平成28(行ウ)533 生活保護費減額決定処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年5月30日 東京地方裁判所
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判決文本文121,422 文字)

令和6年5月30日判決言渡平成28年(行ウ)第533号生活保護費減額決定処分取消請求事件 主文 1 中野区福祉事務所長が平成25年7月5日付けで原告に対してした生活保護法25条2項に基づく保護変更決定を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要 1 事案の要旨厚生労働大臣は、生活保護法(昭和25年法律第144号)による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号。以下「保護基準」という。)が定める生活扶助に関する基準(衣食等の日常生活の必要な基本的、経常的経費についての最低生活費を定めた基準(乙A105・5頁)。以下「生活扶助基準」と いう。)につき、平成25年5月16日付け厚生労働省告示第174号(以下「平成25年告示」という。)、平成26年3月31日付け厚生労働省告示第136号(以下「平成26年告示」という。)及び平成27年3月31日付け厚生労働省告示第227号(以下「平成27年告示」という。)により順次の改定を行った(以下、平成25年告示、平成26年告示及び平成27年告示に よる生活扶助基準の各改定をそれぞれ「平成25年改定」、「平成26年改定」及び「平成27年改定」といい、これらを併せて「本件改定」という。また、平成25年改定がされる前の生活扶助基準を「改定前基準」という。)。 本件は、東京都中野区において生活保護法による保護(以下単に「保護」という。)を受けている原告が、保護の実施機関である処分行政庁(中野区福祉 事務所長のことをいう。以下同じ。)から、平成25年改定の実施に伴い平成 25年8月1日以降の生活扶助費を減額する旨の保護変更決定(以下「平成25年変更決定」と 分行政庁(中野区福祉 事務所長のことをいう。以下同じ。)から、平成25年改定の実施に伴い平成 25年8月1日以降の生活扶助費を減額する旨の保護変更決定(以下「平成25年変更決定」という。)を受けたことから、平成25年変更決定は憲法25条並びに生活保護法1条、3条、8条1項及び同条2項に違反すると主張して、被告を相手に、平成25年変更決定の取消しを求める事案である。 2 関係法令等の定め ⑴ 生活保護法の定めア目的生活保護法は、憲法25条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮する全ての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的と する(1条)。 イ基本原理等無差別平等全て国民は、生活保護法の定める要件を満たす限り、保護を無差別平等に受けることができる(2条)。 最低生活生活保護法により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない(3条)。 保護の補足性保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あら ゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われ(4条1項)、また、民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、全て保護に優先して行われるものとする(同条2項)。 法律の解釈及び運用 生活保護法1条から4条までに規定するところは、同法の基本原理で あって、同法の解釈及び運用は、全てこの原理に基づいてされなければならない(5条)。 基準及び程度の原則保護は、厚生労働大臣(平成11年法律第160号による改正前は厚生大臣。以下、同改正前 同法の解釈及び運用は、全てこの原理に基づいてされなければならない(5条)。 基準及び程度の原則保護は、厚生労働大臣(平成11年法律第160号による改正前は厚生大臣。以下、同改正前であっても「厚生労働大臣」と表記することが ある。)の定める基準(保護基準)により測定した要保護者(現に保護を受けているといないとにかかわらず、保護を必要とする状態にある者をいう。6条2項)の需要を基とし、そのうち、その者の金銭又は物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うものとする(8条1項)。また、保護基準は、要保護者の年齢別、性別、世帯構成別、 所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これを超えないものでなければならない(同条2項)。 必要即応の原則保護は、要保護者の年齢別、性別、健康状態等その個人又は世帯の実 際の必要の相違を考慮して、有効かつ適切に行うものとする(9条)。 世帯単位の原則保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとする(10条本文)。ただし、これにより難いときは、個人を単位として定めることができる(同条ただし書)。 ウ保護の種類及び生活扶助の方法等保護の種類は、①生活扶助、②教育扶助、③住宅扶助、④医療扶助、⑤介護扶助、⑥出産扶助、⑦生業扶助及び⑧葬祭扶助とし(11条1項)、これらの扶助は、要保護者の必要に応じ、単給又は併給として行われる(同条2項)。 生活扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない 者に対して、①衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの及び②移送の範囲内において行われる(12条。以下、単に「生活扶助」 扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない 者に対して、①衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの及び②移送の範囲内において行われる(12条。以下、単に「生活扶助」というときは、特に断りのない限り、居宅において保護を受ける者に対して行われる上記①の保護を指す。)。 生活扶助は、金銭給付によって行うものとする(31条1項本文)。 ただし、これによることができないとき、これによることが適当でないとき、その他保護の目的を達するために必要があるときは、現物給付によって行うことができる(同項ただし書)。 エ職権による保護の変更等保護の実施機関は、常に、被保護者(現に保護を受けている者をい う。6条1項)の生活状態を調査し、保護の変更を必要とすると認めるときは、速やかに、職権をもってその決定を行い、書面をもって、これを被保護者に通知しなければならない(25条2項前段)。 被保護者は、正当な理由がなければ、既に決定された保護を不利益に変更されることがない(56条)。 ⑵ 平成25年告示による改正前の保護基準の定め等保護基準においては、生活保護法11条1項各号の扶助の基準はそれぞれ保護基準別表第1から第8までに定めるところによる旨(1項)、要保護者に特別の事由があって、これらの基準により難いときは厚生労働大臣が特別の基準を定める旨(2項)が規定されているほか、同別表第1ないし第9に おいて、次のとおり規定されている。 ア地域の級地区分生活扶助、住宅扶助、出産扶助及び葬祭扶助に係る各基準(別表第1、第3、第6及び第8)につき、被保護者の居住地の地域の級地区分に応じてその基準額が定められており、別表第9において、当該級地区分と して、全国の市町村が基準額の高い順に1級 各基準(別表第1、第3、第6及び第8)につき、被保護者の居住地の地域の級地区分に応じてその基準額が定められており、別表第9において、当該級地区分と して、全国の市町村が基準額の高い順に1級地-1、1級地-2、2級 地-1、2級地-2、3級地-1及び3級地-2に区分されている。上記地域の級地区分は、大別すると、大都市及びその周辺市町は1級地に、県庁所在地を始めとする中都市は2級地に、その他の市町村は3級地に区分されており、平成25年変更決定がされた時点における原告の居住地である東京都中野区は、1級地-1に区分される。 イ生活扶助基準別表第1において生活扶助基準が定められているところ、生活扶助基準は、基準生活費に関する定め(第1章)と加算に関する定め(第2章)に大別される。 居宅で生活する者(生活保護法30条1項本文)の基準生活費は、 個人別に定められた第1類の表に定める額(飲食物費や被服費等、個人単位に消費される経費に対応するものであり、年齢に応じて基準額が定められる(乙A105・5頁)。以下「第1類費」という。)と、世帯人員別に定められた第2類の表に定める額(光熱水費や家具什器費等、世帯全体としてまとめて支出される経費に対応するものであり、世帯人 数に応じて基準額及び加算額が定められる(乙A105・5頁)。以下「第2類費」という。)とから成るところ、別表第1第1章1⑵アにおいて、次のとおり定められている。 a 基準生活費は、世帯を単位として算定するものとし、その額は個人別の第1類費の額を合算した額と第2類費の額の合計額とする。 b ただし、世帯人数が4人の世帯における基準生活費の額は、第1類費の額を合算した額に0.95を乗じた額(その額に10円未満の端数が生じたときは、これを1 額と第2類費の額の合計額とする。 b ただし、世帯人数が4人の世帯における基準生活費の額は、第1類費の額を合算した額に0.95を乗じた額(その額に10円未満の端数が生じたときは、これを10円に切り上げるものとする。以下このbにおいて同じ。)と第2類費の額の合計額とし、世帯人数が5人以上の世帯における基準生活費の額は、個人別の第1類費の額を合算し た額に0.90を乗じた額と第2類費の額の合計額とする。 c 12月の基準生活費の額は、当該合計額に世帯構成員1人につき級地別に別途定める期末一時扶助費を加えた額とする。 第1類の表においては、級地区分ごとに、被保護者の年齢の区分(①0~2歳、②3~5歳、③6~11歳、④12~19歳、⑤20~40歳、⑥41~59歳、⑦60~69歳及び⑧70歳以上の各区分) に応じた基準額が定められている。 第2類の表においては、級地区分ごとに、保護受給世帯の世帯人員別(世帯人数が①1人、②2人、③3人、④4人及び⑤5人以上の5段階に区分されている。)の基準額(ただし、世帯人数5人以上の世帯については、1人増すごとに加算する額)及び地区別冬季加算額(11月 から3月までの加算額)が定められている。なお、冬季加算に係る地域は、都道府県ごとにⅠ区からⅥ区までの6段階に区分して定められており(別表第1第1章1⑴アの第2類の表)、平成25年変更決定の時点における原告の居住地である東京都は、加算が最も少ないⅥ区に区分される。 加算は、基準生活費において配慮されていない個別的な特別需要を補塡することを目的とするものであり、別表第1第2章において、①妊産婦加算、②障害者加算、③介護施設入所者加算、④在宅患者加算、⑤放射線障害者加算、⑥児童養育加算、⑦介護保険料加算及び⑧ 特別需要を補塡することを目的とするものであり、別表第1第2章において、①妊産婦加算、②障害者加算、③介護施設入所者加算、④在宅患者加算、⑤放射線障害者加算、⑥児童養育加算、⑦介護保険料加算及び⑧母子加算のそれぞれにつき、要件、基準額及び重複調整の方法等が定められてい る。 ⑶ 社会保障審議会に関する定め等ア厚生労働省の本省には、社会保障審議会が置かれており(厚生労働省設置法(平成11年法律第97号)6条1項)、その所掌事務には、厚生労働大臣の諮問に応じて社会保障に関する重要事項を調査審議することや、 同事項に関して厚生労働大臣又は関係行政機関に意見を述べることが含ま れる(同法7条1項1号、3号)。 社会保障審議会の組織、所掌事務及び委員その他の職員その他同審議会に関し必要な事項についてはその定めが政令に委任されているところ(同法7条2項)、この委任を受けて定められた社会保障審議会令(平成12年政令第282号。ただし、令和4年政令第25号による改正前 のもの。)は、①同審議会は委員30人以内で組織すること(1条1項)、②委員及び臨時委員は学識経験のある者のうちから、専門委員は当該専門の事項に関し学識経験のある者のうちから、それぞれ厚生労働大臣が任命すること(2条)、③同審議会は、その定めるところにより部会を置くことができ、部会に属すべき委員、臨時委員及び専門委員は 会長が指名すること(6条1項及び2項)、④同令に定めるもののほか、議事の手続その他同審議会の運営に関し必要な事項は、会長が同審議会に諮って定めること(11条)などを規定している。 イ社会保障審議会令11条に基づいて定められた社会保障審議会運営規則(平成13年1月30日社会保障審議会決定。以下「審議会規則」とい う。)は、 て定めること(11条)などを規定している。 イ社会保障審議会令11条に基づいて定められた社会保障審議会運営規則(平成13年1月30日社会保障審議会決定。以下「審議会規則」とい う。)は、①会長は、必要があると認めるときは、審議会に諮って部会を設置することができること(2条)、②部会長は、必要があると認めるときは、それぞれ部会に諮って委員会を設置することができること(8条)などを規定している。(乙A12、22、100)ウなお、厚生労働省設置法の施行(平成13年1月6日)前においては、 社会福祉事業法(平成12年法律第111号による改正後は社会福祉法。 以下、同改正の前後を通じて「社会福祉事業法」と表記する。)に基づき、厚生省に、社会福祉事業の全分野における共通的基本事項その他重要な事項を調査審議するため中央社会福祉審議会(昭和38年法律第133号による社会福祉事業法の改正前は社会福祉審議会。以下、同改正の前後を通 じて「中央社会福祉審議会」という。)が置かれていた(6条1項)とこ ろ、中央社会福祉審議会は、厚生大臣の監督に属し、その諮問に答え、又は関係行政庁に意見を具申するものとされ(同条3項)、その内部に、生活保護法の施行に関する事項を調査審議するため、生活保護専門分科会が置かれていた(10条1項)。厚生労働省設置法の施行に伴い、中央社会福祉審議会及び厚生省に置かれていたその他の審議会は社会保障審議会に 統合されたが、同審議会には生活保護専門分科会又はこれに相当する分科会は置かれなかった。 3 前提事実(争いのない事実、顕著な事実並びに掲記した証拠(特に断らない限り枝番を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 原告 原告は、平成25年変更決定の時点で満42歳 (争いのない事実、顕著な事実並びに掲記した証拠(特に断らない限り枝番を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 原告 原告は、平成25年変更決定の時点で満42歳であり、居宅において生活扶助を受けていた者である。(甲4)⑵ 生活扶助基準における水準均衡方式の採用ア生活扶助基準は、衣食等のいわゆる日常生活に必要な基本的、経常的経費についての最低生活費を定めたものである。 イ中央社会福祉審議会は、昭和58年12月23日、「生活扶助基準及び加算のあり方について(意見具申)」(以下「昭和58年意見具申」という。)を取りまとめた。 ウ厚生大臣は、昭和58年意見具申を受けて、最低生活費(基準生活費)を算出する方法につき、昭和59年度から水準均衡方式(当該年度に想定 される一般国民の消費動向を踏まえるとともに、前年度までの一般国民の消費実態との調整を図る方式をいう。)を採用することとし、これ以降現在に至るまで、水準均衡方式が採用されてきた。 (乙A7、8、10)⑶ 世帯別基準生活費の算出方法等 ア世帯員の年齢や世帯人数に応じた最低生活費の算出方法は、次のとおり である。 一定の基準となる世帯(昭和61年4月以降は夫婦子1人(33歳、29歳、4歳)の3人世帯。以下、このような世帯を「標準世帯」といい、特に断らない限り1級地-1のものを指す。)における生活扶助基準額(生活扶助基準に基づいて算出された生活扶助費の基準額。原則と して生活扶助基準額から収入認定額を控除した額が実際に当該世帯に支給される生活扶助費となる。乙A5)を決定する。 一般低所得世帯(勤労3人(夫婦子1人)世帯)の消費実態における第1類費に相当する支出額(飲食物費、被服費等)と第2類費に相 額が実際に当該世帯に支給される生活扶助費となる。乙A5)を決定する。 一般低所得世帯(勤労3人(夫婦子1人)世帯)の消費実態における第1類費に相当する支出額(飲食物費、被服費等)と第2類費に相当する支出額(光熱水費、家具什器費等)の構成割合を参考として、上記 の生活扶助基準額を第1類費と第2類費とに分ける。 上記により得られた標準世帯の第1類費については、これに基づき、20~40歳の栄養所要量を100とした場合の年齢階級別の指数を乗ずることにより、世帯員の年齢階級別の第1類費の基準額を算出する。 上記により得られた標準世帯の第2類費については、これを100として、世帯人員別に定めた換算率(一般低所得世帯における世帯人員別の消費支出を参考とした指数)を乗ずることにより、世帯人員別の第2類費の基準額を算出する。 世帯ごとの最低生活費は、上記により得られた第1類費の基準額 と上記により得られた第2類費の基準額とを、当該世帯における世帯員の年齢及び世帯人数に応じて組み合わせることにより算出する。 イ水準均衡方式の下における生活扶助基準の改定に当たっても、標準世帯の合計基準額に水準均衡方式によって算定される改定率を乗じた上で、この改定された基準額を生活扶助基準額の起点として、上記アの方法により 第1類費及び第2類費を設定し、1級地-1以外の級地については、更に 1級地-1の基準額を起点に級地間格差をもって基準額を設定することにより、各世帯に対応する改定後の基準生活費が算出される。 なお、以下においては、標準世帯における生活扶助基準額から、年齢階級別、世帯人員別及び級地別の最低生活費を算出する過程の全部又は一部を「展開」ということがある。 (乙A7、10、21、105 以下においては、標準世帯における生活扶助基準額から、年齢階級別、世帯人員別及び級地別の最低生活費を算出する過程の全部又は一部を「展開」ということがある。 (乙A7、10、21、105)⑷ 近年における生活扶助基準の検証の経緯等ア生活保護制度の在り方に関する専門委員会による検証社会保障審議会福祉部会長は、平成15年7月28日、同部会における了承を経て、審議会規則8条に基づき、同部会の下に、保護基準の在り方 を始めとする生活保護制度全般について議論するため、大学教授を中心に、国立研究所や地方自治体の幹部職員(首長を含む。)ら12名から成る「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」(以下「専門委員会」といい、専門委員会による検証を「平成16年検証」という。)を設置した。 専門委員会は、平成15年12月16日付け「生活保護制度の在り方に ついての中間取りまとめ」(以下「平成15年中間取りまとめ」という。)及び平成16年12月15日付け「生活保護制度の在り方に関する専門委員会報告書」(以下「平成16年報告書」という。)をそれぞれ取りまとめた。 (乙A4、12、13) イ生活扶助基準に関する検討会における検証平成19年10月、厚生労働省社会・援護局長の下に大学教授5名から成る「生活扶助基準に関する検討会」(座長・樋口美雄慶應義塾大学商学部教授。以下「検討会」といい、検討会による検証を「平成19年検証」という。)が設置され、検討会は、平成19年11月30日付け「生活扶 助基準に関する検討会報告書」(以下「平成19年報告書」という。)を 取りまとめた。(乙A5)ウ生活保護基準部会における検証基準部会の設置平成23年2月10日、社会保障審議会における する検討会報告書」(以下「平成19年報告書」という。)を 取りまとめた。(乙A5)ウ生活保護基準部会における検証基準部会の設置平成23年2月10日、社会保障審議会における了承を経て、審議会規則2条に基づき、同審議会の下に、常設の部会として、大学教授7名、 国立研究所幹部職員1名から成る生活保護基準部会(部会長・駒村康平慶應義塾大学経済学部教授。以下「基準部会」という。)が設置された。 基準部会は、保護基準について、5年に1度実施される全国消費実態調査(以下「全消調査」といい、実施年に従い「平成◯年全消調査」等ということがある。)の特別集計データ等を用いて、専門的かつ客観的に 評価・検証を実施することをその設置の趣旨としていた。 平成25年検証基準部会は、平成21年全消調査の個票データを用いて、年齢階級別、世帯人員別及び級地別に、生活扶助基準額及び一般低所得世帯の消費実態をそれぞれ指数化した上で比較することにより、標準世帯から 様々な世帯構成に展開するための指数について検証を行い(以下、基準部会によるこの検証を「平成25年検証」という。)、平成25年1月18日付け「社会保障審議会生活保護基準部会報告書」(以下「平成25年報告書」という。)を取りまとめた。 平成25年検証においては、生活扶助基準と対比する一般低所得世帯 として、平成21年全消調査の対象世帯の中から年間収入階級における第1・十分位の層(全世帯を収入の低い方から順番に並べ、世帯数が等しくなるよう十等分して層に分け、収入の低い層から順次第1から第10までの数字を付したもののうち、第1番目のもの 。以下「第1・十分位」といい、他の層についても当該層を示す番号により同様に表記す るほか、例えば、十等分ではなく五等分 層から順次第1から第10までの数字を付したもののうち、第1番目のもの 。以下「第1・十分位」といい、他の層についても当該層を示す番号により同様に表記す るほか、例えば、十等分ではなく五等分した場合における各層について も「第1・五分位」等と表記する。また、第1・十分位の世帯を「第1・十分位世帯」という。)を設定した。もっとも、平成25年検証では、生活扶助基準額と第1・十分位世帯の消費支出額の水準同士を比較するといった生活扶助基準額の絶対的な水準の検証までは行われなかった。 平成29年検証基準部会は、本件改定後である平成28年5月から平成29年12月にかけて、①生活扶助基準に関する検証、②有子世帯の扶助・加算に関する検証、③勤労控除及び就労自立給付金の見直し効果の検証、④級地制度に関する検証、⑤その他の扶助・加算に関する検証並びに⑥これま での基準見直しによる影響の把握を主な検討事項として検証を行い(以下、基準部会によるこの検証を「平成29年検証」という。)、同月14日付け「社会保障審議会生活保護基準部会報告書」(以下「平成29年報告書」という。)を取りまとめた。 (乙A6、22、66、78) ⑸ 本件改定についてア本件改定の概要本件改定においては、平成25年検証の結果に基づいて生活扶助基準と第1・十分位世帯の消費実態との間における年齢階級別、世帯人員別及び級地別の相対的な較差を是正するための調整(以下「ゆがみ調整」 という。)が実施され、併せて、物価の下落動向を勘案して生活扶助基準を改定する調整(以下「デフレ調整」という。)が実施された。なお、本件改定は、平成25年改定、平成26年改定及び平成27年改定の3回に分けて段階的に実施された。 また、平成26年 て生活扶助基準を改定する調整(以下「デフレ調整」という。)が実施された。なお、本件改定は、平成25年改定、平成26年改定及び平成27年改定の3回に分けて段階的に実施された。 また、平成26年改定においては、ゆがみ調整及びデフレ調整に係 る2年次の改定に加えて、消費税率の引上げの影響を含む国民の消費動 向等を総合的に勘案し、生活扶助基準額を2.9%の改定率で引き上げる内容の改定が行われた。 なお、平成25年告示による改正後の保護基準は平成25年8月1日から、平成26年告示による改正後の保護基準は平成26年4月1日から、平成27年告示による改正後の保護基準は平成27年4月1日か ら、それぞれ適用された。 イゆがみ調整の概要ゆがみ調整は、①第1類費の基準額について、各年齢階級間の基準額の差を小さくする、②第1類費の基準額の逓減率(世帯員が1人増加するごとに第1類費の基準額の合計に乗ずる割合)について、世帯員の 増加に応じた逓減割合を大きくするとともに、第2類費の基準額について、世帯員の増加に応じた世帯人員別の基準額の増額の幅を大きくする、③第1類費及び第2類費の基準額について、それぞれ級地間の基準額の差を小さくすることを内容とするものである。 また、厚生労働大臣は、ゆがみ調整を実施するに当たって、全ての 保護受給世帯につき、平成25年検証において算出された指数を2分の1の割合に限って反映させることとした(以下、この処理を「2分の1処理」といい、2分の1処理も含めたゆがみ調整後の生活扶助基準額を「ゆがみ調整後基準額」という。)を算出した。 なお、2分の1処理それ自体は、平成25年検証において検証され たものではなく、社会保障法や社会福祉学、統計学等に係る学識経験者や地方自治体等 「ゆがみ調整後基準額」という。)を算出した。 なお、2分の1処理それ自体は、平成25年検証において検証され たものではなく、社会保障法や社会福祉学、統計学等に係る学識経験者や地方自治体等で福祉実務に長年携わったような専門家によって構成される基準部会のような合議体(以下「専門家合議体」という。)による審議検討を経たものでもない。 ウデフレ調整の概要 厚生労働大臣は、デフレ調整を実施するに当たり、消費者物価指数 のうち総務省から公表されているもの(以下「総務省CPI」という。)を基に、全ての消費品目(互いに性質の似通った商品又はサービスをグルーピングしたもの)から、①家賃、教育費及び医療費等の生活扶助以外の扶助で賄われる品目並びに②自動車関係費及びNHK受信料等の原則として保有が認められておらず又は免除されるため保護受給世帯にお いて支出することが想定されていない品目(以下、①及び②を併せて「除外品目」と総称する。)を除いて算出した消費者物価指数(以下、全ての消費品目から除外品目を除いた品目を「生活扶助相当品目」といい、生活扶助相当品目を対象とする消費者物価指数を「生活扶助相当CPI」という。)の動向を勘案することとした。そして、厚生労働大臣 は、平成20年の年平均の生活扶助相当CPI(以下、「平成20年生活扶助相当CPI」といい、他の年についても同様に表記する。)及び平成23年生活扶助相当CPIを用いて、平成20年から平成23年まで(以下この期間を「本件対象期間」ということがある。)の生活扶助相当CPIの変化率を-4.78%(以下「本件下落率」という。)と 算出した上で、全ての保護受給世帯につき、ゆがみ調整後基準額に本件下落率を乗ずることにより生活扶助基準額を算出した。 なお、デ CPIの変化率を-4.78%(以下「本件下落率」という。)と 算出した上で、全ての保護受給世帯につき、ゆがみ調整後基準額に本件下落率を乗ずることにより生活扶助基準額を算出した。 なお、デフレ調整は、平成25年検証において検証されたものではなく、専門家合議体による審議検討を経たものでもない。 エ激変緩和措置等 本件改定は、生活扶助基準の見直しの影響を一定程度に抑える観点から、平成25年度から3年間をかけて段階的に実施することとされ、また、改定前基準からの増減幅が±10%を超えないように調整することとされた。 なお、厚生労働省社会・援護局保護課が作成した平成25年1月2 7日付け「生活扶助基準等の見直しについて」によれば、本件改定によ る財政効果は3年間で670億円となる見込みであり、そのうちゆがみ調整によるものが90億円、デフレ調整によるものが580億円であるとされている。 (乙A1ないし3、16、18、89)⑹ 平成25年変更決定 処分行政庁は、平成25年7月5日付けで、原告に対し、平成25年改定の実施を理由として、生活保護法25条2項に基づく保護変更決定をした(平成25年変更決定)。平成25年変更決定により、原告の生活扶助費(月額)は、同年8月1日以降、9万9500円から9万7980円に減額された(なお、証拠上明らかとなっていないが、原告の生活扶助費は、平成 26年改定及び平成27年改定に伴って更に減額されたものと考えられる。)。(甲1)⑺ 本件訴訟の経緯等原告は、平成25年変更決定に係る審査請求及び再審査請求を経て、平成28年11月17日、本件訴えを提起した。(甲2ないし5) 4 主な争点本件の主な争点は、本件改定が厚生労働大臣の裁 原告は、平成25年変更決定に係る審査請求及び再審査請求を経て、平成28年11月17日、本件訴えを提起した。(甲2ないし5) 4 主な争点本件の主な争点は、本件改定が厚生労働大臣の裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用するものと認められるか否かである。 5 当事者の主張の要旨争点に関する当事者の主張の要旨は、別紙のとおりである。なお、別紙にお いて用いた略称は、本文においても用いることとする。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に加え、掲記各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ⑴ 生活扶助基準の改定方式の変遷等ア昭和25年5月4日に生活保護法が施行された当初は、生活扶助基準の改定方式として、旧生活保護法(昭和21年法律第17号)の下において昭和23年8月1日以降採用されていたマーケットバスケット方式(最低生活を営むために必要な飲食物費や衣類、家具什器、入浴料といった個々 の品目を一つ一つ積み上げて最低生活費を算出する方式)が引き続き採用された。 イ昭和36年4月以降は、生活扶助基準の改定方式として、エンゲル方式(栄養審議会の答申に基づく栄養所要量を満たし得る食品を理論的に積み上げて計算し、別に低所得世帯の実態調査から、この飲食物費を支出して いる世帯のエンゲル係数の理論値を求め、これから逆算して総生活費を算出する方式)が採用された。 ウ生活保護専門分科会は、昭和39年12月16日付けで、それまでの生活保護水準の改善についての検討内容を取りまとめ、厚生大臣に対し、中間報告(昭和39年中間報告)を提出した。 昭和39年中間報告においては、生活保護水準につき、生活保護勤労者世帯の昭和38年度における消費水準は全都市勤労者世帯のそ とめ、厚生大臣に対し、中間報告(昭和39年中間報告)を提出した。 昭和39年中間報告においては、生活保護水準につき、生活保護勤労者世帯の昭和38年度における消費水準は全都市勤労者世帯のそれの49. 7%を占めるまでに向上したものと推計されるところ、低所得階層の消費水準、特に生活保護階層に隣接する全都市勤労者世帯第1・十分位階級の消費水準(同年度における消費水準は全都市勤労者世帯の63. 2%)の動向に着目した改善を行うことが特に必要であるなどとされた。 エ昭和39年中間報告を受けて、厚生大臣は、昭和40年4月1日以降、生活扶助基準の改定方式として、格差縮小方式(当時における一般的な消費水準の平準化傾向に伴い、低所得階層の消費支出が平均以上に高い伸び率を示していたことに対応して、翌年度の政府経済見通しにおける民間最 終消費支出の伸び率を基礎として、それに格差縮小分を上乗せすることに より、低所得世帯と保護受給世帯との消費水準の格差を縮小させようとする方式)を採用した。 (前提事実⑵、乙A7の2、乙A9、10、32)⑵ 昭和58年意見具申と水準均衡方式の採用等ア生活保護専門分科会は、格差縮小方式の下における生活扶助基準の評価 と、これからの生活扶助基準の改定方式の在り方について検討を行い、昭和55年12月、それまでの検討状況を中間的に整理するとともに今後の検討の方向性を明らかにするため、「生活保護専門分科会審議状況の中間的とりまとめ」(以下「昭和55年中間取りまとめ」という。)を作成した。 昭和55年中間取りまとめの概要は、次のとおりである。 昭和40年度以降、格差縮小方式によって生活扶助基準が改定されてきた結果、その導入当時の水準に比して相当の改善が図られた点は評価されるべき 昭和55年中間取りまとめの概要は、次のとおりである。 昭和40年度以降、格差縮小方式によって生活扶助基準が改定されてきた結果、その導入当時の水準に比して相当の改善が図られた点は評価されるべきであるが、地域社会の成員としてふさわしい生活を営むために不可欠な交通費、教育費、交際費等社会的経費は、一般世帯のみな らず第1・十分位世帯と比較しても著しい開きがあることなどを勘案すると、保護受給世帯の消費支出の水準は今後更に改善を要するものである。 生活保護の目的は国民の最低生活すなわち最低限度の消費支出を保障することであり、その具体的保障水準を表す生活扶助基準は、当該年 度に予想される一般国民の消費生活の動向に対応して設定されなければならず、それゆえ、生活扶助基準の改定方式としては、消費支出を指標とし、かつ、予想される生活水準に対応できるものであることが前提となる。 現行の生活扶助基準の改定方式である格差縮小方式は、上記のと おりその格差縮小が十分でない現状においては、その考え方は妥当性を 有するものと認められる。 (前提事実⑵、乙A9)イ中央社会福祉審議会は、生活保護専門分科会における検討を踏まえ、その最終報告として、昭和58年12月23日付けで「生活扶助基準及び加算のあり方について(意見具申)」(昭和58年意見具申)を取りまとめ、 厚生大臣に対し生活扶助基準の在り方等について意見具申を行った。 昭和58年意見具申の概要は、次のとおりである。 生活扶助基準の評価生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものである。国民の生活水準 が著しく向上した今日における最低生活の保障の水準は、単に肉体的生存に必要な最低限の べき最低生活の水準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものである。国民の生活水準 が著しく向上した今日における最低生活の保障の水準は、単に肉体的生存に必要な最低限の衣食住を充足すれば十分というものではなく、一般国民の生活水準と均衡のとれた最低限度のものでなければならない。このような考え方に基づき、総理府(当時)による家計調査を所得階層別に詳細に分析検討した結果、現在の生活扶助基準は、一般国民の消費実 態との均衡上ほぼ妥当な水準に達しているとの所見を得た。しかしながら、国民の生活水準は今後も向上すると見込まれるので、保護受給世帯及び低所得世帯の生活実態を常時把握しておくことはもちろんのこと、生活扶助基準の妥当性についての検証を定期的に行う必要がある。 生活扶助基準の改定方式 生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民生活における消費水準との比較における相対的なものとして設定すべきものであり、生活扶助基準の改定に当たっては、当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえるとともに、前年度までの一般国民の消費水準との調整が図られるよう適切な措置をとることが必要である。また、当該年度に 予想される国民の消費動向に対応する見地から、政府経済見通しの民間 最終消費支出の伸びに準拠することが妥当である。なお、賃金や物価は、そのままでは消費水準を示すものではないので、その伸びは、参考資料にとどめるべきである。 (前提事実⑵、乙A8)ウなお、昭和58年意見具申は、変曲点(収入階級ごとの消費支出額を比 較した場合に、所得の減少に伴う消費支出の減少が急激に下方へ変曲する所得分位のことをいい、これ以下の水準では最低生活を営むことが難しくなるものと考え 申は、変曲点(収入階級ごとの消費支出額を比 較した場合に、所得の減少に伴う消費支出の減少が急激に下方へ変曲する所得分位のことをいい、これ以下の水準では最低生活を営むことが難しくなるものと考えられる。)の概念を用いて検証した結果、昭和54年家計調査特別集計結果による勤労者4人(有業1人)世帯(当時の標準世帯に相当する。乙A10)の収入階級別消費支出額によれば、変曲点の分位が 収入階級50分位中、2.99分位(第2.99・五十分位)にあると判断されたことから、当時の生活扶助基準が一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達していると分析したものである。(乙A10、33)エ厚生大臣は、昭和58年意見具申を踏まえ、昭和59年4月1日以降、生活扶助基準の改定方式として水準均衡方式を採用した。 水準均衡方式は、政府経済見通しにおける個人消費(民間最終消費支出)の伸びに準拠して翌年度の改定率を算定する点においては格差縮小方式と共通するが、①格差縮小分を上乗せしない点及び②個人消費の伸びに関する指標の実績値との調整を図ることとしている点において格差縮小方式と異なる。 なお、水準均衡方式において用いられる民間最終消費支出は、国民経済計算を基礎資料として策定される政府経済見通し(例年1月に閣議決定される「経済見通しと経済財政運営の基本的態度」)におけるものである。また、国民経済計算は、統計法に基づく基幹統計として作成されるものであり、四半期別GDP速報と国民経済計算年次推計の二つから成 る。そして、国民経済計算年次推計において指標とされる民間最終消費 支出には、名目値(実際に市場で取引されている価格に基づいて推計された値)及び実質値(ある年からの物価の上昇・下落分を取り除いた値)があるところ、生活扶 において指標とされる民間最終消費 支出には、名目値(実際に市場で取引されている価格に基づいて推計された値)及び実質値(ある年からの物価の上昇・下落分を取り除いた値)があるところ、生活扶助基準が最低生活に必要な衣食等の費用の額を示すものであり、その改定において消費支出の動向を考慮する場合に物価変動による支出額の変化分を取り除くべきものではないことから、水準 均衡方式による改定において参照される民間最終消費支出としては名目値が用いられている。 (乙A10、93ないし97)⑶ 平成16年検証に至る経緯等ア保護基準の見直しに係る動向等 水準均衡方式の導入後、平成3年頃までは完全失業率は低下傾向にあり、賃金、物価及び消費支出はいずれも増加傾向にあったが、いわゆるバブル景気の崩壊に伴い、平成4年頃からは、完全失業率が上昇するとともに、賃金、物価及び消費支出についても増加率が鈍化し、更に平成10年頃以降はいずれも減少に転ずるなどしていた。 このような状況の下、いわゆる社会福祉基礎構造改革のために国会に提出された「社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律案」の国会審議において、衆議院厚生委員会は、平成12年5月10日、「社会福祉基礎構造改革を踏まえた今後の社会福祉の状況変化や規制緩和、地方分権の進展、介護保険の施行状況等を踏まえつ つ、介護保険制度の施行後5年後を目途とした同制度全般の見直しの際に、(中略)生活保護の在り方について十分検討を行うこと」とする旨の附帯決議をし、参議院国民福祉委員会も、同月26日、同様の附帯決議をした。 また、平成15年6月27日に閣議決定された「経済財政運営と構 造改革に関する基本方針2003」では、①生活保護その他福祉の各分 議院国民福祉委員会も、同月26日、同様の附帯決議をした。 また、平成15年6月27日に閣議決定された「経済財政運営と構 造改革に関する基本方針2003」では、①生活保護その他福祉の各分 野においても、制度、執行の両面から各種の改革を推進する、②年金・医療・介護・生活保護などの社会保障サービスを一体的に捉え、制度の設計を相互に関連付けて行う、③生活保護においても、物価、賃金動向、社会経済情勢の変化、年金制度改革などとの関係を踏まえ、老齢加算等の扶助基準など制度、運営の両面にわたる見直しが必要であるとの方針 が示された。同月19日の財政制度等審議会建議においても、近年の物価・賃金動向等の社会経済情勢の変化を踏まえるとともに年金制度改革における給付水準の見直しとも一体的に検討すれば、生活扶助基準・加算の引下げ・廃止、各種扶助の在り方の見直し、扶助の実施についての定期的な見直し・期限の設定など、制度・運用の両面にわたり多角的か つ抜本的な検討が必要であるとされた。 さらに、社会保障審議会においても、平成15年6月16日付け同審議会意見において、生活保護については、他の社会保障制度との関係や雇用政策との連携などにも留意しつつ、今後、その在り方についてより専門的に検討していく必要があるものとされた。 (乙A11、12)イ平成15年中間取りまとめ上記アのような状況を踏まえ、平成15年7月28日、保護基準の在り方を始めとする生活保護制度全般について検討することを目的として、社会保障審議会福祉部会の下に「生活保護制度の在り方に関する専門委 員会」(専門委員会)が設置され、専門委員会は、同年12月16日付けで「生活保護制度の在り方についての中間取りまとめ」(平成15年中間取りまとめ)を作成した 活保護制度の在り方に関する専門委 員会」(専門委員会)が設置され、専門委員会は、同年12月16日付けで「生活保護制度の在り方についての中間取りまとめ」(平成15年中間取りまとめ)を作成した。 平成15年中間取りまとめの概要は、次のとおりである。 生活扶助基準の評価に関し、生活保護において保障すべき最低生活 の水準は、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的 なものであり、具体的には、年間収入階級第1・十分位世帯の消費水準に着目することが適当である。このような考え方に基づいて第1・十分位の勤労者3人世帯の消費水準について詳細に分析し、標準世帯の生活扶助基準額と比較した結果は、次のとおりである。 a 第1・十分位の消費水準と生活扶助基準額とを比較すると、後者が 高い。 b 第1・十分位(第1~第5・五十分位)のうち、食費、教養娯楽費等の減少が顕著な分位である第1~第2・五十分位の消費水準と生活扶助基準額とを比較すると、後者が高い。 c 第1・十分位のうち、残りの第3~第5・五十分位の消費水準(結 果として第1・五分位の消費水準に近似)と勤労控除額を除いた生活扶助基準額とを比較すると均衡が図られているが、保護受給世帯の消費可能額である勤労控除額を含めた生活扶助基準額と比較すると、後者が高い。 生活扶助基準の第1類費及び第2類費の設定の在り方については、 標準世帯(夫婦子1人の3人世帯)を基準として具体的な世帯類型別にこれを展開してみると、次のとおり、いくつかの問題がみられる。 a 第1類費の年齢別格差についてマーケットバスケット方式時の栄養所要量を基準として設定されている現行の第1類費の年齢別格差について、直近の年齢別栄養所要量 及び一般低所得世帯の年齢別消費支 第1類費の年齢別格差についてマーケットバスケット方式時の栄養所要量を基準として設定されている現行の第1類費の年齢別格差について、直近の年齢別栄養所要量 及び一般低所得世帯の年齢別消費支出額と比較して検証したところ、おおむね妥当であるが、年齢区分の幅の在り方については引き続き検討することが必要であり、また、0歳児については、人工栄養費の在り方を含めた見直しが必要である。 b 世帯人員別の生活扶助基準について 第1類費及び第2類費の割合は、一般低所得世帯の消費実態と比べ ると、第1類費が相対的に大きく、また、このように相対的に大きな第1類費が年齢階級別に組み合わされるために、多人数世帯ほど基準額が割高になる。これを是正するため、標準世帯の生活扶助基準額の第1類費と第2類費の構成割合を一般低所得世帯の消費実態に均衡させるよう第2類費の構成割合を高めることが必要である。また、世帯 人員別に定めた第2類費の換算率については、一般低所得世帯における世帯人員別第2類費相当支出額の格差を踏まえ、多人数世帯の換算率を小さくする方向で見直しを行うことが必要である。 c 単身世帯の生活扶助基準について第1類費及び第2類費の構成割合について、現在の標準世帯を基軸 とする基準設定では、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとはなっていない。したがって、一般に単身世帯数が増加している中で、取り分け保護受給世帯の約7割が単身世帯であること、単身世帯における第1類費及び第2類費については一般世帯の消費実態から見てこれらを区分する実質的な意味が乏しいことも踏まえ、単身世 帯については、一般低所得世帯との均衡を踏まえて別途の生活扶助基準を設定することについて検討することが望ましい。 生活扶助基準の改定方 らを区分する実質的な意味が乏しいことも踏まえ、単身世 帯については、一般低所得世帯との均衡を踏まえて別途の生活扶助基準を設定することについて検討することが望ましい。 生活扶助基準の改定方式の在り方については、次の点が指摘される。 a 昭和59年度以降採用されている水準均衡方式はおおむね妥当であると認められてきたが、最近の経済情勢はこの方式を採用した当時と 異なることから、例えば5年間に1度の頻度で、生活扶助基準の水準について定期的に検証を行うことが必要である。 b 定期的な検証を行うまでの毎年の改定については、近年、民間最終消費支出の伸びの見通しがプラス、実績がマイナスとなるなど安定しておらず、また、実績の確定も遅いため、これによる保護受給世帯へ の影響が懸念されることから、改定の指標の在り方についても検討が 必要であり、この場合、国民にとって分かりやすいものとすることが必要なので、例えば、年金の改定と同じように総務省CPIの伸びも改定の指標の一つとして用いることなども考えられる。 (乙A12、13)ウ平成16年検証 専門委員会は、平成16年12月15日、平成16年検証の結果を取りまとめ、「生活保護制度の在り方に関する専門委員会報告書」(平成16年報告書)を作成した。 平成16年報告書の概要は、次のとおりである。 生活扶助基準の評価・検証等に関しては、平成15年中間取りまと めにおいて報告したとおり、いわゆる水準均衡方式を前提とする手法により、標準世帯の生活扶助基準について、低所得世帯の消費支出額との比較において検証・評価した結果、その水準は基本的に妥当であったが、今後、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるた て、低所得世帯の消費支出額との比較において検証・評価した結果、その水準は基本的に妥当であったが、今後、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため、全消調査等を基に5年に1度 の頻度で検証を行う必要がある。なお、生活扶助基準の検証に当たっては、平均的に見れば、勤労基礎控除も含めた生活扶助基準額が一般低所得世帯の消費における生活扶助相当支出額よりも高くなっていること、また、各種控除が実質的な生活水準に影響することも考慮する必要がある。また、これらの検証に際しては、地域別、世帯類型別等に分けると ともに、調査方法及び評価手法についても専門家の知見を踏まえることが妥当である。 現行の生活扶助基準の設定は3人世帯(標準世帯)を基軸としており、算定については、世帯人数分を単純に足し上げて算定される第1類費に、世帯規模の経済性(いわゆるスケールメリット)を考慮し世帯人 数に応じて設定されている第2類費を合算する仕組みとされているため、 世帯人員別に見ると、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていない。このため、特に次の点について改善が図られるよう、設定及び算定方法について見直しを検討する必要がある。 a 多人数世帯基準の是正第2類費の構成割合及び多人数世帯の換算率に関する見直しのほか、 世帯規模の経済性を高めるような設定等について検討する必要がある。 b 単身世帯基準の設定単身世帯の生活扶助基準についても、多人数世帯の基準と同様、必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっておらず、保護受給世帯の7割は単身世帯が占めていることや、高齢化の進展や扶 養意識の変化に伴って高齢単身世帯の増加が顕著となっており、今後も更にその 低所得世帯の消費実態を反映したものとなっておらず、保護受給世帯の7割は単身世帯が占めていることや、高齢化の進展や扶 養意識の変化に伴って高齢単身世帯の増加が顕著となっており、今後も更にその傾向が進むと見込まれることなどに鑑み、単身世帯については、一般低所得世帯との均衡を踏まえて別途の生活扶助基準の設定について検討することが必要である。 c 第1類費の年齢別設定の見直し 人工栄養費の在り方も含めた0歳児の第1類費や、第1類費の年齢区分の幅の拡大などについても見直しが必要である。 (前提事実⑷ア、乙A4)⑷ 平成19年検証ア平成19年検証に至る経緯等 平成16年報告書において、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かについて5年に一度の頻度で検証を行う必要があると指摘されたことに加え、平成18年7月に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」においても、生活扶助基準について、低所得世帯の消費実態等を踏まえた見直 し及び級地の見直しを行うこととされたことなどを踏まえ、平成19年 10月、厚生労働省社会・援護局長の下に「生活扶助基準に関する検討会」(検討会)が設置された。検討会は、平成16年報告書において提言された定期的な検証のほか、生活扶助基準に係る課題として残されていた項目について評価・検討を行い(平成19年検証)、平成19年10月30日付けで「生活扶助基準に関する検討会報告書」(平成19年 報告書)を取りまとめた。(前提事実⑷イ、乙A5、14)イ平成19年報告書の概要平成19年検証における主な検討項目は、①水準の妥当性(生活扶助基準の水準につき、保護を受給していない低所得世帯における消費実態との均 実⑷イ、乙A5、14)イ平成19年報告書の概要平成19年検証における主な検討項目は、①水準の妥当性(生活扶助基準の水準につき、保護を受給していない低所得世帯における消費実態との均衡が適切に図られているかどうかに関する評価・検証)、②体系 の妥当性(第1類費及び第2類費の合算によって算出される基準額が消費実態を反映しているかどうかに関する評価・検証)、③地域差の妥当性(現行の級地制度においては、最も高い級地と最も低い級地との基準額の較差が22.5%となっているが、これが地域間における生活水準の差を反映しているかどうかに関する評価・検証)である。 平成19年検証においては、上記の各検討項目につき、直近に実施された平成16年全消調査の結果等を用いて、主に統計的な分析を基に、専門的かつ客観的に評価・検証を実施した。上記の各検討項目に係る評価・検証の結果は、次のとおりである。 水準の妥当性について a 生活扶助基準の水準の妥当性に関する評価・検証については、保護受給世帯のうち3人世帯は5.5%にすぎないことを踏まえ、夫婦子1人世帯(標準世帯)だけではなく、保護受給世帯の74.2%を占める単身世帯についても評価・検証が実施された。なお、平成19年検証において比較対象とされた第1・十分位世帯からは、保護受給世 帯と考えられる世帯が除外されていた(乙A82)。 b 評価・検証の結果、夫婦子1人(有業者あり)世帯の第1・十分位における生活扶助相当支出額は世帯当たり14万8781円であったのに対し、それらの世帯の平均の生活扶助基準額は世帯当たり15万0408円であり、生活扶助基準額がやや高めとなっていた。なお、第1・五分位世帯で比較すると、前者が15万3607円、後者が1 5万084 、それらの世帯の平均の生活扶助基準額は世帯当たり15万0408円であり、生活扶助基準額がやや高めとなっていた。なお、第1・五分位世帯で比較すると、前者が15万3607円、後者が1 5万0840円であり、生活扶助基準額がやや低めとなっていた。 また、単身世帯(60歳以上の場合)の第1・十分位における生活扶助相当支出額は世帯当たり6万2831円であったのに対し、それらの世帯の平均の生活扶助基準額は世帯当たり7万1209円であり、生活扶助基準額が高めとなっていた。なお、第1・五分位世帯で比較 すると、前者が7万1007円、後者が7万1193円であり、均衡した水準となっていた。 c なお、生活扶助基準額は、これまで第1・十分位世帯の消費水準と比較することが適当とされてきたが、①第1・十分位世帯の消費水準は、平均的な世帯の消費水準に照らして相当程度に達していること、 ②第1・十分位世帯における必需的な耐久消費財の普及状況は、平均的な世帯と比べて大きな差はなく、また、必需的な消費品目の購入頻度は、平均的な世帯と比較してもおおむね遜色ない状況にあることから、平成19年検証においてもこれを変更する理由はないとされた。 体系の妥当性について a 生活扶助基準の体系に関する評価・検証に当たっては、世帯構成等が異なる被保護者の間において実質的な給付水準の均衡が図られる体系としていくべきとの観点から評価・検証を行い、その上で必要な見直しを行っていくことが必要であるとされた。また、平成16年報告書における指摘を踏まえ、平成17年度からの生活扶助基準の見直し 後の世帯人員別、年齢階級別の基準額につき、改めて消費実態を反映 しているかについて評価・検証が実施された。 b 世帯人員別に設定された生活扶助基準額を第1 の生活扶助基準の見直し 後の世帯人員別、年齢階級別の基準額につき、改めて消費実態を反映 しているかについて評価・検証が実施された。 b 世帯人員別に設定された生活扶助基準額を第1・五分位における世帯人員別の生活扶助相当支出額と比較すると、仮に世帯人員が1人の世帯の生活扶助基準額及び生活扶助相当支出額をそれぞれ1としたときの比率でみると、4人世帯及び5人世帯のいずれにおいても生活扶 助基準額が生活扶助相当支出額に比べてやや高めとなっており、世帯人員4人以上の多人数世帯に有利であり、世帯人員が少ない世帯に不利になっている実態が見られた。 c 年齢階級別に設定された生活扶助基準額を単身世帯の第1~第3・五分位における年齢階級別の生活扶助相当支出額と比較すると、仮に 60歳台の生活扶助基準額及び生活扶助相当支出額をそれぞれ1としたときの比率でみると、20~39歳及び40~59歳のいずれにおいても生活扶助基準額が生活扶助相当支出額に比べてやや低めとなっている一方で、70歳以上では生活扶助基準額が生活扶助相当支出額よりやや高めであるなど、消費実態からややかい離していた。 d 実際の消費実態が生活扶助基準を第1類費と第2類費とに分ける考え方に当てはまるかについて評価・検証を行ったところ、個人的経費である第1類費相当の支出額についても世帯人数によるスケールメリットがみられ、また、世帯共通経費である第2類費相当の支出額についても年齢階級別で差がみられた。したがって、第1類費と第2類費 とに区分された基準額が実際の消費実態を反映しているとはいえない状況となっていた。 地域差の妥当性について級地制度における地域差を設定した当時(昭和59年)の消費実態と直近(平成16年)の消費実態とを比較する 消費実態を反映しているとはいえない状況となっていた。 地域差の妥当性について級地制度における地域差を設定した当時(昭和59年)の消費実態と直近(平成16年)の消費実態とを比較すると、地域差が縮小する傾向 がみられた。 (乙A5)⑸ 平成25年検証に至るまでの生活扶助基準の改定状況等ア平成16年度まで厚生労働大臣は、昭和59年4月に水準均衡方式を採用して以降、平成12年度までの毎年度において、政府経済見通しにおける民間最終消費 支出の伸び等を踏まえて標準世帯の生活扶助基準額を増額する改定を行ったが、平成13年度及び平成14年度においては、前年度の生活扶助基準のまま据え置くこととし、平成15年度及び平成16年度においては、生活扶助基準額を若干減額する(それぞれ前年度の99.1%、99.8%とする)改定を行った。(乙A10) イ平成17年度から平成19年度まで平成17年度から平成19年度までの生活扶助基準について、厚生労働大臣は、各年度における民間最終消費支出の伸び率等を考慮し、それぞれ前年度のまま据え置くこととした。 なお、平成17年度の改定においては、平成16年報告書で多人数 世帯における生活扶助基準の見直しの必要性が指摘されていたことを踏まえ、一般低所得世帯の消費実態との均衡を図るため、第1類費につき、4人世帯の場合0.95、5人以上世帯の場合0.90の逓減率を導入するとともに、第2類費につき、4人以上世帯の場合の基準額を抑制する改定が行われた。 (乙A7の3、乙A36ないし38)ウ平成20年度から平成24年度まで厚生労働大臣は、平成19年検証の結果、平成16年度の生活扶助基準額が、夫婦子1人世帯(有業者あり)及び単身世帯(60歳 (乙A7の3、乙A36ないし38)ウ平成20年度から平成24年度まで厚生労働大臣は、平成19年検証の結果、平成16年度の生活扶助基準額が、夫婦子1人世帯(有業者あり)及び単身世帯(60歳以上)の各第1・十分位における生活扶助相当支出額と比べてそれぞれ「やや 高め」及び「高め」となっているという結果が得られたため、生活扶助 基準を消費実態に適合したものとする見直しについて検討を行ったが、原油価格の高騰が消費に与える影響等を見極めるため、平成20年度については生活扶助基準を改定せずにこれを据え置くこととした。 また、厚生労働大臣は、平成21年度の生活扶助基準の改定に当たっても、物価、家計消費の動向を見ると、平成20年2月以降の生活関 連物資を中心とした物価上昇が国民の家計へ大きな影響を与えており、また、「100年に1度」と言われる同年9月以降のいわゆるリーマン・ショックが実体経済へ深刻な影響を及ぼしており、国民の将来不安が高まっている状況にあると考えられるとして、このような社会経済情勢に鑑み、平成21年度においても生活扶助基準の見直しは行わず、こ れを据え置くこととした。 さらに、厚生労働大臣は、平成22年度について、完全失業率が高水準で推移するなど、現下の厳しい経済・雇用状況を踏まえ、国民生活の安心が確保されるべき状況にあることに鑑み、生活扶助基準を改定せずに据え置くこととし、平成23年度及び平成24年度についても、こ れまでの基準の経緯を踏まえ、現在の経済、雇用情勢等を総合的に勘案した結果、据え置くこととした。 (乙A5、7の1、乙A10、15、39ないし43)⑹ 平成25年検証に至る経緯ア各種経済指標の推移等 平成20年9月のいわゆるリーマン・ショック後にお 据え置くこととした。 (乙A5、7の1、乙A10、15、39ないし43)⑹ 平成25年検証に至る経緯ア各種経済指標の推移等 平成20年9月のいわゆるリーマン・ショック後における経済指標の推移は、おおむね以下のようなものであった。 完全失業率は、平成20年には4.0%であったのが、平成21年は5.1%、平成22年は5.0%、平成23年は4.6%、平成24年は4.3%となっていた。 一般勤労者世帯の平均賃金は、事業所規模5人以上の調査産業計で みると、平成20年には0.3%の減少であったのが、平成21年には3.9%の減少となり、平成22年には0.5%の増加となったものの、平成23年には0.2%の減少、平成24年には0.7%の減少となった。 総務省CPIは、平成20年については前年から1.4%増加した が、平成21年には-1.4%、平成22年には-0.7%、平成23年には-0.3%といずれも減少し、平成24年には前年からの増減率が0.0%であった。全国勤労者世帯の家計消費支出をみても、平成20年には前年からの増加率が名目値で0.5%であったのが、平成21年には-1.8%、平成22年には-0.2%、平成23年には-3. 0%といずれも減少し、平成24年には1.6%の増加に転じた。 総務省CPIを費目別にみると、食料費は、平成20年に2.6%上昇した後、平成21年にも0.2%上昇し、その後、平成22年及び平成23年は下降に転じた(それぞれ-0.3%、-0.4%)ものの、これらの下降分を考慮しても、同年の時点では平成19年の時点よりも 高くなっていた。また、光熱水費も、平成20年に6.0%上昇した後、平成21年及び平成22年は下降に転じた(それぞれ-4.2%、-0. 2%) 考慮しても、同年の時点では平成19年の時点よりも 高くなっていた。また、光熱水費も、平成20年に6.0%上昇した後、平成21年及び平成22年は下降に転じた(それぞれ-4.2%、-0. 2%)ものの、その後、平成23年には3.3%上昇し、同年の時点では平成19年の時点よりも高くなっていた。 (乙A11、102) イ基準部会の設置及びその検討平成16年報告書において、水準均衡方式の下で生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かにつき5年に1度の頻度で検証を行う必要性が指摘され、その後、かかる指摘等を踏まえて平成19年検証が行われたものであるところ、このような経 緯を踏まえて、引き続き学識経験者による専門的かつ客観的な検証を定 期的に行うために、平成23年2月10日、社会保障審議会における了承を経て、審議会規則2条に基づき、同審議会の下に、常設の部会として生活保護基準部会(基準部会)が設置された。 基準部会は、平成23年4月19日から平成25年1月18日まで、合計13回にわたり部会を開催して平成25年検証を行い、同日付けで 「社会保障審議会生活保護基準部会報告書」(平成25年報告書)を取りまとめた。 (前提事実⑷ウ、乙A6、22)⑺ 平成25年検証の概要等平成25年報告書の概要は、次のとおりである。(乙A6、25、78) ア検証の方針及び方法当時、生活扶助基準の設定に当たって水準均衡方式が採用されていたことから、その水準は国民の消費実態との関係で相対的に決まるものであることを前提に、平成16年検証及び平成19年検証における指摘を踏まえ、年齢階級別、世帯人員別及び級地別に生活扶助基準額と消費 実態のかい離を詳細に分析し、様々 の関係で相対的に決まるものであることを前提に、平成16年検証及び平成19年検証における指摘を踏まえ、年齢階級別、世帯人員別及び級地別に生活扶助基準額と消費 実態のかい離を詳細に分析し、様々な世帯構成に展開するための指数について検証が行われた。 そして、生活扶助基準と対比する一般低所得世帯として第1・十分位を設定した上で、様々な世帯構成の基準額を算出する際に基本となる年齢、世帯人数及び地域別の基準額が第1・十分位の消費実態を十分反映 しているかについてより詳細な検証を行うこととされた。その際、仮に第1・十分位世帯の全てが生活保護を受給した場合の1世帯当たりの平均受給額が不変となる(すなわち、保護受給世帯の世帯構成割合が第1・十分位世帯のそれと同一であると仮定した場合、生活扶助費の総額が同一となる)ようにして、年齢、世帯人員(世帯人数)体系及び級地 の基準額の水準への影響を評価する方法が採用された。 なお、平成25年検証においては、平成19年検証とは異なり、比較の対象となる世帯を設定するに当たって、平成21年全消調査の個票データから抽出した第1・十分位世帯から保護受給世帯が除外されていなかった(乙A25の2)。また、平成25年検証においては、一部統計的分析手法である回帰分析が採用されたが、その理由は、①全消調査の 調査客体には10代以下の単身世帯がほとんどおらず、10代以下の消費を正確に計測することができないという限界があったこと、②今回の検証結果の妥当性を補強するため、それが回帰分析を用いた結果とおおむね遜色がないかどうかを確認するとしたことにあった。 平成25年検証においては、国民の消費実態を世帯構成別に細かく 分けて分析する必要があるため、平成21年全消調査の個票データが用いられた ね遜色がないかどうかを確認するとしたことにあった。 平成25年検証においては、国民の消費実態を世帯構成別に細かく 分けて分析する必要があるため、平成21年全消調査の個票データが用いられた。 また、上記のとおり、第1・十分位世帯の生活扶助相当支出額が用いられた理由は、①生活扶助基準を国民の健康で文化的な最低限度の生活水準として考えた場合、指数を全分位の所得階層(全世帯)あるいは 中位所得階層(第3・五分位)等から算出することも可能だが、これまでの検証に倣い、保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが今回の検証では現実的であると判断したこと、②第1・十分位の平均消費水準は、中位所得階層の約6割に達していること、③国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費財について、第 1・十分位世帯における普及状況からは、中位所得階層と比べておおむね遜色なく充足されているものといえること、④全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向ではあるものの、高所得階層を除くその他の十分位の傾向を見ても等しく減少しており、特に第1・十分位が減少しているわけではないこ と、⑤OECDの国際的基準によれば、等価可処分所得(世帯の可処分 所得をスケールメリットを考慮して世帯人数の平方根で除したもの)の中位置(全データの真中の値)の半分に満たない世帯は相対的貧困層にあるとされるが、平成21年全消調査の結果によれば、第1・十分位世帯の大部分はOECDの基準では相対的貧困線以下にあること、⑥分散分析等の統計的手法により検証したところ、各十分位間のうち、第1・ 十分位と第2・十分位の間において消費が最も大きく変化しており、他の十分位の世帯に比べて消費の動向が 困線以下にあること、⑥分散分析等の統計的手法により検証したところ、各十分位間のうち、第1・ 十分位と第2・十分位の間において消費が最も大きく変化しており、他の十分位の世帯に比べて消費の動向が大きく異なると考えられることにあった。 年齢階級別の基準額の水準については、年齢階級別に設定されている生活扶助基準の第1類費について、異なる年齢区分間の比率につき、 消費実態と比べてどれほどのかい離があるかが検証された(上記の理由により、統計的分析手法である回帰分析が採用された。)。この分析に当たっては、スケールメリットが最大に働く場合及び最小に働く場合のそれぞれの想定に応じた2種類の第1・十分位を設定し、それぞれを用いて算出された指数の平均値が採用された。 また、世帯人員別の基準額の水準については、第1類費相当支出及び第2類費相当支出ごとに、各世帯人員別の平均消費水準が指数化され、現行の基準額を同様に指数化したものと比較された。なお、第1類費相当支出のスケールメリットについては、異なる年齢区分間の比率を用いて、世帯人員全員が実際の年齢にかかわらず平均並みの消費をする状態 に補正することにより年齢の影響を除去して世帯人数による影響のみを評価することができるようにされた。 さらに、生活扶助基準の地域差については、世帯人員別の検証と同様に、集計データより平均値を求め、各級地別に1人当たり生活扶助相当の平均消費水準を指数化したものと、現行の基準額を同様に指数化した ものとが比較された。なお、指数化に当たっては、第1類費相当支出部 分については上記と同様に年齢の影響を除去するとともに、各世帯人員別の平均消費水準を指数化したもので第1類費相当支出及び第2類費相当支出の合計の消費を調整することにより世帯人数 当支出部 分については上記と同様に年齢の影響を除去するとともに、各世帯人員別の平均消費水準を指数化したもので第1類費相当支出及び第2類費相当支出の合計の消費を調整することにより世帯人数による消費水準の相違の影響を除去し、地域差による影響のみを評価することができるようにされた。 イ検証結果年齢階級別(第1類費)の基準額の水準0~2歳の生活扶助相当支出額を1としたときの各年齢階級別の指数は、生活扶助基準額では0~2歳が0.69、3~5歳が0.86、6~11歳が1.12、12~19歳が1.37、20~40歳が1.3 1、41~59歳が1.26、60~69歳が1.19、70歳以上が1.06であるのに対し、生活扶助相当支出額ではそれぞれ1.00、1.03、1.06、1.10、1.12、1.23、1.28、1. 08となっており、各年齢階級間の指数にかい離が認められた。 世帯人員別(第1類費及び第2類費)の基準額の水準 第1類費の場合、単身世帯の生活扶助相当支出額を1としたときの各世帯人員別の指数は、生活扶助基準額では単身世帯が0.88、2人世帯が1.76、3人世帯が2.63、4人世帯が3.34、5人世帯が3.95となっているのに対し、生活扶助相当支出額ではそれぞれ1. 00、1.54、2.01、2.34、2.64となっており、第1類 費における世帯人員別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態による指数とを比べると、世帯人数が増えるにつれてかい離が拡大する傾向が認められた。 また、第2類費の場合、単身世帯の生活扶助相当支出額を1としたときの各世帯人員別の指数は、生活扶助基準額では単身世帯が1.06、 2人世帯が1.18、3人世帯が1.31、4人世帯が1.35、5人 の場合、単身世帯の生活扶助相当支出額を1としたときの各世帯人員別の指数は、生活扶助基準額では単身世帯が1.06、 2人世帯が1.18、3人世帯が1.31、4人世帯が1.35、5人 世帯が1.36となっているのに対し、生活扶助相当支出額ではそれぞれ1.00、1.34、1.67、1.75、1.93となっており、第2類費における世帯人員別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態による指数とを比べると、世帯人数が増えるにつれてかい離が拡大する傾向が認められた。 級地別の基準額の水準1級地-1の生活扶助相当支出額を1としたときの各級地別の指数は、生活扶助基準額では1級地-1が1.02、1級地-2が0.97、2級地-1が0.93、2級地-2が0.88、3級地-1が0.84、3級地-2が0.79となっているのに対し、生活扶助相当支出額はそ れぞれ1.00、0.96、0.90、0.90、0.87、0.84となっており、級地別の生活扶助基準額による指数と第1・十分位の消費実態による指数とを比べると、消費実態の地域差の方が小さくなっている。 年齢・世帯人数・地域の影響を考慮した場合の水準 上記からまでの検証結果を踏まえ、年齢階級別、世帯人員別及び級地別の指数を反映した場合の影響は、次のとおり、世帯員の年齢、世帯人数、居住する地域の組合せにより、各世帯への影響は様々であると考えられた。 a 例えば、現行の基準額(第1類費、第2類費、冬季加算、児童がい る場合は児童養育加算、1人親世帯は母子加算を含む。)と検証結果を完全に反映した場合の平均値を個々の世帯構成ごとに見ると、夫婦と18歳未満の子1人世帯では、年齢による影響が現行の基準額に比べて-2.9%、世帯人数による影響が-5.8%、地 を含む。)と検証結果を完全に反映した場合の平均値を個々の世帯構成ごとに見ると、夫婦と18歳未満の子1人世帯では、年齢による影響が現行の基準額に比べて-2.9%、世帯人数による影響が-5.8%、地域による影響が+0.1%でこれらを合計した影響が計-8.5%となった。 b 同様に、夫婦と18歳未満の子2人世帯では順に-3.6%、-1 1.2%、+0.2%、計-14.2%となり、60歳以上の単身世帯では、順に+2.0%、+2.7%、-0.2%、計+4.5%となり、ともに60歳以上の高齢夫婦世帯では順に+2.7%、-1. 9%、+0.7%、計+1.6%となり、20~50代の若年単身世帯では順に-3.9%、+2.8%、-0.4%、計-1.7%とな り、母親と18歳未満の子1人の母子世帯では順に-4.3%、-1. 2%、+0.3%、計-5.2%となった。 ウ生活扶助基準の見直しに関する指摘平成25年報告書においては、生活扶助基準の見直しに関し、厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、平成25年検証 の結果を考慮し、その上で他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は、それらの根拠についても明確に示されたい、なお、その際には現在の保護受給世帯及び一般低所得世帯への見直しが及ぼす影響についても慎重に配慮されたい、との旨の指摘がされている。 エ留意事項 平成25年報告書は、平成25年検証の結果に関する留意事項として、次の点を指摘している。 平成25年検証において試みた検証手法は、平成19年報告書において年齢階級別、世帯人員別及び級地別に生活扶助基準の展開と一般低所得世帯の消費実態との間に生じていると指摘があったかい離がどの程 度かなのかを詳細に分析したものであり 、平成19年報告書において年齢階級別、世帯人員別及び級地別に生活扶助基準の展開と一般低所得世帯の消費実態との間に生じていると指摘があったかい離がどの程 度かなのかを詳細に分析したものであり、これにより、個々の保護受給世帯を構成する世帯員の年齢、世帯人数、居住する地域の様々な組合せによる生活扶助基準の妥当性について、よりきめ細やかな検証が行われたことになる。しかしながら、年齢、世帯人員(世帯人数)の体系、居住する地域の組合せによる基準の展開の相違を消費実態に基づく指数に 合わせたとしても、なお、その値と一般低所得世帯の消費実態との間に は、世帯構成によって様々に異なる差が生じ得る。こうした差は金銭的価値観や将来見込みなど、個々人や個々の世帯により異なりかつ消費に影響を及ぼす極めて多様な要因により生ずると考えられる。しかしながら、具体的にどのような要因がどの程度消費に影響を及ぼすかは現時点では明確に分析ができないこと、また、特定の世帯構成等に限定して分 析する際にサンプルが極めて少数となるといった統計上の限界があることなどから、全ての要素については分析・説明に至らなかった。 平成25年検証で採用した年齢、世帯人数、地域の影響を検証する手法についても、委員による専門的議論の結果得られた透明性の高い一つの妥当な手法である一方、これまでの検証方法との継続性、整合性に も配慮したものであることから、これが唯一の手法ということでもない。 さらに基準部会の議論においては、国際的な動向も踏まえた新たな最低基準についての探索的な研究成果の報告もあり、将来の基準の検証手法を開発していくことが求められる。今後、政府部内において具体的な基準の見直しを検討する際には、今回の検証結果を考慮しつつも、同時に 検証方法につ 的な研究成果の報告もあり、将来の基準の検証手法を開発していくことが求められる。今後、政府部内において具体的な基準の見直しを検討する際には、今回の検証結果を考慮しつつも、同時に 検証方法について一定の限界があることに留意する必要がある。 全所得階層における年間収入総額に占める各所得五分位及び十分位の年間収入総額の構成割合の推移を見ると、中位所得階層である第3・五分位の占める割合及び第1・十分位の占める割合がともに減少傾向にあり、その動向に留意しつつ、これまで生活扶助基準の検証の際に参照 されてきた一般低所得世帯の消費実態については、なお今後の検証が必要である。取り分け、第1・十分位の者にとっては、全所得階層における年間収入総額に占める当該分位の年間収入総額の構成割合に僅かな減少があっても、その影響は相対的に大きいと考えられることに留意すべきである。また、現実には第1・十分位には保護基準以下の所得水準で 生活している者も含まれることが想定される点についても留意が必要で ある。 今般、生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には、現在保護を受給している世帯及び一般低所得世帯、取り分け貧困の世代間連鎖を防止する観点から、児童のいる世帯への影響にも配慮する必要がある。 また、基準額の見直しによる影響の実態を把握し、今後の検証の際には 参考にする必要がある。 ⑻ 本件改定の実施ア厚生労働大臣は、平成25年検証の結果を踏まえた生活扶助基準の見直しとして、年齢、世帯人数及び地域差による影響を調整するための改定であるゆがみ調整を実施するとともに、平成25年検証の結果とは別に、生 活扶助基準の前回の見直し(平成20年)以降、デフレ傾向が続く中で生活扶助基準額が据え置かれてきたことに鑑み、実質的な購買力 あるゆがみ調整を実施するとともに、平成25年検証の結果とは別に、生 活扶助基準の前回の見直し(平成20年)以降、デフレ傾向が続く中で生活扶助基準額が据え置かれてきたことに鑑み、実質的な購買力を維持しつつ、客観的な経済指標である総務省CPIの動向を勘案して生活扶助基準額を見直す必要があるとして、そのための改定であるデフレ調整を行うこととした。 なお、本件改定に当たっては、ゆがみ調整につき2分の1処理が行われた上、本件改定全体に係る激変緩和措置として、改定前基準からの増減幅は±10%が限度とされるとともに、生活扶助基準の見直しは平成25年度から3年間にわたり段階的に実施することとされた。 イ厚生労働大臣は、本件改定に先立ち、本件改定による財政効果を合計約 670億円(平成27年度までの3年間の合計額)と見積もった。このうち、ゆがみ調整によるものが約90億円(保護受給世帯の所在が都市部に偏っているなど、その世帯構成割合が第1・十分位世帯のそれと異なっていることによって生じた。)、デフレ調整によるものが約580億円(本体分が510億円、加算分が70億円)である。 ウ厚生労働大臣は、平成25年5月16日付けで平成25年告示を、平成 26年3月31日付けで平成26年告示を、平成27年3月31日付けで平成27年告示をそれぞれ発し、これらにより保護基準(生活扶助基準)を改定した(本件改定)。 (前提事実⑸、乙A1ないし3、16、79、89、90)⑼ 本件改定の内容等 本件改定は、主としてゆがみ調整及びデフレ調整を行うことをその内容とするものであり、具体的には、①改定前基準についてゆがみ調整(2分の1処理を含む。)を行ってゆがみ調整後基準額を算出し、②これにデフレ調整を行った上で、③激変緩和措 デフレ調整を行うことをその内容とするものであり、具体的には、①改定前基準についてゆがみ調整(2分の1処理を含む。)を行ってゆがみ調整後基準額を算出し、②これにデフレ調整を行った上で、③激変緩和措置(3年間の段階的実施、増減幅の上限及び下限の設定)を講ずることにより生活扶助基準額を算出し、生活扶助基準の内 容をこれに沿って改定するものである。 本件改定の概要は、以下のとおりである。 アゆがみ調整ゆがみ調整は、平成25年検証の結果を踏まえ、その検証結果を2分の1の割合に限って生活扶助基準に反映させようとするものである (2分の1処理)。すなわち、平成25年検証においては、年齢階級別、世帯人員別及び級地別に、第1・十分位世帯の消費実態と生活扶助基準のそれぞれについて、第1・十分位世帯の全てが保護を受給したと仮定した場合における1世帯当たりの平均受給額が不変となるようにして指数化しているところ、本件改定に当たっては、かかる平成25年検証の 結果をそのまま生活扶助基準の改定に反映させる(すなわち、改定前基準額に、上記の方法により指数化された第1・十分位世帯の消費実態の指数を生活扶助基準の指数で除した割合を乗じた金額とする)のではなく、そのうち2分の1のみを反映させる(すなわち、改定前基準額に、上記の方法により指数化された第1・十分位世帯の消費実態の指数と生 活扶助基準の指数との和を2で除したものを更に生活扶助基準の指数で 除した割合を乗じた金額とする)こととされた。 また、本件改定のゆがみ調整においては、標準世帯の生活扶助基準額に上記割合を乗じ、他の世帯類型についてはこれを起点とする展開によるという方法ではなく、それぞれの世帯類型について改定前基準によって算出された生活扶助基準額に上記割合を乗ず 標準世帯の生活扶助基準額に上記割合を乗じ、他の世帯類型についてはこれを起点とする展開によるという方法ではなく、それぞれの世帯類型について改定前基準によって算出された生活扶助基準額に上記割合を乗ずる方法により、ゆがみ調 整後基準額が算出された。 ゆがみ調整の結果、第1類費の基準額について、各年齢区分間の差が小さくなり、11歳以下と41歳以上の場合には増額、12歳以上40歳以下の場合には減額となる。また、第1類費の基準額に係る逓減率について、世帯人数の増加に応じた逓減割合が大きくなる。次いで、第 2類費の基準額について、世帯人数1人の場合には減額となる一方、世帯人数2人以上の場合には増額となる上、世帯人数の増加に応じた世帯人員別の増額の幅も大きくなり、さらに、第1類費及び第2類費の基準額について、それぞれ各級地間の差が小さくなった。 イデフレ調整 デフレ調整は、平成20年生活扶助相当CPIと平成23年生活扶助相当CPIとの変化率から求めた平成20年から平成23年までの物価変動率(-4.78%(本件下落率))を、それぞれの世帯類型につき、ゆがみ調整後基準額に反映させる(ゆがみ調整後基準額に(1-0. 0478)を乗ずる)ものである。 なお、本件下落率の算出方法は、後記⑿のとおりである。 ウ激変緩和措置本件改定においては、保護受給世帯に対する激変緩和措置として、平成25年度から3年間にわたり段階的に実施するとともに、改定前基準額からの増減幅が±10%を超えないように調整することとされた。 (前提事実⑸、乙A1ないし3、16、17、89、90) ⑽ 平成29年検証の概要等ア基準部会は、平成28年5月から平成29年12月にかけて、15回にわたり部会を開催し、①生活扶助基準に 事実⑸、乙A1ないし3、16、17、89、90) ⑽ 平成29年検証の概要等ア基準部会は、平成28年5月から平成29年12月にかけて、15回にわたり部会を開催し、①生活扶助基準に関する検証、②有子世帯の扶助・加算に関する検証、③勤労控除及び就労自立給付金の見直し効果の検証、④級地制度に関する検証、⑤その他の扶助・加算に関する検証並びに⑥こ れまでの基準見直しによる影響の把握を主たる検討事項として議論を重ね、上記⑥の影響の把握を行った上で、上記①及び②を中心に、その検証結果を取りまとめ、平成29年12月14日付け「社会保障審議会生活保護基準部会報告書」(平成29年報告書)を作成した。(乙A66)イ平成29年報告書において報告されている検証結果の要旨は、次のとお りである。(乙A66)夫婦子1人世帯につき、本件改定後の生活扶助基準額と第1・十分位の生活扶助相当支出額とを比較すると、おおむね均衡していた。なお、変曲点は、年収階級第3・五十分位値付近で確認された。また、生活扶助基準額は、第3・五分位の生活扶助相当支出額の67ないし68%に 達していた。 高齢夫婦世帯については、変曲点が年収階級第9・五十分位値付近で確認される一方、固定的経費(食費や光熱水費)の支出割合が有意に上昇する点が消費支出階級第6・五十分位値付近となるなど分析結果にかい離がみられ、年収階級別の分析の評価については課題が残る結果と なった。また、生活扶助基準額は、第3・五分位の生活扶助相当支出額の51ないし56%にとどまった。 平成29年検証においては、夫婦子1人世帯(標準世帯)について生活扶助基準額と第1・十分位の生活扶助相当支出額の均衡を確認しただけであり、そこから展開した様々な世帯類型における生活扶助基準額 。 平成29年検証においては、夫婦子1人世帯(標準世帯)について生活扶助基準額と第1・十分位の生活扶助相当支出額の均衡を確認しただけであり、そこから展開した様々な世帯類型における生活扶助基準額 と一般低所得世帯の生活水準の均衡を確認するまでには至らなかった。 この意味することは、単に消費水準との均衡を図ることが最低生活保障水準を満たすものといえるのか、水準均衡方式の在り方が問われる本質的な課題であることに留意する必要がある。また、一般低所得世帯との均衡のみで保護基準の水準を捉えていると、比較する消費水準が低下した場合に絶対的な水準を割ってしまう懸念がある。 ⑾ 消費者物価指数についてア物価指数の概要 一般に、物価指数とは、物価の変動を表示する統計数字であるとされており、このうち、全国の世帯が購入する財およびサービスの価格変動を総合的に測定し、物価の変動を時系列的に測定するものが消費者物価 指数である。消費者物価指数とは、家計の消費構造を一定のものに固定し、これに要する費用が物価の変動によってどう変化するかを指数値で示したものである。 物価指数は、ある基準となる時点(基準時)における物価を100として、その時々(比較時)の物価を比較計算した数値である(このよ うに計算して得られた指数が「価格指数」である。)。消費者物価指数マニュアルは、このうち、比較される時点間(基準時から比較時まで)において、一般に「買物かご」と呼ばれる消費構造の中身を購入するために要する費用の割合の変化を表す指数(ロウ指数)は、非常に普及した一般的な物価指数の種類の一つであるとしている。なお、以下におい ては、ウエイト参照時における指数品目の取引数量を「取引数量」という。ウエイトは、取引数量に基準時の ウ指数)は、非常に普及した一般的な物価指数の種類の一つであるとしている。なお、以下におい ては、ウエイト参照時における指数品目の取引数量を「取引数量」という。ウエイトは、取引数量に基準時の指数品目の価格指数を乗じたもの(後記算式における②)又は家計の消費支出全体に占める各品目の消費支出の割合(後記算式における(②/③))から求められる。 ロウ指数は、①個々の指数品目ごとの基準時から比較時までの価格比 に、②「当該指数品目の取引数量と当該品目の基準時の価格との積(当 該指数品目に係るウエイト)」が③「各指数品目の取引数量に当該品目の基準時の価格指数を乗じたものの総和(ウエイトの総和)」に占める割合を乗じたものの総和(Σ(①×②/③))としても算出することができる。なお、消費者物価指数マニュアルは、消費者物価指数において用いられるウエイト参照時については、基準時と比較時の間の一つを含 むいつの時点でもよいとしている。 物価指数を算出するための算式は、複数のものが知られているところ、このうちウエイト参照時を基準時とする方式(ラスパイレス式)により算出される指数がラスパイレス指数、ウエイト参照時を比較時とする方式(パーシェ式)により算出される指数がパーシェ指数であるが、 上記のとおり、消費者物価指数は、消費構造を一定の時点で固定するものであり、消費者は、物価が下落した指数品目の消費量を増加させ、物価が上昇した指数品目の消費支出を減少させる傾向にあると考えられることから、一般に、基準時から比較時までの期間が長くなるにつれ、ラスパイレス指数はパーシェ指数よりも大きくなることが知られている。 (乙A26ないし29、64、68、101、104)イ総務省CPIの概要総務省統計局は、原則と るにつれ、ラスパイレス指数はパーシェ指数よりも大きくなることが知られている。 (乙A26ないし29、64、68、101、104)イ総務省CPIの概要総務省統計局は、原則として毎月26日に前月分の全国の消費者物価指数(総務省CPI)等の速報値を公表しており、また、12月分を公表する際には併せて年平均指数等も公表しているところ、その概要は次の とおりである。(乙A27ないし29、60、61)指数算式総務省CPIにおける指数算式として、基準時をウエイト参照時とするラスパイレス式を用いている。 基準時 総務省CPIにおいては、ウエイト参照時である基準時(基準年)を 5年ごとに改定している。 指数品目指数品目は、世帯が購入する多種多様な財及びサービス全体の物価変動を代表できるように、家計の消費支出の中で重要度が高いこと、価格変動の代表性があること、継続調査が可能であることなどの観点から選 ばれる。 ウエイト総務省CPIを算出するに当たって用いられる指数品目別のウエイトは、ウエイト参照時における総消費支出額を1万として、各品目の支出額を比例換算した値(1万分比)により表示する。このウエイトは、主 に家計調査によって得られたウエイト参照時となる年の平均1か月の1世帯当たりの品目別消費支出額を用いて作成され、基準時及び指数品目の改定の際に併せて改定される(すなわち、時間と共に消費生活の内容が変化するため「買物かご」の中身は定期的に見直す必要があり、総務省CPIでは、西暦年の末尾が0と5の年を基準時として改定している。 以下、これらの基準時、指数品目及びウエイトの改定を併せて「基準時等の改定」ということがある。)。 価格指数品目の価格には、原則として 年の末尾が0と5の年を基準時として改定している。 以下、これらの基準時、指数品目及びウエイトの改定を併せて「基準時等の改定」ということがある。)。 価格指数品目の価格には、原則として、統計法に基づく基幹統計調査の一つである小売物価統計調査によって得られた市町村別、品目別の小売価 格を用いる。 指数の算出指数は、最初に、比較時価格を基準時価格で除して算出した品目別価格指数を各品目のウエイトで加重平均して最下位の類(段階別分類)の指数を算出し、次に各最下位類の指数を当該類のウエイトで加重平均し て上位類の指数を算出し、同様にして小分類指数、中分類指数、10大 費目(指数品目を①食料、②住居、③光熱・水道、④家具・家事用品、⑤被服及び履物、⑥保健医療、⑦交通・通信、⑧教育、⑨教養娯楽、⑩諸雑費の10費目に分類したもの)指数、総合指数の順に積み上げることにより算出する。 全国の指数は、最初に、各調査市町村の品目別価格指数を各調査市町 村の品目別ウエイトで加重平均して全国の品目別価格指数を算出し、次に、全国のウエイトを用いて、上記の方法により順次上位類を計算して総合指数を算出する。 指数の作成系列平成22年を基準年とする総務省CPIにおいては、基本分類指数、 財・サービス分類指数、世帯属性別指数及び品目特性別指数の各指数が作成されている。 これらのうち、基本分類指数は、全体の物価の動きを総合した「総合指数」と、その内訳を消費の目的により費目別に分類した指数から成り、後者は、10大費目、中分類及び小分類の指数と、品目別指数から成る。 指数の接続総務省CPIは、5年ごとに基準時等の改定がされるところ、消費者物価指数は時間の経過による物価の動きを見るものであるため、改定前 分類及び小分類の指数と、品目別指数から成る。 指数の接続総務省CPIは、5年ごとに基準時等の改定がされるところ、消費者物価指数は時間の経過による物価の動きを見るものであるため、改定前に遡って指数を比較することが可能となるよう、基準時等の改定に併せて同改定前の指数を同改定後の指数に換算し、接続している。 総務省CPIの推移総務省CPI(全国・総合)の平成17年から平成23年までの指数の推移について、平成22年を100として計算すると、次のとおりとなる(ただし、平成17年から平成21年までの指数については、平成17年が基準年となることから、指数の接続を行っている。)。これに よると、総務省CPIにおける平成20年から平成23年までの物価の 変化率は、-2.35%となる。 平成17年:100.4平成18年:100.7平成19年:100.7平成20年:102.1 平成21年:100.7平成22年:100.0平成23年: 99.7⑿ デフレ調整に用いた生活扶助相当CPIの下落率の算出過程ア生活扶助相当CPIの概要 生活扶助相当CPIは、生活扶助に相当する消費品目の物価の動向を勘案するために、同品目を対象とする消費者物価指数として、厚生労働省において考案された指数である。 生活扶助相当CPIは、総務省CPIの算出の基礎となっている指数品目から除外品目を除いた生活扶助相当品目について、総務省CPI の算出に当たり用いられている品目別価格指数及びウエイトを用いて指数化したものである。 なお、生活扶助相当CPIそのものではないが、生活扶助相当品目に係る消費支出額の動向については、平成15年中間取りまとめや平成19年報告書等におい 数及びウエイトを用いて指数化したものである。 なお、生活扶助相当CPIそのものではないが、生活扶助相当品目に係る消費支出額の動向については、平成15年中間取りまとめや平成19年報告書等においても参照されてきたほか、水準均衡方式における 改定率も、民間最終消費支出の伸びを基礎として、生活扶助以外の対象となる家賃等を除外するとともに、人口増減の影響を調整するなどして設定されてきたことが認められる。 (乙A30、87)イ平成20年及び平成23年の各生活扶助相当CPIの算出過程 平成20年生活扶助相当CPIを算出するに当たっては、平成22 年に係る指数品目のうち平成20年においても総務省CPIの算出に当たって指数品目とされていた品目(平成20年の総務省CPIは、平成17年を基準年とするものであることから、平成17年に係る指数品目である。)から除外品目を除いた485品目が、生活扶助相当CPIの算出の基礎となる指数品目とされた。その上で、平成22年をウエイト 参照時として、上記485品目に係る品目ごとの平成22年の価格を100とした場合における平成20年時点の価格指数に、当該品目のウエイト(平成22年ウエイト)を乗じ、その合計を平成22年ウエイトの総和で除することにより、平成20年生活扶助相当CPIが算出されたものである。 具体的には、上記485品目によって算出される平成22年ウエイトの総和は6189となるところ、同品目に係る品目ごとの平成22年の価格を100とした場合における平成20年時点の価格指数に当該品目の平成22年ウエイトを乗じたものの総和は64万6627.9となることから、これを平成22年ウエイトの上記総和(6189)で除する ことにより、平成20年生活扶助相当CPIは104 に当該品目の平成22年ウエイトを乗じたものの総和は64万6627.9となることから、これを平成22年ウエイトの上記総和(6189)で除する ことにより、平成20年生活扶助相当CPIは104.5(小数点2桁以下は四捨五入)と算出された。 平成23年生活扶助相当CPIの算出過程も上記とほぼ同様であるが、その指数品目については、平成22年に係る指数品目から除外品目を除いた517品目とされた。その上で、平成22年をウエイト参照 時として、上記517品目に係る品目ごとの平成22年の価格を100とした場合における平成23年時点の価格指数に当該品目の平成22年ウエイトを乗じ、その合計を平成22年ウエイトの総和で除することにより、平成23年生活扶助相当CPIが算出されたものである。 具体的には、上記517品目によって算出される平成22年ウエイト の総和は6393であるところ、同品目に係る品目ごとの平成22年の 価格を100とした場合における平成23年時点の価格指数に当該品目の平成22年ウエイトを乗じたものの総和は63万5973.1となることから、これを平成22年ウエイトの上記総和(6393)で除することにより、平成23年生活扶助相当CPIは99.5(小数点2桁以下は四捨五入)と算出された。 なお、上記及びにおいて除外品目を除いた後の品目数が異なっている(485品目と517品目)のは、前者の算出に当たっては、除外品目のほか、平成22年に係る指数品目に含まれていない品目も除外されるなどしたためである。 (乙A29、30) ウ生活扶助相当CPIの変化率(本件下落率)平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変化率(本件下落率)は、比較時である平成23年生活扶助相当CPIの (乙A29、30) ウ生活扶助相当CPIの変化率(本件下落率)平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変化率(本件下落率)は、比較時である平成23年生活扶助相当CPIの値(99.5)から起点となる平成20年生活扶助相当CPIの値(104.5)を減じ、これを平成20年生活扶助相当CPIの値(104.5)で除する ことにより、-0.0478(-4.78%)と算出された。 エテレビ等に係る価格の下落生活扶助相当品目について、基準時である平成22年の価格指数を100とした場合における平成20年及び平成23年の各価格指数を対比すると、平成20年から平成23年までの間において、教養娯楽用耐久 財、特に、テレビ、ビデオレコーダー、パソコン(デスクトップ型)、パソコン(ノート型)及びカメラ(これらの5品目を併せて、以下「テレビ等」という。)につき、価格指数の顕著な下落がみられた。(乙A30) 2 判断枠組み⑴ 厚生労働大臣の裁量に係る判断基準ア生活保護法3条によれば、同法により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならないところ、同法8条2項によれば、保護基準は、要保護者の年齢別、性別、世 帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって、かつ、これを超えないものでなければならない。そうすると、仮に、生活扶助基準に基づいて算定される生活扶助費が衣食その他日常生活について最低限度の生活におけるそれらの需要を満たすに足りる程度を超えると認められるというので あれば、生活扶助基準を必要な限度において引き下げることは、同項の規定に沿うところであるということが いて最低限度の生活におけるそれらの需要を満たすに足りる程度を超えると認められるというので あれば、生活扶助基準を必要な限度において引き下げることは、同項の規定に沿うところであるということができる。 イもっとも、これらの規定にいう最低限度の生活は、抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々における経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべき ものであり、これを保護基準において具体化するに当たっては、高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである(最高裁昭和51年(行ツ)第30号同57年7月7日大法廷判決・民集36巻7号1235頁参照)。したがって、生活扶助基準を改定する際に、当該改定前の生活扶助基準が衣食その他日常生活について最低限度の生活に おけるそれらの需要を満たすに足りる程度を超えるものとなっていたか否か、また、当該改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否かを判断するに当たっては、厚生労働大臣に上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるものというべきである。 ウまた、生活扶助は、衣食その他日常生活の需要に応じてされるものであ り(生活保護法12条1号参照)、取り分け、そのうち基準生活費に係る部分は、飲食物費、被服費、光熱水費及び家具什器費等、日常生活において不可欠な支出に係る需要を満たすためのものであり、生活に困窮する者が日常生活を営むための基礎となるものであることからすれば、改定前の生活扶助基準が上記のような最低限度の生活の需要を満たすに足りる程度 を超えるものとなっていた場合であっても、このような生活扶助基準を引き下げる旨の改定は、 るものであることからすれば、改定前の生活扶助基準が上記のような最低限度の生活の需要を満たすに足りる程度 を超えるものとなっていた場合であっても、このような生活扶助基準を引き下げる旨の改定は、現にその保護を受けて日常生活を営んできた被保護者に関しては、それまでの生活扶助基準によって具体化されていた日常生活に係る期待的利益の喪失を来す側面があることも否定し得ないところである。そうすると、上記のような場合においても、厚生労働大臣は、当該 改定前の生活扶助基準が最低限度の生活の需要を超える程度や国の財政事情といった見地に基づく生活扶助基準の引下げの必要性を踏まえつつ、被保護者のこのような期待的利益についても可及的に配慮することが可能かつ必要となるのであって、そのため、その引下げの具体的な方法等について、激変緩和措置の要否等を含め、上記のような専門技術的かつ政策的な 見地からの裁量権を有しているものというべきである。 エそして、生活扶助基準の引下げの要否の判断の前提となる最低限度の生活の需要に係る評価や被保護者の期待的利益についての可及的な配慮は、上記イ及びウのような専門技術的な考察に基づいた政策的判断であって、これまでも生活扶助基準の改定に際しては各種の統計や資料等に基づく専 門家合議体による科学的ないし技術的な検討を経てきたところである。これらの経緯等に鑑みると、生活扶助基準の引下げを内容とする改定は、当該改定の時点において、改定前の生活扶助基準が最低限度の生活の需要を満たすに足りる程度を超えるものとなっており、改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるとした 厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手 続における過誤、欠落の有無等 生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるとした 厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手 続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合、あるいは、生活扶助基準の引下げに際し激変緩和措置を採るか否かについての方針及びこれを採る場合において現に選択した措置が相当であるとした同大臣の判断に、被保護者の期待的利益や生活への影響等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があ ると認められる場合に、生活保護法3条、8条2項の規定に違反し、違法となるものというべきであり、裁判所が本件改定につき上記の各場合に当たるか否かを判断するに当たっては、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等の観点から審理判断するのが相当というべきである。(以上につき、最高裁平成22年(行ツ)第392号、 同年(行ヒ)第416号同24年2月28日第三小法廷判決・民集66巻3号1240頁参照)⑵ 基準部会の位置付けア本件改定においては、ゆがみ調整のうち2分の1処理を除く部分については、専門家合議体である基準部会が行った平成25年検証に基づいてそ の実施及び内容が決定されたのに対し、2分の1処理並びにデフレ調整の実施及び内容については、基準部会その他の専門家合議体による審議検討を経ずに決定されたものである。 そこで、前記⑴の厚生労働大臣の判断に係る裁量に関し、専門家合議体による審議検討を経たか否かが及ぼす影響の有無等について検討するに、 厚生労働大臣が、専門家合議体による審議検討の結果に基づいて生活扶助基準の改定を行った場合には、改定に至る最終的な判断に際して政府部内における政策的な見地 す影響の有無等について検討するに、 厚生労働大臣が、専門家合議体による審議検討の結果に基づいて生活扶助基準の改定を行った場合には、改定に至る最終的な判断に際して政府部内における政策的な見地からの考慮が加えられたとしても、かかる審議検討を経た上で、その結果に沿っていることが厚生労働大臣の判断の客観的な合理性を担保するものといえることからすれば、裁判所による 審理判断の中心となるのは当該審議検討の内容及び結果であると解する のが相当であり、審議検討の結果につき統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものと認められない場合には、他に特段の事情がない限り、厚生労働大臣の判断についても、その判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえないと判断されることとなるものと解される。 他方で、厚生労働大臣が、専門家合議体による審議検討を経ず、自己(もとより厚生労働省内の補助機関を含む。以下同じ。)の判断により生活扶助基準の改定を行った場合には、当該判断については専門家合議体による審議検討という客観的かつ透明性の高い担保は存しないのであるから、審理判断の中心となるのは厚生労働大臣が当該判断に至った経 過及び根拠であると解するのが相当であり、かかる経過等に関して被告が説明(主張)する内容も踏まえて、厚生労働大臣の判断が統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものでないか否かを判断すべきこととなる。 以上のとおり、専門家合議体による審議検討を経ているか否かによって 審理判断の対象に相違が生ずるものと解されるが、いずれの場合においても、主として統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等の観点からその判断等の当否を判断すべきであるから、 理判断の対象に相違が生ずるものと解されるが、いずれの場合においても、主として統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等の観点からその判断等の当否を判断すべきであるから、厚生労働大臣の判断に係る裁量権の広狭に直ちに影響が生ずるものではないものというべきである。 イなお、原告は、デフレ調整に関し、保護基準の改定に当たっては専門家合議体による検討を踏まえることが確立した行政慣行となっていたことからすれば、保護基準の設定ないし改定の手続について法令上特に定められてはいないものの、必ず専門家ないし専門家合議体の意見を踏まえなければならず、基準部会の審議を経ることなくデフレ調整を実施した 厚生労働大臣の判断に係る過程、手続には重大な過誤がある旨主張する。 そこで検討するに、生活保護法の制定に係る経過をみると、同法3条及び8条2項の「最低限度の生活」に係る保護基準については、社会保障制度審議会での検討を通じて具体化されることが想定されていたものといえる(乙A91、92、98)。また、生活保護法の制定後、中央社会福祉審議会の下に置かれた生活保護専門分科会の検討を通じて生活扶 助基準の改定方式の決定又はその基本的な枠組みの設定が行われ、水準均衡方式の運用についても、社会保障審議会福祉部会の下に置かれた専門委員会の指摘に基づき、生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が図られているか否かについて定期的に検証を行うこととされた(認定事実⑵、⑶)。さらに、かかる定期的な検証は、平成19年に厚 生労働省社会・援護局長の下に置かれた検討会によっても行われたほか、平成23年以降は社会保障審議会の下に常設の部会として設置された基準部会により行うこととされている(認定事実⑷ないし⑹)。こ 生労働省社会・援護局長の下に置かれた検討会によっても行われたほか、平成23年以降は社会保障審議会の下に常設の部会として設置された基準部会により行うこととされている(認定事実⑷ないし⑹)。これらの事情を考慮すると、生活扶助基準の改定については、専門家合議体による審議検討の結果を踏まえて行うのが通例になっているということがで きる。 しかしながら、厚生労働大臣が生活扶助基準を改定するに当たって、専門家合議体による審議検討を経ることは、生活保護法その他の関係法令において義務付けられているものではない。また、前記⑴で検討したとおり、厚生労働大臣には生活扶助基準の改定につき専門技術的かつ政策 的な見地からの裁量権が認められるものというべきであるから、専門家合議体の意見は、厚生労働大臣の判断を法的に拘束するものではなく、生活扶助基準の改定に当たっての考慮要素として位置付けられるべきものであると解するのが相当である(最高裁平成22年(行ヒ)第367号同24年4月2日第二小法廷判決・民集66巻6号2367頁参照)。 そうすると、専門家合議体の審議検討を経ていないからといって、厚生 労働大臣がその判断により生活扶助基準の改定をすることが直ちに許されなくなるということはできない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 3 ゆがみ調整について⑴ ゆがみ調整を実施することとした判断について ア平成15年中間取りまとめ及び平成16年検証においては、専門委員会から、生活扶助基準が世帯人員別にみると必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていないため、多人数世帯に係る基準の是正や単身世帯に係る別途の基準の設定等を検討する必要性が指摘されていた(認定事実⑶)。また、平成19年検証にお しも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていないため、多人数世帯に係る基準の是正や単身世帯に係る別途の基準の設定等を検討する必要性が指摘されていた(認定事実⑶)。また、平成19年検証においても、生活扶助基準の体系 に関する評価・検証が行われ、検討会から、世帯人員別の生活扶助基準額につき世帯人員4人以上の多人数世帯に有利である実態がみられる、年齢階級別の生活扶助基準額が年齢階級ごとに消費実態からややかい離している、級地別の生活扶助基準額につき級地制度における地域差を設定した当時の消費実態と直近の消費実態とを比較すると地域差が縮小する傾向がみ られるなどの指摘がされていた(認定事実⑷)。他方で、この間における生活扶助基準の改定としては、平成17年度の改定において、平成16年報告書で多人数世帯に係る基準の是正の必要性が指摘されたことを踏まえて若干の改定が行われたにとどまり(認定事実⑸)、上記の各問題点を解消するような改定は行われなかった。 このような状況の下で、基準部会が平成25年検証において年齢階級別、世帯人員別及び級地別の生活扶助基準に係る検証(ゆがみ調整に関する検証)を行ったことは、上記の各指摘を踏まえた合理的な対応ということができる。 イそして、平成25年検証においては、検証の結果として、年齢階級別の 第1類費、世帯人員別の第1類費及び第2類費並びに級地別の生活扶助基 準額による各指数がいずれも第1・十分位世帯の消費実態による指数とかい離していることが確認されたところ(認定事実⑺)、生活扶助基準と第1・十分位世帯の消費実態との間における年齢階級別、世帯人員別及び級地別の較差を是正することを目的としてゆがみ調整を実施することとした厚生労働大臣の政策的な判断それ自体は、上記 )、生活扶助基準と第1・十分位世帯の消費実態との間における年齢階級別、世帯人員別及び級地別の較差を是正することを目的としてゆがみ調整を実施することとした厚生労働大臣の政策的な判断それ自体は、上記の平成25年検証の結果を 踏まえて行われたものといえるのであり、その過程及び手続に過誤、欠落があるというべき事情は特段うかがわれない。 ウもっとも、平成25年検証の内容が統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠く場合には、結果として上記の厚生労働大臣の判断の過程に過誤、欠落があるものというべきこととなる。そこ で、平成25年検証の内容の合理性に関して原告が主張する点につき、後記⑵及び⑶において検討する。 また、ゆがみ調整の実施に際しては2分の1処理が行われたものであるところ、2分の1処理の実施及びその内容それ自体は、専門家合議体による審議検討を経ないまま、厚生労働大臣の判断でされたものである。 したがって、2分の1処理を行うこととした厚生労働大臣の判断が統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を有するものであるか否かについては、後記⑷において、被告の説明を踏まえて検討することとする。 ⑵ 第1・十分位世帯の生活扶助相当支出を比較対象としたことについて ア平成25年検証は、生活扶助基準額を指数化したものを、平成21年全消調査の個票データに基づき算出した第1・十分位世帯の生活扶助相当支出を指数化したものと比較した(認定事実⑺)が、原告は、第1・十分位世帯の生活扶助相当支出を比較対象とすることは、①水準均衡方式において「一般国民生活における消費水準」が比較対象とされてきたこ とと整合しない上、②平成25年報告書が挙げる理由にはむしろ第1・ 十分位世 を比較対象とすることは、①水準均衡方式において「一般国民生活における消費水準」が比較対象とされてきたこ とと整合しない上、②平成25年報告書が挙げる理由にはむしろ第1・ 十分位世帯を比較対象とすることが不適切であることを根拠付けるものが含まれているから不合理である旨主張する。 イしかしながら、上記①の点について検討するに、平成25年検証は、保護受給世帯間の公平を図るために、年齢階級別、世帯人員別及び級地別に生活扶助基準額と消費実態とのかい離を詳細に分析し、生活扶助基準の展 開部分に係る指数を適正化しようとするものである(認定事実⑺)。これに対し、水準均衡方式は、当該年度に予想される一般国民の消費動向を踏まえるとともに前年度までの一般国民の消費実態との調整を図るために、民間最終消費支出の伸びに準拠して翌年度の改定率を算定するものであり、生活扶助基準の水準を改定するためのものである(認定事実⑵)。このよ うに、原告の上記①の指摘は、生活扶助基準の展開部分に係る平成25年検証における検証手法と生活扶助基準の水準それ自体に係る改定方式である水準均衡方式における算定手法という性質及び目的の異なる事柄の差異を無視ないし軽視してその不整合を論難するものであり、当を得ないものといわざるを得ない。 上記の点をおくとしても、格差縮小方式が導入される契機となった昭和39年中間報告においては、生活扶助基準について第1・十分位世帯の消費水準に着目した改善を行うことが特に必要であるとされ、昭和55年中間取りまとめにおいても、生活扶助基準と第1・十分位世帯の消費水準との格差が指摘されていた(認定事実⑴、⑵)。また、格差縮小方式と基本 的な考え方において共通する部分の多い水準均衡方式を導入する契機となった昭和58 生活扶助基準と第1・十分位世帯の消費水準との格差が指摘されていた(認定事実⑴、⑵)。また、格差縮小方式と基本 的な考え方において共通する部分の多い水準均衡方式を導入する契機となった昭和58年意見具申においても、変曲点が第2.99・五十分位にあるとの考察を前提として、当時の生活扶助基準が一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達していると判断されていた(認定事実⑵)。さらに、平成15年中間取りまとめにおいて、生活保護において保障すべき 最低生活の水準は第1・十分位世帯の消費水準に着目するのが相当である とされ、平成16年報告書においても、これを前提として生活扶助基準の水準が評価されていたほか、平成19年検証においても、それまでの検証等の経緯に加え、第1・十分位世帯の消費水準が平均的な世帯の消費水準に照らして相当程度に達していることなどを踏まえて第1・十分位世帯の消費水準が比較の対象とされていた(認定事実⑶、⑷)。このように、平 成25年検証よりも前に行われた生活扶助基準の検証においては、一貫して第1・十分位世帯の消費実態との均衡に着目してきたものといえるから、平成25年検証において第1・十分位世帯の生活扶助相当支出を比較対象としたことが、従前の水準均衡方式における考え方と整合しない不合理なものということはできない。 ウまた、上記②の点について検討するに、平成25年報告書においては、第1・十分位世帯の生活扶助相当支出を比較対象とした理由として、生活扶助基準を国民の健康で文化的な最低限度の生活水準として考えた場合、指数を全分位の所得階層(全世帯)あるいは中位所得階層(第3・五分位)等から算出することも可能であるが、これまでの検証に倣い、保護受給世 帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用 考えた場合、指数を全分位の所得階層(全世帯)あるいは中位所得階層(第3・五分位)等から算出することも可能であるが、これまでの検証に倣い、保護受給世 帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが今回の検証では現実的であると判断したこと、第1・十分位の平均消費水準は、中位所得階層の約6割に達していること、国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費財について、第1・十分位世帯における普及状況からは、中位所得階層と比べておおむね遜色なく充足されているといえること、 全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向ではあるものの、高所得階層を除くその他の十分位の傾向を見ても等しく減少しており、特に第1・十分位が減少しているわけではないこと、OECDの国際的基準によれば、等価可処分所得の中位置の半分に満たない世帯は相対的貧困層にあるとされるが、平成2 1年全消調査の結果によれば、第1・十分位世帯の大部分は上記基準で相 対的貧困線以下にあることを示していること、分散分析等の統計的手法により検証したところ、各十分位間のうち、第1・十分位と第2・十分位の間において消費が最も大きく変化しており、他の十分位の世帯に比べて消費の動向が大きく異なると考えられることが挙げられているところ(認定事実⑺)、これらの事情はいずれも第1・十分位世帯の生活扶助相当支 出を比較対象とする合理的な理由になり得るものといえる上、いずれも学識経験者である基準部会の委員が相応の根拠に基づいて議論し検討した結果であり、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものというべき事情は見当たらないことからすれば、上記の各理由が不合理ということはできない。 議論し検討した結果であり、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものというべき事情は見当たらないことからすれば、上記の各理由が不合理ということはできない。 エ以上によれば、平成25年検証において第1・十分位世帯の生活扶助相当支出を比較の対象としたことが、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものということはできない。 したがって、原告の上記主張を採用することはできない。 ⑶ 比較対象から保護受給世帯を除外しなかったことについて ア平成25年検証においては、平成19年検証とは異なり、比較対象とする世帯を設定するに当たって、平成21年全消調査の個票データから抽出した第1・十分位世帯から保護受給世帯が除外されていなかったものであるところ(認定事実⑺)、原告は、二つのサンプル(標本)の間の平均の差を検定する場合、独立したサンプルによる比較でなければ統計学上の正 確性が確保されないから、平成25年検証において第1・十分位世帯から保護受給世帯を除外しなかったことは統計学上明らかに不合理であり、また、平成19年検証との連続性を欠く旨主張する。 イしかしながら、平成25年検証は、保護受給世帯間の公平を図るために、年齢階級別、世帯人員別及び級地別に生活扶助基準額と消費実態とのかい 離を詳細に分析し、生活扶助基準の展開部分に係る指数を適正化しようと するものであり(認定事実⑺)、生活扶助基準の絶対的な高低ではなく相対的な公平性を検証するものであったから、生活扶助基準との比較対象となる一般低所得世帯につき、可能な限り実態に合致した十分な数の基礎データを抽出して用いる必要があったといえる。したがって、保護受給世帯も含めた第1・十分位世帯という実態に即 活扶助基準との比較対象となる一般低所得世帯につき、可能な限り実態に合致した十分な数の基礎データを抽出して用いる必要があったといえる。したがって、保護受給世帯も含めた第1・十分位世帯という実態に即したサンプルを比較対象とする ことは、上記の平成25年検証の目的又は性質に照らし、検証方法として相応の合理性があるものということができる。 また、平成25年検証は、上記のような検証をするために、第1・十分位世帯の生活扶助相当支出額を指数化したものと、第1・十分位世帯の全てが生活保護を受給したと仮定した場合の生活扶助基準額を指数化 したものとを比較しているのであり(認定事実⑺)、実際の保護受給世帯の生活扶助相当支出額を比較対象とするものではないから、比較対象となる第1・十分位世帯に保護受給世帯が含まれていたとしても、保護受給世帯の生活扶助相当支出額同士を比較することにはならず、統計学上の正確性が確保されないものとはいえない。 ウ以上によれば、平成25年検証において、平成19年検証とは異なり、比較対象となる世帯を設定するに当たって、平成21年全消調査の個票データから抽出した第1・十分位世帯から保護受給世帯が除外されていなかったことが、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものということはできない。 したがって、原告の上記主張を採用することはできない。 ⑷ 2分の1処理を行ったことについてア本件改定においては、ゆがみ調整を実施するに当たって、平成25年検証の結果をそのまま生活扶助基準の改定に反映させるのではなく、2分の1の割合の限度で反映させる2分の1処理が行われた(認定事実⑼)。 被告は、2分の1処理を行ったことに関し、次のとおり説明している。 平成2 改定に反映させるのではなく、2分の1の割合の限度で反映させる2分の1処理が行われた(認定事実⑼)。 被告は、2分の1処理を行ったことに関し、次のとおり説明している。 平成25年検証の結果をそのまま生活扶助基準に反映させた場合、児童のいる世帯への影響が大きくなることが予想されたところ、平成25年報告書には、平成25年検証の結果に関する留意事項として、貧困の世代間連鎖を防止する観点から、児童のいる世帯への影響に配慮する必要がある旨明記されていた。 平成25年検証は、生活扶助基準の展開のための指数について初めて詳細な分析を行ったところ、その手法は専門的議論の結果得られた透明性の高い合理的なものと評価することができるものの、当該手法が唯一のものであるとはいえず、特定のサンプル世帯に限定して分析する際にサンプル世帯が極めて少数になるといった統計上の限界も認められた。 生活扶助基準については専門家合議体による検証が定期的に行われており、展開部分についても平成25年検証の結果等を前提に更なる検証が行われることが予定されていた。 以上を踏まえて、厚生労働大臣は、激変緩和措置の一つとして、2分の1処理を行った。 イそこで検討するに、前記2で検討したとおり、厚生労働大臣は、生活扶助基準の引下げの具体的な方法等について、激変緩和措置の要否等を含め、専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有しているものというべきであり、また、保護基準の改定に当たって徴求される専門家合議体の意見は、厚生労働大臣の判断を法的に拘束するものではなく、生活扶助基準の改定 に当たっての考慮要素として位置付けられるべきものであると解するのが相当であるから、厚生労働大臣は、専門技術的な審議検討による平成25年検証の結果を 拘束するものではなく、生活扶助基準の改定 に当たっての考慮要素として位置付けられるべきものであると解するのが相当であるから、厚生労働大臣は、専門技術的な審議検討による平成25年検証の結果を踏まえて生活扶助基準を改定するに当たって、当該検証結果をいかなる範囲で反映するかについても主として政策的な見地からの裁量権を有するものということができる。 しかるところ、平成25年報告書においては、平成25年検証の結果に 関する留意事項として、厚生労働省が生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には、現在保護を受給している世帯及び一般低所得世帯、取り分け貧困の世代間連鎖を防止する観点から、児童のいる世帯(ゆがみ調整の結果として生活扶助基準が引き下げられる多人数世帯に多い。)への影響にも配慮する必要がある旨の指摘がされていたほか、平成25 年検証における検証手法につき、統計上の限界がある旨や唯一の手法ではなく一定の限界があることに留意する必要がある旨の指摘がされていたこと(認定事実⑺)からすれば、平成25年報告書には、基準部会の見解として、平成25年検証に基づいて生活扶助基準を改定するに当たっては一定の激変緩和措置を行うのが相当であることを示唆していたも のといえる。 また、平成25年報告書によれば、平成25年検証の結果をそのまま生活扶助基準に反映した場合の生活扶助費は、中高齢単身世帯等では相当程度の増額となる一方、夫婦と18歳未満の子1人世帯では-8.5%となり、夫婦と18歳未満の子2人世帯では-14.2%となり、母親 と18歳未満の子1人の母子世帯では-5.2%となるなど(認定事実⑺)、特に児童のいる世帯への影響が大きくなることが見込まれていたものといえる。 さらに、生活扶助基準に関しては、一般低所 と18歳未満の子1人の母子世帯では-5.2%となるなど(認定事実⑺)、特に児童のいる世帯への影響が大きくなることが見込まれていたものといえる。 さらに、生活扶助基準に関しては、一般低所得世帯の消費実態との均衡についての定期的な検証を行うため、社会保障審議会の下に常設の部会 として基準部会が設置されていることからすれば(認定事実⑹)、ゆがみ調整のような比較的影響の大きな調整についてはそこでの検証を重ねながら時間を掛けて導入することが可能かつ適切であり、2分の1処理を行ったことにより仮に一時的に不当な影響が生じた場合であっても、将来の基準部会において是正され得るものといえる。 以上の各事情を考慮すると、厚生労働大臣が2分の1処理を行ったこと については、被保護者、特に児童のいる世帯の期待的利益や生活への影響等の観点から相応の配慮として激変緩和措置を採ることとしたものと評価することが相当であり、これは、平成25年報告書の趣旨にも沿う合理的な対応であったということができる。 ウ上記に関し、原告は、2分の1処理を行うことは年齢階級別、世帯人員 別及び級地別にみた生活扶助基準額と一般低所得世帯の消費実態とのかい離を是正するというゆがみ調整の趣旨を没却することになる上、2分の1処理を行うことにより、平成25年検証の結果をそのまま反映すれば生活扶助基準が引き上げられるはずであり、かつ、保護受給世帯の大半を占める中高齢単身世帯の被保護者に対し多大な不利益を与えることなどから、 2分の1処理は激変緩和措置として明らかに不合理である旨主張する。 しかしながら、上記イで検討したとおり、厚生労働大臣が2分の1処理を行ったことは、平成25年報告書の趣旨にも沿う合理的な対応であったといえる。また、生活保護制度の 明らかに不合理である旨主張する。 しかしながら、上記イで検討したとおり、厚生労働大臣が2分の1処理を行ったことは、平成25年報告書の趣旨にも沿う合理的な対応であったといえる。また、生活保護制度の運用に当たっては被保護者間の公平にも配慮する必要があることに加え、生活扶助基準額が増加する世帯に ついてのみ2分の1処理を行わないのはかえって被保護者間の公平を図るというゆがみ調整の趣旨を没却することになりかねないことを考慮すると、平成25年検証の結果をそのまま反映した場合には生活扶助基準が引き上げられるはずであった世帯についても一律に2分の1処理を行うことには相応の合理性があるといえる。 以上によれば、原告が指摘する中高齢単身世帯が保護受給世帯の大半を占めるという事情を考慮しても、2分の1処理を行うこととした厚生労働大臣の判断が激変緩和措置として不合理であるということはできない。 したがって、原告の上記主張を採用することはできない。 ⑸ 原告のその余の主張について ア原告は、平成25年報告書は第1・十分位世帯との比較による引下げ等 に懸念を示している旨主張する。 しかしながら、平成25年報告書は、平成25年検証において採用された検証手法につき「妥当な手法である」としている上、平成25年報告書の記載全体をみても、平成25年検証の結果に関する留意事項は記載されているものの、生活扶助基準の改定(ゆがみ調整)の実施自体について懸 念を示しているというべき記載は見当たらない(認定事実⑺、乙A6)。 したがって、原告の上記主張を採用することはできない。 イ原告は、平成25年検証につき、①検証手法として採用された重回帰分析は複数の説明変数間に相関関係があることが否定できないから、その検証結果の正確性 て、原告の上記主張を採用することはできない。 イ原告は、平成25年検証につき、①検証手法として採用された重回帰分析は複数の説明変数間に相関関係があることが否定できないから、その検証結果の正確性に重大な疑義がある、②検証に用いた全消調査のデータに ついても、季節性が反映されていない、サンプルのばらつきを考慮した補正が行われていない、単身世帯の調査方法が特殊であるなどの限界がある旨主張する。 しかしながら、上記①の点については、平成25年報告書において、平成25年検証において重回帰分析の手法が採られた理由として、全消 調査の調査客体には10代以下の単身世帯がほとんどおらず、10代以下の消費を正確に計測することができないという限界があったこと、今回の検証結果の妥当性を補強するため、それが回帰分析を用いた結果とおおむね遜色がないかどうかを確認するとしたことが挙げられているところ(認定事実⑺)、これらの理由が不合理というべき事情は見当た らない上、原告は、重回帰分析の手法を採ったことにより平成25年検証の結果の正確性に重大な疑義が生ずることに関して何ら具体的な主張をしていない。そうすると、平成25年検証において重回帰分析の手法が採られたこと及びその検証内容が、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものということはできない。 また、上記②の点については、季節性を十分に反映することができない のは、原則として9月から11月までを対象に実施される全消調査をベースとする以上ある程度避けられないことといわざるを得ない上、平成25年報告書において、平成25年検証の結果に関する留意事項として、年齢、世帯人員(世帯人数)の体系、居住する地域の組合せによる基準の展開の相違を消費実態に基づ れないことといわざるを得ない上、平成25年報告書において、平成25年検証の結果に関する留意事項として、年齢、世帯人員(世帯人数)の体系、居住する地域の組合せによる基準の展開の相違を消費実態に基づく指数に合わせたとしても、なおその値 と一般低所得世帯の消費実態との間には世帯構成によって様々に異なる差が生じ得るとした上で、具体的にどのような要因がどの程度消費に影響を及ぼすかは明確に分析ができないことなどの限界があることに留意すべき旨が記載されていること(認定事実⑺)からすれば、基準部会は、平成25年検証における検証手法の限界についても明らかにした上で、 平成25年検証の結果を生活扶助基準の改定にどのように反映させるかについては、このような限界をも踏まえた厚生労働大臣の政策的ないし専門的知見に基づく判断に委ねることとしたものと解されるところ、前記⑷で検討したとおり、厚生労働大臣は、かかる検証手法の限界も踏まえて2分の1処理を行ったものといえる。そうすると、平成25年検証 につき原告が指摘するような検証手法の限界があるとしても、そのことをもって、平成25年検証の結果に基づいてゆがみ調整を行った厚生労働大臣の判断が統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものということはできない。 したがって、原告の上記主張を採用することはできない。 ⑹ ゆがみ調整についての小括以上検討したところによれば、ゆがみ調整に関する厚生労働大臣の判断が統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものとはいえないから、同判断につき、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸 脱又はその濫用があるものとは認められない。 欠くものとはいえないから、同判断につき、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸 脱又はその濫用があるものとは認められない。 4 デフレ調整について⑴ デフレ調整を実施することとした判断についてア本件改定においては、ゆがみ調整に併せて、生活扶助基準の水準を改定するデフレ調整が行われた(認定事実⑻)。 被告は、デフレ調整の必要性に関し、次のとおり説明している。 平成19年検証において生活扶助基準が一般低所得世帯の消費実態と比較して高いという見解が示され、生活扶助基準の水準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が崩れていると評価することができる状況にあったが、平成20年時点では平成19年検証に基づく減額改定が行われなかった。その後、平成20年9月のリーマン・ショックに端を発した 世界金融危機が我が国の消費等の実体経済に大きな影響を与え、賃金、物価、家計消費等がいずれも大きく下落する状況となったが、平成21年以降も生活扶助基準の減額改定は行われなかった。 上記の経過により、保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加した(生活扶助基準の水準が実質的に引き上げられた)と評価す ることができる状況となり、生活扶助基準の水準と一般国民の消費実態との不均衡がより一層顕著となっていたことから、厚生労働大臣は、かかる不均衡を是正するためにデフレ調整を行った。 イそこで、デフレ調整の必要性について検討する。平成20年9月のいわゆるリーマン・ショックの発生後、数年間にわたって継続的に経済指標 (完全失業率及び平均賃金)が悪化し、物価(総務省CPI)が下落するなど(認定事実⑹)、我が国の経済が全体として急速に悪化する状況となって ショックの発生後、数年間にわたって継続的に経済指標 (完全失業率及び平均賃金)が悪化し、物価(総務省CPI)が下落するなど(認定事実⑹)、我が国の経済が全体として急速に悪化する状況となっていた。このような状況において、厚生労働大臣が、一般国民の生活水準が急激に悪化しているとの認識を持ったことには合理性があるといえる。 そして、平成19年報告書においては、生活扶助基準の水準の妥当性につ いて評価・検証した結果、夫婦子1人(有業者あり)世帯及び単身世帯 (60歳以上)の生活扶助基準額が第1・十分位世帯に属するそれら世帯の生活扶助相当支出額よりもそれぞれ「やや高め」及び「高め」であるとされていた(認定事実⑷)が、平成20年度ないし平成24年度には生活扶助基準の水準の改定は行われなかった上(認定事実⑸)、平成25年検証においても生活扶助基準の絶対的な水準については検証が行われなかっ た(前提事実⑷ウ、認定事実⑺)。 これらの事情を考慮すると、厚生労働大臣が、平成25年当時、保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加している状況にあるものと判断し、平成25年改定の際にデフレ調整を実施することとしたことには相応の合理性があるものというべきである。また、前記3で検討した とおり、ゆがみ調整は生活扶助基準の展開部分に係る指数を適正化しようとするものであるのに対し、デフレ調整は生活扶助基準の絶対的な水準に関する改定をしようとするものであり、両者はその改定の目的及び対象を異にするものといえるから、それぞれの実施につき必要性が認められる以上は、厚生労働大臣がゆがみ調整に加えてデフレ調整を実施す ると判断したことが直ちに不合理であるとまではいえない。 ウところで、総務省CPIの数値をみると、平成19年から が認められる以上は、厚生労働大臣がゆがみ調整に加えてデフレ調整を実施す ると判断したことが直ちに不合理であるとまではいえない。 ウところで、総務省CPIの数値をみると、平成19年から平成23年までの全体としての物価は下落したものの、食料費や光熱水費については上昇したことが認められる(認定事実⑹)。しかしながら、上記イで検討したとおり、平成25年当時、完全失業率及び平均賃金といった我が国の経 済指標が全体として急速に悪化する状況となっていたこと、一方で生活扶助基準が据え置かれていたことからすれば、上記のとおり食料費や光熱水費が上昇していたとの事情があるからといって、デフレ調整を実施することとした厚生労働大臣の判断の合理性がそれだけで直ちに否定されるものではないというべきである。 もっとも、一般世帯と保護受給世帯との間で消費構造に実質的な相違が あり、それに伴って上記の事情が家計に与える打撃の程度が両世帯の間で大きく異なるような場合には、経済の悪化や物価の下落による保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加の程度に関する評価に影響を及ぼし得るものといえる(この点については、後記⑺において検討する。)。 エ以上によれば、デフレ調整を実施することとした厚生労働大臣の判断が、直ちに統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものとはいえないが、一般世帯と保護受給世帯との消費構造の相違が家計に及ぼす影響によっては、デフレ調整の程度や範囲、方法についてなお留保が必要となるものというべきである。 ⑵ 物価変動率を指標としたことについてアデフレ調整においては、生活扶助基準の改定率の算定に当たって、それまで毎年度の生活扶助基準の改定において用いられていた のというべきである。 ⑵ 物価変動率を指標としたことについてアデフレ調整においては、生活扶助基準の改定率の算定に当たって、それまで毎年度の生活扶助基準の改定において用いられていた民間最終消費支出ではなく、本件対象期間における物価変動率が指標として用いられた(認定事実⑼、⑿)。 被告は、生活扶助基準の改定率の算定に当たって物価変動率を指標としたことに関し、以下のとおり説明している。 保護基準の設定及び改定については、厚生労働大臣に広範な裁量権が認められている上、生活扶助基準の改定方式について法令上の定めはなく、水準均衡方式も昭和58年意見具申以降に採用されている事実上 の改定指針にすぎないから、生活保護法8条2項の「最低限度の生活」を判断決定するための手法は、消費を用いる水準均衡方式等の特定の方式に限られるものではない。そして、生活扶助基準の水準は、保護受給世帯の購買力として捉えられるのであるから、その改定に当たって物価変動率を用いることは、想定される合理的な改定手法の一つである。 物価変動率を用いる改定手法は、購買力の変化の観点から一般国民 と保護受給世帯との間の生活水準の相対的均衡を図ることにほかならないから、従来の水準均衡方式の考え方にも整合する。 イそこで、物価変動率を指標としたことの適否について検討するに、生活扶助基準の改定方式に関し、生活保護法その他の関係法令には何らの定めもないことは被告の主張するとおりであることに加え、前記2で検討した ように、厚生労働大臣には生活扶助基準の改定について政策的かつ専門技術的な見地からの裁量権が認められることからすれば、生活扶助基準の改定の際に、被保護者と一般国民との間に不均衡が生じているか否か及びその程度を検討 大臣には生活扶助基準の改定について政策的かつ専門技術的な見地からの裁量権が認められることからすれば、生活扶助基準の改定の際に、被保護者と一般国民との間に不均衡が生じているか否か及びその程度を検討するに当たってどのような経済指標を用いるかについても、厚生労働大臣の専門的知見に基づく判断に委ねられているものというべき である。しかるところ、前記⑴で検討したとおり、平成20年9月以降、我が国の経済指標が急激に悪化し、それとともに物価の下落が生じていたにもかかわらず、その後も生活扶助基準が減額改定されずに据え置かれていたという状況の下で、厚生労働大臣が、物価の下落に伴って被保護者の可処分所得が相対的、実質的に増加している状況にあり、当該増加分につ いては物価変動率を指標として算出することが可能であると判断したことが不合理であるとはいえない。 ウ上記に関し、原告は、物価を本格的に考慮することは、昭和58年意見具申においても物価は参考程度に考慮すべきとしていたことに反し、また、昭和58年意見具申以来採用されてきた水準均衡方式の本質と矛盾 するものであり、平成25年検証においても一切議論されていないことからも著しく合理性を欠くものである旨主張する。 しかしながら、昭和59年度以降採用されてきた水準均衡方式は、生活保護において保障すべき最低限度の生活の水準は一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであり、また、国民の生活 水準が著しく向上した今日においては、単に肉体的生存に必要な最低限 の衣食住を充足すれば十分というものではなく、一般国民の生活水準と均衡のとれた最低限度の生活であることが要請されるとの考え方に基づき、一般国民の消費実態を基に最低限度の生活の水準を測定しようと の衣食住を充足すれば十分というものではなく、一般国民の生活水準と均衡のとれた最低限度の生活であることが要請されるとの考え方に基づき、一般国民の消費実態を基に最低限度の生活の水準を測定しようとするものといえる(認定事実⑵)。また、水準均衡方式による毎年度の生活扶助基準の改定において参照される民間最終消費支出には、物価変動 分が除去されていない名目値が用いられていることからすれば(認定事実⑵)、水準均衡方式の下においても、物価変動は一般国民の消費実態の変動を通じて生活扶助基準に一定の影響を及ぼしているものといえる。 そうすると、生活扶助基準の水準を改定するに当たって物価変動率を指標とすること自体は、水準均衡方式と矛盾するものとまではいえない。 もっとも、民間最終消費支出が既に物価変動を反映しているとすれば、これに基づいて生活扶助基準の水準を改定しつつ、更に物価変動率に基づいて改定率を算定すると物価変動の影響を二重に考慮することになりかねないが、本件対象期間を通じて民間最終消費支出を参照した生活扶助基準の水準の改定は行われなかった(認定事実⑸)というのであるか ら、この面からも物価変動率を指標とすることに問題は生じない。 また、平成15年中間取りまとめにおいて、生活扶助基準の改定方式の在り方に関し、改定の指標についても検討が必要であるとされ、総務省CPIの伸びを改定の指標の一つとして用いることも考えられるとされていたこと(認定事実⑶)、平成25年報告書においても、厚生労働省 において生活扶助基準の見直しを検討する際に、他に合理的説明が可能な経済指標等を総合的に勘案する場合もあり得ることを前提とする記載があること(認定事実⑺)からすれば、専門委員会や基準部会においても、生活扶助基準の水準を改定するに当たって物価 他に合理的説明が可能な経済指標等を総合的に勘案する場合もあり得ることを前提とする記載があること(認定事実⑺)からすれば、専門委員会や基準部会においても、生活扶助基準の水準を改定するに当たって物価変動率を指標とすることもあり得るとの前提で議論がされていたことがうかがわれる。 以上によれば、厚生労働大臣がデフレ調整において物価変動率を指標と したことにつき、専門的知見との整合性を欠くものということはできない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 エもっとも、本件改定以前において、物価変動率を直接の指標として生活扶助基準の改定がされたことはなく(認定事実⑴ないし⑸、弁論の全趣 旨。なお、マーケットバスケット方式においては物価変動が考慮されるが、デフレ調整とは考慮の方法が明らかに異なる。)、本件改定におけるデフレ調整が初めての試みであったものである。 また、物価が変動すれば消費者の消費行動にも一定の影響が及ぶとは考えられるものの、物価は、消費と関連付けられる諸要素の一つであるに すぎないこと、消費実態は、世帯員の年齢、世帯人数、地域、季節及び社会経済情勢の変化等、他の様々な要素の影響を受けることなどからすれば、消費と物価とが異なる性質を有する別個の経済指標であることは明らかであり、物価に変動が生じたからといって直ちに同程度の消費実態の変動が各人に均等に生ずるものではないことも明らかである。この ことに関しては、昭和58年意見具申においても、物価はそのままでは消費水準を示すものではないのでその伸びは参考資料にとどめるべきである旨が指摘されているところであり(認定事実⑵)、上記のとおり、昭和59年に水準均衡方式が採用されてから本件改定がされるまでの間において、物価変動率を直接の のでその伸びは参考資料にとどめるべきである旨が指摘されているところであり(認定事実⑵)、上記のとおり、昭和59年に水準均衡方式が採用されてから本件改定がされるまでの間において、物価変動率を直接の指標として生活扶助基準の改定がされた ことがなかったのも、消費と物価の性質に相違があることなどを踏まえたものであったと解される。さらに、平成15年中間取りまとめも、物価変動率を指標とすることを積極的に推奨していたものではなく、考え得る選択肢の一つとして総務省CPIの伸びを指標とすることを挙げ、その検討の必要性に言及したにすぎない(認定事実⑶)。加えて、平成 25年報告書も、物価変動率につき、「総合的に勘案」する指標の一つ としていたにすぎない(認定事実⑺)。 以上によれば、物価変動率を直接の指標として生活扶助基準を改定することそれ自体は、厚生労働大臣の裁量に基づく判断として許容されるものの、消費と物価とは異なる性質を有する別個の経済指標であり、物価変動が直ちに同程度の消費実態の変動をもたらすものではないことにつ いては、生活扶助基準の改定に当たって慎重に考慮すべき事情であるといえる。このような事情があるからといって、デフレ調整において物価変動率を指標とした厚生労働大臣の判断の合理性が直ちに否定されるわけではないものの、上記の事情は、物価変動率の算定内容の正確性に影響を及ぼし得るものであり、ひいては保護受給世帯における可処分所得 の相対的、実質的な増加の程度に関する評価にも影響を及ぼし得るものといえる(この点については、後記⑺において検討する。)。 オ以上によれば、デフレ調整において物価変動率を指標とした厚生労働大臣の判断が、それ自体として直ちに統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性 は、後記⑺において検討する。)。 オ以上によれば、デフレ調整において物価変動率を指標とした厚生労働大臣の判断が、それ自体として直ちに統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものとはいえないが、物価変動率が消 費実態に変動をもたらす関連性の強弱いかんによっては、厚生労働大臣の上記判断が、本件改定の前提となる、保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加の程度に係る把握の精度にどの程度の影響を与えたかについて慎重な検討が必要となるものというべきである。 ⑶ 生活扶助相当CPIを用いたことについて アデフレ調整においては、物価変動率の算定において、総務省CPIの指数品目から除外品目を除いて算出された生活扶助相当CPIが用いられた(認定事実⑿)。 被告は、物価変動率の算定に当たって生活扶助相当CPIを用いたことに関し、次のとおり説明している。 平成25年当時、生活扶助による支出が想定される品目の価格指数 及びウエイトを網羅している信頼性の高い客観的なデータとしては、総務省CPIしか存在しなかった。 総務省CPIの指数品目には、家賃、教育費、医療費、自動車関係費、NHK受信料等、生活扶助による支出がおよそ想定されない品目が多数含まれており、保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加 の程度を把握するためには、これらを含めて算定することは相当ではないと考えられた。 そこで、厚生労働大臣は、「生活扶助において捕捉され得るか否か」という客観的かつ明確な基準に従って選択した品目を除外し、生活扶助相当品目を対象として消費者物価指数を算定するのが相当であると判断 し、生活扶助相当CPIを用いることとした。 イそこで、生活扶助相当CPIを用いたこ 従って選択した品目を除外し、生活扶助相当品目を対象として消費者物価指数を算定するのが相当であると判断 し、生活扶助相当CPIを用いることとした。 イそこで、生活扶助相当CPIを用いたことの適否について検討するに、総務省CPIは、家計の消費構造を一定のものに固定した上で、これに要する費用が物価変動によってどのように変化するかを指数値で示した消費者物価指数であり(認定事実⑾)、総務省統計局が作成する客観的な経済 指標の一つとして広く用いられている信頼性の高いデータであるといえる。 また、総務省CPIの指数品目には生活扶助費として支出することが想定されていない除外品目が含まれているところ(認定事実⑾)、これを除いて物価変動率を算定することは、物価の下落による保護受給世帯における可処分所得の実質的増加の程度をより正確に把握することができる手法で あるといえるから、保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加によって一般国民の消費実態との間に生じた不均衡の是正というデフレ調整の目的に沿うものということができる。そして、除外品目は、生活扶助費として支出することが想定されていない品目という客観的な基準に基づいて定められるものであるから(認定事実⑿)、総務省CPIの指数品目か ら除外品目を除外する際に恣意的な判断が入る余地はないと考えられる。 これらの事情を考慮すると、物価変動率の算定において生活扶助相当CPIを用いることとした厚生労働大臣の判断には相応の合理性があるものというべきである。 ウ上記に関し、原告は、生活扶助相当CPIを算出するに当たって、保護受給世帯の支出における品目別消費構造を無視し、総務省CPIが用いる 一般世帯における各品目別ウエイトを用いたために、除外品目として除外されなか は、生活扶助相当CPIを算出するに当たって、保護受給世帯の支出における品目別消費構造を無視し、総務省CPIが用いる 一般世帯における各品目別ウエイトを用いたために、除外品目として除外されなかったテレビ等のウエイトに占める割合が増加し、保護受給世帯の支出の実態とのかい離が大きくなり、保護受給世帯の消費実態が考慮されないものとなっている旨主張する。 しかしながら、上記イで検討したとおり、総務省CPIの指数品目から 除外品目を除外して生活扶助相当CPIを算出し、これを物価変動率の算定に用いることには相応の合理性があるといえるのであり、特定の品目がウエイトに占める割合が増加する結果が生じたからといって、生活扶助相当CPIを物価変動率の算定に用いることとした厚生労働大臣の判断が直ちに統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見と の整合性を欠くものとはいえない。なお、テレビ等の教養娯楽費は、生活扶助費として支出され得る品目であるところ、このような品目を物価変動率が高いという理由で生活扶助相当品目から除外することは、かえって恣意的な取扱いによる統計的処理を招きかねないものであるといわざるを得ない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 エもっとも、物価変動による保護受給世帯の可処分所得の増加の程度をより正確に把握するためには、保護受給世帯における消費実態等も踏まえることが望ましいといえるところ、デフレ調整において、保護受給世帯における消費実態がどのようなものであり、かかる消費実態が物価変動率の算 定においてどのように考慮され、算定の正確性にどの程度の影響があった のかなどについては、なお判然としない部分があるといえる。また、平成15年中間取りまとめや平成19年報告書等において 定においてどのように考慮され、算定の正確性にどの程度の影響があった のかなどについては、なお判然としない部分があるといえる。また、平成15年中間取りまとめや平成19年報告書等において参照されてきたのは生活扶助相当品目に係る消費支出額の動向であり、水準均衡方式における改定率は民間最終支出の伸びを基礎としつつ生活扶助以外の対象となる家賃等を除外するなどして設定されてきたものであるが、いずれも生活扶助 相当CPIそのものを参照していたわけではない(認定事実⑿ア)。このような事情があるからといって、生活扶助相当CPIを物価変動率の算定に用いることとした厚生労働大臣の判断の合理性が直ちに否定されるものではないものの、上記の事情は、物価変動率の算定内容の正確性に影響を及ぼし得るものであり、ひいては保護受給世帯における可処分所得の相 対的、実質的な増加の程度に関する評価にも影響を及ぼし得るものといえる(この点については、後記⑺において検討する。)。 オ以上によれば、物価変動率の算定に当たって生活扶助相当CPIを用いることとした厚生労働大臣の判断が、それ自体として直ちに統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものというこ とはできないが、保護受給世帯における消費実態が物価変動率の算定内容の正確性に及ぼす影響いかんによっては、厚生労働大臣の上記判断が、本件改定の前提となる、保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加の程度に係るその把握の精度を揺るがせていないか否かについて慎重な検討が必要となるものというべきである。 ⑷ 家計調査によって得られた一般世帯のウエイトを用いたことについてアデフレ調整においては、物価変動率の算定において、家計調査によって得られた一般世 となるものというべきである。 ⑷ 家計調査によって得られた一般世帯のウエイトを用いたことについてアデフレ調整においては、物価変動率の算定において、家計調査によって得られた一般世帯のウエイトが用いられた(認定事実⑼、⑿。生活扶助相当CPIは、総務省CPIを基に算出されたものであり、そこで用いられているウエイトは、家計調査によって得られた一般世帯のウエイト である。)。 被告は、物価変動率を算定するに当たって家計調査によって得られた一般世帯のウエイトを用いたことに関し、次のとおり説明している。 家計調査は、統計法上の基幹統計であり、調査対象世帯の選定方法も含め、統計資料としての精度が高いだけではなく、家計上の支出(詳細な品目ごとの支出額)等の把握を目的とした調査であるから、生活扶助 相当CPIの算定に用いられる各品目のウエイトを把握するのに最も適したデータである。また、生活扶助基準の水準は、これまでも、一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考え方に立脚して改定が行われてきたものであり、一般国民の消費を表す家計調査により算出された総務省CPIのウエイトを用いることは、 従来の改定の考え方とも整合する。 これに対し、社会保障生計調査は、保護受給世帯を対象とするものではあるが、調査世帯の選定において地域等による偏りが生ずる可能性があることや、サンプル数が必ずしも多くないこと等を踏まえると、保護受給世帯全体の家計支出の状況を推測する精度に一定の限界がある。 また、社会保障生計調査は、保護受給世帯の「生活実態」を把握する調査であって、保護受給世帯の詳細な支出先や支出額を把握するものではないから、調査手法としても個別品目の消費支出の割 界がある。 また、社会保障生計調査は、保護受給世帯の「生活実態」を把握する調査であって、保護受給世帯の詳細な支出先や支出額を把握するものではないから、調査手法としても個別品目の消費支出の割合等を正確かつ詳細に記載させるための措置が講じられておらず、その調査結果を分析しても家計調査のように詳細な品目ごとのウエイトは把握できない。 なお、家計調査には、第1・十分位世帯のウエイトのデータも存在するが、これについてはいくつかの品目をまとめた「類」レベルでのウエイトのデータのみが存在し、品目別のウエイトのデータは存在しないため、これを用いると、総務省CPIの詳細な品目ごとの消費支出の割合を反映した物価指数を算出することができなくなるものと予想された。 以上のとおり、厚生労働大臣は、社会保障生計調査の結果を分析し たウエイトを用いて物価変動率を算出することも可能であったものの、家計調査の統計資料としての精度や適格性、従来の改定の考え方との整合性等を総合的に勘案し、家計調査によって得られた総務省CPIのウエイトを用いる判断をした。 イそこで、家計調査によって得られた一般世帯のウエイトを用いたことの 適否について検討するに、デフレ調整の目的が物価の下落による保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加によって一般国民の消費実態との間に生じた不均衡の是正にあることからすれば、保護受給世帯の可処分所得の増加の程度をより正確に把握するためには、保護受給世帯に係るデータによって得られたウエイトを用いるのが望ましいといえる のであり、このような観点からは、保護受給世帯をその調査対象としている社会保障生計調査によって得られるウエイトを用いるのが望ましいともいえる。 しかしながら、社会保障生計調査は いといえる のであり、このような観点からは、保護受給世帯をその調査対象としている社会保障生計調査によって得られるウエイトを用いるのが望ましいともいえる。 しかしながら、社会保障生計調査は、保護受給世帯を調査対象とするものではあるものの、調査対象となるのは約3000世帯にとどまる上、 詳細な支出先及び支出額が調査されるわけではなく、品目別のウエイトを把握することはできない(乙A28、62、107)。これに対し、家計調査は、統計法上の基幹統計調査の一つとして実施される、無作為に抽出された約9000世帯の一般世帯を調査対象とするものである上、品目別の消費支出の内訳が調査されることから、品目別のウエイトを把 握することができる(認定事実⑾)。このように、家計調査及び社会保障生計調査には、それぞれに保護受給世帯の可処分所得の増加の程度を把握するためのデータとしての長所及び短所があるものといえるから、いずれを選択するかについては厚生労働大臣の専門的知見に基づく判断に委ねられ得るものというべきである。 そして、以上の事情に加え、家計調査には、第1・十分位世帯のウエイ トのデータが存在するものの、品目別のウエイトのデータまでは存在しない(乙A63)ことを考慮すると、デフレ調整における物価変動率の算定に当たって、家計調査によって得られた一般世帯のウエイトを用いることとした厚生労働大臣の判断が不合理であるとまではいえない。 ウ上記に関し、原告は、家計調査の結果と社会保障生計調査の結果とを比 較すると、保護受給世帯の消費構造には一般世帯とは異なる特徴があるため、保護受給世帯の消費実態を正確に把握しなければ、デフレ傾向によって保護受給世帯の可処分所得が実質的にどれだけ変化したのかを明らかにすることはで 給世帯の消費構造には一般世帯とは異なる特徴があるため、保護受給世帯の消費実態を正確に把握しなければ、デフレ傾向によって保護受給世帯の可処分所得が実質的にどれだけ変化したのかを明らかにすることはできない旨主張する。 しかしながら、保護受給世帯と一般世帯との間で消費構造に一定の相違 があり、物価変動率の算定に当たって参照すべき消費構造としては低所得者世帯のものが望ましいといえるとしても、上記イで検討したところに照らせば、物価変動率の算定に当たって家計調査によって得られた一般世帯のウエイトを用いることとした厚生労働大臣の判断の合理性が直ちに否定されるものではない。 したがって、原告の上記主張は採用することができない。 エもっとも、平成25年検証の過程でも、基準部会の一部委員から、地域や世帯類型、所得階級によって消費構造が変わり、それに伴って妥当する物価指数も変わり得ること、基準部会では物価指数について何も議論していないことなどを根拠に、全国一律の物価変動率を指標とすることについ ては慎重な意見が出されていたところである(乙A79・80頁、106・10頁、23~24頁)。そして、上記ウで原告も指摘するように、一般世帯と保護受給世帯との間で消費構造に相違があり、それに伴って種々の事情が与える影響の程度が両世帯の間で異なる場合には、物価の下落による保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加の程度 を計測する際に一般世帯のウエイトを用いることで、その把握の精度に影 響を及ぼし得るものといえる(この点については、後記⑺において検討する。)。 オ以上によれば、物価変動率の算定に当たって家計調査により算出された一般世帯のウエイトを用いることとした厚生労働大臣の判断が、それ自体 といえる(この点については、後記⑺において検討する。)。 オ以上によれば、物価変動率の算定に当たって家計調査により算出された一般世帯のウエイトを用いることとした厚生労働大臣の判断が、それ自体で直ちに統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合 性を欠くものということはできないが、一般世帯と保護受給世帯との間に存する消費構造の相違に伴って種々の事情が両世帯に及ぼす影響が異なる程度いかんによっては、厚生労働大臣の上記判断が、本件改定の前提となる、保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加の程度に関する把握の精度にゆがみをもたらしていないか否かについて慎重な検討が 必要となるものというべきである。 ⑸ 平成22年ウエイトを用いたことについてアデフレ調整においては、物価変動率の算定において、平成22年ウエイトが用いられた(認定事実⑼、⑿)。 被告は、物価変動率の算定に当たって平成22年ウエイトを用いたこと に関し、次のとおり説明している。 国民の消費の内容は、経時的に変化するものであることからすれば、現実の消費実態を反映した物価指数を算定するために、物価指数の算定時点に可能な限り近接した時点の消費構造を示すデータを用いるのが相当であると考えられたことから、厚生労働大臣は、平成20年から平成 23年まで(本件対象期間)の物価変動率を算定するに当たり、平成22年ウエイトを用いることとしたものである。 厚生労働大臣の上記判断は、消費者物価指数マニュアルの内容に沿うものである。また、対象期間の任意の時点でウエイトを採る方法は、消費者物価指数マニュアルにおいて「中間年指数」と紹介されている方 法である。 イそこで、平成22年ウエイトを用いたこと また、対象期間の任意の時点でウエイトを採る方法は、消費者物価指数マニュアルにおいて「中間年指数」と紹介されている方 法である。 イそこで、平成22年ウエイトを用いたことの適否について検討するに、デフレ調整の目的が物価の下落による保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加によって生じた一般国民の消費実態との不均衡の是正にあることからすれば、保護受給世帯の可処分所得の増加の程度をより正確に把握するために、物価指数の算定時点に可能な限り近接した時点 の消費構造を示すデータを用いるのが望ましいものといえる。しかるところ、家計調査によって得られるウエイトのデータのうち平成25年当時に用いることが可能であったのは、平成22年基準によるものと、平成17年以前を基準年とするものであるから(弁論の全趣旨)、本件対象期間により近接した時点といえる平成22年ウエイトを用いることと した厚生労働大臣の判断には、相応の合理性があるものということができる。 ウ上記に関し、原告は、平成20年及び平成23年のいずれの時点でもない平成22年に消費構造を固定する計算方法は統計的に意味がない上、かかる計算方法によると、異なる計算原理(パーシェ式及びラスパイレ ス式)に基づく二つの指数を比較することとなるから理論的に誤りである旨主張する。 しかしながら、代表的な消費者物価指数としては、基準時をウエイト参照時として算出されるラスパイレス指数及び比較時をウエイト参照時として算出されるパーシェ指数が存在するほか、消費者物価指数マニュア ルにおいては、基準時と比較時との間の任意の時点をウエイト参照時として算出されるロウ指数も一般的な物価指数の一つであると紹介されている(認定事実⑾)など、一定期間の物価変 者物価指数マニュア ルにおいては、基準時と比較時との間の任意の時点をウエイト参照時として算出されるロウ指数も一般的な物価指数の一つであると紹介されている(認定事実⑾)など、一定期間の物価変動率を算定するに当たっていずれの時点をウエイト参照時とするかについては様々な考え方があり得るところであり、そのいずれかが誤りであるものとはいえない。また、 平成22年ウエイトを用いて算定された指数は、結果としてロウ指数と 同様の指数となるものと解される。そうすると、厚生労働大臣が平成22年ウエイトを用いた上で本件対象期間における物価変動率を算定したことが、統計学その他の理論上明らかに誤りであるということはできない。 また、原告は、平成22年ウエイトを用いると、平成20年から平成2 2年にかけては大幅な下方バイアスが生ずることが指摘されている固定基準年方式のパーシェ指数に一致することとなり、実際にも「ノート型パソコン」及び「テレビ」の2品目のみの影響により生活扶助相当CPIの下落幅が著しく大きくなっている旨主張する。 しかしながら、消費者物価指数の算定に当たり、ウエイト参照時をいつ に設定するかによって一定のバイアスが生ずることが計算上あり得るからといって、当該算定方式が統計学その他の理論上誤りであるということはできない。また、消費者物価指数にはそれぞれ一長一短があり、そうであるからこそ複数の指数が併存しているものと考えられることからすると、消費者物価指数の算定において、特定の品目の影響により物価 変動率が大きくなる結果が生じたからといって、当該算定方式が直ちに不合理であるということもできない。 したがって、原告の上記各主張はいずれも採用することができない。 エもっと 変動率が大きくなる結果が生じたからといって、当該算定方式が直ちに不合理であるということもできない。 したがって、原告の上記各主張はいずれも採用することができない。 エもっとも、原告が指摘するとおり、本件下落率の算定過程において、平成20年から平成22年にかけての物価変動に関してはパーシェ式に基 づく算定と同様の結果となるものといえるところ、パーシェ式においては下方バイアスが生ずることが指摘されている(乙A26)ことからすれば、平成22年ウエイトを用いたことにより、算定される物価変動率に下方バイアスが生じた可能性を否定することはできない。また、特定の品目の影響により物価変動率が大きくなっているとの事情については、 一般国民と保護受給世帯との間で消費構造に相違があり、それに伴って 上記の事情が与える影響の程度が両世帯の間で異なる場合もあり得るものといえる。これらの事情があるからといって、平成22年ウエイトを用いることとした厚生労働大臣の判断の合理性が直ちに否定されるわけではないものの、上記の各事情は、物価変動率の算定内容の正確性に影響を及ぼし得るものであり、また、物価の下落による保護受給世帯にお ける可処分所得の相対的、実質的な増加の程度に関する評価の精度にも影響を及ぼし得るものといえる(この点については、後記⑺において検討する。)。 オ以上によれば、物価変動率の算定に当たって平成22年ウエイトを用いることとした厚生労働大臣の判断が、それ自体で直ちに統計等の客観的な 数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものとはいえないが、それによって物価変動率に下方バイアスが生じたか否か及びその程度並びに特定の品目の影響による物価変動率の増大の有無及びその程度のいかんによっては 連性や専門的知見との整合性を欠くものとはいえないが、それによって物価変動率に下方バイアスが生じたか否か及びその程度並びに特定の品目の影響による物価変動率の増大の有無及びその程度のいかんによっては、厚生労働大臣の上記判断が、本件改定の前提となる、物価変動率の算定内容の正確性及び保護受給世帯における可処分所得の相対 的、実質的な増加の程度に関するその把握の精度を鈍らせていないか否かについて慎重な検討が必要となるものというべきである。 ⑹ 算定期間を平成20年から平成23年までとしたことについてアデフレ調整においては、物価変動率の算定において、平成20年から平成23年まで(本件対象期間)を算定期間とすることとされた(認定事実 ⑿)。 被告は、物価変動率の算定期間を本件対象期間としたことに関し、次のとおり説明している。 平成19年検証において、生活扶助基準が一般低所得世帯の消費実態と比較して高くなっているという見解が示されていたにもかかわらず、 平成20年時点では、平成19年検証に基づく減額改定が行われなかっ た。そして、その後のデフレ傾向により、生活扶助基準の水準と一般国民の消費実態との不均衡がより一層顕著となっていたことから、厚生労働大臣は、デフレ傾向によって拡大した生活扶助基準の水準と一般国民の消費実態との不均衡を是正するために、物価変動率の算定期間の始期を平成20年とした。 平成25年改定当時の最新の総務省CPIのデータは平成23年のもの(平成24年1月27日公表)であったことから、厚生労働大臣は、物価変動率の算定期間の終期を平成23年とした。 イそこで、本件対象期間の始期を平成20年としたことの適否について検討するに、平成19年報告書において、夫婦子1人 ことから、厚生労働大臣は、物価変動率の算定期間の終期を平成23年とした。 イそこで、本件対象期間の始期を平成20年としたことの適否について検討するに、平成19年報告書において、夫婦子1人(有業者あり)世帯 及び単身世帯の生活扶助基準額が第1・十分位に属するそれら世帯の生活扶助相当支出額(一般低所得世帯の消費実態)と比較してそれぞれ「やや高め」及び「高め」であるという見解が示されていたこと(認定事実⑷)に加え、前記⑵で検討したとおり、世界金融危機が発生した平成20年以降、我が国の一般国民の生活水準が急激に悪化しており、厚 生労働大臣もそのことを認識していたことからすれば、厚生労働大臣が、平成19年以前の生活扶助基準はその当時における一般低所得世帯の生活扶助相当支出額を充足する水準にあったものと判断し、また、その後のデフレ傾向により相対的、実質的に増加した被保護者の可処分所得を把握するために物価変動率の算定期間の始期(基準時)を平成20年と するのが相当であると判断したことには、相応の合理性があるものということができる。 上記に関し、原告は、本来は生活扶助基準の改定が最後に行われた平成16年を基準時とすべきであり、また、平成20年は石油の高騰にけん引されて総務省CPIが急上昇した特殊な年であるから、同年を基準時 とするのは著しく合理性を欠く旨主張する。 しかしながら、生活扶助基準の改定に当たって、物価変動率の算定期間をどのように設定するかについては様々な考え方があり得るものといえるところ、原告が指摘するとおり、生活扶助基準の改定が最後に行われた平成16年をその始期とすることに一定の合理性があるとしても、上記のとおり、厚生労働大臣が物価変動率の算定期間の始期を平成20年 えるところ、原告が指摘するとおり、生活扶助基準の改定が最後に行われた平成16年をその始期とすることに一定の合理性があるとしても、上記のとおり、厚生労働大臣が物価変動率の算定期間の始期を平成20年 とするのが相当であると判断したことにも相応の合理性があるといえる以上、いずれを選択するかは厚生労働大臣の専門的知見に基づく判断に委ねられるものというべきである。そうすると、厚生労働大臣による前記の判断が、専門的知見との整合性を欠くものであったということはできない。 また、原告が指摘するとおり、平成19年から平成20年にかけて総務省CPIが1.4%上昇しており(認定事実⑾)、同年を算定期間の始期とすると算出される物価変動率の下落幅が大きくなってしまうことは確かである。しかしながら、平成19年検証においては、夫婦子1人(有業者あり)世帯の生活扶助基準額(15万0408円)が当該世帯 の第1・十分位の生活扶助相当支出額(14万8781円)よりも約1. 1%高く、単身世帯(60歳以上の場合)の生活扶助基準額(7万1209円)が当該世帯の第1・十分位の生活扶助相当支出額(6万2831円)よりも約13.3%高いとされていたこと(認定事実⑷)からすれば、平成19年当時において上記の総務省CPIの上昇と同程度の不 均衡が既に生じていたものであり、平成20年にかけての上昇を殊更に考慮する必要はないともいえる。これらの事情を考慮すれば、厚生労働大臣による前記の判断が、統計等の客観的な数値等との合理的関連性を欠くものであったということもできない。 ウ次に、物価変動率の算定期間の終期を平成23年としたことの適否につ いて検討するに、生活扶助相当CPIは総務省CPIを基に算出するも のである(認定事実⑿)ところ、 い。 ウ次に、物価変動率の算定期間の終期を平成23年としたことの適否につ いて検討するに、生活扶助相当CPIは総務省CPIを基に算出するも のである(認定事実⑿)ところ、総務省CPIのデータは平成23年のものが平成24年1月27日に、平成24年のものが平成25年1月25日にそれぞれ公表され、他方で、平成25年度予算の政府案は平成25年1月29日に閣議決定されたものである(乙A59、72、73)。 そうすると、本件改定に当たって平成24年の総務省CPIのデータを 用いることは実際上不可能であったといえるから、厚生労働大臣が当時利用することが可能な最新のデータであった平成23年の総務省CPIのデータを用いることとし、同年を物価変動率の算定期間の終期とした判断には相応の合理性があるものということができる。 エもっとも、上記イで検討したとおり、生活扶助基準の改定が最後に行わ れた平成16年を物価変動率の算定期間の始期とすることにも一定の合理性があるといえるところ、同年を始期として生活扶助相当CPIの変化率を算定した場合には、本件下落率とは異なる数値が算出されるものと考えられる。また、上記イで検討したとおり、平成19年から平成20年にかけて総務省CPIが1.4%上昇していたことを考慮しても、 平成20年を物価変動率の算定期間の始期とすることには相応の合理性があるといえるものの、かかる総務省CPIの上昇があったことからすれば、同年よりも前の時点を物価変動率の算定期間の始期とした場合には、平成23年までの生活扶助相当CPIの下落率は本件下落率よりも小さなものとなった可能性が高いといえる。さらに、一時的ではあれ顕 著な物価上昇局面にあった平成20年における生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実 生活扶助相当CPIの下落率は本件下落率よりも小さなものとなった可能性が高いといえる。さらに、一時的ではあれ顕 著な物価上昇局面にあった平成20年における生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との関係は、平成19年におけるものとは異なっていた可能性があり、その結果として生活扶助基準が一般低所得世帯の消費実態よりも低くなっていたり、高かったとしてもその程度が有意に縮小していたりしていた可能性も否定することができない。仮にそうであっ たとすれば、平成19年検証において、夫婦子1人(有業者あり)世帯 及び単身世帯(60歳以上)において生活扶助基準額が第1・十分位の生活扶助相当支出額よりも「やや高め」及び「高め」とされていたからといって、平成19年から平成20年にかけて総務省CPIが1.4%上昇したのと同程度の不均衡が既に生じていたものとは必ずしもいえないことになる。 このように、本件対象期間の始期をいつに設定するかについては様々な考え方があり得るが、平成16年を算定期間の始期とすることにも一定の合理性があり、その場合、算出される物価変動率の下落幅が本件下落率よりも小さくなる可能性が十分にあるものといえる。これらの事情があるからといって、物価変動率の算定期間の始期を平成20年とした厚 生労働大臣の判断の合理性が直ちに否定されるものではないものの、かかる事情は、物価変動率の算定内容の正確性に影響を及ぼし得るものであり、ひいては物価の下落による保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加の程度に関する評価の精度にも影響を及ぼし得るものといえる(この点については、後記⑺において検討する。)。 オ以上によれば、物価変動率の算定期間の始期を平成20年、終期を平成23年とした厚生労働大臣の判断が、 度にも影響を及ぼし得るものといえる(この点については、後記⑺において検討する。)。 オ以上によれば、物価変動率の算定期間の始期を平成20年、終期を平成23年とした厚生労働大臣の判断が、それ自体として直ちに統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものとはいえないが、平成19年から平成20年にかけて総務省CPIが1.4%上昇していたことの影響や、平成20年における生活扶助基準と一般低所得世 帯の消費実態との関係が平成19年におけるものとは異なっていた可能性のいかんによっては、厚生労働大臣の上記判断が、本件改定の前提となる、保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加の程度に関するその把握の精度を曇らせていないか否かについて慎重な検討が必要となるものというべきである。 ⑺ 本件下落率をそのままデフレ調整分の改定率としたことについてア被告の説明についてデフレ調整においては、本件対象期間における生活扶助相当CPIの変動率(本件下落率)が-4.78%と算定され、これがそのままデフレ調整分の改定率とされた(認定事実⑼、⑿)。 被告は、本件下落率をそのままデフレ調整分の改定率としたことに関し、次のとおり説明している。 厚生労働大臣は、平成25年検証において、本件下落率が-4.78%と算定されたことにつき、その算定過程が適切であり、平成20年以降の物価の下落による保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な 増加の程度を表していると判断した。 そして、厚生労働大臣は、平成19年検証において生活扶助基準額と一般低所得世帯の消費実態との不均衡が確認されていたことに加え、平成20年以降の物価下落が同年9月のリーマン・ショックに端を発する百年 そして、厚生労働大臣は、平成19年検証において生活扶助基準額と一般低所得世帯の消費実態との不均衡が確認されていたことに加え、平成20年以降の物価下落が同年9月のリーマン・ショックに端を発する百年に一度とも評される世界金融危機による実体経済への影響を反映 したものであり、物価のみならず賃金や消費等の経済指標も大きく下落していることなどに照らして、同年以降の保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加による一般国民との間の不均衡を是正するに当たっては、その改定率を本件下落率と同じ-4.78%とするのが相当であると判断した。 イ検討すべき内容について前記⑴ないし⑹において検討したとおり、厚生労働大臣が、デフレ調整を実施することとしたこと、生活扶助基準の改定率の算定に当たって物価変動率を指標としたこと、物価変動率の算定に当たって算定期間を平成20年から平成23年まで(本件対象期間)とし、生活扶助相当C PI及び家計調査によって得られた一般世帯の平成22年ウエイトを用 いたことは、それぞれそれ自体としては不合理であるとまではいえない。 また、前記認定事実⑿のとおり、かかる算定方法によった場合、本件下落率は-4.78%と算出されるものと認められ、その算定の過程に特段の誤りは見当たらない。 しかしながら、既に説示したとおり、前記⑴ないし⑹において検討した 各項目について、保護受給世帯と一般世帯との間の消費構造の相違や物価変動率の算定において採用された指標の妥当性等、物価変動率の算定内容の正確性に影響を及ぼし得る事情や、物価の下落による保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加の程度に関する評価の精度に影響を及ぼし得る事情が複合的、重畳的に存在し、それらを慎重に 検討する必 響を及ぼし得る事情や、物価の下落による保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加の程度に関する評価の精度に影響を及ぼし得る事情が複合的、重畳的に存在し、それらを慎重に 検討する必要があることもまた否定し難い。これらの事情は、デフレ調整分の改定率を定めるに当たって本来考慮されるべきものであったといえ、その各段階における考慮の累積的な結果としてデフレ調整が過大であったと判断されるような場合には、当該各事情は、本件改定につき厚生労働大臣の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があったことを基礎付け るに足りるものといわざるを得ないこととなる。 そこで、保護受給世帯と一般世帯との間の消費構造の相違や物価変動率の算定において採用された指標の妥当性等について更に検討した上で、本件下落率をそのままデフレ調整分の改定率とした厚生労働大臣の判断が、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性 を欠くものであったか否かについて検討する。 ウ保護受給世帯と一般世帯との間の消費構造の相違について 一般に、低所得者世帯においては、それ以外の世帯よりも食費や光熱水費等の日常生活の維持に必要不可欠な品目に係る消費支出額が消費支出総額に占める割合が大きく、他方で、日常生活の維持に必要不可欠と はいえない教養娯楽費等の品目に係る消費支出額の割合が小さくなるも のと考えられる。このことは、かつてのエンゲル方式による生活扶助基準改定の正当性を支えた基本的な原理であるとともに、平成29年検証においても当然の前提とされているものといえる(認定事実⑽)ほか、社会保障生計調査の内容からも読み取ることができる。 すなわち、証拠(乙A28、62、107)及び弁論の全趣旨によれ ば、テレビ等又はこれを含 の前提とされているものといえる(認定事実⑽)ほか、社会保障生計調査の内容からも読み取ることができる。 すなわち、証拠(乙A28、62、107)及び弁論の全趣旨によれ ば、テレビ等又はこれを含む品目類(「教養娯楽」又は「教養娯楽用耐久財」)の支出が消費支出総額に占める割合につき、平成22年の社会保障生計調査の結果(保護受給世帯における消費構造)と同年の総務省CPIにおけるウエイト(一般世帯における消費構造)とを比較すると、以下のとおり、両者の間には、テレビ等を含む品目において大きなかい 離があるものと認められる。なお、社会保障生計調査における消費支出総額には除外品目に係る消費支出も含まれるため、以下の検討においては、一般世帯に係るウエイト総数についても除外品目に係るウエイトを除外せず、総務省CPIにおけるウエイト総数(1万)をそのまま用いた。 a 教養娯楽に係る支出保護受給世帯における教養娯楽に係る支出額が消費支出総額に対して占める割合は、2人以上の世帯が6.4%、単身世帯が5.6%である。これに対し、一般世帯においては、教養娯楽のウエイト(1145)がウエイト総数(1万)に対して占める割合は11.5%であ る。このように、保護受給世帯における消費支出総額のうち教養娯楽に係る支出額が占める割合は、一般世帯の約半分にすぎない。 b 教養娯楽用耐久財に係る支出保護受給世帯(2人以上)における教養娯楽用耐久財に係る支出額(1か月当たり1110円)が消費支出総額(同17万3620円) に対して占める割合は0.64%である。これに対し、一般世帯にお いては、教養娯楽用耐久財のウエイト(171)がウエイト総数(1万)に対して占める割合は1.71%である。このように、保護受給 して占める割合は0.64%である。これに対し、一般世帯にお いては、教養娯楽用耐久財のウエイト(171)がウエイト総数(1万)に対して占める割合は1.71%である。このように、保護受給世帯における消費支出総額のうち教養娯楽用耐久財に係る支出額が占める割合は、一般世帯の4割未満にすぎない。 c テレビ等に係る支出等 社会保障生計調査においては、家計調査におけるような詳細な品目別の調査は行われておらず、教養娯楽用耐久財については「PC・AV機器」、「ピアノ」、「他の教養娯楽用耐久財」の三つに区分されているところ、平成22年の家計調査では同じ教養娯楽用耐久財が「テレビ」、「携帯型オーディオプレーヤー」、「電子辞書」、「ビ デオレコーダー」、「パソコン(デスクトップ型)」、「パソコン(ノート型)」、「プリンタ」、「カメラ」、「ビデオカメラ」、「ピアノ」及び「学習机」に区分されていることからしても、このうちPC・AV機器はおおむねテレビ等(テレビ、ビデオレコーダー、パソコン(デスクトップ型)、パソコン(ノート型)及びカメラ)に 対応するものと考えられる。 そこで、テレビ等ないしPC・AV機器に係る消費支出についてみると、保護受給世帯(2人以上)におけるPC・AV機器に係る支出額(1か月当たり737円)が消費支出総額(同17万3620円)に対して占める割合は0.42%であるのに対し、一般世帯において は、テレビ等のウエイト(147)がウエイト総数(1万)に対して占める割合は1.47%である。このように、保護受給世帯における消費支出総額のうちテレビ等に係る支出額が占める割合は、一般世帯の3割未満にすぎないものと推認される。 次に、原告が本件下落率の算定に大きな影響を及ぼしたと指摘する 保護受給世帯における消費支出総額のうちテレビ等に係る支出額が占める割合は、一般世帯の3割未満にすぎないものと推認される。 次に、原告が本件下落率の算定に大きな影響を及ぼしたと指摘する テレビ等に係る価格の下落について検討するに、基準時(平成22年) における生活扶助相当品目の価格指数を100とした場合における平成20年及び平成23年の各価格指数を対比すると、本件対象期間における教養娯楽用耐久財、特にテレビ等に係る価格指数につき顕著な下落がみられたこと(認定事実⑿)からすれば、本件対象期間における物価変動にはテレビ等に係る価格の下落が相当程度の影響を及ぼしたものとう かがわれる。また、本件対象期間における総務省CPIの下落率が-2. 35%であった(認定事実⑾)のに対し、同期間における生活扶助相当CPIの下落率(本件下落率)が-4.78%と高くなっていることからすれば、生活扶助相当CPIを用いたことにより、上記のテレビ等に係る価格の下落による影響が、算出される物価変動率に相対的に大きく 反映される結果となったものと考えられる。なお、平成25年検証において、テレビを含む耐久消費財について第1・十分位世帯における普及状況は中位所得階層と比べておおむね遜色なく充足されていること(認定事実⑺ア)が確認されているが、普及している耐久消費財の新品・中古の別やグレード、買換えの頻度までは明らかではないことからすれ ば、テレビ等の普及の程度が保護受給世帯においても中位所得階層と大きく異ならないものと解されること自体は、上記判断を左右するには足りない。 上記によれば、テレビ等に係る価格の下落による消費実態への影響の程度は、本来、一般世帯よりも保護受給世帯における方が小さいもの といえるところ 記判断を左右するには足りない。 上記によれば、テレビ等に係る価格の下落による消費実態への影響の程度は、本来、一般世帯よりも保護受給世帯における方が小さいもの といえるところ、上記のとおり、本件下落率の算定にはテレビ等の価格の下落が相当程度の影響を及ぼしたものと考えられることを併せ考慮すると、本件下落率の数値は、物価の下落による保護受給世帯における実際の生活扶助相当支出額の減少(可処分所得の相対的、実質的な増加)よりも下落幅が大きく算出されている可能性があるものというべきであ る。 以上によれば、保護受給世帯と一般世帯との間の消費構造には実際に相違があるものというべきであり、かかる相違を考慮すると、本件下落率が本件対象期間における保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加を正しく表すものといえるかは疑わしい点があるものといわざるを得ない。 エ物価変動率の算定において採用された指標の妥当性等について 本件下落率は、物価変動率を指標として算出されたものであるところ、前記⑵で説示したとおり、物価が変動すれば消費者の消費行動にも影響が及ぶと考えられるものの、消費と物価とは異なる性質を有する別個の経済指標であり、物価変動が直ちに同程度の消費実態の変動をもたらす ものではないというべきである。 加えて、本件下落率は、家計調査によって得られた一般世帯のウエイトを用いて算出されたところ、前記⑷で説示したとおり、平成25年検証の過程でも、基準部会の一部委員から、地域や世帯類型、所得階級によって消費構造が変わり、それに伴って妥当する物価指数も変わり得る ことなどを根拠に、全国一律の物価変動率を指標とすることについては慎重な意見が出されていたこ から、地域や世帯類型、所得階級によって消費構造が変わり、それに伴って妥当する物価指数も変わり得る ことなどを根拠に、全国一律の物価変動率を指標とすることについては慎重な意見が出されていたことなどからすれば、それが保護受給世帯の消費生活を取り巻く実際の物価変動率を反映していない疑いが存するものといわざるを得ない。なお、この疑いは、前記ウで検討した結果として保護受給世帯と一般世帯との間の消費構造に相違が存するものと認め られたことからも裏付けられているところである。 また、本件下落率は、平成22年ウエイトを用いて算出されたものであるところ、前記⑸で説示したとおり、平成22年をウエイト参照時とした場合、平成20年から平成22年までの間についてはパーシェ式に基づく算定と同様の結果となることから、算定される物価変動率に下 方バイアスが生じた可能性を否定することができない。 さらに、本件下落率は、平成20年から平成23年までを算定期間として算出されたものであるところ、上記⑹で説示したとおり、物価変動率の算定期間の始期をいつに設定するかについては様々な考え方があり得るが、生活扶助基準が最後に改定された平成16年を算定期間の始期とすることにも一定の合理性があるといえ、その場合、平成19年から 平成20年にかけての急激な物価上昇が織り込まれることから、算出される物価変動率の下落幅が本件下落率よりも小さくなる可能性が十分にあるものといえる。 上記ないしの各事情を重畳的、累積的に考慮すると、本件下落率は、その算定方法については相応の合理性があるといえるものの、本 件対象期間における保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加を正確に表すものであるとはいい難く、また、保護受給世帯の消費実態 、その算定方法については相応の合理性があるといえるものの、本 件対象期間における保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加を正確に表すものであるとはいい難く、また、保護受給世帯の消費実態に影響した実際の物価変動率よりも下落幅が大きく算出されている可能性が無視し得ない程度に高いものというべきである。 オ厚生労働大臣による判断の適否について 生活扶助は、憲法25条の理念に基づき生活保護法が定める健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように同法11条が定めた各種の保護の中でも、衣食その他日常生活の需要に応じたものであり、飲食物費や光熱水費など日常生活に不可欠な支出に係る需要を満たすためのものとして、保護受給世帯の基礎的な生計に関わるものであるから、生活扶助 基準の引下げは、保護受給世帯の生計の維持に大きな影響を及ぼすものといえる。そうすると、厚生労働大臣は、生活扶助基準の引下げを伴うデフレ調整に関しては、最低生活を保障するとの見地から、慎重な判断をすることが求められていたものというべきである。 そして、上記ウ及びエで検討したとおり、本件下落率は、相応の合理 性を有する算定方法に基づいて算出されたものではあるものの、本件対 象期間における保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加を正確に表すものとはいい難く、また、実際の物価変動率よりも下落幅が大きく算出されている可能性が無視し得ない程度に高いものである。これに加え、本件改定以前には物価変動率を指標として生活扶助基準が改定されたことはなかった事実も考慮すると、厚生労働大臣は、デフレ調整 分の改定率を定めるに当たって、ゆがみ調整における2分の1処理のような方策を採らず、本件下落率をそのまま生活扶助基準の改定率とすることについては慎重 実も考慮すると、厚生労働大臣は、デフレ調整 分の改定率を定めるに当たって、ゆがみ調整における2分の1処理のような方策を採らず、本件下落率をそのまま生活扶助基準の改定率とすることについては慎重になる必要があったものというべきである。 また、上記のとおり、生活扶助が保護受給世帯の基礎的な生計に関わるものであり、その引下げが保護受給世帯の生計の維持に大きな影響 を及ぼすことからすれば、保護基準を引き下げるに当たっては、保護基準によって具体化されていた被保護者の日常生活に係る期待的利益にも可及的に配慮がされるべきである。 しかるところ、デフレ調整による改定率である-4.78%は、昭和59年以降採用されている水準均衡方式の下において過去に減額された 平成15年度(-0.9%)及び平成16年度(-0.2%)の2例(乙A10)と比較しても、前例のない突出した減額率であったといえる。また、デフレ調整がゆがみ調整と併せて行われたことにより、約96%の世帯について生活扶助費が減額される結果となったこと(乙A18)からすれば、デフレ調整が実施されたことにより、実際にほぼ全て の保護受給世帯の生計の維持に大きな影響が及んだものといえる。このように、本件下落率をそのままデフレ調整分の改定率とした場合には、保護受給世帯の生計の維持に重大な影響を及ぼし得ることとなるところ、厚生労働大臣は、その専門的知見に基づき、かかる結果が生じ得ることを認識し得たものといえるのであるから、デフレ調整を実施するに当た って、被保護者の期待的利益に配慮するための具体的な措置を検討する ことが求められていたものといえる。 しかるに、上記アの被告の説明を踏まえても、本件下落率の算定に当たって上記ウ及びエで説示した各点について何 益に配慮するための具体的な措置を検討する ことが求められていたものといえる。 しかるに、上記アの被告の説明を踏まえても、本件下落率の算定に当たって上記ウ及びエで説示した各点について何らかの考慮が実質的に行われたような形跡は特段見当たらず、また、厚生労働大臣が、デフレ調整分の改定率を定めるに当たって、これらの点について何らかの検討 をした形跡も見当たらない。そうすると、デフレ調整においては、厚生労働大臣が上記の考慮ないし検討をしなかった結果として、本件対象期間における保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加を正確に表すものとはいい難く、また、保護受給世帯の消費生活を取り巻く実際の物価変動率よりも下落幅が大きく算出されている可能性を否定するこ とができない本件下落率が、そのままデフレ調整分の改定率とされたものということができる。 また、上記アの被告の説明を踏まえても、厚生労働大臣が、デフレ調整を実施するに当たって、被保護者の期待的利益に配慮するための具体的な措置につき、後記カの激変緩和措置以外に何らかの措置を採るこ とを検討したものとも認められない。そうすると、厚生労働大臣は、専門部会による審議検討を経たゆがみ調整においてすら、統計上の限界があることを一つの理由として2分の1処理を行ったにもかかわらず、専門家合議体による審議検討を経ずに算出され、しかも上記のとおり本件対象期間における保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加を 正確に表すものとはいい難い本件下落率につき、何らの措置も採らずにそのままデフレ調整分の改定率としたものというほかはない。 以上によれば、本件下落率をそのままデフレ調整分の改定率とした厚生労働大臣の判断は、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との そのままデフレ調整分の改定率としたものというほかはない。 以上によれば、本件下落率をそのままデフレ調整分の改定率とした厚生労働大臣の判断は、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くものといわざるを得ない。 カ激変緩和措置について 本件改定においては、改定を3年間にわたり段階的に実施し、増減幅の上限及び下限を±10%とするという内容の激変緩和措置が採られたものであるが(認定事実⑼)、生活扶助費の減額が9%ないし10%となったのは保護受給世帯の約2%にすぎないこと(乙A18)からすれば、かかる激変緩和措置により、上記オで説示したような保護受給 世帯に対する影響が緩和される程度は、極めて限定的なものにとどまるものであったというべきである。 そうすると、上記の激変緩和措置が採られたからといって、厚生労働大臣が本件下落率をそのままデフレ調整分の改定率としたことの適否に係る上記オの判断が直ちに左右されるものではないといわざるを得な い。 ⑻ 被告の主張についてア被告は、平成29年検証において、本件改定後の生活扶助基準の水準が妥当なものか否かについて評価・検証が行われたところ、一般低所得世帯(第1・十分位世帯)の消費実態とおおむね均衡することが確認され たと評価されており、統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところはない旨主張する。また、被告は、全消調査によれば夫婦子1人世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額が平成16年から平成21年にかけて約11.6%も下落していたことや、平成26年全消調査においても夫婦子1人世帯(第1・十分位)の 生活扶助相当支出額が平成16年に比べて約8.2%低下していたことに照らせば、本 21年にかけて約11.6%も下落していたことや、平成26年全消調査においても夫婦子1人世帯(第1・十分位)の 生活扶助相当支出額が平成16年に比べて約8.2%低下していたことに照らせば、本件改定に係る厚生労働大臣の判断について裁量権の範囲の逸脱又はその濫用はおよそ認められない旨主張する。 しかしながら、前記⑺オで説示したような憲法25条の理念に基づく生活扶助の重要性等に鑑みれば、そもそも、生活扶助基準の改定に係 る厚生労働大臣の判断の過程又は手続に過誤、欠落が認められる場合に は、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認めざるを得ないのであり、事後的な検証によって当該改定時における一般低所得世帯の消費実態と当該改定後の生活扶助基準との相対的な均衡の存在が確認されたとしても、また、平成16年からの生活扶助相当支出額の下落率がデフレ調整分の改定率を上回っていたとしても、そのことのみによって直ちに 上記の過誤、欠落が治癒されることとなるものではない。その点をおくとしても、平成29年報告書も、標準世帯についての生活扶助基準額と第1・十分位世帯の生活扶助相当支出額の均衡を確認しただけであって、そこから展開した様々な世帯類型における生活扶助基準額と一般低所得世帯の生活水準の均衡を確認するまでには至っていない(認定事実⑽イ )というのであるから、本件改定の適法性を裏付けるには不十分であるといわざるを得ない(なお、平成29年報告書も指摘するとおり、現実には保護受給世帯の約8割が単身世帯であり、標準世帯はむしろ少数派である。乙A66・25頁)。加えて、①平成21年全消調査はその前年に端を発した世界金融危機で急速に景気が落ち込んだ時期に行われ たものであったことが認められ(乙A78・9頁)、②平成26年の家 ある。乙A66・25頁)。加えて、①平成21年全消調査はその前年に端を発した世界金融危機で急速に景気が落ち込んだ時期に行われ たものであったことが認められ(乙A78・9頁)、②平成26年の家計調査では、2人以上世帯の消費支出の金額の名目指数が前年と比べて-1.8%、実質指数が同じく-5.1%と、上記リーマン・ショックがあった時期と比べても更に顕著な落ち込みがみられており、かかる実質消費指数の減少の要因は、総務省の分析によれば、同年の消費税率引 上げに伴う物価上昇やその前年に生じた駆け込み需要の反動減のほか、夏場の天候不順の影響等とされていることが認められる(乙A55。なお、社会保障生計調査によれば、保護受給世帯においても、その消費水準は平成24年より平成25年が少し上昇し、その後平成26年にかけて大きく落ち込んでいたことがうかがわれる(乙A106)。)ところ、 これらはいずれも基本的に一回的ないし特異的な事象であるから、それ らの影響を大きく受けているものと推認される平成21年全消調査や平成26年全消調査における第1・十分位世帯の生活扶助相当支出額がそれ以前よりも相当程度減少しているとしても、いずれも本件改定の適否を回顧的に検証するに際して依拠するのに適当な結果であるとは直ちには認め難い。 したがって、被告の上記主張は採用することができない。 イこのほか、被告は、デフレ調整に関する厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用はないとして種々の主張をするが、いずれも前記の結論を左右するものではない。 ⑼ デフレ調整についての小括 ア以上検討したところによれば、厚生労働大臣がデフレ調整をすること自体には合理性が認められるとしても、本件下落率をそのままデフレ調整分の改定率 ではない。 ⑼ デフレ調整についての小括 ア以上検討したところによれば、厚生労働大臣がデフレ調整をすること自体には合理性が認められるとしても、本件下落率をそのままデフレ調整分の改定率としたその判断は、被告の説明を踏まえても、統計等の客観的な数値等との合理的関連性又は専門的知見との整合性を欠くものといわざるを得ず、同判断には生活保護法が定める最低限度の生活の具体化に係る判 断の過程に過誤、欠落があるものと認めるほかはない。 そうすると、デフレ調整として生活扶助基準を4.78%引き下げることとした厚生労働大臣の判断は、その裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものとして違法というべきであるから、デフレ調整をその内容として含む本件改定は、生活保護法3条及び8条2項に違反し、違法で ある。 イしたがって、本件改定の実施を理由としてされた平成25年変更決定は、違法なものとして取消しを免れない。 5 結論以上によれば、原告の請求は、理由があるからこれを認容することとし、主 文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第51部 裁判長裁判官岡田幸人 裁判官曽我学 裁判官都野道紀は、差支えのため署名押印することができない。 裁判長裁判官岡田幸人 (別紙)争点に関する当事者の主張の要旨 第1 原告の主張の要旨 1 判断過程に関する司法審査の在り方について 保護基準の改定に当たり、厚生労働大臣の裁量権が一定程度認められるとしても、その裁量判断は無制約ではない。一般に、裁量判断は、重 告の主張の要旨 1 判断過程に関する司法審査の在り方について 保護基準の改定に当たり、厚生労働大臣の裁量権が一定程度認められるとしても、その裁量判断は無制約ではない。一般に、裁量判断は、重要な事実の基礎を欠くか、社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものについては裁量権の範囲の逸脱又はその濫用として違法となるところ、重要な人権である生存権(憲法25条)の保障に関わる保護基準の引下げについては、厚生労働大臣の 裁量の幅はより狭く、その裁量判断の合理性について厳格な司法審査がされるべきである。そして、行政の裁量判断については、本来最も重視すべき諸要素、諸価値を不当、安易に軽視し、その結果当然尽くすべき考慮を尽くさず、又は本来考慮に入れるべきでない事項を考慮に入れ若しくは本来過大に評価すべきでない事項を過重に評価して判断がされた場合、それは、裁量判断の方法ない し過程に瑕疵があるものとして、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用となる。 保護基準の改定については、その基準が「健康で文化的な最低限度の生活」水準を維持することができるように定められるべきことはもとより(憲法25条1項、生活保護法1条、3条)、第1に「要保護者の年齢別、世帯構成別、所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の 需要を満たすに十分なもの」であることが求められ(同法8条2項)、その判断に当たっては、一般に妥当なものとして承認されている経済統計等を利用したマクロ面からの検討に加え、年齢、性別、世帯構成、所在地域等によって境遇の異なる被保護者の生活実態を踏まえたものとなるよう多角的に検討すべきであり、特に保護基準を引き下げる場合には、引下げによって被保護者の生活 を危うくさせるおそれがあるので、引下げの根拠が現実の「生身」 保護者の生活実態を踏まえたものとなるよう多角的に検討すべきであり、特に保護基準を引き下げる場合には、引下げによって被保護者の生活 を危うくさせるおそれがあるので、引下げの根拠が現実の「生身」の被保護者 の生活の実態に即したものであるか否か等について厳格な検討を行わなければならない。本件改定についても、本件改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであるとした最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続について、専門家合議体による諮問機関である基準部会の検討に基づいた高度に専門技術的な考察がされるべきであり、統計等の 客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等を厳格に審査し、これらの合理的関連性や整合性を欠く場合など、保護基準の改定に当たっての厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落がある場合、それが看過し難い程度のものではなかったとしても、生活保護法8条1項、2項及び憲法25条1項に反し、違法・違憲となる。そして、厚生労働大臣の判断の過程 及び手続に過誤、欠落があるかどうかを判断するに当たっては、①保護基準の設定に係る判断は正確な事実の把握を前提とするものであり、厚生労働大臣は、保護基準を設定するに当たり、専門家の知見を得るために必要な事実調査を行う義務を負うこと、②生活保護法8条2項に列挙された要素は優先的に考慮されなければならないこと、③同項の法定考慮要素の考慮に当たって、政策的な 裁量の余地はないことに留意しなければならず、また、保護基準の設定については、その判断過程に関する資料を全て行政側が保持しているため、まず被告側において、厚生労働大臣の判断の過程・手続を明らかにし、事実の調査方法が合理性を有することや必要な考慮要素を適切なバランスで ては、その判断過程に関する資料を全て行政側が保持しているため、まず被告側において、厚生労働大臣の判断の過程・手続を明らかにし、事実の調査方法が合理性を有することや必要な考慮要素を適切なバランスで考慮したことなど、同過程・手続に過誤、欠落がないことを相当の根拠、資料に基づき主張・立証 する必要があり、被告がその主張・立証を尽くさない場合には、厚生労働大臣がした判断に不合理な点があることが事実上推定されることになる。 しかるところ、2以下で述べるとおり、本件改定は、ゆがみ調整及びデフレ調整のいずれについても、保護基準の改定に至る判断の方法・過程に著しい過誤があり、保護基準の改定に係る裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するも のとして違法である。 2 ゆがみ調整について⑴ 厚生労働省は、ゆがみ調整について、基準部会における検証結果(平成25年検証)を踏まえ、年齢区分・世帯人数・級地区分の差による影響を調整するものであると説明しているが、平成25年検証の検証方法は不当である。 すなわち、基準部会は、平成25年検証において、第1・十分位世帯の消費 実態と生活扶助基準を比較して生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かの「検証」を行ったが、昭和59年から現在に至るまで採用されてきた保護基準の検証方式(水準均衡方式)は、もともと最下層である第1・十分位世帯の消費支出に生活扶助基準を合わせるというものではない。水準均衡方式は、中央社会福祉審議会において、保護 受給世帯の消費水準を「一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準」であるとし、その均衡(格差)をそのまま維持せよとの意見具申(昭和58年意見具申)を受けたものであり、その際には、①平均的一般世帯の消費支出、②一般低所得世帯 民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準」であるとし、その均衡(格差)をそのまま維持せよとの意見具申(昭和58年意見具申)を受けたものであり、その際には、①平均的一般世帯の消費支出、②一般低所得世帯(第1・五分位(所得下位20%)と第2・五分位(所得下位20~40%))の消費支出、③保護受給世帯の消費支出の3つの間の 格差の均衡に留意するものとされていた(なお、平成15年中間取りまとめでは、突如として、何ら根拠を示すことなく第1・十分位世帯の消費水準との比較が適当であるとの見解が示されたものである。)。しかるに、平成25年検証は、これまでの水準均衡方式における上記①ないし③の均衡に留意する考え方とは異なり、単純に第1・十分位世帯の消費支出と生活扶助基準 を比較したものであって、このような方法では、様々な理由により保護の受給資格がありながらこれを利用せず生活扶助基準以下の生活を余儀なくされている者(漏給層)が多数存在する現状、すなわち保護基準以下で最低限度の生活水準を下回る暮らしを余儀なくされている超低所得世帯が第1・十分位に多数存在する現状では、生活扶助基準を合理的に定めることはできない。 このような現状で第1・十分位世帯の消費水準との比較を根拠に保護基準を 引き下げることを許せば、保護基準を際限なく引き下げていくことにつながるが、これでは保護基準を定めるための資料としては著しく合理性を欠くこととなる。 また、平成25年報告書は、第1・十分位世帯を比較対象とした理由として、第1・十分位世帯の平均消費水準が中位所得階層の約6割に達している ことも挙げており、ここでの「中位所得階層」とは第3・五分位世帯のことであると認められるが、昭和58年意見具申から現在に至るまで採用されている水準均衡方式における比較 階層の約6割に達している ことも挙げており、ここでの「中位所得階層」とは第3・五分位世帯のことであると認められるが、昭和58年意見具申から現在に至るまで採用されている水準均衡方式における比較対象は、「一般国民生活における消費水準」であり、第3・五分位世帯の消費水準ではない。さらに、平成25年検証が第1・十分位世帯を比較対象とする理由として指摘する、第1・十分位世帯 の大部分は経済協力開発機構(以下「OECD」という。)の基準では相対的貧困線以下にあること(子どもの貧困対策の推進に関する法律に基づき定められる子どもの貧困率においても、OECDの定義に基づく貧困線が基準とされている。)や、第1・十分位世帯と第2・十分位世帯との間において消費が大きく変化していることは、むしろ第1・十分位世帯を比較対象とす ることが不適切であることを根拠付けている。 このように、平成25年検証の「検証」方法に合理性が認められない以上、その「検証」を根拠とする保護基準の引下げには判断の方法・過程に著しい過誤がある。 ⑵ さらに、厚生労働省が「検証結果」であるとする平成25年報告書は、平 成25年検証の結果を踏まえて生活扶助基準を引き下げるべきとは明記しておらず、むしろ、様々な懸念にあえて言及していた。すなわち、基準部会設置当初は、長年貧困問題に携わってきた専門家である委員がそれぞれ独自に調査分析を行い、あるべき最低生活費を算定・発表してきたが、厚生労働省は、こうした基準部会委員の研究成果を無視して第1・十分位世帯の消費実 態と生活扶助基準を回帰分析の方法で比較するという検証方針を示し、その 後の部会において初めて平成21年全消調査のデータを前提とした「検証」の数値を示すとともに、一部の例外を除き、軒並み保護基準を引 基準を回帰分析の方法で比較するという検証方針を示し、その 後の部会において初めて平成21年全消調査のデータを前提とした「検証」の数値を示すとともに、一部の例外を除き、軒並み保護基準を引き下げることを示唆する報告書案を提示し、その僅か2日後に開催された基準部会で平成25年報告書が取りまとめられたものであって、このような検証経過からすると、第1・十分位世帯との比較という手法は厚生労働省が主導・誘導し たものであり、基準部会委員らの積極的発案・検討によるものではなかった。 そのため、平成25年報告書は、上記のとおり、「第1・十分位と第2・十分位の間において消費が大きく変化しており、他の十分位の世帯と比べて消費の動向が大きく異なる」、「第1・十分位に属する世帯の大部分はOECDの基準では相対的貧困線以下にある」、「現実には第1・十分位の階層に は保護基準以下の所得水準で生活している者も含まれる」などと指摘し、第1・十分位世帯との比較によって生活扶助基準を検討すること自体に強い懸念を示していたのである。 このように、基準部会の「検証結果」である平成25年報告書は、作成過程において十分な検討がされたとはいえず、生活扶助基準を引き下げるべき とも提言されておらず、むしろ検証方法などについて懸念が示されていたのであり、このような「検証方法」に問題のある平成25年報告書を根拠とした生活扶助基準の引下げは、保護基準引下げの判断を支える実質的根拠を欠き、判断の方法・過程に著しい過誤がある。 ⑶ また、一般に、二つのサンプル(標本)の間の平均の差を検定する場合、 独立したサンプル(相互に構成メンバーの異なるサンプル)による比較でなければ統計学上の正確性が確保されないところ、平成25年報告書は、第1・十分位世帯(サンプル世 の平均の差を検定する場合、 独立したサンプル(相互に構成メンバーの異なるサンプル)による比較でなければ統計学上の正確性が確保されないところ、平成25年報告書は、第1・十分位世帯(サンプル世帯)を抽出した際、ここから保護受給世帯を除去していないから、平成25年報告書の手法は統計学上明らかに不合理であり、これに依拠すると称する本件改定の手法(ゆがみ調整)も明らかに不合 理である(なお、基準部会では、第9回部会において、委員のコンセンサス の下、比較対象から保護受給世帯を除去した上で検証を行うものとされ、その後にこれに明らかに抵触する議論はされていない。)。また、平成19年検証においては、保護基準を検証する際に比較対象から保護受給世帯を除去しているから、平成25年検証は平成19年検証とも連続性を欠く。 さらに、基準部会が平成25年検証の手法として採用した統計的分析手法 (重回帰分析)については、上記のとおり比較対象となる第1・十分位世帯から保護受給世帯を除去していないなどサンプル世帯の抽出が恣意的かつ不合理である上、複数の説明変数間に相関関係があることも否定できないから、上記手法を用いた検証結果の正確性には重大な疑義があり、平成25年検証が参照した全消調査のデータについても、季節性が反映されていない、サン プルのばらつきを考慮した補正が行われていない、単身世帯調査の調査方法が特殊であるなどの限界がある。 ⑷ 以上に加え、厚生労働大臣は、本件改定におけるゆがみ調整をするに当たり、平成25年検証の結果の数値の半分しか反映しておらず、本件改定におけるゆがみ調整が「統計などの客観的な数値や専門的知見との整合性」を欠 く恣意的かつ不合理なものであることは明らかである。平成25年報告書に記載された第1・十分 か反映しておらず、本件改定におけるゆがみ調整が「統計などの客観的な数値や専門的知見との整合性」を欠 く恣意的かつ不合理なものであることは明らかである。平成25年報告書に記載された第1・十分位世帯の消費実態と生活扶助基準とのかい離指数(かい離率)を2分の1とすることにより、生活扶助基準(第1類費)の基準額につき年間440億5900万円(第2類費については9億3800万円)もの削減効果が生じ、世帯人数に応じた第1類費の逓減率について平成25 年報告に記載されたかい離率の2分の1としたことによっても、最終的には年間91億2100万円程度の生活扶助費の削減効果が生じており、厚生労働大臣は、ゆがみ調整を行う際に恣意的にかい離率を2分の1に操作することにより、本件改定による生活扶助費の削減額を過大に算出したものである。 3 デフレ調整について ⑴ 専門家の検証を経ていないこと 本件改定による生活扶助基準の引下げに伴う保護費の減額幅(合計約670億円)のうちデフレ調整を理由とするものが占める割合(約86%)が極めて大きいことからすれば、経済学者や社会保障法学者で構成される基準部会において物価調整の要否等について徹底して議論されるべきであるにもかかわらず、基準部会で平成20年以降の物価の動向が議論されたことはなか った。昭和58年意見具申は、水準均衡方式における「消費水準の均衡」を判断する際の考慮要素として「民間最終消費支出」を指標とすることを明示しており、その後の改定においても、民間最終消費支出を指標として基準の調整が図られてきたのであり、本件改定以前に「物価」を考慮したことは一度もない。すなわち、水準均衡方式における「水準均衡」とは、生活扶助基 準と消費実態との均衡を意味するから、直接消費実態を確 調整が図られてきたのであり、本件改定以前に「物価」を考慮したことは一度もない。すなわち、水準均衡方式における「水準均衡」とは、生活扶助基 準と消費実態との均衡を意味するから、直接消費実態を確認するほかなく、物価や賃金は、消費に大きな影響を持つが消費実態そのものではないため、一般消費実態との均衡で基準を考える場合には物価は参考程度ということになり(昭和58年意見具申もその旨を述べていた。)、物価の本格的考慮は、水準均衡方式の本質と矛盾し、許されない。これまでも、民間最終消費支出 に代えて物価を考慮することの可否については話題に上がったが、いずれも本格的な検討に至る前に否定されており、物価の本格的考慮を許さない水準均衡方式は、処分基準に準ずる確立した行政慣行になっていたといえる。しかるに、本件改定におけるデフレ調整は、基準部会での議論を全く経ることなく、厚生労働省社会・援護局保護課の少数の職員らが密室で検証不可能な 形で行ったものである。この点、生活扶助基準は、平成30年度にも改定されているところ、平成23年以降平成28年までの生活扶助相当CPIの変化率は5.25%の上昇となるにもかかわらず、上記改定においてはこのインフレ率を根拠とした保護費の引上げはされていない。このことは、厚生労働大臣が、保護費を引き下げるという目的のために、物価の下落時のみに恣 意的に「デフレ」を利用したこと(目的・動機違反)を根拠付けている。 そもそも、物価調整の議論は、単なる統計的な要素のみならず、いかなる品目を調査の基礎とすべきかなど、高度な専門性が要求されるものであり、厚生労働大臣や厚生労働省内の事務方において扱える事項ではないから、厚生労働大臣は、物価の変動を考慮するのであれば、基準部会での議論を経なければならなか かなど、高度な専門性が要求されるものであり、厚生労働大臣や厚生労働省内の事務方において扱える事項ではないから、厚生労働大臣は、物価の変動を考慮するのであれば、基準部会での議論を経なければならなかった。しかるに、上記のとおり厚生労働大臣は、基準部会で 一切議論されていない物価動向という要素を持ち出し、約580億円もの減額幅を導いたのであり、その判断が著しく合理性を欠いていることは明らかである。 また、生活保護法8条2項は、保護基準の設定ないし改定に当たっての考慮要素を具体的に列挙して厳格に法定し、厚生労働大臣の裁量権に大きな制 約を加えているところ、その趣旨は、同項に列挙された考慮要素は、高度に専門技術的な判断を要するものであることから、保護基準の設定ないし改定に当たっては、まず、高度に専門的な考察を基礎としなければならないとすることで、厚生労働大臣の裁量権の範囲を大幅に制限することにある。そうすると、生存権の保障を実効性あるものとし、慎重かつ専門技術的な考察を 担保するためにも、厚生労働大臣による保護基準の設定ないし改定は、審議会等の専門家合議体による専門技術的な観点からの検討に基づくことが必要である。生活保護法8条1項の立法経緯をみても、保護基準が国民の権利であることの重要性に鑑みて、保護基準は審議会等の専門家合議体における専門的観点からの適切かつ慎重な検討に基づいて設定されることが大前提とさ れており、政府においても、保護基準については諮問機関によって得られた結論に従って実施すべきことを立法時点から認めていたものである。取り分け、昭和59年から新たに導入され、現在も採用されている水準均衡方式は、「水準均衡」という考え方そのものから、専門家による検証を不可欠の要素とする方式であり、昭和58年意見具申や平成 である。取り分け、昭和59年から新たに導入され、現在も採用されている水準均衡方式は、「水準均衡」という考え方そのものから、専門家による検証を不可欠の要素とする方式であり、昭和58年意見具申や平成16年報告書においても、生 活扶助基準の妥当性についての専門家による定期的な検証が必要であること が指摘されていたものであって、「学識経験者による定期的な保護基準の専門的かつ客観的な評価・検証を行うこと」を目的として社会保障審議会の下に直接置かれた常設の専門部会である基準部会が設置されたことからすれば、基準部会等の専門家合議体の検討を踏まえることは、処分基準に準ずる確立した行政慣行となっていたものと評価することができる。 以上からすれば、保護基準の設定ないし改定の手続については法令上特に定められていないものの、厚生労働大臣は、保護基準を定めるに当たり、専門的知見を反映させるべく必ず専門家の意見を踏まえなければならず、政策的な考慮(財政事情等)は、専門技術的な考察の範囲内でのみ許容され、これに反する場合には違憲・違法となる。しかるところ、上記のとおり、厚生 労働大臣は、専門部会である基準部会に付議することが容易であったにもかかわらず、その審議を経ることなくデフレ調整を実施しており、本件改定は、その判断過程(手続)に重大な過誤があり、厚生労働大臣の裁量権の範囲を逸脱するものとして違法である。 ⑵ 生活扶助相当CPIによる物価変動率の算定方法が不当であること 本件改定におけるデフレ調整においてその根拠とされた生活扶助相当CPIは、総務省CPIを基にして厚生労働省が独自に作成した指数であるところ、次のとおり、この生活扶助相当CPIの算定には大きな問題がある。 ア消費者物価指数は、ある基準となる物価を100と 相当CPIは、総務省CPIを基にして厚生労働省が独自に作成した指数であるところ、次のとおり、この生活扶助相当CPIの算定には大きな問題がある。 ア消費者物価指数は、ある基準となる物価を100として、その時々の時価を比較計算した数値であるから、まず比較の基準となる年(以下「基準 時」という。)を決め、次に、基準時の買物の内容に基づいて「買物かご」の中に入れる商品とその数量を決め、基準時の費用を100としてその後の時点(以下「比較時」という。)における変化を指数で表したものである。そして、「買物かご」の中に入れるものとして選定された商品(財やサービス。以下「指数品目」という。)、指数品目について銘柄を定めた 上で小売店における新品価格の調査により得られた価格及び消費者物価指 数の計算の際における家計の消費支出全体に占める各品目の支出額の割合(以下「ウエイト」という。)の組合せにより消費者物価指数は算定される。なお、総務省CPIはラスパイレス式(基準時のウエイトを用いて消費者物価指数を算出する方法。他方、比較時のウエイトを用いて消費者物価指数を算出する方法を以下「パーシェ式」という。)によるものである。 また、総務省CPIにおいては、5年ごとに基準時を改定し、指数品目及びウエイトを見直しているところ、過去の基準と現在の基準を統一する方法として、基準改定の都度新たな基準時に合わせて過去の指数系列を換算し「接続」するという方法を採用している。 イしかるところ、本件改定に当たり、厚生労働大臣は、平成22年を基準 年とし(以下、基準年を同年とすることを「平成22年基準」という。)、同年のウエイト(以下、ある年を基準年とするウエイトを「平成22年ウエイト」のようにいう。)を用いて平成20年と平成23年の生活 年とし(以下、基準年を同年とすることを「平成22年基準」という。)、同年のウエイト(以下、ある年を基準年とするウエイトを「平成22年ウエイト」のようにいう。)を用いて平成20年と平成23年の生活扶助相当CPIを算出し、その間の変化率が4.78%の下落(本件下落率)となったとするものである。このように、平成20年と平成23年のいずれ の時点でもない平成22年に消費構造(判決注・物価を測定する財及びサービスの種類及びその数量)を固定する計算方法は、統計的には意味がない。被告の主張する計算方法によると、平成20年から平成22年までの指数の変化率はパーシェ式による計算結果と一致し、同年から平成23年までの指数の変化率はラスパイレス式による計算結果と一致するが、この ような異なる計算原理に基づく二つの指数を比較することはできないから、これらの比較は理論的に誤りである。なお、仮に、総務省CPIと同様の方法により平成20年と平成23年の生活扶助相当CPIを求め、これを接続係数を用いて接続すると、この間の変化率は-2.26%となり、厚生労働大臣が算出した本件下落率とは大きく異なる。 また、消費者物価指数の算出に当たりパーシェ式を用いることは、日本 はおろか世界的にみても前例がない。取り分け、パーシェ式のうちある特定の年を基準年として数年間固定する「固定基準年方式」のパーシェ指数(パーシェ式により算出される指数)は、価格と数量が大幅かつ逆方向に変化し続けるIT関連財のような財が存在する場合、基準時点から時間が経過すればするほどかい離が大きくなること(大幅な下方バイ アスが生ずること)が指摘されているところ、デフレ調整に当たって参照された生活扶助相当CPIの変化率のうち平成20年から平成22年にかけてのものはこ ほどかい離が大きくなること(大幅な下方バイ アスが生ずること)が指摘されているところ、デフレ調整に当たって参照された生活扶助相当CPIの変化率のうち平成20年から平成22年にかけてのものはこの固定基準年方式のパーシェ指数に一致する。実際、被告の主張する計算方法によっても、価格下落幅とウエイトの特に大きい「ノート型パソコン」と「テレビ」の2品目を除くと、平成20年か ら平成23年までの生活扶助相当CPIの変化率は-2.21%となり、このような実証結果は、被告の主張する計算方法が上記2品目だけの影響により計算結果を大きくゆがめる手法であることを裏付けているが、後記のとおり、保護受給世帯においてこれらの品目を全て消費している世帯はまずあり得ない。 ウところで、国際労働機関が提示する消費者物価指数の国際規準においては、①基準時は、対象とする時系列間の期首であり起点であり、また、比較時は、当該時系列の期首以降期末までの各時点であり、したがって、基準時は比較時より過去の時点となること、②基準時の指数値は100でなければならないこと、③マーケットバスケット方式によって消費者物価指 数は作成されなければならないこと、④上記③の必然的結果として、基準時と各比較時の対象とする品目は完全に同一で対応していなければならないこととされている。しかるに、本件改定に当たって用いられた生活扶助相当CPIについては、基準時(平成22年)が比較時(平成20年)より将来の時点となっている点で上記①の国際規準に反し、仮に、これを平 成20年を基準時としたものとみた場合には、上記②の国際基準に反する ことになる。また、総務省CPIにおける指数品目は5年ごとに改定されているところ、平成20年生活扶助相当CPIは、平成17年に改定 準時としたものとみた場合には、上記②の国際基準に反する ことになる。また、総務省CPIにおける指数品目は5年ごとに改定されているところ、平成20年生活扶助相当CPIは、平成17年に改定された総務省CPIにおける指数品目に準拠し、基準時である平成22年については同年に改定された総務省CPIにおける指数品目に準拠しているため、上記平成22年の指数品目の改定(以下「平成22年品目改定」とい う。)に伴い、それ以前には指数品目に含まれなかった品目が新たに含まれることとなり、平成20年生活扶助相当CPIの計算において価格データが不足する(欠測値が生ずる)こととなる。しかるに、厚生労働大臣は、平成20年生活扶助相当CPIを計算するに当たり、総務省CPIの指数品目である588品目から除外品目を控除し、さらに上記欠測値に係る3 2品目(以下「本件欠測32品目」という。)を除外した485品目の価格データとウエイトと用いて計算する一方、平成23年生活扶助相当CPIを計算するに当たっては、本件欠測32品目を含めた平成22年品目改定後の品目から除外品目を除いた517品目の価格データとウエイトを用いて計算している。すなわち、平成20年生活扶助相当CPIと平成23 年生活扶助相当CPIは異なる品目に基づいてその指数値が算出されており、このような異なる品目に基づく消費者物価指数を比較することは不合理であって、上記③及び④の国際規準に反するし、平成20年生活扶助相当CPIについては、除外品目に加えて欠測値相当の品目(本件欠測32品目)を除外したことにより、生活扶助相当品目の価格比に大きなウエイ ト比が乗じられ、その結果、数値が過大評価された可能性が高い(なお、生活扶助相当CPIを算出するに当たり、総務省CPIの指数品目から、生 たことにより、生活扶助相当品目の価格比に大きなウエイ ト比が乗じられ、その結果、数値が過大評価された可能性が高い(なお、生活扶助相当CPIを算出するに当たり、総務省CPIの指数品目から、生活扶助から支出することが想定されない「海外パック旅行」を除外しておらず、この点でも不合理である。)。 エ以上のとおり、厚生労働大臣作成の生活扶助相当CPIは、統計の方法 として誤りであり、国際規準から逸脱するものであって、国際的に標準化 された方法(総務省CPIが採用する方法)による試算結果と比べて下落率が大幅に高くなる計算方法である。 したがって、生活扶助相当CPIは、消費者物価の変化率を測定する方法として誤っており、かかる計算方法に基づく計算結果(-4.78%の本件下落率)は事実に反するため、本件改定は、事実誤認に基づくも ので、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものである。 ⑶ 生活扶助相当CPIはウエイトにおいて保護受給世帯の消費実態を考慮しておらず不当であること世帯の収入の規模により品目別の支出構造が異なるため、消費者物価の変動が及ぼす影響は世帯の収入の多寡により異なる。しかるところ、厚生労働 大臣は、生活扶助相当CPIを作成する際、保護受給世帯の支出における品目別消費構造は全く無視し、総務省CPIにおけるウエイトをそのまま用いたため、除外品目として除外されなかった品目のウエイトが全体に占めるシェアが拡大し、テレビやパソコンなどの高価な電化・IT製品(保護受給世帯はこれらを新品ではほとんど買わない。)がウエイトに占める割合が増加 し、保護受給世帯の支出の実態とのかい離が大きくなった。しかも、平成17年以降、電化・IT製品の価格が激しく下落し、生活扶助相当CPIの「下落」に大きく影響を与 がウエイトに占める割合が増加 し、保護受給世帯の支出の実態とのかい離が大きくなった。しかも、平成17年以降、電化・IT製品の価格が激しく下落し、生活扶助相当CPIの「下落」に大きく影響を与えた。 すなわち、生活扶助相当CPIを算出するに当たって用いられたウエイトは、総務省CPIと同じく総務省が実施している家計調査(判決注・統計法 に基づく基幹統計調査の一つであり、国民生活における家計収支の実態を把握するため、全国で約9000世帯を無作為に抽出し、各世帯における消費支出の支出先及び支出額等について毎月実施している。乙A27)の結果のうち一般世帯(2人以上の世帯。保護受給世帯よりも圧倒的に年収が高い世帯がほとんどを占めている。)の品目別消費支出額に基づくものである。こ の家計調査の結果と、厚生労働省が実施している社会保障生計調査(保護受 給世帯の家計収支の状況、消費品目の種類、購入数量等を、調査世帯が記入した家計簿をもとに把握するもの)とを比較すると、①一般世帯の消費支出額に比べて保護受給世帯の消費支出は約6割程度にとどまっていること、②「食料」、「住居」、「光熱・水道」、「家具・家事用品」、「被服及び履物」については保護受給世帯が一般世帯よりも支出割合が大きく、「保健医 療」、「交通・通信」、「教育」、「教養娯楽」、「その他の消費支出」については保護受給世帯の方が一般世帯より支出割合が小さいこと、③「教養娯楽」については、保護受給世帯では特に「PC・AV機器」等の「教養娯楽用耐久財」と「教養娯楽サービス」への支出額が極めて小さいことなど、保護受給世帯の消費構造には一般世帯とは異なる特徴があるため、保護受給 世帯の上記消費実態を正確に把握しなければ、デフレ傾向によって保護受給世帯の可処分所得が の支出額が極めて小さいことなど、保護受給世帯の消費構造には一般世帯とは異なる特徴があるため、保護受給 世帯の上記消費実態を正確に把握しなければ、デフレ傾向によって保護受給世帯の可処分所得が実質的にどれだけ変化したのかを明らかにすることはできない。それにもかかわらず、厚生労働大臣は、保護受給世帯と一般世帯の消費実態が異なる点を考慮することなく、漫然と一般世帯の消費実態のみを考慮して生活扶助相当CPIを算出し、その結果、生活扶助相当CPIのウ エイトの算定上、考慮すべき保護受給世帯の消費実態を考慮せず、考慮すべきでない一般世帯の消費実態を考慮したものであるから、生活扶助相当CPIを根拠としてされた本件改定は、厚生労働大臣の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものであり、違法である。 ⑷ 比較年度の選択が不合理であること ア生活扶助における老齢加算の削減・廃止に伴う保護基準の改定が行われたのは平成16年であるから、本来、同年の物価指数を基準に比較するのが最も合理的である。しかしながら、厚生労働大臣は、平成20年と平成23年とを比較して、これを「物価の動向」としているところ、平成20年は、サブプライムローン問題から世界の余剰マネーが石油や食品等の商 品市場への投機に回り、日本でも石油の高騰にけん引されて総務省CPI が急上昇した特殊な年である。この年を基準とすれば、生活扶助相当CPIの下落率が大きくなることは明白であったものであり、このような乱高下の局面だけを切り取って「物価」が大きく「下落」したと断ずることは極めて恣意的であって著しく合理性を欠く。 イまた、一般に、政策判断を行うために統計データを使用する場合には、 最新のデータが用いられるところ、今回の生活扶助基準の改定を検討した際に ことは極めて恣意的であって著しく合理性を欠く。 イまた、一般に、政策判断を行うために統計データを使用する場合には、 最新のデータが用いられるところ、今回の生活扶助基準の改定を検討した際における最新の総務省CPIのデータは平成23年ではなく平成24年のものであったから、本件改定に当たっては、本来、平成24年のデータを使用すべきであった。 厚生労働大臣があえて最新のデータを使用しなかった理由は、平成24 年のデータでは食費及び光熱費の物価が上昇しており、平成20年と比較すると「光熱・水道費」が上昇していることとなってしまうためであると考えられる。したがって、厚生労働大臣がデフレ調整における物価の比較の時点として平成23年を選択したことには合理的な理由がなく、かえって、生活扶助費削減の結論を導くために恣意的に同年を選択した ことが示されている。 4 小括以上のとおり、厚生労働大臣による本件改定に至る判断の過程及び手続は、統計等の客観的な数値との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠き、過誤、欠落があることが明らかであるから、厚生労働大臣による本件改定はその裁量 権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものとして、違法・違憲である。 第2 被告の主張の要旨 1 本件改定の適法性に関する判断枠組み⑴ 憲法25条並びに生活保護法3条及び8条2項にいう「最低限度の生活」は抽象的かつ相対的な概念であって、その具体的内容は、その時々における 経済的、社会的条件や一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断 決定されるべきものであり、これを保護基準において具体化するに当たっては、高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とする。したがって、保護基準の改定については厚生労働大臣に上記のよう 決定されるべきものであり、これを保護基準において具体化するに当たっては、高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とする。したがって、保護基準の改定については厚生労働大臣に上記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められる。 ⑵ ゆがみ調整及びデフレ調整の適法性に関しては、保護基準改定に係る最高 裁判決を踏まえると、厚生労働大臣の判断に、最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤、欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められるか否かという判断枠組みにより判断されるべきである。具体的には、論証過程の追試的検証として、被告が説明するゆがみ調整及びデフレ調整に係る厚生労働大臣の判断過程について、 それが一応納得できるものか否か、現に用いられた統計等の客観的な数値等や専門的知見を前提に、これらと上記判断過程との間に論理の飛躍や連関を欠くところがあるか否かという観点から、その適否が判断されることになる。 そして、厚生労働大臣が専門家合議体の審議検討を経ることなく判断した場合にも、その判断の前提となる課題に関する事実認識やそれに対する評価、 対策の課題解決手段としての適合性に一定の合理性が認められれば、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえないというべきである。また、専門家合議体による審議検討を経て判断した場合であっても、厚生労働大臣の判断が、上記審議検討に係る結果ないし意見等と積極的に抵触するものであることが明らかであり、かつ、厚生労働大臣の判断過程について一応の合理 的理由すら認められないような場合でない限り、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえないというべきである。 ⑶ また、激変緩和措置の適法性に関しては、正に政策的判断による広範 応の合理 的理由すら認められないような場合でない限り、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえないというべきである。 ⑶ また、激変緩和措置の適法性に関しては、正に政策的判断による広範な裁量が認められる場面であり、被保護者の期待ないし信頼の程度も勘案して、保護基準の改定等に当たって激変緩和措置を採るか否かについての方針及び これを採る場合において現に選択した措置が相当であるとした厚生労働大臣 の判断に著しい過誤、欠落があるか、当該判断が明らかに合理性を欠くと認められる場合に限り、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとされるべきである。 2 ゆがみ調整に係る判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえないこと以下のとおり、平成25年検証は、専門家合議体である基準部会が審議検討 したものであり、基本的に信頼性が高いものと考えられる上、その検証手法等に過誤、欠落等をうかがわせる事情は見当たらないところ、厚生労働大臣は、かかる平成25年検証の結果を踏まえて、生活扶助基準の「展開のための指数」について適正化を図ることとしたものであり、このような厚生労働大臣の判断過程に関して被告が掲げる理由に論理の飛躍や連関を欠くところがあるとはい えない。したがって、ゆがみ調整に係る厚生労働大臣の判断過程に統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠くところがあるとはいえず、上記判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえない。 ⑴ ゆがみ調整を実施することとしたことの適否ア平成25年検証は、生活扶助基準の展開のための指数が、標準世帯との 比較において必ずしも適切なものとなっていなかったことから、被保護者間における公平を図る目的で、平成21年全消調査を用いて一般低所得世帯の年齢階級 扶助基準の展開のための指数が、標準世帯との 比較において必ずしも適切なものとなっていなかったことから、被保護者間における公平を図る目的で、平成21年全消調査を用いて一般低所得世帯の年齢階級別、世帯人員別、級地別の消費実態の相違を示す「一般低所得世帯の消費実態による指数」を把握し、それと「生活扶助基準額による指数」とを比較することにより、「展開のための指数」に係る評価・検証 を行ったものである。 そして、基準部会は、①平成25年検証においても、過去の検証に倣って保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが現実的であると判断されたこと、②第1・十分位世帯の平均消費水準は、中位所得階層の約6割に達していること、③国民の過半数が必要である と考えている必需的な耐久消費財について、第1・十分位世帯における 普及状況は、中位所得階層と比べておおむね遜色なく充足されている状況にあること、④全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位世帯の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向ではあるものの、特に第1・十分位世帯のみが減少しているわけではないこと、⑤第1・十分位世帯の大部分はOECDの基準では相対的貧困線以下にあること、⑥ 分散分析(判決注・2つ以上の母集団において、各母集団のある属性(ここでは消費水準)の平均値が母集団間で有意に異なっているか否かを推定するために一般的に用いられる統計分析の手法の一つ。乙A84)等の統計的手法による検証からは、各十分位間の中で、第1・十分位と第2・十分位の間において消費が大きく変化しており、他の十分位の世 帯に比べて消費の動向が大きく異なるものと考えられることから、保護受給世帯の比較対象としての一般低所得世帯として、第1・十分位世帯を用いることとした 消費が大きく変化しており、他の十分位の世 帯に比べて消費の動向が大きく異なるものと考えられることから、保護受給世帯の比較対象としての一般低所得世帯として、第1・十分位世帯を用いることとしたものである。 イそして、平成25年検証の結果、年齢階級別、世帯人員別及び級地別のいずれにおいても、生活扶助基準額による各指数(展開のための指数)と 一般低所得世帯の消費実態による指数との間にかい離が認められたことなどを踏まえて、厚生労働大臣は、平成25年検証の結果に基づき、保護受給世帯間の公平を図るため、本件改定におけるゆがみ調整を行うことによって、一般低所得世帯の消費実態を「展開のための指数」に反映させて、生活扶助基準の展開部分の適正化を図ることにしたものである。 ウなお、平成25年検証においては、「仮に第1・十分位の全ての世帯が生活保護を受給した場合の1世帯当たりの平均受給額が不変となるようにして、年齢、世帯人員体系及び級地の基準額の水準への影響を評価する方法」が用いられ、ゆがみ調整においては、このような検証により算出された年齢階級別、世帯人員別及び級地別の区分ごとの指数によって算出した 改定率(展開のための指数の改定率)を、本件改定前の年齢階級別、世帯 人員別及び級地別の各第1類費及び第2類費の額に直接乗ずるという改定手法が用いられたため、水準均衡方式のように、標準世帯の生活扶助基準額に改定率を乗じた上で生活扶助基準全体の水準(高さ)として設定し、当該標準世帯の基準額を基軸としてこれを他の世帯類型に展開させるという改定手法は、そもそも用いられていない。 ⑵ 2分の1処理を行った理由ア平成25年検証は、生活扶助基準の「展開のための指数」(相対的な較差)について初めて詳細な分析を行ったとこ るという改定手法は、そもそも用いられていない。 ⑵ 2分の1処理を行った理由ア平成25年検証は、生活扶助基準の「展開のための指数」(相対的な較差)について初めて詳細な分析を行ったところ、その手法は、専門的議論の結果得られた透明性の高い合理的なものであると評価することができるものの、当該手法が唯一のものであるということはできないし、特定のサ ンプル世帯に限定して分析する際にサンプル世帯が極めて少数になるといった統計上の限界も認められた。現に、生活扶助基準については、専門家合議体による検証が定期的に行われることとされており、展開部分についても、平成25年検証の結果等を前提に、その後も更なる検証が行われることが予定されていた。 また、平成25年検証の影響は、世帯員の年齢、世帯人員、居住する地域の組合せによって様々であると見込まれ、平成25年検証の結果をそのまま反映させた場合、児童のいる世帯への影響が大きくなることが予想されていた。この点、平成25年報告書には、平成25年検証の結果に関する留意事項として、「今般、生活扶助基準の見直しを具体的に検 討する際には(中略)取り分け貧困の世代間連鎖を防止する観点から、子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある」と明記されており、平成25年検証自体が上記の観点から激変緩和措置を講ずることを予定していたものといえる。 イ他方で、ゆがみ調整については、平成25年検証の結果に関し、例えば、 個別の指数ごとに、減額幅(減額の改定比率)については2分の1とし、 増額幅(増額の改定比率)についてはそのまま反映させるといったように、反映の程度を部分的に変えるということは理論的にはあり得る。もっとも、このような世帯によって改定比率を変える反映方法は、検証結 増額幅(増額の改定比率)についてはそのまま反映させるといったように、反映の程度を部分的に変えるということは理論的にはあり得る。もっとも、このような世帯によって改定比率を変える反映方法は、検証結果の取扱いの公平性を欠き、また、増額や減額に偏った反映をすることは、(水準(絶対的な高さ)ではない)相対的な較差の検証という基準部会における 本質的な検証の趣旨を改変することになる。 ウ以上を踏まえて、厚生労働大臣は、「生活扶助基準の展開部分の適正化」というゆがみ調整の本質的部分を維持しつつ、子どものいる世帯への配慮(貧困の世代間連鎖の防止)や次回の検証を見据えた激変緩和措置として、平成25年検証の結果を反映する比率を、減額幅か増額幅かを問わず、一 律に2分の1とする処理をしたものである。 ⑶ ゆがみ調整に関する原告の主張についてア原告は、第1・十分位世帯の消費支出と生活扶助基準とを比較する平成25年検証は、従前から採用されてきた保護基準の検証方式である水準均衡方式の考え方に反する旨主張する。 しかしながら、原告の上記主張は、保護基準の改定方式である水準均衡方式と生活扶助基準の妥当性の検証方法を混同したものである。すなわち、生活扶助基準の改定方式である水準均衡方式とは、政府経済見通しにおける民間最終消費支出の伸びに準拠して生活扶助基準の改定率を決定する方式である一方、生活扶助基準の妥当性の検証においては、過去 から一貫して、一般低所得世帯の消費実態や生活様式に着目して基準の策定ないし検証が行われてきたところである。具体的には、昭和39年12月16日付け生活保護専門分科会による中間報告(乙A33。以下「昭和39年中間報告」という。)、昭和58年意見具申、平成15年中間取りまとめ及び平成19年報告書のいずれに 具体的には、昭和39年12月16日付け生活保護専門分科会による中間報告(乙A33。以下「昭和39年中間報告」という。)、昭和58年意見具申、平成15年中間取りまとめ及び平成19年報告書のいずれにおいても、生活扶助基 準の妥当性の検証については一貫して一般低所得世帯の消費実態に着目 して行われてきたといえるのであるから、第1・十分位世帯を比較対象とした平成25年検証の検証方法に何ら問題はない。 イ原告は、平成25年報告書は、第1・十分位世帯との比較による保護基準の引下げに懸念を示しているとか、様々な観点から安易な引下げに懸念を示しているなどと主張する。 しかしながら、基準部会で検討が重ねられ、最終的に基準部会委員の合意を得ている平成25年報告書では、平成25年検証で採用した手法につき、「委員による専門的議論の結果得られた透明性の高い一つの妥当な手法である」と評価されており、また、「厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には、本報告書の評価・検証の結果を考慮 し、その上で他に合理的な説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合には、それらの根拠についても明確に示されたい」と記載されていることからしても、生活扶助基準の見直しについて懸念が示されているものとはいえない。 ウ原告は、平成25年検証において、平成19年検証とは異なり、第1・ 十分位世帯(サンプル世帯)を抽出した際に保護受給世帯を除去しなかったことが不合理である旨主張する。 しかしながら、平成19年検証は、生活扶助基準の水準の評価を行っているところ、このような生活扶助基準の高低を検証する際、仮にその比較対象である一般低所得世帯の中に保護受給世帯が含まれるとすれば生 活扶助基準とそれ自体を比較することになりかねない 価を行っているところ、このような生活扶助基準の高低を検証する際、仮にその比較対象である一般低所得世帯の中に保護受給世帯が含まれるとすれば生 活扶助基準とそれ自体を比較することになりかねないことから、その検証に当たり、比較対象となるべき一般低所得世帯から保護受給世帯と考えられる世帯を除去したものである。これに対し、平成25年検証は、年齢差、世帯人数差及び地域差によるゆがみという相対的な不公平さを是正すべく、相対的な妥当性(公平性)につき検証を行ったものであり、 かかる相対的な妥当性(公平性)の検証という性質に照らせば、生活扶 助基準との比較対象となる一般低所得世帯については、可能な限り実態に合致した基礎データを抽出して用いる必要があり、保護受給世帯が含まれているか否かにかかわらず、一般低所得世帯の消費実態をその実態に即して補足すべきことになる。また、平成25年検証では、生活扶助基準の絶対的水準(高低)ではなく、相対的な妥当性(公平性)が検証 されているので、その比較対象となるべき一般低所得世帯に保護受給世帯が含まれていても、生活扶助基準とそれ自体とを比較するといういわば循環論法的な問題は生じない。 したがって、平成25年検証において、第1・十分位世帯(サンプル世帯)から保護受給世帯を除去しなかったことは合理的である。 3 デフレ調整に係る判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえないこと以下のとおり、厚生労働大臣がデフレ調整を実施することとした判断の根拠となる社会経済情勢等の評価に誤りはなく、これを踏まえてデフレ調整を実施するとした判断には合理性が認められ、また、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断過程に統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合 性に欠けるところがある 踏まえてデフレ調整を実施するとした判断には合理性が認められ、また、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断過程に統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合 性に欠けるところがあるとはいえず、上記判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえない。 ⑴ デフレ調整の実施を判断した理由ア平成16年全消調査に基づく平成19年検証の結果、一般低所得世帯の消費実態と比較して高いとされながら、生活扶助基準について減額改定 が行われなかったことによって、平成20年当時、生活扶助基準の水準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が崩れ、生活扶助基準の水準が一般低所得世帯の消費実態に比較して高くなっていた。このような状況の中、同年9月のリーマン・ショックに端を発する世界金融危機によって、賃金、物価、家計消費等が落ち込み、一般国民の消費水準等が下落する 一方、生活扶助基準については、その間の経済動向を踏まえた減額改定 が行われずに据え置かれてきた結果、保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加した(平成20年以降の据置きによって、生活扶助基準の水準が実質的に引き上げられた)と評価することができる状況にあり、生活扶助基準の水準と一般国民の消費実態との不均衡は、より一層顕著となっていた。そして、平成24年6月の自由民主党、公明党及び 民主党の三党の合意に基づき国会に提出され同年8月に成立した社会保障制度改革推進法附則2条1項には、生活扶助基準の適正化を早急に行うことが明記されていた。 イこのように、本件改定前における生活扶助基準の水準は、一般国民の生活水準との均衡が大きく崩れた状態(生活扶助基準の水準が高い状態)と なっており、その後、上記のような経済状況において、特に、「百年に一度」とも評 前における生活扶助基準の水準は、一般国民の生活水準との均衡が大きく崩れた状態(生活扶助基準の水準が高い状態)と なっており、その後、上記のような経済状況において、特に、「百年に一度」とも評される世界金融危機が実体経済へ深刻な影響を及ぼすとともに、国民の将来不安が高まっている状況にあったが、平成21年全消調査に基づく平成25年検証では展開部分に関する評価・検証が行われる一方、生活扶助基準の水準が妥当か否かの評価・検証は行われなかった。 ウここで、消費の動向は、物価のほか、賃金の動向やこれらを踏まえた主観的な要素を含む将来の予測等の様々な要素にも影響される。リーマン・ショック後の賃金、物価、家計消費等が下落している状況下では、消費を基礎として生活扶助基準を改定する場合には減額幅が必要以上に大きくなることが想定される状況にあった。現に、全消調査によれば、平成16年 から平成21年にかけて、夫婦子1人世帯を含む二人以上世帯の消費支出が約6.0%下落するなどしていた。 エそもそも水準均衡方式が採用された昭和58年当時は、我が国の経済が右肩上がりに成長を続けていた時期であり、一般国民の消費支出の増加に伴い、生活扶助基準も増額改定がされることが見込まれる状況であったと ころ、その後、社会経済情勢が大きく変化し、専門委員会による平成15 年中間取りまとめにおいては、「昭和59年度以降、(中略)毎年度の政府経済見通しの民間最終消費支出の伸びを基礎とする改定方式が採られて(中略)きたが、最近の経済情勢はこの方式を採用した当時と異なる」との指摘もされていた。 オ水準均衡方式は、消費を基礎としているものの、その考え方の下におい ては、消費支出のほかに、物価や賃金等の経済指標を基礎として生活扶助基準を改定 した当時と異なる」との指摘もされていた。 オ水準均衡方式は、消費を基礎としているものの、その考え方の下におい ては、消費支出のほかに、物価や賃金等の経済指標を基礎として生活扶助基準を改定することも十分想定し得るものといえるのであって、平成15年中間取りまとめにおいても、「最近の経済情勢」を踏まえた場合に、改定の指標として消費を用いることについての課題や改定の指標の在り方について検討する必要性が示されており、改定の指標として物価を用いるこ とも選択肢の一つとして指摘されていたことなどを踏まえると、生活扶助基準の水準を調整するに当たり、デフレ傾向に伴う「保護受給世帯の可処分所得の実質的増加」に着目し、これを表す指標として物価を用いることにも合理性があるものと認められた。 カ以上の経緯等を踏まえ、厚生労働大臣は、平成20年以降のデフレによ る保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(生活扶助基準の水準の実質的な引上げ)により生じた保護受給世帯と一般国民との間の不均衡の是正を図るため、同年以降の物価変動を生活扶助基準に反映させる改定(デフレ調整)を行うこととした。 ⑵ 物価変動を指標とした改定を行うこととした理由 毎年度の生活扶助基準の改定は、従前、消費を基礎とする水準均衡方式に基づいて行われてきたが、これは法令上定められたものではなく、昭和58年意見具申以降採用されている事実上の改定指針にすぎないものであり、保護基準の改定に係る厚生労働大臣の判断を拘束するものではないところ、水準均衡方式が採用された当時とは社会経済情勢が大きく変化しており、平成 15年中間取りまとめにおいてもその旨の指摘がされていた。そして、本件 改定に際し、仮に消費を基礎とする改定を行った場合、減額幅が必 当時とは社会経済情勢が大きく変化しており、平成 15年中間取りまとめにおいてもその旨の指摘がされていた。そして、本件 改定に際し、仮に消費を基礎とする改定を行った場合、減額幅が必要以上に大きくなることが想定されたのに対し、一般国民の生活水準との均衡を図るという水準均衡方式の前提とする考え方の下においては、消費支出のほかに、物価や賃金等の経済指標を基礎として生活扶助基準を改定することも十分考えられるといえる。 そこで、厚生労働大臣は、生活扶助基準の「水準」の改定について、それまで行われてきた消費を基礎とする水準均衡方式の考え方(一般国民の生活水準との均衡を図る観点)を堅持しつつも、平成20年以降のデフレ傾向によって保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加したことにより保護受給世帯と一般国民との間に生じた不均衡を是正するためには、その原因 の一つである保護受給世帯における可処分所得の相対的、実質的な増加に着目した生活扶助基準の水準の見直しを行うのが直截的かつ相当であると判断し、客観的な経済指標の一つである物価の変化率(以下「物価変動率」という。)を基にして生活扶助基準の水準の検討、見直しを行うこととしたものである。 ⑶ 物価変動率の算定方法ア生活扶助相当品目のデータを用いることとした理由 平成25年当時、生活扶助による支出が想定される品目の価格指数(判決注・ある基準となる時点(基準時)における物価を100として、その時々(比較時)の物価を比較計算した数値をいう。)及びウエイト を網羅した信頼性の高い客観的なデータとしては、総務省CPIのデータが存在した一方、そのほかに信頼性等が担保された適切なデータは見当たらなかった。 もっとも、総務省CPIの指数品目には、 を網羅した信頼性の高い客観的なデータとしては、総務省CPIのデータが存在した一方、そのほかに信頼性等が担保された適切なデータは見当たらなかった。 もっとも、総務省CPIの指数品目には、家賃、教育費、医療費、自動車関係費、NHK受信料等の生活扶助による支出がおよそ想定されな い品目が多数含まれており、保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質 的な増加の程度を正確に把握するためには、上記のような品目を含めて算定することは相当でないと考えられた。しかも、被保護者の需要の有無及び程度を判断する手法として、一般低所得者が支出する品目のうち生活扶助相当品目を用いるという手法は、従前から行われており、かつ、専門家においても是認されていたものである。 そして、かかる品目の選定については、「生活扶助において捕捉され得るか否か」という客観的かつ明確な基準に従って判断されたものであり、恣意的判断が入り込む余地はない。このように、生活扶助相当CPIの設定における指数品目の選択は、恣意性を排除した客観的かつ明確な条件設定に基づいて行われたものであり、十分な合理性があると考え られた。 以上の理由から、厚生労働大臣は、総務省CPIの指数品目のうち、生活扶助による支出が想定される品目(生活扶助による支出がおよそ想定されない除外品目を除いた品目)の価格指数及びウエイトのデータ(生活扶助相当CPI)を用いて、物価変動率を算定することとした。 仮に、多数ある指数品目のうちある特定の品目に限って生活扶助相当CPIの算定から除外し又はウエイトを調整するのであれば、厚生労働大臣にはその必要性や合理性について統計等の根拠に基づいて的確に説明することが求められたといえる。 しかるに、生活扶助相当CPIで用いられた家計調査の 外し又はウエイトを調整するのであれば、厚生労働大臣にはその必要性や合理性について統計等の根拠に基づいて的確に説明することが求められたといえる。 しかるに、生活扶助相当CPIで用いられた家計調査のウエイトのデ ータと社会保障生計調査に基づくウエイトのデータを比較すると、両者のウエイトの違いは特定の品目に限られるものではなく、その違いの程度も一様ではない。 また、厚生労働省が平成22年に実施した「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」によれば、保護受給世帯のパソコンの普及率は約4 割、ビデオレコーダーは約7割、電子レンジや洗濯機は約9割、カラー テレビや冷蔵庫はほぼ10割となっている。これらの事情に照らせば、保護受給世帯においても、テレビやパソコン等の教養娯楽用耐久財は一般世帯と同様に普及しているということができ、保護受給世帯において教養娯楽用耐久財を生活扶助で購入することも十分予想されるところ、保護費のうちどの程度をテレビやパソコン等の教養娯楽用耐久財に充て るかは当該世帯ごとの個別の事情によるものであって、この点は教養娯楽用耐久財以外の生活扶助相当品目と変わりがない。 このように、仮に、多数ある指数品目のうち特定の品目に限って生活扶助相当CPIの算定から除外し又はウエイトを調整することを検討したとしても、その必要性や合理性について統計等の根拠に基づいて的確 に説明することは必ずしも容易ではなかったといえる。 イ算定期間を平成20年から平成23年までとした理由 厚生労働大臣が物価変動率の算定の始期を平成20年としたのは、デフレ調整の目的が、同年以降のデフレ傾向による保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加による同世帯と一般国民との間の不均衡を 是正することにあ 動率の算定の始期を平成20年としたのは、デフレ調整の目的が、同年以降のデフレ傾向による保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加による同世帯と一般国民との間の不均衡を 是正することにあったためである。 すなわち、平成19年検証において生活扶助基準が一般低所得世帯の消費実態と比較して高いという見解が現に示され、生活扶助基準の水準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が崩れていたと評価することができる状況にあったが、平成20年時点では平成19年検証に基づく減額 改定が行われず、その後、平成20年9月のリーマン・ショックに端を発した世界金融危機が我が国の消費等の実体経済に大きな影響を与え、賃金、物価、家計消費等がいずれも大きく下落する状況に至ったところ、このような同年以降のデフレ傾向により保護受給世帯の可処分所得が相対的、実質的に増加した(生活扶助基準の水準が実質的に引き上げられ た)と評価することができる状況にあり、生活扶助基準の水準と一般国 民の消費実態との不均衡はより一層顕著となっていた。 以上を踏まえて、厚生労働大臣は、平成20年以降のデフレ傾向によって拡大した生活扶助基準の水準と一般国民の消費実態との不均衡を是正するためにデフレ調整を行ったものである。 なお、総務省CPIは、平成19年から平成20年にかけて1%を超 える上昇をしていたが、既に平成19年検証において生活扶助基準と一般低所得世帯との不均衡が確認されており、平成20年を始期とすることによって平成19年から平成20年にかけての物価変動が反映されないこととなったとしても、これによってデフレ調整後の生活扶助基準の水準と一般国民の消費実態との均衡を図ることができなくなると評価で きるものではない。 一方で、厚生労働大臣は、平成 されないこととなったとしても、これによってデフレ調整後の生活扶助基準の水準と一般国民の消費実態との均衡を図ることができなくなると評価で きるものではない。 一方で、厚生労働大臣は、平成25年改定当時の最新の総務省CPIのデータが平成23年のもの(平成24年1月27日公表)であったことから、物価変動率の算定の終期を平成23年とした。 ウ家計調査により算出されたウエイトを用いた理由 家計調査は、詳細な品目別の支出額を対象とし、その調査対象世帯の選定は、居住地域等による偏りを避け、国民全体の支出等が推計し得るように統計上配慮されており、このように選定された約9000世帯を対象に調査票を配布してそれを回収、集計することによって行われている。このように、統計法上の基幹統計である家計調査は、調査対象世帯 の選定方法も含め、統計資料としての精度が高いだけではなく、家計上の支出(詳細な品目ごとの支出額)等の把握を目的とした調査であるから、総務省CPI又は生活扶助相当CPIの算定に用いられる各品目のウエイト(品目ごとの消費支出の割合)を把握するのに最も適したデータといえる。さらに、生活扶助基準の水準は、これまでも、一般国民の 生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるという考 え方に立脚して改定が行われてきており、一般国民の消費を表す家計調査により算出された総務省CPIのウエイトのデータを用いることは、従来の改定の考え方とも整合する。 一方、厚生労働省が実施している社会保障生計調査は、保護受給世帯の生活実態を明らかにし、保護基準の改定等の生活保護制度の企画運 営等のために必要な基礎資料を得る目的で、保護受給世帯の家計収支の状況を調査する一般統計調査である。そして、その調 、保護受給世帯の生活実態を明らかにし、保護基準の改定等の生活保護制度の企画運 営等のために必要な基礎資料を得る目的で、保護受給世帯の家計収支の状況を調査する一般統計調査である。そして、その調査対象世帯の選定は、全国を10ブロックに分け、ブロックごとに都道府県、指定都市、中核市から1ないし3自治体を選定し、その選定された自治体から合計約1100世帯を抽出することによって行われている。また、家計収支 の状況は、被保護者の生活実態を明らかにする観点から、食料費、住居費等の支出金額、割合として集計される。 このような社会保障生計調査は、保護基準の改定等に用いられる統計資料ではあるものの、調査世帯の選定において地域等による偏りが生ずる可能性があることや、サンプル数が必ずしも多くないこと等を踏まえ ると、保護受給世帯全体の家計支出の状況を推測する精度に一定の限界があることは否定し得ない。その上、社会保障生計調査は、保護受給世帯の「生活実態」を把握する調査であって、保護受給世帯の詳細な支出先や支出額を把握するものではないから、調査の手法としても、個別品目の消費支出の割合等を正確かつ詳細に記載させるための措置が講じら れておらず、その調査結果を分析しても、家計調査のように詳細な品目ごとのウエイトは把握し得ない。そのため、社会保障生計調査のウエイトを用いた場合には、総務省CPIの詳細な品目ごとの価格データが存在するにもかかわらず、その詳細な品目ごとの消費の支出の割合を反映した物価指数を算出することができなくなると予想されるところである。 なお、家計調査には、第1・十分位世帯のウエイトのデータもあるが、 これについてはいくつかの品目をまとめた「類」レベルでのウエイトのデータのみが存在し、品目別 る。 なお、家計調査には、第1・十分位世帯のウエイトのデータもあるが、 これについてはいくつかの品目をまとめた「類」レベルでのウエイトのデータのみが存在し、品目別のウエイトのデータは存在しない。そのため、家計調査の第1・十分位世帯のウエイトを用いた場合にも、総務省CPIの詳細な品目ごとの消費の支出の割合を反映した物価指数を算出することができなくなるものと予想された。 以上のとおり、厚生労働大臣は、社会保障生計調査の結果を分析したウエイトを用いて物価変動率を算出することが可能であったとしても、家計調査の統計資料としての精度や適格性、従来の改定の考え方との整合性等を総合的に勘案し、家計調査により算出された一般国民全体についての総務省CPIのウエイトのデータを用いる判断をしたものである。 エ平成22年ウエイトを用いた理由 平成25年当時、家計調査(総務省CPI)のウエイトのデータとしては、平成17年以前を基準年とするものと平成22年基準によるもの(平成22年ウエイト)が存在した。この点、国民の消費の内容は経時的に変化することから、現実の消費実態を反映した物価指数を算定する ためには、物価指数の算定時点に可能な限り近接した時点の消費の構造を示すデータを用いるのが相当と考えられた。このような観点からみると、仮に、平成17年ウエイトのデータを用いた場合には、同年以降の消費構造の変化が反映されず、物価変動率の算定期間における消費実態を正確に反映しないものとなることが予想された。これに対して、平成 22年ウエイトは、物価変動率を算定する期間に接着したものであり、現実の消費実態を反映したものとして相当と考えられた。 そこで、厚生労働大臣は、平成20年から平成23年ま これに対して、平成 22年ウエイトは、物価変動率を算定する期間に接着したものであり、現実の消費実態を反映したものとして相当と考えられた。 そこで、厚生労働大臣は、平成20年から平成23年までの物価変動率を算定するに当たり、平成22年ウエイトを用いることとしたものである。 上記の厚生労働大臣の判断は、「消費者物価指数マニュアル-理 論と実践-」(乙A64、104。以下「消費者物価指数マニュアル」という。)等の記載に照らしても適切なものといえる。 すなわち、消費者物価指数マニュアルによれば、物価指数の算定時点にできるだけ近接した時点のウエイトのデータを用いることが望ましいといえる。また、対象期間の間の任意の時点でウエイトを採る方法は、 消費者物価指数マニュアルにおいて「中間年指数」と紹介される方法である。 ⑷ 本件下落率がデフレ調整分の改定率として相当であると評価した理由ア厚生労働大臣は、平成25年検証において、本件下落率が-4.78%と算定されたことにつき、その算定過程が適切であり、平成20年以降の 物価変動による保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(生活扶助基準の水準の実質的な引上げ)の程度を表していると判断した。 イそして、厚生労働大臣は、平成19年検証において生活扶助基準と一般低所得世帯との不均衡(夫婦子1人世帯において約1.1%、単身高齢世帯において約13.3%)が確認されていたことに加え、平成20年以降 の物価下落が世界金融危機による実体経済への影響を反映したものであり、物価のみならず賃金や消費等の経済指標も大きく下落していること等に照らして、同年以降の保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(生活扶助基準の水準の実質的な引上げ)による一般国民との間 あり、物価のみならず賃金や消費等の経済指標も大きく下落していること等に照らして、同年以降の保護受給世帯の可処分所得の相対的、実質的な増加(生活扶助基準の水準の実質的な引上げ)による一般国民との間の不均衡を是正するに当たっては、デフレ調整による改定率を本件下落率と同じ- 4.78%とするのが相当と判断したものである。 ⑸ 専門家合議体に意見を求めなかった理由ア厚生労働大臣が、保護基準の改定に当たり、基準部会等の専門家合議体に諮問し又はその意見を求めること等を定める法令上の規定はなく、生活保護法やその関連法規に、保護基準の改定に当たり専門家合議体による分 析及び検証が必要である旨の規定は見当たらない。また、基準部会の設置 の趣旨及び審議事項は、「生活保護基準の定期的な評価・検証」を行うこと、すなわち、飽くまで現在の保護基準の定期的な評価及び検証に限られるのであって、保護基準の評価及び検証を踏まえた保護基準の改定の在り方等については、基準部会の設置の趣旨及び審議事項とされていない。ましてや、厚生労働大臣が行おうとする保護基準の改定の当否等についての 分析や検証は、基準部会の設置の趣旨及び審議事項ではない。 そうすると、厚生労働大臣は、保護基準の改定に当たっての基準部会等の専門家合議体の関与の在り方、例えば、専門家合議体に対し保護基準の評価及び検証や保護基準の改定の在り方に関する検討を依頼するか否かや、これを依頼した場合における上記検証や検討に係る結果又は意見 をどのように考慮するかについて、専門技術的かつ政策的裁量を有しているというべきである。 したがって、厚生労働大臣が保護基準の改定に当たり基準部会等の専門家合議体による審議検討を経ていないことが直ちに裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があること 政策的裁量を有しているというべきである。 したがって、厚生労働大臣が保護基準の改定に当たり基準部会等の専門家合議体による審議検討を経ていないことが直ちに裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があることを意味するものではない。 イ平成19年検証の結果及びそれ以降の社会経済情勢等に照らし、生活扶助基準の「水準」を改定する必要性が認められたものの、平成25年検証においては生活扶助基準の水準についての検証が行われず、基準部会による検証結果を踏まえた生活扶助基準の水準の改定は事実上断念せざるを得なかった。そこで、厚生労働大臣は、自らの専門技術的知見を踏まえてデ フレ調整を行うという判断をしたものであるところ、このデフレ調整の内容は、生活扶助基準の改定に当たっての基本的な考え方に立脚したものであり、また、それまでの専門家合議体による検証の考え方と齟齬するものでもない。そして、平成24年8月に成立した社会保障制度改革推進法の附則において、厚生労働大臣には生活扶助基準について必要な見直しを早 急に行うことが求められていたところ、もとより保護基準の改定に当たり 専門家合議体から意見聴取を求める旨の法令上の規定はない上、厚生労働大臣が行おうとするデフレ調整の当否等について審議検討することは基準部会の設置の趣旨及び審議事項ではなかった。 厚生労働大臣は、以上のような事実関係等に照らし、デフレ調整について基準部会等の専門家合議体に意見を求めなかったものである。 ⑹ デフレ調整に関する原告の主張についてア原告は、昭和58年意見具申において、「賃金や物価は、そのままでは消費水準を示すものではないので、その伸びは、参考資料にとどめるべきである」とされていることを指摘し、保護基準の改定において物価を考慮することは水準均衡 見具申において、「賃金や物価は、そのままでは消費水準を示すものではないので、その伸びは、参考資料にとどめるべきである」とされていることを指摘し、保護基準の改定において物価を考慮することは水準均衡方式と矛盾する旨主張する。 しかしながら、本件改定における生活扶助基準の改定は、水準均衡方式によるものではないから、水準均衡方式による改定率を算定するに当たり、「物価」が参考資料にすぎないとされているとしても、そのことは、物価を考慮した基準改定を否定する根拠とはならず、毎年度の改定に際して水準均衡方式を採用してきたことと矛盾するものでもない。すなわ ち、昭和58年意見具申の上記報告は、飽くまで、一般国民の「消費」を基礎とする水準均衡方式による改定率の算定において、「物価」等を重視するものではなく、参考とすべきことを指摘するものであって、水準均衡方式以外の改定方式を採用する場合において、物価を基礎に改定することを否定する趣旨では全くない。 イ原告は、生活扶助相当CPIは総務省が採用するラスパイレス式による総務省CPIとは異なっていることから、その計算方式の正当性に問題があると主張する。 しかしながら、前記のとおり、デフレ調整の対象や目的に照らせば、デフレ調整の際に生活扶助相当CPIを用いたことは合理的であるといえ、 このような合理性のある方法を採用したことも厚生労働大臣の保護基準 の設定及び改定の広範な裁量権の範囲内のものとして許容されるというべきである。 なお、物価指数の代表的な算式には、ウエイト参照時(「買物かご」を固定する時点をいう。以下同じ。)を基準時とするラスパイレス式、ウエイト参照時を比較時とするパーシェ式、両者を幾何平均するフィッシャー 式などがあり、各算式による指数は、通 照時(「買物かご」を固定する時点をいう。以下同じ。)を基準時とするラスパイレス式、ウエイト参照時を比較時とするパーシェ式、両者を幾何平均するフィッシャー 式などがあり、各算式による指数は、通常、ラスパイレス式≧フィッシャー式≧パーシェ式という関係式が成立する(ラスパイレス式とパーシェ式による指数は、消費者物価指数の真実の値が所在する範囲の上下の限界に相当する)ところ、デフレ調整に用いられた生活扶助相当CPIは、直近の総務省CPIのデータである平成22年基準の指数及びウエイトで加重 平均して算出したものであり、平成20年生活扶助相当CPIは、平成20年を基準時とし平成22年を比較時としたときのパーシェ式によって算出したものと、平成23年生活扶助相当CPIは、平成22年を基準時として平成23年を比較時としたときのラスパイレス式によって算出したものと整理することができる。そして、物価指数の上記各算式は、それぞれ の特徴を有しており、それらの特徴を踏まえた各算式を用いることになるから、消費者物価指数の変化率を測定するのにラスパイレス式を用いることが必ずしも正しい唯一の方法というものではない。 そして、より正確に短期間の物価変動のみを取り出すには、短期間であればその間の消費構造の変化による影響は比較的小さいと考えられるこ とに照らし、消費構造の変化による物価指数への影響を最小限度に抑えるべく、ウエイトを固定するのが最も合理的であり、最新の国民の消費構造を反映するという観点からすれば、直近のウエイトを用いることが適当といえる。本件においては、平成20年から平成23年までの3年間という非常に短い期間の物価の変動を測定する必要があるから、その ために、ウエイトを固定するのが最も合理的であり、また、平成25年 本件においては、平成20年から平成23年までの3年間という非常に短い期間の物価の変動を測定する必要があるから、その ために、ウエイトを固定するのが最も合理的であり、また、平成25年 改定を含む本件改定の直近のウエイトは平成22年ウエイトであった。 したがって、デフレ調整に当たり、平成22年にウエイトを固定して、平成20年及び平成23年の各時点の生活扶助相当CPIを算出したことも合理的である。また、ラスパイレス式により算出される指数(以下「ラスパイレス指数」という。)とパーシェ式により算出される指数 (パーシェ指数)は、いずれもロウ指数(判決注・比較される時点間において、「買物かご」すなわちある一定量の数量の財及びサービスを購入するために要する全費用の割合の変化として定義された指数。乙A27・7~8頁、乙A64・4頁)という統一の定義式で表すことのできる指数であり、パーシェ指数は、ラスパイレス指数と同様の加重相加平 均の算式で表すこともできる指数であるから、デフレ調整に当たり異なる計算原理を混合して用いたことにはならない。 ウ原告は、平成20年生活扶助相当CPIを算出するに当たり、ラスパイレス式に従って、平成17年ウエイトを用いた上で、指数の接続を行うべきである旨主張する。 しかしながら、平成17年ウエイトを用いると、平成20年から3年も過去の時点の消費構造(ウエイト)を基礎として生活扶助相当CPIを算出することになり、そのような算定方法によるならば、平成20年生活扶助相当CPIについて消費構造の変化による影響を最小限に抑えることができず、平成20年から平成23年までの物価変動を可能な限り 正確に抽出するという目的にも反し、不合理である。 エ原告は、生活扶助相当CPIやその変化率(下 による影響を最小限に抑えることができず、平成20年から平成23年までの物価変動を可能な限り 正確に抽出するという目的にも反し、不合理である。 エ原告は、生活扶助相当CPIやその変化率(下落率)の算出方法が国際規準に反する旨主張する。 しかしながら、生活扶助相当CPIの合理性を左右するような国際規準は存在しない。なお、デフレ調整においては、平成22年品目改定によ る新規採用品目(本件欠測32品目)の価格指数を除外して平成20年 生活扶助相当CPIを算定しており、平成20年生活扶助相当CPIと平成23年生活扶助相当CPIとでは計算上の品目が異なっているが、欠測値の処理として、上記のように欠測が生じた品目の価格を「計算上」除外することは、欠測が生じた品目の価格動向を他の全ての品目の価格動向と同じと仮定することを意味し、「買物かご」の中身を変えること を意味するものではないのであって、実務上の妥当な処理と評価できるものである。 オ原告は、物価下落の主因となったテレビやパソコンなどの高価な電化・IT製品が生活扶助相当CPIの下落に大きな影響を及ぼしたところ、保護受給世帯においてはこれらの高価な電化・IT機器をほとんど購入する ことがないから、このような保護受給世帯の生活実態を無視した生活扶助相当CPIを用いることは著しく合理性を欠く旨主張する。 しかしながら、前記のとおり、厚生労働大臣が社会保障生計調査の結果ではなく総務省CPIを基礎資料として用いたことは合理的である。 また、厚生労働省が平成22年に実施した「家庭の生活実態及び生活意 識に関する調査」によれば、保護受給世帯の電化製品の普及率も相当割合に至っており、保護受給世帯においても相当程度電化製品を所持して生活を営んでいることは明ら 施した「家庭の生活実態及び生活意 識に関する調査」によれば、保護受給世帯の電化製品の普及率も相当割合に至っており、保護受給世帯においても相当程度電化製品を所持して生活を営んでいることは明らかであるところ、生活扶助相当CPIの算出に当たって、保護受給世帯においてこれらを生活扶助で購入することが十分予想されるにもかかわらず、物価下落幅が大きいという理由で電 化製品等を算出品目から除外することは、かえって恣意的な算定方法となり、適当ではない。 カ原告は、本来、前回の保護基準の引下げが行われた平成16年の総務省CPIを基準として比較すべきであるのに、一次的に物価が急上昇した平成20年を基準として平成23年の指数と比較したことは極めて恣意的で あって、著しく合理性を欠くなどと主張する。 しかしながら、前記のとおり、起点を本来保護基準の見直しが行われるべきであった平成20年とすることには合理的な理由がある。 また、生活扶助基準額は、平成16年4月から平成25年改定時まで据え置かれているが、平成17年度から平成19年度までは、平成16年報告書において勤労3人世帯の生活扶助基準の水準は「基本的に妥当」と評 価されて据え置かれたのに対し、平成20年度以降は、平成19年報告書において基準が高いと評価されながらも当時の状況等を理由に据え置くこととされたものであり、事情が異なる。 4 激変緩和措置に係る判断の過程及び手続に過誤、欠落があるとはいえないこと ⑴ 前記のとおり、厚生労働大臣は、平成25年検証の結果をそのまま反映させた場合には子どもがいる世帯への影響が大きくなることが見込まれたことなどから、激変緩和措置として2分の1処理を行ったものである。 ⑵ また、厚生労働大臣は、ゆがみ調整及びデフレ調 をそのまま反映させた場合には子どもがいる世帯への影響が大きくなることが見込まれたことなどから、激変緩和措置として2分の1処理を行ったものである。 ⑵ また、厚生労働大臣は、ゆがみ調整及びデフレ調整を併せて行った場合、生活扶助基準額が大幅な引下げとなる世帯が生じることが想定されたため、 その負担を軽減するとの観点から減額幅の上限を10%とし、その結果の反映を平成25年8月以降3年にわたって段階的に実施することとしたものである。 ⑶ 以上のとおり、厚生労働大臣は、貧困の世代間連鎖を防ぐとともに、生活扶助基準額が大幅な引下げとなる世帯の負担を軽減する観点を実現しつつ、 ゆがみ調整の本質的部分を改変しないために、上記のような一連の激変緩和措置を講ずることとしたものであり、その判断に著しい過誤、欠落がある、あるいは当該判断が明らかに合理性を欠くとは認められず、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえない。 5 平成29年検証の結果等について ⑴ 本件改定後に実施された平成29年検証では、平成26年度以降の経済指 標(消費、物価及び賃金)の変化を生活扶助基準の水準に反映させるべきかについても議論が行われたが、その際の議論の基礎とされた統計資料によれば、本件改定におけるデフレ調整において検討対象とされた期間(平成20年から平成23年までの間)における経済指標については、全ての変化率がマイナスを示しており、収入及び生活維持に必要な金額は、実質的に減少し ているものと評価される状況にあった。 ⑵ また、平成29年検証では、本件改定後の生活扶助基準の水準が妥当なものか否かについても評価・検証が行われたところ、そこでは、本件改定後の生活扶助基準の水準が一般低所得世帯(第1・十分位世帯)の消費実態とおおむね均 検証では、本件改定後の生活扶助基準の水準が妥当なものか否かについても評価・検証が行われたところ、そこでは、本件改定後の生活扶助基準の水準が一般低所得世帯(第1・十分位世帯)の消費実態とおおむね均衡することが確認されたと評価されており、統計等の客観的な数値 等との合理的関連性や専門的知見との整合性に欠けるところはない。 ⑶ そして、平成16年以降、生活扶助基準額が基本的に据え置かれてきた状況下において、全消調査によれば、夫婦子1人世帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額が平成16年から平成21年にかけて約11.6%も下落していたことや、本件改定後の平成26年全消調査においても、夫婦子1人世 帯(第1・十分位)の生活扶助相当支出額が平成16年に比べて約8.2%低下していたことに照らせば、本件改定に係る厚生労働大臣の判断について、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用がおよそ認められないことがより一層明らかとなる。 ⑷ 以上のとおり、平成29年検証の結果等によっても、本件改定に係る厚生 労働大臣の判断過程に過誤、欠落等がなかったことが裏付けられている。 以上

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