- 1 -主文一本件訴えのうち、被告東京入国管理局入国審査官が原告に対して平成16年11月1日付けでした、平成8年12月29日付け上陸許可及び平成13年8月10日付け上陸許可の各取消処分の取消しを求める訴えをいずれも却下する。 二被告東京入国管理局長が原告に対して平成16年12月20日付けでした出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく異議の申出には理由がない旨の裁決を取り消す。 三被告東京入国管理局主任審査官が原告に対して平成17年1月28日付けでした退去強制令書発付処分を取り消す。 四訴訟費用は、原告と被告東京入国管理局長との間においては、原告に生じた費用の3分の1を被告東京入国管理局長の負担とし、その余は各自の負担とし、原告と被告東京入国管理局主任審査官との間においては、原告に生じた費用の3分の1を被告東京入国管理局主任審査官の負担とし、その余は各自の負担とし、原告と被告東京入国管理局入国審査官との間においては、全部原告の負担とする。 事実 及び理由第一請求一被告東京入国管理局入国審査官が原告に対して平成16年11月1日付けでした、平成8年12月29日付け上陸許可及び平成13年8月10日付け上陸許可の各取消処分をいずれも取り消す。 二主文第二項と同旨(なお、訴状請求の趣旨第二項の「2005年(平- 2 -成17年)1月28日付でした」とあるのは「平成16年12月20日付けでした」の誤記と認める。)。 三主文第三項と同旨。 第二事案の概要一略語の一部・中華人民共和国を「中国」という。 ・東京入国管理局を「東京入管」という。 ・被告東京入国管理局入国審査官を「被告入国審査官」という。 ・被告東京入国管理局長を「被告東京入管局長」という。 ・被告東京入国管理局主任審査官を「被告主任審査官」と 理局を「東京入管」という。 ・被告東京入国管理局入国審査官を「被告入国審査官」という。 ・被告東京入国管理局長を「被告東京入管局長」という。 ・被告東京入国管理局主任審査官を「被告主任審査官」という。 ・平成17年法律第66号による改正前の出入国管理及び難民認定法を「出入国法」といい、平成16年法律第73号による改正前の出入国管理及び難民認定法を「改正前の出入国法」という。 ・被告入国審査官が原告に対して平成16年11月1日付けでした、平成8年12月29日付け上陸許可及び平成13年8月10日付け上陸許可の各取消処分を「本件各上陸許可取消処分」という。 ・被告東京入管局長が原告に対して平成16年12月20日付けでした出入国法49条1項に基づく異議の申出には理由がない旨の裁決を「本件裁決」という。 ・被告主任審査官が原告に対して平成17年1月28日付けでした退去強制令書の発付処分を「本件退令処分」といい、当該退去強制令書を「本件令書」という。 - 3 -・平成16年法律第84号による改正前の行政事件訴訟法を「改正前の行訴法」という。 ・経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約を「A規約」という。 二事案の骨子本件は、中国国籍を有する男性である原告(本件退令処分当時17歳)が、被告入国審査官から本件各上陸許可取消処分を受け、その後、被告入国審査官から出入国法24条2号(不法上陸)に該当する旨の認定を受け、次いで、東京入管特別審理官から同認定に誤りがない旨の判定を受け、さらに、法務大臣から権限の委任を受けた被告東京入管局長から本件裁決を受け、被告主任審査官から本件退令処分を受けたため、不法上陸当時9歳であった原告には不法上陸について帰責性がなく、かつ、原告は、9歳から日本において教育を受けており、日本での教育を継続する 件裁決を受け、被告主任審査官から本件退令処分を受けたため、不法上陸当時9歳であった原告には不法上陸について帰責性がなく、かつ、原告は、9歳から日本において教育を受けており、日本での教育を継続する必要があること等を理由に、本件各上陸許可取消処分はその必要性を欠く違法があり、また、在留特別許可を付与すべきであったにもかかわらずこれを認めなかった本件裁決は違法であり、それを前提とする本件退令処分も違法であるなどと主張して、被告入国審査官に対しては本件各上陸許可取消処分の各取消しを、被告東京入管局長に対しては本件裁決の取消しを、被告主任審査官に対しては本件退令処分の取消しを、それぞれ求める事案である。 三関係法令の定め等本件に関連する出入国法及び改正前の出入国法の規定は、次のとおり- 4 -である。 出入国法24条は、「次の各号のいずれかに該当する外国人については、次章に規定する手続により、本邦からの退去を強制することができる。」とし、その2号において、「入国審査官から上陸の許可等を受けないで本邦に上陸した者」と定めている。 改正前の出入国法47条2項は、「入国審査官は、審査の結果、容疑者が第24条各号の1に該当すると認定したときは、すみやかに理由を附した書面をもつて、主任審査官及びその者にその旨を知らせなければならない。」と規定している。 改正前の出入国法48条1項は、「前条第2項の通知を受けた容疑者は、同項の認定に異議があるときは、その通知を受けた日から3日以内に、口頭をもつて、特別審理官に対し口頭審理の請求をすることができる。」とし、出入国法48条8項は、「特別審理官は、口頭審理の結果、前条第3項の認定(注:改正前の出入国法47条2項の認定に相当する。)が誤りがないと判定したときは、速やかに主任審査官及び当該容疑者 。」とし、出入国法48条8項は、「特別審理官は、口頭審理の結果、前条第3項の認定(注:改正前の出入国法47条2項の認定に相当する。)が誤りがないと判定したときは、速やかに主任審査官及び当該容疑者にその旨を知らせるとともに、当該容疑者に対し、第49条の規定により異議を申し出ることができる旨を知らせなければならない。」と規定している。 出入国法49条1項は、「前条第8項の通知を受けた容疑者は、同項の判定に異議があるときは、その通知を受けた日から3日以内に、法務省令で定める手続により、不服の事由を記載した書面を主任審査官に提出して、法務大臣に対し異議を申し出ることができる。」と規- 5 -定し、同条3項は、「法務大臣は、第1項の規定による異議の申出を受理したときは、異議の申出が理由があるかどうかを裁決して、その結果を主任審査官に通知しなければならない。」と規定している。 出入国法49条6項は、「主任審査官は、法務大臣から異議の申出が理由がないと裁決した旨の通知を受けたときは、速やかに当該容疑者に対し、その旨を知らせるとともに、第51条の規定による退去強制令書を発付しなければならない。」と規定している。 出入国法50条1項は、「法務大臣は、前条第3項の裁決に当つて、異議の申出が理由がないと認める場合でも、当該容疑者が左の各号の1に該当するときは、その者の在留を特別に許可することができる。」とし、その3号において、「その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき。」と定めている。 四前提事実本件の前提となる事実は、次のとおりである。証拠及び弁論の全趣旨等により容易に認めることのできる事実は、その旨付記しており、その余の事実は、当事者間に争いのない事実である。 原告の身分事項及び入国状況等について(一)原告 おりである。証拠及び弁論の全趣旨等により容易に認めることのできる事実は、その旨付記しており、その余の事実は、当事者間に争いのない事実である。 原告の身分事項及び入国状況等について(一)原告は、昭和▲年(▲年)▲月▲日、中国の黒竜江省において、いずれも中国国籍を有する外国人である父P1及び母P2の間に出生した中国国籍を有する男性の外国人である。原告には、実妹として、平成▲年(▲年)▲月▲日に中国の黒竜江省において原告と同じ父母の間に出生したP3がいる。(乙2、5、6、弁論の全趣- 6 -旨)(二)P4は、日本国籍を有する女性であり、第二次大戦後に中国に残されて、中国で養育されたいわゆる中国残留邦人である。P1は、P4の夫の実兄の子である。P4は、原告が出生した昭和▲年▲月▲日より以前に、既に本邦に帰国していた。(甲9、乙7、弁論の全趣旨)(三)原告、P1、P2及びP3(以下「原告一家」という。)は、平成8年(1996年)12月29日、中国の上海から新東京国際空港(現在の成田空港。以下、改称の前後を問わず「成田空港」という。)に到着した。 P1は、東京入管成田空港支局入国審査官に対し、真実は日本国籍を有する者の子ではないのに、日本国籍を有するP4の子であるとして、外国人入国記録の渡航目的の欄に「日本人の配偶者等」と記載して上陸申請を行った。また、原告、P2及びP3は、東京入管成田空港支局入国審査官に対し、外国人入国記録の渡航目的の欄に「定居(定住)」と記載して上陸申請を行った。なお、上陸申請の際、原告の外国人入国記録の日本滞在予定期間の欄には、「1年」と記載されていた。 P1は、東京入管成田空港支局入国審査官から、在留資格「日本人の配偶者等」とする上陸許可の証印を受け、原告、P2及びP3は、在留資格「定住者」及び在 在予定期間の欄には、「1年」と記載されていた。 P1は、東京入管成田空港支局入国審査官から、在留資格「日本人の配偶者等」とする上陸許可の証印を受け、原告、P2及びP3は、在留資格「定住者」及び在留期間「1年」とする上陸許可の証印を受けた。原告一家は、同日、本邦に上陸した。(乙1から3ま- 7 -で、11、弁論の全趣旨) 原告の在留状況等について(一)原告は、千葉県我孫子市長に対し、外国人登録法に基づく新規登録を申請し、平成9年1月8日、外国人登録証明書の交付を受けた(乙1、4の1)。 (二)原告は、平成9年12月10日、法務大臣に対し、在留期間更新許可申請を行い、法務大臣は、同月22日、在留期間を1年として、これを許可した(乙1、2)。 (三)原告は、平成10年11月27日、法務大臣に対し、在留期間更新許可申請を行い、法務大臣は、同年12月9日、在留期間を1年として、これを許可した(乙1、2)。 (四)原告は、平成11年12月3日、法務大臣に対し、在留期間更新許可申請を行い、法務大臣は、平成12年1月25日、在留期間を3年として、これを許可した(乙1、2)。 (五)原告は、平成13年6月11日、法務大臣に対し、再入国許可申請をし、法務大臣は、同日、これを1回限り有効なものとして許可した(乙1、2)。 (六)原告は、平成13年6月29日、新潟空港から中国のハルピンに向け、再入国許可による出国をした(乙1、2)。 (七)原告は、平成13年8月10日、中国のハルピンから新潟空港に到着し、再入国許可による上陸許可を受けて本邦に上陸した(乙1、2)。 - 8 -(八)原告は、平成14年11月19日、法務大臣に対し、在留期間更新許可申請を行った(乙1、2)。 (九)被告入国審査官は、平成16年11月1日、P4がP1の実母 した(乙1、2)。 - 8 -(八)原告は、平成14年11月19日、法務大臣に対し、在留期間更新許可申請を行った(乙1、2)。 (九)被告入国審査官は、平成16年11月1日、P4がP1の実母ではないことが判明したとして、P1、P2及びP3に対する平成8年12月29日付けの各上陸許可等を取り消した。また、P1は、平成16年11月1日ころ、東京入管に収容された。 被告入国審査官は、原告に対して、平成16年11月1日、本件各上陸許可取消処分をするとともに、平成9年12月22日、平成10年12月9日及び平成12年1月25日付けでした各在留期間更新許可並びに平成13年6月11日付けでした再入国許可を取り消し、さらに、上記(八)の申請を終止した。被告入国審査官は、原告に対し、平成16年11月1日、本件各上陸許可取消処分を告知した。(甲1の1及び2、乙1、2、11、24、弁論の全趣旨) 原告の退去強制手続等について(一)東京入管入国警備官は、平成16年11月1日、原告について違反調査を行い、その結果、原告が出入国法24条2号(不法上陸)に該当すると疑うに足りる相当の理由があるとして、同月16日、被告主任審査官から収容令書の発付を受け、同月19日、同令書を執行するとともに、同日、原告を出入国法24条2号該当容疑者として、被告入国審査官に引き渡した。被告主任審査官は、同日、原告に対し、仮放免を許可した。(乙6、8から10まで)(二)被告入国審査官は、平成16年11月19日、原告、P2及び- 9 -P3について違反審査を行い、その結果、同日、原告が出入国法24条2号に該当する旨の認定を行い、これを通知した。原告は、同日、特別審理官による口頭審理を請求した。(乙11、12)(三)東京入管特別審理官は、平成16年12月3日、原告につい 原告が出入国法24条2号に該当する旨の認定を行い、これを通知した。原告は、同日、特別審理官による口頭審理を請求した。(乙11、12)(三)東京入管特別審理官は、平成16年12月3日、原告について口頭審理を行い、その結果、同日、被告入国審査官による上記認定に誤りがない旨判定し、原告にこれを通知した。原告は、同日、法務大臣に対し、異議の申出をした。(乙13から15まで)(四)法務大臣から権限の委任を受けた被告東京入管局長は、平成16年12月20日、原告の上記異議の申出に理由がない旨の本件裁決をした。本件裁決の通知を受けた被告主任審査官は、平成17年1月28日、原告に本件裁決を通知するとともに、本件退令処分をした。東京入管入国警備官は、同日、本件令書を執行し、被告主任審査官は、同日、原告に対し、仮放免を許可した。(甲2、乙17から20まで)(五)なお、平成16年11月又は12月ころ、P1、P2及びP3も、被告入国審査官から、出入国法24条2号(不法上陸)に該当する旨の認定を受け、次いで、東京入管特別審理官から同認定に誤りがない旨の判定を受け、さらに、法務大臣から権限の委任を受けた被告東京入管局長から出入国法49条1項に基づく異議の申出には理由がない旨の裁決を受けた。被告主任審査官は、P1に対しては、平成16年12月20日に、P2及びP3に対しては、平成17年1月28日に、それぞれ退去強制令書発付処分をした。P3は、- 10 -同日、仮放免されたが、P1及びP2は、退去強制令書の執行により、東京入管に収容された。 P1及びP2は、その後に、仮放免されたものの、平成17年5月15日、成田空港から出国した。(甲20、弁論の全趣旨)(六)原告は、平成17年3月7日、本件訴えを提起した。また、P3も、同日、当庁に、被告入国審査官 の後に、仮放免されたものの、平成17年5月15日、成田空港から出国した。(甲20、弁論の全趣旨)(六)原告は、平成17年3月7日、本件訴えを提起した。また、P3も、同日、当庁に、被告入国審査官がP3に対して平成16年11月1日付でした、平成8年12月29日付け上陸許可及び平成13年8月10日付け上陸許可の各取消処分の取消し等を求める訴えを提起した。(甲4の1ないし4、弁論の全趣旨、当裁判所に顕著な事実)五 争点 本件の主な争点は、次のとおりである。 本件各上陸許可取消処分の取消しを求める訴えの適否具体的には、本件各上陸許可取消処分の取消しを求める訴えは出訴期間を徒過した不適法な訴えか。 本件各上陸許可取消処分の適法性具体的には、本件各上陸許可取消処分は、法令の根拠に基づかないでされた違法なものであるということができるか。また、本件各上陸許可取消処分は、手続上又は実体上、違法なものであるということができるか。 本件裁決の実体上の適法性具体的には、原告は、不法上陸について帰責性がないこと、日本で- 11 -継続して教育を受けるべきこと等を理由として出入国法50条1項3号に基づく在留特別許可を付与されるべきであったのに、これを付与されずにされた本件裁決は、被告東京入管局長の有する裁量権を逸脱するなどしてされた違法なものであるということができるか。 本件裁決についての違法性の承継の有無本件各上陸許可取消処分が違法であるとして、本件裁決は、その違法性を承継するか。 本件裁決の手続上の適法性本件裁決は、手続上違法なものであるということができるか。 本件退令処分の適法性本件裁決が違法であるから、これを前提とする本件退令処分も違法であるか。 六争点に関する当事者の主張の要旨争点に関する当事者の主張の要旨は、別紙 るということができるか。 本件退令処分の適法性本件裁決が違法であるから、これを前提とする本件退令処分も違法であるか。 六争点に関する当事者の主張の要旨争点に関する当事者の主張の要旨は、別紙「当事者の主張の要旨」のとおりである。 第三争点に対する判断一争点1(本件各上陸許可取消処分の取消しを求める訴えの適否)について1(一)改正前の行訴法14条1項によると、取消訴訟の出訴期間は、処分又は裁決があったことを知った日の翌日から起算して3か月である。 前記前提事実によると、原告が本件各上陸許可取消処分を知った- 12 -のは、平成16年11月1日であり、原告が本件訴えを提起したのは、平成17年3月7日である。そうすると、本件各上陸許可取消処分の取消しを求める訴えは、原告が本件各上陸許可取消処分を知った日から4か月以上経過した後に提起されているということになる。 (二)出訴期間は、不変期間であり(改正前の行訴法14条2項)、当事者がその責めに帰することができない事由により不変期間を遵守することができなかった場合には、その事由が消滅した後1週間以内に限り、不変期間内に訴訟行為の追完をすることができる(民事訴訟法97条)。 原告は、P1が、本件各上陸許可取消処分を受けた直後に、東京入管の職員から、在留特別許可についての説明を受け、また、その際に、本件各上陸許可取消処分に対する不服申立てをすることができる旨教示されていなかったことから、本件各上陸許可取消処分とその後の退去強制手続が一体のものであると誤信した旨主張する。 しかし、東京入管の職員が、本件各上陸許可取消処分を受けた直後に、在留特別許可についての説明をすることには、何ら違法な点は存せず、また、上陸許可取消処分に対する審査請求等の不服申立手続は、存在しないのである(行 管の職員が、本件各上陸許可取消処分を受けた直後に、在留特別許可についての説明をすることには、何ら違法な点は存せず、また、上陸許可取消処分に対する審査請求等の不服申立手続は、存在しないのである(行政不服審査法4条1項10号参照)から、東京入管の職員が、本件各上陸許可取消処分に対する不服申立てをすることができる旨教示しなかったことも、違法であるとはいえないのである。 - 13 -そうすると、仮に、原告又はP1が、本件各上陸許可取消処分とその後の退去強制手続が一体のものであると誤信した事実があったとしても、それは、原告又はP1自身の主観的な問題にすぎないといわざるを得ない。 したがって、原告の前記主張事実をもって、本件がその責めに帰することができない事由により不変期間を遵守することができなかった場合に当たるということはできない。 (三)また、上記のとおり、上陸許可取消処分に対する審査請求等の不服申立手続は、存在しないから、改正前の行訴法14条4項の適用の余地もないというべきである。 (四)以上によれば、本件各上陸許可取消処分の取消しを求める訴えは、出訴期間経過後に提起された不適法なものであることが明らかであるというべきである。 2(一)これに対して、原告は、平成16年11月1日に各上陸許可取消通知書(甲1の1及び2)を受け取ったものの、その際には、本件各上陸許可取消処分に対して取消訴訟を提起することができる旨の告知を受けておらず、かつ、そのようなことは知らなかったのであるから、出訴期間は進行しない旨主張する。 しかし、改正前の行訴法14条1項にいう「処分又は裁決があつたことを知つた日」とは、当該処分又は裁決が効力を発生したことを前提として、処分等の相手方がその処分等の存在を知った日をいうと解すべきである。そして、同項の文言からす 1項にいう「処分又は裁決があつたことを知つた日」とは、当該処分又は裁決が効力を発生したことを前提として、処分等の相手方がその処分等の存在を知った日をいうと解すべきである。そして、同項の文言からすると、「処分又は- 14 -裁決があつたことを知つた」というためには、処分等の相手方が取消訴訟を提起することができる旨の告知を受けることや、その処分等に対して取消訴訟を提起することができることを認識することは必要がないというべきである。 したがって、原告の上記主張は、採用することができない。 (二)また、原告は、被告入国審査官が、原告について出入国法24条2号(不法上陸)に該当する旨の認定を行うに際して、本件各上陸許可取消処分が有効か否かについても審査の対象としていることからすると、出入国法49条1項に基づく異議の申出は、上記認定について、改正前の行訴法14条4項にいう「審査請求」に当たるとともに、本件各上陸許可取消処分との関係でも、「審査請求」に当たる旨主張する。 しかし、上陸許可取消処分は公定力を有する行政処分であるから、入国審査官は、出入国法24条2号に該当するかどうかを審査するに当たって、既にされた上陸許可取消処分を有効なものとして扱わざるを得ないというべきである。 また、改正前の出入国法45条1項は、入国審査官は、容疑者が出入国法24条各号の1に該当するかどうかを審査すると規定しているにすぎないのであるから、退去強制手続において、上陸許可取消処分等が有効か否かについて審査することは、予定されていないというべきである。 そうすると、被告入国審査官が、原告について出入国法24条2- 15 -号に該当する旨の認定を行うに際しても、本件各上陸許可取消処分が有効か否かについてを、審査の対象とすべきであるということはできない。 したが 入国審査官が、原告について出入国法24条2- 15 -号に該当する旨の認定を行うに際しても、本件各上陸許可取消処分が有効か否かについてを、審査の対象とすべきであるということはできない。 したがって、被告入国審査官の上記認定に際して、本件各上陸許可取消処分が有効か否かについても審査の対象としていることを前提とする原告の前記主張は、採用することができない。 (三)原告は、P1が、本件各上陸許可取消処分を受けた直後に、東京入管の職員から、在留特別許可についての説明を受け、また、その際に、本件各上陸許可取消処分に対する不服申立てをすることができる旨教示されていなかったことから、上陸許可取消処分とその後の退去強制手続が一体のものであると誤信したのであり、本件裁決のあった日から本件各上陸許可取消処分の取消訴訟の出訴期間が起算される旨主張する。 しかし、前記1(二)のとおり、上記のようなP1の誤信をもって原告の責めに帰することができない事由により出訴期間を遵守することができなかった場合に当たるということはできないのである。 また、改正前の行訴法14条4項後段は、「行政庁が誤つて審査請求をすることができる旨を教示した場合」について規定していることから、改正前の行訴法14条4項の適用もないというべきである。 そうすると、原告の上記主張は、採用することができない。 以上によれば、本件各上陸許可取消処分の取消しを求める訴えは、- 16 -いずれも出訴期間を徒過した不適法な訴えであるといわざるを得ない。 二争点3(本件裁決の実体上の適法性)について 被告東京入管局長の裁量権について法務大臣から権限の委任を受けた被告東京入管局長の裁量権について検討する。 (一)憲法22条1項は、日本国内における居住・移転の自由を保障するにとどまっており、憲法 告東京入管局長の裁量権について法務大臣から権限の委任を受けた被告東京入管局長の裁量権について検討する。 (一)憲法22条1項は、日本国内における居住・移転の自由を保障するにとどまっており、憲法は、外国人の日本へ入国する権利や在留する権利等について何ら規定しておらず、日本への入国又は在留を許容すべきことを義務付けている条項は存在しない。このことは、国際慣習法上、国家は外国人を受け入れる義務を負うものではなく、特別な条約がない限り、外国人を受け入れるかどうか、受け入れる場合にいかなる条件を付するかについては、当該国家が自由に決定することができるとされていることと考えを同じくするものと解される。したがって、憲法上、外国人は、日本に入国する自由が保障されていないことはもとより、在留する権利ないし引き続き在留することを要求する権利を保障されているということはできない。このように外国人の入国及び在留の許否は国家が自由に決定することができるのであるから、我が国に在留する外国人は、法に基づく外国人在留制度の枠内においてのみ憲法に規定される基本的人権の保障が与えられているものと解するのが相当である(最高裁昭和50年(行ツ)第120号同53年10月4日大法廷判決・民集32巻7号1223頁、最高裁昭和29年(あ)第3594号同32年6月1- 17 -9日大法廷判決・刑集11巻6号1663頁参照)。 (二)出入国法2条の2、7条等は、憲法の前記の趣旨を前提として、外国人に対し原則として一定の期間を限り特定の資格により我が国への上陸、在留を許すものとしている。したがって、上陸を許された外国人は、その在留期間が経過した場合は当然我が国から退去しなければならないことになる。そして、出入国法21条は、当該外国人が在留期間の更新を申請することができること る。したがって、上陸を許された外国人は、その在留期間が経過した場合は当然我が国から退去しなければならないことになる。そして、出入国法21条は、当該外国人が在留期間の更新を申請することができることとしているが、この申請に対しては法務大臣が「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、これを許可することができる。」ものと定められている。これらによると、出入国法においても、在留期間の更新が当該外国人の権利として保障されていないことは明らかであり、法務大臣は、更新事由の有無の判断につき広範な裁量権を有するというべきである(前掲最高裁昭和53年10月4日大法廷判決参照)。 (三)また、出入国法50条1項3号は、出入国法49条1項所定の異議の申出を受理したときにおける同条3項所定の裁決に当たって、異議の申出が理由がないと認める場合でも、法務大臣は在留を特別に許可することができるとし、出入国法50条3項は、この許可をもって異議の申出が理由がある旨の裁決とみなす旨定めている。 しかし、①前記のように外国人には我が国における在留を要求する権利が当然にあるわけではないこと、②出入国法50条1項柱書及び同項3号は、「特別に在留を許可すべき事情があると認めると- 18 -き」に在留を特別に許可することができると規定するだけであって、この在留特別許可の判断の要件、基準等については何も定められていないこと、③出入国法には、そのほか、前記在留特別許可の許否の判断に当たって考慮しなければならない事項の定めなど上記の判断をき束するような規定は何も存在しないこと、④在留特別許可の判断の対象となる者は、在留期間更新の場合のように適法に在留している外国人とは異なり、既に出入国法24条各号の規定する退去強制事由に該当し、本来的には退去強制の対象 存在しないこと、④在留特別許可の判断の対象となる者は、在留期間更新の場合のように適法に在留している外国人とは異なり、既に出入国法24条各号の規定する退去強制事由に該当し、本来的には退去強制の対象となる外国人であること、⑤外国人の出入国管理は、国内の治安と善良な風俗の維持、保健・衛生の確保、外交関係の安定、労働市場の安定等、種々の国益の保持を目的として行われるものであって、このような国益の保持の判断については、広く情報を収集し、時宜に応じた専門的・政策的考慮を行うことが必要であり、時には高度な政治的判断を要することもあり、特に、既に退去強制されるべき地位にある者に対してされる在留特別許可の許否の判断に当たっては、このような考慮が必要であることを総合勘案すると、前記在留特別許可を付与するか否かの判断は、法務大臣の極めて広範な裁量にゆだねられていると解すべきである。そして、その裁量権の範囲は、在留期間更新許可の場合よりも更に広範であると解するのが相当である。 したがって、これらの点からすれば、在留特別許可を付与するか否かについての法務大臣の判断が違法とされるのは、その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明ら- 19 -かであるなど、法務大臣が裁量権の範囲を逸脱し又は濫用した場合に限られるというべきである。 (四)そして、出入国法69条の2、出入国管理及び難民認定法施行規則61条の2第10号は、出入国法49条3項所定の裁決の処分権限を地方入国管理局長に委任することができる旨規定しており、本件裁決も、上記規定に基づいて法務大臣から権限の委任を受けた被告東京入管局長により行われたものであるところ、法務大臣が出入国法49条3項所定の裁決を行う場合について、上記(一)から(三)までにおいて説示したことは、当然、 いて法務大臣から権限の委任を受けた被告東京入管局長により行われたものであるところ、法務大臣が出入国法49条3項所定の裁決を行う場合について、上記(一)から(三)までにおいて説示したことは、当然、法務大臣から権限の委任を受けた被告東京入管局長が同項所定の裁決を行う場合についても妥当するということができる(以下、法務大臣及び上記の委任を受けた者を合わせて「法務大臣等」という。)。 (五)なお、原告は、出入国法50条1項3号は、法務大臣に「特別に在留を許可すべき事情」をあらかじめ定める権限を与え、当該外国人に「特別に在留を許可すべき事情」があると認められた場合には、日本への在留を許可するよう定めた規定であり、また、「特別に在留を許可すべき事情」の一般的要件の定立に当たっては、条約、憲法、出入国管理基本計画に従う必要がある旨主張する。 しかし、出入国法50条1項3号の文言からすると、同号が法務大臣に「特別に在留を許可すべき事情」を定めることを要求していると見ることはできないのであり、同号は、前示のとおり、法務大臣等に極めて広範な裁量を認めたものというべきである。 - 20 -また、出入国法61条の10は、法務大臣は、出入国管理基本計画に基づいて、外国人の出入国を公正に管理するよう努めなければならないと規定しているのであるから、法務大臣は、出入国管理基本計画を最大限に尊重した行政運営に努めなければならないことはもちろんであるが、同条は、努力義務を課すにすぎない表現をしているのであるから、同条を根拠にして、出入国管理基本計画に法的拘束力を認めることはできないというべきである。 したがって、原告の上記主張は、採用することができない。 (六)原告は、本件裁決は、原告を強制送還し、原告の日本における教育を受ける機会を奪う点で、A規約13条1項、 とはできないというべきである。 したがって、原告の上記主張は、採用することができない。 (六)原告は、本件裁決は、原告を強制送還し、原告の日本における教育を受ける機会を奪う点で、A規約13条1項、2項(d)、児童の権利に関する条約28条1項、3条に違反する旨主張する。 しかし、A規約2条1項の規定が、締結国において、「立法措置その他のすべての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成する」と規定するように、A規約は、方針規定としての性格が強く、A規約13条1項、2項(d)は、個人に対して即時に具体的な権利を付与すべきことを定めたものではないと解すべきである。 また、児童の権利に関する条約についても、個々の具体的権利について規定したものと見ることはできず、裁判規範として個人に直接適用可能なものではない。また、仮に、その点をさておくとしても、同条約が外国人が本邦に在留する権利までも保障したものではないことは、同条約9条4項が、父母の一方的若しくは双方又は児- 21 -童の退去強制の措置に基づき、父母と児童が分離されることのあることを予定していることからも明らかである。 したがって、本件裁決が、A規約13条1項、2項(d)及び児童の権利に関する条約9条1項、3条に違反するものであるとする原告の前記主張は、いずれも採用することができない。 (七)以上の判断の枠組みに従って、法務大臣から権限の委任を受けて、原告に在留特別許可を付与しないとした被告東京入管局長の判断に裁量権の逸脱又は濫用があるといえるか否かについて、更に検討することとする。 認定事実前記前提事実に加え、証拠(甲9から15、16の1ないし3、17、20、22から27まで、30、31、乙1、4の1、6、11、13、16、原告本人)及び弁論の全 検討することとする。 認定事実前記前提事実に加え、証拠(甲9から15、16の1ないし3、17、20、22から27まで、30、31、乙1、4の1、6、11、13、16、原告本人)及び弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実を認めることができる。 (一)原告の入国までの経緯及び入国状況等について( )原告は、昭和▲年(▲年)▲月▲日、中国の黒竜江省におい て出生した中国国籍を有する男性の外国人である。 原告一家は、平成8年に来日するまで、中国の黒竜江省で居住していた。 ( )原告は、5、6歳のころ、幼稚園に入園した。また、原告は、 7歳になった後の平成6年(1994年)9月、地元のP5小学校に入学した。原告は、小学校3年生に進級後に来日するまで、- 22 -P5小学校で、国語(中国語)と算数の授業を受けた。 ( )P1及びP2は、原告及びP3を伴い、平成8年12月29 日に、来日した。 原告一家の上陸申請手続やその準備については、当時9歳にすぎなかった原告の分は、原告に代わって、P1又はP2が行い、原告はこれに関与せず、内容も知らなかった。なお、P1又はP2は、その後の原告に係る在留期間更新許可申請や再入国申請についても、すべて原告に代わって行った。 (二)中国に一時帰国するまでの原告の在留状況等について( )原告一家は、平成8年12月29日の来日後、千葉県我孫子 市内において、P4の居宅の近くにアパートの一室を借りて居住した。P1及びP2は、このころ、稼働を始めた。 原告は、平成9年1月下旬ころ、我孫子市立P6小学校の2年生に編入入学し、通学を始めた。しかし、原告は、日本語がほとんど分からなかったため、算数以外の授業の内容を全く理解することができなかった。原告は、P6小学校において、中国語のできる通訳から、毎 年生に編入入学し、通学を始めた。しかし、原告は、日本語がほとんど分からなかったため、算数以外の授業の内容を全く理解することができなかった。原告は、P6小学校において、中国語のできる通訳から、毎日約1時間、日本語を教わった。 ( )原告一家は、平成9年4月ころ、P1が別の仕事に就いたた めに、千葉市αに転居した。 原告は、同月ころ、千葉市立P7小学校に転校した。しかし、原告は、日本語が分からなかったため、授業の内容をほとんど理解することができなかった。また、P7小学校には、日本語をほ- 23 -とんど知らない原告に対して、日本語を教える教師等がいなかったため、原告は、ほとんど日本語の勉強をしなかった。 ( )原告一家は、平成10年7月ころ、千葉市βの公営住宅に転 居し、これに伴って、原告は、そのころ、千葉市立P8小学校に転校した。 P8小学校では、日本語教室が週に2、3回開かれていた。原告は、ここで初めて日本語を本格的に教わるようになった。 原告は、P8小学校で、教員であるP9と出会い、P9から、日本語を教わるようになった。原告は、当時、日本語については、最低限の日常会話はできたものの、単語をつなげて話をしている状態であった。また、原告は、平仮名を書くことができたものの、余り漢字を書くことはできず、日本語の助詞の「て、に、を、は」や、よう音の「っ」を習得していなかったことから、作文を書くことができなかった。P9は、工夫を凝らして原告に日本語を教えた。 原告は、負けず嫌いであり、かつ、努力家であって、日本語で年賀状を書いたものの、他の外国人の児童よりも記載した量が少ないことを気にして、休み時間を利用して全部を書き直したこともあった。 ( )原告は、P9がP8小学校から転勤した後の小学校5年生以 降も、日本語の勉強を続け の外国人の児童よりも記載した量が少ないことを気にして、休み時間を利用して全部を書き直したこともあった。 ( )原告は、P9がP8小学校から転勤した後の小学校5年生以 降も、日本語の勉強を続けた。 原告は、小学校6年生のころから、土曜日や平日の夜に、学校- 24 -外の2、3か所の日本語教室に通い、日本語を勉強するようになった。原告は、学校外の日本語教室で、同じ境遇を持つ中国国籍の友人を多く作ることができ、仲間同士で、日本語の勉強に励むようになった。原告は、平成17年5月13日に、千葉市の里親宅に居住するようになるまで、学校外の日本語教室に通い続けた。 原告は、学校外の日本語教室に通い始めて間もなく、小学校低学年のレベルの試験である日本語能力試験4級に合格し、中学校1年生のころには、小学校高学年のレベルの試験である日本語能力試験3級に合格した。 原告は、日本語を学ぶにつれ、小学校の授業の内容も次第に理解することができるようになり、小学校6年生のころには、小学校の授業で教師が話した内容の約半分を聞き取ることができるようになった。 ( )原告は、平成13年3月に、P8小学校を卒業し、同年4月 に、千葉市立P10中学校に入学した。原告は、中学校に入学したころには、授業で使われている日本語をほとんど聞き取ることができるようになり、会話も自然にすることができるようになった。 (三)中国への一時帰国について( )原告一家は、原告が中学校1年生であった平成13年6月2 9日に、新潟空港から、再入国許可による出国をし、中国の黒竜江省のハルピンに行った。原告は、ハルピンに到着した後の約1- 25 -か月間は、中国にいる親戚に会ったり、遊んだりしていた。 ( )原告及びP3は、平成13年7月下旬に約1週間、学校の教 師をしていた ピンに行った。原告は、ハルピンに到着した後の約1- 25 -か月間は、中国にいる親戚に会ったり、遊んだりしていた。 ( )原告及びP3は、平成13年7月下旬に約1週間、学校の教 師をしていた原告の親戚から、中国語の授業を受けた。授業は、小学校1年生の国語(中国語)の教科書を使って、ピンイン(日本でいう仮名の50音表に相当するもの)や漢字の勉強を中心に行われた。原告は、約1週間の授業を受けた後、中国の小学校1年生が習得すべき漢字については読むことができるようになったが、それらの漢字を書くことはできなかった。 ( )上記授業の後、原告及びP3に中国語の授業を行っていた親 戚の教師は、原告に対して、中国で、小学校4、5年生の勉強をすることすら無理であると説明した。 (四)再入国後の原告の在留状況等について( )原告一家は、平成13年8月10日、中国のハルピンから新 潟空港に到着し、再入国許可による上陸許可を受けて本邦に上陸した。 原告は、日本に到着後、再び、P10中学校に通うようになった。原告は、学習に励み、教科の成績は、中学校1年生の2学期から中学校3年生にかけて、次第に上がっていった。また、原告は、生活態度がまじめで、意欲的に授業に取り組み、友達とも仲良くしていた。 原告は、中学校では、課外活動として、技術部に入部し、次第に、機械、電気やコンピュータに興味を持つようになり、工業高- 26 -校への進学を希望した。 そこで、原告は、中学校3年生の1学期ころから受験勉強を始め、平成16年1月に千葉県立P11高等学校の入学試験を受験し、作文と面接からなる推薦の試験に合格した。 ( )原告は、平成16年3月にP10中学校を卒業し、同年4月、 千葉県立P11高等学校電子工業科へ入学した。原告は、高校入学後も、意欲的に学習 験し、作文と面接からなる推薦の試験に合格した。 ( )原告は、平成16年3月にP10中学校を卒業し、同年4月、 千葉県立P11高等学校電子工業科へ入学した。原告は、高校入学後も、意欲的に学習を続け、1年生の1学期から2学期にかけても、教科の成績を上げ、成績の平均は中位以上であって、更に成績は向上する傾向にあった。 原告は、高校において、運動委員を担当するとともに、特に問題なく友達の輪に溶け込み、規則正しい、落ち着いた生活を送っている。また、原告は、高校において、与えられた課題をきちんとこなしており、授業にも前向きに取り組んでいる。高校の教員は、原告について、地道な努力をするという長所を持つと評価しているとともに、原告が中国人であることは意識していないと考えている。 なお、原告は、中学卒業後は、ファミリーレストランでアルバイトをするようになった。 ( )原告は、平成16年11月1日、本件各上陸許可取消処分を 受けたときに、東京入管の職員から説明を受けて、初めて、P4がP1の母親ではなく、自分が日本人と血縁関係がないことを知った。 - 27 -( )平成17年1月28日以降、原告及びP3は、P1に続いて P2も収容されたため、二人で生活することとなった。原告は、それまで行っていたファミリーレストランでのアルバイトに加え、新聞配達のアルバイトも始めた。 原告は、自分の将来についても考え、両親が日本にいられなくなっても、自分は日本で勉強を継続したいと考え、本件訴えを提起することとなり、平成17年3月7日に、本件訴えを提起した。 P1及びP2は、それぞれ一時仮放免されたものの、平成17年5月15日に中国に帰国した。 原告一家は、後記( )の「P12さん兄妹の在留を求める会」 とも相談し、P1及びP2の帰国に先立ち、千葉市児童 及びP2は、それぞれ一時仮放免されたものの、平成17年5月15日に中国に帰国した。 原告一家は、後記( )の「P12さん兄妹の在留を求める会」 とも相談し、P1及びP2の帰国に先立ち、千葉市児童相談所に相談に行き、原告及びP3は、里親委託制度の適用を受け、平成17年5月13日から、千葉市内の里親宅に居住することとなった。なお、里親委託制度においては、原告及びP3のために、1か月に一人当たり、一般生活費として4万8210円、就学費として2万2100円等の支給がされることとなっており、高校を卒業するまで、この制度を利用することができることとなっている。 原告は、P1及びP2と離れて生活しなければならない寂しさに耐えながら、引き続き、勉学に励んだ。原告は、高校2年生の1学期及び2学期には、全教科の成績の平均が、いずれも学年で9位になるなど、優れた成績を修めており、特に、数学及び電子- 28 -回路の科目の成績は優れている。 原告は、本件裁決の以前から、日本に残留して、大学へと進学し、電気やコンピュータの関係の会社に就職し、社会に役立つことをしていきたいと強く希望していた。原告は、現在、P13大学への進学を考えており、その際に必要な学費等についても、奨学金を利用することなどを考えている。 ( )原告は、来日して以降、中国に一時帰国した時を除いて、家 庭内でP1及びP2と会話をするとき以外には、中国語を使うことがなかった。また、原告は、来日して以降約8年間にわたり、日本人の児童や生徒と同様に、日本語による授業を受けてきた。 そのため、現在では、原告は、中国語で簡単な日常会話をすることができるが、中国語による読み書きをほとんど行うことができない。他方、原告は、本件裁決当時、日本語による会話や読み書きについては、問題なく行うことができ は、原告は、中国語で簡単な日常会話をすることができるが、中国語による読み書きをほとんど行うことができない。他方、原告は、本件裁決当時、日本語による会話や読み書きについては、問題なく行うことができるようになっていた。 ( )原告は、中学校、高校を通じて、本件裁決当時まで、非行歴 はなく、犯罪行為、問題行動等も認められなかった。原告は、本件裁決後、妹と二人だけで暮らすようになったり、また、里親の下で生活するようになってからも、現在に至るまで、非違行為はなく、むしろ模範的な高校生生活を継続している。 ( )P9やその協力者たちは、原告及びP3を支援するため、原 告及びP3の在留を求める嘆願書を191通集め、平成16年12月3日、東京入管に提出した。P9等は、原告及びP3の在留- 29 -が認められるように継続的かつ組織的に活動することができるように、同月11日、「P12さん兄妹の在留を求める会」(以下「求める会」という。)を設立した。求める会は、更に嘆願書を集めたほか、原告及びP3に対する学習支援等を行い、訴訟費用の準備のために、支援者から資金を集めた。なお、現在、求める会は、約197万円の資金を保有している。 また、求める会の会員を中心として、本件訴え提起後の平成17年9月1日には、原告及びP3の日本での生活一般の支援や進学の相談、学習の支援、支援金の収集、拠出等を行う目的で「P12兄妹支援団」が設立された。 ( )原告は、進学や生活上の問題等については、P9又はP12 兄妹支援団のメンバーに相談しており、同人たちから物心両面の支援を受けている。 ( )原告は、前記の里親の下で生活している上、P12兄妹支援 団の支援の用意もあるため、現在では、生活費や学費、小遣い等の心配をする必要はなくなっている。そのため、原告は、 支援を受けている。 ( )原告は、前記の里親の下で生活している上、P12兄妹支援 団の支援の用意もあるため、現在では、生活費や学費、小遣い等の心配をする必要はなくなっている。そのため、原告は、里親の家に入居して以降、アルバイトはしておらず、勉学にいそしんでいる。 被告東京入管局長の判断における裁量権の範囲の逸脱又は濫用の有無について(一)( )前記一のとおり、本件各上陸許可取消処分の取消しを求め る訴えは、いずれも不適法である。そして、行政処分には公定力- 30 -があることから、本件各上陸許可取消処分は、有効なものということができるのであって、原告は、遡及的に、平成8年12月29日及び平成13年8月10日に、いずれも上陸許可を受けずに本邦に上陸したことになる。 そうすると、原告は、出入国法24条2号に該当するというべきである。 ( )他方、前記前提事実及び前記認定事実によると、①原告は、 9歳の時に、P1が、日本国籍を有するP4の子であると偽って来日した際に、その事情を知らずに、P1及びP2に連れられて本邦に入国したのであり、上陸申請やその後の在留期間更新等の手続に、原告は関与せず、すべてP1又はP2が行ったこと、②原告は、中国で出生したものの、中国では、小学校3年生の初めまで、小学校の授業を受けたにすぎなかったこと、③原告は、来日後、千葉県内の小学校の2年生に編入し、その後も、千葉県内の小学校、中学校及び高校に通学していたこと、④原告は、9歳の時に来日した当初は、日本語が全く分からなかったものの、小学校内の日本語教室で学んだり、学校外の日本語教室に通うなどの努力を続けて、本件裁決当時は、会話や読み書きはもちろん、高等学校における学習に支障がないレベルにまで、日本語を習得していたこと、⑤原告は、日本語が分 教室で学んだり、学校外の日本語教室に通うなどの努力を続けて、本件裁決当時は、会話や読み書きはもちろん、高等学校における学習に支障がないレベルにまで、日本語を習得していたこと、⑤原告は、日本語が分かるようになったことから、学校の授業も次第に理解することができるようになり、高校入試の受験勉強も行い、高校の入学試験にも合格したこと、⑥原告は、- 31 -高校入学後も、意欲的に学習を続け、本件裁決当時である1年生の1学期から2学期にかけても、教科の成績の平均は中位以上であり、更に成績は向上する傾向にあったこと、⑦原告は、日本において、生活態度がまじめであるとともに、努力家で、学習にも意欲的に取り組んできたこと、⑧原告は、本件各上陸許可取消処分を受けるまで、P4がP1の実母ではないことを知らず、また、自らが不法上陸したことを知らなかったこと、⑨原告は、9歳の時から本件裁決の時点まで約8年間、日本人と同様に、小学校、中学校及び高校に通っており、日本に引き続き在留し、学習を継続して、大学に入学し、電気関係の仕事に就いて、社会に役立ちたいと強く希望していたこと、⑩原告は、中国語で簡単な日常会話をすることはできるが、中国語による読み書きはほとんどすることができないこと、⑪原告は、本件裁決当時、高校1年生であったが、既に17歳であって、一人で生活していくことも可能であり、また、自分の将来の生き方等についても考察する時期に達しており、将来についての判断能力もあったこと、⑫本件裁決当時既に、原告及びP3の在留を支援する者らが多数いて、求める会が設立されており、これらの者の支援も期待することができたこと、⑬本件裁決後、原告の両親は日本を出国したものの、原告は日本での生活を続けることを希望して、妹と二人で日本に残り、高校に通学し続けていること、⑭本 おり、これらの者の支援も期待することができたこと、⑬本件裁決後、原告の両親は日本を出国したものの、原告は日本での生活を続けることを希望して、妹と二人で日本に残り、高校に通学し続けていること、⑭本件裁決当時も、また、その後、現在に至るまでの間も、原告には、犯罪行為、非違行為、問題行- 32 -動等は見られず、健全な高校生として、日本社会に溶け込んでまじめな生活を続けていることが認められる。 ( )そうすると、原告は、9歳の時に、父であるP1が、日本国 籍を有するP4の子であると偽って来日した際に、その事情を知らずに両親に連れられて本邦に入国し、その後、上記の偽りが発覚したため、原告の上陸許可も取り消されたのであって、原告にとっては、いかんともし難い事情により、本邦において不法入国者となったものであり、不法上陸及び不法滞在について、原告には、何らの帰責性もないということができる。 したがって、通常は、出入国法24条各号所定の退去事由に該当するということは、それだけで、類型的に見て我が国に滞在させることが好ましくない外国人であるということを意味するが、原告の場合はこのような類型的な評価をすることはできず、より慎重な吟味が必要であるというべきである。また、上記のように、外国人が不法上陸及び不法滞在していることについて、当該外国人自身には、責めるべき点がない場合には、通常の不法上陸、不法滞在の事案とは異なり、本邦における生活、学習等の実績、将来の設計や、それらが国外退去させられることによって失われる不利益についても、違法状態の上に築かれたものとして軽視することは不相当であり、不利益も大きなものと見るべきときがあり、本件はそのようなときに当たるというべきである。 さらに、原告は、小学校2年生から高校1年生という学習や人- 33 - のとして軽視することは不相当であり、不利益も大きなものと見るべきときがあり、本件はそのようなときに当たるというべきである。 さらに、原告は、小学校2年生から高校1年生という学習や人- 33 -間形成にとって極めて重要な約8年間を、日本の学校や日本社会において生活し、来日当初はほとんど理解することができなかった日本語を大変な努力を重ねて身に付け、現在では、日本人と全く変わりのない生活を継続しており、日本語や日本の生活習慣になじんでいるのである。他方、原告にとって、言語も生活習慣も全く異なる中国で生活することは、大きな困難が生じるであろうと推測するに難くない。 また、原告は、本件裁決の当時、高校1年生であったが、既に17歳であり、自らの将来について自分で判断することができる年齢になっていたということができる。そして、前記認定事実に照らすと、原告は、本件裁決当時、日本での学習を継続し、大学に進学して、就職し、社会に役に立てることをしていきたいと強く希望するなど、自らの将来について自分で考えていたことが認められるのである。 (二)ところが、証拠(乙6、11、13)及び弁論の全趣旨を総合すると、東京入管入国警備官や東京入管特別審理官は、原告から、多少、その生活状況等について事情を聴取しているものの、原告の来日以降の学習状況や生活状況、原告の日本語の能力、原告の中国語の能力、将来についての考察態度や判断能力等について、詳細に事情を聴取しているとはいえず、また、被告入国審査官は、原告自身からは事情を聴取しておらず、P2からも、上記の点については、十分に聴取していなかったことが認められる。 - 34 -そうすると、被告東京入管局長は、本件裁決をする際に、原告の具体的な学習状況や生活状況、原告の日本語の能力、原告の中国語の能力、将来につい 十分に聴取していなかったことが認められる。 - 34 -そうすると、被告東京入管局長は、本件裁決をする際に、原告の具体的な学習状況や生活状況、原告の日本語の能力、原告の中国語の能力、将来についての考察態度や判断能力等について、十分考慮することがなかったと推認することができる。 しかし、既に判示したところを総合すると、原告は、平成8年の来日当初は、日本語や日本での学校生活に苦労したものの、日本の学校で約8年間学習し、日本人の子供と全く変わりのない生活をするまでに至っており、その学習状況や生活状況に照らすと、今後とも学習を継続し、日本社会に溶け込んで、日本社会に貢献することが十分に考えられるところであり、自分の人生や将来についても真しに考察してこれを判断する能力があったと認めることができる。 そうすると、被告東京入管局長が、原告の学習状況や生活状況、判断能力等について、前記判示のように適正に認定していれば、不法上陸及び不法滞在については原告に何らの責任もない以上、被告東京入管局長は、原告に在留特別許可を付与した可能性が相当に高かったであろうと推認することができる。 以上によると、原告に在留特別許可を付与しなかった本件裁決は、その判断が全く事実の基礎を欠くことが明らかである。 (三)また、仮に、被告東京入管局長が前記(一)及び(二)のような事実関係を把握していたのに本件裁決をしたというのであれば、被告東京入管局長は、原告が中国で出生し、小学校3年生の初めまで中国で教育を受けてきたことや、原告が未成年者であることを過度に- 35 -重視したか、あるいは、不法上陸及び不法滞在につき原告自身を責めることができないため、原告について好ましくない者として類型的な評価をすることができず、かつ、国外退去させられることの不利益も十分に勘案すべきで 、あるいは、不法上陸及び不法滞在につき原告自身を責めることができないため、原告について好ましくない者として類型的な評価をすることができず、かつ、国外退去させられることの不利益も十分に勘案すべきであることや、原告のこれまでの努力、中国語能力の乏しさ、原告が今後とも日本社会に溶け込んで、日本社会に貢献し得ること、自分の人生についての判断能力があること等を軽視して、在留特別許可を付与しないという判断に達したものと推認するのが相当である。そうであるとすれば、そのような判断は、社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるというべきである。 (四)( )もっとも、既に判示したように、本件裁決当時、原告の父 であるP1は、東京入管に収容中であって、本件裁決の日付と同日付けで被告主任審査官による退去強制令書発付処分がされている。原告の母であるP2については、退去強制令書発付処分はまだされていなかったものの、前述した処分経緯に照らすと、早晩退去強制令書発付処分がされる可能性が高かったということができる。そして、本件裁決後ではあるが、実際にも、P1及びP2は中国に帰国しているのである。 そうすると、本件裁決当時、原告が日本に在留する場合には、両親と別れて暮らす結果となり、原告が経済的に生活を維持することが困難になることが予想されていたとも考えられる。 しかし、本件裁決時においても、原告は17歳であり、アルバ- 36 -イトによる収入を見込むこともできる上、前述した千葉市の里親委託制度も存在し、また、前記認定事実によると、本件裁決時においても、原告及びP3の在留を支援する者らが多数いるのであり、このような者たちの支援も期待することができたというべきである。また、前記認定事実によると、原告は、大学進学のために学費等が必要になることについても認 びP3の在留を支援する者らが多数いるのであり、このような者たちの支援も期待することができたというべきである。また、前記認定事実によると、原告は、大学進学のために学費等が必要になることについても認識しているのであり、そのようなことをも考慮した上で、なお、本件訴えを提起し、本邦に在留することを選択しているのであるから、将来、多少、経済的な困難を伴う可能性があるからといって、それならば、原告やその両親の判断によって帰国すればよいのであり、出入国管理行政上、一方的に原告等の選択を排除して、国外退去を強制すべき理由はないというべきである。 ( )また、以上の事実関係に照らすと、日本において両親の監護 を受けられないことによる原告に対する心理的、物理的影響も軽視し難いということができる。 しかし、高校生が親元を離れて暮らすことは、日本人であっても必ずしも珍しいことではないのである。しかも、現在では通信手段が発達している上、前記認定事実のとおり、原告には友人も豊富であって、教師であるP9や支援者等による支えも期待することができたというべきである。そうすると、両親による直接の監護を受けられない点を本人の判断を無視するほどに重視することは相当ではなく、この点も、原告自身や両親の判断にゆだねる- 37 -べきことと考えるのが相当である。 (五)( )アこれに対して、被告東京入管局長は、原告が、日本語を 十分に理解することができないP1及びP2と話をする時には、中国語を使っていること、原告が中国語で思考することがあること、及び原告が、現在、中国語を勉強していないことからすると、中国に帰国すれば、中国語を理解することができるようになる旨主張する。 イしかし、前記認定事実のとおり、原告は、中国では約2年間小学校で教育を受けただけであり、それ 勉強していないことからすると、中国に帰国すれば、中国語を理解することができるようになる旨主張する。 イしかし、前記認定事実のとおり、原告は、中国では約2年間小学校で教育を受けただけであり、それ以降、本件裁決時までの約8年間、中国語で学校の授業を受けたことがなく、中国語の読み書き能力を有していないのである。また、平成13年に中国に一時帰国した際に一週間小学校1年生程度の勉強をしてみたことをもって、中国で学校教育を受けたと評価することができないのは当然である。 そうすると、たとえ、原告が、P1及びP2と話をする時に、中国語を用いていたとしても、そのことから、原告が学習したり、思考したりするときに、中国語を用いているということはできないのである。また、原告は、P1及びP2と話をする時以外には中国語を用いていないのであるからこそ、中国語については簡単な日常会話程度しかすることができないのである。 さらに、外国語を十分に用いることができない日本人であっても、思考するなどの時に、外国語の概念を用いることもある- 38 -ことからすると、原告が日本語のみならず中国語も思考に用いることがあるとしても、そのことから、直ちに、原告が、中国語を十分に理解することができるということにはならないというべきである。 被告東京入管局長は、原告について、中国語を今後勉強していけば、身に付く旨主張する。しかし、前示のとおり、原告について、日本語の習得のために、これまで相当期間のたゆまない努力が必要であったことや、年齢もいわゆる人格形成期を過ぎつつあることを考えれば、今後、仮に、原告が現在の日本語の読み書き能力のレベルにまで中国語を身に付けるためには、相当の困難を伴うことは明らかであり、中国において高校に編入入学したり、大学へ進学することが当面不可能である 、今後、仮に、原告が現在の日本語の読み書き能力のレベルにまで中国語を身に付けるためには、相当の困難を伴うことは明らかであり、中国において高校に編入入学したり、大学へ進学することが当面不可能であることは、十分推認することができるというべきである。 ウしたがって、被告東京入管局長の前記アの主張は、採用することができない。 ( )アまた、被告東京入管局長は、原告が、千葉市の里親委託制 度を利用するようになったことや、P12兄妹支援団による支援を受けていることは、本件裁決後の事情にすぎない旨主張する。 イ確かに、上記の各事実は、本件裁決後の事情であり、本件裁決の適法性の判断に当たって、そのまま斟酌することのできる事情というわけではない。 - 39 -しかし、本件裁決後、それほど間を置かずして、原告及びP3について、求める会とも相談して、千葉市の里親委託制度の利用をしたこと、また、P12兄妹支援団が設立されたことは、前述した原告の生活態度や学習態度、将来への希望、判断能力等を考え合わせると、いずれも、本件裁決当時、原告及びP3の在留や在留後の生活について、多数の支援者がおり、その者らの協力を求めることができる状態にあったことや、里親委託制度等の公的支援体制についてもその利用が検討されたであろうことを推認することのできる事実に当たるというべきである。 また、これを言い換えれば、本件裁決当時の原告をめぐる状況や原告の考えに照らせば、原告が、千葉市の里親委託制度を利用したり、P12兄妹支援団による支援を受けるなどして何とか日本に在留して高校生生活を送ることができる可能性があったことは、本件裁決当時にも、予測し得るところであったというべきである。 さらに、本件裁決当時における可能性としては、原告に在留特別許可を付与しても、両親の意向や 生活を送ることができる可能性があったことは、本件裁決当時にも、予測し得るところであったというべきである。 さらに、本件裁決当時における可能性としては、原告に在留特別許可を付与しても、両親の意向や、あるいは親元を離れて生活することによる物心両面の困難さから、原告がその考えを変更して、結局、両親と共に生活するために出国するという事態もあり得るところと考えられる。しかし、それは、原告やその両親が自らの意思で決すべき問題であり、日本での学業継続の意向が強く、支援者もいるなど、既に判示した事実関係に照- 40 -らせば、そのような可能性もあるからといって、出入国管理行政上、強制的に出国させるのが相当であるということにはならないものというべきである。 ウなお、被告東京入管局長は、P12兄妹支援団の実体性ないし実効性について疑問がある旨主張する。 しかし、証拠(甲16の1ないし3、20、24から27まで、30、31)及び弁論の全趣旨によると、①求める会は、原告及びP3の在留を求める嘆願書を集める活動をしていた者を中心に、平成16年12月11日に設立された団体であること、②求める会は、原告及びP3の在留を求める嘆願書を集めたり、訴訟費用の準備のため支援者から資金を集めたりしたこと、③求める会は、P1及びP2が収容された後は、会員が交替で原告等の居宅を訪ね、心理面での支援をして二人を励まし、その後、P1及びP2の帰国の前には、千葉市児童相談所を紹介し、また、P3の高校の入学試験の受験勉強の支援を行い、さらに、本件訴えの提起後の平成17年4月からは、「P12さん兄妹支援ニュース」を発行して訴訟の進行状況を支援者に報告したこと、④現在、求める会は、P1及びP2の仮放免のために準備した保証金の返還額である100万円と、300人以上の支援者から 「P12さん兄妹支援ニュース」を発行して訴訟の進行状況を支援者に報告したこと、④現在、求める会は、P1及びP2の仮放免のために準備した保証金の返還額である100万円と、300人以上の支援者からの寄付金合計約97万円の合計約197万円の資金を保有していること、⑤P9等の求める会の会員の認識としては、同会で集めた資金は、訴訟費用だけでなく、原告及- 41 -びP3の二人が里親宅から離れて生活する場合の生活費や原告の大学の進学費用等に用いることができるものであること、⑥求める会は、その名称上、原告及びP3の在留資格が認められた場合には目的を達成して解散することとなっていたことから、同会の会員を中心として、平成17年9月1日に、P12兄妹支援団が設立されたのであり、上記支援団の構成員は、求める会の会員とほぼ同じであること、⑦上記支援団には、設立趣旨書や、運営規定、構成員の名簿が設けられていることが認められる。 以上によると、P12兄妹支援団は、求める会の会員を中心として、その活動を引き継ぎ、さらに、原告及びP3の在留が認められた後の生活支援も含めて原告等を支援するために設けられた団体であるということができる。また、求める会は、原告等の在留を求めるだけでなく、生活を支援するために積極的な活動を行っており、かつ、相当の資金もあるのであるから、その実体を十分に認めることができるとともに、原告等に対する実効的な支援を行っていたものと認めることができるのである。 そうすると、P12兄妹支援団についても、その実体性ないし実効性を認めることができるというべきである。 なお、被告東京入管局長は、求める会の資金が、原告やP3に対してほとんど支払われていなかったことも主張する。 - 42 -しかし、前記認定事実によれば、原告及びP3は、現在、千葉 いうべきである。 なお、被告東京入管局長は、求める会の資金が、原告やP3に対してほとんど支払われていなかったことも主張する。 - 42 -しかし、前記認定事実によれば、原告及びP3は、現在、千葉市の里親委託制度の適用を受けており、千葉市から、生活費や就学費等の支給を受けているのであって、生活費や学費に困ることがないからこそ、求める会から生活費や学費の金銭的援助をほとんど受けていないにすぎないものと推認することができる。そうすると、原告及びP3が、現在、生活費や学費について、求める会からほとんど金銭的援助を受けていないからといって、将来にわたって、求める会が、原告及びP3に対して、生活費や学費の援助をしないということにはならないというべきである。 エそうすると、被告東京入管局長の前記ア及びウの主張は、採用することができない。 ( )アさらに、被告東京入管局長は、原告が本国に帰国すること により、当初は困惑するような事態が多少生じることがあるとしても、直ちに経済的に困窮するような状況が生じるとは考えられない旨主張する。 イ確かに、原告が中国に帰国しても経済的に困窮するような状況が生じると認めるに足りる証拠はない。しかし、前示のとおり、原告が中国に帰国することによる困難は、主として、言語、生活習慣や、学習面、将来の進路等に係るものである。 ウしたがって、被告東京入管局長の前記アの主張は、的を射ないものであって、採用することができない。 - 43 -( )アさらに、被告東京入管局長は、P1の不法就労によって得 られた資金があることをもって、本邦において原告が勉学を安定的かつ経済的に行うための経費支弁能力を肯定することは、出入国法が罰則まで設けて禁止している不法就労を容認することになりかねず、認められない旨主張する。 イ をもって、本邦において原告が勉学を安定的かつ経済的に行うための経費支弁能力を肯定することは、出入国法が罰則まで設けて禁止している不法就労を容認することになりかねず、認められない旨主張する。 イしかし、在留資格の認定は、将来に向けての判断であるところ、本件裁決の当時、P1は既に収容されて、退去強制令書発付処分がされていたのであるから、原告の今後の学費が、今後のP1の不法就労によって賄われるという危ぐはなかったというべきである。 さらに、仮に、今後、原告が、P1の過去の不法就労によって既に得た資金を学費として用いることがあったとしても、不法上陸や不法滞在について原告には帰責性がないという特別な事情のある本件の場合においては、そのことがP1の不法就労を容認することになるとは必ずしもいえないし、既に中国に出国したP1の不法就労を助長することはあり得ない上、我が国に滞在する不法就労者一般に対して、不法就労を助長することになるとも考え難いというべきである。 ウよって、被告東京入管局長の前記アの主張は、採用することができない。 ( )ア被告東京入管局長は、原告が日本で教育を受けていた事実 があったとしても、それは不法上陸に基づく違法状態の上に築- 44 -かれたものであるから、法的保護を受けない旨主張する。 イしかし、前示のとおり、原告は、9歳の時に、P1が、日本国籍を有するP4の子であると偽って来日した際に、その事情を知らずにP1及びP2に連れられて本邦に入国し、その後、P1の偽った行為が発覚することにより、原告の上陸許可も取り消されたのである。したがって、原告にとっては、いかんともし難い事情により、さかのぼって不法上陸者ということになったのであり、既に判示したとおり、不法上陸や不法滞在について、原告に何らの帰責性もないという のである。したがって、原告にとっては、いかんともし難い事情により、さかのぼって不法上陸者ということになったのであり、既に判示したとおり、不法上陸や不法滞在について、原告に何らの帰責性もないということができる。 そうすると、自らが意図して不法上陸や不法滞在を行った場合とは異なり、原告に責任を問うことができない本件の場合については、当該事実が違法状態の上に築かれたものであるからといって、法的保護に値しないということはできないというべきである。 むしろ、その者に責任を問うことができない本件のような例外的な場合については、前示のとおり、在留特別許可の判断に当たっては、違法状態の時に生じた事実であっても、慎重に吟味しなければならないというべきである。 ウしたがって、被告東京入管局長の前記アの主張は、採用することができない。 ( )アさらに、被告東京入管局長は、原告が中国に帰国した場合、 言語や生活様式等の違いについて多少の困難が生じることがあ- 45 -ったとしても、そのような困難は、外国で長期間生活をした子女が本国に戻った際に多々直面することであり、ましてや、原告については、いまだ可塑性に富む年齢であり、その父母は、既に本国で生活し、言語はもちろんのこと、生活様式等にも習熟している上、親族も生活しているのであり、このような状況を見れば、原告が中国で生活してもその困難を乗り越えることは十分に可能であると認められるから、このような事情をもって、在留を特別に許可すべき事情ということはできない旨主張する。 イしかし、本件で問題となっているのは、本人の選択によらずに、出入国管理行政上強制的に退去させるのが著しく妥当性を欠くか否かであり、外国で長期間生活をした子女が自分や両親の意思で本国に戻る場合とは、その局面が全く異なるというべきで 、本人の選択によらずに、出入国管理行政上強制的に退去させるのが著しく妥当性を欠くか否かであり、外国で長期間生活をした子女が自分や両親の意思で本国に戻る場合とは、その局面が全く異なるというべきである。 また、前示のとおり、原告について、日本語の習得のために、これまで相当期間のたゆまない努力が必要であったことを考えれば、今後、原告が中国語を身に付けるためには、再び相当期間にわたる困難を伴うことは容易に想定することができるというべきである。さらに、原告の現在の年齢からすると、原告が、中国において、小学校や中学校に通学して勉強し直すのは、大変な困難であるというべきであるし、原告が日本において小学生や中学生当時に日本語を学んだよりも、本人にとって辛いも- 46 -のと推認することができる。 確かに、原告は、相当の努力家であるから、仮に、中国に送還されたとしても、中国語や中国の生活様式を苦労して身に付けることができるかもしれない。しかし、そのためには、原告について、相当の困難と時間を要することは明らかというべきであり、そのような困難を一方的に強制することになることは、妥当であるとは言い難いのである。 ウしたがって、被告東京入管局長の前記アの主張は、採用することができない。 (六)以上によれば、前記のとおり、在留特別許可を付与するか否かについて法務大臣から権限の委任を受けた被告東京入管局長に与えられた裁量権が極めて広範なものであることを前提としても、原告に在留特別許可を付与しないとする被告東京入管局長の判断は、全く事実の基礎を欠くことが明らかであるか又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであり、裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たるというべきである。 したがって、その余の点について判断するまでもなく、本件裁決は違法であるというべき であるか又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであり、裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たるというべきである。 したがって、その余の点について判断するまでもなく、本件裁決は違法であるというべきである。 三争点6(本件退令処分の適法性)について法務大臣等は、出入国法49条1項による異議の申出を受理したときには、異議の申出が理由があるかどうかを裁決して、その結果を主任審査官に通知しなければならず(同条3項)、主任審査官は、法務大臣等- 47 -から異議の申出が理由がないと裁決した旨の通知を受けたときには、速やかに当該容疑者に対し、その旨を知らせるとともに、出入国法51条の規定する退去強制令書を発付しなければならない(出入国法49条6項)。 そうすると、本件裁決が違法である以上、これに従ってされた本件退令処分も違法であり、取消しを免れないといわざるを得ない。 第四 結論 よって、原告の本訴請求のうち、本件各上陸許可取消処分の取消しを求める請求に係る訴えは、いずれも不適法であるからこれらを却下することとし、本件裁決及び本件退令処分の各取消しを求める請求は、いずれも理由があるからこれらを認容することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、64条を適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部菅野博之裁判長裁判官市原義孝裁判官- 48 -近道暁郎裁判官- 49 -(別紙)当事者の主張の要旨 争点1(本件各上陸許可取消処分の取消しを求める訴えの適否)について(一)原告の主張( )原告は、平成16年11月1日、上陸許可取消通知書を受け 取ったものの、その際は、在留特別許可について説明を受けただけであった。原告は、本件各上陸許可取消処分に対して、取消訴訟を の主張( )原告は、平成16年11月1日、上陸許可取消通知書を受け 取ったものの、その際は、在留特別許可について説明を受けただけであった。原告は、本件各上陸許可取消処分に対して、取消訴訟を提起することができる旨の告知を受けておらず、かつ、そのようなことは知らなかったのであるから、出訴期間は進行していないのである。 ( )また、原告は、被告入国審査官から、出入国法24条2号に 該当する旨の認定を受けているところ、原告が同号に該当するか否かは、本件各上陸許可取消処分が有効か否かに懸かるというべきである。 そうすると、被告入国審査官の審査に当たっては、本件各上陸許可取消処分が有効か否かがその対象となることになる。 このように考えると、出入国法49条1項に基づく異議の申出は、上陸許可取消処分との関係で、改正前の行訴法14条4項にいう「審査請求」に該当するというべきである。 - 50 -( )P1は、原告が本件各上陸許可取消処分を受けた後、東京入 管の職員から、在留特別許可についての説明を受け、原告は在留特別許可を受ける可能性があることを聞いた。そして、P1は、本件各上陸許可取消処分の結果として、在留が認められるか否かは、出入国法49条3項に基づく法務大臣による裁決によって決まるものと信じたのである。また、P1は、本件各上陸許可取消処分について不服申立てをすることができる旨の説明を受けていなかったこと等から、本件各上陸許可取消処分とその後の退去強制手続が一体の手続であると理解したのである。 結局、東京入管の職員は、出入国法49条1項に基づく異議の申出が、本件各上陸許可取消処分に関する審査請求であるかのような説明をし、かつ、P1がそのように理解し、その理解に基づき、異議の申出がされたのである。 そうすると、仮に、出入国法49条 基づく異議の申出が、本件各上陸許可取消処分に関する審査請求であるかのような説明をし、かつ、P1がそのように理解し、その理解に基づき、異議の申出がされたのである。 そうすると、仮に、出入国法49条1項に基づく法務大臣による裁決が、客観的には上陸許可取消処分との関係で審査請求に当たらないとしても、行政庁が、P1に対して、誤った説明をしたのであるから、改正前の行訴法14条4項に基づき、本件裁決がされたことを知った日から、本件各上陸許可取消処分の取消しを求める訴えの出訴期間が起算されるべきである。 (二)被告入国審査官の主張( )本件各上陸許可取消処分の取消しを求める訴えは、改正前の 行訴法14条1項に定める出訴期間を徒過して提起された不適法- 51 -なものである。 すなわち、原告が、本件各上陸許可取消処分の通知を受けたのは、平成16年11月1日であるから、本件各上陸許可取消処分に係る取消訴訟は、同日を起算点として3か月以内に提起されなければならない。それなのに、本件各上陸許可取消処分の取消しを求める訴えが、出訴期間の期限である平成17年2月1日を超えて提起されたものであることは、明らかである。 ( )これに対して、原告は、本件各上陸許可取消処分に対して取 消訴訟を提起することができる旨の告知を受けておらず、かつ、そのようなことは知らなかったのであるから、出訴期間は進行しない旨主張する。 しかし、改正前の行訴法14条1項にいう「処分又は裁決があつたことを知つた日」とは、当該処分又は裁決が効力を発生したことを前提として、相手方が処分等を現実に知った日であり、かつ、その認識については、現実に了知することで足り、出訴が可能であること及び出訴期間が3か月であることを認識する必要はないのである。 そうすると、本件各上陸許可取消処分 等を現実に知った日であり、かつ、その認識については、現実に了知することで足り、出訴が可能であること及び出訴期間が3か月であることを認識する必要はないのである。 そうすると、本件各上陸許可取消処分については、原告に本件各上陸許可取消処分が通知された平成16年11月1日が、「処分又は裁決があつたことを知つた日」である。 よって、原告の上記主張は、失当である。 ( )原告は、出入国法49条1項に基づく異議の申出は、上陸許 - 52 -可取消処分との関係で、改正前の行訴法14条4項にいう「審査請求」に該当する旨主張する。 しかし、改正前の行訴法14条4項にいう「審査請求」とは、取消しを求める処分を対象とするものでなければならないのである。そして、出入国法49条1項に基づく異議の申出は、その結果として在留特別許可が付与されることがあり得るとしても、上陸許可取消処分を対象として不服申立てをするものではないのである。 そうすると、原告の上記主張は、失当である。 ( )原告は、P1が、原告が本件各上陸許可処分を受けた直後に 在留特別許可についての説明を受けていることや、その際に、本件上陸許可取消処分に対する不服申出をすることができる旨教示されていなかったことから、上陸許可取消処分とその後の退去強制手続が一体のものであったと誤信したとして、本件裁決のあったことを知った日から本件各上陸許可取消処分の取消訴訟の出訴期間が起算される旨主張する。 しかし、そもそも、上陸許可取消処分に係る不服申立ては、行政不服審査法においても、出入国法においても予定されていないから、被告入国審査官が、P1に対して不服申出について教示することができるはずはないのである。 また、改正前の行訴法14条4項後段にいう「行政庁が誤つて審査請求をすることができる旨を教示した場 ないから、被告入国審査官が、P1に対して不服申出について教示することができるはずはないのである。 また、改正前の行訴法14条4項後段にいう「行政庁が誤つて審査請求をすることができる旨を教示した場合」とは、本来不服- 53 -申立てをすることができないにもかかわらず、行政庁が誤ってこれができる旨を教示したときに適法な審査請求があったのと同様に取り扱うものとしたものであるところ、本件において、このような教示をした事実自体、存在しないのである。 そうすると、原告の上記主張は、失当である。 争点2(本件各上陸許可取消処分の適法性)について(一)原告の主張( )法令の根拠に基づかないことについて ア在留資格取消制度は、平成16年法律第73号により新設された制度であり、改正前の出入国法においては、存在しなかったものである。ところが、被告入国審査官は、平成16年法律第73号による改正後の出入国法の施行に先立ち、本件各上陸許可取消処分を行ったもので、法令上の根拠を欠いている。 このような法律上の根拠がない上陸許可取消処分は、法律による行政の原理(憲法41条)に反する。 イ(ア)仮に、被告入国審査官が主張するように、瑕疵ある行政行為については、特に法律上の根拠を必要としないで取り消すことができると考えたとしても、受益的行政処分によって与えられた利益や地位は、その者が不正の手段を講じて獲得するなどその者の責めに帰すべき事情がない限り尊重すべきであり、職権取消しは制限されるべきである。 P4との血縁関係を偽装するという不正の手段を講じて原- 54 -告に対する上陸許可を取得したのは、上陸申請手続の一切を行ったP1であり、原告本人は全く不正の手段を講じてはおらず、原告には責めに帰すべき事情がない。 そうすると、受益的行政処分である上陸 54 -告に対する上陸許可を取得したのは、上陸申請手続の一切を行ったP1であり、原告本人は全く不正の手段を講じてはおらず、原告には責めに帰すべき事情がない。 そうすると、受益的行政処分である上陸許可を職権で取り消すことはできないのであり、本件各上陸許可取消処分は、違法である。 (イ)被告入国審査官は、処分の取消しによって相手方その他、関係者の被る不利益を上回る公益上の必要性がある場合には、処分の取消しが認められる旨主張する。 しかし、被告入国審査官は、行政上の必要性だけで判断しており、上陸許可取消処分を行う必要性、上陸許可取消処分の性質及び内容、上陸許可取消処分を行うに際し原告の被る不利益の程度等を総合的に判断していないというべきであり、失当である。 ウさらに、被告入国審査官であるP14には、法令上、上陸許可の取消権限がないというべきである。 すなわち、仮に、法律上の根拠がない上陸許可取消処分を行うことができるとしても、出入国管理行政における行政庁は法務省の長である法務大臣であるから、上陸許可の取消権限も、法務大臣に帰属するというべきである。 ( )手続上の違法について ア外国人である原告にも、憲法31条の保障する告知及び聴聞- 55 -の権利があるというべきである。 また、告知及び聴聞の権利の保障は、刑事手続のみならず、行政手続にも及ぶものである。 そして、上陸許可取消手続については、対象となる外国人にとって重大な損害を被るものであること、在留資格取消制度においては、対象となる外国人に意見陳述の機会が保障されていること、行政手続法においては、不利益処分を受ける際に、被処分者に告知及び聴聞の機会が保障されていること等を総合考慮すれば、上陸許可取消手続においても、対象となる外国人に告知及び聴聞の機会の保障があり、これ 政手続法においては、不利益処分を受ける際に、被処分者に告知及び聴聞の機会が保障されていること等を総合考慮すれば、上陸許可取消手続においても、対象となる外国人に告知及び聴聞の機会の保障があり、これが与えられなければ、憲法31条に違反するというべきである。 また、聴聞は、不利益処分を受ける者の防御、弁明に支障がないような適正な方法で実施されなければならないというべきである。 イ(ア)原告は、本件各上陸許可取消処分が行われた当時、17歳であった。被告入国審査官は、原告一家に対して、平成16年11月1日、P4がP1の実母ではないことから、上陸許可を取り消す旨告げて、上陸許可取消通知書を交付したのである。 そうすると、本件各上陸許可取消処分は、原告の法定代理人が反論又は反証する十分な機会を与えられないままに行われたものであり、原告の告知及び聴聞の権利を侵害し、違法- 56 -である。 (イ)これに対して、被告入国審査官は、本件各上陸許可取消処分の通知は、P1及びP2も同席した上で行われており、法定代理人の正当な関与があった旨主張する。 しかし、上陸許可取消手続において原告の法定代理人が主張、立証、反論する機会があって初めて「法定代理人の正当な関与」があったと見るべきであるから、被告入国審査官の上記主張は、失当である。 ウ平成16年法律第73号による改正後の出入国法22条の4第3項及び4項の趣旨や行政手続法15条の趣旨等にかんがみると、上陸許可取消処分を行うに際して、相当の期間をおいて、取消しの原因となる事実を事前に通知すること、及び代理人を選任して期日に出頭して意見を述べ、証拠を提出することができる機会があることを事前に説明することが必要であり、これらを欠いた場合には、上陸許可取消処分は違法になるというべきである。 原告は、平 を選任して期日に出頭して意見を述べ、証拠を提出することができる機会があることを事前に説明することが必要であり、これらを欠いた場合には、上陸許可取消処分は違法になるというべきである。 原告は、平成16年11月1日、本件各上陸許可取消処分を受けるに際し、事前に相当期間をおいて、取消しの原因となる事実を通知されることもなく、また、代理人を選任して期日に出頭して意見を述べ、証拠を提出することができる機会があることを事前に説明されたこともなかったのである。 そうすると、本件各上陸許可取消処分は違法である。 - 57 -( )実体的違法について ア上陸許可取消処分の要件としては、不正な手段を用いて上陸許可を得たことが必要であるところ、不正の手段を用いて上陸許可を得たことに該当するためには、当該外国人に不正の手段を用いる認識が必要であるというべきである。 原告についての上陸申請手続の一切を行ったのは、P1であり、原告本人は全く不正の手段を講じた認識はなかった。 したがって、本件各上陸許可取消処分は、要件を欠き、違法である。 イ(ア)上陸許可取消処分を行うためには、上陸許可取消事由に該当することのほか、取消しの必要性を具備することが必要である。 (イ)原告本人は、平成8年12月29日付け及び平成13年8月10日付けの各上陸許可を得ることについて、不正の手段を講じておらず、原告に責任を負わせるのは極めて酷である。 (ウ)原告は、平成8年に来日した当初は、全く日本語が分からない状態のまま、日本の小学校に編入し、苦労して勉強を続けた。原告は、中学校への入学後も、落ち着いた生活態度で、学年が進むにつれてより熱心に学習に取り組んだ。原告は、中学校を卒業した後、千葉県立P11高等学校電子工業科に進学した。 - 58 -このように、原告は、 学校への入学後も、落ち着いた生活態度で、学年が進むにつれてより熱心に学習に取り組んだ。原告は、中学校を卒業した後、千葉県立P11高等学校電子工業科に進学した。 - 58 -このように、原告は、まじめで穏やかな努力家であり、在留状況に何ら問題はなかった。 (エ)原告は、現在高校2年生であり、今後は日本で勉強を続けて大学に進み、電気関係の仕事に就くことを希望している。 原告は、現在、家庭内における日常範囲の中国語しか使うことができず、そのため、原告が中国に帰国したとしても、原告の年齢に合った教育を受けることができないのである。 (オ)以上の事情を考慮すれば、原告に対する各上陸許可を取り消す必要性は認められないのである。 (二)被告入国審査官の主張( )法令の根拠に基づくものであることについて ア瑕疵ある行政行為を職権で取り消すことができることは、一般にこれを定める明文上の規定がなくても、認められている。 このことは、いわゆる受益的処分についても妥当するのであって、相手方及び利害関係人の利益ないし信頼保護の要請から一定の制限があり得るとしても、処分の取消しによって相手方その他の関係者が被る不利益を上回る公益上の必要性がある場合には、処分の取消しが認められるのである。 また、処分の取消しの効果は、遡及すると考えるべきである。 さらに、仮に、処分の取消しの効果が遡及する場合を限定する考え方によっても、本件各上陸許可取消処分における取消しの原因は、行政庁ではなく、申請者たる原告の側にあることから- 59 -すると、本件各上陸許可取消処分の効果は遡及すると考えるべきである。 イ出入国法9条1項は、入国審査官は、上陸審査の結果、外国人が出入国法7条1項に規定する上陸条件に適合していると認定したときは、当該外国人に上陸許可を付与しな 効果は遡及すると考えるべきである。 イ出入国法9条1項は、入国審査官は、上陸審査の結果、外国人が出入国法7条1項に規定する上陸条件に適合していると認定したときは、当該外国人に上陸許可を付与しなければならないと規定している。そうすると、上陸許可を付与した後に、当該外国人が上陸条件に適合していないことが判明した場合には、上陸許可はそれ自体が不適法である上、上陸許可が取り消されない限り、このような不適法な処分に基づいて当該外国人の在留を合法的に容認するという結果が生じるのである。このような事態は、我が国の出入国管理における秩序という国家的公益を著しく害するというべきであって、上陸許可を取り消すべき必要性、緊急性は高く、他方、このような処分の相手方がその取消しを請求することは通常期待し得ない。 したがって、不適法な上陸許可は、公益上の必要から、取り消し得べき行政行為として、職権により取り消されるべきである。 ウこのような職権による上陸許可の取消しは、上陸及び退去強制についての審査及び口頭審理を行うこと(出入国法61条の3第2項1号)の一環として、入国審査官及び特別審理官の所掌事務として行われるものである。 なお、原告は、P14には、上陸許可取消処分を行う法令上- 60 -の権限がない旨主張するが、原告に対して上陸許可をした入国審査官と、これを取り消した入国審査官が別の者であったとしても、いずれも入国審査官であるから、適法であるというべきである。 エなお、平成16年法律第73号により、平成16年12月2日から施行された在留資格取消制度は、従前から実務上取消しの対象とされていた事由(出入国法22条の4第1項1号から4号まで)に加え、一定の場合には上陸許可後の事情(同項5号)をも取消事由とし得べきものとして、取消範囲の拡充を図っ 、従前から実務上取消しの対象とされていた事由(出入国法22条の4第1項1号から4号まで)に加え、一定の場合には上陸許可後の事情(同項5号)をも取消事由とし得べきものとして、取消範囲の拡充を図ったものであるから、上記制度の施行前においても、従前から実務上取消しの対象とされていた事由による職権取消しが妨げられないことは明らかである。 ( )手続上も適法であることについて ア原告は、本件各上陸許可取消処分について、①法定代理人の正当な関与がなかったこと、②手続について適切な説明がなかったこと、③反論及び反証の機会が与えられなかったこと、④代理人選任権の告知がなかったことを主張する。 イしかし、本件各上陸許可取消処分の通知は、原告一家全員を同じ部屋に通した上で、各人に対して行われたもので、P1及びP2も同じ部屋に在室する状況の下で行われたものである。 そうすると、法定代理人の正当な関与がなかったとする原告の上記ア①の主張、及び手続について説明がなかったとする原- 61 -告の上記ア②の主張は、いずれも失当である。 ウさらに、外国人の出入国等については、行政手続法の適用がなく(同法3条1項10号)、同法の定める聴聞等の手続の規定は適用されないのであるから、反論及び反証の機会が与えられなかったとする原告の前記ア③の主張、及び代理人選任権の告知がなかったとする原告の前記ア④の主張は、いずれも失当である。 ( )実体的にも適法であることについて 原告は、日本において教育を継続する必要があること、及び各上陸許可を受けるに当たって原告には帰責性がないことを主張する。 しかし、上記のような事情が存在したとしても、そのことによって、上陸許可の瑕疵の存否が左右されるものではなく、また、その瑕疵が治癒されるものではないから、原告の上記主張 責性がないことを主張する。 しかし、上記のような事情が存在したとしても、そのことによって、上陸許可の瑕疵の存否が左右されるものではなく、また、その瑕疵が治癒されるものではないから、原告の上記主張はいずれも失当である。 争点3(本件裁決の実体上の適法性)について(一)原告の主張( )条約違反について 本件裁決は、原告を強制送還し、原告の日本で教育を受ける機会を奪う点で、A規約13条1項、2項(d)、児童の権利に関する条約28条1項、3条に違反し、違法である。 ( )在留特別許可における裁量権の範囲について - 62 -在留特別許可を付与しないという法務大臣の判断は、全く事実の基礎を欠き、又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかな場合には、裁量権の逸脱ないし濫用として違法となるというべきである。 出入国法50条1項3号は、法務大臣に「特別に在留を許可すべき事情」をあらかじめ定める権限を与え、当該外国人に「特別に在留を許可すべき事情」があると認められた場合には、日本への在留を許可するよう定めた規定であり、また、「特別に在留を許可すべき事情」の一般的要件の定立に当たっては、条約、日本国憲法、出入国管理基本計画に従う必要がある。 ( )原告に対して特別に在留を許可すべき事情について ア原告は、平成8年12月29日に、P1、P2及びP3と共に来日したものであるところ、その際、原告は9歳であり、また、上記来日はP1が主導したものであることからすると、日本に上陸する際に必要な上陸申請手続は、P1が原告に代わって行ったものと推測され、少なくとも、原告自身が上陸申請の意義や効果を理解して行ったものではない。 原告は、P1及びP2から、P4が原告の祖母であると聞かされていたことから、現にそのように信じたのであり、平成8 推測され、少なくとも、原告自身が上陸申請の意義や効果を理解して行ったものではない。 原告は、P1及びP2から、P4が原告の祖母であると聞かされていたことから、現にそのように信じたのであり、平成8年12月29日の来日時に、原告には虚偽の申告をする認識はなかったのである。 その後も、原告についての在留期間更新許可申請手続は、す- 63 -べてP1が行っていること、原告がP4との間に血縁関係がないことを知ったのは、本件各上陸許可取消処分がされた平成16年11月1日であったことからすると、原告は、来日後の在留期間更新許可申請等の手続においても、虚偽の申告をする認識は一切なかったものである。 イ原告は、来日後、日本の小学校に通い始めたが、当初は日本語が全く分からなかった。しかし、原告は、平日の夜や土曜日に日本語学校に通うなどの努力を続けて、中学校を卒業し、推薦で高校に入学し、授業を受けるまでに日本語を習得した。 ウ(ア)原告及びP3が中国の学校へ転校することの可能性を検討するため、原告一家は、平成13年6月、ハルピンに里帰りをした。そして、原告及びP3は、小学校の教師をしている原告の親戚から、小学校1年生の国語の教科書を用いた授業を受けたが、原告及びP3は、その内容すら理解することができなかった。そこで、原告の親戚の教師は、原告及びP3が中国の学校に転校するのは無理であると判断した。それを踏まえて、P1は、原告を中国の学校に転校させることはしないで、日本での教育を継続することとした。 (イ)被告東京入管局長は、原告が、平成13年6月の帰国後約1か月間、中国語の学習をしていなかったこと等を根拠に、一時帰国の目的が親族訪問であった旨主張する。 しかし、原告及びP3の中国語の授業開始が7月下旬にな- 64 -った理由は、中国の小学校が 約1か月間、中国語の学習をしていなかったこと等を根拠に、一時帰国の目的が親族訪問であった旨主張する。 しかし、原告及びP3の中国語の授業開始が7月下旬にな- 64 -った理由は、中国の小学校が夏休みに入らなければ、教師をしている親戚が原告及びP3に授業をする時間をとることができなかった上、会場となる小学校の教室を貸してもらえなかったからである。そして、原告の親戚の教師は、原告の中国語の能力について、中国で小学校4、5年生の勉強をすることすら無理であると判断したため、1週間で授業をするのをあきらめたのである。 仮に、被告東京入管局長の主張するように、一時帰国の目的が親族訪問であったとすれば、日本の学校での勉強に支障がないように、原告及びP3が夏休みに入ってから中国に行けば良いのであり、6月29日という中途半端な時機に中国に行く必要はないというべきである。 よって、被告東京入管局長の上記主張は、失当である。 (ウ)さらに、被告東京入管局長は、原告の親戚の教師に中国語を教わったところ、原告が理解することができなかった事情は、中国に帰国した際の障害にはならない旨主張する。 しかし、授業方法についてP1及びP2や通訳を介していなかったことは、現実の授業方法に適合したものであるし、そもそもP1及びP2は、通訳をすることができる能力も持っていないのである。 また、1週間という授業時間は、原告及びP3が中国の学校に転校して授業を受けることができるかを見極めるための- 65 -期間であり、必ずしも短いということはできない。 エ(ア)原告は、中国において、2年間の初等教育を受けたものの、家庭でP1及びP2と会話する時以外には中国語を使っていなかったことから、来日時の9歳のレベルの中国語の能力すら失った。 したがって、原告は、就学したばかりの いて、2年間の初等教育を受けたものの、家庭でP1及びP2と会話する時以外には中国語を使っていなかったことから、来日時の9歳のレベルの中国語の能力すら失った。 したがって、原告は、就学したばかりの児童と同じレベルでしか中国語の学習言語が身に付いていないのである。そのため、原告は、その能力に応じた教育を受け続けることがほぼ不可能である上、将来に就く職業も知性を要しないものに限定されてしまう可能性が高くなる。 (イ)これに対して、被告東京入管局長は、原告が家庭内で中国語を使っていることを根拠に、原告に相当の中国語能力がある旨主張する。 しかし、日常生活言語と学習思考言語には、大きな違いがあるというべきである。 (ウ)さらに、被告東京入管局長は、原告が物事を考えるとき、日本語と中国語のどちらも出ることがあることをもって、原告に相当な中国語の能力がある旨主張する。 しかし、そのことは、原告に中国語の能力があることを示す根拠となり得るものではなく、むしろ、原告が母語である中国語と学習言語である日本語のどちらの言語も完全に習得することができない危険性にさらされてきた事実を明らかに- 66 -するものということができる。原告が習得した学習言語は、日本語だけなのであるから、日本において学習を継続する道が閉ざされてしまい、中国に帰国することになれば、中国語でも日本語でも知的な活動に制限のある言語運用能力しかない存在になってしまう危険性が高いというべきである。 オ(ア)千葉市児童相談所は、平成17年4月、原告及びP3に対して、保護措置を執ることとし、原告及びP3は、同年5月13日から原告及びP3がそれぞれ高校を卒業するまでの間、千葉市内の里親に委託されることとなった。 原告は、現在、里親と同居して、その監護を受け、千葉県立P11高等学校に通 原告及びP3は、同年5月13日から原告及びP3がそれぞれ高校を卒業するまでの間、千葉市内の里親に委託されることとなった。 原告は、現在、里親と同居して、その監護を受け、千葉県立P11高等学校に通学している。原告の生活態度、授業態度に問題はなく、成績も良好である。 (イ)小学校の教員のP9は、原告の来日直後から学習支援に当たってきていたが、平成17年9月1日に、「P12兄妹支援団」を設立した。上記支援団は、原告及びP3の生活等を支援するほか、里親委託の終了後に、自立支援、進学支援を物心両面からすることを目的としている。 原告及びP3は、里親の指導を素直に受け入れ、上記支援団の支援に感謝しながら生活を送っている。原告は、高校を卒業するまでは公的支援と上記支援団による支援を受けることができ、また、高校卒業後は、上記支援団による支援を受けることができるので、原告及びP3の将来についての不安- 67 -はないというべきである。 (ウ)これに対して、被告東京入管局長は、里親制度の利用やP12兄妹支援団の設立は、処分後の事情にすぎない旨主張する。 しかし、処分時に一定の事実状態が存在し、その後の事情の変化に対応して、処分時の事実状態に変化あるいは発展があった場合には、それらをも考慮に入れるべきである。 そして、支援体制については、平成16年12月11日、「P12さん兄妹の在留を求める会」が設立され、東京入管に嘆願書を提出するほか、原告及びP3に対する支援活動を行っていたのであり、支援体制が処分後に発生したということはできない。また、P12兄妹支援団は、上記求める会の活動を承継し、その目的を明確化したものにすぎないのである。 また、里親委託制度の適用は、児童福祉法に基づくものであり、被告東京入管局長らの行為によりP1及びP2を収容した 援団は、上記求める会の活動を承継し、その目的を明確化したものにすぎないのである。 また、里親委託制度の適用は、児童福祉法に基づくものであり、被告東京入管局長らの行為によりP1及びP2を収容したことにより生じたものである。 (エ)被告東京入管局長は、P12兄妹支援団の実効性について疑問がある旨主張するが、平成18年2月現在、約197万円の資金が集まっていること、さらに、P2の交通事故による損害賠償金約300万円が、進学費用に充てられる予定であることからすると、P12兄妹支援団の実効性には何ら- 68 -疑問がないというべきである。 カ原告は、コンピュータに興味を持ち、大学に進学し、工学部電気科で学び、大学卒業後は、電気関係の職業に就くことを希望している。原告を中国に送還することは、原告の自己実現の機会を奪うことを意味するというべきである。 キ原告については、日本で教育を受け続けることが必要不可欠であり、また、原告は違法な自己の上陸許可に関与していないのである。 そうすると、本件裁決は、その判断の基礎となった事実に誤認があり、社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであって、被告東京入管局長の裁量権を逸脱ないし濫用した違法があるというべきである。 ク被告東京入管局長は、P2が中国に200万円を持ち帰ったと考えられることから、中国にいる原告の両親には、経済的基盤があり、原告及びP3が帰国したとしても直ちに困窮することはない旨主張する。 しかし、P1及びP2は、上記200万円のうち、原告及びP3に100万円を持たせるとともに、残りの100万円は、仮放免のための保証金として、P12さん兄妹の在留を求める会に所属するP15に預けたのである。P15は、この100万円を、原告及びP3の訴訟費用、大学進学費用、進学後の生活費等に充て 00万円は、仮放免のための保証金として、P12さん兄妹の在留を求める会に所属するP15に預けたのである。P15は、この100万円を、原告及びP3の訴訟費用、大学進学費用、進学後の生活費等に充てる予定である。P2は、200万円を中国に持っ- 69 -て帰らなかったのであり、十分な経済的基盤があるということはできない。 ケ被告東京入管局長は、原告の生活費用等は、P1による不法就労により得た金員によって賄われており、「就学」の在留資格該当性の要件の一つとしての「経費支弁能力」を満たさない旨主張する。 しかし、在留資格該当性の判断は、将来に向けての判断であって、過去の事実状態の判断ではない。そして、本件裁決の当時、P1は既に収容されており、原告の今後の学費が、P1の就労により賄われる状態にはなかったのである。 さらに、原告については、児童福祉法による保護が与えられ、通学することができるのである。 したがって、被告東京入管局長の上記主張は、失当である。 (二)被告東京入管局長の主張( )条約違反ではないことについて 原告は、本件裁決が、A規約13条及び児童の権利に関する条約28条に違反する旨主張する。 しかし、A規約2条1項が規定するように、A規約は、方針規定としての性格が強く、個人に対して即時に具体的な権利を付与すべきことを定めたものではないと解すべきである。 また、児童の権利に関する条約についても、個々の具体的権利について規定したものと見ることはできず、裁判規範として直接- 70 -適用可能なものではない。仮にその点をさておくとしても、同条約が、外国人が本邦に在留する権利までも保障したものでないことは、同条約9条4項が、父母の一方若しくは双方又は児童の退去強制の措置に基づき、父母と児童が分離されることのあることを予定して も、同条約が、外国人が本邦に在留する権利までも保障したものでないことは、同条約9条4項が、父母の一方若しくは双方又は児童の退去強制の措置に基づき、父母と児童が分離されることのあることを予定していることからも明らかである。 ( )在留特別許可における裁量権の範囲について アそもそも、国家は、外国人を受け入れる義務を国際慣習法上負うものではなく、特別の条約ないし取決めがない限り、外国人を自国内に受け入れるかどうか、また、これを受け入れる場合にいかなる条件を付するかを自由に決することができる。憲法上も、外国人は、我が国に入国する自由を保障されているものでないことはもちろん、在留の権利ないし引き続き本邦に在留することを要求する権利を保障されているものでもない。我が国に適法に在留し、期間更新について申請権も付与されている在留期間更新の許否についてさえ、我が国への入国・在留が憲法上当然に保障されたものではなく、国家の自由な裁量に任されていることに基づき、更新事由の有無の判断は、法務大臣の裁量に任されているのである。これに対し、在留特別許可は、出入国法上、退去強制事由が認められ、退去させられるべき外国人に恩恵的に与え得るものにすぎず、当該外国人には申請権も認められていないものである。 イ出入国法24条各号の退去強制事由に該当するということは、- 71 -類型的に見て、我が国社会に滞在させることが好ましくない外国人であり、在留特別許可の許否の判断に当たっては、そのことを前提にした上で、恩恵として、当該外国人の在留を特別に許可することが我が国の国益の保持に合致するか否かを検討する必要がある。具体的には、当該外国人の滞在中の一切の行状等の個別的事情のみならず、国内の治安や善良な風俗の維持、保健・衛生の確保、労働市場の安定等の政治、経 国の国益の保持に合致するか否かを検討する必要がある。具体的には、当該外国人の滞在中の一切の行状等の個別的事情のみならず、国内の治安や善良な風俗の維持、保健・衛生の確保、労働市場の安定等の政治、経済、社会等の諸事情、当該外国人の本国との外交関係、我が国の外交政策、国際情勢といった諸般の事情をその時々に応じ、各事情に関する将来の変化の可能性なども含めて総合的に考慮し、我が国の国益を害さず、むしろ積極的に利すると認められるか否かを判断して行わなければならない。そして、そのような判断は、国内はもとより国際的にも広範な情報を収集し、その分析の上に立って、先例にとらわれず、時宜に応じて的確かつ慎重に行う必要があり、時には高度に政治的な判断を要求される場合もあり得ることなどにかんがみれば、出入国管理行政全般について国民や社会に対して責任を負う法務大臣の極めて広範な裁量にゆだねるのが適当である。 ウ以上のとおり、出入国法24条各号の退去強制事由に該当する、我が国にとって好ましくない外国人を対象とする在留特別許可に係る法務大臣の裁量は極めて広いものであり、適法に在留する外国人を対象とする在留期間更新許可に係る法務大臣の- 72 -それと比べても質的に格段にその範囲が広いというべきであるから、在留特別許可を付与しないという法務大臣の判断が裁量権の逸脱濫用に当たるとして違法とされるような事態は容易には想定し難いというべきである。極めて例外的にその判断が違法となり得る場合があるとしても、それは、法律上当然に退去強制されるべき外国人について、なお我が国に在留することを認めなければならない積極的な理由があったにもかかわらずこれが看過されたなど、在留特別許可の制度を設けた出入国法の趣旨に明らかに反するような極めて特別な事情が認められる場合に限られ 在留することを認めなければならない積極的な理由があったにもかかわらずこれが看過されたなど、在留特別許可の制度を設けた出入国法の趣旨に明らかに反するような極めて特別な事情が認められる場合に限られるというべきである。 そして、以上の理は、法務大臣から権限の委任を受けた被告東京入管局長にも妥当する。 エ原告は、出入国法50条1項3号は、法務大臣に「特別に在留を許可すべき事情」をあらかじめ定める権限を与え、当該外国人に「特別に在留を許可すべき事情」があると認められた場合には、日本への在留を許可するよう定めた規定であり、また、「特別に在留を許可すべき事情」の一般的要件の定立に当たっては、条約、憲法、出入国管理基本計画に従う必要がある旨主張する。 しかし、出入国法50条1項3号の文言を見ても、同号が法務大臣に「特別に在留を許可すべき事情」を定めることを要求していると見ることはできないのであり、同号は、法務大臣等- 73 -に極めて広範な要件裁量を認めたものというべきである。 また、出入国法61条の10は、法務大臣は、出入国管理基本計画に基づいて、外国人の出入国を公正に管理するよう努めなければならないと規定しているのであるから、法務大臣は、出入国管理基本計画を最大限に尊重した行政運営に努めなければならないことはもちろんであるが、同条はあくまで訓示規定であり、出入国管理基本計画に法的拘束力はないのである。 したがって、出入国管理基本計画により、法務大臣から権限の委任を受けた被告東京入管局長の在留特別許可の許否に係る裁量権の範囲が法的に制約されることはないというべきである。 ( )原告に対して特別に在留を許可すべき事情がないことについ てア原告においても、P4との血縁関係を偽装するという不正の手段を講じて上陸許可を受けた事実を自認して はないというべきである。 ( )原告に対して特別に在留を許可すべき事情がないことについ てア原告においても、P4との血縁関係を偽装するという不正の手段を講じて上陸許可を受けた事実を自認しており、原告が本邦に不法上陸した事実については当事者間に争いがないというべきである。 イ原告は、本邦に身分関係を偽って入国したのは、P1の責めに帰すべきものであって、原告には何ら帰責性はない旨主張する。 しかし、不法上陸について原告自身に帰責性がないことは、在留特別許可をするか否かの判断に際し斟酌され得る事情の一つにはなり得るとしても、それにより、直ちに法的保護を受け- 74 -得ることにはならないというべきである。 ウ原告は、中国に帰国しても、中国語を理解することができない旨主張している。 しかし、P1及びP2は、日本語を十分に理解することができなかったのであって、原告は、P1及びP2が本邦で生活をしていた際には、家庭内で中国語を使っていたのであり、また、現在においても、原告が中国にいるP1及びP2と電話で連絡をする時には、中国語で会話をしているのである。 また、原告は中国語で思考することもあることからすると、原告は、相当の中国語の能力を有しているというべきである。 加えて、原告は、本人尋問において、中国語について勉強をしていない旨供述するが、原告の努力次第で中国語の能力を更に向上させることができるはずであるし、P1及びP2もこれを支援すべきであるということができる。 エまた、原告は、P1及びP2が原告及びP3を中国の学校に転校させて卒業させようと考え、当時通学していた本邦の学校を退学する手続をした上で、平成13年6月に中国に帰国し、現地の学校で教師をしている親戚に勉強を教えてもらったが、原告及びP3の理解が困難であったことから、 せようと考え、当時通学していた本邦の学校を退学する手続をした上で、平成13年6月に中国に帰国し、現地の学校で教師をしている親戚に勉強を教えてもらったが、原告及びP3の理解が困難であったことから、本邦に戻った経緯がある旨主張する。 しかし、原告は、中国に帰国していた期間のうち、原告の親戚に勉強を教えてもらうまでの1か月間は、遊んでいたという- 75 -のであり、そうすると、P1及びP2が真に原告を中国の学校に転校させようと考えていたのか、一時帰国の目的自体に疑問がある。 しかも、中国滞在中に受けた授業は、1週間しかなかったのであって、授業方法も、日本語が全く分からない者から、通訳を介さずに教えてもらったというのであるから、このような事実が存在したとしても、これをもって原告が本国に帰国した際に障害があるなどと評価することはできない。 また、原告によれば、本国に一時帰国した際には、近隣のみならず遠方の親戚とまで交流したとされていること、特にこの時点で中国の学校に転校しなければならなかったような事情は見当たらないことからすると、平成13年6月から8月にかけて原告一家が中国に帰国したのは、単に親族を訪問するためであったと考えるのが合理的である。このことは、原告が、平成13年6月29日に出国した際には、再入国許可を受けた上で本邦を出国し、上記再入国許可に基づいて本邦に入国していることからも明らかである。 そうすると、原告が本邦の学校を退学する手続をした上で中国で学業を修めるために帰国し、帰国した際に親戚の者から中国語を教えてもらったとする原告の主張ないし陳述には疑問を抱かざるを得ない。また、仮に、親戚の者から中国語を教えてもらった際、原告及びP3の理解が困難であったという事情が- 76 -あったとしても、その授業方法や授業期間からす 主張ないし陳述には疑問を抱かざるを得ない。また、仮に、親戚の者から中国語を教えてもらった際、原告及びP3の理解が困難であったという事情が- 76 -あったとしても、その授業方法や授業期間からすれば、かかる事実をもって原告が本国に帰国した際の障害であると評価することはできない。 オ原告は、千葉市の里親委託制度を利用するようになったこと及びP12兄妹支援団による支援を受けることができることを主張する。 しかし、これらは、いずれも本件裁決の日、又は本件裁決の通知日の後に生じた事情であることは明らかであるところ、これらの事情は、本件裁決の適法性に影響を及ぼすものではないというべきである。 さらに、P12兄妹支援団の実体性ないし実効性について見ると、原告は、自身が支援を受ける立場にありながら、支援内容についてほとんど理解していないのであり、支援を受ける当事者である原告がその支援内容等を詳しく承知していないというのは極めて不自然であるというべきである。 また、原告本人尋問が行われた平成17年12月20日までに、原告自身がP12兄妹支援団から現金を受領したことはなく、P3において、文房具の購入に充てるだけの金額を受領したにすぎないのであるから、少額の支出しかしていなかったというべきである。 加えて、原告本人尋問によれば、P12兄妹支援団の前身のグループが本件訴訟の費用を負担していることがうかがわれる- 77 -のであって、そうすると、P12兄妹支援団の設立も、本件訴訟を有利に進めるために形式的にされた疑いがあるといわざるを得ない。 カ原告は、中国に帰国したP1及びP2について定職に就いていない旨陳述しており、あたかも経済的な基盤がないかのように主張している。 しかし、P2は、退去強制手続において200万円程度の自己名義の貯金がある 、中国に帰国したP1及びP2について定職に就いていない旨陳述しており、あたかも経済的な基盤がないかのように主張している。 しかし、P2は、退去強制手続において200万円程度の自己名義の貯金がある旨供述しているところ、当該貯金は、P2が本国に持ち帰ったと考えられる。また、P1及びP2も農業に従事して収入を得ているのであり、しかも、原告には、親密な関係にある多数の親戚がおり、本国で生活しているのである。 そうすると、原告が本国に帰国したことにより、当初は困惑するような事態が多少生じることがあったとしても、直ちに生活に困窮するような状況が生じるとは考えられない。 キさらに、原告は、中国語の能力を著しく減退させてしまっており、仮に原告が中国に送還されても、中国語を十分に理解することができないから、中国で高等教育を受けることは不可能であり、高等教育の機会を失うことになる旨主張する。 しかし、原告が日本で教育を受けていたことが事実であったとしても、それは不法上陸に基づく本邦滞在という違法状態の上に築かれたものであるから、直ちに法的保護を受ける筋合いのものではない。 - 78 -また、中国における言語や生活様式等の違いについて、多少の困難が生じることがあったとしても、そのような困難は、外国で長期間生活をした子女が本国に戻った際に多々直面することであり、ましてや原告については、いまだ可塑性に富む年齢である。また、原告の両親は、既に本国に帰国して生活をしており、言語はもちろんのこと、生活様式等にも習熟しているし、親族も生活しているのである。 このような状況を見れば、原告が中国で生活してもその困難を乗り越えることは十分に可能であると認められるのであるから、このような事情をもって、在留を特別に許可すべき事情を構成すると認めることはできない。 ク 状況を見れば、原告が中国で生活してもその困難を乗り越えることは十分に可能であると認められるのであるから、このような事情をもって、在留を特別に許可すべき事情を構成すると認めることはできない。 ク原告は、本件裁決当時、高校に通学していた者であり、本邦における学習を継続することを希望している。 しかし、出入国法は、原則として一定の期間に限って、特定の在留資格により、入国及び在留を認める制度を採用しているところ、本件裁決がされた平成16年12月20日当時における原告の本邦における活動、すなわち、高校への通学を想定した在留資格として、「就学」が設けられている(出入国法別表第1の4)。そして、出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令(平成2年法務省令第16号)は、「就学」の活動についての上陸のための条件の基準として、「申請人が生活費用を支弁する十分な資産、奨学金その他の手- 79 -段を有すること。ただし、申請人以外の者が申請人の生活費用を支弁する場合は、この限りでない。」と規定し、本邦で勉学を安定的かつ継続的に行うための経費支弁能力を有することを基準の一つに挙げている。 原告は、本件裁決当時、自らアルバイトをしていたものの、基本的にはP1及びP2の扶養を受けていたものであり、その生活費用は、専らP1が本邦で就労したことによって得た金員で賄われていたものであるところ、これらの就労は、結局のところ不法就労と認めざるを得ない。 そして、このような不法就労によって得られた資金があることをもって、本邦において原告が勉学を安定的かつ継続的に行うための経費支弁能力があることを肯定することは、出入国法が罰則まで設けている不法就労を容認することになりかねず、到底認められるものではない。 争点4(本件裁決についての違法性の承継の 続的に行うための経費支弁能力があることを肯定することは、出入国法が罰則まで設けている不法就労を容認することになりかねず、到底認められるものではない。 争点4(本件裁決についての違法性の承継の有無)について(一)原告の主張本件裁決は、違法な本件各上陸許可取消処分を前提とする退去強制手続によるものであるから、本件上陸許可取消処分の違法性を承継し、違法である。 すなわち、出入国法49条1項に基づく異議の申出においては、上陸許可取消処分における事実誤認等を争うことができるものというべきである。また、本件上陸許可取消処分の通知の際には、入国- 80 -警備官が待機しており、通知手続が終了するとすぐに退去強制手続が開始されたのであるから、被告らの主観においては、本件各上陸許可取消処分と原告の退去強制手続とは、一体のものとされていたのである。 (二)被告東京入管局長の主張( )前記のとおり、本件各上陸許可取消処分は適法であるから、 原告の主張は、その前提を欠くというべきである。 ( )また、一般的に、先行行為たる行政処分が有効である限り、 これに瑕疵があったとしても権限のある機関によって取り消されない限り有効とされ、先行行為の違法(瑕疵)が後行行為に承継されることはなく、後行行為の取消訴訟においては後行行為固有の違法事由しか主張し得ないのが原則であり、この原則の例外として、先行行為と後行行為とが相結合して一つの効果の実現を目指し、これを完成するものである場合には、違法性の承継が認められているのである。 そうすると、上陸許可の取消処分が瑕疵ある上陸許可を職権により取り消すものであるのに対して、退去強制手続における法務大臣の裁決は、退去強制手続における特別審理官の判定に対する原告の異議の申出に理由があるか否かを決するとともに 分が瑕疵ある上陸許可を職権により取り消すものであるのに対して、退去強制手続における法務大臣の裁決は、退去強制手続における特別審理官の判定に対する原告の異議の申出に理由があるか否かを決するとともに、在留特別許可を付与すべきであるか否かをも判断するものであるから、この両者が直接的・必然的な関係を有せず、その目的及び効果を異にすることは明らかである。したがって、この両者の間に違法- 81 -性の承継が認められると解する余地はない。 争点5(本件裁決の手続上の適法性)について(一)原告の主張( )出入国法49条1項に基づく異議の申出に理由がない旨の裁 決には、特別審理官の判定及びその前提となる入国審査官の認定を相当としてこれを維持する判断を含むものであるから、出入国法49条1項の法務大臣等の裁決をするに当たっては、入国審査官の違反審査及び特別審理官の判定手続に手続的瑕疵がなかったか否かについて当然に考慮しなければならず、重大な手続的瑕疵があれば、その認定を相当と認める旨の裁決をすることはできないというべきである。 ( )ア原告の退去強制手続について見ると、平成16年11月1 日における東京入管入国警備官による違反調査は、法定代理人の関与はなく、原告のみに対して行われた。 イまた、原告に対する平成16年12月3日における東京入管特別審理官による口頭審理は、原告と立会人の立会いのみによって行われ、法定代理人の関与はなかった。 ウさらに、平成16年11月19日における被告入国審査官の違反審査においては、P2の供述しか録取されておらず、P2の署名しかされていないなど、原告自身に対して違反審査がされたか否かすら不明である。 エそうすると、原告の退去強制手続においては、違反調査、違- 82 -反審査、口頭審理のいずれの段階 ず、P2の署名しかされていないなど、原告自身に対して違反審査がされたか否かすら不明である。 エそうすると、原告の退去強制手続においては、違反調査、違- 82 -反審査、口頭審理のいずれの段階においても、原告に対しては、聴聞の機会が与えられていないか、不十分にしか与えられていなかったというべきである。 それにもかかわらず、被告東京入管局長は、本件裁決をしたのであるから、本件裁決は違法である。 (二)被告東京入管局長の主張( )退去強制手続における、法定代理人の関与については、特段 の定めはなく、未成年者のうち、意思能力のある者を除いては、原則として、親権者が当該未成年者のために手続をすべきである。 しかし、原告には意思能力があるから、P1及びP2を通じてではなく、原告に対して、直接、違反調査や口頭審理を行ったとしても何ら違法性はない。 また、聴聞の機会についていえば、原告の違反審査をP2から事情を聴取することにより併せて行っているほか、口頭審理においても、原告が選任した成年者を立ち会わせた上で審理を実施しているのであるから、手続は適法である。 ( )原告は、平成16年11月19日に行われた違反審査におい て、P2の供述しか録取されておらず、P2の署名しかされていないとして、違反審査の違法性を主張する。 しかし、P2は、親権者として原告及びP3に代わって供述をしているのであるところ、未成年者等の場合において、法定代理人である親権者と調書を同一にする併括審査をすることは認めら- 83 -れると解される。 よって、原告の上記主張には、理由がない。 争点6(本件退令処分の適法性)について(一)原告の主張( )本件退令処分は、本件各上陸許可取消処分の違法性を承継し、 違法である。 ( )本件退令処分は、本件裁決の違 、理由がない。 争点6(本件退令処分の適法性)について(一)原告の主張( )本件退令処分は、本件各上陸許可取消処分の違法性を承継し、 違法である。 ( )本件退令処分は、本件裁決の違法性を承継し、違法である。 (二)被告主任審査官の主張退去強制手続において、法務大臣等から「異議の申出は理由がない」との裁決をした旨の通知を受けた場合、主任審査官は、速やかに退去強制令書を発付しなければならないのであって、退去強制令書を発付するにつき全く裁量の余地はないのであるから、本件裁決が適法である以上、本件退令処分も当然に適法である。 -以上-
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