2,275 文字
主文 原判決を破棄する。被告人を原判示第一の一、二の罪につき懲役六月に、同第一の三、及ひ同第二の一ないし四の罪につき懲役一年二月に処する。原審の未決勾留日数中二〇日を右懲役一年二月の本刑に算入する。押収物件(原裁判所昭和三三年領第一四号の一の一ないし一〇、同二の一ないし七、同三の一ないし一三、同四の一ないし三、同五の一、二)は、いずれもそれぞれ各被害者に還付する。原審及び当審の訴訟費用は被告人に負担させない。理由 本件控訴の趣意は、東京高等検察庁検事大平要提出にかかる沼田区検察庁検察官副検事田村竹市作成名義の控訴趣意書記載のとおりであるから、これをここに引用し、これに対して次のとおり判断する。原判決が、被告人に対し、判示第一の一ないし三の各窃盗の罪につき懲役八月、同第二の一ないし四の各窃盗の罪につき懲役一年の刑を言い渡し、なお、未決勾留日数中六〇日を右懲役一年の刑に算入する旨の言渡をしていることは、所論のとおりである。ところが所論は、被告人は、原判示第二の四の窃盗罪につき昭和三三年九月二〇日沼田簡易裁判所裁判官渋谷亀三の発した勾留状の執行をされ、同日沼田警察署留置場に収容され、爾来引き続き勾留され、同年一二月三日原判決を言い渡されたものであつて、右判決書渡日の前日までの勾留日数は、七四日であるけれども、その間において、被告人は、同年一〇月七日から同年一一月一一日まて合計三六日間にわたり、他の五つの確定裁判による労役場留置の執行を引き続き受けていたものであつて、その間は、右勞役場留置なる刑の執行と勾留状の執行とが競合している場合にあたり、かかる場合の未決勾留日数を本刑に算入すべからざることは、最高裁判所判例に徴しても明らかであるから、原審の未決勾 あつて、その間は、右勞役場留置なる刑の執行と勾留状の執行とが競合している場合にあたり、かかる場合の未決勾留日数を本刑に算入すべからざることは、最高裁判所判例に徴しても明らかであるから、原審の未決勾留日数中本刑に算入し得られる日数は、前記七四日より右三六日を控除した三八日の範囲内に限られるべき筈であるのにかかわらず、原判決がこの範囲を二二日超える六〇日の未決勾留日数を本刑に算入したのは、刑法第二一条の適用を誤つたものというべく、この誤が判決に影響を及ぼすことが明らかである旨を主張するにより、案ずるに、被告人が勾留状の執行により未決勾留中、他の事件の確定判決により懲役刑の執行を受けるに至つたときは、懲役刑の執行と競合する未決勾留日数を本刑に算入することが違法であると解すべきことは、所論引用の最高<要旨>裁判所判例の示すところであつて、刑法第一八条による労役場留置は、独立の刑ではなく、罰金、科料の特別</要旨>な執行方法であるに過ぎないけれども、これを受ける者にとつては、自由刑の執行と何ら異るところかないのであるから、勾留状の執行と労役場留置の執行とが競合する場合にも、また前同様労役場留置の執行と競合する未決勾留日数を本刑に算入することはできないものと解するのが相当であると考えられる。 最高<要旨>裁判所判例の示すところであつて、刑法第一八条による労役場留置は、独立の刑ではなく、罰金、科料の特別</要旨>な執行方法であるに過ぎないけれども、これを受ける者にとつては、自由刑の執行と何ら異るところかないのであるから、勾留状の執行と労役場留置の執行とが競合する場合にも、また前同様労役場留置の執行と競合する未決勾留日数を本刑に算入することはできないものと解するのが相当であると考えられる。これを本件についてみるに、被告人が、原判示第二の四の窃盗罪につき昭和三三年九月二〇日沼田簡易裁判所裁判官の発した勾留状の執行を受けて同日沼田警察署留置場に収容され、爾来引き続き勾留されているうち、同年同月二七日、同年一〇月一一日、同年一一月五日、同年四月一三日の四回にわたつて本件各公訴事実について原裁判所に起訴され、同年一二月三日原判決の宣告を受けたものであつて、右判決宣告の前日までの勾留日数が七四日であることは、記録上明らかであるところ、記録に編綴してある わたつて本件各公訴事実について原裁判所に起訴され、同年一二月三日原判決の宣告を受けたものであつて、右判決宣告の前日までの勾留日数が七四日であることは、記録上明らかであるところ、記録に編綴してある昭和三三年一〇月七日付検察官の労役場留置執行指揮通知書五通の記載に徴するときは、被告人は、同年一〇月七日から同年一一月一一日まで合計三六日間にわたり、他の五つの確定裁判による労役場留置(刑法第一八条に基づくいわゆる換刑処分)の執行を受けていたことが認め得られるのであつて、右三六日間は、労役場留置の執行と勾留状の執行とが競合する場合にあたり、この間の未決勾留日数を本刑に算入することはできない筋合であるから、本件において原審の未決勾留日数中本刑に算入し得る日数は、前示勾留日数七四日から右三六日を控除した三八日の範囲内に限られるべきものといわなければならない。してみれば、原判決がこの限度を越えて前示のように未決勾留日数中六〇日を懲役一年の本刑に算入する旨の言渡をしたことは、刑法第二一条の解釈適用を誤つたものというべく、この誤が判決に影響を及ぼすことは、まことに明らかであるから、原判決は、この点において到底破棄を免れない。論旨は理由がある。(その他の判決理由は省略する。)(裁判長判事中西要一判事山田要冶判事鈴木良一)
▼ クリックして全文を表示