平成18(わ)3317 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反,贈賄被告事件

裁判年月日・裁判所
平成19年3月29日 大阪地方裁判所
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判決文本文7,953 文字)

主文 被告会社を罰金2億円に,被告人A1を懲役2年6月に,被告人A2を懲役1年6月に処する。 この裁判が確定した日から,被告人A1に対し4年間,被告人A2に対し3年間,それぞれその刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告会社は,市町村等発注のし尿処理施設の新設及び更新工事の請負等の事業を営む事業者であり,被告人A1は,同社のaグループ長等,同A2は,同社のb支社c部長等として,それぞれ,被告会社の従業者として市町村等発注のし尿処理施設の新設及び更新工事の受注等に関する業務に従事していたものであり,第1分離前相被告人株式会社B1,同B2株式会社(平成18年10月1日までの商号は「B11株式会社」。),同B3株式会社,同B4株式会社,同B5株式会社,同株式会社B6,同B7株式会社,同B8株式会社,同B9株式会社及び同株式会社B10の10社(以下同10社及び被告会社を併せて「被告会社等11社」という。)は,市町村等発注のし尿処理施設の新設及び更新工事の請負等の事業を営む事業者であり,同C1は,B1のd部長,同C2は,B2のe部長等,同C3は,B3のf部専門部長,同C4は,B4のg部統括部長等,同C5は,B5のh室長等,同C6は,B6のiグループ担当部長,同C7は,B7のjグループ長,同C8は,B8のk部担当部長等,同C9は,B9のlグループ長,同C10は,B10のm部長等の職にあり,それぞれ,その所属する会社の従業者として市町村等発注に係るし尿処理施設の新設及び更新工事の受注等に関する業務に従事していたものであるが,被告人A1,C1,C2,C3,C4,C5,C6,C7,C8,C9及びC10は,それぞれ,その所属する会社の従業者と共謀の上,その所属する会社の業務に関し,平成16年12月上旬ころ,東京都(以下略)所在のn ,C1,C2,C3,C4,C5,C6,C7,C8,C9及びC10は,それぞれ,その所属する会社の従業者と共謀の上,その所属する会社の業務に関し,平成16年12月上旬ころ,東京都(以下略)所在のnビルo階の当時のB8 東京本社事務所等で会合を開催するなどし,市町村等が競争入札の方法により発注するし尿処理施設の新設及び更新工事につき,発注仕様書の作成に対する関与の度合いなどを勘案して受注希望者間の話し合いにより受注予定会社を決定するとともに当該受注予定会社が受注できるような価格で入札を行うなどする旨を合意した上,そのころから平成17年7月ころまでの間,同合意に従って,同工事について受注予定会社を決定し,もって,被告会社等11社が共同して,市町村等が競争入札の方法により発注するし尿処理施設の新設及び更新工事の受注に関し,被告会社等11社の事業活動を相互に拘束し,遂行することにより,公共の利益に反して,同工事の受注にかかる取引分野における競争を実質的に制限し,第2Dは,平成元年10月1日から平成17年9月30日までの間,E市議会議員として,同市議会が決すべき事件につき議会に議案を提出し,提出された議案について質疑し,表決に加わるなどの職務権限を有していたもの,Fは,土木建築工事の設計,施工及び監理等を目的とする株式会社G代表取締役として,同社を経営するとともに,公共工事に関する各種情報を建設業者等に提供するなどしていたものであるが,被告人A1及び同A2は,被告会社b支社c部副部長Hと共謀の上,同年1月17日ころから同月31日ころまでの間,大阪市(以下略)所在の株式会社G事務所及び同市(以下略)所在のpホテルq階会議室等において,Dらから,E市が発注し,E市議会の議決を要するし尿処理施設「(仮称)E市環境センター」の建設工事(以下「本 市(以下略)所在の株式会社G事務所及び同市(以下略)所在のpホテルq階会議室等において,Dらから,E市が発注し,E市議会の議決を要するし尿処理施設「(仮称)E市環境センター」の建設工事(以下「本件工事」という。)の請負契約締結等に関し,被告会社のために有利かつ便宜な取り計らいをすることの報酬として1億1000万円をDらに供与することを要求され,同趣旨のもとに同金額の金員を供与することを承諾して賄賂の約束をし,Dが,同年2月18日,E市(以下略)所在のE市役所本館3階のE市議会議場において,E市議会第2回臨時会の開会中,同臨時会に付議された本件工事の請負契約締結に係る議案について,被告会社が同工事を談合により落札したものであるこ とを知りながら,可決することについてあえて異議を唱えることなく賛成する職務上不正な行為をしたことなどに関し,同約束に基づき,別表記載のとおり,同年8月30日から平成18年4月26日までの間,10回にわたり,大阪市(以下略)所在の株式会社I銀行(現株式会社J銀行)K支店ほか2か所において,L株式会社代表取締役副社長Mらを介し,Fが管理する株式会社G名義の普通預金口座等へ振り込むなどの方法により,合計7794万5925円を供与し,もって,公務員に対し,その職務に関し,1億1000万円の賄賂の約束をした上,前記の不正な行為に関し,別表番号1記載の1000万円の賄賂を供与したものである。 (法令の適用) 被告会社について被告会社の判示所為は私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)95条1項1号,89条1項1号,3条に該当するので,その所定金額の範囲内で被告会社を罰金2億円に処することとする。 被告人A1について被告人A1の判示第1の所為は刑法60条,独占禁止法95条1項 5条1項1号,89条1項1号,3条に該当するので,その所定金額の範囲内で被告会社を罰金2億円に処することとする。 被告人A1について被告人A1の判示第1の所為は刑法60条,独占禁止法95条1項1号,89条1項1号,3条に,判示第2の所為は包括して刑法60条,198条にそれぞれ該当するところ,各所定刑中それぞれ懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により犯情の重い判示第1の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人A1を懲役2年6月に処し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予することとする。 被告人A2について被告人A2の判示所為は包括して刑法60条,198条に該当するところ,所定刑中懲役刑を選択し,その所定刑期の範囲内で被告人A2を懲役1年6月に処 し,情状により同法25条1項を適用してこの裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予することとする。 (量刑の理由) 本件は,被告人A1ら11名が,その各所属する被告会社等11社の業務に関し,市町村等が競争入札の方法により発注するし尿処理施設の新設及び更新工事について,入札談合を行う旨合意してこれを遂行し,同工事の受注に係る取引分野(以下「本件取引分野」という。)における競争を実質的に制限したという独占禁止法違反の事案(判示第1)並びに被告人A1及び同A2(以下「被告人両名」ともいう。)が,被告会社の従業者と共謀の上,E市議会議員であるDらに対し,E市発注のし尿処理施設建設工事の請負契約締結等に関し,被告会社のために有利かつ便宜な取り計らいをすることの報酬として賄賂を供与する旨約束し,Dが,同市議会において,被告会社が談合により同工事を落札したことを知りながら,同工事の請負契約締結に係 関し,被告会社のために有利かつ便宜な取り計らいをすることの報酬として賄賂を供与する旨約束し,Dが,同市議会において,被告会社が談合により同工事を落札したことを知りながら,同工事の請負契約締結に係る議案について可決にあえて異議を唱えずに賛成したことなどに関し,同約束に基づいてDらに賄賂を供与したという贈賄の事案(判示第2)である。 まず,独占禁止法違反の事案についてみる。同法は,国内における自由競争経済秩序を維持・推進するために制定された経済活動に関する基本法であり,経済活動に携わる事業者において遵守が義務付けられており,とりわけ一部上場の大企業である被告会社は率先して同法を尊重することが期待される立場にあったのに,被告人A1は,同社のかかる立場を顧みないで,もっぱら同社の利益追求のため本件に関与したものであって,その犯情には重いものがある。 本件は,被告会社等11社が,約7か月間にわたり幹事会社を中心とした談合組織(以下「本件談合組織」という。)を形成して敢行した常習的かつ組織的な犯行である。本件取引分野における主要企業がこの11社にほぼ限られていたことに加え,同組織が本件以前からその構成員を変動させつつも相当長期間にわたって存続し,発注者側に対し,構成員以外の業者を入札参加業者として指名しな いように働きかけるいわゆる指名外しをしたり,組織のルールに反していわゆる談合破りをした構成員を組織から排除して指名外しの対象とするなどしてきたことからも明らかなように,同組織の結束力・市場支配力は極めて強固であった。 そして,本件談合組織においては,入札の際に高値で落札してより多額の利益を得るため,幹事会社の受注調整担当者が,構成員各社から見積額の概算について連絡を受けると,その平均額に一定の利益を上乗せした金額を基準として各社の提出すべ ,入札の際に高値で落札してより多額の利益を得るため,幹事会社の受注調整担当者が,構成員各社から見積額の概算について連絡を受けると,その平均額に一定の利益を上乗せした金額を基準として各社の提出すべき見積額を決定して通告し,各社がこれに沿った見積書等を発注者側に提出していた。入札参加業者の指名後は,幹事会社の受注調整担当者が主催する受注調整会議又は電話による受注調整が行われ,「汗かきルール」と称する内部的なルールに従って,受注希望業者のうち,発注者側が作成する発注仕様書の記載などから,その作成への関与の程度が大きく,発注者側の意向に沿った業者であると認められる者を落札予定業者と決め,それ以外の各社は,落札予定業者から連絡された入札価格よりも高値で入札したり,入札を辞退するなどして落札に協力していたものであって,本件は,巧妙に仕組まれた極めて計画性の高い犯行ということができる。 しかも,近年,独占禁止法違反に対する社会的非難が高まり,罰則が強化され,摘発の積極化が試みられてきたことは周知の事実であり,本件当時も,談合情報に基づいて,発注者側から入札参加業者に対する事情聴取や誓約書の提出要求がなされたり,平成17年5月ころには,N公団等の発注する鋼橋上部工事の競争入札に関する入札談合事件によって,本件談合組織の構成員等が公正取引委員会の立入調査を受けるなど,談合行為の違法性を再認識してその継続を中断する契機が少なからずあったにもかかわらず,被告人A1らは,依然として談合を続け,前記立入調査後は,その発覚を免れるため,電話による方法に変更してまで受注調整を行っていたものであり,これらの点からも本件犯行は厳しい非難を免れない。 さらに,本件取引分野は,国民の日常生活に密接に関係する公共性の高い分野 であり,市場も大規模であったことに加えて,本 調整を行っていたものであり,これらの点からも本件犯行は厳しい非難を免れない。 さらに,本件取引分野は,国民の日常生活に密接に関係する公共性の高い分野 であり,市場も大規模であったことに加えて,本件談合組織の各構成員の規模や業界内における地位等をも併せ考慮すれば,本件は,本件取引分野における価格決定に関する自由競争を著しく阻害するものであり,その社会的影響にも極めて大きいものがある。また,本件期間中,本件談合組織の構成員が受注調整により落札した8件の工事においては,落札価格が合計で230億円近くに上り,落札率(落札価格を予定価格で除した割合)の平均が約95パーセントという著しく高い割合であったことからして,談合行為がなく,業者間の自由競争を経て入札が行われた場合と比較すると,その各発注者に相当の損害を生じさせたことがうかがえるが,この損害は,ひいては国民の税負担に帰するものであり,本件によって生じた結果は重大である。 そして,被告会社は,本件談合組織において,5社が交替で担当する幹事会社の一翼を担い,少なくとも平成12年ころから本件同様の行為にかかわってきたものであることに加えて,本件犯行期間中に幹事会社となり,前記8件の工事のうちの7件について入札参加業者として受注調整に関与し,そのうちの2件をそれぞれ約94.82パーセント及び約98.23パーセントという高い落札率で落札して受注していること,本件の態様や,被告人A1が前任者からの引継ぎを受けて受注調整担当者になった経緯に鑑みれば,被告会社は組織として本件に関与したものといえること,被告会社には,独占禁止法違反による行政処分歴が4件あることなどからすれば,被告会社の刑事責任は重大である。また,被告人A1は,B9が本件談合組織に加入する際,被告会社が落札する予定の工事をB9が落札でき には,独占禁止法違反による行政処分歴が4件あることなどからすれば,被告会社の刑事責任は重大である。また,被告人A1は,B9が本件談合組織に加入する際,被告会社が落札する予定の工事をB9が落札できるよう協力したり,B9の加入に反対するB8の担当者やその上司を説得するなどし,B10が同組織に加入する際にも,その担当者に対して加入意思等の確認をするなどして本件基本合意の成立に寄与し,前記期間中は,幹事会社の受注調整担当者として,受注調整会議の開催日時・場所を決定して各社の受注調整担当者に連絡したり,事前に各社の受注希望の有無を確認し,受注調整会議において司会を務めるなど,個々の受注調整行為に積極的かつ協力的な態度で 関与してきたものであって,その果たした役割には大きいものがある。 次に,贈賄の事案についてみる。被告人両名は,被告会社が談合により落札予定業者になることを希望していた本件工事について,E市議会の承認を得るなどして確実に受注できるよう,同社の利益を図って本件に及んだものであって,その動機に酌量の余地はない。被告人両名は,Dに対し,被告会社が本件工事を受注できるよう協力を依頼し,Fらとの間で交渉を重ねてその協力の見返りとなる賄賂の額を決めたほか,同人との間で賄賂供与の方法について協議して,被告会社と本件工事の下請業者との間で工事代金に賄賂額を上乗せした金額での請負契約を締結し,さらに別の業者を介して賄賂金をFが管理する口座に振り込むなどしており,犯行態様は極めて計画的かつ巧妙である。本件の贈賄額は,約束額が1億1000万円,不正行為に対して供与された額が1000万円と高額であり(なお,Dの退職後に同約束額のうち6794万円余りがFらに支払われている。),Dの不正行為により,税金によってまかなわれる同市の財源が不当に支出された 対して供与された額が1000万円と高額であり(なお,Dの退職後に同約束額のうち6794万円余りがFらに支払われている。),Dの不正行為により,税金によってまかなわれる同市の財源が不当に支出されたものであって,市議会議員の職務の公正を損ない,それに対するE市民らの信頼を害した程度は大きい。 そして,被告人A1は,同A2に対し,Fらとの交渉を指示し,提示する賄賂額の上限やその供与方法等についても指示を与えたほか,Fとの交渉がいったん打ち切られた後も,交渉の再開を指示するなどしており,本件において主導的役割を果たしたものである。また,被告人A2も,賄賂の金額や供与方法等についてFとの交渉を重ねるなど重要な役割を果たしている。 これらの事情に照らして考えると,被告会社らの刑事責任,特に被告会社と被告人A1の刑事責任は重大である。 しかしながら,他方,被告会社については,事実を認め,役員等に対する社内処分を行うとともに,し尿処理事業からの撤退,営業監査体制の改革や社内規定の改訂,従業員に対するコンプライアンスについての啓蒙・教育など種々の対策を講じており,被告会社の代理人が当公判廷において再発防止を誓っていること, 古い罰金前科1犯のほか前科はないこと,本件に関連して公正取引委員会から高額の課徴金納付命令を受け,地方公共団体等から多数の指名停止処分を受けるなど,相応の社会的制裁を受けていることなど,被告会社にとって有利に斟酌すべき事情が存在する。被告人両名についても,被告会社の業務の過程で各犯行に及んだもので,個人的利益を図ったものではないこと,Fから,談合の存在を明るみに出して被告会社の受注を妨害するなどと言われて金員を要求されたことがきっかけとなっており,自ら働きかけて本件贈賄に至ったものではないこと,事実を認めて反省の態度を示し ,Fから,談合の存在を明るみに出して被告会社の受注を妨害するなどと言われて金員を要求されたことがきっかけとなっており,自ら働きかけて本件贈賄に至ったものではないこと,事実を認めて反省の態度を示していること,これまで前科前歴がないこと,本件により被告会社から諭旨免職処分を受けるなどの社会的制裁を受けていること,被告人両名の妻が,それぞれ,各被告人のために上申書を提出していること,さらに,被告人A2については,同A1からの指示を受けて行動したという側面があり,従属的立場にあったといえることなど,被告人両名にとってそれぞれ有利に斟酌すべき事情が存在する。 そこで,当裁判所は,これら諸事情を総合考慮の上,被告会社及び被告人両名をそれぞれ主文の刑に処した上,被告人両名についてはそれぞれその刑の執行を猶予するのが相当であると判断した。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑被告会社につき罰金2億円,被告人A1につき懲役2年6月,被告人A2につき懲役1年6月)平成19年3月29日大阪地方裁判所第5刑事部中川博之裁判長裁判官 入子光臣裁判官村木洋二裁判官 別表番号日付方法金額場所(いずれも大阪市)(大阪市以下の地番は省略)株式会社G名義の普通預 I銀行(現J銀行)K支店1000万円平成17年金口座への振込み8月30日ころ同年1049万 同上同上11月7日ころ9160円 株式会社G事務所現金手渡し1500万円同年12月3日ころ 同上同上675万円平成18年1月30日ころ株式会社G名義の普通預 同月31日ころJ銀行K支店50万円金口座への振込み1147万 株式会社G事務所現金手渡し同年5000円2月27日ころ 同上 18年1月30日ころ株式会社G名義の普通預 同月31日ころJ銀行K支店50万円金口座への振込み1147万 株式会社G事務所現金手渡し同年5000円2月27日ころ 同上同上1013万円同年3月27日ころ同年204万 同上同上4月25日ころ7500円株式会社G名義の普通預 同月26日ころJ銀行K支店1050万円金口座への振込みP株式会社名義の普通預104万 同上J銀行O支店金口座への振込み4265円7794万合計5925円

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