平成18(ワ)2218 土地明渡請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年3月24日 千葉地方裁判所
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判決文本文57,413 文字)

平成18年(ワ)第2218号土地明渡請求事件令和7年3月24日千葉地方裁判所民事第2部判決口頭弁論終結日令和6年9月30日 主文 1 被告は、原告に対し、別紙1物件目録記載1の土地の別紙2図面イ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ及びイの各点を順次結ぶ直線で囲まれた部分を明け渡せ。 2 被告は、原告に対し、別紙1物件目録記載3の工作物を収去して、同目録記 載2の土地の別紙2図面ニ、ホ、ヘ、ト、チ、リ、ヌ、ル、ヲ、ワ、カ及びニの各点を順次結ぶ直線で囲まれた部分を明け渡せ。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1 当事者の求めた裁判 1 請求の趣旨(1)主文と同旨(2)仮執行宣言 2 本案前の答弁本件訴えを却下する。 3 本案についての答弁原告の請求をいずれも棄却する。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は、原告が、被告に対し、①別紙1物件目録記載1の土地(M40番の 土地)の所有権に基づき、同土地のうち別紙2図面イ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ及びイの各点を順次結ぶ直線で囲まれた部分(甲土地)の明渡しを求めるとともに、②別紙1物件目録記載2の土地(M41番1の土地)の所有権に基づき、 同目録記載3の工作物(本件工作物)を収去して、同土地のうち別紙2図面ニ、ホ、ヘ、ト、チ、リ、ヌ、ル、ヲ、ワ、カ及びニの各点を順次結ぶ直線で囲まれた部分(乙土地)を明け渡すことを求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) (1)当事者等ア原告は、成田空港の設置及び運営を効率的に行うこと等により、航空輸送の利用者の利便の向上を図り、もっ 実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) (1)当事者等ア原告は、成田空港の設置及び運営を効率的に行うこと等により、航空輸送の利用者の利便の向上を図り、もって航空の総合的な発達に資するとともに、我が国の産業、観光等の国際競争力の強化に寄与することを目的とし(成田国際空港株式会社法1条。なお、本判決で摘示する関係法令は、 特に断りのない限り、いずれも当時のものである。)、平成16年4月1日に設立された株式会社であり、これと同時に解散した新東京国際空港公団(空港公団)の一切の権利及び義務を承継した(同法制定附則12条1項)。 イ A1(明治11年生)は、明治45年(大正元年)頃、現在の千葉県成 田市T(略)M63番の土地(以下、地番のみで表示する土地は、いわゆるT集落の土地である。)に入植し、その後、F1からM41番の土地のうち4反7畝を借りて、小作するようになった。 A2(大正3年生)はA1の子であり、被告(昭和25年生)はA2の子である。 ウ三里塚芝山連合空港反対同盟(反対同盟)は、昭和41年、成田空港の建設に反対する者によって結成された団体であり、昭和58年3月、一坪共有地に係る再共有化運動がきっかけで、これに反対するいわゆるk派と、これを推進するいわゆるa派に分裂した。A2及び被告はk派に属している。(乙198、398、419) (2)成田空港の建設等 ア成田空港の建設は、昭和41年7月、閣議決定され、同月、新東京国際空港公団法に基づき、空港公団が発足した(乙90)。 空港公団が策定した事業計画書(甲70)は、主滑走路(4000mと2500m)、横風用滑走路(特に横風が強い場合に使用する)、着陸帯、誘導路、エプロン(航空機を地上に継 発足した(乙90)。 空港公団が策定した事業計画書(甲70)は、主滑走路(4000mと2500m)、横風用滑走路(特に横風が強い場合に使用する)、着陸帯、誘導路、エプロン(航空機を地上に継続的に留置させることを目的とする 施設)、構内道路及び駐車場、旅客取扱施設区域、貨物取扱施設区域、飛行場保守管理施設区域、航空機整備施設区域を設置するとした。 イ空港公団は、昭和41年12月13日、運輸大臣に対し、航空法55条の3第1項の規定により、成田空港を設置しようとする場合における同項前段の規定による工事実施計画の認可を申請し、昭和42年1月23日、 運輸大臣の認可を受け、昭和42年1月30日運輸省告示第30号により、工事実施計画が認可され、成田空港について、延長進入表面、円錐表面及び外側水平表面が指定されたことが告示された(本件告示)。 同工事実施計画では、昭和46年3月31日までに長さ約4000mの滑走路(A滑走路)等を整備し、昭和49年3月31日までに長さ約25 00mの滑走路(B滑走路)及び約3200mの滑走路(C滑走路。横風用滑走路)を整備することとされた。(甲80、乙110)ウ A滑走路は、昭和48年4月30日に完成し(第一期工事)、成田空港は、昭和53年5月20日、A滑走路のみで開港した(乙90)。 エ運輸省は、昭和59年8月、B滑走路及びC滑走路等の建設を目的とす る第二期工事計画を発表し、空港公団は、昭和61年10月、第二期工事に着工した。 オ空港公団は、平成11年9月3日、空港建設の反対運動による工事の遅れ等を考慮し、当面の航空需要に応えるために早急に暫定的な平行滑走路を整備する必要が生じたとして、運輸大臣に対し、成田空港工事実施計画 変更認可申請をし、同年12 建設の反対運動による工事の遅れ等を考慮し、当面の航空需要に応えるために早急に暫定的な平行滑走路を整備する必要が生じたとして、運輸大臣に対し、成田空港工事実施計画 変更認可申請をし、同年12月1日、認可を受けた(乙111)。 同変更後の工事実施計画では、工事完成の予定期日を平成13年11月30日に変更するとともに、B滑走路につき長さを約2180mに短縮した暫定平行滑走路(B´滑走路)を整備すること、B´滑走路に付随する西側誘導路を被告の耕作地を迂回する形状(への字型カーブ)に整備することとされた(乙111)。 カ B´滑走路は、平成14年4月18日、供用が開始された(甲81)。 キ原告は、平成18年7月10日、国土交通大臣に対し、B´滑走路を北側に延伸して2500mとする内容の空港施設の変更申請をし、国土交通大臣は、同年9月11日、これを許可した。そして、平成21年10月22日、2500mのB´滑走路の供用が開始された。(甲81、93) (3)空港公団がM40番の土地等を取得するに至った経緯等ア M40番の土地、M41番1の土地及び周辺土地との隣接関係は、おおむね別紙3公図(乙2・2枚目)のとおりであり、M40番の土地及びM41番1の土地はいずれも東側において、成田市道(いわゆる団結街道)に面している(なお、各土地の形状については争いがある。)。 イ M40番の土地について(ア)Sは、昭和2年12月26日、L大臣から千葉県印旛郡P村(略)T294番の土地の払下げを受け、同土地は、昭和29年の町名地番変更により、M40番の土地とされた(甲5)。 (イ)空港公団は、昭和44年3月14日、Sとの間でM40番の土地の土 地売買契約を締結して、同人から同土地を買い受け、 は、昭和29年の町名地番変更により、M40番の土地とされた(甲5)。 (イ)空港公団は、昭和44年3月14日、Sとの間でM40番の土地の土 地売買契約を締結して、同人から同土地を買い受け、同月18日、所有権移転登記を経由し、昭和45年8月21日、同土地の引渡しを受けた(甲1、5、32)。 ウ M41番1の土地について(ア)F1は、昭和2年、千葉県印旛郡P村(略)T293番の土地(1町 4反14歩)の払下げを受けて、これを取得した。昭和29年の町名地 番変更により、同土地はM41番の土地とされた。(乙8)(イ)F2は、昭和32年10月6日、相続により、M41番の土地を取得した(乙8)。 (ウ)F2は、昭和59年5月11日、M41番の土地を、別紙4地積測量図(甲16)のとおり、M41番1ないし7の各土地に分筆した(甲2)。 (エ)F2は、昭和63年1月26日、M41番1ないし7の各土地を合筆し、M41番の土地(1万3930㎡)とした(甲2)。 (オ)空港公団は、昭和63年4月12日、F2との間で、M41番の土地についての土地売買契約を締結し、同年5月13日、同人に対し、売買代金4472万2569円を支払った。 なお、同契約では、M41番の土地に賃借人をA2とする4661. 14㎡の賃借権が設定されているものとされ、上記の代金は、土地代金から賃借権相当額を差し引いた金額であった。(甲2、6、7、36、67、乙10)(カ)M41番の土地は、昭和63年8月24日、別紙5地積測量図(甲1 7、乙4)のとおり、M41番1の土地(9269㎡)、M41番8の土地(2677㎡)及びM41番9の土地(1983㎡)の3筆に分筆された(甲2、6、7)。 (キ)空港公団は、平成15年12月24日、M 乙4)のとおり、M41番1の土地(9269㎡)、M41番8の土地(2677㎡)及びM41番9の土地(1983㎡)の3筆に分筆された(甲2、6、7)。 (キ)空港公団は、平成15年12月24日、M41番1の土地、M41番8の土地及びM41番9の土地について、昭和63年4月12日売買を 原因とする所有権移転登記手続をした(甲2、6、7、乙10)。 エ周辺土地について(ア)M38番の土地、39番の土地(北側土地)空港公団は、昭和43年11月26日、K1との間でM38番の土地の売買契約を、同月28日、K2との間でM39番の土地の売買契約を それぞれ締結し、これらの土地を取得した(甲34、35、乙6、7)。 (イ)M42番1の土地等(南側土地)空港公団は、昭和60年8月6日、Iとの間でM42番1の土地及びM42番2の土地の売買契約を締結し、これらの土地を取得した(乙266、267、402)。 (4)被告の占有状況等 ア A2は、昭和25年8月1日付けで、F1との間で、千葉県印旛郡P村の「(略)T293番1」の土地及び「(略)D618」の土地についての農地賃貸借契約を締結し(本件賃貸借契約)、その契約書を農地委員会に提出した(甲20)。同契約において、前者の土地の面積は4反7畝、後者の土地の面積は5畝21歩とされた。 イ A2は、平成11年1月21日、死亡した。被告はA2の権利関係を相続した。 ウ I及びF2は、昭和63年5月10日付けで、IがM41番の土地につき有していた5963.62㎡の賃借権を消滅させる権利消滅補償契約を締結した(甲40)。 エ N及びF2は、昭和63年12月26日付けで、NがM41番の土地につき有していた3305.25㎡の賃借権を消滅さ 62㎡の賃借権を消滅させる権利消滅補償契約を締結した(甲40)。 エ N及びF2は、昭和63年12月26日付けで、NがM41番の土地につき有していた3305.25㎡の賃借権を消滅させる権利消滅補償契約を締結した(甲41)。 (5)本件訴訟に至る経緯ア空港公団は、昭和44年12月16日建設省告示第3865号により、 成田空港建設事業についての土地収用法に基づく事業認定処分を得て、千葉県収用委員会に対し、昭和45年11月30日付けで、F2が所有するM41番の土地についての土地収用法に基づく裁決申請を、昭和48年11月30日付けで、同土地についての明渡裁決の申立てをしたが、平成5年6月16日付けで、これらを取り下げた(甲29、72)。 イ空港公団は、被告に対し、平成15年12月24日付けで、被告が「賃 貸借契約の目的とされている土地」であるM41番8の土地及びM41番9の土地、被告が「現に耕作されている土地」であるM40番の土地及びM41番1の土地に係る賃貸借契約の解約等について相談したい旨を申し入れ(甲13)、また、平成16年2月9日付けで、M41番8の土地及びM41番9の土地に係る賃貸借契約の解約についての相談を申し入れる とともに、M40番の土地及びM41番1の土地については、賃貸借契約が存在せず、無権原で耕作されている土地であるとして、直ちに明け渡すことを求めた(甲14)。 ウ原告は、平成18年7月3日付けで、千葉県知事に対し、M41番8の土地、M41番9の土地及びW2から借りていたT78番2の土地等7筆 の畑について、被告への離作補償を1億8071万5335円とする、農地賃貸借契約の解約申入れの農地法20条1項による許可を申請し(本件許可申請)、千葉県知事は、 ていたT78番2の土地等7筆 の畑について、被告への離作補償を1億8071万5335円とする、農地賃貸借契約の解約申入れの農地法20条1項による許可を申請し(本件許可申請)、千葉県知事は、同年9月21日付けで、離作補償を給付することを条件として、これを許可した(本件許可処分。甲10、67、68、乙219)。 エ原告は、平成18年10月11日付けで、被告に対し、被告の耕作に係る作物の収穫期到来後1年の経過をもってM41番8の土地及びM41番9の土地の賃貸借契約を解約する旨を申し入れた(甲11、12)。 オ原告は、平成18年10月20日、本件訴訟を提起した。 (6)M41番8の土地及びM41番9の土地に関する訴訟(別件訴訟) ア被告は、平成18年10月17日、農林水産大臣に対し、本件許可処分についての審査請求をしたが、農林水産大臣は、平成19年1月29日、これを棄却する旨の裁決をした(甲18)。 イ被告は、平成19年7月27日、本件許可処分の取消しを求める訴訟(千葉地方裁判所平成19年(行ウ)第29号)を提起し、また、原告は、平 成20年、被告に対し、賃貸借契約の終了を理由として、M41番8の土 地、M41番9の土地の明渡しを求める訴訟(同裁判所平成20年(ワ)第2338号)を、A2がW2から借りていたT77番8の土地等について、建物収去土地明渡しを求める訴訟(同裁判所平成20年(ワ)第2341号)をそれぞれ提起し、これらの訴訟は併合審理された(甲81)。 ウ原告は、被告がM41番9の土地の占有を否定し、客観的にも被告によ る同土地の現実の占有はうかがえないとして、平成23年2月15日付け訴えの一部取下書を提出したが、被告の同意が得られなかったことから、平成24年12月10日、同 有を否定し、客観的にも被告によ る同土地の現実の占有はうかがえないとして、平成23年2月15日付け訴えの一部取下書を提出したが、被告の同意が得られなかったことから、平成24年12月10日、同土地の占有を回復したとして、同土地に係る土地明渡請求を放棄した(甲81、乙77、78、361)。 エ千葉地方裁判所は、平成25年7月29日、被告の請求については、本 件許可処分に違法はないとして、これを棄却するとともに、原告の請求については、原告と被告との間のM41番8の土地に係る賃貸借契約は、原告が本件許可処分に基づき賃貸借契約を解約する旨を申し入れたことにより終了したとして、これを認容する旨の判決をした(甲81)。 被告は、上記判決を不服として、控訴をしたが、東京高等裁判所は、平 成27年6月12日、被告の控訴を棄却し(平成25年(行コ)第326号)、その後、上記エの判決は確定した(甲87)。 オ被告は、上記確定判決の執行力の排除を求める請求異議の訴えを提起したが、千葉地方裁判所は、平成30年12月20日、被告の請求を棄却する旨の判決をし(平成28年(ワ)第2431号)、東京高等裁判所は、 令和2年12月17日、被告の控訴を棄却し(平成31年(ネ)第202号)、その後、上記判決は確定した(甲93)。 (7)本件訴訟における審理の状況等ア訴えの変更原告は、当初、請求の趣旨は、①M40番の土地のうち別紙6図面イ、 ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ及びイの各点を順次結ぶ直線で囲まれた土地部分と、 ②M41番1の土地のうち同図面ニ、ホ、ヘ、ト、チ、リ、ヌ、ル、ヲ、ワ、カ及びニの各点を順次結ぶ直線で囲まれた土地部分の明渡しを求めるものであったところ、本件工作物の収去も併せて求めるとして、平成23年1月17日 地のうち同図面ニ、ホ、ヘ、ト、チ、リ、ヌ、ル、ヲ、ワ、カ及びニの各点を順次結ぶ直線で囲まれた土地部分の明渡しを求めるものであったところ、本件工作物の収去も併せて求めるとして、平成23年1月17日付け訴えの変更申立書により、前記第1の1(1)のとおりに請求の趣旨を変更した。 イ被告による賃借権の取得時効の援用被告は、平成20年12月8日の第9回口頭弁論期日において陳述した被告準備書面(9)等により、賃借権の取得時効を援用する旨の意思表示をした。 ウ文書提出命令の申立て (ア)被告は、空港公団がF2との間でM41番の土地の売買契約に至るまでの交渉記録等の関連記録一切(A2名義の同意書(甲8。本件同意書)及び昭和62年4月11日付け賃借地境界確認書(甲9。本件確認書)の作成経緯等を含む。)についての文書提出命令の申立てをした(平成23年(モ)第305号)。 当裁判所は、上記申立てのうち、本件同意書及び本件確認書(以下「本件同意書等」という。)の作成経緯等を記載した文書等の部分を却下したところ、被告はこれを不服として即時抗告をし、抗告審は、原審が所持しているとは認められないとして却下した文書については原告が所持している可能性は否定できないとして、原決定の当該部分を破棄して、 差し戻した(東京高等裁判所平成24年(ラ)第2571号)。差戻審である当裁判所は、平成25年12月9日、本件同意書等の作成経緯等を記載した文書についても、提出を命じる旨の決定をした(平成25年(モ)第128号)。 原告は、これを不服として即時抗告をしたが、平成26年7月16日、 抗告審はこれを棄却し(東京高等裁判所平成26年(ラ)第198号)、 上記決定は確定した。 号)。 原告は、これを不服として即時抗告をしたが、平成26年7月16日、 抗告審はこれを棄却し(東京高等裁判所平成26年(ラ)第198号)、 上記決定は確定した。 しかし、原告は、提出を命じられた文書を提出しなかった。 (イ)なお、本件同意書は、別紙7(甲8)のとおり、F3(F2の名字のうち1文字が異体字の氏名)宛てのものであって、A2名義の署名と押印があり、「不動産の表示」としてM41番の土地が記載され、続いて、 「私は右記のF3所有地の一部4661㎡を賃借しておりますが、賃借地については、土地所有者の指定する場所に戻すことに異議はありません。」と記載されている。 また、本件確認書は、別紙8(甲9)のとおり、A2名義の署名と押印があり、「不動産の表示」としてM41番の土地が記載され、続いて、 「私は右土地の一部4661㎡をF3から賃借し、耕作しておりますが、私が賃借している土地の範囲については、境界標のとおり異議がないことを確約致します。」と記載されている。 本件同意書及び本件確認書のいずれについても、同一の昭和63年3月1日作製の地積測量図が添付されている。 3 争点(1)本案前の主張等について(争点1)ア本件訴えの適法性・農地法違反・権利濫用、信義則違反 イ訴えの変更の可否(2)請求原因について(争点2)ア原告の甲土地及び乙土地の所有イ被告の甲土地及び乙土地の占有(3)抗弁1-売買の無効について(争点3) ア売買契約の農地法違反 イ売買契約の用地事務取扱規定違反(4)抗弁2-被告の占有権原について(争点4)ア合意に基づく賃借権の有無イ賃借 (争点3) ア売買契約の農地法違反 イ売買契約の用地事務取扱規定違反(4)抗弁2-被告の占有権原について(争点4)ア合意に基づく賃借権の有無イ賃借権の時効取得 4 争点1(本案前の主張等について)に関する当事者の主張 (1)本件訴えの適法性【被告の主張】本件訴えは、以下の理由により、不適法である。 ア農地法違反農地法20条は、政令の定めるところにより都道府県知事の許可を受け なければ、賃貸借の解約等をしてはならない(1項)、当該許可を受けないでした行為は効力を生じないとしている(5項)。しかしながら、原告は、M40番の土地及びM41番1の土地に存在する賃借地(小作地)について、千葉県知事による許可を得ることなく、所有権に基づく妨害排除請求権に基づく明渡しを求めるものであり、これは、明らかに農地法20 条1項に違反するから、本件訴えは同項により無効である。 イ権利濫用、信義則違反(ア)空港公団総裁と千葉県知事は、成田空港問題シンポジウムの結果を受けて、平成5年に成田空港建設をめぐって二度と強制収用を行わない旨を表明した上、運輸省も空港公団もB・C滑走路建設計画について白紙 の状態に戻して、改めて地元住民の同意を得るという方針を公言していた。 しかし、原告は、白紙に戻したB滑走路のみならず、民家の40m上空をジェット機に航行させる、違法なB´暫定滑走路誘導路の建設を地元住民の反対を無視して強行し、その一環として、事実上の強制収用を 招来する本件訴訟を提起し、警察機動隊をも動員する民事強制執行力を もって被告の農地を収奪しようとするものである。これは、クリーンハンズの原則、信義則に反する。 (イ)そもそも、成田空港の建設 本件訴訟を提起し、警察機動隊をも動員する民事強制執行力を もって被告の農地を収奪しようとするものである。これは、クリーンハンズの原則、信義則に反する。 (イ)そもそも、成田空港の建設には次のような違法事由があり、本件訴訟はこの違法行為に加担するものである。 ①成田空港建設の違法性 空港公団は、昭和42年、成田空港建設工事に係る工事実施計画の認可処分を受けたが、同認可処分には、空港の位置決定に係る重大な違法があり、また、航空法55条の3第2項で準用される同法39条1項1号(飛行場の位置等の基準適合性)、2号(他人の利益を著しく害しないこと)、5号(用地の確実な取得)の各要件に違背するも のである。 成田空港の建設に至る経緯をみても、地元住民の反対運動を組織する時間的猶予を与えることなくクーデター的に新空港の位置を決定し、警察機動隊による暴力行使、暴力的制圧の下に建設が強行されたもので、憲法29条、31条に違背し、成田空港は軍事空港であるから、 その点からも憲法上許容されない存在である。 また、環境アセスメントも実施されずに設置され、いかに対策を講じようとも騒音公害を発生させ続けており、これを根絶するためにも、廃港以外にない状況にあり、成田空港の建設自体が違法行為である。 ②B´滑走路の建設、供用が違法であること 平成14年3月18日、供用が開始されたB´滑走路は、着陸帯の幅が150mしかなく、国際標準に違反し、かつ、整地部分について、勧告方式に違反している。 また、滑走路誘導路最小離間距離についても176m以上をとらなければならないにもかかわらず、用地取得が出来ないままに建設を強 行したため、誘導路はへの字型に3か所で曲がり勧告方式に違反して いる。 さ 離間距離についても176m以上をとらなければならないにもかかわらず、用地取得が出来ないままに建設を強 行したため、誘導路はへの字型に3か所で曲がり勧告方式に違反して いる。 さらに、誘導路と出発待機用の誘導路との距離が不十分であり、現に、平成14年12月1日には接触事故が発生し、平成15年1月27日には、飛行機がオーバーランした事故、平成16年6月16日には、滑走路の誘導路の見通しが悪いことから、航空機が約800m離 れて鉢合わせした事案が発生しているなど、極めて危険な代物である。 B´滑走路で事故が発生した場合、乗員乗客のみならず地元住民にも直接被害が及ぶ可能性がある。 (ウ)訴えの目的等本件訴えの提起は、成田空港建設に対し絶対反対の態度を堅持して成 田空港の廃港を主張する反対同盟の同盟員たる被告に対して、本件訴えに対応せざるを得ない状況に追い込み、困惑、動揺させ、重圧を加え、無用の出費と労力を強制させることを目的とするものであり、反対同盟つぶしの悪質な策謀である。 【原告の主張】 ア農地法違反の主張について被告が、現在耕作している土地につき賃借権を有しているか否かは、まさに本件訴訟の本案において審理判断される事項であるから、被告の主張は、前提を異にするものであり、失当である。 イ権利濫用、信義則違反の主張について (ア)本件訴訟は、原告が所有する土地を被告が何ら権原なく占有していることから、所有権に基づく妨害排除請求権の行使として土地の明渡しを求めるものであり、被告の権利を強制的に収用するものではない。 (イ)原告は、航空法に基づき、運輸大臣の認可を受け適法に成田空港の建設を行っており、B′滑走路の建設についても、航空法に定める基準に 適合している。 権利を強制的に収用するものではない。 (イ)原告は、航空法に基づき、運輸大臣の認可を受け適法に成田空港の建設を行っており、B′滑走路の建設についても、航空法に定める基準に 適合している。 (ウ)成田空港問題シンポジウムにおける空港公団総裁の発言等は、空港建設を進めるうえで、本件のような訴訟手続を行わないことまでを約したものはない。そもそも、本件訴訟の提起によって、被告の権利が侵害されるかどうかは、本件訴訟の本案において審理判断される事項である。 (2)訴えの変更の可否 【被告の主張】前記(1)の被告の主張に照らせば、本件訴えの変更は認められず、異議がある。 【原告の主張】原告は、被告が設置した本件工作物についても収去を要するものと判断し、 訴えの変更をした。本件工作物は、原告が明渡しを求めているM41番1の土地上に設置されており、明渡しを求める土地の範囲も約8㎡増加するにすぎないことから、訴訟手続を著しく遅滞させるものではない。 5 争点2(請求原因について)に関する当事者の主張(1)原告による甲土地及び乙土地の所有 【原告の主張】原告はM40番の土地及びM41番1の土地を所有するところ、甲土地はM40番の土地の一部であり、乙土地はM41番1の土地の一部である。 【被告の主張】甲土地がM40番の土地の一部であることは争う。甲土地はM41番1の 土地の一部である。M40番の土地は、別紙3公図のとおり、M39番の土地とM41番の土地に挟まれた細長い長方形の土地である。 (2)被告の甲土地及び乙土地の占有【原告の主張】ア被告は甲土地及び乙土地を占有している。 イなお、被告が援用する別紙9関係土地図(本件関係土地図 土地である。 (2)被告の甲土地及び乙土地の占有【原告の主張】ア被告は甲土地及び乙土地を占有している。 イなお、被告が援用する別紙9関係土地図(本件関係土地図)に関する主 張は、次のとおりである(以下、「A土地」等と表示するものは本件関係土地図によるものである。)。 ①昭和25年当時、A2はB土地及びE1土地を、IはA土地及びC土地を、NはF土地を耕作していた。 ②昭和44年当時、A2はA土地及びB土地を、IはC土地、E1土地及 びE2土地を、NはF土地を耕作していた。 ③昭和45年秋頃、A2はA土地、B土地及びD土地を、IはC土地、E1土地及びE2土地を、NはF土地を耕作していた。 ④昭和46年頃、A2はB土地、C土地及びD土地を、IはA土地、E1土地、E2土地及びF土地を耕作していた。 ⑤昭和62年頃、A2はB土地、C土地及びD土地を耕作していた。 ⑥昭和63年8月以降、A2は、A土地、B土地、C土地及びD土地を耕作している。 【被告の主張】ア被告がM40番の土地及びM41番の土地において、占有(耕作)して いる範囲は、別紙10実測図(乙9の1・2)の緑色の部分である。 イ M40番の土地及びM41番1の土地の占有(耕作)の状況は、次のとおりである(なお、本件関係土地図のB土地はおおむねM41番8の土地に該当し、同土地の面積は2677㎡である(甲6)。)。 ①当初、A2はA土地及びB土地を耕作していた。 ②昭和46年12月から、A2はB土地、C土地及びD土地で、IはA土地、B土地、E土地及びF土地で耕作するようになった。 ③昭和62年4月から、A2はA土地、B土地、C土地及びD土地を耕作するようになった。 A2はB土地、C土地及びD土地で、IはA土地、B土地、E土地及びF土地で耕作するようになった。 ③昭和62年4月から、A2はA土地、B土地、C土地及びD土地を耕作するようになった。 6 争点3(抗弁1-売買の無効について)に関する当事者の主張 (1)農地法3条違反 【被告の主張】空港公団は、小作権付きの農地であるM41番の土地を、転用目的ではなく、農地のまま利用することを目的として取得した。そのため、同土地の取得については、その土地の農業上の利用を廃止することを統制の対象としている農地法5条ではなく、農地を農地のまま利用する目的で権利の移転等が 行われることを統制の対象とする農地法3条の要件を満たさなければならない。ところが、空港公団のM41番の土地の取得について、同条が要求する農業委員会の許可はない。したがって、空港公団とF2との間のM41番の土地の売買契約は、同条に違反して無効である。 【原告の主張】 空港公団は、転用目的でM41番の土地を取得した。空港公団は、M41番の土地を告示区域外の部分も含めて「空港の敷地」(農地法施行規則7条11号)に供する目的で取得し、以後も「空港の敷地」として転用する目的で所有していたが、用地取得が計画通りに進まなかったことなどから、取得後直ちに空港の業務に供するための敷地として整備することができなかった ものである。したがって、空港公団によるM41番の土地の取得は農地法3条に違反しない。 (2)農地法5条違反【被告の主張】ア農地法5条は、転用目的での農地の取得につき、都道府県知事等の許可 を要件としている。そのため、上記許可を受けていない空港公団によるM41番の土地の取得は同条1項に違反し、空港公団とF2との間の 地法5条は、転用目的での農地の取得につき、都道府県知事等の許可 を要件としている。そのため、上記許可を受けていない空港公団によるM41番の土地の取得は同条1項に違反し、空港公団とF2との間のM41番の土地の売買契約は無効である。 イ農地法施行規則7条11号が違憲であること成田国際空港株式会社が成田国際空港の敷地若しくは当該空港の建設 のために必要な道路若しくは線路若しくは当該空港の建設に伴い廃止さ れる道路に代わるべき道路の敷地に供するため、又は航空保安施設設置予定地の区域内にある農地若しくは採草放牧地について航空保安施設を設置するために権利を取得する場合、農地法5条の許可を要しない旨を定めた農地法施行規則7条11号は、成田空港の空港用地買収の便宜迅速を図るだけの目的で農地法5条1項の許可を不要としたものであり、農地法5 条1項4号の委任の範囲を超え、立法権を侵害するものであり、憲法41条、14条、29条1項、31条に違反し、違憲無効である。したがって、上記許可を受けていない空港公団によるM41番の土地の取得は、農地法5条1項に違反し、無効である。 ウ小作権者の同意がないこと 仮に、農地法施行規則7条11号が違憲でないとしても、小作権者の同意のない土地の取得は、農地法5条に違反して無効である。すなわち、平成10年の農地法改正により、農地法5条2項本文、同項3号において、小作権者の同意がなければ都道府県知事等の転用の許可ができないとされ、小作人の同意が法定化されているところ、これは従前の局長通達の内 容を条文化したものであることから明らかなように、M41番の土地の売買契約が行われた当時も、転用目的で農地を取得する場合には、小作権者の同意を得る必要があった。しかし、空港公団は、同土地 内 容を条文化したものであることから明らかなように、M41番の土地の売買契約が行われた当時も、転用目的で農地を取得する場合には、小作権者の同意を得る必要があった。しかし、空港公団は、同土地の取得に当たって上記同意を得ていないのであり、空港公団による同土地の取得は、農地法5条に違反して無効である。 エ M41番の土地には、空港敷地外の土地が含まれており、農地法施行規則7条11号の適用を受けないこと仮に、農地法施行規則7条11号が違憲でないとしても、M41番の土地には本件告示に係る区域(告示区域)に含まれない土地(3274.43㎡)も含まれていたから、千葉県知事の許可が必要であった。しかし、 空港公団は、M41番の土地の売買につき、千葉県知事の許可を得ていな いから、F2との売買契約は違法、無効である。 【原告の主張】ア農地法施行規則7条11号が合憲であること農地法5条1項は、農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のものにするため、これらの土地について同法3条1項本 文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合には、都道府県知事の許可を要する旨を定めるとともに、同法5条1項ただし書において、同項の許可を要しない場合を個別具体的に列挙し、成田空港については、同項ただし書4号の「その他農林水産省令で定める場合」として定める同法施行規則7条11号は、「成田国際空港株式会社が成田国際空港の敷地若しくは当 該空港の建設のために必要な道路若しくは線路若しくは当該空港の建設に伴い廃止される道路に代わるべき道路の敷地に供するため、又は航空保安施設設置予定地の区域内にある農地若しくは採草放牧地について航空保安施設を設置するため第1号の権利を取得する場合」を定めている。農地法5 止される道路に代わるべき道路の敷地に供するため、又は航空保安施設設置予定地の区域内にある農地若しくは採草放牧地について航空保安施設を設置するため第1号の権利を取得する場合」を定めている。農地法5条1項4号は、農地法の趣旨に反した農地転用を行わないと考えら れる規制主体が農地の権利移転を行う場合や、法律で定める事業の認可等を通じて公益性又は公共性が担保される事業によって農地の権利移転が行われる場合等について、例外的に都道府県知事の許可を不要とすることを委任するものと解することができ、個別具体的委任である。成田空港の設置等については運輸大臣(現在の国土交通大臣)の認可等に係らしめて おり、その事業の公益性及び公共性が担保されているということができるから、成田空港の敷地等に供するための農地取得について農地法5条1項の許可を不要とする農地法施行規則7条11号は、委任の範囲を超えるものではなく、憲法41条には反しない。 イ小作権者の同意を必要としないこと 被告は、M40番の土地及びM41番1の土地の賃借人(小作人)では ないから、被告の同意が必要である旨の主張は失当である。 ウ農地法施行規則7条11号が適用されること農地法施行規則7条11号における「成田国際空港の敷地」が航空法により定められた告示区域である旨の文言は付されておらず、また、航空法に基づく告示区域及び農地法施行規則の趣旨からすれば、「成田国際空港 の敷地」について、告示区域に限定すべき理由はなく、社会通念上、告示区域はもとより、同区域と一体的に運用されることが企図されており、空港公団が実質的に空港敷地として使用する範囲を示しているものと解される。そして、空港公団は、M41番の土地における告示区域内の部分はもとより、同区域外の部分につ に運用されることが企図されており、空港公団が実質的に空港敷地として使用する範囲を示しているものと解される。そして、空港公団は、M41番の土地における告示区域内の部分はもとより、同区域外の部分についても滑走路、誘導路や第2旅客ターミナ ル周辺のエプロンから近接した場所に位置しており、空港に必要な敷地として使用し得ることから、一筆全体を買収したものである。したがって、農地法5条の許可を要しない。 (3)農地法6条違反【被告の主張】 ア農地法6条1項1号は、国以外の者は、その所有者の住所のある市町村の区域の外にある小作地を所有してはならないと規定しているところ、空港公団が、M40番の土地及びM41番の土地を取得した際、その住所地は東京都内にあった。したがって、空港公団による同土地の取得は同号に違反するところ、同条違反の小作地については、農業委員会が公示・縦覧 の上、所有者が公示の日から起算して原則1か月以内に所有権を譲渡しないときは国が買収し、当該所有者はその買収を拒むことはできないとされている(農地法8条、9条)。そのため、原告が、M40番の土地及びM41番1の土地の所有者であることを前提とした本件請求は理由がない。 イ農地法7条1項4号は「近く農地以外のものとすることを相当とするも のとして、都道府県知事の許可を受けた小作地」については、国以外の者 も所有することができるとしているが、空港公団は、M40番の土地及びM41番の土地の取得につき、上記の許可を受けていない。 【原告の主張】ア空港公団は、成田空港の敷地に転用するためにM40番の土地及びM41番の土地を取得したのである。そして、農地法6条1項の趣旨からすれ ば、具体的な転用目的をもって新たに取得した土地について ア空港公団は、成田空港の敷地に転用するためにM40番の土地及びM41番の土地を取得したのである。そして、農地法6条1項の趣旨からすれ ば、具体的な転用目的をもって新たに取得した土地について、転用されるまでの間に、不在地主と同様の状態が生じたとしても、同条項が適用されるものではない。 イ仮に、農地法6条の適用があるとしても、空港公団は空港敷地として転用することを目的として取得したものであって、農地法7条1項4号の「農 地以外のものとすること」との事由に該当するから、原告は、農地法6条1項の規定にかかわらず、これらの土地を所有することができる。なお、原告は、農地法7条1項4号に基づく都道府県知事の指定を受けていないが、将来において農地以外のものとすることが明白であると認められる場合は同号に該当する。 ウ農地法6条1項は効力規定ではないから、仮に、同項に違反したとしても、小作地の所有権自体が否定されるものではない。 (4)用地事務取扱規定違反【被告の主張】新東京国際空港公団用地事務取扱規定(用地事務取扱規定)38条は、「取 得し、又は使用しようとする土地に用益物権、担保物権等が設定されている場合においては、土地所有者及び関係人にこれらの権利を消滅させるものとする。」と規定し、空港公団が小作権付きで土地を買収することは禁止されていた。したがって、空港公団が、A2の小作権放棄の同意を得ないまま、M41番の土地を取得したことは、用地事務取扱規定38条に違反しており、 また、憲法29条3項に基づく小作権者の権利保障規定を故意に踏みにじる ものであり、空港公団とF2との間のM41番の土地の売買契約は無効である。 【原告の主張】用地事務取扱規定は、空港公団の内規であり、上記規定 権者の権利保障規定を故意に踏みにじる ものであり、空港公団とF2との間のM41番の土地の売買契約は無効である。 【原告の主張】用地事務取扱規定は、空港公団の内規であり、上記規定に違反していたとしても、そのことをもって、M41番の土地の取得が違法であるとはいえな い。加えて、用地事務取扱規定38条は、土地を任意で取得する場合に適用されるものであるところ、本件においては、A2の土地賃借権を解消することは困難であったことから、賃借権付きで所有権を取得した後、賃借権について収用手続によることとしていたのであり、このような場合にまで、上記規定が適用されるものではない。 7 争点4(抗弁2-被告の占有権原について)に関する当事者の主張(1)合意に基づく賃借権の有無【被告の主張】ア A土地についてA1は、下総御料牧場から千葉県印旛郡P村(略)T293番の土地(M 41番の土地)を賃借していたF1より、同土地の中の4反7畝の土地を転借し、F1が、昭和2年12月26日、同土地の払下げを受けたことにともない、同土地をF1から直接賃借することとなった。A1が、当初、賃借した4反7畝の土地の場所は、A土地(2反)及びB土地(2反7畝)である。A1の子であるA2は、昭和47年頃から、A土地の耕作を止め ているが、これは、その頃、Iとの間で、同人が耕作していたC土地と、A2が耕作していたA土地の耕作場所を一時的に交換したためであるから、A2は依然としてA土地の賃借権を有していた。 なお、A(A1及びA2の名字)家がM41番9の土地の部分で耕作した事実はない。同部分はIが利用していた。 イ C土地及びD土地について A2は、昭和46年12月下旬、F2に対し、A土地を 2の名字)家がM41番9の土地の部分で耕作した事実はない。同部分はIが利用していた。 イ C土地及びD土地について A2は、昭和46年12月下旬、F2に対し、A土地をIに転貸し、他方、C土地をIから転借することを申し出て、また、D土地は誰も耕作していなかったので、同土地を賃借したい旨を申し出て、F2がこれを承諾したため、遅くとも昭和47年1月1日以降、A2は、C土地及びD土地の引渡しを受けて、耕作するようになった。よって、A2は、C土地及び D土地に関し、F2との賃貸借契約に基づく賃借権を有している。 また、A2は、昭和62年にIが耕作を止めたことから、同年12月、F2に対し、A土地の転貸借が終了し、自ら賃借人としてA土地の耕作を続けること、Iから転借していたC土地についても、そのまま自らが賃借人として耕作を続けることを申し出て、F2はこれを承諾した。 ウ原告が援用する本件同意書等について原告は、本件同意書等に基づき、A2の賃借地がB土地及びE1土地であると特定したと主張するが、A2が本件同意書等に署名押印した事実はない。 原告は、もともとはA2の賃借地はA土地及びB土地であると認識して いたが、M41番の土地の所有者であるF2が、A2の賃借地はE1土地であると主張したため、これに追随したものである。そして、原告は、賃借地がB土地及びE1土地であることがA2の認識に基づくものであることを装うため、本件同意書等を偽造した。 被告は、原告による上記偽造の事実を立証するため、原告がF2との間 で行ったM41番の土地の買収に関する交渉記録等の文書について文書提出命令の申立てをし、これが認容されて、原告に対する文書提出命令が確定したにもかかわらず、原告は、当該文書は存在 F2との間 で行ったM41番の土地の買収に関する交渉記録等の文書について文書提出命令の申立てをし、これが認容されて、原告に対する文書提出命令が確定したにもかかわらず、原告は、当該文書は存在しない旨の全く不合理な弁解をし、その提出を拒否している。そのため、裁判所は、民事訴訟法224条の規定により、かつ、本件訴訟の審理経過を踏まえ、被告が主張 する、原告が本件同意書等を偽造した事実を認定するべきである。 なお、仮に、本件同意書等が偽造されたものでなかったとしても、本件同意書は、A2の錯誤により作成されたものである。 【原告の主張】ア A土地について被告がA土地の賃借権を有することについては否認する。A2の賃借地 は、本件賃貸借契約の当初から、M41番8の土地及びM41番9の土地であり、仮にそうでなかったとしても、本件同意書等の作成の際に、F2との間で、M41番8の土地及びM41番9の土地を賃借地とすることを合意したものである。 そもそも、本件賃貸借契約に係る農地賃貸借契約書(甲20)には、そ の対象土地がM41番の土地のどの範囲であるか具体的に記載されていない。空港公団は、昭和59年頃まで、被告の賃借地がA土地であることを前提として、図面の作成等を行っていたが、これは、A2らを含むM41番の土地の賃借人が、当初の耕作場所を変更しており、同土地の所有者であるF2も、賃借人らの賃借地の位置及び範囲を把握していなかったこと から、耕作状況をもとに図面等を作成していたにすぎない。そして、A2は、F2に対し、本件同意書等を差し入れており、これらに添付された地積測量図によれば、賃借地はM41番8の土地及びM41番9の土地に相当する位置になっている。F2も、これに基づき、M41番1の土地の分筆 2に対し、本件同意書等を差し入れており、これらに添付された地積測量図によれば、賃借地はM41番8の土地及びM41番9の土地に相当する位置になっている。F2も、これに基づき、M41番1の土地の分筆手続をしている。 なお、被告の錯誤の主張については争う。仮に錯誤が認められるとしても、A2には重過失がある。 イ C土地及びD土地についてA2とF2との間で、昭和47年1月1日以降、C土地及びD土地について、賃貸借契約は締結されておらず、A2は、所有者であるF2及び空 港公団に無断で耕作を開始したにすぎない。 (2)賃借権の時効取得ア A土地について【被告の主張】A2は、A土地について、昭和63年4月から耕作を再開して占有を開始しており、その占有開始時に善意無過失であったことが認められるので、 10年間の短期取得時効により、平成10年4月、A土地の賃借権の取得時効が成立した。 【原告の主張】取得時効の成立については争う。 A2は、昭和63年3月頃、耕作地を本来の賃借地に戻すために本件同 意書を作成しており、本件同意書には、本来の賃借地がM41番8の土地及びM41番9の土地に相当することが記載されている。すなわち、A2は、本件同意書等により、賃借地はこれらの土地に相当すると考えられるB土地及びE1土地である旨の意思表示をしているのであるから、A土地について賃借の意思を認めることはできない。 また、A2は、賃料についても、あくまで賃借地がB土地及びE1土地であることを前提として支払っていたのであり、A土地の賃料を支払う旨の意思表示は存在しないし、賃貸人であるF2もB土地及びE1土地の賃料として受け取っていたのであるから、A土地について、賃借の意思が客観的に を前提として支払っていたのであり、A土地の賃料を支払う旨の意思表示は存在しないし、賃貸人であるF2もB土地及びE1土地の賃料として受け取っていたのであるから、A土地について、賃借の意思が客観的に表現されていたともいえない。 したがって、A土地の賃借権の時効取得は成立しない。 イ C土地及びD土地について【被告の主張】(ア)C土地についてA2は、昭和46年12月からC土地を耕作して占有を開始しており、 その占有開始時に善意無過失であったことが認められるので、10年間 の短期取得時効により、昭和57年1月、C土地に対する賃借権の取得時効が成立した。仮に、上記の占有開始時に善意無過失が認められないとしても、C土地をF2から賃借しているものと認識して平穏かつ公然と耕作を続け、C土地の賃借料を含むものとして毎年年末にF2に小作料を支払ってきており、20年が経過した平成4年1月、C土地に対す る賃借権の取得時効が成立した。 (イ)D土地についてA2は、D土地はSの所有地であるところ、F2の所有地であり、SがF2から賃借しているものと誤って認識し、Sが昭和45年からD土地を耕作しなくなったので、遅くとも昭和46年12月から、従前より 自らがF2から賃借していたM41番の土地に加えて、D土地を賃借する意思で耕作して占有を開始しており、その後も平穏かつ公然と耕作を続け、D土地の賃借料を含むものとして毎年年末にF2に小作料を支払っているから、20年が経過した平成4年1月、D土地に対する賃借権の取得時効が成立した。 【原告の主張】取得時効の成立については争う。 土地賃貸借の時効取得については、土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、それが賃借の意思に 時効が成立した。 【原告の主張】取得時効の成立については争う。 土地賃貸借の時効取得については、土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、それが賃借の意思に基づくことが客観的に表現されていることが必要である。そして、A2にC土地及びD土地の賃借の意思が なかったことは、本件同意書等において賃借地はM41番8の土地及びM41番9の土地であると記載していることからみても明らかであり、C土地及びD土地の賃借の意思をうかがわせる証拠はない。 また、A2は、C土地及びD土地の耕作を始めた後でも、B土地及びE1土地の賃料しか支払っていないのであるから、C土地及びD土地の賃借 権の時効取得は認められない。 また、D土地は、F2の所有に係る土地ではなく、Sの所有に係る土地であったところ、空港公団は、昭和44年3月13日、同土地を買収し、同月18日に所有権移転登記を了しており、地主である空港公団に対し賃料は支払われていないから、取得時効は成立しない。 第3 当裁判所の判断①-争点1(本案前の主張等)について 1 本件訴えの適法性―農地法違反について被告は、本件訴えは農地法20条1項に反するから、同条5項により無効であると主張する。 しかしながら、農地法20条1項は、農地の賃貸借の当事者は、都道府県知事の許可を受けなければ、解約の申入れをしてはならない旨を定めるものであ り、これは、農地等の賃借権を保護し、賃借人の地位の安定を図るため、解約等に制限を加えるものであると解されるところ、本件訴えは、農地の賃貸借契約が解約の申入れにより終了したことを理由として明渡しを求めるものではない。また、本件訴訟において、被告は、原告が明渡しを求める農地は賃貸借契約の対象農 と解されるところ、本件訴えは、農地の賃貸借契約が解約の申入れにより終了したことを理由として明渡しを求めるものではない。また、本件訴訟において、被告は、原告が明渡しを求める農地は賃貸借契約の対象農地であると主張しているが、仮に、審理の結果、被告の当該主張が 認められた場合、同項の要件を充足しないものとして、請求は棄却されることになるから、本件訴えの適法性を肯定したとしても、上記の同項の趣旨が没却されることにはならない。 したがって、本件訴えは農地法20条1項に反するものではなく、被告の上記主張は採用することができない。 2 本件訴えの適法性―権利濫用、信義則違反について(1)被告は、原告は、成田空港の滑走路等の建設に当たって、強制的手段を用いないことを表明していたにもかかわらず、本件訴えを提起したことは、これに反するものであるから、権利濫用であり、信義則違反であると主張する。 (2)そこで、上記の点について検討するに、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によ れば、次の事実が認められる(認定事実)。 ア 「Y1問題」空港公団は、昭和46年2月3日、千葉県収用委員会に対し、成田空港第一期工事予定地にあったY1の土地について、公共用地の取得に関する特別措置法(特措法)に基づく収用の緊急裁決の申立てをし、同委員会は同年6月12日に緊急裁決処分をし、同年9月20日、これに基づく代執 行により、同土地は収用された。 Y1は昭和48年に死亡したが、空港公団は、昭和51年3月30日、Y1の相続人であるY2に対し、Y1が耕作していた土地の明渡しを求める訴訟を提起し、昭和52年12月19日には仮処分の執行をした。 Y2は、昭和55年、緊急裁決処分等の取消しを求める訴訟を提起した。 平成12年12月 し、Y1が耕作していた土地の明渡しを求める訴訟を提起し、昭和52年12月19日には仮処分の執行をした。 Y2は、昭和55年、緊急裁決処分等の取消しを求める訴訟を提起した。 平成12年12月28日、Y2と運輸省及び空港公団との間で、運輸省及び空港公団が、成田空港の建設を急ぐあまり、Y1との話合いの努力を尽くせないまま、特措法の適用を求めたことについて、深く反省する、仮処分の執行について、開港を急ぐあまり法律優先の対応をしたことを素直に反省することを表明し、Y2はこれを了承したことを内容とする合意が成 立し、平成13年2月5日、最高裁判所において、Y2と国土交通大臣との間で和解が成立し、上記訴訟は終了した。 原告及びY2らは、平成27年5月21日、Y1の補償について、合意した。(乙173~185、189~194)イ B調査団 (ア)B東京大学名誉教授を座長とする「成田空港問題の原因を究明し、その現状を明らかにし、併せて社会正義に適った解決の途を見出すことを目的とする調査団」(B調査団)は、成田空港問題を、良識のある話し合いのもとに、社会的公正にかなった形で解決することを目指して、成田空港問題シンポジウム(シンポジウム)を主宰し、平成3年11月2 1日から平成5年5月24日まで、反対同盟(a派)、運輸省、空港公 団、千葉県が参加し、計15回のシンポジウムが開催された。なお、被告の属するk派はシンポジウムに参加しなかった。 (イ)平成5年5月24日に開催された第15回シンポジウムにおいて、反対同盟は、①国側は収用裁決申請を取り下げること、②国は、第二期工事のB・C滑走路の建設計画を白紙に戻し、地域の人々と民主的に話し 合いをすることにより解決の道を探ること、③地域と空港の共生 反対同盟は、①国側は収用裁決申請を取り下げること、②国は、第二期工事のB・C滑走路の建設計画を白紙に戻し、地域の人々と民主的に話し 合いをすることにより解決の道を探ること、③地域と空港の共生について、国側と対等の立場で自由で話し合うことができる場を設けることを提案した。 これに対し、シンポジウムに出席した運輸大臣は、滑走路計画を白紙に戻すとは、原点にもどって空港づくりを行うという意味から、改めて 地元のコンセンサスを丁寧に得ながら空港づくりを行うべきとの趣旨と理解して、B調査団の所見を踏まえて、上記提案を受け入れる旨を表明した。 また、空港公団総裁も、初心に戻って、白紙の状態で空港計画を地域によく説明し、丁寧なコンセンサス作りに取り組み、地域の方々と話し 合いをすることにより解決の道を探ることと受け止めるとして、上記提案を受け入れる旨を表明した。(乙195)(ウ)シンポジウムを受けて、平成5年9月20日から平成6年10月11日まで12回にわたり、運輸省、空港公団、千葉県、関係自治体、住民団体、反対同盟(a派)などが参加し、地域と空港との共生のあるべき 姿を討議することを目的とする成田空港問題円卓会議(円卓会議)が開催された。 B調査団は、平成6年10月11日の第12回円卓会議において、「滑走路計画について」として、①成田空港は、地域との合意を形成しつつ、その整備を進めていくべきことについては、参加者の認識は一致してい る、②平行滑走路の建設を必要とする運輸省の方針は、世論のすう勢や 地域社会の多くの意見を踏まえれば理解できるところであるが、平行滑走路のための用地の取得について、あらゆる意味で強制的手段が用いられてはならない、③平行滑走路が完成した時点で、横風用滑走路について環境 社会の多くの意見を踏まえれば理解できるところであるが、平行滑走路のための用地の取得について、あらゆる意味で強制的手段が用いられてはならない、③平行滑走路が完成した時点で、横風用滑走路について環境への影響等を調査した上で改めて提案し、関係する地域社会と十分話し合いを重ね、その賛意を得て進めるのが適当であるとの所見を示 した。これを受けて、円卓会議に出席していた運輸省事務次官及び空港公団総裁は、上記所見を受け入れる旨を表明した。(乙196)ウ平成7年1月、第1回成田空港地域共生委員会が開催された(被告準備書面(59)別紙「耕作権裁判と「成田空港反対闘争関連年表」」)。 (3)空港公団は、昭和45年、M41番の土地について、土地収用法に基づく 裁決申請をしたが、平成5年6月、これを取り下げている(前提事実(5)ア)。これは、同年5月のシンポジウムにおいて、運輸大臣及び空港公団総裁が、反対同盟による収用裁決申請の取下げの提案を受け入れる旨を表明したこと(認定事実イ(イ))を踏まえたものである。また、空港公団総裁は、平成6年10月の円卓会議において、滑走路計画については、B調査団が示 した民主的な建設の手法を遵守することを当然のことであり、今後の空港づくりにあたっては、空港計画地内及び周辺地域の方々と誠意をもって話し合いを行いたい旨を表明し(乙196)、運輸省及び空港公団は、平成12年12月、Y1の土地を、特措法に基づき強制収用したこと、仮処分を執行したことについて反省の意を表明している(同ア)。これらの事実からは、空 港公団は、成田空港及び同空港施設の建設に際して必要となる用地の取得に当たって、土地収用法(特措法を含む。)に基づく収用はしないことを表明したものと認められる。 しかしながら、土地収 港公団は、成田空港及び同空港施設の建設に際して必要となる用地の取得に当たって、土地収用法(特措法を含む。)に基づく収用はしないことを表明したものと認められる。 しかしながら、土地収用法に基づく収用による土地の取得の実現と、民事訴訟手続による土地の取得の実現は、制度趣旨、法的性質を異にするもので ある。すなわち、土地収用法に基づく収用は、特定の公益事業のために必要 とされる土地を任意で取得しえない場合に、権利者の意思に反しても、強制的に当該土地を起業者に取得させるとともに、これに伴う損失を補償する制度であるのに対し、民事訴訟手続は、本来、所有権等の権利を有する者がその権利の存在を確定させる手続であり、判決等により権利の存在が確定されたにもかかわらず、相手方が任意に履行しない場合には、権利者は、執行手 続により、これを実現することができるものである。このような両者の違いを考慮すると、シンポジウムや円卓会議における空港公団総裁等の各表明が、民事訴訟手続による権利の実現をしないことまでも表明したものとは認められない。 また、空港公団総裁らは、平成5年5月24日のシンポジウムにおいて、 B滑走路、C滑走路の建設計画を白紙に戻すとの提案を受け入れる旨を表明した(認定事実イ(イ))。しかし、B調査団は、シンポジウムを受けて開催された平成6年10月11日の円卓会議において、①成田空港はその整備を進めていくべきことについては、参加者の認識は一致しており、平行滑走路の建設を必要とする運輸省の方針は、世論のすう勢や地域社会の多くの意 見を踏まえれば理解できるところである、②平行滑走路が完成した時点で、横風用滑走路について環境への影響等を調査した上で、改めて提案し、関係する地域社会と十分に話し合いを や地域社会の多くの意 見を踏まえれば理解できるところである、②平行滑走路が完成した時点で、横風用滑走路について環境への影響等を調査した上で、改めて提案し、関係する地域社会と十分に話し合いを重ね、その賛意を得て進めるのが適当であるとの所見を示しており(同イ(ウ))、これによれば、成田空港の建設はもとより、シンポジウムで白紙に戻すとされた平行滑走路であるB滑走路の 建設についても、円卓会議の協議の結果、その建設の必要性自体については、多くの地域住民の理解を得たものと解される。 他方、被告の属するk派は、そもそもシンポジウムや円卓会議に参加していなかった上、被告は、成田空港の建設自体を許容するものではなく、成田空港は誤った経済政策に基づいて建設されたものであり、公共性は存在しな いと主張していること(被告準備書面(34)5頁以下)などに照らすと、 成田空港の存在を前提とした解決を目指す原告の立場と、成田空港の廃港を目指す被告の立場は相いれないものであり、客観的にみて、原告と被告との話し合いの場を設定しても、両者の間に着地点を見出すことができる現状にないことは明らかであり、近い将来にこれが可能となる見通しもない。 上記によれば、シンポジウムや円卓会議における空港公団総裁等の各表明 により、本件訴えが権利の濫用であり、信義則に反することになるものではない。 (4)被告は、本件訴えは違法な成田空港やB´滑走路の建設、供用を目指すものであるから、違法であると主張する。 しかしながら、成田空港の工事実施計画は、昭和42年1月30日、運輸 大臣により認可されている(成田空港予定の周辺住民らは、昭和42年4月22日、上記認可処分の取消しを求める行政訴訟を提起したが、平成15年12月18日、周 計画は、昭和42年1月30日、運輸 大臣により認可されている(成田空港予定の周辺住民らは、昭和42年4月22日、上記認可処分の取消しを求める行政訴訟を提起したが、平成15年12月18日、周辺住民らの請求を棄却する旨の判決が確定している。被告準備書面(1)、原告準備書面(4))。また、平成11年12月、B滑走路の長さを2180m(B´滑走路)、着陸帯の幅を150mに変更すると した工事実施計画の変更も、運輸大臣により、認可されている(周辺住民らは、上記認可処分の取消しを求める訴訟を提起したが、平成19年10月19日の一審判決及び平成21年6月1日の控訴審判決において、請求は認められなかった。被告準備書面(59)別紙「耕作権裁判と「成田空港反対闘争関連年表」」)。(前提事実(2)イ、オ) そして、本件訴訟が提起された当時、既にB´滑走路は供用が開始されており、短縮されたB´滑走路を北側に延伸して2500mとする計画も、国土交通大臣により認可されていた(前提事実(2)キ)。成田空港は、当初の事業計画書では、A滑走路及びB滑走路の供用を前提として、昭和61年度に乗降旅客数1600万人、発着回数18万1000回になることが想定 されていたところ(甲70)、昭和53年の開港以来、国内外の空港を結ぶ 拠点として、多くの乗降客に利用されており、コロナ禍前においては、1日平均512便が離着陸し、空港旅客数は年間3000万人を超えており(甲25)、また、本来、約2500mの滑走路(B滑走路)を整備する計画であったところ、空港建設の反対運動により工事が遅れたため、当面の航空需要に応えるために、暫定的に、B´滑走路が整備されるに至ったこと(同(2) オ)に照らすと、成田空港には公共性、公益性があり、B´滑走 ころ、空港建設の反対運動により工事が遅れたため、当面の航空需要に応えるために、暫定的に、B´滑走路が整備されるに至ったこと(同(2) オ)に照らすと、成田空港には公共性、公益性があり、B´滑走路の供用、延伸は成田空港の機能の充実等に資するものである。被告は、コロナ禍による航空機需要の低下や羽田空港の国際化等を指摘するが、これらの事情により、現時点における成田空港の公共性、公益性や、機能充実の必要性が、直ちに否定されるものではない。 なお、平成15年1月27日、成田空港において、旅客機がオーバーランして停止したインシデントが発生したが、その原因については、機長が意図したよりも早い速度で進入着陸し、接地位置が大幅に延びたため、滑走路内に停止することができなかったことによるものであり(甲19)、成田空港又はB´滑走路の構造に原因があったとまでは認められず、他に成田空港又 はB´滑走路の構造に、乗員や周辺住民の安全の観点から、およそ供用することが許容されないというべき瑕疵があることを認めるに足りる的確な証拠もない。 上記によれば、成田空港における航空機の離発着により周辺住民に一定の騒音被害をもたらしている可能性があること自体は否定できないことをしん しゃくするも、本件訴えが、成田空港の建設やB´滑走路の供用等につながるものであるとして、権利の濫用であることが基礎づけられるものではない。 (5)被告は、本件訴えは成田空港の廃港を主張する反対同盟の活動を抑えることを目的とするものであると主張する。 しかしながら、本件訴えは、B´滑走路を延長して2500mにする計画 が認可されたところ、被告の耕作地がB´滑走路への西側誘導路の予定地に あるため、西側誘導路がこれを迂回する「への字型」の形状(カーブ)に 、B´滑走路を延長して2500mにする計画 が認可されたところ、被告の耕作地がB´滑走路への西側誘導路の予定地に あるため、西側誘導路がこれを迂回する「への字型」の形状(カーブ)に整備され、この結果、西側誘導路上の航空機は、平行滑走路で離発着を行う航空機の安全に万全を期すために、「への字型」形状(カーブ)の手前で待機することが余儀なくされていたことから(甲81)、西側誘導路を直線化することにより、安全性を確保するとともに、航空機の離発着をより円滑にす るために、被告に対し明渡しを求めるものである。また、昭和63年当時、T地区にはA2を含む5戸が農業等を営んでいたが、A2以外の者は、既に平成8年から平成10年までの間までの間に空港公団との間で売買契約、補償契約を締結しており(被告準備書面(59)60~63頁)、被告の耕作地のみが直線化の支障となっていた。このほか、本件訴えによって、反対同 盟の活動が抑制された形跡はうかがえないことに鑑みると、被告の上記主張は、認識を異にするものであり、採用することはできない。 (6)以上によれば、本件訴えが権利の濫用であり、信義則に反するとの被告の主張は採用することができない。 3 訴えの変更について 原告は、平成23年1月17日付け訴えの変更申立書により、本件工作物を収去して乙土地を明け渡すことを求め、明渡しを求める乙土地の範囲も拡張している。しかしながら、上記申立書は、被告から、現に耕作しかつ原告から借りている農地の範囲を示す別紙10実測図(乙9の1・2)が提出されたことを踏まえたものである。そして、変更前の請求と変更後の請求について、請求 の基礎となる事実関係に同一性が認められ、明渡対象地は西側に約0.4m移動し、乙土地の面積が4462.16 出されたことを踏まえたものである。そして、変更前の請求と変更後の請求について、請求 の基礎となる事実関係に同一性が認められ、明渡対象地は西側に約0.4m移動し、乙土地の面積が4462.16㎡から4469.68㎡に増えたにとどまり、請求が変更されたことにより、著しく訴訟手続が遅滞するものでもない(民事訴訟法143条1項)。したがって、上記申立書による訴えの変更は、これを認めるのが相当である。 第4 当裁判所の判断②-争点2(請求原因)について 1 原告の甲土地及び乙土地の所有について(1)空港公団は、SとM40番の土地についての売買契約を、F2とM41番の土地についての売買契約をそれぞれ締結しており(前提事実(3)イ、ウ)、これにより、空港公団はM40番の土地及びM41番の土地の所有権を取得したものと認められる。 (2)そして、原告は、甲土地はM40番の土地の一部であり、乙土地はM41番の土地から分筆されたM41番1の土地の一部であると主張するのに対し、被告は、甲土地はM41番の土地の一部であると主張するものである(乙土地がM41番1の土地の一部であることは争っていない。)。 しかしながら、F2は、昭和59年5月11日、別紙4地積測量図(甲1 6)のとおりにM41番の土地を分筆しており(前提事実(3)ウ)、同図におけるM41番の土地の形状は別紙2図面における同土地の形状とおおむね整合するものである。 そして、M40番の土地は、北側においてM39番の土地と、南側においてM41番の土地と接するところ(別紙3公図、乙18)、空港公団がSか らM40番の土地を取得した昭和44年当時、空港公団は既にM39番の土地を所有していた上(前提事実(3)エ)、かつて同土地を所有していたK2や、M41 (別紙3公図、乙18)、空港公団がSか らM40番の土地を取得した昭和44年当時、空港公団は既にM39番の土地を所有していた上(前提事実(3)エ)、かつて同土地を所有していたK2や、M41番の土地を所有していたF2との間で、M40番の土地との境界について争いがあったことは認められない(甲15~17、26、27。 なお、Sの長男は、M40番の土地の形状は、別紙2図面のとおりであり、 同土地の西側と南側はF2の畑であり、F2の畑と北側のK2の畑の間には人が歩くことができる程度の小道があった旨を、K2の妻は、M39番の土地の南側はSの畑とF2の畑であった旨をそれぞれ述べている。)。 また、昭和44年12月撮影の航空写真(甲33)及び昭和45年8月撮影の航空写真(甲15)からは、別紙2図面の甲土地の耕作状況と他の土地 の耕作状況は異なるものであったことがうかがえるところである。 このほか、C土地はIがF2との賃貸借契約に基づき耕作していたが、D土地はSが自らの所有地として耕作していたことを考慮すると、M40番の土地及びM41番1の土地の形状、範囲は別紙2図面のとおりであり、甲土地はM40番の土地の一部であると認められる。 2 被告の甲土地及び乙土地の占有について 原告は、被告が甲土地及び乙土地を占有していると主張するのに対し、被告はこれを争うところ、被告が主張する占有範囲は別紙10実測図の緑色の部分であり、被告がM41番8の土地を占有していることについては争いがないことなどに照らすと、被告は甲土地及び乙土地を占有しているものと認められ、これを覆すに足りる的確な証拠はない(なお、被告も、準備書面(1)3頁に おいて、甲土地、乙土地及びM41番8の土地を耕作していることを認めていた。)。 3 本 占有しているものと認められ、これを覆すに足りる的確な証拠はない(なお、被告も、準備書面(1)3頁に おいて、甲土地、乙土地及びM41番8の土地を耕作していることを認めていた。)。 3 本件工作物について証拠(甲69、乙9の1、419)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、乙土地上に設置された堆肥場である本件工作物を所有していると認められる。 第5 当裁判所の判断③-争点3(抗弁1-売買の無効)について 1 農地法3条違反の主張について(1)被告は、空港公団は、F2と農地であるM41番の土地に係る売買契約を締結しているが、同土地を農地として利用することを目的として取得するのであるから、農地法3条1項により、農業委員会の許可が必要となるところ (乙91)、これを得ておらず、上記の売買契約は無効であると主張する。 (2)しかしながら、農地を農地以外のものに転用する場合には、農地法3条1項の農業委員会の許可は不要である(同項ただし書)。 そして、空港公団は、新東京国際空港公団法により設立された、成田空港の設置、管理を効率的に行うこと等により、航空輸送の円滑化を図り、もっ て航空の総合的な発達に資するとともに、我が国の国際的地位の向上に寄与 することを目的とする公団であって、M41番の土地の取得も、空港公団の事業に必要な土地として取得したものである(甲36)。また、M41番の土地は、その大部分が工事実施計画の認可処分による告示区域内に所在し、B滑走路の供用に資する用地であり(甲80)、現に、空港公団は、M41番の土地についての土地収用法に基づく裁決申請をし(前提事実(5)ア)、 また、平成18年7月3日付けで、千葉県知事に対し、M41番の土地等を空港用地に転用するとして解約申入れをするとして、 番の土地についての土地収用法に基づく裁決申請をし(前提事実(5)ア)、 また、平成18年7月3日付けで、千葉県知事に対し、M41番の土地等を空港用地に転用するとして解約申入れをするとして、本件許可申請(賃貸借の解約申入れに係る農地法20条1項の許可申請)をしている(甲67・別紙D)。なお、空港公団は、取得後、直ちに空港の業務に供するための敷地として整備していないが、これは用地取得が計画通りに進まなかったことに よるものと認められるから、このことによって転用目的が否定されるものでもない。 上記によれば、空港公団は、M41番の土地を農地以外のものに転用する目的、すなわち空港の敷地として供する目的で、同土地を取得するものと認められるから、当該売買契約については、農地法3条1項の農業委員会の許 可は不要である(なお、M40番の土地の売買契約についても、同様である。)。 したがって、被告の上記(1)の主張は採用することができない。 2 農地法5条違反の主張について(1)被告は、空港公団がF2からM41番の土地を取得するに際しては、農地法5条1項に基づく都道府県知事の許可が必要となるところ、これを得てい ないから、同土地に係る売買契約は無効であると主張する。 (2)しかしながら、農地法5条1項は、農地を農地以外のものに転用するため、所有権を取得する場合には、都道府県知事の許可を受けなければならない旨を定める一方で、同項各号のいずれかに該当する場合を例外としており(同項ただし書)、同項4号は「その他農林水産省令で定める場合」と定め、省 令である農地法施行規則7条11号は、空港公団が成田空港の敷地等に供す るなどのために所有権等を取得する場合を定めている(乙94)。 そして、前記1の める場合」と定め、省 令である農地法施行規則7条11号は、空港公団が成田空港の敷地等に供す るなどのために所有権等を取得する場合を定めている(乙94)。 そして、前記1のとおり、空港公団はM41番の土地を成田空港の敷地に供する目的で取得したものであるから、農地法施行規則7条11号所定の事由に該当し、同土地の取得につき、農地法5条1項に基づく都道府県知事の許可は不要である(なお、M40番の土地についても、同様である。)。 (3)これに対し、被告は、農地法施行規則7条11号は、成田空港の空港用地買収の便宜迅速を図るだけの目的で農地法5条1項の許可を不要としたものであるから、農地法5条1項4号の委任の範囲を超えて、立法権を侵害するものであり、憲法41条、14条、29条1項、31条に違反し、違憲無効であると主張する。 しかしながら、農地法5条1項の規制の目的は、土地の農業上の効率的な利用を図り、営農条件が良好な農地を確保することによって、農業経営の安定を図るとともに、国土の合理的かつ計画的な利用を図るための他の制度と相まって、土地の農業上の利用と他の利用との利用関係を調整し、農地の環境を保全することにあると認められる(最高裁平成12年(あ)第585号 同14年4月5日第二小法廷判決・刑集56巻4号95頁参照)。そして、同項は、本文において農地の転用のための権利移動を制限しつつ、ただし書でその制限の例外を認めており、具体的には、権利を取得する者が国又は都道府県である場合(1号)、土地収用法その他の法律によって農地に関する権利が収用又は使用される場合(2号)等を定めている(乙94)。このよ うな同条の趣旨及び内容に照らせば、同条1項4号は、同法の趣旨に反した農地転用を行わないと考えられる規 よって農地に関する権利が収用又は使用される場合(2号)等を定めている(乙94)。このよ うな同条の趣旨及び内容に照らせば、同条1項4号は、同法の趣旨に反した農地転用を行わないと考えられる規制主体が農地の権利移転を行う場合や、法律で定める事業の認可等を通じて公益性又は公共性が担保される事業によって農地の権利移転が行われる場合等について、例外的に都道府県知事等の許可を不要とすることを委任するものと解することができ、このように解す る限りにおいて、農林水産省令への委任は憲法上許容されるものである。 そして、成田空港の設置等については運輸大臣の認可を受ける必要があり(航空法55条の3)、空港公団の事業計画等については毎事業年度開始前に運輸大臣の認可を受ける必要があるなど(新東京国際空港公団法26条)、空港公団は運輸大臣の監督下にあり(同法36条等)、その事業の公益性及び公共性が担保されているといえるから、その敷地等に供するための農地取 得について農地法5条1項の許可を不要とする農地法施行規則7条11号は、同法5条1項4号の委任の範囲を超えるものではなく、憲法41条に違反するものではない。 さらに、農地法施行規則7条11号は、農地法5条1項の都道府県知事の許可が不要とされた対象が成田空港の敷地等に係る農地の権利取得であるか らといって、合理的な理由を欠く差別的な取扱いであると認められるものではなく、また、同項の都道府県知事の許可を不要とするものであって、農地の賃借人の権利を強制的に奪うことを規定するものでもないから、農地法施行規則7条11号は、憲法14条、29条1項、31条に違反するものでもない。 したがって、被告の当該主張は採用することができない。 (4)被告は、平成10年の農地法の改正によ 、農地法施行規則7条11号は、憲法14条、29条1項、31条に違反するものでもない。 したがって、被告の当該主張は採用することができない。 (4)被告は、平成10年の農地法の改正により、同法5条1項の都道府県知事の許可については、小作権者の同意が要件となったところ(同条2項3号)、M41番の土地の売買については小作権者であるA2の同意はないから、同土地に係る売買契約は、同条に反し、無効であると主張する。 しかしながら、M41番の土地に係るF2と空港公団の売買契約の締結は昭和63年4月12日のことであり、この点を措くとしても、上記の農地法5条2項は同条1項の都道府県知事の許可の要件に関する規定であり、既に述べたとおり、上記の売買契約については、同法5条1項4号により、都道府県知事の許可を要しないものである。また、同条2項3号は、申請に係る 農地を当該申請に係る用途に供することが確実と認められない場合を不許可 事由とするものであるが、M41番の土地の位置関係等からして、空港公団が同土地を空港の敷地に供することは確実であったと認められる。なお、農地法5条1項の都道府県知事の許可の要否にかかわらず、農地の賃貸借契約の解約等については、賃借人保護のため、都道府県知事の許可が必要とされ(農地法20条1項)、許可事由も同条2項で定められている。 上記によれば、被告の当該主張は採用することができない。 (5)被告は、M41番の土地には告示区域外の土地が含まれていたから、農地法5条1項の千葉県知事の許可が必要であると主張する。 しかしながら、本件告示は、認可された工事実施計画における飛行場の位置・範囲、着陸帯、進入区域、進入表面、転移表面、水平表面や、指定され た延長進入表面、円錐 の許可が必要であると主張する。 しかしながら、本件告示は、認可された工事実施計画における飛行場の位置・範囲、着陸帯、進入区域、進入表面、転移表面、水平表面や、指定され た延長進入表面、円錐表面及び外側水平表面を告示するものであり(前提事実(2)イ)、他方、農地法施行規則7条11号は、農地転用のための権利移動の例外として、空港公団が成田空港の敷地に供するために取得する場合を定めるものであることに照らすと、本件告示に係る区域(告示区域)と、農地法施行規則7条11号における空港の敷地を、同一の範囲に解すべき合 理的な理由は見出し難い。また、M41番の土地の面積は1万3258.93㎡であるところ、告示区域内の部分は9984.5㎡であり、区域外の部分も滑走路、誘導路や旅客ターミナル周辺のエプロンから近接した場所にある(甲30、80)。 上記によれば、M41番の土地に告示区域外の部分が含まれるとしても、 同土地の売買について、農地法5条1項の都道府県知事の許可が必要であると解するのは相当でないから、被告の当該主張は採用することができない。 3 農地法6条違反の主張について(1)被告は、農地法6条1項1号は、国以外の者は、その所有者の住所のある市町村の区域の外にある小作地を所有してはならないと規定していたとこ ろ(乙91)、空港公団が、M40番の土地及びM41番の土地を取得した 当時、その住所地は東京都内にあったから、空港公団によるこれらの土地の取得は同号に違反すると主張する。 (2)しかしながら、上記の小作地とは、耕作の事業を行うものが所有権以外の権原に基づいてその事業に供している農地をいうところ(乙91)、空港公団が取得したM40番の土地には小作人(農地につき所有権以外の権原に基 づいて耕作の事業 、耕作の事業を行うものが所有権以外の権原に基づいてその事業に供している農地をいうところ(乙91)、空港公団が取得したM40番の土地には小作人(農地につき所有権以外の権原に基 づいて耕作の事業を行う個人)はいなかったのであるから、同土地は小作地とは認められない。 空港公団は、当初、主たる事務所を東京都内においていたが、成田空港の位置は、新東京国際空港の位置を定める政令(昭和41年7月5日政令第240号)により、千葉県成田市と定められていた。そして、上記の農地法6 条1項1号の規定は、「農地はその耕作者みずからが所有することが最も適当である」との認識(自作農主義)に基づくものであり、所有制限に該当する小作地を強制的に譲渡させ、この譲渡に応じない場合には国がこれを買収して、その小作農に売り渡すことにより、小作農の自作農化を図るものと解されるところ(甲64、乙92)、空港公団は、M40番の土地等を空港の 敷地として利用することを目的として取得するものであり、農地として利用することを目的とするものではないから、空港公団による取得は上記の自作農主義の趣旨に抵触するものではない。 このほか、農地法6条に違反した場合の効力規定はないことを考慮すると、空港公団によるM40番の土地等の取得は、農地法6条1項1号により、無 効となるものではないと判断するのが相当である。 4 用地事務取扱規定違反の主張について(1)被告は、空港公団の用地事務取扱規定第38条には、「取得し、又は使用しようとする土地に用益物権、担保物権等が設定されている場合においては、土地所有者及び関係人にこれらの権利を消滅させるものとする。」と規定さ れ(甲45)、空港公団が小作権付きで土地を買収することは禁止されてい たのであるか されている場合においては、土地所有者及び関係人にこれらの権利を消滅させるものとする。」と規定さ れ(甲45)、空港公団が小作権付きで土地を買収することは禁止されてい たのであるから、空港公団が、A2の小作権放棄の同意を得ないまま、M41番の土地を取得したことは、同条に違反し、無効であると主張する。 (2)しかしながら、用地事務取扱規定は空港公団の事務処理に関する内規にすぎないから、これに違反したからといって、直ちに空港公団によるM41番の土地取得の私法上の効力が否定されるものではない上、空港公団による用 地取得が、用益物権等の設定されていない状態で行われることが望ましいとしても、小作権付きでの取得を禁止するまでの合理的な理由もない。空港公団は、F2が、I及びNと同様に、A2の権利を消滅させる内容でのM41番の土地の取得を目指してきたが、これが実現しなかったものである。 したがって、被告の上記(1)の主張は採用することができない。 5 以上のほか、被告の本件訴訟におけるその余の主張を考慮しても、M40番の土地及びM41番の土地の売買契約が無効であるとは認められない。 第6 当裁判所の判断④-争点4(抗弁2-被告の占有権原)について 1 被告は、甲土地及び乙土地について賃借権を主張するところ、賃借権の発生原因は、①地主との合意及び②時効取得である。 そこで、被告の賃借権の有無について検討するに、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる(認定事実)。 (1)A2がC土地で耕作するまでの経緯等ア A1は、大正10年頃から、F1より現在のM41番の土地を借りて耕作をするようになった(乙419)。 A2は、昭和25年8月1日、F1との間で、(略)T293 経緯等ア A1は、大正10年頃から、F1より現在のM41番の土地を借りて耕作をするようになった(乙419)。 A2は、昭和25年8月1日、F1との間で、(略)T293番の1の土地に係る本件賃貸借契約を締結したが、同契約は、賃借地の面積を4反7畝(約4661㎡)とするものであった(前提事実(4)ア)。 イ F1は昭和32年10月6日に死亡し、F2はM41番の土地を相続により取得した(乙8)。 また、A1は昭和37年7月8日に死亡し、A2はA1の賃借権を相続 により取得した(乙298)。 ウ M41番の土地は、A2のほかに、I及びNも、F1から借りて、耕作していた。Iの賃借地の面積は合計6反4歩(約5963㎡)、Nの賃借地の面積は3反3畝10歩(約3305㎡)であった。(甲2、40、41、乙85) エ A2は本件関係土地図のA土地及びB土地を、IはC土地、E1土地及びE2土地を、NはF土地を、SはD土地をそれぞれ耕作していた。 しかし、昭和46年12月頃、既に、NはF土地の耕作を、SはD土地の耕作をそれぞれ止めており、また、A2は、Iから農道がないため耕作しづらいので交換してほしいとの申入れがあったことから、A土地とC土 地の耕作場所を交換し、A2は、B土地、C土地及びD土地を、IはA土地、E1土地、E2土地及びF土地をそれぞれ耕作するようになった。(乙15)(2)A2がA土地での耕作を開始するまでの経緯等ア Iは、所有するM42番2の土地の一部を、反対同盟の現地闘争本部の 敷地に提供していたが、昭和57年2月、空港公団と交渉していたことが発覚したため、反対同盟の委員長代行及び副委員長の地位を解任された。 その後、A2は、反対同盟の本部役員に就任した。 争本部の 敷地に提供していたが、昭和57年2月、空港公団と交渉していたことが発覚したため、反対同盟の委員長代行及び副委員長の地位を解任された。 その後、A2は、反対同盟の本部役員に就任した。(乙281、327、334)イ F2は、昭和44年にM44番2の土地を空港公団に売却し、昭和47 年にはホテル営業を目的とした株式会社成田プラザホテルを設立し、昭和50年、ホリディ・イン成田を開業した。 しかし、同社は、昭和62年8月、累積赤字のため、解散し、代表取締役であったF2は清算人となり、同年9月1日、ホリディ・イン成田は東武鉄道株式会社に譲渡された。(乙268~270、309、324、3 25) ウ(昭和59年の分筆等)(ア)F2は、成田空港開港後の昭和54年以降、空港公団に対し、M41番の土地の代替地を要求するようになり、昭和59年には、耕作者(A2、I及びN)解約料を現物(耕作地)で渡すため、別紙4のとおり、M41番の土地を7筆に分筆した。 分筆された各土地の面積は、M41番1の土地は3247.7854㎡、41番2の土地は1256.7722㎡、M41番3の土地は540.0405㎡、M41番4の土地は3096.7976㎡、M41番5の土地は1327.2006㎡、M41番6の土地は1337.5634㎡、M41番7の土地は3124.4188㎡であった(甲16)。 (イ)空港公団は、千葉県収用委員会に対し、昭和62年4月24日付けで、「裁決申請書及び明渡裁決申立書の記載事項の変更について(報告)」と題する書面(甲47)を提出し、分筆されたM41番の土地について、41番2、3、6及び7の土地についてはIが、41番1の土地についてはNが、41番4及び5の土地についてはA2がそれ いて(報告)」と題する書面(甲47)を提出し、分筆されたM41番の土地について、41番2、3、6及び7の土地についてはIが、41番1の土地についてはNが、41番4及び5の土地についてはA2がそれぞれ賃借権を有 するとして、裁決申請書等の変更について報告し(甲47)、また、平成元年3月27日付けで、昭和63年1月26日の合筆の事実と同年8月24日の分筆の事実を報告した(甲74)。 (ウ)なお、空港公団は、昭和13年から昭和45年までの間、A2の耕作地はA土地及びB土地、Iの耕作地はC土地、E1土地及びE2土地、 Nの耕作地はF土地であったが、昭和46年頃、A2とIは、土地所有者(F2)の了解なく、耕作場所を変更し、現在に至っているものと認識していた(乙85)。 エ(地代の未払等)A2は、昭和50年頃から、F2に対し地代を支払っていなかった。 A2らは、昭和60年7月、空港公団を被告として、成田空港第二期工 事の差止めを求める訴訟を提起したが(千葉地方裁判所昭和60年(ワ)第919号。二期工事差止訴訟)、反対同盟の法対部で活動していたHは、上記の未払いの事実を知り、これは非常にまずいと考えて、A2と相談し、A2は、同年8月1日、F2に対し、昭和58年から昭和60年までの3年分の地代として合計31万0200円を支払った。このとき、F2が作 成した領収証(乙134)には、「成田市T(略)M41畑4657㎡、成田市(略)D618田570㎡の地代昭和58年、59年、60年分として」と記載されていた(なお、M41番の土地の地代は年6万0593円である。甲67、乙167)。以後、A2及び被告は、平成15年までF2に対し、平成16年及び17年は原告に対し、それぞれ地代を支払 い、平成18年か お、M41番の土地の地代は年6万0593円である。甲67、乙167)。以後、A2及び被告は、平成15年までF2に対し、平成16年及び17年は原告に対し、それぞれ地代を支払 い、平成18年からは原告を被供託者として供託している。(乙15、40、134、136~165、393)オ(昭和62年12月26日)F2は、昭和62年12月26日、A2に対し、資金繰りが苦しいことから、A2の小作地(4反7畝)の3分の1をA2名義にすることを提案 した(甲42の1、乙15)。 A2は、F2に対し、当初の小作状況について、A2の小作地はB土地に相当する2反7畝とE1土地に相当する2反、Iの小作地はC土地に相当する部分である旨を説明した(甲42、43、乙76の1・5~7、15、35~36頁)。 F2は、A2に対し、小作地をもとの場所に戻すことを求めた(乙86)。 カ(昭和63年1月28日付け覚書)F2と空港公団は、昭和63年1月28日、M41番の土地を一部賃借権付きで空港公団に譲渡するものとし、A2が賃借している場所及び面積の確定次第、速やかに土地売買契約を締結する旨の覚書(甲71。本件覚 書)を作成した。 本件覚書には、①A2に賃貸している面積は4661㎡であり、F2は、A2の賃借権を有する場所及び面積を確定するために、A2に対して現場立会等の協力要請を行うこと、②Iに賃貸している面積は5963.62㎡であり、Iの賃借権については、F2が責任をもって解決すること、③Nに賃貸している面積は3305㎡であり、Nの賃借権については、F2 が責任をもって解決すること、④空港公団は、A2の賃借地を確定するために、I及びNに対して現場立会等の協力要請を行うことが記載されていた。 キ I ㎡であり、Nの賃借権については、F2 が責任をもって解決すること、④空港公団は、A2の賃借地を確定するために、I及びNに対して現場立会等の協力要請を行うことが記載されていた。 キ Iは、昭和60年8月、反対同盟の現地闘争本部の敷地(20坪)をM42番3の土地として分筆した上で、M42番1の土地及びM42番2の 土地を空港公団に譲渡したが、同年11月、脳出血で入院した。そのため、Iの耕作地では、昭和61年3月頃から、マルチ(農業用ビニール)が貼られて、耕作が行われなくなった。そして、Iは、昭和62年4月、G町に転居した。(乙11、41、327)(3)昭和63年 ア空港公団は、昭和63年3月8日、T区の自主耕作地をフェンスで囲い込む工事を開始し、翌9日、これを阻止しようとした反対同盟の関係者が逮捕された(乙422~427)。 イ同月11日、二期工事差止訴訟において、A2の第2回本人尋問が実施された(乙282)。 ウ A2は、同年4月、A土地での耕作を開始した。 エ空港公団は、同月12日、F2との間で、M41番の土地に係る土地売買契約を締結したが、これにはA2の賃借権があり、その範囲を示すものとして添付された地積測量図は本件同意書等に添付されたものと同一であった(甲36)。 オ運輸省及び空港公団は、同年7月14日、千葉県収用委員会に対し、昭 和46年から中断していた、第二期工事の対象区域内にある未収用地の収用あっせんの審理の再開を要請することにした(乙320)。 カ空港公団及びF2は、昭和63年7月19日、佐倉簡易裁判所において、F2は、空港公団に対し、M41番の土地につき、空港公団が所有権を有することを確認し、かつ昭和63年4月12日付け売買契約 。 カ空港公団及びF2は、昭和63年7月19日、佐倉簡易裁判所において、F2は、空港公団に対し、M41番の土地につき、空港公団が所有権を有することを確認し、かつ昭和63年4月12日付け売買契約により、所有 権移転登記手続を行う義務があることを確認すること、F2は、空港公団が請求したときは、即時、空港公団に対し、M41番の土地につき、上記売買を原因とする所有権移転登記手続をする旨の内容の和解をした(乙10)。 (4)平成15年以降 ア空港公団は、平成15年12月24日、M41番1の土地、M41番8の土地、M41番9の土地について、所有権移転登記手続をした(前提事実(3)ウ(キ))。 イ空港公団は、被告に対し、同日付けで、被告はM41番8の土地及びM41番9の土地に賃借権を有していることから、同賃貸借契約の解約につ いて相談したい旨を連絡し(甲13)、平成16年1月17日付けで、代替農地として、空港敷地外の隣接地や被告所有の畑の隣接地等の提供を提案した(甲21)。 また、空港公団は、同年2月9日付けで、M41番8の土地及びM41番9の土地の賃貸借の解約について相談したい旨連絡するとともに、M4 0番の土地及びM41番1の土地については、賃貸借契約が存在せず、無権原で耕作されている土地であるとして、直ちに明け渡すよう求めた(甲14)。 これに対し、被告の代理人弁護士は、同月24日付けで、原告に対し、M41番8の土地及びM41番9の土地は、A2が戦後まもなくF1との 間で小作地として農地賃貸借契約を締結し、その後、小作契約をF2と被 告との間で承継継続してきたものであり、M40番の土地及びM41番1の土地の一部については、小作耕作権を時効取得して現在に至っており、権原なく耕作して 締結し、その後、小作契約をF2と被 告との間で承継継続してきたものであり、M40番の土地及びM41番1の土地の一部については、小作耕作権を時効取得して現在に至っており、権原なく耕作しているものではない旨を通知した(甲22)。 ウ被告の代理人弁護士は、原告に対し、平成16年8月2日付けで、B´滑走路の供用停止を求め、平成18年6月20日付けで、賃貸借の解約を 提案するのであれば、まず、B´滑走路の供用停止と北側延伸方針の撤回を表明すべきであると伝えた(甲24の2、67)。 エ原告は、平成18年7月3日付けで、成田市農業委員会に対し、千葉県知事に対し、被告はM41番8の土地及びM41番9の土地について賃借権を有しているとして、各土地に係る農地賃貸借契約の解約申入れについ ての許可を申請した(前提事実(5)ウ)。 2 合意に基づく賃借権について(1)A土地についてア被告は、A2とF2との本件賃貸借契約に基づき、A土地の賃借権を主張するものである。本件賃貸借契約は、(略)T293番の1の土地(4 反7畝)に係るものであるが(認定事実(1)ア)、(略)T293番の土地(1町4反14歩)は、昭和29年の町名地番変更により、M41番の土地(1町4反14歩)となり(前提事実(3)ウ))、また、F2が作成した領収証(乙134)にも、M41番の土地(4567㎡)の地代として受領した旨が記載されていること(認定事実(2)エ)に照らすと、 本件賃貸借契約でいう(略)T293番の1の土地はM41番の土地を意味するものと解するのが相当である。 イ本件賃貸借契約の内容等(ア)上記のとおり、本件賃貸借契約はM41番の土地に係るものであるが、同土地の面積は1町4反14歩(約1万3930㎡)であるところ、契 るものと解するのが相当である。 イ本件賃貸借契約の内容等(ア)上記のとおり、本件賃貸借契約はM41番の土地に係るものであるが、同土地の面積は1町4反14歩(約1万3930㎡)であるところ、契 約書には、賃借地について、面積は「4反7畝」(約4661㎡)と記 載されているにとどまり、同土地における具体的な場所、範囲は記載、特定されておらず(甲20、乙15)、また、当時、M41番の土地は、A2のみならず、I及びNも、F1とそれぞれ同土地についての賃貸借契約を締結して、耕作を行っていたものであり、I及びNとの各賃貸借契約においても、同様であり、同土地における賃借地の具体的な場所、 範囲が特定されていたとは認められない(なお、A2とW1との間のT78番の土地等に係る賃貸借契約においても、賃借地は同土地の一部となっているが、その具体的な場所、範囲は特定されていない。甲43、67、乙307)。 また、A2は、昭和60年に成田市農業委員会に小作権の登録をした が、その内容も、M41番の土地(1町4反14歩)のうち4反7畝とするものであり、同土地における具体的な場所、範囲については特定されていなかった(乙15)。 このほか、①A2、I及びNの賃貸借契約で定められた賃借地の面積の合計はM41番の土地の面積に相当するものであり、②F2は、被告 訴訟代理人弁護士らに対し、F1は温情で貸したにすぎない旨を説明し(乙76の1・4~5頁)、F1に各賃借地の場所等に関心があったとはうかがえず(現に、F2もこれを把握していなかった。乙76の1・13、45頁。被告準備書面(59)342~343頁)、③F2と空港公団との本件覚書においては、A2の賃借地を確定するために、空港 公団がI及びNに対し現場立会等の協力要請を行 。乙76の1・13、45頁。被告準備書面(59)342~343頁)、③F2と空港公団との本件覚書においては、A2の賃借地を確定するために、空港 公団がI及びNに対し現場立会等の協力要請を行うことを合意していること(認定事実(2)カ)などに照らすと、本件賃貸借契約は、賃借地の面積のみを定めるものであって、賃借地の場所、範囲を具体的に定めるものではなかったと認められる。 (イ)そして、A2は、昭和47年以前はA土地及びB土地を、同年から昭 和62年まで、B土地及びC土地を耕作地としており、Iは、昭和47 年以前はC土地、E1土地及びE2土地を耕作地としていたが、同年以降はA土地、E1土地、E2土地及びF土地を耕作地としており(認定事実(1)エ、(3)ウ)、これらの耕作地の変更がF2との協議の結果であることを認めるに足りる証拠はないから(F2は、被告訴訟代理人弁護士らに対し、耕作地の変更が、同人の断りなしに行われたと述べ ている(乙76の1・25頁)。F2が作成した甲42の1にも、A2が「内緒で」C土地の耕作をしている旨が記載されている。)、これは賃借人間での協議により変更されたものと認められる。 (ウ)上記によれば、A2は、本件賃貸借契約に基づく限りにおいて、賃貸人であるF2に対し、M41番の土地のうち約4661㎡の賃借権を主 張することができたにとどまり、同契約に基づき、A土地の賃借権を主張することができる法的地位にあったとは認められない。A2がF2に対しA土地の賃借権を主張するためには、本件賃貸借契約に加えて、同人との間でA土地を賃借地とする旨の合意の成立が必要となる(この合意の有無については、後記エのとおりである。)。 (エ)なお、空港公団は、昭和45年頃までA2の耕作地はA土地及びB えて、同人との間でA土地を賃借地とする旨の合意の成立が必要となる(この合意の有無については、後記エのとおりである。)。 (エ)なお、空港公団は、昭和45年頃までA2の耕作地はA土地及びB土地であったと認識していた(認定事実(2)ウ)。しかしながら、①そもそも空港公団はA2の賃借地ないし耕作地を正確に把握できる立場にはなかった上(空港公団がA2から事情を聴取することができる状況にあったとは認められない。)、②空港公団は、昭和46年頃、A2は、 土地所有者の了解なく、Iと耕作地を交換したと認識しており(同(2)ウ)、③A2も、昭和62年12月26日、F2に対し、E1土地に相当する部分が賃借地であると説明し(同(2)オ。なお、被告も、甲42の1はF2がA2から聞き取った内容を記載した書面であることについては、争っていない(被告準備書面(59)271、283、299、 335頁)。)、④被告の代理人弁護士も、空港公団に対し、M41番 8の土地及びM41番9の土地については賃貸借契約に基づき占有している旨を回答していること(同(4)ウ)に鑑みると、空港公団の当該認識は、本件賃貸借契約がA土地をA2の賃借地とするものであったことを基礎づけるに足りるものではない。 また、空港公団は、昭和62年4月24日付けで、千葉県収用委員会 に対し、A土地及びB土地に相当すると考えられるM41番4及び5の土地の賃借人はA2であると報告したが(同(2)ウ)、上記①ないし④の事由のほか、⑤F2は、昭和63年1月26日にM41番1ないし7の各土地を合筆し、同年8月24日に分筆し、空港公団も、平成元年3月27日付けで、これらの事実を千葉県収用委員会に報告しているこ とに鑑みると、空港公団の当該報告も、本件賃貸借契約がA土地 7の各土地を合筆し、同年8月24日に分筆し、空港公団も、平成元年3月27日付けで、これらの事実を千葉県収用委員会に報告しているこ とに鑑みると、空港公団の当該報告も、本件賃貸借契約がA土地をA2の賃借地とするものであったことを基礎づけるに足りるものではない。 (オ)また、F2は、昭和62年12月26日、A2に対し、小作地をもとの場所に戻すことを求めている(認定事実(2)オ)。しかしながら、①A2は、同日、当初の小作地について、B土地に相当する2反7畝と E1土地に相当する2反である旨を説明しており(同(2)オ)、当初の小作地の場所について、A2とF2との認識が一致していたかは明確でなく、また、②A2は、同年4月から、A土地での耕作を開始するとともに、それまでのC土地での耕作も継続しており、A2の耕作面積は本件賃貸借契約で定められた賃借地の面積を大幅に超えるものとなって おり(乙419・21頁参照)、これは小作地をもとの場所に戻した結果とはかけ離れた状態であることなどに鑑みると、F2が上記のとおり求め、A2が同月からA土地での耕作を開始したことにより、本件賃貸借契約がA土地をA2の賃借地とするものであったと認められるものではない。 ウ被告の主張について①-転貸の有無 (ア)これに対し、被告は、A2の賃借地はA土地及びB土地であったところ、A2はA土地をIに転貸したものであるから、A土地の賃借権を失うものではないと主張する。 (イ)しかしながら、上記の転貸借の事実を裏づける客観的な証拠はなく、また、本件賃貸借契約4条は、賃借権の転貸、譲渡については農地委員 会の承認が必要であると定めるところ(甲20)、この承認があったことを認めるに足りる証拠もない。 そして、A2は、昭 はなく、また、本件賃貸借契約4条は、賃借権の転貸、譲渡については農地委員 会の承認が必要であると定めるところ(甲20)、この承認があったことを認めるに足りる証拠もない。 そして、A2は、昭和62年12月26日、反対同盟の法対部で活動していたHに対し、「Iにより、農道がないため、耕作しづらいので、交換して耕作してほしいとの申入れがあり、耕作地を交換した」旨を述 べている(乙15、16)。 Hは、昭和63年3月19日、昭和62年12月26日にA2から聴取した内容を記載した「小作地について」と題する書面(乙15。Hメモ)を作成しているが、これには、上記交換の事実が記載されているものの、転貸借の事実についての記載はない。①Hは、昭和51年頃から、 成田空港の建設に反対する、いわゆる三里塚闘争の支援活動に参加するようになり、やがて反対同盟の法対部で活動するようになった者であり、Hメモを作成した当時、既に成田空港の第二期工事が着工され、M41番の土地の土地収用法に基づく収用が現実化しつつある状況のもと、F2がA2に買収の話を持ち出してきたことは、背後に空港公団が動いて おり、反対運動にとって重大な動向だと感じ、反対同盟の事務局長に報告し、その指示を受けて、A2の小作地の権利関係を明確化する目的で、Hメモを作成したものであり、②二期工事差止訴訟において、昭和62年12月4日と昭和63年3月11日にA2の本人尋問が予定されており、HはHメモを完成させた数日前の同月10日にはA2と弁護士との 打合せに同席し、③Hは、昭和62年12月26日にA2から聴取した 内容について文案を作成し、自ら法務局や農業委員会で調査した結果を踏まえて、これを訂正し、訂正部分をA2に確認してもらうなどした上で、Hメモを完成したも 年12月26日にA2から聴取した 内容について文案を作成し、自ら法務局や農業委員会で調査した結果を踏まえて、これを訂正し、訂正部分をA2に確認してもらうなどした上で、Hメモを完成したものである(乙16、393、証人H。被告準備書面(59)98~101頁)。これらの事実によれば、HがA2から転貸借の事実を聴取していれば、Hメモに記載していたと考えるのが合 理的であり、Hメモにその旨の記載がない以上、A2は転貸借との認識を有していなかったものと推認される。 また、C土地は農道に接しておらず、道路(団結街道)への出入りは、A2が耕作していたB土地又はSが耕作していたD土地を通行しなければならず、Sは既にD土地での耕作を止めていたことや、IがA土地に 隣接するE1土地、E2土地及びF土地で耕作をしていたこと(認定事実(1)エ)、当時、A2とIはともに反対同盟で活動しており良好な関係にあったことに照らすと、A2とIは、転貸借という形式をとることなく、A土地とC土地の耕作地を交換したとしても、特に不自然ではない。 このほか、①A2がそれまで耕作していたA土地をIが、同人がそれまで耕作していたC土地をA2が、それぞれ耕作するようになり、その期間も約15年に及んでいたことからすれば、交換したものと解するのが自然であること、②A2が昭和63年4月からA土地で耕作するようになったのは、Iが同土地での耕作を止めたことが契機となったもので あり、A2とIの間で、転貸借を解消する手続が行われた形跡もないことを考慮すると、被告の上記(ア)の主張に係る転貸借の事実は認められず、これを採用することはできない。 エ被告の主張について②-昭和62年12月の合意の有無(ア)被告は、昭和62年12月頃、 考慮すると、被告の上記(ア)の主張に係る転貸借の事実は認められず、これを採用することはできない。 エ被告の主張について②-昭和62年12月の合意の有無(ア)被告は、昭和62年12月頃、F2との間で、A土地を賃借地とする 旨の合意が成立したと主張する。 (イ)しかしながら、上記合意が成立した事実を裏づける客観的な証拠はない。 そして、F2は、M41番の土地について、昭和59年5月11日に7筆に分筆したものの、昭和63年1月26日にはこれらを合筆し、同年8月24日には、別紙5地積測量図のとおり、M41番1の土地、4 1番8の土地及び41番9の土地に分筆しており(前提事実(3)ウ)、このような分筆の変遷は、F2とA2との間で協議が成立しなかったことをうかがわせるものであり、同日の分筆内容は、A2がA土地及びB土地につき賃借権を有することと整合しないものである。また、F2は、同年4月12日、空港公団との間で、A2の賃借権の場所をB土地及び E1土地とする、M41番の土地の売買契約を締結している(認定事実(3)エ)。 また、前記イのとおり、従前、M41番の土地はA2、I及びNの3名が耕作し、地主との間で各賃借地の場所、範囲が定められることはなく、各耕作地は上記3名の協議により変更されることもあったところ、 I及びNは遅くとも昭和61年3月頃までには耕作を止めていた上、Iは空港公団との交渉が発覚したため、反対同盟の委員長代行等の地位を解任されており、その後に反対同盟の本部役員に就任したA2との関係も従前のような関係ではなく、A2とIとの間でA土地に係る何らかの合意が成立した事実も認められない(Iは、所有していたM42番の2 の土地の一部を反対同盟の現地闘争本部の敷地に提供するため、 も従前のような関係ではなく、A2とIとの間でA土地に係る何らかの合意が成立した事実も認められない(Iは、所有していたM42番の2 の土地の一部を反対同盟の現地闘争本部の敷地に提供するため、同土地を分筆しているが(乙333、334)、A2がA土地の賃借人であることを明確にする措置は講じていない。)。 (ウ)当時、F2は、ホテル経営が上手くいかず、債務の返済に窮しており、M41番の土地を空港公団に売り渡して、その代金を債務の返済に充て ることを考えていたものであり(認定事実(2)イ、ウ、オ)、この点 については、同土地の取得を目指す空港公団と利害関係が一致していた。 そして、F2は、速やかに空港公団からM41番の土地の売買代金を得るためには、同土地に設定されているA2の賃借権を消滅させるか、本件賃貸借契約で定められた約4661㎡のA2の賃借地の場所、範囲を確定する必要があった(同(2)カ)。しかし、F2にとっては、A2 の賃借地が上記の面積に収まるのであれば、これをA土地、E1土地、E2土地、F土地のいずれとしても、特に支障はなかったと考えられ、F2は、昭和62年12月26日、A2から小作地はB土地及びE1土地である旨の説明を受け(同(2)オ)、昭和63年4月12日の空港公団との売買契約は、A2がB土地及びE1土地の賃借権を有すること を内容とするものであり(同(3)エ)、同年8月24日の分筆内容(別紙5)などに照らすと、F2は、A2の賃借地をM41番8の土地及び41番9の土地と認識していたことが推測される。 また、Hメモ及びHの陳述書(乙16)によれば、A2の小作地の境界に6本の木杭が打たれ、そのうちの1本は、E1土地とM42番2の 土地との境界線と道路(団結街道)が接する地点であり、 れる。 また、Hメモ及びHの陳述書(乙16)によれば、A2の小作地の境界に6本の木杭が打たれ、そのうちの1本は、E1土地とM42番2の 土地との境界線と道路(団結街道)が接する地点であり、2本はE1土地とA土地の境界線上の地点にあることが認められる。仮に、A2の賃借地がA土地であると認識していれば、E1土地とM42番2の土地との境界線と道路が接する地点に木杭を打つのは不自然であり、木杭は空港公団が打ったものであるとしても、F2がその位置について異議を述 べた形跡はうかがえず、Hとともに木杭の位置を確認したA2についても、同様であった(証人H27~30頁、乙16)。上記の事情は、F2がA2の賃借地はM41番8の土地及びM41番9の土地であるとの認識を有していたことを裏づけるものといえる。 (エ)他方、A2は、F2がM44番2の土地を空港公団に売り渡していた ことや、同人が経営していたホテルの状況、同人から資金繰りが苦しく A2の小作地を7:3で分けることを提案されたことから(認定事実(2)イ、オ)、F2がM41番の土地も空港公団に売り渡すことを想定することができたところ、A2は、成田空港の建設や第二期工事に断固反対していたのであるから、空港公団とはもとより、F2とも利害が相反、対立する関係にあり、空港公団による用地取得が進む中、M41番の土 地の売り渡しにつながりかねない賃借地の場所、範囲の特定に安易に協力することができない立場にあった。 そして、賃借権に基づき耕作が行われている状況は土地の売買若しくは強制収用を妨げる要因となることから、M41番の土地の空港公団への売り渡しを阻止するためには、同土地での耕作を広く行うことが有効 な対抗策であった。現に、A2は、F2の小作地を7:3で分け は強制収用を妨げる要因となることから、M41番の土地の空港公団への売り渡しを阻止するためには、同土地での耕作を広く行うことが有効 な対抗策であった。現に、A2は、F2の小作地を7:3で分ける提案を了承することなく、A土地での耕作を開始した昭和63年4月以降も、C土地での耕作を継続して、A2の耕作面積は本件賃貸借契約で定められたA2の賃借地の面積(約4661㎡)を大幅に超えるものになっていた。 また、第二期工事が進行している中、昭和60年7月に提起された二期工事差止訴訟においては、昭和62年12月4日及び昭和63年3月11日にA2の本人尋問が予定されており(乙281、282)、空港公団とA2及び反対同盟との緊張関係も高まっていた。 (オ)前記イのとおり、本件賃貸借契約は、賃借地について、面積を定める のみで、賃借地の場所、範囲を具体的に定めるものではなく、I及びNが耕作を中止して権利を消滅させることとなり、A2を含めた3名がM41番の土地を耕作するという、本件賃貸借契約の前提となっていた関係は消滅し、A2のみがM41番の土地の一部を耕作地とし、残部については耕作人がいないという状態になった以上、A2は、地主であるF 2に対し、賃借地の場所、範囲を具体的に主張するのであれば、同人と の間でこれを特定する必要があった。 しかし、上記(イ)ないし(エ)によれば、①昭和62年12月頃、A2とF2がM41番の土地におけるA2の賃借地の場所、範囲について合意できるような状況にあったとはおよそ認め難く、②F2の認識内容や、③仮に、A土地をA2の賃借地とする旨の合意が成立したのであ れば、A2はHら反対同盟の支援者と相談するなどして、これを証する書面等の客観的証拠を作成しておくことが考えられたとこ の認識内容や、③仮に、A土地をA2の賃借地とする旨の合意が成立したのであ れば、A2はHら反対同盟の支援者と相談するなどして、これを証する書面等の客観的証拠を作成しておくことが考えられたところ、そのような客観的な証拠も存在しないことに鑑みると、同月頃、A2とF2との間で、A土地をA2の賃借地とする旨の合意が成立した事実は認めるに足りないといわざるを得ない。 したがって、被告の上記(ア)の主張は採用することができない。 オ本件賃貸借契約は、A2の賃借地の場所、範囲を具体的に定めるものではなく、A2とF2との間で、被告が主張する昭和62年12月頃に、A土地を賃借地とする旨の合意が成立した事実は認めるに足りず、また、被告の本件訴訟におけるその余の主張を踏まえても、それ以前はもとより、 それ以降の時期において、上記合意が成立した事実を認めるに足りる的確な証拠もない以上、被告のA土地の賃借権は認められない。 (2)C土地についてア被告は、A2は、昭和62年12月、F2に対し、A土地のみならずC土地についても耕作を続けることを申し出て、F2はこれを承諾したと主 張する。 しかしながら、①前記(1)エのとおり、当時、A2とF2が賃借地の場所、範囲について合意できるような状況にあったとはおよそ認められない上、②A土地も耕作するとなると、耕作面積が増えるにもかかわらず、賃料の増額はなく、F2がこれを承諾する合理的な理由はないこと、③H メモの作成目的等からして、F2がC土地での耕作を承諾したのであれば、 その旨が記載されていたと考えられるところ、Hメモに当該承諾の事実は記載されていないこと、④成田空港建設反対闘争の過程においては、移転した農家の耕作地が地続きの隣地である場 のであれば、 その旨が記載されていたと考えられるところ、Hメモに当該承諾の事実は記載されていないこと、④成田空港建設反対闘争の過程においては、移転した農家の耕作地が地続きの隣地である場合、隣地が荒れることを防ぐため、残存する農家が隣地を耕作することが慣例的に行われており(被告準備書面(59)315頁。証人J5、12頁)、被告も、陳述書(乙41 9)において、A2がC土地やD土地まで耕作場所を広げたのは、隣地の耕作放棄により、自らの畑に根が侵食してくることを防ぐため、耕作場所を広げざるを得なかった事情があった旨を述べていること(9頁)などに照らすと、上記承諾の事実は認められず、被告の当該主張は採用することができない。 イなお、前記(1)イのとおり、本件賃貸借契約は、賃借地の面積のみを定めるものであり、A2はF2に対し本件賃貸借契約に基づきM41番の土地のうち約4661㎡の賃借権を主張することができるにとどまるから、A2がIと耕作地を交換してC土地での耕作を開始していたとしても、C土地の賃借権を主張できる法的地位になく、これが可能になるのはA2 とF2との間で新たにC土地に係る合意が成立したことが必要となるところ、被告が主張する昭和62年12月にこれが成立したとは認められないことは上記アのとおりであり、また、F2は、被告の訴訟代理人弁護士に対し、耕作地の変更が同人の断りなしに行われたと述べており(乙76の1・25頁。なお、F2は「2人が換えちゃってごちゃごちゃになった」 とも述べている(同6~7頁)。)、A2が昭和47年にC土地での耕作を開始するに際し、F2との間でC土地の賃借権についての合意が成立した事実を認めるに足りる的確な証拠もない。 ウしたがって、被告のC土地の賃借権は認め 。)、A2が昭和47年にC土地での耕作を開始するに際し、F2との間でC土地の賃借権についての合意が成立した事実を認めるに足りる的確な証拠もない。 ウしたがって、被告のC土地の賃借権は認められない。 (3)D土地について 被告は、昭和47年にA2がC土地での耕作を開始するに当たり、F2に 対し、D土地についての賃借を申し出て、承諾を得たと主張する。 しかしながら、D土地はM40番の土地の一部と認められるところ、空港公団は昭和44年に同土地の所有権を取得して引渡しを受けていたものであるから(前提事実(3)イ)、F2が承諾することは考え難く、仮にA2がF2の承諾を得ていたとしても、A2は空港公団に対抗できる占有権原を有 するものではない。 したがって、被告の当該主張を踏まえるも、被告のD土地の賃借権は認められない。 (4)原告の主張についてアなお、原告は、本件同意書等を根拠に、A2の賃借地はB土地とE1土 地であり、仮にそうでないとしても、これらの文書の作成時に、A2とF2との間で、B土地及びE1土地を賃借地とする旨の合意が成立したと主張するところ、これまでの審理の経過等に鑑み、当該主張についても言及しておく。 イ本件同意書には「賃借地については、土地所有者の指定する場所に戻す ことに異議はありません。」と、本件確認書には「私が賃借している土地の範囲については、境界標のとおり異議がないことを確約致します。」とそれぞれ記載され、A2名義の署名押印があり、A2の耕作地をB土地及びE1土地に相当する部分とする地積測量図が添付されている。 本件同意書等の上記の文言、特に本件同意書は「元の場所に戻す」では なく「土地所有者の指定する場所に戻す」と A2の耕作地をB土地及びE1土地に相当する部分とする地積測量図が添付されている。 本件同意書等の上記の文言、特に本件同意書は「元の場所に戻す」では なく「土地所有者の指定する場所に戻す」としている上、本件賃貸借契約は賃借地の面積を定めるのみで、賃借地の場所、範囲について具体的に定めるものではなかったことなどに照らすと、本件同意書等は、従前にA2が賃借権を有していた範囲を確認するものではなく、賃借地の位置、範囲について、新たに合意することを内容とするものと解するのが相当である。 ウしかしながら、本件同意書等は、その記載内容もさることながら、本件 同意書の作成日付欄は空欄であり(なお、原告は添付された2枚目の地積測量図との間に割り印があるとするが、地積測量図における印影の写り具合に照らすと、これが割り印であるか、必ずしも明確ではない。)、F2の名前が「F2」ではなく「F3」となっており、文面は空港公団の職員が作成したものであることや(乙76の1・11頁)、F2は、平成23 年1月15日、被告訴訟代理人弁護士らに対し、本件同意書等はF2とA2が作成した旨を述べているとしても(乙76の1・2~4、47~48頁)、具体的な作成状況については説明していないことなどに照らすと、本件同意書等は、類型的に信用性の高い文書であるとまでは認め難い。したがって、本件同意書等に基づき、その記載内容(E1土地をA2の賃借 地とする)の合意が成立したと認めることができるかについては、本件同意書等の作成経緯等を踏まえて判断するのが相当である。 エ本件同意書等が作成されたのは、これらに添付された地積測量図は昭和63年3月1日に作製されたものであるから、本件確認書に記載された日付である同年4月11日頃と推認されるが が相当である。 エ本件同意書等が作成されたのは、これらに添付された地積測量図は昭和63年3月1日に作製されたものであるから、本件確認書に記載された日付である同年4月11日頃と推認されるが、前記(1)エのとおり、当時、 M41番の土地を空港公団に売り渡したいF2と、成田空港や第二期工事に反対する立場から、これを阻止したいA2は、利害が相反、対立する関係にあり、しかも、空港公団は自主耕作地をフェンスで囲む工事を開始し、これを阻止しようとした反対同盟の関係者が逮捕されるなど、空港公団と反対同盟の緊張関係も高まっており、A2とF2との間で、M41番の土 地におけるA2の賃借地について何らかの合意が成立する状況にはなかった。また、A2は、本件同意書等が作成されたと推認される同月から、A土地での耕作を開始しているが、これは本件同意書等に記載された内容(添付された地積測量図を含む。)と矛盾する行動である。 オそして、被告は、本件同意書等の作成経緯を明らかにするために、原告 に対し、これらの文書の作成経緯、保管経緯等について記載した交渉記録 等の報告書等の提出を求める文書提出命令の申立てをし、これを認容する決定が確定したにもかかわらず、原告は提出を命じられた文書を提出しない。本来であれば、原告は、本件同意書等に基づく主張をし、被告がその成立の真正や信用性を争っている以上、自らこれらの文書の作成経緯等を明らかにすべきものである。 また、原告の前身である空港公団は、F2から本件同意書等を取得し、これをもとにA2の賃借地の範囲を特定しているところ、A2が成田空港の建設等に反対していたのであるから、いずれその信用性が問題となり得ることを容易に認識することができたことに照らすと、空港公団は本件同意書等の A2の賃借地の範囲を特定しているところ、A2が成田空港の建設等に反対していたのであるから、いずれその信用性が問題となり得ることを容易に認識することができたことに照らすと、空港公団は本件同意書等の作成経緯等について関心があってしかるべきであり、調査、確認 等を行っていたものと考えるのが自然であり、合理的である。空港公団は、本件同意書等が作成されたと推認される時点において、既に、昭和62年4月24日付けで、千葉県収用委員会に対し、「裁決申請書及び明渡裁決申立書の記載事項の変更について(報告)」と題する書面(甲47)を提出し、M41番4及び5の土地の賃借人としてA2を追加しており(認定 事実(2)ウ)、これが本件同意書等の記載内容と整合しないものであったのであるから、なおさらである。 なお、上記の文書提出命令の申立てについて、当裁判所は、平成25年12月9日決定において、本件同意書等の作成経緯は、いずれもA2の賃借権の範囲を特定するまでの経緯において重要な事項であるから、これら について、F2から作成状況等に関する聴取をし、それをもとに検討した内容が記載された交渉記録等が作成されたと認めるのが相当であり、証拠調べの必要性が認められる旨を判示し(平成25年(モ)第128号)、また、抗告審も、平成26年7月16日決定において、M41番の土地の買収に当たって、A2の賃借権の範囲等の確定作業は、空港公団にとって 重要な関心事項、重要な課題であり、当時から、占有の範囲について主張 や資料が整合しない部分があり、A2が空港反対派の農家であるとの認識をもっていたのであるから、なおさら慎重に情報や資料を収集し、その検討が重要であったことが明らかで、担当者が交渉内容等の情報を共有し決裁を仰ぐため、報告書等を作成していな 反対派の農家であるとの認識をもっていたのであるから、なおさら慎重に情報や資料を収集し、その検討が重要であったことが明らかで、担当者が交渉内容等の情報を共有し決裁を仰ぐため、報告書等を作成していなかったことは考え難い旨を判示している(東京高等裁判所平成26年(ラ)第198号)。なお、原告は、 当該文書の所持を否定するが、作成したものの廃棄したとの理由で所持を否定するものではない(廃棄したとすれば、廃棄の具体的な経緯についての説明もない。)。 カこのほか、①E1土地は南側においてIの所有地(M42番2の土地)と接しており、仮にE1土地がA2の耕作地であったとすれば、A土地は Iの耕作地、B土地はA2の耕作地という、耕作の効率性に反する並びになること、②空港公団は、昭和63年4月12日、F2との間で、本件同意書等を前提とする売買契約を締結し、同年7月19日には佐倉簡易裁判所で和解を成立させており(認定事実(3)カ)、速やかにM41番の土地の所有権移転登記手続を行うことが可能であったにもかかわらず、同手 続を行ったのは平成15年12月24日であり(前提事実(3)ウ)、空港公団と売買契約を締結したIが激しい糾弾を受けており(甲57~62)、仮に同様の事態が生じないようにF2に配慮した面があったとしても、それほどの長期間、放置し、地代はF2に収受させることには、不自然さが否めないこと、③別件訴訟において、被告は、E1土地に相当する と考えられるM41番9の土地についての占有を否認しており、原告は、占有を回復したとして、同土地に係る明渡請求を放棄していること(前提事実(6)ウ)、④本件同意書等に添付された地積測量図も、F2及びA2が現場立会した上で作成されたものであるか否かも明らかでないこと(乙76の1・6~7 同土地に係る明渡請求を放棄していること(前提事実(6)ウ)、④本件同意書等に添付された地積測量図も、F2及びA2が現場立会した上で作成されたものであるか否かも明らかでないこと(乙76の1・6~7頁)を併せ総合考慮すると、被告が、当初、A2が 本件同意書及び本件確認書の1枚目に署名した旨を主張していたこと(被 告準備書面(19)5~6頁)をしんしゃくするも、本件同意書等に基づき、A2とF2との間で、E1土地をA2の賃借地とする旨の合意が成立したと認めることはできない。 3 賃借権の時効取得について(1)被告は、A土地、C土地及びD土地についての賃借権の時効取得を主張す るところ、土地賃借権は、他人の土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、それが賃借の意思に基づくものであることが客観的に表現されているとき、民法163条の規定により、時効により取得できるものと解するべきである(最高裁平成14年(受)第1459号同16年7月13日第三小法廷判決・裁判集民事214号953頁参照)。 (2)A土地についてア被告は、A2は昭和63年4月からA土地を占有しているので、10年が経過した平成10年4月にA土地の賃借権を、民法162条2項により、時効取得したと主張する。 イしかしながら、A2は、それまでC土地を耕作地としていたところ、I がA土地での耕作を止めたことから、昭和63年4月よりA土地での耕作を開始したものであり、前記2(1)のとおり、A土地での耕作を開始するにあたって、地主であるF2の承諾を得た事実は認められず、本件賃貸借契約で定められた面積以上の範囲で耕作をしていることなどに照らすと、A2が賃借人としてA土地の占有を開始することについて、無過失で あったとは あるF2の承諾を得た事実は認められず、本件賃貸借契約で定められた面積以上の範囲で耕作をしていることなどに照らすと、A2が賃借人としてA土地の占有を開始することについて、無過失で あったとは認められない。したがって、民法162条2項は適用されず、被告の上記アの主張は採用することができない。 ウなお、原告は平成18年(2006年)10月20日に本件訴訟を提起しているから、昭和63年(1988年)4月を起算点とするも、同条1項の取得時効も完成していない。 (3)C土地について ア被告は、A2は昭和46年12月からC土地において耕作を開始して占有を開始したから、10年が経過した昭和57年1月に(民法162条2項)、もしくは20年が経過した平成4年1月に(同条1項)、C土地の賃借権を時効により取得したと主張する。 イしかしながら、A2は、昭和50年頃から、地主であるF2に地代を支 払っておらず、昭和60年7月に二期工事差止訴訟が提起された後、未払いの事実が判明し、「これは非常にまずい」と考えた反対同盟の法対部のHから支払を促されたことから、同年8月1日、F2に対し、昭和58年から昭和60年までの3年分の地代を支払い、以後、地代を支払うようになったものである(認定事実(2)エ)。上記の事実によれば、少なくと も昭和50年頃から昭和60年7月までの約10年間、A2のC土地の耕作が賃借の意思に基づくものであることが客観的に表現されていたとは認められないから、被告の上記アの主張は採用することができない。 ウなお、A2が地代を支払うようになった昭和60年(1985年)8月以降の占有について検討するに、当時の地代は本件賃貸借契約で定められ た賃借地の面積(約4661㎡)についての地代であった ウなお、A2が地代を支払うようになった昭和60年(1985年)8月以降の占有について検討するに、当時の地代は本件賃貸借契約で定められ た賃借地の面積(約4661㎡)についての地代であったが、A2は、昭和63年4月からA土地を耕作するようになり、結果として、A2の耕作面積は本件賃貸借契約で定められた賃借地の面積を大幅に超えるものになったにもかかわらず、支払われた地代の額は従前の額のままであったことに照らすと、A2が昭和63年4月以降に支払っていた地代はC土地の地 代としての授受であったか否かは明確でないから、C土地の占有が賃借の意思に基づくものであることが客観的に表現されていたとは認められず、昭和60年8月を起算点とする取得時効の成立も認められない。 (4)D土地について被告は、A2は、C土地で耕作するようになった昭和46年12月以降、 D土地での耕作を開始したから、20年が経過した平成4年1月に、D土地 の賃借権を時効取得したと主張する。 しかしながら、D土地に相当すると考えられるM40番の土地は、昭和44年3月14日に空港公団がSから所有権を取得しており(前提事実(3)イ)、A2がD土地での耕作を開始したとする昭和46年12月当時、D土地の所有者はF2ではなく、空港公団であった。そして、A2が空港公団に 対しD土地の地代を支払った事実はなく、A2がF2に地代を支払っていたとしても、これは、本件賃貸借契約に基づく地代であって、同契約で賃借地となっていないD土地の地代を含むものであったとは認められない。なお、A2は、昭和50年から約10年間、地代を支払っていなかったものである(認定事実(2)エ)。したがって、所有者である空港公団との関係におい て、A2のD土地の耕作が賃借の意思 られない。なお、A2は、昭和50年から約10年間、地代を支払っていなかったものである(認定事実(2)エ)。したがって、所有者である空港公団との関係におい て、A2のD土地の耕作が賃借の意思に基づくものであることが客観的に表現されていたとは認められないから、被告の上記主張は採用することができない。 4 争点4(占有権原の抗弁)についての結論等(1)本件において、被告が甲土地及び乙土地について賃借権を有することは、 被告が主張、立証責任を負担するところ、被告は、本件関係土地図のA土地、C土地及びD土地について賃借権を有することから、これらの土地に相当する甲土地及び乙土地について賃借権を有すると主張、立証するものである。 しかしながら、前記2および3のとおり、被告がA土地、C土地及びD土地について賃借権を有するとは認められないから、被告の占有権原の抗弁は採 用することができない。 (2)被告は、祖父であるA1の代から長年にわたり、M41番の土地で農業を営んでおり、また、取り組んできた有機農業は社会的意義や有用性が評価されているところ、これは土壌改良を含めた長期にわたる積み重ねの結果であるから、代替地を確保できたからといって、代替地において直ちに再開でき るものではない。しかしながら、被告のM41番1の土地での耕作が保護さ れるのは、被告が同土地の占有権原を有することが前提であり、これが認められないことは、前記2のとおりである。そして、法的権利が認められない場合において、事実状態を保護する制度として時効制度があり、本件は賃借権の取得時効の問題として解決するのが相当ともいえる事案であるが、取得時効の成立が認められないことは、前記3のとおりである。 (3)なお、上記(1)、(2)及び前記第3の 度があり、本件は賃借権の取得時効の問題として解決するのが相当ともいえる事案であるが、取得時効の成立が認められないことは、前記3のとおりである。 (3)なお、上記(1)、(2)及び前記第3の2で述べたところによれば、成田空港は、昭和53年の開港から現在まで、既に空港としての機能を有し続けており、成田空港の建設をめぐる歴史的経緯や、空港と地域農業との共存の観点から、話し合いによる解決が望ましいことをしんしゃくするも、その糸口すら見出せない現状においては、原告の本件請求が権利の濫用となるも のではない。 第7 被告の令和5年7月7日付け文書提出命令の申立てについて 1 被告は、令和5年7月7日付け文書提出命令申立書を提出して、原告が所持する、M41番の土地を成田空港用地として買収するために行った「権利関係の調整」、「買収の交渉、その報告」、「用地買収の内部検討」のための記録 の全てについての文書提出命令を求めている(本件申立て)。 2 しかしながら、本件訴訟は平成18年10月20日に提起されたものであるところ、被告は、既に、平成23年10月24日付け、平成24年7月23日付け、平成29年9月25日付け、平成30年11月19日付け、平成31年2月18日付けで、それぞれ文書提出命令の申立てをしていることに照らすと、 本件申立ては、時機に後れた攻撃防御方法として、民事訴訟法157条1項により、却下するのが相当である。 3 また、上記申立書に記載された証すべき事実を見ると、本件申立ては、本件同意書等に基づく原告の主張を弾劾するためのものと解されるところ、当該主張に対する判断は前記第6の2(4)において判示したとおりであるから、本 件申立てに係る対象文書を取り調べる必要性も認められない。 4 したがっ ためのものと解されるところ、当該主張に対する判断は前記第6の2(4)において判示したとおりであるから、本 件申立てに係る対象文書を取り調べる必要性も認められない。 4 したがって、本件申立ては却下するのが相当である。 第8 結論以上によれば、本件訴えは適法であり、原告の請求はいずれも理由がある。 なお、被告らが長年にわたりM41番1の土地等において農業を営んできたことなどを考慮して、仮執行宣言は付さないこととする。 よって、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官齊藤顕裁判官宇野遥子裁判官松田祐紀)

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