平成24(行ケ)10402 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成25年10月7日 知的財産高等裁判所 3部 判決 審決一部取消
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判決文本文35,036 文字)

平成25年10月7日判決言渡平成24年(行ケ)第10402号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成25年9月25日判決 原告フローインターナショナルコーポレイション 訴訟代理人弁理士山本秀策訴訟代理人弁護士山本健策訴訟代理人弁理士森下夏樹同石川大輔訴訟復代理人弁護士井髙将斗 被告株式会社スギノマシン 訴訟代理人弁護士松尾和子訴訟代理人弁理士弟子丸健訴訟代理人弁護士藤井輝明訴訟代理人弁理士渡邊誠訴訟代理人弁護士佐竹勝一訴訟代理人弁理士山本航介 主文 1 特許庁が無効2011-800131号事件について平成24年7月10日にした審決のうち「特許第3261672号の請求項1に係る発明についての 審判請求は,成り立たない。」との部分を取り消す。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを3分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 4 この判決に対する原告による上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。 事実 及び理由第1 請求特許庁が無効2011-800131号事件について平成24年7月10日にした審決のうち,「訂正を認める。 理の申立てのための付加期間を30日と定める。 事実 及び理由第1 請求特許庁が無効2011-800131号事件について平成24年7月10日にした審決のうち,「訂正を認める。」との部分及び「特許第3261672号の請求項1ないし2に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」との部分を取り消す。 第2 前提事実 1 特許庁における手続の経緯等(争いがない。)被告は,平成9年3月19日に出願され(以下,この出願日を「本件出願日」という。),平成13年12月21日に設定登録された,発明の名称を「水中切断用アブレシブ切断装置」とする特許第3261672号(以下「本件特許」という。請求項の数は3である。)の特許権者である。 原告は,平成23年7月22日,特許庁に対し,本件特許を全部無効にすることを求めて審判の請求(無効2011-800131号事件)をした。 これに対して,被告は,平成23年10月11日付けで訂正請求したが,特許庁は,平成24年2月7日付けで上記訂正に係る請求項に係る発明について無効理由通知をしたため,被告は,同年3月12日付けで訂正請求をした(以下「本件訂正」という。)。特許庁は,同年7月10日,「訂正を認める。 特許第3261672号の請求項1ないし2に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本を,同月20日,原告に送達 した。 2 特許請求の範囲の記載(1) 本件特許の登録時の請求項1及び2の記載は,以下のとおりである(甲35。なお,本件特許の登録時の明細書及び図面をまとめて「本件明細書」という。)。 「【請求項1】ワークの切断加工を液中で行うためのキャッチャ槽を備えた水中切断用アブレシブ切断装置において,前記キャッチャ槽の内部と液面下で連通 をまとめて「本件明細書」という。)。 「【請求項1】ワークの切断加工を液中で行うためのキャッチャ槽を備えた水中切断用アブレシブ切断装置において,前記キャッチャ槽の内部と液面下で連通する液位調整タンクを備え,該液位調整タンクの内部の液面上は気密室に形成され,該気密室は該気密室内への気体の導入又は導出によって液位調整タンク内の液体を液面下の連通路を介して前記キャッチャ槽に吐出又はキャッチャ槽内の液体を液位調整タンク内に吸入するための給排気装置に接続されていることを特徴とする水中切断用アブレシブ切断装置。 【請求項2】前記気密室への気体の導入により液位調整タンク内の液位が予め設定した液位より下がった時に気密室内の気体を外部に開放する液位調整手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の水中切断用アブレシブ切断装置。」(2) 本件訂正後の請求項1及び2の記載は,以下のとおりである(下線部は訂正箇所である。)(甲44)(以下,本件訂正後の請求項1に記載された発明を「本件発明1」と,請求項2に記載された発明を「本件発明2」と,これらを併せて「本件発明」という。また,本件訂正後の明細書及び図面をまとめて「本件訂正明細書」という。)。 「【請求項1】ノズルから噴射されるアブレシブによりワークの切断加工を液中で行うためのキャッチャ槽を備え,このキャッチャ槽にアブレシブ切断中にキャッチ ャ槽内の水位が上限水位を越えた場合にこの上限水位を越えた水を外部に排出するための水位上限調整用オーバーフロー排出口が設けられている水中切断用アブレシブ切断装置において,前記キャッチャ槽の内部と液面下で連通すると共にワークの切断加工エリアから平面視で外側に配置された(以下,この訂正事項を「訂正事項c」という。)液位調整タンク 切断用アブレシブ切断装置において,前記キャッチャ槽の内部と液面下で連通すると共にワークの切断加工エリアから平面視で外側に配置された(以下,この訂正事項を「訂正事項c」という。)液位調整タンクを備え,該液位調整タンクの内部の液面上は気密室に形成され,該気密室は該気密室内への気体の導入又は導出によって液位調整タンク内の液体を液面下の連通路を介して前記キャッチャ槽に吐出又はキャッチャ槽内の液体を液位調整タンク内に吸入するための給排気装置に接続されていることを特徴とする水中切断用アブレシブ切断装置。 【請求項2】前記気密室への気体の導入により液位調整タンク内の液位が予め設定した液位より下がった時に気密室内の気体を外部に開放するように,その一端が前記予め設定した液位の位置に開口し且つ他端が気密室の外部に開口した液位調整用の管状部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載の水中切断用アブレシブ切断装置。」 3 審決の理由審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。本件に関連する部分の要旨は,(1)本件訂正は,願書に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内でなされたものであるほか,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は,変更するものでもないので,平成23年法律第63号改正附則2条18項によりなお従前の例によるとされている改正前特許法134条の2第1項及び同5項において準用する同法126条3項及び4項に規定する要件を満たす,(2)本件発明は,本件特許の出願前に公然実施され,又は公然知られたものとはいえない,(3)本件発明1と米国特許4,887,797号公報(甲7。以下「甲7公 報」という。)記載の発明(以下「甲第7号証記載の発明」という。)との後記の相違点1及び2に係る発明特定事項については,当業者が容易に想到し 特許4,887,797号公報(甲7。以下「甲7公 報」という。)記載の発明(以下「甲第7号証記載の発明」という。)との後記の相違点1及び2に係る発明特定事項については,当業者が容易に想到し得たものであるが,相違点3に係る発明特定事項については,当業者が容易に想到し得たものということができず,本件発明1には液位調整タンクの損傷が防止されるという作用効果が認められるので,本件発明1が特許法29条2項の規定に違反して特許されたものとはいえない,(4)本件発明2と甲第7号証記載の発明との後記の相違点3及び4に係る発明特定事項につき,当業者が容易に想到し得たものということができず,本件発明2には液位調整タンクの損傷が防止されるという作用効果が認められるので,本件発明2が特許法29条2項の規定に違反して特許されたものとはいえない,(5)本件発明につき,明確性要件,サポート要件及び実施可能要件の違反はない,というものである。 審決が認定した,甲第7号証記載の発明の内容,本件発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。 (1) 甲第7号証記載の発明の内容「ワークの切断加工を水中で行うための焼成槽を備える,プラズマ・アーク・トーチシステムのような水中切断装置において,前記焼成槽の内部と水面下で連通する第二排気チャンバーを備え,該第二排気チャンバーの内部の水面上は気密室に形成され,該気密室は該気密室内への空気の導入又は導出によって第二排気チャンバー内の水を水面下の水路を介して前記焼成槽に吐出又は焼成槽内の水を第二排気チャンバー内に吸入するための給排気装置に接続されている水中切断装置。」(2) 本件発明1と甲第7号証記載の発明との一致点及び相違点ア一致点「ワークの切断加工を液中で行うためのキャッチャ槽を備える水中 るための給排気装置に接続されている水中切断装置。」(2) 本件発明1と甲第7号証記載の発明との一致点及び相違点ア一致点「ワークの切断加工を液中で行うためのキャッチャ槽を備える水中切断装置において, 前記キャッチャ槽の内部と液面下で連通する液位調整タンクを備え,該液位調整タンクの内部の液面上は気密室に形成され,該気密室は該気密室内への気体の導入又は導出によって液位調整タンク内の液体を液面下の連通路を介して前記キャッチャ槽に吐出又はキャッチャ槽内の液体を液位調整タンク内に吸入するための給排気装置に接続されている水中切断装置。」である点。 イ相違点(ア) 相違点1水中切断装置が,本件発明1ではノズルから噴射されるアブレシブによりワークの切断加工を行う水中切断用アブレシブ切断装置であるのに対し,甲第7号証記載の発明ではプラズマ・アーク・トーチ・システムのような水中切断装置である点。 (イ) 相違点2キャッチャ槽が,本件発明1では切断中にキャッチャ槽内の水位が上限水位を越えた場合にこの上限水位を越えた水を外部に排出するための水位上限調整用オーバーフロー排出口が設けられているのに対し,甲第7号証記載の発明ではオーバーフロー排出口が設けられていない点。 (ウ) 相違点3液位調整タンクが,本件発明1ではワークの切断加工エリアから平面視で外側に配置されるのに対し,甲第7号証記載の発明ではこのようなものでない点。 (3) 本件発明2と甲第7号証記載の発明との一致点及び相違点ア一致点及び相違点1~3は,本件発明1と甲第7号証記載の発明との一致点及び相違点1~3と同じ。 イ相違点4本件発明2は,気密室への気体の導入により液位調整タンク内の液位が あら ア一致点及び相違点1~3は,本件発明1と甲第7号証記載の発明との一致点及び相違点1~3と同じ。 イ相違点4本件発明2は,気密室への気体の導入により液位調整タンク内の液位が あらかじめ設定した液位より下がった時に気密室内の気体を外部に開放するように,その一端が前記あらかじめ設定した液位の位置に開口しかつ他端が気密室の外部に開口した液位調整用の管状部材を備えるのに対し,甲第7号証記載の発明はこのような管状部材を備えない点。 第3 原告主張の取消事由 1 取消事由1(本件訂正の適法性の判断の誤り)訂正事項cは,液位調整タンクの配置について,本件訂正前は連通路を介して液面下でキャッチャ槽に接続されていることを除いて特に限定されていなかったものを,ワークの切断加工エリアから平面視で外側に配置することに限定したものである。 審決は,液位調整タンクの配置をワークの切断加工エリアから平面視で外側に限定することにより,アブレシブジェットが液位調整タンクに直撃することによる損傷の防止という作用効果が認められるとしているが,本件明細書には,アブレシブジェットが液位調整タンクに直撃することによる損傷の防止という課題及び作用効果については記載も示唆もない。また,液位調整タンクの配置をワークの切断加工エリアから平面視で外側に限定することによる技術的な意義についても,本件明細書には何ら説明されていない。むしろ,本件明細書【0041】では,「図4は,本発明の水中切断用アブレシブ切断装置の別の実施形態の一例を示す横断面図である。この実施形態では,キャッチャ槽1内の下部領域に水位調整タンク20が配された構成である。」と記載され,液位調整タンクがワークの切断加工エリアから平面視で内側に配置された構成を実施例として明示している。 以上によ ,キャッチャ槽1内の下部領域に水位調整タンク20が配された構成である。」と記載され,液位調整タンクがワークの切断加工エリアから平面視で内側に配置された構成を実施例として明示している。 以上によれば,本件明細書の記載は,液位調整タンクがワークの切断加工エリアから平面視で内側に配置されても,外側に配置されても,発明の課題解決において異ならないということを前提としており,そのような明細書の記載から,当業者は,特定の位置に液位調整タンクを配置することについて発明の課 題解決に寄与する技術的意義を導き出すことはできず,また,本件明細書に記載されているのと同然であるとまで理解することもできない。そうすると,訂正事項cは,アブレシブジェットが液位調整タンクに直撃することによる損傷の防止という,本件明細書には何ら記載されていない「発明の課題解決に寄与する技術的な意義を有する事項」であり,本件明細書から導かれる技術的事項とは異なる新たな技術的事項を導入することとなる。 なお,本件訂正には,本件明細書の【0009】についての訂正も含まれるがこれは訂正事項cに係る訂正請求との整合を図ることを目的としており,これについても同様の議論が当てはまる。 したがって,本件訂正は,特許法134条の2第1項及び同第5項において準用する同法126条3項に反するものであり,本件訂正を認めた審決は誤っており,かかる誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。 2 取消事由2(本件発明1についての公知公用又は公然実施の判断の誤り)仮に本件訂正が認められるとしても,本件発明1は,本件訂正後の請求項1の構成要件を全て具備した原告のアブレシブ水中切断装置「Bengal」により,以下のとおり,本件出願日前に日本国内において公然知られ,また本件出願日前に日本国内 ,本件発明1は,本件訂正後の請求項1の構成要件を全て具備した原告のアブレシブ水中切断装置「Bengal」により,以下のとおり,本件出願日前に日本国内において公然知られ,また本件出願日前に日本国内において公然実施をされた発明に該当するため,特許法29条1項1号,2号により,特許を受けることができない。 (1) 本件出願日に先立つ平成8年7月31日,原告は,原告の日本子会社である株式会社フロージャパン(以下「フロージャパン」という。)に対し,「Bengal」のシリアルナンバー0957-01の装置(以下「原告装置」という。)を販売し,原告装置は,フロージャパンによって日本に輸入された。その際,原告装置の輸入販売に携わったフロージャパンの従業員は,原告装置の構成に関し秘密保持義務を負っていなかった。 そうすると,少なくとも上記輸入の時点で,フロージャパンの従業員は原告装置の構成について現実に了知し,また原告装置は現実に実施(輸入)さ れたことになるため,上記輸入の時点で,原告装置の構成は日本国内において公然知られ,また公然実施されたものであるといえる(以下,原告の上記の公知ないしは公然実施の主張を「主張①」という。)。 (2) 原告装置は,上記(1)の輸入後,フロージャパンの名古屋テクニカルセンターにて保管され,同センターを訪れた顧客に対して展示され,その詳細な説明とともにデモンストレーションが行われた。 これにより,原告装置は,本件出願日前に日本国内において公然知られ,また公然実施された(以下,原告の上記の公知ないしは公然実施の主張を「主張②」という。)。 (3) 原告装置は,平成8年11月に東京で行われた第18回日本国際工作機械見本市において展示され,来場者に対してデモンストレーションが行われた。 その際,来場者に対 の主張を「主張②」という。)。 (3) 原告装置は,平成8年11月に東京で行われた第18回日本国際工作機械見本市において展示され,来場者に対してデモンストレーションが行われた。 その際,来場者に対し,原告装置の水位調整のメカニズムについて,具体的な説明が行われた。その後,原告装置は,株式会社井上製作所(当時)(以下「井上製作所」という。)に転売された。このように,原告装置は,本件出願日前に日本国内において公然知られ,また公然実施された(以下,原告の上記の公知ないしは公然実施の主張を「主張③」という。)。 3 取消事由3(本件発明1についての容易想到性の判断の誤り)(1) 相違点3に係る発明特定事項が設計事項にすぎないこと以下の理由により,液位調整タンクをワークの切断加工エリアから平面視で外側に配置することは当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。 ア審決は,本件発明1の作用効果について,「本件発明1及び2には,甲各号証に記載された発明または事項と比べて,液位調整タンクがワークの切断加工エリアから平面視で外側に配置されることにより,アブレシブジェットが液面調整タンクの上面に直接当たることがなく,液位調整タンクの損傷が防止されるという作用効果の差異を認めることができる。」としているが,本件明細書には,審決が述べるような,アブレシブジェットが液位調整タンクに直撃することによる損傷の防止という課題解決及び作用 効果を達成するために,液位調整タンクをワークの切断加工エリアから平面視で外側に配置することは全く記載されておらず,審決の上記認定判断は,本件明細書の記載に基づくものではなく失当である。 本件発明1における,(ア)水中切断の作業効率及び時間効率の向上を図ることができること,(イ)研磨材によるポンプの破損などの被害がなく 認定判断は,本件明細書の記載に基づくものではなく失当である。 本件発明1における,(ア)水中切断の作業効率及び時間効率の向上を図ることができること,(イ)研磨材によるポンプの破損などの被害がなく,ポンプの寿命を短くすることもないこと,及び(ウ)切断エリアが大きなワークの場合でも,機械自体が大型化しないだけでなく,移動させる水の量が全体的に少ないため比較的短い時間で水中切断加工を行うこと,の課題解決及び作用効果を達成するという点からは,液位調整タンクをワークの切断加工エリアから平面視で外側に配置しようと,内側に配置しようと変わりはない。 イまた,ワーク受け台直下のように,アブレシブジェットが直撃してしまう場所にあえて液位調整タンクを配置することは,当業者の技術認識以前の問題として常識的にあり得ないから,液位調整タンクが配置される場所は,本件発明1のようにワークの切断加工エリアから平面視で外側か,甲第7号証記載の発明のようにキャッチャ槽の底部のさらに下部のいずれかしか考えられない。そして,本件出願日前の技術常識に照らすと,液位調整タンクをワークの切断加工エリアから平面視で外側に配置したとしても,キャッチャ槽の底部のさらに下部(すなわちワークの切断加工エリアから平面視で内側)に配置したとしても,アブレシブジェットによって液位調整タンクが破損されることはない。そうすると,相違点3に係る発明特定事項には,審決が述べているようなアブレシブジェットが液位調整タンクに直撃することによる損傷の防止という効果はそもそも存在せず,当業者もそのような効果を認識できない。 ウ仮に,アブレシブジェットが液位調整タンクに直撃することによる損傷の防止という課題が当業者に自明であったとしても,当業者が本件出願日 前の技術常識に従って適宜キャッチ 認識できない。 ウ仮に,アブレシブジェットが液位調整タンクに直撃することによる損傷の防止という課題が当業者に自明であったとしても,当業者が本件出願日 前の技術常識に従って適宜キャッチャ槽を設計すれば,液位調整タンクの配置とは無関係に液位調整タンクの損傷を防止することができるし,液位調整タンクをワークの切断加工エリアから平面視で外側に配置したとしても,本件発明1の実用的な実施形態において,ジェットが垂直下方から傾いて噴射された場合のようにアブレシブジェットが液位調整タンクに直撃することによる損傷の防止という作用効果を奏さない場合も容易に想定することができるので,液位調整タンクをワークの切断加工エリアから平面視で外側に配置することに特段の技術的意義はない。 (2) 相違点3に係る発明特定事項が容易想到であること仮に相違点3に係る発明特定事項が単なる設計事項ではないとしても,以下のとおり,本件出願日前の当業者であれば,甲第7号証記載の発明と公知技術との組み合わせにより,相違点3に係る構成につき容易に想到することができた。 ア本件出願日前に日本国内において公然実施され,また公然知られた原告装置は,甲第7号証記載の発明に係る装置と同じく水中切断装置であるところ,原告装置は,少なくともエアーチャンバー(液位調整タンク)がワークの切断加工エリアから平面視で外側に配置される構成(すなわち,相違点3に係る発明特定事項)を有している。また,甲第7号証記載の発明と原告装置に係る発明とを組み合わせることを阻害するような要因は特段なく,本件発明1は,甲第7号証記載の発明と原告装置に係る発明との単純な組み合わせを超えるような,当業者が予想できない顕著な作用効果も有しない。 イ実公平6-22547号公報(甲19。以下「甲19公報」とい 明1は,甲第7号証記載の発明と原告装置に係る発明との単純な組み合わせを超えるような,当業者が予想できない顕著な作用効果も有しない。 イ実公平6-22547号公報(甲19。以下「甲19公報」という。),実公昭31-17697号公報(甲30。以下「甲30公報」という。)及び実公平6-22548号公報(甲32。以下「甲32公報」という。)に開示された装置は,いずれも水中切断装置であり,かつ,液 位調節機構がワークの切断加工エリアから平面視で外側に配置される構成が開示されている。そして,甲第7号証記載の発明と甲19公報,甲30公報又は甲32公報に開示された上記事項とを組み合わせることを阻害するような要因は特段なく,本件発明1は,第7号証記載の発明と甲19公報,甲30公報又は甲32公報に開示された上記事項との単純な組み合わせを超えるような,当業者が予想できない顕著な作用効果も有しない。 したがって,アブレシブジェットが液位調整タンクに直撃することによる損傷の防止という課題が当業者に自明であるとすれば,相違点3に係る発明特定事項は,甲第7 号証記載の発明に,甲19公報,甲30公報又は甲32公報記載の事項を組み合わせることにより,当業者が容易に想到できた。 なお,アブレシブ切断装置において,アブレシブの進行方向でワークの後ろ側の近い位置に何らかの部材を配置すれば,その部材が損傷し得ることは,例えば,特開平3―221373号公報(甲28。以下「甲28公報」という。),特開平5-177547号公報(甲29)及び溶接技術43巻6号75~80頁(甲33)に記載されたように,本件出願日前の当業者に周知であった。 ウアブレシブジェットが液位調整タンクに直撃することによる損傷の防止という課題をおいたとしても,実願平2-130 ~80頁(甲33)に記載されたように,本件出願日前の当業者に周知であった。 ウアブレシブジェットが液位調整タンクに直撃することによる損傷の防止という課題をおいたとしても,実願平2-130289号(実開平4-86122号)のマイクロフィルム(甲31。以下「甲31フィルム」という。)には,水中切断加工装置において,液位調整タンク(気体袋)がワーク(被加工体)の切断加工エリアから平面視で外側に配置される構成が開示されている。また,甲第7号証記載の発明と甲31フィルム記載の発明は,ポンプによりキャッチャ槽の水位を調整することの不都合性という同一の技術的課題を有し,甲7公報と甲31フィルムには上記課題を解決するためにポンプに代えて液位調整タンクを用いるという同一の解決方法 が開示されている。 なお,甲7公報記載のプラズマ切断装置と甲31フィルム記載の放電加工装置との間のメカニズムの相違は水位調整方法と関係がなく,切断メカニズムがプラズマ切断であるか,放電加工であるか,アブレシブ切断であるか,ということとは独立して水位調整方法を選択できることが当業者に明らかであるから,この切断メカニズムの相違は相違点3の容易想到性の阻害要因となるものではない。また,甲第7号証記載の発明の液位調整タンク(第二排気チャンバー32)と甲31フィルム記載の発明の液位調整タンク(気体袋15)とはともに,タンクに空気を入れることで水を移動させて液位を調整するのであるから,液位調整のための基本的原理に相違はない。 そうすると,甲第7号証記載の発明のキャッチャ槽の下部に配置されている液位調整タンクに代えて,甲31フィルムに記載されたワーク(被加工体)の切断加工エリアから平面視で外側に配置される液位調整タンクを採用し,相違点3に係る発明特定事 キャッチャ槽の下部に配置されている液位調整タンクに代えて,甲31フィルムに記載されたワーク(被加工体)の切断加工エリアから平面視で外側に配置される液位調整タンクを採用し,相違点3に係る発明特定事項と同一の構成を得ることは,当業者であれば極めて容易に着想できる。 (3) 以上によれば,本件発明1は,本件出願日前の当業者が容易に発明できたものであり,特許法29条2項により特許を受けることはできない。この点に関する審決の認定判断は誤っており,かかる誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。 (4) なお,相違点1及び2の容易想到性に関する審決の認定判断については,以下のとおり誤りはない。 ア相違点1について特開平8-285996号公報(甲9。以下「甲9公報」という。)の【0032】には,「なお,切断トーチ13,14;28は,研磨材を混入したウォータジェットを噴射して被切断物を切断しているけれども,プ ラズマアークを照射して高い熱エネルギで切断することもできる。」との記載があり,切断トーチとして,ウォータージェットをプラズマアークに置き換えることができることが単純かつ明確に記載されており,置き換えるにあたっての制約は何ら記載されていない。 したがって,甲第7号証記載の発明に甲9公報記載の事項を組み合わせることにより,相違点1についての「プラズマ・アーク・トーチ・システムを用いる水中切断装置における液位調整手段を,ノズルから噴射されるアブレシブによりワークの切断加工を行う水中切断用アブレシブ切断装置に適用して<相違点1>に係る発明特定事項を本件発明1ないし3のものとすることは,当業者が容易に想到し得る。」との審決の判断に誤りはない。 イ相違点2について相違点2に係る発明特定事項も,甲第7号証記載 に係る発明特定事項を本件発明1ないし3のものとすることは,当業者が容易に想到し得る。」との審決の判断に誤りはない。 イ相違点2について相違点2に係る発明特定事項も,甲第7号証記載の発明と特開平4―274898号公報(甲13。以下「甲13公報」という。)又は甲28公報記載の事項に基づいて当業者が容易に想到できるものである。 すなわち,甲13公報に記載された側溝も,過剰な水をタンクから排出するという点で機能および用途は異ならず,当業者は,その側溝により,水位が側溝の高さに一定に保持できることを理解できる。したがって,アブレシブ切断装置の水面の高さを一定にしようと考える当業者は,甲13公報記載の側溝をアブレシブ切断装置に適用することにより,その目的が達成できると当然に理解するのであり,その側溝のように過剰な水を排出する手段を採用することに動機付けられることになる。 そもそも,本件訂正後の請求項1では,文言上,ワーク表面と水面までの高さについて何らの限定も付されておらず,本件明細書の発明の詳細な説明及び図面でも,何らの記載も示唆もされていない。そうすると,本件訂正後の請求項1の文言上は,ワーク表面と水面までの高さが可変である 場合も技術的範囲に含まれるのであり,その場合には,仮に被告が主張するようにワーク表面から水面までの高さを一定に保つことが重要であったとしても,被告の主張するような発明の作用効果は認められない。 また,甲28公報は排水口27により液体2の水位が一定に保持されることを開示している。そして甲28公報の気中切断用アブレシブ切断装置を水中切断用アブレシブ切断装置に置き換える場合には,そのワークを浸漬するタンクの水位を一定に保持する手段として,排水口27と同様の手段を用いることは当業者が当然に考える 中切断用アブレシブ切断装置を水中切断用アブレシブ切断装置に置き換える場合には,そのワークを浸漬するタンクの水位を一定に保持する手段として,排水口27と同様の手段を用いることは当業者が当然に考えることであり,何ら困難性はない。 4 取消事由4(本件発明2についての容易想到性の判断の誤り)甲第7号証記載の発明は,第二排気チャンバー32(液位調整タンク)の液面上に形成された気密室へ空気が導入されることにより,第二排気チャンバー32内の水位があらかじめ設定された水路35の上端の高さよりも下がった場合には,気密室内の空気は第二排気チャンバー32の外部に開放される構成を備えている。そして,水路35は,第二排気チャンバー32の内部において開口し,かつ他端が第二排気チャンバー32の外部に開口している。そうすると,甲第7号証記載の発明において開示された水路35は,本件発明2における「気密室への気体の導入により液位調整タンク内の液位が予め設定した液位より下がった時に気密室内の気体を外部に開放するように,その一端が前記予め設定した液位の位置に開口し且つ他端が気密室の外部に開口した」液位調整手段に該当する。 そして,水路35の形状を管状とし,相違点4に係る構成とすることは当業者であれば適宜なし得る設計事項である。仮にそうでないとしても,甲13公報及び特開平5-253675号公報(甲15。以下「甲15公報」という。)では,管状部材が用いられた連通管の開示があるところ,甲第7号証記載の発明における水路35も,上記各公報における連通管と同様に,それを介して水を移動させることによって液位調整機能を果たすものなのであるから, その部材として管状のものを採用し,相違点4に係る構成とすることは当業者であれば極めて容易に想到することができる。 な を移動させることによって液位調整機能を果たすものなのであるから, その部材として管状のものを採用し,相違点4に係る構成とすることは当業者であれば極めて容易に想到することができる。 なお,相違点3が容易想到であることについては前記3記載のとおりである。 したがって本件発明2に進歩性を認めた審決の判断は誤っている。 5 取消事由5(記載要件の判断の誤り)(1) 明確性要件違反ア本件発明1における「ワークの切断加工エリアから平面視で外側に配置された液位調整タンク」との記載は不明瞭であり,明確性要件を欠く。 この点,審決は,「『ワークの切断加工エリア』とは,平面視したときに,キャッチャ槽が存在する範囲内で,ノズルが切断加工のために移動可能である範囲を意味することは,当業者が明確に理解することができる。」と判断している。 しかし,当業者であれば,水中切断装置においては,原告装置のようにワークを固定してノズルを移動させることにより切断加工を行う構成と,ノズルは固定されたままでワークを移動させることにより切断加工を行う構成の両方があり得ることを理解するが,本件明細書ではいずれかの構成に限定するような記載は存在しないので,審決の上記判断は本件明細書の記載に基づかないものである。そして,ノズルは固定されたままでワークを移動させることにより切断加工を行う構成の場合には,本件発明1においては,「ワークの切断加工エリア」が固定されたノズルから噴射されるアブレシブウォータージェットが到達するエリアを指すのか,それともワークを移動させることができるエリアを指すのか不明である。しかも,審決でいう「ノズルが切断加工のために移動可能である」とは,ノズルがどの方向へ移動可能であるというのか不明である。 ,それともワークを移動させることができるエリアを指すのか不明である。しかも,審決でいう「ノズルが切断加工のために移動可能である」とは,ノズルがどの方向へ移動可能であるというのか不明である。 加えて,本件発明1においては,アブレシブジェットの噴射方向が垂直下方に限定されていないところ,垂直下方から傾いた方向に噴射する装置 においては,ノズルの可動範囲と,ノズルから噴射されたアブレシブジェットがワークに当たって切断する切断加工エリアは平面視で一致しないのであり,審決のように解釈することはできない。 イ本件発明2における「その一端が前記予め設定した液位の位置に開口し且つ他端が気密室の外部に開口した液位調整用の管状部材」との記載も不明瞭であり,明確性要件を欠く。 この点,審決は,「液位調整用の管状部材は気密室内の気体を外部に開放するものであるから,管状部材の他端が開口する『外部』とは,気体を開放する『外部』と同じ場所を指すものと解されるところ,管状部材を使用して気体を開放するならば少なくともキャッチャ槽の外部に開放することは,当業者にとって自明であるから,管状部材の他端が開口する『外部』も,少なくともキャッチャ槽の外部であることは容易に理解される。」と認定判断しているが,本件発明の請求項2の文言を解釈すれば,「外部」とは気密室の外部としか解することができない。 (2) 実施可能要件及びサポート要件違反液位調整タンクにアブレシブジェットが直撃することによる損傷を防止するという発明の課題は,本件訂正明細書には一切記載されていない。 そうすると,本件明細書に接した当業者は,発明の課題を解決できるとは認識できないので,本件訂正明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件発明を実施できる程度に明 細書には一切記載されていない。 そうすると,本件明細書に接した当業者は,発明の課題を解決できるとは認識できないので,本件訂正明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえず,実施可能要件を欠く。さらに,本件発明は,本件明細書の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえず,発明の詳細な説明に記載された発明ということもできないので,本件発明に関し,特許請求の範囲の記載は,サポート要件を具備しない。 第4 被告の反論 1 取消事由1(本件訂正の適法性の判断の誤り)について 本件明細書の図1には,水位調整タンク2(液位調整タンクに相当)が,平面視でワーク3及びキャッチャ槽1の設置された範囲の外側に配置されている。 ここで,本件訂正前の請求項1における「ワークの切断加工エリア」は,常識的にワーク及びキャッチャ槽の設置された範囲内を意味するものと理解するのが合理的である。そうすると,訂正事項cは,本件明細書の図1に明示的に記載されている。 そして,上記の図1の配置から,水中切断用アブレシブ切断装置において,アブレシブジェットが水位調整タンク2に直撃することによる損傷の防止という作用効果が奏されることは,自明な事項である。 したがって,本件訂正において,液位調整タンクの配置をワークの切断加工エリアから平面視で外側に限定すること,及び,アブレシブジェットが液面調整タンクに直撃することによる損傷の防止という作用効果を認定することは,本件明細書から導かれる技術的事項の範囲内で行われるものであり,新たな技術的事項を導入するものではない。 よって,審決の判断に誤りはない。 2 取消事由2(公知公用又は公然実施の ることは,本件明細書から導かれる技術的事項の範囲内で行われるものであり,新たな技術的事項を導入するものではない。 よって,審決の判断に誤りはない。 2 取消事由2(公知公用又は公然実施の判断の誤り)について(1) 主張①についてア原告は,無効審判手続において主張①に係る主張を全く行っておらず,審決においても判断されていないので,主張①は審決取消訴訟の審理範囲に属さない。 イ後記(2)及び(3)記載のとおり,原告が提出する全証拠によっても,本件出願日前に原告装置が本件訂正後の請求項1の構成要件を全て備えていたという事実は立証されていない。仮にフロージャパンの従業員が秘密保持義務を負わずに原告装置を受け取っていたとしても,これによって本件発明1が公知になったということはできない。また,フロージャパンは原告の子会社であるところ,輸入された原告装置をフロージャパンが受け取っ た時点において,原告装置は未だ日本国内において展示会における出品や客先への販売がなされていなかった以上,少なくともグループ会社ではない第三者に対して原告装置が開示されるまではグループ会社であるフロージャパンの従業員は原告装置について黙示的に秘密保持義務を負っていたと考えるのが自然である。 (2) 主張②について主張②に関し,原告の提出する供述書以外の証拠は甲1の別紙のみであり,これからは,仮に何らかの事実が立証されるとしても,せいぜい,平成8年7月31日に原告がフロージャパンに原告装置を輸出した事実が立証されるにすぎない。 それ以外の主張②の事実を立証するための証拠は,原告の従業員又は元従業員の供述書のみであり,かつその供述内容も抽象的なものにとどまり,信用性が低い。しかも,いかなる内容・態様で展示,説明及びデモンスト れ以外の主張②の事実を立証するための証拠は,原告の従業員又は元従業員の供述書のみであり,かつその供述内容も抽象的なものにとどまり,信用性が低い。しかも,いかなる内容・態様で展示,説明及びデモンストレーションが行われていたのかは明らかではない。さらに,原告装置のキャッチャ槽内に配置されたエアーチャンバー(本件発明1の「液位調整タンク」に相当),オーバーフロー排出口(本件発明1の「水位上限調整用オーバーフロー排出口」に相当)及び連通パイプ(本件発明1の「連通路」に相当)は,常時水面下にあるため,外部から観察することができないようになっている。 原告の提出する「Bengal」の各図面(甲21~23,53)についても,これら各図面が,原告装置の図面であることを直接証明する証拠は全く存在しないし,これら各図面が本件出願日前に作成されていたかどうかも疑わしい。 原告の提出する井上製作所が所有しているシリアルナンバー0957-01で特定される商品名「Bengal」のアブレシブウォータージェット切断機(以下「井上製作所所有装置」という)の構造や動作状況などを説明するフロージャパン社員及び井上製作所従業員による各供述書(甲1,24, 58,59),井上製作所所有装置の内部,水位調整動作及び各部の配置等を撮影したDVD及び同DVDからの静止画(甲25,27,52(枝番のあるものは枝番を含む。)),井上製作所所有装置の内部を撮影した写真(甲26)についても,甲1を除き,いずれも本件特許について無効審判が請求され,または本件審決取消訴訟が提起され,原,被告間において係争が生じた後である平成24年5月9日又は平成25年1月11日に作成されたものであり,本件出願日からかなりの時間が経過した後に無効審判及び本件審決取消訴訟の準備のために原告に協力す 被告間において係争が生じた後である平成24年5月9日又は平成25年1月11日に作成されたものであり,本件出願日からかなりの時間が経過した後に無効審判及び本件審決取消訴訟の準備のために原告に協力する者によって作成された証拠にすぎない。甲1についても,無効審判請求の直前に作成されたものであり,しかも,原告の子会社の従業員によって作成された供述書にすぎない。井上製作所所有装置が本件出願日前から存在していたことについても何ら立証がされていない。さらに,仮にシリアルナンバー0957-01で特定される井上製作所所有装置が本件出願日前から存在していたとしても,その後現在までの間に改良や修理等によって構造や作動状況が変化した可能性を否定することはできない。以上の点は,甲60~62の2を考慮しても同様である。 以上によれば,原告の提出する証拠により,本件訂正後の請求項1の構成を全て備えた原告装置が,主張②に係る態様で公知となり又は公然実施された事実が立証されたものとはいえない。 (3) 主張③について主張③に係る事実を立証する証拠は,見本市に関するパンフレット等(甲3~6)並びにフロージャパンの従業員及び元従業員の供述書(甲1,2,17)のみであるところ,見本市に関するパンフレット等には,見本市に出展された装置がいかなる構造を有していたのかについては何ら記載されておらず,結局,実質的な証拠としては原告の子会社であるフロージャパンの従業員又は元従業員の供述のみであり,これらの証拠としての価値は低い。フロージャパンの従業員及び元従業員の供述書の記載も,水位調整方法がセー ルスポイントであったかのような記載がされているが,水位調整がセールスポイントであるならば,カタログ等で当然水位調整機能の説明が記載されているのが当然であるにもかかわらず 調整方法がセー ルスポイントであったかのような記載がされているが,水位調整がセールスポイントであるならば,カタログ等で当然水位調整機能の説明が記載されているのが当然であるにもかかわらず,甲1の別紙に添付されている「Bengal」のカタログを見ても水位調整の点については何ら記載がされていない。仮に,見本市におけるデモンストレーションが行われたとしても,前記(2)記載のとおり,原告装置のキャッチャ槽内に配置されたエアーチャンバー,オーバーフロー排出口及び連通パイプは,常時水面下にあるため,外部から観察することができないようになっている。 以上に加え,上記(2)記載の各点にも照らすと,原告の提出する証拠により,本件訂正後の請求項1の構成を全て備えた原告装置が,主張③に係る態様で公知となり又は公然実施された事実が立証されたものとはいえない。 (4) 本件発明1の構成のうち,構成a(ワークの切断加工エリアから平面視で外側に配置された液位調整タンクを備えること),構成b(キャッチャ槽にアブレシブ切断中にキャッチャ槽内の水位が上限水位を超えた場合にこの上限水位を超えた水を外部に排出するための水位上限調整用オーバーフロー排出口が設けられていること)及び構成c(キャッチャ槽と液位調整タンクとが液面下の連通路を介して液面下で連通すること)を外部から認識することは不可能であったから,仮に原告装置が,フロージャパンの名古屋テクニカルセンター,又は第18回日本国際工作機械見本市において顧客等に対し実演等されていたとしても,公然知られ,あるいは公然実施されたということはできない。 3 取消事由3(本件発明1についての容易想到性の判断の誤り)について(1) 相違点3に係る発明特定事項は設計事項にすぎないとの点についてア原告は,「 れたということはできない。 3 取消事由3(本件発明1についての容易想到性の判断の誤り)について(1) 相違点3に係る発明特定事項は設計事項にすぎないとの点についてア原告は,「液位調整タンクをワークの切断加工エリアから平面視で外側に配置すること」及び「その技術的意義(作用効果)」が明細書に記載されていないので,これらの事項を参酌しない場合には,「液位調整タンク をワークの切断加工エリアから平面視で外側に配置すること」は設計事項であるとしている。 しかし,前記1記載のとおり,本件発明1の「液位調整タンクをワークの切断加工エリアから平面視で外側に配置すること」は,本件明細書に明示的に記載されており,さらに,この図1に記載された配置構造から,「アブレシブジェットが液位調整タンクに直撃することによる破損の防止という課題解決及び作用効果」は,自明事項である。 したがって,原告の上記主張は誤っている。 イ原告の主張は,全て「水中切断用アブレシブ切断装置において液位調整タンクを設けること」が前提となっており,典型的な後知恵である。 ウ原告の主張する,噴射されたアブレシブジェットが,ワーク3の右端から外側にずれ,キャッチャ槽1(水位調整タンク2)の側壁を直撃するようになっている形態は,常識的には存在しない例を示すものである。ノズル6のジェットが斜めに噴射された場合であっても,そのアブレシブジェットがワーク3に到達してワークを切断する場合には,アブレシブジェットが液位調整タンクを直撃して破損することはない。 (2) 相違点3に係る発明特定事項が容易想到であるとの点についてア原告の甲第7号証記載の発明に原告装置に係る発明を組み合わせるとの主張は,新規性の根拠となった原告装置 することはない。 (2) 相違点3に係る発明特定事項が容易想到であるとの点についてア原告の甲第7号証記載の発明に原告装置に係る発明を組み合わせるとの主張は,新規性の根拠となった原告装置を進歩性の根拠にしており,それゆえ,原告装置を甲第7号証記載の発明にどのように組み合わせることにより,本件発明1を得ることができるのか不明瞭である。 イ甲第7号証記載の発明に甲19公報,甲30公報及び甲32公報に記載された事項を組み合わせる動機付けは存在しない。 すなわち,アブレシブ切断装置においては,ノズルから噴射された研磨材を含む高圧水は水中でも減衰が少なく,ワークに衝突し加工を行った後の下流領域においても,かなりの衝撃加工エネルギーを保有しているので, 甲7公報記載の装置のように,ワークの直下に水位調整タンクが配置されている場合には,アブレシブジェットはその水位調整タンクを直撃し,時間の経過に伴いタンクを破損させてしまう。このようなアブレシブ切断装置の固有の問題を解決するために,本件発明1では,液位調整タンクをワークの切断加工エリアから平面視で外側に配置したのである。 なお,プラズマ切断装置は,プラズマアークの熱エネルギーによりワークを切断するものであり,水中においては減衰が大きく,ワークの下の領域においては,この熱エネルギーは少ない距離で小さなものとなり,上記の問題は発生しない。 他方,甲19公報には,構造上必然的に切断加工エリアの外側に配置された水位調節機構6が記載されているにすぎないし,しかも,プラズマ切断装置であり,アブレシブが水槽1に直撃して破損することもないので,甲19公報に記載された事項を甲第7号証記載の発明に適用する動機付けがない。 甲30公報及び甲32公報に記載された事項についても,甲19公報 り,アブレシブが水槽1に直撃して破損することもないので,甲19公報に記載された事項を甲第7号証記載の発明に適用する動機付けがない。 甲30公報及び甲32公報に記載された事項についても,甲19公報に記載された事項と実質的に同じであるため,同様に,甲第7号証記載の発明に適用する動機付けがない。 なお,水中切断用アブレシブ切断装置の分野では,キャッチャ槽内の液位を液位調整タンクにより調整するという技術自体が,本件特許の出願当時において存在せず,そのため,「アブレシブジェットが液位調整タンクに直撃することによる損傷の防止という発明の課題」も当業者にとって自明なものではなかった。 ウ甲第7号証記載の発明はプラズマ切断装置であり,甲31フィルム記載の発明は放電加工装置であり,いずれも,アブレシブ切断装置ではないため,アブレシブジェットが液位調整タンクに直撃することによる破損の防止という課題も作用効果も存在しない。また,甲第7号証記載の発明の液 位調整タンク(第二排気チャンバー32)と甲31フィルム記載の発明の液位調整タンク(気体袋15)とは液位調整のための原理が異なっており,また,甲7公報記載の第二排気チャンバー32に換えて甲31フィルム記載の気体袋15を採用する動機付けも記載されていない。 したがって,甲第7号証記載の発明に甲31フィルム記載の事項を組み合わせることが容易であるとはいえない。 (3) 以上によれば,相違点3に係る審決の判断に誤りはない。 (4) なお,以下のとおり,相違点1及び2に係る審決の容易想到性の判断は誤っている。 ア相違点1について甲7公報に記載されたプラズマ切断装置は,本件発明1のアブレシブ切断装置とは,切断原理が全く異なるほか,甲7公報には,水中プラズマ切断装置の液位調整手段がアブレ っている。 ア相違点1について甲7公報に記載されたプラズマ切断装置は,本件発明1のアブレシブ切断装置とは,切断原理が全く異なるほか,甲7公報には,水中プラズマ切断装置の液位調整手段がアブレシブ切断装置に適用可能である旨の記載はないし,また,そのような示唆もない。 甲9公報には,使用済制御棒12のような高放射性固体廃棄物を水中で切断する際,アブレシブ切断装置に代えて,プラズマアークを照射してもよいことが記載されている(【0032】参照)。しかし,甲9公報記載の装置においては,使用済制御棒12は,その冷却の必要性から,常に,水中に貯蔵され,切断作業も,水槽10内で行われ,水槽内は,常に,水が満たされている。このため,甲9公報記載の装置においては,ワークの取り付け取り外しごとにキャッチャ槽(=水槽)内の水を排出するので作業効率及び時間効率が悪いという本件発明1の課題は存在せず,さらに,切断エリアが大きくなると水の給排を迅速に行えないという本件発明1の課題も存在しない。 以上によれば,甲7公報及び甲9公報のいずれにも,甲7公報記載のプラズマ切断装置に代えてアブレシブ切断装置を適用するための動機付けが 記載されていないので,相違点1に係る構成を得ることは当業者において容易に想到し得るものでない。 イ相違点2についてアブレシブ切断装置においては,水位が変化すると,ワークの切断面の上部角部の形状や切断面の面粗さが影響を受けたり,脆性材料を切断する場合には,切断面の上部角部に細かな割れが発生するため,アブレシブ切断中に,ワーク表面から水面までの高さを一定に保持することが極めて重要である。本件発明1においては,あらかじめ適正な位置に水位上限調整用オーバーフロー排出口を設けているので,アブレシブ切断中に水位が上昇しようとし 面から水面までの高さを一定に保持することが極めて重要である。本件発明1においては,あらかじめ適正な位置に水位上限調整用オーバーフロー排出口を設けているので,アブレシブ切断中に水位が上昇しようとしても,キャッチャ槽の水位を所望の位置に保持することができ,それにより,ワークの切断面の上部角部や切断面の面粗さが受ける影響を抑制して,ワークの切断性能を向上させることができる。 甲7公報記載のプラズマ切断装置においては,プラズマ切断中に水量が増え水槽の水位が上昇するようなことはなく,上記の問題は発生しない。 甲13公報には,プラズマ切断装置が記載され,その【0031】に「なお,図中26は,誤操作等により万が一水槽5から水が溢れ出た場合に,この溢れ出た水を適宜所定位置に集水するための側溝であり,同水槽5の上端外周に沿って形成されている」との記載がなされ,その側溝26が,図1に示されている。しかしながら,上記側溝26は,誤操作等により水槽5から水があふれ出た場合に対応するためのものであり,本件発明1の「水位上限調整用オーバーフロー排出口」とは,機能及び用途が異なっている。 甲28公報には,アブレシブジェット加工装置が記載されているものの,気中切断用アブレシブ切断装置であり,本件発明1の水中切断用アブレシブ切断装置とはタイプが異なる。また,甲28公報記載の装置においても,箱体7に排水口27が形成され,これにより,液体2の水位が一定に保持 されるようになっているが,この排水口27は,単に余剰水を排出するためのものであり,本件発明1の水位を一定に保持して切断効率を向上させるものとは異なっている。したがって,気中切断用アブレシブ切断装置である甲28公報の記載事項は,タイプの異なる水中切断用アブレシブ切断装置に適用する動機付けがない。 以 保持して切断効率を向上させるものとは異なっている。したがって,気中切断用アブレシブ切断装置である甲28公報の記載事項は,タイプの異なる水中切断用アブレシブ切断装置に適用する動機付けがない。 以上によれば,相違点2に係る構成は,甲7公報,甲13公報及び甲28公報に記載された事項から容易に想到し得るものでもない。 4 取消事由4(本件発明2についての容易想到性の判断の誤り)について甲第7号証記載の発明における垂直水路26及び水路35は,本件明細書の図2に示された水位調整タンク2とキャッチャ槽1の底部とを連通する連通開口(連通路)に相当するものである。また,本件発明2の「一端が予め設定した液位の位置に開口し且つ他端が気密室の外部に開口した液位調整用の管状部材」は,「予め設定した」と規定されているように,一端の開口位置はあらかじめ設定された特定の位置であり,【0019】に記載されているように,「キャッチャ槽における上昇液位を設定するための液位調整タンク内の下降液位」を意味し,本件発明2の実施形態においては,この「下降液位」は,水位調整タンク2内の「最低水位」として説明されている(【0027】参照)。この本件発明2の液位調整タンク内の下降液位(最低水位)に相当する甲第7号証記載の発明における液位の位置は,図4Dに示されたバーンタンク10の液位が最高水位となったときの第二排気チャンバー32内の液位の位置であり,水路35よりも上方に位置している。 以上によれば,甲7公報記載の水路35は,本件発明2の「一端が予め設定した液位の位置に開口し且つ他端が気密室の外部に開口した液位調整用の管状部材」に該当しない。 また,甲13公報及び甲15公報記載の発明は,いずれも,水中プラズマ切断装置であり,さらに,甲13公報記載の連通管9及び甲15公報記載の連 密室の外部に開口した液位調整用の管状部材」に該当しない。 また,甲13公報及び甲15公報記載の発明は,いずれも,水中プラズマ切断装置であり,さらに,甲13公報記載の連通管9及び甲15公報記載の連通 管9は,いずれも,本件明細書の図2に示された水位調整タンク2とキャッチャ槽1の底部とを連通する連通開口(連通路)に相当するものである。 したがって,甲13公報記載の連通管9及び甲15記載の連通管9を甲第7号証記載の発明に適用しても,本件発明2の「一端が前記予め設定した液位の位置に開口し且つ他端が気密室の外部に開口した液位調整用の管状部材」を得ることはできない。 5 取消事由5(記載要件の判断の誤り)について(1) 明確性要件違反についてア本件明細書【0034】,図1及び図2の記載,並びに,本件明細書にノズル6が固定され,ワーク4が移動する旨の記載もないことに照らすと,本件明細書には,ワークを固定してノズルを移動させる水中切断用アブレシブ装置が記載されていることが明らかである。 また,本件発明1における「ワークの切断加工エリア」は,「ワークが水中で切断加工されることができる範囲」を指している。このため,たとえ,ノズルのジェットが斜めに噴射された場合であっても,そのアブレシブジェットがワークに到達してワークを切断する場合には,アブレシブジェットが液位調整タンクを直撃して破損することを防止することができるようになっている。ノズルの可動範囲は,「ワークの切断加工エリア」の一例であり,これを根拠に不明確であるとはいえない。 イ本件明細書の記載,特に【0027】の記載事項から,当業者であれば,本件発明2の「外部」を「少なくともキャッチャ槽の外部」と理解することになる。したがって,明確性要件違反はない。 ない。 イ本件明細書の記載,特に【0027】の記載事項から,当業者であれば,本件発明2の「外部」を「少なくともキャッチャ槽の外部」と理解することになる。したがって,明確性要件違反はない。 (2) 実施可能要件及びサポート要件違反について前記1記載のとおり,本件明細書の記載から,水中切断用アブレシブ切断装置において,アブレシブジェットが水位調整タンク2に直撃することによる損傷の防止という作用効果が奏されることは,自明な事項である。 したがって,実施可能要件違反もサポート要件違反もない。 第5 当裁判所の判断当裁判所は,原告主張の各取消事由のうち,取消事由3には理由があるので,取消事由2について判断するまでもなく,審決のうち,本件発明1についての審判請求が成り立たないとした部分は取り消されるべきものであるが,取消事由1,4及び5にはいずれも理由がなく,その他,審決の上記部分を除く部分にはこれを取り消すべき違法はないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。なお,事案に鑑み,取消事由1,3,4及び5について判断する。 1 取消事由1(本件訂正の適法性の判断の誤り)について(1) 本件明細書(甲35)に発明の実施形態の一例を示すものとして記載された図1~3の記載内容に照らすと,当業者は,同図において,水位調整タンク2(液位調整タンク)がワーク3及びキャッチャ槽1の設置範囲から平面視で外側に配置されていることが示されていると認識できるものと認められる。そして,ワークの切断加工がワーク及びキャッチャ槽1の設置された範囲内で行われることは常識であると解されるから,当業者において,上記各図から,液位調整タンクがワークの切断加工エリアから平面視で外側に配置されることは容易に理解できるといえる。 1の設置された範囲内で行われることは常識であると解されるから,当業者において,上記各図から,液位調整タンクがワークの切断加工エリアから平面視で外側に配置されることは容易に理解できるといえる。 したがって,訂正事項cは願書に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内でなされたものであると認められる。 (2) 原告は,本件明細書には,アブレシブジェットが液位調整タンクに直撃することによる損傷の防止という課題及び作用効果については記載も示唆もなく,本件明細書の記載から,当業者が,特定の位置に液位調整タンクを配置することについて発明の課題解決に寄与する技術的意義を導き出すことはできないのに対し,液位調整タンクの配置をワークの切断加工エリアから平面視で外側に限定することは,審決において本件発明の作用効果として認定された,アブレシブジェットが液位調整タンクに直撃することによる損傷の防 止という,本件明細書から導かれる技術的事項とは異なる新たな技術的事項を導入することになるから,訂正事項cに係る訂正は,願書に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内における訂正ということはできない旨主張する。 確かに,本件明細書には,アブレシブジェットが液位調整タンクに直撃することによる損傷の防止という課題についての記載や示唆はない。しかし,上記(1)認定のとおり,本件明細書の図1~3から,水位調整タンク2がワークの切断加工エリアから平面視で外側に配置されていることが示されているところ,これらの記載から,アブレシブジェットが水位調整タンク2に直撃することがなく,アブレシブジェットによる水位調整タンク2の損傷が防止できるという作用効果が奏されるであろうことは,もともと当業者が容易に理解できたことといえる。 以上によれば,訂正事項cに係る訂 することがなく,アブレシブジェットによる水位調整タンク2の損傷が防止できるという作用効果が奏されるであろうことは,もともと当業者が容易に理解できたことといえる。 以上によれば,訂正事項cに係る訂正により新たな技術的事項を導入するものということはできず,原告の上記主張を採用することはできない。 (3) よって,本件訂正の適法性に関する審決の判断に誤りはない。 2 取消事由3(本件発明1についての容易想到性の判断の誤り)について(1) 相違点3についてア甲7公報について甲7公報には前記第2の3(1)の内容の発明が記載されているものと認められる(甲7)。 イ周知技術について(ア) 甲19公報上記公報には,水中プラズマ切断装置において,ワークテーブルの領域から平面視で外側に配置された,ウェイトを収容した箱体を水槽内の水中に浸漬することにより,水槽の水位を上下動することが記載されているものと認められる(甲19)。 (イ) 甲30公報上記公報には,放電加工の際に使用するタンクが,加工部と,加工部から平面視で外側に配置されている液面調節用タンクを収納してなる加工液排出部とから成り,液面調節用タンクを液面上に位置せしめておいて電極と被加工体を液面上に現す程度に液面を保持し,液面調節用タンクを液中に沈ませて電極と被加工物が液中に没する液面を保持させることが記載されているものと認められる(甲30)。 (ウ) 甲32公報上記公報には,水中プラズマ切断装置において,水槽内のワークテーブル部分を除く部分に,内部にウェイトを備えた箱体を水中に浸漬自在に昇降する機構からなる,水槽内の水位調節装置を備えることが記載されているものと認められる(甲32)。 (エ) 上記( のワークテーブル部分を除く部分に,内部にウェイトを備えた箱体を水中に浸漬自在に昇降する機構からなる,水槽内の水位調節装置を備えることが記載されているものと認められる(甲32)。 (エ) 上記(ア)~(ウ)認定の各公報等の記載事項に照らすと,水などの液中で切断加工を行う装置において,水槽などの加工槽内の液面(水位)を調節する装置を切断加工領域を除く領域(外側)に備えることは,本件出願日以前において周知であったものと認められる。 ウ相違点3に係る容易想到性について後記3(1)認定のとおり,甲7公報記載の水中切断装置において用いられているプラズマ・アーク・トーチ・システムに代えて,ノズルから噴射されるアブレシブによりワークの切断加工を行う水中切断用アブレシブ切断装置とすることは当業者が容易に想到し得ることである。そして,上記イ認定のとおり,水などの液中で切断加工を行う装置において,水槽などの加工槽内の液面(水位)を調節する装置(本件発明における「液位調整タンク」に該当する。)を,切断加工領域を除く領域(外側)に備えることは,本件出願日以前において周知であったこと,及び,アブレシブ切断装置においては,ノズルから噴射された研磨材を含む高圧水は水中でも減 衰が少なく,ワークに衝突し加工を行った後の下流領域においても,かなりの衝撃加工エネルギーを保有しているものであることは本件出願日において周知であったこと(甲28,29,33)に照らすと,甲第7号証記載の発明において,切断方法としてアブレシブ切断を採用した際に,液位調整タンクなど損傷してはいけないものを,アブレシブジェットが直撃してしまう場所を避けて切断加工領域を除く領域(外側)に配置することは,当業者が容易に考えることであり,そのように考える動機付けがあるといえる。そして してはいけないものを,アブレシブジェットが直撃してしまう場所を避けて切断加工領域を除く領域(外側)に配置することは,当業者が容易に考えることであり,そのように考える動機付けがあるといえる。そして,甲第7号証記載の発明に関し,上記の構造とすることが技術的に困難であるとは認められない(甲7,19,30,32)ことからすれば,液位調整タンクを切断加工領域の下側から切断領域を除く領域(外側)に配置することは設計的な変更事項であるといえる。 以上によれば,甲第7号証記載の発明において,切断方法としてアブレシブ切断を採用した際に,上記周知技術を適用して,相違点3に係る発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得たものであると認められる。 エ被告の主張について(ア) 被告は,アブレシブ切断装置では,甲7公報記載の装置のように,ワークの直下に水位調整タンクを配置すると,アブレシブジェットはその水位調整タンクを直撃し,時間の経過に伴いタンクを破損させてしまうため,このようなアブレシブ切断装置の固有の問題を解決するために,本件発明1では,液位調整タンクをワークの切断加工エリアから平面視で外側に配置したのであるのに対し,プラズマ切断装置においては,上記の問題は発生しない,甲19公報には,構造上必然的に切断加工エリアの外側に配置された水位調節機構6が記載されているにすぎないし,しかも,プラズマ切断装置であり,アブレシブが水槽1に直撃して破損することもないので,甲19公報に記載された事項を甲第7号証記載の 発明に適用する動機付けがなく,甲30公報及び甲32公報に記載された事項についても同様であるので,甲第7号証記載の発明に甲19公報,甲30公報及び甲32公報に記載された事項を組み合わせる動機付けは存在しない旨主張する。 0公報及び甲32公報に記載された事項についても同様であるので,甲第7号証記載の発明に甲19公報,甲30公報及び甲32公報に記載された事項を組み合わせる動機付けは存在しない旨主張する。 しかし,後記3(1)認定のとおり,甲7公報記載の水中切断装置において用いられているプラズマ・アーク・トーチ・システムに代えて,ノズルから噴射されるアブレシブによりワークの切断加工を行う水中切断用アブレシブ切断装置とすることは当業者が容易に想到し得ることであるところ,そのようなアブレシブ切断装置において当業者が液位調整タンクを切断加工領域を除く領域(外側)に配置することを容易に考えるものであることは上記ウ認定のとおりである。 また,甲19公報,甲30公報及び甲32公報に記載の切断加工エリアの外側に配置された水位調節機構が構造上必然のものであったとしても,上記配置自体は開示されているのであるから,これを採用することは当業者にとって容易になし得ることであり,また,上記水位調節機構の構造が上記配置を想到することを阻害するものということもできない。 よって,被告の上記主張を採用することはできない。 なお,被告は,水中切断用アブレシブ切断装置の分野では,キャッチャ槽内の液位を液位調整タンクにより調整するという技術自体が,本件特許の出願当時において存在せず,そのため,「アブレシブジェットが液位調整タンクに直撃することによる損傷の防止という発明の課題」も当業者にとって自明なものではなかった旨主張しているが,後記3(1)認定のとおり採用することができない。 (イ) 被告は,本件訂正明細書に「液位調整タンクをワークの切断加工エリアから平面視で外側に配置すること」が明示的に記載されており,さら に,図1に記載された配置構 することができない。 (イ) 被告は,本件訂正明細書に「液位調整タンクをワークの切断加工エリアから平面視で外側に配置すること」が明示的に記載されており,さら に,図1に記載された配置構造から,「アブレシブジェットが液位調整タンクに直撃することによる破損の防止という課題解決及び作用効果」は自明事項であるため,「液位調整タンクをワークの切断加工エリアから平面視で外側に配置すること」は設計事項ではない旨主張する。 しかし,甲第7号証記載の発明に関し,切断方法としてアブレシブ切断を採用した際に,液位調整タンクを切断加工領域を除く領域(外側)に配置することが技術的に困難であるとは認められず,設計的変更事項であることは前記ウにおいて認定したとおりであり,被告の上記主張を採用することはできない。 オ以上によれば,相違点3に係る発明特定事項につき,甲各号証に記載された発明又は事項に基づいて当業者が容易に想到し得たとはいえないとした審決の判断には誤りがあり,この誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかである。したがって,取消事由3には理由がある。 3 相違点1及び2の容易想到性について事案に鑑み,相違点1及び2の容易想到性に関する審決の判断についても検討する。 (1) 相違点1について被告は,甲9公報記載の装置において,使用済制御棒12はその冷却の必要性から常に水中に貯蔵され,切断作業も水槽10内で行われ,水槽内は常に水が満たされているため,甲9公報記載の装置には,ワークの取り付け取り外し毎にキャッチャ槽(=水槽)内の水を排出するので作業効率及び時間効率が悪いという本件発明1の課題は存在せず,また,切断エリアが大きくなると水の給排を迅速に行えないという本件発明1の課題も存在しないので,甲7公報及び甲9公報のいずれにも, るので作業効率及び時間効率が悪いという本件発明1の課題は存在せず,また,切断エリアが大きくなると水の給排を迅速に行えないという本件発明1の課題も存在しないので,甲7公報及び甲9公報のいずれにも,甲7公報記載のプラズマ切断装置に代えてアブレシブ切断装置を適用するための動機付けがなく,相違点1を得ることは当業者において容易に想到し得るものでない旨主張する。 しかし,甲第7号証記載の発明は,ワークの切断加工を水中で行うための焼成槽を備えるプラズマ・アーク・トーチシステムのような水中切断装置において,焼成槽(キャッチャ槽)内の液位を上下させるための第二排気チャンバー(液位調整タンク)からなる液位調整手段を有するものである(甲7)。そして,甲9公報には,高放射性固体廃棄物の水中切断装置に関する発明が記載されているところ(特許請求の範囲,【0001】),被切断物,すなわちワークを水中で切断する手段として,研磨材すなわちアブレシブを混入したウォータジェットを噴射するためのノズルを用いても,プラズマアークを照射するためのトーチを用いてもよいことが記載されているので(【0032】),同公報には,切断装置において種々の切断方法を適宜選択して使用することができることが開示されているものといえる。そうすると,甲7公報記載の水中切断装置において用いられているプラズマ・アーク・トーチ・システムに代えて,ノズルから噴射されるアブレシブによりワークの切断加工を行う水中切断用アブレシブ切断装置とし,相違点1に係る発明特定事項を本件発明1のものとすることは,当業者が容易に想到し得ることであるといえる。 よって,相違点1に関する審決の判断に誤りはなく,被告の上記主張を採用することはできない。 (2) 相違点2について被告は,アブレシブ切断装置におい 者が容易に想到し得ることであるといえる。 よって,相違点1に関する審決の判断に誤りはなく,被告の上記主張を採用することはできない。 (2) 相違点2について被告は,アブレシブ切断装置においては,アブレシブ切断中に,ワーク表面から水面までの高さを一定に保持することが極めて重要であるところ,本件発明1においては,あらかじめ適正な位置に水位上限調整用オーバーフロー排出口を設けているので,アブレシブ切断中に水位が上昇しようとしても,キャッチャ槽の水位を所望の位置に保持することができ,それにより,ワークの切断面の上部角部や切断面の面粗さが受ける影響を抑制して,ワークの切断性能を向上させることができるのに対し,甲7公報記載のプラズマ 切断装置においては,プラズマ切断中に水量が増え水槽の水位が上昇するようなことはなく,上記の問題は発生しない,甲13公報記載の側溝26は,誤操作等により水槽5から水があふれ出た場合に対応するためのものであり,本件発明1の「水位上限調整用オーバーフロー排出口」とは,機能及び用途が異なっている,甲28公報には,アブレシブジェット加工装置が記載されているものの,気中切断用アブレシブ切断装置であり,本件発明1の水中切断用アブレシブ切断装置とは,タイプが異なるし,甲28公報記載の装置においても,箱体7に排水口27が形成され,これにより,液体2の水位が一定に保持されるようになっているが,この排水口27は,単に余剰水を排出するためのものであり,本件発明1の水位を一定に保持して切断効率を向上させるものとは異なっているので,気中切断用アブレシブ切断装置である甲28公報の記載事項は,タイプの異なる水中切断用アブレシブ切断装置に適用する動機付けがない,したがって,相違点2に係る発明特定事項は,甲7公報,甲13公報及び甲 気中切断用アブレシブ切断装置である甲28公報の記載事項は,タイプの異なる水中切断用アブレシブ切断装置に適用する動機付けがない,したがって,相違点2に係る発明特定事項は,甲7公報,甲13公報及び甲28公報に記載された事項から容易に想到し得るものでもない旨主張する。 しかし,甲13公報記載の装置と甲第7号証記載の発明はともに水中切断装置であり,甲28公報記載の装置と甲第7号証記載の発明も水槽を有する切断装置である点では同じであって,前記(1)において認定したところに照らしても,これらは関連する技術に関するものである。 そして,甲13公報には,プラズマ水中切断装置に付設される水槽定盤において,水槽から水があふれ出た場合に,このあふれ出た水を集水する,すなわち水槽内の水位が上限水位を越えた場合にこの上限水位を越えた水を外部に排出するための側溝を設けることが記載されている(甲13)。上記側溝も,過剰な水をタンクから排出するという点で本件発明1のオーバーフロー排出口と機能及び用途は異ならないし,甲13公報に接した当業者は,その側溝により水位が側溝の高さに一定に保持できることを理解できるから,ア ブレシブ切断装置の水面の高さを一定にしようとする際に,甲13公報記載の側溝をアブレシブ切断装置に適用することにより,その目的が達成できることは,当業者が容易に理解できることといえる。さらに,甲13公報記載の側溝とする代わりに,オーバーフロー排出口とすることは,当業者が適宜なし得る設計変更にすぎないものと認められる。 また,甲28公報には,アブレシブジェット加工において,加工中に水槽の液位が上昇するところ,水槽に余剰水を排出する排水口を設けることが記載されており(甲28),この排水口により,液体の液位が一定に保持されている。そうすると,甲2 ジェット加工において,加工中に水槽の液位が上昇するところ,水槽に余剰水を排出する排水口を設けることが記載されており(甲28),この排水口により,液体の液位が一定に保持されている。そうすると,甲28公報には,本件発明1のような切断中にキャッチャ槽内の水位が上昇する加工装置において,上限水位を超えた場合にこの上限水位を超えた水を外部に排出するための水位上限調整用オーバーフロー排出口を設けることが示唆されているといえる。 以上によれば,甲第7号証記載の発明に上記甲13公報や甲28公報記載の技術事項を適用して,相違点2に係る発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得ることといえる。 よって,被告の上記主張を採用することはできない。 4 取消事由4(本件発明2についての容易想到性の判断の誤り)について原告は,甲第7号証記載の発明において開示された水路35が,本件発明2における「気密室への気体の導入により液位調整タンク内の液位が予め設定した液位より下がった時に気密室内の気体を外部に開放するように,その一端が前記予め設定した液位の位置に開口し且つ他端が気密室の外部に開口した」液位調整手段に該当し,その上で,水路35の形状を管状とし,相違点4に係る構成とすることは当業者であれば適宜なし得る設計事項である,仮にそうでないとしても,甲13公報及び甲15公報では,管状部材が用いられた連通管の開示があるところ,甲第7号証記載の発明における水路35も,上記各公報における連通管と同様に,それを介して水を移動させることによって液位調整機 能を果たすものなのであるから,その部材として管状のものを採用し,相違点4に係る構成とすることは当業者であれば極めて容易に想到することができる旨主張する。 しかし,甲7公報の記載(3欄25行~ を果たすものなのであるから,その部材として管状のものを採用し,相違点4に係る構成とすることは当業者であれば極めて容易に想到することができる旨主張する。 しかし,甲7公報の記載(3欄25行~48行,5欄60行~6欄13行,6欄26行~30行,6欄48行~56行)に照らすと,甲7発明における水路35は,滓トローフ26とともに,焼成槽10内の液位を上昇させるときには,第二排気チャンバー32内の水を焼成槽10内に排出し,下降させるときには,バーンタンク10内の水を第二チャンバー32内に導入するための「連通路」として機能するものであると認められる。すなわち,甲7公報記載の滓トローフ26及び水路35は,本件訂正明細書の図2に示された水位調整タンク2とキャッチャ槽1の底部とを連通する連通開口(連通路)に相当するものであるといえ,本件発明2における「気密室への気体の導入により液位調整タンク内の液位が予め設定した液位より下がった時に気密室内の気体を外部に開放するように,その一端が前記予め設定した液位の位置に開口し且つ他端が気密室の外部に開口した」液位調整用の部材に相当するものではない。したがって,原告の上記主張は,その前提において誤っている。 また,他に甲第7号証記載の発明に相違点4に係る構成を付加することの動機付けや示唆が存在することを裏付ける証拠はない。 以上によれば,原告の上記主張を採用することはできず,相違点4に係る発明特定事項につき,甲第7号証記載の発明から容易に想到できたものということはできず,本件発明2に係る容易想到性に関する審決の判断に誤りはない。 よって,原告の取消事由4に関する主張には理由がない。 5 取消事由5(記載要件の判断の誤り)について(1) 明確性要件違反についてア原告は,本件 る審決の判断に誤りはない。 よって,原告の取消事由4に関する主張には理由がない。 5 取消事由5(記載要件の判断の誤り)について(1) 明確性要件違反についてア原告は,本件発明1における「ワークの切断加工エリアから平面視で外側に配置された液位調整タンク」の記載について,切断加工を行う際に, ノズルが移動するのか,ワークが移動するのかが限定されておらず,また,アブレシブジェットの噴射方向が垂直下方に限定されていないため,審決の認定するように「平面視したときに,キャッチャ槽が存在する範囲内で,ノズルが切断加工のために移動可能である範囲」と理解することはできず,「ワークの切断加工エリア」の意義が不明確であり,明確性要件を欠く旨主張する。 しかし,本件訂正明細書の図1及び2には受け台4に取り付けられたワーク3が記載されており,同図におけるノズル6の位置に照らしても,同図にはワークを固定してノズルを移動させる水中切断用アブレシブ装置が記載されているものと理解するのが自然である。加えて,本件訂正明細書には,ノズル6が固定されワーク4が移動する構成に関する記載がないことも併せ考えると,本件訂正明細書には,ワークを固定してノズルを移動させる水中切断用アブレシブ装置が記載されているものといえる。 また,上記の本件訂正明細書に開示された本件発明1に係る装置の構成及び文言の通常の意味を前提とすれば,「ワークの切断加工エリア」は,ワークの設置された範囲内で,ノズルの可動範囲であり,ワークを切断加工する範囲であると明確に理解できる。 以上によれば,本件訂正後の請求項1において,切断加工を行う際に,ノズルが移動するのか,ワークが移動するのかや,アブレシブジェットの噴射方向について特定(限定)する明示的な文言が含ま 理解できる。 以上によれば,本件訂正後の請求項1において,切断加工を行う際に,ノズルが移動するのか,ワークが移動するのかや,アブレシブジェットの噴射方向について特定(限定)する明示的な文言が含まれていないとしても,「ワークの切断加工エリアから平面視で外側に配置された液位調整タンク」の記載は明確であるといえる。 よって,原告の上記主張を採用することはできない。 イ原告は,本件発明2における「その一端が前記予め設定した液位の位置に開口し且つ他端が気密室の外部に開口した液位調整用の管状部材」との記載につき,審決は,管状部材の他端が開口する「外部」とは,気体を開 放する「外部」と同じ場所を指すものと解されると記載しているが,本件訂正後の請求項2の文言を解釈すれば,「外部」とは気密室の外部としか解することができず,不明瞭であって明確性を欠く旨を主張する。 しかし,本件訂正明細書の【0027】には,「水位調整タンク2には,液位調整手段として両端が開口した管状部材よりなる水位調整パイプ5が設けられており,この水位調整パイプ5の下端は水位調整タンク2内の水位が最も低くなった時の水位(以後,最低水位と述べる。)と同じ高さ位置に開口し,上端は水位調整タンク2の外部に開口している。」との記載があるほか,図1~3には,水位調整パイプ5の「他端」に該当する部分がキャッチャ槽1の外部に設けられた構成の記載があることに加え,本件訂正明細書には他に管状部材に関する実施の形態(実施例)は記載されていないことも併せ考えると,当業者は,本件発明2の「その一端が前記予め設定した液位の位置に開口し且つ他端が気密室の外部に開口した液位調整用の管状部材」との記載における管状部材の他端が開口する「外部」が,少なくともキャッチャ槽の外部を 本件発明2の「その一端が前記予め設定した液位の位置に開口し且つ他端が気密室の外部に開口した液位調整用の管状部材」との記載における管状部材の他端が開口する「外部」が,少なくともキャッチャ槽の外部を意味するものと明確に理解できるものと認められる。 よって,原告の上記主張を採用することはできない。 (2) 実施可能要件及びサポート要件違反について原告は,液位調整タンクにアブレシブジェットが直撃することによる損傷を防止するという発明の課題は,本件訂正明細書には一切記載されていないので,本件明細書に接した当業者は,発明の課題を解決できるとは認識できず,本件発明は実施可能要件を欠くし,本件発明は,本件明細書の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえず,発明の詳細な説明に記載された発明ということもできないので,本件発明の特許請求の範囲の記載は,サポート要件を具備しない旨主張する。 しかし,本件訂正明細書(甲44)の記載内容に加え,前記1及び上記(1)において認定したところを併せ考えると,本件訂正明細書の発明の詳細な説明には,当業者が容易に実施できる程度に本件発明の構成が記載されているし,本件発明は発明の詳細な説明に記載されたものであるものと認められる。 よって,原告の上記主張を採用することはできない。 6 まとめ以上によれば,原告の主張する取消事由3は理由があるが,取消事由1,4及び5は理由がなく,取消事由3に関する部分のほかには審決に取り消すべき違法は認められない。 第6 結論よって,取消事由2について判断するまでもなく,審決のうち「特許第3261672号の請求項1に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」とした部分については違法 は認められない。 第6 結論よって,取消事由2について判断するまでもなく,審決のうち「特許第3261672号の請求項1に係る発明についての審判請求は,成り立たない。」とした部分については違法であるからこれを取り消すこととし,原告のその余の請求については理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官設樂  一 裁判官西理香 裁判官神谷厚毅

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