平成29年3月9日判決言渡平成28年(行ウ)第252号相続税更正処分等取消請求事件 主文 1 本件訴えをいずれも却下する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者が求めた裁判 1 請求の趣旨(1) 原告B1ア処分行政庁が,平成26年10月30日付けで原告B1に対してした,平成21年▲年▲日相続開始に係る相続税の更正処分のうち納付すべき税額3億5201万1400円を超える部分及び重加算税の賦課決定処分を取り消す。 イ裁決行政庁が平成27年12月16日付けでした原告B1の審査請求を却下する旨の裁決を取り消す。 (2) 原告B2ア処分行政庁が,平成26年10月30日付けで原告B2に対してした,平成21年▲年▲日相続開始に係る相続税の更正処分のうち納付すべき税額1086万8500円を超える部分及び重加算税の賦課決定処分を取り消す。 イ裁決行政庁が平成27年12月16日付けでした原告B2の審査請求を却下する旨の裁決を取り消す。 2 請求の趣旨に対する答弁主文と同旨第2 事案の概要本件は,亡B3の相続人である原告らが,亡B3の相続(以下「本件相続」 という。)開始に係る各相続税(以下「本件各相続税」という。)の申告をしたところ,処分行政庁から本件各相続税の各更正及びこれらに係る重加算税の各賦課決定を受け,裁決行政庁からこれらに係る原告らの審査請求を却下する旨の各裁決を受けたのに対し,上記各更正のうち原告らが主張する納付すべき税額を超える部分及び上記各重加算税賦課決定の取消しを求めるとともに,上記各 庁からこれらに係る原告らの審査請求を却下する旨の各裁決を受けたのに対し,上記各更正のうち原告らが主張する納付すべき税額を超える部分及び上記各重加算税賦課決定の取消しを求めるとともに,上記各裁決の取消しを求める事案である。 1 前提事実(証拠等を掲げていない事実は当事者間に争いがない。)(1) 本件相続原告B1は,亡B3の子であり,原告B2は,亡B3の孫である(甲1,2)。亡B3は,平成21年▲年▲日に死亡し,その相続人は原告ら2名である。 (2) 課税処分等の経緯ア原告らは,平成22年4月12日,処分行政庁に対し,別表「課税等の経緯」(以下,単に「別表」という。)の「期限内申告」欄記載のとおり,本件各相続税の申告をした(以下,この申告を「本件各申告」という。)。 なお,本件各相続税の法定申告期限は,同月▲日であった。 イ処分行政庁は,平成26年10月30日付けで,原告らに対し,別表の「更正処分等」欄記載のとおり,本件各相続税の各更正処分及び重加算税の各賦課決定処分(以下「本件各更正処分等」という。)をした。 ウ原告らは,平成26年12月18日,仙台国税局長に対し,本件各更処分等について異議申立てをしたところ,3月を経過しても異議決定がされなかったため,平成27年4月9日,裁決行政庁に対し,本件各更正処分等について審査請求をした。 エ(ア) 処分行政庁は,本件各更正処分等における理由附記に不備があったとことを理由として,平成27年11月24日付けで,原告らに対し,別表の「再更正処分等」欄記載のとおり,課税価格及び納付 すべき相続税額を本件各申告の額と同額とする本件各相続税の各再 成27年11月24日付けで,原告らに対し,別表の「再更正処分等」欄記載のとおり,課税価格及び納付 すべき相続税額を本件各申告の額と同額とする本件各相続税の各再更正処分及び重加算税の額を零円とする各変更決定処分(以下「本件各再更正処分等」という。)をした。 (イ) 処分行政庁は,平成27年11月24日付けで,原告らに対し,別表の「再々更正処分等」欄記載のとおり,課税価格及び納付すべき相続税額並びに重加算税の額を本件各更正処分等の額と同額とする本件各相続税の各再々更正処分及び重加算税の各再賦課決定処分(以下「本件各再々更正処分等」という。)をした。 オ裁決行政庁は,平成27年12月16日付けで,上記ウの原告らの審査請求をいずれも却下する旨の裁決(以下「本件各裁決」という。)をした。 (3) 本件訴えの提起原告らは,平成28年6月13日,本件各更正処分等及び本件各裁決の取消しを求める本件訴えを提起した(顕著な事実)。 (4) 本件各再々更正処分等についての訴え提起の経緯ア原告らは,平成27年12月15日,仙台国税局長に対し,本件各再々更正処分等について異議申立てをしたところ,3月を経過しても異議決定がされなかったため,平成28年6月27日,裁決行政庁に対し,本件各再々更正処分等について審査請求をした(甲29,30,43,44)。 イ原告らは,3月を経過しても上記アの審査請求に対する裁決がされなかったため,平成28年12月19日,東京地方裁判所に対し,本件各再々更正処分等の取消しを求める訴え(以下「別件訴訟」という。)を提起した(弁論 に対する裁決がされなかったため,平成28年12月19日,東京地方裁判所に対し,本件各再々更正処分等の取消しを求める訴え(以下「別件訴訟」という。)を提起した(弁論の全趣旨)。 2 国税通則法の定め(1) 70条(国税の更正,決定等の期間制限) ア 1項次の各号に掲げる更正決定等は,当該各号に定める期限又は日から5年(括弧内略)を経過した日以後においては,することができない。 1及び2号 〔略〕3号課税標準申告書の提出を要しない賦課課税方式による国税に係る賦課決定その納税義務の成立の日イ 2項(平成23年法律第114号による改正前のもの)前項各号に掲げる更正又は賦課決定で次に掲げるものは,同項の規定にかかわらず,同項各号に定める期限又は日(注・更正については,その更正に係る国税の法定申告期限)から5年を経過する日(括弧内略)まで,することができる。 1号納付すべき税額を減少させる更正又は賦課決定2ないし4号 〔略〕ウ 3項 〔略〕エ 4項次の各号に掲げる更正決定等は,1項又は前項の規定にかかわらず,1項各号に掲げる更正若しくは25条の規定による決定又は賦課決定(以下「更正決定等」という。)の区分に応じ,同項各号に定める期限又は日から7年を経過する日まで,することができる。 1号偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ,又はその全部若しくは一部の税額の還付を受けた国税(当該国税に係る加算税及び過怠税を含む。)についての更正決定等2及び3号 〔略〕(2) 平成23年法律第11 れ,又はその全部若しくは一部の税額の還付を受けた国税(当該国税に係る加算税及び過怠税を含む。)についての更正決定等2及び3号 〔略〕(2) 平成23年法律第114号改正附則37条(国税の更正の期間制限に関する経過措置)ア 1項 新国税通則法70条1項(同項1号に係るものに限る。)及び3項の規定は,施行日以後に同条1項に定める期限又は日が到来する国税について適用し,施行日前に旧国税通則法70条1項に定める期限又は日が到来した国税については,なお従前の例による。 イ 2及び3項 〔略〕 3 争点(1) 本件各更正処分等の取消しを求める訴えの利益があるか否か。 なお,原告らが主張するように本件各再更正処分等に国税通則法70条4項1号が適用されないとすると,本件各再更正処分等のうち各再更正処分については,同条2項1号(平成23年法律第114号による改正前のもの)が適用になり,重加算税の各変更決定処分については,同条1項3号(同改正後のもの)が適用になると考えられる。 (2) 本件各裁決の取消しを求める訴えの利益があるか否か。 4 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(本件各更正処分等の取消しの訴えの利益の有無)について(原告らの主張)ア最高裁昭和39年(行ツ)第52号同42年9月19日第三小法廷判決・民集21巻7号1828頁(以下「昭和42年最判」という。)は,当初更正処分の取消しを求める利益が,納付すべき税額を申告額に減額する再更正処分がされたことにより失われるとしたが,本件において,原告らは,本件各再々更正処分等について,異議申立て及び審査請求を行い,別件訴訟まで提起しているの 申告額に減額する再更正処分がされたことにより失われるとしたが,本件において,原告らは,本件各再々更正処分等について,異議申立て及び審査請求を行い,別件訴訟まで提起しているのであり,昭和42年最判の事案とは異なる。 本件各更正処分等と本件各再々更正処分等とは,理由附記が追完されている以外は,その内容が同一であり,本件各再々更正処分等は,理由を附記するためだけの修正・正誤にほかならず,取消訴訟上,別個独立の処分とみるべきものではなく,本件各再々更正処分等の内容が本件訴えの対象 になっていると解すべきである。 イ処分行政庁は,本件各再更正処分等を行い,原告らに多額の還付加算金を発生させたものの,これを原告らの手元には還付せず,還付加算金分を雑所得として高額の所得税を発生させてこれを納税させようとしたものであって,原告らを苦しめようとする特別の意図をもって本件各再更正処分等及び本件各再々更正処分等を行ったものである。したがって,本件各再更正処分等及び本件各再々更正処分等は,権限の濫用による不適法なものであり,重大かつ明白な瑕疵があって無効である。 ウ法定申告期限から6年目及び7年目における減額更正において,申告額と同一の金額にまで減額をするということは,脱税分に対応する税額の範囲を超える減額を行うものであるところ,そのような減額更正は国税通則法70条4項1号が適用される更正処分には該当せず,本件各再更正処分等は,5年間の除斥期間経過後にされたものである。また,そもそも減額更正において申告額と同一の金額にまで減額をすることは,更正処分の 処分には該当せず,本件各再更正処分等は,5年間の除斥期間経過後にされたものである。また,そもそも減額更正において申告額と同一の金額にまで減額をすることは,更正処分の範疇を超えるものであって,更正処分とはいえない。したがって,本件各再更正処分等は,重大かつ明白な瑕疵があり無効である。 さらに,原告らは,偽りその他不正の行為(国税通則法70条4項1号)により税額を免れたことはないから,同号は適用されないところ,本件各再更正処分等は,5年間の除斥期間(同条1項)経過後にされたものであるから,重大かつ明白な瑕疵があり無効である。 このような無効な本件各再更正処分等を前提としてされた本件各再々更正処分等も無効である。 エ以上のとおり,本件各再更正処分等及び本件各再々更正処分等が無効である以上,当初の処分である本件各更正処分等は,現在もその効力を有していることになり,原告らには本件各更正処分等の取消しを求める利益がある。 (被告の主張)ア納付すべき税額を申告額に減額する再更正処分がされた場合の当初更正処分の取消しを求める訴えの利益は,再更正処分の行われたとき以降,失われるものであるところ(昭和42年最判参照),本件においては,適法にされた本件各再更正処分等により,本件各更正処分等は取り消され,本件各更正処分等の取消しを求める訴えの利益は失われている。 イ原告B1は,相続財産の一部について,これらが相続財産であることを知りながら隠蔽し,相続財産として申告していなかったことから,「偽りその他不正の行 えの利益は失われている。 イ原告B1は,相続財産の一部について,これらが相続財産であることを知りながら隠蔽し,相続財産として申告していなかったことから,「偽りその他不正の行為」(国税通則法70条4項)により税額を免れた場合に該当し,本件相続に係る相続税の申告を原告B1に委任した原告B2についても同項が適用される。 そうすると,同項により,増額更正等である本件各更正処分等の除斥期間が7年になるのはもとより,減額更正等である本件各再更正処分等の除斥期間についても7年となり,その除斥期間内にされた本件各再更正処分等に何らの瑕疵もない。本件各再更正処分等は適法であり,重大かつ明白な瑕疵などなく,有効である。 (2) 争点(2)(本件各裁決の取消しの訴えの利益の有無)について(原告らの主張)原処分取消しの訴えの利益が失われていない以上,原告らには本件各裁決の取消しを求める訴えの利益がある。 (被告の主張)原処分取消しの訴えの利益は消滅しているから,本件各裁決の取消しを求める利益も消滅している。 (3) 原告らの本案の主張ア本件各更正処分等において相続財産であると認定された各財産は,いずれも原告B1らの財産であって,亡B3の財産ではなく,本件各更正処分 等は違法である。 イ本件各裁決は,原告らに本件各再更正処分等の除斥期間についての主張及び反論の機会を与えないままされたものであり,手続上の重大な瑕疵があるとともに,本件各再更正処分等が違法かつ無効な処分であるにもかかわらず,これらが適法かつ有効な処分であることを前提に,原告らの審査請求 続上の重大な瑕疵があるとともに,本件各再更正処分等が違法かつ無効な処分であるにもかかわらず,これらが適法かつ有効な処分であることを前提に,原告らの審査請求を却下したもので,その判断には重大な誤りがあり,裁決固有の違法がある。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件各更正処分等の取消しの訴えの利益の有無)について(1) 前提事実(2)エ(ア)のとおり,課税価格及び納付すべき相続税額を本件各申告の額と同額とする本件各再更正処分等がされたことにより,本件各更正処分等は,取り消されたのであって,本件各更正処分等の取消しの訴えの利益は失われたものというべきである(昭和42年最判参照)。 (2) 原告らの主張についてア前記第2の4(1)(原告らの主張)アについて前提事実(4)のとおり,原告らは,本件各再々更正処分等について,異議申立て及び審査請求を経て,別件訴訟を提起しているが,この点により上記(1)の判断が左右されることはない。むしろ,原告らが別件訴訟を提起したという以上,本件各更正処分等の取消しの訴えの利益が消滅していないとすれば,本件訴訟と別件訴訟の審理及び判断の重複や矛盾が問題となり,不都合である。 そして,上記のとおり,本件各再々更正処分等について不服申立てをしたり取消しの訴えを提起したりできるという以上,原告らが主張するように,本件各再々更正処分等の内容が本件訴訟の対象となっていると解すべきものではない。 イ前記第2の4(1)(原告らの主張)イについて 本件各再更正処分等及び本件各再々更正処分等が原告らを苦しめようという意図 ていると解すべきものではない。 イ前記第2の4(1)(原告らの主張)イについて 本件各再更正処分等及び本件各再々更正処分等が原告らを苦しめようという意図によりされたものと認めるに足りる証拠はなく,原告らの主張は採用できない。 なお,本件各再更正処分等により生じた還付加算金は,所得税法上原告らの雑所得に当たると解され,これが所得税の課税の対象となることは法の予定するところであって何ら不当なものではなく(所得税法22条,35条) また,上記還付加算金は本件各相続税に充当されており(甲41,42),原告らに不利益はない。 ウ前記第2の4(1)(原告らの主張)ウについて(ア) 本件各再更正処分等は,課税価格及び納付すべき相続税額を本件各申告の額と同額とするものであり,本件各更正処分等により課税された税額を超えて減額したものではない。また,減額更正において申告額と同一の金額にまで減額をすることは,更正処分に当たると解される。したがって,本件各再更正処分等は,更正処分としてされたものというべきである。 (イ) 国税通則法70条4項1号は,偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れた国税についての更正決定等について,7年間の除斥期間に服する旨定めるところ,同号が適用される上記更正決定等には,偽りその他不正の行為により国税の全部若しくは一部の税額を免れたとして税額を増額する更正決定等がされ,その後に,当該増額更正決定等において増額された税額を ,その増額された範囲内において減額する旨の更正決定等(以下「当該減 額を免れたとして税額を増額する更正決定等がされ,その後に,当該増額更正決定等において増額された税額を ,その増額された範囲内において減額する旨の更正決定等(以下「当該減額更正決定等」という。)も含むものと解される。 もっとも,当該減額更正決定等の除斥期間が7年間とされるのは,偽りその他不正の行為があるとしてされた増額更正決定等に誤りがあった場合に,国税通則法70条1項(本件各再更正処分等につい ていえば同条1項3号及び平成23年法律第114号による改正前の同条2項1号)の5年間の除斥期間経過後においても,その是正をすることができるようにするためであり,偽りその他不正の行為により国税の全部若しくは一部の税額を免れたと認められなければ,上記5年間の除斥期間経過後には当該減額更正決定等をすることができないと解するのは相当ではない。 したがって,原告らが,偽りその他不正の行為により本件各相続税を免れたものではないとして,本件各再更正処分等について国税通則法70条4項1号が適用されず,同条1項が適用される旨主張する点は,失当である。 (3) 以上のとおり,本件各更正処分等の取消しを求める利益は失われており,その取消しを求める訴えは不適法である。 2 争点(2)(本件各裁決の取消しの訴えの利益の有無)について(1) 処分についての審査請求は,原処分が違法又は不当であるとしてその取消しを求めるものであるから,裁決の取消しの訴えの目的も,究極的には原処分の取消しを求めることにあると解される。そうすると,原処分が既 審査請求は,原処分が違法又は不当であるとしてその取消しを求めるものであるから,裁決の取消しの訴えの目的も,究極的には原処分の取消しを求めることにあると解される。そうすると,原処分が既に取り消され,審査請求により取消しを求める対象である原処分が存在しない場合には,審査請求を棄却し又は却下する裁決の取消しを求める法律上の利益はないと解するのが相当である。 (2) これを本件についてみると,上記1のとおり,本件各再更正処分等がされたことにより原処分である本件各更正処分等は取り消されたのであるから,本件各裁決の取消しを求める法律上の利益はない。したがって,本件各裁決の取消しを求める訴えは不適法である。 3 結論よって,本件訴えはいずれも不適法であるから,これらを却下することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部裁判長裁判官林俊之裁判官梶浦義嗣裁判官高橋心平
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