- 1 - 主文 被告人を懲役1年6月に処する。 未決勾留日数中40日をその刑に算入する。 この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、令和6年8月9日、名古屋市a区bc丁目d番e号独立行政法人A病院B号室において、点滴治療を受けていた母親であるCの点滴輸液ボトルに加工食品を溶かした水溶液を注射器を用いて注入し、医師による点滴輸液ボトルを用いた適切な医療行為の継続を困難にさせるとともに医師や看護師らに点滴輸液ボトル等の交換や点滴輸液ボトル内の輸液の培養検査等の業務を余儀なくさせて医師や看護師らの正常な業務の遂行に支障を生じさせ、もって偽計を用いて医師や看護師らの業務を妨害したものである。 (量刑の理由)被告人は、母親が入院して治療を受けるようになった後も、入院前から摂取させていた加工食品(以下「本件サプリメント」という。)を摂取させたいと考えていたところ、母親の主治医等から摂取させることはできないと何度も言われていたにもかかわらず、病院関係者に見つからないように、事前に用意した注射器等を持ち込み、それらを使用して母親の点滴輸液ボトルに本件サプリメントを溶かした水溶液を注入したものであって、計画的で悪質な犯行というほかない。被告人の注入行為により、点滴輸液ボトルを用いた医療行為の継続に支障が生じたほか、点滴輸液ボトルの交換や点滴輸液ボトル内の輸液の培養検査などといった余計な業務が生じたのであって、医師や看護師らの通常業務に与えた影響も小さくない。 被告人は、第三者からみると不十分な点があったかもしれないものの、ひとりで母親の面倒をみていたところ、販売元から被告人宛てに郵送されたと思われる本件サプリメントに関する資料には、本件サプリメントを摂取 告人は、第三者からみると不十分な点があったかもしれないものの、ひとりで母親の面倒をみていたところ、販売元から被告人宛てに郵送されたと思われる本件サプリメントに関する資料には、本件サプリメントを摂取することにより免疫や遺- 2 - 伝子が活性化するとの説明や実際に効果があったとの多数の体験談が記載されていたのであって、これらを目にした被告人が母親にも効果があると信じ込み、本件サプリメントを摂取させたいと考えたこと自体を強く非難することはできない。主治医等から本件サプリメントを摂取させることはできないと何度も言われていたにもかかわらず、医師ら病院関係者に迷惑がかかることについて深く考えることなく、自らの勝手な判断で注入行為に及んだという点での非難は免れないものの、母親の病気を治したいという思いからの行動でもあったという点はある程度斟酌すべき事情といえる。 そこで、以上のほか、被告人は、事実を認め、医師ら病院関係者に迷惑をかけたことについて謝罪の言葉を述べ、病院に対して、謝罪文を送付し、受け入れてもらえなかったとはいえ、被害弁償の申入れもしていること、被告人には前科があるものの、直近のふたつは本件とは罪種を異にする犯行による罰金前科であり、それ以外はいずれも10年以上前に刑の執行を終えている前科であることを考慮すると、被告人に対しては、主文の刑を定めた上で、その刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。 (求刑:懲役2年6月)令和7年3月11日名古屋地方裁判所刑事第5部 裁判官松田克之
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