平成13(ワ)914 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成14年6月14日 神戸地方裁判所
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判決文本文20,637 文字)

判決平成14年6月14日神戸地方裁判所平成13年(ワ)第914号損害賠償請求事件 主文 1 被告らは,原告に対し,連帯して金2237万4870円及びこれに対する平成11年5月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを10分し,その7を被告らの負担とし,その余は原告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告らは,原告に対し,連帯して金3196万4100円及びこれに対する平成11年5月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告会社が原告から指名競争入札により受注した道路改良工事について,同受注が,被告会社及び他の指名業者らとの談合の結果であり,原告は,談合により原告が支払うことになった請負代金と,適正に入札がなされていた場合に原告が支払うはずであった請負代金との差額相当額の損害を被ったとして,被告らに対し,不法行為に基づく損害賠償請求をした事案である。 1 争いのない事実等(末尾に証拠の標目の記載のない事実は当事者間に争いがない。)(1) 当事者原告は地方自治法上の普通地方公共団体である。 被告会社は,土木工事,建築工事,舗装工事等を業とする株式会社であり,被告Aは,昭和63年2月4日から平成12年8月20日まで被告会社の代表取締役であった者である。 (2) 本件工事の指名競争入札原告は,都市計画道路宝塚駅南口線(湯本町工区)道路改良工事・工事番号B5-5(以下「本 8月20日まで被告会社の代表取締役であった者である。 (2) 本件工事の指名競争入札原告は,都市計画道路宝塚駅南口線(湯本町工区)道路改良工事・工事番号B5-5(以下「本件工事」という。)を計画した。 原告は,上記工事の発注を指名競争入札によって行うこととし,平成10年7月6日,原告の業者選定委員会において,被告会社,B,C,D,E,F,G,H,I及びJの計10業者を指名業者として選定した。 (3) 本件工事の設計金額,予定価格,最低制限価格(乙10,11)本件工事は,土工,排水工,舗装工,路側工及び電線共同溝工から成るところ,原告は,平成10年6月ころ,本件工事の指名競争入札につき,落札価格の上限である予定価格の算定のため,本件工事の設計金額(直接工事費,間接工事費〔共通仮設費,現場管理費〕,一般管理費等,消費税)を,その基準単価表等に従って積算し,これを1億1676万7350円(うち消費税556万0350円。 したがって,消費税を別途とした積算額は1億1120万7000円)と積算した。 そして,原告は,上記設計金額(ただし,消費税を除いた1億1120万7000円)から約5パーセントを減じた1億0500万円(消費税別途)を落札価格の上限である予定価格として設定し,同予定価格の70パーセントの価格である7350万円(消費税別途)を落札価格の下限である最低制限価格として設定した。 (4) 本件談合被告会社は,本件工事を請け負いたいと考え,平成10年7月6日以降,他の指名業者らに対し,被告会社が落札できるよう働きかけ,本件入札の落札業者を被告会社とする承諾を取り付けた。そして被告会社は,自己の入札価格を1億0500万円(消費税別途)とし, 年7月6日以降,他の指名業者らに対し,被告会社が落札できるよう働きかけ,本件入札の落札業者を被告会社とする承諾を取り付けた。そして被告会社は,自己の入札価格を1億0500万円(消費税別途)とし,他の指名業者には,これ以上の入札価格にしてもらうこととし,それぞれが入札すべき金額を指示した(以下「本件談合」という。)。 本件談合は,本件談合当時被告会社の代表取締役であった被告Aが,自ら,又は被告会社の営業部長Kに指示して,行ったものであった。 (5) 談合の実態ア談合組織宝友会について(甲5の1,7,8の1,9,10,11の1,14)原告は,平成元年ころから,公共工事の現場が武庫川の右岸である場合,右岸所在の業者を指名し,左岸の工事現場であれば,左岸所在の業者を指名するようになり,それに併せて,同時期以降,被告会社を含む武庫川右岸業者らにおいて,談合を行うようになった。ところが,不況の長期化に伴い公共工事が減少した結果,右岸の指名業者間で談合がうまくまとまらず,落札価格が低下する事態が生じたことから,平成9年7月,右岸の業者間の親睦を深め,談合をスムーズに行うことを目的として,右岸の土木建築業者28社を構成員とする団体「宝友会」が結成された。被告会社を含む本件談合に加わった指名業者らは,いずれも宝友会の構成員である。 イ談合の目的(甲5の2,6,7,8の1,9,10,20)宝友会所属の各業者が長期間に渡って談合を行ってきた目的は,落札業者については,自由競争による入札の場合と比べてより多額の利益を得ること,他の指名業者については,談合金を得たり,下請けの仕事をもらったり,当該工事を譲ることで貸しを作り,後に他の工事で借りを返してもらい,自ら落札業 競争による入札の場合と比べてより多額の利益を得ること,他の指名業者については,談合金を得たり,下請けの仕事をもらったり,当該工事を譲ることで貸しを作り,後に他の工事で借りを返してもらい,自ら落札業者となって多額の利益を得たりすること等であった。 ウ落札業者の決め方(甲5の2ないし4,8の1・2,10,12の1)宝友会の構成員の間においては,談合によって決まった落札予定業者を「本命」と呼んでいた。談合の際,この本命の業者の決定は,「地域性」,「続き」,「腹の上」,「貸借」,「トーナメント制」,「くじびき」,「点数制」等の一定のルールに従ってなされていた。「地域性」とは,工事現場が会社や資材置き場のそばにある業者が優先的に本命となるルールである。「続き」とは,ある工事の継続工事について,最初の落札業者が継続工事についても優先権を有するルールである。「腹の上」とは,地下工事を行った業者が地上工事についても優先権を有するルールである。「貸借」とは,先に工事を譲られた業者が,譲った業者に別の工事で本命を譲って借りを返すというルールである。「トーナメント制」とは,2社ずつを対戦させ,貸借,地域性などで勝者を決め,勝者は2回戦,3回戦と戦い,決勝で勝った業者が本命となるというルールである。「点数制」とは,入札参加回数を得点とし,得点の一番多い業者を本命とするというルールである。 本件談合においては,被告会社が,上記ルールのうち「続き」を主張したところ,他の構成員の了解が得られたため,本命となった。 (6) 被告会社による落札被告会社は,平成10年7月21日に行われた本件工事の指名競争入札(以下「本件入札」という。)において,各指名業者が,本件談合どおりの金額で入札を行ったこ (6) 被告会社による落札被告会社は,平成10年7月21日に行われた本件工事の指名競争入札(以下「本件入札」という。)において,各指名業者が,本件談合どおりの金額で入札を行ったことにより,代金1億0500万円(消費税別途)で本件工事を落札した(以下「本件落札」という。)。 (7) 請負契約と代金の支払原告は,平成10年7月22日,本件落札に基づき,被告会社との間で,代金を1億0500万円(消費税別途)とする本件工事の請負契約を締結した。 その後,本件工事の電線共同溝工に信号制御用ケーブル管及び付帯設備の追加があり,設計を変更することになったため,原告は,平成11年3月31日,被告会社との間で,本件工事の請負代金を金1億1022万円(消費税別途)に増額する変更契約を締結した。 原告は,被告会社に対し,同年5月12日,上記変更契約に基づき,請負代金1億1022万円及び消費税551万1000円の合計1億1573万1000円を支払った。 2 争点及び当事者の主張(1) 本件談合による原告の損害(本件談合により原告に損害が発生したかどうか。また,発生したと認められる場合,その損害額。)ア原告の主張本件工事は,本件談合がなければ,Fが7600万円(消費税別途)で落札していた蓋然性が高く,したがって,その後の本件工事の追加変更による増額を考慮しても,原告は,本件工事を7977万8000円(1000円未満切捨て。消費税別途)でFに請け負わせることができたものである。 したがって,原告は,本件談合によって,原告が被告会社に支払った消費税を含む代金1億1573万1000円と,Fに請け負わせることができた場合の消費税を ることができたものである。 したがって,原告は,本件談合によって,原告が被告会社に支払った消費税を含む代金1億1573万1000円と,Fに請け負わせることができた場合の消費税を含む代金8376万6900円(工事代金7977万8000円,消費税398万8900円)との差額3196万4100円を余分に被告会社に支払わされたものであり,3196万4100円の損害を被った。 以下に詳述する。 (ア) 予定価格及び最低制限価格についてa 地方公共団体は,その事務を処理するに当たっては,住民の福祉の増進に努めるとともに,最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない(地方自治法第2条14項)。このような観点から,契約は,一般競争入札を原則としつつ,一定の場合には,指名競争入札,随意契約,せり売りの方法により締結することができるものとされている(地方自治法第234条1項,2項)。そして,公共工事においては,工事の内容によって必要とされる程度以上の施工能力を有する業者に施工させる必要があると判断される場合には指名競争入札となることが多い(地方自治法施行令第167条1号参照)。 原告は,本件工事についても,上記の見地から指名競争入札により発注することとした。 b ところで,普通地方公共団体の支出の原因となる契約について競争入札に付す場合には,政令の定めるところにより,契約の目的に応じ,予定価格の制限の範囲内で最低の価格をもって申込みをした者を契約の相手方とするものとされている(地方自治法第234条3項)。 また,工事又は製造の請負の契約について,当該契約の内容に適合した履行を確保するため特に必要がある た者を契約の相手方とするものとされている(地方自治法第234条3項)。 また,工事又は製造の請負の契約について,当該契約の内容に適合した履行を確保するため特に必要があると認めるときは,あらかじめ最低制限価格を設けて,予定価格の制限の範囲内で最低の価格をもって申込みをした者を落札者とせず,予定価格の制限の範囲内の価格で最低制限価格以上の価格をもって申込みをした者のうち最低の価格をもって申込みをした者を落札者とすることができる(地方自治法施行令第167条の10第2項,167条の13)。価格面だけではなく,完成した契約の目的物を質的にすぐれたものとするため,技術上常識で考えられない低価格で落札して不良工事を行うような業者を排除しようとの趣旨によるものである。そして,宝塚市財務規則第92条1項においても,同様の趣旨から,特に必要があると認めるときは,予定価格の10分の9から10分の6までの範囲内で,最低制限価格を設けなければならないとされている。 本件入札においても,このような見地から最低制限価格が設けられた。 c 以上から明らかなように,予定価格を上限とし最低制限価格を下限として,入札参加者の自由な競争によって,この範囲内で最低の価格をもって申込みをした者と契約を締結し,もって最少の経費で最大の効果を挙げようとするのが本件入札の目的であり,かつ法の要請するところである。 d 予定価格は,取引の実例,価格,需給の状況,履行の難易,契約数量の多寡,履行期間の長短等を考慮して,適正に定めなければならないとされている(宝塚市財務規則第91条3項)。 この予定価格を決定するに際しては,まず設計金額を算出するのであるが,これらの積算基 等を考慮して,適正に定めなければならないとされている(宝塚市財務規則第91条3項)。 この予定価格を決定するに際しては,まず設計金額を算出するのであるが,これらの積算基準等についての法令の定めは特にない。しかしながら,各工事毎の積算に不公平が生じないようにするため,あるいは多種多様な大量の工事に関する積算を円滑,迅速,正確に処理できるようにするために,ほとんどの地方公共団体は設計金額の積算基準を設けている。そして,この積算基準は,国土交通省(以前は建設省)の策定にかかる各種積算基準や都道府県の定める積算単価表等によっているのが通例である。 ところで,現実の請負契約においては,このようにして定められた設計金額より相当下回った金額で契約されているが,業者は一般的には,それでも利益を得て,経営も成り立っているのである。その理由としては,前述の積算基準等と比べて,現実の工事においては,機械化,地域的事情,労務者との契約形態等により労務費が安くなっていること,業者間で大量に仕入れることにより資材費が安くなっていること等が考えられ,業者側の企業努力等によって,設計金額より相当下回った金額であっても受注希望者が多数存在するのが現状である。 したがって,予定価格の決定に際しては,このような状況を前提に,最少の経費で最大の効果を挙げるという観点から,設計金額から一定の割合を差し引いて決めているのである。 (イ) 自由競争が行われた場合に想定される落札価格について被告らは,本件工事の対価は,変更契約を含めて,適正妥当な代金額を上回るものではないと主張するが,談合を行うことの目的は,自由競争による場合よりも高い価格で契約して,より多くの利 被告らは,本件工事の対価は,変更契約を含めて,適正妥当な代金額を上回るものではないと主張するが,談合を行うことの目的は,自由競争による場合よりも高い価格で契約して,より多くの利益を得ることであり,その結果原告が損害を被ったことは明らかである。 被告会社の担当者を含め本件指名競争入札に参加した10業者は,本件談合に関する刑事事件の捜査中,検面調書において,談合が行われず,いわゆる「たたき合い」という本来あるべき自由競争が行われた場合の入札価格について,「最低限度の利潤で請け負う場合の入札価格」であると供述し,別紙「入札価格一覧表」記載のとおり積算している。これによれば,本件談合がなされず自由な競争が行われていたならば,Fが金7600万円(消費税別途)で本件工事を入札し,落札していた蓋然性が極めて高い。 (ウ) 原告の損害額a 本件工事における当初設計金額,予定価格,最低制限価格は別紙「契約金額一覧表」①~③記載のとおりである。 本件入札においては,被告会社が同表④のとおり税抜金額1億0500万円で落札し,消費税を含めて金1億1025万円で当初の請負契約を締結したのであるが,前記のとおり,談合がなく自由競争が行われていた場合にはFが同表⑤のとおり7600万円で落札し,消費税を含めて7980万円で契約していた蓋然性が高い。 b そして,当初契約の後,設計変更があり設計金額が上記別紙契約金額一覧表⑥のとおり増額となったのであるが,このような場合,変更後の契約金額は下式により算出され,さらにこれに消費税が加えられることとなる。 変更後設計金額(税抜)×当初請負金額(税込)/当初設計金額(税込) ,このような場合,変更後の契約金額は下式により算出され,さらにこれに消費税が加えられることとなる。 変更後設計金額(税抜)×当初請負金額(税込)/当初設計金額(税込)したがって,被告会社の変更後契約金額は下式のとおり計算され,税込みで金1億1573万1000円となった。 116,736,000×110,250,000/116,767,350≒ 110,220,000(1000円未満切捨て)110,220,000×0.05=5,511,000以上合計115,731,000同様の計算をFが落札したであろう金額に基づいて行うと,下式のとおり税込みで金8376万6900円となる。 116,736,000×79,800,000/116,767,350≒79,778,000(1000円未満切捨て)79,778,000× 0.05= 3,988,900以上合計 83,766,900したがって,原告が被った損害は下式のとおり金3196万4100円となる。 115,731,000-83,766,900=31,964,100イ被告らの認否及び反論(ア) 本件入札に関して指名競争入札参加業者の間において談合が行われたことは事実であるが,原告の損害の発生及び額については否認する。 原告の指名競争入札においては,その実施に先立って,まず工事設計書を起案する担当課(本件工事については,宝塚市道路部道路整備室街路 ,原告の損害の発生及び額については否認する。 原告の指名競争入札においては,その実施に先立って,まず工事設計書を起案する担当課(本件工事については,宝塚市道路部道路整備室街路建設課)において設計金額の積算が行われる。設計金額は,工事発注者が,公共工事の標準的な施工方法を基準として,標準的な施工能力を有する建設業者が,それぞれの現場条件に応じて当該工事を行った場合に最も妥当性があると考えられる経費を積算した合計金額であって,当該工事における請負人の適正な利潤を含んだ標準的な請負代金である。本件工事の設計金額は,1億1676万7350円(消費税額込み。消費税額を控除すると1億1120万7000円である。)であった。 次に,同市総務部理財課において,予定価格を決定する。予定価格とは,落札価格の上限であり,それは,通例,設計金額から5パーセント程度を減じた金額をもって定められている。前記のとおり,設計金額が標準的な請負代金であるが,市の支出を抑制するためにこのような「歩引き」を行う。本件工事の予定価格(消費税額別途)は,1億0500万円(設計金額の94.4パーセント相当額)であった。 また,理財課は,入札に先立って最低制限価格を決定しておくのが通例である。最低制限価格は,落札価格の下限であり,通例,予定価格の70パーセント程度の金額をもって定められる。不当に廉価での落札が生じたときには手抜き工事等の弊害が懸念されるために,このような事態の発生を未然に防止する目的で最低制限価格を設けるとのことである。本件工事における最低制限価格(消費税額別途)は,7350万円(予定価格の70パーセント相当額)であった。 以上のとおり,本件工事(変更契約前)の請負代金1億0 とのことである。本件工事における最低制限価格(消費税額別途)は,7350万円(予定価格の70パーセント相当額)であった。 以上のとおり,本件工事(変更契約前)の請負代金1億0500万円は,標準的な請負代金である設計金額から5パーセント程度減じたところの予定価格と同額であり,変更契約の対価についてもこれに準じて算定された金額であるとのことであるから,本件工事の対価は,変更契約を含めて,決して適正妥当な代金額を上回るものではなく,原告には何ら損害は発生していない。 (イ) さらに,談合がなかったと仮定した場合に予想される契約金額と現実の契約金額との間の差額をもって原告の損害として認められるかを考えるに,もともと談合がなかった場合の落札価格なるものは現実には存在しない金額であり,推計により算出するしかないが,談合がなかった場合の入札においては,予定価格を上限とし最低制限価格を下限とする価格帯において,いかなる価格での落札もありうるのであり,事後的にこれを推断することはできないものであるから,談合がなかったと仮定した場合に予想される契約金額と現実の契約金額との間の差額をもって原告の損害と認めることもできないというべきである。 また,原告は,談合がなかったと仮定した場合に予想される契約金額を,「たたき合い」という本来あるべき自由競争が行われた場合の入札価格であると主張する。 しかしながら,「たたき合い」とは,談合と無縁の事態ではなく,談合をしようとしたが,何らかの事情で不調となったため,談合に加わろうとした業者が意地を張り合い,当該工事の損得とは別の損得に固執して,入札参加業者の全部又は一部が採算性を度外視した低価格での入札を行って激しく競い合い,その結果,最低 調となったため,談合に加わろうとした業者が意地を張り合い,当該工事の損得とは別の損得に固執して,入札参加業者の全部又は一部が採算性を度外視した低価格での入札を行って激しく競い合い,その結果,最低制限価格に近い価格での落札が行われる現象であるところ,このたたき合いが行われた場合には,落札業者には適正な利潤が見込めないどころか,損失が発生するのが通常であるから,競争入札において,たたき合いが常態化すれば,入札参加資格のある業者らは,受注を獲得できないか,又は赤字受注を余儀なくされる結果,経済的破綻に陥るほかない。 したがって,「たたき合い」は,実際には,競争入札制度が本来的に想定する「公正な自由競争」とは無関係な現象であり,たたき合いが発生した場合に予想される落札金額と現実の落札価格との間の差額をもって原告の損害と観念することは妥当でない。 (2) 信義則違反(原告の被告らに対する本件損害賠償請求は信義則違反として許されないか。)ア被告らの主張(ア) 原告における公共工事については,従来から,土木建築業者間に談合が蔓延していたが,原告はこれを知りつつ黙認していたばかりか,予定価格又はこれに近い価格での落札ができるよう入札参加業者に設計金額を示唆するなどして便宜を図っていた。 (イ) 被告Aは,昭和55年から,宝塚市内において,土木建築の個人営業を始めたが,その当時から既に土木建築業者間には談合の風習があった。 被告Aが被告会社を設立した前後から,競争入札参加業者として指名されることが増えたところ,談合の風習が蔓延している中で,被告会社のみが談合を拒絶した場合,他の業者から村八分にされ,徹底的に排除されて,受注ができず,経営の存続が不可能に 争入札参加業者として指名されることが増えたところ,談合の風習が蔓延している中で,被告会社のみが談合を拒絶した場合,他の業者から村八分にされ,徹底的に排除されて,受注ができず,経営の存続が不可能になることから,被告らとしては,宝塚市内で営業をしている他の土木建築業者と歩調を合わせるほかなかった。 (ウ) 原告市役所道路部,下水道部等の公共工事を立案・担当する部局においては,設計金額を聞きに来た指名業者に対して,職員が公然と設計金額を教示するのが慣行になっていたばかりでなく,地元業者の保護育成等の名目から,同慣行が指示・奨励されていたもので,組織ぐるみで行われていた。原告の職員が同慣行に従わない場合には,本人の意に反する人事上の不利益な処遇がなされることもあった。なお,業者と原告職員間には,買収供応等の癒着関係はなく,双方の距離は応分に確保されていた。原告職員は,個人的な好悪の感情や人脈の有無による差別をせず,すべての業者に対し等しく設計金額を教示していたもので,同教示は,執務時間中,役所の部屋で公然と行われていた。そして,原告職員は,設計金額を聞きに来る指名業者が,後日,必ず落札業者になっていたのであるから,事前に談合がなされていること,事前に設計金額を聞きに来る業者が,落札業者として予定されている業者,いわゆる「本命」であることを十分に認識していた。 本件工事に関しては,原告の道路部道路整備室街路建設課係長として,街路事業に係る工事の設計,施工及び管理監督等の職務に従事していたLが,平成10年7月中旬ころ,前記Kに対して,本件工事の設計金額が消費税を含めおよそ1億1600万円である旨を教示した。この情報をもとに被告会社は予定価格を推認して入札をしたところ,予定価格と同一金額である1億0500万円で ,前記Kに対して,本件工事の設計金額が消費税を含めおよそ1億1600万円である旨を教示した。この情報をもとに被告会社は予定価格を推認して入札をしたところ,予定価格と同一金額である1億0500万円で落札した。 (エ) 宝塚市は,地理的に,武庫川を隔てて右岸と左岸とに地域が分かれているが,原告は,古くから,工事場所が右岸である公共工事は右岸の業者を指名業者とし,左岸の工事は左岸の業者を指名業者として競争入札をしていた。これは,右岸の工事は右岸の業者間で談合が行われて右岸の業者が落札し,左岸の工事は左岸の業者間で談合が行われて左岸の業者が落札する風習を容認した上での取り扱いであり,談合の風習をいっそう定着させた。また,原告は,個々の指名競争入札の執行に先立って,指名された業者名を公表してきたが,この扱いも談合を容易にするものだった。 (オ) このように,原告においては,本件に限らず,入札参加業者間の談合を容認し,これに協力していた実態があるうえ,他の土木建築業者においても同様に談合を経由して落札・受注してきた実態があるのに,被告会社のみを狙い撃ちして損害賠償を請求して本件訴訟を提起したのは,差別的かつ抜き打ち的であり,著しく偏頗かつ不公平な取り扱いであって,原告が被告らに対して損害の賠償を求めることは信義則上許されないというべきである。 イ原告の認否及び反論(ア) 被告ら主張事実のうち,原告が,従来から一貫して,組織的に,談合に対する容認と協力の体制を保持してきたという点は否認し,談合が蔓延していたとの事実は不知。 本件に関し,原告職員が競売入札妨害罪で起訴され,罰金の略式命令を受けた事実はあるが,これは,被告らが本件談合のために設計金額を聞き出そうとした 延していたとの事実は不知。 本件に関し,原告職員が競売入札妨害罪で起訴され,罰金の略式命令を受けた事実はあるが,これは,被告らが本件談合のために設計金額を聞き出そうとしたものであり,地方公共団体としての原告が談合に対する容認と協力の姿勢を保持してきたわけではない。 (イ) 被告らは,原告が従前から工事場所によって武庫川の右岸業者と左岸業者に分けて指名業者を選定していることに関し,談合の風習を容認し定着させるものである旨主張するが,このような取り扱いは業者選定基準第2条第7号の地理的条件に基づく運用であって,何ら異とするに足りない。 (ウ) 被告らは,被告らに対して差別的かつ抜き打ち的に損害賠償請求をしたと主張するが,刑事事件における捜査によって,談合の事実のみならず談合を行わなかった場合の入札金額まで明らかになった本件の特殊事情に鑑み,被告らに対して損害賠償請求訴訟を提起しただけであり,何ら差別的かつ抜き打ちではない。 (3) 過失相殺ア被告らの主張信義則違反の主張において述べたとおり,原告組織内において談合に対する容認及び協力が慣習として確立され,原告担当職員の交替があっても,そのような慣習が伝承されてきた実態があり,原告職員の設計金額の教示は,原告の組織と無関係な個人的行動と評価し得ないことからすれば,問題となる原告職員の談合に対する姿勢及び行動は原告に不利益に斟酌されるべき原告側の事情といえる。 また,本件は,被告会社が予定価格と完全に等しい金額で落札した例であるところ,このように予定価格と同額で落札し得たのは,原告職員による設計金額の教示があったからこそであり,これがなければ,被告会社は予定価格を上回る金額で入 定価格と完全に等しい金額で落札した例であるところ,このように予定価格と同額で落札し得たのは,原告職員による設計金額の教示があったからこそであり,これがなければ,被告会社は予定価格を上回る金額で入札して失格となっていたか,安全を見込んで予定価格を相当下回る金額で落札していた可能性が高い。すなわち,本件では,原告が予定価格と同額で契約を締結したこと,したがって,談合による損害が拡大したことについて,原告の職員が大きく寄与したのである。 以上の事実に鑑み,損害額の算定については,民法722条2項の適用又は類推適用により過失相殺をするべきである。 イ原告の認否及び反論被告らの主張を否認する。 仮に被告ら主張の如き事実が存在したとしても,原告の当該職員と被告らとは原告に対する共同不法行為者の関係に立つのであり,本件訴訟において,原告側の過失として評価すべき要素はない。 被告らが,原告職員から予定価格等を聞き出そうとするのは,談合によって被告らが得る違法な利益を最大限にしようとの意図によるものであって,すべて被告らの利益のためになされたことである。 第3 争点に対する判断 1 争点1(本件談合による原告の損害)について(1) 原告は,本件談合がなければ,本件工事はFが7600万円(消費税別途)で落札していた蓋然性が高く,したがって,本件談合の結果,原告は,被告会社に支払った請負代金額と,Fが落札していたはずの金額に基づき原告が支払うべき請負代金額との差額3196万4100円に相当する損害を被ったと主張する。 これに対し,被告らは,被告会社の落札価格は予定価格と同額であるところ,予定価格は,当該工事における請負人の適正な利潤を含んだ標 3196万4100円に相当する損害を被ったと主張する。 これに対し,被告らは,被告会社の落札価格は予定価格と同額であるところ,予定価格は,当該工事における請負人の適正な利潤を含んだ標準的な請負代金である設計金額から5パーセント程度を減じた金額であるから,これに基づく本件工事の対価は,適正妥当な請負代金額を上回るものではなく,原告には何ら損害は発生していない旨を主張し,また,もともと談合がなかった場合の落札価格なるものは現実には存在しない金額であり,推計により算出するしかないが,談合がなかった場合の入札においては,予定価格を上限とし最低制限価格を下限とする価格帯において,いかなる価格での落札もありうるのであり,事後的にこれを推断することはできないものであるから,談合がなかったと仮定した場合に予想される契約金額と現実の契約金額との間の差額をもって原告の損害と認めることはできないとか,原告が損害額算定の基礎とする,本件談合がない場合を想定したという捜査段階での指名業者らによる再見積もりは,本来あるべき自由な競争がなされた場合の入札落札価格ではなく,適正利潤を無視した赤字覚悟の「たたき合い」の場合の価格であるから,これとの差額をもって,本件談合による損害とみることはできないと主張して,その損害の発生及び額を争う。 (2) 損害の発生の有無そこで,まず,本件談合により原告に損害が発生したと認められるか否かにつき検討する。 証拠(甲6,7,8の1・2,9,10,11の1・2,12の1ないし3,13,14,乙10)及び弁論の全趣旨によれば,①公共工事は,発注者が地方公共団体であるため工事代金の回収が確実であること,民間企業と異なり手形ではなく現金で代金が支払われること,工事代金の約3割が前渡金と 4,乙10)及び弁論の全趣旨によれば,①公共工事は,発注者が地方公共団体であるため工事代金の回収が確実であること,民間企業と異なり手形ではなく現金で代金が支払われること,工事代金の約3割が前渡金として先払いされるため資金繰りが楽となること,公共工事を受注することで会社の信用が高まり,銀行からの融資の際にも有利となることなどから,土木建築会社にとって一般に魅力の大きい工事であること,②本件入札時である平成10年7月ころは,不況の長期化に伴い公共工事が減少し,民間企業からの受注も減少していたこと,③本件入札の指名業者として指名された被告会社及び他の指名業者らは,本件工事の指名業者が10業者であったことから,その設計金額が9000万円以上であり,宝塚市内においては比較的大きな仕事であることを本件入札前から察知していたこと,④以上のような理由から,本件工事の指名業者のうち,被告会社以外の,B,C,D,E,F,G,H及びJの8業者も,談合の慣習がなければ,本件工事を受注したいと考えていたこと,以上の事実が認められる。 これらの事実に照らすと,本件談合が行われなければ,本件工事の入札においてはかなり激しい競争になったと推認されるうえ,後記(3)で認定のとおり,本件談合を対象とする捜査において,捜査機関が,本件入札に参加した被告会社を含む指名業者らに対し,本件談合がなされずに入札が実施された場合の本件工事の入札価格について,見積もりをやり直させたところ,いずれの業者も,本件談合による入札価格をかなり下回る価格での見積もりを行ったことにも照らすと,本件談合が行われなければ,落札価格が,落札可能価格の上限である予定価格になるなどという事態は到底考えられず,むしろ,それをかなり下回る価格で落札されたであろうことが推認される。 と,本件談合が行われなければ,落札価格が,落札可能価格の上限である予定価格になるなどという事態は到底考えられず,むしろ,それをかなり下回る価格で落札されたであろうことが推認される。 ところが,現実には,本件談合が行われた結果,予定価格で落札されてしまったのであって,本件談合が行われなかったであろう場合と比べて,落札金額に相当な差が生じたことは明らかであるから,本件談合によって原告に損害が発生したという事実はこれを優に認定することができる。 なお,被告らは,本件落札価格が,客観的に適正妥当な金額である設計金額を約5パーセント減じた予定価格と同一であることを理由に,損害発生の事実を否認する。しかしながら,設計金額が,土木建築業者にとって適正な利潤を含んだ妥当な価格であるかどうかはともかく,本件談合が行われなかった場合,予定価格を下回る価格で落札されたであろうことが上記のとおり推認できる以上,原告に損害が発生していることは明らかである。被告らの上記主張は理由がない。 (3) 損害額ア証拠(甲5の3・4,6,7,8の1・2,9,10,11の1・2,12の1・2,13,14)によれば,本件談合を対象とする捜査において,捜査機関が,本件入札に参加した被告会社を含む指名業者らに対し,本件談合がなされずに入札が実施された場合の本件工事の入札価格について,見積もりをやり直させたところ,その見積もり結果は,別紙入札価格一覧表の「談合なしに自社に相応の利潤を上乗せして入札に参加した場合の入札価格」欄及び「自社が最低限度の利潤で請け負う場合(たたきあいの場合)の入札価格」欄に記載のとおりであって,被告会社を含めた指名業者らのいずれもが,本件談合による入札価格をかなり下回る価格での見積もりを行ったこと,それ 低限度の利潤で請け負う場合(たたきあいの場合)の入札価格」欄に記載のとおりであって,被告会社を含めた指名業者らのいずれもが,本件談合による入札価格をかなり下回る価格での見積もりを行ったこと,それら見積もりの中ではFの7600万円が最低の見積額(以下「本件最低見積額」という。)であったことが認められる。以上の事実に,前記(2)で認定したとおり,本件工事は,その額も大きな工事であったうえ,被告会社を含む9業者がこれを受注したいと考えていた工事であり,本来は相当激しい競争となったことが推認できる工事であることを併せ考えれば,本件談合がなければ,本件工事は本件最低見積額7600万円で落札された蓋然性が高いものと認めることができる。 そして,前記争いのない事実等のとおり,本件工事においては,本件落札後に追加変更があり,請負代金が被告会社の落札した1億0500万円から1億1022万円(消費税別途)に増額する変更契約が締結され,これに消費税5パーセントを加えた1億1573万1000円が変更後の請負代金額となっているので,この追加変更を考慮すると,本件最低見積額に基づく落札がなされていた場合にも同率の増額変更がなされたものと推認できるので,これに基づき算定すると,以下の計算式のとおり,7977万8000円(消費税別途)に変更契約がなされ,これに5パーセントの消費税398万8900円を加えた8376万6900円(以下「推定請負代金」という。)が,その請負代金額になったものと推認できる。 (計算式) 7600万円×(1億1022万円/1億0500万円)≒7977万8000円そうすると,原告は,被告会社及びその他の指名業者が本件談合という共同不法行為を行ったことによって,本件請負代金1億157 1022万円/1億0500万円)≒7977万8000円そうすると,原告は,被告会社及びその他の指名業者が本件談合という共同不法行為を行ったことによって,本件請負代金1億1573万1000円と推定請負代金8376万6900円との差額に相当する3196万4100円について,無用の支出を強いられ,損害を被ったと認めることができる。 イもっとも,Fの代表取締役Mは,被告A及びKを被告人とする刑事裁判において,本件最低見積額は,本件談合にかかる競売入札妨害罪の被疑者として警察から取調べを受けた際に,入札価格を積算しないと刑務所に行ってもらう等と言われたため,仕方なく行ったものであって,利益を度外視したものである,あくまで仮定の見積もりなので,現実に落札していたならば当然下請けに出すはずの電線共同溝工事等について下請業者に見積もりも取らずに積算している,いわゆるたたき合いの場合というのはほぼ確実に赤字になるものであり,本件最低見積額では工事が赤字になることは必至であるといった旨の供述をする(乙7)。 しかしながら,以下の事実に照らすと,Mの上記供述を信用することはできない。 (ア) 前記争いのない事実等において認定したとおりの,原告の指名入札における長年にわたる談合の実態に鑑みると,これらの談合を行ってきた業者は,談合制度に依存し続けた結果,経費削減などの経営努力を長年にわたって怠ってきたものと推認されるから,本件工事を本件最低見積額で受注しても,経費削減等の経営努力を行えば利益を得ることができる可能性があると考えられる。したがって,本件最低見積額が果たして確実に赤字になるほど利益を度外視したものかどうかについては疑問がある。 (イ) M自身,捜査段階では,本件最 とができる可能性があると考えられる。したがって,本件最低見積額が果たして確実に赤字になるほど利益を度外視したものかどうかについては疑問がある。 (イ) M自身,捜査段階では,本件最低見積額につき,「今回の捜査が始まり,警察から,談合によらず,自由な競争での入札を前提として当社が入札する金額を積算して出すように指示されました。当社では,私が中心となって積算作業を行いました。この結果,5パーセント程度の利益を見込んだ価格としては,7600万円が入札価格となり,15パーセントの利益を見込んだ場合には,8740万円が入札価格となりました。当社が,この工事をぎりぎりの利益で取る場合の入札価格は,7600万円の入札価格となります。」と述べているのであって(甲10),本件最低見積額が利益を度外視したたたき合いの場合の入札であるといったことや,本件最低見積額が赤字必至の入札額であるといったことは,一切述べておらず,むしろ,ぎりぎりの利益を見込んだ入札額であることを明確に述べているうえ,それら捜査段階の供述と刑事裁判での供述を対比しても,刑事裁判時における供述にはあいまいな部分が多く,また,その供述の変遷について十分説得力のある説明がなされているとは認めがたい。 のみならず,捜査段階で,捜査機関の求めに応じて,本件談合がなされずに入札が実施された場合の本件工事の入札価格について,見積もりをやり直した他の業者らも,捜査段階では,その再見積額が利益を度外視した赤字必至の額であるとか,いわゆるたたき合いが自由な競争の場合ではなく,当初から赤字が必至である場合であるとかいったようなことは,述べていない(甲5の3・4,6,7,8の1・2,9,11の1・2,12の1・2,13,14。)。 なお,一部の者 ,当初から赤字が必至である場合であるとかいったようなことは,述べていない(甲5の3・4,6,7,8の1・2,9,11の1・2,12の1・2,13,14。)。 なお,一部の者(EのN及び被告会社のK)は,Mと同様,捜査段階における前記の供述を否定するかのような供述(乙8,9)を,前記刑事裁判において行っているが,これも,前記捜査段階の供述(甲5の3,9)と対比して,にわかに採用しがたい。 (ウ) 宝塚市における以下の4回の指名競争入札においては,入札業者間で談合が決裂し,自由競争の事態となった結果,いずれも予定価格の約70パーセント前後の価格で落札されたこと,そして,それら工事を落札した業者の中には,トントンでほとんど利益がなかった旨を述べる業者もあるが(甲15),他方,最低でも100万円の利益が見込まれ,経営努力によってより利益を上げうる旨述べる業者もあるのであって(甲22ないし24),赤字であったとまではいずれの落札業者も述べていないこと(甲15,19,21ないし24)が認められる。 ① 平成11年10月28日に実施された宝塚市ab丁目地内の市道652号線道路改良工事の指名競争入札。7指名業者のうち,株式会社Oが,予定価格2030万円の約70パーセントの1420万円で落札(甲22ないし24)。 ② 平成11年11月25日に実施された宝塚市c地内公共下水道(第A101工区)高丸汚水幹線管路施設工事の指名競争入札。6指名業者のうち,Jが,予定価格920万円の約66パーセントの612万円で落札(甲21)。 ③ 平成11年12月24日に実施された宝塚市dの逆瀬川沿いの市道342号線防護柵新設工事の指名競争入札。6指名業者のうち,Cが,予定価格6 トの612万円で落札(甲21)。 ③ 平成11年12月24日に実施された宝塚市dの逆瀬川沿いの市道342号線防護柵新設工事の指名競争入札。6指名業者のうち,Cが,予定価格617万円(なお,設計金額704万3889円)の約71パーセントの442万円で落札(甲15ないし18)。 ④ 平成12年4月27日に実施された宝塚市e町地内の公共下水道(第E1工区)宝塚汚水幹線管路施設工事の指名競争入札。6指名業者のうち,Fが,予定価格547万3000円(なお,設計金額544万9789円)の約70パーセントの384万円で落札(甲19,20)。 (エ) 本件最低見積額も,本件工事の予定価格と比較すると,約72パーセントであって,上記(ウ)の各落札価格における予定価格との割合(約70パーセント)と概ね符合することからすると,これらの落札価格と同様に利益を確保しうる金額であると推認することができる。 ウまた,被告らは,本件談合が行われなかった場合の落札価格を事後的に認定することはできないとして,その損害を,現実の落札価格に基づく契約代金額と談合が行われなかった場合の落札価格に基づく契約代金額との差額と認定することはできないとも主張する。 しかし,本件では,現に,入札に参加した業者らが,捜査機関の求めに応じて,本件談合がなかった場合の入札額の見積もりを行っているのであり,その結果等からして,本件談合がなければ本件最低見積額で落札されていた高度の蓋然性があったものと認定し得ることは,前記したとおりであるから,この点の被告らの主張も採用できない。その他,前記損害額についての認定を覆すに足りる証拠はない。 エ以上の次第で,原告は,被告会社及びその他の指名業者による本件 記したとおりであるから,この点の被告らの主張も採用できない。その他,前記損害額についての認定を覆すに足りる証拠はない。 エ以上の次第で,原告は,被告会社及びその他の指名業者による本件談合の結果,3196万4100円の損害を被ったと認めることができる。そして,前記争いのない事実等のとおり,被告会社の本件談合は,当時の代表取締役であった被告Aが自ら又は被告会社の営業部長Kに指示して行ったものであるから,被告会社は,商法261条3項,78条2項,民法44条1項により損害賠償責任を負うのみならず,被告A個人も,不法行為者としてその損害賠償責任を負うものである。 2 争点2(信義則違反)について被告らは,原告が,入札参加業者間の談合を容認し,これに協力していた実態があるうえ,他の土木建築業者においても同様に談合を経由して落札・受注してきた実態があるのに,被告らのみを狙い撃ちし,損害賠償請求をするのは,著しく偏頗かつ不公平な取り扱いであって,信義則上許されないと主張する。 たしかに,後記3において認定のとおり,原告の組織内部において,少なからざる人数の職員が,長年にわたり,指名競争入札の指名業者間において談合が行われていることを認識しつつ,落札予定業者に対して設計金額を教示するという便宜を図ってきた事実を認めることができる。 しかしながら,上記の便宜供与は談合そのものの成立に関与するものではないこと,本件談合によって不当な利益を得たのは原告ないし同職員ではなく,本件工事を落札した被告会社であることに加え,本件談合に関しては,捜査の結果,当時の被告会社の代表者であった被告A及び営業部長であったKが競売入札妨害罪で公訴を提起され,その結果,両名とも執行猶予付懲役刑に処せられていること(乙14)にも ,本件談合に関しては,捜査の結果,当時の被告会社の代表者であった被告A及び営業部長であったKが競売入札妨害罪で公訴を提起され,その結果,両名とも執行猶予付懲役刑に処せられていること(乙14)にも照らせば,地方公共団体である原告が,かかる事態を受けて被告らを提訴するという判断をすることには十分合理的理由があるところであって,被告らに対して本訴を提起して損害賠償請求を行うことが信義則違反で許されないものであるとは認めることができない。 3 争点3(過失相殺)について証拠(甲5の3,乙1ないし6,9)及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。 原告においては,昭和49年ころから,原告下水道部工務課,同都市計画部,同道路部において,原告発注の公共工事の指名競争入札執行前に,談合により落札予定の業者に対し,当該工事担当の各課係長らが,談合が行われたことを認識しつつ,設計金額を教示する慣行があり,上司である課長らもこれを黙認していた。上記設計金額の教示は,談合により決定された本命の業者が原告内の担当部署を訪れた際,執務時間中に,同部署内において,上司,同僚,部下の面前で,業者に対し,口頭で,又は,設計金額が記載された「予算差引表」という内部資料を業者に示すという方法により行われていた。本件入札においても,当時,原告道路部道路整備室街路建設課(平成12年4月1日付で土木部道路公園整備室道路建設課に名称変更。)係長に在職していたLが,平成10年7月中旬ころ,同課を訪れた被告会社のKに対し,上記と同様の方法で設計金額を教示した。当時,同課内には,課長や部下である係員Pがいたが,LとKのやりとりを目にしながらこれを黙認した。 以上の事実によれば,原告の組織内部において,昭和49年ころから本件に至るまで,長年 。当時,同課内には,課長や部下である係員Pがいたが,LとKのやりとりを目にしながらこれを黙認した。 以上の事実によれば,原告の組織内部において,昭和49年ころから本件に至るまで,長年にわたり,少なからざる人数の職員が,指名競争入札において談合が行われていることを認識しつつ,談合によって落札予定の業者に対し設計金額を教示するという便宜を図る慣行が存在したこと,本件入札においても,原告の職員Lが,かかる慣行に従い,被告会社に対して設計金額を教示したことを認めることができる。 以上の便宜供与は,談合の成立そのものとは無関係であるが,これにより,落札予定業者は,落札可能価格の上限である予定価格にほぼ近い価格で落札し,当該公共工事から高い利益を得ることが可能になるのであるから,談合を援助,助長するものであるということができる。そして,上記の便宜供与は,原告の組織内部において黙認され,改められることなく続いてきたのであって,原告は,これらの行為に対する適切な監督・指導を長年にわたって怠ってきたものと認めることができる。 そうすると,以上の指導監督の懈怠は,過失相殺の対象となるというべきであり,上記認定の諸般の事情に照らすと,過失相殺の割合としては3割と認めるのが相当である。 以上の次第で,被告らは,本件談合によって原告が被った損害金3196万4100円から3割を減じた金2237万4870円について,連帯責任を負うものと認められる。 4 結論以上のとおり,原告の本訴請求は,被告らに対し,金2237万4870円及びこれに対する不法行為の日の後である平成11年5月13日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の各連帯支払いを求める限度において理由があるからこれを認容し,その余 37万4870円及びこれに対する不法行為の日の後である平成11年5月13日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の各連帯支払いを求める限度において理由があるからこれを認容し,その余は失当であるからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第4民事部裁判長裁判官上田昭典裁判官太田敬司裁判官島田環

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