平成16年10月25日判決言渡し同日判決原本交付裁判所書記官平成13年(ワ)第413号損害賠償請求事件(平成16年8月2日口頭弁論終結)判決 主文 1 被告は,原告Aに対し,金7277万2953円,原告Bに対し金165万円,原告Cに対し金18万3333円,原告Dに対し金18万3333円及びこれらに対する平成7年9月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告Aのその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを5分し,その2を原告らの負担とし,その3を被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告Aに対し金1億2059万7041円,原告Bに対し金165万円,原告Cに対し金18万3333円,原告Dに対し金18万3333円及びこれらに対する平成7年9月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,飲酒運転をし,対向車線を越えて走行していた被告が,被告の運転する普通乗用自動車を,原告Aの運転する普通乗用自動車に衝突させた交通事故(以下「本件事故」という。)につき,原告らが,被告に対し,原告Aは,脳挫傷,頬骨・鼻骨骨折等の障害を負い,後遺障害等級併合第4級に該当する後遺障害が残ったとして,自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)3条または民法709条に基づき,損害賠償金及びこれに対する事故の日から年5分の割合による遅延損害金の支払いを求めている事案である。 1 争いのない事実ないし証拠により容易に認められる事実(1)当事者等ア Eは,原告Aの父であり,原告Bは,原告Aの母であり,原告C及び原告Dは,Eの子である。 イ E 案である。 1 争いのない事実ないし証拠により容易に認められる事実(1)当事者等ア Eは,原告Aの父であり,原告Bは,原告Aの母であり,原告C及び原告Dは,Eの子である。 イ Eは,平成16年3月1日,死亡した。 (2)本件事故の発生ア発生日時平成7年9月20日午前0時15分ころイ発生場所 a県b郡c町d番地の9先路上ウ原告車両普通乗用自動車運転者原告Aエ被告車両普通乗用自動車運転者被告オ事故態様被告が,飲酒運転により,被告車両を対向車線を越えて走行させたことにより,折から,上記発生場所において,対向進行してきた原告車両ほか1台に,被告車両を衝突させた。 (3)被告の責任原因ア被告は,被告車両の保有者であり,本件事故の際,被告車両を自己のために運行の用に供していたものである。 イ被告は,道路交通法65条1項に違反し,本件事故現場付近を飲酒運転し,同所先のやや右にカーブしている道路を進行していたのであるから,常に前方を注視し,自車の進路を適正に保持すべき義務があるにもかかわらず,これを怠り,自車を対向車線上に進入させ,もって,本件事故を惹起した過失がある。 (4)原告Aの傷害(甲第3号証,第4号証,第5号証の1,第6号証,第8号証,第10号証)ア脳挫傷イ下顎骨骨折右頬骨上顎骨複合骨折鼻骨骨折顔面挫創上顎右側前歯部欠損上顎前歯部歯根膜炎上顎左側大臼歯部欠損下顎骨骨折下顎右側前歯部欠損下顎前歯部歯根膜炎下顎左側臼歯部欠損下顎右側大臼歯部欠損全歯牙の動揺 上顎左側大臼歯部欠損下顎骨骨折下顎右側前歯部欠損下顎前歯部歯根膜炎下顎左側臼歯部欠損下顎右側大臼歯部欠損全歯牙の動揺咬合不全ウ右肘関節脱臼骨折右肘頭開放骨折右肩鎖関節脱臼右肩甲骨骨折右前腕,右肘挫創(5)原告Aの治療経過原告Aは,本件事故後,次のとおり入通院した。 ア F病院(脳神経外科,整形外科)(ア)入院 105日間(甲第3号証)平成7年9月20日から同年12月17日まで89日間平成8年3月8日から同月23日まで16日間(イ)通院 116日間(甲第4号証)平成7年9月20日から平成11年3月8日までイ G病院(ア)入院 8日間(甲第6号証)平成8年1月26日から同年2月2日まで(イ)通院 238日間(甲第5号証の1,第6号証,第8号証,第9号証の3)平成7年10月3日から平成9年3月27日(入院8日,通院129日)平成9年4月4日から同年10月8日(通院16日間)平成9年10月22日から平成11年1月13日(通院22日)平成11年1月29日から同年8月11日(通院13日)平成11年8月31日から平成12年3月28日(通院36日)平成12年4月5日から平成12年10月27日(通院22日)(6)後遺障害の認定(甲第4号証,乙第3号証)原告Aは,平成11年3月8日に症状固定し,自動車保険料率算定会(以下「自算会」という。)から,次のとおり,自賠法施行令2条 日(通院22日)(6)後遺障害の認定(甲第4号証,乙第3号証)原告Aは,平成11年3月8日に症状固定し,自動車保険料率算定会(以下「自算会」という。)から,次のとおり,自賠法施行令2条別表(後遺障害別等級表。以下「等級表」という。)併合第4級に該当する後遺障害の認定を受けた。 ア第6級2号咀嚼の機能に著しい障害を残すものイ第7級12号女子の外貌に著しい醜状を残すものウ第11級相当(ア)第12級5号右鎖骨の著しい変形(イ)第12級5号骨移植術に伴う骨盤骨の著しい変形エ第12級6号右肘関節の機能障害オ第10級3号現症19歯に歯科補綴を加えたもの(第13級4号既存6歯に歯科補綴を加えていたもの)カ第8級以上に該当する後遺障害が2つ以上あるので,重い後遺障害を2級繰り上げることになるから,第6級を2級繰り上げる結果,併合第4級となる。 (7)既払額被告は,原告Aに対して,合計619万9094円を支払った。 2 争点(1)原告Aに本件事故により高次脳機能障害の後遺障害が残ったか否か(2)原告Aの労働能力喪失率(3)損害額 3 争点に対する当事者の主張(1)高次脳機能障害について(原告の主張)ア原告Aは,本件交通事故による頭部外傷により,事故前後の記憶欠落が未だに回復せず,記憶力が大幅に減退したばかりか,会話と思考についても,意識的に1語1語確認しながらでないと,通常の会話と思考ができず,会話が続くと,どもりがひどくなり,日常生活に大幅な支障を来しており,事故前とでは,全く別人のようになってしまった。 イ高次脳機能障害が認められるための一般的な要件は,要旨次のとおりである。 ① 交通事故によって脳 り,日常生活に大幅な支障を来しており,事故前とでは,全く別人のようになってしまった。 イ高次脳機能障害が認められるための一般的な要件は,要旨次のとおりである。 ① 交通事故によって脳に対する強い外力が加わり,その結果,画像で脳の萎縮や脳室の拡大が認められること② 意識障害の一定期間の継続③ 事故後の性格や人格の変化,知能低下が顕著であること(ア)まず,①の要件中の脳に対する強い外力の要件であるが,正面衝突の大事故により,まさに見るも無惨な姿となった車両の状況及び原告Aにおいて,本件事故により,あごが「ぐちゃぐちゃ」になるほどの衝撃を受け,頭蓋骨骨折,脳挫傷の傷害を負い,顔も変形してしまったことから明らかなように,脳に強い衝撃を受けていることはいまさらいうまでもない。 次に,画像所見の要件であるが,F病院のH医師によると,「MRIの所見により,左視床下部から中脳にかけて,脳挫傷の跡が認められ,全体に脳の萎縮が認められる」とのことであり,なお,その後の所見についても,I病院リハビリテーション科部長J医師の診断書にあるとおり,MRI検査において,「左右側脳室外側深部白質,脳梁の傷害」の所見が認められ,また,SPECT検査において,「両側頭葉内側部,脳梁帯状回部の血流量低下」の所見が認められている。 (イ)意識障害の一定期間の継続一般に,この点については,瞬時に回復する軽度の脳震盪症も対象となるが,受傷後6時間以上継続する意識障害の場合は,高次脳機能障害を第一に疑うべきであるとされるところ,原告Aは,受傷後16時間経過した平成7年9月20日午後4時の段階でも,H医師において,「今のところCT上では,出血はなく,OP(手術)の必要はありません。強い外傷はないので,このまま様子 ところ,原告Aは,受傷後16時間経過した平成7年9月20日午後4時の段階でも,H医師において,「今のところCT上では,出血はなく,OP(手術)の必要はありません。強い外傷はないので,このまま様子をみていき,意識は回復する可能性があるようです。時間はかかるでしょう。」と家族に説明がなされており,意識障害が継続し,呼名反応がでたのは,2日以上も経過した後であり,その後も意識障害が継続している。 (ウ)事故後の性格や人格の変化,知能低下が顕著であることもともと原告Aは,西日本銀行に5年在籍した後,友人と二人で中洲店舗を経営し,その後は,Eの経営する有限会社で,塗装業の養生の仕事のほか,会社の経理を中心とする事務及び電話応対等を含め一切を任されていた。 以上の原告Aの経歴が示すとおり,原告Aは,男勝りで,饒舌で,リーダーシップをとるような極めて積極的な性格であった。 ところが,本件事故後,記憶障害,思考障害,会話障害などにより,会社の仕事が全くできなくなったばかりか,その性格も,おっとりしたものにかわり,家族から見ると別な人格にかわったと思えるほどに性格ががらりとかわった。 原告Aは,周囲から「変わった,変わった」と言われるたびに自己同一性を必死で確認しながら,生きている状態である。 また,心理検査票(甲第19号証3丁裏)の報告まとめ欄に,知的機能につき,言語性で「知識」「単語」やや低下が見られ,一般的知識及び語彙力の低下が考えられるとの記載があり,記憶につき,遅延再生での記憶力低下が顕著,物語記憶では全体の流れも曖昧さあり,視覚性再生Ⅱでは,4つの図形を書いたことも忘れているとの記載があり,前頭葉につき,軽度転換障害及び注意の分割能力低下を認めるとの記載がある。 (エ)以上より,原告A は全体の流れも曖昧さあり,視覚性再生Ⅱでは,4つの図形を書いたことも忘れているとの記載があり,前頭葉につき,軽度転換障害及び注意の分割能力低下を認めるとの記載がある。 (エ)以上より,原告Aの症状は,典型的な高次脳機能障害に該当することが明らかである。 ウ本件事故との因果関係(ア)Eにおいては,原告Aの精神障害について診断することにつき,そもそも受診すること自体原告Aに頭がおかしいというレッテルを貼ることになるのではないかという危惧感から,親として強い抵抗があり,頑強に拒否していたが,本件訴訟の課程で,事実を直視し,その上で原告Aを支援しリハビリを尽くすことが最善の選択であるとの思いに至り,平成13年12月28日,I病院のJ医師を受診した。診療の結果,J医師は,平成14年2月6日,「事故後約6年を経過しており改善の可能性は低く,症状固定しているものと考える」として,同月28日,自賠責後遺障害診断書を発行した。その診断結果は,次のとおりである。 ① 言語性知的機能の若干の低下,言語性記憶の低下,遅延性の中程度記憶障害。前頭葉は性格変化,判断力低下を認める。 ② MRI検査における画像所見として,左右側脳室外側深部白質,脳梁の障害の所見が認められた。 ③ SPECT検査所見として,両側頭葉内側部,脳梁帯状回部の血流量低下の所見が認められた。 これは,脳損傷による明らかな脳機能障害の所見である。なお,遅延性の中程度記憶障害については,「63」の指標数値結果が出ているが,具体的には,同年齢の平均的な一般人が,約30分後に100覚えているとして,原告Aの場合は,その63%しか記憶を保持できないという著しい記憶能力の低下を示すものである。 (イ)事前認定結果連絡票(乙第2号証)に の平均的な一般人が,約30分後に100覚えているとして,原告Aの場合は,その63%しか記憶を保持できないという著しい記憶能力の低下を示すものである。 (イ)事前認定結果連絡票(乙第2号証)においては,本件事故と原告Aの精神症状との因果関係が否定されている。その根拠を要約すると,①原告Aの精神症状は,事故後約3年6月経過した平成11年3月8日までは出現していない,②提出された画像所見において脳挫傷等の脳実質の損傷や脳萎縮,脳室拡大等の明らかな外傷性の異常所見等を裏付ける明らかな異常所見が認められないということである。しかしながら,かかる事前認定には,前提事実に重大な事実誤認がある。 ①について,これは,H医師の平成11年3月8日付け後遺障害診断書に記載がないことの一事をもって,記憶障害,思考障害,会話障害等の精神症状がなかったと短絡的に結論づけるもので,明らかな事実誤認である。そもそも,H医師は,脳機能障害についての検査すらしていない以上,診断の記載をすることができず,また,平成7年の事故当時はもちろん平成11年の上記診断書発行時においても,脳外傷による高次脳機能障害はそれほど注目されておらず,医学的な定義もなく,客観的診断法も見あたらなかったことや,脳の器質的損傷であるとの認識が薄かったこと等の事情があり(甲第22号証,第23号証),しかも,脳神経外科医の職務は,まず目の前の患者を救命することにあり,意識障害の回復が救命の全てといっても過言ではなく,意識回復後の患者の変化(社会適応の可否)には,通常関心が払われないという実情があり(リハビリに任せるという体制にある),とくに診断あるいは診断書記載がなされなかっただけのことである。また,事前認定においては,家族の報告が必要な資料となるとされているにもかかわらず,Eの 情があり(リハビリに任せるという体制にある),とくに診断あるいは診断書記載がなされなかっただけのことである。また,事前認定においては,家族の報告が必要な資料となるとされているにもかかわらず,Eの陳述書(甲第14号証)において述べられている記憶障害,会話障害,思考障害等原告Aの精神症状を基礎づける外形的な行動事実の記載や,原告A本人の陳述書(甲第10号証)において述べられている記憶障害,どもりなども含む会話障害の自覚症状がまったく無視され,原告Aにおいて,本件受傷直後から記憶力,思考力,会話力が減退していた事実の存在について,何の根拠もなく不当に無視されている。さらに,本件事故から1か月後の平成7年10月21日午後11時のF病院の看護記録記載欄に,「事故のことを覚えておらず,自分の身の回りの物もうろ覚えと思い出そうとするあせりがみられる」との記載があり,原告Bの手帳日記(甲第20号証)にも記憶障害,人格変化を示す記載がある。また,H医師は,本件訴訟において,高次脳機能障害について,「訴えはあったと思います。ただ,一番訴えられるのは,高次脳機能障害よりも,手とあごの振れでしたので,そちら側のほうばかりを重視し」,「家事とかができないので,仕事ができないので,それを何とかしてほしいということでそれに対する薬物療法をいろいろと考えて」おり,いわゆる「記憶力の衰退とか,高次脳機能障害と言われるものについてはマスク」をしていた状態,すなわち,「振戦ばかりにとらわれていた」が,少なくとも「記憶力が落ちているなというのは感じ」ていたと証言している。 ②について,上記事前認定において,どの画像を検討した結果,異常所見を確認できなかったとするかにつき特定されていないが,上記イ■のとおり異常所見を肯定する医師の診断所見があるのであるから,上 ②について,上記事前認定において,どの画像を検討した結果,異常所見を確認できなかったとするかにつき特定されていないが,上記イ■のとおり異常所見を肯定する医師の診断所見があるのであるから,上記事前認定の根拠は事実に基づかないものであるというほかない。また,高次脳機能障害においては,重症例でもCTやMRIで異常所見を認めないことがある(いかにMRIといえども,神経軸索までは写らない。)のであるから,厳密な診断画像の検証が不可欠であるにもかかわらず,上記事前認定は,かかる配慮を欠いている。 (ウ)原告Aの上記アの脳機能障害は,上記イのとおり,本件事故により発生したものであり,原告Aの高次脳機能障害は,本件事故と因果関係がある。 (被告の主張)高次脳機能障害と事故との因果関係ア平成11年3月8日付けF病院発行の後遺障害診断書(甲第4号証)中には,脳損傷による「記憶障害,性格変化」として,「言語性知的機能の若干の低下,言語性記憶の低下,遅起性の中程度記憶障害,前頭葉は,性格変化,判断力の低下」等の記載はない。上記は,平成14年2月28日付けI病院発行の後遺障害診断書(甲第18号証)に記載されている症状である。本件事故は,平成7年9月20日発生しており,平成11年3月8日の診断書には記載のない症状が,平成14年2月18日の診断書には記載されている。これらの症状については,事故と因果関係がないか,または因果関係が立証できていないと判断すべきである。 イ原告は,平成11年3月8日当時,高次脳機能障害について自賠責の審査会が設置されていなかったと主張し,高次脳機能障害についての理解が医師の間でも不足しており,後遺障害診断書に記載がないのは,いわば記載漏れと同様の結果となっていた旨主張する。しかし,記憶力の低下 査会が設置されていなかったと主張し,高次脳機能障害についての理解が医師の間でも不足しており,後遺障害診断書に記載がないのは,いわば記載漏れと同様の結果となっていた旨主張する。しかし,記憶力の低下等は,いろいろな形をとって現れ,医師は容易に気が付くはずであり,医師が認知した場合には必ず記載するはずである。また,画像診断においても,放射線科のレポート(乙第4号証2頁中段以下)では事故後数年にわたり,頭部CT,MRI所見では外傷性の所見は認められていない。H医師が,平成11年3月8日に「視床下部から中脳にかけて脳挫傷痕及び慢性脳萎縮」があると判断した画像所見に対して,平成7年11月16日のK病院L医師は,「MRI上は局在病変を認めず」と異なる見解を示している。H医師は,本件訴訟において,平成11年2月23日のG病院のMRIT2フィルムと比較して,後から見ると,事故直後のCTスキャンフィルムに出血の跡を見ることができると証言しているが,CTに出血の跡が認められるとは到底いえない。 (2)労働能力喪失率(原告の主張)ア原告Aには,高次脳機能障害を除く後遺障害で,併合4級の後遺障害が残った(労働能力喪失率92%)。 加えて,次に述べるような後遺障害が医学的にも明らかになった。 イ高次脳機能障害による障害(ア)記憶障害について原告Aは,本件事故により,言語性記憶の低下及び遅延性中等度記憶障害が残った(甲第18号証)。その程度は,遅延再生63というデータが示すとおり,一般平均人が,30分後に100覚えている事項のうち,原告Aは,63しか記憶を保持できないのである。心理検査票においても,遅延再生での記憶能力低下が顕著であると指摘されている(甲第19号証3丁)。 これにより,原告Aは,約 いる事項のうち,原告Aは,63しか記憶を保持できないのである。心理検査票においても,遅延再生での記憶能力低下が顕著であると指摘されている(甲第19号証3丁)。 これにより,原告Aは,約束を忘れたり,同じことを何度も繰り返したり,言った言わないで家族とけんかしたり,十分に適応できないでいる。原告Aは,単純な日常的作業でも,メモする等して工夫しなければ,十分に処理できない状態にある(甲第19号証3丁)。 原告Aは,仕事をするについては,同じことを何度も繰り返し,繰り返し指示する必要があり,実質的には自力で仕事の遂行ができない状態にある。 これは,「単純繰り返し作業などに限定すれば,一般就労も可能。ただし,新しい作業を学習できなかったり,環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため,一般人に比較して作業能力が著しく制限されており,就労の維持には,職場の理解と援助をかかすことのできないもの」(等級表第5級2号)に該当する。 原告Aは,父であるEの会社だから,リハビリのためということもあって業務に従事できているのであって,これが身内の会社でなければ,およそ特別の理解と支援なしに採用する企業はないのであって,その意味で,通常の仕事に就労することは事実上不可能ないし極めて困難なのである。 (イ)会話障害について原告Aは,医学的にも言語的知的機能につき若干の低下がみられ,また,言語性記憶も低下していることが明らかになったとおり,通常の会話の速度に十分ついていけないばかりか,話そうとしても,どもったり,一語一語確認しながらでなければ,普通に話せない状態にある。一見,普通に話しているように見えても,原告Aの頭は,必死で一つ一つの単語を確認しながら言葉をつないでいるような状態 としても,どもったり,一語一語確認しながらでなければ,普通に話せない状態にある。一見,普通に話しているように見えても,原告Aの頭は,必死で一つ一つの単語を確認しながら言葉をつないでいるような状態である。しかも,この会話障害は,顔面のしびれやふるえ(現在も脳神経外科処方の薬を服用中である。)と輻輳して,より深刻なものとなっている。 (ウ)理解力,知的能力の低下原告Aについて,医学的にも,「前頭葉は,性格変化,判断力低下を認める。」との診断がなされている(甲第18号証)。 (エ)性格変化原告Aについて,上記■と同じく「前頭葉は,性格変化,判断力低下を認める。」との診断がなされており,家族から見ても,原告Aの性格は,本件事故の前後で,明らかに変化している。 (オ)原告Aの高次脳機能障害の程度原告Aは,記憶障害,思考障害,会話障害,性格障害(積極性が減退している。)が相乗的に作用して,単純繰り返し作業などに限定すれば,一般就労も可能であるが,新しい作業を学習できなかったり,環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題があり,このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており,就労の維持には,職場の理解と援助を欠かすことができない。 したがって,原告Aの高次脳機能障害による等級は,第5級2号に該当するものである。 ウ労働能力喪失率について(ア)咀嚼障害について原告Aの食事,咀嚼に対する障害は,極めて深刻かつ重大であり,通常の職場で就労しようとすれば,就労中の食事を断念するか,ジュース食のような食事に限定するしか方法がない。原告Aの咀嚼障害は,原告Aの就労範囲につき著しく制約することが明らかであり,また,歯牙障害も加わり,より重篤なものとなって 労中の食事を断念するか,ジュース食のような食事に限定するしか方法がない。原告Aの咀嚼障害は,原告Aの就労範囲につき著しく制約することが明らかであり,また,歯牙障害も加わり,より重篤なものとなっている。 原告Aは,本件事故後,固いもの,熱いもの,極端に冷たいものを口にすると,首の筋が全部立ち,口がゆがむ。口の中にものがはさかったり残ったりしても,原告Aは舌を使うことができず,指や爪楊枝を使って出さなければならない。唇の神経がないので,ご飯粒がついたり,汁が垂れても,感覚がないので,そのままにしている等の極めて不自由な状態が,本件事故後変わりなく継続している。 (イ)外貌の醜状障害について原告Aは,本件事故時,33歳の女性であり,しかも,醜状の部位が顔面であることからすれば,対人関係,社会関係においても,心理的にも大きな影響を及ぼすことが明らかであり,結果的に就労において極めて不利益が生ずることが明らかである。人によっては,対人接触が不可能ないし対人接触障害にまで結びつくことがあっても不思議ではない。また,右鎖骨の奇形障害(12級5号)により,服装(特に夏場)ですら制約を受ける状態にある。 特に,第7級の後遺障害等級自体,外貌醜状について人に嫌悪感を抱かせ,それにより労働能力に影響を与えるかどうかの観点から作られており,かなり重い症状であること,現代の労働の種類,内容の変化,女子の就業率の増加,テレビ等による視覚の重要性の増加,転職・失職・昇級延伸等の不利益の可能性,男性化粧の増加という美意識の高揚,社会経済状況の変化等を考慮すると,労働能力の喪失は肯定されてしかるべきである。原告Aの顔は,以前と比べて,顎が少し引っ込んでおり,頬も複雑骨折した方が陥没し,少し引っ込んでおり,原告Aは,自分のこと 経済状況の変化等を考慮すると,労働能力の喪失は肯定されてしかるべきである。原告Aの顔は,以前と比べて,顎が少し引っ込んでおり,頬も複雑骨折した方が陥没し,少し引っ込んでおり,原告Aは,自分のことを顎なし人間だとか事あるごとに言っており,顎を出す手術をしたら元に戻るか等言っており,原告Aにとっていかに重大な影響を与えているか明らかである。 (ウ)上肢の運動障害について原告Aの上肢の運動障害だけでも,その喪失率は14%である。 (エ)頭部外傷に起因する障害について原告Aの頭部外傷に起因する顔面のしびれ,ふるえ,どもりが就労に及ぼす影響は計り知れない。 H医師は,原告Aについて,あごの振戦等があり,うまくしゃべれず,構語障害にあたると指摘している。 (オ)高次脳機能障害について原告Aは,記憶障害,思考障害,会話障害により,従前の仕事が全く不可能になった。特に,30分後で普通の人のおよそ半分しか記憶を保持できない人間を採用する企業はないであろう。今後,知識,サービス社会がますます進展することも考慮すれば,この高次脳機能障害だけでも労働能力喪失率は100%といっても過言ではない。 (カ)まとめ以上により,原告Aの後遺障害等級は,8級以上に該当する後遺障害が2つ以上あるので,重い後遺障害を2級繰り上げることになるから,5級を2級繰り上げることになり,結果的に併合3級の後遺障害(労働能力喪失率100%)が残存した。原告Aには,多数の後遺障害が残存し,それらが輻輳して,労働能力の喪失に重大な影響を及ぼしており,これらによる全体的な労働能力の喪失の程度は,単に個別の後遺障害の「足し算」で十分に把握できるものではなく,1個の生命体・統合体の中で相互に影響し合う関係にあ 能力の喪失に重大な影響を及ぼしており,これらによる全体的な労働能力の喪失の程度は,単に個別の後遺障害の「足し算」で十分に把握できるものではなく,1個の生命体・統合体の中で相互に影響し合う関係にあることを考慮すれば,「かけ算」的な把握こそが重要であり,原告Aは,92%以上の労働能力を喪失したことが明らかである。 (被告の主張)ア原告Aの後遺障害が併合4級となったのは,6級の後遺障害と7級の後遺障害があったためである。後遺障害等級の労働能力喪失率は,それぞれ何号に該当するかも含めて検討すべきものである。原告Aは,咀嚼の機能に著しい障害を残すもの(6級2号),女子の外貌に著しい醜状を残すもの(7級12号)となっており,労働能力喪失率が92%というのは過大である。 イ高次脳機能障害と障害等級について仮に,原告Aの高次脳機能障害が本件事故と因果関係を有するとした場合,その障害等級は,9級10号である。 原告Aの記憶障害の残存については,遅延性の中等度記憶障害が63というデータだけを抽出して議論すべき問題ではない。それ以外のほとんどの記憶に関する結果は正常であることが立証されており,記憶障害があったとしても,それほど重篤なものではないと捉えるべきである。これは,これまでの後遺障害診断書において,診察していた医師でさえ,原告Aとの会話の中でその異常を捉えられなかった程度と考えられる。 この点については,原告Aの陳述書(甲第10号証)には,「途中加害者が何度か見舞いに来たが誠意ある対応もなく,口で言うことが行動として伴っていない。いつもいつも来るたびに都合のいいことしか言わなかった。」,「好きだったカラオケに行ってもテンポのある曲にはついていけない。」等の記載があり,原告Aの「記憶力が大幅に減退した 動として伴っていない。いつもいつも来るたびに都合のいいことしか言わなかった。」,「好きだったカラオケに行ってもテンポのある曲にはついていけない。」等の記載があり,原告Aの「記憶力が大幅に減退したばかりか,会話と思考についても意識的に一語一語確認しなからでないと,通常の会話と思考が出来ず,会話が続くとどもりがひどくなり,日常生活に大幅な支障を来しており,事故前後で別人のようになってしまった」という訴えが,第5級2号の「一般人と比較して,作業能力が著しく制限され,就労の維持には,職場の理解と援助をかかすことができないもの」に該当するとは考えられない。 また,原告Aは,本件事故後,再び実家での仕事に従事するようになり,その後,アパートを借りて一人暮らしを始め,結婚し,子供2人を出産し,最初の子供がある程度大きくなったら仕事を再開し,2人目の子供を出産して仕事を休み,またある程度大きくなったら子供を保育園に預けて働き始めている。原告Aは,子供を抱いていなければ,身の回りのものをたたんだり,細かいものを整理することはでき,家事も原告Aが中心となってやっており,原告Aの夫との間では,精神的な面でのトラブルはなく,結婚生活,主婦業的にみれば,大きな支障は見られない。 仕事の面で見ても,日常会話として普通の話しはでき,バスに一人で乗って通勤でき,車を運転することもでき(同乗者付きというが,運転は一人でするものである。),仕事としては,現在は塗装の仕事(簡単な養生)と,簡単な事務の整理と電話の受付ということであるが,接客もしている。 本件事故前の原告Aの仕事については,原告Bの供述は一貫していない。原告Aは,会計とお客さんの対応と電話対応をし,会計はEのかわりに行っていたと供述している一方で,本件事故前は,塗装の仕事を中心 本件事故前の原告Aの仕事については,原告Bの供述は一貫していない。原告Aは,会計とお客さんの対応と電話対応をし,会計はEのかわりに行っていたと供述している一方で,本件事故前は,塗装の仕事を中心としてやっており,会計もEと二人でやっていたと全くといって良いほど違っている。おそらく,従業員数の減少などから,本件事故前は,原告Aがやっていなかった塗装の仕事もやるようになった結果,対比のため,本件事故前は塗装の仕事が中心であったという事実と異なる供述をしていると推測される。 したがって,原告Aの記憶障害を含めた高次脳機能障害については,第9級10号の「一般的労働能力は残存しているが,神経系統の機能または,精神の障害のために,社会通念上,その就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」とするのが妥当である。 (3)損害額(原告の主張)ア症状固定後の治療費・将来の治療費 144万円(ア)脳神経外科少なくとも120万円以上が必要となる。 投薬がなければ,震えと痛みのために,咀嚼,会話,通常の手作業などが不可能であり,症状固定後も継続的な投薬が必要である。 このために,毎年12万円相当の負担(薬代,診察代)が必要となる(おそらく終生継続するものと思われる。)。 (イ)歯科少なくとも24万円以上が必要となる。 補綴科医師より,将来的にインプラント等の特殊な調整作業が必要であり,また,手が震え疲れるために,十分なブラッシングが行えないほか,咀嚼部位が少なく残存歯に負担が大きいので,定期的かつ頻回のメンテナンス,調整が必要であると言われている。 今後継続的に毎週1回(少なくとも,1回500円は必要である。)は,通院する必要がある。 イ付添看護費 67万80 定期的かつ頻回のメンテナンス,調整が必要であると言われている。 今後継続的に毎週1回(少なくとも,1回500円は必要である。)は,通院する必要がある。 イ付添看護費 67万8000円入院付添費近親者付添6000円×日数(113日)ウ入通院雑費 87万7500円入院雑費 1500円×日数(113日)=16万9500円通院雑費 2000円×日数(354日)=70万8000円ただし,タクシーによる通院を余儀なくされたので,交通費として任意保険より支払われた公共交通機関による交通費を超過する交通費を含むエ休業損害 1042万円平成8年5月までは,任意保険から,毎月35万円の支給を受けた。 なお,原告Aは,現在,従前の仕事に復帰しているが,実際は,かえって会社によけいな負担をかける結果になっているところ,リハビリのために,あえて社会復帰させているものである(これは,実父経営の家族企業であることから支援が可能になったのであり,通常であれば,職場復帰は無理である。)。 平成8年6月以降については,実質上は,労働の実質上の実績がないにもかかわらず(本来であれば,ノーワークノーペイであるが),原告Aの生活支援のために,平成9年12月まで毎月35万円の合計665万円を(甲第16号証の2,3),平成10年1月から同年12月までは毎月30万円の合計360万円を(甲第16号証の4),平成11年11月及び同年2月(症状固定の前月まで)は各8万5000円の合計17万円を給与名目で,会社が原告Aに対して貸し付けた(以上合計1042万円)。すなわち,かかる1042万円については,原告Aにおいて,会社に返済すべき金員であり,原告Aに,同額の休業損害が発 の合計17万円を給与名目で,会社が原告Aに対して貸し付けた(以上合計1042万円)。すなわち,かかる1042万円については,原告Aにおいて,会社に返済すべき金員であり,原告Aに,同額の休業損害が発生している。 オ後遺障害逸失利益 7456万8208円(ア)原告Aは,本件事故により,労働能力を92%喪失した。 (イ)全体の後遺障害症状固定は,平成11年3月8日で(ただし,厳密には歯科の治療が残る。),原告Aは,当時36歳である。 (ウ)基礎収入 440万円事故当時の実収入である。毎月35万円の給与と,20万円の賞与の合計額。 (エ)ホフマン係数 18.421(オ)計算式440万円×0.92×18.421=7456万8208円カ慰謝料 2100万円(ア)傷害 400万円本件事故は,被告車両の衝突により,原告車両のフロント右フレームがV字型ないし三角形の鋭利な形に曲がり,その金属フレーム先端が,原告Aの顔面(口中央部)に突き刺さったという極めて悲惨な事故であり,事故直後,F病院の院長より,「覚悟して下さい。」と事実上の死の宣告までされ,結果的に入院113日,通院354日間以上の診療を余儀なくされるに至ったもので,慰謝料としての損害は400万円を下らない。 (イ)後遺障害 1700万円原告Aには,上記争いのない事実■のとおりの後遺障害が残ったものであるが,肉体的自由,思考の自由,会話の自由,咀嚼の自由に重大な障害を受けたばかりか,顔や性格の変容も余儀なくされたものであり,慰謝料としての損害は1700万円を下らない。 本件は,原告Aに多数の後遺障害が残ったことにより,労働能力を喪失したという重大な損害のほかに,とくにそれまで存 も余儀なくされたものであり,慰謝料としての損害は1700万円を下らない。 本件は,原告Aに多数の後遺障害が残ったことにより,労働能力を喪失したという重大な損害のほかに,とくにそれまで存在した人格の喪失とでもいうべき重大な問題を含むものである。原告Aにおいては,自分の性格そのものが変容したという事実については,正面から受容できていない。それだけに,その損害は重大である。原告Aの家族は,原告Aが変わったと認識し,他方,原告Aは,不自由にはなったが,自分は自分であり性格も変わっていないと認識していることから,前提について大きな溝ができたことにより,家族間の信頼関係に亀裂が入りかけた。 高次脳機能障害は,外部から目に見えないだけに,ある意味では,両手,両足を失うことや,失明すること等の外部から目に見える重度の障害よりも耐え難く,悲惨であるとも評価できるのであり,自らの娘の性格が変化した事実を突きつけられた家族にとっても,その精神的苦痛は耐え難いものがある。 人間にとって,最終的には,精神が全てであるともいわれるが,高次脳機能障害により,本件事故前の精神との連続性が絶たれたことによる損害は極めて甚大である。 したがって,慰謝料においても,かかる観点が十二分に考慮されなければならない。 キ弁護士費用 1100万円原告Aは,原告訴訟代理人に交渉及び訴訟の提起遂行を委任せざるを得なかったものであるところ,被告の本件不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は,1100万円が相当である。 ク原告Aの両親の固有の損害及び相続(ア)本件事故により,原告Aの父E及び母原告Bは,娘である原告Aが,本件事故により生死をさまようほどの傷害を受け重大な後遺障害が残ることになった結果,生活能 原告Aの両親の固有の損害及び相続(ア)本件事故により,原告Aの父E及び母原告Bは,娘である原告Aが,本件事故により生死をさまようほどの傷害を受け重大な後遺障害が残ることになった結果,生活能力,労働能力はもちろん外見も性格も,それまでの娘とは別人のようになったことにより,原告Aが死亡した場合に比肩するほどの精神的衝撃を受けたものであり,慰謝料としての損害は,E,原告Bそれぞれ各100万円を下らない。 (イ)E,原告Bは,原告ら訴訟代理人に交渉及び訴訟の提起遂行を委任せざるを得なかったものであるところ,被告の本件不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は,各10万円が相当である。 (ウ)Eは,上記(ア)(イ)のとおり,被告に対し,金110万円の損害賠償請求権を有していたところ,平成16年3月1日,死亡し,原告Bが2分の1の割合(55万円)で,原告A,原告C,原告Dが,それぞれ6分の1の割合(18万3333円)で承継取得した。 ケ過失相殺について(ア)被告は,①原告Aが,本件事故当時,シートベルトをしておらず,②原告Aが,シートベルトをしていれば,原告Aの脳挫傷は避けられたか,少なくとも,脳挫傷による後遺障害を残すことはなかった,③したがって,シートベルト不着用により過失相殺がなされるべきであると主張する。しかし,次に述べるとおり,被告の主張は理由がない。 (イ)①について原告Aが,シートベルトを装着していなかったとの主張は,本件事故から1か月後の平成7年10月20日に作成された原告Aの供述調書(乙第1号証)に基づくものであるが,原告Aは,本件事故後1か月は,記憶が全く戻らず,自分が何故病院にいるのか理解できない状態にあり,しかも,本件事故の前後の状況については,現在においても全く記憶のない 1号証)に基づくものであるが,原告Aは,本件事故後1か月は,記憶が全く戻らず,自分が何故病院にいるのか理解できない状態にあり,しかも,本件事故の前後の状況については,現在においても全く記憶のない状態である(甲第10号証)。 乙第1号証は,かかる異常な状況下で聴取して作成された調書であり,文面を一読すれば明らかなとおり,本件事故の前後につき全く記憶のない原告Aから,無理に誘導して作成されたものであり,そもそもシートベルトを装着していなかったかどうか不明である。 (ウ)②について本件事故の態様は,被告において,飲酒運転で,かつ猛スピードで対向車線にセンターオーバーしてきた大型オフロード車が,原告Aにおいて,おそらく被告車を避けようとしてとっさにハンドルを左に切ろうとした瞬間に原告A運転の小型車(日産パオ)の右斜め前から衝突してきたもので,このことは,原告Aの車の損傷状態からも明らかである(甲第12号証)。しかも,原告Aの車は,走行方向左側の歩道上にまで弾き飛ばされているのである。 したがって,原告Aは,正面方向ではなく,むしろ右斜め前方向に頭等を飛ばされ,ぶつけられる状態にあったのであり,シートベルト装着の有無は,原告の脳挫傷の有無,程度に全く影響していない。この点は,原告Aの受傷部位が,顔面右側,右腕,右肘,右肩であることからも明らかである。 ちなみに,原告Aの車の右側フレーム部分は,ハンドル位置まで鋭角に折れ曲がってせり出してきているのであり,このことからも,シートベルトを装着していようがいまいが,本件事故による重大な結果は避けられなかったことが明らかである。 (エ)③について上記(ウ)で述べたとおり,原告Aの後遺障害は,原告Aのシートベルト装着の有無とは全く無 いまいが,本件事故による重大な結果は避けられなかったことが明らかである。 (エ)③について上記(ウ)で述べたとおり,原告Aの後遺障害は,原告Aのシートベルト装着の有無とは全く無関係であり,過失割合は10対0で,被告に全面的に責任がある。 コよって,原告らは,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償金として,原告Aにつき1億2059万7041円,原告Bにつき165万円,原告Cにつき18万3333円,原告Dにつき18万3333円及びこれらに対する本件事故の日である平成7年9月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (被告の主張)ア休業損害について休業損害に関して,出勤して就労している以上は,賃金は支払われるべきものであり,会社からの借金という主張は不合理である。 イ後遺障害関連の損害算定における,事故時現価修正について原告らは,原告Aの後遺障害は,平成11年3月8日に症状が固定したと主張している。 ところで,原告らは,本件訴訟において,本件事故の日である平成7年9月20日からその損害に対して年5%の遅延損害金を付して請求している。 そこで,公平の観点から,後遺障害による損害について,その算出は,事故日現価として行うべきである。 すなわち,原告Aは,本件事故時32歳,症状固定時36歳であり,仮に就労可能年数を67歳とすると,35年(67-32=35)のライプニッツ係数(16.3741)から,4年(36-32=4)のライプニッツ係数(3.5459)を控除すべきことになる。 16.3741-3.5459=12.8282ウ既払金社会保険合計220万6298円エ過失相殺 ニッツ係数(3.5459)を控除すべきことになる。 16.3741-3.5459=12.8282ウ既払金社会保険合計220万6298円エ過失相殺原告Aの脳挫傷については,本件事故が正面衝突であることから,当時シートベルトを着用しておれば避けられたと考えられ,少なくとも脳挫傷による後遺障害を残すことはなかったと考えられる。 本件事故のように,脳挫傷を原因とする後遺障害が主張されているケースについては,シートベルトの不着用は過失相殺がなされるべきである。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(原告Aに本件事故により高次脳機能障害の後遺障害が残ったか否か)について(1)上記第2の1の争いのない事実等,証拠(甲第1号証ないし第4号証,第5号証の1,2,第6号証ないし第8号証,第9号証の1ないし3,第10号証,第12号証ないし第14号証,第17号証ないし第27号証,第28号証の1ないし5,第29号証ないし第32号証,乙第1号証ないし第5号証,第6号証の1ないし10,証人H医師の証言及び原告B本人尋問の結果)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア自賠責保険を適用する自算会は,平成13年1月から,脳外傷に基づく高次脳機能障害が後遺した場合に,その認定を行うために,「高次脳機能障害審査会」を設置し,高次脳機能障害とは,交通事故によって脳に損傷を受け,一定期間以上の意識障害が持続した結果発生する認知障害(記憶・記銘力障害,集中力障害,遂行機能障害,判断力低下等)と人格変化(感情易変,暴力・暴言,攻撃性,幼稚,羞恥心の低下,多弁,自発性・活動性の低下,病的嫉妬,被害妄想等)が残存する障害をいうと定義し,交通事故に起因する高次脳機能障害の認定要件として,① と人格変化(感情易変,暴力・暴言,攻撃性,幼稚,羞恥心の低下,多弁,自発性・活動性の低下,病的嫉妬,被害妄想等)が残存する障害をいうと定義し,交通事故に起因する高次脳機能障害の認定要件として,①交通事故によって,脳に対する強い外力が加わり,その結果,画像で脳の萎縮や,脳室の拡大が認められること,②意識障害が一定期間継続していたこと,③事故後の性格や人格の変化,知能低下が顕著であることの3点を挙げている(甲第22号証及び第23号証)。 イ本件事故の態様は,被告が,飲酒運転及び脇見により,被告車両を対向車線を越えて走行させ,本件事故現場において,折から対向進行してきた原告車両ほか1台に,衝突させたというものであり,原告車両の運転席側の前部の損傷が最も大きく(甲第12号証),原告Aの車は,衝突の衝撃により,原告車両の走行方向左側の歩道上まで弾き飛ばされ,原告車両の運転席側フロントの右フレームが運転席方向にV字型に折れ曲がっており(甲第2号証,第12号証,第31号証),その衝撃はかなり激しかったものと考えられ,原告Aは,本件事故により,脳挫傷,下顎骨骨折,右頬骨上顎複合骨折,鼻骨骨折,顔面挫創等の傷害を負っており(原告らは,頭蓋骨骨折も生じたと主張するが,これを認めるに足りる証拠はない。),本件事故により,原告Aの脳に対する強い外力が加えられたと認めることができる。 ウ原告Aの平成11年2月23日撮影にかかるMRIフィルム(乙第6号証の4)の上から2番目の左端の画像に,左視床下部から中脳に脳挫傷の跡が認められ,H医師は,平成11年3月8日,原告Aについて,びまん性脳萎縮であると診断しており,さらに,原告Aの平成7年9月20日撮影にかかるCTスキャンフィルムの画像にも淡い高吸収域があり,この高吸収域が,上記MRI画像の病変部位 8日,原告Aについて,びまん性脳萎縮であると診断しており,さらに,原告Aの平成7年9月20日撮影にかかるCTスキャンフィルムの画像にも淡い高吸収域があり,この高吸収域が,上記MRI画像の病変部位と一致していることから,本件事故直後から,同部分に出血があったとみるのが相当であり,両者を比較すると,MRIフィルムの画像の方が脳のしわがはっきりと見え,脳溝の中の水の部分が増えていて,脳萎縮があったことが認められると診断しており(甲第4号証,第32号証,乙第6号証の4及びH医師の証言),また,I病院のJ医師も,原告Aについて,MRI検査により,左右側脳室外側深部白質,脳梁の障害が認められ,SPECT検査により,両側頭葉内側部,脳梁・帯状回部の血流量低下が認められると診断しており(甲第18号証,第19号証,第27号証及び第28号証の1ないし5),これらの事情によれば,原告Aについて,画像で脳の萎縮があったと認めることができる。 エ原告Aは,本件事故により意識を失い,2日後の平成7年9月22日に意識を回復しており(乙第5号証及びH医師の証言),原告Aは,本件事故後,意識障害が一定期間継続していたと認められる。 オ甲第10号証,第14号証,第20号証,第30号証及び原告B本人尋問の結果によれば,原告Aの性格は,家族から見て,本件事故前は,男勝りで,饒舌で,家族の食事,風呂の準備等も行い,仕事も,てきぱきと指示をして処理をし,自分で何でもはっきりと物を言い,人を引っ張っていくような性格であり,服装の好みについては,渋めのものが好きであったが,本件事故後は,引っ込み思案になり,ちょっとしたことで自分の感情を抑えることができなくなり,けんか腰になり,服装についても,原告Bが差し入れた子供服に近いような明るいものを着るようになったこと,原告 件事故後は,引っ込み思案になり,ちょっとしたことで自分の感情を抑えることができなくなり,けんか腰になり,服装についても,原告Bが差し入れた子供服に近いような明るいものを着るようになったこと,原告Aは,本件事故後の平成7年9月24日,弟の原告Cのことを覚えておらず,原告Cに対して,「これ誰」というようなことを言ったこと,原告Aは,会話の内容を次から次へと忘れていく状態であったこと,原告Aは,本件事故前から,Eが経営していた塗装会社に勤務し,養生(家具等を塗装する前に塗装しない部分,汚れてはいけない部分に紙をテープで貼る作業),会社の経理及び事務全般の仕事を行っていたが,本件事故後は,すぐ記憶がなくなり,自分が行ったことを行っていないと言ったり,E等に指示されたことだけを単純に行い,付随,関連することを行えなくなったこと,I病院での諸検査の結果,知的機能につき,言語性で「知識」,「単語」にやや低下が見られ,一般的知識及び語彙力の低下が考えられ,記憶につき,遅延再生での記憶能力低下が顕著であり,物語記憶では,全体の流れも曖昧さが見られ,視覚性再生Ⅱでは,4つの図形を書いたことも忘れていると判断され(甲第19号証),I病院のJ医師は,平成14年2月28日付け自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書(甲第18号証)において,言語性知的機能の若干の低下,言語性記憶の低下,遅延性の中等度記憶障害が認められ,前頭葉は,性格変化,判断力低下を認めると診断していることが認められ,原告Aは,本件事故後,性格や人格の変化,知能低下が顕著であるものと認められる。 カ以上からすれば,原告Aは,上記アの①ないし③を満たしており,原告Aに,本件事故により,高次脳機能障害の後遺障害が発生したと認められる。 (2)この点について,被告は,平成11年3月8日付けF カ以上からすれば,原告Aは,上記アの①ないし③を満たしており,原告Aに,本件事故により,高次脳機能障害の後遺障害が発生したと認められる。 (2)この点について,被告は,平成11年3月8日付けF病院発行の後遺障害診断書(甲第4号証)に,原告Aの記憶障害,性格変化等の記載がなく,これらの症状は,本件事故後約3年経過した後に発生したものであり,本件事故と因果関係がないと主張するが,甲第32号証及びH医師の証言によると,平成11年3月当時は,医学的には,交通事故により高次脳機能障害が発生することがあることは知っていたが,自賠責の認定があるのか否かは知らなかったこと,原告Aについて,意識障害が強かった割には,CTスキャンの画像上では所見があまりなく,原告側の訴えも,手とあごの振戦についてのことが主であり,そちらの治療に主眼をおいていたこと,F病院においては,高次脳機能障害を診断するための検査は行っていないこと,CTスキャンや通常のMRIでは,性能の限界から異常所見が写らないこともあり,H医師は,平成11年2月23日,G病院において,MRIT2*という特殊な撮影方法を選択したこと,その結果,視床下部から大脳脚にかけて脳挫傷の跡が認められたこと,上記■オのとおり,家族から見て,本件事故の前後で,原告Aの性格は変化しており,また,記憶力の低下も見られていたことが認められ,原告Aの記憶障害,性格変化等の症状は,本件事故直後から発生していたものと認めることができ,被告の主張は採用できない。 2 争点(2)(原告Aの労働能力喪失率)について(1)上記第2の1の争いのない事実等,証拠(甲第10号証,第11号証,第14号証,第30号証,乙第2号証ないし第4号証及び原告B本人尋問の結果),上記1で認定した事実及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ 1の争いのない事実等,証拠(甲第10号証,第11号証,第14号証,第30号証,乙第2号証ないし第4号証及び原告B本人尋問の結果),上記1で認定した事実及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (2)原告Aには,①右肘脱臼骨折後の右肘関節の機能障害,②右肩鎖関節脱臼後の右鎖骨の奇形障害,③右肘関節骨折に対する骨移植術に伴う腸骨骨採取による骨盤骨の奇形障害,④上下顎骨骨折による咀嚼障害,⑤顔面外傷による顔面部による醜状障害等が残存すること,症状固定日は,平成11年3月8日であること,自算会は,上記各後遺障害につき,①については,等級表第12級6号に,②については,第12級5号に,③については,第12級5号に,④については,第6級2号に,⑤醜状障害については,第7級12号にそれぞれ該当し,②及び③はいずれも第12級5号に該当するので併合する方法により第11級相当とし,これらを併合して併合第4級の適用が相当である旨認定した(甲第11号証,乙第3号証)。 原告Aは,本件事故後も,Eが経営していた塗装会社で事務と養生の仕事を行っており,電話の取次,接客等も行っているが,事務の仕事をするときに,文字を忘れたり,銀行に行くことを忘れたり,小切手を切ることを忘れたりするようになり,会話においても,滑らかに話すことができなくなり,手の震えにより(常にあるわけではない。),養生をするときに,うまくテープを貼ることができないこともあり(甲第14号証,原告B本人尋問の結果),手の震え以外は,主に高次脳機能障害による後遺障害であることが認められ,原告Aのこの点の後遺障害は,神経系統の機能又は精神に相当程度の障害を残しているもので,軽易な労務に服することにも,その種類によっては相当な困難を伴うものと推測される。 (3)原告Aには,上記1■オのと のこの点の後遺障害は,神経系統の機能又は精神に相当程度の障害を残しているもので,軽易な労務に服することにも,その種類によっては相当な困難を伴うものと推測される。 (3)原告Aには,上記1■オのとおり,高次脳機能障害があり,言語性知的機能の若干の低下,言語性記憶の低下,遅延性の中等度記憶障害等があって,性格や人格の変化,知能低下が顕著であり,これにより,神経系統の機能又は精神に相当程度の障害を残し,軽易な労務に服することにも,その種類によっては,相当な困難が伴うと推測されること,上記■のとおり,自算会は,右肘脱臼骨折後の右肘関節の機能障害で等級第12級6号に,上下顎骨骨折による咀嚼機能障害で第6級2号に,顔面外傷による顔面部の醜状障害等で第7級12号にそれぞれ該当するとしたうえ,これらを併合して併合第4級の適用が相当である旨認定していること,咀嚼障害については,それが労働意欲等に与える影響も軽視できないこと,外貌醜状については,一般には労働能力の低下をきたさないとはいうものの,原告Aは,本件事故当時32歳の女性で,醜状の部位が顔面であり,接客等において,外貌醜状が労働能力に影響するところがないとはいえないこと等の各事情が認められるのであるから,咀嚼障害や醜状障害が肉体的な運動機能に直接影響を与える程度が少ないことを考慮しても,少なくとも,原告Aは,上記の各後遺障害によって,その労働能力の80%を喪失したと認めるのが相当である。 3 争点(3)(損害額)について(1)症状固定後の治療費・将来の治療費原告らは,原告Aが,症状固定後も後遺障害による震えと痛みのために,咀嚼,会話,通常の手作業などが不可能であり,症状固定後も継続的な投薬が必要であり,少なくとも120万円以上が必要であり,また,歯牙の損傷についても,将来的にイン 後遺障害による震えと痛みのために,咀嚼,会話,通常の手作業などが不可能であり,症状固定後も継続的な投薬が必要であり,少なくとも120万円以上が必要であり,また,歯牙の損傷についても,将来的にインプラント等の特殊な調整作業が必要であり,残存歯についても定期的かつ頻回なメンテナンス,調整が必要であり,少なくとも24万円以上が必要である旨主張している。 上記第2の1の争いのない事実等,上記1及び2で認定した事実,甲第9号証の1ないし3及び弁論の全趣旨によれば,原告Aは,平成11年3月8日,後遺障害の症状が固定したが,手の震え等が残存しており,症状固定後も継続的な投薬が必要であること,歯牙損傷についても,インプラント等の特殊な調整作業及び残存歯について定期的なメンテナンス,調整が必要であることは認められるが,上記費用は,症状緩和のための治療費であること,具体的な金額が明らかでないこと等の事情を考慮すると,原告らが将来の治療費として請求する点については,後記(6)イ(後遺障害慰謝料)で考慮することにし,これを独立の損害として認めないことにする。 (2)付添看護費原告Aは,上記第2の1(4)の傷害を受けているが,その傷害の程度からみると,付添看護の必要性が認められるところ,同の(5)のとおり合計113日入院しており,1日当たりの付添看護費としては6000円が相当であるから,その合計は67万8000円となる。 (3)入通院雑費ア入院雑費原告Aは,113日の入院期間中,1日当たり,1500円の割合により,合計16万9500円の損害を被ったと認めるのが相当である。 イ通院雑費上記第2の1の争いのない事実等,上記1及び2で認定した事実及び弁論の全趣旨によれば,原告Aは,その傷害の程度から,通院の 500円の損害を被ったと認めるのが相当である。 イ通院雑費上記第2の1の争いのない事実等,上記1及び2で認定した事実及び弁論の全趣旨によれば,原告Aは,その傷害の程度から,通院のためにタクシーを利用することはやむを得なかったといえるところ,上記第2の1■のとおり354日通院しているから,1日当たりのタクシー代は2000円として,合計70万8000円の損害を被ったと認めるのが相当である。 (4)休業損害証拠(甲第14号証,第15号証の1ないし3,第16号証の1ないし6)及び弁論の全趣旨によれば,原告Aは,本件事故前から本件事故後の平成9年12月まで,1月あたり35万円の給与の支給を受けていたが,その後は減額されて,平成10年1月から同年12月まで1月あたり30万円を,平成11年1月及び2月は各月8万5000円の給与の支給を受けていたことが認められる。 以上によれば,原告Aには,平成10年1月から症状固定日である平成11年3月8日までの14月と8日の間,休業損害が発生したということができ,その額は,以下の計算式のとおり,122万0323円である。 (50000×12)+(265000×2)+(350000÷31×8)=1220323(5)後遺障害逸失利益証拠(甲第15号証の1ないし3,第16号証の1ないし6),上記第2の1の争いない事実,上記1及び2で認定した事実及び弁論の全趣旨によれば,原告Aは,本件事故当時,32歳であり,1月当たり35万円の給与の支給を受けており,1年当たり420万円の収入を得ることができていたこと,原告Aは,本件事故により,その労働能力の80%を喪失したと考えられること,原告Aの症状固定日は平成11年3月8日であり,その当時は36歳であったことが認められる。なお, を得ることができていたこと,原告Aは,本件事故により,その労働能力の80%を喪失したと考えられること,原告Aの症状固定日は平成11年3月8日であり,その当時は36歳であったことが認められる。なお,原告Aが年20万円の賞与を受けていたことを認めるに足りる客観的証拠はない。 そこで,ライプニッツ方式により中間利息を控除して,原告Aの逸失利益を計算するが,原告らは,事故日からの遅延損害金の請求もしているから,公平の観点から,後遺障害による損害についての算出は,事故日現価として行うことが相当であり,35年(67-32)のライプニッツ係数(16.3741)から,4年(36-32)のライプニッツ係数(3.5459)を控除した,12.8282をライプニッツ係数として用いる。 4200000×0.80×12.8282=43102752(6)慰謝料ア入通院慰謝料上記第2の1(5)の争いのない事実のとおり,原告Aは,本件事故により,入院113日,通院実日数354日の治療を要する傷害を負っており,また,本件事故は,被告が,飲酒運転をした上,助手席の同乗者を脇見をしたことにより,被告車両を対向車線を越えて進行させ,原告車両に衝突させたという,被告の重大な過失により発生したものであること,原告Aは,本件事故により,脳挫傷,下顎骨骨折等の重大な傷害を負い,本件事故後2日間意識を失い,医師に「覚悟して下さい。」とまで言われていたこと等を考慮すると,原告Aに対する入通院慰謝料としては,400万円をもって相当と認める。 イ後遺障害慰謝料原告Aには,上記第2の1(6)及び上記1のとおりの後遺障害が残っており,原告Aの後遺障害は,自算会により等級表併合第4級に該当すると認定されていること,上記1,2の高次脳機能障害の 謝料原告Aには,上記第2の1(6)及び上記1のとおりの後遺障害が残っており,原告Aの後遺障害は,自算会により等級表併合第4級に該当すると認定されていること,上記1,2の高次脳機能障害の内容・程度及び上記(1)で判示したところを総合考慮すると,原告Aに対する後遺障害慰謝料は1800万円をもって相当と認める。 (7)両親固有の慰謝料原告Aは,本件事故により,生死の境をさまようほどの傷害を受け,咀嚼機能障害,高次脳機能障害等の重大な後遺障害が残り,本件事故の前後では性格,人格に変化が見られ,原告Aの両親であるE,原告Bは,本件事故により,原告Aが死亡した場合にも比肩するほどの精神的苦痛を受けたものと推認することができ,E及び原告Bに対する慰謝料としては,各100万円をもって相当と認める。 (8)過失相殺被告は,原告Aが本件事故当時,シートベルトを装着しておれば,原告Aに生じた脳挫傷は避けることができ,脳挫傷による後遺障害も残すことはなかったのであり,シートベルトの不着用について,過失相殺がなされるべきである旨主張する。 しかし,乙第1号証は,本件事故から1か月後の平成7年10月20日に作成された供述調書であり,原告Aは,本件事故当時の記憶を全く失っていることからすれば,シートベルトを着用していなかったことだけを覚えているのは不自然であり,乙第1号証のかかる記載は信用することができず,他に原告Aがシートベルトを着用していなかったと認めるに足りる証拠はない。 仮に,原告Aがシートベルトを着用していなかったとしても,上記1(1)イの事故態様からすれば,原告Aの傷害,後遺症が同原告が受けたものより軽くなったと認めるまでには至らない。 したがって,被告のこの点に関する主張は採用することができず, としても,上記1(1)イの事故態様からすれば,原告Aの傷害,後遺症が同原告が受けたものより軽くなったと認めるまでには至らない。 したがって,被告のこの点に関する主張は採用することができず,また,他に原告側に過失相殺をするべき事情も見受けられないので,本件においては,過失相殺はしないこととする。 (9)損害の填補ア被告が原告Aに対し損害賠償金として619万9094円を支払ったとの事実については,当事者間に争いがない。 弁論の全趣旨によれば,上記金額には,原告Aの平成7年10月から平成8年5月までの月給35万円の休業損害及び治療費並びに交通費,タクシー代及びその他の合計28万8955円が含まれており,原告らは,本件において平成8年5月までの休業損害及び過去の治療費を請求していないので,交通費,タクシー代及びその他の28万8955円は控除の対象とすべきことになるが,その余の金額は控除の対象とならない。 イ被告は,社会保険から,原告Aに対し,合計220万6298円が支払われたと主張しているが,弁論の全趣旨によれば,これは,原告Aの過去の治療費であり,原告は,本件において過去の治療費を請求していないので,かかる金額は控除の対象とならない。 ウしたがって,原告Aの損害額から28万8955円を控除することとし,上記(2)ないし(6)の合計額6787万8575円から上記填補額28万8955円を控除するとその合計は6758万9620円となる。 (10)弁護士費用本件訴訟の難易度,審理の経過,認容額その他本件において認められる諸事情に鑑みると,本件事故と相当因果関係のある弁護士費用相当額は,原告Aについては500万円,E及び原告Bについては各10万円と認めるのが相当である。 (11)相続Eは おいて認められる諸事情に鑑みると,本件事故と相当因果関係のある弁護士費用相当額は,原告Aについては500万円,E及び原告Bについては各10万円と認めるのが相当である。 (11)相続Eは,上記(7)(10)のとおり被告に対し,110万円の損害賠償請求権を有していたところ,平成16年3月1日,死亡し,原告Bが2分の1の割合(55万円)で,原告A,原告C,原告Dが,それぞれ6分の1の割合(18万3333円)でこれを承継取得した。 4 したがって,原告らの請求は,原告Aにつき損害賠償金7277万2953円,原告Bにつき損害賠償金165万円,原告Cにつき損害賠償金18万3333円,原告Dにつき損害賠償金18万3333円,及びこれらに対する不法行為の日である平成7年9月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 第4 以上によれば,原告らの請求は上記の限度で理由があるから,その限度で認容し,その余は棄却することとし,訴訟費用の負担について民事訴訟法64条本文,61条を適用し,仮執行宣言につき同法259条1項を適用して,主文のとおり判決する。 福岡地方裁判所第6民事部裁判長裁判官杉山正士裁判官川﨑聡子裁判官森中剛
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