昭和47(ネ)2119 建物収去土地明渡請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和49年2月28日 東京高等裁判所
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判決文本文7,445 文字)

主文 本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。事実 控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人国は控訴人に対し原判決添付別紙第二物件目録記載(一)(二)の各建物を収去して同第二物件目録記載の土地を明渡し、且つ昭和四六年三月五日から右明渡ずみまで一か月金七、〇〇〇円の割合による金員を支払え。被控訴人A、同B、同C、同D、同Eは控訴人に対し、同第二物件目録記載(一)(二)の各建物の各占有部分から退去して同第一物件目録記載の土地を明渡せ。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求め、被控訴人国指定代理人およびその余の被控訴人らはいずれも控訴棄却の判決を求めた。当事者双方の主張及び証拠の関係は次に掲げるほかは原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する。控訴代理人は次のように述べた。一、 相続財産の特別縁故者に対する分與審判確定時に残余財産があればそれは国庫に帰属することとなるが、その帰属の時期は分與審判確定時ではなく、相続財産管理人から国庫に引渡が行なわれた時であり、管理人は国庫に帰属するに至つた相続財産を具体的に国に引渡してはじめてその任務を終了するものであつて、右引継ぎ完了までの間は管理人としての権限を有し、代表権を有する。このことは、民法第九五九条が同法第九五六条第二項のみを準用し、同条第一項を準用していないことからも明らかである。そして、本件において、相続財産は本件土地の賃借権と本件建物であり、しかも、本件建物は被控訴人国を除くその余の被控訴人らに賃貸中のものであり、管理人としては、国庫帰属確定後も国への引継完了までは、控訴人に本件土地の地代を支払い、本件建物の賃料を徴収する任務があつたものである。本件土地の地代は毎月末 の余の被控訴人らに賃貸中のものであり、管理人としては、国庫帰属確定後も国への引継完了までは、控訴人に本件土地の地代を支払い、本件建物の賃料を徴収する任務があつたものである。 も、本件建物は被控訴人国を除くその余の被控訴人らに賃貸中のものであり、管理人としては、国庫帰属確定後も国への引継完了までは、控訴人に本件土地の地代を支払い、本件建物の賃料を徴収する任務があつたものである。本件土地の地代は毎月末 の余の被控訴人らに賃貸中のものであり、管理人としては、国庫帰属確定後も国への引継完了までは、控訴人に本件土地の地代を支払い、本件建物の賃料を徴収する任務があつたものである。本件土地の地代は毎月末日限り、地主である控訴人に支払うべきものであり、借地人Fはそのとおり支払つてきたし、この地代支払義務その支払時期は相続財産となつたことないしは国庫に帰属したことによつて変更されるいわれはない。本件建物の国庫帰属が確定したのは前記分與審判が確定した昭和四四年七月一三日であり、現実に国に引継がなされたのは昭和四六年一月一日である、この間国が控訴人に対し地代を支払う必要はないという理由はなく、また控訴人が地代を徴収できないという理由もない。家賃の取立、地代の支払は相続財産の増減をきたすものであり、管理人のなすべき清算事務の一部であり、これは、被控訴人国えの引継時点まで管理人の権利義務として存続し、従つて地代催告はもとより、地代不払による賃貸借契約解除の意思表示をも受領する権限を有するものであり、このことは、管理人の権限が保存行為の範囲に限られるとしても変りはない。二、 仮りに、相続財産管理人は、国庫帰属後は国庫に帰属した相続財産の代表者としての資格を失い、従つて、地代催告、賃貸借契約解除の意思表示を受領する権限がないとしても、管理人であつたGは、控訴人に対し昭和四四年五月分の本件地代を支払い、同年五月末には控訴人と同年六月分からの地代を一月金七、〇〇〇円に増額することに合意し、六、七月分を支払つた。控訴人としては、本件相続財産の国庫帰属(分與審判が確定した昭和四四年七月一三日)と同時に管理人Gの代理権が消滅したことは知らず、被控訴人国から本件建物が国庫に帰属するに至つた旨の通知を受けた昭和四六年一月一三日頃までGが管理人として代理権を有するも 定した昭和四四年七月一三日)と同時に管理人Gの代理権が消滅したことは知らず、被控訴人国から本件建物が国庫に帰属するに至つた旨の通知を受けた昭和四六年一月一三日頃までGが管理人として代理権を有するものと信じていたものであり、かつ信ずるにつき善意無過失であつたから民法第一一二条により控訴人が管理人たるGに対しなした地代催告ないし賃貸借契約解除の意思表示は有効である。 でGが管理人として代理権を有するも 定した昭和四四年七月一三日)と同時に管理人Gの代理権が消滅したことは知らず、被控訴人国から本件建物が国庫に帰属するに至つた旨の通知を受けた昭和四六年一月一三日頃までGが管理人として代理権を有するものと信じていたものであり、かつ信ずるにつき善意無過失であつたから民法第一一二条により控訴人が管理人たるGに対しなした地代催告ないし賃貸借契約解除の意思表示は有効である。被控訴人国指定代理人およびその余の被控訴人らは次のとおり陳述した。一、 Gは、控訴人主張の催告並びに条件付契約解除の意思表示の受領権限がない。本件相続財産分與の審判は、昭和四四年七月一三日確定し、本件建物の所有権および本件土地賃借権は分與されず、右確定とともに国庫に帰属した。従つて、相続財産管理人であつたGの代理権限は、右物件が国庫に帰属すると同時に消滅したものである。相続財産管理人は、相続財産法人につき代理権を有するが、権利主体が消滅したのに、その代理権が存続するということはありえないから右法人の消滅とともにその代理権を喪失する。本件において、分與審判確定により分與されなかつた残存財産である本件建物および土地賃借権は国庫に帰属し、他に残余財産はないから相続財産法人は、右分與審判確定の時点において清算の目的を達し消滅したことは明らかである。相続人が判明した場合に、管理人の代理権が相続の承認をした時に消滅するとしたのは、相続人が直ちに相続財産の管理をはじめえない場合の無管理の状態を救うために相続財産法人の存続期間を延長した例外規定であり、国庫帰属のごとく、直ちに所有権の帰属が決する場合に、かかる例外規定を要しないことは当然である。管理人は、国庫帰属後においても、管理の計算および財産の引渡等の事務を行なうことがあるが、かかる事務は、委任終了による内部的行為に止まり、対外 する場合に、かかる例外規定を要しないことは当然である。管理人は、国庫帰属後においても、管理の計算および財産の引渡等の事務を行なうことがあるが、かかる事務は、委任終了による内部的行為に止まり、対外的な賃貸借契約解除の意思表示を受領する如き代理権を有するものではない。二、 控訴人は、代理権消滅後の表見代理を主張するが、代理関係の消滅が本人たる権利主体の消滅による場合には民法第一一二条の表見代理は成立しない。表見代理行為は、表見代理人の行為を、一定の場合に本人に及ぼすものであるが、すでに、効果を受けるべき権利主体そのものが消滅した以上、代理の効果が生ずる余地はない。 よる内部的行為に止まり、対外的な賃貸借契約解除の意思表示を受領する如き代理権を有するものではない。二、 控訴人は、代理権消滅後の表見代理を主張するが、代理関係の消滅が本人たる権利主体の消滅による場合には民法第一一二条の表見代理は成立しない。表見代理行為は、表見代理人の行為を、一定の場合に本人に及ぼすものであるが、すでに、効果を受けるべき権利主体そのものが消滅した以上、代理の効果が生ずる余地はない。また、表見代理は、財産の管理清算を目的として認められた特殊な法人である相続財産法人には適用のない制度であり、本件において表見代理を問題とする余地はない。三、 仮定抗弁仮りに、Gに、控訴人の本件催告および解除の意思表示を受領する権限があつたとしても、右解除の意思表示は信義則に反し許されない。本件相続財産法人の管理人であつたHは、昭和四四年四月六日管理人を辞任し、同月一四日その母であるGが管理人に選任されたが、その後も右Hが管理人の事務を実質的に行なつていた。本件解除の意思表示は昭和四五年六月一五日頃到達したが、其の頃GはH渡米のため多忙をきわめたうえ、その処理に窮しており、同年七月三日付で七月三一日までの賃料を控訴人に送付したが、六月一九日分以降の地代の受領を拒絶されたので、同女は同年一二月二五日、同月末日までの地代を供託した。以上のでとく、管理人Gとしては、本件地代を支払う意思はあつたが、管理人の機能に問題があり、かつ多忙と事務不慣れのため支払期日をわずかに遅れたにすぎない。これに加え、催告期間が三日間という過酷なことを考えると、控訴人のなした本件解除は信義に 払う意思はあつたが、管理人の機能に問題があり、かつ多忙と事務不慣れのため支払期日をわずかに遅れたにすぎない。これに加え、催告期間が三日間という過酷なことを考えると、控訴人のなした本件解除は信義に反し、継続的な信頼関係を基礎とする賃貸借関係を終了させる効力はない。証拠(省略) 理由 一、 控訴人が原判決添付第一物件目録記載の土地(本件土地)を所有し、被控訴人国が右土地上に在る同第二物件目録(一)(二)記載の各建物(本件建物)を所有し、その餘の被控訴人らが本件各建物に居住し、それぞれ本件土地を占有していることは各当事者間に争いがない。二、 そこで被控訴人らの本件土地の占有権原の主張およびこれに対する控訴人の主張について判断する。 借関係を終了させる効力はない。証拠(省略) 理由 一、 控訴人が原判決添付第一物件目録記載の土地(本件土地)を所有し、被控訴人国が右土地上に在る同第二物件目録(一)(二)記載の各建物(本件建物)を所有し、その餘の被控訴人らが本件各建物に居住し、それぞれ本件土地を占有していることは各当事者間に争いがない。二、 そこで被控訴人らの本件土地の占有権原の主張およびこれに対する控訴人の主張について判断する。本件土地はFが控訴人から建物所有の目的で賃借し、同地上に本件各建物を所有していたところ、同人は昭和四二年四月六日死亡し、相続人がなかつたため本件各建物と本件土地の借地権を含む同人の遺産は相続財産法人となりはじめHが、同人辞任後はGがその相続財産管理人に選任されたこと、昭和四四年七月一三日右相続財産に関し東京家庭裁判所の特別縁故者に対する分與審判が確定したが本件(一)(二)の建物の所有権およびその敷地たる本件土地に対する賃借権は分與されずに残り、処分されなかつた財産として、本件各建物の所有権が国庫に帰属したことは当事者間に争いがない。控訴人は、分與されなかつた財産が国庫に帰属する時期は分與審判確定時ではなく、右財産が相続財産管理人から国庫に引渡が行われた時であり、相続財産管理人は国庫に帰属すべき財産を具体的に国に引渡してはじめてその任務を終了するものである。本件各建物が管理人から関東財務局長に対し、財産引継ぎがなされたのは昭和四六年一月一日附であつて、これより先控訴人は相続財産 帰属すべき財産を具体的に国に引渡してはじめてその任務を終了するものである。本件各建物が管理人から関東財務局長に対し、財産引継ぎがなされたのは昭和四六年一月一日附であつて、これより先控訴人は相続財産管理人Gに対し昭和四五年六月一五日到達の書面をもつて昭和四四年八月一日以降の延滞賃料を三日以内に支払うよう催告するとともに右支払のないときは本件土地の賃貸借契約を解除する旨の意思表示をしたから、これによって右賃貸借契約は解除されたものであり、したがつて本件土地の賃借権は国庫に帰属していないと主張し、被控訴人らは本件各建物よびその敷地である本件土地の賃借権は前示相続財産分與審判が確定した昭和四四年七月一三日に国庫に帰属し、それと同時にGの相続財産管理人としての代理権限は消滅したのであるから、控訴人主張の催告及び契約解除の意思表示はその受領権限のない者になされたものであつてその効力を生じないと主張するので検討する。 は解除されたものであり、したがつて本件土地の賃借権は国庫に帰属していないと主張し、被控訴人らは本件各建物よびその敷地である本件土地の賃借権は前示相続財産分與審判が確定した昭和四四年七月一三日に国庫に帰属し、それと同時にGの相続財産管理人としての代理権限は消滅したのであるから、控訴人主張の催告及び契約解除の意思表示はその受領権限のない者になされたものであつてその効力を生じないと主張するので検討する。右控訴人の主張する事実は成立に争いのない甲第四号証の一二および同第五号証によつてこれを認めることができる。<要旨>しかしながら相続財産につき特別縁故者からの分與申立がなされ、これについて家庭裁判所の審判があつ</要旨>たときは相続財産の国庫帰属の時期は右審判確定の時が基準となることは、民法第九五九条の規定上明らかである。これを具体的にいえば、分與申立認容の審判において相続財産が全部分與されたときは国庫帰属の問題を生じる余地はないが、一部分與がなされたときは分與されなかつた残余財産が右審判の確定時に国庫に帰属することとなり、また申立却下の審判があれば清算後の全遺産が国庫に帰属する(分與申立が所定の期間(同法第九五八条の三第二項)内になされなかったときは同期間満了時に国庫に帰属することとなる)。そして、右いずれの場合においても国庫帰 判があれば清算後の全遺産が国庫に帰属する(分與申立が所定の期間(同法第九五八条の三第二項)内になされなかったときは同期間満了時に国庫に帰属することとなる)。そして、右いずれの場合においても国庫帰属と共にそれまで存続した相続財産法人は消滅するのである。相続財産管理人は相続財産管理のため法定の職務権限を有し、対外的には法人の事務を執行するに必要とする範囲において相続法人を代理する権限をも有するものであるが、右財産管理人の有する代理権もまた前示相続財産が国庫に帰属し、法人が消滅すると同時に減滅するものと解するを相当とする。もつとも相続財産が国庫に帰属した場合には管理人は国庫に対し管理の計算、引継ぎをする任務を有するが、これらはいずれも国の機関に対し相続財産管理人としての任務終了に伴う事後処理としてなされる行為に過ぎず、相続人が相続を承認した場合を国庫帰属の場合とはその性格を全く異にするのであるから、民法第九五九条において同法第九五六条第一項を準用しなかつたことを根拠として、右国庫に対する引継等が終了までは相続財産法人が存続し管理人の代理権も消滅しないと解することは相当でない。 の計算、引継ぎをする任務を有するが、これらはいずれも国の機関に対し相続財産管理人としての任務終了に伴う事後処理としてなされる行為に過ぎず、相続人が相続を承認した場合を国庫帰属の場合とはその性格を全く異にするのであるから、民法第九五九条において同法第九五六条第一項を準用しなかつたことを根拠として、右国庫に対する引継等が終了までは相続財産法人が存続し管理人の代理権も消滅しないと解することは相当でない。本件において、分與審判が昭和四四年七月一三日確定したことは前示のとおりであり、しかも右審判確定時の昭和四四年七月末までの本件土地の賃料が管理人Gにより控訴人に支払われていることは控訴人の主張自体により明らかであり、管理人Gとしては、本件建物および本件土地賃借権の国庫帰属即ち相続財産法人消滅時までになすべき清算事務はすべて結了しているものというべく、したがつて本件各建物の所有権および本件土地の賃借権は右審判確定時において国庫に帰属し、それと同時にGの相続財産法人の代理権も消滅したのであるから、右代理権消滅後になされた控訴人の賃料支払の催告および契約解除の意思表示は 所有権および本件土地の賃借権は右審判確定時において国庫に帰属し、それと同時にGの相続財産法人の代理権も消滅したのであるから、右代理権消滅後になされた控訴人の賃料支払の催告および契約解除の意思表示はその受領権限のない者になされたものとして効力を生ずるに由ないものといわなければならない。さらに控訴人は、民法第一一二条による代理権消滅後の表見代理を主張するが、表見代理は、もともと表見代理人の行為の効果を一定の場合に本人に及ぼすものであるところ、その効果を受くべき権利主体そのものが消滅した以上かかる代理の効果が生じる余地がなく、本件において権利主体たる相続財産法人は国庫帰属と共に消滅している以上同条による表見代理の成立する余地はなく、控訴人の右主張は採用できない。以上の理由により、本件土地の賃借権は国庫に帰属し、国庫帰属による権利の移転は法律の規定に基くものであるから、相続の場合と同様国は右賃借権の取得をもつて賃貸人である控訴人に対抗し得るもの解すべきであるから、被控訴人国およびその余の各控訴人は本件土地を適法に占有するものといわなければならない。三、 そうすると、控訴人の本訴請求はその他の点につき判断するまでもなく、いずれも失当として棄却すべく、これと同旨の原判決は正当であつて本件控訴は理由がないから民事訴訟法第三八四条第一項によりこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき同法第九五条、第八九条を適用し、主文のとおり判決する。 るもの解すべきであるから、被控訴人国およびその余の各控訴人は本件土地を適法に占有するものといわなければならない。三、 そうすると、控訴人の本訴請求はその他の点につき判断するまでもなく、いずれも失当として棄却すべく、これと同旨の原判決は正当であつて本件控訴は理由がないから民事訴訟法第三八四条第一項によりこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき同法第九五条、第八九条を適用し、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官杉山孝裁判官渡辺忠之裁判官小池二八)

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