主文 1 被告らは,原告に対し,連帯して,4885万9464円及び内金4541万4462円に対する平成9年12月4日から,内金103万2332円に対する平成11年1月1日から,内金97万6733円に対する平成12年1月1日から,内金134万0257円に対する平成13年1月1日から,内金9万5680円に対する平成13年3月1日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを10分し,その3を原告の,その余を被告らの各負担とする。 4 この判決は,第1項につき,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告らは,原告に対し,連帯して,7079万8980円及び内金6262万2909円に対する平成9年12月4日から,内金196万2576円に対する平成11年1月1日から,内金185万6876円に対する平成12年1月1日から,内金254万7973円に対する平成13年1月1日から,内金180万8646円に対する平成13年3月1日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,被告いすゞ自動車東海株式会社(以下「被告会社」という。)に雇用され,被告会社一宮整備工場(以下「本件工場」という。)において,自動車の修理点検等の業務を行っていた原告が,同工場のフロント業務を行っていた被告E(以下「被告E」という。)の指示により,自動車の下に潜ってブレーキライニングの点検をしていたところ,被告Eが作業終了の確認をせずに運転手に車両の発進を指示したため,その誘導に従って発車した自動車に轢かれ,傷害を負ったとして,被告らに対し,損害賠償の連帯支払を求めた事案である。 2 争いのない事実(1)ア被告会社(平成9年12月4日当時 発進を指示したため,その誘導に従って発車した自動車に轢かれ,傷害を負ったとして,被告らに対し,損害賠償の連帯支払を求めた事案である。 2 争いのない事実(1)ア被告会社(平成9年12月4日当時の商号は,愛知いすゞ自動車株式会社)は,自動車の販売修理等を業務とし,愛知県一宮市i町j字kl番地に本件工場を有する株式会社である。 イ原告は,平成9年12月4日当時,被告会社と労働契約を締結し,本件工場で勤務していた。 ウ被告Eは,平成9年12月4日当時,被告会社に雇用され,本件工場でフロント業務(事務職)を行っていた。 (2)ア被告会社では,整備工場で勤務する従業員を工場長,フロントマン,ディスパッチャ(工程管理者),メカニック(整備士)等に分けていた。 イフロント業務は,入庫時の受付,故障箇所及び内容の確認,整備内容の確認,作業指示書の作成等を行うことを内容とする。 ウディスパッチャの業務には,大きく分けて工程管理及び技術指導の2つがあり,具体的にいえば,フロントマンから出た作業指示を各メカニックに配分担当させること,メカニックの作業進捗状況等を管理すること及び各メカニックに対して安全面を含めた整備技術の指導教育を行うことを内容とする。すなわち,ディスパッチャは,メカニックの長として位置づけられ,フロントマンとメカニックを仲介する立場にある。 エメカニックの業務は,ディスパッチャから配分された整備作業を行うことを内容とする。 オ平成9年12月4日当時,被告Eはフロントマン,原告はディスパッチャ,本件車両の整備を直接行った訴外F(以下「F整備士」という。)はメカニックの立場であった。 (3) 原告が,平成9年12月4日午後(時刻については,午後5時20分ころか,午後5時ころから午後5時5分ころまでの間かについて,争いがある。),本 整備士」という。)はメカニックの立場であった。 (3) 原告が,平成9年12月4日午後(時刻については,午後5時20分ころか,午後5時ころから午後5時5分ころまでの間かについて,争いがある。),本件工場において,大型貨物自動車(登録番号G,以下「本件車両」という。)の左前輪内側へ潜りブレーキを点検していたところ,本件車両の運転手である訴外H(以下「H運転手」という。)が本件車両を発進させて,原告を轢いた(以下「本件事故」という。)。 (4)ア本件事故の結果,原告は,右大腿骨開放骨折,右大腿切断,左大腿骨果骨折,左大腿骨骨折,骨盤骨折,肛門裂傷の傷害(以下「本件傷害」という。)を負った。 イ原告は,本件傷害のため,平成9年12月4日から平成10年6月5日まで愛知県立I病院に合計184日間入院していた。 ウ原告は,退院後の平成10年6月6日から症状固定日である平成11年3月15日までの間に84日間通院した。 エ原告には,右大腿部切断(第4級5号),左腸骨欠損(第12級5号),左膝関節の機能障害(第12級7号)の後遺障害が残存し,後遺障害等級として併合第3級の認定を受けた。 オ原告は,平成11年4月以降平成12年11月までに23回リハビリのために通院し,平成12年11月時点も通院を継続していた。 (5)ア被告会社は,労働契約に基づき,原告その他の従業員が修理等の業務をなすに当たり,労働災害が生じないように危険防止のために必要な措置をとる安全配慮義務を負っている。 イ被告会社は,本件事故当時,被告Eを雇用していたものであり,被告Eの使用者である。 3 争点(1) 本件事故の発生原因と被告らの責任についてア原告の主張(ア) 本件事故は,被告Eが独断で本件車両の移動を許可したことにより生じたものである。 すなわち,被告Eから口 である。 3 争点(1) 本件事故の発生原因と被告らの責任についてア原告の主張(ア) 本件事故は,被告Eが独断で本件車両の移動を許可したことにより生じたものである。 すなわち,被告Eから口頭で作業指示を受けた原告が,F整備士に一人で本件車両のブレーキライニングの点検をさせた。 そして,F整備士からブレーキライニングが摩耗しているという報告を受けたので,原告は,ブレーキライニングの残量がないことについて被告Eに「どうするんだ。」と聞いた。 これに対し,被告Eは,「ないものはやらないかんな。」と原告に指示をした。 その会話を聞いたH運転手が,「時間がない。早くしてくれ。3か月前にライニングは取り替えた。」と言った。 そこで,原告は,3か月前に取り替えたのに残量がないのはおかしいと思ったが,部位の不具合によってはあり得ないわけではなく,本件車両のような大型車の場合,ブレーキライニングがなければブレーキ不具合による事故につながる危険性が特に大きいことから,「俺が見てくるわ。」と被告Eに言って,自分で本件車両を点検するために事務所を出た。 このように,原告は,被告Eに対し,本件車両を点検する旨連絡した上で点検に行っているし,原告が点検に行ったのはむしろ被告Eの指示に従ったものであり,独断で本件車両の下に潜ったわけではない。 そもそも,3か月前にブレーキライニングを取り替え済みであるにもかかわらずブレーキライニングがないとの報告を受けたのであれば,フロントである被告Eとしては変だと思うのが当然である。 また,本当にブレーキライニングがないまま自動車を運転すれば重大事故が発生する可能性があり,被告会社としてもそのままそれに対処せずに放置することは考えられないのであって,ブレーキライニングの交換時期を車両カルテで確認したからといってそれで済まされる すれば重大事故が発生する可能性があり,被告会社としてもそのままそれに対処せずに放置することは考えられないのであって,ブレーキライニングの交換時期を車両カルテで確認したからといってそれで済まされるわけではなく,実際にブレーキライニングの有無を確認しなければならない。 したがって,それだけでもフロントである被告Eとしてはその場にいなかった原告が点検中でないかどうか確認するのが当然である。 これに対し,被告Eは,本件車両のブレーキライニングの張り替えの必要性がないと判断したのは,本件車両のカルテに,ブレーキライニングの張り替えが本件事故より1か月半程度前の平成9年10月18日に行われていた旨の記載があったからであるという。確かに,通常の状態であれば,1か月半程度でブレーキライニングがなくなる可能性は低いかもしれないが,その他の故障,不具合等によりブレーキライニングが磨り減ることは十分あり得ることであり,かつ,大型車のブレーキの不具合が大事故を引き起こす可能性のあることは今更いうまでもないことである。 何より現物の確認をしたF整備士が「ない」と報告しているにもかかわらず,それを修理記録だけを見て「ある」と判断すること自体極めて重大な問題である。なお,被告Eは,本件車両のカルテを見ながら,ブレーキ状況,オイル等について問診したと供述しているが,これに対して,H運転手は,被告Eの「終わったよ。」,「ライニングが少ないから今度替えようか。」という程度のやり取りしか記憶しておらず,被告EがH運転手に対して詳しい問診をしたかどうかも極めて疑わしい。かような場合には,再度,現物の確認を行うのがいわば当然の対応であり,むしろ再度確認すべきものである。したがって,原告の行動は,被告会社の業務上至極当然の行動であり,本件工場の工場長である訴外J(以下「J工場長 は,再度,現物の確認を行うのがいわば当然の対応であり,むしろ再度確認すべきものである。したがって,原告の行動は,被告会社の業務上至極当然の行動であり,本件工場の工場長である訴外J(以下「J工場長」という。)も,仮に3か月前に替えていたとしても,もう一度念のため確認する必要があるからこそ原告が確認したのであるという証言をしており,原告の行動が被告会社の業務上当然のものであることを認めている。 また,被告EとJ工場長は,被告Eが作業終了を確認したと述べている。しかし,現場で作業を行ったF整備士は,ブレーキ調整を行ったところブレーキライニングがないとの報告をしているのであり,被告Eにしてもそれだからこそ「ライニングがなきゃ替えなきゃいかんな。」と言った後,カルテボックスからカルテを取り出すなどして確認を続けたのであって,原告を含め作業現場の人間は誰一人作業が終わったものと考えておらず,作業現場から作業完了の報告が全くなかったことは明白である。すなわち,F整備士は,「まだ作業が終わっていない」と考えて,ブレーキライニングの張り替えの指示を待って待機していたのであり,原告は,ブレーキライニングがないというF整備士の報告を聞いて,確認のために本件車両の下に潜って点検作業を行ったものであって,現場の責任者である原告が報告が正しいかどうか確かめに本件車両のところへ戻ったのは職務上至極当然の行動であり,もちろん原告も本件車両の整備作業が完了したとは考えてもいないし,被告Eに完了の報告をしたこともない。車両の整備をするというときには,ディスパッチャが終わりましたとフロントに言わなければ,フロントは勝手に終わりましたとは言えないことは,J工場長も認めているところである。 被告EがH運転手を問診したり,カルテを取り出したりする前に,現場の担当者である原告 たとフロントに言わなければ,フロントは勝手に終わりましたとは言えないことは,J工場長も認めているところである。 被告EがH運転手を問診したり,カルテを取り出したりする前に,現場の担当者である原告やF整備士は,作業が継続していると考えたまま,事務所を離れて行ったのであって,その後になってブレーキライニングがないという現場の報告を軽視し,被告Eが問診やカルテを見ただけで勝手に作業終了と判断して,現場の二人に連絡しないままH運転手に本件車両を移動させたのは極めて不注意である。 さらに,被告らは,原告が「俺が見てくるわ。」と言ったのを聞いていない旨主張している。しかし,本件事故発生直後に原告から直接聴き取り調査をした被告会社総務部勤務の訴外K(以下「K」という。)が本件事故から数日後に原告の姉である訴外L(以下「L」という。)に持参した交通事故発生届には,被告会社総務部勤務で本件事故の労災関係書類を作成した訴外M(以下「M」という。)のものと思われる字により,はっきりと「再点検のため(見てくると言って)」と記されている。この書類は,被告会社側が用意した書面であり,上記記載がされたのは,事故当初は,原告が「俺が見てくるわ。」と言った事実を誰かから事情聴取していたからにほかならない。これに対し,Mは,この書面は平成10年5月初めころ,原告の言い分を記載した上で準備したものであるが,結局原告は署名押印しなかった旨供述している。しかし,その記載内容が原告主張の事実に沿うことからすれば,上記書類に原告又はLが署名押印しない理由は,Lが述べるように原告本人から話を聞いていないという理由以外に考えられない。また,Mは,労災の手続をとるために労働基準監督署の勧めでやむを得ず原告の言い分どおりに記載し,これと別に被告会社の調査結果を記載した上申書を提出した旨 を聞いていないという理由以外に考えられない。また,Mは,労災の手続をとるために労働基準監督署の勧めでやむを得ず原告の言い分どおりに記載し,これと別に被告会社の調査結果を記載した上申書を提出した旨供述する一方で,原告が自分で言い分を記載した交通事故発生届は被告会社の調査結果と違う内容であるので被告会社の判を押すことはできないという,明らかに矛盾した供述をしている。また,以前にも何度も労災給付の申請をしたことがあるMが,本件の労災給付のための手続を事故から半年も経過した平成10年5月ころから始めたというのは到底考え難いし,遅れた理由も「分からない。」と答え,合理的な説明ができていない。さらに,原告側と被告側の食い違いに苦慮していたと言いながらも,どこが食い違っていたかという問いに対しては,明確な回答ができていない。 なお,被告Eは,F整備士及び原告が事務所を出て行くときに納車の段取りを頼むよと声をかけた旨供述するが,F整備士は,原告が納車の指示を出したので自分が一人で出て行ったと供述しており,被告Eのそのような発言を聞いていない。 (イ) 本件事故は,H運転手が被告Eの誘導に従って本件車両を発進させたために発生したものであるが,被告らの主張によれば,被告会社においては,職務分担が行われている建前であり,フロントは事務所内での業務に限定されており,整備の現場とは切り離されており,作業終了の確認もディスパッチャが行うこととされている。したがって,フロントにおいて作業指示を出した後は,ディスパッチャが作業を終了した旨をフロントに告げなければ,フロントは客に対して車両を動かす指示を出してはいけないことになっている。しかし,被告Eは,原告に対し,本件車両のブレーキライニングの点検を指示した後,職務分担制度に違反し,原告が何ら作業終了確認をフロント 客に対して車両を動かす指示を出してはいけないことになっている。しかし,被告Eは,原告に対し,本件車両のブレーキライニングの点検を指示した後,職務分担制度に違反し,原告が何ら作業終了確認をフロントに出していないにもかかわらず,原告らに対する作業終了の確認も,また,顧客はもちろん,被告会社の従業員らの安全の確認もせずに,1か月半前にブレーキライニングを交換したばかりであるから,F整備士の見間違いであって,ブレーキライニングを交換する必要はなく,整備は終了した旨の判断をし,H運転手に整備現場の本件車両の発進を独断で指示し,本件車両を引き渡したものである。以上によれば,本件事故は,被告Eの一方的過失により生じたものであり,被告Eは,原告に対し,民法709条の不法行為責任を負う。 なお,被告らは,本件事故発生当時,本件工場内の最高責任者であるJ工場長が本件工場内におらず,ディスパッチャである原告が現場作業に関する安全管理の責任をすべて負っており,フロントマンである被告Eにかような義務はないかのような主張も行っているが,仮に被告Eが社内的な規則に従って行動しているとしても,その場その場での状況を判断して事故が発生しないように注意する義務は,当然被告Eも負っているものである。職務分担制度や作業時の規則は,事故の発生を未然に防止するための注意義務を一種のマニュアル化したものであろうが,これらに従っている以上はその者に過失がないといい切れるものでもない。ましてや,後記のとおり,被告会社においては,これらのマニュアルが有名無実化しており,被告Eはマニュアルにすら従っていない。したがって,J工場長が本件事故当時本件工場内にいたかどうかによって被告らの責任の有無が左右されるものではなく,加えて,そもそも,本件事故当時,J工場長が本件工場内にいなかったとい ら従っていない。したがって,J工場長が本件事故当時本件工場内にいたかどうかによって被告らの責任の有無が左右されるものではなく,加えて,そもそも,本件事故当時,J工場長が本件工場内にいなかったという被告らの主張自体甚だ疑わしいものである。すなわち,J工場長の証言は一貫しておらず,ほとんど曖昧な供述をしており,被告会社関係者の証言は,口裏合わせが簡単にできるものであって,一致するからといって安易に信用すべきものでない。 (ウ) 被告会社としては,本件のように車両の下に潜って修理点検の作業を行う場合であれば,車両の移動を行う前に確実に作業終了の確認を行うことができる手順を確立し,かつ,フロントである被告Eに対し,安全教育を徹底する義務があったにもかかわらず,同義務を果たすことなく,漫然と業務を行った結果,本件事故を生じさせたものであり,安全配慮義務違反があるから,原告に対し,債務不履行責任を負う。 すなわち,被告らの主張によれば,被告会社においては,車両の整備に際しては,フロントマンがまず作業指示書を作成してからディスパッチャを呼び,ディスパッチャが実際に作業を行うメカニックを指名して整備作業を行わせることとされている。安全管理の上からすれば,作業終了後,この作業指示書がメカニックからディスパッチャを経由してフロントに返ってからフロントが作業終了の判断をするシステムになっていなければ安全を確保することができない。また,現場の二人がいずれも口頭で作業が終わったと言っていないのに,フロントマンの被告Eが作業終了の判断をしてもよいことになっていたとすれば,この点でも被告会社は安全管理義務を怠っていたといわなければならない。被告会社においては,日々の業務の多忙さ等から極めて杜撰な安全管理体制であった。本件事故は,このような杜撰な安全管理体制が原因 ,この点でも被告会社は安全管理義務を怠っていたといわなければならない。被告会社においては,日々の業務の多忙さ等から極めて杜撰な安全管理体制であった。本件事故は,このような杜撰な安全管理体制が原因で惹起されたものである。 また,被告Eの行為は,自動車の修理点検という被告会社の事業の執行についてなされたものであるから,被告会社は,原告に対し,被告Eの不法行為責任につき,民法715条の使用者責任を負う。 (エ) 被告らの主張によれば,被告会社においては,フロントマン,ディスパッチャ,メカニック等に職務内容が明確に区別され,責任の所在が明らかにされていたという。しかし,そのような職務分担制度自体が正常に機能していたとは到底考えられない。例えば,ディスパッチャである原告は,工程管理者としてフロントとメカニックとの間の連携役であるにもかかわらず,現場において作業したり,納車に出かけたりすることは日常的に行われていた。被告らのいう工程管理者の原告が納車で工場外に出た場合には,被告ら主張のディスパッチャの職務を行う者が工場内にいないこととなる。さらに,被告らの主張によれば,工場全体の責任者である工場長も納車に出かけることがあり,工場長と工程管理者の両者が工場内にいないという状態もあったということになる。なお,ただ一人J工場長は,営業の人間以外の者が納車に行くことはまずない旨,ディスパッチャである原告が修理の作業を行うことはない旨証言しているが,これは工場長としての責任回避のための証言としか思えない。また,本件の場合,作業現場の者が誰も作業が終了したと判断していないにもかかわらず,本来作業の終了の判断を行う権限のないフロントマンである被告Eが,作業終了の判断を勝手に行って,H運転手に本件車両を引き渡したため,本件事故が惹起されている。 (オ) 被 ていないにもかかわらず,本来作業の終了の判断を行う権限のないフロントマンである被告Eが,作業終了の判断を勝手に行って,H運転手に本件車両を引き渡したため,本件事故が惹起されている。 (オ) 被告らによれば,フロント,ディスパッチャ,メカニック間の指示のやり取りは作業指示書により行われるとのことであるが,そのような事実もない。作業指示書が作成されずに口頭で指示が出る場合や,作業指示書が戻されるのに4日もかかるなど,作業指示書が厳格にその機能を果たしていたわけではない。ちなみに,被告らは,本件に関する作業指示書には,ブレーキ調整ということのみしか記載がなされていないので,それ以外の指示はなされていない旨主張するが,作業指示書に追加して口頭でブレーキライニングの張り替えを指示することもあり,かつ,本件の場合はF整備士が作業の終了を確認することなく(ブレーキライニングの張り替えをするかどうか分からないまま)返却してしまっており,被告らの主張は何ら根拠のないものである。 (カ) 被告ら主張の被告本社による工場の実態調査は行われていたが,実態調査が行われる日はあらかじめ被告会社の方で分かっていたので,その日は実態調査に向け,規則を意識して業務を行っていたというのが実状であり,極めて形式的なものであった。 (キ) 被告らは,被告会社においてはストール内で作業することになっているにもかかわらず,本件ではストールで作業するように原告が指示しなかった点を問題にしている。しかし,被告会社においては,ストールの外で作業することは常態となっており,F整備士としても被告会社からストール外での作業は許されていると考えていた。もともと,本件工場にはストールが7台しかないのにメカニックが約12名もいることからも,ストール内で作業するだけではメカニックが余ってしまう 被告会社からストール外での作業は許されていると考えていた。もともと,本件工場にはストールが7台しかないのにメカニックが約12名もいることからも,ストール内で作業するだけではメカニックが余ってしまうし,修理車両の台数はストールの台数に比して多いため,ストールへの入庫を厳守していると業務が滞るような状態であった。したがって,ストール外での作業も被告会社から許されており,J工場長からも注意を受けることはなかった。また,被告Eもストール外だけでなくキャノピーで作業することがあると供述している。今回だけでなく,キャノピーで作業することも実際にあったのであり,だからこそ被告Eも,本件車両の整備をF整備士がキャノピーで行っていることは認識していながら,特に異議を唱えなかったし,F整備士も特に疑問を感じずに作業を行った。なお,この点についても,ただ一人J工場長は,原則としてストール外で作業することはない旨証言しているが,これも工場長としての責任回避からくる証言としか思えない。 そもそも,本件においては,F整備士は,車輪止めもせず,エンジンをかけたまま(ただし,これは被告らの主張である),キャノピーで作業を行っており,これは被告らが主張する被告会社の日常の管理,指導には全く反する行為である。何故F整備士がこのような形で作業を行ったかという理由については,「ストールが空いていなかった。忙しかった。」と証言している。しかし,本件事故当時実際にストールが満車であったかどうかはF整備士自身しっかりと確認しているわけではない。また,当時,F整備士は,他に仕事をしていたわけでもなく,待機していただけであるから,忙しかったというのも事実に反する。したがって,本件の場合のみ,上記のような形で作業する理由,必要性は特に見当たらない。にもかかわらず,F整備士が何の抵抗も けでもなく,待機していただけであるから,忙しかったというのも事実に反する。したがって,本件の場合のみ,上記のような形で作業する理由,必要性は特に見当たらない。にもかかわらず,F整備士が何の抵抗もなくこのような形で作業を行っていること,並びに被告Eを始めこれを認識していた他の者も何らこれを問題視していなかったことからすれば,被告会社においては,かような形での作業も日常的に行われていた可能性が極めて高いといえる。 また,車輪止めについても,日頃からしていないことが多かった。 さらに,修理中の車両には,修理中であり動かしてはいけないことを明示するために,「修理中」の看板をつけるべきであるのに,被告会社はそのような措置をとっておらず,車両が修理中か修理中でないかは分からない状態であった。 このように,被告会社においては,作業量の多さから,被告らが主張するような安全管理のための原則がほとんど守られていなかった。本件事故はそのために惹起されたものである。 (ク) 被告らは,原告がエンジンがかかったままの本件車両の下に潜った旨主張する。しかし,通常,エンジンがかかったままの車両の下に潜ることは考えられない。仮にエンジンがかかったままであったとすれば,H運転手は乗車後直ちに本件車両を発進させることが可能であるため,原告は逃げ出すことが遅れ,足だけの負傷にはとどまっていなかったはずである。Kは,原告からエンジンがかかっていた旨聴き取りをしたと証言しているが,本件事故から二日後に,しかも集中治療室で生命も危ぶまれる状態でいる原告に対し,特に被告会社から特別な指示を受けていたわけでもないのに事情聴取を本当に行ったとは考え難い。また,重傷を負った原告は本件事故から二日後に話ができるような状態ではなかったし,仮に話ができても,負傷しておきながら「会社に大変申し けていたわけでもないのに事情聴取を本当に行ったとは考え難い。また,重傷を負った原告は本件事故から二日後に話ができるような状態ではなかったし,仮に話ができても,負傷しておきながら「会社に大変申し訳ないことをした。」と発言するとは,どのような事情からしても考えにくい。さらに,Kは,この聴き取りを基に報告書を作成したと証言しているが,H運転手とは話をしていないにもかかわらず,「骨が折れる音でドライバーが不審に思い」と,聴き取りしていないはずの事実まで報告書に記載しており,原告からの聴き取りを基に作成したとは思われない。また,原告は,Kが聴き取りをしたという日から数日後に,L及び取調担当警察官に対しては,「確認する旨を伝えて事務所を後にした。潜っているところでエンジンがかかった。」旨告げており,これらの話とKの証言は全く異なることからも信用し難い。原告が,L及び取調担当警察官に対し,生命の危険な状態で事実に反し上記のような作り話をしたとも考えにくい。 イ被告らの主張(ア) 平成9年12月4日午後4時30分ころ,H運転手が運転する本件車両が,被告会社の本件工場に入場し,停止線手前のキャノピーに停車した。 (イ) H運転手は,フロントマンの被告Eに対し,「ブレーキの利きが甘くなってきたからブレーキ調整をしてほしい」旨依頼した。そこで,被告Eは,通常どおり,ブレーキ調整を指示する作業指示書を作成し,ディスパッチャの原告に交付した。 本件工場に勤務するフロントマンは,被告E一人であったため,忙しい場合には,口頭での作業指示も行われていたが,飽くまでも作業指示書を発行した上で,整備作業を実施するのが原則であり,本件工場の作業指示書の発行率は90パーセント以上であった。実際,本件車両の作業指示書は,作業指示と同時に,被告Eから原告に交付され,さらに 指示書を発行した上で,整備作業を実施するのが原則であり,本件工場の作業指示書の発行率は90パーセント以上であった。実際,本件車両の作業指示書は,作業指示と同時に,被告Eから原告に交付され,さらにF整備士に渡っている。 なお,上記作業指示書の内容は,ブレーキ調整のみであり,被告Eの原告に対する指示内容も,ブレーキ調整に尽きる。すなわち,被告Eは,本件車両の整備に関し,ブレーキ調整以外の指示を一切出していない。 (ウ) ブレーキ調整は,原告の指示によりF整備士が行った。そして,同ブレーキ調整は,ストール内ではなく,本件車両の停止地点であるキャノピーで,エンジンを切ることなく行われた。 なお,本件事故発生直前において,本件車両のエンジンがかかっていたか否かにつき,原告はエンジンがかかっていなかった旨述べる。しかし,F整備士は,エンジンを切っていない旨述べ,H運転手も,車両引取りのため本件車両に乗り込んだ際,エンジンがかかっていた旨述べている。また,本件事故発生直後に原告から直接聴き取り調査をしたKも,原告がエンジンがかかっていたと言っていた旨述べている。エンジンがかかっていなかった旨述べているのは,原告しかなく,原告の供述は信用できない。 (エ) 被告Eは,上記作業指示書を発行してから約15分後の午後4時50分ころに,本件車両とは別の車両について納車の指示をするために,原告を事務所内に呼び,原告は事務所内に入った。 (オ) それから間もなくして,F整備士が,事務所にやってきて,「ブレーキのライニングがないですよ。」と被告Eに対し報告した。 (カ) 同報告を受けて,被告Eは,事務所内でH運転手に対し,ブレーキのライニングがないから張り替えなければならない旨告げると,H運転手は,「3か月くらい前にブレーキのライニングを張り替えたばかりだよ。そんな馬 告を受けて,被告Eは,事務所内でH運転手に対し,ブレーキのライニングがないから張り替えなければならない旨告げると,H運転手は,「3か月くらい前にブレーキのライニングを張り替えたばかりだよ。そんな馬鹿な。」と答えた。 そこで,被告Eは,「そんなに早く減るわけがないから,車両整備カルテを調べるのでお待ちください。」とH運転手に言い,カルテを調べることにした。 (キ) 被告Eは,H運転手との上記やり取りの後,その場にいた原告に対し,「(本件車両とは別の車両についての)納車の段取りを頼むよ。」と声をかけた。 原告は,同指示を受け,F整備士とともに事務所から出て行った。 このとき,被告Eが原告に対し,本件車両の整備に関し指示を出したことは一切なく,また,原告が被告Eに対し,本件車両を見てくると伝えたことも一切なかった。 原告は,本件事故後,被告Eの「なぜ潜っていたのか。」という質問に対し,「Fが以前にもブレーキライニングの摩耗について判断ミスをしたことがあったので,ひょっとしてまたかと思ってとっさに潜ったんだ。」と答えている。このことは,原告が,独断で本件車両に潜り込んだことを如実に現している。 なお,原告は,本件事故発生直前に被告Eに「見てくるわ。」と言って本件車両を再点検する旨伝えた旨供述するが,被告Eはもとより,F整備士もH運転手もかかるやり取りを聞いていない旨述べており,原告の供述に沿うものは,原告から聞いたとする伝聞供述と原告の言い分をそのまま記載した交通事故発生届しかなく,原告の供述は全く信用できない。被告会社の本件事故調査の結果からは,Kが行った原告からの事情聴取も含め,原告が「見てくるわ。」と言った事実は認められなかったのである。上記交通事故発生届は,労災給付の手続を担当していたMが,労働基準監督署に対し,被告会社の調査結果と原告の言 原告からの事情聴取も含め,原告が「見てくるわ。」と言った事実は認められなかったのである。上記交通事故発生届は,労災給付の手続を担当していたMが,労働基準監督署に対し,被告会社の調査結果と原告の言い分が食い違うために書類がなかなか揃わないことを相談したところ,労災給付の手続を最優先するために被災者の言い分どおり記載するようにとの助言を受けて,平成10年5月ころ,やむなく原告の言い分どおりに記載した書類なのである。原告の言い分どおりに記載した上記交通事故発生届の作成が,本件事故発生から約半年後となったのは,本件事故態様について,とりわけ原告が再点検する旨をフロントに伝えたかどうか,本件車両のエンジンがかかっていたかどうかについて,被告会社の調査結果と原告の主張が一致せず,労災給付に必要な書類の作成が難航したからである。また,Mが,原告作成の交通事故発生届に社印を押すに際し,再度労働基準監督署に相談したのは,被告会社が労働基準監督署の助言に従い原告の言い分どおりに上記交通事故発生届を作成したにもかかわらず,原告が署名押印を拒否し,逆に原告自ら作成した交通事故発生届への社印の押印を求めてきたという経緯を説明した上で,被告会社の事故調査結果とは全く違う内容の原告作成の交通事故発生届に社印を押していいのか,最終確認をするためであった。 (ク) 被告Eが車両カルテを調べた結果,実際には平成9年10月18日にブレーキライニングが交換されていたことが確認できた。被告Eは,ブレーキライニングは最低1年半はもち,交換から1か月半でなくなることはあり得ないことから,F整備士の報告が間違いであると判断した。 そこで,被告Eは,H運転手に対し,事務所内で引き続き,約10分間ほどブレーキライニングについて説明し,最終的に「2か月前に交換されているので大丈夫です ,F整備士の報告が間違いであると判断した。 そこで,被告Eは,H運転手に対し,事務所内で引き続き,約10分間ほどブレーキライニングについて説明し,最終的に「2か月前に交換されているので大丈夫です。取りあえず調整しましたから様子をみてください。」と,本件車両の引取りを許可した。 原告は,この点につき,原告が作業終了確認をフロントに出していないにもかかわらず,被告Eが,H運転手に対し,車両移動を指示したのは,フロントの職務違反に当たる旨主張する。しかし,被告Eが,原告に対し出した作業指示は,作業指示書記載のブレーキ調整のみであり,ブレーキライニングの張り替えは,ブレーキ調整とは全く別個の作業であって,新たな作業指示を要する整備である。そもそも,新たな作業を指示するかどうかは,顧客の了解を得て,フロントが判断する事項である。特に,ブレーキライニングの張り替えは,時間も費用もかかることから,顧客の了解を得なければならない整備作業であり,これを実施するか否かは,顧客と直接対応するフロントの判断事項である。そして,被告Eは,原告に対し,作業指示書によるブレーキライニングの張り替えを指示していないのはもちろんのこと,口頭でもブレーキライニングの張り替えの指示はしていない。被告Eの「ライニングがなきゃ替えなきゃいかんな。」との発言は,独り言に近いものであり,原告に対するブレーキライニング張り替えの指示ではない。したがって,新たにブレーキライニング張り替えの指示が出ていない以上,本件車両の整備は,F整備士によるブレーキ調整の終了報告によって完了しているのである。また,本件車両の整備を担当したF整備士が,原告から本件車両とは別の車両について納車に行くよう新たな指示を受けていることからしても,本件車両の整備が終了していたことは明らかである。そして,F整 る。また,本件車両の整備を担当したF整備士が,原告から本件車両とは別の車両について納車に行くよう新たな指示を受けていることからしても,本件車両の整備が終了していたことは明らかである。そして,F整備士が,原告と被告Eの双方が居合わせた事務所においてブレーキ調整の終了報告をし,原告と被告Eがこの報告を受けているのであるから,原告の被告Eに対する終了報告があったと考えてもよいというべきである。被告Eは,原告及びF整備士から本件車両の整備終了報告があったからこそ,原告に対し,本件車両とは別の車両の納車を指示し,H運転手に対し,本件車両の引取りを許可して,車両移動を指示したものであって,被告E自ら作業終了の判断をしたものではなく,何らフロント係としての職務分担違反に当たらない。 また,原告は,ブレーキライニングの有無に疑義が生じた以上,被告Eが,ブレーキライニングの再確認を指示しなければならない旨主張する。しかし,本件車両のブレーキの不具合は,利きが甘いといった程度のものであり,ブレーキが全く利かないというものではなかった。また,車両カルテから1か月半前にブレーキライニングが交換されたことが確認されたが,ブレーキライニングは,最低1年から1年半は摩耗することはなく,張り替えの必要はないのであって,被告EがH運転手に問診した結果,ブレーキライニングが短期間に摩耗する例外的場合には当たらなかったことから,これらを総合的に判断して,被告Eは,「ライニングがない」というF整備士の報告は本人の判断ミスによるものと判断したのである。したがって,被告Eにおいて,本件車両のブレーキ調整を行った以上,しばらく様子をみてもらうこととし,ブレーキライニング張り替えの指示をしないと判断することは,合理的であり,何ら問題がなく,また,被告Eが,本件車両につき,ブレー 件車両のブレーキ調整を行った以上,しばらく様子をみてもらうこととし,ブレーキライニング張り替えの指示をしないと判断することは,合理的であり,何ら問題がなく,また,被告Eが,本件車両につき,ブレーキライニングの再確認を指示する必要もなかったのであって,再点検の指示をしなかったことにつき,責められるべき点はない。 フロントマンは,顧客の要請に十分配慮した対応をしなければならない。H運転手は,急ぎ本件車両を引き取ることを望んでいた。そこで,被告Eは,H運転手のかかる要請と再点検の必要性とを比較考量し,F整備士の判断ミスであることが明らかである以上,顧客の要請を無視してまで,再点検を実施する必要はないと判断し,H運転手に本件車両の引取りを許可したのである。実際,本件車両のブレーキライニングは摩耗していなかったのであり,結果的に被告Eの判断は正しかったのである。 (ケ) 一方,原告は,被告Eから本件車両とは別の車両についての納車の指示を受け,事務所を出た後,被告EがH運転手に対し前記説明をしている最中に,原告独自の判断で本件車両の下に潜り込んでいた。そして,午後5時ころから午後5時5分ころまでの間に本件事故に遭ったものである。 (コ) 以上のとおり,被告Eは,原告から,本件車両のブレーキライニングの再点検をすることについて,何ら事前報告を受けていない。また,被告Eは,F整備士の前記判断ミスが過去にもあったことについて把握していなかった。結局,被告Eは,原告が本件車両下に潜り込んでいることについて全く知らなかったし,知り得なかったのである。 前記のとおり,被告Eは,原告に対し,ブレーキライニングの張り替えの指示を出すかどうか決まっていない段階で,本件車両とは別の車両の納車を指示し,かかる指示を受けた原告は事務所を後にしている。かかる経緯からすれ り,被告Eは,原告に対し,ブレーキライニングの張り替えの指示を出すかどうか決まっていない段階で,本件車両とは別の車両の納車を指示し,かかる指示を受けた原告は事務所を後にしている。かかる経緯からすれば,被告Eが,「原告は,自分の指示に従い,事務所を出て,本件車両とは別の車両の納車の段取りを行っている」と認識し,本件車両の引取りを許可することは,至極当然のことである。ところが,ディスパッチャである原告は,フロントの作業指示を無視し,独断で本件車両の下に潜り込んで再点検を行ったために,本件事故に遭ったのである。被告Eが,原告から再点検する旨を聞いていたなら格別,そのような事情がない本件においては,本件車両の引取りを許可するか否かを判断するにつき,原告の作業指示違反行為の可能性まで考慮に入れる必要は全くない。仮に,車両の引取りを許可するに際し,あらゆる可能性を排除するために,フロントがその都度実車確認をしなければならないとすれば,被告Eに過重な負担を強いるだけではなく,効率的な会社経営に反することになり,また,顧客の要請に応えることもできない。したがって,被告らは,原告のかかる作業指示違反行為についてまで,責任を負わない。 (サ) 被告会社においては,整備作業は安全確保のためすべてストール内で行うことになっている。 本件工場において,例外的に,ストールが満車で車両を入れる余地がない場合に,やむを得ずストールの近くで作業を行うことはある。しかし,ストール外作業は,全作業の2割程度にすぎず,日常的にストール外作業が行われていたわけではない。また,ストール外で行う作業は,簡単な作業に限られ,車輪止めの実施も強化,徹底されていた。さらに,ストール外作業といえども,作業はストール付近で行うこととされていた。すなわち,ストール外作業を行う場合にも,安全確 外で行う作業は,簡単な作業に限られ,車輪止めの実施も強化,徹底されていた。さらに,ストール外作業といえども,作業はストール付近で行うこととされていた。すなわち,ストール外作業を行う場合にも,安全確保は十分施されていたのである。 本件事故が発生したキャノピーという場所は,顧客が車両を停車させ,受付及び引取りを行う場所であり,誰が車両を動かしてもおかしくない場所である。キャノピーでブレーキ調整など車両の下に潜り込むことを要する整備作業を行うことが許されないのは当然のことである。加えて,整備作業を行うに際し,車両のエンジンを切ることは,整備作業の基本であり,至極当たり前のことである。被告会社において,キャノピー内での整備作業,エンジンをかけたままでの整備作業というものは,行われていなかった。 被告会社において,ストール内は,関係者以外立入禁止とされている。したがって,顧客である車両運転手がストール内にある車両に乗り込み,これを発進させることはできない。 被告会社の定めるとおり,本件車両がストール内に移動されていれば,H運転手が本件車両を発進させるという事態は起こり得なかったのであり,本件事故は発生しなかったものである。本件事故が発生したのは,原告が,H運転手が立ち入ることのできる場所,すなわちH運転手が車両を停止した場所において,整備作業をしたからにほかならない。 また,車両をストール内に入れる場合は,車両前部からストール内に入り,奥まで移動させる。本件工場のストールは,奥行き18メートルで,ストール奥から2メートルの部分には,リフトアップの機械や荷物が置いてある。そのため,ストール内に入った車両は,障害物により,前進することは不可能である。したがって,たとえ,H運転手がストール内に立ち入り,本件車両に乗り込んだとしても,荷物や機械に阻害さ 物が置いてある。そのため,ストール内に入った車両は,障害物により,前進することは不可能である。したがって,たとえ,H運転手がストール内に立ち入り,本件車両に乗り込んだとしても,荷物や機械に阻害され,本件車両を前進させることはできず,本件事故は発生しない。 (シ) また,原告は,車輪止めをしないまま本件車両に潜り込んだ。被告会社においては,ストール内外を問わず,車両下に潜り込む際には,車輪止めをすることになっていた。 被告会社で使用している車輪止めは,長さ約25センチメートル,幅約12センチメートル,高さ約15センチメートルの堅固なものである。車輪止めを車両に施した場合,アクセルを踏んでも車両はほとんど動かない。また,車両が動いたとしても,車輪止めを多少引きずる程度であり,運転手もタイヤに抵抗を感じるため,車輪止めが施されていることに気づき,車両を停止させるのが普通である。仮に,運転手が車輪止めを乗り越えようとしてアクセルを踏み込んだとしても,通常,車両は車輪止めの高さ故にエンストを起こし,停止する。 本件車両に車輪止めが施してあれば,H運転手は,本件車両のエンジンをかけ,アクセルを踏んだ際に,車輪止めに気づくかエンストするかのいずれかによって,車両を停車させたはずである。したがって,本件車両に被告会社の定めどおり車輪止めが施してありさえすれば,本件事故が発生することはなかったのである。 (ス) 被告会社における職務分担からすれば,ディスパッチャは,工場長に次ぐ現場の責任者であり,工場長がいないときには第一次的に責任を負う立場にあり,メカニックを統括し,前記安全確保を怠ったメカニックに対し,注意する立場にある。 本件工場のディスパッチャであった原告には,十二,三名のメカニックが部下としており,メカニックが安全に作業するよう指導監督する立場 統括し,前記安全確保を怠ったメカニックに対し,注意する立場にある。 本件工場のディスパッチャであった原告には,十二,三名のメカニックが部下としており,メカニックが安全に作業するよう指導監督する立場にあり,実際,原告は,毎朝の朝礼において,部下であるメカニックに対し,安全確保について思うところを発言,指導し,また,被告会社において定められていた車輪止めの実施等に違反するメカニックに対しては,自ら違反を注意,指導していた。 本件事故発生当時は,本件工場の工場長が不在であったため,同工場内の安全確保に関する責任は,正に,ディスパッチャである原告が第一次的に負っていた。なお,原告は,工場長が本件事故当時本件工場にいたと供述しているが,J工場長本人が,本件事故当時本件工場内にいなかった旨証言しており,工場長が不在であったことについては,被告会社にとって全くの第三者であるH運転手も同様の証言をしており,原告のほかにJ工場長が本件事故当時本件工場内にいたと述べる者はなく,原告の供述は信用できない。 したがって,作業終了の確認を行い,整備現場の安全を確保する義務は,整備現場の責任者たる地位にある原告が負っていたものであり,ストール内への移動や,ストール外作業に際し車輪止めを施す等,工場内の安全を確保する最終責任は,原告が負っていたものである。なお,被告会社における職務分担については,人事部が,口頭で各従業員に対し,職務内容を告知し,責任の所在について周知徹底させていた。 本来であれば,前記ブレーキ調整もストール内で行うべきものであったところ,原告は,後記「サービス工場実態調査表」でストール外で作業しない旨定められているにもかかわらず,これに反し,本件車両をストール内に移動させるという責任を全く果たさなかった。 また,原告は,後記「サービス工場実態調査表 ビス工場実態調査表」でストール外で作業しない旨定められているにもかかわらず,これに反し,本件車両をストール内に移動させるという責任を全く果たさなかった。 また,原告は,後記「サービス工場実態調査表」に車輪止めを正しく使用する旨定められているにもかかわらず,これに反したために,本件事故に遭ったのであり,前記のとおり,車輪止めの義務を尽くしてさえいれば,本件事故は防げたものである。 (セ) 被告会社は,整備工場内及び従業員の安全確保のために,朝礼等における常日頃の口頭指導はもちろんのこと,年に一度整備工場の実態調査を行っていた。同調査は,被告会社の親会社である訴外いすゞ自動車株式会社が第三者的な立場から,客観的に各整備工場(サービス工場)の実態を詳細に調査するものであり,各期ごとに「サービス工場実態調査表」により調査項目が定められている。同調査の実施は,前日若しくは当日に通知されるため,調査のために前もって準備することは不可能であり,同調査は,形式的な調査ではなく,実質的な調査であって,かかる調査の存在により,被告会社では,平素より,「サービス工場実態調査表」の記載事項,すなわち車輪止めの実施等を徹底し,従業員らの安全意識を高めるとともに,より安全な整備工場に改善する努力をし,工場内の安全確保を図っていたのである。 被告会社では,入社時研修に始まり,その後も勤務年数に応じて研修を実施し,従業員に対する徹底した安全教育を継続的に行っていた。また,研修の中で,メカニックやディスパッチャが工場内でどのような立場にあるかについても指導されており,原告もかかる研修を受けていた。 本件工場では,工場長,ディスパッチャ,メカニックといった現場関係者が参加する朝礼が毎朝実施され,工場内の安全確保について,従業員間の意識の徹底が図られていた。 被告会社が安 かる研修を受けていた。 本件工場では,工場長,ディスパッチャ,メカニックといった現場関係者が参加する朝礼が毎朝実施され,工場内の安全確保について,従業員間の意識の徹底が図られていた。 被告会社が安全確保のために遵守するよう定めた行為に違反する行為が行われた場合には,その都度,工場長やディスパッチャから注意,指導がなされ,日々の業務においても安全確保が徹底されていた。 (ソ) 以上からすれば,被告らには,本件事故について何ら過失はなく損害賠償責任を負うものではない。 すなわち,被告会社は,整備工場内の安全確保,事故発生防止について,十分な措置を講じていたものであり,従業員に対する安全配慮義務を尽くしていたものであって,本件事故発生につき,過失はない。 結局,原告は,被告会社が徹底していた事故発生防止措置を遵守する責任者たる地位にあったにもかかわらず,自ら安全管理に関する遵守事項に違反し,自ら又はメカニックに指示して工場内に移動させなければならない本件車両をキャノピーに放置したまま,F整備士に本件車両のブレーキ調整作業を指示し,被告会社の事故発生防止のための遵守事項に違反し,エンジンを切ることなく,車輪止めを施すことなく,ブレーキ調整作業を実施したF整備士に対し,責任者として何ら注意しなかったばかりか,自らも,これに違反し,エンジンをかけたまま,車輪止めも施さずに,しかも,被告Eに何の連絡もせず,本件車両の下に潜り込み,本件事故に遭ったものである。したがって,原告が被告会社の定める職務義務に違反したために,本件事故が起きている以上,本件事故について責任を負うのは原告自身であり,被告会社は責任を負わない。 また,本件事故発生を回避するために尽くすべき義務は,ディスパッチャである原告が負っているのであり,フロントマンである被告Eが負っている いて責任を負うのは原告自身であり,被告会社は責任を負わない。 また,本件事故発生を回避するために尽くすべき義務は,ディスパッチャである原告が負っているのであり,フロントマンである被告Eが負っているものではない。 すなわち,被告Eについて,そもそも義務違反ということは観念できない。したがって,被告Eも,本件事故の発生について何ら責任を負わない。 (2) 原告の損害額についてア原告の主張原告は,本件事故により,以下のとおりの損害を被った。 (ア) 入院雑費 27万6000円1500円×184日(イ) 通院交通費 126万0360円1万1670円(往復の交通費)×108回(ウ) 給料差額分 654万9323円被告会社は,本件事故後も原告が退職するまで原告に対し給料を支払っていたが,給料の支給額は通常の昇給を前提にしていない。 また,賞与については,休業を理由に一部減額されている。 しかし,被告らの過失による休業であることを考えれば,休業を理由に賞与の一部を控除することはできない。 通常の昇給を前提とすると,平成10年1月から平成13年2月までに本来原告が受けるべき給料は,別紙計算書のとおり,2474万8126円である。 上記金額から,平成10年1月から平成13年2月までに被告会社から原告に支払われた金額1819万8803円を差し引くと654万9323円となる。 (エ) 入通院慰謝料 400万円入院約6か月,通院約9か月であるが,本件事故直後は生死も危ぶまれたほどの重傷であり,事故によるストレスにより,脳血栓,脳梗塞の可能性もあって,集中治療室に入っていたものであり,生命の危険があることから,当初は骨折した左足の手術も行えなかったものであって,その精神的,肉体的苦痛は極めて甚大であって,少な ,脳血栓,脳梗塞の可能性もあって,集中治療室に入っていたものであり,生命の危険があることから,当初は骨折した左足の手術も行えなかったものであって,その精神的,肉体的苦痛は極めて甚大であって,少なくとも400万円をもって慰謝することが相当である。 (オ) 後遺症逸失利益 5447万3349円原告の労働能力喪失率は,前記のとおり,併合第3級の後遺症であることから,100パーセントであり,原告の後記退職後に生ずる逸失利益は,以下の(a),(b),(c)の合計金額となる。 a 55歳まで822万3676円(昇給を前提とした平成12年給与)×(3.5459-1. 8594)≒1386万9229円b 56歳から60歳657万8940円(56歳以降の給与=上記平成12年給与に8割を乗じた額)×(7.1078-3.5459)≒2343万3526円c 61歳から67歳まで460万3500円(平成10年賃金センサスによる男子労働者学歴計平均)×(10.8377-7.1078)≒1717万0594円(カ) 後遺障害慰謝料 2100万円原告は,前記のとおり,併合第3級に該当する後遺障害を負ったものであり,右足を失い,左足も可動域が狭まり不自由になったことにかなりの精神的衝撃を受け,3年近く虚脱感が原告を支配していた。このことは,後遺障害慰謝料として考慮されるべきである。 (キ) 退職金差額 162万6748円原告は,平成13年2月28日,被告会社を退職した。 被告会社は,平成13年3月28日,原告に対し,退職金として895万4500円を支払った。 原告は,本来定年まで就労するつもりであったところ,本件事故により退職を余儀なくされたものである。 原告の定年退職時に本来支払われるべき金額は,1113万4543円(36万1300円(年齢給9万 。 原告は,本来定年まで就労するつもりであったところ,本件事故により退職を余儀なくされたものである。 原告の定年退職時に本来支払われるべき金額は,1113万4543円(36万1300円(年齢給9万1500円+職能給26万9800円)×30.818(定年退職))であり,これと上記895万4500円との差額に上記の現実の退職時から定年退職時までの期間6年に対応したライプニッツ係数である0.7462を乗じた162万6748円((1113万4543円-895万4500円)×0.7462)が退職金差額としての逸失利益である。 (ク) 既払金 2338万6800円自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という。)からの支払分である。 なお,治療費については,自賠責保険及び労働者災害補償保険(以下「労災保険」という。)により支払われているが,治療費を損害として計上しない代わりに,既払金にも自賠責保険及び労災保険による治療費支払を計上していない。 また,原告は,給料差額分のみ損害として計上しており,既に支払われた給与についても当然既払金には計上していない。 (ケ) 弁護士費用 500万円(コ) 合計額 7079万8980円(ア)ないし(キ)及び(ケ)の損害額の合計から(ク)の既払金を差し引くと7079万8980円となる。 (サ) よって,原告は,被告らに対し,連帯して,7079万8980円及び給料差額と退職金差額を除いた他の損害合計である内金6262万2909円に対する本件事故の日である平成9年12月4日から,平成10年分の給料差額である内金196万2576円に対する当該給与年度の年末の翌日である平成11年1月1日から,平成11年分の給料差額である内金185万6876円に対する当該給与年度の年末の翌日である平成12年 料差額である内金196万2576円に対する当該給与年度の年末の翌日である平成11年1月1日から,平成11年分の給料差額である内金185万6876円に対する当該給与年度の年末の翌日である平成12年1月1日から,平成12年分の給料差額である内金254万7973円に対する当該給与年度の年末の翌日である平成13年1月1日から,平成13年分の給料差額18万1898円と退職金差額162万6748円の合計である内金180万8646円に対する退職の翌日である平成13年3月1日から,それぞれ支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (シ) なお,被告らの平成14年5月7日付け第9準備書面における損害論についての主張(後記イ被告らの主張の(カ))及び乙29の提出は,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきである。 イ被告らの主張(ア) 原告主張の(ア)入院雑費,(イ)通院交通費,(オ)後遺症逸失利益,(カ)後遺障害慰謝料,(ケ)弁護士費用については,損害の発生は認め,その額については争う。 (イ)a 原告主張の(ウ)給料差額分については,被告会社が,本件事故後も原告が退職するまで原告に対し給料を支払っていたこと,賞与については,休業を理由に一部減額されていたこと,平成10年1月から平成13年2月までに被告会社から原告に支払われた金額が1819万8803円であることは認め,その余は否認する。 b 被告会社における賞与の決定方法は以下のとおりである。 被告会社において賞与は,夏季,冬季の計2回支給され,その都度査定等を行い支給額を決定している。賞与支給対象期間は,夏季が前年10月1日から当年3月31日まで,冬季が当年4月1日から9月30日までとなっている。 まず,社員は労働組合員と非組合員に区別され,非組合員は更に役職によるクラ している。賞与支給対象期間は,夏季が前年10月1日から当年3月31日まで,冬季が当年4月1日から9月30日までとなっている。 まず,社員は労働組合員と非組合員に区別され,非組合員は更に役職によるクラスに分けられる。労働組合の協定に拘束されるのは組合員のみで,非組合員において協定は参考とされるにすぎない。被告会社においては,主査以上のクラス,すなわち主査,グループリーダー,部長,支店長が非組合員に当たる。 賞与支給額は,査定分(①)及び一律分(②)の合計(以下「理論上の賞与金額」という。)並びに欠勤控除(③)により決定される(①+②-③)。 ①査定分の決定方法は以下のとおりである。すなわち,各クラスの社員は,査定によって更にAからDの4ランクに振り分けられる。査定は,被告会社役員全員から構成される査定会議で行われ,各社員の自己申告等を基に所属上司が出した評価(AからD)を参考に,最終的なランクが決定される。賞与支給対象全期間欠勤のため,所属上司による評価が不可能な社員は,査定会議で,労働力の提供なしという理由から主としてDランクに査定される。そして,ランク別に決定されている金額,若しくは各ランクの査定率(月)により算出される金額が査定分となる。 ②一律分の決定方法は以下のとおりである。すなわち,一律分は,クラス別に,総資金から上記査定分合計を引いた金額をそのクラスの人数で除した金額となる。総資金は,各クラスの基準内賃金合計に支給率を乗じた金額である。基準内賃金とは,基本給,役付手当,資格手当及び家族手当を合わせたものであり,支給率は,期毎に変動する。 ③欠勤控除の方法は以下のとおりである。すなわち,欠勤控除金額は,賞与支給対象期間の日数に対する欠勤日数の割合により決定される。賞与支給対象期間は,前述のとおりであるが,欠勤控除金額の算定に当たっ ③欠勤控除の方法は以下のとおりである。すなわち,欠勤控除金額は,賞与支給対象期間の日数に対する欠勤日数の割合により決定される。賞与支給対象期間は,前述のとおりであるが,欠勤控除金額の算定に当たって基準となる賞与支給対象期間の日数は,私傷病による場合が被告会社の稼働日数となり,業務上の傷病による場合が暦日となる。上記取扱いの差異は,例えば,賞与支給対象全期間欠勤した場合に,全額控除されるか否かという点に現れる。 c 原告に支給された賞与の具体的内容は以下のとおりである。 本件事故発生は平成9年12月4日であり,これは平成10年夏季賞与の支給対象期間に含まれる。原告は,平成9年当時から主査クラスに属していた。 原告の平成9年冬季(本件事故発生直前)の賞与は,査定評価がAで,査定分33万円に一律分75万2000円を加えた理論上の賞与金額108万2000円であり,欠勤控除は0円であるので,支給額は108万2000円であった。 原告の平成10年夏季(本件事故発生直後)の賞与は,当期が本件事故発生直後であり,原告が入院治療中であったことから,査定は行われず,一律分のみから欠勤控除した。欠勤日数の算定に当たって,平成10年度持ち越し分を含む有給休暇残日数をすべて消化した。その結果,査定評価はなく,査定分は0円となり,一律分は66万5000円であるので理論上の賞与金額は66万5000円となり,これから欠勤控除18万3000円を引くと,支給額は48万2000円であった。 なお,欠勤控除は,賞与支給対象期間(暦日)が182日であり,欠勤日数が実際の欠勤日数81日から有給休暇残日数31日を引いた50日であるので,66万5000円×50日÷182日≒18万3000円と算定とされた。 原告の平成10年冬季以降の賞与は,査定評価が労働力の提供が一切ないとの理由でDであ 給休暇残日数31日を引いた50日であるので,66万5000円×50日÷182日≒18万3000円と算定とされた。 原告の平成10年冬季以降の賞与は,査定評価が労働力の提供が一切ないとの理由でDであり,欠勤控除の算定に当たっては,賞与支給対象期間を暦日で計算している。なお,平成10年冬季のみ,査定分の算定を率(月数)で行った。その結果,原告の平成10年冬季賞与は15万円,平成11年夏季賞与は22万6000円,平成11年冬季賞与は22万7000円であり,平成12年以降も同様に支払った。 d 被告会社における昇給方法は以下のとおりである。 被告会社において,昇給は毎年4月1日に行われる。 昇給金額は,定期昇給と調整給の昇給を合わせたものとなる。定期昇給は,年齢給と職能給それぞれの昇給から構成される。 年齢給は,年齢給表に従い昇給が行われる。同一年齢であれば昇給額は同じである。 職能給は,各社員の職能級及び査定評価に従い決定される。まず,被告会社社員は,13段階の職能級に分けられる。そして,賞与額の決定方法と同様の理由から,社員を組合員と非組合員とに分ける。被告会社において,非組合員は8級(課長心得)以上である。次に,各職能級ごとに,AからCの3段階に査定評価が行われる。昇給における査定評価は,全役員出席の査定会議で決定される。評価に当たっては,前年夏季及び冬季の賞与の査定評価並びに前年度(前年4月1日から当年3月31日まで)の実績等を考慮する。そして,職能給表に従い,職能級ごとに,A評価は5号俸,B評価は4号俸,C評価は3号俸の昇給が行われる。 調整給については,各社員の昇給前基準内賃金に,各職能級ごとに決定される率(調整給昇給率)を乗じた金額分の昇給が行われる。調整給昇給率とは,各職能級ごとに,昇給総額から年齢給昇給額合計及び職能給昇給額合計を ついては,各社員の昇給前基準内賃金に,各職能級ごとに決定される率(調整給昇給率)を乗じた金額分の昇給が行われる。調整給昇給率とは,各職能級ごとに,昇給総額から年齢給昇給額合計及び職能給昇給額合計を引いた金額(調整給昇給合計額)の昇給前基準内賃金合計額に対する割合である。各職能級ごとの昇給総額は,昇給前基準内賃金合計額に被告会社が決める昇給率を乗じた金額である。 以上により,各社員に支給される昇給後の基準内賃金は,昇給前基準内賃金に,年齢給昇給,職能給昇給,調整給昇給それぞれの額を加えた金額となる。 e 原告の昇給は,以下のとおりである。 本件事故直後の昇給は,平成10年4月1日に行われた。 原告の昇給前(平成9年)基準内賃金は,41万7700円であった。 年齢給については,原告は,平成10年4月1日当時49歳であったから,1000円の昇給であった。 職能給については,主査クラスの職能級は8級から10級に該当し,原告は職能級10級であった。平成9年夏季及び冬季賞与における原告の査定評価は,いずれもAであったが,平成9年12月4日発生の本件事故の結果,平成10年度の労働力提供の見込みがなかったため,査定評価はCとされた。したがって,原告の職能給は,3号俸の昇給となった。すなわち,原告の職能給は,56号(19万8700円)から,59号(20万2900円)に昇給し,昇給額は4200円である。 調整給については,平成10年度の職能級10級における調整給昇給率は1.102パーセントであるから,原告の調整給昇給額は,原告の昇給前基準内賃金(41万7700円)×0.01102≒4600円となった。 以上から,原告の昇給額は,1000円+4200円+4600円=9800円となり,昇給後の基準内賃金は,41万7700円+9800円=42万7500円となった。 原 01102≒4600円となった。 以上から,原告の昇給額は,1000円+4200円+4600円=9800円となり,昇給後の基準内賃金は,41万7700円+9800円=42万7500円となった。 原告の昇給については,平成11年度以降も同様の方法により行われており,被告会社は,原告に対し,上記のとおり通常の昇給を行った基準内賃金を100パーセント支払っているのであって,給料の減額はしておらず,給料の減額をいう原告の主張は当たらない。 (ウ) 原告主張の(エ)入通院慰謝料については,入院約6か月,通院約9か月であることは認め,その余は不知ないし否認する。 (エ) 原告主張の(キ)退職金差額については,原告が,平成13年2月28日,被告会社を退職し,被告会社が,平成13年3月28日,原告に対し,退職金として895万4500円を支払ったことは認め,その余は否認する。 (オ) 原告主張の(ク)既払金については認める。 (カ) 損害論についての被告らの主張は,以下のとおりである。 a 治療費,休業損害及び逸失利益も,双方に過失があれば,当然に過失相殺の対象となるべきものであって,本件事故に起因する損害賠償を請求するに当たり,損害から除外すべきものではない。 しかし,原告は,本件訴訟において,①自賠責保険及び労災保険により支払われた治療費,②被告会社が原告に対し,給料,賞与名目で支払った金額を損害として計上していない。特に,原告は,本件事故後退職まで,被告会社に対し,労働力を一切提供していないため,本来であれば給料及び賞与の支払を受けることはできないことから,被告会社が原告に対し,給料,賞与名目で支払った金額は,本件事故に起因する損害に対する填補と考えるべきであり,かかる金額を損害額から除外する理由はない。 仮に本件事故につき過失相殺を行う必要が から,被告会社が原告に対し,給料,賞与名目で支払った金額は,本件事故に起因する損害に対する填補と考えるべきであり,かかる金額を損害額から除外する理由はない。 仮に本件事故につき過失相殺を行う必要があるならば,損害額全体につき,過失相殺を行うべきである。 b 以下,本件事故に起因する損害について,個別に論じる。 (a) 治療費 956万7518円愛知県立I病院における平成9年12月4日から平成11年3月15日(症状固定日)までの治療費額(b) 通院交通費 93万3600円原告は,往復の交通費1万1670円に108を乗じているが,平成10年6月6日から平成11年3月15日(症状固定日)までの実通院日数は,80日であり,計算式は,1万1670円×80日=93万3600円となる。 (c) 入院雑費 23万9200円入院雑費は,1日当たり1300円が相当であり,計算式は,1300円×184日=23万9200円となる。 (d) 入通院慰謝料 300万円入通院慰謝料としては,上記金額が相当である。 (e) 休業損害 961万7303円休業損害の算定期間は,本件事故の翌日である平成9年12月5日から,症状固定日である平成11年3月15日までの466日間である。 この点,原告は,退職時を基準に,原告の主張するところの給料差額発生期間と逸失利益算定期間とに分けているが,妥当でない。症状固定時を基準に,休業損害の問題と後遺障害による逸失利益の問題とに分けるべきである。 上記期間中,原告から被告会社に対する労働力の提供は,一切ない。 本件事故前すなわち平成9年における原告の年間給与所得は,753万2866円であり,休業損害額の計算式は,753万2866円÷365日×466日≒961万7 告会社に対する労働力の提供は,一切ない。 本件事故前すなわち平成9年における原告の年間給与所得は,753万2866円であり,休業損害額の計算式は,753万2866円÷365日×466日≒961万7303円となる。 (f) 後遺症逸失利益 6944万7145円原告の労働能力喪失期間は,症状固定時である51歳から67歳までの16年間であるが,被告会社の定年は,60歳である。 したがって,逸失利益を算定するに当たり,本件事故前すなわち平成9年における原告の年間給与所得を基礎収入とする期間は,51歳から定年である60歳までの9年間とすべきであり,51歳から60歳までの逸失利益の計算式は,753万2866円×100/100×7.1078(9年のライプニッツ係数)≒5354万2105円となる。 定年後である60歳から67歳までの7年間は,平成11年の賃金センサス60歳から64歳までの高卒男子労働者平均賃金を基礎収入として,逸失利益を算定すべきであり,60歳から67歳までの逸失利益の計算式は,426万4200円×100/100×(10.8377(16年のライプニッツ係数)-7.1078)≒1590万5040円となる。 (g) 後遺障害慰謝料 1850万円後遺障害等級併合第3級の慰謝料としては,上記金額が相当である。 (h) 損害合計 1億1130万4766円c 給料差額は,本件事故後症状固定時あるいは治癒時までの期間の休業損害を算定するに当たり,あれば考慮されるべき事項であるところ,原告は,症状固定後退職時までの給料差額も併せて請求しており,妥当でない。 d 被告会社が,原告に対し,本件事故による負傷を理由として退職を促したことは全くない。したがって,原告が被告会社において定年まで就労することは十分可能であった。そうすると,原告が後遺症を原因とし d 被告会社が,原告に対し,本件事故による負傷を理由として退職を促したことは全くない。したがって,原告が被告会社において定年まで就労することは十分可能であった。そうすると,原告が後遺症を原因として被告会社を退職せざるを得なかったとはいえず,原告の退職と本件事故との間には相当因果関係がない。 よって,原告は,被告らに対し,定年退職時に支払われるべき退職金と実際の支払退職金額との差額を,本件事故に起因する損害として請求することはできない。 e また,逸失利益として本件事故前の収入の全額を損害として請求することは,原告が被告会社において原告の就労可能な職場を用意されたにもかかわらず,これに応じず退職していることからすれば,本件事故と相当因果関係がなく,許されない。したがって,上記bの(f)で算定した後遺症逸失利益額は,かかる意味で,相当程度減ぜられるべきである。 f 原告は,自賠責保険金として,2339万円,労災保険金として,956万4318円,被告会社支払給料として,1724万6866円,被告会社支払賞与として,254万9503円の合計5275万0687円の損害の填補を受けているので,損益相殺されるべきである。 (3) 過失相殺についてア原告の主張労基法上,給料については労働者の生活を保護するため,懲戒による減額すら厳格に制限され,また,業績悪化等を理由に一方的に減額することもできないとされており,給料の減額は厳格な要件の下でしか行えないこととなっている。原告は,本件事故後も平成13年2月28日までは被告会社の従業員であったから,上記退職日までの給料は適正に算定された金額が支給されるべきことになる。ところが,被告会社は,被告会社の業務中の労働災害により原告の労働能力を奪っているにもかかわらず,原告の労働能力低下を理由に給料の減額を行っ での給料は適正に算定された金額が支給されるべきことになる。ところが,被告会社は,被告会社の業務中の労働災害により原告の労働能力を奪っているにもかかわらず,原告の労働能力低下を理由に給料の減額を行っており,この点は認められるものではない。そして,もし過失相殺を認めることになれば,給料減額を実質的に行うことが可能となってしまう。したがって,原告が給料差額分(退職金差額分に関しても同様のことが当てはまる。)として請求しているものに関しては,過失相殺の対象とならないというべきである。 イ被告らの主張本件事故により原告の労働能力が低下し欠勤していたために,査定評価が低くなり欠勤控除された結果,賞与の額が減り,原告の年収は全体として本件事故前よりも減少している。しかし,かかる年収の減少は,本件事故による休業損害あるいは逸失利益の問題として捉えるべきであり,本件事故による損害として,当然過失相殺の対象となるものである。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(本件事故の発生原因と被告らの責任)について(1) 前記争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実に証拠(甲1,18ないし20,21の1・2,乙4,5,16ないし24,証人H,同F,同J一彦,同K,同M,原告本人,被告E本人)並びに弁論の全趣旨を併せれば,以下の事実を認めることができる。 ア H運転手は,平成9年12月4日,本件車両のブレーキの利きが悪く,警告ランプが点灯したことから,同日午後4時30分ころ,被告会社の本件工場に赴き,エンジンはかけたままの状態で,工場内の停止線手前のキャノピーに停車した。 H運転手は,事務所に入って,フロントマンの被告Eに対し,「ブレーキの利きが悪いから見てくれ。」と依頼した。 イ被告Eは,本件車両の運転席に入って走行距離を確認し,事務所に戻って,本 ーに停車した。 H運転手は,事務所に入って,フロントマンの被告Eに対し,「ブレーキの利きが悪いから見てくれ。」と依頼した。 イ被告Eは,本件車両の運転席に入って走行距離を確認し,事務所に戻って,本件車両の車両カルテ(乙5)に走行距離及び「ブレーキA」というブレーキ調整を意味する記載をした後,ブレーキ調整を指示する作業指示書(乙4)を作成した。 そして,マイクでディスパッチャの原告を呼び,原告に同作業指示書を交付して,誰かにブレーキ調整をやらせてくれと指示した。 原告は,この作業指示書をF整備士に渡して,ブレーキ調整を指示した。 ウ F整備士は,ストールが満車であり,ストール前の通路に移動させることについてもその時間を省きたかったことから,本件車両の停止地点であるキャノピーで,エンジンを切ることなく,車輪止めもしないまま,ブレーキドラムとブレーキライニングの隙間を狭くする調整及びブレーキライニングの残量確認等のブレーキの点検調整を行った(なお,本件事故発生直前において,本件車両のエンジンがかかっていたか否かにつき,原告はエンジンがかかっていなかった旨供述するが,F整備士は,エンジンを切っていない旨証言し,H運転手も,車両引取りのため本件車両に乗り込んだ際,エンジンがかかっていた旨証言していること,本件事故発生直後に原告から直接聴き取り調査をしたKも,原告がエンジンがかかっていたと言っていた旨証言していることなどに照らし,原告の供述はたやすく採用することができない。)。 F整備士は,その点検の結果,本件車両の前側の左右のブレーキライニングの残量がないと思った。 エ被告Eは,上記作業指示書を発行してからしばらくして,本件車両とは別の車両の納車の段取りについて指示するために,マイクで原告を事務所内に呼び,やってきた原告に対し,納車の段取りを頼む と思った。 エ被告Eは,上記作業指示書を発行してからしばらくして,本件車両とは別の車両の納車の段取りについて指示するために,マイクで原告を事務所内に呼び,やってきた原告に対し,納車の段取りを頼む旨述べた。 それから間もなくして,F整備士が,事務所内にやってきて,「ブレーキライニングの残量がありません。」と被告Eに対し報告した(なお,被告Eは,F整備士からブレーキ調整は終わったとの報告があった旨供述し,一方,原告は,原告とF整備士が二人で一緒に事務所へ行き,被告Eに3ミリくらいしかブレーキライニングがないと報告した旨供述するが,F整備士の証言内容に照らし,上記いずれの供述もたやすく採用することができない。)。 これに対し,被告Eは,「ライニングがなきゃ替えないかんな。」と述べた。 オ F整備士は,原告に「どうすればいいんですか。」と尋ねたところ,原告から,「お前は取りあえず納車に行け。」と,本件車両とは別の車両の納車に行くよう指示されたので,その指示に従って納車に出かけたが,その時点では,ブレーキライニングを取り替えるかどうかについてH運転手の指示待ち中であり,ブレーキ調整のための待機中の状態であって,本件車両の整備はまだ終わっていないと考えていた。 カ被告Eが,H運転手に対し,「ブレーキライニングがないから交換しなければならないが,どうしますか。」と尋ねたところ,H運転手は,「そんな馬鹿な,3か月くらい前にブレーキライニングを交換したばっかりだよ。」と答えた。そこで,被告Eは,「そうですか。取りあえずカルテを出して調べてみます。」と述べ,車両カルテを調べることにした。 キそのころ,原告も事務所から出て行った(原告は,F整備士と一緒に事務所から出たものであり,その際,被告Eに「見てくるわ。」と言って本件車両を再点検する旨伝えた旨供述し カルテを調べることにした。 キそのころ,原告も事務所から出て行った(原告は,F整備士と一緒に事務所から出たものであり,その際,被告Eに「見てくるわ。」と言って本件車両を再点検する旨伝えた旨供述し,一方,被告Eは,原告がF整備士と一緒にフロントから出て行こうとした際に,本件車両とは別の車両の納車の段取りを頼むと念を押した旨供述するが,F整備士は,原告から納車指示を受け一人で出かけた旨証言しており,その証言内容に照らし,上記いずれの供述もたやすく採用することができない。)。 ク被告Eは,本件車両の車両カルテ(乙5)を確認した結果,平成9年10月18日に本件車両のブレーキライニングが交換されていることが分かった。そして,被告Eとしては,ブレーキライニングは最低1年若しくは1年半くらいはもち,交換から2か月弱でなくなることはあり得ないと考え,H運転手に対するブレーキの利き具合に関する問診の結果等も併せ考慮して,F整備士の報告が間違いであると判断した。 そこで,被告Eは,H運転手に対し,「調整が終わったので乗って行ってください。ライニングが少ないから今度のときに替えましょうか。」という趣旨の言葉を述べて,本件車両の引取りを許可した。 ケ事務所を出た原告は,3か月くらい前に張り替えたブレーキライニングがなくなるのはおかしいと思ったが,故障部位によってはあり得ないことでもなく,ブレーキの利き具合に関するものである以上,事故につながる危険があるので,簡単に済ませるわけにはいかないと考え,本件車両の左前輪内側へ潜り込んでブレーキライニングの点検を始めた。 コ H運転手は,被告Eから,本件車両の引取りを許可されたことから,同年12月4日午後5時過ぎ,本件車両に戻ったが,本件車両の下に原告が潜り込んでいることに気づかず,エンジンがかかっていたので,その コ H運転手は,被告Eから,本件車両の引取りを許可されたことから,同年12月4日午後5時過ぎ,本件車両に戻ったが,本件車両の下に原告が潜り込んでいることに気づかず,エンジンがかかっていたので,そのまま本件車両を発進させて,原告を轢き,本件事故を惹起させた(なお,原告は,本件車両のエンジンがかかったことから,逃げようとして,上半身を本件車両の下から出すことができたのであって,エンジンがかかったままの状態ですぐに発進したら逃げる余裕はなかった旨供述するが,Kは,ドアが閉まったような音がして飛び出したが間に合わなかったと原告が事情聴取に対して述べていた旨証言しており,上半身を本件車両の下から出すことができたということから,本件車両のエンジンがかかっていなかったことが裏付けられるということはできない。)。 (2) 以上認定の事実によれば,修理の現場責任者であるディスパッチャの原告が本件車両のブレーキの修理点検が終了したので引き渡してよいとの指示を出していないのに,フロントマンである被告Eにおいて,F整備士の「ブレーキライニングの残量がありません。」との言葉の真偽を実際に確かめることなく,車両カルテとH運転手からの事情聴取のみで,ブレーキには問題がないと判断し,事務所から出て行った後の原告の行動に思いを致すことなく,H運転手に本件車両の引取りを許可し,H運転手がその許可を受けて,十分な安全確認をせずに本件車両を発進させたことが競合して,本件事故が生じたものということができ,両者の過失が競合した共同不法行為によって生じた事故というべきである。 (3) これに対し,被告らは,被告Eが原告に出した作業指示は,作業指示書記載のブレーキ調整のみであり,ブレーキライニングの張り替えは,ブレーキ調整とは全く別個の作業であり,時間も費用もかかることから,顧客の れに対し,被告らは,被告Eが原告に出した作業指示は,作業指示書記載のブレーキ調整のみであり,ブレーキライニングの張り替えは,ブレーキ調整とは全く別個の作業であり,時間も費用もかかることから,顧客の了解を得なければならない整備作業であって,これを実施するか否かは,顧客と直接対応するフロントの判断事項であるところ,被告Eは,原告に対し,ブレーキライニング張り替えの指示は出しておらず,本件車両の整備はF整備士によるブレーキ調整の終了報告によって完了しているから,原告もF整備士に対し本件車両とは別の車両について納車に行くよう新たな指示をしているのであって,被告Eとしては,原告及びF整備士から本件車両の整備終了報告があったからこそ,原告に対し,本件車両とは別の車両の納車を指示し,H運転手に対し,本件車両の引取りを許可して,車両移動を指示したものであって,被告E自ら作業終了の判断をしたものではなく,何らフロント係としての職務分担違反に当たらない旨主張する。 しかし,前記認定のとおり,F整備士としては,いまだ本件車両のブレーキ調整のために待機中であり,ブレーキライニングを取り替えるかどうかについてH運転手の指示待ち中の状態であると考えていたが,原告から,本件車両とは別の車両について納車に行くよう指示されたのでそのまま出かけたものであり,原告は自ら本件車両のブレーキライニングの点検に行ったものと認められるのである。したがって,F整備士の報告としては,ブレーキライニングの残量がないということにとどまっているのであり,F整備士や原告から,被告Eに対し,本件車両の整備終了報告があったものということはできない。そうすると,被告Eにおいて,自らの判断で本件車両の引取りをH運転手に許可したことは,フロントマンとしての職務分担に違反するものというべきである。そ 整備終了報告があったものということはできない。そうすると,被告Eにおいて,自らの判断で本件車両の引取りをH運転手に許可したことは,フロントマンとしての職務分担に違反するものというべきである。そして,原告が事務所から出て行こうとした時点では,既にF整備士が原告からの指示を受けて納車のために出かけているのであるから,その後原告が事務所から出て行く際に,被告Eが,原告に対し,改めて納車について指示したものとたやすく認めることはできず,被告Eにおいて,原告が納車に出かけたものと思い込み,事務所から出て行った後の原告の行動に思いを致すことなく,本件車両の引取りをH運転手に許可したことには,過失があるというべきである。この点については,J工場長も,メカニックがブレーキライニングがないと言っている以上,もう一度確認した方が安全であることから,原告がその確認をしたものである旨の証言をしており,原告の再点検という行動については,被告会社の業務を遂行する上で当然予見し得る行動ということができる。 次に,被告らは,被告会社においては,整備作業は安全確保のためすべてストール内で行うことになっており,本件車両がストール内に移動されていれば,H運転手が本件車両を発進させるという事態は起こり得ず,本件事故は発生しなかったものであって,本件事故が発生したのは,原告が,H運転手が立ち入ることのできる場所,すなわちH運転手が車両を停止した場所において,整備作業をしたからにほかならず,また,本件車両に被告会社の定めどおり車輪止めが施してありさえすれば,本件事故が発生することはなかった旨主張する。 しかし,前記のとおり,被告Eが,修理の現場責任者であるディスパッチャの原告において本件車両のブレーキの修理点検が終了したので引き渡してよいとの指示を出していないのに,本件車両 なかった旨主張する。 しかし,前記のとおり,被告Eが,修理の現場責任者であるディスパッチャの原告において本件車両のブレーキの修理点検が終了したので引き渡してよいとの指示を出していないのに,本件車両の引取りを許可し,H運転手がその許可を受けて,十分な安全確認をせずに本件車両を発進させたことが競合して,本件事故が生じたものというべきであって,原告がストール外のキャノピーにおいて車輪止めを施さないでブレーキライニングの点検を行ったことは,過失相殺事由に該当するということはできても,そのことが本件事故の専らの原因であるということはできない。 (4) 以上によれば,本件事故は,被告EとH運転手の過失が競合して生じたものであり,被告Eとしては,原告に対し,不法行為責任を負うものというべきである(被告EとH運転手は共同不法行為者となる。)。 そして,被告Eの行為は,自動車の修理点検という被告会社の事業の執行につきなされたものであるから,被告会社は,原告に対し,被告Eの不法行為責任につき,使用者責任を負うというべきである。 なお,被告会社の安全配慮義務違反による債務不履行責任の有無については,原告において,不法行為責任と債務不履行責任を選択的に主張しているものと解されるので,判断の要はない。 2 争点(2)(原告の損害額)について(1) 原告は,被告らの平成14年5月7日付け第9準備書面における損害論についての主張及び乙29の提出は,時機に後れた攻撃防御方法として却下されるべきである旨主張するところ,それらの提出によって口頭弁論の終結が遅れたということはなく,時機に後れたものということはできない。 (2) 本件事故によって原告が被った損害については,後掲証拠によれば,以下のとおりと認めるのが相当である。 ア治療費 956万7518円 ,時機に後れたものということはできない。 (2) 本件事故によって原告が被った損害については,後掲証拠によれば,以下のとおりと認めるのが相当である。 ア治療費 956万7518円(甲16,17,乙15)イ入院雑費 23万9200円入院雑費は,1日当たり1300円が相当であり,これに入院日数184日(前記争いのない事実)を乗じたもの。 ウ通院交通費 126万0360円往復の交通費1万1670円(甲7の1,2)に平成10年6月10日から平成12年7月3日までの実通院日数108日(甲4,6,7の1,2)を乗じたもの。 なお,前記争いのない事実によれば,原告の症状固定日は平成11年3月15日であるが,それ以降もリハビリのために通院しているものであり,その通院に要した費用についても,本件事故と相当因果関係のある損害というべきである。 エ給料差額分 654万9323円被告らも,その主張において,原告の平成9年冬季(本件事故発生直前)の賞与は,査定評価がAで,査定分33万円に一律分75万2000円を加え108万2000円の支給額であったこと,原告の平成10年夏季(本件事故発生直後)の賞与は,当期が本件事故発生直後であり,原告が入院治療中であったことから,査定は行われず,一律分のみから欠勤控除したこと,欠勤日数の算定に当たって,平成10年度持ち越し分を含む有給休暇残日数をすべて消化したこと,その結果,査定評価はなく,査定分は0円となり,一律分は66万5000円であるので,これから欠勤控除18万3000円を引くと,支給額は48万2000円となったこと,原告の平成10年冬季以降の賞与は,査定評価が労働力の提供が一切ないとの理由でDであり,その結果,原告の平成10年冬季賞与は15万円,平成11年夏季 を引くと,支給額は48万2000円となったこと,原告の平成10年冬季以降の賞与は,査定評価が労働力の提供が一切ないとの理由でDであり,その結果,原告の平成10年冬季賞与は15万円,平成11年夏季賞与は22万6000円,平成11年冬季賞与は22万7000円となり,平成12年以降も同様に算定されたこと,原告の職能給の昇給については,本件事故の結果,平成10年度の労働力提供の見込みがなかったため,査定評価はCとされ,原告の職能給は3号俸の昇給となったこと,原告の昇給については,平成11年度以降も同様の方法により行われたことを認めている。 そうすると,本件事故により,原告は,欠勤控除及び労働力の提供がないとの査定評価による賞与の減額を受け,また,労働力提供の見込みがないとの査定評価により通常の昇給を受けられなかったものということができ,これは本件事故によって原告が被った損害ということができる。 そして,甲8,10,11,13の1ないし6,15及び弁論の全趣旨によれば,原告が労務の提供ができる状態で通常の昇給を受け,賞与の減額を受けることがなければ受領できた金額は,別紙計算書のとおり,2474万8126円と認めるのが相当であり,これから,平成10年1月から平成13年2月までに被告会社から原告に支払われた金額1819万8803円(この額については当事者間に争いがない。)を差し引くと654万9323円となり,これが本件事故による給料差額分の損害額と認めることができる。 なお,被告らは,退職時を基準に給料差額発生期間と逸失利益算定期間に分けるのは妥当でなく,症状固定時を基準に休業損害の問題と後遺障害による逸失利益の問題とに分けるべきである旨主張する。しかし,原告は,症状固定後も退職までは給与及び賞与の支払を受けていたのであるから,その期間について労働 症状固定時を基準に休業損害の問題と後遺障害による逸失利益の問題とに分けるべきである旨主張する。しかし,原告は,症状固定後も退職までは給与及び賞与の支払を受けていたのであるから,その期間について労働能力喪失率に基づいた逸失利益を算定するのは相当でなく,本件事故に起因する現実の収入の減少分をもって損害と認めるのが相当である。 オ入通院慰謝料 300万円前記認定の入通院日数等に照らせば,入通院慰謝料としては,300万円が相当である。 カ後遺症逸失利益 5447万3349円前記争いのない事実にあるとおり,原告の後遺障害等級は併合第3級であることから,原告の労働能力喪失率は,100パーセントと認めることができる。そして,甲17によれば,原告は,昭和22年10月11日生まれであり,平成11年3月15日の症状固定時には51歳,後記の平成13年2月28日の退職時には53歳であったことが認められる。そうすると,原告の後記退職後に生ずる逸失利益は,以下の(ア),(イ),(ウ)の合計金額と認めるのが相当である。 (ア) 55歳まで 1386万9229円822万3676円(別紙計算書のとおりの昇給を前提とした平成12年給与)×(3.5459(51歳から55歳までの4年間のライプニッツ係数)-1.8594(51歳から53歳までの2年間のライプニッツ係数))(イ) 56歳から60歳まで 2343万3526円657万8940円(56歳以降の給与=上記平成12年給与に8割を乗じた額)×(7.1078(51歳から60歳までの9年間のライプニッツ係数)-3.5459(51歳から55歳までの4年間のライプニッツ係数))(ウ) 61歳から67歳まで 1717万0594円460万3500円(平成10年賃金センサスによる男子労働 プニッツ係数)-3.5459(51歳から55歳までの4年間のライプニッツ係数))(ウ) 61歳から67歳まで 1717万0594円460万3500円(平成10年賃金センサスによる男子労働者学歴計年齢別平均賃金)×(10.8377(51歳から67歳までの16年間のライプニッツ係数)-7.1078(51歳から60歳までの9年間のライプニッツ係数))キ後遺障害慰謝料 1900万円原告は,前記のとおり,併合第3級に該当する後遺障害を負ったものであり,後遺障害慰謝料としては,1900万円と認めるのが相当である。 ク退職金差額 0円原告が,平成13年2月28日,被告会社を退職したものであり,被告会社が,同年3月28日,原告に対し,退職金として895万4500円を支払ったことは当事者間に争いがない。 ところで,原告は,本来定年まで就労するつもりであったところ,本件事故により退職を余儀なくされたものである旨主張する。しかし,原告自身が,被告会社からも職場復帰するよう言われたが,希望退職者を募っているということを聞き,自ら辞めた方がよいのではないかと思って退職した旨供述しているところ,原告は,平成11年3月15日の症状固定後も被告会社に雇用されていたものであるから,本件事故により退職を余儀なくされたものと認めることはできず,原告の定年退職時に本来支払われるべき金額と原告が現実に受領した退職金額の差額をもって,原告が本件事故により被った損害ということはできない。 ケ損害合計額以上によれば,本件事故によって原告が被った損害額合計は,9408万9750円となる。 コ既払金原告に対する自賠責保険からの既払金が2338万6800円であることは当事者間に争いがなく,乙15によれば,原告に対する労災保険からの療養補償給付としての支 408万9750円となる。 コ既払金原告に対する自賠責保険からの既払金が2338万6800円であることは当事者間に争いがなく,乙15によれば,原告に対する労災保険からの療養補償給付としての支払額は956万4318円であると認めることができる。 なお,被告らは,被告会社が原告に支払った給料及び賞与も損益相殺の対象とすべき旨主張するが,前記のとおり給料差額分を損害として認定するものである以上,支払われた給料及び賞与が損益相殺の対象となるものということはできない。 3 争点(3)(過失相殺)について前記1で認定した本件事故の状況に照らせば,原告は,被告Eに特に断ることなく,事務所を出て,ストール内ではなく,キャノピーに停車中の,エンジンがかかった状態で車輪止めを施していない本件車両の下に潜り込んで,ブレーキライニングの再点検を始めたものということができ,ディスパッチャの立場にある原告としては,当然にその危険性を認識し得たものというべきであり,原告には本件事故の原因となった過失があるものといわざるを得ない。 しかし,原告本人の供述によれば,ディスパッチャである原告が指示しない限り,整備車両を動かす者はいないと考えて,本件車両の下に潜り込んで再点検を始めたことが認められ,前記争いのない事実にあるディスパッチャの職務分担内容に照らせば,原告がそのように考えたことには一定の合理性があるということができる。 そうすると,本件事故の主たる原因は,前記認定のとおり,本件車両のブレーキ調整についてディスパッチャの原告から整備完了報告がなされていないのに車両の引取りを許可した被告Eと,その許可に基づき安全を十分に確認することなく本件車両を発進させたH運転手の競合した過失によるものというべきであって,その過失の方が原告の過失よりもはるかに大きいものというべ 取りを許可した被告Eと,その許可に基づき安全を十分に確認することなく本件車両を発進させたH運転手の競合した過失によるものというべきであって,その過失の方が原告の過失よりもはるかに大きいものというべく,原告の過失に基づく過失相殺の割合としては3割と認めるのが相当である。 なお,原告は,給料差額分として請求しているものに関して過失相殺を認めることになれば,給料減額を実質的に行うことが可能となってしまうから,過失相殺の対象とならないというべきである旨主張するが,給料差額分も本件事故に起因する損害である以上,過失相殺の対象となるというべきである。 4 小括(1) 自賠責保険からの給付額については,損害項目に関係なく損害額全体から損益相殺をした後にこれを過失相殺の対象とすべきものと解されるが,労災保険給付と過失相殺の先後関係については,まず過失相殺をして損害賠償額を減額してから労災保険給付の控除を各損害項目に対応させて行うべきものと解するのが相当である(最高裁第1小法廷昭和55年12月18日判決・民集34巻7号888頁,最高裁第3小法廷平成元年4月11日判決・民集43巻4号209頁参照)。 そうすると,前記損害額合計9408万9750円から自賠責保険からの既払金2338万6800円を控除した7070万2950円を基に3割の過失相殺をすると4949万2065円(7070万2950円×0.7)となり,そのうち,治療費の占める額は,503万2601円(4949万2065円×956万7518円÷9408万9750円),平成10年の給料差額分の占める額は,103万2332円(4949万2065円×196万2576円÷9408万9750円),平成11年の給料差額分の占める額は,97万6733円(4949万2065円×185万6876円÷9408万9750円) 2332円(4949万2065円×196万2576円÷9408万9750円),平成11年の給料差額分の占める額は,97万6733円(4949万2065円×185万6876円÷9408万9750円),平成12年の給料差額分の占める額は,134万0257円(4949万2065円×254万7973円÷9408万9750円),平成13年の給料差額分の占める額は,9万5680円(4949万2065円×18万1898円÷9408万9750円)となる。 そして,前記のとおり,原告に対する労災保険からの療養補償給付としての支払額は956万4318円であるから,上記503万2601円の治療費については,労災保険からの療養補償給付により補填済みということになり,この治療費額は損害額から控除すべきことになる。 したがって,これを控除した後の損害額は,4445万9464円(4949万2065円-503万2601円)となる。 (2) 本件事案の内容や訴訟の経緯に照らせば,本件事故と相当因果関係のある弁護士費用相当額の損害は,440万円と認めるのが相当である。 (3) したがって,原告の損害額合計としては,4885万9464円(4445万9464円+440万円)となる。 (4) 以上によれば,原告の請求は,被告らに対し,連帯して,4885万9464円及びこれに対する前記給料差額を除いた他の損害合計である内金4541万4462円(4885万9464円-103万2332円-97万6733円-134万0257円-9万5680円)に対する本件事故の日である平成9年12月4日から,平成10年分の給料差額である内金103万2332円に対する当該給与年度の年末の翌日である平成11年1月1日から,平成11年分の給料差額である内金97万6733円に対する当該給与年度の年末の翌日であ 平成10年分の給料差額である内金103万2332円に対する当該給与年度の年末の翌日である平成11年1月1日から,平成11年分の給料差額である内金97万6733円に対する当該給与年度の年末の翌日である平成12年1月1日から,平成12年分の給料差額である内金134万0257円に対する当該給与年度の年末の翌日である平成13年1月1日から,平成13年分の給料差額である内金9万5680円に対する退職の翌日である平成13年3月1日から,それぞれ支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があることになる(なお,給料差額の損害は,本件事故によって生じた休業損害に準じる現実損害であり,その遅延損害金の起算日については,原告が請求しているように給与の支払時期経過後に繰り下げる必要はないと解されるが,原告がそのように繰り下げた請求をしているので,その限度で遅延損害金の始期を認めるものである。)。 第4 結論よって,原告の請求は,主文掲記の限度で認容し,その余は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第1部裁判官橋本昌純
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