昭和52(行ウ)28 所得税更正処分等取消請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和55年7月30日 広島地方裁判所 租税
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【DRY-RUN】○ 主文 一 原告の昭和四七年分所得税について 1 被告が昭和五一年三月一一日付でなした更正処分及び過少申告加算税賦課決定 処分(但し、いずれも審査請求に対する裁決により一部取消後のもの)の取消しを

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○ 主文一原告の昭和四七年分所得税について 1 被告が昭和五一年三月一一日付でなした更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分(但し、いずれも審査請求に対する裁決により一部取消後のもの)の取消しを求める本件訴えのうち、総所得金額九一万三七〇九円を超えない部分の取消しを求める訴えを却下する。 2 原告の右更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分の取消しを求める請求のうち、総所得金額九一万三七〇九円を超える部分の取消しを求める請求を棄却する。 二原告の昭和四八年分所得税について 1 被告が昭和五一年三月一一日付でなした更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分(但し、いずれも審査請求に対する裁決により一部取消後のもの)の取消しを求める本件訴えのうち、総所得金額二一三万五〇〇〇円を超えない部分の取消しを求める訴えを却下する。 2 原告の右更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分の取消しを求める請求のうち、総所得金額二一三万五〇〇〇円を超える部分の取消しを求める請求を棄却する。 三訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実第一当事者の求めた裁判一請求の趣旨 1 被告が原告に対して昭和五一年三月一一日付でなした昭和四七年分及び昭和四八年分所得税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分(但し、いずれも審査請求に対する裁決により一部取消後のもの)を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 二被告の本案前の申立主文第一、二項の各1と同旨三請求の趣旨に対する答弁 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 第二当事者の主張一請求原因 1 原告は、研磨業を営む者であるが、昭和四七、四八年分の各所得税につき被告に対し確定申告をしたところ、被告は右の各年分につき更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下本件各賦課決定処分という 1 原告は、研磨業を営む者であるが、昭和四七、四八年分の各所得税につき被告に対し確定申告をしたところ、被告は右の各年分につき更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下本件各賦課決定処分という)をした。そこで、原告は、右各処分を不服として被告に対し異議申立をしたが、右異議申立は棄却されたので、更に国税不服審判所長に対し審査請求をしたところ、同所長は右各処分の一部を取り消す旨の裁決をした(確定申告から審査請求に対する裁決までの経過及びその各内容は別表一《昭和四七年分》及び二《昭和四八年分》のとおりである。)。 2 しかしながら、右各更正処分(但し、審査請求に対する裁決により一部取消後のものを意味する。 以下本件各更正処分という。)には、推計の必要性及び合理性が全く存しないにもかかわらず、推計による課税を行なつた違法があり、また原告の各年分の総所得金額は昭和四七年分が九一万三七〇九円、昭和四八年分が二一三万五〇〇〇円(その明細は別表三のとおりである)しかなかつたにもかかわらず、これを過大に認定した違法があるので、本件各更正処分及び本件各賦課決定処分(但し、審査請求に対する裁決により一部取消後のもの。以下同じ。)の取消しを求める。 二被告の本案前の主張 1 一般に、増額更正処分は、課税漂準またはこれに基づく税額を全体として確認する処分ではあるが、更正処分の法律効果は、申告による税額等の確定の効力を全面的に失わせて新規に納税義務の範囲を確定させるものではなく、申告額を超える増差額に関する部分についてのみ納税義務を確定させるものである(国税通則法二九条一項参照)。したがつて、更正処分が取り消されても、申告によつて確定した課税標準及び税額は何らの影響も受けない。申告によつて確定した課税標準または税額に誤り等があつたためこれを減額させるには、更正 条一項参照)。したがつて、更正処分が取り消されても、申告によつて確定した課税標準及び税額は何らの影響も受けない。申告によつて確定した課税標準または税額に誤り等があつたためこれを減額させるには、更正の請求(国税通則法二三条)の手続によらなければならないのである。したがつて、原告は、本件訴えのうち、申告により既に確定した課税標準(昭和四七年分につき総所得金額九一万三七〇九円、昭和四八年分につき総所得金額二一三万五〇〇〇円)及びこれらに対応する税額部分の取消しを求める部分については、その取消しを求める法律上の利益を欠き、右部分は不適法であつて却下を免れない。 2 過少申告加算税賦課決定処分は、更正による税額と申告による税額との増差額に一〇〇分の五の割合を乗じた金額をもつて課せられるものである(国税通則法六五条一項)から、申告による課税標準に至る部分に対応する過少申告加算税賦課決定処分なるものは存在しない。したがつて、原告は、本件訴えのうちこの部分の取消しを求める部分については、その取消しを求める法律上の利益を欠き、右部分は不適法であつて却下を免れない。 三請求原因に対する認否請求原因1の事実は認めるが、同2の主張は争う。 四被告の主張 1 推計の必要性について(一) 推計課税に基づき更正処分を行なうについて、「推計課税の必要性」という要件は存しない。 (1) 白色申告者に対する更正処分の要件として法が規定しているのは、国税通則法二四条所定の要件のみで、推計課税の必要性という要件はどこにも規定されていない。また、所得税法一五六条、法人税法一三一条が青色申告者につき推計による更正を禁止したのは、青色申告者に対し法定の帳簿書類の備付け、記帳、法定帳簿書類に基づく申告、当該帳簿書類の保存が義務づけられている(所得税法一四八条一項、法人税法一二六 青色申告者につき推計による更正を禁止したのは、青色申告者に対し法定の帳簿書類の備付け、記帳、法定帳簿書類に基づく申告、当該帳簿書類の保存が義務づけられている(所得税法一四八条一項、法人税法一二六条一項参照)反面としての特典である。したがつて、自らの選択により青色申告者の特典を得ることを拒否している白色申告者については、課税庁は自由に推計に更正ができるのである。 (2) 推計計算による更正処分は、実額計算による更正処分と全く異質な更正処分ではなく、推計計算によるか実額計算によるかは所得額の認定が直接証拠によるか間接証拠によるかという事実認定の方法の相違にすぎないから、推計課税の必要性という手続要件が存立する余地はない。 (二) 仮に推計課税をなすに付その必要性を要するとしても、被告は次のような事実の下に推計計算による更正処分を行なつたのであるから、推計課税の必要性の要件を満たしている。 (1) 被告の調査係官は、原告の正当な所得金額を調査しようと努め、昭和五〇年五月一五日以後原告宅を再三にわたり訪問し、調査に協力するよう説得を繰り返して、営業に関する帳簿書類(売上金額、仕入金額、たな卸高、必要経費に関する数値が記録された帳簿書類、計算書などの資料)の提示を求めたが、原告は、同年五月一九日、昭和四九年分の外注費支払明細書を提出したにとどまり、「帳簿はない。その外の書類もない。」と主張するのみで右外注費支払明細書以外の帳簿書類等を一切提示しなかつた。 (2) また、被告の調査係官は原告に対し、原告が申告した本件係争各年分の事業所得金額の計算根拠について説明を求めたが、原告は、右事業所得金額の計算根拠を明らかにせず、「帳簿がない。記憶がない。」と主張して調査に全く協力しなかつた。 2 原告の本件各係争年分の各総所得金額は、以下のとおり、昭和四七 て説明を求めたが、原告は、右事業所得金額の計算根拠を明らかにせず、「帳簿がない。記憶がない。」と主張して調査に全く協力しなかつた。 2 原告の本件各係争年分の各総所得金額は、以下のとおり、昭和四七年分が四〇七万六八五三円、昭和四八年分が四二一万四七七四円であるから、右各金額の範囲内でなされた本件各更正処分及び本件各賦課決定処分に違法な点はない。 (一) 昭和四七年分(1) 収入金額八七七万三四七四円(2) 売上利益五八八万七八七八円収入金額に別表四の同業者の平均的算出所得率(同業者の収入金額に対する収入金額から売上原価と一般経費を控除した後の金額《特別経費控除前の金額》の割合の算出平均値。以下同じ。)六七・一一パーセントを乗じた金額である。 (3) 雑収入金額一二万八七九〇円(4) 特別経費外注費一九三万九八一五円原告の昭和四八年分の収入金額九一五万六一六〇円に対する同年分の外注費二〇二万三九一三円の割合二二・一一パーセントを原告の昭和四七年分の収入金額に乗じて算出した金額である。 (5) 総所得金額四〇七万六八五三円((2)プラス(3)マイナス(4))(二) 昭和四八年分(1) 収入金額九一五万六一六〇円(2) 売上利益六一一万七二三〇円収入金額に別表五の同業者の平均的算出所得率六六・八一パーセントを乗じた金額である。 (3) 雑収入金額二五万七六一六円(4) 特別経費(1) 外注費二〇二万三九一三円原告が確定申告以前に自主的に被告に提出した外注費等の明細書の合計額である。 (2) 手形割引料一三万六一五九円(5) 総所得金額四二一万四七七四円((2)プラス(3)マイナス(4)) 3 仮に、給料及び外注費を除くその余の必要経費につき原告の主張 計額である。 (2) 手形割引料一三万六一五九円(5) 総所得金額四二一万四七七四円((2)プラス(3)マイナス(4)) 3 仮に、給料及び外注費を除くその余の必要経費につき原告の主張に従つて計算したとしても、以下のとおり、原告の各総所得金額は、昭和四七年分が三七九万〇三三七円、昭和四八年分が四四四万九三五七円であるから、右各金額の範囲内でなされた本件各更正処分及び本件各賦課決定処分に違法な点はない。 (一) 昭和四七年分(1) 収入金額八七七万三四七四円(2) 雑収入金額一二万八七九〇円(3) 必要経費のうち給料及び外注費を除いた金額一〇六万四〇五一円明細は別表三の必要経費の額の欄のとおりである。 (4) 特別経費(1) 給料 〇円理由は後記(三)のとおりである。 (2) 外注費三八七万七八七六円収入金額に別表六の原告の平均的算出外注費率(原告の昭和四四年、四五年、四九年分の各収入金額に対する原告が確定申告期などに自主的に被告に提出した右各年分の外注費の明細書の各合計額の割合の算出平均値。以下同じ。)四四・二パーセントを乗じた金額である。 (5) 事業専従者控除額一七万円原告の事業に従事している原告の長男Aに対する所得税法五七条三項(昭和四六年法律一八号改正)による金額である。 (6) 総所得金額三七九万〇三三七円((1)プラス(2)マイナス(3)マイナス(4)マイナス(5))(二) 昭和四八年分(1) 収入金額九一五万六一六〇円(2) 雑収入金額二五万七六一六円(3) 必要経費のうち給料及び外注費を除いた金額七二万四八九六円明細は別表三の必要経費の額の欄のとおりである。 (4) 特別経費(1) 給料 〇円理由は後 五万七六一六円(3) 必要経費のうち給料及び外注費を除いた金額七二万四八九六円明細は別表三の必要経費の額の欄のとおりである。 (4) 特別経費(1) 給料 〇円理由は後記(三)のとおりである。 (2) 外注費四〇四万七〇二三円収入金額に別表六の原告の平均的算出外注費率四四・二パーセントを乗じた金額である。 (5) 事業専従者控除額一九万二五〇〇円原告の事業に従事している原告の長男Aに対する所得税法五七条三項(昭和四八年法律八号改正)による金額である。 (6) 総所得金額四四四万九三五七円((1)プラス(2)マイナス(3)マイナス(4)マイナス(5))(三) 原告は、長男Aに対し給料を支給したとして、別表三の各該当欄のとおり昭和四七年分五八万円、昭和四八年分一三五万円を必要経費に計上しているが、同人は、次のとおり、原告と生計を一にする事業専従者であつたから、右の各金額はいずれも各年分の必要経費には計上できない。 (1) 原告の仕事の実態は昭和四七、四八年の前後を通じて全く変つていないところ、原告は、昭和四六年分までの所得税確定申告において、Aを事業専従者として申告し、専従者控除を受けており、また、昭和四九年分の所得税確定申告においては、事業所得者をA名義とし、原告及びその妻Bを事業専従者として申告し、右両名についてそれぞれ専従者控除を受けている。 (2) 被告の調査係官が原処分調査の際原告に人件費などの支払明細書類の提示を求めたのに対し、原告は給料などを記載した帳簿または賃金台帳の提示をしなかつた。 (3) 原告は源泉徴収すべき所得税を徴収していない。 (4) 住民基本台帳法による住民票の記録によれば、従前Aは世帯主である原告の世帯員となつており、昭和五一年一月二六日には、世帯主を原告からA 。 (3) 原告は源泉徴収すべき所得税を徴収していない。 (4) 住民基本台帳法による住民票の記録によれば、従前Aは世帯主である原告の世帯員となつており、昭和五一年一月二六日には、世帯主を原告からAに変更し、原告は同人の世帯員となつている。 (5) 地方税法七〇三条の四の国民健康保険税においても、従前、Aは納税義務者で組合員である原告の世帯員となつており、昭和五一年一月二六日には、Aに組合員の名義を変更し、原告は同人の世帯員となつている。 (6) 原告は昭和四九年一二月二五日山陽光学精工株式会社(以下山陽光学という)に対し、その取引名義をAに変更する旨届け出ているが、山陽光学は、同年中、右名義変更に関係なく加工代金を中国銀行府中支店の原告名義の普通預金に振り込んでおり、原告とAの資金の調達は渾然一体となつている。 五被告の主張に対する認否 1 被告の主張1のうち、(一)の主張は争うが、(二)の(1)及び(2)の各事実はいずれも認める。 2 同2のうち、各年分の収入金額及び雑収入金額、並びに昭和四八年分の手形割引料(特別経費)はいずれも認めるが、その余は否認する。 3 同3のうち、各年分の収入金額及び雑収入金額、並びに必要経費のうち給料及び外注費を除いた金額はいずれも認める。 第三証拠(省略)○ 理由一請求原因1の事実は当事者間に争いがない。 二そこで、まず、被告の本案前の主張について検討する。 原告は本件各更正処分全部の取消しを求めるものであるが、一方、原告は、昭和四七年分の所得税につき同年分の総所得金額が九一万三七〇九円であるとして、また、昭和四八年分の所得税につき同年分の総所得金額が二一三万五〇〇〇円であるとしてそれぞれ確定申告をしている(右事実は当事者間に争いがない。)ところ、納税義務者が確定申告書を提出すれば、原則として、納税 昭和四八年分の所得税につき同年分の総所得金額が二一三万五〇〇〇円であるとしてそれぞれ確定申告をしている(右事実は当事者間に争いがない。)ところ、納税義務者が確定申告書を提出すれば、原則として、納税義務はこれによつて確定し(国税通則法一六条参照)、更正の請求(同法二三条参照)の手続によつてのみその金額の減額変更を求め得るにすぎないのであるから、納税義務者が自己の確定申告書に記載した金額が高額にすぎるとして更正処分のうち申告額を超えない部分の取消しを、訴訟によつて求めることは、訴えの利益を欠くものとして許されないというべきである。したがつて、本件各更正処分の取消しを求める訴えのうち、昭和四七年分につき原告の申告額である総所得金額九一万三七〇九円を超えない部分の取消しを求める訴え及び昭和四八年分につき原告の申告額である二一三万五〇〇〇円を超えない部分の取消しを求める訴えは、いずれも不適法として却下を免れない。 また、原告は本件各更正処分に対応してなされた本件各賦課決定処分の取消しを求めるものであるが、前記申告額に至る部分に対応する過少申告加算税賦課決定処分なるものは存在しないのであるから、本件各賦課決定処分の取消しを求める訴えのうち、右部分の取消しを求める各訴えも訴えの利益を欠き、いずれも不適法として却下を免れない。 三推計の必要性について原告は、本件各更正処分には、推計の必要性がないのに推計による課税を行なつた違法があると主張する。しかし、本件各更正処分においては、原告は被告の調査係官に対し昭和四九年分の外注費支払明細書以外の帳簿書類等を一切提示しなかつたのみならず、その外の被告の調査にも全く協力しなかつたことは当事者間に争いがないのであるから、被告が原告の所得金額を把握するにつき実額調査により得なかつたことは明らかである。したがつて 示しなかつたのみならず、その外の被告の調査にも全く協力しなかつたことは当事者間に争いがないのであるから、被告が原告の所得金額を把握するにつき実額調査により得なかつたことは明らかである。したがつて、本件各更正処分においては推計の必要性が認められ、原告のこの点に関する主張は仔細に検討するまでもなく理由がない。 四次に、原告の本件各係争年分の総所得金額につき検討する。 1 昭和四七年分の収入金額(八七七万三四七四円)、雑収入金額(一二万八七九〇円)、昭和四八年分の収入金額(九一五万六一六〇円)、雑収入金額(二五万七六一六円)、手形割引料(一三万六一五九円)については、いずれも当事者間に争いがない。 2 被告は、原告の本件各係争年分の売上利益(特別経費控除前)を同業者の平均所得率に基づいて推計しているので、以下、右推計の合理性について検討することとする。 (一) その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき乙第一号証の一ないし三によると、右平均所得率の算出根拠となつた資料は、税務訴訟の資料とするため、広島国税局長が府中税務署長(被告)に対し、昭和五三年三月二五日付で発した書面により、作成基準を指示したうえで、研磨業(金属受託加工)を業とする個人事業者につき課税事績を調査した結果を報告書として提出させたものであること、右調査の対象は、府中税務署管内で研磨(金属受託加工)を業とする個人事業者のうち、(1)昭和四七、四八年分の所得税の申告を青色申告によつている者であること、(2)当該事業に納税義務者本人のほか家族または雇人が従事していること、(3)年間を通じて事業を行なつている者であること、(4)更正または決定処分を行なつたもので、国税通則法の規定に基づく不服申立期間または出訴期間の経過していないもの及び または雇人が従事していること、(3)年間を通じて事業を行なつている者であること、(4)更正または決定処分を行なつたもので、国税通則法の規定に基づく不服申立期間または出訴期間の経過していないもの及び当該処分に対して不服申立または提訴がなされて現在審理中のもののいずれにもあたらないこと、の各条件を備える納税者に限定され、かつ、右に該当する納税者の全員について報告すべきものとされたこと、その結果、被告からは本件各係争年分につきいずれも一〇例の報告がなされ、その内容は別表四、五のとおりであること、の各事実を認めることができる。そして、右各事実によれば、右調査資料は、訴訟資料とすることを予定して収集されたものではあるが、その対象は既に確定した納税者の過去の事実であり、特殊事情にある納税者は報告の対象から除外され、調査対象の選択及び資料収集過程に被告の思惑や恣意が介入する余地は少なく、したがつて、右調査資料は一応客観性を有するものであるということができる。 (二) しかしながら、被告の選定した同業者一〇例の各数値を検討すると、まず、昭和四七年分においては、売上金額は最高が一二二〇万一七七五円、最低が一二七万八一〇三円で、前者は後者の九・五倍を超え、両者の間には大幅な差異があり、所得率は最高が八〇・七九パーセント、最低が五五・二二パーセントで、両者の間に二五・五七パーセントの差異がある。また、昭和四八年分においては、売上金額は最高が一五一六万七三九八円、最低が二二五万八一七六円で、前者は後者の六・七倍を超え、右両者の間にも相当の差異があり、所得率は最高が八三・〇三パーセント、最低が五三・七七パーセントで、両者の間に一九・二六パーセントの差異がある。このように、右各数値にはかりのばらつきが認ぬられ、被告の採用した同業者は、各年分とも、前記各条件を満た ・〇三パーセント、最低が五三・七七パーセントで、両者の間に一九・二六パーセントの差異がある。このように、右各数値にはかりのばらつきが認ぬられ、被告の採用した同業者は、各年分とも、前記各条件を満たす点において共通項を有するとはいえ、営業の規模、形態において多様のものが混在することを窺わせるものであつて、採用された同業者数が特に多いともいえないことをも考慮すると、右同業者の所得率の平均値は、充分に個別的偏倚を包摂したものとしてこれを原告に適用すべき妥当性を未だ具備するに至つていないのではないかとの疑いを禁じ得ないところである。しかも、成立に争いのない乙第四号証、証人Cの証言により真正に成立したものと認められる甲第一一号証、証人D、同E、同Cの各証言及び原告本人尋問の結果を総合すると、研磨業者の多くが多少なりとも機械を使用しているのに対し、原告は、カメラの部品であるペンタプリズムホルダーの余肉、カジリ、フクレ、バリをやすり等で取つたり、歪みを木槌と手により修正するなど、機械を全く使わない完全な手作業であることが認められ、被告の選定した同業者の中には、営業規模、形態において原告とは異質のものが多数含まれている可能性が高いものといわなければならない。 (三) 以上に指摘した点を考慮すると、前記同業者の平均的算出所得率は、原告の所得金額を推計するうえで妥当なものとはいえず、被告の採用する推計方法は合理性を欠くといわざるえない。 五そこで、被告の予備的な総所得金額の主張について検討することとする。 1 昭和四七年分の収入金額(八七七万三四七四円)、雑収入金額(一二万八七九〇円)、必要経費のうち給料及び外注費を除いた金額(一〇六万四〇五一円)、昭和四八年分の収入金額(九一五万六一六〇円)、雑収入金額(二五万七六一六円)、必要経費のうち給料及び外注費 額(一二万八七九〇円)、必要経費のうち給料及び外注費を除いた金額(一〇六万四〇五一円)、昭和四八年分の収入金額(九一五万六一六〇円)、雑収入金額(二五万七六一六円)、必要経費のうち給料及び外注費を除いた金額(七二万四八九六円)については、いずれも当事者間に争いがない。 2 外注費について(一) 被告は原告の本件各係争年分の外注費を原告自身の外注費率に基づいて推計しているところ、これに対し、原告は、右各年分の外注費を実額によつて主張するので、まず原告の右主張の当否について判断する。 (1) 原告は、右の実額を立証するために、外注先の発行した外註工賃受領証明書と題する書面を甲第一号証の一ないし二一(別表八の(1)ないし(21)を記載したもの)として提出(いずれも原告本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる。)しているところ、証人Eの証言及び原告本人尋問の結果によると、右の外註工賃受領証明書は、いずれも、外注工賃の受領時から三年以上を経過した後である本件訴訟係属中に、原告において予め外註費の金額を記入したうえで各外注先を訪問し、その署名捺印をもらうという経過により作成されたものであること、また当時外注先の大部分においては、本件各係争年分の外注費を記載した原始記録等を全く備えていなかつたことがそれぞれ認められ、これに反する証拠はないところ、右認定事実によると、外注先の側には、右証明書に記載された金額の正確性を確認し得べき材料は殆どなかつたといわなければならないから、右証明書に外注工賃受領者本人の署名捺印があるからといつて、そのことから直ちに右証明書に記載された金額が正当なものであるということはできない。 (2) すると、前記証明書の金額を原告はいかなる根拠に基づいて記載したかが問題となるところ、原告本人尋問の結果中には、原告は外注費 右証明書に記載された金額が正当なものであるということはできない。 (2) すると、前記証明書の金額を原告はいかなる根拠に基づいて記載したかが問題となるところ、原告本人尋問の結果中には、原告は外注費につき毎月外注先に問い合わせてメモを作成し、これに基づいて前記外註工賃受領証明書に外注費の金額を記載した旨の供述部分が存し、なるほど、証人Dの証言及び原告本人尋問の結果によると、原告は確定申告時に外注費明細を書き込んだ書面(原告が右メモをまとめたものと称するもの)を府中民商の事務局に提出したこと、前記外註工賃受領証明書の金額は同事務局が保管していた右書面の手書きによる写しに基づいて記載されたことが認められるけども、右認定事実から直ちに右メモの存在を推認することは難しく、しかも、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき乙第三号証の一ないし七、いずれも成立に争いのない乙第二号証の一ないし九、同第五号証、同第一七号証の一、二、証人F、同Eの各証言及び弁論の全趣旨によると、原告は、被告に対し、昭和四八年分の所得税につきその確定申告をする以前に同年分の外注費の明細書(別表八の(2)ないし(4)、(10)、(12)、(22)ないし(25)を記載したもの。乙第二号証の一ないし九)を提出したこと、原告は、国税不服審判所長に対する審査請求をした後の昭和五一年一一月末頃、広島国税不服審判所の審査担当官の再三にわたる求めに応じて、同審判所に対し本件各係争年分の外注費明細書(昭和四七年分につき別表八の(1)ないし(17)、及びG等に対する一八五万二八六〇円を、昭和四八年分につき同表の(1)ないし(6)、(8)、(10)ないし(15)、(18)ないし(21)、及びG等に対する一九〇万九二八四円をそれぞれ記載したもの。乙 G等に対する一八五万二八六〇円を、昭和四八年分につき同表の(1)ないし(6)、(8)、(10)ないし(15)、(18)ないし(21)、及びG等に対する一九〇万九二八四円をそれぞれ記載したもの。乙第一七号証の一)を郵送したこと、ところが、右外注先のうち、別表八の(22)ないし(25)、及びG等は、原告から名義を借りて山陽光学から直接請け負つていたものであつて、原告の外注先とはいえないものであること、また、右外注先のうち、住民税につき原告からの工賃受領額を申告している者は、別表八の(2)ないし(4)、(7)、(8)、(18)にすぎず、その中においても金額が原告の主張と一致していないものがあること等の各事実が認められるので、右認定事実に照らすと、原告の前記供述部分にたやすく措信できないのみならず、原告が府中民商の事務局に提出した前記書面についても、何らの作為なく原告の正確な記憶に基づいて作成されたとは到底認めることができないところである。 (3) してみると、原告提出の前記外注工賃受領証明書(甲第一号証の一ないし二一)の信憑性には多大の疑問を抱かざるを得ないので、右各証拠をもつて原告が実額により主張する外注費認定の資料とすることはできないといわなければならず、他に原告の右主張事実を認めるに足りる証拠はない。 (二) そこで、進んで、原告自身の外注費率に基づき本件各係争年分の外注費を推計した被告の方法の合理性につき検討する。 (1) いずれも成立に争いのない乙第八、第九号証によると、昭和四四年、四五年分の収入金額、外注費の合計額及び外注費率は別表六の各年分欄のとおりであること、また、いずれも成立に争いのない乙第五、第六、第一五号証、同第一七号証の一、二、原告本人尋問の結果によると、昭和四九年分の収入金額、外注費の合計額及び外注費率は別表の同年分 分欄のとおりであること、また、いずれも成立に争いのない乙第五、第六、第一五号証、同第一七号証の一、二、原告本人尋問の結果によると、昭和四九年分の収入金額、外注費の合計額及び外注費率は別表の同年分欄のとおりである(その算出方法は別表七のとおりである。)ことがそれぞれ認められる。 (2) 次に、証人D、同Cの各証言及び原告本人尋問の結果を総合すると、原告は山陽光学の下請として前記作業を行つていたものであるが、同社は昭和四七年ころ下請の再編成を行ない、下請先を原告にまとめ、一本化したこと、その結果、同社の従前の下請業者が原告の外注先に繰り込まれるなどして、原告の外注先が多沙増加したこと、しかしながら、外注先が増加したほかは、下請先の一本化の前後を通じて原告の事業の実態には殆ど変化がなかつたことの各事実が認められ、右認定に反する証拠はない。 (3) しかして、本件各係争年分の外注費推計の資料として被告の採用する昭和四四年、四五年、四九年分の外注費率を検討すると、最高は昭和四五年分の四五・八パーセントで、最低は昭和四九年分の四二・八パーセントであり、両者の間には三パーセントの差異があるだけでその間に有意の差は認められず、また、前記認定のとおり、その頃原告の営業には殆ど変化がなかつたことも考えると、右三か年分の外注費率の平均値四四・二パーセントは、本件各係争年分の外注費を推計するにふさわしいものということができるから、被告の採用する前記推計方法には合理性があるというべきである。 (三) してみると、原告の本件各係争年分の外注費は、昭和四七年分が収入金額八七七万一二四七四円に前記四四・二パーセントを乗じた三八七万七八七六円、昭和四八年分が収入金額九一五万六一六〇円に右四四・二パーセントを乗じた四〇四万七〇二三円と認めるのが相当である。 3 被告は、 七七万一二四七四円に前記四四・二パーセントを乗じた三八七万七八七六円、昭和四八年分が収入金額九一五万六一六〇円に右四四・二パーセントを乗じた四〇四万七〇二三円と認めるのが相当である。 3 被告は、原告主張の給料につき、Aは事業専従者であつたから必要経費には算入すべきではない旨主張するので、以下、この点につき検討(一) いずれも成立に争いのない甲第三ないし第一〇号証、原告本人尋問の結果によると、Aは、原告の研磨業に従事した対価として昭和四七年に五八万円、昭和四八年に一三五万円をそれぞれ受領し、いずれも給与として確定申告をしたうえその税額を納入したことが認められる。しかしながら、いずれも成立に争いのない乙第一一、第一二号証、同一三、第一四号証の各一、二、同第一五号証、同第一六号証の一、二、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したと認められるから真正な公文書と推定すべき乙第一〇号証、証人Fの証言及び原告本人尋問の結果によると、被告の調査係官による本件各更正処分調査の際、原告は長男Aの給料について何らの申立てもせず、賃金台帳等の資料も一切提出しなかつたこと、Aは昭和四七、四八年当時原告住居近くのアパートに居住した以外はその前後を通じて原告と同居し、原告の事業に従事していたこと、住民票及び国民保険税においては、右別居中も、原告が世帯主でAは世帯員になつていたこと、原告の昭和四六年分の所得税確定申告においてAは事業専従者として申告されており、Aの昭和四九年分の所得税確定申告においては原告が事業専従者として申告されているところ、その間、原告の事業の実態には変更がなかつたこと、以上の各事実が認められ、右認定に反する証拠はない。そして、右認定事実によると、原告とその長男Aとは生計を一にする親族であると認めるのが相当である。 (二) してみると、原告 には変更がなかつたこと、以上の各事実が認められ、右認定に反する証拠はない。そして、右認定事実によると、原告とその長男Aとは生計を一にする親族であると認めるのが相当である。 (二) してみると、原告主張の給料は、所得金額の計算上、当然には必要経費に算入されないこととなる(所得税法五六条参照)が、他方で、Aは原告の事業専従者として、右金額のうち昭和四七年分につき一七万円(昭和四六年法律一八号により改正後の所得税法五七条三項一号参照)、昭和四八年分につき二〇万円(昭和四八年法律八号により改正後の所得税法五七条第三項一号参照)の限度でそれぞれ必要経費とみなされる。 4 そこで右認定の各事実を更に総合すれば、原告の本件各係争年分の総所得金額は、(一) 昭和四七年分が、収入金額八七七万三四七四円と雑収入金額一二万八七九〇円との合計八九〇万二二六四円から、外注費三八七万七八七六円とその他の必要経費一〇六万四〇五一円及び事業専従者控除額一七万円をそれぞれ差し引いた三七九万〇三三七円となり、(二) 昭和四八年分が収入金額九一五万六一六〇万円と雑収入金額二五万七六一六円との合計九四一万三七七六円から、外注費四〇万七〇二三円とその他の必要経費七二万四八九六円及び事業専従者控除額二〇万円をそれぞれ差し引いた四四四万一八五七円となる。 六以上の説示によれば、本件各更正処分は、いずれも原告の総所得金額の範囲内でなされており、右処分には原告主張のごとき総所得金額を過大に認定した違法はなく本件各更正処分を前提としてなされた本件各賦課決定処分にも違法はないことになる。 七よつて、原告の主張はいずれも理由がないから、原告の本件各係争年分の所得税について被告がなした本件各更正処分及び本件各賦課決定処分の取消しを求める原告の請求のうち、昭和四七年分所得税について総所得 よつて、原告の主張はいずれも理由がないから、原告の本件各係争年分の所得税について被告がなした本件各更正処分及び本件各賦課決定処分の取消しを求める原告の請求のうち、昭和四七年分所得税について総所得金額九一万三七〇九円を超えない部分の取消しを求める訴え及び昭和四八年分所得税について総所得金額二一三万五〇〇〇円を超えない部分の取消しを求める訴えをいずれも不適法として却下し、昭和四七年分所得税について総所得金額九一万三七〇九円を超える部分の取消しを求める部分及び昭和四八年分所得税について総所得金額二一三万五〇〇〇円を超える部分の取消しを求める部分はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官植杉豊大谷禎男川久保政徳)別表八(省略)

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