主文 1 本件各控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は、控訴人らに対し、各100万円及びこれに対する令和3年4月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事実関係等(以下、略称〔初出時にゴシック体で表記する。〕の使用は、特に断らない限り、原判決の例による。) 1 事案の要旨本件は、法律上の性別を同じくする者との間で法律婚制度を利用することを希望する控訴人らが、民法及び戸籍法の諸規定(本件諸規定)が現行の法律婚制度を利用できる者を法律上異性の者同士(以下、単に「異性の者同士」といい、法律上の性別を同じくする者同士を単に「同性の者同士」という。)に限定しているのは、日本国 憲法(以下「憲法」という。)24条1項、2項、14条1項に適合しておらず、これらの条項に違反する憲法違反があるにもかかわらず、被控訴人が、正当な理由なく長期にわたって、同性の者同士の婚姻を可能とする立法措置を講ずるべき義務を怠っていることが国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受けるなどと主張して、被控訴人に対し、同項に基づき、慰謝料各100万円及びこれらに対する訴状送 達の日である令和3年4月13日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原審は、控訴人らの請求をいずれも棄却したところ、控訴人らがこれを不服として控訴した。 2 前提事実、争点及びこれに関する当事者の主張 次のとおり原判決を補正し、3項において、当審における控訴人らの補充主張を加 えるほか、原判決「事実及び理由」第2の1及び2に記載の 2 前提事実、争点及びこれに関する当事者の主張 次のとおり原判決を補正し、3項において、当審における控訴人らの補充主張を加 えるほか、原判決「事実及び理由」第2の1及び2に記載のとおりであるから、これを引用する(ただし、「同性カップル等」及び「異性カップル」は、それぞれ「同性の者同士のカップル」及び「異性の者同士のカップル」と読み替える。以下、上記引用に係る前提事実を原判決「事実及び理由」第2の1の項目番号を用いて「前提事実⑴」、上記引用に係る控訴人らの主張を原判決同第2の2の項目番号を用いて「控訴 人らの主張⑴ア」のように引用する。)。 (原判決の補正)⑴ 原判決4頁14行目冒頭から24行目末尾までを次のとおり改める。 「イ性的指向(sexualorientation)とは、人の恋愛・性愛の対象が、異性若しくは同性のいずれに向くのか、双方に向くのか、又はそもそも いずれにも向かないのかといった方向性を指す。 この性的指向は、①異性に向かう場合、②同性に向かう場合、③両性(双方)に向かう場合、④性別が自身にとって重要でない場合、⑤どこにも向かない場合があるとされ、上記①~④の性的指向を有する者は、それぞれ順次、①「異性愛者」、②「同性愛者」、「ゲイ」(身体的性別が男性の場合)又は「レズビアン」(身 体的性別が女性の場合)、③「両性愛者」、「バイセクシャル」、④「全性愛者」、「パンセクシャル」と呼ばれている。 また、ゲイ、レズビアン、バイセクシャル、パンセクシャル及びトランスジェンダーを併せて「性的少数者」と呼ぶことがあり、それぞれの英語表記の頭文字をとって、「LGBT」と呼ぶことがあるほか、「LGBT」だけでは言い表せな い人々を含める趣旨で「Q」を末尾に付した「LGBTQ」と呼ぶこと 数者」と呼ぶことがあり、それぞれの英語表記の頭文字をとって、「LGBT」と呼ぶことがあるほか、「LGBT」だけでは言い表せな い人々を含める趣旨で「Q」を末尾に付した「LGBTQ」と呼ぶことがある。 (甲A4の1・2、24、34、134、578)」⑵ 原判決5頁1行目末尾に改行して次のとおり加える。 「エ電通ダイバーシティ・ラボ(株式会社電通の一組織)、株式会社LGBT総合研究所(博報堂DYグループ)及び日本労働組合総連合会が平成27年又は平成28 年に行った各種調査によれば、日本における性的少数者の人口規模は、4.9%から 7.6%までとされており、これによれば、単純に令和5年5月の日本の総人口比で試算しても、少なくとも約600万人から約940万人までの性的少数者が、日本で生活していることになる(甲A578、579)。」 3 当審における控訴人らの補充主張当審において控訴人らは、次のとおり補充主張をした(以下、次の項目番号を用い て「控訴人らの補充主張⑴ア」のように引用する。)。 ⑴ 主たる主張次のア~ウのとおり、憲法24条1項、2項、14条1項は、①同性の者同士に対し、その親密な関係を「婚姻」として保護する制度、すなわち、婚姻制度の利用を保障し、かつ、②そのような婚姻制度として本件諸規定に基づく現行の法律婚制度の利 用を保障しているのであるから、本件諸規定は、同性の者同士に対し、現行の法律婚制度の利用を認めていない点において、憲法の上記各条項に適合せず、これらの条項に違反する憲法違反がある。 ア憲法24条1項適合性に関する主張憲法24条1項は、2項とともに、男女差別的で取り分け女性の婚姻の自由を制限 していた明治民法下における制約を排し、現行憲法の基本原理である「個人の尊厳」及び 法24条1項適合性に関する主張憲法24条1項は、2項とともに、男女差別的で取り分け女性の婚姻の自由を制限 していた明治民法下における制約を排し、現行憲法の基本原理である「個人の尊厳」及び「法の下の平等」を婚姻や家族制度においても徹底させることを目的として制定された。 同性の者同士に関しては、憲法制定当時、婚姻をし得る主体としては考えられていなかったとしても、憲法制定以降の科学的知見や社会規範の変化等に伴い、現在で は、そのような考えの背後にあったいわゆる「異性愛規範」は根本的に否定され、異性愛やシスジェンダー以外の性の在り方も人の性の在り方として自然なものであると考えられるようになった。さらに、性自認又は性的指向(以下「性自認等」という。)に基づく差別は許されないという規範が法規範として確立された。それに伴い、同性の者同士も、異性の者同士と同様、「婚姻の本質」を満たし得る関係を築くことがで きると認識されるようになった。また、婚姻制度には次世代を育成し保護するという 機能があるが、婚姻するすべての異性の者同士がこの機能を果たすわけではない。他方、子を育てることを選択した場合、同性の者同士も異性の者同士と同様に親としての責任を果たすことができる。このように、同性の者同士は、「婚姻の本質」を満たす関係を形成し得る点、次世代の育成保護という機能も果たし得る点で何ら異性の者同士と本質的な違いは存在しない。 そうである以上、憲法24条1項が定められたそもそもの趣旨に照らし、同項を今日的に解釈するならば、「両性」、「夫婦」との文言は「両当事者」に読み替えられ、同項は、法律上男女の関係にある者のみならず、性別を問わず、人と人との間の自由な結びつきとしての婚姻を保障する規定と解するのが論理的帰結である。したがって、 」との文言は「両当事者」に読み替えられ、同項は、法律上男女の関係にある者のみならず、性別を問わず、人と人との間の自由な結びつきとしての婚姻を保障する規定と解するのが論理的帰結である。したがって、同項は、同性の者同士にも直接適用される。仮に、同項がその文言上同性の者同 士に直接適用されない場合であっても、同項が定められたそもそもの趣旨に照らせば、同項を類推適用すべきである。 そして、憲法24条1項が同性の者同士にも適用される以上、同項の要請を受けて整備された現行の法律婚制度の利用を同性の者同士に対しても保障することが当然に要請される。 したがって、本件諸規定は、同性の者同士に対し現行の法律婚制度の利用を一切認めていない点において憲法24条1項に違反する。 イ憲法24条2項適合性に関する主張憲法24条2項は、「配偶者の選択」を含め「婚姻及び家族」に関する法律が憲法の基本原理である「個人の尊厳」及び「法の下の平等」に立脚して制定されなければ ならないことを定めている。また、文言との関係でも同条1項と比較してその適用範囲を柔軟に解し得る。したがって、同条2項は、仮に、その文言上、同条1項が直接適用されない場合でも、同条2項が直接又は類推適用され、同項独自の審査が要請されることになる。 そして、望む相手と婚姻し、家族としての法的身分を形成し、ふさわしい法的効果 を付与されること、国の制度により公的な公証を受けることは重要な人格的な利益 であり、性自認等という本人が容易に変更することができない事由によって、そのような重大な人格的利益が制約されていることなどからすれば、憲法24条2項適合性については厳格な基準で審査すべきである。 憲法24条2項の本来の趣旨は「婚姻の本質」を満たす関係に対し婚姻の自由や婚姻 うな重大な人格的利益が制約されていることなどからすれば、憲法24条2項適合性については厳格な基準で審査すべきである。 憲法24条2項の本来の趣旨は「婚姻の本質」を満たす関係に対し婚姻の自由や婚姻制度の利用を保障することにあること、同性の者同士も「婚姻の本質」を満たす関 係を築くことができること、親としての責任も果たし得ること、憲法制定後の科学的知見の変化、社会状況等の変化により、異性愛やシスジェンダー以外の性の在り方も人の性の在り方として自然なものであると考えられるようになっていること、性自認等に基づく差別は許されないという法規範が確立されたこと、同性の者同士も異性の者同士と同等に扱うべきであるという認識が一般化していること、婚姻制度の 利用が認められないことにより同性の者同士の重要な人格的利益が制約されていること、その影響範囲は広いことなどからすれば、同性の者同士に対し婚姻制度の利用を認めないことは、同条2項の「個人の尊厳」に違反する。 他方、伝統的な価値観や反対意見の存在などは、同性の者同士の婚姻を認めることによって侵害される反対利益が想定し難いことなどからすれば、同性の者同士に対 し婚姻制度の利用を認めないことが憲法24条2項の「個人の尊厳」に違反しないとの結論を正当化するだけの事情とはなり得ない。 原判決は、諸外国で婚姻類似の制度としてPACSや法定同棲、婚姻機能非等価型パートナーシップ制度、婚姻機能等価型パートナーシップ制度を導入した例があることを念頭に、婚姻制度の利用を認めるか、婚姻類似の制度にとどめるかは国会の裁 量であると述べるが、婚姻類似の制度は憲法24条2項の要請する「個人の尊厳」に立脚したものとはなり得ない。現行の法律婚制度の内容は、婚姻の当事者が異性の者同士であることを前提とした用語につ 量であると述べるが、婚姻類似の制度は憲法24条2項の要請する「個人の尊厳」に立脚したものとはなり得ない。現行の法律婚制度の内容は、婚姻の当事者が異性の者同士であることを前提とした用語について、同性の者同士も含む用語に修正するといった技術的な手当てをしさえすれば、同性の者同士にもそのままの内容で適用可能である。同性の者同士については別の婚姻制度とすることは、同性の者同士は異性 の者同士と同等ではなく、劣った存在であるというレッテルを貼ることになり、これ は「個人の尊厳」から許されない。 したがって、憲法24条2項は、現行の法律婚制度に同性の者同士を包摂することを要請しているのであり、同性の者同士に対し現行の法律婚制度の利用を認めない本件諸規定は同項に違反する。 ウ憲法14条1項適合性に関する主張 本件諸規定の下では、異性の者同士は婚姻することができ、それによる利益を当然に享受しているのに対し、同性の者同士はそれができず、かかる利益を剥奪されている。原判決は、憲法14条1項に違反しない理由として、「憲法24条1項は、(少なくとも現段階において)異性の者同士の婚姻(の自由)のみを保障していると解される以上、それに従った区別的取扱いが、同じ法規内の別の条項である憲法14条1 項に反すると解することはできない」とするが、憲法24条1項は婚姻の保障が及ぶ対象を異性の者同士に限定することを意図した規定ではなく、「個人の尊厳」、「法の下の平等」という基本原理を定める憲法14条1項などによる複線的な保障が及ぶことを否定していない。本件では、重要な人格的利益について、本人による選択又は変更が困難な属性による区別取扱いが問題となっているのであるから、憲法14 条1項適合性が厳しく問われるのは当然であり、憲法24条 いない。本件では、重要な人格的利益について、本人による選択又は変更が困難な属性による区別取扱いが問題となっているのであるから、憲法14 条1項適合性が厳しく問われるのは当然であり、憲法24条が適用されるか否かにかかわらず、本件区別取扱いには憲法14条1項違反の問題が生じる。そして、同性の者同士の婚姻を認めることによって侵害される反対利益が想定し難いことなどからすれば、「伝統的な婚姻のとらえ方」などは本件区別取扱いを正当化する合理的根拠になり得ない。 本件区別取扱いが性自認等や法律上の性別という自己の意思によって容易に選択・変更できない要素に基づいてされている以上、憲法14条1項後段列挙事由に該当することを踏まえた審査がされなければならない。 同性の者同士は、婚姻制度を利用できないために、パートナーとの関係性を正当なものとして承認されず、社会を構成する「家族」として扱われない。身分関係の公証 やそれに応じた法的地位が同性の者同士に与えられないということは、すなわち、同 性の者同士が婚姻した異性の者同士と同等の社会的承認(国が認めた「正当な関係性」であるとの社会的承認)を得られないことを意味し、それ自体重大な不利益である。また、同性の者同士は、婚姻による個別の法的効果を一切享受することができない。さらに、社会生活上も、例えば医療関係の診療情報の提供や手術の同意など、法的な意味での「配偶者」や「家族」でないことに伴って異性の者同士と異なる取扱い がされている。このように、同性の者同士は、婚姻制度を利用できないことにより様々な不利益を被っており、その程度は極めて深刻である。 加えて、現行憲法制定以降の社会状況等の変化に伴い性自認等に関する認識が根本的に変化し、異性愛やシスジェンダー以外の性の在り方も人の性の在り 様々な不利益を被っており、その程度は極めて深刻である。 加えて、現行憲法制定以降の社会状況等の変化に伴い性自認等に関する認識が根本的に変化し、異性愛やシスジェンダー以外の性の在り方も人の性の在り方として自然なものであると考えられるようになったこと、更に進んで、性自認等に基づく差 別があってはならないとの規範が国内で確立し、婚姻制度や家族制度に関して同性の者同士も異性の者同士と同等に扱うべきであるという認識が一般化していること、といった事情が存在する。 以上に鑑みれば、本件区別取扱いに合理的根拠を見出す余地はない。 「婚姻の本質」を満たす関係を築くことができ、親としての責任も果たし得る点に おいて、異性の者同士と同性の者同士との間に本質的な差異がなく、同性の者同士は異性の者同士と同等に社会的に尊重されなければならないこと、個別の規定の適用において支障はないことなどに鑑みれば、本件区別取扱いの憲法14条1項違反の状態を解消するに当たっては、同項の要請として現行の法律婚制度への包摂が求められる。 したがって、同性の者同士に対し、現行の法律婚制度の利用を認めない本件諸規定は憲法14条1項に違反する。 ⑵ 従たる主張1憲法24条1項は、現時点において、同性の者同士に対し婚姻の自由を保障している。また、同条2項は、同条1項が同性の者同士に対し適用されるか否かにかかわら ず、同性の者同士が利用可能な婚姻制度の構築を要請している。さらに、「婚姻の本 質」を満たすという点や親としての責任も果たし得る点において異性の者同士と本質的な違いがないにもかかわらず、異性の者同士に対してのみ婚姻制度の利用を認め、同性の者同士に対してはこれを認めないという本件区別取扱いに憲法14条1項の観点から合理性は認められない。 した と本質的な違いがないにもかかわらず、異性の者同士に対してのみ婚姻制度の利用を認め、同性の者同士に対してはこれを認めないという本件区別取扱いに憲法14条1項の観点から合理性は認められない。 したがって、同性の者同士に対し、現行の法律婚制度を含む婚姻制度の利用を認め ない本件諸規定又は婚姻制度の利用を保障する立法の不存在は憲法の上記各条項に違反する。 ⑶ 従たる主張2憲法24条1項及び2項は、同性の者同士に対し、婚姻制度を含む家族制度の利用を保障し、立法府に対し制度の構築を義務付けている。また、異性の者同士にのみ家 族制度の利用を認め、同性の者同士に対してはこれを認めないという本件区別取扱いは憲法14条1項の観点から合理性が認められない。 したがって、同性の者同士に対し、現行の法律婚制度を含む家族制度の利用を何ら認めない本件諸規定又は家族制度の利用を保障する立法の不存在は憲法の上記各条項に違反する。 ⑷ 国家賠償法上の主張前記⑴~⑶のとおり、本件諸規定には憲法違反があるところ、それにもかかわらず、国会議員が本件諸規定の改廃をはじめとして憲法違反を是正するために必要な立法行為を行っていないという立法不作為は、次のア・イのとおり、国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受ける。 ア違憲の明白性について本件では、同性の者同士が婚姻できず、家族としての法的保障が何らない状態に置かれていることにより、「婚姻や家族の形成と結びついた重要な人格的利益が合理的な理由なく制約されていること」や「当該状況を是正するために何らかの立法措置をとることが必要不可欠であること」が国会にとって明白であれば、違憲の明白性の要 件が満たされる。 遅くとも次の各時点において、憲法違反が存在することは国会にとって明白 らかの立法措置をとることが必要不可欠であること」が国会にとって明白であれば、違憲の明白性の要 件が満たされる。 遅くとも次の各時点において、憲法違反が存在することは国会にとって明白となっていた。 (ア) 平成20年平成9年の府中青年の家東京高裁判決に始まり、2008年(平成20年)12月の「性的指向と性自認に関する国連宣言」(甲A279。以下、特に断らない限り、 枝番を含む。)の採択に至るまでの間の一連の出来事に示されるように、国会は、遅くとも平成20年までに、国内法上も、国際法上も、性自認等に基づく権利利益の制約やそれらを理由とする差別が許されないことを明確に認識していた。 (イ) 令和元年6月令和元年6月には、憲法の基本原理である「個人の尊重」、「法の下の平等」から 要請されるとの認識を前提に、野党から同性の者同士の婚姻を可能とするための民法の改正法案が国会に提出された。 (ウ) 令和5年6月令和5年6月には、立法府によって性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律(以下「LGBT理解増進法」とい う。)が制定され、日本の法体系上、性的指向やジェンダーアイデンティティに基づく差別が許されないこと、何よりも、性的少数者がかけがえのない個人として尊重されることが明確化された。 (エ) 本件口頭弁論終結までの一定の時点本件では、令和5年6月以降も憲法違反が国会にとって明白であることを基礎付 ける事実が断続的に生じており、これらの事実が積み重なることにより、憲法違反の明白性がより増している。 イ長期間の懈怠について関連訴訟の各判決が違憲と指摘する状態により、自己の性自認等に即した生活を送るという重要な人格的利益を剥奪されるという重大な権 より、憲法違反の明白性がより増している。 イ長期間の懈怠について関連訴訟の各判決が違憲と指摘する状態により、自己の性自認等に即した生活を送るという重要な人格的利益を剥奪されるという重大な権利・利益の侵害が生じて いること、その影響範囲が広いこと、婚姻を望む同性の者同士には高齢の者や病気を 抱える者もいることからすれば、喫緊の課題としての取組が求められる。 他方、かかる憲法違反の状況を是正するに当たっての立法技術的な困難や、法改正を困難にする特殊な事情は存在しない。法案も野党から少なくとも2度にわたって提出されているにもかかわらず、政府与党が何ら合理的な理由なく対応を拒み、野党提出の法案も審議にすら入らず廃案を繰り返している。その結果、国会では憲法違反 を是正するための手続の建設的かつ実質的な検討に入ることすらされない状況が続いており、近い将来そのような状況が改善される見込みもない。 これらの事情を総合考慮すれば、本件においては、どれ程遅くとも本件訴訟の口頭弁論終結時では、立法府に許容された合理的期間を超えており、長期間の懈怠が認められる。 第3 認定事実前記引用に係る前提事実に加え、後掲各証拠及び弁論の全趣旨並びに公知の事実によれば、次の各事実が認められる(以下、次の項目番号を用いて「認定事実⑴ア」のように引用する。)。 1 性自認等に関する医学的・社会的評価の変遷 ⑴ 性自認についてア医学的に精神疾患と評価されていた時代性自認が身体的性別と一致しないトランスジェンダー(前提事実⑴)は、かつては医学的に精神疾患と評価され、精神科領域において、1960年(昭和35年)頃までは、主として、性自認の方を身体的性別に一致させることを目的とする治療(精神 分析療法や電気ショック嫌悪 かつては医学的に精神疾患と評価され、精神科領域において、1960年(昭和35年)頃までは、主として、性自認の方を身体的性別に一致させることを目的とする治療(精神 分析療法や電気ショック嫌悪療法など)が行われていた。しかし、このような治療は、ほとんど成功することがなく、同年頃以降からは、外科領域における技術の進歩や内分泌内科領域における医学的知見の進展を背景に、逆に身体的性別の方を性自認に一致させることを目指す治療方針が登場した。(甲A24)精神科領域において世界的に参照される権威ある文献に、アメリカ精神医学会発 行の「精神障害の診断と統計マニュアル」(以下「DSM」という。)がある。このD SMでは、1980年(昭和55年)発行の第3版(以下「DSM-Ⅲ」といい、その後の版についてもローマ数字を用いて同様に略称する。)において、初めて「性同一性障害」という診断名を使用し、トランスジェンダーのうち性自認と身体的性別の不一致に違和感が強い場合(前提事実⑴ア)と定義した(甲A24、34、297、300)。 精神科領域においては、世界保健機構(以下「WHO」という。)が発表している「国際疾病分類(以下「ICD」という。)も、世界的に参照される権威ある疾病分類である。このICDでも、1990年(平成2年)にWHOが承認した第10版(以下「ICD-10」といい、その後の版についても数字を用いて同様に略称する。)では、「精神及び行動の障害」の下位分類として「性同一性障害」(F64)という項 目が設けられていた(甲A24、33の2)。 イ医学的評価が見直された時代2013年(平成25年)発行のDSM-Ⅴでは、「性同一性障害」という名称が「性別違和」という名称に変更された(甲A24、300)。 また、IC 、33の2)。 イ医学的評価が見直された時代2013年(平成25年)発行のDSM-Ⅴでは、「性同一性障害」という名称が「性別違和」という名称に変更された(甲A24、300)。 また、ICDでも、2019年(令和元年)に発表され、2022年(令和4年) に発効となったICD-11では、「性同一性障害」という名称が「性別不合」(genderincongruence)という名称に変更され、この性別不合は、「精神及び行動の障害」の下位分類から外れ、「性の健康に関連する状態」の下位分類に位置付けられて、精神疾患とはみなされなくなった(脱病理化。甲A24)。 ウ我が国の場合 我が国では、伝統的に、歌舞伎における女形の例のように、トランスジェンダーが、芸能の分野において社会的に受け入れられ、文化の担い手としての重要な役割を担っていた。しかし、大正期において、同性愛が「変態性欲」として紹介され、異性愛が自然で同性愛は病理である旨の認識が社会に浸透した結果、トランスジェンダーは、社会的に抑圧されることになった(甲A277、299、304)。 1990年(平成2年)代頃から、DSMで使われていた「性同一性障害」という 用語が広く普及し、日本精神神経学会は、平成9年5月、「性同一性障害に関する答申と提言」の中で「性同一性障害の診断と治療のガイドライン」(以下「本件ガイドライン」という。)を発表した。これ以降、我が国においても、これに準拠した治療の取組が広まった(甲A24、28)。本件ガイドラインに基づく治療は、性自認を自らの意思によって変更することは困難という理解(前提事実⑴ウ)の下、性同一性 障害を有する者の社会適応度を高めて生活の質を向上させることを目的とするものであった。 日本精神神経学会は、本件ガ 自らの意思によって変更することは困難という理解(前提事実⑴ウ)の下、性同一性 障害を有する者の社会適応度を高めて生活の質を向上させることを目的とするものであった。 日本精神神経学会は、本件ガイドラインに4回にわたる改訂を加えてきたが、令和6年8月、「性同一性障害」に対する世界的な医学的評価の変更(前記イ)や、令和5年の最高裁決定(最高裁令和2年(ク)第993号同5年10月25日大法廷決 定・民集77巻7号1792頁。以下「令和5年最高裁決定」という。その要旨は後記2⑶ウのとおり。)などを踏まえ、ガイドラインの名称を「性別不合に関する診断と治療のガイドライン(第5版)」と改訂した。 ⑵ 性的指向についてア医学的に精神的病理と評価された時代 欧米諸国では、キリスト教の影響により、同性間の性行為が中世期に宗教上の罪とされ、近代期においても法的処罰の対象とされていた。また、19世紀後半には、同性愛者を精神的病理とする主張がされ、同性愛者は、正常な人の在り方から逸脱した、治療すべき対象であるとの認識が、欧米諸国の社会に浸透した(甲A140)。 1968年(昭和43年)発行のDSM-Ⅱでは、「性的逸脱 SexualD eviations」の項目に同性愛を含む記載がされており、1979年(昭和54年)発行のICD-9では、「性的偏倚と性的障害」の項に同性愛が精神的疾患として記載されていた(甲A30、32)。 イ医学的評価が見直された時代20世紀半ば以降、アメリカにおいて、同性愛自体を病理とする認識に根拠がない との実証的な研究が積み重ねられ、アメリカ精神医学会は、1973年(昭和48 年)、同性愛そのものを精神障害として扱わないことを決定した。1974年(昭和49年)発行のDSM-Ⅱ改訂版では、 との実証的な研究が積み重ねられ、アメリカ精神医学会は、1973年(昭和48 年)、同性愛そのものを精神障害として扱わないことを決定した。1974年(昭和49年)発行のDSM-Ⅱ改訂版では、同性愛そのものは精神疾患ではないが、本人がそのことで苦悩している場合は、精神疾患とするという「性的指向障害」(sexualorientationdisturbance)という疾患概念となり、1980年(昭和55年)発行のDSM-Ⅲでは、「自我異質性同性愛 ego -dystonichomosexuality」と名称を変えた。そして、1987年(昭和62年)発行のDSM-Ⅲ改訂版では、自我異質性同性愛も削除され、同性愛に関する記載が削除された。また、1990年(平成2年)発行のICD-10でも、同性愛が記載されないこととなり、同性愛はいかなる意味でも治療の対象とならない旨が明記された。(甲A7、24、30~33) ウ我が国の場合我が国では、古来、男性同性愛が存在し、近代期にも、明治初期の数年間を除けば、同性間の性行為を処罰する法律は存在しなかった。しかし、大正期において、同性愛が「変態性欲」として紹介され、異性愛が自然で同性愛は病理である旨の認識が社会に浸透した。この認識は、戦後にも引き継がれ、第2版(昭和44年)から第3版(昭 和58年)までの広辞苑では、同性愛は、「同性を愛し、同性に性欲を感ずる異常性欲の一種」という記載がされていた。 一方、現在、公刊されている広辞苑第7版では、「エル・ジー・ビー・ティー【LGBT】」という用語が登載され、その意味について、「①レズビアン・ゲイ・バイセクシャルおよびトランスジェンダーを指す語。②広く、性的指向が異性愛でない人々 や、性自認が誕生時に付与された性別と異なる人 という用語が登載され、その意味について、「①レズビアン・ゲイ・バイセクシャルおよびトランスジェンダーを指す語。②広く、性的指向が異性愛でない人々 や、性自認が誕生時に付与された性別と異なる人々」という解説がされ、上記「異性愛」という用語について「異性の者に性的にひかれること」という解説がされ、それが「同性愛」という用語と対義語であることが示され、「同性愛」という用語について「同性の者に性的にひかれること」という解説がされ、それが「異性愛」の対義語であることが示されている。(甲A140、141、広辞苑第7版) ⑶ 小括 以上のところによれば、性自認等の多様性は、今日、医学的・社会的に承認され、性自認等は、生来的な人の個性と観念されていると認められる。 2 性自認等を理由とする差別禁止の取組⑴ 国際機関等の取組アいわゆるジョグジャカルタ宣言 国際人権法ならびに性的指向および性別自認に関する専門家国際委員会は、2006年(平成18年)、いわゆるジョグジャカルタ原則(性的指向および性自認に関連する国際人権法の適用に関する原則)を採択した。これは、参加国に対して拘束力を有するような国際法上の規範ではないものの、前文に、世界のあらゆる場所に住む人々が、性自認等による暴力、いやがらせ、差別、排除、烙印及び偏見の対象となっ ているなどの現状認識を掲げ、29の原則を挙げて、既存の人権規定が性自認等に基づき差別されることなく適用可能であるとするものであり、性自認に対する医療処置を強制されないこと、性自認等にかかわらず、家族を形成する権利を有することが明らかにされている。(甲A38の1~3)イ国際連合による「性的指向と性自認に関する国際連合宣言」 国際連合は、2008年(平成20年)、総 わらず、家族を形成する権利を有することが明らかにされている。(甲A38の1~3)イ国際連合による「性的指向と性自認に関する国際連合宣言」 国際連合は、2008年(平成20年)、総会において「性的指向と性自認に関する国際連合宣言」(甲A279の1・2)を採択した。同宣言は、性自認等にかかわらず、人権が全ての人に平等に適用されることを求める無差別の原則を再確認すること、全ての加盟国と関係国際人権機構に対し、性自認等にかかわらず、全ての人の人権の促進と保護に努めるよう求めることなどを宣言したものであり、我が国は、そ の共同提案国の一つである。 ウ国際連合LGBTIコアグループの設立2008年(平成20年)には、11の国と地域、2つの国際NGOから構成される非公式の地域横断的グループである「国際連合LGBTIコアグループ」が設立された。これは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー及びイン ターセックス(LGBTI)の人々の人権と基本的自由に対する普遍的な尊重を確実 にすることに取り組むことを目的とするものである。我が国は、その構成国の一つである。(甲A278の1・2、358)エ国連人権理事会の取組国際連合には、人権と基本的自由の促進と擁護に責任を持つ主要な政府間機関として国連人権理事会(以下、単に「人権理事会」という。)が、国際連合の人権活動 に主要な責任を持つ国連人権高等弁務官(以下、単に「高等弁務官」という。)が、それぞれ置かれている。人権理事会は、人権分野への対処能力強化を目的として、2006年(平成18年)、それまでの人権委員会に代えて設立された機関であり、国際連合の加盟国193か国に対し、4年半ごとに人権状況に関するピアレビュー(相互審査)を受けることを求 化を目的として、2006年(平成18年)、それまでの人権委員会に代えて設立された機関であり、国際連合の加盟国193か国に対し、4年半ごとに人権状況に関するピアレビュー(相互審査)を受けることを求める普遍的定期審査の制度(UniversalPer iodicReview。以下「UPR」という。)を構築している。また、高等弁務官は、事務総長の指示と権限の下、その活動を人権理事会と総会に報告するものとされている(国際連合ホームページ、外務省ホームページ)。 この人権理事会は、2011年(平成23年)、世界の全ての地域での性自認等を理由とした暴力や差別に重大な懸念を表明し、高等弁務官に対し、各種取組を要請す る決議を採択した。同決議には23か国が賛成し、その賛成国には我が国も含まれていた(甲A39の1・2)。 また、人権理事会は、2014年(平成26年)10月、「人権、性的指向及び性自認」に関する決議(A/HRC/RES/27/32)を採択した。これは、世界のあらゆる地域における性自認等を理由として個人に対して行われる暴力及び差別 行為に重大な懸念を表明し、性自認等に基づく暴力及び差別との闘いにおける国際的、地域的及び国家的レベルでの前向きな動向を歓迎することなどを内容とするものであり、我が国も賛成した(甲A286の1・2)。 高等弁務官は、2015年(平成27年)5月、人権理事会に提出した報告書(甲A277の1・2)において、加盟国に対し、性自認等に基づく個人に対する差別に 対する方策の一つとして、同性カップル及びその子どもを法的に認定し、結婚した パートナーに従来与えられてきた便益(給付、年金、課税及び相続に関連するものを含む。)が差別なく与えられることを保障することを勧告した。 ただし、人権理事 の子どもを法的に認定し、結婚した パートナーに従来与えられてきた便益(給付、年金、課税及び相続に関連するものを含む。)が差別なく与えられることを保障することを勧告した。 ただし、人権理事会では、2009年(平成21年)、2011年(平成23年)、2014年(平成26年)に、LGBTの人権保障に反対する趣旨の決議も採択されている(甲A280の1・2、282の1・2、285の1・2)。 ⑵ 我が国の状況に対する勧告ア UPR人権理事会のUPRでは、国際連合の全ての加盟国が3回の審査を終了している(国際連合ホームページ)。 我が国の報告に対しては、2008年(平成20年)の第1回審査(甲A274の 1・2)、2012年(平成24年)の第2回審査(甲A275の1・2)及び2017年(平成29年)の第3回審査(甲A276の1・2)の過程で、複数の他の加盟国が、性自認等に基づく差別の撤廃に向けた措置を講ずるよう勧告し、上記第3回審査の過程では、いくつかの加盟国が、同性の者同士の婚姻制度の公式な承認を国レベルに拡大するなど、地方自治体及び民間企業が性自認等に基づく差別を撤廃する ための努力を促進するよう勧告した(具体的には後記4⑵ア)。 イ自由権規約委員会国際人権規約は、国際連合が、1966年(昭和41年)の国連総会において、世界人権宣言の内容を条約化したものである。この規約は、自由権規約と社会権規約とから成り、1976年(昭和51年)に発効し、我が国は1979年(昭和54年) にこれを批准した(外務省ホームページ)。 自由権規約の締約国は、同規約40条1項(b)に基づき、同規約において認められる権利の実現のためにとった措置及びこれらの権利の享受についてもたらされた進歩に関する報告を提出し、同規 ームページ)。 自由権規約の締約国は、同規約40条1項(b)に基づき、同規約において認められる権利の実現のためにとった措置及びこれらの権利の享受についてもたらされた進歩に関する報告を提出し、同規約に基づいて設立された委員会(以下「自由権規約委員会」という。)がこれを検討し、委員会の報告及び適当と認める一般的な性格を有 する意見を締約国に送付するものとされている(同条4項)。 自由権規約委員会は、2008年(平成20年)、我が国が提出した報告書に対する意見において挙げた主要な懸案事項と勧告の1つとして、公営住宅の入居要件及び配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律の適用等において、同性カップルが排除される等の差別があることにつき懸念を示し、法改正を検討するよう勧告した(甲A100の1・2)。 また、自由権規約委員会は、2014年(平成26年)、我が国が提出した定期報告に係る見解において、主要な懸案事項と勧告の1つとして、性自認等を含むあらゆる理由に基づく差別を禁止する包括的な反差別法を採択することなどを勧告した(甲A101の1・2)。 さらに、自由権規約委員会は、2022年(令和4年)、我が国が提出した定期報 告に対する総括所見において、主要な懸案事項と勧告の1つとして、性自認等に基づく差別を禁止する明示的な法律が存在しないこと、LGBTの人々が、特に公営住宅、戸籍上の性別の変更、法律婚へのアクセス及び矯正施設における処遇において差別的な扱いに直面しているとの報告に懸念を表明し、前回の勧告に沿い、同性の者同士が公営住宅へのアクセス及び同性の者同士の婚姻を含む自由権規約に定められて いる全ての権利を享受することができるよう勧告した(甲A427、428)。 ⑶ 我が国の取組ア特例法の制定 同士が公営住宅へのアクセス及び同性の者同士の婚姻を含む自由権規約に定められて いる全ての権利を享受することができるよう勧告した(甲A427、428)。 ⑶ 我が国の取組ア特例法の制定我が国では、人がその自認する性別と同一の法律上の取扱いを受けるために性別の変更を可能とする制度として、平成15年、「性同一性障害者の性別の取扱いの特 例に関する法律」(以下「特例法」という。)が成立した。 特例法は、「生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別であるとの持続的な確信を持ち、かつ、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって、そのことについてその診断を的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一般に認められてい る医学的知見に基づき行う診断が一致しているもの」を「性同一性障害者」と定義付 け(2条)、一定の要件の下で家庭裁判所が性別の取扱いの変更の審判をすることができることとした(3条1項。なお、同項4号は、その要件の一つとして「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」と定めている。)。そして、その審判を受けた者は、民法その他の法律の適用について、法律に別段の定めがある場合を除き、他の性別に変わったものとみなすこととされた(4条1項)。 イ LGBT理解増進法の制定令和5年6月23日、LGBT理解増進法が公布、施行された(甲A534)。 LGBT理解推進法は、1条において「目的」の見出しの下、「この法律は、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解が必ずしも十分でない現状に鑑み、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国 民の理解の増進に関する施策の推進に関 的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解が必ずしも十分でない現状に鑑み、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国 民の理解の増進に関する施策の推進に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の役割等を明らかにするとともに、基本計画の策定その他の必要な事項を定めることにより、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性を受け入れる精神を涵養し、もって性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に寛容な社会の実現に資することを目的とする」ことを定め、3条において「基本理念」として 「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する施策は、全ての国民が、その性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、性的指向及びジェンダーアイデンティティを理由とする不当な差別はあってはならないものであるとの認識の下に、相互に人格と個性を尊 重し合いながら共生する社会の実現に資することを旨として行われなければならない。」ことを定めている。 また、LGBT理解増進法は、4条において「国の役割」の見出しの下、「基本理念にのっとり、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する施策を策定し、及び実施するよう努めるものとする。」ことを、 5条において「地方公共団体の役割」の見出しの下、「基本理念にのっとり、国との 連携を図りつつ、その地域の実情を踏まえ、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する施策を策定し、及び実施するよう努めるものとする。」ことを、それぞれ定め、さらに、6条1項において、「事 の実情を踏まえ、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する施策を策定し、及び実施するよう努めるものとする。」ことを、それぞれ定め、さらに、6条1項において、「事業主等の努力」の見出しの下、「事業主は、基本理念にのっとり、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関するその雇用する労働者の理解の増進に関し、普及 啓発、就業環境の整備、相談の機会の確保等を行うことにより性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する当該労働者の理解の増進に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する施策に協力するよう努めるものとする。」ことを定めている。 ただし、以上のようなLGBT理解増進法の定めからは、性自認等の多様性が医学的・社会的に生来的な人の個性と観念されるようになった現在(前記1⑶)でも、少なくとも令和5年時点で、国民の間に性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する十分な理解が醸成されていたとは認められない。そして、同法がその理解を醸成するために8条において政府が策定するとした基本計画は、策定された との立証がない。 ウ令和5年最高裁決定最高裁判所は、令和5年10月25日、特例法3条1項4号(生殖腺に関する要件)は憲法13条に違反する旨の令和5年最高裁決定をした。 同決定は、性同一性障害者がその性自認に従った法令上の性別の取扱いを受ける ことは、法的性別が社会生活上の多様な場面において個人の基本的な属性の一つとして取り扱われており、性同一性障害を有する者の置かれた状況に鑑みると、個人の人格的存在と結び付いた重要な法的利益というべきである旨を説示している。 ⑷ 小括以 おいて個人の基本的な属性の一つとして取り扱われており、性同一性障害を有する者の置かれた状況に鑑みると、個人の人格的存在と結び付いた重要な法的利益というべきである旨を説示している。 ⑷ 小括以上によれば、今日、医学的・社会的に人の生来的な個性と観念される性自認等 (前記1⑶)は、個人の人格的存在と結びついた重要な法的利益と観念されているこ とが認められる。 3 我が国の法律婚制度⑴ 法律婚制度の概要生物である人は、自然の摂理として、前国家的に種の保存を図り、男女の性的結合関係によって子を成し、未成熟子を養育し、世代を超えて人間社会を維持してきた。 遺伝子分野で飛躍的発展を遂げた現在の科学技術の下では、男女の性的結合関係によらない子の生殖も不可能であるとは思われないが、そのような方法による子の生殖は、現時点で広い社会的承認を受けるには至っていない。したがって、男女の性的結合関係による子の生殖は、現時点においてなお、人の種を保存し、世代を超えて人間社会を維持する上で社会的承認を受けた一般的な方法である。 婚姻の本質は、一般に、両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むことにあると理解されているが(最高裁昭和61年(オ)第260号同62年9月2日大法廷判決・民集41巻6号1423頁参照)、歴史的には、婚姻は、夫婦のみならず子の生殖と養育をも目的とした男女の結合関係として社会に実在したものであり、この夫婦・親子関係を規範によって統制する法制度とし て生まれたのが法律婚制度である。そのため、法律婚制度は、その対象として、当事者間の親密な人的結合関係全般ではなく、婚姻として社会的承認を受けた人的結合関係を想定し、伝統的には、単純な男女の性的結合関係ではなく、男女の生活共 ある。そのため、法律婚制度は、その対象として、当事者間の親密な人的結合関係全般ではなく、婚姻として社会的承認を受けた人的結合関係を想定し、伝統的には、単純な男女の性的結合関係ではなく、男女の生活共同体として子の監護養育や分業的共同生活等の維持によって家族の中核を形成するものと捉えられてきた。(乙1、2) 我が国では、明治31年公布の明治民法(同年法律第9号)の施行により、法律婚制度が確立したが、婚姻制度はそれ以前からも法令や慣習上存在し、また、法律婚制度の確立後も、大正期から第二次世界大戦に至るまでの昭和期にかけては、改正の試みがされていた。その経緯は、次のとおりである。 ⑵ 明治民法 ア明治初期の婚姻制度 明治政府は、明治4年、いわゆる廃藩置県により全国集権制度に移行するに当たり、戸籍制度を全国的に統一するため、戸籍法(明治4年4月4日太政官布告第170号。法令全書114頁)を公布した。戸籍法は、明治5年2月1日に施行され、いわゆる壬申戸籍が全国的に整備された。この壬申戸籍は、戸ごとに作成され、戸主、その父母、妻、子等を記載することとされた(第3号寄留人届書式)。そして、同年、 平民に至るまで婚姻は差し支えないものとされ、その届出は戸籍法に照らすべきこととされた(甲A161)。 明治8年には、同年12月9日附使府県宛太政官第209号達(法令全書明治8年785頁)により、婚姻は壬申戸籍に記載しない間は効力がないものとされたが、司法の分野においては、明治10年6月19日附大審院・上等裁判所及び地方裁判所宛 司法省達第46号(法令全書明治10年913頁)により、親族、近隣者及び裁判官が婚姻と同様の状況にあると認めるときには、事実婚が婚姻と同様に取り扱われることがあった。 イ明治23年公布の民 司法省達第46号(法令全書明治10年913頁)により、親族、近隣者及び裁判官が婚姻と同様の状況にあると認めるときには、事実婚が婚姻と同様に取り扱われることがあった。 イ明治23年公布の民法における法律婚制度明治政府は、近代的な法制度の導入を目的に法典編纂を行い、明治23年、我が国 最初の民法を公布した(財産編、財産取得編、債権担保編、証拠編につき同年法律第28号、人事編につき同98号。以下「旧明治民法」という。)。 旧明治民法人事編は、第12章に「戸主及び家族」の章を設けて「家」制度を採用し、戸主を一家の長、家族を戸主の配偶者とその家にある家族とし、戸主及び家族はその家の氏を称することとし、家族は年齢にかかわらず婚姻をするときは戸主の許 可を受けるべきこととした。また、婚姻の一般的効力として、夫が妻を保護し、妻は夫に聴順すべきことを定め、夫の許可を得ない妻の法律行為を制限するなど、「家」の構成や戸主の権利を明確にし、夫に対する妻の従属的地位を明らかにした(新版注釈民法(21)23頁)。 また、旧明治民法では、婚姻の形式的要件として、いわゆる儀式婚主義を採用し、 ①婚姻の儀式を行う前に戸籍官吏に婚姻をすることを申し出(43条)、②当該申出 から3日後30日以内に証人2人以上の立会いを得て慣習に従って婚姻の儀式を行い(47条、48条。なお、当事者の承諾はこの儀式を行うことにより成立するとされた。)、③当該儀式から10日以内に戸籍官吏に婚姻を届け出る(49条)という3段階の手続を要求した。そして、婚姻の儀式をしたが戸籍官吏に届出をしなかった場合や、婚姻の儀式が法律で定める要件を欠いていた場合は、婚姻は無効とされ、婚姻 当事者双方、尊属親、現実の利益を有する者、検察官が婚姻の無効を請求することができ たが戸籍官吏に届出をしなかった場合や、婚姻の儀式が法律で定める要件を欠いていた場合は、婚姻は無効とされ、婚姻 当事者双方、尊属親、現実の利益を有する者、検察官が婚姻の無効を請求することができるものとされたが、その無効訴権には1年の期間制限が設けられたため(59条、56条)、婚姻儀式後1年を超えれば届出のない事実婚も婚姻として取り扱われることとされた。 旧明治民法は、施行が延期され(明治25年法律第8号、明治29年法律第94 号)、明治民法の公布(「第1編総則」、「第2編物権」、「第3編債権」については明治29年法律第89号、「第4編親族」及び「第5編相続」については明治31年法律第9号)に伴い、施行されることなく廃止された。ただし、明治民法の立案作業は、旧明治民法の条文を参考に進められた。 ウ明治民法 明治民法の立案作業の過程では、法典調査会において、旧明治民法が形式的要件として定める3段階の手続が煩雑である上、国情に合わず、3段階のどこで婚姻が成立するかも不明であることから、これまでの慣習を幾分か法律的なものにしたいという考えで、婚姻の形式的要件に関し、当事者双方及び成年2名以上の証人により口頭又は書面で戸籍官吏に届け出ることにより婚姻が成立することとする提案がされた。 この提案に対しては、婚姻の儀式を行ったときに婚姻が成立するというのが慣習であるなどの意見も出されたが、立案担当者からは、前記アの太政官第209号達以来、届出の厳行を企図したが私通が多いことなどが挙げられ、上記原案が支持されて、届出主義が採用された。(社団法人商事法務研究会・法務大臣官房司法法制調査部監修・日本近代立法資料叢書6 法典調査会民法議事速記録六第百三十七回 -第百六十七回) また、婚姻の届出を 義が採用された。(社団法人商事法務研究会・法務大臣官房司法法制調査部監修・日本近代立法資料叢書6 法典調査会民法議事速記録六第百三十七回 -第百六十七回) また、婚姻の届出をしない場合については、無効とする規定のみが設けられた(778条2項)。 立案担当者の著した教科書(梅謙次郎「民法要義」第19版105~108頁)には、法律婚制度に関する明治民法の立法政策上の態度に関し、要旨、婚姻は人生の一大重事であるが、既に一定の慣習があり、にわかにこれを改めることは難しいが現今 弊害ある事項、不明なる事項其他の欠点は全て法典において適当な規定を設けて補正せざるを得ないとの説明がされた上、届出主義を採用した775条につき、要旨、届出手続を最も行いやすい簡明なものにしなければ、婚姻と届出を欠く私通とが混同し、文明国において採用すべきでない制度となるという趣旨の説明がされている。 一方で、「家」制度の下で、婚姻に対する戸主の権限や夫に対する妻の従属的地位 を明らかにした規定については、おおむね旧明治民法の規定が踏襲され、婚姻は、戸主や親の同意が要件とされ(750条)、法定推定家督相続人は婚姻により他の家に入ることを禁じられる(744条)など、「家」が重要な価値とされていた。 なお、同教科書の778条の説明には、外国の法律中には当事者双方が共に男子又は女子である場合に婚姻を無効とする規定が設けられていることがあるが、婚姻と は男女間の関係を定めるものであり、同性間の婚姻なるものがあり得ないことは言うまでもなく明らかであるため、明治民法にはそのような規定を設けなかったとの説明がされている(甲A175・梅謙次郎「民法要義」118頁)。 また、同教科書(第16版221頁)には、「婚姻とは終生の共同生活を目的とする一男一 め、明治民法にはそのような規定を設けなかったとの説明がされている(甲A175・梅謙次郎「民法要義」118頁)。 また、同教科書(第16版221頁)には、「婚姻とは終生の共同生活を目的とする一男一女の正當な結合關係を云ふ。」との記載がある(乙4)。 エ大正期から昭和期にかけての改正の試み明治民法の下では、前記イのような旧明治民法等とは異なり、届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある関係は法律婚として保護されないこととなったため、事実婚はその後も相当数あり、大審院大正4年1月26日民事連合部判決(民録21輯49頁)以降、判例・学説において、このような内縁ないし事実婚を保護す る方向性が定まった。 大正8年、臨時法制審議会は、民法改正要綱案を立案した。同案では、再び儀式婚主義が採用され、①婚姻は慣習上認められた儀式を挙げることにより成立し、その証明の方法を法律で定めること、②①により婚姻を為したときは一定の期間内に届出を為すべきこととすること、③①によらない場合においては婚姻の届出により成立するものとすることが提案された。その理由として、要旨、次の説明がされている。 明治民法775条は、届出主義を採用するが、このような形式重視は、婚姻が人倫の大義である所以に反するきらいがあるだけでなく、普通の場合は、婚姻の儀式を挙げても直ちに届出をしないことが通常であるため、届出があるまでの間は法律上夫婦でないことになってしまい、このような事態は、古来の習慣に背き、風致を紊すものといわなければならないので、慣習上認められている儀式による婚姻の効力を認 めるとともに、届出の強制による弊害の発生を防ぎ、また別に届出による婚姻の成立も認めるということにした。 昭和期には、同案に基づいて民法改正案が立案され、婚 れている儀式による婚姻の効力を認 めるとともに、届出の強制による弊害の発生を防ぎ、また別に届出による婚姻の成立も認めるということにした。 昭和期には、同案に基づいて民法改正案が立案され、婚姻は慣習上認められた儀式を挙げることにより効力を生じ、この場合は、当事者双方及び成年の証人により口頭又は書面にて戸籍吏に届出をすべきものとされるとともに、届出をしないで1年を 経過した後の婚姻成立の証明は、家事審判所の確認によって行うこととし、家事審判所は、当事者双方、成年の証人の署名した書面、儀式を挙げた場所を管理する者の作成した帳簿の記載その他婚姻があったことを明確にすべき書面がある場合に限って婚姻の成立を認めることができる旨の規定も立案された。もっとも、これらの改正の試みは、結実することなく、我が国は第二次世界大戦に突入した。(太田武男「届出 婚主義に関する一考察-その系譜と今後の問題-」最高裁判所事務総局・家庭裁判月報・昭和37年8月第14巻第8号)⑶ 憲法24条及び本件諸規定ア憲法改正我が国が第二次世界大戦終了時に受諾したポツダム宣言は、その第10条におい て「日本国民の間における民主主義的傾向の復活強化に対する一切の障碍を除去し、 言論・宗教及び思想の自由並びに基本的人権を確立すること」を我が国政府に要求し、いわゆるマッカーサー草案を基に憲法改正の議論がされた。 婚姻の当事者につき、いわゆるマッカーサー草案23条では、「男女両性」という文言が、(日本側の第1案である)いわゆる「3月2日案」37条、及び、(日本側の第2案である)いわゆる「3月5日案」22条では、「男女相互」という文言が用い られた。そして、これら草案に基づき作成された口語化憲法改正草案22条では、「両性の合意」という文言が (日本側の第2案である)いわゆる「3月5日案」22条では、「男女相互」という文言が用い られた。そして、これら草案に基づき作成された口語化憲法改正草案22条では、「両性の合意」という文言が用いられ、その後、現在の憲法24条1項の規定として成文化された。(乙15、18~21)憲法の審議録によれば、「一夫一婦の原則は、私個人の考えでありますが、これは全く世界通有の一大原則だと思います。」、「婚姻はどうしてもこの男女が相寄り相助 ける所に基礎があるのであります。」等といった当時の司法大臣の発言に係る記載があり、婚姻が男女間のものであることを前提とした議論が行われていた(乙22)。 イ民法改正時の議論憲法改正と並行して、政府は、昭和21年9月、臨時法制調査会に対し、憲法の改正に伴い、制定又は改正を必要とする主要な法律について、その法律要綱を示すよう 諮問した(同年諮問第1号)。 明治民法は、「家」制度の下で、婚姻に対する戸主の権限や夫に対する妻の従属的地位を定めていたため(前記⑵ウ)、改正は当然に必要とされた。 上記諮問に対し、最初に立案された民法改正要綱では、臨時法制調査会における戦前の議論(前記⑵エ)も踏まえ、明治民法と同様の届出主義のほか、儀式婚主義を含 めた合計4つの案が提示されたが(我妻栄編「戦後における民法改正の経過」217頁)、国会に提出された改正案では、婚姻の形式的要件について、明治民法の届出主義が維持された。 同改正案における提案全体の提案理由については、次のとおり説明されている(乙7)。 「日本國憲法は、その第十三條及び第十四條で、すべて國民は、個人として尊重せら れ、法の下に平等であつて、性別その他により経済的又は社会的関係において差別されないことを明らかにし、その第 「日本國憲法は、その第十三條及び第十四條で、すべて國民は、個人として尊重せら れ、法の下に平等であつて、性別その他により経済的又は社会的関係において差別されないことを明らかにし、その第二十四條では、婚姻は両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により維持されなければならない。及び配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚 して制定されなければならないことを宣言しております。然るに現行民法(引用者注:明治民法)、特にその親族編、相続編には、この新憲法の基本原則に牴触する幾多の規定がありますのでこれを改正する必要があります。」また、A政府委員は、事実婚との関係で明治民法の届出主義を維持した理由につき、次のとおり説明している。 「いわゆる事実婚、これは現在では婚姻と認めませんが、苟くも結婚式を挙げれば届出しなくても婚姻と認めていいんではないか、事実婚を認むべきでないかという議論があるのであります。この点は実は古くから法制審議会において研究をいたして、事実婚を認めたらどうかという意見もあるのでありますが、なかなかこれはむずかしい問題でありまして、結局いつ婚姻ができたのかということを、届出というよう な形式で押さえないとなかなか難しい。而も婚姻ということは第三者との関係におきましても重要な問題で、その時を明確にせしむる必要があるということからと、それから今まで本当に結婚して置きながら婚姻の届出を怠っておったということは、実は父母の同意が得られなかったとか、戸主の同意が得られないとか、或いはその者が法定推定家督相続人であるが故に、廃嫡の手続を取らなければ婚姻ができない、戸 籍 届出を怠っておったということは、実は父母の同意が得られなかったとか、戸主の同意が得られないとか、或いはその者が法定推定家督相続人であるが故に、廃嫡の手続を取らなければ婚姻ができない、戸 籍の上で戸主になっておったのは養子でも迎えて自分が外に出るとか、或いは隠居をするとか、そういったような法律上の手続を履まなければ、婚姻届が出せないということで、婚姻届出ができなくて、意思に反して事実婚-婚姻予約の状態であったというのが多い例でありますが、それらの制限はこの法律によって、全部撤廃されて、婚姻届さえ出せば自由に婚姻ができることとなったのでありますから、そういう障 害が全部除かれたということ、それから日本は段々文化国家として法律的な思想も 発達し、届出がなければ正式な婚姻にならんということは一般常識として大体認められて参ったので、今事実婚を婚姻として認めて行くということは、むしろ法律の逆行で、奨励すべきことではないので、むしろ一般の法律思想の向上を期待しながら、やはり従来通り届出という形式主義を採用いたしたのであります。ただ事実婚の問題につきましては、将来全般的に改正を試みます際には、十分研究をいたしたいと考 えておりますが、早急の問題でありましたので、事実婚をここに持って来るだけの確信を得なかったがために、従来通りといたしたのであります。」なお、この改正に係る国会審議において、同性の者同士の婚姻を対象とすることについて言及された形跡はない。(最高裁事務総局家庭局編「民法改正に関する国会関係資料」482~483頁、前掲・太田武男「届出婚主義に関する一考察-その系譜 と今後の問題-」)ウ現行民法の公布昭和22年、明治民法を改正する形で現行民法(同年法律第222号)が公布された。現行民法が当初定めていた法 武男「届出婚主義に関する一考察-その系譜 と今後の問題-」)ウ現行民法の公布昭和22年、明治民法を改正する形で現行民法(同年法律第222号)が公布された。現行民法が当初定めていた法律婚の実質的要件、形式的要件及び効果は、概要、次のようなものであった。 (ア) 実質的要件婚姻適齢(731条)として、男性は18歳、女性は16歳と定められた。これは明治民法の規定を婚姻適齢を男女とも1歳ずつ引き上げた上で引き継いだものであり、明治民法では、人種改良と風俗のため、従来の早婚の弊を改めることとして、医学的研究により定められていた。現行民法においても、婚姻によって成立する家族が 社会の基礎的な構成単位であることから、その健全な成長発展を通じて社会の健全な発展を期するため、肉体的・精神的・経済的に健全な婚姻能力を有する者に限り、婚姻を許容することとしたものと解されている。(新版注釈民法(21)192~193頁)重婚も、明治民法と同様、禁止された(732条)。これは、近代社会における婚 姻の本質が一夫一婦の結合であることを宣言するものと解されている(新版注釈民 法(21)198頁、新注釈民法(17)110頁)。 再婚禁止期間(733条1項)として、女性は前婚終了後6か月間、再婚が禁止された。これは、後に生まれた子につき、民法772条1項による父性の推定の重複を回避し、もって父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐ目的のものと解されている(最高裁平成4年(オ)第255号同7年12月5日第三小法廷判決・裁判集民事 177号243頁、最高裁平成25年(オ)第1079号同27年12月16日大法廷判決・民集69巻8号2427頁〔以下「平成27年最高裁1079号判決」という。〕)。 婚姻当事者が一定の血縁関係 177号243頁、最高裁平成25年(オ)第1079号同27年12月16日大法廷判決・民集69巻8号2427頁〔以下「平成27年最高裁1079号判決」という。〕)。 婚姻当事者が一定の血縁関係にある近親婚も禁止された(734~736条)。これは、①近親者間の婚姻が人類の普遍的な倫理に反するという社会的倫理的考慮の ほか、②両親が共通の劣性遺伝子を有している場合に、その劣性遺伝子が子に伝わって発現することを避けるという優生学的配慮に基づくものと解されている。 以上のとおり、実質的要件の多くは、婚姻が子の生殖を目的とする結合関係であることを前提にしたものとなっている。 (イ) 形式的要件 形式的要件は、明治民法と同様、戸籍法に基づく届出のみとされた(739条)。 法律婚制度は、世界各国に存在するが、最も簡易な届出を指向した我が国の形式的要件としての届出主義は、婚姻儀式と無関係である点で、我が国固有のものであることが、一般に認められているとされている(新版注釈民法(21)181頁)。 (ウ) 婚姻の効果 民法は、婚姻による夫婦間の効果として、①夫婦は婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称すること(750条)、②夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならないこと(752条)、③婚姻の届出前に夫婦財産契約をしない限り、夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担すること(755条、760条)、④夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行 為をしたとき、他の一方が、原則として、連帯責任を負うこと(761条)、⑤夫婦 のいずれに属するか明らかでない財産はその共有に属するものと推定すること(762条)を定めている。 また、民法は、子との関係では、⑥妻が婚姻中に懐胎 連帯責任を負うこと(761条)、⑤夫婦 のいずれに属するか明らかでない財産はその共有に属するものと推定すること(762条)を定めている。 また、民法は、子との関係では、⑥妻が婚姻中に懐胎した子、婚姻前に懐胎した子で婚姻後に生まれたもの等を当該婚姻における夫の子と推定すること等の嫡出推定(772条)、⑦当該父(当該婚姻における夫)は嫡出を否認し得ること(774条)、 ⑧父母が婚姻中はその双方を共同親権者とすること(818条)を定めている。なお、親権者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負い(820条)、子は親権者が指定した場所に居所を定めなければならず(821条)、親権者の許可を得なければ職業を営めず(823条)、親権者が子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表すること(824条)等を定めている。 (エ) 現行戸籍法の公布戸籍法は、その中核的存在であった家制度が廃止されたことから、新たに現行戸籍法(昭和22年法律第224号)が制定・公布された。 現行戸籍法は、戸籍を「一の夫婦及びこれと氏を同じくする子」ごとに編製するものとし(6条)、上記「一の夫婦」について、「婚姻をしようとする者」は、夫婦が称 する氏その他法務省令で定める事項を届書に記載して「その旨を届け出なければならない」ものとし(74条)、その「届出があったときは、夫婦について新戸籍を編製する」ものとし(16条1項)、「夫婦については、夫又は妻である旨」を戸籍に記載すべきものとする(13条1項7号)。また、上記「これと氏を同じくする子」につき、出生の届出は、嫡出子の場合は父又は母(子の出生前に父母が離婚をした場合 は母)、非嫡出子の場合は母(52条1、2項)が、14日以内にこれをしなければならないものとし( 同じくする子」につき、出生の届出は、嫡出子の場合は父又は母(子の出生前に父母が離婚をした場合 は母)、非嫡出子の場合は母(52条1、2項)が、14日以内にこれをしなければならないものとし(49条1項)、その届書には、①子の男女の別及び嫡出子又は嫡出でない子の別、②出生の年月日時分及び場所、③父母の氏名及び本籍その他法務省令で定める事項を記載しなければならないものとし(同条2項)、父母の氏を称する子は父母の戸籍に、その他の場合、父の氏を称する子は父の、母の氏を称する子は母 の、各戸籍に入ることとしている(18条1、2項)。 ⑷ 現在の法律婚制度と関連する法制度等ア法律婚(ア) 民法及び戸籍法我が国における民法及び戸籍法による法律婚制度は、現在まで、事実婚を含まない異性の者同士の婚姻を法律婚とする制度として80年近く維持されてきたが、その 具体的な要件・効果については、時代の変遷とともにいくつかの改正がされた。 まず、婚姻適齢については、平成30年法律第59号により、男女とも18歳とされた。 次に、再婚禁止期間については、最高裁判例において、100日を超えて再婚禁止期間を設ける部分が、平成20年時点において、昭和22年の民法改正後の医療や科 学技術の発達及び社会状況の変化等により父性の推定の重複回避のための制限として合理性を欠くに至り、憲法14条に違反するものとされ(平成27年最高裁1079号判決)、さらにその後の科学技術の進歩等を踏まえ、令和4年法律第102号により削除されるに至った。 また、特例法が施行された平成16年以降は、同法による法律上の性別取扱いの変 更がされた場合は、生来的な身体的性別が同じである者間の婚姻も、生殖機能を有しないときには可能とされた(特例法3条、4条)。 法が施行された平成16年以降は、同法による法律上の性別取扱いの変 更がされた場合は、生来的な身体的性別が同じである者間の婚姻も、生殖機能を有しないときには可能とされた(特例法3条、4条)。 一方で、最高裁判例において、夫婦が婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称すると定める民法750条の規定について、憲法13条、14条1項、24条に違反しないとされた(最高裁平成26年(オ)第1023号同27年12月16日 大法廷判決・民集69巻8号2586頁〔以下「平成27年最高裁1023号判決」という。〕)。 (イ) 関連する法制度法律婚における夫婦や親子関係は、社会の基礎的な構成単位として、戦後80年の間に、他の法制度においても、要件等に用いられてきた。 夫婦についてみると、例えば、一般に公開されている現行の法律は少なくとも約2 400件存在するが、その1割を超える290件程度の法律に法律婚制度を前提にした「配偶者」という文言を含む条文が置かれている。これらには、①後見など人の身分法上の行為を行うための要件(任意後見契約に関する法律4条)、②弁護人選任など人の刑事司法上の行為を行うための要件(刑事訴訟法30条2項)、③公的業務等を行う者から利益相反関係にある者を排除するための要件(民事訴訟法23条、会 社法2条15号、16号、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律68条3項2号、信託法249条3項2号)、④遺族年金など公的給付を受給するための要件(国民年金法37条の2、厚生年金保険法59条)などがあり、⑤婚姻という特別な関係の下で生じる危険から免れるための要件とされているもの(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律10条)など、多種多様なものが存在している。 親子についてみると という特別な関係の下で生じる危険から免れるための要件とされているもの(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律10条)など、多種多様なものが存在している。 親子についてみると、一般に公開されている現行の法律少なくとも約2400件のうち、130件程度の法律に「父」という文言を含む条文が置かれている。法律上の父子関係は、法律上の母子関係とは異なり、婚姻や認知、親子関係に関する裁判等によって決定するよりほかはなく、令和3年の統計データにおいても、我が国の子の97.5%は嫡出の子であるとされることからすれば(政府統計ポータルサイト)、 上記多数の法律における「父」は、そのほとんどが婚姻を通じて決定されていることになる。国籍についても、憲法は、日本国民たる要件を法律によって定めるとし(10条)、この委任を受けた国籍法は、原則としていわゆる血統主義を採用し、生まれたときに父又は母が日本国民であるときに子を日本国民としているが(国籍法3条1項)、国籍法上の父を生まれたときに定めるには、出生前に認知をしない限り、婚 姻によるほかはない。 イ事実婚昭和22年の民法改正経緯において、事実婚は、判例上の保護と大正期と昭和期の改正の検討を踏まえ、その後の立法課題とされた(前記⑶イ)。その立法は、いまだされていないが、我が国の判例は、引き続き、その立法を待たず、事柄に応じて、婚 姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある事実婚に法律婚と同様 の保護を与えてきた。この保護は、司法上のものであるから、個別事案における当事者相互の関係を個別に審理し、そのような事情にあると認められる場合に行われてきた。 一方、実定法上も、「配偶者」という文言を含む前記290件程度の法律のうち50件程度において、括弧書 における当事者相互の関係を個別に審理し、そのような事情にあると認められる場合に行われてきた。 一方、実定法上も、「配偶者」という文言を含む前記290件程度の法律のうち50件程度において、括弧書きや定義として「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻 関係と同様の事情にある者」を「配偶者」と同様に扱う条文が置かれている。国会審議において、この文言は、戦後の第13回国会において、昭和27年3月13日に衆議院厚生委員会に付託された「戦傷病者戦没者遺族等援護法案」に初めてみられるようであり、同法が同年法律第127号として制定されたことにより法律上の概念として採用され、以後、遺族年金などの公的給付や扶養手当などを中心に、同様の表現 ぶりで用いられてきており、令和期においても同様の法律が制定されている(令和3年法律第74号「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」)。 このような法律に関しては、婚姻の届出が可能であるのにそれがされていない異性の者同士の関係だけでなく、法律婚の実質的要件を欠くために婚姻の届出ができ ない関係も、それが事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる場合、個別の法律の立法趣旨に照らして、保護されることがあった。 例えば、近親婚に当たるために届出ができない場合に関し、①厚生年金保険の被保険者と直系姻族の関係にある者は、仮に被保険者と内縁関係にあったとしても、「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻と同様の事情にある者」に当たらないとされる (最高裁昭和59年(行ツ)第335号同60年2月14日第一小法廷判決・訟務月報31巻9号2204頁)一方で、②厚生年金保険の被保険者であった叔父と姪との内縁関係が、叔父と先妻との子の養育を主たる動機として形成され、当初から反倫理的、反社会的な 14日第一小法廷判決・訟務月報31巻9号2204頁)一方で、②厚生年金保険の被保険者であった叔父と姪との内縁関係が、叔父と先妻との子の養育を主たる動機として形成され、当初から反倫理的、反社会的な側面を有していたものとはいい難く、親戚間では抵抗感なく承認され、地域社会等でも公然と受け容れられ、叔父の死まで約42年間にわたり円満かつ 安定的に継続したという事案において、近親者間における婚姻を禁止すべき公益的 要請よりも遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与するという厚生年金保険法の目的を優先させるべき特段の事情が認められるとして、「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者」に当たるとの事例判断がされた(最高裁平成17年(行ヒ)第354号同19年3月8日第一小法廷判決・民集61巻2号518頁)。 また、重婚に当たるために届出ができない場合に関しては、民法上の配偶者との婚姻関係が実体を失って形骸化し、かつ、その状態が固定化して近い将来解消される見込みのない場合、すなわち、事実上の離婚状態にある場合には「配偶者」に当たらないとされる(最高裁令和2年(受)第753号、同(受)第754号同3年3月25日第一小法廷判決・民集75巻3号913頁、最高裁昭和54年(行ツ)第109号 同58年4月14日第一小法廷判決・民集第37巻3号270頁)一方で、そのような場合に、事実上婚姻関係と同様の事情にある内縁関係にあった女性が「配偶者」に当たるとの事例判断がされた(最高裁平成16年(行ヒ)第332号同17年4月21日第一小法廷判決・裁判集民事216号597頁)。 さらに、近時、異性の者同士の婚姻を前提とする民法・戸籍法の下で婚姻の届出が できない同性の者同士について、犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等 廷判決・裁判集民事216号597頁)。 さらに、近時、異性の者同士の婚姻を前提とする民法・戸籍法の下で婚姻の届出が できない同性の者同士について、犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律(以下「犯給法」という。)5条1項にいう「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に関し、犯罪被害者と同性の者がこれに当たり得るとした判例も現れている(最高裁令和4年(行ツ)第318号、同年(行ヒ)第360号同6年3月26日第三小法廷判決・民集78巻1号99頁。 以下「令和6年最高裁判決」という。)。同判例は、犯給法に定める犯罪被害給付制度が、犯罪行為により不慮の死を遂げた者の遺族等の精神的、経済的打撃を早期に軽減するなどし、もって犯罪被害等を受けた者の権利利益の保護が図られる社会の実現に寄与することを目的とすることを踏まえ、犯給法5条1項1号括弧書が「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」を挙げているのは、民 法上の配偶者に該当しない者であっても、犯罪被害者との関係や共同生活の実態等 に鑑み、事実上婚姻関係と同様の事情にあったといえる場合には、犯罪被害者の死亡により、民法上の配偶者と同様に精神的、経済的打撃を受けることが想定され、その早期の軽減等を図る必要性が高いと考えられるからであると解されるところ、そのように考えられる場合があることは、共同生活を営んでいた者が異性であるか同性であるかによって直ちに異なるものとはいえないとして、上記判断を示したもので ある。 以上のような我が国の判例は、個別の法律の趣旨等と各事案の当事者間の具体的関係に即して、それが法律婚と同様に保護されるべきものであるか否かを、当該法律に事実婚を法律婚と同様に扱う明示的規定があ 。 以上のような我が国の判例は、個別の法律の趣旨等と各事案の当事者間の具体的関係に即して、それが法律婚と同様に保護されるべきものであるか否かを、当該法律に事実婚を法律婚と同様に扱う明示的規定があるか否かにかかわらず、決してきたものということができ、この保護は、同性の者同士の事実婚にも及んでいる。 4 同性の者同士の結合関係を家族として規律する制度⑴ 諸外国法律婚制度は、当事者間の親密な人的結合関係全般でなく、社会的承認を受けた人的結合関係を想定し、規範によって統制する制度であるところ(前記3⑴)、諸外国における法律婚制度も、かつては異性の者同士の結合関係を前提とするものであっ た。しかし、前記1及び2のような性自認等に関する医学的・社会的評価の変遷と性自認等を理由とする差別禁止の取組等を背景に、同性の者同士の結合関係を社会的承認を受けた人的結合関係として想定し、規範によって統制する動きが広がっている。立法例は、①婚姻ではない別の制度とするものと、②婚姻とするものとに分かれており、その概要は、次のとおりである。 ア婚姻でない制度とするもの世界で初めて、同性の者同士の関係を公証し、一定の法的効果を付与したのはデンマークである。デンマークは、1989年(平成元年)、婚姻とは別の制度として同性同士によるパートナーシップ制度を導入し、その後、ヨーロッパ諸国を中心に、同制度が導入されていった。 パートナーシップ制度の法的効果(相続、社会保障、税制上の優遇措置、養子制度、 関係の解消方法)は、国ごとに異なり、例えば、イギリス、イタリア、スウェーデン及びフィンランドなどでは、婚姻とほぼ同一の法的効果である制度とされた。一方で、ドイツなどでは、社会保障、税制上の優遇措置、養子制度等において、婚姻と 異なり、例えば、イギリス、イタリア、スウェーデン及びフィンランドなどでは、婚姻とほぼ同一の法的効果である制度とされた。一方で、ドイツなどでは、社会保障、税制上の優遇措置、養子制度等において、婚姻と異なる法的効果である制度とされた。しかし、その後、各国において、訴訟や法改正等が行われたことにより、パートナーシップ制度は、婚姻に近いものになっていき、最 終的には、いわゆる同性の者同士の婚姻制度が導入され、パートナーシップ制度が廃止又は新規登録停止となった国が多数存在している。 また、パートナーシップ制度以外でも、例えば、ベルギーは、1998年(平成10年)に、法定同棲という制度(身分法・社会保障法・税法等に係る法的効果を除いた、財産法上の法的効果のみを保障する制度)を、フランスは、1999年(平成1 1年)に、PACSという制度(契約に基づき権利及び義務を設定し、それを公的機関に登録することによって、第三者(債権者、賃貸人、使用者)や国家(税法、社会保障法)に対し、カップルであることを対抗できるようにする制度)を導入した。なお、後記イのとおり、ベルギーは、2003年(平成15年)に、フランスは、2013年(平成25年)に、同性の者同士の法律婚が導入されたが、法定同棲及びPA CSは、現在においても、同性の者同士か、異性の者同士かにかかわらず、利用可能な制度として存続している。 これらの登録パートナーシップなどを持つ国・地域は、アンドラ、イスラエル、イタリア、エクアドル、オーストリア、キプロス、ギリシャ、イギリス、クロアチア、コロンビア、スイス、スロベニア、チェコ、チリ、ハンガリー、フランス、ベネズエ ラ、メキシコ(一部の州)、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク、ニュージーランド、オランダ、ベルギー、ラトビアがある。 ンビア、スイス、スロベニア、チェコ、チリ、ハンガリー、フランス、ベネズエ ラ、メキシコ(一部の州)、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク、ニュージーランド、オランダ、ベルギー、ラトビアがある。(甲A103、447、570~572、608~611、645~647、689、693、711、712、839)イ婚姻とするものオランダは、2001年(平成13年)4月、世界で初めて同性の者同士の婚姻を 法律上認めた。その後、法定同棲制度を採用していたベルギーが、2003年(平成 15年)6月、同性の者同士の婚姻を法律婚として承認し、スペイン及びカナダが2005年(平成17年)7月、南アフリカが2006年(平成18年)11月、ノルウェーが2009年(平成21年)1月、パートナーシップ制度を採用していたスウェーデンが同年5月、ポルトガル及びアイスランドが2010年(平成22年)6月、アルゼンチンが同年7月、パートナーシップ制度を採用していたデンマークが2 012年(平成24年)6月、ブラジル及びPACSを採用していたフランスが2013年(平成25年)5月、ウルグアイ及びニュージーランドが同年8月、パートナーシップ制度を採用していたイギリス(北アイルランドを除く)が2014年(平成26年)3月、ルクセンブルクが2015年(平成27年)1月、メキシコ及びアメリカが同年6月、アイルランドが同年11月、コロンビアが2016年(平成28 年)4月、フィンランドが2017年(平成29年)3月、マルタが同年9月、ドイツが同年10月、オーストラリアが同年12月、オーストリアが2019年(平成31年)1月、台湾が同年(令和元年)5月、エクアドルが同年6月、コスタリカが2020年(令和2年)5月、チリが2022年(令和4年)3月、スイス トラリアが同年12月、オーストリアが2019年(平成31年)1月、台湾が同年(令和元年)5月、エクアドルが同年6月、コスタリカが2020年(令和2年)5月、チリが2022年(令和4年)3月、スイス及びスロヴェニアが同年7月、キューバが同年9月、アンドラが2023年(令和5年)2月、ネ パールが同年6月、エストニアが2024年(令和6年)1月、ギリシャが同年2月、リヒテンシュタイン及びタイが2025年(令和7年)1月、それぞれ同性の者同士の婚姻を法律婚として採用した(上記年月は、法律の施行時を基準としている。)。 同性の者同士の婚姻を法律婚として採用した国の数は、令和7年1月時点で、39か国である。(甲A103~106、354~356、447、528~530、60 8、839、934、935)⑵ 我が国ア導入の勧告人権理事会が、2017年(平成29年)11月に行ったUPR(前記2⑴ア)において、スイス及びカナダは、日本に対し、国レベルで同性の者同士の婚姻を承認す ることを勧告し、人権理事会が2023年(令和5年)1月から同年2月までに行っ たUPRにおいて、アメリカ、メキシコ、カナダ、デンマーク及びアイスランドが、日本に対し、同性の者同士の婚姻を承認又は取組を促進するよう勧告し、アルゼンチン、オーストリア及びニュージーランドが、同性の者同士につき、婚姻類似の制度の導入を勧告した(甲A276、429、430)。 国連女子差別撤廃委員会は、2024年(令和6年)10月17日に開催された会 合において、日本に対し、同性の者同士の婚姻、国際私法に基づいて締結された婚姻及び登録された婚姻を認め、同性の者同士の婚姻又は事実婚の女性による養子縁組を認めることを勧告した(甲A938)。 神奈川県弁護士会は、 対し、同性の者同士の婚姻、国際私法に基づいて締結された婚姻及び登録された婚姻を認め、同性の者同士の婚姻又は事実婚の女性による養子縁組を認めることを勧告した(甲A938)。 神奈川県弁護士会は、令和元年10月17日、同性の者同士の婚姻を認めるべきである旨の会長声明を発出し、東京弁護士会は、令和3年3月8日、「同性カップルが 婚姻できるための民法改正を求める意見書」を発表し、「国は、同性婚を認め、これに関連する法令の改正を速やかに行うべきである」と提言した。また、愛知県弁護士会は、同年6月22日、同性の者同士の婚姻を認めるべきである旨の会長声明を発出し、その後も全国各地の弁護士会及び日本弁護士連合会等が、同性の者同士の婚姻に係る法制度を早急に導入するよう求める会長声明等を発出している。 なお、こうした勧告のうち、2020年(令和2年)、自由権規約委員会からの「同性婚を国レベルで公式に認めるための措置が取られているかにつき説明願いたい」との質問に対し、我が国政府は、「同性婚やそれに準ずる制度を導入すべきかどうかについては、我が国の家族の在り方に関わる問題であり、国民的な議論を踏まえつつ、慎重な検討を要する」旨を回答している。(甲A268、491~518、67 9~685、912~921、940、941)イ国会における議論等少なくとも、平成27年以降令和6年まで、各年の国会において、同性の者同士の法律婚制度を創設すべき旨の意見表明や政府の方針を問う質問等がされたが、政府側からは慎重な検討を要する等の答弁がされてきた(甲A83、234~237、2 39、242、857、862~867、869~882、891~895、897)。 最近では、令和6年12月、いずれも当時のB内閣総理大臣から、①衆議院予算委 83、234~237、2 39、242、857、862~867、869~882、891~895、897)。 最近では、令和6年12月、いずれも当時のB内閣総理大臣から、①衆議院予算委員会で、同性婚の導入は、親族の範囲やそこに含まれる人々の間にどのような権利義務関係を認めるかという国民生活の基本に関わる点であるため、この点を精査していく必要がある旨の見解が示され(甲A898)、②参議院本会議で、同性婚制度の導入は、国民一人一人の家族観と密接に関わっており、政府としては、国民各層の意見、 国会における議論の状況、同性婚に関する訴訟の状況を注視していく必要があるとの立場が示されている(甲A932)。 令和2年には、野党議員から提出された国会法74条2項に基づく質問主意書に対し、同法75条2項に基づく答弁書において、我が国政府は、①憲法24条1項の「両性」という文言は、男女を表しているものと解される、②同項は、「婚姻は、両 性の合意のみに基いて成立」すると規定しており、当事者双方の性別が同一である婚姻の成立を認めることは想定されていない、③いずれにしても、同性婚を認めるべきか否かは、我が国の家族の在り方の根幹に関わる問題であり、極めて慎重な検討を要するものと考えており、政府としては、現時点において、同性婚の導入について検討していないため、具体的な制度を前提として、それが憲法に適合するか否かの検討も 行っていない、と答弁した。(甲A860、861)そして、少なくとも、令和元年及び令和5年には、国会に同性の者同士の婚姻制度に関する民法改正案が提出されたが、廃案となるなどしている(甲A84、239、536、537、883、884)。 ウ地方公共団体及び民間企業における実績 一方、地方公共団体や民間企業 に関する民法改正案が提出されたが、廃案となるなどしている(甲A84、239、536、537、883、884)。 ウ地方公共団体及び民間企業における実績 一方、地方公共団体や民間企業においては、同性の者同士の結合関係を家族として取り扱う動きが広がっている。 地方公共団体をみると、東京都が、令和4年11月1日から、パートナーシップ制度の運用を開始しており、令和7年4月1日時点で、条例等によって、パートナーシップ制度を導入済みの自治体数は、524自治体となり、人口比率では、約93% 相当の人々が居住する自治体が、パートナーシップ制度を導入しており、このような 自治体が増加傾向にある。パートナーシップ制度をより発展させて、同性の者同士と共に居住する子どもも家族として認めるというファミリーシップ制度を導入している自治体も増加傾向にあり、令和7年4月1日時点で、同制度を導入している自治体数は、180自治体である。(甲A329~332、357、475、476、480、615、714~804、840、902) また、民間企業をみると、一般社団法人日本経済団体連合会は、平成29年5月16日、LGBTの人々に関する対応に経済界として初めて焦点を当て、各企業の取り組み状況を紹介するとともに、どのような対応が考えられるかを提言した「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて」を発表した。そして、日本国内の多くの民間企業において、同性の者同士の家族形成・子育てを、異性の者同士と同様に 支援する取組が広がっている。(甲A99、333~343、621~627) 5 我が国における家族の実情と国民の意識⑴ 夫婦と親子に関する統計我が国政府は、国民生活の実情を把握するため、種々の調査を行っており、その A99、333~343、621~627) 5 我が国における家族の実情と国民の意識⑴ 夫婦と親子に関する統計我が国政府は、国民生活の実情を把握するため、種々の調査を行っており、その中には人口動態調査がある。これは、戸籍法及び死産の届出に関する規定により届け出 られた出生、死亡、婚姻、離婚及び死産の全数を対象とするものであり、こうした調査や政府統計ポータルサイトによれば、我が国の家族生活の実情について、次のような統計数値や調査結果等が得られている。 ア世帯構成昭和22年頃については、国勢調査の結果によれば、昭和25年当時、我が国には 1642万2000世帯が存在したが、単身世帯は、このうち88万6000世帯(5.3%)にすぎなかった(第13表)。2人以上世帯には、8079万3000人が属していたが、うち世帯主が1553万7000人(19.2%)、配偶者が1277万人(15.6%)、直系卑属が4177万8000人(51.7%。以上の合計は86.5%)であり(第15表)、9割近い国民が、一の夫婦とその間の子と いう家族を構成していたと推認される。 一方、昭和55年以降は、「夫婦と子供」の世帯割合は、昭和55年に42.1%、平成27年に26.9%、令和2年に25.0%と減少した。同じく、「単独」世帯の割合は、昭和55年に19.8%、令和2年に38.0%に増加し、今日では約4割の世帯が単身世帯となり(甲A408)、「夫婦のみ」の世帯割合は、昭和55年に12.5%、令和2年に20.1%と増加している。 イ法律婚の件数と未婚割合婚姻の件数は、明治32年には年間29万7372件であり、昭和25年には年間71万5081件であったが、その後上昇し、いわゆる第1次ベビーブーム世代が20代前半の イ法律婚の件数と未婚割合婚姻の件数は、明治32年には年間29万7372件であり、昭和25年には年間71万5081件であったが、その後上昇し、いわゆる第1次ベビーブーム世代が20代前半の年齢を迎えた昭和45年には、年間102万9405件となった。その後は、昭和47年にピークとなって以降は減少し、平成7年から平成13年までの間に おいて再び一時的に増加したものの、それ以降は減少を続けており、平成27年から令和元年までの間においては、婚姻件数は、年間約60万件で推移した。新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっていた令和2年以降においては、婚姻件数は、同年で年間約52.6万件、令和3年で年間約50.1万件であり、令和5年には47万4717件と50万件を切る状況となっている。(甲A408、厚生労働省人口動態総 覧の年次推移)国勢調査によれば、30歳時点での未婚割合は、女性は、昭和25年の10.4%、昭和55年の11.3%から令和2年の40.5%に、男性は、昭和25年の21. 1%、昭和55年の31.1%から令和2年の50.4%に、いずれも増加した。同じく、50歳時点での未婚割合は、女性は、昭和55年の4.45%から令和2年の 17.81%に、男性は、昭和55年の2.60%から令和2年の28.25%に、いずれも増加した。(甲A408)ウ出生者数と嫡出子率人口動態統計によれば、現行民法が公布された昭和22年における我が国の出生者数は、男女合計267万8792人であったが、昭和28年には200万人を、平 成28年には100万人を下回り、令和7年には70万人を切る状況となっている。 また、古い統計資料では、明治期の嫡出子はそれほど高くはなく、庶子や私生児が相当数いたことがうかがわれるが、人口動態統計 は100万人を下回り、令和7年には70万人を切る状況となっている。 また、古い統計資料では、明治期の嫡出子はそれほど高くはなく、庶子や私生児が相当数いたことがうかがわれるが、人口動態統計によれば、出生した子の嫡出子割合は、現行民法が公布された昭和22年に96.2%であり、その後も100%に近い割合を維持しており、令和3年においても97.5%は嫡出子であり、嫡出でない子の割合は2.5%にとどまっている。 ⑵ 夫婦と親子に関する意識調査ア婚姻等についての意識調査(ア) NHKは、昭和48年から5年ごとに、日本人の生活や意識の変化を探るために意識調査を行っている。NHKが、平成30年6月から同年7月までに行った同調査によれば、「必ずしも結婚する必要はない」と回答した者の割合は、68%であ り、「人は結婚するのが当たり前だ」と回答した者の割合は、27%であり、「結婚しても、必ずしも子どもをもたなくてよい」と回答した者の割合は、60%であり、「結婚したら、子どもをもつのが当たり前だ」と回答した者の割合は、33%であった。 (甲A252)(イ) 国立社会保障・人口問題研究所は、出生動向基本調査を行っているところ、 平成27年に行った第15回調査結果によれば、結婚の利点につき、「自分の子どもや家族をもてる」と回答した男性の割合は、35.8%で、女性の割合は、49.8%であり、「精神的な安らぎの場が得られる」と回答した男性の割合は、31.1%で、女性の割合は、28.1%であった。令和3年6月に行った第16回調査結果によれば、結婚の利点につき、「自分の子どもや家族をもてる」と回答した男性の割合は、 31.1%で、女性の割合は、39.4%であり、「精神的な安らぎの場が得られる」と回答した男性の割合は、33.8% ば、結婚の利点につき、「自分の子どもや家族をもてる」と回答した男性の割合は、 31.1%で、女性の割合は、39.4%であり、「精神的な安らぎの場が得られる」と回答した男性の割合は、33.8%で、女性の割合は、25.3%であった。第16回調査に基づく分析結果としては、「結婚することや、子どもを持つことは必ずしも必要ではないと考える人が増え、個人の生活や価値観を大切にする考え方への支持が増えた」と指摘されている。(甲A253、353、633、634) イ同性の者同士の婚姻等についての意識調査 (ア) 前記ア(イ)の研究所は、全国家庭動向調査を行っているところ、令和元年9月13日に発表した第6回調査結果によれば、同性の者同士が子ども(家族)を持つことにつき、何らかの法的保障が認められるべきと回答した者の割合は、75.1%で、同性の者同士の婚姻を法律で認めるべきと回答した者の割合は、69.5%であり、令和5年8月22日に発表した第7回調査結果によれば、「男性どうしや、女性どう しの結婚(同性婚)を法律で認めるべきだ」との意見に「賛成」と回答した者の割合は、75.6%であった(甲A185、186、468、606)。 (イ) 朝日新聞及び東京大学C研究室が、令和2年3月から同年4月までに行った世論調査等によれば、同性婚につき、「賛成」又は「どちらかと言えば賛成」と回答した者の割合は、46%であり、「反対」又は「どちらかと言えば反対」と回答した 者の割合は、23%であった(甲A265)。 (ウ) NHKが、令和5年2月10日から同月12日までに行った世論調査によれば、同性婚を法律で認めるかどうかにつき、「賛成」と回答した者の割合は、54%で、「反対」と回答した者の割合は、29%であった(甲A469)。 (エ) 0日から同月12日までに行った世論調査によれば、同性婚を法律で認めるかどうかにつき、「賛成」と回答した者の割合は、54%で、「反対」と回答した者の割合は、29%であった(甲A469)。 (エ) 共同通信社が、令和5年2月11日から同月13日までに行った全国緊急電 話世論調査によれば、同性婚につき、「認める方がよい」と回答した者の割合は、64.0%で、「認めない方がよい」と回答した者の割合は、24.9%であった(甲A419)。また、同社が、令和6年5月3日の前に行った憲法に関する調査では、同性婚を認める方がよいという回答をした者の割合が73%との報道がある(甲A901の1・2)。 (オ) 日本ニュースネットワーク(NNN)及び読売新聞社が、令和5年2月17日から同月19日までに行った世論調査によれば、同性婚を法律で認めるべきかどうかにつき、「賛成」と回答した者の割合は、66%で、「反対」と回答した者の割合は、24%であった。また、毎日新聞社が、同月18日及び19日に行った世論調査によれば、同様の質問につき、「賛成」と回答した者の割合は、54%で、「反対」と 回答した者の割合は、26%であり、朝日新聞社が上記両日に行った世論調査によれ ば、同様の質問につき、「認めるべきだ」と回答した者の割合は、72%で、「認めるべきではない」と回答した者の割合は、18%であった。(甲A470)(カ) 産経新聞社及びフジニュースネットワーク(FNN)が、令和5年2月18日及び19日に行った合同世論調査によれば、同性婚を法律で認めるかどうかにつき、自由民主党支持層において「賛成」と回答した者の割合は、60.3%、立憲民 主党支持層において「賛成」と回答した者の割合は、74.0%、日本維新の会支持層において「賛成」と回答した うかにつき、自由民主党支持層において「賛成」と回答した者の割合は、60.3%、立憲民 主党支持層において「賛成」と回答した者の割合は、74.0%、日本維新の会支持層において「賛成」と回答した者の割合は、86.9%、無党派層において「賛成」と回答した者の割合は、76.3%であった(甲A352)。 (キ) 日本経済新聞社が、令和5年2月に行った世論調査によれば、同性婚を法律で認めるべきかどうかにつき、「賛成だ」と回答した者の割合は、65%で、自民党 支持層において「賛成だ」と回答した者の割合は、58%であった(甲A471)。 (ク) NHKが、令和5年5月3日に行った世論調査によれば、同性婚を法律で認めるべきかどうかにつき、「法的に認められるべきだと思う」と回答した者の割合は、44%、「法的に認められるべきではないと思う」と回答した者の割合は、15%であった(甲A473)。 (ケ) NHKが、平成27年10月に、性的少数者を対象として行った全国調査によれば、「同性間の結婚を認める法律を作って欲しい」と回答した者の割合は、65. 4%であった(甲A112)。また、ライフネット生命保険株式会社が性的少数者を対象として行った調査によれば、回答者の68.6%が「同性婚を法律で認めてほしい」と回答し、パートナーシップ制度を利用している人の91.5%が「同性婚を法 律で認めて欲しい」と回答した(甲A656)。 第4 当裁判所の判断 1 本件諸規定が憲法24条1項に違反するか(争点⑴)について⑴ 憲法24条1項の趣旨等について憲法24条は、1項において「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同 等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならな い。」と規定しているところ、 憲法24条は、1項において「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同 等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならな い。」と規定しているところ、これは、婚姻をするかどうか、いつ誰と婚姻をするかについては、当事者間の自由かつ平等な意思決定に委ねられるべきであるという趣旨を明らかにしたものと解される(平成27年最高裁1023号判決参照)。 そして、婚姻は、これにより、配偶者の相続権(民法890条)や夫婦間の子が嫡出子となること(同法772条1項等)などの重要な法律上の効果が与えられるもの とされているほか、近年家族等に関する国民の意識の多様化が指摘されつつも、国民の中にはなお法律婚を尊重する意識が幅広く浸透していると考えられることをも併せ考慮すると、上記のような婚姻をするについての自由は、憲法24条1項の規定の趣旨に照らして、十分尊重に値するものというべきである(平成27年最高裁1079号判決参照)。 ⑵ 憲法24条1項の「婚姻」の意義に関する控訴人らの主張についてア控訴人らの主張控訴人らは、憲法13条が保障する幸福追求の上では「一人と一人の親密かつ永続性のある人的結合関係」を基礎に人的結びつきを形成することが重要な意味を持つと指摘し(控訴人らの主張⑴ア)、憲法24条は、そのことを前提として、国家以前 の、個人の尊厳に直接由来する権利として、「一人と一人の親密かつ永続性のある人的結合関係」の当事者に「婚姻」の自由を保障したものであり、これが同条1項の核心部分であるとし、同性の者同士も、そのような「一人と一人の親密かつ永続性のある人的結合関係」の当事者であれば、同項により法律婚制度を利用する権利・自由が保障される旨を主張する(控訴人らの主張⑴イ、ウ)。 同性の者同士も、そのような「一人と一人の親密かつ永続性のある人的結合関係」の当事者であれば、同項により法律婚制度を利用する権利・自由が保障される旨を主張する(控訴人らの主張⑴イ、ウ)。 イ検討しかし、婚姻及び家族に関する事項は、国の伝統や国民感情を含めた社会状況における種々の要因を踏まえつつ、それぞれの時代における夫婦や親子関係についての全体の規律を見据えた総合的な判断を行うことによって定められるべきものである。 したがって、その内容の詳細については、憲法が一義的に定めるのではなく、法律に よってこれを具体化することがふさわしいものと考えられる。憲法24条が、1項に おいて前記⑴のとおり規定するとともに、2項において「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。」と規定するのは、このような観点から、婚姻及び家族に関する事項について、具体的な制度の構築を第一次的には国会の合理的な立法裁量に委ねるとともに、その立法に当たっ ては、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚すべきであるとする要請、指針を示すことによって、その裁量の限界を画したものといえる(平成27年最高裁1079号判決参照)。 法律婚制度が、当事者間の親密な人的結合関係全般を意味するものではなく、社会的承認を受けた人的結合関係を想定し、規範によって統制する制度であると捉えら れてきたこと(認定事実3⑴)は、このような憲法24条の解釈と整合するものといえる。 そして、憲法改正当時の社会状況において、婚姻として社会的承認を受けていた結合関係は、異性の者同士が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を と整合するものといえる。 そして、憲法改正当時の社会状況において、婚姻として社会的承認を受けていた結合関係は、異性の者同士が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営む結合関係のみであった(認定事実3⑶ア、イ)が、婚姻につ いて明治民法が採用した法律婚制度は、「家」制度の下で、戸主や親の同意を婚姻の要件とし、夫に対する妻の従属的地位を明らかにするなど、個人の尊厳や両性の本質的平等に反する制度設計となっていた(認定事実3⑵ウ)。そのために、憲法24条は、国民の間における民主主義的傾向の復活強化に対する一切の障碍を除去し、基本的人権を確立することを目的として(認定事実3⑶ア)、婚姻及び家族に関する事項 について、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚すべきであるという立法に当たっての要請、指針を示したと解されるのであり、その審議経過においても、婚姻が異性の者同士の結合関係であることを前提とした議論がされていて(認定事実3⑶ア)、同条に関する一連の審議経過において、同性の者同士の結合関係について言及されたことをうかがわせるような証拠はない。さらに、条文の規定ぶりをみても、同条は、 1項において、前記⑴のとおり、「婚姻」は「両性の合意のみ」に基づいて成立する と規定した上で、2項において、「婚姻」と関連する「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚」を具体的に列挙しつつ、「婚姻及び家族に関するその他の事項」に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならないと規定している。 以上のような憲法改正当時の社会状況、明治民法が採用していた法律婚制度の制 度設計の問題点、審議経過における議論、憲法24条1項、2項の趣旨・目的及び規定ぶりを総合すれば、同条は、憲 ている。 以上のような憲法改正当時の社会状況、明治民法が採用していた法律婚制度の制 度設計の問題点、審議経過における議論、憲法24条1項、2項の趣旨・目的及び規定ぶりを総合すれば、同条は、憲法改正当時、社会的承認を受けていた歴史的、伝統的な婚姻形態である両性、すなわち異性の者同士が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営む人的結合関係を「婚姻」とし、国会が、その法制度を定めるに当たっての要請、指針として、民主主義の基本原理である 個人の尊厳(憲法13条)と両性の本質的平等の原則(憲法14条)を定めたものであって、男女両性は本質的に平等であるから、夫と妻との間に、夫たり妻たるの故をもって権利の享有に不平等な扱いをすることは禁じられることなどを明らかにしたものと解される(最高裁昭和34年(オ)第1193号同36年9月6日大法廷判決・民集15巻8号2047頁参照)。また、憲法24条2項は、そのような異性の 者同士の「婚姻」に加え、それ以外の人的結合関係を含む「家族」に関し、同項が例示した事項及びそれ以外の「その他の事項」について、その裁量の限界を画した上で、国会の合理的な立法裁量に委ねたものと解される。 そうすると、憲法改正当時、社会的承認を受けていなかった他の人的結合関係については、憲法が一義的に定めるのではなく、第一次的には、憲法24条2項の「家族 に関するその他の事項」として、国の伝統や国民感情を含めた社会状況における種々の要因を踏まえつつ、その各時代における夫婦や親子関係についての全体の規律を見据えた総合的かつ合理的な判断により、具体的な制度の構築を国会が合理的な立法裁量で決することが予定されていると解されるのである。 したがって、憲法24条1項、2項の「婚姻」に同性の者同士の結 律を見据えた総合的かつ合理的な判断により、具体的な制度の構築を国会が合理的な立法裁量で決することが予定されていると解されるのである。 したがって、憲法24条1項、2項の「婚姻」に同性の者同士の結合関係が含まれ るとは解されない。 以上と異なり、国家以前の、個人の尊厳に直接由来する権利として、「一人と一人の親密かつ永続性のある人的結合関係」の当事者に「婚姻」の自由を保障することが憲法24条1項の核心部分であり、同性の者同士も「一人と一人の親密かつ永続性のある人的結合関係」の当事者であれば、同項により法律婚制度を利用する権利・自由が保障されるとする前記アの控訴人らの主張は、採用することができない。 ⑶ 憲法24条1項の「婚姻」の今日的意義に関する控訴人らの主張についてア控訴人らの主張控訴人らは、憲法改正後、今日までの性自認等に関する医学的評価の変遷等を挙げ、今日では、同性の者同士も、異性の者同士と同様に、婚姻の本質を満たし得る関係を形成し得るから、少なくとも現時点においては、同性の者同士の結合関係は、憲 法24条1項の「婚姻」に含まれるとし、同項は、婚姻の本質を伴う同性の者同士に婚姻の自由を保障している旨を主張する(控訴人らの主張⑴エ、控訴人らの補充主張⑴ア、⑵)。 イ同性の者同士をめぐる社会状況の変化について確かに、憲法改正後、今日までの性に関する伝統的な理解は変化して、性自認等は、 生まれながらに備わる先天的なもの、又は人生の初期に決まる、人の性の重要な構成要素であり、自らの意思によって変更することが困難な各人の人格に根差した生来的な個性であると理解されている(前提事実⑴、認定事実1⑶、2⑷)。そして、人が性自認等に従った法令上の取扱いを受けることは、個人の人格的存在と結びついた重要 ることが困難な各人の人格に根差した生来的な個性であると理解されている(前提事実⑴、認定事実1⑶、2⑷)。そして、人が性自認等に従った法令上の取扱いを受けることは、個人の人格的存在と結びついた重要な法的利益と位置付けられ(令和5年最高裁決定参照)、実定法上の事実婚と して保護を受ける場合もある(令和6年最高裁判決参照)。また、今日の国際的な社会状況においては、制度設計は多様であるが、同性の者同士の結合関係を法律上家族として承認する国家が少なからず存在し(認定事実4⑴)、我が国においても、地方公共団体及び民間企業において、同性の者同士の結合関係を家族として取り扱う動きが広がっており(認定事実4⑵ウ)、国民感情という点でも、様々な調査で同性の 者同士の婚姻を法律で認めることに多くの国民が賛成し、反対はさほど多くない(認 定事実5⑵イ)。 以上のことからすれば、今日では、異性の者同士に加え、同性の者同士が、永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営む人的結合関係は、一つの家族の姿として社会的承認を受けていると認められる。このような同性の者同士の結合関係は、いわば「同性の者同士の事実婚」とでも呼ぶべき性質のも のである(以下、この結合関係をそのようにいう。)。 ウ憲法24条における上記変化の位置付けしかし、憲法24条の趣旨(前記⑵イ)に照らせば、憲法改正後における同性の者同士の事実婚の社会的承認(前記イ)は、同条との関係では、国会が具体的な制度の構築に当たって踏まえるべき社会状況における要因の変化と位置付けられる。そし て、婚姻及び家族に関する事項は、このような要因を踏まえつつ、それぞれの時代における夫婦や親子関係についての全体の規律を見据えた総合的な判断を行うことによって定めら 化と位置付けられる。そし て、婚姻及び家族に関する事項は、このような要因を踏まえつつ、それぞれの時代における夫婦や親子関係についての全体の規律を見据えた総合的な判断を行うことによって定められるべきものであることから、具体的な制度の構築が国会の合理的な立法裁量に委ねられたものである(前記⑵イ)。この趣旨に照らせば、憲法改正当時、社会的承認を受けていなかった他の人的結合関係は、同条2項の「家族に関するその 他の事項」として、具体的な制度の構築を第一次的には国会が合理的な立法裁量で決することが予定されていると解される。そして、同性の者同士の事実婚は、憲法改正後に家族として社会的承認を受けた人的結合関係である(前記イ)。諸外国の立法例をみても、同性の者同士の法律上の婚姻に準ずる関係を一般的に公証する法制度(以下「同性の者同士に係る家族に関する法制度」という。)は、そもそもこれを創設し ていない国も相当数ある上、これを創設した国においてもその立法時期は国ごとに異なり、創設された法制度の内容も、異性の者同士の婚姻と同様のものから、財産法上の法的効果のみを保障するもの、契約類似のものなど、多種多様な制度設計があるのであって、国ごとに多様な選択決定がされている(認定事実4⑴)。 そうすると、我が国に限って、同性の者同士に係る家族に関する法制度の内容が、 直ちに憲法24条1項の婚姻と全く同一のものに一義的に定まり、国会による制度 内容の選択決定が憲法上許されないと解する合理的理由は見当たらない。 なお、控訴人らは、同性の者同士も婚姻の本質を満たす人的結合関係を形成し得ることのほか、養子縁組等により次世代の育成保護という機能も果たし得ることを、憲法24条1項が婚姻の本質を伴う同性の者同士に婚姻の自由を保障する理由として も婚姻の本質を満たす人的結合関係を形成し得ることのほか、養子縁組等により次世代の育成保護という機能も果たし得ることを、憲法24条1項が婚姻の本質を伴う同性の者同士に婚姻の自由を保障する理由として挙げる(控訴人らの補充主張⑴ア)。しかし、以上に説示したところによれば、同性 の者同士が上記のような子の育成保護機能を有することもまた、国会の合理的裁量の中で総合的に検討されるべき事柄というべきである。 したがって、同性の者同士の事実婚は、現在でも憲法24条1項、2項の「婚姻」に含まれるとはいえない。 ⑷ 憲法24条1項の類推適用に関する控訴人らの主張について ア控訴人らの主張控訴人らは、同性の者同士も婚姻の本質を満たす人的結合関係を形成し得ること、次世代の育成保護という機能も果たし得ることから、憲法24条1項を類推適用すべきである旨主張する(控訴人らの補充主張⑴ア)。 イ検討 しかし、同性の者同士の事実婚が憲法24条1項の「婚姻」に含まれるかについて説示したところ(前記⑶ウ)と同様に、憲法が、憲法改正後に社会的承認を受けた結合関係を「家族に関するその他の事項」として後の立法に委ねており、同性の者同士に係る家族に関する法制度の内容が、直ちに同条1項の婚姻と全く同一のものに一義的に定まり、国会による制度内容の選択決定が憲法上許されないと解する合理的 理由は見当たらない以上、同性の者同士の事実婚をもって直ちに同条の「婚姻」に類するものとみることはできない。 一方で、婚姻に関連する法制度の中には事実婚を法律婚と同様に扱う明文規定があるものも相当数存在し、このような規定は、当該規定の趣旨等と当事者間に形成された人的結合関係に即して、同性の者同士の事実婚に適用される場合がある(令和6 年最高裁判決)。また、我 明文規定があるものも相当数存在し、このような規定は、当該規定の趣旨等と当事者間に形成された人的結合関係に即して、同性の者同士の事実婚に適用される場合がある(令和6 年最高裁判決)。また、我が国の判例は、明文規定がなくても、個別の事案について、 事実婚を法律婚と同様に保護してきたが、この保護も、今日では、同性の者同士の事実婚の場合にも、その趣旨が妥当するものは多いように思われる。このように、同性の者同士の事実婚に対する個別の法律の規定の類推適用は、人的結合関係の実質だけではなく、当該規定の趣旨等に即して検討されるものであるから、このことをもって、同性の者同士の事実婚に憲法24条の規定を類推適用することはできない。 したがって、憲法24条1項の類推適用に関する控訴人らの主張も採用できない。 ⑸ 小括以上によれば、同性の者同士の結合関係(同性の者同士の事実婚)が憲法24条の「婚姻」に含まれ、又はこれに同条1項の類推適用がされるとは解されず、同性の者同士が憲法上「婚姻」の自由を保障されているとはいえないから、本件諸規定が憲法 24条1項に違反する旨の控訴人らの主張は、採用することができない。 2 本件諸規定が憲法14条1項に違反するか(争点⑵)について⑴ 本件区別取扱いと憲法14条1項適合性の判断基準等について憲法14条1項は、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されな い。」と規定して法の下の平等を定めている。 ところで、民法、戸籍法その他の現行の法令には、当事者が特定の性自認等を有することを婚姻成立の要件としたり、当事者が特定の性自認等を有することを理由として婚姻を禁止したりする規定はない。しかし、前記認定 ろで、民法、戸籍法その他の現行の法令には、当事者が特定の性自認等を有することを婚姻成立の要件としたり、当事者が特定の性自認等を有することを理由として婚姻を禁止したりする規定はない。しかし、前記認定の立法経緯等によれば(認定事実3⑶イ)、法律婚に関する民法及び戸籍法の規定は、憲法24条1項が規定す る婚姻、すなわち、異性の者同士の婚姻を法律婚制度として具体化し、その具体的な要件及び効果を定める趣旨のものであり(前記1)、この趣旨に照らせば、本件諸規定における「夫婦」もまた、同項の「両性」と同様、法律上の男性である夫及び法律上の女性である妻を指すものと解される(以下、この解釈を「本件解釈」という。)。 そのため、同性の者同士で法律婚制度を利用することを希望する控訴人らは、本件諸 規定に基づいて法律婚を利用することができず、自らの性自認等に従ってその望む 法律上同性の相手との間で婚姻の法的効果を享受できない状態に置かれている。このように、同性の者同士と異性の者同士との間には、本件諸規定により、法律婚制度を利用できるか否か、その利用の可否に関する区別(本件区別取扱い)が生じていると認められる。 本件区別取扱いは、両性のいずれであれ同性の者同士は法律婚制度を利用できな いというものであるから、憲法24条2項に明記された両性の本質的平等に反するとはいえないが、法律婚制度を利用することを希望する控訴人らにとって、その利用に係る相手方について、憲法14条1項に明記された性別が異なることを理由とする法的取扱いの区別である。 しかし、同項の規定は、事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限 り、法的な差別的取扱いを禁止する趣旨のものであり、各人に存する経済的、社会的その他種々の事実関係上の差異を理由としてその法的取扱 の規定は、事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限 り、法的な差別的取扱いを禁止する趣旨のものであり、各人に存する経済的、社会的その他種々の事実関係上の差異を理由としてその法的取扱いに区別を設けることは、その区別が合理性を有する限り、この規定に違反するものではない(最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁、最高裁昭和45年(あ)第1310号同48年4月4日大法廷判決・刑集27巻3号2 65頁等)。 以上のところを踏まえると、本件区別取扱いについては、それが事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づかない差別的取扱いに当たるか否かが問題となり、憲法24条2項が立法府に与えた裁量権を考慮しても、本件区別取扱いが事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づかないものと認められる場合には、憲法14条1項に違反す るものと解するのが相当である。 ⑵ 本件諸規定の立法目的の合理性についてア本件諸規定の立法目的について婚姻及び家族に関する事項は、その具体的内容の決定を国会の合理的裁量に委ねた憲法24条2項の下、関連する法制度においてその具体的内容が定められていく ものであることから、当該法制度の制度設計が重要な意味を持つものである(平成2 7年最高裁1023号判決参照)。取り分け、本件諸規定は、同項に基づいて、同条1項の「婚姻」を法律婚制度として具体化し、その具体的な要件及び効果を定めたものであるから(前記1)、その立法目的は、民法が採用した法律婚制度の制度設計と密接不可分のものと解される。 そこで、現行民法が採用した法律婚制度の制度設計を審議経過等からみると、その 制度設計は、明治民法が採用した法律婚制度のうち、憲法24条の基本原則に抵触する部分を改正して 分のものと解される。 そこで、現行民法が採用した法律婚制度の制度設計を審議経過等からみると、その 制度設計は、明治民法が採用した法律婚制度のうち、憲法24条の基本原則に抵触する部分を改正して承継するというものであったと解される(認定事実3⑶イ)。そして、明治民法が採用した法律婚制度の制度設計を審議経過等からみると、婚姻自体については、既に慣習として社会に実在していた婚姻を、その当時の欠点を補正して採用するという制度設計が取られたが、その婚姻の上位に「家」制度を置く制度設計で あったことが明らかである(認定事実3⑵ウ)。この「家」とは、要するに複数の世代にわたる複数の夫婦とその間の子の結合体にほかならない。したがって、明治民法が採用した法律婚制度は、複数の夫婦とその間の子の結合体である「家」を、社会の基礎的な構成単位となる基本的な家族の姿として想定し、これを近代法における権利義務の帰属主体である人に着目して分解し、人と人との関係として夫婦を定める という制度設計に立ったものと解される。実際にも、明治民法において、婚姻に戸主や親の同意が要件とされたり(750条)、法定推定家督相続人が婚姻により他の家に入ることを禁じられたり(744条)したのは、夫婦が夫婦としてどうあるべきかという観点のみならず、婚姻により「家」を構成することになる夫婦としてどうあるべきかという観点からも規律する趣旨と解されるのであって、夫婦という法律関係 は、これを包摂するより大きな単位である「家」の構成要素の一つとして制度設計がされたものと解される。 もっとも、現行民法は、憲法24条の要請に抵触する「家」制度を廃したから(認定事実3⑶イ、ウ)、その制度設計において想定された家族の姿は、複数の世代にわたる複数の夫婦とその間の子の結合体である「家」 もっとも、現行民法は、憲法24条の要請に抵触する「家」制度を廃したから(認定事実3⑶イ、ウ)、その制度設計において想定された家族の姿は、複数の世代にわたる複数の夫婦とその間の子の結合体である「家」から、「一の夫婦とその間の子」 の結合体に分解されたものと解される。しかし、国民の9割以上が実際に「一の夫婦 とその間の子」という家族を構成していた憲法改正当時の社会状況(認定事実5⑴ア)や憲法改正時の議論(認定事実3⑶ア)からすれば、同条が、「一の夫婦とその間の子」という結合体まで解体することを要請したものとは解されず、民法改正時の議論(認定事実3⑶イ)によれば、現行民法が、これを解体したものとも解されない。 かえって、現行民法が、婚姻の実質的要件及び基本的かつ重要な効果の多くを、婚姻 が子の生殖と養育を目的とする結合関係であることを前提としたものとしている(認定事実3⑶ウ(ア))のは、「一の夫婦とその間の子」の結合体を、社会の基礎的な構成単位となる基本的な家族の姿として想定し、夫婦が夫婦としてどうあるべきかという観点のみならず、その間に生まれてくる子の父母としてどうあるべきかという観点から規律する趣旨と解される。夫婦という法律関係は、これを包摂するより 大きな単位である「一の夫婦とその間の子」の構成要素として制度設計がされていると解されるのである。そして、この制度設計を受けて、戸籍法は、「一の夫婦とその間の子」という単位で戸籍を編製することにしたものと解される。 以上によれば、民法が採用した法律婚制度は、「一の夫婦とその間の子」の結合体を、社会の基礎的な構成単位となる基本的な家族の姿として想定するという制度設 計(以下「本件制度設計」という。)に立って構築されたものと解され、本件諸規定の立法目的は、本件制度設 子」の結合体を、社会の基礎的な構成単位となる基本的な家族の姿として想定するという制度設 計(以下「本件制度設計」という。)に立って構築されたものと解され、本件諸規定の立法目的は、本件制度設計の下で、夫婦が夫婦としてどうあるべきかという観点のみならず、その間に生まれてくる子の父母としてどうあるべきかという観点から、具体的な婚姻の要件及び効果を定めることにあると解するのが相当である。 そこで以下、項を改め、本件制度設計に立って具体的な婚姻の要件及び効果を定め るという本件諸規定の立法目的が合理性を有するかについて、昭和22年当時(後記イ)と現時点(後記ウ)とに分けて検討する。 イ昭和22年当時における合理性について憲法改正に伴って民法が改正された昭和22年当時、国民は、その9割近くが実際に、「一の夫婦とその間の子」という家族を構成していたから(認定事実5⑴ア)、 社会の基礎的な構成単位は、実際にも「一の夫婦とその間の子」から成る家族であっ たと推認される。また、昭和22年当時は、性自認を身体的性別と同一としない状態や性的指向としての同性愛は、医学的に精神疾患と評価されていた時代に当たり(認定事実1⑴ア、⑵ア)、同性の者同士の結合体を社会の基礎的な構成単位としないことは、国の伝統や国民感情を含めた当時の社会状況の諸要因からして当然であったと解される。 以上のような昭和22年当時の社会状況を踏まえれば、「一の夫婦とその間の子」の結合体のみを社会の基礎的な構成単位である基本的な家族の姿として想定した本件制度設計には合理性が認められ、本件制度設計に立って、夫婦が夫婦としてどうあるべきかという観点のみならず、その間に生まれてくる子の父母としてどうあるべきかという観点から具体的な婚姻の要件及び効果を定める 設計には合理性が認められ、本件制度設計に立って、夫婦が夫婦としてどうあるべきかという観点のみならず、その間に生まれてくる子の父母としてどうあるべきかという観点から具体的な婚姻の要件及び効果を定めることにも合理性が認めら れる。 ウ現時点における合理性について昭和22年当時に比べ、令和2年では、婚姻の件数が減少して未婚割合が上昇し、「一の夫婦とその間の子」から成る世帯の割合は25.0%にまで減少し、これと近い割合の20.1%が夫婦のみの世帯となっていて、4割近い国民が単身世帯で社会 生活をしている状況にある(認定事実5⑴ア、イ)。このように、今日の実際の社会の基礎的な構成単位は多様化し、もはや「一の夫婦とその間の子」から成る家族「のみ」が社会の基礎的な構成単位であるとは評価し難い社会状況にある。また、現時点では、同性の者同士の事実婚も、一つの家族の姿として社会的承認を受けており(前記1⑶イ)、国会が選択決定する婚姻及び家族に関する法制度の制度設計は、本件制 度設計のみに限られない。 しかしながら、生まれる子の側からすると、嫡出子率は、昭和22年以来、100%近い割合を維持し続け、令和5年においても97.5%の子が嫡出子として出生している(認定事実5⑴ウ)。このように、生まれる子の側からみれば、100%近くが夫婦の間の子として出生して養育され、「一の夫婦とその間の子」として社会生 活を営んでいるわけであり、そのような国民が、なお全体の4分の1に及ぶ社会状況 にあるわけである。また、憲法が、その前文において「われらとわれらの子孫のために(中略)この憲法を確定する。」とうたうように、国家は、国民社会が世代を超えて維持されることを前提とするものである。そして、男女の性的結合関係による子の生殖が、今なお 「われらとわれらの子孫のために(中略)この憲法を確定する。」とうたうように、国家は、国民社会が世代を超えて維持されることを前提とするものである。そして、男女の性的結合関係による子の生殖が、今なお世代を超えて国民社会を維持する上で社会的承認を受けた通常の方法であることにも変わりはなく(認定事実3⑴)、この方法をおいて、国民社会が世 代を超えて安定的に維持されることを期することは困難である。加えて、婚姻数が減少し、未婚率が男女共に上昇しても(認定事実5⑴イ)、上記のとおり生まれてくる子のほぼ全てが嫡出子であるという事実は、「一の夫婦とその間の子」という結合体を形成しようとする異性の者同士にとって、現行の法律婚制度が、生まれてくる子の出生環境を整えるという観点から実際に有用な制度であることを、優に推認させる ものというべきである。 そうすると、他にも制度設計があり得るとしても、「一の夫婦とその間の子」の結合体を一つの家族の姿として想定する本件制度設計自体はなお合理的なものであり、本件制度設計に立って、夫婦としてどうあるべきかという観点のみならず、その間に生まれてくる子の父母としてどうあるべきかという観点から具体的な婚姻の要件及 び効果を定めることには、現在でもなお合理性が認められる。 ⑶ 本件諸規定による本件区別取扱いの合理性についてア立法目的との合理的関連性前記⑵のとおり、本件諸規定の立法目的は、「一の夫婦とその間の子」の結合体を、社会の基礎的な構成単位となる基本的な家族の姿として想定する本件制度設計に 立って、夫婦が夫婦としてどうあるべきかという観点のみならず、その間に生まれてくる子の父母としてどうあるべきかという観点から、具体的な婚姻の要件及び効果を定めるというものである(前記⑵ア)。そして、この立法 夫婦が夫婦としてどうあるべきかという観点のみならず、その間に生まれてくる子の父母としてどうあるべきかという観点から、具体的な婚姻の要件及び効果を定めるというものである(前記⑵ア)。そして、この立法目的は、現時点でもなお合理性を有しており(前記⑵ウ)、本件諸規定における「夫婦」を法律上の男性である夫と法律上の女性である妻と解することは、上記立法目的との関連において合理 性を有している。そして、本件諸規定が存在しなければ、誰も婚姻ができなくなり、 憲法13条、24条に違反する結果となるから、その存在が憲法に違反することもあり得ない。したがって、本件諸規定による本件区別的取扱いは、事柄の性質上、合理的な根拠に基づくものといえる。 イ控訴人らの主張について控訴人らは、今日までの社会状況の変化に伴い、同性の者同士も婚姻の本質を満た す人的結合関係を形成することができること、次世代の育成保護という機能も果たし得ることを挙げ、婚姻の本質を伴う結合関係は、同性の者同士と異性の者同士との間に本質的な差がないから、同性の者同士は、憲法14条1項の要請として現行の法律婚制度への包摂が求められる旨主張する(控訴人らの主張⑵エ、控訴人らの補充主張⑴ウ、⑵、⑶)。この主張は、本件諸規定における「夫婦」には「その間の子」が 出生しない同性の者同士も含まれる旨の主張と解される。そして、今日では、個別の法律については、当該法律の趣旨等と当事者間に形成された関係に即して、同性の者同士の事実婚への適用ないし類推適用を検討し得るものであり(前記1⑷イ)、本件諸規定も、個別の法律の一つではある。 しかし、本件諸規定の立法目的は、具体的な婚姻の要件及び効果を定めるというも のであり(前記⑵ア)、簡易な届出により、夫婦や親子関係についての関連す 本件諸規定も、個別の法律の一つではある。 しかし、本件諸規定の立法目的は、具体的な婚姻の要件及び効果を定めるというも のであり(前記⑵ア)、簡易な届出により、夫婦や親子関係についての関連する法制度の全体を利用することを可能とする趣旨の規定である。一方で、憲法24条2項により国会が見据えるべき夫婦と親子関係についての全体の規律は、本件制度設計の下で、昭和22年から現在までに、私的領域及び公的領域における多数かつ多種多様な関連する法制度が相互に作用・影響し合って形成されてきたものである(認定事実 3⑷ア)。この関連する法制度の中には、本件制度設計と切り離せないものからこれと係わりないものまで濃淡があり得るところ、新たに社会的承認を受けた家族の姿について法制度を創設する場合には、その全体の規律を構成する個々の法制度との整合性や妥当性といった国会の多方面にわたる総合的な検討と合理的な裁量判断による制度設計を含めた選択決定が必要不可欠になると解される。 本件諸規定のみをみても、「夫婦とその間の子」を同じ氏とすることは、本件制度 設計と密接不可分に関わるが、平成27年最高裁1023号判決において憲法違反が争われ、同判決後も選択的夫婦別姓制度に関する議論が続く社会状況において、生まれてくる子の氏の問題のない同性の者同士の結合関係にこの規律を及ぼすのかや、近親婚の規律をどうするかなどについても様々な意見があり得る。さらに、性自認が身体的な性別と同じ者については、その身体的な性別もまた個人の重要な人格的個 性であり、具体的な法制度の内容の詳細は、そのことも踏まえて行われる必要がある。実際に、諸外国における法制度にも、多様な制度設計があり、憲法24条が、国会による選択決定を待たず、同性の者同士に係る家族に関する法制度の内 制度の内容の詳細は、そのことも踏まえて行われる必要がある。実際に、諸外国における法制度にも、多様な制度設計があり、憲法24条が、国会による選択決定を待たず、同性の者同士に係る家族に関する法制度の内容について、当然に現行民法が採用した法律婚制度と全く同一内容に一義的に具体化されることを予定しているとは解されない。 そうであるのに、婚姻の成立要件を定める本件諸規定の「夫婦」に同性の者同士の結合関係を含めると、憲法24条が国会の選択決定に委ねた同性の者同士に係る家族に関する法制度の内容は、現行の法律婚制度と全く同一の内容のものとして当然に一義的に具体化され、関連する法制度を含めて適用されることになるのであり、そのような解釈は採り得ないから、控訴人らの上記主張は採用できない。 ⑷ 同性の者同士に係る家族に関する法制度の不存在が憲法14条1項に違反するとの主張についてア控訴人らの主張控訴人らは、今日までの社会状況の変化に伴い、同性の者同士も婚姻の本質を満たす人的結合関係を形成することができること、次世代の育成保護という機能も果た し得ることを挙げ、婚姻の本質を伴う結合関係は、同性の者同士と異性の者同士の間に本質的な差がないのに、同性の者同士に係る家族に関する法制度が存在しないことが、憲法14条1項に違反する旨主張する(控訴人らの補充主張⑵、⑶)。 イ憲法上保障されていない権利と憲法14条1項についてしかし、同性の者同士は、憲法24条1項により「婚姻」の自由を保障されるもの ではなく(前記1⑸)、同性の者同士に係る家族に関する法制度の創設は、同条2項 により国会の立法裁量に委ねられているものである(前記1⑵イ、⑶イ)。そもそも国会議員の立法不作為が国家賠償法1条1項の規定の適用上違法の評価を受 に係る家族に関する法制度の創設は、同条2項 により国会の立法裁量に委ねられているものである(前記1⑵イ、⑶イ)。そもそも国会議員の立法不作為が国家賠償法1条1項の規定の適用上違法の評価を受けることがある場合は、立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるに もかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などの例外的な場合とされていること(最高裁平成13年(行ツ)第82号、第83号、同年(行ヒ)第76号、第77号同17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁。 以下「平成17年最高裁判決」という。)を踏まえると、前記のような立法裁量に委ねられた同性の者同士に係る家族に関する法制度は、存在しないことが直ちに憲法 14条1項に違反するものではない。 また、本件で不存在である立法は、その性質において、憲法上保障された権利を実現するものではない(前記1⑸)。その内容においても、新たに社会的承認を受けた家族の姿についての法制度を制度設計から検討するというものである(前記⑶)。諸外国においても、同性の者同士に係る家族に関する法制度の立法時期は国ごとに異 なり、創設していない国もある(認定事実4⑴)。そうすると、国会がこのような性質・内容の立法を怠っているとみたとしても、現時点においては、このことをもって直ちにその立法不作為が憲法14条1項に違反するとはいえない。 ウ性自認等による差別の解消を目的とする立法の不作為と憲法14条1項について 同性の者同士に係る家族に関する法制度の創設は、国際的な取組や勧告では、性自認等を理由とする差別を えない。 ウ性自認等による差別の解消を目的とする立法の不作為と憲法14条1項について 同性の者同士に係る家族に関する法制度の創設は、国際的な取組や勧告では、性自認等を理由とする差別を解消する方策の一つと位置付けられており、我が国に対しても、そのような観点からその創設が勧告されている(認定事実2⑴、⑵、4⑵ア。 特に、2015年〔平成27年〕の高等弁務官の報告書には、これを方策の一つとする旨の明記がある。)。控訴人らは、このことを踏まえ、性自認等を理由とする差別 の解消を目的とする法制度の創設を求めるものとも解される。 そこで検討すると、同性の者同士が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営む人的結合関係は、今日では、同性の者同士の事実婚と呼ぶべき性質のものである(前記1⑶イ)。そして、我が国では、この事実婚に関する法制度も、大正期から検討されながら昭和22年の民法改正時に立法上の課題とされ(認定事実3⑵エ、⑶イ)、約80年が経過しても不存在のまま、個別の法 律と当事者間に形成された関係に即した事案ごとの解決に委ねられてきた(認定事実3⑷イ)。事実婚は、明治期には、文明国において「婚姻」と混同すべきものでない「私通」とされ(認定事実3⑵ウ)、かつての「内縁」という呼称にも「婚姻」とは異なるという国民感情がうかがわれるが、今日では「事実婚」という名称を得て、多くの実定法において採用され、判例上も広く保護されて(認定事実3⑷イ)、法制 度化をみないまま既に国民の間に定着した観があり、今日では、少なくとも私的な日常生活においては、単に手続を欠くだけの婚姻であり、特段、届出の有無を重要視しないというのが今日の一般的な国民感情であると思われる。 ところが、控訴人らの供述や弁論の全 今日では、少なくとも私的な日常生活においては、単に手続を欠くだけの婚姻であり、特段、届出の有無を重要視しないというのが今日の一般的な国民感情であると思われる。 ところが、控訴人らの供述や弁論の全趣旨によれば、控訴人らは、実際には、私的な日常生活の様々な場面で事実婚とも異なる状況に置かれていることが認められる。 そして、令和5年に制定されたLGBT理解増進法の規定内容(認定事実2⑶イ)からすると、このような控訴人らの状況は、性自認等の多様性に対する国民の理解不足に起因するところが大きいものと考えられる。このような社会状況の要因を踏まえると、国会が、同性の者同士について異性の者同士と全く同じ法律婚制度を創設したときには、確かに、性自認等の多様性に対する国民の理解が飛躍的に高まる可能性が あり得る。 しかし、家族に関する法制度自体は、本来、社会の基本的な構成単位の在り方を定めるものであり、定められた制度に差別があってはならないが、差別を解消することをその制度本来の目的とするものではない。一方で、性自認等の多様性に対する国民の理解不足を解消する方策も、家族に関する法制度の創設だけではなく、例えば、L GBT理解増進法による理解の増進を待つにとどめず、2022年(令和4年)の自 由権規約委員会の勧告のように、差別を禁止する明示的な法律を立法するという方策もあり得る(認定事実2⑵イ)。そうすると、憲法24条2項は、国会が、社会状況における要因の一つとして、性自認等を理由とする差別の実情をも踏まえつつ、夫婦や親子関係についての全体の規律を見据え、多方面にわたる検討と総合的かつ合理的な裁量判断により、差別の解消を目的として法制度を創設するか否か、創設する としてその内容をどこまで現行の法律婚と同じものにするかなど、制度 体の規律を見据え、多方面にわたる検討と総合的かつ合理的な裁量判断により、差別の解消を目的として法制度を創設するか否か、創設する としてその内容をどこまで現行の法律婚と同じものにするかなど、制度設計を含めた選択決定をすることを求めていると解される。 そして、国会自体も、全体が立法に全く取り組んでいないという状況にはなく、質疑がされ、審議は開始されないものの、複数回、法律案が提出されている状況にある(認定事実4⑵イ)。憲法が立法裁量に委ねた事柄について、国会内で実際に審議の 求めがある以上、憲法は、第一次的には国会が、多方面にわたる検討と総合的かつ合理的な裁量判断により、国民の代表機関として自ら上記の選択決定をすることを求めていると解される。そうすると、それを待つことなく、現時点の状況をもって、憲法上客観的に保障された権利が実現していない状況と同視することはできない。 しかも、本件の主張立証は、弁論主義の下で収集された極めて限定的なものであ り、国会が踏まえるべき社会状況全体の多方面にわたる諸要因とは全く次元を異にするものである。差別の解消を本来の目的としない家族に関する法制度について、憲法が、差別の解消を目的にこれをどのように創設するかを社会状況の全体の多方面にわたる諸要因を踏まえた国会の選択決定に委ね、国会内で審理の開始が求められているのに、この限られた訴訟資料を根拠として、差別の解消を目的とするその立法 不作為が憲法に違反するとまで断じることも、やはり困難であるというほかない。 以上のところに加え、同性の者同士に係る家族に関する法制度の不存在に関しては、①その立法の不存在によって、同性の者同士が婚姻の本質を伴う結合関係を形成すること自体が侵害されているわけではなく、そのような結合関係は、同性の者同士の事実婚と 族に関する法制度の不存在に関しては、①その立法の不存在によって、同性の者同士が婚姻の本質を伴う結合関係を形成すること自体が侵害されているわけではなく、そのような結合関係は、同性の者同士の事実婚として法的に保護されること、②簡易な届出によって関連する法制度全体 の適用を一度に受けることはできないとしても、関連する法制度の趣旨に即して個 別に適用ないし類推適用を受けることはでき(前記1⑷イ)、また、婚姻によって発生する扶養義務(民法752条)や婚姻費用分担義務(同法760条)等は、委任契約(同法643条)など契約によっても発生させることができ、離婚による財産分与(同法768条)や、法定相続分(同法890条、900条)等も契約で代替することができるなど、婚姻の基本的かつ重要な法的効果の一部については代替する方法 があること、③法律による公証とは異なるものの、人口比率で約93%相当の人々が居住する自治体がパートナーシップ制度を導入し、多くの民間企業が、同性の者同士の家族の形成・子育てを異性の者同士と同様に支援する取組が広がっていること(認定事実4⑵ウ)、④性自認が身体的性別と一致しない者は、特例法による法律上の性別の変更を経て法律婚を選択することができ、その性別の変更は、令和5年最高裁決 定後は身体的侵襲を受けることなく可能であること(認定事実2⑶ア、ウ)等の事情も指摘することができる。 以上の事情を総合すると、同性の者同士に係る家族に関する法制度の不存在を原因として本件区別取扱いが生じていることについては、全体としてはなお、憲法24条2項が立法府に与えた裁量権を考慮した場合に、事柄の性質に応じた合理的な根 拠に基づかないとまで断じることが困難であり、憲法14条1項に違反するとまではいえない。 ⑸ 小括以 憲法24条2項が立法府に与えた裁量権を考慮した場合に、事柄の性質に応じた合理的な根 拠に基づかないとまで断じることが困難であり、憲法14条1項に違反するとまではいえない。 ⑸ 小括以上のとおり、本件諸規定又は同性の者同士に係る家族に関する法制度の不存在によって生じる本件区別取扱いが憲法14条1項に違反する旨の控訴人らの主張は 採用することができない。 3 本件諸規定が憲法24条2項に違反するか(争点⑶)について⑴ 憲法24条2項の趣旨等について憲法24条は、2項において「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本 質的平等に立脚して、制定されなければならない。」と規定している。 この規定は、これまでも説示してきたとおり、婚姻及び家族に関する事項は、国の伝統や国民感情を含めた社会状況における種々の要因を踏まえつつ、それぞれの時代における夫婦や親子関係についての全体の規律を見据えた総合的な判断を行うことによって定められるべきものであり、関連する法制度においてその具体的内容が定められていくものであることから、その内容を法律によって具体化することとし て、具体的な制度の構築を第一次的には国会の合理的な立法裁量に委ねるとともに、その立法に当たっては、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚すべきであるとする要請、指針を示すことによって、その裁量の限界を画したものである(前記1⑵イ)。 そして、憲法24条2項が、本質的に様々な要素を検討して行われるべき立法作用に対して上記のようにあえて立法上の要請、指針を明示していることからすると、そ の要請、指針は、単に、憲法上の権利として保障される人格権を不当に侵害するものでなく 検討して行われるべき立法作用に対して上記のようにあえて立法上の要請、指針を明示していることからすると、そ の要請、指針は、単に、憲法上の権利として保障される人格権を不当に侵害するものでなく、かつ、両性の形式的な平等が保たれた内容の法律が制定されればそれで足りるというものではないのであって、憲法上直接保障された権利とまではいえない人格的利益をも尊重すべきこと、両性の実質的な平等が保たれるように図ること、婚姻制度の内容により婚姻をすることが事実上不当に制約されることのないように図る こと等についても十分に配慮した法律の制定を求めるものであり、この点でも立法裁量に制限的な指針を与えるものといえる。もっとも、ここでいう憲法上直接保障された権利とまではいえない人格的利益や実質的平等は、その内容として多様なものが考えられ、それらの実現の在り方は、その時々における社会的条件、国民生活の状況、家族の在り方等との関係において決められるべきものである。 そうすると、憲法上の権利として保障される人格権を不当に侵害して憲法13条に違反する立法措置や不合理な差別を定めて憲法14条1項に違反する立法措置を講じてはならないことは当然であるとはいえ、憲法24条の要請、指針に応えて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定が上記のとおり国会の多方面にわたる検討と判断に委ねられているものであることからすれば、婚姻及び家族に関する 法制度を定めた法律の規定が憲法24条1項、14条1項に違反しない場合に、更に 憲法24条2項にも適合するものとして是認されるか否かは、当該法制度の趣旨や同制度を採用することにより生ずる影響につき検討し、当該規定が個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠き、国会の立法裁量の範囲を超えるものと して是認されるか否かは、当該法制度の趣旨や同制度を採用することにより生ずる影響につき検討し、当該規定が個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠き、国会の立法裁量の範囲を超えるものとみざるを得ないような場合に当たるか否かという観点から判断すべきものとするのが相当である(平成27年最高裁1023号判決参照)。 ⑵ 検討争点⑴及び争点⑵において説示したとおり、本件諸規定は、憲法24条1項、14条1項に違反しない(前記1⑸、2⑸)。そして、本件諸規定の立法目的は、「一の夫婦とその間の子」の結合体を、社会の基礎的な構成単位となる基本的な家族の姿として想定する本件制度設計の下、夫婦が夫婦としてどうあるべきかという観点のみ ならず、その間に生まれてくる子の父母としてどうあるべきかという観点から、婚姻の具体的な要件及び効果を定めることにあるところ(前記2⑵ア)、この制度設計は、異性の者同士の婚姻を予定する憲法24条1項(前記1⑵イ、⑶ウ)の趣旨に沿ったものとして現時点でも合理性を有しており(前記2⑵ウ)、本件解釈は、上記立法目的との関連において合理性を有し、本件諸規定の存在を否定して無効とすれば誰も 婚姻ができないという憲法13条や24条1項が許容しない事態となるものである(前記2⑶ア)。上記「夫婦」が同性の者同士を含むという解釈を採るときには、本件諸規定が婚姻の成立要件を定める規定であるために、国会が同性の者同士に係る家族に関する法制度の内容を決していないのに、その内容が必然的に現行の法律婚制度と同じになってしまうのであり、そのような解釈は採り得ない(前記2⑶イ)。 また、同性の者同士の事実婚に関しては、婚姻の基本的かつ重大な法律効果の一部について代替する方法があり、法律による公証とは異なるものの、人口比 あり、そのような解釈は採り得ない(前記2⑶イ)。 また、同性の者同士の事実婚に関しては、婚姻の基本的かつ重大な法律効果の一部について代替する方法があり、法律による公証とは異なるものの、人口比率で約93%相当の人々が居住する自治体がパートナーシップ制度を導入し、多くの民間企業が同性の者同士の家族の形成・子育てを異性の者同士と同様に支援する取組が広がっているなどの事情もある(前記⑷ウ)。 以上の点を総合的に考慮すると、異性の者同士の婚姻を法律婚制度として具体化 し、その具体的な要件及び効果を定める本件諸規定が、同性の者同士に係る家族に関する法制度を含まないものであるとしても、上記のような状況の下で直ちに個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠き、国会の立法裁量の範囲を超えるものとみざるを得ないような場合に当たるということはできない。したがって、本件諸規定は、憲法24条2項に違反するものではない。 ⑶ 控訴人らの原審における主張についてア控訴人らの主張控訴人らは、①憲法24条2項が婚姻及び家族に関する制度の制定を義務付けており(控訴人らの主張⑶ア)、②同条1項が婚姻の本質を伴う同性の者同士にも婚姻の自由を保障しているとの前提に立って、本件諸規定が取り分け配偶者の選択の自 由について同条2項に違反すると主張する(控訴人らの主張⑶イ(ア))とともに、③同条1項の婚姻の自由の保障が及ぶかどうかにかかわらず、法律婚制度により法的に家族を形成し、維持する利益が前国家的なもので、個人の人格的生存にとって極めて重要な人格的利益として位置付けられる以上、同条2項は、婚姻の本質を伴う同性の者同士に対しても、法律婚制度により法的に家族を形成し、維持する利益を保障す るために必要な法制度を整備す て極めて重要な人格的利益として位置付けられる以上、同条2項は、婚姻の本質を伴う同性の者同士に対しても、法律婚制度により法的に家族を形成し、維持する利益を保障す るために必要な法制度を整備することを要請しているとして(控訴人らの主張⑶イ(イ))、真にやむを得ない理由がない限り、本件諸規定が、婚姻の本質を伴う同性の者同士の現行の法律婚制度の享有主体性を否定し、同性の者同士が現行の法律婚制度に基づき婚姻できないこととしていることは、同項に違反する旨を主張する。 イ検討 しかし、上記ア①(憲法24条2項による立法の義務付け)について、同性の者同士に係る家族に関する法制度についての立法不作為を原因として本件区別取扱いが生じていることについては、憲法14条1項との関係で、全体としてはなお、憲法24条2項が立法府に与えた裁量権を考慮した場合に、事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づかないとまで断じることが困難である(前記2⑷ウ)。憲法13条との関 係でも、人が性自認等に従った法令上の取扱いを受けることは、人の人格的存在と結 びついた重要な法的利益であり(令和5年最高裁決定参照)、憲法上、保障された権利とまではいえない人格的利益の一つであるから、憲法24条2項に基づく立法においても、これを尊重すべきことは、立法の指針とされるものであるが、そのような利益を、同性の者同士に係る家族に関する法制度の中でどのように実現するかは、その時々における社会的条件、国民生活の状況、家族の在り方等との関係において立法 裁量で決められるべき事柄である(前記⑴)。そして、憲法14条1項との関係と同様、国会内で審議の求めがある以上、憲法は、第一次的には国会が、多方面にわたる検討と総合的かつ合理的な裁量判断により、現時点における社会的条件、国 である(前記⑴)。そして、憲法14条1項との関係と同様、国会内で審議の求めがある以上、憲法は、第一次的には国会が、多方面にわたる検討と総合的かつ合理的な裁量判断により、現時点における社会的条件、国民生活の状況、家族の在り方等との関係において同性の者同士の結合関係を法制度としてどのように実現するかを自ら選択決定することを求めていると解される。それを待つ ことなく、現時点の状況をもって、憲法上客観的に保障された権利が実現していない状況と同視することはできない(前記2⑷ウ)。 また、上記ア②(婚姻の自由の保障による立法の義務付け)について、憲法24条1項は、同性の者同士に婚姻の自由を保障するものではない(前記1⑸)。さらに、上記ア③(法律婚制度により法的に家族を形成し、維持する利益の前国家的な性質に よる立法の義務付け)について、法律婚制度は、生命や自由などとは異なり、近代法において初めて成立したものであり(認定事実3⑴)、そのような法律婚制度を利用する利益が前国家的な性質を有するとの主張は、論理則上、矛盾がある。本件諸規定が、同性の者同士に係る家族に関する法制度を含まないものであるとしても、現在の状況の下で直ちに個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠き、 国会の立法裁量の範囲を超えるものとみざるを得ないような場合に当たるとはいえないことは、前記⑵のとおりである。 ⑷ 控訴人らの当審における補充主張についてア控訴人らの主張控訴人らは、①同性の者同士に対し法律婚制度の利用を認めないことは、憲法24 条2項の「個人の尊厳」に違反するとし、また、②同性の者同士に係る家族に関する 法制度の内容を、異性の者同士の婚姻とは別の制度とすることは、同性の者同士が異性の者同士と同等ではなく、劣った存 条2項の「個人の尊厳」に違反するとし、また、②同性の者同士に係る家族に関する 法制度の内容を、異性の者同士の婚姻とは別の制度とすることは、同性の者同士が異性の者同士と同等ではなく、劣った存在であるというレッテルを貼ることになり、これは「個人の尊厳」から許されないとして、同項が、個人の尊厳として、現行の法律婚制度に同性の者同士を包摂することを要請している旨主張する(控訴人らの補充主張⑴イ)。 イ検討上記ア①(同性の者同士に法律婚制度の利用を認めないことと個人の尊厳)に関する控訴人らの主張は、憲法24条2項が、同性の者同士に係る家族に関する法制度の具体的内容を国会の合理的裁量に委ねたこと(前記1⑵イ)が、個人の尊厳に反すると主張するものに等しい。しかし、憲法は、13条において個人の尊厳の尊重を定め る一方で、憲法改正後の家族に関する法制度の具体的構築を国会の立法裁量に委ねているのであり、個人の性自認等が、各人の人格に根差した個性であり、前国家的な性質を有するとしても、法律婚制度自体は前国家的なものではないのであるから(前記⑶イ)、同性の者同士に現行の法律婚制度の利用を認めないことが、直ちに個人の尊厳に反するとはいえない。 また、上記ア②(同性の者同士に係る家族に関する法制度が現行の法律婚制度と異なることと個人の尊厳)についていえば、同性の者同士に係る家族に関する法制度の内容は、諸外国の立法例においても、必ずしも同一とはされていないし、異なるものとした場合に、一方が優れ、他方が劣っているというものでもない。そもそも、同性の者同士の事実婚は、少なくとも、私的領域において、事実婚と同様の法的性質を有 するものであるのに、控訴人らの供述及び弁論の全趣旨によれば、控訴人らは、実際には、私的な日常生活の様々 も、同性の者同士の事実婚は、少なくとも、私的領域において、事実婚と同様の法的性質を有 するものであるのに、控訴人らの供述及び弁論の全趣旨によれば、控訴人らは、実際には、私的な日常生活の様々な場面で、性自認等の多様性に対する国民の理解不足を背景として、同性の者同士であることを理由に、事実婚とも異なる状況に置かれていると認められる(前記2⑷ウ)。個人の尊厳との関係で問題とされるべきなのは、このような社会状況の要因それ自体である。このような要因は、同性の者同士に係る家 族に関する法制度を現行の法律婚制度と全く同一とすれば、飛躍的に改善されるか も知れないが、方策はそれのみではなく、諸外国の立法例をみても、同性の者同士に係る家族に関する法制度の内容が、直ちに現行の法律婚制度(憲法24条1項の婚姻)と全く同一のものに一義的に定まり、国会による内容の選択決定が憲法上許されないと解する合理的理由は見当たらない(前記1⑶、2⑷イ、ウ)。 ⑸ 小括 以上によれば、憲法24条2項違反に関する控訴人らの主張は、結局のところ、憲法24条1項違反と14条1項違反に関する主張と同趣旨であり、憲法24条1項、14条1項に違反しない本件諸規定又は同性の者同士に係る家族に関する法制度の不存在(前記1、2)について、国会の立法裁量の範囲を超えるものとみざるを得ないような場合に当たるとする主張として採用することができない。 4 控訴人らの請求について⑴ 国家賠償法上の違法の意義国家賠償法1条1項は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに、国又は公共団体がこれを賠償する責に任ずることを規定するものである(最高裁昭 和53年(オ)第1240 務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに、国又は公共団体がこれを賠償する責に任ずることを規定するものである(最高裁昭 和53年(オ)第1240号同60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁、平成17年最高裁判決)。 ⑵ 立法に関して控訴人らが置かれている状況についてア性自認等は、今日、人の重要な個性であり(認定事実1⑶、2⑷)、性自認等に従った法令上の取扱いを受けることは、人の人格的存在と結びついた重要な法的 利益である(令和5年最高裁決定参照)。また、同性の者同士の事実婚は、今日、一つの家族の姿として社会的承認を受けている(前記1⑶イ)。このような同性の者同士の事実婚は、少なくとも、私的領域において、事実婚と同様の法的性質を有するものであるのに、控訴人らは、実際には、私的な日常生活の様々な場面で、事実婚とも異なる状況に置かれている(前記2⑷ウ)。 イ令和5年制定のLGBT理解増進法の規定内容からすると、この状況は、性自 認等の多様性に対する国民の理解不足(認定事実2⑶イ)に由来するところが大きいものと考えられる。そして、国際的には、この種の理解不足に由来する差別を解消する方策の一つとして、同性の者同士に係る家族に関する法制度を創設し、その関係を公証する取組が進められ(認定事実2⑴)、我が国に対しても、そのような法制度の創設が勧告されている(認定事実2⑵、4⑵ア)。 ところが、我が国における立法の検討状況をみると、法律婚制度については、社会状況の変化を踏まえた改正が随時行われる(認定事実3⑷ア)一方で、同性の者同士に係る家族に関する法制度については、少なくとも約10年前から、政府において、国会等で慎重な検討を要すると政府が答弁等を 状況の変化を踏まえた改正が随時行われる(認定事実3⑷ア)一方で、同性の者同士に係る家族に関する法制度については、少なくとも約10年前から、政府において、国会等で慎重な検討を要すると政府が答弁等をしながら、その慎重な検討を開始したことをうかがわせる証拠がなく、国会においては、法律案が提出されても、審議が 開始されないという状況にある(認定事実4⑵イ)。このことからは、かえってその慎重な検討は開始されていないこともうかがえるのであって、その検討状況は、客観的にみて、控訴人らが性自認等に従った法制度上の取扱いを受けるという人格的存在と結びついた重要な法的利益が十分に尊重されているとは評し難い状況にある。 また、背景にある国民の理解不足との関係でも、LGBT理解増進法において、役割 が定められた国、地方公共団体及び民間企業(同法4~6条、認定事実2⑶イ)のうち、地方公共団体及び民間企業では、同性の者同士の結合関係を家族として取り扱う動きが広がっているのに(認定事実4⑵ウ)、国のみが、上記のような検討状況にあり、同法8条に基づいて政府が定めるべき基本計画さえ、同法の制定から2年以上が経過した現時点でも策定されたとの立証がないのである(認定事実2⑶イ)。 ウ以上の諸点に照らすと、本件の主張立証の限りでは、被控訴人の関係行政機関が、LGBT理解増進法に基づき、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する施策を的確に実施していれば、このような状況が生じるとは考えられない。そうであるとすれば、当該施策を実施する権限を有する関係行政機関の公務員が、漫然と当該施策の実施を怠り、性的指向及びジェンダー アイデンティティを理由とする不当な差別が生ずる状況を放置しているものとして、 控訴人らと する権限を有する関係行政機関の公務員が、漫然と当該施策の実施を怠り、性的指向及びジェンダー アイデンティティを理由とする不当な差別が生ずる状況を放置しているものとして、 控訴人らとの関係で、国家賠償法1条1項の適用上違法となる場合もあり得るというべきである。 ⑶ 控訴人らが主張する国家賠償法上の違法の有無についてしかし、控訴人らが本件において主張する国家賠償法上の違法は、本件諸規定又は同性の者同士に係る家族に関する法制度の不存在が憲法24条1項、2項、14条1 項に違反することを前提に、その立法又はそれを是正しない立法不作為(同性の者同士に係る家族に関する法制度の創設をしない不作為を含む。)が、国家賠償法上違法であるというものである。そして、弁論主義の下で当裁判所が判断できるのは、この違法の有無のみであり、本件の主張立証も、上記憲法違反をめぐって行われてきたものである。 このような国会議員の立法又は立法不作為は、当該立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などに、例外的に、上記違法の評価を受けるもので ある(平成17年最高裁判決参照)。 しかし、本件諸規定又は同性の者同士に係る家族に関する法制度の不存在は、前記1~3のとおり、控訴人らが主張する憲法24条1項、2項、14条1項に違反するとまで断じられない。取り分け、国会との関係では、審議は開始されないものの、複数回、法律案が提出され、審議が求められている(認定事実4⑵イ)。憲法が立法裁 量に委ねた事柄に 4条1項に違反するとまで断じられない。取り分け、国会との関係では、審議は開始されないものの、複数回、法律案が提出され、審議が求められている(認定事実4⑵イ)。憲法が立法裁 量に委ねた事柄について、国会内で審議が求められている以上、憲法は、国会がその審議を尽くした上で、同性の者同士に係る家族に関する法制度の選択決定をすることを求めていると解される(前記2⑷ウ、3⑶イ)。人が性自認等に従った法令上の取扱いを受けることは、人の人格的存在と結びついた重要な法的利益であるから、このままの状況が続けば、憲法13条、14条1項との関係で憲法違反の問題を生じる ことが避けられないが、現時点では、まずは国会内で審議が尽くされるべきであり、 直ちに前記の立法不作為が前記のような国家賠償法上違法の評価を受ける場合に当たるとはいえない。 したがって、控訴人らが主張する国家賠償法上の違法があるとは認められない。 第5 結論以上の他、原審及び当審における当事者双方の主張に鑑み、証拠の内容を検討して も、裁判所の以上の認定判断(原判決を引用した部分を含む。)を左右しない。そうすると、控訴人らの請求をいずれも棄却した原判決は相当であり、本件各控訴はいずれも理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第24民事部 裁判長裁判官東亜由美 裁判官右田晃一 裁判官林史高
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