- 1 -主文 本件訴えのうち,原告に対する平成20年10月7日付けの退去強制令書発付処分,同日付けの原告が退去強制対象者に該当すると認定する処分及び同年11月5日付けの原告の仮放免を許可しない処分の取消しを求める訴えに係る請求をいずれも棄却する。 本件訴えのうち,原告の仮放免を許可する処分及び原告の在留を特別に許可する処分の義務付けを求める訴えをいずれも却下する。 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実 及び理由第1請求 東京入国管理局主任審査官が平成20年10月7日付けで原告に対してした退去強制令書発付処分を取り消す。 東京入国管理局入国審査官が平成20年10月7日付けで原告に対してした原告が退去強制対象者に該当すると認定する処分を取り消す。 3(1)東京入国管理局主任審査官が平成20年11月5日付けで原告に対してした原告の仮放免を許可しない処分を取り消す。 (2)東京入国管理局主任審査官は,原告に対し,仮放免を許可せよ。 法務大臣は,原告に対し,在留を特別に許可せよ。 第2事案の概要 本件は,中国(台湾)国籍を有する外国人女性である原告が,①東京入国管理局(以下「東京入管」という)入国審査官から,退去強制対象者(出入国。 管理及び難民認定法(以下「入管法」という)24条4号ロ(不法残留)に。 該当し,かつ,出国命令対象者に該当しない外国人)に該当する旨の認定(以下「本件認定処分」という。)を受けた上,入管法48条の口頭審理の請求を放棄したものとして,東京入管主任審査官から入管法47条5項に基づき退去強制令書(以下「本件退令書」という)の発付処分(以下「本件退令処分」。 - 2 -という。)を受けたところ,原告の日本語能力及び入国審査官の説明が不十分であったために口頭審理の請求及びその放棄の 強制令書(以下「本件退令書」という)の発付処分(以下「本件退令処分」。 - 2 -という。)を受けたところ,原告の日本語能力及び入国審査官の説明が不十分であったために口頭審理の請求及びその放棄の意味を理解しないまま口頭審理放棄書に署名したので,本件認定処分及び本件退令処分は違法であるとして,これらの取消しを求めるとともに,②上記各処分後に日本人男性との婚姻の届出をした上で仮放免の許可申請をしたが,東京入管主任審査官から原告の仮放免を許可しない旨の処分(以下「本件不許可処分」という。)を受けたことから,原告の仮放免を認めるべきであり,本件不許可処分は違法であるとして,当該処分の取消し及び仮放免許可処分の義務付けを求め,③さらに,上記婚姻を理由に,法務大臣に対し在留特別許可処分の義務付けを求めている事案である。 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1)原告の国籍等原告は,▲年(昭和▲年)▲月▲日に出生した中国(台湾)国籍を有する外国人女性である(乙1)。 (2)今回の原告の入国及び在留の状況原告は,平成15年5月20日,新東京国際空港(現在の成田国際空港)に到着し,東京入管成田空港支局入国審査官から,入管法所定の在留資格を「」,,短期滞在在留期間を90日とする上陸許可を受けて本邦に上陸したがその後,在留期間の更新又は在留資格の変更の許可を受けることなく,在留期限である同年8月18日を超えて本邦に不法残留した(乙1,4)。 (3)本件認定処分,本件退令処分及び本件不許可処分に至る経緯等ア東京入管入国警備官は,平成20年10月6日,警視庁大塚警察署警察官と合同で原告を入管法違反不法残留容疑により摘発した以下本,()(「件摘発」という 件不許可処分に至る経緯等ア東京入管入国警備官は,平成20年10月6日,警視庁大塚警察署警察官と合同で原告を入管法違反不法残留容疑により摘発した以下本,()(「件摘発」という(乙2)。)。 イ東京入管入国警備官は,同日,原告に係る違反調査をした(以下「本件- 3 -違反調査」という(乙3)。)。 ウ東京入管入国警備官は,同日,原告が入管法24条4号ロ(不法残留)に該当すると疑うに足りる相当の理由があるとして,東京入管主任審査官から収容令書の発付を受け,同日,同令書を執行するとともに,東京入管入国審査官に引き渡した(乙4,5)。 エ東京入管入国審査官は同月7日原告に対し違反審査をし以下本,,,(「件違反審査」という,原告が退去強制対象者(入管法24条4号ロ(不。)法残留)に該当し,かつ,出国命令対象者に該当しない者)に該当する旨の認定をした(本件認定処分(乙6の1・2))。 オ上記エの認定に対する特別審理官による口頭審理について,原告は,同日,上記エの認定に服して口頭審理の請求をしない旨を記載した口頭審理放棄書に署名した(ただし,原告が口頭審理の請求及びその放棄の意味を理解していたか否かは争いがある(乙8)。)。 カ東京入管主任審査官は,同日,入管法47条5項に基づき,原告に対し送還先を中国(台湾)とする退去強制令書(本件退令書)を発付し(本件退令処分,東京入管入国警備官は,同日,本件退令書を執行した(乙)。 9)キ原告は,同月21日,日本人男性であるAとの婚姻の届出をした。 ク原告の代理人は,同月28日,東京入管主任審査官に対し,仮放免の許可申請をした(乙1,10)。 ケ東京入管主任審査官は,同年11月5日,原告の仮放免を許可しない処分をし(本件不許可処 した。 ク原告の代理人は,同月28日,東京入管主任審査官に対し,仮放免の許可申請をした(乙1,10)。 ケ東京入管主任審査官は,同年11月5日,原告の仮放免を許可しない処分をし(本件不許可処分,同日,原告の代理人に対し,その旨を通知し)た(乙1)。 コ原告は,東京入管収容場に収容されていたところ,同年12月22日,(「」。)入国者収容所東日本入国管理センター以下東日本センターというに移収され,現在,同センターに収容中である(乙9)。 - 4 -(4)本件訴訟に至る経緯原告は,平成20年11月27日,本件訴えを提起した(顕著な事実)。 争点 (1)本件退令処分の適法性(2)本件認定処分の適法性(3)仮放免関係ア本件不許可処分の取消しの訴えの適法性イ本件不許可処分の適法性ウ仮放免許可処分の義務付けの訴えの適法性エ仮放免許可処分の義務付けの訴えの本案要件の有無(4)在留特別許可関係ア在留特別許可処分の義務付けの訴えの適法性イ在留特別許可処分の義務付けの訴えの本案要件の有無 争点に関する当事者の主張の要旨(1)原告の主張の要旨ア争点(1)(本件退令処分の適法性)について入国審査官は,日本語のよく分からない原告に対し,中国語の通訳を付けず,口頭審理の請求及びその放棄の意味について十分な説明をしないまま,口頭審理放棄書に署名させたものであり,原告は,実際には口頭審理の請求を放棄する意思がなかったものであって,そのような口頭審理の請求の放棄を前提とする本件退令処分は違法である。 イ争点(2)(本件認定処分の適法性)について入国審査官の本件認定処分は,日本語のよく分からない原告に対し,中国語の通訳のないまま審査された結果のもので,その内容自体並びにその後の口頭審理の請求及び 争点(2)(本件認定処分の適法性)について入国審査官の本件認定処分は,日本語のよく分からない原告に対し,中国語の通訳のないまま審査された結果のもので,その内容自体並びにその後の口頭審理の請求及びその放棄の意味についての説明は不十分なものであり,違法である。 - 5 -ウ争点(3)(仮放免関係)について(ア)争点(3)ア(本件不許可処分の取消しの訴えの適法性)について本件不許可処分の取消しの訴えは適法である。 (イ)争点(3)イ(本件不許可処分の適法性)について原告が,平成20年10月21日付けで,日本人であるAとの婚姻の届出をしたにもかかわらず,仮放免申請を不許可とした本件不許可処分は違法である。 (ウ)争点(3)ウ(仮放免許可処分の義務付けの訴えの適法性)について本件の仮放免許可の義務付けの訴えは適法である。 (エ)争点(3)エ(仮放免許可処分の義務付けの訴えの本案要件の有無)について本件不許可処分は前記(イ)のとおり違法であり,原告に対し,仮放免を許可すべきことは明らかであって,仮放免の義務付けの請求が認められるべきである。 エ争点(4)(在留特別許可関係)について(ア)争点(4)ア(在留特別許可処分の義務付けの訴えの適法性)について本件の在留特別許可義務付けの訴えは適法である。 ()(イ)争点(4)イ在留特別許可処分の義務付けの訴えの本案要件の有無について原告は,平成17年10月ころ,日本人であるAと出会い,交際し,平成20年10月21日付けで同人との婚姻の届出をしたものである。 ,,このように出会ってから婚姻届を提出するまでに時間がかかったのはAの家族の反対があったためである。 そして,Aは,前妻を病気で亡くした後は独りで生活を続けており,持病の看護が必要な状態にあること,原告は不法残留について ら婚姻届を提出するまでに時間がかかったのはAの家族の反対があったためである。 そして,Aは,前妻を病気で亡くした後は独りで生活を続けており,持病の看護が必要な状態にあること,原告は不法残留について反省して- 6 -いることを踏まえれば,原告には「日本人の配偶者等」の在留資格が,認められるべきであり,在留特別許可が付与されるべきである。 (2)被告の主張の要旨ア争点(1)(本件退令処分の適法性)について原告は,東京入管入国審査官から中国語のチャート図による退去強制手続の説明を受けていること,口頭審理の請求権がある旨の認定通知書の交付を受けていること,原告は十分な日本語能力を備えていること,担当の入国審査官が口頭審理の請求及びその放棄の意味を理解していない原告にその放棄をさせることはあり得ないことからして,原告による口頭審理の請求の放棄は適法なものであり,これを前提とする本件退令処分は適法である。 イ争点(2)(本件認定処分の適法性)について原告は,不法残留を自認しており,入管法24条4号ロに該当するとともに,同法24条の3の出国命令対象者でないことは明らかである。 原告は,口頭審理の請求及びその放棄の意味についての説明が不十分であったと主張するが,上記事項についての説明は本件認定処分後に行われたものであって,その説明の仕方が遡って本件認定処分の違法性を基礎付けることはない。 ウ争点(3)(仮放免関係)について(ア)争点(3)ア(本件不許可処分の取消しの訴えの適法性)について本件不許可処分の取消しの訴えは不適法である(ただし,被告は,口頭弁論終結後,上記主張及び本案前の答弁を撤回する旨の書面を提出した。 。)(イ)争点(3)イ(本件不許可処分の適法性)について仮に本件不許可処分の取消しの訴えが適法であるとしても,以 は,口頭弁論終結後,上記主張及び本案前の答弁を撤回する旨の書面を提出した。 。)(イ)争点(3)イ(本件不許可処分の適法性)について仮に本件不許可処分の取消しの訴えが適法であるとしても,以下のとおり,その請求は理由がない。 - 7 -すなわち,退去強制手続は,容疑者の身柄確保及び在留資格に基づかない在留活動の禁止のため,原則として容疑者を収容して行うものであり,仮放免は,本来在留活動の禁止された者に特別の事情があることをもって許される例外的な措置であり,その許可の判断には処分行政庁に広範な裁量が認められる。 原告がAとの婚姻の届出をしたとしても,仮放免を許可しなければならないものではないのであって,本件不許可処分に処分行政庁の裁量権の逸脱又は濫用はなく,同処分は適法である。 (ウ)争点(3)ウ(仮放免許可処分の義務付けの訴えの適法性)について仮放免許可処分の義務付けの訴えは,行政事件訴訟法3条6項2号の申請型の義務付けの訴えであると解されるところ,上記(ア)及び(イ)の,,とおり本件不許可処分は取り消されるべきものとは認められないから仮放免許可処分の義務付けの訴えは訴訟要件(同法37条の3第1項2号)を欠き,不適法である。 エ争点(4)ア(在留特別許可処分の義務付けの訴えの適法性)について入管法50条1項4号の在留特別許可の付与を求める法令上の申請権は認められておらず,在留特別許可処分の義務付けの訴えは,行政事件訴訟法3条6項1号の非申請型の義務付けの訴えである。 そして,非申請型の義務付けの訴えは,行政庁が一定の処分をすべきであるにもかかわらず,これがされないときに,行政庁がその処分をすべき旨を命ずることを求める訴訟であり(同法3条6項柱書,同項1号,行)政庁に当該処分をする権限があることが前提となるところ,入管 であるにもかかわらず,これがされないときに,行政庁がその処分をすべき旨を命ずることを求める訴訟であり(同法3条6項柱書,同項1号,行)政庁に当該処分をする権限があることが前提となるところ,入管法50条1項4号の在留特別許可は,同法49条3項の裁決に当たって判断されるものであり,本件では,原告は,当該裁決の前提となる法務大臣への異議の申出(同法49条1項)をしていないのはもとより,当該異議の前提となる特別審理官による口頭審理(同法48条)を受ける機会を放棄してい- 8 -るのであるから,行政庁が在留特別許可をする余地はなく,本件の在留特別許可処分の義務付けの訴えは不適法である。 第3当裁判所の判断 争点(1)(本件退令処分の適法性)について(1)前記前提事実(3)エ及びオのとおり,本件退令処分は,原告が退去強制対象者に該当する旨の認定に服して口頭審理の請求をしない旨を記載した口頭審理放棄書(乙8)に署名したことから,入管法47条5項に基づいてされたものであるところ,原告は,口頭審理の請求及びその放棄の意味を理解しないまま口頭審理放棄書に署名したものであるから,本件退令処分は違法であると主張しており,これは,当該口頭審理の請求の放棄は意思の欠如により無効であって,本件退令処分は入管法47条5項所定の要件を欠くと主張する趣旨であると解される。 そこで,以下,本件における口頭審理の請求の放棄の有効性について検討する。 (2)前記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 ア原告は,平成20年10月6日の本件違反調査時において,既に今回の来日後5年以上を経過し,その間は本邦で就労していたところ,入国警備官に対し,日本語で,日本には8回位遊びに来ており,今回も観光のために来日した後,アル 0月6日の本件違反調査時において,既に今回の来日後5年以上を経過し,その間は本邦で就労していたところ,入国警備官に対し,日本語で,日本には8回位遊びに来ており,今回も観光のために来日した後,アルバイトを続けたかったので,在留期限を経過しても台湾に帰らず,本邦内の各地を転々としながらアルバイトをして生活していたが,同日摘発されたので,台湾に帰国する旨を供述し,その際,Aとの関係については特に言及していなかった(乙3)。 イ原告は,同月7日の本件違反審査の際も,東京入管入国審査官から,日本語を解することの確認を受けた上で,日本語により審査を受けることに同意し,日本語で,不法残留の容疑事実に間違いない旨を述べ,また,早- 9 -期に台湾に帰国することを希望する旨を述べた(乙6の1,同11)。 ウ原告は,同月7日,本件違反審査の結果に基づく本件認定処分を受けた後,東京入管主任審査官から,本邦の退去強制手続の教示として,中国語で記載された同手続のチャート図を示され,併せて日本語で口頭の説明を受けており,当該図には,①口頭審理の請求を放棄すれば,退去強制令書の発付を受けることになること及び②口頭審理の請求をすれば,特別審理官の口頭審理を経て認定の誤りの有無に係る判定の手続に移行することがそれぞれ明確に分かりやすく図示されていた(乙6の2,同7,11)。 エ原告が同月7日に上記説明を受けた後に署名した口頭審理放棄書には,中国語で,入管法47条3項の規定に基づく入国審査官の退去強制対象者に該当するとの認定に服し,同法48条1項の規定による口頭審理の請求を放棄する旨の翻訳文が同旨の日本語の本文の下に併記されていた乙,。(8)オ原告が本件摘発を受けたのは,当時の就労先の東京都文京区α-×-10β×階のB(仕事は雑役婦)であり,本 の請求を放棄する旨の翻訳文が同旨の日本語の本文の下に併記されていた乙,。(8)オ原告が本件摘発を受けたのは,当時の就労先の東京都文京区α-×-10β×階のB(仕事は雑役婦)であり,本件摘発時に,原告は,自らの居住地を東京都文京区γ-×-10δ×階であると供述していた。これに対し,Aは,本件摘発当時,長野県内に居住していた(乙2,3,6の1。 ・2)(3)以上の事実によれば,本件の口頭審理放棄書(乙8)に署名するに当たり,①原告は,事前に,中国語及び図示により口頭審理の請求及びその放棄の意味を十分に理解し得るチャート図を示されており,その記載内容と口頭審理放棄書に記載された中国語の訳文を併せ読めば,これに署名することに,,より入国審査官の認定の誤りの有無に係る判定の手続に移行することなく退去強制令書の発付に至ることは,容易に理解し得るものであったといえること,②しかも,原告は,今回の来日後5年以上の間本邦で就労を続けており,上記(2)アの本件違反調査時の供述全体の内容に照らしても,相応の日- 10 -本語能力を有していたものと推認されるところ,本邦の退去強制手続の流れ並びに口頭審理の請求及びその放棄の意味については,上記①の中国語の書面による教示と併せて,入国審査官から口頭で日本語による説明も受けていたこと,③本件違反調査及び本件違反審査において,原告は,自ら台湾に帰国する旨を申述し,本邦での在留の希望を述べることはなく,Aとの関係にも特に言及しておらず,現に本件摘発当時,本邦内の各地を転々とした後に東京都内で居住・稼働していた原告と長野県在住のAとは住居を異にしていたこと等の事情が認められ,これらの諸事情を総合すれば,原告は,口頭審理放棄書に署名して口頭審理の請求を放棄すれば退去強制令書の発付を受けることに 働していた原告と長野県在住のAとは住居を異にしていたこと等の事情が認められ,これらの諸事情を総合すれば,原告は,口頭審理放棄書に署名して口頭審理の請求を放棄すれば退去強制令書の発付を受けることになることを理解した上で,自らの意思で,当該口頭審理放棄書に署名したものと認めるのが相当である。 (4)以上によれば,原告には,口頭審理放棄書に署名した際,入国審査官の認定に服し,口頭審理の請求を放棄し,これにより退去強制令書の発付を受けることの認識があったものと認められ,原告による口頭審理の請求の放棄は,原告の意思に基づいて有効にされたものというべきであるから,これを前提とする本件退令処分は,入管法47条5項の要件を充たすものとして,適法というべきである。 争点(2)(本件認定処分の適法性)について原告は,前記前提事実(2)のとおり自らが入管法24条4号ロ(不法残留)に該当することを認めており,原告が出国命令対象者に該当しないことも明らかであるから,原告が退去強制対象者に該当する旨の本件認定処分の内容自体に瑕疵はなく,また,上記1によれば,本件違反審査の手続に瑕疵があったともいえないから,本件認定処分は適法というべきである。 争点(3)(仮放免関係)について(1)争点(3)ア(本件不許可処分の取消しの訴えの適法性)について東京入管収容場に収容中に仮放免を許可しない処分がされ,その後に被収- 11 -容者が東日本センターに移収された場合でも,仮に,取消判決によって,仮放免を許可しない処分が取り消されれば,その判決の拘束力により,東京入管主任審査官は,被収容者を東京入管収容場に再移収した上で,仮放免を許可する処分をすることができる(行政事件訴訟法33条1項)と解されるので,原告が東日本センターに移収中であることをもって,本件不許可処 任審査官は,被収容者を東京入管収容場に再移収した上で,仮放免を許可する処分をすることができる(行政事件訴訟法33条1項)と解されるので,原告が東日本センターに移収中であることをもって,本件不許可処分の取消しの訴えが訴えの利益を欠くものとはいえない。 (2)争点(3)イ(本件不許可処分の適法性)についてア入管法においては,退去強制手続について,(ア)入国警備官は,容疑者が同法24条各号のいずれかに該当すると疑うに足りる相当の理由がある場合において,容疑者を収容令書により収容したときは,容疑者を入国審査官に引き渡さなければならないとし(同法39条1項,44条,(イ))①入国審査官は,容疑者の引渡しを受けた場合には,容疑者が退去強制対象者に該当するかどうかを速やかに審査し,審査の結果,容疑者が同法24条各号のいずれにも該当しないと認定したとき,又は容疑者が出国命令対象者に該当すると認定した場合において容疑者が出国命令を受けたときは,直ちにその者を放免しなければならないとし(同法45条1項,47条1項,2項,②特別審理官は,口頭審理の請求があった場合には,速)やかに口頭審理を行わなければならず,口頭審理の結果,容疑者が同法24条各号のいずれにも該当しないと判定したとき,又は容疑者が出国命令対象者に該当すると判定した場合において容疑者が出国命令を受けたとき,(,,は直ちにその者を放免しなければならないとし同法48条3項6項7項,③主任審査官は,同法49条1項に基づく異議の申出は理由があ)る旨の裁決の通知を受けた場合には,その裁決が容疑者が同法24条各号のいずれにも該当しないことを理由とするとき,又はその裁決が容疑者が出国命令対象者に該当することを理由とする場合において容疑者に対し出国命令をしたときは,直ちにその者を放 決が容疑者が同法24条各号のいずれにも該当しないことを理由とするとき,又はその裁決が容疑者が出国命令対象者に該当することを理由とする場合において容疑者に対し出国命令をしたときは,直ちにその者を放免しなければならないとし(同条- 12 -4項,5項,(ウ)主任審査官は,容疑者が退去強制対象者に該当する旨)の認定若しくは判定に服したとき,又は同法49条1項に基づく異議の申出は理由がない旨の裁決の通知を受けたときは,速やかに退去強制令書を(,,,,発付しなければならないとし同法47条3項5項48条3項6項7項,49条6項,(エ)入国警備官は,退去強制令書の執行により退去)強制を受ける者を直ちに本邦外に送還することができないときは,送還可能のときまで,その者を入国者収容所,収容場等に収容することができるとしている(同法52条5項。 )イ他方,入管法は,収容令書又は退去強制令書の発付を受けて収容されている者について,入国者収容所長又は主任審査官は,その者若しくはその者の代理人,保佐人,配偶者,直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により,,又は職権で情状及び仮放免の請求の理由となる証拠並びにその者の性格資産等を考慮して,法務省令で定める額の保証金を納付させ,かつ,住居及び行動範囲の制限,呼出しに対する出頭の義務その他必要と認める条件を付して,その者を仮放免することができるとしている(同法54条2項。なお,これは,入国者収容所長又は主任審査官による仮放免の許可)について,上記の者らに許可の申請権を付与したものと解される。 ウ上記の入管法の規定によれば,入管法は,退去強制対象者の送還に備えた身柄の確保及び違法な在留活動の防止といった行政目的の観点から,退去強制手続において,収容令書の発付を受けて収容されている容疑者に 上記の入管法の規定によれば,入管法は,退去強制対象者の送還に備えた身柄の確保及び違法な在留活動の防止といった行政目的の観点から,退去強制手続において,収容令書の発付を受けて収容されている容疑者については,所定の手続により退去強制対象者に該当しないことが確定しない限り,その身柄を収容し,退去強制令書の発付を受けて収容されている者については,送還が可能となるまでの間,その身柄を収容することを原則としているものと解される。したがって,入管法54条2項の仮放免の許可は,上記の原則に対する例外的措置として,自費出国又はその準備,収容に耐えられない病気その他のやむを得ない事情が存する場合に,出頭の- 13 -確保及び逃亡の防止の担保として一定の条件を付した上で,一時的に身柄の解放を認める制度であり,同項の文言上その要件を具体的に限定するものはなく,入管法上,入国者収容所長又は主任審査官が考慮すべき事項を掲げるなどしてその判断を羈束するような規定も存在しないこと等を併せ考えると,仮放免の許可をするか否かの判断は,入国者収容所長又は主任審査官の広範な裁量にゆだねられていると解するのが相当であり,このよ,()うな入管法の規定の趣旨・構造等を考慮すれば仮放免の請求許可申請に対してその許可をするか否かについての入国者収容所長又は主任審査官の判断が違法となるのは,上記の行政目的を達成すべき必要性と被収容者の個別的事情とを総合的に勘案した上で,その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるなど,その裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したと認められる場合に限られるものというべきである。 エそこで,上記ウの判断の枠組みを前提として,原告の仮放免を許可しないとした本件不許可処分における主任審査官の判断が,その裁量権の はこれを濫用したと認められる場合に限られるものというべきである。 エそこで,上記ウの判断の枠組みを前提として,原告の仮放免を許可しないとした本件不許可処分における主任審査官の判断が,その裁量権の範囲を逸脱し又は濫用するものといえるか否かについて,以下検討するに,原告は,本件不許可処分には,原告とAが平成20年10月21日との間の婚姻関係を十分に考慮していない違法があると主張する。 ,,,しかしながら①前記1及び2のとおり原告が退去強制対象者であり既に口頭審理の請求を放棄し,それが有効であること,②本件退令処分の執行による原告の収容期間は,本件不許可処分の当時,いまだ約1か月であり,合理的な期間の範囲内にとどまること,③原告の健康状態について収容に耐えられない病気等の存在をうかがわせる証拠はないこと(なお,乙3によれば,本件違反調査の際,原告は,○○のため台湾の薬を所持しているが,服用しなくても日常生活に問題はないと供述している,④。)本件摘発時には原告とAは住居を異にしており,婚姻届の提出も本件退令- 14 -処分後であるところ,収容期間中に家族の交流が一定の制約を受けるとしても,合理的期間の範囲内にとどまる限り,それは収容に伴い通常生ずる範囲内の不利益といわざるを得ず,また,収容中であっても,家族との面会は保安上等の支障がなければ許可され,通信文の発受等も保安上の支障がない限り認められていること(被収容者処遇規則34条1項,37条)等の諸事情を総合考慮すれば,前記前提事実(3)カないしクのとおり原告が本件退令処分後に仮放免の許可申請までにAとの婚姻届を提出したことを斟酌しても,本件不許可処分に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があると認めることはできない。 したがって,本件不許可処分は,適法というべきである。 (3)争点( 許可申請までにAとの婚姻届を提出したことを斟酌しても,本件不許可処分に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があると認めることはできない。 したがって,本件不許可処分は,適法というべきである。 (3)争点(3)ウ(仮放免許可処分の義務付けの訴えの適法性)について主任審査官に対する仮放免を許可する処分の義務付けを求める訴えは,仮放免を許可する処分が主任審査官に対する仮放免の許可申請に対する応答としてされることからすると,行政事件訴訟法37条の3所定のいわゆる申請型の義務付けの訴えであると解されるところ,本件不許可処分は,原告の仮,,放免の許可申請を棄却する処分であるということができ上記(2)のとおり本件不許可処分が取り消されるべきものと認められない以上,本件における原告の仮放免を許可する処分の義務付けを求める訴えは,同条1項2号所定の訴訟要件を欠くものとして,その余の点(争点(3)エ)について判断するまでもなく,不適法であるといわざるを得ない。 争点(4)ア(在留特別許可処分の義務付けの訴えの適法性)について(1)原告は,法務大臣が原告に対し入管法50条1項の規定による在留特別許可処分の義務付けを求めているものと解されるところ,処分の義務付けの訴え(行政事件訴訟法3条6項)は,当該行政庁が当該処分をする法令上の権限を有する場合にそのことを前提とした上でその処分の義務付けを求めるものであって,当該行政庁が当該処分をする法令上の権限を有していない場- 15 -合には,当該行政庁がその処分をすることができない以上,その処分の義務付けを求めることもできないことは明らかであるから,そのような訴えは不適法であるというべきである。 (2)そして,入管法50条1項所定の在留特別許可の許否は,同法49条1項の異議の申出に対する同条3項の裁決の中で判 できないことは明らかであるから,そのような訴えは不適法であるというべきである。 (2)そして,入管法50条1項所定の在留特別許可の許否は,同法49条1項の異議の申出に対する同条3項の裁決の中で判断されるものであるところ,原告は,その異議の申出をしておらず,また,そもそも,前記1のとおり,その異議の申出の前提となる手続である口頭審理の請求を放棄し,それが有効である以上,法務大臣は,原告に対し,入管法50条1項の規定による在留特別許可処分をする権限を有しているということはできない。 したがって,本件における在留特別許可処分の義務付けを求める訴えは,当該処分をする権限を有していない行政庁に対し,その処分の義務付けを求,(),めるものであってその余の点争点(4)イについて判断するまでもなく不適法である。 よって,本件訴えのうち,本件退令処分,本件認定処分及び本件不許可処分の取消しを求める訴えに係る請求は,いずれも理由がないから棄却することとし,仮放免許可処分及び在留特別許可処分の義務付けを求める訴えはいずれも不適法であるから却下することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部裁判長裁判官岩井伸晃裁判官小島清二- 16 -裁判官大畠崇史
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