令和5年4月6日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和元年(ワ)第16225号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和4年11月29日判決 主文 1 被告らは、原告に対し、連帯して55万円及びこれに対する被告Aは令和2年2月21日から、被告早稲田大学は同月20日から各支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 2 被告早稲田大学は、原告に対し、5万5000円及びこれに対する令和2年2月20日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 3 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は、原告に生じた費用はこれを10分し、その1を被告Aの負担とし、その1を被告早稲田大学の負担とし、その余を原告の負担とし、被告Aに生じた費用はこれを5分し、その1を被告Aの負担とし、その余を原告の負担とし、被告早稲田大学に生じた費用はこれを5分し、その1を被告早稲田大学の負担とし、 その余を原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは、原告に対し、連帯して550万円及びこれに対する被告Aは同月21日から、被告早稲田大学は令和2年2月20日から各支払済みまで年5%の割 合による金員を支払え。 2 被告早稲田大学は、原告に対し、110万円及びこれに対する令和2年2月20日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨 本件は、原告が、①被告早稲田大学及び同大学の教授(当時)である被告Aに 対し、在学中に、被告Aからハラスメントを受け、また、被告早稲田大学が同ハラスメントに対して適切な対応をしなかったことなどにより精神的苦痛を受けたと主張し、被告Aに対し、不法行為(民法709条)に基づき、被告早 に、被告Aからハラスメントを受け、また、被告早稲田大学が同ハラスメントに対して適切な対応をしなかったことなどにより精神的苦痛を受けたと主張し、被告Aに対し、不法行為(民法709条)に基づき、被告早稲田大学に対し、使用者責任(民法715条)及び債務不履行(民法415条)に基づき、連帯して550万円(慰謝料500万円及び弁護士費用50万円)及びこれ に対する訴状送達の日の翌日(被告Aについては令和2年2月21日、被告早稲田大学については同月20日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「民法」という。)所定の年5%の割合による遅延損害金、②被告早稲田大学に対し、同大学を退学した後に、被害回復に尽くすべき義務を怠ったなどと主張して、債務不履行及び不法行為に基づき、110万円(慰謝料1 00万円及び弁護士費用10万円)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和2年2月20日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実当事者間に争いがない事実並びに証拠(枝番は適宜省略する。以下同じ。)及び 弁論の全趣旨により容易に認定できる事実は、次のとおりである。 ⑴ 当事者等ア原告は、平成25年3月、B大学C学部を卒業し、平成27年9月、被告早稲田大学の文学学術院の大学院修士課程の現代文芸コース(以下、単に「現代文芸コース」という。)の入学試験に合格し(以下「本件合格」という。)、 平成28年4月に現代文芸コースへ入学し、平成30年3月に退学した者である(以下、原告が被告早稲田大学に入学してから退学するまでの間を「本件当時」という。)。原告は、婚姻していたことがあるが、本件当時は独身であった。 イ被告早稲田大学は、早稲田大学等の教育、研究機関を 以下、原告が被告早稲田大学に入学してから退学するまでの間を「本件当時」という。)。原告は、婚姻していたことがあるが、本件当時は独身であった。 イ被告早稲田大学は、早稲田大学等の教育、研究機関を設置する学校法人で あり、その学内組織として、ハラスメント防止委員会及び同事務局(以下、 これらを併せて「ハラスメント防止室」という。)を置いている。 ウ被告Aは、原告が現代文芸コースの入学試験を受験した当時及び本件当時、文芸評論を専門とする現代文芸コースの教授であり、当初、原告の指導教員であった。(甲2)被告Aは、平成30年7月27日付けで原告に対するハラスメントを理由 に被告早稲田大学から解任された。(甲9)被告Aは、既婚者である。 エ D(以下「D教授」という。)は、本件当時、現代文芸コースの教授であり、同コース主任であった。 オ E(以下「E准教授」という。)は、本件当時、現代文芸コースの准教授で あった。E准教授は、被告Aの元教え子である。(甲2)カ F(以下「F教授」という。)は、本件当時、現代文芸コースの教授であり、専門分野は創作(小説、批評、エッセイ)であり、被告Aの後の原告の指導教員となった者である。(甲2)⑵ 概ね争いのない事実経過 ア原告は、平成27年9月の入学試験以降、平成28年4月に現代文芸コースに入学するまでの間も、被告Aが授業を聴講するように案内したことから、被告Aの授業を聴講するなどしていた。 イ原告は、平成29年4月20日、被告Aと飲食店に行った。その際、被告Aは、原告に対し、「卒業したらおれの女にしてやる」といった趣旨の発言を した。 ウ原告は、同月24日、D教授に対し、被告Aの上記発言をはじめとして被告Aからハラスメント た。その際、被告Aは、原告に対し、「卒業したらおれの女にしてやる」といった趣旨の発言を した。 ウ原告は、同月24日、D教授に対し、被告Aの上記発言をはじめとして被告Aからハラスメントを受けている旨の相談をした(以下「本件相談」という。)。 エ本件相談を経て、D教授ら現代文芸コースの教員らは、原告の指導教員を 被告Aから変更する調整を行い、原告の指導教員は、同年5月、被告Aから F教授に変更された。(乙ロ12)オ原告は、平成30年3月末、現代文芸コースを退学した。 カ原告は、同年4月16日、被告早稲田大学のハラスメント防止室に電話連絡をし、苦情処理申立ての手続に関する問合せをし、同日、メールにより日程調整の連絡をした。(乙ロ13) キ原告は、同月23日、父とともに、ハラスメント防止室を訪問し、被告Aから受けたハラスメントの内容を説明した。その際、ハラスメント防止室の担当者は、原告に対し自身の名前を名乗らなかった。(乙ロ13)ク原告は、同年6月、ハラスメント防止委員会に対し、苦情申立書を提出した。(甲3) 被告早稲田大学は、原告の申立てを受けて、ハラスメント防止委員会とは独立した本件に関する調査委員会(以下「本件調査委員会」という。)を設置し、原告の申立てに係る被告A、D教授及びE准教授のハラスメント、ハラスメント防止室の対応の不備等について、調査を開始した。 ケ本件調査委員会は、平成30年7月12日付け調査報告書(甲8。以下「本 件報告書」という。)及び同年8月23日付け調査報告書(甲10。以下「本件報告書2」という。)を作成し、その頃、原告にこれらを交付した。 コ本件訴訟に係る訴状は、被告Aに対して、令和2年2月20日に、被告早稲田大学に対して、同年19日に送 査報告書(甲10。以下「本件報告書2」という。)を作成し、その頃、原告にこれらを交付した。 コ本件訴訟に係る訴状は、被告Aに対して、令和2年2月20日に、被告早稲田大学に対して、同年19日に送達された。(当裁判所に顕著な事実) 3 争点及び争点に関する当事者の主張 ⑴ 被告Aによるハラスメント行為の有無(原告の主張)被告Aは、次のアのとおり原告との間で支配従属関係を構築し、イのとおり違法なハラスメント行為を行った。 ア支配従属関係の構築 被告Aは、原告の入学面接試験の際や、その後の合格発表以前から、原告 に対し、聴講すべき授業を命令した。そして、原告の入学後、被告Aは、原告の指導教員となったところ、原告に対し、他の教授が原告の指導教員を引き受けなかったために被告Aが原告の指導教員になったと虚偽の説明をして恩を着せた。さらに、被告Aは、原告に対し、原告が入学試験の際に提出した作品を厳しく講評したり、下記イのとおり原告が創作の拠り所として いた作家等を批判したりする一方で、被告Aの研究室においては原告に丁寧に対応したり、原告のみに対し、飲み会に誘う、イベント入場料を免除する、教科書や本を無料で渡すなどといった優遇的な取扱いをしたりした。 以上の過程により、被告Aは、原告との間で、指導教員と大学院生としての地位よりも強い支配従属関係を構築した。 イ被告Aの違法なハラスメント行為は以下のとおりである(以下の各行為を総称して「本件ハラスメント行為」という。)。 被告Aは、本件合格以降、日常的に、原告が短パンや短いスカートをはいていると、原告の足元を凝視した(以下「本件凝視行為」という。)。本 件凝視行為は、原告の意に反する性的な関心や欲求に基づく性的な言動に当た 格以降、日常的に、原告が短パンや短いスカートをはいていると、原告の足元を凝視した(以下「本件凝視行為」という。)。本 件凝視行為は、原告の意に反する性的な関心や欲求に基づく性的な言動に当たるから、セクシャルハラスメントであって違法な行為である。 被告Aは、本件合格以降、原告に対して「かわいい」などと外見について発言した(以下「本件外見発言行為」という。)。本件外見発言行為は、原告の意に反する性的な関心や欲求に基づく性的な言動に当たるから、セ クシャルハラスメントであって違法な行為である。 被告Aは、本件合格以降、原告と電車に乗り合わせた際に身体を接触させたり、エレベーターや飲み会においては原告の肩や背中を押す、原告の頭を触るなどの行為を行ったりした(以下「本件身体接触行為」という。)。 本件身体接触行為は、必然性のない行為であり、原告の意に反する性的な 関心や欲求に基づく性的な言動に当たるから、セクシャルハラスメントで あって違法な行為である。 被告Aは、平成28年1月22日、原告と他の大学院生とともに居酒屋に行った際に、原告が冗談で「寄付して下さい」と言ったところ、原告に対し、「キス」と言って顔を近付けた(以下「本件キス発言行為」という。)。 本件キス発言行為は、原告の意に反する性的な関心や欲求に基づく性的な 言動に当たるから、セクシャルハラスメントであって違法な行為である。 被告Aは、平成28年の春学期の被告Aの授業中、原告が雨の中通学したために上着が濡れたまま授業に出席したところ、原告に対し、他の出席者である学生に上着を借りるように命じ、原告がその指示に従って上着を脱いだところ、被告Aは、原告に対し、原告が上着を脱ぐ様子を眺めて、 上着の下が裸だったらどうしようといった に対し、他の出席者である学生に上着を借りるように命じ、原告がその指示に従って上着を脱いだところ、被告Aは、原告に対し、原告が上着を脱ぐ様子を眺めて、 上着の下が裸だったらどうしようといった趣旨の発言をした(以下「本件授業時発言行為」という。)。本件授業時発言行為は、原告の意に反する性的な関心や欲求に基づく性的な言動に当たるから、セクシャルハラスメントであって違法な行為である。 被告Aは、原告に対し、昼夜を問わず原告に授業と関係のない電話をし、 原告が電話に出ないと叱責したことがあった(以下「本件電話及び叱責行為」という。)。本件電話及び叱責行為は、原告の意に反して原告の私的な領域に立ち入り、過度の要求をしている点、精神的な攻撃をしている点において、パワーハラスメントであって違法な行為である。 被告Aは、本件合格以降、度々、原告に対し、二人きりで食事をするこ とを求め、二人きりで食事に行った際には、被告Aの食べかけの食事を直箸で原告の皿に乗せたり、原告の食べかけの食事を自分の方へ持って行ったりした(以下「本件会食要求及び食事シェア行為」という。)。同行為は、原告の意に反して優越的地位に基づき行われたものであるから、パワーハラスメントであり、かつ、原告の意に反して性的な関心や欲求に基づく性 的な言動に当たるから、セクシャルハラスメントであって違法な行為であ る。 被告Aは、原告に対し、被告Aのゼミの飲み会に原告の意に反して深夜2時まで出席を強いた(以下「本件飲み会出席強要行為」という。)。本件飲み会出席強要行為は、原告に対して被告Aの優越的な地位に基づくものであるから、違法である。 被告Aは、本件合格以降、被告Aの授業において、原告が創作の拠り所としていた村上春樹、河合隼雄及び 席強要行為は、原告に対して被告Aの優越的な地位に基づくものであるから、違法である。 被告Aは、本件合格以降、被告Aの授業において、原告が創作の拠り所としていた村上春樹、河合隼雄及びユングらの作家自身、作品並びに思想を「死ね」などの表現を用いて罵倒し、それらの作家等を信奉する者は馬鹿であると公言した(以下「本件作家等罵倒行為」という。)。本件作家等罵倒行為は、原告に対し、原告の能力が低いと思わせるような環境を形成 するとともに、原告の人格攻撃をするものであるから、社会通念上相当な方法とは到底いえず、批判・評価の域を超えるものであるから、アカデミックハラスメント、パワーハラスメントであって違法な行為である。 被告Aは、本件合格以降、原告に対し、おにぎりやティッシュなどの買出しといった個人的用事を命じた(以下「本件私用強要行為」という。)。 本件私用強要行為は、指導の範囲を超えて不適切なものであるから、アカデミックハラスメントであって違法な行為である。 被告Aは、平成29年4月20日、飲食店において、「卒業したらおれの女にしてやる」といった趣旨の発言をした(以下「本件おれの女発言行為」という。)。本件おれの女発言行為は、原告の意に反する性的な関心や欲求 に基づく性的な言動に当たるから、セクシャルハラスメントであって違法な行為である。 被告Aは、原告に対し、同月27日、その数日前に被告Aの電話に原告が出なかったことについて詰問し、また、原告が出席する飲み会に案内するように要求し、これを原告が断ったものの、被告Aは、原告の関知しな いところで飲み会の場におり、原告が被告Aに挨拶もしないでいると、帰 り際に原告のことをにらみつけた(以下「本件詰問及び飲み会案内要求等行為 が断ったものの、被告Aは、原告の関知しな いところで飲み会の場におり、原告が被告Aに挨拶もしないでいると、帰 り際に原告のことをにらみつけた(以下「本件詰問及び飲み会案内要求等行為」という。)。本件詰問及び飲み会案内要求等行為は、被告Aの指導的立場を利用したセクシャルハラスメントであって違法な行為である。 被告Aは、同年5月後半頃、たまたま遭遇した原告に対し、ニヤニヤと笑いながら近づき、「卒業は大丈夫なんですか」、「単位は大丈夫なんです か」などと声を掛けた(以下「本件卒業要件発言行為」という。)。本件卒業要件発言行為は、被告Aの指導的立場を利用して原告を威圧するものであって、パワーハラスメントであって違法な行為である。 (被告Aの主張)ア支配従属関係の構築は否認し、争う。 イ本件凝視行為は否認し、争う。 ウ本件外見発言行為は否認し、争う。 エ本件身体接触行為は否認し、争う。 オ本件キス発言行為は否認し、争う。 カ本件授業時発言行為について、被告Aが、雨で濡れた上着を着たままであ った原告を見て上着を借りるように言ったことは認め、その余は否認し、争う。被告Aは上記発言をしたにとどまり、それが不法行為と評価される余地はない。 キ本件電話及び叱責行為のうち、被告Aが叱責したことは否認し、本件電話及び叱責行為が違法な行為であることは争う。 ク本件会食要求及び食事シェア行為のうち、被告Aが原告に対して二人きりで食事をすることを求めたことは否認し、本件会食要求及び食事シェア行為がセクシャルハラスメントであることは争う。 ケ本件飲み会出席強要行為は否認し、争う。 コ本件作家等罵倒行為について、原告が村上春樹、河合隼雄及びユングらを 創作の拠 食事シェア行為がセクシャルハラスメントであることは争う。 ケ本件飲み会出席強要行為は否認し、争う。 コ本件作家等罵倒行為について、原告が村上春樹、河合隼雄及びユングらを 創作の拠り所としていたかは不知であり、本件作家等罵倒行為が違法である ことについては、争う。本件作家等罵倒行為は、被告Aの思想表明であり、批判に過ぎないことに加え、原告に対して行われたものでないから違法行為にはならない。 サ本件私用強要行為については、不知であり、私用を強制してはいないから、違法でない。 シ本件おれの女発言行為は認め、それが不法行為としてのハラスメントであるとの主張は争う。同発言は、原告との間で卒業後の話になった際に、原告が結婚すると言ったことに対してなされたものであり、また、原告の才能に対する愛着の表明であり、さらに、身体的な接触もなく強制も伴わない一回的な同発言のみをもって損害賠償金の支払義務が発生するほどのハラスメ ントには該当しない。 ス本件詰問及び飲み会案内要求等行為は否認し、争う。 セ本件卒業要件発言行為は認め、違法であるとの主張は争う。 (被告早稲田大学の主張)ア支配従属関係の構築については否認し、争う。 イ本件凝視行為のうち、被告Aが原告の足元を見たことがあったことは認める。 ウ本件外見発言行為は認める。 エ本件身体接触行為は認める。 オ本件キス発言行為は否認する。 カ本件授業時発言行為は認める。 キ本件電話及び叱責行為について、被告Aが、原告に対し、度々電話をして、原告が電話に出ないと叱責したことは認め、これがハラスメントに当たることは争う。 ク本件会食要求及び食事シェア行為は認める。 ケ本件飲み会出席強要行為は認める。 し、度々電話をして、原告が電話に出ないと叱責したことは認め、これがハラスメントに当たることは争う。 ク本件会食要求及び食事シェア行為は認める。 ケ本件飲み会出席強要行為は認める。 コ本件作家等罵倒行為のうち、被告Aが、ユング派の理論、作品及び作家について「死ね」と発言したことは認め、これがハラスメントに当たることは否認する。 サ本件私用強要行為について、被告Aが自習中の原告に対しておにぎりを買ってこいと命じたことは認める。 シ本件おれの女発言行為は認める。 ス本件詰問及び飲み会案内要求等行為は不知。 セ本件卒業要件発言行為は認める。 ⑵ D教授の不法行為及びD教授を履行補助者とする被告早稲田大学の債務不履行の有無 (原告の主張)ア義務の発生根拠及び義務内容大学は、その学生に対し、在学契約に基づき、研究・学習にふさわしい環境を提供する義務を負い、その一環として、学生の研究・学習が阻害された場合には、そのような阻害行為を速やかに除去して学生の被害を回復する義 務を負う。大学の教員も、大学の被用者又は履行補助者として、同様の義務を負い、大学の教員が同義務に違反した場合、大学は不法行為責任(使用者責任)及び在学契約上の債務不履行責任を負うというべきである。 現代文芸コースの主任であったD教授は、平成29年4月24日、原告から、本件おれの女発言行為をはじめとした被告Aのハラスメント行為につい て本件相談を受けたため、原告の被害を認識した。そうすると、D教授には、原告の相談するハラスメント行為に関する事実関係を確認して被害を真摯に受け止め、原告の被害の回復につき適切な措置をとるべき義務がある。 イ D教授の義務違反アの義務があるにもか 教授には、原告の相談するハラスメント行為に関する事実関係を確認して被害を真摯に受け止め、原告の被害の回復につき適切な措置をとるべき義務がある。 イ D教授の義務違反アの義務があるにもかかわらず、D教授は、下記の言動により同義務を怠 った。 D教授は、本件相談の際、原告に対し、①「面倒なことは嫌だ」などと言い、原告の相談を真摯に受け止めず、②「セクハラはもっとすごいやつだ」などと言って被害の深刻さを理解せず、③「原告に隙がある」などと言って二次加害行為を行い、本件相談以降も、④被告Aに対する詫びの言葉があるとよいのではないかといった趣旨のメールを送付したことより、 被害回復につき適切な措置を講ずることを怠った。 D教授は、原告に対し、本件相談の際、被告Aの行為について⑤「教員変更もしたくない」、⑥「ハラスメント委員会に行くと調査とかとても煩雑で大変なんだよ」、⑦「口外しないように」、⑧「しばらく様子を見よう」などといった趣旨の発言をし、本件相談以降も、⑨文学学術院事務所に相 談の際に具体的なことは話したのでしょうか、⑩被告Aとの問題はあまり広まらないようにした方がよいので慎重にしてくださいなどと記載したメールを送付した(以下、上記D教授の①~⑩の行為をそれぞれ「D教授の行為①~⑩」という。)ことにより、原告に対して口止めをし、事態の収束と隠蔽を優先してコース内部の問題にとどめようとして、被告Aの行為 に関する問題を適切な救済機関に持ち込ませることを妨げたことにより、被害回復への尽力を怠った。 (被告早稲田大学の主張)ア義務の発生根拠及び内容について否認し、争う。相談を受けた教職員が個人の立場で組織が負担するのと同 等の安全配慮義務を負担するものではない。 力を怠った。 (被告早稲田大学の主張)ア義務の発生根拠及び内容について否認し、争う。相談を受けた教職員が個人の立場で組織が負担するのと同 等の安全配慮義務を負担するものではない。 イ義務違反について原告の主張イのうち、D教授が「面倒なことは嫌だ」という趣旨の発言をしたこと、「原告に隙がある」といった趣旨の発言をしたことは認め、これらの発言はD教授が事態を隠蔽する意思に基づくものではないから、こ れらの発言が違法又は義務違反であるとの主張は争う。その余は否認し、 争う。 原告の主張イのうち、D教授が、原告に対し、被告Aのハラスメントについてあまり外で言わないようにという趣旨の発言をしたこと、上記⑨及び⑩の趣旨の各メールを送付したことは認めるが、違法又は義務違反であるとの主張は争う。D教授の行為は、ある一時点の発言やメールの内容の みを切り取るべきではなく、その前後の経緯に照らして違法性等を判断すべきである。D教授は、原告と被告Aとの間の人間関係の調整役として、上記メールの送付時点では原告の指導教員が被告AからF教授に変更された上にD教授から被告Aに対する注意もされていた時期であったことを特に考慮し、調整をできるだけ穏便に行おうとの意図に基づいていた。また、原 告も、上記メールの送付時点においては、ハラスメント防止室への相談に何らの言及もすることなく、解決手段としてD教授による調整を求めていた。そして、特に⑩のメールの送付に当たって、D教授は、F教授と相談の上、原告から被告Aに対するメールを送付することの意味を検討していた。 以上の経緯に照らせば、D教授による上記発言やメールの送付は、社会通 念上相当を欠くとはいえず、違法又は義務違反であるとはいえない。 その余は否認し、争 ルを送付することの意味を検討していた。 以上の経緯に照らせば、D教授による上記発言やメールの送付は、社会通 念上相当を欠くとはいえず、違法又は義務違反であるとはいえない。 その余は否認し、争う。 ⑶ E准教授の不法行為及びE准教授を履行補助者とする被告早稲田大学の債務不履行の有無(原告の主張) ア義務の発生根拠及び義務内容E准教授は、被告Aによる本件ハラスメント行為を熟知していた。そうすると、E准教授にも、原告の相談するハラスメント行為に関する事実関係を確認して被害を真摯に受け止め、原告の被害の回復につき適切な措置をとるべき義務がある。 イ E准教授の義務違反 アの義務があるにもかかわらず、E准教授は、下記の言動により、被害を真摯に受け止めて原告の被害の回復につき適切な措置をとるべき義務を怠った。 E准教授は、原告の指導教員が被告AからF教授に変更された平成29年5月20日頃から、原告も出席するE准教授自身の講義において、被告 Aを称賛する発言を繰り返し、被告Aによるセクハラ発言について被告Aを擁護する発言をした。 E准教授は、平成29年11月頃、原告による被告Aのセクハラの告発に協力しようとしたG助教(以下「G助教」という。)に対し、発言を控えるように圧力をかけた。 E准教授は、平成30年1月頃、原告に対し、原告が成長できたことに関して被告Aにお礼を言うように申し向けた。 (被告早稲田大学の主張)ア義務の発生根拠及び内容について争点⑵(D教授の不法行為及びD教授を履行補助者とする被告早稲田大学 の債務不履行の有無)同様に争う。また、E准教授は原告からハラスメントの相談を受けたわけではないから、義務の発生根拠及び内容は 点⑵(D教授の不法行為及びD教授を履行補助者とする被告早稲田大学 の債務不履行の有無)同様に争う。また、E准教授は原告からハラスメントの相談を受けたわけではないから、義務の発生根拠及び内容は否認し、争う。 イ E准教授の義務違反について原告の主張イについて、E准教授による被告Aの研究成果を称賛する発言があったことは認め、その余は否認し、争う。原告の主張は、具体的 な日時、場所、内容の特定が足りない。同発言は、学問の自由に属する事柄であり、不法行為又は債務不履行となることはない。 原告の主張イについて、否認し、争う。 E准教授による被告Aへお礼を言うように申し向けた行為については認め、義務違反であるとの主張は争う。E准教授の発言は、その前後の経 緯に照らして違法性等を判断すべきである。E准教授は、修士論文審査後 の祝賀会という場面で原告、E准教授以外の多くの人がいる状況において、上記発言をした。また、上記発言は、あくまでも、E准教授が教えたことの半分は、E准教授の師匠である被告Aから教わったことであるから、被告Aにもお礼を述べてもらえたら嬉しいという文脈において、E准教授の感情を述べたに過ぎず、原告に対してお礼を命じたり強要したりしたので はない。また、E准教授の発言内容をみても、被告Aの責任を否定し難いものと考えていることを前提としている。以上からすれば、E准教授の発言が社会通念上相当性を欠くとはいえない。 ⑷ 原告退学後の被告早稲田大学の不法行為及び債務不履行の有無(原告の主張) ア義務の発生根拠及び義務内容被告早稲田大学は、被告A、D教授及びE准教授による上記⑴ないし⑶の不法行為又は義務違反について、使用者としての責任を負い(又は (原告の主張) ア義務の発生根拠及び義務内容被告早稲田大学は、被告A、D教授及びE准教授による上記⑴ないし⑶の不法行為又は義務違反について、使用者としての責任を負い(又は原告に対して良好な教育、学習及び教育環境を提供し、セクハラ及びパワハラ等により学生、院生の教育、学習及び教育環境並びにその権利が阻害されないよう に配慮する義務を負っているにもかかわらず、履行補助者である被告A、D教授及びE准教授においてその義務に違反し)、その結果原告に損害を与えた。そして、被告早稲田大学は、原告の退学後、本件セクハラ行為を認識した。したがって、被告早稲田大学は、原告に対し、信義則上、原告が現代文芸コースを退学した後もその被害の回復に尽くす義務として、被告早稲田大 学における救済機関であるハラスメント防止室において、原告の訴えを丁寧に聴取し、本件調査委員会において適切な調査を実施し、処分を含む適切な対応によって、原告の被害を回復する義務を負っていた。 イ被告早稲田大学の義務違反アの義務があるにもかかわらず、被告早稲田大学は、下記の対応により、 原告の被害の回復に尽くすべき義務を怠った。 被告早稲田大学のハラスメント防止室は、原告が面談の事前相談のために連絡をした際、退学者の訴えは取り上げないかのような対応をし、原告が面談への親族の同行を要望したのに対して、これを受け入れる姿勢を示さなかった。 被告早稲田大学では、事前相談当時、ハラスメント防止室の担当者が名 乗ることをせず、代理人を立てることができない決まりになっていると説明し、相談とは別に申立書の提出を求められ、郵送による申立ては認められないと説明された。 被告早稲田大学が原告の申立てを受けて設置した本件調査委員会は、本 てることができない決まりになっていると説明し、相談とは別に申立書の提出を求められ、郵送による申立ては認められないと説明された。 被告早稲田大学が原告の申立てを受けて設置した本件調査委員会は、本件報告書の作成過程において調査を行ったところ、被告Aの本件作家等罵 倒行為について、擁護する認定をした。また、被告Aの他のハラスメントや他の教員によるハラスメントについての認定も行わなかった。このような本件報告書に係る調査は、不公正で不十分であった。 本件調査委員会は、本件報告書2の作成過程において調査を行ったところ、同委員会がD教授の供述と反する原告の友人H(以下「H」という。) の供述を採用せずにD教授の発言を認定したことは、歪んだ事実認定であり、不公正であり不十分であった。 (被告早稲田大学の主張)ア義務の発生根拠及び義務内容について争う。在学契約の終了により、学生が大学において教育役務を受け、施設 利用をするという利益追求は終了するから、被告早稲田大学には、原告との間の在学契約終了後においても原告に対する学習教育環境に関する配慮義務があるとはいえない。 イ被告早稲田大学の義務違反について原告の主張イのうち、退学者の訴えを取り上げないかのような対応を したことが違法又は義務違反であるとの主張は否認ないし争う。退学者の 訴えを拒絶する趣旨の対応をしたものではない。 親族の同行を受け入れる姿勢を示さなかったことは否認する。 原告の主張イについて、担当者が名乗らなかったことは認め、これが違法又は義務違反であるとの主張は争う。 代理人を立てることができない決まりになっていると説明したこと及 び郵送の申立ては認められないと説明したことは否認する。 原告 ことは認め、これが違法又は義務違反であるとの主張は争う。 代理人を立てることができない決まりになっていると説明したこと及 び郵送の申立ては認められないと説明したことは否認する。 原告の主張イ及びは否認し、争う。 ハラスメント調査に当たっては学内の情勢を踏まえた専門的判断が必要である。また、本件調査委員会はあくまでも学内のリスク管理のために設置されたものであるから、本件調査委員会の在り方については被告早稲 田大学の合目的的判断に委ねられるべき事柄である。以上からすれば、本件調査委員会の調査内容及び調査方法は、本件調査委員会の合理的な裁量に委ねられ、本件調査委員会の調査内容及び調査方法に関する判断が違法又は義務違反となるのは、その判断に裁量の逸脱濫用が認められる場合である。 本件調査委員会において、そのメンバーは中立性を有し、調査の方法も原告の苦情申立書をもとにヒアリング対象者を選定し、供述が食い違う部分やそもそも供述者が不明と述べるものを排斥し、供述者の属性や供述内容を考慮して供述の信用性を判断するなど、当然の事実認定によっている。 したがって、本件報告書及び本件報告書2の作成のための調査が不公正、 不十分であるということはできず、本件調査委員会がその裁量を逸脱濫用したということはできない。 ⑸ 損害及び因果関係(原告の主張)ア退学前の本件ハラスメント行為等による損害及び因果関係 原告は、前記⑴ないし⑶の本件ハラスメント行為等により現代文芸コース の退学を余儀なくされ、多大な精神的苦痛を被った。これらによる慰謝料額は、500万円を下らない。また、相当因果関係のある弁護士費用は、50万円を下らない。 イ退学後の被告早稲田大学の不法行為又は債務不履 余儀なくされ、多大な精神的苦痛を被った。これらによる慰謝料額は、500万円を下らない。また、相当因果関係のある弁護士費用は、50万円を下らない。 イ退学後の被告早稲田大学の不法行為又は債務不履行による損害及び因果関係 原告は、上記⑷の原告退学後の被告早稲田大学の不法行為又は債務不履行により、精神的苦痛を被り、その慰謝料額は100万円を下らない。また、相当因果関係のある弁護士費用は、10万円を下らない。 (被告Aの主張)原告が現代文芸コースを退学したのは、単位不足を踏まえた原告の自由意思 に基づくものというべきであるから、本件ハラスメント行為と原告の損害との間に相当因果関係は認められない。 (被告早稲田大学の主張)ア退学前の本件ハラスメント行為等による損害及び因果関係被告Aの主張に同じ イ退学後の被告早稲田大学の不法行為又は債務不履行による損害及び因果関係争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実 前記前提事実に加え、各項に掲げた証拠及び弁論の全趣旨によれば、次のとおりの事実が認められる。 ⑴ 被告Aの原告に対する行為等ア被告Aは、本件合格以降いずれかの時点において、原告に対し、「かわいい」と発言した。(甲3、8、77、被告A本人8頁) イ被告Aは、本件合格の後であり、かつ、現代文芸コースに入学する前であ る平成27年12月3日、原告と満員状態の電車に乗り合わせた際に、原告と身体を接触させた。また、被告Aは、同月12日に開催された現代文芸コースの学会の打上げとしての飲み会において、原告の頭、肩及び背中を触った。(甲3、8、77、被告A本人26頁)ウ被告Aは、平成28年4月頃の被告Aの授業中、原告が雨の中通学したた め 芸コースの学会の打上げとしての飲み会において、原告の頭、肩及び背中を触った。(甲3、8、77、被告A本人26頁)ウ被告Aは、平成28年4月頃の被告Aの授業中、原告が雨の中通学したた めに上着が濡れたまま授業に出席したところ、原告に対し、他の出席者である学生に上着を借りるように言い、原告がその教室内で濡れた上着を脱いだところ、被告Aは、原告が上着を脱ぐ様子を眺め、原告に対し、「上着の下が裸だったらどうしようかと思った」という趣旨の発言をした。(甲4、8、49、77、証人H2頁、被告A本人6、28頁) エ被告Aは、原告に対し、度々電話をして、原告が電話に出ないと強い口調で咎めたことがあった。(甲8、被告A本人43頁)オ被告Aは、本件合格以降、度々、原告に対し、二人きりで食事をすることを求め、二人きりで食事に行った際には、被告Aの食べかけの食事を直箸で原告の皿に乗せたり、原告の食べかけの食事を自分の方へ持って行っ たりした。その際、原告は被告Aの上記行為を拒絶する旨の意向を示したことはなかった。(甲3、8、77、原告本人34頁、被告A本人8頁)被告Aは、原告に対し、本件合格以降、度々二人で食事に行くことに誘い、原告もこれに応じていること、平成29年4月20日に被告Aが原告の作品を見る機会を設け、これを原告が明示又は黙示に拒絶していなかっ たことが認められ、これらの事実からすれば、本件合格から平成29年4月20日までの間、少なくとも表面的には、原告と被告Aの関係は、良好な関係であった。(甲77、原告本人33、34頁、被告A本人30頁、弁論の全趣旨)カ平成29年4月12日、被告Aのゼミの後に、被告A以下、新入生も交え た飲み会が開催され、原告を含めて電車通学でない学生は、深夜2時まで同 3、34頁、被告A本人30頁、弁論の全趣旨)カ平成29年4月12日、被告Aのゼミの後に、被告A以下、新入生も交え た飲み会が開催され、原告を含めて電車通学でない学生は、深夜2時まで同 飲み会に出席した。(甲3、77、被告A本人44頁)キ被告Aは、原告の出席している被告Aの授業において、村上春樹、河合隼雄及びユングらの作家自身、作品並びに思想を「死ね」などの激烈な表現を用いて批判し、それらの作家等を信奉する者は田舎者、馬鹿であるといった趣旨のことを述べた。(甲8、22、47、49、77、被告A本人 9~10、21頁)同授業は、文芸批判を取り扱う内容の授業であり、文芸作品を批判的に検討したり批判の方法を講義したりする内容の授業であった。(原告本人58頁、被告A本人49頁)原告は、本件合格以降の時点においても、村上春樹、河合隼雄及びユン グを創作の拠り所としており、被告Aはこれを認識していた。(甲24、77、被告A本人21頁)ク被告Aは、原告が現代文芸コースに入学した平成28年4月以降のいずれかの時点において、原告に対し、それぞれ1度、おにぎり、ティッシュを被告Aの研究室へ持ってくるようにと言ったことがあった。(甲3、8、甲7 7、被告A本人7頁)ケ被告Aは、平成29年4月20日、飲食店において原告と二人で飲食している際に、原告が就職活動をしていないことから、卒業後はどうするつもりかと問い、原告が冗談で「結婚します」と答えたところ、「卒業したらおれの女にしてやる」という趣旨の発言をした(以下「本件おれの女発言」 という。)。(原告本人11頁、被告A本人2頁、争いがない事実)なお、原告はおれの女にしてやるとの発言が繰り返されたと供述する(甲77、原告本人12頁 言をした(以下「本件おれの女発言」 という。)。(原告本人11頁、被告A本人2頁、争いがない事実)なお、原告はおれの女にしてやるとの発言が繰り返されたと供述する(甲77、原告本人12頁)が、発言の回数を裏付ける的確な証拠はなく、同事実は認められない。 また、原告は、本件おれの女発言の前提となる卒業したら結婚する旨の 発言は、被告Aの(卒業しても就職できなければ)体でも売るのかという 趣旨の発言を受けてなされたものであると供述する(甲77、原告本人11頁)が、このようなやり取りがされたことを裏付ける的確な証拠はないから、同事実は認められない。 原告は、被告Aの本件おれの女発言を聞くとはっとした表情になり、被告Aはこれに気付いた。原告は、食事を済ませ店を出た後、他の学生らが 飲食している別の店に行き、他の学生らに対し被告Aから本件おれの女発言をされたことを訴えた。(甲3、47、77、被告A本人31頁)原告は、本件おれの女発言以降である平成29年4月27日も、被告Aのゼミに出席した。(甲77、弁論の全趣旨)コ被告Aは、平成29年4月27日、原告に対し、原告が出席する飲み会 に案内するように要求し、これを原告が断ったものの、被告Aは、同飲み会に出席していた。(争いがない事実)上記飲み会で原告と被告Aは会話を含めて接触することはなかった。 (甲77、弁論の全趣旨)サ被告Aは、同年5月後半頃、たまたま遭遇した原告に対し、「卒業は大丈 夫なんですか」、「単位は大丈夫なんですか」などと声を掛けた。 (甲3、8、被告A本人33頁)。 被告Aは、同月18日、D教授と面会し、D教授から、原告からのハラスメント被害の報告を受けていることを告げられ、原告と接触しないようにとの注意を 声を掛けた。 (甲3、8、被告A本人33頁)。 被告Aは、同月18日、D教授と面会し、D教授から、原告からのハラスメント被害の報告を受けていることを告げられ、原告と接触しないようにとの注意を受けた。なお、上記注意と上記の発言との先後関係は証拠 上認定することができない。(乙ロ12、被告A本人33頁)⑵ 原告とD教授との関係等ア原告は、本件おれの女発言の後の平成29年4月22日 、G助教と会い、被告Aによるハラスメントについて相談した。G助教は、原告に対し、ハラスメントを公にして被告Aを追及すれば辞めさせることもできると思うけ ど、原告はどうしたいかとの趣旨の問いかけをした。これに対し、原告は、 被告Aを慕っている学生も多くいることを知っているから、急に訴えて首にするようなことは考えていないとの趣旨の回答をした。さらに、G助教は、原告に対し、それならばどうしたいのかといった趣旨の問いかけをし、原告は、指導教員の変更が可能であればしたい旨、被告Aと距離を置きたいこと、もともとF教授のゼミに入りたくて現代文芸コースを受験したことを考慮 すると、被告AのゼミからF教授のゼミに移動できたらそれが一番良い旨を答えた。(甲3、8、10)イHは、原告から被告Aのハラスメントについて打ち明けられ、平成29年4月22日、D教授に対し、H自身の問題ではなく、現代文芸コースの同期のことに関して相談がある旨のメールを送信し面談を求めた。D教授 は、これを受け、同月24日、H及びHの言及するHの同期と会うこととなった。Hの送信したメールには、同期が原告であることや、相談内容が何であるかは書かれていない。(乙ロ12)そのため、D教授は、Hの言及する同期が原告であることや、その相談内容がハラスメント問題で った。Hの送信したメールには、同期が原告であることや、相談内容が何であるかは書かれていない。(乙ロ12)そのため、D教授は、Hの言及する同期が原告であることや、その相談内容がハラスメント問題であることを事前に認識していなかった。 なお、D教授は、Hからの相談のメールに対し、当初は原告ではなくレポートを提出しなかった別の学生の名前を挙げたが、Hがそうではないと回答したところ、「何となくの察しは付きました」と記載したメール(乙ロ12)を送信したことが認められる。Hは、上記メールをもってD教授がハラスメントの問題であると気付いたと思うと証言する(証人H4頁)が、 それはHの憶測の域を出ず、また、上記メールの文言はそれ以上に具体的な記載がないものであるから、同メールの記載は上記認定を覆すものではない。 D教授は、平成29年4月24日、原告及びHと目白の飲食店で会い、原告の話を聞いた。その際、原告は、少なくとも、被告Aから、2人きり で食事に誘われること、時間を考慮しないで電話をしてきて電話に応答し ない場合には後に詰問されること、本件おれの女発言をされたことを申告し、今後どのように対処すべきかについて相談した(本件相談)。 D教授は、本件相談の冒頭、原告から具体的な話がされる前に、冗談交じりに「面倒なことは嫌だ」という趣旨の発言をした。 (甲3、8、10、11、77、乙ロ12、争いがない事実) D教授は、原告から本件おれの女発言等の話を聞いた際に、セクハラとはもっとすごいやつだという趣旨の発言や、原告にも隙があった、原告の視線の動かし方が異性を勘違いさせてしまうという趣旨の発言をした。 (甲3、4、8、46、77、乙ロ11の2、乙ロ12、証人H7頁、原告本人15、60頁) 原告は 告にも隙があった、原告の視線の動かし方が異性を勘違いさせてしまうという趣旨の発言をした。 (甲3、4、8、46、77、乙ロ11の2、乙ロ12、証人H7頁、原告本人15、60頁) 原告は、本件相談の際に、D教授に対し、被告Aからのハラスメントについて訴えたが、具体的な解決策をとるように要求することはなかった。 D教授は、原告に対し、解決策として、①指導教員を被告Aから他の教員に変更するという現代文芸コース内の対応が考えられること、②ハラスメント防止室に相談するという方法も考えられるが、調査等が煩雑で大事に なるおそれがあること、③①②のいずれもせずに様子を見るという方法も考えられることを話した。原告は、これを受けて、D教授に対し、指導教員をF教授に変更することを希望する旨を話した。 そこで、D教授は、原告に対し、F教授及び女性であるI教授(以下「I教授」という。)にもこのことを話しておいた方がよいことを助言すると ともに、しばらく様子見をしようと発言し、原告は、この結論について受け入れた。 (甲3、4、10、乙ロ12、証人H7~8、20、24、26頁、原告本人16、46、62~65頁)D教授は、本件相談の際に、原告に対し、ハラスメント問題が現代文芸 コースの外に明らかになれば、「結構叩かれちゃうことになるかもな」と 発言し、原告は同発言を現代文芸コースの外に話してほしくないという口止めの意味に理解した。(甲10、乙ロ11の2、証人H7、20頁、原告本人16、63~65頁)ウ原告は、平成29年5月6日、F教授との間で、D教授との本件相談を踏まえて、被告Aのハラスメントについての対応を相談した結果、指導教 員を変更する場合は、創作に比重を置いた修士論文にするという名目で、F教授が原 5月6日、F教授との間で、D教授との本件相談を踏まえて、被告Aのハラスメントについての対応を相談した結果、指導教 員を変更する場合は、創作に比重を置いた修士論文にするという名目で、F教授が原告を引き受けること、指導教員変更までは被告Aの授業に2、3回出席する程度でしばらく様子を見るという方針(以下「本件方針」という。)が決まった。(乙ロ12、原告本人45~46頁)原告は、同月7日、D教授に対し、F教授との上記の相談の結果とし て、本件方針をメールで報告した。 上記報告を受けて、D教授は、同日、原告に対し、指導教官変更の場合の手続について事務方に確認する旨の連絡をした。(乙ロ12)エ D教授は、同月7日から19日にかけて、次のないしのとおり、原告の指導教員変更のために、F教授やI教授と連携して、指導教員変更のため のスケジュール調整、指導教員変更のための必要事項の確認などを行った。 原告は、同月11日、D教授及びF教授に対し、文学学術院事務所(以下、単に「事務所」という。)において、指導教員変更の手続について相談した結果、①指導教員変更の手続には、現在の指導教員である被告Aの承認を得る必要があり、教授会における承認も得る必要があるため、教授会 において被告Aが初めて指導教員の変更を知るよりも、事前に、他の教員から被告Aに指導教員変更の件について説明した方が問題が起こりにくいかもしれない旨、指導教員変更の理由は、ハラスメントがあったためではなく、専門分野が違うためといった別の理由でも構わない旨、②ハラスメントについては、ハラスメント防止室で相談でき、指導教員の変更につ いては文学学術院の教授であるJ教務主任に相談できる旨、③同月15日 までに提出しなければならない修士論文計画書 メントについては、ハラスメント防止室で相談でき、指導教員の変更につ いては文学学術院の教授であるJ教務主任に相談できる旨、③同月15日 までに提出しなければならない修士論文計画書についての手続確認を翌日する旨の各説明があり、④運営主任であるDと変更先の指導教員であるF教授が原告の申告するハラスメントと指導教員変更希望の件を知っているか確認された旨の報告するメールを送信した。(甲45、乙ロ4)D教授は、同月11日、原告及びF教授に対し、上記原告のメール①に 対する返答として、指導教員変更の資料は運営主任会、教授会に出ること、その際に資料に記載されている変更理由は通常「コース内調整のため」が一番多いこと、指導教員を変更する場合には現指導教員である被告Aにもその方向性を何らかのかたちで知らせた方がよく、その場合には、慎重に対応した方がよいのでD教授に相談することといった趣旨の回答を、上記 原告のメール②に対する返答として、「事務所の方との相談の際には、具体的なことは話したのでしょうか。J先生はとても温厚で、相談をすれば懇切丁寧に助言をくれると思うが、できればその前の段階で解決できた方がいいですね。」といった趣旨の回答を、上記原告のメール③に対する返答として、修士論文計画書に関連することで悩むことがあるならば、現時 点で、指導教員の変更に舵を切った方がよく、事務所との相談は事務手続上の問題に絞った方がよいと思うといった趣旨の回答を、上記原告のメール④に関連し、原告は指導教員の変更についてはDを希望しているかの質問をメールで送信した(以下「本件メール1」という。)。 原告は、同日、本件メール1の②に対する返答として、事務所に相談し た際には、原告が指導教員の変更のことについて質問すると、まずは指 問をメールで送信した(以下「本件メール1」という。)。 原告は、同日、本件メール1の②に対する返答として、事務所に相談し た際には、原告が指導教員の変更のことについて質問すると、まずは指導教員と相談するようにと案内されたため、ハラスメントが絡んでいるので指導教員とは二人で話すことは難しいと伝えたにとどまり、詳細は話していない旨、本件メール1の④に関連し、指導教員変更の場合はF教授を希望している旨のメールを送信した。 D教授は、同日、原告に対し、上記原告のメールに対し、「現指導教員と の件は、あまり広まらないようにした方がよいと思いますので、慎重にしてください。」、「私(D)、F教授、I教授の範囲で、できれば止めたいです。」と返信し(以下「本件メール2」という。)、事務所やJ教授に対しハラスメントの詳細を話すべきではないという意見を明らかにした。また、D教授は、翌日である同月12日、F教授との間で、指導教員変更の場合 に舵を切る方向で相談し、同月6日にF教授と原告とが相談したとおり、修士論文の内容をF教授の専門分野である創作にしたいということを前面に押し出すことになるといった趣旨のメールを送信した。 原告は、同月12日、事務所に行き、修士論文計画書の提出日が同月15日となっているが、同計画書は指導教員の事前確認を経ることになって いるため、指導教員変更との関係で、仮に新しい指導教員の確認が取れない場合には、遅延提出を認める旨を説明された。 I教授は、同月12日、原告との相談の場を持ち、原告から、被告Aのハラスメントについて申告を受け、原告が被告AからF教授への指導教員の変更を希望していることを聞いた。 D教授は、同月13日、F教授に対し、修士論文計画書変更に関する今後の手続、 告Aのハラスメントについて申告を受け、原告が被告AからF教授への指導教員の変更を希望していることを聞いた。 D教授は、同月13日、F教授に対し、修士論文計画書変更に関する今後の手続、指導教員変更に関する今後の手続(そのスケジュールが同月17日の教室会議までに被告Aに指導教員変更についての了解を得ること、その前提で同日の教室会議に指導教員変更の報告をして承諾を得て、同年6月の主任会、教授会で正式承認を得るものであること、指導教員変更の 理由については、原告が、修士論文のテーマを、被告Aの専門である批評からF教授の専門である創作へと変更したいとの希望によるものであると整理することも含む。)、その後の原告のケアの方向性(この機会を逃すと演習科目の単位取得のための最低出席要件を充たさなくなることなど)を整理した結果を報告した。 D教授は、その際、その後の原告のケアに関して、指導教員変更後も、 原告が何か負担を感じるようになった場合には、問題は現代文芸コースの外に出ることとなると思うため、指導教員変更までで問題が終息することを祈るばかりといった趣旨のことに言及した(このことは、下記の原告への共有の際には記載されていない。)。 D教授は、同日、原告に対し、F教授と相談した結果、指導教員変更の 方向で進めることとなり、変更の理由は原告が創作にシフトするという理由のみを掲げて指導教員の変更を実現したいとの趣旨のメールを送信した。 また、D教授は、同日、原告に対しても、上記と同旨の整理した結果を報告した。 原告は、同日、D教授に対し、上記の手続について了解した旨の連絡をした。原告は、その際、指導教員変更の理由をハラスメント問題ではなく原告の修士論文のテーマ変更とすることについて明示又は 原告は、同日、D教授に対し、上記の手続について了解した旨の連絡をした。原告は、その際、指導教員変更の理由をハラスメント問題ではなく原告の修士論文のテーマ変更とすることについて明示又は黙示に異議を述べなかった。 F教授は、同月15日、D教授に対し、原告との今後に関するやりとり の事前相談として、原告が指導教員変更をしたことについての被告Aへの説明に関し、F教授が被告Aに対して指導教員変更の件をメールにて連絡した後、被告Aが原告に対して指導教員変更の件について事前に相談しなかったことを問い合わせる連絡をすることが想定されるため、F教授から、被告Aに対する上記メールの際に、原告から言い出しにくいのでF教授が 先に状況説明をすることにしたとの文言を添えるようにするものの、原告から何も連絡がないことは不自然なことなので、原告からも、被告Aに対して連絡を入れてもらった方がよいかなどを相談するメールを送信した。 D教授は、同日、F教授及びI教授に対し、上記事前相談に関する整理として、①原告が修士論文計画書提出を機に創作を最終的な目標としたく なり、F教授に相談をした、②F教授が、事務所と現代文芸コース主任で あるD教授に相談し、指導教員変更が可能であることを確認した、③F教授が、被告Aに対し、原告の意思を尊重して原告を受け入れる旨のメールを送信する、④③の結果にもよるが、上記流れを被告Aが受け入れた場合、原告から一言あった方が自然であり、原告が被告Aに対して指導教員変更の件について事前に相談しなかった弁明としては、「怖くて言い出せなか った」というのもあり得るのであり、また、原告からは「申し訳ありません」という詫びの言葉があるといいのではないか、⑤③の結果、話がこじれた場合には、その際の状況か しては、「怖くて言い出せなか った」というのもあり得るのであり、また、原告からは「申し訳ありません」という詫びの言葉があるといいのではないか、⑤③の結果、話がこじれた場合には、その際の状況から新たに考え直す必要があるといった趣旨の整理などを行ったメールを送信した。 F教授は、同日、D教授及びI教授に対し、上記D教授の整理に沿った 方向で原告に連絡する旨、D教授から原告に対して上記①~⑤の流れを再確認するように依頼する旨のメールを送信した。 上記やりとりを踏まえ、F教授は、同日、原告並びにF教授及びI教授に対し、D教授から今後の流れについての最終確認の連絡があること、被告Aへの連絡には「原告からは言い出しにくいので、F教授から先に状況 説明をすることにしました」という文言を添えることにすることなどを連絡するメールを送信した。 上記やりとりを踏まえ、D教授は、同日、原告、F教授及びI教授に対し、上記①~⑤の流れをメールにて共有した(以下「本件メール3」という。)。 上記D教授のメールに対し、I教授は、同日、D教授、原告及びF教授に対し、上記④について、原告が悪いわけではないので、「申し訳ありません」と詫びる必要はなく、「急なご連絡となってしまいましたが、ご了承いただけると幸いです」という感じでさらっと告げればいいのではないかという趣旨のメールを送信した。 上記Iのメールに対し、D教授は、同日、I教授、原告及びF教授に対 し、I教授の指摘のとおりであり、さらっと行きましょうとのメールを送信した。 これらのやりとりに対し、原告は、同日、F教授、I教授及びD教授を送信先として、全員に対して対応に関する謝意を述べるとともに、F教授に対して、被告Aへの連絡にF教授が添える文言について 信した。 これらのやりとりに対し、原告は、同日、F教授、I教授及びD教授を送信先として、全員に対して対応に関する謝意を述べるとともに、F教授に対して、被告Aへの連絡にF教授が添える文言について、被告Aから原 告に対して直接連絡が来るのではないかと不安に思っていたので非常に助かりましたとの連絡を、I教授に対して、被告Aに対して下手に出ることは避けたかったので、女性の立場として原告に寄り添った意見をいただけて安心した旨の連絡を、D教授に対して、対応に感謝し、今後の流れと被告Aへの連絡の件について了解する旨及びI教授の提案のとおり被告 Aにはさらっと告げる方向にする旨の連絡を記載したメールを送信した。 I教授は、同月16日、D教授及びF教授に対し、そもそも原告から被告Aに連絡をさせること自体が不適切であり、原告の負担を軽減するために、原告から被告Aへの連絡をさせないようにするか、原告に連絡をさせるにしても、原告に対し、被告Aから連絡が来た場合にはそれを無視する ように事前に助言すべきではないかといった趣旨のメールを送信した。 上記I教授の連絡に対し、D教授は、同日、I教授及びF教授に対し、F教授から被告Aのメールに対する被告Aの返事の前に、被告Aが、原告に対して接触する可能性もあるため、I教授の提案のとおり、原告に対し、被告Aの連絡を無視するように助言する方がいいかもしれませんという 趣旨のメールを送信した。 その間、F教授は、同日、D教授及びI教授に対し、F教授のメールに対する被告Aからの返事は、指導教員の変更の件には異存がなく、原告本人に対しては、好きなようにやればよく被告Aを気にする必要はないとのことであったとの趣旨のメールを送信した。 これらのやりとりを踏まえ、D教授は、同日、F教授及 の件には異存がなく、原告本人に対しては、好きなようにやればよく被告Aを気にする必要はないとのことであったとの趣旨のメールを送信した。 これらのやりとりを踏まえ、D教授は、同日、F教授及びI教授に対し、 被告Aの上記の返事を信じ、F教授から、原告に対し、被告Aの返信を共有し、被告Aには連絡を取ることを控えるように進言することを提案した。 上記D教授の提案を踏まえ、F教授は、同日、原告、D教授及びI教授に対し、被告Aからの返信と、原告から被告Aに対する返信はしなくてよ いと思う旨のメールを送信した。 D教授は、原告や事務所と連絡を取りながら手続を進め、原告の指導教員変更は同月17日の教室会議で承認された。 D教授は、同日、被告Aと面会し、前記⑴サ認定のとおりの話をした。 D教授は、同日、原告、F教授及びI教授に対し、指導教員変更がスム ーズに認められ、被告Aに対しては、原告の指導教員変更の経緯とその意図について話し、その理解を得たこと、学生指導に当たっては慎重にしていただくように注意を促したことを報告した。 その際、D教授は、原告に対し、今後何らかの問題が生じた場合には、D教授、F教授及びI教授のいずれかに相談してくださいとの連絡もした。 上記D教授の連絡に対し、原告は、特段不満を述べず、原告の指導教員の変更及びD教授による被告Aへの自重のお願いに関して、D教授ら教員の速やかな対応・協力に感謝する趣旨のメールを送信した。 (以上につき甲3、乙ロ12)⑶ 原告とE准教授の関係 ア E准教授は、原告から被告Aに関するハラスメントの相談を受けたことがない。(原告本人43頁)イ現代文芸コースでは、平成29年6月17日の教室会議において、原告の指導教員変更の報告がされ、 ア E准教授は、原告から被告Aに関するハラスメントの相談を受けたことがない。(原告本人43頁)イ現代文芸コースでは、平成29年6月17日の教室会議において、原告の指導教員変更の報告がされ、その理由として、修士論文のテーマを創作に変更したいとの原告の希望によるとの説明がされ、E准教授を含む同コースの 教員らによって、原告の指導教員の変更が承認された。その際、前記⑵認定 の経緯により、被告Aによるハラスメントが理由であるという説明はなされなかった。(乙ロ12)ウ E准教授は、その講義において、被告Aの研究成果を称賛する発言をした。 (争いがない事実)エ E准教授は、G助教が被告Aのハラスメントについて酒席で話しているこ とを知り、平成29年11月頃、G助教に対し、「考えた上で話しているのであればよいが、そうでないなら気を付けたほうがいい」と発言し、G助教が被告Aのハラスメントについて話すことをけん制した。(甲14)オ E准教授は、平成30年1月23日の修士論文の口頭試問後の打上げの際、原告に対し、原告が成長できたことについては被告Aのおかげという面もあ るとして、被告Aへお礼を述べることを求める趣旨の発言をした。その場には、原告、E准教授を含め現代文芸コースの教員全員と学生全員20名以上参加しており、原告とE准教授が会話する機会があったときに、E准教授は、原告に対し、上記発言を行った。(甲8、原告本人42~43頁、争いがない事実) ⑷ 原告退学後苦情処理申立前の事実経緯ア原告は、本件当時、被告早稲田大学と在学契約を締結していたところ、平成30年3月末に被告早稲田大学を退学して同契約を解消した。 イ原告は、平成30年4月16日、自身の名前を名乗り、ハラスメント防止室へ電話連絡した。 告早稲田大学と在学契約を締結していたところ、平成30年3月末に被告早稲田大学を退学して同契約を解消した。 イ原告は、平成30年4月16日、自身の名前を名乗り、ハラスメント防止室へ電話連絡した。 その際、原告は、ハラスメント内容自体については説明せず、まずハラスメント相談の際の手続についてのみ問い合わせた。その際、原告に応対したハラスメント防止室の職員は、原告に対し、その名を名乗らなかった。さらに、その際に、原告がその父の同席を要望したところ、これに応対した職員が、こちらは女性2人なので大丈夫との趣旨の発言をした。 (甲77、乙ロ13) ウ原告は、同日、ハラスメント防止室に対し、日程調整のメールを送付した。 このメールに対し、ハラスメント防止室の職員は、「ハラスメント防止室では継続的人間関係の維持を考慮し、ハラスメント事案解決については人間関係の調整を旨としています」、「中退された場合には、申立てをお受けすることができない場合もあります」との趣旨を記載したメールを返信した。(甲 77、乙ロ13)エ原告は、同月23日、原告の父を同行してハラスメント防止室を訪問した。 その際、原告は、応対したハラスメント防止室の相談員及び職員に対し、原告の主張するハラスメントの内容について申告した。また、同相談員及び職員は、原告に対し、苦情処理申立ての手続について説明をし、苦情処理申 立てには、申立書の提出が必要であることを説明した。さらに、申立書の提出方法に関し、郵送の可否、代理人による申立ての可否が話題になった。そして、原告は、苦情処理申立てをすることなく、ハラスメント防止室を後にした。上記相談の過程において、原告の父も立ち会っていた。 上記相談の際、上記相談員及び職員は、自身の名前を名乗らなかった。 。そして、原告は、苦情処理申立てをすることなく、ハラスメント防止室を後にした。上記相談の過程において、原告の父も立ち会っていた。 上記相談の際、上記相談員及び職員は、自身の名前を名乗らなかった。 (甲13、77、乙ロ4、13)オ原告は、同年6月、苦情申立書を提出した。(甲3)カハラスメント防止室では、苦情処理申立ては書面によるものとする運用がされていた。(乙ロ4)⑸ 原告退学後苦情申立後の事実経緯 ア被告早稲田大学は、原告による苦情処理申立てを受け、同申立てはハラスメント防止室の対応の在り方に関するものを含む内容であったため、早稲田大学リスク管理およびコンプライアンス推進に関する規則(以下「本件規則」という。本件に関係する規定は別紙のとおり)9条3項、8条2項を踏まえ、ハラスメント防止委員会とは独立した調査委員会(本件調査委員会)を設置 した。 本件規則4条3項は、早稲田大学の総括責任者が、リスク発生時に外部有識者、教職員等から構成される対策本部、調査委員会等を設置することができると定めている。(乙ロ5)イ本件調査委員会は、平成30年7月12日付け調査報告書(甲8。本件報告書)を作成した。 本件調査委員会は、本件報告書を作成するに当たり調査を行い、同年6月27日から同年7月11日にかけて、7回にわたり委員会を開催し、そのうちの一部において、原告、被告A、D教授、F教授及びその他の関係者(少なくとも原告以外の学生を含む。具体的にどのような人物かは証拠上認定できない。)に対するヒアリングを行った。本件調査委員会の構成員には、少な くも犯罪心理学を専門とする被告早稲田大学の教授が含まれており、被告Aに対し厳しい質問をしたことから、被告Aは被告早稲田大学に対して抗議 るヒアリングを行った。本件調査委員会の構成員には、少な くも犯罪心理学を専門とする被告早稲田大学の教授が含まれており、被告Aに対し厳しい質問をしたことから、被告Aは被告早稲田大学に対して抗議文を送付するなどした。 本件調査委員会は、本件報告書において、原告の苦情処理申立てのうち、被告Aに関するものを取り扱った。本件報告書には、被告Aが、原告が拠り 所としていたユング派等の評価を行う際に「死ね」といった表現を用いたこと、ティーチング・アシスタント(以下「TA」という。)を行うように強要されたために授業を履修できなかったことについては、被告Aの行為はハラスメントや不適切な行為といえないと評価し、その他の原告の主張については、概ねハラスメント又は不適切な行為に当たる又はその可能性があると評 価している。もっとも、本件報告書は、原告の主張するAの支配従属関係の構築や被告Aのセクシャルハラスメントの常態化などについては、概ねそれを認めるに足りる証拠がないとの理由で取り扱わなかった。 (以上につき甲3、8、13、乙イ1、2、原告本人48~49頁、争いがない事実、弁論の全趣旨) ウ本件調査委員会は、平成30年8月23日付け調査報告書(甲10。本件 報告書2)を作成した。 本件調査委員会は、本件報告書2を作成するに当たり調査を行い、同年7月12日から同年8月7日にかけて、8回にわたり委員会を開催し、そのうちの一部において、関係者(少なくともG助教、M総務部長を含む。その他に具体的にどのような人物が関係者に該当するかは証拠上認定できない。)、 K教授、E准教授、ハラスメント防止委員会委員長(L教授)、Hに対するヒアリングを行った。 本件調査委員会は、本件報告書2において、原告の苦情処理申立てのうち、被 は証拠上認定できない。)、 K教授、E准教授、ハラスメント防止委員会委員長(L教授)、Hに対するヒアリングを行った。 本件調査委員会は、本件報告書2において、原告の苦情処理申立てのうち、被告A以外に関するものを取り扱った。本件報告書2は、D教授とHの面談の場面におけるD教授の行為に関して、HとD教授の供述が食い違っている ことを理由に、Hの供述をもとにした原告の主張のとおりの事実を認定できないと結論付けた(他方で、D教授の発言のとおりに認定できるとは認定していない。)。また、本件報告書2は、原告の苦情処理申立ての主張について、原告と他の者の供述の食違い等を理由にして事実認定ができないとして、その主張の一部認めず、その余の点については原告の主張を認めて、被告A以 外の者の行為を不適切などと評価した。 (以上につき甲3、10、13)⑹ 原告の退学に関する事情ア原告は、平成30年3月に退学した時点において、修士論文は完成していたものの、語学及び演習科目の授業等の単位不足により、同時点で修士号を 取得する要件を充足していなかった。もっとも、原告は、退学せずにもう1年在学して修士号の取得を試みることも可能であった。(甲78、乙ロ8、9、原告本人21~22頁)イ原告は、退学に先立つ平成30年3月2日、指導教員であるF教授に対し、「成績確認しましたが、やっぱり卒業不可でした。」、「去年の春学期に元 指導教官との問題が起こってから、F先生方が対処してくださって助かりま したが、体調を崩し、学校に行くことに抵抗を感じるようになって、ほとんど授業に出席できなくなっていました。語学の授業は出席が必須だったのでその時点で単位が取れなくなったのですが、もともと語学の授業にはあまり関心がなく、就職 行くことに抵抗を感じるようになって、ほとんど授業に出席できなくなっていました。語学の授業は出席が必須だったのでその時点で単位が取れなくなったのですが、もともと語学の授業にはあまり関心がなく、就職するつもりもなかったので修士号も必要なく(後略)」と記載したメールを送信し、入学当初から創作に関心があったことから修士号 を取得する必要性がなく、語学の授業にも関心を持っていないことを明らかにした。 実際に、原告は、語学科目について、被告Aによる本件おれの女発言(平成29年春学期)以前からほとんど出席しておらず、平成28年秋学期の「イタリア語を読む3」の単位を落とし、出席をしなくても単位を取れる同学期 の「中国古典語」の単位を取得するにとどまっていた。 (以上につき甲66、77、78、乙ロ9、原告本人53~54頁) 2 争点⑴(被告Aによるハラスメント行為の有無)について⑴ 支配従属関係の構築の有無についてア前記前提事実⑵アによれば、被告Aは、原告の合格発表前から、原告に対 し、被告Aの授業等を聴講するように案内したことが認められる。 原告は、合格発表前の授業の聴講について、被告Aが命令したと主張するも、合格発表前であり、かつ、入学をするかどうかも決意していない原告において、これに従う義務はないのであって、原告が被告Aの案内のとおり聴講したからといって被告Aが聴講を命じたということはできない。 イ原告は、被告Aが、原告の指導教員となったところ(前記前提事実⑴ウ)、原告に対し、他の指導教員が原告の指導教員となることを引き受けなかったために被告Aが原告の指導教員になったと虚偽の説明をすることがあったと主張するが、これを認めるに足りる的確な証拠はない。 ウまた、原告は、被告Aが、原告に対し、原告が なることを引き受けなかったために被告Aが原告の指導教員になったと虚偽の説明をすることがあったと主張するが、これを認めるに足りる的確な証拠はない。 ウまた、原告は、被告Aが、原告に対し、原告が入学試験の際に提出した作 品を厳しく講評したり、原告のみに対し、飲み会に誘う、イベント入場料を 免除する、教科書や本を無料で渡したりしたことも、支配従属関係の強化を基礎付ける旨を主張するも、それらの行為によって、被告Aと原告との支配従属関係をいかなる意味において強化するか明らかでなく、原告の主張は採用できない。 エさらに、原告は、被告Aが原告の拠り所とする作家等を講義において批判 したことが支配従属関係を基礎付けると主張するも、後記のとおり、このような行為は文芸評論を専門とする被告Aの講義としてその裁量の範囲を出るものではなく、同批判について、被告Aが原告を加害する意図を有していたと認めるに足りる的確な証拠もないため、原告の主張は採用できない。 オ以上によれば、原告と被告Aとの間には、指導教員とその学生という以上 に特別な支配従属関係があると認めることはできない。もっとも、大学院における指導教員は、学生に対し、日常的な教育、研究における指導権限を有しているのみならず、単位や卒業の認定等についての判断権も有しているのであるから、その力関係において著しく優位にあることは明らかであり、以下ではこれを前提に被告Aの行為の違法性について判断する。 ⑵ 本件凝視行為についてア被告Aに対する請求原告は、被告Aが、本件合格以降、日常的に、原告が短パンや短いスカートをはいていると、原告の足元を凝視したと主張し、これに沿った供述(甲77、原告本人42頁)をするが、これを裏付ける客観的な証拠はなく、被 が、本件合格以降、日常的に、原告が短パンや短いスカートをはいていると、原告の足元を凝視したと主張し、これに沿った供述(甲77、原告本人42頁)をするが、これを裏付ける客観的な証拠はなく、被 告Aが原告の足元を見たか否かや、仮に見たとしてもその状況や程度は認定することができない。被告早稲田大学作成の本件報告書は、本件凝視行為を認定するものの、本件凝視行為が認められると述べるのみであり、その認定根拠は明らかにされておらず、その状況や程度を認定したものでもないから、原告の主張を裏付ける客観的な証拠とはいえない。そうすると、本件凝視行 為を認めることはできないし、仮に被告Aが原告の足元を見たことがあった としても、同行為が損害賠償の支払を命ずるほど社会通念上許容される限度を超えた違法な行為であったと認めるに足りない。したがって、本件凝視行為に係る被告Aの不法行為の成立は認められない。 イ被告早稲田大学に対する請求原告と被告早稲田大学の間では、本件凝視行為のうち、被告Aが原告の足 元を見たことがあったことに争いがないものの、上記ア説示によれば、同行為が不法行為に当たるとはいえない。 ウ以上によれば、この点に関する原告の主張は採用できない。 ⑶ 本件外見発言行為についてア被告Aに対する請求 前記認定事実⑴アによれば、被告Aが、本件合格以降いずれかの時点において、原告に対し、「かわいい」と発言したことが認められる。しかしながら、その発言の頻度や、同発言をした際の状況を認めるに足りる的確な証拠はない。 また、原告が、被告Aによる上記発言について、拒絶の意向を示していた ことを認めるに足りる的確な証拠もない。 以上によれば、被告Aが原告に対し、「かわいい」と発言 足りる的確な証拠はない。 また、原告が、被告Aによる上記発言について、拒絶の意向を示していた ことを認めるに足りる的確な証拠もない。 以上によれば、被告Aが原告に対し、「かわいい」と発言したことが、損害賠償の支払を命ずるほど社会通念上許容される限度を超えた違法な行為であったと認めるに足りず、不法行為が成立するとはいえない。 イ被告早稲田大学に対する請求 原告と被告早稲田大学の間では、本件外見発言行為について争いがない。 しかしながら、上記ア説示によれば、同発言をもって不法行為が成立するとはいえない。 ウ以上によれば、この点に関する原告の主張は採用できない。 ⑷ 本件身体接触行為について 前記認定事実⑴イによれば、被告Aが、平成27年12月3日、原告と満員 状態の電車に乗り合わせた際に、原告と身体を接触させたことが認められ、また、被告Aが、同月12日の飲み会において、原告の頭、肩及び背中を触ったことが認められる。しかしながら、これらの行為が反復継続されたことを認めるに足りる証拠はなく、その態様を認めるに足りる的確な証拠はない。以上のように、被告Aの原告への接触部位、被告Aの接触の態様が触れたことに留ま りそれ以上に明らかでないこと、被告Aの行為に継続性が認められないことなどに照らせば、これらの行為により原告が不快に感じたことは推認できるものの、損害賠償の支払を命ずるほど社会通念上許容される限度を超えた違法な行為であったと認めるに足りず、被告Aの上記行為が不法行為に該当するとはいえない。 以上によれば、この点に関する原告の主張は採用できない。 ⑸ 本件キス発言行為について原告は、被告Aが、平成28年1月22日、原告と他の大学院生とともに居酒屋に行った際に、 。 以上によれば、この点に関する原告の主張は採用できない。 ⑸ 本件キス発言行為について原告は、被告Aが、平成28年1月22日、原告と他の大学院生とともに居酒屋に行った際に、原告が冗談で「寄付して下さい」と言ったところ、原告に対し、「キス」と言って顔を近付けたと供述する(甲77、原告本人8~9頁) が、これを裏付ける的確な証拠はない。 なお、仮に本件キス発言行為が認められたとしても、同行為は、身体的接触を伴うものでもなく、一回的な行為であるから、原告と被告Aの間の力関係等を考慮しても、損害賠償の支払を命ずるほど社会通念上許容される限度を超えた違法な行為であったと認めるに足りず、同行為が不法行為に該当するとはい えない。 以上によれば、この点に関する原告の主張は採用できない。 ⑹ 本件授業時発言行為についてア被告Aに対する請求前記認定事実⑴ウによれば、被告Aは、平成28年4月頃の被告Aの授 業中、原告が雨の中通学したために上着が濡れたまま授業に出席したとこ ろ、原告に対し、他の出席者である学生に上着を借りるように言い、原告がその教室内で濡れた上着を脱いだところ、被告Aは、原告が上着を脱ぐ様子を眺め、原告に対し、上着の下が裸だったらどうしようかと思ったという趣旨の発言をしたこと(本件授業時発言行為)が認められる。同発言が授業という公の場で行われたこと、原告個人の行動を対象にした発言で あること、裸という性的な内容の発言であることからすれば、同発言は、合理的に推認される原告の意思に反してなされた、性的な観点から原告を取り扱った発言であるといえる。したがって、本件授業時発言行為は、社会通念上許容される限度を超えた発言であり、人格権を侵害して違法であるというべきで 原告の意思に反してなされた、性的な観点から原告を取り扱った発言であるといえる。したがって、本件授業時発言行為は、社会通念上許容される限度を超えた発言であり、人格権を侵害して違法であるというべきである。 これに対し、被告Aは、原告がトイレで着替えてくると想定していたところ、その想定に反し、原告が他の受講者のいるその場で着替えを始めたことに驚き、とっさに本件授業時発言行為をしたのであり違法ではない旨主張する。 しかしながら、上記のとおり、本件授業時発言行為は、その発言場所及 び内容から社会通念上許容される範囲を超えたものと評価されるのであるから、被告Aの予測した事態と原告の行動が異なったためにとっさに本件授業時発言行為がなされたとしても、このことは上記評価を左右しない事柄であり(なお、これをもって被告Aの故意又は過失が否定されることもない。)、被告Aの主張は採用することができない。 イ被告早稲田大学に対する請求原告と被告早稲田大学の間では本件授業時発言行為について争いがなく、上記ア同様に、同行為は違法であるというべきである。 ウ以上によれば、被告Aによる本件授業時発言行為は違法である。 ⑺ 本件電話及び叱責行為について ア被告Aに対する請求 前記認定事実⑴エによれば、被告Aが、原告に対し、度々電話をして、原告が電話に出ないと叱責したことがあったことが認められる。しかしながら、その電話の内容や叱責の程度については、これを認めるに足りる的確な証拠はない。したがって、被告Aの上記行為は、原告と被告Aの間の力関係等を考慮しても、損害賠償の支払を命ずるほど社会通念上許容される限度を超え て違法な行為であったと認めるに足りず、不法行為に該当するとはいえない って、被告Aの上記行為は、原告と被告Aの間の力関係等を考慮しても、損害賠償の支払を命ずるほど社会通念上許容される限度を超え て違法な行為であったと認めるに足りず、不法行為に該当するとはいえない。 イ被告早稲田大学に対する請求原告と被告早稲田大学の間では、被告Aが、原告に対し、度々電話をして、原告が電話に出ないと叱責したことについては争いがないが、上記ア説示によれば、同行為について不法行為が成立するとはいえない。 ウ以上によれば、原告の主張は採用できない。 ⑻ 本件会食要求及び食事シェア行為について前記認定事実⑴オによれば、被告Aは、本件合格以降、度々、原告に対し、二人きりで食事をすることを求め、二人きりで食事に行った際には、被告Aの食べかけの食事を直箸で原告の皿に乗せたり、原告の食べかけの食事を自分の 方へ持って行ったりしたことがあったことが認められる。 そして、原告は、上記行為当時の被告Aとの関係が表面的には悪くなく、被告Aの上記行為に対して拒絶の意向を示さなかったことが認められる。 以上によれば、二人きりで食事を誘う行為及び食事の際には食べかけの食事を上記の態様で共有する行為は、原告と被告Aの間の力関係等を考慮しても、 損害賠償の支払を命ずるほど社会通念上許容される限度を超えた違法な行為であったと認めるに足りず、不法行為に該当するとはいえない。 ⑼ 本件飲み会出席強要行為についてア被告Aに対する請求前記認定事実⑴カによれば、平成29年4月12日、被告Aのゼミの後 に、被告A以下、新入生も交えた飲み会が開催され、原告を含めて電車通 学でない生徒は、深夜2時まで同飲み会に出席したことが認められる。 しかしながら、被告Aが原告に対して上記時間までの飲み会への A以下、新入生も交えた飲み会が開催され、原告を含めて電車通 学でない生徒は、深夜2時まで同飲み会に出席したことが認められる。 しかしながら、被告Aが原告に対して上記時間までの飲み会への出席を強要したことについては、原告の供述(甲3、77)によっても明らかでなく(「付き合わされた」と表現するにとどまる。)、かえって、原告の供述(甲3、77)によれば、電車通学の学生は終電を理由に飲み会から帰っ たことが認められることからすれば、原告が途中で退席することも許されない状態であったとは考えにくい。したがって、被告Aが、原告に対し、深夜2時まで飲み会に参加するように強要した事実は認められない。 そうすると、被告Aが原告に対し飲み会への出席を強要したと認めるに足りず、不法行為は成立しない。 イ被告早稲田大学に対する請求原告と被告早稲田大学の間では、被告Aが、原告に対し、被告Aのゼミの飲み会に原告の意に反して深夜2時まで出席を強いたことについて、争いがない。 しかしながら、同行為が継続的に行われたと認めるに足りる的確な証拠 はなく、原告と被告Aの間の力関係等を考慮しても、上記行為が損害賠償の支払を命ずるほど社会通念上許容される限度を超えた違法な行為であったと認めるに足りず、不法行為に該当するとはいえない。 ウ以上によれば、原告の主張は採用することができない。 ⑽ 本件作家等罵倒行為について 前記認定事実⑴キによれば、原告は、本件合格以降の時点においても、村上春樹、河合隼雄及びユングを創作の拠り所としており、被告Aは、本件合格以降の時点で、そのことを認識しつつ、被告Aの文芸作品を批判的に検討する内容の授業において、村上春樹、河合隼雄及びユングらの作家自身、作品並びに思想を「死 創作の拠り所としており、被告Aは、本件合格以降の時点で、そのことを認識しつつ、被告Aの文芸作品を批判的に検討する内容の授業において、村上春樹、河合隼雄及びユングらの作家自身、作品並びに思想を「死ね」といった激烈な表現を用いて批判し、それらの作家等を信奉す る者は「田舎者である」、「馬鹿」といった趣旨のことを述べたことが認められ る。 しかしながら、大学院における講義においては、講義を受ける学生も一定程度の知識や批判精神を持っていると推測されることからすれば、大学教員が講義をするに当たって、自らの考えと異なる学説や研究に対して批判を加えることにつき広範な裁量があることは論を俟たない。 文芸評論を専門とする被告Aがその講義において文芸作品やその作者、思想等を批判することは、その批判が「死ね」、「馬鹿」などという激烈な表現を使用したものであったことを考慮してもなお、大学の教員としてその授業をするに当たって有する裁量の範囲を超えた違法な行為であるとはいえない。そして、同発言の時点において、被告Aが、原告が上記作家らを創作の拠り所としてい たことを認識していたことが認められるとしても、原告を精神的に追いこむなどの加害目的で上記発言をしたことを認めるに足りる的確な証拠はない。 以上によれば、被告Aの上記発言は、大学の教員が講義において行う意見表明としての裁量の範囲を超えるものではなく、違法性を有するとはいえず、不法行為に当たるとはいえない。 ⑾ 本件私用強要行為についてア被告Aに対する請求前記認定事実⑴クによれば、被告Aは、原告が現代文芸コースに入学した平成28年4月以降のいずれかの時点において、原告に対し、それぞれ1度、おにぎり、ティッシュを被告Aの研究室へ持ってくるようにと言ったことが 実⑴クによれば、被告Aは、原告が現代文芸コースに入学した平成28年4月以降のいずれかの時点において、原告に対し、それぞれ1度、おにぎり、ティッシュを被告Aの研究室へ持ってくるようにと言ったことが あったことが認められるが、原告に対し私用を命ずる行為につきそれ以上の頻度や継続性があったことを認めるに足りる的確な証拠はない。そうすると、指導教員である被告Aが、その学生である原告に対し、私用を命ずることは不適切であるものの、同行為の頻度や継続性が認定できない以上、被告Aと原告との力関係を考慮しても、不法行為法上違法とまではいえない。 イ被告早稲田大学に対する請求 原告と被告早稲田大学の間では、被告Aが自習中の原告に対しておにぎりを買ってこいと命じたことについては争いがない。しかしながら、上記ア説示同様、同行為が違法であるとまではいえない。 ⑿ 本件おれの女発言行為についてア前記認定事実⑴ケによれば、被告Aが、平成29年4月20日、原告に対 し、「卒業したらおれの女にしてやる」という趣旨の発言(本件おれの女発言)をしたことが認められる。また、前記認定事実によれば、原告の卒業後の進路について話題になり、話が結婚に関する事項に移った際に、本件おれの女発言がされたことが認められる。さらに、前記前提事実⑴ウによれば、被告Aは既婚者である。 そして、前記認定事実⑴ケによれば、その当時の原告と被告Aの関係は、少なくとも表面上は悪化していないことが認められる。しかしながら、原告と被告Aは、その当時、日ごろから性的な観点からの発言を許容しあえるような親密な関係であったことを認めるに足りる証拠はない。 以上に照らせば、本件おれの女発言は、既婚者である被告Aが、卒業後は、 原告と不倫関係を結ぶと から性的な観点からの発言を許容しあえるような親密な関係であったことを認めるに足りる証拠はない。 以上に照らせば、本件おれの女発言は、既婚者である被告Aが、卒業後は、 原告と不倫関係を結ぶという趣旨の発言であって、同発言の受け手である原告もその趣旨に理解したものと認められる。そうすると、同発言は、性的な観点から原告を扱うものであり、原告の意思に反して原告に許容し難い性的な不快感を与えるものといえる。したがって、本件おれの女発言は、社会通念上許容される限度を超えて原告の人格権を侵害するものであって、不法行 為法上違法というべきである。 イこれに対し、被告Aは、同発言が、ジョークでありつつ親しみという意味も込められた原告の才能に対する愛着の表明の趣旨であった旨供述する(被告A本人32~33頁)。しかしながら、本件おれの女発言に関する被告Aの上記意図が原告に伝わっていたことを認めるに足りる証拠はなく、それが 許容されるほどの親密な関係が原告と被告Aとの間に存在することを認め るに足りる証拠がない以上、被告Aの上記主張は採用できない。 ウ以上によれば、この点に関する原告の主張は認められる。 ⒀ 本件詰問及び飲み会案内要求等行為についてア前記認定事実⑴コによれば、被告Aは、平成29年4月27日、原告に対し、原告が出席する飲み会に案内するように要求し、これを原告が断ったも のの、被告Aは、同飲み会に出席していたことが認められる。 他方で、被告Aが、原告に対し、同日、その数日前に被告Aの電話に原告が出なかったことについて詰問し、また、上記飲み会において、原告が被告Aに挨拶もしないでいると帰り際に原告のことをにらみつけたと供述する(甲3、77)も、そのことを裏付ける的確な証拠はないのであるから、同 とについて詰問し、また、上記飲み会において、原告が被告Aに挨拶もしないでいると帰り際に原告のことをにらみつけたと供述する(甲3、77)も、そのことを裏付ける的確な証拠はないのであるから、同 事実を認めることはできない。 イ以上を前提に検討するに、前記認定事実⑴ケによれば、被告Aは本件おれの女発言を受けた原告がはっとした表情になったと認識していたことが認められる。他方で、原告は、本件おれの女発言以降も、被告Aのゼミに出席していたことからすると、被告Aが原告に対して上記飲み会に案内するよう に要求して原告がこれを断るまでは、原告は、明示的又は黙示的に被告Aとの接触を回避していたとまでは認められない。そうすると、被告Aは、上記のような原告からの断りがあった時点で、原告が被告Aとの接触を回避していることを認識し得たといえる。そのため、原告から飲み会へ連れて行くことの拒絶がある前の段階において、被告Aが原告に対して飲み会に案内する ように要求したことをもって、直ちに原告の良好な学習環境で学習する利益などの何らかの権利利益を侵害したと評価することはできない。 他方で、上記飲み会において原告と被告Aとは会話を含めて接触をしていない(甲77、弁論の全趣旨)のであるから、上記のように飲み会参加段階において原告が被告Aとの接触を避けていることを被告Aが認識し得たこ と踏まえても、被告Aが上記飲み会に参加したことが損害賠償の支払を命ず るほど社会通念上許容される限度を超えて違法な行為であったと認めるに足りず、不法行為に該当するとはいえない。 ウ以上によれば、原告の主張は採用することができない。 ⒁ 本件卒業要件発言行為についてア被告Aに対する請求 前記認定事実⑴サによれば、被告Aは、平成2 当するとはいえない。 ウ以上によれば、原告の主張は採用することができない。 ⒁ 本件卒業要件発言行為についてア被告Aに対する請求 前記認定事実⑴サによれば、被告Aは、平成29年5月後半頃、たまたま遭遇した原告に対し、「卒業は大丈夫なんですか」、「単位は大丈夫なんですか」などと声を掛けたことが認められる。なお、この際、被告Aがニヤニヤと笑っていたとする本件報告書(甲8)はその認定根拠が明らかでなく、また、同趣旨の原告の供述(甲3)についても、これを裏付ける的確な証拠が ないことから、同事実を認定することはできない。 そして、上記⒀によれば、被告Aは、平成28年4月27日には原告が被告Aとの接触を回避していることを認識し得たといえる。 しかしながら、被告Aが意図的に原告に面会に行ったことを裏付ける客観的な証拠はなく、本件卒業要件発言行為自体は、単位取得等の見込みを問う だけのものであって、性的な意味はなく、原告の人格を傷つけるような誹謗中傷でもない。被告Aが本件おれの女発言を受けて原告が被告Aとの接触を避けていることを認識し得たことを考慮しても、たまたま遭遇した原告に対して上記声掛けをすることが損害賠償の支払を命ずるほど社会通念上許容される限度を超えた違法な行為であるとはいえず、不法行為に該当するとは いえない。 イ被告早稲田大学に対する請求原告と被告早稲田大学の間では、被告Aが、同年5月後半頃、たまたま遭遇した原告に対し、ニヤニヤと笑いながら近づき、「卒業は大丈夫なんですか」、「単位は大丈夫なんですか」などと声を掛けたことについて争いがない が、上記ア説示のとおり、これについて不法行為は成立しない。 ウ以上によれば、この点に関する原告の主張は採 「単位は大丈夫なんですか」などと声を掛けたことについて争いがない が、上記ア説示のとおり、これについて不法行為は成立しない。 ウ以上によれば、この点に関する原告の主張は採用できない。 ⒂ 争点⑴の総括以上によれば、争点⑴に関する原告の主張は、本件授業時発言行為(前記⑹)及び本件おれの女発言行為(前記⑿)に関する主張については理由があり、その余は理由がない。 3 争点⑵(D教授の不法行為及びD教授を履行補助者とする被告早稲田大学の債務不履行の有無)について⑴ D教授が原告の被害の深刻さを理解せずに適切な措置を講じなかったとの主張(争点⑵イ)についてア D教授の行為①について 前記認定事実⑵イによれば、D教授は、原告に対し、本件相談において、原告から被告Aのハラスメントについて具体的な相談を受ける前に、「面倒なことは嫌だ」という趣旨の発言をしたことが認められる。 しかしながら、D教授が、同発言以前において、原告が被告Aからハラスメントを受けていることを認識していたことを認めるに足りる証拠はない。 そうすると、上記発言は何らかの問題を抱え相談に来た学生に対する発言としては冗談であってもいささか軽率かつ無責任に過ぎるものであるとはいえるが、これをもって、D教授が原告の性的自由に関する人格権又は良好な学習環境で学習する利益を侵害した(又は原告の被害回復のために適切な措置を講ずる義務を怠った)と評価することはできない。したがって、原告 の主張は採用できない。 イ D教授の行為②、③について 前記認定事実⑵イによれば、現代文芸コース主任であるD教授は、本件相談時、セクハラはもっとすごいやつだとの趣旨の発言をしたこと、原告に隙がある、原告の視線の動かし方が 授の行為②、③について 前記認定事実⑵イによれば、現代文芸コース主任であるD教授は、本件相談時、セクハラはもっとすごいやつだとの趣旨の発言をしたこと、原告に隙がある、原告の視線の動かし方が異性を勘違いさせてしまうという趣 旨の発言をしたことが認められる。 そして、本件おれの女発言は、前記2⑿説示のとおり、その内容自体からして、原告を性的関心の対象としていると評価でき違法なセクシュアルハラスメントに当たる行為であることは明らかであるから、かかる被害申告を聴取したD教授は、原告がセクシュアルハラスメント被害を受けたと認識するに至ったといえる(そうであるからこそ、D教授は、原告に対し、 本件相談時には、指導教員変更及びハラスメント防止室への相談という解決策を提示し、本件相談後は、指導教員変更のために尽力していた。)。そうすると、D教授は、原告による被害申告を受けた時点以降は、被告早稲田大学の被用者、履行補助者である教員として、学生である原告に対して、学習環境が損なわれることのないように、原告の申告に対し適切に配慮す る義務を負うというべきである。 そうであるにもかかわらず、上記のとおり、D教授は、原告の被害が軽微であり、原因が原告にもある旨の発言をしたといえる。かかるD教授の発言は、本件おれの女発言等によって性的自由に関する人格権を侵害された原告に対し適切な配慮をすることを怠り、原告の性的自由に関する人格 権をさらに侵害するものといえる。したがって、D教授の上記発言は、セクシュアルハラスメント被害を申告した原告の性的自由に関する人格権を侵害するという点において、原告の学習環境が損なわれることのないように原告の申告に対し適切に配慮する義務に違反(不法行為責任との関係においては、原告の性的自由に関 した原告の性的自由に関する人格権を侵害するという点において、原告の学習環境が損なわれることのないように原告の申告に対し適切に配慮する義務に違反(不法行為責任との関係においては、原告の性的自由に関する人格権及び原告の良好な学習環境で 学習する利益を侵害)するものといえる。 以上によれば、D教授の上記発言は、その後D教授が指導教員変更の手続を進めるなどしたことを考慮しても、被告早稲田大学の在学契約上の債務不履行ないし不法行為に該当する。 ウ D教授の行為④について 前記認定事実⑵ウ、エによれば、本件メール3送信前後の経緯は以下の とおりである。 D教授は、F教授とも相談した上で、原告に対し、指導教員の変更を被告Aに知らせることにつき、原告の専攻分野変更を理由として指導教員変更をするというストーリーを作り、その内容として、①原告が修士論文計画書提出を機に創作を最終的な目標としたくなり、F教授に相談をした、 ②F教授が、事務所と現代文芸コース主任であるDに相談し、指導教員変更が可能であることを確認した、③F教授が、被告Aに対し、原告の意思を尊重して原告を受け入れる旨のメールを送信する、④③の結果にもよるが、上記流れを被告Aが受け入れた場合、原告から一言あった方が自然であり、原告が被告Aに対して指導教員変更の件について事前に相談しなか った弁明としては、「怖くて言い出せなかった」というのもあり得るのであり、また、原告からは「申し訳ありません」という詫びの言葉があるといいのではないか、⑤③の結果、話がこじれた場合には、その際の状況から新たに考え直す必要があるという趣旨の整理などを行った本件メール3を送信したものである。 そして、本件メール3を読んだI教授は、このうち④の部分に対 、話がこじれた場合には、その際の状況から新たに考え直す必要があるという趣旨の整理などを行った本件メール3を送信したものである。 そして、本件メール3を読んだI教授は、このうち④の部分に対し、原告が悪いわけではないので、「申し訳ありません」と詫びる必要はないのではないかと指摘したところ、D教授は、I教授の指摘を受けてすぐに意見を変え、同部分を撤回し、実際に原告が被告Aに謝罪することはなかったというのである。 原告は、本件メール3のうち④の部分が原告に対する被害回復について適切な措置を講ずることを怠ったものであると主張する。 しかしながら、上記のとおり、D教授は、原告の承諾も受けて指導教員変更の表向きの理由が原告の希望による修士論文テーマの変更に伴うものと整理したことにより、被告Aが、原告に対し、原告側の事情による 指導教員変更であるにもかかわらず事前に相談がなかったことに腹を立 てて、原告に対し接触を求めてくる可能性があることを考慮して、そのような被告Aによる接触の可能性を減らし、円滑に指導教員の変更を行う目的で、本件メール3の④部分を提案したものといえる。 以上によれば、D教授が上記④の部分を含む本件メール3を原告に送付したことは、その記載を表面的に捉えれば被害者が加害者に対して謝罪す ることを求めるもので不当なものに見えるが、実際には、原告が被告Aから接触されることなく円滑に指導教員の変更をするための便法としての提案であって、原告の良好な学習環境で学習する利益など原告の何らかの権利利益を侵害したもの(又は原告の学習環境が損なわれることのないように原告に配慮する義務に反する)と評価することはできない。 以上によれば、原告の主張は採用できない。 エ小括 たもの(又は原告の学習環境が損なわれることのないように原告に配慮する義務に反する)と評価することはできない。 以上によれば、原告の主張は採用できない。 エ小括以上によれば、D教授が原告の被害の深刻さを理解せずに適切な措置を講じなかったとの原告の主張については、前記イの限度で認められる。 ⑵ D教授が事態の収束と隠蔽をしたことにより被害回復への尽力を怠ったと の主張(争点⑵イ)についてア D教授の行為⑤及び⑥について原告は、本件相談の際、D教授に対し、指導教員変更を考えたいと伝えると、D教授は、その話を遮り、教員変更もしたくないと述べたと供述する(原告本人46頁)。 また、原告は、D教授が、本件相談の際、解決策を何も提案することがなかったことを前提に、大事にしたくないことの具体例として、ハラスメント防止室に言及したにとどまる旨供述する(原告本人16、46、63~65頁)。 しかしながら、前記認定事実⑵エの経緯や、平成29年5月7日20時 44分にD教授が原告及びF教授に送信したメール(乙ロ12)には、指 導教員変更の手続に言及した上で、「F先生、重たい問題に関わらせてしまい、申し訳ありません。原告からの話を受け、私一人では心細く、F先生、I先生にも相談をするようにすすめてしまいました。」との記載があることによれば、D教授は、本件相談の際、原告が指導教員の変更をする場合にはF教授を希望していること、本件がセクシャルハラスメントを含 む事案であることを踏まえ、F教授及びI教授にも相談した方がよいと提案し、原告がF教授と相談して本件方針を決定した後は、原告の指導教員変更の要望を実現するために、スケジュール調整、指導教員変更のための必要事項の確認な まえ、F教授及びI教授にも相談した方がよいと提案し、原告がF教授と相談して本件方針を決定した後は、原告の指導教員変更の要望を実現するために、スケジュール調整、指導教員変更のための必要事項の確認などを行ったことが認められ、このことからすればD教授が本件相談の際に指導教員の変更に言及するなど解決策を提案したこと は明らかである。 また、以上の経緯を考慮すると、D教授は、問題の解決策の一つとして、ハラスメント防止室への相談という方法もあることを紹介した上で、これについては手続が煩雑で大変であるというデメリットがある趣旨の発言をしたと認めるのが相当である。 以上を前提に検討すると、上記D教授の発言は、被告Aによるハラスメントの解決策として、指導教員の変更という方法が考えられることを示し、その他にも、ハラスメント防止室への相談という方法もあることを教示したものであるが、ハラスメント防止室への相談についてはデメリットを強調し、同方法による解決に対し消極的な意見を表明したものといえる。 前記認定事実⑵ア、ウ、エによれば、原告は、①本件相談に先立つG助教との相談においても、被告Aを慕っている学生も多いことからハラスメント問題を公にして被告Aを追及し「首にする」ことまでは考えておらず、指導教員をF教授に変更することが一番良いという考えを明らかにしていたこと、②本件相談の後のF教授とのやり取りにおいても、ハラスメン ト問題を理由に指導教員を変更するのではなく専門分野の変更を理由と するという方針を共有し、これに対し異議を述べていなかったことが認められる。D教授は、前記認定事実⑵イ、エのとおり、本件相談に先立ち、面倒なことは避けたいという態度を示しており、本件相談以降もハラスメント問題を公にすること れに対し異議を述べていなかったことが認められる。D教授は、前記認定事実⑵イ、エのとおり、本件相談に先立ち、面倒なことは避けたいという態度を示しており、本件相談以降もハラスメント問題を公にすることについてしばしば消極的な姿勢を示していたことからすれば、一学生にすぎない原告はD教授の姿勢を感じ取ってD教授 に対して直接異議を述べづらかったという可能性はあり得るが、そうであるとしても、F教授やI教授、G助教は原告に寄り添う立場であり原告と信頼関係を築いていたものと推認され、特にI教授は前記認定事実⑵エのとおり原告が被告Aに謝る必要はないという意見を述べることができる立場の人物であったことからすれば、原告が上記方針に不服であれば、 これらの信頼できる教授らに対しその旨を話し、ハラスメント防止室に訴え出ることを含む方針変更を求めることも可能であったのに、これをしていないことからすれば、少なくとも本件相談から指導教員変更がされた平成29年5月頃までの時期においては、原告はハラスメント問題を公にせずに指導教員変更をするという方針に納得していたものというべきであ る。 そうすると、ハラスメント防止室の利用について否定的な意見を述べた上記D教授の発言は、その内心の動機においては事態が公になることで現代文芸コース主任である自分の負担が重くなることを憂慮したものであるとしても、結論においては当時の原告の意向に反するものではなかった といえるから、原告の希望する学習環境の形成(指導教員の変更)を阻害するようなものではなかったといえ、原告の性的自由に関する人格権や良好な学習環境で学習する利益を侵害した(又は原告の被害回復のために適切な措置を講ずる義務を怠った)とまで評価することはできない。 以上によれば、本件D発言に関する原告の主 性的自由に関する人格権や良好な学習環境で学習する利益を侵害した(又は原告の被害回復のために適切な措置を講ずる義務を怠った)とまで評価することはできない。 以上によれば、本件D発言に関する原告の主張は採用できない。 イ D教授の行為⑦について 前記認定事実⑵イによれば、D教授は、本件相談の際に、原告に対し、ハラスメント問題が現代文芸コースの外に明らかになれば、「結構叩かれちゃうことになるかもな」と発言し、原告は同発言を現代文芸コースの外に話してほしくないという口止めの意味に理解したことが認められる。 確かに、D教授の上記発言は、ハラスメント問題の解決よりも事態が公に なることで現代文芸コース主任である自分の負担が増えることを憂慮したものであり、原告に対して配慮を欠く不適切な発言であるといえる。しかしながら、前記認定事実⑵アないしエのとおり、原告は、本件相談に先立つG助教との会話においてもハラスメント問題を公にして被告Aの免職を求めることまではせず、指導教員の変更という解決策を希望する意思を明らかに していること、本件相談の際やその後のF教授やI教授とのやり取りの際にも、ハラスメント問題を公にすることを求める意向は示していなかったことなどからすれば、D教授の上記発言は、発言の動機はともかく、結論においては原告の意思に反するものではなく、原告の意思に反して現代文芸コースの外にハラスメント問題の話をすることを口止めしたというものではない。 そうすると、現代文芸コース主任であるD教授の上記発言は、原告の性的自由に関する人格権や良好な学習環境で学習する利益を侵害した(又は原告の被害回復のために適切な措置を講ずる義務を怠った)とまではいえない。 また、D教授は、平成28年5月11、13日のメールにおいて、 由に関する人格権や良好な学習環境で学習する利益を侵害した(又は原告の被害回復のために適切な措置を講ずる義務を怠った)とまではいえない。 また、D教授は、平成28年5月11、13日のメールにおいて、原告やF教授に対し、原告の指導教員変更の調整を行うに当たり、原告の申告した 被告Aのハラスメントに関する問題が現代文芸コースの外に出ることを懸念する趣旨ともとれるメールをしている(前記認定事実⑵エ)。しかしながら、D教授の同メールは、原告が指導教員の変更を希望しているため、F教授とI教授にも相談して指導教員の変更のための手順を検討していた際のやり取りの中で送信されたものであり、上記メールは、突然に指導教員変更 の話を被告Aに持って行った場合、被告Aから原告に対するさらなるハラス メントがされるおそれがあることを考慮したものである可能性も否定できない。したがって、原告の主張するように、上記発言が、被告Aによるハラスメント隠蔽の趣旨で行われたとまでは認められない。したがって、上記発言は、原告の性的自由に関する人格権や良好な学習環境で学習する利益を侵害した(又は原告の被害回復のために適切な措置を講ずる義務を怠った)と 評価することはできない。 以上によれば、原告の主張は採用できない。 ウ D教授の行為⑧について前記認定事実⑵イによれば、D教授は、本件相談の結論として、しばらく様子見をしようと発言し、原告は、この結論を受け入れたことが認められる。 前記認定事実⑵イによれば、本件相談では、最終的に、D教授と原告との間で、原告が指導教員の変更を希望しているため、F教授とI教授にも相談して方向性を決定するとの方針になったことが認められるから、上記D教授の発言は、同方針を踏まえ、方向性が決まるまでの間は現状を維持すると 原告が指導教員の変更を希望しているため、F教授とI教授にも相談して方向性を決定するとの方針になったことが認められるから、上記D教授の発言は、同方針を踏まえ、方向性が決まるまでの間は現状を維持するという趣旨の発言であると認められる。そうすると、上記様子を見ようとのD教授 の発言はその発言当時の状況からして、原告から相談された被告Aのハラスメントを隠蔽する内容のものとは認められず、同発言に関するD教授の意図もそのような隠蔽にあると認めることはできない。したがって、上記D教授の発言は、原告の性的自由に関する人格権や良好な学習環境で学習する利益を侵害した(又は原告の被害回復のために適切な措置を講ずる義務を怠った) と評価することはできない。 以上によれば、原告の主張は採用できない。 エ D教授の行為⑨、⑩について前記認定事実⑵ウ、エによれば以下の事実が認められる。 原告が、D教授に対し、F教授との相談の結果、とりあえずは被告Aの 授業に2、3回出席しつつ、指導教員を被告AからF教授へと変更する手 続を進めることを報告し、その方針に対し、D教授は異存がなくD教授の方でも手続を事務所に確認する旨を返信した。その後、原告が、D教授に対し、事務所における確認の結果を報告したところ、ハラスメントについては、ハラスメント防止室で相談でき、指導教員の変更については被告早稲田大学文学学術院の教授であるJ教務主任に相談できる旨の教示を受 けたことも報告した。これに対し、D教授は、「事務所の方との相談の際には、具体的なことは話したのでしょうか。J先生はとても温厚で、相談をすれば懇切丁寧に助言をくれると思いますが、できればその前の段階で解決できた方がいいですね。」といった趣旨の回答をした(本件メール1)。 これに対し、原 たのでしょうか。J先生はとても温厚で、相談をすれば懇切丁寧に助言をくれると思いますが、できればその前の段階で解決できた方がいいですね。」といった趣旨の回答をした(本件メール1)。 これに対し、原告は、事務所に相談した際には、原告が指導教員の変更 のことについて質問すると、まずは指導教員と相談するようにと案内されたため、ハラスメントが絡んでいるので指導教員とは二人で話すことは難しいと伝えたにとどまり、詳細は話していない旨回答した。 これに対してさらに、D教授は、「現指導教員である被告Aとの件は、あまり広まらないようにした方がよいと思うので、慎重にしてください。 D、F教授、I教授の範囲で、できれば止めたいです。」といった趣旨の回答(本件メール2)をした。 他方で、前記認定事実⑵エによれば、本件メール1及び本件メール2の時点においては、指導教員の変更はスケジュール的に平成29年5月17日の教室会議に持ち込むのが原告と被告Aの接触を回避させて原告の被 害拡大を防止するための最短のスケジュールであり、かつ、上記教室会議を逃すと指導教員変更による演習科目の単位取得のための要件を充足しなくなることが認められる。 原告は、D教授が本件メール1及び本件メール2の送信により被告Aのハラスメントの隠蔽を図り、原告の被害回復に尽力することを怠ったと主 張する。 確かに、本件メール1及び本件メール2は、その内容自体からすると、原告が、D教授、F教授及びI教授以外の者にセクシャルハラスメントの被害申告をしないことを求めるものといえる。しかしながら、上記のとおり、原告は指導教員変更による解決を希望しており、しかも、同月17日までに指導教員変更の手続を完了させなければ演習科目の単位取得の 要件を充たさ を求めるものといえる。しかしながら、上記のとおり、原告は指導教員変更による解決を希望しており、しかも、同月17日までに指導教員変更の手続を完了させなければ演習科目の単位取得の 要件を充たさなくなるという状況であった。そうすると、D教授による原告に対する本件メール1及び本件メール2の送信は、上記のような切迫した状況において、まずは指導教員変更を円滑かつ早急に行うために、原告がハラスメント問題を理由に指導教員変更を希望していることを被告Aに悟られてはならないとの配慮の下で、指導教員変更のために動いている D教授、F教授及びI教授以外の者に対する情報の提供は相当ではないとの考慮により行った可能性も残る。また、原告が、本件メール1及び本件メール2の時点で、ハラスメント防止室や教務主任への相談が不可能であったことを認めることもできない。そうすると、D教授が、原告の被害の隠蔽と原告によるハラスメント防止室の利用を妨げる目的で、本件メール 1及び本件メール2を送信したとまでは認められない。 以上によれば、本件メール1及び2に関する原告の主張は採用できない。 オ小括以上によれば、D教授が事態の収束と隠蔽をしたことにより被害回復への尽力を怠ったとの原告の主張はいずれも採用できない。 ⑶ 争点⑵に関する総括以上によれば、争点⑵に関する原告の主張は、D教授が原告の被害の深刻さを理解せずに適切な措置を講じなかったとの原告の主張のうち、D教授の行為②及び③の主張(前記⑴イ)に関する主張については理由があり、その余は理由がない。 4 争点⑶(E准教授の不法行為及びE准教授を履行補助者とする被告早稲田大学 の債務不履行の有無)について⑴ E准教授がその講義にて被告A があり、その余は理由がない。 4 争点⑶(E准教授の不法行為及びE准教授を履行補助者とする被告早稲田大学 の債務不履行の有無)について⑴ E准教授がその講義にて被告Aを称賛する発言をしたことについて前記認定事実⑶ウによれば、E准教授は、その講義において、被告Aの研究成果を称賛する発言をしたことが認められる。しかしながら、大学の教員がその講義において他の研究者の研究成果を称賛することは当該教員の裁量 の範囲内の行為であって違法であるとはいえず、原告がE准教授の講義を聞き不快に感じたとしてもそのことにより原告の法的保護に値する利益が侵害されたという余地はない。 したがって、原告の主張は採用できない。 ⑵ E准教授が原告に協力した教員に対して発言を控えるようにと圧力をかけ たことについて前記認定事実⑶エによれば、E准教授が、平成29年11月頃、G助教に対し、被告Aのハラスメント行為について話すことをけん制する趣旨の発言をしたことが認められる。 しかしながら、原告が関与しないところでE准教授がG助教に対してかかる 発言をしたことにより、直ちに原告の法的保護に値する利益が侵害されたとまではいえず、このことが原告に対する不法行為に当たるということはできない。 ⑶ E准教授が原告に対して被告Aにお礼を言うように求めたことについて前記認定事実⑶エによれば、E准教授は、平成30年1月23日の修士論文の口頭試問後の打上げの際、原告に対し、被告Aへお礼を述べるように求めた ことが認められる。しかしながら、上記E准教授の発言内容から、E准教授が、原告に対し、被告Aへお礼を述べることを強要したとまでは評価できず、上記発言により原告の良好な学習環境で学習する利益その他の何らかの 認められる。しかしながら、上記E准教授の発言内容から、E准教授が、原告に対し、被告Aへお礼を述べることを強要したとまでは評価できず、上記発言により原告の良好な学習環境で学習する利益その他の何らかの権利利益が侵害された(又は原告の被害の回復につき適切な措置をとるべき義務を怠った)と評価することはできない。 以上によれば、原告の主張は採用できない。 ⑷ 争点⑶に関する総括以上によれば、争点⑶に関する原告の主張はいずれも理由がない。 5 争点⑷(原告退学後の被告早稲田大学の不法行為及び債務不履行の有無)について⑴ 被告早稲田大学の義務の有無について ア前記認定事実⑷によれば、原告は、本件当時、被告早稲田大学と在学契約を締結していたことが認められる。他方で、前記認定事実によれば、原告は平成30年3月末に現代文芸コースを退学したところ、原告は、原告が現代文芸コースを退学した後である同年4月16日にハラスメント防止室へ連絡を取り、同月23日にハラスメント防止室を訪問して被告Aによるハラス メントの内容を説明し、同年6月末に苦情申立書を提出したことが認められる。 イ被告早稲田大学は、在学契約上の義務として、原告に対し、教育役務を提供するとともに、これに必要な教育施設等を利用させる義務を負う。そうすると、被告早稲田大学は、その学生との間の在学契約から派生する義務とし て、学生との間において、信義則上、ハラスメントによる人格権や良好な学習環境を保持する利益の侵害から学生を保護するための配慮義務を負っていると解することができる。 しかしながら、上記義務は、あくまでも、被告早稲田大学に在学する学生との間で、教育役務の提供という本来的な債務を実現するために、その良好 な学 慮義務を負っていると解することができる。 しかしながら、上記義務は、あくまでも、被告早稲田大学に在学する学生との間で、教育役務の提供という本来的な債務を実現するために、その良好 な学習環境を保護するために認められるものであるから、在学契約を解消した退学者との関係においてまで、上記配慮義務を認めることはできない。 本件においては、前記認定事実のとおり、原告が主張している被告早稲田大学の行為は、原告が現代文芸コースを退学した後のものであるから、原告との関係において、被告早稲田大学が上記配慮義務を負うと解することはで きない。 したがって、在学契約に基づく債務不履行責任を理由とする原告の主張は採用できない。 ウ他方で、不法行為責任との関係において、在学契約を根拠としない信義則上の義務が認められるかを検討するに、前記認定事実⑷、⑸によれば、被告早稲田大学は、退学者である原告の苦情処理申立てを受け入れ、原告の主張 するハラスメント行為について調査し、その結果を原告に対して報告したことが認められ、その過程において、原告在学時の被告Aによるハラスメント行為を認識したことが認められる。そうすると、本件においては、原告と被告早稲田大学の関係は、被告早稲田大学が被害の申告を受け付けて調査を開始した以降の時点においては、原告在学時の人格権侵害に関して、その被害 救済という観点から、特別な社会的接触の関係にあるというべきである。したがって、本件事案のもとにおいては、被告早稲田大学は、信義則上、被告早稲田大学が被害の申告を受け付けて調査を開始した以降の時点においては、原告の人格権侵害に配慮する義務の一内容として、ハラスメントント防止室におけるハラスメント調査を適正に行う義務を負うというべきである。 の申告を受け付けて調査を開始した以降の時点においては、原告の人格権侵害に配慮する義務の一内容として、ハラスメントント防止室におけるハラスメント調査を適正に行う義務を負うというべきである。 エ以上によれば、上記ウの限度で原告の主張は採用でき、これに反する被告早稲田大学の主張は採用できない。 ⑵ 事前相談時の被告早稲田大学の対応に関する原告の主張についてア原告は、ハラスメント防止室が、原告が面談の事前相談のために連絡をした際、退学者の訴えは取り上げないかのような対応をしたと主張する。 前記認定事実⑷ウによれば、確かに、ハラスメント防止室の職員は、「ハラスメント防止室では継続的人間関係の維持を考慮し、ハラスメント事案解決については人間関係の調整を旨としています。」、「中退された場合には、申立てをお受けすることができない場合もあります」との趣旨を記載したメールを送信したことが認められるから、ハラスメント防止室が、原告の申出 を取り上げられない場合がある可能性を示したことが認められる。また、被 告早稲田大学のハラスメント防止委員会規程(本件に関係する規定については別紙のとおり)1条によれば、ハラスメント防止委員会は、ハラスメントの防止及びハラスメントに関する相談又は苦情の適切な処理によって、被告早稲田大学において就学する全ての学生が能力と個性を自由に発揮できる良好な学習環境を保持することを目的に設置されると定められており、在学 契約を解消した退学者との関係においても上記良好な学習環境を保持するためにハラスメント防止委員会が事案解決に取り組むことは本来想定されていないともいえる。 しかしながら、このことをもって、被告早稲田大学のハラスメント防止室が、原告の被害回復に尽くさなかった するためにハラスメント防止委員会が事案解決に取り組むことは本来想定されていないともいえる。 しかしながら、このことをもって、被告早稲田大学のハラスメント防止室が、原告の被害回復に尽くさなかったと評価することはできない。むしろ、 前記認定事実⑷エによれば、上記メールの後に原告がハラスメント防止室を訪問した際、ハラスメント防止室の職員は、原告の説明するハラスメントの内容を聞き、苦情処理申立てを希望する場合の手続を教示したことが認められるのであり、このことからすれば、被告早稲田大学のハラスメント防止室は、原告の主張を取り上げるための対応をしていたといえる。したがって、 被告早稲田大学が退学者の訴えを取り上げないかのような対応をしたということはできない。 以上によれば、原告の主張は採用できない。 イまた、原告は、原告がその親族の面談への同行を要望したのに対し、ハラスメントン防止室がこれを受け入れる姿勢を示さなかったと主張する。 確かに、前記認定事実⑷イによれば、原告がハラスメント防止室へ電話した際に、原告がその父の同席を要望したところ、これに応対した職員が、こちらは女性2人なので大丈夫との趣旨の発言をしたことが認められる。しかしながら、この職員の発言のみをもって、ハラスメント防止室が原告の父の同行を受け入れない姿勢を示したと即断して評価することはできず、むしろ、 前記認定事実⑷エによれば、実際には、原告の父は、原告がハラスメント防 止室を訪問した際、原告の相談の場に立ち会っていることが認められ、ハラスメント防止室の職員が原告の父の訪問を拒絶したり、退出を命じたりしたという事実は認められない。そうすると、被告早稲田大学のハラスメント防止室の職員の上記発言は、ハラスメント防止室は女性2人で対 ラスメント防止室の職員が原告の父の訪問を拒絶したり、退出を命じたりしたという事実は認められない。そうすると、被告早稲田大学のハラスメント防止室の職員の上記発言は、ハラスメント防止室は女性2人で対応するから付添いがいなくても安心してよいという趣旨でされたものであるといえ、原告 の父の同行を受け入れない姿勢を示すものということはできない。 以上によればハラスメント防止室が原告の親族の同行を受け入れなかったという原告の主張は採用できない。 ウさらに、原告は、被告早稲田大学では、事前相談当時、ハラスメント防止室の担当者が名乗ることをせず、代理人を立てることができない決まりにな っていると説明したと主張する。 前記認定事実⑷イ、エによれば、原告の電話と訪問時において対応したハラスメント防止室の職員いずれもが、原告の電話時及び訪問時いずれの時点においても、その名を名乗ることがなかったことが認められる。しかしながら、職員が名乗らないことにより被害者のハラスメントに関する相 談が阻害されるとまではいえず、社会通念に照らして職員が名乗るべき法的な義務を負うということはできない。 また、原告は、ハラスメント防止室の職員は、代理人を立てることができない決まりになっていると説明したと主張するが、そのような規定の存在は認められず、かえって、原告の来訪に対応した職員は、苦情申立書の 持参に関する質問を受けたため、「本人の意思確認をするためもあって、原則としては、申立書を持参してもらっています」という案内をしたとの供述をする(乙ロ13)ことを踏まえると、原告の主張するように、原告の来訪に対応した職員が、代理人による申立てが例外なくできないと説明したと認めるに足りないし、ハラスメントというデリケートな問題 の供述をする(乙ロ13)ことを踏まえると、原告の主張するように、原告の来訪に対応した職員が、代理人による申立てが例外なくできないと説明したと認めるに足りないし、ハラスメントというデリケートな問題を扱う に当たって、直接話を聞いてその真意を確認するために本人の出頭を求め ることが社会通念に照らして違法であるということはできない。 以上によれば、原告の主張は採用できない。 エ原告は、ハラスメント防止室の担当者が、相談とは別に申立書の提出を求め、郵送による申立ては認められないと説明されたと主張する。 前記認定事実⑷エ、カによれば、ハラスメント防止室では、苦情処理申 立ては書面によるという運用がされており、ハラスメント防止室の職員は、原告に対し、苦情処理申立てには申立書の提出が必要である旨を説明したことが認められる。そして、同運用自体が、ウ説示同様、原告による苦情処理申立てを妨げたと認めるに足りる証拠はないし、ハラスメントに関する苦情処理申立てという手続をするに当たって正確を期するために書 面の提出を求める運用が社会通念に照らして違法であるということはできない。 また、原告は、ハラスメント防止室の職員が、郵送による申立ては認められないと説明したと主張するものの、上記ウ説示同様に、その事実を認めることはできないし、仮にそのような説明をしたとしても、上記ウ のとおり原則として意思確認のため本人による申立書持参を求めるという運用が社会通念に照らして違法であるということはできない。 以上によれば、原告の主張は採用できない。 オ小括以上によれば、事前相談時の被告早稲田大学の対応に関する原告の主張は いずれも採用することができない。 ⑶ 。 以上によれば、原告の主張は採用できない。 オ小括以上によれば、事前相談時の被告早稲田大学の対応に関する原告の主張は いずれも採用することができない。 ⑶ 本件調査委員会に関する主張についてア被告早稲田大学の義務の有無について前記⑵説示のとおり、被告早稲田大学は、信義則上、被告早稲田大学が被害の申告を受け付けて調査を開始した以降の時点において、原告の人格権侵 害に配慮する義務の一内容として、ハラスメント調査を適正に行う義務を負 うというべきである。 イ本件報告書に関する主張について 前記認定事実⑸イによれば、本件報告書は、被告Aに関する原告の申立てのうち、本件おれの女発言等を認定しセクシャルハラスメントに該当すると結論付け、それ以外にもいくつかの被告Aの行為について不適切な行 為であるとしたが、被告Aがユングらの理論や作家、作品を「死ね」と言ったことについては、被告Aによる批判、評価の域を出ないとし、他の主張の一部については当該事実が認められないと結論付けた。 他方で、前記認定事実⑸アによれば、本件調査委員会の構成員は、通常、外部有識者、教職員等から構成されることが認められる。また、前記認定 事実⑸イによれば、本件調査委員会は、本件調査報告書作成の過程において、7回にわたり委員会を開催し、そのうちの一部において、原告、被告A、D教授、F教授、関係者(少なくとも原告以外の学生を含む。具体的にどのような人物かは証拠上認定できない。)に対するヒアリングを行ったことが認められる。 以上の事情を踏まえると、本件調査委員会が上記の結論を出すに当たっての調査が適正ではなかったと認めるに足りる証拠はない。原告は、本件報告書の ヒアリングを行ったことが認められる。 以上の事情を踏まえると、本件調査委員会が上記の結論を出すに当たっての調査が適正ではなかったと認めるに足りる証拠はない。原告は、本件報告書の調査結果が原告の申立てのとおりに認定されていない点を捉えて調査が不十分、不公正であったと主張するに過ぎず、これを採用することはできない。 ウ本件報告書2に関する主張について 前記認定事実⑸ウによれば、本件報告書2は、原告の苦情処理申立てのうち、被告A以外に関するものを取り扱い、D教授とHの面談の場面におけるD教授の行為に関して、HとD教授の供述が食い違っていることを理由に、Hの供述をもとにした原告の主張のとおりの事実を認定できないと 結論付ける(他方で、D教授の発言のとおりに認定できるとも認定してい ない。)など、原告の主張の一部認めず、その余の点については原告の主張を認めて、被告A以外の者の行為を不適切などと評価したことが認められる。 前記認定事実⑸アによれば、本件調査委員会の構成員は、通常、外部有識者、教職員等から構成されることが認められる。また、前記認定事実に ⑸ウよれば、本件調査委員会は、本件報告書2を作成するに当たり調査を行い、その調査過程において、8回にわたり委員会を開催し、そのうちの一部において、関係者(少なくともG助教、M総務部長は含まれている。 その他に具体的にどのような人物が関係者に該当するかは証拠上認定できない。)、K教授、E准教授、ハラスメント防止委員会委員長(L教授)、 Hに対するヒアリングを行ったことが認められる。 以上の事情を踏まえると、本件調査委員会が上記の結論を出すに当たっての調査が適正でなかったと認めるに足りる証拠はない。原告は、 授)、 Hに対するヒアリングを行ったことが認められる。 以上の事情を踏まえると、本件調査委員会が上記の結論を出すに当たっての調査が適正でなかったと認めるに足りる証拠はない。原告は、本件報告書2の調査結果が原告の申立てのとおりに認定されていない点を捉えて調査が不十分、不公正であったと主張するに過ぎず、これを採用する ことはできない。 エ小括以上によれば、本件調査委員会に関する原告の主張は採用できない。 ⑷ 争点⑷に関する総括以上によれば、争点⑷に関する原告の主張はいずれも認められない。 6 争点⑸(損害及び因果関係)について ⑴ 被告Aの行為による慰謝料額ア前記2説示によれば、被告Aは、原告に対し、本件おれの女発言及び本件授業時発言をし、その性的自由に関する人格権を侵害すると同時に当時の原告の良好な学習環境で学習する利益を侵害したものといえる。 原告は指導教員である被告Aの上記各行為により多大な精神的苦痛を受 けたことが認められる。 イ原告は、被告Aのハラスメント行為が原因で現代文芸コースを退学した旨主張する。 確かに、前記認定事実⑹アによれば、原告は、語学及び演習科目の授業等の単位不足により学位授与要件を充足しておらず、退学せずにもう1年在学 して修士号の取得を試みることも可能であったことが認められる。 しかしながら、前記認定事実⑹イによれば、原告は、被告Aが関与していない語学の授業についても入学当初から単位取得に必要な出席をしておらず、もともと語学に関心を持っておらず、入学当初から創作に関心があったことから修士号を取得する必要性も感じていなかったことが認められる。 そうすると、原告は、被告Aによる本件おれの女 ておらず、もともと語学に関心を持っておらず、入学当初から創作に関心があったことから修士号を取得する必要性も感じていなかったことが認められる。 そうすると、原告は、被告Aによる本件おれの女発言等のハラスメント行為によって精神的苦痛を受けたことは認められ、これにより原告の学習意欲が減退し退学の一因になったことはうかがわれるものの、原告は上記ハラスメント行為とは関係なくもともと語学の授業に関心を有さず修士号取得も必要としていなかったというのであるから、上記被告Aのハラスメント行為 と原告の退学との間に相当因果関係があるとまではいえない。したがって、慰謝料額の算定に当たっては、原告が退学を余儀なくされた事実は考慮できない。 ウ被告Aの上記不法行為の態様に加え、本件に現れた一切の事情を考慮すると、被告Aの上記不法行為により原告が被った精神的苦痛を慰謝するには、 50万円をもって相当と認める。 ⑵ D教授の行為に関する慰謝料額ア前記3⑴イ説示によれば、D教授が、セクハラはもっとすごいやつだ、被告Aのハラスメントの原因が原告にもあるといった趣旨の発言をしたことが認められ、これらのD教授の行為に係る不法行為又は債務不履行によって、 原告の性的自由に関する人格権及び原告の良好な学習環境で学習する利益 を侵害された。他方で、同行為は、本件相談という場面における一回的な発言であり、その後は、D教授はF教授らと連携し指導教員の変更手続をしたことが認められる。 イその他の事情については、上記⑴ア及びウ説示同様である。 ウ以上の他に本件に現れた一切の事情を考慮すると、D教授の行為に係る不 法行為又は債務不履行により原告が被った精神的苦痛を慰謝するには、5万円をもって相当と認める。 様である。 ウ以上の他に本件に現れた一切の事情を考慮すると、D教授の行為に係る不 法行為又は債務不履行により原告が被った精神的苦痛を慰謝するには、5万円をもって相当と認める。 ⑶ 上記⑴及び⑵の損害の合計額は55万円であるところ、本件に関する弁護士費用として5万5000円(上記⑴の損害50万円との関係では5万円、上記⑵の損害5万円との関係では5000円)と認めるのが相当である。 ⑷ 以上によれば、被告Aと被告早稲田大学は、原告に対し、55万円の限度で連帯して損害を賠償すべきであり、被告早稲田大学は、原告に対し、これに5万5000円を加えた合計60万5000円の損害を賠償すべきである。 第4 結論以上によれば、原告の請求は、被告Aとの関係においては、不法行為(民法7 09条)に基づく損害賠償として55万円の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、被告早稲田大学との関係においては、使用者責任(民法715条1項)及び在学契約の債務不履行に基づく損害賠償として60万5000円の支払を求める限度(被告Aとの間では55万円の限度で不真正連帯債務となる。)で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却することと し、仮執行宣言は事案に鑑み相当ではないからこれを付さないこととして、よって主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第49部 裁判長裁判官中村心 裁判官谷地伸之 裁判官紅林颯馬 (別紙) 本件に関係する被告早稲田大学における規則等 早稲田大学リスク管理およびコンプライアンス推進に関する規則(本件規則)(目的)第1条 紅林颯馬 (別紙) 本件に関係する被告早稲田大学における規則等 早稲田大学リスク管理およびコンプライアンス推進に関する規則(本件規則)(目的)第1条この規則は、早稲田大学(以下「本学」という。)における教育研究活動、組 織の管理運営または教職員、学生その他の構成員(以下「教職員等」という。)に負の影響を及ぼす可能性のある様々なリスクを管理する体制およびコンプライアンスを推進する体制を一体的に構築することで、本学の安定的発展および価値の向上を図ることを目的とする。 (用語の定義) 第2条この規則において、次の各号に定める用語の意義は、当該各号の定めるところによる。 一リスク自然災害、火災、感染症、コンプライアンス違反等の発生その他の事件または事故により、本学の研究教育活動の遂行、教職員等の安全、財産、名誉もしくは組織の存続に関し重大な被害または支障が生じ、または生じる恐れがあ る緊急の事態をいう。 二コンプライアンス法令、本学の規約、教育研究に係る固有の倫理その他の規範を遵守することをいう。 三リスク管理リスクの発生を未然に防ぐための対策およびリスク発生時における被害を最小限にとどめるための取り組みをいう。 四コンプライアンス推進コンプライアンス違反を未然に防ぐための対策を講じ、啓発活動等を行うことをいう。 (総括責任者)第4条本学に、リスク管理およびコンプライアンス推進に関する業務を総括させるため、リスク管理およびコンプライアンス総括責任者(以下「総括責任者」という。) を置き、総長が指名する副総長をもって充てる。ただし、副総長が置かれていない 場合は、総長が指名する常任理事をもって充てるものとする。 総括責任者(以下「総括責任者」という。) を置き、総長が指名する副総長をもって充てる。ただし、副総長が置かれていない 場合は、総長が指名する常任理事をもって充てるものとする。 2 (略) 3 総括責任者は、リスク発生時に外部有識者、教職員等から構成される対策本部、調査委員会等を設置することができる。 4 (略) (リスクマネージャー)第8条通報窓口で受理した通報に適切に対応するため、リスクマネージャーを置き、総務部長をもって充てる。 2 リスクマネージャーは、通報窓口で受理した通報および第9条第3項の規定により報告された案件を遅滞なく精査し、リスク・コンプライアンスに関連する委員会、 学術院、本部事務機構その他の委員会・箇所等に対応を依頼するものとする。ただし、リスク・コンプライアンスに関連する委員会が取り扱うべき事項については、当該委員会の審議を優先するものとする。 3 (略)(リスク・コンプライアンスに関連する委員会等の責務) 第9条リスク・コンプライアンスに関連する委員会は、前条第2項本文の規定によりリスクマネージャーから対応を依頼された案件を速やかに審議するものとする。 2 リスク・コンプライアンスに関連する委員会の委員長は、委員会で受け付けた通報および審議した案件のうち、全学のリスク管理およびコンプライアンス推進に重大な影響を与えると認められるものについては、総括責任者に報告し、対応を協議 するものとする。 3 リスク・コンプライアンスに関連する委員会の委員長は、委員会で受け付けた通報のうち、当該委員会において取り扱うことが不適当と認めるものがあるときは、リスクマネージャーに報告するものとする。 ハラスメント防止委員会規程 (目的)第 け付けた通報のうち、当該委員会において取り扱うことが不適当と認めるものがあるときは、リスクマネージャーに報告するものとする。 ハラスメント防止委員会規程 (目的)第1条この規程は、本大学に就学就労するすべての学生・生徒および教職員が能力と個性を自由に発揮できることを目的とし、本大学における、性別、社会的身分、人種または国籍等に基づく不当な差別的取扱いその他のハラスメントの発生を防止するための教育および啓発活動の展開ならびにハラスメントに関する相談また は苦情の適切な処理についての必要な事項を定める。 以上
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