主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 原告の請求被告が平成15年5月29日付けで原告に対して行った,別表1の各事業年度欄記載の各法人税決定処分並びに無申告加算税欄記載の各無申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。 第2 事案の概要 1 事案の骨子(1) 法人税法等の規定法人税法(以下「法」という。)は,内国法人である公益法人については,収益事業を営む場合に限って,法人税を納める義務がある旨規定し(法4条),収益事業の範囲は,法施行令5条1項によって規定されている。 他方,法施行令5条2項1号は,当該収益事業を行う場合においても,特定従事者(身体障害者等)がその事業に従事する者の半数以上を占め,かつ,その事業がこれらの者の生活の保護に寄与している場合には,当該事業は,収益事業から除外すると規定しており,この場合には,公益法人は,法人税を納付すべき義務がない。 (2) 事実関係ア原告は,宗教法人法に基づいて設立された公益法人であり(法2条6号),平成10年3月期から平成14年3月期まで,収益事業を営んでいた。 イ被告は,原告の営んでいた収益事業に対して,別表1の各事業年度欄に該当する所得金額及び法人税額記載の各法人税決定処分(以下「本件法人税決定処分」という。),並びに,無申告加算税の各賦課決定処分(以下,併せて「本件決定処分等」という。)を行った。 (3) 本件訴え本件は,被告が,原告が営んでいた収益事業は,法施行令5条2項1号所定の収益事業からの除外事由があるにもかかわらず,本件決定処分等を行ったのは違法である等と主張して,原告が,被告を相手に, 本件は,被告が,原告が営んでいた収益事業は,法施行令5条2項1号所定の収益事業からの除外事由があるにもかかわらず,本件決定処分等を行ったのは違法である等と主張して,原告が,被告を相手に,本件決定処分等の取消しを求めた事案である。 2 前提事実次の事実は,当事者間に争いがない。 (1) 原告原告は,昭和60年8月1日に宗教法人法に基づいて設立された宗教法人であり,法2条6号所定の公益法人に該当する。 (2) 原告の行う収益事業ア原告は,平成10年3月期から平成14年3月期(以下「本件各事業年度」という。)まで,次の事業(以下「本件各事業」という。)を営んでいた。 (ア) 原告は,本件各事業年度において,医療法人アガペ会ほかに対し,病棟などの不動産を賃貸していた(不動産貸付業)。 (イ) 原告は,本件各事業年度において,「アガペソーラーホーム」と称する老人ホームを有料で営んでいた(有料老人ホーム業)。 (ウ) 原告は,平成14年3月期において,アガペ会に対し,MRIなどの医療機器を賃貸していた(物品貸付業)。 イ原告が営んでいた不動産貸付業は法施行令5条1項5号所定の収益事業に,同有料老人ホーム業は法施行令5条1項15号所定の収益事業に,同物品貸付業は法施行令5条1項4号所定の収益事業に各該当する。 (3) 被告の税務調査等ア被告職員は,平成4年,平成6年及び平成10年,原告の税務調査を行った。 イ被告職員は,本件決定処分等(平成15年5月29日付け)に先立ち,原告代表者,同人の夫,同人らの子供5名及び孫1名の銀行預金の有無・内容や,証券会社との取引の有無・内容を調査した。 (4) 不服申立て等ア原告は,平成15年6月 29日付け)に先立ち,原告代表者,同人の夫,同人らの子供5名及び孫1名の銀行預金の有無・内容や,証券会社との取引の有無・内容を調査した。 (4) 不服申立て等ア原告は,平成15年6月19日付けで,被告に対し,本件決定処分等に対する異議申立てをしたが,被告は,同年9月10日,同異議申立てを棄却する決定をした。 イそこで,原告は,平成15年9月16日付けで,国税不服審判所長に対し,本件決定処分等の取消しを求める審査請求を行ったが,同所長は,平成16年5月31日付けで,上記審査請求を棄却する裁決をした。 ウそこで,更に,原告は,平成16年7月22日,被告を相手に,本件決定処分等の取消しを求めて,本件訴えを提起した。 3 関係法令(1) 法人の納税義務一般宗教法人は公益法人に該当する(法2条6号)。内国法人は法人税を納める義務があるが(法4条1項本文),公益法人については,収益事業を営む場合に限り納税義務がある(法4条1項ただし書)。すなわち,内国法人である公益法人の所得のうち,収益事業から生じた所得以外の所得については,法人税は課されない(法7条)。 (2) 収益事業に対する課税ア収益事業とは,販売業,製造業その他政令で定める事業で,継続して事業場を設けて営まれるものをいう(法2条13号)。物品貸付業(法施行令5条1項4号),不動産貸付業(法施行令5条1項5号)及び旅館業(法施行令5条1項15号)などが収益事業に該当する。 イただし,収益事業を営んでいる公益法人が,① その事業に従事する次のウに掲げる者(以下「特定従事者」という。)が,その事業に従事する者の総数の半数以上を占め(以下「①の要件」という。),かつ,② その事業がこれらの者の生活の保護に寄与 ,① その事業に従事する次のウに掲げる者(以下「特定従事者」という。)が,その事業に従事する者の総数の半数以上を占め(以下「①の要件」という。),かつ,② その事業がこれらの者の生活の保護に寄与しているものである場合(以下「②の要件」という。)は,法施行令5条1項に規定する収益事業(その収益に対しては法人税の納付義務がある事業)には含まれない(法施行令5条2項1号)。 ウ特定従事者とは,身体障害者,年齢65歳以上の者,配偶者のない女子で児童を扶養している者などをいう。 4 争点本件の争点は,抽象的には,本件決定処分等の適否であるが,具体的には,次の5点である。 (1) 争点1(収益事業の除外事由該当性)本件各事業は,法施行令5条2項1号の適用があり,収益事業からの除外事由に該当するか。 (2) 争点2(課税要件明確主義違反)法施行令5条2項1号について,被告主張の解釈をとると,課税要件明確主義に違反するか。 (3) 争点3(信義則違反等)本件決定処分等の全部又は一部が,信義則ないし禁反言法理に反し違法なものであるか。 (4) 争点4(質問検査権行使の違法)被告が,本件決定処分等に先立ち行った質問検査権の行使が違法であり,これによって,本件決定処分等が違法となるか。 (5) 争点5(法人税額及び無申告加算税額)原告の本件各事業年度の本件各事業の所得金額,法人税額,無申告加算税額は幾らか。 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(収益事業の除外事由該当性)について(1) 原告の主張本件各事業は,法施行令5条2項1号に規定する収益事業の除外事由に該当するから,法人税が課せられる収益事業には含まれない。その理由は,次のとおりである 当性)について(1) 原告の主張本件各事業は,法施行令5条2項1号に規定する収益事業の除外事由に該当するから,法人税が課せられる収益事業には含まれない。その理由は,次のとおりである。 ア法施行令5条2項1号の規定等(ア) 法施行令5条2項1号の規定① 収益事業に従事する特定従事者が,その事業に従事する者の総数の半数以上を占め(①の要件),かつ,② その事業がこれらの者の生活の保護に寄与しているものである場合(②の要件)は,法施行令5条1項に規定する収益事業(その収益に対しては法人税の納付義務がある事業)には含まれない(法施行令5条2項1号)。 (イ) 法施行令5条2項1号の解釈①の要件は,公益法人の収益事業に対する課税の除外事由として,運営主体の側すなわち当該収益事業運営組織面からみて,特定従事者が半数を超えていなければ,収益事業の人員体制からみても,収益事業の除外事由とするに相応しくないとの観点に立脚している。 他方,②の要件は,被用者側すなわち当該特定従事者の立場からみて,その事業が,これらの者の生活の保護に寄与しているものでなければならない,との趣旨で規定している。そして,雇用されている個々の特定従事者にとって,「生活の保護に寄与している」か否かについては,生活保護基準も参考にして判断すべきである。 イ ①の要件の充足(ア) 平成10年3月期平成10年3月期当時,本件各事業の従業員数は17名であり,うち11名は特定従事者であるから,本件各事業について①の要件を充足している(別表2参照)。 (イ) 平成11年3月期から平成14年3月期原告の本件各事業の従業員数,うち特定従事者数は,平成 者であるから,本件各事業について①の要件を充足している(別表2参照)。 (イ) 平成11年3月期から平成14年3月期原告の本件各事業の従業員数,うち特定従事者数は,平成11年3月期から平成14年3月期についても,平成10年3月期と概ね同様の事実関係が認められ,①の要件を充足している(別表2参照)。 ウ ②の要件の充足(ア) 平成10年3月期特定従事者のうち,年間300万円ないし400万円の給与が支給されている者(別表2のとおり3名)については,この給与によって,家族を養うことが可能である。 特定従事者のうち,年間100万円から130万円の給与が支給されている者(別表2のとおり6名)については,生活保護基準(大阪市の場合,住居を有する者の年間生活保護費は95万4360円である。)を超える程度の生活が可能である。 その余の特定従事者(別表2のとおり2名)についても,その給与は年間59万5800円と47万8000円であったが,住居費を除く生活保護費の50ないし60パーセント以上の給与を原告から得ており,生活の保護に寄与していると認められる。 それゆえ,本件各事業は,②の要件を充足している。 (イ) 平成11年3月期から平成14年3月期原告の本件各事業が特定従事者の生活の保護に寄与しているかは,平成11年3月期から平成14年3月期についても,平成10年3月期と概ね同様の事実関係が認められ,②の要件を充足している(別表2参照)。 エまとめ以上から,本件各事業は,いずれも法施行令5条2項1号の規定する①の要件及び②の要件を具備しているから,原告には法4条に基づく法人税納税義務が生ぜず,本件各事業年度についてなされ まとめ以上から,本件各事業は,いずれも法施行令5条2項1号の規定する①の要件及び②の要件を具備しているから,原告には法4条に基づく法人税納税義務が生ぜず,本件各事業年度についてなされた本件決定処分等は違法である。 (2) 被告の主張本件各事業は,法施行令5条2項1号に規定する収益事業の除外事由に該当しないから,法人税が課せられる収益事業に含まれる。その理由は,次のとおりである。 ア法施行令5条2項の判定単位収益事業から除かれる事業に該当するか否かの判定単位は,法施行令5条1項が収益事業を限定列挙しているから,公益法人が複数の収益事業を営んでいるとしても,一括で判断するのではなく,各収益事業ごとに判断すべきである。 イ ①の要件について不動産貸付業の平成10年3月期は,全従業員3名のうち特定従事者は1名であり,その事業に従事する特定従事者の占める割合が,その事業に従事する者の総数の半数以上でないから,①の要件を欠いている(別表3参照)。 不動産貸付業のその他の各事業年度,有料老人ホーム業の本件各事業年度,及び物品貸付業の平成14年3月期においては,その事業に従事している特定従事者の占める割合が,その事業に従事する者の総数の半数以上となっていることから(別表3参照),①の要件を充足している。 ウ ②の要件について(ア) 一般論法施行令5条2項1号の規定は,収益事業であっても社会政策上収益事業から除外することにしていると解されるところから,その事業が営利を目的とせず,従事する特定従事者の生活の保護に寄与することを主目的として行われていると認められる場合が,これに該当すると解すべきであり,具体的には,当該事業に係る収入金 ところから,その事業が営利を目的とせず,従事する特定従事者の生活の保護に寄与することを主目的として行われていると認められる場合が,これに該当すると解すべきであり,具体的には,当該事業に係る収入金額又は利益金額の相当部分を,特定従事者に給与等として支給しているか否かによって判断すべきである(国税不服審判所平成元年8月28日裁決・裁決事例集38-135)。 (イ) 本件への当てはめ本件各事業の収入金額及び剰余金等処分可能額に占める原告の特定従事者の給与等の割合は,別表4の不動産貸付業,有料老人ホーム業及び物品貸付業の各割合欄記載のとおりであって,この程度の割合では,本件各事業に係る収入金額又は利益金額の相当部分を特定従事者に給与として支給しているとはいえず,本件各事業が特定従事者の生活の保護に寄与するためのものとは認められない。また,事業の内容からも,本件各事業が,特定従事者の雇用を通じて,これらの者の自立,福祉の向上等を図るために行われているとは認められない。 したがって,本件各事業は,いずれも②の要件を充足せず,法施行令5条2項1号に規定する収益事業の除外事由に該当しない。 2 争点2(課税要件明確主義違反)について(1) 原告の主張ア課税要件明確主義について租税法律主義は,国民生活の法的安定性と予測可能性を保障し,恣意的で不公平な課税を予防する目的で,憲法84条によって定められている。この租税法律主義の一内容として,課税要件明確主義があり,課税要件についての定めをなす場合には,その定めはなるべく一義的で明確でなければならない。 イ課税要件明確主義違反ところが,被告は,②の要件について,法施行令5条2項1号が「その事業がこれらの者の生活の なす場合には,その定めはなるべく一義的で明確でなければならない。 イ課税要件明確主義違反ところが,被告は,②の要件について,法施行令5条2項1号が「その事業がこれらの者の生活の保護に寄与している場合」と規定しているにもかかわらず,②の要件を充足するには,その事業に係る収入金額又は利益金額の相当部分を特定従事者に給与として支給しているか否かによって判断すると主張している。 もし,被告の主張が認められれば,②の要件として規定されている条文の文言からは,およそ理解することが不可能な,「その事業に係る収入金額又は利益金額の相当部分を特定従事者に給与として支給しているか否か」という要件を導き出している。これでは,法施行令5条2項1号について,不明確で恣意的な解釈を許し,国民に予測不能の困難を強いることとなるから,課税要件明確主義に反する違法な解釈であって,そのような解釈は許されない。 (2) 被告の主張ア課税要件明確主義について租税法律主義の原則上,課税要件は実定法上明確に規定されていることが要求されるのであり,租税法規の定めはできるだけ明確かつ一義的であることが望ましい。この点は,納税者の課税に対する予測を可能ならしめ,法的安定性を確保することからも必要であり,租税法規の解釈に当たっては,法の文言を重視すべきである。 イ課税要件明確主義違反ではないしかし,租税法規の究極の目的は,租税正義の実現にあることからすれば,租税法規の解釈については,租税の公共性,公平負担の原則等,税法の基本原則をふまえつつ,法規の目的に照らし,その経済的,実質的意義を考慮して,客観的,合理的に解釈すべきである。 それゆえ,文理解釈以外の解釈方法であっても,それだけでは違法とはいえず,また, 則をふまえつつ,法規の目的に照らし,その経済的,実質的意義を考慮して,客観的,合理的に解釈すべきである。 それゆえ,文理解釈以外の解釈方法であっても,それだけでは違法とはいえず,また,課税要件明確主義に反するものでもない。 3 争点3(信義則違反等)について(1) 原告の主張ア原告の信頼,それを裏切る本件決定処分等(ア) 原告は,平成4年12月,平成6年10月,平成10年8月,被告職員から税務調査を受けた。原告は,その際,被告職員との間で,原告の収益事業が法施行令5条2項1号所定の収益事業の除外事由に該当するか否かについて論争したが,被告は,その度毎に,原告の行っている収益事業に対して,法人税を課することはなかった。 (イ) また,被告は,平成5年以降,それまで必ず送付していた法人税申告用紙一式の送付を中止した。これを受けて,原告は,平成6年3月31日,被告に対し,収益事業廃止届(乙2)を提出した。 (ウ) そのため,原告は,被告が原告の収益事業に対する課税をしないものと信頼していた。ところが,被告は,平成15年5月29日付けで,本件決定処分等を行った。 イ信義則及び禁反言法理違反(ア) 本件決定処分等の違法原告は,平成10年以後も,原告の収益事業については,被告が法施行令5条2項1号所定の収益事業の除外事由に該当することを認めていると信じて,確定申告をしなかったのである。したがって,被告が,このような原告に対し,突然,本件決定処分等に及ぶことは,信義則,禁反言法理からみて違法である。 (イ) 無申告加算税等の違法仮に,本件決定処分等のうち,本件法人税決定処分が違法でないとしても,上記(ア)のとおり,被告が原告の収益事業に対する 反言法理からみて違法である。 (イ) 無申告加算税等の違法仮に,本件決定処分等のうち,本件法人税決定処分が違法でないとしても,上記(ア)のとおり,被告が原告の収益事業に対する課税をしないものと信頼して,本件各事業年度の収益事業の確定申告をしなかった原告に対し,無申告加算税及び延滞税までをも課することは,信義則上許されない。 (2) 被告の主張ア適用要件について課税処分において,信義則が適用されるための要件としては,① 税務官庁が,納税者に対して,信頼の対象となる公的見解を表示したこと,②納税者の信頼が保護に値する(納税者の責めに帰すべき事由がない。)ものであること,③納税者が表示を信頼し,それに基づいて何らかの行為をしたことが必要である。 イ要件欠如(ア) ①要件の欠如a 被告による法人税申告用紙一式の送付は,納税者に対する適正な申告及び納付を促進するための行政サービスの一環であり,被告からの法人税申告用紙一式の送付の有無は,被告の公的見解の表示ではない。 b 平成4年に被告職員が原告の調査を行っているが,原告に対して,収益事業課税についての議論をしたことはない。平成6年に被告職員が原告の調査を行っているが,このときは,原告の外注費等の適否を検討したものであり,収益事業課税に関する調査を実施したものではない。平成10年に被告職員が原告の調査を行っているが,この調査は,原告従業員らに対する源泉徴収に係る所得税の源泉徴収の適否についての調査であった。 以上から,被告は,原告に対して,収益事業課税について,公的な見解を示したことはない。 c したがって,本件では,信義則及び禁反言法理違反を認めるのに必要な①要件を欠如している。 以上から,被告は,原告に対して,収益事業課税について,公的な見解を示したことはない。 c したがって,本件では,信義則及び禁反言法理違反を認めるのに必要な①要件を欠如している。 (イ) ③要件の欠如原告は,もともと行っていた収益事業を継続して行っているのであり,被告職員の表示を信頼し,それに基づいて何らかの行為をしたものではないので,③要件も欠如している。 ウまとめ以上から,原告には,信義則を適用すべき上記要件のうち,①要件及び③要件を欠くこととなるので,本件決定処分等が信義則に反し,違法であるとはいえない。 4 争点4(質問検査権行使の違法)について(1) 原告の主張ア法153条ないし156条は課税庁に質問検査権を認めているが,その質問検査権は誰に対しても行えるものではなく,その対象は同条で明確に規定している。ところが,被告は,本件決定処分等に際し,原告代表者及びその夫に対してだけではなく,同人らの子5名及び孫1名などにまで,銀行預金の有無・内容の調査や,証券会社との取引の有無・内容の調査をしている。 イ被告の上記質問検査権の行使は,原告の本件各事業との関連性が全く認められず,質問検査権行使の前提条件を欠く著しく違法なものであり,これにより本件決定処分等も違法となるというべきである。 (2) 被告の主張ア調査手続の適法性質問検査権については,法153条ないし156条に規定されているが,質問検査権の範囲,程度,時期,場所等については実定法上特段の定めはされておらず,質問検査権の実施の細目については,質問検査の必要があり,かつ,これを相手方の私的利益との衡量において,社会通念上相当な限度にとどまる限り,権限のある税務職員の合理的な選択に委ねら はされておらず,質問検査権の実施の細目については,質問検査の必要があり,かつ,これを相手方の私的利益との衡量において,社会通念上相当な限度にとどまる限り,権限のある税務職員の合理的な選択に委ねられていると解すべきである。 これを本件について見るに,被告が,原告代表者及びその夫,同人らの子供5名及び孫1名の銀行預金の有無・内容の調査や,証券会社との取引の有無・内容の調査をしたのは,原告の本件各事業との関連性を判断するために必要な範囲で行ったものであり,違法な行為ではない。 イ調査手続と課税処分との関係質問検査権の実施は,特定の者に対する課税行政処分とは本来別個のものである。したがって,特定の者に対する税に関する調査手続が違法であるとしても,これが後続する課税処分の違法をもたらすものとはいえないから,本件において,仮に調査手続に違法があったとしても,それが本件決定処分等の違法に結びつくものではない。 5 争点5(所得金額,法人税額,無申告加算税額)について(1) 被告の主張被告の本件各事業年度の不動産貸付業,有料老人ホーム業,物品貸付業による所得金額,その合計所得金額(課税標準額),法人税額,無申告加算税額は,別表5,6記載のとおりであり,本件決定処分等の所得金額,法人税額,無申告加算税額(別表1記載のとおり)は,別表5,6記載の金額の範囲内である。 (2) 原告の認否被告の上記主張は争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(収益事業の除外事由該当性)の検討(1) 事実関係証拠(甲3,甲5の2)及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。 ア原告(宗教法人,公益法人)は,本件各事業年度において,不動産貸付業,有料老人ホーム業を営み,平成14年 証拠(甲3,甲5の2)及び弁論の全趣旨によると,次の事実が認められる。 ア原告(宗教法人,公益法人)は,本件各事業年度において,不動産貸付業,有料老人ホーム業を営み,平成14年3月期において,物品貸付業を営んでいた。原告が営んでいた不動産貸付業,有料老人ホーム業,物品貸付業(本件各事業)は,法施行令5条1項5号,15号,4号所定の収益事業に各該当する。 イ原告の本件各事業年度における本件各事業毎の従業員数,うち特定従事者数は別表3記載のとおりであり,原告の本件各事業年度における本件各事業毎の収入金額,剰余金等処分可能額,特定従事者に支給した給与等の金額は,別表4記載のとおりである。 (2) 法施行令5条2項1号の規定等ア法施行令5条2項1号の規定内国法人は法人税を納める義務があるが(法4条1項本文),公益法人については,収益事業を営む場合に限り納税義務がある(法4条1項ただし書)。 しかし,① 収益事業に従事する特定従事者が,その事業に従事する者の総数の半数以上を占め(①の要件),かつ,② その事業が,これらの者の生活の保護に寄与しているものである場合(②の要件)は,法施行令5条1項に規定する収益事業(その収益に対しては法人税の納付義務がある事業)には含まれず(法施行令5条2項1号),法人税の納税義務はない。 イ法施行令5条2項1号の判定単位収益事業から除かれる事業に該当するか否かの判定単位は,法施行令5条1項が収益事業を限定列挙しているから,公益法人が複数の収益事業を営んでいるとしても,一括で判断するのではなく,各収益事業ごとに判断すべきである。 (3) ①の要件の検討原告の平成10年3月期の不動産貸付業は,全従業員3名のう の収益事業を営んでいるとしても,一括で判断するのではなく,各収益事業ごとに判断すべきである。 (3) ①の要件の検討原告の平成10年3月期の不動産貸付業は,全従業員3名のうち特定従事者は1名であり,その事業に従事する特定従事者の占める割合が,その事業に従事する者の総数の半数以上でないから(別表3参照),①の要件を欠いている。 原告の本件各事業年度の不動産貸付業(平成10年3月期を除く。),有料老人ホーム業,及び平成14年3月期の物品貸付業においては,その事業に従事している特定従事者の占める割合が,その事業に従事する者の総数の半数以上となっていることから(別表3参照),①の要件を充足している。 (4) ②の要件の検討ア当裁判所の解釈法は,公益法人については,収益事業から生じた所得についてのみ法人税を課す旨規定し(法4条1項ただし書),また,公益法人が収益事業を行う場合であっても,①の要件及び②の要件を充たす事業は,収益事業に含まれないものとする旨規定している(法施行令5条2項1号)。 これらの規定の趣旨は,公益法人の行う事業が収益事業に該当するものである場合は,他の営利法人との課税の公平を図る目的から,法人税を課すことを原則とするが,本来収益事業に該当する内容の事業であっても,その事業が従業員の半数以上の者を特定従事者として雇用し(①の要件),これらの者の生活の保護に寄与しているものである場合(②の要件)には,その公益性を考慮し,社会政策上法人税を課すことは相当でないと判断して,これを収益事業から除外したものと解される。 そして,「その事業が,これらの者の生活の保護に寄与しているもの」(②の要件)とは,本来収益事業に当 を課すことは相当でないと判断して,これを収益事業から除外したものと解される。 そして,「その事業が,これらの者の生活の保護に寄与しているもの」(②の要件)とは,本来収益事業に当たるものについて,社会政策上特例的に収益事業から除外している趣旨に照らすと,その事業が,営利を主たる目的として行われているものではなく,従事する特定従事者の生活の保護に寄与することを主たる目的として行われているものであり,具体的には,当該事業に係る収入金額又は利益金額の相当部分を特定従事者に給与等として支給していることが必要であると解する。 イ原告主張の検討(ア) 原告の主張原告は,上記アの当裁判所の解釈とは異なり,次のとおり主張する。 a ②の要件は,被用者側すなわち当該特定従事者の立場からみて,その事業が,これらの者の生活の保護に寄与しているものでなければならない,との趣旨で規定している。 b そして,雇用されている個々の特定従事者にとって,「生活の保護に寄与している」か否かについては,生活保護基準も参考にして判断すべきである。 (イ) 検討a 文言解釈②の要件は,「その事業が,これらの者の生活の保護に寄与しているものである場合」と定められており,収益事業を主語とし,収益事業が特定従事者の生活の保護に寄与しているものと規定されているのであるから,被用者側すなわち当該特定従事者の立場からみて,その事業がこれらの者の生活の保護に寄与しているものとの趣旨で規定しているものではない。 それゆえ,原告の上記(ア)の主張は,既にこの点(②の要件の文言解釈に反する)で失当であるとい れらの者の生活の保護に寄与しているものとの趣旨で規定しているものではない。 それゆえ,原告の上記(ア)の主張は,既にこの点(②の要件の文言解釈に反する)で失当であるといわざるを得ない。 b ②の要件を設けた意義が没却原告が主張するように,②の要件を個々の特定従事者の立場からみれば,収益事業の中から特定従事者に給与が支給される限り,個々の特定従事者の生活の保護に寄与することになるから,②の要件を充たすことになり(現に,原告自身,別表2のとおり,特定従事者に対する年間数十万円の給与支払でも,②の要件を充足していると主張している。),あえて②の要件を設けた意義が没却されてしまう。 それゆえ,原告の上記(ア)の主張は,この点でも失当であるといわざるを得ない。 c 課税回避が可能原告の解釈によれば,収益事業を営む公益法人が多大な収益をあげながら,その課税を免れるために,多数の特定従事者を敢えて雇用し,それらの者にわずかな給与を支払い,①の要件さえ形式的に充足すれば,②の要件はなきに等しいものであるから,たとえ,特定従事者に対する給与等の支給額をはるかに上回る剰余金が生じていても,たやすく法人税課税を免れることができる。 このような結論は,同様の事業を営み,同程度の剰余金を得ている一般私企業との間に公平を欠くのみならず,同様の事業を営みながら,①の要件を充たしていない公益法人と対比しても,不公平である。それゆえ,原告の上記(ア)の主張は,この点でも失当であるといわざるを得ない。 d 生活保護基準を参考にすることの不合理性もっとも,原告は,「雇用されている個々の特定従事 え,原告の上記(ア)の主張は,この点でも失当であるといわざるを得ない。 d 生活保護基準を参考にすることの不合理性もっとも,原告は,「雇用されている個々の特定従事者にとって,『生活の保護に寄与している』か否かについては,生活保護基準も参考にして判断すべきである。」と主張する。 しかし,「生活の保護に寄与している」か否かについて,生活保護基準も参考にするとすれば,例えば,公益法人が主催する身体障害者の授産所において,特定従事者(身体障害者)の自立促進を目的として,特定従事者を集め,特定従事者による作品を制作・販売し,幾ばくかの収益が生じている場合に,その収益の大部分を特定従事者の給与等として分配したにもかかわらず,一人当たりの分配額(給与額)が生活保護基準を相当下回る場合は(このような事例が非常に多い),法人税課税を受けることになる。 しかし,このような結論は到底是認することができず,原告の上記(ア)の主張は,この点でも失当であるといわざるを得ない。 e 当裁判所解釈の相当性②の要件にいう「生活の保護に寄与する」とは,個々の特定従事者に支給される給与額で評価するのではなく,収益事業から生じた剰余金等の処分可能な金額のあり方に着目し,これに占める特定従事者に支給する給与等の割合という手法を用いて,その事業が,特定従事者の自立促進を目的とするものか,それ以上に利益追求を目指すものかを評価すべきである。 当裁判所が前記アで説示した解釈は,収益事業の収入金額及び剰余金額等の処分可能額に占める特定従事者の給与等の割合を基に,当該事業が特定従事者の生活の保護に寄与する性質を有するか否かを判定しようとする 当裁判所が前記アで説示した解釈は,収益事業の収入金額及び剰余金額等の処分可能額に占める特定従事者の給与等の割合を基に,当該事業が特定従事者の生活の保護に寄与する性質を有するか否かを判定しようとするものであり,一般私企業や他の公益法人との課税の公平の要請に答えるものである。 それゆえ,原告の上記(ア)の主張は,この点でも失当であるといわざるを得ない。 ウ本件への適用以上から,②の要件は,収益事業に係る収入金額又は利益金額の相当部分を特定従事者に給与等として支給しているか否かによって判断すべきである。 そして,原告の本件各事業年度の本件各事業における収入金額又は利益金額(剰余金等処分可能額)の特定従事者に対する給与として支払われている割合は,別表4の不動産貸付業,有料老人ホーム業及び物品貸付業の各割合欄記載のとおりであり,その割合が著しく低い。 したがって,上記程度の割合では,到底,収益事業に係る収入金額又は利益金額の相当部分を特定従事者に対する給与等として支給しているとはいえず,原告の本件各事業年度の本件各事業は,いずれも②の要件(当該事業が特定従事者の生活保護に寄与するためのものであること)を充足していない。 (5) まとめ以上によると,原告の平成10年3月期の不動産貸付業は①の要件を欠いており,原告の本件各事業年度の本件各事業はいずれも②の要件を欠いている。それゆえ,原告の本件各事業年度の本件各事業は,法施行令5条2項1号に規定する収益事業の除外事由に該当せず,法人税が課せられる収益事業に含まれる。 2 争点2(課税要件明確主義違反)の検討(1) 課税要件明確主義租税法律主義は,国民生活の法的安定性と予測可能性を保障し,恣意的で不公平な課 法人税が課せられる収益事業に含まれる。 2 争点2(課税要件明確主義違反)の検討(1) 課税要件明確主義租税法律主義は,国民生活の法的安定性と予測可能性を保障し,恣意的で不公平な課税を予防する目的で,憲法84条によって定められている。この租税法律主義の一内容として,課税要件明確主義があり,課税要件についての定めをなす場合には,その定めはなるべく一義的で明確でなければならない。 すなわち,租税法律主義の原則上,課税要件は実定法上明確に規定されていることが要求されるのであり,租税法規の定めはできるだけ明確かつ一義的であることが望ましい。この点は,納税者の課税に対する予測を可能ならしめ,法的安定性を確保することからも必要であり,租税法規の解釈に当たっては,法の文言を重視すべきである。 しかし,租税法規の究極の目的は,租税正義の実現にあることからすれば,租税法規の解釈については,租税の公共性,公平負担の原則等,税法の基本原則をふまえつつ,法規の目的に照らし,その経済的,実質的意義を考慮して,客観的,合理的に解釈することも許される。 (2) 本件への適用法施行令5条2項1号所定の「その事業が特定従事者の生活の保護に寄与しているもの」の解釈についても,租税の公共性,公平負担の原則等,税法の基本原則をふまえつつ,法規の目的に照らし,その経済的,実質的意義を考慮して,客観的,合理的に解釈すれば,前記1(4)ア,同イ(イ)で検討したとおり,「その事業が,営利を主たる目的として行われているものではなく,従事する特定従事者の生活の保護に寄与することを主たる目的として行われているものであり,具体的には,当該事業に係る収入金額又は利益金額の相当部分を特定従事者に給与等として支給していることが必要である。」と 特定従事者の生活の保護に寄与することを主たる目的として行われているものであり,具体的には,当該事業に係る収入金額又は利益金額の相当部分を特定従事者に給与等として支給していることが必要である。」と解することになる。 すなわち,「その事業が特定従事者の生活の保護に寄与しているもの」という規定は,解釈によってその意味内容を上記のとおり客観的に明らかにすることができるから,上記のとおり解したからといって,課税要件明確主義に反して違法であるとはいえない。 むしろ,「その事業が,特定従事者の生活の保護に寄与しているもの」という規定について,原告が主張するように,「当該特定従事者の立場からみて,その事業がこれらの者の生活の保護に寄与しているものでなければならない。」との趣旨と解すると,前記1(4)イ(イ)aのとおり,法施行令5条2項1号の文言に反する解釈をすることになり,課税要件明確主義に反する違法な解釈ということになる。 3 争点3(信義則違反等)の検討(1) 課税処分における信義則の適用について租税法規に適合する課税処分について,法の一般原則である信義則の法理の適用により,課税処分を違法なものとして取り消すことができる場合があるが,法律による行政の原理,なかんずく租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては,上記法理の適用については慎重でなければならず,租税法規の適用における納税者間の平等,公平という要請を犠牲にしても,なお,当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような,特別の事情が存する場合に,初めて上記法理の適用の是非を考えるべきである。 そして,その特別の事情が存するかどうかの判断に当たっては,少なくとも,① 税務官庁が,納税者に るといえるような,特別の事情が存する場合に,初めて上記法理の適用の是非を考えるべきである。 そして,その特別の事情が存するかどうかの判断に当たっては,少なくとも,① 税務官庁が,納税者に対して,信頼の対象となる公的見解を表示したこと,② 納税者の信頼が,保護に値する(納税者の責めに帰すべき事由がない)ものであること,③ 納税者が公的見解の表示を信頼し,それに基づいて何らかの行為をしたこと,が必要である(最高裁昭和62年10月30日判決・訟務月報34巻853頁)。 (2) 本件への当てはめア公的見解の表示(要件①)について(ア) 原告の主張原告は,次のとおり主張する。 a 被告が,平成4年,平成6年及び平成10年,法施行令5条2項1号の除外事由について,原告と論争した上で,本件各事業について課税しなかった。 b 被告が,平成5年から,それまで原告に送付していた法人税申告用紙一式を送付しなくなった。これを受けて,原告は,平成6年3月31日,被告に対し,収益事業廃止届を提出した。 c それゆえ,原告は,被告が本件各事業について課税しないと信頼していた。 (イ) 検討被告職員が,平成4年,平成6年及び平成10年,原告の調査をしていることは当事者間に争いはないが,その際,被告の一定の責任ある立場の者の正式な見解という形で,原告が営んでいた本件各事業について,課税しない旨表示されたことを認めるに足りる証拠はないから,上記各調査の際に,信頼の対象となる被告の公的見解が表示されたとはいえない。 また,課税庁が納税者に対し法人税申告用紙一式を送付することは,納税者に対する適正な申告及び納付を促進するための行政サービスの一環であって,そのことが,原 見解が表示されたとはいえない。 また,課税庁が納税者に対し法人税申告用紙一式を送付することは,納税者に対する適正な申告及び納付を促進するための行政サービスの一環であって,そのことが,原告の営む本件各事業に対して,課税しないという公的見解を表示したものとは到底評価できない。 それゆえ,課税処分における信義則が適用されるための要件①(税務官庁が,納税者に対して,信頼の対象となる公的見解を表示したこと)を欠如している。 イ原告の行為(要件③)について信義則の適用があるためには,原告は,公的な見解が表示されたことを信頼して,何らかの行為を行う必要があるが,原告は,もともと行っていた収益事業を継続して行っているのであり,被告職員の表示を信頼し,それに基づいて何らかの行為をしたものではない。 それゆえ,課税処分における信義則が適用されるための要件③(納税者が公的見解の表示を信頼し,それに基づいて何らかの行為をしたこと)も欠如している。 (3) まとめ以上から,本件決定処分等について,信義則を適用して,同処分等を違法と認めることはできない。 4 争点4(質問検査権行使の違法)の検討(1) 調査手続の違法性の検討ア質問検査権行使の要件法人税法上の質問検査権の行使の要件については,法人税に関する調査について必要があるときと規定している(法153条1項及び154条1項)だけであり,質問検査権の範囲,程度,時期,場所等については,特段の定めがない。 それゆえ,このような実施の細目については,質問検査の必要があり,かつ,これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまるかぎり,権限ある税務職員の合理的な裁量に委ねられているものと解す え,このような実施の細目については,質問検査の必要があり,かつ,これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまるかぎり,権限ある税務職員の合理的な裁量に委ねられているものと解するのが相当である(最高裁昭和48年7月10日決定・刑集27巻7号1205頁)。 イ本件への適用これを本件についてみるに,被告が,原告の営む本件各事業について課税するについて,原告には,公益法人としての決算書等はあるものの,収益事業について決算書等は作成されておらず(弁論の全趣旨),収益事業に係る収入額及び費用の状況を確認する必要があった。 そして,原告代表者やその家族(夫,子,孫)についての銀行調査等は,原告の収益事業との関連性を判断するために必要な範囲の調査であり,原告の収益事業の収入額及び費用の状況の確認方法として,社会通念上相当な限度にとどまるものであって,課税庁職員の合理的な裁量に委ねられた範囲内で行われた適正な質問検査権の行使であると認められる。 したがって,被告職員が,本件決定処分等に際し,原告代表者及びその夫に対してだけではなく,同人らの子供5名及び孫1名などにまで,銀行預金の有無・内容の調査や,証券会社との取引の有無・内容の調査をしたからといって,その調査手続が違法であるとは認められない。 (2) 調査手続と課税処分との関係ア一般論調査手続と課税処分とは本来別個のものであり,違法な調査手続により収集された資料に基づき課税処分がされた場合であっても,そのことだけでは当該処分が違法であるとはいえず,ただ,調査手続に刑罰法令違反,公序良俗違反などが認められ,その違法性の程度が著しい場合には,これによって収集された資料を課税処分の資料として用いることは許されず,その結果 分が違法であるとはいえず,ただ,調査手続に刑罰法令違反,公序良俗違反などが認められ,その違法性の程度が著しい場合には,これによって収集された資料を課税処分の資料として用いることは許されず,その結果,他の資料によっては当該処分を導くことができないために,当該処分が違法との評価を受けることがあり得るにとどまる。 イ本件への適用これを本件についてみるに,被告職員が,本件決定処分等に際し,原告代表者及びその夫に対してだけではなく,同人らの子5名及び孫1名などにまで,銀行預金の有無・内容の調査や,証券会社との取引の有無・内容の調査をしたからといって,そのような調査方法が,刑罰法令に違反したり,公序良俗に違反するものとは到底認められないので,この点からしても,本件決定処分等が違法とはいえない。 5 争点5(法人税額及び無申告加算税額)の検討証拠(甲1~5〔枝番を含む〕),及び弁論の全趣旨(被告の第2準備書面第1の1~6項参照)によると,被告の本件各事業年度の不動産貸付業,有料老人ホーム業,物品貸付業による所得金額,その合計所得金額(課税標準額),法人税額,無申告加算税額は,別表5,6記載のとおりであり,本件決定処分等の所得金額,法人税額,無申告加算税額(別表1記載のとおり)は,別表5,6記載の金額の範囲内であることが認められる。 第5 結語以上の認定判断によると,本件決定処分等は適法であり,原告の本訴請求は理由がないので棄却することとし,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第2民事部裁判長裁判官紙浦健二裁判官今中秀雄裁判官向井宣人 長裁判官 紙浦健二 裁判官 今中秀雄 裁判官 向井宣人
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