平成27(行ウ)315 処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成29年4月21日 東京地方裁判所 その他
ファイル
hanrei-pdf-87461.txt

判決文本文40,920 文字)

- 1 -平成29年4月21日判決言渡平成27年(行ウ)第315号処分取消請求事件主文 1 被告が平成26年6月11日付けで野村證券株式会社に対してした原告に係る外務員の登録を取り消す旨の処分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨。 第2 事案の概要被告は,内閣総理大臣から金融商品取引業者等の外務員の登録に関する事務の委任を受けた認可金融商品取引業協会であるところ,被告に所属する金融商品取引業者である野村證券株式会社(以下「野村證券」という。)の外務員として外務員登録原簿に登録されていた原告において,有価証券の売買その他の取引について,顧客に対して当該有価証券の発行者の法人関係情報を提供して勧誘するという法令に違反する行為をしたとして,野村證券に対し,金融商品取引法(以下「法」という。)64条の5第1項2号の規定により,原告に係る外務員の登録を取り消す旨の処分(以下「本件処分」という。)をした。本件は,原告が,上記の行為をした事実はなく,本件処分は処分要件及び理由提示の要件を欠いた違法な処分であると主張して,被告に対し,本件処分の取消しを求める事案である。 1 関係法令の定め(1) 金融商品取引業者等の使用人等の禁止行為に関する定め法38条は,金融商品取引業者等(金融商品取引業者又は登録金融機関をいう。以下同じ。)又はその役員若しくは使用人は,投資者の保護に欠け,若しくは取引の公正を害し,又は金融商品取引業の信用を失墜させるものとし- 2 -て内閣府令で定める行為をしてはならない旨を定める。 金融商品取引業等に関する内閣府令(以下「府令」という。)117条1項14号(平成26年内閣府令第7号による改正前のもの。以下同号について同じ。)は,上記の内閣府 行為をしてはならない旨を定める。 金融商品取引業等に関する内閣府令(以下「府令」という。)117条1項14号(平成26年内閣府令第7号による改正前のもの。以下同号について同じ。)は,上記の内閣府令で定める行為として,有価証券の売買その他の取引又は有価証券に係るデリバティブ取引若しくはその媒介,取次ぎ若しくは代理につき,顧客に対して当該有価証券の発行者の法人関係情報を提供して勧誘する行為を掲げる。 府令1条4項14号は,上記の「法人関係情報」とは,法163条1項に規定する上場会社等(金融商品取引所に上場されている株券等の有価証券の発行者をいう。)の運営,業務又は財産に関する公表されていない重要な情報であって顧客の投資判断に影響を及ぼすと認められるもの等をいう旨を定める。 (2) 外務員の登録及びその取消しに関する定めア外務員の登録法64条1項は,金融商品取引業者等は,勧誘員,販売員,外交員その他いかなる名称を有する者であるかを問わず,その役員又は使用人のうち,その金融商品取引業者等のために同項各号に掲げる行為(有価証券の売買又はその媒介,取次ぎ若しくは代理,これらの申込みの勧誘等)を行う者(以下「外務員」という。)の氏名,生年月日等につき,外務員登録原簿に登録を受けなければならない旨を定める。 法64条2項は,金融商品取引業者等は,同条1項の規定により当該金融商品取引業者等が登録を受けた者以外の者に外務員の職務(同項各号に掲げる行為をいう。以下同じ。)を行わせてはならない旨を定める。 法64条3項は,同条1項の規定により登録を受けようとする金融商品取引業者等は,登録申請書を内閣総理大臣に提出しなければならない旨を定め,同条5項は,内閣総理大臣は,上記の登録の申請があった場合にお- 3 -いては,法64条の2第1項の けようとする金融商品取引業者等は,登録申請書を内閣総理大臣に提出しなければならない旨を定め,同条5項は,内閣総理大臣は,上記の登録の申請があった場合にお- 3 -いては,法64条の2第1項の規定により登録を拒否する場合を除くほか,直ちに登録をしなければならない旨を定める。 イ外務員の登録の拒否及び取消し法64条の2第1項は,内閣総理大臣は,登録の申請に係る外務員が同項各号のいずれかに該当するときは,その登録を拒否しなければならない旨を定め,同項2号は,法64条の5第1項の規定により外務員の登録を取り消され,その取消しの日から5年を経過しない者を掲げる。 法64条の5第1項は,内閣総理大臣は,登録を受けている外務員が同項各号のいずれかに該当する場合においては,その登録を取り消すことができる旨を定め,同項2号は,金融商品取引業のうち法64条1項各号に掲げる行為を行う業務又はこれに付随する業務に関し法令に違反したとき,その他外務員の職務に関して著しく不適当な行為をしたと認められるときを掲げる。 法64条の5第3項は,内閣総理大臣は,同条1項の規定に基づいて処分をすることとしたときは,書面により,その旨を登録申請者に通知しなければならない旨を定める。 ウ登録事務の委任法64条の7第1項は,内閣総理大臣は,内閣府令で定めるところにより,認可金融商品取引業協会に,法64条,64条の2,64条の5等に規定する登録に関する事務であって当該協会に所属する金融商品取引業者等の外務員に係るものを行わせることができる旨を定める。 府令254条は,上記の規定に基づき,法64条3項の規定による登録申請書の受理,同条5項の規定による登録,法64条の2第1項の規定による登録の拒否,法64条の5第1項の規定による登録の取消し及び同条3項の規定 は,上記の規定に基づき,法64条3項の規定による登録申請書の受理,同条5項の規定による登録,法64条の2第1項の規定による登録の拒否,法64条の5第1項の規定による登録の取消し及び同条3項の規定による通知であって,認可金融商品取引業協会に所属する金融商品取引業者等の外務員に係るものを当該協会に行わせるものとする旨を- 4 -定める。 2 前提事実(証拠等の掲記のない事実は当事者間に争いがない。)(1) 当事者等原告は,平成19年に野村證券と労働契約を締結し,同社の外務員として外務員登録原簿に登録されて外務員の職務に従事していた者である(甲31,弁論の全趣旨)。 被告は,認可金融商品取引業協会であり,野村證券は,被告に所属する金融商品取引業者である。 東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)は,金融商品取引所である東京証券取引所市場第一部に上場されている株券の発行者である(乙18,弁論の全趣旨)。 Z1は,原告の知人であり,コンサルティングや資産運用に関する情報提供等を業とするZ6株式会社(以下「Z6」という。)の代表取締役を務めている者である(甲4,5,乙30,33)。 FirstNewYorkSecuritiesL. L. C.(以下「FNY社」という。)は,ブローカー・ディーラー業務を行うことにつき米国証券取引委員会の登録を受けている同国の法人であり,Z6の顧客である(甲4,乙18,弁論の全趣旨)。 Z2は,FNY社のトレーダーとして同社の保有資産の運用を担当していた者である(甲8の1,2,乙18,弁論の全趣旨)。 (2) 東京電力による公募増資の実施の公表前におけるZ1らによる同社株式の売付けア東京電力は,平成21年12月22日,野村證券を主幹事証券会社として公募増資を実施することにつき,代 旨)。 (2) 東京電力による公募増資の実施の公表前におけるZ1らによる同社株式の売付けア東京電力は,平成21年12月22日,野村證券を主幹事証券会社として公募増資を実施することにつき,代表取締役会長らが承認することにより実質的に決定し,平成22年1月頃から,野村證券との間で公募増資の実施の準備を開始した(乙18,弁論の全趣旨)。 東京電力の代表取締役会長らは,平成22年8月30日までに,公募増- 5 -資の実施に係る取締役会決議を同年9月29日に行うことを了承した(甲31,弁論の全趣旨)。 イ Z1は,平成22年9月27日午後2時58分,東京証券取引所において,株式会社SBI証券を介し,自己の計算において,東京電力の株式100株を23万3600円で売り付け,同月29日午前9時39分,東京証券取引所において,株式会社SBI証券を介し,自己の計算において,東京電力の株式100株を20万9500円で売り付けた。 FNY社は,平成22年9月28日午前9時から同日午後2時34分までの間,東京証券取引所において,ゴールドマン・サックス証券株式会社及び野村證券を介し,自己の計算において,東京電力の株式合計3万5000株を総額8051万8900円で売り付けた。 (甲4,乙18,弁論の全趣旨)ウ東京電力は,平成22年9月29日,取締役会において公募増資の実施の決議をし,同日午後3時50分,その旨が東京証券取引所のウェブサイトに掲載されて公表された(乙18,弁論の全趣旨)。 (3) Z1らに対する課徴金の納付命令ア証券取引等監視委員会は,平成24年6月8日,内閣総理大臣及び金融庁長官に対し,Z1及びFNY社による上記(2)イの株式の売付けが法に規定するいわゆるインサイダー取引に該当するとして課徴金の納付命令の勧告をした(乙 会は,平成24年6月8日,内閣総理大臣及び金融庁長官に対し,Z1及びFNY社による上記(2)イの株式の売付けが法に規定するいわゆるインサイダー取引に該当するとして課徴金の納付命令の勧告をした(乙3)。 イこれを受けて,金融庁長官は,平成25年6月27日,Z1及びFNY社に対し,Z1及びFNY社が,原告から,東京電力の業務執行を決定する機関が株式の募集を行うことについての決定をした旨の重要事実の伝達を受けたとの事実認定の下に,課徴金の納付命令の決定をした(乙18)。 (4) 本件処分ア被告は,平成26年6月11日付けで,野村證券に対し,原告に係る外- 6 -務員の登録を取り消す旨の処分(本件処分)をした。 イ野村證券宛ての本件処分に係る処分通知書には,本件処分の理由として以下のとおり記載されている(乙15)。 「 貴社外務員Z3(外務員ID〔略〕)は,平成22年9月,有価証券の売買その他の取引について,顧客に対して当該有価証券の発行者の法人関係情報を提供して勧誘を行った。 (金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第14号該当)上記の行為は,法令に違反する行為と認められ,金融商品取引法第64条の5第1項第2号に該当する。」 3 争点及び当事者の主張(1) 原告適格の有無(争点1)(原告の主張)外務員の登録を取り消された者は,取消しの日から5年間にわたり外務員の登録を受けることができず(法64条の2第1項2号),その間,金融商品取引業に従事することにより収入を得る途を絶たれるなどの重大な不利益を受けることになる。このような外務員の登録を取り消す旨の処分により生じる不利益の性質及び内容並びにその態様に照らせば,法は,外務員個人が違法に外務員の登録を取り消されない利益を保護しているものと解することが になる。このような外務員の登録を取り消す旨の処分により生じる不利益の性質及び内容並びにその態様に照らせば,法は,外務員個人が違法に外務員の登録を取り消されない利益を保護しているものと解することができる。よって,外務員の登録を取り消される外務員は,外務員の登録を取り消す旨の処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者として,当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(行政事件訴訟法9条1項)に当たり,その取消訴訟における原告適格を有する。 したがって,本件においても,原告は,本件処分の取消訴訟である本件訴えにおける原告適格を有する。 (被告の主張)- 7 -外務員の登録及び監督上の処分の制度は,金融商品取引業者等を主体又は客体とするものであり,外務員個人が主体又は客体となることを予定するものではない。 また,外務員の登録は,金融商品取引業者等が,投資者保護のため外務員の職務の適切性を確保しつつ,金融商品取引業者等としての諸活動を行うためになされるものであって,外務員個人のためになされるものではないこと,外務員の登録の申請主体は金融商品取引業者等であり,個人が外務員の登録を希望したとしても,金融商品取引業者等が当該個人をその役員又は使用人として申請しない限り,外務員の登録を受けることはできないこと,外務員の登録の取消しは,当該外務員が当該金融商品取引業者等において継続して勤務できなくなるという効果を発生させるものではないことからすれば,外務員の登録の制度は,外務員個人が外務員の登録によって受ける利益を保護するものではないことが明らかである。 したがって,外務員個人は,外務員の登録を取り消す旨の処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者とはいえず,原告は,本件 員の登録によって受ける利益を保護するものではないことが明らかである。 したがって,外務員個人は,外務員の登録を取り消す旨の処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者とはいえず,原告は,本件処分の取消訴訟である本件訴えにおける原告適格を有しない。 (2) 原告が府令117条1項14号に該当する行為をしたか否か(争点2)(被告の主張)以下のとおり,原告は,遅くとも平成22年9月27日午前10時30分頃までに,Z1及びZ1を介してFNY社に対し,東京電力による公募増資の実施の公表が同月29日らしいとの趣旨の情報(以下「本件情報」という。)を提供し,もって,顧客であるZ1及びFNY社に対して東京電力の法人関係情報を提供して同社の株式の売付けを勧誘した。この行為は,府令117条1項14号に該当する。 ア本件情報の提供行為の有無について(ア) Z1に対する本件情報の提供- 8 -原告は,平成22年9月下旬頃までに,東京電力による公募増資が実施されることを認識していた野村證券のアナリストと募集担当社員に接触し,同人らとのやり取りを通じて取得した情報を根拠として,東京電力による公募増資の実施が同月29日に公表されるかもしれないことを認識した。そして,原告の知人であるZ1は,FNY社のトレーダーであるZ2に対し,同月21日午前8時43分に,「bytheway, Nomuraguycalled – morefeellike 9501, asAnalystkindofdenying 5020 so.」(私〔Z1〕の野村ガイが電話してきたところによれば,アナリストが5020については否定したので,9501について,5020よりも可能性は高いとのこと。)という内容のメッセージをチャットにより送信し,同月27日午 村ガイが電話してきたところによれば,アナリストが5020については否定したので,9501について,5020よりも可能性は高いとのこと。)という内容のメッセージをチャットにより送信し,同月27日午前10時29分に,「bytheway, Nomuraguyjustsentmsgonmymobile – Dealwillbe 29th (feellike)」(ところで,野村ガイがただいま私〔Z1〕の携帯電話に案件は29日らしいというメッセージを送ってきた。)という内容のメッセージをチャットにより送信した。 「Nomuraguy」(野村ガイ)は原告を意味し,「5020」はJXホールディングス株式会社(以下「JX社」という。)の,「9501」は東京電力のそれぞれ証券コードを意味する。 以上の事実関係からすれば,原告が,野村證券のアナリストらから得た情報をもとに,遅くとも平成22年9月27日午前10時30分頃までに,Z1に対し,本件情報を提供したことは明らかである。 (イ) FNY社に対する本件情報の提供法人関係情報規制の上からは,金融商品取引業者等の役職員が,ある情報を相手方から第三者にも提供されるであろうことを予見して当該相手方に提供したのであれば,当該役職員は,当該第三者に対しても当該情報を提供したと解すべきである。 Z1が代表取締役を務めるZ6は,マーケット情報等を顧客に提供し- 9 -て報酬を受けている会社であるから,同社の業務内容や同社がFNY社を顧客としていたことについて聞かされていた原告としては,Z1に提供した情報が,Z6の顧客であるFNY社にも提供されるであろうことを予見していたことは明らかである。また,Z1から情報の提供を受けていたFNY社のトレーダーのZ2も,Z1とのチャットにより寄せら 提供した情報が,Z6の顧客であるFNY社にも提供されるであろうことを予見していたことは明らかである。また,Z1から情報の提供を受けていたFNY社のトレーダーのZ2も,Z1とのチャットにより寄せられる情報の中に「野村ガイ」からの情報もあることを了知していた。 したがって,FNY社は,Z1を介して原告からの本件情報を提供されているが,法人関係情報規制の上からは,原告は,本件情報をFNY社にも提供したというべきである。 イ法人関係情報該当性について(ア) 上場会社等の公募増資に関する情報は,株価の変動要因となり投資者の投資判断に影響を及ぼすものであるため,公表されていない段階では,法人関係情報に該当する。原告が本件情報を提供したのは,東京電力が公募増資の実施を公表する前であるから,原告が提供した本件情報は法人関係情報に該当する。 (イ) 原告は,法人関係情報は確定的な情報である必要があり,断片的な情報や,他の情報と組み合わせることによって公募増資の実施を予測することが可能になるような情報は,法人関係情報に該当しないと主張する。 しかしながら,府令117条1項14号においては,法人関係情報の取得経過は要件とされていない。同号は,投資者を保護し取引の公正を確保し金融商品取引業の信用を失墜させないことを目的とした法38条の行為規制の一つとして位置付けられるもので,金融商品取引市場の仲介者として,市場,すなわち,一般的抽象的な投資者に対して中立,公正,誠実であるべき金融商品取引業者やその役職員が,特別にその顧客の利益のために行動し,市場の公正を阻害してはならないとの趣旨で定められたものである。したがって,複数の情報を組み合わせて得られた- 10 -情報や,確定的でない情報であっても,法人関係情報の要件に該当する限り,市場の公正を を阻害してはならないとの趣旨で定められたものである。したがって,複数の情報を組み合わせて得られた- 10 -情報や,確定的でない情報であっても,法人関係情報の要件に該当する限り,市場の公正を阻害するものであって,金融商品取引市場の仲介者としてこれを提供することは許されない。原告の上記主張は,法38条の趣旨を没却するものであって容認できない。 ウ顧客該当性及び勧誘行為の有無について(ア) Z1及びFNY社が顧客に該当すること府令117条1項14号は,法人関係情報規制の一内容として位置付けられるものであるが,法人関係情報規制は,内部者取引の未然防止と法人関係情報を利用した不公正取引一般の禁止を目的として,金融商品取引業者等にその管理下におかれた法人関係情報を適切に管理することを義務付けるとともに,当該金融商品取引業者等の役職員が法人関係情報を外部に伝達・伝搬・漏えいすることを禁止している。そうであるとすれば,役職員が,その所属する金融商品取引業者等の管理下におかれた法人関係情報を伝達・伝搬・漏えいしたのであれば,その相手方を「顧客」として同号の規律の対象としなければ,立法目的を達成することができない。 原告は,コンサルティングや資産運用に関する情報提供等を業とするZ6を経営していたZ1に対し,野村證券における寄り付き前の売買の注文状況,バスケット取引の約定状況,特定の銘柄に関するマーケットでの話題などの情報を提供していたが,このような情報提供は,原告にとっても将来の顧客獲得や担当顧客の維持のために有用であり,Z1は,原告から実質的に野村證券の顧客として扱われていたものということができる。そして,Z1は,野村證券の従業員である原告から法人関係情報に該当する本件情報の提供を受けたのであるから,府令117条1項14号に規定 質的に野村證券の顧客として扱われていたものということができる。そして,Z1は,野村證券の従業員である原告から法人関係情報に該当する本件情報の提供を受けたのであるから,府令117条1項14号に規定する顧客に該当することは明らかである。 また,上記ア(イ)のとおり,FNY社は,Z1を介して原告から法人関- 11 -係情報に該当する本件情報を提供されているが,法人関係情報規制の上からは,原告は,本件情報をFNY社にも提供したというべきであるから,FNY社は府令117条1項14号に規定する顧客に該当すると解されるべきである。 (イ) 原告による本件情報の提供行為が勧誘に該当すること府令117条1項14号に規定する勧誘とは,金融商品取引業者等の役職員が積極的・明示的に特定の有価証券の売買等を薦めることまでは必要ではなく,特定の有価証券についての投資者の関心を高めその売買等を促進するような情報,すなわち,情報の提供を受けた者において金融商品取引を促進・誘発されるような情報を提供すれば,同号に規定する提供して勧誘する行為をしたと解される。 原告によるZ1及びFNY社に対する法人関係情報に該当する本件情報の提供が,同時に東京電力の株式の売付けを促進・誘発する行為であったことは明らかであるから,この行為は府令117条1項14号に規定する勧誘する行為に該当する。 (原告の主張)以下のとおり,原告が,Z1及びFNY社に対し,本件情報を提供した事実はなく,東京電力の株式の売付けを勧誘する行為をした事実もない。また,本件情報は法人関係情報に該当せず,Z1及びFNY社は府令117条1項14号に規定する顧客に該当しない。 ア本件情報の提供行為の有無について原告が,野村證券のアナリストらとのやり取りを通じて,法人関係情報の全部若しくは一部, Z1及びFNY社は府令117条1項14号に規定する顧客に該当しない。 ア本件情報の提供行為の有無について原告が,野村證券のアナリストらとのやり取りを通じて,法人関係情報の全部若しくは一部,又はそれ自体は法人関係情報に該当するわけではないが他の情報と相まって法人関係情報となり得る情報(いわゆる示唆情報等)を取得した事実はなく,したがって,これらをZ1らに提供した事実もない。 - 12 -Z1がZ2に対してチャットで送信したメッセージにつき,被告が付した日本語訳は不正確であり,「bytheway, Nomuraguycalled – morefeellike 9501, asAnalystkindofdenying 5020 so.」の正確な訳は,「ところで,(知り合いの)野村の証券営業員が電話してきました。私(Z1)は,東京電力の方がありそうな気がします。アナリストは,なんだかJX社は否定的だったようですし。」であり,「bytheway, Nomuraguyjustsentmsgonmymobile – Dealwillbe 29th (feellike)」の正確な訳は,「ところで,野村の証券営業員が,私(Z1)の携帯電話にちょっとメッセージを送信してきました。私(Z1)は,公募増資の実施公表は29日になるだろうと思います(そんな気がするのです)。」であり,あくまでもZ1自身の心証ないし投資判断を伝える内容である。後者のメッセージの中で「Nomuraguy」がZ1に送信したとされている「メッセージ」は,携帯電話の復元調査などを経ても存在を確認できておらず,そもそも原告がZ1にそのような「メッセージ」を送信した事実は存在しない。 イ法人関係情報該当性について本件において顧客に ッセージ」は,携帯電話の復元調査などを経ても存在を確認できておらず,そもそも原告がZ1にそのような「メッセージ」を送信した事実は存在しない。 イ法人関係情報該当性について本件において顧客に対する提供が禁止される法人関係情報とは,平成22年9月29日に東京電力が公募増資を実施するという確定的な情報であり,断片的な情報や,他の情報と組み合わせることによって公募増資の実施を予測することが可能になるような情報は,単独では顧客の投資判断に影響を及ぼす蓋然性が高い情報であるとはいえないから,法人関係情報に該当しない。 被告は,平成25年4月ないし6月頃に,それ自体は法人関係情報に該当するわけではないが他の情報と相まって法人関係情報となり得る情報(いわゆる示唆情報等)に関し,業務上必要な場合を除き,伝達を制限することが考えられる旨記載した「『協会員における法人関係情報の管理態勢の整備に関する規則』に関する考え方」等(甲11の1,2,甲12)を- 13 -公表したところ,平成22年9月当時,このような情報が法人関係情報に準じて規制対象にされるという認識は,被告も含め証券業界において共有されていなかったから,本件処分は事後処罰というべきであって許されない。 ウ顧客該当性及び勧誘行為の有無について(ア) Z1もFNY社も顧客に該当しないことZ1及び同人が代表取締役を務めるZ6は,野村證券に口座を持っていないし,野村證券を介して株式の売買等の取引を一切行っていない。 原告は,野村證券の機関投資家営業二部に所属し,海外の機関投資家(主にヘッジファンド)向け日本株の営業業務に従事していたから,海外の機関投資家ではないZ1やZ6は担当外である。原告はあくまでも知人としてZ1と情報交換をしていたにすぎず,野村證券で口座を開設させたり,株式 ファンド)向け日本株の営業業務に従事していたから,海外の機関投資家ではないZ1やZ6は担当外である。原告はあくまでも知人としてZ1と情報交換をしていたにすぎず,野村證券で口座を開設させたり,株式の売買等の取引をさせたりしようとする意図は一切なかった。 よって,Z1が府令117条1項14号に規定する顧客に該当しないことは明らかである。 また,原告は,FNY社のトレーダーであるZ2に一切接触しておらず,存在すら知らなかったのであり,FNY社が野村證券で株式の売買等の取引を行う具体的・現実的可能性はなかった。原告は,Z1に提供した情報がZ1を通じてFNY社に提供されるとは全く考えておらず,Z1を情報提供の道具として利用する意思を全く有していなかったのであり,Z1をFNY社への情報提供の道具とみなすことはできない。よって,FNY社も府令117条1項14号に規定する顧客に該当しないことが明らかである。 (イ) 原告は勧誘をしていないこと原告は,Z1に対し,野村證券で口座を開設し,東京電力の株式の売買をするよう勧誘する意思は一切有しておらず,Z1に対して東京電力- 14 -による公募増資に関する法人関係情報の提供をしておらず,当然ながら東京電力の株式の売買を勧誘することはしていない。 また,原告は,存在も知らないFNY社のトレーダーであるZ2に対し,FNY社が野村證券に口座を開設し株式の売買等の取引をするよう勧誘する意思があろうはずもなく,FNY社に対して東京電力による公募増資に関する法人関係情報の提供をしておらず,当然ながら東京電力の株式の売買を勧誘することはしていない。 (3) 処分理由の提示の要件を欠いた違法の有無及び同違法が原告の法律上の利益に関係のない違法に該当するか否か(争点3)(被告の主張)ア処分理由の提示の の売買を勧誘することはしていない。 (3) 処分理由の提示の要件を欠いた違法の有無及び同違法が原告の法律上の利益に関係のない違法に該当するか否か(争点3)(被告の主張)ア処分理由の提示の要件を欠いた違法の有無について野村證券は,事故顛末報告書(乙6の1)及び「行為者Z3の経緯書について」と題する文書(乙6の2)において,事故を起こした主体を原告,違反該当条項を府令117条1項14号,行為の期間を平成22年9月などと記載し,事故の内容についても,課徴金納付対象者X(Z1)に対して東京電力による公募増資に関する未公表の情報を伝達した行為を詳細に記載しているところ,本件処分に係る処分通知書における理由の記載は,行為主体,法令の該当条文,行為の内容及び期間において,野村證券が自ら作成した上記各文書の記載と一致又は整合している。そして,野村證券は,上記各文書を被告に提出して,原告が顧客に対して法人関係情報を提供して勧誘した行為を被告に申告し,被告は同申告に基づき本件処分を行ったのであるから,本件処分の名宛人である野村證券において,処分通知書における理由の記載によって,原告のいかなる具体的行為が顧客に対して法人関係情報を提供して勧誘する行為に該当するのか等,本件処分の理由を知ることができたことは明白である。 また,処分通知書における理由の記載から,本件処分の対象となる行為- 15 -が「法人関係情報を提供して勧誘する行為」であり,これが府令117条1項14号の規定に違反するものであって,法64条の5第1項2号に該当することは容易に了知することができること,同項の規定による処分について行政庁による処分基準は定められていないこと,外務員の登録が取り消されたとしても,野村證券において原告を他の職務に従事させること自体を妨げるもので することができること,同項の規定による処分について行政庁による処分基準は定められていないこと,外務員の登録が取り消されたとしても,野村證券において原告を他の職務に従事させること自体を妨げるものではなく,名宛人である野村證券の金融商品取引業者としての業務の執行に支障を来すものではないという本件処分の性質,本件処分の原因となる事実関係は,原告が,平成22年9月,有価証券の売買その他の取引について,顧客に対して当該有価証券の発行者の法人関係情報を提供して勧誘する行為をしたという極めて単純なものであり,本件処分の際には,証券取引等監視委員会の勧告及び金融庁長官の課徴金納付命令の決定等により同事実が公表され,野村證券自ら事実関係を認めていたのであるから,処分通知書における理由の記載自体から,本件処分の名宛人である野村證券のみならず,第三者においても,本件処分の原因となる事実関係の内容を当然に了知できたこと,以上を総合考慮すれば,本件処分に係る処分通知書における理由の記載は,行政手続法14条1項本文の要求する理由提示として十分であることは明らかである。 よって,本件処分に,行政手続法14条1項本文の定める理由提示の要件を欠いた違法はない。 イ原告の法律上の利益に関係のない違法に該当するか否かについて原告は本件処分の名宛人でない以上そもそも行政手続法14条1項本文の適用を受ける者ではないこと,原告は本件処分により直接に義務を課され又はその権利を制限される者ではなく,同項本文の保護する利益との関係において反射的利益を受ける者にすぎないことからすれば,同項本文の定める理由提示の要件を欠いた違法は,原告の法律上の利益に関係のない違法であるというべきであるから,これを理由として本件処分の取消しを- 16 -求めることはできない(行政事件訴訟 ,同項本文の定める理由提示の要件を欠いた違法は,原告の法律上の利益に関係のない違法であるというべきであるから,これを理由として本件処分の取消しを- 16 -求めることはできない(行政事件訴訟法10条1項)。 (原告の主張)ア処分理由の提示の要件を欠いた違法の有無について本件処分に係る処分通知書には,「平成22年9月」という幅のある期間が記載されているのを除けば,府令117条1項14号の規定の文言どおりの記載しかされておらず,対象行為たる事実関係を記載せずに罰条の記載しかしていないに等しい。原告が法人関係情報を取得したとする年月日,情報源及び情報取得の方法並びに法人関係情報を提供したとする年月日,相手方及び提供手段等の具体的事実関係が一切特定されておらず,処分通知書の記載自体からは,いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して本件処分がされたかを了知することは到底できない。 よって,本件処分は,理由提示の要件を欠いた違法な処分である。 イ原告の法律上の利益に関係のない違法に該当するか否かについて原告は,本件処分の名宛人ではないものの,本件処分により直接にその権利義務関係に変動を生じる立場にあるから,このような原告の立場に鑑みれば,本件処分の名宛人である野村證券が主張できることはすべて,原告も主張することができると解される。したがって,理由提示の要件を欠いた違法は,原告の法律上の利益に関係のない違法であるということはできず,これを理由として本件処分の取消しを求めることは何ら制限されない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(原告適格の有無)について(1) 行政事件訴訟法9条は,取消訴訟の原告適格について規定するが,同条1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の 1(原告適格の有無)について(1) 行政事件訴訟法9条は,取消訴訟の原告適格について規定するが,同条1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうと解すべきである(最高裁昭和4- 17 -9年(行ツ)第99号同53年3月14日第三小法廷判決・民集32巻2号211頁,最高裁平成元年(行ツ)第130号同4年9月22日第三小法廷判決・民集46巻6号571頁等参照)。そして,処分の名宛人以外の者が処分の法的効果による権利又は法律上保護された利益の制限を受ける場合には,その者は,処分の名宛人として権利又は法律上保護された利益の制限を受ける者と同様に,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者として,当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に当たり,その取消訴訟における原告適格を有するものというべきである(最高裁平成24年(行ヒ)第156号同25年7月12日第二小法廷判決・裁判集民事244号43頁参照)。 (2) 法は,外務員の登録を申請してこれを受ける主体を金融商品取引業者等と定め(64条1項,3項),法64条の5第1項の規定に基づいて外務員の登録を取り消す旨の処分をすることとしたときは,その旨を登録申請者である金融商品取引業者等に通知しなければならない旨を定めている(同条3項)ことからすれば,同条1項の規定による外務員の登録を取り消す旨の処分の名宛人は金融商品取引業者等であって,登録を取り消される外務員は同処分の直接の名宛人ではないものといわざるを得ない。 しかしながら,法の規定によれば,登録を取り消された外務員については,その取消し 名宛人は金融商品取引業者等であって,登録を取り消される外務員は同処分の直接の名宛人ではないものといわざるを得ない。 しかしながら,法の規定によれば,登録を取り消された外務員については,その取消しの日から5年を経過するまでは再度の登録が拒否されることとなり(64条の2第1項2号),その間,金融商品取引業者等は,当該外務員に外務員の職務を行わせることができなくなる(64条2項)のであるから,金融商品取引業者等との間で労働契約を締結し,外務員の登録を受けて当該金融商品取引業者等の外務員の職務に従事していた者(以下「労働者外務員」という。)について,法64条の5第1項の規定による外務員の登録を取り消す旨の処分がされた場合には,その処分の法的効果として,当該外務員が,- 18 -その本来の職務である外務員の職務に就くことができず,使用者の責めに帰することができない事由による就労不能として,その対価である賃金の支払請求権を失う(民法536条1項)などの労働契約上の権利の制限を受けることとなることは明らかである。 そうすると,労働者外務員は,自己についてされた法64条の5第1項の規定による外務員の登録を取り消す旨の処分の法的効果による権利の制限を受けるものであって,当該処分により自己の権利を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者として,当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に当たり,その取消訴訟における原告適格を有するものと解するのが相当である。 (なお,この点に関連して,法64条の9は,法64条の7第1項の規定により登録事務を行う認可金融商品取引業協会の法64条の5第1項の規定による処分について不服がある金融商品取引業者等は,内閣総理大臣に対し,審査請求をすることができる旨を定めるが,この規定は,当該処分について, を行う認可金融商品取引業協会の法64条の5第1項の規定による処分について不服がある金融商品取引業者等は,内閣総理大臣に対し,審査請求をすることができる旨を定めるが,この規定は,当該処分について,内閣総理大臣に対する審査請求ができることを定めることに主眼が置かれたものであって,その審査請求の主体を金融商品取引業者等に限定し,当該処分に係る外務員からの審査請求を許さないとするまでの趣旨ではないものと解される。)(3) 前記前提事実(1)によれば,原告は,金融商品取引業者等である野村證券との間で労働契約を締結し,外務員の登録を受けて同社の外務員の職務に従事していたというのであるから,その外務員の登録を取り消す旨の本件処分の取消訴訟である本件訴えにおいて原告適格を有するものというべきである。 2 争点2(原告が府令117条1項14号に該当する行為をしたか否か)について(1) 認定事実- 19 -ア野村證券における情報管理及び原告の業務内容野村證券においては,上場会社等の運営,業務又は財産に関する公表されていない重要な情報であって顧客の投資判断に影響を及ぼすと認められるものに接する可能性が高いと考えられる部署を「イン部署」と総称し,機関投資家や個人投資家に対して販売活動を行い通常はこうした情報に接する可能性が低いと考えられるイン部署以外の部署を「アウト部署」と総称していた。イン部署とアウト部署との間には情報の隔壁(いわゆる「チャイニーズ・ウォール」)が施されており,上記の情報に当たるものとの扱いがされていた公募増資に関する未公表の情報をイン部署からアウト部署に伝達するためには,売買管理部長の承認を得る必要があった。また,公募増資の実施の公表後の販売活動等の準備のため,アウト部署に所属する社員に対し,「イン登録」と呼ばれ の情報をイン部署からアウト部署に伝達するためには,売買管理部長の承認を得る必要があった。また,公募増資の実施の公表後の販売活動等の準備のため,アウト部署に所属する社員に対し,「イン登録」と呼ばれる所定の手続を経た上で,公募増資に関する未公表の情報を伝達することがあった。 (甲13・15,19~21頁,乙37・3,7,8頁)原告は,平成22年9月当時,アウト部署である機関投資家営業二部に所属し,海外の機関投資家に日本の株式に関する情報を提供し,取引を受注する業務(リサーチ・セールス業務)を担当していた(甲5・3,4頁)。 イ原告,Z1及びZ2の関係等(ア) 原告とZ1の関係等Z1は,平成▲年▲月から平成▲年▲月まで,投資運用会社であるZ7株式会社にマーケットアナリストとして勤務していた。当時,野村證券の機関投資家営業部に所属していた原告は,Z1に対し,原告の担当する野村證券の顧客として,野村證券の調査部アナリストが推奨する銘柄の情報提供等を行っていた。 Z1は,平成▲年▲月,Z7株式会社を退職し,平成22年1月,コンサルティングや資産運用に関する情報提供等を業とするZ6を設立し- 20 -た。Z1がZ7株式会社を退職した後は,原告の担当する顧客ではなくなったが,原告と個人的に業務に関する情報交換を毎日のように行っており,Z1は,原告に対し,マクロ経済の動向,海外市況,市場に対する見方等を話し,原告は,Z1に対し,ミクロ情報,例えば,日々のマーケット動向,主要な個別銘柄の決算発表の内容や業績予想等について話していた。また,原告は,Z1からの要望により,野村證券のストラテジストやエコノミストによるセミナーの案内を提供することもあった。 なお,原告は,Z1から,報酬や謝礼等を受け取ったことはない。また,Z1は,野村證券に 告は,Z1からの要望により,野村證券のストラテジストやエコノミストによるセミナーの案内を提供することもあった。 なお,原告は,Z1から,報酬や謝礼等を受け取ったことはない。また,Z1は,野村證券に口座を持った顧客ではない。 (甲4・1,2,5,6頁,甲5・6,7頁,甲13・64頁,甲17・2,3頁,乙24・2,3頁,乙34・2,3頁,乙40・22,23頁)(イ) Z1とZ2の関係等Z1とZ2は証券会社の元同僚であり,両名が同社を退職した後も連絡を取り合っていた。Z1は,Z6を設立した際,当時FNY社のトレーダーであったZ2を介し,FNY社との間でコンサルティング契約を締結し,同社がZ6の最初の顧客となった。 Z6は,FNY社に対し,東京証券取引所のいわゆる板情報を分析した情報や,証券会社主催のセミナー,ストラテジスト等とのミーティング,調査レポートやメディア情報の分析等により得られた情報を提供していた。 (甲4・2,3頁,甲8の1,8の2,甲17・6,7頁)(ウ) 原告とZ2の関係等原告は,Z2と面識がなく,メール,チャット,電話等で話したこともない。また,FNY社は,野村證券の米国現地法人に取引口座を持っているものの,野村證券(日本法人)に口座を持った顧客ではない。(甲- 21 -4・4頁,甲8の1,8の2,甲13・64頁,甲17・9頁,乙24・3頁)(なお,Z1は,証券取引等監視委員会証券調査官による質問調査において,平成22年1月にZ6を立ち上げた際,原告に対し,FNY社を顧客としてビジネスを立ち上げたことについて話したと供述していたが(乙33の質問調書・5頁),この供述を裏付けるに足る証拠はなく,その後,Z1は,金融庁の審判手続での被審人審問において,上記質問調書の記載は誤りであり,Z6の設立時にそ いて話したと供述していたが(乙33の質問調書・5頁),この供述を裏付けるに足る証拠はなく,その後,Z1は,金融庁の審判手続での被審人審問において,上記質問調書の記載は誤りであり,Z6の設立時にそのようなことを原告に話した記憶は全くないと述べるに至っている(乙34・27~30頁)。また,原告は,金融庁の審判手続での参考人審問において,Z1からFNY社のZ2について聞いたのは平成23年か24年になってからであり,それまでは,FNY社がZ6の顧客であることを知らなかったと述べている(乙24・3頁,乙35・42,43頁)。このような証拠関係に照らせば,Z1が,平成22年1月,原告に対し,FNY社を顧客としてビジネスを立ち上げたことを話したとの事実を認定することはできず,原告が,同年9月当時,FNY社がZ6の顧客であることを知っていたとの事実を認定することもできない。)ウ東京電力による公募増資の実施の可能性に関する原告の認識状況(ア) 原告は,平成22年9月8日,顧客の一人から,「他の証券会社の営業マンから東京電力の公募増資の噂を聞いたので確認してくれないか。」という趣旨の連絡を受けた。この依頼を受け,原告は,野村證券の電力・石油セクター担当の証券アナリストであるZ4に対し,電力セクターのバリュエーション・シート(アナリストが担当する銘柄のレーティングの評価や企業価値計算表が掲載されているリスト)の送付を依頼するとともに,石油セクターのバリュエーション・シートの送付も依頼し,これらを入手して当該顧客に転送した。原告が石油セクターのバリュエー- 22 -ション・シートの送付をも依頼したのは,同年8月19日の日本経済新聞(以下「日経新聞」という。)にJX社が大規模な資源開発事業を行うという記事(甲4・資料4参照)が掲載されているの - 22 -ション・シートの送付をも依頼したのは,同年8月19日の日本経済新聞(以下「日経新聞」という。)にJX社が大規模な資源開発事業を行うという記事(甲4・資料4参照)が掲載されているのを読み,JX社が公募増資を実施する可能性があるのではないかと推測していたためである。(甲5・8,9頁,乙24・4,5頁,乙40・11~13頁)原告は,上記顧客からの連絡を受けた後,その翌日頃までに,Z1に対し,電話で,東京電力による公募増資について噂があることを伝えた(甲3・12頁,甲4・7頁,甲5・16頁)。 また,野村證券においては,公募増資が近づくと,バリュエーション・シートから当該銘柄に関する情報を削除しなければならなくなるという内部ルールが存在し,原告も,公募増資が予定されている場合等にバリュエーション・シートから個別銘柄が削除される場合があることを知っていたが,原告がZ4から入手した上記バリュエーション・シートには,東京電力に関する情報も記載されていた(甲3・9,10頁,乙37・10頁)。 (イ) 東京電力は,平成22年9月13日,中期経営計画(「東京電力グループ中長期成長宣言2020ビジョンの策定について」)を発表したところ,その中には1兆円規模の海外投資をするという内容が含まれていた。原告は,この発表内容に加え,同月8日頃から東京電力の株価が下落基調にあったことから,東京電力が公募増資を実施する可能性もあると考えた。もっとも,東京電力は,上記中期経営計画の発表の際,公募増資を実施する可能性について否定的な見解を示したとの他社の証券アナリストによる分析もなされていた。(甲5・10,13頁,甲18から21まで,乙20・3,4頁,乙24・4頁,乙35・9頁,乙40・7頁)また,原告は,平成22年9月21日,Z4に対し,「 証券アナリストによる分析もなされていた。(甲5・10,13頁,甲18から21まで,乙20・3,4頁,乙24・4頁,乙35・9頁,乙40・7頁)また,原告は,平成22年9月21日,Z4に対し,「東京電力の中期経営計画書には,1兆円もの海外投資開発計画がありますが,どうやっ- 23 -て調達するのですか。銀行からの借入れより,公募増資を選択するのでしょうか。」と質問したところ,Z4から,「可能性は否定できないね。 やってもおかしくないよ。」との回答を得た。その際,原告は,Z4とJX社による公募増資の実施の可能性についても話をしたところ,原告は,Z4の話しぶりから,Z4がJX社による公募増資の実施の可能性については否定的な見解を持っているとの印象を受けた。(甲5・10,11頁,甲13・77頁,乙27,乙35・8頁,乙40・15,16,65,66頁)原告は,以上のような情勢の推移の下で,平成22年9月16日には,顧客に対し,JX社や東京電力等につき公募増資の噂がある,東京電力とJX社は公募増資がありそうである,東京電力は社債や借入により借り換えが可能なので,100パーセントの自信はないがJX社の方がより公募増資の可能性があるとの内容のメールを送信し,その後,同月21日から同月22日にかけての頃には,顧客に対し,東京電力の株式の売りを推奨する旨のメールを送信した(甲5・13,14頁,乙28,乙35・9頁,乙40・7頁)。 (ウ) 原告は,平成22年9月21日から同月24日にかけての頃,野村證券の機関投資家営業二部において営業員の休暇管理をしていたZ5に対し,同月の最終週(27日〔月曜日〕から30日〔木曜日〕までの週)に休暇を取得できるかどうかを質問したところ,Z5から,「取ろうと思えば取れるが,忙しくなりそう。」との回答を得た( していたZ5に対し,同月の最終週(27日〔月曜日〕から30日〔木曜日〕までの週)に休暇を取得できるかどうかを質問したところ,Z5から,「取ろうと思えば取れるが,忙しくなりそう。」との回答を得た(甲5・12頁,乙24・5頁,乙35・20,21頁,乙40・18,19頁)。 また,原告は,平成22年9月20日前後頃から同月24日頃までの間に,Z5に対し,同月29日に顧客とのディナーを入れることができるかを確認したところ,Z5から,「その日は何かがあるかもしれない。 規模は大きいかもしれない。」との回答を得た(甲5・13頁,甲14の- 24 -1・5枚目,甲14の2・4枚目,乙27,乙35・21頁,乙40・21頁)。 なお,Z5は,機関投資家営業二部において,公募増資等のファイナンス案件に関する部内の取りまとめ等を行う募集担当を務めており,案件の担当部署から,銘柄名を伏せた上で未公表の公募増資等の実施予定を事前に伝えられていたが,Z5が東京電力による公募増資が実施されることを認識したのは,平成22年9月24日に正式にイン登録された時点である(甲13・79頁,乙21,乙37・11,12頁)。 原告は,Z5からの回答と自分のこれまでの推察を組み合わせることなどによって,可能性の一つとして,平成22年9月29日に東京電力による公募増資の実施が公表されるかもしれないと考えた(乙27,乙35・21頁,乙40・43~45頁)。 エ Z1とZ2との間のメッセージのやり取りZ1は,以下の各日時(いずれも日本時間)において,Z2との間で,チャットを通じて以下の内容の各メッセージを送受信した(乙29。訳文については当事者間に争いがあるので,各メッセージの末尾の【】内に,被告が依拠する証券取引等監視委員会証券調査官作成の調査官報告書(乙29)による 以下の内容の各メッセージを送受信した(乙29。訳文については当事者間に争いがあるので,各メッセージの末尾の【】内に,被告が依拠する証券取引等監視委員会証券調査官作成の調査官報告書(乙29)による訳文と,原告が依拠するZ1ら作成の陳述録取書(甲3)による訳文の双方を,この順番で付記した。)。なお,以下の各メッセージ中の「Nomuraguy」【野村ガイ/野村の証券営業員】とは,Z1の認識においては原告を意味し,原告もこれを争わない(甲4・4頁,甲17・24頁,乙35・19頁)。 (ア) 平成22年9月9日午前9時43分から同時45分までの間Z1 「Nomuraguysaying – Tepcorumoreddealyesterday..?」(以下「本件第1メッセージ」という。)【野村ガイが,昨日東京電力の案件の噂を聞いたと言っている。 - 25 -/野村の証券営業員が言っています。昨日,東京電力の公募増資の噂が(市場に)出ましたか?】(「saying –」の次の「Tepcorumoreddealyesterday」が,「Nomuraguy」が言ってきたとする内容を記載したものか,Z1自身のZ2への問いかけの内容を記載したものかについて争いがあるが,Z1は,甲3・12頁において,原告が前日の8日に顧客から東京電力の公募増資の噂のことを聞いた旨を原告から聞いたことが,本件第1メッセージを送信するきっかけとなったことは認めている。)Z2「yessomeonesaidtomemaybetepco」【ああ,誰かも自分(Z2)に東京電力かもしれないと言った。 /はい,そうです。東京電力かもしれないと私(Z2)に言った人がいました。】Z1 「HecheckedwithAnalysttho’, ,誰かも自分(Z2)に東京電力かもしれないと言った。 /はい,そうです。東京電力かもしれないと私(Z2)に言った人がいました。】Z1 「HecheckedwithAnalysttho’, theydon’tthinksodatte.maybeResouces, Utilityetcrumor –>Tepco? stillHefeellike 5020 tho’ 」(以下「本件第2メッセージ」という。)【彼は,アナリストに確認したんだけど,彼らはそう思わないんだって。資源(業種)か公益(業種)などの噂から東京電力ということになったんだろうか?もっとも,彼はまだ5020(JX社の証券コード)のような気がするらしいんだけど。/(甲3には,本件第2メッセージの訳は記載されていないが,Z1は,甲3・13頁において,本件第2メッセージ中の「He」(彼)が「Nomuraguy」,すなわち,原告を指すことを認めている。)】(イ) 平成22年9月14日午後2時Z1 「9501 – bytheway.. justNomuraguycalled. today’sNikkei- 26 -saying 1trnyinvestingfor 10yrs. Stockhasbeensoldthesedays,.. youhearingany? Nomuraguysaysstillfeellike 5020 tho’.. notsuresureyetso.」(以下「本件第3メッセージ」という。)【ところで,9501(東京電力の証券コード)の件で,ちょうど今,野村ガイが「1兆円規模の投資を今後10年間で行うと日経が報じている。」と電話してきた。東電の株はこのごろ売られて ジ」という。)【ところで,9501(東京電力の証券コード)の件で,ちょうど今,野村ガイが「1兆円規模の投資を今後10年間で行うと日経が報じている。」と電話してきた。東電の株はこのごろ売られているんだけど,何か聞いてる?野村ガイは依然として5020らしいと思っているんだけど,まだぜんぜんはっきりしない。/9501のことです。ところで,野村の証券営業員がちょっと電話してきました。今日の日経新聞は,今後10年で1兆円規模の投資をすると報じています。このところ,株も売られています。あなた(Z2)は,何か聞いていますか?それでも,野村の証券営業員は,まだ5020のような気がすると言っています。今はまだ,よく分かりません。】(「Nomuraguycalled.」の次の「today’sNikkeisaying1trnyinvestingfor 10yrs.」が,「Nomuraguy」が電話で伝えてきたとする内容を記載したものか否かについて争いがある。)(ウ) 平成22年9月21日午前8時43分から同時44分までの間Z1 「bytheway, Nomuraguycalled – morefeellike 9501, asAnalystkindofdenying 5020 so.」(以下「本件第4メッセージ」という。)【私(Z1)の野村ガイが電話してきたところによれば,アナリストがJX社については否定したので,東京電力について,JX社よりも可能性が高いとのこと。/ところで,(知り合い- 27 -の)野村の証券営業員が電話してきました。私(Z1)は,東京電力の方がありそうな気がします。アナリストは,なんだかJX社は否定的だったようですし。】(「Nomuraguycalled –」の次の「 野村の証券営業員が電話してきました。私(Z1)は,東京電力の方がありそうな気がします。アナリストは,なんだかJX社は否定的だったようですし。】(「Nomuraguycalled –」の次の「morefeellike 9501」が,「Nomuraguy」が電話で伝えてきたとする内容を記載したものか,Z1自身の心証ないし投資判断を記載したものかについて争いがある。 なお,「asAnalystkindofdenying 5020 so.」が,「Nomuraguy」,すなわち,原告が伝えてきたとする内容を記載したものであることについては争いがない。)Z2「okgreatamstilltheresoseehowitplaysthisweek」【オッケー,素晴らしい。今週はちょっと様子を見ようかな。 /了解です。素晴らしい。今週はなお,市場がどう動くのか様子を見るつもりです。】(エ) 平成22年9月27日午前10時29分から同時38分までの間Z1 「bytheway, Nomuraguyjustsentmsgonmymobile – Dealwillbe 29th (feellike)」(以下「本件第5メッセージ」という。)【ところで,野村ガイがただいま私(Z1)の携帯電話に案件は29日らしいというメッセージを送ってきた。/ところで,野村の証券営業員が,私(Z1)の携帯電話にちょっとメッセージを送信してきました。私(Z1)は,公募増資の実施公表は29日になるだろうと思います(そんな気がするのです)。】(「Nomuraguyjustsentmsgonmymobile –」の次の「Dealwillbe 29th (feellike)」が,「Nomura んな気がするのです)。】(「Nomuraguyjustsentmsgonmymobile –」の次の「Dealwillbe 29th (feellike)」が,「Nomuraguy」が送信してきたとするメッセージの内容を記載したものか,Z1自身の心証ないし投資判断を記載したものかについて争いがある。)- 28 -Z2「awesomedomo」【すばらしい。どうも。/あなたの読みはすごいです。どうも(ありがとうございます)。】Z1 「9501 feellikestilldatte.」(以下「本件第6メッセージ」という。)【依然として,9501だろうって。/9501のような気がする「だって」。今でもなお,そういう気がしているそうです。】Z1 「onmobilenow.」(以下「本件第7メッセージ」という。)【今,携帯で。/今,携帯電話でそう言ってきました。】(なお,Z1は,甲3・34頁において,本件第6及び第7メッセージは,原告が,携帯電話により,Z1に対し,東京電力による公募増資の実施の公表が近いような気がしているという趣旨を述べたことを意味していると思う旨述べている。)(2) 本件情報の提供行為の有無についてア Z1に対する本件情報の提供行為の有無について(ア) 検討a 前記(1)認定事実ウによれば,原告は,顧客から聞いた噂の内容,東京電力が発表した中期経営計画の内容,東京電力の株価の下落の状況といった諸事情から,東京電力が公募増資を実施する可能性があると考えていたものの,平成22年9月16日の時点では,大規模な資源開発事業を行うことが日経新聞で報じられていたJX社が公募増資を実施する可能性の方が高いと考えていたこと(同(ア),(イ)),しかしながら,同月21 の,平成22年9月16日の時点では,大規模な資源開発事業を行うことが日経新聞で報じられていたJX社が公募増資を実施する可能性の方が高いと考えていたこと(同(ア),(イ)),しかしながら,同月21日,Z4から,東京電力が公募増資を実施する可能性を否定できず,やってもおかしくないとの回答を得,さらにZ4の話しぶりから,Z4がJX社による公募増資の実施の可能性については否定的な見解を持っているとの印象を受けたこと(同(イ))などから,- 29 -東京電力による公募増資の実施の可能性が高いとの認識を持つに至り(顧客に対する東京電力の株式の売りの推奨はそのような認識の表れとみることができる。),さらに,同月20日前後頃から同月24日頃までの間に,Z5から,同月の最終週は休暇を取ろうと思えば取れるが忙しくなりそうである,同月29日は何かがあるかもしれず,規模は大きいかもしれないとの回答を得たこと(同(ウ))から,遅くとも同月24日頃までには,可能性の一つとして,同月29日に東京電力による公募増資の実施が公表されるかもしれないと考えるに至ったことが認められる。 b そして,このような原告の認識状況と,Z1とZ2との間のメッセージのやり取りの状況(前記(1)認定事実エ)とを併せみると,原告は,平成22年9月8日,顧客から東京電力による公募増資の噂を聞き,翌9日頃までにこれをZ1に伝え(同ウ(ア)),Z1は,これをきっかけとして同月9日にZ2に送信した本件第1メッセージ以下において,Z2との間で東京電力による公募増資の噂に関するメッセージのやり取りをしており(同エ(ア)),その際,Z1は,Z2に対し,「Nomuraguy」(原告)がアナリストに確認したところ,彼ら(アナリスト)は東京電力が公募増資を実施するとは思っていない,「Nomur をしており(同エ(ア)),その際,Z1は,Z2に対し,「Nomuraguy」(原告)がアナリストに確認したところ,彼ら(アナリスト)は東京電力が公募増資を実施するとは思っていない,「Nomuraguy」(原告)はJX社が公募増資を実施するような気がするらしいとの趣旨の本件第2メッセージを送信しているところ(同エ(ア)),この内容は,その当時の原告の認識内容及び原告が顧客から噂を聞いて入手したバリュエーション・シートの記載内容からうかがわれる担当の証券アナリストであるZ4の認識内容(同ウ(ア))と一致しており,Z1は,同月14日にZ2に送信した本件第3メッセージにおいて,「Nomuraguy」(原告)が電話してきたと言及した上,これに引き続き,同月13日に発表された東京電力の中期経営計画の内容や,東京電力の株式- 30 -が売られていること(株価が下落基調にあること)に言及し,それでも「Nomuraguy」(原告)がまだJX社が公募増資を実施するような気がすると言っている旨を述べているところ(同エ(イ)),この内容は,その当時の原告の認識内容(同ウ(イ))と一致しており,Z1は,同月21日にZ2に送信した本件第4メッセージにおいて,「Nomuraguy」(原告)が電話してきたと言及した上,これに引き続き,東京電力が公募増資を実施する可能性の方がありそうな気がする,アナリストはJX社が公募増資を実施する可能性について否定的であったようである旨のメッセージをZ2に送っているところ(同エ(ウ)),この内容は,原告が同日にZ4から得た回答の内容及びZ4の話しぶりから受けた印象(同ウ(イ))と一致しており,Z1は,同月27日にZ2に送信した本件第5メッセージにおいて,「Nomuraguy」(原告)が携帯電話にメッセージを 得た回答の内容及びZ4の話しぶりから受けた印象(同ウ(イ))と一致しており,Z1は,同月27日にZ2に送信した本件第5メッセージにおいて,「Nomuraguy」(原告)が携帯電話にメッセージを送信してきたと言及した上,これに引き続き,公募増資の実施の公表は29日になるような気がする旨のメッセージをZ2に送り,さらに,同日の本件第6及び第7メッセージにおいて,原告が携帯電話で東京電力による公募増資の実施の公表が近いような気がしているという趣旨を言ってきた旨を述べているところ(同エ(エ)),これらの内容は,その当時の原告の認識状況(同ウ(ウ))と一致している。 以上のとおり,Z1がZ2に送信した本件第1ないし第7メッセージの内容がその当時の原告の認識内容等と一致していること,本件第2メッセージ,本件第3メッセージの最後の1文の部分,本件第4メッセージの「asAnalystkindofdenying 5020 so.」の部分及び本件第6メッセージには,Z1が原告から伝え聞いた内容が記載されていること,本件第1,第3ないし第5及び第7メッセージにおいて,原告が言っている,電話してきた,あるいは携帯電話にメッセージを送信- 31 -してきたなどと言及されていることからすれば,本件第1ないし第7メッセージは,全体として,Z1が,東京電力及びJX社による公募増資の実施の可能性について原告から伝え聞いた内容をZ2に伝えたものと認めるのが相当である。すなわち,本件第4メッセージの「Nomuraguycalled –」の次の「morefeellike 9501」及び本件第5メッセージの「Nomuraguyjustsentmsgonmymobile –」の次の「Dealwillbe 29th (feellik eellike 9501」及び本件第5メッセージの「Nomuraguyjustsentmsgonmymobile –」の次の「Dealwillbe 29th (feellike)」は,それぞれ,Z1が電話及び携帯電話のメッセージにより原告から伝え聞いた内容を記載したものと認めるのが相当である。 そうすると,Z1は,平成22年9月27日午前10時29分から同時38分までの間に,Z2に対し,本件第5ないし第7メッセージをもって,ただいま原告が同月29日に東京電力による公募増資の実施が公表される気がすると言ってきた旨を伝えたものと認められる。 c 上記aのとおり,原告は,東京電力についての噂や東京電力に関する客観的な諸事情のほか,Z4及びZ5の発言内容等に基づいて,遅くとも平成22年9月24日頃までには,可能性の一つとして,同月29日に東京電力による公募増資の実施が公表されるかもしれないと考えるに至ったこと,上記bのとおり,Z1は,同月27日午前10時29分から同時38分までの間に,Z2に対し,ただいま原告が同月29日に東京電力による公募増資の実施が公表される気がすると言ってきた旨を伝えたことからすれば,原告は,同月27日午前10時30分前後頃に,Z1に対し,東京電力による公募増資の実施の公表が同月29日らしいとの趣旨の本件情報(ただし,他者からの単なる伝聞ではなく,多分に原告自身の推測を交えたもの)を提供したものと認められる。 (なお,以上の認定は,東京電力による公募増資の実施の公表前に,- 32 -Z2から実施の見通しを聞かれ,その都度,原告に対し,実施の可能性などのニュアンスを探るよう依頼し,原告から伝えられた内容をそのままZ2に対して「NomuraGuy」からの情報として伝えていた旨のZ1の当初 の見通しを聞かれ,その都度,原告に対し,実施の可能性などのニュアンスを探るよう依頼し,原告から伝えられた内容をそのままZ2に対して「NomuraGuy」からの情報として伝えていた旨のZ1の当初の供述〔平成24年5月2日の証券取引等監視委員会証券調査官に対する供述。乙30・5頁〕とも符合する。)(イ) 原告及びZ1の主張・供述についてa これに対し,原告は,本件第4メッセージに関連して,平成22年9月21日,Z1に対し,Z4がJX社による公募増資の実施の可能性については否定的であった旨を伝えたが,東京電力による公募増資の実施の可能性については話さなかった(乙40・17,66頁)と供述し,本件第5メッセージに関連して,Z1に対し,東京電力による公募増資の実施が平成22年9月29日になりそうであると伝えた事実はなく,そのような内容のメッセージをZ1の携帯電話に送信した事実はない(甲5・16,17頁,乙24・7頁,乙35・14,22頁,乙40・27,28頁)と供述する。Z1も,上記(ア)cの当初の供述(乙30・5頁)後の供述においては,本件第4メッセージの「Nomuraguycalled –」(野村の証券営業員が電話してきました。)の次の「morefeellike 9501」(東京電力の方がありそうな気がします。)は原告から伝え聞いた内容ではなく,Z1自身の主観的判断を記載したものであり,その後に引き続く「asAnalystkindofdenying 5020 so.」(アナリストは,なんだかJX社は否定的だったようですし。)は原告から伝え聞いた内容を記載したものである(甲3・27~31頁,甲4・8,9頁,甲17・12,13頁,乙34・7頁),本件第5メッセージの「Nomuraguyjustsentmsg 。)は原告から伝え聞いた内容を記載したものである(甲3・27~31頁,甲4・8,9頁,甲17・12,13頁,乙34・7頁),本件第5メッセージの「Nomuraguyjustsentmsgonmymobile –」(野村の証券営業員が,私の携帯電話にちょっとメッセージを送信してきました。)の次の「Dealwillbe 29th (feellike)」(公募増資の実施公- 33 -表は29日になるだろうと思います〔そんな気がするのです〕。)は原告から伝え聞いた内容ではなく,Z1自身の主観的判断を記載したものであり,原告からそのような内容が記載されたメッセージを受け取った事実はない(甲3・31~36頁,甲4・10~12頁,甲17・13,14頁,乙34・8頁)旨,原告の上記及びの供述に沿った供述をする。 しかしながら,Z1の上記の供述を前提とすれば,本件第4メッセージにおいては,野村の証券営業員(原告)が電話してきたとの記載があるにもかかわらず,その後に電話で伝え聞いた内容が記載されることなくZ1自身の主観的判断が記載され,その後に原告から伝え聞いた内容が記載されていることになり,不自然である。また,Z1の上記の供述を前提とすれば,本件第5メッセージにおいては,野村の証券営業員(原告)がZ1の携帯電話にメッセージを送信してきたとの記載があるにもかかわらず,その後にそのメッセージの内容が記載されることなくZ1自身の主観的判断が記載されていることになるが,これも不自然というほかない。 原告は,本件第4及び第5メッセージにおいて,主観的な感じを伝える「feellike」との表現が用いられていることからすれば,この部分は,Z1自身の投資判断ないし推測を記載したものとみるのが自然であるとも主張するが,本件第4及び第 おいて,主観的な感じを伝える「feellike」との表現が用いられていることからすれば,この部分は,Z1自身の投資判断ないし推測を記載したものとみるのが自然であるとも主張するが,本件第4及び第5メッセージを全体として見ると,「feellike」の主語はZ1ではなく「Nomuraguy」であって,この部分はZ1が原告から伝え聞いた原告自身の主観的判断を記載したものであると解することは十分可能であり,かつ,そのように解する方がより自然であるというべきであって,このように解したとしても「feellike」の一般的な意味(甲23から30まで)と矛盾するとはいえない。 - 34 -よって,Z1の上記及びの供述及びこれに沿う原告の上記及びの供述は,いずれも採用できない。 b 原告は,本件第5メッセージの中で「Nomuraguy」がZ1の携帯電話に送信したとされている「メッセージ」は,携帯電話の復元調査などを経ても存在を確認できておらず,原告がZ1にそのような「メッセージ」を送信した事実は存在しないと主張する。 証拠(甲15,16)及び弁論の全趣旨によれば,証券取引等監視委員会が行った調査時において,原告の保有していた携帯電話端末には,Z1との間で送受信されたメールが平成24年3月から同年4月までの間に送受信されたものしか保存されておらず,Z1の保有していた携帯電話端末には,原告との間で送受信されたメールが同年2月から同年4月までの間に送受信されたものしか保存されていなかったこと,削除されたメール等のデータの復元が試みられたものの,復元できなかったことが認められる。しかしながら,原告がZ1に送信した「メッセージ」が上記調査の前に削除されていた可能性も否定できず,削除されたデータが復元調査により必ず復元できるものではないと考 元できなかったことが認められる。しかしながら,原告がZ1に送信した「メッセージ」が上記調査の前に削除されていた可能性も否定できず,削除されたデータが復元調査により必ず復元できるものではないと考えられるから,原告が送信したとされている「メッセージ」が,携帯電話の復元調査などを経ても存在を確認できなかったからといって,原告がZ1に本件情報を提供したとの上記(ア)cの認定が左右されるものではない。 イ FNY社に対する本件情報の提供行為の有無について被告は,金融商品取引業者等の役職員が,ある情報を相手方から第三者にも提供されるであろうことを予見して当該相手方に提供したのであれば,当該役職員は,当該第三者に対しても当該情報を提供したと解すべきであるとした上で,Z1からZ6の業務内容や同社がFNY社を顧客としていたことについて聞かされていた原告としては,Z1に提供した情報が,Z- 35 -6の顧客であるFNY社にも提供されるであろうことを予見していたことは明らかであるから,原告は,本件情報をFNY社にも提供したというべきであると主張する。 しかしながら,前記(1)認定事実イ(ウ)で認定・説示したとおり,原告は,Z2と面識がなく,メール,チャット,電話等で話したこともないというのであり,原告が,Z1に本件情報を提供した平成22年9月当時,FNY社がZ6の顧客であったことを知っていたとも認められない。そうすると,原告が,本件情報がFNY社に提供されるであろうことを予見してZ1に本件情報を提供したとは認められないから,これを前提として,原告が本件情報をFNY社にも提供したというべきであるとする被告の主張を採用することはできない。 ほかに原告が本件情報をFNY社に提供した事実を認めるに足る証拠はないから,同事実を認めることはできない。 本件情報をFNY社にも提供したというべきであるとする被告の主張を採用することはできない。 ほかに原告が本件情報をFNY社に提供した事実を認めるに足る証拠はないから,同事実を認めることはできない。 (3) 法人関係情報該当性についてア検討(ア) 上記(2)アのとおり,原告は,平成22年9月27日午前10時30分前後頃に,Z1に対し,東京電力による公募増資の実施の公表が同月29日らしいとの趣旨の本件情報を提供したところ,本件情報が,上場会社等である東京電力の運営,業務又は財産に関する情報に該当すること,この時点において公表されていない情報であったことは明らかである(前記前提事実(2)ウ参照)。 そして,本件情報は,平成22年9月29日の公表後にこれを知った多くの投資者が東京電力の株式を売り付けることにより東京電力の株式が値下がりすることを予測させる情報であり,多分に情報提供者自身の推測を交えたものであるとはいえ,これにその推測過程に照らして相当程度の確度ないし信憑性が備わっているものと認めることができれば,- 36 -そのような情報を公表に先立ち入手した投資者にとっては公表による値下がり前に東京電力の株式を売り付けることにより損失を回避し又は利益を得ようとする誘因となり得る情報であるといえるから,顧客(投資者)の投資判断に影響を及ぼすと認められる重要な情報であるというべきである。 (イ) そこで,本件情報の推測過程に照らし,本件情報の確度ないし信憑性について検討するに,本件情報の核となるのは,東京電力による公募増資の実施が公表される可能性のある日を平成22年9月29日と特定した部分であるというべきところ,原告が本件情報を推測する根拠となった前記(1)認定事実ウの事実関係のうち,東京電力による公募増資の実施が公表され 表される可能性のある日を平成22年9月29日と特定した部分であるというべきところ,原告が本件情報を推測する根拠となった前記(1)認定事実ウの事実関係のうち,東京電力による公募増資の実施が公表される可能性のある日が同日であることを推測させるものは,同日に何かがあるかもしれず,規模が大きいかもしれないとのZ5の回答(同(ウ))以外にはなく,原告は,Z5の上記回答を推測の主要な根拠としたものと認められる。 Z5は,平成22年9月24日に正式にイン登録されて初めて東京電力による公募増資が実施されることを認識したのであるから(前記(1)認定事実ウ(ウ)参照),Z5が上記回答をした時点(同月20日前後頃から同月24日頃までの間)においては,Z5自身は,同月29日が東京電力による公募増資の実施が公表される日であることを知らなかった可能性を否定できない。しかしながら,Z5のいう同日にあるかもしれない規模が大きい「何か」とは,Z5自身が認識していたか否かにかかわらず,客観的には東京電力による公募増資の実施の公表を意味するものであったこと,Z5は,公募増資等の案件の担当部署から,銘柄名を伏せた上で未公表の公募増資等の実施予定を事前に伝えられており,これに基づき,営業員からの休暇取得等の可否に関する問い合わせに回答する役割を担っていたと認められること(前記(1)認定事実ウ(ウ)),Z5が- 37 -上記回答をする前の同年8月30日までに,東京電力において公募増資の実施に係る取締役会決議を同年9月29日に行うことを決めていたこと(前記前提事実(2)ア),野村證券は,同年1月頃から,東京電力との間で公募増資の実施の準備をしていたこと(前記前提事実(2)ア)からすれば,野村證券は,公募増資の実施の準備の過程で,東京電力から,同年9月29日に公募増資の 村證券は,同年1月頃から,東京電力との間で公募増資の実施の準備をしていたこと(前記前提事実(2)ア)からすれば,野村證券は,公募増資の実施の準備の過程で,東京電力から,同年9月29日に公募増資の実施に係る取締役会決議をしてこれを公表する旨伝えられ,これを受けて,担当部署を通じて,Z5に対し,営業員に休暇取得を控えさせるため,東京電力による公募増資の実施が公表される日であるという情報を伏せた上で,同日に規模が大きい案件があることを伝え,Z5は,この情報をもとに,原告に対し,上記回答をしたものと推認できる。 そうすると,本件情報の核となる東京電力による公募増資の実施の公表の可能性のある日を平成22年9月29日と特定した部分は,主幹事証券会社となることが予定されている野村證券が東京電力との間で公募増資の実施の準備をしていたからこそ得られた情報を主要な根拠として推測されたものということができる。 このような本件情報の推測過程に照らせば,本件情報は,一般の投資者には推測することができず,原告が,予定されている主幹事証券会社として東京電力との間で公募増資の実施の準備をしていた野村證券の営業員であり,かつ,公募増資等の実施予定期間を知り得る立場にあった募集担当の職員に休暇取得等の可否の問い合わせができる立場にあったからこそ入手できた情報を主要な根拠として推測した情報を核とする情報であるといえるから,相当程度の確度及び信憑性を備えたものということができ,上記のとおり,顧客の投資判断に影響を及ぼすと認められる重要な情報に該当するものというべきである。 (ウ) 以上によれば,本件情報は,上場会社等である東京電力の運営,業務- 38 -又は財産に関する公表されていない重要な情報であって顧客の投資判断に影響を及ぼすと認められるものとして,法人関 (ウ) 以上によれば,本件情報は,上場会社等である東京電力の運営,業務- 38 -又は財産に関する公表されていない重要な情報であって顧客の投資判断に影響を及ぼすと認められるものとして,法人関係情報に該当するといえる。 イ原告の主張について(ア) 原告は,法人関係情報は確定的な情報である必要があるところ,本件情報は,原告が推測した情報であり,かつ,確定的でない情報であるから,法人関係情報に該当しない旨の主張をする。 しかしながら,法人関係情報の意義を定める府令1条4項14号は,法人関係情報を他者から知った情報や確定的な情報に限定しておらず,推測によって得られた確定的でない情報も,文理上,法人関係情報に含まれ得ること,このような情報であっても,その確度ないし信憑性の程度によって顧客の投資判断に影響を及ぼすと認められる重要な情報となり得ることからすれば,推測によって得られた確定的でない情報であるからといって,法人関係情報に該当し得ないということはできない。 そして,本件情報が,相当程度の確度及び信憑性を備えたものとして法人関係情報に該当するものというべきことは,上記アに説示したとおりである。 (イ) また,原告は,断片的な情報や,他の情報と組み合わせることによって公募増資の実施を予測することが可能になるような情報は,単独では顧客の投資判断に影響を及ぼす蓋然性が高い情報であるとはいえないから,法人関係情報には該当しない,平成22年9月当時,それ自体は法人関係情報に該当するわけではないが他の情報と相まって法人関係情報となり得る情報(いわゆる示唆情報等)が,法人関係情報に準じて規制対象にされるという認識は,被告も含め証券業界において共有されていなかったから,本件処分は事後処罰というべきであって許されない旨主張する。 - いわゆる示唆情報等)が,法人関係情報に準じて規制対象にされるという認識は,被告も含め証券業界において共有されていなかったから,本件処分は事後処罰というべきであって許されない旨主張する。 - 39 -しかしながら,上記アに説示したとおり,本件情報は,他の情報と組み合わせるまでもなく,それだけで,平成22年9月29日に東京電力による公募増資の実施が公表されることを予測させるものであって,顧客の投資判断に影響を及ぼすと認められる重要な情報であるといえるから,本件情報が,断片的な情報,他の情報と組み合わせることによって公募増資の実施を予測することが可能になるような情報,又はいわゆる示唆情報等であるとの前提の下に,法人関係情報に該当しない旨をいう原告の上記主張は採用できない。 (ウ) さらに,原告は,市場の噂と他の情報を組み合わせることは,禁止されるどころか,営業員として通常行う業務の一環にすぎず,何ら責められるべきものではない,情報の取得経過等の事情に照らし,取引の公正を害さない情報の提供や,インサイダー取引の未然防止という府令117条1項14号の目的に抵触しない情報の提供は,同号による禁止の対象とならないとも主張する。 しかしながら,上記アに説示したとおり,本件情報は,一般の投資者には推測することができず,原告が,予定されている主幹事証券会社として東京電力との間で公募増資の実施の準備をしていた野村證券の営業員であり,かつ,公募増資等の実施予定期間を知り得る立場にあった募集担当の職員に休暇取得等の可否の問い合わせができる立場にあったからこそ入手できた情報を主要な根拠として推測した情報を核とする情報であり,それゆえに,相当程度の確度及び信憑性を備えたものとして顧客の投資判断に影響を及ぼすと認められる重要な情報に該当するものといえ こそ入手できた情報を主要な根拠として推測した情報を核とする情報であり,それゆえに,相当程度の確度及び信憑性を備えたものとして顧客の投資判断に影響を及ぼすと認められる重要な情報に該当するものといえるのであるから,このような本件情報が仮に顧客に対して有価証券の売買等を勧誘する手段として提供されたとすれば,そのような情報提供及びこれを手段とする顧客に対する勧誘行為は,法38条が禁止する「投資者の保護に欠け,若しくは取引の公正を害し,又は金融商品取引- 40 -業の信用を失墜させる」行為として,府令117条1項14号に実質的にも該当するというべきである。 (4) 顧客に対する勧誘行為の有無についてア府令117条1項14号は,金融商品取引業者等又はその役員若しくは使用人が,有価証券の発行者の法人関係情報を提供することを手段として顧客に対して当該有価証券の売買等を勧誘する行為を,法38条による禁止行為と定めるものである。 このように,府令117条1項14号の規定が,法人関係情報を提供する行為とは別に,顧客に対して勧誘する行為を要件として定めているのは,顧客に対して法人関係情報を提供して同号に定める取引等を勧誘することによって,当該顧客によって法人関係情報を利用したこれらの取引等が実際に行われ,投資者の利益や取引の公正,金融商品取引業の信頼(法38条参照)が害される危険性が高まるからであると解される。このような同号の趣旨に鑑みれば,同号にいう顧客には,現に当該金融商品取引業者等との間で金融商品取引契約を締結している者のみならず,金融商品取引契約の締結を含めて勧誘の対象となっている者を含むものと解し得る余地があり,また,勧誘する行為は明示的・積極的に行われる必要はなく,黙示的に行われることで足りると解される。 しかしながら,法人関係 約の締結を含めて勧誘の対象となっている者を含むものと解し得る余地があり,また,勧誘する行為は明示的・積極的に行われる必要はなく,黙示的に行われることで足りると解される。 しかしながら,法人関係情報とは,上場会社等の運営,業務又は財産に関する公表されていない重要な情報であって顧客の投資判断に影響を及ぼすと認められるもの等をいうのであり,法人関係情報の提供自体が,府令117条1項14号に定める取引等を誘発する行為であると評価し得るものであるから,それにもかかわらず,同号の規定が,あえて法人関係情報を提供する行為とは別に,顧客に対して上記の取引等を勧誘する行為を要件として定めていることからすれば,同号にいう顧客に対する勧誘行為があったといえるためには,単に法人関係情報を提供する行為があったこと- 41 -が認められるだけでは足りず,法人関係情報を提供した相手方との人的関係や法人関係情報を提供した際の言動等に照らし,当該相手方に対して同号に定める取引等を当該金融商品取引業者等の顧客として行うことを勧誘する行為が少なくとも黙示的に行われたと評価できることが必要であると解すべきである。 イそこで,本件の原告がZ1に対して本件情報を提供するに際し,Z1に対して東京電力の株式の売付けを野村證券の顧客として行うことを勧誘する行為が少なくとも黙示的に行われたと評価できるかどうかを検討する。 原告がZ1に本件情報を提供した当時,原告の担当していた顧客は海外の機関投資家であり(前記(1)認定事実ア),日本法人であるZ6を経営するZ1は原告の担当する顧客ではなく,野村證券に口座を持っていなかったこと(同イ(ア))からすれば,原告が,Z1に本件情報を提供することにより,野村證券に口座を開設し,野村證券を介して東京電力の株式を売り付けてもらい,自ら ではなく,野村證券に口座を持っていなかったこと(同イ(ア))からすれば,原告が,Z1に本件情報を提供することにより,野村證券に口座を開設し,野村證券を介して東京電力の株式を売り付けてもらい,自らの営業成績を上げる動機を有していたと認めることはできない(実際,Z1は,株式会社SBI証券を介して東京電力の株式を売り付けている。前記前提事実(2)イ参照。)。むしろ,両名の人的関係(前記(1)認定事実イ(ア))は,Z1は自らの経営するZ6の業務のため,原告は野村證券において行う自らの業務のため,相互に利益となる情報を交換し合っていたというものであって,本件情報もその情報交換の一環として原告からZ1に提供されたことがうかがわれる。そうすると,原告としては,今後の見返りとしての情報提供を期待するという観点から本件情報をZ1に提供すること自体に関心があったとしても,Z1が本件情報をどのように利用するか,すなわち,本件情報を受けて野村證券の顧客として東京電力の株式の売付けをするかどうかについて関心があったとはうかがわれず,そのような関心があったことを認めるに足る証拠はない。 このような両名の人的関係と原告の関心状況に照らせば,原告がZ1に- 42 -対して本件情報を提供するに際し,Z1に対して東京電力の株式の売付けを野村證券の顧客として行うことを勧誘する行為が黙示的にでも行われたと評価することはできないというべきである。 ウほかに,原告が,Z1及びFNY社に対して東京電力の株式の売付けを野村證券の顧客として行うことを勧誘する行為をした事実を認めるに足る証拠はないから,同事実を認めることはできない。 (5) 結論以上によれば,原告が,Z1に対して法人関係情報に該当する本件情報を提供したとは認められるものの,FNY社に対して本件情報を提供 足る証拠はないから,同事実を認めることはできない。 (5) 結論以上によれば,原告が,Z1に対して法人関係情報に該当する本件情報を提供したとは認められるものの,FNY社に対して本件情報を提供したとは認められず,Z1及びFNY社に対して東京電力の株式の売付けを野村證券の顧客として行うことを勧誘する行為をしたと認めることもできない。よって,原告が,府令117条1項14号に該当する行為をしたとは認められない。 したがって,原告が府令117条1項14号に該当する行為をしたことを理由として法64条の5第1項2号の規定によりなされた本件処分は,同項の定める処分要件を欠いた違法な処分であるというべきである。 3 争点3(処分理由の提示の要件を欠いた違法の有無及び同違法が原告の法律上の利益に関係のない違法に該当するか否か)について(1) 処分理由の提示の要件を欠いた違法が原告の法律上の利益に関係のない違法に該当するか否かについて本件処分は,行政手続法に定める不利益処分に当たり,同法の適用を受けるものと解されるところ,同法14条1項本文が,不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは,名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解- 43 -される(最高裁平成21年(行ヒ)第91号同23年6月7日第三小法廷判決・民集65巻4号2081頁参照)。 前記1に説示したとおり,外務員は,法64条の5第1項の規定による外務員の登録を取り消す旨の処分の直接の名宛人ではないものの,労働者外務員について,処分行政庁による慎重と合理性を欠いた恣意的な 。 前記1に説示したとおり,外務員は,法64条の5第1項の規定による外務員の登録を取り消す旨の処分の直接の名宛人ではないものの,労働者外務員について,処分行政庁による慎重と合理性を欠いた恣意的な判断に基づき外務員の登録が取り消された場合には,その労働契約上の権利が不当に侵害されることになるから,当該処分において行政手続法14条1項本文の規定が遵守されることは,当該処分に係る判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するという観点において,労働者外務員の法律上の利益に関係するといえる。 また,前記1に説示したとおり,労働者外務員は,自己についてされた法64条の5第1項の規定による外務員の登録を取り消す旨の処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に当たり,当該処分につき取消訴訟を提起するなどの不服の申立てを行うことができるところ,処分の理由が名宛人である金融商品取引業者等に適切に知らされなければ,当該労働者外務員においても処分の理由を知ることができず,不服の申立てに支障を来すおそれがあるから,当該処分において行政手続法14条1項本文の規定が遵守されることは,当該処分に対する不服の申立てに便宜を与えるという観点においても,労働者外務員の法律上の利益に関係するといえる。 以上のとおりであるから,労働者外務員についてされた法64条の5第1項の規定による外務員の登録を取り消す旨の処分が行政手続法14条1項本文の定める理由提示の要件を欠いた違法は,当該労働者外務員にとって自己の法律上の利益に関係のない違法(行政事件訴訟法10条1項)であるとはいえない。 よって,本件の原告においても,行政手続法14条1項本文の定める理由提示の要件を欠いた違法を理由として本件処分の取消しを求めることを妨げ- 44 -られないというべきである。 いえない。 よって,本件の原告においても,行政手続法14条1項本文の定める理由提示の要件を欠いた違法を理由として本件処分の取消しを求めることを妨げ- 44 -られないというべきである。 (2) 処分理由の提示の要件を欠いた違法の有無についてア前記前提事実(4)イのとおり,本件処分に係る処分通知書においては,本件処分の理由として,原告が,平成22年9月,有価証券の売買その他の取引について,顧客に対して当該有価証券の発行者の法人関係情報を提供して勧誘を行った行為が,府令117条1項14号に該当し,法令に違反する行為と認められ,法64条の5第1項2号に該当する旨が記載されているが,「顧客」,「当該有価証券の発行者の法人関係情報」,「勧誘」等に該当する具体的な事実が記載されていない。 一般に,外務員は,常日頃から,数多くの顧客に対し,様々な取引等の勧誘や情報の提供を行っていると解されるから,府令117条1項14号に該当することを理由として法64条の5第1項2号の規定に基づいて行われる外務員の登録を取り消す旨の処分に係る処分通知書の理由の記載に,「顧客」,「当該有価証券の発行者の法人関係情報」,「勧誘」等に該当する具体的な事実の記載がなければ,処分の名宛人である金融商品取引業者等及び当該処分に係る外務員において,誰に対するいかなる情報の提供及び勧誘の行為が処分の理由とされているのかを知ることは通常は困難であると解される。 特に,本件においては,本件処分の理由とされる行為の時期が「平成22年9月」と特定されてはいるものの,その当時,Z1及びFNY社は野村證券に口座を持つ顧客ではなかった一方で,原告とZ1は個人的に業務に関する情報交換を毎日のように行っていたのであり,本件処分時にはこれらの事実を示す証拠(甲13〔乙19も同じ〕, 及びFNY社は野村證券に口座を持つ顧客ではなかった一方で,原告とZ1は個人的に業務に関する情報交換を毎日のように行っていたのであり,本件処分時にはこれらの事実を示す証拠(甲13〔乙19も同じ〕,乙34等)も存在していたのであるから,本件訴訟において被告が主張するように,「Z1及びZ1を介したFNY社」が「顧客」に,「東京電力による公募増資の実施の公表が平成22年9月29日らしいとの趣旨の情報」が「当該有価証券の発行- 45 -者の法人関係情報」に,「当該情報の提供それ自体」が「勧誘」にそれぞれ該当するというのであれば,処分理由書中の理由の記載においてその旨が具体的に示されなければ,本件処分の名宛人である野村證券及び本件処分に係る外務員である原告において,被告の認識する処分の具体的な理由がそのようなものであると認識することは困難であり,被告においてもそのような認識の困難さは予見できたものというべきである。 このような本件の事情の下においては,本件処分に係る処分通知書における理由の記載は,上記(1)に述べた行政手続法14条1項本文の趣旨に照らし,同項本文の要求する理由提示としては十分でないといわなければならず,本件処分は,同項本文の定める理由提示の要件を欠いた違法な処分であるというべきである。 イこれに対し,被告は,野村證券は,事故の内容等を詳細に記載した事故顛末報告書(乙6の1)及び「行為者Z3の経緯書について」と題する文書(乙6の2)を被告に提出して,原告が顧客に対して法人関係情報を提供して勧誘した行為を被告に申告し,被告は同申告に基づき本件処分を行ったのであるから,本件処分の名宛人である野村證券において,処分通知書における理由の記載によって本件処分の理由を知ることができたことは明白であり,本件処分の際には,証券取引等監 に基づき本件処分を行ったのであるから,本件処分の名宛人である野村證券において,処分通知書における理由の記載によって本件処分の理由を知ることができたことは明白であり,本件処分の際には,証券取引等監視委員会の勧告及び金融庁長官の課徴金納付命令の決定等により本件処分の原因となる事実関係が公表されていたのであるから,処分通知書における理由の記載自体から,第三者においても,本件処分の原因となる事実関係の内容を当然に了知できたとして,本件処分に係る処分通知書における理由の記載は,行政手続法14条1項本文の要求する理由提示として十分であると主張する。 しかしながら,事故顛末報告書(乙6の1)及び「行為者Z3の経緯書について」と題する文書(乙6の2)には,原告がZ1に対して東京電力による公募増資に関する未公表の情報を伝達したとは記載されているもの- 46 -の,「法人関係情報」に該当する具体的事実の特定が十分にされているとはいえないし,Z1を介してのFNY社に対する法人関係情報の提供については言及されておらず,原告のいかなる行為が顧客に対する勧誘に該当するのかも示されていない。 また,前記前提事実(3)によれば,本件処分に先立ち,証券取引等監視委員会の勧告及び金融庁長官の課徴金納付命令の決定がされた事実が認められるものの,これらの措置は,本件処分とは別の手続により行われるものであって,主体も客体も要件も異なるのであるから,これらの勧告や決定における事実関係の記載をもって,本件処分に係る処分通知書における理由の記載から本件処分の理由とされた事実関係を了知できるとはいえない。 よって,被告の上記及びの主張はいずれも採用できない。 第4 結論以上のとおり,原告は,本件訴えにおける原告適格を有し,本件処分は,法64条の5第1項の定める処分要件 了知できるとはいえない。 よって,被告の上記及びの主張はいずれも採用できない。 第4 結論以上のとおり,原告は,本件訴えにおける原告適格を有し,本件処分は,法64条の5第1項の定める処分要件及び行政手続法14条1項本文の定める理由提示の要件を欠いた違法な処分であると認められる。 よって,本件訴えは適法であり,原告の請求は理由があるから,これを認容することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官古田孝夫 裁判官大畠崇史 裁判官南宏幸は,転補のため署名押印することができない。

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る