【DRY-RUN】主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人白井誠の上告趣意第一点について。 所論は、違憲をいう点もあるが、その実質は、物品税法一八条一項一号所定の無 申告
主 文 本件上告を棄却する。 理 由 弁護人白井誠の上告趣意第一点について。 所論は、違憲をいう点もあるが、その実質は、物品税法一八条一項一号所定の無 申告製造罪が成立するためには、行為者において当該製造にかかる物品が同法によ る物品税の課税物品であることを認識していることが必要であり、この認識は犯罪 構成要件たる事実そのものの認識であつて、これを欠くときは故意を阻却すると解 すべきであるから、原判決は同法一八条一項一号、二二条、刑法三八条の解釈適用 を誤つた違法がある旨主張する単なる法令違反の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告 理由に当らない。 ところで、本件製造物品が物品税の課税物品であること従つてその製造につき政 府に製造申告をしなければならぬかどうかは物品税法上の問題であり、そして行為 者において、単に、その課税物品であり製造申告を要することを知らなかつたとの 一事は、物品税法に関する法令の不知に過ぎないものであつて、犯罪事実自体に関 する認識の欠如、すなわち事実の錯誤となるものではない旨の原判決の判断は正当 である。 同第二点について。 所論は、判例違反をいうけれども、所論引用(1)の判例は、当該被告人におい て、民訴法其の他の公法の解釈を誤り差押の効力がなくなつたので差押自体が存在 しないと錯誤したかまたは封印等を損壊する権利があると誤信した結果、当該封印 および標示を剥離するの行為に出でたのではないかの点が問題とされた事案に関す るもの、同引用(2)の判例は、当該被告人が、その判示のような理由から法華経 寺寺院規則が既に失効したものと誤信した結果、問題とされた変更登記事項の内容 - 1 - に、ついてそれが虚偽不実であることの認識自体を欠いでいたと認定された事案に 関するもの、同引用(3)の判例は、当該被告人におい に失効したものと誤信した結果、問題とされた変更登記事項の内容 - 1 - に、ついてそれが虚偽不実であることの認識自体を欠いでいたと認定された事案に 関するもの、同引用(3)の判例は、当該被告人において明治三四年五月一四日大 分県令第二七号飼犬取締規則等を誤解した結果、鑑札をつけていない犬は、たとえ 他人の飼犬であつても直ちに無主犬と看做されるものと誤信し、その錯誤の結果、 案件の犬が他人の所有に属する事実自体について認識を欠いでいたのではないかの 点が問題とされた事案に関するものであるところ、本件原判決によれば、単に、本 件製造物品が物品税課税物件であること従つてその製造につき政府申告を必要とす ることを知らなかつたという事実が認められるだけであつて、被告会社代表者Aそ の他の従業者において本件物品製造の認識自体についてはなんら欠くるところがな いというのであるから、本件は事実の錯誤をもつて論ずべき場合に当らないこと明 白であり、所論引用の右各判例は、本件とは事案を異にし不適切であつて、所論判 例違反の主張はその前提を欠き上告適法の理由とならない。 また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。 よつて、同四〇八条に従い、裁判官藤田八郎を除くその他の裁判官全員一致の意 見で主文のとおり判決する。 藤田裁判官の少数意見は次のとおりである。 本件公訴事実はこれを要約すれば、被告会社代表取締役Aは、同会社の業務に関 し、政府に申告しないで、物品税課税物品である遊戯具ブランコ等を製造したとい うのである。そして、一審判決の確定するところによれば、被告会社の代表者Aそ の他被告会社の従業者等は本件各物品の製造当時、それが物品税の課税物品である ことを知らなかつたというのであり、原判決も、「記録中の諸資料に徴すると被告 会社の代表者Aその他の従業者は本件物品 表者Aそ の他被告会社の従業者等は本件各物品の製造当時、それが物品税の課税物品である ことを知らなかつたというのであり、原判決も、「記録中の諸資料に徴すると被告 会社の代表者Aその他の従業者は本件物品製造当時、右各物品がいずれも物品税の 課税物品であること従つてその製造につき政府に製造申告をしなければならないこ とを知らなかつた」ことがわかる旨判示している。しかも、原判決は右の不知をも - 2 - つて「物品税法に関する法令の不知換言すれば法律の錯誤」と解すべきものであり 「法律の錯誤は犯意を阻却しない」のであるから、被告人に対して無罪を言渡した 一審判決は違法であるとして同判決を破棄したのである。 しかしながら、本件に適用されるべき物品税法一八条一項一号所定の罪はいわゆ る法定犯に属するものであつて、自分は、かかる法定犯については、法の不知は、 これを知らざるにつき相当の理由のある場合は犯罪の成立を阻却するものと考える。 であるから、本件については、原審のごとく、単純に法の不知は犯意を阻却しない との原理に固執して被告会社の罪責を肯定することは不当であつて、被告会社代表 者その他の従業員について、右法の不知につき過失の有無その他法の不知が右の者 らの責に帰すべき理由に基いている場合であるかどうかを審査して、しかるのちに、 被告会社の罪責の有無を決すべきものと思料する。但し、一審判決が本件の場合過 失の有無を問わず無罪である旨判示したことはあやまりであるから、原判決が第一 審判決を破棄して本件を地方裁判所に差戻すとしたことは結局において正当である。 従つて、本件上告は棄却すべきものであるとする多数意見の結論に賛同する。 昭和三四年二月二七日 最高裁判所第二小法廷 裁判長裁判官 小 谷 勝 重 裁判官 きものであるとする多数意見の結論に賛同する。 昭和三四年二月二七日 最高裁判所第二小法廷 裁判長裁判官 小 谷 勝 重 裁判官 藤 田 八 郎 裁判官 池 田 克 裁判官 河 村 大 助 裁判官 奥 野 健 一 - 3 -
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