主文 1 被告は、原告に対し、47万3000円及びこれに対する令和4年3月18日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、これを4分し、その3を原告の負担とし、その余は被告の負担と する。 4 この判決は、第1項に限り、本判決が被告に送達された日から14日を経過したときは、仮に執行することができる。ただし、被告が40万円の担保を供するときは、その仮執行を免れることができる。 事実及び理由 第1 請求被告は、原告に対し、177万1000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は、甲刑務所に収容されている懲役刑の受刑者である原告が、被告に対し、 ①甲刑務所職員が原告を裸の状態で身体検査等をしたこと、甲刑務所長が、②原告が布類や衝立等の物品を居室内等で所持することを不許可にし、③原告をカメラ室へ収容するほか、④令和3年10月5日の優遇区分の変更にもかかわらず、原告の第4種制限区分を相当期間変更せず昼夜居室処遇をしたこと、⑤原告代理人弁護士(以下「原告弁護士」という。)が原告に宛てて送付した2通の信書に ついて甲刑務所職員が内容にわたる検査を行ったことは、いずれも、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下「刑事収容施設法」という。)等に反する違法な措置であり、原告はこれらの措置により精神的苦痛を被った等と主張し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求として、慰謝料等合計177万1000円(慰謝料は、①につき40万円、②につき10万円、③につき70万 円、④につき35万円、⑤につき各3万円。このほか弁護士費用16万1000 く損害賠償請求として、慰謝料等合計177万1000円(慰謝料は、①につき40万円、②につき10万円、③につき70万 円、④につき35万円、⑤につき各3万円。このほか弁護士費用16万1000 円)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和4年3月18日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 なお、本件に関連する関係法令等の定めは、別紙1のとおりである。 2 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠又は弁論の全趣旨により容易に認められる事実) ⑴ 原告は、甲刑務所に在所する受刑者である。 ⑵ 原告に対する反則調査の経緯ア原告は、令和2年9月24日、同じ居室に収容されていた受刑者(以下「受刑者A」という。)に対し、同人が物品を不正授受したとしてとがめたところ、受刑者Aと口論になった。受刑者Aは、同月30日、甲刑務所職員に対 し、原告に右拳で左頬を殴られた旨申し出た(乙1、7、8)。 イ甲刑務所職員は、令和2年9月30日、原告に対する事情聴取を行ったところ、原告は、同月27日に受刑者Aを殴ったことを認めた。原告は、その事情聴取の中で、自身が受刑者Aから暴行を受けたことは述べなかった。 (乙1、4) ウ甲刑務所職員は、令和2年9月30日、受刑者A及び原告の負傷状況等を確認するため、上衣を脱衣させた状態の受刑者Aの上半身、顔面及び口腔内の写真撮影をし、また、上衣を脱衣させた状態の原告の上半身、両手の甲及び両手の平の写真撮影をした(乙2)。 エ甲刑務所長は、令和2年9月30日、けんかの疑いで原告を反則調査に付 すとともに原告を共同室から単独室へ転室させる昼夜居室処遇をすることにした。(乙1、3)。 オ原告は、令和2年10月2日、甲刑務所職員に 和2年9月30日、けんかの疑いで原告を反則調査に付 すとともに原告を共同室から単独室へ転室させる昼夜居室処遇をすることにした。(乙1、3)。 オ原告は、令和2年10月2日、甲刑務所職員に対し、「血便が出る。殴られた腹が痛い」旨申し出たため、甲刑務所職員は医務課へ連絡した。甲刑務所医師は、同日、原告の診療を実施したところ、原告は、同医師に対し、「心窩 部を殴られた、血便があった」旨を述べた。(乙4、5) カ甲刑務所職員は、令和2年10月2日頃、前記エの反則調査(第101号)のために、原告を取り調べたところ、原告は「原告が受刑者Aの顔面を手で1回殴りつけたことは間違いない。その後、受刑者Aから原告の右足小指側を踏まれ、右手拳で腹を殴られた。」旨述べた(乙6〔供述調書。なお、その作成時期については争いがある。〕)。 キ原告が上記カの取調べの際に「令和2年9月24日に受刑者Aと口論をした」旨供述したため、甲刑務所長は、同年10月5日、原告を、口論の疑いの反則容疑行為に係る追加調査(第102号)に付し、同日、原告に対し、上記口論に関する取調べを行った(乙7、8、12)。 ク甲刑務所職員は、令和2年10月5日、他の職員から、原告が「足も蹴ら れた。」と申し出ている旨の報告を受けたことから、原告に対し、改めて当時の状況を確認したところ、原告は、「受刑者Aが左足で原告の右足を踏み、右手で原告の腹部を殴った。受刑者Aから受けた暴行は上記の2点のほかにはない。」旨を述べた。(乙5、9)。 ⑶ 甲刑務所職員は、令和2年10月5日、原告が暴行を受けたとする箇所の正 確な特定及び身体状況の記録化のため、原告を甲刑務所医務棟待合室へ連行し、同所において、原告の身体検査及び写真撮影を実施した(以下、同身体検 和2年10月5日、原告が暴行を受けたとする箇所の正 確な特定及び身体状況の記録化のため、原告を甲刑務所医務棟待合室へ連行し、同所において、原告の身体検査及び写真撮影を実施した(以下、同身体検査及び写真撮影を併せて「本件身体検査」という。)(乙9~11、弁論の全趣旨)。 ⑷ 甲刑務所長は、原告が令和2年10月10日の朝食から食事の受取りを拒否するなどの不食を続け、その心情を把握することが困難な状況にあることを受 け、原告の健康を管理把握する必要があること、原告の不食が続けば本人の生命身体を脅かす結果につながるおそれが極めて高いこと、衝動的に自傷行為に及ぶおそれが懸念されることを理由に、令和2年10月13日、原告を「要注意者B(自殺・自傷)」(甲刑務所要注意被収容者等処遇基準2条2項、3条、4条(2))に指定した上、カメラ付き第2種単独室に収容する(以下、同収容に 係る処遇を「本件カメラ室処遇」という。)とともに、別紙2のとおり所持物 品を制限した(以下、同制限を「本件物品制限」という。)。(乙18~20)⑸ 甲刑務所長は、令和2年10月14日、原告に対する反則調査の結果を踏まえ、原告が受刑者Aに対し、一方的に暴行したものと判断し、反則行為名を「けんか」から「暴行等」に変更した(乙13、14)。 甲刑務所長は、令和2年10月16日、懲罰審査会の意見を踏まえ、原告に 対し、受刑者Aとの争論及び同人に対する暴行が遵守事項違反に当たるとして、閉居25日の懲罰を科した(乙15~17)。 ⑹ 甲刑務所長は、上記の要注意者B(自殺・自傷)の指定後も原告が給付された食事を断続的に不食する動静は認められたものの、令和3年3月30日の夕食以降は不食を続けることがないこと、自殺自傷等を示唆する動静も認められ 注意者B(自殺・自傷)の指定後も原告が給付された食事を断続的に不食する動静は認められたものの、令和3年3月30日の夕食以降は不食を続けることがないこと、自殺自傷等を示唆する動静も認められ ないこと、同年4月13日に実施された甲刑務所職員との面接において、工場への出業に意欲を示す旨の発言をするなど、受刑生活に前向きな姿勢がうかがえ、心情が安定している様子が認められることを理由に、同年5月14日、原告を「要注意者(自殺・自傷)」から「要視察者(自殺・自傷)」(甲刑務所要注意被収容者等処遇基準2条3項、4条(4))に指定変更することにし、同指 定変更後、原告をカメラ室から通常の単独室へ転室させるとともに、原告に対する本件物品制限を解除した。その後、同年7月2日には、要視察者(自殺・自傷)の指定も解除された。(乙23~26、弁論の全趣旨)⑺ 甲刑務所長は、処遇審査会の意見を踏まえて、令和2年11月10日、令和3年2月1日、同年8月1日及び令和4年2月1日に、原告の制限区分(受刑 者の生活及び行動の制限の緩和に関する訓令3条)を第4種(改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図ることができる見込みが低い者)にそれぞれ指定した。甲刑務所長は、上記各指定に伴い、令和2年11月10日以降、原告を昼夜居室処遇とした。(乙27~30、39~41、弁論の全趣旨) ⑻ 甲刑務所長は、令和3年10月1日、原告の優良区分(受刑者の優遇措置に 関する訓令4条)を第5類(受刑態度が不良である受刑者)から第4類(受刑態度がやや不良である受刑者)に変更した(弁論の全趣旨)。 ⑼ア原告弁護士は、令和3年11月25日付けで、甲刑務所長宛てに、「原告から甲刑務所内における原告に対する違法な措置について国家賠償請求訴 度がやや不良である受刑者)に変更した(弁論の全趣旨)。 ⑼ア原告弁護士は、令和3年11月25日付けで、甲刑務所長宛てに、「原告から甲刑務所内における原告に対する違法な措置について国家賠償請求訴訟の提起を依頼され、今後原告との間で上記訴訟に係る訴状案などが発受さ れる予定である。そのため、原告弁護士と原告との間で発受される信書は全て『受刑者が自己に対する刑事施設の長の措置その他自己が受けた処遇に関し弁護士法第3条1項に規定する職務を遂行する弁護士との間で発受する信書(刑事収容施設法127条2項3号)』に該当する。信書の発信者と受信者を確認すればその内容を確認せずとも刑事収容施設法127条2項3 号該当性を確認することができるため、原告弁護士と原告との間で発受される信書については記述内容にわたる検査を実施しないよう要求する。11月26日付で裁判所へ提出予定の書面に関する信書を原告に送付する予定である。」旨記載された通知文(以下「本件通知文1」という。)を発送した。 甲刑務所において本件通知文1を受領したのは、同年11月30日であった。 (乙32、弁論の全趣旨)イ原告弁護士は、令和3年11月26日付けの信書(以下「本件信書1」という。)を甲刑務所に在所する原告に対して発送した。本件信書1を封入した封筒は、原告弁護士の所属する法律事務所の名称(法テラス愛知法律事務所)、住所、電話番号等が不動文字で印刷された業務用封筒で、原告弁護士 の記名がされていた。また、本件信書1は、「甲刑務所に対する国家賠償請求訴訟に関する信書(刑事収容施設法127条2項3号該当信書)」、「開封厳禁」、「信書の内容に関して検査が必要な場合は、以下の番号までご連絡ください。訴訟戦略の妨げにならない範囲で、問い合わせにお答えします。」との記 刑事収容施設法127条2項3号該当信書)」、「開封厳禁」、「信書の内容に関して検査が必要な場合は、以下の番号までご連絡ください。訴訟戦略の妨げにならない範囲で、問い合わせにお答えします。」との記載(開封厳禁については朱書)と原告弁護士の氏名、所属法律事務所 及び電話番号が繰り返し記載された用紙に包まれた状態で上記封筒に入っ ていた。(甲4、10)ウ甲刑務所職員は、令和3年11月29日、本件信書1の封筒を開封し、本件信書1を包んでいた上記用紙を外して本件信書1の記述内容等を確認する検査をした。甲刑務所長は、同日、原告に対し、本件信書1を受信することを許可し、本件信書1を交付した。(乙31、弁論の全趣旨) ⑽ア原告弁護士は、令和3年12月9日付けで、甲刑務所長宛てに、上記⑼アと同様に、「12月10日付で裁判所へ提出予定の書面に関する信書を原告に送付する。同信書は刑事収容施設法127条2項3号に該当することが外見上明らかであるため、信書の内容にわたる検査を実施しないよう要求する」旨記載された通知文(以下「本件通知文2」という。)を発送した。甲刑務 所において本件通知文2を受領したのは同月10日であった。(乙33)イ原告弁護士は、令和3年12月10日付けの信書(以下「本件信書2」といい、「本件信書1」と併せて「本件各信書」という。)を原告に対して発送した(甲5)。本件信書2を封入した封筒及びその外観は上記⑼イと同じであり、また、本件信書2は、「甲刑務所に対する国家賠償請求訴訟に関す る信書(刑事収容施設法127条2項3号該当信書)」、「開封厳禁」、 「金品は同封しておりません。必要があればこのカバーの隙間からご確認下さい。」、「信書の内容に関して検査が必要な場合は、以下の番号までご連絡くださ 設法127条2項3号該当信書)」、「開封厳禁」、 「金品は同封しておりません。必要があればこのカバーの隙間からご確認下さい。」、「信書の内容に関して検査が必要な場合は、以下の番号までご連絡ください。訴訟戦略の妨げにならない範囲で、問い合わせにお答えします。」との記載(開封厳禁については朱書)と原告弁護士の氏名、所属法律事務所 及び電話番号が繰り返し記載された用紙に包まれた状態で封筒に入っていた。(甲5、10)ウ甲刑務所職員は、令和3年12月13日、本件信書2の封筒を開封し、本件信書2を包んでいた上記用紙を外して本件信書2の記述内容等を確認する検査をした。甲刑務所長は、同日、原告に対し、本件信書2を受信するこ とを許可し、本件信書2を交付した。(乙34、弁論の全趣旨)。 ⑾ 岐阜地方裁判所の裁判官は、令和3年10月12日、甲刑務所において検証の証拠保全を実施した。その際、甲刑務所職員等は、①令和2年9月30日及び同年10月5日に原告の身体を撮影した写真、②同日に作成された原告の供述調書、③同日から同年12月18日までに作成された原告に係る診療録、④原告弁護士から原告宛てに送付された令和3年8月2日付信書及び同年8月 16日付信書に係る書信表を提出した(甲1)。 3 争点⑴ 甲刑務所職員が原告に対して実施した本件身体検査につき、国家賠償法上の違法性及び故意又は過失が認められるか(損害論を含む。)(争点1)⑵ 甲刑務所長が令和2年10月13日から令和3年5月14日までの間、原告 に対して実施した本件物品制限及び本件カメラ室処遇につき、それぞれ国家賠償法上の違法性及び故意又は過失が認められるか(損害論を含む。)(争点2)甲刑務所長が、令和3年10月5日付けで優遇区分を第5類から第4類へ変 件物品制限及び本件カメラ室処遇につき、それぞれ国家賠償法上の違法性及び故意又は過失が認められるか(損害論を含む。)(争点2)甲刑務所長が、令和3年10月5日付けで優遇区分を第5類から第4類へ変更した後、原告の第4種制限区分を相当期間変更しなかったことにつき、国家賠償法上の違法性及び故意又は過失が認められるか(損害論を含む。)(争点 3)原告弁護士が原告宛てに送付した本件各信書の内容を甲刑務所職員が検査したことにつき、国家賠償法上の違法性及び故意又は過失が認められるか(損害論を含む。)(争点4) 4 当事者の主張 ⑴ 争点1(甲刑務所職員が原告に対して実施した本件身体検査につき、国家賠償法上の違法性及び故意又は過失が認められるか[損害論を含む。])(原告の主張)ア本件身体検査の態様は、甲刑務所職員が、原告に対し、下着の上から陰部を握り、全裸になるよう命じた上、陰部を持ち上げた状態や両手で肛門を広 げた状態等のポーズを取るよう命じ、原告の陰部や肛門等の写真撮影をする というものであった。そして、本件身体検査が実施された部屋の扉は開放されており、職員等から、本件身体検査を受ける原告の様子が見えるようになっていた。このように、本件身体検査は、原告の羞恥心や名誉感情を著しく害するものであった。 原告が受刑者Aから暴行を受けたと主張した箇所は右足小指と腹部のみ であるから、あえて原告を全裸にさせなくとも暴行箇所を確認することは可能であり、原告を全裸にした上で写真撮影をする必要性は全くなかった。また、原告が取調べにおいて受刑者Aから腹部を殴られた、右足小指を踏まれた旨を供述したのは、令和2年10月5日のみであるから、原告が今後、受刑者Aから他の部位に暴行を受けたなどと新たな申述をすること た、原告が取調べにおいて受刑者Aから腹部を殴られた、右足小指を踏まれた旨を供述したのは、令和2年10月5日のみであるから、原告が今後、受刑者Aから他の部位に暴行を受けたなどと新たな申述をすることが十分考 えられる状況にはなかった。 したがって、本件身体検査は、刑事収容施設法75条1項の定める要件を満たしておらず違法である。 イ本件身体検査により原告は精神的苦痛を負い、それにより食事を喉が通らなくなり、20日以上全く食事を取れない状況が続いた。原告の被った精神 的損害に対する慰謝料は40万円を下らず、同損害と相当因果関係のある弁護士費用は4万円を下らない。 (被告の主張)ア甲刑務所職員が、令和2年9月30日、原告に事情聴取を行ったところ、原告は、受刑者Aを殴った旨述べるだけで受刑者Aから何らかの暴行を受け た旨述べなかった。しかし、原告は、同年10月2日になり、殴られた腹部が痛い旨、受刑者Aが原告の右足小指側を左足で踏み、右手拳で腹を殴ってきた旨述べ、同月5日には、受刑者Aから足も蹴られた旨述べるなど、原告が受刑者Aから暴行を受けた旨を新たに申述することが続いた。これらの状況から、今後、原告が受刑者Aから他の部位に暴行を受けたなどと新たな申 述をする可能性があり、その場合、自然治癒等により暴行の痕跡の確認が困 難になることが想定された。そのため、原告の反則容疑行為の事実認定のため、原告が暴行を受けたと申述していない部位を含めて原告の身体を広範囲に写真撮影をし、暴行の痕跡を記録化しておく必要性は高かった。 イ甲刑務所職員は、本件身体検査において、原告の身体に触れないように配慮しており、原告の陰部を握るようなことはしておらず、原告の陰部や肛門 を被写体として写真撮影するようなこと は高かった。 イ甲刑務所職員は、本件身体検査において、原告の身体に触れないように配慮しており、原告の陰部を握るようなことはしておらず、原告の陰部や肛門 を被写体として写真撮影するようなこともしていない。さらに、甲刑務所職員は、本件身体検査を実施する際、他の被収容者等の目につかないようにするとともに、短時間で検査を終えるよう配慮しており、できる限り、原告のしゅう恥心を害することがないような態様で本件身体検査を実施した。 ウしたがって、甲刑務所職員がした本件身体検査は、必要な限度を超えるも のではなく、できる限り原告のしゅう恥心を害することがないよう配慮して実施されたものといえるから、国家賠償法上の違法はない。 ⑵ 争点2(甲刑務所長が令和2年10月13日から令和3年5月14日までの間、原告に対して実施した本件物品制限及び本件カメラ室処遇につき、国家賠償法上の違法性及び故意又は過失が認められるか[損害論を含む。]) (原告の主張)ア原告は、本件身体検査により被った精神的苦痛により食欲が著しく減退し、食事を取れない状況が続いたが、そのような状況であっても、原告は、経腸栄養剤(エンシュア)を摂取して体調の回復に努めていたのであり、意図的に摂食拒否をして自傷行為に及んでいたわけではなく、本件物品制限の対象 となる物品を用いて自殺、自傷行為に及ぶ具体的危険性もなかったから、令和2年10月13日から令和3年5月14日までの間、原告の動静を確認するために本件カメラ室処遇をすることや本件物品制限をする必要はなかった。また、不食により生命身体を脅かす結果を防止するためであれば、不食の状況や原告の健康状態を注視すれば十分であり、それを超えて24時間原 告の挙動の全てを監視カメラで監視する必要はない。とりわけ、 た、不食により生命身体を脅かす結果を防止するためであれば、不食の状況や原告の健康状態を注視すれば十分であり、それを超えて24時間原 告の挙動の全てを監視カメラで監視する必要はない。とりわけ、原告は令和 3年12月19日以降、通常どおり食事を取っており(同年3月23日まで合計6食を食べていないが、この程度の不食であれは生命身体を脅かす結果は生じ得ない。)、カメラ室に継続して収容する必要性は皆無であった。 したがって、甲刑務所長が原告を要注意者B(自殺・自傷)に指定した上、本件物品制限や本件カメラ室処遇を実施したこと、不食がほとんどなくなっ た令和2年12月19日以降も漫然と本件カメラ室処遇を継続したことは、いずれも国家賠償法上の違法な措置である。 イ本件物品制限は、刑事収容施設法に定められた貸与物品および自弁物品を使用する原告の権利を侵害するものである。原告は、本件物品使用制限により著しい不便を強いられ精神的苦痛を被った。原告が被った精神的損害に対 する慰謝料は10万円を下らず、同損害と相当因果関係のある弁護士費用は1万円を下らない。 ウ原告は、本件カメラ室処遇により、7か月間にわたり、排泄等の行動を24時間監視されたのであり、プライバシー権の侵害は甚大である。原告が被った精神的損害に対する慰謝料は70万円を下らず(1か月10万円×7か 月)、同損害と相当因果関係のある弁護士費用は7万円を下らない。 (被告の主張)ア原告は、令和2年10月10日から支給された食事の受取りを拒否するなど食事を取らない状況が続いており、甲刑務所職員が、原告に対し、食事を取らない理由を問いただしても何ら返答をないなど、原告の心情を把握する ことが困難な状況にあった。甲刑務所長は、このような状況を踏まえ、今 い状況が続いており、甲刑務所職員が、原告に対し、食事を取らない理由を問いただしても何ら返答をないなど、原告の心情を把握する ことが困難な状況にあった。甲刑務所長は、このような状況を踏まえ、今後原告が食事を取らないという自傷行為を続けた場合、原告の生命身体を脅かす結果につながるおそれが極めて高いこと、原告が衝動的に不食以外の手段による自傷行為に及ぶおそれも懸念されることなどを考慮して、令和2年10月13日、原告を要注意者B(自殺・自傷)に指定した上、首吊り等の自 傷行為に用いられかねない布類及び衝立等を居室内で所持することなどを 制限(本件物品制限)するとともに、本件カメラ室処遇を実施した。 イそして、原告は、令和3年3月頃までの間、本件身体検査を実施した甲刑務所職員に対する意趣返しの手段として食事を取らないという自傷行為を繰り返しており、精神的に不安定な状態にあったのであるから、令和3年3月頃までは原告が不食その他の手段による自傷行為に及ぶおそれは十分に あった。なお、原告は経腸栄養剤(エンシュア)を摂取していたが、それのみでは1日に必要とされる基礎代謝量すら満たされず、原告の不食が続けば健康状態に悪影響をもたらすことは明らかであるから、原告による不食は自傷行為に当たる。 ウ甲刑務所長は、令和3年5月14日、原告の喫食状況や甲刑務所職員との 面談における原告の言動等を総合的に判断し、原告を要注意者指定から要視察者(自殺・自傷)に指定を変更し、本件物品制限を解除したほか、原告をカメラ室から通常の単独室へ転室させた。 以上のとおり、甲刑務所長は、原告の動静や心情を慎重に見極めた上で、令和2年10月13日から令和3年5月14日までの間、本件物品制限及び 本件カメラ室処遇を実施したのであり、 へ転室させた。 以上のとおり、甲刑務所長は、原告の動静や心情を慎重に見極めた上で、令和2年10月13日から令和3年5月14日までの間、本件物品制限及び 本件カメラ室処遇を実施したのであり、これらの判断に裁量権の逸脱又はその濫用はない。 争点3(甲刑務所長が、令和3年10月5日付けで優遇区分を第5類から第4類へ変更した後、原告の第4種制限区分を相当期間変更しなかったことにつき、国家賠償法上の違法性及び故意又は過失が認められるか[損害論を含む。]) (原告の主張)ア甲刑務所長は、令和3年10月5日付で原告の優良区分の指定を第5類(受刑態度が不良である受刑者)から第4類(受刑態度がやや不良である受刑者)に変更した。その後、甲刑務所長は、上記変更から相当期間経過後も、原告を制限区分第4種に指定し続けた。 甲刑務所長は、原告について「犯罪の責任の自覚及び悔悟の情並びに改善 更生の意欲の程度が著しく低い」と評価して制限区分第4種に指定したが、令和3年10月5日の時点で原告の優遇区分を第4(受刑態度がやや不良な受刑者)に当たると評価したのであれば、「犯罪の責任の自覚及び悔悟の情並びに改善更生の意欲の程度が著しく低い」と評価することはできないはずである。したがって、甲刑務所長が、上記優良区分の変更から相当期間経 過後も原告を制限区分第4種に指定した上、昼夜居室処遇に付した措置は国家賠償法上違法である。 イ原告は、本件昼夜居室処遇により工場への出役を含む集団生活への参加が妨げられており、これにより著しい精神的苦痛を被った。原告が被った精神的損害に対する慰謝料は35万円を下らず(1か月5万円×7か月)、同損 害と相当因果関係のある弁護士費用は3万5000円を下らない。 (被告の主張) 著しい精神的苦痛を被った。原告が被った精神的損害に対する慰謝料は35万円を下らず(1か月5万円×7か月)、同損 害と相当因果関係のある弁護士費用は3万5000円を下らない。 (被告の主張)甲刑務所長は、原告の制限区分に係る定期評価において、評価項目の「犯罪の責任の自覚及び悔悟の情並びに更生意欲」につき「F(著しく低い)」の評価がされたことを受けて、令和2年11月10、令和3年2月1日、同年8月 1日及び令和4年2月1日に原告の制限区分を第4種にそれぞれ指定し、同指定に伴い、令和3年5月14日以降も原告を昼夜居室処遇とした。甲刑務所長の上記各判断につき裁量権の逸脱又は濫用はない。 原告は、令和3年10月1日付で原告の優遇区分を第5類から第4類に変更したことからすれば、それ以降原告の制限区分を第4種に指定した甲刑務所長 の判断には明らかな裁量権の逸脱又は濫用があると主張するが、刑事収容施設法88条の規定に基づく制限区分の指定と、同法89条に基づく優遇区分の指定とでは、指定の基準が異なり、優遇区分を第5類から第4類に変更されたからといって、必然的に制限区分も第4種から変更されることにはならない。原告の上記主張には理由がない。 争点4(原告弁護士が原告宛てに送付した本件各信書の内容を甲刑務所職員 が検査したことにつき、国家賠償法上の違法性及び故意又は過失が認められるか[損害論を含む。])(原告の主張)ア刑事収容施設法127条2項3号が定める確認対象は信書の発受の主体に限定され、当該信書の記述内容は含まれないと解するのが相当である。 本件各信書は、「甲刑務所に対する国家賠償請求訴訟に関する信書(刑事収容施設法127条2項3号該当信書)」、「開封厳禁」等と明記された用紙に包まれた 内容は含まれないと解するのが相当である。 本件各信書は、「甲刑務所に対する国家賠償請求訴訟に関する信書(刑事収容施設法127条2項3号該当信書)」、「開封厳禁」等と明記された用紙に包まれた状態で封筒に入っていたから、同用紙の記載を見れば、信書の記述内容を検査することなく、刑事収容施設法127条2項3号に定める信書(以下「3号信書」という。)に該当することが確認できる。また、少な くとも本件信書2については、原告弁護士がその送付に先立ち、甲刑務所長宛てに送付した「原告弁護士が『受刑者が自己に対する刑事施設の長の措置その他自己が受けた処遇に関し弁護士法第3条1項に規定する職務を遂行する弁護士(刑事収容施設法127条2項3号)』に該当すること、裁判所に提出する予定の本件信書2を原告に送付する予定であること、本件信書2 は刑事収容施設法127条2項3号に該当することが外見上明らかであるから記述内容にわたる検査を実施しない」ことを求める本件通知文2が、本件信書2よりも前に甲刑務所に到達しているのであるから、本件信書2の記述内容を検査するまでもなく、3号信書に該当することは明らかである。また、信書にあたらない現金その他物品が含まれていないかを確認するためで あれば、本件各信書の記述内容の検査をする必要はない。 したがって、甲刑務所長が本件各信書の内容にわたる検査をしたことは、当該信書に該当することを確認するために必要な限度を超えており、刑事収容施設法127条2項に違反する。 イ本件各信書を検査されたことにより、原告は通信の秘密(憲法21条2項 後段)を侵害され精神的苦痛を被った。原告が被った精神的損害は、本件各 信書につきそれぞれ3万円、合計6万円を下らず、これらの損害と相当因果関係にある弁護士 密(憲法21条2項 後段)を侵害され精神的苦痛を被った。原告が被った精神的損害は、本件各 信書につきそれぞれ3万円、合計6万円を下らず、これらの損害と相当因果関係にある弁護士費用は6000円を下らない。 (被告の主張)刑事収容施設法127条2項各号が掲げる信書について、これらの信書に該当するか否かを確認する限度で当該信書の記述内容を調べることは必然的に 必要となる。 甲刑務所職員は、本件各信書の検査において、本件各信書が3号信書に該当することを確認するために記述内容の検査を行ったが、その限度を超えて検査をしていない。したがって、甲刑務所職員がした本件各信書の検査に、国家賠償法上の違法はない。 なお、甲刑務所職員は、本件各信書を包んでいた用紙を外して記述内容等の検査をしたが、そのようにして本件各信書の内容を確認しなければ、本件各信書が3号信書に該当する信書か否かや、本件各信書の中に3号信書以外の物が含まれていないかを確認することができない。したがって、上記用紙を外して本件各信書の内容を必要な限度で確認することは、刑事収容施設法127条2 項に反しない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(甲刑務所職員が原告に対して実施した本件身体検査につき、国家賠償法上の違法性及び故意又は過失が認められるか[損害論を含む。])⑴ 証拠(甲1、乙9~11)及び弁論の全趣旨によれば、本件身体検査の実施 状況等について、次の事実が認められる。 ア甲刑務所職員は、甲刑務所医務棟待合室において、令和2年10月5日午後2時20分から午後2時24分までの間、原告について本件身体検査を実施した。 イ本件身体検査の方法は、原告に対し、衣類を順次脱ぐように指示し、上半 身裸で直立状態の原告の 年10月5日午後2時20分から午後2時24分までの間、原告について本件身体検査を実施した。 イ本件身体検査の方法は、原告に対し、衣類を順次脱ぐように指示し、上半 身裸で直立状態の原告の腹部、上腕、前腕及び背部の状態を確認するととも に写真撮影をし、次いで、原告を全身裸にさせた上、陰部を両手で覆わせた状態で、大腿部、膝下、臀部及び左足の甲の状態を確認するとともに写真撮影をするというものであった。 ウ本件身体検査は、甲刑務所医務棟待合室で行われたところ、本件身体検査の間、同室の扉は開放されており、本件身体検査を受ける原告の様子が通路 を通過する職員等の目に触れ得る状態であった。 エ本件身体検査の結果をまとめた写真撮影報告書(乙2)の写真の中には、原告の陰毛(NO.13)、臀部(NO.15。肛門までは写っていない。)、陰茎らしきもの(NO.16。なお、手の可能性もある。)が写っていた。 ⑵ 刑事施設の規律及び秩序の維持は、刑事施設における重要な目的であり(刑 事収容施設法1条、73条1項)、刑事施設の長は、刑事施設の規律及び秩序を維持するため被収容者が遵守すべき事項(遵守事項)を具体的に定めるものとされている(同法74条1項)。これを受けて、甲刑務所長は、受刑者の遵守事項として、「他人に暴行を加え、若しくは傷害を与え、又はこれらの行為を企ててはならない。」、「他人とけんかし、若しくは口論し、又はこれらの 行為を企ててはならない。」などと定めている(乙35)。 刑事収容施設法150条1項は、刑事施設の長は、被収容者が遵守事項を遵守しなかった場合にはその被収容者に懲罰を科することができる旨規定しているところ、懲罰を科するためには、被収容者が懲罰を科されるべき行為(反則行為)をした事実が証 施設の長は、被収容者が遵守事項を遵守しなかった場合にはその被収容者に懲罰を科することができる旨規定しているところ、懲罰を科するためには、被収容者が懲罰を科されるべき行為(反則行為)をした事実が証拠に基づきに認定できることが前提として求められ、 また、適切な懲罰を科するためには、反則行為をした被収容者の年齢、心身の状態及び行状、反則行為の性質、軽重、動機及び刑事施設の運営に及ぼした影響等の事情を考慮することが求められる(同条2項)。そのため、刑事施設の長は、被収容者が反則行為をした疑いがある場合には、反則行為の有無及び上記の事情の有無等について速やかに調査を行わなければならないとされてい るところ(同法154条1項)、その調査をするためには、客観的な証明資料 の収集のため被収容者の身体の検査等が必要となる場合もあることから、同法154条2項は、上記調査のため必要があるときは、刑事施設の長は刑務官に被収容者の身体を検査させることができる旨を定めている。 このように、刑事収容施設法154条2項に基づく被収容者の身体検査は、反則行為の調査の一環として行われるものであるところ、被収容者に対しどの ような範囲、態様で身体検査を実施するかは、刑事施設の規律及び秩序の適正な維持という目的に照らし、刑事施設内の実情に通じた刑事施設の長の合理的な裁量に委ねられていると解される。しかし、身体検査は、その実施態様によっては、被収容者のしゅう恥心や名誉感情を害するおそれが高いから、合理的な範囲で適切に行われる必要があり、特に被収容者を全裸にして行う身体検査 は、被収容者のしゅう恥心や名誉感情を害する度合いが大きいから、上記の目的達成のために真に必要な場合に行われるべきものであると解される。したがって、刑事施設の長が 者を全裸にして行う身体検査 は、被収容者のしゅう恥心や名誉感情を害する度合いが大きいから、上記の目的達成のために真に必要な場合に行われるべきものであると解される。したがって、刑事施設の長が、被収容者に対する身体検査を上記の必要かつ合理的な範囲を超えて行ったと認められる場合には、その身体検査の実施は、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして、国家賠償法1条1 項上の違法が あるというべきである。 ⑶ 本件身体検査は、原告が受刑者Aから暴行を受けたとする部位の正確な特定及び同部位以外の部位を含めた身体状況の記録化のために行われたものである(前提事実)ところ、被告は、本件身体検査を実施する必要性について、原告が受刑者Aから受けたとする暴行について新たな申述をする可能性があ り、その申述の当否の認定が困難になることが予想された旨を主張する。 確かに、前提事実イ、オ及びカのとおり、原告は、令和2年9月30日の事情聴取の際には、受刑者Aから暴行受けたことを話しておらず、同年10月2日になって、「受刑者Aから原告の右足小指側を踏まれ、右手拳で腹を殴られた」旨を述べている(なお、原告は、調査年月日を「令和2年10月2日」 とする乙6号証の供述調書に「第102号視察表関係」との記載があること等 から、上記供述調書は同月5日に作成されたものである旨主張するが、上記記載が必ずしも上記供述調書の作成時に同時にされたものとは限らず、他に上記供述調書が同月5日に作成されたと認めるに足りる証拠はないから、原告の上記主張は採用できない。)。しかし、原告は、同年9月30日の事情聴取の際に、受刑者Aからの暴行の有無について問われたのに対して「ない」旨を答え たのではなく、問われていないから積極的に話していない 主張は採用できない。)。しかし、原告は、同年9月30日の事情聴取の際に、受刑者Aからの暴行の有無について問われたのに対して「ない」旨を答え たのではなく、問われていないから積極的に話していない(問われたことに対してのみ答えていた)というにとどまるから、同年10月2日の取調べにおいて原告の供述が変遷したとは評価できない。そして、同日の取調べにおける、受刑者Aから受けたとする暴行に関する原告の供述内容は、同月5日の取調べの段階でも一貫しており変遷はない。なお、被告は、原告が「足も蹴られた。」 旨も申し出たとして、原告から新たな申述がされることが続いた旨主張するが、原告が「右足小指側を踏まれた」暴行とは異なる暴行として「足も踏まれた」旨を申し出たと認めるに足りる的確な証拠はなく、仮にそのような発言をしていたとしても、同月5日の取調べで「受刑者Aが左足で原告の右足を踏み、右手で原告の腹部を殴った。」と直ちに訂正したといえるから(前提事実ク)、 上記認定に影響しない。 このように、令和2年10月2日以後に原告が供述する、受刑者Aから受けたとする暴行の内容は一貫しているのであり、加えて、同月5日の取調べの際には、原告が(同年9月30日の事情聴取のときとは異なり)受刑者Aから受けた暴行はほかにはない旨を明言していることを踏まえると、原告がその後に、 受刑者Aから受けたとする暴行を新たに追加して申し出ることが具体的に予想される状況であったとは認め難い。 そもそも、本件身体検査は、刑事収容施設法154条2項に基づき、反則行為の有無及び適切な懲罰を科するために考慮すべき事情の有無等の調査の一環として実施されたものであるところ、原告の反則行為については原告自身が これを認めているのであるから(前提事実イ、カ)、本 の有無及び適切な懲罰を科するために考慮すべき事情の有無等の調査の一環として実施されたものであるところ、原告の反則行為については原告自身が これを認めているのであるから(前提事実イ、カ)、本件身体検査の目的と される「原告が受刑者Aから暴行を受けたとする部位の正確な特定及び身体状況の記録化」は、主として、適切な懲罰を科するために原告側の情状として考慮すべき事情の調査のためであると解される。そのような調査の対象、目的に照らせば、上記のとおり原告からの新たな暴行被害の申出が具体的に予想されない状況下で、「受刑者Aから受けた暴行はほかにはない」旨の発言を翻して ほかにも暴行を受けたと供述を変遷させた場合を想定し、その変遷させた供述の真偽を裏付けるための客観的証拠を残さなければ、適切な懲罰を科すことができなくなるものとは考え難い。 そうすると、本件身体検査においては、原告が受刑者Aから暴行を受けたと供述する、原告の腹部や右足を中心に検査をすれば足りると考えられ、それ以 外の部位を検査する必要性が高いものであったとは認め難く、まして、扉が開放され通路を通過する職員等の目に触れ得る状況で、原告を全裸にさせた上で股間付近や臀部にまで検査範囲を広げて撮影することが、原告の名誉感情やしゅう恥心を大きく害することを考慮してもなお必要な検査であったとは認められないというべきである。なお、被告は、本件身体検査の際に、甲刑務所職 員は原告の身体に触れないように配慮し、原告の陰部や肛門自体を被写体として撮影しておらず、他の被収容者等の目につかない場所で短時間で検査を終えるなど、できる限り原告のしゅう恥心を害しないように配慮していた旨主張する。しかし、上記のとおりそもそも全裸の状態で本件身体検査を実施する必要性自体が認め 者等の目につかない場所で短時間で検査を終えるなど、できる限り原告のしゅう恥心を害しないように配慮していた旨主張する。しかし、上記のとおりそもそも全裸の状態で本件身体検査を実施する必要性自体が認められない上、被告主張のような配慮がされていたとしても、全裸 の状態で股間付近にカメラを向けられることや、写真として記録化されること自体によって、名誉感情やしゅう恥心は大きく害されるのであり、仮に撮影範囲を一定程度広げるとしても、下着を着用させたまま、下着の一部をめくるなどして記録化することも可能であったといえるから、被告の上記主張は結論に影響しない。 したがって、甲刑務所長による本件身体検査は、その目的に照らし必要かつ 合理的な範囲を超えるものといわざるを得ず、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして、国家賠償法1条1項上の違法があると認められる。なお、原告は、本件身体検査の際に甲刑務所職員から陰部を握られた、陰部や肛門の写真撮影をされた等とも主張するが、証拠保全(前提事実)の結果を含め、同事実を認めるに足りる証拠はなく、上記主張は採用できない。 そして、上記のとおり認定、説示したところによれば、甲刑務所長には、違法な本件身体検査を行うにつき、過失があったと認めるのが相当である。 原告が、上記において指摘した態様等で本件身体検査を実施されたことにより、しゅう恥心及び名誉感情を著しく傷つけられ精神的苦痛を被ったことは容易に認めることができ、これに対する慰謝料としては10万円を、上記損害 と相当因果関係のある弁護士費用としては1万円をそれぞれ認めるのが相当である。 2 争点2(甲刑務所長が令和2年10月13日から令和3年5月14日までの間、原告に対して実施した本件物品制限及び本件カメ 当因果関係のある弁護士費用としては1万円をそれぞれ認めるのが相当である。 2 争点2(甲刑務所長が令和2年10月13日から令和3年5月14日までの間、原告に対して実施した本件物品制限及び本件カメラ室処遇につき、それぞれ国家賠償法上の違法性及び故意又は過失が認められるか[損害論を含む。]) ⑴ 認定事実前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ア本件身体検査が実施された令和2年10月5日から、本件カメラ室処遇及び本件物品制限が解除された令和3年5月14日までの間に、原告が食事の受取りを拒否するなどの不食をした日は、別紙3の赤色枠の日である。なお、 別紙3の黄色部分の数字はその日に処方された経腸栄養剤(エンシュア)の本数である。(乙18、乙63、弁論の全趣旨)。 イ原告は、令和2年10月7日の夕食から断続的に不食をし、同月10日の朝食から同月16日の昼食まで、合計38食連続して不食をした(別紙3)。 原告は、食事を提供する甲刑務所職員に対し、不食の理由について、「食欲 がない」、「食べられない」、「いらない」などと述べていた(乙18)。 原告は、令和2年10月12日、食事を8食分連続して食べていないということで、医務室において、バイタル(血圧、脈拍、体重)の測定が実施された。体重は56.8kgであったところ、原告は、甲刑務所職員に対し、「過去に40kgまで体重が落ちたことがある。まだまだいける。」などと述べ、食事や水分を取るよう指導されても、これを拒否した。(乙63) 令和2年10月13日、原告に対し、要注意者B(自殺・自傷)の指定がされた上、本件カメラ室処遇及び本件物品制限が開始された(前提事実)。 ウ甲刑務所職員は、令和2年10月15 63) 令和2年10月13日、原告に対し、要注意者B(自殺・自傷)の指定がされた上、本件カメラ室処遇及び本件物品制限が開始された(前提事実)。 ウ甲刑務所職員は、令和2年10月15日、不食を続けている原告と面談した。原告は、食事を取らない理由について問われたのに対し、「今回の反則調査はおかしい。」、「何も言っても変わらない。」、「徹底的にやってやる。」、「一 番の原因は、反則調査になった際、全裸写真を撮られたこと(本件身体検査)だ。」、「これ(不食)が刑務所にとっても、あの職員にも一番効くんだよ。」などと述べ、どのようにしたら食事を取るのかとの質問に対しては、「腹をくくったので誰の話も聞かない、倒れても点滴も受けないし、いずれ押さえつけられて栄養剤を入れるだろうが全て拒否する。このまま食べず、30k g台までいってやる。」、「C型肝炎の持病を持っている。」、「身体が壊れようが、あの職員を最大限困らせたい。」旨述べた。また、原告は、同日、甲刑務所職員に対し、「本当に心配しているならもっと他に言い方がある、そんなんだったらやることやるし、物品制限されてもいくらでもやれるんだから」などと述べた。(乙21、71) エ原告は、令和2年10月16日、受刑者Aとの争論及び同人に対する暴行の反則行為について、閉居25日の懲罰を科された(前提事実)。 原告は、同日、甲刑務所医師の診察を受け、それまで経口摂取を勧められても拒否していたが、食べる努力をする、夕食から食べるなどと述べ、現に、同日の夕食から食事を取るようになった(乙63)。 しかし、原告は、その後も、令和2年10月20日、甲刑務所医師による 診察の際に、反則調査の件であれこれ不満を述べ、「まだ納得はしてない」などと うになった(乙63)。 しかし、原告は、その後も、令和2年10月20日、甲刑務所医師による 診察の際に、反則調査の件であれこれ不満を述べ、「まだ納得はしてない」などと述べた。また、原告は、同月13日には精神科医師の診察を受け、同医師に対しても処遇に関する不平不満を述べるなどし、精神安定剤の処方を受けた。(乙63、65、66)オ原告は、令和2年11月7日の夕食から同月10日の朝食まで、8食連続 して不食をした(別紙3)。原告は、食事を提供される都度、「食欲がない。」、「食べられない。」などと言って拒否した。原告は、同月9日及び10日、甲刑務所医師による診察等の際に、カメラ室に入ったことへの不満をぶちまけるなどした。(乙18、63)カ原告は、令和2年11月25日の朝食から同年12月18日の昼食まで、 断続的に合計61食、不食をした(別紙3)。 原告は、令和2年11月25日、妹宛ての信書に、「私がメシ食べられなくなったのは、ここの主任の性的暴行、脅迫があったからで、なぜこんなところに閉じ込められて、今日で41日目、どっちが犯罪者だよ。これから先まだずっとここに居ると思うけど、私に何かあったらここのせいだよ!必ず 騒いでな。」などと記載した(乙73)。 原告は、令和2年11月26日、甲刑務所医師の診察を受けた際、食事を取らない理由について、「ストレスを超えるイライラで何も喉を通らない」などと述べた。なお、同日の体重は55kgであった。(乙63)原告は、令和2年11月30日、甲刑務所医師の診察等の際に、体調を問 われ、「元気です。仕事もしているし。」などと答えたが、処遇に対する不満も述べた。また、原告は、同日、精神科医師の診察も受け、精神安定剤の処方を受 0日、甲刑務所医師の診察等の際に、体調を問 われ、「元気です。仕事もしているし。」などと答えたが、処遇に対する不満も述べた。また、原告は、同日、精神科医師の診察も受け、精神安定剤の処方を受けた。(乙63、65、68)原告は、令和2年12月1日、甲刑務所職員に対し、「今後管を入れようとしたら暴れるし、針を刺したら引き抜いて血を逆流させる。」、「今後も 食事を取るつもりはない。」などと話した(乙63)。 原告は、令和2年12月3日、甲刑務所医師の診察の際に、処遇への不満を長々と話すほか、食事再開のためにエンシュアを処方したりおかゆに変更したりすることは拒否し、食事再開時には自分でスープを飲むなどして開始する旨を述べた。なお、同日の体重は55.2kgであった。(乙63)原告は、令和2年12月7日、甲刑務所職員から、少しずつ食事を取るよ う指導され、同月8日の昼食から食事を取り始めたが、同月10日、甲刑務所医師の診察の際に、「食事を開始してお腹が痛い。」、「お腹が減らない、ストレスかもしれない。」などと述べて休養を希望し、全身倦怠感と診断された。(乙63)原告は、令和2年12月14日、甲刑務所医師の診察の際に、「食べない のではなく、食べられない。」、「寒くて寝れない。」などと訴えたため、安静度3とされた。原告は、その後の昼食を不食とし、甲刑務所職員から1口でも食べられないのかと問われたのに対し、笑いながら「もう死ぬよ。」などと述べたが、エンシュアは服用し、同日の夕食は全て喫食した。(乙46、63) 原告は、令和2年12月15日、甲刑務所医師の診察の際に、「食事は全て喫食し、エンシュアも飲んでいる。そのせいで、胃腸が痛い。不眠も続いている。」などと述べた。同月17日 乙46、63) 原告は、令和2年12月15日、甲刑務所医師の診察の際に、「食事は全て喫食し、エンシュアも飲んでいる。そのせいで、胃腸が痛い。不眠も続いている。」などと述べた。同月17日の診察時も、体調はすぐれず、気分をまずはなんとかしたいなどと述べていた。(乙63)原告は、令和2年12月18日の夜、甲刑務所職員に対し嘔気や悪寒を訴 え、バイタルを測定した。原告は、不食が続いた後の食事摂取による体調不良が予想される旨の説明に対し、胃腸薬を服用した旨述べた。原告に対し、明日以降、できる限り食事を摂取していくよう指導がされた。(乙63)キ原告は、令和2年12月18日の夕食から、令和3年3月24日の朝食まで、不食を継続することがなかった(別紙3)。 原告は、令和2年12月25日、妹宛ての信書に、「部屋の外に前工場1 5工場の担当が無言でものすごい顔でにらみつけてきました!怖ろしくて食欲が全くなくなりました。こんな圧力を毎日掛けられ食べられる訳がありません。すなわち死ねということです。」などと記載した(乙78)。 ク原告は、令和3年3月24日の昼食から同月27日の朝食までの合計9食及び同月28日の朝食から同月30日の昼食までの合計8食を不食とした が、同日の夕食からはほとんど不食をすることがなかった(別紙3)。 ケ甲刑務所職員が、令和3年4月13日、原告との面談を実施したところ、原告は、甲刑務所職員に対し、「以前は意地になって拒食をしたが、今は全て食べている。現在のカメラ室から普通の居室に転室し、物品制限も解除してもらいたい。最終的には工場に戻りたいと思っている。一般工場であればど こにでも行く。」などと述べた(乙22)。 コ令和3年5月14日、原告について、要注意者B に転室し、物品制限も解除してもらいたい。最終的には工場に戻りたいと思っている。一般工場であればど こにでも行く。」などと述べた(乙22)。 コ令和3年5月14日、原告について、要注意者B(自殺・自傷)から要視察者(自殺・自傷)に指定変更がされ、本件カメラ室処遇及び本件物品制限がいずれも解除された(前提事実)。 サ原告は、令和3年7月13日、精神科医師による診察の際に、過去の不平 不満を様々に述べた。同医師は、原告について、変な完璧主義があって、何事につけ納得することはなく、偏屈で人間関係の構築ができないため、社会でのトラブルが不可避であろうなどと判断した。(乙65)⑵ア刑事収容施設法は、刑事収容施設の適正な管理運営を図るとともに、被収容者の人権を尊重しつつ、これらの者の状況に応じた適切な処遇を行うこと を目的とするものであり(1条)、この目的の下、刑事収容施設の適正な管理運営に関し、刑事施設の規律及び秩序は適正に維持されなければならない旨を明確に定める一方(73条1項)、そのために執る措置は、被収容者の収容を確保しその処遇のための適切な環境及び安全かつ平穏な共同生活を維持するために必要な限度を超えてはならない旨も明記している(同条2項)。 イ刑事収容施設法75条1項は、刑務官は、刑事施設の規律及び秩序を維持 するため必要がある場合には、被収容者の所持品を取り上げて一時保管することができる旨を定めている。同規定によれば、刑事施設の規律及び秩序を維持するため必要がある場合には、受刑者が居室内において所持することのできる物品を制限することも許され、その要否及び範囲等に関する判断は、刑事施設の実情に通じた刑事施設の長の裁量に委ねられているものと解さ れるが、上記アの各規定の趣 居室内において所持することのできる物品を制限することも許され、その要否及び範囲等に関する判断は、刑事施設の実情に通じた刑事施設の長の裁量に委ねられているものと解さ れるが、上記アの各規定の趣旨を踏まえれば、刑事施設の長による上記判断は、被収容者の権利、自由を不当に制限するものであってはならず、その判断が著しく合理性を欠くと認められる場合には、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして、国家賠償法1条1項上違法になるものと解するのが相当である。 ウまた、刑事収容施設法上、本件カメラ室処遇に係る措置の直接の根拠となる規定は置かれていないが、被収容者が主として休息及び就寝のために使用する場所(居室)は刑事施設の長が指定することが前提とされていること(4条3項)や、居室内の監視のためのカメラの設置は、刑務官による居室内の検査や刑事施設の職員による巡回視察を補うものとして相応の必要性及び 合理性を認め得る手段であることを踏まえれば、刑事施設の規律及び秩序を維持するため、被収容者をカメラが設置された居室(カメラ室)に収容することは、刑事施設の長の合理的な裁量に委ねられているものと解される。 しかし、カメラ室処遇は、本件カメラ室処遇について見れば、天井中央に設置されたカメラで居室全体を上方から撮影し、これを録画記録するととも に、職員がモニターで画像を確認するという形態のものであるところ(乙87)、その監視範囲には死角がなく、排泄行為を含む日常生活の動静が24時間監視されることになる点で、被収容者のプライバシー権を制限する結果になることは明らかであるから、上記アの各規定の趣旨も踏まえれば、刑事施設の長の上記裁量の範囲は限定的であり、必要性を慎重に検討することな くカメラ室を居室として指定し、又 ー権を制限する結果になることは明らかであるから、上記アの各規定の趣旨も踏まえれば、刑事施設の長の上記裁量の範囲は限定的であり、必要性を慎重に検討することな くカメラ室を居室として指定し、又は必要性がなくなったにもかかわらず、 漫然とカメラ室への収容を継続するなどした場合には、上記裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとして国家賠償法1条1項上違法となると解するのが相当である。 ⑶ア被告は、令和2年10月13日に本件物品制限及び本件カメラ室処遇を実施し、これらの措置を令和3年5月14日まで7か月間(214日)継続し た理由について、原告が不食を続け、その心情を把握することが困難な状況であったことから、不食の継続により原告の生命身体が害されるおそれが極めて高く、不食以外の方法で衝動的に自傷行為に及ぶおそれもあった旨、令和3年3月頃までの間、不食を繰り返しており、精神的に不安定な状態にあったことから、原告が不食その他の手段による自傷行為に及ぶおそれが十分 にあった旨を主張する。 イ原告は、令和2年10月7日の夕食から断続的に不食をし、同月10日以降は継続的に不食をしているところ、不食の理由については「食欲がない」、「食べれない」などと述べるのみである一方、同月12日には、「過去に40kgまで体重が落ちたことがある。まだまだいける。」などと意図的に不 食をしていることをうかがわせる発言をしたり、水分を取ることも拒否する応答をしたりしていること(認定事実イ)、同月13日の段階で、不食が連続して10食程度に及んでおり、上記のとおり今後も不食を続ける意向を示し、水分摂取も拒否しているなどの事情に照らせば、甲刑務所長において、不食を続ける原告の意図を把握できない中、水分摂取すら拒否する態度を受 程度に及んでおり、上記のとおり今後も不食を続ける意向を示し、水分摂取も拒否しているなどの事情に照らせば、甲刑務所長において、不食を続ける原告の意図を把握できない中、水分摂取すら拒否する態度を受 けて、不食又はその他の方法での自殺自傷の危険性があると判断したことも相応の理由があると認められ、このような原告の自傷行為を防止するため、本件物品制限及び本件カメラ室処遇を開始したことについて、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があったとは認められない。 また、本件物品制限及び本件カメラ室処遇が開始された後も、原告は、前 記認定事実のとおり、「今回の反則調査はおかしい」、「徹底的にやってや る」、「一番の原因は本件身体検査」、「不食が刑務所にもあの職員にも一番効く」、「身体が壊れようがあの職員を最大限困らせたい」などと、本件身体検査に対する不満及びその意趣返しとして不食を継続していることをうかがわせる発言等を繰り返すほか、「腹をくくったので誰の話も聞かない」、「倒れても点滴も受けない」、「針を刺したら引き抜いて血を逆流させる」 などと原告の生命身体を保護する措置を全て拒否するかのような発言や、「物品制限されてもいくらでもやれる」などと不食以外の方法での自殺自傷をほのめかす発言等を繰り返し行っている(認定事実ウ~カ)。確かに、原告は、この間も、甲刑務所医師の勧め等に従って、食事を再開したり、処方されたエンシュアを服用したり、体調不良の際には甲刑務所医師の診察を受 けて処方薬を服用したりするなど、自殺自傷を企図する者の行動とは考えにくい行動をとっていることも少なくなく、生命身体の安全が危ぶまれるほど急激な体重減少もみられない。しかし、他方で、原告は、甲刑務所医師や甲刑務所職員、妹に対し、反則調査や本件カメラ の行動とは考えにくい行動をとっていることも少なくなく、生命身体の安全が危ぶまれるほど急激な体重減少もみられない。しかし、他方で、原告は、甲刑務所医師や甲刑務所職員、妹に対し、反則調査や本件カメラ室処遇等についての強い不満を繰り返し述べ、何も喉を通らないほどのイライラを訴え、笑いながら「も う死ぬよ」などと不穏な発言をするなど、精神的に不安定な状態であったことがうかがわれ、現に、令和2年10月13日及び同年11月30日には精神科医師の診察を受けている。以上に加え、原告が2、3日ないし8日にわたる連続した不食を令和2年12月18日まで繰り返していることも考慮すれば、同日までの間については、全体としてみれば、原告につき不食又は 不食以外の方法での自殺自傷の危険性があると判断したことにも一定の理由があるといえる。 したがって、本件物品制限及び本件カメラ室処遇を開始した令和2年10月13日から、連続した不食が止んだ同年12月18日から一定期間経過するまでの間は、本件物品制限及び本件カメラ室処遇を継続したことについて、 甲刑務所長の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があったとは認め難いとい うべきである。 ウ他方、令和2年12月18日の夕食以後、令和3年3月24日の朝食までの3か月余りの間は、同年1月11日の夕食、同月19日の夕食、同月23日の夕食及び同年2月22日の三食以外に不食はなく、連続して食事を取らない状況は見られない。また、この間も、原告は、妹宛ての書簡で不満を述 べたり(認定事実キ)、甲刑務所医師等に対し処遇に対する不平不満を述べるなどもしているが(乙63)、本件身体検査に問題があったことや本件カメラ室処遇が原告のプライバシー権を制限するものであることは前記1及び上記ウにおいて述べた 師等に対し処遇に対する不平不満を述べるなどもしているが(乙63)、本件身体検査に問題があったことや本件カメラ室処遇が原告のプライバシー権を制限するものであることは前記1及び上記ウにおいて述べたとおりであり、令和2年12月18日以降も本件物品制限及び本件カメラ室処遇が現に継続して行われていることを踏ま えれば、原告が自身に対し行われている処遇に不満を持ちその不服を都度口にしたり、イライラする態度を見せたりするのもやむを得ない面があるといえるのであり、そのような原告の態度や精神的に不安定な様子は、本件物品制限及び本件カメラ室処遇が解除された後の令和3年7月にも同様に見られていること(認定事実サ)にも照らせば、上記の原告の態度等について、 本件物品制限及び本件カメラ室処遇を継続して実施する必要性を根拠付ける主たる事情であるとは評価し難いというべきである。以上のほか、具体的な自傷行為が見られたなど、原告に対し引き続き所持品等の使用制限やプライバシー権の制限を加えてもやむを得ないといえる程度に自殺自傷の現実的、具体的なおそれがあったと認めるに足りる証拠はない。 被告は、原告の不食をきっかけに原告に自殺自傷のおそれがあると判断し、原告の自傷行為等を防ぐために本件物品制限や本件カメラ室処遇を実施し、これらを継続していたのであるから、原告の不食の傾向が落ち着き、自殺自傷を想起させる言動が見られなくなった頃、遅くとも(不食の傾向が落ち着いて2か月程度経過した)令和3年2月中旬頃には、本件物品制限及び本件 カメラ室処遇を継続して実施する必要性について再検討すべきであったと いえる。しかし、本件全証拠に照らしても、甲刑務所において、原告の精神状態や今後についての意向等を把握するために原告と面談するなどして して実施する必要性について再検討すべきであったと いえる。しかし、本件全証拠に照らしても、甲刑務所において、原告の精神状態や今後についての意向等を把握するために原告と面談するなどして、本件物品制限及び本件カメラ室処遇の継続の必要性に関し真摯な検討がされたとの事実は認められない。 そうすると、甲刑務所長は、令和2年12月18日の夕食から令和3年3 月24日の朝食まで原告がほとんど不食をしておらず、その間、本件物品制限の対象となる物品等を用いて自殺自傷に及ぶおそれがあると考えられるような具体的な事情も特段見られない状況であったにもかかわらず、本件物品制限及び本件カメラ室処遇の継続の必要性について改めて検討することなく、これらの措置を漫然と継続したものといえる。本件物品制限及び本件 カメラ室処遇が原告の権利、自由を制限するものであること、特に本件カメラ室処遇は原告のプライバシー権を大きく制限するものであることに照らせば、甲刑務所長が、令和3年2月中旬頃までに本件物品制限及び本件カメラ室処遇の継続の必要性について改めて検討することなく、上記時期以降もこれらの措置を漫然と継続したことは、合理的な裁量の範囲を逸脱し、又は これを濫用したものとして、国家賠償法1条1項上の違法があるというべきである。 そして、上記において認定したところによれば、甲刑務所長には、本件物品制限及び本件カメラ室処遇を上記のとおり漫然と継続したことにつき過失があったと認めるのが相当である。 したがって、本件物品制限及び本件カメラ室処遇は、令和3年2月中旬以降、これらの措置が解除された同年5月14日までの約3か月間については、違法な措置であったと認められるから、被告は、これらの違法な措置により原告が受けた損害を賠償す メラ室処遇は、令和3年2月中旬以降、これらの措置が解除された同年5月14日までの約3か月間については、違法な措置であったと認められるから、被告は、これらの違法な措置により原告が受けた損害を賠償すべき責任を負う。 原告は、上記の違法な本件物品制限により、約3か月の間、本来使用し得る 物品の使用を制限され不自由な生活を強いられたことにより、少なからず精神 的苦痛を受けたと認められ、その慰謝料としては3万円を、同損害と相当因果関係のある弁護士費用としては3000円をそれぞれ認めるのが相当である。 また、原告は、上記の違法な本件カメラ室処遇により、約3か月の間、24時間にわたり排泄行為等を含む全ての生活上の動静を監視カメラで監視され、プライバシー権が制限される状態が継続したことにより、多大な精神的苦痛を 被ったと認められ、その慰謝料としては30万円を認めるのが相当である。また、上記損害と相当因果関係のある弁護士費用としては3万円を認めるのが相当である。 3 争点3(甲刑務所長が、令和3年10月5日付けで優遇区分を第5類から第4類へ変更した後、原告の第4種制限区分を相当期間変更しなかったことにつき、 国家賠償法上の違法性及び故意又は過失が認められるか[損害論を含む。])⑴ 甲刑務所長は、令和2年11月10日、令和3年2月1日、令和3年8月1日及び令和4年2月1日に、原告について、「犯罪の責任の自覚及び悔悟の情並びに改善更生の意欲の程度」が「F(著しく低い)」との評価に基づき、原告の制限区分を第4種と指定し、それに伴い原告を昼夜居室処遇とした(前提 事実 、乙40、41)。 また、甲刑務所長は、令和3年10月1日、原告の優良区分を第5類(受刑態度が不良である受刑者)から第4類(受刑 し、それに伴い原告を昼夜居室処遇とした(前提 事実 、乙40、41)。 また、甲刑務所長は、令和3年10月1日、原告の優良区分を第5類(受刑態度が不良である受刑者)から第4類(受刑態度がやや不良である受刑者)に変更することを決定した(前提事実)。 刑事収容施設法は、被収容者の状況に応じた適切な処遇を行うことを目的と しているところ(1条)、受刑者の処遇は、その者の資質や環境等に応じて行うものとして個別処遇が原則とされ(30条)、その方法は、処遇の目的達成の見込みが高まるに従い生活や行動についての制限を緩和する取扱いとされており(88条1項)、刑事施設の長は、あらかじめ処遇審査会の意見を聴いた上で、上記の見込みについての評価に応じて受刑者を第1種から第4種のい ずれかの制限区分に指定し、これに応じた処遇を行うこととされている(刑事 施設及び被収容者の処遇に関する規則48条1項2項、受刑者の生活及び行動の制限の緩和に関する訓令6条)。評価事項は、①犯罪の責任の自覚及び悔悟の情並びに改善更生の意欲の程度、②勤労意欲の程度並びに職業上有用な知識及び技能の習得状況、③社会生活に適応するために必要な知識及び生活態度の習得状況、④受刑中の生活態度の状況、⑤心身の健康状態、⑥社会生活の基礎 となる学力の有無であり、これを総合的に評価して制限区分の指定を行うものとされている(同訓令4条)。なお、第4種の制限区分は、受刑者のうち「改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図ることができる見込みが低い者」が指定される、最下位の制限区分であり、第4種の制限区分に指定された受刑者については、その矯正処遇等は原則として居室棟内で行う ものとされ(刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則49条5項 者」が指定される、最下位の制限区分であり、第4種の制限区分に指定された受刑者については、その矯正処遇等は原則として居室棟内で行う ものとされ(刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則49条5項)、甲刑務所においても、第4種の制限区分に指定された受刑者については、閉鎖居室とされ、原則として単独室で居室棟内での矯正処遇とされている(乙40・別表3)。 他方、優遇区分の指定は、刑事施設の長が、評価期間における受刑態度の評 価に基づき指定するものであり、その指定された優遇区分に応じて、物品の貸与又は支給、自弁物品の使用又は摂取の許可等について優遇措置を講ずるものとされている(刑事収容施設法89条、刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則53条)。優遇区分の指定における評価事項は、①日常生活等の態度、②賞罰の状況、③作業への取組状況、④各種指導への取組状況、⑤資格の取得状 況であり、これを総合的に評価して優遇区分の指定を行うものとされている(受刑者の優遇措置に関する訓令5条)。第1類(受刑態度が特に良好である受刑者)から第4類(受刑態度がやや不良である受刑者)までの優遇区分に指定されている受刑者は、それぞれ刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則54条各項に定められている優遇措置を受けることになるが、第5類(受刑態度 が不良である受刑者)の優遇区分に指定されている受刑者は、優遇措置を受け ない。 制限区分の指定及び優遇区分の指定のいずれについても、被収容者の処遇に関する判断であり、個別の受刑者に対し、どのような評価を行い、どのような指定を行うかについては、刑事施設の実情及び受刑者の処遇に通じた刑事施設の長の裁量に委ねられていると解される。 甲刑務所長は、上記の刑事収容施設法、刑事施設及び被収容 価を行い、どのような指定を行うかについては、刑事施設の実情及び受刑者の処遇に通じた刑事施設の長の裁量に委ねられていると解される。 甲刑務所長は、上記の刑事収容施設法、刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則、受刑者の生活及び行動の制限の緩和に関する訓令等の各定めを受けて、「受刑者の生活及び行動の制限の緩和に関する細則」(乙40)を制定している。前記のとおり、甲刑務所長は、令和2年11月10日以降、原告の制限区分を第4種に指定しているが、これは、各制限区分の決定に先立つ処遇調査 における定期評価で、評価項目のうちの「犯罪の責任の自覚及び懺悔の情並びに改善更生の意欲の程度」(上記①)についていずれの定期評価においても「F(著しく低い)」と評価され、第4種の制限区分の指定基準に該当したためであり、また、いずれの制限区分の指定においても、処遇審査会の意見を踏まえた上で決定がされている。そうすると、甲刑務所長は、原告の制限区分の 指定については、いずれも上記各法令等の定めに従い行っているものと認められるのであり、これらの指定に関し、裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したことをうかがわせる特段の事情は認められない。 これに対し、原告は、令和3年10月5日付けで原告の優良区分の指定が第5類から第4類に変更されたのに、同変更から相当期間のうちに制限区分が第 4種から変更されなかったことにつき国家賠償法上の違法がある旨主張する。 しかし、上記及びのとおり、制限区分の指定と優遇区分の指定とでは、その目的も評価項目も異なるのであるから、優遇区分の指定が第5類から第4類に変更されたからといって、当然に制限区分の指定を第4種から第3種に変更すべきものとはいえず、それぞれの評価項目の評価に基づき、またその目的等 のであるから、優遇区分の指定が第5類から第4類に変更されたからといって、当然に制限区分の指定を第4種から第3種に変更すべきものとはいえず、それぞれの評価項目の評価に基づき、またその目的等 に照らして変更の要否等について判断されるのが相当であると考えられるか ら、原告の上記主張は採用できない。 他に、制限区分の指定に関し、甲刑務所長に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があったと認めるに足りる証拠はなく、国家賠償法上の違法があるとは認められないから、その余の点について判断するまでもなく、争点3に係る原告の主張はいずれも採用することができない。 4 争点4(原告弁護士が原告宛てに送付した本件各信書の内容を甲刑務所職員が検査したことにつき、国家賠償法上の違法性及び故意又は過失が認められるか[損害論を含む。])刑事収容施設法127条1項は、刑事施設の長は、刑事施設の規律及び秩序の維持、受刑者の矯正処遇の適切な実施その他の理由により必要があると認める場 合には、その指名する職員に、受刑者が発受する信書について検査(以下「1項検査」という。)を行わせることができると定めている。刑事収容施設法129条1項が、刑事施設の長は、上記の検査の結果、受刑者の発受する信書の全部又は一部が、刑事施設の職員が理解できない内容のものであるときや、発受により刑罰法令に触れることとなるおそれがあるとき等には、その発受の差止め等をす ることができる旨を定めていることに照らせば、1項検査は、信書の内容にわたる検査を許容する趣旨と解される。 他方、刑事収容施設法127条2項は、3号信書(受刑者が自己に対する刑事施設の長の措置その他自己が受けた処遇に関し弁護士法3条1項に規定する職務を遂行する弁護士との間で発受する信書) れる。 他方、刑事収容施設法127条2項は、3号信書(受刑者が自己に対する刑事施設の長の措置その他自己が受けた処遇に関し弁護士法3条1項に規定する職務を遂行する弁護士との間で発受する信書)について、同項ただし書の場合を除 き、1項検査は3号信書に該当することの確認のため必要な限度において行う旨を定めている。もっとも、受刑者が発受する信書が3号信書に該当するというためには、単に発受信の相手方が弁護士であるというだけでなく、当該弁護士が刑事収容施設法127条2項3号に定める弁護士であることが必要であり、また、当該弁護士がこれに該当していたとしても、当該信書の内容に同号に定める職務 に関係する記述がなければ、3号信書に該当するとはいえないから、受刑者が発 受する、ある信書が3号信書に該当するか否かを判断するためには、その記述内容を確認する必要があるといえる。したがって、受刑者からの依頼によって、当該受刑者が受けた処遇に関する行政庁への不服申立てに係る法律事務を受任した弁護士から、その受刑者宛てに発信された信書について、3号信書に該当することを確認するために必要な限度において行う検査には、記述内容の検査も含ま れると解するのが相当である。同解釈は、刑事収容施設法127条2項柱書において、3号文書を始めとする同項各号の信書については、内容にわたる検査を許容する趣旨の1項検査を排除するのではなく、「前項の検査(1項検査)は、上記各号の信書に該当することを確認する限度で行うものとする」と定め、1項検査を行うことを前提にその範囲や程度が限定される旨を定めている刑事収容施 設法127条1項及び2項の規定の文言からも裏付けられる。 これを本件についてみると、前提事実及びのとおり、本件各信書はいずれも その範囲や程度が限定される旨を定めている刑事収容施 設法127条1項及び2項の規定の文言からも裏付けられる。 これを本件についてみると、前提事実及びのとおり、本件各信書はいずれも、本件各信書を封入した封筒や本件各信書を包む用紙の各記載から、発信者が原告弁護士であることがうかがわれる体裁のものであり、また、本件信書2については、これが3号信書である旨を告げる本件通知文2があらかじめ甲刑務所に 届いていた。しかし、本件各信書の実際の記述内容は、証拠(甲10)に照らし、その外観からは不明であったといわざるを得ないから、本件各信書が3号信書か否かを判断するためには、本件各信書を包む上記の用紙を外し、その記述内容を見て、発信者が真に原告弁護士であること及びその信書の内容が本件の甲刑務所に対する国家賠償請求訴訟に関するものであることを確認する必要があったと 認められる。 甲刑務所長が本件各信書について職員に行わせた各検査では、本件各信書を包む用紙を外して本件各信書の記述内容の確認が行われているが(前提事実ウ、ウ)、甲刑務所の書信表(乙31、34)に記載された本件各信書の確認結果の内容に照らせば、上記各検査が、3号信書に該当することの確認のために必要 な限度を超えて行われたものであったとはうかがわれず、他にこれを認めるに足 りる証拠はないから、甲刑務所長が職員に行わせた本件各信書の検査が、刑事収容施設法127条2項に反し、国家賠償法上違法な検査であったとは認められない。 よって、その余の点について判断するまでもなく、争点4に関する原告の主張はいずれも採用することができない。 5 小括以上によれば、原告は、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求として、1 ついて判断するまでもなく、争点4に関する原告の主張はいずれも採用することができない。 5 小括以上によれば、原告は、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求として、11万円(前記1(4)〔本件身体検査〕)、3万3000円(前記2(4)〔本件物品制限〕)及び33万円(前記2(4)〔本件カメラ室処遇〕)の合計47万3000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和4年3月18日 から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 第4 結論よって、原告の請求は、上記第3の5記載の限度で理由があるからその限度でこれを認容し、その余の請求は理由がないからこれを棄却することとし、主文第4項のとおり仮執行宣言及び同免脱宣言を付すこととして、主文のとおり判決す る。 岐阜地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官松田敦子 裁判官井口礼華は、差支えのため、署名押印することができない。 裁判官桑原周大は、転補のため、署名押印することができない。 裁判長裁判官松田敦子 別紙1〇刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(平成17年法律第50号)(目的)第一条この法律は、刑事収容施設(刑事施設、留置施設及び海上保安留置施設をいう。)の適正な管理運営を図るとともに、被収容者、被留置者及び海上保安被留 置者の人権を尊重しつつ、これらの者の状況に応じた適切な処遇を行うことを目的とする。 (受刑者の処遇の原則)第三十条受刑者の処遇は、その者の年齢、資質及び環境に応じ、その自覚に訴え、改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を た適切な処遇を行うことを目的とする。 (受刑者の処遇の原則)第三十条受刑者の処遇は、その者の年齢、資質及び環境に応じ、その自覚に訴え、改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図ることを旨と して行うものとする。 (物品の貸与等)第四十条被収容者には、次に掲げる物品(書籍等を除く。以下この節において同じ。)であって、刑事施設における日常生活に必要なもの(第四十二条第一項各号に掲げる物品を除く。)を貸与し、又は支給する。 一衣類及び寝具二~三 (略) 2 (略)(自弁の物品の使用等)第四十一条刑事施設の長は、受刑者が、次に掲げる物品(次条第一項各号に掲げ る物品を除く。次項において同じ。)について、自弁のものを使用し、又は摂取したい旨の申出をした場合において、その者の処遇上適当と認めるときは、法務省令で定めるところにより、これを許すことができる。 一~四 (略)五日用品、文房具その他の刑事施設における日常生活に用いる物品 2 (略) (刑事施設の規律及び秩序)第七十三条刑事施設の規律及び秩序は、適正に維持されなければならない。 2 前項の目的を達成するため執る措置は、被収容者の収容を確保し、並びにその処遇のための適切な環境及びその安全かつ平穏な共同生活を維持するため必要な限度を超えてはならない。 (遵守事項等)第七十四条刑事施設の長は、被収容者が遵守すべき事項(以下この章において「遵守事項」という。)を定める。 2 遵守事項は、被収容者としての地位に応じ、次に掲げる事項を具体的に定めるものとする。 一 (略)二他人に対し、粗野若しくは乱暴な言動をし、又は迷惑を及ぼす行為をしてはならないこと。 三~十一 (略 容者としての地位に応じ、次に掲げる事項を具体的に定めるものとする。 一 (略)二他人に対し、粗野若しくは乱暴な言動をし、又は迷惑を及ぼす行為をしてはならないこと。 三~十一 (略) 3 (略) (身体の検査等)第七十五条刑務官は、刑事施設の規律及び秩序を維持するため必要がある場合には、被収容者について、その身体、着衣、所持品及び居室を検査し、並びにその所持品を取り上げて一時保管することができる。 2~4 (略) (制限の緩和)第八十八条受刑者の自発性及び自律性を涵かん養するため、刑事施設の規律及び秩序を維持するための受刑者の生活及び行動に対する制限は、法務省令で定めるところにより、第三十条の目的を達成する見込みが高まるに従い、順次緩和されるものとする。 2 前項の場合において、第三十条の目的を達成する見込みが特に高いと認められる受刑者の処遇は、法務省令で定めるところにより、開放的施設(収容を確保するため通常必要とされる設備又は措置の一部を設けず、又は講じない刑事施設の全部又は一部で法務大臣が指定するものをいう。以下同じ。)で行うことができる。 (優遇措置)第八十九条刑事施設の長は、受刑者の改善更生の意欲を喚起するため、次に掲げる処遇について、法務省令で定めるところにより、一定の期間ごとの受刑態度の評価に応じた優遇措置を講ずるものとする。 一第四十条第二項の規定により物品を貸与し、又は支給すること。 二第四十一条第一項の規定により自弁の物品の使用又は摂取を許すこと。 三第百十一条の面会をすることができる時間又は回数を定めること。 四その他法務省令で定める処遇(発受を許す信書)第百二十六条刑事施設の長は、受刑者(未決拘禁者と 用又は摂取を許すこと。 三第百十一条の面会をすることができる時間又は回数を定めること。 四その他法務省令で定める処遇(発受を許す信書)第百二十六条刑事施設の長は、受刑者(未決拘禁者としての地位を有するものを 除く。以下この目において同じ。)に対し、この目、第百四十八条第三項又は次節の規定により禁止される場合を除き、他の者との間で信書を発受することを許すものとする。 (信書の検査)第百二十七条刑事施設の長は、刑事施設の規律及び秩序の維持、受刑者の矯正処 遇の適切な実施その他の理由により必要があると認める場合には、その指名する職員に、受刑者が発受する信書について、検査を行わせることができる。 2 次に掲げる信書については、前項の検査は、これらの信書に該当することを確認するために必要な限度において行うものとする。ただし、第三号に掲げる信書について、刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあると認める べき特別の事情がある場合は、この限りでない。 一~二 (略)三受刑者が自己に対する刑事施設の長の措置その他自己が受けた処遇に関し弁護士法第三条第一項に規定する職務を遂行する弁護士(弁護士法人及び弁護士・外国法事務弁護士共同法人を含む。以下この款において同じ。)との間で発受する信書 (信書の内容による差止め等)第百二十九条刑事施設の長は、第百二十七条の規定による検査の結果、受刑者が発受する信書について、その全部又は一部が次の各号のいずれかに該当する場合には、その発受を差し止め、又はその該当箇所を削除し、若しくは抹消することができる。 同条第二項各号に掲げる信書について、これらの信書に該当することを確認する過 程においてその全部又は一部が次の各号のいずれかに該当 止め、又はその該当箇所を削除し、若しくは抹消することができる。 同条第二項各号に掲げる信書について、これらの信書に該当することを確認する過 程においてその全部又は一部が次の各号のいずれかに該当することが判明した場合も、同様とする。 一暗号の使用その他の理由によって、刑事施設の職員が理解できない内容のものであるとき。 二発受によって、刑罰法令に触れることとなり、又は刑罰法令に触れる結果を生 ずるおそれがあるとき。 三~六 (略) 2 (略)(懲罰の要件等)第百五十条刑事施設の長は、被収容者が、遵守事項若しくは第九十六条第四項(第 百六条の二第二項において準用する場合を含む。)に規定する特別遵守事項を遵守せず、又は第七十四条第三項の規定に基づき刑事施設の職員が行った指示に従わなかった場合には、その被収容者に懲罰を科することができる。 2 懲罰を科するに当たっては、懲罰を科せられるべき行為(以下この節において「反則行為」という。)をした被収容者の年齢、心身の状態及び行状、反則行為の 性質、軽重、動機及び刑事施設の運営に及ぼした影響、反則行為後におけるその 被収容者の態度、受刑者にあっては懲罰がその者の改善更生に及ぼす影響その他の事情を考慮しなければならない。 3 (略)(反則行為の調査)第百五十四条刑事施設の長は、被収容者が反則行為をした疑いがあると思料する 場合には、反則行為の有無及び第百五十条第二項の規定により考慮すべき事情並びに前条の規定による処分の要件の有無について、できる限り速やかに調査を行わなければならない。 2 刑事施設の長は、前項の調査をするため必要があるときは、刑務官に、被収容者の身体、着衣、所持品及び居室を検査させ、並びにその所持品を取り上げて一 限り速やかに調査を行わなければならない。 2 刑事施設の長は、前項の調査をするため必要があるときは、刑務官に、被収容者の身体、着衣、所持品及び居室を検査させ、並びにその所持品を取り上げて一 時保管させることができる。 3~6 (略) 〇刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則(平成18年法務省令第57号)(受刑者の自弁の物品の使用等) 第十五条受刑者には、法第四十一条第一項各号に掲げる物品(法第四十二条第一項各号に掲げる物品を除く。以下この条及び次条において同じ。)について、この条の定めるところにより、必要な数量の範囲内で、自弁のものの使用又は摂取を許すことができるものとする。 2~4 (中略) 5 受刑者には、法第四十一条第一項第五号に掲げる物品は、サンダル、座布団及び余暇時間帯における娯楽的活動に用いる物品(法務大臣が定める品名のものに限る。)について、優遇措置として自弁のものの使用を許すほか、次に掲げる物品(法務大臣が定める品名のものに限る。)について、自弁のものの使用を許すことができるものとする。 一タオル、石けん、洗髪剤、洗顔用具、調髪用具、靴その他の日用品 二~三 (略)6~7 (略)(制限の緩和)第四十八条刑事施設の規律及び秩序を維持するための受刑者の生活及び行動に対する制限は、開始時指導が終了した受刑者について、第一種、第二種、第三種又 は第四種の区分(以下「制限区分」という。)を指定し、又はその指定を変更し、その制限区分の指定に応じ次条に定めるところにより処遇を行うことにより、順次緩和するものとする。 2 刑事施設の長は、開始時指導を終了した後速やかに、法第三十条の目的を達成する見込みを評価し、その評価に応じて、制限区分を指定するもの ところにより処遇を行うことにより、順次緩和するものとする。 2 刑事施設の長は、開始時指導を終了した後速やかに、法第三十条の目的を達成する見込みを評価し、その評価に応じて、制限区分を指定するものとする。 3 (略)(居室の指定等)第四十九条1~4 (略) 5 第四種の制限区分に指定されている受刑者については、矯正処遇等は、刑事施 設内において、特に必要がある場合を除き、居室棟内で行うものとする。 6 (略)(優遇措置)第五十三条優遇措置は、次に定めるところにより、受刑者について、その受刑態度の評価に基づき優遇区分を指定し、その区分に応じて処遇を行うことにより、 講ずるものとする。 一優遇区分は、第一類、第二類、第三類、第四類及び第五類の区分とする。 二刑事施設の長は、四月から九月まで又は十月から翌年三月までの期間(以下「評価期間」という。)の初日以前から継続して刑事施設において刑の執行を受けている受刑者又は評価期間の末日に優遇区分の指定を受けている受刑者であ って、その評価期間内に一月以上刑の執行を受けたものについて、その評価期 間が経過した後十日以内に、その評価期間における受刑態度の評価に基づき、優遇区分を指定するものとする。 三~九 (略)九第一類から第四類までの優遇区分に指定されている受刑者には、法及びこの規則の規定の範囲内で、次条に定めるところによる処遇を行うものとする。 (処遇内容)第五十四条第一類の優遇区分に指定されている受刑者には、次に掲げる処遇を行うものとする。 一~七 (略)2・3 (略) 4 第四類の優遇区分に指定されている受刑者には、次に掲げる処遇を行うものとする。 一受刑者が発信を申請することができる信書 処遇を行うものとする。 一~七 (略)2・3 (略) 4 第四類の優遇区分に指定されている受刑者には、次に掲げる処遇を行うものとする。 一受刑者が発信を申請することができる信書の通数を一月につき五通以上に定めること。 二刑事施設の長が第四類の優遇区分に指定されている受刑者に行う処遇として 定めるもの 〇被収容者に係る物品の貸与、支給及び自弁に関する訓令(平成19年5月30日矯成訓3339法務大臣訓令)(乙36)(被収容者に貸与する衣類及び寝具) 第2条刑事施設の長は、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(中略)第40条第1項第1号の規定に基づき、被収容者に対し、別表1に掲げる衣類及び寝具を貸与するものとする。 2 (略)(受刑者の自弁の日用品、文房具その他の刑事施設における日常生活に用いる部品) 第7条規則第15条5項の規定により受刑者に自弁を許すことができる日用品、文房具その他の刑事施設における日常生活に用いる物品及び受刑者に優遇措置として自弁のものの使用を許す余暇時間帯における娯楽的活動に用いる物品の品名は、別表7のとおりとする。 〇甲刑務所要注意被収容者等処遇基準(平成22年12月18日付け達示第24号)(乙37)(要注意者等の種別)第2条要注意者等の種類は、要注意者と要視察者(以下「要注意者等」という。)の二種とする。 2 要注意者とは、闘争、自殺その他の事故をじゃっ起するなど、正常な施設の管理運営を阻害する行為に出たことがあるか、又はそのおそれが十分に認められ、特に注意して視察をする必要がある者をいう。 3 要視察者とは、要注意者に指定するまでには至らないが、逃走、自殺、その他の事故をじゃっ起した経歴を有する とがあるか、又はそのおそれが十分に認められ、特に注意して視察をする必要がある者をいう。 3 要視察者とは、要注意者に指定するまでには至らないが、逃走、自殺、その他の事故をじゃっ起した経歴を有するが、一応の心情安定等が認められる者及び当該行 為の経歴はないが、言動等に軽度な変異が見られ、要注意者に準じて動静視察等に注意を払う必要がある者をいう。 (要注意者等の指定及び処遇基準)第3条要注意者等の種別ごとの指定及び処遇基準は、「要注意者等の指定及び処遇基準」(別紙1)のとおりとし、指定種別は重複させて差し支えない。 別紙1 1 現に自殺(自傷)を企図し、なお心情不安定な者2~8 (略) 9 食欲不振又は不眠状態が継続しているなど、日常生活に不安定な状態が認められる者10~14 (略) (判定区分) 第4条前条の基準に該当する場合においては、次の各号に掲げる区分に振り分けるものとし、その意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。 ⑴ (略)⑵ 要注意者B(要注意者)当該行為の経歴があり、当該行為を行うおそれが十分に認められ、特に注意して 視察又は対応する必要がある者⑶ (略)⑷ 要視察者要注意者の指定を解除したものの、引き続き経過観察をすることが望ましい者、又は精神疾患等が原因と思料される特異動静が認められる者で、動静に注意して視 察を必要とする者 〇受刑者の生活及び行動の制限の緩和に関する訓令(平成18年5月23日付け法務省矯成訓3321法務大臣訓令)(乙38)(制限区分の指定) 第3条制限区分は、法第85条第1項第1号に定める指導が終了した受刑者(未決拘禁者としての地位を有するものを 23日付け法務省矯成訓3321法務大臣訓令)(乙38)(制限区分の指定) 第3条制限区分は、法第85条第1項第1号に定める指導が終了した受刑者(未決拘禁者としての地位を有するものを除く。)について、次の各号に掲げる制限区分に応じ、それぞれ当該各号に定める者を指定するものとする。 ⑴ 第1種改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図ることができる見込みが特に高い者。 ⑵ 第2種改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図ることができる見込みが高い者。 ⑶ 第3種改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図ることができる見込みが中程度である者。 ⑷ 第4種改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図るこ とができる見込みが低い者。 (制限区分の評価事項)第4条前条の指定は、次に掲げる事項を総合的に評価して行うものとする。 ⑴ 犯罪の責任の自覚及び悔悟の情並びに改善更生の意欲の程度⑵ 勤労意欲の程度並びに職業上有用な知識及び技能の習得状況⑶ 社会生活に適応するために必要な知識及び生活態度の習得状況 ⑷ 受刑中の生活態度の状況⑸ 心身の健康状態⑹ 社会生活の基礎となる学力の有無(制限区分の指定及びその指定の変更の手続)第6条刑事施設の長は、第3条又は前条の規定により制限区分を指定し、又はその 指定を変更しようとするときには、あらかじめ、受刑者の処遇調査に関する訓令第 11 条に規定する処遇審査会を開催し、その意見を聴くものとする。 〇受刑者の生活及び行動の制限の緩和に関する訓令の運用について(依命通達)(平成18年5月23日付け法務省矯成第3322矯正局長依頼通達)(乙39) 1 制限区分 見を聴くものとする。 〇受刑者の生活及び行動の制限の緩和に関する訓令の運用について(依命通達)(平成18年5月23日付け法務省矯成第3322矯正局長依頼通達)(乙39) 1 制限区分の評価の基準(訓令第3条及び第5条)訓令第3条又は第5条に規定する制限区分の指定又はその指定の変更に当たっては、訓令第4条各号に掲げる事項の評価に応じて、次の基準により行うこと。 ~(略)⑷ 第4種の指定基準 第4種の指定は、次のいずれかに該当すると認められる場合に限ること。 ア犯罪の責任の自覚及び悔悟の情並びに改善更生の意欲の程度犯罪の責任の自覚及び悔悟の情並びに改善更生の意欲の程度が著しく低いこと。 イ勤労意欲の程度並びに職業上有用な知識及び技能の習得状況 正当な理由なく作業を怠るなど勤労意欲が著しく低いこと。 ウ社会生活に適応するのに必要な知識及び生活態度の習得状況集団処遇が困難な状況であること。 エ受刑中の生活態度の状況生活態度が不良な状況が継続し、又は継続する見込みがあること。 〇受刑者の生活及び行動の制限の緩和に関する細則(平成24年1月25日付け達示第1号、改正平成30年5月28日付け達示第13号)(乙40)(制限区分の種類及び評価基準)第3条制限区分の種類及び評価基準は、次の各号のとおりとする。 ⑴~⑸ (略) ⑹ 第4種改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図ることができる見込みが著しく低い者(制限の緩和措置)第8条制限区分ごとの緩和措置について、別表3(略)のとおりとする。 〇受刑者の優遇措置に関する訓令(平成18年5月23日付け矯成訓第3323号法務大臣訓令)(乙42)(優遇区分の指定又 制限区分ごとの緩和措置について、別表3(略)のとおりとする。 〇受刑者の優遇措置に関する訓令(平成18年5月23日付け矯成訓第3323号法務大臣訓令)(乙42)(優遇区分の指定又はその指定の変更)第4条規則第53条第2号から第4号までの規定により優遇区分を指定し、又は優遇区分の指定を変更するに当たっては、次の各号に掲げる優遇区分に応じ、それぞ れ当該各号に定める受刑者を指定するものとする。 ⑴ 第1類受刑態度が特に良好である受刑者⑵ 第2類受刑態度が良好である受刑者⑶ 第3類受刑態度が普通である受刑者⑷ 第4類受刑態度がやや不良である受刑者 ⑸ 第5類受刑態度が不良である受刑者 第5条前条の指定は、次に掲げる事項を総合的に評価して行うものとする。 ⑴ 日常生活等の態度⑵ 賞罰の状況⑶ 作業への取組状況⑷ 各種指導への取組状況 ⑸ 資格の取得状況
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