥fスチレン220μg/㎥gフタル酸ジ-2-エチルヘキシル120μg/㎥hアセトアルデヒド48μg/㎥iTVOC(暫定目標値)400μg/ ㎥eエチルベンゼン3800μg/㎥fスチレン220μg/㎥gフタル酸ジ-2-エチルヘキシル120μg/㎥hアセトアルデヒド48μg/㎥iTVOC(暫定目標値)400μg/㎥(イ)なお,指針値は,現時点で入手可能な毒性に係る科学的知見から,ヒトがその濃度の空気を一生涯にわたって摂取しても,健康への有害な影響は受けないであろうと判断される値を算出したものであり,TVOCの暫定目標値は,国内家屋の室内VOC実態調査の結果から,合理的に達成可能な限り低い範囲で決定した値であり,室内空気質の状態の目安として利用されることが期待されるものであって,毒性学的知見から決定したものではなく,含まれる物質の全てに健康影響が懸念されるわけではない。 また,上記暫定目標値における測定方法においては,n-ヘキサン(分子量86)からn-ヘキサデカン(分子量226)までの物質のみを測定対象とした上で,トルエン換算することを前提としている。 - 13 -エ寝屋川市の悪臭防止法に基づく規制寝屋川市においては,悪臭防止法に基づき,次の22種類の特定悪臭物質について,規制基準が設定されている(乙A39)。 (ア)アンモニア(イ)メチルメルカプタン(ウ)硫化水素(エ)硫化メチル(オ)二硫化メチル(カ)トリメチルアミン(キ)アセトアルデヒド(ク)プロピオンアルデヒド(ケ)ノルマルブチルアルデヒド(コ)イソブチルアルデヒド(サ)ノルマルバレルアルデヒド(シ)イソバレルアルデヒド(ス)イソブタノール(セ)酢酸エチル(ソ)メチルイソブチルケトン(タ)トルエン(チ)スチレン(ツ)キシレン(テ)プロピオン酸(ト)ノルマル酪酸(ナ)ノルマル吉草酸(ニ)イソ吉草酸オ環境基準値(乙1 チル(ソ)メチルイソブチルケトン(タ)トルエン(チ)スチレン(ツ)キシレン(テ)プロピオン酸(ト)ノルマル酪酸(ナ)ノルマル吉草酸(ニ)イソ吉草酸オ環境基準値(乙1038)- 14 -環境基準値とは,環境基本法16条に基づき,人の健康を保護し,生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準として定められたものである(以下,単に「環境基準値」というときは,環境基本法に基づく環境基準値を指す。)。 そして,環境基準値が定められた物質のうち,ベンゼンは,1年平均値が0.003㎎/(3μg/㎥)以下,トリクロロエチレンは,1年平‰均値が0.2㎎/(200μg/㎥)以下,テトラクロロエチレンは,‰1年平均値が0.2㎎/(200μg/㎥)以下,ジクロロメタンは,‰1年平均値が0.15㎎/(150μg/㎥)以下ということが定めら‰れている。 カ日本産業衛生学会作業環境許容濃度(甲A11)日本産業衛生学会作業環境許容濃度(以下「作業環境許容濃度」という。)とは,労働者が1日8時間,1週間40時間程度,肉体的に激しくない労働強度で有害物質に曝露される場合に,当該有害物質の平均曝露濃度が当該許容濃度以下であれば,ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響が見られないと判断される濃度として日本産業衛生学会が勧告する許容濃度である。 ただし,上記許容濃度の利用上の注意として,許容濃度は,安全と危険の明らかな境界を示したものと考えてはならないこと(したがって,労働者に何らかの健康異常が見られた場合に,許容濃度を超えたことのみを理由として,その物質等による健康障害と判断してはならないし,また,逆に,許容濃度等を超えていないことのみを理由として,その物質等による健康障害ではないと判断してはならない。),許容 えたことのみを理由として,その物質等による健康障害と判断してはならないし,また,逆に,許容濃度等を超えていないことのみを理由として,その物質等による健康障害ではないと判断してはならない。),許容濃度の数値を,労働の場以外での環境要因の許容限界値として用いてはならないことが指摘されている。 (5)杉並中継所・杉並病・原因裁定- 15 -ア杉並区全域及び中野区と練馬区の一部で集められた不燃ごみを最終処分地まで搬送する作業を軽減,合理化するための,東京都杉並区d地区にある東京都清掃局所管の不燃ごみ圧縮積み替え施設を杉並中継所という。そこでは,ごみ収集車で集められた不燃ごみ9台分を10トンコンテナにピストンで押し込み,容積の圧縮を図り(圧縮率50パーセント),大型ごみ運搬車に積み替える作業を行っており,東京23区内には,同様の中継施設が5か所存在する。 なお,杉並中継所における作業等に伴う排気は,排気塔,換気塔を通して行われており,また,粉じんの飛散防止のため,散水も行われている。 イ杉並中継所周辺において,平成8年4月の同中継所の本格操業の開始と時期を符合するように周辺住民の一部に集団発生したとされる健康被害(喉の痛み,目の痛み,頭痛,めまい,咳,吐き気等の症状)を指して杉並病と俗称されることがある。 ウ杉並中継所周辺の住民は,公害等調整委員会に原因裁定の申立てを行ったところ,同委員会は,平成14年6月26日,公害紛争処理法に基づいて,操業開始後一定時期(約4か月)までの周辺住民の健康被害の原因については,廃プラスチックを含む不燃ごみの中継施設である杉並中継所の操業に伴って排出された化学物質によるものであると推認される旨の原因裁定を下したが,同裁定では,どの化学物質が原因であるかの特定はされていない。 (6)仮処分決定原告 中継施設である杉並中継所の操業に伴って排出された化学物質によるものであると推認される旨の原因裁定を下したが,同裁定では,どの化学物質が原因であるかの特定はされていない。 (6)仮処分決定原告らを含む本件2施設の周辺住民ら645名は,平成16年7月1日,大阪地方裁判所に対し,被告Y社を債務者として,本件Y社施設の操業停止を求める仮処分の申立てを行ったが,大阪地方裁判所は,平成17年3月31日,本件Y社施設の操業による化学物質の発生により債権者らの生命の安全及び身体の健康に対して,受忍限度を超える被害が生じる蓋然性があると- 16 -までは認められないとして,申立てを却下する旨の決定をした(甲A4)。 (7)単位・用語等の説明ア単位(ア)μg(マイクログラム)100万分の1グラムの意味である。 (イ)ppm(パーツ・パー・ミリオン)100万分の1の意味であり,主に濃度を表すときに用いられる。 (ウ)ppmcメタン換算値の意味である。 イ物質名等(ア)VOC(揮発性有機化合物VolatileOrganicCompounds)VOCとは,大気中に排出され,又は飛散した時に気体である有機化合物(浮遊粒子状物質及びオキシダントの生成の原因とならない物質として政令で定める物質(メタン等)を除く。)をいう。 また,VOCの中においては,NMHCが主要部分を構成する。 (イ)NMHC(Non-MethaneHydrocarbon)メタン以外の炭化水素の総称である。 (ウ)NOx窒素酸化物の意味である。 ウ団体名(ア)WHO(WorldHealthOrganization)世界保健機関の略語である。 (イ)EPA(EnvironmentalProtectionAgency)アメリカ環境保護庁の略語である。 O(WorldHealthOrganization)世界保健機関の略語である。 (イ)EPA(EnvironmentalProtectionAgency)アメリカ環境保護庁の略語である。 エ気象用語(ア)逆転- 17 -逆転とは,気温は,高度を増すほど低下していくことが自然であるが,時には温度勾配が,その自然の温度勾配よりも小さい,あるいは逆に高度が増すほど温度が高くなるというような温度勾配が形成されることがあり,このような温度勾配をいう。 (イ)接地逆転接地逆転とは,逆転のうち,夜間の放射冷却等で地面が冷えて生じる逆転をいう(特に晴天で無風・弱風時などでは夜間の放射冷却で地面が冷えて,地表に接する空気の温度が低くなり,高さを増す方が温度が上昇するという現象が生じる。)。 (ウ)接地逆転層温度勾配が逆転している空気層を逆転層といい,そのうち,接地逆転により生じたものを接地逆転層という。 オ環境測定比較対照地点とは,その地域における特定施設の影響を受けない地点のことをいい,その地域周辺の濃度等が人為的な影響を受けない状況でどの程度のものであるかを把握するために設定されるものをいう。 争点 (1)原告らに,本件Y社施設について,操業を差し止めるための訴えの利益が認められるか。 (2)本件Y社施設から排出されるVOC等によって,原告らに受忍限度を超える健康被害が発生したか。 (3)本件4市組合施設から排出されるVOC等によって,原告らに受忍限度を超える健康被害が発生したか,発生する蓋然性があるか。 (4)本件Y社施設,本件4市組合施設,第2京阪道路等の施設から排出されるVOC等の複合汚染によって,原告らに受忍限度を超える健康被害が発生したか,発生する蓋然性があるか。 - 18 - 争点に対する当事者の 施設,本件4市組合施設,第2京阪道路等の施設から排出されるVOC等の複合汚染によって,原告らに受忍限度を超える健康被害が発生したか,発生する蓋然性があるか。 - 18 - 争点に対する当事者の主張(1)争点(1)(原告らに,本件Y社施設について,操業を差し止めるための訴えの利益が認められるか。)について【被告Y社の主張】ア健康被害の不存在本件事件においては,後記(2)の【被告Y社の主張】のとおり,そもそも被告Y社の操業によって人の健康に影響を及ぼす程度の濃度の化学物質(VOCを含む。)は,本件Y社施設からは排出されていない。 また,後記(2)の【被告Y社の主張】のとおり,何らかの化学物質が本件Y社施設から大気中に排出されたとしても,この化学物質は人に健康に影響を及ぼす濃度を維持したまま原告らの居住地まで到達しているわけではないから,原告らへの曝露が存在しない。 そして,原告らは,このような状況の中で本件訴訟を提起したが,この訴訟の中で健康被害に関する医師のカルテを提出した原告は,原告Bしかいない(もっとも,原告Bのカルテにより同原告の症状が明らかになるものでもない。)。また,甲A123の1,124の1,125の1,126の1は,原告らが主導する「守る会」が原案を作成し,これを医師である証人Cが一部手直しした問診票であるが,この問診票に応答した者は原告らのうちでは原告Bだけである。 以上によれば,原告らは,「原告ら」を含む周辺住民に「被害」が生じたなどと主張しているが,実際に「被害」なるものの資料として問診票を提出しているのは,原告28名のうちでは原告Bだけであって,残りの原告ら27名は問診にも応じていないと思われ,医療機関においても診療を受けたこともないと思われる。また,カルテがないところからすれば,C証人の診察も受けて 28名のうちでは原告Bだけであって,残りの原告ら27名は問診にも応じていないと思われ,医療機関においても診療を受けたこともないと思われる。また,カルテがないところからすれば,C証人の診察も受けていないということができ,本来,原告らには何の被害も生じていないというべきである。 - 19 -なお,被告Y社は原告Bに健康被害が生じていると認めるものではない。 イ代表訴訟性本件は,本件Y社施設から,「化学物質(有害化学物質)を排出していない」,「化学物質の到達(曝露)がない」ケースであるが,いずれにしても個々の原告らに「健康被害」なるものの主張・立証がないのであるから,原告らは健康であるということになる。 そうであれば,原告らには,まずもって損害が生じておらず,当然,損害賠償請求権は発生していない。また,損害が発生していない原告らが,健康被害による損害賠償請求を飛び越えて,本件Y社施設の操業の全面差止めを求めることは許されない。 ウしたがって,原告らには訴えの利益がなく,原告適格を欠いているというべきである。 万一,原告らについて,原告以外の周辺住民に健康被害が生じていることを理由として,本件Y社施設の操業を差し止める請求をなし得る地位を認めるときは,原告らは周辺住民のために一種の代位訴訟,代表訴訟をしていることになるが,このような訴訟は現行法下では許されていない。 以上のとおりであって,原告らの請求は,不適法であるから却下されるべきである。 【原告らの主張】争う。 後記(2)の【原告ら主張】のとおり,原告らは,本件Y社施設から排出された有害化学物質の暴露を受け,現実に健康被害が発生している。 したがって,原告らには訴えの利益は存在する。 (2)争点(2)(本件Y社施設から排出されるVOC等によって,原告らに受忍限度を超える健康被害が発 学物質の暴露を受け,現実に健康被害が発生している。 したがって,原告らには訴えの利益は存在する。 (2)争点(2)(本件Y社施設から排出されるVOC等によって,原告らに受忍限度を超える健康被害が発生したか。)について【原告らの主張】- 20 -アVOC等の有害化学物質の排出(ア)廃プラの危険性等a有害化学物質の発生(a)プラスチックは,最小構成要素である各種単量体(モノマー)を製造し,その重合・縮合によって重合体(ポリマー)を作ることでできる高分子材料であって,主成分である高分子量の合成樹脂等に加えて,安定剤,可塑剤,硬化剤,酸化防止剤,有機溶剤など多種多様な化学物質が添加されている。 (b)そして,プラスチックは,そのままの状態で放置していただけでも,種々の化学物質が空気中に放出されており,圧縮されることによってもベンゼンが発生し,また,破損すると,PEからはキシレン,PVCからはアセトアルデヒド等が発生するとされている。 このように,プラスチックからは,プラスチックの性状,プラスチックにかけられるストレスの種類によって多種多様な化学物質が発生するということができる。 b発生した化学物質の危険性VOCは,浮遊粒子状物質(SPM)の原因物質であり,窒素酸化物とともに光化学オキシダントの生成の原因となるため,現在,大気汚染防止法において,規制の対象とされている。 そして,VOCは,トルエン,キシレンなど200種類程度に及び,そのうち環境省が主要なものと指摘するだけでも100種類もある。 それらの中には,ベンゼンやトリクロロエチレン,テトラクロロエチレンなどの有害大気汚染物質(大気汚染防止法2条13項,18条の20以下。優先取組物質の中でも上記の3物質などは指定物質として排出抑制対策が取られている。)も含まれている。 レン,テトラクロロエチレンなどの有害大気汚染物質(大気汚染防止法2条13項,18条の20以下。優先取組物質の中でも上記の3物質などは指定物質として排出抑制対策が取られている。)も含まれている。 また,エチルベンゼン,ホルムアルデヒド,アセトアルデヒド,- 21 -トルエンなど13項目については,厚生労働省の「シックハウス(室内空気汚染問題)に関する検討会」で室内濃度指針値が策定されている。 (イ)本件Y社施設の危険性等本件Y社施設においては,廃プラの解砕・破砕・減容・乾燥・熔融・残渣圧縮の各工程が存在し,廃プラに様々なストレスをかけている。また,PE,PPなどから生成されたペレットについては,乾燥,溶融という加熱工程があり,PSについてのインゴット工程では高温スチームで溶融されて減容されるので,主としてメカノケミカル反応及び加熱反応が生じ,それによって様々な有害化学物質が発生する危険性が極めて高いというべきである。 (ウ)D意見書による裏付け本件地域における大気汚染の状況は,東京大学大学院新領域創成科学研究科のD教授(以下「D教授」または「D証人」ということがある。)が作成した以下の内容の意見書(以下「D意見書」という。)により裏付けられる。 aある場所における大気中のNMHC/NOx比の数値は,相対的に燃焼系発生源に対して非燃焼系発生源が多いか少ないかを表している指標ということができる。 そして,東大阪市西保健センター,国設四条畷,寝屋川市役所には,それぞれ大気環境を測定する測定局があるところ(以下,順に「東大阪局」,「四条畷局」「寝屋川局」という。),東大阪局,四条畷局,寝屋川局の各測定局におけるNMHC/NOxの経年的変化を対比すると,この間,各測定局における気候条件,地形条件などに大きな変化はないので,上記指標 局」「寝屋川局」という。),東大阪局,四条畷局,寝屋川局の各測定局におけるNMHC/NOxの経年的変化を対比すると,この間,各測定局における気候条件,地形条件などに大きな変化はないので,上記指標の経年変化は,それぞれの測定局周辺におけるNMHCとNOxの排出源の寄与度の変化を反映するはずである。 - 22 -また,燃焼系発生源のNMHCとNOxは気温の影響を受けないのに対し,非燃焼系発生源のNMHCは気温の上昇とともに揮発するなどして排出量が増える。 各局の測定値を検討すると,四条畷局においては,平成9年から平成17年にかけてNMHC/NOxの数値が順次下がっており,また,東大阪局においては,平成9年よりは減少しているものの,平成13年以降は,その数値がほぼ横ばいであるのに対し,寝屋川局においてのみ,平成14年と平成17年にその数値が上昇している。また,寝屋川局が最も気温との相関関係が強い。 このことは,寝屋川局付近においては,もともとNMHCの発生について非燃焼系の発生源の寄与度が高かったが,近年,その傾向がさらに強まったことを意味しているということができる。 また,NMHC/NOxの気温依存性が平成10年よりも平成16年に寝屋川局のみにおいて高まっており,このことからも,非燃焼系の寄与が高まっていることが裏付けられているということができる。 b次に,寝屋川局に影響を与え得る非燃焼系の発生源としては,平成14年1月からの廃プラの全戸収集と寝屋川市による圧縮梱包の開始及び平成17年4月からの被告Y社による試験操業の開始があげられる。 そして,寝屋川市の大気中のNMHCは,非燃焼系又は燃焼系の排出源からのNMHCの排出対策が一般的に進んでいるにもかかわらず,寝屋川市における廃プラからの排気の寄与によって,その抑制が十分に進まない状 て,寝屋川市の大気中のNMHCは,非燃焼系又は燃焼系の排出源からのNMHCの排出対策が一般的に進んでいるにもかかわらず,寝屋川市における廃プラからの排気の寄与によって,その抑制が十分に進まない状態にあるといえるので,本件Y社施設からのNMHCの排出が寝屋川市の大気環境に影響を与えているといえ,この点からも,原告ら居住地の環境汚染に本件Y社施設によるVOC等の有害化学物質の排出が関与していることを示しているということができる。 - 23 -(エ)原告らを含む周辺住民の健康被害の多発後記ウにおいて詳論するとおり,本件Y社施設の周辺においては,深刻な健康被害が多発しており,本件Y社施設以外に原因は考えられず,後記ウのE疫学調査やC調査によって,本件Y社施設との関係が裏付けされているのであるから,本件Y社施設から有害化学物質が排出されていることは明らかである。 (オ)臭気調査による裏付け原告らは,本件Y社施設の操業開始後,同施設の周辺でそれ以前には経験したことがない臭気を感じるようになった。臭気は人間の「感覚」であるが,人間の防御反応の一つでもあり,不快な臭気は人間の健康に対して有害な物質による場合も多い。原告らが行った後記イ(ウ)の臭気調査の結果は,本件Y社施設から有害化学物質が排出されていることを裏付けている。 (カ)被告Y社の調査に対する反論被告Y社は,平成17年から平成19年において,毎年1回,大気環境調査を実施している(以下,それぞれを「17年環境調査」「18年環境調査」「19年環境調査」という。)が,その調査には,根本的欠陥が存在するので,その調査結果を信用することはできない。 aまず,上記調査においては,本件Y社施設から発生する化学物質についての全数調査〔母集団すべてを調査対象とする調査方法〕(定性,半定量(トル が存在するので,その調査結果を信用することはできない。 aまず,上記調査においては,本件Y社施設から発生する化学物質についての全数調査〔母集団すべてを調査対象とする調査方法〕(定性,半定量(トルエン換算)など)を実施しておらず,測定調査対象を55物質に限定するなど,政府が指定する有害化学物質234物質はもとより,環境省通知に記載されている主なVOC100物質をもカバーしていない。 bまた,本件Y社施設には煙突などまとまった排気口がなく,換気扇11箇所,窓,扉などから化学物質が排出されているにもかかわらず,- 24 -これらの場所から排出されている化学物質の種類,濃度,排気量が測定調査されていないことから,本件Y社施設からの発生についての全容が不明である。 (キ)以上のとおりであって,本件Y社施設がVOC等の有害化学物質を排出しているということができる。 イVOC等の有害化学物質の到達・曝露(ア)17年環境調査,18年環境調査a17年環境調査の結果によれば,比較対照地点の濃度が,全国平均値が明らかにされているVOCの12項目(環境省水・大気環境局編集の「日本の大気汚染状況」平成18年版)のうち8項目において全国平均値以上の濃度となっており,環境省発行の「化学物質の環境リスク評価」における一般大気環境平均値を超える化学物質が14項目も測定されており,また,ダイオキシン類が全国平均値の7倍の濃度で測定されている。 bまた,18年環境調査の結果によれば,この18年環境調査においても,比較対照地点において全国平均値より高濃度を示す物質が,「テトラクロロエチレン」,「アクリロニトリル」,「塩化ビニルモノマー」,「クロロホルム」,「アセトアルデヒド」,「1,2-ジクロロエタン」,「アセトニトリル」,「フェノール」,「ビスフェ 質が,「テトラクロロエチレン」,「アクリロニトリル」,「塩化ビニルモノマー」,「クロロホルム」,「アセトアルデヒド」,「1,2-ジクロロエタン」,「アセトニトリル」,「フェノール」,「ビスフェノールA」など17物質も測定されている。 cしたがって,本件Y社施設から排出された多くの化学物質が,南方に400メートル離れた地点である比較対照地点に到達しているということができる。 (イ)D6月調査について環境システム学を専攻するD教授の指導の下,原告らが,平成18年6月23日,24日,26日に行った大気環境調査(以下「D6月調- 25 -査」という。)の結果によれば,検出された27の化学物質のうち,ほとんどの化学物質において,本件Y社施設から北方約70メートルのF宅の濃度が,西北西方向に約450メートル離れたe第2ハイツ公民館(以下,単に「公民館」というときは,e第2ハイツ公民館を指す。)における濃度より高い結果を示している。 そして,上記27の化学物質のうち,被告Y社が測定している10の化学物質においては,本件Y社施設内での測定においても検出されていることからすれば,本件Y社施設を発生源とした化学物質が公民館まで到達しているということができる。 また,公民館で全国平均値以上の測定値を示す化学物質は,トルエン3倍,ホルムアルデヒド6倍,ベンゼン4倍(環境基準を超えている。),トリクロロエチレン4倍,テトラクロロエチレン3倍,スチレン2倍,パラジクロロベンゼン5倍,エチルベンゼン4倍,n-酢酸ブチル11倍,アクロレイン4倍であり,このことは,極めて深刻な汚染が進行していることを示しているということができる。 (ウ)原告ら臭気調査原告らが,平成17年から平成20年2月まで,行った臭気調査(以下「原告ら臭気調査」という。)によれば,本 極めて深刻な汚染が進行していることを示しているということができる。 (ウ)原告ら臭気調査原告らが,平成17年から平成20年2月まで,行った臭気調査(以下「原告ら臭気調査」という。)によれば,本件Y社施設の臭気については,原告らの生活圏内で225回,日数にして147日,周辺住民が臭気を感じたとの記録があり,本件Y社施設直近でも88回,77日の記録がある。 また,原告Bは,可能な限り,地域を巡回して自分自身で悪臭情報に根拠があるかどうかを個別に確認してきているところ,原告Bが臭気を確認できた場所は本件Y社施設1キロメートル範囲内に相当程度分散し,かつ多数回確認できており,原告ら臭気調査の客観的な裏付けとなっている。 - 26 -以上によれば,本件Y社施設から排出される化学物質によって,同施設周辺の大気が汚染されているということができる。 (エ)府市合同調査に対する反論大阪府と寝屋川市による合同の環境調査(以下「府市合同調査」という。)には,次のような重大な問題が存在するので,信用することはできない。 第1に,府市合同調査は,原告らが居住等する地域の大気環境の実態,全容を明らかにするために必要であるTVOCの調査をしていない。 現在,政府は有害大気汚染物質リストとして234物質を挙げ,また,環境省通知において「揮発性有機化合物(VOC)に該当する主な物質」100項目が挙げられているが,府市合同調査による調査項目は11項目に過ぎず,とりわけ,シックハウス症候群に関して基準のある13物質中でみれば,わずかに2物質を調査しているにすぎないものであり,まさに不十分な調査といわざるを得ない。 第2に,府市合同調査は,TVOCの測定でも全体のわずか10パーセント程度を測定しているだけで,この調査では,とても多種類のVOC類による汚染の全容を把 り,まさに不十分な調査といわざるを得ない。 第2に,府市合同調査は,TVOCの測定でも全体のわずか10パーセント程度を測定しているだけで,この調査では,とても多種類のVOC類による汚染の全容を把握できるものではないのである。 (オ)大気拡散論に対する反論a被告Y社は,本件Y社施設から放出される化学物質がほとんど周辺大気に影響を与えていないとする幾つかの大気拡散予測結果を提出しているが,これら拡散予測には,次のとおり,根本的な問題点が存在するので,信用することはできない。 b放出された有害化学物質の移流・拡散を規定するのは,当該地域の気象条件であるところ,その前提として重要なのは,当該地域の地形的特徴である。 まず,本件Y社施設周辺は,浄水場や養護学校などのある高さ50- 27 -メートル程度の台地などの土地に囲まれた盆地状になっており,本件Y社施設は,その底部を流れるa川沿いに立地している。また,本件Y社施設の東側約1キロメートルの所からは,高度200メートルないし300メートル弱級の山群につながる斜面地が始まっている。 そして,本件Y社施設が立地している上記のような地形的特徴を持った地域では,しばしば接地逆転現象が形成され,また,東側の山群斜面で形成される山風の影響が及ぶことも考えられ,こうしたこの地域の局地気象の特徴を十分考慮した上で有害化学物質の移流・拡散を考えなければならない。 具体的には,原告らが居住等する地域は,夕方から朝の時間帯にかけて,この地域特有の接地逆転の形成と山群斜面からの冷気流による二重の影響で,しばしば明瞭な接地逆転層が形成され,その接地逆転層の高さは,地形から考えて数十メートルないし100メートル程度と推定され,さらに,本件Y社施設からの有害化学物質が,排気塔からは,有効高さも考慮すれば地面から な接地逆転層が形成され,その接地逆転層の高さは,地形から考えて数十メートルないし100メートル程度と推定され,さらに,本件Y社施設からの有害化学物質が,排気塔からは,有効高さも考慮すれば地面から25から30メートル程度から上向きに放出され,換気扇は下向きであるから事実上地面に接して地面に沿って放出されることになるという放出条件も考慮すれば,有害化学物質は,すべて強い接地逆転層の中へ放出されていると考えられる。 以上のことは,本件Y社施設からの有害化学物質の到達を考える場合には不可欠な局地気象現象であり,単なる大気拡散モデルによる机上の計算だけでは実際の有害化学物質の移流・拡散を把握することはできない。 cまた,乙A61号証の大気拡散予測報告書には,次のとおり,重大な問題点も存在するので,より一層信用することはできない。 第1に,ベンゼンとアセトアルデヒドの2種類の物質しか扱ってお- 28 -らず,わずか2種類だけでは汚染評価としては余りにもお粗末といわざるを得ない。総体影響の評価として,TVOCの影響評価もなされるべきである。 第2に,大気拡散予測手法すなわちシミュレーションモデルは,公害対策研究センター「窒素酸化物総量規制マニュアル(新版)」(平成12年12月)(以下ここではマニュアルという)の拡散式を用いたとしているが,その内容は,気象条件に応じてプルームモデル式とパフモデル式を単純に当てはめて拡散濃度を計算しているにすぎないものであり,本件地域周辺での拡散予測では全く意味をもたない。 第3に,大気拡散予測報告書が依拠しているマニュアルは,汚染影響を調べるためのシミュレーションモデルについて,①時間的,空間的に濃度の分布や変動を適切に再現するものであること,②各種発生源の環境に対する汚染負荷の状態を適切に再現するもので アルは,汚染影響を調べるためのシミュレーションモデルについて,①時間的,空間的に濃度の分布や変動を適切に再現するものであること,②各種発生源の環境に対する汚染負荷の状態を適切に再現するものであることをあげ,そのためには,実測値とシミュレーションモデルによる計算値との整合性に関する判定条件を挙げているが,上記大気拡散予測報告書においては,整合性について全く検証しておらず,拡散予測は机上の空論といっても過言でない。 第4に,有害化学物質の排出条件として,成型機脱臭装置からの排ガスだけを対象にして,その汚染は微々たるものであるかのように述べているが,①本件Y社施設には,上記以外に11個の換気扇,多数の排煙窓などから化学物質は放出されており,成型機脱臭装置からの放出はごく一部に過ぎず,②換気扇や排煙窓などからの化学物質は脱臭処理されておらず,成型機脱臭装置からのものよりも多量の有害化学物質が含まれている可能性が高く,③成型機脱臭装置からの化学物質は,高さわずか15.3メートルとはいえ,一応排気塔によって上向きに放出されているが,換気扇からの多量の化学物質は下向- 29 -きに放出され,排煙窓などは自然通風放出であり,成型機脱臭装置からの放出に比べて,拡散しにくい状態で放出されており,これらのことを考慮すれば,大気拡散予測報告書による評価は不当というよりも欺瞞的ですらある。 (カ)以上のとおりであって,本件Y社施設から排出された有害化学物質が原告ら住居まで到来していることは明らかである。 ウ被告Y社由来のVOC等による健康被害の発生(ア)原告Bの健康被害の訴え寝屋川市ef地域に居住する原告B(59歳)は,今まで気管支喘息やアレルギー性鼻炎・結膜炎の症状はなかったにもかかわらず,本件Y社施設が操業を開始したしばらく後の平 (ア)原告Bの健康被害の訴え寝屋川市ef地域に居住する原告B(59歳)は,今まで気管支喘息やアレルギー性鼻炎・結膜炎の症状はなかったにもかかわらず,本件Y社施設が操業を開始したしばらく後の平成18年1月ころから咳や痰が出るようになり,のどの痛みも感じるようになった。 気管支喘息治療薬であるフルタイド,セレベントを吸入したが効果がなく,全身がだるくてしんどくなり,自宅周辺で悪臭が臭うと気分が悪くなり,時には吐き気もするようになった。 そして,上記症状は,居住地域を離れると改善するため,医師の勧めもあり,京都府宮津市に家を確保して転地療養をするようになった。 以上のとおりであって,原告Bの上記の健康被害は,本件Y社施設に由来するということができる。 (イ)E疫学調査の信用性等岡山大学大学院環境学研究科のE教授は,本件Y社施設の操業と周辺住民の健康影響の関連を定量的に評価する目的でアンケート調査に基づく疫学調査を行ったが,その疫学調査結果(以下「E疫学調査」という。)によれば,本件Y社施設の本格稼働後である平成18年7月の時点における本件Y社施設周辺住民の健康被害の多発は,次のとおりである。 - 30 -a第1に,本件Y社施設から北西700メートル以内(ef)地域においては,極めて多数の住民が,「咽頭痛」,「いがらっぽい」,「咳」,「痰」,「眼掻痒感」,「眼の痛み」,「眼脂」,「湿疹」等の各健康被害を受けていることが明らかになっている。 すなわち,ef地域における各症状の有病オッズ比(一般的には,非曝露群と比較して,曝露群とされている集団においては病気が何倍多発しているかという指標)をみると,「咽頭痛」で,3.56,「いがらっぽい」で2.61,「咳」で2.51,「痰」で2.50,「眼掻痒感」で2.78,「眼の痛み」で5.85,「 においては病気が何倍多発しているかという指標)をみると,「咽頭痛」で,3.56,「いがらっぽい」で2.61,「咳」で2.51,「痰」で2.50,「眼掻痒感」で2.78,「眼の痛み」で5.85,「眼脂」で5. 00,「湿疹」で2.53と,いずれも極めて高率であり,このことはef地域で他の地域に比較して深刻な健康被害が多発していることを示している。 b第2に,本件Y社施設から北西700から1000メートル以内(eg自治会)地域においても,多数の住民に健康被害が進行していることが明らかになっている。 すなわち,eg地域の住民にも,「咽頭痛」,「いがらっぽい」,「眼掻痒感」,「眼の痛み」,「眼脂」の各健康被害が進行しており,各症状の有病オッズ比は,「咽頭痛」で2.70,「いがらっぽい」で1.92,「眼掻痒感」で2.02,「眼の痛み」で3.67,「眼脂」で3.32となっている。 cそして,深刻な問題は,昼間在宅者に関する調査結果である。1日のほとんどを在宅する昼間在宅者に限定して,工場からの距離による有病オッズ比をみれば,本件Y社施設から700メートル以内(ef)地域の昼間在宅者は,「咽頭痛」が4.08,「いがらっぽい」が5.91,「鼻水」が2.61,「眼掻痒感」が6.89,「眼の痛み」が5.80,「眼脂」が4.62,「湿疹」が12.43,- 31 -「皮膚掻痒感」が4.30と,各症状での有病オッズ比は驚くほど高率であり,同様に,本件Y社施設から700から1000メートル以内(eg)地域の昼間在宅者でも,「いがらっぽい」が4.22,「眼掻痒感」が3.78,「皮膚掻痒感」が3.35となっている。 d以上によれば,原告らが居住する地域において,有害化学物質汚染の影響とみられる咽頭・呼吸器・眼・皮膚の各健康被害が多発しているということがで 」が3.78,「皮膚掻痒感」が3.35となっている。 d以上によれば,原告らが居住する地域において,有害化学物質汚染の影響とみられる咽頭・呼吸器・眼・皮膚の各健康被害が多発しているということができる。 (ウ)C調査による裏付けa医師Cによる住民に対する健康調査(以下「C調査」という。)によれば,問診結果と訴えている症状の特徴としては,①ほとんどの検診者が,眼が痒い,目やにが出る,鼻が痒い,鼻水が出る,のどが痛い,咳や痰が出る,蕁麻疹や湿疹が出るなどの皮膚粘膜の刺激症状を訴えており,②20人中15人が,こうした症状が大阪市(梅田)などに出かけ自宅周辺を離れたり,旅行に行くと軽快あるいは消失すると述べ,居住地域と症状の相関が高い割合で認められるという点であった。 また,悪臭に伴う嘔気や気分不良,眼やのどの痛みの訴えが多く,これらの症状は,WHOのシックビルディング症候群で指摘されている症状と全く一致し,EPAで指摘されているその症状が居住地域を離れると改善する,戻ると悪化するという特徴も備えており,WHOのシックビルディング症候群と同様の状態であった。 そして,理学的所見やカルテでの点検でも上記訴えと矛盾する点はなかった。 したがって,住民検診の結果によれば,本件地域で,シックビルディング症候群(シックハウス症候群)と類似のVOCによる健康被害が進行していることが裏付けられたということができる。 - 32 -bC調査の結果によれば,住民らから訴えのある症状のうち有病オッズ比が高く本件Y社施設との関連を示している症状は,眼の痛み,目やに,のどの痛み,湿疹や皮膚のかゆみであるところ,これらはWHOで指摘されているシックビルディング症候群の不定愁訴と一致しており,汚染地域に長時間いる昼間在宅者の方が,この皮膚粘膜刺激症状が高率 やに,のどの痛み,湿疹や皮膚のかゆみであるところ,これらはWHOで指摘されているシックビルディング症候群の不定愁訴と一致しており,汚染地域に長時間いる昼間在宅者の方が,この皮膚粘膜刺激症状が高率であることもシックハウス症候群(シックビルディング症候群)と一致している。 そして,この地域での有症状率(症状を有する者の割合)は,工場から700メートル以内では,「眼掻痒感」が42.5%,「のどがいがらっぽい」が35%,「咽頭痛」が26.6%,「眼脂」が25. 2%と高率であり,いずれも20%を超しており,EPAが定める診断基準と合致している。 したがって,臨床医学的分析においても,本件地域において,シックビルディング症候群(シックハウス症候群)と類似のVOCによる健康被害が進行していることが裏付けられたということができる。 (エ)小括a本件Y社施設周辺の住民においては,本件Y社施設が試験稼働中であった平成17年7月の時点よりも,本件Y社施設の本格稼働後である平成18年7月の時点の方が,有病割合が高くなっており,曝露状況と発症の時期が符合している。 b次に,eg(本件Y社施設から,700メートルから1000メートル以内)の住民には,咽頭症状,眼症状について,統計上有意な健康被害が認められ,本件Y社施設により近いef(本件Y社施設から700メートル以内)の住民には,咽頭症状,眼症状に加えて,呼吸器症状,皮膚症状についても,統計上有意な健康被害が認められている。 - 33 -このように,本件Y社施設に近い,efとegの住民は,本件Y社施設から遠いh地区の住民よりも,健康被害が多発している。 cさらに,本件Y社施設周辺住民における各症状の多発は,看過できないほど高い倍率となっており,健康被害の程度も極めて強いが,とりわけ本件Y社施設によ いh地区の住民よりも,健康被害が多発している。 cさらに,本件Y社施設周辺住民における各症状の多発は,看過できないほど高い倍率となっており,健康被害の程度も極めて強いが,とりわけ本件Y社施設により近いefの住民ではegの住民よりも各症状の多発が顕著であり,本件Y社施設との距離について量反応関係が認められる。 また,昼間在宅者は,より多くの曝露を受けることから,各症状の多発も断然に高い倍率となっており,在宅時間の長さにより健康被害が増大するという量反応関係も認められる。 dそして,本件Y社施設周辺住民における有病オッズ比の高さについては,情報バイアスや交絡バイアスでは説明することはできない。 eしたがって,E疫学調査の結果等からすれば,本件Y社施設周辺住民における健康被害の多発の原因が,本件Y社施設にあることは明らかである。 エ杉並中継所との比較本件4市組合施設からのTVOCの1日の排出量は,平成20年2月の平均値を用いると2520グラム,同年3月の平均値を用いると4080グラムであるということができる。 そして,本件Y社施設においても,①本件4市組合施設と同様に廃プラを扱っていること,②廃プラの処理能力について,本件4市組合施設の1万1728トンとほぼ同様の1万2000トンであることからすれば,およその概算として,本件4市組合施設と同程度の有害化学物質が発生していると考えられる。ただ,本件Y社施設においては,脱水乾燥工程,200度以下の温風による乾燥工程,減容工程,パレット成型工程,インゴット製造工程など,本件4市組合施設にはない工程が含まれており,これ- 34 -らの工程によって有害化学物質の発生量はさらに増加していると考えられ,かつ,本件Y社施設では,脱臭装置が成型工程のみに(ただし平成18年7月末以後)設置されて 工程が含まれており,これ- 34 -らの工程によって有害化学物質の発生量はさらに増加していると考えられ,かつ,本件Y社施設では,脱臭装置が成型工程のみに(ただし平成18年7月末以後)設置されているだけであり,こうした点をも考えれば,本件Y社施設からの有害化学物質の発生量は本件4市組合施設に比べてもっと大量になると考えられる。 そして,杉並中継所において,換気系に活性炭処理が行われていなかった初期のTVOCの1日の排出量の推算を行うと,排気塔及び換気塔からのTVOCの1日の排出量は1890グラムにすぎないことからすると,本件における原告らの重大な健康被害を裏付けているということができる。 オ受忍限度(ア)廃プラのリサイクルの問題点a総論容リ法の大本になる循環型社会形成促進法では,発生抑制(リデュース),再利用(リユース),リサイクル,適正処理という優先順位が決められており,リサイクルは万能なものではなく,その効用を強調しすぎるのは誤りである。 むしろ,安易な大量リサイクルは,大量生産,大量消費を招きかねないという危険性をはらんでいることを考慮に入れるべきである。 真に社会に還元することなく(少しの割合しか還元することなく),リサイクルという美名で大量消費の抑制を緩和するようなことがあってはならないのであって,リサイクルの質,実態を検討しなければならない。 b廃プラにおけるマテリアルリサイクルの非経済性等リサイクルを論ずる場合,当然のことながら,環境負荷の軽減というだけでなく,経済性も重要な検討要素となるべきである。なぜなら,容リ法上のリサイクル施設は,単なる私企業ではなく,その運営には- 35 -公的負担が入っているからである。 すなわち,容リ法上のリサイクル施設の原料である廃プラは,行政の負担(税金)で収集・選別され 法上のリサイクル施設は,単なる私企業ではなく,その運営には- 35 -公的負担が入っているからである。 すなわち,容リ法上のリサイクル施設の原料である廃プラは,行政の負担(税金)で収集・選別された後,供給されるものであり,かつ,容リ法上のリサイクル施設は,それを買い取るのではなく,逆に処理代金付きで受け取るのである。しかも,その入札に当たっては,マテリアルリサイクルとして,他のケミカル,サーマルリサイクルに優先し,より高い処理代金を受け取ることも認められている。 被告Y社は,国からの補助は一切受け取っていないと主張するが,それは直接的には補助を受けていないというだけであり,実際には,行政によって莫大な税金が投入されている廃プラの収集・選別の上に成り立っている事業であることを無視する主張であり,通常の営業(例えばバージン原料でのプラスチック製造業)と比較すれば,考えられないほどの公的負担による厚遇を受けているものである。 また,被告Y社が受け取る容リ協からの引き取り委託料には,市町村から一定の割合で負担金が入っており,その意味でも公的負担があるということができる。 そして,廃プラにおけるマテリアルリサイクルの是非については,様々な意見があるが,主に経済性という観点から,多くの論者がマテリアルリサイクルに対するケミカルリサイクルやサーマルリサイクルの優位性を指摘している。 なお,経済性と環境負荷とを合わせての比較方法としてLCA分析があり,社団法人プラスチック処理促進協会の「プラスチック製容器包装の処理に関するエコ効率分析2006年度」でも,マテリアルリサイクルが経済性において劣位しており,また環境負荷の点でも優位性を持っていないことを指摘している。 c国の施策の動揺- 36 -国の政策としてもマテリアルリサイクルの優位は揺らぎ マテリアルリサイクルが経済性において劣位しており,また環境負荷の点でも優位性を持っていないことを指摘している。 c国の施策の動揺- 36 -国の政策としてもマテリアルリサイクルの優位は揺らぎつつある。 中央環境審議会は,意見具申の中でサーマルリサイクルの方向性を打ち出しており,総理大臣の諮問機関である経済財政諮問会議の「循環型社会に関する専門調査会」でも3R(リデュース,リユース,リサイクル)原則に基づいて,これまで行われてきた取組みを評価し,現状で抱える問題点の幾つかを指摘している。 特に,プラスチックリサイクルに関連する事項は,次の2つがあり,①マテリアルリサイクルをサーマルリサイクルより優先するために,その向上が自己目的化し,合理的とは思われないコストとエネルギーをかけている分野や経済価値が低い劣化品の生産が行われている場合がある,②再生資源と海外からの1次資源を比較した場合の相対的な価格差など競争条件によってリサイクルの促進が困難な場合があるという点である。 「中央環境審議会プラスチック製容器包装に係る再商品手法専門委員会及び産業構造審議会プラスチック製容器包装に係る再商品手法検討会合同会合取りまとめ」(以下「合同会合取りまとめ」という。)においても,「(財)日本容リ協に設置されたプラ再商品化に関する環境負荷等検討委員会において実施された環境負荷分析(LCA分析)について報告を受け,議論を行った」として,「各再商品化手法について,最新の技術動向や処理状況を踏まえ,多様な手法のそれぞれの特徴を確認するとともに,再商品化製品の資源代替効果及び再商品化に伴う環境負荷に関する検討を行ったところ,現状では,対象とした手法に関して,特定の手法の優位性を示すに至らなかった。」としており,いまやマテリアルリサイクルは,国策として 資源代替効果及び再商品化に伴う環境負荷に関する検討を行ったところ,現状では,対象とした手法に関して,特定の手法の優位性を示すに至らなかった。」としており,いまやマテリアルリサイクルは,国策としても揺らいでいるのである。 (イ)本件Y社施設の公共性の問題点- 37 -a本件Y社施設の問題点本件Y社施設は,マテリアルリサイクルを行っているので,容リ法上,容リ協からの落札価格が他のリサイクルによる落札価格よりも高くなっている。また,マテリアルリサイクルが収集,選別,梱包という点で自治体により一層の負担をかけることを考えれば,自治体の負担は,前処理などの費用を加えると他のリサイクルを選択した場合よりも大きいものとなる。 他方,それに見合うような環境負荷の軽減があるかというと,そのようなものはない。本件Y社施設におけるパレット製造の収率は悪く,大量の残渣は,結局サーマルリサイクルに回り,マテリアルリサイクルの利点はわずかしかない。本件Y社施設においては,ペレットミルにしたが製品化されないものを含めても上記収率が51%程度にしかならないのであり,製品化されたものだけを見れば,その数値はさらに少なくなるものである。しかも,その効率の悪いパレット製造のためには新たなエネルギーを要するのであり,全体としてのエネルギーの消費,CO2の排出はさほど軽減されるものではない。 また,別の観点からみれば,マテリアルリサイクルとして高い処理代金を受け取っておきながら,大きな割合の残渣をより安い処理(サーマルリサイクル)に回すという不合理がある。そして,被告Y社も認めるように,1億3700万円ほどの製品を作るのに11億7800万円ほどのお金が投入されているのであり,経済効率からいっても極めて異常である。これが全く私企業であるとすれば,それは自業自得と も認めるように,1億3700万円ほどの製品を作るのに11億7800万円ほどのお金が投入されているのであり,経済効率からいっても極めて異常である。これが全く私企業であるとすれば,それは自業自得ということになるであろうが,被告Y社には公的負担が入っており,それゆえに成り立っているのであるから見過ごせない実態である。 b被告Y社に対する反論被告Y社は,「地消地産」などと称し,本件Y社施設が,近隣の廃- 38 -プラが収集される寝屋川市内に存在していて,その運搬に要するエネルギーの消費が少なくて済むのに対し,他方,ケミカルリサイクルの場合,焼却処理をする製鉄所などの大規模工場が遠距離にあり,運搬のエネルギーコストが高いことを指摘している。 しかし,本件Y社施設で製造されるパレットや残渣の運搬コストを考慮に入れれば,ケミカルリサイクルにこの点で優位に立つものではない。 しかも,被告Y社主張の「地消地産」なるものはマテリアルリサイクルについて必然的なものではなく,本件Y社施設のようなマテリアルリサイクル施設は,廃プラ排出地にあることは容リ法上定められておらず,被告Y社の上記指摘は,本件Y社施設が現在の場所に立地していることから本件4市組合施設から廃プラの供給を受けることを当然の前提と考えているものであり,「地消地産」なるものは,容リ法が入札を前提にしていることとも明らかに矛盾している。 仮に,本件4市組合施設が本件Y社施設の儲けを保証する意味で現在の場所に立地したとするならば,まさに行政と特定企業との癒着といわざるを得ないものである。 したがって,「地消地産」をもって,本件Y社施設におけるマテリアルリサイクルの優位性を強調することは誤りである。 (ウ)本件Y社施設の建設,操業経過の問題点a寝屋川市長は,都市計画区域内における一定の処理 ,「地消地産」をもって,本件Y社施設におけるマテリアルリサイクルの優位性を強調することは誤りである。 (ウ)本件Y社施設の建設,操業経過の問題点a寝屋川市長は,都市計画区域内における一定の処理施設の用途に供する建築物に関する規制の例外を定める建築基準法51条ただし書の適用を認めた理由として,「本件施設は営利追求を第一義とする民間事業者によるものであり,将来の経済情勢の推移によって転移が予想され,その存在が暫定的なものと考えられるから,本件施設の位置につき,都市計画決定を講じるのは不適当である」と述べているが,こ- 39 -の論理によれば,全ての民間施設はこのただし書が適用されることになり,極めて不当な結果をもたらすことになる。 しかも,被告Y社は,本件Y社施設について,マテリアルリサイクルという国策にもとづき,「大阪府エコタウンプラン」に位置付けられているとして公共性を強調しており,上記建築基準法51条ただし書適用の理由は,被告Y社の上記主張とも明らかに矛盾するものである。 b(a)また,建築基準法51条ただし書での「その敷地の位置が都市計画上支障がない」として都市計画審議会がその適用を認めたこと自体も誤っている。 本件Y社施設が位置する地域は市街化調整地域であり,本来市街化を抑制する地域であり,具体的に見ても,寝屋川市で数少ない緑が残っている地域であって,近くは第1種住居専用地域となっており,学校,保育所,病院,公園などの重要な公共施設が存在している地域である。 他方,既に寝屋川市清掃工場(クリーンセンター)が存在し,第2京阪国道の供用も予定されているというように環境面でも悪化が懸念されている地域である。 したがって,本来,このような地域においては新たな開発行為である本件Y社施設の建設は抑制されるべきであり,少なくとも都 道の供用も予定されているというように環境面でも悪化が懸念されている地域である。 したがって,本来,このような地域においては新たな開発行為である本件Y社施設の建設は抑制されるべきであり,少なくとも都市計画上の慎重な手続を省略して「その敷地の位置が都市計画上支障がない」としたことは明白な誤りであるといわざるを得ない。 (b)また,その所在地が市街化調整区域内にあることから,本件Y社施設が,都市計画法34条10号ロの要件(「開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ,かつ,市街化区域において行うことが困難又は著しく不適当と認められるもの」)- 40 -でなければ,都道府県知事は開発許可をしてはならないとされている。 この点,寝屋川市は,平成15年4月に「都市計画法第34条第10号及び同法施行令第3項ホに関する判断基準」を規定しており,この「判断基準」の第6には「開発審査会に付議するため,この基準の定めるところに従い,あらかじめ提案基準を定めることができる」と規定されており,寝屋川市は平成15年7月1日施行の提案基準11「容器包装の選別施設などの建築を目的とする開発行為等の取扱い」を規定した。この規定は,まさに本件Y社施設に関連する規定であり,その第2では,「この基準に係る選別施設等は,市町村から委託を受けて,容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律に基づき容器包装の選別,圧縮,粉砕,保管等の処理を行う施設で,処理能力が1日5トン未満の施設とする」と規定している。 つまり,寝屋川市長は,市街化調整区域では,本件Y社施設などの容器包装の選別施設などの建設については,市町村から委託を受けた施設で,かつ,処理能力が1日5トン未満の施設しか開発審査会に許可の申請をしないとしているのである。 そうであれば,本件 Y社施設などの容器包装の選別施設などの建設については,市町村から委託を受けた施設で,かつ,処理能力が1日5トン未満の施設しか開発審査会に許可の申請をしないとしているのである。 そうであれば,本件Y社施設は,市町村の委託を受けた施設ではないし,また,1日の処理能力は102トンにも及ぶ大規模施設であるので,本来許可申請の対象になるべきものではないはずである。 (c)さらに,開発許可運用指針(平成13年5月2日国土交通省総合政策局宅地課民間宅地指導室策定)Ⅲ-7-1は,都市計画法34条10号ロにおいて許可されるケースとして,21項目を詳細に記載しているが,上記運用指針には本件のような容器包装廃棄物処理施設は含まれていない。このようなことからも,廃プラ処理施設- 41 -の開発は許可されるべきではなかった。 (d)以上の点から見ても,本件Y社施設の設置許可を認めたのは明白な建築基準法違反である。 cまた,被告Y社は,本件Y社施設を「大阪エリア構想」,「大阪府エコタウンプラン」に位置付けられものであることを強調しているが,本件Y社施設は,以下のとおり,その評価基準にも反している。 大阪府エコエリア構想推進検討委員会では,事業の評価基準として,①環境への配慮,②関係者等への説明,③情報公開及び施設の一般公開があげられている。 しかし,被告Y社が,既に述べたように環境の危機をもたらしかねないこの地域に立地を決めたこと自体,「①環境への配慮」に欠けるといえるものである。 また,平成15年12月の生活環境影響調査書で,本件Y社施設では問題となるおそれのある化学物質について,単に法律で要求されていないからとして調査項目にすら入れず,また悪臭については,一応調査項目自体には入れているものの,周辺地域への影響が軽微であるとして調査予測及び影 おそれのある化学物質について,単に法律で要求されていないからとして調査項目にすら入れず,また悪臭については,一応調査項目自体には入れているものの,周辺地域への影響が軽微であるとして調査予測及び影響の分析を行なっていない。 これらの被告Y社の対応は,環境への配慮の欠如を具体的に示したものということができる。 さらに,「②関係者等への説明」「③情報公開及び施設の一般公開」の点については,建築基準法51条ただし書の適用を求めたこと自体,その基準に反することは明らかである。 実際にも,被告Y社は,本件Y社施設の建築に際して,周辺住民に対する事前説明も,また情報公開も全く行っていない。原告らは,建設に着手されるまで全く知らされず,被告Y社は,住民の寝屋川市に対する要望により平成16年4月10日に開催された地域住民に対す- 42 -る説明会にも出席しなかった。 したがって,本件Y社施設は「大阪エリア構想」,「大阪府エコタウンプラン」にも反しており,もともと本件地域が市街化調整区域であり,本来的に廃プラ処理施設の建設は禁止されるべきであって,そうした点からも都市計画法の趣旨にも反するものでもある。 カまとめ本件においては,1400μg/㎥というNMHCの高濃度汚染地域である寝屋川市に,被告Y社が本件Y社施設を建設し,大量の廃プラを解砕,加熱などして,そのプロセスにおいて,原告らが居住等する大気中にVOCを半永続的に大量に排出する事業の危険性が問題となっている。 人格権に基づく差止め請求においては,①被侵害利益の性質と内容と,②侵害行為の公共性の内容と程度が違法性の判断要素とされる(最判平成7年7月7日民集49巻7号1870頁)。また,③受益と受忍の彼此相補性,④被害の防止に関する措置の内容も要素としてあげられうる(最判平成7年7月 内容と程度が違法性の判断要素とされる(最判平成7年7月7日民集49巻7号1870頁)。また,③受益と受忍の彼此相補性,④被害の防止に関する措置の内容も要素としてあげられうる(最判平成7年7月7日民集49巻7号2599頁)。 これを本件についてみると,被侵害利益は,原告を含む地域住民の健康である。そして,本件においては,本件Y社施設からの有害化学物質が原因の疾病が既に発生している上に,寝屋川市のNMHCの濃度はもともと高度に汚染された状況にある。 そうだとすれば,現在,既に発生している被害のみならず,今後も原告らには,粘膜症状,皮膚症状,呼吸器症状などを含む健康被害が増悪し,新たに発生するなどして,被害が拡大する蓋然性が高い。 他方で,侵害行為の公共性については,そもそも被告Y社の操業は純然たる営利を目的とした民間事業である上に,周辺住民の健康被害を前提にした公共性はありえない。また,循環型社会の形成との関係でも有害化学物質の排出を通じて環境負荷を高めるという矛盾があるのみならず,経済- 43 -的合理性,効率性にも著しく欠ける。 原告らは,寝屋川市のクリーンセンターの操業継続に加えて,第2京阪道路が地域を貫通するということで著しい居住環境における負荷を抱えている上に,本件2施設を集中的に立地されることで,一方的な受忍を強いられている。しかも,それらの設置手続が住民無視の姿勢で貫かれている。 また,被害の防止に関する措置については,被告Y社は本件4市組合施設のように,活性炭による施設内の汚染空気の排出抑制措置さえ採っていない。 本件4市組合施設がそのような措置を取った上でおいても,大量のVOCを排出している現状からすれば,本件4市組合施設の被害防止措置が不十分なことはいうまでもないが,被告Y社はそれ以上に被害防止措置を導入しておら 施設がそのような措置を取った上でおいても,大量のVOCを排出している現状からすれば,本件4市組合施設の被害防止措置が不十分なことはいうまでもないが,被告Y社はそれ以上に被害防止措置を導入しておらず,逆に窓やドアを開け放しにして操業を継続している状況である。 寝屋川市にはNMHCの汚染があり,健康被害が出ている中で,本件Y社施設の操業と本件4市組合施設の操業のいずれについても,既に高い濃度である寝屋川市のNMHCひいてはVOCの濃度を悪化させ,原告らの被害発生を拡大させるものであるから,いずれについてもそれぞれ独立した個別のVOCの発生源としてその排出を停止する義務がある。 すなわち,被告Y社については,本件4市組合施設の操業に先立つ操業によって,有害物質を含むVOCを本件Y社施設から地域に排出し,原告らの健康被害を発生させているから,単独の有害物質の発生源としてその操業を停止すべき義務がある。 【被告らの主張】アVOC等の有害化学物質の排出に対する反論(ア)廃プラの危険性に対する反論a総論- 44 -プラスチックにおいて,講学上,メカノケミカル反応が存在し,人体に有害な化学物質が発生する可能性のあることは認めるが,本件Y社施設におけるプラスチックの処理において,人の健康に影響を及ぼす程度の有害化学物質は排出されていない。 また,そもそも,TVOCとは総揮発性有機化合物のことであり,そのトルエン換算値は,端的に言えば「物質の濃度,総量」を示すものに過ぎず,その値の大小は,健康影響の悪性の大小を示すものではない。 b甲A2号証(H論文)に対する反論甲A2号証には,「放置」期間に関する記述はなく,「有害化学物質」も特定されておらず,その「発生」量,条件も特定されていない。 また,「圧縮」,「破損」の質・量も特定されていない上 論文)に対する反論甲A2号証には,「放置」期間に関する記述はなく,「有害化学物質」も特定されておらず,その「発生」量,条件も特定されていない。 また,「圧縮」,「破損」の質・量も特定されていない上,「等」として範囲をより一層不明確にし,どのような「圧力」をどのような方法で「加えた」のかも明確ではなく,「放置」期間も不明であって,「発生」に関しても,「より一層多種」の有害化学物質が発生することが確認されているという極めて曖昧なものであり,さらには,圧縮・破損による化学物質の発生量にも触れていない。 c甲1003号証(I論文)に対する反論甲1003号証においては,化学物質の定量的な分析がなされておらず,化学物質の発生量が全く測られていない。 (イ)大気環境調査に基づく本件Y社施設の安全性a被告Y社は,平成17年6月30日,7月1日の両日に17年環境調査を実施し,平成18年9月23日に18年環境調査を実施し,平成19年8月28日に19年環境調査を実施し,平成19年2月16日から同月20日にかけて本件Y社施設周辺におけるNMHC濃度を測定し(以下「19年NMHC測定」という。),平成19年8月2- 45 -7日に臭気測定調査(以下「被告Y社臭気調査」という。)を実施し,いずれにおいても問題となるような結果は確認できなかったのであるから,本件Y社施設から原告らに健康被害を与える化学物質を排出していないことは明らかである。 b測定手法等の正当性(a)測定地点複数の窓,換気口,出入口などがある建物について,地表からの高度が低い窓(数メートル程度)などを通して工場内で発生した化学物質などが工場外に出ていく場合には,敷地境界で測定することが一般的であり,また,工場内で発生した化学物質が煙突,排気管など高い地点から大気中に排出される場 ル程度)などを通して工場内で発生した化学物質などが工場外に出ていく場合には,敷地境界で測定することが一般的であり,また,工場内で発生した化学物質が煙突,排気管など高い地点から大気中に排出される場合には,この排気管などを排出源の高さと考えてその口部における濃度を測定するのが妥当である。 そして,被告Y社においては,平成18年8月に脱臭装置を設置しているところ,それ以前は敷地境界における測定を行っており,設置後は,脱臭装置出口の濃度を測定するとともに,敷地境界における測定をも行っているので,測定地点の選定に問題はない。 (b)測定項目被告Y社は,原則として,①国内では環境ホルモンに対する法的規制は,平成17年6月30日時点において,存在していないこと,②杉並病の調査に際し,対象項目として33項目が選択されたこと,③「環境ホルモン戦略計画SPEED’98」リストではプラスチック可塑剤関係で9項目が「内分泌攪乱作用の可能性のある」対象物質に挙げられていること,④工業調査会資料では「加熱に伴い発生する副生成物」として22項目が挙げられていること,⑤欧州委員会がEU各国に要請した環境ホルモンに関する- 46 -規制項目のうちプラスチック関連の項目は5項目であることという視点を基にし,重複を避けた55項目の化学物質を測定対象としており,測定対象に問題はない。 また,被告Y社は,19年環境調査においては,平成17年,18年の環境調査において定量下限値よりさらに低かった項目及び2年連続して一般環境レベルであったダイオキシン類を除外する一方で,キシレン2種を追加し,合計41項目の化学物質を測定対象としており,この点でも測定対象に問題はない。 c被告Y社の従業員の発症の不存在被告Y社においては,本格操業が始まった平成18年4月1日か で,キシレン2種を追加し,合計41項目の化学物質を測定対象としており,この点でも測定対象に問題はない。 c被告Y社の従業員の発症の不存在被告Y社においては,本格操業が始まった平成18年4月1日から平成20年5月末日までに,延べ413人(ただし,アルバイトも含む。)が勤務し,廃プラの解砕,選別,成型などの各工程で作業に従事している。 それにもかかわらず,平成18年4月1日の本格操業以来今日まで,従業員からは工場内の空気の汚染を理由にした疾病の申出はない。 d以上のとおりであって,上記被告Y社による調査のとおり,室内の作業環境は良好であるから,原告が主張するような人に健康被害を与えるような有害化学物質が排出されていないことは明らかである。 (ウ)D意見書の信用性についてaNMHC/NOx比についてNMHC/NOx比は,数字のレトリックであって,大気汚染の指標になるものではないから,大気汚染の現状分析は,各濃度の絶対値で議論すべきである。 そして,寝屋川局のNMHCの濃度は,平成13年以降,減少傾向を示している上に,東大阪局のNMHCの濃度よりも減少傾向は大きくなっており,本件Y社施設が大気環境に影響を与えていないという- 47 -ことができる。その間,寝屋川市におけるNOxの減少が著しかったために,結果的に寝屋川市におけるNMHC/NOx比が高くなったに過ぎない。 また,寝屋川市に搬入された廃プラの量が平成16年から平成19年にかけて約4倍に増加しているにもかかわらず,平成19年のNMHC/NOx比は,平成16年に比べて小さくなっているのであるから,本件Y社施設等は,NMHC/NOx比の増減に何らの関係もない。 b再現性の不存在廃プラの分別回収や圧縮処理などが非燃焼系NMHCの濃度を上昇させるのであれば,大阪府下あるいは るのであるから,本件Y社施設等は,NMHC/NOx比の増減に何らの関係もない。 b再現性の不存在廃プラの分別回収や圧縮処理などが非燃焼系NMHCの濃度を上昇させるのであれば,大阪府下あるいは他府県の自治体のうち,寝屋川市と同じように分別収集,圧縮処理に踏み切った自治体に設けられた環境測定局において測定されたNMHC,NOxの各々の濃度あるいはNMHC/NOx比の数値は,寝屋川市における数値と同じ傾向を示すはずである。 しかし,原告らからはそのようなケースの報告やデータの開示はなく,再現性が存在しないのであるから,科学的正当性はない。 c他の発生源の存在寝屋川局の東側100メートルの地点,約1キロメートルの地点及び約2キロメートルの地点にガソリンスタンドが存在し,同測定局の南西約40メートルという至近距離にクリーニング業の帝国洗業が存在するため,これらの施設から排出されたVOCが寝屋川局のNMHCの測定濃度を引き上げる要因になっている可能性が高い。 dしたがって,D意見書は信用することができない。 イVOC等の有害化学物質の到達・曝露に対する反論(ア)拡散・希釈- 48 -a一般論一般的に,気体としての化学物質及び大気中を浮遊する化学物質は,無風状態では発生源を中心にその周囲に(立面では)半球状,(平面では)円状に拡散し,風がある状態では,風の影響を受けながら別の場所(風下側)に移動し,拡散している。 そして,発生源から排出された化学物質は,抽象的には,発生源からある距離の移動をしつつ拡散し順次着地するところ,その際の最も高い濃度を最大着地濃度といい,人は,抽象的には最大着地濃度が現れる地点において,最も多くの曝露を受けることになる。 したがって,化学物質の到達・曝露の判断においては,拡散を予測することが重要である 高い濃度を最大着地濃度といい,人は,抽象的には最大着地濃度が現れる地点において,最も多くの曝露を受けることになる。 したがって,化学物質の到達・曝露の判断においては,拡散を予測することが重要である。 ただし,化学物質の拡散には風系(風向,風速)の作用が非常に大きいので,風向,風速を捨象して拡散を論じることは,誤った結論を導くおそれが強いということができる。 b平成19年予測被告Y社は,平成19年1月に,化学物質の大気拡散予測を実施している(以下「平成19年予測」という。)。 そして,平成19年予測におけるプルーム法モデルによれば,1. 1μg/㎥のベンゼンが排出されるとして,最大濃度と距離は,「0. 000120μg/㎥225メートル」であり,風下300メートルの着地濃度は,「0.000107μg/㎥」,風下500メートルの着地濃度は,「0.0000853μg/㎥」である。 したがって,本件Y社施設の操業によって仮にベンゼンが排出されたとして(1.1μg/㎥),原告ら住所地にそれが到達したときの濃度は非常に低いといえ,到達したこの濃度のベンゼンあるいは他の化学物質が,原告らの健康に被害を与えるものではないことは明らか- 49 -である。 c平成20年予測被告Y社は,平成20年4月に,再度,化学物質の大気拡散予測を実施している(以下「平成20年予測」という。)。 そして,平成20年予測によれば,ベンゼンの最大着地濃度出現地点は本件Y社施設排出口の南西側約400メートル,最大着地濃度は0.000021μg/㎥(ベンゼンの環境基準値0.003mg/㎥の約14万分の1)であり,アセトアルデヒドの最大着地濃度出現地点は本件Y社施設排出口の南西側約400メートル,最大着地濃度は0,00015μg/㎥(シックハウス問題に関する検討会の示す室 g/㎥の約14万分の1)であり,アセトアルデヒドの最大着地濃度出現地点は本件Y社施設排出口の南西側約400メートル,最大着地濃度は0,00015μg/㎥(シックハウス問題に関する検討会の示す室内濃度指針値48μg/㎥の32万分の1)である。 したがって,ベンゼン,アセトアルデヒドが最も高い濃度で地上に到達する地点は,原告ら居住地域(本件Y社施設の北西側,西側)とは風上,風下関係のない場所,すなわち本件Y社施設排出口の南西方向約400メートル付近となるとともに,その際のベンゼン,アセトアルデヒドの年平均到達濃度は本件Y社施設排出口から排出されたときの濃度の25万分の1程度であり,本件Y社施設排出口から大気中に排出された他の化学物質も,ベンゼン,アセトアルデヒドと同様におよそ25万分の1程度の年平均濃度で地上に到達すると推測されるので,本件Y社施設の操業により万一何らかの化学物質(既知物質,未知物質を問わず)が大気中に排出されたとしても,風向,風速といった気象条件などを考慮すれば,原告ら住所地にはほとんど到達していないということができる。 なお,原告ら住宅に着地するベンゼンの濃度の予測は,一部の原告ら住宅において0.00001μg/㎥,大半の原告ら住宅において0.000004から0.000008μg/㎥であり,アセトアル- 50 -デヒドの濃度の予測は,一部の原告ら住宅において0.00008μg/㎥,大半の原告ら住宅において0.00002から0.00006μg/㎥であって,いずれも,原告らの住宅には,被告Y社の操業によるものと思われるベンゼン,アセトアルデヒドはほとんど到達していないということができる。 d地域的特性に対する反論本件Y社施設及び原告ら住所地を含む地域は,何ら特殊な地形ではなく,地形的要因のために1年間を通じて大 ゼン,アセトアルデヒドはほとんど到達していないということができる。 d地域的特性に対する反論本件Y社施設及び原告ら住所地を含む地域は,何ら特殊な地形ではなく,地形的要因のために1年間を通じて大気が滞留するような事実はない。むしろ,本件Y社施設を起点とした場合,年間を通して概ね北東の風,南西の風が吹いている地域であって,気団の滞留は存在しない。 (イ)府市合同調査による安全性平成19年3月6日及び7日の両日に実施された大阪府と寝屋川市の合同調査は,①大気汚染防止法に基づく有害化学物質であるベンゼン,アセトアルデヒドなど優先取組22物質中11物質,②悪臭防止法に基づくアンモニアなど22の特定悪臭物質をそれぞれ測定対象とし,測定場所として,本件Y社施設北側敷地境界,本件Y社施設西側敷地境界,ei公園,公民館,市立消費生活センターなど7か所を選定して測定したが,この調査の結果は,全ての①物質で環境基準値(指針値を含む)を,全ての②物質で規制基準値を,それぞれ大幅に下回る濃度数値であって,問題となるような濃度は全く検出されなかった。 したがって,被告Y社の操業によって,化学物質が原告らに到達しておらず,原告らは曝露していないことは明らかである。 (ウ)府市継続調査による安全性大阪府及び寝屋川市は,対象物質を上記①の物質とし,測定場所を,本件Y社施設西側敷地境界,公民館周辺,市立消費生活センターとし,- 51 -毎月1回・24時間・年12回調査することを決定し,調査を継続した(以下,「府市継続調査」という。)。 そして,府市継続調査によれば,平成19年5月から同年12月までの調査結果おいては,12月を除く各月の測定数値はいずれも環境基準値,指針値を下廻っていた。 また,平成19年12月のベンゼンについては,測定場所の3か所とも環 ば,平成19年5月から同年12月までの調査結果おいては,12月を除く各月の測定数値はいずれも環境基準値,指針値を下廻っていた。 また,平成19年12月のベンゼンについては,測定場所の3か所とも環境基準値より10から20パーセント程度高かったが,他の月の数値が低く安定していることなどを考えれば一時的,季節的な現象であることは明らかである上に,そもそも原告らに直ちに健康被害を与える程度の濃度ともいえない。 (エ)D調査に対する反論D調査において指定されているF宅は,本件Y社施設の北方100メートルの地点にあるところ,1年間被告Y社で実測した風向の結果によれば,本件Y社施設における年間風向では,北西方面に吹く風(原告らが被告Y社の風下に位置することになる南東の風)の出現頻度が一番少なく,北北東方面に吹く風(F宅がほぼ風下となる南南東の風)の出現頻度は北西方面に吹く風に次いで2番目に少なかった。 また,D調査において指摘のあるように,測定時間帯の18時から21時における寝屋川市役所における風向は,18時から19時は北,19時から20時は北東,20時から21時は東南東であり,本件Y社施設がF宅の風上に立つ気象条件はほとんどなかった。なお,甲A24号証においては,風向・風速は明らかにされていない。 したがって,本件Y社施設からベンゼンが排出されていたとしても,F宅におけるベンゼンの測定値には,ほとんど影響がなかったはずであって,D調査は信用することができない。 なお,甲A24号証における平成18年6月26日のF宅近傍のベン- 52 -ゼンなどの高濃度の測定数値は,クリーニング工場であるF宅において,クリーニング業用のVOCが使用された,又はその近辺で化学物質を扱う何らかの作業が行われた,特異な気象状況によりF宅を含む寝屋川市一帯が高濃度に 度の測定数値は,クリーニング工場であるF宅において,クリーニング業用のVOCが使用された,又はその近辺で化学物質を扱う何らかの作業が行われた,特異な気象状況によりF宅を含む寝屋川市一帯が高濃度になった,測定については全くの素人である原告らによる測定中の過誤があった,あるいはこれらが複合したなどの原因で出現したものと推察するのが自然である。 (オ)原告ら臭気調査に対する反論a原告ら臭気調査においては,原資料提供者の氏名が開示されておらず,この点において,まず,原告ら臭気調査の基礎となる原資料の信頼性は著しく低く,原告ら臭気調査の信用性も低いということができる。 b府市合同調査の中において,平成19年3月6日及び7日,悪臭防止法に基づく特定悪臭物質22項目の調査が実施され,22項目全てで規制基準値を大きく下廻り,臭いはなくなっていたはずであるにもかかわらず,原告ら臭気調査においては依然として臭いが存在する旨の主張は続いており,その信用性は低い。 c臭気は風系によって移動し,通常,風上では風下で発生する臭気を感じないところ,被告Y社より風下側で臭気をかいだケースは16パーセントであるのに対し,38.5パーセントは風上側で臭気を感じたと報告していたものが存在し,報告の大半は被告Y社に由来する臭気かどうかの信憑性が非常に薄いものである。 dしたがって,原告ら臭気調査は信用することができない。 ウ被告Y社由来のVOC等による健康被害の発生に対する反論(ア)原告らの症状についてa原告らが挙げた証拠のほとんどは,その本人の単なる主観的な意識を記載しただけのものであって,その状態が実際に存在しているのか- 53 -は明確ではない。 具体的には,甲A号証のうち,原告らの健康被害らしきものがある旨の資料なるものや証言が提出されているの を記載しただけのものであって,その状態が実際に存在しているのか- 53 -は明確ではない。 具体的には,甲A号証のうち,原告らの健康被害らしきものがある旨の資料なるものや証言が提出されているのは,原告Bと原告Gだけであって,他の原告ら全員については健康被害に関する証拠らしきものは一切提出されていないことからすれば,原告らには,個別的,具体的健康被害が発生,存在していないと考えるのが自然であり合理的である。 b原告G及び原告Bについて患者から症状が愁訴として訴えられた場合,医師としてはアレルギー症状の有無を疑い,それに関する客観的検査を行うのが一般的な診察(診断)である。 (a)原告Gについては,甲A114の12のメモによれば,「目のかゆみ,異物感,,,足は湿疹」といった身体状況を症状であるとして訴えているが,この症状のため医師の診察を受けたという記載はなく,このことは,原告G自身がこの症状について治療を受ける必要性を認めていないことを窺わせる。 また,原告Gの愁訴内容は,老化,アレルギー,ホームダスト,花粉などの多原因,他原因に基づいて出現する症状でもあり,典型的な非特異的症状であって,被告Y社の操業と何らの相関関係もない。さらに,症状について何一つ客観的な所見がない。 (b)原告Bについては,平成18年1月に発症したとする症状なるものも,客観的所見のない典型的な非特異的症状であるところ,同人が「守る会」の役員であり,被告Y社の操業に対し強い嫌悪を有する活動家であるから,その症状なるものは,怒りや嫌悪の情から発する心因性のものとも考えることができる。また,原告Bは,松下電器に勤めていたが退職し,その後働いておらず,30年間1日- 54 -1箱のタバコを吸い,20数年間犬を飼い,年に数回自らの手で除草剤を散布し,10年 も考えることができる。また,原告Bは,松下電器に勤めていたが退職し,その後働いておらず,30年間1日- 54 -1箱のタバコを吸い,20数年間犬を飼い,年に数回自らの手で除草剤を散布し,10年くらい前に家を改装して,平成18年1月まで例年のとおり犬,喫煙,除草剤の曝露など多くのアレルゲンに接触,吸収しながら生活しており,しかも会社をリタイアしたことによる新しいストレスや60歳前という老化が進行する過程で,たまたま平成18年1,2月ころに,同原告主張の症状が発生したと考えるのが自然である。 そして,原告Bは,血液検査の一つであるIgE抗体検査などの客観的な医学検査を行っていないのであって,いずれにしても,原告Bの主張する症状が大気汚染物質による症状でないことは明らかである。 (c)なお,甲A123から125号証(各枝番を含む。)などに記載されている原告ら以外の者についても,客観的な検査は何一つ行われていない。 c他原因について(a)老化現象甲A123号証の1,2,124号証の1,2,125号証の1,2,126号証の1,2の対象の年令等は,順に62才(女性),73才(女性),80才(男性),59才(男性)であり,全員が高齢者であって,平均年齢は68.5才であり,これらの問診票とカルテに記載のある症状なるものは,いずれも老化現象の1つである疑いが濃厚である。 (b)その他の原因原告らが主張する症状は,化学物質の曝露を受けたことによって発症する場合に出現する特異な症状ではなく,花粉,家塵,ダニ,老化現象,疲労,喫煙(受動喫煙を含む。以下,全て同様),スト- 55 -レス(心因性),興奮や嫌悪感の継続など様々な多くの原因によって出現する症状であって,その症状が発現する原因に,本件Y社施設の操業により発生,排出された化学物 。以下,全て同様),スト- 55 -レス(心因性),興奮や嫌悪感の継続など様々な多くの原因によって出現する症状であって,その症状が発現する原因に,本件Y社施設の操業により発生,排出された化学物質(大気汚染物質)の曝露があるなどとは到底いえないものである。 d一部住民の愁訴にすぎないこと被告Y社施設の周辺住民のうち,自覚症状を有する者が高齢者に集中していること,若年者からの自覚症状の訴えがほとんどないこと,乳幼児に健康被害が生じている旨の報告や医学的所見が認められないこと,自覚症状を有する者が専ら「守る会」を構成する自治会所在地の近隣住民に限られていることからすれば,当該症状の存在は,寝屋川市の大気環境とは関係がないということができる。 (イ)E疫学調査の信用性a一般的注意普通の人間集団に健康被害を起こすと思われる原因が単一のものしかないというケースは少数であり,疾病についての要因は,多要因,他要因であることが普通である。 そして,環境に関する疫学においては,ほとんどの疾患は非特異的疾患であるところ,その疾患を引き起こすと思われる原因は,通常は複数であるか,あるいは不明であることが多いことから,1つの原因を特定することは非常に困難である。 また,疫学においては,何がかく乱要因(交絡要因)であるかについては特別に深い注意を払うべきだとされており,統計学の側面で2つの要因や現象の間に相互交通的な相関関係が読み取れたとしても,その相関関係を一方通行的な(これあればあれあり)因果関係だと即断してはならないとされている。 b前提となる曝露の不存在- 56 -疫学の手法が用いられるのは,「曝露」「病気の発生」が客観的に存在していることが前提となる場合である。本件においては,上記ア及びイで主張したとおり,本件Y社施設からは,人に健 の不存在- 56 -疫学の手法が用いられるのは,「曝露」「病気の発生」が客観的に存在していることが前提となる場合である。本件においては,上記ア及びイで主張したとおり,本件Y社施設からは,人に健康被害を与える程度の有害化学物質は発生しておらず,また,仮に何らかの化学物質が発生していたとしても,それが原告らは到達していないのであるから,そもそも有害化学物質の曝露が存在しない。 したがって,E疫学調査は,理論的大前提(『あれ(曝露)』の存在)を欠き,病気の発生(『これ』)など何ら証明することができていない。 c調査条件の問題及びバイアス等(a)そもそも,E疫学調査の前提となる原資料において,『これ(病気)』があるとされる根拠は客観的所見ではなく,アンケートの記載にすぎず,また,そのアンケートは,次のとおり,サンプルが汚染されている。 ①E疫学調査の基礎とした質問票には,E証人らではなく「各自治会担当者ないし守る会事務局」と記載され,回答しない場合には「回答しない理由」を選択するよう指示する旨の記載があり,その選択肢のなかには「②守る会の運動に協力できない」というものもあって,隣組組織の中で生活する被調査者を強く牽制しており,また,アンケート質問票の回収を行ったのは原告らであって,被調査者とすれば記載内容を知られるのではないかという危惧感がつきまとうことは容易に推察できるので,被調査者が自らの意思に基づいて正確に記入したとは認められない。 ②E疫学調査においては,乳幼児・病気で回答できない人などに対してもアンケートの質問票を配布しているが,調査対象者をどうするか等について,年齢等による明確な基準さえ設定していな- 57 -い。また,病気で回答できない人かどうかの基準についても,原告らを含む調査作業をする人たちによって適宜判 るが,調査対象者をどうするか等について,年齢等による明確な基準さえ設定していな- 57 -い。また,病気で回答できない人かどうかの基準についても,原告らを含む調査作業をする人たちによって適宜判断するということとしており,病気で回答できないか否かについての明確な基準も存在しない。 ③E疫学調査におけるアンケートの回収率は,efで96.0パーセント,egで96.1パーセントとE氏の想定を約20%以上も超過する高率なものであった。 また,集計の正確性をチェックしたとされる「財団法人青空財団」は原告ら代理人が専務理事をしており,評議員も原告ら代理人が就任しているなど,党派性が窺える。 ④原告らは,E疫学調査が実施される直前に,同種のアンケート調査をef・egで行っているばかりか,非曝露群として選定されたh町においてまで行っており,「6自治会」と「h」の有訴率を症状ごとに棒グラフで対比して問題点を知らしめているということまで行っている。 また,原告らは,守る会発行のビラに発生すべき症状を具体的に記載(「咳がとまらない」「皮膚に湿疹のようなものができ痒みがとまらない」など)したうえ,これを配布して知らしめ,被調査者に対して,いわゆる健康被害なるものの内容を暗示し,いわば模範解答を提示・催促している。 E疫学調査は,模範解答を事前に提示された被調査者に対し,アンケートを実施し,そのアンケート調査結果に基づいてなされたものであるから,その結果は信頼性が乏しいものである。 (b)調査範囲の不適切本件Y社施設の操業によって住民に健康被害が生じているという仮説を定立しようとするのであれば,本来は,本件Y社施設を中心- 58 -として同心円上に存在する地域の集団を調査・解析の対象として設定すべきある。 しかし,E疫学調査においては,本件Y社施 いう仮説を定立しようとするのであれば,本来は,本件Y社施設を中心- 58 -として同心円上に存在する地域の集団を調査・解析の対象として設定すべきある。 しかし,E疫学調査においては,本件Y社施設から見て同一方向に存在する,ef,eg,h町だけを対象地点としており,特定の地点(本件Y社施設)と症状との間の因果関係は,全く証明できていない。 (c)調査対象の恣意的な選択E疫学調査の基礎となるアンケート調査は,上記3か所の対象地点以外の多数の自治会において実施されているにもかかわらず,上記3か所のみを解析対象としており,E疫学調査には,解析対象地区の恣意的な選択が存在する。 また,上記アンケート調査に際し,対象地区の選定において,風向きは一切考慮されていない。 (d)観察の正確性等E疫学調査における問題点として,①そもそも,調査票の作成の真正につき何の保証もないこと,②自覚症状があると回答した者につき,医師による診断の有無の確認も行われていないこと,③E疫学調査における質問票による調査においては,代筆によって回答することが認められているところ,代筆による回答か否かの区別すら行われていないこと,④調査者が住民を問診して調査票を作成するか,調査者の面前で質問票に回答してもらうという手間を一切省いてしまっていること,⑤E疫学調査は,平成18年8月頃に実施されたものであるが,同年7月頃の健康状態に関する質問・回答のみならず,平成17年7月の健康状態に関する質問・回答が行われ,1年前の健康状態について各人の記憶に基づいて回答させているところ,その記憶の正確性についても何の保証もないなど- 59 -の点が存在することが指摘できるのであって,E疫学調査は,観察の正確性等に多くの問題があり,信用できない。 d以上のとおりであって ところ,その記憶の正確性についても何の保証もないなど- 59 -の点が存在することが指摘できるのであって,E疫学調査は,観察の正確性等に多くの問題があり,信用できない。 d以上のとおりであって,E疫学調査は信用することができない。 (ウ)C調査の信用性a問診票・診察の問題点等(a)C調査の対象者には問診票が配られ,対象者がこれに回答を記載しているところ,C調査で用いられた問診票には,第9項に突如として「廃プラのにおいを感じたことがありますか」との記載が出てきて,廃プラこそが問題である旨誘導し,かつ,「廃プラのにおい」という不明確な文言が記載されている。 そして,C医師は,C調査はE疫学調査と実際の住民の症状に矛盾がないかどうかを診察するのための調査であると証言しているところ,E疫学調査の目的が「被告Y社の操業と周辺住民の健康影響の関連を定量的に評価すること」であった以上,C調査においても,「被告Y社の操業」を指し示す「におい」を特定して問診する必要があることは明白である。 それにもかかわらず,C調査においては,上記のように「におい」が特定されておらず,何のにおいであっても,どこから発生したにおいであっても,対象者の感じているにおいが存在する限り,本件Y社施設の操業と周辺住民の健康影響の関連を指し示す資料が入手できることになり,相関性,有意性などを検定する基礎資料の段階で非常にあいまいなものになることになり,極めて非論理的・非科学的な立論といわざるを得ない。 (b)また,C調査においては,C医師は,初診であるにもかかわらず,対象者をわずか4分から15分程度しか診察しておらず,かかる短時間の診察では各人の健康状態を正確に把握することは困難な- 60 -はずであるから,その診査結果の正確性には疑問がある。 そして,C医師が 者をわずか4分から15分程度しか診察しておらず,かかる短時間の診察では各人の健康状態を正確に把握することは困難な- 60 -はずであるから,その診査結果の正確性には疑問がある。 そして,C医師が診察した20名の住民につき各人の住居内の空気の測定は行われておらず,一部住民が訴えた目・鼻・咽喉等に関する自覚症状が,自宅の室内空気の汚染による症状の発生ないし悪化である可能性を否定できず,その症状の発生ないし悪化の原因が,各人の持病,加齢,生活習慣又は心因による可能性があることも否定できないはずである。 さらに,わずか20名の診察結果に依拠して,本件施設との関連性を推認したり,症状悪化の因子を特定したりすることは不可能である。 bシックハウス症候群類似の症状とする問題点(a)シックハウス症候群は,1970年代に,オイルショックの影響を受けて建築物の設計が高気密なものになったことや建築物に化学物質が多用されはじめたことを原因として,気密性の高い室内空気の汚染を念頭において論議された概念であるところ,開放された室外の一般大気が問題となっている本件事案とは前提が異なるのであって,そもそもシックハウス症候群の概念を本件事案に持ち出すこと自体が非科学的である。 (b)C調査における対象者の20名は,守る会役員による聞き取りで症状を訴えていた人を対象に,守る会役員が口頭で呼びかけて集めた者というのであるから,15人に症状が認められたからシックゾーンシンドロームなどと判断することは極めて不合理である(本来,20名中20名に症状が認められて当然であるにもかかわらず,15人にしか認められなかったことこそ不思議である。)。 また,「汚染の地域に入ると症状が出て,そこから離れると良くなる」か否かの判断基準は不明確であり,その判断の主体について- かかわらず,15人にしか認められなかったことこそ不思議である。)。 また,「汚染の地域に入ると症状が出て,そこから離れると良くなる」か否かの判断基準は不明確であり,その判断の主体について- 61 -も,「症状を訴えていた人」の主観的判断に委ねるのみであるにもかかわらず,C調査においては,恣意的判断を排除する手法は何も講じられていない。 さらに,そもそもEPAの定義やWHOの定義における「症状を訴える人の割合」は,「住民の総数」を分母とし,「住民総数の中で症状を訴える人数」を分子として計算されなければならないところ,C調査においては,その前提が守られていない。 c以上のとおりであって,C調査は非科学的なものであり,信用することはできない。 エ杉並中継所との比較等(ア)廃棄物の組成の違い本件Y社施設と杉並中継所とでは,処理の対象物の成分が全く異なっており,両者を同様に考えることは相当でない。 杉並中継所においては,処理の対象物は,ビンやスプレー缶,電池等も多く含まれる非常に雑多な組成の廃棄物である不燃ゴミ全般であった。 これに対し,本件Y社施設の処理の対象物は,住民が第1次的に分別排出した後の一般廃棄物を,分別収集をした各地方公共団体(市町村)において異物除去などを行い,プラスチック廃棄物が「重量比で90パーセント以上」という分別基準に適合するようにした分別プラスチックであって,廃棄物の中身が決定的に異なっている。 (イ)杉並以外の処理施設について東京都23区内には,杉並中継所と同種・同規模・同目的の中継所があわせて5か所存在するが,杉並中継所以外の他の4箇所では,新宿区など人口密集地にも建設・操業されているにもかかわらず,周辺住民の化学物質による健康被害などは全く問題になっていない。 (ウ)公害等調整委員会の裁定について 杉並中継所以外の他の4箇所では,新宿区など人口密集地にも建設・操業されているにもかかわらず,周辺住民の化学物質による健康被害などは全く問題になっていない。 (ウ)公害等調整委員会の裁定について- 62 -公害等調整委員会は,原因裁定において,健康被害は,杉並中継所の操業によって排出された化学物質によるものであると裁定しているが,大気中に排出された有害物質によるものであるとまでは裁定していない。 また,公害等調整委員会は,排出された化学物質が,プラスチックがコンパクターによる圧縮過程でせん断された結果,生成されたものであるという申請人の主張を認めていない。むしろ,公害等調整委員会は,杉並中継所における健康被害について,プラスチックなどから発生したかもしれない環境ホルモンやベンゼンなどの有害化学物質が原因物質ではなく,排水処理が行われることなく排出された硫化水素が主たる要因であると指摘している。 (エ)TVOCについてまず,TVOCの排出濃度が健康に対する危険性を示す指標でないことは,上記アで主張したとおりである。 また,杉並中継所と,本件Y社施設からの排出量の前提となる本件4市組合施設とでは,TVOCの測定方法が全く同一ではなく,原告らも自認するように,杉並中継所の場合,TVOC濃度の連続測定値がなく,一回の測定をもとに単純な数値比較を明瞭に示すことは難しいはずであるし,VOCの排出量は,その時々のごみの質や量によって異なるから,この相違点を無視して議論するのは,当を得ないものである。 オ受忍限度(ア)廃プラのマテリアルリサイクルの公共性a総論我が国においては,循環型社会形成推進基本法を核にして,生産量・生産額・使用量などが多い物質・物品の循環処理の基本的視点を定め,物質の排出・処分の管理,物質の再使用,再利用,再資源 公共性a総論我が国においては,循環型社会形成推進基本法を核にして,生産量・生産額・使用量などが多い物質・物品の循環処理の基本的視点を定め,物質の排出・処分の管理,物質の再使用,再利用,再資源化などの具体的方策の下に,我が国を物質循環型社会に形成し直すための施- 63 -策が整備されてきており,廃棄物の適正な処理とリサイクルの発展は我が国の国策となっている。 b法制面での優位性等循環型社会形成推進基本法は,廃棄物等の処理の優先順位につき,①発生抑制,②再使用,③再生利用(リサイクル),④熱回収,⑤適正処分の順番で定め,技術的・経済的に可能な範囲でできる限り上位の処理を行い,それらが困難な場合は,下位の処理を行うことを定め,また,これらの処理に関し,国・地方自治体・事業者・市民が役割分担すべきことを求めている。 c経済性に関する反論原油価格は高騰しており,早晩,1バレル150ドルを突破することが予測されており,プラスチックなど各種化学製品のバージン原料価格の急激な上昇を招くことも予測されており,既に化学製品の高騰が始まっている。 そうだとすれば,マテリアルリサイクルのコストは,バージン材料のコストとさらに接近し,バージン材料のコストを下廻るようになるかも知れず,その結果として,マテリアルリサイクルはますます降盛を極め,技術も高まることになると考えられる。 また,バージン材料のコストの上昇に伴い,リサイクル商品の開発,改良が進展し,バージン材料を使用したプラスチック商品との棲み分けも徹底し,経済性,事業性は高まってくるはずである。 なお,原告らが指摘する経済性の点については,大半が平成16年から平成18年ころまでの評論家の報告書に基づくものであり,原油が高騰したときより以前に書かれたものであって,前提が異なってい である。 なお,原告らが指摘する経済性の点については,大半が平成16年から平成18年ころまでの評論家の報告書に基づくものであり,原油が高騰したときより以前に書かれたものであって,前提が異なっている。 そして,現状において,マテリアルリサイクルの経済性が,サーマ- 64 -ルリサイクルの経済性に劣っているとしても,それは,循環型社会形成推進基本法も認める経済的に許容可能な範囲の差にすぎない。 (イ)本件Y社施設の公共性a本件Y社施設は,容リ法に基づいて設置されている施設であって,「容器包装廃棄物の排出の抑制並びにその分別収集及びこれにより得られた分別基準適合物の再商品化を促進するための措置を講ずること等により,一般廃棄物の減量及び再生資源の十分な利用等を通じて,廃棄物の適正な処理及び資源の有効な利用の確保を図り,もって生活環境の保全及び国民経済の健全な発展に寄与する」(同法1条)事業を行う施設である。 また,本件Y社施設は,平成15年3月に大阪府が策定した「大阪エコエリア構想」において,「当面整備が望ましいリサイクル・適正処理施設」として位置づけられた施設であり,平成17年7月に大阪府が取りまとめ,環境大臣及び経済産業大臣から承認を受けた「大阪エコタウンプラン」においては,「先導的に整備すべきリサイクル施設」として選定された施設である。 したがって,本件Y社施設は,循環型社会を形成するという時代背景の下でリサイクル事業の発展という国家政策に対応し,地方自治体・地域社会・地域住民の責務と要請に応えるものである。 b本件Y社施設の収率に対する反論原告らは,本件Y社施設の収率が低く,非効率であると主張するが,51パーセントの収率は,経済的な見地からも,環境保全の見地からも妥当な数値であって問題はない。 c地消地産について熱回収 する反論原告らは,本件Y社施設の収率が低く,非効率であると主張するが,51パーセントの収率は,経済的な見地からも,環境保全の見地からも妥当な数値であって問題はない。 c地消地産について熱回収・ケミカルリサイクルは,それを利用することができる者が,巨大独占資本に限られており,一般国民,中小企業は,直接的には利- 65 -用することができないので,国民的広がりに欠けている。そして,熱回収・ケミカルリサイクルは,廃棄物を燃やしてしまうので分別排出,分別収集が必要でないことから,マテリアルリサイクルを行う場合には必要となる地域住民の分別排出,分別収集も必要でなくなり,その結果として,マテリアルリサイクルを行う場合に必要な地域住民の分別排出や自治体の分別回収といったリサイクルの基礎となる自発的行動が不要となる。 そのため,熱回収・ケミカルリサイクルにおいては,地域住民・地方自治体の循環型社会を目指す自発的意識が雲散霧消してしまい,廃棄物の発生を抑制することはできない。 これに対し,マテリアルリサイクルは,相対的に設備資金が少なくて済み,全国津々浦々に設備を建設することが可能であり,それぞれの地域の雇用も促進することとなるので,地方のゴミはその地方でリサイクル処理をすることが最も望ましいということができる。 (ウ)本件Y社施設の建設,操業経過の問題点争う。 なお,本件Y社施設においては,法令上は本来取り付ける必要のない装置であり,設備自体に相当な費用がかかり,活性炭取替えなどのメンテナンス費用も非常にかかる脱臭装置を備え付けており,周辺環境や地域住民に配慮している。 また,被告Y社は,平成17年,18年,19年の環境調査の測定における化学物質の濃度をホームページに公開し,また,工場見学会も開催し,公開性にも配慮している。 カまとめ 域住民に配慮している。 また,被告Y社は,平成17年,18年,19年の環境調査の測定における化学物質の濃度をホームページに公開し,また,工場見学会も開催し,公開性にも配慮している。 カまとめ以上のとおりであって,本件Y社施設から人の健康に被害を与える程度の有害化学物質は排出されていないし,仮に何らかの化学物質が排出され- 66 -ていたとしてもその化学物質が原告らに到達していないし,本件Y社施設由来の化学物質によって原告らに疾病が生じたということもないのであるから,原告らの請求は棄却されるべきである。 (3)争点(3)(本件4市組合施設から排出されるVOC等によって,原告らに受忍限度を超える健康被害が発生したか,発生する蓋然性があるか。)について【原告らの主張】ア専門委員会報告の信用性(ア)発生リスクの過小評価a被告4市組合は,平成16年10月,安全なプラスチック等の処理施設の建設と円滑な廃棄物処理を行うため,学識経験者等からなる北河内4市リサイクル施設組合専門委員会を設置している(以下「専門委員会」という。)ところ,専門委員会は,廃プラを圧縮する模擬試験(以下「圧縮実験」という。)の結果によれば,本件4市組合施設から派生すると予想される有毒ガスについては小さな値であると想定することができ,また,活性炭吸着塔を通過させればトルエン換算値で90%以上除去できるという前提で,排気中に残存する物質はごくわずかであり,周辺環境にほとんど影響を与えないと判断している。 そして,専門委員会は,もともと実験装置での実験について,実験対象の廃プラにつき本来の廃棄物と同様のサンプルを作り,圧縮速度等についても実際に予定されている圧縮と「模擬」することを前提とし,圧縮実験における圧縮速度については,寝屋川市で稼働中の圧縮梱包装置の 象の廃プラにつき本来の廃棄物と同様のサンプルを作り,圧縮速度等についても実際に予定されている圧縮と「模擬」することを前提とし,圧縮実験における圧縮速度については,寝屋川市で稼働中の圧縮梱包装置の処理速度に合わせて,0.4m/秒程度に設定したと被告4市組合の事務局から報告されていたため,上記圧縮実験が実機と同等の条件で行われていることを前提として,上記評価を行っていた。 bしかしながら,圧縮実験においては,実際の実験に立ち会ったJ元- 67 -大阪市立大学教授と守る会のK幹事が圧縮速度が実機に比較して著しく遅いことを現認しており,また,原告らが,圧縮実験を行った大阪府立産業技術研究所の担当者に聞いたところ,実験に用いた圧縮装置の圧縮速度の最高は1.6㎝/秒であり,4市組合の事務局が報告した40㎝/秒の20倍以上遅い速度であったことが判明している。 さらに,上記J教授とK幹事が「産技研での圧縮速度は4,5秒であるから,現場の圧縮より7倍から8倍程度ゆっくりしたものであった。圧縮速度は,廃プラの機械的な崩壊,破壊に影響を与えることは容易に予測できるので,本実験は現場の条件とかけ離れている。検討を要する点と考える。」との報告と意見を平成17年2月7日付けで被告4市組合に対して提出していたにもかかわらず,専門委員会において,事務局から圧縮速度につき訂正の申し出がされることはなかった。 cそして,上記(2)の【原告らの主張】アにおいて主張したように,廃プラからの有害ガスの発生は,メカノケミカル反応に負うことが大きく,圧縮速度に大きく影響されるものであるから,圧縮速度を実機より遅く設定すれば,当然に有害ガスの発生量も抑制されると想定できるといえ,専門委員会の報告は,有害化学物質の発生リスクを過小評価しており,その報告書が非科学的なものであ であるから,圧縮速度を実機より遅く設定すれば,当然に有害ガスの発生量も抑制されると想定できるといえ,専門委員会の報告は,有害化学物質の発生リスクを過小評価しており,その報告書が非科学的なものであることは明らかであって,信用することができない。 (イ)活性炭による除去の過大評価a専門委員会は,大阪府産業技術総合研究所における活性炭のVOC類等の吸着試験結果を根拠として,施設の環境安全を考慮して設置される換気設備及び排気浄化用の活性炭吸着塔を通過させれば,トルエン換算値として90%以上除去できることから,排気中に残存する物質はごくわずかであり,周辺環境にほとんど影響を与えないと判断し- 68 -ている。 bしかし,現実の操業実態において活性炭を通した後でも平均値でそれをはるかに上回るトルエン換算値でのTVOC濃度となっていることからすれば,本件4市組合施設の現場においては,活性炭の吸着効果が想定よりも低いか,実際の施設内でのVOC類の発生が想定を上回った結果,設置されている活性炭では十分な除去効果が得られていないことを示している。 したがって,専門委員会の報告書は,非科学的なものであるということができる。 (ウ)バックグラウンド濃度設定の不適切性専門委員会は,寝屋川市役所屋上のTVOC濃度が1400μg/㎥であることを前提にして,本件4市組合施設における排出量のバックグラウンド濃度として,上記数値を利用している。 しかし,シックハウス症候群を防止するための室内TVOC濃度の暫定指針値が400μg/㎥であり,全国調査の室外最高値が306μg/㎥であることからすれば,寝屋川市役所屋上の1400μg/㎥という数値は既に汚染状態の数値であって,かかる数値をバックグラウンド濃度として設定することは誤っている。 (エ)以上によれば, 6μg/㎥であることからすれば,寝屋川市役所屋上の1400μg/㎥という数値は既に汚染状態の数値であって,かかる数値をバックグラウンド濃度として設定することは誤っている。 (エ)以上によれば,専門委員会の報告書が非科学的なものであることは明らかであって,信用することはできない。 イ現実の稼働による危険性(ア)有害化学物質の発生本件4市組合施設においては,圧縮梱包過程が存在し,廃プラが強度の圧力で圧縮,梱包されるのであるから,その際に,廃プラ容器包装に対して相当強度の物理力が加えられることになり,その過程で様々な有害化学物質が発生する高度の蓋然性が認められることもまた明らかであ- 69 -る。 (イ)専門委員会の報告をも上回る排出a専門委員会は,上記アのとおり,有害化学物質発生の危険性を過小評価しており,その報告には問題が存在するものの,少なくとも排出ガスのトルエン換算値を1400μg/㎥まで抑制することを前提としていた。 bそれにもかかわらず,本件4市組合施設は,専門委員会においても想定外の極めて高濃度のNMHCを常時排出していることが判明しており,その危険性は明らかである。 具体的には,本件4市組合施設における脱臭装置通過後の排気ガスのトルエン換算値でのTVOC濃度は,平成20年2月の平均値が3367μg/㎥,同年3月の平均値が5457μg/㎥であることが測定されており,同月10日に1万1000μg/㎥,同年4月8日午前1時に2万5480μg/㎥が測定されている。 (ウ)被告4市組合に対する反論a被告4市組合TVOC分析調査の報告書の信用性被告4市組合は,TVOCに関する分析調査を行っている(以下「被告4市組合TVOC分析調査」という。)が,2頁「4.測定項目」にあるように,TVOC(トルエン換算による), 分析調査の報告書の信用性被告4市組合は,TVOCに関する分析調査を行っている(以下「被告4市組合TVOC分析調査」という。)が,2頁「4.測定項目」にあるように,TVOC(トルエン換算による),プロパン,イソブタン,ノルマルブタンのみを測定対象にした調査で,施設から排出されているVOC類の全容を把握することは最初から想定されていないものであって,被告4市組合が無害としている物質のみを測定し,その量比が多ければ,そのほかの化学物質は,たとえ安全性が確認されていないものであっても,あるいは少量で高い有害性を示すものが存在する可能性があっても測定対象にもしないという姿勢であり,まさに,「安全宣言」目的の調査方法が取られているとしかいいようが- 70 -なく,このような調査は,実態を客観的に明らかにする科学的方法とは無縁なものである。 また,被告4市組合TVOC分析調査の報告書の6頁から8頁には,併行測定における全イオンクロマトグラム(TIC)のチャートが掲載されているが,縦軸のスケールが大きすぎるため,実際には多数のピークが検出されているにかかわらず,ほとんどないかのようなチャートになっている。 ところが,上記報告書においては,全イオンクロマトグラムのチャートを拡大すればピーク毎の化学物質の種類と濃度の分析が十分可能であるにもかかわらず(測定対象になっていないイソペンタン,エタノールの測定濃度については同報告書に記載されている。),そのような分析がなされていない。 したがって,被告4市組合によるこのような「安全宣言」のための分析調査は,真実を明らかにする科学的調査とは無縁なものであり,信用性はない。 b被告4市組合大気汚染物質調査に基づく本件4市組合施設の危険性について(a)被告4市組合は,有害大気汚染物質の調査を行っている( を明らかにする科学的調査とは無縁なものであり,信用性はない。 b被告4市組合大気汚染物質調査に基づく本件4市組合施設の危険性について(a)被告4市組合は,有害大気汚染物質の調査を行っている(以下「被告4市組合大気汚染物質調査」という。)が,同調査の報告書によれば,本件4市組合施設から排出されているTVOCの9回の測定における合計値(FID法)は6万7026μg/㎥であるところ,被告4市組合が無害とするイソブタン,ノルマルブタン,イソペンタン,エタノールの9回の測定値の合計数値は2万6809μg/㎥であり,全体の40パーセントである。 そうだとすれば,被告4市組合が無害と主張している化学物質以外のVOC類は,9回の測定値の合計で約4万μg/㎥,1回平均- 71 -約4400μg/㎥が本件4市組合施設から排出されていることとなり,これは,大阪での大気中平均濃度の26倍にも当たり,NMHC(非メタン炭化水素)の保全目標(0.20から0.31ppmc)の25から48倍という高濃度である。 したがって,被告4市組合TVOC分析調査の報告書によったとしても,本件4市組合施設から,被告4市組合が無害とする化学物質以外のVOC類が大量に排出されていることを示している。 (b)また,被告4市組合は,イソブタン,ノルマルブタン,エタノールを無害な物質であると主張している。 しかし,上記物質は,浮遊粒子状物質や光化学オキシダントの生成に関与するVOCに含まれる物質として,環境省通知添付の別表「揮発性有機化合物(VOC)に該当する主な物質」100項目にそれぞれ番号9,同10,同53として記載されており,環境省によって無害どころか有害化学物質として警告されている物質である。 したがって,被告4市組合の発生しているTVOCの大部分が無害で,問題がない れぞれ番号9,同10,同53として記載されており,環境省によって無害どころか有害化学物質として警告されている物質である。 したがって,被告4市組合の発生しているTVOCの大部分が無害で,問題がないとする主張はまやかしである。 (エ)杉並中継所との比較本件4市組合施設からのTVOCの1日排出量は,平成20年2月の平均値を用いると2520グラム,同年3月の平均値を用いると4080グラムであるということができる。 そして,杉並中継所においては,換気系に活性炭処理が行われていなかった初期のTVOCの1日排出量の推算を行うと,排気塔及び換気塔からのTVOCの1日排出量は1890グラムにすぎないことからすると,本件における原告らの重大な健康被害を裏付けているということができる。 ウ受忍限度について- 72 -(ア)廃プラのリサイクルの公共性について上記(2)【原告らの主張】で主張したように,廃プラのマテリアルリサイクルには問題があり,公共性は認められない。 (イ)本件4市組合施設の公共性について原告らを含めた周辺住民の健康被害を前提にしている公共性は,あり得ない。 (ウ)本件4市組合施設の建設,操業経過についてa本件4市組合施設は,本件Y社施設と違い,一応都市計画決定の手続を踏んではいるが,その手続における付近住民の参加,住民合意の形成という点では極めて不十分であった。 b「東大阪ブロックごみ処理広域化計画」においては,「(4)施設整備に向けた合意形成」として,「ごみ処理施設は,都市の環境保全及び都市活動を維持するために必要不可欠な基幹施設であるが,施設に対するイメージや環境保全面から,地域住民による反対運動が起こるなど処理施設の立地は非常に困難である。廃棄物処理施設の設置・更新に当たっては,社会的な合意を得るまでに,長期の手 施設であるが,施設に対するイメージや環境保全面から,地域住民による反対運動が起こるなど処理施設の立地は非常に困難である。廃棄物処理施設の設置・更新に当たっては,社会的な合意を得るまでに,長期の手続き期間が予想されるため,早い段階で計画を公開し,広く住民から意見・情報の募集(パブリックコメント)をするなど,住民参加のもと進めていくことが求められている。このため,ごみ処理施設の整備にあたっては,行政・住民・学識経験者による新たなごみ処理方策を検討する研究会を設けるなど合意形成に向けたシステムづくりが重要である。」とし,「施設整備に向けた合意形成フロー」も示されている。 そして,上記フロー図の下には,【施設整備計画フローの主な留意点】として6点があげられ,そこでは「②基本構想は,パブリックコメントを行い,その内容を考慮し施設整備計画案を作成する。③処理方法や施設場所の選定は,複数案を公開し,計画案の策定にあたる。 - 73 -⑤環境アセスメントは,実施前に環境調査等の方法,実施後に環境調査結果及び評価等を公開する」などと記載されている。 cしかしながら,東大阪ブロックごみ処理広域化計画で唯一具体化されている事業である被告4市組合による本件4市組合施設の建設に際して,ここに挙げられているような住民説明の徹底や,住民参加の手法は一切実施されなかった。 具体的には,まず,平成16年4月10日の寝屋川市の住民説明会において,寝屋川市は第2回説明会を行うと約束したが,それは未だに実行されていない。 また,平成16年9月から平成17年3月までの都市計画決定手続における公聴会では,公述人53名中48名が反対意見を表明し,計画案への意見書についても寝屋川市で198通202件はすべて反対で見直しを求めるものであったところ,この意見書について,4市とも 手続における公聴会では,公述人53名中48名が反対意見を表明し,計画案への意見書についても寝屋川市で198通202件はすべて反対で見直しを求めるものであったところ,この意見書について,4市ともにそれに対する見解をホームページで発表するとしていたが,未だそれもなされていない。 d被告4市組合は,環境問題に関して,平成16年11月に生活環境影響評価書を作成したが,本来であれば,予測対象項目は,杉並病の公害等調整委員会の原因裁定を参考にしつつ,「廃棄物処理生活環境影響調査指針の解説」において示されている方針に基づいて選定されるべきものであったが,上記の生活環境影響評価書では,肝心の有害化学物質は予測対象とされなかった。また,上記の生活環境影響評価書は,寝屋川市においては,北河内4市が建設を計画していた施設の安全性に関する専門委員会が設置され,同委員会は平成16年9月から審議が開始していたにもかかわらず,同委員会の結論を待つことなく審議続行中に公表されるという点でも大きな問題があった。 さらに,平成17年2月26日,寝屋川市都市計画審議会において,- 74 -欠席したL委員の「都市計画決定における意見書」が読みあげられ,そこには「提出された意見を類型化し,その採否を類型毎に検討する必要がある」などの都市計画審議会の在り方に関する重要な意見が述べられていたが,会長はその意見を無視する会議運営を行い,被告4市組合のM事務局長も「先ほど申し上げましたように,いわゆるこの施設のリスクマネージメント,リスクについては,十分管理ができるということについては(専門委員会で)合意が得られております。」と発言し,D委員,N委員が異論を述べていることを意図的に無視する虚偽発言を行って審議を強行した。 そして,上記説明会で賛成発言を行ったのはa,jの自治 ては(専門委員会で)合意が得られております。」と発言し,D委員,N委員が異論を述べていることを意図的に無視する虚偽発言を行って審議を強行した。 そして,上記説明会で賛成発言を行ったのはa,jの自治会長のみで,周辺自治会をはじめとする住民の合意がなかったにもかかわらず,同年3月25日,寝屋川市,枚方市,交野市,四條畷市の4市は,被告4市組合による廃プラの選別,圧縮,梱包施設を寝屋川市aに設置する都市計画決定を強行した。 e以上のように,本件4市組合施設の都市計画決定は,住民意見を無視し,肝心の環境影響に関する調査も不十分なまま,都市計画審議会や説明会で繰り返し虚偽説明まで行って強行したものであり,明らかに「国及び地方公共団体は,都市の住民に対し,都市計画に関する知識の普及及び情報の提供に努めなければならない」とする都市計画法第3条3項に違反し,本件Y社施設と同様に,市街化調整区域に建設されている点で都市計画法の趣旨にも違反するものである。 したがって,本件4市組合施設の建設手続における法律違反も明らかである。 エまとめ本件4市組合施設は,操業開始に伴って高濃度のVOCを排出しつづけている。そして,この高濃度のVOCの排出は,専門委員会の意見に沿っ- 75 -て活性炭処理を行った上での排出であるから,当初の計画通りの排出抑制は全く実現されておらず,地域社会の健康リスクにとって脅威となっている。 よって,被告4市組合においても,被告Y社とは独立して単独の有害物質の発生源として,本件4市組合施設の操業を停止すべき義務がある。 【被告4市組合の主張】ア専門委員会の報告の信用性被告4市組合は,本件4市組合施設における近隣住民の生活に影響が懸念される事項に対応すべく,安全な施設の建設と円滑な廃棄物処理を行うことを目的として専門委員会を 主張】ア専門委員会の報告の信用性被告4市組合は,本件4市組合施設における近隣住民の生活に影響が懸念される事項に対応すべく,安全な施設の建設と円滑な廃棄物処理を行うことを目的として専門委員会を設置したのであり,同専門委員会は,廃プラの圧縮実験や活性炭による吸着実験等を行っているところ,専門委員会の報告によれば,本件4市組合施設について,原告らの健康被害を生じるおそれがないことは明らかである。 (ア)発生リスクの過小評価に対する反論等a圧縮実験の前提圧縮実験は,実際に一般家庭から排出された廃プラを試料として用い,本件4市組合施設の圧縮減容機の圧力及び圧縮回数を模して真空プレス機による圧縮を行い,その工程で発生する全量のガスを採取するようにし,これを解析したものである。 測定対象としては,28種類の化学物質を対象としており,この選定は,環境基準値等が定められていること,プラスチック類から生成することが予測されること等を理由になされたものである。 そして,圧縮実験は2回実施されており,1回目の圧縮実験では,雰囲気ガス(外部大気中に存在する化学物質によって測定するガスが汚染されないよう,圧縮時に発生する化学物質だけを補足するため,予めプレス機内に充填しておくガス)を窒素ガスで置換したが,本件- 76 -施設の実際の工程は大気下であるから,酸化物の生成の可能性を確認するために,大気下と同様の雰囲気ガスで実験を行う必要が認められたため,空気を雰囲気ガスとする2回目の圧縮実験が実施されたものである。 b圧縮実験の正当性(a)専門委員会における圧縮実験においては,圧縮工程において発生する化学物質につき真空プレス機により全量採取するようにしていたので,有害化学物質の濃度につき過小評価するおそれは存在しない。 (b)なお,本件4市組 ける圧縮実験においては,圧縮工程において発生する化学物質につき真空プレス機により全量採取するようにしていたので,有害化学物質の濃度につき過小評価するおそれは存在しない。 (b)なお,本件4市組合施設は,ポリウレタンを圧縮梱包することを目的としておらず,また,丙A37号証の修士論文おける実験においては,本件4市組合施設が予定するものと異なり,プラスチックに大きな摩擦が加えられていることから,本件4市組合施設と丙A37号証の実験を同列に論じることはできない。 c圧縮実験による安全性専門委員会における純プラスチックの圧縮実験の結果によれば,有害化学物質の発生について,本件施設が予定する圧力によって純プラスチックを圧縮した場合は,測定項目となった18種の化学物質は,ほとんど検出されておらず,ベンゼン,ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドは検出されているが,いずれも微量であり,環境基準値等を大きく下回っているので,本件施設での圧縮工程においては,プラスチック自体から問題とされるべき量の有害化学物質が発生することはないということができる。 また,廃プラを試料とした圧縮実験においても,問題となるべき量の有害化学物質は発生していない。 (イ)活性炭による除去の過大評価に対する反論等- 77 -専門委員会では,未知の化学物質を含めて圧縮工程において発生する化学物質を制御する方法が検討され,活性炭による吸着実験が実施された。 そして,活性炭による吸着実験の結果及びそれに関する検討経過によれば,本件4市組合施設から排出されることが予想される既知及び未知の化学物質は,活性炭吸着装置を通過することによりトルエン換算値(TVOCと類似)として90%以上を除去できることが明らかとなっている。 また,被告4市組合は,専門委員会での議論をも踏まえ,活性炭 の化学物質は,活性炭吸着装置を通過することによりトルエン換算値(TVOCと類似)として90%以上を除去できることが明らかとなっている。 また,被告4市組合は,専門委員会での議論をも踏まえ,活性炭吸着装置により本件4市組合施設から排出される空気を浄化し,エアカーテン,高速シートシャッター及びスチールシャッターにより本件4市組合施設内の空気が漏洩しないようにするなどして環境保全対策を講じている。 (ウ)バックグラウンド濃度設定についての反論aそもそも,TVOCとは総揮発性有機化合物のことであり,そのトルエン換算値は,端的に言えば「物質の濃度,総量」を示すものに過ぎず,その値の大小は,健康に対する影響の悪性の大小を示すものではない。 そして,専門委員会の議論においては,D教授も「どれだけの未同定の物質があるのかを確認しておくことに意味がある」として,その意味を未同定物質の量を把握することに置いていたところである。 また,専門委員会で用いられることとなった1400μg/㎥という値についても,TVOCの算出方法については勧告に基づくものがあるだけで統一的な規格はないこと,TVOCの値は季節によって増減があること,その取扱いは慎重にすべきことが指摘されていることから,飽くまで参考として用いられたものにすぎない。 - 78 -b原告らは,専門委員会における参考値(1400μg/㎥)と「室内暫定指針値」(400μg/㎥)とを対比して,前者が後者の3. 5倍であることを指摘し,バックグラウンド濃度の設定について誤りがある旨主張している。 しかし,厚生労働省のTVOCの室内濃度指針値(暫定目標値)が測定対象としているのは,n-ヘキサン(分子量86)からn-ヘキサデカン(分子量226)までの物質であるが,参考値の算出においては,質量設定範囲35 労働省のTVOCの室内濃度指針値(暫定目標値)が測定対象としているのは,n-ヘキサン(分子量86)からn-ヘキサデカン(分子量226)までの物質であるが,参考値の算出においては,質量設定範囲35から300(=分子量35から300)までの物質が測定対象となっており,原告らの指摘は,このような質量設定範囲の相違を見落としており,失当である。 (エ)以上によれば,専門委員会の報告書は,十分な検討を加えているといえ信用することができる。 イ現実の稼働による危険性(ア)被告4市組合大気汚染物質調査の報告書及び被告4市組合TVOC分析調査の報告書の信用性等a有害大気汚染物質の測定被告4市組合は,本件4市組合施設の稼働後の大気環境の把握を目的として,財団法人関西環境管理技術センターに依頼し,本件4市組合施設の活性炭吸着装置排出気筒出口(チャンバー室)及び敷地境界の2か所における有害大気汚染物質を5日間にわたって測定した。 試料採取及び分析方法は,「有害大気汚染物質測定マニュアル(環境庁大気保全局大気規制課)」に準拠し,24時間採取することとして,平成20年3月5日から同月9日までの計5日間にわたり採取した試料につき分析するというものであり,測定項目は,ベンゼン,ジクロロメタン,トリクロロエチレン,テトラクロロエチレン,アセトアルデヒド,ホルムアルデヒド,TVOC(VOC類等未知物質(ト- 79 -ルエン換算))の計7項目である。 なお,上記した物質は,専門委員会の議論の中で取り上げられたこと,環境基準値等が定められていること,いわゆるシックハウス症候群との関連性が指摘されていることから,測定物質として選定されたものである。 上記調査の測定結果としては,TVOCの値が,敷地境界においては,参考値(1400μg/㎥)を下回っているが,チ ウス症候群との関連性が指摘されていることから,測定物質として選定されたものである。 上記調査の測定結果としては,TVOCの値が,敷地境界においては,参考値(1400μg/㎥)を下回っているが,チャンバー室においては,参考値を上回っていた。 b被告4市組合TVOC分析調査被告4市組合は,測定器による連続測定において,TVOCの値が参考値(1400μg/㎥)を上回る傾向があることが認められていたため,上記した有害大気汚染物質の測定に加え,本件4市組合施設のチャンバー室内において,被告4市組合TVOC分析調査も行っている。 被告4市組合TVOC分析調査の報告書によれば,平成20年3月5日,7日及び10日の各日において,本件4市組合施設の稼働前,稼働中及び終了直前におけるプロパン,イソブタン及びノルマルブタンのTVOC濃度が測定されている。 なお,上記3つの化学物質に限定して調査を行った理由は,本件4市組合施設の稼働後において,廃プラの中に,プロパン,イソブタン,ノルマルブタン,イソペンタン及びエタノールを溶剤ないし噴射剤の成分として構成しているガスライターやヘアスプレー容器等が混入していることが確認されているためである。 具体的には,平成20年3月17日から同年4月7日までの調査では,1日あたり最多で178個,最小で80個の混入が確認されている。 - 80 -なお,これらの混入物については,圧縮梱包工程の前段階である選別工程時に除去している。 c以上によれば,被告4市組合大気汚染物質報告書,被告4市組合TVOC報告書は,信用することができる。 (イ)本件4市組合施設の安全性a有害大気汚染物質の測定結果本件4市組合施設における有害大気汚染物質の測定結果によれば,ベンゼン,ジクロロメタン,トリクロロエチレン,テトラクロロエチレ る。 (イ)本件4市組合施設の安全性a有害大気汚染物質の測定結果本件4市組合施設における有害大気汚染物質の測定結果によれば,ベンゼン,ジクロロメタン,トリクロロエチレン,テトラクロロエチレン,アセトアルデヒド及びホルムアルデヒドのいずれの項目についても,環境基準値等を下回っている。 bTVOC(a)一般論について上記ア(ウ)で主張しているように,そもそも,TVOCとは総揮発性有機化合物のことであり,そのトルエン換算値は,端的に言えば「物質の濃度,総量」を示すものに過ぎず,その値の大小は,健康に対する影響の悪性の大小を示すものではなく,また,専門委員会で用いられることとなった1400μg/㎥という参考値についても,TVOCの算出方法については勧告に基づくものがあるだけで統一的な規格はないこと,TVOCの値は季節によって増減があること,その取扱いは慎重にすべきことが指摘されていることから,飽くまで参考として用いられたものにすぎないのであるから,参考値を上回るTVOCの排出があったとしても,直ちに,本件4市組合施設が大気環境や住民の健康に悪影響を及ぼすことを示すものではない。 (b)観測されたTVOCの中身について被告4市組合は,財団法人関西環境管理技術センターに依頼し,- 81 -本件4市組合施設のチャンバー室内のTVOCの分析調査を行っているところ,その結果によれば,チャンバー室内の空気中のTVOCのうち概ね75%以上(75.4%から92.7%の範囲)がイソブタン,ノルマルブタン,イソぺンタン及びエタノールで占められていることが分かり,同室内のTVOCの値が参考値(1400μg/㎥)を上回る傾向が認められるのは,イソブタン,ノルマルブタン,イソぺンタン及びエタノールの存在が原因であることを確認できる。 そして, ることが分かり,同室内のTVOCの値が参考値(1400μg/㎥)を上回る傾向が認められるのは,イソブタン,ノルマルブタン,イソぺンタン及びエタノールの存在が原因であることを確認できる。 そして,イソブタン,ノルマルブタン,イソペンタン,エタノール及びプロパンは,いずれも中央環境審議会「今後の有害大気汚染物質対策の在り方について(第二次答申)」(平成8年10月)が定める有害大気汚染物質に該当する(又は該当する可能性がある)物質(234物質)には含まれていない。 また,専門委員会においても,当該物質について,環境基準値を定める必要性があると判断されていないことから,これらの化学物質を測定項目として取り上げていない。 以上のとおりであって,本件4市組合施設から屋外へ排出される空気に含まれる物質のトルエン換算量(TVOC)として示された値のうち,その大部分を占めているのは,イソブタン,ノルマルブタン,イソペンタン及びエタノールであるが,これらの物質は,有害大気汚染物質と認められるものではないから,その排出が住民の健康に対して悪影響を及ぼす具体的な危険性はない。 (c)TVOCの最高濃度について原告らは,本件4市組合施設から排出されるTVOCが最高濃度2万μg/㎥を超える時間帯があったことを指摘し,その危険性を主張している。 - 82 -しかし,上記した数値は,次のとおり,大気汚染防止法によるVOCの排出基準を大きく下回っており,何ら危険性は存在しない。 本件4市組合施設は,大気汚染防止法2条5項における揮発性有機化合物排出施設ではないが,TVOCが最高濃度2万μg/㎥を超える時間帯があったとしても,これが大気汚染の原因となったり,住民の健康に被害を生じさせるおそれはない。 すなわち,大気汚染防止法によるVOCの排出基準は,施設の種類及 Cが最高濃度2万μg/㎥を超える時間帯があったとしても,これが大気汚染の原因となったり,住民の健康に被害を生じさせるおそれはない。 すなわち,大気汚染防止法によるVOCの排出基準は,施設の種類及び規模ごとに定められているところ,環境大臣が定める測定法により測定された排出ガス1立方メートルにつき最大400ppmc(1時間値)とされている(大気汚染防止法17条の3,同法施行規則15条の2,別表5の2)。 ppmcとは,炭素(元素記号C)で換算した濃度を示す単位であり,トルエン(CH-CH)の場合は炭素の数が7であるの で,トルエン1ppmは,7ppmcと換算されることとなる。そして,トルエン1ppm=3763μg/㎥(気温25℃・1気圧の場合)であるから,トルエン換算値による1ppmcは,538μg/㎥となり,400ppmcは,21万5200μg/㎥と計算される。 しかるところ,本件4市組合施設で測定されたTVOCの1時間当たりの最大濃度は,2万5480μg/㎥(平成20年4月8日)であるが,これは,大気汚染防止法が定める排出基準の約12%に過ぎない。 以上のとおり,大気汚染防止法によるVOCの排出基準との比較からすれば,本件4市組合施設から排出されるTVOCが大気の汚染の原因となったり,住民の健康に被害を生じさせるおそれがないことは明らかである。 - 83 -(d)測定条件の相違本件4市組合施設におけるTVOCの測定は,本件4市組合施設のチャンバー室内で行われており,その測定値は大気による拡散・希釈前の数値である。 これに対し,1400μg/㎥という参考値は,寝屋川市役所屋上における測定値であって,大気による拡散・希釈後の数値であって,これらの数値は,それぞれ測定条件が異なるものであるから,測定値の比較をするに当た し,1400μg/㎥という参考値は,寝屋川市役所屋上における測定値であって,大気による拡散・希釈後の数値であって,これらの数値は,それぞれ測定条件が異なるものであるから,測定値の比較をするに当たっては,その相違点に留意する必要がある。 また,イソブタン,ノルマルブタン,イソペンタン及びエタノールは,本件4市組合施設に搬入される廃棄物の中に混入していたガスライターやヘアスプレー容器等から漏出したものと推認されるが,専門委員会での模擬試験においては,ガスライターやヘアスプレー容器等を除去して行われていたから,同試験におけるTVOCの測定値には,ガスライターやヘアスプレー容器等から排出されるイソブタン,ノルマルブタン,イソペンタン及びエタノールが含まれることはない点についても留意する必要がある。 (ウ)杉並中継所との比較aまず,TVOCの排出濃度が健康に対する危険性を示す指標でないことは前記ア(ウ)で主張したとおりである。 また,杉並中継所と本件4市組合施設とでは,TVOCの測定方法が全く同一ではなく,杉並中継所の場合,TVOC濃度の連続測定値がなく,一回の測定をもとに単純な数値比較を明瞭に示すことは難しいはずである。 bまた,VOCの排出量は,その時々のごみの質や量によって異なるから,この相違点を無視して議論するのは,当を得ないものである。 - 84 -そして,本件4市組合施設において処理するものは,一般廃棄物のうち,いわゆる容リ法に規定するペットボトル及びプラスチック製容器包装に限られており,不燃ごみ全般を処理対象としていた杉並中継所とは,処理対象物が全く異なる。 cしたがって,杉並中継所と本件4市組合施設を比較して安全性を検討することはできないはずである。 (エ)拡散・希釈による安全性等以上のように,本件4市組合施設か 所とは,処理対象物が全く異なる。 cしたがって,杉並中継所と本件4市組合施設を比較して安全性を検討することはできないはずである。 (エ)拡散・希釈による安全性等以上のように,本件4市組合施設からの化学物質の排出量は問題ない水準のものである上に,当該化学物質は,本件4市組合施設から排出された後,大気中で拡散し,希釈されることになるので,本件4市組合施設から排出される可能性がある既知の有害化学物質の濃度は,人の健康に影響を及ぼさない濃度まで低下するので,原告らの健康に悪影響を与えることはない。 ウ受忍限度について(ア)廃プラリサイクルの公共性について資源の有効な利用の促進に関する法律(平成3年4月26日法律第48号),容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(平成7年6月16日法律第112号),特定家庭製品機器再商品化法(平成10年6月5日法律第97号),循環型社会形成推進基本法(平成12年6月2日法律第110号),使用済自動車の再資源化等に関する法律(平成14年7月12日法律第87号)等の諸立法からすると,循環型社会の形成が国家的施策方針であることは明らかである。 (イ)本件4市組合施設の公共性について循環型社会形成推進基本法第7条は,循環資源の循環的な利用及び処分の基本原則として,①再使用,②再生利用,③熱回収,④処分の順に行うべきことを掲げているところ,本件4市組合施設は,枚方市,寝屋- 85 -川市,四條畷市及び交野市の北河内4市の各家庭から分別排出されたペットボトル及びプラスチック製容器包装をリサイクルするため,焼却などを行わず,異物を取り除いて,これらを選別・圧縮梱包処理する施設であり,北河内4市地域でのごみ減量化・リサイクルを推進し,循環型社会を目指すという行政施策の中心を担っているだけでなく ため,焼却などを行わず,異物を取り除いて,これらを選別・圧縮梱包処理する施設であり,北河内4市地域でのごみ減量化・リサイクルを推進し,循環型社会を目指すという行政施策の中心を担っているだけでなく,上記国家的施策方針にも合致しており,高い公益性を有している。 (ウ)本件4市組合施設の建設,操業経過についてa原告らは,本件施設の操業差止めの訴えにおいて,本件施設の建設手続の違法性について主張しているが,本件4市組合施設の建設手続につき違法な点はない。 むしろ,被告4市組合は,本件4市組合施設の建設及び操業につき,原告らを含む地域住民に対し,次のとおり,十分な説明を尽くしている。 b平成13年12月13日の読売新聞朝刊において,本件4市組合施設が平成16年度に稼働する計画である旨が報道されており(丙5号証),また,平成14年3月には,本件4市組合施設に係る基本構想及び生活環境影響評価調査書が寝屋川市議会に提出されている。 したがって,北河内4市は,平成16年まで,本件4市組合施設の建設を,住民に明らかにすることなく手続を進めていたものではない。 cさらに,本件4市組合施設について,都市計画法に定められている所定の都市計画決定手続は,全て,適法に履行されており,当該都市計画決定手続に係る法的瑕疵は,一切存在していない。 原告らにおいても,当該法的瑕疵の存在を理由とする都市計画決定処分の取消し等を求める行政訴訟は,提起していない。 dまた,廃棄物処理法に基づく生活環境影響調査も事前に実施しており,生活環境への悪影響はないとの結論が出されており,この意味か- 86 -らも建設手続における法的瑕疵は存在しないのである。 eそして,原告らは,本件4市組合施設の建設について,住民説明・住民合意の欠如を主張しているが,建設に係る住民への説明会 この意味か- 86 -らも建設手続における法的瑕疵は存在しないのである。 eそして,原告らは,本件4市組合施設の建設について,住民説明・住民合意の欠如を主張しているが,建設に係る住民への説明会は,平成16年3月から平成17年3月までの間に23回にわたって実施されている。 しかも,住民への説明会の実施は,都市計画法や廃棄物処理法に規定された法定要件ではなく,行政運営上,行政庁の裁量により実施されているものであり,仮に,これらが欠如していたとしても,そのことにより本件4市組合施設の建設が違法となることはない。 f以上のとおり,本件4市組合施設の建設過程に違法性は存在せず,問題ない。 エまとめ以上によれば,本件4市組合施設から人体に有害な種類及び量の化学物質が排出されることはなく,仮に排出されることがあるとしても,ごく微量であるから,原告らのもとに到達することはない。 また,本件4市組合施設から排出された化学物質が原告らのもとに到達すると仮定しても,元々ごく微量で,環境基準値等を下回る安全な量でしかないものが,さらに大気中で拡散することにより十分に希釈されるから,原告らの健康に影響を与えるとは考えられない。 そして,被告4市組合は,排出ガスを排出空気測定器によって24時間連続測定し,モニタリング及び情報開示することによって環境保全対策のための管理体制を整えているから,今後本件4市組合施設の操業が原告らの健康に影響を与えることとなる蓋然性があるとも認められない。 したがって,本件4市組合施設の操業は,原告らに対して,受忍限度を超える現実の被害を与えておらず,今後も与えることになると認められないから,原告らの本訴請求は棄却されるべきである。 - 87 -(4)争点(4)(本件Y社施設,本件4市組合施設,第2京阪道路等の施設から排出さ を与えておらず,今後も与えることになると認められないから,原告らの本訴請求は棄却されるべきである。 - 87 -(4)争点(4)(本件Y社施設,本件4市組合施設,第2京阪道路等の施設から排出されるVOC等の複合汚染によって,原告らに受忍限度を超える健康被害が発生したか,発生する蓋然性があるか。)について【原告らの主張】原告らが居住する地域においては,寝屋川市のクリーンセンターが継続操業している上に,本件Y社施設及び本件4市組合施設が操業を開始しており,さらには,第2京阪国道が開通することが予定されており,複合汚染による大気環境が悪化することは確実である。 【被告Y社の主張】争う。 【被告4市組合の主張】争う。 第3争点に対する当裁判所の判断 争点(1)(原告らに,本件Y社施設について,操業を差し止めるための訴えの利益が認められるか。)について被告Y社は,本件Y社施設からは有害化学物質が排出されておらず,有害化学物質の原告らへの到達もなく,原告らの健康被害も存在しないから,原告らには,訴えの利益がない旨主張する。 しかしながら,本件Y社施設の操業により有害化学物質が発生し,それが原告らへ到達し,その結果として原告らが健康被害を受けたか否かの点については,原告らの差止請求権の存否という実体上の請求権の存否の問題であるから,社会通念上,原告ら主張の損害発生が到底考えられないという特段の事情のない限り,原告らの訴えの利益が否定されることはないと解するのが相当である。 本件においては,前記第2,1(2)のとおり,本件Y社施設は操業をしており,廃プラを処理する過程で様々な化学物質が放出される可能性があることや原告らは本件Y社施設の周辺住民であることからすれば,原告らの健康被害の- 88 -発生が到底考えられないということはできないの ,廃プラを処理する過程で様々な化学物質が放出される可能性があることや原告らは本件Y社施設の周辺住民であることからすれば,原告らの健康被害の- 88 -発生が到底考えられないということはできないので,被告Y社の上記主張は理由がない。 差止請求の判断基準について本件は,原告らが,本件2施設において,廃プラを処理,加工する過程で有害化学物質(特にVOC)が発生し,周辺住民に対して健康被害を与えているとして,本件2施設の操業の差止めを求めている事案である。 身体に対する侵害については,人格権侵害として,物権的請求権に準じて妨害予防請求権及び妨害排除請求権が認められると解することができるが,差止請求の場合においては,相手方の社会経済活動を直接規制するものであって,その影響するところが大きいものであるから,排出物による侵害行為がすべて当然に違法性を有するというべきではなく,社会の一員として社会生活を送る上で受忍するのが相当といえる限度を超えていることによって初めて違法性を有するというべきである。 そして,受忍限度の判断としては,侵害行為の態様とその程度,被侵害利益の性質とその内容,侵害行為のもつ公共性,発生源対策等の事情を総合的に考慮して判断する必要がある。 そこで,以下においては,かかる観点から検討を加える。 認定事実前記第2,1の事実,証拠(甲〈以下,枝番のあるものはすべて枝番を含む。〉A2,3,12ないし24,27,30ないし32,35,45,73ないし76,107,114,117ないし121,123ないし126,129,130,甲1003,1004,1012,乙A4,13,14,44,55ないし59,61,63,64,69,丙A37,57ないし59,証人D,証人E,証人C,証人O,証人P,証人Q,原告B,原告A),弁論の全趣旨 3,1004,1012,乙A4,13,14,44,55ないし59,61,63,64,69,丙A37,57ないし59,証人D,証人E,証人C,証人O,証人P,証人Q,原告B,原告A),弁論の全趣旨及び裁判所に顕著な事実を総合すれば,次の事実が認められる。 (1)本件2施設の概要- 89 -ア本件2施設の周辺状況について(ア)本件2施設周辺の地形条件本件Y社施設及び本件4市組合施設(すなわち本件2施設)は,生駒山系の北部からk川沿いの平地に向かっておおむね北西方向に下った丘陵部で,JRl線よりもk川寄りの場所にあり,その位置関係は,別紙2「本件2施設周辺図」(甲A75と同じ)のとおりであって,道路を挟んで相互に隣接して設置されている。 本件2施設は,寝屋川の最上流部を形成する支流であるa川によって形成された緩やかな谷間(谷幅は,甲第A107号証からの読み取りによれば,本件2施設付近で300メートル前後である。)に所在し,大阪府交野市mn丁目付近からJRo駅付近を経て大阪市水道局p浄水場(以下「p浄水場」という。)に連なる尾根筋(この尾根筋の末端部やp浄水場を挟んで本件2施設と反対側にある辺りが本件地域である。)と大阪府交野市mq丁目付近から養護学校を経て,クリーンセンターの南側に連なる尾根筋に挟まれている。標高や高低差の状況は,別紙3「本件2施設周辺高低図」(甲A76と同じ)のとおりであり,標高は,甲第A107号証記載の標高点の読み取りで,p浄水場辺りが約40ないし43メートル,本件2施設辺りが約25ないし28メートル,クリーンセンター側の尾根が43ないし49メートルであって,尾根筋と谷間との標高差は,p浄水場側が本件2施設付近で約12ないし18メートル,クリーンセンター側が本件2施設付近で約15ないし24メートルとみられ ター側の尾根が43ないし49メートルであって,尾根筋と谷間との標高差は,p浄水場側が本件2施設付近で約12ないし18メートル,クリーンセンター側が本件2施設付近で約15ないし24メートルとみられる。 (イ)本件2施設周辺における,揮発性有機化合物(VOC)の大気中への排出源となり得る他の施設の分布状況本件2施設から半径500メートル圏内には,クリーニング業を営むR社,S商会が営む産業廃棄物中間処理施設,寝屋川市の廃棄物焼却場- 90 -であるクリーンセンター,ベアリング等の各種金属製部品を製造するT株式会社の工場,U工業所等が存在している(乙A30,71)。 イ本件Y社施設及びその運営の概要等(ア)製品の原材料本件Y社施設で扱われる材料は,家庭から排出される一般廃棄物を市民が分別排出し,これを地方自治体が収集し,さらに異物を排除するなどして,容リ協の作成した分別基準に従って分別された廃プラのうち容器包装プラスチックである〔いわゆるペット(PET)ボトルは除かれる。〕。 なお,廃ガスライター,廃ボンベ等の不純物は,除去されることとなっている(丙A59)。 (イ)処理状況本件Y社施設における平成18年度の廃プラの搬入量は,合計1万1257トンであり,平成19年度の廃プラの搬入量は,合計1万0253トンであり,パレット製造量は,平成18年度が22万0125枚,平成19年度が27万6665枚であり,上記期間中のいわゆるリサイクル率である収率は,概ね50パーセント強程度であった。 (ウ)人員(平成20年5月16日現在)64名の従業員が本件Y社施設で稼働しており,地元出身者が優先的に採用されている。 ウ本件4市組合施設の概要等(ア)取扱物本件4市組合施設で扱われる対象物は,北河内4市の各家庭から分別排出され,北河内4市が 本件Y社施設で稼働しており,地元出身者が優先的に採用されている。 ウ本件4市組合施設の概要等(ア)取扱物本件4市組合施設で扱われる対象物は,北河内4市の各家庭から分別排出され,北河内4市がそれぞれ収集した一般廃棄物のうち,容リ法に規定するペットボトル及びプラスチック製容器包装である。 (イ)処理状況- 91 -本件4市組合施設では,搬入されたペットボトル及びプラスチック製容器包装を選別し,圧縮することによって減容した上で梱包し,これを事業者に引き渡すまで一時的に保管し,その後,事業者に引き渡す。分別収集の結果,異物は含まれていないはずであるが,その精度が十分でない場合には異物が混入することもあり,本件4市組合施設における圧縮梱包工程の前に行われている手選別による異物の選別除去工程においては,実際に混入された排ガスライター等が除去されている(丙A37,59)。 (2)発生関連ア化学物質についての知見プラスチックが劣化したり,機械的処理を加えられたりすると,発生量は明らかでないが,条件によって,以下のとおり,各種の化学物質が発生することがあることが認められる(甲A2,甲1003,1004)。 (ア)PPを加熱処理するとメタン,エタン,プロピレン,プロパン等が発生することがある。 (イ)PEを加熱処理すると水素,メタン,エタン,エチレン等が,PEを摩擦処理するとイソプロピルアルコール,エチルアセテート,ヘキサン,トルエン等が,PEを圧縮処理するとベンゼン等が,PEを破損処理するとキシレン等がそれぞれ発生することがある。 (ウ)PSを加熱処理するとベンゼン,トルエン,スチレン等が,PSを摩擦処理するとブタン,ベンゼン,トルエン,メチルアセテート等がそれぞれ発生することがある。 (エ)PVCを加熱処理するとベンゼン,ト PSを加熱処理するとベンゼン,トルエン,スチレン等が,PSを摩擦処理するとブタン,ベンゼン,トルエン,メチルアセテート等がそれぞれ発生することがある。 (エ)PVCを加熱処理するとベンゼン,トルエン,スチレン等が,PVCを摩擦処理するとヘキサン,ベンゼン,トルエン等が,PVCを破損処理するとアセトアルデヒドがそれぞれ発生することがある。 イ本件Y社施設からの化学物質の発生に関する各種調査及び調査結果等- 92 -(ア)17年環境調査について(乙A4)a調査日時被告Y社は,試験操業中であった平成17年6月30日及び同年7月1日,株式会社環境管理センターに委託して,本件Y社施設において,17年環境調査を実施した。 b調査手法(a)調査地点17年環境調査における測定地点は,別紙4-1「調査地点図1」及び別紙4-2「調査地点図2」記載のとおり,本件Y社施設内の2か所,本件Y社施設敷地境界の2か所及び比較対照地点として本件Y社施設の風上である南約400メートルの地点の1か所の合計5か所である。 (b)測定項目17年環境調査においては,①杉並中継所における調査項目として対象となった33項目,②環境省の「環境ホルモン戦略計画SPEED’98」リストにおいて,プラスチック由来の「内分泌攪乱作用の可能性のある」物質として挙げられた9項目,③工業調査会が発行する資料において加熱に伴い発生する副生成物として挙げられた22項目,④欧州委員会がEU各国に要請した環境ホルモンに関する規制項目のうちのプラスチック関連の5項目の物質を選定した上で,重複している項目を除いた合計55項目の物質を測定項目として選定している。 なお,調査分析方法は,主としてガスクロマトグラフ質量分析法によっている。 c調査結果17年環境調査の結果は, した上で,重複している項目を除いた合計55項目の物質を測定項目として選定している。 なお,調査分析方法は,主としてガスクロマトグラフ質量分析法によっている。 c調査結果17年環境調査の結果は,別紙4-3「測定結果一覧」記載のとお- 93 -りであり,選別機側敷地境界及び成型機側敷地境界の両地点において,大気汚染に係る環境基準及び作業環境許容濃度が設定されている物質については,いずれも基準値を下回る数値となっている。 また,一般環境大気測定結果が存在する物質については,ジクロロメタンを除いて,いずれも最大値を下回る数値となっている(なお,ジクロロメタンにおいては,大気汚染に係る環境基準の半分以下の数値である。)。 なお,室内環境たる成型機近傍におけるベンゼン濃度の値(64μg/㎥)が比較的高いものであったが,室内で作業を行う従業員についてのベンゼンの作業環境許容濃度(3200μg/㎥)と比較すれば,その50分の1であった。 また,測定当時の測定地点における風向は,ほとんど南,一時的に南西であった。 (イ)18年環境調査について(乙A13)a調査日時被告Y社は,本格操業を開始した後である平成18年9月23日,株式会社環境管理センターに委託して,本件Y社施設において,18年環境調査を実施した。 b調査手法(a)調査地点18年環境調査における測定地点は,別紙5-1「調査地点図1」及び別紙5-2「調査地点図2」記載のとおり,本件Y社施設内の2か所,新しく追加された本件Y社施設の脱臭装置出口の1か所,本件Y社施設敷地境界の2か所及び本件Y社施設の南約400メートルの地点(比較対照地点)の1か所の合計6か所である。 (b)測定項目- 94 -18年環境調査においては,17年環境調査同様に,合計55項目の物質を測定項目として 件Y社施設の南約400メートルの地点(比較対照地点)の1か所の合計6か所である。 (b)測定項目- 94 -18年環境調査においては,17年環境調査同様に,合計55項目の物質を測定項目として選定している。なお,分析方法等も17年環境調査と同様である。 c調査結果18年環境調査の結果は,別紙5-3「測定結果一覧」記載のとおりであり,脱臭装置出口,選別機側敷地境界及びベール置場側敷地境界の3地点において,大気汚染に係る環境基準及び指針値並びに作業環境許容濃度が設定されている物質については,いずれも基準値を下回る数値となっている。 また,一般環境大気測定結果が存在する物質については,①トリクロロエチレン,②塩化ビニルモノマー,③水銀(ガス状),④一酸化炭素,⑤アセトアルデヒド,⑥ホルムアルデヒドを除いて,いずれも最大濃度を下回っている(なお,上記①ないし④の物質は,いずれも環境基準値及び指針値を半分以下の数値であり,⑤及び⑥の物質は,いずれも作業環境許容濃度の200分の1以下の数値である。)。 なお,測定当時の測定地点における風向は,ほぼ静謐であったが,午後1時前後には南東の風が緩やかに吹いていた。 (ウ)19年環境調査について(乙A58)a調査日時被告Y社は,平成19年8月28日,株式会社環境管理センターに委託して,本件Y社施設において,19年環境調査を実施した。 b調査手法(a)調査地点19年環境調査における測定地点は,別紙6-1「調査地点図1」及び別紙6-2「調査地点図2」記載のとおり,本件Y社施設- 95 -内の2か所,本件Y社施設の脱臭装置出口の1か所,本件Y社施設敷地境界の2か所及び本件Y社施設の南約400メートルの地点(比較対照地点)の1か所の合計6か所である。 (b)測定項目19年環境 -内の2か所,本件Y社施設の脱臭装置出口の1か所,本件Y社施設敷地境界の2か所及び本件Y社施設の南約400メートルの地点(比較対照地点)の1か所の合計6か所である。 (b)測定項目19年環境調査においては,17年環境調査及び18年環境調査において測定した55項目の物質のうち,定量下限値以下であった項目及び2年連続して一般環境レベルであったダイオキシン類を除いた残りの39項目にキシレン2種を追加した41項目の物質を測定項目として選定している。さらに,敷地境界2地点と脱臭装置出口に関しては,より広範囲な化学物質の把握を行うために,GC/MSによる定性分析と半定量分析が行われた。 c調査結果19年環境調査の結果は,別紙6-3「定量分析結果一覧」記載のとおりであり,脱臭装置出口,成型機側敷地境界及びベール保管場所側敷地境界の3地点において,大気汚染に係る環境基準及び指針値並びに作業環境許容濃度が設定されている物質については,ベンゼンを除いては,いずれも基準値を下回る数値となっている(なお,ベンゼンは,作業環境許容濃度の約600分の1の数値である。)。 また,一般環境大気測定結果が存在する物質については,①ベンゼン,②トリクロロエチレン,③塩化ビニルモノマー,④水銀(ガス状),⑤酸化エチレン,⑥アセトアルデヒド,⑦ホルムアルデヒドがいずれも最大濃度を明確に上回っている(なお,上記7物質のうち,環境基準値及び指針値が存在する②ないし④の物質については,それらの数値を下回る数値であり,また,上記①,⑤ないし⑦の物質のいずれにおいても,作業環境許容濃度を大幅に下回る数値である。)。 - 96 -なお,測定当時の測定地点における風向は,概ね西北西ないし西であった。 (エ)19年NMHC測定(乙A44)a調査日時被告Y も,作業環境許容濃度を大幅に下回る数値である。)。 - 96 -なお,測定当時の測定地点における風向は,概ね西北西ないし西であった。 (エ)19年NMHC測定(乙A44)a調査日時被告Y社は,平成19年2月16日,本件Y社施設から排出されていると思われる化学物質の濃度を把握するため,株式会社環境管理センターに委託して,同施設周辺におけるNMHCの濃度を測定した。 b調査手法別紙7-1に示す地点において,別紙7-2に示す項目について測定を実施した。 なお,環境大気中の未知物質の定性及び半定量分析の捕集については,十分にバックグラウンドを低下させたステンレス製キャニスターを用いた。 c測定結果測定結果は,別紙7-3「大気中の炭化水素濃度測定結果」記載のとおりであり,測定した3日間を通しての非メタン炭化水素濃度の最小値,最大値,平均値は,それぞれ0.10ppmc,0.40ppmc,0. 21ppmcであり,平均値は,寝屋川市の平成17年度の年間平均値である0.30ppmcよりも約30パーセント低い値であった。 また,定性分析の結果,86ほどの化合物と思われるピークが検出され,そのうち51化合物が同定されたが,13本のピークは同定及び種類の推定も不可能であった。 半定量分析の結果,比較的濃度の高い物質は,イソブタンとトルエンであり,20ないし32μg/㎥程度であり,ベンゼンは3.0μg/㎥程度であった。全く同定も推定もできなかったピークは,2. 0と3.7μg/㎥程度であり,全ピークのトルエン換算値である1- 97 -44μg/㎥の1.4と2.6パーセントにすぎなかった。 (オ)被告Y社臭気調査(乙A59)a調査日時被告Y社は,平成19年8月27日,株式会社環境管理センターに委託して,脱臭装置出口からの排出ガスに関し,臭気 4と2.6パーセントにすぎなかった。 (オ)被告Y社臭気調査(乙A59)a調査日時被告Y社は,平成19年8月27日,株式会社環境管理センターに委託して,脱臭装置出口からの排出ガスに関し,臭気測定調査を行った。 b調査手法悪臭防止法で定める22の特定悪臭物質の濃度,排出口における規制基準の設けられている13の特定悪臭物質について排出流量を算出した。 その調査項目は,別紙8-1記載のとおりである。 c調査結果各物質の濃度の調査結果は,別紙8-2の「調査結果」記載のとおりであり,規制排出流量との比較は,同「規制流量との比較」記載のとおりであって,すべての項目で,濃度,流量とも,基準値,規制値を下回っていた。 ウD意見等(ア)前提数値(甲A30)寝屋川局,東大阪局及び四条畷局における,平成9年度から平成17年度のNMHC,NOx及びNMHC/NOx比の数値は,別紙9のとおりである。 (イ)D意見(甲A23,32,35,証人D)D教授は,寝屋川市の大気環境について,大要,次のとおり,意見を述べている。 ある場所における大気中のNMHC/NOxの数値は,相対的に燃焼系発生源に対して非燃焼系発生源が多いか少ないかを表している指標と- 98 -いうことができる。 そして,四条畷局では1997年から2005年にかけてNMHC/NOxの値が順次下がっており,また,東大阪局では1997年よりは減少しているものの,2001年以降はほぼ横ばいであるのに対し,寝屋川局のみが2002年と2005年に数値が上昇していることからすると,寝屋川局付近においては,NMHCの発生について非燃焼系の発生源の寄与度が近年高まっていることを意味しているということができる。 また,寝屋川局に影響を与え得る非燃焼系の発生源としては,2002年1月からの廃プ おいては,NMHCの発生について非燃焼系の発生源の寄与度が近年高まっていることを意味しているということができる。 また,寝屋川局に影響を与え得る非燃焼系の発生源としては,2002年1月からの廃プラの全戸収集と寝屋川市による圧縮梱包の開始及び2005年4月からの被告Y社による一部操業開始があげられるところ,寝屋川市の大気中のNMHCは,非燃焼系又は燃焼系の排出源からのNMHCの排出対策が一般的に進んでいるにもかかわらず,寝屋川市における廃プラからの排気の寄与によって,その抑制が十分に進まない状態にあるといえるので,本件Y社施設からのNMHCの排出が寝屋川市の大気環境に影響を与えているということができる。 エ本件4市組合施設からの化学物質の発生と調査等(ア)専門委員会報告書(甲A3)被告4市組合は,平成16年10月,安全なプラスチック等の処理施設の建設と円滑な廃棄物処理を行うため,学識経験者等からなる専門委員会を設置した。 上記専門委員会のまとめた専門委員会報告書の概要は,次のとおりである。 a検討内容(a)圧縮実験の結果は,別紙10のとおりであり,多くの物質では,純空気雰囲気下で生成した濃度と窒素ガス雰囲気下で圧縮したとき- 99 -に生成した濃度との間に大きな差は見られなかったが,アセトアルデヒド等2,3の物質については,空気雰囲気下における方が窒素ガス雰囲気下で発生した値よりわずかに大きい濃度が得られ,圧縮により特定物質については酸化反応が起こり得ることを確認した。 (b)圧縮実験においては,クロマトグラム上に,既知物質以外にも未知物質のピークが多数見られた。 未知物質の生体影響については不明であり,リスク評価になじまないとの委員の意見もあったが,新たな物質が科学的知見の深化とともに有害物質にリストアップされた例が にも未知物質のピークが多数見られた。 未知物質の生体影響については不明であり,リスク評価になじまないとの委員の意見もあったが,新たな物質が科学的知見の深化とともに有害物質にリストアップされた例があることから,未知物質に対しても生体及び環境に配慮すべきことが確認され,クロマトグラム上のピークをトルエン濃度に換算した値(トルエン換算値)として表示することを求めた。 (c)トルエン換算値を含め施設で発生する有害ガスによるリスクの可能性が示唆されたことから,リスクを下げる手法を検討し,除去法の有力な手法の一つである活性炭による吸着実験を実施した。 4社の未使用活性炭を用い,6回の吸着実験を行ったところ,トルエン換算値として最大95.6パーセント,最小90.7パーセントの吸着効率が得られ,また,クロマトグラム上においても,未知物質を含む多数のピークが一様に減少していることが確認された。 (d)被告4市組合が設置を計画する施設の空気を換気し,これを活性炭吸着塔を通して排出した場合,トルエン換算値は,寝屋川市役所屋上の値と同程度の1400μg/㎥程度の濃度まで低下することが確認された。 なお,上記トルエン換算値の測定方法においては,分子量35から分子量300までの物質を測定対象とした上で,トルエン換算することとしている。 - 100 -(e)住環境における室内濃度指針と関連し,TVOCの説明がなされ,トルエン換算値と類似していることが確認された。また,TVOC概念で排出空気を管理している施設は恐らく例がないと思われるので,設計や維持管理にこの概念を進めるべきであることが確認された。 (f)施設完成後の維持管理が大切であり,排出空気のモニタリングは,連続的・定期的に行うこと,情報は公開し,透明な維持管理を行うことで市民の安全を守っていく を進めるべきであることが確認された。 (f)施設完成後の維持管理が大切であり,排出空気のモニタリングは,連続的・定期的に行うこと,情報は公開し,透明な維持管理を行うことで市民の安全を守っていく姿勢が大切であること,TVOCだけでなくトルエンなどの基準の定まった物質もモニタリングに加えることが確認された。 (g)立地予定場所における他施設(第2京阪道路,本件Y社施設)との相加的な環境影響を考慮すべきであるとの意見が委員2名から出されたが,多くは現在の環境省の環境影響評価制度に準じて,施設ごとに影響評価する方法が現在採り得る最善策であるとの意見であった。 b総合判断計画中の廃プラスチック類圧縮梱包施設から発生すると予想される有害ガスについては小さな値であるが,施設の環境安全を考慮して設置される換気設備及び排気浄化用の活性炭吸着塔を通過させれば,トルエン換算値(TVOC値と類似)として90パーセント以上除去できることから,排気中に残存する物質はごくわずかであり,周辺環境にほとんど影響を与えないと判断される。 c添付資料なお,添付資料の一つとして,純プラスチックの圧縮実験の結果も添付されており,その結果は,別紙11のとおりであって,特段問題となる量の有害化学物質は検出されなかった。 - 101 -(イ)被告4市組合大気汚染物質調査(丙A57)a調査日時被告4市組合は,本件4市組合施設稼働開始後の平成20年3月5日から同月9日,財団法人関西環境管理技術センターに委託して,本件4市組合施設において,有害大気汚染物質の測定調査を行った。 b調査手法(a)調査地点被告4市組合大気汚染物質調査における測定地点は,別紙12-1「調査地点1」及び別紙12-2「調査地点2」記載のとおり,本件4市組合施設の敷地境界1か所及び本件4 。 b調査手法(a)調査地点被告4市組合大気汚染物質調査における測定地点は,別紙12-1「調査地点1」及び別紙12-2「調査地点2」記載のとおり,本件4市組合施設の敷地境界1か所及び本件4市組合施設の活性炭吸着装置排出気筒出口の1か所の合計2か所である。 (b)測定項目被告4市組合大気汚染物質調査においては,環境基準のあるベンゼン,ジクロロメタン,トリクロロエチレン,テトラクロロエチレンの4項目,室内環境基準があるアセトアルデヒド及びホルムアルデヒドの2項目(なお,アセトアルデヒドについては,専門委員会における圧縮実験等において,室内環境基準を上回った実験結果が存在した。),TVOC(トルエン換算)の合計7項目を選定した。 なお,試料採取及び分析方法は,「有害大気汚染物質測定マニュアル(環境庁大気保全局大気規制課)」に準拠し,24時間採取し,これを5日間連続実施した。 c調査結果被告4市組合大気汚染物質調査の結果は,別紙12-3「有害大気測定結果」記載のとおりであり,敷地境界及び活性炭吸着装置排出気筒出口(チャンバー室)の両地点において,いずれも環境基準及び室- 102 -内環境基準値を下回る数値となっている。 また,TVOCについては,敷地境界においては,1400μg/㎥を下回る数値であったが,チャンバー室においては,1400μg/㎥を上回る数値であった。 (ウ)被告4市組合TVOC分析調査(丙A58)a調査日時被告4市組合は,本件4市組合施設稼働開始後の平成20年3月5日,同月7日,同月10日,財団法人関西環境管理技術センターに委託して,本件4市組合施設において,上記大気汚染物質測定調査と並行して,TVOCの分析調査を行った。 b調査手法(a)調査地点被告4市組合TVOC分析調査における測定地点は, 技術センターに委託して,本件4市組合施設において,上記大気汚染物質測定調査と並行して,TVOCの分析調査を行った。 b調査手法(a)調査地点被告4市組合TVOC分析調査における測定地点は,本件4市組合施設のチャンバー室内1か所である。 (b)測定項目被告4市組合TVOC分析調査においては,TVOC(トルエン換算値)の測定調査とともに,プロパン,イソブタン,ノルマルブタンの合計4項目を選定した。 なお,上記トルエン換算値の測定方法においては,分子量35から分子量300までの物質を測定対象とした上で,トルエン換算することとしている。 c調査結果被告4市組合大気汚染物質調査の結果は,別紙13「TVOC及びプロパン等分析結果」記載のとおりであり,チャンバー室内の空気中のTVOCのうち,概ね75パーセント以上がイソブタン,ノルマルブタン,イソベンタン及びエタノールで占められている。 - 103 -(3)到達・曝露関連ア拡散・希釈について(ア)一般的知見a気体としての化学物質及び大気中を浮遊する化学物質は,無風状態では発生源を中心にその周囲に(立面では)半球状,(平面では)円状に拡散し,風がある状態では,特に,風の影響を受けながら別の場所(風下側)に移動し,拡散することとなる。 そして,発生源から排出された化学物質は,抽象的には,発生源からある距離の移動をしつつ拡散し順次着地するところ,その際の最も高い濃度を最大着地濃度といい,人は,抽象的には最大着地濃度が現れる地点において,最も多くの曝露を受けることになる。 したがって,化学物質の到達・曝露の判断においては,拡散を予測することが重要である。 ただし,晩秋・初冬の夜間のように,排出量の割に濃度が極端に高くなる,いわゆる高濃度現象に対しては,通常の拡散式と拡散パラメー 学物質の到達・曝露の判断においては,拡散を予測することが重要である。 ただし,晩秋・初冬の夜間のように,排出量の割に濃度が極端に高くなる,いわゆる高濃度現象に対しては,通常の拡散式と拡散パラメータの範囲で表現することは困難な場合もある。 b接地逆転層について(甲A129)接地逆転層が形成される場合には,大気の拡散を考えるに当たり考慮する必要がある。 (イ)19年予測調査(乙A14)a調査手法等(a)被告Y社は,平成19年1月,株式会社環境管理センターに委託して,本件Y社施設から排出される化学物質に関する,大気拡散予測調査を行った。 (b)調査条件としては,18年環境調査結果に基づき,脱臭装置出口のベンゼン濃度1.1μg/㎥の排出濃度を前提として,予測式- 104 -としては,原告らが推奨する経済産業省が定める低煙源工場拡散モデル(以下「METI-LIS」という。)と日本国内で多く採用されている窒素酸化物総量規制マニュアルに記載のある有風時(風速1m/秒以上)の大気拡散式(以下「プルーム式」という。)の2つの拡散式を用いた。 なお,排出口の高さは,本件Y社施設外壁に取り付けられた排気管口の高さである15.3メートルとした。 また,拡散予測に用いる,風向,風速データは本件Y社施設に最も近いアメダス測定局である枚方局のデータを,日射量,雲量は大阪地方気象台の観測結果(いずれも平成17年版)を用いた。 b調査結果19年予測調査の結果は,別紙14-1及び14-2記載のとおりであり,また,次のとおり,希釈されるとの予測をしている。 (a)METI-LIS31メートル(最大着地濃度)約500分の1以下300メートル約1300分の1以下500メートル約1900分の1以下(b)プルーム式225メートル(最大着地濃度) )METI-LIS31メートル(最大着地濃度)約500分の1以下300メートル約1300分の1以下500メートル約1900分の1以下(b)プルーム式225メートル(最大着地濃度)約9000分の1以下300メートル約1万分の1以下500メートル約1万2000分の1以下(ウ)20年予測調査(乙A61)a調査手法等(a)被告Y社は,平成20年4月,再度,株式会社環境管理センターに委託して,本件Y社施設から排出される化学物質に関する大気拡散予測調査を行った。 - 105 -(b)調査条件としては,19年環境調査結果に基づき,脱臭装置出口における測定値のうち最高値であるベンゼン濃度5.3μg/㎥及びアセトアルデヒド37μg/㎥の排出濃度を前提として,予測式としては,有風時においてはプルーム式を,弱風・無風時(風速1m/秒未満)においては,窒素酸化物総量規制マニュアルに記載のある大気拡散式(以下「パフモデル式」という。)を用いた点源拡散式を用いた。 なお,この際の風向,風速データは,本件Y社施設の屋上に設置していた自動記録式の風向風速計による平成19年2月16日から平成20年2月15日までの測定データに基づいた。 b調査結果20年予測調査の結果は,別紙15-1ないし15-4記載のとおりであり,また,次のとおり,希釈されるとの予測をしている。 (a)ベンゼン最大着地濃度出現地点排出口南西約400メートル最大着地濃度0.000021μg/㎥希釈約25万2000分の1(b)アセトアルデヒド最大着地濃度出現地点排出口南西約400メートル最大着地濃度0.00015μg/㎥希釈約24万6000分の1(エ)接地逆転層に関するV意見(甲A129)神戸商船大学名誉教授Vは,大要,次のとおり,本件地 地点排出口南西約400メートル最大着地濃度0.00015μg/㎥希釈約24万6000分の1(エ)接地逆転層に関するV意見(甲A129)神戸商船大学名誉教授Vは,大要,次のとおり,本件地域における移流拡散について,意見を述べている(以下「V意見」という。)。 a本件Y社施設及び本件4市組合施設は,周辺を浄水場や養護学校などのある台地など高さ50メートル程度の土地に囲まれた盆地状の土- 106 -地であって,その底部を流れるa川沿い及びその近傍に立地しており,また,上記2施設の東側1キロメートルほどの所からは高度200メートルないし300メートル弱級の山群につながる斜面地が始まっているという立地であり,このような地域では,しばしば接地逆転層が形成されることから,この地域の局地気象の特徴を考慮して移流拡散を考える必要がある。 b放射冷却によって冷えた地面に接した空気は冷え,地面が傾斜している場合においては,低所に向かって流れ出す冷気流が発生し,このように流れ出した冷気は,低地に溜まって冷気湖(明確な逆転層)が形成される。なお,冷気湖の厚さは,盆地底と山との高さの5分の1から3分の1程度である。 c以上によれば,上記2施設が設置されている地域には,夕方から朝の時間帯にかけて,しばしば明瞭な接地逆転層が形成されると考えなければならず,通常の環境アセスメントなどで用いられる一般的な拡散モデルで予測評価することは妥当でない。 また,被告Y社や被告4市組合の予測調査は,ほとんどが夏の昼間に実施されており,この地域の気象特徴を考慮するときには,最も不適切な時間帯であると批判している。 イ調査結果等(ア)府市合同調査(乙A56の1)a調査日時等大阪府と寝屋川市は,平成19年3月6日,7日,大気汚染防止法に基づく優先取組み物 は,最も不適切な時間帯であると批判している。 イ調査結果等(ア)府市合同調査(乙A56の1)a調査日時等大阪府と寝屋川市は,平成19年3月6日,7日,大気汚染防止法に基づく優先取組み物質22物質のうち,11物質について,測定調査を行うとともに,悪臭防止法に基づく特定悪臭物質22物質について測定調査を行い,その結果を寝屋川市広報により公表した。その調査結果は,次のとおりであった。 - 107 -b調査地点上記調査における調査は,いずれも,別紙16のとおり,本件Y社施設北側敷地境界及び西側敷地境界,ei公園,公民館周辺,中央高齢者福祉センター,市立消費生活センター,ar公民館の7か所で行われた。 c調査結果(a)大気環境調査有害大気汚染物質の調査結果は,別紙16のとおりであり,すべての調査対象物質につき,環境基準等を超える濃度は検出されなかった。 (b)臭気調査特定臭気物質の調査結果は,別紙16のとおりであり,すべての調査対象物質につき,規制基準値を超える濃度は検出されなかった。 (イ)府市継続調査(乙A56の2ないし5)a調査日時等大阪府と寝屋川市は,引き続き平成19年5月以降も,毎月1回,24時間,年12回,有害大気汚染物質22物質のうちの11物質について,測定調査を行うことを決定し,調査が継続された。なお,悪臭防止法に基づく特定悪臭物質については,上記府市合同調査の結果を考察した結果,継続調査は不要であると判断された。 b調査地点上記調査における調査は,別紙17-1及び17-2のとおり,本件Y社施設西側敷地境界,公民館周辺,市立消費生活センターの3か所で行われた。 c調査結果上記調査における平成19年12月までの調査結果は,別紙17-- 108 -1及び17-2のとおりであり,ベンゼンにお 敷地境界,公民館周辺,市立消費生活センターの3か所で行われた。 c調査結果上記調査における平成19年12月までの調査結果は,別紙17-- 108 -1及び17-2のとおりであり,ベンゼンにおける平成19年12月の数値(調査地点すべて)及び市立消費生活センターの5月,6月及び7月の数値以外は,すべて環境基準等を下回る数値であった。 なお,府市継続調査の調査結果については,大阪府及び寝屋川市のホームページ上で公開されている(寝屋川市は広報誌「広報ねやがわ」でも公開している。)。 (ウ)D調査(甲A24,31,35)a調査日時D教授は,平成18年3月17日,同年6月20日から同月27日まで,D教授の研究生及び原告ら住民等で,本件Y社施設周辺地域において,大気環境調査としてD調査(以下,前者を「D3月調査」という。)を実施した。 b調査手法(a)調査地点D調査における測定地点は,別紙18-1「測定地点」記載のとおりであり,D3月調査においては,本件Y社施設周辺4か所で行われ,D6月調査においては,本件Y社施設から北方約100メートル地点にあるF宅及び500メートル弱の地点にある公民館の2か所で行われた。 (b)測定項目D調査においては,別紙18-2記載のとおりの21項目の化学物質を測定項目として選定している。 (c)測定条件D6月調査においては,調査地点において,3時間外気を捕集した後,その3時間の測定値と,寝屋川市役所で測定している1時間値であるNMHCの値の両者を使って,比例按分をして,24- 109 -時間値として推計した。 c調査結果(a)D3月調査原告らは,D3月調査の結果を明らかにしていない。 (b)D6月調査D6月調査の結果は,別紙18-2「F宅,公民館外気のVOC濃度」記載のとおりであり 推計した。 c調査結果(a)D3月調査原告らは,D3月調査の結果を明らかにしていない。 (b)D6月調査D6月調査の結果は,別紙18-2「F宅,公民館外気のVOC濃度」記載のとおりであり,F宅においては,6月24日,26日,27日のベンゼン濃度が環境基準値を超え,公民館においては,6月26日のベンゼン濃度が環境基準値を超えたが,その余の化学物質については,環境基準値等を超えるものはなかった。 (エ)原告らを含む周辺住民による臭気調査(甲A130)原告らを含む周辺住民は,平成17年10月ころから平成20年2月ころまで,記録票方式及びメーリングリストによる方式により,本件Y社施設周辺住民に対する臭気調査を実施した。 記録票方式とは,「記録者の住所,氏名」「臭気を感知した日時及び場所」「臭気の種類」「臭気の強さ」を記入できる記録票を周辺自治会が作成し,これを自治会員に配布して,臭気を感知したときに記録する方式であり,この方式を用いて記録者した者は33名であった。 メーリングリスト方式とは,臭気記録専用のメーリングリストを作成し,自治会員がそのメーリングリストに登録を行い,記録票方式と同じ項目について,臭気を感知した会員がその場で携帯電話からメール送信し,その情報を記録,管理する方式であり,11名がこの方式を利用して記録した。 その集計結果は,別紙19のとおりである。 (オ)被告Y社臭気調査(乙A55,59)a調査日時等- 110 -被告Y社は,平成19年8月27日,株式会社環境管理センターに委託して,本件Y社施設において,被告Y社臭気調査を実施した。 b調査手法(a)調査地点被告Y社臭気調査における測定地点は,別紙20-1「調査地点図」及び別紙20-2記載のとおり,本件Y社施設を取り囲むように本件Y社施設敷地境界の 臭気調査を実施した。 b調査手法(a)調査地点被告Y社臭気調査における測定地点は,別紙20-1「調査地点図」及び別紙20-2記載のとおり,本件Y社施設を取り囲むように本件Y社施設敷地境界の3か所及び脱臭装置の出口の合計4か所である。 (b)測定項目被告Y社臭気調査においては,悪臭防止法で定められている22種類の特定悪臭物質の濃度を,さらに脱臭装置の出口地点においては,排出口における規制基準の設けられている13の特定悪臭物質の排出流量を追加測定項目として選定している。 c調査結果被告Y社臭気調査の結果は,別紙20-3「調査結果1」及び別紙20-4「調査結果2」のとおりであり,いずれの地点,いずれの特定悪臭物質の濃度においても,悪臭防止法で規定されている規制基準値を十分に下回る数値となっており,また,いずれの特定悪臭物質の排出流量においても,規制排出流量を著しく下回る数値であった。 (4)結果・因果関係関連ア原告らによる健康被害の訴え等(ア)原告ら原告らのうち具体的被害を訴えている者は,次のとおり,原告B及び原告Gのみである。 また,原告らは,他覚的所見を示す医師の診断書及び負荷誘発試験,血液検査等の客観的検査結果を一切提出していない。 - 111 -a原告B(甲A73,126,原告B本人)原告Bは,平成18年1月ころから,風邪を引いていないにもかかわらず,せきや痰が出る,身体がだるい症状が出た旨訴えている。 b原告G(甲A114の12)原告Gは,平成17年夏ころから,目のかすみ,異物感,しょぼしょぼ感,のどの違和感,痰,せき,くしゃみ,足の湿疹,頭痛の症状が出た旨訴えている。 (イ)原告らを含む本件2施設周辺住民(甲A73ないし75,114,123ないし126)原告らを含む本件2施設周辺の住民は,本件Y ,痰,せき,くしゃみ,足の湿疹,頭痛の症状が出た旨訴えている。 (イ)原告らを含む本件2施設周辺住民(甲A73ないし75,114,123ないし126)原告らを含む本件2施設周辺の住民は,本件Y社施設が稼働を始めたことから,咽頭症(咽頭痛,いがらっぽい),呼吸器症状(せき,痰),眼症状(眼掻痒感,眼の痛み,眼脂),湿疹,粘膜症状等を訴えている。 なお,周辺住民の他覚的所見を示す医師の診断書及び負荷誘発試験,血液検査等の客観的検査等についても,一切提出されていない。 また,本件において積極的に症状を訴えている周辺住民の大半は,60歳以上の高齢者である。 (ウ)被告Y社従業員等本件Y社施設の操業開始後,多数の従業員が同施設で稼働しているが,被告Y社は,本件Y社施設の操業によって,従業員から,眼が痛い,眼がチカチカする,鼻が痛い,のどが痛い,のどがいがらっぽいなどの症状を訴えられたことや苦情を受けたことはなく,上記症状の症状が発生したことを理由に退職したという人もいない(乙A64)。 また,日本全国の廃プラのマテリアルリサイクル工場において,プラスチック由来の化学物質により,健康被害が発生したことが明らかになった事例は報告されていない。 イ疫学調査- 112 -(ア)一般的知見(乙A57,63)疫学は,仮説を設定し,その設定した仮説を分析検討するためのものであって,原因の存在を証明するためのものではない。 また,疫学において因果関係を判断するためには,バイアス等の問題を慎重に検討する必要がある。 (イ)E疫学調査(甲A12,13,26)a前提(a)曝露指標E疫学調査においては,本件Y社施設の操業と周辺住民の健康影響の関連を定量的に評価することを目的と定め,本件Y社施設より何らかの物質が浮遊していると仮定し,工場からの距離 a前提(a)曝露指標E疫学調査においては,本件Y社施設の操業と周辺住民の健康影響の関連を定量的に評価することを目的と定め,本件Y社施設より何らかの物質が浮遊していると仮定し,工場からの距離を曝露指標とした。 具体的な地点については,別紙21のとおりであり(甲A27),本件Y社施設から北西方向700メートル以内の地域(ef地域)の住民630名,同じく北西方向700メートルから1000メートルの地域(eg地域)の住民852名を曝露群とし,比較対照の基準となる非曝露群として本件Y社施設から北西方向2800メートルの地域(h町地域のうちの2班)の住民97名を設定している。 (b)結果指標E疫学調査においては,質問紙で集めた対象者の症状を結果指標とした。 b解析E疫学調査においては,3自治会の住民に対するアンケート調査結果のロジスティック解析を用い,性・年齢・喫煙・花粉症の有無を調整した有病オッズ比を求め,また,昼間在宅する対象者に絞り,同じ距離の比較でオッズ比を求めたところ,別紙22-1及び別紙22-- 113 -2記載のとおりとなった。 c意見(a)本件Y社施設に近い地域においては,平成17年7月に比べ,平成18年7月の方が,症状を有している割合が高かった。 (b)平成18年7月の時点で,本件Y社施設に近づくほど症状が発症しやすく,特に本件Y社施設の700メートル以内に居住している住民が症状を発症しやすかった。 (c)曝露が多いと考えられる昼間在宅している住民は,より症状を呈しやすく,粘膜症状以外にも様々な症状を発症しやすかった。 (d)関連があると思われる症状は,咽頭症状,呼吸器症状,眼症状,皮膚症状であり,その中でも,本件Y社施設から700メートル以内に居住し昼間在宅している対象者には,2800メートルの地域 かった。 (d)関連があると思われる症状は,咽頭症状,呼吸器症状,眼症状,皮膚症状であり,その中でも,本件Y社施設から700メートル以内に居住し昼間在宅している対象者には,2800メートルの地域と比較し,喉のいがらっぽさ・眼掻痒感・眼の痛み・眼脂・湿疹は,約5倍以上も多発しており,湿疹については13倍にも達している。 これらの症状は,本件Y社施設でのプラスチック処理工程における大気汚染による被害と考えることができる。 (e)以上によれば,本件Y社施設の操業と健康被害との間に強い因果関係が存在することを示している。 d調査状況(甲A14から22,乙A69)(a)E疫学調査の基礎とした質問票には,「各自治会担当者ないし守る会事務局」と記載され,回答しない場合には「回答しない理由」を選択するよう指示する旨の記載がある。 また,アンケート質問票の回収を行った者は,原告らである。 (b)E疫学調査の基礎となるアンケート調査は,解析された3つの自治会以外にも幾つもの自治会において実施されているにもかかわらず,ef,eg,h町の3自治会のものだけが解析調査対象とな- 114 -っており,その他の地域については解析されておらず,また,アンケート調査の原始資料が提出されていない。 (c)E疫学調査が実施される前に,原告らは,E疫学調査におけるアンケート調査と同種の内容のアンケート調査を,E疫学調査の解析対象となっているef・eg・h町を含む8自治会において実施しており,その結果を「健康アンケート有訴率%」として棒グラフで対比し,各自治会員に配布している(甲A17)。 (d)eg自治会は,E疫学調査の基礎となるアンケート調査が実施される前である平成18年5月ころ,自治会員宛のビラに,「眼に激痛がはしり,顔が腫れあがり,緊急治療を受けた」「咳 いる(甲A17)。 (d)eg自治会は,E疫学調査の基礎となるアンケート調査が実施される前である平成18年5月ころ,自治会員宛のビラに,「眼に激痛がはしり,顔が腫れあがり,緊急治療を受けた」「咳がとまらない」「皮膚に湿疹のようなものができ痒みがとまらない」などの訴えをされる方がたくさん出てきたと記載して,これを会員に配布している(乙A69)。 (e)E疫学調査における質問票による調査においては,代筆によって回答することが認められているところ,代筆による回答か否かの区別が明確になるような手段は講じられていない。 (f)E疫学調査においては,調査時点の平成18年7月の健康状態のみではなく,その1年前である平成17年7月時点の健康状態についても各人の記憶に基づいて回答させている。 ウシックハウス類似の症状(ア)シックハウス(シックビルディング)症候群に関する一般的知見(甲A117ないし119)aW医師による診断基準等(a)W医師による定義シックハウス症候群とは,建築物の室内空気汚染因子による健康障害である。 - 115 -その室内空気汚染物質としては,ホルムアルデヒド,トルエン,キシレン等の多くのVOC,ダニ類,細菌,花粉,ハウスダスト,タバコ煙等の粒子状物質,一酸化炭素や硫黄酸化物等のガス成分等が考えられている。 よく現れる臨床症状としては,①眼,鼻腔,口腔・咽喉,気道等の粘膜刺激症状,②粘膜・皮膚乾燥感,③アトピー性皮膚炎,蕁麻疹等の皮膚症状,④頭痛,倦怠感,不眠,目眩などの精神・神経症状等がある。 その主たる原因としては,高気密,自然換気不足,化学物質の多用の3要素を挙げている。 (b)シックハウス症候群の診断基準として,「健康障害発生の確認」及び「室内空気汚染の確認」の両方を満たすことが必要である。 としては,高気密,自然換気不足,化学物質の多用の3要素を挙げている。 (b)シックハウス症候群の診断基準として,「健康障害発生の確認」及び「室内空気汚染の確認」の両方を満たすことが必要である。 (c)検査方法シックハウス症候群の検査としては,負荷誘発試験(ケミカルフリー・クリーンルームによるVOCの二重盲験法による負荷誘発試験),血液学的検査,尿検査,皮内反応,鼻汁検査等がある。 bWHO(世界保健機関)の定義(a)最も頻繁に現れる症状の一つは,眼,鼻,咽頭の粘膜刺激症状である。 (b)気道下部及び内臓を含むその他の症状は頻繁ではない。 (c)シックビルディング症候群と在室者の感受性あるいは過剰曝露との関連は明らかでない。 (d)症状は,ある建築物あるいは特定部分において特に頻繁に現れる。 (e)在室者の大多数が症状を訴える。 cEPA(アメリカ環境保護庁)の定義等- 116 -(a)定義以下の3つの要件を充たせば,シックビルディング症候群といえる。 ①ある建物の居住者の一定割合(20パーセント)以上が不快感に基づく症状の訴えを申し出る。 ②それらの症状のほとんどが当該建物を離れると解消する特徴が認められる。 ③原因物質が明確でないことなお,EPAにおいては,原因物質が特定できる場合,例えば,レジオネラ肺炎や過敏性肺臓炎をビル関連病と呼び,シックビルディング症候群と区別している。 (b)原因原因としては,室内の空気を循環していること(省エネのため換気量を4分の1にしている),自然空気の換気量が低減していること,気密性が高すぎること,室内が布地やカーペット仕上げになっていることをあげている。 (イ)C調査(甲A117,123ないし126)a調査目的C調査の目的は,本件Y社施設周辺住民に対する健康調 ,気密性が高すぎること,室内が布地やカーペット仕上げになっていることをあげている。 (イ)C調査(甲A117,123ないし126)a調査目的C調査の目的は,本件Y社施設周辺住民に対する健康調査結果の分析とE疫学調査の臨床医学的な分析である。 b調査手法等(a)C調査においては,事前に,対象者に対して問診票を配り,対象者が回答を記載する手法を取っている。 (b)C調査においては,C医師は,対象者を4分から15分程度診察している。 (c)C調査の対象者である20名の住民は,症状を訴えていた人を- 117 -守る会役員が口頭で呼びかけて集めた者である。 c意見(a)E疫学調査において,本件Y社施設の700メートル以内に居住している住民において,皮膚粘膜刺激症状が20パーセント以上の高率であらわれており,WHOの指摘するシックビルディング症候群の愁訴と一致する健康被害が住民の一定割合以上に発生している。 (b)実際の20人の住民の診断においても,WHO,EPAのシックビルディング症候群に該当する訴え症状があり,眼鼻皮膚症状など健康被害の症状がこの地域内では悪化し,そこから離れると症状が改善するという特徴が15人に認められ,EPAのシックビルディング症候群に該当する健康被害が発生していると考えられる。 (5)比較されている杉並中継所(甲1012,丙A37)ア杉並中継所における処理の対象物は,ビンや内容物が残留しているスプレー缶,乾電池等が含まれる非常に雑多な組成の一般不燃ゴミ全般であった。 イ杉並中継所においては,粉じんの飛散防止のために散水施設が設けられており,創業当初は,散水した水やコンパクター等を洗浄した水を雑排水などと同じ排水枡から直接公共下水に放流されていたが,排水調査の結果,総水銀及びphの値が条例に 飛散防止のために散水施設が設けられており,創業当初は,散水した水やコンパクター等を洗浄した水を雑排水などと同じ排水枡から直接公共下水に放流されていたが,排水調査の結果,総水銀及びphの値が条例による規制基準を上回っていたため,平成8年7月18日以降,公共用下水道への放流を中止し,平成9年4月以降は,完成した排水処理設備を経由して排水処理を行っている。 (6)受忍限度関係ア廃プラにおけるマテリアルリサイクルの公共性に関連する事情(ア)リサイクル自体の公共性に関する立法動向循環型社会形成推進基本法は,廃棄物の適正な処理とリサイクルの発- 118 -展を求め,廃棄物等の処理の優先順位を,①発生抑制(リデュース),②再使用(リユース),③再生利用(リサイクル),④熱回収,⑤適正処分の順番で定め,技術的・経済的に可能な範囲でできる限り上位の処理を行い,それらが困難な場合は,下位の処理を行うことを定め,また,これらの処理に関し,国・地方自治体・事業者・市民が役割分担すべきことを求めている。 (イ)合同会合取りまとめ(甲A45)a従前の取扱い平成11年の産業構造審議会においては,廃プラに係る再商品化については,白色トレイのリサイクルにみられるようなプラスチックの原材料等としての利用がなるべく望ましいことから,マテリアルリサイクルを一定の基準の下で優先的に取り扱うこととされた。 そして,指定法人が行う再商品化事業者の入札選定方法においては,マテリアルリサイクル手法を優先的に取り扱うこととし,対象となる手法に関して特に基準を設けずに実施してきた。 b見直し理由その後,材質別処理や高品質プラスチック製品への用途拡大は大きく進展していない一方で,事業参入の拡大に伴い,マテリアルリサイクルの落札量が,近年予想を超えて急激に拡大 実施してきた。 b見直し理由その後,材質別処理や高品質プラスチック製品への用途拡大は大きく進展していない一方で,事業参入の拡大に伴い,マテリアルリサイクルの落札量が,近年予想を超えて急激に拡大するなど,施行当時の想定と異なる状況が生じてきた。そのため,より適切な廃プラによる再商品化を実現するため,廃プラのリサイクル手法の在り方について見直しが行われた。 c見直し結果中央環境審議会プラスチック製容器包装に係る再商品化手法専門委員会及び産業構造審議会プラスチック製容器包装に係る再商品化手法検討会合同会合は,平成19年6月28日,次のとおり,廃プラのリ- 119 -サイクルの見直しに関する合同会合取りまとめを発表した。 (a)マテリアルリサイクルに関しては,分別収集における異物や汚れの除去の徹底や材質別処理の進展を通じて分別基準適合物の質が向上することにより,再商品化製品が容器包装として繰り返し再生利用されている白色トレイに準じた再商品化率及び再商品化製品の品質の向上と費用の低減といった再商品化の効率化が図られる可能性を有していると考えられる。 このため,中長期的には,①識別表示の在り方や追加的コストに十分配慮した上でのマテリアルリサイクルに適した分別収集区分等の設定,②市町村による本分別収集区分に基づく分別収集の実施,③特定事業者による容器包装の機能維持や使用の合理化(リデュース)と両立する形での単一素材化・非塩素系素材化に向けた更なる取組み,④再商品化製品の品質向上やそれを踏まえた有効利用とそのための技術開発・販路開拓の在り方について検討することが必要である。 (b)上記の取組みが進展するまでの間は,多様な再商品化手法のバランスのとれた組合せを確保しつつ,分別排出を行う消費者から容器包装リサイクル制度の意義や適 り方について検討することが必要である。 (b)上記の取組みが進展するまでの間は,多様な再商品化手法のバランスのとれた組合せを確保しつつ,分別排出を行う消費者から容器包装リサイクル制度の意義や適正な分別排出の必要性についての理解がより得られやすくなるよう,上記のような可能性を有するマテリアルリサイクルの質を高めることが必要と考えられる。 かかる観点から,入札に当たっては,可能な限りプラスチック製品の原材料を代替するような資源性の高い再商品化製品を得られるよう,平成20年度より,再商品化製品が一定の品質基準を満たす場合に限り,マテリアルリサイクルを優先的に取り扱うこととすべきである。 (ウ)再商品化製品の品質基準値- 120 -容リ協は,平成20年度より,上記合同会合取りまとめをふまえ,再商品化製品が,次のとおり,一定の品質基準を満たす場合に限り,マテリアルリサイクルを優先的に取り扱うこととした(甲A45,証人O)。 a塩素分0.3パーセント以下b水分0.1パーセント以下(エ)経済的要因原油価格は年々高騰しており,それに伴ってプラスチックなどの各種化学製品のバージン原料価格の上昇傾向が続いており,今後も長期的には同一の傾向が予測されている。 イ本件2施設の公共性について(ア)本件Y社施設についてa本件Y社施設は,容リ法に基づいて設置されている施設であり,また,平成15年3月に大阪府が策定した「大阪エコエリア構想」において,「当面整備が望ましいリサイクル・適正処理施設」として位置づけられた施設であり,平成17年7月に大阪府が取りまとめ,環境大臣及び経済産業大臣から承認を受けた「大阪エコタウンプラン」においては,「先導的に整備すべきリサイクル施設」として選定された施設である。 bまた,被告Y社の再商品化製品は 阪府が取りまとめ,環境大臣及び経済産業大臣から承認を受けた「大阪エコタウンプラン」においては,「先導的に整備すべきリサイクル施設」として選定された施設である。 bまた,被告Y社の再商品化製品は,平成19年6月ころの時点において,塩素分及び水分のいずれについても,容リ協の定める品質基準を満たしていた(甲A45,証人O)。 (イ)本件4市組合施設について本件4市組合施設は,枚方市,寝屋川市,四條畷市及び交野市の北河内4市の各家庭から分別排出されたペットボトル及びプラスチック製容器包装をリサイクルするため,選別・圧縮梱包処理する施設であり,北河内4市地域におけるごみ減量化・リサイクルを推進し,循環型社会を- 121 -目指すという行政施策の中心を担っている。 争点(2)(本件Y社施設から排出されるVOC等によって,原告らに受忍限度を超える健康被害が発生したか。)について(1)はじめに原告らは,本件Y社施設において,廃プラを処理,加工等する過程で有害化学物質(特にVOC)が発生し,それによって原告らに現に重大な健康被害が進行しているため,本件Y社施設の操業を停止すべきであると主張し,これらのことは,E疫学調査,C調査,D意見,原告らによる臭気調査等から明らかであり,さらに,被告らが主導して行った各種調査や大阪府と寝屋川市の合同調査等は不十分なものであるが,それによっても原告らの主張は裏付けられている旨主張する。 他方,被告Y社は,各種の調査結果から,本件Y社施設からは人の健康に影響を及ぼすような化学物質は発生,排出されておらず,仮に一定の化学物質が排出されていたとしても,大気中で十分拡散・希釈されるので,人体に影響を及ぼすような濃度で原告らの居住地域には到達せず,原告らがこれに曝露されることはなく,また,原告らには現に本件Y 定の化学物質が排出されていたとしても,大気中で十分拡散・希釈されるので,人体に影響を及ぼすような濃度で原告らの居住地域には到達せず,原告らがこれに曝露されることはなく,また,原告らには現に本件Y社施設に由来する化学物質による健康被害が生じていないと主張し,原告らの主張の根拠とする調査結果はいずれも相当性を欠き信用できないと反論している。 そこで,以下においては,順次,有害化学物質の発生,有害化学物質の原告らへの到達・曝露,原告らの健康被害の発生(因果関係を含む。)について,各調査結果等の証拠としての信用性,信頼性を検討しつつ,判断する。 (2)有害化学物質の発生についてア理論上及び現実における有害化学物質の発生についてまず,前記3(2)アで判示したとおり,理論上においては,PP,PE,PS,PVC等のいわゆるプラスチックが劣化したり,機械的処理を加えられたりすると,一定の化学物質が発生するところ,本件Y社施設におい- 122 -ては,破砕工程,乾燥工程,パレット成型工程等の廃プラに機械的処置を加える工程が存在するので,本件Y社施設の操業によって化学物質が発生する可能性があると認められる。 そして,前記3(2)イで判示したとおり,17年環境調査ないし19年環境調査によれば,選別機近傍,成型機近傍において,比較対照地点の濃度を明確に上回る化学物質の濃度が測定されていることも併せて考慮すると,本件Y社施設の操業によって化学物質が発生していると認められる(なお,プラスチックに機械的処理を加えることによって発生する化学物質の量については不明であるので,上記の発生した化学物質が廃プラの機械的処理に伴って発生したものであるか,それとも廃プラに付着していた残渣から発生したものであるかについても不明であるが,少なくとも本件Y社施設の操業に伴っ るので,上記の発生した化学物質が廃プラの機械的処理に伴って発生したものであるか,それとも廃プラに付着していた残渣から発生したものであるかについても不明であるが,少なくとも本件Y社施設の操業に伴って発生したことには変わりがない。)。 また,甲1010号証及び1011号証によれば,上記の発生が認められる化学物質の中には,有害性が既知のものとされている物質も存在することが認められる。 そこで,以下においては,原告らが主張する,TVOC及び既知の有害化学物質の人の健康に影響を及ぼす程度の排出について検討する。 イ人の健康に影響を及ぼす程度の化学物質の排出の有無について(ア)VOCの排出総量(TVOC)とその危険性についてa原告らは,プラスチックの劣化や機械的処理,加熱などにより発生ないし遊離することが理論上見込まれる化学物質のうち,特にVOCの排出の危険性を指摘し,厚生労働省が定める室内空気質のTVOCの暫定目標値400μg/㎥を超えたVOCの排出は危険性がある旨主張する。 bしかし,前記第2,1(4)ウに判示したとおり,厚生労働省の上記指針は,閉鎖空間となりやすく,かつ,同一人物が長時間滞在する蓋- 123 -然性が高いため厳格な規制が要求される室内空間を対象とするものであるし,TVOCの暫定目標値は,室内空気質の全体状態の目安として用いることを意図したものであって,毒性学的知見からVOC自体の危険性に着眼して設定したものではないのであるから,屋外への排気について上記暫定目標値が直ちに危険性の指標になるわけではないというべきである。 そして,前記第2,1(4)イに判示したとおり,環境省通知において列挙されているVOC構成物質100種類は,関係者の理解を容易にするため,VOCに該当する主な物質として,平成12年度における排出量推 して,前記第2,1(4)イに判示したとおり,環境省通知において列挙されているVOC構成物質100種類は,関係者の理解を容易にするため,VOCに該当する主な物質として,平成12年度における排出量推計結果に基づき排出量の多い順番に列挙しただけであって,当該物質の危険性を考慮して記載したものではなく,また,大気汚染防止法におけるVOCの扱いとしても,光化学オキシダント及び浮遊粒子状物質の生成の原因となる前駆物質の一つという扱いにすぎず,直接的に人体に有害な物質として扱われているわけではない。 さらにいえば,VOCを大量に発生させる施設は,日本中に多数存在するところ(乙A33),それらの施設の周辺環境において,VOCの総量を原因として,本件訴訟と同様の症状が訴えられている施設の存在は証拠上明らかになっていない。 c以上の事情を総合考慮すると,現代の科学的知見としては,VOCの総量が一定限度を超えたからといって,そのことから直ちに,人の健康に影響を及ぼす程度の化学物質が排出されている危険性があるということはできないのであって,TVOCの数値をもって,人の健康に影響を及ぼす危険性についての判断指標と考えることはできない。 (イ)D意見(甲A23等)についてa原告らは,非燃焼系又は燃焼系の排出源からのNMHCの排出対策が一般的に進んでいるにもかかわらず,寝屋川局のNMHC/NOx- 124 -比の数値のみが別紙9のとおり2002年(廃プラの全戸回収開始時期)と2005年(本件Y社施設の操業開始時)に数値が上昇していることからすると,寝屋川市の大気中のNMHCは,非燃焼系排出源からのNMHCの排出傾向が増加しており,それはすなわち,寝屋川市における本件Y社施設からの排気の寄与によって,その抑制が十分に進まない状態にあるといえるので,本件Y 中のNMHCは,非燃焼系排出源からのNMHCの排出傾向が増加しており,それはすなわち,寝屋川市における本件Y社施設からの排気の寄与によって,その抑制が十分に進まない状態にあるといえるので,本件Y社施設からのNMHCの排出が寝屋川市の大気環境に影響を与えているということができ,したがって,本件Y社施設から大量のVOC等の有害化学物質が排出されていると主張しており,D教授は,前記3(2)ウ(イ)に判示した概要の,上記主張に沿う意見を述べている。 bしかし,NMHC/NOx比は,NMHCとNOxのそれぞれの数値の変動により影響を受けるものであるところ,寝屋川局におけるそれぞれの数値の変動の根拠及び両者の相関関係については実証的に明らかにされておらず,かかる数値を元に推論を行うことの相当性についての十分な検証はなされていない。また,前記3(1)ア(イ)に判示したとおり,本件2施設周辺にはクリーニング工場や金属工場など非燃焼系のNMHCの有力排出源が存在し,寝屋川局周辺にもクリーニング工場やガソリンスタンドなど非燃焼系のNMHCの有力排出源が存在するのであるし,寝屋川局で観測されるNMHCがもっぱら非燃焼系排出源から供給されているわけではなく,当然のことながら燃焼系排出源からの供給もあるというべきであるから,それらからのNMHCの排出動向を十分勘案した上でなければ,寝屋川局におけるNMHCの検知状況から,本件Y社施設からのNMHCの排出動向を正確に推し量ることはできないのであるが,この点につきD教授は,非燃焼系または燃焼系の排出源からのNMHCの排出対策が一般的に進んでいるとするのみで,それぞれの具体的排出動向をどのように考慮し- 125 -ているのか不明であり,合理的な推論とはいい難い。 さらに,寝屋川局におけるNMHC濃度の年平均 の排出対策が一般的に進んでいるとするのみで,それぞれの具体的排出動向をどのように考慮し- 125 -ているのか不明であり,合理的な推論とはいい難い。 さらに,寝屋川局におけるNMHC濃度の年平均値は,平成13年以降減少し続けており,同局におけるNMHC/NOx比も,上記の2005年,すなわち本件Y社施設が試験操業を開始した年以降減少傾向にあることが窺えるが(弁論の全趣旨),前記第2,1(2)エのとおり,その間に,本件Y社施設は本格操業を開始し,廃プラの搬入,処理量やパレット製造量も飛躍的に増加しているのであるから,D意見とは整合しない結果となっている。 また,そもそも,本件Y社施設は大気汚染防止法の定めるVOC排出工場に当たらず,大量のVOCを発生させる工場と想定されていない上,本件Y社施設から1500メートル以上離れた寝屋川局におけるNMHCの数値に明確な影響を及ぼすだけの大量のVOCの排出を認めるに足りる的確な証拠が存しない(前記3,(2)イ(エ)のとおり,被告Y社が実施した19年NMHC測定の結果によれば,本件Y社施設の敷地境界におけるNMHCの濃度は,多くの時間帯において,寝屋川局の測定数値よりも低いものであった。)。 したがって,甲A23号証等のD意見は,証拠としての信頼性に欠けるためこれを採用することができない。 ウ周辺住民の健康被害の多発について原告らは,本件Y社施設の操業開始に伴って,周辺住民に健康被害が多発しているとして,被害の発生が操業開始と時期的に合致しており,また,他に原因が考えられない以上,本件Y社施設から発生した有毒化学物質がその原因である旨主張し,周辺住民の健康被害の多発を本件Y社施設における有害化学物質の発生論の根拠の一つとしている。 しかしながら,後記(4)において詳しく検討するとおり,証拠上, した有毒化学物質がその原因である旨主張し,周辺住民の健康被害の多発を本件Y社施設における有害化学物質の発生論の根拠の一つとしている。 しかしながら,後記(4)において詳しく検討するとおり,証拠上,周辺住民に本件Y社施設由来の化学物質により健康被害が多発していることを- 126 -認めるには至らず,また,他に原因となり得るものが存在する可能性を完全に排除することはできないのであるから,その前提を欠くこととなる。 エ悪臭の発生について(ア)悪臭に関する規制等の状況a悪臭防止法は,悪臭規制制度として,現在寝屋川市地域において採用されている特定臭気物質の濃度による規制のほかに,臭気指数(試料を臭気が感じられなくなるまで無臭空気で希釈したときの希釈倍率(臭気濃度)を求め,その常用対数に10を乗じた数値)による規制の制度を設け,上記の特定臭気物質の濃度による規制との選択制にしている。 b環境省(環境管理局大気生活環境室)は,①従来大部分を占めていた畜産農業や工場からの悪臭への苦情が減少している一方で,飲食店などのサービス業からの悪臭やいわゆる都市・生活型と呼ばれる身の回りから発生する悪臭への苦情が急激に増加しているところ,このような臭気はその発生源が多様であるため,旧来の規制手法である特定臭気物質の濃度に着目した規制で対応できるのは全体のわずか30パーセントにすぎず(一説には40万あるといわれる臭気物質のうち特定悪臭物質として規制対象となっているのはわずか22物資である。),本来規制されるべき悪臭に対して対策不要という誤った判断を下すおそれがある,②臭気指数による規制は,人の嗅覚を利用することで,多種多様なにおいの物質に対応することができ,においの相加,相乗等の効果を評価でき,においの程度がイメージしやすく,住民の悪臭に対す それがある,②臭気指数による規制は,人の嗅覚を利用することで,多種多様なにおいの物質に対応することができ,においの相加,相乗等の効果を評価でき,においの程度がイメージしやすく,住民の悪臭に対する被害感覚と一致しやすいというメリットがあり,③国際的に実施されている方法でもあり,また,悪臭防止法で採用されている嗅覚測定の測定精度については,機器分析と同等又はそれ以上の精度が得られることが分かっている,という点を根拠に,今後- 127 -の悪臭問題の解決には臭気指数制度の導入が極めて重要であるとし,その導入を推奨している。 (イ)本件Y社施設周辺における悪臭の認知状況a寝屋川市ef地区在住の原告Bは,寝屋川市に対し,平成17年6月16日,電話をかけて,本件Y社施設の悪臭について環境政策の見解を聞きたい旨陳情した。これを受けて,寝屋川市では,本件Y社施設に立入調査するとともに,同年7月から平成18年3月17日にかけて,3日ないし7日に1回の割合で本件Y社施設周辺をパトロールした。このうち,寝屋川市職員による立入調査においては,平成17年11月11日の立入調査と平成18年3月8日の立入調査の際に工場内で臭気のあることが確認されている。また,周辺パトロールについては,平成17年7月5日,同年8月4日,同月18日,同年9月13日,同年11月18日及び同月22日に臭気を感じたが,他のパトロール回(延べ40回)においてはパトロール員は特に臭気を感じていなかった(甲A95)。 なお,平成18年11月9日午後7時ころに本件地域で感じられた異臭は,本件2施設の北側にある寝屋川市のクリーンセンターにおいて,2基ある焼却炉のうちの1基を稼働停止にして改修工事を行っていたため,残る1基の焼却炉では搬入された一般ごみを処理しきれず,燃やしきれなかっ 件2施設の北側にある寝屋川市のクリーンセンターにおいて,2基ある焼却炉のうちの1基を稼働停止にして改修工事を行っていたため,残る1基の焼却炉では搬入された一般ごみを処理しきれず,燃やしきれなかった生ごみを,敷地内に一時的に集積していたことから発生したものであって,その後,2基の焼却炉が稼働するようになってからは同様の異臭が発生したという報告はなく,したがって,同日の異臭は本件2施設とは直接の関係はなかった(甲A73,87)。 b原告ら臭気調査の報告(甲A130に収録)の中で臭気の内容について具体的な形容をしているものをみると,①「煙たい臭い」「何かを燃やしているような」「焦げ臭い」「ナイロン糸が焼けた臭い」- 128 -「魚を焼いたような」「ゴムの焦げた臭い」といった燃焼や加熱に由来するものとみられるもの,②「ゴムくさい」「セメダイン系」「入浴剤と香水を混ぜたような」という化学工場でみられるようなもの,③「酸っぱい」「甘くてくさい」「甘酸っぱい」「魚のあらのような」「腐った魚を焼くような」という,化学工場でみられるようなものとも発酵や腐敗に由来するものともみられるものが見受けられた。 なお,原告ら臭気調査で使用された調査票(甲A130添付)の冒頭には,「4月から,本格稼働(24時間,連日操業)に入った廃プラ処理民間工場から発生する化学物質によるものと考えられる『臭気』(におい)を感じる日が,周辺住宅地でも多くなっています。 『におい』は幾種類かありますが,特徴的な『におい』は,甘酸っぱく,芳香剤や入浴剤,セメダインなどに似ていますが,中には吐き気を感じる人もいるような気分の良くない『におい』です。『におい』を感じたとき,次の表に記録し,月末に自治会役員又は組長に提出してください。また,『におい』を感じたとき,市役所の環境政策課 は吐き気を感じる人もいるような気分の良くない『におい』です。『におい』を感じたとき,次の表に記録し,月末に自治会役員又は組長に提出してください。また,『におい』を感じたとき,市役所の環境政策課(代表電話072-824-1181)に電話をして,記録してもらうよう要請して頂ければ,なお結構です。」という協力要請文言が記載されていた。また,調査票には臭いの強中弱を記載する欄があるが,その判断基準は何ら示されていなかった。そして,記録者は全部で44人であるところ,その中で10件以上記録した者は15人,50件以上記録した者は5人で,その中の1人は140件も記録していた。 cなお,前記3(2)イ(オ)のとおり,被告Y社は,脱臭装置の出口という限定された場所ではあるが,悪臭防止法で規制排出流量が定められている13物質について測定を行ったところ,すべての項目において,規制排出流量を大きく下回るという結果であった。 (ウ)上記(ア)及び(イ)に判示したところを総合すると,本件Y社施設に- 129 -おいては,人に不快感を与える何らかの臭気が発生し,少なくとも何回かは周辺にも排出されていることが窺える。 しかし,原告ら臭気調査については,においの特徴を示して誘導している上に行政への報告を促すなど運動の一環としての位置づけを示しているものである上,記録者にも偏りがみられるなど,バイアスがかかりやすい状態で報告がなされているといわざるを得ないし,臭気の強さについても,環境省が推奨する臭気指数方式と異なって記録者の全くの主観的判断に頼っているもので,本件地域においてどういう内容の臭気が感じ取られているかという極めておおまかな傾向を把握することについてはともかく,臭気の強さや頻度といった点については信頼性に留保を付さざるを得ない状況である。 また,寝屋 おいてどういう内容の臭気が感じ取られているかという極めておおまかな傾向を把握することについてはともかく,臭気の強さや頻度といった点については信頼性に留保を付さざるを得ない状況である。 また,寝屋川市の職員によるパトロール状況によっても,臭気を感知したのは46回中6回にとどまっており,排出頻度が高いと認めることは困難である。 結局,臭気の排出頻度や程度について信頼に足りる証拠はなく,本件Y社施設からの排気の危険性を窺わせるに足りるものは証拠上認め難いといわざるを得ない。 オ17年環境調査ないし19年環境調査の評価について17年環境調査ないし19年環境調査の結果は,前記3(2)イの(ア)ないし(ウ)記載のとおり(各測定物質の具体的測定値は別紙4-3,同5-3,同6-3のとおり)であり,大気汚染に係る環境基準値及び作業環境許容濃度が設定されている物質については,極一部(19年環境調査のベンゼン)を除いて,いずれも基準値を下回る数値となっており,一般環境大気測定結果が存在する物質については,概ね,いずれも最大値を下回る数値となっていることから,被告Y社は,これを根拠に,本件Y社施設からの人の健康に影響を及ぼす程度の化学物質の排出を否定するのに対し,- 130 -原告らは,各調査について以下のとおり疑問を呈している。 (ア)各調査の手法の相当性についてa原告らは,被告Y社の測定調査には,①本件Y社施設から発生する化学物質についての全数調査(定性,半定量(トルエン換算)など)を実施せず,測定調査対象を55物質に限定するなど,政府が指定する有害化学物質234物質はもとより,環境省環境管理局長による「大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行について(通知)平成17年6月17日」に記載されている主なVOC100物質についてもカバーしてい 害化学物質234物質はもとより,環境省環境管理局長による「大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行について(通知)平成17年6月17日」に記載されている主なVOC100物質についてもカバーしていない,②本件Y社施設には煙突などまとまった排気口がなく,換気扇11箇所,窓,扉などから化学物質が排出されているにもかかわらず,これらから排出されている化学物質の種類,濃度,排気量が測定調査されていないという根本的欠陥が存在するので,信用できない旨主張する。 bしかし,ある地域ないし場所の環境調査において,ありとあらゆる地点ないし箇所,ありとあらゆる物質を網羅的に調査することは,人員や費用,手間の観点からみて現実的ではなく,代表的な地点ないし箇所と代表的な物質のみを調査して,後の地点ないし箇所及び物質についてはその調査結果を踏まえた推論に頼ることも,科学的知見からみて地域ないし場所全体の状況を把握するのに十分な数と特性の測定箇所を確保し,科学的知見からみて問題となる物質の動向を把握するのに十分な数と特性の物質を測定しているものである限り,調査手法として合理性を有するものというべきである。 そこで,まず,測定物質の選定について検討するに,17年環境調査及び18年環境調査においては,①いわゆる杉並病問題に関して杉並中継所における調査項目として対象となった33項目,②環境省の「環境ホルモン戦略計画SPEED’98」リストにおいて,プ- 131 -ラスチック由来の物質として挙げられた9項目,③工業調査会が発行する資料において加熱に伴い発生する副生成物として挙げられた22項目,④欧州委員会がEU各国に要請した環境ホルモンに関する規制項目のうちのプラスチック関連の5項目の各物質を選定した上で,延べ69項目から重複している項目を除いた合計5 成物として挙げられた22項目,④欧州委員会がEU各国に要請した環境ホルモンに関する規制項目のうちのプラスチック関連の5項目の各物質を選定した上で,延べ69項目から重複している項目を除いた合計55項目の物質を測定項目として選定したものであること,19年環境調査においては,17年環境調査及び18年環境調査において測定した55項目の物質のうち,定量下限値以下であった項目及び2年連続して一般環境レベルであったダイオキシン類を除いた残りの39項目にキシレン2種を追加した41項目の物質を測定項目として選定したものであることが認められるところ,現代の科学的知見において廃プラに起因して発生する可能性があり,かつ,危険性を指摘されている化学物質を網羅的に測定しているといえるから,測定項目の選定過程及び選定対象には合理性があると認められる。 この点,原告らは,環境省通知記載の主なVOC100物質を測定対象に含めるべきであった旨主張するが,前記第2,1(4)イに判示したとおり,環境省通知は,関係者の理解を容易にするため、VOCに該当する主な物質として,平成12年度における排出量推計結果に基づき排出量の多い順番に100種類の物質の名称を記載したものであって,その100種類のVOCが危険であるとして記載したものではなく,その中にはブタン,イソブタン,デカン等明らかに有害性や毒性の低い物質も含まれている。したがって,その100種類のVOC全部を計測しても,大気中のVOC総体の状態を推し量る意味しかなく(なお,厚生労働省が室内空気質中のTVOCの暫定目標値を設定したのは,空気質の全体状態の目安とするためである。),有害な有機化学物質の有無,量及び分布を検討する上での参考となし得るに- 132 -すぎないのであるから,被告Y社が環境省通知記載の主なVOC したのは,空気質の全体状態の目安とするためである。),有害な有機化学物質の有無,量及び分布を検討する上での参考となし得るに- 132 -すぎないのであるから,被告Y社が環境省通知記載の主なVOC100物質すべてを測定対象に含めなかったことが不合理であるとはいえない。 次に,測定地点の選定について検討するに,一般に,複数の窓や換気口,出入口などがある建物について,それらの地表からの高度が低い窓(数メートル程度)であって,この窓などを通して工場内で発生した化学物質などが建物外に排出される場合には,敷地境界でその量や濃度等を測定するのが通例であり,また,工場内で発生した化学物質が煙突,排気管など高い地点から大気中に排出される場合には,この排気管などを排出源の高さと考えてその口部における量や濃度等を測定することが妥当であると考えられるものであって,上記各調査において,敷地境界及び脱臭装置出口を測定地点に選定したことも何ら不合理であるとはいえない。そして,建物と敷地境界との間に一定程度の距離がある場合には,複数の排出口から排出された空気は敷地境界に至るまでの間に混合されるとみられるので,敷地境界のうち風下側の1か所のみを測定地点としたこともあながち不合理とはいえない。 その他,被告Y社による測定地点の選定について不合理なものがあったことを窺わせる証拠ないし事情は見あたらない。 そして,その他,調査手法の合理性を疑う事情を認めるに足りる的確な証拠はないから,上記各調査の結果は,調査時における本件Y社施設の操業状況,ベール保管状況及び換気状況を反映したものとしては十分採用することができるというべきである。 (イ)各調査の前提となる操業状況,ベール保管状況及び換気状況a17年環境調査(乙A4。稼働状況報告書は乙A5)17年環境調査は,被告Y ものとしては十分採用することができるというべきである。 (イ)各調査の前提となる操業状況,ベール保管状況及び換気状況a17年環境調査(乙A4。稼働状況報告書は乙A5)17年環境調査は,被告Y社の依頼を受けた株式会社環境管理センターが本件Y社施設構内で行ったものであって,被告Y社において,- 133 -依頼者としての打合せや構内立入りの承諾手続等を通じて,現地での調査実施に先立ち,調査がなされる日時を把握できる状況にあり,事前に操業状況やベール置場でのベール保管量の状況,換気状況(窓の開閉や換気扇の運転など)などの操作を試みたり,逆に操業状況をにらみながら調査実施日を調整することが可能な状況にあった。 17年度環境調査が実施された平成17年6月30日及び同年7月1日の稼働状況は,前者が,ベール投入,手選別及び破砕工程の2系統のうち1系統は停止し,原料はベール18個使用,パレット製造枚数は0枚で,測定実施中は成型機は稼働していないという状況であり,後者は,ベール投入,手選別及び破砕工程は不稼働,原料(選別済みプラスチック0.09トン,ペレット12.560トン,減容品1. 19トンでベールは使用せず)使用量は通常並み,パレット製造枚数は697枚であった。 b18年環境調査(乙A13)18年環境調査も,被告Y社の依頼を受けた株式会社環境管理センターが本件Y社施設構内で行ったものであって,被告Y社において,依頼者としての打合せや構内立入りの承諾手続等を通じて,現地での調査実施に先立ち,調査がなされる日時を把握できる状況にあり,事前に操業状況やベール置場でのベール保管量の状況,換気状況(窓の開閉や換気扇の運転など)などの操作を試みたり,逆に操業状況をにらみながら調査実施日を調整することが可能な状況にあったという点は17年度環境調査時 やベール置場でのベール保管量の状況,換気状況(窓の開閉や換気扇の運転など)などの操作を試みたり,逆に操業状況をにらみながら調査実施日を調整することが可能な状況にあったという点は17年度環境調査時と同様である。 18年環境調査が実施された平成18年9月23日(土曜日)の稼働状況は,原料使用量が,同月の稼働日における通常の使用量が約19トンから約22トンの間であり,調査前日の同月22日(金曜日)の使用量も20.084トンであるのに対し,約半分の10.364- 134 -トンにすぎなかったし,パレット製造量も通常は約500枚から約800枚の間であり調査前日の同月22日の製造量も680枚であるのに対し,その約半分の310枚であった。なお,調査翌日の同月24日(日曜日)は操業していない。また,同月の土曜日の稼働状況は,同月29日を除き,原料使用量,パレット製造量ともに通常の約半分という状況にあり,日曜日は稼働していなかった(弁論の全趣旨)。 c19年環境調査(乙A58)19年環境調査も,被告Y社の依頼を受けた株式会社環境管理センターが本件Y社施設構内で行ったものであって,調査における状況については,前2回の環境調査時と異ならない。 そして,19年環境調査が実施された平成19年8月28日の稼働状況については,これを認定できる資料は提出されていない。 d上記aないしcに判示したところを総合すると,17年環境調査時の操業状況は,1日目がベール投入,手選別,破砕工程のみ,2日目は成型工程のみの各稼働であって,明らかに通常よりも低下した稼働状況にあったというべきである。しかもその稼働状況からみて,保管していたベールは1日目で使い切り,補充もなかったとみられる上,そのベールの量も,減容品が2日目の成型工程における原材料中の1割程度しか占めていない いうべきである。しかもその稼働状況からみて,保管していたベールは1日目で使い切り,補充もなかったとみられる上,そのベールの量も,減容品が2日目の成型工程における原材料中の1割程度しか占めていないことに照らせば,通常よりも相当少なかったといわざるを得ず,有機物の発酵,腐敗その他の化学変化由来の臭気の源であるベールがほとんどない状況下での調査であったといわざるを得ない。また,18年環境調査時の操業状況についても,通常の約半分程度の稼働状況であった上,翌日が日曜日で稼働していないことを合わせると,ベールが相当に少ない状況での調査だったのではないかとの疑問を免れない。 結局,17年環境調査及び18年環境調査は,調査の前提として,- 135 -いずれも通常の操業状況をそのまま反映したものということはできず,19年環境調査についても通常の操業状況を反映したものと認めるに足りる証拠は存しないというべきである。 (ウ)各調査の結果を踏まえた判断前記各調査は,調査手法において問題点は見あたらないものの,通常の操業状況を忠実に踏まえたものであるとはいい難いものであるから,前記各調査の結果をもって,直ちに,本件Y社施設から人の健康に影響を及ぼす程度の量の物質の排出されていないものとまで積極的には認めることはできない。 しかし,反面,前記各調査以外に本件Y社施設の敷地境界付近における大気中の化学物質の量について調査したものは見あたらないから,結局,被告Y社施設の敷地境界付近において,大気中に人の健康に影響を及ぼす程度の量の化学物質が存した形跡は見あたらないというべきである。 ところで,平成19年環境調査では,脱臭装置出口において環境基準値である3μg/㎥(なお,作業環境許容濃度は3200μg/㎥)を上回る5.3μg/㎥のベンゼンが検出されているので いうべきである。 ところで,平成19年環境調査では,脱臭装置出口において環境基準値である3μg/㎥(なお,作業環境許容濃度は3200μg/㎥)を上回る5.3μg/㎥のベンゼンが検出されているので検討するに,測定数値としては,生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準として定められた環境基準の1.76倍程度にとどまっており,作業環境許容濃度の約600分の1であること,後記(3)に詳論する大気による拡散を考慮すれば,人の健康に影響を及ぼす程度の排出とは直ちにいうことはできない。 カ小括以上の検討の結果,上記の各証拠によっても,本件Y社施設の操業により何らかの化学物質が発生していることは窺えるものの,それ以上に,本件Y社施設から人の健康に影響を及ぼす程度の有害化学物質が排出されて- 136 -いるとまで認めることはできず,他にこれを認めるに足る的確な証拠は存在しないものといわざるをえない。 (3)有害化学物質の到達・曝露について原告らは,17年環境調査及び18年環境調査,D6月調査,原告ら臭気調査等の結果から,本件Y社施設由来の有害化学物質が原告らに到達していることが明らかであり,被告Y社主張の大気拡散論は本件地域の特殊地形を考慮すると妥当しないし,府市合同調査は信用性を有しない旨主張するのに対し,被告Y社は,大気による拡散・希釈により,本件Y社施設由来の化学物質が,原告らの健康に影響を及ぼす程度の濃度で原告らに到達することは理論上有り得ないし,実際にも,府市合同調査等の結果から,到達・曝露の事実は存しないことは明らかである旨主張している。 そこで,各種調査の結果及び信用性,大気拡散論の妥当性について,検討する。 ア17年環境調査及び18年環境調査の結果について(ア)全国平均値の検討a原告らは,①17年環境調査 張している。 そこで,各種調査の結果及び信用性,大気拡散論の妥当性について,検討する。 ア17年環境調査及び18年環境調査の結果について(ア)全国平均値の検討a原告らは,①17年環境調査の結果によれば,本件Y社施設の南方約400メートルの比較対照地点における濃度が,全国平均値が明らかにされているVOCの12項目(環境省水・大気環境局編集の「日本の大気汚染状況」平成18年版)のうち8項目で全国平均値以上の濃度となっており,環境省発行の「化学物質の環境リスク評価」における一般大気環境平均値を超える化学物質が14項目測定されており,また,ダイオキシン類が全国平均値の7倍の濃度で測定されていること,②18年環境調査の結果によれば,同じく比較対照地点において全国平均値より高濃度を示す物質が,テトラクロロエチレン,アクリロニトリル,塩化ビニルモノマー,クロロホルム,アセトアルデヒド,1,2-ジクロロエタン,アセトニトリル,フェノール,ビ- 137 -スフェノールAなど17物質も測定されていることからすれば,本件Y社施設から排出された多くの化学物質が,400メートル離れた地点である比較対照地点に到達しているということができる旨主張する。 bしかし,前記3(1)ア(イ)のとおり,本件2施設周辺に他に化学物質の発生源となり得る施設が全く存在しないわけではなく,前記比較対照地点に到達している化学物質が本件Y社施設由来のものに限られることを認めるに足りる証拠もなく,また,他に考えられる発生源の影響の程度も不明である以上,前記比較対照地点における有機化学物質の数値をもって,直ちに本件Y社施設からの物質の排出や到達を論じることはできないというべきであるし,また,原告らの指摘するダイオキシン類においては,別紙4-3のとおり,本件Y社施設内部 有機化学物質の数値をもって,直ちに本件Y社施設からの物質の排出や到達を論じることはできないというべきであるし,また,原告らの指摘するダイオキシン類においては,別紙4-3のとおり,本件Y社施設内部の方が濃度が低かったことからすれば,その発生源は本件Y社施設とは別に存在する可能性が高いと考えるのが相当である。 さらに,比較対照地点とは,特定施設の影響を受けない地点のことであり,被告Y社は風上である本件Y社施設の南方約400メートルの地点を選定しているのであるから,本件Y社施設の影響を受けていないはずの地点の濃度でもって発生・到達を論ずるのは,比較対照地点の設定の不合理性を具体的に指摘できていない限り,明らかに不合理である。 したがって,原告らの上記主張は,採用することができない。 (イ)D6月調査についてa原告らは,D6月調査によれば,検出された27の化学物質のうち,23の化学物質について本件Y社施設から約70メートルのF宅の,濃度が,450メートル離れた公民館における濃度より高い結果を示しており,そして,上記27の化学物質のうち,被告Y社が測定している10の化学物質においては,本件Y社施設内での測定においても- 138 -検出されていることからすれば,本件Y社施設を発生源とした化学物質が公民館まで到達しているということができる等主張している。 bしかし,D証人によれば,D6月調査の数値は,調査地点において,3時間外気を捕集した後,その3時間の測定値と, 寝屋川市役所で測定している1時間値であるNMHCの値の両者を使って, 比例按分をして,24時間値として推計したものであるところ,寝屋川市役所における大気の状況と調査地点の大気の状況の相違に関する考慮状況が明らかになっておらず,比例按分することの正当性が何ら示されていない をして,24時間値として推計したものであるところ,寝屋川市役所における大気の状況と調査地点の大気の状況の相違に関する考慮状況が明らかになっておらず,比例按分することの正当性が何ら示されていないことから,その数値の正確性,信頼性には疑問が残る。 また,府市合同調査及び府市継続調査によれば,本件Y社施設周辺,公民館付近,寝屋川市役所に近い位置に所在する消費生活センターにおける各ベンゼンの値は,大きく異なっていることからすると,単純に比例按分をしてもむしろ誤った数値を導きかねない危険性が存する。 しかも,上記F宅は,その位置関係及び会社代表者の氏名からみて,ベンゼン等の揮発性有機化合物を利用するクリーニング業者であるR社の建物と推認できるものであって,同社由来の化学物質の影響が不可避であるとみられる地点である。 以上によれば,D6月調査の結果は,信頼性に疑問があるというべきであって採用することができず,さらにD3月調査の結果が明らかになっていないことも考慮すると,原告らの上記主張は採用することができない。 (ウ)接地逆転層の形成について原告らは,甲A129号証のV意見を指摘して,本件Y社施設が立地している地域では,しばしば接地逆転が形成され,また,東側の山群斜面で形成される山風の影響が及ぶことも考えられ,こうしたこの地域の局地気象の特徴を十分に考慮に入れて有害化学物質の移流・拡散を考え- 139 -なければならない旨主張している。 そして,上記3(3)ア(ア)において認定したとおり,理論的には,接地逆転層が形成されると,大気の拡散状況が変化し,一般的な拡散モデルで予測評価することは困難となることが認められ,V意見の指摘するように,本件Y社施設が設置されている場所において,接地逆転層が形成される可能性を排除することはできない。 しかし ,一般的な拡散モデルで予測評価することは困難となることが認められ,V意見の指摘するように,本件Y社施設が設置されている場所において,接地逆転層が形成される可能性を排除することはできない。 しかし,V意見においては,接地逆転層が形成される具体的条件が示されておらず,V意見によっては,本件地域に,いつ,どのような条件の下で,また,いかなる時間的・空間的範囲で接地逆転層が形成されるかについては不明であるといわざるを得ない。 そして,別紙3「本件2施設周辺高低図」によれば,本件Y社施設が存在する敷地の標高は20メートルから30メートルであり,その周辺地域の標高が40メートルから50メートル程度であって,盆地といえる程度の高度差ではなく,また,a川に沿って開かれた地形であって盆地のように周囲を山や丘陵によって囲まれた地形というわけでもなく,本件地域の東部を含めた地形としても,標高300メートル程度の地形からなだらかに平地に開けてくるというものであって,原告らが主張するような特別な地形と認められるものではないことからすると,本件地域は,強い接地逆転層が継続的に形成され,一般的な大気の拡散モデルの適用が困難となるような特別な地域であると認めることは困難であり,この他に本件地域に継続的に接地逆転層が形成されていることを認めるに足りる的確な証拠は存在しない。 また,本件地域では,緩やかであっても比較的風が吹くことが多く,その風向は,本件Y社施設を起点に取ると北東ないし北北東及び南南西の風が多いことが認められる(乙A61)。 したがって,接地逆転層が形成される結果,一般的な大気の拡散モデ- 140 -ルを適用することできないという原告らの主張は,採用することができない。 (エ)原告ら臭気調査についてまた,原告らは,平成17年から平成20年2月まで 結果,一般的な大気の拡散モデ- 140 -ルを適用することできないという原告らの主張は,採用することができない。 (エ)原告ら臭気調査についてまた,原告らは,平成17年から平成20年2月まで行われた原告ら臭気調査の結果によれば,本件Y社施設の臭気については,原告ら住民の生活圏内で225回,日数にして147日の臭気の記録があり,本件Y社施設直近でも88回,77日の記録があるとして,本件Y社施設から排出される化学物質によって,周辺の大気が汚染されている旨主張する。 しかし,上記3(3)イ(ア)で判示したとおり,平成19年3月に実施された府市合同調査における臭気調査においては,規制基準値を超える特定臭気物質は一切検出されておらず,また,平成19年8月に実施された被告Y社臭気調査においても,規制基準値を超える特定臭気物質が一切検出されていないところ,原告らの臭気調査においてはこれらの調査と矛盾が生じている。 また,原告らの臭気調査においては,原資料提供者の氏名等が開示されていないことからすると,臭気調査の基礎となる原資料の信頼性を揺るがせる点も存在するといわざるを得ない。 そして,上記(2)エ(イ)において検討したとおり,そもそも本件Y社施設から人の健康に影響を及ぼす程度の化学物質が排出されたことを認めるに足りる的確な証拠が存在しないことをも併せて考慮すると,原告らの臭気調査は直ちに信用することができない。 イ被告らの反論について(ア)拡散・希釈論についてa上記3(3)アで判示したとおり,気体としての化学物質及び大気中を浮遊する化学物質は,無風状態では発生源を中心にその周囲に(立- 141 -面では)半球状,(平面では)円状に拡散し,風がある状態では,特に,風の影響を受けながら別の場所(風下側)に移動し,拡散することとなる 質は,無風状態では発生源を中心にその周囲に(立- 141 -面では)半球状,(平面では)円状に拡散し,風がある状態では,特に,風の影響を受けながら別の場所(風下側)に移動し,拡散することとなるので,化学物質の到達・曝露の判断においては,拡散を予測することが重要であるということができる。 そして,上記ア(ウ)で判示したとおり,本件地域においては,接地逆転層の具体的発生状況が不明であることからすれば,一般的な大気拡散式によって,拡散・希釈を考慮することにつき不都合とする特段の事情が認められないのであるから,被告Y社が行った19年予測調査及び20年予測調査の結果は,いずれについても信用性を認めることができ,本件Y社施設から排出される化学物質の拡散希釈状況について,一定の参考資料となり得るものというべきである。 なお,原告らは,拡散予測の対象が1項目又は2項目と少ないことから,信用できない旨主張するが,ベンゼンとアセトアルデヒドの希釈率の差がわずかであり,他の物質においても概ね同様の状況を示すと推認することができること,また,原告らにおいて,物質の違いによって希釈率の差が生じ,上記ベンゼンやアセトアルデヒドによる推測が不合理である理由を一切指摘できていないことからすれば,原告らの主張は採用することができない。 bそして,前記3(3)ア(イ)で判示したとおり,19年予測調査の結果は,別紙14-1及び別紙14-2記載のとおりであって,METI-LISと呼ばれる大気拡散式においても,最大着地濃度において約500分の1まで希釈されることが予測されており,プルーム式においては,最大着地濃度において約9000分の1まで希釈されることが予測されており,また,20年予測調査の結果は,別紙15-1ないし15-4記載のとおりであり,ベンゼンにおいては,最 ,プルーム式においては,最大着地濃度において約9000分の1まで希釈されることが予測されており,また,20年予測調査の結果は,別紙15-1ないし15-4記載のとおりであり,ベンゼンにおいては,最大着地濃度出現地点が排出口南西約400メートル,最大着地濃度が0.0- 142 -00021μg/㎥,希釈率が約25万2000分の1と予測されており,アセトアルデヒドにおいては,最大着地濃度出現地点が排出口南西約400メートル,最大着地濃度が0.00015μg/㎥,希釈率が約24万6000分の1であると予測されているところ,本件Y社施設から排出される化学物質は,原告らに到達するまでには十分なほどに希釈されると推認することができる。 そうであれば,本件Y社施設から排出された化学物質が,さらに大気によって相当程度拡散し,希釈されるといえるので,原告らに健康被害が生じるような濃度の化学物質が到達した,あるいは到達すると認めることは困難である。 (イ)府市合同調査及び府市継続調査(以下,両者を併せて「府市合同調査等」という。)の信用性等についてa府市合同調査等の信用性について原告らは,府市合同調査等には,原告ら住民が居住する地域の大気環境の実態,全容を明らかにするために必要であるTVOCの調査をしておらず,府市合同調査等による調査項目は11項目に過ぎず,とりわけ,シックハウス症候群に関して基準のある13物質中でみれば,わずかに2物質を調査しているにすぎないものであり,まさに不十分な調査といわざるを得ないとして,信用性はない旨主張する。 しかし,TVOCの調査については,上記(2)で判示したとおり,現代の科学的知見としては,VOCの総量によって,人の健康に影響を及ぼす程度の化学物質の排出があるか否かの危険性を判断することはできないのであるか OCの調査については,上記(2)で判示したとおり,現代の科学的知見としては,VOCの総量によって,人の健康に影響を及ぼす程度の化学物質の排出があるか否かの危険性を判断することはできないのであるから,これにつき調査をしなかったとしても不合理ということはできない。 また,調査項目が11項目と少なすぎるという指摘についても,確かに被告Y社による調査項目よりも少ないということではあるが,府- 143 -市合同調査等においては,環境基準値等が設定されているものを中心に選定していること及び被告Y社による調査において11項目以外の化学物質においては特段問題となるような発生量のあるものが存在しないことからすれば,調査として不合理であるということはできず,以上を総合考慮すれば,原告ら主張のような理由で信用性を有しないということはできず,他に信用性を左右する事情は認められないことから,府市合同調査等は十分信用することができるものというべきである。 b府市合同調査等の結果の判断前記3(3)イ(ア)及び(イ)で判示したとおり,府市合同調査の結果によれば,測定物質は,別紙16記載のとおりであって,いずれも環境基準値(指針値を含む)を大幅に下回る濃度数値であって,問題となるような濃度は全く検出されることはなく,また,府市継続調査の結果によれば,別紙17-1及び17-2記載のとおりであって,平成19年5月から同年12月までの調査結果おいては,ベンゼンを除く各月の測定数値はいずれも環境基準等を下廻り,ベンゼンについては,平成19年12月においては,測定場所の3か所とも環境基準値より10ないし20パーセント高かったが,他の月の数値が低く安定していること,市立消費生活センターのベンゼン濃度が本件Y社施設敷地境界の濃度より基本的に高い測定値となっていること,ベ とも環境基準値より10ないし20パーセント高かったが,他の月の数値が低く安定していること,市立消費生活センターのベンゼン濃度が本件Y社施設敷地境界の濃度より基本的に高い測定値となっていること,ベンゼンの発生源は本件2施設以外にも存在し得ると考えられることなどの諸般の事情を考慮すれば,一時期,ベンゼン濃度が環境基準値を上回ったことについては,本件地域において,他に一時的にベンゼンを発生させる何らかの事情が存在したことが窺えるのであって,必ずしもそれが本件Y社施設から発生したものであると認めることはできず,他に本件Y社施設由来の化学物質が,人体に影響を及ぼすに足りる程度,- 144 -原告らに到達していると認めるに足りる的確な証拠は存在しない。 ウ小括以上によれば,そもそも本件Y社施設から人の健康に影響を及ぼす程度の有害化学物質が排出されていることを認めるに足りる的確な証拠はなく,また,原告らが有害化学物質に曝露していることを認めるに足りる的確な証拠が存在せず,むしろシミュレーションモデルにおいては,拡散希釈によって,原告らへの到達量はその排出量に比べて著しく減少していると考えられ,さらには,実際にも,原告らへの到達を認めることが困難であるとする調査結果が存在するのであるから,到達・曝露に関する原告らの主張も採用することができない。 (4)被告Y社由来の有害化学物質による健康被害の発生についてア前提上記(2)及び(3)で判示したとおり,そもそも,本件Y社施設から人の健康に影響を及ぼす程度の有害化学物質が排出されていることも,本件Y社施設由来の化学物質が原告らに到達していることも認めるに足りる的確な証拠は存在しないのであるから,理論上,被告Y社由来の有害化学物質による健康被害の発生を観念することは困難である。 なお,人の健康 施設由来の化学物質が原告らに到達していることも認めるに足りる的確な証拠は存在しないのであるから,理論上,被告Y社由来の有害化学物質による健康被害の発生を観念することは困難である。 なお,人の健康に影響を及ぼす程度の有害化学物質の排出及び到達の事実が認められない以上,それに因る健康被害も存在しないことは理論上自明のことであるが,原告らは,原告らに現実に深刻な健康被害が進行しており,他には原因が考えられず,時期及び場所的関係から,本件Y社施設由来の有害化学物質がその原因である旨強く主張していることに照らし,本件Y社施設由来の化学物質による健康被害を疑わせる事情があればその排出・到達に関して再検討を要することとなるし,また,逆に本件Y社施設由来の化学物質による健康被害の存在が証拠上認められなければ,その排出・到達が確認できないことの裏付けにもなるので,以下,本件Y社施- 145 -設由来の化学物質による健康被害に関する原告らの主張について検討する。 イ各調査の結果の検討(ア)E疫学調査についてa原告らは,E疫学調査の結果に基づき,非曝露群に比べて曝露群の有病オッズ比が際立って高いことなどを指摘して,①曝露状況と発症時期が符合していること,②本件Y社施設周辺住民には統計上有意な健康被害が認められること,③本件Y社施設との距離が近いほど,また曝露時間が長いほど健康被害が多発するという量反応関係が認められること,④他の理由で有病オッズ比の高さを説明することができないことなどを根拠に,本件Y社施設の操業と健康被害に因果関係がある旨主張している。 前記3(4)イのとおり,E疫学調査自体は,3つの自治会(ただし,h町自治会はそのうちの2班のみ)の会員合計1579名に対するアンケート調査結果に基づき,多方面,多角度から解析を行った大 している。 前記3(4)イのとおり,E疫学調査自体は,3つの自治会(ただし,h町自治会はそのうちの2班のみ)の会員合計1579名に対するアンケート調査結果に基づき,多方面,多角度から解析を行った大規模な調査といえる。 b(a)しかし,前記3(4)イ(イ)で判示したとおり,E疫学調査においては,本件Y社施設より何らかの物質が浮遊していると仮定し,工場からの距離を曝露指標としているところ,まず,前記(2)で判示したように,本件Y社施設からの有害化学物質の排出・到達(すなわち曝露の存在)という前提については何ら実証的裏付けが行われていない。 また,本件Y社施設の操業によって住民に健康被害が生じているとする仮説を定立するのであれば,本来は,本件Y社施設を中心として同心円上に存在する地域の集団を調査・解析の対象として設定すべきであるところ,E疫学調査においては,別紙21のとおり,そもそも同心円上に資料を取っていない。したがって,理論上,発- 146 -生源とされる地点と各サンプルの地点の距離関係が変わらないのであれば矛盾は生じないのであるから,必ずしも3地域を結ぶ直線上に発生源がある必然性はないということとなる。 (b)次に,E疫学調査においては,前記3(4)ア(ウ)で判示したように,原告ら住民同様に,あるいはそれ以上に本件Y社施設由来の化学物質に曝露していると想定できる被告Y社の従業員において健康被害が発生しているという事実は認められないこと及び他の廃プラのリサイクル工場において同種の健康被害についての報告がされていないことについては何ら説明が加えられておらず,この点についていかなる考慮をして仮説を設定したのか不明である。 (c)さらに,前記3(4)イ(イ)dで判示したとおり,E疫学調査においては,E疫学調査の基礎となるアンケート 明が加えられておらず,この点についていかなる考慮をして仮説を設定したのか不明である。 (c)さらに,前記3(4)イ(イ)dで判示したとおり,E疫学調査においては,E疫学調査の基礎となるアンケート調査が,周辺の8つの自治会において実施されているにもかかわらず,3つの自治会分だけが解析対象となっており,その他の地域のアンケートについては解析されていないのであり,特に,曝露群として解析の対象となった2地域は,守る会を構成する主要自治会の所在地区であること,守る会は,平成16年4月ころから広報誌の発行,署名運動,シンポジウムの開催,デモ行進,議会への請願,仮処分の申請等により,一貫して本件2施設の建設・操業に反対運動を行ってきている集団であること(甲A4,72,78ないし85,原告A)などの点に照らせば,仮にすべてのアンケート調査表を解析することに時間的,費用的制約があったとしても,都合の良い結果があらわれるように恣意的な選択がなされていると疑われかねず,その信用性にも疑問が生じる。 また,E疫学調査においては,E疫学調査の基礎とした質問票に,その実施者として「廃プラ処理による公害から健康と環境を守る- 147 -会」と各自治会名とが記載されており,その目的として「この度,専門家の指導のもと,健康アンケート調査を実施します。この調査は,廃プラ工場操業による地域住民の方への健康影響を調査し,健康と環境を守る運動に活用するものです。なお,プライバシーは厳守します。」と記載がある上に(甲A15ないし22),原告らを含む守る会の会員がアンケート質問票の回収を行っていること,さらに,E疫学調査が実施される前に,原告らは,同種のアンケート調査を,今回の解析対象としているef・eg・h町において実施し,守る会発行のビラに,その結果を棒グラフで対 票の回収を行っていること,さらに,E疫学調査が実施される前に,原告らは,同種のアンケート調査を,今回の解析対象としているef・eg・h町において実施し,守る会発行のビラに,その結果を棒グラフで対比するとともに,発生すべき症状を具体的に記載(「咳がとまらない」「皮膚に湿疹のようなものができ痒みがとまらない」など)してこれを住民に配布し,その状況を知らしめていること,質問票による調査においても,代筆によって回答することが認められているところ,代筆による回答か否かの区別さえも行われていないこと等調査における正確性を担保するための手続に問題点が多数存在するといわざるを得ない。 そして,E証人は,E疫学調査においてはロジスティック解析を行っており,経験上,バイアスの問題は生じていない旨供述等しているが,上記の事情について問題がないとする具体的な判断を示していないことからすると,E疫学調査の信頼性には疑問が残るといわざるを得ない。 (イ)C調査についてa原告らは,C調査に基づいて,①本件Y社施設の700メートル以内に居住している住民において,皮膚粘膜刺激症状が20パーセント以上の高率であらわれており,WHOの指摘するシックビルディング症候群の愁訴と一致する健康被害が住民の一定割合以上に発生して- 148 -おり,臨床医学的分析において,E疫学調査の結果が裏付けられている,②実際の20人の住民の診断においても,WHO,EPAのシックビルディング症候群に該当する訴え症状があり,眼鼻皮膚症状など健康被害の症状がこの地域にいるときは悪化し,この地域を離れると症状が改善するという特徴がそのうち15人に認められ,EPAのシックビルディング症候群に該当する健康被害が現に発生していると主張する。 bしかし,そもそも,シックハウス(ビルディン 地域を離れると症状が改善するという特徴がそのうち15人に認められ,EPAのシックビルディング症候群に該当する健康被害が現に発生していると主張する。 bしかし,そもそも,シックハウス(ビルディング)症候群とは,W医師による定義,WHOによる定義,EPAによる定義のいずれにおいても,閉鎖された室内環境を前提としていることが明らかであって,前提の異なる屋外の土地における開放状況下での大気環境の場面に,単純にその基準を当てはめることは必ずしも相当とはいい難い。 そして,上記(ア)で判示したとおり,そもそもC調査が前提としているE疫学調査の信頼性につき疑問が存するのであるから,これを前提とするC調査における臨床医学的分析の点についてもその信頼性について限界が存する。 また,C調査においては,C医師は,初診であるにもかかわらず,わずか4分から15分程度しか診察しておらず(C証人),そのような短時間の診察では各人の健康状態を客観性をもって正確に診断することは困難であるといわざるを得ず,その診査結果の正確性には疑問が残らざるを得ない。そして,E疫学調査につき上記のとおり信頼性に疑問があるのであるから,わずか20名の診察結果に依拠して,本件施設との関連性を推認することは困難であるといわざるを得ず,さらには,C調査の対象者である20名の住民については,症状を訴えていた人を守る会役員が口頭で呼びかけて集めた人達であり,かかる対象者を前提にWHOによる定義やEPAによる定義に当てはめるこ- 149 -とは相当でないから,いずれにしてもC調査はこれを採用することはできない。 (ウ)原告B等の症状についてa原告らは,原告Bにおいて,以前には気管支喘息やアレルギー性鼻炎・結膜炎の症状はなかったにもかかわらず,本件Y社施設が稼働した後の平成18年1月 とはできない。 (ウ)原告B等の症状についてa原告らは,原告Bにおいて,以前には気管支喘息やアレルギー性鼻炎・結膜炎の症状はなかったにもかかわらず,本件Y社施設が稼働した後の平成18年1月から咳と痰が出るようになり,のどの痛みも感じるようになったが,気管支喘息治療薬では効果がなく,居住地域を離れると症状が改善するのであるから,本件Y社施設由来の有害化学物質によって,上記の健康被害が生じたものであると主張する。 bしかし,患者から一定の症状が訴えられた場合,医師としては,様々な原因を考慮し,問診及び科学的検査等を実施して症状の原因を特定又は排除していくものであるところ,患者からシックハウス症候群の可能性を指摘されたのであれば,その可能性を検討するために,前記3(4)ウで判示した負荷誘発試験,血液検査等の客観的検査を行うのが一般的な診察であると考えられるにもかかわらず,原告Bにおいて血液検査などの客観的な医学検査の資料を証拠として提出されておらず,また,同原告の室内環境・生活環境等を検討,調査した形跡も認められない。 そして,原告Bが「守る会」の役員であり,被告Y社の操業に対し強い嫌悪を有する者であることからすれば,その症状は,嫌悪・怒り等の感情から発したという心因性のものである可能性も否定できず,上記(2)及び(3)で判示したように,本件Y社施設からの有害化学物質に曝露したとは認めるに至らないことも併せて考慮すると,原告Bが訴える症状が,本件Y社施設由来の化学物質により生じた健康被害であると認めることは困難である。 cそして,原告らは,原告G及びその他の原告ら並びに周辺住民の健- 150 -康被害の存在についても主張するが,そもそも証拠上明らかになっているものは各人の愁訴だけにすぎないこと,いずれの者についても客観的検 らは,原告G及びその他の原告ら並びに周辺住民の健- 150 -康被害の存在についても主張するが,そもそも証拠上明らかになっているものは各人の愁訴だけにすぎないこと,いずれの者についても客観的検査等が行われた形跡が存しないこと,愁訴を訴える者の大半が60歳以上の高齢者であり,加齢からくる症状も含まれている可能性が考えられること,本件Y社施設に対する嫌悪・怒り等に起因する心因性の症状である可能性も否定できないこと等の諸般の事情を考慮すると,原告G及びその他の原告ら並びに周辺住民の健康被害と称する症状についても,本件Y社施設由来の化学物質により生じた健康被害であると認めることは困難である。 ウ小括以上のとおりであって,そもそも本件Y社施設から人の健康に影響を及ぼす程度の化学物質の排出・到達の事実を認めるに足りる客観的証拠が存在しない上,原告らに本件Y社施設に由来する化学物質による健康被害が生じていることを認めるに足りる的確な証拠も存在しないのであるから,原告らの主張は採用することができない。 (5)杉並中継所との比較ア原告らは,本件Y社施設から,杉並中継所における換気系に活性炭処理が行われていなかった初期のTVOCの1日排出量を超えたTVOCが排出されていると推測でき,原告ら住民に重大な健康被害が発生していることを裏付けていると主張する。 イしかし,一般的に処理対象物が異なれば発生する物質も発生量も異なるものであるところ,本件Y社施設の処理対象物は,プラスチック製容器包装廃棄物のうち,容リ協が規定する再商品化適合物に合致する廃プラのみであり,他方,杉並中継所の処理対象物は,前記3(5)アのとおり,ビンやスプレー缶,電池等も多く含まれる非常に雑多な組成の廃棄物である不燃ゴミ全般であって,両者の廃棄物の中身が明らかに異なるのであ であり,他方,杉並中継所の処理対象物は,前記3(5)アのとおり,ビンやスプレー缶,電池等も多く含まれる非常に雑多な組成の廃棄物である不燃ゴミ全般であって,両者の廃棄物の中身が明らかに異なるのであるから,- 151 -本件Y社施設と杉並中継所を同列に論ずることは明らかに不合理である。 そして,甲1012号証によれば,公害等調整委員会裁定委員会は,杉並中継所が排水を処理することなく直接公共下水道に放流していた時期に限定して,杉並中継所から排出される化学物質と周辺住民の健康被害との因果関係を認めているところ,本件Y社施設においては,前記第2,1(2)ウ(シ)のとおり,操業当初から水処理を行っているので,かかる見地においても,本件Y社施設と杉並中継所を単純に比較することには疑問がある。 さらに,上記(2)で判示したとおり,TVOCによる危険性は現在の科学的知見において明らかになっておらず,その危険性を認めることは困難である。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 (6)受忍限度の判断受忍限度の判断としては,前記2で判示したとおり,侵害行為の態様とその程度,被侵害利益の性質とその内容,侵害行為のもつ公共性,発生源対策等の事情を総合的に考慮して判断する必要がある。 ア侵害行為の態様等上記(2)ないし(4)で判示したとおり,本件Y社施設から人の健康に影響を及ぼす程度の有害化学物質が発生していること,原告らが本件Y社施設由来の有害化学物質に曝露していること,原告らが本件Y社施設由来の有害化学物質によって健康被害を生じたことのいずれについても,これを認めるに足りる的確な証拠は存在せず,認めることはできないのであるから,侵害の程度としても,心理的な嫌悪感程度のものを超えることの具体的証明がなされていないといわざるを得ない。 イ ついても,これを認めるに足りる的確な証拠は存在せず,認めることはできないのであるから,侵害の程度としても,心理的な嫌悪感程度のものを超えることの具体的証明がなされていないといわざるを得ない。 イ公共性等(ア)マテリアルリサイクルの優先性については,前記3(6)アで判示し- 152 -たとおり,見直しの機運はあったものの,合同会合取りまとめにおいては,マテリアルリサイクルは,繰り返し再生利用されている白色トレイに準じた再商品化率及び再商品化の効率化が図られる可能性を有しているとして,平成20年度より,再商品化製品が一定の品質基準を満たす場合に限り,容リ協における入札において,マテリアルリサイクルを優先的に取り扱うべきであるとされているので,現状においても,マテリアルリサイクルの優先性は維持されているものと認められる。 (イ)そして,本件Y社施設は,前記3(6)イ(ア)で判示したとおり,容リ法に基づいて設置されている施設であり,平成15年3月に大阪府が策定した「大阪エコエリア構想」において,「当面整備が望ましいリサイクル・適正処理施設」として位置づけられた施設であり,平成17年7月に大阪府が取りまとめ,環境大臣及び経済産業大臣から承認を受けた「大阪エコタウンプラン」において,「先導的に整備すべきリサイクル施設」として選定された施設であるので,国や地方公共団体の環境政策に沿った公共的施設であるということができる。 また,本件Y社施設は,前記3(6)ア(イ)及び(ウ)で判示したとおり,合同会合取りまとめにおいて要請されている優先的取扱いの条件について,塩素分についても,水分についても条件を満たしているのであるから,施設の具体的運営の点においても特段問題は存しないということができる。 以上によれば,本件Y社施設は,国や地方公共団体の 件について,塩素分についても,水分についても条件を満たしているのであるから,施設の具体的運営の点においても特段問題は存しないということができる。 以上によれば,本件Y社施設は,国や地方公共団体の環境政策に沿った公共的施設であるということができ,一定の公共性を有しているものというべきである。 (ウ)これに対し,原告らは,廃プラのマテリアルリサイクルの非経済性,国の施策が動揺していること,本件Y社施設の収率が約51パーセントと低いことなどを指摘し,本件Y社施設には公共性がない旨主張してい- 153 -る。 確かに,マテリアルリサイクルには,収集・運搬・選別過程を必然的に伴うため,同過程にかかるコストが経済性を落とすことは避けがたく,また,同過程や製造過程などで輸送燃料や熱源等として投入されるエネルギーの量などの事情によっては環境負荷対策等としての価値にも問題が生じかねない面がある上,バージン原料に比べて品質のコントロールが難しい面があるため製品の品質や多様性,収益性にも一定の限界があるし,持ち込まれた廃プラの半分程度しか利用できないなど,リサイクル手法としての限界があることは否めず,その公共性も手放しで承認できるものとはいえない。 しかしながら,リサイクルの公共性は経済面だけで成り立っているものではなく,環境対策等の諸側面も含めて成り立っているものであるから,マテリアルリサイクルが経済性において他の廃プラ処理手法に劣るからといって,直ちに,マテリアルリサイクルの公共性が他の廃プラ処理手法に劣後するということにはならないし,マテリアルリサイクルの経済性はバージン原料たる石油の価格の騰落と相関関係にあり,かねてから石油資源に限界が指摘され続けている中で将来を含めて経済性を考えた場合に,マテリアルリサイクルの経済性が劣ると即断すること クルの経済性はバージン原料たる石油の価格の騰落と相関関係にあり,かねてから石油資源に限界が指摘され続けている中で将来を含めて経済性を考えた場合に,マテリアルリサイクルの経済性が劣ると即断することは疑問である。また,国の施策が動揺しているといっても,マテリアルリサイクルの価値を否定したという状況にはなく,公共性の否定には結びつかないというべきである。さらに,マテリアルリサイクルの収率の問題は,今後の技術革新や住民レベルを含めた分別の適正,効率化の問題でもあり,また,マテリアルリサイクルに適した廃プラをマテリアルリサイクルに,そうでない廃プラは,ケミカルリサイクルや生ゴミの助燃剤等として活用して熱回収等にというリサイクル手法の使い分けの問題ともいえるものであって,リサイクル手法相互間の相対的優位性には影響- 154 -し得ても,直ちにマテリアルリサイクルの公共性の否定に結びつくものではないというべきである。 よって,原告らの上記主張は採用することができない。 ウその他の事情について(ア)被告Y社は,前記第2,1(2)ウ(ス)及び前記3(2)イで判示したとおり,原告らを含む周辺住民からの苦情等を考慮し,脱臭装置を設置して臭気対策を実施するとともに,平成17年から平成19年にかけて,大気環境等の調査を継続的に行い,その結果をホームページで一般公開している(弁論の全趣旨)ことを考慮すると,被告Y社が環境調査及び環境対策にも一定の関心を持って取り組んでいることが認められる(ただし,廃プラに食品残渣等の有機性の汚れが少なからず付着し,廃プラがストックされる中で発酵・腐敗したりその他の化学変化を来して悪臭を放つことは容易に予測し得たにもかかわらず,ベール置場や選別・洗浄過程に由来する排気について臭気除去対策を講じていないことや窓やシャッ トックされる中で発酵・腐敗したりその他の化学変化を来して悪臭を放つことは容易に予測し得たにもかかわらず,ベール置場や選別・洗浄過程に由来する排気について臭気除去対策を講じていないことや窓やシャッターを開け放したままの状態で操業していることもあること(甲A96,97)は,本件4市組合施設においては,エアーカーテンや高速シートシャッターなどを設置して施設内と外界とをできるだけ遮断し,施設内空気の漏洩を防ぐとともに各所で空気を吸引し脱臭装置を経由させた上で排気するという対策を講じていることと比較すると,その対応に不十分な点が残ることは否めない。)。 また,本件全証拠によっても,被告Y社による本件Y社施設の建設について,違法な手続が履践されたと認めることはできない。 (イ)これに対し,原告らは,寝屋川市長が寝屋川市都市計画審議会に対し,本件Y社施設について建築基準法51条ただし書新築許可の審議を申請し,同審議会が許可すべき旨の決議をし,それを受けて寝屋川市長が建築許可をしたのは,いずれも,寝屋川市自身が策定した判断基準を- 155 -無視したものであって違法である,本件Y社施設が大阪エコエリア及び大阪エコタウン構想に反していると主張している。 しかし,建築基準法51条ただし書は,許可の基準について何ら示しているものではなく,仮に寝屋川市長の建築許可が寝屋川市の内部基準に反していたとしても,直ちに建築基準法51条ただし書に違反することにはならないというべきであるから,本件Y社施設への建築許可を問題とする原告らの主張は失当である。 また,本件Y社施設の建設に関し,原告らを含む周辺住民の満足を得られる手続・説明等がなされていなかったことに対する不満は存在するとしても,大阪エコエリア及び大阪エコタウン構想に反していることを認めるに足りる的確な証 の建設に関し,原告らを含む周辺住民の満足を得られる手続・説明等がなされていなかったことに対する不満は存在するとしても,大阪エコエリア及び大阪エコタウン構想に反していることを認めるに足りる的確な証拠は存在しないのであるから,原告らの上記主張は前提を欠いており採用することができない。 エ小括以上のとおり,そもそも被告Y社による原告らを含む本件Y社施設周辺住民に対する侵害の程度は証拠上小さいものといわざるを得ないこと,廃プラのマテリアルリサイクルには公共性があり,それに取組む本件Y社施設にも一定の公共性があること,被告Y社が環境対策等にも相応の関心を持って取り組んでいること,本件Y社施設の建設について行政上の諸手続に違法性は認められないこと等本件において認められる諸般の事情を総合考慮すれば,本件Y社施設の操業により,原告らにおいて,社会の一員として社会生活を送る上で受忍するのが相当といえる限度を超える侵害があった,又は,その蓋然性があるとまでは認められない。 (7) 結論 以上のとおりであって,本件Y社施設からの排出物によって,原告らに受忍限度を超える健康被害が現に生じている,あるいは今後生じる蓋然性があるとの原告らの主張は,採用することができない。 - 156 - 争点(3)(本件4市組合施設から排出されるVOC等によって,原告らに受忍限度を超える健康被害が発生したか,発生する蓋然性があるか。)について(1)発生・排出ア理論面における有害化学物質の発生まず,前記4(2)アで判示したとおり,理論面においては,いわゆるプラスチックが劣化したり,機械的処理を加えられたりすると,化学物質が発生するところ,本件4市組合施設においては,圧縮工程等の廃プラに機械的処置を加える工程が存在するので,本件4市組合施設の操業によって何らかの化学 したり,機械的処理を加えられたりすると,化学物質が発生するところ,本件4市組合施設においては,圧縮工程等の廃プラに機械的処置を加える工程が存在するので,本件4市組合施設の操業によって何らかの化学物質が発生する可能性があると認められる。 そして,前記3(2)エで判示したとおり,専門委員会における圧縮実験において,廃プラの圧縮により化学物質が発生することが確認されていることも併せて考慮すると,本件4市組合施設の操業によって何らかの化学物質がある程度発生しているものと認められる(なお,前記4(2)においても判示したとおり,プラスチックに機械的処理を加えることによって発生する化学物質に量については不明であるので,上記の発生した化学物質が廃プラの機械的処理に伴って発生したものであるか,それとも廃プラに付着していた残渣から発生したものであるかについても不明であるが,少なくとも本件4市組合施設の操業に伴って発生していることにはかわりがない。)。 そこで,以下においても,原告らが主張する,TVOC及び既知の有害化学物質の人の健康に影響を及ぼす程度の排出の有無について検討する。 イ有害化学物質の大量排出をいう原告らの主張の検討(ア)専門委員会の報告をも上回るTVOCの排出についてa原告らは,専門委員会においても,排出ガスのトルエン換算値を1400μg/㎥まで抑制することを前提としていたにもかかわらず,本件4市組合施設は,専門委員会においても想定外の極めて高濃度の- 157 -NMHCを常時排出していることが判明しており,その危険性は明らかである旨主張する。 bしかし,前記4(2)で判示したとおり,そもそも,現代の科学的知見としては,VOCの総量によって,人の健康に影響を及ぼす危険性の有無を判断する指標とはなりえないのであり(このことは,本件 する。 bしかし,前記4(2)で判示したとおり,そもそも,現代の科学的知見としては,VOCの総量によって,人の健康に影響を及ぼす危険性の有無を判断する指標とはなりえないのであり(このことは,本件4市組合施設のチャンバー室内の空気中のTVOCのうち,概ね75パーセント以上がイソブタン,ノルマルブタン,イソベンタン,エタノール等によって構成されていたが(丙A58),これらの物質がいずれも有害大気汚染物質として環境基準値等が定められていないこと(丙A37,Q証人)に照らしても,明らかである。),トルエン換算値1400μg/㎥というのは飽くまで専門委員会が設定した参考値であって,統一的な規制値ではない。 また,大気による拡散・希釈後の数値(1400μg/㎥)と拡散前の排出ガスの濃度を単純に比較して危険性を論じることも合理性を欠くものといわざるを得ない。 なお,本件4市組合施設において,専門委員会が想定しなかったTVOCの測定結果が生じているのは,本来,分別排出,分別回収が十分に機能しておれば本件4市組合施設に搬入されることのないヘアースプレー,殺虫剤等の容器やガスライターなどが相当程度混入されたまま搬入されて来ること(丙A59の1及び2)が影響しているものと推測することができる。 また,直接的な健康被害に関係するわけではないが,本件4市組合施設は,大気汚染防止法における揮発性有機化合物(VOC)排出施設ではないとしても,本件4市組合施設で測定されたTVOCの1時間当たりの最大濃度は,2万5480μg/㎥であって(甲A133),これは,大気汚染防止法が定める排出基準の約12%にしか過- 158 -ぎない(弁論の全趣旨)のであるから,本件4市組合施設は大気汚染防止法におけるVOC排出基準にも適合しているものと認められる。 c以上のとおり 止法が定める排出基準の約12%にしか過- 158 -ぎない(弁論の全趣旨)のであるから,本件4市組合施設は大気汚染防止法におけるVOC排出基準にも適合しているものと認められる。 c以上のとおりであって,原告らのTVOCの危険性の主張は採用することができない。 (イ)既知の有害化学物質の危険性についてa専門委員会報告の信用性等について(a)原告らは,圧縮実験に関し,実験に用いた圧縮装置の圧縮速度の最高速度は1.6㎝/秒であり,被告4市組合の事務局が設定したと報告されている40㎝/秒の20倍以上遅い速度であったとして,専門委員会報告における圧縮実験がリスクを過小評価している旨主張する。 (b)しかし,本件4市組合施設における圧縮速度が原告らの主張するような速度であること及び実験に用いた圧縮装置の圧縮速度が原告らの主張するような速度であったことを認めるに足りる証拠はなく(丙34,35号証によれば,本件4市組合施設の圧縮機の押出し部分の移動速度は,約1.5メートルを約13秒間で移動すると試算できる。),丙A35,37号証によれば,被告4市組合の事務局は圧縮速度に関して専門家に要請し,専門家が実験を行っていること,専門委員会においては,圧縮実験において,圧縮速度よりもプラスチックに加わる圧力が同じであることを重視していること,H論文(甲A2)においても,圧縮速度を問題とすることなく,プラスチックにかかる力を問題としていることからすれば,プラスチックからの化学物質の発生に関しては,速度以上に圧力が重要視されているということができ,仮に圧縮速度が多少異なっていたとしても,危険性のリスクの評価に当たってはさほど大きな影響は生じない程度のものであるということができる。 - 159 -また,専門委員会は,圧縮実験において,圧縮工程にお 縮速度が多少異なっていたとしても,危険性のリスクの評価に当たってはさほど大きな影響は生じない程度のものであるということができる。 - 159 -また,専門委員会は,圧縮実験において,圧縮工程において発生する化学物質につき真空プレス機により全量採取するようにしているところ(丙A38),危険性を過小評価することがないように配慮していたことが認められる。 以上によれば,専門委員会報告は信用することができるというべきである。 (c)そして,前記3(2)エで判示したとおり,専門委員会における圧縮実験の結果は,別紙10及び別紙11のとおりであって,測定項目となった18種の化学物質については,いずれも環境基準値等を大きく下回っているので,基本的には,本件4市組合施設での圧縮工程においては,プラスチック自体から及び廃プラから人の健康上問題とされるべき量の有害化学物質が発生することはないものと推測することができる。ただ,廃プラの圧縮実験において,純窒素の環境下より純AIRの環境下の方が発生量が多かったベンゼン,アセトアルデヒド等については,本件4市組合施設稼働後の調査において注意して検討する必要がある。 b被告4市組合大気汚染物質調査について被告4市組合大気汚染物質調査の結果は,前記3(2)エ(イ)で判示したとおりであり,測定した6項目(ベンゼン,ジクロロメタン,トリクロロエチレン,テトラクロロエチレン,アセトアルデヒド,ホルムアルデヒド)すべてにおいて,いずれも環境基準及び室内環境基準値を下回る数値となっている。 この点,測定項目が6項目と少ないということはあるが,上記aで判示したとおり,専門委員会における圧縮実験の結果において問題となることがあり得るベンゼン,アセトアルデヒド等については測定対象とされているので,上記調査対象に特段の問題 いうことはあるが,上記aで判示したとおり,専門委員会における圧縮実験の結果において問題となることがあり得るベンゼン,アセトアルデヒド等については測定対象とされているので,上記調査対象に特段の問題は存しない。 - 160 -c以上によれば,本件4市組合施設から人体に影響を及ぼす程度の既知の有害化学物質が排出されていると認めることはできない。 (ウ)VOC100物質の危険性についてなお,原告らは,被告4市組合が観測し分析したTVOCの組成のイソブタン,ノルマルブタン,イソぺンタン及びエタノールについて,VOCに該当する主な物質100項目にそれぞれ該当し危険性を有する物質であると主張する。 しかし,前記4(2)で判示したように,かかる100の物質は,関係者の理解を容易にするため,VOCに該当する主な物質として,平成12年度における排出量推計結果に基づき排出量の多い順番に100種類の物質の名称を記載しているだけであって,当該物質の危険性を考慮して記載されたものではないから,原告らの主張は失当である。 (エ)小括以上のとおりであって,本件4市組合施設から人体に影響を及ぼす程度の有害化学物質が排出されたことを認めるに足りる的確な存在しないのであるから,原告らの主張は採用することができない。 ウ杉並中継所との比較(ア)原告らは,本件4市組合施設からのTVOCの1日あたりの排出量は,平成20年2月の平均値を用いると2520グラム,同年3月の平均値を用いると4080グラムであって,杉並中継所におけるTVOCの1日あたりの排出量(1890グラム)を上回っていることからすれば,本件における原告ら住民の重大な健康被害を裏付けているということができる旨主張する。 (イ)しかし,TVOCの排出濃度が健康に対する危険性を示す指標でないことは,前記 上回っていることからすれば,本件における原告ら住民の重大な健康被害を裏付けているということができる旨主張する。 (イ)しかし,TVOCの排出濃度が健康に対する危険性を示す指標でないことは,前記4(2)で判示したとおりである。 また,VOCの排出量は,ごみの質や量によって異なるものであると- 161 -ころ,本件4市組合施設において処理するものは,一般廃棄物のうち,いわゆる容リ法に規定するペットボトル及びプラスチック製容器包装に限られているのに対し,杉並中継所における処理の対象物は,ビンや内容物が残留しているスプレー缶,乾電池等が含まれる非常に雑多な組成の一般不燃ゴミ全般であって,両者は明らかに処理対象物が異なり,比較の前提を欠くということができる。 したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 エ小括以上のとおりであって,本件4市組合施設から何らかの化学物質が発生しているとしても,そもそもVOCの総量を危険性の指標として理解することには現代の科学的知見においては疑問がある上に,本件4市組合施設から人の健康に影響を及ぼす程度の化学物質が排出されていることを認めるに足る的確な証拠は存在せず,むしろその排出を否定する調査結果が存在することからすれば,本件4市組合施設から有害化学物質が排出されているとする原告らの主張は採用することができない。 (2)到達・曝露について上記(1)で判示したとおり,本件4市組合施設から人体に影響を及ぼす程度の化学物質が排出されていると認めることはできないのであるから,原告らが本件4市組合施設由来の化学物質に曝露した事実についても認めることは困難である。 また,被告4市組合からは,大気の拡散・希釈に関する具体的予測の資料の提出はなされていないが,一般論として,本件4市組合施設から排出される化学 物質に曝露した事実についても認めることは困難である。 また,被告4市組合からは,大気の拡散・希釈に関する具体的予測の資料の提出はなされていないが,一般論として,本件4市組合施設から排出される化学物質においても,大気中への拡散により相当程度希釈されるものと推認することができる。 したがって,そもそも本件4市組合施設から人の健康に影響を及ぼす程度の化学物質が排出されていることを認めることができないのであるから,論- 162 -理的に原告らの有害化学物質の曝露も認めることはできず,また,実際にも,原告らの有害化学物質の曝露を認めるに足りる的確な証拠が存在しないのであるから,原告らが本件4市組合施設由来の有害化学物質に曝露したと認めることはできない。 (3)本件4市組合施設由来の有害化学物質による健康被害上記(1)及び(2)で判示したとおり,そもそも,本件4市組合施設から人の健康に影響を及ぼす程度の化学物質が排出されていることも,本件4市組合施設由来の化学物質が原告らに到達していることも認めることはできないのであるから,本件4市組合施設由来の有害化学物質による健康被害の発生を観念することはできない。 また,本件4市組合施設稼働後に,原告らの健康被害が生じた,又は,健康被害が悪化したと認めるに足りる的確な証拠はない。 以上によれば,本件4市組合施設由来の有害化学物質による健康被害が発生した(発生する蓋然性がある)との原告らの主張は採用することができない。 (4)受忍限度の判断受忍限度の判断としては,前記2で判示したとおり,侵害行為の態様とその程度,被侵害利益の性質とその内容,侵害行為の持つ公共性,発生源対策等の事情を総合的に考慮して判断する必要がある。 ア侵害行為の態様等上記(1)ないし(3)で判示したとおり,本件4市組合施設から人の 度,被侵害利益の性質とその内容,侵害行為の持つ公共性,発生源対策等の事情を総合的に考慮して判断する必要がある。 ア侵害行為の態様等上記(1)ないし(3)で判示したとおり,本件4市組合施設から人の健康に影響を及ぼす程度の化学物質が発生していること,原告らが本件4市組合施設由来の有害化学物質に曝露していること,原告らが本件4市組合施設由来の有害化学物質によって健康被害を生じたことのいずれについても,これらを認めるに足りる的確な証拠は存在しないのであるから,侵害の程度としても嫌悪感等心理的なもの以上のものであることを認めるには至ら- 163 -ない。 イ公共性等(ア)マテリアルリサイクルの優先性については,前記4(6)で判示したとおりであって,現状においても,マテリアルリサイクルの優先性は維持されていると認められる。 (イ)そして,本件4市組合施設は,前記3(6)イ(イ)で判示したとおり,枚方市,寝屋川市,四條畷市及び交野市の北河内4市の各家庭から分別排出されたペットボトル及びプラスチック製容器包装をリサイクルするため,選別・圧縮梱包処理する施設であり,北河内4市地域におけるごみ減量化・リサイクルを推進し,循環型社会を目指すという行政施策の中心を担っているということができる。 したがって,本件4市組合施設は,国や地方公共団体の環境政策に沿った公共的施設であるということができ,公共性を有していると認められる。 ウ対策等被告4市組合は,専門委員会における議論をも踏まえ,活性炭吸着装置により本件4市組合施設から排出される空気を浄化し,また,エアーカーテン,高速シートシャッター及びスチールシャッターを設置するして本件4市組合施設内の空気ができる限り漏出しないようにするなどして,環境保全対策を講じている。 また,本件4市組合施設にお ,エアーカーテン,高速シートシャッター及びスチールシャッターを設置するして本件4市組合施設内の空気ができる限り漏出しないようにするなどして,環境保全対策を講じている。 また,本件4市組合施設においては,排出ガスを排出空気測定器によって24時間連続測定し,モニタリングするとともに地域住民に情報を開示している。 エその他(ア)原告らは,本件4市組合施設について,一応都市計画決定の手続を踏んではいるが,その手続における付近住民の参加,住民合意という点- 164 -では極めて不十分であった旨主張する。 (イ)しかし,本件全証拠によっても,本件4市組合施設について,都市計画法に定められている所定の都市計画決定手続が違法になされたとは認められず,都市計画決定手続に係る法的瑕疵は存在しないのであるから,特段,本件における受忍限度の判断において問題とすべき事情は存在しない。 オ小括以上のとおり,そもそも被告4市組合による侵害の程度が大きいとはいえないこと,廃プラのマテリアルリサイクルには公共性があり,それに取組む本件4市組合施設にも公共性があること,本件4市組合施設において,相応の環境保全対策が講じられていること,本件4市組合施設の建設について行政上の諸手続を適法に履践していること等本件において認められる諸般の事情を総合考慮すれば,原告らにおいて,社会の一員として社会生活を送る上で受忍するのが相当といえる限度を超えている侵害があった,又は,その蓋然性があるとまでは認められない。 (5) 結論 以上のとおりであって,本件4市組合施設からの排出物によって,受忍限度を超える健康被害が生じている(生じる蓋然性がある)とする原告らの主張は,採用することができない。 争点(4)(本件Y社施設,本件4市組合施設,第2京阪道路等の施設から排出され よって,受忍限度を超える健康被害が生じている(生じる蓋然性がある)とする原告らの主張は,採用することができない。 争点(4)(本件Y社施設,本件4市組合施設,第2京阪道路等の施設から排出されるVOC等の複合汚染によって,原告らに受忍限度を超える健康被害が発生したか,発生する蓋然性があるか。)について(1)複合汚染により健康被害が生じたことが認められるのであれば,一般論として,複合汚染に関与する施設の操業の差止めを認める余地もあると解することはできるが,本件においては,上記4及び5で判示したとおり,そもそも本件Y社施設及び本件4市組合施設が,人の健康に影響を及ぼす程度の- 165 -化学物質を排出している事実を認めることはできず,原告らにおいて,人の健康に影響を及ぼす有害化学物質の到達・曝露の事実を認めることもできないのであるから,少なくとも現時点において,本件地域に複合汚染が発生していることを認めるに足りる証拠は存しない。 また,本件2施設の近辺には,その北側に寝屋川市清掃工場が現に操業しており,その東側に第2京阪道路の施設工事がされていることが認められるものの,それらの施設からいかなる大気汚染物質が排出されているのか,今後,排出されることが予想されるのかについては何らの資料もなく,まったく不明である。 (2)したがって,原告らの複合汚染に関する主張は,何ら資料が存在せず,これを採用することができない。 (3)なお,原告らの居住地域は,平穏な住宅地であるにもかかわらず,その周辺地域には,前記3(1)ア(イ)のとおり,私企業が営む工場,作業所の他,既に寝屋川市の廃棄物焼却場であるクリーンセンターが存在し,その近隣に本件2施設が建設され,さらに,南東側に第2京阪道路が建設されているなど,揮発性有機化合物(VOC)等を発生させ 場,作業所の他,既に寝屋川市の廃棄物焼却場であるクリーンセンターが存在し,その近隣に本件2施設が建設され,さらに,南東側に第2京阪道路が建設されているなど,揮発性有機化合物(VOC)等を発生させる可能性のある施設が集中しており,居住環境に大きな負荷がかかっていることが認められるのであって,原告らが,大気の安全性について不安を有し,神経を尖らせるのも無理もない状況であるといえる(原告らの不安感は,本件2施設が,その計画,設置手続に際し,必ずしも,地域住民に対する説明や情報公開等が十分でなかったことにより増幅されていることが窺える。)。特に,今後,第2京阪道路の供用が開始された際には,その影響も無視できないものであり,本件地域における大気環境に相当な影響を与えることが予想される。したがって,被告らは,原告らを含む周辺住民に対し,今後とも,可能な限り,情報や検査結果を公開するとともに,化学物質の排出を最小限に抑制する努力・工夫を継続し,複合的な大気汚染が生じることのないよう注意していく必要がある- 166 -ものというべきである。 結論 以上の次第で,原告らの被告らに対する本件請求は,いずれも理由がないからこれらを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第24民事部裁判長裁判官村岡寛裁判官宮本博文裁判官原田宗輔

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