- 1 -平成19年9月27日判決言渡平成19年(行ケ)第10006号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成19年9月20日判決原告株式会社ポッカコーポレーション訴訟代理人弁護士鮫島正洋同内田公志同吉原政幸同岩永利彦同松島淳也訴訟復代理人弁護士木村貴司被告特許庁長官肥塚雅博指定代理人鵜飼健同阪野誠司同徳永英男同内山進主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1請求特許庁が不服2004-25516号事件について平成18年11月2日にした審決を取り消す。 第2事案の概要本件は,原告が後記発明につき特許出願をしたところ,拒絶査定を受けたの- 2 -で,これを不服として審判請求をしたが,特許庁から請求不成立の審決を受けたことから,その取消しを求めた事案である。 第3当事者の主張 請求の原因(1)特許庁における手続の経緯原告は,平成8年3月26日,発明の名称を「高品質容器入りコーヒーの製造方法」とする発明について特許出願(特願平8-124125号。請求項1ないし6。以下「本願」という。甲3の2)をし,その後拒絶理由通知を受けたので平成16年3月11日付けで特許請求の範囲の変更を内容とする補正(第1次補正。請求項1ないし5。甲3の7)をしたが,平成16年10月19日拒絶査定を受けたので,平成16年12月14日付けで不服の審判請求をした。 同請求は不服2004-25516号事件として審理されることとなり,その中で原告は,平成17年1月11日付けで特許請求の範囲の変更を内容とする補正(第2次補正。以下「本件補正」という。請求項1ないし5。甲3の11)をしたが,特許庁は 件として審理されることとなり,その中で原告は,平成17年1月11日付けで特許請求の範囲の変更を内容とする補正(第2次補正。以下「本件補正」という。請求項1ないし5。甲3の11)をしたが,特許庁は,平成18年11月2日,本件補正を却下した上「本件審判の請求は,成り立たない」との審決をし,その謄本は平成,。 18年12月11日原告に送達された。 (2)発明の内容ア第1次補正時第1次補正時の特許請求の範囲は,前記のとおり請求項1ないし5から,(「」。),成るがその請求項1に記載された発明以下本願発明というは次のとおりである。 「請求項1】使用する原料を実質的に脱酸素状態としてなること,窒素【ガス雰囲気下でコーヒー粉末を脱酸素した水,湯,熱水,沸とう水又は水蒸気によって抽出処理すること,コーヒーを充填する前の容器内を窒素ガ- 3 -ス雰囲気にして実質的に脱酸素状態とすること,を特徴とする高品質容器入りコーヒーの製造方法」。 イ本件補正時本件補正時の特許請求の範囲も,前記のとおり請求項1ないし5から成るが,その請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という)。 は,次のとおりである(下線部は補正部分。 )「請求項1】使用するすべての原料を実質的に脱酸素状態としてなるこ【と,窒素ガス雰囲気下でコーヒー粉末を脱酸素した水,湯,熱水,沸とう水又は水蒸気によって抽出処理すること,コーヒーを充填する前の容器内を窒素ガス雰囲気にして実質的に脱酸素状態とすること,を特徴とする高品質容器入りコーヒーの製造方法」。 (3)審決の内容ア審決の詳細は,別添審決写しのとおりである。 その要点は,①本願補正発明は下記の各引用例に記載された発明に基(「」。)づいて容易に発明をすることができたから特許法以下 3)審決の内容ア審決の詳細は,別添審決写しのとおりである。 その要点は,①本願補正発明は下記の各引用例に記載された発明に基(「」。)づいて容易に発明をすることができたから特許法以下法という29条2項により特許を受けることができず,したがって本件補正は不適法である,②本願発明も同様の理由により特許を受けることができない,というものである。 記①特開平6-141776号公報(出願人株式会社ポッカコーポレーション,以下「引用例1」といい,同記載の発明を「引用例1発明」という。甲1)②特開昭63-152944号公報出願人大和製罐株式会社以下引(,「用例2」といい,同記載の発明を「引用例2発明」という。甲2)イなお,審決は,引用例1発明を次のとおり認定した上,本願補正発明と対比した一致点と相違点を,次のとおりとした。 - 4 -<引用例1発明>脱酸素状態にしたコーヒー粉末を脱酸素した水,湯,熱水,沸騰水又は水蒸気を用いて窒素ガス雰囲気下で抽出処理し,得られたコーヒー抽出液を窒素ガス雰囲気下で容器に密封することを特徴とする高品質容器入りコーヒーの製造方法。 <一致点>「使用するコーヒー粉末を実質的に脱酸素状態としてなること,窒素ガス雰囲気下でコーヒー粉末を脱酸素した水,湯,熱水,沸とう水又は水蒸気によって抽出処理すること,を特徴とする高品質容器入りコーヒーの製造方法」である点。 <相違点イ>本願補正発明は,コーヒー粉末以外の「使用するすべての原料」を脱酸素状態とするのに対し,引用例1発明では,そのことが記載されていない点。 <相違点ロ>本願補正発明は,コーヒーを充填する前の容器内を窒素ガス雰囲気にして実質的に脱酸素状態とするのに対し,引用例1発明では,そのことが記載されていない点。 (4)審決の れていない点。 <相違点ロ>本願補正発明は,コーヒーを充填する前の容器内を窒素ガス雰囲気にして実質的に脱酸素状態とするのに対し,引用例1発明では,そのことが記載されていない点。 (4)審決の取消事由しかしながら,本件補正発明には独立特許要件がないとして本件補正を却下した審決の認定判断には,以下に述べる誤りがあるから,違法として取り消されるべきである。 ア取消事由1(相違点イについての審決の判断手法の誤り)(ア)法157条2項は「審決は,次に掲げる事項を記載した文書をもって行わなければならない」と,同項4号は「審決の結論及び理由」と定。 めるところ,この点について最高裁判所は以下のように述べている。 - 5 -「特許法157条2項4号が審決をする場合には審決書に理由を記載すべき旨定めている趣旨は,審判官の判断の慎重,合理性を担保しその恣意を抑制して審決の公正を保障すること,当事者が審決に対する取消訴訟を提起するかどうかを考慮するのに便宜を与えること及び審決の適否に関する裁判所の審査の対象を明確にすることにあるというべきであり,したがって,審決書に記載すべき理由としては,当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者の技術上の常識又は技術水準とされる事実などこれらの者にとって顕著な事実について判断を示す場合であるなど特段の事由がない限り,前示のような審判における最終的な判断として,その判断の根拠を証拠による認定事実に基づき具体的に明示することを要するものと解するのが相当である(最高裁昭和59。」年3月13日第三小法廷判決・判例時報1119号135頁)したがって,同最高裁判決によれば,審決書の理由記載の程度については,①原則として,判断の根拠を証拠による認定事実に基づき具体的に明示することを要し,②例外的に,当該 ・判例時報1119号135頁)したがって,同最高裁判決によれば,審決書の理由記載の程度については,①原則として,判断の根拠を証拠による認定事実に基づき具体的に明示することを要し,②例外的に,当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者の技術上の常識又は技術水準とされる事実などこれらの者にとって顕著な事実について判断を示す場合であるなど特段の事由がある場合には,具体的に明示することは不要である,ということになる。 (イ)本件において「・・・副原料(B ・・・についても,予め脱酸素の,)前処理をして,上記製造工程に酸素が同伴されないようにすべきこと」(審決4頁16行~17行)は,上記判決にいう「①の原則的な場合」に当たるものである。 ところが,審決は,上記「・・・副原料(B ・・・についても,予め)脱酸素の前処理をして,上記製造工程に酸素が同伴されないようにすべきこと」について,引用例1にも,引用例2にも,周知技術等の例とし- 6 -て審決が示した実験成績証明書(平成16年3月12日付け手続補足書添付のA作成平成16年2月2日付け実験成績証明書「コーヒー製造において酸素が及ぼす影響について〔甲3の7,甲4,審判甲1。以下」〕「甲4実験成績証明書」という)にも,記載も示唆もないにもかかわ。 ,,,「」らず加えてその他の証拠を示すことなく簡単に当業者が容易に想到し得るとして,いわば結論的に示すにとどまっているのである。 これは,判断の根拠を証拠による認定事実に基づき具体的に明示していないことになり,法157条2項4号所定の理由を示していない理由不備に当たる。 ,,,(ウ)被告は相違点イについてこの相違点についての判断の根拠として証拠である引用例1(甲1)を具体的に明示し,併せて,出願(平成8 項4号所定の理由を示していない理由不備に当たる。 ,,,(ウ)被告は相違点イについてこの相違点についての判断の根拠として証拠である引用例1(甲1)を具体的に明示し,併せて,出願(平成8年3月26日)時の周知事項や技術常識を示した上での判断であるから審決は正当である旨主張する。 しかし,相違点イが出願時の技術常識や技術水準ではないことは,被告も認めるところであるから,相違点イについての判断の根拠を出願時の周知事項や技術常識に求めたとしても,審決を正当化できないものである。 また,引用例1には,そもそも相違点イについての記載も示唆もない,,のだから相違点イについての判断の根拠を引用例1に求めたとしても審決を正当化できないことは明らかである。 イ取消事由2(相違点イについての判断の誤り)審決は「・・・引用例1に係る発明においても,コーヒー粉末を使用時に予め脱酸素処理している。そうすると,コーヒー粉末以外の副原料についても,その使用時に酸素が同伴されないように予め脱酸素処理することは当業者が容易になし得ることである(4頁18行~22行)と判断し。」た。 - 7 -,「,しかし引用例1 に係る発明にコーヒー粉末以外の副原料についてもその使用時に酸素が同伴されないように予め脱酸素処理する」技術を組み合わせることには,以下のとおり,阻害事由があり,容易想到ではない。 (ア)阻害事由1出願当時,代表的な副原料である液状の乳は,一般的な特性から,脱酸素すなわち窒素ガスの吹き込みをすることによる問題点が懸念されていた。したがって,これらの問題点を回避するため,副原料の作製の際などには,なるべく窒素等の気体を入れないように行うことが常識であった。それゆえ,副原料を脱酸素するという発想と,コーヒーを脱酸素するという発想 って,これらの問題点を回避するため,副原料の作製の際などには,なるべく窒素等の気体を入れないように行うことが常識であった。それゆえ,副原料を脱酸素するという発想と,コーヒーを脱酸素するという発想を組み合わせるには,阻害事由があった。 (イ)阻害事由2出願当時,コーヒー製造の副原料となる液状の牛乳は一定程度酸化された状態で工場に入庫されていたため,これを今さら脱酸素しても仕方ないだろうという固定観念があった。また出願当時,牛乳を脱酸素するという発想はいかなる飲料でも行われていなかった。したがって,乳を脱酸素するという発想とコーヒーを脱酸素するという発想を組み合わせるには,阻害事由があった。 (ウ)阻害事由3出願当時,液状の乳をはじめとする副原料まで脱酸素するような設備を整えることは設備投資が甚大であった。加えて上述のとおり,副原料の割合は小さく,投資に見合った効果が得られないと考えるのが一般的であった。したがって,副原料を脱酸素するという発想とコーヒーを脱酸素するという発想を組み合わせるには,阻害事由があった。 (エ)阻害事由4出願当時,代表的な副原料である液状の乳を,脱酸素すなわち窒素ガスの吹き込みをする場合には,かき混ぜることが必要であり,そのため- 8 -の問題点も懸念されていた。すなわち,副原料の作製の際には液状の乳の変質の懸念があり,かき混ぜそのものやかき混ぜに類する作業はなるべく行わないことが常識であった。したがって,乳を脱酸素するという発想とコーヒーを脱酸素するという発想を組み合わせるには,阻害事由があった。 (オ)阻害事由5出願当時,代表的な副原料である液状の乳は,消費期限が短かったため腐敗の防止が最大の課題であった。すなわち,出願当時には,乳をはじめとする副原料はそもそも脱酸素まで要求されていなかった 阻害事由5出願当時,代表的な副原料である液状の乳は,消費期限が短かったため腐敗の防止が最大の課題であった。すなわち,出願当時には,乳をはじめとする副原料はそもそも脱酸素まで要求されていなかったのである。したがって,副原料を脱酸素するという発想とコーヒーを脱酸素するという発想を組み合わせるには,阻害事由があった。 (カ)阻害事由6,()本願の出願当時液状の乳以外の重曹・砂糖などの粉体粉乳を含むの脱酸素化は,その溶解原理上,困難を伴うものであった。もし,粉体をその溶媒となる水よりも先に添加することができれば,その前段階で窒素ガス置換を行い,脱酸素した水を添加して溶解することによって,容易に脱酸素した副原料を得ることができるとも考えられる。しかし,出願当時,実際は粉体には水を入れることはできなかった。なぜなら,粉体がダマになりやすかったからである。 したがって,粉体を溶かした水を製造するには,先に水をタンク等に投入し,その後副原料を添加し,攪拌して溶解することになる。ところが,この方法では,脱酸素工程との整合性が極めて難しいものとならざるを得ない。というのは,溶解自体は速やかに実施できるものの,予め脱酸素した粉体原料や予め脱酸素した水を使用したとしても,原料投入を少しずつ行うため,どうしても酸素が溶解タンクに入り込む構造になりやすいからである。 - 9 -以上のことから,副原料を脱酸素するという発想とコーヒーを脱酸素するという発想を組み合わせるには,阻害事由があった。 (キ)阻害事由7出願当時「膜脱気装置が主流。有機物が混合した液体は膜脱気でき,なかった平成19年2007年5月22日付け技術説明資料甲。」(()〔22)のである。これは不純物が混入すると膜が目詰まりを起こして〕しまうからである。した た液体は膜脱気でき,なかった平成19年2007年5月22日付け技術説明資料甲。」(()〔22)のである。これは不純物が混入すると膜が目詰まりを起こして〕しまうからである。したがって,副原料の脱酸素については,阻害事由があった。 (ク)被告は,引用例1 に係る発明に「コーヒー粉末以外の副原料についても,その使用時に酸素が同伴されないように予め脱酸素処理する」技術を組み合わせることの阻害事由について,①前記阻害事由1~5については,本願補正発明の副原料が乳に限るわけではないから審決は正当である旨,②阻害事由6については,副原料だけでなくコーヒー粉末のことを考えれば阻害事由6は不当である旨主張する。 しかし,上記①については,乳以外の副原料について少なくとも阻害,。 事由6があるのだからそれだけでは審決を正当化することはできないまた,上記②については,抽出する主原料であるコーヒー粉末と,溶解する副原料とでは,そもそも性質が全く異なるものであり,阻害事由6はきわめて合理的なものである。 ウ取消事由3(本願補正発明に係る効果についての判断の誤り)(ア)審決は「また,本願補正発明の奏する効果をみても,本願補正発明,では,抽出処理後,得られたコーヒー抽出液を容器に密封するまでの工程を窒素ガス雰囲気下で行うことを発明特定事項としていないから,この工程でコーヒー抽出液が脱酸素とはいえない状態下に置かれる場合があると考えられる。そうすると,請求人が甲第1号証として提出した実験成績証明書(判決注,甲4実験成績証明書)に記載の実験結果から類- 10 -推すると,脱酸素状態でない工程を含む本願補正発明は,所期の効果が奏されるとは到底いえない(4頁下3行~5頁4行)とするが,誤り。」である。 本願明細書(甲3の2)には「得 から類- 10 -推すると,脱酸素状態でない工程を含む本願補正発明は,所期の効果が奏されるとは到底いえない(4頁下3行~5頁4行)とするが,誤り。」である。 本願明細書(甲3の2)には「得られたコーヒー抽出液を容器に密封するまでの工程」に何の言及もないのであるから,これを発明特定事項とする必要はない。仮に,そのような工程が存在したとしても,本願補正発明においてはそのような工程において窒素ガス雰囲気下等,何らかの脱酸素状態が達成されるべきことが既に含意されている。これは,本願明細書の従来技術の欄,発明の実施の形態の欄及び実施例1からすれば,明らかである。 それにもかかわらず,審判官は存在もしない工程を勝手に作り出し,そのような存在しない工程について発明特定事項としていないことに基づいて,効果の認定を拒否しているのであって,このような恣意的な認定手法が誤りであることは論をまたない。 したがって,審決の上記判断はそもそも誤りである。 (イ)次に審決は「また,仮に,本願補正発明が全工程を脱酸素処理する,ことを発明特定事項にしたとしても,脱酸素処理を全工程にわたり行ったものが,その一部しか行わなかったものに比較して酸化によるコーヒー飲料の品質劣化がより抑制されることは,当業者ならば容易に予測し得ることであるから,全工程を脱酸素状態にすることに基づく効果は格別なものとはいえない(5頁4行~9行)とするが,誤りである。 。」まず,本願明細書(甲3の2)によれば,本願補正発明は引用例1に対して顕著な効果を奏することは明らかである。 ,,,,また甲4実験成績証明書によれば本願補正発明により色の濃い,。 酸化されていないコーヒー本来の香気にあふれたコーヒーが得られる,(。 さらに原告が平成19年2月20日に作成した実験 ,また甲4実験成績証明書によれば本願補正発明により色の濃い,。 酸化されていないコーヒー本来の香気にあふれたコーヒーが得られる,(。 さらに原告が平成19年2月20日に作成した実験成績書甲13- 11 -以下「甲13実験成績書」という)によれば,本願補正発明に顕著な。 効果があることが明らかである。特に,香気に関しては,完全脱酸素のもの(本願補正発明に対応)は,副原料の脱酸素のない部分脱酸素(相)(,違点イに対応及び副原料と空缶の脱酸素のない部分脱酸素相違点イロに対応)に比べて,明らかに有意な差がある(甲13の9頁~10頁のグラフ。 )そして原告が平成19年5月15日に作成した実験成績書追加甲()(16。以下「甲16実験成績書」という)によれば,本願補正発明に。 顕著な効果があることが明らかである。また,原告が平成19年6月11日に作成した実験成績書官能評価による脱酸素製法の特徴確認甲()(。 「」。),, 以下甲17実験成績書というによれば本願補正発明は引用例1及び2に記載された発明に比較して「おいしさ」の点で,顕,著な効果を有するものである。 以上のように,本願補正発明のような脱酸素処理を全工程にわたり行,,ったものは一部酸素を含むかもしれない部分酸素処理のものに比べてその脱酸素処理工程自体の線形的増加を超えて脱酸素による品質劣化防止効果が非線形的に増加し,予測できない顕著で有利な効果を生じたのである。したがって,本願補正発明は引用例1などに比べて進歩性を有する。 (ウ)なお被告は,①本願補正発明が「使用するすべての原料を実質的に,」,「,脱酸素状態とする窒素ガス雰囲気下でコーヒー粉末を脱酸素した水湯,熱水,沸とう水又は水蒸気によって抽出処理す 。 (ウ)なお被告は,①本願補正発明が「使用するすべての原料を実質的に,」,「,脱酸素状態とする窒素ガス雰囲気下でコーヒー粉末を脱酸素した水湯,熱水,沸とう水又は水蒸気によって抽出処理する」及び「コーヒーを充填する前の容器内を窒素ガス雰囲気にして実質的に脱酸素状態とする」という少なくとも3つの脱酸素処理手段で脱酸素処理する方法であり,その中には,フィラータンク内のヘッドスペース部分を窒素ガスで置換しない(脱酸素状態にしない)実施の態様や,抽出後得られたコー- 12 -ヒーを容器に密封するまでの工程を窒素ガス雰囲気下で処理しない(脱酸素状態にしない)実施の態様を含むものであるから,結果的に本願補正発明は全工程を脱酸素するものではなく,審決は正当である,②本願補正発明の効果も当業者の予測の範囲内であるから審決は正当である,旨の主張をしている。 しかし,上記①の点について,本願補正発明に係るある工程を窒素ガス等で処理しないからといって,直ちに脱酸素状態にならないわけではなく,それだけでは審決を正当化できないものである。すなわち,フィラータンクについていえば,脱酸素された液がフィラータンクへ送られるときに窒素が移動し,酸素は抜け道から押し出されることになり,フィラータンクに特別の工夫がなくても,一定程度酸素は窒素に置換されることになるのである。 また,上記②については,①の点の認定の誤りに加えて,本願補正発明のような食品分野においては非線形的効果の向上があり,本願補正発明の効果が当業者の予測の範囲内であるとは必ずしも言えず,審決を正当化することはできない。 エ取消事由4(本願補正発明の要旨認定手続の違法),,,,(ア)原告は本願補正発明出願後一貫して本願補正発明の要旨として「容器入りコーヒー製造の全工程を脱酸 化することはできない。 エ取消事由4(本願補正発明の要旨認定手続の違法),,,,(ア)原告は本願補正発明出願後一貫して本願補正発明の要旨として「容器入りコーヒー製造の全工程を脱酸素処理するもの」を主張してきた。そして,これに対して,被告も一旦これを認めた上で,応答を繰り返してきたのである。 そのような事情があるにもかかわらず,①被告は,審決で「本願補,正発明が全工程を脱酸素処理」するものではない旨の認定を行っており(3頁(3)対比,4頁(4)判断など参照,これは原告にとって不意打ち)であって平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下「旧特許法」という)159条2項に反し,②それを正当化しようとするいわ。 - 13 -ゆるリパーゼ事件判決(最高裁平成3年3月8日第二小法廷判決・民集45巻3号123頁)に反する旨の被告の主張も,信義則に反し許されないものである。 (イ)不意打ちの点a旧特許法159条2項は「第50条の規定は,拒絶査定不服審判,。」において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に準用するとして,拒絶査定不服審判請求を不成立とする審決をしようとするときは,特許出願人に対し,拒絶の理由を通知し,相当の期間を指定し,。 て意見書を提出する機会を与えなければならない旨を規定しているこの規定の趣旨は,審査手続において通知した拒絶理由によって出願を拒絶することは相当でないが,上記拒絶理由とは異なる理由によって拒絶するのが相当と認められる場合には,出願人が当該異なる理由については意見書を提出していないか又は補正の機会を与えられていないことが通常であることにかんがみ,出願人に対し改めて意見書の提出及び補正の機会を与えることにあり,審判段階におけるいわゆる不意打ち防止を図るものである。とすれば いか又は補正の機会を与えられていないことが通常であることにかんがみ,出願人に対し改めて意見書の提出及び補正の機会を与えることにあり,審判段階におけるいわゆる不意打ち防止を図るものである。とすれば,審決の理由が既に通知してある拒絶理由と同趣旨のものであり,出願人に対し意見書の提出及び補正の機会が実質的に与えられていたときは,改めて拒絶理由が通知されなかったことをもって,旧特許法159条2項において準用する同法50条の規定に違反する違法があるとまではいえないが,逆に,審決の理由が既に通知してある拒絶理由と同趣旨のものはなく,出願人に対し意見書の提出及び補正の機会が実質的に与えられていないときは,改めて拒絶理由が通知されなかったことをもって,旧特許法159条2項において準用する同法50条の規定に違反する違法があることになる(例えば,知財高裁平成18年(行ケ)第10030号・平成18年9月12日判決参照。 )- 14 -,,,bこれを本件についてみると原告は拒絶査定前の拒絶理由通知が甲1及び2を引用例とした法29条2項違反の旨であったことにかんがみ(甲3の6,拒絶査定前の意見書において「・・・容器入りコ),ーヒーの製造に至るすべての工程を脱酸素状態にする・・・コーヒー粉末その他の原料をはじめとして,コーヒーの抽出工程,タンク内,空缶,充填工程,ヘッドスペース等すべての工程に亘って脱酸素状態にするよう・・・(平成16年3月11日付意見書〔甲3の7〕1」頁27行~30行)と主張した。これに対し,被告は「そして,脱,酸素処理を全工程にわたり行ったものが,その一部しか行わなかったものに比べて効果が優れることは十分予期し得ることであり,顕著な効果とは認められない(拒絶査定〔甲3の9〕下3行以降)と反論。」しており拒 全工程にわたり行ったものが,その一部しか行わなかったものに比べて効果が優れることは十分予期し得ることであり,顕著な効果とは認められない(拒絶査定〔甲3の9〕下3行以降)と反論。」しており拒絶査定の前には本願補正発明の要旨として明白に容,,,「器入りコーヒー製造の全工程を脱酸素処理するもの」を認めているのである。 さらに原告は,拒絶査定が先の拒絶理由と同旨の甲1及び2を引用(),例とした法29条2項違反の旨であったことにかんがみ甲3の9拒絶査定不服審判の理由補充において「・・・すべての工程を脱酸,素状態にする・・・容器入りコーヒーの製造に至るすべての工程を脱酸素状態にする・・・コーヒー粉末その他の原料をはじめとして,コーヒーの抽出工程,タンク内,空缶,充填工程,ヘッドスペース等すべての工程に亘って脱酸素状態にするよう・・・(審判請求理由補」充〔甲3の11〕2頁21行~28行)と主張した。これに対し被告は「・・・全工程の脱酸素処理が当業者にとって想到困難であった,理由として審判請求人が指摘しているのは,高コスト化につながると,。 いう点のみであって技術的な困難性については何ら指摘していない一方,全てを完璧に脱酸素すればより効果が高まることは,予期し得- 15 -るものと認められ,本願発明の効果が格別顕著なものであるとは認められない(前置報告書〔甲3の12〕下6行~下1行)と反論して。」おり,さらに「・・・全工程の脱酸素処理が当業者にとって想到困難であった理由として審判請求人が指摘しているのは,高コスト化につながるという点のみであって,技術的な困難性については何ら指摘し。 ,,ていない一方全てを完璧に脱酸素すればより効果が高まることは予期し得るものと認められ,本願発明の効果が格別顕著なも につながるという点のみであって,技術的な困難性については何ら指摘し。 ,,ていない一方全てを完璧に脱酸素すればより効果が高まることは予期し得るものと認められ,本願発明の効果が格別顕著なものであるとは認められない(審判官の平成18年3月1日付け審尋〔甲3の。」14〕2頁下6行~下1行)とも反論しており,審判段階に入ってもなお,本願補正発明の要旨として,明白に「容器入りコーヒー製造の全工程を脱酸素処理するもの」を認めているのである。 このように原告は,審決に至るまでの審判を含めた出願経過中一貫して,本願補正発明の要旨として「容器入りコーヒー製造の全工程を脱酸素処理するもの」を主張し,他方,被告も,審決以外の審判を含めた出願経過中一貫して,本願補正発明の要旨として「容器入りコーヒー製造の全工程を脱酸素処理するもの」を認めていたのである。 したがって,出願人たる原告は,これらの応答に沿って,法29条2項違反のみの拒絶理由を回避すべく,手続補正書を提出し,意見書において顕著で有利な効果などを主張し,自らの主張を地道に積み上げようとしていたのである(甲3の7,甲3の11など参照。 )cところが,審決の,本願補正発明は「容器入りコーヒー製造の全工程を脱酸素処理するもの」ではない旨の被告の認定は「本願補正発,明は,原告主張の発明の要旨を表しておらず,実質的には特許法36条に違反する」との認定にほかならず,実体的特許要件である法29条2項違反の拒絶理由とは全く異なるものである。 しかるに,被告は,審判段階では「特許法36条に違反する」旨の- 16 -拒絶理由を通知しなかった(甲3参照。そのため原告は,拒絶理由)はいまだ法29条2項のみであるという認識しかなく,それについて信頼していたところ,被告は,実質的に法36条違反である旨の 16 -拒絶理由を通知しなかった(甲3参照。そのため原告は,拒絶理由)はいまだ法29条2項のみであるという認識しかなく,それについて信頼していたところ,被告は,実質的に法36条違反である旨の審決を下しているのである。これは正に「審決の理由が既に通知してある拒絶理由と同趣旨のものではなく,出願人に対し意見書の提出及び補正の機会が実質的に与えられていないとき」に当たり,不意打ちである。そして「改めて拒絶理由が通知されなかった」のだから,旧特,許法159条2項において準用する同法50条の規定に違反する違法があるのも当然である。この審決の違法の瑕疵は,本件のように,形式的には引用例が拒絶査定と同じでその理由も同じであったとしても,拒絶査定とは実質的に異なる理由で審決を下している以上,治癒することはないものである。 (ウ)信義則違反被告は,上述のとおりの出願経過であるにもかかわらず,審決でいきなり,本願補正発明の要旨は「容器入りコーヒー製造の全工程を脱酸,素処理するもの」ではない旨を認定した。その後,被告は,平成19年4月9日付け準備書面(第1 回)でもいわゆるリパーゼ事件判決を引用するなどして審決を正当化して審決と同様の趣旨を主張した。 (),,この被告準備書面第1 回での主張は従前原被告間で応答を重ねその応答に既に信頼関係が生じていた法29条2項違反の拒絶理由とは全く異なる趣旨を包含するものである。上述のとおり,被告の主張は,「本願補正発明は,原告主張の発明の要旨を表しておらず,実質的には法36条に違反する」との主張にほかならず,従来から存した原被告の信頼関係を裏切るものなのである。 加えて,仮に被告が,きちんと審判段階で本願補正発明が法36条違反である旨の拒絶理由を通知したならば原告はこれに応えることができ ほかならず,従来から存した原被告の信頼関係を裏切るものなのである。 加えて,仮に被告が,きちんと審判段階で本願補正発明が法36条違反である旨の拒絶理由を通知したならば原告はこれに応えることができ- 17 -たことは,出願経過及び審判経過からすれば明らかである。 とすれば,原告は本願補正発明を補正する機会を奪われた上,もはやその機会もないのに,本件訴訟において,本願補正発明は実質的に法36条違反であると主張する被告の訴訟行為は,審判を含んだ出願経過中に存在した信頼関係を裏切り,矛盾した行為として禁反言に違反するも,()。 のであって明白な信義則違反民訴法2条及び民法1条2項である,,,。 よって結局のところかかる主張は到底許されるべきものではない以上のとおりであるから,被告は,本願補正発明について「容器入りコーヒー製造の全工程を脱酸素処理するもの」ではなく,リパーゼ事件判決に反する旨の主張を行うことはできないのである。 (エ)これに対し被告は,本願の審査及び審判手続の過程において,本願補正発明は「使用するすべての原料を実質的に脱酸素状態とする「窒素」,ガス雰囲気下でコーヒー粉末を脱酸素した水,湯,熱水,沸とう水又は水蒸気によって抽出処理する,及び「コーヒーを充填する前の容器内」を窒素ガス雰囲気にして実質的に脱酸素状態とする」という少なくとも3つの脱酸素処理手段で脱酸素処理する方法であって,その中には,全工程を脱酸素処理する方法をその態様として包含しているものを発明の要旨として認定して手続を進め,それについて法36条違反の拒絶理由もなかったのであるから,手続に何ら瑕疵はなく,審決は正当である旨を主張する。 しかし,被告が本願補正発明の要旨を前記のとおりのものであると認定したのは,審決が最初であって,審決 6条違反の拒絶理由もなかったのであるから,手続に何ら瑕疵はなく,審決は正当である旨を主張する。 しかし,被告が本願補正発明の要旨を前記のとおりのものであると認定したのは,審決が最初であって,審決以前の手続又は審決それ自体に手続上の瑕疵があることは明白であり,審決を正当化することはできない。 請求原因に対する認否請求原因(1)ないし(3)の各事実は認めるが,(4)は争う。 - 18 - 被告の反論(1)取消事由1に対し原告は「・・・副原料(B・・・についても,予め脱酸素の前処理をし,)て,上記製造工程に酸素が同伴されないようにすべきこと」が,本件出願当時の技術常識や技術水準ではなく,本件は,原告主張の最高裁判所判決にいう②の例外的な特段の事由がある場合に当たらないと主張する。 しかし,甲4実験成績証明書に記載の「フロー図1」には,「主原料(A)→調合タンク(C)→充填→巻きしめ(E)→殺菌→製品↑↑()()」副原料B空缶Dと示されており,缶入りコーヒーの上記製法は,本願出願前に当業者において周知の事項である。 また,引用例1には「抽出から容器に密封するまでの全工程を不活性ガ,ス雰囲気下にして実質的にコーヒー中の溶存酸素をなくしておけば容器に密封した後保存中に起る酸素による品質の劣化を防止することができる(審。」決4頁摘示事項( ))と記載され,この記載から当業者は「コーヒー中の溶d存酸素をなくしておけば容器に密封した後保存中に起る酸素による品質の劣化を防止できる」ことを独立した技術思想として把握することができる。 そして,容器入りコーヒー中に溶存する酸素は,使用する原料を介し,及び容器入りコーヒーを製造する一連の工程においてコーヒー中に持ち込まれることは技術常識であるから,容器入りコーヒー ることができる。 そして,容器入りコーヒー中に溶存する酸素は,使用する原料を介し,及び容器入りコーヒーを製造する一連の工程においてコーヒー中に持ち込まれることは技術常識であるから,容器入りコーヒー中に溶存酸素が含まれないようにするためには,上記「フロー図1」で示される本願出願前に周知であった容器入りコーヒーの製造工程の原料を含む各工程において酸素が同伴されないようにすればよいことは,当業者ならばすぐに気付くことである。 このことを,審決は「・・・上記製法において,調合(C)から充填・,巻きしめ(E)までの工程では,その操作中に酸素が侵入しないようにすべ- 19 -きこと,また,主原料(A,副原料(B)及び空缶(D)についても,予)め脱酸素の前処理をして,上記製造工程に酸素が同伴されないようにすべきことは当業者ならば容易に想到し得る(4頁14行~18行)と判断した」のである。 このように,審決は,缶入りコーヒーの製法に関する上記周知事項や技術常識と引用例1に記載された事項を具体的に明示し,これらの証拠による事実認定に基づいて相違点イの上記判断をしているのであって,原告の挙げる最高裁判所判決にいう「当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者の技術上の常識又は技術水準とされる事実などこれらの者にとって顕著な事実について」の判断であるという②の例外的な特段の事由がある場合に該当する。 (2)取消事由2に対しア原告は「阻害事由1ないし5」において,副原料として乳を使用する,場合の阻害事由をるる述べているが,本願明細書(甲3の2)に「本発明において,コーヒーには,通常のコーヒーのほか,これにミルク,クリーム,砂糖等の甘味料,その他の添加成分を添加したコーヒー飲料もすべて包含される(段落【0022)と記載されているとお )に「本発明において,コーヒーには,通常のコーヒーのほか,これにミルク,クリーム,砂糖等の甘味料,その他の添加成分を添加したコーヒー飲料もすべて包含される(段落【0022)と記載されているとおり,本願補正発。」】明に係る「コーヒー」には,いわゆる「ミルク入り加糖コーヒー」だけでなく,副原料として乳を使用しない「無糖コーヒー」や「加糖コーヒー」も含まれている。 このことは,原告が本件出願の審査段階で提出した資料,審判段階で提出した審尋に対する回答書及び本件訴訟で新たに提出した資料からも明らかである。 すなわち,原告が提出した平成8年4月23日付け「新規性の喪失の例外証明書(甲3の3)に添付の資料のうち,例えば飲料総合専門誌」「」()(),BeverageJapanビバリッジジャパン符号25ないし27には- 20 -「脱酸素製法」を使用して製造した「ポッカMr(ミスター(加糖コ. )」ーヒーに相当する「BLACKコーヒー無糖」及び「BM(ミルク入),」り加糖コーヒーに相当する)を既に発売又は発売予定であることが記載され,また,平成16年3月12日付け手続補足書(甲3の7)に添付の実験成績証明書(甲4実験成績証明書)には,全工程脱酸素処理の効果を確認する目的で,無糖コーヒー,加糖コーヒー,ミルク入り加糖コーヒーについて,酸素除去の有無による各飲料の品質の比較試験を行い,上記コーヒー飲料のそれぞれにおいて顕著な効果が奏されることを立証しようとしているし,さらに,原告は,審尋に対する平成18年5月26日付け回答書(甲3の15)において「・・・段落0022に記載の『通常のコー,ヒー』についても,本発明にしたがって全工程を窒素ガス雰囲気にした方法のほうが,より品質のよい製品が得られる結果を得ております。 書(甲3の15)において「・・・段落0022に記載の『通常のコー,ヒー』についても,本発明にしたがって全工程を窒素ガス雰囲気にした方法のほうが,より品質のよい製品が得られる結果を得ております。事実,本件請求人は,実際にブラックコーヒーを商品として発売しており,好評を得ております。)また『実験成績証明書』においても,ミルク,クリii,ーム,砂糖などの副原料を用いないコーヒー(無糖コーヒー)について試験を行い,その結果,全工程を脱酸素処理することによって,色差,過酸化水素量,香気成分等に関してすぐれた品質の無糖コーヒーが得られることが確認されています(回答書5頁7行~15行)と述べている。さら。」に,本件訴訟において新たに提出した甲13実験成績書においても「ミ,ルク入り無糖タイプ「ブラックタイプ(無糖ブラック「ブラックタ」,)」,イプ(加糖ブラック」及び「ブレンドタイプ(牛乳,重曹,砂糖入り」)の各コーヒーについて,すべての工程を窒素置換(脱酸素)することによる効果を立証しようとしている。 このように,本願補正発明に係る「コーヒー」は「無糖コーヒー」や,「加糖コーヒー」を包含しており,本願補正発明に係る「無糖コーヒー」「」,。 や加糖コーヒーを製造する場合には副原料として乳は使用されない- 21 -一方,審決が「・・・コーヒー粉末以外の副原料についても,その使用時に酸素が同伴されないように予め脱酸素処理することは当業者が容易に。」(),,なし得ることである4頁20行~22行と摘示したとおり審決は副原料を乳に限定して判断しているわけではなく無糖コーヒーや加,「」「糖コーヒー」を製造するときに使用する副原料を含めて判断している。 すなわち,本願補正発明に係る「無糖コーヒー」にお は副原料を乳に限定して判断しているわけではなく無糖コーヒーや加,「」「糖コーヒー」を製造するときに使用する副原料を含めて判断している。 すなわち,本願補正発明に係る「無糖コーヒー」においては,重曹,調製水等の副原料(甲4実験成績証明書の表3参照)について判断すれば。 足り,また,同「加糖コーヒー」においては,重曹,砂糖,調製水等の副原料(甲4実験成績証明書の表3参照)について判断すれば足りる。 。 そして,上記(1)に述べたとおり,引用例1の「抽出から容器に密封するまでの全工程を不活性ガス雰囲気下にして実質的にコーヒー中の溶存酸素をなくしておけば容器に密封した後保存中に起る酸素による品質の劣化を防止することができる(審決2頁の摘示事項( ))という記載から,。」d当業者は「コーヒー中の溶存酸素をなくしておけば容器に密封した後保存中に起る酸素による品質の劣化を防止できる」という技術思想を把握することができ,かつ,容器入りコーヒー中に溶存酸素が含まれないようにするために,コーヒー粉末を使用時に予め脱酸素処理すること及びコーヒー粉末を抽出処理する水,湯,熱水,沸騰水等の抽出用水を予め脱酸素処理することが引用例1に記載されているのであるから「無糖コーヒー」製,,「」造において副原料として使用される重曹調製水等を上記コーヒー粉末や「抽出用水」と同様に予め脱酸素処理することは,当業者が容易に想到し得ることであるし,また「加糖コーヒー」製造において副原料として,使用される重曹,砂糖,調製水等を予め脱酸素処理することも,同様に当業者が容易に想到し得ることである。 このことを,審決は「・・・引用例1に係る発明においても,コーヒー粉末を使用時に予め脱酸素処理している。そうすると,コーヒー粉末以外- 22 -の副原料につ 当業者が容易に想到し得ることである。 このことを,審決は「・・・引用例1に係る発明においても,コーヒー粉末を使用時に予め脱酸素処理している。そうすると,コーヒー粉末以外- 22 -の副原料についても,その使用時に酸素が同伴されないように予め脱酸素。」()処理することは当業者が容易になし得ることである4頁18~22行と判断したのであり,かかる判断に誤りはない。 なお,原告は,副原料として乳を使用する場合に阻害事由1ないし5があると主張しているが,乳についての阻害事由1~5が,重曹,砂糖,調整水についても同様の阻害事由であると推認できる根拠はない。また,乳を予め脱酸素処理するときに他の副原料とは異なり特別な技術的手段を施す必要があることが本願明細書に記載されているわけではないから,原告の主張は失当である。 イまた原告は本件出願当時液状の乳以外の重曹砂糖などの粉体粉,,,,(乳を含む)の脱酸素化は,その溶解原理上,困難を伴うものであったとして,阻害事由6を主張する。 しかし,原告が上記主張の裏付けとして提出する文献「最新ソフトドリンクス(平成15年9月30日株式会社光琳発行,甲14)は,本件出」願後に発行された文献であり,出願当時の技術常識を示す証拠としては参酌できない。仮に参酌したとしても,同文献は,乳の粉末についてのものであり,重曹や砂糖が同様の挙動をとるとはいえないし,粉体に水を入れることができなかったとの主張は,主原料であるコーヒー粉末にも水を入れることできないという非合理なものであるから,重曹や砂糖といった副原料を脱酸素処理することに阻害事由があったことが出願当時に当業者にとって認識されていたとはいえない。 また,原告が平成19年(2007年)5月15日作成した「副原料の溶解性試験(甲15)は,上 副原料を脱酸素処理することに阻害事由があったことが出願当時に当業者にとって認識されていたとはいえない。 また,原告が平成19年(2007年)5月15日作成した「副原料の溶解性試験(甲15)は,上記文献に基づく主張を裏付けるための実験」報告書であり,本願明細書等に記載された技術事項や本願出願時の技術常識を確認するものともいえず,上記文献と同様に参酌できない。 ウさらに,原告は,阻害事由7として,本件出願当時は「膜脱気装置が主- 23 -流。有機物が混入した液体は膜脱気できなかった(平成19年〔200。」7年〕5月22日付け技術説明資料,甲22)のであるから,副原料の脱酸素については阻害事由があった旨主張するが,上記主張は,単に,原告自身の作成した技術説明資料(甲22)の記載のみに基づく主張であり,主張するような事実があるかどうかは不明であって,客観的な根拠に欠けるものであるから,参酌に値しない。 念のため「有機物が混合した液」の膜脱気について,以下に述べる。 ,本願補正発明に係る「無糖コーヒー」及び「加糖コーヒー」を製造するときに使用する副原料(重曹,砂糖,調整水)を脱酸素状態とすることについて,当業者が容易に想到し得たことは,既に述べたとおりであるところ,原告の上記主張は,副原料に「有機物」を用いる場合について述べたものであり,無機物である重曹(炭酸水素ナトリウム)と水を副原料とする「無糖コーヒー」については明らかに関係がない。 また,副原料に砂糖(有機物)を用いる「加糖コーヒー」の場合についても,例えば,有機物が水に不溶であり水中に大きな粒子が分散している状態の「有機物が混合した液」と異なり,砂糖を水に混合した液の場合,砂糖は水に溶解するから,膜を通過する際の目詰まりに影響を与えるものとはいえず,原告が主張するような阻害 に大きな粒子が分散している状態の「有機物が混合した液」と異なり,砂糖を水に混合した液の場合,砂糖は水に溶解するから,膜を通過する際の目詰まりに影響を与えるものとはいえず,原告が主張するような阻害事由があるとはいえない。 (3)取消事由3に対しア原告は,本願補正発明においては,その工程において窒素ガス雰囲気下等,何らかの脱酸素状態が達成されるべきことが既に含意されていると主張する。 しかし,特許出願に係る発明の認定は,特段の事情がない限り,明細書の特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきである(最高裁平成3年3月8日第二小法廷判決・民集45巻3号123頁参照)ところ,本願補正発明に係る「使用するすべての原料を実質的に脱酸素状態とする「窒素」,- 24 -ガス雰囲気下でコーヒー粉末を脱酸素した水,湯,熱水,沸とう水又は水蒸気によって抽出処理する「コーヒーを充填する前の容器内を窒素ガス」,雰囲気にして実質的に脱酸素状態とする」及び「高品質容器入りコーヒーの製造方法」という発明特定事項は,いずれもその技術的意義を一義的に明確に理解することができるし,また,一見して上記事項の記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるともいえないから,本願補正発明の認定に当たり,上記判決にいう「特段の事情」はないというべきである。 そうである以上,本願補正発明の認定は特許請求の範囲の記載に基づいてなされるべきであり,明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌して,本願補正発明を限定的に解釈することは許されない。 イこの点,本願補正発明は,フィラータンク内のヘッドスペース部分も窒素ガス雰囲気にして実質的に脱酸素状態にすることや,抽出処理後,得られたコーヒーを容器に密封するまでの工程を窒素ガス雰囲気下で処理することは記載 補正発明は,フィラータンク内のヘッドスペース部分も窒素ガス雰囲気にして実質的に脱酸素状態にすることや,抽出処理後,得られたコーヒーを容器に密封するまでの工程を窒素ガス雰囲気下で処理することは記載されていないのであるから,容器入りコーヒー製造の全工程を脱酸素処理するものだけではなく,全工程のうち,例えば,①フィラータンク内のヘッドスペース部分を窒素ガスで置換しない(脱酸素状態にしない)実施の態様や,②抽出処理後,得られたコーヒーを容器に密封するまでの工程を窒素ガス雰囲気下で処理しない(脱酸素状態にしない)実施の態様を包含しているものである。 このことは,本件補正(第2次補正)後の請求項2ないし4が,補正後の請求項1を更に限定して「請求項2】更に,フィラータンク内のヘッ,【ドスペース部分も窒素ガス雰囲気にして実質的に脱酸素状態とすること,を特徴とする請求項1に記載の製造方法「請求項3】抽出処理後,得。」,【られたコーヒーを容器に密封するまでの工程を窒素ガス雰囲気下で処理すること,を特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の製- 25 -造方法」及び「請求項4】原料を含むすべての製造工程において実質的。 【に脱酸素状態としてなること,を特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の製造方法(甲3の11)となっていることからも明らか。」であるまた本願明細書甲3の2の発明の詳細な説明には・。 ,()【】,「・・この場合,更にフィラー4のヘッドスペースに窒素ガスを圧入しておくと更に脱酸素が充分に行われる(段落【0011)及び「・・・原。」】料の調製から容器への充填,巻締,密封までの全工程を不活性ガス雰囲気で行うと更に良い結果が得られる(段落【0012)と記載され,こ。」】の記 われる(段落【0011)及び「・・・原。」】料の調製から容器への充填,巻締,密封までの全工程を不活性ガス雰囲気で行うと更に良い結果が得られる(段落【0012)と記載され,こ。」】の記載からも,本願補正発明は,容器入りコーヒー製造の全工程を脱酸素処理することを必須の要件とするものではなく,全工程のうち,例えば,上記2つの実施の態様をも包含していることは明らかである。 なお,原告は,脱酸素された液がフィラータンクに送られるときに窒素が移動し,酸素は抜け道から押し出されることになり,フィラータンクに特別の工夫がなくても一定程度酸素は窒素に置換されると主張するが,このような主張は,本願補正発明が,全工程を脱酸素処理する方法だけではなく,全工程のうち一部の工程を脱酸素しない態様も含むことを自認するものである。 このように,本願補正発明は,全工程を脱酸素処理することを発明特定事項としておらず,また,本願補正発明を「全工程を脱酸素処理する」ものと解釈することも許されない。 ウそして,全工程のうち一部の工程を脱酸素しない態様においては,缶容,,器内に酸素が残存し酸化によるコーヒーの品質の劣化は免れないところごく少量の副原料(無糖ブラックでは,コーヒー焙煎豆48.00g/L に対し,重曹は0.80g/L(甲4実験成績証明書の3頁「<1>-I:無糖ブラック製造」を参照)を窒素置換することによって更に少量の酸素を除いたとしても,品質劣化が幾分抑制される程度のことであって,それにより顕著- 26 -な効果が奏されるとは考え難く,この程度の効果は当業者にとって十分に予測し得ることである。 エなお,原告は各種実験成績証明書等を挙げて,全工程を脱酸素状態にすることに基づく効果をるる述べ,本願補正発明のように脱酸素処理を全工程にわたり行ったも 業者にとって十分に予測し得ることである。 エなお,原告は各種実験成績証明書等を挙げて,全工程を脱酸素状態にすることに基づく効果をるる述べ,本願補正発明のように脱酸素処理を全工程にわたり行ったものは,一部酸素を含むかもしれない部分酸素処理のものに比べて,その脱酸素処理工程自体の線形的増加を超えて脱酸素による品質劣化防止効果が非線形的に増加し,予測できない顕著で有利な効果を生じたと主張するが,上述のとおり,本願補正発明は,全工程を脱酸素処理することを発明特定事項としていない以上,これを前提とした原告の上記主張は失当である。ちなみに,脱酸素処理を全工程にわたり行ったものは,酸素を実質的に含まないのであるから,一部酸素を含むかもしれない部分脱酸素処理のものに比べて,酸素による品質劣化防止効果が優れていることは,当業者が容易に予測し得ることであり,実験により有利な効果が奏されることが確認できたとしても当業者の予測の範囲内であるし,品質劣化防止効果が非線形的に増加するものともいえない。 (4)取消事由(4)に対しア原告の主張は,要するに,原告が本願補正発明の要旨として本願出願後一貫して「容器入りコーヒー製造の全工程を脱酸素するもの」を主張してきたのに対し,被告は,そのような発明の要旨を一旦認めた上での応対を重ねていたにもかかわらず,一度も審判手続において拒絶理由通知をすることがないまま,審決でいきなり「本願補正発明が全工程を脱酸素処理」するものでない旨の認定を行ったものであり,そして,審決におけるこの認定は「本願補正発明は,原告主張の発明の要旨を表して,おらず,実質的には法36条に違反する」との認定にほかならず「法3,6条に違反する」旨の拒絶理由を通知されていない原告に対する不意打ちであって,旧特許法159条2項において準用する同 を表して,おらず,実質的には法36条に違反する」との認定にほかならず「法3,6条に違反する」旨の拒絶理由を通知されていない原告に対する不意打ちであって,旧特許法159条2項において準用する同法50条の規定- 27 -に違反する,また,被告第1回準備書面における,本願補正発明が「容器入りコーヒー製造の全工程を脱酸素するもの」ではない旨の被告の主張は,審判を含んだ出願経緯中に存在していた原被告の信頼関係を裏切り矛盾した行為として禁反言に違反するものであって信義則違反民,,(訴法2条及び民法1条2項)であるというものである。 イしかし,審決は,本願補正発明を,容器入りコーヒーの製造において,全工程のうち「使用するすべての原料を実質的に脱酸素状態とする「窒」,素ガス雰囲気下でコーヒー粉末を脱酸素した水,湯,熱水,沸とう水又は水蒸気によって抽出処理する」及び「コーヒーを充填する前の容器内を窒素ガス雰囲気にして実質的に脱酸素状態とする」という少なくとも3つの脱酸素処理手段で脱酸素処理する方法であって,その中には,全工程を脱酸素処理する方法をその態様として包含しているものとして本願補正発明の進歩性について判断しており,原告主張のように「本願補正発明が全,工程を脱酸素処理」するものでない旨の認定は行っていない。 むしろ,被告は,本願の審査及び審判手続の過程において,一貫して,特許を受けようとする発明を,全工程のうち「使用する(すべての)原料を実質的に脱酸素状態とする「窒素ガス雰囲気下でコーヒー粉末を脱酸」,素した水湯熱水沸とう水又は水蒸気によって抽出処理する及びコ,,,」「ーヒーを充填する前の容器内を窒素ガス雰囲気にして実質的に脱酸素状態とする」という少なくとも3つの脱酸素処理手段で脱酸素処理する方 沸とう水又は水蒸気によって抽出処理する及びコ,,,」「ーヒーを充填する前の容器内を窒素ガス雰囲気にして実質的に脱酸素状態とする」という少なくとも3つの脱酸素処理手段で脱酸素処理する方法であって,その中には,全工程を脱酸素処理する方法をその態様として包含しているものとして,拒絶査定(甲3の9,前置報告(甲3の12)及)び審尋(甲3の14)を行っている。 また,原告主張のような「本願補正発明は,原告主張の発明の要旨を表しておらず,実質的には特許法36条に違反する」との拒絶の理由もないのであるから,本件審決における本願補正発明の認定手続は,原告- 28 -に対する不意打ちに当たるものではなく,そのような本願補正発明の認定に係る被告の主張が信義則に反するものでもない。 ウ原告の上記主張は①平成16年3月11日付け手続補正及び意見書甲,(3の7)と,②平成17年1月11日付け手続補正書(甲3の11)の記載を根拠とするものであるが,第1次補正に係る特許請求の範囲の記載をみても,同請求項1の発明(本願発明)は,本願補正発明と同様に,第1次補正前の特許請求の範囲の記載から,全工程を脱酸素処理する方法だけではなく全工程のうち一部の工程で脱酸素処理しない態様を包含しているものであると明確に把握できるものである。 そうすると,上記①及び②の記載においては,一見すると「すべての,工程を脱酸素状態にするという技術思想」を意識し,本件補正(第2次補正)前の請求項1を「すべての工程に亘って脱酸素状態にする,すな」,「,,わちコーヒー粉末その他の原料をはじめとしてコーヒーの抽出工程タンク内,空缶,充填工程,ヘッドスペース等すべての工程に亘って脱酸素状態にする」と特定したことを述べているようにみえるが,すべての工程のうち,少なく その他の原料をはじめとしてコーヒーの抽出工程タンク内,空缶,充填工程,ヘッドスペース等すべての工程に亘って脱酸素状態にする」と特定したことを述べているようにみえるが,すべての工程のうち,少なくとも「コーヒー粉末その他の原料「コーヒーの」,抽出工程」及び「空缶」については,脱酸素状態にすることを特定しているものと解するのが相当である。 したがって,この点に関する原告の主張は失当である。 エまた,原告は,拒絶査定(甲3の9)の「備考」欄の「・・・脱酸素処理を全工程にわたり行ったものが・・(下3行)との記載等を指摘,」し,被告が,本件補正前の請求項1に係る発明(本願発明)を「全工程を脱酸素処理する方法」であると認定していたと主張するが,これも妥当ではない。 すなわち,第2次補正前の請求項1に係る発明(本願発明)は「全工,程を脱酸素処理する方法」の態様だけでなく,全工程のうち一部の工程で- 29 -脱酸素処理しない態様を包含しているところ,当該拒絶査定の「備考」欄で拒絶理由の根拠を述べる上で,出願人が,意見書(甲3の7後半)において「全工程」について主張をしていることにかんがみ,本願発明の,うち,最良の態様である全工程を脱酸素処理する方法についての効果を否定すれば当然に,一部の工程を脱酸素処理しない方法についてもその効果を否定するに足りるから,上記のように記載したものであり,当該記載があったとしても,本件補正前の請求項1に係る発明(本願発明)を「全工程を脱酸素処理する方法」であると認定しているものとはいえない。このことは,拒絶査定に続く前置報告書(甲3の12)及び審尋書(甲3の14)についても同様である。 オなお,原告は「法36条に違反する」旨の拒絶理由の通知がないと主,張するが,特許請求の範囲の記載から本願補正発明及 に続く前置報告書(甲3の12)及び審尋書(甲3の14)についても同様である。 オなお,原告は「法36条に違反する」旨の拒絶理由の通知がないと主,張するが,特許請求の範囲の記載から本願補正発明及び本願発明が明確に把握できる以上,本願が法36条で規定する要件を満たしていないとはいえないから,原告の主張は失当である。 第4当裁判所の判断 請求原因(1)(特許庁における手続の経緯,(2)(発明の内容,(3)(審決))の内容)の各事実は,当事者間に争いがない。 取消事由1(相違点イについての審決の判断手法の誤り)について(1)ア引用例1(甲1)には,次の記載がある。 (ア)【0001】【産業上の利用分野】本発明は実質的に酸素のない状態でコーヒーを抽出し,高品質のコーヒーを得るものである。 (イ)【0007】【課題を解決するための手段】本発明では不活性ガス雰囲気下でコーヒー粉末を脱酸素した水,湯,熱水,沸騰水又は水蒸気によって抽出処理することによって高品質のコーヒーを得ることに成功したものである。 (ウ)【0008】即ち,本発明では,コーヒー粉末の存在する雰囲気を不- 30 -,,,,活性ガス例えば窒素ガスで置換し実質的に無酸素の状態としかつコーヒー粉末を抽出処理する水,湯,熱水,沸騰水又は水蒸気のもととなる抽出用水を脱酸素処理,例えば脱酸素装置を用いた脱酸素処理を行い,実質的に酸素を含まない水として,これを加熱又は加圧加熱して得た水,湯,熱水,沸騰水又は水蒸気によって,コーヒー粉末を抽出処理するものである。 (エ)【0009】本発明においては,実質的に酸素の存在しない状態で抽出することを可能とし,味を劣化させる成分,即ち,いやなえぐ味,強い苦味,渋味などの溶出を極力抑え,適度な苦味,まろやかな味,入れ エ)【0009】本発明においては,実質的に酸素の存在しない状態で抽出することを可能とし,味を劣化させる成分,即ち,いやなえぐ味,強い苦味,渋味などの溶出を極力抑え,適度な苦味,まろやかな味,入れたての香りをもつ高品質のコーヒーを得ることができたものである。 (オ)【0010】また,本発明は不活性ガス雰囲気下でコーヒー粉末を脱酸素した水,湯,熱水,沸騰水又は水蒸気によって抽出処理し,得られたコーヒーを容器に密封するまでの工程を不活性ガス雰囲気下で処理して高品質のコーヒーを得るものである。 (カ)【0011】抽出から容器に密封するまでの全工程を不活性ガス雰囲気下にして実質的にコーヒー中の溶存酸素をなくしておけば容器に密封した後保存中に起る酸素による品質の劣化を防止することができる。 (キ)【0019】実質的に酸素のない状態で抽出したコーヒーは高品質のコーヒーであるが,得られたコーヒーを容器に密封するまでの工程を不活性ガス雰囲気下で処理すれば,実質的に酸素を含まないカン入りコーヒーを得ることができる。 イ以上の各記載によれば,コーヒーの品質には,酸素が味を劣化させる成分として深く関係し,缶入りコーヒーを製造する際,コーヒー粉末や水などの主原料について脱酸素すること,また,原料のみならず,その工程自体を脱酸素の状態で行うことが,高品質のコーヒーを得る上で有用であるとの技術常識の存在を認めることができる。 - 31 -そして,原告作成に係る甲4実験成績証明書によれば,缶入りコーヒーの製法の一般的なフローとして,「主原料(A)→調合タンク(C)→充填→巻きしめ(E)→殺菌→製品↑↑()()」副原料B空缶Dという工程が認められるところ,酸素とコーヒーの品質との深い関係にかんがみれば,主原料(A)の脱酸素処理,上記(C →充填→巻きしめ(E)→殺菌→製品↑↑()()」副原料B空缶Dという工程が認められるところ,酸素とコーヒーの品質との深い関係にかんがみれば,主原料(A)の脱酸素処理,上記(C)ないし(E)の工程の全部又は一部を脱酸素の状態で行うということのほか,副原料(B)のすべてを脱酸素化すれば高品質のコーヒーが得られるということは,当該技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)にとっては技術上の常識に属するものというべきである。 そうすると,引用例1に記載の技術事項に基づいて,コーヒー粉末以外の「使用するすべての原料」を脱酸素状態とすることは,容易に想到できるものと認められる。 (2)アこれに対し原告は,審決が,相違点イについての判断に当たり,証拠を示すことなく「当業者ならば容易に想到しうる」としたことは,最高裁,判所の判例に違反し,特許法157条2項4号所定の理由を示していないことになると主張する。 イ相違点イについての審決の判断は,以下のとおりである。 「缶入りコーヒーの製法は,請求人が提出した甲第1号証の『フロー図1』によると,主原料(A)→調合タンク(C)→充填→巻きしめ(E)→殺菌→製品↑↑副原料(B)空缶(D)というものである。 一方,引用例1に『抽出から容器に密封するまでの全工程を不活性ガス- 32 -雰囲気下にして実質的にコーヒー中の溶存酸素をなくしておけば容器に密封した後保存中に起る酸素による品質の劣化を防止することができる』。 (摘示事項(d))と記載されているように,製造された缶入りコーヒー中には溶存酸素が実質的に含まれないようにしておくことが求められるところ,これを達成するためには,上記製法において,調合(C)から充填・巻きしめ(E)までの工程では,その操作中に酸素が侵入しないよ 中には溶存酸素が実質的に含まれないようにしておくことが求められるところ,これを達成するためには,上記製法において,調合(C)から充填・巻きしめ(E)までの工程では,その操作中に酸素が侵入しないようにす,,(),()(),べきことまた主原料A副原料B及び空缶Dについても予め脱酸素の前処理をして,上記製造工程に酸素が同伴されないようにすべきことは当業者ならば容易に想到し得ることであり,引用例1に係る発明においても,コーヒー粉末を使用時に予め脱酸素処理している。 そうすると,コーヒー粉末以外の副原料についても,その使用時に酸素が同伴されないように予め脱酸素処理することは当業者が容易になし得ることである(4頁3行~22行)。」ウ審決の上記記載によれば,審決は,引用例1における「抽出から容器,に密封するまでの全工程を不活性ガス雰囲気下にして実質的にコーヒー中の溶存酸素をなくしておけば容器に密封した後保存中に起る酸素による品質の劣化を防止することができる」との記載から,コーヒー中に溶存酸。 素があると,容器に密封した後の保存中に酸素による品質の劣化が起こることを前提に,酸素の侵入による品質の劣化を避けるため,すべての副原料に脱酸素処理を適用することが有用であるとの技術常識を抽出し,これにより相違点イについては容易に想到できる旨を述べたものと理解できる。 そして,審決の上記論理過程は前記(1)ア・イに述べたところと合致するから,誤りということはできず,その理由が上記のような技術常識を前提とするものである以上,理由の記載として欠けるところもないというべきである。 - 33 -したがって,この点に関する原告の主張は採用することができない。 取消事由2(相違点イについての判断の誤り),,「,(1) 由の記載として欠けるところもないというべきである。 - 33 -したがって,この点に関する原告の主張は採用することができない。 取消事由2(相違点イについての判断の誤り),,「,(1)原告は引用例1 に係る発明にコーヒー粉末以外の副原料についてもその使用時に酸素が同伴されないように予め脱酸素処理する」技術を組み合わせることには阻害事由があり,容易想到ではないと主張する。 (2)ところで,原告の主張する阻害事由のうち,阻害事由1,2,4,5は,。 ,,いずれも乳を副原料とした場合の阻害事由であるすなわち阻害事由1は液状の乳の一般的特性から窒素等の気体を入れることが問題視されていたこと,阻害事由2は,液状の牛乳は既に酸化された状態で工場に入庫されていたため脱酸素しても仕方ないという固定観念,阻害事由4は,液状の乳をかき混ぜることによる変質の懸念,阻害事由5は,液状の乳の消費期限が短いことによる腐敗の問題をいうものである。 しかし,本願補正発明は「使用するすべての原料を実質的に脱酸素状態,としてなること,窒素ガス雰囲気下でコーヒー粉末を脱酸素した水,湯,熱水,沸とう水又は水蒸気によって抽出処理すること,コーヒーを充填する前の容器内を窒素ガス雰囲気にして実質的に脱酸素状態とすること,を特徴とする高品質容器入りコーヒーの製造方法」というものであって,ここにお。 けるコーヒーは,副原料として乳を使用することを特定事項としておらず,副原料を含まないいわゆるブラックコーヒーや,乳を含まない加糖コーヒーを含むものである。 そうである以上,乳を副原料とした場合における阻害事由をもって本件補正発明の阻害事由ということはできないから,阻害事由1,2,4,5に関する原告の主張はいずれも理由がない。 (3)次に阻害事由3について検討 以上,乳を副原料とした場合における阻害事由をもって本件補正発明の阻害事由ということはできないから,阻害事由1,2,4,5に関する原告の主張はいずれも理由がない。 (3)次に阻害事由3について検討すると,阻害事由3は,出願当時,液状の乳をはじめとする副原料まで脱酸素するような設備を整えるには設備投資が甚大であったというものであるが,発明を実施するために要する費用の多寡は- 34 -直ちに阻害事由となるものではないし,また,本願明細書に設備投資が甚大となることを窺わせるような記載は見当たらず,その他これを認めるに足り。 ,。 る的確な証拠はないしたがってこの点に関する原告の主張は理由がない,,,(4)次に阻害事由6について検討すると阻害事由6は粉体の脱酸素化には溶解原理上の困難を伴うというものであり,具体的には,予め脱酸素した粉原料や予め脱酸素した水を使用したとしても,水への原料投下は少しずつ行うため,どうしても酸素が溶解タンクに入り込むというものであるが,このような事情は,粉体の副原料の脱酸素化自体の困難性を直ちに意味するもの,。 ,,ではなく阻害事由とすることはできないまた粉体を溶解するに当たり粉体を直接タンクの水に投入することが唯一の方法であり,これ以外の方法では粉体を溶解できないとも考え難い。したがって,この点に関する原告の主張は理由がない。 (5)さらに阻害事由7について検討すると,阻害事由7は,有機物が混合した液体は目詰まりを起こすため,脱酸素方法の主流である膜脱気装置は使用できないというものである。しかし,本願補正発明は,上記のとおり,脱酸素の手段として「膜脱気装置」を使用することを発明特定事項としていないから,原告の上記主張は理由がない。 (6)なお,原告は,乳以外の副原料について少な 。しかし,本願補正発明は,上記のとおり,脱酸素の手段として「膜脱気装置」を使用することを発明特定事項としていないから,原告の上記主張は理由がない。 (6)なお,原告は,乳以外の副原料について少なくとも阻害事由6があるなどと主張するが,いずれも上記判断を左右するものではない。 取消事由3(本願補正発明に係る効果についての判断の誤り)について(1)原告は,本願補正発明は,引用例1発明と比較して顕著な効果を奏する旨主張するところ,引用例1(甲1)には,引用例1発明の効果に関し,次の記載が認められる。 ア【0009】本発明においては,実質的に酸素の存在しない状態で抽出することを可能とし,味を劣化させる成分,即ち,いやなえぐ味,強い苦み,渋みなどの溶出を極力抑え,適度な苦み,まろやかな味,入れたての- 35 -香りをもつ高品質のコーヒーを得ることができたものである。 イ【0013】一般に,コーヒーの抽出固形量を多くして収率を上げるために,抽出温度を70~130℃と高くし,抽出時間を20~120分と長くしている。そして,このように抽出温度を高くし,抽出時間を長くすれば,味を劣化させる,即ち,いやなえぐ味,強い苦味,渋味などが多量に抽出されてしまうことになる。 ウ【0014】しかし,本発明の実質的に酸素のない状態のコーヒー粉末抽出によれば,約70~130℃の湯,熱水又は水蒸気による抽出であっても,えぐ味,強い苦味,渋味などのいやな味は,ほとんど抽出されず,高品質のコーヒーが高収率で得られるのである。 エ実施例として,引用例1発明の方法により製造したコーヒー(サンプル),() と脱酸素をしない従来の方法により製造したコーヒーサンプル1とを対照する方法で,30名に対しパネルテストを行った結果,次のとおりとなった(段落【00 造したコーヒー(サンプル),() と脱酸素をしない従来の方法により製造したコーヒーサンプル1とを対照する方法で,30名に対しパネルテストを行った結果,次のとおりとなった(段落【0022】~【0025。 】)「味覚評価」と題する表1には,上記サンプル1とサンプル2の味覚評価が5段階の評点5,4,3,2,1ごとの人数と短評で示され,その人数と短評は,サンプル1は順に0,2,7,15,6で「苦み強い,サ」ンプル2は順に11,12,6,1,0で「まろやかで飲み易い」である(段落【0026。表1の欄外には「サンプル2については,コーヒー】)感がシャープに出ている。いやなえぐ味・酸味が少ない。入れたての香りがある等の評価を得た」と記載されている。 。 オ【0029】表1から明らかなように,本発明によるコーヒーは品質劣化が抑制され,苦味はやわらかく軽い味があり,入れたての香りも保持されているのが分る。 カ【0031】【発明の効果】本発明においては,実質的に酸素の存在しない状態でコーヒー粉数を抽出処理し,味を劣化させる成分,即ち,い- 36 -やなえぐ味,強い苦味,渋味などの溶出を極力抑え,適度な苦味,まろやかな味,入れたての香りをもつ高品質のコーヒーを得ることができた。 (2)以上の記載によれば,引用例1発明は,前述の「実質的にコーヒー中の,溶存酸素をなくし,容器に密封した後保存中に起る酸素による品質の劣化を防止する」との目的を達成するための手段として,抽出を不活性雰囲気下で,,,行うこととコーヒー粉末の脱気すなわち脱酸素と水等の脱酸素を採用しこれにより品質劣化が抑制され,まろやかな味,入れたての香りをもつコーヒーを得ることができるという効果を奏するものと認められる。 これに対し,本願補正発明は,引用例1 ち脱酸素と水等の脱酸素を採用しこれにより品質劣化が抑制され,まろやかな味,入れたての香りをもつコーヒーを得ることができるという効果を奏するものと認められる。 これに対し,本願補正発明は,引用例1発明と比べて,さらに,使用するすべての原料を脱酸素状態とする(相違点イ,また,コーヒーを充填する)(),前の容器内を窒素ガス雰囲気にして実質的に脱酸素状態とする相違点ロというものであり,引用例1発明よりも,さらに脱酸素を徹底させるというものであるから,それに応じて,品質劣化の抑制,まろやかな味,入れたての香りの点で,より優れた効果を奏するであろうことは,容易に予測しうるところである。したがって,本願補正発明が引用例1発明に比し進歩性があるといえるためには,本願補正発明に単なる脱酸素の効果とは異なる顕著な効果が認められなければならない。 この点,本願明細書(甲3の2)によれば,前記(1)エに述べたパネルテストと同様,本願補正発明の方法に則り製造したコーヒー(サンプル2。ただし,フィラーのヘッドスペース部分にも窒素ガスを吹き込み,脱酸素を行っている。段落【0031】参照)と,脱酸素をしない従来の方法により製造したコーヒー(サンプル1)とを常温に3か月間放置した後に対照した結果,味覚評価は,サンプル1については「苦み強い,サンプル2について」は「まろやかでのみやすい,また「サンプル2については,長期間の保持」,にもかかわらず,コーヒー独特のシャープなコーヒー感が維持されている。 ,。」嫌なえぐ味や酸味が少ない入れたての香りがある等の良好な評価を得た- 37 -(段落【0034)というものであり,これと前記引用例1における効果】とを比較しても,本願補正発明における効果がより優れたものであると認める余地があるとしても,これが予測 評価を得た- 37 -(段落【0034)というものであり,これと前記引用例1における効果】とを比較しても,本願補正発明における効果がより優れたものであると認める余地があるとしても,これが予測の範囲を超えた顕著な効果を奏するものであるとまでは認め難い。 また原告は,甲17実験成績書をもって上記主張の根拠とするところ,同実験においては,酸素置換率の異なる3種のサンプル(①完全脱酸素をしたもの,②フィラータンクの窒素置換をしなかったこと以外は完全脱酸素をし,),たもの③上記②で副原料の窒素置換をもしなかったものを比較した結果味や香り等において,①ないし③の順序で評価が劣っており,脱酸素の程度によってその優劣の効果が生じることが認められるものの,本願補正発明が脱酸素に伴い当然予想される効果を超えた顕著な効果を奏するものとまでは認め難い。 したがって,本願補正発明が引用例1発明に比し顕著な作用効果を奏するとまでは認められないというべきである。 (3)なお原告は,本願補正発明においては,全工程について窒素ガス雰囲気下等,何らかの脱酸素状態が達成されるべきことが既に含意されている旨主張する。 しかし,本願補正発明は,①使用するすべての原料を実質的に脱酸素状態とすること,②窒素ガス雰囲気下で,脱酸素した水等を用いてコーヒーを抽出処理すること,③コーヒーを充填する前の容器内を窒素ガス雰囲気にして実質的に脱酸素状態とすることを発明特定事項とするものであって,それ以外の工程における脱酸素処理については何ら特定していない。このことは,甲3の11の手続補正書から認められるように,請求項2が,本願補正発明の方法に,フィラータンク内のヘッドスペース部分を窒素ガス雰囲気にして実質的に脱酸素状態とする場合を加えたものを発明特定事項としていること,請 続補正書から認められるように,請求項2が,本願補正発明の方法に,フィラータンク内のヘッドスペース部分を窒素ガス雰囲気にして実質的に脱酸素状態とする場合を加えたものを発明特定事項としていること,請求項3が,本願補正発明の方法に,抽出処理後,得られたコーヒーを- 38 -容器に密封するまでの工程を窒素ガス雰囲気下で処理する場合を加えたものを発明特定事項としていること,請求項4が,本願補正発明の方法に,原料を含むすべての製造工程において実質的に脱酸素状態としてなることを発明特定事項としていることからも明らかである。 そうである以上,本願補正発明において,全工程について脱酸素状態が達成されるべきことが含意されているとの原告の主張は,特許請求の範囲の記載に基づかない主張といわざるを得ない。したがって,この点に関する原告の上記主張は採用することができない。 また原告は,脱酸素処理を全工程にわたり行った場合の効果は顕著なものである旨主張し各種実験結果等を挙げるが,本願補正発明が脱酸素処理を全工程にわたり行ったことを発明特定事項としていない以上,原告の主張はその前提を欠き採用することができない。 取消事由4(本願補正発明の要旨認定手続の違法)について原告は,出願後,一貫して,本願補正発明の要旨として「容器入りコーヒー製造の全工程を脱酸素処理するもの」を主張し,被告もこれを認めて応答を繰り返していたにもかかわらず,審決でこれと反する認定をしたのは不意打ちであって旧特許法159条2項に違反する旨主張する。 しかし,証拠(甲3の1ないし19)によれば,拒絶査定(甲3の9)や前置報告書(甲3の12)などには,全工程の脱酸素処理について触れた記載が存在するが,これらはいずれも,全工程の脱酸素処理の効果を否定すれば,これに包含される一部脱酸素処理の効果も否 (甲3の9)や前置報告書(甲3の12)などには,全工程の脱酸素処理について触れた記載が存在するが,これらはいずれも,全工程の脱酸素処理の効果を否定すれば,これに包含される一部脱酸素処理の効果も否定されるという論理的な関係を前提に,全工程の脱酸素処理の効果をいう原告の主張(甲3の7等参照)に対して応答したものであることは明らかであって,これをもって被告が本願補正発明の要旨として「容器入りコーヒー製造の全工程を脱酸素処理するもの」と認めたことになるものではない。むしろ,本件の審判手続においては,一貫して本願補正発明の進歩性が問題とされ,かつ,審決においては,これが否定された- 39 -結果,原告の不服審判請求が否定されたものであることは明らかであって,その過程に不意打ちがあったとは認めることはできない。原告の上記主張は,本願補正発明は「容器入りコーヒー製造の全工程を脱酸素処理するもの」ではないとする審決の認定は「本願補正発明は,原告主張の発明の要旨を表わして,おらず,実質的には法36条に違反する」との認定にほかならないとの理解を前提に,法36条に違反する旨の拒絶理由を通知していないことの手続違背を主張するものであるが,審決は法29条2項に基づき本願補正発明の進歩性を否定したものであって,法36条に基づき原告の請求を排斥したのでないことは,審決書の記載(甲3の18)から明らかである。 したがって,特許庁が原告に対し法36条に違反する旨の拒絶理由を通知しなかったとしても,手続上の瑕疵となるものではなく,原告の主張は採用することができない。 また原告は,上記不意打ちの主張に対する反論として主張する,いわゆるリパーゼ事件判決に反する旨の被告の主張も信義則に反し許されない旨主張する。しかし,審決が法36条に基づき原告の請求を排斥したものではな 原告は,上記不意打ちの主張に対する反論として主張する,いわゆるリパーゼ事件判決に反する旨の被告の主張も信義則に反し許されない旨主張する。しかし,審決が法36条に基づき原告の請求を排斥したものではなく,審決に手続上の違法がなかったことは上記のとおりであるから,被告が本件訴訟において上記リパーゼ事件判決等を引用して反論したとしても,それが信義則違反となるものではない。 結論 以上のとおりであるから,原告主張の取消事由はすべて理由がない。 よって,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部裁判長裁判官中野哲弘- 40 -裁判官森義之裁判官澁谷勝海
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