平成21(ワ)24207等 不当利得返還請求事件

裁判年月日・裁判所
平成23年12月16日 東京地方裁判所
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判決文本文37,599 文字)

平成23年12月16日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成21年(ワ)第24207号不当利得返還請求事件(第1事件)平成21年(ワ)第24210号損害賠償等請求事件(第2事件)口頭弁論終結日平成23年10月19日判決東京都新宿区<以下略>原告株式会社ブルーアンドピンク同訴訟代理人弁護士中道武美東京都渋谷区<以下略>被告株式会社アーツブレインズ同訴訟代理人弁護士髙橋順一兼松由理子向宣明大江耕治太田貴裕長島弘幸主文 1 被告は,原告に対し,899万2270円及びこれに対する平成21年7月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用はこれを100分し,その99を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求(第1事件) 主文第1項と同旨(第2事件)被告は,原告に対し,8億8126万8618円及びこれに対する平成21年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要1(1) 第1事件は,化粧品等の商品を被告から仕入れ販売していた原告が,販売先から商品が返品された場合には,被告に支払済みの当該商品の仕入代金を原告に返還する旨の合意があるにもか 2 事案の概要1(1) 第1事件は,化粧品等の商品を被告から仕入れ販売していた原告が,販売先から商品が返品された場合には,被告に支払済みの当該商品の仕入代金を原告に返還する旨の合意があるにもかかわらず,被告が返品分の仕入代金を支払わないとして,被告に対し,不当利得金の返還合意に基づき,899万2270円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成21年7月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 (2) 第2事件は,①化粧品等の販売等を業とする原告が,被告との間で被告が製造する商品については原告を通して販売する旨の合意をしていたにもかかわらず,正当な理由なく原告を通さずに商品を直接販売する被告の行為は原告に対する債務不履行に当たるとして,被告に対し,債務不履行による損害賠償請求権に基づき,5億1166万8618円,②後記2(7)の商標権(以下「本件商標権」という。)の商標権者である原告が,被告が化粧品,化粧雑貨等の商品に別紙被告標章目録記載の標章(以下「被告標章」という。)を付して販売する行為は本件商標権を侵害するとして,被告に対し,商標権侵害による不当利得金返還請求権に基づき,3億6960万円,及び①,②の各金員に対する訴状送達日の翌日である平成21年9月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提となる事実(証拠等を掲記した事実を除き,当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告は,化粧品,化粧雑貨の販売等を目的とする株式会社である。 イ被告は,化粧品の研究開発,製造,輸入,販売等を目的とする株式会社である。 (2) 業務提携契約の締結等ア被告と株式会社ディアローラ(旧商号は株式会社ピィ・ジィ・アイ。以 る。 イ被告は,化粧品の研究開発,製造,輸入,販売等を目的とする株式会社である。 (2) 業務提携契約の締結等ア被告と株式会社ディアローラ(旧商号は株式会社ピィ・ジィ・アイ。以下「ディアローラ」という。)は,平成15年11月30日付けで,両社の製品の円滑かつ効率的な販売及び安定した物流を目的として以下の内容の業務提携契約(以下「本件基本覚書」という。)を締結した。(甲1)(ア) ディアローラの関連会社である株式会社D・L・Cを平成15年12月1日付けで株式会社ブルーアンドピンク(原告)に商号変更し,同社の発行済株式総数200株を,被告とディアローラが100株ずつ保有する。 (イ) ディアローラの販売に係る営業の全てを,平成17年4月1日付けで原告に譲渡する。 上記の営業譲渡は,原告とディアローラとの平成17年3月1日付けの営業譲渡契約(甲2)により実行された。 イ本件基本覚書に基づき,被告とディアローラは,原告の株式(発行済株式総数200株)をそれぞれ100株ずつ保有している。原告の代表取締役はA(以下「A」という。)及びB(以下「B」という。)の2人であるが,Aは被告の代表取締役を,Bはディアローラの代表取締役をそれぞれ兼任している。また,原告の代表権のない取締役はC(以下「C」という。)及びD〔通称は「D」〕(以下「D」という。)の2人であるが,Cは被告の取締役を,Dはディアローラの取締役をそれぞれ兼任している。 〔第1事件について〕(3) 本件返還合意原告,被告及びディアローラ間で締結された平成17年3月31日付けの覚書(甲3。以下「本件覚書」という。)の第3条1項では,原告は,被告 及びディアローラから仕入れた商品の問屋等の取引先への販売価格の14%相当額(以下「販売手数料」 成17年3月31日付けの覚書(甲3。以下「本件覚書」という。)の第3条1項では,原告は,被告 及びディアローラから仕入れた商品の問屋等の取引先への販売価格の14%相当額(以下「販売手数料」という。)を控除した金額を仕入価格として被告及びディアローラに支払う旨定められている。 また,本件覚書第8条1項及び2項では,原告が納品した商品が問屋等の取引先から返品された場合には,原告は当該商品を被告又はディアローラへ返送するとともに,原告が本件覚書第3条1項により被告又はディアローラに支払った商品の仕入代金について,原則として,被告又はディアローラは,その商品の仕入価格に相当する金額(問屋等の取引先への販売価格から当該価格の14%相当額を控除した残額)と同額で精算し,当該金額を原告に返還する旨定められている(以下「本件返還合意」という。)。 (甲3)(4) 被告の返還債務原告は,本件覚書第3条に基づき被告の商品の仕入代金を被告へ支払ってきたが,平成20年11月から平成21年6月までの間に既に仕入代金を支払った被告の商品が問屋等の取引先から原告へ返品されたため,本件返還合意に基づき,被告は,別紙返品金額一覧表に記載された当該返品商品の仕入価格に相当する金額である899万2270円を原告へ返還する債務を負っているが,被告は,原告にこれを返還していない。 (5) 被告の相殺の意思表示被告は,第1事件の第1回口頭弁論期日(平成21年9月11日)において,原告の被告に対する上記(4)の不当利得金返還債権(899万2270円)と,後記4(1)〔被告の主張〕の被告の原告に対する貸金債権(合計488万8500円)を対当額で相殺する旨の意思表示をした。 〔第2事件について〕(6) 被告商品の販売についての合意本件覚書 と,後記4(1)〔被告の主張〕の被告の原告に対する貸金債権(合計488万8500円)を対当額で相殺する旨の意思表示をした。 〔第2事件について〕(6) 被告商品の販売についての合意本件覚書の第1条は,3者の役割として,被告及びディアローラはメーカ ーとしての機能を果たし,自社商品の販売は原則として原告を通して行うこと,原告は販売会社としての機能を果たし,原則として被告及びディアローラから仕入れた商品を,問屋等の取引先に販売することを定めており,被告は,同条により,被告の商品を原則として原告を通して販売する義務を負う。 (甲3)被告は,平成20年11月1日以降,原告への商品供給を停止し,原告を通さずに被告の商品を直接販売している。 (7) 原告の商標権原告は,下記商標権(本件商標権)の商標権者である。(甲4,7,8)記登録番号第4894059号登録年月日平成17年9月9日商品及び役務の区分第3類指定商品つけまつ毛用接着剤,つけづめ用接着剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,つけづめ,つけまつ毛商品及び役務の区分第8類指定商品ひげそり用具入れ,ペディキュアセット,まつ毛カール器,マニキュアセット商品及び役務の区分第21類指定商品化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。)登録商標ナーナニーナ(標準文字)(以下「本件商標」という。)(8) 被告の行為被告は,平成20年11月1日以降,別紙被告商品目録記載の各商品(以下,同目録記載1の商品を「被告商品1」などといい,各商品を併せて「被告商品」という。)に被告標章を付し,販売していた(被告商品1について は平成21 日以降,別紙被告商品目録記載の各商品(以下,同目録記載1の商品を「被告商品1」などといい,各商品を併せて「被告商品」という。)に被告標章を付し,販売していた(被告商品1について は平成21年10月まで,被告商品2ないし4については同年9月まで被告標章を付して販売していた。)。 (9) 被告標章の商標登録について被告は,被告標章について,平成21年6月17日,第3類「つけまつ毛用接着剤,つけづめ用接着剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,つけづめ,つけまつ毛」,第8類「ひげそり用具入れ,ペディキュアセット,まつ毛カール器,マニキュアセット」及び第21類「化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。)」を指定商品として商標登録出願したところ,特許庁は,平成22年2月12日,被告標章は本件商標に類似するものであって商標法4条1項11号に該当するとして,その登録を拒絶する旨の査定をした。 被告は,平成22年5月12日,拒絶査定不服審判(不服2010-11503)を請求し,特許庁は,同年12月21日,被告標章と本件商標とは外観,称呼及び観念のいずれの点からみても類似しないとして原査定を取り消し,被告標章を登録すべきものとする審決をし(乙73),平成23年2月25日,被告標章は登録第5392787号商標(以下「被告商標」という。)として登録された。 原告は,平成23年4月22日,被告商標の登録を無効とする旨の審判(無効2011-890029)を請求し,特許庁は,同年10月4日,被告商標は,本件商標に類似する商標であって,その指定商品は本件商標の指定商品と同一の商品と認めることができ,商標法4条1項11号に該当するとして,被告商標の登録(登録第5392787号)を無効とする審決をした(甲57)。 3 争点〔第1事件について〕(1) 相 品と同一の商品と認めることができ,商標法4条1項11号に該当するとして,被告商標の登録(登録第5392787号)を無効とする審決をした(甲57)。 3 争点〔第1事件について〕(1) 相殺の可否(争点1)〔第2事件について〕 (2) 本件覚書の解除の可否(争点2)(3) 本件覚書の債務不履行による損害額(争点3)(4) 商標権侵害の成否(争点4)(5) 商標権侵害による不当利得額(争点5) 4 争点に関する当事者の主張(1) 争点1(相殺の可否)について〔被告の主張〕ア原告の従業員E(以下「E」という。)及びF(以下「F」という。)は平成20年12月9日に,原告の従業員G(以下「G」という。)は平成21年1月23日に,それぞれ原告からの退職希望を申し出た。 被告は,平成21年2月26日,Eに対する特別退職金(乙4の雇用問題解決案3項)に充当するため,原告に対し,142万8000円を送金し(以下「本件送金1」という。),弁済期の定めなく貸し付けた。 被告は,同年3月25日,F及びGに対する特別退職金(乙4の雇用問題解決案3項)に充当するため,原告に対し,284万1000円を送金し(以下「本件送金2」という。),弁済期の定めなく貸し付けた。 被告が原告に本件送金1,2をするに当たっては,被告の取締役であるC(原告の経理担当取締役を兼務)と原告の代表取締役であるAとの間で,被告が提案した雇用問題解決案(乙4)についてディアローラとの間で最終的な合意ができていなかったため,最終的な取扱いを確定する際にその処理を決することとして,送金した特別退職金相当額の金員の最終的な取扱いが確定するまでは被告から原告に期限の定めなく貸し付けるものとして処理することが合意されたものであり,被告 いを確定する際にその処理を決することとして,送金した特別退職金相当額の金員の最終的な取扱いが確定するまでは被告から原告に期限の定めなく貸し付けるものとして処理することが合意されたものであり,被告は決算において本件送金1,2を「短期貸付金」と処理した(乙26の2,63の1,2)。 イ原告の従業員で組織されたブルーアンドピンク労働組合(以下「原告労組」という。)は,原告を被申立人として,平成21年4月1日,大阪府 労働委員会に不当労働行為の救済を申し立てた(以下「本件労働事件」という。)。原告の代表取締役であるAは,同月17日,本件労働事件の被申立人代理人として弁護士髙橋順一及び同太田貴裕(以下「髙橋弁護士ら」という。)を選任した。 髙橋弁護士らは,平成21年5月14日,原告に対し,本件労働事件の着手金等として59万円(消費税別。以下「本件弁護士費用」という。)を請求した。 被告は,本件弁護士費用に充当するため,平成21年5月29日,原告に対し,本件弁護士費用に相当する61万9500円を送金し(以下「本件送金3」という。),弁済期の定めなく貸し付けた。 被告が原告に本件送金3をするに当たっては,被告の取締役であるC(原告の経理担当取締役を兼務)と原告の代表取締役であるAとの間で,被告が提案した雇用問題解決案(乙4)についてディアローラとの間で最終的な合意ができておらず,雇用問題の派生的問題である本件労働事件に関する本件弁護士費用の負担につき協議できる状況ではなかったことから,雇用問題に関する最終的な取扱いが確定するまでは,被告から原告に期限の定めなく貸し付けるものとして処理することが合意されたものであり,被告は決算において本件送金3を「短期貸付金」と処理した(乙26の2,63の1,2)。 原告の経理担当取締役であるC ら原告に期限の定めなく貸し付けるものとして処理することが合意されたものであり,被告は決算において本件送金3を「短期貸付金」と処理した(乙26の2,63の1,2)。 原告の経理担当取締役であるCが当時把握し得た原告の銀行預金口座における毎月の自動引落し等で引き落とされる金員を考慮すると,本件弁護士費用相当額程度を借り入れないと同口座の資金がショートする現実的危険性が高く,本件送金3に係る借入を実行する必要性が高かった。 ウ Cは,原告の担当者に対し,本件送金1~3は被告から原告に対する貸付金であると説明しており,原告は,役員及び税理士事務所に相談した上で,本件送金1~3を短期借入金として経理処理をした(甲26)。 株式譲渡等契約書(乙10の2)は,原告被告間にとどまらず,ディアローラも含めた3者間の包括的な紛争解決案として提示したものであり,同契約書に記載のない債権はもともと存在していないというわけではない。 本件送金1,2に係る貸金債権は同契約書第4条の清算条項によりすべて清算することで紛争全体を解決しようとしたものであるから,同契約書に本件送金1及び2に係る貸金に関する記載がないことをもって返還合意がなかったということはできない。 〔原告の主張〕ア被告が主張する各金員が被告から原告へ送金されたこと(本件送金1~3)は認めるが,原告被告間に返還の合意はなく,いずれも貸金ではない。 本件送金1~3は,被告がその原資を負担するものとし,後日,原告被告間で話し合いを行い,仮に原告においていくぶんかを負担することになった場合には精算するものとして被告から原告に送金されたものであり,返還の合意はなかった。 イ本件送金1,2は,被告が原告への商品供給を停止したことにより生じた原告の従業員の雇用問題(E,F及びG〔 場合には精算するものとして被告から原告に送金されたものであり,返還の合意はなかった。 イ本件送金1,2は,被告が原告への商品供給を停止したことにより生じた原告の従業員の雇用問題(E,F及びG〔以下「Eら3名」という。〕の退職)につき,被告が責任を負うとしてその退職金を被告が負担することとしたが,Eら3名は被告の従業員ではなく,被告が退職金を直接支払うことができなかったため,被告が原告を経由してEら3名の退職金を支払うために原告に振り込んだ金員であって,本件送金1,2について返還の合意はない。 平成21年2月から3月の間,原告は,出金時期に配慮して資金繰りすれば,Eら3名に特別退職金を独力で支払うことが可能であり,被告から融資を受ける必要はなかった。 また,本件送金1,2の後に本件紛争の解決案として被告が提示した株式譲渡等契約書(乙10の2)において,被告が主張する貸金は全く触れ られていないことからも,本件送金1,2につき返還の合意がなかったことは明らかである。 ウ髙橋弁護士らは,従前から被告の代理人として行動してきた実質的には被告の代理人であるから,被告は,本件労働事件に係る本件弁護士費用を髙橋弁護士らに支払う必要があったが,本件労働事件において髙橋弁護士らは原告の代理人であったため,被告から弁護士費用を直接支払うことができなかった。そのため,被告は,原告の銀行口座を把握していたCにおいて,原告の銀行口座を借用して原告に対して本件送金3を行い,原告を経由して髙橋弁護士らに本件弁護士費用を支払ったのであって,本件送金3について返還の合意はない。 本件送金3の当時,原告の銀行口座には本件弁護士費用を支払うに足りる相応の資金余力があったのであるから,被告から融資を受ける必要はなかった。 エ本件送金1~3につ ついて返還の合意はない。 本件送金3の当時,原告の銀行口座には本件弁護士費用を支払うに足りる相応の資金余力があったのであるから,被告から融資を受ける必要はなかった。 エ本件送金1~3については返還時期や金利が定められておらず,また,本訴に至るまで被告が返還の催告をしていなかったことからも,返還合意がなかったことは明らかである。 被告は,原告の代表取締役であるAと被告の取締役であるCが返還の合意をしたと主張するが,Aは原告の代表取締役であると同時に被告の代表取締役でもあり,Cも被告の取締役であると同時に原告の取締役でもあるから,被告主張の合意は同じ立場のものが仲間内で話し合ったにすぎない。 また,当時,AとCは原告の経営から実質的に撤退して形式的な取締役であったにすぎず,原告を実質的に経営していた代表取締役であるBは,被告が主張する貸付けの合意には全く関与していない。 原告において本件送金1~3は短期借入金として経理処理されているが(甲26),これは,既に原告の経営から離脱していたにもかかわらず,原告の経理担当取締役(経理部長)であったCが原告の銀行通帳や銀行印 を原告に返還しなかったため,原告の経理担当社員がやむを得ずCの指示に従って経理処理をした結果であって,真実の法律関係を現すものではない。 (2) 争点2(本件覚書の解除の可否)について〔被告の主張〕被告は,原告に対する平成20年8月29日付けの通知書(乙3)をもって本件覚書を解除したが(以下「本件解除」ということがある。),本件解除には以下のとおり正当な解除事由(やむを得ない事由)があり,適法な解除である。 ア本件覚書は,単なる販売(基本)契約というにとどまらず,被告とディアローラがそれぞれ折半して出資をした原告を間に挟み,原告を介 当な解除事由(やむを得ない事由)があり,適法な解除である。 ア本件覚書は,単なる販売(基本)契約というにとどまらず,被告とディアローラがそれぞれ折半して出資をした原告を間に挟み,原告を介した被告及びディアローラの各商品の販売を中核とする包括的業務提携の一環を担う契約である。すなわち,この業務提携は,原告の商号を変更し,Bの保有していた原告株式の半分を被告に譲渡して,原告を被告とディアローラの合弁会社にした上で,ディアローラの販売にかかる事業を原告に譲渡して,原告を被告とディアローラの共通の販売会社とし,それに伴い,統一的なブランド戦略を策定し,受注業務・出荷発送業務・返品対応業務等の統一化を図り,電算システムの構築,物流センターの選定・建築,従業員の移籍・移行,原告の販売手数料の設定,販売促進戦略・商品開発戦略,財務体質の改善・強化等,様々な部面にわたって調整・統一化を進める包括的な業務提携であった。 したがって,本件覚書の成否・消長は,単に原告と被告との関係のみならず,ディアローラと被告あるいは原告とディアローラとの関係,さらには,3者全体の関係も考慮して判断されなくてはならない。 イしかしながら,統一的なブランド戦略は,ディアローラが全くその構想に乗ってこなかったために早々に破綻し,また,それまでディアローラの 財務体質の改善に向けて協力してきた被告の立場(原告に対する売掛代金をディアローラが優先的に回収できるようにし,原告の販売手数料を販売価格の14%相当額として実質的にディアローラの経費の相当部分を被告において負担したこと等)を顧みずに,ディアローラが自社ビル取得や自社工場の取得というおよそ上記業務提携の精神に反する方針を一方的に表明したことにより,被告とディアローラとの事業展開の考え方の相違が決定 て負担したこと等)を顧みずに,ディアローラが自社ビル取得や自社工場の取得というおよそ上記業務提携の精神に反する方針を一方的に表明したことにより,被告とディアローラとの事業展開の考え方の相違が決定的となったことから,上記業務提携の見直しが必至となった。 そのため,被告は,原告及びディアローラに対して提案書(乙1)を提出し,上記業務提携の見直し,再編を巡る議論が行われたが,収束する方向性が全く見いだせない状況であった。 このような状況において,下記(ア)~(ウ)の上記業務提携の根幹をなすグループ会社間の信頼関係を破壊する出来事が起き,遅くとも平成20年6月末頃までには,上記業務提携の基礎となる信頼関係は破壊された。 (ア) D物流部長の突然の辞任平成20年4月25日,Bは原告の役員用電子掲示板に,ディアローラは上記業務提携からの離脱を決意した旨を記載し,これと呼応するかのように,同日,Dは,原告の取締役であるA,B及びCに対して,突然,同日付けで原告の物流部部長を辞任する旨の電子メールを送信した。 そして,Dは,原告の取締役会の承認もないまま,同年5月2日,一身上の都合により4月末日付けで原告の物流部部長を辞任したという内容の電子メールを原告の全従業員へ送信した。 この突然の辞任は,上記業務提携の方向性,すなわちグループ全体の方向性を話し合っている最中に,グループとしての了承も,原告の取締役会の承認もない状態で一方的に宣言されたものである。 (イ) 原告の役員用電子掲示板の内容の流出Bは,平成20年5月ころから,原告の役員用電子掲示板の記載内容 を部分的に原告従業員の一部に電子メールで送信し始めた。原告の経営判断に関わる重要情報が,しかも,いまだ結論の出ていない中途のやり取りが意図的に役員以外の者に流出し 用電子掲示板の記載内容 を部分的に原告従業員の一部に電子メールで送信し始めた。原告の経営判断に関わる重要情報が,しかも,いまだ結論の出ていない中途のやり取りが意図的に役員以外の者に流出したことで,社内が混乱し,原告の従業員に大きな不安を招くことになった。本来,役員用電子掲示板は公開目的のものではなく,役員間の伝達手段として,また非公開であるが故の本音での議論の場として機能することを予定したものであった。しかし,Bは,独断で一方的な意見を添えてその内容を従業員の一部に流出させ,原告の従業員を意図的に分断しようとしたものといわざるを得ず,その結果,原告社内は大いに混乱し,従業員の不安を掻き立てた。 また,これに気付いた被告出身の原告の役員は,以後,本音での議論を投稿することができなくなり,グループ再編を巡る議論の膠着状態に拍車を掛けることとなった。 このようなBによる独断的な役員用電子掲示板の記載内容の流出行為は,上記業務提携の根幹をなす信頼関係を根本的に破壊するものであった。 (ウ) 従業員の選別,引き抜き策動平成20年5月30日から6月2日まで,ブルーアンドピンク・グループの慰安旅行が実施され,ディアローラと原告の従業員及び被告の営業部長で当時原告に出向中であったH(以下「H」という。)が参加した。旅行中の同年5月31日の夕食時,Bは,旅行参加者に対し,原告の再編問題について,営業部社員は母親(ディアローラ)の連れ子だからディアローラに戻す,管理部・物流部の社員は原告に残ることになる,原告の養育費は被告から取るなどと一方的な説明をした。このように,Bは,いまだ結論の出ていなかったグループ再編問題について,従業員の振り分けにまで踏み込んだ一方的な発言をし,従業員の不安をより一層掻き立てた。また,Bは,この慰安旅 方的な説明をした。このように,Bは,いまだ結論の出ていなかったグループ再編問題について,従業員の振り分けにまで踏み込んだ一方的な発言をし,従業員の不安をより一層掻き立てた。また,Bは,この慰安旅行中に,Hに対して,ディアロ ーラに来ないかと引き抜き工作を行い,日本に戻ってからも引き抜き工作を続けた。 このような一方的な従業員の選別,引き抜き策動は,上記業務提携の根幹をなす信頼関係を破壊するものであった。 ウ以上のように,遅くとも平成20年6月末頃までには上記業務提携の基礎となる原告,被告及びディアローラ間の信頼関係が破壊されたため,被告は,原告に対する同年8月29日付けの通知書(乙3)をもって,業務提携に係る本件覚書を解除した。 本件覚書の解除により,原告を介して被告商品を販売する旨の合意は効力を失うことになるが,被告は,平成20年4月16日から原告に対する商品供給を停止する旨を申し出ている。そして,被告は,グループ再編のための交渉を同年3月から7月末まで根気強く継続してきたものの,話し合いによる再編は困難であるとの判断に至ったことから,やむなく同年7月25日に申入書(乙2)を送付し,さらに同年8月29日に通知書(乙3)をもって本件覚書を解除し,同年11月1日以降,被告商品の供給を停止する旨を原告に通告したものであって,ディアローラ及び原告には十分な予告期間が与えられていた。 また,被告のグループ再編の申入れに対して,ディアローラは,人道的・道義的見地から,原告への支援を求めてきたが,これに対しても,被告は雇用問題解決案(乙4)を提示し相応の補償の申出をしており,十分なものといえる。 したがって,被告による本件覚書の解除には,やむを得ない事由(正当な解除事由)があり,有効な解除である。この有効な解除により, 決案(乙4)を提示し相応の補償の申出をしており,十分なものといえる。 したがって,被告による本件覚書の解除には,やむを得ない事由(正当な解除事由)があり,有効な解除である。この有効な解除により,本件覚書に基づく契約関係は消滅したため,本件覚書の存続を前提とする契約上の債務の不履行に基づく損害賠償請求は理由がない。 〔原告の主張〕 ア被告が,平成20年8月29日付けの通知書(乙3)により本件覚書につき解除の意思表示をしたことは認めるが,やむを得ない事由(正当な解除事由)がなく,本件解除は無効である。 イ上記業務提携の内容として,被告が主張する統一的ブランド戦略などは存在しなかった。すなわち,被告はもともとブランドを持たなかったが,ディアローラは独自のブランドを持っていたため,統一的ブランド戦略などそもそも必要がなかった。 被告は自ら営業部門を持たず,営業を卸業者に任せきりであったため,卸業者による安売りやネット販売などで被告商品の価値やイメージが壊されかかっており,ディアローラの営業力を利用することによって被告商品の価値やイメージを維持することが,被告にとっての上記業務提携の最大の目的であった。また,強力な営業部門を有するディアローラの人件費や販売促進費の割合は高かったものの,費用対効果からすれば有効な投資であって,ディアローラは高い利益を維持しており,財務的に不安視する点など全くなかった。 被告は,ディアローラとの業務展開の考え方の相違が決定的となったことから業務提携の見直しが必要になったと主張するが,被告は,自らの考え方に固執し,業務提携の継続に向けた努力をすることなく,被告の考え方にディアローラが同化しなければ上記業務提携は解消すると決めつけ,それを強行してきたのである。被告が本件業務提携から離脱し らの考え方に固執し,業務提携の継続に向けた努力をすることなく,被告の考え方にディアローラが同化しなければ上記業務提携は解消すると決めつけ,それを強行してきたのである。被告が本件業務提携から離脱した最大の原因は,ディアローラが金融機関から借入れをして自社工場を建設することが「持たざる経営」という被告の社是に反することにあったが,上記業務提携はそれぞれの会社の経営の独自性を認めないものではなく,ディアローラが安定的かつ等質的な商品を継続的に製造,販売するために自社工場を建設することは,会社経営上,十分な合理性と必要性があったのであるから,ディアローラの自社工場建設が上記業務提携の解除事由とならない ことは明らかである。 ディアローラは何度も話し合いによって解決をしようと試みたが,被告は一方的に上記業務提携からの離脱の時期を設定し,業務提携の解消を目指して行動していたのであって,本件解除の正当性を基礎づける事情は認められない。 ウ被告は,平成20年3月17日の役員会の当時から,上記業務提携を一方的に破棄して原告不要論を展開する兆しをみせていた。そのため,Dは,被告の本心を確認するために原告の物流部長を辞任すると申し出たものである。もし,被告において原告に対する契約上の責任を果たすつもりがあったならば,直ちに物流部長を補充するなどの対策を採ったはずであるが,被告は何の行動も起こさなかった。こうした被告の態度を確認したDは,その後も原告の物流部長としての職責を全うしたのである。 被告は,このD物流部長の辞任を信頼関係破綻の原因の一つに挙げているが,実際には辞任しておらず,本件解除の正当性を基礎づける事情とはなり得ない。 エ一般論としては役員用電子掲示板の内容については秘密が守られてしかるべきであるが,その記載内容が 挙げているが,実際には辞任しておらず,本件解除の正当性を基礎づける事情とはなり得ない。 エ一般論としては役員用電子掲示板の内容については秘密が守られてしかるべきであるが,その記載内容が会社の継続と従業員の地位を危うくし,従業員を路頭に迷わせるほどの重大な背信的事項である場合には,従業員に対して情報を開示して,適正,妥当な判断を求めるべきであって,その記載内容を従業員に開示することは何ら違法なことではない。 被告出身の原告役員の考え方や行動に関する情報を正確に従業員に開示し,それに基づいて従業員が自ら行動することは企業統制として認められており,これを本件解除の正当性を基礎づける事情とすることはできない。 オ被告は,原告の慰安旅行においてBが被告の営業部長であるHを引き抜こうとしたと主張し,信頼関係破綻の原因の一つと挙げている。しかし,Hは,もともと被告に対する不満を募らせており,慰安旅行中も被告に対 する不満を口にしたため真意を問いただしたところ,被告とは決別したいとのことだったため,Bが受け皿を用意しようとしたものであって,引き抜き工作などではなく,Hの希望に応じようとしたにすぎない。 したがって,被告が主張する慰安旅行での社員の引き抜きの事実はなく,本件解除の正当性を基礎づける事情とはなり得ない。 カ以上より,被告による本件覚書の解除には正当な解除事由(やむを得ない事由)は認められず,被告が主張する解除は無効であり,被告は,本件覚書第1条により,原則として原告を通して被告商品を販売する契約上の義務を負っている。したがって,平成20年11月1日以降,原告を通さずに被告商品を自ら直接販売している被告の行為は,原告に対する債務不履行を構成する。 (3) 争点3(本件覚書の債務不履行による損害額)に いる。したがって,平成20年11月1日以降,原告を通さずに被告商品を自ら直接販売している被告の行為は,原告に対する債務不履行を構成する。 (3) 争点3(本件覚書の債務不履行による損害額)について〔原告の主張〕被告の上記債務不履行により,原告は以下の損害を受け,その損害額は5億1166万8618円である。 ア逸失利益被告は,本件覚書第3条に基づき,原告を通して問屋等の取引先に販売した被告商品の販売価格の14%相当額を販売手数料として原告に支払う義務を負担している。 原告を通して販売した被告商品の販売手数料(販売価格の14%)控除後の売上額は,平成19年11月から平成20年10月までの1年間で,合計10億1385万7112円であったため,この1年間の売上総合計は11億7890万3618円(10億1385万7112円÷0.86)であり,1年当たりの販売手数料額は1億6504万6506円である。 原告は,平成20年11月1日以降,原告を通さずに被告商品を自ら直接販売している被告の債務不履行行為により,逸失利益として3年分の販 売手数料である4億9513万9518円の損害を被った。 イシステム不具合による損害原告の経理システムにつき,被告が独自の経理システムを組んだため,被告の上記債務不履行により,平成20年11月1日以降,原告は経理システムを有効に利用することができなくなり,経理システムの再構築の費用として1652万9100円(①コクミンに関するシステムの再構築費用182万9100円及び②販売管理機能追加に関するシステムの再構築費用1470万円)の損害を被った。 〔被告の主張〕本件覚書の有効期間中,被告が原告に対し,原告を通して問屋等の取引先に販売した被告商品の販売価 管理機能追加に関するシステムの再構築費用1470万円)の損害を被った。 〔被告の主張〕本件覚書の有効期間中,被告が原告に対し,原告を通して問屋等の取引先に販売した被告商品の販売価格の14%相当額(ただし,輸出用商品については5%相当額)を販売手数料として支払う義務を負っていたこと,原告を通した被告商品の販売価格(販売手数料控除後の金額)の合計が平成19年11月から平成20年10月までの1年間で10億1385万7112円であったことは認めるが,その余の原告の主張は否認ないし争う。 原告の経理システムについて被告が独自の経理システムを組んだという事実はなく,原告が主張するシステム不具合はいずれも被告の行為に基づくものではない。 (4) 争点4(商標権侵害の成否)について〔原告の主張〕ア被告が化粧品,化粧雑貨等の商品に被告標章を付して販売する行為は,以下のとおり商標法37条1号に該当し,本件商標権を侵害する。 (ア) 本件商標と被告標章の類否につき本件商標は片仮名の標準文字をもって「ナーナニーナ」と一連に左から右へ横書きしてなるものであり,「ナーナニーナ」の称呼が生じるものである。 これに対して,被告標章は,別紙被告標章目録記載のとおり,アルファベット文字の活字体の小文字よりなる「na」,「nani」及び「na」の3つの部分を若干の間隔を空けて左から右へ横方向に並べてなるものであり,第1の部分「na」と第2の部分「nani」との間に,ハートの図形を横転させてなる流れるように湾曲した横長の図形を配し,また,第2の部分「nani」と第3の部分「na」との間に,同様にハートの図形を横転させてなる流れるように湾曲した更に横長の図形を「i」の文字の頂部の点の辺りから右向きに配して た横長の図形を配し,また,第2の部分「nani」と第3の部分「na」との間に,同様にハートの図形を横転させてなる流れるように湾曲した更に横長の図形を「i」の文字の頂部の点の辺りから右向きに配してなるとともに,この横長のハートの図形の右下において小さなハートの図形を左下から右上にかけて斜めに配してなるものである。 上記の2つの横転したハートの図形はそれぞれ左右の2つの文字により挟まれるとともに,横長に流れるように延びていることから,看者をして長音記号「ー」を想起させるものであって,被告標章は,全体として,あたかも「naーnaniーna」と左から右へ横書きしてなるかのように認識されるものである。 したがって,被告標章は,「naーnaniーna」の構成に相応して「ナーナニーナ」の称呼を生じるとみるのが自然であり,被告自身のみならず需要者・取引者からも広く「ナーナニーナ」と呼称されてきた。 以上のとおり,本件商標と被告標章は「ナーナニーナ」の称呼を共通にするものであるから,被告標章は本件商標に類似するといえる。非類似であると評価すべき特殊な取引の実情は存在しない。仮に被告標章が「ナナニナ」の称呼を生じるものであったとしても,本件商標の「ナーナニーナ」の称呼に類似するものといえる。 (イ) 被告商品と本件商標権の指定商品との類否につき被告商品1,2は二重まぶた形成用ファイバーであり,被告商品3は二重まぶた形成用ファイバーを接着するための下地材であり,被告商品 4は二重まぶた形成用接着剤であって,被告商品はいずれも二重まぶたを形成するための化粧用具である。 被告商品と,本件商標権の指定商品である「つけまつ毛」及び「つけまつ毛用接着剤」は,目元を装飾する化粧用具である点で用途が同一であり,若い女 重まぶたを形成するための化粧用具である。 被告商品と,本件商標権の指定商品である「つけまつ毛」及び「つけまつ毛用接着剤」は,目元を装飾する化粧用具である点で用途が同一であり,若い女性が使用するものである点で需要者の範囲が同一であり,同一店舗の同一又は近接した場所で販売されている点で販売部門が同一である。 被告商品1,2は,まぶた部分に貼着することにより一重まぶたを二重まぶたに見せかけるものであり,他方,本件商標権の指定商品である「つけまつ毛」は,まぶた部分に貼着して短いまつ毛を長いまつ毛に見せかけるものであって,まぶた部分に貼着して目元の装飾効果を高める化粧用具である点において共通する。したがって,被告商品1,2は,本件商標権の指定商品である「つけまつ毛」に類似する商品である。 また,被告商品3,4は,いずれも皮膚に塗布する液状のものであって,被告商品3は,二重まぶた形成用ファイバーである被告商品1,2を接着する際に,接着力を高めるためにまぶた部分に塗布し二重まぶた形成の効果を高めるものであり,被告商品4は,まぶた部分に塗布して皮膚同士を接着することにより二重まぶたを形成するものである。他方,本件商標権の指定商品である「つけまつ毛用接着剤」は,つけまつ毛をまぶた部分に接着するためにまぶた部分に塗布する液状のものであって,まぶた部分に塗布して接着作用を有する又は接着力を高める液状のものである点において被告商品3,4と共通する。したがって,被告商品3,4は,本件商標権の指定商品である「つけまつ毛用接着剤」に類似する商品である。 (ウ) 被告標章の商標としての使用につき被告は,被告商品においては商品の出所を示すものとして「メザイク」 ないし「MEZAIK」の表示が使用されてき 」に類似する商品である。 (ウ) 被告標章の商標としての使用につき被告は,被告商品においては商品の出所を示すものとして「メザイク」 ないし「MEZAIK」の表示が使用されてきたと主張するが,被告商品の包装の正面部分には被告標章が表示されており,被告が主張するように小さく目立たない態様で表示されているとは到底いえないものである。 そして,商品に複数の標章が表示されることは一般的であり,当該標章が自己の商品と他人の商品との識別標章として機能する場合には,それぞれの標章が出所表示機能を果たす商標として使用されているというべきである。したがって,被告標章が「メザイク」ないし「MEZAIK」とともに使用されていたとしても,被告標章による被告商品の出所表示機能が消失するものではない。 また,被告標章と「MEZAIK」とにおいて,たとえ表示の大きさに大小の差があるとしても,被告標章が視覚的に明確に識別できるのであれば,被告標章が単独で被告商品を識別する標章として出所表示機能を果たしていることは明らかである。「メザイク」ないし「MEZAIK」が被告商品の出所表示として需要者や取引者の間で広く知られているとしても,被告標章も単独で被告商品を識別する標章として出所表示機能を果たしていることに変わりはない。 したがって,被告標章は商標として使用されていないとの被告の主張は失当である。 イ権利の濫用につき被告商品は,被告が本件覚書につき解除の意思表示をして原告を通さずに直接販売を開始するまでは原告が販売しており,当該商品には,原告が製造,販売会社として表示されていると共に本件商標及びこれに類似する被告標章が付されていた。 被告が原告を通さずに直接販売を開始した後は,被告商品は被告単独の商品となり,当該商品からは当 ,原告が製造,販売会社として表示されていると共に本件商標及びこれに類似する被告標章が付されていた。 被告が原告を通さずに直接販売を開始した後は,被告商品は被告単独の商品となり,当該商品からは当然に原告の表示が消去されるとともに,原 告が商標権を有する本件商標及びこれに類似する標章も消去されるのが道理である。過去に本件商標及び被告標章が付されていたからといって,本件商標が原告の出所を表示するものである以上,被告による直接販売開始後の被告の単独商品について,本件商標及びこれに類似する被告標章を被告が継続して使用する権利は,商標権者である原告の許諾なくしては存在しない。 したがって,原告が被告に対して本件商標権を行使するのは正当な権利行使であって権利の濫用となるものではない。 〔被告の主張〕ア(ア) 被告標章の商標としての使用につき以下に述べるとおり,被告は,被告標章を商標として使用していないから,本件商標との類否にかかわらず,被告標章を付した被告商品の販売が本件商標権を侵害することはない。 a 被告は,二重まぶた形成材商品及びその関連商品を自ら開発し,これを「MEZAIK」と名付け,平成13年3月以来,一貫して「MEZAIK」の商品名の下に製造,販売してきており,被告商品の商品名は全て「MEZAIK」(ないし「メザイク」)を冠したものとなっている。 b 後記(イ)bのとおり,被告商品のパッケージには,「MEZAIK」が大きく目立つ態様で表示されているのに対し,被告標章は小さく目立たない態様で表示されていたにすぎない。 被告の製造する二重まぶた形成材商品及びその関連商品は,需要者,取引者の間では,一貫して「MEZAIK」商品として認識されており,「MEZAIK」は被告商品の出所を示すものとして,需要者,取引者の 被告の製造する二重まぶた形成材商品及びその関連商品は,需要者,取引者の間では,一貫して「MEZAIK」商品として認識されており,「MEZAIK」は被告商品の出所を示すものとして,需要者,取引者の間で周知となっている。 c このように,被告の製造に係る商品は,「MEZAIK」ないし「メ ザイク」の商標をもって取引されているため,終始一貫して被告のみが商品の出所として需要者,取引者に認識されている。このため,被告標章は,被告の製造に係る商品に使用されたとしても,常に「MEZAIK」ないし「メザイク」と共に使用されており,独立して商品の出所を識別する機能や,商品の品質を保証する機能を果たしているとは到底認められない。 したがって,被告商品において,商品の出所を示すものとして使用されているのは専ら「MEZAIK」ないし「メザイク」であって被告標章ではないため,被告標章は商標として使用されているものとはいえず,本件商標権を侵害することはない。 (イ) 本件商標と被告標章の類否につき仮に被告標章が商標として使用されていたとしても,以下のとおり,被告標章は本件商標に類似しないため,被告標章を付した被告商品の販売が本件商標権を侵害することはない。 a 本件商標の外観及び称呼が原告主張のとおりであることは認める。 しかしながら,本件商標は,片仮名で「ナーナニーナ」と一連に表記され,辞書等に掲載されていない造語商標であり,その称呼は「ナーナニーナ」であって,特定の観念を有しないものである。 これに対し,別紙被告標章目録記載のとおり,被告標章は,アルファベットの「na」,「nan」(又は「nani」),「na」の間にハート形の図形を組み合わせて構成した文字と図形の結合商標であり,その称呼は「ナナンナ」又は「ナナニナ」であって 被告標章は,アルファベットの「na」,「nan」(又は「nani」),「na」の間にハート形の図形を組み合わせて構成した文字と図形の結合商標であり,その称呼は「ナナンナ」又は「ナナニナ」であって,特定の観念を有しない。被告標章は被告の社内において特別な称呼はなく,「ナーナニーナ」とは呼びならされていない。 したがって,本件商標と被告標章は,外観,観念,称呼のいずれにおいても相違しており,被告標章は本件商標に類似していない。 b 商標の外観,観念又は称呼の類似は,その商標を使用した商品につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず,そのうち一つにおいて類似しても他の2点において著しく相違することその他取引の実情等によって,何ら商品の出所に誤認混同を来すおそれが認められない場合は類似商標と解すべきではない。 被告標章は,上記aのとおり,外観,観念,称呼のいずれにおいても本件商標と類似していないが,仮に被告標章と本件商標の称呼が同一であったとしても,以下の事情を考慮すれば,何ら商品の出所に誤認混同を来すおそれがないため,類似商標と解すべきではない。 (a) 原告は,株式会社D・L・Cの商号で平成15年2月に設立され,同年12月に現在の商号に変更した後,平成16年5月に被告が発行済株式の50%を譲り受けることにより,被告商品及びディアローラの商品を統一ブランドの下で販売することを目的とする会社となったのであって,自ら商品の製造を行ったことはない上,ディアローラも統一ブランド向けの商品を原告に供給しなかったため,所期の目的であった統一ブランドによる商品の販売としては被告商品のみを販売していた。 (b) 被告は,二重まぶた形成材商品及びその関連商品を自ら開発し,これを「MEZAIK」と名付け,平成13 ,所期の目的であった統一ブランドによる商品の販売としては被告商品のみを販売していた。 (b) 被告は,二重まぶた形成材商品及びその関連商品を自ら開発し,これを「MEZAIK」と名付け,平成13年3月以来,一貫して「MEZAIK」の商品名の下に製造,販売してきた。 (c) 被告が製造して原告に供給し原告において販売していた商品のパッケージには,表面の左側(黒い部分)に大きく目立つようにピンク色で「MEZAIK ○○」と商品名が表示されていたのに対し,被告標章は商品本体が入っている透明の箱の下部に小さく表示されていたにすぎなかった。 (d) 原告を通さず被告が直接販売する被告商品のパッケージには,全 て表面の左側(黒い部分)に大きく目立つようにピンク色で「MEZAIK ○○」と商品名が表示されているのに対し,被告標章はパッケージ下部に小さく表示されていたにすぎない。また,被告商品の容器についても同様に,「MEZAIK」を冠した商品名が大きく目立つように表示されていたのに対し,被告標章は容器下部に小さく表示されていたにすぎない。 (e) このため,被告が製造する二重まぶた形成材商品及びその関連商品は,被告を出所とする「MEZAIK」商品として,需要者,取引者に認識されてきており,「ナーナニーナ」商品としては認識されていない。 (f) 同種同機能の商品が多数存在する化粧用具業界においては,商品のパッケージ・広告宣伝等により差別化を図っているのが実情であり,商品の外観が化粧用具関係の商品の取引に当たっては重要な要素を占めるものである。 (g) よって,原告が販売していた商品であれ,被告が原告を通さずに直接販売する被告商品であれ,被告が製造する二重まぶた形成材商品及びその関連商品は,常に,被告を出所とする「MEZAIK」 る。 (g) よって,原告が販売していた商品であれ,被告が原告を通さずに直接販売する被告商品であれ,被告が製造する二重まぶた形成材商品及びその関連商品は,常に,被告を出所とする「MEZAIK」商品として需要者,取引者の間で取引されてきたのであって,商品の出所は常に被告であるため何ら出所の混同は生じていない。 (ウ) 被告商品と本件商標権の指定商品との類否につき特許庁の類似商品・役務審査基準(国際分類第9版)によれば,「つけまつ毛」は類似群コード21F01に分類されるところ,他に同コードに該当する商品としては,「つけづめ,ひげそり用具入れ,ペディキュアセット,まつ毛カール器,マニキュアセット,耳かき,携帯用化粧道具入れ,化粧用具(「電気式歯ブラシ」をのぞく。),つけあごひげ,つけ口ひげ,ヘアカーラー(電気式のものを除く。)」が挙げられてお り,「つけまつ毛,つけづめ,つけあごひげ,つけ口ひげ」は,いわゆる化粧用具等と同じ群に分類されている。そして,「つけまつ毛」は身体の一部を模した擬似的な物体を身体に付着させるものであるところ,被告商品1,2は,それ自体が擬似的な(二重)まぶたであるわけではなく,まぶたに付着させることによりまぶた自身が二重を形成する効果が得られるものである。したがって,被告商品1,2は,「つけまつ毛」と性質を異にし「つけまつ毛」に類似しない。 また,同審査基準によれば,「つけまつ毛用接着剤」は類似群コード01A02に分類されるところ,他に同コードに該当する商品としては,「のり及び接着剤(事務用または家庭用のものを除く。),かつら装着用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,事務用または家庭用ののり及び接着剤」が挙げられており,いわゆる接着剤と洗濯のりが含まれている。この点,被告商品3は被告商品1,2 のを除く。),かつら装着用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,事務用または家庭用ののり及び接着剤」が挙げられており,いわゆる接着剤と洗濯のりが含まれている。この点,被告商品3は被告商品1,2とセットで使用する補助下地剤であって単品では接着効果はない(洗濯用のりでもない)ため,「つけまつ毛用接着剤」とは性質を異にし,「つけまつ毛用接着剤」に類似しない。 被告商品4には,皮膚と皮膚を付着させるという意味での接着効果はあるものの,「つけまつ毛用接着剤」がつけまつ毛を皮膚に接着させることを目的とするのに対して,被告商品4は皮膚と皮膚を付着させること自体が目的なのではなく,それにより二重まぶたの形成を助けることが目的であり,被告商品4は「つけまつ毛用接着剤」とは性質を異にし,「つけまつ毛用接着剤」に類似しない。 イ権利の濫用につき仮に被告標章が原告の商標権を侵害しているとしても,以下のように,原告の被告に対する商標権の行使は権利の濫用であって,商標権侵害に基づく原告の請求に理由はない。 すなわち,そもそも原告は,株式会社D・L・Cの商号で平成15年2月に設立され,同年12月に現在の商号に変更した後,平成16年5月に被告が発行済株式の50%を譲り受けることにより,被告商品及びディアローラの商品を統一ブランドの下で販売することを目的とする会社となったのであり,本件商標は,被告の代表取締役であるAが共通のブランディングにより商品を販売していくに当たり原告に利用させるため考案した商標であり,商標登録が可能か否かの事前調査やロゴデザインの開発等の費用は被告が負担したものである。被告としては,本件商標を自ら登録することも可能であったが,ディアローラとの共同事業が発展することを願い,原告が販売会社であることを考慮して, ロゴデザインの開発等の費用は被告が負担したものである。被告としては,本件商標を自ら登録することも可能であったが,ディアローラとの共同事業が発展することを願い,原告が販売会社であることを考慮して,原告の名義で登録させたものである。また,原告は被告商品の販売会社であったのであって,被告標章が付された商品としては被告の製造する商品しか販売していなかったものである。 したがって,本件商標は,このような共同事業に資するためにのみ使用されるべき商標であって,被告とディアローラとの共同事業が破綻した時点で原告は本件商標を使用する固有の利益を失っており,本件商標権が原告の名義で登録されていることを奇貨として,被告に対して本件商標権を行使するのは権利の濫用である。 (5) 争点5(商標権侵害による不当利得額)について〔原告の主張〕被告は,上記商標権侵害行為に基づき,平成20年11月から平成21年5月までの間,被告商品を月額平均8000万円分販売し,粗利益として販売価格の66%である5280万円相当の利得を法律上の原因なく得ていた。 上記の商標権侵害行為により被告が不当に得た利得は,少なくとも3億6960万円(平成20年11月から平成21年5月までの7か月分の利得の総額)に上り,原告は同額の損失を被った。 〔被告の主張〕原告の主張は否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(相殺の可否)について(1) 被告は,本件送金1~3につき,被告の取締役であるCと原告代表取締役であるAとの間で,当該各金員を被告から原告へ期限の定めなく貸し付ける旨の合意がされ,原告被告間で返還合意があったと主張する。 (2) 本件送金1~3は,原告従業員の特別退職金及び本件労働事件に係る弁護士費用の支払のた 員を被告から原告へ期限の定めなく貸し付ける旨の合意がされ,原告被告間で返還合意があったと主張する。 (2) 本件送金1~3は,原告従業員の特別退職金及び本件労働事件に係る弁護士費用の支払のために被告名義の銀行口座から原告名義の銀行口座へ振込送金されたものであるが(甲36,37,乙13の1及び2,14の1及び2,15の1及び2,62の7,75),いずれも被告とディアローラとの間の業務提携の解消に伴う原告従業員の雇用問題に関連するものである(弁論の全趣旨)。 業務提携の解消に係る問題についての交渉過程において,被告が,原告,被告及びディアローラの3者間の株式等を含む債権債務関係を清算するために作成し,B及びDへ送付した「株式譲渡等契約書」(乙10の1,2)には,原告が被告へ請求する被告商品の返品に係る不当利得金(精算金)の処理について記載する条項がある一方,本件送金1~3に係る被告の原告に対する貸金債権の処理を明示した条項はない。また,本件送金1~3に係る金銭消費貸借契約書等の書面は作成されておらず,本件送金1~3の当時の原告の財務状況につき,被告から借り入れをしなければ従業員の特別退職金や本件弁護士費用の支払いが困難な状況であったとは認められない上(甲36~38,乙15の2,61の3の2,62の7,75),本件訴訟において相殺の抗弁を主張するまで,被告が本件送金1~3に係る貸金の返還を原告へ請求した事実も認められない(弁論の全趣旨)。そして,証人Cの証言によれば,Cは,本件送金 1~3に係る被告とディアローラの負担割合について,業務提携の解消に係る問題の全体的な解決の中でディアローラと交渉し,原告への出資割合に基づき精算し,最終的な負担割合を決定すべきと考えていたことが認められる。 (3) 以上の事実からすると ,業務提携の解消に係る問題の全体的な解決の中でディアローラと交渉し,原告への出資割合に基づき精算し,最終的な負担割合を決定すべきと考えていたことが認められる。 (3) 以上の事実からすると,被告が原告名義の口座に振込送金した本件送金1~3に係る金員については,最終的に被告とディアローラとの間の交渉により原告に対する出資割合等に基づき精算し,両者が一定の割合ずつ負担することが想定されていたものと認められるが,その負担割合について合意が成立したものと認めることはできず,また,送金に当たって原告被告間において当該金員の返還についての合意がされたものと認めることもできない。 本件送金1~3について,原告の取引明細書において短期借入金として会計処理されているが(甲26),当該会計処理は,原告の経理担当者が,当該金員を貸し付けたと主張する被告の取締役で,かつ,原告の経理担当取締役であったCから短期借入金として処理するよう指示されたことによるものであって(乙26の1),契約書等の客観的な証拠に基づいて処理されたものではないから,上記取引明細書の記載を根拠に当該金員を借入金と認定することはできず,上記認定を左右するものとはいえない。 (4) したがって,被告主張の相殺は理由がなく,原告の被告に対する第1事件の請求は,全て認容すべきである。 2 争点2(本件覚書の解除の可否)について(1) 証拠(甲1~4,7,8,15の1~15の6,18~20,40,43,44,56,乙1~4,17の1~18の3の2,20の1~25の4,36の1~36の5,38の1~41,53の1~55,59,60,65,67,82,証人C,原告代表者B,被告代表者,弁論の 全趣旨)によれば,以下の事実が認められる。 アアイメイク 6の1~36の5,38の1~41,53の1~55,59,60,65,67,82,証人C,原告代表者B,被告代表者,弁論の 全趣旨)によれば,以下の事実が認められる。 アアイメイク関係商品を主力とする化粧品等の製造,販売を主な業務とする被告とネイル関係商品を主力とする化粧品等の製造,販売を主な業務とするディアローラは,平成15年夏頃,共通の製造下請会社を介して知り合い業務提携交渉を開始し,同年末頃にはほぼ基本的な合意に至った。そこで,両社は,同年12月1日,ディアローラの関連会社である株式会社D・L・Cの商号を「株式会社ブルーアンドピンク」(原告)に変更するとともに,平成16年1月12日及び2月1日,被告とディアローラが共同出資による新会社として原告を設立したことを業界紙である「週刊粧業」及び「東京化粧品商報」において発表した(乙17の1及び2)。 被告とディアローラの業務提携は,両社が折半して原告に出資し,両社の商品を原告を通して販売することを内容とする包括的なものであり,具体的には,平成16年5月20日にBの保有していた原告の株式を両社に半分ずつ譲渡して原告を被告とディアローラの共同出資会社とした上で,平成17年4月1日,ディアローラの販売に係る営業の全てを原告に譲渡し,当該営業に従事するディアローラの社員を原告に転籍させ,原告を被告とディアローラの共通の販売会社として受注業務や出荷発送業務等を統一し,物流センターを建設するなどして,下記イの目的や事業戦略に基づき同月から実施された(以下,被告とディアローラとの間のこの業務提携を「本件業務提携」という。)。 本件業務提携に関する契約書類(甲1~3,乙21)は,それぞれ平成15年11月30日付け(甲1),平成17年3月1日付け(甲2),平成17年3月31日付け の業務提携を「本件業務提携」という。)。 本件業務提携に関する契約書類(甲1~3,乙21)は,それぞれ平成15年11月30日付け(甲1),平成17年3月1日付け(甲2),平成17年3月31日付け(甲3,乙21)とされているが,実際には,いずれも平成18年7月頃に作成された。 イ被告及びディアローラは,平成16年5月から,本件業務提携の目 的,原告の事業戦略等についての検討を開始し,同年7月3日の原告取締役会において,Aが提出した「ブルー&ピンク企業化の指針(中期計画ビジョン)」(乙36の2)に基づき協議がされた。この書面の主な記載は以下のとおりである。 (ア) 目的と課題○開発会社の二元化と相互協力による開発力の強化○販売会社の新設による営業力の強化と流通(代理店)の再編強化○ブランディングの統一によるマーケットの再整理と販売力の強化○スケールメリットと分社化による利益構造の構築(イ) 独立採算制と利益構造の創出○企業としての自己責任を果たす為には,まず「絶対に倒産しない企業」を前提とした健全企業の建設を目標とし,3社関係の独立経営と安全経営,独立利益の追求を目指すものとする。 ○キャッシュフローの確保で無借金経営を目指す。そのためには,自己資本(=資本金+内部留保)比率を高めること(利益を上げ税金を払い,税引後利益で内部留保を増やしていくのが基本である)に努力する。また,総資本をできるだけ小さくし相対的に自己資本比率を高くするために,①在庫減らしの努力と売掛金の早期回収に努める。②支払手形ゼロ=現金支払で高収益体質を確立する。③受取手形については,現金化を原則に進める。 (ウ) 企業ブランド,製品ブランドについ めに,①在庫減らしの努力と売掛金の早期回収に努める。②支払手形ゼロ=現金支払で高収益体質を確立する。③受取手形については,現金化を原則に進める。 (ウ) 企業ブランド,製品ブランドについて○被告,ディアローラのブランドマーケットを結集し,原告の企業ブランドを戦略ブランドとして位置付ける。 ○基本ルートセールス(従前問屋卸し)品については「ピンクパッケージ」と「ブルーパッケージ」の2つのブランド群を用意し両社のブランドをこの中に再編成する。 さらに,平成16年12月22日の原告取締役会において,Aが提出した「ブランディングにおける基本方針(案)」(乙36の4)に基づき協議がされた。この書面の主な記載は以下のとおりである。 (ア) ブランディングの統一原告を販売会社とし,被告,ディアローラの各商品ブランドをB&Pブランドとして傘下に継承して再構築する。被告,ディアローラの各社は原告のオーナー会社であり,製造・企画開発会社として原告のブランディング方針に従い協力する。 (イ) Shopzone(マーケット)の住み分け(標準ブランドの構築)当該マーケット,当該ショップへの商品の適材化を目指し,ブルーzone(バラエティーショップ,専門店,百貨店等),ピンクzone(ドラッグストア,総合スーパー等)の各ショップターゲットに照準を合わせた標準ブランドをそれぞれ構築する。 ピンクzone のスタンダードブランド 「Na~nani~na」ブルーzone のスタンダードブランド 「Samasama~na」(ウ) ファッションコンセプトによるポジショニングファッショントレンドをリーディングし,提案テーマごとに再分割した各デザインコ ダードブランド 「Samasama~na」(ウ) ファッションコンセプトによるポジショニングファッショントレンドをリーディングし,提案テーマごとに再分割した各デザインコンセプトをファッションシリーズ名(Pa,エターナル,紋,マンティス等)として構築する。当面は既存のブランドデザインを継承し,原告のマーク等をルール化して用いるものとする。 このように,取締役会において原告企業グループの統一ブランド構想について検討した結果,原告は,平成16年12月22日,「ナーナニーナ」(本件商標)と「サマサマーナ」につき,商標登録出願をした。 もっとも,ディアローラは,この統一ブランド構想に従って自社商品を「サマサマーナ」,「ナーナニーナ」のブランドとして販売することはなく,被告がその商品を同ブランドとして販売したのみであった。 ウ被告及びディアローラの商品が本件業務提携に基づき原告を通じて販売されるようになった平成17年4月当初から,被告及びディアローラの原告に対する売掛金はディアローラが優先的に回収できるよう,原告が現金支払を受けた場合はまずディアローラへの支払に充て,原告が問屋などから取得した受取手形は被告に裏書譲渡して被告において満期日となるようにした。その結果,ディアローラは1か月を待たずに売掛金の回収ができるようになり,資金繰りが改善されることになったが,被告の売掛金の回収については平均すると約2か月を要することとなった。 また,被告とディアローラは,本件覚書(甲3)に基づき,各商品につき原告の取引先への販売価格の14%相当額を販売手数料として原告に支払ってきた。これは,本件業務提携前と比較すると,少量かつ多種類の商品を積極的な営業活動によって大量に販売するディアローラにとっては経費負担 引先への販売価格の14%相当額を販売手数料として原告に支払ってきた。これは,本件業務提携前と比較すると,少量かつ多種類の商品を積極的な営業活動によって大量に販売するディアローラにとっては経費負担を軽減するものであったが,販売する商品の種類が少なく主力商品が特許製品であるため,多くの販売経費を必要としなかった被告にとっては経費負担を増大させるものであった。実際にも,原告における業務の多くはディアローラの商品のためのものであったため,実質的にディアローラの経費の相当部分を被告において負担することとなった。 その結果,平成18年7月頃には,それまで常態化していた支払手形の振出しが不要となり,ディアローラの財務内容は改善された。 エディアローラは,平成19年秋頃,商品の製造委託先の経営状態に問題があったため,金融機関からの借入れにより自社工場を建設することを決め,これを被告へ伝えた。被告は,本件業務提携は3社の財務体質の強化も目的としたものであったことから,金融機関からの借入れによる自社工場の建設はディアローラの財務体質の脆弱化をもたらすも のであるとして強く反対し,ディアローラの承諾なくディアローラの商品の製造を委託した場合の見積もりをし,その見積書をディアローラに交付するなどして説得したが,ディアローラは自社工場の建設を実行した。 このディアローラの自社工場建設をきっかけに,ディアローラと被告間の本件業務提携に基づく事業展開に対する考え方の相違が明らかとなり,被告は,平成20年3月17日,ディアローラに対し,「提案書」(乙1)を交付し,原告,被告及びディアローラがそれぞれ自立性を強め,自立経営の地盤を確立するために,本件業務提携の再編(被告及びディアローラ出身者以外の原告役員への登用,ブランド戦略の見直 案書」(乙1)を交付し,原告,被告及びディアローラがそれぞれ自立性を強め,自立経営の地盤を確立するために,本件業務提携の再編(被告及びディアローラ出身者以外の原告役員への登用,ブランド戦略の見直し,販売手数料率の変更等)を提案した。 これに対し,Bは,同月25日,原告の役員専用電子掲示板(以下「本件掲示板」という。)に,ディアローラ側の役員(B及びD)は原告から退陣し原告の経営は被告に委ねる考えであることを投稿し(乙23の1[362]),これを受けて,Aは,同年4月16日,本件掲示板において,被告の立場から,原告を物流会社に特化して本件業務提携を再編すること(ディアローラ及び被告は得意先と直接取引を行う),販売手数料ではなく物流手数料に転換することを提案した(乙23の1[364])。同月25日,Bは,前日に行われたB,A及びCの協議を踏まえ,本件掲示板にディアローラは原告企業グループからの離脱を決意した旨を投稿したものの,同年5月15日に行われたB,A及びCの協議において,原告を解散するしかない,被告には解散後に原告の社員を雇用する場もないとAが発言したこと等を受け,同月26日,本件掲示板において,原告の解散を回避するためディアローラが主体となって原告を支えていく,被告は,道義上,原告の存続に不可欠な補償をすべきであるとして,被告に対し具体的なシミュレーションを依頼した(乙 23の2[370])。この依頼を受け,Cは,同年6月13日,被告が原告を物流会社として活用して物流手数料を支払う場合をシミュレーションして,物流手数料の試算(乙24)及び被告とディアローラの電算業務量の集計表(乙25の1~4)をディアローラに送信し,検討を依頼したところ(乙23の2[371]),同日,Bは,本件掲示板において,被告が正当な理由なく 算(乙24)及び被告とディアローラの電算業務量の集計表(乙25の1~4)をディアローラに送信し,検討を依頼したところ(乙23の2[371]),同日,Bは,本件掲示板において,被告が正当な理由なく本件業務提携から離脱するのであれば,人道的・道義的に原告に対しどのような支援をするのかを検討して欲しい旨回答した(乙23の2[372])。 その後も,C及びBは,本件掲示板において本件業務提携の再編の必要性,ディアローラの経営改善の必要性,原告社員の雇用問題等について議論を重ねたが,解決の目処が立たないまま膠着状態となった。 オ被告とディアローラとの間において本件業務提携の再編について上記エの協議がされていた平成20年4月25日,Dは,原告の取締役会の承認を得ることなく,原告の取締役であるB,A及びCに対し,「本日付で物流部部長を辞任させて戴き度く,その儀,宜しくお願いします。」と記載した電子メール(乙38の1)を送信し,同年5月2日,原告の従業員に対し,一身上の都合により4月末日付けで原告物流部の部長を辞任した旨の電子メール(乙38の2)を送信した。しかし,Dは,辞任表明を受けても被告が原告の物流部長の補充等の措置を講じないことを確認すると,実際には辞任することなく原告の物流部長としての執務を継続した。 カ被告とディアローラとの間において本件業務提携の再編について上記エの協議がされていた平成20年5月26日以降,Bは,「【参考】役員掲示板ラリー」などの表題を付して,上記エの本件掲示板への投稿内容をそのまま原告の一部従業員へ電子メールで送信した(乙39の1~4)。本件掲示板は,役員会を補助するものとして開設された原告役 員専用のものであって,B,D,A及びCのみがパスワードを入力することにより利用することが予定 メールで送信した(乙39の1~4)。本件掲示板は,役員会を補助するものとして開設された原告役 員専用のものであって,B,D,A及びCのみがパスワードを入力することにより利用することが予定されており,掲載内容の公開は予定されていなかった。 原告の従業員は,上記のBによる本件掲示板への投稿内容のメール送信により,原告が危機的状況にあると認識し非常に不安な状態となり,被告に対して意見書を送付し,早期解決による決定事項の開示,従業員に対する説明会の開催等を要望した。 キ被告とディアローラとの間において本件業務提携の再編について上記エの協議がされていた平成20年5月30日から6月2日にかけて,原告企業グループの慰安旅行が実施され,ディアローラと原告の従業員等が参加した。Bは,同年5月31日の夕食時に,旅行参加者に対し,本件業務提携の再編問題について,原告営業部の社員はディアローラに戻すが,管理部,物流部の社員は原告に残ることになるなどと説明した。 ク被告は,本件業務提携の再編問題について話合いによる解決は困難であると判断し,平成20年7月25日付け「申入書」(乙2)をディアローラへ送付し,原告の解散を申し入れた。この申入書には,「D取締役の物流部部長の辞任が,ブルーアンドピンク取締役会での承認を踏まずに執行され,また,役員掲示板の内容がほぼそのまま一部社員にメールで流されたり,慰安旅行時においては一方的な発表がされたりするなど,会社組織としての体をなしていない運営,親会社同士の守秘義務に反する情報流出という残念な事態に瀕しております。御社との間でこの再編問題の結論が出ていない段階での,社内不安をもたらすような情報流出はとりわけ問題であると考えます。重要な経営判断に係わる事項を親会社同士で協議している 念な事態に瀕しております。御社との間でこの再編問題の結論が出ていない段階での,社内不安をもたらすような情報流出はとりわけ問題であると考えます。重要な経営判断に係わる事項を親会社同士で協議している最中であり,その内容がそのまま子会社の社員にも漏れ出てしまうということは,両社における今後の信頼関係を前提とする誠実な協議は不可能であると言わざるを得ません。」,「ブ ルーアンドピンクを今後どう運営していくかについてもはや御社と協力関係を持てない状況に立ち至ったとここに判断し,『円満かつ効率的な販売及び安定した物流』の遂行は困難であるとの認識を致しました。」との記載がある。 その後,被告は,平成20年8月29日付け「通知書」(乙3)を原告へ送付し,本件業務提携に係る本件覚書(甲3)を解除する意思表示をし,同年10月31日をもって被告の商品の原告への出荷を終了し,同年11月1日以降,各得意先との直接取引を開始することを通知した。 この通知を受け,ディアローラは,被告に対し,原告への出荷停止に伴う原告社員の雇用問題等に対して人道上,道義上の責任を果たすよう申し入れたため,被告は,同年9月2日,ディアローラに対し,原告社員の被告又はディアローラへの転籍,希望退職者への特別退職金の支給等を内容とする雇用問題解決案を提示するとともに(乙23の4[390]),同月10日,同内容の雇用問題解決案を原告の社員に対して電子メールで送信した(乙4)。 (2) 上記(1)認定のとおり,被告とディアローラは,原告をそれぞれの商品の販売会社とすることを中核とし,相互協力により商品開発力,営業力を強化し,それぞれの商品のブランドを統一すること等により,商品流通におけるメーカーの影響力を高めること,原告,被告及びディアローラ3社が自己資本比率を高め無借 し,相互協力により商品開発力,営業力を強化し,それぞれの商品のブランドを統一すること等により,商品流通におけるメーカーの影響力を高めること,原告,被告及びディアローラ3社が自己資本比率を高め無借金経営を目指し,それぞれ独立して健全な経営を維持することなどを目的とする包括的かつ継続的な本件業務提携に基づき,原告を通して各商品を販売していたが,平成19年秋頃にディアローラが金融機関からの借入れにより自社工場を建設することを決定したことを端緒として,本件業務提携に基づく事業展開に対する考え方の相違が明確となり,平成20年3月17日以降,被告とディアローラとの間で,本件業務提携をどのように再編すべきかが問題となっ た。 この本件業務提携の再編につき,A及びCが被告の立場から,Bがディアローラの立場から,実際に会談したり本件掲示板に投稿したりして,協議,検討していたところ,原告代表者兼ディアローラ代表者であるBは,平成20年5月26日以降,本件業務提携の再編に関してA,C及びBが本件掲示板に投稿した内容を,原告代表者兼被告代表者であるA,原告取締役兼被告取締役であるCの承諾を得ることなく原告の一部従業員へ電子メールで送信した。本件掲示板は,原告の役員会を補助するために開設された原告役員専用の電子掲示板であって,B,D,A及びCのみがパスワードを入力することにより利用することができるものであり,利用者は掲載内容が上記4名以外の者に公開されることは全く想定していなかった上に,原告の一部従業員へ公開された内容は,本件業務提携の再編という原告企業グループの経営判断に関わる重要な問題に関するもので,しかも結論が出ていない段階での協議中の具体的な意見や提案のやり取りがそのまま公開されたため,原告社内に混乱を招き,従業員の不安を掻き う原告企業グループの経営判断に関わる重要な問題に関するもので,しかも結論が出ていない段階での協議中の具体的な意見や提案のやり取りがそのまま公開されたため,原告社内に混乱を招き,従業員の不安を掻き立てることとなったことからすると,Bの上記行為により,本件業務提携の再編問題の解決はより一層困難なものとなり,その結果,本件業務提携における被告とディアローラとの間の信頼関係は破壊されるに至ったものということができる。 さらに,上記(1)で認定したように,①原告代表者兼ディアローラ代表者であるBが,平成20年5月31日,慰安旅行に参加したディアローラ及び原告の従業員に対し,被告及びディアローラ間で協議中で結論の出ていない本件業務提携の再編問題につき,原告営業部の社員はディアローラに戻すが管理部,物流部の社員は原告に残ることになるなどと説明したこと,②同年4月25日,原告取締役兼ディアローラ取締役であるDが,被告が人員補充等の措置を講ずるか否かを確かめるため,辞任 する意思がないにもかかわらず原告の物流部長を辞任する旨の電子メールを被告の取締役であるA及びCへ送信し,かつ,同内容の電子メールを原告の従業員へ送付したことも,原告社内に混乱を招き,従業員の不安を掻き立てることとなったのであるから,本件業務提携の再編問題の解決をより困難なものとし,被告とディアローラとの間の信頼関係の破壊に影響を与えたものといえる。 本件業務提携は包括的かつ継続的な性質を有するものであり当事者間の信頼関係の破壊は本件業務提携に係る契約の正当な解除事由になると解すべきである。そして,上記のとおり,遅くとも平成20年8月29日までには,本件業務提携に係る被告とディアローラとの間の信頼関係は破壊されていたと認めることができ,同日付け通知書(乙3)による と解すべきである。そして,上記のとおり,遅くとも平成20年8月29日までには,本件業務提携に係る被告とディアローラとの間の信頼関係は破壊されていたと認めることができ,同日付け通知書(乙3)による本件業務提携に係る本件覚書(甲3)の解除には,正当な解除事由があるから,これにより本件覚書に基づく原告,被告及びディアローラ間の本件業務提携は終了したものと認めることができる。 以上に説示したところによれば,本件覚書に基づく本件業務提携は,平成20年8月29日付け通知書による解除により終了し,以降,被告は本件覚書第1条に基づく原告を通して被告商品を販売する契約上の義務を負わないから,同年11月1日以降原告を通さずに被告商品を自ら直接販売している被告の行為が,債務不履行を構成するということはできない。 したがって,本件覚書の債務不履行に基づく原告の請求(第2事件①の請求)は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。 3 争点4(商標権侵害の成否)について(1) 商標法37条1号の「指定商品…についての登録商標に類似する商標の使用」に該当するか否かの判断において,商標の類否は,同一又は類似の商品に使用された商標が外観,観念,称呼等によって取引者,需要 者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべきであり,かつ,その商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものであるが,商標の外観,観念又は称呼の類似は,その商標を使用した商品につき出所を誤認混同するおそれを推測させる一応の基準にすぎず,上記3点のうち類似する点があるとしても,他の点において著しく相違するか,又は取引の実情等によって,出所を混同するおそれが認められないものについては,これを「類似する商標」と認めることは にすぎず,上記3点のうち類似する点があるとしても,他の点において著しく相違するか,又は取引の実情等によって,出所を混同するおそれが認められないものについては,これを「類似する商標」と認めることはできない。 (2) 本件商標は,片仮名の標準文字で「ナーナニーナ」と左から右へ横書きにしてなるものであって,「ナーナニーナ」の称呼を生じ,特定の観念を生じない造語と認められる(乙59,被告代表者)。 (3) 被告標章は,別紙被告標章目録記載のとおり,小文字のアルファベットからなる「na」,「nan」及び「na」の3つの部分を左から右へ横書きにしてなるものであり,第1の部分「na」と第2の部分「nan」との間には,左方向に横転し右方向へ払うように湾曲した横長のハート形の図形(以下「本件図形1」という。)が配されており,また,第2の部分「nan」と第3の部分「na」との間には,左方向に横転し右方向に払うように湾曲した本件図形1より更に横長のハート形の図形(以下「本件図形2」という。)が上部に配され,本件図形2の左下に,本件図形2に接する縦棒状の図形(以下「本件縦棒図形」という。)が,本件図形2の右下に,左斜め下方向を向き右斜め上方向に払うように湾曲した本件図形1よりも小さなハートの図形(以下「本件図形3」という。)がそれぞれ配されている。 そして,本件棒状図形は,その左右に配された「n」の縦のラインと同様の書体,太さで表現されていることから,需要者において,アルファベットの一部を表したものと理解されるものと認められる。また,本件図形2は本件棒状図形の上部から右方向へ流れるように配されており,本件棒状図形が アルファベットの一部を表したものと理解されることに鑑みると,需要者は,本件図形2につき,アルファベットの一部をハート形の 棒状図形の上部から右方向へ流れるように配されており,本件棒状図形が アルファベットの一部を表したものと理解されることに鑑みると,需要者は,本件図形2につき,アルファベットの一部をハート形の図形をもって表現したものと理解するものと認めるのが相当であり,需要者は,本件棒状図形と本件図形2を併せて,小文字のアルファベットの「i」をデザイン化して表したものと認識するものといえる。 したがって,被告標章は,「na」,本件図形1,「nani」,本件図形3,「na」を左から右へ表したものということができる。そして,「na」「nani」「na」をローマ字読みすれば,「ナ」「ナニ」「ナ」,すなわち「ナナニナ」の称呼を生じるが,ローマ字において長音記号「ー」は用いられないこと,本件図形1及び本件図形3は,多少変形したものではあるがいずれもハート形の図形であることからすると,需要者は,装飾的なものとしてハート形の図形が用いられているものと認識し,原告が主張するように,これらの図形を需要者が長音記号「ー」として認識すると認めることはできず,被告標章から「ナーナニーナ」の称呼を生じると認めることはできない。 そうすると,被告標章の称呼は「ナナニナ」であり,アルファベットと図形を組み合わせて作成された造語であって特定の観念は生じないものといえる。 (4) 原告は,被告標章は被告のみならず需要者からも広く「ナーナニーナ」と称呼されてきたと主張するが,以下のように,被告又は需要者が被告標章を「ナーナニーナ」と称呼することを認めるに足りる証拠はない。 ア被告商品のパッケージ,容器,リーフレットには被告標章が付されているが(甲6,9,12の1~6),振り仮名等は記載されておらず,被告標章がどのような称呼を生じるのかについての記載は全くない。 被告商品のパッケージ,容器,リーフレットには被告標章が付されているが(甲6,9,12の1~6),振り仮名等は記載されておらず,被告標章がどのような称呼を生じるのかについての記載は全くない。 イ被告商品を紹介する雑誌記事において被告標章が小さく記載されているが,その称呼については全く記載がない(甲13)。 ウ被告のホームページにおける被告商品を紹介するページには被告標章が掲載されており,当該画面をプリントアウトした場合にはそのヘッダー部分の一部に「ナーナニーナ」と記載されることが認められるが(甲5,31),被告標章が表示された画面上には被告標章がどのような称呼を生じるのかについての記載は全くない。また,ヘッダー部分の記載は当該ページの画面自体には表示されておらず当該ページをプリントアウトして初めて需要者に認識されるものと認められる上,被告標章と「ナーナニーナ」の記載の間には他の記載が存在しており両者を結びつけるような記載は認められない。 エ甲32及び33によれば,被告の従業員が被告商品を「ナーナ商品」,「ナーナニーナMEZAIKミルキーダブラー」などと呼んでいたことが認められるが,上記2,(1)イで認定したように,本件業務提携においては,被告とディアローラの各商品のブランドを統一し,ドラッグストア等のピンクゾーンにおける標準ブランドとして「ナーナニーナ」を採用し,これを前提に原告が本件商標につき商標登録の出願手続を行い,実際に被告は「ナーナニーナ」ブランドとして被告商品を製造販売していたのであるから,被告の従業員は,本件業務提携における標準ブランドとしての「ナーナニーナ」を指して上記のように呼んでいたものと認めるのが相当であり,他方,被告の従業員が被告標章を指して「ナーナニーナ」と呼んでいたことを認めるに ,本件業務提携における標準ブランドとしての「ナーナニーナ」を指して上記のように呼んでいたものと認めるのが相当であり,他方,被告の従業員が被告標章を指して「ナーナニーナ」と呼んでいたことを認めるに足りる的確な証拠はない。 オ被告商品のリーフレット(甲34の1)には,被告商品4につき「ナーナニーナブランドとして,装いも新たにシリーズラインアップです。」と記載されているが,これは,被告商品4を上記エで述べた本件業務提携における標準ブランドである「ナーナニーナ」ブランドとして発売することを意味すると認めるのが相当であり,上記記載を理由に被告標章から「ナーナニーナ」の称呼が生じるとは認められない。 カ被告が取引先に送付した文書(甲10)には「ナーナニーナ」の記載が数箇所認められるが,いずれの記載も,上記エで述べた本件業務提携における標準ブランドとしての「ナーナニーナ」を意味するものと認めるのが相当であり,同記載を理由に被告標章から「ナーナニーナ」の称呼が生じるとは認められない。 また,被告が取引先に送付した文書(甲46)に記載された「ナーナニーナ」ついても,同様というべきである。 キインターネットの検索サイトにおいて「ナーナニーナ」で検索すると,検索結果として被告商品に関する多数のサイトが表示されることが認められるが(甲45の添付資料,乙47の1及び2),これらの結果は,上記エで述べたように,被告が被告商品を本件業務提携における標準ブランドである「ナーナニーナ」ブランドとして製造販売していたことによるものと推認され,被告標章の称呼が「ナーナニーナ」であることを示すものと認めることはできない。 (5) 以上によれば,本件商標と被告標章は,①外観においては全く異なり,②どちらも特定の観念を生じないから観念に 被告標章の称呼が「ナーナニーナ」であることを示すものと認めることはできない。 (5) 以上によれば,本件商標と被告標章は,①外観においては全く異なり,②どちらも特定の観念を生じないから観念において類似するということはできず,③称呼においては,本件商標の称呼は「ナーナニーナ」であり,被告標章の称呼は「ナナニナ」であり,前者が2つの長音を含む点において相違するものの,類似する印象を与えること自体は否定し難いものと認められる。 そうすると,本件商標と被告標章は,称呼において類似する印象を与えること自体は否定し難いものの,長音の有無において相違しており,外観においては全く異なり,観念においても類似するということはできないから,上記2(1)で認定した取引の実情を考慮しても,両者が全体として類似するとまでは認められない。 被告商品1,2は二重まぶた形成用ファイバーであり,被告商品3は二重まぶた形成用ファイバーを接着するための下地材であり,被告商品4は二重 まぶた形成用接着剤であって,被告商品はいずれも二重まぶたを形成するための化粧用具であるから,被告商品と,本件商標権の指定商品である「つけまつ毛」及び「つけまつ毛用接着剤」は,目元を装飾する化粧用具である点で用途が同一であり,若い女性が使用するものである点で需要者の範囲も同一であるから,被告商品は本件商標権の指定商品と類似する商品であると認めることができる。 しかしながら,被告標章が本件商標と類似すると認めることはできないから,被告が被告商品に被告標章を付して販売する行為が商標法37条1号に該当するということはできず,本件商標権を侵害するということはできない。 したがって,本件商標権の侵害に基づく原告の請求(第2事件②の請求)は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない 号に該当するということはできず,本件商標権を侵害するということはできない。したがって,本件商標権の侵害に基づく原告の請求(第2事件②の請求)は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。 4 結論 よって,原告の請求は,本件返還合意による返還金支払請求権に基づく返還金899万2270円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成21年7月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないからいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 岡本岳 裁判官 坂本康博 裁判官 寺田利彦 (別紙)被告標章目録 (別紙)返品金額一覧表 (別紙)被告商品目録 1 商品名メザイクストレッチファイバー120商品番号MENN2201 2 商品名メザイクストレッチファイバー60商品番号MENN1202 3 商品名メザイクフィッター商品番号MENN0661 4 商品名メザイクミルキーダブラー商品番号MENN0853 MENN0853

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