昭和23(れ)296 傷害、傷害致死

裁判年月日・裁判所
昭和23年10月6日 最高裁判所大法廷 判決 棄却 仙台高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件各上告を棄却する。          理    由  被告人三名の弁護人加藤行吉、同工藤祐造上告趣意第一点について。  原判決において確定した事実は「被告人等は原審相被告人

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判決文本文3,901 文字)

主文本件各上告を棄却する。 理由被告人三名の弁護人加藤行吉、同工藤祐造上告趣意第一点について。 原判決において確定した事実は「被告人等は原審相被告人等と共謀し犯意継続の上昭和二〇年一二月三〇日午後、一一時半頃A及びB両名に対して交々所携の楢薪等を投付け、又は之を以て殴打し、或は蹴る等の暴行を加え、Aには右肩胛骨骨折等加療約一ケ月半を要する傷害を負わせ、又Bには頭部に数個の挫創、背部に両肺の破裂を伴う筋肉内出血等の傷害を与え、同人をして翌三一日午後零時半頃該挫傷並びに外傷性脳出血のため死亡、するに至らしめた」というのである。そして、論旨は、「本件は同時にしかも極めて短時間内に十数名入り乱れての闘争の結果発生した傷害事件であつて各傷害行為の間に連続観念を容るべき時間的間隔がない。従つて之に対する罰条の適用は単一行為に基く事犯と為すべきである」と主張するのである。しかし、右判示事実は、要するに被告人等がA及び同Bの両名に対して相次いで幾多の暴行と傷害とを与えその傷害の結果遂にBをして死亡せしめたというのであるから、その暴行及び傷害行為の間に時間的間隔の存在したことは明白であつて、社会通念の上からみても一個の行為で同時に右両名に対し傷害を与えたと為すべきではなく、むしろ連続した数個の傷害行為があつたと見るのを相当とする。 されば、原審が判示事実に対し連続犯の法条を適用したのは当然であつて、原判決には所論のような違法はなく、論旨は採用に値しない。 同第二点について。 多衆一団となつて他人に暴行を加えることを謀議したものが、偶々犯行現場におくれて到着したため、又はその現場にいながら、直接実行々為に加担しなかつたとしても、他の共謀者の実行々為を介して自己の犯罪敢行の意思を実現したものと認- 1 - を謀議したものが、偶々犯行現場におくれて到着したため、又はその現場にいながら、直接実行々為に加担しなかつたとしても、他の共謀者の実行々為を介して自己の犯罪敢行の意思を実現したものと認- 1 -められるときは、その衆団暴行に基く傷害乃至は傷害致死の罪につき、なお共同正犯たるの責を負うべきである。さて、原審の確定した事実は、被告人等は、原審相被告人(但しCを除く)が盛岡市における暴力団の排除等を標傍する髑髏団の団員として、同団員Dが同市a町土木請負業E組親分A及びその弟B等から謂われない暴行を加えられたと称して憤慨している際、自らも激昂していた被告人Fは「E組の者をぶつた斬れ、責任は俺が負う」との旨、被告人Gは、「皆の命は俺が貰つた、頼みたいことはFに頼んでおけ」との旨、被告人Hは、「相手は日本刀を持つているから一人に三人でかかれ、責任は俺が負う」との旨をそれぞれ絶叫して互に激励し合い、ここに一同はE組に対する徹底的贋懲の殴込みを散行ずることに衆議を一決して、順次酒杯を取り交わし、同志打を避けるため各自白鉢巻をし、楢薪又は角材等を携えて、前記A方に押し寄せ髑髏団の名乗りをあげて怒号し、附近路上で之に応じて立ち向つたI兄弟に対し、被告人F、G両名をのぞく一同は、交々所携の薪等を投げ付け、或は之を以て同人等を殴打し、或は蹴る等の暴行を加え、よつて両名にそれぞれ判示の傷害を与え、その結果遂にBをして死亡するに至らしめたというのである。この認定事実によれば、被告人等はいづれも指導的地位に立つて、原審相被告人等と一団となつてE組膺懲のため殴込みを謀議敢行し、I兄弟に対し傷害を加え、うち一名をその傷害により死亡に致したものと見るべきであり、唯単に他のものを唆かして右殴込みを決意敢行せしめたに過ぎないものとはいい得ないのである。従つて仮りに所論のよ し、I兄弟に対し傷害を加え、うち一名をその傷害により死亡に致したものと見るべきであり、唯単に他のものを唆かして右殴込みを決意敢行せしめたに過ぎないものとはいい得ないのである。従つて仮りに所論のように、被告人Fは暴行の現場に遅参したため、又被告人Gはその現場にいながら、それぞれ暴行及び加害の行動には直接手を出さなかつたとしても、被告人両名は本件傷害及び傷害致死罪の共同正犯たるの責を免れ得ないのである。しかも、原審の前示事実認定は、原判決挙示の証拠に照らしこれを肯認するに難くないのであるから、原判決には所論のような違法はなく、論旨は畢竟事実審である原審の裁量権の範囲に属する事実認定を非難するに帰着し採用の- 2 -限りでない。 同第三点について。 所論「その二の事実」、すなわち、「被告人等一同は当初から薪材等を携えていたのではなく、B等が日本刀を抜いて立向つて来たので、各自一旦引返えして薪材を携行し之に対抗したに過ぎない」との事実が原審において新たに主張せられたことは、原審公判調書の記載によつて明らかである。しかし、かゝる事実は唯量刑上斟酌せらるべき一つの事情たるに止まり、本件犯罪の成否に関係がないばかりでなく、原審は事実審理の結果、右被告人等の弁解を採用せず、原判決挙示の証拠に基いて判示事実を認定したのであつて、しかもその事実認定が認定資料とせられた各証拠に照らし肯認し得るものであることは前説示の通りであるから、論旨は結局事実審である原審の裁量権の範囲に属する事実認定又は量刑の不当を非難するに帰着し、上告適法の理由とならない。 同第四点について。 論旨は「第一審公判廷においては、被告人等はE組の無言の威迫と警察官の傍聴等によつて警察署における言語に絶する拷問による供述を訂正し得ないような事情の下に置かれていたのであるから、たと について。 論旨は「第一審公判廷においては、被告人等はE組の無言の威迫と警察官の傍聴等によつて警察署における言語に絶する拷問による供述を訂正し得ないような事情の下に置かれていたのであるから、たとい第一審の公判の取調そのものには、強制拷問脅迫の事実がなかつたとしても、その供述はなお警察における拷問に禍されたものというべきである。然るに原審が比較的自由な立場においてなされた原審公判廷における供述をとらず第一審公判廷における被告人等の自白を断罪の資料としたのは憲法第三八条の精神に違反する」というのである。しかし、記録を精査しても第一審公判廷において被告人等が所論のような事情の下にその供述を強要せられたということを窺い得べき事跡は遂に発見し得ないのであり、其の他右被告人等の供述が違法な手続の下に為されたということも、これを認むべき何等の証左もない。 従つて該被告人等の自供が証拠となし得ないことを前提とする論旨は到底採用に値- 3 -しないのである。そして、原審がその公判における被告人等の供述と、これに反する第一審公判におけるそれのいづれに信憑力を置くかは、一切の証拠その他諸般の事情を斟酌衡量して決せらるべき自由心証の問題であるから、原審が経験法則等に反して採証したことを認め得ない本件においては、この点を非難する趣旨は、結局事実審である原審の裁量権の範囲に属する証拠の取捨選択を攻撃することに帰着し上告適法の理由とならない。 被告人F同Hの弁護人工藤祐造、同佐藤邦雄上告趣意第一点について。 論旨は要するに縷々陳述する諸般の事情に鑑み、被告人Fに対しては懲役三年以下の刑を科し、そして同人及び被告人Hに対しそれぞれ刑の執行を猶予するを相当とするに拘わらず、原判決がその措置に出でなかつたのは刑の量定甚しく不当と認むべき顕著な理由があると主張するので 懲役三年以下の刑を科し、そして同人及び被告人Hに対しそれぞれ刑の執行を猶予するを相当とするに拘わらず、原判決がその措置に出でなかつたのは刑の量定甚しく不当と認むべき顕著な理由があると主張するのである。しかし、刑の執行猶予の言渡を為すか否かは、事実審である原審の自由裁量に委ねられているところであり、しかも原判決には他に量刑上法令違反ありとは認め得ないのであるから論旨は結局原審の裁量権の範囲に属する刑の量定を非難するに帰着するのであつて、刑訴応急措置法第一三条第二項により上告適法の理由とならない。 同第二点について。 一件記録を精査しても、原審において被告人Fが本件犯行当時酩酊の極心神耗弱の状態にあつたという事実の主張せられた形跡はない。従つて、原判決に、その点に関する判断が特に明示されていなかつたのは、むしろ当然であるが、実は原判決を通読すれば容易に了解し得るように、原審は被告人Fの犯行当時における精神状態が正常であつたことを認定しているのである。そしてこの認定は原判決挙示の証拠に照らし肯認するに難くないのであるから、論旨は結局事実審である原審の裁量権の範囲に属する事実認定を非難するに帰着し、上告適法の理由とならない。 被告人G弁護人湯川忠一の上告趣意について。 - 4 -論旨の理由ないことはその援用にかゝる弁護人加藤行吉及び同工藤祐造の上告趣意に対し、説示したところによつて明らかである。 よつて刑訴第四四六条に従い主文の通り判決する。 この判決は裁判官全員の一致した意見である。 検察官橋本乾三関与昭和二三年一〇月六日最高裁判所大法廷裁判長裁判官塚崎直義裁判官長谷川太一郎裁判官沢田 最高裁判所大法廷裁判長裁判官塚崎直義裁判官長谷川太一郎裁判官沢田竹治郎裁判官霜山精一裁判官井上登裁判官栗山茂裁判官真野毅裁判官小谷勝重裁判官島保裁判官齋藤悠輔裁判官藤田八郎裁判官岩松三郎裁判官河村又介- 5 -

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