令和5(わ)962 過失運転致死傷被告事件

裁判年月日・裁判所
令和5年4月19日 京都地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-92144.txt

判決文本文3,565 文字)

令和5年4月19日宣告令和4年第962号過失運転致死傷被告事件 主文 被告人を禁錮2年8月に処する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、準中型貨物自動車を運転し、令和4年9月21日午後1時27分頃から同日午後1時31分頃までの間、京都府相楽郡a町大字b小字cd東方約100m先道路から同町大字a小字ef番地g付近aトンネル内道路までを進行中、眠気を催し、前方注視が困難な状態になったのであるから、直ちに運転を中止すべき自動車運転上の注意義務があるのに、これを怠り、直ちに運転を中止せず、漫然上記状態のまま運転を継続した過失により、同日午後1時32分頃、同町大字a小字hi番地j西方約50m付近道路を東から西に向かい時速約50㎞ないし55㎞で進行中に仮睡状態に陥り、その頃、同所先の左に湾曲する道路において、自車を右側車線に進出させ、折から対向直進してきたA(当時65歳)運転の普通貨物自動車(軽四)前部に自車前部を衝突させてA運転車両を押し戻してガードレールに衝突させるなどし、よって同人に多発性内臓破裂の傷害を、同人運転車両の同乗者B(当時65歳)に高次脳機能障害等の後遺症が見込まれる約4か月以上の入院加療を要するびまん性軸索損傷、急性硬膜下血腫等の傷害をそれぞれ負わせ、同日午後4時12分頃、京都市k区内の病院において、Aを上記多発性内臓破裂により死亡させた。 (事実認定の補足説明)弁護人は、速度の点を除いて判示事実と同旨の公訴事実のうち、被告人は眠気を催したとの認識がなく、運転中止義務に直面していないから、中止義務違反は認められず、公訴事実記載の過失はない旨主張し、被告人もこれに沿う供述をする。しかし、関係各証拠、取り分け被告人車両及びその後続車両のドライブレコーダーの映像〔甲14〕によれば から、中止義務違反は認められず、公訴事実記載の過失はない旨主張し、被告人もこれに沿う供述をする。しかし、関係各証拠、取り分け被告人車両及びその後続車両のドライブレコーダーの映像〔甲14〕によれば、本件当日午後1時27分頃から同日午後1時31分頃までの間、 京都府相楽郡a町大字b小字cd東方約100m先道路から同町大字a小字ef番地g付近aトンネル内道路までの間のおおむね片側1車線の道路を進行中の被告人車両がしばしば中央線に寄り、特に、同日午後1時30分頃には対向車両が進行してきているのに中央線に寄り、また、上記aトンネル内では中央線に寄るだけでなくトンネル側壁のある道路左側にも寄っていることが認められ、後続車両の運転者が述べるとおり〔甲1〕、被告人車両はふらつきながら走行していたものと認められる。 被告人車両がこのような走行をしていた理由としては、被告人が眠気を催し、前方注視等が困難な状態になりながら運転していたことが考えられ、かつ、他にそのような走行をしていた理由は現実的には考えられない。そして、被告人車両が一定時間にわたって上記のような走行をしていたことにも照らし、被告人が眠気を催して前方注視が困難な状態にあることを認識していなかったとは考えられない。眠気を催して上記の状態になった場合に運転中止義務が発生することは明らかであり、かつ、上記区間ないしその後本件事故現場に至るまでの間、道路が拡幅されるなどして被告人車両を停車させ得る場所は数か所存在し、運転を中止することは可能であったと認められる。以上からすれば、被告人は、判示のとおり、眠気を催し、前方注視が困難な状態になっており、被告人自身もこれを認識していたこと、直ちに運転を中止すべき自動車運転上の注意義務が生じ、これに直面しながらも、直ちに運転を中止せず、上記状態のまま運転 気を催し、前方注視が困難な状態になっており、被告人自身もこれを認識していたこと、直ちに運転を中止すべき自動車運転上の注意義務が生じ、これに直面しながらも、直ちに運転を中止せず、上記状態のまま運転を継続して、本件事故を引き起こしたことが認められ、被告人には判示の過失が認められる。 被告人は、眠気を感じた記憶はないと供述しつつ、上記区間を走行中からその後本件衝突寸前までの記憶はないとも供述しているのであって、そもそも当時被告人が眠気を感じていたこと等を積極的に否定するものではなく、上記認定を左右するものではない。 なお、本件事故当時の被告人車両の速度について、公訴事実は時速約50㎞ないし60㎞とするが、同車両の上記ドライブレコーダーの映像から判示のとおり認定した。 (法令の適用) 1 被告人の判示所為は、被害者ごとに、いずれも自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条本文に該当するところ、 2 これは1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから、刑法54条1項前段、10条により、1罪として犯情の重い被害者Aに対する過失運転致死罪の刑で処断し、 3 所定刑中禁錮刑を選択し、 4 その所定刑期の範囲内で被告人を禁錮2年8月に処することとする。 (量刑の理由)本件は、被告人が準中型貨物自動車を居眠り運転して対向車両と正面衝突し、その運転者を死亡させ、その妻である同乗者に重篤な傷害を負わせた事案である。被害者のうち1名の尊い生命が失われたのみならず、他の1名も判示のとおり高次脳機能障害の後遺症が見込まれる取り返しのつかない傷害を負ったのであって、本件結果は極めて重大である。また、本件過失行為は、準中型貨物自動車を少なくとも時速約50㎞で居眠り運転するという、人の死傷の結果を生じさせる危険性が高いものであって、 ない傷害を負ったのであって、本件結果は極めて重大である。また、本件過失行為は、準中型貨物自動車を少なくとも時速約50㎞で居眠り運転するという、人の死傷の結果を生じさせる危険性が高いものであって、このことは、被害者車両が被告人車両に押し戻されるとともに前部バンパー等が原形をとどめないほどに変形し、その運転者の遺体の損傷状況が激しいことからもうかがえるところである。なお、被害者側に落ち度は見当たらない。 被告人は、職業運転手として準中型貨物自動車を運転していたのであって、本件道路が曲線の多い片側1車線の中央分離帯のない道路であることにも照らし、居眠り運転をした場合に重大な結果を招きかねないことを十分に認識し得たはずであるのに、前記のとおりふらつき走行を続けるほど眠気を催しながら運転を継続して居眠り運転をするに至ったのであって、過失の程度は大きい。なお、被告人は、本件事故現場の先にあるコンビニエンスストア駐車場で休憩するつもりでいたともいうが、上記のような危険な運転の継続を正当化し得る事情とはいえない。 そして、被害者ら夫妻は、仕事を引退後、趣味等を楽しむ生活を送っていたものとうかがわれるところ、本件事故によって、夫について、突然その人生を断たれたことは誠に痛ましいというほかなく、妻についても、夫を失った上、自らも重傷を 負って今後も後遺症等が残ることが見込まれ、その受けた身体的精神的苦痛は甚大である。被害者らの子らの処罰感情が峻厳であるのも当然である。 他方、被告人車両に付されたいわゆる対人無制限の自動車保険によって、相当額の賠償がされる見込みである。 以上を総合して考慮すると、本件結果の重大性、過失行為の危険性や過失の程度からすれば、被告人の刑事責任は重く、被告人に前科はもとより交通違反歴も見当たらないことを考慮しても、本件に 見込みである。 以上を総合して考慮すると、本件結果の重大性、過失行為の危険性や過失の程度からすれば、被告人の刑事責任は重く、被告人に前科はもとより交通違反歴も見当たらないことを考慮しても、本件においては被告人に対して実刑をもって臨むほかない。 なお、被告人は、単に本件事故に至るまでの状況について記憶がないと述べるだけでなく、前記のとおりドライブレコーダーの映像等から当時被告人が眠気を催していたことは明らかであるのにこれを前提としても本件過失責任を認めないかのような供述ないし主張もしており、被告人が述べる反省の言葉や被害者側宛ての手紙に記した謝罪等が真摯な内省等に基づくものか疑問があるが、その点を考慮するまでもなく被告人は上記のとおり実刑を免れない。 そこで、被告人の妻や勤務先の上司が被告人の監督や雇用の継続等を申し出ていることや、被告人が妻とともに3人の子を養育していること等も踏まえつつ、被告人を主文の刑に処することとした。 よって、主文のとおり判決する。 (求刑-禁錮4年)令和5年4月19日京都地方裁判所第1刑事部 裁判官増田啓祐

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る