平成11(ワ)4085等 損害賠償請求事件(通称 愛知県職員損害賠償)

裁判年月日・裁判所
平成17年1月26日 名古屋地方裁判所
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判決文本文113,802 文字)

平成17年1月26日判決言渡平成11年(ワ)第4085号損害賠償請求事件(以下「第1事件」という。)平成12年(ワ)第1940号損害賠償請求事件(以下「第2事件」という。)口頭弁論終結日平成16年7月23日判決 主文 1 第1事件原告ら及び第2事件原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は第1事件原告ら及び第2事件原告らの負担とする。 事実及び理由 第1章請求(第1事件)被告は,第1事件原告らに対し,それぞれ10万円及びこれらに対する平成13年6月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (第2事件)被告は,第2事件原告らに対し,それぞれ10万円及びこれらに対する平成13年6月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2章事案の概要本件は,被告の職員である第1事件原告ら及び第2事件原告ら(以下両者を併せて「原告ら」という。)が,被告が原告らの給与を抑制する条例を制定したことが違法であるとして,被告に対し,国家賠償法1条による損害賠償請求権に基づき,減額された賃金相当の損害のうち各10万円及びこれらに対する不法行為の後の日である平成13年6月13日から支払済みまで国家賠償法4条が準用する民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 さらに,原告らは,本件各訴え提起後,行政事件訴訟法4条所定のいわゆる実質的当事者訴訟として,原告らの給与を抑制する前記条例が無効であると主張して,原告らの給与の根拠となる職員の給与に関する条例(昭和42年愛知県条例第3号)による賃金支払請求権に基づき,減額されなければ得られたであろう賃金のうち各10万円及びこれらに対する支払日の後の日である平成13年6月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を選択的,追加 権に基づき,減額されなければ得られたであろう賃金のうち各10万円及びこれらに対する支払日の後の日である平成13年6月13日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を選択的,追加的に併合して請求するものである。 第1 争いのない事実等 1 原告らは,いずれも地方公務員法の適用を受け,被告の機関である愛知県教育委員会が給与を支給する職員である(争いがない。)。 原告らは,職員の給与に関する条例(昭和42年愛知県条例第3号)1条に規定する職員である(争いがない。)。 2 愛知県人事委員会は,平成10年10月1日,愛知県議会議長と愛知県知事に対し,その当時の給料表を人事院が勧告した俸給表に準じて改定することなどを内容とする報告及び勧告をした(乙24)。 3 A前愛知県知事は,4期16年にわたり愛知県知事を務めてきたが,平成11年2月の知事選挙には不出馬を表明し,知事選挙が同月7日に実施され,その結果,Bが新愛知県知事となった(甲4)。 4 B新愛知県知事(以下単に「愛知県知事」という。)は,被告の財政が危機的状況に陥っているとして,平成11年2月26日に開会した定例愛知県議会に対し,第22号議案「知事等及び職員の給与の特例に関する条例」(以下「平成11年度給与抑制条例」という。)を提出することとした(弁論の全趣旨)。 5 愛知県議会は,平成11年度給与抑制条例案が提出される予定であることを受け,議案説明会が,議会開会に先立つ平成11年2月22日から同月25日にかけて,愛知県議会議長の召集により,議事堂大会議室において開かれた。 前記議案説明会は,前記定例愛知県議会において提出する予定の当初予算及び各議案について各議員が理解を深めることを目的とし,各議案に対する被告当局の説明を求めて,愛知県議会議長が召集し,議員全員を対象に 記議案説明会は,前記定例愛知県議会において提出する予定の当初予算及び各議案について各議員が理解を深めることを目的とし,各議案に対する被告当局の説明を求めて,愛知県議会議長が召集し,議員全員を対象に開催される会である。議案説明会は,常任委員会の所管ごとに行われ,平成11年度給与抑制条例に関しては,総務企画委員会所管に係る議案として,平成11年2月25日午前10時から開かれた議案説明会において説明がされ,所管部担当者は,同日の説明会において,全議員を対象に,条例案の提案趣旨及び逐条の説明をした(乙13から15まで)。所管部担当者は,さらに,前記条例案による給与抑制見積額等について説明をした(乙23)。 6 愛知県議会は,愛知県人事委員会に対し,平成11年度給与抑制条例案中第5条から第7条までの条項等につき,平成11年2月22日付けで意見照会をし(乙25の1),愛知県人事委員会は,愛知県議会に対し,同月24日付けで当該照会に対する回答をした。その回答は,「この措置は誠に残念であると言わざるを得ません。しかしながら,今回の措置は,景気の一層の悪化に伴う県税収入の急激な減少により,本県財政が過去に経験したことのない危機的状況に立ち至っていることに鑑み,こうした状況に対処するため可能な限りの努力をされた結果,緊急避難的にとられるものであると理解されますので,現下の諸情勢を勘案すればやむを得ないものであると考えます。」というものであった(乙25の2)。 7 愛知県知事は,平成11年2月26日に開会した定例愛知県議会に平成11年度給与抑制条例の条例案を提出し,被告の財政の危機的状況の下における予算編成についての説明を加えながら,提案理由の説明をした(争いがない事実,乙1,10)。 8 愛知県議会は,平成11年度給与抑制条例案の提出を受け,平成11年3月 被告の財政の危機的状況の下における予算編成についての説明を加えながら,提案理由の説明をした(争いがない事実,乙1,10)。 8 愛知県議会は,平成11年度給与抑制条例案の提出を受け,平成11年3月2日から同月9日にかけて開かれた愛知県議会本会議及び総務企画委員会において審議をした。 平成11年2月の定例愛知県議会は,被告の抱えている財政危機の問題が主要なテーマとされ,現下の被告の財政の危機的状況の要因とそれに対する被告の対応策について,愛知県議会本会議において議員から質問がされ,質疑が重ねられた(乙20の2,20の3から7までの各1,2)。 9 愛知県議会総務企画委員会は,全会一致をもって前記議案について原案を可決した(争いがない。)。 これを受けて,愛知県議会は,平成11年3月19日に開かれた本会議で,前記議案について多数の議員の賛成により原案を可決した(争いがない。)。 これを受けて,愛知県知事は,平成11年3月23日,平成11年度給与抑制条例(甲1)を公布した(争いがない。)。 平成11年度給与抑制条例のうち,原告らに適用される条項の内容は,おおむね平成11年4月1日から平成12年3月31日までの間,給与(教職調整額を含む。)及びこれに係る調整手当については,3.5%減額し,期末,勤勉手当については,8%減額するというものであり,その詳細は別紙1の「平成11年度の知事及び職員等の給与の減額について」と題する書面記載のとおりである(減額の対象を除き争いがなく,教職調整額が対象となることは弁論の全趣旨により認められる。)。 被告は,平成11年度給与抑制条例に基づき平成11年4月1日から給与の減額を実施している(争いがない。)。 11 愛知県人事委員会は,平成11年10月1日,愛知県議会及び愛知県知事に対し,当時の給 被告は,平成11年度給与抑制条例に基づき平成11年4月1日から給与の減額を実施している(争いがない。)。 11 愛知県人事委員会は,平成11年10月1日,愛知県議会及び愛知県知事に対し,当時の給料表を人事院が勧告した俸給表に準じて改定することを内容とする報告及び勧告をした(乙19)。 12 第1事件原告らは,平成11年10月26日,名古屋地方裁判所に対し,減額された賃金相当損害金の支払を被告に対して求める国家賠償請求訴訟を提起した(当裁判所に顕著)。 13 平成12年度の職員給与に関しては,平成11年度給与抑制条例に定める給与抑制期間を,「平成12年4月1日から平成13年3月31日まで」と改正する条例が,「知事等及び職員の給与の特例に関する条例の一部を改正する条例」(平成12年愛知県条例第23号。以下「平成12年度給与抑制条例」という。)として平成12年3月28日に公布され,同年4月1日から施行され,平成11年度と同じ内容の給与抑制が実施されている(甲36,37)。 14 第2事件原告らは,平成12年4月26日,名古屋地方裁判所に対し,減額された賃金相当損害金の支払を被告に対して求める国家賠償請求訴訟を提起した(当裁判所に顕著)。 愛知県人事委員会は,平成12年10月1日,愛知県議会及び愛知県知事に対し,人事院が俸給表の改定を見送ることとしたため,給料表の改定を見送ることが相当であるという内容の報告及び勧告をした(乙81)。 16 平成13年度の職員給与に関しては,給与(教職調整額を含む。)及び調整手当の減額率を3.5%から2%に減縮し,期末,勤勉手当の8%の減額をやめ,平成11年度給与抑制条例に定める給与抑制期間を,「平成13年4月1日から平成14年3月31日まで」と改正する条例が,「知事等及び職員の給与の特例に関する条例の一部 末,勤勉手当の8%の減額をやめ,平成11年度給与抑制条例に定める給与抑制期間を,「平成13年4月1日から平成14年3月31日まで」と改正する条例が,「知事等及び職員の給与の特例に関する条例の一部を改正する条例」(平成13年愛知県条例第9号。以下「平成13年度給与抑制条例」という。)として平成13年3月27日に公布され,同年4月1日から施行されている(甲38,39)。 17 原告らは,平成13年6月11日付け同月12日送達の書面をもって,被告に対し,選択的,追加的に,職員の給与に関する条例(昭和42年愛知県条例第3号)による賃金支払請求権に基づく請求を併合した(当裁判所に顕著)。 18 原告らが,平成11年度給与抑制条例,平成12年度給与抑制条例及び平成13年度給与抑制条例(以下これらを総称して「本件給与抑制条例」という。)により,減額された給与等の額は,別紙2の「一覧表」の「認否額」欄記載の各原告に対応する欄に記載のとおりである(原告らの主張する額よりも被告の認める額の方が多く,弁論の全趣旨により,被告の認める額と認めるのが相当である。)。 19 「財政再建団体」とは,地方財政再建促進特別措置法(昭和30年法律第195号)及び同法施行令に根拠を有するものである。すなわち,地方財政再建促進特別措置法2条1項は,「昭和29年度において,歳入が歳出に不足するため昭和30年度の歳入を繰り上げてこれに充て,又は実質上歳入が歳出に不足するため昭和29年度に支払うべき債務の支払を昭和30年度に繰り延べ,若しくは昭和29年度に執行すべき事業を昭和30年度に繰り越す措置を行った地方公共団体(以下「昭和29年度の赤字団体」という。)で,この法律によって財政の再建を行おうとするものは,(略)財政の再建に関する計画(以下「財政再建計画」という。)を定めなけれ 越す措置を行った地方公共団体(以下「昭和29年度の赤字団体」という。)で,この法律によって財政の再建を行おうとするものは,(略)財政の再建に関する計画(以下「財政再建計画」という。)を定めなければならない。」とし,同法3条4項は,財政再建計画について承認を得た昭和29年度の赤字団体を「財政再建団体」と呼称している。 また,同法22条2項は,「昭和30年度以降の年度において,歳入が歳出に不足するため翌年度の歳入を繰り上げてこれに充て,又は実質上歳入が歳出に不足するため当該年度に支払うべき債務の支払を翌年度に繰り延べ,若しくは当該年度に執行すべき事業を翌年度に繰り越す措置を行った地方公共団体で既に財政再建団体となっているもの以外のもの(略)は,当分の間,第2条第1項の規定により財政の再建を行うことを申し出ることができる。(略)。」と定め,同条4項は,「歳入欠陥を生じた団体でその財政再建計画について総務大臣(平成11年12月までは「自治大臣」)の同意を得たもの」を「準用財政再建団体」と呼称しているが,この「準用財政再建団体」を単に「財政再建団体」と称することもある(弁論の全趣旨。ただし法令の内容は当裁判所に顕著)。 そして,同法23条1項は,「昭和36年度以降においては,歳入欠陥を生じた団体で政令で定めるものは,地方財政法第5条ただし書の規定にかかわらず,前条第2項の規定によって財政の再建を行う場合でなければ,地方債をもって同法第5条第5号に掲げる経費の財源とすることができない。(略)」と定めており,同法22条2項により同法2条1項の規定による財政の再建を行う場合でなければ,原則として地方債の発行ができなくなり,事実上財政再建が不可能となる。 したがって,地方公共団体が「歳入欠陥を生じた団体で政令で定めるもの」に当たることになった場合には 政の再建を行う場合でなければ,原則として地方債の発行ができなくなり,事実上財政再建が不可能となる。 したがって,地方公共団体が「歳入欠陥を生じた団体で政令で定めるもの」に当たることになった場合には,同法2条以下の規定により財政再建手続に入ることになる(乙9,弁論の全趣旨)。 ところで,同法23条1項に定める「歳入欠陥を生じた団体で政令で定めるもの」については,地方財政再建促進特別措置法施行令11条の2第1項により,「当該年度の前年度の歳入が歳出に不足するため当該年度の歳入を繰り上げてこれに充てた額並びに実質上当該年度の前年度の歳入が歳出に不足するため,当該年度の前年度に支払うべき債務でその支払を当該年度に繰り延べた額及び当該年度の前年度に執行すべき事業に係る歳出予算の額で当該年度に繰り越した額の合算額(以下「当該年度の前年度の赤字額」という。)が,次の各号に掲げる地方公共団体の区分に応じ,当該年度の前年度について,当該各号に定めるところにより算定した額以上である場合における当該地方公共団体とする。」と定義され,かつ,同項2号には道府県の場合の「当該各号に定めるところにより算定した額」について,「地方交付税法第10条の規定により算定した普通交付税の額,同法第14条の規定により算定した基準財政収入額から同条の規定により算定した地方道路譲与税,石油ガス譲与税,航空機燃料譲与税及び交通安全対策特別交付金の収入見込額を控除した額の80分の100に相当する額並びに当該地方道路譲与税,石油ガス譲与税,航空機燃料譲与税及び交通安全対策特別交付金の収入見込額の合算額に0.05を乗じて得た額」と定められている(乙21)。すなわち,道府県の場合には,前年度の赤字額がいわゆる「標準財政規模」の5%以上となる場合に,「準用財政再建団体」に当たることとなる 額の合算額に0.05を乗じて得た額」と定められている(乙21)。すなわち,道府県の場合には,前年度の赤字額がいわゆる「標準財政規模」の5%以上となる場合に,「準用財政再建団体」に当たることとなる(弁論の全趣旨)。 この「標準財政規模」とは,地方公共団体の一般財源の標準規模を示すもので,道府県の場合,次の方法によって計算されたものをいう(乙32)。 (基準財政収入額-各種譲与税・交通安全対策特別交付金額)×100/80+各種譲与税・交通安全対策特別交付金額+普通交付税被告の平成10年度の「標準財政規模」は,約1兆0879億円(以下,億を超える数字については,四捨五入して億単位で記載する。)であり(乙22),これに0.05を乗じた額は約540億円となる(弁論の全趣旨)。 「形式収支」とは,歳入決算総額から歳出決算総額を単純に差し引いた額,すなわち歳入歳出差引額をいう(乙31)。形式収支は,例えば,当該年度に支払うべき債務の支払を翌年度に繰り延べ,又は当該年度に執行すべき事業を翌年度に繰り越すなどの措置を執っても,このような現金の収入支出を伴わない債権的,債務的要素は形式収支には現れないため,当該地方公共団体の収支の実態を的確に示しているとはいい難い(弁論の全趣旨)。 「実質収支」とは,歳入歳出差引額(形式収支)から翌年度へ繰り越すべき財源,すなわち継続費逓次繰越,繰越明許費,事故繰越,事業繰越,支払繰延に伴い翌年度へ繰り越すべき財源を控除した決算額をいい,形式収支に発生主義的要素を加味して本来当該年度に属すべき支出(翌年度への繰越額)を債務要素とみなし,本来当該年度に属すべき収入(翌年度への繰越額に係る未収入特定財源)を債権要素とみなして,両者を加減した実質的な収入と支出との差額として算出し,前年度以前からの収支の累積と 額)を債務要素とみなし,本来当該年度に属すべき収入(翌年度への繰越額に係る未収入特定財源)を債権要素とみなして,両者を加減した実質的な収入と支出との差額として算出し,前年度以前からの収支の累積という意味がある(乙31)。地方公共団体の決算においては,この実質収支が黒字であるか赤字であるかが,準用財政再建団体に当たるかの判断において重要である(弁論の全趣旨)。 繰越明許費は,歳出予算経費のうち,その性質上又は予算成立後の事由により当該年度内に支出が終わらなかったもので,予算の定めるところにより翌年度に限り繰り越して使用できるものであり,また,事故繰越は,歳出予算経費のうち,年度内に支出負担行為をし,避け難い事故のため年度内に支出が終わらなかったものを翌年度繰り越して使用するものである(弁論の全趣旨)。 「単年度収支」とは,当該年度の決算による実質収支から前年度の実質収支を差し引いた額をいう(乙31)。これにより当該年度の収支均衡の状況が明らかとなる。すなわち,単年度収支が黒字であれば繰越金が増加したり,過去の赤字額が減少したことを意味し,単年度収支が赤字であれば,過去からの繰越金が減少したり,赤字額が増加したことを意味する(乙28,31,弁論の全趣旨)。 21 「骨格予算」とは,地方公共団体の長や議員の選挙時期等の関係から政策的な判断ができにくいなどの事情により,政策的経費等の予算計上を避け,人件費等義務的経費等必要最小限度の経費を計上する予算編成をいう(乙38)。 「肉付け予算」とは,これらの事由が解消された後,政策的経費や新規事業等を加える補正予算をいう(乙38)。 22 歳入は,その使途の制約に着目して①「一般財源」と②「特定財源」に分けられている(乙76)。①一般財源は,財源の使途が特定されず,どのような経費にも使用できるも える補正予算をいう(乙38)。 22 歳入は,その使途の制約に着目して①「一般財源」と②「特定財源」に分けられている(乙76)。①一般財源は,財源の使途が特定されず,どのような経費にも使用できるもので,県税,地方交付税,地方消費税清算金,地方特例交付金,地方譲与税,交通安全対策特別交付金及び繰越金がこれに当たる。これに対し,②特定財源は,財政の使途が特定されているもので,県債,国庫支出金,諸収入,使用料,手数料,分担金,負担金,繰入金,財産収入及び寄附金がこれに当たる(乙76,弁論の全趣旨)。一般財源と特定財源とを分類する意義は,財政運営の観点から歳入のうち一般財源が占める割合によって県が独自に行い得る施策の幅が決まる点にある。すなわち,いかなる経費にも使用できる一般財源の割合が高いほど,県の施策の自由度が高まり,また,新しい行政需要にも的確に応えることのできる弾力性を有することとなる。逆に,使途が特定されている特定財源の割合が高いほど,施策の自由度が低くなり,施策の硬直化を招くことになる(乙76,弁論の全趣旨)。 23 歳出は,①「義務的経費等」,②「投資的経費」及び③「その他経費」に分けられている(乙40,76)。①「義務的経費等」は,支出が義務付けられて任意に削減できない経費のことで,人件費,扶助費,公債費がこれに当たり,「等」とは,地方税法により県税として収入した一定割合を市町村に交付することが義務付けられている県税交付金等をいう。②「投資的経費」は,道路,河川,砂防,治山,土地改良など,その支出の効果が社会資本の形成に向けられる経費で,国からの負担金又は補助金の交付を受けるか否かで,公共事業と単独事業とに分類される。③「その他経費」は,義務的経費等及び投資的経費以外の経費で,単独補助金,貸付金,繰出金,物件費などである(弁論 ,国からの負担金又は補助金の交付を受けるか否かで,公共事業と単独事業とに分類される。③「その他経費」は,義務的経費等及び投資的経費以外の経費で,単独補助金,貸付金,繰出金,物件費などである(弁論の全趣旨)。「単独補助金」は,法令によらず県が独自に交付する補助金で,例えば,市町村振興事業費補助金などが挙げられる。「貸付金」は,行政施策上の目的で企業に対して貸付けをする経費で,例えば,中小企業金融対策貸付金などが挙げられる。「繰出金」は,一般会計から他会計,基金に対して支出する経費で,例えば,流域下水道事業特別会計繰出金などが挙げられる。「物件費」は,賃金,旅費,役務費,委託料などの消費的性質の経費が挙げられる(乙76,弁論の全趣旨)。なお,この③「その他経費」として,2005年日本国際博覧会関係のものとして,博覧会の準備,運営を担う財団法人2005日本国際博覧会協会への補助金として,平成11年度に約5億円(乙48の72頁),平成12年度に約6億円(乙58の193頁),平成13年度に約8億円(乙69の186頁)がそれぞれ支出されている。 第2 争点(職員の給与に関する条例に基づく請求) 1 平成11年度給与抑制条例の無効(1) 地方公務員法24条6項,25条1項,3項1号,憲法94条違反(2) 地方公務員法所定の給与決定原則違反(3) 条例の成立過程の瑕疵の有無(4) 合理的理由の欠如ア裁量権零収縮の理論で,被告当局及び愛知県議会の立法裁量は否定される。 イ仮に,被告当局及び愛知県議会の立法裁量が認められるとしても,被告が主張するような広汎な立法裁量は認められず,裁量権零収縮の理論にならって裁量権は限定されるべきであり,裁量権の逸脱,濫用により違法である。 (ア) 総論(イ) 裁量基準の違法(ウ) 裁量判断の方法・過程の違 な広汎な立法裁量は認められず,裁量権零収縮の理論にならって裁量権は限定されるべきであり,裁量権の逸脱,濫用により違法である。 (ア) 総論(イ) 裁量基準の違法(ウ) 裁量判断の方法・過程の違法(エ) 裁量権行使に際しての手続の不公正財政再建計画を立てないまま,本件給与抑制条例を立案,提案した。 (オ) 事実誤認 2 平成12年度給与抑制条例の無効(1) 立法形式の濫用(2) 地方公務員法24条6項,25条1項,3項1号,憲法94条違反(3) 地方公務員法所定の給与決定原則違反(4) 条例の成立過程の瑕疵の有無(5) 合理的理由の欠如ア裁量権零収縮の理論で,被告当局及び愛知県議会の立法裁量は否定される。 イ仮に,被告当局及び愛知県議会の立法裁量が認められるとしても,被告が主張するような広汎な立法裁量は認められず,裁量権零収縮の理論にならって裁量権は限定されるべきであり,裁量権の逸脱,濫用により違法である。 (ア) 総論(イ) 裁量基準の違法(ウ) 裁量権行使に際しての手続の不公正財政再建計画を立てないまま,本件給与抑制条例を立案,提案した。 (エ) 事実誤認 3 平成13年度給与抑制条例の無効前記「2 平成12年度給与抑制条例の無効」と同じ。 4 消滅時効(抗弁)(国家賠償請求) 1 平成11年度給与抑制条例の違法 2 平成11年度給与抑制条例の違法性に関する愛知県知事及び愛知県議会議員の故意,過失 3 平成12年度給与抑制条例の違法 4 平成12年度給与抑制条例の違法性に関する愛知県知事及び愛知県議会議員の故意,過失 5 平成13年度給与抑制条例の違法 6 平成13年度給与抑制条例の違法性に関する愛知県知事及び愛知県議会議員の故意,過失第3章争点に関する当事者の主張(職員の給与に関する条例に基づく請求)第 平成13年度給与抑制条例の違法 6 平成13年度給与抑制条例の違法性に関する愛知県知事及び愛知県議会議員の故意,過失第3章争点に関する当事者の主張(職員の給与に関する条例に基づく請求)第1 平成11年度給与抑制条例の無効 1 地方公務員法24条6項,25条1項,3項1号,憲法94条違反(原告らの主張)地方公務員法24条6項は職員の給与は条例で定めると定め,同法25条1項は,職員の給与は,同法24条6項の規定による給与に関する条例に基づいて支給されなければならずと定め,同条3項は,給与に関する条例に規定すべき事項として給料表を1号として掲げている。また,同法26条に定める人事委員会の報告,勧告の対象は給料表である。 これらに照らせば,給料表は,給与に関する条例の中核的事項であるということができる。 国家公務員に対しても,その生存権保障の趣旨から,法は労働基本権の制約に見合う代償措置として,身分,任免,服務,給与その他に関する勤務条件について詳細な規定を設け,さらに,中央人事行政機関として準司法機関的性格を持つ人事院を設けている。ことに公務員は,法律によって定められる給与準則に基づいて給与を受け,その給与準則には俸給表のほか法定の事項が規定されるなど,いわゆる法定された勤務条件を享受しているのであって,人事院は公務員の給与,勤務時間その他の勤務条件について,いわゆる情勢適応の原則(国家公務員法28条1項)により国家及び内閣に対して報告と勧告をすることが義務付けられている(同条2項)。そして,公務員たる職員は,個別的に又は職員団体を通じて俸給,給料その他の勤務条件に関し,人事院に対しいわゆる行政措置要求をし,不利益な行政処分を受けたときは,人事院に対し審査請求をする途も開かれているのであり,このように,国家公務員は労働基本権 通じて俸給,給料その他の勤務条件に関し,人事院に対しいわゆる行政措置要求をし,不利益な行政処分を受けたときは,人事院に対し審査請求をする途も開かれているのであり,このように,国家公務員は労働基本権に対する制限の代償を法制度上整備された生存権擁護のための関連措置による保障を受けている(最高裁判所昭和48年4月25日大法廷判決刑集27巻4号547頁参照)。 地方公務員も,地方公務員法上,国家公務員の場合とほぼ同様な勤務条件に関する利益を保障する定めがされているほか,人事院制度に対応するものとして,これと類似の性格を持ち,かつ,これと同様の又はこれに近い職務権限を有する人事委員会又は公平委員会の制度が設けられており,それらは,なお中立的・第三者的な立場から公務員の勤務条件に関する利益を保証するための機構としての基本的構造を持ち,かつ,必要な職務権限を与えられている(同法26条,47条等)点においては,人事院制度と本質的に異なることはなく,その点において,制度上地方公務員の労働基本権の制約に見合う代償措置の一つの一般的要件を満たしているものと認めることができる(最高裁判所昭和51年5月21日大法廷判決刑集30巻5号1178頁参照)。 以上のとおり,公務員の労働基本権の制約に対する代償措置における俸給表(国家公務員の場合)又は給料表(地方公務員の場合)及び俸給表に対する人事院の権限(調査研究と給与準則の立案)又は給料表に対する人事委員会の権限(給料表に対する報告と勧告)の制度の持つ意味は極めて大きい。 したがって,職員の給与は,職員の給与に関する条例に定める給料表に従って支給されるべきであり,仮に職員の給与を減額する場合,給料表自体の改定が必要であり,かつ,その改定に当たっては地方公務員法26条所定の人事委員会の給料表に対する報告と勧告と 例に定める給料表に従って支給されるべきであり,仮に職員の給与を減額する場合,給料表自体の改定が必要であり,かつ,その改定に当たっては地方公務員法26条所定の人事委員会の給料表に対する報告と勧告という手続が必要不可欠である。 しかし,平成11年度給与抑制条例は,給料表それ自体を変更するものではないし,また,人事委員会の報告,勧告の手続もなく,職員の給料を地方公務員法25条3項1号に定める給料表に従って支給しないことを定めるものであり,地方公務員法24条,25条1項,3項1号に反し,ひいては憲法94条にも反する。また,これらは,公務員の労働基本権を制約したことの代償措置の存在意義を否定するものであり,前記最高裁判所大法廷判決にも違反する。 (被告の主張)(1) 地方公務員法24条,25条は,職員の給与は条例でこれを定めなければならず,また,職員の給与は法律又はこれに基づく条例によらなければならないと定め,給与は必ず条例の根拠に基づかなければならないという原則(給与条例主義)を定めている。 この趣旨は,①地方公務員は,その地位の特殊性に基づき労働基本権が制限されており,その制約に対する代償措置の基本となるものとして,職員の給与は,住民の代表である議会が制定する条例によって定めるべきものとし,職員に対して給与を権利として保障するとともに,②給与の決定を条例の制定の形で住民の意思に基づいて行うことにより住民自治の原則の実現を企図したことにある。 したがって,給与を定める条例は,その条例の名称や形式を問わず,これらの趣旨に反しない限り,給与条例主義に反することはない。 平成11年度給与抑制条例は,「職員の給与に関する条例」の特例的措置を別条例の形式で定めるものであり,「職員の給与に関する条例」に定める給料表の基準を一律に削減する形式 主義に反することはない。 平成11年度給与抑制条例は,「職員の給与に関する条例」の特例的措置を別条例の形式で定めるものであり,「職員の給与に関する条例」に定める給料表の基準を一律に削減する形式で,同条例と一体となって,職員給与の給料表を定めるものであって,職員の給与に関するその他の基準は,すべて「職員の給与に関する条例」にのっとっている。 また,平成11年度給与抑制条例と同様,給与に関する特例的措置を定めた条例として,「義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置条例」や「職員の懲戒の手続き及び効果に関する条例」があるし,同様の特例的措置を定めた条例は被告だけでなく,ほとんどすべての自治体に存在する。 したがって,平成11年度給与抑制条例は,明らかに地方公務員法所定の「給与に関する条例」に当たり,給与条例原則に反しない。 (2) 人事委員会の報告,勧告の点については,地方公務員法14条は,勤務条件の情勢適応の原則を定め,硬直的になりがちな職員の勤務条件をできる限り弾力化するよう求めている。そして,地方公共団体の各機関は,職員の給与を含む勤務条件が「社会一般の情勢(それぞれの地方公共団体の地域的事情)」に適応するよう,「随時」措置をすべき義務を負っている。地方公務員法24条3項が,職員の給与に関して「均衡の原則」を定めているのも,この「情勢適応の原則」を具体化したものである。 したがって,本来,議会又は当局は,人事委員会の勧告を待つまでもなく,法定されている「情勢適応の原則」又は「均衡の原則」にのっとり,自主的に給与の改定を行うことができる。 平成11年度給与抑制条例は,前記の「情勢適応の原則」の要請にのっとって制定された。 なお,地方公務員法26条は,人事委員会が「給与を決定する諸条件の変化により,給料表に定 うことができる。 平成11年度給与抑制条例は,前記の「情勢適応の原則」の要請にのっとって制定された。 なお,地方公務員法26条は,人事委員会が「給与を決定する諸条件の変化により,給料表に定める給料額を増減することが適当であると認めるときは,あわせて適当な勧告をすることができる。」という給与勧告制度を定めている。しかし,この人事委員会による給与勧告制度は,給与の決定などについては,中立かつ専門的機関である人事委員会が関与することが望ましいことから設けられているにすぎず,その勧告に拘束力が認められているわけではない。特に議会は給与等に関する条例についての最終的な意思決定機関であって,その議決は地方公共団体の公共的な意思を確定するものであり,現に人事委員会を設けていない市町村では,人事委員会の勧告がなくても議会の議決のみで給与の改定をしていることとの均衡からも,人事委員会を置く地方公共団体においても,議会の議決がすべてに優先し,人事委員会の勧告を待たずとも,自主的に給与の改定をすることができる。 また,平成11年度給与抑制条例の審議に際し,愛知県議会議長は,地方公務員法5条2項に基づき,愛知県人事委員会委員長に対して平成11年度給与抑制条例に関する意見照会をしているが,この照会に対し,愛知県人事委員会委員長は,「現下の諸情勢を勘案すればやむを得ないもの」との判断を示し(乙25の1及び2),平成11年度給与抑制条例の制定を是認している。 (3) 原告らが引用する判例において,最高裁判所は,公務員の労働基本権の制約の合憲性を認めるに当たり,公務員の給与が,議会の議決において定められるものであって,契約当事者間の交渉によって決定される民間労働者とはその賃金決定体系が異なっているという財政民主主義の見地を重視したのであり,平成11年度給 務員の給与が,議会の議決において定められるものであって,契約当事者間の交渉によって決定される民間労働者とはその賃金決定体系が異なっているという財政民主主義の見地を重視したのであり,平成11年度給与抑制条例は,正に財政民主主義の要請に基づいて制定されたものである。 (原告らの反論)(1) 被告は,平成11年度給与抑制条例による給与抑制は条例をもって行われたから,地方公務員法25条1項にいう給与条例主義に反しないとするが,給与条例主義は,同法25条3項1号から7号までに定める事項を内容とする条例というのが,その意味である。そして,その中でも給料表が給与条例の内容の核心にほかならず,給料表の改定を離れての給与抑制は,給与条例主義に反している。 (2) 地方公務員法は,同法25条1項において,給与に関する条例に定められる事項を同条3項1号から7号までと定めている。また,憲法94条は,地方公共団体は,「法律の範囲内で条例を制定することができる。」と定めている。 本件のように給料表の改定以外の方法で給与を減額することは,地方公共団体が地方公務員法25条3項1号から7号までに定めている事項以外の事項について条例を制定することになり,憲法94条所定の「法律の範囲内」を逸脱するものであり,違法である。 (3) 「義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置条例」は,国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法8条及び11条に基づき,「職員の懲戒の手続き及び効果に関する条例」は,地方公務員法29条2項及び4項に基づくものであり,いずれも法律上の根拠があり,本件給与抑制条例とは異なる。 (4) なお,この地方公務員法違反の主張に関しては,被告当局又は愛知県議会の裁量の範囲内であるとして適法となる余地はない。 2 地方公務員法 ずれも法律上の根拠があり,本件給与抑制条例とは異なる。 (4) なお,この地方公務員法違反の主張に関しては,被告当局又は愛知県議会の裁量の範囲内であるとして適法となる余地はない。 2 地方公務員法所定の給与決定原則違反(原告らの主張)地方公務員法14条は情勢適応の原則を定め,人事委員会制度を始めとする代償措置を講じている。具体的には,地方公務員法26条は,人事委員会の給料表に関する報告及び勧告の制度を定め,人事委員会は,地方公務員法24条1項から5項までに定める給与等の勤務条件の根本基準にのっとらなければならない。さらに,地方公共団体は,人事委員会の報告や勧告を尊重した上,条例をもって給与を決定しなければならない(給与決定原則)。 財政が危機的状況にあるという理由で,給与を減額することはこの給与決定原則に反する。 この給与決定原則違反の主張については,被告当局又は愛知県議会の裁量の範囲内であるとして適法となる余地はない。 (被告の主張)地方公務員法14条は,情勢適応原則を定め,これを具体化するために同法24条において給与決定の3原則(「職務給の原則」,「均衡の原則」,「給与条例主義」)を定めている。この3原則の中の同法24条3項に定められている「均衡の原則」によれば,給与決定の際に考慮すべき事情として「地域の経済事情」を考慮すべきものとされているのであって,平成11年度給与抑制条例の制定については,被告としては,被告の財政の危機的状況を考慮したものであり,正に地方公務員法の定める給与決定原則にのっとったものである。 また,同項においては,「国家公務員の給与に準ずる」ことも考慮すべき事項と定めているところ,被告の職員の給与水準は給与抑制後においてもなお国家公務員の給与水準を上回っているのであって,国家公務員との給与の比較におい ては,「国家公務員の給与に準ずる」ことも考慮すべき事項と定めているところ,被告の職員の給与水準は給与抑制後においてもなお国家公務員の給与水準を上回っているのであって,国家公務員との給与の比較においても,平成11年度給与抑制条例が地方公務員法24条に定める給与決定原則に反することはない(乙19)。 (原告らの反論)地方公務員法14条所定の「情勢適応の原則」も,同法24条3項所定の「均衡の原則」も,地方公務員の身分保障を目的とするものであって,給与を抑制することを目的としていないから,減額を正当化する根拠とはなり得ない。 3 条例の成立過程の瑕疵の有無(原告らの主張)(1) 地方公共団体の当局が,給与条例の立案に当たって履践すべき2つの手続を欠くとき又は不十分なときは,当該給与条例は違法かつ無効である。 その1つは,人事委員会の地方公務員法25条4項所定の調査研究,職階制に適合する給料表に関する計画及び同法26条に定める給料表に関する報告及び勧告を待った上立案すること並びにこれらの人事委員会の勧告等を尊重して立案することである。もう1つは,地方公務員法55条に定める職員団体と誠実な交渉を経なければならないことである。その理由は①同法55条が定める勤務条件のうち給与はその中核を占めるもので極めて重要なものであることにある。また,②従前の被告の実情によれば,人事委員会が給料表に関する報告及び勧告をしたのを受けて,被告当局は,各職員団体と給与に関する交渉を行い,これを経た上で,愛知県知事は給与条例を立案して,愛知県議会に提出していたのであり,この手順は長年にわたって実行されてきた確立した慣行・慣習であって,法例2条所定の慣習法又は民法92条所定の事実たる慣習に当たる。 平成11年度給与抑制条例は,人事委員会の報告,勧告等もないのであ の手順は長年にわたって実行されてきた確立した慣行・慣習であって,法例2条所定の慣習法又は民法92条所定の事実たる慣習に当たる。 平成11年度給与抑制条例は,人事委員会の報告,勧告等もないのであるから,当該条例の立案に先立って,被告当局が職員団体と地方公務員法55条に定める交渉を経ることの重要性は極めて高くなり,この交渉を欠くとき又は不十分なときは,当該条例の立案に先立って履践すべき手続を欠くものとして,平成11年度給与抑制条例は違法かつ無効なものとなる。 (2) 被告当局は,職員団体との交渉において給与減額についての合理的説明をしていない。 ア原告らが加入する職員団体と交渉した被告当局は,財政について十分に説明できる者でなかったり,交渉について専決されていない者であったりして,地方公務員法55条所定の「当局」とはいえない。 イまた,被告当局側の交渉担当者自らが財政再建計画の必要性及び財政再建計画が立てられないままの交渉が不十分であることを認めていたことから,給与減額についての合理的説明がされたとはいえない。 以上ア及びイによれば,平成11年度給与抑制条例を立案する前に履践すべき地方公務員法55条に定める交渉を欠いていたか又は不十分であったといえる。 (3) 愛知県議会総務企画委員会,本会議のいずれにおいても,愛知県議会議員は十分な審議を尽くしていない。 (被告の主張)(1) 被告は,平成11年度給与抑制条例案の提出に先立ち,平成10年11月から平成11年1月下旬にかけて,別紙3の「平成10年度給与改定等組合交渉スケジュール」と題する書面に記載のとおり,8回にわたり原告らの所属する職員団体を含む関係職員団体に対し,被告の財政の危機的状況と給与抑制の必要性及びこれに伴う平成11年度給与抑制条例の内容について説明する機会を設け る書面に記載のとおり,8回にわたり原告らの所属する職員団体を含む関係職員団体に対し,被告の財政の危機的状況と給与抑制の必要性及びこれに伴う平成11年度給与抑制条例の内容について説明する機会を設け,これらの事項についてあらかじめ十分な時間をかけて説明し,かつ,質疑を行い,理解を求めたほか,その他の関係団体に対しても説明した。 その際,被告当局側は,関係職員団体に対し,資料(乙3,4,8,11及び12)を交付したり,その内容を説明したりした。 (2) 地方公務員法55条1項によれば,「地方公共団体の当局は,登録を受けた職員団体から,職員の給与,勤務時間その他の勤務条件に関し,・・・適法な交渉の申入れがあった場合,その申入れに応ずべき地位に立つ」ことにとどまるのであって,地方公共団体がそれ以上の義務を負うものではない。さらに,平成11年度給与抑制条例の議決に,職員団体との交渉の存在が要件となるとか,職員団体の合意が必要であるということはない。 (3) 地方公務員法55条5項は,「(職員団体との)交渉は,・・・地方公共団体の当局の指定する者との間において行われなければならない。」と定めているが,原告らが主張する各交渉日において,愛知県教育委員会側の当局側として対応した者は,いずれも愛知県教育委員会事務局組織規則及び愛知県教育委員会事務決裁規程に基づいて対応しており,同項に定める「地方公共団体の当局の指定する者」に当たる。 (4) 愛知県議会議員は,十分検討の上,審議をした。 (原告らの反論)8回行ったとされる交渉はいたずらに回数を重ねるだけで,ほとんどまともな議論はされなかった。財政状況を的確に説明できる財政課職員は,8回中,平成10年11月13日及び同年12月3日の2回出席しただけで,それも職員団体による強い要求の結果であった。財政課 とんどまともな議論はされなかった。財政状況を的確に説明できる財政課職員は,8回中,平成10年11月13日及び同年12月3日の2回出席しただけで,それも職員団体による強い要求の結果であった。財政課職員の説明は概略「県税収入,特に法人2税が大幅に落ち込み,1050億円の財源不足が予想される。このままでは財政再建団体に転落する。」というもので,平成11年1月以降に財政状況ははっきりするとしたが,財政課職員は財政状況が明らかになる最終局面には出席することもなく,明確な財政状況についての説明はされなかった。 財政課が出席しない中での交渉は,人事当局である教職員課員が当局者として出席したが,財政課職員以上の説明はなかった。職員団体は,その際,「財政を圧迫する要因は公債費にあり,高利の県債の借り換えを検討すべき。」,「どうして財政危機といわれる状況になったのか,その原因を説明すべき。」,「財政再建計画をまず出すべき。」,「万博や空港といった大型プロジェクトが財政を圧迫しているのではないか。」などの要求,質問をしたが,まともな回答はされなかった。そればかりか,財政状況の説明については,常にマスコミによる報道が先行し,当局も困惑の色を隠せなかった。 その上,当局は,「税収が見込めない。」,「教育,福祉削減のためには身内から。」という論理で,平成11年度給与抑制条例を愛知県議会に強行上程した。 (被告の再反論)愛知県教育委員会の関係職員に対しては,所管課の教職員課が主として対応し,時に財政課の職員が同席できる場合には,その同席を得てされた。 所管課の教職員課としては,職員団体からのすべての質疑に対し,その時点で可能な限りの回答,説明をしている。財政関係の質疑事項については,財政課と連絡を密にし,基本的説明については,財政課職員の同席の下で説明をし 課としては,職員団体からのすべての質疑に対し,その時点で可能な限りの回答,説明をしている。財政関係の質疑事項については,財政課と連絡を密にし,基本的説明については,財政課職員の同席の下で説明をし,かつ職員団体からの質疑に対する応答もし,財政課職員の出席を得られないときには,質疑事項の回答に必要な場合には,財政課に問い合わせをし,又はその確認を得た上で回答するなど,関係職員団体のすべての質疑に対し,誠意をもってその時点で可能な限りの回答,説明をしている。 4 合理的理由の欠如(原告らの主張)職員の給与に関する条例(昭和42年愛知県条例第3号)に定める給与月額,給与調整額,期末手当及び勤勉手当は,既に確定した勤務条件であり,これを職員に不利益に変更するに当たっては,就業規則の不利益変更に関する判例法理(最高裁判所昭和63年2月16日第3小法廷判決民集42巻2号60頁)が準用されるべきで,当該給与の減額を職員に法的に受忍させることを許容できるだけの高度の必要性に基づいた合理的な理由がなければならず,これを満たさないときは違法かつ無効と解すべきである。 (被告の主張)原告らは,地方公務員法の適用を受ける一般公務員であって,その勤務関係は基本的に公法上の関係であって,民間労使間におけるような私法上の関係に属するものではなく,その勤務条件も,就業規則等の私的自治に基づく規範に準拠するものではない。 したがって,就業規則の不利益変更に関する判例法理は,原告らには適用されない。 被告の財政の危機的状況の下,勤務条件条例主義の原則にのっとり,給与決定原則に反しない範囲で人件費の削減を図ることは,歳入歳出の均衡を図る上でやむを得ない行為であることは明らかであり,平成11年度給与抑制条例の制定は合理的理由を有する。 (1) 立法裁量の否定 決定原則に反しない範囲で人件費の削減を図ることは,歳入歳出の均衡を図る上でやむを得ない行為であることは明らかであり,平成11年度給与抑制条例の制定は合理的理由を有する。 (1) 立法裁量の否定(原告らの主張)アそもそも給料表によって確定している給与請求権を一方的にはく奪する立法について立法裁量が認められるはずがない。 イ地方公務員法14条所定の情勢適応の原則,同法24条3項所定の均衡の原則は,地方公務員の身分保障の定めであり,給与はその中核をなすものである。この2つの原則は,国家公務員における人事院勧告制度と同様,具体的には,人事委員会の給料表に関する報告,勧告という手続を経ることによって制度的に保障される。 しかし,本件では,条例によって既に既得権として給料表により定められた給与の削減が,人事委員会の報告,勧告という制度的保障を無視してされたものであり,職員は,既に地方公務員法が定める給与決定原則による保護は奪われているのであって,被告当局又は愛知県議会の裁量権を認めると,職員の給与請求権の権利性は著しく不安定なものとなるから,被告当局又は愛知県議会の裁量権は,裁量権零収縮の理論にならって否定されるべきである。 したがって,「立法行為」の裁量権は零収縮し,裁判所は判断代置説によって審査した上,平成11年度給与抑制条例の違法性の有無を判断すべきであり,判断代置説により裁判所が判断するときの基準としては,当該給与の減額を職員に法的に受忍させることを認容できるだけの高度の必要性に基づいた合理性がなければならないことになる。 (被告の主張)財政民主主義の原則の下,県議会の議決をもって職員の給与を改定できることは,地方公務員法上明らかというべきであり,また,このような県議会の議決をもって地方公共団体の勤務条件が定められると の主張)財政民主主義の原則の下,県議会の議決をもって職員の給与を改定できることは,地方公務員法上明らかというべきであり,また,このような県議会の議決をもって地方公共団体の勤務条件が定められるという財政民主主義の制度自体が,地方公共団体の労働基本権の基本的な代償措置と考えられており,地方公務員法上も人事委員会の勧告に拘束力はないとされていることからすれば(同法26条),給料表を変更することなく給与を削減することをもって,被告当局及び愛知県議会の給与条例制定に関する裁量権を否定する根拠とはならない。 (2) 裁量権の逸脱,濫用ア総論(原告らの主張)(ア) 裁量権零収縮の理論に従って,裁量権は限定されるべきであって,被告が主張するような広範な立法裁量は認められる余地がない。 被告が主張する立法裁量論(最高裁判所昭和60年3月27日大法廷判決民集39巻2号247頁)は,条例制定一般に関するものであり,新しく発生する立法事実に対応して,国や地方公共団体が国民や住民に対し何らかの給付や不利益排除の措置を定める立法をする場合には妥当するかもしれないが,本件は,職員が既に定められた給料表による給与請求権を有するのに,その支払を一部制限するものであるから,被告が主張する立法裁量論は本件には当てはまらない。 (イ) この裁量権行使の際にも,地方公務員法14条所定の情勢適応の原則と同法24条3項の均衡の原則は,その裁量の根本的な準則として機能する。 平成11年度の人事委員会の報告,勧告(乙19の12頁別表第3「職員の給与と民間給与の較差」)によれば,民間給与と職員給与とでは,平成11年度給与抑制条例による減額前では967円の較差であるが,減額後では1万4988円の較差となっている。 また,平成12年度の人事委員会の報告,勧告(甲42) ば,民間給与と職員給与とでは,平成11年度給与抑制条例による減額前では967円の較差であるが,減額後では1万4988円の較差となっている。 また,平成12年度の人事委員会の報告,勧告(甲42)によれば,民間給与と職員給与とでは,減額前は435円の較差であるが,減額後は1万4607円もの較差となり,平成13年度の人事委員会の報告,勧告(甲43)によれば,民間給与と職員給与とでは,減額前は304円の較差であるが,減額後は依然として8593円もの較差となる。 本件給与抑制条例は,いずれも以上のように給与を減額するものであり,地方公務員法14条所定の情勢適応の原則と同法24条3項の均衡の原則の定める根本基準に反し,裁量権の逸脱,濫用となるものである。 (被告の主張)(ア) 裁量論一般的に,予算の編成においては,それぞれの時点における被告の財政の状況,歳入の増減状況,県下の社会経済の状況や県民生活の実態等についての多くの情報が不可欠であり,予算編成行為は極めて高度で専門的な判断と政治的配慮を要する事項であることから,その判断については,これらの事項について正確で多様な資料を有する被告当局及び県民の代表として民主的な基礎を有する愛知県議会の政策的,技術的判断にゆだねるべきであり,被告当局及び愛知県議会は,このような予算の編成及びそれに必要な施策の選択について,広範な裁量権を有している。 したがって,被告当局及び愛知県議会の選択判断が,著しく妥当性を欠き,明らかに裁量権を逸脱,濫用して地方公務員法14条所定の「情勢適応の原則」及びこれを具体化した同法24条3項の「均衡の原則」に違反するといわざるを得ない場合を除き,裁判所は,基本的に被告当局及び愛知県議会の裁量判断を尊重すべきである(最高裁判所昭和60年3月27日大法廷判決民集3 体化した同法24条3項の「均衡の原則」に違反するといわざるを得ない場合を除き,裁判所は,基本的に被告当局及び愛知県議会の裁量判断を尊重すべきである(最高裁判所昭和60年3月27日大法廷判決民集39巻2号247頁参照)。 平成11年度給与抑制条例の制定が検討された平成10年秋から平成11年2月当時の被告の財政の危機的状況の下では,どのような方法で財政の健全化を図るか,その選択が大きな政治的課題となったが,このような被告の財政の健全化のために考えられる多様な方法の選択についても,原則として,被告当局及び愛知県議会の政策的,技術的な裁量判断にゆだねるべきである。 (イ) 被告の財政の危機的状況平成10年10月ころ,被告の財政状況は,経済の低迷による県税収入の急激な落ち込みによって,かつて経験したことのない極めて深刻な状況にあった。すなわち,被告の平成10年度の県税収入は,景気の動向に影響を受けやすい法人二税(法人事業税及び法人県民税)を中心に急激に落ち込み,予算計上額に比べ,おおむね900億円の減収が見込まれていた。 他方,歳出面は,今後必要となる財政需要がおおむね150億円あり,歳入,歳出を併せ,最終的に1050億円程度の財源不足が生じる見込みであった。 そのため,このまま推移すると,平成10年度決算においては,戦後初めて赤字決算となる見通しであったばかりでなく,決算の結果,仮に,赤字が約540億円を超えた場合には,被告が財政再建団体に転落し,自主的な行財政運営ができなくなるおそれも生じるなど,被告の財政は極めて深刻な危機的状況に陥っていた(乙3から5まで)。 そのため,被告は,平成10年度においても,県債(歳入)の確保,基金の活用,歳出の抑制など,歳入,歳出両面からの財政健全化策を講じることとしていた。 特に,歳出抑制の ていた(乙3から5まで)。 そのため,被告は,平成10年度においても,県債(歳入)の確保,基金の活用,歳出の抑制など,歳入,歳出両面からの財政健全化策を講じることとしていた。 特に,歳出抑制の見地から,経常的事務管理費の節減を実施するほか,平成10年11月から平成11年3月までの特別職及び管理職員の給与カット並びに知事,副知事等の平成10年12月期及び平成11年3月期の期末手当カット等を実施した(乙6の911頁以下)。 さらに,単純補助金の10%カット(既執行分や個人等を対象にするため削減が困難なものを除く。)に基づいて,現実にカットされた補助金の削減額の合計額は60億5278万円である。 このような歳入確保,歳出抑制等の措置により,平成10年度の決算は,財源不足がかなり圧縮されたものの,結果としてなお約222億円余りに及ぶ戦後初の赤字決算となった(乙7の19頁以下)。 (ウ) 予算編成方針予算編成作業は,毎年10月ころまでに翌年度の歳入,歳出の見通し(財政見通し。乙11に相当する。)を作成することから始まる。この見通しを基に,翌年度実施したい新規事業,政策的事業の選択とその財源が確保できるかどうかを判断し,できなければ不足する財源をどのように捻出するかの段階的な検討を踏まえて,最終予算案が編成される。 被告では,この予算編成を統一性をもって行うための基準として予算編成方針等を策定しており,平成11年度当初予算にあっては,平成10年10月19日付けで,「平成11年度予算編成方針」(乙34の別紙)と「平成11年度予算編成事務処理要領」(乙35の別紙)を通達,通知している。 そして,この「平成11年度予算編成方針」(乙34の別紙)にあるように,歳出については,政策的重要経費及びその他の行政経費について,前年度当初予算額の70 (乙35の別紙)を通達,通知している。 そして,この「平成11年度予算編成方針」(乙34の別紙)にあるように,歳出については,政策的重要経費及びその他の行政経費について,前年度当初予算額の70%の範囲内とするなど,厳しいシーリングを設定し,事務事業全般にわたり,制度,施策の縮減や廃止をも含めた一層徹底した見直し,合理化を図り,歳出構造の抜本的改善に取り組んだものである。 予算編成事務の主な流れは,まず,予算編成方針に基づき各部局から要望額の提出があり,これを踏まえて個別事務事業に対する政策判断はもとより,財政見通しに基づく財政の健全性を確保するための諸検討を積み重ねながら,2月の知事査定を経て,予算案が編成される。 この過程における財源不足額の状況は,①各部局から要望額を取りまとめた段階(平成10年10月末)で約2550億円の赤字(乙12),②同年12月末時点で1267億円の赤字(乙38),③平成11年1月中旬の時点で1003億円の赤字(乙38),④同年2月中旬の知事査定後で482億円の赤字であった(乙36,38)。財源不足が順次減少しているのは,「平成11年度一般会計の財源不足対策について」と題する書面(乙37)に記載の財源不足対策が各段階を経て予算案の中に織り込まれていったからである。なお,平成11年度給与抑制条例の制定については④知事査定の段階で盛り込まれた。 (エ) 平成11年2月の一般財源見通し被告は,④平成11年2月の知事査定を踏まえた予算編成最終段階の一般財源見通し(乙36)を作成した。一般財源は,給与費,公債費などの義務的経費の財源等として最も重要なものであり,被告では県債も含めてその見通しを立てている。 この財政見通しは,当面する当初予算(骨格予算)の歳入,歳出のみならず,その後に予定される肉付け予算見 の義務的経費の財源等として最も重要なものであり,被告では県債も含めてその見通しを立てている。 この財政見通しは,当面する当初予算(骨格予算)の歳入,歳出のみならず,その後に予定される肉付け予算見込み額をも踏まえ,通年予算を見据えた財政収支見通しがされてきたことを明らかにしている。すなわち「当初予算(骨格予算)A」列では,人件費,国制度による扶助費,公債費などの義務的経費,さらに公共,単独事業について債務負担行為に基づく所要の経費及び継続事業等に係るものとして,前年度当初予算額の一定割合の経費を中心に歳出予算を計上し,それに対する所要の財源を歳入予算として計上したものである。 そして,「6月肉付補正見込B」列のとおり,当初骨格予算で計上を見合わせた政策的な判断を必要とする経費を中心に歳出予算の肉付けをし,財源を通常充当率の県債で賄おうとしたが,1155億円の財源不足が見込まれていた。そこで,「調整E」列で760億円の歳入の確保対策(「平成11年度一般会計の財源不足対策について」(乙37)に記載の「肉付け予算段階における財源対策」の「歳入の確保」のこと)を考えるものの,それでもなお480億円程度の財源不足(「平成11年度一般会計の一般財源見通し」(乙36)の「調整後補正見込計F(D+E))」列の一番下の「-482」のこと)が見込まれていた。 このように,「平成11年度一般会計の財源不足対策について」(乙37)に掲げられている平成11年度給与抑制条例による人件費の削減を始めとする様々な財源不足対策をしてもなお,平成11年度通年(肉付け予算後)で480億円程度の財源不足が見込まれる状況にあった。 さらに,平成10年度に赤字が生じることが確実視される中で(結果的に赤字額は222億円であった。),その財源を確保しなければならないことも考 )で480億円程度の財源不足が見込まれる状況にあった。 さらに,平成10年度に赤字が生じることが確実視される中で(結果的に赤字額は222億円であった。),その財源を確保しなければならないことも考慮すると,被告の財政は危機的状況にあった。 しかし,平成10年度の赤字分相当額の財源確保ができない中,その後においても歳出削減や歳入の確保策を講じ,その結果として平成11年度実質収支の赤字額は約91億円にとどめることができた。 (オ) 平成11年6月補正予算平成11年6月補正予算においては,地方交付税や県税について,当初予算編成段階以降の諸事情を踏まえた再見直しによる歳入予算の確保を見込むなどして取りまとめられた。 被告では,機会を通じて国に対して地方税財源の充実を要望してきた。平成11年度予算編成に当たっては,国の編成作業が佳境を迎える平成10年12月15日に知事自ら先頭に立って関係省庁への被告の財政の危機的状況を説明しながら,地方税財源の充実強化の緊急要望をした。 なお,県債については,個別の地方公共団体において取扱いを異にするものではなく,年末に明らかになる地方財政対策によって地方債計画が固まり,翌年度の統一的な充当率が明らかになるものである。したがって,予算編成時に,個別の事情を示し,起債の可否等を含む国との折衝をするような制度になっていない。 (カ) 地方交付税と県税の見通し地方交付税と県税は,「11年度当初見込①」(乙30)の段階では,国の平成11年度の地方財政対策の具体的計画である地方財政計画が不明であったことや,被告の税収の見通しが不透明な状況にあったことなど,具体的な試算をすることができない状況であったことから,平成10年度地方交付税48億円を基に,慎重な額(県税と併せて約1兆1100億円)で見込んだ。 平成1 見通しが不透明な状況にあったことなど,具体的な試算をすることができない状況であったことから,平成10年度地方交付税48億円を基に,慎重な額(県税と併せて約1兆1100億円)で見込んだ。 平成10年12月末における財政見通しでは,地方交付税を1270億円と見込んだ。これは,平成10年12月19日に自治大臣と大蔵大臣との折衝による平成11年度地方財政対策が決着し,平成11年度の地方交付税の総額の伸び率などが明らかになったことに加え,被告の税収見通し(この段階で約9500億円。被告の県税収入の動向に大きな影響を及ぼす法人関係税については,平成10年12月に主要企業に対する聴き取り調査を実施し,その結果を踏まえつつ税収見込額を見積もった。)が,平成11年度当初見込からも約1600億円減少する見込みであったことなどを踏まえて試算した。なお,地方交付税は,性質上,県税収入が減少すれば,その減少額のおおむね8割が地方交付税として増えるという関係にあり,地方交付税の増収が大幅に見込まれても財源不足の解消につながるものではない。 平成11年2月中旬の知事査定後の財政見通しでは,「平成11年度一般会計の一般財源見通し」(乙36)記載のとおり,地方交付税を1308億円と見込んだ。平成10年12月末と比べて38億円増加したが,これは,平成11年1月21日に自治省が開催した全国都道府県財政課長会議で説明,配布された地方交付税算定上の留意点を踏まえつつ,精査したことによるものである。また,県税は,平成10年12月の段階から更に精査し,9605億円と見込んだ。 平成11年6月補正後の地方交付税の現計予算額は,1550億円で平成11年2月中旬の知事査定後と比べて242億円増加した。 被告のように,税収に占める法人関係税の割合が高い団体においては,地方交付 平成11年6月補正後の地方交付税の現計予算額は,1550億円で平成11年2月中旬の知事査定後と比べて242億円増加した。 被告のように,税収に占める法人関係税の割合が高い団体においては,地方交付税算定上の法人関係基準税額の動向によって,地方交付税交付額に数百億円程度の影響が及ぶことがある。地方交付税算定上の法人関係基準税額は,本来ならば平成11年度の各団体の税収入額に基づいて算出されることが理想であるが,当該年度の7月に地方交付税の94%を占める普通交付額を決定することとなっているため,前年度(平成10年度)の税収実績に国が定める係数(見込み伸率)を乗じて得た額を当該年度(平成11年度)の推計税額として交付税額の算定に用いられている。この係数は,7月に交付税額が決定される直前まで明らかにされないため,予算編成段階では,この係数を想定して見込んだ上で交付額の試算をしており,2月の当初予算編成段階で係数1.14として見込んでいたものを,6月補正段階では,その後の諸情勢を踏まえ1.05としていたことなどにより,基準財政収入額が減少し,基準財政需要額と基準財政収入額との差,いわゆる交付税額を増やしたものである。 また,県税の平成11年度6月補正後の現計予算額は,平成11年2月中旬後の知事査定の段階と比べて,145億円増の9750億円となっている。これは,法人関係税について,主要企業の平成11年3月期決算の状況などを中心として県税収入の見直しをしたことによるものである。 (キ) 県債の見通し県債については,「11年度当初見込①」(乙30)の段階では,約1650億円を見込んだ。これは,各部局からの要望経費を基に地方債充当率を乗じて見積もったものである。この見積りに当たって用いた地方債充当率等は,平成10年度を基本としつつ,平成10年度の地 は,約1650億円を見込んだ。これは,各部局からの要望経費を基に地方債充当率を乗じて見積もったものである。この見積りに当たって用いた地方債充当率等は,平成10年度を基本としつつ,平成10年度の地方財政対策において国により通常の起債の充当率が臨時的に引き上げられたものについては,平成11年度も継続されるか否か,又は継続されても引上げ率がどの程度になるかなどが不明であったため,平成10年度の通常の充当率によったものである。 平成10年12月末における財政見通しでは,県債について約2600億円を見込んだ。「11年度当初見込①」(乙30)と比べて,約1000億円増加したが,これは,平成10年12月19日,自治大臣と大蔵大臣との折衝による平成11年度地方財政対策が決着したことにより,平成11年度においても,地方財政全体の財源不足を補うために,国により,通常の起債の充当率が引き上げられることとなったことを踏まえ,充当率の引上げ措置を最大限に活用することとしたためである。 平成11年2月中旬の知事査定後の財政見通しでは,「平成11年度一般会計の一般財源見通し」(乙36)のとおり,県債について2651億円を見込んだ。平成10年12月末と比べて約50億円増加したが,これは,平成11年1月21日,自治省が開いた全国都道府県財政課長会議で説明,配布された地方債計画に関する情報を基に額の精査をしたことによるものである。 県債の平成11年6月補正後の現計予算額は,2860億円であった。 平成11年2月中旬の知事査定後と比べて209億円増加したが,これは平成11年2月中旬の段階で6月補正分として見込んでいた道路,河川など県民生活を支える社会基盤整備事業について,その後の諸情勢を踏まえて増額計上したことなどに伴い,その財源として県債が増えたものである。 年2月中旬の段階で6月補正分として見込んでいた道路,河川など県民生活を支える社会基盤整備事業について,その後の諸情勢を踏まえて増額計上したことなどに伴い,その財源として県債が増えたものである。 なお,このような歳入の見積りに当たっては,財源補そくの的確性が求められるが,現行の収入体系下では,国庫に依存しなければならない部分が少なくなく,正確にその財源を補そくすることは困難であるが,地方公共団体としては,あらゆる資料に基づいて,その的確な把握,とりわけ過大見積りの回避に努めなければならない。そのための資料としては,地方公共団体自体に関するもののほか,国の予算編成方針及び予算内容,翌年度の経済見通しと経済運営の基本的態度,地方財政計画,地方交付税の算定方法に関する改正事項,地方債の許可方針,各種の国庫支出金の交付基準等が考えられ,これらについて熟知することは,財源の正確な補そくをする上で極めて重要であるとされている。また,収入の見積りに関しては,税収入と地方交付税の基準財政収入との相関性の閑却,国庫支出金,特別交付税,地方債の過大見積りなどの過ちを犯さないよう留意すべきであるとされている。 よって,被告は,このような考え方に立ち,予算編成の立案についての方針を示す前段階である「11年度当初見込①」の段階では,より慎重な歳入を見込んだものであり,その後の査定の過程の中で,より熟度を高める作業をした。 (ク) 財源不足平成10年10月時点における見通しによれば,被告の財政の前記のような状況は,平成11年度以降においても,基本的に変わるものではなかった。かえって,戦後初の2年連続マイナス成長がほぼ確実視されるなど,経済情勢が深刻さを増していることにより,県税収入の増加は期待できず,財政不足額は,更に悪化するおそれがあった。平成10年 はなかった。かえって,戦後初の2年連続マイナス成長がほぼ確実視されるなど,経済情勢が深刻さを増していることにより,県税収入の増加は期待できず,財政不足額は,更に悪化するおそれがあった。平成10年12月現在における「平成10~11年度の財政について(試算)」(乙5)によれば,平成10年度並みの県税収入を前提とし,かつ,これまでになく厳しいマイナスシーリング(政策的経費等マイナス30%,公共事業マイナス10%)を設定してもなお2550億円の財源不足が見込まれていた(乙8)。 さらに,当時,国においては6兆円を上回る恒久減税が議論されており,その動向いかんでは,更に財源不足が拡大するおそれがあった。 バブル経済崩壊後の経済の低迷を受け,平成2年をピークとした県税収入が大幅に減少してきている状況の中で,被告は,教育,福祉,社会基盤などの行政水準の維持向上に努めてきた。その結果,人件費,扶助費,公債費などの義務的経費や各種補助金など行政サービスに要する経常的経費は毎年増加してきた。 しかし,これらの経常的経費は,県債等の借入金で賄うことは許されず,県税等の一般財源しかその財源に充てることができないとされている。 被告においては,ここ数年県税等の一般財源だけでは,前記のような義務的経費を賄うことができない状況が続いていたが,これまでは各種基金などを取り崩したり,一般会計に繰り入れ運用したりすることでなんとか財源を賄ってきた。ところが,最も多いときには2800億円程度もあったこれら取崩型基金も枯渇し,平成10年10月現在では,実際に活用可能な額は,わずか約100億円程度であった(乙8,乙9)。 (ケ) 平成11年度における歳出抑制努力について被告当局は,平成11年度給与抑制条例の制定に当たり,その裁量の範囲内において,まず人件費以外の は,わずか約100億円程度であった(乙8,乙9)。 (ケ) 平成11年度における歳出抑制努力について被告当局は,平成11年度給与抑制条例の制定に当たり,その裁量の範囲内において,まず人件費以外の事務事業費を対象にして大幅なシーリングをかけて歳出の抑制を図り,さらには,事務事業費全般にわたり,制度,施策の縮減や廃止を含めた一層徹底した見直し,合理化を図り,歳出構造の抜本的改善に取り組んだ上で,被告が準用財政再建団体に転落することを回避するためにやむを得ない手段として,給与の抑制措置を選択し,愛知県議会はこれを認め,条例を議決したものである。 平成10年12月において見込まれた2550億円に上る収支不足に対する対応策として,被告が平成11年度給与抑制条例制定の必要性について関係職員団体に説明した際の資料である「平成10年度及び11年度の財政状況について」(乙12)の「2 平成11年度 (3) 収支不足(2,550億円)の対応策」の各歳出抑制に対する取組みが実施された。それには,平成10年度並(1000億円程度)の県債の更なる活用があり得ることを見込んだものの,それでもなお,1550億円の収支不足を解消する必要があり,そのため,1150億円に及ぶ更なる歳出削減の一環として,歳出の中で最大の比重を占めている経費である人件費の削減が必要であると見込まれたものである(乙12,甲2の9頁「5関係」参照)。この「1000億円程度の県債の更なる活用」とは,当時の巨額の地方財政全体の財源不足を補うために,国により通常の起債の充当率が臨時的に引き上げられることなどを想定したものであった。 その予算段階における抑制額は,原告らが所属する職員団体が作成した「2000 給与改定交渉等の流れ」と題する書面(甲25)の36頁下段の「7 平成11年度・平 ることなどを想定したものであった。 その予算段階における抑制額は,原告らが所属する職員団体が作成した「2000 給与改定交渉等の流れ」と題する書面(甲25)の36頁下段の「7 平成11年度・平成12年度における歳出抑制の状況」に示された一覧表(左側)記載のとおりである。 平成11年度においては,前記一覧表のうち「投資的経費の抑制」項目について,国の緊急経済対策に呼応した公共投資の増額実施が国から要請されたことから,この項目のみ予算段階での数値と結果の数値とが異なったが,それ以外の項目については,ほぼ予算段階での数値のとおり歳出の抑制がされている。なお,この投資的経費増加の財源については,国庫支出金と県債であり,県債の償還についても地方交付税で措置されることになっていた。 結果として,平成11年6月現計予算の額は,「11年度当初見込」の県債の額に比べて約1200億円増加したが,被告は,原告らに対して平成11年度給与抑制条例制定の必要性を説明するに当たり,1000億円程度の県債の更なる活用があり得ることを説明しているのであって,県債が1200億円増額したことは,被告の見込み誤りではないし,原告らも県債が増額されることにより歳入不足の手当がされることは了解していた。 以上のような,県税収入が大幅に減少し,かつ,各種基金も枯渇している状況の下では,歳入に見合うように歳出全体を削減するなど,抜本的かつ徹底した財政健全化策を講じることが急務であった。 そのため,被告では,平成11年度予算の立案の段階から,事務事業の見直しを徹底し,これまでになく厳しいマイナスシーリング(政策的経費マイナス30%,公共事業マイナス10%)を設定することにしたが,この設定をした上でもなお予想された2550億円の財源不足を補うためには全般的な経常経費削減 なく厳しいマイナスシーリング(政策的経費マイナス30%,公共事業マイナス10%)を設定することにしたが,この設定をした上でもなお予想された2550億円の財源不足を補うためには全般的な経常経費削減の一環として,人件費についても全般的に削減を行う必要があると判断された。 そこで,愛知県知事は,知事,副知事,出納長を含む全職員について,平成11年度中に支払われる給与及び期末手当の一定割合での額を抑制する平成11年度給与抑制条例案を作成し,平成11年2月に開かれた定例愛知県議会に議案として提出した(乙1)。 (コ) 被告の財政再建団体への転落のおそれ被告の実質収支は,平成10年度は約222億円の赤字,平成11年度も約91億円の赤字となるのであり,平成12年度はわずか28億円程度の黒字にすぎない。 この点,平成11年度給与抑制条例による抑制額は約320億円,また,抑制規模を縮小した平成12年度給与抑制条例による抑制額は約220億円であったから,仮に,前記両年度において給与抑制措置を講じなかった場合には,両年度において更に合計540億円程度の給与支出(歳出)が加わり,被告における平成12年度の実質収支上の赤字額は約510億円程度にまで拡大し,更に深刻な財政上の危機に直面していたはずであり,被告が,準用財政再建団体に転落する赤字額が,平成10年度の標準財政規模約1兆0879億円(乙22)に0.05を乗じた額である約540億円であり,平成12年度の標準財政規模約1兆0949億円(乙29)に0.05を乗じた額約547億円であることに照らすと,準用財政再建団体に転落するおそれも現実の可能性として存在した。 仮に,被告が準用財政再建団体に転落した場合には,地方公共団体としての自主的な行財政運営が不可能になってしまうことになり,県民の生活に多大 再建団体に転落するおそれも現実の可能性として存在した。 仮に,被告が準用財政再建団体に転落した場合には,地方公共団体としての自主的な行財政運営が不可能になってしまうことになり,県民の生活に多大な支障が生ずることは必至であった。 よって,本件給与抑制条例が被告の財政の健全化に果たした役割は大きく,本件給与抑制条例の必要性,合理性が認められる。 (サ) 財政の弾力性,健全性の確保地方財政を運営するに当たり,地方自治法や地方財政法等において,財政の健全性の確保が強く要請されている(地方自治法243条の4,地方財政法2条1項,2項)。 地方公共団体は,「一会計年度における一切の収入及び支出は,すべてこれを歳入歳出予算に編入しなければならない。」(地方自治法210条)とされているため,歳入歳出予算書を見ると歳入歳出が均衡しているが,予算は,表見上の収入,支出の差引額の有無だけでなく,経費構成と収入構成との実質的な相関において適正に均衡が保持されなければならない。 さらに,歳入,歳出の構成についても,経済変動や地域社会の変化などに伴った新しい行政需要にも的確に対応できる弾力性を有していることが不可欠である。 なお,平成11年度一般会計当初予算は,新知事就任後,限られた期間での予算編成のため,骨格予算として編成し,政策的判断を要する経費など当初予算編成で計上を見合わせたものは6月補正予算で計上したのであり,6月補正後の現計予算が通常年度の当初予算に当たるものであり,比較の対象もそれとすべきである。 平成11年度6月補正後の一般会計予算は2兆2213億円で,このうち①義務的経費等が62.8%,②投資的経費が16.5%,③その他経費が20.7%を占めている(乙40)。義務的経費等が予算全体の6割を超えていることは,財政構造の硬直化が進ん 213億円で,このうち①義務的経費等が62.8%,②投資的経費が16.5%,③その他経費が20.7%を占めている(乙40)。義務的経費等が予算全体の6割を超えていることは,財政構造の硬直化が進んでいることを表している。仮に,平成11年度給与抑制条例による給与抑制(事業費ベースで319億円)をしなければ,人件費は35.3%,義務的経費等全体では63.3%となり,県財政が経済変動や行政内容の変化に耐え得るための体力が更に減っていたことになる。 次に,これらの経費として充当する一般財源の状況については,平成11年6月補正後において,平成11年度予算における一般財源の総額は1兆2728億円(乙40の「サ」の「C」欄)で,平成10年度に比べて1171億円,8.4%の減少となっている。これは,平成10年度当初予算において一般財源の約5割(乙40の「シ」の「A」欄の括弧内の数値)を占めていた県税の大幅な減少が見込まれたためである。また,この一般財源総額の減少額1171億円(乙40の「サ」の「F」欄)が予算全体の減少額1197億円(乙40「コ」の「F」欄)にほぼ等しいことからも,予算編成上,一般財源は極めて重要な要素である。 一方,一般財源の9割の近く(乙40の「ア」の「D」欄の括弧内の数値)を義務的経費等の財源とせざるを得ない状況にあり,また,前年度に比べて1000億円を超える減収が見込まれる中にあっては,その財源不足対策として一般財源の約半分(乙40の「イ」の「D」欄の括弧内の数字)を財源とする人件費についても,抑制措置を講じなければならなかった。 なお,平成11年度給与抑制条例による歳出抑制効果は,事業費ベースで319億円,一般財源ベースで284億円であった(乙37)。この284億円は,投資的経費の財源に充てられる一般財源の254億円( なお,平成11年度給与抑制条例による歳出抑制効果は,事業費ベースで319億円,一般財源ベースで284億円であった(乙37)。この284億円は,投資的経費の財源に充てられる一般財源の254億円(乙40の「カ」の「D」欄)を超えるものであり,仮に,平成11年度給与抑制条例による給与抑制措置を実施しなければ,284億円の財源が更に必要となり,投資的経費,すなわち県民生活を支える社会基盤整備が実施できない状況ともなった。 特定財源,例えば,県債の活用の可能性については,県債の対象とすることができる経費は,地方財政法5条により,①公営企業に要する経費,②出資金及び貸付金,③地方債の借換えに要する経費,④災害応急事業費,災害復旧事業費及び災害救助事業費,⑤公共施設又は公用施設の建設事業費等に制限されており,人件費の財源として県債を発行することは認められていない。一方,県債の対象となり得る経費である投資的経費については,県債の最大限の活用を図ることにより,投資的経費の財源とする一般財源額の割合は,平成10年度は当初予算の13.2%(583億円を4412億円で除して100を乗じたもの)であるのに対し,平成11年度当初は6.9%(254億円を3675億円で除して100を乗じたもの)であるというように,一般財源を他の経費に充てるための努力もしている。 また,経費の財源として充当する一般財源額の対前年度伸び率(乙40の「G」欄)を見れば,経費削減の余地のない公債費(県債の償還に要する費用)を除き,いずれの経費も人件費のマイナス3.4%を上回る減少率となっていることなど,人件費以外の経費についても,人件費以上に歳出抑制のための様々な努力をした。これらの中には,被告が独自施策として実施してきた福祉政策(乙40の「扶助費」の中に含まれる。)の見直し っていることなど,人件費以外の経費についても,人件費以上に歳出抑制のための様々な努力をした。これらの中には,被告が独自施策として実施してきた福祉政策(乙40の「扶助費」の中に含まれる。)の見直しや,私立学校への助成や市町村への補助を始めとする補助金(乙40の「その他経費」に含まれる。)の見直しが含まれ,県民や県内市町村に対して一定の負担と理解を求めなければならなかった。 経費予算額の対前年度伸び率(乙40の「E」欄)も経費充当一般財源額の伸び率(乙40の「G」欄)と同じく減少傾向にあるが,③「その他経費」の予算額が増加しているのは,平成10年度の一般会計赤字額222億円に対する平成11年度予算措置(歳出:繰上充用金,歳入:諸収入)を講じたためである。歳入を特定財源の諸収入としたのは,一般財源による財源手当の目処がつかなかったためであり,表見上歳入,歳出は均衡しているものの,実質的に222億円の財源の手当ができていないという危機的な財政状況にあった。 財政の弾力性は,一般財源の総額と,非弾力的経費に充当する一般財源との割合の高低の度合によって判断される。各年度間の一般財源の総額の増減額(乙40,56,67の各「サ」の「F」欄)と,非弾力的経費である義務的経費等に要する一般財源の増減額(前記各乙号証の各「ア」の「H」欄)を比べると,平成10年度当初予算と平成11年度補正予算については,歳出の義務的経費等に要する一般財源の「減」マイナス690億円よりも,歳入における一般財源総額の「減」マイナス1171億円が大幅に上回っており(乙40),平成11年度6月補正予算と平成12年度当初予算については,歳出の義務的経費等に要する一般財源の「増」898億円が,歳入における一般財源総額の「増」779億円よりも(乙56),平成12年度当初予算と平成 1年度6月補正予算と平成12年度当初予算については,歳出の義務的経費等に要する一般財源の「増」898億円が,歳入における一般財源総額の「増」779億円よりも(乙56),平成12年度当初予算と平成13年度当初予算については,歳出の義務的経費等に要する一般財源の「増」284億円が,歳入における一般財源総額の「増」113億円よりも(乙67),いずれも上回っている。 すなわち,いずれの年度の間においても,一般財源に占める義務的経費等の割合(前記各乙号証の各「ア」の「B」欄の括弧内)が高まっているのであって,このことから,被告の財政構造は毎年硬直化が進行し,行政需要の急激な変化に耐えられない,より厳しい財政状況に陥っていた。 このことからも,財政再建団体に転落するおそれを回避し,被告の財政を赤字を出すことのない健全な体質に改善するために本件給与抑制条例による給与抑制措置が必要不可欠であった。 (シ) 住民の理解地方公共団体は,住民の福祉の増進を図ることを基本として,地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く,かつ連綿として担わなければならず,その礎となる財政運営の基本的在り方としては,地方公共団体としての自主性,自立性が大きく損なわれる準用財政再建団体への転落を回避することは当然として,単年度の収支均衡の保持にとどまらず,長期にわたる財政の健全性すなわち長期間を通じて起こる財政変動に耐え得る弾力性のある財政を確立することが求められている。 本件給与抑制条例による給与抑制措置は,準用財政再建団体への転落を避けるという目的のみならず,被告の財政の危機的状況の下,歳入に見合うように歳出全般を削減するために講じられた抜本的かつ徹底した財政健全化を目的としたものである。 特に,当時の被告の職員の給与水準は,平成10年のラスパイレ ,被告の財政の危機的状況の下,歳入に見合うように歳出全般を削減するために講じられた抜本的かつ徹底した財政健全化を目的としたものである。 特に,当時の被告の職員の給与水準は,平成10年のラスパイレス指数は104.3で(乙19),国家公務員の水準を4.3%上回り,全都道府県中5位(乙41)と高水準であった。 さらに,この本件給与抑制条例による給与抑制措置は,歳出削減により県民や県内の各市町村にも一定の負担と理解を求める財源対策をしなければならない状況の下で,もはや給与水準を維持することはできず,被告自らも率先して身を削る努力をすることが避けて通れないものと判断したことによるものである。 以上のとおり,本件給与抑制条例による給与抑制措置は,歳入,歳出の均衡を図り,更に財政の健全性を確保する上でも,そして,県民,市町村の理解を得る上でも不可避の手段であった。 なお,茨城県,宮城県,埼玉県,福岡県などでは,実質収支が赤字に至らない段階にあっても,財政の健全性を確保する手段として,被告と同様の給与抑制措置を講じている。また,現在,独自の給与抑制措置を実施している地方公共団体は約900団体あり,地方公共団体の財政の健全化のための職員の給与抑制は広く全国の地方公共団体で実施されている。 県民サービスの低下のみによる財政支出の削減を実施するか,又は受忍できる範囲内での職員の給与抑制を併せて実施するかなど,いかなる政策の選択により当時の危機的状況からの回避を図るかは,県議会における高度な政治的判断及び比較衡量により決定されるべきである。そして,地方公務員の勤務条件が法律及び地方公共団体の議会の制定する条例によって定められ,また,その給与が地方公共団体の税収等の財源によって賄われるものである以上,その決定はもっぱら当該地方公共団体における政治 務員の勤務条件が法律及び地方公共団体の議会の制定する条例によって定められ,また,その給与が地方公共団体の税収等の財源によって賄われるものである以上,その決定はもっぱら当該地方公共団体における政治的,財政的,社会的その他諸般の合理的な配慮によって行われるべきであって,その結果,給与を含めた地方公務員の労働基本権が,地方公務員を含む地方住民全体又は国民全体の共同利益のために,これと調和するように制限されることもやむを得ないというべきである。 (ス) 人事院勧告の凍結に反対する抗議行動をした職員に対する懲戒処分等の取消訴訟においては,抗議行動に対する懲戒処分という表現の自由の側面を含む行動に対する制約であるという点でより厳格に判断すべき事案であるが,そこにおいても,給与に関して地方自治体等が採る措置等についての裁量権からその懲戒処分の適法性が認められているのであるから,本件のように,給与を抑制するという給与抑制条例自体の違法性を問う事案にあっては,よりその裁量性,適法性が認められるべきである。 (原告らの反論)(ア) 被告が主張する「財政再建団体に転落するおそれ」,「愛知県財政を赤字を出すことのない健全な体質に改善するため」という理由で,本件給与抑制条例による給与抑制措置を適法とするとすれば,憲法28条に定める労働基本権を一部制約する代償措置としての給与決定原則は事実上廃止されたに等しくなるのであって,本件給与抑制条例による給与抑制措置を適法とするに足りない。 (イ) 給与抑制措置をしている地方公共団体900団体のうち,給料表を無視して削減をしているものはすべてではない。また,「総務省制度・政策改革ビジョン」(乙42)に「国の給与改定に準じ」とあるように,人事委員会の調査,報告,勧告制度にのっとって実行することを予定してい して削減をしているものはすべてではない。また,「総務省制度・政策改革ビジョン」(乙42)に「国の給与改定に準じ」とあるように,人事委員会の調査,報告,勧告制度にのっとって実行することを予定しているものである。 イ裁量基準の違法(原告らの主張)行政がその裁量を適正に行使するためには,裁量決定の準則となるべき基準を内部的に定立し,それに基づいて権限を行使する必要がある。かかる裁量基準の定立においては,行政の専門的知識や経験が不可欠であるとしても,基準そのものを裁判所は審査すべきであり,平成11年度から平成13年度までにおいて被告がそれぞれ主張する基準を審査すべきである。基準について問題がない場合に,本件給与抑制条例の制定について基準の逸脱,濫用が認められるかを審査すべきである。 「被告が準用財政再建団体に転落することを回避するため最終的にやむを得ない手段として,給与の抑制措置を選択し,愛知県議会は認めた。」という基準では,地方公務員法所定の給与決定原則(その中核は人事委員会の勧告制度)に反して,既に職員が基本条例に基づいて既得の権利として有する給与を,給料表を変更せずして削減することの基準としては不十分である。準用財政再建団体に現実に転落したという事実の発生が,給与削減を必要とする基準の要素となるべきであって,「準用財政再建団体に転落することを回避するために,最終判断としてやむを得ない」というのでは,実際に発生していない事象に対するいわば予測の判断であり,地方財政の仕組みは複雑であり,被告当局以外の者が当否を判断することが困難であることに照らすと,被告当局又は愛知県議会のし意的判断を許容し,裁判所の審査権が事実上及ばなくなることを容認するものであるから,このような理由では,既に「職員の給与に関する条例」によって職員が既得の ことに照らすと,被告当局又は愛知県議会のし意的判断を許容し,裁判所の審査権が事実上及ばなくなることを容認するものであるから,このような理由では,既に「職員の給与に関する条例」によって職員が既得の権利として有する給与を給料表を変更することなく,条例で削減する基準として不十分である。 (被告の主張)仮に,準用財政再建団体に転落した事実を給与抑制条例の制定の要件とすれば,財政状況に応じた適宜の措置を採るべきことを要請している地方公務員法14条所定の「情勢適応の原則」の趣旨に反するばかりでなく,被告当局及び愛知県議会から財政健全化に向けて措置する重要な方策を奪うものであって,硬直的すぎ,到底容認できない。 ウ裁量判断の方法・過程の違法(原告らの主張)裁量権零収縮の理論に従って,裁量権は限定されるべきであって,被告が主張するような広範な立法裁量は認められる余地がない。 したがって,事実認定及びその評価,比較衡量に際し,し意的判断が禁じられ,考慮すべき要素を考慮せず又は不当に軽視し,他方,考慮すべきでないことを考慮に入れ加重評価するなど,その判断過程に誤りが認められる場合にも,裁量濫用となる。 (各論)a 被告は,財政赤字を招いたA前知事が次期知事選挙に出馬しないと表明していた事実を考慮していないか不当に軽視した。 (原告らの主張)A前知事は,平成9年度末に平成10年度の予算を組むときに「ほとんどない預貯金をさらに取り崩し,めいっぱい各分野に配分する。」という放漫,バラマキをするなど(甲32),長年にわたり,県債の累積的増加を容認した放漫財政をしてきた。さらに,既定方針としての中部国際空港の建設と愛知万博の開催という大型事業の存在により,被告の財政は硬直化することとなった。これと,平成10年度の法人関連税の予想外の落ち込みにより 財政をしてきた。さらに,既定方針としての中部国際空港の建設と愛知万博の開催という大型事業の存在により,被告の財政は硬直化することとなった。これと,平成10年度の法人関連税の予想外の落ち込みにより,国がそれまでと同様に県債の発行を許可してくれるのかという不安感が生じ,単年度収支の均衡が取れなくなってしまうという危機感が生じた。 A前知事は,平成5年度に855億8319万円,平成6年度に1162億1596万円,平成7年度に491億9842万円の赤字を招くなど放漫財政をした。 A前知事は,このような放漫財政をしたにもかかわらず,「万博や空港などの巨大事業を控え,限られた税収を積み立てに回すべきだ」(甲32)との意見を押し切って,平成9年度,平成10年度と積極財政を組んだ。 しかし,平成10年の秋以降,県税収入の大幅な減少が見込まれ,それに伴って収支状況の見通しが急速に悪化した時点で,A前知事は,次期知事選挙への不出馬を表明した。 したがって,この不出馬の表明以降,被告当局は責任をもって平成11年度の予算編成をすることができなくなったものといわなければならず,被告当局は,平成11年度給与抑制条例を制定する実質的権限を欠いたものといえる。 しかし,被告当局は,立法行為をする権限を実質的に欠いている事実を考慮しなかったか又は不当に軽視したもので,立法行為の過程に誤りが認められる。 (被告の主張)被告当局の予算編成は,その時点における財政状況全般に応じ,適正にされているのであって,原告らが主張する事実は存在しないばかりでなく,仮にあったとしても,平成11年度給与抑制条例を違法とする根拠とならない。 b 平成10年度の実質収支の赤字額は222億円であって準用財政再建団体に転落しなかった事実を考慮していないか又は不当に軽視 仮にあったとしても,平成11年度給与抑制条例を違法とする根拠とならない。 b 平成10年度の実質収支の赤字額は222億円であって準用財政再建団体に転落しなかった事実を考慮していないか又は不当に軽視した。 (原告らの主張)被告当局は,平成10年10月から同年12月まで,同年度の一般会計について1050億円の財源不足となり,「県債活用は,現在自治省とも折衝中だが,非常に厳しい状況にある。このため,更に県税収入が落ち込み,実質収支の赤字額がマイナス540億円となると準用再建団体になる可能性がある。」とけん伝していた(乙11)。 しかし,平成10年度決算による,実質収支の赤字額は,222億2585万円であり,準用財政再建団体に転落することはなかった。 平成11年度給与抑制条例制定時においても,準用財政再建団体に転落しないことは見込まれていた。 被告は,平成11年度給与抑制条例の制定に当たり,平成10年度決算の実質収支の赤字によっても準用財政再建団体に転落しない事実を考慮していなかったか又は不当に軽視したものであって,立法行為の過程に誤りがある。 (被告の主張)準用財政再建団体に転落しないことは見込まれていたのではなく,不分明であった。 (a) 平成10年度の赤字額について平成11年度当初予算作成時期である平成10年末から翌平成11年2月にかけては,平成10年度の見込額を赤字として算出し,同年12月時点で1050億円として見込んでおり,戦後初の赤字決算となることがほぼ明らかであった。 そこで,被告当局は,歳入の確保努力をすることにより800億円,基金の取り崩しにより100億円,知事等のボーナスカット,管理職手当のカット,単独補助金の10%カット等により150億円歳出を抑制することとし,800億円の歳入確保を検討した ことにより800億円,基金の取り崩しにより100億円,知事等のボーナスカット,管理職手当のカット,単独補助金の10%カット等により150億円歳出を抑制することとし,800億円の歳入確保を検討した。 しかし,800億円の歳入確保努力のうち,県債の活用については,通常の起債の充当率を超えて発行しようとするものであるため,発行許可の権限を有する自治省(当時)との更なる折衝が必要であり,県税の確保についても法人関係税の税収に占める割合が高いため,県税収入は景気の動向に左右されやすい状況にあり,800億円の歳入確保努力は不確定な要素を含んだものであった。 平成10年度の赤字額は最終的な決算額としては222億円余となった。 (b) 年度途中における予算執行見込みと決算の関係について予算の執行は,財源配分を通じてされた地方公共団体の政策決定であるところの予算編成を具体化する過程であり,予算執行の管理は決定された政策としての事務事業がどのように実施されているのかを把握するのが一般的である。そして,その把握作業の中で,当該年度の財源等の見通しを立てて,その後の予算執行に統制を加えるとともに,次年度以降の予算編成に必要な情報を収集することになる。 歳出予算の当該年度中の一時点における執行見込みは,例えば,法令に基づく給付事業自体が法令の廃止によってなくなってしまったというように,年度内に支出する可能性がなくなるという例外的な場合を除き,通常は,当該年度中に事業の可能性がある限り,その事務事業につき最大限の効果を図るため,適切に予算を執行していくものであるから,この段階で執行しない額を予定することは通常はできない。 また,歳入予算の当該年度中の一時点における執行見込みは,歳出と異なり,例えば,予定した補助金について国等から交付決定通知 ものであるから,この段階で執行しない額を予定することは通常はできない。 また,歳入予算の当該年度中の一時点における執行見込みは,歳出と異なり,例えば,予定した補助金について国等から交付決定通知があり,歳入額が確定するような場合(この場合ですら,事業の実績によって補助金が確定し,減額されることがある。)を除き,歳入見込みを立てることは困難であり,歳入不足に陥らないようにするため,確実性をもって見積もらざるを得ない。 このように,予算執行見込みは,年度途中における予算化された政策を年度内にどのように,どの程度執行していくのかを見込むものであり,歳出面ではその時点で想定される必要十分な額を,歳入面では最終的な財源不足を避けるため,その時点で想定される確実な額を見込むことになる。 一方,決算とは,一会計年度内の予算執行の「結果」を「確定的」計数で表示する行為又は表示するために調整される計算表である。その目的は,財政運営の中心である歳入歳出予算の執行実績を計数的に把握し,行政活動の総まとめをするとともに,法令に基づき監査委員による監査を経て,議会での審議,認定を経ることにより,財政執行の監督をし,財務の効率化,適正化を図るためのものである。これは,事務事業の当該年度における執行が終わり,各種の精算が終了した段階での一円単位の数字の積み上げとなる。 歳出面では,年度末においては,工事の入札残であるとか,補助対象とされた事業が相手方事業主体の事情により縮小されたとか,貸付対象者が少なかったとか諸般の事情により執行残が生じる。さらに,厳しい財政事情の下では,できるだけ事務事業の執行の効率化,経費削減を図っているため,執行残が通常より多くなる傾向がある。 また,歳入面でも,滞納者等への指導を含め一層の収納努力をするのであり,結果として歳 情の下では,できるだけ事務事業の執行の効率化,経費削減を図っているため,執行残が通常より多くなる傾向がある。 また,歳入面でも,滞納者等への指導を含め一層の収納努力をするのであり,結果として歳入決算額が年度途中において歳入不足を回避するために堅く見込んだ数値より多額となることはある。 したがって,年度途中における執行見込みと最終的な決算とでは,その目的とするところも,把握の方法も大きく異なっており,両者を比較すること自体の意味合いは大きいものとはいえない。 そもそも,被告の予算の総額は2兆3000億円を超え,事業数にしても約1800件を超える中で100億円ほどの差は約0.4%であり,精度としてやむを得ないものであるといわざるを得ない。 (c) 予算と決算の対比について予算と決算の対比に関して,歳入歳出の見積りである予算の額と歳入歳出の実績である決算の額とは,必ずしも一致しない。そもそも社会経済環境や行政需要等が大きく変化する中で,収入支出を寸分の狂いなく見積もり,それに従って事務事業を固定的に実施していくことは事実上不可能であり,かつ合理性にも欠ける。ただし,一方で,根拠に乏しい収支の見積りや政策判断を超える事務事業の実施などは認められないのであり,執行機関以外の第三者がその内容を審査するため,決算が適正であるか否かの審査や議会の認定などが法令上義務付けられている。 この法令上義務付けられている適正な決算かどうかの審査に関して,愛知県監査委員が作成した「愛知県歳入歳出決算及び基金運用状況の審査意見書」(乙77から79まで)のとおり,被告の決算は適正にされているし,決算の適正さは,逆に予算及びその執行が適正であることを意味している。 (d) 平成11年度の適正さについて歳入面においては,「平成11年度愛知県歳入歳出決算 ,被告の決算は適正にされているし,決算の適正さは,逆に予算及びその執行が適正であることを意味している。 (d) 平成11年度の適正さについて歳入面においては,「平成11年度愛知県歳入歳出決算及び基金運用状況の審査意見書」(乙77)の11頁の「(C)/(A)×100」欄の「計」欄記載のとおり,一般会計全体では予算に対して97.29%が収入済みであり,「11 寄附金」及び「12 繰入金」を除けば,90%以上の高い率であって,歳入の見積りは適正である。寄附金については,その性格上予定した収入がなかったとしてもやむを得ないものであり,また,繰入金についても,基金からの繰入運用の取止めや基金の取崩額を減らすといった臨時的な財源対策を回避した結果であって(乙77の32頁),いずれも基金を温存し,将来に備えるという点で,適切な財政運営であるといえる。 歳出面においては,前記審査意見書(乙77)の39頁の「執行率(B)/(A)×100」欄の「計」欄記載のとおり,執行率は全体として97.54%であり,「14 災害復旧費」を除けば,90%以上の高い率であって,歳出の見積りは適正である。また,災害復旧費についても,災害を事前に見込むことは極めて困難であるから,やむを得ない。 愛知県監査委員は,前記審査意見書(乙77)の7頁で,「予算の執行に当たっては,議会の議決の趣旨に沿い,効率性に配慮して,おおむね適正に執行されているものと認めた。」としている。 歳入面においては,前記審査意見書(乙77)の10,11頁記載のとおり,予算現額2兆3674億円から収入済額2兆3033億円を除いた差額マイナス641億円が予算と決算の差である。その内訳については,歳入項目(款)別に,「1 県税」から始まり「15 県債」までそれぞれ同様に予算現額,収入済額,予算現 済額2兆3033億円を除いた差額マイナス641億円が予算と決算の差である。その内訳については,歳入項目(款)別に,「1 県税」から始まり「15 県債」までそれぞれ同様に予算現額,収入済額,予算現額と収入済額との比較で整理されている。 さらに,例えば,前記審査意見書(乙77)の14,15頁の「第1款県税」の細区分である項区分の「1 県民税」から「15 旧法による税(料理飲食等消費税)」まで,それぞれ同様に予算現額,収入済額,予算現額と収入済額との比較で整理されて,主な増収又は減収の内容は,項区分の表に続けてそれぞれ明記され,審査がされているなど,この歳入項目(款)を細分化した区分(項)ごとに整理され,審査されている。 そして,例えば,一般会計歳入の「第1款県税」のうち,前記審査意見書(乙77)の16頁に記載の「法人事業税」は,大きくは法人の所得に課税する税目であり,景気の動向に大きく左右される税目である。すなわち,景気が良く法人の所得が多い場合には税収が増加し,逆に,景気が悪く法人の所得が少ない場合には税収が減少するという性質のものであるというように,当初予算編成を行う前年度末の段階において,翌年度の景気動向を正確に予想することは不可能なのであり,景気に左右される法人事業税を正確に見積もり,寸分の狂いもなく歳入予算として計上することは困難である。また,実際の収入が歳入予算額を下回った場合,例えば,事業の実施が困難になるなど,支出面で多大な影響が生じることもあり得ることから,歳入の見積りは,確実性をもって見込まざるを得ない。 歳出面においては,前記審査意見書(乙77)の38,39頁の上段の表の「予算現額」欄記載の2兆3674億円から「支出済額」欄記載の2兆3093億円を除いた「翌年度繰越額」欄記載の428億円(繰越明許費 面においては,前記審査意見書(乙77)の38,39頁の上段の表の「予算現額」欄記載の2兆3674億円から「支出済額」欄記載の2兆3093億円を除いた「翌年度繰越額」欄記載の428億円(繰越明許費423億円及び事故繰越し5億円)と「不用額」欄記載の153億円が予算と決算の差である。 歳出の内訳については,前記審査意見書(乙77)の38,39頁の下段で,歳出の項目(款)別に「1 議会費」から始まり,「18 繰上充用金」まで,それぞれ同様に予算現額,支出済額,翌年度繰越額と不用額との比較で整理されている。さらに,この歳出項目(款)を細分化した区分(項)ごとに整理され,審査されている。例えば,前記審査意見書(乙77)の42頁の「第1款議会費」の細区分である項区分の「1 議会費」,また,同頁から45頁までの「第2款総務費」の細区分である項区分の「1 総務管理費」から「11 総務諸費」まで,さらに,前記審査意見書(乙77)の46頁から48頁までの「第3款民生費」の細区分である項区分の「1 社会福祉費」から「5 災害救助費」まで,それぞれ同様に予算現額,支出済額,翌年度繰越額と不用額との比較で整理されている。また,項区分の表以下で,予算現額と支出済額との比較において翌年度繰越額と不用額の主な内容がそれぞれ明記され,審査がされている。 例えば,前記審査意見書(乙77)の45頁において,「第2款総務費」の「1 総務管理費」の項の「4 人事管理費」の目の不用額として,8200万円ほど計上され,その理由として「退職手当において,対象人員が見込みより少なかったこと」と記載されているとおり,当初予算編成の際に1人の狂いもなく退職者数を正確に予想することは困難であるだけでなく,年度途中の執行見込みの段階においても,その見込み以降,年度末まで退職 少なかったこと」と記載されているとおり,当初予算編成の際に1人の狂いもなく退職者数を正確に予想することは困難であるだけでなく,年度途中の執行見込みの段階においても,その見込み以降,年度末まで退職者が出ないと断定することも困難である中で,年度の途中段階では,飽くまでも当該手当は全額を執行するものとして予算執行見込みを立てざるを得ない。また,例えば,前記審査意見書(乙77)の47頁において,「第3款民生費」の「1 社会福祉費」の項の「1 社会福祉総務費」の目の不用額として,3億2500万円ほどが計上され,不用額が生じた主な理由として「①民間社会福祉施設運営費補助金において,対象事業費が見込みより少なかったこと ②地域福祉サービスセンター事業費補助金において,対象事業が見込みより少なかったこと」と記載されているとおり,当初予算編成の段階で1件の狂いもなく補助対象事業数を正確に予測することは困難であるだけでなく,年度途中の執行見込みの段階においても,その見込み以降,年度末までに補助対象事業が出ないと断定することも困難である中で,当該年度が終了するまでは,飽くまでも補助金を全額執行するものとして見込みを立てざるを得ない。このほか,被告では,1800件を超える事業が予算化され,執行,決算されている。 このように,予算及び年度途中の執行見込みと,最終の決算とが一致せず,また,支出額について決算が見込みよりも少額となる性質を有している。 (e) 平成11年度の決算において赤字がマイナス91億円に縮小した理由について平成12年2月の補正予算編成時に見込んだ収支不足のマイナス190億円が,結果としてマイナス91億円に縮小した理由は以下のとおりである。 年度途中の収支状況で見込んだマイナス190億円は,「平成11年度愛知県歳入歳出決算及 に見込んだ収支不足のマイナス190億円が,結果としてマイナス91億円に縮小した理由は以下のとおりである。 年度途中の収支状況で見込んだマイナス190億円は,「平成11年度愛知県歳入歳出決算及び基金運用状況の審査意見書」(乙77)の32頁から35頁までの歳入の「第14款諸収入」の「7 雑入」の項の「5 雑入」の目(35頁上段)の予算現額227億円の内数として計上されている。すなわち,この歳入予算190億円は,いわば赤字額であり,その財源に関して,歳入歳出を均衡させるために当てのない財源の雑入として平成12年2月の段階で計上していたにすぎず,決算段階では同額の実収入がない予定であった。すなわち,2月補正予算のとおりであれば,決算段階では収入済額に計上されず,結果として,予算現額と収入済額との比較においてマイナス190億円が計上されることになる。このことは,前記審査意見書(乙77)の35頁の下段の表の「7 雑入」の項の「5 雑入」の目の「主な内容」欄において,「総務費雑入において,前年度の実質収支が赤字になったことに対応するための繰上充用に係る財源を措置したこと」とあるとおりである。しかし,前記審査意見書(乙77)の35頁の上段の表の「7 雑入」の項の「5 雑入」の目の「予算現額と収入済額との比較」の欄にはマイナス182億円が記載されている。これは,他に予算現額を上回る諸収入が8億円あったことによるものである。 なお,この収入不足マイナス190億円は,他の収入の過不足と合算され,前記審査意見書(乙77)の10,11頁の上段の表の歳入決算額の総額記載のとおり,歳入の「予算現額と収入済額との比較」欄のマイナス641億円の内数となり,このマイナス641億円が当該年度の最終的な歳入不足の総額である。 一方,前記審査意見書(乙77) 決算額の総額記載のとおり,歳入の「予算現額と収入済額との比較」欄のマイナス641億円の内数となり,このマイナス641億円が当該年度の最終的な歳入不足の総額である。 一方,前記審査意見書(乙77)の38,39頁の上段の表の歳出決算額記載のとおり,歳出の予算現額と支出済額との差である「翌年度繰越額」欄記載の428億円(繰越明許費423億円と事故繰越し5億円)と「不用額」欄記載の153億円の合計である581億円が当該年度に最終的に支出しなかった額である。これら歳入不足額マイナス641億円と歳出しなかった581億円の差し引きで,結果としてマイナス59億円の収支の不足が計上されることになる。これは,前記審査意見書(乙77)の6頁の表の「一般会計」欄の「歳入歳出差引額」欄に記載されているマイナス59億円である。 さらに,翌年度繰越額428億円のうち,一般会計の翌年度へ繰り越すべき財源として32億円(繰越明許費繰越額27億円と事故繰越し額5億円)があることから,結果として当該年度はマイナス59億円から32億円を差し引いたマイナス91億円が最終赤字額であり,また実質収支額である。なお,翌年度に繰り越すべき財源とは,一般財源や既に収入してしまった特定財源のことを示す。すなわち,翌年度に繰り越すべき財源を伴った事業といいつつも,そもそも,年度内に事業を実施すべきものであり,予算も年度内に支出すべきものであるが,事業を執行するための財源は既に当該年度に措置したものであり,逆に実際の事業をする翌年度には財源措置されないことから,当該年度から翌年度に措置した財源を移し替えているものである。 以上のとおり,平成12年2月補正予算編成の際の収支不足のマイナス190億円は,計算上,他の収入の過不足と支出の過不足によって穴埋めされたことにより,部分的に不足 源を移し替えているものである。 以上のとおり,平成12年2月補正予算編成の際の収支不足のマイナス190億円は,計算上,他の収入の過不足と支出の過不足によって穴埋めされたことにより,部分的に不足が解消し,最終的な収支不足額がマイナス91億円となった。 c 県債による財源の確保について考慮せず又は不当に軽視した。 (原告らの主張)仮に,県税収入がどれだけ落ち込んでも,県債さえ発行すれば当該単年度収支は赤字とならないはずである。 被告は,平成10年10月,11月時点の予算見込み中,県債の見込みを950億円としており(乙11),これが見込み違いの大きな原因となっている。県債の実績は,平成10年度が3953億円,平成9年度が3828億円となっていることに照らすと,仮に,県債発行の許可額が従前の年より抑制されるとしても,950億円ということはあり得ず,これは原告らを含む県民の無知につけ込んだものである。 被告の平成10年12月時点での平成11年度予算の当初試算による県債は,1650億円であり,当初予算では1542億円にすぎない。しかし,他年度の当初予算の額と対比すると,当初試算の1650億円,当初予算の1542億円が極めて少額であることが明らかである。 県債の発行額は,平成11年度決算によれば3192億円となっている。平成11年度給与抑制条例の制定時においても,仮に,給与抑制をしないとしても,他の支出の抑制と併せて,準用財政再建団体に転落しないように,県債が発行できると判断することは可能であった。 (被告の主張)地方交付税,地方債制度は,国による毎年度の地方財政対策と密接な関係がある。被告が平成10年10月時点でまとめた「11年度当初見込①」(乙30)は,平成11年度の地方財政対策の具体像はもとより,同対策の具体的実施方針であ ,国による毎年度の地方財政対策と密接な関係がある。被告が平成10年10月時点でまとめた「11年度当初見込①」(乙30)は,平成11年度の地方財政対策の具体像はもとより,同対策の具体的実施方針である国の平成11年度の地方債許可方針も明らかにされていない段階のものであった。 特に,平成11年度の地方財政対策は,小渕恵三総理大臣が平成10年8月7日の第143回国会の所信表明演説において表明した6兆円を相当程度上回る恒久的な減税をめぐって,国と地方のそれぞれでどのように減税をするかなどその具体化に向けた様々な議論がされ,同年11月26日になって取りまとめられた国,地方併せて約6兆6000億円に上る個人所得課税,法人課税の恒久的な減税やこれに係る財政措置の具体的な内容が盛り込まれるなど,例年にない内容であった。 一方,県債については,当時の地方自治法250条の規定においては,起債について自治大臣の許可が必要であったほか,地方財政法5条において「地方公共団体の歳出は,地方債以外の歳入をもって,その財源としなければならない。」ことを原則とした上で,ただし書において地方債の対象とする経費を列挙している。そして,国の平成11年度地方債許可方針が決まったのは,平成11年4月21日になってからであった。 平成11年度6月現計の県債予算額は,当初見込みに比べて約1200億円増加したが,これは,国の平成11年度地方債許可方針を踏まえながら県債の活用を最大限に図ったからである。その後,国にあっては,平成11年7月21日に平成11年度第1次補正予算が,同年12月9日に平成11年度第2次補正予算がそれぞれ成立し,被告としてもこれらの国の緊急経済対策に応ずるため,平成11年度最終予算の時点で更に県債が約300億円増加した。 以上のとおり,被告が平成10年 月9日に平成11年度第2次補正予算がそれぞれ成立し,被告としてもこれらの国の緊急経済対策に応ずるため,平成11年度最終予算の時点で更に県債が約300億円増加した。 以上のとおり,被告が平成10年10月の時点で取りまとめた「11年度当初見込①」(乙30)の段階では,地方交付税,県債等といった歳入項目の増減予測は困難であり,また,これらの歳入項目の変動の結果にかかわらず,仮に,給与抑制措置が採られなければ,被告の財政の危機的状況が継続していたことは明らかである。 (原告らの反論)人件費は県債の対象とならないとするが,一般財源と特定財源は相互補完の関係にあるのであって,投資的経費を削減すれば財政的な余裕が出るはずであり,被告は,愛知万博や中部国際空港等の大型プロジェクトの財政負担が将来的にどうなるのかを検証し,それを踏まえての財政再建計画をすべきであったが,被告はそれをしていない。 d 県税収入及び地方交付税の安定財源性について考慮せず又は不当に軽視した。 (原告らの主張)被告は,平成10年度の財源不足の原因について,県税収入の減少を強調する。 しかし,平成10年度の県税収入は1兆0877億円であって,前年の平成9年度の1兆1110億円と比べて,233億円の減少にとどまっている。 しかし,被告は,平成10年度当初予算で,1兆2065億円と,平成9年度の決算額1兆1110億円を955億円,約1000億円も増額した予算を立て,さらに,この歳入予算増額に対応して,平成10年度の歳出予算を1000億円も増額させていた。歳出予算は,いったん予算として議決されている以上,根拠なく削減できないために,この約1000億円の増額分と233億円の現実の減少額の合計約1233億円が一挙に財源不足となったのである。 したがって,平成10 ったん予算として議決されている以上,根拠なく削減できないために,この約1000億円の増額分と233億円の現実の減少額の合計約1233億円が一挙に財源不足となったのである。 したがって,平成10年度の赤字は,A前知事が平成9年度に引き続いて平成10年度も積極予算を組んだことが原因であるので,平成11年度以降に堅実予算を組めば,平成10年度に発生した実質収支の赤字は,順次解消されるはずである。 また,仮に,県税収入が減少しても,地方交付税でその減少分の約8割はてん補されるので,収入源として大きな変動はなく,安定財源となっている。 しかし,被告は,平成11年度給与抑制条例の制定に際し,県税収入の見通しと対応を誤ったものである。 (被告の主張)県税収入については,一般論としては,「仮にその額が減少しても,その分の約8割が地方交付税としてカバーされる」ということはあり得るが,現実にこのような充当がされるということは誤りである。 例えば,平成9年度決算では県税が1兆1109億円余り,地方交付税額は47億円余りとなったが,平成10年度は県税が1兆0877億円余り,地方交付税額は66億円余りとなり,平成9年度から平成10年度にかけて,県税は232億円余りも減少したのに対し,地方交付税は19億円しか増加しておらず,これは,県税の減少分の80%どころか8%にしかすぎない。このように,当該年度における税収見込みがまだ十分でない7月に地方交付税の額が決定されるという時期の問題があるものの,県税収入の減収額の約8割が必ず交付されるというものではない。 以上のとおり,「県税収入+地方交付税」は必ずしも安定財源というわけではなく,特に平成10年度においては,県税収入の減少が被告の財政に与えた影響は大きかった。 エ裁量権行使に際しての手続の不公正 以上のとおり,「県税収入+地方交付税」は必ずしも安定財源というわけではなく,特に平成10年度においては,県税収入の減少が被告の財政に与えた影響は大きかった。 エ裁量権行使に際しての手続の不公正(原告らの主張)(ア) 被告は,本件給与抑制条例の必要性及び理由について,被告の財政の危機的状況を挙げているが,地方財政の仕組みは極めて複雑であり,これを正確に理解するには高度の専門知識を要するし,財政の善し悪しについての判断基準についても政治的判断が先行するものであり,被告がその財政の危機的状況を立証することは不可能である。 このような極めて専門性が高く,政治的判断の余地もあると解される場合,いわゆる「行政過程審査」が取られるのが妥当である。すなわち,行政機関や立法機関が本来行政過程,立法過程ですべき手続や検討をしているかどうかで判断すべきである。 (イ) 本件の場合,歳出構造の抜本的改善に取り組むためには,中長期の財政再建計画が必要であるはずである。 被告と同じく財政危機に陥ったとされている東京都は,平成11年7月に「財政再建推進プラン-都財政自主再建への道-」(甲15),大阪府は平成10年9月に「財政再建プログラム(案)」(甲14)を,神奈川県は平成11年10月に「神奈川県財政の現状と今後の展望-財政健全化の指針(仮称)-中間取りまとめ」(甲16)を発表している。 したがって,財政の危機的状況という理由から平成11年度給与抑制条例を制定する場合には,財政再建計画を立てる必要がある。 しかし,被告は財政再建計画を立てていない。 (被告の主張)(ア) 被告は,準用財政再建団体に転落したことはなかったので,地方財政再建特別措置法の規定に基づき財政の再建を行おうとする地方公共団体が作成する財政再建のための赤字解消年次計画は策定する の主張)(ア) 被告は,準用財政再建団体に転落したことはなかったので,地方財政再建特別措置法の規定に基づき財政の再建を行おうとする地方公共団体が作成する財政再建のための赤字解消年次計画は策定する必要はなかったし,現に策定もしていない。 (イ) 被告としては,平成10年12月,「愛知県行政改革推進計画(愛知県第三次行革大綱)」(甲18)を策定し,愛知県行政全般の改革を推進するとともに,財政についても将来にわたる健全な財政運営を確保するため,経費の削減合理化を始めとする諸施策を講じることとしており,財政健全化に向けた努力は継続している。 平成11年度予算編成においても,愛知県地方計画「新世紀への飛躍~愛知2010計画」及び上記「第三次行革大綱」との整合性に留意して予算編成をすることとされており(乙34),第三次行革大綱における財政再建策に基づいて適正に編成することとされた。 同様に,平成12年度予算編成(乙52)及び平成13年度予算編成(乙63)においても,「第三次行革大綱」をできるだけ前倒し実施することに努めるとともに,「愛知県地方計画」との整合整にも留意することとされた。 オ事実誤認(原告らの主張)被告当局は,平成10年度の決算について,平成10年10月時点で1050億円の赤字を見込んだが(乙11),同年度の決算では実質収支は222億2585万円の赤字にとどまった(甲13の18頁)。 平成11年度予算について,実質収支の観点から平成10年10月時点で2900億円の赤字額(乙12),同月末時点で1267億円の赤字額(乙38の1頁),平成11年1月時点で1003億円の赤字額(乙38の1頁)を予測した。そして,同年2月中旬の知事査定では,平成11年度給与抑制条例による給与抑制額320億円を組み込んだ後,482億円の赤字を見込 ),平成11年1月時点で1003億円の赤字額(乙38の1頁)を予測した。そして,同年2月中旬の知事査定では,平成11年度給与抑制条例による給与抑制額320億円を組み込んだ後,482億円の赤字を見込んだ(乙38の1頁)。 しかし,同年度の実質収支の赤字の決算額は,91億3762万円にとどまった(甲22の18頁,乙75の22,23頁)。 このように,被告当局は,平成11年度給与抑制条例の制定に当たり,前記のとおり平成10年度の実質収支額及び平成11年度の実質収支額について見込みを誤ったのであり,このような事実誤認に基づいてされた平成11年度給与抑制条例の制定には裁量権の逸脱,濫用があり,愛知県議会も同様である。 (被告の主張)(ア) 「11年度当初見込①」(乙30)欄の記載は,平成10年10月時点における平成11年度の収支見込みの額であり,各職員団体との交渉時に提示した数値である(乙5)。 「11年度6月現計予算②」(乙30)欄の記載は,平成11年6月補正時点における予算である。この年は,平成11年2月に県知事選挙が実施されたことから,平成11年度当初予算はいわゆる骨格予算となっているため,6月補正後の数値が比較の対象として適当である。 「11年度最終予算③」(乙30)欄の記載は,平成11年度2月補正後の最終予算である。なお,決算の総額ベースの数字は,乙28に記載のとおりであるが,決算数値については,人件費,扶助費等の費目ごとに集計作業を行っていないため,最終予算額が決算額と近似することから,最終予算との間で対比するのが適当である。 (イ) 歳入については,まず,県税収入について,「11年度最終予算③」(乙30)の時点では,「11年度当初見込①」(乙30)の時点よりも更に落ち込む結果となり,約1000億円減少した。 県税に (イ) 歳入については,まず,県税収入について,「11年度最終予算③」(乙30)の時点では,「11年度当初見込①」(乙30)の時点よりも更に落ち込む結果となり,約1000億円減少した。 県税については,平成11年度における税制改革の内容や国の地方財政対策の具体像がいまだ明らかにされていなかったため,平成10年10月現在の税制を前提とし,平成10年度の最終見込額と同額と仮定して見積もることとしたものであり,県債,国庫等その他特定財源については,歳出の減少と連動させて見積もったものである(乙5,12)。この「歳出の減少」とは,歳出項目について「かつてない厳しいマイナスシーリング(行政経費マイナス30%,公共事業マイナス10%)を設けて要求を受け付け,(略)」との方針を策定した上で,歳出をあらかじめ減額した上で見積もったことを指す(乙5,乙12中「2(2)「歳出」の項参照)。 県債については,「11年度6月現計予算②」(乙30)の時点で約1200億円増加しているが,これは歳入不足を補うため,県債の活用を最大限に図ったからであり,その後,国の緊急経済対策に応ずるため,上記③の時点で更に約300億円増加した。 その他については,地方交付税が約1600億円増加した。「11年度当初見込①」(乙30)の時点では,次年度の地方財政計画が立てられておらず,地方交付税の見込みができないため,平成10年度並みの額と見積もったのであるが,その後平成11年度の地方財政計画に基づく算定の結果,大幅増額の結果となった。 地方交付税,地方債制度は,国による毎年度の地方財政対策と密接な関係がある。被告が平成10年10月時点でまとめた「11年度当初見込①」(乙30)の時点は,平成11年度の地方財政対策の具体像はもとより,同対策の具体的実施方針である国の平成 の地方財政対策と密接な関係がある。被告が平成10年10月時点でまとめた「11年度当初見込①」(乙30)の時点は,平成11年度の地方財政対策の具体像はもとより,同対策の具体的実施方針である国の平成11年度の地方債許可方針も明らかにされていない段階であった。 被告当局は,そのような状況の下,当時の可能な限りの情報の収集に努めつつ,地方財政の運営に関する基本原則を定めた地方財政法の4条の2で,「地方公共団体は,予算を編成し(略)ようとする場合においては,当該年度のみならず,翌年度以降における財政の状況をも考慮して,その健全な運営をそこなうことがないようにしなければならない。」と定め,翌年度以降その償還が必要となる地方債について慎重な立案を求めるとともに,同法5条により「地方公共団体の歳出は,地方債以外の歳入をもってその財源としなければならない(略)。」ことを原則としているといった財政運営の基本原則を十分に踏まえ見積もったものである。 特に,前記のとおり,平成11年度の地方財政対策は,小渕恵三総理大臣が平成10年8月7日の第143回国会の所信表明演説において表明した6兆円を相当程度上回る恒久的な減税をめぐって,国と地方のそれぞれでどのように減税をするかなどその具体化に向けた様々な議論がされ,同年11月26日になって取りまとめられた国,地方併せて約6兆6000億円に上る個人所得課税,法人課税の恒久的な減税やこれに係る財政措置の具体的な内容が盛り込まれるなど,例年にない内容であった。 地方交付税については,国の平成11年度の地方財政対策の具体的計画である地方財政計画での伸び率が不明であったことに加え(結果として,平成11年2月2日に閣議決定された同計画における地方交付税額の対前年度伸び率は19.1%であった。),その算定においては 体的計画である地方財政計画での伸び率が不明であったことに加え(結果として,平成11年2月2日に閣議決定された同計画における地方交付税額の対前年度伸び率は19.1%であった。),その算定においては,被告の特徴として,景気動向に大きく左右される法人関係税による影響が大きく,過去の交付実績(平成8年度約450億円,平成9年度約48億円,平成10年度約67億円)を見ても平成11年度の交付額の予測は非常に困難なものであった。 一方,県債については,前記のとおり,当時の地方自治法250条の規定においては,起債について自治大臣の許可が必要であったほか,地方財政法5条において「地方公共団体の歳出は,地方債以外の歳入をもって,その財源としなければならない。」ことを原則とした上で,ただし書において地方債の対象とする経費を列挙している。そして,国の平成11年度地方債許可方針が決まったのは,平成11年4月21日になってからであった。 前記のとおり,平成11年度6月現計の県債予算額は,当初見込みに比べて約1200億円増加したが,これは,国の平成11年度地方債許可方針を踏まえながら県債の活用を最大限に図ったからである。その後,国にあっては,平成11年7月21日に平成11年度第1次補正予算が,同年12月9日に平成11年度第2次補正予算がそれぞれ成立し,被告としてもこれら国の緊急経済対策に応ずるため,平成11年度最終予算の時点で更に県債が約300億円増加した。 以上のとおり,被告が平成10年10月の時点で取りまとめた「11年度当初見込①」(乙30)の段階では,地方交付税,県債等といった歳入項目の増減予測は困難であり,また,これらの歳入項目の変動の結果にかかわらず,仮に,給与抑制措置が採られなければ,被告の財政の危機的状況が継続していたことは明らかで ,地方交付税,県債等といった歳入項目の増減予測は困難であり,また,これらの歳入項目の変動の結果にかかわらず,仮に,給与抑制措置が採られなければ,被告の財政の危機的状況が継続していたことは明らかである。 (ウ) 歳出については,まず,人件費について平成11年度給与抑制条例による給与抑制措置が採られたため,約320億円減少した。 その他については,「11年度6月現計予算②」(乙30)の時点,すなわち当初予算に近いベースでは,各種歳出の削減により約200億円減少したが,その後国の緊急経済対策に呼応して,国の要請により公共投資の増額を実施したため,約400億円増加した。なお,この増加の財源は,国庫支出金と県債(償還については,後年度において地方交付税で措置されることとなる。)である。 (エ) 以上のとおり,多額の財源不足が見込まれたため,事前に各種の財源対策を施して当初予算を編成し,更に年度中においても一層適切な執行と歳入確保に努力したからこそ,決算では見込みよりも改善したものであって,見込み誤りではない。 そもそも,社会経済環境や行政需要等が大きく変化する中で,収入支出を寸分の狂いもなく見積もり,それに従って事務事業を固定的に実施していくことは非常に困難であり,合理性にも欠ける。 第2 平成12年度給与抑制条例の無効 1 立法形式の濫用(原告らの主張)被告は,第2年目の給与抑制については,本来平成12年3月1日に失効するはずであった平成11年度給与抑制条例について,平成12年度給与抑制条例により,給与抑制期間を「平成12年4月1日から平成13年3月31日まで」に改めるとし,併せて平成12年度給与抑制条例の施行日を平成12年4月1日とし,期末,勤勉手当の削減率を減少させている(甲36)。 また,第3年目の平成13年度給与抑制条例も 13年3月31日まで」に改めるとし,併せて平成12年度給与抑制条例の施行日を平成12年4月1日とし,期末,勤勉手当の削減率を減少させている(甲36)。 また,第3年目の平成13年度給与抑制条例も同様の立法形式を採用している(甲38)。 このような立法は,本来失効する条例の改正という形を借り,実際には全く新しい条例を制定するものであり,立法形式において濫用があり無効である。 2 地方公務員法24条,25条1項,3項1号,憲法94条違反(原告らの主張及び反論)前記第1の1(原告らの主張)及び(原告らの反論)と同じ。 (被告の主張)前記第1の1(被告の主張)と同じ。 3 地方公務員法所定の給与決定原則違反(原告らの主張及び反論)前記第1の2(原告らの主張)及び(原告らの反論)と同じ。 (被告の主張)前記第1の2(被告の主張)と同じ。 4 条例の成立過程の瑕疵の有無(原告らの主張)(1) 愛知県知事は,第2年目及び第3年目それぞれの給与抑制条例の提案に先立って,原告らの所属する職員団体と教育委員会との給与改定の交渉を実施している。 しかし,教育委員会は,この交渉において,被告が本件訴訟に提出した資料を提出していない。また,自ら財政に関する説明が不十分であることを随所に自認していた(甲40)。 したがって,愛知県知事は,既に条例で確定した給与等を削減するについて負う説明義務を果たしていない。 (2) 第2年目及び第3年目の各給与抑制条例を審議した議員もほとんどが与党であって,議員としてすべき質問をしていない。与党でない議員も自らの出身団体に対する補助金等が削減されることを恐れ,すべき質問を放棄した。 5 合理的理由の欠如(1) 立法裁量の否定(原告らの主張)前記第1の4(1)(原告らの主張)と同じ。 (被告の主張) 身団体に対する補助金等が削減されることを恐れ,すべき質問を放棄した。 5 合理的理由の欠如(1) 立法裁量の否定(原告らの主張)前記第1の4(1)(原告らの主張)と同じ。 (被告の主張)前記第1の4(1)(被告の主張)と同じ。 (2) 裁量権の逸脱,濫用ア総論(原告らの主張)前記第1の4(2)ア(原告らの主張)と同じ。 (被告の主張)(ア) 前記第1の4(2)ア(被告の主張)と同じ。 (イ) なお,被告は,予算の編成を統一性をもってするための基準として,予算の編成方針を策定しており,平成12年度当初予算については,平成11年10月18日付けで「平成12年度予算編成について(依命通達)」(乙52)と「平成12年度予算編成事務処理要領」(乙53の別紙)を各部局長等に通達,通知し,予算編成方針を明らかにした。 被告の財政は,この予算編成方針にもあるように,平成11年10月の時点で,平成10年度に生じた決算赤字の財政措置の目処が立っておらず,大幅な収支不足が見込まれるなど,平成12年度においても,引き続き,平成11年度と同様に極めて深刻な状況が継続していた。このため,行政活動計画の立案に当たっては,平成11年度6月補正後予算額の政策的重要経費及びその他の行政経費については原則70%の範囲内,公共事業費については原則90%の範囲内とするなど厳しいシーリングを設定し,事務事業全般にわたり,制度施策の廃止縮小を含めた徹底した見直し,合理化を図り,これまで以上に歳出の抑制に取り組むこととした。 そして,被告は,これらの「予算編成方針」に基づいて,各部局から出された要望額を基に,平成12年1月7日時点までの調整状況を100億円単位で「平成12年度財政状況試算(当初)」(甲24の49,50頁)を取りまとめた。 これによれば, に基づいて,各部局から出された要望額を基に,平成12年1月7日時点までの調整状況を100億円単位で「平成12年度財政状況試算(当初)」(甲24の49,50頁)を取りまとめた。 これによれば,平成12年1月7日の段階での収支不足の見込額は,「平成12年度①」(甲24の49,50頁)欄の「歳出」の「計」の2兆2800億円から「歳入」の「計」2兆0900億円を差し引いた1900億円であった。 この「平成12年度財政状況試算(当初)」(甲24の49,50頁)の記載項目のうち,歳入面については,この平成12年1月7日時点で,県税につき,被告の税収動向に大きな影響を及ぼす法人関係税に関して県内主要企業に対する聴き取り調査を実施することなどにより,できるだけの正確な補そくに努め,1兆0300億円と見積もった。また,地方交付税については,被告の税収見通しや国の地方財政対策の動向を踏まえながら,1200億円と見込んでいた。さらに,県債については,各部局からの予算要望のあった経費を基に,国の地方財政対策の動向を踏まえながら,平成11年度の通常の起債充当率を乗じて見積もり,1700億円と見込んでいた。 他方,歳出面においては,「平成12年度予算編成方針(依命通達)」(乙52)及び「平成12年度予算編成事務処理要領」(乙53の別紙)に基づき,既に平成12年1月7日のこの時点で,事務事業全般にわたり,制度施策そのものの廃止縮小を含めた一層徹底した見直し,合理化を図り,政策的重要経費及びその他の行政経費について,前年度予算額の70%の範囲内とするシーリングを設定するなど,厳しい歳出抑制の基で見積もった。この時点では,給与抑制を見込んでいなかった。 その後,平成12年2月の知事査定の段階までに,前記の各項目について,更により正確な補そくに努め, グを設定するなど,厳しい歳出抑制の基で見積もった。この時点では,給与抑制を見込んでいなかった。 その後,平成12年2月の知事査定の段階までに,前記の各項目について,更により正確な補そくに努め,精査をした。 県税については,直近の徴収状況などを基に精査し,平成12年2月のこの時点では,275億円増の1兆0575億円と見込んでいた(乙55)。 また,地方交付税については,平成12年1月下旬に自治省が開いた全国都道府県財政課長会議で説明された平成12年度の地方交付税算定上の留意点を踏まえて,更に精査し,200億円増の1400億円と見込んだ(乙55)。さらに,県債については,地方交付税と同様に全国都道府県財政課長会議で説明された平成12年度の地方債計画に関する情報を踏まえて精査し,790億円増の2490億円と見込んだ(乙55)。 このような精査の中で,「12年度の財源対策について」(乙54)の作成段階で,県税及び地方交付税について既に最終予算額ベースで整理したが,歳入の増加を見込んだ上でも,歳出との収支の均衡を保つことが困難であり,合計1680億円の財源対策が必要とされたので,被告の財政の健全化を図る不可欠の施策として「12年度の財源対策について」(乙54)の記載に係る給与抑制措置を含む様々な財源対策を講じざるを得ず,「平成12年度一般会計の財源見通し」(乙55)の作成に至った。 このため,平成12年度当初予算作成に当たっては,この多額の収支不足額を解消するため,歳入,歳出の両面にわたる,更なる様々な財源対策が講じられた。平成12年度当初予算編成における歳入,歳出両面での最終段階での財源対策の内容を示す「12年度の財源対策について」(乙54)のとおり,平成12年度においても,給与の抑制措置が財源対策の一環として必要な措置として組 予算編成における歳入,歳出両面での最終段階での財源対策の内容を示す「12年度の財源対策について」(乙54)のとおり,平成12年度においても,給与の抑制措置が財源対策の一環として必要な措置として組み込まれた。 平成12年度当初予算の知事査定の結果を踏まえた予算編成最終段階の一般会計の財源見通しは,「平成12年度一般会計の財源見通し」(乙55)のとおりである。同見通しの「12年度当初予算A」の「差引」の欄が0円となっているように,この時点で,歳入,歳出の均衡を図ることができた。しかし,この中には,「12年度の財源対策について」(乙54)の「歳出」の区分にあるように,本来当初予算で措置しなければならない①「公債費」における満期一括償還減債基金への平成12年度分の積立金123億円や,②「人件費」(給与費)における平成12年度給与改善費30億円の予算計上が見送られているほか,更にその後に額が確定する③平成11年度2月補正予算段階では190億円と見込まれていた平成11年度の赤字額(乙55の「歳入」欄の「繰越金」欄の「12年度当初予算の主な内容」欄参照)に対する財源手当の見通しも立っていなかった。 以上のとおり,平成12年度の当初予算編成においては,平成12年度給与抑制条例による給与抑制措置を講じても,実質的には,歳入,歳出の均衡に達することができない危機的な財政状況にあった。 (ウ) 予算は,経費構成と収入構成の実質的な相関において,適正に均衡が保持されなければ調整できない。 平成12年度当初予算における経費構成と収入構成の内容を示す「経費構成と収入構成について」(乙56)の「サ」の「F」欄記載のとおり,平成12年度の当初予算における一般財源の総額は,平成11年度6月補正後予算と比べて,779億円増加しているが,他方で,上記書面の「ア 成と収入構成について」(乙56)の「サ」の「F」欄記載のとおり,平成12年度の当初予算における一般財源の総額は,平成11年度6月補正後予算と比べて,779億円増加しているが,他方で,上記書面の「ア」の「H」欄記載のとおり,義務的経費等に要する一般財源額は898億円増加しており,人件費を始めとする義務的経費の財源確保の見地から,平成12年度においては,平成11年度に引き続き厳しい状況にあった。 以上のように,平成12年度当初予算においては,本来措置すべき経費の予算計上を先送りして初めて収支の均衡を図ることが可能となったものであり,平成12年度における給与抑制措置は,被告の財政の健全化を図る見地からやむを得ない措置であった。 (エ) 平成12年度人事委員会勧告においては,「職員の給与の減額措置は,県税収入の急激な減少により過去に経験したことのない危機的な財政状況が引き続く中にあって,財政再建に向けた様々な取組の一つとしてやむを得ず継続されているものであると理解し」,「職員の給与の減額措置は勧告制度とは異なる次元で実施される例外的なものであり,当該減額措置の影響による較差については,勧告制度の枠組みを超えるものとして取り扱うことが適当であると考える。」(乙81)とされている。 (原告らの反論)「被告の財政の健全化を図る見地からやむを得ない」などという理由は,職員が既に「職員の給与に関する条例」によって既得の権利として有する給与を,給料表を変更することなく削減する基準としては,認められる余地がない。また,これらは,被告自身が平成11年度給与抑制条例の制定の必要性の基準として主張している基準にも反する。 イ裁量基準の違法(原告らの主張)前記第1の4(2)イ(原告らの主張)と同じ。 なお,第1年目の給与抑制は,被告が財政再建団体に転 条例の制定の必要性の基準として主張している基準にも反する。 イ裁量基準の違法(原告らの主張)前記第1の4(2)イ(原告らの主張)と同じ。 なお,第1年目の給与抑制は,被告が財政再建団体に転落する可能性があるなど極めて深刻な危機的状況にあったため,単年度限りの緊急避難的措置であったが,平成10年度の決算は222億円の赤字であり,準用財政再建団体に転落するおそれ自体は解消された。 したがって,被告が,平成12年度においてもなお給与抑制を続ける財政上の根拠はなくなったし,平成13年度においてはなおさらである。 (被告の主張)前記第1の4(2)イ(被告の主張)と同じ。 ウ裁量権行使に際しての手続の不公正(原告らの主張)(ア) 前記第1の4(2)エ(原告らの主張)と同じ。 (イ) 抜本的かつ徹底した財政健全化策を講じるためには,財政再建計画の策定が不可欠であるが,被告はこれを策定していない。したがって,被告は,第2年目,第3年目の給与抑制に関する財政上の根拠を合理的に説明できない。 (被告の主張)前記第1の4(2)エ(被告の主張)と同じ。 エ事実誤認(原告らの主張)平成12年度予算について,被告当局は,実質収支の観点から,平成12年1月7日の時点で1900億円の赤字額(甲24の49,50頁),同年2月当初予算作成時1680億円の赤字額(乙54)を予測した。 しかし,同年度の実質収支の決算額は,赤字ではなく28億4748万円の黒字であった(乙28)。 被告当局は,平成12年度給与抑制条例の制定に当たり,平成11年度の実質収支及び平成12年度の実質収支について見込みを誤ったことは明らかであり,このような事実誤認に基づいてされた平成12年度給与抑制条例の制定については,裁量権の逸脱,濫用がある。愛知県議会についても同様であ 平成12年度の実質収支について見込みを誤ったことは明らかであり,このような事実誤認に基づいてされた平成12年度給与抑制条例の制定については,裁量権の逸脱,濫用がある。愛知県議会についても同様である。 (被告の主張)(ア) 一会計年度の歳入歳出予算の執行の結果,すなわち決算は,通常現金の未収未払の整理をするための期間である出納整理期間(翌年度の4月1日から5月31日までの2か月間)が終了する出納閉鎖期日をもって初めて確定する。 平成12年2月の補正予算編成の時点で,平成12年度予算に繰り越される見込みであった平成11年度の赤字額190億円(乙55の「歳入」欄の「繰越金」欄の区分のうち「12年度当初予算の主な内容」欄に記載)は,平成11年度の決算額が確定した平成12年5月末の出納閉鎖期日の時点で,歳出不要額の増加などから実質収支として91億円(乙66の「平成11年度決算赤字額」欄)の赤字に縮小して平成12年度に繰り越された(乙73)。この平成12年2月の見込みは,補正予算の編成及び平成12年度予算の編成のために出したものであり,この補正予算時点,すなわち平成12年度の予算編成時点で,その全体額を見込み,算定したものである。これに対し,確定時点の赤字額は,様々な要因の結果として支出した又はされなかった額と,収入をした又は収入に至らなかった額との差として確定するものである。したがって,決算に至る過程の分析は困難である。また,それぞれの時点相互間における金額の変化は,様々な要因に基づく歳入面,歳出面の個別の変動が多数集積した結果であって,その個別の変動をすべて補そくすることは不可能である。 確定した赤字の91億円の内訳は,次のとおりである。歳入の面においては,一般会計歳入の予算現額2兆3674億円から,収入済額2兆3034億円を差 個別の変動をすべて補そくすることは不可能である。 確定した赤字の91億円の内訳は,次のとおりである。歳入の面においては,一般会計歳入の予算現額2兆3674億円から,収入済額2兆3034億円を差し引き,641億円の減収(歳入不足)となった(乙75「平成11年度愛知県一般会計歳入歳出決算書」12,13頁の表中の「歳入合計」欄参照。)。他方,歳出の面においては,予算現額2兆3674億円から支出済額2兆3093億円を差し引きし,581億円の支出の減少となった(乙75の22,23頁の表中の「歳出合計」欄参照)。 以上のように,確定した歳入総額2兆3034億円と歳出総額2兆3093億円とを差し引きした「歳入歳出差引歳入不足額」のマイナス59億円から,「翌年度へ繰り越すべき財源」の32億円を差し引いた「翌年度歳入繰上充用金」のマイナス91億円が,赤字額として確定したものである(乙75の22頁,23頁)。 (イ) 平成12年度においては,歳入面で税収が予算額を上回ったことのほか,歳出面でより一層の適切な執行に努めたことなどにより健康福祉費,建設費,教育費,公債費など不用額が生じた結果,最終的には,平成12年度の決算額が確定した平成13年5月末において,実質収支として28億円の黒字となった。 (ウ) 平成12年度については,歳入面においては,「平成12年度愛知県歳入歳出決算及び基金運用状況の審査意見書」(乙78)の10,11頁の「各款別内訳表」の「(C)/(A)×100」欄の「計」欄記載のとおり,97.50%が収入済みであり,「11 寄附金」及び「12 繰入金」を除けば90%以上の高率であるように,予算の見積りは適正である。 歳出面においては,前記審査意見書(乙78)の38,39頁の「各款別内訳表」の「執行率(B)/(A)×100」欄の「計 繰入金」を除けば90%以上の高率であるように,予算の見積りは適正である。 歳出面においては,前記審査意見書(乙78)の38,39頁の「各款別内訳表」の「執行率(B)/(A)×100」欄の「計」欄記載のとおり,執行率は全体として97.22%であり,「12 災害復旧費」を除けば,いずれもほぼ90%以上の高い率であるように,同様に予算の見積りは適正である。 なお,愛知県監査委員は,前記審査意見書(乙78)の7頁で,「予算の執行に当たっては,議会の議決の趣旨に沿い,効率性に配慮しておおむね適正に執行されているものと認めた。」と判断している。 歳入面においては,総額が前記審査意見書(乙78)の10,11頁の上段の表の「予算現額」欄記載の2兆3997億円から「収入済額」欄記載の2兆3398億円を差し引いた「予算現額と収入済額との比較」欄記載のマイナス599億円が予算と決算との差である。 歳出面においては,総額が前記審査意見書(乙78)の38,39頁の上段の表の「予算現額」欄記載の2兆3997億円から「支出済額」欄記載の2兆3330億円を除いた,「翌年度繰越額」欄記載の533億円(繰越明許費532億円と事故繰越し1億円)と「不要額」欄記載の134億円との合計667億円が予算と決算との差である。 平成12年度においても,予算及び年度途中の執行見込みと最終の決算とが一致せず,また,支出額について決算が見込みより少額となる性質を有している。 平成13年2月の補正予算編成時に見込んだマイナス80億円は,結果として12年度の決算段階では28億円へと黒字に転換した。 平成13年2月に見込んだマイナス80億円は,前記審査意見書(乙78)の34頁下段の表の「7 雑入」項の「5 雑入」の目の「主な内容」欄に,「総務費雑入において,前年度の実 へと黒字に転換した。 平成13年2月に見込んだマイナス80億円は,前記審査意見書(乙78)の34頁下段の表の「7 雑入」項の「5 雑入」の目の「主な内容」欄に,「総務費雑入において,前年度の実質収支が赤字になったことに対応するための繰上充用に係る財源を措置したこと」と記載があるとおり,前記審査意見書(乙78)の34頁の上段の表の「歳入」の「第14款諸収入」の「7 雑入」の項の「5 雑入」の目欄に予算現額166億円として計上されている。なお,前記審査意見書(乙78)の34頁の上段の表の「7 雑入」の項の「5 雑入」の目の「予算現額と収入済額との比較」欄に,マイナス71億円が計上されているが,これは,他に予算現額を上回る収入が9億円あったことによるものである。 前記の収入不足80億円は,他の収入の過不足と合算され,前記審査意見書(乙78)の10,11頁の上段の「予算現額と収入済額との比較」欄記載のマイナス599億円の内数となり,このマイナス599億円が当該年度の最終的な収入不足の総額となる。一方,前記審査意見書(乙78)の38,39頁の上段の表記載のとおり,最終の予算現額と支出済額との差である翌年度繰越額533億円(繰越明許費532億円と事故繰越し1億円)と不用額134億円の合計667億円が当該年度に最終的に支出しなかった額である。これら歳入不足マイナス599億円と歳出しなかった667億円の差し引きで,前記審査意見書(乙78)の6頁の表の「歳入歳出差引額」欄記載のとおり,結果として68億円の黒字が計上される。 さらに,翌年度繰越額533億円のうち,翌年度に財源を繰り越すべきものが,前記審査意見書(乙78)の6頁の表の「翌年度へ繰り越すべき財源」欄記載のとおり,40億円あることから,68億円から40億円を差し引いた28億円が 33億円のうち,翌年度に財源を繰り越すべきものが,前記審査意見書(乙78)の6頁の表の「翌年度へ繰り越すべき財源」欄記載のとおり,40億円あることから,68億円から40億円を差し引いた28億円が,当該年度の最終黒字額であり,また実質収支額である。 以上のとおり,平成13年2月の補正予算編成の際の収支不足のマイナス80億円は,計算上,他の収入の過不足と支出の過不足によって穴埋めされたことにより,不足が解消し,最終的に28億円の黒字となった。 (エ) 前記第1の5オ(エ)と同じ。 第3 平成13年度給与抑制条例の無効 1 立法形式の濫用(原告らの主張)前記第2の1(原告らの主張)と同じ。 2 地方公務員法24条,25条1項,3項1号,憲法94条違反(原告らの主張)前記第1の1(原告らの主張)と同じ。 (被告の主張)前記第1の1(被告の主張)と同じ。 3 地方公務員法所定の給与決定原則違反(原告らの主張)前記第1の2(原告らの主張)と同じ。 (被告の主張)前記第1の2(被告の主張)と同じ。 4 条例の成立過程の瑕疵の有無(原告らの主張)前記第2の4(原告らの主張)と同じ。 5 合理的理由の欠如(1) 立法裁量の否定(原告らの主張)前記第1の4(1)(原告らの主張)と同じ。 (被告の主張)前記第1の4(1)(被告の主張)と同じ。 (2) 裁量権の逸脱,濫用ア総論(原告らの主張)前記第1の4(2)ア(原告らの主張)と同じ。 (被告の主張)(ア) 前記第1の4(2)ア(被告の主張)と同じ。 (イ) 被告は,「平成13年度予算編成について(依命通達)」(乙63)及び「平成13年度予算編成事務処理要領」(乙64の別紙)を通達,通知した。各部局はこれに基づいて要望額を提出し,被告が平成13年1月9日時点までの調整状 度予算編成について(依命通達)」(乙63)及び「平成13年度予算編成事務処理要領」(乙64の別紙)を通達,通知した。各部局はこれに基づいて要望額を提出し,被告が平成13年1月9日時点までの調整状況を取りまとめ,その金額を100億円単位で整理したものが「平成13年度財政状況試算(当初)」(甲25の51頁)である。 平成13年1月9日のこの時点での収支不足の見込額は,「平成13年度①」欄の「歳出」欄の「計」欄の2兆3300億円から「歳入」欄の「計」欄の2兆1900億円を差し引いた1400億円となっており,平成13年度の予算編成においても大変厳しい状況にあった。 平成13年1月9日のこの時点で,歳入面では,県税につき,被告の税収動向に大きな影響を及ぼす法人関係税に関して県内主要企業に対する聴き取り調査を実施することなどにより見積もり,1兆0800億円と見込んでいた(甲25の51頁)。また,地方交付税については,税収見通しや国の地方財政対策の動向などを踏まえながら,1150億円と見込んでいた(甲25の51頁)。さらに,県債については,各部局からの予算要望のあった経費を基に国の地方財政対策の動向を踏まえながら平成12年度の起債充当率を乗じて見積もり,2100億円と見込んでいた(甲25の51頁)。 他方,歳出面では,「平成13年度予算編成について(依命通達)」(乙63)及び「平成13年度予算編成の要領について(通知)」(乙64)に基づき,既に平成13年1月9日のこの時点で,被告の事務事業全般にわたり,制度,施策そのものの廃止,縮小をも含めた一層徹底した見直し,合理化を図り,政策的重要経費及びその他行政経費について,前年度予算額の90%の範囲内とするシーリングを設定するなど,厳しい歳出抑制の基で見積もったものであるが,それでもなお,収 層徹底した見直し,合理化を図り,政策的重要経費及びその他行政経費について,前年度予算額の90%の範囲内とするシーリングを設定するなど,厳しい歳出抑制の基で見積もったものであるが,それでもなお,収支において1400億円の不足が見込まれた。なお,平成13年度においてもこの時点で給与抑制措置は見込んでいない。 その後,平成13年2月の知事査定の段階までに,歳入面,歳出面ともに,更に精査を行い,正確な補そくに努めた。 その結果,県税については,直近の徴収状況などを基にした精査により,176億円増の1兆0976億円と見積もった。また,地方交付税については,平成13年1月下旬に自治省が開いた全国都道府県財政課長会議で説明された平成13年度の地方交付税算定上の留意点を踏まえて精査し,1150億円の同額と見込んだ。さらに,県債については,地方交付税と同様に全国都道府県財政課長会議で説明された平成13年度の地方債計画に関する情報を踏まえて精査し,678億円増の2778億円と見込んだ。 こうした精査の中で,歳入の増加を見込んだ上でも,1400億円すべての収支不足を解消し,歳入,歳出との収支の均衡を保つことが困難であったことから,平成13年度においても様々な財源対策を講じることが不可欠と判断された。その結果,知事査定の結果を踏まえ,「平成13年度の収支状況」(乙65)記載のとおり,給与抑制措置を含む財源対策を,被告の財政健全化のためにやむを得ない措置として講じざるを得なかった。 平成13年度当初予算は,こうした歳入,歳出両面にわたる1400億円の財源対策を講ずることによって,一応編成することができたのであるが,この中には,「平成13年度の収支状況」(乙65)の「歳出の調整」欄記載のとおり,本来当初予算で措置しなければならない①公債費にお の財源対策を講ずることによって,一応編成することができたのであるが,この中には,「平成13年度の収支状況」(乙65)の「歳出の調整」欄記載のとおり,本来当初予算で措置しなければならない①公債費における平成13年度満期一括償還分の減債基金への積立金155億円や②人件費(給与費)における平成13年度給与改善費30億円の予算計上が見送られている。 さらに,前年度と同様,平成13年2月の補正予算編成の時点で平成13年度予算に繰り越される見込みであった平成12年度の赤字額80億円(「平成12年度の収支状況」(乙66)の「12年度収支見込(2月補正)」欄に記載。平成13年2月時点)に対する財源手当の見通しも立っていなかった。 このように,給与抑制措置を講じても,実質的には,歳入,歳出の均衡に達することができない危機的な状況にあった。 (ウ) 平成13年度当初予算における一般財源の総額は,平成12年度当初予算と比べて,113億円増加(「経費構成と収入構成について」(乙67)の「サ」の「F」欄記載)しているのであるが,それ以上に義務的経費等に要する一般財源額(「経費構成と収入構成について」(乙67)の「ア」の「H」欄記載)が284億円増加しているのであって,被告の財政は,平成12年度に引き続き厳しい状況にあった。 こうした一般財源状況に加え,前記のとおり,平成13年度当初予算では,本来措置すべき経費の予算計上を先送りしなければならなかったもので,平成13年度給与抑制条例による給与抑制措置をしなければ予算の編成すらできなかった。 (エ) 平成13年度における給与抑制の内容は,例月給与の2%の抑制であり,当初予算ベースでは,104億円の抑制であった。 (オ) 平成13年度人事委員会勧告においては,「人事委員会の勧告制度とは異なる次元で実施され 度における給与抑制の内容は,例月給与の2%の抑制であり,当初予算ベースでは,104億円の抑制であった。 (オ) 平成13年度人事委員会勧告においては,「人事委員会の勧告制度とは異なる次元で実施される例外的な措置であると考えて」おり,「特例条例により実施されている職員の給与の減額措置については,かつてない危機的な財政状況に対処するため緊急避難的に,また,財政再建に向けた様々な取組の一つとして,やむを得ず継続されているものであると理解している」とされている(乙82)。 イ裁量基準の違法(原告らの主張)前記第2の5(2)イ(原告らの主張)と同じ。 (被告の主張)前記第2の5(2)イ(被告の主張)と同じ。 ウ裁量権行使に際しての手続の不公正(原告らの主張)前記第2の5(2)ウ(原告らの主張)と同じ。 (被告の主張)前記第2の5(2)ウ(被告の主張)と同じ。 エ事実誤認(原告らの主張)平成13年度予算について,被告当局は,実質収支の観点から,予算編成段階で1400億円の赤字(甲25の51頁)を予測した。 しかし,同年度の実質収支の決算額は19億6282億円の黒字(乙79の6頁)であった。 被告当局は,平成12年度決算について,平成13年2月時点で80億円の赤字額を見込んだが(「平成12年度の収支状況」(乙66)の「12年度収支見込(2月補正)」欄参照),同年の実質収支の決算額は28億4748万円の黒字となっている(「平成12年度愛知県歳入歳出決算及び基金運用状況の審査意見書」(乙78)の6頁)。 被告当局は,平成13年度給与抑制条例の制定に際し,平成12年度の実質収支額及び平成13年度の実質収支額の見込みを誤ったことは明らかであって,このような事実誤認に基づいてされた平成13年度給与抑制条例の制定には,裁量権の逸脱 抑制条例の制定に際し,平成12年度の実質収支額及び平成13年度の実質収支額の見込みを誤ったことは明らかであって,このような事実誤認に基づいてされた平成13年度給与抑制条例の制定には,裁量権の逸脱,濫用がある。 (被告の主張)(ア) 平成13年度については,歳入面においては,「平成13年度愛知県歳入歳出決算及び基金運用状況の審査意見書」(乙79)の10,11頁の下段の各款別内訳表の「(C)/(A)×100」欄の「計」欄記載のとおり,一般会計全体では,予算に対して97.49%が収入済みであり,「11寄附金」及び「12 繰入金」を除けばおおむね90%以上の高率であるように,予算の見積りは適正である。 歳出面においては,前記審査意見書(乙79)の40,41頁の下段の表の「執行率(B)/(A)×100」欄記載のとおり,97.24%であり,いずれもほぼ90%以上の高い率であるように,同様に予算の見積りは適正である。 歳入面においては,総額が前記審査意見書(乙79)の10,11頁の上段の表の「予算現額」欄記載の2兆4373億円から「収入済額」欄記載の2兆3761億円を除いた「予算現額と収入済額との比較」欄記載のマイナス612億円が,予算と決算との差である。 歳出面においては,総額が前記審査意見書(乙79)の40,41頁の上段の表の「予算現額」欄記載の2兆4373億円から「支出済額」欄記載の2兆3701億円を除いた「翌年度繰越額」欄記載の516億円(繰越明許費515億円及び事故繰越し1億円)と「不用額」欄記載の156億円との合計672億円が,予算と決算との差である。 平成13年度においても,予算及び年度途中の執行見込みと最終の決算とが一致せず,また,支出額について決算が見込みより少額となる性質を有していた。 平成14年2月の ,予算と決算との差である。 平成13年度においても,予算及び年度途中の執行見込みと最終の決算とが一致せず,また,支出額について決算が見込みより少額となる性質を有していた。 平成14年2月の補正予算編成時において,収支状況は歳入歳出が均衡するものと見込んでいた(乙80)が,結果として平成13年度の決算段階では20億円の黒字となった。 当該年度の最終的な不足額は,前記審査意見書(乙79)の10,11頁の上段の表の「予算現額と収入済額との比較」欄記載のマイナス612億円である。一方,当該年度に最終的に支出しなかった額は,前記審査意見書(乙79)の40,41頁の上段の表の予算現額と支出済額との差である「翌年度繰越額」欄記載の516億円(繰越明許費515億円と事故繰越し1億円)と「不用額」欄記載の156億円の合計である672億円である。したがって,収支は,前記審査意見書(乙79)の6頁の上段の表の「歳入歳出差引額」欄記載のとおり,収入のマイナス612億円と支出の672億円を加えた60億円の黒字となる。 さらに,翌年度繰越額516億円のうち,翌年度に繰り越すべきものが,前記審査意見書(乙79)の6頁の上段の表の「翌年度へ繰り越すべき財源」欄記載のとおり40億円あることから,結果として当該年度は,60億円から40億円を差し引いた20億円が,当該年度の最終黒字額であり,また,実質収支額である。 (イ) 第2の5(2)エ(被告の主張)(エ)と同じ。 第4 消滅時効(抗弁)(被告の主張)原告らの被告に対する給与支払請求権の消滅時効は2年であり(地方公務員法58条3項,労働基準法115条),原告らは,平成13年6月11日の追加的請求の申立時点においては対象年度を明らかにしておらず,平成14年9月30日の請求原因の追加等の申立て時点で初め 地方公務員法58条3項,労働基準法115条),原告らは,平成13年6月11日の追加的請求の申立時点においては対象年度を明らかにしておらず,平成14年9月30日の請求原因の追加等の申立て時点で初めて明らかにしたから,平成12年9月(少なくとも平成11年5月)までの請求権は消滅時効により消滅している。 この消滅時効は援用を要しない(地方自治法236条2項後段)。 (国家賠償請求)第1 平成11年度給与抑制条例の違法(原告らの主張)前記「(給与に関する条例に基づく請求)第1 平成11年度給与抑制条例の無効」と同じ。 (被告の主張)1(1) 国会議員の立法行為が国家賠償法1条1項の適用上違法となるかどうかは,国会議員の立法過程における行動が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背したかどうかの問題である。国会議員は,立法に関しては,原則として国民全体に対する関係で政治的責任を負うにとどまり,個別の国民の権利に対応した関係での法的義務を負うものではないというべきであって,国会議員の立法行為は立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとき,容易に想定し難いような例外的な場合でない限り,国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けないものといわなければならない(最高裁判所昭和60年11月21日第1小法廷判決民集39巻7号1512頁)。 この法理は,知事及び県議会議員が行う条例制定行為にも基本的に妥当するというべきであり,このような地方議会議員及び地方公共団体の長が,地方議会における立法過程上行うこととなる各種行為は,本質的に政治的な行為であって住民全体に対する関係で政治的責任を負うにとどまり,特定個人に対する損害賠償責任の有無という見地から在るべき行為を措定してその適否を法的に評価 行うこととなる各種行為は,本質的に政治的な行為であって住民全体に対する関係で政治的責任を負うにとどまり,特定個人に対する損害賠償責任の有無という見地から在るべき行為を措定してその適否を法的に評価することは,その性質上原則として許されない。 また,地方公共団体の長の条例の制定議案の提出行為(地方自治法149条1号)及び条例の公布行為(同法16条2項)は,議員による条例制定行為と相まって全体としての立法作用を構成するものであり,国家賠償法上の違法性の問題としては,議員と同じ地位にあるものと評価できる。 よって,条例制定行為が,国家賠償法上違法と評価される場合は,条例の内容が憲法や法律の文言に一義的に違反していることが明白である場合など極めて例外的な場合に限られるというべきである。 (2) 平成11年度給与抑制条例は,被告の財政の危機的状況下において,財政支出削減の一環として,地方公務員法14条所定の「勤務条件の情勢適応の原則」及び同法24条3項所定の「均衡の原則」にのっとって制定されたものであり,前記例外的な場合に当たる事由が存在しないことは明らかである。 また,愛知県知事も,被告の財政の危機的状況の下,財政支出削減の一環として財政再建のため必要であるとして,勤務条件条例主義の原則にのっとり,平成11年度給与抑制条例案を愛知県議会に提出したものであり,議案提出に先立ち,関係職員団体に対して被告の財政の危機的状況と給与抑制内容について十分な説明をして理解を求めるとともに,愛知県議会において,前記議案内容の説明をして審議を求めたものであって,その議案提出行為の全課程において,愛知県知事が個別の県民に対して負担する職務上の法的義務に違反したことはない。 また,愛知県議会議員においても,平成11年度給与抑制条例案の提出を受け,議 て,その議案提出行為の全課程において,愛知県知事が個別の県民に対して負担する職務上の法的義務に違反したことはない。 また,愛知県議会議員においても,平成11年度給与抑制条例案の提出を受け,議案説明,提案理由の説明,本会議又は委員会でされた審議の過程を通して,被告の財政の危機的状況を理解し,前記条例案について十分な検討を加えた上で同議案を可決したのであり,愛知県議会議員が,前記条例案の審議及び議決の過程で,個別の県民に対して負担する職務上の法的義務に違背したこともない。 2 その他は,前記「(給与に関する条例に基づく請求)第1 平成11年度給与抑制条例の無効」と同じ。 第2 平成11年度給与抑制条例の違法性に関する愛知県知事及び愛知県議会議員の故意,過失(原告らの主張)平成11年度給与抑制条例は給与決定原則に反していること,提案に先立って職員団体との交渉で合理的説明をしなかったこと,その内容が高度の必要性に基づいた合理的な理由がないものであったことから,平成11年度給与抑制条例案の提出は違法であり,愛知県知事は,その違法性について故意又は過失があった。 愛知県議会議員は,平成11年度給与抑制条例の議案についてその必要性及び合理性について十分審議しなかった違法があり,その違法性について故意又は過失があった。 第3 平成12年度給与抑制条例の違法前記「(給与に関する条例に基づく請求)第2 平成12年度給与抑制条例の無効」と同じ。 第4 平成12年度給与抑制条例の違法性に関する愛知県知事及び愛知県議会議員の故意,過失(原告らの主張) 1 愛知県知事は,条例案の作成の専門家であるから,立法形式の濫用,給与条例主義違反,地方公務員法の給与決定原則違反について,故意又は過失がある。 合理的理由の欠如についても,①準用財政再建団体に 愛知県知事は,条例案の作成の専門家であるから,立法形式の濫用,給与条例主義違反,地方公務員法の給与決定原則違反について,故意又は過失がある。 合理的理由の欠如についても,①準用財政再建団体に転落することがないことを認識しつつ第2年目及び第3年目の条例を提案したから故意があるし,②自ら抜本的かつ徹底的な財政健全化策といいながら財政再建計画を策定しないまま第2年目の給与抑制条例を提案したから故意がある。 2 愛知県議会議員は,立法形式の濫用をチェックせず,濫用形式の条例を成立させたことには過失がある。 給与条例主義違反,地方公務員法の給与決定原則違反の給与抑制条例をほとんど審議らしい審議もせずに成立させたことに故意又は過失がある。 合理的理由の欠如についても,第1年目の給与抑制時に準用財政再建団体に転落するという切迫した理由から単年度限りの緊急避難的措置であることがけん伝されていたのであるから,準用財政再建団体に転落しないことが明らかであった第2年目及び第3年目についてはこの点について審議すべきであるにもかかわらず,ほとんど審議らしい審議もせずに条例を成立させたことに故意又は過失がある。 第5 平成13年度給与抑制条例の違法前記「(給与に関する条例に基づく請求)第3 平成13年度給与抑制条例の無効」と同じ。 第6 平成13年度給与抑制条例についての愛知県知事及び愛知県議会議員の故意過失(原告らの主張)前記第4(原告らの主張)と同じ。 第4章当裁判所の判断第1 いわゆる逆併合の許否について職権によって判断するに,原告らは,前記のとおり,被告に対し,国家賠償法に基づく請求を当初していたが,その後,実質的当事者訴訟として本件給与抑制条例が無効であるとして職員の給与に関する条例に基づく請求を選択的,追加的に併合しており, 記のとおり,被告に対し,国家賠償法に基づく請求を当初していたが,その後,実質的当事者訴訟として本件給与抑制条例が無効であるとして職員の給与に関する条例に基づく請求を選択的,追加的に併合しており,民事訴訟に行政訴訟を併合するいわゆる逆併合の許否が問題となる。 この点,この選択的,追加的請求は,前記国家賠償請求と被告を同じくする上,いずれも対等の当事者間で金銭給付を求めるもので,その主張する経済的不利益の内容が同一で請求額もこれに見合うものであり,条例制定という同一の行為に起因するものとして発生原因が実質的に共通するなど,相互に密接な関連性を有するものであるから,請求の基礎を同一にするものとして民事訴訟法232条の規定による訴えの追加的変更に準じて前記国家賠償請求に,職員の給与に関する条例に基づく請求を追加することができるものと解するのが相当である(最高裁判所平成5年7月20日第3小法廷判決民集47巻4号4627頁参照)。 よって,本件において,原告らは,職員の給与に関する条例に基づく請求を選択的,追加的に併合することが許される。 第2 国家賠償請求について原告らは,国家賠償請求の違法原因として前記のとおりるる主張する。 しかし,本件は,本件給与抑制条例の制定という立法行為が問題となっているところ,国政の立法行為に関し,国会議員の立法行為が国家賠償法1条1項の適用上違法となるかどうかについては,国会議員は,立法に関しては,原則として国民全体に対する関係で政治的責任を負うにとどまり,個別の国民の権利に対応した関係での法的義務を負うものではないというべきであって,国会議員の立法行為は立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとき,容易に想定し難いような例外的な場合でない限り,国家賠償法 というべきであって,国会議員の立法行為は立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとき,容易に想定し難いような例外的な場合でない限り,国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けないものといわなければならない(最高裁判所昭和60年11月21日第1小法廷判決民集39巻7号1512頁参照)。 この法理は,県議会議員が行う条例制定行為にも基本的に妥当するというべきであり,また,愛知県知事が普通地方公共団体の長としてした本件給与抑制条例の制定議案の提出行為(地方自治法149条1号)及び本件給与抑制条例を公布した行為(同法16条2項)は,議員による条例制定行為と相まって全体としての立法作用を構成するものであり,国家賠償法上の違法性の問題としては,議員と同じ地位にあるものと評価できる。 したがって,条例の内容が憲法や法律の一義的な文言に違反しているにもかかわらずあえて当該立法を行うというような例外的な場合でない限り,国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けないといわなければならない。 本件においては,本件給与抑制条例につき,その内容が憲法や法律に違反するかどうかについては,当然に解釈の余地を残す問題というべきであって,その内容がそれらの一義的な文言に違反していると認めることはできない。 したがって,原告らの国家賠償請求は,その余の点について判断するまでもなくいずれも理由がない。 第3 「(職員の給与に関する条例に基づく請求)第1 平成11年度給与抑制条例の無効」について 1 地方公務員法24条6項,25条1項,3項1号,憲法94条違反(1) 原告らは,職員の給与は,職員の給与に関する条例に定める給料表に従って支給されるべきであり,仮に職員の給与を減額する場合,給料表自体の改定が必要であるが,平 条1項,3項1号,憲法94条違反(1) 原告らは,職員の給与は,職員の給与に関する条例に定める給料表に従って支給されるべきであり,仮に職員の給与を減額する場合,給料表自体の改定が必要であるが,平成11年度給与抑制条例は給料表それ自体を変更するものではないし,地方公務員法24条,25条1項,3項1号に反し,ひいては憲法94条にも反するなどと主張する。 しかし,平成11年度給与抑制条例は,「職員の給与に関する条例」に定める給料表を一律に削減する形式で,同条例と一体となって職員給与の給料表を定めるものであり,職員の給与に関するその他の基準は,すべて「職員の給与に関する条例」にのっとっており,単に「職員の給与に関する条例」の特例的措置を別の条例の形式で定めるものにすぎない。この点,平成11年度給与抑制条例が,特例的な措置を定めるものである以上,本来の職員の給与に関する条例を改正して特例期間が終了した後再び改正する方法を採るか,別の条例で特例的な措置を定める方法を採るのかは立法技術的事項であって,別の条例を定める方法を採ったからといって,それが地方公務員法24条1項,25条1項,3項1号に反するとはいえない。 また,地方公務員法24条,25条1項は,職員の給与はこれを条例で定めなければならず,また,職員の給与は必ず条例の根拠に基づかなければならないと定めるが,その趣旨は,①労働基本権が制約されている地方公務員について,その代償措置として,私人間における契約ではなく,給与を条例という地方公共団体における最高の法規,意思決定という公的な権威により保障し,職員に対して給与を権利として保障することと,②給与の決定を住民の意思に基づいて公明正大に行うことにあると解される。 平成11年度給与抑制条例は,地方公務員法24条,25条1項の上記のい 障し,職員に対して給与を権利として保障することと,②給与の決定を住民の意思に基づいて公明正大に行うことにあると解される。 平成11年度給与抑制条例は,地方公務員法24条,25条1項の上記のいずれの趣旨にも反するものではなく,この点からも,同法24条,25条1項,3項1号に反するとはいえない。 また,平成11年度給与抑制条例と同様,給与に関する特例的措置を定めた条例として,「義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置条例」や「職員の懲戒の手続き及び効果に関する条例」などの例があり,この点からも,平成11年度給与抑制条例が,地方公務員法24条1項,25条等に反するとはいえない。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 原告らは,給与条例主義は,地方公務員法25条3項1号から7号までに定める事項を内容とする条例を意味し,中でも給料表が給与条例の核心であるが,平成11年度給与抑制条例は,給料表を離れての給与抑制であり給与条例主義に反すると主張する。 しかし,前記のとおり,平成11年度給与抑制条例は,職員の給与に関する条例の特例を単に別条例の形式で定めたにすぎず,同条例と一体となって職員給与の給料表を定めるものであるから,給料表を離れての給与抑制であるということはできない。さらに,条例の中には,地方公務員法25条3項各号に掲げる事項のすべてを定めていないものもあることに照らすと,同項に掲記された事項は単に訓示的な趣旨を有するものにすぎないと解される。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 また,原告らは,「義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置条例」や「職員の懲戒の手続き及び効果に関する条例」は,法律上の根拠があり,平成11年度給与抑制条例とは異なると主張する。 しか た,原告らは,「義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置条例」や「職員の懲戒の手続き及び効果に関する条例」は,法律上の根拠があり,平成11年度給与抑制条例とは異なると主張する。 しかし,給与に関する特例的措置を,職員の給与に関する条例を直接改正する方法でなく,別の条例で定める方法を採るかは専ら立法技術上の問題であって,法律上の根拠を必要とするものと解することはできない。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 (2) 原告らは,また,その改定に当たっては地方公務員法26条所定の人事委員会の給料表に対する報告と勧告という手続が必要不可欠であるが,平成11年度給与抑制条例は,人事委員会の報告,勧告の手続もなく,給料表それ自体を変更するものではないし,職員の給料を地方公務員法25条3項1号に定める給料表に従って支給しないことを定めるものであり,地方公務員法24条,25条1項,3項1号に反し,ひいては憲法94条にも反し,公務員の労働基本権を制約したことの代償措置の存在意義を否定するものであって,最高裁判所大法廷判決にも違反するなどと主張する。 確かに,前記のとおり,愛知県人事委員会は,平成11年度給与抑制条例について,「この措置は誠に残念であるといわざるを得ません。」との意見を述べていることが認められる。また,確かに,人事委員会の給料表に対する報告,勧告は,労働基本権を制約されている地方公務員にとって,労働基本権の代替措置としての重要な意義を有するものであるといえる。 しかし,前記のとおり,愛知県人事委員会は,「今回の措置は,景気の一層の悪化に伴う県税収入の急激な減少により,本県財政が過去に経験したことのない危機的状況に立ち至っていることに鑑み,こうした状況に対処するため可能な限りの努力をされた結果,緊急避難 措置は,景気の一層の悪化に伴う県税収入の急激な減少により,本県財政が過去に経験したことのない危機的状況に立ち至っていることに鑑み,こうした状況に対処するため可能な限りの努力をされた結果,緊急避難的にとられるものであると理解されますので,現下の諸情勢を勘案すればやむを得ないものであると考えます。」との意見も併せて述べていること,条文の文言上からも,人事委員会の報告,勧告が強制力や法的拘束力を持つものであると解することは困難であること,県議会が地方公共団体の最高意思決定機関であること,人事委員会を設けていない地方公共団体では,人事委員会の報告,勧告自体があり得ないが,この場合の地方公共団体は人事委員会の報告,勧告を考慮せずに条例を定めていることとの均衡を考慮する必要があることなどに照らせば,平成11年度給与抑制条例が,人事委員会の報告,勧告に沿わないものであるからといって,この事実から直ちに平成11年度給与抑制条例を無効とするには十分ではない。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 (3) 原告らは,被告が給料表の改定以外の方法で給与を減額することは,地方公共団体が地方公務員法25条3項1号から7号までに定めている事項以外の事柄について条例を制定することになり,憲法94条所定の「法律の範囲内」を逸脱すると主張する。 しかし,前記のとおり,平成11年度給与抑制条例は,職員の給与に関する条例と一体となって職員給与の給料表を定めるものであり,地方公共団体が地方公務員法25条3項1号から7号までに定めている事項以外の事柄について条例を定めるものではないから,原告らの主張はその前提を欠くものである。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 (4) 以上は,平成12年度給与抑制条例及び平成13年度給与抑制条例に 例を定めるものではないから,原告らの主張はその前提を欠くものである。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 (4) 以上は,平成12年度給与抑制条例及び平成13年度給与抑制条例においても同様であり,これらに対する原告らの主張を採用することはできない。 2 地方公務員法所定の給与決定原則違反(1) 原告らは,地方公務員法14条は情勢適応の原則を定め,人事委員会制度を始めとする代償措置を講じ,具体的には,地方公務員法26条は,人事委員会の給料表に関する報告及び勧告の制度を定め,人事委員会は,地方公務員法24条1項から5項までに定める給与等の勤務条件の根本基準にのっとらなければならず,さらに,地方公共団体は,人事委員会の報告や勧告を尊重した上,条例をもって給与を決定しなければならない(給与決定原則)が,財政が危機的状況にあるという理由で,給与を減額することはこの給与決定原則に反すると主張する。 しかし,地方公務員法14条所定の「社会一般の情勢」には本件のような地方公共団体の地域的事情も含まれ得るものであり,同法24条3項には「国の・・・職員の給与」も考慮事情に含まれていることに照らすと,前記のとおり,当時の被告の財政の状況や被告のラスパイレス係数の数値等に照らすと,平成11年度給与抑制条例が直ちにそれらに違反するとまではいえないし,そもそもこれらの規定はその規定ぶりからも地方公共団体に努力義務を課したにすぎないものと解されるから,平成11年度給与抑制条例がそれらに違反して直ちに無効となるということはできない。また,人事委員会の報告,勧告に沿わないからといって平成11年度給与抑制条例が無効になると解することができないことは前記のとおりである。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 (2) 以上は,平成1 告,勧告に沿わないからといって平成11年度給与抑制条例が無効になると解することができないことは前記のとおりである。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 (2) 以上は,平成12年度給与抑制条例及び平成13年度給与抑制条例においても同様であり,これらに対する原告らの主張を採用することはできない。 3 条例の成立過程の瑕疵の有無(1) 原告らは,地方公共団体の当局が,給与条例を立案するに当たっては,①人事委員会の地方公務員法25条4項所定の調査研究,職階制に適合する給料表に関する計画及び同法26条に定める給料表に関する報告及び勧告を待った上立案すること並びにこれらの人事委員会の勧告等を尊重して立案すること,②地方公務員法55条に定める職員団体と誠実な交渉を経ることが必要であり,これを欠くとき又は不十分なときは,当該給与条例は違法かつ無効であると主張する。また,原告らは,その理由として,①地方公務員法55条が定める勤務条件のうち給与はその中核を占めるもので極めて重要なものであり,また,②従前の被告の実情によれば,人事委員会が給料表に関する報告及び勧告をしたのを受けて,被告当局は,各職員団体と給与に関する交渉を行い,これを経た上で,愛知県知事は給与条例を立案して,愛知県議会に提出していたのであり,この手順は長年にわたって実行されてきた確立した慣行の慣習であって,法例2条所定の慣習法又は民法92条所定の事実たる慣習に当たると主張する。 確かに,地方公務員法55条が定める勤務条件のうち給与がその中核を占める重要なものであるということはできる。 しかし,給与については,給与条例主義が定められているように,法律による行政の法理が支配する領域であって,慣習法の成立を認めることは極めて困難であるし,原告らが主張する慣習法の存在を認 はできる。 しかし,給与については,給与条例主義が定められているように,法律による行政の法理が支配する領域であって,慣習法の成立を認めることは極めて困難であるし,原告らが主張する慣習法の存在を認めるに足りる的確な証拠もない。また,地方公務員法55条1項は「地方公共団体の当局は,登録を受けた職員団体から,職員の給与,勤務時間その他の勤務条件に関し・・・適法な交渉の申入れがあった場合においては,その申入れに応ずべき地位に立つ」と定めるにすぎず,地方公共団体がそれ以上の義務を負うものでないといえる。よって,地方公務員法55条に定める職員団体と誠実な交渉を経ることが給与に関する条例を制定するための要件となるとはいえず,それを欠くとき又は不十分な場合には当該給与条例が違法かつ無効になるということはできない。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 (2) 原告らは,原告らが加入する職員団体と交渉した被告当局は,財政について十分に説明できる者でなかったり,交渉について専決されていない者であったりして,地方公務員法55条所定の「当局」とはいえず,被告当局は,職員団体との交渉において給与減額についての合理的説明をしていないと主張する。そして,第1事件原告C作成の陳述書(甲28)にはこれに沿った記載があり,同原告は「財政状況を説明できる財政課の職員ですけど,12月14日以降の交渉には一切出てきませんでした。」などと前記主張に沿った供述をしている。 しかし,地方公務員法55条所定の「地方公共団体の当局」とは,「交渉事項について適法に管理し,又は決定することのできる地方公共団体の当局」(同条4項),すなわち交渉事項について調査研究し,企画し,立案することが,法令,条例,規則その他の規程に照らし,当該当局の任務の範囲内にあると解され, 又は決定することのできる地方公共団体の当局」(同条4項),すなわち交渉事項について調査研究し,企画し,立案することが,法令,条例,規則その他の規程に照らし,当該当局の任務の範囲内にあると解され,又は当該事項について,法令等の規定により,当該当局が何らかの決定をすることが認められている当局をいうと解される。 本件においては,原告らは愛知県教育委員会が給与を支給する教職員であって,交渉事項は給与等という勤務条件にかかわるものであり,教職員の勤務条件は,原則として教育委員会が所管するものであるから(地方教育行政の組織及び運営に関する法律23条),給与等についての当局は教育委員会となる。証拠(甲2)によれば,別紙3記載の交渉日に,被告側として対応した者は,愛知県教育委員会の者であることが認められ,原告らが主張するような説明が不十分であるとか,交渉について専決されていないからといって,同条所定の「当局」に当たらないということはできない。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 (3) 原告らは,また,被告当局側の交渉担当者自らが財政再建計画の必要性及び財政再建計画が立てられないままの交渉が不十分であることを認めていたことから,給与減額についての合理的説明がされたとはいえないと主張する。そして,証拠(甲2)には,当局が「大阪が再建ビジョンを出したので,愛知も出すと思っていたが再建計画は出されず,当局側交渉担当者として数字の根拠を自身(ママ)をもって示すことができず,むなしさがある。」と述べたという記載がある。 しかし,仮に被告当局側担当者が前記のような発言をしたとしても,それは交渉の場におけるやり取りの中の一部にすぎないし,証拠(甲2,第1事件原告C)によれば,被告当局が,第1回から第8回までの交渉全体として,被告の財政が危 当者が前記のような発言をしたとしても,それは交渉の場におけるやり取りの中の一部にすぎないし,証拠(甲2,第1事件原告C)によれば,被告当局が,第1回から第8回までの交渉全体として,被告の財政が危機的状況にあるためその打開策として原告らの給与抑制をしなければならないという説明をしており,そのことは原告らも認識していると認められるし,原告らが納得しなかったからといってそれが合理的説明ではないということはできず,直ちに違法となるということはできない。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 4 合理的理由の欠如(1) 立法裁量の否定(1) 原告らは,そもそも給料表によって確定している給与請求権を一方的にはく奪する立法について立法裁量が認められるはずがないと主張する。 しかし,原告らの給与は減額されることが予定されていないものではなく,給与条例主義により地方公共団体の最高意思決定機関である議会の意思によって当然減額することがあり得るものであるから,原告らの前記主張は採用することができない。 (2) 原告らは,本件では,条例によって既に既得権として給料表により定められた給与の削減が,人事委員会の報告,勧告という制度的保障を無視してされ,職員は既に地方公務員法が定める給与決定原則による保護は奪われており,被告当局又は愛知県議会の裁量権を認めると職員の給与請求権の権利性は著しく不安定なものとなるから,裁量権零収縮の理論にならって被告の裁量権は否定されるべきであると主張する。 前記のとおり,確かに,本件においては,平成11年度給与抑制条例は人事委員会の報告,勧告に沿わない内容となっている。 しかし,いわゆる「裁量権の零収縮」の理論とは,国民の生命,身体,健康という極めて高度な保護法益について,かつ,権力の不行使について認められ 人事委員会の報告,勧告に沿わない内容となっている。 しかし,いわゆる「裁量権の零収縮」の理論とは,国民の生命,身体,健康という極めて高度な保護法益について,かつ,権力の不行使について認められるものであって,給与という財産権が問題となり,かつ条例制定という公権力の行使が問題となっている本件とは適用範囲を異にするものであるから,「裁量権の零収縮」の理論にならって被告の立法裁量を否定することはできず,他に被告の立法裁量を否定する理由は認められない。 したがって,原告らの前記主張は採用することができない。 (3) 以上は,平成12年度給与抑制条例及び平成13年度給与抑制条例においても同様であり,これらに対する原告らの主張を採用することはできない。 5 合理的理由の欠如(2) 裁量権の逸脱,濫用(1) 原告らは,本件では,就業規則の不利益変更に関する判例法理(最高裁判所昭和63年2月16日第3小法廷判決民集42巻2号60頁)が準用されるべきであり,給与の減額を職員に受忍させることを許容できるだけの高度の必要性に基づいた合理的理由がなければならないと主張する。 しかし,就業規則の不利益変更に関する判例法理は,民間労使間という私的自治が支配し,労働基本権が認められているとはいえ,労働者にとって極めて酷な状況が生じ得る可能性のある領域について認められる法理であるが,原告らは地方公務員法の適用を受ける公務員で,その勤務関係は公法上の関係であって,給与を含む勤務条件も条例によっていわば公的に保護されているともいえるから,就業規則の不利益変更に関する判例法理を準用する前提を欠くものである。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 (2) 総論予算の編成においては,それぞれの時点における県財政の状況,歳入の増減状況,県下の社会経済 を準用する前提を欠くものである。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 (2) 総論予算の編成においては,それぞれの時点における県財政の状況,歳入の増減状況,県下の社会経済の状況や県民生活の実態等についての多くの情報が不可欠であり,予算編成行為は極めて高度で専門的な判断と政治的配慮を要する事項であることから,その判断については,これらの事項について正確で多様な資料を有する被告当局及び県民の代表として民主的な基礎を有する愛知県議会の政策的,技術的判断にゆだねるべきであり,被告当局及び愛知県議会は,このような予算の編成及びそれに必要な施策の選択について,広範な裁量権を有している。 したがって,被告当局及び愛知県議会の選択判断が,著しく妥当性を欠き,明らかに裁量権を逸脱,濫用して地方公務員法14条所定の「情勢適応の原則」及びこれを具体化した同法24条3項の「均衡の原則」に違反するといわざるを得ない場合を除き,基本的に被告当局及び愛知県議会の裁量判断は尊重されるべきである(最高裁判所昭和60年3月27日大法廷判決民集39巻2号247頁参照)。 平成11年度給与抑制条例の制定が検討された平成10年秋から平成11年2月当時の被告の財政の危機的状況の下では,どのような方法で財政の健全化を図るか,その選択が大きな政治的課題となったが,このような県財政の健全化のために考えられる多様な方法の選択についても,原則として,被告当局及び愛知県議会の政策的,技術的な裁量判断にゆだねるべきである。 これに対し,原告らは,被告が主張する立法裁量論は,条例制定一般に関するものであり,新しく発生する立法事実に対応して,国や地方公共団体が国民や住民に対し何らかの給付や不利益排除の措置を定める立法をする場合には妥当するかもしれないが,本件は, 論は,条例制定一般に関するものであり,新しく発生する立法事実に対応して,国や地方公共団体が国民や住民に対し何らかの給付や不利益排除の措置を定める立法をする場合には妥当するかもしれないが,本件は,職員が既に定められた給料表による給与請求権を有するのに,その支払を一部制限するものであるから,被告が主張する立法裁量論は本件には当てはまらないと主張する。 しかし,例えば,租税関係の法令は当然に既に納税者が有する権利に影響を及ぼすものであるが,その性質上立法機関の広い裁量にゆだねざるを得ないなど,立法裁量の内容については,立法の対象となった事柄が政策的,技術的判断にゆだねられるべき事項であるかどうかなどにより決まるのであり,原告らの主張する基準を採用することはできない。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 (3) 争いがない事実,証拠(乙9,38,76,83),後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア平成10年10月ころ,被告の財政状況は,経済の低迷による県税収入の急激な落ち込みによって,かつて経験したことのない極めて深刻な状況にあった。すなわち,被告の平成10年度の県税収入は,景気の動向に影響を受けやすい法人二税(法人事業税及び法人県民税)を中心に急激に落ち込み,予算計上額に比べ,おおむね900億円の減収が見込まれていた(乙3,12)。 他方,歳出面は,今後必要となる財政需要がおおむね150億円あり,歳入,歳出を併せ,最終的に1050億円程度の財源不足が生じる見込みであった(乙3,12,83)。 そのため,このまま推移すると,平成10年度決算においては,戦後初めて赤字決算となる見通しであったばかりでなく,決算の結果,仮に,赤字が約540億円を超えた場合には,被告が準用財政再建団体に転落し, そのため,このまま推移すると,平成10年度決算においては,戦後初めて赤字決算となる見通しであったばかりでなく,決算の結果,仮に,赤字が約540億円を超えた場合には,被告が準用財政再建団体に転落し,自主的な行財政運営ができなくなるおそれも生じるなど,被告の財政は深刻な状況に陥っていた(乙3から5まで)。 そのため,被告は,平成10年度においても,県債(歳入)の確保,基金の活用,歳出の抑制など,歳入,歳出両面からの財政健全化策を講じることとしていた(乙3,12)。 特に,歳出抑制の見地から,経常的事務管理費の節減を実施するほか,平成10年11月から平成11年3月までの特別職及び管理職員の給与カット並びに知事,副知事等の平成10年12月期及び平成11年3月期の期末手当カット等を実施した(乙3,6の911頁以下)。 さらに,単純補助金の10%カット(既執行分や個人等を対象にするため削減が困難なものを除く。)に基づいて,現実にカットされた補助金の削減額の合計額は60億5278万円である。 このような歳入確保,歳出抑制等の措置により,平成10年度の決算は,財源不足がかなり圧縮されたものの,結果としてなお一般会計で約222億円余りに及ぶ戦後初の赤字決算となった(乙7の19頁以下,乙28)。 イ予算編成作業は,毎年10月ころまでに翌年度の歳入,歳出の見通し(財政見通し。乙11に相当する。)を作成することから始まる。この見通しを基に,翌年度実施したい新規事業,政策的事業の選択とその財源が確保できるかどうかを判断し,できなければ不足する財源をどのように捻出するかの段階的な検討を踏まえて,最終予算案が編成される(弁論の全趣旨)。 被告では,この予算編成を統一性をもって行うための基準として予算編成方針等を策定しており,平成11年度当初予算に うに捻出するかの段階的な検討を踏まえて,最終予算案が編成される(弁論の全趣旨)。 被告では,この予算編成を統一性をもって行うための基準として予算編成方針等を策定しており,平成11年度当初予算にあっては,平成10年10月19日付けで,「平成11年度予算編成方針」(乙34の別紙)と「平成11年度予算編成事務処理要綱」が添付された「平成11年度予算編成の要領について(通知)」(乙35)が通達,通知された(弁論の全趣旨)。 そして,この「平成11年度予算編成方針」(乙34の別紙)によれば,歳出については,政策的重要経費及びその他の行政経費について,前年度当初予算額の70%の範囲内とし,集合的公共事業についてはその90%の範囲内とするなど,厳しいシーリングが設定されるなど,事務事業全般にわたり,制度,施策の縮減や廃止をも含めた一層徹底した見直し,合理化が図られ,歳出構造の抜本的改善が図られた。 予算編成事務の主な流れとしては,まず,予算編成方針に基づき各部局から要望額の提出があり,これを踏まえて個別事務事業に対する政策判断はもとより,財政見通しに基づく財政の健全性を確保するための諸検討を積み重ねながら,2月の知事査定を経て,予算案が編成されることになっている(乙38)。 平成11年度の予算編成過程における財源不足見込み額の状況は,①各部局からの要望額を取りまとめた平成10年10月末の時点で約2550億円の赤字(乙12,38),②同年12月末の時点で1267億円の赤字(乙38),③平成11年1月中旬の時点で1003億円の赤字(乙38),④同年2月中旬の知事査定後の時点で482億円の赤字であった(乙36,38)。 平成11年度給与抑制条例による給与抑制措置は,上記④の知事査定の段階で盛り込まれたものであり,上記のとおり財源不足が順次減 年2月中旬の知事査定後の時点で482億円の赤字であった(乙36,38)。 平成11年度給与抑制条例による給与抑制措置は,上記④の知事査定の段階で盛り込まれたものであり,上記のとおり財源不足が順次減少しているのは,「平成11年度一般会計の財源不足対策について」(乙37)に記載の財源不足対策が各段階を経て予算案の中に織り込まれていったからである(乙38)。 ウ被告は,上記④の平成11年2月の知事査定を踏まえた予算編成最終段階で,「平成11年度一般会計の一般財源見通し」(乙36)を作成した。一般財源は,給与費,公債費などの義務的経費の財源等として最も重要なものであり,被告では県債も含めてその見通しを立てているものである(乙38)。 前記一般財源見通し(乙36)は,当面する当初予算(骨格予算)の歳入,歳出のみならず,その後に予定される肉付け予算見込み額をも踏まえ,通年予算を見据えた財政収支見通しがされてきたものである(乙38)。すなわち,前記一般財源見通し(乙36)の「当初予算(骨格予算)A」列では,歳出予算について,人件費,国制度による扶助費,公債費などの義務的経費,さらに公共事業費,単独事業費について,債務負担行為に基づく所要の経費及び継続事業等に係るものとして,前年度当初予算額の一定割合の経費を中心に計上し,それに対する所要の財源を歳入予算として計上したものである(乙38)。 そして,前記一般財源見通し(乙36)の「6月肉付補正見込B」列のとおり,当初骨格予算で計上を見合わせた政策的な判断を必要とする経費を中心に歳出予算の肉付けをし,その財源を通常充当率の県債で賄おうとしたが,1155億円の財源不足が見込まれていた。そこで,前記一般財源見通し(乙36)の「調整E」列で760億円の歳入の確保対策(「平成11年度一般会計の財源 ,その財源を通常充当率の県債で賄おうとしたが,1155億円の財源不足が見込まれていた。そこで,前記一般財源見通し(乙36)の「調整E」列で760億円の歳入の確保対策(「平成11年度一般会計の財源不足対策について」(乙37)の「肉付け予算段階における財源対策」の「歳入の確保」のこと)を考えたものの,それでもなお480億円程度の財源不足(「平成11年度一般会計の一般財源見通し」(乙36)の「調整後補正見込計F(D+E)」列の一番下の「-482」のこと)が見込まれていた(乙38)。 このように,「平成11年度一般会計の財源不足対策について」(乙37)に掲げられている平成11年度給与抑制条例による給与抑制措置を始めとする様々な財源不足対策をしてもなお,平成11年度通年(肉付け予算後)で480億円程度の財源不足が見込まれる状況にあった。 さらに,平成10年度の実質収支が赤字となることが確実視される中で(結果的に赤字額は222億円であった(乙28)。),その財源を確保しなければならないことも考慮すると,被告の財政は危機的状況にあった。 エなお,前記の被告の財政見通しにおける歳入のうちの地方交付税と県税については,「11年度当初見込①」(乙30)の段階では,国の平成11年度の地方財政対策の具体像が明らかにされていなかったことや(乙83),県税については,税制改革の具体的内容や地方財政対策等が示されないと積算が困難であること(乙12)など,具体的な試算をすることができない状況であったことから,確実な額が見込まれた。 その後,平成10年12月19日に自治大臣と大蔵大臣との折衝による平成11年度地方財政対策が決着した。 そして,平成11年2月中旬の知事査定後の財政見通しでは,「平成11年度一般会計の一般財源見通し」(乙36)記載のとおり,地方 に自治大臣と大蔵大臣との折衝による平成11年度地方財政対策が決着した。 そして,平成11年2月中旬の知事査定後の財政見通しでは,「平成11年度一般会計の一般財源見通し」(乙36)記載のとおり,地方交付税を1308億円,県税を9605億円と見込んだ。 その後,平成11年6月補正後の地方交付税の現計予算額は,1550億円で平成11年2月中旬の知事査定後の1308億円と比べて242億円増加し(乙49),また,県税の平成11年度6月補正後の現計予算額は,平成11年2月中旬後の知事査定の段階の9605億円と比べて,145億円増の9750億円となっている(乙30,49)。 オまた,前記の被告の財政見通しにおける歳入のうち県債については,「11年度当初見込①」(乙30)の段階では,1650億円を見込んだ。これは,各部局からの要望経費を基に地方債充当率を乗じて積算したものである。 この積算に当たって用いた地方債充当率は,平成10年度における基本的な取扱いを基とした。その理由は,平成10年度の地方財政対策において国により通常の起債の充当率が臨時的に引き上げられたものについては,平成11年度も継続されるか否か,あるいは継続されたとしても引上げ率がどの程度のものになるかなどが不明であり,歳入見込みを立てる場合には確実に見積もる必要があったためである(乙83)。 その後,平成10年12月末における財政見通しでは,県債を約2600億円と見込んだ。前記「11年度当初見込①」(乙30)の見込額と比べて,約1000億円増加したが,これは,平成10年12月19日に,自治大臣と大蔵大臣との折衝による平成11年度地方財政対策が決着したことにより,平成11年度においても,地方財政全体の財源不足を補うために,国により,通常の起債の充当率が引き上げられることとなったこと 大臣と大蔵大臣との折衝による平成11年度地方財政対策が決着したことにより,平成11年度においても,地方財政全体の財源不足を補うために,国により,通常の起債の充当率が引き上げられることとなったことを踏まえ,充当率の引上げ措置を最大限に活用することとした結果である。県債は,将来の世代に一定割合を負担してもらおうとするものであり,起債の充当率を引き上げるということは,通常の割合を超えて将来の世代につけを回すことになり,本来は慎むべきことであると考えられたが,それでもなお,財源不足を埋めるために,充当率一杯に県債を最大限活用したものである(乙83)。 そして,平成11年2月中旬の知事査定後の財政見通しでは,「平成11年度一般会計の一般財源見通し」(乙36)のとおり,県債2651億円を見込んだ。平成10年12月末の見込額と比べて約50億円増加したが,これは,平成11年1月21日に,自治省が開催した全国都道府県財政課長会議で説明,配布された地方債計画に関する情報を基に額の精査をしたことによるものである(乙83)。 その後,県債の平成11年6月補正後の現計予算額は,2860億円であり(乙30,49),平成11年2月中旬の知事査定後の見込額と比べて209億円増加した。平成11年度当初予算よりも増加したのは,当初から肉付け予算の財源として保留しておいたことによるものである(乙83)。 カ平成10年10月時点における見通しによれば,平成3年度以降8年にわたる経済の低迷が続いており,経済成長率は,戦後初の2年連続マイナス成長がほぼ確実になるなど,経済情勢は深刻さを増しており,県税収入は更に悪化するおそれがあった(乙3)。 また,平成10年12月現在における「平成10~11年度の財政について(試算)」(乙5)によれば,平成10年度並みの県税収入を前 は深刻さを増しており,県税収入は更に悪化するおそれがあった(乙3)。 また,平成10年12月現在における「平成10~11年度の財政について(試算)」(乙5)によれば,平成10年度並みの県税収入を前提とし,かつ,これまでになく厳しいマイナスシーリング(政策的経費等マイナス30%,公共事業マイナス10%)を設定してもなお2550億円の財源不足が見込まれていた(乙8)。 さらに,当時,国においては6兆円を相当上回る恒久減税が議論されており,その動向いかんでは,更なる財源不足の拡大が懸念されていた(乙3)。 バブル経済崩壊後の経済の低迷を受け,歳入のほとんどを占める県税の低迷が続く中で,被告は,教育,福祉,社会基盤などの行政水準の維持向上に努めてきたが,その結果,人件費,扶助費,公債費などの義務的経費や各種補助金など行政サービスに要する経常的経費は毎年確実に伸び続けてきた(乙3)。 しかし,これらの経常的経費は,県債等の借入金で賄うことは認められておらず,県税等の一般財源しかその財源に充てることができないとされている(乙3)。 被告においては,経済が低迷する中で,県税等の一般財源だけでは経常的経費を賄いきれない状況が数年続いており,その間,基金などの財源を取り崩し,又は一般会計への繰り入れ運用をしたりなどのやり繰りをしながら財政運営に努めてきたが,最も多いときには2800億円程度もあった取崩型基金も枯渇し,平成10年11月現在では,実際に活用が見込める額は,わずか約100億円程度であった(乙3,4,8,9)。 キ被告当局は,平成11年度給与抑制条例の制定に当たり,まず人件費以外の事務事業費を対象にして大幅なシーリングをかけて歳出の抑制を図り,さらには,事務事業費全般にわたり,制度,施策の縮減や廃止を含めた一層徹底した見直し 年度給与抑制条例の制定に当たり,まず人件費以外の事務事業費を対象にして大幅なシーリングをかけて歳出の抑制を図り,さらには,事務事業費全般にわたり,制度,施策の縮減や廃止を含めた一層徹底した見直し,合理化を図り,歳出構造の抜本的改善に取り組んだ上で,被告が準用財政再建団体に転落することを回避するためにやむを得ない手段として,給与の抑制措置を選択した(乙4,9から12まで,16,17)。 すなわち,平成10年12月において見込まれた2550億円に上る収支不足に対する対応策として,被告が平成11年度給与抑制条例の必要性について関係職員団体に説明した際の資料である「平成10年度及び11年度の財政状況について」(乙12)の「2(3)収支不足(2550億円)の対応策」の各歳出抑制に対する取組みが実施された。それによれば,平成10年度並(1000億円程度)の県債の更なる活用があり得ることを見込んだものの,それでもなお,1550億円の収支不足を解消する必要があり,そのため,1150億円に及ぶ更なる歳出削減の一環として,歳出の中で最大の比重を占めている経費である人件費の削減が必要であると見込まれた(乙12,甲2の9頁「5関係」)。 ク地方財政を運営するに当たり,地方自治法や地方財政法等において,財政の健全性の確保が強く要請されている(地方自治法243条の4,地方財政法2条1項,2項)。 地方公共団体は,「一会計年度における一切の収入及び支出は,すべてこれを歳入歳出予算に編入しなければならない。」(地方自治法210条)とされているため,歳入歳出予算書を見ると歳入歳出が均衡しているが,予算は,表見上の収入,支出の差引額の有無だけでなく,経費構成と収入構成との実質的な相関において適正に均衡が保持されていなければならない(乙76)。 さらに, を見ると歳入歳出が均衡しているが,予算は,表見上の収入,支出の差引額の有無だけでなく,経費構成と収入構成との実質的な相関において適正に均衡が保持されていなければならない(乙76)。 さらに,歳入,歳出の構成についても,経済変動や地域社会の変化などに伴った新しい行政需要にも的確に対応できる弾力性を有していることが不可欠である(乙76)。 なお,平成11年度一般会計当初予算は,新知事就任後,限られた期間での予算編成のため,骨格予算として編成し,政策的判断を要する経費など当初予算編成で計上を見合わせたものは6月補正予算で計上したのであり,6月補正後の現計予算が通常年度の当初予算に当たるものであり,比較の対象もそれとすべきである(乙76)。 平成11年度6月補正後の一般会計予算は2兆2213億円で,このうち①義務的経費等が62.8%,②投資的経費が16.5%,③その他経費が20.7%を占めている(乙40)。義務的経費等が予算全体の6割を超えていることは,財政構造の硬直化が進んでいることを表している(乙76,弁論の全趣旨)。仮に,平成11年度給与抑制条例による給与抑制(事業費ベースで319億円。乙37)をしなければ,人件費は35.3%((人件費7632億円+抑制額319億円)÷(歳出総額2兆2213億円+抑制額319億円)),義務的経費等全体では63.3%((義務的経費等1兆3949億円+抑制額319億円)÷(歳出総額2兆2213億円+抑制額319億円))となり(人件費,歳出総額,義務的経費等の額につき,乙40),被告の財政が経済変動や行政内容の変化に耐え得るための弾力性をより失い硬直化が進行することになる(乙76)。 次に,これらの経費として充当する一般財源の状況については,平成11年6月補正後において,平成11年度予算にお 政内容の変化に耐え得るための弾力性をより失い硬直化が進行することになる(乙76)。 次に,これらの経費として充当する一般財源の状況については,平成11年6月補正後において,平成11年度予算における一般財源の総額は1兆2728億円(乙40の「サ」の「C」欄)で,平成10年度の1兆3899億円(乙40の「サ」の「A」欄)に比べて1171億円,8.4%の減少となっている。これは,平成10年度当初予算において一般財源の51.5%(乙40の「シ」の「A」欄の括弧内の数値)を占めていた県税の大幅な減少が見込まれたためである。また,この一般財源総額の減少額(1171億円・乙40の「サ」の「F」欄)が予算全体の減少額(1197億円・乙40「コ」の「F」欄)にほぼ等しいことからも,予算編成上,一般財源は極めて重要な要素である。 一方,乙40の「D」欄のとおり,一般財源の88.8%(「ア」の「D」欄の括弧内の数値)を義務的経費等の財源とせざるを得ない状況にあり,また,前年度に比べて900億円を超える減収が見込まれる(乙4)中にあっては,その財源不足対策として一般財源の45.4%(「イ」の「D」欄の括弧内の数字)を財源とする人件費についても,抑制措置を講じなければならなかった。 なお,平成11年度給与抑制条例による歳出抑制効果は,事業費ベースで319億円,一般財源ベースで284億円であった(乙37)。この284億円は,投資的経費の財源に充てられる一般財源の254億円(乙40の「カ」の「D」欄)を超えるものであり,仮に,平成11年度給与抑制条例による給与抑制措置を実施しなければ,284億円の財源が更に必要となり,投資的経費の支出,すなわち県民生活を支える社会基盤整備が実施できない状況ともなった。 特定財源,例えば,県債の活用の可能性については 抑制措置を実施しなければ,284億円の財源が更に必要となり,投資的経費の支出,すなわち県民生活を支える社会基盤整備が実施できない状況ともなった。 特定財源,例えば,県債の活用の可能性については,県債の対象とすることができる経費は,地方財政法5条により,①公営企業に要する経費,②出資金及び貸付金,③地方債の借換えに要する経費,④災害応急事業費,災害復旧事業費及び災害救助事業費,⑤公共施設又は公用施設の建設事業費等に制限されており,人件費の財源として県債を発行することは認められていない(乙83)。一方,県債の対象となり得る経費である投資的経費については,県債の最大限の活用を図ることにより,投資的経費の財源とする一般財源額の割合は,平成10年度は当初予算の13.2%(乙40の「カ」のB欄の「583億円」を同A欄の「4412億円」で除したもの)であるのに対し,平成11年度当初は6.9%(乙40の「カ」の「D」欄の「254億円」を同「C」欄の「3675億円」で除したもの)であるというように,一般財源を投資的経費以外の経費に充てるための努力もされている(乙83)。 また,経費の財源として充当する一般財源額の対前年度伸び率(乙40の「G」欄)を見れば,経費削減の余地のない公債費(県債の償還に要する費用)を除き,いずれの経費も人件費のマイナス3.4%を上回る減少率となっていることなど,人件費以外の経費についても,人件費以上に歳出抑制のための様々な努力をした。これらの中には,被告が独自施策として実施してきた福祉政策(乙40の「扶助費」の中に含まれる。)の見直しや,私立学校への助成や市町村への補助を始めとする補助金(乙40の「その他経費」に含まれる。)の見直しが含まれ,県民や県内市町村に対して一定の負担と理解を求めなければならなかった(乙8,1 の見直しや,私立学校への助成や市町村への補助を始めとする補助金(乙40の「その他経費」に含まれる。)の見直しが含まれ,県民や県内市町村に対して一定の負担と理解を求めなければならなかった(乙8,12,弁論の全趣旨)。 経費予算額の対前年度伸び率(乙40の「E」欄)も経費充当一般財源額の伸び率(乙40の「G」欄)と同じく減少傾向にあるが,「その他経費」の予算額が2.8%増加しているのは,前記の平成10年度の一般会計赤字額222億円余りに対する平成11年度予算措置(歳出:繰上充用金,歳入:諸収入)を講じたためであり,歳入を特定財源の諸収入としたのは,一般財源による財源手当の目処がつかなかったためであって,表見上歳入,歳出は均衡しているものの,実質的に222億円余りの財源の手当ができていないという危機的な財政状況にあった(弁論の全趣旨)。 財政の弾力性は,一般財源の総額と,非弾力的経費に充当する一般財源との割合の高低の度合によって判断される(乙76)。各年度間の一般財源の総額の増減額(乙40,56,67の各「サ」の「F」欄)と,非弾力的経費である義務的経費等に要する一般財源の増減額(前記乙号各証の各「ア」の「H」欄)を比べると,平成10年度当初予算と平成11年度補正予算については,歳出の義務的経費等に要する一般財源の「減」マイナス690億円よりも,歳入における一般財源総額の「減」マイナス1171億円が大幅に上回っており(乙40),平成11年度6月補正予算と平成12年度当初予算については,歳出の義務的経費等に要する一般財源の「増」898億円が,歳入における一般財源総額の「増」779億円よりも(乙56),平成12年度当初予算と平成13年度当初予算については,歳出の義務的経費等に要する一般財源の「増」284億円が,歳入における一般財源総額 歳入における一般財源総額の「増」779億円よりも(乙56),平成12年度当初予算と平成13年度当初予算については,歳出の義務的経費等に要する一般財源の「増」284億円が,歳入における一般財源総額の「増」113億円よりも(乙67),いずれも上回っている。 すなわち,いずれの年度の間においても,一般財源に占める義務的経費等の割合(前記乙号各証の各「ア」の「B」欄の括弧内)が高まっているのであって,このことから,被告の財政構造は毎年硬直化が進行し,行政需要の急激な変化に耐えられない,より厳しい財政状況に陥っていたものである。 ケ当時の被告の職員の給与水準は,平成10年のラスパイレス指数は104.3で,国家公務員の水準を4.3%上回り,全都道府県中5位(乙41)と高水準であった(乙19)。 被告当局及び愛知県議会は,前記のとおり,歳出削減により県民や県内の各市町村にも一定の負担と理解を求める財源対策をしなければならない状況の下で,もはや給与水準を維持することはできず,被告自らも率先して身を削る努力をすることが避けて通れないものと判断した(乙10,12,16,弁論の全趣旨)。 コ平成10年度の赤字分相当額の財源確保ができない中,その後においても支出削減や収入の確保の対策を講じ,その結果として平成10年度は222億円余りの赤字,平成11年度実質収支の赤字額は歳出不用額の増加などにより91億円にとどめることができた(乙28,66,73,76,83,弁論の全趣旨)。 しかし,前記のとおり,平成11年2月の時点で,482億円の赤字が見込まれていたのであり,平成11年度給与抑制条例による抑制額は前記のとおり319億円であったから,仮に,同年度において給与抑制措置を講じなかった場合には,同年度において319億円余りの給与支出(歳出)が加わ いたのであり,平成11年度給与抑制条例による抑制額は前記のとおり319億円であったから,仮に,同年度において給与抑制措置を講じなかった場合には,同年度において319億円余りの給与支出(歳出)が加わり,被告における平成11年度の実質収支上の赤字額は約801億円程度にまで拡大し,更に深刻な財政上の危機に直面する見込みとなっていた。そして,被告が準用財政再建団体に転落する赤字額は,平成10年度の標準財政規模約1兆0879億円(乙22)に基づけば,前記争いのない事実等19のとおり,これに0.05を乗じた約540億円となることに照らすと,結果的に,平成11年度の実質収支の赤字額が91億円(給与抑制をしなければ410億円)でとどまったとしても,被告が準用財政再建団体に転落するおそれが現実の可能性として存在したものといえる。 仮に,被告が準用財政再建団体に転落した場合には,地方公共団体としての自主的な行財政運営が不可能になってしまうことになり,県民の生活に多大な支障が生ずることは必至であった(乙3,4,9)。 サ以上によれば,平成11年度においては,被告は,準用財政再建団体に転落する現実のおそれがあったといえるし,地方公務員の勤務条件が法律及び地方公共団体の議会の制定する条例によって定められ,また,その給与が地方公共団体の税収等の財源によって賄われるものであること,当時の被告のラスパイレス係数が国家公務員の水準を4.3%上回り全都道府県中5位であったことに加え,地方公共団体は,住民の福祉の増進を図ることを基本として,地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く,かつ連綿として担っているものであり,その礎となる財政運営の基本的在り方としては,地方公共団体としての自主・自立性が大きく損なわれる準用財政再建団体への転落を回避することはも に実施する役割を広く,かつ連綿として担っているものであり,その礎となる財政運営の基本的在り方としては,地方公共団体としての自主・自立性が大きく損なわれる準用財政再建団体への転落を回避することはもちろんのこと,単年度の収支均衡の保持,さらには,長期にわたる財政の健全性,すなわち長期間を通じて起こる財政変動に耐え得る弾力性のある財政を確立することが求められているといえること(乙83)などに照らすと,平成11年度給与抑制条例は,準用財政再建団体に転落するという現実的危険を回避するため,また,財政の健全性を回復し,県民,市町村の理解を得るという上でもやむを得ないものであったといえ,被告の判断が著しく妥当性を欠き,明らかに裁量権を逸脱,濫用したと認めることはできない。 よって,被告の裁量権の逸脱,濫用を認めることはできない。 (4) 裁量基準の違法ア原告らは,行政がその裁量を適正に行使するためには,裁量決定の準則となるべき基準を内部的に定立し,それに基づいて権限を行使する必要があり,「被告が準用財政再建団体に転落することを回避するため最終的にやむを得ない手段として,給与の抑制措置を選択し,愛知県議会は認めた。」という基準では,地方公務員法所定の給与決定原則(その中核は人事委員会の勧告制度)に反して,既に職員が基本条例に基づいて既得の権利として有する給与を,給料表を変更せずして削減することの基準としては不十分であり,準用財政再建団体に現実に転落したという事実の発生が,給与削減を必要とする基準の要素となるべきであると主張する。 しかし,仮に,準用財政再建団体に転落した場合には,地方公共団体としての自主的な行財政運営が不可能になってしまうことになり,県民の生活に多大な支障が生ずることになるのであるから,準用財政再建団体に転落した事実を給与抑制 再建団体に転落した場合には,地方公共団体としての自主的な行財政運営が不可能になってしまうことになり,県民の生活に多大な支障が生ずることになるのであるから,準用財政再建団体に転落した事実を給与抑制条例の制定の要件とすることは硬直的にすぎるといわざるを得ない。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 イなお,以上は,平成12年度及び13年度給与抑制条例についても同様であり,これらに対する原告らの主張を採用することはできない。 (5) 裁量判断の方法・過程の違法原告らは,次のとおり主張するが,いずれも採用することができない。 ア財政赤字を招いたA前知事が次期知事選挙に出馬しないと表明していた事実を考慮していないか不当に軽視した原告らは,財政赤字を招く放漫財政をしてきたA前知事が次期知事選挙に不出馬を表明したのであるから,被告当局は責任をもって平成11年度の予算編成をすることができなかったものといわなければならず,被告当局は,平成11年度給与抑制条例を制定する実質的権限を失ったものであると主張する。 しかし,知事が交代することにより当然政策に影響があり得るかもしれないが,被告当局は知事がだれであるにせよ責任をもって政策を遂行しなければならない立場にあることは変わらないし,また,行政の継続性の要請に照らすと,被告当局は原則として従前の政策を継承することが要請されるというべきであって,知事が交代したからといって被告当局が平成11年度給与抑制条例を制定する実質的権限を失ったとはいえない。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 イ平成10年度の実質収支の赤字額は222億円であって準用財政再建団体に転落しなかった事実を考慮していないか又は不当に軽視した原告らは,平成10年度決算における実質収支の赤字額は とはできない。 イ平成10年度の実質収支の赤字額は222億円であって準用財政再建団体に転落しなかった事実を考慮していないか又は不当に軽視した原告らは,平成10年度決算における実質収支の赤字額は222億円であって準用財政再建団体に転落することはなく,平成11年度給与抑制条例制定時にも準用財政再建団体に転落しないことは見込まれていたと主張する。 しかし,前記のとおり,平成11年度給与抑制条例による抑制額は319億円で,平成11年度の実質収支額は91億円の赤字であったから,同条例が制定されていなければ,約410億円の赤字となったのであり,被告が準用財政再建団体となり得る赤字額が約540億円であったこと,平成10年度や平成11年度の実質収支の赤字額も,前記のような様々な収入確保と支出削減の努力がされた結果であることに照らすと,結果として平成10年度の赤字額が222億円余りで,平成11年度の赤字額が91億円となったからといって,準用財政再建団体に転落しないことが見込まれていたということはできない。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 ウ県債による財源の確保について考慮せず又は不当に軽視した原告らは,平成11年度の県債の発行額は平成11年度決算によれば3192億円となり,県債の実績が平成10年度が3953億円,平成9年度が3828億円であったことに照らすと,平成11年度の当初試算の1650億円,当初予算の1542億円が極めて少額であり,県債による財源の確保について考慮せず又は不当に軽視したと主張する。 しかし,前記のとおり,地方債制度は,国による毎年度の地方財政対策と密接な関係があり,国の地方財政対策が明確にならない限り予測しにくいなどそもそも予測が困難なものであるし,平成11年度の地方財政対策は,恒久減税の国 り,地方債制度は,国による毎年度の地方財政対策と密接な関係があり,国の地方財政対策が明確にならない限り予測しにくいなどそもそも予測が困難なものであるし,平成11年度の地方財政対策は,恒久減税の国と地方の分担について議論されていて見通しが不透明であったし,その具体的実施方針である国の平成11年度の地方債許可方針は,平成11年1月21日に自治省が開催した全国都道府県財政課長会議において初めて明らかにされたのであるし,平成11年度給与抑制条例による給与抑制を織り込んだ平成11年2月中旬の知事査定後の財政見通しでは,前記のとおり,充当率の引き上げ措置を最大限に活用することとして県債を2651億円と見込んでいたのであるから,当初試算が1650億円,当初予算が1542億円であったからといって,被告当局が県債による財源の確保について考慮せず又は不当に軽視したということはできない。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 エ県税収入及び地方交付税の安定財源について考慮せず又は不当に軽視した原告らは,被告が,平成11年度給与抑制条例の制定に際し,県税収入及び地方交付税の見通しと対応を誤ったものであり,堅実予算を執るべきところを積極予算を執ったと主張する。 しかし,証拠(乙9,83)及び弁論の全趣旨によれば,地方交付税は,国の地方財政対策の多大な影響を受けるものであるところ,平成11年度の地方財政対策は,恒久減税の国と地方の分担について議論されていて見通しが不透明であったものであり,また,例えば,平成9年度決算では,県税が1兆1109億円余り,地方交付税額は47億円余りであり,平成10年度決算では県税が1兆0877億円余り,地方交付税額は66億円余りであって,平成9年度から平成10年度にかけて,県税が232億円余り減少したのに 円余り,地方交付税額は47億円余りであり,平成10年度決算では県税が1兆0877億円余り,地方交付税額は66億円余りであって,平成9年度から平成10年度にかけて,県税が232億円余り減少したのに対し,地方交付税は19億円余りしか増加していないというように,県税収入の減収額の約8割が必ず地方交付税として交付されることが保障されるというものではなく,県税収入と地方交付税を合算したものが必ずしも安定財源というわけではないことが認められる。そして,前記のとおり,被告は様々な収入の確保,支出の削減措置を講じていたのであるから,これによれば,被告当局が県税収入及び地方交付税の見通しと対応を誤ったということはできない。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 (6) 裁量権行使に際しての手続の不公正ア原告らは,歳出の抜本的改善に取り組むためには,中長期の財政再建計画を立てる必要があるが,被告はこれをしておらず,平成11年度給与抑制条例は無効であると主張する。 しかし,そもそも原告らが指摘する中長期の財政再建計画の具体的な内容が不明であるし,証拠(甲18,乙83)によれば,被告は,平成10年12月,「愛知県行政改革推進計画(愛知県第三次行革大綱)」を策定し,被告の財政についても,将来にわたる健全な財政運営を確保するため,経費の削減合理化を始めとする諸施策を講じることとしており,財政健全化に向けた努力をしていることが認められる。したがって,それを超えて,被告が原告らが求めるような財政再建計画を立てていないからといって,それにより直ちに平成11年度給与抑制条例が無効となるということはできない。 イなお,以上は,平成12年度及び13年度給与抑制条例についても同様であり,これらに対する原告らの主張を採用することはできない。 (7) 事 成11年度給与抑制条例が無効となるということはできない。 イなお,以上は,平成12年度及び13年度給与抑制条例についても同様であり,これらに対する原告らの主張を採用することはできない。 (7) 事実誤認原告らは,被告が,平成10年度の実質収支を平成10年10月の時点で1050億円の赤字と見込んだが,同年度決算では222億2585万円の赤字にとどまり,平成11年度の実質収支を平成11年2月の知事査定の段階で482億円の赤字を見込んだが,同年度決算では91億3762万円の赤字にとどまるなど,それぞれの実質収支額について見込みを誤ったのであり,このような事実誤認に基づいてされた平成11年度給与抑制条例には裁量権の逸脱,濫用があると主張する。 しかし,前記のとおり,被告は,平成11年度において収入の確保や適正な予算執行に努め,これにより実質収支の赤字額が減少したのであるし,そもそも社会経済環境や行政需要が大きく変化する中で,収入支出を寸分の狂いもなく見積もり,それに従って事務事業を固定的に実施することは非常に困難であるし,証拠(乙9)によれば,被告の予算規模が2兆円を超える大規模なものであることが認められることなどに照らすと,前記のような差は誤差の範囲内であるということができ,被告が事実誤認をしたとまで認めることはできない。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 第4 「(職員の給与に関する条例に基づく請求)第2 平成12年度給与抑制条例の無効」について 1 立法形式の濫用について(1) 原告らは,被告が,第2年目の給与抑制については,本来平成12年3月1日に失効するはずであった平成11年度給与抑制条例の給与抑制期間を延長し,併せて期末,勤勉手当の削減率を減少させており,第3年目の給与抑制条例も同様の立法形式を採用し ついては,本来平成12年3月1日に失効するはずであった平成11年度給与抑制条例の給与抑制期間を延長し,併せて期末,勤勉手当の削減率を減少させており,第3年目の給与抑制条例も同様の立法形式を採用しているが,このような立法は,本来失効する条例の改正という形を借り,実際には全く新しい条例を制定するものであり,立法形式において濫用があり無効であると主張する。 しかし,条例を新規制定する方法を採るか又は既存の条例を一部改正する方法を採るかは立法技術的な事項であり,どれによるかは,専ら立法機関の裁量にゆだねられるべき事項であって,既存の条例を一部改正する方法を採ったからといってこれにより直ちに平成12年度給与抑制条例が違法,無効であるとはいえない。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 (2) なお,以上は,平成13年度給与抑制条例についても同様であり,これに対する原告らの主張を採用することはできない。 2 条例の成立過程の瑕疵の有無(1) 原告らは,被告が第2年目及び第3年目の給与抑制条例の提案に先立って,原告らの所属する職員団体と教育委員会との給与改定の交渉を実施しているが,教育委員会は,この交渉において,被告が本件訴訟に提出した資料を十分に提出していないし,また,自ら財政に対する説明が不十分であることを随所に自認しており(甲40),被告は,既に条例で確定した給与等を削減するについて負う説明義務を果たしていないと主張する。 しかし,証拠(甲24,25)によれば,教育委員会と職員団体との交渉において一定程度の資料が提出されたことが認められるし,被告が本件訴訟に提出した資料の中には,その交渉の際には存在しなかったものもある可能性がある。また,「給与改定交渉時の当局の財政説明が不十分であること等を自認した発言の内容(抄 ことが認められるし,被告が本件訴訟に提出した資料の中には,その交渉の際には存在しなかったものもある可能性がある。また,「給与改定交渉時の当局の財政説明が不十分であること等を自認した発言の内容(抄)」(甲40)に記載された内容については,団体交渉の席において被告当局がした発言としては不用意なものが多く含まれていることに照らすと直ちに信用することはできない。 よって,被告が説明義務を果たしていないから平成12年度給与抑制条例が無効であるということはできない。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 (2) 原告らは,第2年目及び第3年目の各給与抑制条例を審議した議員もほとんどが与党であって,議員としてすべき質問をしていないし,与党でない議員も自らの出身団体に対する補助金等が削減されることを恐れ,すべき質問を放棄したと主張する。 しかし,原告らが主張する「議員としてすべき質問」の内容が明らかではないし,仮に,議員の質問が的確なものでなかったとしても,それによって条例が無効になるということはできない。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 3 裁量権の逸脱,濫用(1) 証拠(甲13,乙62,73,76,83),後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア被告は,平成12年度当初予算については,平成11年10月18日付けで「平成12年度予算編成について(依命通達)」(乙52)と「平成12年度予算編成事務処理要領」が添付された「平成12年度予算編成の要領について(通知)」(乙53)を各部局長等に通達,通知し,予算編成方針を明らかにした。 被告の財政は,この予算編成方針にもあるように,平成11年10月の時点で,平成10年度に生じた決算赤字の財政措置の目処が立っておらず,大幅な収支 等に通達,通知し,予算編成方針を明らかにした。 被告の財政は,この予算編成方針にもあるように,平成11年10月の時点で,平成10年度に生じた決算赤字の財政措置の目処が立っておらず,大幅な収支不足が見込まれるなど,平成12年度においても,引き続き,平成11年度と同様に極めて深刻な状況が継続していた。このため,行政活動計画の立案に当たっては,平成11年度6月補正後予算額の政策的重要経費及びその他の行政経費については原則70%の範囲内,公共事業費については原則90%の範囲内とするなど厳しいシーリングを設定し,事務事業全般にわたり,制度施策の廃止縮小を含めた徹底した見直し,合理化を図り,これまで以上に歳出の抑制に取り組むこととした(乙52)。 イそして,被告は,これらの「予算編成方針」に基づいて,各部局から出された要望額を基に,平成12年1月7日時点までの調整状況を100億円単位で「平成12年度財政状況試算(当初)」(甲24の49,50頁)を取りまとめた(乙62)。 これによれば,平成12年1月7日の段階での収支不足の見込額は,前記財政状況試算(甲24の49,50頁)の「平成12年度①」欄の「歳出」欄の「計」欄の2兆2800億円から「歳入」欄の「計」欄の2兆0900億円を差し引いた1900億円であった(乙62)。 前記財政状況試算(甲24の49,50頁)の記載項目のうち,歳入面については,平成12年1月7日時点で,県税につき,被告の税収動向に大きな影響を及ぼす法人関係税に関して県内主要企業に対する聴き取り調査を実施することなどにより積算し,1兆0300億円と見込んでいた。また,地方交付税については,被告の税収見通しや国の地方財政対策の動向を踏まえながら,1200億円と見込んでいた。さらに,県債については,各部局からの予算要望の し,1兆0300億円と見込んでいた。また,地方交付税については,被告の税収見通しや国の地方財政対策の動向を踏まえながら,1200億円と見込んでいた。さらに,県債については,各部局からの予算要望のあった経費を基に,国の地方財政対策の動向を踏まえながら,平成11年度の通常の起債充当率を乗じて見積もり,1700億円と見込んでいた(乙73)。 他方,歳出面においては,「平成12年度予算編成について(依命通達)」(乙52)及び「平成12年度予算編成事務処理要領」が添付された「平成12年度予算編成の要領について(通知)」(乙53)に基づき,既に平成12年1月7日の時点で,事務事業全般にわたり,制度,施策そのものの廃止・縮小をも含めた一層徹底した見直し,合理化を図り,政策的重要経費及びその他の行政経費について,前年度予算額の70%の範囲内とするシーリングを設定するなど,厳しい歳出抑制の下で積算を行った。この時点では,給与抑制を見込んでいたわけではなかった(乙73)。 ウその後,平成12年2月の知事査定の段階までに,前記の各項目について,更に精査を行った。 県税については,直近の徴収状況などを基に精査し,平成12年2月の時点では,275億円増の1兆0575億円と見込んだ(乙55,73)。また,地方交付税については,平成12年1月下旬に自治省が開催した全国都道府県財政課長会議で説明された平成12年度の地方交付税算定上の留意点を踏まえて精査し,200億円増の1400億円と見込んだ(乙55,73)。さらに,県債については,地方交付税と同様に全国都道府県財政課長会議で説明された平成12年度の地方債計画に関する情報を踏まえて精査し,790億円増の2490億円と見込んだ(乙55,73)。 エこのような精査の中で,「12年度の財源対策について」(乙54 政課長会議で説明された平成12年度の地方債計画に関する情報を踏まえて精査し,790億円増の2490億円と見込んだ(乙55,73)。 エこのような精査の中で,「12年度の財源対策について」(乙54)の作成段階で,県税及び地方交付税について既に最終予算額ベースで整理したが,歳入の増加を見込んだ上でも,歳出との収支の均衡を保つことが困難であり,合計1680億円の財源対策が必要とされたので(乙62),その財源不足を解消するため,「12年度の財源対策について」(乙54)の記載に係る給与抑制措置を含む様々な財源対策を講じざるを得ず(乙83),「平成12年度一般会計の財源見通し」(乙55)の作成に至った。 このため,平成12年度当初予算作成に当たっては,この多額の収支不足額を解消するため,歳入,歳出の両面にわたる,更なる様々な財源対策が講じられた(乙62)。平成12年度当初予算編成における歳入,歳出両面での最終段階での財源対策の内容を示す「12年度の財源対策について」(乙54)に記載のとおり,平成12年度においても,給与の抑制措置が財源対策の一環として必要な措置として組み込まれた。この給与抑制の効果は,総額222億円であった。 オ平成12年度当初予算の知事査定の結果を踏まえた予算編成最終段階の一般会計の財源見通しは,「平成12年度一般会計の財源見通し」(乙55)記載のとおりであり,「12年度当初予算A」欄の「差引」欄が0円となっているように,この時点で,歳入,歳出の均衡を図ることができた。しかし,この中には,「12年度の財源対策について」(乙54)の「歳出」の区分にあるように,本来当初予算で措置しなければならない「公債費」における満期一括償還減債基金への平成12年度分の積立金123億円や,「人件費」(給与費)における平成12年度給与改善費 の「歳出」の区分にあるように,本来当初予算で措置しなければならない「公債費」における満期一括償還減債基金への平成12年度分の積立金123億円や,「人件費」(給与費)における平成12年度給与改善費30億円の予算計上が見送られているほか,更にその後に額が確定する平成11年2月補正予算段階では190億円(乙55の「歳入」欄の「繰越金」欄の「12年度当初予算の主な内容」欄記載の額)と見込まれていた平成11年度の赤字額に対する財源手当の見通しも立っていなかった(乙62)。 以上のとおり,平成12年度の当初予算編成においては,平成12年度給与抑制条例による給与抑制措置を講じても,実質的には,歳入,歳出の均衡に達することができない財政状況にあった(乙62)。 カ平成12年度当初予算における経費構成と収入構成の内容を示す「経費構成と収入構成について」(乙56)の「サ」の「F」欄記載のとおり,平成12年度の当初予算における一般財源の総額は,平成11年度6月補正後予算と比べて,779億円増加しているが,他方で,同「ア」の「H」欄記載のとおり,義務的経費等に要する一般財源額は898億円増加しており,人件費を始めとする義務的経費の財源確保の見地から,平成12年度においては,平成11年度に引き続き厳しい状況にあった(乙62)。 キ平成12年度人事委員会勧告においては,「職員の給与の減額措置は,県税収入の急激な減少により過去に経験したことのない危機的な財政状況が引き続く中にあって,財政再建に向けた様々な取組の一つとしてやむを得ず継続されているものであると理解し」,「職員の給与の減額措置は勧告制度とは異なる次元で実施される例外的なものであり,当該減額措置の影響による較差については,勧告制度の枠組みを超えるものとして取り扱うことが適当であると考える。」(乙 ,「職員の給与の減額措置は勧告制度とは異なる次元で実施される例外的なものであり,当該減額措置の影響による較差については,勧告制度の枠組みを超えるものとして取り扱うことが適当であると考える。」(乙81)とされている。 (2) 原告らは,被告の裁量権の逸脱,濫用を主張する。 しかし,前記のとおり,平成12年度当初予算においては,予想された平成11年度の実質収支が190億円の赤字であり,これに対する財源見通しも立っておらず,満期一括償還減債基金123億円や平成12年度給与改善費30億円など本来措置すべき経費の予算計上を先送りして初めて収支の均衡を図ることが可能となったものであるし,地方公共団体は,住民の福祉の増進を図ることを基本として,地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く,かつ連綿として担っているものであり,その礎となる財政運営の基本的在り方としては,地方公共団体としての自主・自立性が大きく損なわれる準用財政再建団体への転落を回避することはもちろんのこと,単年度の収支均衡の保持,さらには,長期にわたる財政の健全性,すなわち長期間を通じて起こる財政変動に耐え得る弾力性のある財政を確立することが求められているといえること,平成12年度給与抑制条例による給与抑制措置は,被告の財政の健全化や県民,市町村の理解を図る見地からもやむを得ないものであったということができ,平成12年度給与抑制条例による抑制額が前記のとおり222億円と平成11年度給与抑制条例に比べて緩和されていることに照らすと,被告の判断が著しく妥当性を欠き,明らかに裁量権を逸脱,濫用したとまで認めることはできない。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 4 事実誤認(1) 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア前記のと 逸脱,濫用したとまで認めることはできない。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 4 事実誤認(1) 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア前記のとおり,平成12年2月の補正予算編成の時点で,平成12年度予算に繰り越される見込みであった平成11年度の赤字額190億円は,平成11年度の決算額が確定した平成12年5月末の出納閉鎖期日の時点で,歳出不要額の増加などから実質収支として91億円の赤字に縮小して平成12年度に繰り越された(乙66,73,76,83)。この見込みから確定に至るまでの赤字額の縮小については,時点,時点の整理でその全体額を見込み,確定していくというものであり,その途中の過程で,どの費目でどれだけ赤字額が縮小したのかの分析は困難である(乙76)。また,それぞれの時点相互間における金額の変化は,様々な要因に基づく歳入面,歳出面の個別の変動が多数集積した結果であって,その個別の変動をすべて補そくすることは不可能である(乙83,弁論の全趣旨)。 イ確定した91億円の赤字の内容は,次のとおりである。歳入の面においては,一般会計歳入の予算現額2兆3674億円から,収入済額2兆3034億円を差し引き,641億円の減収(歳入不足)となった(「平成11年度愛知県一般会計歳入歳出決算書」(乙75)の12,13頁の表中の「歳入合計」欄の各記載)。一方,歳出の面においては,予算現額2兆3674億円から支出済額2兆3093億円を差し引きし,581億円の支出の減少となった(前記決算書(乙75)の22,23頁の表中の「歳出合計」欄の各記載)。 以上のように,確定した歳入総額2兆3034億円と歳出総額2兆3093億円とを差し引きした「歳入歳出差引歳入不足額」のマイナス59億円から,「翌年度へ繰り越す の表中の「歳出合計」欄の各記載)。 以上のように,確定した歳入総額2兆3034億円と歳出総額2兆3093億円とを差し引きした「歳入歳出差引歳入不足額」のマイナス59億円から,「翌年度へ繰り越すべき財源」の32億円を差し引いた「このため翌年度歳入繰上充用金」のマイナス91億円(前記決算書(乙75)の22,23頁)が,赤字額として確定したものである(乙28,76)。 ウ平成12年度については,歳入面においては,「平成12年度愛知県歳入歳出決算及び基金運用状況の審査意見書」(乙78)の10,11頁の「各款別内訳表」の「(C)/(A)×100」欄の「計」欄記載のとおり,97.50%が収入済みであり,「11 寄附金」及び「12 繰入金」を除けば90%以上の高率である。したがって,予算の見積りは適正であったといえる。 歳出面においては,前記審査意見書(乙78)の38,39頁の「各款別内訳表」の「執行率(B)/(A)×100」欄の「計」欄記載のとおり,執行率は全体として97.22%であり,「12 災害復旧費」を除けば,いずれもほぼ90%以上の高率である。したがって,同様に予算の見積りは適正であったといえる。 なお,愛知県監査委員は,前記審査意見書(乙78)の7頁で,「予算の執行に当たっては,議会の議決の趣旨に沿い,効率性に配慮して,おおむね適正に執行されているものと認めた。」と判断している。 エところで,平成12年度においても,予算及び年度途中の執行見込みと最終の決算とが一致せず,平成13年2月の補正予算編成時に見込んだマイナス80億円(乙66)は,結果として平成12年度の決算段階では28億円へと黒字に転換した(前記審査意見書(乙78)の6頁)。 平成13年2月に見込んだマイナス80億円は,前記審査意見書(乙78)の34頁下段の表 6)は,結果として平成12年度の決算段階では28億円へと黒字に転換した(前記審査意見書(乙78)の6頁)。 平成13年2月に見込んだマイナス80億円は,前記審査意見書(乙78)の34頁下段の表の「7 雑入」の項の「5 雑入」の目の「主な内容」欄に,「総務費雑入において,前年度の実質収支が赤字になったことに対応するための繰上充用に係る財源を措置したこと」と記載があるとおり,前記審査意見書(乙78)の34頁の上段の表の「7 雑入」の項の「5 雑入」の目の欄に予算現額166億円として計上されている。なお,前記審査意見書(乙78)の34頁の上段の表の「7 雑入」の項の「5 雑入」の目の「予算現額と収入済額の比較」の欄に,マイナス71億円が計上されているが,これは,他に予算現額を上回る収入が9億円あったことによるものである(弁論の全趣旨)。 前記の収入不足80億円は,他の収入の過不足と合算され,前記審査意見書(乙78)の10,11頁の上段の「予算現額と収入済額との比較」欄記載のマイナス599億円の内数となり,このマイナス599億円が当該年度の最終的な収入不足の総額となった。一方,前記審査意見書(乙78)の38,39頁の上段の表記載のとおり,最終の予算現額と支出済額との差である翌年度繰越額533億円(繰越明許費532億円と事故繰越し1億円)と不用額134億円の合計667億円が当該年度に最終的に支出しなかった額である。これら歳入不足マイナス599億円と歳出しなかった667億円の差し引きで,前記審査意見書(乙78)の6頁の表の「歳入歳出差引額」欄記載のとおり,結果として68億円の黒字が計上された。 さらに,翌年度繰越額533億円のうち,翌年度に財源を繰り越すべきものが,前記審査意見書(乙78)の6頁の「翌年度へ繰り越すべき財源」欄記載の のとおり,結果として68億円の黒字が計上された。 さらに,翌年度繰越額533億円のうち,翌年度に財源を繰り越すべきものが,前記審査意見書(乙78)の6頁の「翌年度へ繰り越すべき財源」欄記載のとおり,40億円あることから,68億円から40億円を差し引いた28億円が,当該年度の最終黒字額であり,また実質収支額となった(弁論の全趣旨)。 以上のとおり,平成13年2月の補正予算編成の際の収支不足のマイナス80億円は,最終的に28億円の黒字となったものであるが,これは,歳入面で税収が予算額を上回ったことのほかに,歳出面でより一層の適切な執行に努めたことなどから,健康福祉費,建設費,教育費,公債費など不用額が生じたこと,様々な財源対策(乙54)の実施と,平成11年度の赤字が結果として91億円に減縮されたことなどの結果として,最終的に平成12年度の決算額が確定した平成13年5月末において,実質収支として28億円の黒字となったものである(乙73,83)。 (2) 原告らは,平成12年度予算について,被告当局は,実質収支の観点から,平成12年1月7日の時点で1900億円の赤字額(甲24の49,50頁),同年2月当初予算作成時1680億円の赤字額(乙54)を予測したが,同年度の実質収支の決算額は赤字ではなく28億4748万円の黒字であり(乙28),被告当局は,平成12年度給与抑制条例の制定に当たり,平成11年度及び平成12年度の実質収支額について見込みを誤ったことは明らかであり,このような事実誤認に基づいてされた平成12年度給与抑制条例の制定については,裁量権の逸脱,濫用があり,県議会についても同様であると主張する。 しかし,被告が,平成12年2月当時に見込んだ収支不足額1680億円については,前記のとおり,平成12年度給与抑制条例による抑制 裁量権の逸脱,濫用があり,県議会についても同様であると主張する。 しかし,被告が,平成12年2月当時に見込んだ収支不足額1680億円については,前記のとおり,平成12年度給与抑制条例による抑制額約222億円を含む様々な収入の確保や支出の削減の措置が採られているのであるし,被告は,年度内においても収入の確保に努め,さらに適正な予算の執行に努めたことにより実質収支の赤字額が減少したのであって(乙62,73),また,前記のとおり,そもそも社会経済環境や行政需要等が大きく変化する中で,収入支出を寸分の狂いもなく見積もり,それに従って事務事業を固定的に実施することは極めて困難であるし,被告の予算規模が2兆円を超える大規模なものであることに照らすと,前記のような差は誤差の範囲内であるということができ,被告が事実誤認したとまでは認めることはできない。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 第5「(職員の給与に関する条例に基づく請求)第3 平成13年度給与抑制条例の無効」について 1 裁量権の逸脱,濫用(1) 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア被告は,平成13年度予算については,「平成13年度予算編成について(依命通達)」(乙63)及び「平成13年度予算編成事務処理要領」が添付された「平成13年度予算編成の要領について(通知)」(乙64)を通達,通知した。各部局はこれに基づいて要望額を提出し,被告が平成13年1月9日時点までの調整状況を取りまとめ,その金額を100億円単位で整理したものが「平成13年度財政状況試算(当初)」(甲25の51頁)である(乙73)。 平成13年1月9日の時点での収支不足の見込額は,前記財政状況試算(甲25の51頁)の「平成13年度①」欄の「歳出」欄の「計」欄の2兆330 状況試算(当初)」(甲25の51頁)である(乙73)。 平成13年1月9日の時点での収支不足の見込額は,前記財政状況試算(甲25の51頁)の「平成13年度①」欄の「歳出」欄の「計」欄の2兆3300億円から「歳入」欄の「計」欄の2兆1900億円を差し引いた1400億円となっており,平成13年度の予算編成においても大変厳しい財政状況にあった(乙73,83)。 イ平成13年1月9日の時点で,歳入面では,県税につき,被告の税収動向に大きな影響を及ぼす法人関係税に関して県内主要企業に対する聴き取り調査を実施することなどにより積算し,1兆0800億円(前記財政状況資産(甲25)の51頁)と見込んでいた。また,地方交付税については,被告の税収見通しや国の地方財政対策の動向などを踏まえながら,1150億円と見込んでいた。さらに,県債については,各部局からの予算要望のあった経費を基に国の地方財政対策の動向を踏まえながら平成12年度の起債充当率を乗じて積算し,2100億円と見込んでいた(乙73)。 他方,歳出面では,「平成13年度予算編成について(依命通達)」(乙63)及び「平成13年度予算編成事務処理要領」が添付された「平成13年度予算編成の要領について(通知)」(乙64)に基づき,既に平成13年1月9日の時点で,被告の事務事業全般にわたり,制度,施策そのものの廃止・縮小をも含めた一層徹底した見直し,合理化を図り,政策的重要経費及びその他行政経費について,前年度予算額の90%の範囲内とするシーリングを設定するなど,厳しい歳出抑制の下で積算を行ったが,それでもなお,収支において1400億円の不足が見込まれた。なお,平成13年度においてもこの時点で給与抑制措置は見込んでいない(乙73)。 ウその後,被告は,平成13年2月の知事査定の段階までに,更 れでもなお,収支において1400億円の不足が見込まれた。なお,平成13年度においてもこの時点で給与抑制措置は見込んでいない(乙73)。 ウその後,被告は,平成13年2月の知事査定の段階までに,更に精査を行った(乙73)。 その結果,県税については,直近の徴収状況などを基に精査し,176億円増の1兆0976億円と見込んだ。また,地方交付税については,平成13年1月下旬に自治省が開催した全国都道府県財政課長会議で説明された平成13年度の地方交付税算定上の留意点を踏まえて精査し,1150億円の同額と見込んだ。さらに,県債については,地方交付税と同様に全国都道府県財政課長会議で説明された平成13年度の地方債計画に関する情報を踏まえて精査し,678億円増の2778億円と見込んだ(乙73)。 エこうした精査の中で,歳入の増加を見込んだ上でも,1400億円すべての収支不足を解消し,歳入,歳出との収支の均衡を保つことが困難であったことから,平成13年度においても様々な財源対策を講じることが不可欠と判断された。その結果,知事査定の結果を踏まえ,「平成13年度の収支状況」(乙65)記載のとおり,給与抑制措置を含む財源対策を講じることになった(乙73)。 平成13年度当初予算は,こうした歳入,歳出両面にわたる1400億円の財源対策を講ずることによって,一応編成することができ,表見上は,歳入,歳出の均衡を図ることができたが,この中には,「平成13年度の収支状況」(乙65)の「歳出の調整」欄に記載のとおり,本来当初予算で措置しなければならない①公債費における平成13年度満期一括償還分の減債基金への平成13年度分の積立金155億円や,②人件費(給与費)における平成13年度給与改善費30億円の予算計上が見送られているほか,さらに,前年度と同様,平成1 る平成13年度満期一括償還分の減債基金への平成13年度分の積立金155億円や,②人件費(給与費)における平成13年度給与改善費30億円の予算計上が見送られているほか,さらに,前年度と同様,平成13年2月の補正予算編成の時点で平成13年度予算に繰り越される見込みであった平成12年度の赤字額80億円(「平成12年度の収支状況」(乙66)の「12年度収支見込(2月補正)」欄に記載)に対する財源手当の見通しも立っていなかった(乙73,83)。 このように,平成13年度給与抑制条例による給与抑制措置を講じても,実質的には,歳入,歳出の均衡に達することができない状況にあった(乙73,83)。 オ平成13年度当初予算における一般財源の総額は,平成12年度当初予算と比べて,113億円増加(「経費構成と収入構成について」(乙67)の「サ」の「F」欄)しているのであるが,それ以上に義務的経費等に要する一般財源額(「経費構成と収入構成について」(乙67)の「ア」の「H」欄)が284億円増加しているのであって,被告の財政は,平成12年度に引き続き厳しい状況にあった(乙73)。 こうした一般財源状況に加え,前記のとおり,平成13年度当初予算では,本来措置すべき経費の予算計上を先送りしなければならなかったもので,平成13年度給与抑制条例による給与抑制措置を講じなければ予算の編成すらできなかったものといえる。 カ平成13年度給与抑制条例による給与抑制の内容は,例月給与の2%の抑制であり,当初予算ベースでは,104億円の抑制であった(甲22の9頁,弁論の全趣旨)。 キ平成13年度人事委員会勧告においては,「人事委員会の勧告制度とは異なる次元で実施される例外的な措置であると考えて」おり,「特例条例により実施されている職員の給与の減額措置については,かつて 。 キ平成13年度人事委員会勧告においては,「人事委員会の勧告制度とは異なる次元で実施される例外的な措置であると考えて」おり,「特例条例により実施されている職員の給与の減額措置については,かつてない危機的な財政状況に対処するため緊急避難的に,また,財政再建に向けた様々な取組の一つとして,やむを得ず継続されているものであると理解している」とされており,平成13年度の給料表については改定を見送ることが適当であると考えると報告された(乙82)。 (2) 原告らは,被告に裁量権の逸脱,濫用があると主張するところ,前記のとおり,平成12年の実質収支額は,平成13年5月締めで28億円の黒字であったことが認められる。 しかし,前記のとおり,被告が平成13年度給与抑制条例を制定しようとした平成13年2月8日の時点では,平成12年度の実質収支額は80億円の赤字が見込まれていたこと,被告は,本来当初予算で措置すべきものの予算計上を見送ったり,予想された平成12年度の実質収支赤字額80億円の財源の見通しも立っていなかったものであること,地方公共団体は,住民の福祉の増進を図ることを基本として,地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く,かつ連綿として担っているものであり,その礎となる財政運営の基本的在り方としては,地方公共団体としての自主・自立性が大きく損なわれる準用財政再建団体への転落を回避することはもちろんのこと,単年度の収支均衡の保持,さらには,長期にわたる財政の健全性,すなわち長期間を通じて起こる財政変動に耐え得る弾力性のある財政を確立することが求められているといえること,愛知県人事委員会も,平成13年度の給料表については改定を見送るよう報告した上,給与抑制措置についても,かつてない危機的な財政状況に対処するため,緊急避難的に,ま ことが求められているといえること,愛知県人事委員会も,平成13年度の給料表については改定を見送るよう報告した上,給与抑制措置についても,かつてない危機的な財政状況に対処するため,緊急避難的に,また,財政再建に向けた様々な取組みとして,やむを得ず継続されているとの理解を示していたこと,平成13年度給与抑制条例は,給与(教職調整額を含む。)及び調整手当の抑制額を従前の3.5%から2%に軽減し,期末,勤勉手当の8%の減額をやめるなど緩和された内容となっていることなどに照らすと,被告の判断が著しく妥当性を欠き,明らかに裁量権を逸脱,濫用したとまで認めることはできない。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 2 事実誤認(1) 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア平成13年度については,歳入面においては,「平成13年度愛知県歳入歳出決算及び基金運用状況の審査意見書」(乙79)の10,11頁の各款別内訳表の「(C)/(A)×100」欄の「計」欄記載のとおり,一般会計全体では,予算に対して97.49%が収入済みであり,「11 寄附金」及び「12 繰入金」を除けばおおむね90%以上の高率である。したがって,予算の見積りは適正であったといえる。 歳出面においては,前記審査意見書(乙79)の40,41頁の下段の表の「執行率(B)/(A)×100」欄記載のとおり,97.24%であり,いずれもほぼ90%以上の高い率である。したがって,同様に予算の見積りは適正であったといえる。 イところで,平成13年度においても,予算及び年度途中の執行見込みと最終の決算とが一致せず,平成14年2月の補正予算編成時において,収支状況は歳入歳出が均衡するものと見込まれていた(「平成13年度の収支状況」(乙80)の「13年度 ,予算及び年度途中の執行見込みと最終の決算とが一致せず,平成14年2月の補正予算編成時において,収支状況は歳入歳出が均衡するものと見込まれていた(「平成13年度の収支状況」(乙80)の「13年度収支見込(2月補正)」欄記載の額が「0」となっている。)が,結果として平成13年度の決算段階では20億円の黒字となった(前記審査意見書(乙79)の6頁の上段の表の「実質収支額(A)」欄記載の額)ものであり,その理由は以下のとおりである。 すなわち,平成13年度の最終的な不足額は,前記審査意見書(乙79)の10,11頁の上段の表の「予算現額と収入済額との比較」欄のマイナス612億円であった。一方,当該年度に最終的に支出しなかった額は,前記審査意見書(乙79)の40,41頁の上段の予算現額と支出済額との差である「翌年度繰越額」欄記載の516億円(繰越明許費515億円と事故繰越し1億円)と「不用額」欄記載の156億円の合計である672億円であった。したがって,収支は,前記審査意見書(乙79)の6頁の上段の表の「歳入歳出差引額」欄記載のとおり,収入のマイナス612億円と支出の672億円を加えた60億円の黒字となった。そして,翌年度繰越額516億円のうち,翌年度に繰り越すべきものが,前記審査意見書(乙79)の6頁の上段の表の「翌年度へ繰り越すべき財源」欄記載のとおり40億円あることから,結果として当該年度は,60億円から40億円を差し引いた20億円が,平成13年度の最終黒字額であり,また,実質収支額となったものである(乙83,弁論の全趣旨)。 (2) 原告らは,平成13年度予算について,被告当局は,実質収支の観点から,予算編成段階で1400億円の赤字(甲25の51頁)を予測したが,同年度の実質収支の決算額は19億6282億円の黒字(乙79の6頁)で らは,平成13年度予算について,被告当局は,実質収支の観点から,予算編成段階で1400億円の赤字(甲25の51頁)を予測したが,同年度の実質収支の決算額は19億6282億円の黒字(乙79の6頁)であり,平成12年度決算について,平成13年2月時点で80億円の赤字額を見込んだが(乙66の「12年度収支見込(2月補正)欄参照),同年度の実質収支の決算額は28億4748万円の黒字となっており(乙78の6頁),平成13年度給与抑制条例の制定に当たって,平成12年度及び平成13年度の実質収支額の見込みを誤ったことは明らかであって,このような事実誤認に基づいてされた平成13年度給与抑制条例の制定には,裁量権の逸脱,濫用があると主張する。 しかし,前記のとおり,被告は,平成12年度において収入の確保や適正な予算の執行に努めたことにより実質収支の赤字額が減少したのであるし,そもそも,社会経済環境や行政需要等が大きく変化する中で,収入支出を寸分の狂いもなく見積もり,それに従って事務事業を固定的に執行することは極めて困難であって,被告の予算規模が2兆円を超える大規模なものであることに照らすと,前記のような差は誤差の範囲内ということができ,被告が事実誤認したとまで認めることはできない。 したがって,原告らの前記主張を採用することはできない。 第5章結論よって,原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第1部裁判長裁判官橋本昌純裁判官上村考由裁判官鈴木基之 裁判官鈴木基之 別紙添付省略

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