平成8(行ウ)6 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成10年10月30日 名古屋地方裁判所 住民訴訟
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判決文本文36,377 文字)

主文 一被告A、被告B及び被告Cは、各自、名古屋市に対し、四六六五万円及びこれに対する平成八年一月一二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 二被告Dは、名古屋市に対し、六六万円及びこれに対する平成八年二月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 三被告Eは、名古屋市に対し、六九万円及びこれに対する平成八年二月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 四原告のその余の請求を棄却する。 五訴訟費用は、原告に生じたものについてはこれを四分し、その一を原告の負担とし、その余は被告A、被告B、被告C、被告D及び被告Eの負担とし、被告A、被告B、被告C、被告D及び被告Eに生じたものについては右被告らそれぞれの負担とし、その余の被告らに生じたものについては原告の負担とし、参加人に生じた費用は参加人の負担とする。 事実及び理由 第一請求一被告A、F、G及びHは、連帯して、名古屋市に対し、五一七万五〇〇〇円及びこれに対する平成八年一月一二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 二被告A、F、B及びCは、連帯して、名古屋市に対し、四六六五万円及びこれに対する平成八年一月一二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 三被告Dは、名古屋市に対し、六六万円及びこれに対する平成八年一月一二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 四被告Eは、名古屋市に対し、六九万円及びこれに対する平成八年一月一二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 第二事案の概要本件は、名古屋市の住民である原告が、名古屋市が平成六年一一月一七日から同七年九月までの間に、名古屋市政調査会(以下「市政調査会」という。)の審議員に対し、費用弁償としてした支給(以下「本件費用弁 本件は、名古屋市の住民である原告が、名古屋市が平成六年一一月一七日から同七年九月までの間に、名古屋市政調査会(以下「市政調査会」という。)の審議員に対し、費用弁償としてした支給(以下「本件費用弁償」という。)は違法であるとして、右期間に名古屋市長・収入役の職にあった者及び支出命令等の代決権者であった者並びに費用弁償の支給を受けた審議員に対し、地方自治法(以下「法」という。)二四二条の二第一項四号に基づき、名古屋市に代位して、不法行為に基づく損害賠償又は不当利得の返還を請求する住民訴訟である(市の職員に対する請求は、当該職員に対する損害賠償請求であり、審議員に対する請求は、当該行為の相手方に対する損害賠償請求又は不当利得に基づく返還請求である。)。 第三争いのない事実等一当事者 1 原告は、名古屋市の住民である。 2(一) 市政調査会は、昭和二二年五月三〇日の名古屋市長決裁による名古屋市政調査会規程(以下「市政調査会規程」という。甲二)により設置された機関であり、「市長の諮問に応じて市政に関する重要事項を調査審議する」(市政調査会規程一条)。 (二) 市政調査会の組織は、次のとおりである。 (1) 市政調査会は、審議員長一名、副審議員長一名及び審議員若干名で組織される(同二条)。 (2) 市政調査会は、次の六部会に分けられ(同四条)、各部会に部長及び副部長二人が置かれる(同六条)。 総務民生部会、財政衛生部会、経済教育部会、計画建設部会、環境水道部会、建築交通消防部会(3) 審議員長、副審議員長及び審議員は、市会議員中から市長が嘱託するとされ(同二条)、部員は各部会若干名とし市会常任委員会の所属による(同五条)、「部長及び副部長は市会常任委員会の委員長及び副委員長を以ってこれに充てる」(同六条)とされている。 (4) 現実の運用と れ(同二条)、部員は各部会若干名とし市会常任委員会の所属による(同五条)、「部長及び副部長は市会常任委員会の委員長及び副委員長を以ってこれに充てる」(同六条)とされている。 (4) 現実の運用として、市政調査会部会の構成員は、名古屋市議会(以下「市会」という。)の常任委員会の構成と全く一致している。また、市会議長になった者は、常に審議員長に委嘱されている。 (三) 部会の運営状況部会の日程及び審議案件は、部会の招集に先立ち正副部長と所管関係局との調整により決定される。 部会の招集は、市会の常任委員会と同様、部長から各部員宛てに日時、場所及び案件を示した部会開会通知を送付することにより行われる。 部会の開会場所は、常任委員会同様、名古屋市会議事堂内の委員会室である。 部員は、部会開会日には名古屋市会議事堂内の各会派別に設けられた議員控室(以下「各会派控室」という。)に登庁する。 部会の運営は、常任委員会の会議原則に沿った形で行われる。すなわち、所管関係局から資料に基づく報告を受け、これに対し部員が質疑を行い、所管関係局がこれに答える形で進められる。各部員の意見披露が終了した時点で、部会は閉会とされ、原則として表決されることはなく、意見集約が行われることも答申も行われていない。 3 被告らは、平成六年一一月一七日から同七年九月までの間、次のとおりの役職に就いて、その職務を行っていた。 (一) 被告A 名古屋市長(二) 被告F 収入役(三) 被告G 総務局長(四) 被告H 総務局総務課長(五) 被告B 市会事務局長(六) 被告C 市会事務局総務課長(七) 被告D 市政調査会の審議員(ただし、平成六年五月二四日から審議員長)(八) 被告E 市政調査会の審議員(ただし、平成七年五月一六日から審議員長)二費用弁償の法的根拠等 務局総務課長(七) 被告D 市政調査会の審議員(ただし、平成六年五月二四日から審議員長)(八) 被告E 市政調査会の審議員(ただし、平成七年五月一六日から審議員長)二費用弁償の法的根拠等 1 名古屋市は、市政調査会の審議員の費用弁償に関し、「名古屋市政調査会審議員費用弁償支給規程」(以下「費用弁償規程」という。甲三)を定めているが、その概要は次のとおりである。 第一条この規程は、名古屋市非常勤の特別職の職員の報酬及び費び費用弁償に関する条例(昭和三一年名古屋市条例第三三号)第五条第三項の規定に基づき、審議員が職務を行うについて交通費その他の費用を必要とするときの費用弁償の額及び支給方法を定めるものとする。 第二条前条に規定する費用弁償の額は、日額一万五〇〇〇円とする。 第三条費用弁償を支給する基礎となる日数が、同一人について一月に九日をこえるときは、その者に対して支給する費用弁償の額は、特に必要があると認めた場合を除き一月につき九日相当額とする。 2 右費用弁償は、市政調査会の部会が開催された日については款・総務費から支出され、市政調査会の部会が開催されていない日については、登庁日数に応じて款・議会費から支出されていた。 三費用弁償支給の手続 1 本件費用弁償の手続は、①支出決定を経た後、②収入役に対する支出命令を行い、③収入役がこの支出命令を審査のうえ適法と認めた場合に支出のための現金の出納を行うというものである。 2 これらの手続における意思決定は、名古屋市においては、助役以下代決規程(昭和三九年名古屋市達第五一号。以下「代決規程」という。丙一)、市会事務局事務局長以下代決規程(昭和五三年市会達第一号。以下「市会代決規程」という。 丙二)及び収入役室副収入役以下代決規程(昭和四一年収入役達第一号。以下「収入役室代決規程」と 」という。丙一)、市会事務局事務局長以下代決規程(昭和五三年市会達第一号。以下「市会代決規程」という。 丙二)及び収入役室副収入役以下代決規程(昭和四一年収入役達第一号。以下「収入役室代決規程」という。丙三)により、次のように所管の総務局、市会事務局及び収入役室の職員が代決することとされている。 総務費の支出決定総務局長(代決規程四条及び別表第一局長の欄二七号)議会費の支出決定市会事務局長(市会代決規程三条二項並びに代決規程七条一項及び二項並びに代決規程別表第一局長の欄二七号)総務費の支出命令総務局総務課長(代決規程四条及び別表第一主管課長の欄一〇号)議会費の支出命令市会事務局総務課長(市会代決規程六条二項並びに代決規程七条一項及び二項並びに代決規程別表第一主管課長の欄一〇号)支出命令の審査収入役室審査課長(収入役室代決規程四条二号) 3 具体的な費用弁償の支給手続(一) 市政調査会の審議員の職務には審議活動と調査活動とがあり、それぞれの活動に対して費用弁償が支給される。 (二) 審議活動については、部会への出席という客観的事実の把握により費用弁償を支給していた。 (三) 調査活動については、各会派控室への登庁という事実に着目して費用弁償を支給してきた。 審議員の各会派控室への登庁状況は、控室に常駐する市会事務局総務課職員が把握し、各会派ごとにその日の出欠状況を市会事務局総務課の費用弁償支給事務担当職員(以下「担当職員」という。)に毎日報告する。また議員が本会議、委員会はじめ各種の議会の会議へ出席した日数、審議員が部会へ出席した日数及び議員が公務により出張した日数が、それぞれの職務を担当する市会事務局職員から担当職員に報告される。 担当職員は、これらの報告を集約して、同一日に重複して費用弁償を支給しないように精 席した日数及び議員が公務により出張した日数が、それぞれの職務を担当する市会事務局職員から担当職員に報告される。 担当職員は、これらの報告を集約して、同一日に重複して費用弁償を支給しないように精査したうえ、調査活動に対する費用弁償の対象となる登庁日数を把握していた。すなわち、費用弁償支給対象期間となる前月の一六日から支給月の一五日までの一か月間(費用弁償規程四条)のすべての登庁日数から、①本会議、委員会はじめ各種の議会の会議に出席した日数、②単独部会(本会議、委員会はじめ各種の議会の会議が開かれない日の部会)に出席した日数、③議員が公務出張の発着日に登庁した日数をすべて除いた残りの登庁日数に限って、調査活動に対するものとして当該費用弁償を支給してきた。なお、この調査活動に従事した日数と単独部会へ出席した日数とを合わせた日数が九日を超えた場合には、原則として九日を限度として費用弁償を支給していた(費用弁償規程三条)。 四名古屋市は、市政調査会の審議員に対し、平成六年一一月一七日から平成七年九月までの間に、三の手続を経て、総務費から五一七万五〇〇〇円、議会費から四六六五万円を費用弁償として、支給した(以下、総務費からの支給を「審議活動分の費用弁償」、議会費からの支給を「調査活動分の費用弁償」という。)。そのうち、被告Dに対しては六六万円、被告Eに対しては六九万円が各支給された。 五住民監査請求の前置 1 原告は、法二四二条一項の規定に基づき、平成七年一一月一七日、本件費用弁償等について、被告らを対象として、名古屋市監査委員に対し必要な措置を講ずべきことを請求した。 2 これに対し、名古屋市監査委員は、平成八年一月一二日、原告に対し、本件費用弁償の支出は違法でないと判断し、原告の措置請求には理由がなく、措置の必要がないものと判断する旨、書 きことを請求した。 2 これに対し、名古屋市監査委員は、平成八年一月一二日、原告に対し、本件費用弁償の支出は違法でないと判断し、原告の措置請求には理由がなく、措置の必要がないものと判断する旨、書面により通知した(甲一)。 第四争点及び争点に関する当事者の主張一本件費用弁償の支給が違法であるか。 (原告の主張) 1 市政調査会自体の違法性(一) 市政調査会規程の違法性(1) 地方自治法の構造違反(違法事由その1)ア憲法九三条及び地方自治法は、地方公共団体には長と議会とを置くこととして、権力の分立を制度化している。市政調査会は、その一方である長が他方である議会を丸ごと諮問機関とするもので、市長(行政)と市会(立法)の対抗関係という基本構造に反するものであるから、地方自治法上の明文の禁止規定をまつまでもなく違法と解すべきである。 イ被告ら及び参加人は、市政調査会の必要性として、議会・常任委員会で行うことができる事項が制限されていると主張するが、市政調査会のような他の組織を作ってそれを議会の構成員に行わせるのは、まさに脱法行為にほかならない。 また、議会の権限は、法九六条の議決権に限られるのではなく、検査権・監査請求権(法九八条)、説明請求、意見陳述、意見書提出権(法九九条)、調査権(法一〇〇条)など多岐にわたっている。また、議会の議決権は法九六条一項で列挙されているが、それ以外の事項についても、条例で議会の議決すべきものを定めることができると規定されているのであるから(同条二項)、市政に関する重要事項について議会が関与することは可能である。 ウ被告ら及び参加人は、議会運営上の申し合せ事項で「常任委員会は付議された事件についてのみ審査する」ことになっていることを議会の制限事由であると主張するが、常任委員会が本来的に付議された事件の 。 ウ被告ら及び参加人は、議会運営上の申し合せ事項で「常任委員会は付議された事件についてのみ審査する」ことになっていることを議会の制限事由であると主張するが、常任委員会が本来的に付議された事件の審査しかできないわけではない。 実際に、他の多くの政令指定都市では、常任委員会で行われている。 エ被告ら及び参加人は、議会の閉会中は常任委員会を開催できないので、市政調査会が必要である旨主張している。しかし、議会の閉会中に真に緊急に対処が必要な事件が発生した場合は、法一〇二条三項以下により臨時会を招集することが可能であるし、仮に、臨時会を開催しないとしても、「特定の事件」としてあらかじめ議決しておくことは十分可能である。 (2) 条例上の根拠規定がないこと(違法事由その2)法一三八条の四第三項本文は、「普通地方公共団体は、法律又は条例の定めるところにより、執行機関の附属機関として自治紛争調停委員、審査会、審議会、調査会その他の調停、審査、諮問又は調査のための機関を置くことができる」と規定し、右のような調査会を置くには、法律又は条例の定めを要するとしている。行政実例でも、「調停、諮問又は調査を行う附属機関は、名称のいかんを問わず、すべて条例をもってしなければ設置できない」、「また、臨時的、速急を要する機関であってもすべて条例によらなければ設置できない」としている(昭和二七年一一月一九日、自行行発第一三九号、群馬県総務部長宛、行政課長回答)。 市政調査会は「市長の諮問に応じて市政に関する重要事項を調査審議する」のであるから、右規定に該当するものであるところ、名古屋市長はこれを条例ではなく、市政調査会規程という市長の命令によって設置しているのであるから、法一三八条の四第三項本文に反し違法である。 (二) 費用弁償規程の違法性(違法事由その3)(1 ろ、名古屋市長はこれを条例ではなく、市政調査会規程という市長の命令によって設置しているのであるから、法一三八条の四第三項本文に反し違法である。 (二) 費用弁償規程の違法性(違法事由その3)(1) 費用弁償規程の不存在費用弁償規程は、原告が平成七年一〇月に名古屋市に公文書公開請求するまでは公にされていなかったもので、その体裁からしても、いつ、どこで決裁され、制定・改正されたのかも全く不明のものである。 (2) 条例違反による違法性費用弁償規程一条は、「名古屋市非常勤の特別職の職員の報酬及び費用弁償に関する条例(以下「費用弁償条例」という。)第五条第三項の規定に基づき」としているが、同条例五条三項は「特別職の職員が職務を行うため特に要した費用については、その相当額をそのつど支給する。」と定めており、その文言からも明らかなように、特別な場合の臨時的・応急的な費用弁償に対処するための規定であって、費用弁償規程のような全員に対する恒常的かつ一律の支給を定める根拠とはならないものである。そもそも、同条例の別表には、対象となる非常勤の特別職の職員が列挙されているが、市政調査会の審議員はここにも挙げられていない(なお、同別表の番号11には「前各号以外の附属機関の構成員その他の非常勤の職員」との記載があるが、その具体的内容について定めた「附属機関の構成員その他の非常勤の職員に対する報酬及び費用弁償支給規程(甲一四)の別表にも市政調査会の審議員は挙げられていないので、市政調査会の審議員はこれに該当しない。)。 よって、費用弁償規程は条例に基づかない違法なものである。 2 会計区分の違法性(調査活動分の費用弁償を議会費から支給する違法性ー違法事由その4)法二一六条は、予算について「歳出にあっては、その目的に従ってこれを款項に区分しなければならな ものである。 2 会計区分の違法性(調査活動分の費用弁償を議会費から支給する違法性ー違法事由その4)法二一六条は、予算について「歳出にあっては、その目的に従ってこれを款項に区分しなければならない」と規定し、法二二〇条二項は「歳出予算の経費の金額は、各款の間又は各項の間において相互にこれを流用することができない」と規定している。 市政調査会は、市会とは全く別個の、市長の諮問機関とされている以上、本件費用弁償は、その目的に従って、款・総務費から支出されるべきものである。しかし、調査活動分の費用弁償は款・議会費から支出されているので違法である。 3 カラ支給の違法性(違法事由その5)市政調査会の審議員に対する調査活動分の費用弁償の支給は、名古屋市会議事堂内の各会派控室への登庁に対して行われているが、単なる登庁は、審議員としてのものではなく、市会議員としてか、あるいは単なる私人としてのものと見るべきである。むしろ市会議員としての日常活動と見るべきものであって、その内容を問わず市政調査会の審議員としての登庁とみなすことは許されない。 市会議員は、名古屋市議会の議員の報酬及び費用弁償等に関する条例(昭和三一年名古屋市条例第三二号)に基づいて、報酬及び費用弁償を支給されているが、本件費用弁償は、右条例によっては正当化できない、単なる登庁による高額の費用弁償を行っているものにほかならない。 そして、右のような単なる登庁というだけでは、費用弁償条例五条三項にいう「特に要した費用」や、費用弁償規程にいう「審議員が職務を行うについて交通費その他の費用を必要とするとき」との支給要件にさえ該当しないのであるから、明確に違法な支出である。 (被告ら及び参加人の主張) 1 市政調査会自体の違法性(一) 市政調査会規程の違法性(1) 地方自治法の構造違反に とするとき」との支給要件にさえ該当しないのであるから、明確に違法な支出である。 (被告ら及び参加人の主張) 1 市政調査会自体の違法性(一) 市政調査会規程の違法性(1) 地方自治法の構造違反について(違法事由その1)ア地方自治法は、普通地方公共団体の組織について、公選の議会と市長が対等の地位に立ち、相互に独立して、力の均衡を図りながら、日常の政治・行政を執行するいわゆる大統領制を採用しているが、市政調査会はこれらの法による議会の諸権限を前提として運用されているものである。市政調査会は、法形式上「議会」そのものではないが、その実質的な機能から言えば、議会が市政に主体的に関わるための組織とも言うべき実体を備えたものである。したがって、議員が市政調査会の審議員となることは、議会の市長に対する対抗上の諸権限を強化することになるのであって、議会と市長との対抗関係を乱すとか弱めるものではない。 イ市政調査会のように、市会議員全員を市長の諮問機関の構成員にする制度を設けることについては、関連法令に明確な規定はなく、法は「沈黙」していると解される。したがって、法の明文の禁止規定を欠く以上、そのような制度を設けるか否かは市長の裁量の範囲内にあるというべきである。 そして、市政調査会は、市長が、議会と市長との権限にも配慮しつつ、その裁量の範囲内において、市会との協議とその了承に基づき、設置・運営してきているものであり、法に反するどころか、その間隙を補い、その精神をより具体的に実現するものといえる。 ウ地方自治制度の下で地方公共団体が住民の日常生活に関わりの深い行政を現実に執行するに当たっては、様々な形で住民の意見、要望を反映させるため、創意工夫を凝らして住民の代表である議会の声を採り入れる必要に迫られている。 そこで、名古屋市においては、長と議 の深い行政を現実に執行するに当たっては、様々な形で住民の意見、要望を反映させるため、創意工夫を凝らして住民の代表である議会の声を採り入れる必要に迫られている。 そこで、名古屋市においては、長と議会の相互牽制のうちにも均衡のとれた公正かつ円滑な地方自治運営を実現するという「地方自治の本旨」実現のため、次に記載するような議会の制約や制限を克服するために、議会が市長の執行する市政の重要課題に主体的に関わる制度として、やむを得ず法の間隙を補う形で、市政調査会を設置して運用している。 ①地方議会は、法九六条に規定する議決権のほか、法九八条から法一〇〇条までに規定される権限を有しているが、機関委任事務については、法的には議会は関与することができないし、法九六条に定める議決事件についても、一旦議会の議決を経ると、法的にはその後は長限りで執行できる。②常任委員会は、議会の議決により付議された事件に限り審査することができるのであり、法九九条一項の説明請求権・意見陳述権のように委員会に付議できないとされている権限もあるし、常任委員会の所管事務調査(法一〇九条三項)も、条例案等議案立案のための調査であり、団体事務に限られている。③議会閉会中は議会の活動能力が失われ、閉会中の常任委員会の審査は、議会の議決により付議された特定の事件に限定されるし、臨時会を開くにしても、特定の付議事件でなければならないこと(法一〇二条三項)、議院運営委員会を開くこと(法一〇九条の二)など手続が煩雑である。 以上のように、議会の種々の制限・制約があるので、地方自治、住民自治の一層の推進を図るため、住民の意見、要望等を把握し、行政運営に反映させる観点から、市政調査会の制度が必要である。 また、部会審議は常任委員会と同様に報道機関に公開されているため、市政のその時々の課題・懸案な を図るため、住民の意見、要望等を把握し、行政運営に反映させる観点から、市政調査会の制度が必要である。 また、部会審議は常任委員会と同様に報道機関に公開されているため、市政のその時々の課題・懸案などや、通常公開されることのない行政の意思形成過程が新聞やテレビ等の報道を通じて多くの市民に明らかにされている。 エ市政調査会は、法形式上「議会」そのものではないが、「議会」を市政に主体的に関わらしめるために、市長、市会双方の協議と了承の下に設置されているものである。このことは、市政調査会は、構成員(審議員長、副審議員長及び審議員)が市会議員中より嘱託することとされている(市政調査会規程二条二項)こと、審議員は、名古屋市会の常任委員会に対応した部会に所属することとされ(市政調査会規程四条)、各部会の運営は、議会の委員会の運営に準じて、委員会室で、執り行われていること、市政調査会で取り扱う事項と市会の委員会で取り扱う事項についても、右申し合わせにより明確に区分されていること、市政調査会での調査審議を経ることにより、政治判断も様々に分かれる課題の処理を、住民の意見、要望を踏まえて、適正かつ円滑に行ってきたことに表われており、市会は、市政調査会を活用することにより、このような市政の重要な課題に、主体的かつ積極的に関わってきたのである。 オ市政調査会は、市長の内部規程たる市政調査会規程を直接の根拠規定として設置されるものであり、その運営の基本的事項については、市会として正式に決定された幾つかの申し合わせ(丙二一)によることとしている。 カ市長の内部規程等によって設置されているいわゆる法定外諮問機関は他の地方公共団体においても、多数設置されている。また、地方公務員法は、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程により設けられた「委員会(審 って設置されているいわゆる法定外諮問機関は他の地方公共団体においても、多数設置されている。また、地方公務員法は、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程により設けられた「委員会(審議会その他これに準ずるものを含む。)」が存在することを前提としているのであり(地方公務員法三条三項二号)、市政調査会のように、市長の内部規程で設置されたものは、地方自治法、地方公務員法などから構成される地方自治制度の中に、その存在を予定されているのである。 そして、市政調査会の構成員である審議員には、市長が市会議員を非常勤の職員として、地方公務員法三条三項二号に規定する委嘱をしている(市政調査会規程二条二項)。 (2) 条例上の根拠規定がないことについて(違法事由その2)地方自治法上、条例をもって設置しなければならないとしているのは、執行機関の附属機関として設置される場合であり(法一三八条の四第三項)、市政調査会は「執行機関の附属機関」として設置されるものでないし、「諮問又は調査のための機関」でもない。 なぜなら、市政調査会は議員全員を構成員とするのであるから、執行機関である市長の附属機関と位置付けることは、執行機関と議会の分立、相互牽制作用を原則とする法の趣旨に反すること、そもそも市政調査会は、法上、市長と議会の権限にアンバランスがあることを前提に、地方自治、住民自治の観点から、両者の事実上の均衡を図ることを目的として生み出され、運営されている制度であることから、執行機関の附属機関ではないし、また、市政調査会は、部会での活動の充実と執行機関に対する主体性を確保するため、個々の審議員により調査活動が行われているにすぎず、意思決定を行う場ではなく、審議事項について、個々の審議員が幅広く自由に意見を述べる場として機能しており、市政調査会は機 対する主体性を確保するため、個々の審議員により調査活動が行われているにすぎず、意思決定を行う場ではなく、審議事項について、個々の審議員が幅広く自由に意見を述べる場として機能しており、市政調査会は機関として法一三八条の四第三項に規定する「諮問又は調査のための」活動を行うものではないからである。 なお、地方公共団体の長が附属機関でない任意の機関を設置することについて、法は禁止しているわけではなく、長の事務の執行の一環として認めているのである。 (二) 費用弁償規程の違法性について(違法事由その3)市政調査会の審議員は法二〇三条一項の「その他普通地方公共団体の非常勤の職員」として、同条三項の規定により費用の弁償を受けることができ、同条五項に基づき制定された費用弁償条例五条三項の規定に基づいて、費用弁償されることになるが、同項の適用される名古屋市の非常勤職員は多種多様であり、その勤務形態も様々であるので、右非常勤職員が職務を行うための費用をあらかじめ予想して個々に規定することは困難である。そこで、「職務を行うため特に要した費用については、その相当額をそのつど支給」されることとされている。そして、審議員に対する費用弁償支給の細目については、費用弁償条例六条の規定に基づき、名古屋市長が費用弁償規程を定めている。 原告は、費用弁償条例の別表に市政調査会の審議員が掲げられていないことをもって審議員に対する費用弁償が予定されていない旨を主張する。しかし、同表は、費用弁償条例一条に基づく報酬の額並びに同条例五条一項及び二項に基づく旅費を定めた規定であり、審議員には、その活動に対して報酬を支給しないし、同条例一条に「議会の議員を除く」とあるのは、当該条例と同一議会で制定された「市会議員の費用弁償条例」との適用関係を明確にするために規定されたものである 議員には、その活動に対して報酬を支給しないし、同条例一条に「議会の議員を除く」とあるのは、当該条例と同一議会で制定された「市会議員の費用弁償条例」との適用関係を明確にするために規定されたものである。したがって、条例の根拠を欠くものではない。 2 会計区分の違法性について(調査活動分の費用弁償を議会費から支給する違法性ー違法事由その4)審議員に支給される費用弁償のうち、調査活動分の費用弁償は議会費から支給されていた。 法二一六条及び二二〇条二項の規定は、事業の目的に従った適正な予算執行を期すために定めているものであるところ、審議員の調査活動分の費用弁償に係る予算を適正に執行するためには、審議員の調査のための登庁という客観的事実を最も的確に把握できる部署に計上する必要があり、市会事務局は、その事実を最も的確に把握できる部署であった。また、市政調査会は、形式上は市長が設置するものであるが、「議会」を市政に主体的に関わらしめるために、市長、市会双方の協議と了承の下に設置されているものである。そこで、このような市会事務局における支給対象事実の把握の容易さと市政調査会の実質的な機能に着目し、本件費用弁償の一部を「議会費」から支出しているのであり、法二一六条及び二二〇条二項に違反しない。 3 カラ支給の違法性について(違法事由その5)市政調査会においては、名古屋市政の重要課題が調査審議される。このような課題について、市政調査会の部会において質の高い審議を行い、適正かつ円滑に処理していくためには、市政に対する審議員の常日頃からの積極的な調査活動が不可欠であるし、審議員は、議会と市長との対抗・並立関係を念頭に審議に臨むためにも常日頃からの主体的な調査活動が不可欠である。 審議員の調査活動には、現地調査及び登庁による調査などがあるが、調査活動の であるし、審議員は、議会と市長との対抗・並立関係を念頭に審議に臨むためにも常日頃からの主体的な調査活動が不可欠である。 審議員の調査活動には、現地調査及び登庁による調査などがあるが、調査活動の目的が、調査そのものの結果を得ることではなく、自主的な活動であるため、調査目的、調査項目などを報告させることにより調査活動及びそれに費用を要した事実を把握することは、その内容が審議以前に議会と対抗・並列の立場にあるべき市長側に明らかになってしまうなど、調査活動の性質上適切でないし、審議員が登庁すれば、必ず、審議員としての調査活動を行うのが通例であり、さらに調査活動のための登庁は市会事務局で客観的にその事実を把握でき、当然に「交通費その他の費用」が必要となるので、調査活動のための登庁という客観的事実に基づいて支給していたものである。 また、調査活動分の費用弁償の支給は、登庁の事実のみに基づいて無制限にあるいは重複して行っていたのではなく、前記争いのない事実等三に記載したような手続を経て、重複支給を避け、一定の限度をもつて支給したのである。 二被告らの責任について(原告の主張) 1 被告Aについて被告Aは、昭和六〇年四月二八日の就任以来、本件当時まで約一〇年間の長期にわたって名古屋市長として、市政調査会規程及ぴ費用弁償規程の制定を行い、市政調査会に対し諮問をし、審議員等を嘱託する立場にあったのであるから、市政調査会の運営実態については知悉していた。そうである以上、市政調査会の存在や費用弁償の支給根拠自体に対する疑義についても、十分認識があったはずである。また、予算の調製権は市長にあるから(法二一一条)、調査活動に関する費用弁償が総務費でなく議会費に計上されていることは認識していた。 ところが、被告Aは、指揮監督上の権限を行使し、違法な費用弁 る。また、予算の調製権は市長にあるから(法二一一条)、調査活動に関する費用弁償が総務費でなく議会費に計上されていることは認識していた。 ところが、被告Aは、指揮監督上の権限を行使し、違法な費用弁償の支給を阻止することは十分可能であったにもかかわらず、故意又は過失により、指揮監督行為を怠り、支出負担行為及び支出命令を防止する措置を採らなかった。 2 被告Fについて被告Fは、収入役として、その職務権限は会計事務全般に及び、支出負担行為に関する確認や決算の調製を行う権限などを有するものであり(法一七〇条)、支出命令を受けた場合においても、当該支出負担行為が法令又は予算に違反していないこと及び当該支出負担行為に係る債務が確定していることを確認したうえでなければ、支出をすることができないとされている(法二三二条の四第二項)。決算の調製をその責任で行っているのであるから、調査活動に関する費用弁償を議会費から支出していたことを知っていた。 ところが、被告Fは、故意又は過失により、指揮監督行為を怠り、支出負担行為及び支出命令を審査して違法な支出を防止する措置を採らなかった。 3 被告G及び被告Bについて被告Gは、総務局長として、被告Bは、市会事務局長として、代決権限に基づいて、本件費用弁償の支出負担行為を行った。 右両被告は、下級職員ではなく幹部職員として代決を任されていたのであるから、監査委員その他の者からの指摘が無くとも、支出の適法性について疑義を抱き、是正することが期待されていた。総務局長は、市政調査会全体及ぴ総務民生部会の開催にも関わっているし、市会事務局長は、市会と密接な関係を有する市政調査会についても実質上は最高責任者と言うべき立場にあった。よって、被告G及び被告Bは、原告が主張する市政調査会自体の違法性について、問題の所在を認識 し、市会事務局長は、市会と密接な関係を有する市政調査会についても実質上は最高責任者と言うべき立場にあった。よって、被告G及び被告Bは、原告が主張する市政調査会自体の違法性について、問題の所在を認識し、違法支出を行わないよう留意すべき注意義務があった。また、調査活動に関する費用弁償に関し、単なる登庁に対して支給していたことについては、自ら代決している以上、問題を認識していた。 ところが、被告G及び被告Bは、右注意義務を怠り、支出負担行為を行ったのであるから、重過失がある。 4 被告H及び被告Cについて被告Hは総務局総務課長として、被告Cは市会事務局総務課長として、本件費用弁償の支出命令を行っている。 被告ら及び参加人は、3の支出負担行為と区別し、支出命令は会計上の一事務手続に過ぎないと主張するが、支出命令がなければ支出をすることができないのであるから、支出命令は支出負担行為と同等以上に重要であり、実質的な審査をせず形式的に処理することは許されない。また、被告H及び被告Cは、支出負担行為の決裁にも実質的に関与している。なお、被告Hは、市政調査会総務民生部会の開催にも直接関わっていたし、調査活動に関する費用弁償が単なる登庁に対して行われていることを認識していた。 ところが、被告H及び被告Cは、故意又は重過失により、違法な支出命令を行った。 5 被告D及び被告Eについて被告D及び被告Eは、長年、市政調査会の審議員であるとともに、本件対象期間中に順次、市会議長兼市政調査会審議員長を務めたものであるから、市政調査会自体の違法性について深刻な問題意識を抱き、市長からの申し入れを待つまでもなく、市政調査会の廃止や費用弁償の凍結を率先して提起しなければならない立場にあった。また議会では予算・決算の審議をしているのであるから、会計区分の違法性 意識を抱き、市長からの申し入れを待つまでもなく、市政調査会の廃止や費用弁償の凍結を率先して提起しなければならない立場にあった。また議会では予算・決算の審議をしているのであるから、会計区分の違法性についても容易に知り得た。さらに長年、市政調査会の審議員として本件費用弁償の支給を受けてきた以上、カラ支給の違法性も当然認識すべきであった。 ところが、以上の事情があるのにもかかわらず、被告D及び被告Eは、本件費用弁償支給を受けたのであるから、同被告らには、不法行為責任又は不当利得を返還すべき責任がある。 (被告ら及び参加人の主張) 1 被告Aについて被告Aは、名古屋市長として本件費用弁償の支給について本来的な権限を有するものであるが、審議活動分及び調査活動分に係る支出の決定及び支出命令の双方とも、助役以下代決規程等の規定により補助職員に代決させることとしていた。よって、被告Aは、補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失により右補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかったときに限り、損害賠償責任を負う。 しかし、被告Aには、次のように、本件費用弁償の支給について、指揮監督上の義務違反は全くなかったものであり、責任が発生する余地は全くない。 ① 市政調査会は、名古屋市において、半世紀にわたって、市政の重要事項を調査審議する機関として営々と続けられ、その間、市政調査会の運用に当たっては、市長及び議会の双方において、市長と議会の分立、相互牽制作用に配慮しながら、市政調査会が市政の重要事項を調査審議する機関としての実をいかに挙げるべきかを模索し、常に検討、議論してきた。したがって、本件費用弁償の支給当時、被告Aが市政調査会制度ないしは市政調査会規程の適法性について、疑問を抱く余地はなく、 議する機関としての実をいかに挙げるべきかを模索し、常に検討、議論してきた。したがって、本件費用弁償の支給当時、被告Aが市政調査会制度ないしは市政調査会規程の適法性について、疑問を抱く余地はなく、その必要もなかったのであり、ましてや市政調査会審議員に対する費用弁償支給について適法性を検討すべき事情は全く存しなかった。 ② 被告Aは、本件費用弁償の支給事務に全く関わっておらず、本件費用弁償の支給当時において、本件費用弁償がいかなる事実に基づいて支給されていたのかについての認識すらなかった。 ③ 本件費用弁償の支給に至るまでは、本件費用弁償の支給について、監査委員その他の者から、違法と指摘されたことがなかった。 ④ 本件費用弁償の支給に至るまでは、本件費用弁償の支出負担行為を代決させていた部下から、本件費用弁償の適法性について疑問を呈されたり、指示を求められたこともなかった。 2 被告Fについて本件費用弁償の支給に係る被告Fの収入役としての権限は、審議活動分及び調査活動分に係る支出の命令の審査であるが、右については、収入役室代決規程等の規定により補助職員に代決させることとしており、被告Fは、本件費用弁償の支給に係る審査には一切関与していなかった。したがって、本件費用弁償の支給について、指揮監督上の義務違反があった場合に限り責任を負うと解されるものである。 しかし、被告Fは、本件費用弁償の支給について、次のように、指揮監督上の義務違反は全くなかったものであり、被告Fの責任が発生する余地は全くない。 ① 市政調査会は、名古屋市において、半世紀にわたって、市政の重要事項を調査審議する機関として営々と続けられていたのである。したがって、地方公共団体の会計事務を所管する収入役である被告Fにおいては、本件費用弁償の支給当時、市政調査会審議員に対する費用 市政の重要事項を調査審議する機関として営々と続けられていたのである。したがって、地方公共団体の会計事務を所管する収入役である被告Fにおいては、本件費用弁償の支給当時、市政調査会審議員に対する費用弁償支給の適法性について、疑問を抱く余地はなく、その必要もなかったのである。 ② 被告Fは、本件費用弁償の審査事務に全く関わっておらず、本件費用弁償の支給当時において、本件費用弁償がどのように支給されていたのかについての認識すらなかった。 ③ 本件費用弁償の支給に至るまでは、本件費用弁償の支給について、監査委員その他の者から、違法と指摘されたことがなかった。 ④ 本件費用弁償の支給に至るまでは、本件費用弁償の支出命令の審査を代決させていた部下から、本件費用弁償の適法性について疑問を呈されたり、指示を求められたこともなかったのである。 3 被告G及び被告Bについて本件費用弁償の支給につき、被告Gは総務局長として、代決権限に基づき、本件費用弁償の内審議活動分に係る支出負担行為を行ったものであり、被告Bは、市会事務局長として、代決権限に基づき、本件費用弁償のうち調査活動分に係る支出負担行為を行ったものである。 右支出負担行為は、法二〇三条、費用弁償条例五条三項及び費用弁償規程を根拠として、かつ、それらの規定の定めるところに従って適正に行われていたものである。 被告Gについて、①市政調査会は、名古屋市において、半世紀にわたって、市政の重要事項を調査審議する機関として営々と続けられ、本件費用弁償の支給当時、被告Gが市政調査会制度ないしは市政調査会規程の適法性について、疑問を抱く余地はなく、その必要もなかったのであり、ましてや市政調査会審議員に対する費用弁償支給について適法性を疑う余地は全く存しなかった。②また、右支出負担行為については、市政調査会審 について、疑問を抱く余地はなく、その必要もなかったのであり、ましてや市政調査会審議員に対する費用弁償支給について適法性を疑う余地は全く存しなかった。②また、右支出負担行為については、市政調査会審議員としての部会への出席という客観的事実により本件費用弁償の支給要件を確認したうえで行っており、右支出負担行為の違法性の問題を生ずる余地はなかった。 被告Bについて、①市政調査会は、名古屋市において、半世紀にわたって、市政の重要事項を調査審議する機関として営々と続けられ、本件費用弁償の支給当時、被告Bが市政調査会制度ないしは市政調査会規程の適法性について、疑問を抱く余地は全くなかった。②また、部会審議の充実を図るとともに、部会審議を通じて議会側が執行機関に対してその主体性を十分に発揮するためには、市政調査会審議員の行う調査活動は必要不可欠な職務であることから、被告Bは、費用弁償条例五条三項の規定に基づき、調査活動に係る費用弁償を支給していたのである。③さらに、被告Bが、本件費用弁償に係る支出負担行為を行う以前から、市会事務局において、登庁という、客観的に確認できる事実に基づいて、費用弁償を支給していたものである。また、被告Bは、右調査活動に係る本件費用弁償の支給に当たって、自主的な活動である調査活動の性質上、右方法が最も合理的なものであると認識していたのであり、被告Bが本件費用弁償の支給の適法性に疑問を抱く余地は全くなかったものである。 以上の点から、被告G及び被告Bは市政調査会自体の適法性及び本件費用弁償の支給の適法性を疑うことなく、さらに、条例上必要とされる要件を確認したうえで、本件費用弁償を支給していたのであるから、仮に、本件費用弁償の支給の適法性について、今回の監査請求を契機として、疑問が呈されることがあったとしても、被告G及び被 上必要とされる要件を確認したうえで、本件費用弁償を支給していたのであるから、仮に、本件費用弁償の支給の適法性について、今回の監査請求を契機として、疑問が呈されることがあったとしても、被告G及び被告Bは本件費用弁償の支給について、故意又は重過失はなく、一切責任を問われることはない。 4 被告H及び被告Cについて本件費用弁償の支給につき、被告Hは総務局総務課長として、その審議活動分に係る支出命令を行ったものであり、被告Cは市会事務局総務課長として、その調査活動分に係る支出命令を行ったものである。 右支出命令は、既に意思決定された支出負担行為どおりに支出するために行われる会計上の一事務手続に過ぎない。地方公共団体の出納事務を所管する収入役が支出をするためには法二三二条の四の規定により長の命令が必要とされることから、地方公共団体が支出をするに当たっては、「支出命令」が必ず行われるものである。しかしながら、「支出命令」における支出金額、支出の相手方、支出年月日等の内容は、既に行われた支出負担行為により確定しており、「支出命令」にあたって、新たな内容を付加することは一切ない。したがって、仮に支出負担行為が違法であるとされても、支出命令権者としては、支出命令が支出負担行為を逸脱するなど、支出命令自体に新たな違法のない限り、その責任を問われるものではない。 また、本件費用弁償の支給につき、被告Hは総務局総務課長として、また、被告Cは市会事務局総務課長として、支出負担行為に係る決裁に関わっているが、その一事をもって、支出命令について過重な責任を負うべきいわれもないのである。すなわち、被告H及び被告Cは本件支出命令の根拠となる支出負担行為について、最終決裁権者である総務局長及び市会事務局長の直属の部下として、決裁文書に押印しているにすぎない。したが れもないのである。すなわち、被告H及び被告Cは本件支出命令の根拠となる支出負担行為について、最終決裁権者である総務局長及び市会事務局長の直属の部下として、決裁文書に押印しているにすぎない。したがって、本件支出負担行為に重大かつ明白な瑕疵がない限り、本件支出命令を行ったことは当然の職務行為に他ならないのである。 被告H及び被告Cは本件費用弁償の支給について、一切責任を問われることはない。 5 被告D及び被告Eについて被告D及び被告Eは、名古屋市長も名古屋市会も適法であり必要であると理解して、半世紀にわたって、継続してきた市政調査会の審議活動及び調査活動に必要な費用として、手続上も実質上も適法な本件費用弁償を受領したのであるから、不法行為責任を問われることはない。 仮に、本件費用弁償の支給の適法性について、今回の監査請求を契機として、疑問が呈されることがあったとしても、被告Dらは、本件費用弁償を受領しただけであり、費用弁償の請求書を提出するなどの積極的な行為を行っておらず、当該受領行為のみをもって不法行為があったと言うことはできない。したがって、被告D及び被告Eは本件費用弁償の支給について、一切責任を問われることはない。 被告D及び被告Eが受領した費用弁償は、法二〇三条、費用弁償条例五条三項及び費用弁償規程に基づいて支給された適法なものであり、不当利得として返還すべきではない。 第五当裁判所の判断一本件費用弁償支給が違法であるか(争点一)。 1 市政調査会は、憲法及び地方自治法の構造に違反するか(違法事由その1)。 (一) 憲法九三条は、地方公共団体に、議事機関としての議会を設置するとともに、地方公共団体の住民の直接選挙による執行機関としての長を設け、地方自治法も、地方公共団体には長と議会とを置くこととするとともに(法六章、七章) 地方公共団体に、議事機関としての議会を設置するとともに、地方公共団体の住民の直接選挙による執行機関としての長を設け、地方自治法も、地方公共団体には長と議会とを置くこととするとともに(法六章、七章)、議会には長に対する不信任決議を認め(法一七八条)、他方、長には議会の解散権(法一七八条)、条例の制定・改廃又は予算に関する議決に対する再議権の付与等(法一七六条、一七七条)の規定を設けている。 このように、憲法及び地方自治法は、議会と長を相互に独立した、原則として対等、並列の関係にあるものとして、両者が抑制・均衡の関係に立ちつつ立法・行政を行うものとしている。 (二) 市政調査会は、市政調査会規程(甲二)により設置されているが、同規程によれば、市長の諮問に応じて市政に関する重要事項を調査審議するものであり(一条)、組織上も、すべての構成員が市会議員であり(二条)、市会常任委員会の所属に従って各部会に所属するもの(五条)とされている。 このような会の目的と組織構成からすると、市政調査会は、執行機関である市長が、議事機関である市会の議員すべてを諮問機関とするものであるが、これによって、議会の独立性、長に対する対等性が損なわれ、議会と長が抑制・均衡の関係に立てなくなるとすれば、前記憲法及び地方自治法上の原則に反する違法な存在ということになる。 (三) これに対し、被告ら及び参加人は、市政調査会は、法形式上「議会」そのものではないが、その実質的機能からいえば議会が市政に主体的に関わるための組織ともいうべき実体を備えたものであり、議会と長の対抗関係を乱すものではないと主張するので、市政調査会が設置された経緯、その運用状況及び実態並びにその必要性について検討してみる。 なお、被告ら及び参加人は、市会議員全員を市長の諮問機関の構成員とする制度を設ける ではないと主張するので、市政調査会が設置された経緯、その運用状況及び実態並びにその必要性について検討してみる。 なお、被告ら及び参加人は、市会議員全員を市長の諮問機関の構成員とする制度を設けることに関する明文の禁止規定がない以上、そのような制度を設けるか否かは市長の裁量の範囲内であると主張するが、市長の裁量であるとしても、憲法及び地方自治法に反しない限度で許容されるにすぎないものである。 (四) 市政調査会の設置経緯及び運用状況等証拠(甲二、八の一ないし九、九の一ないし八、一〇の一ないし一二、一一の一ないし一五、一二の一ないし一八、一三の一ないし六、一八、一九、丙二一、三〇の一ないし七、三一の一ないし六、三二の一ないし四五、三三の一ないし三、三四の一ないし三、三五の一ないし八、三六の一及び二、三七の一ないし三、三八の一ないし五、三九の一ないし六、四三の一ないし四、四四ないし四六、証人I)及び弁論の全趣旨によれば、市政調査会の設置経緯及び運用状況等について、次のとおりの事実が認められる。 (1) 昭和九年五月二三日、市長の諮問機関として、市政全般に関する調査研究を目的とする「臨時市政調査委員会」が設置され、全ての市会議員と関係市当局が委員に委嘱された。七つの部会に属した委員は、他都市への出張や関係方面の事業施設の視察をして、審議を重ね、同年末までに調査報告書を作成して、市長に提出して活動を終えた。 (2) 翼賛選挙により昭和一七年六月に名古屋市会が成立したが、いかなる政党政派も認められないため、全市会議員を構成員とする名古屋翼賛市政会が結成された。翼賛市政会に市政に関する各般の重要事項を調査研究する市政会研究会が設置され、八つの委員会に分かれて活動をすることとされた。そして、これと表裏一体をなすものとして、同年七月一三日、名古屋市政 れた。翼賛市政会に市政に関する各般の重要事項を調査研究する市政会研究会が設置され、八つの委員会に分かれて活動をすることとされた。そして、これと表裏一体をなすものとして、同年七月一三日、名古屋市政調査会規程が決定され、市長の諮問に応じ、市政に関する重要事項を調査審議する「名古屋市政調査会」が発足し、八部会の分掌事項及び委員は翼賛市政会のそれをもって充てることとされた。 (3) 昭和二二年五月三日に施行された日本国憲法と、同憲法により保障された地方自治制度のもと、新しい時代の法体制に即応するものとして、同年五月三〇日、市政調査会規程が、市長の決裁を受け、同日から施行された。規定及び組織は戦前のものと同様であった。なお、当時、執行機関の附属機関を法律又は条例で設置すべきであるとする法一三八条の四の規定は存在しなかった。 (4) 昭和二七年八月一五日、法一三八条の四の規定が新設され(同日に公布され、同年九月一日施行された。)、執行機関の附属機関の設置には法律又は条例の定めが必要となったが、市政調査会について、条例制定の措置は採られなかった。 (5) 昭和四二年六月二六日の名古屋市会本会議において、「市政調査会規程は議会を附属機関又は補助機関とするものではないか」との議員からの質問があり、これに対し、市長側は、助役が、「部会制度は長い沿革を有し市政の運営に多大の貢献がある。事前審査機関でなく諮問機関であり、市長の附属機関ではない」と答弁した。 (6) 昭和四六年に開かれた市会の各会派の幹事委員長協議会等において、議案審議方法について協議がされた。それまでは、当初予算を除く議会提出の議案について実質的な事前審査が市政調査会で行われており、ほとんどの議案は議会上程後も、提案理由の説明もなく、条例案以外は即決であり、条例案の審査も極めて形式的で、議案は 、当初予算を除く議会提出の議案について実質的な事前審査が市政調査会で行われており、ほとんどの議案は議会上程後も、提案理由の説明もなく、条例案以外は即決であり、条例案の審査も極めて形式的で、議案は提案即原案可決が予測される状態であった。このような状態に対する議会内部からの是正意見が噴出したこと等が契機となって議案審議方法について協議がなされるに至ったものである。 協議の結果、同年六月三日の各会派の幹事委員長協議会及び同月一九日の議会運営委員会において次のような「議会運営上の申し合せ事項」が決められた。 (市政調査会の運営)存続する意見、廃止する意見、その他種々の意見があったが、最終的には、事前審査をしないことを前提として存続させることに決定した。 なお、事前審査をしないこととは、従来の当初予算及び関連議案と同様の扱いをするということである。 「事前審査をしないこと」の補足説明 1 常任委員会で審査するものは部会にかけない。 2 議会に付議する事件名も部会に報告しない。 3 議会に対する報告及び提出書類は部会に報告しない。 (常任委員会との関係)原則的には常任委員会は付議された事件についてのみ審査する。それ以外のものについては、閉会中の部会において行なうものとする。ただし、会期中であっても付議された事件の審査が全部終了した場合は、委員長の判断で委員会終了後部会を開くこともありうるものとする。 (7) 「昭和四六年の申し合わせ」をはじめとする各申し合わせは、市会関係例規集に掲載され、昭和四六年以降も、議員が改選される度に、議会運営委員会等で再確認され、あるいは、その都度整理され、現在に至るまで、市政調査会の運営の基本的事項として引き継がれている。 (8) 部会の運営状況部会の日程及び審議案件は、部会の招集に先立ち正副部長と所管関係局との され、あるいは、その都度整理され、現在に至るまで、市政調査会の運営の基本的事項として引き継がれている。 (8) 部会の運営状況部会の日程及び審議案件は、部会の招集に先立ち正副部長と所管関係局との調整により決定される。 部会の招集は、市会の常任委員会と同様、部長から各部員宛てに日時、場所及び案件を示した部会開会通知を送付することにより行われる。 部会の開会場所は、常任委員会同様、名古屋市会議事堂内の委員会室である。部員は、部会開会日には名古屋市会議事堂内の各会派控室に登庁する。 部会の運営は、常任委員会の会議原則に沿った形で行われる。すなわち、所管関係局から資料に基づく報告を受け、これに対し部員が質疑を行い、所管関係局がこれに答える形で進められる。各部員の意見披露が終了した時点で、部会は閉会とされ、原則として表決されることはなく、意見集約が行われることも答申も行われていない。 常任委員会も部会も、一般住民の傍聴は許されないが、報道機関には公開されている。常任委員会の議事については記録が残されるが、部会の審議については記録が残されない。 (9) 昭和四六年一月から平成九年一二月まで、部会は約二〇〇〇回開催されているが(昭和二二年から平成九年一二月まででは約四七〇〇回)、主要なものとしては、別紙「主要諮問事例」のようなものがあり、立案が執行機関限りとされ議会の関与が予定されていない行政計画(基本計画・新基本計画の策定、基幹バスの導入)や執行の内容(中央卸売市場北部市場の開場遅延問題)なども含まれている。 本件費用弁償支給の期間を含む平成六年五月から平成七年一〇月までの間には、別紙「開催内容」記載のとおり、総務民政部会九回、財政衛生部会八回、経済教育部会一二回、計画建設部会一五回、環境水道部会一八回、建築交通消防部会六回の計六八回開催 月から平成七年一〇月までの間には、別紙「開催内容」記載のとおり、総務民政部会九回、財政衛生部会八回、経済教育部会一二回、計画建設部会一五回、環境水道部会一八回、建築交通消防部会六回の計六八回開催されており、常任委員会終了後に引き続いて開催されている事例も多い。 右期間中の六月開催の各部会で所管関係局から事業概要の説明がなされる他、その所管関係局が抱える行政課題についての方針や執行の状況が報告されている。 執行機関は、予算案や議案の作成に当たって部会で出た意見を採り入れるなどし、行政計画の策定や行政の執行に当たって部会の意向を考慮している。 執行機関としては、議案の作成前の段階から議員によって代表される住民の意見を採り入れることができるメリットがあり、議員にとっても議案が固まる前に意見を述べ、議案に反映できるメリットがある。また、議会が閉会中にも開催できることから、緊急事態や二〇〇二年ワールドカップサッカー大会誘致問題のように住民の関心の高い事項について、タイミング良く、議会が行政に意見を反映できる機会ともなっている。 以上によれば、市政調査会は、現制度として成立した昭和二二年から五〇年近くも設置・運用されてきたものであること、当初は、市会で審議すべき事項を事前審査していたものであるが、昭和四六年の申し合わせにより、この事前審査が行われないこととなったこと、それと同時に市会の常任委員会と部会の役割分担が明確化され、常任委員会においては、付議された事項のみ審査し、それ以外のものについては閉会中の部会において行うこととされたこと、部会の運営は、議決がされないことを除くと常任委員会と同様の方法で行われているが、所管関係局から事業概要や行政課題についての執行機関の方針、執行の状況と問題点の報告がなされ、これに対して部員が意見を述べ、執行機 議決がされないことを除くと常任委員会と同様の方法で行われているが、所管関係局から事業概要や行政課題についての執行機関の方針、執行の状況と問題点の報告がなされ、これに対して部員が意見を述べ、執行機関がこれらの意見をその後の行政に活かすこととされていることが、それぞれ認められる。 各部会毎に具体的に諮問事項が示されることはなく、答申もなされないが、執行機関たる長が、行政の施策を立て、その執行を行うについて、審議員からの意見を求め、これに対して審議員が意見を述べるものであり、諮問とこれに対する応答という実質はあり、市政調査会は、長の諮問機関として行政機構の一部をなすものであるといわざるをえない。 (五) 市政調査会の必要性被告ら及び参加人は、市政調査会が必要である根拠として、行政に住民の意見、要望を反映させるため、議会が関与する方法の一つであり、①議会の権限に制限のあること、②常任委員会の権限に制限があること③議会閉会中の権限に制限があることを主張する。 たしかに、行政の執行に当たり、住民の意見、要望を採り入れることは重要であり、現行制度の下において、長が住民の直接選挙によって選出され(憲法九三条二項)、住民の意見を行政に採り入れる方法として公聴活動や世論調査等の方法があるとしても、行政の複雑・高度化とともに議会の形骸化が指摘されている今日において、住民の代表者である議員からなる議会の意見を広範に行政に活かしていく必要性があることは、都道府県議会制度研究会の報告書(丙四二)や行政法学者(丙五三)が指摘するとおりである。 そこで、議会や常任委員会の権限等に制約があるため、住民の代表者である議員からなる議会の意見を行政に反映することが十分できず、市政調査会のような制度が必要かについて、検討する。 ①法九六条一項は議会の議決により団体意 員会の権限等に制約があるため、住民の代表者である議員からなる議会の意見を行政に反映することが十分できず、市政調査会のような制度が必要かについて、検討する。 ①法九六条一項は議会の議決により団体意思を決定できる事項として一五項目を制限列挙し、これ以外の事項についての団体意思の決定は、長その他の執行機関が自己の権限内で行うものであることを定めている。しかしながら、同条二項は条例でその議決すべき事項を増加することができる旨を定めており、条例の制定・改廃が広範囲に及ぶこと(法一四条、二条二項)を考慮すると、その議決の範囲が特に狭いわけではない。 地方自治法は、執行機関と意思決定機関との間の相互の牽制により、普通地方公共団体の事務処理を適正ならしめる趣旨で、議会に、執行機関に対する監視権を認め、法九八条で、当該団体の事務及び機関委任事務の執行の状況についての検査(事務に関する書類及び計算書の閲覧権並びに長に対する報告書の請求)、及び監査委員に対する監査の請求を規定し、法九九条で、機関委任事務に関して、長に対し説明を求め、長に対し意見を述べることができるとしているうえ、当該普通地方公共団体の公益に関する事件について意見書を関係行政庁に提出することができると規定している。 そのほか、法一〇〇条には、地方公共団体の事務に関する調査権が定められており、関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求できる。 このように、議会の権限は限定的なものではなく、行政の執行全般について、検査及び調査をすることができるのである。 次に、②被告ら及び参加人は、常任委員会の権限について定めた法一〇九条三項について、議会で付議された事件に限り審査することができるのであり、所管事務調査も条例など議案立案のための調査に限られるとして、市政調査会の存在が必要であると主張する 限について定めた法一〇九条三項について、議会で付議された事件に限り審査することができるのであり、所管事務調査も条例など議案立案のための調査に限られるとして、市政調査会の存在が必要であると主張する。 しかしながら、所管事務調査については、議決機関と執行機関の権限の分立に鑑み、執行機関の執行の内部までタッチすることはできないとしても、議会が有する前記検査権(検査の実施は、通常、常任委員会に付託される。)、調査権などに鑑みれば、調査すべき事務が常任委員会の所掌に属しさえずれば、常任委員会が執行の状況についても調査を行うことができると解すべきであり、被告ら及び参加人の見解は狭すぎる。仮に、条例などの議案立案のための調査に限られるとの見解を採ったとしても、議案立案のために必要な調査は、事柄の性質上、その範囲は決して狭くはないものと考えられる。 別紙「主要諮問事例」の内、学校給食費の値上げ問題、名東・天白両区の分区独立問題については、予算措置や条例として議会が関与した事例であり、名古屋ボストン美術館誘致問題、二〇〇二年ワールドカップサッカー誘致問題についてもこれが実現するとすれば、大きな額の予算措置を要するから、各事務を所掌する常任委員会としては早い時期から関係部局から説明を受けるなどして事務調査をすることが相当な事案であったと思われる。名古屋都市高速道路建設問題については、市会の議長が愛知県都市計画地方審議会の委員で、市会の意向を表明する必要があったというのであるから、当時の建設清掃委員会あるいは建設環境委員会が右の点についての議会の意思をまとめるについてなんら問題はないはずである。 また、六価クロム汚染問題、平成三年台風一八号による浸水被害問題について、被告ら及び参加人は、いずれも機関委任事務に関するとして常任委員会の所掌事務調査事項で についてなんら問題はないはずである。 また、六価クロム汚染問題、平成三年台風一八号による浸水被害問題について、被告ら及び参加人は、いずれも機関委任事務に関するとして常任委員会の所掌事務調査事項でないと主張するが、前記のとおり、議会として機関委任事務について法九八条、九九条で検査及び説明を求められることを考慮すれば、機関委任事務を所掌事務調査から除外できるものではない。 このように、「主要諮問事例」の内の大半は、常任委員会の所掌事務調査の対象とすることが可能であったものと思われ、現に部会で行われたような関係部局の説明と意見陳述程度のことさえ常任委員会で行えないという見解は採用できない。議会や常任委員会の権限が制限されていることを理由としては、部会の必要性を説明することはできない。被告ら及び参加人の見解は、右調査の範囲から外れるとする事項も部会において採り上げることができることを前提として、狭く解しすぎているきらいがあり、前記「申し合わせ」が、常任委員会における議論を制限する根拠となっているとの見解が生ずる所以である。 ③被告ら及び参加人は、議会閉会中は常任委員会が開催できず、臨時会の開催については招集手続に時間を要することから、緊急の事態に対応できず、市政調査会が必要となると主張する。 主張のとおり、常任委員会は、原則として議会が開会されている状態でなければ活動能力が認められず、例外的に議会の議決により付議された特定の事件について、閉会中も審査することができるにすぎないし(法一〇九条六項)、臨時会の開催には、特定の付議事件を要求するため、緊急の事態に対応できないこと、招集手続の困難さ(議会側から臨時会の開会を求めるためには、議員に発案権がある事件で、事件を特定して、議員定数の四分の一以上(名古屋市会では二〇人以上)の議員から開会を 急の事態に対応できないこと、招集手続の困難さ(議会側から臨時会の開会を求めるためには、議員に発案権がある事件で、事件を特定して、議員定数の四分の一以上(名古屋市会では二〇人以上)の議員から開会を市長に請求する必要があるし、事前に、議会運営委員会(法一〇九条の二)を開いて臨時会の会期などについて協議する必要があり、市長が招集及び付議事件を告示しなければならないこと(法一〇一条)など)があり、迅速・的確に対応することは困難である。 このような点からすると、閉会中の緊急事態に対する対応に関する法律上の制度は不備であるといわざるをえない。そのために、名古屋市以外の政令指定都市においては、定例会毎に、包括して「各常任委員会の所管する事務」として閉会中の継続審査議決をしたり、閉会中に全員協議会あるいは委員会協議会を開催する運用をしているが(丙二〇)、包括的継続審査議決については法解釈上の難点があり、委員協議会あるいは委員会協議会の開催については法的な位置づけが十分にできず、費用弁償ができない。 この点、市政調査会は、これらの問題点とは無関係であり、議会の閉会中においても、議員を通じての地域住民の声をより細かく行政に反映できる利点があるものということができる。しかしながら、真にそのような必要性のある緊急事態はそれほどは多くはない。 (六) 以上を前提として判断すれば、市政調査会は、規程上、執行機関である市長が議事機関である市会の議員すべてを諮問機関とするものであり、実態上も、部会においては、所管関係部局からの諮問とこれに対する部員の応答とみるべき行為がなされており、本質的には長の諮問機関として行政機構の一部と位置づけるべきものである。そして、部会で審議されている事項は、常任委員会における所掌事務調査として行える事項等が大半であって、独立・対等・ なされており、本質的には長の諮問機関として行政機構の一部と位置づけるべきものである。そして、部会で審議されている事項は、常任委員会における所掌事務調査として行える事項等が大半であって、独立・対等・並列であるべき議会と執行機関との関係を損ないかねない市政調査会のような特異な制度を設ける必要性は疑問であると言わざるをえない。 しかしながら、市政調査会は、議会自らが了承して存在するもので、長と議会の協議機関ということもでき、市政調査会が存在することによって、議会の独立性や執行機関との対等性が失われたとはいえない。市政調査会は、市長から独立の立場で対置するという構造は維持したうえで、住民の関心が高い事項について、計画立案前の早期の段階から住民の意見を反映するという機能を果たした事実は否定できず、閉会中の緊急事態など限られた事態に当たっては有効な機能を果たしてもいる。 (七) 以上を総合すると、市政調査会の存在自体が、憲法や地方自治法の基本原則に違反して違法であるとまでいうことはできない。 2 市政調査会を設置する条例上の根拠規定は必要か(違法事由その2)。 法一三八条の四第一項は、普通地方公共団体の執行機関は、その団体の長と委員会又は委員からなることとし、同条第三項本文で、「普通地方公共団体は、法律又は条例の定めるところにより、執行機関の附属機関として自治紛争調停委員、審査会、審議会、調査会その他の調停、審査、諮問又は調査のための機関を置くことができる」と規定し、右のような調査会を置くには、法律又は条例の定めを要するとしている。 附属機関とは、執行機関の要請により、その行政執行のための必要な資料の提供等いわばその行政執行の前提として必要な調停、審査、審議又は調査等を行うことを職務とする機関であるところ、前記のように、市政調査会は、市長の諮問 機関の要請により、その行政執行のための必要な資料の提供等いわばその行政執行の前提として必要な調停、審査、審議又は調査等を行うことを職務とする機関であるところ、前記のように、市政調査会は、市長の諮問に応じて市政に関する重要事項を調査審議するものであり、右規定にいう、執行機関の附属機関として諮問又は調査のための機関に該当する。ところが、名古屋市長はこれを条例ではなく、市政調査会規程という市長の内部規定によって設置しているのであるから、法一三八条の四の規定に反し違法である。 被告ら及び参加人は、市政調査会は、執行機関の附属機関でない、諮問又は調査のための機関でないとして、法一三八条の四第三項の適用がないと主張する。 しかし、前記のように、市政調査会は、名古屋市の団体事務や機関委任事務や市長の執行事務等に関し、部会を通じ、市長側からの個々の事件についての報告を受けて、これに対し、部員が意見を述べるという形態で行われるものであり、諮問とこれに対する答申の実質を有するから、諮問のための機関であると認められる。 被告ら及び参加人は、議会と市長との対等の関係からしても市政調査会が附属機関ということはできないと主張し、法定外の諮問機関であると主張する。 しかし、市政調査会は前記のとおり、執行機関が行政を行うために意見を聴くという組織であり、執行機関に属するといわざるをえず、執行機関は長若しくは委員会又は委員及び附属機関からなるとの法一三八条の四第一項、第三項からすると、附属機関に位置づけざるを得ないのであって、議員と市長との関係のみから、「附属」機関性を有しないということはできない。そのような理由で附属機関でないというのは、そもそもそのような組織を設けることの可否が問題となる。 市政調査会は私的諮問機関として、法に反しないとの意見がある。なるほど、法 ないということはできない。そのような理由で附属機関でないというのは、そもそもそのような組織を設けることの可否が問題となる。 市政調査会は私的諮問機関として、法に反しないとの意見がある。なるほど、法定外の私的諮問機関が実際存在し、地方公務員法上、これの存在を前提とした規定が存在するとはいえ、これら私的諮問機関は、迅速な行政対応をすることを目的として、限定された諮問事項につき、短期的に諮問を受けることを予定したものであり、諮問事項について限定がなく、議会制度が存続する限り恒常的に存在し、その人員が多く、これに対する費用弁償額も多額に上る市政調査会のような組織を、私的諮問機関ということは到底できない。 3 費用弁償規程が違法であるか(違法事由その3)。 前記のとおり、市政調査会は附属機関に該当するものであるから、法律又は条例に基づいてその設置がなされなければならないところ、これがなされていないから、市政調査会自体の存在を法的に認知することができない結果、審議員に対する費用弁償も許されないことになる。 すなわち、費用弁償条例では、五条において、特別職の職員について費用弁償ができる旨定められており、同条にいう「特別職の職員」は別表記載のものに限られるところ、市政調査会は附属機関として条例上の根拠を有しないから、審議員は、別表11の「附属機関の構成員」にも該当しないからである。 被告ら及び参加人は、市政調査会が私的諮問機関であり、審議員は非常勤の特別職職員に該当するから、審議員に対する費用弁償は、費用弁償条例五条三項により、そのつど支給できる、そして、その支給については費用弁償規程により定額で支給される旨の定めがなされていると主張する(もっとも、費用弁償条例五条三項は、非常勤の特別職員に対して支給する旅費(登庁に交通費を要する場合はその費用を その支給については費用弁償規程により定額で支給される旨の定めがなされていると主張する(もっとも、費用弁償条例五条三項は、非常勤の特別職員に対して支給する旅費(登庁に交通費を要する場合はその費用を含む。)について規定した同条一、二項を前提として、旅費以外に要した特別の費用についての規定であり、少なくとも旅費部分については別表11号の「その他の非常勤の職員」によるべきで、調査研究のために特別に要した費用について同条三項が適用されるべきであろう。)が、前記認定のとおり、市政調査会を私的諮問機関であるということはできないから、費用弁償条例上の「その他の非常勤の職員」ということもできない。 4 調査活動分の費用弁償支給が会計区分違反により違法であるか(違法事由その4)。 法二一六条は、予算について「歳出にあっては、その目的に従ってこれを款項に区分しなければならない」と規定し、法二二〇条二項は「歳出予算の経費の金額は、各款の間又は各項の間において相互にこれを流用することができない」と規定している。 市政調査会は、市会とは全く別個の、市長の諮問機関とされている以上、本件費用弁償は、その目的に従って、すべて款・総務費から支出されるべきものである。 しかし、調査活動分の費用弁償については、これを款・議会費から支出しているので法二二〇条二項に違反し、違法である。 被告ら及び参加人は、登庁という客観的に明確な行為を審査するに適した部署であること、市政調査会は、実質的には議会と同視できることから、議会費からの支出が違法でないとする。しかし、客観的に明白であることと支出を適正に行うことは別であり、それは理由となり得ないし、実質的に議会と同視できるといっても、前記のように市政調査会は行政内部の組織であるので、議会費から支出することはできないものである。 5 支出を適正に行うことは別であり、それは理由となり得ないし、実質的に議会と同視できるといっても、前記のように市政調査会は行政内部の組織であるので、議会費から支出することはできないものである。 5 調査活動分の費用弁償がカラ支給により違法であるか(違法事由その5)。 市政調査会の審議員に対する調査活動分の費用弁償の支給は、名古屋市会議事堂内の各会派控室への登庁に対して行われている。 審議員は、他面、市会議員としての立場を有しており、単なる登庁は、審議員としてのものか、市会議員としてのものかは不明である。市会議員は、「名古屋市議会の議員の報酬及び費用弁償等に関する条例」(甲一六)に基づいて、その議員としての活動について報酬と費用弁償を支給されているところ、本件費用弁償は、これとは別に支給されるものであるから、本件費用弁償をすべき調査活動がなされたかについては厳格にこれを認定すべきであり、いずれの立場であるか不明である単なる登庁に着目して支給する行為は、たとえ、毎月九日分を限度としていること、常任委員会や議会、部会がある日を除いているとしても、正当なものとは評価できず、違法な支出を含むものと解さざるを得ない。 被告ら及び参加人は、調査活動は、自主的な活動であるため、それに費用を要した事実を把握することは、その内容が市長側に明らかになり調査活動の性質上適切でないから、登庁という客観的な事実に基づいて支給したと主張する。 しかしながら、市会議員としての登庁と審議員としての登庁は区別でき、審議員に確認することもできるし、調査活動終了後にそれに要した費用を審議員に申告させる方法をとることも可能であるから、被告ら及び参加人の主張は採用できない。 二被告らの責任の有無(争点二) 1 審議活動分の費用弁償に関する財務会計職員の責任について審議活動分の 審議員に申告させる方法をとることも可能であるから、被告ら及び参加人の主張は採用できない。 二被告らの責任の有無(争点二) 1 審議活動分の費用弁償に関する財務会計職員の責任について審議活動分の費用弁償については、市政調査会の設置が条例に基づかないという違法の結果、費用弁償規程に基づかない違法な支給をした点のみが問題となるところ、市政調査会の設置が条例に基づかないという違法は、法一三八条の四の解釈として市政調査会が執行機関の附属機関といえるかどうか、諮問又は調査のための機関といえるかどうかに関わるものであるところ、市政調査会が五〇年以上にわたり存続し、特にその点が問題となったことが前記昭和四二年六月の市会本会議に限られ、そこでも市長の附属機関ではないと答弁されていることなどからすると、被告ら財務会計担当者において、市政調査会の設置が条例に基づかない違法であることについて、認識しあるいは認識し得たとはいえず、審議活動分の費用弁償について、当該職員に該当する被告F、被告G及び被告Hについて重過失は認められないし、同じく当該職員に該当する被告Aについて、補助職員をして、支出決定又は支出命令を阻止する措置をとるべき注意義務があったものとは認められない。 したがって、審議活動分の費用弁償について、被告A、被告F、被告G及び被告Hの責任を認めることはできない。 2 調査活動分の費用弁償に関する財務会計職員の責任について(一) 被告Aについて被告Aは、本件費用弁償支給当時、名古屋市長として本件費用弁償の支給について本来的な権限を有するものであったが、調査活動分の費用弁償に係る支出決定及び支出命令の双方とも、補助職員に代決させることとしていたのであるから、補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失 査活動分の費用弁償に係る支出決定及び支出命令の双方とも、補助職員に代決させることとしていたのであるから、補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失により右補助職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかったときに限り、損害賠償責任を負う。 証拠(甲二〇の一ないし三、丙五)及び弁論の全趣旨によれば、被告Aは昭和六〇年四月二八日の就任以来、本件当時まで約一〇年間にわたり市長の地位にあり、市政調査会規程及び費用弁償規程を制定する立場にあり、平成三年三月一五日に日額一万二〇〇〇円を一万五〇〇〇円に増額する旨の費用弁償規程の一部改正をしていること、市政調査会に対し諮問をし、審議員等を嘱託する立場にあったこと、平成七年七月四日ころ、市会議長に市政調査会制度の見直しを申し入れたことが認められ、市政調査会の運営実態については知悉していたものと認められる。 そして、被告Aは、市長として予算の調製権を有し(法二一一条)、調査活動分の費用弁償が総務費でなく議会費に計上されていることは認識していたものと認められる。被告ら及び参加人は、被告Aは、本件費用弁償の支給事務に全く関わっておらず、本件費用弁償支給当時、いかなる事実に基づいて支給されていたのかについての認識はなかったと主張するが、審議員に対する費用弁償が総務費と議会費に分けて予算化されていることを知っていたのであるから、そのような区別をする理由について説明を受けていたはずであり、さらには、調査活動分の費用弁償が単に登庁という事実のみによって支給されていたことを認識していたものと推定できる。 したがって、被告Aは、補助職員をして、支出決定又は支出命令を阻止する措置をとるべき注意義務があったものと認められ、これを怠ったものであるから、調査活動分の費用 を認識していたものと推定できる。 したがって、被告Aは、補助職員をして、支出決定又は支出命令を阻止する措置をとるべき注意義務があったものと認められ、これを怠ったものであるから、調査活動分の費用弁償の支出については、少なくとも過失が認められる。 (二) 被告Fについて被告Fは、本件費用弁償の支給当時、収入役として、調査活動分の費用弁償に係る支出命令の審査を行い、支出する権限を有していたが、収入役室代決規程等の規定により審査課長Jに代決させていたから、故意又は重過失により指揮監督上の義務に違反した場合に限り責任を負うものである。 市政調査会の設置が条例に基づかないという違法の結果、費用弁償規程に基づかない違法な支給をした点については、前記1記載のとおり、被告Fに責任はない。 また、証拠(証人J)によれば、本件費用弁償についての支出は審査課長Jが専ら担当しており、被告Fに対して伺いをたてたりしたことはないことが認められる。被告Fが、本件費用弁償の支給当時、本件費用弁償がいかなる事実に基づいて、どのような費目から支給されていたのかについて認識していたことを認めるに足る証拠はなく、被告Fに補助職員をして、違法な支出決定又は支出命令による支出を阻止する措置をとるべき注意義務を怠ったものと認めるに足る証拠はない。よって、被告Fに責任はない。 (三) 被告Bについて被告Bは、市会事務局長として、代決権限に基づき、調査活動分の費用弁償に係る支出決定を行ったものである。 市政調査会の設置が条例に基づかないという違法の結果、費用弁償規程に基づかない違法な支給をした点については、前記1記載のとおり、被告Bに責任はない。 しかし、証拠(丙六、七、被告B、被告C)によれば、被告Bは、市政調査会が市長の諮問に応じて市政に関する重要事項を調査審議するもので 支給をした点については、前記1記載のとおり、被告Bに責任はない。 しかし、証拠(丙六、七、被告B、被告C)によれば、被告Bは、市政調査会が市長の諮問に応じて市政に関する重要事項を調査審議するものであり、議会とは別の存在であることを認識しながら、調査活動分の費用弁償を議会費から支出するべく支出決定をなしたものであり、しかも、右支給が審議員の各会派控室への登庁という事実のみによってなされており、調査活動の有無を確認していないことを認識しつつ、支出決定を行ったものである。右事実によれば、被告Bは、重大な過失により違法な支出負担行為を行ったものである。 したがって、被告Bは、調査活動分の費用弁償について責任を負う。 (四) 被告Cについて被告Cは、市会事務局総務課長として、代決権限に基づき、調査活動分の費用弁償に係る支出命令を行ったものである。なお、被告Cが市会事務局総務課長として、支出決定に係る決裁に関わっているのは、専決権者である総務局長の直属の部下として、関与しているにすぎず、支出負担行為について法二四二条の二第一項四号の当該職員には該当しないから、責任を問うことはできない。 また、市政調査会の設置が条例に基づかないという違法の結果、費用弁償規程に基づかない違法な支給をした点については、前記1記載のとおり、被告Cに責任はない。 しかし、証拠(丙六、七、被告B、被告C)によれば、被告Cは、市政調査会が市長の諮問に応じて市政に関する重要事項を調査審議するものであり、議会とは別の存在であることを認識しながら、市政調査会の調査活動分の費用弁償を議会費から支出するべく支出命令をなしたものであり、しかも、右支給が審議員の各会派控室への登庁という事実のみによってなされており、調査活動の有無を確認していないことを認識しつつ、支出命令を行ったもので 費から支出するべく支出命令をなしたものであり、しかも、右支給が審議員の各会派控室への登庁という事実のみによってなされており、調査活動の有無を確認していないことを認識しつつ、支出命令を行ったものである。右事実によれば、被告Cは、重大な過失により違法な支出命令を行ったものである。 したがって、被告Cは、調査活動分の費用弁償について責任を負う。 3 被告D及び被告Eについて被告D及び被告Eは、審議員として、本件費用弁償の支給を受けた者である。 市政調査会の設置が条例に基づかないという違法の結果、費用弁償規程に基づかない違法な支給であったという点については、前記1記載のとおり、財務会計職員についても、過失を認めることはできないところ、右費用弁償の支給を受けた被告D、被告Eにその点を知り若しくは知らなかったことについて過失があったということは認められない。 証拠(丙二四ないし二六、被告B、被告C)によれば、審議員は、議員の議会活動に対する費用弁償とは別に審議員の審議活動に対する費用弁償と審議員の調査活動に対する費用弁償を別々の封筒に分けて支給されていること、審議活動費は市役所の封筒で、調査活動費は市会の封筒であることが認められるものの、審議員は、市政調査会の調査活動分の費用弁償が議会費から支出されることを認識し、あるいは、登庁という行為に着目して調査活動費が支出されていることを認識していたものとは認められず、またこれを認識しないことについて過失も認められない。 したがって、被告D及び被告Eに不法行為に基づく責任を問うことはできない。 しかしながら、被告D及び被告Eは、違法な支出決定及び支出命令に基づき、法律上の原因なく、不当に本件費用弁償を支給されたのであるから、右受領した金員を返還する義務を負う。なお、右返還債務は、請求により遅滞に陥る 、被告D及び被告Eは、違法な支出決定及び支出命令に基づき、法律上の原因なく、不当に本件費用弁償を支給されたのであるから、右受領した金員を返還する義務を負う。なお、右返還債務は、請求により遅滞に陥るので、本件訴状が被告D及び被告Eに送達された日の翌日である平成八年二月二四日から遅延損害金が認められるにすぎない。 三以上のとおりであるから、原告の請求は、 1 被告A、被告B及び被告Cに対し、各自、調査活動分の費用弁償額四六六五万円の損害賠償及びこれに対する不法行為の日より後である平成八年一月一二日から支払い済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める部分 2 被告Dに対し六六万円の不当利得に基づく返還請求及びこれに対する平成八年二月二四日から支払い済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める部分 3 被告Eに対し六九万円の不当利得に基づく返還請求及びこれに対する平成八年二月二四日から支払い済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める部分に限り理由があるので、右の限度でそれぞれ認容し、その余の請求はいずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 なお、仮執行については、相当でないから、これを付さないこととする。 名古屋地方裁判所民事第九部裁判長裁判官野田武明裁判官佐藤哲治裁判官安永武央

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