平成26(わ)1284 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反,銃砲刀剣類所持等取締法違反,現住建造物等放火,非現住建造物等放火,殺人未遂(変更後の訴因 傷害),殺人

裁判年月日・裁判所
令和4年9月28日 福岡地方裁判所
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判決文本文63,880 文字)

令和4年9月28日宣告平成26年第1284号組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件(以下「看護師事件」という。)平成27年第231号組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件(以下「歯科医師事件」という。)平成27年第918号組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件(以下「元警察官事件」という。)平成27年第1732号現住建造物等放火、非現住建造物等放火被告事件(以下「放火事件」という。)平成28年第809号殺人未遂(変更後の訴因は傷害)被告事件(以下「丙事件」という。)平成29年第115号殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件(以下「甲事件」という。)平成29年第718号組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件(以下「乙事件」という。) 主文 被告人を無期懲役に処する。 未決勾留日数中1000日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)第1【甲事件】被告人は、E、F、G、H、I、J、Kと共謀の上、法定の除外事由がないのに、 1 平成23年11月26日午後9時頃、不特定又は多数の者の用に供される場所である北九州市B3区(以下省略)のL方前路上付近において、被告人が、 前記L(当時72歳。)に対し、殺意をもって、所携の回転弾倉式けん銃で、同人の身体を目掛けて弾丸2発を発射し、うち1発を同人の頚部に命中させ、よって、同日午後10時3分頃、同市C3区(以下省略)のK3病院において、同人を右内頚静脈及び右鎖骨下動脈の離開に基づく失血により死亡させて殺害した。 2 同日午 ち1発を同人の頚部に命中させ、よって、同日午後10時3分頃、同市C3区(以下省略)のK3病院において、同人を右内頚静脈及び右鎖骨下動脈の離開に基づく失血により死亡させて殺害した。 2 同日午後9時頃、L方前路上付近において、前記けん銃1丁を、これに適合するけん銃実包2発と共に携帯して所持した。 第2【元警察官事件】平成24年4月19日当時、被告人は指定暴力団五代目A2會(以下、その前身や代替わり前の組織を含め「A2會」という。)専務理事兼A2會の二次団体である五代目B2組(以下、代替わり前の組織を含め「B2組」という。)若頭補佐、MはA2會総裁、NはA2會会長、OはA2会理事長兼B2組組長、FはA2會上席専務理事兼B2組若頭、GはA2會専務理事兼B2組筆頭若頭補佐、PはA2會専務理事兼B2組組長付、QはA2會理事兼B2組組員、KはA2會幹事兼B2組組員、R及びS(以下「S」という。)はいずれもB2組組員であったものであるが、被告人は、M、N、O、F、G、P、Q、K、R及びSと共謀の上、組織により、元福岡県警察警察官a(当時61歳)を殺害することになってもやむを得ないと考え、A2會の活動として、Mの指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務分担に従って、いずれも法定の除外事由がないのに、 1 平成24年4月19日午前7時6分頃、不特定又は多数の者の用に供される場所である北九州市C3区(以下省略)付近路上において、Pが、aに対し、殺意をもって、所携の自動装てん式けん銃で、aの身体を目掛けて弾丸2発を発射し、同人の左腰部及び左大腿部に1発ずつ命中させ、もって団体の活動として組織により人を殺害しようとしたが、同人に約1か月間の入院及び通院加療を要する見込みの左股関節内異物残留、左大腿部銃創の傷害を負わせたにと 部に1発ずつ命中させ、もって団体の活動として組織により人を殺害しようとしたが、同人に約1か月間の入院及び通院加療を要する見込みの左股関節内異物残留、左大腿部銃創の傷害を負わせたにと どまり、殺害するに至らず、さらに、引き続き、同所において、Pが、所携の前記けん銃で、地面に向けて弾丸1発を発射した。 2 前記1の日時場所において、前記けん銃1丁を、これに適合するけん銃実包3発と共に携帯して所持した。 第3【放火事件】被告人は、 1 O、F、T、U及びVと共謀の上、平成24年8月14日午前4時26分頃、Wほか2名が現に住居に使用し、かつ、現に同人ら10名がいた北九州市B3区(以下省略)所在のD4ビル(鉄筋コンクリート造陸屋根等6階建、床面積合計約1025.39平方メートル)において、T及びVが、同ビル3階に停止していたエレベーター乗りかご内に灯油をまいた上、同エレベーター乗りかご内に火をつけた発炎筒を投げ込んで火を放ち、その火を同エレベーター乗りかごの天井及び3階エレベーター前床面等に燃え移らせ、よって、建造物である同ビルのエレベーター乗りかごを全焼させるとともに、同ビル3階エレベーター前床面の一部を焼損(焼損面積合計約3.2平方メートル)した。 2 O、F、X、U及びQと共謀の上、同日午前4時30分頃、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない同市B3区(以下省略)所在のL3株式会社が所有するM3ビル(鉄筋コンクリート造陸屋根6階建、床面積合計1313. 31平方メートル)において、X及びQが、同ビル3階に停止していたエレベーター乗りかご内に灯油をまいた上、同エレベーター乗りかご内に火をつけた発炎筒を投げ込んで火を放ち、その火を同エレベーター乗りかごの内壁等に燃え移らせ、よって、建造物である同ビルのエレベ いたエレベーター乗りかご内に灯油をまいた上、同エレベーター乗りかご内に火をつけた発炎筒を投げ込んで火を放ち、その火を同エレベーター乗りかごの内壁等に燃え移らせ、よって、建造物である同ビルのエレベーター乗りかごを全焼させて焼損(焼損面積約1.7平方メートル)した。 第4【乙事件】平成24年9月7日当時、被告人はB2組筆頭若頭補佐、OはB2組組長、FはB2組若頭、HはB2組組織委員長、GはB2組風紀委員長、T及びXは B2組組織委員、KはB2組組員であったものであるが、被告人は、O、F、H、G、T、X及びKと共謀の上、B2組の不正権益を維持・拡大する目的で、組織により、Bがタクシーで帰宅した際に同人を襲撃し、その際同人を殺害することになってもやむを得ないと考え、B2組の活動として、Oの指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務分担に従って、 1 平成24年9月7日午前零時58分頃、北九州市B3区(以下省略)東側駐車場において、タクシーを降車したB(当時35歳)に対し、Tが、殺意をもって、持っていた刃物でその左顔面を1回切り付け、その臀部を1回突き刺したが、Bに入院加療約114日間を要する左顔面切創、左顔面神経損傷、右臀部刺創等の傷害を負わせたにとどまり、殺害するに至らなかった。 2 前記1の日時、場所において、前記1の犯行を制止しようとした前記タクシーの運転手C(当時40歳)に対し、Tが、殺意をもって、前記刃物でCの左側頭部等を切り付けたが、同人に入院加療14日間を要する左側頭部切創、左耳介切創、左頚部創、手背部切創等の傷害を負わせたにとどまり、殺害するに至らなかった。 第5【丙事件】被告人は、O、F、H、D、T、R及びKと共謀の上、平成24年9月26日午前零時38分頃、北九州市B3区(以下省略)出入口前において 負わせたにとどまり、殺害するに至らなかった。 第5【丙事件】被告人は、O、F、H、D、T、R及びKと共謀の上、平成24年9月26日午前零時38分頃、北九州市B3区(以下省略)出入口前において、Dが、b(当時54歳)に対し、持っていた刃物でその左臀部及び右大腿部を3回突き刺すなどし、よって、同人に入院加療15日間を要する臀部・大腿部刺創、頭部挫創の傷害を負わせた。 第6【看護師事件】平成25年1月28日当時、被告人は特定危険指定暴力団A2會専務理事兼B2組筆頭若頭補佐、MはA2會総裁、NはA2會会長、OはA2會理事長兼B2組組長、EはA2會理事長補佐兼E組組長、FはA2會上席専務理事兼B2組若頭、HはA2會専務理事兼B2組組織委員長、GはA2會専務理事兼B 2組風紀委員長、YはA2會専務理事兼B2組若頭補佐、ZはA2會専務理事兼B2組組長秘書、PはA2會専務理事兼B2組組長付、X及びTはA2會専務理事兼B2組組織委員、JはA2會常任理事兼E組組員であったものであるが、被告人は、M、N、O、E、F、H、G、Y、Z、P、X、T及びJと共謀の上、組織によりc(当時45歳)を殺害することになってもやむを得ないと考え、同日午後7時4分頃、福岡市D3区(以下省略)のN3北側歩道上において、A2會の活動として、Mの指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務分担に従って、Yが、cに対し、殺意をもって、所携の刃物で、左側頭部等を数回突き刺すなどし、もって団体の活動として組織により人を殺害しようとしたが、cに約3週間の入院及び通院加療を要する見込みの左眉毛上部挫創、顔面神経損傷、右前腕部挫創及び左殿部挫創の傷害を負わせたにとどまり、殺害するに至らなかった。 第7【歯科医師事件】平成26年5月26日当時、被告人は特定 を要する見込みの左眉毛上部挫創、顔面神経損傷、右前腕部挫創及び左殿部挫創の傷害を負わせたにとどまり、殺害するに至らなかった。 第7【歯科医師事件】平成26年5月26日当時、被告人は特定危険指定暴力団A2會専務理事兼B2組本部長、MはA2會総裁、NはA2會会長、OはA2會理事長兼B2組組長、XはA2會専務理事兼B2組若頭補佐、PはA2會専務理事兼B2組若頭補佐兼組長付、QはA2會理事兼B2組組員であったものであるが、被告人は、M、N、O、X、P及びQと共謀の上(ただし、X、P及びQとは組織的殺人の限度で共謀の上)、北九州市内及びその周辺を主たる縄張とするA2會の不正権益を維持・拡大する目的で、組織によりd(当時29歳。)を殺害することになってもやむを得ないと考え、同日午前8時29分頃、北九州市B3区(以下省略)所在のO3駐車場において、A2會の活動として、Mの指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務分担に従って、Pが、dに対し、殺意をもって、所携の刃物で、胸部、腹部、背部、大腿部等を目掛けて多数回突き刺すなどし、もって団体の不正権益を維持・拡大する目的で、かつ、団体の活動として組織により人を殺害しようとしたが、dに入院加療約14日間及び外 来加療約3か月間を要する見込みの左大腿部刺創、腹部刺創、胸壁刺創及び背部刺創の傷害を負わせたにとどまり、殺害するに至らなかった。 (証拠の標目)省略(事実認定の補足説明)第1 前提事実 1 A2會の概要A2會は、北九州市内に拠点を置く暴力団組織である。 A2會は、平成4年6月、福岡県公安委員会から、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に基づき、指定暴力団に指定され(当時の名称は二代目A2連合E2一家)、平成24年12月に特定危険指定暴力団にも指定 平成4年6月、福岡県公安委員会から、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に基づき、指定暴力団に指定され(当時の名称は二代目A2連合E2一家)、平成24年12月に特定危険指定暴力団にも指定され、以後、それぞれの指定を継続して受けている。 本件各事件のうち最初に発生した甲事件(判示第1)に先立って、平成23年7月、MをA2會総裁、Nを同会長、B2組組長であるOを同理事長とする体制が布かれ(この体制のA2會を、「五代目A2會」と呼称する。)、平成26年5月の歯科医師事件(判示第7)の発生に至るまで、維持されている。 その組織構成は、総裁Mを頂点として、会長N、理事長Oの順で序列が続き、理事長以下複数のA2會幹部組員による執行部が設けられているというものである。 Mの指示がNを経由せずOに直接下されることはなく、またMやNの指示が、Oを経由せずOより下の者に直接下されることもない(元警察官事件、看護師事件、歯科医師事件につき)。 B2組は、A2會傘下の最大の二次団体である。 五代目A2會への代替わりに先立ち、平成23年6月、OがNからB2組組長を継承し、B2組内序列2位の若頭にFを置く五代目B2組の体制が布 かれ、歯科医師事件まで維持されている。 B2組の組織構成は、組長を頂点として、以下、若頭、本部長、幹事長、組織委員長、風紀委員長、筆頭若頭補佐、若頭補佐の順で序列が続くというものである。 その他に、B2組の本部長であったEが組長を務めるE組など、B2組出身のA2會直若が組長を務める二次団体が存在する。これらB2組と関係を有する二次団体はB2組一門と称され、B2組一門に属する組員がB2組の事務所当番を担当するなど、出身母体であるB2組と親密で一体的な関係を保っている(元警察官事件、看護師事件、歯科医師事件 と関係を有する二次団体はB2組一門と称され、B2組一門に属する組員がB2組の事務所当番を担当するなど、出身母体であるB2組と親密で一体的な関係を保っている(元警察官事件、看護師事件、歯科医師事件につき)。 A2會及びB2組に関連する主たる事務所として、北九州市B3区(以下省略)(以下、断りのない限り、北九州市内の地名については、市の記載を省略する。)にA2会館、B3区(以下省略)にB2組本部事務所、B3区(以下省略)にB2組事務所があった。 2 被告人とA2會との関係被告人は、平成15年頃にA2會B2組内C2組の組員となり、平成23年6月、B2組の組長がNからOに代わり五代目B2組の体制が布かれるに伴いB2組に移籍し、B2組若頭補佐の地位に就いた。以後、被告人は、甲事件及び元警察官事件当時はB2組若頭補佐、放火事件、乙事件、丙事件及び看護師事件当時はB2組筆頭若頭補佐、歯科医師事件当時はB2組本部長の地位にあった。 第2 甲事件について(以下、「第2」内における「本件クラウン」「本件バイク」等の略称は、甲事件に関するものを指す。) 1 争点甲事件の争点は、①被告人が実行犯であるか、②実行犯の殺意、③被告人の共謀である。 2 認定事実⑴ 甲事件の概要平成23年11月26日午後9時頃(以下、「第2」において平成23年の記載は省略する。)、実行犯B3区(以下省略)のL方(以下「自宅」ということがある。)前路上付近において、大相撲九州場所の観戦を終えて帰宅したLに対し、所携のけん銃で弾丸2発を発射し、うち1発を同人の頚部に命中させて死亡させた。 ⑵ 各関係者の立場等ア 11月26日当時、被告人はB2組若頭補佐、EはA2會直若兼E組組長、FはB2組若頭、Hは 銃で弾丸2発を発射し、うち1発を同人の頚部に命中させて死亡させた。 ⑵ 各関係者の立場等ア 11月26日当時、被告人はB2組若頭補佐、EはA2會直若兼E組組長、FはB2組若頭、HはB2組組織委員長、GはB2組筆頭若頭補佐、I、J及びKはB2組組員であった。 イ当時、Lは、B3区に本店を置くP3株式会社の取締役を務めていた。 Lは、平素大相撲を愛好しており、毎年の大相撲九州場所の時期になると、15日分のチケットを手に入れて、ほぼ毎日、福岡市D3区の福岡国際センターで大相撲を観戦する習慣があった。Lは、大相撲を観戦する際、「砂かぶり」と呼ばれる東の花道沿いの前から数列以内の席に座り、その場所は頻繁にテレビに映ることから、大相撲中継を見た者がLの姿を見つけることは容易であった。 Lは、11月13日から福岡国際センターで開催されていた大相撲九州場所を観戦するため、連日、自家用車、知人の車、新幹線等を利用して、自宅と福岡国際センターとを往復していた。 ⑶ 犯行準備状況等ア Fは、11月16日、B2組組員であるDから自動車を借りて、R及びSと共に福岡国際センターへ行き、R及びSに指示して、大相撲観戦のため同センターに来ていたLの顔を確認させた。その後、F及びSは、同センターからバスで帰宅するLをD3駅まで追跡した。 Fは、同月22日及び23日、Kに指示して自動車を運転させ、Lが乗車する車両の後を追従したり、福岡国際センターを見て回ったりするなどして、それぞれLの行動確認をした。 イ Fは、同年の大相撲九州場所開催中、B2組本部事務所の会議室において、G組組員であったeに対し、Lが映っている大相撲中継の録画映像を示し、Lの顔を覚えさせた上、同日の事務所当番中に大相撲中継を見て、Lの行動を確認し、F 場所開催中、B2組本部事務所の会議室において、G組組員であったeに対し、Lが映っている大相撲中継の録画映像を示し、Lの顔を覚えさせた上、同日の事務所当番中に大相撲中継を見て、Lの行動を確認し、Fに報告するよう指示した。後日、Gは、G組事務所において、eに対し、大相撲中継を見るよう指示し、Lが大相撲中継に映っているか確認させた。 ⑷ 犯行日当日の関係者の行動等Lは、本件犯行当日である11月26日午後2時半ないし午後3時頃、大相撲観戦のため、妻であるA1及び知人であるM1と共に、M1の運転する白色クラウン(以下「本件クラウン」という。)に乗車し、福岡国際センターに向けて自宅を出発した。この時、Eは、本件クラウンの後を追従し、Lの行動確認をした。L、A1及びM1は、午後6時頃、大相撲観戦を終え、福岡市内の飲食店に立ち寄り食事をした後、本件クラウンで自宅に向かった。 Eは、本件クラウンがE4インターを通過する際、同車を追従して行動確認をした。 Kは、Fの指示に従い、同日午後6時頃からQ3インター付近の歩道上で待機し、同日午後8時50分頃、本件クラウンがQ3インターを通過するのを見て、あらかじめFに指示されていた番号に電話をかけ、その通話相手に報告した。 L及びA1は、同日午後9時頃、本件クラウンに乗って帰宅し、自宅玄関前の通路で同車から降りた。 実行犯が、Lに向かって、所携の回転弾倉式けん銃で弾丸2発を発射し、そのうち1発をLの頚部に命中させた。 Lは、病院に搬送されたが、その時点で既に心肺停止状態であり、同日午後10時3分に死亡が確認された。その死因は、頚部射創による右内頚静脈及び右鎖骨下動脈の離開に基づく失血であった。 及びの事実は、S、e、K等の各供述、カメラ映像、高速道路の通行券及び指掌紋の 10時3分に死亡が確認された。その死因は、頚部射創による右内頚静脈及び右鎖骨下動脈の離開に基づく失血であった。 及びの事実は、S、e、K等の各供述、カメラ映像、高速道路の通行券及び指掌紋の鑑定結果等によって認定した。弁護人はこれらの証拠の信用性を争っているが、S、e、K等の供述は裏付けとなる証拠があり、又は他の者の供述と相互に整合していることから信用し得、指掌紋鑑定も手法等に特段問題はなく、信用し得る。 3 被告人が実行犯か(争点①)被告人が実行犯かどうかについての主要な証拠は、J及びA1の供述である。 ⑴ J及びA1の供述ア Jの供述要旨被告人の本件犯行への関与に関し、Jは、要旨次のとおり供述する。 11月17日の昼頃、FからEのランサー(以下「本件ランサー」という。)を運転してG組事務所に来るよう指示されたので、同事務所に向かうと、Fと被告人がおり、両名とも本件ランサーに乗車してきた。Fの指示で本件ランサーを運転して福岡国際センターまで行き、被告人、F及び私の3名で、大相撲の九州場所を観戦した。観戦中指示されて本件ランサーで待機し、午後6時頃被告人から電話で連絡を受け、F及び被告人を乗せた。Fの指示の下、本件ランサーに乗ってF及び被告人と共にR3インター付近で待機していると、白いベンツが走っているのを見た。Fからこの白いベンツを追い掛けるよう指示されたので追跡を開始し、R3インターから高速道路に乗り、Q3インターで高速道路を降りた。この際、白いベンツがETCを使用していたので、お金を払っている間に見失わないように、自分たちもETCレーンを通った。S3の交差点を右折した後、白いベンツを見失ったが、Fの指示に従いある家の駐車場まで行ったところ、 白いベンツが駐まっていた。私が逮捕された後、この家が 自分たちもETCレーンを通った。S3の交差点を右折した後、白いベンツを見失ったが、Fの指示に従いある家の駐車場まで行ったところ、 白いベンツが駐まっていた。私が逮捕された後、この家がL方であることを知った。 11月の初旬にEからバイクを用意するよう指示されていたので、同月18日から19日にかけての夜、Iと共にC3区(以下省略)で、回路を直結させてバイク(以下「本件バイク」という。)を盗み、知人のガレージに隠した。その後、H1に依頼して本件バイクの修理をしてもらったり、本件バイクの車体を黒色に塗り替えたりした。 その後、別の日の昼頃、Eから呼び出され、Eが運転する本件ランサーに乗ってL方付近の三差路(以下「三差路」という。)の手前まで行った。 そこで、Eから、当日、Iと2人で目立たない車に乗り、この場所で待機すること、バイクに乗った2人組が来るから、そのバイクを受け取り右へ行き、バイクを処分すること、Iは2人組を車に乗せて右へ行くこと、バイクを処分できない場合は一度隠して後日処分することなどを指示された。 Iが知人からワゴンRを借りて用意した(以下「本件ワゴンR」という。)。 本件犯行の数日前、前記ガレージから本件バイクを持ち出し、被告人、H、I及び私の4人で、U3神社付近に行った。この時、Hが本件バイクの試し乗りをしたが、Uターン時に転倒した。その後、解散するに際して、Hから本件バイクを前記ガレージではなくB3区(以下省略)にあるガレージ(以下「T3のガレージ」という。)で保管するよう指示されたので、Hの案内で、被告人及びIと共にT3のガレージまで行き、本件バイクを保管した。 本件犯行当日午後5時頃、Iと共に本件ワゴンRに乗って集合場所に行き、被告人及びHと合流した。本件ワゴンRで移動しながら待機し、被告人及びH と共にT3のガレージまで行き、本件バイクを保管した。 本件犯行当日午後5時頃、Iと共に本件ワゴンRに乗って集合場所に行き、被告人及びHと合流した。本件ワゴンRで移動しながら待機し、被告人及びHは、本件ワゴンRの後部座席で、前もって用意していた衣服に着替えた。その後、被告人かHに、最終的な位置につくよう電話で連絡が入ったので、私とIは、被告人とHをT3のガレージに送った。私とIは三 差路の手前付近まで本件ワゴンRで移動し、待機した。その後、被告人かHから指示があり、三差路の手前の路上に移動した。約10分後、本件ワゴンRの後方から本件バイクがやって来て真後ろに止まったので、本件ワゴンRから降りて本件バイクに近づいたところ、本件バイクの後部座席から人が降りてきて本件ワゴンRに乗り込んだ。その人物の顔は見ていないが、衣服や背格好から、その人物は被告人だと思った。本件バイクの運転手の顔を見るとHだった。Hは本件バイクから降り、本件ワゴンRに乗った。私はHと本件バイクの運転手を替わり、あらかじめ決めていた隠し場所まで運転して本件バイクを隠した。 その後、Iが本件バイクの隠し場所付近まで本件ワゴンRで迎えに来てくれた。Iは、私に、三差路を左に行ったが人に見られたかもしれない、本件ワゴンRには着替えとけん銃が載っており、けん銃は2発発射されたが3発まだ弾が残ったままの状態で袋に入っていると述べた。Eに相談して、けん銃が入っているという袋は、その後Eと待ち合わせをしてEに渡し、着替えは、Eの実家の前の車に積み替えた。 翌日、Iと共に、本件バイクをE3区のM4に、本件ワゴンRをB3区(以下省略)の海にそれぞれ捨てた。 イ A1の供述要旨本件犯行の被害状況に関し、A1は、要旨次のとおり供述する。 事件当日、夫とM1と共に福 バイクをE3区のM4に、本件ワゴンRをB3区(以下省略)の海にそれぞれ捨てた。 イ A1の供述要旨本件犯行の被害状況に関し、A1は、要旨次のとおり供述する。 事件当日、夫とM1と共に福岡国際センターで大相撲の九州場所を観戦した後、M1が運転する本件クラウンで自宅へ向かった。M1が自宅の玄関前の坂の途中で本件クラウンを止めたので、M1にお礼を言って後部座席の運転席側のドアから降りた。その時、U3神社の方向からバイクが走ってきた。バイクには、顔が見えないような形のヘルメットを被った男性2人が乗っていた。バイクも服装も黒っぽかった。夫が助手席のドアから本件クラウンを降りるのとほぼ同時に、バイクの後部から1人の男性が飛 び降り、けん銃を構えるような仕草をした。その直後、パパパンと爆竹が鳴るような音がし、その男はバイクの後部に飛び乗って、B3区(以下省略)の方向に逃げた。私は、怖いと思い、自宅の方へ向かったが、夫がついてこなかったので驚いて立ち止まっていると、M1が引き返してきて、夫が倒れていると言った。戻ってみると夫が倒れていたので、110番通報をし、「今、主人がピストルで撃たれたから、すぐ来てください。」「単車の二人乗りのお兄ちゃんが撃って逃げました。」と伝えた。犯人がけん銃を構えるような仕草をした時、本件クラウンはすでにいなくなっていた。 ⑵ Jの供述の信用性ア 11月17日のLの行動確認については、携帯電話の通話履歴、高速道路通行券に付着したJの指紋及びETCの通行履歴と整合する。本件バイクを窃取し、本件バイク及びIが知人から借りた本件ワゴンRを犯行に使用し、これらを海に捨てたなどの点については、本件バイクが現にC3区(以下省略)において11月ないし12月頃窃取され、Jの供述と矛盾しない損傷がある本件 及びIが知人から借りた本件ワゴンRを犯行に使用し、これらを海に捨てたなどの点については、本件バイクが現にC3区(以下省略)において11月ないし12月頃窃取され、Jの供述と矛盾しない損傷がある本件バイクがM4から、Jが供述する知人名義の本件ワゴンRがB3区(以下省略)でそれぞれ発見され、N1が11月23日及び24日にHにT3のガレージを貸したこととよく整合している。犯行後の逃走状況については、犯行現場周辺の防犯カメラ映像と矛盾なく説明できる。これに対して、Jの供述に反する証拠は見受けられない。 Jの供述には上記のとおり裏付けとなる証拠が多数存在し、その供述内容は、J自身が、Lの行動確認、犯行に用いた本件バイクや本件ワゴンRの準備、実行犯の送迎と逃走援助、犯行用具の隠滅等を行ったという、自己の関与を自認するもので、その内容に疑問を抱かせる不自然、不合理な点はない。これらの事情によれば、Jの供述には全体として高い信用性を認めることができる。 弁護人は、ETCの通行履歴は本件ランサーの通行履歴ではなく、J及 び被告人が行動確認を行った裏付けにならない旨主張するが、関係証拠によれば、同通行履歴は本件ランサーのものと認められる。 また、弁護人は、本件バイクが甲事件で用いられたものでない可能性がある旨主張する。Jは、当初、本件バイクを本件ワゴンRと同様V3に捨てた旨供述していたが、捜査機関がV3の海中を捜索しても見つからず、他方、Jは別事件に用いたバイクをM4に捨てた旨供述していたところ、同所を捜索すると本件バイクが発見されたという経緯が認められ、バイクを捨てた場所について、甲事件と別事件とで当初記憶を混同していたと認められる。当初このような記憶の混同があったとしても、結局、本件バイクがJの供述によって初めて発見 れたという経緯が認められ、バイクを捨てた場所について、甲事件と別事件とで当初記憶を混同していたと認められる。当初このような記憶の混同があったとしても、結局、本件バイクがJの供述によって初めて発見されたことには変わりがなく、上記のとおり、海中から発見された本件バイクにJの供述と矛盾しない損傷があり、Jがこれを確認した上で甲事件に用いたものである旨供述していることからすれば、弁護人の主張するような可能性はないと認められる。 イ次に、Jが被告人の関与について部分的に事実と異なる供述をしている可能性がないかについて検討する。 Jと被告人は本件以前から交流があり、見知った間柄であることに加えて、本件犯行当日において、Jは、被告人、H及びIと場所を変えながら待機するなど、一定時間行動を共にしていたというのであるから、他人を被告人であると間違えて認識したとは考え難い。 Jは、A2會の幹部であり自己の直接の上位者であるEの関与を供述しているのに、被告人の関与について虚偽の供述をし、被告人を引き込むことは容易に想定できない。 この点につき、弁護人は、J自身が実行犯である可能性も残されており、Jが故意に虚偽の供述をしている可能性を主張する。 前記のとおり、本件バイクや本件ワゴンRについて、Jの供述に裏付けがあることによれば、Jがこれらの準備及び処分を行ったことは疑いがな い。Jが実行犯であるとすれば、実行犯自らが犯行に用いたバイクや車を準備し、処分したことになるが、そのような仮定は、徹底した役割分担に基づく組織的な行動確認等の上で実行された本件の全体像に照らして、著しく不自然である。加えて、構成員の序列が厳格に決まっており、上位者は絶対的な存在である暴力団組織において、下位の者が自身の犯罪の責任を逃 織的な行動確認等の上で実行された本件の全体像に照らして、著しく不自然である。加えて、構成員の序列が厳格に決まっており、上位者は絶対的な存在である暴力団組織において、下位の者が自身の犯罪の責任を逃れるために、上位の者を犯人であると虚偽の供述をすれば、暴力団組織からどのような報復を受けるかも知れず、そのような危険を冒して虚偽供述をすることは容易に考えられない。 結局、本件において、Jが、被告人の関与以外の部分については客観的証拠と整合するように供述し、被告人の関与についてのみ部分的に虚偽を述べていることを疑わせる事実は何ら存在せず、Jの供述は、被告人の関与に関する部分を含め、信用することができる。 A1の供述の信用性A1の供述は、本件クラウンに乗って自宅前まで帰ったところ、バイクに乗った2人組の者がやって来て、バイクの後ろに乗っていた者が、突然、目の前で夫をけん銃で撃つような動作をしたというものであり、虚偽の供述をする理由が一切ないことはもとより、少なくともその概要において、誤認が生じる可能性は低い。 とりわけ、A1は本件犯行直後に110番通報をしており、その際、ヘルメットを着用して小型バイクに2人乗りをした男性が犯人であり、W3方向に逃走した旨伝えているところ、A1が実際に目撃していないのにこのような通報をするとは考えられない。2人組がバイクに乗って犯行現場に行き、いずれかが犯行を実行する場合、運転席に乗車する人物が送迎役であり、後部座席に乗車する人物が実行役であると考えるのが合理的であり、A1の供述は自然である。 以上によれば、夜間の視認状況など弁護人の指摘する点を考慮しても、A 1の供述は信用できる。 なお、A1は、Lが本件クラウンから降車するのとほぼ同時に実行犯もバイクを降りてけん銃を構え によれば、夜間の視認状況など弁護人の指摘する点を考慮しても、A 1の供述は信用できる。 なお、A1は、Lが本件クラウンから降車するのとほぼ同時に実行犯もバイクを降りてけん銃を構えた旨供述しつつ、その時点ですでに本件クラウンはいなくなっていたと整合性に欠ける供述をしている。そして、M1が、LとA1を本件クラウンから降ろし、U3神社の方向に本件クラウンを発進させて二、三十メートル進んだ辺りで大きな音がした旨供述していることによると、Lが撃たれた時点は、Lが本件クラウンから降車するのとほぼ同時ではなく、多少時間が経過した後と認められる。もっとも、このような事情があるにせよ、Lが降車後短時間内に襲われたことは確実であり、上記核心的な部分に関するA1の供述の信用性は弾劾されない。 本件犯行の実行犯以上の証拠を基に、本件犯行の実行犯を検討する。 A1の供述によれば、本件犯行の犯人グループは、顔が見えないようなヘルメットを被った2人組であり、後部座席に乗った実行犯がバイクから降りてけん銃で弾丸を2発発射した後、バイクの後部座席に乗ってB3区(以下省略)の方向に逃走したことが認められる。 Jの供述及び本件犯行現場付近の防犯カメラ映像によれば、Jは、本件犯行が実行された直後に、本件犯行現場からみてB3区(以下省略)の方向にある三差路の手前の路上で、フルフェイスのヘルメットを被り本件バイクの後部座席に乗った人物及び運転席に乗ったHと合流したと認められる。Jは、合流時、後部座席の人物の顔を見ていないが、直前に被告人及びHをT3のガレージに送っていること等によると、後部座席の人物は被告人と認められる。 このように、A1が目撃したバイクに乗った2人組と被告人及びHの特徴が一致し、本件犯行現場付近を2人乗りで走行するバイクが ガレージに送っていること等によると、後部座席の人物は被告人と認められる。 このように、A1が目撃したバイクに乗った2人組と被告人及びHの特徴が一致し、本件犯行現場付近を2人乗りで走行するバイクが複数あるとは考え難いことや、本件犯行を行う以外に、被告人及びHが同所付近をバイクで 走行する理由が想定できないことによれば、本件犯行を行った2人組は、被告人及びHであると認められる。 そして、本件犯行を終え逃走を開始してから三差路付近でJらと合流するまでの短距離かつ短時間の間に本件バイクの運転手を交代しなければならない事情は見当たらないことからすれば、本件犯行の実行犯は被告人であると認められる。 4 実行犯の殺意(争点②)A1の供述によれば、本件バイクの後部座席から降りた被告人は、近距離でLに向けてけん銃を構えた直後、連続して2回弾丸を発射したものと認められる。けん銃から発射された2発の弾丸のうち、Lに命中した弾丸は、まずLの右鎖骨上窩部の中部から体内に侵入して前斜め右側わずかに上方から後斜め左側わずかに下方へほぼ直線状に進んでおり、地面に当たった弾丸が跳弾してLに当たったとは考えられず、現に犯行現場周辺において跳弾痕は発見されていない。 近距離から人の身体にけん銃を向けて弾丸を発射する行為が人を死に至らしめる危険性の高い行為であることは明らかであり、被告人はそれと認識して本件犯行を実行したのであるから、殺意に欠けるところはない。 5 被告人の共謀(争点③)被告人は、本件犯行に実行犯として関与していることから、正犯性に欠けるところはない。また、これまでに認定した事実関係に加え、Jの前記供述によると被告人がF及びJと共に、Lの大相撲の観戦状況を福岡国際センターに出向いて確認していることが認められること 、正犯性に欠けるところはない。また、これまでに認定した事実関係に加え、Jの前記供述によると被告人がF及びJと共に、Lの大相撲の観戦状況を福岡国際センターに出向いて確認していることが認められることによれば、被告人は、本件が、少なくとも、F、H、J及びIが役割を分担して共同して実行されるものであったことを認識していたと認められ、同人らを介して、他の共犯者らとの共謀も認められる。 6 以上によれば、被告人は、甲事件について、殺人罪、けん銃発射罪及びけん 銃加重所持罪の共同正犯の責任を負うと認められる。 第3 元警察官事件(以下、「第3」内における「本件けん銃」等の略称は、元警察官事件に関するものを指す。) 1 争点元警察官事件の争点は、①実行犯について殺人未遂罪の成否(殺人の実行行為該当性及び殺意)、②組織性、③被告人の故意及び共謀である。 2 認定事実⑴ 元警察官事件の概要平成24年4月19日午前7時6分頃、B2組組員であるPが、住宅地であるC3区(以下省略)の路上において、元警察官であり当時の勤務先に出勤途中であったaに向かい、所携のけん銃をもって弾丸を発射し、2発の弾丸を命中させて重傷を負わせた。 関係者相互の関係性ア aは、平成23年3月末日をもって福岡県警察を退職した元警察官である。aは、在職中、A2會の事件を長く担当し、福岡県警察内部において、北九州地区の暴力団捜査の代表的存在で、M及びNらA2會の最高幹部とも直接話をすることができる数少ない存在と目されていた。 aは、平成21年4月頃、情報収集のため、A2會を破門になった元組員であるkと接触し、その際、kに対し、Mを呼び捨てにしたり、MやNがA2會の利益を独占していると述べたりしたが、その発言はkにより秘密に録音され 年4月頃、情報収集のため、A2會を破門になった元組員であるkと接触し、その際、kに対し、Mを呼び捨てにしたり、MやNがA2會の利益を独占していると述べたりしたが、その発言はkにより秘密に録音された。Mは、同月22日頃、aが北九州市内のゴルフクラブでMの行動を視察していた際、aに対し、kと会ったことを指摘し、「あんた、最後に悪いもん残したな。」旨述べた。また、Mは、aが警察を退職した直後である平成23年4月頃、同人の当時の勤務先で、同人に対し、「B2組を目の敵にしてたらしいな、あんたが全部B2組の事件をしていたらしい のう。」などと述べた。 Nとの関係においては、aは、平成22年7月頃、自ら責任者となって、Nの自宅の捜索を実施し、事後にNからaの携帯電話に直接電話があり、不在中に捜索を実施したことに対し苦情を述べられるという出来事があった。 イ実行犯であるPは、当時、B2組組員であり、同組組長であるOの自動車の運転や経費の収支を管理する組長付の地位にあった。 当時、被告人、O、F及びGは、aと面識があったが、個人的な関係はなく、P、R、Q、K及びSはaと面識がなかった。 犯行前の関係者の行動ア Fは、平成24年4月上旬頃、aが自宅を出発する時間を知るために、配下の組員であるR及びSに対し、a方を朝見張るよう指示し、さらに被告人に対し、R及びSにaの容貌を覚えさせるよう指示した。 被告人は、Fの指示に従い、R及びSと共にa方の最寄り駅付近(犯行現場付近でもある)へ行き、同所を通りがかったaをR及びSに見せ、「あのおっさんやけ、顔を覚えておいてくれ。」旨述べてその容貌を覚えさせた。 Rは、その後数日間にわたり、Sと共に又は単独で、aの行動確認を行い、aの通勤、退勤経路やその時間帯等をFに報告した。 イ のおっさんやけ、顔を覚えておいてくれ。」旨述べてその容貌を覚えさせた。 Rは、その後数日間にわたり、Sと共に又は単独で、aの行動確認を行い、aの通勤、退勤経路やその時間帯等をFに報告した。 イ Fは、犯行前日である同月18日、Qに対し、同月19日の朝にPを迎えに行ってある場所に送り、一旦Pと別れた後別の場所でPと合流し、同人を別の場所に送るとともに荷物を受け取り、それをG組事務所に持って行ってeに渡すこと、Kに対し、Pからバイク及びヘルメットを受け取って、指定した場所でバイクを投棄することを指示した上、Q及びKをPとの待ち合わせ場所やバイクの投棄予定場所に案内した。 Fは、同月18日、Rに対し、同月19日の朝に犯行現場付近で待機し、aが同所を通りかかったら指定した携帯電話に電話をかけることなどを指 示し、さらに、捨ててもよいようなバイクを用意するよう指示した。Rは、Fの指示に従い、同月19日午前零時過ぎ頃、Qと共にC3区内で、原動機付自転車1台(以下「本件原付」という。)を窃取した。 Kは、R及びQから本件原付を受け取り、同人らと共にFから指定された現場付近の場所までこれを移動させ、そこに駐車した。 ウ Fは、同月18日の夜までに、実行役であるPに対し、犯行に関する指示をした上、口径0.25インチの自動装てん式けん銃(以下「本件けん銃」という。)、これに適合する弾丸約10発及び連絡用の第三者名義の携帯電話1台を渡した。 Fは、本件犯行に先立ち、犯行に用いた作業着等の処分をGに指示した。 エ同月19日朝、Q及びKは、Qが運転する自動車でPを迎えに行き、Fに指定された場所までPを送った。 Pは、その車内で、用意されていた作業着等に着替え、フルフェイスのヘルメットをかぶり、指定場所に駐車されていた本件原付に は、Qが運転する自動車でPを迎えに行き、Fに指定された場所までPを送った。 Pは、その車内で、用意されていた作業着等に着替え、フルフェイスのヘルメットをかぶり、指定場所に駐車されていた本件原付に乗って移動し、犯行現場付近の路上で待機した。 Rは、犯行現場付近で待機し、同日午前7時5分頃、aが徒歩で通過する姿を認めると、Pの持つ携帯電話に電話をかけた。 本件犯行態様ア Pは、Rの合図を受け、本件原付を発進させて犯行現場に行った。 Pは、aを発見すると、本件原付に乗って正面から近づき、すれ違いざま、約2メートルの間隔でaの左横に付け、本件原付に跨った体勢で、歩行中のaの左大腿部を狙って本件けん銃で弾丸を2発発射した。 その後、Pは、3、4メートルほど更に前方に進行し、aを背に、その場で、自身の進行方向の地面に向けて、更に弾丸1発を発射し、速度を上げてその場から走り去った。 イ Pがaの身体に向けて発射した弾丸は、aの左大腿部、左腰部に各1発 ずつ命中し、うち左大腿部に命中した1発は骨に当たって跳ね返って体外に排出され、左腰部に命中した1発は、左大腿骨骨頭の背中側部分の大腿動脈から約7センチメートルの位置で体内に残留した。 その結果、aは、約1か月間の入院及び通院加療を要する見込みの左股関節内異物残留、左大腿部銃創の傷害を負った。 犯行後の状況Pは、逃走の途中、Fに指定された河川に本件けん銃を投棄し、その後、Q及びKと合流し、Qの運転する自動車に乗り換え、車内で作業着を脱いだ。 Kは本件原付を投棄し、ヘルメットや作業着等は、最終的にGが受け取り、焼却処分した。 3 実行犯について殺人未遂罪の成否(殺人の実行行為該当性及び殺意)(争点①)鑑定結果(元警甲43)によれば、本件けん銃は人を殺傷する能 トや作業着等は、最終的にGが受け取り、焼却処分した。 3 実行犯について殺人未遂罪の成否(殺人の実行行為該当性及び殺意)(争点①)鑑定結果(元警甲43)によれば、本件けん銃は人を殺傷する能力を十分に備えていたと認められる。 Pは、このような本件けん銃を用いてaに向けて弾丸2発を発射し、左腰部及び左大腿部にこれらを命中させている。この弾丸2発の発射行為については、銃口の向きがわずかでもそれたり、Pやaの動作が少しでも異なったりしていれば、弾丸により大腿動脈を損傷させ、又は心臓、肝臓等の他の重要な臓器を損傷させてaを死亡させる可能性が十分にあったと認められる。 以上によれば、Pによる弾丸2発の発射行為は、aを死亡させる危険性の高い行為、すなわち殺人の実行行為であると認められる。 そして、Pにおいて、上記危険性を基礎づける事情の認識に欠けるところはなく、自己の行為が人を死亡させる危険性の高い行為であることを認識した上であえて行為に及んだと認められ、殺意が認められる。 なお、Pは、上記弾丸2発の発射後、引き続き、更に弾丸1発を発射している。この弾丸1発は、aを背にして、しかも地面に向けて発射されたものであり、aを死亡させる危険性の高い行為であるとは認め難い。そのため、この弾 丸1発の発射行為は、上記弾丸2発の発射行為と一連のものとして1個の発射罪を構成するものの、これを殺人の実行行為の一部であるとまで評価することはできない。そこで、殺人の実行行為としては、罪となるべき事実記載のとおり、上記弾丸2発の発射に限定して認めることとした。 4 組織性(争点②)前記認定事実によれば、元警察官事件は、B2組若頭であるFが中心となって、被告人、P、Q、Kら配下の組員らに対し、事前の行動確認、実行、逃走援助、証拠隠滅等それぞ とした。 4 組織性(争点②)前記認定事実によれば、元警察官事件は、B2組若頭であるFが中心となって、被告人、P、Q、Kら配下の組員らに対し、事前の行動確認、実行、逃走援助、証拠隠滅等それぞれの具体的な役割を指示して敢行された組織的犯行であると認められる。A2會捜査の代表的存在であった元警察官であるaを、けん銃を用いて路上で組織的に襲撃するという犯行内容によれば、その犯行動機は、A2會に敵対的な元警察官に対する報復及び警察組織に対する威嚇、牽制であったと推認できる。 その上で、元警察官事件が、住宅街で元警察官を銃撃するという極めて重大な事件であること、犯行直後、福岡県警がA2會による犯行と考え、最高幹部であるMやNをも対象に入れた徹底した捜査を行うなど、A2會全体に対し大きな影響が及ぶことが容易に想定されること、犯行に関与した個々の組員はもとよりFにも襲撃対象としてaを選択する特段の動機が認められないことなどからすると、Fが独断で元警察官事件を立案・実行したとは考えられず、同事件は、Fより上位のA2會幹部の指示に基づく犯行と推認できる。 そして、上記事案の重大性、殊にMやNにも捜査が及び得る影響の大きさ等を考慮すれば、Oであっても元警察官事件の実行を独断で決定できるとは考えられず、また、前記2アに認定した事実によれば、Mはaに対し強い反感を有していたと認められ、襲撃対象としてaを選択する最も強い動機を有しているのはMである。さらに、前提事実で認定したA2會の組織構成に照らすと、Mの指示が、N及びOを介さずにFに伝わることも想定できない。 以上によれば、元警察官事件は、最終決定権者であるMの指示に基づき、A 2會に敵対的な元警察官を襲撃することにより、警察組織を牽制しA2會の結束を高めるという効果又は利益をA2 い。 以上によれば、元警察官事件は、最終決定権者であるMの指示に基づき、A 2會に敵対的な元警察官を襲撃することにより、警察組織を牽制しA2會の結束を高めるという効果又は利益をA2會に帰属させるものであり、団体の活動として行われたと認められる。 また、同犯行は、A2會及びB2組の序列及び指揮命令系統に従い、順次下位者に対して指示、伝達が行われた上、多数の組員がそれぞれ役割を果たすことにより準備、遂行されたものであり、A2會組織により行われたものと認められる。 5 被告人の故意及び共謀(争点③)⑴ 弁護人は、要旨、被告人は、平成24年4月12日にFに言われてRとSにaの容貌等を覚えさせ、同月17日及び同月18日にFとPを自動車に乗せてFの指示に従い運転したことはあるが、元警察官事件が計画されていることは知らなかったと主張し、被告人もこれに沿う供述をする。 ⑵ 関係者の供述実行犯であるPに対する具体的な犯行の指示場面や、被告人が事前に犯行計画を知っていたか否かに関して、P、F及び被告人は、当公判廷において、要旨以下のとおり供述する。 ア Pの供述要旨犯行の2週間ぐらい前に、Fから「仕事」があると伝えられた。 平成24年4月17日の午後2時から午後4時頃、F及び被告人と共に、被告人運転の自動車でC3区内のホテル付近へ行った。同所に停めた自動車内で、Fから、ある人物を襲撃すること、これから犯行現場まで行くが、その道のりが逃走経路になると伝えられた。被告人運転の自動車で犯行現場まで行き、Fから、この場所を通る人物を襲撃するよう指示された。犯行現場でFから指示を受けたのが車内であったか車外であったかは覚えてない。 同月18日の午後8時から午後9時頃、Fと待ち合わせ、Fが被告人の を通る人物を襲撃するよう指示された。犯行現場でFから指示を受けたのが車内であったか車外であったかは覚えてない。 同月18日の午後8時から午後9時頃、Fと待ち合わせ、Fが被告人の 運転する自動車に乗ったので、私もその車に乗り込み、高速道路の高架下の空き地のような場所へ行った。 同所に停めた自動車内で、Fから本件けん銃等が入った黒色のポーチと携帯電話を渡された。その際、Fから、明朝、元警察官であるaを本件けん銃で襲撃する、足を狙って2発撃て、それが無理なら地面を狙って2発撃て、絶対殺してはならないと指示された。Fの説明を聞きながら、黒色ポーチを開いて中身を見ると、本件けん銃、弾丸等が入っていた。私がももを狙いますというと、Fは了解した様子だった。Fに試射を申し出て、本件けん銃に弾を2発込めてから自動車を降り、自動車から約5メートル離れた場所で、周囲に誰もいないことを確認した上で、2発試射をした。 試射が終わって車内に戻ってから、Fから、本件けん銃を捨てることなどを指示された。 Fから指示を受け、本件けん銃の試射をした時、被告人は車内にいたと思う。被告人は車内の会話を耳にしていたはずであるし、車外で本件けん銃を試射した際、それなりに大きい発射音がしたので、車内にいたF及び被告人には聞こえたはずである。 イ Fの供述要旨私は、各関与者に犯行計画がわからないようにするため、P以外の人間には元警察官事件の内容を教えていない。犯行に先立って、被告人に、RとSにaの容貌を覚えさせるよう指示したが、その際にも詳しい事情は教えていない。 平成24年4月17日に、被告人に車の運転を頼んでPを迎えに行き、自動車で関係各所を移動しながらPに指示を与えた。話を聞かれないように、ホテルでは被告人を自動車から降ろして車内で 教えていない。 平成24年4月17日に、被告人に車の運転を頼んでPを迎えに行き、自動車で関係各所を移動しながらPに指示を与えた。話を聞かれないように、ホテルでは被告人を自動車から降ろして車内でPに指示し、犯行現場付近では被告人を車内に待機させ車外でPに指示した。 同月18日の夜、Pに本件けん銃等を渡そうと、被告人の運転する自動 車でPを拾い、人けのない場所へ移動した。話を聞かれたくなかったので、被告人を自動車から降ろした上でPに本件けん銃等を渡し、襲撃を指示した。Pは、自動車から降りて本件けん銃の試射をした。Pが試射を終え車内に戻った後、本件けん銃や犯行に使用する作業着等の処分方法等をPに伝えた。全ての話が終わったところで、クラクションを鳴らすと、被告人が車内に戻ってきた。 ウ被告人の供述要旨被告人は、捜査段階において、元警察官事件の発生から1、2か月前に事件のことは知っていたと述べたが、公判廷においては以下のように述べた。 Fの指示で、平成24年4月12日の朝に、R及びSにaの容貌を見せて覚えさせたが、その目的は聞いていない。 同月17日に、Fから、酒を飲んでいるから運転をしてくれと言われて、FとPを自動車に乗せて、私の運転で、指定されたホテルや犯行現場の周辺を回った。犯行現場に着くまでの間に、私は車から降りていないが、この間、車内でFがPに事件に関する話をしたこともなかった。犯行現場付近で停車した時、FとPが自動車から降り、離れたところで何か話をしていた。 同月18日の夜にも、同じくFから酒を飲んでいるから運転してくれと言われて、FとPを自動車に乗せた。Fの指示で、民家のない暗い方向に向かって車を走らせると、高速道路の高架下のような場所に着いた。そこに自動車を停め、Fの指示で車の外 を飲んでいるから運転してくれと言われて、FとPを自動車に乗せた。Fの指示で、民家のない暗い方向に向かって車を走らせると、高速道路の高架下のような場所に着いた。そこに自動車を停め、Fの指示で車の外に出た。車外にいる間、Pが自動車を乗り降りしているのは気配で気付いた。その後、Fからクラクションを鳴らされて、呼ばれた合図だと思って、自動車に戻った。大型トラックのエンジン音、マフラーのバックファイアーの音が頭上の高速道路の方から始終響いていたが、けん銃の発射音は全く聞こえなかった。 ⑶ 各供述の信用性Pの供述は、Fから本件犯行を指示された場面を説明するものとして自然な内容であり、組織上の上位者にあたるFや被告人に不利な虚偽の供述を述べる動機も認められず、信用性を疑うべき具体的事情は特段見当たらず、概要において信用し得る。もっとも、被告人及びFは、FがPに犯行を指示する際、被告人は席を外しており、指示内容を聞いていなかった旨供述しており、この部分につき、Pの供述と被告人及びFの供述との間に食い違いがある。 Fが、Rらに犯行計画が分からないようにするため事件の詳細を教えなかったと供述する点は、Rらの実際の関与形態と整合的であり、内容も自然である。Pは、Fから指示を受けた際、被告人も自動車内におり、話の内容を聞いていたと思う旨述べているが、確実な趣旨の供述とまではいい難い上、Pは当時Fの指示に意識を向けていたはずであることによれば、被告人が席を外していたとしても、当時そのことをさして気にとめておらず、明確な記憶として保持していないことも十分に考えられる。Fが、Rらと同様、被告人に対しても、元警察官事件の内容を知られないようにしていた可能性は否定し得ず、犯行指示の際、被告人が傍にいたかどうかに関するPの供述は、被告人及びF ことも十分に考えられる。Fが、Rらと同様、被告人に対しても、元警察官事件の内容を知られないようにしていた可能性は否定し得ず、犯行指示の際、被告人が傍にいたかどうかに関するPの供述は、被告人及びFの供述を排斥し得るまでの信用性はない。よって、Fによる指示の際、被告人が傍でその指示を聞いていたと認定することはできない。 被告人の故意及び共謀の検討以上の証拠評価を前提とすると、次の事実が認められる(なお、R、Qは、これ以外の場面でも被告人が関与した旨供述しているが、必ずしも供述が一致していないため、以下の限度にとどめた。)。 被告人は、Fの指示を受け、平成24年4月12日、R及びSと共にa方の最寄り駅付近へ行き、同所を通りがかったaをR及びSに見せ、この人物の顔を覚えておくように旨述べてその容貌を覚えさせた。被告人は、Fから 依頼され、同月17日、自動車を運転し、F及びPを乗せ、ホテルやa方の近隣である犯行現場付近などを回った。Fは、ホテルや犯行現場付近でPに対し指示をしたが、その際、Fは、被告人を車外に出すか又は被告人を残して車外に出て、Pと話した。被告人は、Fから依頼され、同月18日、自動車を運転し、F及びPを乗せ、高速道路の高架下へ行った。被告人は、Fの指示により車外へ出て、同車のクラクションの音が聞こえる程度の距離にいた。Fは、車内で、Pに犯行を指示し、けん銃を渡した。Pは車外に出て、けん銃を試射した。その後、P、被告人の順に車内に戻った。 以上を前提に検討する。被告人は、a方の近隣において、R及びSにaの顔を覚えさせているが、退職した警察官の顔を配下組員に覚えさせるという行為からすると、Fがaを何らかの行為の標的としており、標的たるaの顔をR及びSに覚えさせていることは認識したと認められる。そして、その数 せているが、退職した警察官の顔を配下組員に覚えさせるという行為からすると、Fがaを何らかの行為の標的としており、標的たるaの顔をR及びSに覚えさせていることは認識したと認められる。そして、その数日後である同月17日、被告人は、会話内容は分からなかったにせよ、FがPを、数日前aの顔をRらに覚えさせた場所付近に連れて行き、これらの場所で何らかの指示をしているところを目撃した。その翌日である同月18日、被告人は、高速道路の高架下において、FがPに対し何らかの指示をしているところを目撃し、その直後、Pが車外で試射したけん銃の発射音を聞いた。 この点、被告人は、けん銃の発射音は聞こえなかったと供述するが、被告人はクラクションが聞こえる距離におり、Pも自動車から約5メートルしか離れていない場所でけん銃の試射をしていたのであるから、けん銃の発射音が聞こえなかったとは考えられない。そして、これらの出来事は、いずれもFが起点となり数日間のうちに発生していることからすると、被告人において、相互に関連した一連の出来事であると認識したと考えるのが自然である。 加えて、被告人は、平成15年頃からA2會組員として活動を続け、その活動の中で、A2會組員がけん銃発砲事件やけん銃を使用しての殺人事件に関与して検挙され、有罪判決を受けている事実を認識しており、既に検討し たとおり、本件犯行の約5か月前には、Fが複数の配下組員らに指示して実行された甲事件に、正にけん銃を用いて被害者を射殺した実行犯として関与した。 これらの事情を総合すると、被告人は、R及びSにaの顔を覚えさせた時点で、Fが甲事件と同様に、配下の者に指示して、けん銃を含む凶器を用いて人を襲撃させ、最悪の場合には死亡させるような事件を起こそうとしている可能性があることを未必的に認識し Sにaの顔を覚えさせた時点で、Fが甲事件と同様に、配下の者に指示して、けん銃を含む凶器を用いて人を襲撃させ、最悪の場合には死亡させるような事件を起こそうとしている可能性があることを未必的に認識したものと認められ、その後、犯行現場付近でFがPへ指示する場面を目撃し、高架下でけん銃の発射音を聞くことにより、上記認識をより強めたと認められる。 よって、被告人にはA2會による組織的殺人、組織的けん銃発射罪及び組織的けん銃加重所持罪の少なくとも未必的故意が認められる。 そして、被告人はかかる認識を前提として、上記のとおり、Fの指示に従い元警察官事件に関与していたと認められ、Fを介して他の共犯者らとの共謀も認められる。 6 元警察官事件の結論以上によれば、被告人は、元警察官事件について、組織的殺人未遂罪、組織的けん銃発射罪及び組織的けん銃加重所持罪の共同正犯の責任を負うと認められる。 第4 放火事件(以下、「第4」内における「本件黒色バイク」「本件駐車場」等の略称は、放火事件に関するものを指す。) 1 争点放火事件の争点は、①D4ビル及びM3ビルに対する被告人の放火の故意、②D4ビルの現住性及び現在性(現に人が住居に使用し、かつ、現に人がいたこと)の認識、③共謀である。 2 認定事実 ⑴ 放火事件の概要B2組組員であるV及びTが、平成24年8月14日午前4時26分頃、D4ビル内のエレベーター乗りかご内に灯油をまいた上、火をつけた発炎筒を投げ込み放火し、D4ビルの一部を焼損させ、同じくB2組組員であるX及びQが、同日午前4時30分頃、M3ビル内のエレベーター乗りかご内に灯油をまいた上、火をつけた発炎筒を投げ込み放火し、M3ビルの一部を焼損させた。 ⑵ B2組におけるみか B2組組員であるX及びQが、同日午前4時30分頃、M3ビル内のエレベーター乗りかご内に灯油をまいた上、火をつけた発炎筒を投げ込み放火し、M3ビルの一部を焼損させた。 ⑵ B2組におけるみかじめ料の管理状況 (及びは放火事件、乙事件及び丙事件に共通する事実)平成24年当時、B2組及びB2組一門の組員らは、B3区内の繁華街にある飲食店等からみかじめ料として金員を徴収し、毎月その半額をB2組に納めていた。また、それ以外のA2會の組員がB3区内の繁華街でみかじめ料を受け取った場合、その一部が募金名目でB2組に納められることもあった。 B2組に納められたみかじめ料は、B2組事務局長であるmが管理し、Oへの報告の上、B2組の必要経費を除いてOに渡されていた。O及びm以外にB2組に納められたみかじめ料の総額を知る者はおらず、その使途を決めることができたのはOのみであり、配下のB2組組員は、若頭のFであってもその使途につき意見を述べることはできなかった。 標章制度とこれに対するB2組の活動状況等ア平成23年、福岡県暴力団排除条例の改正により、暴力団排除特別強化地域に指定された地域で営業する飲食店等に「暴力団員立入禁止」等と記載された所定の標章(以下「標章」という。)が掲示された場合、暴力団員が同店内に立ち入ることが禁止される制度(以下「標章制度」という。)が定められ、同制度は平成24年8月1日から施行された。 イ D4ビル及びM3ビルは、いずれも暴力団排除特別強化地域に指定され た地域に所在しており、標章制度施行後には、D4ビル及びM3ビル内を含め、同地域内の多数の店舗に標章が掲示されていた。D4ビル3階には、乙事件の被害者が経営するラウンジ「乙」があり、乙にも標章が掲示されていた。 章制度施行後には、D4ビル及びM3ビル内を含め、同地域内の多数の店舗に標章が掲示されていた。D4ビル3階には、乙事件の被害者が経営するラウンジ「乙」があり、乙にも標章が掲示されていた。 ウ B2組では、標章制度施行後間もなく、標章の掲示状況を調査することとなり、B2組組員は、手分けしてB3区の繁華街の飲食店等を見て回り、標章を掲示している店舗の情報を取りまとめた。調査対象となったビルには、D4ビル及びM3ビルも含まれていた。 その頃、Oは標章制度に対する不満を示しており、配下組員に対し、みかじめ料を徴収している飲食店等には標章を掲示させないよう指示したり、mから標章を掲示している店が減ったことの報告を受けたりしていた。 ⑷ 本件犯行に至る経緯ア Fは、本件犯行の2週間前頃、Kにバイクのナンバープレート1枚を、さらに、犯行前日である平成24年8月13日頃、赤色スプレー缶2本を用意するよう指示し、Kはその頃これらを用意した。 Fは、本件犯行の前日までに、知人であるnに依頼して黒色バイクを用意させた(以下「本件黒色バイク」という。)。 イ被告人は、本件犯行の1週間から10日前頃、Uに対し、作業着、手袋及び靴を2組ずつ入れたボストンバッグを2つ、並びに、灯油8ガソリン2の割合で混ぜた混合油を入れたペットボトル及び「発えん筒」を1つずつ入れたリュックサックを2つ、それぞれ用意するよう指示した。Uは、被告人の指示に従いこれらを用意したが、ペットボトルについては、ガソリンを入れると破裂して危険だと判断し、被告人に無断で、ガソリンを入れず灯油のみを入れ、被告人にはそのことを言わなかった。Uは、「発えん筒」については、自己の車から発炎筒を2本取り出し用意した。 被告人は、本件犯行の2、3日前に、Uに指示し に無断で、ガソリンを入れず灯油のみを入れ、被告人にはそのことを言わなかった。Uは、「発えん筒」については、自己の車から発炎筒を2本取り出し用意した。 被告人は、本件犯行の2、3日前に、Uに指示して、バイクのナンバー プレート1枚を用意させた。 被告人は、本件犯行の1週間から10日前頃、Vに足のつかないバイクを用意するよう指示し、Vは、これに従い、白色バイクを用意した(以下「本件白色バイク」という。)。 ウ被告人は、同月13日の夜、Xに対し、Uから犯行道具を受け取り、B3区内の高架下駐車場(以下「本件駐車場」という。)からバイクに乗ってM3ビルへ行き、その2階か3階のエレベーター内に灯油をまいて「発えん筒」を投げ込むことなどを指示し、Qに対し、バイクを運転することを指示した。 被告人は、この頃、V及びTに対し、Uから犯行道具を受け取り、本件駐車場からVの運転するバイクに乗ってD4ビルへ行き、そこでVが標章にスプレーを吹き付けること、Tが2階か3階のエレベーター内に灯油をまいて「発えん筒」を投げ込むことなどを指示した上、同人らをD4ビル等の関係各所に案内した。被告人は、犯行までの間に、Vに対し、スプレーを吹き付けるのは乙の標章であると、乙を名指しして指示した。 エ同月14日の午前4時頃までに、F及び被告人の指示により、本件駐車場に本件黒色バイク及び本件白色バイクが運び込まれ、これらのバイクに前記ア及びイで用意されたナンバープレートがそれぞれ装着された。 Uは、被告人から指示を受け、その頃までに、本件駐車場付近において、前記ボストンバッグをV及びQにそれぞれ1つずつ渡した。 オ X及びQは、前記ボストンバッグ内の作業着等に着替え、本件駐車場に集合し、Qが本件黒色バイクの運転席に乗り、XがUから受け取った おいて、前記ボストンバッグをV及びQにそれぞれ1つずつ渡した。 オ X及びQは、前記ボストンバッグ内の作業着等に着替え、本件駐車場に集合し、Qが本件黒色バイクの運転席に乗り、XがUから受け取った前記リュックサックを持ち、本件黒色バイクの後部座席に乗って、M3ビルに向けて出発した。 V及びTは、前記ボストンバッグ内の作業着等に着替え、XらがM3ビルへ出発する頃、本件駐車場に集合し、Vが本件白色バイクの運転席に乗 り、TがUから受け取った前記リュックサックを持ち、本件白色バイクの後部座席に乗って、D4ビルに向けて出発した。 ⑸ 犯行状況等ア V及びTは、同日午前4時25分頃、D4ビルに到着し、本件白色バイクから降りてD4ビルの3階まで階段を上がり、Vが乙のシャッター、壁面等に赤色スプレーを吹き付け、Tが3階で停止したエレベーター乗りかご内に灯油をまき、発炎筒に火をつけ、これをエレベーター乗りかご内に投げ込んだ。 イ X及びQは、同日午前4時30分頃、M3ビルに到着し、本件黒色バイクから降りて3階まで階段を上がり、Qが「暴力団追放宣言の店」等と記載されたステッカー(標章とは別のもの)等に赤色スプレーを吹き付け、Xが3階で停止したエレベーター乗りかご内に灯油をまき、Qが発炎筒に火をつけ、これをエレベーター乗りかご内に投げ込んだ。 ⑹ 犯行後の状況等V及びTは、犯行後、本件白色バイクでD4ビルから逃走し、Vが本件白色バイクを海中に投棄した後、Tと共にGと会い、犯行の際に使用した作業着等をGに渡した。 X及びQは、犯行後、本件黒色バイクでM3ビルから逃走し、Qが本件黒色バイクを海中に投棄した後、Xと共にGと会い、犯行に使用した作業着等を入れた荷物をGに渡した。 Gは、これらの作業着等を受け取った後、 Qは、犯行後、本件黒色バイクでM3ビルから逃走し、Qが本件黒色バイクを海中に投棄した後、Xと共にGと会い、犯行に使用した作業着等を入れた荷物をGに渡した。 Gは、これらの作業着等を受け取った後、C3区内にある干潟で焼却した。 3 D4ビル及びM3ビルに対する被告人の放火の故意(争点①)弁護人は、被告人が実行犯らにD4ビル及びM3ビルに投げ込むよう指示した「発えん筒」は、煙を発生させる「発煙筒」を意味するものであって、被告人が放火の指示をしたことはなく、放火の故意もなかったと主張し、被告人も同旨の供述をする。被告人の供述は、当時B2組風紀委員長であったGから、 飲み屋のビルのエレベーターを2か所燃やすから手伝ってくれと頼まれて放火事件に関与することになった、もっとも、火をつけると飲食店へのやくざとしての評判が悪くなるため、そこまでする必要はないと考え、灯油をまいて発煙筒を投げ込んで煙を充満させて騒ぎを起こすことで十分だと考えた、使用する発煙筒は、先端をこすったら一瞬火がついてすぐに消え、その後煙が出るものを考えていたというものである。 被告人の供述を前提としても、被告人は、自身が投げ込むよう指示した「発えん筒」が火気を伴うものであることを認識していたと認められる。 加えて、現実に犯行に用いられたのは灯油であるが、これはUが被告人に無断でガソリンを入れなかった結果であり、被告人は、Uに対し、灯油とガソリンの混合油を準備するよう指示していた。ガソリンは揮発性が高く、わずかな火気でも容易に引火し得ることは社会常識であり、被告人がそれを認識していなかったとは考えられない。被告人が火をつけることを考えていなかったのであれば、わざわざ灯油とガソリンの混合油を準備するよう指示する理由はない。 以上によれば、被告人は、油をまき、 それを認識していなかったとは考えられない。被告人が火をつけることを考えていなかったのであれば、わざわざ灯油とガソリンの混合油を準備するよう指示する理由はない。 以上によれば、被告人は、油をまき、そこに「発えん筒」を投げ込むことで、「発えん筒」によって発生した火を油に引火させることを意図して、Uに犯行用具を準備させ、T、Xらに犯行を指示したものと認められる。 そして、エレベーターの乗りかご内にまいた油に火がつけば、その火がエレベーターの乗りかごを含む建造物に燃え移る可能性が極めて高いことは容易に認識し得ることであり、被告人もこれを認識していたと認められる。 以上によれば、被告人はD4ビル及びM3ビルに対する放火の故意を有していたと認められる。 4 D4ビルの現住性及び現在性(現に人が住居に使用し、かつ、現に人がいたこと)の認識(争点②)弁護人は、D4ビルに関し、人が住んでいるという認識はなく、また、現に人がいるという認識もなかったと主張し、被告人も同旨の供述をする。 実況見分調書抄本によると、D4ビルは、スナックなど酒類を提供する飲食店が多数入居するビルであり、その5階部分にWらが居住する木造部分が存在していたことが認められる。もっとも、この居住部分の存在は、D4ビルの構造等から一見して明らかとはいえず、スナックなどが多いD4ビルの利用実態からしても、そこに居住部分があることを外部者が当然に推測できるものでもない。そうすると、被告人が、本件当時、D4ビルを人が現に住居に使用していたことを未必的にも認識していなかった可能性を排斥できない。 他方で、放火事件当時、D4ビル内にスナックなど酒類を提供する飲食店が入居していたことは被告人も認識していたのであるから、お盆の時期の未明とはいえ、被告人において、飲食店が営業中 を排斥できない。 他方で、放火事件当時、D4ビル内にスナックなど酒類を提供する飲食店が入居していたことは被告人も認識していたのであるから、お盆の時期の未明とはいえ、被告人において、飲食店が営業中であり従業員や客がいる可能性や、メンテナンス業務等のため人がいる可能性は当然想定できたはずであり、かつ想定していたと認められる。現に、当時、D4ビル内には営業中の飲食店があり、従業員や客がいたが、これが予想外の特異な事態であったとはいえない。 そして、被告人は、犯行に先立ち、D4ビル内に現に人がいるか否かを確認したことはなく、V及びTに対し犯行を指示するに際し、このような確認をするよう指示したこともない。 以上によれば、被告人は、D4ビルに現に人がいる可能性が十分にあることを認識しつつ、それを意に介することなく犯行を指示したものと認められる。 これによれば、被告人は、現に人がいる建造物に放火する意思をもって、現に人が住居に使用し、かつ現に人がいる建造物に対する放火を行ったことになる。かかる錯誤は同一構成要件内のものであるから、故意は否定されず、結局、客観的に認められる「現に人が住居に使用し、かつ現に人がいた」D4ビルに対する現住建造物等放火の故意が認められる。 5 共謀(争点③)被告人は、D4ビル及びM3ビルへの放火の故意をもって、Uに犯行用具を準備させ、T、Xらに犯行を指示したことによれば、他の共犯者との間の共謀 が認められる。 共犯者の範囲について、弁護人は、放火事件を計画したのはGであり、Oとの間の共謀はない旨主張し、被告人も同旨の供述をしている。 放火事件は、標章の掲示状況の調査が行われて間もなく、標章が掲示された店舗が多数入居するビルに対し、多数のB2組組員が動員されて行われた犯行である。そして、犯行に際し、 人も同旨の供述をしている。 放火事件は、標章の掲示状況の調査が行われて間もなく、標章が掲示された店舗が多数入居するビルに対し、多数のB2組組員が動員されて行われた犯行である。そして、犯行に際し、実行犯らが、火を放つのみならず、標章掲示店である乙のシャッターや、他の店舗の「暴力団追放宣言の店」等と記載されたステッカーに赤色スプレーを吹き付けていることに照らせば、放火事件は、標章制度及びこれを含む反暴力団活動に反発するB2組により、反暴力団活動への見せしめとして実行されたものであると認められる。 放火事件は、建造物が密集する繁華街での放火事件という危険かつ重大な犯行であり、Fや被告人を始めとするB2組執行部の組員が中心となって組織的に準備、実行されている。 被告人は、Vに対し、乙を名指ししてその標章にスプレーを吹き付けるよう指示しているが、O以外に、殊更乙を標的とする動機を有する者はいない。 これらの事情によれば、B2組組長であるOの指示なくして放火事件が計画されたとは考えられず、また、若頭という要職にあり、犯行に関与したFが犯行の内容を認識していなかったとも考えられない。 以上によれば、本件犯行は、B2組組長であるOの指示に基づき、順次下位者に対して指示、伝達が行われた上で準備、実行されたものと認められる。 6 放火事件の結論以上によれば、被告人は、放火事件について、D4ビルへの放火につき現住建造物等放火罪の共同正犯の責任を、M3ビルへの放火につき非現住建造物等放火罪の共同正犯の責任を負うと認められる。 第5 乙事件(以下、「第5」内における「本件ワゴンR」「本件駐車場」等の略称は、乙 事件に関するものを指す。) 1 争点乙事件の争点は、①本件がB2組組員による犯行か、②実行犯 (以下、「第5」内における「本件ワゴンR」「本件駐車場」等の略称は、乙 事件に関するものを指す。) 1 争点乙事件の争点は、①本件がB2組組員による犯行か、②実行犯について殺人未遂罪の成否(殺人の実行行為該当性及び殺意)、③組織性及び不正権益維持・拡大目的、④被告人の共謀の有無であり、被告人は、特に、乙事件には一切関与していない旨供述している。 2 認定事実証拠によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 乙事件の概要実行犯が、平成24年9月7日午前零時58分頃、乙の経営者であるBが帰宅する際、Bの自宅マンションの駐車場において、タクシーから降車した直後のBに対し、所携の刃物でその左顔面を切り付け、さらに臀部を突き刺し、これを制止しようとしたタクシー運転手Cに対しても、所携の刃物で同人の左側頭部等を切り付け、それぞれに重傷を負わせた。 ⑵ 関係者相互の関係性Bは、平成24年当時、放火事件の被害現場であるD4ビルの3階で乙を経営していた。 Bは、平成18年頃、B3区内で乙とは別のスナックの経営を始めたところ、Oから要求を受け、B2組に対していわゆる「みかじめ料」として毎月5万円を支払うようになり、O個人に対しても、誕生日プレゼントの購入費等の名目で現金を供与していた。 Bは、平成22年2月頃に乙の経営を始めるに当たり、乙への暴力団組員の立入りをやめさせたいと考えた。そこで、Bは、知人であったA2會D2組の組員に、暴力団組員を乙に一切入れないよう依頼し、その代償として、D2組にみかじめ料を支払うようになり、B2組に対するみかじめ料及びO個人への金品の供与を行わなくなった。そして、Bは、来店したA2會組員 に対しては、直接来店を断っていた。 Bが乙への にみかじめ料を支払うようになり、B2組に対するみかじめ料及びO個人への金品の供与を行わなくなった。そして、Bは、来店したA2會組員 に対しては、直接来店を断っていた。 Bが乙への暴力団員の立入りを拒絶するようになった後、OがBに対して俺だけは店に入れろよなどと言い、実際に、Bが不在の際に乙へ入店したこともあったが、Bは、その際、店長に指示して、Oに接待要員をつけず、退店を促すような接客をさせた。その後、Bは、乙の店舗に暴力団お断りなどと記載されたステッカー(標章とは別のもの)を貼り、Oと会った際に、婉曲に乙に来るのを控えるよう伝えた。 乙の店舗には、平成24年8月1日に標章制度が施行されると間もなく、標章が掲示された。 乙事件当時、TはB2組組織委員であったが、証拠上判明している限り、Bとの間に個人的な利害関係は特段認められない。FはB2組若頭、HはB2組組織委員長、GはB2組風紀委員長、被告人はB2組筆頭若頭補佐、XはB2組組織委員、KはB2組組員であり、いずれもBと面識はあったが、個人的なトラブルが生じたことはなかった。 犯行準備状況等Fは、平成24年8月下旬頃、Kに自動車のナンバープレートを用意するよう指示し、Kは放置自動車からナンバープレートを外してこれを用意した。 Fは、nに対し、自動車を用意するよう依頼し、nは知人に依頼してワゴンR(以下「本件ワゴンR」という。)を盗ませた。本件ワゴンRは、同月24日、G組事務所の倉庫に運び込まれた。 Hは、同年8月下旬頃から同年9月上旬頃までの間、複数回にわたり、乙が入居するD4ビルの向かいのビルの3階や付近の路上から、乙の店舗を見張るなどした。 Fは、本件犯行の約1週間前に、Gに対して、B3区(以下省略)内の駐車場(以下「本件駐車場」という わたり、乙が入居するD4ビルの向かいのビルの3階や付近の路上から、乙の店舗を見張るなどした。 Fは、本件犯行の約1週間前に、Gに対して、B3区(以下省略)内の駐車場(以下「本件駐車場」という。)で荷物を受け取って処分するよう指示した。 Kは、同年9月6日の夜、Fからの指示を受け、G組事務所にあった本件ワゴンRに前記ナンバープレートを装着し、本件ワゴンRを本件駐車場に運んだ後、Xに対し、本件ワゴンRを本件駐車場に運んだ旨を携帯電話で伝えた。 Fは、同日午後9時半頃、Gに本件駐車場に荷物を受け取りに行くよう指示した。Gは、荷物を取りに行く足として知人からBMWを借りた。 犯行状況等Bは、同年9月7日午前零時40分頃、D4ビルを出て南下し、同日午前零時48分頃、D4ビル付近のY3(以下省略)店(以下「本件Y3」という。)でCの運転するタクシーに乗り、自宅へ向かった。 実行犯は、同日午前零時58分頃、Bを乗せたタクシーがBの自宅マンションに到着し、Cがタクシーの後部座席のドアを開けBが降車したところにBの右方から近づき、右に振り向いたBの顔面を所携の刃物で切り付け、臀部を突き刺した。さらに、これを制止しようとしたCに対し、前記刃物でその左側頭部等を切り付けて、直ちに逃走した。 Bは、これにより、入院加療約114日間を要する左顔面切創、左顔面神経損傷、右臀部刺創等の傷害を負った。左顔面切創は、長さが左側頭部から左頬にかけて約20センチメートル、深さが最も深いところで左側頭骨まで達する約5センチメートルであり、浅側頭動脈の分枝を損傷させた上、左側頭骨の一部をそぐものであった。 Cは、これにより、入院加療14日間を要する左側頭部切創、左耳介切創、左頚部創、手背部切創等の傷害を負った。左側頭部切創 あり、浅側頭動脈の分枝を損傷させた上、左側頭骨の一部をそぐものであった。 Cは、これにより、入院加療14日間を要する左側頭部切創、左耳介切創、左頚部創、手背部切創等の傷害を負った。左側頭部切創は長さ約2センチメートル、深さ約1センチメートルであり、左頚部創は長さ約12センチメートル、深さ約2センチメートルであった。 B及びCは、いずれも搬送先の病院において、多量に出血をしていたことによる出血性ショックに陥っていた。 犯行後の状況等Gは、同日午前1時頃、前記BMWに乗って本件駐車場へ行き、15分から20分ほど待機していたところ、X及びTがX運転の黒っぽい軽自動車に乗って本件駐車場へ来た。 Gは、黒っぽい軽自動車の後部座席にいたTからボストンバッグを受け取り、前記BMWで福岡県豊前市の海岸へ行った。Gがボストンバッグの中を確認すると、作業服、目出し帽、靴、先端に血液のようなものが付着した出刃包丁等が入っていた。Gは、出刃包丁を海中に投げ捨て、それ以外のものは燃料をかけて火をつけ焼却した。 Kは、同日から翌日にかけての夜、Fの指示を受け、Rと共にG組事務所に戻っていた本件ワゴンRを、F3区内の海中に投棄した。 3 本件がB2組組員による犯行か(争点①)Gは、Fの指示に基づき、乙事件の発生直後である平成24年9月7日午前1時15から20分頃、本件駐車場において、Tから、血液のようなものが付着した出刃包丁や作業服等が入ったボストンバッグを受け取り、その後、出刃包丁を海中に投げ捨て、作業着や目出し帽等を焼却している。こうしたFの指示や、Gの行動によれば、上記ボストンバッグの在中物は、上記時刻の直前の時間帯にB2組が組織として行った犯罪に供された凶器等であると推認できる。 同時刻頃、上記のよ を焼却している。こうしたFの指示や、Gの行動によれば、上記ボストンバッグの在中物は、上記時刻の直前の時間帯にB2組が組織として行った犯罪に供された凶器等であると推認できる。 同時刻頃、上記のような物が凶器等として用いられ、その処分を要することとなるようなB2組の組織としての犯罪行為が、乙事件以外に存在したことを疑わせる事情はない。本件犯行によるB、Cの各受傷状況から推測される凶器の大きさ、形状と、GがTから受け取ったボストンバッグ内にあった出刃包丁の大きさ、形状とに特段矛盾はない。B及びCが目撃した実行犯の着衣等は、全身真っ黒で、目だけ出た男の人、紺色の作業服などというものであり、作業着、目出し帽という上記ボストンバッグの在中物と整合している。これらの事 情を考慮すると、上記ボストンバッグの在中物は、乙事件の凶器等であると認められる。 GがTから上記ボストンバッグを受領したのは、犯行からわずか20分程度の近接した時刻であり、これがGに渡されるまでの間に第三者が関与していることを疑わせる事情は何ら存在しない。そして、Kが本件ワゴンRを本件駐車場に運んだ際、Xと連絡をとったことや、Gが上記ボストンバッグを受領した際、Xが黒っぽい軽自動車を運転し、Tは後部座席に乗っていたこと、運転手が途中で入れ替わる事情もないことによれば、Xが送迎役、Tが実行役と考えるのが自然である。なお、本件ワゴンRは銀色、Gが供述する軽自動車の色は「黒っぽい」ものであり、色に食い違いはあるが、乙事件直前にXがKから本件ワゴンRを受け取ったなどの事情を考慮すると、Gが目撃した黒っぽい軽自動車は、本件ワゴンRと認められる。 加えて、Tは、丙事件の際、Dに対し、「前回は思わぬところから反撃があった。あれは、鉈じゃなくて包丁だったんだけどな。」旨述べ、 すると、Gが目撃した黒っぽい軽自動車は、本件ワゴンRと認められる。 加えて、Tは、丙事件の際、Dに対し、「前回は思わぬところから反撃があった。あれは、鉈じゃなくて包丁だったんだけどな。」旨述べ、乙事件を実行したことを示唆する発言をした。 以上によると、本件はB2組組員による犯行であり、実行犯はTであると認められる。 4 実行犯について殺人未遂罪の成否(殺人の実行行為該当性及び殺意)(争点②)B及びCの負傷内容や同人らの治療を担当した医師の供述を考え併せると、これらの傷は、一定の重量があり、刃に厚みがある鋭利な刃物によって、強い力で切り付けられたことにより形成されたものと認められる。 Tは、このような刃物を用いて、強い力で、Bに対してはその頭部を切り付け、その臀部を突き刺し、Cに対してはその頭部及び頚部を切り付けている。 いずれの行為も、頭部又は頚部を走行する動脈を切断して短時間のうちに死亡させる可能性があったといえ、人の生命を侵害する現実的危険性を有するものであり、殺人の実行行為に該当すると認められる。 このような行為の危険性を認識して犯行に及んだTには、B及びCに対する殺意が認められる。 5 組織性及び不正権益維持・拡大目的(争点③)前記認定事実によれば、乙事件は、B2組若頭であるFが指示役となって、Tを始めとする配下の組員に、事前の行動確認、送迎、実行、証拠隠滅等、それぞれ役割を分担させて敢行された組織的犯行である。 Oは、B2組組長としてB2組のみかじめ料の使途の決定権限を独占しており、みかじめ料の減少につながり得る標章制度に重大な関心を寄せていた。そして、F以下の組員にはBとの間に特段の関係はない一方で、Oには、Bから金品の供与を中止され、乙への入店を断られるなど、Bとの間に個人的なあつ の減少につながり得る標章制度に重大な関心を寄せていた。そして、F以下の組員にはBとの間に特段の関係はない一方で、Oには、Bから金品の供与を中止され、乙への入店を断られるなど、Bとの間に個人的なあつれきがあり、標章が掲示された店舗の経営者の中から、襲撃対象としてBを選択する理由があった。加えて、Bは、B2組同様A2會の二次団体であるD2組にみかじめ料を支払っていたところ、そのようなBを、D2組の反発を無視して、二次団体の若頭であるFが、B2組組長に断りなく独断で襲撃することができるとは考え難い。 以上の事実に照らせば、乙事件は、Fに対するOの指示に基づくものと推認できる。 そして、その動機は、暴力団特にB2組を排除する姿勢を鮮明にするBを襲うことにより、B2組に反抗的な者がいかなる危害をも加えられかねないことを縄張り内の飲食店等に示し、反暴力団活動に打撃を加え、ひいてはB2組のみかじめ料収入を確保すること、及びO個人に対しても例外なく来店を拒絶したBに対する報復にあると推認される。 以上によれば、乙事件は、B2組が標章の掲示などの暴力団を排除する活動に対抗して、その縄張りとする繁華街の飲食店等からのみかじめ料収入を得るという不正権益を維持・拡大する目的で、かつ、B2組の団体の活動として、組長であるOの指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務分担に従って組 織により遂行されたものと認められる。 6 被告人の共謀(争点④)弁護人は、被告人は乙事件には一切関与していない旨主張し、被告人も同旨の供述をしている。 ⑴ 乙事件における被告人の役割ア親交者を通じたBの行動確認pは、当時、B3区で飲食店を経営し、O、被告人らと交際していた者であるが、要旨次のとおり供述している。 「平成24年8月下旬の前 件における被告人の役割ア親交者を通じたBの行動確認pは、当時、B3区で飲食店を経営し、O、被告人らと交際していた者であるが、要旨次のとおり供述している。 「平成24年8月下旬の前頃、被告人から、地図が貼り付けられた大学ノートを渡され、標章が掲示されている飲食店を教えてほしいと頼まれ、協力した。乙事件の約1週間前に、被告人から、乙のママであるBの顔が載っているパンフレットを見せられ、乙の場所、Bの帰宅時間及び経路の概要を教えられ、Bが帰宅する時間帯を調べて報告するよう依頼された。 私は、当時D4ビル3階の別の飲食店で働いていたoに電話をして、Bが帰る時間帯を調べて私に報告するよう依頼した。その夜、午前零時から午前1時頃に、oから、Bが今帰宅した旨の連絡を受けたので、すぐに被告人にその旨を伝えた。このような被告人からの依頼が2、3回あり、その都度oに連絡して調べてもらい報告を受け、被告人に報告していた。」oは、当時、D4ビル3階の飲食店で働いていた者であるが、要旨次のとおり供述している。 「乙事件の3、4日前に、当時私が働いていた店にpが来て、Bが帰宅する時間帯、乗ったタクシー、帰る方向等を教えてほしいと頼まれた。その夜、日をまたいで午前1時前頃、たまたまD4ビルの下で帰宅するBと会って話をしたので、pに電話で連絡して、Bが今帰宅していることと向かった方向を伝えた。その後、Bが本件Y3前でタクシーに乗ったのを見て、D4ビルに帰る途中、再度pに電話をして、Bが乗ったタクシーや帰 った方向等を伝えた。翌日もpから同じような依頼を受けたが、面倒だったので、実際にはBの帰宅を確認せず、pに適当に報告した。この2回以外にpからこのような依頼を受けて報告をしたことがあるかは覚えていない。」p及びoの前記 ら同じような依頼を受けたが、面倒だったので、実際にはBの帰宅を確認せず、pに適当に報告した。この2回以外にpからこのような依頼を受けて報告をしたことがあるかは覚えていない。」p及びoの前記各供述は、相互に概ね整合し、平成24年9月4日の午前零時40分及び同月5日の午前1時4分にoとpとの間で通話がされていることや、同月4日の午前零時40分頃にD4ビルの前でBと男性が話をした後、帰宅するBの後ろを男性が携帯電話で通話をしながら追尾する様子等が撮影された防犯カメラ映像とも整合しており、oがpの依頼を受けてBの行動確認をしたとする点は信用できる。 そして、Bと面識のないp自身にBが帰宅する時間帯を調査する動機は全くなく、Bの行動確認から数日後に乙事件が実行されていることを踏まえれば、pがB2組組員からBの行動確認の依頼を受けた以外の可能性は想定し難い。pには被告人が不利になるような虚偽供述をする動機が見当たらないことからすれば、被告人を真実の依頼者とすり替えて供述しているとも考え難い。よって、Bの行動確認をするよう依頼を受けたという点に関するpの供述も信用できる。 p及びoの供述によれば、被告人は、乙事件の数日前、pにBが帰宅する時間帯、経路等を調べるよう依頼し、pからその報告を受けたと認められる。 イ被告人自身によるBの行動確認捜査報告書並びにx及びhの供述によれば、被告人が、本件犯行前日である平成24年9月6日の遅くとも午後11時34分頃から翌日の午前零時49分頃までの間、Bがタクシーに乗車した本件Y3前の歩道付近に居続け、同日午前零時49分頃にBがタクシーに乗車して自宅の方向に向かい始めた直後に、被告人が携帯電話で通話をしながらその場から立ち去っ たことが認められる。 Bは、そ に居続け、同日午前零時49分頃にBがタクシーに乗車して自宅の方向に向かい始めた直後に、被告人が携帯電話で通話をしながらその場から立ち去っ たことが認められる。 Bは、その約10分後、タクシーから降車した直後の時点で襲われた。 前記アに認定したとおり、被告人は、その数日前、pに依頼してBが帰宅する時間帯、経路等を調べ、その報告を受けている。 これらの事実を併せ考えると、被告人は、Bの行動確認をするために本件Y3前の歩道付近に居続け、Bが本件Y3前でタクシーに乗車したのを確認した上、その旨を携帯電話で共犯者に伝えたものと認められる。 弁護人は、被告人が本件Y3前の歩道にいたのは、飲食店の女性と待ち合わせていたためであると主張し、被告人も同旨の供述をするが、飲食店の女性と会うために1時間以上も本件歩道付近に居続けた挙句、結局誰とも会うことなくその場から立ち去るというのは不自然というほかはない。 以上によれば、被告人は、乙事件の直前、乙から帰宅するBの行動確認をし、Bが本件Y3前でタクシーに乗車し帰宅するのを見た上で、その旨を携帯電話で共犯者に伝えたと認められる。 被告人の認識被告人は、乙事件当時、B2組内において筆頭若頭補佐の地位にあり、B2組にとって標章制度がみかじめ料収入に影響を与え得る重大な関心事であることを認識し、標章の掲示状況をB2組が調査していたことを認識していたのみならず、自らもpに依頼して標章の掲示状況を調査していたと認められる。また、被告人は、前記第4のとおり、B2組が標章制度への反発の一環として実行した放火事件に指示役として関与している。 以上の事情に加え、本件犯行において被告人が果たした役割・関与態様や、被告人が乙事件の約10か月前には甲事件に、約5か月前 標章制度への反発の一環として実行した放火事件に指示役として関与している。 以上の事情に加え、本件犯行において被告人が果たした役割・関与態様や、被告人が乙事件の約10か月前には甲事件に、約5か月前には元警察官事件に、それぞれA2會組員が組織的に人を襲撃した事件に関与し、特に甲事件においては被告人自身が対象者を殺害したことをも併せ考慮すると、被告人は、前記の役割を果たす際、B2組組員が、生命を奪いかねない態様でB を襲う可能性があること、その目的が、B2組のみかじめ料収入を維持することにあり、Oの指揮命令の下、B2組の活動として実行されるものであることを認識していたと認められる。 被告人の正犯性被告人が果たした役割は、Bの帰宅時刻の調査及び犯行直前のBの行動確認であるが、これらは、犯行計画を策定し、実行犯がこれを円滑に遂行する上で欠くことのできない重要な役割であることによれば、被告人には正犯性も認められる。 被告人の共謀に関する結論以上によれば、被告人には、O等他の共犯者らとの間で組織的殺人及び不正権益維持・拡大目的殺人の共謀が認められ、共同正犯としての責任を負うと認められる。 本件においてはBのみならずCも攻撃されており、これが共謀の範囲内かが問題となる。そこで検討すると、本件の共謀の骨格は、Bが送迎を受けているタクシーから降車した際に、これを襲撃するというものである。そうすると、この共謀においては、タクシーの運転手が襲撃現場付近に居合わせることは当初から想定されていたことになるし、そうである以上、仮にタクシーの運転手を含む周囲に居合わせた第三者が抵抗を示した場合には、その抵抗を暴力で排除してでもBを襲撃することとなることも、黙示的にせよ、併せて想定されていたと認められる。また、そのような 仮にタクシーの運転手を含む周囲に居合わせた第三者が抵抗を示した場合には、その抵抗を暴力で排除してでもBを襲撃することとなることも、黙示的にせよ、併せて想定されていたと認められる。また、そのような抵抗者を排除するための暴力の程度について、Bに対するのと異なるものが想定されていたことを疑わせるような事情もみられない。現にCはBを送迎したタクシーの運転手であり、Bが実行犯に襲撃された際にこれを制止しようとして襲われたものであるから、このような事態は、上記共謀の範囲内のものである。そして、本件犯行直前にBがタクシーに乗車するのを確認していた被告人であればなおさらその認識認容に不足するところはない。よって、Cに対する殺人未遂 行為も本件組織的殺人及び不正権益維持・拡大目的殺人の共謀の範囲内であると認められるから、被告人はCに対する犯行についても共謀共同正犯としての責任を負う。 6 乙事件の結論以上のとおり、被告人と判示第4の共犯者らとの間に組織的殺人及び不正権益維持・拡大目的殺人の共謀があったと認められ、被告人には判示第4の組織的殺人未遂罪、不正権益維持・拡大目的殺人未遂罪の共同正犯が成立する。 第6 丙事件(以下、「第6」内における「本件団地」「本件包丁」等の略称は、丙事件に関するものを指す。) 1 争点丙事件の争点は、被告人と共犯者との間の共謀の有無(主観面を含む。)である。 2 認定事実⑴ 丙事件の概要平成24年9月26日午前零時38分頃、B2組組長付であるDが、B3区(以下省略)にあるマンションの出入口前において、勤務先から帰宅するb(以下「b」という。)に対し、持っていた刃物で左臀部及び右大腿部を3回突き刺すなどし、傷害を負わせた。 ⑵ b及びその親族の立場 下省略)にあるマンションの出入口前において、勤務先から帰宅するb(以下「b」という。)に対し、持っていた刃物で左臀部及び右大腿部を3回突き刺すなどし、傷害を負わせた。 ⑵ b及びその親族の立場等bの実兄であるi(以下「i」という。)は、昭和52年からB3区(以下省略)にある「クラブ丙」の運営会社の社長を務め、同店を経営していた。 bは、平成15年頃からクラブ丙で働くようになり、平成24年当時は、クラブ丙の営業部長を務めていた。 クラブ丙では、暴力団組員の入店を拒否しており、暴力団にみかじめ料を支払ったこともなかった。 iは、平成24年当時、「Z3町・I3町を明るくする会」の副会長を務めており、暴力団追放運動に関与し、標章制度が施行される際には、クラブ丙の店舗に標章を掲示するだけでなく、標章制度を推進する活動を行っていた。 ⑶ 犯行前の関係者の行動ア Fは、平成24年9月半ば頃、K及びRに対し、軽自動車のナンバープレートを用意するよう指示した。K及びRは、F3区内の空地に駐車されていた軽自動車からナンバープレートを取り外し、C3区(以下省略)内の団地(以下「本件団地」という。)で保管した。 イ Fは、平成24年9月25日の夕方頃、知人に依頼して、白色のスズキエブリィ(以下「本件エブリィ」という。)を借り、B3区(以下省略)にあるスーパーマーケットの駐車場(以下「スーパーマーケットの駐車場」という。)に止めさせた。 Fは、K及びRと共にスーパーマーケットの駐車場へ行き、本件エブリィに乗り換え、B3区(以下省略)にある砂利の駐車場(以下「砂利の駐車場」という。)へ行った。 Fは、砂利の駐車場において、K及びRに対し、この日の夜に砂利の駐車場に来る人物らに本件エブリィを渡し、同人ら 換え、B3区(以下省略)にある砂利の駐車場(以下「砂利の駐車場」という。)へ行った。 Fは、砂利の駐車場において、K及びRに対し、この日の夜に砂利の駐車場に来る人物らに本件エブリィを渡し、同人らが本件エブリィで砂利の駐車場に戻ってきたら、本件エブリィ内にあるかばんをB3区(以下省略)の岸壁で海中に捨て、その後本件エブリィをスーパーマーケットの駐車場に戻すよう指示した後、前記岸壁に案内した。 その後、Fらは本件団地に戻り、Fは、K及びRに対し、本件エブリィのステッカーを剥がし、砂利の駐車場でナンバープレートを付け替えるよう指示した。 K及びRは、Fの指示に従い、本件団地で本件エブリィのステッカーを剥がした後、本件エブリィに乗って砂利の駐車場へ向かい、同所でナンバープレートを前記アのものと付け替えた。 ウ Dは、平成24年9月25日午後11時頃、B3区(以下省略)内の駐車場で黒い軽自動車(以下「黒い軽自動車」という。)に乗り込みH及びTと合流し、作業着等に着替えながら、Hの運転で砂利の駐車場に向かった。 エ K及びRが砂利の駐車場で待機していたところにH、T及びDが乗車する黒い軽自動車が到着し、H、T及びDは本件エブリィに乗り込みB3区(以下省略)に向かい、K及びRは黒い軽自動車に乗り込み待機した。 Hは、B3区(以下省略)内のパチンコ店前の道路で本件エブリィを停車させ、Dに対し、対象の男性の尻を3回刺すよう指示した上、刃体の長さが約20センチメートルで、刃先から5センチメートルまで以外の部分がテープで巻かれていた出刃包丁(以下「本件包丁」という。)を手渡した。 ⑷ 犯行状況等ア bは、同年9月26日午前零時25分頃、クラブ丙を出て紺色のBMW(以下「本件BMW」という。)に乗って で巻かれていた出刃包丁(以下「本件包丁」という。)を手渡した。 ⑷ 犯行状況等ア bは、同年9月26日午前零時25分頃、クラブ丙を出て紺色のBMW(以下「本件BMW」という。)に乗って帰宅しはじめ、同日午前零時32分頃にセブンイレブン(以下省略)店(以下「本件セブンイレブン」という。)に立ち寄った後、同日午前零時37分頃にB3区(以下省略)にある自宅マンション(以下「本件マンション」という。)の駐車場に到着し、本件BMWを降り、本件マンションの出入口に向かった。 イ Dは、Tと共に本件マンションの駐車場の塀の裏で隠れていたところ、Tから合図を受け、本件マンションの出入口にいるbのところに走って行き、bの左肩をつかんで尻付近を本件包丁で3回突き刺した。これによりbは転倒し、後頭部を本件マンションの出入口のガラスに打ち付けた。 その後、Dは逃走し、Tはbに向かって「次は殺すぞ。」と言った後、同様に逃走した。 ウ本件犯行により、bは、入院加療15日間を要する臀部・大腿部刺創、頭部挫創の傷害を負った。 ⑸ 犯行後の状況等 本件犯行後、T及びDは、Hが運転する本件エブリィに乗車し、犯行に使用した本件包丁、作業着等をかばんに入れ、砂利の駐車場まで行き、黒い軽自動車に乗り換え逃走した。 K及びRは、Hらから本件エブリィを受け取るとナンバープレートを元に戻し、同車両に乗って前記岸壁まで行き、前記かばん、本件包丁及びナンバープレートを海中に投げ捨てた後、本件エブリィをスーパーマーケットの駐車場に戻した。 3 関係者の供述被告人の本件犯行への関与に関し、U及びDは、要旨以下のとおり供述する。 ⑴ Uの供述要旨平成24年9月25日の夕方頃、B2組本部事務所の当番に入っていた際に 戻した。 3 関係者の供述被告人の本件犯行への関与に関し、U及びDは、要旨以下のとおり供述する。 ⑴ Uの供述要旨平成24年9月25日の夕方頃、B2組本部事務所の当番に入っていた際に被告人から電話で運転を依頼され、同事務所で合流した後、被告人の指示の下、私の運転でB3区(以下省略)の方へ向かった。本件マンションまで行くと、被告人が本件マンションを確認するように見て、「ここか」と言っていた。その後、B3区(以下省略)内にあるY3(以下省略)店(以下「本件Y3」という。)で被告人を降ろし、B2組本部事務所に戻った。 同日の夜、被告人から電話で「さっきのとこ」に迎えに来るよう指示されたため、本件マンションの辺りに行けばよいと考え、白色のパジェロミニ(以下「本件パジェロミニ」という。)で同所に行った。同所で待機していたところ、被告人から電話があり、J3の方ではなく本件Y3の前辺りに来るよう言われたことから、同所付近へ移動した。 本件Y3付近の銀行の前で待機していると、被告人がやって来て乗車し、被告人から、向かいの路地の方から出てくる車を見るよう指示され、その車の特徴も伝えられた。しばらく路地の方を見ていると、その特徴に合致する黒っぽい色のセダンタイプの車(以下「セダンタイプの車」という。)が出てきたので、被告人に報告すると、ついて行くよう指示された。本件パジェロ ミニでセダンタイプの車につけて行くと、セダンタイプの車が本件セブンイレブンの駐車場に入ったので、同駐車場の車の出入りが見える位置で本件パジェロミニを停車させた。5分ほど待機していたところ、被告人から来た道を戻るように言われたため、本件Y3の方へ戻った。本件Y3へ戻る途中、被告人は誰かと携帯電話で連絡を取っていた。 ⑵ Dの供述要旨丙事件の約1週 た。5分ほど待機していたところ、被告人から来た道を戻るように言われたため、本件Y3の方へ戻った。本件Y3へ戻る途中、被告人は誰かと携帯電話で連絡を取っていた。 ⑵ Dの供述要旨丙事件の約1週間前に、B3区(以下省略)のB2組事務所において、被告人から「指名が来とるけ。」と言われ、足の速さや足のサイズを訊かれた。 平成24年9月25日午前9時頃、被告人から電話でどこにいるか尋ねられ、A2会館において、被告人から「今日決行するけ。」と言われ、Hと連絡を取るよう言われた。その後、Hと連絡を取り、待ち合わせ場所やHが乗ってくる車を確認した。 同日午後8時頃、被告人から電話があり、Hとの待ち合わせ時間を指定され、Hと連絡を取るよう指示された。 その後、待ち合わせ時間にH及びTと合流し、砂利の駐車場で本件エブリィに乗り換え、B3区(以下省略)のパチンコ店前まで移動して停車し、Hから男の尻を3回刺せと指示を受けた。また、この時、Hから、対象者がセブンイレブンを過ぎたら被告人から連絡があると説明された。待機しているとHに電話が入り、通話後、Hは、対象者がセブンイレブンを通過する予定だったがセブンイレブンに寄ったとの連絡が被告人からあったと述べた。それから少しして本件犯行現場に向かい、男性の尻を3回刺した。 同月26日朝、組長付の仕事のためOの自宅前に行くと、被告人がおり、Oに報告するため昨日のことを聞かせてくれと言われた。被告人に対し、指示どおり尻を3回刺した旨言うと、被告人は、Oの自宅の方へ向かった。Oと被告人が一緒に来て、Oが車に乗り込み、「怖い事件があってるから気を付けないけんど。」と言った。 4 U及びDの供述の検討⑴ Uの供述についてUの供述のうち、被告人が同乗する本件パジェロミニでセダンタイプの み、「怖い事件があってるから気を付けないけんど。」と言った。 4 U及びDの供述の検討⑴ Uの供述についてUの供述のうち、被告人が同乗する本件パジェロミニでセダンタイプの車を追跡したこと等、本件犯行直前におけるU及び被告人の言動に関する部分については、本件犯行現場付近、本件セブンイレブン付近及び本件Y3付近の各防犯カメラ映像並びに被告人とUとの間の通話履歴と高度に整合している上、Dの供述とも整合している。 また、証拠によれば、Uが本件Y3付近の銀行に行く前に本件マンション付近を本件パジェロミニで走行していたことが認められるが、Uがこのような行動をとった理由は、Uが供述するとおり、被告人から指示された合流場所を本件マンション付近であると勘違いしたため以外に考え難く、本件マンション付近を被告人と共に事前に確認したとの供述の信用性も高い。 よって、Uの供述は信用し得る。 そして、証拠によると、本件パジェロミニは、bの運転する本件BMWの直後を進行していることが認められ、Uが供述するセダンタイプの車は、bの本件BMWであったと認められる。 ⑵ Dの供述についてDの供述のうち、本件犯行直前のD及びHの言動に関する部分については、対象者がセブンイレブンに立ち寄ったとの連絡が被告人からあったことも含め、Uの供述及び犯行現場付近の防犯カメラ映像と整合している。特に、対象者がセブンイレブンに立ち寄ったことは、被告人が行動確認をした上でHに連絡したのでなければ、Dにおいて認識し得ない事実である。また、Dへの指示者が被告人であるという点についても、Dの供述と整合する通話履歴及びメールの送受信歴が存在し、Dにおいて事実に反してまで自らの上位者であった被告人を指示者であると供述する動機を見出し難いことなどからすれば、そ あるという点についても、Dの供述と整合する通話履歴及びメールの送受信歴が存在し、Dにおいて事実に反してまで自らの上位者であった被告人を指示者であると供述する動機を見出し難いことなどからすれば、その信用性は高い。 よって、Dの供述は信用し得る。 弁護人は、犯行当日である平成24年9月26日朝、Oの自宅前で被告人に犯行結果を報告したとのDの供述に関し、Dは同日午前8時38分、Oが先ほどH3(Nの自宅)を出て本家に向かっている旨のメールを出している(Dの公判供述)一方、被告人は午前8時54分頃、Nの運転手としてB3区(以下省略)にあるMの自宅付近におり、そこから逆算すると被告人は午前7時30分頃にはNの自宅に集合したはずであるから、Oが自宅を出発したであろう時間帯に、被告人がOの自宅前にいることはできない旨主張している。しかし、被告人がOと同じ頃Oの自宅を出発してNの自宅へ向かった後、Nの運転手を務めてMの自宅へ行くなどのことがあり得ないとはいえず、Dの供述が、メールの時刻等客観的証拠と矛盾する不合理なものとはいえない。その他、弁護人の主張は、いずれもDの供述の信用性を否定し得るものではない。 ⑶ U及びDの供述等により認められる事実U及びDの供述によれば、被告人は、次の行為を行ったと認められる。 被告人は、平成24年9月26日の1週間前頃、Dに対し、上位者から実行犯として指名されている旨述べた。 被告人は、同月25日朝、Dに対し、同日が決行日である旨述べ、Hと連絡を取るよう指示した。 被告人は、同日夕方、Uに指示して本件パジェロミニを運転させ、本件マンション付近へ行き、同所の下見をした。 被告人は、同日夜、Uに指示して本件パジェロミニを運転させ、本件Y3付近からbが運転していた本件BMWを追跡し、bが本件 て本件パジェロミニを運転させ、本件マンション付近へ行き、同所の下見をした。 被告人は、同日夜、Uに指示して本件パジェロミニを運転させ、本件Y3付近からbが運転していた本件BMWを追跡し、bが本件セブンイレブンに立ち寄ったのを見て、その旨Hに電話で連絡した。 被告人は、同月26日朝、Dから犯行結果の報告を受け、それをOに報告した。 5 被告人と共犯者との間の共謀の有無(主観面を含む。)bの実兄であるiは、暴力団追放運動を実施していた「Z3町・I3町を明るくする会」の副会長として活動し、自らが経営していたクラブ丙では暴力団組員の立ち入りを断っていた上、標章制度施行後には同店舗に標章の掲示を受けるのみならず、標章制度を推進する活動を行っていた。 実行犯は当時B2組の組長付であったDであるところ、B2組組長であるOの指示なくして組長付のDが実行犯に指名されるとは考え難い。 丙事件は、若頭のF、組織委員長のH、筆頭若頭補佐の被告人というB2組の執行部が関与し、B2組により組織的に行われた犯行である。 これらの事実によれば、丙事件は、乙事件と同様に、標章制度に反発するOが、B2組に反抗的な態度をとる者はいかなる危害をも加えられかねないことをB3区内の繁華街にある飲食店等に示し、みかじめ料による収入を維持するため、暴力団排除活動に携わっていたiの実弟であるbを襲撃対象として選択し、又は、bをiと誤認し、配下組員に命令して実行されたものと認められる。 そして、被告人は、Dが実行犯として上位者から指名されていることをDに伝え、本件犯行前日にはHと連絡を取るようDに指示し、本件犯行直前にはbの行動確認をし、共犯者に電話で連絡し、犯行後、Oに犯行結果を報告しているところ、これらの事実に照らせば被告人が本件の犯行計画を知らな 本件犯行前日にはHと連絡を取るようDに指示し、本件犯行直前にはbの行動確認をし、共犯者に電話で連絡し、犯行後、Oに犯行結果を報告しているところ、これらの事実に照らせば被告人が本件の犯行計画を知らなかったとはおよそ考え難く、その果たした役割の重要性に照らせば正犯性も認められる。 以上によれば、被告人とO等他の共犯者らとの間で傷害の共謀があったと認められる。 6 丙事件の結論以上によれば、被告人は、丙事件について、傷害罪の共同正犯の責任を負うと認められる。 第7 看護師事件(以下、「第7」内における「本件刃物」等の略称は、看護師事件に関するも のを指す。) 1 争点看護師事件の争点は、①実行犯の殺人未遂罪の成否(殺人の実行行為該当性及び殺意)、②組織性、③被告人の故意及び共謀であり、特に③について、被告人は、自らYに被害者への襲撃を指示したが、その指示は被害者に傷害を負わせるに止めていたと主張している。 2 認定事実看護師事件の概要平成25年1月28日午後7時4分頃、B2組若頭補佐であるYが、福岡市D3区の路上において、帰宅途中の看護師であるcを襲撃し、所携の刃物で左側頭部を突き刺し、右前腕を切り付けるなどして重傷を負わせた。 関係者とcの関係性ア cは、被害当時、北九州市内の美容形成皮膚科クリニック(以下「本件クリニック」という。)に勤務していた看護師であり、従前、A2會及びB2組と何ら関係を有していなかった。 イ指示役である被告人はB2組筆頭若頭補佐、実行犯であるYはB2組若頭補佐であった。同人らを含むA2會関係者は、Mを除きいずれもcと全く面識がなかった。 Mは、平成24年8月頃からcが勤務する本件クリニックを継続的に受診しており、A2會において唯一cと面識があった。た であった。同人らを含むA2會関係者は、Mを除きいずれもcと全く面識がなかった。 Mは、平成24年8月頃からcが勤務する本件クリニックを継続的に受診しており、A2會において唯一cと面識があった。ただし、その関係は本件クリニックに通う患者と担当看護師であり、それ以外の関係は一切なかった。 看護師事件に至る経緯ア Mは、平成24年8月4日、本件クリニックを受診し、亀頭増大手術やレーザー脱毛の施術を受けた。cは、担当看護師としてMの施術等に関与した。 Mは、翌日以降、患部の異常を訴えて本件クリニックへの問い合わせを繰り返し、これらについては、主に担当看護師であるcが対応した。Mは、同年10月18日、本件クリニックを訪れ、他の看護師に対し、施術及びcの対応に対する不満を強く訴えた。Mは、同月20日、医師の診察を希望して本件クリニックを受診し、医師に対し、患部の状態について失敗ではないのかと述べた。 イ被告人は、同年11月上旬頃、cの容貌を確認するため、Xを伴って本件クリニックへ行き、Xにcの施術を受けさせ、その容貌を覚えさせた。 その後、被告人は、X及びTに指示して、cを尾行させ、その自宅の場所や帰宅経路、帰宅時刻を調べて自身に報告させた。 被告人は、同年12月頃、Xらからの報告を踏まえ、自ら犯行現場付近へ赴き、犯行現場、逃走経路、合流場所等を下見して確認した。 被告人は、その頃、Yに対し、女性看護師の顔を切って尻を刺すよう指示した。 被告人は、平成25年1月中旬頃までに、Pに対し、自動車を1台用意し、Yと共に自動車で福岡市D3区へ行き、バイクでYを送迎することを指示した。被告人は、その頃、Y及びPと共に、本件犯行現場付近やその周辺を下見し、同人らに、cの帰宅経路、犯行実行のタイミング、犯行後の行動等を伝え で福岡市D3区へ行き、バイクでYを送迎することを指示した。被告人は、その頃、Y及びPと共に、本件犯行現場付近やその周辺を下見し、同人らに、cの帰宅経路、犯行実行のタイミング、犯行後の行動等を伝えた。被告人は、その頃までに、犯行に使用する刃物(以下「本件刃物」という。)を購入して、Yに渡した。 Fは、その頃、Gに対し、D3区で事件を起こす旨を告げた上で、関係場所を案内し、そこである人物と合流すること、同人が乗ってきた自動車を運転して別の場所に送ること、犯行に使用された物を処分することを指示した。 被告人は、その頃、Jに対し、足のつかないバイクを用意するよう指示し、Jは、被告人の指示に従い、G3区内でバイク1台を窃取した。 Fは、上位者から被告人にもっと協力するように言われ、同月22日、被告人に対し、Yにcの顔を1回見せておくよう促し、被告人は、これを受けて、同日夕方、Yと共にJRA4駅へ行ったが、その日はcが出勤していなかったため、顔を見せることができなかった。 被告人は、同月23日頃、G、Y、P、X及びTに対し、同月24日に実行すること及び改めてそれぞれの役割(Gは現場指揮役、Yは襲撃の実行役、PはYの送迎役、XはJRA4駅での、TはJRD3駅でのcの各行動確認役)を伝えた。同日夕方頃、G、Y及びPは犯行現場付近で待機し、XはJRA4駅付近で、TはJRD3駅付近で、それぞれcの行動を確認して被告人に報告し、被告人はその旨をGらに連絡したが、犯行に用いる予定のバイクが見つからなかったため、襲撃は中止となった。 同月25日の朝頃、被告人とGが話し合った結果、被告人がGの代わりに現場指揮役を担うこととなり、Gは、被告人に対し犯行現場付近に行くための自動車を貸し、犯行後、作業着等を処分することになった。 被告人は、そ の朝頃、被告人とGが話し合った結果、被告人がGの代わりに現場指揮役を担うこととなり、Gは、被告人に対し犯行現場付近に行くための自動車を貸し、犯行後、作業着等を処分することになった。 被告人は、その頃、Xに対し、もともと保管させていたバイク1台をPに渡すよう指示し、XはPにこれを渡した。 同日、再度cに対する襲撃が決行されることとなり、被告人、Y及びPが、同日夕方、犯行現場周辺に集合し、c襲撃のために待機したが、cが早退していたため、襲撃は再度中止となった。 被告人は、同月26日の午前中頃までに、Jに対しバイクをもう1台用意するよう指示した。Jは、同月27日から翌28日にかけての夜間、H3区内でバイク1台を窃取し、被告人の指示に従い、これをPに渡した。 犯行状況等同月28日、犯行に使用するバイクが用意できたことから、再度cに対する襲撃が決行されることとなり、被告人、Y及びPは、同日午後6時頃、犯行現場周辺に集合し、先立ってcの行動確認を行っていたXから連絡が来る まで待機した。 cは、同日午後6時過ぎ頃本件クリニックを退勤し、JRA4駅から新幹線でJRD3駅に行き、バスに乗り換え、自宅近くのバス停で降車して、自宅に向かって歩き出した。 一方、Xは、同日午後6時11分頃、JRA4駅構内で帰宅途中のcを追跡し、被告人にその状況を伝え、その後、Y及びPは、被告人から出発の指示を受け、Pが運転するバイクに乗って犯行現場付近まで移動し、Yはその場で待機してcを待った。 Yは、同日午後7時4分頃、歩いているcの背後から走って近づき、cの左前方まで行って振り返り、左手でcの前頭部の髪の毛をつかみ、右手に持った本件刃物で、cの左耳上部付近を突き刺し、動かした。Yは、更に、cの右前腕を切り付け、左殿部を突き刺した後、逃 て近づき、cの左前方まで行って振り返り、左手でcの前頭部の髪の毛をつかみ、右手に持った本件刃物で、cの左耳上部付近を突き刺し、動かした。Yは、更に、cの右前腕を切り付け、左殿部を突き刺した後、逃走した。 本件犯行により、cは、約3週間の入院及び通院加療を要する見込みの左眉毛上部挫創、顔面神経損傷、右前腕部挫創及び左殿部挫創の傷害を負った。 左眉毛上部挫創及び右前腕部挫創は、法医学上はいずれも刺切創に分類される傷であり、左側頭部の浅側頭動脈及び顔面神経が切断され、右前腕部の傷は筋層にまで達していた。 cは、搬送された病院において、多量に出血をしていたことによる出血性ショックに陥っていた。 事件後の状況等Y及びPは、逃走後、あらかじめ決められていた集合場所に戻って被告人と合流し、同所付近で被告人と共にバイクを海中に投棄し、Yが被告人に対し犯行を終えたことを報告し、北九州市へ戻った。 被告人は、Gに自動車を返すとともに、Y及びPが使用した作業着等が入ったバッグを引き渡した。 Gは、E3区内で、被告人から受け取った作業着等が入ったバッグを焼却 した。 3 実行犯の殺人未遂罪の成否(殺人の実行行為該当性及び殺意)(争点①)前記のとおり、左側頭部の傷害につきcの浅側頭動脈及び顔面神経が切断されており、右前腕部の傷は筋層まで達していた。本件刃物が、少なくとも、これらの負傷を負わせるに足りる形状を備えていたことは明らかである。さらに、信用性に疑いのない法医学者及びcの治療に当たった医師らの供述を考え併せると、これらの傷はいずれも比較的鋭利で先端が尖った刃物で形成されたと認められる。 以上によれば、本件刃物は、少なくとも、人体の皮下組織にある動脈、神経、筋組織等をわずかな時間で切断するに足りる鋭利さを備えており、人に れも比較的鋭利で先端が尖った刃物で形成されたと認められる。 以上によれば、本件刃物は、少なくとも、人体の皮下組織にある動脈、神経、筋組織等をわずかな時間で切断するに足りる鋭利さを備えており、人に対する殺傷能力を十分に有していたと認められる。 本件刃物の形状について、実行犯であるYやこれを用意した被告人は、その先端は尖っていなかったと供述する。その形状をどのように言語で表現するかはともかくとして、いずれにせよ本件刃物が、前記傷害を生じさせ得る鋭利な刃物であったことには変わりがない。 このような刃物を用いて、左側頭部を突き刺す行為は、その皮膚の直下を走行している動脈を切断して短時間のうちに大量出血を引き起こすおそれがあり、現にcは搬送された病院において出血性ショックに陥っている。Yの行為は、人の生命に危険を生じさせる現実的危険性を有し、殺人の実行行為に該当すると認められる。 このような人の生命に危険を生じさせる行為を、それと認識しつつ実行したYについて、少なくとも未必の殺意に欠けるところはない。 以上によれば、Yの行為は殺人の実行行為であり、かつYに殺意も認められる。 4 組織性(争点②)前記認定事実によれば、看護師事件は、B2組筆頭若頭補佐である被告人が 指示役となって、実行犯であるYを始めとする配下の組員に対し、事前の行動確認や逃走援助、証拠隠滅等、それぞれ役割を分担させて敢行した組織的犯行であると認められる。 そして、総裁であるMを除いては、A2會及びB2組とcとの間に接点が全く存在せず、被告人、YらA2會及びB2組組員においてcを襲撃する理由が組織的にも個人的にも皆無であることからすると、看護師事件は、cに対し強い不満を抱いたMの意思及び指示に基づいて敢行されたと考える以外、その発生をおよそ合理 及びB2組組員においてcを襲撃する理由が組織的にも個人的にも皆無であることからすると、看護師事件は、cに対し強い不満を抱いたMの意思及び指示に基づいて敢行されたと考える以外、その発生をおよそ合理的に説明することができない。 以上によれば、看護師事件は、A2會総裁であるMの意思決定に基づき、cを組織的に襲撃することによって、M、ひいてはA2會の威信を維持するとともに、その結束を固めるという効果又は利益をA2會に帰属させるものであり、団体の活動として行われたと認められる。 また、同犯行は、A2會及びB2組一門の序列に従い、順次下位者に対して指示、伝達が行われた上、多数の組員がそれぞれ細分化された役割を果たすことにより、準備、遂行されたものであり、A2會組織により行われたものと認められる。 5 被告人の故意及び共謀(争点③)被告人は、看護師事件の指示役として、事前に、被害者の行動確認、実行犯への被害者への襲撃指示、実行犯の逃走援助、証拠隠滅等多岐にわたる指示を出しており、犯行当日も犯行現場周辺で現場指揮を行うなど、看護師事件の指揮役として本件犯行全体を統括し、極めて重要な役割を果たしている。 そして、本件犯行は、本件刃物を用いてcの顔を傷つけるよう被告人から指示を受けたYが、正にその指示どおりに行ったものであるところ、刃物を以て人体の枢要部である頭部に攻撃を加えることは被告人の認識の範囲内であって、Yの犯行が被告人にとって予想外のものであったことを認める事情もない。 よって、直接の指示者である被告人についても、少なくとも未必的な殺意に欠 けるところはない。 併せて、被告人に看護師事件を直接指示したのは、B2組の上位者であるO又はFのいずれかと認められ、被告人は、かかる指示を受け、B2組の構成員であるYに実行役 欠 けるところはない。 併せて、被告人に看護師事件を直接指示したのは、B2組の上位者であるO又はFのいずれかと認められ、被告人は、かかる指示を受け、B2組の構成員であるYに実行役を、Pに送迎役を、X及びTにcの監視役をそれぞれ依頼し、行動させていることによれば、看護師事件が、A2會の活動として、Mを含む上位者の指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務分担に従って行われる組織的犯行であることを認識していたと認められる。 こうした被告人の認識を前提に、ここまでに認定した犯行準備状況及び犯行状況に加え、本件の前後の時期に被告人とE、H及びZとの間でされた通話の内容によれば、被告人は、直接又は上位者を介して、他の共犯者らとの間に組織的殺人の共謀が認められる。なお、上記通話に係る通信傍受記録は違法収集証拠に当たらない。 6 看護師事件の結論以上によれば、被告人は、看護師事件について、組織的殺人未遂罪の共同正犯の責任を負うと認められる。 第8 歯科医師事件(以下、「第8」内における「本件駐車場」等の略称は、歯科医師事件に関するものを指す。) 1 争点歯科医師事件の争点は、①実行犯の殺人未遂罪の成否(殺人の実行行為該当性及び殺意)、②組織性及び不正権益維持・拡大目的、③被告人の故意及び共謀であり、特に③について、被告人は、自らPに被害者への襲撃を指示したが、その指示は被害者に傷害を負わせるに止めていたと主張している。 2 認定事実⑴ 歯科医師事件の概要平成26年5月26日午前8時29分頃、B2組若頭補佐兼組長付である Pが、B3区内の駐車場(以下「本件駐車場」という。)において、通勤途中の歯科医師であるdを襲撃し、所携の刃物で胸部、腹部、背部、大腿部等を多数回突 頃、B2組若頭補佐兼組長付である Pが、B3区内の駐車場(以下「本件駐車場」という。)において、通勤途中の歯科医師であるdを襲撃し、所携の刃物で胸部、腹部、背部、大腿部等を多数回突き刺すなどして重傷を負わせた。 ⑵ d及びその親族とA2會との関係等ア dは、被害に遭った当時、いかなるA2會組員とも面識がなかった。 イ dの父であるf(以下「f」という。)、祖父であるj(歯科医師事件当時故人。以下「j」という。)は、いずれもM及びNと面識があった。 jは、生前、A3区にあるB4漁業協同組合(後のC4漁業協同組合B4支所)の組合長を務め、fも、平成19年以降、C4漁業協同組合B4支所の代表理事を務めており、いずれも地元で実施される工事に関し、工事の実施に同意を与える地元の漁業権者の代表として、事業者の選定や漁業補償金の配分に事実上大きな影響力を有すると目されていた。 jは、後にA2會と合併する暴力団E2一家の総長であるE2とは懇意にしていたが、E2の死後は、その配下であったM、Nらと距離を置くようになり、同人らとの交際を断った。jは、平成10年2月、A2會組員によって射殺された。 jが射殺された後、Nはfに、電話で、「このまま20年、30年警察とやっていくのか、表を歩けるようにしたほうがいいのではないか。」旨述べ、A2會と交際するよう要求したが、fはこれを断り、以後、A2會との交際を拒否していた。 平成20年頃以降、Nは、fのいとこであり、A2會と親交のあったg(以下「g」という。)に、漁業協同組合がどのような権限を持っているか尋ねることが何度もあった。gは、漁業協同組合の同意がなければ公共事業はできないこと、漁業協同組合が元請企業に対し下請、孫請として地元企業を優先的に使用してほしいと要請することは日 限を持っているか尋ねることが何度もあった。gは、漁業協同組合の同意がなければ公共事業はできないこと、漁業協同組合が元請企業に対し下請、孫請として地元企業を優先的に使用してほしいと要請することは日常的にあり、漁業協同組合内で権限を有しているのは、組合長や代表理事であることなどを述べ た。 ウ平成25年、B4周辺で風力発電、火力発電及び廃棄物処分場の総額数百億円を超える大規模な開発が予定されていることが発表された。 平成25年12月20日、C4漁業協同組合の組合長であるlが、何者かに射殺された。同人はjの弟で、かねてA2會に対する反対姿勢を公にしていた人物であった。空席となった組合長を選任するため、選挙が実施されることとなり、fは組合長の有力候補者であった。 Nは、平成26年2月上旬頃、gに対し、組合長選挙の実情を尋ね、「ここまできたらA2會の方針として引くことはできない、最悪の場合fもやらなければならない、そのことをfにも伝えるように。」旨述べた。 同月26日、gは、fに対し、「A2會の執行部は若いから何でもする、次はfの番である。」旨、すなわち、A2會の意に沿う行動をとらなければ前記lの次はfがA2會組員に殺害されるであろう旨述べたが、fはこれを拒絶した。 gが、fの返答をNに報告すると、Nは、「お前がそんだけ言うても分からんのやったら、やっぱもう最後までせんな分からんのかのう。」などと言った。 同年4月以降、fは警察の保護対象となり、出退勤時には警察車両が追従していた。 ⑶ 本件犯行の準備状況と被告人の役割等ア被告人は、平成26年2月中旬から下旬頃、A2會の上位者からfの行動確認を命じられ、その頃から同年3月中旬頃にかけて、複数のB2組組員にその旨を指示した。被告人は、上記組員らから、fの使 割等ア被告人は、平成26年2月中旬から下旬頃、A2會の上位者からfの行動確認を命じられ、その頃から同年3月中旬頃にかけて、複数のB2組組員にその旨を指示した。被告人は、上記組員らから、fの使用車両は警察車両が常時警備していると報告を受けた。 イ被告人は、同年3月中旬頃、上記上位者から、fではなく、その息子であるdの行動確認を命じられた。被告人は、XらB2組組員と共に調査し た結果、dが午前8時半頃に勤務先へ出勤し、勤務先近くにある本件駐車場に自動車(以下「d車両」という。)を駐車することを把握した。 ウ被告人は、同年5月中旬頃、上記上位者から新たに追加された指示に基づいて、Xに対し、Pを実行役、Qを送迎役として、朝の出勤時に本件駐車場でdを襲撃する計画があることを伝えた上、PとQの犯行後の逃走を援助すること、犯行時に実行犯が着用するヘルメットや作業着、凶器となる刃物を用意することを指示した。 同じ頃、被告人は、Qに対し、バイクを1台用意するよう指示し、本件犯行の2、3日前頃、用意したバイクの運転役をするよう伝え、詳細をXから聞くよう指示した。 Qは、上記指示に従い、XからPが若い男を襲撃する旨の犯行計画を聞き、Xと共に本件駐車場及び逃走経路の下見をして、同月24日未明、犯行に使用するバイクを1台窃取して用意した。 エ被告人は、本件犯行の約3日前に、Xを伴って、Pと共に本件駐車場を下見し、Pに対し、d車両の特徴を伝え、本件駐車場でd車両から降りてくる人物を、尻かももを4、5回刺して襲い、Qの運転するバイクに乗って逃げるよう指示した。 被告人は、同月25日の夜頃、Pの逃走に用いる自動車をXに引き渡し、同人に対し、dの襲撃が翌朝に決まったことを伝え、これをP及 刺して襲い、Qの運転するバイクに乗って逃げるよう指示した。 被告人は、同月25日の夜頃、Pの逃走に用いる自動車をXに引き渡し、同人に対し、dの襲撃が翌朝に決まったことを伝え、これをP及びQに伝えるよう指示した。Xは、P及びQに対し、翌朝の決行を伝えると共に、集合場所(X3神社の駐車場)及び時刻を伝えた。 ⑷ 犯行状況等X、P及びQは、平成26年5月26日午前7時40分頃、犯行現場周辺(X3神社の駐車場)に集合した。Pは、Xが運転してきた自動車の後部座席のバッグから作業着等を取り出し着替え、凶器となる刃物(以下「本件刃物」という。)を確認して携帯した。Pは、Qが運転するバイクの後部座席に 乗って本件駐車場付近に移動し、d車両を待った。 dは、同日午前8時29分の少し前頃、d車両を運転して本件駐車場に到着し、d車両を駐車して運転席から降り、荷物を取り出すために外側から助手席に回ってドアを開け、身をかがめた。 Pは、バイクから降り、dの背後から小走りで近付き、dの姿を見てその場にしゃがみ込み、犯行を数秒ほど躊躇した後、dに駆け寄り、右手で順手に持った本件刃物を、dの背部に突き刺した。dが、Pを振り払い、振り返って車両を背にPと正対すると、Pは、両手に持ち替えた本件刃物を、さらにdの胸を目掛けて突き出した。dは、両手でPの両手を握って、本件刃物を下に向かって押し下げたが、Pは、この間、本件刃物をdの身体に向けて繰り返し突き出し、dの胸部や腹部、左大腿部を刺した後、その場から逃走した。 ⑸ dの負傷状況等本件犯行により、dは、14日間の入院加療及び3か月間の外来加療を要する見込みの左大腿部刺創、腹部刺創、胸壁刺創及び背部刺創の傷害を負った。具体的には、左大腿部に幅約10センチメートル、深さ約 本件犯行により、dは、14日間の入院加療及び3か月間の外来加療を要する見込みの左大腿部刺創、腹部刺創、胸壁刺創及び背部刺創の傷害を負った。具体的には、左大腿部に幅約10センチメートル、深さ約10センチメートルの刺切創(傷E)、幅約5センチメートル、深さ約2、3センチメートルの切創(傷F)、幅約1センチメートル、深さ約1、2センチメートルの切創(傷G)、幅約8センチメートル、深さ約1、2センチメートルの切創(傷H)、腹部に幅約5センチメートル、深さ約7センチメートルの刺創(傷C)、胸部に幅約1センチメートル、深さ約1センチメートルの刺創が2か所(傷A、B)、背部に幅約6センチメートル、深さ約7センチメートルの刺創(傷D)があった。 これらによる大量の出血で、dは、犯行直後、救急隊と医師が現場に到着した時点で既に出血性ショックに陥っており、医師が緊急に必要な措置を講じていなければ、病院に搬送される前に心停止する可能性があった。 ⑹ 事件後の状況等Pは、Qが運転するバイクに乗って逃走し、あらかじめ決められていた集合場所でXと合流し、PはXが運転する車に乗って、Qは前記バイクで、それぞれ逃走した。被告人は、同日の午前中に、Xから本件犯行が終わったとの報告を受けた。 同月29日、fの母親方に、fに宛てて「コドモマゴカナラズヤルカクゴシロ」と書かれた脅迫文が届いた。 3 実行犯の殺人未遂罪の成否(殺人の実行行為該当性及び殺意)(争点①)⑴ 前記のdの負傷状況やdの治療を担当した医師(信用性を疑うべき事情はない)の供述を考え併せると、これらの傷は、刃体の長さが少なくとも約10センチメートル程度ある鋭利な刃物により形成されたと認められ、本件刃物はこのような性状を有していたと認められる。 ⑵ そし ない)の供述を考え併せると、これらの傷は、刃体の長さが少なくとも約10センチメートル程度ある鋭利な刃物により形成されたと認められ、本件刃物はこのような性状を有していたと認められる。 ⑵ そして、傷の部位、形状からすると、Pは、本件刃物を用いて、dの正面から胸部や腹部を、背後から腰部をそれぞれ強い力で突き刺していると認められる。このように身体の枢要部を強い力で複数回突き刺す行為は、心臓等の重要な臓器や動脈を損傷して短時間のうちに大量出血を引き起こして死に至らしめるおそれがあり、現にdは犯行現場で出血性ショックに陥り、医師が緊急に必要な措置を講じなければ病院搬送前に死亡する危険もあった。Pの行為は、人の生命に危険を生じさせる現実的危険性を有し、殺人の実行行為に該当すると認められる。 このような腹部や胸部を含む体幹部に向かい強い力で複数回刃物を突き出す犯行態様によれば、Pは、前記のとおり人の生命に危険を生じさせる行為を、それと認識しつつあえて実行したと認められる。 ⑶ 以上によれば、Pの行為は殺人の実行行為にあたり、殺意も認められる。 4 組織性及び不正権益維持・拡大目的(争点②)前記認定事実によれば、歯科医師事件は、B2組本部長である被告人が指示 役となって、B2組内の指揮命令系統に従い、X、P、QらB2組組員らに対し、事前の行動確認や逃走援助等、それぞれの役割を分担させて敢行した組織的犯行であると認められる。 A2會の組織上、M及びNの指示が被告人に直接伝達されることがあり得ず、B2組内で被告人の上位者である若頭のFが当時別件で勾留中だったことからすると、被告人に指示をした上位者はOと認められる。Oの上位者であるNは、本件に先立って、A2會の要求に応じるようgを通じてfに圧力をかけていた。B2組 ある若頭のFが当時別件で勾留中だったことからすると、被告人に指示をした上位者はOと認められる。Oの上位者であるNは、本件に先立って、A2會の要求に応じるようgを通じてfに圧力をかけていた。B2組組員らによる当初の行動確認の対象はfであり、d自身には、A2會に襲撃される理由は皆無である。 これらの事情からすると、歯科医師事件は、少なくともNの指示により、fの息子であるdを襲撃することでfをA2會に屈服させ、C4漁業協同組合に支配力を及ぼし、地元の工事に関する事業者の選定や漁業補償金の配分へ介入することにより、A2會又はその構成員が継続的に経済的等の利益を得る目的で行われたことが認められる。 これらの事情に加え、Nが、gに対し、fがA2會の意に沿う行動をとらなければA2會の方針としてfを襲撃しなければならない旨述べたこと、C4漁業協同組合に支配力を及ぼすことにより得られる利益は、A2會全体の利益であることなどによれば、歯科医師事件は、Nの独断ではなく、A2會総裁であるMの指示に基づくものと推認できる。 以上によれば、歯科医師事件は、最終決定権者であるMの指示に基づき、A2會の不正権益(C4漁業協同組合への支配力)を維持・拡大する目的で、A2會の活動として、A2會及びB2組の序列及び指揮命令系統に従い、順次下位者に対して指示、伝達が行われた上、多数の組員がそれぞれに役割を果たすことにより準備、遂行されたものであると認められる。 5 被告人の殺意及び共謀(争点③)殺意に関し、弁護人は、被告人がPに指示した内容は、刃物で尻かももを4、 5回刺すというものであって、被告人には傷害を負わせる認識しかなかったと主張する。 Pは、被告人から尻かももを5、6回刺せと指示された旨供述し、被告人も、尻かももを4、5回刺せと指示 5回刺すというものであって、被告人には傷害を負わせる認識しかなかったと主張する。 Pは、被告人から尻かももを5、6回刺せと指示された旨供述し、被告人も、尻かももを4、5回刺せと指示した旨供述しており、具体的な指示文言としては、これらを否定する証拠はない。そこで、被告人の指示が被告人に最も有利な「尻やももを4、5回刺せ」という文言であったことを前提として検討する。 Pによる犯行態様は、dの脚部分にとどまらず、胸部や腹部に向かって複数回本件刃物を突き出すという、危険かつ執拗なものである。Pは、犯行直前、dを襲うことを躊躇しているのであり、Pに対する指示が生命に危険を及ぼさないような軽い態様を念頭に置いたものであったとすると、Pがその指示を無視してこのような危険かつ執拗な行為に及ぶ理由はない。Pにとって、本件犯行態様は、被告人の指示に従った結果であったと認められる。また、fをA2會に屈服させるという犯行目的からすると、歯科医師事件の実行を決意し、命令した者としては、相当程度強度な犯行態様を想定していたと考えられ、弱い態様の犯行で構わないかのような指示が上層部からあったとは考え難い。 これらの事情に加え、そもそも、刺した部位にかかわらず人の身体を刃物で4、5回も刺せば大量出血等により死に至り得ることは容易に想像がつくことをも併せ考えると、「尻かももを4、5回刺せ」との被告人の指示は、確実かつ積極的にdの生命を奪う意図は含まないにせよ、Pが現に行った犯行態様に見合う、生命に対する危険な行為をも想定したものであったと認められる。 以上によれば、弁護人の主張を踏まえても、被告人には未必的な殺意があったと認められる。 そして、歯科医師事件が、看護師事件と同様に、被告人自身が上位者から命令を受け指示役として多数の配下の組員を指揮して よれば、弁護人の主張を踏まえても、被告人には未必的な殺意があったと認められる。 そして、歯科医師事件が、看護師事件と同様に、被告人自身が上位者から命令を受け指示役として多数の配下の組員を指揮して犯行を実現していることによれば、被告人は、歯科医師事件がA2會及びB2組による組織的なものであることを認識していたと認められる。 これに加え、被告人が、当時fがB4で有名な漁業関係者であることを知っていた旨供述していること、行動確認の対象が当初はfであり、その後息子であるdに変更されたという経緯を認識していたこと、歯科医師事件が直接的にはOの指示により行われる組織的犯行であることを認識していたこと、当時B2組本部長として同組長のO、同組若頭のFに次ぐ枢要な地位にあったことによれば、被告人は、歯科医師事件がdやfに対する個人的な怨恨等を晴らすためでなく、C4漁業協同組合へ支配力を及ぼし、利益を得るというA2會の不正権益を維持・拡大する目的で敢行されることも認識していたと認められる。 被告人は、歯科医師事件の指示役として、被害者の行動確認、被害者への襲撃、実行犯の逃走援助等、多岐にわたる指示を出しており、歯科医師事件の指示役として極めて重要な役割を果たしている。 以上によれば、被告人は、直接又は上位者を介して、他の共犯者らとの間に不正権益維持・拡大目的殺人の共謀が認められ、故意も認められる。 6 歯科医師事件の結論被告人は、歯科医師事件について、組織的殺人未遂罪及び不正権益維持・拡大目的殺人未遂罪の共同正犯の責任を負う。なお、X、P及びQは、事件の詳細を知らされていなかったことによれば、不正権益を維持・拡大する目的までは認識しておらず、組織的殺人の共謀にとどまるものと判断した。 (累犯前科及び確定裁判)省略(法 P及びQは、事件の詳細を知らされていなかったことによれば、不正権益を維持・拡大する目的までは認識しておらず、組織的殺人の共謀にとどまるものと判断した。 (累犯前科及び確定裁判)省略(法令の適用)省略(量刑の理由)第1 各犯行の犯情 1 甲事件について甲事件は、暴力団組織に属していた被告人及び共犯者らが共謀の上、建設会 社の取締役であった被害者をけん銃で射殺したという殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反の事案である。 その犯行態様は、被害者を目掛けて真正けん銃で弾丸2発を発射し、うち1発を頚部に命中させるという凶悪なものであり、これにより被害者の死亡という取り返しのつかない極めて重大な結果を招いた。突如生命を奪われた被害者の無念は言葉に尽くし難く、理由も分からないまま眼前で夫が射殺された妻が犯人への厳罰を望むのも当然である。 被告人らが被害者を殺害した理由の詳細は不明であるが、本件が暴力団組織に属する者らによる組織的・計画的犯行であり、建設会社の取締役である被害者が暴力団との縁を切ろうとしていたとみられることからすると、いずれにしても暴力団特有の論理に基づく反社会的な犯行であることは疑いない。反社会的な価値観と論理に基づき、意に沿わない者を組織を挙げて抹殺するという、社会においておよそ許容される余地のない犯行であり、その犯情の悪質さは、殺人事件の中でも際立っている。 被告人は、甲事件において、正に被害者を射殺した実行犯であり、その刑事責任は、首謀者、犯行を指示した上位者に次いで重い。 2 元警察官事件について元警察官事件は、暴力団組織に属していた被告人及び共犯者らが、組織として、共謀の上、退職した元警察官に対して、同人が死亡することも辞さず、路上で銃撃して重傷を負わせたという組織的殺人 事件について元警察官事件は、暴力団組織に属していた被告人及び共犯者らが、組織として、共謀の上、退職した元警察官に対して、同人が死亡することも辞さず、路上で銃撃して重傷を負わせたという組織的殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反の事案である。 早朝の市街地において、真正けん銃を発射し、通勤中の被害者を銃撃した犯行態様は、被害者の生命をも奪いかねない危険かつ悪質なものである。 その結果、被害者は、約1か月間の入院及び通院加療の傷害を負い、症状が固定した現時点においても、痛みが残り、走ることができないなど日常生活上の支障が生じており、未遂にとどまったとはいえ結果は重大である。 被害者は、福岡県警察において長年暴力団事件の捜査に従事し、A2會捜査の代表的存在と目されてきた人物である。元警察官事件は、A2會に敵対的であった被害者に対する報復であるとともに、治安維持を担う警察官であっても襲撃を免れないことを示し、警察組織に対する威嚇、牽制及びA2會の威力を社会に誇示することを目的に敢行されたものと認められ、極めて反社会性の高い凶悪な犯行である。 被告人が元警察官事件において果たした役割は、被害者の行動確認や指示役が実行犯へ指示する際の補助などであり、指示役や実行犯と比較すれば数段落ちるものの、この種の組織的犯罪の円滑な実現に相当程度寄与したものである。 3 放火事件について放火事件は、暴力団組織に属していた被告人と共犯者らが共謀の上、所有者家族の住居や多数の飲食店等があったビルと、多数の飲食店等が入居していたビルのそれぞれのエレベーター乗りかごに灯油をまいて火を放ったという現住建造物等放火、非現住建造物等放火の事案である。 建造物が密集する繁華街に位置する両ビルへの放火が地域に与えた不安は多大なものがあり、とりわけ、 レベーター乗りかごに灯油をまいて火を放ったという現住建造物等放火、非現住建造物等放火の事案である。 建造物が密集する繁華街に位置する両ビルへの放火が地域に与えた不安は多大なものがあり、とりわけ、犯行当時、所有者や家族、飲食店の従業員等10名が現在していたビルへの放火は、人の生命・身体を害する危険性の高い非常に悪質なものであって、現に所有者やその家族に気道熱傷を負わせた。 犯行に至る経緯を踏まえると、放火事件は、みかじめ料による収入の減収につながりかねない標章制度に反発するB2組が、標章が掲示された飲食店等への見せしめとして敢行したものであると推認できる。被告人らはこのような不正な金銭的利益のために放火という悪質性の高い犯行に及んだものであって、酌量の余地は皆無である。 被告人は、放火事件において、実行犯らへの指示役として中心的な役割を果たしており、その刑事責任は首謀者に次いで重い。 4 乙事件について 乙事件は、暴力団組織に属していた被告人と共犯者らが、組織として、共謀の上、暴力団組織へのみかじめ料の支払いを拒んだ飲食店の女性経営者Bに対し、同人が帰宅した際を狙って刃物で襲撃して重傷を負わせ、その際犯行を制止しようとした他の一般人Cにも重傷を負わせたという、組織的殺人未遂、不正権益維持・拡大目的殺人未遂の事案である。 その犯行態様は、タクシーから降車した直後のBの顔面を鋭利な刃物で切り付け、さらに臀部を突き刺した上、これを制止しようとしたCの側頭部や頚部を切り付けたというものであり、いずれの行為も動脈を切断するなどして短時間のうちに被害者らを死亡させる現実的危険を有しており、非常に危険で悪質である。 その結果、Bは重傷を負い、長期間の入院加療を経た後、現在も患部の痛みなど様々な後遺症が残存し、著しい肉体的・ 短時間のうちに被害者らを死亡させる現実的危険を有しており、非常に危険で悪質である。 その結果、Bは重傷を負い、長期間の入院加療を経た後、現在も患部の痛みなど様々な後遺症が残存し、著しい肉体的・精神的苦痛を受けている。Cも出血性ショックに陥る重傷を負っており、その被った苦痛は軽いものではない。 乙事件は、標章制度などの暴力団を排除する活動に反発するB2組が、みかじめ料収入という不正な利益を維持するために、暴力団排除の姿勢を明らかにし、経営する店舗に標章が掲示されたBを見せしめとして襲撃したものである。 不正な金銭的利益のためであれば、組織を挙げて、身を守るすべを持たない女性であっても容赦なく襲撃し、その生命に危険を生じさせることも全く辞さないというA2會特有の暴力的な発想に基づく犯行であり、極めて卑劣かつ凶悪である。 被告人は、乙事件において、Bの帰宅時刻の調査及び犯行直前のBの行動確認を行っており、実行犯が犯行を円滑に遂行する上で欠くことのできない重要な役割を果たした。相応の刑事責任は免れない。 5 丙事件について丙事件は、暴力団組織に属していた被告人と共犯者らが共謀の上、暴力団組員の入店を拒否し、みかじめ料を支払っていなかったクラブの営業部長である 被害者に対し、その帰宅途上、刃物で襲撃して傷害を負わせたという事案である。 その犯行態様は、被害者の背後から刃物で尻を立て続けに3回刺すというものであり、刃が深く刺さらないよう細工をしていたとはいえ、被害者の身体に対する危険性は相応に高いものであった。これにより、被害者は入院加療15日間を要する傷害を負っており、予期せぬ凶行を受けたことによる肉体的・精神的苦痛は多大なものであったと推察され、犯行結果は到底軽視できるものではない。 丙事件は、乙事件と同様に、B は入院加療15日間を要する傷害を負っており、予期せぬ凶行を受けたことによる肉体的・精神的苦痛は多大なものであったと推察され、犯行結果は到底軽視できるものではない。 丙事件は、乙事件と同様に、B2組に反抗的な態度をとる者にはいかなる危害をも加え得ることをB3区内の繁華街にある飲食店等に示し、みかじめ料による収入を維持するために敢行されたものである。不正な金銭的利益を維持するために何らの落ち度のない被害者の身体に危害を加えており、悪質な犯行というほかない。 被告人は、犯行当日の被害者の行動確認を担っており、指示役や実行犯と比較すると一段落ちるとはいえ、円滑な犯行の遂行への寄与は軽視できるものではない。 6 看護師事件について看護師事件は、暴力団組織に属していた被告人及び共犯者らが、組織として、共謀の上、看護師に対して、刃物で襲撃して重傷を負わせたという組織的殺人未遂の事案である。 夜間、帰宅途上の被害者の背後から突然襲い掛かり、鋭利な刃物で頭部を切りつけるなどした犯行態様は、生命を奪う危険性の高い非常に凶悪な犯行であり、現に被害者は本件犯行により出血性ショックに陥った。被害者は、現在でも顔に傷跡が残り、神経が切断された指に常にしびれた感じがあり、日常生活における支障も多大であって、事件そのものよりも現在の方がとても苦しいと述べるなど、著しい肉体的・精神的苦痛を被った。 看護師事件は、A2會総裁であるMが、自らの担当看護師であった被害者の言動に不満を抱いて報復を決意し、そのようなMの意思及び指示を受けて、被告人を含む配下組員が組織的に被害者を襲撃したものである。取るに足らない理由で一般市民を襲い、その生命すら脅かした、極めて理不尽な犯行である。 被告人は、看護師事件において、指示役ないし現場指揮役として中心的 配下組員が組織的に被害者を襲撃したものである。取るに足らない理由で一般市民を襲い、その生命すら脅かした、極めて理不尽な犯行である。 被告人は、看護師事件において、指示役ないし現場指揮役として中心的な役割を果たしており、その刑事責任は首謀者、被告人に役割を指示した上位者に次いで重い。 7 歯科医師事件について歯科医師事件は、暴力団組織に属していた被告人及び共犯者らが、組織として、共謀の上、歯科医師に対して、刃物で襲撃して重傷を負わせたという組織的殺人未遂、不正権益維持・拡大目的殺人未遂の事案である。 その犯行態様は、通勤中の被害者に突然刃物で襲い掛かり、正面から胸部、腹部、大腿部を、背後から腰部を合計8か所、それぞれ強い力で突き刺したものであって、生命を奪う危険性の非常に高い凶悪な犯行であり、現に被害者は医師らが現場に到着した時点ですでに出血性ショックに陥っていた。 その結果、被害者は入院加療約14日間及び外来加療約3か月間を要する見込みの傷害を負い、現在でも足の痛みが続き、走ることができないなど、日常生活や仕事において多大な支障が生じている。突如凶行に遭い重傷を負わされた被害者の肉体的・精神的苦痛は著しいものがある。 歯科医師事件は、A2會がC4漁業協同組合に支配力を及ぼし、継続的に経済的等の利益を得る目的で、その組合長であった被害者の父へ圧力をかけるために組織的に実行されたものである。反社会性の著しい犯行であることは論をまたないが、被告人らは、被害者の父への襲撃が困難であることを知るや、同組合とは全くの無関係であった被害者へと襲撃対象を変えて犯行に及んでおり、その卑劣さは際立っている。 被告人は、歯科医師事件において、実行犯らへの指示役として必要不可欠な 役割を果たしており、その刑事責任は首謀者、被告人に役 対象を変えて犯行に及んでおり、その卑劣さは際立っている。 被告人は、歯科医師事件において、実行犯らへの指示役として必要不可欠な 役割を果たしており、その刑事責任は首謀者、被告人に役割を指示した上位者に次いで重い。 第2 量刑判断以上のとおり、被告人は、A2會組員が組織的に実行した判示の各犯行に関与した。とりわけ、暴力団組織が組織的・計画的に一般市民である被害者をけん銃で射殺した甲事件に、実行犯として関与したことによる刑事責任は極めて重く、甲事件への関与のみでも無期懲役刑を選択するに値する。これに加え、被告人は、いずれも重大な結果を発生させた放火事件、看護師事件及び歯科医師事件で指示役として必要不可欠な役割を果たしており、元警察官事件、乙事件及び丙事件でも各犯行へ相当程度寄与している。被告人が判示の各犯行に関与したのは上位者からの指示によるものであり、被告人自身に犯行動機があったわけではないことを考慮しても、刑事責任の重大さは揺らがない。 他方において、被告人が指示役として関与した放火事件、看護師事件及び歯科医師事件については自己及び下位者の役割等を供述しており、事案解明に一定程度寄与している。元警察官事件、看護師事件及び歯科医師事件の各被害者には賠償金又は和解金の全額又は一部が、それぞれ共犯者から支払われている。 被告人の帰りを待つ妻や子がいる。 これらの被告人に有利な事情を最大限考慮しても、被告人の行為責任の重さからすると、有期懲役刑を選択することはできず、被告人を無期懲役刑に処するのが相当と判断した。 (求刑無期懲役)令和4年9月29日福岡地方裁判所第3刑事部 裁判長裁判官神原浩 裁判官細川英仁 懲役) 令和4年9月29日福岡地方裁判所第3刑事部 裁判長裁判官神原浩 裁判官細川英仁 裁判官絹川宥樹

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