平成23(行ウ)22 交付要求取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成24年2月17日 大阪地方裁判所 租税
ファイル
hanrei-pdf-82526.txt

判決文本文15,979 文字)

- 1 - 主文 1 本件訴えを却下する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告が破産者A株式会社(以下「破産会社」という。)の破産手続において平成21年12月22日付けで大阪地方裁判所に対してした交付要求のうち,平成17年5月分以前の健康保険料,厚生年金保険料及び児童手当拠出金並びにこれらに対する延滞金に係る部分を取り消す。 2 被告が破産会社の破産手続において平成21年12月22日付けで大阪地方裁判所に対して交付要求した請求権のうち,平成17年5月分以前の健康保険料,厚生年金保険料及び児童手当拠出金並びにこれらに対する延滞金に係る請求権について,破産会社の納付義務がないことを確認する。 第2 事案の概要 1 事案の骨子本件は,破産会社に係る破産手続が開始され,平成19年法律第109号による改正前の健康保険法204条及び同改正前の厚生年金保険法4条により社会保険庁長官から権限の委任を受けた大阪社会保険事務局大手前社会保険事務室長が,破産会社が健康保険料,厚生年金保険料及び児童手当拠出金並びにそれらに対する各延滞金(以下,併せて「社会保険料等」という。)を滞納しているとして,破産会社が滞納している社会保険料等のうち破産債権となるもの(以下「本件滞納社会保険料等」という。)について,破産裁判所である大阪地方裁判所に対し,破産法114条による請求権等の届出として,国税徴収法82条1項に基づく交付要求(以下「本件交付要求」という。)を行ったところ,破産会社の破産管財人に選任された原告が,健康保険法204条1項15号,16号,厚生年金保険法100条の4第1項29号,30号,児童手 - 2 -当法22条2項,3項により本件滞納社会保険料等の徴収に 社の破産管財人に選任された原告が,健康保険法204条1項15号,16号,厚生年金保険法100条の4第1項29号,30号,児童手 - 2 -当法22条2項,3項により本件滞納社会保険料等の徴収に関する権限を承継した被告に対し,本件滞納社会保険料等のうち平成17年5月分以前のもの(以下「本件請求対象社会保険料等」という。)についての納付義務は時効等により消滅しているとして,本件交付要求のうち本件請求対象社会保険料等に係る部分についての取消しを求める(以下,当該請求を「本件取消請求」という。)とともに,本件請求対象社会保険料等につき,破産会社の納付義務が不存在であることの確認を求めた(以下,当該請求を「本件確認請求」という。)事案である。 2 前提事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,掲記各証拠及び弁論の全趣旨から容易に認めることができる。なお,争いのない事実には認定根拠を付記しない。 (1) 破産会社は,健康保険法及び厚生年金保険法上の適用事業所の事業主であった者である(弁論の全趣旨)。 破産会社は,平成21年11月30日,大阪地方裁判所に破産手続開始の申立てを行い,大阪地方裁判所は,同年12月16日,破産会社について,破産手続開始の決定をし,原告を破産管財人に選任した(甲1)。 (2) 社会保険庁長官から権限の委任を受けた大阪社会保険事務局大手前社会保険事務室長は,平成21年12月22日,破産会社が社会保険料等を滞納しているとして,その徴収のため,国税徴収法82条1項に基づき,上記滞納した社会保険料等のうち,財団債権となるもの(平成20年12月分(納期限平成21年2月2日)から同年10月分(納期限同年11月30日)までのもの。破産法148条1項3号。)については執行機関である原告に対して交付要求を行い(甲2),破産債権 平成20年12月分(納期限平成21年2月2日)から同年10月分(納期限同年11月30日)までのもの。破産法148条1項3号。)については執行機関である原告に対して交付要求を行い(甲2),破産債権となるもの(平成12年3月分(納期限同年5月1日)から平成20年7月分(納期限同年9月1日)までのもの。本件滞納社会保険料等)については執行機関である大阪地方裁判所に対して交付要求(本件交付要求)を行い,これを破産会社に通知した(甲3)。 - 3 -なお,当該通知は,破産会社の破産決定(甲1)において,同法81条に基づき,信書の送達の事業を行う者に対し,破産会社に宛てた郵便物等を破産管財人である原告に配達すべき旨を嘱託する旨の決定がされていたため,原告に対して送付された。 なお,破産会社に対する本件交付要求の通知書には,「あなたがこの交付要求に不服があるときは,この処分を受けた日の翌日から起算して60日以内に,健康保険料及び厚生年金保険料にかかるものは社会保険審査会(東京都千代田区霞ヶ関1ノ2ノ2厚生労働省内)に対して審査請求を,児童手当拠出金にかかるものは社会保険庁(東京都千代田区霞ヶ関1ノ2ノ2)に対して異議申立てをすることができます。」と記載されていた(以下「本件教示文」という。)。 (3) 原告は,平成22年2月19日付けで,本件交付要求について,本件滞納社会保険料等のうち健康保険料及び厚生年金保険料に関する部分については社会保険審査会に対し,児童手当拠出金及びそれに係る延滞金に関する部分については厚生労働省年金局に対し,それぞれ審査請求を行った(甲4,5)。 社会保険審査会は,同年11月30日,原告の審査請求を棄却する旨の裁決を行った(甲6)。 (4) 原告は,平成23年2月17日,本件訴訟を提起した(顕著な事実)。 請求を行った(甲4,5)。 社会保険審査会は,同年11月30日,原告の審査請求を棄却する旨の裁決を行った(甲6)。 (4) 原告は,平成23年2月17日,本件訴訟を提起した(顕著な事実)。 第3 争点本件の争点は以下のとおりである。 1 本案前の争点(1) 本件取消請求に係る訴えの適法性(争点①)具体的には,本件交付要求の処分性の有無,本件取消請求は破産法134条2項に基づく異議の主張としてすることができるか否か及び同条4項の不変期間内に本件交付要求に係る審査請求をしていないことにより本件取消請 - 4 -求に係る訴えが不適法になるか否かである。 (2) 本件確認請求に係る訴えの適法性(争点②)具体的には,確認の利益の有無(本件確認請求に係る訴えを被告に対して提起することの可否)及び破産法134条4項の期間制限を遵守していないことにより本件確認請求に係る訴えが不適法となるか否かである。 2 本案の争点本件請求対象社会保険料等の消滅時効の成否等(中断及び滞納処分停止の有無)(争点③)第4 当事者の主張 1 争点①(本件取消請求に係る訴えの適法性)について(1) 原告の主張ア本件交付要求の処分性の有無について本件交付要求は,破産債権となる本件滞納社会保険料等に係る交付要求であるところ,破産法においては,租税等の請求権(国税徴収法又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権(破産法97条4号参照)。 社会保険料等の徴収については,国税徴収の例によって徴収することとされているため(健康保険法183条,厚生年金保険法89条,児童手当法22条1項),社会保険料等の請求権は租税等の請求権に含まれる。)の調査・確定手続に関しては,一般の破産債権の調査・確定手続が排除されており(破産法134条1 3条,厚生年金保険法89条,児童手当法22条1項),社会保険料等の請求権は租税等の請求権に含まれる。)の調査・確定手続に関しては,一般の破産債権の調査・確定手続が排除されており(破産法134条1項),破産債権となる租税等の請求権についての交付要求がされ,破産債権としての届出がされると,それがすぐに破産債権者表に記載されることとされており,確定防止のための起訴責任が破産管財人に転換されている。このように,破産債権となる租税等の請求権に係る交付要求により,起訴責任の転換という効果が生じる以上,本件交付要求には処分性が認められる。 イ破産法134条2項について - 5 -被告は,一旦納付義務が確定した社会保険料等について,事後的に納付義務が失われたということを理由として異議を主張する場合には,破産法134条2項の定める場合に該当しないから,本件交付要求の取消しを求める方法によることはできない旨主張する。しかしながら,同項の文言をみても,同項に基づく異議の主張をそのように限定して解釈すべきであるとは認められないから,本件取消請求も同項の定める異議の主張として行うことが許容されるというべきである。 ウ破産法134条4項の定める不変期間の徒過について確かに原告は,本件交付要求についての通知を受けた後,1月を経過した後に審査請求を行っているため,破産法134条4項の定める不変期間を徒過しているが,当該審査請求は受理され,これに対する裁決も行われている(甲6)。 また,本件交付要求の通知書(甲3)には,本件交付要求がされた日から60日以内に異議申立てをすればよい旨の本件教示文が記載されていたため,原告はこれにより60日以内に審査請求を行えばよいと誤信し,そのため本件交付要求があったと知った日から1月以内に審査請求を行 ら60日以内に異議申立てをすればよい旨の本件教示文が記載されていたため,原告はこれにより60日以内に審査請求を行えばよいと誤信し,そのため本件交付要求があったと知った日から1月以内に審査請求を行うことができなかったのであるから,誤った教示により審査請求期間を徒過した場合の救済規定が適用されると考えられる。また,民事訴訟法97条1項の「責めに帰することができない事由により不変期間を遵守することができなかった」場合に該当し,原告は本件教示文で示された期間内に審査請求をしているから,不変期間内にすべき訴訟行為の追完がされたということができる。 なお,被告は,本件教示文は,原告ではなく破産会社に対する教示であるため,これに従ったことによって原告が救済を受けられるわけではない旨主張するが,上記本件交付要求の通知書は原告に直接送付されており,また,破産法134条2項の不服申立て等は破産管財人のみが行うことが - 6 -できることとされていることからすれば,教示の対象は原告であったということができる。 したがって,本件取消請求に係る訴えは適法である。 (2) 被告の主張ア本件交付要求の処分性について本件交付要求は,行政事件訴訟法3条2項にいう処分に当たらないから,本件取消請求に係る訴えは不適法である。 すなわち,破産債権となる租税等の請求権は,他の破産債権と同様に順位に従って破産配当を受けることとされており(破産法193条,194条),当該租税等の請求権に係る破産裁判所に対する交付要求は,同法114条に従った租税等の請求権の破産債権の届出にすぎないものである。そして,交付要求は,あくまで他の強制換価手続を前提としているもので,その前提となる手続が取下げ等の理由により効力を失った場合には,交付要求も効力を失うのであって,交付 の届出にすぎないものである。そして,交付要求は,あくまで他の強制換価手続を前提としているもので,その前提となる手続が取下げ等の理由により効力を失った場合には,交付要求も効力を失うのであって,交付要求自身は独自に処分禁止効を持たない。また,対外的な公示が十分でないため,交付要求は,中止命令の対象となる国税滞納処分から除外され(同法25条),破産手続の開始によって禁止される国税滞納処分や先着手による続行を妨げない国税滞納処分の対象からも除外されている(同法43条1項,2項)。以上からすれば,破産債権に係る交付要求は,破産者又は破産管財人等の地位又は権利義務に何らの変動を生じさせるものではないということができる。なお,租税等の請求権は,公債権であることなどから,破産債権届出期間が定められていない点及びその性質上,真実性が一応推定され,確定防止のための起訴責任を破産管財人に転換している点に一般的な破産債権との相違点があるが,このような効果は,租税等の請求権自体の性質から導かれるもので,交付要求によって創設されるわけではない。 以上からすれば,本件交付要求に処分性は認められない。 - 7 -イ破産法134条2項について仮に本件交付要求が行政事件訴訟法3条2項にいう行政処分に当たるとしても,本件取消請求に係る訴えは,以下の理由で不適法である。 破産債権となる租税等の請求権に関する異議等の主張方法について,破産法134条2項は,租税等の請求権の原因が審査請求・訴訟その他の不服申立てをすることができる処分である場合には,当該不服の申立てをする方法で異議を主張することができる旨定めているところ,当該規定は,その文言上,租税等の請求権に関する納税・納付義務の確定(成立や発生自体)を争う場合についてのみ適用されると解するの 服の申立てをする方法で異議を主張することができる旨定めているところ,当該規定は,その文言上,租税等の請求権に関する納税・納付義務の確定(成立や発生自体)を争う場合についてのみ適用されると解するのが相当であり,一旦確定した納税・納付義務が事後的に消滅した場合の異議の主張については,同項の定める方法によることができないと解すべきである。 本件取消請求は,同項の定める異議主張としてされたことが明らかであるところ,同請求は,破産会社の本件滞納社会保険料等についての納付義務が一旦確定したことを前提としつつ,事後的に当該社会保険料等の一部が時効等により消滅したこと等を理由として,後続の本件交付要求につき取消しを求めるものであり,上記のとおり,同項の異議の主張として行うことはできないと解すべきであるから,本件取消請求に係る訴えは不適法である。 ウ破産法134条4項の定める不変期間の徒過についてまた,仮に本件取消請求が破産法134条2項に定める異議の主張として行うことができるとしても,同条4項は,同条2項の規定による異議の主張,すなわち租税等の請求権に関する審査請求,訴訟等の不服申立てについて,当該請求権の届出があったことを知った日から1月の不変期間以内に行わなければならない旨定めており,当該不変期間を徒過した場合には,届出事項の存在が確定し,これを争うことができなくなると解すべきである。 - 8 -そして,本件交付要求についての審査請求は当該不変期間経過後にされたものであるから,本件交付要求に係る本件滞納社会保険料等についてもはや争うことができないのであって,本件取消請求に係る訴えは不適法である。 2 争点②(本件確認請求に係る訴えの適法性)について(1) 原告の主張ア確認の利益について社会保険料等の徴収は や争うことができないのであって,本件取消請求に係る訴えは不適法である。 2 争点②(本件確認請求に係る訴えの適法性)について(1) 原告の主張ア確認の利益について社会保険料等の徴収は,その権限が被告に委任されており,被告が自己の名でこれを行うことができるのであって,このような被告との間で本件請求対象社会保険料等の納付義務の不存在を確認すれば,原告の目的が達成できること,また実際上,当該訴えにおいて,徴収の事務に当たっている被告の関与なしに審理を行うことは不可能であることなどからすれば,被告を相手方とする本件確認請求には確認の利益が認められる。 イ破産法134条4項の期間制限について本件取消請求と本件確認請求とは,いずれも本件請求対象社会保険料等の存在を争うものであり,本案の争点が共通している。そして,破産法134条4項の不変期間の定めは,法律関係の早期安定を目的として定められたものであるが,本件交付要求に対する不服申立てが当該不変期間内にされれば,本件滞納社会保険料等の存在に関する法律関係についての早期安定の要請が後退し,当該法律関係の確認を行うことを優先する必要が生じるため,本案の争点を共通にする本件確認請求についても,同様に法律関係の早期安定の要請が後退し,本件確認請求に係る訴えの提起につき,同項の不変期間を遵守していなくとも,本件確認請求に係る訴えは適法となる。そして,前記のとおり,本件交付要求に対する審査請求は,同項の不変期間内にされたものとみなされるから,本件確認請求に係る訴えは適法である。 - 9 -(2) 被告の主張ア確認の利益について本件確認請求は,本件請求対象社会保険料等に係る破産会社の納付義務が不存在であることの確認を求めるものであるが,本件請求対象社会保険 - 9 -(2) 被告の主張ア確認の利益について本件確認請求は,本件請求対象社会保険料等に係る破産会社の納付義務が不存在であることの確認を求めるものであるが,本件請求対象社会保険料等の債権者は国であり,被告は当該請求権の徴収事務を委任されているにすぎないから,原告としては,国に対し,本件請求対象社会保険料等の納付義務の不存在確認を求める訴えを提起した方がより直截かつ有効に目的を達成し得る。そうであれば,債権者でない被告に対して破産会社の納付義務の不存在の確認を求める本件確認請求に係る訴えは,他人間の法律関係の確認を求めるものであって,紛争解決に適切なものではないから,確認の利益を欠き,不適法である。 イ破産法134条4項の期間制限について本件確認請求に係る訴えは,行政処分に対する不服申立ての方法とはいえないから,破産法134条2項が適用されず,従って直接同条4項の不変期間が適用されるわけではない。もっとも,同項の期間制限の趣旨は,破産手続の迅速な進行であるところ,破産債権となる租税等の請求権の不存在確認を求める場合にも,破産手続の迅速な進行という同項の趣旨が当てはまることからすれば,同項を類推適用し,破産管財人は,本件滞納社会保険料等の請求権についての届出(本件交付要求)を知った日から1月の不変期間内に訴えを提起すべきである。なお,本件確認請求に係る訴えも実質的当事者訴訟として同条2項が規定する行政上の不服申立ての一種であり,同条4項が直接適用されるとの考え方もあり得るが,その場合にも同様の結論となる。 本件請求対象社会保険料等の納付義務の不存在確認を求める訴えについては,同項の不変期間経過後に提起されたものであることは明らかであり,不適法として却下されるべきである。 - 10 - 3 争点③(本件請 象社会保険料等の納付義務の不存在確認を求める訴えについては,同項の不変期間経過後に提起されたものであることは明らかであり,不適法として却下されるべきである。 - 10 - 3 争点③(本件請求対象社会保険料等の消滅時効の成否等)について(1) 原告の主張滞納社会保険料等の徴収権については,2年の短期消滅時効が規定されている。そうであるところ,本件滞納社会保険料等のうち平成17年5月分以前のもの(本件請求対象社会保険料等)については,督促指定期限から2年以上経過しており,既に時効消滅している。 被告は,上記滞納社会保険料等についての時効は,破産会社が一部弁済を行ったことにより中断している旨主張するが,国税通則法基本通達73条関係4によれば,一部弁済によって時効が中断するのは,納付された部分の国税及び延滞税又は利子税のみであって,それ以外の部分の国税及び延滞税についての時効が中断するためには,別途債務承認の意思表示がされることが必要となる。そして,本件滞納社会保険料等について,破産会社が債務承認の意思表示をしたと認め得る破産会社作成の資料は存在しない。 また,本件滞納社会保険料等については,本件交付要求が行われるまでの間,滞納処分が一度も行われておらず,換価の猶予,納税の猶予といった措置も執られていないことからすると,本件請求対象社会保険料等については滞納処分の停止(国税徴収法153条1項)がされていたということができ,これが3年以上継続していることから,同条4項に基づき納税義務は消滅しているといえる。 (2) 被告の主張破産会社は,平成13年1月26日から平成21年4月30日までの間,本件滞納社会保険料等につき,その全額を認識し,承認した上で,その存在を認める旨記載した書面を提出し,充当先を指定して,本件滞納社会保険 会社は,平成13年1月26日から平成21年4月30日までの間,本件滞納社会保険料等につき,その全額を認識し,承認した上で,その存在を認める旨記載した書面を提出し,充当先を指定して,本件滞納社会保険料等の一部を継続して納付している。したがって,本件滞納社会保険料等の徴収権についての消滅時効は,上記破産会社の行為により中断しているから,本件滞納社会保険料等の徴収権は消滅しておらず,かつ破産会社の納付義務 - 11 -は失われていない。 なお,国税の徴収権の時効については,時効期間の経過によって消滅するため,税務官庁は,納税者が時効を援用するかどうかを問わず徴収手続をとることができなくなるという絶対的効力を有している。したがって,時効完成後に行われた滞納処分(交付要求)は無効となるところ,無効な行政処分については,そもそも当該処分は効力を生じていないのであるから,そのような事由は処分の取消事由とはならないというべきである。 また原告は,本件滞納社会保険料等については滞納処分の停止が行われた後3年が経過しているから,徴収権は既に消滅している旨主張するが,本件滞納社会保険料等につき滞納処分の停止がされたなどという事実はない。 第5 当裁判所の判断 1 争点①(本件取消請求に係る訴えの適法性)について(1) 本件交付要求の処分性の有無についてア行政事件訴訟法3条2項における「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」とは,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう(最判昭和39年10月29日・民集18巻8号1809頁)。 イ交付要求は,租税等の請求権の徴収につき,滞納者について破産手続の開始決定があった場合など,既に ことが法律上認められているものをいう(最判昭和39年10月29日・民集18巻8号1809頁)。 イ交付要求は,租税等の請求権の徴収につき,滞納者について破産手続の開始決定があった場合など,既に強制換価手続(国税徴収法2条12号)が行われている場合に,当該財産につき自ら重ねて差押えをするのではなく,当該強制換価手続の執行機関に対し,滞納に係る租税等の請求権について配当金の交付を要求する手続である(国税徴収法82条)。 本件滞納社会保険料等は,破産債権となる租税等の請求権であり,本件交付要求はこれについてされたものであるところ,破産債権となる租税等の請求権に係る交付要求は,裁判所に対する債権届出(破産法114条) - 12 -としての意味を有するものとされている。そして,当該請求権については,優先的破産債権とされているため(同法98条),交付要求を行うことにより,破産者(租税等の請求権の滞納者)の破産財団から優先的に配当を受けることができる。このように,破産債権となる租税等の請求権に係る交付要求は,当該請求権につき,滞納処分の手続として,滞納者の意思に基づくことなく強制的に,その破産財団から優先して配当を受けることを可能にするものであり,また,他の破産債権者においても自己の配当が減少することを受忍させられるという効果をもたらすものである。したがって,本件交付要求は,これにより直接利害関係者の実体法上の権利義務に変動をもたらす効果を有するものということができる。 被告は,上記効果は,通常の破産債権の届出の効果と変わらないものであり,交付要求は,滞納に係る租税等の請求権の弁済を催告する行為にすぎず,利害関係者の権利利益を変動させる効果を有しないから,処分性がない旨主張する。しかしながら,破産債権となる租税等の請求権に係る交付要求 要求は,滞納に係る租税等の請求権の弁済を催告する行為にすぎず,利害関係者の権利利益を変動させる効果を有しないから,処分性がない旨主張する。しかしながら,破産債権となる租税等の請求権に係る交付要求は,既に破産手続が開始されていることから,別個に差押え等の滞納処分を行う代わりに当該破産手続を利用し,これに参加するという形式で行われているというだけで,実質的には,上記のとおり破産者(租税等の請求権の滞納者)の意思にかかわらず,他の債権者に優先して強制的に租税等の請求権を徴収し,満足を得るための行為であって,差押え等と同じく滞納処分の一種であるということができる。したがって,破産債権となる租税等の請求権に係る交付要求を弁済の催告にすぎないということはできない。被告が引用する大阪高判昭和57年9月30日・判例時報1079号36頁,最判昭和59年3月29日・裁判集民事141号523頁は,破産手続によることなく随時弁済される財団債権(旧破産法(大正11年法律第71号)49条)である租税等の請求権(同法47条2号)に関するものであって,本件と事案を異にするものである。被告が,財団債 - 13 -権の交付要求書(甲2)には処分に対する不服申立ての教示を記載していないにもかかわらず,本件交付要求の通知書(甲3)には処分に対する不服申立ての教示を記載していることも,これを裏付けるものである。 ウ以上からすれば,本件交付要求は,これにより直接利害関係者の実体法上の権利義務に変動をもたらすことが法律上認められているものということができ,処分性が認められる。これに反する被告の主張は採用することができない。 (2) 破産法134条2項についてア租税等の請求権については,破産法134条1項により,通常の債権の調査・確定手続の適用が排除され,同法11 れに反する被告の主張は採用することができない。 (2) 破産法134条2項についてア租税等の請求権については,破産法134条1項により,通常の債権の調査・確定手続の適用が排除され,同法114条に基づく届出があった場合,当該事実及び結果が破産債権者表に記載されることとされ(同法115条,134条1項かっこ書),当該請求権に係る異議については,同条2項において,「請求権の原因が審査請求,訴訟その他の不服の申立てをすることができる処分である場合には」,破産管財人において,当該不服の申立てをする方法で異議を主張することができる旨規定されている。 被告は,同項は,その文言から,租税等の請求権に関する納税・納付義務の成立や発生について争う場合に限り,その根拠となる処分に不服の申立てをする方法によって異議を主張することを認めたもので,本件交付要求のように,租税等の請求権の成立・発生を前提とした後続処分について,租税等の請求権が事後的に消滅したことを理由として,これに対する不服の申立てをする方法で異議を主張することは認められていないから,本件取消請求に係る訴えは不適法である旨主張する。 イしかしながら,同条1項及び2項は,破産債権となる租税等の請求権については,租税等の請求権の性質上,債権の真実性が一応認められ,他の破産債権者に異議権を認めても適切な行使が期待できないことから,通常の破産債権の調査,確定に関する規定の適用を排除し,当該請求権につい - 14 -て異議がある場合には,破産管財人において,その存在を争うために認められている不服申立て方法により破産債権確定防止のための異議を主張させることとして,破産管財人に起訴責任を転換した規定であると解される。 そして,破産債権となる租税等の請求権について破産債権確定防止のために異議を 立て方法により破産債権確定防止のための異議を主張させることとして,破産管財人に起訴責任を転換した規定であると解される。 そして,破産債権となる租税等の請求権について破産債権確定防止のために異議を主張する場面としては,典型的には当該請求権の成立・発生を争いその根拠となる処分について不服の申立てをする場合が想定されるが,本件のように,納付義務の成立・発生自体は争わないが,租税等の請求権が事後的に消滅したことを理由として異議を主張する場合も考えられるところ,このような場合には,請求権の成立・発生の根拠となる処分を争う方法によることはできず,後続の滞納処分又は交付要求について不服の申立てをする方法によって異議を主張することができるというべきである。 本件交付要求も本件滞納社会保険料等の請求権を破産手続において行使するための前提となる処分の一つであり,これについての不服申立ても,同項にいう請求権の原因である処分に対する不服申立てに該当すると解することができる。 ウこれに対し,同項の文言を限定的に解釈し,租税等の請求権の事後的な消滅の場合について,破産管財人がおよそ異議を主張することができないとすれば,納付等により実体的に消滅している請求権であっても,破産手続上争う余地がないということになり,妥当性を欠くことは明らかである。 上記請求権に基づく配当について,事後的に是正する方法があり得るとしても,手段として著しく迂遠であることはいうまでもない。 他方,同項はあくまでも「請求権の原因が・・・不服の申立てをすることができる処分である場合」の異議主張方法に関する取扱いを定めたものにすぎず,租税等の請求権の事後的な消滅の場合等請求権の成立,発生の根拠となる処分に対する不服申立てとは異なる方法による不服申立てについては,同項による制限を受けるこ 方法に関する取扱いを定めたものにすぎず,租税等の請求権の事後的な消滅の場合等請求権の成立,発生の根拠となる処分に対する不服申立てとは異なる方法による不服申立てについては,同項による制限を受けることなく自由に行うことができると解釈 - 15 -する余地もある。しかし,同条4項は,破産管財人が租税等の請求権の届出がされたことを知ってから1月の不変期間内に同条2項の異議の主張を行う必要がある旨定めているところ,その趣旨は,無名義債権の確定のための査定申立てや中断した訴訟手続の受継申立ての期間制限(同法125条2項,127条2項),有名義債権の確定防止のための異議主張の期間制限(同法129条3項)と同様に,破産手続の迅速な遂行を目的とするものであると考えられる。そうであるところ,租税等の請求権が事後的に消滅した場合等における異議の主張について,同条2項とは無関係のものとして同条4項の期間制限が適用されないと解釈することは,破産債権の早期確定を定めた破産法の趣旨に反するものといわざるを得ず,採用し難い。 エ以上からすれば,本件取消請求に係る不服申立ては,破産法134条4項の期間制限を遵守する限りにおいて,同条2項の規定による異議の主張として認められるというべきである。これに反する被告の主張は採用することができない。 (3) 破産法134条4項の不変期間の徒過についてア前記のとおり,破産法134条4項は,同条2項の規定による異議の主張については,租税等の請求権の届出があったことを破産管財人が知った日から1月以内の不変期間内に行わなければならないことと定めているところ,本件取消請求に係る不服申立ては同項に基づく異議の主張としてされたものといえるから,本件交付要求があったことを知った日から1月以内に本件交付要求に対する不服申立てとし らないことと定めているところ,本件取消請求に係る不服申立ては同項に基づく異議の主張としてされたものといえるから,本件交付要求があったことを知った日から1月以内に本件交付要求に対する不服申立てとして,審査請求を行う必要がある。 そして,本件交付要求については,平成21年12月22日,原告に対して通知書が送付されており(甲3),原告は,その頃本件交付要求があったことを知ったと認められ,それから1月以内に本件交付要求についての審査請求を行う必要があったところ,原告が本件交付要求についての審査請求を行ったのは,平成22年2月19日であり(前記前提事実),破産法 - 16 -134条4項の不変期間を徒過していることになる。そして,同項の不変期間を徒過した場合,同法129条4項,124条1項の趣旨に鑑み,届出のあった租税等の請求権の届出事項の存在が確定し,当該事項を争うことができなくなると解すべきである。したがって,原告は,上記不変期間を徒過したことにより,届出事項である本件滞納社会保険料等の請求権の存在を争うことができなくなり,本件取消請求に係る訴えは不適法となるというべきである。 イ原告は,本件交付要求の通知書に,交付要求がされた翌日から起算して60日以内に審査請求をすればよい旨の本件教示文が記載されており,これを信じて60日以内に審査請求をすればよいものと誤信したのであるから,誤った教示により審査請求期間を徒過した場合の救済の規定(行政不服審査法19条に該当する旨の主張であると善解することができる。)が適用され,又は民事訴訟法97条1項における「責めに帰することができない事由により不変期間を遵守することができなかった」場合に該当する旨主張する。 しかしながら,破産法134条4項の不変期間の定めは,前記のとおり,破産手続の迅速 における「責めに帰することができない事由により不変期間を遵守することができなかった」場合に該当する旨主張する。 しかしながら,破産法134条4項の不変期間の定めは,前記のとおり,破産手続の迅速な遂行のために設けられた破産法上の期間制限である。これに対し,本件教示文は,行政不服審査法14条1項に定められた不服申立期間に関し,同法57条1項に基づいてされた教示であると考えられ,上記破産法上の期間制限とは関係のないものであるから,これにより教示された期間に従って審査請求を行ったとしても,破産法134条4項の期間制限について行政不服審査法19条等の救済規定が適用されるものではない。また,本件教示文が破産法上の期間制限についてされたものではない以上,本件教示文の教示に従ったことは,破産法上の不変期間を遵守することができなかったことを正当化する事由とはならないというべきであるし,そもそも,破産法上の期間制限の定めについては,破産管財人であ - 17 -る以上,当然にこれを把握し,遵守する必要があると解されることからすれば,本件において,弁護士として破産管財人に選任された原告が不変期間を遵守することができなかったことについて,民事訴訟法97条1項の「責めに帰することができない事由」があるとは認められない。 以上からすれば,上記原告の主張を採用することはできず,本件取消請求に係る訴えは,破産法134条4項が定める不変期間を徒過したことにより,不適法である。 2 争点②(本件確認請求に係る訴えの適法性)について(1) 破産法134条2項は,届出があった租税等の請求権の原因が審査請求,訴訟その他の不服の申立てをすることができる処分である場合には,破産管財人は,当該届出があった請求権について,当該不服の申立てをする方法で,異議を主張すること あった租税等の請求権の原因が審査請求,訴訟その他の不服の申立てをすることができる処分である場合には,破産管財人は,当該届出があった請求権について,当該不服の申立てをする方法で,異議を主張することができる旨規定しているところ,同項の趣旨は,前記のとおり,租税等の請求権について,その性質の特殊性から通常の破産債権の調査・確定の手続を排除し,破産管財人に当該請求権の存在について争うために認められている方法により,破産債権確定防止のための異議の主張をすることを認めるものであると考えられるのであり,その異議の主張方法に関しても,当該処分に対する不服申立てとして許容される方法であれば異議を主張できるというべきであり,処分そのものに対する不服申立てに限定する趣旨ではないと考えるのが相当である。同項の「審査請求,訴訟その他の不服の申立て」は,処分そのものに対する不服申立てに限られず,租税等の納付義務の不存在確認訴訟等の実質的に処分を争う不服申立て方法を含むと解することができる。以上によれば,租税等の納付義務の不存在確認訴訟等については,同項に基づく異議の主張に該当すると解するのが相当である。 さらに,被告は,本件滞納社会保険料等の徴収権限を有し,その徴収に関する事務を担当していることからすれば,被告との間で本件請求対象社会保険料等の納付義務の存否を確認することにより,紛争の抜本的解決を図るこ - 18 -とが可能というべきであり,本件確認請求に係る訴えの被告適格及び確認の利益を認めることができる。 以上からすれば,本件確認訴訟に係る訴えも,同項の定める方法による異議の主張として許されるというべきである。 (2) しかしながら,本件確認請求についても破産法134条4項の不変期間の制限に服することになるから,原告は,本件滞納社会保険料等につ 定める方法による異議の主張として許されるというべきである。 (2) しかしながら,本件確認請求についても破産法134条4項の不変期間の制限に服することになるから,原告は,本件滞納社会保険料等についての届出がされたことを知った日,すなわち本件交付要求があったことを知った日(前記のとおり平成21年12月22日頃)から1月以内に本件確認請求に係る訴えを提起する必要があったところ,実際に本件確認請求に係る訴えが提起されたのは平成23年2月17日であり(前記前提事実),本件確認請求に係る訴えは,同項の定める不変期間を徒過したものとして,不適法となるというべきである。 これに対し原告は,本件交付要求に対する審査請求が同項の不変期間内にされていれば,本件確認請求に係る訴え自体が当該不変期間内に行われる必要がない旨主張するが,前記のとおり本件交付要求に対する審査請求が同項の不変期間内にされたとは認められないから,原告の上記主張を採用することはできない。 したがって,本件確認訴訟に係る訴えは不適法であり,却下されるべきである。 3 結論以上からすれば,本件訴えは,いずれも破産法134条4項の定める不変期間を徒過したものとして不適法であるから却下することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第2民事部 - 19 -裁判長裁判官山田 明 裁判官徳地 淳 裁判官藤根桃世

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る