主文 1 本件訴えを却下する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求原告が,次回の衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙において,①本件口頭弁論終結日からみて直近に実施された国勢調査の結果による人口を基準とし,②市,区及び東京都の特別区については,それらのうちの町,丁目又は大字を最小単位とし,③郡については,そのうちの町又は村を最小単位として,人口比例で画定された選挙区割りに基づく選挙権を有する地位にあることを確認する。 第2 事案の概要 1 本件は,平成21年8月30日施行の衆議院議員総選挙における小選挙区選出議員の選挙(以下「平成21年選挙」という。)において東京都第1区の選挙人であった原告が,被告に対し,次回に実施される衆議院議員総選挙における小選挙区選出議員の選挙において,一定の行政区画と人口比例で画定された選挙区割りに基づく選挙権を有する地位にあることの確認を求める事案である。 被告は,本件訴えは不適法であるとして,却下の裁判を求めている。 2 関係する憲法及び法令の定め(1) 憲法は,国会を構成する衆議院及び参議院の両議院は,全国民を代表する選挙された議員でこれを組織し,両議院の議員の定数及び選挙区,投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は,法律でこれを定める旨を規定 している(憲法42条,43条,47条)。 (2) これを受けた公職選挙法は,平成6年1月に成立した公職選挙法の一部を改正する法律(平成6年法律第2号。その後,同年法律第10号及び第104号により一部改正。)により改正され,衆議院議員の選挙制度につき,小選挙区比例代表並立制を採用することとなった。現行の公職選挙法に 正する法律(平成6年法律第2号。その後,同年法律第10号及び第104号により一部改正。)により改正され,衆議院議員の選挙制度につき,小選挙区比例代表並立制を採用することとなった。現行の公職選挙法においては,衆議院議員の定数は480人で,そのうち,300人が小選挙区選出議員,180人が比例代表選出議員とされ(同法4条1項),小選挙区選出の衆議院議員については,全国に300の選挙区を設け,各選挙区において1人の議員を選挙すべきものとされている(同法13条1項,別表第1)。衆議院議員の総選挙における投票は,小選挙区選出議員について,1人1票とされている(同法36条)。 (3) また,前記の公職選挙法の一部を改正する法律と同時に成立した衆議院議員選挙区画定審議会設置法(以下「区画審設置法」という。)によれば,衆議院議員選挙区画定審議会(以下「区画審」という。)は,衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定に関し,調査審議し,必要があると認めるときは,その改定案を作成して内閣総理大臣に勧告するものとされ(同法2条),勧告を受けた内閣総理大臣は,これを国会に報告するものとされている(同法5条)。 上記の改定案の作成に当たっては,各選挙区の人口の均衡を図り,各選挙区の人口(官報で公示された最近の国勢調査又はこれに準ずる全国的な人口調査の結果による人口)のうち,その最も多いものを最も少ないもので除して得た数が2以上とならないようにすることを基本とし,行政区画,地勢, 交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行わなければならないものとされ(区画審設置法3条1項),また,各都道府県の区域内の衆議院小選挙区選出議員の選挙区の数は,各都道府県にあらかじめ1を配当した上で,衆議院小選挙区選出議員の定数に相当する数から都道府県の数を控除した数を人口に比例し 1項),また,各都道府県の区域内の衆議院小選挙区選出議員の選挙区の数は,各都道府県にあらかじめ1を配当した上で,衆議院小選挙区選出議員の定数に相当する数から都道府県の数を控除した数を人口に比例して各都道府県に配当した数を加えた数とするとされている(同法3条2項)。 前記の区画審による勧告は,統計法5条2項本文の規定により10年ごとに行われる国勢調査の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内に行うものとされ(区画審設置法4条1項),さらに,区画審は,各選挙区の人口の著しい不均衡その他特別の事情があると認めるときは,上記の勧告を行うことができるものとされている(同条2項)。 3 当事者の主張の概要(原告の主張)(1) 本件請求に係る権利についてア平成21年選挙における選挙区割りの違憲性(ア) 平成21年選挙は,現行の公職選挙法13条1項及び別表第1による選挙区の定め(以下「本件区割規定」という。)に基づいて施行されたものである。 この本件区割規定による選挙区間の人口格差をみると,人口の平成21年調査結果を基にすると(以下「人口基準」という。),議員1人当たりの人口数が最少の高知県第3区(25万2840人)と最多の千葉県第4区(59万0943人)との間では,2.337であり,平成2 0年9月20日現在の衆議院小選挙区別選挙人名簿及び在外選挙人名簿登録者数を基にすると(以下「有権者数基準」という。),同2.255である。これを1票の価値としてみると,高知県第3区の有権者1人の選挙権の価値を1とした場合の千葉県第4区の有権者1人の選挙権の価値は,有権者数基準では0.44である。 また,高知県第3区の有権者1人の選挙権の価値を1とした場合の原告が選挙人となっている東京都第1区の有権者1人 した場合の千葉県第4区の有権者1人の選挙権の価値は,有権者数基準では0.44である。 また,高知県第3区の有権者1人の選挙権の価値を1とした場合の原告が選挙人となっている東京都第1区の有権者1人の選挙権の価値は,人口基準では0.48であり,有権者数基準では0.47である。 (イ) 憲法は,代表民主制を採用し(前文1段,43条1項),公務員の選定罷免権を国民固有の権利とし(15条1項),成年者による普通選挙(同条3項)及び平等選挙(14条1項,44条)を保障している。 そして,憲法14条1項及び44条は,すべての有権者の1人1人の選挙権が,人種,信条,性別,社会的身分,門地,教育,財産,収入,住所等によって差別されることなく,等価であることを保障しており,このような1人1票の選挙権の憲法上の保障は,国会が選挙区制に基づく選挙制度を採用する場合には,各選挙区から選出される議員数の配分を人口分布に比例して配分するべく,国会の立法権限を覊き束しているというべきである。 ところが,本件区割規定は,前記(ア)のとおり,人口分布に基づいて議員数を配分しておらず,憲法が規定する代表民主制やその基礎となる公正な代表を選出するために必須の選挙権の平等の保障に反する。 (ウ) また,憲法は,国会の両議院の議事は出席議員の過半数でこれを決 し(56条2項),国会の議決で内閣総理大臣を指名し(67条),国会の指名に基づいて天皇が任命する内閣総理大臣(6条1項)と内閣総理大臣によって任命される国務大臣(68条1項)とから成る内閣によって,最高裁判所の長たる裁判官を指名し(6条2項),かつ,最高裁判所の長たる裁判官以外の裁判官を任命する(79条1項)ことを規定しているところ,この多数決ルールの正当性の根拠は,国会議員の正当な選挙(憲法前文1段参照), 判官を指名し(6条2項),かつ,最高裁判所の長たる裁判官以外の裁判官を任命する(79条1項)ことを規定しているところ,この多数決ルールの正当性の根拠は,国会議員の正当な選挙(憲法前文1段参照),すなわち,選挙により,国会議員の多数が国民の多数から選出されることにあり,これを実現するためには,人口に基づいた選挙区割りがされることにより,選挙権の価値の平等を伴った1人1票が保障されることが必須である。 ところが,本件区割規定に基づく選挙によると,全小選挙区選出議員300人のうち過半数である151人の衆議院議員が,全登録有権者数の42パーセントから選出されることになり(ただし,選挙権の価値の大きい小選挙区の順に選出議員が151人に達するまでの各選挙区の有権者数を合計したものから算出した場合),全有権者数の過半数に満たない有権者が過半数の議員を選出することになるから,少数有権者によって,立法も,行政府の長の選任も,最高裁判所の長たる裁判官の指名もし,最高裁判所の長たる裁判官以外の裁判官の任命もすることができることになるのであって,このことは,憲法前文1段が「日本国民は,正当に選挙された国会における代表者を通じて行動」する旨を定めていることに違反するものである。 イ本件請求に係る権利の内容及びその根拠 (ア) 投票価値の平等を前提とする1人1票を有権者すべてに保障することは,全有権者が「1を全有権者数で除した値」で表現される国政への影響力のある1票を有するということであり,そのような意味での投票価値の平等を,最高裁判所判決(最高裁平成18年(行ツ)第176号同19年6月13日大法廷判決・民集61巻4号1617頁)において選挙区割りを決定するに当たって考慮することができる要素として示された①都道府県,②人口密度や地理的状況,③過疎 年(行ツ)第176号同19年6月13日大法廷判決・民集61巻4号1617頁)において選挙区割りを決定するに当たって考慮することができる要素として示された①都道府県,②人口密度や地理的状況,③過疎化現象及び④1人別枠方式という4要素,あるいは,被告の主張する①都道府県,②市町村その他の行政区画,③従来の選挙の実績,④選挙区としてのまとまり具合,⑤面積の大小,⑥人口密度,⑦住民構成,⑧交通事情,⑨地理的状況という9要素の全部又は一部によって減殺してはならない。 なぜなら,憲法は国民主権の法理を定めており,普通選挙の手続はその具体的発現の1つであるところ,上記の4要素又は9要素は憲法により保護されていない利益であって,これらを考慮して1票の投票価値を増減させることは,憲法が定める国民主権の法理に反するからである。 このことは,普通選挙手続と同様に国民主権の法理の具体的発現である憲法改正手続(憲法96条1項)及び最高裁判所裁判官国民審査手続(憲法79条3項)においては,全有権者が「1を全有権者数で除した値」で表現される国政に対する影響力を有していることとの対比からも明らかである。 (イ) また,憲法前文1段2文は,国政は「国民の厳粛な信託によるもの」であるとしており,国会議員は,主権者たる国民を委託者とする受託者 でしかないのだから,そのような国会議員が委託者である国民の国政に対する影響力である1票の価値を裁量によって増減させることは,上記憲法前文に反する。 (ウ) なお,これまで最高裁判所は,住所による選挙権の差別が生じている公職選挙法の選挙区割りの規定につき,国会が合理的な範囲で裁量権を有する旨の判断をしているが,これは,投票価値の不平等を定めた公職選挙法が有効であるか否かという問題に関し,当事者又は直接の利害関係者 職選挙法の選挙区割りの規定につき,国会が合理的な範囲で裁量権を有する旨の判断をしているが,これは,投票価値の不平等を定めた公職選挙法が有効であるか否かという問題に関し,当事者又は直接の利害関係者である国会議員から成る国会に,1票の価値をどう定めるかについての裁量権を認めるもので,説得力に欠けるものである。 (エ) そして,前記ア(ア)のような選挙区割りにおける人口格差を均一化しようと努力すれば,1つの選挙区の人口数を基準人口(総人口数を選挙区数で除したもの)である42万5893人あるいはそれに近似させたものにすることにより,投票価値の最大格差を縮小又は排除することは可能である。 その際,日本における都道府県は,単なる行政区画でしかないのであり,また,都道府県の境界を越えて選挙区割りをすることを禁ずる旨の憲法の定めは存在しないのであるから,人口に基づいた選挙区割りは,都道府県の境界を越えてでも実行されなければならない。もっとも,有権者の投票行動や被選挙人の選挙活動の利便性等も考慮し,行政区画としての丁,町,村及び大字を最小単位とすることには合理性がある。 (オ) 以上のとおり,原告は,丁,町,村及び大字を最小単位として,人口比例に基づいて画定された選挙区割りに基づく選挙権を有するもので ある。 (2) 被告の本案前の主張に対する反論ア法律上の争訟性について選挙権は,成人たる国民1人1人の有している個別具体的な権利である。 したがって,本件訴えが法律上の争訟に関するものであることはいうまでもない。 イ確認の利益について選挙権は,これを行使することができなければ意味がないものといわざるを得ず,侵害を受けた後に争うことによっては権利行使の実質を回復することができない性質のものであるから, の利益について選挙権は,これを行使することができなければ意味がないものといわざるを得ず,侵害を受けた後に争うことによっては権利行使の実質を回復することができない性質のものであるから,その権利の重要性にかんがみると,具体的な選挙につき選挙権を行使する権利の有無につき争いがある場合にこれを有することの確認を求める訴えについては,それが有効適切な手段であると認められる限り,確認の利益を肯定すべきものである(最高裁平成13年(行ツ)第82号ほか同17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁)とされている。 これを本件についてみると,国民は,衆議院議員選挙における小選挙区選出議員の選挙でいくら憲法上「投票価値平等」の選挙権を有していても,次の選挙で現行の公職選挙法に基づく選挙権の行使しか認められないのであれば,「投票価値平等」の選挙権を行使できないのであるから,意味が大幅に減殺される。また,原告が次回の衆議院議員選挙における小選挙区選出議員選挙で高知県第3区の有権者の選挙権と比べて1票未満の投票価値しかない選挙権の行使を強いられると,事後的に,憲法上保障された選 挙権行使を侵害されたとして争っても,原告の憲法上保障された1人1票の選挙権行使の実質を回復することはできない。そして,本件訴えは,国民の有する憲法上基本的な権利である選挙権につき,その内容である投票価値が平等であることの確認を求める行政事件訴訟法4条に基づく訴えであるところ,公職選挙法204条に基づく選挙無効訴訟は,行政事件訴訟法4条に基づく訴えとその提訴の要件,裁判の目的及び裁判の効果を異にするものであり,本件訴えは,憲法上保障された1人1票の投票価値のある選挙権を回復するための有効適切な手段である。 したがって,本件訴えについては,確認の利益があるとい 判の目的及び裁判の効果を異にするものであり,本件訴えは,憲法上保障された1人1票の投票価値のある選挙権を回復するための有効適切な手段である。 したがって,本件訴えについては,確認の利益があるというべきである。 (被告の主張)(1) 本案前の主張1(法律上の争訟性を欠くこと)ア裁判所法3条にいう「法律上の争訟」とは,法令を適用することによって解決し得べき具体的な権利関係ないし法律関係の存否に関する紛争に限られるのであって,「法律上の争訟」として裁判所の固有の権限に基づく審判の対象となるのは,①当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であり,かつ,②法令の適用により終局的に解決することができ,③事柄の性質上司法審査に適しないような事情の存しないものに限られる。 イところで,憲法は,衆議院議員に係る選挙制度について,「両議院の議員の定数は,法律でこれを定める」(43条2項),「選挙区,投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は,法律でこれを定める」(47条)と規定しており,選挙区割りの在り方を含め衆議院議員の選挙制度 をどのような仕組みの制度として構成するかを,国会による立法行為にゆだねている。 そして,選挙区割りの在り方は,国民の投票行動,立候補者の選挙運動,選挙の管理執行機関の事務の適正さ及び事務処理の合理性などに影響を及ぼすものであるから,選挙区割りの具体的な決定に当たっては,人口基準のみならず,これに対する修正要素である行政区画やその面積の大小,人口密度,住民構成,交通事情,地理的状況等の諸事情を全体として考慮しなければ,公平かつ公正な選挙の実現を図ることはできない。したがって,選挙区割りの決定作業は,単に人口基準の計数的な当てはめにとどまるものではなく,全国の都道府県,市町村 の諸事情を全体として考慮しなければ,公平かつ公正な選挙の実現を図ることはできない。したがって,選挙区割りの決定作業は,単に人口基準の計数的な当てはめにとどまるものではなく,全国の都道府県,市町村その他の行政区画,人口,地勢,交通等の諸事情,更には人口の都市集中現象による過疎化の実情等について,時間的変動可能性を含んだ極めて広範かつ大量の情報を踏まえた専門技術的かつ高度の識見に基づく判断が必要となる。それゆえに,国会は,選挙区割りの改定に当たっては,情報収集手段を備えた専門的勧告機関である区画審がその作成に係る改定案に基づき行った内閣総理大臣に対する勧告につき報告を受けるなどした上(区画審設置法2条,5条),その裁量的判断により選挙区割りを決定している。 このように,選挙区割りを含む選挙に関する事項を決するに当たっては,人口基準のみならず,上記の諸事情を総合的に考慮し,高度の専門的又は技術的判断を要することにかんがみると,上記事項の決定は,唯一の立法機関である国会のみが最もよくなし得るところであり,憲法が選挙に関する事項を法律で定めることとして,その決定を国会の裁量にゆだねたのは, 正に上記の特質を踏まえたからにほかならず,このことは憲法の採用する三権分立の考え方にも沿うものである。 ウところが,原告は,自らが妥当と考える小選挙区制を前提とする独自の選挙区割りを措定した上で,次回の衆議院議員総選挙における小選挙区選出議員の選挙において,当該選挙区割りに基づき投票をなし得る地位にあることの確認を求めているのであり,自己の選挙権等の確認の形式による請求ではあるものの,その実体は,国会の立法行為をいわば先取りして,裁判所に対し,自らの主張に沿う小選挙区制の採用や,これを前提とする独自の選挙区割りの決定や創設を求めるに等 権等の確認の形式による請求ではあるものの,その実体は,国会の立法行為をいわば先取りして,裁判所に対し,自らの主張に沿う小選挙区制の採用や,これを前提とする独自の選挙区割りの決定や創設を求めるに等しい。しかし,前記イのとおり,小選挙区制の採否や選挙区割りの定め方は,立法作用に属する事項であって,法令の適用によって終局的に解決することができないことはもとより,その性質上司法審査に適さない事柄であることが明らかであり,裁判所がこれらの事項について判断することは,三権分立の原理に反し,裁判所の権限の範囲を逸脱するものといわざるを得ない。また,原告が確認を求めている権利は,小選挙区制の採用を含め国会がこれに沿う立法措置を行うことによって初めて具体化するものであって,本件訴えは,当事者間の具体的な法律関係に関する紛争にも該当しない。 したがって,本件訴えは,裁判所法3条の法律上の争訟に当たらないことが明らかであり,不適法というべきである。 (2) 本案前の主張2(確認の利益を欠くこと)ア本件訴えは,公法上の法律関係に関する確認の訴え(行政事件訴訟法4条)と解されるところ,公法上の法律関係に関する確認の訴えが適法とさ れるためには,①確認対象選択の適否,②確認の訴えを用いることの適切性及び③即時解決の必要性という要件のいずれをも充足する必要がある。 イところが,本件訴えは,「人口比例で画定された選挙区割りに基づく選挙権」なるものの内容について,「本件最終口頭弁論期日からみて直近に実施された国勢調査の結果」を踏まえて決せられることを前提とするが,「本件最終口頭弁論期日」とはいかなる時期か不明であることに加え,その「直近に実施された国勢調査」なるものの実施時期,内容も特定することができない。 また,原告は,一定の行政区画を とするが,「本件最終口頭弁論期日」とはいかなる時期か不明であることに加え,その「直近に実施された国勢調査」なるものの実施時期,内容も特定することができない。 また,原告は,一定の行政区画を最小単位として構成される区域によって選挙区割りが決定されることを前提として,人口比例で画定された選挙区割りに基づく選挙権を有する地位の確認を求めているが,その内容から想定される選挙区割りは,単一ではなく,多種多様なものが想定可能であって,その請求内容は不明瞭といわざるを得ない。 さらに,公職選挙法204条に基づく選挙無効訴訟という他の適切な手段があり,現に原告が別訴においてそのような請求を行っている以上,あえて本件訴えのような確認の訴えという法的手段を選択することは不適切であり,また,上記別訴の結果を待たず,本件訴えによることには即時解決の利益も認められない。 ウしたがって,本件訴えは,確認の利益を欠き不適法である。 第3 当裁判所の判断 1 本件訴えの適法性について(1) 本件訴えは,原告が,本件口頭弁論終結時の後に初めて実施される衆議院 議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙において,一定の行政区画を最小単位として,都道府県その他の要素を考慮せず,人口比例で画定された選挙区割りに基づく選挙権,すなわち,そのような意味で平等な選挙権を有することの確認を求めているものと解されるところ,その訴えの性質は,公法上の法律関係の確認を求める訴え(行政事件訴訟法4条)であると解される。 この公法上の法律関係の確認を求める訴えも,訴えである以上,その対象は,裁判所がその固有の権限に基づいて審判することのできる対象である「法律上の争訟」であることを要する(裁判所法3条)ところ,ここにいう法律上の争訟とは,①当事者間の具体的な権 である以上,その対象は,裁判所がその固有の権限に基づいて審判することのできる対象である「法律上の争訟」であることを要する(裁判所法3条)ところ,ここにいう法律上の争訟とは,①当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する現実の紛争であって,かつ,それが②法令の適用によって終局的に解決できるものをいう(最高裁昭和39年(行ツ)第61号同41年2月8日第三小法廷判決・民集20巻2号196頁,最高裁昭和51年(オ)第749号同56年4月7日第三小法廷判決・民集35巻3号443頁,最高裁平成10年(行ツ)第239号同14年7月9日第三小法廷判決・民集第56巻6号1134頁等参照)。 そこで,本件訴えが上記の「法律上の争訟」であるか否かについて検討する。 (2) 憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば,議員の選挙における各選挙人の投票の有する影響力の平等,すなわち投票価値の平等を要求していると解される(最高裁昭和49年(行ツ)第75号同51年4月14日大法廷判決・民集30巻3号223頁,最高裁昭和54年(行ツ)第65号同58年4 月27日大法廷判決・民集37巻3号345頁,最高裁昭和59年(行ツ)第339号同60年7月17日大法廷判決・民集39巻5号1100頁,最高裁平成3年(行ツ)第111号同5年1月20日大法廷判決・民集47巻1号67頁,最高裁平成6年(行ツ)第59号同8年9月11日大法廷判決・民集50巻8号2283頁,最高裁平成9年(行ツ)第104号同10年9月2日大法廷判決・民集52巻6号1373頁,最高裁平成11年(行ツ)第7号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1441頁,最高裁平成11年(行ツ)第35号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1704頁,最高裁平成11年(行ツ)第241号同12年9月 )第7号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1441頁,最高裁平成11年(行ツ)第35号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1704頁,最高裁平成11年(行ツ)第241号同12年9月6日大法廷判決・民集54巻7号1997頁及び最高裁平成18年(行ツ)第176号同19年6月13日大法廷判決・民集61巻4号1617頁参照)。 しかし,議会制民主主義の下における選挙制度は,国民の利害や意見が公正かつ効果的に国政の運営に反映されることを目的としつつ,政治における安定の要請をも考慮しながら,各国の実情に即して具体的に決定されるべきものであり,そこに論理的に要請される一定不変の形態が存在するものではない。日本国憲法は,上記のような理由から,国会を構成する衆議院及び参議院の両議院の議員の選挙については,議員の定数,選挙区,投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとし(43条2項,47条),両議院の議員の各選挙制度の仕組みの具体的決定を原則として国会の裁量にゆだねているのであるから,投票価値の平等は,憲法上,選挙制度の決定のための唯一絶対の基準となるものではなく,原則として,国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的又は理由との関連において調和的に実現さ れるべきものと解さなければならない。 そして,衆議院議員総選挙における小選挙区選出議員の選挙について,どのように選挙区を区分するかを決定するについては,投票価値の平等の観点から,議員1人当たりの選挙人数又は人口ができる限り平等に保たれることを最も重要かつ基本的な基準とすることが求められているというべきであるとしても,それ以外にも,考慮することができる要素として,都道府県,市町村等の行政区画,従来の選挙の実績,選挙区としてのまとまり具合,面積の大小,人 な基準とすることが求められているというべきであるとしても,それ以外にも,考慮することができる要素として,都道府県,市町村等の行政区画,従来の選挙の実績,選挙区としてのまとまり具合,面積の大小,人口密度,住民構成,交通事情,地理的状況等の諸般の事情が存在し,また,人口の都市集中化の現象等の社会情勢の変化も考慮することができる要素の1つであるといえる。 このように,衆議院議員総選挙における小選挙区選出議員の選挙における選挙区割りの決定には,極めて多種多様で複雑微妙な政策的及び技術的考慮要素が含まれており,それらの諸要素のそれぞれをどの程度考慮し,これを具体的決定にどこまで反映させることができるかについて,客観的基準が存在するものでもないから,選挙区割りの決定は,唯一の立法機関である国会がその裁量により適切に決定することが要請されているというべきであり,裁判所としては,国会が具体的に定めた選挙区割り等の選挙制度の仕組みが,法の下の平等などの憲法上の要請に反するため国会の上記のような裁量権を考慮してもなおその限界を超えて決定されたものであり,これを是認することができない場合に,これが憲法に反する旨の判断をすることができるにとどまり,国会がその裁量権を行使して具体的な選挙制度を決定する前に,裁判所があるべき具体的区割り等の選挙制度を定め,有権者がそのような選挙 区割りに基づく選挙権を有することの確認をするようなことは,三権分立の原理に反するものというべきである。 (3) そうすると,本件訴えは,法令の適用によって終局的に解決できる紛争を対象とするものであるということはできず,裁判所の権限外の事柄についての判断を求めるものであるというべきであって,「法律上の争訟」には当たらないというべきである。 (4)アこれに対し,原告は,選挙権 とするものであるということはできず,裁判所の権限外の事柄についての判断を求めるものであるというべきであって,「法律上の争訟」には当たらないというべきである。 (4)アこれに対し,原告は,選挙権は,これを行使することができなければ意味がないものといわざるを得ず,侵害を受けた後に争うことによっては権利行使の実質を回復することができない性質のものであるから,具体的な選挙につき選挙権を行使する権利の有無につき争いがある場合にこれを有することの確認を求める訴えは,法律上の争訟に当たり,本件訴えも法律上の争訟に当たると主張するようである(最高裁平成13年(行ツ)第82号ほか同17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁参照)。 イ前記(2)のとおり,どのような選挙制度を採用するかは国会の裁量にゆだねられているところ,確かに,そのような裁量の下で国会が採用した選挙制度が,ある特定の有権者の選挙権の行使を妨げるようなものである場合には,代表民主制の下での選挙権の重要性に照らすと,当該選挙制度を採用することとした国会の判断は,その裁量権の範囲を逸脱するものであると容易に認められると考えられるから,有権者が,上記のような選挙制度の下で自己の選挙権の行使が妨げられていることを主張して,自己が選挙権を行使することができる地位にあることの確認を求めて訴えを提起したような場合に,裁判所において,原告がその主張するような地位にあるか 否かについての判断をすることは,具体的に定められた選挙制度について,国会の裁量権の範囲の逸脱の有無を判断するものとして,裁判所の権限の範囲内のものであり,法令の適用により終局的な解決が可能であるということができる。したがって,そのような確認を求める訴えは,原則として,法律上の争訟に当たるものと解される。 ,裁判所の権限の範囲内のものであり,法令の適用により終局的な解決が可能であるということができる。したがって,そのような確認を求める訴えは,原則として,法律上の争訟に当たるものと解される。 これに対し,本件訴えにおいては,原告は,次回の衆議院議員総選挙における小選挙区選出議員の選挙において,自分が選挙権を行使することができること自体は前提としつつ,その選挙権がいかなる価値のものであるべきかを,あるべき選挙区割りの方法という形で主張しているものである。 したがって,原告は,国会が採用した選挙制度の下で選挙権の行使が妨げられているものではなく,具体的な選挙につき選挙権を行使する権利を有することの確認を求める訴えを提起しているものではない。また,いかなる選挙区割りの下で選挙権を行使することができるのかということは,どのようにして選挙区や投票の方法が決定されるかによって決まる事柄であって,正に憲法47条によって国会の決定事項とされ,国会の裁量権にゆだねられている事項であるところ,次回の衆議院議員総選挙における小選挙区選出議員の選挙の選挙区割りはいまだ決定されておらず,現段階では,この点についての国会の裁量権は行使されていないのであるし,どのような裁量権の行使がされるのかも明らかでない。そうすると,裁判所において,国会の裁量権の範囲の逸脱の有無を判断することによって,原告の請求の当否を判断することができるという関係にもない。したがって,前記アのような観点から本件訴えが法律上の争訟に当たるということはできず, 原告の主張は採用できない。 (5) 以上のとおりであるから,本件訴えは,法律上の争訟に当たらず,不適法であるというべきであり,却下を免れない。 2 結論よって,本件訴えを却下することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴 以上のとおりであるから,本件訴えは,法律上の争訟に当たらず,不適法であるというべきであり,却下を免れない。 結論 よって,本件訴えを却下することとし,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官杉原則彦 裁判官角谷昌毅 裁判官澤村智子
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