平成19(行コ)53 建築物是正命令等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成18年(行ウ)第428号)

裁判年月日・裁判所
平成19年6月13日 東京高等裁判所 警察関係
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判決文本文4,549 文字)

- 1 -主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 主位的請求杉並区長は,原判決別紙物件目録記載の建築物について,建築基準法43条1項に違反する部分を是正するために,建築基準法9条1項に基づく是正命令権限を行使せよ。 予備的請求杉並区長が,原判決別紙物件目録記載の建築物について,建築基準法43条1項に違反する部分を是正するために,建築基準法9条1項に基づく是正命令権限を行使しないことが違法であることを確認する。 第2事案の概要 Aは,杉並区α×××番11,16,18,19及び21の土地(原判決別紙図面1中の青色の線で囲まれた範囲内の土地。以下「本件敷地」という)。 に原判決別紙物件目録記載の建築物(以下「本件建築物」という)を建築す。 ることについて建築確認を申請し,杉並区建築主事は,建築確認処分をした。 本件敷地の隣地を所有している控訴人は,この建築確認処分について,本件敷地が位置指定道路に1.88メートルしか接していないのは建築基準法43条1項に違反するなどとして,建築確認処分の取消しを求める訴えを提起したが,本件敷地は位置指定道路に2メートル以上接しているとして,控訴人の請求は棄却され,この判決は控訴審及び上告審においても維持され,確定した。 本件は,Aが本件建築物の建築を開始したところ,控訴人が,本件敷地は実質的には道路に接していないこと,建築確認申請では1個の建築物を建築する- 2 -としていたにもかかわらず現実には2個の建築物を建築しようとしていることから,本件建築物は建築基準法43条1項に違反するとして,主位的請求として,杉並区長に対し,建築基準法9条1項に基づく是正命令権限の行使を求め(非申請型義務付け訴訟,予備的 建築しようとしていることから,本件建築物は建築基準法43条1項に違反するとして,主位的請求として,杉並区長に対し,建築基準法9条1項に基づく是正命令権限の行使を求め(非申請型義務付け訴訟,予備的請求として,杉並区長に対し,この是正命)令権限を行使しないことが違法であることの確認を求めた事案である。 原審は,主位的請求について,(1)建築基準法上,本件敷地の隣地に居住する控訴人には,杉並区長に対する是正命令権限の行使についての申請権が認められていないから,この訴えは非申請型義務付けの訴え(行政事件訴訟法3条6項1号)であるところ,この訴えが認められるのは,①一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり,②この損害を避けるために他に適当な方法がない場合に限られる,(2)本件では,控訴人の主張するとおり本件建築物が接道義務に違反し,1敷地1建物原則に違反しているとしても,それによる現実の危険はなく,本件建築物について是正命令権限の行使がなくても控訴人に重大な損害を生ずるおそれがあるとはいえないから,①の要件を満たさず不適法であると判断して訴えを却下した。 原審は,予備的請求について,(1)建築基準法上,本件敷地の隣地に居住する控訴人には,杉並区長に対する是正命令権限の行使についての申請権が認められていないから,この訴えは,行政法上の不作為の違法確認訴訟ではなく,無名抗告訴訟であるところ,この訴えが認められるのは,①行政庁が権限を行使すべきことが一義的に明白で,行政庁の第1次判断権を尊重することが重要でないこと,②行政庁の不作為による損害が大きく,事前救済が必要であること,③他に適切な救済方法がないこと,がいずれも認められることが必要である,(2)本件では,控訴人の主張するとおり本件建築物が接道義務に 行政庁の不作為による損害が大きく,事前救済が必要であること,③他に適切な救済方法がないこと,がいずれも認められることが必要である,(2)本件では,控訴人の主張するとおり本件建築物が接道義務に違反し,1敷地1建物原則に違反しているとしても,それによる現実の危険はなく,是正命令権限の行使がなくても損害が大きいとはいえず,事前救済が必要であるとはいえないから,②の要件を満たさず不適法であると判断して訴え- 3 -を却下した。 そこで,控訴人がこれを不服として本件の控訴をしたものである。 その他,前提事実,当事者の主張及び争点は,次の7のとおり当審における控訴人の主張を付加するほか,原判決「事実及び理由「第2事案の概」,要」の2及び3に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決添付図面中の「紙別図面1」を「別紙図面1」に改める。 。) 控訴人の当審における主張(1)本件敷地の東端は,建築基準法42条1項5号に基づく位置の指定を受けた道路(原判決別紙図面1中の赤色の線で囲まれた範囲内の土地。以下「本件位置指定道路」という)に接しているとされているが,本件位置指。 定道路は門扉や囲いがされており自由に通行することができないし,本件位置指定道路のうち,原判決別紙図面1の30,87,95,31,30の各点を順次直線で結んだ範囲内の土地は道路状になっておらず,道路として築造されていない。そうすると,本件位置指定道路は,道路として開設されているといえないから,建築基準法42条の道路としての要件を満たしておらず,本件敷地は建築基準法43条に適合していない。 (2)ア本件敷地の広さは240.58平方メートルであり,建築基準法53条に定める建ぺい率によれば,本件敷地上の建物の建築面積は96.23平方メートル以内でなけれ 築基準法43条に適合していない。 (2)ア本件敷地の広さは240.58平方メートルであり,建築基準法53条に定める建ぺい率によれば,本件敷地上の建物の建築面積は96.23平方メートル以内でなければならないが,本件建築物の建築面積は96. 44平方メートルで,これを超えているから,本件建築物は建築基準法53条に違反する建築物である。 イ建築基準法52条の定める容積率によれば,本件敷地上の建物の延べ面積は192.464平方メートル以内でなければならないが,本件建築物の延べ面積は192.88平方メートルで,これを超えているから,本件建築物は建築基準法52条に違反する建築物である。 第3当裁判所の判断- 4 - 当裁判所も,主位的請求である義務付けの訴えは,本件建築物について是正命令権限が行使されなくても控訴人に重大な損害を生ずるおそれがあるとはいえないから不適法であり,予備的請求である不作為の違法確認の訴えも,本件建築物について是正命令権限が行使されなくても控訴人の受ける損害が大きく,事前救済の必要性があるとはいえないから不適法であり,いずれの訴えも却下すべきであると判断する。 その理由は,原判決を2のとおり付加訂正し,3のとおり控訴人の当審における主張に対する判断を付加するほか,原判決「事実及び理由」の「第3争点に対する判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決の付加訂正(1)原判決19頁17行目から20頁18行目までを次のとおり改める。 「しかし,前記前提事実のとおり,本件敷地は本件位置指定道路に接しており,本件敷地から公道に出るまでの通路状部分における通行可能な幅員は,本件門扉を開いた状態では,最も狭い箇所でも2メートル以上確保されている(本件門扉はいわゆるアコーディオンタイプの可動式のものであり,本件 地から公道に出るまでの通路状部分における通行可能な幅員は,本件門扉を開いた状態では,最も狭い箇所でも2メートル以上確保されている(本件門扉はいわゆるアコーディオンタイプの可動式のものであり,本件。 ,門扉が開かれていれば,レールが固定された部分も通行可能である)から火災等の緊急時に消火活動等に特段の支障が生じることはなく,隣接地に居住する控訴人が生命身体の危機にさらされるとは認められない。 もっとも,控訴人は,上記通路状部分における通行可能な幅員が本件門扉を閉じた状態では約1メートルであることを理由に,緊急時の消火活動等に支障が生じると主張するようである。しかし,証拠(甲7)及び弁論の全趣旨によれば,本件門扉は,控訴人の前主であるBが平成10年に本件位置指定道路内に突き出して設置したものであるところ,道路内の建築制限を定める建築基準法44条,私道の変更又は廃止を制限する建築基準法45条の規定に照らせば,控訴人が自ら本件門扉を閉じた状態にすることを前提として,そのような状態であると消火活動等に支障が生じ,自らに危険が生じると主- 5 -張することは,許されないというべきであって,控訴人の主張は理由がない」。 (2)原判決22頁10行目の「本件建築物」から13行目の「こと」まで,を削る。 控訴人の当審における主張に対する判断(1)上記のとおり,本件建築物について是正命令権限が行使されなくても,控訴人に重大な損害が生ずるおそれがあるとはいえないし,また,控訴人の受ける損害が大きく事前救済の必要性があるとはいえないことから,控訴人の本件主位的請求及び予備的請求はいずれも不適法であり,本件建築物が建築基準法に適合していないとの控訴人の上記当審における主張は,いずれも検討の必要がないというべきである。 (2)なお,念のため付言 本件主位的請求及び予備的請求はいずれも不適法であり,本件建築物が建築基準法に適合していないとの控訴人の上記当審における主張は,いずれも検討の必要がないというべきである。 (2)なお,念のため付言すると,控訴人は,本件位置指定道路は門扉や囲いがされており自由に通行することができないし,本件位置指定道路のうち,原判決別紙図面1の30,87,95,31,30の各点を順次直線で結んだ範囲内の土地は道路状になっておらず,道路として築造されていないことを理由に,本件位置指定道路は,建築基準法42条の道路としての要件を満たしておらず,本件敷地は建築基準法43条に適合していないと主張するが,上記のとおり,控訴人が本件門扉を閉じた上で本件位置指定道路を自由に通行できないと主張することは許されないというべきであるし,証拠(甲8)によれば,控訴人の主張する部分が道路として築造されていないとは認められないから,控訴人の主張は採用できない。 また,控訴人は,本件建築物が建ぺい率及び容積率の点で違法な建築であると主張し,これを裏付ける証拠として甲20号証を提出するが,甲20号証による床面積の計算が正しいと認める根拠はなく(ちなみに,甲20号証の「へ」部分の計算式中の長さには誤りがある,本件建築物が建ぺい率。)及び容積率の点で違法な建築であると認めるに足りる証拠はない。 - 6 -第4 結論 よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第23民事部裁判長裁判官安倍嘉人裁判官片山良広裁判官後藤健 裁判官 後藤健

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