昭和49(行ウ)9 税理士特別試験実施公告処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和54年9月20日 東京地方裁判所 警察関係
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【DRY-RUN】○ 主文 1 原告らの被告税理士試験委員に対する訴えを却下する。 2 原告らの被告国に対する請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告らの負担とする。 ○ 事実 第一 当事者の求めた裁判 一 原告ら

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○ 主文 1 原告らの被告税理士試験委員に対する訴えを却下する。 2 原告らの被告国に対する請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告らの負担とする。 ○ 事実第一当事者の求めた裁判一原告ら 1 被告税理士試験委員が実施した昭和四七年度から同五二年度までの税理士法附則第三〇項の規定による各税理士試験は無効であることを確認する。 2 被告税理士試験委員が実施している昭和五三年度の税理士法附則第三〇項の規定による税理士試験を取り消す。 3 被告税理士試験委員は昭和五四年度以降税理士法附則第三〇項の規定による税理士試験を実施してはならない。 4 被告は、原告Aに対し金五八〇万円、同Bに対し金三六四万円及びその余の原告ら各自に対し金一〇〇万円並びに右各金員に対する原告A及び同Bについては昭和五三年一二月七日から、その余の原告らについては同四七年一〇月三日から各支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。 5 訴訟費用は被告らの負担とする。 との判決及び第四項について仮執行宣言二被告ら 1 被告税理士試験委員の本案前の申立て主文第一項同旨日及び訴訟費用は原告らの負担とするとの判決 2 本案についての申立て(一) 原告らの請求いずれも棄却する。 (二) 訴訟費用は原告らの負担とする。 との判決第二当事者の主張一請求の原因 1 (一)被告税理士試験委員(以下「被告委員」という。)は、昭和四七年から同五二年まで毎年税理士法(以下「法」という。)附則第三〇項の規定による税理士試験(以下「特別試験」という。)を実施した。 (二) 被告委員は、昭和五三年一〇月一五日以降同年度の特別試験を実施しており、昭和五四年以降も毎年特別試験を実施しようとしている。 2 しかしながら、特別試験には以下に述べる違法があり、これは重大かつ明白な瑕疵に当たる。 ( 年一〇月一五日以降同年度の特別試験を実施しており、昭和五四年以降も毎年特別試験を実施しようとしている。 2 しかしながら、特別試験には以下に述べる違法があり、これは重大かつ明白な瑕疵に当たる。 (一) 特別試験について規定する法附則第三〇項ないし第三六項の規定及び現在実施されている特別試験は、憲法第一四条第一項に違反する。すなわち、(1) 特別試験の受験資格と、その試験科目及び試験問題の選択制との間に矛盾が存し、合理性がない。 (2) 特別試験の筆記試験は、法第六条の規定による税理士試験(以下「一般試験」という。)のそれと比較して税理士としての専門的知識を判定するには問題の程度が低すぎる。 (3) 特別試験の口頭試験は、筆記試験で合格点に達しなかつた人について一人でも多く合格させるために恩情的はからいをするものである。 (4) 特別試験の合否の判定においては、経験年数により参酌点を加算することにより著しく合格を容易にしている。 (5) 特別試験の合格率は、八〇ないし九〇パーセントであるのに対し、一般試験のそれは約三パーセントに過ぎない。 右に述べたとおり、特別試験は、一般試験に比較して著しく不合理な差別をし、法附則第三一項第一号に規定する税務職員に対してのみ特権を与えるものであるから、憲法第一四条第一項に違反する。 (二) 特別試験の内容について規定する法施行令附則第一〇項ないし第一二項の規定及び現在実施されている特別試験は、法第六条に違反する。 すなわち、法施行令附第一〇項ないし第一二項で規定する試験科目とその内容、科目選択のゆるやかさ、参酌点制度、恩情的口頭試験にみられる合否判定上の優遇的措置等をその内容とする特別試験は、民主的税理士制度に不可欠な納税者の権利擁護を使命とする税理士の資質、学識及び応用能力の有無を判定するという税理士試験 、恩情的口頭試験にみられる合否判定上の優遇的措置等をその内容とする特別試験は、民主的税理士制度に不可欠な納税者の権利擁護を使命とする税理士の資質、学識及び応用能力の有無を判定するという税理士試験の目的に反するから、法第六条に違反する。 (三) 特別試験の実施は、少なくとも昭和四七年以降法令上の根拠を有しないものである。 すなわち、特別試験の制度は、税理士不足であつた昭和二六年の法成立に伴う一回的資格認定措置に端を発し、同三一年に五年間の時限立法により創設され、その後同三六年に「当分の間」と改定されたまま現在に至つているものであるが、右いう「当分の間」とは国会審議でも明らかなとおり三年間程度を予定していたもので、法附則第三〇項ないし第三六項の規定は時限立法の性格を有するものであるから、特別試験の制度は、同年から一〇年以上経過している昭和四七年以降はその法的根拠を失つているものといわねばならない。 (四) 特別試験は、前述のとおり、極めて不合理な内容のものであつて、納税者の権利を擁護すべき税理士の資格付与のための制度としての趣旨に背反するものである。そうして、特別試験が実施されることにより、税務職員が同試験に合格して大量に税理士の資格を取得し一般税理士の地位を不安定なものにしているが、同人らは在職中に税務職員としての地位を不正に利用して顧問先を予約し、更に職権を濫用して原告ら一般試験合格税理士の顧問先を奪取し、税理士業界の綱紀を紊乱し、税理士会の自主的運営を阻害し、税理士制度をして徴税機構の補助機関化たらしめるなど社会的に多くの弊害をもたらしている。このように特別試験は、多くの弊害をもたらし、民主的税理士制度を破壊するものであるから違法というべきである。 (五) 以上のとおりであつて、特別試験は違憲、違法のものであるから、被告委員は、昭和 。このように特別試験は、多くの弊害をもたらし、民主的税理士制度を破壊するものであるから違法というべきである。 (五) 以上のとおりであつて、特別試験は違憲、違法のものであるから、被告委員は、昭和四七年以降これを実施する権限を有しなかつたものというべきである。 3 (一)原告らは、いずれも一般試験に合格して税理士になり、現に税理士業務に従事しているものであるところ、前述したとおり、特別試験の実施により多数の特別試験合格税理士が誕生し社会的に多くの弊害が生じていることによつて、税理士としての名誉及び信用を毀損され、かつ業務を妨害されて、原告らの有する職業に関する独占的利益としての営業権(営業的利益)及び人格権(人格的利益)を侵害されている。 したがつて、原告らは、特別試験の実施により法律上の利益が侵害されているものであるから、被告委員に対する訴えにつきその利益を有するものである。 (二) 原告らは、毎年繰り返し行われる行政庁の処分である特別試験の実施により損害を受けるおそれのある者に該当するし、現在の法律関係に関する訴えである損害賠償請求によつては原告らの被る損害を回復するという目的を達することができないから、既に実施された特別試験の無効確認の訴えの原告適格を有する。 (三) また、原告らとしては、同試験の実施を差し止め、もつて同試験合格税理士の誕生を阻止しなければ、原告らの被る損害を防止、回復することはできない。 したがつて、特別試験の実施の差止めを求める原告らの訴えは、無名抗告訴訟としての予防的差止訴訟における訴訟要件を具備している。 4 (一)被告委員が違憲、違法な特別試験を実施して来た行為及び大蔵大臣が被告委員をして同試験を実施させ、違憲、違法な同試験の実施を放置している行為は、いずれも原告らに対する故意あるいは少なくとも過失による不法行 委員が違憲、違法な特別試験を実施して来た行為及び大蔵大臣が被告委員をして同試験を実施させ、違憲、違法な同試験の実施を放置している行為は、いずれも原告らに対する故意あるいは少なくとも過失による不法行為を構成するものというべきであり、従つて被告国は、これによつて原告らが被つた損害を賠償すべき責任がある。 (二) 原告らは、前記3の(一)のとおり特別試験の実施により法律上の利益が侵害され、多大の精神的苦痛を被つてきた。 右精神的苦痛を慰藉するには原告ら各自につき金一〇〇万円の慰藉料をもつてするのが相当である。 (三) 原告Aは、昭和四七年七月顧問先の小林酒店及び株式会社小林ビルから天下り税理士を顧問に入れるとの理由で顧問契約(顧問料月各二万円)を破棄され、同年一二月顧問先の菱神運輸株式会社から天下り税理士を顧問に入れるとの理由で顧問契約(顧問料月四万円)を破棄された。その結果同原告の被つた損害は、月当たり八万円であり、昭和四八年から同五二年までの五年間で金四八〇万円になる。 (四) 原告Bは、昭和四二年六月滋賀東芝商品販売株式会社と顧問契約を締結する段階で天下り税理士により顧問先を奪われた。その結果同原告の被つた損害は、月当たり顧問料二万円として、一一年間で二六四万円になる。 (五) 右(一)ないし(四)の各損害は、被告委員及び大蔵大臣の共同不法行為によナ被つた原告らの損害である。したがつて、被告国は右各損害を賠償すべき義務がある。 5 よつて、原告らは、被告委員に対し、同被告が実施した昭和四七年度から同五二年度までの各特別試験の無効確認、同被告が実施している昭和五三年度の特別試験の取消し及び昭和五四年度以降の特別試験の実施の差止めを求め、被告国に対し、原告Aは損害賠償金五八〇万円、同Bは損害賠償金三六四万円及びその余の原告らは各自損害賠償金一 ている昭和五三年度の特別試験の取消し及び昭和五四年度以降の特別試験の実施の差止めを求め、被告国に対し、原告Aは損害賠償金五八〇万円、同Bは損害賠償金三六四万円及びその余の原告らは各自損害賠償金一〇〇万円並びに右各金員に対する原告A及び同Bについては本件不法行為後である昭和五三年一二月七日から、その余の原告らについては同じく同四七年一〇月三日から各支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。 二被告委員の本案前の主張 1 抗告訴訟は、公権力の違法な行使又は不行使によつて権利又は法的利益に侵害を受けた者に限り提起し得るものであるところ、名誉、信用等の人格的利益は実体行政法規の保護する法的利益ではないから、単に行政処分によつて名誉、信用を毀損され、又は一般的に業務を妨害されたというだけでは、それは事実上の利益の侵害にとどまり、法的利益に侵害を受けたものということはできない。したがつて、原告らは、被告委員に対する訴えについて原告適格を有しないのである。 2 請求の趣旨第一項の無効確認請求については、行政事件訴訟法第三六条前段にいわゆる後続処分は係争処分が有効であることを前提としてこれに続いて行われる処分をいうものと解されるところ、特別試験は毎年繰り返し実施されるものではあるが、毎年の試験が前年度の試験の有効なことを前提としてその後続処分として実施されるわけではないから、仮に、原告らが将来実施される特別試験によつて損害を受けるおそれがあるとしても、原告らは「当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者」に該当しない。 また、原告らは、現在の法律関係に関する訴えである損害賠償請求訴訟によつてその目的を達することができるものであり、法律上の支障は何もない。原告らが毎年右訴訟を繰り返すことを余儀なくされると しない。 また、原告らは、現在の法律関係に関する訴えである損害賠償請求訴訟によつてその目的を達することができるものであり、法律上の支障は何もない。原告らが毎年右訴訟を繰り返すことを余儀なくされるとしても、それは事実上の困難に過ぎず、これをもつて「現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないもの」に該当するということはできない。 3 請求の趣旨第三項の差止請求については、将来の行政処分の差止めを求める訴訟は、三権分立の建前に反し許されないものである。 仮に、例外的にこのような訴訟が許されるとしても、それは基本的人権が侵害され、事前に差し止めなければ回復し難い重大な損害を生ずるおそれがあるという極めて緊急な事態の下においてのみ許容されるに過ぎないものである。 三請求の原因に対する被告らの認否 1 請求の原因1の事実は認める。 2 請求の原因2の主張は争う。 3 請求の原因3の(一)のうち、原告らがいずれも一般試験に合格して税理士になり、現に税理士業務に従事していることは認め、特別試験合格税理士が原告ら主張の弊害をもたらしていることは否認し、その主張は争う。同(二)及び(三)の主張は争う。 4 請求の原因4の(一)、(二)は争う。同(三)及び(四)の事実は不知。同(五)の主張は争う。 四被告らの主張 1 請求の原因2の(一)に対して(一) 特別試験は、税務職員に特権を与えるものでなく、実務能力を強く要請される税理士の資格を判定し、税理士たるに相応しい能力を有する者に税理士資格を付与するために、既に十分に税務実務の経験に富んだ者の実務経験に着目し、これを正しく評価した相応の試験制度である。 税務行政は、税法及び会計に関する高度な専門的知識と十分な実務経験とに基づいて運営されているものであり、多年これに従事した税務職員は、原則として に着目し、これを正しく評価した相応の試験制度である。 税務行政は、税法及び会計に関する高度な専門的知識と十分な実務経験とに基づいて運営されているものであり、多年これに従事した税務職員は、原則として税理士業務に相応しい知識経験を有していると認められてよいのであるから、税理士資格の判定方法として、多年税務行政に従事した者とそうでない者とを同列において、これに暗記中心的な一般試験を採用することこそ不合理というべきであり、現行制度は「この点に着目してこれらの者に一般の者と異なる試験制度を採用しているのであつて、十分な合理的理由をもつものである。 このように、実務経験に応じて資格判定方法を異にすることは、アメリカ合衆国、ドイツ連邦共和国等の税理士制度においても見られるところであり、わが国でも公証人、司法書士、行政書士、弁理士等他の職業専門家に関する資格判定において広く行われているところである。 (二) 一般試験と特別試験とは、その目的を異にしているものであつて、これを同列において試験内容を比較することは適当でない。 すなわち、一般試験は、税務に関する知識経験が未知数である者を対象として、その者が税理士となるに相応しい能力を有しているかどうかを判定するために行われるものであるのに対して、特別試験は、税務実務に多年従事した者を対象として、税理士となるに相応しい能力を備えていない者を排除することを目的として、この点を判定するために行われるものであるから、両者の試験内容が異なることは当然である。 のみならず、試験制度の下において、どのような問題を選定するかは試験委員の裁量に属することで、その選定が甚だしく常軌を逸脱したものであるような場合は格別として、一般には司法審査の対象となるものではない。 2 請求の原因2の(二)に対して法附則第三〇項ないし第三六項 員の裁量に属することで、その選定が甚だしく常軌を逸脱したものであるような場合は格別として、一般には司法審査の対象となるものではない。 2 請求の原因2の(二)に対して法附則第三〇項ないし第三六項の規定は、法第六条に規定する一般試験による資格判定方法を税務実務経験者に適用することを不相当と認めて、それらの者に特別な資格判定方法を採用することを定めたもので、この附則の下に制定された特別試験の内容が法第六条の趣旨とは異なる面をもつことは当然のことであり、原告らの主張は立法政策の当否を論ずるに過ぎないものである。 3 請求の原因2の(三)に対して法附則第三〇項ないし第三六項の規定は、改正を予定した暫定的立法ではあるが時限立法ではないから、原告らの主張は失当である。 4 請求の原因4の(二)ないし(四)に対して原告ら主張のような被害の事実があつたとしても、これと特別試験の実施との間に相当因果関係は存しない。 五被告らの主張1の(一)に対する原告らの反論 1 税務職員は、納税者と税の納入、徴収において対立関係に立つものである一方、税理士は、納税者の税務代理人としてその権利、利益を擁護すべき職業的使命があるから、税務職員と税理士とでは要求される使命、資質が大きく異なるものである。したがつて、税務職員に対する税理士資格の付与は抑制されるべきであり、税務職員に安易に税理士資格を付与する特別試験の制度は不当不合理である。 2 公証人、司法書士、行政書士、弁理士等他の職業専門家については、税理士の場合のような弊害はないから、これと同列に論じることはできないし、アメリカ合衆国、ドイツ連邦共和国等の税理士制度は、わが国のそれと基本的な相違があるから、単純に比較することはできない。 第三証拠関係(省略)○ 理由一まず、被告委員に対する訴えの適否についてであ カ合衆国、ドイツ連邦共和国等の税理士制度は、わが国のそれと基本的な相違があるから、単純に比較することはできない。 第三証拠関係(省略)○ 理由一まず、被告委員に対する訴えの適否についてであるが、特別試験の実施が抗告訴訟の対象となる行政処分としての性格を有するものかどうかは別として、原告らが被告委員に対する訴えについて原告適格を有するといえるか否かの点について判断する。 1 昭和四七年度から同五二年度までの各特別試験の無効確認を求める訴えについて無効確認の訴えの原告適格については行政事件訴訟法第三六条に規定されているところ、特別試験についてはそれに続く処分というものは存しないから、原告らは当該処分(特別試験)に「続く処分により損害を受けるおそれのある者」に該当しない。また、行政処分の無効確認の訴えは、当該処分の無効確認を求めるにつき「法律上の利益を有する者」に限り提起することができるものであることは前記規定により明らかなところであるが、右「法律上の利益」に該当するかどうかは、当該処分の根拠となつた法規が特定個人の利益を個別的・具体的な利益として保護しているといえるかどうかによつて判断されるものである。 ところで、原告らは、特別試験の実施により一般試験合格税理士である原告らの有する職業に関する独占的利益としての人格権及び営業権を侵害されていると主張する。しかしながら、特別試験の根拠となつた法規である法が原告らの主張するような権利・利益を原告ら一般試験合格税理士の個別的・具体的な利益として保護していると解することは到底できないから、原告らは、当該処分(特別試験)の無効確認を求めるにつき「法律上の利益を有する者」に該当しない。 2 昭和五三年度の特別試験の取消しを求める訴えについて処分の取消しの訴えは、当該処分の取消しを求めるにつき法 、当該処分(特別試験)の無効確認を求めるにつき「法律上の利益を有する者」に該当しない。 2 昭和五三年度の特別試験の取消しを求める訴えについて処分の取消しの訴えは、当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り提起することができる(行政事件訴訟法第九条)ものであるところ、原告らが特別試験の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に該当しないことは、1において判示したとおりである。 3 昭和五四年度以降の特別試験の実施の差止めを求める訴えについて将来行われる処分の差止めを求めるいわゆる無名抗告訴訟は、現行の行政事件訴訟法のもとにおいてそれが許容される場合があるとしても、法定抗告訴訟である取消訴訟と同様に、当該処分の差止めを求めるにつき「法律上の利益」を有する者に限り提起することができるものと解されるところ、前記1で述べたと同様の理由により、原告らは特別試験の実施の差止めを求めるにつき法律上の利益を有する者に該当しない。 4 したがつて、原告らの被告委員に対する訴えは、いずれも不適法であるというほかない。 二次に、被告国に対する損害賠償請求について判断する。 1 請求の原因1の事実及び原告らがいずれも一般試験に合格して税理士になり、現に税理士業務に従事していることは当事者間に争いがない。 2 そこで、被告委員が実施した特別試験に原告ら主張の違法が存するか否かについて検討する。 (一) 原告らは、特別試験は一般試験に比較して著しく不合理な差別をし、税務職員に対してのみ特権を与えるものであるから、憲法第一四条第一項に違反すると主張する。 憲法第一四条第一項は、不合理と考えられる理由に基づく差別を禁止するものであるところ、一定の職業専門家としての資格を付与するに際しては必ずしも単一の試験制度を採用しなければならないものではなく、いか 憲法第一四条第一項は、不合理と考えられる理由に基づく差別を禁止するものであるところ、一定の職業専門家としての資格を付与するに際しては必ずしも単一の試験制度を採用しなければならないものではなく、いかなる試験制度を採用するかは立法政策の問題に属するものであり、異なる受験資格ごとに異なる試験制度を採用することも、合理的な理由がある限り憲法第一四条第一項に違反することにはならないものである。 法は、税理士資格を付与するのに一般試験のほか特別試験の制度を採用し、「官公署における国税又は地方税に関する事務にもつぱら従事した期間が通算して二十年以上で政令で定める事務の区分に応じ政令で定める年数以上になる者」に該当する者にその受験資格を付与している(法附則第三一項第一号)が、これは、相当長期間にわたり税務事務にもつぱら従事してきた者は一般的に税務実務の経験を積み、税務実務に関する能力を有しているものと認められるところ、税理士業務(税務代理、税務書類の作成及び税務相談(法第二条))は税務官公署との税務折衡を重要な内容とするものであり、税務実務に関する能力が要請される職種であるので、一般的に税務実務に関する能力を有していると認められる前記の者に一般試験とは異なる特別試験の受験資格を付与し、会計学(簿記論及び財務諸表論)の科目を主とした会計に関する実務につき筆記及び口頭により右試験を行う(法附則第三二項、法施行令附則第一〇項)こととし、右試験の合否の判定を右試験の成績の点数に受験者の税務事務従事年数に応じた参酌点を加算して行う(法附則第三三項、法施行令附則第一一項、第一二項)こととしたものであり、このような一般試験と異なる内容の特別試験の制度を採用すること自体は、直ちに違憲、違法をきたすほどの強度の非合理性を有するものとまではいえないというべきである。 そ 、第一二項)こととしたものであり、このような一般試験と異なる内容の特別試験の制度を採用すること自体は、直ちに違憲、違法をきたすほどの強度の非合理性を有するものとまではいえないというべきである。 そして、特別試験は税理士試験委員が行うもので、その際同委員は委員長、常任委員二人及び一五人以内の臨時委員で構成され、委員長及び常任委員は租税に関し学識経験のある者のうちから、臨時委員は税理士試験を行うについて必要な学識経験のある者のうちから税理士試験委員が推薦した者について、それぞれ大蔵大臣が任命するものである(法附則第三四項、法第一三条)。このような学識経験者により構成される税理士試験委員によつて特別試験が行われるのであるから、右試験の問題の作成及び採点については同委員の裁量判断に委ねられているものというべきであるし、特別試験は、一般試験とその内容を異にする試験制度であるから、その問題の程度、合格率等が一般試験のそれと比較して相違するからといつて、直ちに憲法第一四条第一項に違反するということはできない。 もつとも、国民は、本来公共の福祉に反しない限り職業選択の自由を有するのであるから(憲法第二二条第一項)、税理士業務の公共性や納税義務者の保護等の政策的観点から税理士制度を設け、税理士の資格を有しない者が右業務を行うことを禁止した税理士法の趣旨にかんがみても、税理士資格を付与するについては、できる限り適正公平な方法によるべきことは、改めていうまでもない。この観点からすれば、弁護士、公認会計士等法が当然税理士資格を付与するのを相当とするような場合を除けば、公平な一般の競争試験によつて税理士資格を付与するのを相当とする者を選抜するのが適当な方法というべきであろう。しかし、それ以外に税理士業務の性質、内容からして、その業務に関連する実務の経験がある者に 公平な一般の競争試験によつて税理士資格を付与するのを相当とする者を選抜するのが適当な方法というべきであろう。しかし、それ以外に税理士業務の性質、内容からして、その業務に関連する実務の経験がある者に対し、資格認定、あるいは特別試験等の方法により別個の取扱いをするかどうかは、税理士制度の趣旨その他税理士法の精神に照らし、政策的裁量によつて決すべき問題である。 もちろん、そのような別個の取扱いを行う場合においても、その具体的内容は適正公平なものでなければならないのであつて、みだりに一部の者に特権的利益を与えるものであつてはならないことはいうまでもない。しかしながら、資格認定ないし特別試験等の特別な取扱いを採用する場合において具体的にどのような内容のものとするかについても、政策的な裁量の幅があることもまた、前述したところから明らかであろう。 この観点から特別試験の適否について考えると、特別試験制度の採用それ自体を直ちに違憲、違法とすることができないのは、前述したところから明らかであるし、現に施行されている特別試験の具体的内容に即して考えてみでも、原告ら主張のような問題点があるにしても、これが直ちに憲法第一四条第一項に違反すると断定できる程の明白な非合理性を有するとまで認めることはできず、仮に相当性を欠く点があるとしても、それは立法ないしこれに基づく施策についての政治的責任に属する事項というべきである。したがつて、特別試験が憲法第一四条第一項に違反するとする原告らの主張は採用できない。 (二) 原告らは、特別試験は税理士の資質、学識及び応用能力の有無を判定するという税理士試験の目的に反するから、法第六条に違反すると主張する。 特別試験は法第六条の規定による一般試験とその内容を異にする試験制度として法附則により規定されているものであり、したがつて、特 するという税理士試験の目的に反するから、法第六条に違反すると主張する。 特別試験は法第六条の規定による一般試験とその内容を異にする試験制度として法附則により規定されているものであり、したがつて、特別試験が法第六条に適合するかどうかをいうのは失当であるし、特別試験は前記のとおり長年税務事務に従事してきた者を対象として、その税務実務能力をしんしやくし、もつて税理士となるのに必要な能力を有するかどうかを判定することを目的とするものであるから、直ちに法第六条の趣旨に反するものともいえない。そして、特別試験の内容について規定する法施行令附則第一〇項ないし第一二項の規定は、いずれも法附則第三二項、第三三項の規定の政令への委任に基づいて規定されたものであり、特別試験について規定する法の趣旨に直ちに反するものとはいえないこと前述のとおりである。よつて、原告らの右主張は採用できない。 (三) 原告らは、法附則第三〇項にいう「当分の間」とは三年間程度を予定したもので、同項ないし第三六項の規定は時限立法の性格を有するものであるから、特別試験の制度は昭和四七年以降はその法的根拠を失つていると主張する。 法第三〇項の規定は、「当分の間、第六条の規定による税理士試験のほか、特別な税理士試験を行う。」と規定しており、その立法の経緯に照らしてみても、特別試験の制度は将来廃止又は変更されることが予想されたものとして立法されたものと認められるが、法文上その実施期間が「当分の間」と定められている場合であつても、他の法規によつて現実に廃止又は変更の措置がとられない限り、なお法規としての効力を失うものではないと解すべきであるから、特別試験について規定する法附則第三〇項ないし第三六項の規定がこれらの措置がとられていないにもかかわらず、現在効力を失つているものということはできない。 の効力を失うものではないと解すべきであるから、特別試験について規定する法附則第三〇項ないし第三六項の規定がこれらの措置がとられていないにもかかわらず、現在効力を失つているものということはできない。原告ら主張のように昭和三六年の法改正時において三年間を目途として試験制度の抜本的改正が意図されていたにしても、その実現は、やはり政治的責任に属する事項といわざるを得ない。したがつて、原告らの右主張もまた、採用することはできない。 3 最後に、原告は、特別試験制度が極めて不合理な内容のものであり、税務職員の在職中の地位利用による顧問先の予約その他の多くの弊害が生ずるから違法である旨主張するけれども、特別試験制度の内容の合理性については前述したとおりである。また、顧問先の予約等の弊害についても、そのようなことが是認できないものであることはいうまでもないが、現に施行されている特別試験が右のような弊害を生じさせ易くするという面はあるにしても、必ずしも不可避的にこれと結びついているとまではいえないから、そのようなことがあつたからといつて、直ちに特別試験制度一般ないし現に施行されている特別試験が違法であるとすることはできない。 4 以上のとおり、被告委員が実施した特別試験に原告ら主張の違法があるとはいえないから、原告らの被告国に対する損害賠償請求は、その余の点について判断するまでもなく失当である。 三よつて、原告らの被告委員に対する訴えをいずれも却下し、原告らの被告国に対する請求をいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条、第九三条第一項本文を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官藤田耕三菅原晴郎杉山正己) 主文 八九条、第九三条第一項本文を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官藤田耕三菅原晴郎杉山正己)

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