- 1 -平成28年6月9日判決言渡平成27年(行ケ)第10126号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成28年5月17日判決 原告日本特殊陶業株式会社 訴訟代理人弁理士奥田 誠同冨田泰久 被告株式会社デンソー 訴訟代理人弁理士碓氷裕彦同中村広希 主文 1 特許庁が無効2014-800031号事件について平成27年5月27日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文第1項と同旨第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等被告は,平成20年12月18日,発明の名称を「ガスセンサ素子及びその製造方法」とする発明について特許出願(特願2008-322180号。 以下「本件出願」という。)をし,平成24年10月12日,特許第510- 2 -4744号(請求項の数4。以下「本件特許」という。)として特許権の設定登録を受けた。 原告は,平成26年2月26日,本件特許を無効とすることを求めて無効審判請求をした。 特許庁は,上記請求を無効2014-800031号事件として審理し,平成26年12月3日付けで審決の予告をした。 これに対し被告は,平成27年2月3日付けで本件特許の特許請求の範囲及び明細書について訂正請求をした(以下,この訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)。 その後,特許庁は,平成27年5月27日,「請求のとおり訂正を認める。 本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決 求をした(以下,この訂正請求に係る訂正を「本件訂正」という。)。 その後,特許庁は,平成27年5月27日,「請求のとおり訂正を認める。 本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同年6月4日,原告に送達された。 原告は,平成27年7月1日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 特許請求の範囲の記載本件訂正後の特許請求の範囲は,請求項1ないし3からなり,その記載は,次のとおりである(以下,本件訂正後の請求項1ないし3に係る発明を,それぞれ「本件発明1」,「本件発明2」及び「本件発明3」という。また,本件訂正後の明細書(甲8)を,図面を含めて「本件明細書」という。)。 「【請求項1】固体電解質シートの両表面の互いに対向する位置に一対の電極を設けてなるガスセンサ素子において,上記固体電解質シートは,電気絶縁性を有するアルミナ材料からなるアルミナシートに設けた充填用貫通穴内に,酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなるジルコニア充填部を配設してなり,上記一対の電極は,上記ジルコニア充填部の両表面に設けてあり,- 3 -上記アルミナシートの両表面には,該アルミナシートよりも薄く,電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層が積層してあり,該一対の表面アルミナ層には,上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴が設けてあり,該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあって,該開口用貫通穴から上記電極が露出し,且つ,該開口用貫通穴の周縁部は,上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重なっていることを特徴とするガスセンサ素子。 【請求項2】請求項1において,上記ガスセンサ素子は,上記ジルコニア 且つ,該開口用貫通穴の周縁部は,上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重なっていることを特徴とするガスセンサ素子。 【請求項2】請求項1において,上記ガスセンサ素子は,上記ジルコニア充填部を配設した2枚の上記アルミナシートを,電気絶縁性を有するアルミナ材料からなるスペーサを介して積層してなり,該スペーサによって,上記2枚のアルミナシートにおける上記ジルコニア充填部に対応する位置に,被測定ガスを導入するためのチャンバーを形成したことを特徴とするガスセンサ素子。 【請求項3】固体電解質シートの両表面の互いに対向する位置に一対の電極を設けてなるガスセンサ素子を製造する方法において,電気絶縁性を有するアルミナ材料を用いて,充填用貫通穴を有するアルミナシートを形成し,酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなり,上記充填用貫通穴の形状に沿った形状のジルコニアシートを,上記充填用貫通穴内に配置し,上記ジルコニアシートの両表面における外縁部に重なる状態で,且つ,上記電極を露出した状態で,上記アルミナシートの両表面に電気絶縁性を有するアルミナ材料からなり,上記電極を露出させるための開口用貫通穴を有する一対の表面アルミナ層を配置して,シート体を形成し,- 4 -該シート体を焼成することを特徴とするガスセンサ素子の製造方法。」 3 請求人が審判で主張した無効理由無効理由1本件特許の請求項1及びこれを引用する請求項2の記載は,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出し得る空間についての記載がなく,不明確であるから,特許法36条6項2号の要件(明確性要件)を満たしておらず,また,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止するという作用効果を奏しない範囲を含むものであるから, 明確であるから,特許法36条6項2号の要件(明確性要件)を満たしておらず,また,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止するという作用効果を奏しない範囲を含むものであるから,同条6項1号の要件(サポート要件)も満たしていない。 無効理由2本件特許の請求項1及びこれを引用する請求項2の記載は,開口用貫通穴の周縁部がジルコニア充填部の外縁部に重なる範囲又は程度についての規定がないため,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止するという作用効果を奏しない範囲を含むものであるから,サポート要件を満たしていない。 無効理由3本件特許の請求項2の記載は,「ジルコニア充填部に対応する位置」がどのような位置を示しているのかが不明確であり,ジルコニア充填部とチャンバーとの位置関係が不明確であるから,明確性要件を満たしておらず,また,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止するという作用効果を奏しない範囲を含むものであるから,サポート要件も満たしていない。 無効理由4ア本件発明1は,①甲2(特開2007-278941号公報)に記載された「センサ素子」に関する発明(以下「甲2発明」という。)及び甲3(特開2004-93207号公報)に記載された技術(以下「甲3技術」- 5 -という。),②甲4(特開2003-294698号公報)に記載された発明(以下「甲4発明」という。)及び甲5(特開2003-240750号公報)に記載された技術(以下「甲5技術」という。),又は,③甲4発明及び甲6(特開2000-65782号公報)に記載された技術(以下「甲6技術」という。)に基づいて,本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定によ 発明及び甲6(特開2000-65782号公報)に記載された技術(以下「甲6技術」という。)に基づいて,本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができないものである。 イ本件発明2は,甲2発明甲3技術に基づいて,本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができないものである。 ウ本件発明3は,甲2に記載された「センサ素子を得る方法」に関する発明及び甲3技術に基づいて,本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができないものである。 4 本件審決の理由本件審決の理由は,別紙審決書写しのとおりであるが,その要旨は,次のとおりである。 ア無効理由1について請求項1にジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出し得る空間についての特定がされていないことをもって,請求項1の記載が明確でないということはできない。 請求項1には,課題を解決するための手段が反映されており,発明の作用効果を奏しない範囲を含むとはいえない。 したがって,請求項1及びこれを引用する請求項2の記載は,明確性要件及びサポート要件を満たしていないとはいえない。 イ無効理由2について- 6 -請求項1の記載が表面アルミナ層の開口用貫通穴の周縁部とジルコニア充填部の外縁部とが重なる範囲及び程度を特定していないことをもって,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止するという作用効果を奏しない範囲を含むとはいえない。 したがって,請求項1及びこれを引用する請求項2の記載は,サポート要件を満 ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止するという作用効果を奏しない範囲を含むとはいえない。 したがって,請求項1及びこれを引用する請求項2の記載は,サポート要件を満たしていないとはいえない。 ウ無効理由3について請求項2が被測定ガスを導入するためのチャンバーを形成する位置をジルコニア充填部に対応する位置として特定していることをもって,請求項2の記載が明確でないとまでいうことはできない。 請求項2が引用する請求項1では,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止するという作用効果を奏するための構成が特定されているから,請求項2の記載が発明の作用効果を奏しない範囲を含むとはいえない。 したがって,請求項2の記載は,明確性要件及びサポート要件を満たしていないとはいえない。 エ無効理由4について 本件発明1は,①甲2及び甲3技術,②甲4発明及び甲5技術及び③甲4発明及び甲6技術のいずれの組合せに基づいても,当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないから,本件発明1に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反しない。 本件発明2は,本件発明1の発明特定事項を全て含み,更に発明特定事項を追加したものであり,本件発明1と同様に,甲2及び甲3技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないから,本件発明2に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反しない。 - 7 - 本件発明3は,甲2及び甲3技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないから,本件発明3に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反しない。 本件審決が無効理由4についての判断の前提として認定した甲2発明,甲4 容易に発明をすることができたものとすることはできないから,本件発明3に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反しない。 本件審決が無効理由4についての判断の前提として認定した甲2発明,甲4発明,の各内容,本件発明1と甲2発明との各一致点及び相違点並びに本件発明3と甲2発明との一致点及び相違点は,以下のとおりである。 ア甲2発明 「一対の電極である第1電極404と第2電極406とのうち,第1電極404は絶縁部材405の表面に配置され,第2電極406は絶縁部材405の裏面に配置され,絶縁部材405は絶縁性材料であるアルミナからなり,厚さ方向に貫通する貫通孔433を有する板型形状に形成されており,部分安定化ジルコニア焼結体で構成されている固体電解質体435が,絶縁部材405における貫通孔433の内部に配置されており,第1電極404は,第1電極部451全体が固体電解質体435の一部を覆い,第2電極406は,第2電極部447全体が固体電解質体435の一部を覆い,絶縁部材405の裏面には,第2電極406を挟み込むようにして,保護層407が形成されており,絶縁部材405の表面には,ヒータ500の第2基体403で第1電極404を挟み込むようにして,ヒータ500が形成されている,センサ素子4」イ甲4発明「第1絶縁性基部11,第2セル部13,層間調節層153及び154- 8 -並びに律速導入部151及び152で形成される内室15,第1セル部12,中間層17,第2絶縁性基部16が,この順に積層された積層型ガスセンサ素子であって,中間層17は,アルミナからなる中間層多孔質部171及び中間層非多孔質部172からなり,第1セル部12は,貫通穴を有しアルミナからなる層間調節層124,層間 層型ガスセンサ素子であって,中間層17は,アルミナからなる中間層多孔質部171及び中間層非多孔質部172からなり,第1セル部12は,貫通穴を有しアルミナからなる層間調節層124,層間調節層124の貫通穴に配置され,酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなる第1セル部用固体電解質体121,第1セル部用固体電解質体121の中間層17側に設けられた第1セル部用電極122,第1セル部用固体電解質体121の内室15側に設けられた第1セル部用電極123からなり,内室15を形成する層間調節層153及び154並びに律速導入部151及び152はアルミナからなり,中間層17の厚さは,層間調節層124及び第1セル部用固体電解質体121の厚さよりも薄く,第1セル部用電極122及び123の幅は,第1セル部用固体電解質体121の幅及び内室15の幅よりも狭く,内室15の幅は,第1セル部用固体電解質体121の幅よりも狭い,積層型ガスセンサ素子。」ウ 「厚さ方向に貫通する貫通孔が形成された板型形状の絶縁性材料からなる絶縁部材と,少なくとも一部が貫通孔に配置された固体電解質体と,少なくとも自身の一部が固体電解質体を覆う電極部と,長手方向に延びて電極部に接続するリード部と,を有し,絶縁部材および固体電解質体の板面上に配置される一対の電極と,を備えるガスセンサ素子の製造方法であって,- 9 -アルミナ粉末97質量%の第1原料粉末と可塑剤とを湿式混合により分散した第1スラリー,アルミナ粉末63質量%の第2原料粉末と可塑剤とを湿式混合により分散した第2スラリー,ジルコニア粉末97質量%の第3原料粉末と可塑剤とを湿式混合により分散した第3スラリーを用意し,第1スラリーを用いて,加工焼成 2原料粉末と可塑剤とを湿式混合により分散した第2スラリー,ジルコニア粉末97質量%の第3原料粉末と可塑剤とを湿式混合により分散した第3スラリーを用意し,第1スラリーを用いて,加工焼成後に絶縁部材405となる未焼成絶縁部用シート117,焼成後に保護層407となる未焼成シート,焼成後に第2基体403となる未焼成シートである未焼成第2基体403を形成し,第2スラリーを用いて,加工焼成後に電極保護部441となる未焼成電極保護部用シートを形成し,第3スラリーを用いて,加工焼成後に固体電解質体435となる未焼成固体電解質体用シート113を形成し,貫通孔形成工程では,パンチ型307を下降させて未焼成絶縁部用シート117に貫通孔433を貫設して未焼成絶縁部材405を作成し,打抜配置工程では,未焼成絶縁部材405の上に未焼成固体電解質体用シート113を配置し,パンチ型307を下降させ,未焼成固体電解質体用シート113から未焼成固体電解質体435を繰り抜くとともに,未焼成絶縁部材405の貫通孔433に未焼成固体電解質体435を挿入し,未焼成固体電解質体435及び未焼成絶縁部材405と同様にして,焼成後に保護層407となる未焼成シート及び未焼成電極保護部用シートに対して貫通孔形成工程,打抜配置工程を行うことで,未焼成補強部408の貫通孔442に未焼成電極保護部441を配置して,未焼成保護層407を形成し,未焼成固体電解質体435および未焼成絶縁部材405の上に,未焼成第1電極404および未焼成第2電極406をスクリーン印刷法により形成し,未焼成第1電極404を挟み込むようにして,未焼成絶縁部材405を- 10 -未焼成第2基体403に対して積層し, 極404および未焼成第2電極406をスクリーン印刷法により形成し,未焼成第1電極404を挟み込むようにして,未焼成絶縁部材405を- 10 -未焼成第2基体403に対して積層し,未焼成第2電極406を挟み込むようにして,未焼成保護層407を絶縁部材405に対して積層して,下方から順に,未焼成第2基体403,未焼成第1電極404,未焼成絶縁部材405,未焼成第2電極406,未焼成保護層407などが積層された未焼成成型体を形成し,焼成工程として,樹脂抜きを行う前焼成を実施した後,さらに本焼成して,酸素濃度を検出するセンサ素子4を得る方法。」エ 一致点「固体電解質シートの両表面の互いに対向する位置に一対の電極を設けてなるガスセンサ素子において,上記固体電解質シートは,電気絶縁性を有するアルミナ材料からなるアルミナシートに設けた充填用貫通穴内に,酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなるジルコニア充填部を配設してなり,上記一対の電極は,上記ジルコニア充填部の両表面に設けてある,ガスセンサ素子。」である点。 相違点本件発明1においては,「上記アルミナシートの両表面には,該アルミナシートよりも薄く,電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層が積層してあり,該一対の表面アルミナ層には,上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴が設けてあり,該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあって,該開口用貫通穴から上記電極が露出し,且つ,該開口用貫通穴の周縁部は,上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重なっている」のに対し,は,そのような表面アルミナ層を備えていない点。 - 11 - 口用貫通穴から上記電極が露出し,且つ,該開口用貫通穴の周縁部は,上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重なっている」のに対し,は,そのような表面アルミナ層を備えていない点。 - 11 -オ本件発明1と甲4発明の一致点及び相違点 一致点「固体電解質シートの両表面の互いに対向する位置に一対の電極を設けてなるガスセンサ素子において,上記固体電解質シートは,電気絶縁性を有するアルミナ材料からなるアルミナシートに設けた充填用貫通穴内に,酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなるジルコニア充填部を配設してなり,上記一対の電極は,上記ジルコニア充填部の両表面に設けてあり,上記アルミナシートの上面には,該アルミナシートよりも薄く,電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる表面アルミナ層が積層してあり,上記アルミナシートの下面には,電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる表面アルミナ層が積層してあり,上記アルミナシートの下面の表面アルミナ層には,上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴が設けてあり,該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな幅に形成してあって,該開口用貫通穴から上記電極が露出し,かつ,該開口用貫通穴の幅方向の周縁部は,上記ジルコニア充填部の下面における幅方向の外縁部に重なっているガスセンサ素子。」である点。 相違点(相違点1)アルミナシートの上面の表面アルミナ層が,本件発明1においては,「上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴が設けてあり,該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあって,該開口用貫通穴から の上面の表面アルミナ層が,本件発明1においては,「上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴が設けてあり,該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあって,該開口用貫通穴から上記電極が露出し,且つ,該開口用貫通穴の周縁部は,上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重なっている」のに対し,甲4発明においては,開口用貫通穴が設けられていない点。 - 12 -(相違点2)アルミナシートの下面の表面アルミナ層が,本件発明1においては,「該アルミナシートよりも薄」いのに対し,甲4発明においては,アルミナシートよりも薄いのかが不明である点。 (相違点3)アルミナシートの下面の表面アルミナ層に設けられた開口用貫通穴が,本件発明1においては,「上記電極よりも大きな形状に形成してあって」,かつ,「該開口用貫通穴の周縁部は,上記ジルコニア充填部の」下「面における外縁部に重なっている」のに対し,甲4発明においては,「上記電極よりも大きな幅に形成してあって」,かつ,「該開口用貫通穴の幅方向の周縁部は,上記ジルコニア充填部の下面における幅方向の外縁部に重なっている」ものの,長手方向における開口用貫通穴,電極及びジルコニア充填部相互の大小関係が不明であり,長手方向においても,開口用貫通穴が上記電極よりも大きく形成してあって,かつ,該開口用貫通穴の周縁部は,上記ジルコニア充填部の下面における外縁部に重なっているのかが不明である点。 カ 一致点「固体電解質シートの両表面の互いに対向する位置に一対の電極を設けてなるガスセンサ素子を製造する方法において,電気絶縁性を有するアルミナ材料を用いて,充填用貫通穴を有するアルミナシートを形成し, いに対向する位置に一対の電極を設けてなるガスセンサ素子を製造する方法において,電気絶縁性を有するアルミナ材料を用いて,充填用貫通穴を有するアルミナシートを形成し,酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなり,上記充填用貫通穴の形状に沿った形状のジルコニアシートを,上記充填用貫通穴内に配置し,上記ジルコニアシートの両表面における外縁部に重なる状態で,上記- 13 -アルミナシートの両表面に電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層を配置して,シート体を形成し,該シート体を焼成するガスセンサ素子の製造方法。」である点。 相違点上記ジルコニアシートの両表面における外縁部に重なる状態で,上記アルミナシートの両表面に電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層を配置して形成した,焼成するシート体に関し,本件発明3においては,「表面アルミナ層」が「上記電極を露出させるための開口用貫通穴を有」し,「上記電極を露出した状態」で「配置」されるのに対し,甲2発明においては,「表面アルミナ層」が開口用貫通穴を有していない点。 第3 原告主張の取消事由 1 取消事由1(無効理由1(請求項1及び2に係る明確性要件違反・サポート要件違反)についての判断の誤り) 本件審決は,本件特許の請求項1には,ガスセンサ素子として必要な固体電解質シート及び一対の電極を有すること,表面アルミナ層に設けた開口用貫通穴から電極が露出していることが特定されていることから,測定対象のガスと電極とが接触するための構造を把握することができ,請求項1に係るガスセンサ素子がガスセンサ素子として機能することは明らかであるから,ジルコニア充填部 ることが特定されていることから,測定対象のガスと電極とが接触するための構造を把握することができ,請求項1に係るガスセンサ素子がガスセンサ素子として機能することは明らかであるから,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出し得る空間についての特定がされていないことをもって,請求項1の記載が明確でないということはできない旨判断した。 しかし,ガスセンサ素子として機能するのに必要な構造が記載されていることと,「ジルコニア充填部が充填用貫通穴内から抜け出してしまうことを防止することができる。」(本件明細書の段落【0016】)という作用効果(以下,この作用効果を「抜け出し防止効果」という場合がある。)を奏- 14 -するのに必要な構成が明確に記載されていることとは,全く別である。 本件特許の請求項1では,表面アルミナ層がない場合において,ジルコニア充填部が抜け出して進む先の部位としての空間が,固体電解質シートの上方や下方に存在しているか否かについて特定されておらず,したがって,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出し得る空間が存在しない場合も含まれることになるが,そのような場合には,もともとジルコニア充填部の抜け出しは生じ得ないのであるから,抜け出し防止効果を原理的に奏し得ないことは明らかである。つまり,請求項1の記載では,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出し得る空間についての特定がされていないことにより,抜け出し防止効果を生じるガスセンサ素子が備えるべき構成の記載が明らかに欠落しているのである。 したがって,請求項1及びこれを引用した請求項2の記載は,明確性要件を欠くものというべきであり,これを満たしているとした本件審決の判断は誤りである。 本件審決は,本件明細書の段落【0016】から,ジルコニア充填 及びこれを引用した請求項2の記載は,明確性要件を欠くものというべきであり,これを満たしているとした本件審決の判断は誤りである。 本件審決は,本件明細書の段落【0016】から,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止するという作用効果は,表面アルミナ層がジルコニア充填部の外縁部に重ねて配置されることによってもたらされることは明らかであるとした上で,本件特許の請求項1では,「該一対の表面アルミナ層には,上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴が設けてあり,該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあって,該開口用貫通穴から上記電極が露出し,且つ,該開口用貫通穴の周縁部は,ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重なっている」ことが特定されているから,課題を解決するための手段が反映されており,発明の作用効果を奏しない範囲を含むとはいえない旨判断した。 しかし,表面アルミナ層がジルコニア充填部の抜け出し防止効果を奏するといえるには,ガスセンサ素子の形態として,表面アルミナ層がない状態に- 15 -おいて,アルミナシートとジルコニア充填部からなる固体電解質シートの上方及び下方に,ジルコニア充填部が抜け出して進む先である「抜け出し得る空間が存在している」形態のガスセンサ素子であることが前提となる。ところが,本件特許の請求項1では,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出し得る空間についての特定がされていないため,このような空間が存在しない形態のガスセンサ素子も含まれることになる。 したがって,請求項1及びこれを引用した請求項2については,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止するという作用効果を奏しない範囲を含むものであるから,サポート要件を満たしていないとい ,請求項1及びこれを引用した請求項2については,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止するという作用効果を奏しない範囲を含むものであるから,サポート要件を満たしていないというべきであり,これを満たしているとした本件審決の判断は誤りである。 2 取消事由2(無効理由2(請求項1及び2に係るサポート要件違反)についての判断の誤り)本件審決は,本件特許の請求項1において,表面アルミナ層の開口用貫通穴の周縁部がジルコニア充填部の外縁部に重なっていることの技術的意義は,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止することにあることに鑑みると,表面アルミナ層の開口用貫通穴の周縁部とジルコニア充填部の外縁部とが重なる範囲及び程度は,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出てしまうことを防止できるものであると解釈するのが相当であるから,請求項1の記載が表面アルミナ層の開口用貫通穴の周縁部とジルコニア充填部の外縁部とが重なる範囲及び程度を特定していないことをもって,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止するという作用効果を奏しない範囲を含むとはいえない旨判断した。 しかし,本件審決の上記判断は,要するに,本件明細書に「抜け出し防止効果」が記載されているから,請求項1に記載のガスセンサ素子の構成は,抜け出し防止ができる構成であるというものであり,請求項1の記載を無視した誤った判断である。 - 16 -すなわち,請求項1の記載からすれば,表面アルミナ層の開口用貫通穴の周縁部がジルコニア充填部の外縁部に重なった形態のガスセンサ素子は,全てその技術的範囲に属することになるが,上記重なりの範囲及び程度によっては,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止できないものもあり 外縁部に重なった形態のガスセンサ素子は,全てその技術的範囲に属することになるが,上記重なりの範囲及び程度によっては,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止できないものもあり得るから,請求項1の記載は,上記重なりの範囲及び程度を特定しないことにより,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止するという作用効果を奏しない範囲を含むものとなっている。 したがって,請求項1及びこれを引用した請求項2については,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止するという作用効果を奏しない範囲を含むものであるから,サポート要件を満たしていないというべきであり,これを満たしているとした本件審決の判断は誤りである。 3 取消事由3(無効理由3(請求項2に係る明確性要件違反・サポート要件違反)についての判断の誤り)本件審決は,本件特許の請求項2における「ジルコニア充填部に対応する位置に,被測定ガスを導入するためのチャンバーを形成した」との記載について,固体電解質であるジルコニア充填部と被測定ガスを導入するためのチャンバーとが重なるように構成することを意味していると解釈するのが相当であるから,請求項2が被測定ガスを導入するためのチャンバーを形成する位置をジルコニア充填部に対応する位置として特定していることをもって,その記載が明確でないとまでいうことはできない旨判断した。 しかし,請求項2の上記記載について,ジルコニア充填部とチャンバーとが重なるように構成することを意味するとの解釈に立ったとしても,「ジルコニア充填部」と「チャンバー」とが重なる場合には,両者の平面方向の範囲(厚み方向に見た範囲)の大小関係(包含関係)を考慮すると,①「ジルコニア充填部」の範囲が「チャンバー」の範囲を含む場合,② ルコニア充填部」と「チャンバー」とが重なる場合には,両者の平面方向の範囲(厚み方向に見た範囲)の大小関係(包含関係)を考慮すると,①「ジルコニア充填部」の範囲が「チャンバー」の範囲を含む場合,②「チャンバー」の範囲が「ジルコニア充填部」の範囲を含む場合及び③「ジルコニア充填部」- 17 -の範囲と「チャンバー」の範囲とが互いに一部で重なる場合の3つの場合が考えられるところ,このうち,上記②以外の場合には,ジルコニア充填部がチャンバー側に抜け出ることができない形態のもの,すなわち,ジルコニア充填部の抜け出し防止効果を奏し得ない形態のものが含まれることになる。 このように,請求項2の前記記載について,ジルコニア充填部とチャンバーとが重なるように構成することを意味するとの解釈に立ったとしても,その中には,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止するという作用効果を奏しない形態のガスセンサ素子が含まれてしまうのであり,このことは,請求項2の記載が,「ジルコニア充填部」と「チャンバー」の位置関係について,「対応する位置」としか特定せず,上記②の場合の構成に関する記載が不足していて,不明確であることに起因するものである。 したがって,請求項2の記載は,明確性要件を欠くものというべきであり,これを満たしているとした本件審決の判断は誤りである。 本件審決は,本件特許の請求項2が引用する請求項1では,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止するという作用効果を奏するための構成が特定されているから,発明の作用効果を奏しない範囲を含むとはいえない旨判断した。 「ジルコニア充填部」と「チャンバー」の位置関係について,「対応する位置」としか特定しないことにより,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から 用効果を奏しない範囲を含むとはいえない旨判断した。 「ジルコニア充填部」と「チャンバー」の位置関係について,「対応する位置」としか特定しないことにより,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止するという作用効果を奏しない範囲を含むものとなっている。 したがって,請求項2については,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止するという作用効果を奏しない範囲を含むものであるから,サポート要件を満たしていないというべきであり,これを満たしているとした本件審決の判断は誤りである。 - 18 - 4 取消事由4(無効理由4(本件発明1ないし3に係る進歩性欠如)についての判断の誤り) 容易想到性判断の誤り)本件審決は,甲3技術(「ガスセンサ素子の製造方法において,シート上の導体層との間に隙間を空けることなくその周縁に接するように,かつ,導体層の平坦部と略面一になるように接着剤を塗布し,シート又はスペーサを重ね合わせた状態で加圧して積層して中間体を作製し,その後焼成する技術。」)を適用した結果として得られる表面アルミナ層(接着剤表面アルミナ層)について,相違点に係る本件発明1の構成のうち,「上記アルミナシートの両表面には,該アルミナシートよりも薄く,電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層が積層してあり,該一対の表面アルミナ層には,上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴が設けてあり」,「該開口用貫通穴から上記電極が露出し,且つ,該開口用貫通穴の周縁部は,上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重なっている」との構成を満たしているが,本件発明1の「該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあ」るとの構成は,電極の側面が露出する 部は,上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重なっている」との構成を満たしているが,本件発明1の「該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあ」るとの構成は,電極の側面が露出する程度に開口用貫通穴は電極よりも大きな形状に形成してあることを特定しているものと理解するのが相当であるから,第1電極404及び第2電極406の側面に接する上記接着剤表面アルミナ層は,上記構成を満たしているとはいえない旨判断した。 加えて,本件審決は,甲3には,導体層との間に隙間を空け,導体層の側面に接しないように接着剤を塗布することを示唆する記載は見当たらず,他方,甲3における「上記積層工程において,未焼成基板上の導体層を形成した表面に未焼成積層シートを積層して中間体を作製する際には,未焼成積層シートは導体層の平坦部に当接することができる。そのため,この積層の際- 19 -に,未焼成基板と未焼成積層シートとの間に過度の局所的な加重が加わることを防止することができる。」(段落【0009】),「未焼成スペーサ150,170は,未焼成固体電解質シート160の両側の表面において上記略面一の状態を形成したリード部211,221の平坦部201と接着剤5とに対して当接することができる。」(段落【0052】)との記載に鑑みると,当業者であれば,局所的な加重が加わることを防止し,導体層の平坦部と接着剤とで略面一の状態を形成するためには,導体層と接着剤との間に隙間を設けないことが有利であると理解するものといえるから,接着剤表面アルミナ層の開口用貫通穴を電極の側面が露出する程度に上記電極よりも大きな形状に形成することを当業者が容易に想到することができるといえる根拠もないとし,本件発明1は,甲2発明容易に発明をすることができたものとすることはできない旨 側面が露出する程度に上記電極よりも大きな形状に形成することを当業者が容易に想到することができるといえる根拠もないとし,本件発明1は,甲2発明容易に発明をすることができたものとすることはできない旨判断した。 しかしながら,以下に述べるとおり,本件審決の上記判断は誤りである。 ア本件発明1の「該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあ」るとの構成についての解釈の誤り本件審決は,本件発明1の「該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあ」るとの構成について,請求項1には記載のない「電極の側面が露出する程度に」との文言を補う解釈をしているが,そのような解釈をすべき理由はない。 本件審決は,上記解釈の根拠として,本件明細書の段落【0025】の記載及び図4を挙げる。 確かにこの本件明細書の段落【0025】には,「開口用貫通穴351は,ジルコニア充填部4(充填用貫通穴31)よりも小さく,ジルコニア充填部4における電極5よりも大きな形状に形成してある。」と記載されており,図4には,電極5と表面アルミナ層35との間に隙間を設けた形態のガスセンサ素子が記載されている。 - 20 -しかしながら,本件明細書の段落【0025】は,開口用貫通穴351とジルコニア充填部4(充填用貫通穴31)との大小関係及び開口用貫通穴351と電極5との大小関係を記載しているにすぎず,電極5と表面アルミナ層35との間に「隙間を設ける」ことについて何ら記載するものではない。 また,本件明細書の図4は,「開口用貫通穴351は,ジルコニア充填部4(充填用貫通穴31)よりも小さく,ジルコニア充填部4における電極5よりも大きな形状に形成してある」形態のガスセンサ素子の一例を示しているにすぎない。 し 開口用貫通穴351は,ジルコニア充填部4(充填用貫通穴31)よりも小さく,ジルコニア充填部4における電極5よりも大きな形状に形成してある」形態のガスセンサ素子の一例を示しているにすぎない。 したがって,本件明細書の段落【0025】の記載及び図4の記載は,本件発明1の「該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあ」るとの構成に関する本件審決の解釈の根拠となるものではない。 また,本件審決は,「ガスセンサ素子において,電極はできる限り広い面積で測定ガスに接することが好ましいことが技術常識であること」を前記解釈の根拠とする。 しかし,「ガスセンサ素子において,電極はできる限り広い面積で測定ガスに接することが好ましい」との技術的知見は正しいとしても,当業者は,ガスセンサ素子の設計に当たり,測定ガスに接する電極の面積を広くすることのみを考慮して,ジルコニア充填部4に形成する電極5の大きさや形態を設計するものではなく,製造工程等におけるその他の事項等をも考慮するものであるから,上記の技術的知見を他に優先して守らなければならない事項であるかのように扱うことはできない。 また,電極が測定ガスに接する露出面の面積は,電極の大きさ及び電極と表面アルミナ層との間の隙間の大きさ等によって異なり,電極の側面を露出させることが,必ずしも電極が広い面積で測定ガスに接することにはならない。 - 21 -したがって,上記の技術常識の存在が,直ちに本件審決のような解釈をすべきことの根拠となるものではない。 以上のとおり,「該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあ」るとの構成について,本件審決のように,「電極の側面が露出する程度に」との文言を補う解釈をすべき根拠はなく,当該構成は,その文言どおり,開口用貫通穴と電極との物理 電極よりも大きな形状に形成してあ」るとの構成について,本件審決のように,「電極の側面が露出する程度に」との文言を補う解釈をすべき根拠はなく,当該構成は,その文言どおり,開口用貫通穴と電極との物理的な大小関係を定めたものであると解釈すべきである。 しかるところ,物理的に見れば,外側にあるものはその内側にあるものよりも大きいことが当然の理であるから,用した結果として得られる「第1電極404及び第2電極406の側面に接し,第1電極404及び第2電極406の表面を露出させる接着剤表面アルミナ層」は,「該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあ」るとの構成を満たしているといえる。 イ甲3記載の技術について,接着剤5が導体層20等の周縁に接する形態に限定されるとした認定及び当該認定に基づく容易想到性判断の誤り本件審決は,甲3記載の技術について,接着剤5が導体層20等の周縁に接する形態に限定して認定した上で,甲3には,導体層との間に隙間を空け,導体層の側面に接しないように接着剤を塗布することを示唆する記載は見当たらないから,接着剤表面アルミナ層の開口用貫通穴を電極の側面が露出する程度に上記電極よりも大きな形状にすることを,当業者が容易に想到することができたといえる根拠はない旨判断する。 確かに,甲3の図7及び図9には,導体層20等との間に隙間を空けることなくその周縁に接するように接着剤(接着剤表面アルミナ層)5を形成した形態が記載されている。 しかし,甲3の記載(段落【0049】ないし【0053】)によれば,甲3技術においては,接着剤5を導体層20等における平坦部201等と- 22 -略面一に設けることは必要とされているものの,接着剤5を導体層20等との間に隙間を空けることなく設けることが必要であると 技術においては,接着剤5を導体層20等における平坦部201等と- 22 -略面一に設けることは必要とされているものの,接着剤5を導体層20等との間に隙間を空けることなく設けることが必要であるとはされていない。 したがって,図7や図9等に,甲3における好ましい実施形態として,導体層20等の周縁に接着剤5が接する形態が記載されているからといって,甲3技術は,接着剤5が導体層20等の周縁に接する形態に限定され,導体層20等の側面に接しない形態は除外されているとすることはできず,本件審決の上記認定及び当該認定に基づく容易想到性の判断は誤りである。 ウ以上によれば,者が容易に発明をすることができたものではないとする本件審決の判断は誤りである。 取消事由4-2(本件発明1について,甲4発明及び甲5技術に基づく容易想到性判断の誤り)本件審決は,相違点1及び3に係る本件発明1の各構成が容易に想到し得ないものであることを理由に,本件発明1は,甲4発明及び甲5技術(「固体電解質板に被測定ガス側電極を覆うガス透過性の拡散層を積層したガスセンサ素子において,固体電解質体と拡散層との間に被測定ガス側電極と対面する位置に窓を有する絶縁層と接着層とを介在させ,絶縁層と接着層とに設けた窓により被測定ガス側電極を格納する小室を形成する技術。」)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない旨判断した。 しかしながら,以下に述べるとおり,本件審決の判断は誤りである。 ア相違点1について本件審決は,相違点1に係る本件発明1の構成について,甲4発明及び甲5技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない旨判断したが,その判断は,以下に述べるとおり,誤りである。 - 23 - 本件審決は,甲 本件発明1の構成について,甲4発明及び甲5技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない旨判断したが,その判断は,以下に述べるとおり,誤りである。 - 23 - 本件審決は,甲4発明における素子は,第1セル部用電極122上に中間層17における中間層多孔質部171を積層する積層型ガスセンサ素子であり,第1セル部用電極122を小室に格納するタイプのガスセンサ素子ではないから,甲4発明の第1セル部用電極122を小室に格納しようとする動機付けが存在するとはいえない旨判断した。 しかし,甲4ないし7に記載されているとおり,「積層型のガスセンサ素子」及び「電極を小室に格納するタイプのガスセンサ素子」は,いずれも周知の形態であって,当業者がいずれかを適宜選択できる程度のものである。 したがって,甲4発明の電極上に積層した中間層17を,甲5記載の被測定ガス側電極121を小室127に格納する絶縁層163及び接着層164に換える程度の変更は,当業者が通常行う周知技術の変更適用にすぎないから,そのような動機付けが存在しないとする本件審決の判断は誤りである。 また,本件審決は,甲4の段落【0038】の記載によれば,甲4発明は,中間層を設けることにより電極の細線化や切断を防止しようとするものであるから,「積層型のガスセンサ素子」及び「電極を小室に格納するタイプのガスセンサ素子」が適宜選択できるものであるからといって,甲4発明の中間層に換えて甲5技術の小室を形成する絶縁層及び接着層を採用することの動機付けとなるものとはいえない旨判断した。 しかし,甲4の段落【0038】の記載からすれば,細線化や切断が問題となるのは,電極のうちでも,線状の電極リード部であり,幅広の電極部ではないから,細線化や切断を防止するために薄い 判断した。 しかし,甲4の段落【0038】の記載からすれば,細線化や切断が問題となるのは,電極のうちでも,線状の電極リード部であり,幅広の電極部ではないから,細線化や切断を防止するために薄い層を設ける必要があるのは,境界と電極リード部との間であり,境界と幅広の電極部との間にまで薄い層(中間層)が必要であるわけではない。 したがって,甲4発明が中間層を設けることにより電極の細線化や切- 24 -断を防止しようとするものであることを根拠として,甲4発明の中間層に換えて甲5技術を採用することの動機付けがないとする本件審決の判断は誤りである。 さらに,本件審決は,甲4発明の中間層に換えて甲5技術の小室を形成する絶縁層及び接着層を採用したとしても,相違点1における「開口用貫通穴の周縁部は,上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重なっている」構成を直ちに導き出せるものではない旨主張する。 しかし,甲4発明において,中間層17に換えて甲5記載の小室127を有する絶縁層163及び接着層164を設けるに当たり,この小室127(絶縁層163及び接着層164の窓)の幅を設定するのに,第2絶縁性基部多孔質部161よりも幅広にすることにメリットはないから,小室の幅は,第2絶縁性基部多孔質部161と同じ幅あるいはこれ以下とするのが通常であると考えられる。そうすると,以下の「甲4の図11+小室」の図に示されているとおり,このガスセンサ素子では,中間層17に換えた絶縁層163及び接着層164には,第1セル部用固体電解質体121を収容する小室127(窓)が設けられ,かつ,この小室127(窓)の周縁部は,第1セル部用固体電解質体121の外縁部に重なる形態となり,この小室127を構成する絶縁層163及び接着層164は,本件発明1の「開口用貫 7(窓)が設けられ,かつ,この小室127(窓)の周縁部は,第1セル部用固体電解質体121の外縁部に重なる形態となり,この小室127を構成する絶縁層163及び接着層164は,本件発明1の「開口用貫通穴」を有する「表面アルミナ層」に相当することとなる。 <甲4の図11+小室> - 25 -したがって,甲4発明の中間層に換えて甲5技術の小室を形成する絶縁層及び接着層を採用すれば,相違点1における「開口用貫通穴の周縁部は,上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重なっている」構成を直ちに導き出せるのであり,本件審決の上記判断は誤りである。 イ相違点3について本件審決は,相違点3に係る本件発明1の構成について,甲4発明及び甲5技術から当業者が容易に想到し得たとはいえない旨判断した。 しかしながら,相違点3については,本件発明1の構成及び作用効果に鑑み,相違点として考慮すべき実質的な差異には当たらないというべきであるから,本件審決の上記判断は誤りである。 すなわち,甲4発明においては,甲4の図11から明らかなとおり,第1セル部用固体電解質体(ジルコニア充填部)121の幅方向の外縁部には,内室15の周縁部をなす律速導入用多孔質部151,152が重なる形態となっている。しかも,その重なりは,第1セル部用固体電解質体121及び律速導入用多孔質部151,152の厚みよりも大きくなっていることからすれば,長手方向の形態のいかんにかかわらず,第1セル部用固体電解質体121が,その構造上,下方に抜け出し得ないことは明らかである。 したがって,長手方向における開口用貫通穴,電極及びジルコニア充填部相互の大小関係に係る相違点3は,ジルコニア充填部の抜け出し防止 21が,その構造上,下方に抜け出し得ないことは明らかである。 したがって,長手方向における開口用貫通穴,電極及びジルコニア充填部相互の大小関係に係る相違点3は,ジルコニア充填部の抜け出し防止効果に関わるものではないから,実質的な相違点には当たらない。 取消事由4-3(本件発明1について,甲4発明及び甲6技術に基づく容易想到性判断の誤り)本件審決は,相違点1及び3に係る本件発明1の各構成が容易に想到し得ないものであることを理由に,本件発明1は,甲4発明及び甲6技術(「酸素イオン導電性の固体電解質体の表面に設けた被測定ガス側電極を多孔質拡- 26 -散抵抗層にて被覆した積層型空燃比センサ素子において,固体電解質体と多孔質拡散抵抗層との間に開口を有する絶縁層及び窓部を有するスペーサを積層し,絶縁層の開口及びスペーサの窓部により被測定ガス側電極と多孔質拡散抵抗層との間に空間部を設ける技術。」)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない旨判断した。 しかしながら,以下に述べるとおり,本件審決の判断は誤りである。 ア相違点1について本件審決は,前記点1に係る本件発明1の構成は,甲4発明及び甲6技術から当業者が容易に想到し得たとはいえない旨判断したが,その判断が誤りであることについては,ことがそのまま妥当する。 イ相違点3について本件審決は,相違点3に係る本件発明1の構成について,甲4発明及び甲6技術から当業者が容易に想到し得たとはいえない旨判断したが,そのする。 取消事由4-4容易想到性判断の誤り)本件審決は,本件発明2について,本件発明1の発明特定事項を全て含み,更に発明特定事項を追加したものであるから,本件発明1と同様に,甲2発することはできない旨判断した。 易想到性判断の誤り)本件審決は,本件発明2について,本件発明1の発明特定事項を全て含み,更に発明特定事項を追加したものであるから,本件発明1と同様に,甲2発することはできない旨判断した。 しかしながら,本件発明1について当業者が容易に発明をすることができたものではないとした本件審決の判断が誤りである審決の上記判断も誤りである。 - 27 -取消事由4-5容易想到性判断の誤り)本件審決は,本件発明3において焼成するシート体について,ジルコニアシートの両表面における外縁部に重なる状態で,アルミナシートの両表面に電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層を配置して形成したものであるから,各表面アルミナ層のアルミナシートとは反対側の面には,他の層などが形成されていないものと認められるとした上で,甲3技術は,シートに接着剤を塗布し,シート又はスペーサを重ね合わせた状態で加圧,積層して中間体を作製し,その後焼成するものであるから,甲2発に甲3技術を適用したものは,未焼成絶縁部材405の両面に形成した各接着剤表面アルミナ層の上に未焼成保護層407及び未焼成第2基体403を積層した後に焼成するものであって,本件発明3における各表面アルミナ層のアルミナシートとは反対側の面には,他の層などが形成されていないシート体とは異なるものであるでは,上記相違点は解消しないとして,技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない旨判断した。 しかしながら,本件特許の特許請求の範囲の請求項3には,「…シートを形成し,該シート体を焼成することを特徴とするガスセンサ素子の製造方法。」と記載されているのみであり,「…シートを形成し,該シート体のみを焼成する」とか,「…シート体を焼成した後に, ,「…シートを形成し,該シート体を焼成することを特徴とするガスセンサ素子の製造方法。」と記載されているのみであり,「…シートを形成し,該シート体のみを焼成する」とか,「…シート体を焼成した後に,この焼成したシート体に他の層を積層する」などとは記載されていないのであるから,請求項3では,シート体の上下に他の層を形成した後に,他の層と共にシート体を焼成する場合も含まれる記載となっていると解される。 したがって,本件審決が前提とする本件発明3において焼成するシート体に関する解釈は,特許請求の範囲の記載に基づかない誤ったものであり,こ- 28 -のような解釈に基づに甲3技術を適用しただけでは相違点は解消しないとして,本件発明3の容易想到性を否定する本件審決の判断も誤りである。 第4 被告の主張 1 取消事由1(無効理由1(請求項1及び2に係る明確性要件違反・サポート要件違反)についての判断の誤り)に対し原告は,本件特許の請求項1及び2の記載について,ジルコニア充填部が抜け出し得る空間についての記載がなく,その結果,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止するという作用効果を奏しない範囲を含むものとなっていることから,明確性要件及びサポート要件を満たしていない旨主張する。 しかし,本件発明1のガスセンサ素子は,表面アルミナ層の開口用貫通穴の周縁部が,ジルコニア充填部の外縁部と重なるように配置することで,ジルコニア充填部の抜け出しを防止するものであるから,ジルコニア充填部が抜け出し得る空間の存在は,本件発明1における当然の前提である。そして,このような抜け出し得る空間としては,本件明細書の図1のジルコニア充填部の両側に配置されたチャンバー61がその典型であるが,これに限定されるものではなく 本件発明1における当然の前提である。そして,このような抜け出し得る空間としては,本件明細書の図1のジルコニア充填部の両側に配置されたチャンバー61がその典型であるが,これに限定されるものではなく,本件明細書の図4に示されるとおり,表面アルミナ層の厚みの範囲で動きやすくなるのを防止する場合も想定できる。 しかるところ,本件特許の請求項1に係るガスセンサ素子は,ガスセンサ素子として機能するものであり,請求項1の記載では,「表面アルミナ層には,上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴が設けてある」こと及び「開口用貫通穴の周縁部は,上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重なっていること」が規定されていることから,表面アルミナ層によるジルコニア充填部の抜け出し防止の課題を解決する手段は明確に反映されているものといえる。 - 29 -したがって,請求項1及びこれを引用した請求項2の記載について,明確性要件及びサポート要件違反があるとする原告の上記主張は理由がなく,本件審決の判断に誤りはない。 2 取消事由2(無効理由2(請求項1及び2に係るサポート要件違反)についての判断の誤り)に対し原告は,請求項1の記載について,表面アルミナ層の開口用貫通穴の周縁部がジルコニア充填部の外縁部に重なる範囲及び程度を特定しないことにより,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止するという作用効果を奏しない範囲を含むものとなっており,サポート要件を満たしていない旨主張する。 しかし,表面アルミナ層の開口用貫通穴の周縁部とジルコニア充填部の外縁部の重なりをどの程度にするかについては,本件明細書の実施例の記載(段落【0016】)でも,その全周を重ねることもできるし,周方向の適宜箇所を重ねるこ の開口用貫通穴の周縁部とジルコニア充填部の外縁部の重なりをどの程度にするかについては,本件明細書の実施例の記載(段落【0016】)でも,その全周を重ねることもできるし,周方向の適宜箇所を重ねることもできると説明されているとおり,ジルコニア充填部の抜け出し防止効果を考慮して適宜設定することができる。したがって,請求項1の記載は,「表面アルミナ層には,上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴が設けてある」こと及び「開口用貫通穴の周縁部は,上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重なっていること」が規定されている以上,ジルコニア充填部の抜け出し防止効果を奏するものであることは明らかである。 したがって,請求項1及びこれを引用した請求項2の記載について,サポート要件違反があるとする原告の上記主張は理由がなく,本件審決の判断に誤りはない。 3 取消事由3(無効理由3(請求項2に係る明確性要件違反・サポート要件違反)についての判断の誤り)に対し原告は,本件特許の請求項2の記載について,「ジルコニア充填部」と「チャンバー」の位置関係を,「対応する位置」としか特定しないことにより,ジ- 30 -ルコニア充填部がチャンバー側に抜け出ることができない形態のもの,すなわち,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出してしまうことを防止するという作用効果を奏しない範囲を含むものとなっていることから,明確性要件及びサポート要件を満たしていない旨主張する。 しかし,ジルコニア充填部が抜け出し得る空間の存在は,本件発明1における当然の前提であるから,請求項2の「上記2枚のアルミナシートにおける上記ジルコニア充填部に対応する位置に,被測定ガスを導入するためのチャンバーを形成した」との記載によって,ジルコニア充填部が充填用 る当然の前提であるから,請求項2の「上記2枚のアルミナシートにおける上記ジルコニア充填部に対応する位置に,被測定ガスを導入するためのチャンバーを形成した」との記載によって,ジルコニア充填部が充填用貫通穴から抜け出し得る空間についての特定はされているというべきである。 したがって,請求項2の記載について,明確性要件及びサポート要件違反があるとする原告の上記主張は理由がなく,本件審決の判断に誤りはない。 4 取消事由4(無効理由4(本件発明1ないし3に係る進歩性欠如)についての判断の誤り)に対し 容易想到性判断の誤り)に対しア原告の主張の誤り原告は,本件審決が,本件発明1の「該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあ」るとの構成について,「電極の側面が露出する」ものに限定して解釈したことは誤りであり,したがって,この解釈を前提に,「接着剤表面アルミナ層」は,「該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあ」るとの構成を満たさないとした本件審決の判断は誤りである旨主張する。 しかしながら,請求項1においては,「該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状」と規定されているところ,これは,開口用貫通穴の内面が電極の外面より大きいことを意味し,そうである以上,その間に- 31 -隙間が必然的に生じ,電極の側面が露出することは明らかである。すなわち,開口用貫通穴と電極との間に隙間がなく,電極の側面が露出しないのであれば,それは,開口用貫通穴の内面と電極の外面が同じであるということになり,「該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状」とはならないはずである。 したがって,本件発明1の「該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあ」るとの構成に うことになり,「該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状」とはならないはずである。 したがって,本件発明1の「該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあ」るとの構成についての本件審決の上記解釈に誤りはなく,これに基づく上記判断にも誤りはないから,原告の上記主張には理由がない。 また,原告は,本件審決が,甲3技術について,接着剤5が導体層20等の周縁に接する形態に限定して認定したことについて,甲3に,接着剤5と導体層20等との間に隙間を空けることなく設けることが必要である旨の記載がないことを根拠に誤りであるとし,当該認定を前提とした容易想到性の判断も誤りである旨主張する。 しかしながら,本件審決は,甲3技術の目的が未焼成基板と未焼成積層シートとの間に局所的な加重が加わるのを防止することであることを踏まえ,甲3技術では導体層の平坦部と接着剤とで略面一の状態を形成していることを確認した上で,接着剤5と導体層20等との間に隙間がないことが甲3に実質的に記載されていると判断したのであり,単に,本件明細書に「隙間を設けてはならない」旨の文言があるか否かのみを取り上げて,本件審決に誤りがあるとする原告の主張には理由がない。 イ本件審決の結論に誤りがないこと に発明することができないとした本件審決の結論に誤りがないことは,次のような点からも明らかである。 本件審決は,甲2発明に甲3技術を適用するに当たり,甲2発明- 32 -の保護層407及び第2基体403を本件発明1の表面アルミナ層に対応させた上で,これらを甲3技術の接着剤に置き換えることは当業者が想起し得る事項である旨判断した。 しかし,甲3技術の接着剤に置き換えた 体403を本件発明1の表面アルミナ層に対応させた上で,これらを甲3技術の接着剤に置き換えることは当業者が想起し得る事項である旨判断した。 しかし,甲3技術の接着剤に置き換えた場合,その接着剤層に開口用貫通穴を設ける動機付けはない。 むしろ,甲2発明の第2基体403を接着剤に置き換え,その接着剤層に本件発明1の表面アルミナ層のように開口用貫通穴を設けるとすれば,第1電極404の電極部451が発熱体402の発熱部455と直接対面し,ガスセンサ素子として機能し得ないこととなる。 また,甲2発明は,固体電解質体と絶縁部材との境界部分に生じる段差によって電極が断線状態となるおそれがあることを課題とし,境界部分における固体電解質体と絶縁部材との段差寸法を電極の厚さ寸法よりも小さくすることで,固体電解質体と絶縁部材との境界部分において電極が断線するのを防止できるようにした発明であり,電極と接する面において極力段差を少なくすることをその発明の特徴としているところ,甲2発明の保護層407を接着剤に置き換え,その接着剤層に開口用貫通穴を設けるとすれば,当該開口用貫通穴の周縁部に必然的に段差が生ずることとなり,甲2発明の目的に反することとなる。 以上のとおり,甲2発明の保護層407及び第2基体403を甲3技術の接着剤に置き換え,その接着剤層に本件発明1の表面アルミナ層のように開口用貫通穴を設けることには動機付けがなく,むしろ阻害要因があるといえるから,これを当業者が想起し得る事項であるとした本件審決の上記判断は誤りである。そうすると,この点において,甲2発想到することができないことは明らかであるから,本件審決には,その- 33 -結論において誤りはない。 仮に,本件審決が,甲2発 断は誤りである。そうすると,この点において,甲2発想到することができないことは明らかであるから,本件審決には,その- 33 -結論において誤りはない。 仮に,本件審決が,甲2発明に甲3技術を適用するに当たり,甲2発明の保護層407及び第2基体403を本件発明1の表面アルミナ層に対応させた上で,これらを甲3技術の接着剤に置き換えるという態様ではなく,甲2発明の保護層407及び第2基体403と固体電解質体との間に甲3技術の接着剤5を追加する態様を前提としているとしても,甲2発明においては,保護層407及び第2基体403がアルミナ粉末を含む未焼成シートとして形成され,その後,未焼成の成型体を形成し,積層方向の外力を加えて未焼成シートを圧着することで各層間の接合を行い,切断後焼成しているのであり,保護層407及び第2基体403の未焼成シートそれ自体が接着剤の機能を備えているのであるから,それに加えて更に接着剤を用いることには動機付けがなく,むしろ無駄な構成の追加となる点において,阻害要因があるというべきである。 したがって,甲2発明の保護層407及び第2基体403と固体電解質体との間に甲3技術の接着剤5を追加する態様を前提としても,甲易に想到することができないことは明らかであるから,本件審決には,その結論において誤りはない。 さらに,仮に,甲2発明も,甲2においては,電極部447,451と固体電解質体435の大きさに関して,電極部が固体電解質体より大きい場合も,逆に小さい場合もあるとされており,大小関係は特定されていない。そうすると,上通穴と固体電解質体(本件発明1のジルコニア充填部に相当)との大小関係は特定されないことになるから,相違点に係る本件発明1の構成の- 34 - れており,大小関係は特定されていない。そうすると,上通穴と固体電解質体(本件発明1のジルコニア充填部に相当)との大小関係は特定されないことになるから,相違点に係る本件発明1の構成の- 34 -うち,「該開口用貫通穴の周縁部は,上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重なっている」との構成を導き出すことはできない。 したがって,上記の点においても,て,相違点に係る本件発明1の構成を容易に想到することができないことは明らかであるから,本件審決には,その結論において誤りはない。 取消事由4-2(本件発明1について,甲4発明及び甲5技術に基づく容易想到性判断の誤り)に対しア相違点1について 原告は,「積層型のガスセンサ素子」と「電極を小室に格納するタイプのガスセンサ素子」は,いずれも周知の形態であって,当業者がいずれかを適宜選択できる程度のものであるから,前者のガスセンサ素子である甲4発明に,後者に関する甲5技術を適用することに動機付けがないとした本件審決の判断は誤りである旨主張する。 しかし,甲4の中間層17は,第2絶縁性基部16の多孔質部161と非多孔質部162との境界部分に生じ易い段差をできる限り平坦化して取り除くために,この境界と電極122との間に薄い層を形成するものであり,その表面に第1セル部用電極122を配置し,電極の保護を図るものであるところ,この中間層17を甲5技術の絶縁層163及び接着層164に換え,小室127を形成する構成とすることは,電極保護という甲4発明の目的に反することとなるから,このような置き換えには阻害要因があるというべきである。 したがって,原告の上記主張には理由がない。 原告は 極保護という甲4発明の目的に反することとなるから,このような置き換えには阻害要因があるというべきである。 したがって,原告の上記主張には理由がない。 原告は,甲4の段落【0038】の記載において,細線化や切断を問題としているのは,電極のうち線状のリード部であり,幅広の電極部ではないから,同段落の記載を根拠として,甲4発明の中間層に換えて甲5技術を採用することの動機付けがないとした本件審決の判断は誤り- 35 -である旨主張する。 しかし,甲4の段落【0038】の記載によれば,中間層17は,第2絶縁性基部の多孔質部と非多孔質部との境界が,第2絶縁性基部の層下に配置されるセル部の備える電極と直接接することを防止するために設けられるのであり,幅細に形成された電極リード部のみのために設けられたものでないことが理解できる。 したがって,原告の上記主張には理由がない。 原告は,甲4発明の中間層に換えて甲5技術の小室を形成する絶縁層及び接着層を採用すれば,相違点1に係る本件発明1の構成を直ちに導き出せるとし,これに反する本件審決の判断は誤りである旨主張する。 しかし,甲4発明の中間層17に甲5技術の小室127を形成する絶縁層163及び接着層164を組み合わせた場合,第2絶縁性基部16の多孔質部161と非多孔質部162との境界部分に生じ易い段差をできる限り平坦化して取り除くために,この境界と電極122との間に薄い層を形成するという中間層17の役割からすれば,第2絶縁性基部16の多孔質部161と非多孔質部162との境界167を中間層17が覆う構成とすることは必須であり,同時に,第1セル部用電極122が第2絶縁性基部多孔質部161に接しない からすれば,第2絶縁性基部16の多孔質部161と非多孔質部162との境界167を中間層17が覆う構成とすることは必須であり,同時に,第1セル部用電極122が第2絶縁性基部多孔質部161に接しないように配置することも必須となる。そうすると,この場合に,中間層17に設けられた開口用貫通穴(甲5技術の小室127)は,第1セル部用電極122よりも小さく設定される構成となるから,相違点1に係る本件発明1の構成のうち,「該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあって,該開口用貫通穴から上記電極が露出」するとの構成を備えないものとなる。 したがって,甲4発明の中間層に換えて甲5技術の小室を形成する絶縁層及び接着層を採用しても,相違点1に係る本件発明1の構成を導き出すことはできないから,本件審決の判断に誤りはなく,原告の上記主- 36 -張には理由がない。 イ相違点3について原告は,甲4発明においては,甲4の図11の幅方向の断面図からみて,長手方向の形態のいかんにかかわらず,第1セル部用固体電解質体121が下方に抜け出し得ないことは明らかであり, 相違点3は実質的な相違点には当たらないから,相違点3に係る本件発明1の構成につき,甲4発明及び甲5技術から当業者が容易に想到し得たとはいえないとした本件審決の判断は誤りである旨主張する。 しかし,甲4の図11のように,第1セル部用固体電解質体121の幅方向の外縁部に内室15の周縁部をなす律速導入部151,152が重なっていたとしても,それのみでは全体の重なり状態は不明であり,全体として第1セル部用固体電解質体121の下方への抜け出し防止効果があるのかは不明というべきであるから,幅方向の断面図のみを根拠とする原告の上記主張は理由がない。 取消事由4-3(本件発明1につ として第1セル部用固体電解質体121の下方への抜け出し防止効果があるのかは不明というべきであるから,幅方向の断面図のみを根拠とする原告の上記主張は理由がない。 取消事由4-3(本件発明1について,甲4発明及び甲6技術に基づく容易想到性判断の誤り)に対し相違点1及び3についての本件審決の判断に誤りがあるとする原告の主張に理由がないことにつ 容易想到性判断の誤り)に対し 発明をすることができたものではないとした本件審決の判断に誤りがないこ したがって,本件審決の上記判断に誤りがあることを前提として,本件発明1に従属する本件発明2について,業者が容易に発明をすることができたものではないとした本件審決の判断に- 37 -誤りがあるとする原告の主張に理由がないことは明らかである。 容易想到性判断の誤り)に対し原告は,本件審決が,本件発明3において焼成するシート体について,各表面アルミナ層のアルミナシートとは反対側の面には他の層などが形成されていないものであるとする解釈には誤りがあり,このような解釈に基づいて,発明3の容易想到性を否定した本件審決の判断は誤りである旨主張する。 しかしながら,本件審決の上記解釈が誤りであるとしても,本件発明3について,甲2発明及び甲3技術に基づいて当業者が容易に発明することができないとした本件審決の結論に誤りがないことは,次のような点から明らかである。 ア本件審決は,甲2発明に甲3技術を適用するに当たり,甲2発明の保護層407及び第2基体403を本件発明3の表面アルミナ層に対応させた上で,これらを甲3技術の接着剤に置き換えることは当業者が想起し得る事項である旨判断した。 しかし,甲2発明の保護層407及び第2基体403を甲3技術の接着剤 の表面アルミナ層に対応させた上で,これらを甲3技術の接着剤に置き換えることは当業者が想起し得る事項である旨判断した。 しかし,甲2発明の保護層407及び第2基体403を甲3技術の接着剤に置き換えた場合,その接着剤層に開口用貫通穴を設ける動機付けはない。 むしろ,甲2発明の第2基体403を接着剤に置き換え,その接着剤層に本件発明3の表面アルミナ層のように開口用貫通穴を設けるとすれば,第1電極404の電極部451が発熱体402の発熱部455と直接対面し,ガスセンサ素子として機能し得ないこととなる。 また,甲2発明は,固体電解質体と絶縁部材との境界部分に生じる段差によって電極が断線状態となるおそれがあることを課題とし,境界部分における固体電解質体と絶縁部材との段差寸法を電極の厚さ寸法よりも小- 38 -さくすることで,固体電解質体と絶縁部材との境界部分において電極が断線するのを防止できるようにした発明であり,電極と接する面において極力段差を少なくすることをその発明の特徴としているところ,甲2発明の保護層407を接着剤に置き換え,その接着剤層に開口用貫通穴を設けるとすれば,当該開口用貫通穴の周縁部に必然的に段差が生ずることとなり,甲2発明の目的に反することとなる。 以上のとおり,甲2発明の保護層407及び第2基体403を甲3技術の接着剤に置き換え,その接着剤層に本件発明3の表面アルミナ層のように開口用貫通穴を設けることには動機付けがなく,むしろ阻害要因があるといえるから,これを当業者が想起し得る事項であるとした本件審決の上記判断は誤りであり,この点において,甲2発明及び甲3技術に基づいて,相違点に係る本件発明3の構成を容易に想到することができないことは明らかであるから,本件審決には,その結論において誤りは 決の上記判断は誤りであり,この点において,甲2発明及び甲3技術に基づいて,相違点に係る本件発明3の構成を容易に想到することができないことは明らかであるから,本件審決には,その結論において誤りはない。 イ仮に,本件審決が,甲2発明に甲3技術を適用するに当たり,甲2発明の保護層407及び第2基体403を本件発明3の表面アルミナ層に対応させた上で,これらを甲3技術の接着剤に置き換えるという態様ではなく,甲2発明の保護層407及び第2基体403と固体電解質体との間に甲3技術の接着剤5を追加する態様を前提としているとしても,甲2発明においては,保護層407及び第2基体403がアルミナ粉末を含む未焼成シートとして形成され,その後,未焼成の成型体を形成し,積層方向の外力を加えて未焼成シートを圧着することで各層間の接合を行い,切断後焼成しているのであり,保護層407及び第2基体403の未焼成シートそれ自体が接着剤の機能を備えているのであるから,それに加えて更に接着剤を用いることには動機付けがなく,むしろ無駄な工程の追加となる点において,阻害要因があるというべきである。 したがって,甲2発明の保護層407及び第2基体403と固体電解- 39 -質体との間に甲3技術の接着剤5を追加する態様を前提としても,甲2発明及び甲3技術に基づいて,相違点に係る本件発明3の構成を容易に想到することができないことは明らかであるから,本件審決には,その結論において誤りはない。 第5 当裁判所の判断当裁判所は,本件発明1に係る取消事由4-1,本件発明2に係る取消事由4-4及び本件発明3に係る取消事由4-5には理由があるから,その余の取消事由につき判断するまでもなく,本件審決にはこれを取り消すべき違法があるものと判断する。その理 -1,本件発明2に係る取消事由4-4及び本件発明3に係る取消事由4-5には理由があるから,その余の取消事由につき判断するまでもなく,本件審決にはこれを取り消すべき違法があるものと判断する。その理由は,以下のとおりである。 1 本件発明1及び3について本件特許に係る本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び3の記載は,前記第2の2のとおりである。 そして,本件明細書(甲8)の発明の詳細な説明には,本件発明1及び3に関し,次のような記載がある(下記記載中に引用する図面については別紙1を参照)。 ア技術分野【0001】本発明は,固体電解質シートの両表面の互いに対向する位置に一対の電極を設けてなるガスセンサ素子及びその製造方法に関する。 イ背景技術【0002】ガスセンサ素子としては,排ガス中の酸素濃度を検出して空燃比制御を行うもの,NOx(窒素酸化物),SOx(硫黄酸化物),HC(炭化水素),CO(一酸化炭素)等の特定ガス成分の濃度を検出するもの等がある。そして,ガスセンサ素子の形状としては,固体電解質シートの両表面の互いに対向する位置に一対の電極を設けてなる積層タイプのものがあ- 40 -る。 この積層タイプのガスセンサ素子においては,酸素イオン導電性を有するジルコニアによって固体電解質シートを形成し,この固体電解質シートの両表面に一対の電極を設けている。そして,この一対の電極を設けた複数の固体電解質シートを,電気絶縁性を有するアルミナシートを介して積層することが行われている。…ウ発明が解決しようとする課題【0004】ところで,アルミナの熱伝導率は,15~40W/mK程度であるのに対し,ジルコニアの熱伝導率は,2~4W/mK程度である。そのため,ガスセンサ素子においてアルミナを多く用いれば, 【0004】ところで,アルミナの熱伝導率は,15~40W/mK程度であるのに対し,ジルコニアの熱伝導率は,2~4W/mK程度である。そのため,ガスセンサ素子においてアルミナを多く用いれば,ガスセンサ素子の早期活性化を図るために有利になる。また,アルミナの曲げ強度は,800MPa程度であるのに対し,ジルコニアの曲げ強度は,470MPa程度である。そのため,ガスセンサ素子においてアルミナを多く用いれば,ガスセンサ素子の強度を図るために有利である。 しかしながら,従来のガスセンサ素子においては,一対の電極を設ける固体電解質シートは,すべてジルコニアから形成している。そのため,ガスセンサ素子の早期活性化及び強度向上の改善を図るためには更なる工夫が必要とされる。 【0005】本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,早期活性化を図ることができると共に強度に優れたガスセンサ素子及びその製造方法を提供しようとするものである。 エ課題を解決するための手段【0006】第1の発明は,固体電解質シートの両表面の互いに対向する位置に一対- 41 -の電極を設けてなるガスセンサ素子において,上記固体電解質シートは,電気絶縁性を有するアルミナ材料からなるアルミナシートに設けた充填用貫通穴内に,酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなるジルコニア充填部を配設してなり,上記一対の電極は,上記ジルコニア充填部の両表面に設けてあり,上記アルミナシートの両表面には,該アルミナシートよりも薄く,電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層が積層してあり,該一対の表面アルミナ層には,上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴が設けてあり,該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあって,該開口用貫 表面アルミナ層が積層してあり,該一対の表面アルミナ層には,上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴が設けてあり,該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあって,該開口用貫通穴から上記電極が露出し,且つ,該開口用貫通穴の周縁部は,上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重なっていることを特徴とするガスセンサ素子にある(請求項1)。 【0007】本発明のガスセンサ素子は,固体電解質シートの形成状態に工夫をすることによって,ガスセンサ素子の早期活性化及び強度向上を図っている。 具体的には,本発明の固体電解質シートは,上記アルミナシートに設けた充填用貫通穴内に上記ジルコニア充填部を配設してなり,ジルコニア充填部に一対の電極を設けている。これにより,固体電解質シートにおいて,ジルコニア材料を用いる部位は,一対の電極の配設箇所に対応する部位だけにすることができ,残りの部位は,熱伝導率及び曲げ強度がジルコニア材料よりも高いアルミナ材料から構成することができる。 【0008】それ故,本発明のガスセンサ素子によれば,早期活性化を図ることができ(ガス濃度の検出が可能になる温度により早く到達させることができ),強度向上(機械的強度,靭性,耐熱強度等の向上)を図ることができる。 【0009】- 42 -第2の発明は,固体電解質シートの両表面の互いに対向する位置に一対の電極を設けてなるガスセンサ素子を製造する方法において,電気絶縁性を有するアルミナ材料を用いて,充填用貫通穴を有するアルミナシートを形成し,酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなり,上記充填用貫通穴の形状に沿った形状のジルコニアシートを,上記充填用貫通穴内に配置し,上記ジルコニアシートの両表面における外縁部に重なる状態で,且つ,上記電極を露 性を有するジルコニア材料からなり,上記充填用貫通穴の形状に沿った形状のジルコニアシートを,上記充填用貫通穴内に配置し,上記ジルコニアシートの両表面における外縁部に重なる状態で,且つ,上記電極を露出した状態で,上記アルミナシートの両表面に電気絶縁性を有するアルミナ材料からなり,上記電極を露出させるための開口用貫通穴を有する一対の表面アルミナ層を配置して,シート体を形成し,該シート体を焼成することを特徴とするガスセンサ素子の製造方法にある(請求項3)。 【0010】本発明のガスセンサ素子の製造方法は,上記第1の発明のガスセンサ素子の製造に適したものである。 具体的には,本発明においては,アルミナシートの充填用貫通穴の形状に沿った形状のジルコニアシートを形成し,このジルコニアシートを充填用貫通穴内に配置する。そして,ジルコニアシートの両表面における外縁部に重なる状態でアルミナシートの両表面に一対の表面アルミナ層を配置して,シート体を形成することにより,ジルコニアシートが充填用貫通穴内から抜け出さないようにすることができる。その後,シート体を焼成することにより,ガスセンサ素子を製造することができる。 【0011】それ故,本発明のガスセンサ素子の製造方法によれば,早期活性化を図ることができると共に強度向上を図ることができるガスセンサ素子を安定して製造することができる。 オ発明を実施するための最良の形態- 43 -【0015】上述した第1,第2の発明における好ましい実施の形態につき説明する。 …上記アルミナ材料は,アルミナ(酸化アルミニウム,Al2O3)を主成分とする(例えば90wt%以上含有する)ものとすることができる。また,アルミナ材料は,アルミナ以外にも,ジルコニア,イットリア,マグネシア,カルシア,シリカ等を含 アルミニウム,Al2O3)を主成分とする(例えば90wt%以上含有する)ものとすることができる。また,アルミナ材料は,アルミナ以外にも,ジルコニア,イットリア,マグネシア,カルシア,シリカ等を含有することができる。 上記ジルコニア材料は,ジルコニア(二酸化ジルコニウム,ZrO2)を主成分とし(例えば85wt%以上含有し),イットリア(Y2O3)を添加してなるものとすることができる。また,ジルコニア材料は,ジルコニア,イットリア以外にも,アルミナ,シリカ,マグネシア,カルシア等を含有することができる。 【0016】第1の発明において,上記アルミナシートの両表面には,該アルミナシートよりも薄く,電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層を積層し,該一対の表面アルミナ層には,上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴を設け,該開口用貫通穴の周縁部は,上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重ねる。 これにより,表面アルミナ層によって,ジルコニア充填部が充填用貫通穴内から抜け出してしまうことを防止することができる。また,ジルコニア充填部に設けた一対の電極は,開口用貫通穴からジルコニア充填部の表面に露出させておくことができる。 なお,開口用貫通穴の周縁部は,その全周をジルコニア充填部の両表面における外縁部に重ねることができる。また,開口用貫通穴の周縁部は,その周方向の適宜箇所をジルコニア充填部の両表面における外縁部に重ねることもできる。 カ実施例- 44 -【0018】以下に,本発明のガスセンサ素子及びその製造方法にかかる実施例につき,図面を参照して説明する。 (実施例1)本例のガスセンサ素子1は,図1,図2に示すごとく,固体電解質シート2の両表面の互いに対向する位置に一対の電極5( 子及びその製造方法にかかる実施例につき,図面を参照して説明する。 (実施例1)本例のガスセンサ素子1は,図1,図2に示すごとく,固体電解質シート2の両表面の互いに対向する位置に一対の電極5(被測定ガス側電極5及び基準ガス側電極5)を設けてなる。本例の固体電解質シート2は,電気絶縁性を有するアルミナ材料からなるアルミナシート3に設けた充填用貫通穴31内に,酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなるジルコニア充填部4を配設してなる。そして,一対の電極5は,ジルコニア充填部4の両表面に設けてある。 【0019】以下に,本例のガスセンサ素子1及びその製造方法につき,図1~図3を参照して詳説する。…図1に示すごとく,本例のガスセンサ素子1は,ジルコニア充填部4を配設した2枚のアルミナシート3を,電気絶縁性を有するアルミナ材料からなるスペーサ6を介して積層してなる。このスペーサ6には,2枚のアルミナシート3におけるジルコニア充填部4に対応する位置に,被測定ガスGを導入するためのチャンバー61が形成されている。 【0021】図2は,第1のアルミナシート3Aの平面状態を示し,図3は,第2のアルミナシート3Bの平面状態を示す。 両図に示すごとく,本例の各アルミナシート3においては,ジルコニア充填部4は1箇所に形成してある。本例の充填用貫通穴31(ジルコニア充填部4)は,四角形状の電極5の形状に合わせて四角形状に形成してある。…- 45 -【0025】(実施例2)本例は,図4に示すごとく,アルミナシート3の両表面に,アルミナシート3よりも薄く,電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層35を積層して,固体電解質シート2を形成した例である。 本例においても,アルミナシート3に設けた充填用貫通穴31内 ナシート3よりも薄く,電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層35を積層して,固体電解質シート2を形成した例である。 本例においても,アルミナシート3に設けた充填用貫通穴31内にはジルコニア充填部4が配設してあり,ジルコニア充填部4の両表面には一対の電極5が設けてある。また,本例の一対の表面アルミナ層35には,ジルコニア充填部4の配設箇所に対応して開口用貫通穴351が設けてある。開口用貫通穴351の周縁部は,ジルコニア充填部4の両表面における外縁部に重ねてあり,ジルコニア充填部4が充填用貫通穴31内から抜け出さないようにしてある。開口用貫通穴351は,ジルコニア充填部4(充填用貫通穴31)よりも小さく,ジルコニア充填部4における電極5よりも大きな形状に形成してある。そして,ジルコニア充填部4の両表面における外縁部に開口用貫通穴351の周縁部が重なった状態において,一対の電極5を,開口用貫通穴351を介して,ジルコニア充填部4の表面に露出させておく。 【0026】本例のガスセンサ素子1は,以下のようにして製造することができる。 すなわち,本例においては,まず,図5に示すごとく,電気絶縁性を有するアルミナ材料を用いて,充填用貫通穴31を有するアルミナシート3を形成する。次いで,図6に示すごとく,酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなり,充填用貫通穴31の形状に沿った形状のジルコニア充填部4となるジルコニアシートを,充填用貫通穴31内に配置する。次いで,図7に示すごとく,ジルコニア充填部4の両表面における外縁部に重なる状態で,アルミナシート3の両表面に電気絶縁性を有するアルミナ- 46 -材料からなる一対の表面アルミナ層35(本例ではシート状のもの)を積層して,シート体20を形成する(図4参照)。 に重なる状態で,アルミナシート3の両表面に電気絶縁性を有するアルミナ- 46 -材料からなる一対の表面アルミナ層35(本例ではシート状のもの)を積層して,シート体20を形成する(図4参照)。ここで,一対の電極5は,ジルコニアシートを充填用貫通穴31内に配置する前にジルコニアシートの両表面に設けておくことができる。また,一対の電極5は,ジルコニアシートを充填用貫通穴31内に配置した後にジルコニアシートの両表面に設けることもできる。 なお,表面アルミナ層35は,アルミナシート3とする以外にも,ペースト,スラリー等を塗布することによって形成することもできる。 【0027】次いで,2枚のシート体20を,アルミナ材料からなるスペーサ6を介して積層し,第1のシート体20(上記第1のアルミナシート3A)にヒータ72を積層すると共に,第2のシート体20(上記第2のアルミナシート3B)に拡散抵抗層71を積層して,積層体を形成する(図1参照)。 スペーサ6は,シート材を用いて形成することができ,ペースト,スラリー等をアルミナシート3の表面に塗布して形成することもできる。また,各構成部品間の積層は,アルミナ材料からなるペースト,スラリー等を塗布して行うことができる。その後,積層体を焼成してガスセンサ素子1を製造する。…【0030】(早期活性化の確認)上記実施例1において用いたアルミナ材料の熱伝導率は,約27W/mKであり,実施例1において用いたジルコニア材料の熱伝導率は,約2. 3W/mKであった。ジルコニア材料の熱伝導率は,アルミナ材料の熱伝導率に比べて約12倍大きい。 そして,ガスセンサ素子1において用いられるジルコニア材料の割合とアルミナ材料の割合とから,ガスセンサ素子1の活性化時間を検討した。 - 47 -その結果,ジルコ 導率に比べて約12倍大きい。 そして,ガスセンサ素子1において用いられるジルコニア材料の割合とアルミナ材料の割合とから,ガスセンサ素子1の活性化時間を検討した。 - 47 -その結果,ジルコニア材料のみからなる固体電解質シート2を用いた従来のガスセンサ素子においては,一対の電極5を設けた検知部分においてガス検知が可能になる温度に安定する活性化時間が,約100秒となった。 これに対し,アルミナシート3にジルコニア充填部4を配設した実施例1のガスセンサ素子1においては,上記活性化時間が約80秒となった。このことより,実施例1に示したガスセンサ素子1を用いることにより,早期活性化を図ることができることがわかった。 【0031】(素子強度の確認)上記実施例1において用いたアルミナ材料の曲げ強度は,約800MPaであり,実施例1において用いたジルコニア材料の曲げ強度は,約470MPaであった。 そして,ガスセンサ素子1において用いられるジルコニア材料の割合とアルミナ材料の割合とから,ガスセンサ素子1の曲げ強度を検討した。その結果,ジルコニア材料のみからなる固体電解質シート2を用いた従来のガスセンサ素子においては,曲げ強度が約730MPaとなった。これに対し,アルミナシート3にジルコニア充填部4を配設した実施例1のガスセンサ素子1においては,曲げ強度が約800MPaとなり,この曲げ強度が約1.1倍になった。このことより,実施例1に示したガスセンサ素子1を用いることにより,その強度の向上を図ることができることがわかった。 前記によれば,本件明細書には,本件発明1及び3に関し,次のような開示があることが認められる。 ア本件発明1はガスセンサ素子に関する発明であり,本件発明3はその製造方法に関する発明である(段落【 よれば,本件明細書には,本件発明1及び3に関し,次のような開示があることが認められる。 ア本件発明1はガスセンサ素子に関する発明であり,本件発明3はその製造方法に関する発明である(段落【0001】)。 イガスセンサ素子には,排ガス中の酸素濃度を検出して空燃比制御を行う- 48 -もの,NOx(窒素酸化物)等の特定ガス成分の濃度を検出するもの等があり,その形状には,固体電解質シートの両表面の互いに対向する位置に一対の電極を設け,この一対の電極を設けた複数の固体電解質シートを,電気絶縁性を有するアルミナシートを介して積層した積層タイプのものがあるが(段落【0002】),従来のガスセンサ素子においては,一対の電極を設ける固体電解質シートは,すべてアルミナよりも熱伝導率及び曲げ強度の低いジルコニアから形成しているため,ガスセンサ素子の早期活性化及び強度向上の改善を図るためには更なる工夫が必要とされていた(段落【0004】)。 ウ本件発明1及び3は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,早期活性化を図ることができると共に強度に優れたガスセンサ素子及びその製造方法を提供することを目的とする(段落【0005】)。 エ本件発明1は,固体電解質シートの両表面の互いに対向する位置に一対の電極を設けてなるガスセンサ素子において,上記固体電解質シートは,電気絶縁性を有するアルミナ材料からなるアルミナシートに設けた充填用貫通穴内に,酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなるジルコニア充填部を配設してなり,上記一対の電極は,上記ジルコニア充填部の両表面に設けてあり(段落【0018】,図1~3),上記アルミナシートの両表面には,該アルミナシートよりも薄く,電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層が積層してあり ニア充填部の両表面に設けてあり(段落【0018】,図1~3),上記アルミナシートの両表面には,該アルミナシートよりも薄く,電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層が積層してあり,該一対の表面アルミナ層には,上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴が設けてあり,該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあって,該開口用貫通穴から上記電極が露出し,且つ,該開口用貫通穴の周縁部は,上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重なっている(段落【0016】,【0025】,図4)ことを特徴とする。 また,本件発明3は,本件発明1のガスセンサ素子の製造に適したもの- 49 -であり,固体電解質シートの両表面の互いに対向する位置に一対の電極を設けてなるガスセンサ素子を製造する方法において,電気絶縁性を有するアルミナ材料を用いて,充填用貫通穴を有するアルミナシートを形成し,酸素イオン導電性を有するジルコニア材料からなり,上記充填用貫通穴の形状に沿った形状のジルコニアシートを,上記充填用貫通穴内に配置し(段落【0026】,図5,6),上記ジルコニアシートの両表面における外縁部に重なる状態で,且つ,上記電極を露出した状態で,上記アルミナシートの両表面に電気絶縁性を有するアルミナ材料からなり,上記電極を露出させるための開口用貫通穴を有する一対の表面アルミナ層を配置して,シート体を形成し(段落【0026】,図7),該シート体を焼成する(【0027】)ことを特徴とする。 オ上記エのような本件発明1及び3のガスセンサ素子及びその製造方法によれば,固体電解質シートにおけるジルコニア材料を用いる部位を,一対の電極の配設箇所に対応する部位だけにすることができ,残りの部位には,熱伝導率及び曲げ強度がジルコニア センサ素子及びその製造方法によれば,固体電解質シートにおけるジルコニア材料を用いる部位を,一対の電極の配設箇所に対応する部位だけにすることができ,残りの部位には,熱伝導率及び曲げ強度がジルコニア材料よりも高いアルミナ材料を用いることができるため(段落【0007】),早期活性化を図ることができる(ガス濃度の検出が可能になる温度により早く到達させることができる)と共に,強度向上(機械的強度,靭性,耐熱強度等の向上)を図ることができ(段落【0008】,【0011】,【0030】,【0031】),これによって上記ウの目的が達成される。 さらに,本件発明1及び3のガスセンサ素子及びその製造方法によれば,アルミナシートの両表面に,該アルミナシートよりも薄く,電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層を積層し,該一対の表面アルミナ層には,上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴を設け,該開口用貫通穴の周縁部は,上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重ねることによって,ジルコニア充填部が充填用貫通穴- 50 -内から抜け出してしまうことを防止することができる(【0016】,【0025】,【0026】,図4,7)。 2 取消事由易想到性判断の誤り)について 甲2発明についてア甲2(特開2007-278941号公報)には,次の記載がある(下記記載中に引用する図面については別紙2を参照)。 【技術分野】【0001】本発明は,厚さ方向に貫通する貫通孔が形成された板型形状の絶縁性材料からなる絶縁部材と,少なくとも一部が貫通孔に配置された固体電解質体と,少なくとも自身の一部が固体電解質体を覆う電極部と,長手方向に延びて電極部に接続するリード部と,を有し,絶縁部材および固体電解質体の板面上に 材と,少なくとも一部が貫通孔に配置された固体電解質体と,少なくとも自身の一部が固体電解質体を覆う電極部と,長手方向に延びて電極部に接続するリード部と,を有し,絶縁部材および固体電解質体の板面上に配置される一対の電極と,を備えるガスセンサ素子およびそのようなガスセンサ素子の製造方法に関する。 【発明が解決しようとする課題】【0004】…従来のガスセンサ素子製造方法においては,固体電解質体の厚さ寸法と絶縁部材の厚さ寸法とに大きな差が生じることがあり,そのような場合には,固体電解質体と絶縁部材との境界部分に生じる段差によって電極が断線状態となる虞がある。 【0009】そこで,本発明は,こうした問題に鑑みなされたものであり,絶縁部材と固体電解質体との境界部分における電極の断線が生じがたいガスセンサ素子,およびそのようなガスセンサ素子の製造方法を提供することを目的とする。 - 51 - 【課題を解決するための手段】【0010】かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明方法は,厚さ方向に貫通する貫通孔が形成された板型形状の絶縁性材料からなる絶縁部材と,少なくとも一部が貫通孔内に配置された固体電解質体と,少なくとも自身の一部が固体電解質体を覆う電極部と,長手方向に延びて電極部に接続するリード部と,を有し,絶縁部材および固体電解質体の板面上にそれぞれ配置される一対の電極と,を備えるガスセンサ素子を製造するガスセンサ素子製造方法であって,絶縁部材の貫通孔内に固体電解質体の少なくとも一部を配置する固体電解質体配置工程と,固体電解質体配置工程の後,固体電解質体および絶縁部材のうち少なくとも一方に対して厚さ寸法を変更させる外力を印加して,固体電解質体と絶縁部材との境界部分にお も一部を配置する固体電解質体配置工程と,固体電解質体配置工程の後,固体電解質体および絶縁部材のうち少なくとも一方に対して厚さ寸法を変更させる外力を印加して,固体電解質体と絶縁部材との境界部分における段差寸法が電極の厚さ寸法よりも小さくなるまで,固体電解質体および絶縁部材のうち少なくとも一方を変形させる加圧工程と,加圧工程の後,絶縁部材および固体電解質体における板面上に電極を配置する電極配置工程と,を有することを特徴とするガスセンサ素子製造方法である。 【0015】…貫通孔内に配置された固体電解質体は,貫通孔に対して全周が当接するように配置されていることは言うまでもないが,寸法公差等の隙間があっても良い。 また,電極のうち電極部は,少なくとも一部が固体電解質体を覆う構成であればよい。具体的には,電極部全体が固体電解質体の一部を覆い,固体電解質体と絶縁部材との境界部分にリード部が配置された構造や,電極部の一部が固体電解質体全体を覆い,固体電解質体と絶縁部材との境界部分に電極部が配置された構造や,電極部の一部が固体電解質体の- 52 -一部を覆い,固体電解質体と絶縁部材との境界部分に電極部およびリード部が配置された構造であっても良い。 【発明を実施するための最良の形態】…【0037】ここで,センサ素子4の概略構造を表す分解斜視図を,図2に示す。 …図に示すように,センサ素子4は,センサ部600と,ヒータ500と,を備えて構成されている。 【0038】センサ部600は,酸素濃度検出セル430および保護層407を備えて構成されている。 センサ部600の酸素濃度検出セル430は,絶縁性材料(アルミナなど)からなる絶縁部材405と,部分安定化ジルコニア焼結体からなる固体電解質体435と, び保護層407を備えて構成されている。 センサ部600の酸素濃度検出セル430は,絶縁性材料(アルミナなど)からなる絶縁部材405と,部分安定化ジルコニア焼結体からなる固体電解質体435と,白金(Pt)からなる第1電極404および第2電極406と,を備えて構成されている。 【0039】絶縁部材405は,厚さ方向に貫通する貫通孔433を有する板型形状に形成されている。…【0040】固体電解質体435は,絶縁部材405における貫通孔433の内部に配置されている。この固体電解質体435は,ジルコニア(ZrO2)に安定化剤としてイットリア(Y2O3)又はカルシア(CaO)を添加してなる部分安定化ジルコニア焼結体で構成されている。 【0041】第1電極404は,固体電解質体435の一部を覆う第1電極部451と,第1電極部451から絶縁部材405の長手方向の後端側に延び- 53 -る第1リード部453と,を備えて形成されている。 【0042】第2電極406は,固体電解質体435の一部を覆う第2電極部447と,第2電極部447から絶縁部材405の長手方向の後端側に延びる第2リード部449と,を備えて形成されている。 【0043】これら一対の電極(第1電極404,第2電極406)のうち,第1電極404は絶縁部材405の表面(図2における上面(判決注:下面の誤記と考えられる。))に配置され,第2電極406は絶縁部材405の裏面(図2における下面(判決注:「上面」の誤記と考えられる。))に配置される。 【0045】また,絶縁部材405の表面には,第2電極406を挟み込むようにして,保護層407が形成されている。この保護層407は,多孔質材料からなる電極保護部441と,絶縁性材料からなる補強部408と,を備えてい 絶縁部材405の表面には,第2電極406を挟み込むようにして,保護層407が形成されている。この保護層407は,多孔質材料からなる電極保護部441と,絶縁性材料からなる補強部408と,を備えている。 【0046】電極保護部441は,固体電解質体435との間で第2電極部447を挟み込むように位置して第2電極部447を被毒から防御するために備えられる。補強部408は,絶縁部材405との間で第2リード部449を挟み込むように位置して,第2リード部449および絶縁部材405を保護するために備えられる。 【0047】次に,ヒータ500は,アルミナを主体とする第1基体401と,アルミナを主体とする第2基体403と,第1基体401と第2基体403とに挟まれた白金(Pt)を主体とする発熱体402と,を備えて構- 54 -成されている。 イ上記アのような甲2の記載事項によれば,甲2には,ガスセンサ素子に関する発明として,本件審決が認定したとおりの甲2発明(前記第2の記載されていることが認められ,これと前記1のとおりの本件発明1とを対比すれば,両者の間には,本件審決が認定したとおりの一致 なお,被告は,の認定に関し,「甲2においては,電極部447,451と固体電解質体435の大きさに関して,電極部が固体電解質体より大きい場合も,逆に小さい場合もあるとされており,大小関係は特定されていない第1電極404は,第1電極部451全体が固体電解質体435の一部を覆い」,「第2電極406は,第2電極部447全体が固体電解質体435の一部を覆い」との構成を認定した本件審決に誤りがあるかのごとく主張する。 しかし,甲2の段落【0015】には,「電極のうち電極部は,少なくとも一部が固体電解質体を覆う構成であればよい。具体的には,電極部全 い」との構成を認定した本件審決に誤りがあるかのごとく主張する。 しかし,甲2の段落【0015】には,「電極のうち電極部は,少なくとも一部が固体電解質体を覆う構成であればよい。具体的には,電極部全体が固体電解質体の一部を覆い,固体電解質体と絶縁部材との境界部分にリード部が配置された構造や,電極部の一部が固体電解質体全体を覆い,固体電解質体と絶縁部材との境界部分に電極部が配置された構造や,電極部の一部が固体電解質体の一部を覆い,固体電解質体と絶縁部材との境界部分に電極部およびリード部が配置された構造であっても良い。」と記載されており,この記載によれば,甲2のセンサ素子には,電極部と固体電解質体の大小関係について3つの態様があることが例示され,そのうちの一つが「電極部全体が固体電解質体の一部を覆」うものであることは明らかである。 したがって,甲2において,「第1電極404は,第1電極部451全体が固体電解質体435の一部を覆い」,「第2電極406は,第2電極- 55 -部447全体が固体電解質体435の一部を覆い」との構成を備えたセンサ素子が開示されていることは明らかであって,本件審決のの認定に誤りはない。 甲3記載の技術についてア甲3(特開2004-93207号公報)には,次の記載がある(下記記載中に引用する図面については別紙3を参照)。 【0026】【実施例】以下に,図面を用いて本発明のガスセンサ素子の製造方法にかかる実施例につき説明する。…【0046】…未焼成ヒータシート1950に導体層190を,未焼成固体電解質シート140,160にそれぞれ導体層30,40,20を形成した後には,積層工程として,図2に示すごとく,未焼成ヒータシート1950の導体層190の表面に未焼成被覆ヒータシート を,未焼成固体電解質シート140,160にそれぞれ導体層30,40,20を形成した後には,積層工程として,図2に示すごとく,未焼成ヒータシート1950の導体層190の表面に未焼成被覆ヒータシート1960を重ね合わせる。また,未焼成被覆ヒータシート1960の表面に未焼成積層シートとしての未焼成スペーサ170を,この未焼成スペーサ170の表面に未焼成基板としての未焼成固体電解質シート160を重ね合わせる。 【0047】また,図2に示すごとく,未焼成固体電解質シート160の表面に未焼成積層シートとしての未焼成スペーサ150を積層し,この未焼成スペーサ150の表面に未焼成基板としての未焼成固体電解質シート140を重ね合わせる。さらに,未焼成固体電解質シート140の表面に,未焼成多孔質シート1310及び未焼成積層シートとしての未焼成スペーサ1330を積層し,未焼成スペーサ1330の表面に未焼成遮蔽シート1320を重ね合わせる。…- 56 -【0048】また,図6,図7に示すごとく,上記重ね合わせの際には,各未焼成シート1310,1320,140,160,1950,1960及び各未焼成スペーサ1330,150,170の間には,接着剤5を塗布した。 この接着剤5としては,アルミナ,有機系バインダ及び溶剤を混錬したものがある。…【0049】本例では,図6に示すごとく,未焼成ヒータシート1950の上記導体層190を形成した側の表面には,上記接着剤5を,導体層190における平坦部199と略面一になるよう塗布した。また,図7に示すごとく,各未焼成固体電解質シート140,160の上記導体層30,40,20を形成した両側の表面にも,上記接着剤5を,導体層30,40,20における平坦部301,401,201と略面一になるよう塗布した。 各未焼成固体電解質シート140,160の上記導体層30,40,20を形成した両側の表面にも,上記接着剤5を,導体層30,40,20における平坦部301,401,201と略面一になるよう塗布した。 【0050】その後,図8,図9に示すごとく,各未焼成シート1310,1320,140,160,1950,1960及び各未焼成スペーサ1330,150,170を重ね合わせた状態で加圧してこれらを積層し,ガスセンサ素子1の中間体を作製した。このとき,図8に示すごとく,未焼成被覆ヒータシート1960は,未焼成ヒータシート1950において上記略面一の状態を形成した導体層20(判決注:「導体層20」は「導体層190」の誤記と考えられる。)の平坦部199と接着剤5とに対して当接することができる。 【0051】また,図9に示すごとく,未焼成スペーサ1330,150は,未焼成固体電解質シート140の両側の表面において上記略面一の状態を形成したリード部311,321,411,421の平坦部301,401と接- 57 -着剤5とに対して当接することができる。…【0052】また,未焼成スペーサ150,170は,未焼成固体電解質シート160の両側の表面において上記略面一の状態を形成したリード部211,221の平坦部201と接着剤5とに対して当接することができる。…【0053】そのため,上記加圧の際に,各未焼成シート140,160,1950,1960と各未焼成スペーサ1330,150,170との間に,局所的な加重が加わることを防止することができる。 それ故,各未焼成シート140,160,1950,1960又は各未焼成スペーサ1330,150,170に亀裂が発生することを防止することができる。 イ上記アのような甲3の記載事項によれ それ故,各未焼成シート140,160,1950,1960又は各未焼成スペーサ1330,150,170に亀裂が発生することを防止することができる。 イ上記アのような甲3の記載事項によれば,甲3には,本件審決が甲3技術として認定したとおりの技術,すなわち,「ガスセンサ素子の製造方法において,シート上の導体層との間に隙間を空けることなくその周縁に接するように,かつ,導体層の平坦部と略面一になるように接着剤を塗布し,シート又はスペーサを重ね合わせた状態で加圧して積層して中間体を作製し,その後焼成する技術」が記載されているものと認められる。 相違点に関する容易想到性の判断についてそこでに甲3技術を適用することにより,相違点に係る本件発明1の構成(「上記アルミナシートの両表面には,該アルミナシートよりも薄く,電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層が積層してあり,該一対の表面アルミナ層には,上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴が設けてあり,該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあって,該開口用貫通穴から上記電極が露出し,且つ,該開口用貫通穴の周縁部は,上記ジルコ- 58 -ニア充填部の両表面における外縁部に重なっている」構成)とすることが,本件出願当時の当業者において容易に想到し得たものといえるか否かについて検討する。 アの有無について 本件出願前の周知技術aトの積層手段について,各未焼成シート1310,1320,140,160,1950,1960及び各未焼成スペーサ1330,150,170の間に,アルミナ,有機系バインダ及び溶剤を混錬した接着剤5を塗布して各未焼成シートを積層する技術が記載されている。 b また,甲5( 1950,1960及び各未焼成スペーサ1330,150,170の間に,アルミナ,有機系バインダ及び溶剤を混錬した接着剤5を塗布して各未焼成シートを積層する技術が記載されている。 b また,甲5(特開2003-240750号公報)には,ガスセンサ素子を構成する未焼成シートの積層手段について,次の記載がある(下記記載中に引用する図面については別紙4を参照)。 【0021】図1…に示すごとく,本例のガスセンサ素子1は,基準ガス室形成板15,固体電解質板11,拡散層141,遮蔽層142を積層して構成する。…【0022】また,本例のガスセンサ素子1は,基準ガス室形成板15の固体電解質板11と対面する側の反対面に,セラミックヒータ19を一体的に備える。…【0023】…ヒータ絶縁板197と上記基準ガス室形成板15との間,基準ガス室形成板15と固体電解質板11との間,拡散層141と遮蔽層142との間はそれぞれ接着層161,162,165が介在する。また,固体電解質体11と拡散層141との間は絶縁層163と接着層164とが介在する。 【0024】…接着層161,162,164,165はアルミナよりなる。 - 59 -【0029】…各種接着層161,162,164,165,絶縁層163は,接着層用,絶縁層用のペーストを作成してこれをグリーンシートに対し印刷する。 【0031】…各グリーンシートを図1に示すような順序で積層し…未焼積層体を得た。この未焼積層体を1470℃まで加熱して焼成した。その後,1470℃から室温まで冷却し,本例のガスセンサ素子1を得た。 c 甲7(特開2007-85946号公報)には,ガスセンサ素子を構成する未焼成シートの積層手段について,次の記載がある(下記記載中に引用する図面については別紙5を参照 ガスセンサ素子1を得た。 c 甲7(特開2007-85946号公報)には,ガスセンサ素子を構成する未焼成シートの積層手段について,次の記載がある(下記記載中に引用する図面については別紙5を参照)。 【0033】…ガスセンサ素子1は,…図2に示すごとく,センサ層2,ダクト層11,ヒータ層3,及び拡散層12を有する積層体10よりなる。 本例の積層体10は,さらに遮蔽層13を有しており,遮蔽層13,拡散層12,センサ層2,ダクト層11,ヒータ層3の順に積層して構成されている。 【0035】ダクト層11は,センサ層2の基準ガス側電極23と対面し,センサ層2との間に接着剤51を介して積層されている。…【0037】拡散層12は,センサ層2の被測定ガス電極22に対面し,センサ層2との間に接着剤51を介して積層されている。 【0039】…接着剤51は,セラミック粉末としてのアルミナ,バインダとしてのアクリル系,ビニル系樹脂等を含有したものを焼成したものである。…- 60 -【0058】…最後に,この積層体10を最高温度1400~1550℃の範囲で焼成し,…ガスセンサ素子1を得る。 d 以上のような甲3,5及び7の記載によれば,本件出願当時,積層タイプのガスセンサ素子において,これを構成する各未焼成シートをアルミナからなる接着剤を介して積層することは,当業者にとって周知の技術であったものと認められる。 検討甲2の段落【0091】ガスセンサ素子を構成する未焼成シートの積層に当たり,各層を接合する方法として,接着剤を用いるのではなく,積層方向に外力を加えて未焼ガスセンサ素子を構成する未焼成シートをアルミナからなる接着剤を介して積層することが本件出願当時の周知技術であったことからすると,甲未焼成シートの 剤を用いるのではなく,積層方向に外力を加えて未焼ガスセンサ素子を構成する未焼成シートをアルミナからなる接着剤を介して積層することが本件出願当時の周知技術であったことからすると,甲未焼成シートの積層に当たり,圧着ではなく甲3技術の接着剤を用いた接合方法を採用することに,格別の困難があったものとはいえない。 加えて,甲3の段落【0049】ないし【0053】の記載によれば,甲3技術は,導体層の平坦部と略面一の状態となるように接着剤を塗布することにより,各未焼成シートと各未焼成スペーサとの間に局所的な加重が加わることを防止し,各未焼成シート又は各未焼成スペーサに亀裂が発生することを防止するというものであるとこ第1電極404及び第2電極406によって生じる段差によって,第2基体403,絶縁部材405,保護層407に亀裂が発生するおそれがあることは,甲3のガスセンサ素子の場合と同様であるから,甲2及び甲3に接した当業者であれば,- 61 -においても,上記のような亀裂の発生を防止すべく甲3技術を適用しようとする動機付けがあるというべきである。 したがって,し,絶縁部材405の表面及び裏面のうち,第1電極404及び第2電極406周囲の電極非形成部分に,各電極の周縁に接するように,かつ,各電極の平坦部と略面一の状態になるようにアルミナからなる接着剤を塗布して段差を解消し,平坦化を図った上で上記403ないし407の各層を積層することは,当業者が容易に想到し得たことというべきである。 イに係る本件発明1の構成を備えるか否かについて 容易に想到し得たことといえるところ,その結果得られるガスセンサ素子において,絶縁部材405の両面に形成されるアルミナからなる接着剤の層(以下「本件アルミナ接着剤層」という。)は,本件発明 て 容易に想到し得たことといえるところ,その結果得られるガスセンサ素子において,絶縁部材405の両面に形成されるアルミナからなる接着剤の層(以下「本件アルミナ接着剤層」という。)は,本件発明1の表面アルミナ層に相当するものといえる。 そして,本件アルミナ接着剤層は,絶縁部材405よりも薄いものであり,第1電極404及び第2電極406の周縁(側面)に接し,各電極の表面を露出させており,固体電解質体435の表面及び裏面のうち各電極で覆われない部分と重なるように形成されるものである。 そうすると,本件アルミナ接着剤層は,相違点に係る本件発明1の構成のうち,「上記アルミナシートの両表面には,該アルミナシートよりも薄く,電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層が積層してあり,該一対の表面アルミナ層には,上記ジルコニア充填部の配設箇所に対応して開口用貫通穴が設けてあ」るとの構成及び「該開口用貫通穴から上記電極が露出し,且つ,該開口用貫通穴の周縁部は,上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重なっている」との構- 62 -成を満たすものであると認められる。 さらに,本件アルミナ接着剤層が,相違点に係る本件発明1の構成のうち,「該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあ」るとの構成を満たすか否かについて検討する。 a 本件審決は,本件発明1の表面アルミナ層に設けられた開口用貫通穴は「上記電極よりも大きな形状に形成してあ」るとの構成について,電極の側面が露出する程度に開口用貫通穴が電極よりも大きな形状に形成してあることを意味すると解釈した上で,本件アルミナ接着剤層は,第1電極404及び第2電極406の側面に接して形成されているから,「該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあ 状に形成してあることを意味すると解釈した上で,本件アルミナ接着剤層は,第1電極404及び第2電極406の側面に接して形成されているから,「該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあ」るとの構成を満たさない旨判断した。 しかしながら,以下に述べるとおり,本件審決の上記判断は誤りである。 本件特許の特許請求の範囲の請求項1においては,表面アルミナ層に設けられた開口用貫通穴と電極との大きさの関係について,「該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあって」とされるのみであり,「電極よりも大きな形状」の意義について,電極の側面が露出する程度のものでなければならないことを示す記載はない。 この点について,被告は,「該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状」とは,開口用貫通穴の内面が電極の外面より大きいことを意味し,そうである以上,その間に隙間が必然的に生じ,電極の側面が露出することは明らかである旨主張する。しかし,表面アルミナ層の開口用貫通穴の側面とその内側に配置される電極の側面が隙間なく接する構成(電極の側面が露出しない構成)においても,開口用貫通穴の内側に電極が配置されるものである以上,開口用貫- 63 -通穴の内周は,電極の外周よりも大きな形状となっているはずである。なぜなら,開口用貫通穴の内周と電極の外周が全くの同一形状であるとすれば,開口用貫通穴の内側に電極を配置することは物理的にできないはずだからである。 したがって,開口用貫通穴の大きさについて,「電極よりも大きな形状」との文言から直ちに「電極の側面が露出する程度」のものであるとの解釈が導き出されるものではなく,本件発明1に係る特許請求の範囲の記載から,本件審決の上記解釈が根拠付けられるものとはいえない。 ⒝ 次に 言から直ちに「電極の側面が露出する程度」のものであるとの解釈が導き出されるものではなく,本件発明1に係る特許請求の範囲の記載から,本件審決の上記解釈が根拠付けられるものとはいえない。 ⒝ 次に,本件明細書の発明の詳細な説明の記載をみると,実施例2に関して,「本例は,図4に示すごとく,アルミナシート3の両表面に,アルミナシート3よりも薄く,電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層35を積層して,固体電解質シート2を形成した例である。…開口用貫通穴351は,ジルコニア充填部4(充填用貫通穴31)よりも小さく,ジルコニア充填部4における電極5よりも大きな形状に形成してある。」との記載があり,図4のガスセンサ素子の断面図では,表面アルミナ層の開口用貫通穴351の内周と電極の外周との間に隙間が形成されている態様が示されていることが認められる。 しかしながら,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明1について,表面アルミナ層の開口用貫通穴が電極の側面が露出する程度に電極よりも大きな形状であることを要する旨の記載はなく,ガスセンサ素子の早期活性化と共に,強度向上を図ることができること及びジルコニア充填部が充填用貫通穴内から抜け出してしまうことを防止すること)との関係からみても,電極の側面が露出する態様のも- 64 -のに限定されるべき理由はない。 他方,図4に示されたガスセンサ素子は,実施例の一態様を示すものにすぎないから,当該図面に表面アルミナ層の開口用貫通穴351の内周と電極の外周との間に隙間が形成されている態様が示されているからといって,直ちに本件発明1の構成が当該態様のものに限定されると解すべきものとはいえない。 ⒞ さらに,本件審決は,「ガスセンサ素子において,電極はできる限り広い面積で測定 態様が示されているからといって,直ちに本件発明1の構成が当該態様のものに限定されると解すべきものとはいえない。 ⒞ さらに,本件審決は,「ガスセンサ素子において,電極はできる限り広い面積で測定ガスに接することが好ましいことが技術常識であること」を前記解釈の根拠とする。 しかしながら,上記のような技術常識があるからといって,本件発明1のガスセンサ素子における電極が,常にその上面のみならず側面まで露出するものであることを要するとの解釈が直ちに導き出されることにはならない。 ⒟ 以上によれば,本件発明1の表面アルミナ層に設けられた開口用貫通穴は「上記電極よりも大きな形状に形成してあ」るとの構成について,電極の側面が露出する程度に開口用貫通穴が電極よりも大きな形状に形成してあることを意味するとした本件審決の解釈は,根拠を欠くものであって誤りであり,これを前提とする本件審決の前記判断も誤りというべきである。 b 上記aで検討したところによれば,本件発明1における「該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあ」るとの構成には,電極の側面が露出する程度に開口用貫通穴が電極よりも大きな形状に形成してある表面アルミナ層の開口用貫通穴の側面とその内側に配置される電極の側面が隙間なく接しているものも含まれると解すべきである。 してみると,本件アルミナ接着剤層が第1電極404及び第2電極- 65 -406の側面に接して形成される態様は,相違点に係る本件発明1の構成のうち,「該開口用貫通穴は,上記電極よりも大きな形状に形成してあ」るとの構成を満たすものといえる。 ウ以上のア及びイによれば,業者が容易に想到し得たことであり,かつ,その結果得られるガスセンサ素子は,相違点に係る本件発明1の構成をすべて備えるものといえ あ」るとの構成を満たすものといえる。 ウ以上のア及びイによれば,業者が容易に想到し得たことであり,かつ,その結果得られるガスセンサ素子は,相違点に係る本件発明1の構成をすべて備えるものといえるから,成とすることは,本件出願当時の当業者において容易に想到し得たものと認められる。 エ被告の主張について 保護層407及び第2基体403を本件発明1の表面アルミナ層に対応させた上で,これらを甲3技術の接着剤に置き換える態様,及び②甲技術の接着剤を追加する態様を想定し,いずれの態様においても,甲2発動機付けはなく,むしろ阻害要因があるから,及び甲3技術に基づいて相違点に係る本件発明1の構成を容易に想到することはできない旨主張するので,以下,その主張の当否について検討する。 被告は,上記①の態様を前提とした場合,接着剤層に開口用貫通穴を設ける動機付けはなく,むしろ,第1電極404の電極部451が発熱体402の発熱部455と直接対面することになるなどの不都合が生じるから,阻害要因がある旨主張する。 用する場合においては,絶縁部材405の表面及び裏面のうち,第1電極404及び第2電極406周囲の電極非形成部分に,各電極の周縁に- 66 -接するように,かつ,各電極の平坦部と略面一の状態になるようにアルミナからなる接着剤を塗布して段差を解消し,平坦化を図った上で403ないし407の各層を積層すること,すなわち被告主張の上記②の態様を想定するのが自然であり,本件審決も当該態様を前提としていることは,本件審決の判断内容(審決書42ないし45頁)に照らし明らかである。 したがって,上記①の態様を前提とする被告の主張は,そもそもその前提において失当である。 未焼成シートを圧着することで各層間の接 (審決書42ないし45頁)に照らし明らかである。 したがって,上記①の態様を前提とする被告の主張は,そもそもその前提において失当である。 未焼成シートを圧着することで各層間の接合を行っているのであるから,それに加えて更に接着剤を用いることには動機付けがなく,むしろ無駄な構成の追加となる点において,阻害要因がある旨主張する。 しかしながら,ガスセンサ素子を構成する未焼成シートをアルミナからなる接着剤を介して積層することが本件出願当時の周知技術であったことに加え,導体層の平坦部と略面一の状態となるように接着剤を塗布することにより,各未焼成シートと各未焼成スペーサとの間に局所的な加重が加わることを防止し,各未焼成シート又は各未焼成スペーサに亀裂が発生することを防止するという甲3技術に係る課題が当てはまることからすれば,甲2及び甲3に接した当業者であればの発生を防止すべく甲3技術を適用しようとする動機付けがあるというべきであるから,被告の上記主張は理由がない。 なお,被告は,甲2においては,電極部と固体電解質体の大小関係がしても,相違点に係る本件発明1の構成のうち,「該開口用貫通穴の周縁部は,上記ジルコニア充填部の両表面における外縁部に重なっている」- 67 -との構成を導き出すことはできない旨主張する。 しかし,甲2には,電極部と固体電解質体の大小関係について,「第1電極404は,第1電極部451全体が固体電解質体435の一部を覆い」,「第2電極406は,第2電極部447全体が固体電解質体435の一部を覆い」との構成を備えたセンサ素子が開示されていることは明らかであるから,被告の上記主張は,その前提において理由がない。 以上によれば,発明1の構成を容易に想到することはできない 5の一部を覆い」との構成を備えたセンサ素子が開示されていることは明らかであるから,被告の上記主張は,その前提において理由がない。 以上によれば,発明1の構成を容易に想到することはできないとする被告の主張は,いずれも理由がない。 小括 基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないとした本件審決の判断は誤りであり,原告主張の取消事由4-1は理由がある。 3 取消事由4-4易想到性判断の誤り)本件審決は,本件発明1について,者が容易に発明をすることができたものとすることはできないとの判断を前提とした上で,本件発明1の発明特定事項を全て含み,更に発明特定事項を追加した発明である本件発明2についても,甲3技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものとすることはできない旨判断した。 しかしながら,本件発明1についての本件審決の判断が誤りであることは,前記2で述べたとおりであるから,当該判断を前提とする本件発明2についての本件審決の判断も誤りであることは明らかであり,原告主張の取消事由4-- 68 -4は理由がある。 易想到性判断の誤り)について 甲2発明についてア甲2(特開2007-278941号公報)には,加え,次の記載がある(下記記載中に引用する図面については別紙2を参照)。 【発明を実施するための最良の形態】…【0051】…まず,第1原料粉末と可塑剤とを湿式混合により分散した第1スラリーを用意する。第1原料粉末は,例えば,アルミナ粉末97質量%と,焼結調整剤としてのシリカ3質量%とからなる。可塑剤はブチラール樹脂及びジブチルフタレート(DBP)からなる。 【0052】ドクターブレード装置を使用したシート成形法 アルミナ粉末97質量%と,焼結調整剤としてのシリカ3質量%とからなる。可塑剤はブチラール樹脂及びジブチルフタレート(DBP)からなる。 【0052】ドクターブレード装置を使用したシート成形法により,この第1スラリーを厚さ0.4mmのシート状物に成形した後,140mm×140mmに切断し,未焼成絶縁部用シート117を得る。未焼成絶縁部用シート117は,加工焼成後に絶縁部材405となる未焼成シートである。…【0053】また,同様に,上記の第1スラリーを用いて,焼成後に第1基体401,第2基体403,保護層407(図2参照)となる未焼成シートを得る。 一方,第2原料粉末と可塑剤とを湿式混合により分散した第2スラリーを用意する。第2原料粉末は,例えば,アルミナ粉末63質量%と,焼結調整剤としてのシリカ3質量%とカーボン粉末34質量%とからなる。可塑剤はブチラール樹脂及びDBPからなる。 - 69 -【0054】そして,この第2スラリーを用い,未焼成絶縁部用シート117と同様のシート成形法により,未焼成電極保護部用シートを得る。なお,この未焼成電極保護部用シートは,加工焼成後に電極保護部441となる未焼成シートである。 【0055】また,第3原料粉末と可塑剤とを湿式混合により分散した第3スラリーを用意する。第3原料粉末は,例えば,ジルコニア粉末97質量%と,焼結調整剤としてシリカ(SiO2)粉末及びアルミナ粉末合計3質量%とからなる。可塑剤はブチラール樹脂及びDBPからなる。 【0056】この第3スラリーを用い,未焼成絶縁部用シート117と同様のシート成形法により,未焼成固体電解質体用シート113を得る。未焼成固体電解質体用シート113は,加工焼成後に固体電解質体435となる未焼成シートである。 【0060 絶縁部用シート117と同様のシート成形法により,未焼成固体電解質体用シート113を得る。未焼成固体電解質体用シート113は,加工焼成後に固体電解質体435となる未焼成シートである。 【0060】貫通孔形成工程では,図3及び図4に示す貫通孔成形型301を用いる。 貫通孔成形型301は,貫通孔用下型303,貫通孔用上型305,パンチ型307を備える。 【0062】パンチ型307は,断面輪郭形状が下型加工孔311および上型加工孔313の断面輪郭形状と同様に形成され,下型加工孔311および上型加工孔313の内部に挿通可能に形成されている。 【0063】そして,未焼成シートに対して厚さ方向に貫通する貫通孔を形成するためには,まず,貫通孔用下型303と貫通孔用上型305とを離し,パン- 70 -チ型307を貫通孔用上型305の内部に配置した状態で,図3に示すように,貫通孔用下型303の上に未焼成絶縁部用シート117を配置する。 これにより,下型加工孔311は,未焼成絶縁部用シート117によって覆われる。 【0064】次に,貫通孔用上型305を下降させ,貫通孔用上型305と貫通孔用下型303とで未焼成絶縁部用シート117を挟んで固定する。続いて,図4に示すように,パンチ型307を下降させ,未焼成絶縁部用シート117に10個の貫通孔433を貫設し,未焼成絶縁部材405を作成する。 この後,貫通孔用上型305およびパンチ型307を上昇させる。 【0066】次に,打抜配置工程を行う。 図6は,貫通孔成形型301に対して未焼成絶縁部材405および未焼成固体電解質体用シート113が配置されたときの断面状態を表す説明図である。 【0067】図7は,貫通孔433に未焼成固体電解質体435が挿入された未焼成絶縁部材405の断面 405および未焼成固体電解質体用シート113が配置されたときの断面状態を表す説明図である。 【0067】図7は,貫通孔433に未焼成固体電解質体435が挿入された未焼成絶縁部材405の断面状態を表す説明図である。 まず,図6に示すように,貫通孔用下型303と貫通孔用上型305とを離して,さらにパンチ型307を貫通孔用上型305における上型加工孔313の内部に配置した状態で,未焼成絶縁部材405の上に未焼成固体電解質体用シート113を配置する。 【0068】そして,貫通孔用上型305を下降させ,貫通孔用上型305と貫通孔用下型303とで未焼成絶縁部材405および未焼成固体電解質体用シート113を挟んで固定する。 - 71 -続いて,図7に示すように,パンチ型307を下降させ,未焼成固体電解質体用シート113から10個の未焼成固体電解質体435を繰り抜くとともに,未焼成絶縁部材405の貫通孔433に未焼成固体電解質体435を挿入する。 【0069】その後,パンチ型307を上昇させるとともに貫通孔用上型305を取り除いて,貫通孔433に未焼成固体電解質体435が挿入された未焼成絶縁部材405を取り出す。…【0072】次に,加圧工程を行う。 図8は,加圧成形型321に対して未焼成絶縁部材405(詳細には,貫通孔433に未焼成固体電解質体435が挿入された未焼成絶縁部材405)が配置されたときの断面状態を表す説明図である。 【0073】図9は,加圧成形型321により未焼成固体電解質体435が変形した後の未焼成絶縁部材405および未焼成固体電解質体435の断面状態を表す説明図である。 加圧工程では,図8に示すように,加圧成形型321を用いる。 【0076】…図9に示すように,加圧用上型325を下 絶縁部材405および未焼成固体電解質体435の断面状態を表す説明図である。 加圧工程では,図8に示すように,加圧成形型321を用いる。 【0076】…図9に示すように,加圧用上型325を下降させ,未焼成固体電解質体435を…下方に加圧する。これにより,未焼成固体電解質体435の厚さ寸法を圧縮できると共に,未焼成固体電解質体435の厚さ寸法と未焼成絶縁部材405の厚さ寸法との寸法差を縮小することができる。 【0085】…未焼成保護層407については,未焼成固体電解質体435および未焼成絶縁部材405と同様にして,貫通孔形成工程,打抜配置工程,加圧- 72 -工程などを行うことで,未焼成補強部408の貫通孔442に未焼成電極保護部441を配置して,未焼成保護層407を得ることができる。 【0086】次に,上記のようにして得られた未焼成シートを積層して未焼成成型体を形成する成型体形成工程を行う。 なお,未焼成成型体は,下方から順に…未焼成第2基体403,未焼成第1電極404,未焼成絶縁部材405,未焼成第2電極406,未焼成保護層407などが積層されて形成される。 【0088】…固体電解質体435および絶縁部材405の上に,未焼成第1電極404および未焼成第2電極406をスクリーン印刷法により形成する。…【0089】続いて,未焼成第1電極404を挟み込むようにして,絶縁部材405を未焼成第2基体403に対して積層する。…【0090】そして,未焼成第2電極406を挟み込むようにして,未焼成保護層407を絶縁部材405に対して積層する。…【0091】…次に,切断工程を行う。 切断工程では,未焼成の成型体に対して積層方向の外力…を加えて,未焼成成型体を構成する各未焼成シートを圧着した 縁部材405に対して積層する。…【0091】…次に,切断工程を行う。 切断工程では,未焼成の成型体に対して積層方向の外力…を加えて,未焼成成型体を構成する各未焼成シートを圧着した後,予め定められた大きさに切断して,1個の成型体から10個の積層体を得る。…【0092】その後,焼成工程として,積層体から樹脂抜きを行う前焼成を実施した後,さらに本焼成して酸素濃度を検出するセンサ素子4を得る。…【0097】- 73 -…本実施形態のセンサ素子4は,絶縁部材405と固体電解質体435との境界部分における電極(第1電極404および第2電極406)の断線が生じがたいセンサ素子となる。 イ及び上記アのような甲2の記載事項によれば,甲2には,ガスセンサ素子の製造方法に関する発明として,本件審決が認定したとおり 本件審決の判断について 未焼成絶縁部材405と未焼成保護層407との接合及び未焼成絶縁部材405と未焼成第2基体403との接合に甲3技術を適用し,未焼成絶縁部材405の両面に配置された未焼成第1電極404及び未焼成第2電極406との間に隙間を空けることなくその周縁に接し,かつ,第1電極404及び第2電極406と略面一になるように接着剤を塗布して未焼成保護層407及び未焼成第2基体403と接合することは,当業者であれば容易に想起し得る事項であり,その際アルミナ系の接着剤を用いることは設計的事項であること,その結果として未焼成絶縁部材405の両面に形成されるアルミナ系接着剤の層は,本件発明3の表面アルミナ層に相当するものであること,当該アルミナ系接着剤層は,本件発明3における「上記ジルコニアシートの両表面における外縁部に重なる状態で,且つ,上記電極を露出した状態で,上記アルミナシートの両表面に電 層に相当するものであること,当該アルミナ系接着剤層は,本件発明3における「上記ジルコニアシートの両表面における外縁部に重なる状態で,且つ,上記電極を露出した状態で,上記アルミナシートの両表面に電気絶縁性を有するアルミナ材料からなり,上記電極を露出させるための開口用貫通穴を有する一対の表面アルミナ層を配置」する構成を満たすことをいずれも認めながら,いて焼成するシート体は,本件発明3において焼成するシート体とは異なるものであることを理由に,だけでは,相違点は解消しないとして,及び甲3技術に基づく本件発明3の容易想到- 74 -性を否定した。すなわち,本件審決は,本件発明3において焼成するシート体について,各表面アルミナ層のアルミナシートとは反対側の面には他の層などが形成されていないものに限定されるとの解釈に立った上で,甲2発明いて焼成するシート体は,未焼成絶縁部材405の両面に形成したアルミナ系接着剤層の上に未焼成保護層407及び未焼成第2基体403を積層したもの(積層後に焼成するもの)であるから,本件発明3において焼成するシート体とは異なると判断したものである。 これに対し,原告は,本件審決の本件発明3において焼成するシート体に関する解釈は誤りであり,それを前提として本件発明3の容易想到性を否定した本件審決の判断も誤りである旨主張するので,以下検討する。 ア本件審決は,本件特許の特許請求の範囲の請求項3の記載において,焼成の対象となるシート体は,上記ジルコニアシートの両表面における外縁部に重なる状態で,上記アルミナシートの両表面に電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層を配置して形成したものとされていることを根拠に,当該焼成の対象となるシート体は,各表面アルミナ層のアルミナシートとは反対側の面 の両表面に電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層を配置して形成したものとされていることを根拠に,当該焼成の対象となるシート体は,各表面アルミナ層のアルミナシートとは反対側の面には他の層などが形成されていないものと認められるとする。 しかしながら,本件特許の特許請求の範囲の請求項3の記載においては,上記のようにして「シート体を形成し,該シート体を焼成することを特徴とするガスセンサ素子の製造方法」とされるのみであり,この記載からは,形成されたシート体をその後焼成することが規定されていることは明らかであるものの,その焼成の態様について何らかの限定をする趣旨を読み取ることはできず,焼成の対象となるシート体が,各表面アルミナ層のアルミナシートとは反対側の面に他の層などが形成されていないものに限定されるとの解釈を導き出すことはできない。 イまた,本件明細書の発明の詳細な説明の記載をみると,実施例2として,- 75 -2枚のシート体20をスペーサ6を介して積層するなどして積層体を形成し,その後,この積層体を焼成してガスセンサ素子を製造する方法(段落【0027】)が記載されている一方,各表面アルミナ層のアルミナシートとは反対側の面には他の層などが形成されていないシート体(すなわち,積層体ではない単体のシート体)のみを焼成することについては,何らの記載もない。 このように,本件明細書の発明の詳細な説明においても,本件審決の上記解釈を根拠付ける記載はなく,むしろ,これと矛盾した記載がみられるものといえる。 ウ以上によれば,本件発明3において焼成するシート体について,各表面アルミナ層のアルミナシートとは反対側の面には他の層などが形成されていないものに限定されるとする本件審決の解釈は誤りであり,このような 以上によれば,本件発明3において焼成するシート体について,各表面アルミナ層のアルミナシートとは反対側の面には他の層などが形成されていないものに限定されるとする本件審決の解釈は誤りであり,このような解釈を前提として,いて焼成するシート体は,本件発明3において焼成するシート体とは異なるものであ性を否定した本件審決の判断も誤りというべきである。 エ相違点の認定及び相違点に係る容易想到性の判断について,念のため付言する。 未焼成第2基体403」及び「未焼成保護層407」が「未焼成絶縁部材405」に対する表面層,すなわち,本件発明3における「表面アルミナ層」に相当するものであることを前提に,「上記ジルコニアシートの両表面における外縁部に重なる状態で,上記アルミナシートの両表面に電気絶縁性を有するアルミナ材料からなる一対の表面アルミナ層を配置して,シート体を形成」することを本件発明3と一致点と認定し,表面アルミナ層(「未焼成第2基体403」及び「未焼成保護層407」)が電極を露出させる- 76 -ための開口用貫通穴を有していない点をもって相違点と認定している。 ところが,本件審決は,当該相違点に係る容易想到性の判断においては,「未焼成第2基体403」及び「未焼成保護層407」が本件発明3の表面アルミナ層に相当することを前提とした検討・判断を行うことなく未焼成絶縁部材405と未焼成保護層407との接合及び未焼成絶縁部材405と未焼成第2基体403との接合に接着剤を用いた結果,未焼成絶縁部材405の両面に付加的に形成されるアルミナ系接着剤の層が本件発明3の表面アルミナ層に相当することを前提として検討・判断を行っているのであり,このような判断が上記一致点・相違点の認定と整合するものであるかについては,疑問がある(本件審決が 系接着剤の層が本件発明3の表面アルミナ層に相当することを前提として検討・判断を行っているのであり,このような判断が上記一致点・相違点の認定と整合するものであるかについては,疑問がある(本件審決が行ったような検討・判断はの表面アルミナ層に相当するものが存在しないことをもって相違点と認定した場合に行われるべきものであるように思われる。)。 被告の主張について被告は,甲2発明に甲3技術を適用する場合の態様として,①甲2発明の保護層407及び第2基体403を本件発明3の表面アルミナ層に対応させた上で,これらを甲3技術の接着剤に置き換える態様,及び②甲2発明の保護層407及び第2基体403と固体電解質体との間に甲3技術の接着剤を追加する態様を想定し,いずれの態様においても,甲2発明に甲3技術を適用する動機付けはなく,むしろ阻害要因があるから,甲2発明及び甲3技術に基づいて相違点に係る本件発明3の構成を容易に想到することはできない旨主張するので,以下,その主張の当否について検討する。 ア被告は,上記①の態様を前提とした場合,接着剤層に開口用貫通穴を設ける動機付けはなく,むしろ,第1電極404の電極部451が発熱体402の発熱部455と直接対面することになるなどの不都合が生じるから,阻害要因がある旨主張する。 - 77 -しかしながら,甲2発明に甲3技術を適用する場合においては,絶縁部材405の表面及び裏面のうち,第1電極404及び第2電極406周囲の電極非形成部分に,各電極の周縁に接するように,かつ,各電極の平坦部と略面一の状態になるようにアルミナからなる接着剤を塗布して段差を解消し,平坦化を図った上で403ないし407の各層を積層すること,すなわち被告主張の上記②の態様を想定するのが自然であり,本件審決も と略面一の状態になるようにアルミナからなる接着剤を塗布して段差を解消し,平坦化を図った上で403ないし407の各層を積層すること,すなわち被告主張の上記②の態様を想定するのが自然であり,本件審決も当該態様を前提としていることは,本件審決の上記判断内容(審決書57ないし60頁)に照らし明らかである。 したがって,上記①の態様を前提とする被告の主張は,そもそもその前提において失当である。 イ被告は,上記②の態様を前提としても,甲2発明においては,未焼成シートを圧着することで各層間の接合を行っているのであるから,それに加えて更に接着剤を用いることには動機付けがなく,むしろ無駄な工程の追加となる点において,阻害要因がある旨主張する。 しかしながら,前記2る未焼成シートをアルミナからなる接着剤を介して積層することが本件出願当時の周知技術であったこと及び導体層の平坦部と略面一の状態となるように接着剤を塗布することにより,各未焼成シートと各未焼成スペーサとの間に局所的な加重が加わることを防止し,各未焼成シート又は各未焼成スペーサに亀裂が発生することを防止するという甲3技術に係る課題は甲2発明にも当てはまるものであることからすれば,甲2及び甲3に接した当業者であれば,甲2発明においても,上記のような亀裂の発生を防止すべく甲3技術を適用しようとする動機付けがあるというべきであるから,被告の上記主張は理由がない。 ウ以上によれば,甲2発明及び甲3技術に基づいて相違点に係る本件発明3の構成を容易に想到することはできないとする被告の主張は,いずれ- 78 -も理由がない。 小括以上の次第であるから,本件発明3について,甲2発明及び甲3技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない 張はいずれも理由がない。 主文 以上の次第であるから,本件発明3について,甲2発明及び甲3技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないとした本件審決の判断は誤りであり,原告主張の取消事由4-5は理由がある。 理由 以上によれば,原告主張の取消事由4-1,4-4及び4-5には理由があるから,その余の取消事由につき判断するまでもなく,本件審決は取り消されるべきものである。 よって,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官 鶴岡稔彦 裁判官 大西勝滋 裁判官 杉浦正樹 (別紙1) 本件明細書の図面 (別紙2) 甲2の図面 (別紙3) 甲3の図面 (別紙4) 甲5の図面 (別紙5) 甲7の図面
▼ クリックして全文を表示