平成29年9月7日判決言渡平成26年(行ウ)第298号所得税更正処分取消請求事件 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 A税務署長が平成24年12月25日付けで原告に対してした,平成21年分の所得税の更正処分のうち還付金の額に相当する税額460万0977円を超えない部分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。 2 A税務署長が平成24年12月25日付けで原告に対してした,平成22年分の所得税の更正処分のうち還付金の額に相当する税額598万1231円を超えない部分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。 3 A税務署長が平成24年12月25日付けで原告に対してした,平成23年分の所得税の更正処分のうち還付金の額に相当する税額2707万9520円を超えない部分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分を取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,平成21年分から平成23年分まで(以下「本件各年分」という。)の所得税について確定申告をしたところ,A税務署長が,平成24年12月25日付けで,原告に対し,①本件各年分の所得税に係る更正処分(以下「本件各更正処分」という。),②本件各年分の所得税に係る過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件各過少申告加算税賦課決定処分」という。)及び③平成23年分の所得税に係る重加算税の賦課決定処分(以下「本件重加算税賦課決定処分」という。)をしたことから,本件各更正処分(ただし,原告がした申告における還付金の額に相当する税額を超えない部分)並びに本件各過少申告加算 税賦課決定処分及び本件重加算税賦課決定処分の取消しを求める事案である。 1 関係法 (ただし,原告がした申告における還付金の額に相当する税額を超えない部分)並びに本件各過少申告加算 税賦課決定処分及び本件重加算税賦課決定処分の取消しを求める事案である。 1 関係法令の定め(1) 所得税法26条2項は,不動産所得の金額は,その年中の不動産所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする旨規定する。 同法37条1項は,その年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,当該所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費,一般管理費その他当該所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする旨規定する。 (2) 国税通則法(ただし,平成28年法律第15号による改正前のもの。以下同じ。)65条1項は,期限内申告書が提出された場合において,修正申告書の提出又は更正があったときは,当該納税者に対し,その修正申告又は更正に基づき同法35条2項の規定により納付すべき税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する旨規定し,同法65条4項は,同条1項又は2項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となった事実のうちにその修正申告又は更正前の税額(還付金の額に相当する税額を含む。)の計算の基礎とされていなかったことについて正当な理由があると認められるものがある場合には,これらの項に規定する納付すべき税額からその正当な理由があると認められる事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除して,これらの項の規定を適用する旨規定する。 (3) 国税通則法68条1項は,同法65条1項(過少申告加算税) あると認められる事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除して,これらの項の規定を適用する旨規定する。 (3) 国税通則法68条1項は,同法65条1項(過少申告加算税)の規定に該当する場合において,納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し,又は仮装し,その隠蔽し,又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは,当該納税者に対 し,政令で定めるところにより,過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る過少申告加算税に代え,当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する旨規定する。 2 前提となる事実(当事者間に争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。以下,書証番号は特に断らない限り枝番号を含む。)(1) 確定申告書の提出等(甲1~3,10,24,乙1~6,27)ア原告は,平成21年から平成23年までの間,α市β所在の各建物(以下「本件各建物」という。)を賃貸することにより,別表1-1から1-3までの「①確定申告額」欄の「総収入金額」欄の金額のとおり,賃貸料収入を得ていた(以下,本件各建物の賃貸業務を「本件業務」という。)。 なお,原告は,本件各年分の所得税について,所得税法143条に規定する確定申告書を青色の申告書により提出することについての所轄税務署長の承認を受けていない,いわゆる白色申告者であった。 イ原告は,平成22年2月28日,A税務署長に対し,平成21年分の所得税に係る確定申告書を提出し,平成22年3月1日,同税務署長に対し,「所得税青色申告決算書(不動産所得用)」を提出した。 上記確定申告における 28日,A税務署長に対し,平成21年分の所得税に係る確定申告書を提出し,平成22年3月1日,同税務署長に対し,「所得税青色申告決算書(不動産所得用)」を提出した。 上記確定申告における不動産所得の損益計算は,別表1-1の「①確定申告額」欄記載のとおりである(本件訴訟においては,別表1-1の各項目のうち,地代家賃,修繕費,リース料,通信費,旅費交通費及びその他の経費につき必要経費該当性に争いがある。)。 ウ原告は,平成23年3月14日,A税務署長に対し,平成22年分の所得税に係る確定申告書及び「平成22年分収支内訳書(不動産所得用)」を提出した。 上記確定申告における不動産所得の損益計算は,別表1-2の「①確定申告額」欄記載のとおりである(本件訴訟においては,別表1-2の各項 目のうち,地代家賃,損害保険料,修繕費,外注費及び雑費につき必要経費該当性に争いがある。)。 エ原告は,平成24年2月13日,A税務署長に対し,平成23年分の所得税に係る確定申告書及び「平成23年分収支内訳書(不動産所得用)」を提出した。 上記確定申告における不動産所得の損益計算は,別表1-3の「①確定申告額」欄記載のとおりである(本件訴訟においては,別表1-3の各項目のうち,貸倒金,地代家賃及び雑費につき必要経費該当性に争いがある。 以下,本件各年分の必要経費につき争いのある部分を総称して「本件地代家賃等」という。)。平成23年分の上記貸倒金(以下「本件貸倒金」という。)は,平成23年8月31日に破産手続開始決定を受け,同年12月21日に破産手続廃止決定が確定した株式会社B(平成23年3月18日の変更前の商号は「C株式会社」である。以下,商号変更の前後を問わず「本件会社」という。)に対する前 手続開始決定を受け,同年12月21日に破産手続廃止決定が確定した株式会社B(平成23年3月18日の変更前の商号は「C株式会社」である。以下,商号変更の前後を問わず「本件会社」という。)に対する前払金についてのものである。また,原告は,上記確定申告において,本件会社からの6000万円の給与収入(以下「本件給与」という。)及びこれに係る源泉徴収税額2272万1760円を計上していたが,上記源泉徴収税は,本件会社から納付されていない。 (2) 本件各更正処分等(甲4~6)A税務署長は,平成24年12月25日付けで,原告に対し,本件各更正処分,本件各過少申告加算税賦課決定処分及び本件重加算税賦課決定処分(以下,併せて「本件各更正処分等」という。)をした。 (3) 不服申立て(甲7~10)ア原告は,平成25年2月22日付けで,A税務署長に対し,本件各更正処分等を不服として異議申立てをしたが,同税務署長は,同年5月21日付けで,原告の異議申立てをいずれも棄却する旨の決定をした。 イ原告は,平成25年6月26日付けで,国税不服審判所長に対し,上記異議決定を不服として審査請求をしたが,国税不服審判所長は,平成26年6月24日付けで,原告の審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をした(なお,原告の確定申告から上記裁決までの課税の経緯は,別表2「課税の経緯」記載のとおりである。)。原告は,同月28日頃,上記裁決の裁決書謄本の送達を受けた。 (4) 本件訴訟の提起(顕著な事実)原告は,平成26年12月26日,本件訴訟を提起した。 3 主たる争点及び当事者の主張本件の主たる争点は,①本件地代家賃等の金額は,原告の本件各年分に係る不動産所得の計算上,必要経費に算入するこ 6年12月26日,本件訴訟を提起した。 3 主たる争点及び当事者の主張本件の主たる争点は,①本件地代家賃等の金額は,原告の本件各年分に係る不動産所得の計算上,必要経費に算入することができるか(争点①),②本件貸倒金及び本件給与は架空のものであって,原告の平成23年分の所得税の申告は,事実を隠蔽又は仮装し,その隠蔽又は仮装したところに基づくものか否か(争点②),③平成21年分及び平成22年分の過少申告について,国税通則法65条4項の「正当な理由」があるか否か(争点③)である。 (1) 本件地代家賃等の金額は,原告の本件各年分に係る不動産所得の計算上,必要経費に算入することができるか(争点①)(被告の主張)ア必要経費の判断基準及び立証責任等(ア) ある支出が所得税法37条1項の必要経費として総収入金額から控除され得るためには,客観的にみてそれが当該事業の業務と直接関係を持ち,かつ,業務の遂行上通常必要な支出であることを要し,その判断は当該事業の業務内容など個別具体的な諸事情に即し社会通念に従って実質的に行われるべきである。 (イ) そして,課税処分取消訴訟においては,課税標準となる所得を生じさせる収入金額及び必要経費の双方について,原則として,処分者である 課税庁に主張立証責任があるものとされている。しかし,一般に必要経費は原告にとって有利な事柄であり,原告の支配領域内の出来事であって,その主張立証は原告の方が課税庁に比べはるかに容易であるから,原告において必要経費該当性を積極的に主張立証しないということは,事情によっては,当該経費の不存在について事実上の推定が働くものというべきであり,原告が,必要経費の具体的内容を明らかにし,ある程度これ において必要経費該当性を積極的に主張立証しないということは,事情によっては,当該経費の不存在について事実上の推定が働くものというべきであり,原告が,必要経費の具体的内容を明らかにし,ある程度これを合理的に裏付ける程度の立証をしなければ,上記の推定を覆すことはできないというべきである。 原告は,平成21年分の修繕費,リース料,通信費,旅費交通費及びその他の経費,並びに平成22年分の損害保険料,修繕費,外注費及び雑費について,その証拠書類が平成23年1月5日の火災(以下「本件火災」という。)により焼失したとして,これらの必要経費該当性については,上記の推定の前提を欠く旨主張する。しかし,上記書類を紛失した原因等に係る原告の供述は,合理的な理由なく変遷しており,これを信用することはできず,他にその支出の事実を認めるに足りる的確な証拠もないから,原告が上記の各経費を支出した事実は認められない。 また,仮に,上記支出の事実があったとしても,原告は,支出の相手方からの協力を得て改めて証拠を収集することは可能であるのに,上記支出が本件業務と直接の関係を持ち,業務の遂行上必要な支出であることについて具体的な立証を行わないのであるから,上記支出は必要経費に該当しないと事実上推定され,この推定は覆されない。 イ本件各年分の地代家賃原告は,D(平成21年1月から平成23年5月まで)及びE(同年6月から12月まで)を賃借し,本件業務に係る事務所及び記録保管庫として使用していたと主張し,その地代家賃(平成21年分152万8800円,平成22年分152万8800円,平成23年分200万0500円) を本件各年分の必要経費に計上する。 しかし,原告は,D及びEに係る本件各年分の地代家賃が,本件業務 円,平成22年分152万8800円,平成23年分200万0500円) を本件各年分の必要経費に計上する。 しかし,原告は,D及びEに係る本件各年分の地代家賃が,本件業務と直接の関係を持ち,業務の遂行上必要な支出であることについて,ある程度合理的に裏付けるに足りる具体的立証を行っていないから,同地代家賃が必要経費に該当しないことが事実上推定され,この推定は覆されない(なお,原告が提出したDの不動産賃貸借契約証書等の証拠(甲26~30)は,本件業務との直接関連性及び業務遂行上の必要性を立証するものではないし,その証拠の一部には不自然な点がある。)。したがって,上記地代家賃の金額は,不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入することができない。 ウ平成21年分及び平成22年分の修繕費原告は,平成21年分の修繕費(367万5000円)及び平成22年分の修繕費(350万円)を必要経費として計上するところ,これらの修繕費につき,本件各建物の補強又は倒壊防止のための修繕工事を有限会社F(以下「F」という。)に依頼した際の工事代金である旨主張するようである(甲8,10)。 しかし,この点に関する原告の供述(甲10)は,支出の内訳等の具体的内容を明らかにしないものであり,他に上記各支出を認めるに足りる的確な証拠もない。かえって,Fの代表取締役であるGは,原告から上記修繕工事を請け負ったことはない旨明確に回答しており,その供述に不自然な点も見当たらない。したがって,原告が上記修繕費を支出していないことが認められ,上記修繕費の金額は,不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入することができない。 エ平成21年分のリース料原告は,平成21年において,本件業 いないことが認められ,上記修繕費の金額は,不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入することができない。 エ平成21年分のリース料原告は,平成21年において,本件業務のために自動車1台を利用していたとして,そのリース料(109万6200円)を必要経費に計上する。 しかし,原告がリース契約に係る自動車を本件業務の用に供していたか否かは不明であって,原告は,平成21年分のリース料が本件業務と直接の関係をもち,業務の遂行上必要な支出であることについて何ら具体的に立証していない。したがって,上記リース料の支出は必要経費に該当しないと事実上推定され,この推定は覆されないから(本件火災による証拠書類の焼失の主張については上記ア(イ)のとおり。),上記リース料の金額は,不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入することができない。 オ平成21年分の通信費原告は,平成21年において,本件業務のために携帯電話を使用していたとして,その通信費(7万7215円)を必要経費に計上する。 しかし,上記通信費に係る携帯電話は,本件各建物が解体され本件業務が終了した後においても継続して使用されており,当該携帯電話は本件業務と関係なく使用されていたものと認められ,そもそも本件業務の遂行上の必要性が認められない。したがって,上記通信費の支出は必要経費に該当しないと事実上推定され,この推定は覆されないから(本件火災による証拠書類の焼失の主張については上記ア(イ)のとおり。),上記通信費の金額は,不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入することができない。 カ平成23年分の貸倒金(本件貸倒金)原告は,平成23年分の不動産所得に係る必要経費として,貸倒金33 は,不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入することができない。 カ平成23年分の貸倒金(本件貸倒金)原告は,平成23年分の不動産所得に係る必要経費として,貸倒金3300万円(本件貸倒金)を計上するが,後記(2)(被告の主張)のとおり,本件貸倒金は架空に計上されたものと認められるから,本件貸倒金は,不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入することができない。 なお,本件各建物の敷地の譲渡を目的として本件各建物の解体工事(以下「本件解体工事」という。)を行ったという原告の主張を前提とすれば,その経費は本件業務の必要経費には該当しないこととなる。 キ平成23年分の雑費 原告は,平成23年分の不動産所得に係る雑費として974万4513円を計上し,その裏付けとなる資料として平成23年分の不動産所得に係る総勘定元帳(乙11。以下「本件元帳」という。)を提出する。しかし,平成23年末に雑費に振り替えられる前の勘定科目別にみると,①水道光熱費(36万2014円),②車両費(46万1969円),③リース料(46万7250円)については,税務調査の結果によっても,本件業務との直接の関係性及び業務遂行上の必要性を確認することができない。また,④消耗品費(141万5476円)については,別表3-1のとおり,⑤旅費交通費(88万0584円)については,別表3-2のとおり,⑥通信費(57万1005円)については,別表3-3のとおり,⑦接待交際費(107万6793円)については,別表3-4のとおり,⑧その他の雑費(441万1077円のうち114万5500円を除く部分)については,別表3-5のとおり,いずれも不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入することができない。 ク平成2 り,⑧その他の雑費(441万1077円のうち114万5500円を除く部分)については,別表3-5のとおり,いずれも不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入することができない。 ク平成21年分の旅費交通費及びその他の経費並びに平成22年分の損害保険料,外注費及び雑費原告は,平成21年分の不動産所得に係る必要経費として,旅費交通費(30万9392円)及びその他の経費(119万6730円)を計上し,平成22年分の不動産所得に係る必要経費として,損害保険料(12万9530円),外注費(169万6981円)及び雑費(606万5972円)を計上する。 しかし,原告は,これらの経費の支出が本件業務と直接の関係をもち,業務の遂行上必要な支出であることについて何ら具体的に立証していない。 したがって,これらの経費の支出は必要経費に該当しないと事実上推定され,この推定は覆されないから(本件火災による証拠書類の焼失の主張については上記ア(イ)のとおり。),これらの経費の金額は,不動産所得の 金額の計算上,必要経費に算入することができない。 (原告の主張)ア必要経費の判断基準及び立証責任等(ア) 所得税法37条1項は,いわゆる一般対応の必要経費につき業務との直接の関連性を要求しておらず,これを必要とする被告の主張は誤りである(東京高等裁判所平成24年9月19日判決・判タ1387号190頁参照)。 (イ) 被告は,必要経費の主張立証は原告の方がはるかに容易であることを必要経費の不存在に係る事実上の推定の根拠とするところ,平成21年分の修繕費,リース料,通信費,旅費交通費及びその他の経費,並びに平成22年分の損害保険料,修繕費,外注費及び雑費については ることを必要経費の不存在に係る事実上の推定の根拠とするところ,平成21年分の修繕費,リース料,通信費,旅費交通費及びその他の経費,並びに平成22年分の損害保険料,修繕費,外注費及び雑費については,その証拠書類が平成23年1月5日の本件火災により焼失したから(甲16),上記の推定の前提を欠いている。このような不可抗力による証拠書類の滅失をもって必要経費を否認することは,公序良俗に反し無効である。 イ本件各年分の地代家賃原告は,D及びEを,本件業務に係る事務所又は記録保管庫として利用し,当該物件内で本件各建物に関する大量の書類の保管や不動産に関するインターネット調査などをしていたから,その地代家賃は必要経費に算入されるべきである。 原告は,自ら代表取締役を務める株式会社Hから,本件業務の事務所としてDの一室を賃借し,その賃料を役員報酬から控除していたものであり,このことは,平成19年分及び平成20年分の確定申告書(甲14,15)を比較すれば容易に証明し得るし,不動産賃貸借契約証書(甲26,27)及び同社の給与明細書(甲28~30)からも裏付けられる。 ウ平成21年分及び平成22年分の修繕費 本件火災による証拠書類の焼失の主張については上記ア(イ)のとおり。 被告が指摘するFのGの供述(乙43)については,原告とGが良好な関係ではないことなどに照らし,信用性がない。 エ平成21年分のリース料本件火災による証拠書類の焼失の主張については上記ア(イ)のとおり。 原告は,上記リース料が自動車のリース料であることを説明しており,処分行政庁はリース会社からその実態を調査済みである。自動車1台は,本件各 主張については上記ア(イ)のとおり。 原告は,上記リース料が自動車のリース料であることを説明しており,処分行政庁はリース会社からその実態を調査済みである。自動車1台は,本件各建物を管理する上で必要なものである。 オ平成21年分の通信費本件火災による証拠書類の焼失の主張については上記ア(イ)のとおり。 原告は,上記通信費の大半が電話料金であることを説明しており,電話等の通信手段は,本件各建物を管理する上で必要なものである。 カ平成23年分の貸倒金(本件貸倒金)本件貸倒金は,後記(2)(原告の主張)のとおり,架空に計上されたものではない。 キ平成23年分の雑費平成23年分の雑費は,いずれも本件業務について生じた費用であり,必要経費に算入されるべきである。特に,クレジットカードの明細書に記載のあるものは,何の対価として支払われたものであるかはおおむね把握可能であり,一律に必要経費該当性を否定するのは相当でない。 ク平成21年分の旅費交通費及びその他の経費並びに平成22年分の損害保険料,外注費及び雑費本件火災による証拠書類の焼失の主張については上記ア(イ)のとおり。 原告は,これらの経費の証拠書類を示すことはできないが,これらの経費は本件業務の必要経費として認められるべきである。 (2) 本件貸倒金及び本件給与は架空のものであって,原告の平成23年分の所 得税の申告は,事実を隠蔽又は仮装し,その隠蔽又は仮装したところに基づくものか否か(争点②)(被告の主張)ア本件貸倒金原告は,平成23年1月下旬頃,本件 得税の申告は,事実を隠蔽又は仮装し,その隠蔽又は仮装したところに基づくものか否か(争点②)(被告の主張)ア本件貸倒金原告は,平成23年1月下旬頃,本件各建物の解体工事(本件解体工事)及び宅地造成工事(以下,本件解体工事と併せて「本件解体造成工事」という。)を本件会社に発注し,その代金を同月分から同年4月分までの本件会社からの給与(本件給与)から月825万円ずつ相殺して前払したが,本件会社が破産したため,原告においてその貸倒処理を行ったと主張して,本件貸倒金3300万円を平成23年分の不動産所得に係る必要経費として計上する。 しかし,①本件会社に本件解体造成工事を行う能力はなく,その能力のないことを前提として本件会社に本件解体造成工事を依頼した旨の原告の主張が不自然かつ不合理であること,②原告が本件会社に工事代金を支払った旨記載された各預り証(乙12の1~12の4。以下「本件各預り証」という。)の内容が不自然であり(本件各預り証はいずれも「株式会社B」名義で作成されているが,本件各預り証のうち2通の作成日付は,本件会社の商号が「株式会社B」に変更される前のものである。),原告が工事代金を前払したこと自体信用し難いこと,③原告が提出する本件会社作成の見積書(甲18)は,その提出された経緯や内容が不自然であること,④本件会社は,本件解体工事に着手しておらず,その発注もしていないこと,⑤本件解体工事の経緯に係る原告の主張は客観的な事実と矛盾するなど不自然であること,⑥本件会社の破産事件において,債権者一覧表(乙26)に原告の氏名はなく,本件会社及びその破産管財人は,原告について,本件会社に対して債権を有する者と認識していなかったこと等からすると,原告は,本件解体造成工事を 事件において,債権者一覧表(乙26)に原告の氏名はなく,本件会社及びその破産管財人は,原告について,本件会社に対して債権を有する者と認識していなかったこと等からすると,原告は,本件解体造成工事を本件会社に発注していないにもかかわ らず,これを発注したかのように偽装したものと認められる。したがって,本件貸倒金は架空に計上されたものである。 イ本件給与について原告は,平成23年分の所得税の確定申告において,本件会社からの給与6000万円(本件給与)を計上する。 しかし,①本件給与の額(月1500万円)が不自然に高額である一方,実際に原告が受け取っていたとする現金の額(月6万6400円)が不自然に低額であること,②本件給与の支払に関する原告の主張及び供述が変遷していること,③源泉徴収票(乙7)に記載されている源泉徴収税額2272万1760円と,本件給与に係る明細書(乙8の1~4)に記載されている源泉徴収税額の合計額2273万4400円が一致しないこと等からすると,原告は,本件給与が支給されていないにもかかわらず,その支給を受けたかのように偽装したものと認められる。したがって,本件給与は架空に計上されたものである。 ウ小括上記ア及びイのほか,原告の主張する事実関係は,全体として不自然なものであり,本件貸倒金を計算上作出することに向けられた一種のスキームであると推認されることにも照らすと,原告は,所得税法69条1項の損益通算の規定を利用して源泉徴収税額等の控除不足額を創出し,不正に源泉所得税の還付を受けることを企図し,本件解体造成工事に係る契約及び雇用契約を仮装し,架空の本件貸倒金及び本件給与を計上した平成23年分の所得税の確定申告書を提出して,源泉所得税の不正還付 不正に源泉所得税の還付を受けることを企図し,本件解体造成工事に係る契約及び雇用契約を仮装し,架空の本件貸倒金及び本件給与を計上した平成23年分の所得税の確定申告書を提出して,源泉所得税の不正還付を求めたものと推認される。したがって,原告は,本件貸倒金及び本件給与について事実を仮装したものであり,国税通則法68条1項の定める重加算税の要件を優に満たすものである。 (原告の主張) ア本件貸倒金及び本件給与は架空のものではないし,仮に申告内容に誤りがあるとしても,事実の隠蔽又は仮装はなく,少なくとも本件重加算税賦課決定処分は違法である。 イ本件貸倒金及び本件給与に関する事実経過は,概要次のとおりである。 (ア) 原告は,Iから,本件会社を第三者に高額で売却するから譲ってほしい旨の申出を受け,平成22年12月30日,Iとの間で,本件会社の全株式(20株)を2万円で譲渡する旨の契約を締結した(乙13)。 そして,原告は,同月31日,本件会社の代表取締役を辞任し,Iは,同日,本件会社の代表取締役に就任した。 (イ) 上記(ア)において本件会社の譲渡代金を低く設定したことや本件会社からの退職金がないことなどを考慮し,原告は,その頃,I及び本件会社との間で,原告が業務の引継ぎやIの補佐等の業務を行い,本件会社が平成23年1月から同年6月まで原告に対し月額1500万円の給与を支払う旨合意し,その旨の覚書兼雇用契約書(乙14)を作成した。 (ウ) Iは,原告から本件各建物の管理を任されていたところ,本件各建物の解体が必要になることを知り,原告に対し,本件会社から給与を支払う代わりに,本件解体造成工事を3500万円(税別)で請け負わせてほしい旨を申し出るとともに,平成23 任されていたところ,本件各建物の解体が必要になることを知り,原告に対し,本件会社から給与を支払う代わりに,本件解体造成工事を3500万円(税別)で請け負わせてほしい旨を申し出るとともに,平成23年1月頃,上記工事の工事代金を3675万円(税込)とする本件会社作成の見積書(甲18)を交付した。 (エ) 原告は,その頃,Iの上記申出を受け,本件会社に対して本件解体造成工事を発注し,その工事代金3500万円のうち3300万円を,平成23年1月分から4月分までの給与(源泉徴収後の金額は月額931万9560円)から月825万円ずつ相殺して支払うことなどを合意した。 (オ) 原告は,平成23年1月から同年4月までの間,本件会社から原告に 支給される給与のうち毎月100万円を,Iが代表取締役を務める株式会社J(以下「J社」という。)に貸し付けることとした。 (カ) 原告は,平成23年1月から同年4月までの間,本件会社から,毎月6万6400円(給与1500万円から工事代金分割金825万円と源泉徴収されるべき所得税568万3600円と貸付金100万円を控除した残額)の現金を受け取った。 本件会社は,原告に対し,本件解体工事の前払金につき,本件各預り証を交付した。ただし,同年1月31日付け及び同年2月28日付けの各預り証(乙12の1,12の2)は,当初Iが名刺の裏に預かり文言をメモしたものを原告に交付していたところ,本件会社が商号変更後に「株式会社B」名義で改めて預り証を作成し,上記名刺と差し替えて原告に交付したものである。 (キ) 本件会社は,本件解体造成工事に着手することなく,平成23年5月に事業を停止し,同年8月5日に大阪地方裁判所に破産申立てをした。 そして,本件 差し替えて原告に交付したものである。 (キ) 本件会社は,本件解体造成工事に着手することなく,平成23年5月に事業を停止し,同年8月5日に大阪地方裁判所に破産申立てをした。 そして,本件会社は,同月31日に破産手続開始決定を受け,同年11月21日付けで破産手続廃止(異時廃止)の決定がされた。そのため,原告に対して債権届出の用紙は送付されなかった。 (ク) 原告は,本件解体工事について,株式会社Lに1785万円で発注した。その後,上記工事は,J社に1575万円で外注(下請け)され,さらに株式会社M(以下「M社」という。)に1050万円で外注(孫請け)され,平成23年6月に上記工事が施工された。 (ケ) 以上の経緯により,原告は,平成23年分の所得税の確定申告において,本件会社からの給与6000万円(本件給与)を計上するとともに,本件解体造成工事の工事代金として前払した3300万円(本件貸倒金)を不動産所得の必要経費として計上したものである。 (3) 平成21年分及び平成22年分の過少申告について,国税通則法65条4 項の「正当な理由」があるか否か(争点③)(原告の主張)平成21年分及び平成22年分の所得税の過少申告は,本件火災によって事後的に必要経費の証明ができなくなったことによるものであり,国税通則法65条4項の「正当な理由」がある。 (被告の主張)原告は,必要経費に係る証拠書類が本件火災により焼失したとするが,その旨の立証はないから,原告の主張はその前提を欠く。 また,必要経費については,その支出の相手方からの協力を得て改めて証拠を収集することで,当該支出の有無及び数額を立証することが通常可能であるから,不可抗力によ 原告の主張はその前提を欠く。 また,必要経費については,その支出の相手方からの協力を得て改めて証拠を収集することで,当該支出の有無及び数額を立証することが通常可能であるから,不可抗力によって証拠書類が失われたことのみをもって,直ちに「正当な理由」があるとすることはできない。また,「正当な理由」の有無を検討するに当たっては,更正処分における納付すべき税額に誤りのないことを前提とすべきであるから,本件各更正処分における必要経費の認定が誤りであることを前提とする上記主張に基づいて「正当な理由」があるとすることはできない。 第3 当裁判所の判断 1 本件地代家賃等の金額は,原告の本件各年分に係る不動産所得の計算上,必要経費に算入することができるか(争点①)(1) 必要経費の判断基準等所得税法26条2項は,不動産所得の金額は,その年中の不動産所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額とする旨規定し,同法37条1項は,その年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,当該所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費,一般管理費その他当該所得を生ずべき業務について生じた費用の額とする旨 規定する。 そして,上記の「総収入金額を得るため直接に要した費用」及び「所得を生ずべき業務について生じた費用」という文言に加え,所得を稼得するための投下資本の回収部分に課税が及ぶことを避けるという必要経費の控除の趣旨にも照らすと,ある支出が不動産所得の金額の計算上必要経費として控除されるためには,当該支出が所得を生ずべき業務(不動産賃貸業)と合理的な関連性を有し,かつ,当該業務の遂行上必要であることを要する 旨にも照らすと,ある支出が不動産所得の金額の計算上必要経費として控除されるためには,当該支出が所得を生ずべき業務(不動産賃貸業)と合理的な関連性を有し,かつ,当該業務の遂行上必要であることを要すると解するのが相当である。そして,上記の判断は,単に事業主の主観的判断によるのではなく,当該業務の内容,当該支出(費用)の性質及び内容など個別具体的な諸事情に即し,社会通念に従って客観的に行われるべきである。 (2) 必要経費の立証責任課税処分の取消訴訟においては,原則として,被告(課税庁)がその課税要件事実について主張立証責任を負い,不動産所得の金額の計算上控除する必要経費についても,その主張する金額を超えて存在しないことにつき主張立証責任を負うものと解される。しかし,必要経費は,所得算定の減算要素であって納税者に有利な事柄である上,納税者の支配領域内の出来事であるから,必要経費該当性(支出の存在及び数額並びに業務との合理的関連性及び業務遂行上の必要性)の主張立証は,通常,納税者たる原告の方が被告よりもはるかに容易である。したがって,必要経費該当性につき争いのある支出については,原告において,当該支出の具体的内容を明らかにし,その必要経費該当性について相応の立証をする必要があるというべきであり,原告がこれを行わない場合には,当該支出が必要経費に該当しないことが事実上推認されるというべきである。 (3) 本件各年分の地代家賃について原告は,本件各年分の地代家賃(152万8800円,152万8800円及び200万0500円)につき,D(平成21年1月から平成23年5 月まで)及びE(同年6月から12月まで)を賃借し,本件業務に係る事務所及び記録保管庫として使用していたと主張する。 00万0500円)につき,D(平成21年1月から平成23年5 月まで)及びE(同年6月から12月まで)を賃借し,本件業務に係る事務所及び記録保管庫として使用していたと主張する。 しかし,本件業務の内容は,同一番地に所在する本件各建物の賃貸業務であって,賃料収入が計上されている賃借人の数は平成21年が12名,平成22年が4名,平成23年が1名にすぎず(乙2,4,6),本件業務の遂行のため自宅とは別に2部屋(甲26,27)を借り受ける必要性には疑問がある。また,本件各建物につき賃料収入が計上されているのは同年2月分までであり(乙6),同年4月5日には最後の賃借人の明渡しが完了し(甲23),同年6月には本件各建物の解体が終了したというのに(乙47,弁論の全趣旨),それ以後も不動産所得の必要経費として地代家賃が計上され続けており,そもそも本件業務の遂行のため部屋を借り受ける必要があったのか疑問がある。そして,原告は,D及びEの使用目的や使用方法等につき,上記の程度の抽象的な主張をするにとどまり,本件業務との合理的な関連性や本件業務遂行上の必要性について特段の主張立証を行わない。 したがって,本件各年分の地代家賃については,必要経費に該当しないことが推認されるというべきである。 (4) 平成21年分及び平成22年分の修繕費についてア原告は,平成21年分及び平成22年分の修繕費(367万5000円及び350万円)につき,その証拠書類が平成23年1月5日の本件火災により焼失し,不可抗力によりこれを提出することができないとして,上記(2)の事実上の推認の前提を欠くとか,これを理由に否認することは不当であるなどと主張する。 しかし,原告は,平成24年3月28日の質問調査(以下「本件調査」とい ができないとして,上記(2)の事実上の推認の前提を欠くとか,これを理由に否認することは不当であるなどと主張する。 しかし,原告は,平成24年3月28日の質問調査(以下「本件調査」という。)において,本件火災の場所や出火原因等について説明する一方で,調査担当者の「経費の領収証などは自宅に保管しているのですか。」との質問に対し,「いいえ,(株)Hが所有するマンションの一室を事務所 として借り受けており,そこに不動産賃貸業に係る書類は保存しております。」と回答していたところ(乙36),平成24年11月8日の質問調査においては,「平成22年分以前の書類については探しましたが,見つかりません。たぶん出てこないと思います。」と回答し(乙41),平成25年6月26日付け審査請求書には,要旨,平成21年分及び平成22年分の必要経費の証拠書類については,本件火災によりほとんど焼失し,平成22年分の一部の書類については,焼失を免れたものの,引越業者の手違いで紛失した旨を記載し(甲9),さらに,本件訴訟においては,平成21年分及び平成22年分の必要経費の証拠書類については,本件火災により焼失した旨主張するのみで,引越しの際に一部の書類を紛失した旨の主張は行っていない。なお,本件火災により焼失した家屋に原告が本件業務に関する書類を保管していた理由及び経緯は,記録上不明である。 以上のとおり,必要経費に係る証拠書類の保管場所,保管の有無,紛失の原因とその範囲等につき,原告の主張及び供述は変遷しており,その変遷につき合理的な理由も見当たらないから,本件火災により証拠書類が焼失した旨の原告の主張は,信用性を欠くものといわざるを得ず,採用することができない。 なお,原告は,本件調査に係る調査報告書(乙36 的な理由も見当たらないから,本件火災により証拠書類が焼失した旨の原告の主張は,信用性を欠くものといわざるを得ず,採用することができない。 なお,原告は,本件調査に係る調査報告書(乙36。以下「本件調査報告書」という。)につき,その内容の正確性や信用性を争うが,原告の供述と異なる内容が記載され又は事後的に改ざんされたことを疑うべき不自然な点は認められず,また,その内容が原告本人でなければ知り得ない内容を含む具体的なものであり,当時調査担当者が作成した聞き取りメモにもおおむね整合すること(乙44,45)等にも照らすと,本件調査報告書の内容は,当時の原告の言動を記録したものとして十分信用することができる。原告の主張は採用することができない。 イ原告は,本件各更正処分等の異議申立て及び審査請求の際,平成21年 分及び平成22年分の修繕費につき,本件各建物の補強又は倒壊防止のための修繕工事をFに依頼した際の工事代金である旨主張,供述していたようである(甲8,10)。 しかし,原告は,本件訴訟において,このような主張を明示的には行っておらず,その旨の立証も行わない。また,賃料収入の総額(平成21年266万1600円,平成22年25万3800円)を大きく超える修繕費が毎年必要であったというのも不自然であるし,この点に関する原告の主張ないし供述(甲10)は,支出の内訳等の具体的内容を明らかにしない曖昧なものであり,他に上記各支出を認めるに足りる的確な証拠もない。 かえって,Fの代表取締役であるGは,要旨,原告から修繕工事を請け負ったことはない,平成23年にバリケードを作る作業をしたことはあるが,アルバイト程度の工事で,代金はもらっていない旨を明確に供述している(乙43)。なお,原告は,Gの供述の信用性を 修繕工事を請け負ったことはない,平成23年にバリケードを作る作業をしたことはあるが,アルバイト程度の工事で,代金はもらっていない旨を明確に供述している(乙43)。なお,原告は,Gの供述の信用性を争うが,Fに修繕工事を発注した旨の具体的な反論を行うことなく,Gとの関係が良好でないこと等による虚偽供述の可能性を抽象的に指摘するものにすぎない上,調査担当者に対するGの供述に特に不自然な点も見当たらないから,同供述は信用することができる。原告の主張は採用することができない。 ウしたがって,平成21年分及び平成22年分の修繕費については,支出の事実自体がなく,必要経費には該当しないと認められる。 (5) 平成21年分のリース料について原告は,平成21年において,本件業務のために自動車1台を利用していたとして,そのリース料(109万6200円)は必要経費に該当すると主張する。 しかし,当該自動車のリース契約上の使用の本拠地及び保管場所は,原告の住所地とされていたことが認められ(甲10,弁論の全趣旨),前述の本件業務の内容等に照らしても,原告が当該自動車を専ら本件業務のために使 用していたとは考えにくい。そして,原告は,当該自動車の使用目的や使用方法等につき,上記の程度の抽象的な主張をするにとどまり,本件業務との合理的な関連性や本件業務遂行上の必要性について特段の主張立証を行わない(なお,原告は,上記リース料の証拠書類は本件火災により焼失した旨主張するが,前述のとおり,採用することができない。)。 したがって,平成21年分のリース料については,必要経費に該当しないことが推認されるというべきである。 (6) 平成21年分の通信費について原告は,平成21年において, したがって,平成21年分のリース料については,必要経費に該当しないことが推認されるというべきである。 (6) 平成21年分の通信費について原告は,平成21年において,本件業務のためにNTTドコモの携帯電話を使用していたとして,その通信費(7万7215円)は必要経費に該当すると主張する。 しかし,当該携帯電話は,本件各建物が解体された後の平成25年12月時点でも継続して使用されていたというのであり(甲10,弁論の全趣旨),原告が当該携帯電話を専ら本件業務のために使用していたとは考えにくい。 そして,原告は,当該携帯電話の使用目的や使用方法等につき,上記の程度の抽象的な主張をするにとどまり,本件業務との合理的な関連性や本件業務遂行上の必要性について特段の主張立証を行わない(なお,原告は,上記通信費の証拠書類は本件火災により焼失した旨主張するが,前述のとおり,採用することができない。)。 したがって,平成21年分の通信費については,必要経費に該当しないことが推認されるというべきである。 (7) 平成23年分の貸倒金(本件貸倒金)について原告は,平成23年分の不動産所得に係る必要経費として,本件解体造成工事の工事代金に係る貸倒金3300万円(本件貸倒金)を計上するが,後記2のとおり,本件貸倒金は架空に計上されたものと認められるから,本件貸倒金は,不動産所得の金額の計算上,必要経費に算入することができない。 (8) 平成23年分の雑費について原告は,平成23年分の雑費(974万4513円)につき,いずれも本件業務について生じた費用であり,必要経費に該当すると主張する。 しかし,平成23年の賃料収入は3万4800円であり(乙6), 告は,平成23年分の雑費(974万4513円)につき,いずれも本件業務について生じた費用であり,必要経費に該当すると主張する。 しかし,平成23年の賃料収入は3万4800円であり(乙6),同年6月には本件解体工事が行われたというのであって(乙47),1年を通じてこれほど多数かつ多額の経費が計上されるのは不自然である上,被告が必要経費該当性を争う部分(124万3845円を超える部分)について,本件元帳や領収書等(乙11,22)をみても,個々の支出の理由や具体的内容は明らかでない。しかも,被告は,本件訴訟において,必要経費該当性を争う部分について,第2の3(1)(被告の主張)キ及び別表3-1から3-5までのとおり個別に主張するのに対し,原告は,ごく抽象的かつ一般的にこれを争うにとどまり,個々の支出につき本件業務との合理的な関連性や本件業務遂行上の必要性について特段の主張立証を行わない。 したがって,上記974万4513円のうち被告が必要経費該当性を争わない124万3845円を超える部分の雑費については,必要経費に該当しないことが推認されるというべきである。 (9) 平成21年分の旅費交通費及びその他の経費並びに平成22年分の損害保険料,外注費及び雑費について原告は,平成21年分の旅費交通費(30万9392円)及びその他の経費(119万6730円)並びに平成22年分の損害保険料(12万9530円),外注費(169万6981円)及び雑費(606万5972円)につき,証拠書類が本件火災により焼失したためこれを提出することはできないが,上記の各経費は必要経費に該当すると主張する。 しかし,本件火災により証拠書類を焼失した旨の原告の主張は,前述のとおり,採用することができない。また,本件業務の内容 出することはできないが,上記の各経費は必要経費に該当すると主張する。 しかし,本件火災により証拠書類を焼失した旨の原告の主張は,前述のとおり,採用することができない。また,本件業務の内容や賃料収入の総額等に照らし,上記のような多数かつ多額の経費が計上されるのは不自然である 上,原告は,本件訴訟において,上記の各支出の必要経費該当性につき,ごく抽象的かつ一般的にこれを争うにとどまり,個々の支出につき本件業務との合理的な関連性や本件業務遂行上の必要性について特段の主張立証を行わない。 したがって,上記の各支出については,必要経費に該当しないことが推認されるというべきである。 (10) 小括以上のとおり,本件地代家賃等はいずれも必要経費に該当しないと認められるから,本件地代家賃等の金額は,本件各年分に係る不動産所得の計算上,必要経費に算入することができない。 2 本件貸倒金及び本件給与は架空のものであって,原告の平成23年分の所得税の申告は,事実を隠蔽又は仮装し,その隠蔽又は仮装したところに基づくものか否か(争点②)(1) 認定事実前記前提となる事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア本件会社は,平成22年4月2日に資本金100万円で設立された株式会社であり,商業登記簿上,その目的は「1,事務業務処理,経理事務処理の請負」,「2,事務に係る文書,証票その他の書類の作成,整理,保管,発送又は配送を行う業務」,「3,前各号に付帯する一切の事業」とされていた(甲24,乙27)。 本件会社名義の決済用普通預金口座(平成22年6月7日新規開設)の残高は,同月22日の1691万5543円が最高額であり,同年12月30日時点 の事業」とされていた(甲24,乙27)。 本件会社名義の決済用普通預金口座(平成22年6月7日新規開設)の残高は,同月22日の1691万5543円が最高額であり,同年12月30日時点は3万4559円であった(乙28,29)。また,本件会社の元取締役,元監査役及び元従業員は,税務調査の担当者に対し,本件会社が同年10月又は11月頃から給与の支払に窮していた旨を供述してい る(甲8)。 イ本件会社の商業登記簿(閉鎖事項全部証明書)によれば,①原告が平成22年12月31日付けで本件会社の取締役及び代表取締役を辞任すること,②Iが同日付けで本件会社の取締役及び代表取締役に就任すること,③平成23年3月18日付けで本件会社の商号を「C株式会社」から「株式会社B」に変更したこと等につき,同年4月5日付けで登記がされている。また,④同年3月19日付けで本店を「神戸市γ×番3号」から「大阪市δ×番1号」に移転したことにつき,同年4月20日付けで登記がされている。(以上につき,乙27)ウ原告は,平成21年4月頃,神戸地方裁判所α支部に対し,本件各建物の賃借人であるPことQらを被告として,本件各建物のうち同人らが占有する部分の明渡しを求める訴え(以下「本件明渡請求訴訟」という。)を提起した。原告は,一部の被告との間で占有部分の明渡しを内容とする和解をするなどしたが,被告の一人であるQは,最後まで和解による明渡しに応じなかった。(以上につき,甲20,乙6,15)本件明渡請求訴訟は,最後の被告であるQとの関係で,平成23年1月11日に弁論を終結し,同年2月24日,立退料100万円の支払と引き換えにQに建物明渡しを命ずる旨の判決が言い渡された(甲20)。なお,弁論終結直前の同年1月5日午後17時4 関係で,平成23年1月11日に弁論を終結し,同年2月24日,立退料100万円の支払と引き換えにQに建物明渡しを命ずる旨の判決が言い渡された(甲20)。なお,弁論終結直前の同年1月5日午後17時45分頃,Qが賃借する建物の隣家等を焼損する原因不明の火災(本件火災)が発生した(甲16,乙36)。 エ原告は,平成23年3月22日,本件明渡請求訴訟の代理人であったR弁護士から,Qからの鍵の引渡しの日を同月末日とすることなどを提案する電子メールに対し,「ご提案いただきましたとおりで結構ですので,進めて頂けませんでしょうか?それでは,解体工事の手配をさせて頂いても,宜しいでしょうか?」などと記載した電子メールを返信した。これに対し, R弁護士は,「『解体工事の手配』の件,…和解契約書が返ってくればOKです。ただし,Pの家を潰すのは,4月1日以降にしていただければ,トラブルが無くていいのではないかと思います。」などと記載した電子メールを返信した。(以上につき,甲21,22)R弁護士は,同年4月5日,原告に対し,「本日,Pからβの賃貸建物の鍵が送られてきました。早急に,建物の取り壊しにかかってください。」などと記載した電子メールを送信した(甲23)。 オ M社は,J社のIから本件解体工事の見積りを依頼され,平成23年3月頃,担当者が本件各建物を見に行くなどした(乙47)。 M社は,同年4月12日付けで,J社に対し,本件解体工事の工事見積合計金額を829万5000円(税込)とする見積書を作成した(なお,同見積書には,「平成23年4月8日付ご照会」との記載がある。)。これに対し,Iから工事代金の値引き依頼があったため,M社は,同月13日付けで,本件解体工事の工事見積合計金額を 書を作成した(なお,同見積書には,「平成23年4月8日付ご照会」との記載がある。)。これに対し,Iから工事代金の値引き依頼があったため,M社は,同月13日付けで,本件解体工事の工事見積合計金額を800万円(税込)とする見積書を作成した。(以上につき,乙47)カ J社は,M社との間で,平成23年5月20日付けで,本件解体工事の期間を同月23日から同年6月30日までとし,その代金を800万円(税込)とすることなどを内容とする覚書を作成した(乙38,47)。 キ M社は,J社から,本件解体工事のほかに追加でフェンス取付工事を代金290万円(税込)で受注し,平成23年6月末頃,これらの工事を完成した。しかし,J社は,M社に対し,同年5月23日に40万円を支払ったものの,その余の代金を支払わなかった。(以上につき,乙47)ク本件会社は,平成23年8月5日,大阪地方裁判所に対し,本件会社の破産申立書を提出した。同裁判所は,同月31日,本件会社につき破産手続を開始する旨決定した。(以上につき,甲17,24,乙26)本件会社が大阪地方裁判所に提出した債権者一覧表には,債権者として 原告は記載されておらず,新たな債権者が判明した旨の同年10月13日付けの上申書及び変更後の債権者一覧表にも,原告は記載されていなかった(乙26)。 大阪地方裁判所は,本件会社につき費用不足による破産手続廃止(異時廃止)の決定をし,同決定は同年12月21日に確定した(甲24)。 (2) 本件貸倒金についてア客観的な事実関係からみた検討(ア) 原告は,本件貸倒金に関し,平成23年1月頃,本件解体造成工事を本件会社に3500万円(税別)で発注し,その代金のうち3300万円 ついてア客観的な事実関係からみた検討(ア) 原告は,本件貸倒金に関し,平成23年1月頃,本件解体造成工事を本件会社に3500万円(税別)で発注し,その代金のうち3300万円を,同月分から同年4月分まで,本件給与から月825万円ずつ相殺して前払したが,本件会社が破産したため,原告においてその貸倒処理を行ったと主張する。 しかし,平成23年1月の時点では,Qとの関係で,本件明渡請求訴訟の判決は言い渡されておらず,仮にその後の判決において原告の請求が認容されたとしても,Qが控訴するかどうかや,強制執行を経ることなく立ち退くかどうかは不明であるから(認定事実ウ),その時点で,本件会社に3500万円(税別)もの本件解体造成工事を発注し,同年1月から4月までに合計3300万円を前払することを決めるというのは,事実経過として不自然である。むしろ,客観的な事実関係からすれば,原告は,本件明渡請求訴訟の判決が同年2月24日に言い渡され,その後確定したことから,同年3月にIを介してM社に本件解体工事の見積りを打診し,同年4月5日のR弁護士からの電子メールを受けて,同月8日,M社に対して本件解体工事の見積金額の提示を促し,同社から同月12日付け見積書の交付を受け,値引き交渉を経て,本件解体工事を代金800万円(税込)で発注することになったとみるのが自然である。 (イ) また,本件解体工事の代金額についても,M社は,当初,829万5000円(税込)とする見積書を作成し,値引き交渉を経て,J社との間で,代金800万円(税込)で合意していること(認定事実オ,カ)からすると,本件会社に発注した工事には宅地造成工事が含まれる旨の原告の主張を前提としても,原告の主張する3500万円(税抜)という工事代 代金800万円(税込)で合意していること(認定事実オ,カ)からすると,本件会社に発注した工事には宅地造成工事が含まれる旨の原告の主張を前提としても,原告の主張する3500万円(税抜)という工事代金は,不自然に高額というべきである(なお,M社の担当者は,本件解体工事について,1785万円や3300万円という代金額は「ありえない数字」である旨述べており(乙47),FのGも,平成23年5月初め頃,原告から,本件解体工事の見積りを依頼され,知り合いの業者に参考として見積りをしてもらったところ,見積額は800万円前後であった旨述べている(乙43)。)。 (ウ) また,原告の主張によれば,原告は,平成23年8月に本件会社が破産申立てを行った時点で,本件会社に対し少なくとも3300万円の債権を有していたことになるが,本件会社が大阪地方裁判所に提出した債権者一覧表に原告は記載されておらず,新たな債権者が判明した旨の同年10月13日付けの上申書及び変更後の債権者一覧表にも原告は記載されていなかったこと(認定事実ク)は,原告の主張と整合しないものである。このように,本件会社,破産申立代理人及び破産管財人がいずれも原告の3300万円の債権(本件貸倒金)を認識していないことは,原告の主張する債権が実際には存在しないことを裏付ける事情の一つであるというべきである。 なお,原告は,破産管財人から,平成23年8月31日付けで破産手続開始等の連絡文書(甲17)が郵送されてきた旨主張するが,この連絡文書が原告宛てに郵送されたことを裏付ける証拠はないし,債権者一覧表に記載されていない原告に対し,上記の連絡文書が郵送されたとも考え難い。原告の主張は採用することができない。 (エ) さらに,原告は,本件会社によ 証拠はないし,債権者一覧表に記載されていない原告に対し,上記の連絡文書が郵送されたとも考え難い。原告の主張は採用することができない。 (エ) さらに,原告は,本件会社による本件解体造成工事の施工を諦めた経緯につき,要旨,平成23年4月5日のR弁護士からのメールを受けて,Iに対し,本件解体造成工事を行うよう数度督促をしていたが,一向に着手がされず,ついに,Iから,従業員の給料すら支払えないことなどを告げられたため,本件会社による本件解体造成工事の施工を諦め,同年5月,株式会社Lを経由して,J社に本件解体工事のみを発注した旨主張する。 しかし,原告が主張する上記の経緯は,M社が,J社のIから本件解体工事の見積りを依頼され,同年3月頃,担当者が本件各建物を見に行くなどした経緯(認定事実オ)と時期的に整合しないし,原告が数度にわたり督促しても本件会社が一向に本件解体造成工事に着手しなかったというのに,同年4月5日からわずか1週間後にM社の見積書(同月12日付け)が作成されていることや,その見積書に「平成23年4月8日付けご照会」と記載されていること(認定事実オ)とも整合的でなく,不自然である。さらに,原告は,その主張によれば,同月上旬の時点で本件会社による本件解体造成工事の施工が事実上不可能であることを認識したはずであるのに,同月下旬に工事代金の一部である825万円を相殺により本件会社に前払したというのも,事実経過として不自然である。 イ原告が提出する資料等についての検討(ア) 原告が主張する本件会社との合意は,本件解体造成工事を3500万円(税抜)で発注するという高額なものであり,その代金の支払時期や支払方法も特殊なものであるのに,合意内容を記載した契約書等の書面が作成 告が主張する本件会社との合意は,本件解体造成工事を3500万円(税抜)で発注するという高額なものであり,その代金の支払時期や支払方法も特殊なものであるのに,合意内容を記載した契約書等の書面が作成されていないこと(乙36,弁論の全趣旨)は,不自然というべきである。 (イ) 原告は,税務調査において,本件会社に対し本件解体造成工事の代金 のうち3300万円を支払ったことを示す証拠として,本件会社名義の本件各預り証(乙12の1~12の4)を提出する。 しかし,本件各預り証のうち,平成23年1月31日付け及び同年2月28日付けの各預り証(乙12の1,12の2)は,本件会社の商号が「株式会社B」に変更される同年3月18日よりも前で,かつ,本件会社の本店が大阪市δ区に移転する同月19日よりも前の作成日付とされているのに,「大阪市δ×番1号株式会社B 代表取締役I」の名義で作成されており,その日付において作成されたものではない(この点は原告も争っていない。)。したがって,本件各預り証は,本件貸倒金を偽装するために事後的に作出されたものであることが疑われ,信用性に乏しいものといわざるを得ない。 この点につき,原告は,平成23年1月31日付け及び同年2月28日付けの各預り証(乙12の1,12の2)について,Iが名刺の裏に預かり文言をメモ書きの上,署名をして原告に渡していたが,同年3月18日に本件会社の商号が「株式会社B」に変更された後,Iが改めて同年1月分及び2月分の本件会社(株式会社B)名義の預り証を作成し,メモ書きをした名刺と差し替えで,原告に対し,上記各預り証を交付したなどと主張する。 しかし,上記の主張は,審査請求の審理において,処分行政庁の主張を踏ま 社B)名義の預り証を作成し,メモ書きをした名刺と差し替えで,原告に対し,上記各預り証を交付したなどと主張する。 しかし,上記の主張は,審査請求の審理において,処分行政庁の主張を踏まえた国税不服審判官からの求釈明に対し,平成26年2月5日付けの回答書をもって初めてされたものであり(乙36,46,弁論の全趣旨),その主張の経緯及び内容に照らすと,上記のような矛盾点を指摘されたために行った虚偽の弁解とみられても仕方のないものであって,信用することができない。しかも,2か月間にわたり各825万円もの前払がされているのに,なぜ名刺の裏にサインするというような取扱いとされたのか,その理由や経緯は明らかでないし,不自然でもある。本 件各預り証の作成経緯に関する原告の上記主張は,採用することができない。 (ウ) 原告は,本件会社に本件解体造成工事を発注したことを示す証拠として,本件会社作成の見積書(甲18)を提出する。 しかし,原告は,本件調査の際には,本件解体造成工事に係る書類としては本件各預り証しかない旨を述べていたのであり(乙36),本件見積書が審査請求の段階で初めて提出されたものであることも考慮すると,本件見積書は,本件調査後に事後的に作成されたものであることが強く疑われ,その信用性は乏しいといわざるを得ない。 この点につき,原告は,審査請求の段階で初めて見積書を提出した経緯につき,税務調査の際,調査担当者から見積書では意味がないとして実質的に提出を拒否されたなどと主張するが,前述のとおり,本件調査報告書は原告の言動を記録したものとして十分信用することができるところ,原告は,本件解体造成工事につき,「見積書や契約書は作成しておりません。」と明確に述べており(乙36),また,本 おり,本件調査報告書は原告の言動を記録したものとして十分信用することができるところ,原告は,本件解体造成工事につき,「見積書や契約書は作成しておりません。」と明確に述べており(乙36),また,本件調査は原告に対する税務調査が始まって間もない頃のものであって,調査担当者の立場からすれば,原告が本件解体造成工事に係る見積書を保管しているのであれば,その提出を積極的に求めるのが通常であって,その提出を拒否するようなことは考えにくいというべきである。原告の主張は採用することができない。 しかも,本件会社は,事務業務処理,経理事務処理の請負等を目的とする株式会社であり(認定事実ア),本件解体造成工事を自ら施工する能力を有していないとみられるが(この点は原告も争っていない。),このような本件会社が,平成23年1月の時点で,そもそも本件見積書を作成し得たのか疑問があるし,他の業者等の助力を得て本件見積書を作成したことをうかがわせる証拠等も見当たらない。また,その内容も, 取引条件として,総額3675万円もの代金を,工事着工予定の同年3月下旬までに全額前払する旨記載されているなど(甲18),本件会社に一方的に有利な内容となっており,不自然である。 (3) 本件給与についてア客観的な事実関係からみた検討(ア) 原告は,平成22年12月末頃,I及び本件会社との間で,原告が業務の引継ぎやIの補佐等の業務を行い,本件会社が平成23年1月から同年6月まで原告に対し月額1500万円の給与を支払う旨合意した旨主張する。 しかし,本件会社は,同年4月2日に資本金100万円で設立された株式会社であること,本件会社名義の決済用普通預金口座(同年6月7日新規開設)の残高は,同月22日の1691万55 する。 しかし,本件会社は,同年4月2日に資本金100万円で設立された株式会社であること,本件会社名義の決済用普通預金口座(同年6月7日新規開設)の残高は,同月22日の1691万5543円が最高額であり,同年12月30日時点ではわずか3万4559円であったこと,本件会社の元取締役,元監査役及び元従業員は,税務調査の担当者に対し,本件会社が同年10月又は11月頃から給与の支払に窮していた旨を供述していること(以上につき,認定事実ア),本件会社は,平成23年8月5日に破産申立てを行っていること(認定事実ク)などの事実関係に照らすと,月額1500万円を6か月間,総額9000万円という金額は,本件会社の規模や経営状況等から想定される給与の金額からかけ離れており,平成22年当時代表取締役であった原告が,同年に本件会社から支給を受けたとする給与の総額2640万円(乙3)よりもはるかに高額であって,明らかに不自然である。 なお,原告は,本件会社の業績からすると,本件給与の支払は困難ではないかと思っていたが,Iが本件会社を高く売却することができると述べていたため,その代金から回収できると考えていた旨主張する。しかし,本件会社の規模や経営状況等に照らすと,Iが本件会社を900 0万円を超えるような高額で第三者に売却し得る見込みがあったとは考え難く,そのような見込みがあったことをうかがわせる客観的な証拠もない。原告の上記主張は採用することができない。 (イ) 原告は,平成23年1月から同年4月までの間,月額給与1500万円から源泉徴収されるべき所得税568万3600円,工事代金の分割金825万円及びJ社への貸付金100万円を控除した残額6万6400円を,本件会社から現金で受け取っていた旨主張す 月額給与1500万円から源泉徴収されるべき所得税568万3600円,工事代金の分割金825万円及びJ社への貸付金100万円を控除した残額6万6400円を,本件会社から現金で受け取っていた旨主張する。 しかし,月額1500万円という給与の金額に比して,受領していた金額が月額6万6400円というのは不自然に低額であるし,その現金の出所や入金先も不明であり,そのような現金の授受があったことを裏付ける客観的な証拠も見当たらない。 しかも,原告は,本件調査の時点では,本件会社から源泉所得税568万3600円及び工事代金825万円を控除した106万6400円を現金で受け取り,財布に入れて使い切った旨述べていたところ(乙36),その後,J社への貸付金100万円を差し引いた残額6万6400円をIから現金で受け取った旨主張するに至っており(甲8~10,弁論の全趣旨。なお,異議決定書(甲8)によれば,Iにおいても,当初は原告に対し100万円くらいを支払っていた旨供述していたのに,後日これを覆し,J社が原告から100万円を借りたことにして,原告に残金10万円くらいを現金で支払った旨の供述をするに至ったことが認定されている。),本件会社から毎月100万円を超える現金を受け取っていたかどうかについて原告の供述は大きく変遷している。4か月間にわたり受領していた現金が毎月100万円を超えていたかどうかについて,記憶違いをするというのは不自然であり,上記のような供述又は主張の変遷につき合理的な理由は見当たらない。このような不自然な供述の変遷があることは,実際には本件会社と原告との間に本件給与に 係る現金の授受がなかったことを推認させるものといえる。 イ原告が提出する資料等についての検討( あることは,実際には本件会社と原告との間に本件給与に 係る現金の授受がなかったことを推認させるものといえる。 イ原告が提出する資料等についての検討(ア) 原告は,税務調査において,本件会社との間で月額1500万円の給与を受けることなどを内容とする雇用契約を締結した証拠として,株式譲渡契約に伴う覚書兼雇用契約書(乙14)を提出する。 しかし,上記覚書兼雇用契約書は,原告とIが作成したものであるから,事実に合致しない内容や日付とすることはたやすいものといえるし,その内容についても,前述のとおり,給与の金額が不自然に高額であることはもとより,本件会社又は原告が契約期間を違約した場合には,相手方に対して5000万円の損害賠償金を支払うという不自然な内容の条項が置かれていることも考慮すると,本件給与の存在を偽装するために原告とIが通謀して作成した疑いを否定することができない。 (イ) 原告は,税務調査において,本件会社から本件給与の支給を受けたことの証拠として,源泉徴収票(乙7)及び給与明細書(乙8の1から4まで)を提出する。 しかし,源泉徴収票については,Iが手書きで作成したというのであるが,本件会社は,当時,従業員の給与計算に係る業務をS社会保険労務士に委託していたのであって(乙49),原告の源泉徴収票をIが手書きで作成する合理的な理由も見当たらず,不自然である。また,給与明細書の平成23年3月分と4月分(乙8の3及び4)については,「株式会社B」の記載があるが,同年1月分と2月分(乙8の1及び2)については,「C株式会社」との記載がなく,発行した会社名が記載されておらず不自然である。しかも,源泉徴収票の源泉徴収税額(原告の確定申告額) 」の記載があるが,同年1月分と2月分(乙8の1及び2)については,「C株式会社」との記載がなく,発行した会社名が記載されておらず不自然である。しかも,源泉徴収票の源泉徴収税額(原告の確定申告額)は2272万1760円と記載されているのに対し(乙7),給与明細書の所得税の金額の合計は2273万4400円であって(乙8),金額が一致しておらず不自然である。 (4) 小括以上のとおり,本件貸倒金及び本件給与に関する原告の主張は,客観的な事実や経験則に照らし明らかに不自然であり,その提出に係る証拠も不自然であるなど信用性に乏しい。これらの点に照らすと,本件貸倒金及び本件給与に関する原告の主張は虚偽であると認めるに十分であり,本件貸倒金及び本件給与は,架空に計上されたものと認めるのが相当である。 そして,本件会社が平成23年8月に破産申立てを行い,本件給与に係る源泉所得税2272万1760円を納付しておらず,他方で,原告は,平成23年分の所得税の確定申告において,上記源泉所得税を含む2707万9520円を還付するよう求めていたことにも鑑みると,原告は,多額の源泉徴収税額等の控除不足額を創出することにより,不正に源泉所得税の還付を求めることを企図して,本件給与の額を給与所得に係る収入金額に計上しつつ,本件貸倒金を不動産所得に係る必要経費に算入して,源泉所得税の還付を求める内容の所得税の確定申告書を作成し,提出したものと認めるのが相当である。 したがって,本件貸倒金及び本件給与は架空のものであって,原告の平成23年分の所得税の確定申告は,本件貸倒金及び本件給与に係る事実を仮装し,その仮装したところに基づくものと認められ,国税通則法68条1項の定める重加算税の要件を満たすものという であって,原告の平成23年分の所得税の確定申告は,本件貸倒金及び本件給与に係る事実を仮装し,その仮装したところに基づくものと認められ,国税通則法68条1項の定める重加算税の要件を満たすものというべきである。 3 平成21年分及び平成22年分の過少申告について,国税通則法65条4項の「正当な理由」があるか否か(争点③)原告は,平成21年分及び平成22年分の所得税の過少申告は,本件火災によって事後的に必要経費の証明ができなくなったことによるものであり,国税通則法65条4項の「正当な理由」があると主張する。 しかし,上記1(4)ア記載のとおり,平成21年分及び平成22年分の必要経費に係る証拠書類の保管場所,保管の有無,紛失の原因とその範囲等につき, 原告の主張及び供述は変遷しており,その変遷につき合理的な理由も見当たらないから,本件火災により証拠書類が焼失した旨の原告の主張は,信用性を欠くものといわざるを得ない。したがって,原告の上記主張は,その前提となる事実を認めることができないから,採用することができない。 4 結論以上のとおり,原告が主張する本件各更正処分等の違法事由の主張はいずれも採用することができず,その他,本件各更正処分等を取り消すべき違法事由は見当たらないから,本件各更正処分等はいずれも適法であると認められる。 よって,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官山田明 裁判官徳地淳 裁判官小林真由美 裁判官徳地淳 裁判官小林真由美
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