令和4(ワ)14148 不正競争行為差止請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年4月27日 東京地方裁判所
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令和5 年4 月27 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和4 年(ワ)第14148 号不正競争行為差止請求事件口頭弁論終結日令和5 年2 月21 日判決原告ダイソン株式会社 同訴訟代理人弁護士溝田宗司同訴訟復代理人弁護士松岡悠也被告パナソニック株式会社同訴訟代理人弁護士松田知丈同西川喜裕 同岩崎啓太同渡辺駿 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、別紙被告商品目録記載の商品についての広告又は取引に用いる書類若しくは通信及び被告の営業に係るウェブサイトその他の宣伝広告物に、別紙被告表示目録記載の表示をしてはならない。 2 被告は、別紙被告商品目録記載の商品についての広告又は取引に用いる書類若しくは通信及び被告の営業に係るウェブサイトその他の宣伝広告物における別紙被告表示目録記載の表示を抹消せよ。 第2 事案の概要本件は、ヘアードライヤー等を販売する原告が、被告の販売する別紙被告商品目 録記載のヘアードライヤー(以下「被告商品」という。)の広告における別紙被告表 示目録記載の性能や機能についての表示(以下、同目録記載のとおり、「被告表示1-1」などといい、これらを併せて「被告各表示」という。)は被告商品の品質について誤認させるような表示であり、その表示をする行為は不正競争(不正競争防止法(以下「法」という。)2 り、「被告表示1-1」などといい、これらを併せて「被告各表示」という。)は被告商品の品質について誤認させるような表示であり、その表示をする行為は不正競争(不正競争防止法(以下「法」という。)2 条1 項20 号)に該当するとして、被告に対し、法3 条に基づき、当該表示行為の差止め(同条1 項)及び当該表示の抹消(同条2 項)を求 める事案である。 1 前提事実(いずれも当事者間に争いがないか弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 当事者原告は、ヘアードライヤーを含む家電製品の製造、輸出及び販売等を行う英国企 業ダイソンテクノロジーリミテッドの関連会社であり、同社の製品を輸入し、日本国内において販売等をする株式会社である。 被告は、日本において、ヘアードライヤーを含む家電製品の製造、輸出及び販売等をする株式会社である。 (2) 被告各表示 ア被告は、遅くとも平成17 年頃から、「高浸透ナノイー」と称する水微粒子を吹き出す機能を備えた複数の種類のドライヤーを毎年モデルチェンジして販売している。そのうち、少なくとも最上位モデルのドライヤーには、送風口とは別に送風口の上部にイオン吹出口(ナノイーデバイス)が設けられている。 被告は、令和元年秋頃、従来のナノイーデバイスの18 倍の水分量を発生させる 「高浸透ナノイーデバイス」と称する機構を搭載したドライヤーを発売し、令和2年秋に同機構を搭載した製品を発売した後、令和3 年秋頃、同機構を搭載した被告商品を発売した。 被告は、被告商品の宣伝のため、被告商品専用のウェブサイトを開設し、その中に、その性能や機能の説明ページ(以下「被告ウェブページ」という。)を設けてい る。また、被告は、被告ウェブページと同様の内容が記載されたカタログを店舗等 品専用のウェブサイトを開設し、その中に、その性能や機能の説明ページ(以下「被告ウェブページ」という。)を設けてい る。また、被告は、被告ウェブページと同様の内容が記載されたカタログを店舗等 で配布している(以下、被告ウェブページ及び被告の上記カタログによる広告を併せて「被告広告」という。)。被告広告中には、以下のとおりの被告各表示がある。 イ被告表示1被告は、被告広告の中で、被告商品と従来商品であって高浸透ナノイーデバイスを搭載していないナノイー&ミネラル「EH-NA9E」(以下「ナノイードライヤー」と いう。)を比較して、被告商品が髪に与える毛髪水分量の点で優れた商品であることを示すために、「高浸透ナノイーで髪へのうるおい1.9 倍」と表示している(被告表示1-1)。また、これを図で説明する被告表示1-2 をも表示している(以下、被告表示1-1 及び1-2 を併せて「被告表示1」という。)。 ウ被告表示2 被告は、被告広告の中で、被告商品のイオン吹出口に搭載されている高浸透ナノイーデバイスとナノイードライヤーに搭載されているナノイーデバイスとを比較して、「水分発生量従来の18 倍」と表示している(被告表示2-1)。また、これを図で説明する被告表示2-2 をも表示している(以下、被告表示2-1 及び2-2 を併せて「被告表示2」という。)。 エ被告表示3被告は、被告広告の中で、ヘアカラーした髪を被告商品で乾かした場合、イオンなしのドライヤーで乾かした場合と比較して、「ヘアカラーの色落ちを抑えます」と表示する(被告表示3-1)と共に、「色が抜けにくい」とも表示している(被告表示3-2)。さらに、これを図で説明する被告表示3-3 をも表示している(以下、被告表示 3-1~3-3 えます」と表示する(被告表示3-1)と共に、「色が抜けにくい」とも表示している(被告表示3-2)。さらに、これを図で説明する被告表示3-3 をも表示している(以下、被告表示 3-1~3-3 を併せて「被告表示3」という。)。 オ被告表示4被告は、被告広告の中で、被告商品がイオンなしのドライヤーに比べて摩擦ダメージを抑えるものであることを示すために、被告表示4 を表示している。 カ被告表示5 被告は、被告広告の中で、被告商品がイオンなしのドライヤーに比べて摩擦ダメ ージを抑えるものであることを示す趣旨で、「摩擦ダメージを抑制」と表示している(以下「被告表示5-1」という。)。また、そのことを図で説明するために、被告表示5-2 を表示している(以下、被告表示5-1 及び5-2 を併せて「被告表示5」という。)。 2 争点被告各表示の品質誤認表示該当性(争点1~5) 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点1(被告表示1 の品質誤認表示該当性)〔原告の主張〕ア品質誤認表示(法2 条1 項20 号)は、商品の広告が品質を誤認させるものであるかどうかについて、消費者を基準とする。したがって、広告を検証する側は、 検証に当たり、①表示に記載又は併記された試験条件が明確である場合にはそれに従い、②試験条件が曖昧な場合や不十分な場合には消費者の視点に立って常識的にこれを解釈して具体的な試験条件を設定し、③記載されていない試験条件については消費者の視点に立って合理的な試験条件を設定すべきであり(以下、この考え方を「本件規範」という。)、広告を表示する側が②や③の場合に上記から外れた試験 条件を設定しているときは、当該広告は品質誤認表示に該当するというべきである。 原告が後記原告実験 下、この考え方を「本件規範」という。)、広告を表示する側が②や③の場合に上記から外れた試験 条件を設定しているときは、当該広告は品質誤認表示に該当するというべきである。 原告が後記原告実験1~5 において設定し、実施した試験条件は、いずれもこれに沿ったものである。 イ被告表示1 は、被告商品はナノイードライヤーに比べて、毛髪に与える水分の増加量が1.9 倍となっているため、毛髪に対して1.9 倍のうるおいを与えるとい うものである。しかし、後記原告実験2 によれば、被告商品のイオン吹出口からの水分発生量は、従来のナノイードライヤーの1.36 倍程度に過ぎない。にもかかわらず、毛髪に与える水分増加量が1.9 倍になるというのは明らかに矛盾する。実際に被告商品を使用する際にはイオン吹出口からの水分が送風口からの送風(熱風)の影響を受けて乾燥し蒸発することを考えれば、なおのことである。 したがって、この点だけを見ても、被告表示1 は、被告商品の品質を誤認させる 表示に該当する。 ウ被告表示1-2 によれば、ナノイードライヤーを用いた処理と被告商品を用いた処理で毛髪に与えた水分量を比較するために、FT-NIR 法による実験を行ったとされている。原告が行ったFT-NIR 法による実験(以下「原告実験1-1」という。)によれば、被告商品では処理前後で水分量が増加したのに対し、ナノイードライヤー では水分量の増加を観察できなかった。しかし、被告商品とナノイードライヤーを比べると、両者には処理前の数値について相違がある。このように、FT-NIR 法では処理前の数値にばらつきが出てしまうため、この方法は同じ毛束における処理前後の相対評価にしか用いることができない。すなわち、そもそも、FT-NIR 法では、異な る。このように、FT-NIR 法では処理前の数値にばらつきが出てしまうため、この方法は同じ毛束における処理前後の相対評価にしか用いることができない。すなわち、そもそも、FT-NIR 法では、異なる毛束の評価はできず、異なる毛束における処理前後の差分同士を比較しても水 分量の増加値を算出することはできない。したがって、FT-NIR 法は実験方法として不適切であり、これを用いて、被告商品がナノイードライヤーに比べて、毛髪に対し1.9 倍の潤いを与えているということはできない。 加えて、FT-NIR 法で得られた測定値については、KF 法により検証する必要があり、前者だけで試験を行うことは適切でない。 したがって、FT-NIR 法に基づき、被告商品はナノイードライヤーに比べて毛髪に与える水分の増加量が1.9 倍となっているなどと表示する被告表示1 は、商品の品質を誤認させる表示といえる。 他方、KF 法は、通常、様々な材料に含まれる水分量を測定するために用いられるものであり、毛髪を含め材料に含まれる水分量を直接的に計測することができると ころ、これを用いた原告の実験(以下「原告実験1-2」という。また、これと原告実験1-1 とを併せて「原告実験1」という。)によれば、水分の減少量はナノイードライヤーよりも被告商品の方が少ないものの、そもそも水分が増加していない。 したがって、水分増加量が1.9 倍であることを根拠として、毛髪に対して与える潤いが1.9 倍であるとする被告表示1 は、被告商品の品質を誤認させる表示である。 〔被告の主張〕 ア原告の主張に係る本件規範は、表示の根拠となるデータすなわち試験条件について、消費者の視点として客観的に解釈又は想像されるものが設定されていれば足り(又は設定さ 〔被告の主張〕 ア原告の主張に係る本件規範は、表示の根拠となるデータすなわち試験条件について、消費者の視点として客観的に解釈又は想像されるものが設定されていれば足り(又は設定されるべきであり)、必ずしも客観的かつ科学的に妥当な形で設定される必要はないとの帰結を導くものであり、かえって表示規制を緩める事態にもなりかねず、消費者保護に反する。広告の表示内容の解釈は一般消費者の視点に基づ き判断されるべきものであるが、その根拠となるデータは客観的かつ科学的に実証されたものでなければならない。 イ被告表示1 は、「うるおい1.9 倍」の内容として、被告商品で髪を乾かした場合の水分増加量が、旧製品で髪を乾かした場合の水分増加量の1.9 倍であったことを表示したものである。その比較に当たっては、同一の毛束における水分増加量を、 被告商品と旧製品(EH-NA9E、EH-NE6B)のそれぞれの場合において、サンプル数となる毛束の数の分だけ算出し、それに統計学的な処理を加え、それぞれの増加量を比較している。そのため、髪にもともと含まれている水分量に差が存在し、同じ毛束における処理前後の相対評価にしか用いることができないとしても問題はない。 原告実験1 においても、被告商品による乾燥処理を施した髪において水分量が増 加していることは認められており、他方、EH-NA9E による乾燥処理後では水分量が増加していることは観察できなかったとされている。これを前提とすると、原告実験1 の結果からも、被告商品は、EH-NA9E に比べて1.9 倍を超える水分量が認められることになる。 しかし、原告実験1 は、被告表示1 について、水分増加量の対比ではなく水分含 有量の対比を表示するものと誤解しているかのようであり、その実験 .9 倍を超える水分量が認められることになる。 しかし、原告実験1 は、被告表示1 について、水分増加量の対比ではなく水分含 有量の対比を表示するものと誤解しているかのようであり、その実験結果の信用性・妥当性は疑問である。また、実験対象となるサンプルは原告が提供しており、その真実性は原告が責任を負うべきものである旨が実験機関によって留保されているにもかかわらず、原告は、サンプルとなる毛束について何らの説明も行っていない。 加えて、髪質によっても水分の吸収量には差があり、結果にばらつきが生じる可能 性がある。適切な比較値を算出するためには統計的観点から十分なサンプル数であ るかを配慮・検証することになるところ、原告実験1 ではサンプル数が5 であると記載するのみで、上記の点について統計的観点からの検討がされた形跡がない。 ウ FT-NIR 法とKF 法の計測結果に相関性があることは一般的に確認されており、また、FT-NIR 法も、定量分析は十分に可能な評価手法である。むしろ、KF 法よりも非破壊的で迅速な評価方法として一般的に知られている。したがって、いず れの評価手法によったとしても正確な測定を行うことは可能であって、FT-NIR 法自体の妥当性に問題はない。 (2) 争点2(被告表示2 の品質誤認表示該当性)〔原告の主張〕ア被告表示2 は、被告商品は、ナノイードライヤーと対比して、18 倍の水分量 を発生することを示している。しかし、原告が専門家に委託して行った実験(以下「原告実験2」という。)によれば、被告商品の水分発生量は、ナノイードライヤーの水分発生量と比べて、1.21~1.36 倍程度であった。 被告商品のようなナノイーを発生させるドライヤーのイオン吹出口から出る水分量は非常に微 よれば、被告商品の水分発生量は、ナノイードライヤーの水分発生量と比べて、1.21~1.36 倍程度であった。 被告商品のようなナノイーを発生させるドライヤーのイオン吹出口から出る水分量は非常に微量であり、このような微量な水分を計測する一般的な技術は確立して おらず、被告も、被告表示2 の根拠となる測定方法を明らかにしていない。そこで、原告は、シリカゲルの吸水性能に着目し、閉鎖系にシリカゲルを配置して、ナノイードライヤーと被告商品の水分発生量を比べる原告実験2 を行った。その際、可能な限り被告に有利な条件で実験が行われたにもかかわらず、上記結果のとおり、被告商品による水分発生量は、被告表示2 で示された数値を大幅に下回る。このよう に、被告商品がナノイードライヤーと対比して18 倍の水分量を発生することはないことから、被告表示2 は、被告商品の品質を誤認させる表示である。 イ被告商品の水分発生量を計測するためにシリカゲルを用いた試験を実施した点については、水分を吸着するというシリカゲルの常識的な知識ともいえる化学的性質に着目したものであり、水分を計測する上で最も基礎的な方法であって、消費 者からしても極めて合理的な試験方法である。このため、この方法を採用したこと に疑問を差し挟む余地はない。 また、本件規範③によれば、広告を表示する側は、試験条件を記載しないのであれば、その試験条件を消費者からして合理的なものに設定すべきである。しかるに、被告が試験条件として空気中の水分による影響を排除しており、その結果水分発生量が18 倍になっているのだとすると、その試験条件は、実際の使用環境とは大きく 異なるものであるため、消費者の視点から見て合理的な試験条件とはいえない。 〔被告の主張〕原告実験2 は、シリ 量が18 倍になっているのだとすると、その試験条件は、実際の使用環境とは大きく 異なるものであるため、消費者の視点から見て合理的な試験条件とはいえない。 〔被告の主張〕原告実験2 は、シリカゲルの吸水性能を利用し、閉鎖系に含まれる空気中の水分量を測定するという方法である。 しかし、シリカゲルに空気中の水分が混ざった時点で、その実験結果は信用に値 しない。すなわち、上記方法により測定されるシリカゲルの吸水量には、空気中の水分とナノイーデバイスから発生する水粒子が含まれるが、空気中に含まれる水分と比較すると、ナノイーデバイスから発生する水粒子ははるかに質量が小さい(すなわち、空気中に存在する水分量が、シリカゲルの吸収した水分量の大半を占める)ため、本来の測定対象であるナノイーデバイスから発生する水粒子が従来の18 倍 となっていたとしても、全体としての吸水量にはその結果が適切に反映されないことになる。このため、空気中の水分も吸水したシリカゲルの重量の変化を対比したところで、本来の測定対象であるナノイーデバイスから発生する水分量の差を測定したことにはならない。 また、原告実験2 では、閉鎖系の湿度もシリカゲルの重量変化(吸水量)に影響 し得るところ、2 つの閉鎖系における湿度が完全に一致していることについて、何らの検証や説明がされていない。 (3) 争点3(被告表示3 の品質誤認表示該当性)〔原告の主張〕ア被告表示3 は、ヘアカラーした髪について、被告商品を用いて処理した場合 とイオンなしのドライヤーを用いて処理した場合を比べて、前者の場合の方がヘア カラーの色落ちを抑えると表示するものである。 原告が、被告表示3 に表示されている実験条件及び工業標準のCIEDE2000 を用いて実験 て処理した場合を比べて、前者の場合の方がヘア カラーの色落ちを抑えると表示するものである。 原告が、被告表示3 に表示されている実験条件及び工業標準のCIEDE2000 を用いて実験(以下「原告実験3」という。)を行った結果によれば、被告商品で処理した場合とイオンなしのドライヤー(品番を「EH-ND2B」とする被告の製品。以下「EH-ND2B」という。)で処理した場合とでは、色変化の明らかな差は観察されなかった。 この実験結果は被告表示3 に表示された結果と一致しておらず、しかも、被告商品で処理した場合とEH-ND2B で処理した場合の間の数値の変化は、統計的に有意なものではなかった。つまり、原告実験3 の結果が示す色の変化は、被告商品とイオンなしドライヤーの性能の差により生まれたものではないことになる。したがって、被告商品は、イオンなしのドライヤーと比較して、ヘアカラーをした毛髪の色抜け が減少しているとはいえない。 以上より、被告表示3 は、被告商品の品質を誤認させる表示である。 イ被告表示3 には、「イオンなしドライヤー」とのみ併記されているところ、それが何を示すかは曖昧である。もっとも、被告のウェブサイトを閲覧した一般消費者からすると、被告の販売するドライヤーのうち「イオンなしドライヤー」として 通常考えるのはEH-ND2B しかあり得ないため、本件規範②により、原告は、これを比較対象である「イオンなしドライヤー」として選択したものである。 また、原告実験3 の実験主体は世界的に著名であり、かつ、中立的な調査機関であること、原告実験3 の試験条件は本件規範に沿って設定していることから、原告実験3 の結果の信頼性に問題はない。 〔被告の主張〕ア原告実験3 は、比較対象となるドライヤー 調査機関であること、原告実験3 の試験条件は本件規範に沿って設定していることから、原告実験3 の結果の信頼性に問題はない。 〔被告の主張〕ア原告実験3 は、比較対象となるドライヤーとしてEH-ND2B を使用している。 しかし、同製品は、風量、風温が被告商品と大きく異なるものであり、イオン機能以外の要素によってキューティクルに与える影響に差が生じている。そのため、原告実験3 は、イオン機能の有無による正確な比較となっていない。イオンがある場 合とない場合の比較試験である以上、比較対象以外の条件を同一にすることは科学 的な試験において基本となる前提であり、現に被告は、被告商品において高浸透ナノイーを機能させたものとそうでないものとで比較している。 イ原告実験3 においては、比較試験として不当な結果を示すものではないかとの観点から特段の配慮や検討がされた形跡がない。すなわち、カラー退色抑制効果に係る比較試験については、様々な諸条件が同一となるように配慮しなければなら ないところ、例えば、使用する毛束の分量・サイズ、保管状況、髪の濡らし方・乾かし方、色差の測定結果そのもの、計測部位や計測装置の当て方、毛束の乾燥状態について、原告実験3 の際にこうした配慮がされたことを示す説明等がない。 (4) 争点4(被告表示4 の品質誤認表示該当性)〔原告の主張〕 ア被告表示4 は、イオンなしのドライヤーで髪を乾かした場合には毛先がささくれ傷んで枝毛となるのに対し、被告商品で髪を乾かした場合には傷みがなく美しい毛先になると表示するものである。 しかし、被告表示4 記載の実験条件と同じ条件で原告が実施した実験(以下「原告実験4」という。)の結果は、被告商品で処理した場合の方がむしろイオンなしド い毛先になると表示するものである。 しかし、被告表示4 記載の実験条件と同じ条件で原告が実施した実験(以下「原告実験4」という。)の結果は、被告商品で処理した場合の方がむしろイオンなしド ライヤー(EH-ND2B)で処理した場合よりも枝毛が増加しており、被告商品で髪を乾かした場合には傷みがなく美しい毛先になるとはいえない。 したがって、被告表示4 は、被告商品の品質を誤認させる表示である。 イ前記(3)〔原告の主張〕イに同じ。 〔被告の主張〕 前記(3)〔被告の主張〕に同じ。 また、原告実験4 については、髪を1000 回梳くとの記載と共に、合計180 回の洗浄/乾燥の循環と3 回の濯ぎを行った旨の記載もあり、どのような方法で実験を行ったのかが全く意味不明である。 (5) 争点5(被告表示5 の品質誤認表示該当性) 〔原告の主張〕 ア被告表示5 は、被告商品で乾かした場合、イオンなしのドライヤーで乾かした場合と比べて、イオンなしのドライヤーで乾かした場合には枝毛発生率が30.7%であるのに対し、被告商品で乾かした場合には枝毛発生率が3.0%であるから、被告商品はイオンなしのドライヤーに比べて摩擦ダメージを抑制することができると表示するものである。 しかし、原告が被告表示5 記載の実験条件と同じ条件で実施した実験(以下「原告実験5」という。)によれば、被告商品で処理した方が、イオンなしドライヤー(EH-ND2B)で処理するよりも枝毛の発生率は低いものの、イオンなしのドライヤーでは、被告表示5 で記載されているような高確率で枝毛が発生してはいない。被告表示5 は、イオンなしのドライヤーの枝毛発生率についてこのような誤った表示をし て被告商品を広告することで、消費者に対して 告表示5 で記載されているような高確率で枝毛が発生してはいない。被告表示5 は、イオンなしのドライヤーの枝毛発生率についてこのような誤った表示をし て被告商品を広告することで、消費者に対して、被告商品の優位性を誤認させている。 したがって、被告表示5 は、被告商品の品質を誤認させる表示である。 イ前記(3)〔原告の主張〕イに同じ。 また、誤った試験方法を約1 年間という長期にわたり掲載していたこと自体、品 質誤認表示である。 〔被告の主張〕前記(3)〔被告の主張〕と同じ。 なお、被告表示5-2 は、試験方法の記載に誤記があったため訂正を行ったが、数値自体は正確であり、消費者の商品選択に影響はない。 第3 当裁判所の判断事案に鑑み、まず被告表示2 の品質誤認表示該当性を検討した上で、被告表示1、被告表示3~5 の順に品質誤認表示該当性を検討することとする。 1 被告表示2 の品質誤認表示該当性について(1) 被告表示2 について 被告表示2 は、別紙被告表示目録記載のとおり、「水分発生量従来の18 倍」とす る表示(被告表示2-1)及び被告表示2-2 のとおりのものである。被告表示2-2 中には、「高浸透ナノイーとは、髪への浸透性を高めたナノイーのことです。発生方式を変えることで、ナノイーの水分発生量が従来の18 倍になりました。」との記載がある。「18 倍」とは、「ナノイーと高浸透ナノイーとの比較(当社調べ)」とされている(甲2)。 これらの記載から、被告表示2 においては、「高浸透ナノイー」と従来の「ナノイー」の各「水分発生量」が比較対象とされていることが理解される。 (2) 原告実験2 について原告実験2 に係る報告書「水分量測定試験に関する報告」(甲4。以下「 高浸透ナノイー」と従来の「ナノイー」の各「水分発生量」が比較対象とされていることが理解される。 (2) 原告実験2 について原告実験2 に係る報告書「水分量測定試験に関する報告」(甲4。以下「原告実験 2 報告書」という。)によれば、その測定試験は、「送風口とイオン口を備えるドラ イヤーA 及びB について、イオン口から発せられる水分量を比較すること」を目的として、ドライヤーA とB について、イオン口から放出される水分子による絶乾シリカゲルの吸水変化を閉鎖系において測定し、その測定結果を比較したものである。 ドライヤーA 及びB は原告代理人から提供されたものであるが、その製品名等は原告実験2 報告書では特定されていない。 実験の具体的な方法は、「105℃で一晩静置した乾燥シリカゲルをデシケータに入れ、閉鎖系でドライヤーA およびB のイオン口から送風し(HOT モード、TURBO。 ナノイーのランプが付いている状態)、シリカゲルの吸水量の変化を観察した。」、「チャンバー内の風速は2.6±0.3m/s に統一した。各時間(0~4 時間)にイオン口からの風を吹かせた後、シリカゲルの重量変化を測定し、シリカゲル中に給水された 水分量変化として換算した。」とされている。また、「Fig.1」では、原告実験2 で使用した実験装置の構成及び配置等が示されている。 原告実験2 報告書では、原告実験2 の結論として、「ドライヤーA 及びB のイオン口からの水粒子によるシリカゲルの吸水率は、コントロールと比較して明確な違いが見られた。また、ドライヤーA とドライヤーB を比較すると、その吸水率の差 は1.21~1.36 倍であることが判明した。つまり、ドライヤーA のイオン口から発せ られる水分量は、ドライヤーB ドライヤーA とドライヤーB を比較すると、その吸水率の差 は1.21~1.36 倍であることが判明した。つまり、ドライヤーA のイオン口から発せ られる水分量は、ドライヤーB のイオン口から発せられる水分量の約1.21 倍~1.36倍であると推察される。」(裁判所注:「コントロール」とは、「デシケータ内に風を送り込んでいないシリカゲル」である。)とされている。 (3) 原告実験2 報告書について原告実験2 報告書において、閉鎖系を実現する構成については、Fig.1 に画像とし て示されるにとどまり、具体的かつ詳細な説明はない。もっとも、同図を子細に見ると、ドライヤーA 及びB のいずれについても、その送風口を除き、その上部にあるイオン口が包まれるようにラップフィルム状のものでドライヤーの中央部外周を覆い、かつ、そのラップフィルム状のものにより当該部分からデシケーター入り口までを覆い、覆った上記ラップフィルム状のものの端部を固定・固着して塞いでい ることが看取される。 しかし、この方法による場合、各ドライヤーのイオン口から放出される水分の全てが、ラップフィルム状のもの等に吸着されることなくデシケーター内に送られ、デシケーター内のシリカゲルに吸着するといえるのかは不明である。また、各ドライヤーのイオン口から放出される水分の系外への流出及び空気中の水分の系内への 流入が防止されているのか、又は、上記吸着ないし流出・流入がいずれの系においても一定に保たれているのかも、不明である。このため、原告実験2 において測定されたシリカゲルの吸水量が、各ドライヤーのイオン口から発せられる水分量すなわち水分発生量を正しく反映していると見ることについては疑義がある。 さらに、シリカゲルを用いる方法によることについて、 定されたシリカゲルの吸水量が、各ドライヤーのイオン口から発せられる水分量すなわち水分発生量を正しく反映していると見ることについては疑義がある。 さらに、シリカゲルを用いる方法によることについて、原告実験2 報告書によれ ば、懸念材料として「秤量時の大気中水分の影響です。シリカゲルをデシケーターから取り出して精密天秤で測定する場合…、大気中水分の吸着の影響を最小限に抑える工夫が必要となります。」との指摘がされたのに対し、同報告書作成者は、「確かに厳密に数値を計測する場合には当該指摘のとおりであるが、本測定はドライヤーA におけるシリカゲルの重量変化とドライヤーB におけるシリカゲルの重量変化 を比較する目的で実施されたもので、いずれも秤量中に大気中の水蒸気の影響を受 けること、また秤量時間は30 秒程度と送風時間と比べて短時間であることから、本測定においては、秤量中の水蒸気が結果に影響を与えることはないといってよいだろう。」との見解を示している。しかし、いずれのシリカゲルも秤量中に大気中の水蒸気の影響を受けるといっても、その影響が同じであるとは必ずしもいえないのであって(そもそも、使用されたシリカゲルの状態及び性能等が同一ないし同等であ ったかも、同報告書上明らかでない。)、秤量時間が30 秒程度と短時間であるとしても、原告実験2 の精度が問題ないといえる程度に高いといえるのかについては疑問を抱かざるを得ない。 「高浸透ナノイー」と従来の「ナノイー」との「水分発生量」の比較に当たっては、各ドライヤーのイオン口から発せられる水分量の正確な測定値が必要とされる ところ、原告実験2 は、上記の各点で、その正確性が担保されていることにつき疑義がある。 (4) 原告の主張について原告は、その主張に係る本 発せられる水分量の正確な測定値が必要とされる ところ、原告実験2 は、上記の各点で、その正確性が担保されていることにつき疑義がある。 (4) 原告の主張について原告は、その主張に係る本件規範を前提としつつ、原告実験2 に基づき、被告表示2 が被告商品の品質につき誤認を生じさせるものである旨を主張する。 しかし、品質等誤認表示の不正競争に関しては、法2 条1 項20 号の趣旨に鑑み、広告等の表示内容の解釈に当たっては一般消費者の視点に基づき判断するのが相当であるとしても、その表示中に示されたデータ等については、客観的かつ科学的に実証されたものであることを要し、かつ、それで足りると考えられる。そのデータ等の取得に当たって設定されるべき試験条件等についても、法2 条1 項20 号の解 釈として何らかの規律が設けられているとは考えられない。 また、原告実験2 の結果について、「コントロール」の存在を考慮しても、なお上記(3)の疑義はいずれも解消されない。 その他原告が縷々指摘する点を考慮しても、この点に関する原告の主張は採用できない。 (5) 小括 以上のとおり、原告実験2 報告書は、被告表示2 が被告商品の品質につき誤認を生じさせるものであることを裏付けるに足りるものとはいえない。その他被告表示 2 が被告商品の品質につき誤認を生じさせるものであることを裏付けるに足りる証拠もない。 したがって、被告表示2 は、被告商品の品質につき誤認を生じさせるものとは認 められない。 2 被告表示1 の品質誤認表示該当性について(1) 被告表示1 について被告表示1 は、別紙被告表示目録記載のとおり、「高浸透ナノイーで髪へのうるおい1.9 倍」とする表示(被告表示1-1)及び被告表示1-2 質誤認表示該当性について(1) 被告表示1 について被告表示1 は、別紙被告表示目録記載のとおり、「高浸透ナノイーで髪へのうるおい1.9 倍」とする表示(被告表示1-1)及び被告表示1-2 のとおりのものである。「1.9 倍」とは、被告の「従来品2020 年発売EH-NA9E との比較(当社調べ)」とされている。 また、被告表示1-2 には、「毛髪水分増加量」、「高浸透ナノイーがキューティクルのわずかな間から入り込み、髪の表面だけでなく髪の内側にまで水分を与え、うるおいが浸透。毛先まで、まるで水のベールに包まれたような手触りに。」、「【モデル 試験方法】毛髪に、下記条件で施術し、乾燥直後の水分量をFT-NIR 計測」、「【サンプル】ナノイー/当社2020 年発売EH-NA9E 高浸透ナノイー/EH-NA0G」、「【施術条件】1)毛束を水に浸す 2)ドライヤーにて乾燥させる(距離10 ㎝、温風/TURBO)」と記載されている。これらの記載によれば、被告表示1 における「水分増加量」とは、同一の毛束(毛髪)における、髪を乾かした際の水分増加量を意味 するものと理解される。 (2) 原告の主張についてア原告の主張のうち、原告実験2 の結果を前提とするものは、前記1 のとおり、採用できない。 イ原告実験1 に係る報告書「髪の水分含有量レビュー」(甲5 の3。以下「原告 実験1 報告書」という。)によれば、原告実験1 は、被告表示1 において被告が示す 「髪の毛処理方法で髪束サンプルを処理し、フーリエ変換近赤外線スペクトル法(FT-NIR)で髪の水分含有量を測る」ものであると共に、「FT-NIR 法は定性的、またはせいぜい半定量的な測定方法である。カールフィッシャー滴定法…は定量的測定法であ 変換近赤外線スペクトル法(FT-NIR)で髪の水分含有量を測る」ものであると共に、「FT-NIR 法は定性的、またはせいぜい半定量的な測定方法である。カールフィッシャー滴定法…は定量的測定法であるため、本実験でもこの方法で髪の水分含有量を測る」ものとされている。 また、原告実験1 に当たっては、被告商品(「サンプル組」)とEH-NA9E(「対照組」) が比較され、それぞれ5 束の髪の毛を使用している。 原告実験1 の結果について、原告実験1 報告書は、FT-NIR 法で測った場合(原告実験1-1)、被告商品の乾かした髪の水分含有量が増えたのに対し、EH-NA9E の乾かす前後の髪の水分含有量には著しい変化がないとし、ただ、FT-NIR 法は「ばらの材料を分析する半定量的方法であるため、乾す前後の髪の毛の含有量の変化量を測る ことができない。その他の定量的方法が採用されずそのままFT-NIR の結果を髪の実際の水分含有量にイコールすることは適切でない。」とする。他方、KF 法による実験(原告実験1-2)については、原告実験1 報告書は、被告商品とEH-NA9E の「髪の水分含有量が共に減ったことを観察した。」、被告商品と比べ、EH-NA9E の「髪の水分含有量がより顕著に減った。」としている。 ウ原告実験1-1 においては、実験に使用した二組の5 束の髪の毛につき、同一の毛束の、水道水浸漬・乾燥処理前後の水分量が測定されている。その点では、原告実験1-1 においては、被告表示1 の検証・確認実験として適切な対象の測定が行われたものといえる。また、その結果、被告商品の場合には、水道水に浸漬・乾燥後の毛束の水分量は未処理の毛束の水分量よりも増加しているのに対し、EH-NA9E の場合、処理の前後で髪の水分含有量に著し ものといえる。また、その結果、被告商品の場合には、水道水に浸漬・乾燥後の毛束の水分量は未処理の毛束の水分量よりも増加しているのに対し、EH-NA9E の場合、処理の前後で髪の水分含有量に著しい変化がない可能性があるとされている。 他方、原告実験1-2 においては、「濡らし/乾し処理前後の髪の水分含有量を定量する」とされているものの、具体的には、同じ毛束から採取された別の毛髪を水道水浸漬・乾燥処理前に水分量を測定する毛髪と処理後に測定する毛髪として使用し ている。しかし、同じ毛束に属していたといっても、毛髪が異なればその水分量は 当然異なるといえることから、原告実験1-2 においては、同一の毛束(毛髪)における髪を乾かした際の水分増加量に関する被告表示1 の検証・確認実験として適切な対象が測定されているとはいえない。 また、原告実験1 報告書においては、FT-NIR 法は定性的、又はせいぜい半定量的な測定方法であるなどとされている。しかし、証拠(乙7、8)によれば、FT-NIR 法 は、定性分析や定量分析に利用されるものであること、従来の分析法に匹敵する正確さと精度で多成分分析を行うことができる素早くシンプルな非破壊の分析手法であり、初期より、農業から食品業界まで幅広い測定に応用できる非破壊の迅速な分析手法として広く用いられるようになったものとの評価を受けているものであることが認められる。 これらの事情を踏まえると、被告表示1 の検証・確認実験における測定法としては、非破壊的に毛髪中の水分を定量でき、同一の毛髪につき、水道水浸漬・乾燥処理前後の水分量を測定し得るFT-NIR 法の方が、KF 法よりも適切な方法と考えられる。にもかかわらず、原告実験1 においては、FT-NIR 法については定量的な測 の毛髪につき、水道水浸漬・乾燥処理前後の水分量を測定し得るFT-NIR 法の方が、KF 法よりも適切な方法と考えられる。にもかかわらず、原告実験1 においては、FT-NIR 法については定量的な測定方法とは位置付けられておらず、また、KF 法の結果は同一の毛髪で水道水浸漬・乾燥 処理前後の水分量を測定していないこと、そのような不適切な方法を被告表示1 の検証・確認実験として採用したことから、原告実験1 の結果が十分に信頼し得るものであるかについては疑義があるというべきである。これに反する原告の主張は採用できない。 (3) 小括 以上のとおり、原告実験1 報告書は、被告表示1 が被告商品の品質につき誤認を生じさせるものであることを裏付けるに足りるものとはいえない。その他被告表示 1 が被告商品の品質につき誤認を生じさせるものであることを裏付けるに足りる証拠もない。 したがって、被告表示1 は、被告商品の品質につき誤認を生じさせるものとは認 められない。 3 被告表示3 の品質誤認表示該当性について(1) 被告表示3 について被告表示3 は、別紙被告表示目録記載のとおり、「ヘアカラーの色落ちを抑えます」(被告表示3-1)及び「色が抜けにくい」(被告表示3-2)との各記載と共に、被告表示3-3 がされたものである。 また、被告表示3-3 には、「【モデル試験方法】洗髪後、日常的に使用するのと同様に、毛束が乾くまで高浸透ナノイー搭載ヘアードライヤーナノケアを使用した場合とイオンなしドライヤーを使用した場合のヘアカラーした毛束の色の変化(色差)を比較」とも記載されている。 (2) 原告実験3 について ア原告実験3 に係る報告書「洗髪後の髪の色の変化」(甲6。以下「原告実験3報 した場合のヘアカラーした毛束の色の変化(色差)を比較」とも記載されている。 (2) 原告実験3 について ア原告実験3 に係る報告書「洗髪後の髪の色の変化」(甲6。以下「原告実験3報告書」という。)によれば、原告実験3 に当たっては、被告商品(「サンプル組」)とEH-ND2B(「対照組」)を比較し、それぞれ5 束の髪束が使用された。その方法は、黒い髪の毛を均衡で色鮮やかにカラーリングするためにヘアカラー剤で髪束に色を漂白しておき、次に、ヘアーカラー剤でブリーチ処理された髪束を赤色に染め、 洗浄・乾燥を5 回、15 回及び30 回繰り返した後に、分光光度計を利用して髪色を測定し、色差ΔE を求めたものである。 その結果については、「色変化ΔE00 が洗浄/乾燥サイクルの増加に伴い増える。ただ、5、15、30 回の洗浄/乾燥サイクル後、サンプル組と対照組の間で色の変化値ΔE00に統計的に有意な差は観察されなかった。」とされている。 イ原告実験3 報告書では、上記のとおり、色差ΔE 等の数値は示されているものの、洗髪・乾燥後の毛束の写真は掲載されていないことから、人間の目から見て実際にどのような色に見えるのか、どの程度洗髪による色の変化(色落ち)があるのかは理解し得ない。 この点は被告表示3 も同様であるからひとまず措くとしても、被告表示3 では被 告商品と「イオンなしドライヤー」とが比較されているところ、被告表示3 は高浸 透ナノイーの効果を示すことを意図した広告と理解されることに鑑みると、比較対象である「イオンなしドライヤー」は、被告商品とは高浸透ナノイー機能の有無のみが異なるものであることを要するというべきである。端的には、被告商品の高浸透ナノイーを機能させた場合とさせなかった場合とを 象である「イオンなしドライヤー」は、被告商品とは高浸透ナノイー機能の有無のみが異なるものであることを要するというべきである。端的には、被告商品の高浸透ナノイーを機能させた場合とさせなかった場合とを比較とすることが考えられるところ、被告商品において高浸透ナノイーが放出されるイオン口は送風口とは別に 設けられていることから(甲3)、被告商品につき、高浸透ナノイーが機能していない形態で使用することも可能と考えられる。しかるに、原告実験3 では、「イオンなしドライヤー」としてEH-ND2B が比較対象として使用されている。EH-ND2B の機能の詳細は必ずしも明らかでないが、被告商品とEH-ND2B とは、前者は「風量1.5㎡/分 TURBO 時」とされる(甲3)のに対し、後者は「風量1.1 ㎡/分のターボド ライ」とされている(甲18)ことに鑑みると、高浸透ナノイーの有無以外にも、風量等の機能において異なることがうかがわれる。また、その点に配慮した試験条件により原告実験3 が行われたことをうかがわせる記載も、原告実験3 報告書上見当たらない。そうすると、原告実験3 は、比較対象の選定の点で必ずしも適切でないといえる。 以上より、原告実験3 の結果の信用性については疑義がある。これに反する原告の主張は採用できない。 (3) 小括以上のとおり、原告実験3 報告書は、被告表示3 が被告商品の品質につき誤認を生じさせるものであることを裏付けるに足りるものとはいえない。その他被告表示 3 が被告商品の品質につき誤認を生じさせるものであることを裏付けるに足りる証拠もない。 したがって、被告表示3 は、被告商品の品質につき誤認を生じさせるものとは認められない。 4 被告表示4 の品質誤認表示該当性について (1) であることを裏付けるに足りる証拠もない。 したがって、被告表示3 は、被告商品の品質につき誤認を生じさせるものとは認められない。 4 被告表示4 の品質誤認表示該当性について (1) 被告表示4 について 被告表示4 は、別紙被告表示目録記載のとおり、右側には、「高浸透ナノイー&ミネラル搭載新ヘアードライヤーナノケアによってキューティクルの密着性が高まるので、ブラッシングなどの摩擦ダメージを抑えます。」、「【モデル試験方法】毛束を洗浄、ドライヤーにて乾燥した後(約1 分30 秒)、約1,000 回くしで髪をとかし加速試験」と記載されている。他方、同表示左側には、「高浸透ナノイー&ミネラル」 の場合と「イオンなし」の場合との毛髪先端部の各拡大画像と共に、前者の画像上部には「傷みがなく美しい毛先」と、後者の画像上部には「毛先がささくれ傷んで枝毛に」と、それぞれ記載されている。なお、上記各画像は、走査電子顕微鏡(SEM)による画像とみられる。 また、被告ウェブページ上の広告(甲2)において、被告表示4 の上部には、「ブ ラッシングなどの摩擦ダメージを抑え、枝毛を低減」との記載がある。 (2) 原告実験4 についてア原告実験4 に係る報告書「ダメージを受けた髪が千回梳られたあとの毛先状況分析」(甲7。以下「原告実験4 報告書」という。)によれば、原告実験4 に当たっては、被告商品(「サンプル組」)とEH-ND2B(「対照組」)とを比較し、それぞれ 束の髪の毛が使用された。その方法は、まず、サンプル組と対照組の髪の毛のオリジナルの分岐率を測り、髪を洗浄した上で1 分30 秒間乾燥させ、髪を1000 回梳り、その後のサンプル組と対照組の毛先の分岐の比率を測って比較するというものである。 プル組と対照組の髪の毛のオリジナルの分岐率を測り、髪を洗浄した上で1 分30 秒間乾燥させ、髪を1000 回梳り、その後のサンプル組と対照組の毛先の分岐の比率を測って比較するというものである。 イもっとも、原告実験4 では、「SEM 分析には大量の時間がいるため、本分析 には主に目視観察の方法で毛先分岐の計数を行った。…毛先の分岐率を測るために、サンプル組と対照組の5 束の髪の毛よりそれぞれ200 本の髪の毛を取り…、肉眼で毛先の分岐状況を観察する」という方法によっている。この点で、原告実験4 は、SEM 分析に基づく被告表示4 の検証・確認実験といえるものではない。SEM 分析ではなく目視観察によった理由として、原告実験4 報告書では、上記のとおり、SEM 分析には大量の時間を要することを挙げているが、SEM 分析を避ける必要があるほ どの支障があったことをうかがわせる記載は見当たらない。 また、原告実験4 報告書には、処理前後のサンプル組及び対照組の髪の毛からランダムに選択して撮影した2 本の髪の毛先の画像が掲載されているが、被告表示4の画像とは倍率も精度も異なることが一見して明らかである。 加えて、比較対象の選定の点で必ずしも適切でないことは、原告実験3 の場合と 同様である。 以上より、原告実験4 の結果の信用性については疑義があるといえる。これに反する原告の主張は採用できない。 (3) 小括以上のとおり、原告実験4 報告書は、被告表示4 が被告商品の品質につき誤認を 生じさせるものであることを裏付けるに足りるものとはいえない。その他被告表示 4 が被告商品の品質につき誤認を生じさせるものであることを裏付けるに足りる証拠もない。 したがって、被告表示4 は、被告商品の品質につき誤認 ことを裏付けるに足りるものとはいえない。その他被告表示 4 が被告商品の品質につき誤認を生じさせるものであることを裏付けるに足りる証拠もない。 したがって、被告表示4 は、被告商品の品質につき誤認を生じさせるものとは認められない。 被告表示5 の品質誤認表示該当性について(1) 被告表示5 について被告表示5 は、別紙被告表示目録記載のとおり、「摩擦ダメージを抑制」(被告表示5-1)との記載と共に、被告表示5-2 のとおりの表示がされたものである。 被告表示5-2 においては、「【試験方法】」として、「ブリーチ処理した毛束の洗髪、 ドライヤー乾燥、コーミングを繰り返し実施。60 回洗髪ごとにブリーチ処理し、180回まで実施。」などとする記載部分があるが、同部分は後に削除されている(乙10)。 もっとも、上記部分には「毛髪のキューティクル維持率を比較」と記載されている。 被告表示5 が「枝毛発生率の差」に関するものであることはその表示中の他の記載から明らかであるから、上記部分の記載が誤記であることは容易に理解し得る。ま た、被告表示5 は、被告表示4 と共に、被告広告中の「ブラッシングなどの摩擦ダ メージを抑え、枝毛を低減」とする項に配置されていることに鑑みると、被告表示に表示されるデータに係る試験方法が被告表示4 によるものと同じものであることも十分に推認し得る。そうである以上、上記誤記の存在をもって直ちに、被告表示5 につき、被告商品の品質を誤認させるものとまではいえないと考えられる。これに反する原告の主張は採用できない。 (2) 原告実験5 について原告実験5 に係る報告書「180 回の洗浄/乾燥と3 回のブリーチ処理後の枝毛率の分析」(甲8。以下「原告実験5 報告書」という。 原告の主張は採用できない。 (2) 原告実験5 について原告実験5 に係る報告書「180 回の洗浄/乾燥と3 回のブリーチ処理後の枝毛率の分析」(甲8。以下「原告実験5 報告書」という。)によれば、原告実験5 は、上記誤記訂正前の被告表示5 に示された試験方法に基づき実施されたことがうかがわれる。その点で、原告実験5 は、被告表示5 の検証・確認実験といえるものではない。 このことを措くとして、原告実験5 は、被告商品(「サンプル組」)とEH-ND2B(「対照組」)を比較することとし、各5 束の髪束が使用されたものであり、また、その枝毛率の測定は、「サンプル組と対照組の5 束の中に、それぞれ200 本の髪を選び…、目で髪先の枝毛状況を観察する、次は、観察後記載の枝毛本数を纏め、枝毛率を計算した」というものである。しかし、被告表示5 の場合の試験方法としては、 上記のとおり、被告表示4 によるものと同じものであると推認されることに鑑みると、目視での観察結果に基づくという枝毛率算定方法の点でも、原告実験5 は、被告表示5 の検証・確認実験といえるものではない。 加えて、比較対象の選定の点で必ずしも適切でないことは、原告実験3 の場合と同様である。 以上より、原告実験5 の結果の信用性については疑義があるといえる。これに反する原告の主張は採用できない。 (3) 小括以上のとおり、原告実験5 報告書は、被告表示5 が被告商品の品質につき誤認を生じさせるものであることを裏付けるに足りるものとはいえない。その他被告表示 が被告商品の品質につき誤認を生じさせるものであることを裏付けるに足りる証 拠もない。 したがって、被告表示5 は、被告商品の品質につき誤認を生じさせるものとは認められ が被告商品の品質につき誤認を生じさせるものであることを裏付けるに足りる証 拠もない。 したがって、被告表示5 は、被告商品の品質につき誤認を生じさせるものとは認められない。 6 まとめ以上より、被告各表示は、いずれも被告商品の品質につき誤認を生じさせるもの とは認められない。したがって、原告は、被告に対し、法3 条に基づき、被告各表示の差止請求権(同条1 項)及び抹消請求権(同条2 項)をいずれも有しない。 なお、事案に鑑み付言すると、原告は、被告各表示に関する裏付けとなるデータ等を被告が開示しないことにつき、具体的態様の明示義務(法6 条)及び積極否認の際の理由明示義務(民訴規則79 条)に違反するものと指摘する。 しかし、「具体的態様」とは、侵害判断のための対比検討が可能な程度に具体的に記載された物の構成又は方法の内容等を意味すると解されるところ、本件においては、被告商品の品質につき誤認を生じさせるものとされる被告各表示に記載された表示内容は、その記載から明確であるといってよく、その基礎となる被告が保有するはずのデータそれ自体及びこれを導く試験条件等につき、被告各表示において開 示されたもののほかは開示されていないというに過ぎない。このため、現に原告が各実験により試みているように、本件において主張立証すべき対象は、侵害判断のための対比検討が可能な程度に、被告各表示において既に具体的に示されているといえる。そうすると、本件においては、「侵害の行為を組成したものとして主張する物又は方法の具体的態様」(法6 条)が明らかでないとは必ずしもいえない。また、 その点を措くとしても、具体的態様の明示義務に基づき相手方に対して具体的態様の明示を求め得るためには、濫用的・探索的な提訴等を抑 的態様」(法6 条)が明らかでないとは必ずしもいえない。また、 その点を措くとしても、具体的態様の明示義務に基づき相手方に対して具体的態様の明示を求め得るためには、濫用的・探索的な提訴等を抑止する観点から、当該事案の性質・内容等を踏まえつつ、提訴等を一応合理的といい得る程度の裏付けを要すると解される。しかるに、本件においては、上記のとおり対比検討すべき表示内容は明確である上、原告実験1~5 は、その実験方法が被告各表示の検証・確認実験 として不適切であり、また、その結果にはそれぞれ疑義があることを踏まえると、 上記の程度の裏付けがされているとはいいがたい。そうである以上、被告の対応をもって具体的態様の明示義務等に違反するものとまではいえない。 第4 結論よって、原告の請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとする。 東京地方裁判所民事第47 部 裁判長裁判官 杉浦正樹 裁判官 小口五大 裁判官稲垣雄大は、転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官 杉浦正樹

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