平成18(わ)637 道路交通法違反,危険運転致死傷(予備的訴因 業務上過失致死傷)

裁判年月日・裁判所
平成19年1月11日 名古屋地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-35991.txt

判決文本文25,656 文字)

主文 被告人を懲役6年に処する。 未決勾留日数中240日をその刑に算入する。 理由 【罪となるべき事実】第1被告人は,酒気を帯び,呼気1リットルにつき0.15ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態で,平成18年2月25日午前1時ころ,愛知県春日井市a町b丁目c番地のd付近道路において,普通乗用自動車を運転した。 第2被告人は,上記日時ころ,業務として上記車両を運転し,上記場所先の信号機により交通整理の行われている交差点を名古屋市西区方面から愛知県春日井市e町方面に向かい直進しようとしたのであるから,このような場合,自動車運転者としては,対面信号機の灯火信号の表示を確認し,その表示する信号に従って進行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,対面信号機が赤色の灯火信号を表示しているのに,これを看過し,漫然,時速70ないし80キロメートルの速度で自車を運転して同交差点内に進入した過失により,折から左方道路から青色信号に従って同交差点内に進入してきたA(当時68歳)運転の普通乗用自動車右側部に自車前部を衝突させ,よって,別紙1記載のとおり,上記Aほか3名を死亡させるとともに,別紙2記載のとおり,E(当時22歳)ほか1名に傷害を負わせた。 【補足説明】第1 争点 本件の争点は,①本件前における被告人の飲酒量,②被告人が赤信号を「殊更に無視」したか否か,の2点である。 当裁判所は,飲酒検知の結果に基づいて判示第1のとおりの事実を認定したが,被告人が赤信号を殊更に無視したと認定するには合理的な疑いが残ると判 断し,判示第2のとおり予備的訴因である業務上過失致死傷の事実を認定した。 その理由は以下のとおりである。 第2飲酒量について 弁護人の主張弁護人は,被告人が酒を飲んだ上で自動車を運転したことは争わないが,その飲酒 予備的訴因である業務上過失致死傷の事実を認定した。 その理由は以下のとおりである。 第2飲酒量について 弁護人の主張弁護人は,被告人が酒を飲んだ上で自動車を運転したことは争わないが,その飲酒量について,本件事故の前日である平成18年2月24日午後10時30分ころから午後11時30分ころまでの間に,冷酒用グラスに八分目まで注いだ日本酒1杯(約60ミリリットル)を飲んだだけであって,これよりも多量の酒を飲んだことを示す飲酒検知の結果は正確性に問題があると主張する。 そして,被告人もこれに沿う供述をしている。 当裁判所の判断(1)前提となる事実関係関係証拠によれば,以下の事実が認められ,これらについては争いがない。 被告人は,同月25日午前1時ころ本件事故を起こし,同日午前2時20分ころ,搬送先の病院において,警察官Gによる飲酒検知を受けたが,その結果は,呼気1リットル当たり0.35ミリグラムのアルコールが含まれるというものであった。その数値から推定される飲酒量は,被告人が飲酒検知の3時間前に飲酒したとすると,被告人が飲んだとされている日本酒であれば,算出方法により,約235ミリリットルないし約450ミリリットル又は約346ミリリットルないし約475ミリリットルに相当する。また,被告人は,本件の前々日である同月23日夜から翌24日朝にかけて発泡酒を飲んだが,この飲酒が今回の飲酒検知の結果に影響を及ぼすとは考えられない。 (2) 証拠 ア証人Gの捜査報告書及び公判供述飲酒検知を行った警察官Gは,その際の状況について,その作成にかか る捜査報告書(甲17)及び当公判廷において,以下のとおり供述している。 本件当日,交番勤務中に,本件事故の当事者の把握と事情聴取をするようにと指揮を受け,被告人が搬送された病院に行った。被告人は,病 捜査報告書(甲17)及び当公判廷において,以下のとおり供述している。 本件当日,交番勤務中に,本件事故の当事者の把握と事情聴取をするようにと指揮を受け,被告人が搬送された病院に行った。被告人は,病院に到着するとまずレントゲン室へ入り,その後トイレに行ってから車椅子で処置室に運ばれた。自分は,処置室から出てきた被告人に対し,飲酒検知を行うことにした。まず,被告人に飲酒検知を行うと告げ,うがいをさせてから風船でその呼気を採取し,北川式飲酒検知管SE型の新品の検知管の両端を割り,風船を取り付けて吸引機で1回吸引し,そのアルコール濃度を測定した。その結果,検知管は,0.35と0.4の中間の値を示していたので,両者のうち小さい値である0.35を採用した。その検知管を封筒に入れて糊付けし,被告人に割印を求めたが,いったんは拒否された。引き続き,鑑識カードの質問事項を被告人に尋ねたところ,被告人は,飲酒量の質問に対し,最初は酒は飲んでいないと答え,更に質問を受けて発泡酒を3本,缶で1.6リットルくらい飲んだなどと答えた。なお,被告人から1メートルくらい離れたところからでもアルコール臭を感じた。 被告人の顔色は赤く,目は充血していた。歩行能力や直立能力の検査を行ったが正常であった。その後,被告人は説得に応じ,「飲酒は認めるが,酒気帯び運転は認めない。」などと言いながら割印をした。 イ証人Hの公判供述本件直後に現場を通りかかり,被害者の救助活動に当たっていたHは,当公判廷において,救助活動の合間に被告人にも声を掛けたが,その際,被告人車両の中でアルコール臭がしていた旨供述している。 ウ証人Iの公判供述本件事故の約50分後に現場に臨場し,被告人から事情を聴取した消防士Iは,当公判廷において,被告人から,すぐに分かるほど強いアルコー ル臭がしたこ がしていた旨供述している。 ウ証人Iの公判供述本件事故の約50分後に現場に臨場し,被告人から事情を聴取した消防士Iは,当公判廷において,被告人から,すぐに分かるほど強いアルコー ル臭がしたこと,被告人に氏名等を尋ねた際,被告人ははっきりと自分の名前を名乗り,膝が痛い旨答えたが,声が大きく,ろれつが回らないような状態であったことなどを供述している。 (3)上記証言の信用性の検討証人Gは,職務の一環として被告人の飲酒検知を行った交番勤務の警察官であり,マニュアルで決められた手順に従って飲酒検知を行ったことやその際の被告人の態度等について,その供述の信用性を疑わせる具体的な事情は見当たらない。 証人Hは,偶然事故現場に居合わせた通行人であり,証人Iは,事故による出動要請を受けて現場に臨場した消防指令補であって,いずれも被告人と面識がなく,公判廷においてあえて虚偽の内容の供述をすることは考えにくい。いずれもその供述の信用性を否定する事情を見出すことはできない。 また,互いに面識がなく,立場も異なる3名の証人が,近接した時期の異なる場面において,被告人が酒気を帯びた状態であると認識したという点で一致した内容の供述をしているのであって,3名の供述は互いにその信用性を支え合う関係にあるといえる。 したがって,証人H,同I,同Gの各公判供述はいずれも信用できる。 (4)飲酒検知の正確性について信用できる証人Gの供述によれば,飲酒検知は,マニュアルで決められた手順に従い,新品の検知管を使って行われた。被告人は,呼気を採取する前,飲酒検知を行うと告げられた上でうがいをしたと認められ,嘔吐による影響は考えにくい。同証人が飲酒検知を行った経験は,警察官になってから本件までの約9年間で30回程度であり,仮にこれが弁護人主張のように経験豊富とはいえない た上でうがいをしたと認められ,嘔吐による影響は考えにくい。同証人が飲酒検知を行った経験は,警察官になってから本件までの約9年間で30回程度であり,仮にこれが弁護人主張のように経験豊富とはいえない程度のものであったとしても,このことは飲酒検知の結果に直接影響を与える事情とはいえない。飲酒検知を行う条件についても,温度が低すぎるとその正確性に疑問が生じ得るが,今回は病院の室内において, 検知管を暖房の効いた室内に持ち込んで約10分後に行われており,誤差が生じた可能性は低い。被告人が病院で受けた治療が測定結果に何らかの影響を与えたという事情も窺えない。 また,呼気1リットル当たり0.35ミリグラムという数値から計算される上記(1)記載の飲酒量は,それ自体特に不自然な量であるとはいえず,また,証人G,同H,同Iの公判供述から認められるアルコール臭の存在や,被告人の言動,顔色等とも矛盾しない。また,直立能力や歩行能力の検査の結果が正常であったこととも矛盾しない。 本件において,飲酒検知の正確性を疑わせる事情は見当たらず,検知管が示した数値は,被告人の呼気中のアルコール濃度を正確に反映したものであることが認められる。 (5)被告人の供述被告人は,当公判廷において,順序についての記憶ははっきりしないが,飲酒検知の前にトイレに行って嘔吐した記憶がある旨を供述している。しかし,この供述は,信用できる証人Gの供述と異なっている。また,被告人は,捜査段階においては,うがいしたこと自体を否定していたと認められるところ(乙5,7,9),公判においてはうがいをしたことは認めるがいつ頃か分からない旨供述を変遷させている。いずれもそもそも記憶が明確でないままの供述ではないかと考えられるが,その変遷理由について合理的な説明はないといわざるを得ない。被告人の供述 ことは認めるがいつ頃か分からない旨供述を変遷させている。いずれもそもそも記憶が明確でないままの供述ではないかと考えられるが,その変遷理由について合理的な説明はないといわざるを得ない。被告人の供述を信用することはできない。 (6) 結論 したがって,本件当日の午前2時20分ころ,被告人が,呼気1リットルにつき0.35ミリグラムのアルコールを身体に保有していたことが認められ,判示第1のとおりの事実が認定できる。 第3危険運転致死傷罪の成否 主位的訴因 判示第2の事実に係る主位的訴因は,「被告人は,平成18年2月25日午前1時ころ,普通乗用自動車を運転し,愛知県春日井市a町b丁目c番地のd先の信号機により交通整理の行われている交差点を名古屋市西区方面から愛知県春日井市e町方面に向かい直進するに当たり,同所の対面信号機が赤色の灯火信号を表示しているか否かについて意に介することなく,同信号機が既に赤色の灯火信号を表示していたとしてもこれを無視して進行しようと考え,同信号機が赤色の灯火信号を表示していたのに,これを殊更に無視し,重大な交通の危険を生じさせる速度である時速70ないし80キロメートルの速度で自車を運転して同交差点内に進入したことにより,折から左方道路から青色信号に従って同交差点内に進入してきたA(当時68歳)運転の普通乗用自動車右側部に自車前部を衝突させ,よって,別紙1(本判決の別紙1と同一)記載のとおり,Bほか3名を死亡させるとともに,別紙2(本判決の別紙2と同一)記載のとおり,E(当時22歳)ほか1名に傷害を負わせた」というものである。 検察官の主張は,本件当時,被告人は信号による規制自体を無視し,赤信号であるか否か意に介することなく,本件交差点に進入したというものである。 これに対し,弁護人の主張は,被告人は青信号だと思い ある。 検察官の主張は,本件当時,被告人は信号による規制自体を無視し,赤信号であるか否か意に介することなく,本件交差点に進入したというものである。 これに対し,弁護人の主張は,被告人は青信号だと思い込んで本件交差点に進入したというものである。 検討の方法信号表示の認識や信号による規制に対する態度といった事実は,被告人の内心的事実であり,これに関する被告人の供述が直接的な証拠であるほかは,直接これを立証する証拠はないことから,当時の客観的状況や被告人の運転態度などの間接事実からその当時の被告人の心理状態を推認することによって検討する必要がある。 そこで,当裁判所は,まず,①本件当時の被告人車両の走行状況や運転態度を証拠から認定し,②それらの事実から被告人が赤信号を殊更に無視したと認めることができるか否かを検討した上で,③赤信号を看過した可能性の有無に ついての検察官の主張を検討し,④被告人の供述の信用性にも触れ,⑤結論を出すことにする。 被告人車両の走行状況と運転態度(1)前提となる事実(本件現場の状況及び被告人車両の経路)関係証拠によれば,以下の事実が認められ,これらについては争いがない。 本件事故現場であるa町b丁目交差点(以下,「本件交差点」ともいう。)は,東西に走る国道甲号線と南北に走る県道乙線が交差する信号機により交通整理の行われている交差点である。被告人が東進していた国道甲号線は,最高速度が時速50キロメートルと指定され,片側2車線で交差点手前では右折レーンが設置されている道路である。 本件当時,被告人は,内妻の子(当時4歳。以下,単に「子供」ともいう。)を乗せた自動車(丙。以下,「被告人車両」という。)を運転し,自分の経営する店から帰宅する途中であった。被告人車両は,国道甲号線にf交差点から入り,第2車線を東へ 歳。以下,単に「子供」ともいう。)を乗せた自動車(丙。以下,「被告人車両」という。)を運転し,自分の経営する店から帰宅する途中であった。被告人車両は,国道甲号線にf交差点から入り,第2車線を東へと直進し,g交差点(以下,「二つ手前の交差点」ともいう。),h交差点(以下,「一つ手前の交差点」ともいう。)を通過して,同日午前1時ころ,本件交差点に至った。そして,客観的には同交差点の対面信号機が赤色を表示していた状況で,時速70ないし80キロメートルの速度で同交差点に進入したことにより,本件事故を起こした。衝突の状況は判示罪となるべき事実第2のとおりである。 (2)当事者の主張ア検察官の主張検察官は,本件当時における被告人の運転状況は以下のとおりであったと主張している。 「(ア)二つ手前の交差点付近において,クラクションを鳴らして通行車両に警告を発し,急な車線変更を多用しつつ,高速度で他の走行車両を次々と追い越して走行して,黄色から赤信号に変わるタイミングで同交差 点を通過した。 (イ)一つ手前の交差点において,赤信号のまま同交差点を通過しなければならないやむを得ない事情もないのに,同交差点手前でクラクションを鳴らし続けて交差道路の通行車両に警告を発しつつ,赤信号のまま同交差点を通過して,引き続き時速約70ないし80キロメートルの速度で走行した。 (ウ)本件交差点においても,同交差点手前で(イ)同様にクラクションを鳴らし続けて交差道路の通行車両に警告を発しつつ,その後,ブレーキをほとんどかけないまま上記速度で赤信号のまま同交差点に進入して本件事故を起こした。」そして,検察官は,そのような運転状況に加え,被告人が走行していた国道甲号線は,ほぼ直線であり,視界を遮る障害物はなく夜間でも見通しがよいこと,二つ手前の交差点と一つ 入して本件事故を起こした。」そして,検察官は,そのような運転状況に加え,被告人が走行していた国道甲号線は,ほぼ直線であり,視界を遮る障害物はなく夜間でも見通しがよいこと,二つ手前の交差点と一つ手前の交差点との距離は約400メートル強,一つ手前の交差点と本件交差点との距離は約200メートル強であり,時速約70キロメートルの車両がそれぞれの各交差点間を通過する時間は約20秒及び約10秒という短時間であることからすれば,このような短時間で上記(ア)ないし(ウ)のとおりの無謀ともいうべき走行方法をする運転者にとっては,一つ手前及び本件交差点においては,もはや信号表示など一切意に介さず,信号表示に従う意思がおよそなかったとみるのが自然かつ合理的であると主張している。 イ弁護人の主張これに対し,弁護人は,本件当時における被告人の運転状況は以下のとおりであるとし,被告人が本件交差点では青信号だと思い込んでいたと主張している。 「(ア)国道甲号線と立体交差する国道丁号線の下をくぐった後,本件交差点の三つ手前の交差点に至るまでの間に,同乗していた子供がクラクシ ョンを鳴らしたことが1度あった。その後,先行車両を追い越すため左側の車線に入り,追い越し後,左側の車線前方に別の先行車両がいたため右側の車線に戻るという走行をした。この時点では,この2台の車両に向けてクラクションを鳴らしたことはなく,また,両車両に接近して車線変更をするような運転はしていない。 (イ)一つ手前の交差点の手前で,運転席と助手席の中央部分にいた子供が,ハンドルの方に手を伸ばし,その際にハンドル操作を誤って被告人車両の右側部分が中央分離帯に近付き,チッという音がした。自車が損傷したことを考えているうちに同交差点が直前に迫った。そのため,赤信号で停止できないと判断し,同交 その際にハンドル操作を誤って被告人車両の右側部分が中央分離帯に近付き,チッという音がした。自車が損傷したことを考えているうちに同交差点が直前に迫った。そのため,赤信号で停止できないと判断し,同交差点を抜けきるまでクラクションを押し続ける状態で長目に鳴らして通過した。 (ウ)その後,被告人は,一つ手前の交差点を無事通過したことや,車内で子供がクラクションに気を取られたり音楽に合わせて踊ったりしていたので若干気の緩みがあったことも起因したのか,本件交差点が青信号であると勘違いして,そのまま同交差点に進入してしまった。」(3)走行状況等以上の当事者の主張を踏まえ,証拠によって認定できる事実関係を確定した上で,争点について検討する。 ア二つ手前の交差点付近における走行状況(ア)認定した事実被告人は,二つ手前の交差点よりも手前(西側)において,自己車両の前方,第2車線上を走行していた上記H運転の自動車(以下,「H車両」という。)に対し,後方からクラクションを鳴らしながら接近し,左側車線に車線変更をして追い越すと,再びH車両の前方に割り込もうとし,その直後に左側へ車線変更をしながら他の車両を追い越した後,再び右側へ車線変更をして第2車線に戻った。そして,スピードを緩め ずに同交差点を通過した。被告人車両が同交差点を通過するころ,それまで青色だった同交差点の信号表示が変わった。 (イ)認定の理由上記の被告人車両の走行状況は,証人Hの公判供述によって認定できる。 弁護人は,証人Hには被告人が加害者であるという意識があり,その供述は信用できないと主張し,その根拠として,同証人の供述には,①捜査段階において,被告人車両に追い抜かれたときの位置関係を書いた図面は,実際の道路と車線の数などが異なり,公判で書いた図面と比較すると周りを走 きないと主張し,その根拠として,同証人の供述には,①捜査段階において,被告人車両に追い抜かれたときの位置関係を書いた図面は,実際の道路と車線の数などが異なり,公判で書いた図面と比較すると周りを走っていた車の台数も異なっていること,②自己の車両が二つ手前の交差点で停止した位置についても,捜査段階では先頭で停まったどうか分からないと述べたのに対し,公判廷では右折レーンの先頭で停まったなどと述べ,供述を変遷させていること,③被告人車両が同交差点を通過したときの信号の色について,捜査段階では青から黄色に変わるころと述べたのに対し,公判供述では黄色から赤に変わるころと述べ,被告人により不利益になるように供述を変遷させていること,④被告人がゼブラゾーンにはみ出して走行したという供述について,実際のゼブラゾーンにはポストコーンが設置されていることからするとそのような走行はあり得ないことなどといった問題点があると指摘する。 しかし,証人Hは,これまで被告人と何の関係もなかった第三者であり,法廷で宣誓した上であえて虚偽を述べて被告人を陥れようとするほどの動機は見受けられない。供述内容をみても,クラクションの音により被告人車両の存在に気付いてから同車両に追い越されたときの状況について,自分や同乗者の動作等も併せて具体的に供述しており,内容自体も自然である。また,弁護人が指摘(②)するとおり,捜査段階の供述とやや異なる部分はあるものの,その根幹部分,すなわち,被告人車 両がクラクションを鳴らして自車の後方から接近したこと,被告人車両が,車線変更をして自車をぎりぎりの距離で追い越すや,すぐ前に割り込もうとし,また左側に寄って前方の車を追い越し,さらに,右に車線変更をして第2車線に戻ったということ,自分は二つ手前の交差点で信号待ちのため停止したが,被 ぎりぎりの距離で追い越すや,すぐ前に割り込もうとし,また左側に寄って前方の車を追い越し,さらに,右に車線変更をして第2車線に戻ったということ,自分は二つ手前の交差点で信号待ちのため停止したが,被告人車両はそのまま直進していったことについては,捜査及び公判を通じて一貫している。 弁護人が信用性を否定すべきであるとする根拠(①)として挙げる捜査段階で書かれた図面は,実際の道路状況を忠実に反映したものではなく,同証人がその記憶しているイメージを表現したものであり,その車線変更のおおまかな状況等は,公判供述と一致している。弁護人が指摘する実際の道路状況や公判供述との違いは,その供述の信用性を否定する事情となるものではない。二つ手前の交差点の信号の色についての供述の変遷(③)についても,証人Hは,被告人が二つ手前の交差点を通過したとき,信号は黄色から赤色だったと述べる一方で,その点についての記憶があいまいである旨正直に述べた上で,少なくとも,自分が赤信号のために停車したことを根拠に信号の変わり目であったことを述べており,その限度では内容は一貫しているのであって,自車の動きと関連付けた記憶を根拠にした内容である。また,被告人車両がゼブラゾーンにはみ出したという供述(④)は,被告人車両が左に車線変更した際,ハンドルの操作が急激で曲がり切れずにはみ出して行ったように見えたというものであり,ゼブラゾーン上に,断続的にポストコーンが点在していることと必ずしも矛盾する内容ではない。 以上のとおり,証人Hの公判供述は,大要において信用することができ,上記(ア)に挙げた事実については同証人の供述により認定することができる。 これに対し,被告人は,子供がクラクションを鳴らしたことが1回あ ったが,それはもっと前での出来事であり,H車両に対してクラクショ 挙げた事実については同証人の供述により認定することができる。 これに対し,被告人は,子供がクラクションを鳴らしたことが1回あ ったが,それはもっと前での出来事であり,H車両に対してクラクションを鳴らしたことはない,左に車線変更してH車両を追い越した後,その車線前方に先行車両がいたので,H車両の前方で右に車線変更したが,その際には,車間距離は十分に取った,自分が追い抜いた車は他にはないなど供述するが,上記認定の事実に反する部分はそのまま信用することはできない。 イ一つ手前の交差点付近における走行状況(ア)客観的な走行状況関係証拠によれば,以下の事実が認められ,これらについて争いはない。 被告人車両は,一つ手前の交差点に差しかかったとき,同交差点は既に赤信号であり,左側の第1車線では,J運転の自動車が同交差点手前で停止するため減速していた。被告人は,この車両を追い越し,赤信号であることを認識しつつ,時速約70ないし80キロメートルの速度で同交差点を通過し,同交差点を通過する間クラクションを鳴らし続けた。 (イ)被告人の運転態度a被告人の供述被告人は,一つ手前の交差点で上記のような運転をした理由について,その手前で,子供が運転席と助手席との間に立ってクラクションに向かって手を伸ばしてきたことに動揺して自車が右側の縁石に接触したことや,同児が音楽に合わせて踊っていることなどに気を取られ,交差点直前に至るまで赤信号だと気付かず,赤信号に気付いたときには停止線手前で停まれる状況になかったので,やむを得ずクラクションを鳴らし続けながら速度を落とさず直進した旨供述している。なお,被告人車両の中での出来事についての証拠は,被告人の供述のみである。 b被告人供述の信用性検察官は,被告人の供述が変遷していることなどを挙げてその 度を落とさず直進した旨供述している。なお,被告人車両の中での出来事についての証拠は,被告人の供述のみである。 b被告人供述の信用性検察官は,被告人の供述が変遷していることなどを挙げてその信用性を争い,被告人には赤信号のまま同交差点を通過しなければならないやむを得ない事情は全くなかったのに,あえて赤信号を無視したと主張する。 この点についての被告人の供述経過をみると,被告人は,捜査段階において,当初は一つ手前の交差点も青信号であったと供述していたのに,途中から,赤信号であったことを認めた上で子供の行動が原因となったことを供述し始めた。このように供述を変遷させた理由について,被告人は,取調官からは二つの信号を無視して事故を起こしたと言われていたため,一つ手前の交差点の信号無視についてその原因が子供の行動にあることを話すと,子供が将来負い目を感じることになると思い,当初は子供のことを黙っていたなどと供述している。一つ手前の交差点における赤信号無視の事実は,本件事故の直接の原因とはなっていないが,本件当時における危険な運転行為の一環と評価され得るものであることを考えると,このような供述を変えるに至った理由についての被告人の供述は一概に不合理であるとは言い切れないところがある。 また,被告人は,一つ手前の交差点直前に至るまで赤信号に気付かなかった理由について,検察官からの質問に対して「意識して信号を見ていなかった。」などと述べるのみで,さらにその原因となる具体的事情を明らかにし得てはいないが,単なる不注意等によって信号の認識が遅れることも起こり得ないものではないことを考えると,このような供述について,虚偽を述べたものであると断定することはできない。 そして,その供述内容は,赤信号の交差点をクラクションを鳴らし 続けながら高 も起こり得ないものではないことを考えると,このような供述について,虚偽を述べたものであると断定することはできない。 そして,その供述内容は,赤信号の交差点をクラクションを鳴らし 続けながら高速度のまま通過した理由の説明として,成り立ちうるものである。 c小括そうすると,子供の行動に気を取られて信号に気付くのが遅れたという可能性については,これを完全に排除することはできないというべきである。 ウ一つ手前の交差点から本件交差点までの走行状況(ア)証拠上認められる走行状況被告人車両は,時速70ないし80キロメートルの速度のまま走行し,対面信号機が赤信号であるにもかかわらず,ブレーキも掛けずに,本件交差点に進入した。なお,一つ手前の交差点から本件交差点までの距離は約222.1メートルである。 他方,その直前ころ,交差道路である県道乙線では,被害者A運転のタクシー(以下,「被害車両」ともいう。)が乗客を乗せて南進し,本件交差点に差しかかっていた。そして,被害車両は,青信号に従い,先行して走っていた別のタクシーの後に続いて同交差点に進入した。そして,その先行するタクシーが通過した直後,被告人車両が本件交差点に進入し,被害車両の右側面に自車の前部を衝突させた。 被告人は,一つ手前の交差点通過後39.73メートルないし49. 46メートル移動する地点までクラクションのスイッチを押していたが,その後本件交差点に至るまでの間,クラクションを鳴らした事実は証拠上認められない。また,被告人は,本件交差点に進入するに当たり,その付近においては,クラクションを鳴らさなかったと認められる。 この点についての検察官の主張は上記3(2)ア(ウ)のとおり,「本件交差点においても,同交差点手前で一つ前の交差点のときと同様にクラクションを鳴らし続けて交差道路の ンを鳴らさなかったと認められる。 この点についての検察官の主張は上記3(2)ア(ウ)のとおり,「本件交差点においても,同交差点手前で一つ前の交差点のときと同様にクラクションを鳴らし続けて交差道路の通行車両に警告を発しつつ,その後, ブレーキをほとんどかけないまま上記速度で赤信号のまま同交差点に進入して本件事故を起こした。」というものであるが,その立証は不十分であるといわざるを得ない。検察官は,論告においては,被告人が,本件交差点の手前104.6メートルの地点までクラクションを鳴らし続けたという事実を前提としても,本件交差点に向けた警告であったと主張するが,その意味でのクラクション吹鳴とは認められない。 (イ)認定の理由a当事者の主張(クラクション吹鳴があった地点及びその意味)検察官は,被告人は本件交差点の104.6メートル手前の地点までクラクションを鳴らし続けていたのであり,それは本件交差点を通行する車両に対する警告のために鳴らしたものであると主張する。他方,弁護人は,被告人は一つ手前の交差点をクラクションを鳴らし続けた状態で通過したが,本件交差点に向けてクラクションを鳴らしたことはないと主張し,被告人も一つ手前の交差点を通過する間はクラクションを鳴らし続け,通過後一,二秒してから手を離したなどとこれに沿う供述をする。 b証人Kの公判供述等本件直前に被告人車両の反対車線を車で走行し,被告人車両とすれ違った証人K(以下,「K」ともいう。)は,当公判廷において,本件交差点を北から西へと右折した後,被告人車両とすれ違ったこと,その際,被告人車両が対向車線を前方から接近して真横を通る時点まで,そのクラクションが鳴り続けた状態であったこと,それ以後は聞こえなかったことを供述し,捜査段階ではすれ違った場所として本件交差点から10 ,被告人車両が対向車線を前方から接近して真横を通る時点まで,そのクラクションが鳴り続けた状態であったこと,それ以後は聞こえなかったことを供述し,捜査段階ではすれ違った場所として本件交差点から104.6メートルの地点を現場で指示している(甲23)。 証人Kは,仕事として車を運転中,偶然被告人車両とすれ違った第 三者であり,あえて虚偽を述べる動機は乏しい。また,本件事故から10日後に,すれ違った地点を警察官に指示説明している。その供述の信用性を疑わせる事情は見当たらない。 したがって,証人Kの供述は信用でき,同人が本件交差点の約104.6メートル手前の地点で被告人車両のクラクションを聞いた事実が認められる。 cクラクションの設定被告人車両に取り付けられたクラクションは,そのスイッチから手を離した後余韻が残るように設定することができるものである。本件当時の設定がどちらであったかは,証拠上判明していない(この設定について,被告人は,捜査段階において,一時は余韻の残らない状態になっていたと思う旨供述し(乙5),その後余韻の残る状態であったと供述を変遷させているが,その供述では当時のクラクションの設定を認定することはできない。)ので,被告人に有利に考えるほかない。余韻の残る設定になっていたとすると,被告人が,証人Kがクラクションを聞いた位置よりも手前でクラクションのスイッチを離していた可能性が否定できないこととなる。 d被告人がクラクションのスイッチを離した地点そこで,クラクションが余韻の残る設定になっていた場合において,被告人がどの地点までクラクションのスイッチを押していたと認められるかを検討する。 スイッチから手を離した後に余韻の残る時間は,被告人車両に取り付けられたクラクションの型では,設計値で1.4秒ないし4.5秒間,実力 でクラクションのスイッチを押していたと認められるかを検討する。 スイッチから手を離した後に余韻の残る時間は,被告人車両に取り付けられたクラクションの型では,設計値で1.4秒ないし4.5秒間,実力値で2.5秒ないし3.5秒間である(甲56)。その余韻の残り方は,手を離した後1秒程度はスイッチを押した状態と同様の音量であるが,時間の経過に従って音が小さくなり,設計値の最長値 4.5秒後には聞き取ることが難しい(甲78)。もっとも,個々の機械にはある程度のばらつきがあること(甲80)を考慮すると,実力値の最長値3.5秒後までは相当程度の音量が保たれていた可能性は否定できないというべきである。 そこで,被告人がクラクションのスイッチから手を離した後3.5秒間余韻が残るとして計算すると,その間に被告人車両が進む距離は,時速80キロメートルの速度では約77.77メートル,時速70キロメートルの速度では約68.04メートルである。K車両とすれ違った地点からその距離を差し引いて考えると,被告人車両は,一つ手前の交差点を通過してから,その速度が時速80キロメートルの場合には約39.73メートル,時速70キロメートルの場合には約49. 46メートルの距離を移動した地点まで,クラクションのスイッチを押していたことになる。 すなわち,被告人は,一つ手前の交差点を通過後約39.73メートルないし約49.46メートル移動した地点まで,クラクションのスイッチを押していたことが証拠上認められる。 eその後のクラクション吹鳴の有無Kがクラクションを聞いた本件交差点の104.6メートル手前の地点より本件交差点に近い地点において,被告人車両のクラクションが鳴っていたことを示す証拠はない。 当時,被害車両に先行して走っていたタクシーの運転手L,その乗客M,被害車両 04.6メートル手前の地点より本件交差点に近い地点において,被告人車両のクラクションが鳴っていたことを示す証拠はない。 当時,被害車両に先行して走っていたタクシーの運転手L,その乗客M,被害車両の後続車両に乗っていたNとO,及び,本件時において本件交差点東側停止線付近で信号待ちをしていた自動車内にいたPは,捜査段階において,いずれもクラクションを聞いた旨の供述はしていない。これらの者は,いずれも本件事故の時点で現場近くにいたため本件事故の状況を見聞きしており,事故直後の記憶が鮮明な時期 にその状況について事情聴取を受けたものである。いずれの者の調書にも被告人車両のクラクションについて言及した記載はなく,クラクションが鳴らなかったと明言はしていないが,クラクションを聞いた記憶があれば,そのことを進んで供述するのが自然である。また,重大事故の初動捜査においては,現場にいた参考人からの事情聴取に当たり,事件の解明に関連がありそうな事情を幅広く聴取していると思われる。このことを併せ考えると,特に,上記L及び同Mのように,衝突音を聞いて事故に気付いた旨供述している者については,捜査官もその詳しい状況を聴取しようと努めるであろうし,これらの者がもしクラクションの音を聞いていたのであれば,音に関する記憶として衝突音と併せて記憶し,取調べにおいても供述しているはずである。 それにもかかわらず,これらの者のうち誰もクラクションについて供述していないということは,その地点ではクラクションが鳴っていなかったことを意味していると考えられる。 したがって,被告人は,本件交差点に進入するに当たり,その付近においてはクラクションを鳴らさなかったと認められる。 f検討以上を前提にすると,証拠上,被告人がクラクションのスイッチを押していたと認められるのは, 人は,本件交差点に進入するに当たり,その付近においてはクラクションを鳴らさなかったと認められる。 f検討以上を前提にすると,証拠上,被告人がクラクションのスイッチを押していたと認められるのは,一つ手前の交差点通過後約39.73メートルないし約49.46メートルを移動した地点までであり,この距離は,被告人車両の上記速度では1.8秒ないし2.5秒で移動できる範囲である。そして,その地点以降,被告人がクラクションのスイッチを押した事実を示す証拠は見当たらず,また,被告人は,本件交差点に進入するに当たり,その付近でクラクションを鳴らさなかったと認められる。 そうすると,一つ手前の交差点を通過後一,二秒してクラクション から手を離した旨の被告人の供述は,上記の事実関係と矛盾するものではなく,これを排斥することは困難である。 なお,検察官は,このような事実関係が認められるとしても,被告人は,一つ手前の交差点を通過した後,なおもクラクションのスイッチを押していたのであり,これは一つ手前の交差点を通行する車両に対する警告とはいえない旨主張する。しかし,クラクションによる警告は,通常は交差点に進入する前や通過している最中に行うのが自然であるが,交差点を通過した後に多少それがずれて,一,二秒間スイッチを押したままであったとしても,殊更に不自然ということはない。 むしろ,上記の認定によれば,被告人は,一つ手前の交差点通過後約39.73メートルないし約49.46メートルを移動した地点までクラクションのスイッチを押していたが,その後本件交差点までの残りの距離約172.64メートルないし約182.37メートルを進行する間にはクラクションを鳴らさなかったのであり,これを時間に直せば,被告人は,一つ手前の交差点通過後1.8秒ないし2.5秒はクラクションの 約172.64メートルないし約182.37メートルを進行する間にはクラクションを鳴らさなかったのであり,これを時間に直せば,被告人は,一つ手前の交差点通過後1.8秒ないし2.5秒はクラクションのスイッチを押しておきながら,本件交差点に至るまでの約8.2秒ないし約8.9秒の間にはクラクションを鳴らさなかったことになる。すなわち,被告人は,一つ手前の交差点を通過した後まもなくクラクションのスイッチから手を離し,その後本件交差点に至るまでクラクションを鳴らさなかったと認められる。 そして,このような行動からすると,検察官が主張するように,被告人が本件交差点を通行する車両への警告の趣旨でクラクションを鳴らしたと考えるには無理があり,合理的な疑いが残るといわざるを得ない。 上記の走行状況の検討以上の事実関係を前提に,被告人が赤信号を殊更に無視したと認められるか を検討する。 (1)本件交差点に至るまでの運転態度被告人は,二つ手前の交差点の手前において,車線変更を繰り返しながら他の車両を追い抜き,信号の変わり目で同交差点を通過した上,一つ手前の交差点において,赤信号を無視してクラクションを鳴らし続けながら,指定最高速度を時速20キロメートル以上上回る速度で同交差点を通過した。その客観的な運転状況は,交通ルールに著しく違反した危険で無謀なものである。 もっとも,上記のとおり,被告人車両が二つ手前の交差点を通過するときは信号の変わり目であり,信号がまだ青色であるか,青色から黄色に変わるときであった可能性があるのであって,この時点において被告人が信号の規制自体を無視していたとはいえない。また,一つ手前の交差点を赤信号で通過した背景には,その手前で子供の行動に気を取られて赤信号に気付くのが遅れたという可能性が否定できない。その場合には,被 信号の規制自体を無視していたとはいえない。また,一つ手前の交差点を赤信号で通過した背景には,その手前で子供の行動に気を取られて赤信号に気付くのが遅れたという可能性が否定できない。その場合には,被告人の主観としては,赤信号で停止できずにやむを得ずに交差点に進入したことになる。 そうすると,二つ手前及び一つ手前の交差点における運転態度は危険を伴うものであったものの,これをもって,本件当時被告人が信号の規制自体を無視しようとしていたという心理状態であったと認めることはできない。 (2)本件交差点における運転態度本件交差点に至るまでの道路は,前方の見通しは良好であるが,左側に防音壁が,右側には高速道路の高架等が停止線付近まで続いているため,左右の見通しはよくない(甲38,当裁判所の検証調書等)。しかし,被告人は,本件交差点に進入する際,クラクションを鳴らさず,減速もしなかった(甲19,20)。また,衝突直前には目の前をタクシーが横切ったのに,その存在にも気付いておらず,本件交差点に進入するに当たり,同交差点内の状況を確認していないことが認められる。なお,本件交差点は二つ手前及び一 つ手前の交差点よりも交差道路がやや広く,被告人は本件交差点を日ごろ通行していた。 もし,被告人が,赤信号の表示を見ていながらそれを殊更に無視し,または,信号の規制自体を意に介することなく本件交差点を通過するつもりであったならば,交差道路を走行してくる車両と衝突する危険を避けるために,警告のためクラクションを鳴らしたり,進入する手前で速度を落として様子を見たり,交差点内の車両の走行状況を確認したりするなどの危険を回避する行動をとるのが自然であると考えられる。そして,現に,被告人は,一つ手前の交差点においては,それに至る事情はともかくとして,赤信号を無視して同 内の車両の走行状況を確認したりするなどの危険を回避する行動をとるのが自然であると考えられる。そして,現に,被告人は,一つ手前の交差点においては,それに至る事情はともかくとして,赤信号を無視して同交差点を通過するに当たっては,危険を避けるためにクラクションを鳴らし続けていたのである。このような観点からすると,本件交差点における被告人の運転は,本件当時,被告人が,内妻の子を同乗させて帰宅途中であったことも併せ考えると,信号の規制を無視しようとする者の行動としてはあまりに無防備で危険な態様である。 すなわち,本件交差点におけるこのような運転態度は,被告人が赤信号を殊更に無視していたとすると不自然な点がある一方で,青信号だと思い込んでいたという被告人の供述とは矛盾しないと理解することができる。 (3)小括そうすると,本件当時の被告人車両の走行状況や運転態度を総合考慮しても,それらからは,被告人が,信号の規制を無視し,赤信号であるか否か意に介することなく本件交差点に進入したという事実を推認するには不十分である。本件交差点に進入する際には青信号と思い込んでいたという被告人の弁解を排斥することはできない。被告人が信号規制を無視していたと認定するには,合理的な疑いが残るといわざるを得ない。 検察官の主張について検察官は,被告人が赤信号を誤って看過したという事態は考えられないと主 張するが,上記の認定を左右するものはない。検察官の具体的な主張内容とそれに対する当裁判所の判断は,以下のとおりである。 (1)信号の連動性の認識について検察官は,被告人には,一つ手前の交差点が赤信号であれば本件交差点も赤信号となる連動性の認識を有していた上,一つ手前の交差点を赤信号で通過したのであるから,本件交差点も赤信号となるであろうことを容易に認識し得る状 には,一つ手前の交差点が赤信号であれば本件交差点も赤信号となる連動性の認識を有していた上,一つ手前の交差点を赤信号で通過したのであるから,本件交差点も赤信号となるであろうことを容易に認識し得る状況にあったのであり,そのような状況にありながら赤信号を見間違って看過することなどおよそ考えられないと主張する。 しかし,信号の連動性として通常理解されているのは,ある交差点を青信号で通過したときに次の信号も青になるという関係であり,赤信号を無視して通過すれば次の信号も赤であるという関係は,一見その裏返しのようではあるが,日常の運転において必ず実感する現象ではなく,この意味での連動性について被告人が当然認識していたと言い切ることは難しい。また,このような意味での信号の連動性について,被告人が仮に知識を有していたとしても,具体的な運転の場面において,とっさにその連動性について想起し,一つ手前の交差点が赤信号であったから本件交差点も赤信号であると推論し,認識するということが,常に可能であるとは限らないのであり,過失によって赤信号を看過した可能性を否定することができない。 (2)客観的な道路状況について検察官は,一つ手前の交差点から本件交差点に至る道路は,見通しが良好であり,本件交差点手前には本件交差点の存在を予告する表示や標識も設置され,本件交差点の赤信号も容易に認識し得る状況であって,よほど特別な事情がない限り,赤信号を看過することは通常あり得ず,本件では青信号と見間違えるような事情は存在しないと主張する。 検察官が指摘するとおり,一つ手前の交差点から本件交差点までの見通しは良好であり,案内標識や道路上の表示から本件交差点の存在は明らかであ る。また,本件交差点から少なくとも約100メートル手前付近から,道路左側の透明板に本件交差点の赤信号 件交差点までの見通しは良好であり,案内標識や道路上の表示から本件交差点の存在は明らかであ る。また,本件交差点から少なくとも約100メートル手前付近から,道路左側の透明板に本件交差点の赤信号2つ(なお,同交差点の被告人進行方向の信号機は,交差点入口付近と出口付近の2箇所に設置されている。)が反射して4つに見えること,一見して青信号と見間違えるおそれのあるような物は見当たらないことも認められる(当裁判所の検証調書)。 しかし,注意力が散漫な状態で運転しているような場合には,信号表示が目立つ状態にあったとしても,これを見過ごすことが全く起こり得ないというわけではない。信号表示は本来,運転者にとって見やすく整備されるべきであるところ,そのように整備された場所においてもなお信号看過を含む過失による交通事故が発生しているのが実情である。 (3)事故直前の運転能力や運転態度について検察官は,被告人が,酒気を帯びた状態で運転し,助手席にはチャイルドシートを装着せずに幼児を乗車させながら,高速度で車を進行させ,二つ手前の交差点の手前において,左右に大きく車線変更しながら複数の車両を次々と追い越すという細心の注意が必要な際どい運転を,大型の乗用車で事故を起こすことなく行ったのであり,本件当時運転能力を十分有していたことや,被告人が,信号の連動性について認識しており,本件交差点が赤信号であろうことを容易に認識し得る状況にあったこと,本件交差点は見通しが極めて良いことからすると,被告人が赤信号を看過するはずがないと主張する。 しかし,運転能力の高さと信号表示に対する注意力の高さは必ずしも比例関係にあるとは言い切れないし,運転態度についても,道路の状態,周囲を走行する車の有無,車内の状況等に応じて,または,時間の経過により,変化することも十分考えられ に対する注意力の高さは必ずしも比例関係にあるとは言い切れないし,運転態度についても,道路の状態,周囲を走行する車の有無,車内の状況等に応じて,または,時間の経過により,変化することも十分考えられる。二つ手前の交差点付近において,被告人が相当程度の運転能力を示したことは,被告人が本件交差点において赤信号を看過した可能性を排除するものではない。二つ手前の交差点付近で複数の車両を追い越した際には,被告人が一定の緊張した精神状態にあったことが窺わ れるが,本件交差点進入時にも同様の精神状態にあったという立証はない。 むしろ,被告人が供述するような,一つ手前の交差点を何とか無事に通過したという緊張感の緩みがあったとすれば,それは過失に結び付くものとも考えられる。 また,検察官は,当時被告人は,酒気帯び運転に及んだ上,高速度で先行車両を追い抜く危険な運転を繰り返し,一つ手前の交差点を赤信号で通過するという,交通法規を顧みない傍若無人な運転態度を示していたのであり,このような被告人が,唐突に本件交差点の赤信号を守ろうとする意識を生じ,赤信号を守ろうとするつもりであったのに誤って赤信号を看過したなどということも,極めて不自然であると主張する。 しかし,上記4(1)のとおり,本件交差点に至るまでの運転状況については,客観的には非常に危険で無謀なものであったが,被告人の主観的事情としては,一つ手前の交差点における信号無視は,信号による交通規制を守ろうという意識はあったが,子供の行動に気を取られ赤信号に気付くのが遅れたためのものであった可能性が排除できないのであり,検察官の主張はその前提を異にするものである。 (4)本件交差点への進入に対する心理的抵抗について検察官は,本件交差点が,交差道路の幅が約十数メートルしかなく,時速70キロメートルで進入し あり,検察官の主張はその前提を異にするものである。 (4)本件交差点への進入に対する心理的抵抗について検察官は,本件交差点が,交差道路の幅が約十数メートルしかなく,時速70キロメートルで進入した場合でも1秒未満で通過しうる程度の比較的小さな交差点であること,本件当時は深夜であり,交通量も比較的少ない時間帯であること,被告人が現場交差点に到達した時点では,本件交差点は対面信号機が赤を表示して一定時間が経過しており,本件交差点の左右道路で青信号を待って発進した車両は既に通過しているであろうことも容易に予測できたこと,被告人が当時酒に酔っており,気が大きくなっていたであろうことを併せ考えれば,当時の被告人にとって,信号規制を無視して本件交差点に赤信号で進入することに対し,心理的に抵抗となる事情が乏しいことは明 らかであると主張する。 しかし,検察官が指摘する事情は,いずれも,被告人が信号の規制を無視したとしても不自然ではないことを示すにとどまり,被告人が過失で赤信号を看過した可能性を排除する性質をもつものではない。また,被告人は,本件交差点よりも交差道路の幅の狭い一つ手前の交差点を通過するときには,クラクションを鳴らして危険を回避する措置を取っていたのであり,このような被告人の行動からすると,被告人が,赤信号を認識しつつ,又は赤信号であったとしても意に介することなく,かつ,クラクションを鳴らしたり減速して左右を確認したりするなどの安全確保の方策を一切取ることなく本件交差点に進入するということに,心理的な抵抗を感じなかったと考えるには違和感を覚えざるを得ない。 ところで,被告人の元同僚である証人Qの公判供述等によれば,被告人が,過去に高速度での走行,急な割り込み,赤信号無視などの危険な運転や飲酒運転をしたことがあり,また,赤信号を無 を覚えざるを得ない。 ところで,被告人の元同僚である証人Qの公判供述等によれば,被告人が,過去に高速度での走行,急な割り込み,赤信号無視などの危険な運転や飲酒運転をしたことがあり,また,赤信号を無視して交差点を通過する際,クラクションを鳴らし続けながら走行したことがあると認められ,検察官は,これを前提として,被告人が日ごろからそのような運転を繰り返していたと主張した上,被告人が本件において信号表示などを意に介さない危険な運転をしたとしても,何ら不思議ではないと主張する。 しかし,関係証拠から認められる事実は,過去の特定の時点における被告人の運転状況であり,別の時点においては常識的な運転態度をとっていたこともあったと窺えることも考慮すると(証人Rの公判供述等),本件において,被告人が危険で無謀な運転を常習的に繰り返していたと認めるには飛躍がある。 被告人の供述(1)供述内容被告人の供述は,上記3の関係箇所で検討したとおり,一つ手前の交差点 と本件交差点における運転状況については,客観的な事実関係に即してその理由を一応合理的に説明しており,その信用性を否定することはできない。 もっとも,被告人は,青信号だと思い込んだ具体的理由については,工事の看板を見間違えたのかもしれないなどと述べるにとどまり,具体的な根拠を示し得ていない。しかし,人が思い違いや見落としをする原因は様々であり,外部的に明らかな事情によって説明が付く場合もあれば,具体的なきっかけや原因が思い当たらないのになぜか思い違いをしてしまうということも全くないわけではない。赤信号を看過した理由について合理的な説明ができないからといって,その供述が虚偽であると決め付けることは相当でない。 (2)供述経過その供述経過についてみると,被告人は,事故直後に駆け付けた者から事 号を看過した理由について合理的な説明ができないからといって,その供述が虚偽であると決め付けることは相当でない。 (2)供述経過その供述経過についてみると,被告人は,事故直後に駆け付けた者から事情を聞かれて「普通だった,普通だった」と述べ,救急車で病院に搬送される途中,「交差点に入ったら急に車が飛び出してきたんだ。」と話し,飲酒検知の際にも,「赤信号を無視したのはタクシーの方だ。」と言うなど,事故直後から自分の対面信号機が青信号だったと述べていた。そして,目撃者の供述等から本件交差点が赤信号であったことを動かし難くなった後は,青信号だと見間違えたと思う旨述べ(乙9),当公判廷においても同様の供述をしている。つまり,被告人は,青信号だと思って本件交差点に進入したことを事故直後の言動を含めて一貫して主張している。このような被告人の供述状況は,被告人が本件交差点に進入する際には青信号だと思い込んでいたことと整合する事情として評価することができる。 もっとも,それ以外の点についてみると,被告人の供述は,一つ手前の交差点の信号の色や,一つ手前の交差点と本件交差点の信号が連動していることの認識の有無等について変遷しており,このような変遷は,供述の信用性を考える上で無視することはできないが,本件交差点について青信号だと勘違いしていたという被告人の供述の信用性に根本的な疑問を提起するには至 らない。 (3)小括したがって,青信号だと思い込んで本件交差点に進入した旨の被告人の供述について,その信用性を否定することはできない。 結論 以上で検討したとおり,本件の全証拠を検討してみても,被告人が,本件交差点に進入する時点においては青信号だと思い込んでいた可能性が払拭できないといわざるを得ない。 ところで,本件事故の背景としては,酒気を帯びた状態 おり,本件の全証拠を検討してみても,被告人が,本件交差点に進入する時点においては青信号だと思い込んでいた可能性が払拭できないといわざるを得ない。 ところで,本件事故の背景としては,酒気を帯びた状態で運転し,4歳の幼児を同乗させるのにチャイルドシートを用いず,同児が運転席付近で踊ったり,ハンドルに手を出したりしている中で指定最高速度を上回る速度で走行を続けたという被告人自身の危険極まりない運転態度が原因となっているといえる。 これらの一連の行為に対し,厳しい非難が妥当することは当然であろう。 しかし,刑法208条の2所定の危険運転致死傷罪は,その規定の形式から明らかなように,単に重大な死傷事故を惹起する危険が高い運転行為により死傷の結果を生じさせた場合の全てを処罰の対象としているわけではなく,その中でも高度に危険な故意による運転行為として4つの類型を抽出した上,これに該当する運転行為により人を死傷させた場合に限って特に重く処罰するものである。このような趣旨からすると,赤信号を「殊更に無視」するとは,①赤信号であることについて確定的認識があって交差点手前の停止線で停止することが十分可能であるのにこれを無視して交差点に進入する場合や,②信号の規制自体を無視し,およそ赤信号であるか否かについては一切意に介することなく,赤信号の規制に違反して交差点に進入する場合をいうと理解される。 そうすると,何らかの理由で,被告人が青信号と思い込んでしまったという疑いが残る本件においては,被告人の主観的態度としては,青信号に従って交差点に進入するつもりであり,すなわち信号の規制に従っているという心理状 態であって,この状態をもって被告人が「信号の規制自体を無視しようとしていた」ということはできない。 結局,本件では,主位的訴因を認定することはできないが,被告 号の規制に従っているという心理状 態であって,この状態をもって被告人が「信号の規制自体を無視しようとしていた」ということはできない。 結局,本件では,主位的訴因を認定することはできないが,被告人に予備的訴因である業務上過失致死傷罪が成立することは証拠上明らかであり,弁護人もこれを争わないので,判示第2のとおり認定する。 【法令の適用】罰条第1の事実平成16年法律第90号附則23号により同法による改正前の道路交通法117条の4第2号,65条1項,平成16年政令第390号による改正前の道路交通法施行令44条の3第2の事実A,B,C,Dに対する各業務上過失致死の点いずれも行為時においては平成18年法律第36号による改正前の刑法211条1項前段(致死の場合)に,裁判時においてはその改正後の刑法211条1項前段(致死の場合)に該当するが,これは犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから,刑法6条,10条により軽い行為時法の刑による。 E,Fに対する各業務上過失致傷の点いずれも行為時においては平成18年法律第36号による改正前の刑法211条1項前段(致傷の場合)に,裁判時においてはその改正後の刑法211条1項前段(致傷の場合)に該当するが,これは犯罪後の法令によって刑の変更があったときに当たるから,刑法6条,10条により軽い行為時法の刑による。 科刑上一罪の処理第2の罪刑法54条1項前段,10条(各業務上過失致死と各業務上過失致傷は1個の行為が6個の罪名に触れる場合であるから,1罪として最も重い業務上過失致死罪の刑(各同罪の犯情に軽重はない)で処断)刑種の選択各罪いずれも懲役刑併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(重い第2の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重)未決勾留日数 の刑(各同罪の犯情に軽重はない)で処断)刑種の選択各罪いずれも懲役刑併合罪の処理刑法45条前段,47条本文,10条(重い第2の罪の刑に同法47条ただし書の制限内で法定の加重)未決勾留日数刑法21条(240日算入)訴訟費用刑訴法181条1項ただし書(被告人に負担させない。)【量刑の理由】本件は,被告人が,(1)酒気を帯びた状態で車を運転した道交法違反(判示第1),及び,(2)赤信号を看過して交差点に進入した過失により,交差道路を走行中であったタクシーの側面に自車前部を衝突させ,乗客3名とタクシー運転手を死に至らしめ,乗客1名と自車の同乗者である4歳の子供に傷害を負わせた業務上過失致死傷(判示第2)の事案である。 本件事故により,タクシーの乗客3名と運転手は生命を奪われ,乗客1名と被告人車両に同乗していた子供が負傷した。青信号に従って交差点を通過しようとしていたタクシーの乗客と運転手には,事故に遭わなければならない落ち度などは全くない。突然事故に巻き込まれた被害者らが受けたであろう驚愕や苦痛,その将来を絶たれた被害者ら4名の無念さ,幸い負傷にとどまったが同僚らを失うことになった被害者が受けた精神的衝撃,いずれをとっても,察するに余りあるものである。 家族を奪われた遺族らの悲しみは深く,怒りは激しい。そして,被告人に対する厳罰を強く求めている。被告人は,被害者やその遺族らを慰謝することができない。 また,被告人車両に同乗していた被害者は当時わずか4歳で,加療約31日間を要する眼底出血等の重傷を負ったのであり,その結果も重大である。 被告人は,自分の店で酒を飲み,そのまま自分の車に乗って帰宅する途中,本件各犯行に及んだのであり,その経緯に同情すべき余地は全くない。 信号のある交差点に進入する前に信号の表示を確認することは ある。 被告人は,自分の店で酒を飲み,そのまま自分の車に乗って帰宅する途中,本件各犯行に及んだのであり,その経緯に同情すべき余地は全くない。 信号のある交差点に進入する前に信号の表示を確認することは,自動車を運転する際に果たすべき基本的な注意義務であって,これを怠った被告人の過失は非常に重い。また,この過失の背景には,同乗していた幼児をチャイルドシートに座らせず,同児がハンドルに手を出すなど非常に危険な状態であったのにそのまま指定最高速度を時速20キロメートル以上も上回る高速度で走行を続けたことが認められるのであり,自動車運転者としての自覚が足りない。被告人が,平成12年から平成16年にかけて,速度超過3件を含む交通違反歴6件を有し,その中には速度超過で罰金に処せられた前科もあることも考えると,交通ルールを守ろうという意識が薄いといわざるを得ない。 したがって,被告人の刑事責任は重大である。 そうすると,被告人車両には対人賠償無制限の任意保険が掛けられており,被害車両に乗車していた被害者らについて今後相当額の補償が行われる見込みがあることや,被告人が本件事故を起こしたことについて反省の情を示し,被害者らにはいまだ受け入れられていないが謝罪の手紙を書いていること,父親と内妻が更生を援助する意思を示していることなど,被告人のために酌むことができる事情も認められるが,このような事情を最大限に考慮しても,その刑事責任の重さを考慮すると,法律の定める最高刑から刑期を減じることは相当でない。 そこで,主文のとおりの刑を定める。 (検察官森幹,弁護人宮崎真(私選)各出席)(求刑懲役20年)平成19年1月23日名古屋地方裁判所刑事第2部 裁判長裁判官伊藤納裁判官大村泰平裁判官宮部良奈 )各出席)(求刑懲役20年)平成19年1月23日名古屋地方裁判所刑事第2部 裁判長裁判官伊藤納裁判官大村泰平裁判官宮部良奈

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る