主文 1 被告は、参加人に対し、11万円を支払え。 2 参加人のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを20分し、その1を被告の負担とし、その余を参加人の負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告は、参加人に対し、216万円を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は、参加人が、亡Aは、大阪入国管理局(当時)において収容中、警備 官らから、違法な後手錠をされて長時間放置され、負傷するなどの違法な処遇を受け、精神的苦痛を受けたところ、参加人は、Aから当該違法行為を理由とする国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求権の債権譲渡を受けたとして、被告に対し、同請求権に基づき、前記第1の金員の支払を求める事案である。 なお、本件訴えは、Aが原告として提起した訴え(大阪地方裁判所令和2年 (ワ)第1555号)の係属中に、参加人が独立当事者参加をしたものであり、Aが提起した上記訴えは、上記の参加後、請求放棄により終了した。 2 関係法令の定め本件に関係する法令等の定めは、別紙関係法令等のとおりである。 3 前提事実(争いのない事実並びに後掲各証拠(枝番号のあるものは各枝番号 を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)⑴ Aの在留状況等ア Aは、昭和48年(1973年)にペルー共和国に生まれ、ペルー国籍を有する日系3世の男性である。 イ Aは、平成3年5月、新東京国際空港(現在の成田国際空港)から本邦 に上陸し、その後、複数回にわたり在留期間の更新許可を受けていた。 Aは、平成17年、前橋地方裁判所桐生支部で、窃盗、住居侵入、道路交通法違反及び業務上過失傷害の罪により、懲役2年6月執行猶予5年の有罪 たり在留期間の更新許可を受けていた。 Aは、平成17年、前橋地方裁判所桐生支部で、窃盗、住居侵入、道路交通法違反及び業務上過失傷害の罪により、懲役2年6月執行猶予5年の有罪判決を受け、その判決は確定した。また、平成22年には、東京地方裁判所で、住居侵入及び窃盗の罪により、懲役3年の有罪判決を受け、その判決は確定した。 ウ Aは、身柄拘束中であった平成21年7月、在留期間更新許可申請を不許可とする処分を受けた。 Aは、異議の申立てをするなどしたが、平成24年12月、異議に理由がない旨の裁決を受けた。Aは、退去強制令書の発布と執行を受けて大村入国管理センター等に収容されたが、平成26年に仮放免を許可され、出 所した。その後、Aは、平成29年7月、暴行の被疑事実で逮捕され、その身柄拘束中に仮放免許可が期間を満了したため、同年8月8日、大阪入国管理局(現在の大阪出入国在留管理局。以下「大阪入管」という。)の収容場に収容された。 なお、Aは、平成24年と平成29年の2度にわたって法務大臣に対す る難民認定申請をしたが、いずれの申請に対しても難民と認定しない処分がされている。 ⑵ Aに対する戒具(手錠)の使用ア 1回目の使用平成29年12月20日(以下、ウにかけて同日)午後0時3分頃、大 阪入管の収容場内のA6号室に収容されていたAを含む被収容者が、支給された昼食に対する不満を述べて、大声を出したり、物を投げつけたりして騒ぎ立てる事態が発生した。 午後0時14分頃、B統括入国警備官(以下「B統括」という。)は、Aが激しく抵抗していると認め、緊急隔離を告知し、警備官らは抵抗する Aを抱え上げるようにして入所手続室に連行した。 0時14分頃、B統括入国警備官(以下「B統括」という。)は、Aが激しく抵抗していると認め、緊急隔離を告知し、警備官らは抵抗する Aを抱え上げるようにして入所手続室に連行した。 午後0時20分頃、警備官らは、AがC統括入国警備官(以下「C統括」という。)に飛びかかろうとしたと認め、午後0時21分頃、Aを長椅子の上にうつ伏せにし、体の各部位を保持するとともに、両手後に第一種手錠を施した(以下「本件手錠1」という。)。そして、警備官らは、午後0時29分頃、Aを保護室へ連行した。 イ 1回目の解錠Aは、保護室から警備官らが退室すると、扉を蹴ったりするなどした(以下、2回目の解錠に至るまでの間にされたAの具体的な動静について争いがある。)。 再度保護室に入室した警備官らは、Aが指示に従わず、抵抗する様子を 示すため、Aの体を保持するなどしたが、次第に落ち着くのを確認し、退室した。そして、警備官らは、午後0時42分頃及び午後0時57分頃、保護室に入室して第一種手錠の使用状況を確認した。 その上で、警備官らは、午後1時48分頃、Aが落ち着いたと判断し、両手後に施した第一種手錠を解除した。 ウ 2回目の使用大阪入国管理局長は、Aが、他の被収容者と共謀の上、大声で騒ぎ立て、居室内の椅子や机をひっくり返し、職員の連行の指示にも従わず、職員の職務執行を妨害したとして、5日間の隔離をすることを決め、午後5時16分、B統括がAにその内容を読み聞かせた。 しかるに、Aは、午後5時33分頃以降、弁当を保護室内にまき散らす、扉の窓に米飯を塗りつける、壁や扉を叩く、扉を蹴る、水飲み場を蹴るといった行為をしたり、扉前に排尿をしたりする行為をした。そして、 しかるに、Aは、午後5時33分頃以降、弁当を保護室内にまき散らす、扉の窓に米飯を塗りつける、壁や扉を叩く、扉を蹴る、水飲み場を蹴るといった行為をしたり、扉前に排尿をしたりする行為をした。そして、午後9時1分頃、大声でトイレットペーパーを要求し、警備官が搬入口からこれを手交すると、警備官に投げたりした。 午後9時9分頃、警備官は、Aに注意するため保護室の扉を開け、入室 した。警備官らは、「言うことを聞くのかどっちや」「大人しくするんかどっちや」などとAに言った。その上で、警備官らは、Aが指示に従わず、抵抗を続けようとしていると判断し、午後9時11分頃、Aの両手後に第一種手錠を施した(以下「本件手錠2」といい、本件手錠1と合わせて「本件各手錠」という。)。 エ 2回目の解錠警備官らは、同日午後9時58分頃及び午後10時53分頃、保護室に入室して第一種手錠の使用状況を確認した。その際、警備官らが「大人しくするか」などと声をかけたが、Aは同意しなかった。 Aは、同日午後11時43分頃から、保護室の扉を蹴り始めた。警備官 らは、保護室に入室し、Aをうつ伏せにしてその体を保持し、落ち着いたと認めて退室したが、Aは、同月21日(以下、オにかけて同日)午前0時6分頃から再び保護室の扉を蹴り始めた。警備官らは、上記同様に入室と保持をするも、Aや他の収容者が大声をあげるなどしたため、非常ベルを発報するなどし、結果的に午前0時55分頃まで原告の両足を保持する などした上で、午前0時59分頃退室した。 警備官らは、午前1時55分頃及び午前2時48分頃、保護室に入室して第一種手錠の使用状況を確認した。Aは、横になっていたり、壁にもたれて座ったりしており、後者の確認の際は、「痛 退室した。 警備官らは、午前1時55分頃及び午前2時48分頃、保護室に入室して第一種手錠の使用状況を確認した。Aは、横になっていたり、壁にもたれて座ったりしており、後者の確認の際は、「痛い痛い」と述べるなどして保護室内を動き回ったりした。 警備官らは、午前3時43分頃、保護室に入室して第一種手錠の使用状況を確認した。警備官らが確認に来た際、Aは、横になって眠っており、警備官らが起こすと立ち上がり、歩き回ったり、扉にぶつかったりするなどした。そして、警備官らが退室すると、大声をあげて扉を蹴ったが、その後は床に座っていた。 その後、警備官らは、午前4時36分頃、午前5時14分頃、午前6時 12分頃、午前7時5分頃、午前8時頃、午前8時46分頃、午前9時33分頃、午前9時57分頃及び午前10時50分頃、第一種手錠の使用状況を確認した。警備官らが確認に来た際、Aは、眠るなどして静かにしており、警備官らの確認に対し、不満を表すような発言をしたことはあったが、粗暴な言動はみられなかった。 警備官らは、午前11時49分頃、Aにしていた第一種手錠を解錠し、単独室に移室させた。 オ移室後の訴えAは、移室後、両手甲や手首の痛み、左上腕部のあざと痛みを訴えた。 そこで、午後2時頃、大阪みなと中央病院を受診したところ、左上腕骨骨 幹部骨折及び左手打撲との診断を受けた(乙27)。 ⑶ Aのした損害賠償請求等Aは、被告に対し、本件各手錠をしたことは違法で、その結果、Aは受傷し、精神的苦痛を被ったとして、国家賠償法1条1項に基づき、216万円と法定遅延損害金の支払を求める訴えを提起した(大阪地方裁判所令和2年 (ワ)第1555号)。 その後、Aは、参 Aは受傷し、精神的苦痛を被ったとして、国家賠償法1条1項に基づき、216万円と法定遅延損害金の支払を求める訴えを提起した(大阪地方裁判所令和2年 (ワ)第1555号)。 その後、Aは、参加人に対し、令和5年3月17日、上記の債権を譲渡し、その後被告にその通知をした(甲13、丙1)。参加人は、令和5年7月10日、上記訴えに独立当事者参加をした。 Aは、令和5年4月3日に死亡した。そして、Aの訴訟代理人弁護士は、 令和6年6月26日の進行協議期日において、上記訴えに係る請求を放棄した。 4 争点⑴ 本件手錠1の使用と継続に係る違法性(争点1)⑵ 本件手錠2の使用と継続に係る違法性(争点2) ⑶ 警備官らが暴行し、負傷させたか(争点3) ⑷ 損害及び額(争点4) 5 争点に関する当事者の主張⑴ 争点1(本件手錠1の使用と継続に係る違法性)について(参加人の主張)ア事実経過 本件手錠1の使用と継続に係る事実経過と、その経過に関する被告の主張に対する認否は、別紙経過一覧表の「原告の主張」欄及び「認否」欄記載のとおりである。 イ手錠使用の違法性警備官らは、AがC統括に飛びかかろうとしたとして本件手錠1をした が、Aは、その直前に警備官らから首を絞められたことに対する抗議をしようとしてC統括の方に振り向いて立ち上がったにすぎない。また、Aは、警備官らにつかみかかるなどしていないし、警備官の手を振りほどこうとはしたが、これは警備官らのした実力行使に対して反射的になされた防御行為にすぎない。警備官らは、冷静にAの意見を傾聴すればよかったし、 AがC統括の方を振り向いたことが問題であるとするのであれば、座り直すように注意すればよいこと に対して反射的になされた防御行為にすぎない。警備官らは、冷静にAの意見を傾聴すればよかったし、 AがC統括の方を振り向いたことが問題であるとするのであれば、座り直すように注意すればよいことであった。 これらの事情からすると、警備官らには、Aに対し、被収容者処遇規則(以下「処遇規則」という。)19条や、戒具の使用要領(以下「使用要領」という。)に基づいて第一種手錠を後手に用いるといった処置をする ことができる要件が欠けているのに、かかる処置をした違法がある。 ウ手錠継続の違法性警備官らは、平成29年12月20日午後0時21分頃に本件手錠1をし、その後、同日午後1時48分頃までその継続をした。 しかし、保護室に隔離したAに対し、さらに戒具を使用することは、市 民的及び政治的権利に関する国際規約、拷問及び他の残虐な、非人道的な 又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約、国連被拘禁者処遇最低基準規則(マンデラ・ルール)に反するもので、処遇規則の定めにも反するものであって許されない。そもそも保護室内には損壊できるものがないことや、保護室内の監視がされていることからすれば、保護室に入室させられた後のAに、危害を加えたり、物を損壊させたりするおそれはない。 仮に、そのおそれがあったとしても、Aは、同日午後0時31分以降、落ち着いた状況にあり、その後にした扉を蹴るなどの言動は、手錠を解錠しないことへの抗議であるから、戒具使用の要件に当たるものではなく、遅くとも同日午後0時57分までに戒具使用の要件はない状態にあった。 これらの事情からすると、警備官らが、本件手錠1を継続させたことは、 戒具使用の要件に欠け、必要最小限を超えた使用というべきであり、違法である。 (被告の主張) い状態にあった。 これらの事情からすると、警備官らが、本件手錠1を継続させたことは、 戒具使用の要件に欠け、必要最小限を超えた使用というべきであり、違法である。 (被告の主張)ア事実経過本件手錠1の使用と継続に係る事実経過は、別紙経過一覧表の「被告の 主張」欄記載のとおりである。 イ手錠使用の違法性Aは、多数の職員らが取り囲んで説得し、制止されていたにもかかわらず、A6号室から入所手続室において、C統括に飛びかかろうとするなどした。このような状況は、自傷他害のおそれがあり、戒具を用いずに防止する 方法がないというべき場合であり、前手錠では、手を伸ばしてつかみかかることなどするおそれがあるというべき場合に当たる。 したがって、警備官らが、本件手錠1をした処置に違法はない。 ウ手錠継続の違法性参加人は、保護室に隔離したAに戒具を使用すること自体が違法である 旨主張するが、自傷他害のおそれがある場合などに拘束具を使用してはな らないとする規定はない。Aは、本件手錠1がされた後も、大声をあげ、保護室に入室した後も、多数回にわたって扉や壁を蹴り、肩や腕をぶつけるなどしていた。そして、このような、自傷他害や器物損壊のおそれがある状態は、本件手錠1が解錠されるまでの間継続していた。 したがって、警備官らが、本件手錠1を継続した処置に違法はない。 ⑵ 争点2(本件手錠2の使用と継続に係る違法性)について(参加人の主張)ア事実経過本件手錠2の使用と継続に係る事実経過と、その経過に関する被告の主張に対する認否は、別紙経過一覧表の「原告の主張」欄及び「認否」欄記 載のとおりである。 イ手錠使 実経過本件手錠2の使用と継続に係る事実経過と、その経過に関する被告の主張に対する認否は、別紙経過一覧表の「原告の主張」欄及び「認否」欄記 載のとおりである。 イ手錠使用の違法性保護室に隔離しているAに対し、さらに戒具を使用することが違法であることは、争点1において主張したとおりである。 警備官らは、Aが保護室の扉や壁を叩いたり、蹴ったりしたとして本件 手錠2をしたが、保護室の材質構造からして、自傷他害や器物損壊のおそれはなかった。B統括ら警備官らの言動からすると、警備官らは、Aを指示に従わせようとし、それにAが従わないことへの制裁として本件手錠2をしたといえる。 これらの事情からすると、警備官らがした本件手錠2は違法である。 ウ使用継続の違法性警備官らは、平成29年12月20日午後9時11分頃に本件手錠2をし、その後、同月21日午前11時49分頃までその継続をした。 しかし、Aは、本件手錠2をされた後、言葉を発せず、うつ伏せで床に横たわり、暴れたり叫んだりしていない。それにもかかわらず、警備官ら は、14時間以上にわたって後手で第1種手錠を用いて、睡眠や飲食、排 せつに支障を生じさせるような著しい行動の制約をし、さらに手錠の確認として、Aの睡眠を頻繁に妨害した。警備官らは、戒具を連続して8時間を超えて使用する場合は、所長等の承認を得なければならない。しかし、警備官らは、その承認を得ていないのであるから、8時間が経過した同日午前5時11分以降に本件手錠2をしたことも違法である。たとえ、所長 等が事前承認や事後承認をしたとしても、8時間を超えた時点で所長等が使用継続の適否を判断したことにならないから、使用要 た同日午前5時11分以降に本件手錠2をしたことも違法である。たとえ、所長 等が事前承認や事後承認をしたとしても、8時間を超えた時点で所長等が使用継続の適否を判断したことにならないから、使用要領の定めを潜脱するものとして許されない。 これらの事情からすると、警備官らがした本件手錠2の長時間の使用継続は違法である。 (被告の主張)ア事実経過本件手錠2の使用と継続に係る事実経過は、別紙経過一覧表の「被告の主張」欄記載のとおりである。 イ手錠使用の違法性 保護室に隔離されているAに戒具を使用すること自体が違法であるとする旨の参加人の主張が失当であることは、争点1で主張したとおりである。 Aは、保護室への入室後、前提事実(2)ウのような言動をし、さらに、他の収容区に響くほどの大声をあげたり、保護室から出ようとしたり、警備官らに「死んだら私どうする」などと自死を連想させる発言をするとい った行為を繰り返した。このような状況は、自傷他害や器物損壊のおそれが極めて大きいといえる状況であり、警備官らの制止で対応できなかった以上、本件手錠2をした処置に違法はない。 ウ使用継続の違法性Aは、本件手錠2がされた後も、確認に訪れる警備官らに反抗的な態度 を取り続け、扉を蹴るなどの行動を繰り返した。 他方、警備官らは、本件手錠2をした時点で既に相当な長時間にわたってAへの対応をして極度に疲労していて、夜間勤務下、本件手錠2を解錠すると、Aが暴れた場合の制止や身体保持ができないほどの状態にあった。 平成29年12月21日午前3時45分以降のAに、明らかな自傷他害や器物損壊のおそれはないようにみえるとしても、Aは、手錠確認の際 すると、Aが暴れた場合の制止や身体保持ができないほどの状態にあった。 平成29年12月21日午前3時45分以降のAに、明らかな自傷他害や器物損壊のおそれはないようにみえるとしても、Aは、手錠確認の際に壁 にもたれて確認の妨害をしたり、保護室内で放尿したりするなど、反抗的で粗暴な程度をとっていた。参加人は、警備官らが8時間を超えて本件手錠2をしたのに、所長等の承認がなかったと主張するが、B統括は、本件手錠2の使用に先立ち、夜間に8時間を超える可能性を踏まえて、長時間の手錠使用について事前承認を得ていたし、使用継続中の同日午前8時過 ぎにも報告をした。そもそも、使用要領に係る違反をもって違法に当たるということはできない。 これらの事情からすると、Aの態度が明らかに平穏なものに変わったといえない限り、使用継続の必要性と相当性があるというべき状況があったといえ、警備官らが本件手錠2を継続したことに違法はない。 ⑶ 争点3(警備官らが暴行し、負傷させたか)について(参加人の主張)ア警備官らは、平成29年12月21日午前0時11分頃、Aをうつ伏せにしてAの左腕を含む体の各部位を保持した。また、同日午前2時48分頃、警備官らは保護室に入室し、Aの両腕を保持してAを立たせ、Aの両 腕を保持した。これらの際、Aは「痛いよ、助けて」などと痛みを訴えていた。 これらの際に警備官らがした行為は、合理的に必要な程度を超えた暴行であり、Aが、前提事実(2)オの診断に係る受傷をしたのは、他に原因が見当たらない以上、これらの暴行によるものである。 イなお、被告は、他の場面におけるAの行為が受傷の原因となった可能性 を主張するが、Aがその際痛みを訴えていないことや、激しい衝突 らない以上、これらの暴行によるものである。 イなお、被告は、他の場面におけるAの行為が受傷の原因となった可能性 を主張するが、Aがその際痛みを訴えていないことや、激しい衝突といえないことから、その可能性は否定される。 (被告の主張)ア参加人の主張に係る、警備官らがした2度の制圧行為は、Aが大声で叫び、扉を蹴ったり、警備官らの確認を妨害したりする言動を制止するため にされた合理的なものであり、過剰な有形力の行使ではない。 イそもそもAは、第一種手錠をされている状況でありながら、保護室内で走り回って、壁に向かって左肩から体当たりをし、扉に左腕をぶつけたりし(同月20日午後0時33分頃)、保護室から出ようとして左腕から扉にぶつかったりしていた(同月21日午前3時43分頃)のであって、こ れらの際に強打して受傷した可能性もあるから、警備官らがした制圧行為が原因であるといえないし、制圧行為と受傷との間に因果関係があるともいえない。 ⑷ 争点4(損害および額)について(参加人の主張) ア Aは、本件各手錠によって長時間にわたって後手錠をされ、睡眠、飲食及び排せつに著しい支障がある状態に置かれ、肉体的、精神的な苦痛を受けたのであり、この苦痛に対する慰謝料は100万円を下らない。 また、Aは、警備官らから暴行され、左上腕骨骨幹部骨折等の受傷をしたのであり、この苦痛に対する慰謝料は80万円に相当する。 そして、Aは、弁護士費用として、36万円相当の損害も被った(合計216万円)。 イなお、Aの国籍はペルー共和国であるところ、同国でも、国家賠償法1条1項と重要な点で異ならない要件の下で本件と同様の損害賠償請求をすることは可能と解 の損害も被った(合計216万円)。 イなお、Aの国籍はペルー共和国であるところ、同国でも、国家賠償法1条1項と重要な点で異ならない要件の下で本件と同様の損害賠償請求をすることは可能と解されるから、相互保証の要件に欠けることはない。 (被告の主張) ア参加人の主張アは否認ないし争う。 イ参加人の主張イへの反論反証はしない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件手錠1の使用と継続に係る違法性)について⑴ 前提事実に加え、証拠(乙4~18、63の1、63の2、63の17~ 19、証人B統括)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められ、これに反する参加人の主張を採用することはできない。 ア Aを含むA6号室に収容されていた被収容者らは、平成29年12月20日(以下、ウにかけて同日)午後0時3分頃、警備官に対し、昼食の不満を述べ、訪れた警備官らに対し、大声で「入るな」などと言いながら、 椅子を高く持ち上げて威嚇したり、パンを投げたり、椅子を扉などにぶつけたりした。Aは、大声をあげながら、C統括に詰め寄ったりした。 B統括は、Aが、複数名の警備官らに体を保持されてもなお大声で騒ぎ、興奮して、激しく抵抗していたことから、緊急隔離を告知した。 イ Aは、入所手続室に連行され、多数の警備官らが体を保持しているにも かかわらず、大声をあげ、抵抗し続けていた。 そして、午後0時19分頃、Aが落ち着いたと警備官らが判断し、体の保持を解除したところ、Aは、急に勢いよく立ち上がり、大声で叫びながらC統括に飛びかかろうとした。そこで、警備官らは、直ちにAをうつ伏せにし、体の各部位を保持しながら両手後に第一種手錠をしたが(本件手 錠1)、手 Aは、急に勢いよく立ち上がり、大声で叫びながらC統括に飛びかかろうとした。そこで、警備官らは、直ちにAをうつ伏せにし、体の各部位を保持しながら両手後に第一種手錠をしたが(本件手 錠1)、手錠を施した際も、その後、警備官らがAに落ち着くよう述べていた際も、Aは大声で叫び続けていた。 なお、B総括は、上記のAの様子が変わらなければ戒具を使用するよう他の警備員に伝えて、他の被収容者の対応に当たっていたが、本件手錠1をした旨の報告を受けて、事務室にあるカメラ映像で上記の状況の確認を した。 ウ Aは、午後0時29分頃に保護室に入室したが、警備員らが退室すると、両手後に第一種手錠を施された状態のまま立ち上がり、保護室の扉を蹴り始め、保護室内を走り回ったり、壁に向かって左肩から2回体当たりをしたり、扉に向かって左腕を1回ぶつけたりした。 そして、午後0時34分頃、警備官らが入室し、Aの体を保持すると、 Aはなお大声で訴え続けた。 その後、Aが次第に落ち着いたことから、警備官らは保持を解除して保護室から退室し、午後1時48分頃、Aが落ち着いたものと判断して、本件手錠1を解錠した。 ⑵ 参加人は、争点1に係る参加人の主張アのとおり、手錠使用に違法性があ った旨主張するが、前提事実に加え上記⑴で認定したとおり、当時のAを含む被収容者らが、大声をあげて椅子を持ち上げて威嚇したり、椅子をぶつけたりし、警備官らの制止に従おうとしなかったことや、Aが、緊急隔離を告げられ、多数の警備官らに体を保持された状況を経ながら、体の保持が解除されるや警備官(C総括)に飛びかかろうとしたことという経緯からすると、 警備官らが、Aに自傷他害のおそれがあり、戒具を使用しなければ制止が困 らに体を保持された状況を経ながら、体の保持が解除されるや警備官(C総括)に飛びかかろうとしたことという経緯からすると、 警備官らが、Aに自傷他害のおそれがあり、戒具を使用しなければ制止が困難で、かつ、両手を前に動かすことが可能な前手錠では十分な制止ができないと判断したことに裁量権の逸脱や濫用はなかったというべきであり、かえってその判断は合理的なものであったと認めるのが相当である。 これに対し、参加人は、Aは抗議をしようとして立ち上がったにすぎず、 飛びかかろうとしていない旨主張するが、警備官(C総括)に向かって急に勢いよく立ち上がる様子から飛びかかろうとしたものと認めたことは自然な判断というべきである。また、参加人は、Aの意見を傾聴し、注意をすれば足りたはずである旨主張するが、上記のような粗暴な威嚇等をし、警備官らの制止に従おうとしない状況があった以上、その主張を採用することはでき ない。 ⑶ 参加人は、争点1に係る参加人の主張イのとおり、手錠継続に違法性があった旨主張する。 しかし、まず、被収容者において、自傷他害のおそれがある場合などであっても拘束具を使用してはならないとする法的根拠があると認めることはできない。また、Aが、保護室に入室させられ、両手後に第一種手錠を施され ている状況であるにもかかわらず、警備官らが退室するや、扉を蹴ったり、壁に体当たりをしたりするなどの行動を繰り返していたことは、前提事実に加え上記⑴で認定したとおりである。そして、これらの言動をしていたAが落ち着いたと警備官らが認めてから、1時間余りで本件手錠1の解錠がされていることからすると、本件手錠1の継続が戒具使用の要件に欠けていたと いうことはできないし、解錠の判断が、裁量権の逸脱や濫用 ち着いたと警備官らが認めてから、1時間余りで本件手錠1の解錠がされていることからすると、本件手錠1の継続が戒具使用の要件に欠けていたと いうことはできないし、解錠の判断が、裁量権の逸脱や濫用に当たるほどに遅く、必要最小限を超えた使用に当たるものであったと認めることもできない。 これに対し、参加人は、保護室内に損壊できるものがなく、監視がされているから、自傷他害や器物損壊のおそれがない旨主張する。しかし、力を込 め、Aがしたような体当たりを繰り返したりするような場合に自ら負傷したり、何らかの設備の損壊が生じたりするおそれがあることは明らかであるから、その主張を採用することはできない。また、参加人は、Aの言動は手錠を解錠しないことへの抗議であった旨主張するが、仮に、そのような主観的な意図がAにあったとしても、現に上記のようなおそれがある言動をしてい た以上、戒具使用の要件に欠けることにはならないから、その主張も採用することはできない。 2 争点2(本件手錠2の使用と継続に係る違法性)について⑴ 前記前提事実に加え、証拠(乙5、8、16~25、63の4~8,10~14,20、証人B統括)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認め られ、これに反する参加人の主張を採用することはできない。 ア Aは、平成29年12月20日(以下、イにかけて同日)午後5時33分頃から午後9時1分頃までにかけての間、前提事実⑵ウのような行為、すなわち、支給された弁当を保護室内にまき散らす、扉の窓に米飯を塗りつける、保護室の壁や扉を叩いたり、蹴ったりする、水飲み場を蹴るといった粗暴な行為を繰り返し、大声で叫んで、トイレットペーパーを要求し て、警備官がこれを搬入口から交付するや、これを投げつけるといっ る、保護室の壁や扉を叩いたり、蹴ったりする、水飲み場を蹴るといった粗暴な行為を繰り返し、大声で叫んで、トイレットペーパーを要求し て、警備官がこれを搬入口から交付するや、これを投げつけるといった言動をするなどした。また、上記の間、保護室の扉に排尿したりする行為もした。 午後9時9分頃、警備官らが保護室の扉を開け、入室しようとすると、Aは、大声で叫びながら警備官らに向かってくる様子をみせた。警備官ら は、Aを床にうつ伏せにさせると、「言うことを聞くのかどっちや」「大人しくするんかどっちや」などと言い、午後9時11分頃、Aに本件手錠2をした。 その後、警備官らは、午後9時24分頃までに、Aが落ち着いたと判断し、保護室を退室した。 イ警備官らは、午後9時58分頃及び午後10時53分頃、保護室に入室して第一種手錠の使用状況を確認した。これらの際、警備官らがAに、静かにできるか、大丈夫か、といった趣旨を尋ねたのに対し、Aは、午後9時58分頃の時点では無言のまま返事をせず、午後10時53分頃の時点では「触らないよ」などと言い、体を動かすなどして、不満ないし抗議の 意思を示した。 その後、Aは、午後11時43分頃から、保護室の扉を蹴り始め、叫んだり、後手の手錠のまま搬入口をこすったりした。そして、警備官らが入室し、何度同じことをするのか、(指示に)従わないのか、といった趣旨を述べるも、Aは、静かに落ち着くような様子をみせることはなく、かえ って、「殺していいよ」「(入管は)マフィアと一緒」「やっていいよ」 などと反発する発言を繰り返した。その上で、警備官らが、同月21日(以下、オにかけて同日)午前0時5分頃に退室すると、その直後から保護室の扉を蹴り始めた。午前0時11分頃、警備官ら などと反発する発言を繰り返した。その上で、警備官らが、同月21日(以下、オにかけて同日)午前0時5分頃に退室すると、その直後から保護室の扉を蹴り始めた。午前0時11分頃、警備官らが再び入室し、Aをうつ伏せにし、体の各部位を保持すると、Aは、大声で、「痛いよ、助けて」と大声で叫び続けるなどしたため、収容区域全体が騒然とした状況となり、 警備官らが非常ベルを発報する状況になった。 その後、警備官らは、午前0時59分頃までAの両足を保持するなどし、Aが落ち着いたと判断し、保護室を退室した。 ウ警備官らは、午前1時55分頃及び午前2時48分頃、保護室に入室して第一種手錠の使用状況を確認した。警備官らが入室するまで、Aは、横 になっていたり(なお、左腕を下にした体勢のときもあった。)、壁にもたれたりして静かに過ごしていた。Aは、午前1時55分頃の時点では静かに横たわったままであり、午前2時48分頃の時点では、警備官らから両腕を保持されて立たせられると抵抗し、「痛い、痛い」と大声をあげて室内を動き回るなどした。そのため、警備官らは、Aを止めようとして動 き回るAの両腕の保持をし続けたが、保持を止めるとAが着座したため、午前2時52分頃退室した。 その後、Aは、午前3時43分頃、警備官らが保護室に入室して第一種手錠の使用状況の確認をしようとすると、大声をあげて立ち上がり、保護室内を動き回ると、左半身から扉に強くぶつかるなどした。そして、警備 官らが、Aを落ち着かせ、午前3時45分頃に退室すると、Aは、大声をあげて扉を蹴った。 エその後、警備官らは、午前4時36分から午前10時50分頃にかけて、数十分ごとに保護室に入室し、第一種手錠の使用状況の確認をした。これらの訪室の際、Aは、眠ったり、着 声をあげて扉を蹴った。 エその後、警備官らは、午前4時36分から午前10時50分頃にかけて、数十分ごとに保護室に入室し、第一種手錠の使用状況の確認をした。これらの訪室の際、Aは、眠ったり、着座したりしながら静かに過ごしていた。 そして、警備官らの確認に対し、立ち上がったり、「こんな法律ないよ」 などと抗議の意思を示したり、保護室の扉に排尿したりする行為をしたことはあったが、それ以上に粗暴な言動をすることはなかった。 オ警備官らは、午前11時49分頃、本件手錠2を解錠し、Aを単独室に移動させた。 ⑵ 参加人は、争点2に係る参加人の主張アのとおり、手錠使用に違法性があ った旨主張するが、前提事実に加え上記⑴で認定したとおり、当時のAが、本件手錠1をされたり、保護室に移室させられたりした経緯がありながら、なお保護室内を叩いたり、蹴ったり、食事をまき散らしたり、警備官にトイレットペーパーを投げつけたり、扉に排尿したりするなどといった様々な行為をする興奮した状況が続いていた経緯があったことからすると、警備官ら が、Aに自傷他害のおそれがあり、戒具を使用しなければ制止が困難で、かつ、両手を前に動かすことが可能な前手錠では十分な制止ができないと判断したことに裁量権の逸脱や濫用はなかったというべきであり、かえってその判断は合理的なものであったと認めるのが相当である。 これに対し、参加人は、保護室内においては自傷他害や器物損壊のおそれ がない旨主張するが、その主張が採用できないことは、争点1で説示したとおりである。また、参加人は、警備官らは、警備官らの指示に従わない制裁として本件手錠2がされた旨主張するが、現にAが上記のような粗暴な言動を続けていた状況がある以上、そのような推認がされる状況にあ おりである。また、参加人は、警備官らは、警備官らの指示に従わない制裁として本件手錠2がされた旨主張するが、現にAが上記のような粗暴な言動を続けていた状況がある以上、そのような推認がされる状況にあったということはできず、その主張を採用することはできない。 ⑶ 他方、本件手錠2について、手錠使用の継続がされたことについてであるが、前提事実に加え上記⑴で認定したように、Aは、本件手錠2がされた平成29年12月20日午後9時11分頃以降、特段暴れたりすることなく2時間以上を過ごしていたこと、同日午後11時43分頃から再び扉を蹴ったり、叫んだりするようになったものの、同月21日午前0時59分頃に警備 官らが保護室から退室すると、警備官らが来た時に抵抗を示したことはあっ たものの、その余の2時間近くの時間は静かに過ごしていたこと、警備官らが来た同日午前3時43分頃から粗暴な言動をしたものの、警備官らが制圧すると数分ですぐに収まり、それ以降は、抗議の意思を示すことはあるものの、粗暴な言動をすることはなく、眠ったり、着座したりしながら静かに過ごしていたことが認められる。また、本件手錠2がされていたのは、通常、 被収容者が就寝する深夜の時間帯の出来事であったところ、上記で認定したように、Aは、同日午前0時59分頃に警備官らが退室した以降は、眠ったり、座ったりするなどして静かに過ごしていたのであって、警備官らに抗議の意思を示したり反発したりしたのは、警備官らが訪室したときに限られていたことが認められる。そして、戒具の使用を必要最小限の使用に止めるべ く、その使用要領は、連続して8時間を超えて使用する場合に所長等の承認を受けなければならないと定めているところ、本件手錠2は、同月20日午後9時11分頃の使用開始 必要最小限の使用に止めるべ く、その使用要領は、連続して8時間を超えて使用する場合に所長等の承認を受けなければならないと定めているところ、本件手錠2は、同月20日午後9時11分頃の使用開始から8時間となる同月21日午前5時11分頃をはるかに超え、使用開始から14時間以上が経過する同日午前11時49分頃まで行われたものであったし、8時間を超える同日午前5時11分頃の時 点において、上記認定説示したようなAの様子に関する情報が現場の警備官らと所長等の間で共有され、なお本件手錠2の使用を継続させるほどの状況にあるか否かについての慎重な判断自体がされていないことが認められる。 これらの事情からすると、同日午前0時59分頃以降、警備官らが訪室しない限りAが眠ったり座ったりするなどして静かに過ごしている時間が2時 間以上継続し、通常就寝している時間でもあったといえる同日午前5時45分頃以降の本件手錠2の使用は、自傷他害や器物損壊のおそれがあったとまでいえない状況で継続された過剰な戒具使用であったと認めるのが相当である。また、仮に、同時刻頃以降の本件手錠2の使用の是非に係る判断について、所長等に一定の裁量権があることを前提にその合理性を判断しようとし ても、そもそも同時刻頃の時点で所長等による判断自体が的確にされていな いのであるから、その裁量判断に合理性があると認めることもできない。これらの点を考慮すると、同時刻頃以降、警備官らがAに対して本件手錠2の使用を継続し続けたことは、自傷他害や器物損壊のおそれといった一定の要件があることを前提に、必要最小限度の範囲でのみ戒具使用ができると定めた処遇規則19条1項に反する違法があったと認めるのが相当である。 ⑷ これに対し、参加人は、同月20日午後9時 定の要件があることを前提に、必要最小限度の範囲でのみ戒具使用ができると定めた処遇規則19条1項に反する違法があったと認めるのが相当である。 ⑷ これに対し、参加人は、同月20日午後9時11分頃以降の本件手錠2の使用継続の全てについて、戒具使用の要件に欠ける違法なものであったことを前提とする主張をする。 しかし、そもそもAが、一度本件手錠1をされ、保護室に移室されたという経緯がありながら、再び上記⑴に認定したような粗暴な言動を行っていた という経緯があり、その経緯やAの言動自体から、自傷他害や器物損壊のおそれが高いといい得る状況にあったといえることからすると、警備官らが、Aが落ち着きを取り戻したと認識できてから2時間余り程度の時間をかけてAの様子を観察し、上記のおそれがなくなったかを慎重に見極めをしようと判断したことが違法であるということはできない。そして、現に、Aが、同 日午後11時43分頃から再び扉を蹴るなどし始めていたことや、警備官らが訪室したのを機にした言動であったとはいえ、同月21日午前3時45分頃の時点でも大声をあげ、扉に強くぶつかったり、扉を蹴ったりして、自傷他害のおそれを基礎づけるような言動があったことからすると、警備官らがかかる言動が収まって2時間程度の時間にわたる観察と見極めをしようとし たことが、裁量権を逸脱したり濫用したりしたといえるほどの違法な対応であったとまでいうこともできない。 したがって、参加人の上記主張を採用することはできない。 ⑸ 他方、被告は、同月21日午前5時45分頃以降の本件手錠2の使用についても違法ではなかったとして、その時点でも、Aが、警備官らの指示に従 う旨の意思表示をせず、反抗的な態度をとっていたから戒具使用の要件を満 午前5時45分頃以降の本件手錠2の使用についても違法ではなかったとして、その時点でも、Aが、警備官らの指示に従 う旨の意思表示をせず、反抗的な態度をとっていたから戒具使用の要件を満 たしていた旨主張し、B統括が同旨の証言をする。 しかし、Aが、同日午前0時59分頃以降に抗議の意思を示したり、反発したりしたのが警備官らの訪室時に限られていて、その余の時間を、眠ったり、座ったりして静かに過ごしていたことや、その事情に係る情報が現場の警備官らと所長等の間で共有されず、慎重な判断がされていなかったことは 前記⑶で認定判示したとおりである。また、そもそもAが警備官らの指示に従う旨の意思表示をしないことや、訪室した警備官らに反抗的な態度を示すことは、それ事情のみでは本件手錠2の使用を正当化させる事情に当たるとまでいえない。なお、B統括は、当時のAの表情が怒りに満ちたものであったことや、人的態勢が手薄な深夜帯であり、警備官らがAへの対応で相当な 疲弊をしていた状況があったことなども証言している。しかし、このような被収容者の客観的な言動ではない事情を根拠に第一種手錠の長時間使用の是非を判断しようとするのであれば、判断権者との間で適時適切な情報の共有とその情報に基づく慎重な判断が一層求められるといえるのであって、その判断自体がされていない本件において、かかる事情を重視した判断をするこ とはできない。そして、以上の事情を考慮してもなお同日午前3時45分頃以降のAに、警備官らが容易に制圧できないほどに粗暴な言動があったとまで認めるに足りる証拠はない。 したがって、被告の上記主張やB統括の証言を採用することはできない。 3 争点3(警備官らが暴行し、負傷させたか)について ⑴ 参加人は、 とまで認めるに足りる証拠はない。 したがって、被告の上記主張やB統括の証言を採用することはできない。 3 争点3(警備官らが暴行し、負傷させたか)について ⑴ 参加人は、争点3に係る参加人の主張アのとおり、警備官らがした平成29年12月21日午前0時11分頃と同日午前2時48分頃にした左腕等の保持が違法な暴行であり、その結果Aが負傷した旨主張する。 しかし、警備官らがした上記の各保持が、Aが大声をあげて保護室内を動き回ろうとするなどしたためにされたものであったことは、争点2について 前記2⑴で認定したとおりである。また、前者の保持は、結果的に約48分 もの間継続しているのであるが、その原因は、Aの興奮状態が続いていたためであったと推認されるし(騒然とし、他の被収容者の監視や対応も要する状況にあった中、Aの興奮状態が収まっていながら、多数の警備官らが不必要な保持を続けていたと解することは困難である。)、後者の保持はわずか4分間程度であったことからすれば、これらの保持が不必要に過剰なもので あったとにわかに認めることはできないし、そのように認定できるだけの証拠もない。そして、これらの保持が、Aが診断された左上腕骨骨幹部骨折及び左手打撲(前提事実⑵オ)の原因になったかであるが、これらの保持が、Aの行動を制止させる目的で、警備官らがその職務上習得した方法によってされたものであったことや、これらの保持に際し、警備官らが、Aの左手や 左腕を強打するような行動をしたことを認めるに足りる証拠はない。かえって、Aは、これら2度の保持以外に、保護室に収容されている中で、自ら壁に向かって左肩から2回体当たりをし、壁に向かって左腕を1回ぶつけたりし(前記1⑴ウ)、左腕を下にして寝ていたりし(前 い。かえって、Aは、これら2度の保持以外に、保護室に収容されている中で、自ら壁に向かって左肩から2回体当たりをし、壁に向かって左腕を1回ぶつけたりし(前記1⑴ウ)、左腕を下にして寝ていたりし(前記2⑴ウ)、参加人が指摘する同日午前2時48分頃以降である同日午前3時43分頃にも、保護 室内を動き回り、左半身から扉に強くぶつかってみたりしていた(前記2⑴ウ)という状況にあったことが認められるし、そもそもAが、参加人が主張する各保持が解除されたときに、左腕等の痛みを警備官らに申告したという経緯も認められない。 これらの事情を考慮すると、参加人が主張する警備官らのした2度の保持 が違法な暴行であり、それによりAが負傷したという事実を認めることはできない。 ⑵ これに対し、参加人は、当該2度の保持の際、Aが痛いと言っていたことを指摘し、他に受傷の原因が見当たらない旨主張するが、Aが、当該保持の際、左上肢が痛いと申告していた事実までは認められないし、上記⑴で認定 説示したように、A自身が左腕等に衝撃を与える行動をしていた経緯が認め られる以上、参加人の主張を採用することはできない。 4 争点4(損害および額)について争点2で認定判示したとおり、警備官らがAに対し、平成29年12月21日午前5時45分頃を超えて同日午前11時49分頃まで6時間以上にわたり本件手錠2の使用を継続させたことは、戒具使用の要件を満たさない違法な身体 拘束に当たる対応であったといえる。 両手後に第一種手錠を施す態様でされた本件手錠2(前提事実⑵ウ)が、Aの身体の自由を妨げるものであることは明らかであるところ、その態様は、飲食や排せつに支障をもたらすもので、安静に過ごすこと自体に支障になるものであるから 態様でされた本件手錠2(前提事実⑵ウ)が、Aの身体の自由を妨げるものであることは明らかであるところ、その態様は、飲食や排せつに支障をもたらすもので、安静に過ごすこと自体に支障になるものであるから、長時間の使用によってAが相応の肉体的、精神的苦痛を受けたであろう ことは容易に推認されるといえる。 このような本件手錠2の違法な使用について、その継続時間や使用の態様を考慮すると、被告には、Aに対し、上記の苦痛に対する慰謝料として10万円の支払義務があると認めるのが相当である。また、本件事案の内容に照らすと、Aには、その請求に係る弁護士費用として、認容額の1割相当である1万円の支払 義務もあると認めるのが相当である。 5 結論以上によれば、参加人の請求は、主文第1項の限度で理由があるから同限度で認容し、その余の請求は理由がないからこれを棄却することとし、仮執行宣言は相当でないからこれを付さないこととして、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第17民事部 裁判長裁判官堀部亮一 裁判官上寺紗也佳 裁判官葛󠄀西功洋は、てん補のため、署名押印することができない。 裁判長裁判官堀部亮一 関係法令の定め(いずれも平成29年12月20日当時のもの)第1 出入国管理及び難民認定法第61条の7(被収容者の処遇) 1 入国者収容所又は収容場(以下「入国者収容所等」という。)に収容されている者(以下「被収容者」という。)には、入国者収容所等の保安上支障 がない範囲内においてできる限りの自由が与えられなければならない。 容所又は収容場(以下「入国者収容所等」という。)に収容されている者(以下「被収容者」という。)には、入国者収容所等の保安上支障 がない範囲内においてできる限りの自由が与えられなければならない。 2項ないし5項略 6 前各項に規定するものを除く外、被収容者の処遇に関し必要な事項は、法務省令で定める。 第69条(政令等への委任) 第二章からこの章までの規定の実施のための手続その他その執行について必要な事項は、法務省令(市町村の長が行うべき事務については、政令)で定める。 第2 被収容者処遇規則第7条(遵守事項) 1 収容所等の安全と秩序を維持するため及び収容所等における生活を円滑に行わせるため必要な被収容者の遵守すべき事項(以下「遵守事項」という。)は、次のとおりとする。 一逃走し、又は逃走することを企てないこと。 二自損行為をし、又はこれを企てないこと。 三他人に対し危害を加え、又は危害を加えることを企てないこと。 四他人に対する迷惑行為をしないこと。 五収容所等の設備、器具その他の物を損壊をしないこと。 六許可を得ないで、外部の者との物品の接受をしないこと。 七凶器、発火物その他の危険物を所持、使用しないこと。 八職員の職務執行を妨害しないこと。 九整理整とん及び清潔の保持に努めること。 2 所長等は、前項のほか、収容所等の実情に応じ、法務大臣の認可を受けて遵守事項を定めることができる。 3 所長等は、新たに収容される者を収容所等に収容するときは、遵守事項をあらかじめその者に告知しなければならない。 4 入国警備官は、被収容者に対し、遵守事項を遵守させるため必要な指導を行うことができる。 第17条の2(制止等の措置)入国警 は、遵守事項をあらかじめその者に告知しなければならない。 4 入国警備官は、被収容者に対し、遵守事項を遵守させるため必要な指導を行うことができる。 第17条の2(制止等の措置)入国警備官は、被収容者が遵守事項に違反する行為をし、又は違反する行為をしようとする場合には、その行為の中止を命じ、合理的に必要と判断される 限度で、その行為を制止し、その他その行為を抑止するための措置をとることができる。 第18条(隔離) 1 所長等は、被収容者が次の各号の一に該当する行為をし、又はこれを企て、通謀し、あおり、そそのかし若しくは援助した場合は、期限を定め、その者 を他の被収容者から隔離することができる。この場合において、所長等は、当該期限にかかわらず、隔離の必要がなくなつたときは、直ちにその隔離を中止しなければならない。 一逃走、暴行、器物損壊その他刑罰法令に触れる行為をすること。 二職員の職務執行に反抗し、又はこれを妨害すること。 三自殺又は自損すること。 2 前項に規定する場合において、所長等の命令を受けるいとまがないときは、入国警備官は、自ら当該被収容者を他の被収容者から隔離することができる。 3 入国警備官は、前項の規定による隔離を行つたときは、速やかに所長等に 報告しなければならない。 第19条(戒具の使用) 1 所長等は、被収容者が次の各号の一に該当する行為をするおそれがあり、かつ、他にこれを防止する方法がないと認められる場合は、必要最小限度の範囲で、入国警備官に、当該被収容者に対して戒具を使用させることができる。ただし、所長等の命令を受けるいとまがないときは、入国警備官は、自 ら戒具を使用することができる。 一逃走すること。 二自己又は他人に危害を加 収容者に対して戒具を使用させることができる。ただし、所長等の命令を受けるいとまがないときは、入国警備官は、自 ら戒具を使用することができる。 一逃走すること。 二自己又は他人に危害を加えること。 三収容所等の設備、器具その他の物を損壊すること。 2 入国警備官は、前項ただし書の規定により戒具を使用したときは、速やか に所長等に報告しなければならない。 第20条(戒具の種類) 1 戒具は、次の四種類とする。 一第一種手錠二第二種手錠 三第一種捕じよう四第二種捕じよう 2 戒具の制式は、別表(略)のとおりとする。 第3 戒具の使用要領の定め(戒具の使用要領は、被収容者処遇規則第19条及び第20条等に規定する戒具の使用を適正に行うための運用方針として定められ たものである。)第1章第1節収容時の使用1ないし3 略 4 緊急時の使用 (1)入国警備官は、被収容者に対し戒具を使用する必要があり、所長等の命令を受けるいとまがないときは、戒具を使用した後、直ちに処遇担当統括に報告の上、速やかに所長等に報告しなければならない。 (2)所長等は、上記(1)の戒具の使用が適正を欠くと認めたときは、処遇担当統括に対して使用の解除又は使用方法の変更を命じなければならな い。 (3)略 5 使用後の措置(1)処遇担当統括は、戒具を使用した被収容者について、規則第18条の規定に基づき隔離するときは、隔離のための居室(保護室を含む。)へ移 室後、後記(2)に該当する場合を除き、戒具の使用を解除するものとする。 (2)所長等は、隔離中の被収容者に対しては、次のいずれかに該当する行為をするおそれがある場合で、かつ、他にこれを防止することができない )に該当する場合を除き、戒具の使用を解除するものとする。 (2)所長等は、隔離中の被収容者に対しては、次のいずれかに該当する行為をするおそれがある場合で、かつ、他にこれを防止することができないと認められるときに限り、入国警備官に戒具を使用させることができる。 ただし、この場合においては、所長等は、処遇担当統括に指揮をさせて戒具を使用させるものとする。 ア自殺又は自損イ入国警備官等の職員に対する暴行ウ施設等の損壊 (3)入国警備官は、戒具を使用するときは、特に被収容者の心身の状況に留意し、1時間に1回以上、手首、腰部等の緊縛部位について異状の有無を確認するとともに、異状を発見した場合は、必要に応じて医師の診察を受けさせなければならない。 (4)入国警備官は、戒具を使用するときは、必要最小限の使用に止め、戒具を連続して8時間を超えて使用するときは、8時間ごとに所長等の承認を受けなければならない。 第2章第2節手錠の操法 1 略 2 第一種手錠(1)(2) 略(3)留意事項ア略イ両手錠の場合、手の位置は、暴行、自殺又は自損のおそれなど特別 な理由がない限り両手前とし、あらかじめ被収容者等の利き腕を把握しているときは、利き腕からかけ、手錠の鍵穴を被収容者等の腹部に向けるように施す。 ただし、両手前では、暴行、自殺又は自損を制止することが困難と認められる場合は、両手後とし、手錠の鍵穴を外側に向けるよう施 す。 ウ、エ略 す。 ウ、エ略
▼ クリックして全文を表示