判決平成14年2月14日神戸地方裁判所平成12年(ワ)第1039号代表役員代務者地位不存在確認請求事件 主文 1 本件訴えを却下する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告ら(請求の趣旨)(1) 原告らと被告らとの間で,被告Aは,被告宗教法人B別院の代表役員代務者の地位にないことを確認する。 (2) 訴訟費用は被告らの負担とする。 2 被告ら(請求の趣旨に対する答弁)(1) 本案前の答弁ア本件訴えを却下する。 イ訴訟費用は原告らの負担とする。 (2) 本案の答弁ア原告らの請求を棄却する。 イ訴訟費用は原告らの負担とする。 第2 事案の概要 1 事案の骨子本件は,宗教法人真宗大谷派(以下,単に「大谷派」という。)と被告宗教法人B別院(以下「被告別院」という。)との包括・被包括関係の廃止を巡って,原告らがその廃止を前提として,その廃止を否定する大谷派の宗務総長から被告別院の代表役員代務者に選任された被告Aがその地位にないことの確認を求める訴訟である。 被告らは,被告別院が大谷派との包括・被包括関係から離脱していないことを前提に,原告らは被告別院の責任役員ないし総代でもなく,本件訴訟の原告適格を欠くと主張する。 2 前提事実(文章の末尾に証拠を挙げた部分は,証拠によって認定した事実であり,その余は当事者間に争いのない事実である。)(1) 当事者及び関係者ア原告らは,いずれも被告別院の門徒である。原告C及び原告Dは被告別院の責任役員に選任され,原告Eは被告別院の総代に選任されたと主張し に争いのない事実である。)(1) 当事者及び関係者ア原告らは,いずれも被告別院の門徒である。原告C及び原告Dは被告別院の責任役員に選任され,原告Eは被告別院の総代に選任されたと主張している。 イ被告別院は,宗祖親鷲の立教開宗の本旨に基づいて教義を広め,儀式行事を行い,門徒を教化育成し,社会教化を図ること等を目的として,昭和27年11月20日に設立された宗教法人である。 ウ被告別院に係る宗教法人登記簿の役員欄には,平成11年2月1日付で被告Aが被告別院の代表役員代務者に就任した旨の記載がある。 エ大谷派は,本山本願寺を中心として,寺院,教会その他の所属団体,僧侶及び檀徒を包括する宗門である。被告別院と大谷派は,大谷派を包括宗教団体,被告別院を被包括宗教法人とする包括・被包括の関係にあった。 オ Fは,元大谷派の法主(管長)で,被告別院の住職でもあったところ,平成5年4月13日死亡している。 カ Gは,昭和48年6月6日,当時の大谷派管長であったFから被告別院の輪番に,そして,昭和54年9月20日,被告別院の住職であったFから輪番に命ぜられている(甲6,8)。 (2) 被告別院の大谷派からの離脱決議等被告別院(代表者F)は,昭和54年9月6日責任役員会を開催し,大谷派からの離脱決議を行った(甲15の2)。また,同年9月9日及び16日院議会を開催し,大谷派からの離脱決議を行った(甲15の5)。そして,同年9月20日上記大谷派からの離脱のための公告を行い(甲15の6・7),大谷派に上記離脱の通知を行った(甲15の8・9)。 被告別院(代表者F)は,昭和56年7月27日,大谷派からの離脱の規則改正を行うため,兵庫県知事に規則変更の認証申請を行った(甲15の1)。これに対し,兵庫県 知を行った(甲15の8・9)。 被告別院(代表者F)は,昭和56年7月27日,大谷派からの離脱の規則改正を行うため,兵庫県知事に規則変更の認証申請を行った(甲15の1)。これに対し,兵庫県知事は,同申請書類を正式な受理ということでなく,窓口預かりということで,申請から20年以上経過した現在も,その担当係(教育課宗務係)で保管している(調査嘱託の結果)。 すなわち,被告別院は,大谷派に対して包括・被包括関係を廃止する旨の通知をしているが,未だに兵庫県知事から同規則変更にかかる認証書の交付を受けていない。 (3) 別院規則の内容被告別院は,宗教法人法12条の規定に基づき,「宗教法人B別院規則」(以下単に「別院規則」という。)(甲1)を制定しているところ,別院規則には,代表役員代務者選任を含めて,以下のような規定がある。 ア第6条(代表役員の資格)(ア) 代表役員は,この寺院の住職の職にある者をもって充てる。 (イ) 住職は,宗憲により,大谷派の法主の職にある者が當る。 イ第8条(責任役員)この法人には,3人の責任役員を置く。 ウ第9条(責任役員の資格及び選任)代表役員以外の責任役員は,以下に掲げる者とする。 院議会が推薦した門徒2人エ第11条(代表役員代務者)代表役員が以下の各号の一に該当するときは,代表役員代務者を置き,輪番の職にある者をもってこれに充てる。 (ア) 死亡その他の事由に因って欠けた場合において,すみやかにその後任者を選ぶことができないとき(1号)。 (イ) 病気その他の事由に因って3月以上その職務を行うことができないとき(2号)。 オ第13条(代 因って欠けた場合において,すみやかにその後任者を選ぶことができないとき(1号)。 (イ) 病気その他の事由に因って3月以上その職務を行うことができないとき(2号)。 オ第13条(代務者の職務権限及び退任)(ア) 代務者は,代表役員又は責任役員に代ってその職務権限の全部を行う。 (イ) 代表役員代務者は,院議会の議決又は同意を要する事項については,予め住職の承認を受けなければならない。 (ウ) 代務者は,その置かなければならない事由がなくなったときは,当然退任するものとする。 カ第16条(輪番)(ア) この寺院に輪番一人を置く。 (イ) 輪番は,教師について,管長が任命する。 (ウ) 輪番は,住職の命を受け,この法人の事務その他の寺務を行う。 キ第18条(院議会の組織及び議員の任期)総代 5人崇敬区域内の教師及び門徒のうちから輪番の上申により住職が選定した者 5人(中略)ク第21条(議事及び議決の定数)(ア) 院議会は,総議員の半数以上の出席者がなければ,議事を開き議決することができない。 (イ) 院議会の議事は,出席議員の過半数で決し,可否同数の時は,議長の決するところによる。 (中略)ケ第23条(総代の員数,資格及び任期)(ア) この寺院には,総代5人を置く。 (イ) 総代は,門徒で衆望の帰するもののうちから,院議会の意見を聞いて選定する。 コ第24条(総代の権限)(ア) 総代は,責任役員に協力して,この寺院の興隆に努めなければならない。 (イ) 総代は,この寺院の業務について, 聞いて選定する。 コ第24条(総代の権限)(ア) 総代は,責任役員に協力して,この寺院の興隆に努めなければならない。 (イ) 総代は,この寺院の業務について,勧告及び助言をすることができる。 3 争点及びそれに対する当事者の主張(1) 被告別院は大谷派との包括・被包括関係から離脱しているか。 (原告らの主張)ア被告別院から大谷派に離脱通知が送達された昭和54年9月20日ころ,離脱の効力が生じた。 イ仮に,大谷派からの離脱の効力が生じる時期が,規則変更に関する認証書の交付の時期(宗教法人法30条)としても,所轄庁である知事の規則変更の認証判断は,形式的なものに過ぎない。 本件の場合,その申請書類に不備がなく,かつ,所轄庁である兵庫県知事から書類などの追完を求められることもなく,したがって,同離脱のための規則変更の認証申請に問題がなかった。それにもかかわらず,兵庫県知事が書類預かりとしてから既に20年が経過し,被告別院は,輪番である華房を中心として,大谷派から実質的に離脱・独立した宗教的,社会的活動を20年にもわたって継続してきている。 以上の事実からすると,既に,離脱の効力が生じていると解するのが相当である。 (被告らの反論)ア包括・被包括の離脱の効力が生じるのは,知事から包括・被包括関係を解消する旨の規則変更に関する認証書が交付されたときである(法30条)。 イ本件においては,原告らに対し,兵庫県知事から,被告別院が大谷派から離脱する旨の規則変更に関する認証書の交付がされていない。したがって,同離脱の効力が生じていない。 (2) 原告らは被告別院の責任役員ないし総代か(被告らの主張)ア Gは,昭和48年6 る旨の規則変更に関する認証書の交付がされていない。したがって,同離脱の効力が生じていない。 (2) 原告らは被告別院の責任役員ないし総代か(被告らの主張)ア Gは,昭和48年6月6日,当時の大谷派の管長であったFから被告別院の輪番に任命されているが,昭和56年9月25日,大谷派の宗務総長により輪番を免ぜられた。 なお,Gは,昭和57年2月22日,大谷派審問会において,重懲戒7年に処せられ,その結果,全ての役職務を差免し,教師の資格を剥奪された(大谷派懲戒条例8条)。 イ原告らは,Gから,平成10年3月9日付けで,被告別院の責任役員や総代に選任などされたと主張するが,Gは,その当時,輪番でもなく,代表役員代務者でもなく,原告らをして責任役員や総代に任命すべき権限を有していなかった。 したがって,原告らは,本件の訴え提起当時,責任役員や総代の地位にない以上,本件訴えについて原告適格がない。 (原告らの反論)ア原告C及び原告Dは,被告別院の院議会の推薦にかかる平成10年3月9日付け責任役員選定届(甲44)に基づき,同日,被告別院の代表役員代務者であるGによって,被告別院の責任役員に選任された。その就任時期は,平成10年5月1日から平成13年4月30日までとなっている。 イ原告Eは,被告の院議会の推薦にかかる平成10年3月9日付け総代選定届(甲45)に基づき,同日,被告別院の代表役員代務者であるGによって,被告別院の総代に選任された。その就任時期は,平成10年5月1日から平成13年4月30日までとなっている。 (3) 被告Aは被告別院の代表役員代務者に就任したか(被告らの主張)ア大谷派では,昭和56年6月11日,宗憲が改正され,それまで存した法主を廃止し, 月30日までとなっている。 (3) 被告Aは被告別院の代表役員代務者に就任したか(被告らの主張)ア大谷派では,昭和56年6月11日,宗憲が改正され,それまで存した法主を廃止し,その一方で門首を設け,別院の住職は原則として門首が当たることとなった(宗憲73条。甲2)。大谷派の法主はFであったが,上記宗憲改正により同人が門首になり,同人が引き続き被告別院の住職,代表役員の地位にあった。 イ Fが平成5年4月13日に死亡した。同人の死亡により,Hが大谷派の後任門首に就任し,同時に被告別院の住職にも就任した。しかし,同人は,平成8年1月31日,大谷派離脱の宣言をし,同年2月13日,門首の地位とともに被告別院の住職の地位も喪失した。その後の同年7月31日,Jが門首に就任し,同時に被告別院の住職にも就任した。 ウ上記宗憲の改正により,従前大谷派管長が行っていた職務は,大谷派宗務総長が行うこととなった(大谷派規則付則2)。 エ被告Aは,平成11年2月1日,大谷派宗務総長から被告別院の輪番に任命された。 Jは多忙であり,3月以上その職務を行うことができないため,別院規則11条2号により,代表役員代務者を置くこととなり,同日,被告Aを被告別院の代表役員代務者に充てた。 オしたがって,被告Aは,平成11年2月1日以降,被告別院の代表役員代務者の地位にある。 (原告らの反論)ア大谷派では,昭和56年6月11日,宗憲が改正され管長制が廃止され,法主が存在しなくなったが,被告別院では,同改正に対応する規則の変更はなされなかった。その結果,被告別院の住職(代表役員)に就任する者がいなくなったし,また,被告別院の輪番を任命する権限を有する者がいなくなった。 イ被告別院では,院議会で議決され 規則の変更はなされなかった。その結果,被告別院の住職(代表役員)に就任する者がいなくなったし,また,被告別院の輪番を任命する権限を有する者がいなくなった。 イ被告別院では,院議会で議決された昭和54年9月6日の規則改正により,「輪番は,寺法の規定により任命する。」(15条2項)と規定された。 ウ大谷派の宗務総長には,被告別院の輪番を任免する権限はない。 エしたがって,大谷派の宗務総長から任命されたという被告Aは,被告別院の輪番となることはあり得ず,被告Aが被告別院の代表役員代務者となることもない。 第3 当裁判所の判断 1 被告別院と大谷派との包括・被包括関係の有無の検討(1) 離脱通知送達による包括・被包括関係の離脱についてア原告らの主張原告らは,「被告別院から大谷派に離脱通知が送達された昭和54年9月20日ころ,被告別院と大谷派との間の包括・被包括の関係について,離脱の効力が生じた」と主張する。 イ検討しかし,宗教法人法は,包括・被包括関係の廃止を当該宗教法人の規則変更手続によるものとし(26条),その廃止に係る宗教法人規則の変更をするには,所轄庁(知事)への規則変更の認証申請前に,被包括関係を廃止しようとする宗教団体にその旨の通知をし(26条3項),そのうえで所轄庁へ被包括関係の廃止に関する規則変更の認証の申請をすること(27条),そして,その規則の変更は,所轄庁からの認証書の交付を受けることによってその効力が生じる(30条)と規定している。 ところが,被告別院は,大谷派に対して包括・被包括関係を廃止する旨の通知をしているが,未だに兵庫県知事から同規則変更にかかる認証書の交付を受けていないので(前記第2の2(2)),同規則変更の効力が生じていないことが明 は,大谷派に対して包括・被包括関係を廃止する旨の通知をしているが,未だに兵庫県知事から同規則変更にかかる認証書の交付を受けていないので(前記第2の2(2)),同規則変更の効力が生じていないことが明らかである。原告らの前記アの主張は,宗教法人法の規定を無視した独自の解釈であり,到底採用することができない。 (2) 本件の特殊性による包括・被包括関係の離脱についてア原告らの主張原告らは,「離脱の効力が生じる時期が,規則変更に関する認証書の交付を受けたときである(法30条)としても,本件の場合,認証申請に問題がなかったにもかかわらず,兵庫県知事が書類預かりとしてから既に20年が経過し,離脱を踏まえた実体が20年以上経過している(被告別院としての独立の宗教活動が20年以上にわたって行われている)以上,既に離脱の効力が生じている」と主張する。 イ検討(ア) 宗教法人法の規定からの検討a 検討-その①前記(1)イで検討したとおり,宗教法人法は,包括・被包括関係の離脱について,被包括関係にある宗教法人から包括関係にある宗教法人に対する離脱の通知に加えて,所轄庁(知事)による被包括関係の廃止に関する規則変更の認証行為を必要としている。 したがって,そのような兵庫県知事による認証行為を抜きにして,原告らが主張する本件の特殊性(離脱を踏まえた実体が20年以上経過している)を根拠に,包括・被包括関係の廃止を認めることはできない。 b 検討-その②また,所轄庁である知事の包括・被包括関係を廃止する旨の規則変更に対する認証は,法28条1項1・2号に掲げる要件,具体的には,①変更しようとする事項が法その他の法令の規定に適合して また,所轄庁である知事の包括・被包括関係を廃止する旨の規則変更に対する認証は,法28条1項1・2号に掲げる要件,具体的には,①変更しようとする事項が法その他の法令の規定に適合していること(1号)や,②その変更の手続が26条の規定に従ってなされていること(2号)について,検討が加えられることになる。 そして,上記①の要件は,その内容からすると,原告らが主張するような当該申請に必要な書類が整っているか否かという形式的な審査にとどまらず,包括・被包括関係を廃止する旨の規則変更が法令に適合しているか否かにつき,実質的判断がされることが予定され,しかも,その判断内容が法令適合性ということからすると,包括・被包括関係にある宗教法人間のみの問題に留まるものではない。 以上の点を踏まえると,原告らが主張するような被告別院としての独立の宗教活動が20年以上にわたりになされているという関係だけから,包括・被包括関係の廃止を認めることはできず,この点からも,原告らの前記アの主張は認められない。 (イ) 本件の具体的な事実関係からの検討a 事実の認定前記第2の2の前提事実に,証拠(甲2,甲16ないし18,甲49,乙1ないし3,乙5,乙9,乙12,乙17,乙19,乙20)を総合すると,以下の事実が認められる。 (a) 被告別院の包括法人であった大谷派では,昭和56年6月11日,宗憲が改正され,管長制が廃止されて,大谷派宗務総長が大谷派の代表役員になり,従前大谷派管長(F)が行なっていた職務は,同宗務総長が行なうこととなった。 (b) 大谷派宗務総長は,被告別院が大谷派との関係で包括・被包括関係にあるとして,昭和56年9月25日,大谷派の懲戒条例に基づい が行なっていた職務は,同宗務総長が行なうこととなった。 (b) 大谷派宗務総長は,被告別院が大谷派との関係で包括・被包括関係にあるとして,昭和56年9月25日,大谷派の懲戒条例に基づいて,被告別院の輪番であったGについて,その職を免じる旨の処分をした。 (c) その後も,大谷派宗務総長は,被告別院が被包括関係にあるとして,数人の者を順次被告別院の輪番として任命し,平成11年2月1日には,被告Aを被告別院の輪番として任命し,その旨の被告別院の法人登記もしている。 (d) なお,被告別院の住職,代表役員には,大谷派の法主であったFが就任していたが,同人が平成5年4月13日に死亡したため,その後Hが大谷派の門首に就任し,同時に被告別院の住職にも就任した。 しかし,Hは,平成8年1月31日大谷派離脱の宣言をし,同年2月13日門首の地位とともに被告別院の住職の地位も喪失した。その後の同年7月31日,Jが門首に就任し,同時に被告別院の住職にも就任したところ,その旨の被告別院の法人登記もされている。 b 検討上記aの認定のとおり,被告別院の包括法人であった大谷派は,被告別院から包括・被包括関係の廃止の通知を受けた後も,被告別院が大谷派の被包括関係にあることを前提として,被告別院の輪番などの任命をしている。 したがって,仮に被告別院が原告ら主張のような独立した宗教活動を20年以上にもわたって行ってきたとしても,大谷派と被告別院との包括・被包括関係の存在を窺わせる事実がある以上,原告らが主張するような事実をもって,兵庫県知事による規則変更の認証もないのに,大谷派との包括・被包括関係の廃止を認めることはできない。 (ウ) 知事の申請書不受理からの検討 上,原告らが主張するような事実をもって,兵庫県知事による規則変更の認証もないのに,大谷派との包括・被包括関係の廃止を認めることはできない。 (ウ) 知事の申請書不受理からの検討a 本件では,被告別院(代表者F)が,昭和56年7月27日,大谷派からの離脱の規則改正を行うため,兵庫県知事に規則改正の認証申請を行ったのに,兵庫県知事は,同申請書類を正式に受理することでなく,窓口預かりということで,申請から20年以上経過した現在でも,その担当係(教育課宗務係)で上記申請書を保管している(前記第2の2(2))。 b ところで,宗教法人法28条2項,14条4項は,所轄庁が規則変更認証申請を受理した場合は,受理した日から3月以内に認証するかしないかを決定し,認証する旨の決定をしたときは,認証した旨を附記した規則を交付し,認証することができない旨の決定をしたときは,その理由を附記した書面でその旨を通知しなければならないと規定している。 ところが,兵庫県知事は,被告別院の代表権を巡って争いがあり,正当な代表権を有する者が誰であるか訴訟で明確になるまで待つとの対応をとり,申請から20年以上経過した現在も同申請書類を正式に受理していないのであり(調査嘱託に対する兵庫県企画管理部管理局文書課長からの回答),兵庫県知事がとったこのような対応に問題がないわけではない(行政手続法7条参照)。 しかし,昭和56年7月27日直後から,FないしはGを代表者とする被告別院が原告となり,兵庫県知事を被告として,本件認証申請書の不受理違法確認訴訟を提起して,救済を求める方法が考えられた。そして,当該訴訟において,FないしはGが,被告別院の正当な代表権を有することを主張立証すればよかったのである。 認証申請書の不受理違法確認訴訟を提起して,救済を求める方法が考えられた。そして,当該訴訟において,FないしはGが,被告別院の正当な代表権を有することを主張立証すればよかったのである。 ただ,Gについては,昭和56年9月25日以降は,そのような訴訟を起こしても,被告別院の正当な代表権を有することの立証に成功できたかの問題はあるが,それは又別問題である。そして,Fについては,平成5年4月13日に死亡するまで,被告別院の住職,代表役員の地位にあった(この事実は,被告別院も平成6年6月22日付準備書面一項で認めている)のだから,問題はない。 c したがって,このような司法上の救済方法が存在した以上,兵庫県知事が本件規則変更に対する認証をしていないのに,兵庫県知事が20年以上にわたり本件認証申請書類を正式に受理していないことを理由に,宗教法人法の明文規定に反してまで,本件包括・被包括関係の廃止を認めることはできない。 2 原告らの原告適格の検討(1) 宗教法人役員の地位存否確認訴訟の原告適格宗教法人である寺院の代表役員たる地位や代表役員代務者たる地位の存否確認を求める訴えについて,第三者の原告適格を肯定するには,組織上,その代表役員の任免に関与するなど代表役員などの地位に影響を及ぼすべき立場にあるか,又は自らが代表役員などによって任免される立場にあるなど代表役員などの地位について法律上の利害関係を有していることを要する(最高裁判所平成7年2月21日第3小法廷判決・民集49巻2号231頁)。 (2) 事実の認定そして,前記第2の前提事実,及び証拠(甲2,甲8,甲15の1,甲18,甲44,甲45,乙1ないし3,乙9,乙20)並びに弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア Gは,昭 そして,前記第2の前提事実,及び証拠(甲2,甲8,甲15の1,甲18,甲44,甲45,乙1ないし3,乙9,乙20)並びに弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア Gは,昭和48年6月6日,当時の管長であったFから被告別院の輪番に任命され,その後の昭和54年9月20日,被告別院の住職であったFから輪番に命ぜられていた(甲8)。 イ被告別院の包括法人であった大谷派では,昭和56年6月11日,宗憲が改正され,管長制が廃止されて,大谷派宗務総長が大谷派の代表役員になり,従前大谷派管長が行なっていた職務は,同宗務総長が行なうこととなった。 ウ被告別院(代表者F)は,昭和56年7月27日,大谷派からの離脱の規則改正を行うため,兵庫県知事に規則変更の認証申請を行った(甲15の1)。 しかし,兵庫県知事は,上記認証申請を正式に受理しなかったので,その後も大谷派と被告別院とは包括・被包括の関係にあった。 エそこで,大谷派宗務総長は,被告別院が大谷派との関係で引き続き包括・被包括関係にあることを前提に,昭和56年9月25日,大谷派の懲戒条例に基づいて,被告別院の輪番であったGについて,その職を免じる旨の処分をした。 さらに,Gは,昭和57年2月22日,大谷派審問院にて重懲戒7年に処せられ,全ての役職務を差免され,教師の資格を剥奪された。 オこのように,Gは,平成10年3月当時,被告別院の輪番たる地位になく,代表役員代務者ではなかった。ところが,Gは,平成10年3月9日,その任期を平成13年4月30日までとして,原告C及び原告Dを被告別院の責任役員に選任し,原告Eを被告別院の総代に選任したとして,その旨を被告別院の住職に届けている。 (3) 検討原告らは,平成10年3月9日,被告別院の代表役員 C及び原告Dを被告別院の責任役員に選任し,原告Eを被告別院の総代に選任したとして,その旨を被告別院の住職に届けている。 (3) 検討原告らは,平成10年3月9日,被告別院の代表役員代務者であるGによって,原告C及び原告Dは被告別院の責任役員に選任され,原告Eは被告別院の総代に選任された旨主張する。この主張は,Gが平成10年3月当時,被告別院の輪番(代表役員代務者)の地位にあったことを前提とするものである。 しかし,Gは,昭和56年9月25日,大谷派の宗務総長により輪番を免ぜられ,昭和57年2月22日,大谷派審問院にて重懲戒7年に処せられ,全ての役職務を差免されているので,平成10年3月当時,Gが被告別院の輪番(代表役員代務者)の地位になかったことは,前記(2)で認定したとおりである。したがって,Gは,当時,原告らをして責任役員や総代に任命すべき権限を有していなかったのであり,原告らは,被告別院の責任役員ないし総代に選任されたものとは認められない。 そうすると,原告らは,被告別院の代表役員代務者の任免などに関するその地位に影響を及ぼすべき立場にはなく,したがって,本件訴えを提起する原告適格がないといわざるを得ない。 なお,原告らの主張によっても,原告らの責任役員ないし総代の就任期間は平成10年5月1日から平成13年4月30日までであるから,この点からも原告らにつき本件訴訟の原告適格を認めることができない。 第4 結論以上の次第で,本件訴えは,その余の点について判断するまでもなく不適法であるから,これを却下することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第2民事部裁判長裁判官紙浦健二 これを却下することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第2民事部裁判長裁判官紙浦健二裁判官中村哲裁判官秋田志保
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