主文 本件訴えのうち,被告堺市長に対し,別紙工事目録1記載の工事の進行の差止めを求める訴え,並びに被告堺市上下水道事業管理者に対し,別紙工事目録2記載の工事の進行及び請負代金の支出の差止めを求める訴えをいずれも却下する。 原告らのその余の訴えに係る請求を棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1請求 被告堺市長は,別紙工事目録1記載の工事を進行させ,かつ,これによる請負代金の支出をしてはならない。 被告堺市上下水道事業管理者は,別紙工事目録2記載の工事を進行させ,かつ,これによる請負代金の支出をしてはならない。 第2事案の概要本件は,堺市の住民である原告らが,堺市が,A株式会社との間で,別紙工事目録記載1の工事(以下「クラスター工事」という。)及び同目録記載2の工事(以下「配水管布設工事」といい,両工事を併せて「本件各工事」という。)につき,随意契約の方法により請負契約を締結したことが違法であると主張して,地方自治法(以下「法」という。)242条の2第1項1号に基づき,被告堺市長及び同堺市上下水道事業管理者に対し,本件各工事につきその進行及び請負代金の支出の差止めを求めた住民訴訟である。 随意契約に係る関連法令の定め等(1)普通地方公共団体の契約の締結は,一般競争入札,指名競争入札,随意契約又はせり売りの方法によるものとされ,随意契約は,政令で定める場合に該当するときに限り,これによることができる(法234条1項,2項)。 これを受けて,地方自治法施行令(以下「施行令」という。)167条の2 第1項6号は,随意契約によることができる場合として,「競争入札に付することが不利と認められるとき」と規定している。 堺市建設工事等における随意契約のガイドライン(甲24。以下「堺市ガ 7条の2 第1項6号は,随意契約によることができる場合として,「競争入札に付することが不利と認められるとき」と規定している。 堺市建設工事等における随意契約のガイドライン(甲24。以下「堺市ガイドライン」という。)においては,同号に当たる場合として,「他の発注者の発注による現に施工中の工事等と交錯又は近接する箇所の工事等(出合丁場)で,当該施工中の者に施工させた場合には,工期の短縮,経費の節減に加え,工事の安全・円滑かつ適切な施工を確保する上で有利と認められる場合」と規定している。 また,地方公営企業法及び同法施行令においても法及び施行令と同様の定めがされており(地方公営企業法35条,同法施行令21条の14第1項6号),堺市ガイドラインと同様の運用がされている。 (2)公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(以下「適正化法」という。)は,国,特殊法人等及び地方公共団体が行う公共工事の入札及び契約について,その適正化の基本となるべき事項を定めるとともに,情報の公表,不正行為等に対する措置及び施工体制の適正化の措置を講じ,併せて適正化指針の策定等の制度を整備すること等により,公共工事に対する国民の信頼の確保とこれを請け負う建設業の健全な発達を図ることを目的として定められた法律であり(1条),公共工事の入札及び契約の適正化の基本となるべき事項として,以下の各号が定められている(3条)。 1号入札及び契約の過程並びに契約の内容の透明性が確保されること2号入札に参加しようとし,又は契約の相手方になろうとする者の間の公正な競争が促進されること3号入札及び契約からの談合その他の不正行為の排除が徹底されること4号契約された公共工事の適正な施工が確保されること。 また,適正化法15条1項に基づき,「公共工事の入札及び契約の適正化 ること3号入札及び契約からの談合その他の不正行為の排除が徹底されること4号契約された公共工事の適正な施工が確保されること。 また,適正化法15条1項に基づき,「公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針」と題する告示(平成13年3月29日総務 省・財務省・国土交通省告示第1号。甲4)により,適正化指針が示された。 (3)堺市入札参加有資格業者の指名停止等に関する要綱(甲3。以下「市要綱」という。)は,市長は,堺市契約規則により入札の参加資格を与えられた業者(以下「有資格業者」という。)のうち,一定の措置要件に該当する者について,一定の期間,指名停止を行うこととしている(2条1項本文)。 そして,指名停止期間中の者(以下「指名停止業者」という。)を堺市の随意契約の相手方としない旨定めており(7条本文),例外的に,「市長が特にやむを得ない事由があると認めるとき」はこの限りではないとしている(同条ただし書)。 堺市は,市要綱を具体的に運用していく指針として市要綱運用基準(乙1)を設けており,同運用基準第6においては,市要綱7条ただし書の「特にやむを得ない事由」に該当する場合として,「施行令167条の2で規定されている契約の性質又は目的が競争に適しない場合,緊急の必要により競争に付することができない場合及び競争に付することが不利と認められる場合などで,災害時の応急措置,特殊技術を必要とする契約,施工責任の一元化等により指名停止中の有資格業者を随意契約の相手方とすることが市民の利益にかなう場合等」をいうものと定めている。 堺市上下水道局入札参加有資格業者の指名停止等に関する要綱(甲7)は市要綱を準用している。 前提事実(争いがないか,証拠(甲9,10,13,15,19,22,28,乙26から29まで。書証番号は枝番を含 水道局入札参加有資格業者の指名停止等に関する要綱(甲7)は市要綱を準用している。 前提事実(争いがないか,証拠(甲9,10,13,15,19,22,28,乙26から29まで。書証番号は枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)。 (1)当事者等ア原告らは,堺市の住民である。 イ被告堺市長は,堺市の執行機関である。 ウ被告堺市上下水道事業管理者は,堺市の営む堺市上下水道事業の管理者 であって,当該業務の執行に関して堺市を代表する権限を有する者である(地方公営企業法8条1項本文)。 エA株式会社は,建設業を業とする株式会社であり,本件各工事を堺市から請け負った者である。 (2)B中小企業クラスター整備事業の概要等ア堺市は,平成17年ころより,先進的な中小企業が集中する工業団地を市内臨海部に位置するB地区に整備するべく,B中小企業クラスター整備事業(以下「クラスター事業」という。)の検討を開始した。堺市は,平成19年4月には進出企業の公募を始め,同年11月には,C株式会社から事業用地として別紙物件目録記載1の各土地(以下「クラスター事業用地」という。)の無償譲渡を受けており,平成21年秋以降,進出企業に対する土地の分譲を行うことを予定している。 イ平成19年6月ころ,D株式会社が堺市での工場建設を検討していることを表明し,同年7月31日には,クラスター事業用地に隣接する別紙物件目録記載2の各土地(以下「D株式会社工場用地」という。)に,D株式会社を筆頭とするインフラ施設や部材・装置メーカー等の関連企業約10数社が進出して,コンビナートを形成することが決定された(以下,建設予定のD株式会社及び関連企業の工場を併せて「D株式会社工場」という。)。 (3)本件各工事に係る請負契約の締結ア堺市は,A株式会 が進出して,コンビナートを形成することが決定された(以下,建設予定のD株式会社及び関連企業の工場を併せて「D株式会社工場」という。)。 (3)本件各工事に係る請負契約の締結ア堺市は,A株式会社との間で,平成19年11月22日,クラスター工事の請負契約につき仮契約を締結し,同年12月20日,請負代金額を8億6100万円と定めて,随意契約の方法により本契約を締結した。クラスター工事は現在も進行中である。 イ堺市は,A株式会社との間で,平成20年1月23日,iD株式会社及び関連企業,iiクラスター事業進出企業,並びに,iii大規模地震対策防災施 設である緑地に対する各上水供給施設の整備を目的とする配水管布設工事についても,随意契約の方法により請負契約を締結した。 ウ堺市は,A株式会社との間で,平成20年8月19日,配水管布設工事の請負代金額を1億1177万4600円に減額する旨の変更契約を締結した。 エ配水管布設工事は,平成20年8月29日に竣工し,同年9月11日,工事検査確認の後,堺市に引き渡された。 オ堺市は,A株式会社に対し,平成20年9月30日,配水管布設工事の請負代金として,1億1177万4600円を支払った。 (4)A株式会社に対する指名停止措置A株式会社は,堺市から,市要綱に基づき,次のとおり,有資格業者の指名停止措置を受けており,本件各工事は,いずれも指名停止期間中に締結されたものであった。 i神奈川県の排出基準を超える強アルカリ性の汚水を横浜港に排出した水質汚濁防止法違反の罪により社員が略式命令を受けたことを理由とする,平成18年12月27日から平成19年12月26日までの指名停止措置ii名古屋市発注の地下鉄工事に関して,独占禁止法違反により公正取引委員会から刑事告発を受けたことを理由とする,平成19年 する,平成18年12月27日から平成19年12月26日までの指名停止措置ii名古屋市発注の地下鉄工事に関して,独占禁止法違反により公正取引委員会から刑事告発を受けたことを理由とする,平成19年2月28日から平成20年2月27日までの指名停止措置iii防衛施設庁発注の特定土木・建築工事に関して,独占禁止法違反により公正取引委員会から排除措置命令及び課徴金納付命令を受けたことを理由とする,平成19年6月25日から平成20年6月24日までの指名停止措置(5)本件訴えに至る経緯等ア原告らは,堺市監査委員に対し,平成20年2月25日,本件各工事の請負契約の違法を主張して監査請求(以下「本件監査請求」という。)を し,同日,本件訴えを提起した。 イ堺市監査委員は,原告らに対し,平成20年4月24日付けで,本件監査請求を棄却する旨の監査結果を通知した。 争点及び当事者の主張(1)監査請求前置の有無(本案前の争点i)(被告らの主張)原告らは,本件監査請求の監査結果がいまだ出されていない段階で訴えを提起しているから,本件訴えはいずれも不適法である。 (原告らの主張)争う。堺市監査委員は,平成20年4月24日付けで,原告らの主張には理由がないとの監査結果を出したので,監査請求を前置していない瑕疵は既に治癒されたものである。 (2)本件各工事の進行の差止請求に係る訴えの適法性(本案前の争点ii)(被告らの主張)原告らは,本件訴訟において,本件各工事の進行の差止めを求めているが,本件各工事の施工主体は,受注業者たるA株式会社であるから,法242条の2第1項1号の差止請求の名宛人である地方自治体の執行機関又は職員の行為には該当しない。 したがって,本件各工事の進行の差止請求に係る訴えは不適法である。 (原告らの主張)争う。被告ら 法242条の2第1項1号の差止請求の名宛人である地方自治体の執行機関又は職員の行為には該当しない。 したがって,本件各工事の進行の差止請求に係る訴えは不適法である。 (原告らの主張)争う。被告らは,いずれも本件各工事の発注者たる堺市の執行機関であり,契約上,A株式会社に対し本件工各事の続行を停止させる権限を有しており,原告らはこれを求めているものであるから,本件各工事の進行の差止請求に係る訴えは,違法若しくは不当な契約の履行の差止めを求めるものとして,住民訴訟の対象になる。したがって,上記訴えは適法である。 (3)配水管布設工事に係る差止請求の訴えの適法性(本案前の争点iii) (被告らの主張)配水管布設工事は,平成20年8月29日に完成し,堺市は,A株式会社に対し,同年9月30日,請負代金を支払った。 よって,配水管布設工事の請負代金の支払の差止めを求める訴えの利益は消滅した。 (原告らの主張)争う。 (4)クラスター工事に係る随意契約の適法性(本案の争点i)(被告らの主張)ア施行令167条の2第1項6号の「競争入札に付することが不利と認められるとき」に該当すること(ア)「競争入札に付することが不利と認められるとき」には,不特定多数の者の参加を求め競争原理に基づいて契約の相手方を決定することが適当ではなく,普通地方公共団体において当該契約の目的,内容に照らしそれに相応する資力,信用,技術,経験等を有する相手方を選定しその者との間で契約の締結をするという方法をとるのが,契約目的を達成する上でより妥当であり,当該普通地方公共団体の利益の増進につながることから,随意契約の方法により契約を締結できるとされている。 そして,堺市は,堺市ガイドラインにおいて,他の発注者の発注による現に施工中の工事等と交錯又は近接する箇所の工事等 の利益の増進につながることから,随意契約の方法により契約を締結できるとされている。 そして,堺市は,堺市ガイドラインにおいて,他の発注者の発注による現に施工中の工事等と交錯又は近接する箇所の工事等(出合丁場)で,当該施工中の者に施工させた場合には,工期の短縮,経費の節減に加え,工事の安全・円滑かつ適切な施工を確保する上で有利と認められる場合についても,「競争入札に付することが不利と認められるとき」に当たるものと解している。 (イ)堺市は,平成15年からD株式会社に対して誘致活動を行っており,D株式会社が,新しい工場の操業時期を経営戦略上重要視していたこと から,堺市がその候補地として選ばれるには,D株式会社の操業予定時期までにインフラ整備を行うことを約束する必要があった。 D株式会社工場の責任者は,平成19年6月,初めて堺市を訪問し,D株式会社工場のインフラ整備が完了すべき時期が平成20年7月末であることを明らかにした。D株式会社誘致が堺市の将来を左右する重要案件であると考えられたことから,堺市は,平成19年6月18日の関係局長会議を開催し,D株式会社誘致に全力を尽くすことを決定した上,同月19日から,D株式会社との間で協議を開始し,D株式会社から工程表(乙15)の提示を受けた。 堺市のD株式会社に対する工場誘致活動の経緯によれば,D株式会社工場のインフラ整備に関する契約書・協定書,堺市議会の議決等がなくても,堺市は,信義衡平の原則に照らし、D株式会社に対して平成20年7月末までにインフラを整備すべき法的義務を負っていたものである。 (ウ)D株式会社は,クラスター事業用地の隣地で行うD株式会社工場の建設工事をA株式会社に請け負わせていた。一方,クラスター工事は,平成21年秋に分譲予定であり,平成22年3月に操業開始を目指すD株 )D株式会社は,クラスター事業用地の隣地で行うD株式会社工場の建設工事をA株式会社に請け負わせていた。一方,クラスター工事は,平成21年秋に分譲予定であり,平成22年3月に操業開始を目指すD株式会社工場建設工事の工期との関係で,同時併行して,しかも短期間で施工せざるを得ない状況であった。 そして,クラスター事業予定敷地内がD株式会社工場の建設工事の主要進入路となり,各工事の進捗に併せて大規模な調整が必要であったところ,同一業者に両工事を一体管理させることにより,工事工程を適切に監理し,責任の一元化を図ることで,工事の安全や,円滑かつ適切な施工を確保することができた。 また,本件では,A株式会社と随意契約をすることで,別業者との契約をする場合と比較して経費(交通整理員,仮設道路の維持管理費等)の節減ができ,実際,クラスター工事の契約金額は,予定価格の83. 8パーセントであり,過去の実績を下回る低額で契約することができた。 さらに,D株式会社工場のインフラ整備は,平成20年7月末までにクラスター事業用地内の道路予定地にされる予定であったところ,同期限内に同インフラ整備を行うためには,同年3月にはクラスター事業用地での工事を開始しなければならず,さらに,クラスター事業用地でのインフラ整備工事を開始するに当たっては,埋設の位置,深さを決めるため,同年2月末までにクラスター事業用地の粗造成を終え,道路位置を定める必要性があった。 しかし,クラスター工事は,「一般競争入札方式の実施に伴う手続の運用について」と題する通達(平成6年6月21日付建設省厚発第262号,建設省技調発第131号通達。以下「平成6年通達」という。甲30)により公告から入札までの標準期間が約50日と定められているものの,原則として低入札価格調査制度の対象にするべき工事で 発第262号,建設省技調発第131号通達。以下「平成6年通達」という。甲30)により公告から入札までの標準期間が約50日と定められているものの,原則として低入札価格調査制度の対象にするべき工事であり,調査に要する期間を更に3週間要したこと,年末年始をはさみ,業者の営業日を考慮しなければならなかったことを考え併せると,公告から落札者の決定まで約3か月かかり,さらに,仮設工及び造成工の前に準備工の期間として1か月半が必要であったことから,クラスター事業用地の粗造成の終了まで4か月半が必要であった。 なお,原告らが主張するように,クラスター事業用地内の道路部分のみを先に造成すると,クラスター工事が更に錯綜したものとなり,安全性の面から問題がある上,効率面や経費面からも現実的ではない。 したがって,競争入札に付していては,工期内に完成させることは事実上不可能であり,工期内に完成させるには,D株式会社工場の建設工事を請け負い,各工種の下請け業者の選定や材料の手配等,準備工の期間を短縮することのできるA株式会社と随意契約を締結する以外には方法がなかった。 (エ)以上より,クラスター事業に著しい支障が生じるのを避けるため,A株式会社との随意契約という方法が選択されたのであるから,被告堺市長が,クラスター工事請負契約につき「競争入札に付することが不利と認められるとき」に該当すると判断したことには,合理性が認められる。 イA株式会社が市要綱に基づき入札参加有資格者としての指名停止措置を受けていることは,本件において上記アの主張に影響しないこと(ア)施行令167条の2第1項は,各号のいずれかに該当する場合には,随意契約を締結することができるとしており,法及び施行令上,随意契約の相手方を問題とした規定はない。 また,指名停止措置とは,直接に )施行令167条の2第1項は,各号のいずれかに該当する場合には,随意契約を締結することができるとしており,法及び施行令上,随意契約の相手方を問題とした規定はない。 また,指名停止措置とは,直接には,指名競争において指名の対象外とする措置,すなわち指名基準の一部として位置付けられており,指名停止について直接規定する法令はない。 したがって,施行令167条の2第1項各号のいずれかに該当すれば,指名停止業者との随意契約を締結することは違法ではない。 (イ)また,市要綱運用基準第6は,施工責任の一元化等により,指名停止業者を随意契約の相手方とすることが市民の利益にかなう場合にも,市要綱7条ただし書の「特にやむを得ない事由」があるときに当たると定めており,これは,指名停止業者を随意契約の相手方とすることが,工期の短縮及び経費の節減につながり,加えて,工事の安全・円滑かつ適切な施工を確保する上で必要である場合を指すものである。 上記アで述べたとおり,本件において,A株式会社以外には,クラスター工事に係る契約の相手方として適切な業者が存在せず,堺市長が,A株式会社を随意契約の相手方とする「特にやむを得ない事由」があると判断したことに合理性が認められる。 (ウ)なお,他の政令指定都市における調査によれば,各都市は,それぞ れの要綱及び運用指針に従って,指名停止業者との間で随意契約を締結しているのであり,工期の短縮及び経費の節減に加えて,工事の安全・円滑かつ適切な施工を確保する見地から,実際に指名停止業者との間で随意契約を締結している例も見受けられる。 したがって,他の政令指定都市との比較においても,原告らが主張するように,指名停止業者との随意契約が極めて限定されるものということはできない。 (原告らの主張)ア施行令167条の2第1項6号の したがって,他の政令指定都市との比較においても,原告らが主張するように,指名停止業者との随意契約が極めて限定されるものということはできない。 (原告らの主張)ア施行令167条の2第1項6号の「競争入札に付することが不利と認められるとき」に該当しないこと(ア)堺市とD株式会社との間に,D株式会社工場のインフラ整備に関する合意や堺市議会の議決はなく,単に地方公共団体内部部局でD株式会社工場の誘致に協力をすることを決めただけであり,そもそも堺市に平成20年7月末までにインフラ整備をしなければならない法的義務はなかったものである。したがって,平成20年7月末までにD株式会社のインフラ整備をしなければならなかった旨の被告らの主張は前提が誤っているものである。 (イ)工事の施行業者は,通常,大規模工事や他の工事と錯綜する工事についても,短期間で安全かつ円滑に進めるために,工事車両調整や,工事の工程管理を適切に行っているのであるから,本件においても,クラスター工事につき入札をした施工業者に,D株式会社工場の建設工事との調整義務を課すことで,同工事との適切な調整を行うことは可能であった。 また,平成20年7月末までにD株式会社工場のインフラ整備をしなければならなかったとしても,平成19年7月にはD株式会社の進出が決定し,同年10月中旬にクラスター工事の実施設計が完成したのだか ら,あらかじめ競争入札が円滑に行えるスケジュールを組み,市長の専決処分等,競争入札期間を短縮するための工夫をすることで,同年12月中に契約に至ることは十分可能だったものである。 なお,平成6年通達において,公告から入札までの標準期間が51日と定められており,「一般競争入札方式の拡大に伴う手続の運用について」と題する通達(平成17年10月7日付国地契第81号,国 のである。 なお,平成6年通達において,公告から入札までの標準期間が51日と定められており,「一般競争入札方式の拡大に伴う手続の運用について」と題する通達(平成17年10月7日付国地契第81号,国官技第136号,国営計第84号通達。甲39)において,技術的に工夫の余地の少ない簡易な工事の場合は,更に期間の短縮が認められている。そして,クラスター工事は,技術的に工夫の余地の少ない簡易な工事であったから,被告らの主張するように公告から入札まで3か月もかかることはない。 被告らは,A株式会社以外の業者ではD株式会社工場へのインフラ整備の期限に間に合わせることができなかったと主張するが,平成20年7月末までにD株式会社工場のインフラ整備が完了するように調整するという条件での競争入札に付すればよかったのであり,道路部分のみの工事であれば,インフラ整備に必要な粗造成を終わらせるのに4か月半もかかることはない。 (ウ)以上からすれば,クラスター工事につき,A株式会社と随意契約をする必要性も合理性もなかったものであり,「競争入札に付することが不利と認められるとき」には該当しない。 イ指名停止業者を随意契約の相手方とする「特にやむを得ない事由」(市要綱7条ただし書)がないこと(ア)堺市は,法234条,施行令167条の2第1項及び適正化法を受けて,市要綱において,有資格業者の指名停止措置を定めているところ,このように指名停止措置を定めた趣旨は,指名競争入札において,不公正な行為を行った業者に対し,一定期間指名競争入札に参加させないと いう強い制裁を課すことにより,当該業者が不公正な行為を繰り返すのを防止するとともに,他の業者が不公正な行為をすることを防止することにある。 上記趣旨からすれば,原則として,指名停止業者は,指名停止措置を受けて 課すことにより,当該業者が不公正な行為を繰り返すのを防止するとともに,他の業者が不公正な行為をすることを防止することにある。 上記趣旨からすれば,原則として,指名停止業者は,指名停止措置を受けている期間中,堺市の随意契約の相手方とはなり得ないものである。 そして,例外的に,堺市が指名停止業者を随意契約の相手方となし得る場合があるとしても,随意契約自体が,国又は地方公共団体が行う契約の中で例外であること,指名停止業者については,指名停止を受けていない業者と比較して,より厳格に契約の適法性が判断されなければならないことからすれば,市要綱7条ただし書に規定する「特にやむを得ない事由があるとき」とは,市要綱運用基準にあるように,「施工責任の一元化等により指名停止中の有資格業者を随意契約の相手方とすることが市民の利益にかなう場合」とまで拡大して解釈すべきではなく,災害時の応急工事,特殊技術を要する工事等,極めて限定的な場合を指すというべきである。 被告らの解釈によれば,指名停止業者とそれ以外を全く区別しないこととなり,市要綱の趣旨は完全に没却されてしまう。 (イ)本件につき,クラスター工事は,災害時の応急措置ではなく,A株式会社でなければ行えないような特殊技術を要する工事でもないから,市要綱7条ただし書の「特にやむを得ない事由」は認められない。 したがって,クラスター工事は,市要綱7条に違反して違法である。 (ウ)なお,他の政令指定都市における調査によれば,指名停止業者との間の随意契約は,いずれも,緊急性がある工事か,代替性がない工事であり,指名停止業者との随意契約は極めて限定された場合に行われるものであることが明らかである。 (5)配水管布設工事に係る随意契約の適法性(本案の争点ii) (被告らの主張)ア施行令167条の2第1項6 業者との随意契約は極めて限定された場合に行われるものであることが明らかである。 (5)配水管布設工事に係る随意契約の適法性(本案の争点ii) (被告らの主張)ア施行令167条の2第1項6号の「競争入札に付することが不利と認められるとき」に該当すること(ア)クラスター事業,D株式会社工場及び緑地への上水供給施設整備は,相互に密接に関連する事業であり,堺市は,これらの工事を1つの配水管布設工事として施工することが合理的であると判断した。 (イ)平成20年7月末までにD株式会社に対する上水供給を開始するために,クラスター事業用地内の工程調整を的確に行った上で,配水管敷設工事の作業を進める必要があったところ,A株式会社は,クラスター工事を施行中の請負業者であり,現場の状況を把握していることから,工事開始までの準備期間を短縮し,施工責任の一元化により工事の円滑かつ適切な施工を確保できた。 また,請負業者がクラスター工事と配水管布設工事の綿密な調整を行うことで,盛土の作業に合わせて配水管を布設することができ,配水管埋設に係る掘削費用が軽減された。 (ウ)したがって,堺市が,配水管敷設工事につき「競争入札に付することが不利と認められるとき」に該当すると判断したことには,合理性が認められる。 イ指名停止業者を随意契約の相手方とする「特にやむを得ない事由」(市要綱7条ただし書)があること配水管布設工事は,クラスター事業用地内の道路予定地に布設する配水管を延伸して,実質5か月間の期間で平成20年7月末までにD株式会社工場等への上水供給を開始するという工事である。 クラスター事業用地内の水道工事の施工が可能となるのは,水道管の埋設が可能な状態にまでクラスター事業用地内の粗造成が完了した後であることからすれば,クラスター工事で施工する道路 るという工事である。 クラスター事業用地内の水道工事の施工が可能となるのは,水道管の埋設が可能な状態にまでクラスター事業用地内の粗造成が完了した後であることからすれば,クラスター工事で施工する道路造成作業と並行して水道 工事を行うことによって工期の短縮を図らなければ,平成20年7月末の期限に間に合わない。 かかる錯綜した状況の下で,クラスター事業用地内の工程調整を的確に行い,作業を進めることができたのは,クラスター工事の請負業者であるA株式会社だけであった。 以上より,本件では,配水管布設工事がクラスター工事及びD株式会社工場の建設工事と密接に関連すること,クラスター事業及びD株式会社工場の誘致施策の重要性を併せ考えると,被告堺市上下水道事業管理者が,両工事を請け負うA株式会社を配水管布設工事に係る随意契約の相手方とする「特にやむを得ない事由」があると判断したことに合理性が認められる。 ウ以上より,配水管布設工事に係る随意契約は適法である。 (原告らの主張)ア施行令167条の2第1項6号の「競争入札に付することが不利と認められるとき」に該当しないことそもそも配水管布設工事を平成20年7月末までに行わなければならない事情がなかったこと,工夫次第で競争入札の方法によったとしても平成20年7月末の供給期限に間に合わせることができたことは前記(4)で主張したとおりである。 したがって,配水管布設工事に係る随意契約につき,施行令167条の2第1項6号の「競争入札に付することが不利と認められるとき」には該当しない。 イ指名停止業者を随意契約の相手方とする「特にやむを得ない事由」(市要綱7条ただし書)がないこと(ア)指名停止業者を随意契約の相手方とする「特にやむを得ない事由」につき,限定的に解する必要があることは前記(4)で主張した 相手方とする「特にやむを得ない事由」(市要綱7条ただし書)がないこと(ア)指名停止業者を随意契約の相手方とする「特にやむを得ない事由」につき,限定的に解する必要があることは前記(4)で主張したとおりであ る。 (イ)配水管布設工事は,クラスター工事と同様,災害時の応急工事ではなく,また,A株式会社でなければ行えないような特殊技術を要する工事でもない。 したがって,配水管布設工事は,市要綱7条に違反して違法である。 なお,市要綱運用基準によったとしても,本件は,施工責任の一元化等により指名停止中の有資格業者を随意契約の相手方とすることが市民の利益にかなう場合とはいえず,市要綱に反するものであった。 (6)本件各工事の請負契約が私法上無効となるか否か(本案の争点iii)(原告らの主張)指名停止業者であるA株式会社と随意契約の方法により締結された本件各工事の請負契約は,法及び施行令に定める随意契約をできる場合に当たらず,しかも,指名停止業者の排除という適正化法の趣旨とこれを受けた市要綱に違反するものであった。 堺市もA株式会社も,指名停止という厳格な制裁につき十分な認識を有しており,しかも,上記各契約の締結前に,堺市議会においてその違法性が問題となっていたものであり,上記各契約が許されない違法なものであることをA株式会社は知っていたか,知り得たものである。 したがって,本件各工事の請負契約は,指名停止業者の排除という随意契約の締結に制限を加える法令の趣旨を没却するもので,特段の事由がある場合として,いずれも私法上無効となる。 (被告らの主張)随意契約の制限に関する法令に違反して締結された違法な契約であっても私法上当然に無効になるものではなく,随意契約によることができる場合として施行令の規定の掲げる事由のいずれにも当たらないことが 張)随意契約の制限に関する法令に違反して締結された違法な契約であっても私法上当然に無効になるものではなく,随意契約によることができる場合として施行令の規定の掲げる事由のいずれにも当たらないことが何人の目にも明らかである場合や契約の相手方において随意契約の方法による当該契約の 締結が許されないことを知り又は知り得べかりし場合のように当該契約の効力を無効としなければ随意契約の締結に制限を加える法及び施行令の規定の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められる場合に限り,私法上無効になる。 しかし,堺市は,堺市議会での指摘も踏まえた上で,本件各工事につき,A株式会社との随意契約が許される場合に当たると判断したのであり,仮に本件各工事の請負契約が違法であったとしても,A株式会社は,当該契約が許されないものであることを知らなかったことにつき無過失であったものであるから,本件において,上記特段の事情は存在せず,当該契約はいずれも私法上有効である。 第3当裁判所の判断 監査請求前置の有無について(本案前の争点i)法242条の2第1項柱書は,普通地方公共団体の住民は,住民監査請求をした場合において,その監査結果に不服がある場合等には,同監査請求に係る違法な行為又は怠る事実につき,住民訴訟を提起することができるとしており,監査請求の前置を定めている。このように監査請求の前置を定めた法の趣旨は,住民訴訟の前に,まず当該普通地方公共団体の監査委員に住民の請求に係る行為又は怠る事実について監査の機会を与え,当該行為又は当該怠る事実の違法,不当を当該普通地方公共団体の自治的,内部的処理によって予防,是正させることにある。 本件において,原告らは,本件監査請求と本件訴えの提起を同じ日に行っているから,訴え提起段階において,本件訴えは,監査請求を経な 地方公共団体の自治的,内部的処理によって予防,是正させることにある。 本件において,原告らは,本件監査請求と本件訴えの提起を同じ日に行っているから,訴え提起段階において,本件訴えは,監査請求を経ないでされた不適法なものであったというべきである。 しかし,堺市監査委員は,平成20年4月24日付けで,本件監査請求には理由がないとして棄却の判断を示しており,原告らは,口頭弁論終結時において,その監査結果に不服を有していたものであるから,監査請求前置を欠いて いた瑕疵は,一応是正されたものということができる。 もっとも,監査請求に対して監査委員は60日という比較的短い期間内に応答すべきものとされており,本件において,その応答又は期間の経過を待たずに訴えを提起しなければならない特別な理由があったとは認め難い。近い将来に瑕疵が治癒されることを見込んで訴えを提起するのは,監査請求の手続を有名無実なものにするなどの弊害を招きかねず,法の趣旨にもとる不当なものであることをあえて付言する次第である。 本件各工事の進行の差止請求に係る訴えの適法性について(本案前の争点ii)原告らは,法242条の2第1項1号に基づき,本件各工事の進行の差止めを求めているところ,同号の差止請求の対象は,法242条1項所定の地方公共団体の執行機関又は職員による同項所定の財務会計上の違法な行為又は怠る事実,すなわち,違法若しくは不当な公金の支出,財産の取得,管理若しくは処分,契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担,違法若しくは不当に公金の賦課徴収,財産の管理を怠る事実に限られるものであり,これら以外のものを対象とする訴えは,法の認める住民訴訟の類型に該当しない不適法なものとなる。 本件において,原告らが差止めの対象とする本件各工事を進行させることは,A株式 実に限られるものであり,これら以外のものを対象とする訴えは,法の認める住民訴訟の類型に該当しない不適法なものとなる。 本件において,原告らが差止めの対象とする本件各工事を進行させることは,A株式会社による契約の履行行為であり,上記財務会計行為のいずれにも該当せず,住民訴訟において差止請求の対象とはできないものであるから,当該差止めの訴えは不適法といわざるを得ない。 原告らは,被告らが発注者たる堺市の執行機関としてA株式会社に対し本件各工事の続行を停止させる権限を有していることを,訴えの適法性の根拠として主張している。しかし,本件各工事の続行を停止させる権限の発動を求めることは,執行機関等に対する義務付けを求めることにほかならず,かかる訴えは,法の認める住民訴訟の類型に該当しない不適法なものであるとの結論を左 右しない。したがって,原告らの主張は採用できない。 配水管布設工事の請負代金の支出に係る差止請求の訴えの適法性について(本案前の争点iii)前記前提事実(第2の2)(3)エ,オのとおり,配水管布設工事は,平成20年8月29日に竣工して,工事検査確認及び引渡しがされ,同年9月30日,堺市からA株式会社に対し,配水管布設工事の請負代金全額が支払われている。 そうすると,配水管布設工事に係る請負代金の支出行為は,口頭弁論終結時において既に完了したことが認められるので,同行為を差し止める余地はなくなったものというべきである。 したがって,配水管布設工事の請負代金の支出行為につき差止めを求める部分もまた,差止めの対象を欠く不適法なものである。 クラスター工事に係る随意契約の適法性について(本案の争点i)(1)前記前提事実,証拠(甲9,10,13,16から19まで,28,30,乙4から7まで,9,10,18,19,37)及び弁論の クラスター工事に係る随意契約の適法性について(本案の争点i)(1)前記前提事実,証拠(甲9,10,13,16から19まで,28,30,乙4から7まで,9,10,18,19,37)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 ア堺市の企業誘致施策堺市は,従前から,堺市内の工業に適した土地に企業投資を誘導することにより,堺市における雇用機会及び事業機会の拡大並びに産業の空洞化の防止を図り,もって地域経済の活性化,産業の高度化及び市民生活の向上に寄与することを目的として,堺市への進出企業に固定資産税の減税等の優遇措置をとることを定めた堺市企業立地促進条例(平成17年堺市条例第21号)を施行するなど,積極的に企業誘致を推進する政策をとっていた。特に,クラスター事業用地及びD株式会社工場用地を含む堺市臨海部には,約277ヘクタールもの遊休地があったことから,大阪府や地権者であるC株式会社とも協力しながら,活発な企業誘致活動を行っていた。 イD株式会社の堺市進出の決定 (ア)堺市が企業誘致を推進する中,D株式会社は,平成19年6月,堺市での工場建設を検討していることを表明した。これに呼応して,堺市は,同月18日,堺市関係局長会議において,D株式会社誘致の成功に全力を尽くすことを決定した。 (イ)堺市は,平成19年6月19日から,工場進出に関するD株式会社との話し合いを開始し,同年7月31日には,D株式会社の堺市進出及び工場建設が正式に決定された。 D株式会社は,同年9月20日,C株式会社との間で売買契約を締結してD株式会社工場用地を取得し,A株式会社との間で請負契約を締結して,同年11月には,D株式会社工場の建設工事に着工した。 A株式会社は,それまでのD株式会社の国内工場の建設工事の大半を請け負うなど,D株式 会社工場用地を取得し,A株式会社との間で請負契約を締結して,同年11月には,D株式会社工場の建設工事に着工した。 A株式会社は,それまでのD株式会社の国内工場の建設工事の大半を請け負うなど,D株式会社との間で密接な関係にあった。 (ウ)堺市は,D株式会社工場の誘致により,法人市民税の増大による税収構造の強化,雇用の創出効果,従業員の市内在住による経済効果等,低迷している地域経済の活性化を期待しており,D株式会社誘致成功を市の重要施策と位置づけている。 ウクラスター事業の概要(ア)クラスター事業は,堺市における中小企業の流出を防止し,その高度化を支援することにより,市内産業の活性化を図ることを目的とした堺市の施策である。堺市は,C株式会社及びE商工会議所とB中小企業クラスター形成検討協議会を設置するとともに,C株式会社からクラスター事業用地の無償譲渡を受けた上で事業を実施し,先進的な中小企業の集積拠点として整備することを予定していた。 クラスター工事は,道路を含めたクラスター事業用地において,切土や盛土を行い,同用地を平坦にすることを内容とする造成工事であり,平成19年3月時点で,造成に係る切土は10万立方メートル,盛土は 9.82万立方メートルと設計されていた。 (イ)堺市は,平成18年度中にクラスター事業の基本計画を策定し,平成19年3月,C株式会社及びE商工会議所との間でクラスター事業用地に係る土地譲渡の覚書を交わし,同年4月11日,クラスター事業への進出企業の公募を開始した。同公募における対象事業者は,「中小企業者であって,製造業,新エネルギー供給業及び情報通信業を現に営む者で,Bにおいて同事業を実施しようとする者」とされた。現在までにクラスター事業用地への進出を予定している中小企業は10数社であり,堺市では,雇用 製造業,新エネルギー供給業及び情報通信業を現に営む者で,Bにおいて同事業を実施しようとする者」とされた。現在までにクラスター事業用地への進出を予定している中小企業は10数社であり,堺市では,雇用創出効果や税収増の効果等を期待している。 (ウ)平成19年6月ころ,D株式会社の進出表明を受けて行われた堺市との話し合いの過程で,D株式会社工場の建設工事やインフラ整備に関連して,クラスター事業用地内の道路の形状や造成の高さについての調整が必要となったため,クラスター事業用地の設計が変更されることになり,土地形状及び実施設計の決定が当初の予定よりも遅れることになった。 (エ)堺市は,平成19年9月ころ,クラスター事業用地の土地形状を決定し,同年10月15日,クラスター工事の実施設計を確定させ,同日,堺市建築都市局B推進室において,A株式会社に対し随意契約の方法でクラスター工事を発注することにつき,施行令167条の2第1項6号及び市要綱7条ただし書の適用の可否に関する稟議書を作成し,同月18日,被告堺市長がこれを決裁した。 (オ)堺市は,A株式会社との間で,平成19年11月22日,クラスター工事の請負契約につき仮契約を締結した。 (カ)堺市は,C株式会社との間で,平成19年11月26日,クラスター事業用地を無償で譲り受ける旨の契約を締結した。同契約においては,同用地の周辺で工事が行われる場合,堺市は工事車両が同用地に進入す ることを認め,その使用を妨げないよう配慮する旨の条項が定められていた。 (キ)クラスター工事をA株式会社との間の随意契約の方法で行う旨の議案は,第6回堺市議会(定例会)において提案され,建設委員会に付託された。同議案は,平成19年12月13日ころ,同委員会において,同月20日ころ,第6回堺市議会(定例会)の最終 約の方法で行う旨の議案は,第6回堺市議会(定例会)において提案され,建設委員会に付託された。同議案は,平成19年12月13日ころ,同委員会において,同月20日ころ,第6回堺市議会(定例会)の最終本会議において,いずれも賛成多数で可決された。 (ク)堺市は,A株式会社との間で,平成19年12月20日,クラスター工事につき随意契約の方法により請負契約を締結した。 エD株式会社工場のインフラ整備(ア)D株式会社は,平成19年7月末,堺市に進出することを決定するに当たり,堺市に対し,平成22年3月末に操業開始することを予定していること,そのために平成20年7月末までにインフラ(上水道,電力,ガス等)整備が必要であることを提示した。 (イ)クラスター事業用地とD株式会社工場用地は,共に堺市E区F町内にあって隣接する位置関係にあるところ,D株式会社工場のインフラ整備は,クラスター事業用地内の道路予定地に埋設して行わなければならず,これらのインフラ整備には5か月程度の施工期間が見込まれたため,平成20年2月末までに,各インフラ設備の埋設位置や深さを決める必要があり,その前提として,クラスター事業用地の粗造成(造成工)を終え,クラスター事業用地内の道路位置を決めておく必要があった。 (ウ)クラスター工事に係る契約を競争入札の方法で行う場合,市長の専決処分によったとしても,平成6年通達の基準に従った標準的な期間として,公告から入札まで約50日程度を要することが見込まれた。 また,大阪府都市整備部作成の「建設工事積算参考資料〔工事編〕」においては,500万円を超える工事について,準備工(下請け業者の 選定等の労務手配,材料調達業者の選定等の資機材手配等)の標準期間は50日間とされており,同整備部作成の「建設工事積算基準〔Ⅰ〕」に基づいて仮 0万円を超える工事について,準備工(下請け業者の 選定等の労務手配,材料調達業者の選定等の資機材手配等)の標準期間は50日間とされており,同整備部作成の「建設工事積算基準〔Ⅰ〕」に基づいて仮設工(仮囲い設置,地盤の改良等)に必要な標準期間を積算すると約80日間となった。 一方,A株式会社は,クラスター事業用地に隣接するD株式会社工場用地で,既にD株式会社工場の建設工事を行っていたため,クラスター工事の仮設工に必要な準備工は済んでおり,平成20年1月から仮設工と造成工を同時に開始し,平成20年2月末までにクラスター事業用地の粗造成を終え,道路位置を確定することが可能であった。 (エ)なお,堺市とD株式会社との間で,平成20年7月末までにインフラ整備を行うことについて合意した書面は作成されなかった。 オ工事用車両の切回しD株式会社工場用地に接続した道路(市道F5号線)が大規模工事に対応できる造りではなかったことから,D株式会社工場の工事用車両は,C株式会社の用地(クラスター事業用地の東側に位置する)及びクラスター事業用地内を工事用車両の進入路として使用していた。 そして,クラスター工事の着工後は,クラスター工事とD株式会社工場の建設工事の施工時期が重なるため,両工事において共通の工事用進入路を使用することになった(クラスター事業用地を無償で譲り受けた際に,クラスター事業用地を隣接地の工事用車両の進入路として使用することが予定されていたことは,前記ウ(カ)のとおりである。)。具体的には,クラスター工事開始当初は,クラスター事業用地の中央部を両工事の工事用進入路として使用し,その後,クラスター工事の進捗状況に応じて,道路予定部に工事用進入路を移動させるなど,適時に工事用進入路を切り回すことが予定されていた。 (2)施行令167条の 両工事の工事用進入路として使用し,その後,クラスター工事の進捗状況に応じて,道路予定部に工事用進入路を移動させるなど,適時に工事用進入路を切り回すことが予定されていた。 (2)施行令167条の2第1項6号の「競争入札に付することが不利と認めら れるとき」に該当するかア法234条1項及び2項は,普通地方公共団体の締結する契約については,機会均等の理念に最も適合して公正であり,かつ,価格の有利性を確保し得るという観点から,一般競争入札の方法によるべきことを原則とし,それ以外の方法を例外的なものとして位置付けているものと解することができる。例外的な方法の一つである随意契約によるときは,手続が簡略で経費の負担が少なくて済み,しかも,契約の目的,内容に照らしそれに相応する資力,信用,技術,経験等を有する相手方を選定できるという長所がある反面,契約の相手方が固定化し,契約の締結が情実に左右されるなど公正を妨げる事態を生じるおそれがあるという短所も指摘され得ることから,施行令167条の2第1項は,法の趣旨を受けて,同項に掲げる一定の場合に限定して随意契約の方法による契約の締結を許容することにしたものである。そして,同項6号は随意契約の方法によることができる場合として,「競争入札に付することが不利と認められるとき」を掲げているが,これに該当するか否かは,契約の公正及び価格の有利性を図ることを目的として普通地方公共団体の契約締結の方法に制限を加えている法及び施行令の趣旨を勘案しつつ,具体的な個々の契約ごとに,当該契約の種類,内容,性質,目的等諸般の事情を踏まえ,競争入札・随意契約の各方法によった場合の利害得失を比較対象する必要があるから,その判断は当該普通地方公共団体の契約担当者の合理的な裁量にゆだねられているものと解するのが相当である の事情を踏まえ,競争入札・随意契約の各方法によった場合の利害得失を比較対象する必要があるから,その判断は当該普通地方公共団体の契約担当者の合理的な裁量にゆだねられているものと解するのが相当である(最高裁昭和62年3月20日第二小法廷判決・民集41巻2号189頁)。 そして,堺市ガイドラインが,「他の発注者の発注による現に施工中の工事等と交錯又は近接する箇所の工事等(出合丁場)で,当該施工中の者に施工させた場合には,工期の短縮,経費の節減に加え,工事の安全・円滑かつ適切な施工を確保する上で有利と認められる場合」を同項6号に該 当するものとしている(前記第2の1(1))のは,上記法の趣旨に即しており,裁量判断の基準として合理的なものということができる。 イそこで,クラスター工事に係るA株式会社との随意契約が,施行令167条の2第1項6号の「競争入札に付することが不利と認められるとき」に該当するか否かを検討する。 (ア)被告らは,D株式会社工場に係るインフラ整備の期限が平成20年7月末であったことを根拠に,平成20年2月末をクラスター事業用地内の粗造成を終え,道路位置を確定すべき期限として設定しているところ,原告らは,堺市にはそもそも平成20年7月末までにD株式会社工場のインフラ整備をしなければならない法的義務はなかったと主張する。 なるほど,堺市は,D株式会社からインフラ整備の期限につき提示を受けたのみで,当該期限について合意した書面は作成されなかったこと,平成19年7月末にD株式会社の堺市進出が決定した際,D株式会社は,いまだ工場用地の取得に至っておらず,D株式会社工場の建設工事に着手していなかったことからすれば,堺市がD株式会社に対して当該期限までにインフラ整備を終えておく法的義務を負っていたとは認められない。 しかし,堺市 取得に至っておらず,D株式会社工場の建設工事に着手していなかったことからすれば,堺市がD株式会社に対して当該期限までにインフラ整備を終えておく法的義務を負っていたとは認められない。 しかし,堺市は,法人市民税の増大による税収構造の強化,雇用の創出効果等,堺市の地域経済の活性化のために,D株式会社工場の誘致を成功させることを市を挙げての重要施策としていたものであり,法的義務がなかったとしても,D株式会社工場の誘致を成功させるべく,D株式会社の提示に呼応して平成20年7月末をインフラ整備の期限に設定し,同期限から逆算して,クラスター事業用地内の粗造成を終えるべき時期を設定することには,相応の必要性・合理性が肯定できるものである。 したがって,堺市が,平成20年2月末をクラスター事業用地内の粗 造成を終え,道路位置を確定すべき期限として設定したことが不合理であるとはいえない。 (イ)前記認定事実(4(1)イ,ウ,エ)のとおり,平成19年6月にD株式会社が堺市進出を表明し,同年11月にはA株式会社がD株式会社工場の建設工事に着工したこと,堺市では,D株式会社工場のインフラ整備の期限である平成20年7月末から逆算して工事日程を決めることにしたが,D株式会社工場用地がクラスター事業用地の西隣に位置しており,平成20年2月末までにクラスター事業用地内の各インフラ設備の埋設位置や深さを決定するべく,クラスター事業用地の粗造成を終える必要が生じたこと,そのため,両工事は同時期に施工されることとなり,共通の工事用進入路を使用することになったこと,以上の事情から,クラスター工事とD株式会社工場の建設工事とは交錯・近接するものとなり,工事の安全,円滑かつ適切な施工を確保する上で,両工事を調整し,一括して工程を監理した方が効率的・合理的な状況にあっ 事情から,クラスター工事とD株式会社工場の建設工事とは交錯・近接するものとなり,工事の安全,円滑かつ適切な施工を確保する上で,両工事を調整し,一括して工程を監理した方が効率的・合理的な状況にあったといえる。 そして,A株式会社は,D株式会社工場の建設工事を請け負っていることから,同時にクラスター工事も請け負うことになれば,両工事の進捗状況及び工事工程を常時把握して適時に進入路の切回しを行うなど,一括して監理を行うことができ,事故や渋滞を防止するなど,より安全かつ円滑に両工事の進行を図ることが可能な立場にあったということができる。 また,D株式会社工場との調整の結果,クラスター工事の実施設計等の確定が平成19年10月15日までずれこんだが,クラスター工事について競争入札の方法を採用した場合,市長の専決処分によっても,公告から入札までに標準期間で約50日程度かかり,準備工,仮設工の標準期間を考えると,契約締結から平成20年2月末までに粗造成を終えるには時間的余裕がほとんどなかったのに対し,A株式会社は,D株式 会社工場用地で建設工事を行っていたため,仮設工に必要な準備工は既に済んでおり,平成20年1月から仮設工と造成工を同時に開始できるため,平成20年2月末までに粗造成を終えることが可能な状況にあるなど,工期を短縮できる点で優位性があったものと認められる。 (ウ)さらに,原告らは,インフラ整備を早期に行う必要があるとしても,クラスター工事のうち道路部分のみの工事を先行させれば足りる旨主張する。しかし,クラスター工事が切土や盛土を行って用地全体を平坦にするものであるところ,クラスター事業用地における道路部分は,周囲を取り囲む形状となっており(甲10),道路部分が先に造成されると,工事が非効率となる上,費用も高額になる可能性があるも 全体を平坦にするものであるところ,クラスター事業用地における道路部分は,周囲を取り囲む形状となっており(甲10),道路部分が先に造成されると,工事が非効率となる上,費用も高額になる可能性があるものと認められる。 他方,被告らは,A株式会社とのクラスター工事の契約金額が,予定価格の83.8パーセントであり,過去の実績を下回る低額で契約することができたと主張し,甲17は同主張に沿うものであって,その信用性を疑わせる証拠もないことからすると,上記契約金額は,価格の面でも有利なものであったと一応推認することができる。 ウ以上からすると,本件においては,「他の発注者の発注による現に施工中の工事等と交錯又は近接する箇所の工事等(出合丁場)で,当該施工中の者に施工させた場合には,工期の短縮,経費の節減に加え,工事の安全・円滑かつ適切な施工を確保する上で有利と認められる場合」に当たるものであって,堺市長が,施行令167条の2第1項6号の「競争入札に付することが不利と認められるとき」に該当するものと判断したことには合理的な根拠があり,随意契約の方法によりクラスター工事の請負契約を締結したことに裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったということはできない。 (3)指名停止業者を随意契約の相手方とすることの適否(「特にやむを得ない事由」(市要綱7条ただし書)の該当性) ア法令上,入札参加有資格者としての指名停止措置を受けている者(指名停止業者)との随意契約自体を禁止した規定はないことから,各地方公共団体は,法,施行令及び適正化法の趣旨に沿って,その裁量に基づき,指名停止業者との随意契約の可否に関する基準を定めることができるというべきである。 もっとも,地方公共団体が,適正化法の適正化指針に従い,指名停止業者との随意契約の締結を制限する基準を設けた場 き,指名停止業者との随意契約の可否に関する基準を定めることができるというべきである。 もっとも,地方公共団体が,適正化法の適正化指針に従い,指名停止業者との随意契約の締結を制限する基準を設けた場合においては,その内容が合理的で,法,施行令及び適正化法の趣旨に沿うものである限り,当該基準は適正化法の規定や適正化指針を具体化したものとして法令に準ずるものと位置付けるべきであり,契約担当者の裁量は当該基準によって制約され,当該基準に反して随意契約を締結したときは,法及び施行令で認められた裁量に違反し違法になるものと解するのが相当である。 したがって,施行令167条の2第1項6号に該当する場合であったとしても,指名停止業者を随意契約の相手方としたことの適否は別途検討を要することになる。 この点について,被告らは,同項各号のいずれかに該当する事情があれば,指名停止業者との随意契約を締結することは違法ではないと主張するが,適正化指針を具体化した基準を設けて契約担当者の裁量を制限しようとした趣旨を看過するものであって,採用することはできない。 イ堺市においては,公共工事の適正な執行を確保するとともに,不正行為に対する発注者の毅然とした姿勢を明らかにし,再発防止を図る観点から,指名停止業者を入札制度から排除するべく,有資格業者の指名停止等について市要綱を設けて必要な事項を定めており(弁論の全趣旨),適正化指針を具体化した措置とみることができるところ,同要綱7条は,原則として,指名停止業者を随意契約の相手方としないものとし,「特にやむを得ない事由」がある場合に限り,例外的にその相手方となることを認めてい る。同条は,一般競争入札を原則とし,随意契約を例外的なものと位置付ける法及び施行令の趣旨,並びに入札や契約の公正性や透明性の確保を図るという 合に限り,例外的にその相手方となることを認めてい る。同条は,一般競争入札を原則とし,随意契約を例外的なものと位置付ける法及び施行令の趣旨,並びに入札や契約の公正性や透明性の確保を図るという適正化法の趣旨を受け,契約担当者の裁量を制限しようとしたものであり,わざわざ「特にやむを得ない事由」という文言を用いていることからすれば,単に指名停止業者との契約が他の業者との契約と比較して有利な事情があるというだけでは足りず,当該指名停止業者でなければ,契約の履行又は目的の達成が極めて困難な事情がある場合に限って,指名停止業者との随意契約の締結を認めたものと解するのが相当である。 そして,市要綱の定めた上記基準は,法,施行令及び適正化法の趣旨に沿い,合理的なものであると認められるから,「特にやむを得ない事由」がないにもかかわらず指名停止業者を相手方として随意契約を締結した場合には,裁量違反が生じ違法との評価を免れないものというべきである。 なお,堺市が運用指針として定めた市要綱運用基準は,市要綱7条ただし書に当たる場合について,「競争に付することが不利と認められる場合」や「市民の利益にかなう場合」等がこれに当たるとしており(前記第2の1(3)),これだけをみると,例えば,施行令167条の2第1項6号の要件に付加するところはないようにもみえるが,飽くまでも運用指針にすぎないことからすれば,上記ただし書の文言と整合するよう随意契約が締結できる場合を限定して解釈すべきである。 ウそこで,随意契約の方法により,A株式会社とクラスター工事の請負契約を締結したことについて,「特にやむを得ない事由」があったか否かについて検討するのに,隣接する大規模工事の現場で複数の建設業者が工事を行い,その工期が重なることはさほどまれな事態であるとは考えられないし,D ことについて,「特にやむを得ない事由」があったか否かについて検討するのに,隣接する大規模工事の現場で複数の建設業者が工事を行い,その工期が重なることはさほどまれな事態であるとは考えられないし,D株式会社工場の建設工事との連携を図ることを入札の条件とするなどの措置を講じることにより,入札業者にA株式会社との間で工事工程の調整を行わせることが不可能であったとまでは認め難い(クラスター工 事は請負代金が8億円を超える規模の大きな工事であり,入札業者は相応の監理能力を有しているのが通常であると考えられる。)。D株式会社工場の建設工事の工事用車両がクラスター事業用地内を通行する関係にあり,工事用進入路を適時に切り回す必要があった点についても,工事自体は飽くまでも別個のもので内容面での関連はなく,異なる現場で施工されることからも,施工責任の一元化が要請されるなどの事情もうかがえない。また,平成19年7月末までにD株式会社工場の進出が具体的に決定しているから,この時期に入札参加資格の審査を開始して,入札を行う場合のスケジュールの調整を行い,入札の際に工期についての条件を付したり,最終的な工事の内容について調整・変更の余地を残したりするなどすれば,クラスター工事の実施設計の確定が平成19年10月15日までずれこんだこと(前記(1)ウ(エ))や,競争入札や工事に見込まれる標準的な期間(同エ(ウ))を勘案したとしても,早期に入札を実施して契約を締結し,平成20年2月末までの工期にクラスター事業用地の粗造成を終えることが不可能であったとまでは認められない。 要するに,堺市において,隣接地でD株式会社工場の建設工事を請け負うことになるのが指名停止業者であるA株式会社であることは当初から容易に判明する事柄であり,同社と随意契約を締結することは市要綱によ 要するに,堺市において,隣接地でD株式会社工場の建設工事を請け負うことになるのが指名停止業者であるA株式会社であることは当初から容易に判明する事柄であり,同社と随意契約を締結することは市要綱により厳しく制限されているから,同社以外に発注する事態に備えて必要な検討・準備を進めておくべきところ,これを漫然と怠っていたために結果として時間的な切迫が生じ,そのことを理由にして随意契約の方法を安易に選択したことが疑われる。むしろ,平成19年10月15日にクラスター工事の実施設計が確定するのとほぼ同時に,A株式会社に対して随意契約の方法でクラスター工事を発注することの適否につき稟議書が作成されていること(前記(1)ウ(エ))からすれば,当初からA株式会社との随意契約のみを視野に入れ,その準備を進めていたことが推認されるものである。こ のような事実関係の下では,A株式会社が施工するのでなければ,契約の履行又は目的の達成が極めて困難な事情があったとみることはできない。 エ被告らは,指名停止業者との随意契約は,他の都市でも行われていると主張する。 この点につき,証拠(甲32から37まで,49から51まで,乙13,14,30から33まで,35,36,調査嘱託の結果,弁論の全趣旨)によれば,i堺市以外の政令指定都市16市(札幌市,仙台市,さいたま市,千葉市,横浜市,川崎市,新潟市,静岡市,浜松市,名古屋市,京都市,大阪市,神戸市,広島市,北九州市,福岡市)のうち,平成19年度に指名停止業者との随意契約の例があると回答したのは6市(札幌市,千葉市,横浜市,名古屋市,大阪市,福岡市),かかる例がないと回答したのは10市であること,ii随意契約の例があると回答した6市においては,それぞれ,指名停止措置に関する要領又は要綱において,指名停止業者を随意契 名古屋市,大阪市,福岡市),かかる例がないと回答したのは10市であること,ii随意契約の例があると回答した6市においては,それぞれ,指名停止措置に関する要領又は要綱において,指名停止業者を随意契約の相手方とすることを原則として禁止し,やむを得ない事由がある場合(大阪市においては,「事業実施上重大な支障を及ぼすと認められ,かつ緊急の必要がある場合」と定める)は,堺市と同様,例外的に随意契約の相手方となることを認めていること,iiiしかし,本件のように,工事現場を異にし,直接関連しない内容の工事について,施工中の指名停止業者と随意契約を締結した事例はないことが認められ,他の政令指定都市の扱いと比較しても,本件のような場合に,指名停止業者との随意契約を例外的に許容すべきような事情は見いだし難いところである。 (4)したがって,クラスター工事につき,指名停止業者と随意契約を締結する「特にやむを得ない事由」があったとはいえず,クラスター工事に係る随意契約は違法という評価を免れない。 私法上無効になるか否かについて(本案の争点iii)上記4のとおり,クラスター工事に係る随意契約は,適正化法の趣旨及び適 正化指針を具体化した市要綱に反し違法であるものの,随意契約の制限に関する法令に違反して締結された違法な契約であっても,私法上当然に無効になるものではなく,随意契約によることができる場合として施行令の規定の掲げる事由のいずれにも当たらないことが何人の目にも明らかである場合や,契約の相手方において随意契約の方法による当該契約の締結が許されないことを知り又は知り得べかりし場合のように,当該契約の効力を無効としなければ随意契約の締結に制限を加える法令の規定の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められる場合に限り,私法上無効になるものである(最 り又は知り得べかりし場合のように,当該契約の効力を無効としなければ随意契約の締結に制限を加える法令の規定の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められる場合に限り,私法上無効になるものである(最高裁昭和62年5月19日第三小法廷判決・民集41巻4号687頁)。 法,施行令及び適正化法上,指名停止業者との随意契約について禁止した規定はなく,市要綱において契約担当者の裁量を制限しているものであるところ,その例外要件である「特にやむを得ない事由」については,その範囲を緩やかに解釈した市要綱運用基準が定められており,また,クラスター工事をA株式会社との随意契約の方法で行う旨の議案は,堺市議会建設委員会において審理の上,賛成多数で可決され,堺市議会の最終本会議においても,賛成多数で可決されたものである。 そうすると,A株式会社が指名停止業者であり,堺市議会でも,「特にやむを得ない事由」に当たらないなどとして上記議案に反対する意見があったとはいえ,契約当時,随意契約によることができる場合に当たらないことが何人の目にも明らかであったとか,契約の相手方であるA株式会社において,随意契約の方法による契約締結が許されないことを知り又は知り得べきであったということはできず,契約の効力を無効としなければ随意契約の締結に制限を加える法令の規定の趣旨を没却する結果となる特段の事情は認められない。 したがって,クラスター工事に係る随意契約は,私法上無効とまではいえない。 結論 よって,本件訴えのうち,主文第1項記載の訴えは不適法であるから,これらをいずれも却下することとし,原告らのその余の訴えに係る請求は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部裁判長裁判官吉田徹裁判官小林康彦裁判官仲 ることとし,原告らのその余の訴えに係る請求は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部裁判長裁判官吉田徹裁判官小林康彦裁判官仲井葉月 (別紙)工事目録 契約締結日平成19年12月20日発注者堺市契約の相手方A株式会社工事名中小企業クラスター造成外工事工事場所堺市E区F町地内工期平成19年12月21日から平成21年9月30日まで請負代金額8億6100万円 契約締結日平成20年1月23日発注者堺市契約の相手方A株式会社工事名F町配水管布設工事工事場所堺市E区F町地内工期平成20年1月23日から平成20年8月29日まで請負代金額1億1650万円 (別紙)物件目録1(1)所在堺市E区F町地番G番H地目宅地地積20304.88平方メートル(2)所在堺市E区F町地番G番I地目宅地地積21449.81平方メートル(3)所在堺市E区F町地番J番K地目宅地地積50372.57平方メートル2(1)所在堺市E区F町地番G番L地目宅地地積225895.88平方メートル(2)所在堺市E区F町地番G番M地目宅地地積51763.42平方メートル(3)所在堺市E区F町地番N番O 地目宅地地積933931.40平方メートル(4)所在堺市E区F町地番P番Q地目宅地地積12144.04平方メートル 目宅地地積12144.04平方メートル
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