主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は,原告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告(1) 被告らは,被告ら補助参加人株式会社甲銀行に対し,10億4952万4600円及びこれに対する平成12年11月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 訴訟費用は,被告らの負担とする。 (3) 前記(1)につき,仮執行宣言 2 被告ら及び被告ら補助参加人主文と同旨第2 事案の概要 1 事案の要旨原告は,被告ら補助参加人株式会社甲銀行(以下「補助参加人」という。)の株式を有する株主であるところ,補助参加人が,A産業との間で,補助参加人のA産業に対する貸金債権の回収として,平成8年8月以降,A産業が所有し宅地造成した土地を1坪当たり平均約37万円で売却し,補助参加人がA産業から1坪当たり25万5000円の返済を受けるとの合意をし,その合意にしたがい,A産業が上記土地のうち141筆3万0860平方メートルを合計35億3606万6300円で売却したにもかかわらず,補助参加人がA産業から23億8046万0700円の返済を受けたにとどまったのは,A産業ないしその代表取締役であったBに対し不当に利益を与え,補助参加人に対し損害を与えるものであるから,このような処理を常務会において承認し,補助参加人に実行させた被告らは,補助参加人の取締役としての忠実義務及び善管注意義務(以下「忠実義務等」という。)に違反するものであり,これにより補助参加人に対し,A産業の前記売却価格35億3606万6300円から販売経費として仲介手数料に相当する1億0608万1000円を控除した34億2998万5300円と補助参加人の前記回収額23億8046万0700円との差額10億4952万46 606万6300円から販売経費として仲介手数料に相当する1億0608万1000円を控除した34億2998万5300円と補助参加人の前記回収額23億8046万0700円との差額10億4952万4600円の損害を生じさせたものであるから,被告らは,補助参加人に対し,商法266条1項5号に基づき,損害賠償責任を負うべきところ,補助参加人が,被告らに対し,この損害賠償請求をしないとして,商法(平成13年法律第128号改正前のもの)267条1項,2項に基づき,補助参加人に代位して,被告らに対し,補助参加人に前記損害賠償債務10億4952万4600円及びこれに対する平成12年11月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 これに対し,被告ら及び補助参加人は,忠実義務等違反の成立を否認して,争っている。 2 前提事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,証拠(甲1《枝番号付き。以下枝番号のある書証の枝番号は同様に省略する。》,5,18,21,22,乙1,4,5,7,10ないし12,19,21,30,59ないし62,証人C,同D,被告乙本人)及び弁論の全趣旨により,容易に認めることができる。 (1) 当事者等原告は,平成10年2月25日,補助参加人の株式1000株を取得した株主である。 被告丙は,昭和62年6月から平成11年6月29日まで,補助参加人の取締役の地位にあり,その間の平成7年5月から平成10年6月26日まで,代表取締役頭取の地位にあった。 被告乙は,平成8年6月,補助参加人の審査を担当する代表取締役兼専務取締役に就任し,平成10年6月,代表取締役頭取に就任した。 被告丁は,平成6年6月,補助参加人の専務取締役に就任した。 被告戊は,平成5年6月,補助参加人の常務取締役に就任し,平成11年2月,専務取締役に に就任し,平成10年6月,代表取締役頭取に就任した。 被告丁は,平成6年6月,補助参加人の専務取締役に就任した。 被告戊は,平成5年6月,補助参加人の常務取締役に就任し,平成11年2月,専務取締役に就任した。 A産業株式は,不動産の売買等を業とする株式会社であり,Eは,平成元年12月22日から平成8年8月31日までその代表取締役の地位にあったものであり,Bは,同年4月22日,同社の代表取締役に就任したものである。 (2) 補助参加人とA産業との融資取引に関する事実経過補助参加人は,昭和60年10月ころから,A産業に対する融資取引を開始した。 A産業は,昭和62年ころから,同社所有にかかる和歌山県那賀郡岩出町大字a所在(平成6年11月8日に所在の表示が同町大字bと変更され,同月15日,その旨の登記がされた。)の土地(当初104筆,面積合計30万7276平方メートル,以下,一括して「本件土地」という。)の開発造成工事の準備を開始し,平成2年11月27日,県知事の開発行為の許可を受け,同年12月1日から,本件土地の宅地造成(以下「本件造成工事」という。)を行った。 補助参加人は,A産業に対し,昭和63年3月24日,本件造成工事に関する開発用地購入資金として10億8000万円を貸し付けて以降,同社に対する融資を継続し,平成8年3月31日時点における融資金額(貸付け及び支払保証にかかるものを含む。)の合計は,約233億2200万円となっていた。また,A産業は,補助参加人のために,遅くとも平成7年1月20日までに,本件土地の全部につき,極度額234億円の根抵当権を設定した。 (3) A産業による本件土地の売却と補助参加人による担保解除の概要A産業は,別紙1のとおり,Fを介し又はFを売主として,平成7年7月3日から平成11年9月10日までの間,本件土地の 権を設定した。 (3) A産業による本件土地の売却と補助参加人による担保解除の概要A産業は,別紙1のとおり,Fを介し又はFを売主として,平成7年7月3日から平成11年9月10日までの間,本件土地のうち139区画(142筆,総面積は3万0952.59平方メートル)を販売した(ただし,売却額合計については争いがある。)。 A産業は,別紙1のとおり,平成7年7月27日から平成11年10月15日までの間に,補助参加人に対し,貸金債務の弁済として,前記売買代金から売却された土地1坪当たり約25万円を支払い(支払額合計については争いがある。),補助参加人は,A産業に対し,本件土地のうち売買がされ,かつ,前記支払を受けた土地について,根抵当権設定契約を解除するとの意思表示をした。 (4) 原告の補助参加人に対する被告らの責任を追及する訴え提起の請求原告は,補助参加人に対し,平成12年10月30日到達の内容証明郵便により,被告らが,A産業による本件土地の売却代金1坪当たり37万円から25万5000円のみを同社の補助参加人に対する貸金債務の弁済に充てさせ,その結果,平成8年8月から平成11年までに売却代金35億3606万6300円のうち23億8046万0700円しか債権回収をしなかったのは,補助参加人に上記各金員の差額から不動産仲介手数料に相当する3パーセント(1億0608万1000円)を控除した合計10億4952万4600円の不当な損害を与えたものであるから,補助参加人において,被告らに対し,損害賠償請求をするよう求める旨を請求した。 補助参加人は,前記内容証明郵便到達後30日以内である平成12年11月29日までに,被告らに対し,前記損害賠償を請求する訴訟を提起しなかった。 3 争点及びこれに関する当事者の主張(1) 補助参加人が本件土地の売却代金から 明郵便到達後30日以内である平成12年11月29日までに,被告らに対し,前記損害賠償を請求する訴訟を提起しなかった。 3 争点及びこれに関する当事者の主張(1) 補助参加人が本件土地の売却代金からA産業に対する貸金債権を回収するに当たり,被告らに忠実義務等違反が認められるか。 (原告の主張)ア被告らは,補助参加人の取締役として,補助参加人のA産業に対する貸金債権の回収を最大限に行うべき忠実義務等があった。そして,前提事実(2)のとおり,補助参加人は,A産業に対し,合計約233億2200万円の貸金債権を有していたものであり,補助参加人のために極度額234億円の根抵当権が設定されている本件土地の売却代金全額をもってその弁済に充てさせることができたし,A産業の販売経費を最大限考慮したとしても,その額を通常の不動産売買の仲介手数料に相当する売買価格の3パーセントに留めて,その余の金銭については,A産業から貸金債務の弁済として支払を受けるべきであった。 しかしながら,被告らは,Bと共謀の上,A産業が本件不動産を1坪当たり約37万円で売却するのに対し,補助参加人は1坪当たり25万5000円のみを回収するにとどまり,その余の約11万5000円をA産業を介してBに利得させるという背任的な措置を取った。 さらに,被告らは,補助参加人をして,A産業が平成8年10月31日に本件土地のうち1筆を1坪当たり50万円で売却したのに対し,1坪当たり25万5008円の弁済を受けたのみで,同年12月13日,同土地に設定されていた根抵当権を解除させるなど,A産業が1坪当たり37万円を超える額で本件土地の一部を売却した場合でも,1坪当たり概ね25万円を超えて貸金債権の回収をさせなかった。そして,A産業ないしBにおいて本件土地を売却する期限としていた平成8年12月及び平 7万円を超える額で本件土地の一部を売却した場合でも,1坪当たり概ね25万円を超えて貸金債権の回収をさせなかった。そして,A産業ないしBにおいて本件土地を売却する期限としていた平成8年12月及び平成9年9月を経過した後も,A産業ないしBに対し,何らの違約罰を課することなく,引き続き本件土地の売却価格と補助参加人の回収額との間の差益を取得させ続けた。 このような,被告らが取った措置は,Fの代表取締役であったBと共謀して,Bの利益のために補助参加人に損害を与えるものにほかならず,忠実義務等違反に該当することは明らかである。 イ被告ら及び補助参加人は,補助参加人がA産業から本件土地の売却代金のうち1坪当たり25万5000円を同社に対する貸金債権の弁済として受けたのは,平成8年9月10日に行われた補助参加人の常務会(以下「本件常務会」という。)において,総合的な経営判断の結果として了承され,実行されたものであり,忠実義務等違反はない旨主張する。 しかしながら,以下の各事実に照らすと,本件常務会における了承は,Bに利得を与えることを隠し,被告らの忠実義務等違反を糊塗するためにされた形式的なものにすぎないから,忠実義務等違反の成立に消長を来すものではないというべきである。 (ア) 本件土地の売却にBが代表取締役をしていたFを急遽参画させた。 (イ) 本件常務会当時において,A産業の代表取締役はAであったし,他の取締役もまだその地位にあったが,被告ら及び本件常務会当時の補助参加人審査第二部長のGは,Bのみと協議の上,本件土地の売却処分及び弁済額を決定した。 (ウ) A産業が本件土地を1坪当たり約37万円で売ることができるにもかかわらず,補助参加人への弁済額を1坪当たり25万5000円として,差額約11万5000円をBないし同人支配にかかるA産業及びF (ウ) A産業が本件土地を1坪当たり約37万円で売ることができるにもかかわらず,補助参加人への弁済額を1坪当たり25万5000円として,差額約11万5000円をBないし同人支配にかかるA産業及びFに利得させることの根拠が何ら示されていない。 (エ) 補助参加人は,平成8年初めころにおいて,H1,H2及びH3に対し売却を依頼するに当たっては,本件土地を一括売却し,その売却代金から債権回収することを検討しており,その際,H1においては1坪当たり20万円の金額を提示していたから,補助参加人としては約100億円の貸金回収が見込めた。それにもかかわらず,前記3社が,いずれも本件土地の売却につき,A産業の関与を排除する旨申し入れていたことから,このような一括売却をすることなく,宅地として問題のないところだけを売却し全体としての債権回収に問題が残るA産業及びFによる個別売却の方針を選択した。 (オ) A産業ないしBは,本件土地を1年で全て売却するというおよそ不可能な売却計画を補助参加人に対し提示したにもかかわらず,被告らは,その実現可能性を顧慮することなく,本件常務会において,A産業ないしB提示の売却及び弁済計画をそのまま承認した。 (被告ら及び補助参加人の主張)被告らは,以下に詳述するように,本件土地の売買代金から補助参加人のA産業に対する貸金債権の回収を図るに当たっては,不良債権の早期処理の必要性等補助参加人の置かれた金融財政環境,地価の長期低落傾向及び不動産市況の低迷並びにこれに起因する本件土地の売却の困難性,本件土地に設定されていた根抵当権の実行の可否及び得失,本件土地の近隣の土地の販売実績並びにA産業の維持管理費を本件土地の販売代金から賄わせることの必要性及び相当性等の必要な基礎事実につき誤りなく認識し,検討の上,本件常務会において,銀 可否及び得失,本件土地の近隣の土地の販売実績並びにA産業の維持管理費を本件土地の販売代金から賄わせることの必要性及び相当性等の必要な基礎事実につき誤りなく認識し,検討の上,本件常務会において,銀行として,唯一最良の債権回収方法と判断し,決定したものであり,何ら忠実義務等違反を構成するものではない。 ア補助参加人の置かれた金融財政環境いわゆるバブル経済の崩壊に伴い,不動産関連融資を進めていた金融機関の財務内容は悪化した。これを受けて,大蔵省(当時)は,平成7年9月27日,「金融機関の不良債権の早期処理について」を示達し,金融機関の不良債権の開示の促進を図るとともに,いわゆる早期是正措置の制度の創設,破綻金融機関にかかる処理手続の整備等を内容とするいわゆる金融三法の次期国会への提案を示した。この示達を受けて,都市銀行協会は平成7年9月期決算より加盟銀行の不良債権開示の実施を取り決め,地方銀行協会も平成8年3月期決算より加盟銀行の不良債権開示の実施を取り決めた。この不良債権の開示は,金融機関にとって株主,預金者その他取引先等に与える影響が極めて大きいことから,不良債権の処理が金融機関にとって喫緊の課題となった。また,同時に,早期是正措置を視野に入れ,自己資本比率を向上するため,融資額の圧縮をも考慮し,不良債権の早期処理の努力をしなければならなくなった。 そして,補助参加人においては,関西国際空港の開設を予想した土地関連融資が多かったことから,いわゆるバブル経済の崩壊により,不良債権が他行と比べて多く,そのことが,平成8年3月期決算において開示された。このような状態において,補助参加人は,平成8年3月期決算において,赤字決算を行い,A産業に対する77億6000万円余を含む合計約730億円の不良債権の償却を行わざるを得ない事態に立ち至った れた。このような状態において,補助参加人は,平成8年3月期決算において,赤字決算を行い,A産業に対する77億6000万円余を含む合計約730億円の不良債権の償却を行わざるを得ない事態に立ち至った。 こうして,補助参加人にとって,不良債権の早期処理,融資額の圧縮は,経営上緊急かつ最大の課題であり,A産業に対する貸金債権の回収もその一環として,早期に処理する必要があった。 イ地価及び不動産市況の状況並びに本件土地の売却の困難性バブル経済の崩壊により,地価は,平成4年のいわゆる総量規制終了後,下落し,平成7年ないし8年当時,この地価の下落がいつまで続くか分からないという見通しであった。そのため,大規模な不動産開発をしても,その売却期間が長引くほど販売価格が低落する状況にあった。また,不動産市況の沈滞も甚だしく,取引数も著しく減少傾向にあった。 A産業が,本件土地の開発工事を完了したのは,このような状況下の平成7年2月のことであった。そのため,本件土地の販売数及び販売価格とも減少が予想された。また,本件土地のような造成土地は,時間が経過するとともに商品価値が低下するものであった。さらに,本件土地が所在する岩出町は,従前は大阪府からの人口の流入が望み得たが,交通の便が悪いため,大阪府下の造成地と比較すると,本件土地の販売価格の維持は,一層の困難が予想された。それゆえ,本件土地の売却及びその売却価格からの債権の回収を早期に行う必要があった。 他方,A産業は,不動産開発業者ではあるものの不動産販売業者ではなかった。そこで,A産業は,補助参加人の協力の下,平成7年7月ころから,大手ゼネコン各社に本件土地を一括で買い受けるよう依頼したが,各社とも自己手持ちの不動産の売却をするのが精一杯の状況であり,手持ちの不動産を増加させることになる本件土地の買受 平成7年7月ころから,大手ゼネコン各社に本件土地を一括で買い受けるよう依頼したが,各社とも自己手持ちの不動産の売却をするのが精一杯の状況であり,手持ちの不動産を増加させることになる本件土地の買受をする余裕はなかったため,具体的な売買交渉とはならなかった。そのため,A産業は,補助参加人を介し,平成8年1月ころから,H1,H2,H3等の地元不動産販売業者に対する一括売却ないしロット売りを試みたところ,1坪当たり20万円ないし22万円で売却できる可能性が窺えたが,本件土地が広大でその買受額が高額となる上,完売までには6年ないし7年以上の長期間を要することが予見されたことから,いずれの地元不動産業者も上記価格で買い取ることとはならなかった。 このように,A産業が,本件土地を一括で売却することは困難な状況であった。 ウ本件土地に設定された根抵当権実行の可否及び得失前記イのとおり,本件土地を一括で売却することは困難な状況であったことから,A産業は,本件土地を個別的な任意売却によって売却する以外にこれを処分し,補助参加人に対する貸金債務を弁済する方法はなかった。 その一方で,補助参加人は,本件土地に設定された根抵当権を実行して,A産業に対する貸金債権を回収することも検討した。しかしながら,以下の理由により,平成8年当時,本件土地に設定された根抵当権の実行即ち競売手続により本件土地を売却し,もって,A産業に対する貸金債権を回収するという方法を採ることはできなかった。 (ア) 本件土地の宅地造成が完了し,県の完工検査を受け,ようやく販売可能となって間もない時点において,本件土地を一括競売に付することは,当事者,関係者及び地元住民の納得を得難いものであり,本件土地の開発を支援してきた補助参加人と県,岩出町との信頼関係を揺るがすことにもなりかねない。 点において,本件土地を一括競売に付することは,当事者,関係者及び地元住民の納得を得難いものであり,本件土地の開発を支援してきた補助参加人と県,岩出町との信頼関係を揺るがすことにもなりかねない。 (イ) 本件土地を競売に付した場合,一般の取引時価と比較して,その売却価格が低額となることは必至である。殊に,本件土地のように広大で多数区画よりなる住宅販売用地の一括ないしブロック別の競売価格は,個々の区画の換価に要する期間を勘案して半額近くになることも予想されたものであり,あまりに低額となることが容易に推測された。したがって,回収額を高めるべき銀行としては,本件土地を競売に付することは最後の手段というほかない。しかも,本件土地を競売に付した場合,競売手続に長期間かかることはもちろんのこと,前記イのとおり停滞した不動産市況にかんがみると,最終的に競売自体有効に成立するかすら疑問であった。 (ウ) 本件土地に対する競売手続を選択した場合,現実問題として後戻りをすることはできず,最低競売価格が決定されれば,銀行の財務会計上,貸出金額と最低競売価格との差額が損失として確定され,これを基礎として,直ちに間接償却することを余儀なくされる。業務純益,含み資産等償却財産は限られており,ほかにも償却を要する不良債権を有する補助参加人としては,短絡的に本件土地を競売に付することにより多額の償却を発生させ,再度赤字決算を行わなければならなくなる事態をも考慮に入れる必要があった。 エ本件土地近隣の不動産の販売実績本件土地の近隣においてH3が,d台の土地(以下「d台」という。)を売り出しており,総販売区画数234区画中,平成6年後半より約2年半の間に60区画を売却したにすぎず,年平均販売区画数は約25区画,その販売価格は概ね1坪38万円程度であった。 また,和歌 う。)を売り出しており,総販売区画数234区画中,平成6年後半より約2年半の間に60区画を売却したにすぎず,年平均販売区画数は約25区画,その販売価格は概ね1坪38万円程度であった。 また,和歌山県開発公社(以下「県開発公社」という。)も,本件土地の近隣において,c台の土地(以下「c台」という。)を売り出しており,総販売区画数723区画中509区画を販売し,昭和54年5月以降の年平均販売区画数は31.2区画,販売価格は39万8000円であった。 その上,H3及び県開発公社は,既に相当の販売実績を持ち,販売主体としても一般に信用されているものであり,しかも,c台d台も,1区画当たりの面積は,本件土地よりも小さいにもかかわらず,平成8年当時の販売残存区画数は,c台が174区画,d台が342区画もあった。このような状況下で,A産業は,本件土地を先行する販売実績のある業者らと競争販売せざるを得ないのであり,かつ,H3及び和歌山県開発公社は,建売住宅の販売を行っており,土地の投資回収額が少なくても建売住宅の販売で補うことができる。 したがって,A産業が,これら2社に伍して,本件土地の販売区画数を増大させることは極めて困難な状況にあった。その一方で,A産業及び補助参加人は,前記ア,イの事情により,本件土地を早期に処分する必要に迫られていた。 オ A産業の維持管理費捻出の必要性及び相当性A産業においては,本件土地の売却代金から販売に必要な経費だけでなく,その経営を維持管理するに必要な経費をも本件土地の売却代金より取得する必要があった。すなわち,A産業は,補助参加人から融資を受けて本件土地の開発事業を推進していたのであり,資産及び収入は,担保目的物である本件土地ないしその販売収入以外に存在しない。しかも,本件土地は,多数区画の住宅販売用地であり,A 助参加人から融資を受けて本件土地の開発事業を推進していたのであり,資産及び収入は,担保目的物である本件土地ないしその販売収入以外に存在しない。しかも,本件土地は,多数区画の住宅販売用地であり,A産業がこれを完売するには相当期間を要することが予測される。 A産業は,補助参加人に対し,平成7年5月2日から金利を延滞していたのであり,補助参加人としては,A産業に対し,新規に融資をすることは原則として許されなかった。そうすると,補助参加人は,A産業をして,本件土地を売却させ,その売却代金から貸金債権を回収する場合,A産業の倒産,さらには本件土地の任意売却による債権回収の途絶を避けるため,A産業をしてその売却代金から販売経費だけでなく同社の経営維持管理費も賄わせなければならなかった。 そして,A産業が,本件土地の売却代金を1坪当たり37万円と計画したとしても,同社がどの程度の区画数を販売できるかは的確に予測できるものではないから,1坪当たりのA産業の維持管理費の負担割合を数学的に計算し予想できるものでもない。このような予測困難な事情が存する中で,被告らが考慮したのは,A産業に不当な利益を得させることは認められないものの,販売途中で同社の経営が頓挫しあるいは販売意欲を失って投げ出すような事態を招来しないようにするだけでなく,同社をして熱意を持って本件土地の販売に取り組ませ,近隣の土地を販売する競業他社の販売区画数に劣らない実績を上げるようにすることであった。すなわち,被告らは,A産業をして可及的速やかに,しかも可能な限り本件土地の多くの区画を売却させ,同社に対する補助参加人の貸金債権を総額において高額に回収することを意図した。 以上の次第で,被告らが,A産業の経営維持管理費を販売代金中より支弁することを認め,確保すべき債権回収額を1坪当たり25 同社に対する補助参加人の貸金債権を総額において高額に回収することを意図した。 以上の次第で,被告らが,A産業の経営維持管理費を販売代金中より支弁することを認め,確保すべき債権回収額を1坪当たり25万5000円とした。 (2) 前記(1)が肯定される場合,補助参加人に発生した損害はいくらか。 (原告の主張)前記(1)の原告の主張のとおり,被告らの忠実義務等違反により,補助参加人は,A産業との間で,同社が本件土地を1坪当たり約37万円で売却し,補助参加人が,その売却代金から1坪当たり25万5000円をA産業に対する貸金債権の弁済として受領するという合意をし,A産業は,この合意に基づき,平成11年までに,別紙2のとおり,本件土地のうち141筆3万0860平方メートルを販売した。これを上記比率で計算すると,販売価格合計は,35億3606万6300円であり,補助参加人は,23億8046万0700円しか貸金債権の弁済を受けていないことになる。この販売価格と貸金債権として弁済を受けた額の差額から,最小の販売経費である仲介手数料に相当する販売価格の3パーセントの1億0608万1000円を控除した10億4952万4600円が,被告らの忠実義務等違反により補助参加人に発生した損害であるというべきである。 (被告ら及び補助参加人の主張)原告の主張は争う。 なお,別紙1のとおり,A産業が,原告主張の別紙2に対応する平成11年10月15日までに売却した本件土地の筆数及び区画数は142筆・139区画であり,総販売面積は3万0952.59平方メートル,販売価格合計は31億8712万7740円であり,A産業が,補助参加人に対し,本件土地の売却代金から貸金債権の弁済として支払った額は,23億9417万2700円である。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実(1)な 12万7740円であり,A産業が,補助参加人に対し,本件土地の売却代金から貸金債権の弁済として支払った額は,23億9417万2700円である。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実(1)ないし(3),証拠(甲8,21,乙1,8,13ないし17,19,20,27ないし38,40,42ないし45,47ないし50,52ないし54,59ないし62,証人C,同D,被告乙本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 地価の推移,不動産市況の状況及び本件土地の近隣分譲地の販売状況ア地価の推移及び不動産市況の状況(いわゆるバブル経済の崩壊)平成元年の日本銀行による公定歩合の引き上げ,平成2年の土地基本法制定,地価税の導入及びいわゆる総量規制の実施により,金融機関から不動産業者への資金の流入が停滞し,これに伴い,平成3年以降,不動産需要が低下し,地価が低落傾向となった。この傾向は,岩出町においても同様であり,同町の住宅地の平均地価変動についてみると,昭和62年7月1日における地価を100とした場合,平成3年7月1日においては178.0,平成4年7月1日においては165.0,平成5年7月1日においては152.6,平成6年7月1日においては153.1,平成7年7月1日においては147.1,平成8年7月1日においては139.0,平成9年7月1日においては134.2,平成10年7月1日においては126.9,平成11年7月1日においては115.2,平成12年7月1日においては107.9となっており,また,本件土地の南に近接し,県道と接する地点の路線価(1坪当たり)は,平成4年が36万7000円,平成5年が33万4000円,平成6年が30万7000円,平成7年が30万4000円,平成8年が29万4000円,平成9年が28万4000円 地点の路線価(1坪当たり)は,平成4年が36万7000円,平成5年が33万4000円,平成6年が30万7000円,平成7年が30万4000円,平成8年が29万4000円,平成9年が28万4000円,平成10年が27万1000円,平成11年が24万5000円,平成12年が22万5000円となっていた。 このような状況から,平成7年から平成8年当時の不動産市況については,地価の下落が当分継続するとの予測を前提に,沈滞傾向にあった。 イ本件土地の近隣分譲地の販売状況H3は,本件土地の西に近接するc台(総区画数234区画,1区画平均約50坪)を平成5年3月から販売していたところ,平成7年7月までの販売区画数は60区画であり,年間平均の販売区画数は約25区画であり,販売された土地の価格は,主として1坪当たり約38万円の区画であった。 また,県開発公社は,昭和54年5月からc台の北西に隣接するd台(総区画数851区画,1区画平均約50坪)を販売していたところ,平成7年10月までの販売区画数は509区画であり,年間平均の販売区画数は約30区画であり,平成7年に販売開始された区画の販売価格は1坪当たり39万8000円であった。 (2) 金融財政政策の状況と補助参加人の財務内容アバブル経済の崩壊による不良債権の増加と破綻金融機関の出現前記(1)ア認定のような地価の下落及び不動産市況の低迷による担保目的物の価値の下落のため,銀行等の金融機関の不動産関連融資が不良債権化し,各金融機関ともその財務内容は悪化した。その結果,平成7年ころから,I1信用組合,I2信用組合,I3信用組合が相次いで経営破綻し,平成7年8月30日にはI4信用組合と株式会社I5銀行が経営破綻した。また,平成8年11月21日には,和歌山市を本店所在地としていた株式会社I6銀行に対し,業 組合,I3信用組合が相次いで経営破綻し,平成7年8月30日にはI4信用組合と株式会社I5銀行が経営破綻した。また,平成8年11月21日には,和歌山市を本店所在地としていた株式会社I6銀行に対し,業務停止命令が出され,その後,和歌山県内所在のI7信用組合及びI8商工信用組合も経営破綻した。 イ大蔵省(当時)の対応等大蔵省(当時)は,平成7年9月27日,同日に提出された金融制度調査会の金融システム安定化委員会の審議経過報告を受け,金融機関の不良債権問題に対応するため,「金融機関の不良債権の早期処理について」と題する示達を発し,主要21行においては平成8年3月期から全ての不良債権の開示が行われることとなるが,これに加えて,地方銀行協会加盟銀行についても一律に延滞債権の開示を行うよう促すとともに,健全性確保のための早期是正,破綻処理手続の早期開設に関する制度の創設などを内容とする破綻処理方法等の改善につき,次期通常国会においていわゆる金融三法を提案することを提言した。地方銀行協会は,この示達を受け,加盟銀行において,平成8年3月期より不良債権の開示を実施することを取り決めた。 金融三法の1つとして,金融機関等の経営の健全性確保のための関係法律の整備に関する法律が,平成8年6月18日の参議院本会議において可決成立し,同月21日,同年法律第94号として公布された。同法において,早期是正措置が法制化され,自己資本比率に従い,監督当局が,適時,適切に是正措置命令を発動していくこととされた。具体的には,監督当局は,修正された国内基準に基づき計算された自己資本比率が4パーセント未満2パーセント以上となった金融機関に対する経営改善計画の作成及びその実施命令,自己資本比率が2パーセント未満0パーセント以上となった金融機関に対する自己資本充実計画の提出及 本比率が4パーセント未満2パーセント以上となった金融機関に対する経営改善計画の作成及びその実施命令,自己資本比率が2パーセント未満0パーセント以上となった金融機関に対する自己資本充実計画の提出及び実行,配当又は役員賞与の禁止及び抑制,業務の縮小又は新規取扱の禁止などの措置,自己資本比率が0パーセント未満となった金融機関に対する業務の一部又は一部の停止命令を発することができるとされた。そして,この早期是正措置は,平成10年4月1日から実施されることとされた。 ウ補助参加人の財務内容補助参加人は,平成8年3月当時において,A産業に対する本件造成工事等に関する約233億2000円の融資のほか,関西国際空港の開設を予測して,J開発株式会社,株式会社K組及び関連会社である甲ビジネスファイナンス株式会社等に対する不動産関連融資が多かった。そのため,バブル経済の崩壊により,不良債権が増大し,平成8年3月期における不良債権額の合計は,約1412億8100万円であり,貸出金に対する不良債権の比率は,約6.5パーセントと地方銀行のうち4番目に高いものであった。 このような状況の下で,補助参加人は,早期是正措置の導入に備えて,平成8年3月期決算において,A産業に対する貸金債権のうちの77億6183万5430円を含む合計739億8061万8462円の不良債権を償却した。補助参加人は,その際,約190億円の任意積立金を取り崩し,第2次世界大戦後初めて赤字決算となった。そして,その後も不動産価格の下落に伴う担保目的物の価値の減少により,平成9年3月期には約6億7000万円,平成10年3月期には約13億7000万円,平成11年3月期には約7億1000万円,平成12年3月期には約3億7000万円の不良債権の追加償却をそれぞれ実施した。 (3) 補助参加人のA産 0万円,平成10年3月期には約13億7000万円,平成11年3月期には約7億1000万円,平成12年3月期には約3億7000万円の不良債権の追加償却をそれぞれ実施した。 (3) 補助参加人のA産業に対する貸金債権の処理に関する事実関係等ア A産業は,平成7年1月ころ,本件造成工事を完成させた。和歌山県知事は,A産業に対し,平成7年2月1日付けで,本件土地における本件造成工事が,同年1月17日に和歌山県によって実施された検査の結果,開発許可の内容に適合していたことを証明する開発行為に関する工事の検査済証を発行し,本件土地は,このころ販売可能となった。 A産業は,同年1月から2月ころ,大手不動産販売会社数社に対し,本件土地をロット単位で買い受けるか本件土地の販売に協力するよう依頼したが,合意は成立しなかった。そこで,A産業は,補助参加人に対し,同年3月ころ,A産業自身において本件土地を小売りしたいと申し入れた。しかし,A産業は,不動産開発業者であっても消費者への販売を主たる業務とはしておらず,消費者向けの販売能力に乏しかった上,具体的な販売計画が提示されなかった。そのため,補助参加人は,A産業が本件土地の小売りを開始し,それが途中で頓挫した場合に,本件土地の残存区画の販売が困難となりその売却代金からの債権回収に不安を抱き,A産業が本件土地を小売りにすることを承諾せず,補助参加人において,大手ゼネコン各社に対し,本件土地の全部又はロット単位での買入を依頼する方針を採った。 補助参加人は,同年3月以降,A産業に対する実質与信を停止し,A産業は,同年5月ころから,補助参加人に対する利息の支払を延滞するようになった。 A産業は,プロパンガス業者であるM株式会社に対し,同年7月3日,本件土地のうち事業用土地1区画(2筆,面積合計180.65坪)を 5月ころから,補助参加人に対する利息の支払を延滞するようになった。 A産業は,プロパンガス業者であるM株式会社に対し,同年7月3日,本件土地のうち事業用土地1区画(2筆,面積合計180.65坪)を7550万9000円(1坪当たり41万7985円)で売却し,そのうち5600万円(1坪当たり31万円)を補助参加人に対し,貸金債務の弁済として支払い,補助参加人は,同月27日,同土地についての根抵当権設定契約を解除した。 イ補助参加人は,平成7年7月ころから,以下のとおり,大手ゼネコン各社等に対し,本件土地全部又はロット単位での買受けを依頼したが,いずれも成約には至らなかった。 (ア) 補助参加人は,N建設に対し,平成7年7月7日,本件土地のうち10区画を1坪当たり50万円で買い受けるよう依頼した。これに対し,N建設は,当初,検討する旨回答したが,後日,本件土地の販売協力はするものの,その購入は拒絶した。 (イ) 補助参加人は,O建設に対し,本件土地のうち20区画を1坪当たり50万円で買い受けるよう依頼した。O建設は,当初,本件土地のうち20区画の購入について前向きに検討する旨回答したが,同年8月25日,同社の現状にかんがみ,その購入はできない旨回答した。 (ウ) 補助参加人は,P組に対し,平成7年7月13日,本件土地のうち20区画を1坪当たり50万円で買い受けるよう依頼した。P組は,当初,何とか協力したいとの回答をしたが,後日,同社の現状にかんがみ,販売協力については最大の努力はするが,買受けはできない旨回答した。 (エ) 補助参加人は,k組に対し,平成7年7月18日,本件土地のうち10区画を買い受けるよう依頼し,同年8月8日のK組の価格及び全体の販売計画等の問い合わせを受け,同月11日,改めて,本件土地のうち10区画を1坪当たり50万円で 平成7年7月18日,本件土地のうち10区画を買い受けるよう依頼し,同年8月8日のK組の価格及び全体の販売計画等の問い合わせを受け,同月11日,改めて,本件土地のうち10区画を1坪当たり50万円で買い受けるよう依頼した。K組は,後日,他社と同調すると,本件土地の買受けを拒絶する趣旨の回答をした。 (オ) 補助参加人は,Q建設に対し,平成7年12月7日,本件土地全部を1坪当たり30万円で買い受けるよう依頼した。Q建設は,1週間後,本件土地は交通アクセスの観点から販売が困難であるとの理由で,その買受けを拒絶する旨回答した。 (カ) 補助参加人は,県開発公社に対し,平成8年1月22日,本件土地全部を買い受けるよう依頼し,県開発公社は,同日,検討する旨回答し,同年2月2日,検討のための会議を同月5日から9日までの間に開催する予定である旨の回答をしたが,その後,この買受けの交渉は進展しなかった。 ウ株式会社R鑑定代表取締役,不動産鑑定士Sが,平成7年12月14日,本件土地の価格について鑑定した結果,本件土地のうち分譲住宅地520区画(公簿面積合計3万7212坪)については,一括売却する場合は90億6000万円(1坪当たり24万3000円)であり,消費者向けに分譲する場合は132億8300万円(1坪当たり35万7000円)とされた。 エ補助参加人は,大手ゼネコン各社等に対する本件土地の買受交渉が不首尾に終わったことから,平成8年初めころから,H1,H2,H3及びH4の4社(以下「地元不動産販売業者ら」という。)に対し,共同で,本件土地全部を買い受けるよう依頼した。これに対し,地元不動産販売業者らは,1坪当たり20万円ないし22万円の販売価格であれば,共同で本件土地のうち住宅用地260区画(面積合計1万7346坪)を一括で買い受けることを検討する旨 依頼した。これに対し,地元不動産販売業者らは,1坪当たり20万円ないし22万円の販売価格であれば,共同で本件土地のうち住宅用地260区画(面積合計1万7346坪)を一括で買い受けることを検討する旨回答した。 この回答を受けて,補助参加人は,平成8年2月20日に被告ら参加の下で開催された常務会において,①前記(1)イ認定の本件土地の近隣におけるc台及びd台の販売状況,②c台及びd台がいずれも1区画平均約50坪であるのに対し,本件土地の1区画が平均約67坪と広いところ,バブル経済の崩壊後建物価格を含めた総販売価格が4000万円を超える物件を売ることが難しい状況下においては土地の単価を下げざるを得ないこと,③A産業が,前記アのとおり,消費者向けの販売能力に乏しいこと,④A産業が第三者に本件土地の販売委託をするとしても本件土地を完売するには相当長期間を要することが予測されること,⑤A産業が本件土地を販売する場合でも,A産業が第三者に販売委託させる場合でも,A産業が営業を継続し,補助参加人においてA産業に対する債権回収を十分なものとするためには,本件土地の売却代金からA産業の営業継続のための維持管理費を支出する必要があること,⑥本件土地の販売計画が頓挫した場合に本件土地のうち残った部分の販売及びその代金からの債権回収に困難を来すことが予測されること,⑦補助参加人の当時における財務状況が,前記(2)ウのとおりであり,補助参加人のA産業に対する不良債権を早期に処理するとともにその債権額を圧縮する必要性が高かったこと,といった事情を総合的に検討の上,解決すべき問題はあるものの,地元不動産販売業者らの回答に沿った方向で本件土地の売却を進めることを決定し,地元不動産販売業者らと具体的な交渉に当たることとした。 しかし,地元不動産業者らは,補助参加人に対 べき問題はあるものの,地元不動産販売業者らの回答に沿った方向で本件土地の売却を進めることを決定し,地元不動産販売業者らと具体的な交渉に当たることとした。 しかし,地元不動産業者らは,補助参加人に対し,前記常務会の後,以下のとおり,いずれも本件土地の購入価格をさらに下げるよう補助参加人に求めるとともに,事業資金等の超低利での融資を求める趣旨の回答をした。そのため,Gら補助参加人の審査第2部の担当者において,同年5月から6月ころ,地元不動産販売業者らへの本件土地の一括売却は困難であるとの見通しを有するに至った。 (ア) H1は,同月22日,本件土地の消費者への販売価格は1坪当たり30万円が上限であり,これに,広告費5パーセント,人件費10パーセント,雑費5パーセントといった経費を併せると,本件土地の購入価格としては1坪当たり20万円が上限である,補助参加人に対し,A産業の完全な排除及び超低利での融資やメイン銀行として応分の協力等を要望する旨の回答をした。 (イ) H3は,同年3月12日,本件土地の消費者への平均販売価格は23万円ないし28万円であると考えられ,これを前提として本件土地の買受価格を算定すべきである,補助参加人が本件土地の売主となり,A産業は完全に排除されるべきである,税金,ボーナス等の運転資金が不足した場合に超低利での融資を要望する旨の回答をした。 (ウ) H2は,同じころ,本件土地の1区画当たりの販売価格は1800万円が最高限度である一方,本件土地はいずれの区画も擁壁不足であることから1区画平均250万円の費用を要し,また,当初3割を販売するまでは1区画平均100万円の販売促進費用を要することなどから,販売価格の設定を厳しく考えること並びに補助参加人において,購入資金及び運営資金につき格別の配慮をし,かつ,本件土地に対す 割を販売するまでは1区画平均100万円の販売促進費用を要することなどから,販売価格の設定を厳しく考えること並びに補助参加人において,購入資金及び運営資金につき格別の配慮をし,かつ,本件土地に対する行政庁以外の第三者の権利は排除すること等の要望ないし回答をした。 オ補助参加人は,平成8年3月5日の常務会及び取締役会において,A産業が住宅金融公庫から借り入れ,補助参加人において債務保証していた約99億2000万円(元金約96億4800万円及び利息2億7200万円)について,A産業に対する同公庫への利息の増加に伴い,補助参加人のA産業に対する与信額が拡大することを避けるため,補助参加人が,A産業に対し,約99億2000万円の証書貸付けを実行し,それをもって同公庫に対し前記借入金及び利息の繰上完済をすることを決定し,併せて,補助参加人のA産業に対する貸金債権について,償却を視野に入れた対応を検討していくとの方針を採用することとした。 また,補助参加人は,同月26日の常務会において,前記(2)ウのとおり,早期是正措置の導入に備えて,平成8年3月期決算において,A産業に対する貸金債権のうちの77億6183万5430円を含む合計739億8061万8462円の不良債権を償却することを決定した。 補助参加人は,この償却に当たり,A産業においては,本件土地につき計画時と現在の販売予定価格に乖離が生じたため,大幅な赤字が生ずることを前提として,A産業に対する担保及び同社の預金を119億7510万6287円と,同社が清算された場合の配当見込みを35億8587万7185円として計算した。 カ Bは,平成8年4月22日,A産業の代表取締役に就任した。 A産業は,同年7月20日から,東京都内に本社を,大阪府内に支社を置き,Bが代表取締役の地位にあり,株式を店頭公 85円として計算した。 カ Bは,平成8年4月22日,A産業の代表取締役に就任した。 A産業は,同年7月20日から,東京都内に本社を,大阪府内に支社を置き,Bが代表取締役の地位にあり,株式を店頭公開しているFを介して,本件土地につきテレビを通して販売宣伝広告をしたり,新聞の折り込み広告による販売広告をしたりした。そして,A産業は,同年6月28日から同年9月2日までの間に,29区画について買主との間で売買契約ないし売買仮契約を締結していた。 また,A産業とFは,同年7月10日付けで,A産業が,本件土地のうち167区画(面積合計1万1683.50坪)を代金合計31億5454万5000円(1坪当たり27万円)で売買し,67区画(代金12億4140万6000円)については同年9月30日を,残りの100区画(代金19億1313万9000円)については同年12月28日を代金弁済期日とする売買契約書(以下「本件売買契約書」という。)を作成した。 キ Bは,平成8年8月ころ,補助参加人に対し,本件売買契約書を提出するとともに,本件土地のうち,住宅用地512区画について,第1期分167区画を同年12月末までに完売し,以後3か月ごとに100区画以上を販売することを目標とし,1坪当たり24万5000円を補助参加人のA産業に対する貸金債権の弁済として補助参加人に支払い,補助参加人は,これと引換えに,本件土地のうち販売された部分についての根抵当権を解除すること,1年後の平成9年9月には残存区画も含めた本件土地の住宅用地512区画全部につき同じ条件で決済することを条件に,A産業においてFを介し消費者に本件土地の住宅用地512区画を販売させるよう申し入れ,Gら補助参加人の担当者らは,BないしA産業と交渉し,1坪当たりのA産業の補助参加人に対する弁済を25万500 ,A産業においてFを介し消費者に本件土地の住宅用地512区画を販売させるよう申し入れ,Gら補助参加人の担当者らは,BないしA産業と交渉し,1坪当たりのA産業の補助参加人に対する弁済を25万5000円とすることとした。 上記の経緯を受けて,補助参加人は,被告ら出席の本件常務会(平成8年9月10日開催)において,①大手ゼネコン各社や地元不動産販売業者らに対し,本件土地全部又はロット販売を検討し,交渉を行ったが,いずれも契約成立に至らなかったこと,②A産業が消費者向けの販売能力に乏しく,株式を店頭公開しており信用性のあるFに仲介させる必要があること,③A産業が本件土地を直接売却する場合でも第三者に販売委託させる場合でも,A産業が本件土地の販売期間中営業継続でき,本件土地を販売し,その代金をもって補助参加人の債権を回収するためには,A産業の販売維持管理費を本件土地の売却代金から支出する必要があること,④A産業及びFが1年を期限とする短期で本件土地を販売し,その代金からA産業の補助参加人に対する貸金債務を弁済する旨確約していること,⑤既にA産業がFを介して29区画につき売買契約又は売買仮契約を買主との間で締結していること,⑥Bが提案したA産業の補助参加人への弁済額は1坪当たり25万5000円と本件土地のうち住宅用地を一括売却した場合におけるSの鑑定価格1坪当たり24万3000円を上回るものであること,⑦今後も地価の下落が引き続き予想され,販売開始が遅れたり販売期間が長期となった場合に,本件土地の商品価値さらには担保価値が低下すること,⑧前記オのとおり,補助参加人は,平成8年3月期決算において,A産業に対する貸金債権のうち77億6183万5430円を間接償却しており,本件土地を早期に売却してその代金から貸金債権を回収しなければ追加償却をする必 ,補助参加人は,平成8年3月期決算において,A産業に対する貸金債権のうち77億6183万5430円を間接償却しており,本件土地を早期に売却してその代金から貸金債権を回収しなければ追加償却をする必要が生ずること,⑨早期是正措置の実施を考慮し,補助参加人の自己資本比率を向上させるためには,早期に不良債権となっているA産業に対する貸金債権額を圧縮する必要があること,といった諸事情を考慮して,Bの提案に応じることを決定した。 そして,補助参加人は,A産業との間で,A産業が,Fを介して,本件土地のうち住宅用地を1坪当たり約37万円で売却し,補助参加人は,その売買代金から1坪当たり25万5000円をA産業に対する貸金債権の弁済として受領し,売却部分について設定された根抵当権を解除するとの合意をした。 ク補助参加人とA産業との間の前記キ認定の合意に基づき,別紙1のとおり(ただし,同別紙32記載の売買契約における売却額は2345万3000円,37記載の売買契約における売却額は2592万9000円,62記載の売買契約における売却額は1736万2740円である。),A産業はFを介して(平成11年9月8日以降は,F自身が売主となった。),平成11年9月10日までに,本件土地のうち140筆,138区画を代金合計31億1161万0480円(1坪当たり平均33万8887円)で売り,補助参加人は,A産業から,同年10月15日までに,A産業の補助参加人に対する貸金債務の弁済として,前記売買代金から23億3817万2700円(1坪当たり平均25万4651円)の支払を受けた。 ケその間,補助参加人は,被告らが出席した平成9年9月9日開催の常務会において,担当者(T取締役審査第二部長)から,①住宅用地512区画中,同日時点において113区画の販売にとどまっていること,② ケその間,補助参加人は,被告らが出席した平成9年9月9日開催の常務会において,担当者(T取締役審査第二部長)から,①住宅用地512区画中,同日時点において113区画の販売にとどまっていること,②Bが取締役を務めるU社に対し,残り区画を代金約69億円で一括で買い取るよう交渉してるが,U社が同年6月30日に不渡手形を出したことからすれば,かかる交渉は困難であること,③地価の下落が引き続き予想され,販売期間が長期化すれば本件土地の商品価値が低下することから,債権回収の促進を図るため,同年10月から,補助参加人において不動産販売業者に交渉し,本件土地のうち北側235区画を売却する方針であるが,この区画は,本件土地の北側奥に位置し,擁壁及び造成等が不完全な区画が多く,販売価格は南側区画よりも相当低額となる見込みであることの報告を受けたが,特段の異論や意見が出ることはなかった。 コ A産業は,補助参加人に対し,平成10年5月8日及び平成11年2月15日付けの2度にわたり,本件土地の価格を下げない限り売却が困難であることを理由として,A産業が補助参加人に対し本件土地のうち売却された土地の根抵当権の解除のためにその土地の売却代金から支払うべき金額を1坪当たり15万円に引き下げるよう要請した。また,A産業は,補助参加人に対し,同年5月13日付けで,岩出町に対する固定資産税が延滞に陥っていることを理由として,A産業が補助参加人に対し売却された土地の根抵当権の解除のためにその土地の売却代金から支払うべき金額を1坪当たり20万円に引き下げるか,A産業の岩出町に対する本件土地の固定資産税(1坪当たり約1万7600円)の支払を肩代わりするよう求めた。さらに,A産業は,補助参加人に対し,同年7月1日付けで,地価の落ち込み及び不動産市況の低迷を理由として,A産 する本件土地の固定資産税(1坪当たり約1万7600円)の支払を肩代わりするよう求めた。さらに,A産業は,補助参加人に対し,同年7月1日付けで,地価の落ち込み及び不動産市況の低迷を理由として,A産業が補助参加人に対し売却された土地の根抵当権の解除のために本件土地の売却代金から支払うべき金額を1坪当たり18万6166円に引き下げるよう要請した。 補助参加人は,当初,A産業の要請を拒絶していたが,同年11月10日の融資審査会において,①不動産業者が不動産市況の低迷により本件土地の売却に関与することに消極的であること,②地価の下落が引き続き予想され,販売期間が長期化すれば,本件土地の商品価値がさらに低下することを考慮の上,補助参加人が本件土地のうち売却された土地に設定された根抵当権を抹消するためにA産業が支払うべき金額を,各区画の販売予定価格の9割とすることを承認した。 2 争点(1)(忠実義務等違反の有無)について(1) 本件常務会における方針決定の忠実義務等違反該当性についてア原告は,被告らが本件常務会において前記1(3)キ認定の方針決定をしたことが,その内容自体から忠実義務等違反に該当すると主張する。 しかしながら,以下の(ア)ないし(カ)の説示に照らせば,原告の主張を認めることはできない。 (ア) 前記1(3)ア認定のとおり,補助参加人は,A産業に対し,総額約233億2200万円を貸し付けていたところ,A産業が平成7年5月ころから利息の支払を延滞するようになり,前記貸金債権が不良債権化していた。そして,前記1(2)イ,ウ,(3)オ認定のとおり,銀行に対する早期是正措置が平成10年4月1日から実施されることを受けて,補助参加人は,早期に自己資本比率向上のため不良債権額を圧縮する必要があり,その一環として,平成8年3月期決算においては り,銀行に対する早期是正措置が平成10年4月1日から実施されることを受けて,補助参加人は,早期に自己資本比率向上のため不良債権額を圧縮する必要があり,その一環として,平成8年3月期決算においては,A産業に対する不良債権のうち77億6183万5430円を含む739億8061万8462円を間接償却していた。さらに,前記1(1)ア認定のとおり,地価は下落傾向にあり,この傾向は当分継続すると予測されていた。このような状況にかんがみると,A産業に対する貸金債権につき再度の償却を避けるため,A産業に対する貸金債権の担保目的物である本件土地を早急に処分する必要があったということができる。 (イ) しかし,補助参加人が,本件土地に設定された根抵当権を実行して競売手続によりA産業に対する貸金債権を回収する方法は,前提事実(2)のとおり,本件土地の面積が合計30万平方メートルを超える広大なものであり,その手続に長時間を要することが明らかである上,証拠(乙59)及び前記1(1)ア認定の事実によれば,岩出町においてもバブル経済の崩壊により地価が下落傾向にあり,競売によった場合の債権回収額が相当低額になることが容易に予想された(現に,証拠《乙39》によれば,本件土地のうち分譲住宅地520区画面積合計12万3020平方メートルを一括して競売した場合の平成7年12月1日における最低売却価額を決定するための評価人の評価額は1坪当たり11万5000円になると推定されることが認められ,これは,同一区画を一括で任意売却した場合の鑑定評価額1坪当たり24万3000円の半分に満たない額である。)。そのため,補助参加人において,本件土地を早期にかつ合理的な価格で処分するには,任意売却による必要があったというべきである。 (ウ) そして,前記1(3)イ,エ認定のとおり,補助参加 い額である。)。そのため,補助参加人において,本件土地を早期にかつ合理的な価格で処分するには,任意売却による必要があったというべきである。 (ウ) そして,前記1(3)イ,エ認定のとおり,補助参加人において,本件土地を一括又はロット単位で売却するよう,平成7年7月ころからは大手ゼネコン各社及び県開発公社と,平成8年初めころからは地元不動産販売業者らと交渉したが,いずれも契約成立には至らず,本件土地を一括又はロット単位で売却することは困難な状況にあった。 また,前記1(3)ア認定のとおり,A産業は,消費者に対する販売能力に乏しいことから,A産業単独で本件土地を売却させることは,販売が頓挫した場合における本件土地の売却及び売却代金からの債権回収が困難を来すことが予測された。 (エ) 前記1(3)オ認定のとおり,A産業ないしBは,かかる状況の下,平成8年7月20日以降,株式を店頭公開しており,信用性のあるFに本件土地の販売広告をさせるなどして,同年6月28日から同年9月2日までの間に,本件土地のうち29区画について売買契約又は売買仮契約を買主との間で締結していたのであり,本件土地を個別の消費者に売却する方法での債権回収に期待感を持たせるものであった。このA産業ないしBが,前記1(3)カ認定のとおり,本件売買契約書を提出の上,補助参加人に対し,1年という短期で本件土地を売却し,貸金債権を支払う旨提案していることからすれば,補助参加人においては,貸金債権の回収に相当の期待を持つことができるものであった。 (オ) A産業ないしBが最終的に提示した1坪当たり約37万円の売却代金のうち25万5000円という弁済額は,本件土地のうち住宅用地を消費者向けに個別売却した場合の鑑定評価額1坪当たり35万7000円を下回るものの,同一部分を一括売却した場合の り約37万円の売却代金のうち25万5000円という弁済額は,本件土地のうち住宅用地を消費者向けに個別売却した場合の鑑定評価額1坪当たり35万7000円を下回るものの,同一部分を一括売却した場合の鑑定評価額1坪当たり24万3000円を上回るものであった。 そして,証拠(乙36)及び弁論の全趣旨によれば,A産業は,本件土地の販売について,平成7年6月期決算において2億2918万0215円,平成8年6月期決算において1億7486万7337円,平成5年6月期から平成12年6月期までの平均で2億1596万3903円の販売費及び一般管理費を計上していたことが認められる。このような状況において,A産業が本件土地を売却し,補助参加人に対する貸金債権を弁済するには,A産業が本件土地を販売する間営業を継続することが前提となるので,本件土地の売却代金からA産業の販売及び一般管理費を支出する必要があったというべきである。また,A産業が本件土地を消費者に売却するに当たっては,前記エのとおり,Fが介在することが前提となることからすれば,Fにおいて支出する宣伝広告費,人件費及び雑費についても,本件土地の売却代金から支出する必要があった。 (カ) 以上のとおり,補助参加人においては,本件常務会当時,本件土地を早期のうちにA産業において任意売却させ,その売却代金からA産業に対する貸金債権を回収する必要性があったというべきところ,大手ゼネコン各社,地元不動産販売業者らとの間で,本件土地の一括又はロット単位での売却についての交渉が成立せず,その一方で,消費者向けの販売能力に乏しいA産業がFを介して2か月強の間に29区画の売買契約又は売買仮契約を成立させており,そのA産業及びFの代表者であったBが,本件土地を1年で売却しA産業の補助参加人に対する貸金債務を弁済すると 乏しいA産業がFを介して2か月強の間に29区画の売買契約又は売買仮契約を成立させており,そのA産業及びFの代表者であったBが,本件土地を1年で売却しA産業の補助参加人に対する貸金債務を弁済すると約束したことからすれば,補助参加人においては,前記1(1)イ,(3)エ認定のとおり,本件土地の近隣で販売されているc台及びd台の販売状況が年平均25ないし30区画であり,本件土地がこの両者よりも1区画当たりの面積が広いことからみて,全区画の販売が困難であるとしても,相当区画数の売買契約の成立及びその売却代金からA産業に対する貸金債権の回収を図ることができると期待することは不合理ということはできない。 また,本件土地の1坪当たりの売却代金約37万円から弁済額を25万5000円と設定することについても,A産業が営業を継続し本件土地を売却するためには,本件土地の売却代金からその営業維持管理費を支出する必要がある上,A産業がFを介して本件土地を売却する以上Fの支出する宣伝広告費等の支出についても本件土地の売却代金から支出する必要があったということができる。このような状況にかんがみると,A産業の補助参加人に対する本件土地の売却代金からの弁済額を,本件土地を一括売却した場合の鑑定評価額1坪当たり24万3000円を上回る1坪当たり25万5000円と設定することが不合理であるということもできない。 イ次に,原告は,①Bが代表取締役をしていたFを本件土地の売却に急遽参画させたこと,②GやEその他のA産業の取締役とではなくBのみと本件土地の売却について協議していること,③A産業が本件土地を1坪当たり約37万円で売却することができるにもかかわらず,補助参加人が1坪当たり25万円しか支払を受けないことの根拠が示されていないこと,④補助参加人が,平成8年初めころ, ,③A産業が本件土地を1坪当たり約37万円で売却することができるにもかかわらず,補助参加人が1坪当たり25万円しか支払を受けないことの根拠が示されていないこと,④補助参加人が,平成8年初めころ,地元不動産販売業者らとの間で本件土地を1坪当たり20万円ないし22万円で一括売却することの交渉をしていたにもかかわらず,地元不動産業者らが補助参加人に対し本件土地の売却についてA産業の排除を申し入れていたことから,一括売却の方針を転換し,宅地として問題のないところだけを売却し,全体としての債権回収に問題が残る個別売却の方針を選択したこと,⑤A産業ないしBの本件土地を1年で完売するとのおよそ不可能な提案の実現可能性について何ら検討することなく,本件常務会においてA産業ないしBの提案がそのまま承認されていることをあげて,被告らがBに不当な利益を得させることを隠すため本件常務会において形式的に前記方針決定をしたことは明らかであるから,被告らに忠実義務等違反がある旨主張する。 しかしながら,前提事実(1)及び証拠(甲21,証人D)によれば,Bが平成8年4月22日にA産業の代表取締役となる一方,Eは同月8日には病気のため九州に転居していたことが認められ,この事実によれば,補助参加人の担当者であったGにおいて,本件土地の売却について,Bのみと交渉していたとしても何ら不自然なものではないから,この事実をもって原告の主張の根拠とはならない。また,前記ア(ウ),(オ)説示のとおり,補助参加人及びA産業は,当初,本件土地を一括又はロット単位で売却する方針であったが,大手ゼネコン各社及び地元不動産販売業者らとの間での交渉の結果,売却にまで至らなかったこと,成約まで至らなかったのは,地元不動産業者らにおいては,売買代金の引下げや事業資金の超低利での融資を申し入れてい ネコン各社及び地元不動産販売業者らとの間での交渉の結果,売却にまで至らなかったこと,成約まで至らなかったのは,地元不動産業者らにおいては,売買代金の引下げや事業資金の超低利での融資を申し入れていたからであり,A産業を排除することが決定的理由となったことを認めるに足りる証拠はないから,被告らが地元不動産業者らにおいてA産業の排除を申し入れたことによって一括売却の方針を転換したとする原告の主張は採用できない。そして,前記ア(カ)説示のとおり,本件土地の売却に株式の店頭公開をしており,対外的信用性のあるFを関与させることは,消費者向けの販売能力に乏しいA産業が本件土地を個別に売却するに当たって必要不可欠の条件であったということができるから,本件土地の売却に当たりFを介在させることが,原告の主張の根拠とはなり得ない。 ところで,本件土地の売却代金のうち,補助参加人がA産業に対する貸金債権の弁済として受領の上,本件土地のうち売却された部分についての根抵当権設定契約を解除する金額を1坪当たり25万5000円と設定したことについて,本件常務会において客観的に明確な根拠をもって設定したとまでは認められないが,前記ア(カ)説示のとおり,この金額が不合理なものということはできないから,この金額設定の根拠が示されないことをもって,原告の主張の根拠ということはできない。 また,前記1(1)イ認定の事実及び証拠(乙27,30,59,60,証人C,被告乙本人)によれば,本件土地に近接するc台及びc台が年間平均25区画ないし30区画しか売却されていないこと,この事実との対比から,被告ら及び補助参加人の担当者らにおいても,A産業及びFが本件土地を1年間で完売できるとは考えていなかったことは認められる。しかし,前記ア(カ)説示のとおり,被告らにおいて,A産業ないし 対比から,被告ら及び補助参加人の担当者らにおいても,A産業及びFが本件土地を1年間で完売できるとは考えていなかったことは認められる。しかし,前記ア(カ)説示のとおり,被告らにおいて,A産業ないしBが本件土地のうち相当区画を売却し,補助参加人に対し貸金債務の弁済をすることについて期待することが不合理とまではいえないことに照らすと,上記事実をもって,原告の主張の根拠ということはできない。 他に原告の主張を認め得る証拠はない。 ウさらに原告は,被告らに忠実義務等違反があったとして,次のとおり主張するので,順に判断する。 (ア) 原告は,被告らがBと共謀して,仲介手数料相当額を超える本件土地の売却代金については補助参加人が取得すべきであるにもかかわらず,本件土地の売却代金のうち現に補助参加人に支払われた分を除く全額をA産業を介してBに利得させたと主張する。そして,A産業の取締役であった証人は,A産業の代表取締役であったEと補助参加人の前頭取であったVが親密な関係にあり,Eはその関係を利用して,補助参加人から融資を受けた,また,本件土地の売却代金から6パーセントの仲介手数料をFに支払い,その余をBの口座に振り込んでおり,A産業には売却代金が支払われていなかった旨を陳述書(甲21)に記載ないし証言する。 しかしながら,被告らとBが本件土地の売却及び売却代金の取扱いについて共謀したことを認めるに足りる証拠はない。また,証拠(証人D)によれば,Dは,A産業の取締役を辞任する平成11年3月までの間,総務部長として月額60万円程度の給与ないし報酬を受領していたことが認められ,この事実に照らすと,A産業が本件土地の売却代金を全く受領していないとのDの前記陳述書記載ないし証言部分はにわかに採用できず,他にBが本件土地の売却代金のうち補助参加人に支払われた ことが認められ,この事実に照らすと,A産業が本件土地の売却代金を全く受領していないとのDの前記陳述書記載ないし証言部分はにわかに採用できず,他にBが本件土地の売却代金のうち補助参加人に支払われた分を除く全額を利得していたことを認めるに足りる証拠はない。 また,前記ア(オ)説示のとおり,本件土地の売却代金からFへの仲介手数料のみならず,A産業の営業維持管理費を支出する必要があったことに照らすと,本件土地の売却代金相当額のうち仲介手数料相当額を超える分については,補助参加人が利得すべきであることを前提とする原告の主張は認めることができない。 (イ) 原告は,被告らが,補助参加人をして,本件土地のうち1坪当たり37万円を超える額で売却された部分についても,1坪当たり25万円程度の支払を受けるのみで,同部分に設定された根抵当権設定契約を解除したことを忠実義務等違反に該当する旨主張する。 しかしながら,前記1(3)キ,ク認定のとおり,被告らは,本件常務会において,本件土地を個別に売却した場合の平均の売却価格が1坪当たり約37万円であることを前提として,補助参加人における回収額を1坪当たり25万5000円と設定し,この方針に基づき,本件土地の特定の区画の売却価格が,1坪当たり37万円を上回る場合でも下回る場合でも,概ね1坪当たり25万円を回収していることに照らすと,被告らにおいて,補助参加人をして,特定の区画につき,A産業が1坪当たり37万円を超える額で売却した場合であっても,25万5000円を超えて回収させる必要まではなかったというべきである。したがって,原告の主張は認めることができない。 (2) 平成9年9月以降もA産業ないしFに本件土地の販売を継続させていたことの忠実義務等違反該当性について前記1(3)ケ認定のとおり,被告らは,平成9年9 って,原告の主張は認めることができない。 (2) 平成9年9月以降もA産業ないしFに本件土地の販売を継続させていたことの忠実義務等違反該当性について前記1(3)ケ認定のとおり,被告らは,平成9年9月9日に開催された補助参加人の常務会において,A産業及びFが本件土地のうち113区画の販売にとどまっており,これを約束の1年以内に完売することができなかったことを認識しつつ,A産業及びFが本件土地を販売し,その売却代金のうち1坪当たり25万5000円を補助参加人に対して支払うことで本件土地の売却部分に設定された根抵当権設定契約を解除するという本件常務会で決定された方針を継続することについて,特に異議を述べてはいない。 しかし,前記1(1)ア認定のとおり,地価の下落傾向が引き続き予想される状況において,本件常務会で決定された方針を覆したとしても,本件常務会以前にもまして本件土地を他の不動産販売業者において一括又はロット単位で購入する可能性は低いこと,また,根抵当権を実行しても,前記(1)イ説示のとおり,手続終了までに長期間かかり,売却価格がさらに低額になるおそれが大きいことに照らすと,被告らにおいて,本件常務会で決定された方針を継続することに異議を述べなかったとしても,その判断が不合理であったということはできず,まして,この判断に忠実義務等違反があったことを認めることはできないというべきである。 (3) まとめ以上のとおりであるから,補助参加人が本件常務会の決定方針にしたがって平成8年8月以降平成11年までの間本件土地(一部)の売却に伴って根抵当権を解除し,その代金からA産業に対する貸金債権の回収をするに当たり,被告らにおいて,補助参加人の取締役として,原告が主張する忠実義務等違反があったことを認めることはできない。 3 結論以上によれ を解除し,その代金からA産業に対する貸金債権の回収をするに当たり,被告らにおいて,補助参加人の取締役として,原告が主張する忠実義務等違反があったことを認めることはできない。 3 結論以上によれば,争点(2)について判断するまでもなく,原告の本件請求はいずれも理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 和歌山地方裁判所第二民事部裁判長裁判官礒尾正裁判官成田晋司裁判官間史恵は,転補につき署名押印することができない。 裁判長裁判官礒尾正
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