平成12(行ウ)13 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成14年1月30日 岡山地方裁判所
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判決文本文15,834 文字)

主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1当事者の求めた裁判 原告(1)被告は,岡山県i町に対し,820万円及びこれに対する平成12年8月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2)訴訟費用は被告の負担とする。 (3)仮執行宣言 被告(1)本案前の答弁ア原告の訴えを却下する。 イ訴訟費用は原告の負担とする。 (2)本案に対する答弁主文同旨第2事案の概要本件は,i町の住民である原告が,i町が建設した建物の敷地,進入路用地及び駐車場用地をめぐる紛争を解決するために,同町が議会の議決を経た上で1200万円の解決金を支出したことが,不相当な額の支払で違法であるとして,この支出当時,同町長であった被告に対し,解決金として相当な額である380万円との差額820万円をi町に返還することを求めた(附帯請求は,訴状送達の日の翌日である平成12年8月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金である)事案である。 。 争いのない事実等(証拠により明らかな事実は,かっこ内に掲記する)。 (1)原告は岡山県i町の住民であり,被告は,後記公金支出の当時,岡山県i町の町長の職にあった。 ,,(2)岡山県i町は平成5年2月ころから町民センターの建設工事に着手し平成6年6月上旬ころまでに総工費約25億円をかけて別紙物件目録記載1の建物を完成させた。 (3)丙は,町民センターが完成した当時,別紙物件目録記載2の土地(以下「丙所有地」という)を所有していた。 。 丙所有地と町民センターの敷地である町有地との境界は,別紙「現況平面図」中のA,A,B,C,C’の各点を順次直線で結んだ線であった。 ’,,,,ところが町民センターの南東端の一部が丙所有 丙所有地と町民センターの敷地である町有地との境界は,別紙「現況平面図」中のA,A,B,C,C’の各点を順次直線で結んだ線であった。 ’,,,,ところが町民センターの南東端の一部が丙所有地のうち同図中のEB,C,F,Eの各点を順次直線で結んだ範囲(以下「町民センター侵害土地部分」という)を侵害して建設され,かつ,町民センターの付属設。 備であるマンホール4個も,丙所有地のうち,同図中のA,D,F,E,Aの各点を順次直線で結んだ範囲(以下「マンホール設置土地部分」といい,これと町民センター侵害土地部分とを併せて「別訴係争土地部分」という)に設置された(甲3。 。 )そこで,丙は,町民センターが丙所有地を侵害しているとして,町民センター侵害土地部分上の建物部分5.23平方メートル及び,マンホール設置土地部分にあるマンホール4個の収去及び別訴係争土地部分の明渡しを求めて岡山地方裁判所津山支部に提訴した(同支部平成6年(ワ)第116号土地明渡請求事件,以下「別件訴訟」という。なお,同訴訟の係。)属中である,平成8年5月17日,丙が死亡し,遺産分割協議の結果丙所有地を相続した丙’が訴訟承継した。 ,’,同訴訟では丙の上記請求が権利の濫用に当たるかが争点とされたが平成9年8月27日,別訴係争土地部分に存する町民センター建物部分及びマンホール4個を収去して補修するには数百万円から1000万円以上の費用が必要であることが予測され,その社会的損失と町民センターへの影響が大きいこと,他方別訴係争土地部分の価格は約160万円であり,,特に町民センター侵害土地部分の価格は30万5000円にすぎないこと丙’に別訴係争土地部分の明渡しを求めなければならない用益上の必須性は認めがたく,同人の損害は金銭賠償で十分補償できること等から丙 特に町民センター侵害土地部分の価格は30万5000円にすぎないこと丙’に別訴係争土地部分の明渡しを求めなければならない用益上の必須性は認めがたく,同人の損害は金銭賠償で十分補償できること等から丙’の請求は権利の濫用に当たるとの理由で丙’の請求を棄却する判決が言い渡された(甲3。 )丙’は,同判決を不服として同年9月に控訴したが,平成11年2月22日に訴えを取り下げ,i町は,同訴えの取下げに同意した(乙2の1,4,6。 )(4)i町議会は,平成11年12月25日,i町と丙’間の下記内容を含む和解契約の締結(乙1,以下「本件和解契約」という)と解決金120。 0万円の補正予算案について議決し,i町と丙’は,同日,本件和解契約とこれに基づく土地等価交換契約及び土地賃貸借契約を締結した(乙2の1,2,4。 )アi町は,町民センターの建設時に,別訴係争土地部分を町民センター建物及び付属設備によって侵害したことから発生した一連の紛争の解決金として,丙’に対し,平成11年12月末日限り,1200万円を支払う。 イ丙’は,別訴係争土地部分27.40平方メートルを丙所有地から分筆して,同土地の所有権をi町に移転する。また,丙’は平成6年6月の町民センター開館時からこの和解契約締結日までの間のi町に対する同土地使用料相当損害金請求権を放棄する。 ウ丙’とi町は,丙所有地のうち698.05平方メートル(別紙「町民」),,センター駐車場の①-3部分とi町の所有する別紙物件目録記載34の土地とを,等価で交換する旨の交換契約を締結する。 エ丙’とi町は,丙所有地のうち,別訴係争土地部分及び上記ウの交換契約により丙’からi町に所有権が移転する土地を除いた部分の土地と,別紙物件目録記載3,4の土地をi町が駐車場用地として使用することを目 丙’とi町は,丙所有地のうち,別訴係争土地部分及び上記ウの交換契約により丙’からi町に所有権が移転する土地を除いた部分の土地と,別紙物件目録記載3,4の土地をi町が駐車場用地として使用することを目的として賃貸借契約を締結する。 (5)被告は,丙’に対し,本件和解契約に基づいて解決金1200万円を支払った(以下「本件公金支出」という。 。)(6)原告は,平成12年3月27日,i町監査委員に対し,上記解決金の支払は違法な公金の支出であるとして,i町の被った損害を填補するため必要な措置を求める住民監査請求をしたが,同請求は同年5月22日付けで棄却され,その通知が同日ころ原告に送付され,原告は同年6月20日に本件訴えを提起した。 主たる争点(1)住民訴訟の対象被告の主張地方自治法242条の2に定める住民訴訟の対象となる事項は,監査委員が,監査を行い,長に対して措置を求める権限を有する事項でなければならないから,議会の議決に基づく行為は同訴訟の対象とはならない。 本件公金支出についてはi町議会において契約議決及び予算執行議決を経ており,これに基づいて執行されている。したがって,本件公金支出の適否は住民訴訟の対象となり得ない。 (2)本件公金支出の違法性ア原告の主張解決金1200万円は,実質は,i町が取得する別訴係争土地部分の代償と町民センター建設後のi町が所有権を取得するまでの同土地の使用料相当額の損害金である。 ところで,公共事業の用に供する土地を任意買収によって取得する際には,土地収用法に定める損失補償基準規定が買収価格の算定基準として機能しており,損失補償基準は,取得する土地に対しては正常な取引価格をもって補償するものとする旨及び正常な取引価格は近傍類地の取引価格を基準として算定する旨が定められている。 これを本件 基準として機能しており,損失補償基準は,取得する土地に対しては正常な取引価格をもって補償するものとする旨及び正常な取引価格は近傍類地の取引価格を基準として算定する旨が定められている。 これを本件について当てはめると,別訴係争土地部分の買収価格として相当な額は約160万円である。 また,同土地の前記使用料相当額の損害金額についても,7年間で50万円ないし60万円が相当である。 さらに,前記1の争いのない事実等(4)ウの交換契約によって丙’が取得する土地の面積は合計999.20平方メートルであり,他方,i町が取得する土地の面積は698.05平方メートルであって,ほぼ隣接する’. ,土地についてi町が丙に対して15倍の面積の土地を提供している上固定資産評価等によってもi町にとって特に有利となる内容のものではない。 そうすると,本件和解契約がi町の丙所有地の一部に対する不法占有という不法行為に関連しての和解であることを考慮しても,当該土地価格の2倍に当たる320万円と,損害金60万円の合計380万円が相当な解決金額である。にもかかわらず,被告は,1200万円の解決金を支払っており,解決金として相当な額を超える820万円の損害をi町に被らせた。 イ被告の主張(ア)議会の議決と財務会計行為の違法性地方自治法242条の2第1項4号の規定に基づく代位請求に係る当該職員に対する損害賠償請求権は,住民訴訟の一類型として財務会計上の行為を行う権限を有する当該職員に対し,職務上の義務に違反する財務会計上の行為による当該職員の個人としての損害賠償義務の履行を求めるものに他ならない。したがって,当該職員の財務会計上の行為をとらえてこの規定に基づく損害賠償責任を問うことができるのは,これに先行する原因行為に違法事由が存する場合であっても,同原因行為を を求めるものに他ならない。したがって,当該職員の財務会計上の行為をとらえてこの規定に基づく損害賠償責任を問うことができるのは,これに先行する原因行為に違法事由が存する場合であっても,同原因行為を前提としてなされた当該職員の行為自体が財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるときに限られると解すべきである。 本件公金支出は,本件和解契約の履行としてなされたものであるし,同和解契約は町議会の承認を得て締結されたものであり,被告には本件公金支出を止めるべき権利ないし義務はない。したがって,被告の本件公金支出行為自体は財務会計法規上の義務に違反する違法なものではないから,原告の請求には理由がない。 (イ)解決金額の正当性本件公金支出は,丙’の諸々の主張や要求を譲歩させて,i町の利益を確保するための紛争解決金であった。 すなわち,i町と丙’との間では,別訴係争土地部分について長年にわたり訴訟が係属し,丙’は,①別訴係争土地部分にある町民センター及びマンホールの撤去を別件訴訟において求めていた他,②町民センター駐車場正面侵入路部分土地の賃貸ないし交換,③町民センター駐車場予定地の主要部分を賃貸することをいずれも拒否していた。そのため,町民センターの利便は大きく損なわれ,同センターは全体として未完成の状態であった。そこで,i町としては,1200万円程度の撤去費用を支出して別訴係争土地部分の町民センター部分等を撤去することをも考えざるを得ない状況にあったところ,本件公金支出により,これら諸問題について丙’を譲歩させ,①につき,丙’から別訴係争土地部分の所有権をi町が譲り受け,②につき,丙’とi町との間で交換契約が締結され,③についてi町と丙’間で賃貸借契約が締結されるという解決をみるに至ったのである。 したがって,町民センター撤去費用を基 分の所有権をi町が譲り受け,②につき,丙’とi町との間で交換契約が締結され,③についてi町と丙’間で賃貸借契約が締結されるという解決をみるに至ったのである。 したがって,町民センター撤去費用を基準にした解決金額の提示に違法はない。 (ウ)議会の議決と瑕疵の治癒仮に,本件和解契約に基づく本件公金支出の額が不適正でかつ専決権の濫用にあたるとしても,i町議会において同和解契約の締結が承認されたから,これらの瑕疵は治癒されている。 第3争点に対する判断 主たる争点(1)(住民訴訟の対象)について地方自治法242条の2に定める住民訴訟の対象となる事項が,監査前置主義より,監査委員が,監査を行い,地方公共団体の長に対しその執行につき妥当な措置を要求することができる事項でなければならないことは被告の主張するとおりである。 しかしながら,地方公共団体の長の公金支出等は,一方において議会の議決に基づくことを要するとともに,他面法令の規定に従わなければならないのはもちろんであり,議会の議決があったからといって,法令上違法な支出が適法な支出となる理由はない。このように解するならば,監査委員は,議会の議決があった場合にも,長に対し,その執行につき妥当な措置を要求することができないわけではないから,町議会の議決があった一事をもって直ちに本件公金支出の適否が住民訴訟の対象となり得ないとすることはできない。 したがって,この点についての被告の主張には理由がない。 争点(2)(本件公金支出の違法性)について(1)議会の議決と財務会計行為の違法性について地方自治法242条の2第1項4号の規定に基づく損害賠償請求権は,財務会計上の行為を行う権限を有する当該職員に対し,職務上の義務に違反する財務会計上の行為による当該職員の個人としての損害賠償義務の履行を求 治法242条の2第1項4号の規定に基づく損害賠償請求権は,財務会計上の行為を行う権限を有する当該職員に対し,職務上の義務に違反する財務会計上の行為による当該職員の個人としての損害賠償義務の履行を求めるものに他ならないから,当該職員の財務会計上の行為をとらえてこの規定に基づく損害賠償責任を問うことができるのは当該職員の行為自体が財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるときに限られると解すべきである(最判平成4年12月15日民集46巻9号2753頁。 ),,,,ところで地方公共団体の長は地方自治法138条の2に基づき条例予算その他の議会の議決に基づく事務及び法令,その他の規則の規定に基づく当該普通地方公共団体の事務を自らの判断と責任において,誠実に管理し及び執行する義務を負うものであって,前記1のとおり,議会の議決のみならず,法令の規定にも従わなければならない。さらに,同法176条4項に基づき,法令に違反する議決を再議に付する権限をも有し,義務を負う場合もある。したがって,地方公共団体の長は,議会の議決に基づく事務も自らの判断と責任において執行すべきであって,同法96条1項12号の議決がなされたからといって,必ずこれに従うべきものではなく,同議決は長に財産処分の権限を付与するにすぎない許可的なものであると解するのが相当である。また,議会の議決が明らかに法令に違反する場合には,これを再議に付すべきであって,これを看過して同議決に基づいて契約を締結し,公金を支出することは,違法の評価を免れないと解すべきである。 そして,本件のように議会の議決によって町長に和解を締結する権限が与えられた場合でも,その後に事情が変更する場合もあり得るのであって,実際に和解契約を締結するか否かは町長の裁量に委ねられ,議会の議決によって町長が うに議会の議決によって町長に和解を締結する権限が与えられた場合でも,その後に事情が変更する場合もあり得るのであって,実際に和解契約を締結するか否かは町長の裁量に委ねられ,議会の議決によって町長が和解を締結すべき義務まで負うに至ると解するのは相当ではない。 したがって,本件和解契約に関する議会の議決があり,当該職員たる町長がこれに従って財務会計上の行為を行った場合でも,当該財務会計上の行為が違法となり得る場合がある。 (2)解決金額の正当性についてア地方自治法96条1項12号には,地方公共団体が紛争の一方当事者として和解をする場合には議会の議決を要するものと定められているところ,和解は,当該紛争の経緯と内容,争いの対象となった利益,両当事者や関係者の利害状況,紛争解決の経済性など諸般の事情に応じて各事案毎にその時期,方法,内容等について異なるものである。このような和解の性質に照らすならば,和解につき,地方公共団体の長に与えられた裁量権の範囲はかなり広範なものと言うべきであり,本件のように議会の議決を経ている和解は原則として適法と考えるべきである。 しかし,当該和解内容に重大な法令違反が存するものであったり,議会が相手方と通謀して専ら相手方の利益を図るような和解を成立させるなど,明らかにその裁量の範囲を逸脱していると認められる特段の事情が存する場合に,このような和解をすることは,地方公共団体の長に与えられた裁量権の範囲を逸脱した違法なものとなる。 イそこでこの点について以下判断するに前記争いのない事実 証拠 甲,,,(2の1,3,乙2の1,2,4,6,証人丁及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。 (ア)i町は,平成4年12月18日に町民センターの建築工事請負契約を締結し,平成5年2月ころに同センターの建設工 ,乙2の1,2,4,6,証人丁及び弁論の全趣旨によると,以下の事実が認められる。 (ア)i町は,平成4年12月18日に町民センターの建築工事請負契約を締結し,平成5年2月ころに同センターの建設工事に着手した。 (イ)平成5年2月20日ころ,当時丙所有地の所有者であった丙から,i町に対し,町民センターの建物の南側の基礎が丙所有地内に入っているのではないかとの指摘があったが,i町は境界を調査するなどの対応をしなかった。 (ウ)i町は,丙’に対し,平成4年2月ころから,丙所有地のうち,進入路用地部分及び進入路と町民センターの間の土地部分の合計600平方メートル(以下「進入路用地等」という)の買収を申し入れて。 いたが,丙は,平成5年11月ころ,進入路用地等を売却するよりは同土地と丙所有地の南側に隣接する町有地(別紙「町民センター駐車。 「」。)場の②-4及び③-2部分の土地以下南側隣接町有地というとを交換し,さらに,交換後に丙が新たに取得した土地を駐車場用地としてi町に賃貸したいと申し出た。 i町は,丙の申し出を承諾し,交換比率について不動産鑑定士による価格鑑定を資料として協議することを提案し,丙も了解したため,平成3年12月までに行われた町民センター用地買収の際の鑑定に関与した不動産鑑定士に進入路用地等と南側隣接町有地の価格鑑定を依頼し,進入路用地等100に対して南側隣接町有地75であるとの鑑定の結果を得て,平成5年12月18日ころ,その結論のみを丙に伝。 ,,,えた丙はその結論に不満の様子を示し息子らと相談すると言いその後丙やその息子らはi町に不動産鑑定書の提示を要求したが,i町はこれに応じなかった。 (エ)同月30日に,丙の次男から,町民センターが丙所有地に入っているのではないかとの問い合わせがあり, いその後丙やその息子らはi町に不動産鑑定書の提示を要求したが,i町はこれに応じなかった。 (エ)同月30日に,丙の次男から,町民センターが丙所有地に入っているのではないかとの問い合わせがあり,応対したX課長が入っていないと思うがと曖昧な返事をしたため,侵害の有無を明らかにするようにと次男が厳しく要求した。そこで,i町は丙所有地と町民センター敷地の境界を明らかにするために年明けに測量をすることとした。 (オ)平成6年1月6日にi町が境界を確認した結果,町民センターの建物が町民センター侵害土地部分を侵害していることが判明し,i町は測量図面を丙らに渡して謝罪した。このころからi町との交渉時には丙に代わって丙’や次男が表に立つようになった。 (カ)同月21日,丙’らはi町に対して町民センター侵害土地部分に建築されている町民センターの建物部分を収去するように要求し,i町はそれには応じられないとして,あくまで土地の売り渡し又は交換を要請した。そして,丙’らとi町との交渉において,土地の交換契約に関し,丙’らは,面積割合を進入路用地等を1に対し南側隣接町有地を2とする交換を要求し,i町が再鑑定書を示しても譲歩を示さなかった。 (キ)丙’らは,同年2月8日,i町に対し,内容証明郵便にて丙所有地についての賃貸借契約期間が同年3月末日で満了することを理由に明渡しを要求した。そのため,i町は,町議会の副議長で町民センター建設特別委員会の副委員長でもあったYに仲介を依頼して丙’らと交渉したが,丙’らは,町民センター侵害土地部分の町民センター収去に要する費用の半額を解決金として支払うこと,丙所有地についての賃貸借契約を更新する場合には賃料を従前の3割増にすること,借地料に対する課税免除の措置をとること等の条件を提示し,進入路用地等と南側隣接町有地 用の半額を解決金として支払うこと,丙所有地についての賃貸借契約を更新する場合には賃料を従前の3割増にすること,借地料に対する課税免除の措置をとること等の条件を提示し,進入路用地等と南側隣接町有地の1対2の交換比率は絶対条件としたため,丙’らとi町との交渉は同年3月末日までに妥結しなかった。 そこで,i町はやむなく同日をもって別訴係争土地部分を除く丙所有地を明け渡した。 (ク)i町は,以上の経緯から別訴係争土地部分は丙’の所有地であることを熟知しつつも,他に町民センターを維持管理する方法がないとして,同年3月末ころから同年4月中旬ころまでの間に,マンホール設置土地部分に,合併浄化槽への排水管等を埋設し,マンホールを4個設置した。 そこで,丙’は,同年4月15日,岡山地方裁判所津山支部に建築工事続行禁止の仮処分申請をした。 (ケ)同年6月上旬ころ町民センターが完成したが,丙所有地の周囲にはバリケードが張られ,進入路もふさがれていた。 (コ)同年7月,丙は,別件侵害土地部分に建てられている町民センター及びその付属設備の収去を求めて,岡山地方裁判所津山支部に訴えを提起したが,平成9年8月27日,丙’の請求が権利濫用であるとして退けられ,丙’の請求を棄却するとの判決が言い渡された。 (サ)同年9月に丙’は前記判決を不服として控訴をし,控訴審では数回和解期日が開かれた。この和解にi町の助役として出席した丁は,土地の交換は不動産鑑定書の交換比率にて交換し,丙所有地についての賃借料は従前のままとするとのi町としての条件を貫き,丙’も従前の主張を譲らなかったために激しい言い合いとなり,双方折り合いがつかずに和解は成立しなかった。しかし,その直後である平成11年2月22日,丙’は訴訟に関与することと会社勤務とを両立させることに困難を来した等の理 かったために激しい言い合いとなり,双方折り合いがつかずに和解は成立しなかった。しかし,その直後である平成11年2月22日,丙’は訴訟に関与することと会社勤務とを両立させることに困難を来した等の理由から,別件訴訟の訴えを取り下げることとし,i町はこの取下げに同意した。 この訴えの取下げに同意する前に,i町は訴えの取下げと控訴の取下げの意味が異なることを弁護士から説明を受け,訴えの取下げに同意。 ,をすると第一審の判決の効力もなくなることを理解していたしかしi町は,弁護士が「ここらへんでよろしいのではないか」と言った。 ため,丙’の訴えの取下げに同意した。 i町が訴えの取下げに同意した時点では,丙’の態度はかたくなで,同人がi町との話し合いに応じることは到底考えられないような状況であり,i町もこれを認識していた。また,同時点では,i町は,丙’との紛争をいかに解決するかについて,将来の見通しを十分検討しておらず,結果的には町民センターを取り壊すことになるかもしれないと考えていた。また,特に訴えの取下げに同意しなければならない事情がi町にあったわけではない。 (シ)同年5月,i町の助役である丁と総務課長代理が2人で丙’宅を訪問し,改めて町民センターに関する問題を解決するための交渉を申し入れたが,丙’は,町は信用できない,土地は遊ばせておいても妥協はしないなどと述べ,i町との交渉には一切応じない姿勢を示した。 しかし,その後丁らが再三にわたり丙’を訪問した結果,丙’は態度を軟化させ,まずi町の条件を示すようにと要求し,親兄弟が納得できる条件が示されれば交渉に応じるかどうかの親族会議を開くことにすると述べた。 (ス)丁は,丙’からi町の条件を示すようにと言われた旨を,同月31日に町議会総務常任委員会に報告した。そして,今後は同委員会と協 れれば交渉に応じるかどうかの親族会議を開くことにすると述べた。 (ス)丁は,丙’からi町の条件を示すようにと言われた旨を,同月31日に町議会総務常任委員会に報告した。そして,今後は同委員会と協議を密にしながらi町としての条件を詰めることとし,条件の基本として以下の3つの条件をたてた。 a丙’が別訴係争土地部分の町民センター建物部分及び付属設備の収去並びに同土地部分の明渡しの後でなければi町との交渉に応じないのであれば,別訴係争土地部分を侵害している町民センター部分の取壊しもやむを得ないが,現状のままで解決することが最も望ましい。 したがって,取壊修復費を解決金の参考とする。 b土地の交換は鑑定士の鑑定した比率による。すなわち,平成6年2月16日付けの不動産鑑定士Zによる不動産鑑定評価書によると,同年1月10日時点での別訴係争土地部分の1平方メートル当たりの鑑定評価額は5万8400円であり,南側隣接町有地(鑑定時には337番7の土地であったが,その後の合筆により地番が変更された)。 の鑑定評価額は4万0800円であるから,丙所有地1に対し町有地0.6986の割合で交換する。 c借地料は平成6年までi町が契約していた条件である年間150万円を基本とする。 (セ)そこで,i町は,町内外の建築設計事務所3社を指名し,取壊修復の工法とその費用の提案を依頼したところ,以下のような提案がなされた。 aA社の場合工法バルコニー一部取壊し電気給排水施設屋内集水マス,暗渠排水工事費882万円bB社の場合工法バルコニー全部取壊し電気給排水施設それぞれの管渠埋設工事費1118万円cC社の場合工法バルコニー一部取壊し電気給排水施設屋内ピット施行収納工事費1571万4000円A社及びB社の案によると 電気給排水施設それぞれの管渠埋設工事費1118万円cC社の場合工法バルコニー一部取壊し電気給排水施設屋内ピット施行収納工事費1571万4000円A社及びB社の案によると,町民センターの建物部分と用地界約30センチメートルの間に多数の管渠を埋設する必要があるため,施行上現実性に欠け,また事後管理にも困難を来たし再改造の可能性があった。 一方,C社案は,工事費は高いものの,施行上も事後管理上も問題がなかったため,C社案を採用することが決定され,同案の工事費を基に実施見込事業費を算出し,その額1554万円を解決金の最高限度額として参考にすることが町議会総務常任委員会で承認された。 ,’。 (ソ)その後丙に対して提示する解決金の額についての検討がされたこの検討にあたっては,取壊修復費用及び丙’との交渉がうまくいか。 ,なかった場合の進入路と駐車場の確保費用が参考にされたすなわち取壊修復費用としては,採用されたC社案の実施見込事業費1554万円の他,不採用であるが最低額のA社案の実施見込事業費923万6000円及びA社とC社の折衷案の実施見込事業費1238万8000円が考慮された。また,進入路計画を変更した際に必要となる,町道の再改築工事費1200万円及び町民センター敷地内進入路の再改築工事費500万円並びに駐車場の確保費用2800万円が考慮され,解決金として1200万円を提示することとなった。 ,’,’,(タ)平成11年9月30日i町から丙に対し①i町は丙に対し解決金として1200万円を支払う,②町民センターは現状のままとし,丙’はi町に対し別訴係争土地部分の土地使用料を請求しない,③i町が進入路と駐車場用地として必要とする土地については,i町が鑑定士に依頼して鑑定した比率で町有地と交換す 民センターは現状のままとし,丙’はi町に対し別訴係争土地部分の土地使用料を請求しない,③i町が進入路と駐車場用地として必要とする土地については,i町が鑑定士に依頼して鑑定した比率で町有地と交換する,④土地を交換した後,丙’が新しく取得した土地全部を駐車場用地としてi町に賃貸する,との和解案が提示された。 その後,i町と丙’は11回の交渉を経て,同年12月16日,丙’が上記和解案で和解することに合意し,同月21日に町議会総務常任委員会が本件和解契約締結を了承し,定例議会で同和解契約締結が全員一致で可決され,平成11年度一般会計補正予算が可決された。そして,同月25日,丙’とi町長であった被告との間で本件和解契約が締結された。 なお,本件和解契約には含まれていないが,丙’は,i町に対し,本’,件和解契約に基づく土地の交換によって丙が所有権を取得した土地丙所有地から別訴係争土地部分と土地の交換によってi町が所有権を取得した土地部分とを除いた残土地部分及びこれに隣接する丙’の所有する土地(52平方メートル)を年間155万8000円で賃貸するとの合意がなされており,この賃借料は,平成6年3月末日までの賃貸借契約における賃借料と同額の150万円に,隣接する丙’の所有土地52平方メートル分の賃借料5万8000円を加えて算出されている。 ウ以上の事実に基づき,被告に本件公金支出につき明らかな裁量権の濫用ないし逸脱があったか否かを検討する。 ところで,公共事業の用に供する土地を任意買収によって取得する場合に,土地収用法に定める損失補償基準規定が買収価格の算定基準として機能するかはさておき,和解によって取得する財産の価格が,和解のための解決金としての相当額を判断する際に考慮すべき諸要素のうちの主たる要素の1つであることは論をまたないところであ 格の算定基準として機能するかはさておき,和解によって取得する財産の価格が,和解のための解決金としての相当額を判断する際に考慮すべき諸要素のうちの主たる要素の1つであることは論をまたないところである。 そこで,本件和解契約の内容をこの点から検討してみるに,前記の認定事実によれば,本件和解契約の内容は,解決金1200万円の支払の他,①丙’から町への別訴係争土地部分の無償譲渡及び平成6年6月から平成11年12月25日までの同土地使用料の放棄,②i町町有地と丙所有地の等価交換,③賃貸借契約の締結であるから,i町が得た財産的利益は,結局,別訴係争土地部分の所有権と前記期間中の同土地の使用料相当損害金の債務免除及び賃借権であることが認められる。 そして,別訴係争土地部分の単価は5万8400円,面積は27.40,。 平方メートルであるから同土地部分の価格は160万0160円であるまた,使用料相当損害金については,丙所有地(1342平方メートル)を従前年間150万円で賃借し,本件和解契約締結後には,従前よりも広い面積を賃借しているにもかかわらず,賃借料は年間155万8000円であり,増額された5万8000円は丙’の所有する隣接土地52平方メートルが新たに賃貸借の対象となったためであるというのであるから,別訴係争土地部分の使用料相当損害金の算出にあたっては,これらの賃貸借契約における賃借料を参考にすべきである。そして,賃借料単価がより高い,平成6年3月末日までの賃貸借契約における1平方メートルあたりの年間賃料は150万円を1342平方メートルで除した1117.7347円であるから,別訴係争土地部分の面積である27.40平方メートルをこれに乗じ,さらに町民センター建設時である平成6年6月から本件和解契約締結時である平成11年12月までの年数5.58 7.7347円であるから,別訴係争土地部分の面積である27.40平方メートルをこれに乗じ,さらに町民センター建設時である平成6年6月から本件和解契約締結時である平成11年12月までの年数5.5833年(67か月)を乗じると,約17万0990円となる。 そうすると,丙’がi町へ無償譲渡した土地の価格160万0160円に丙’が債務免除をした別訴係争土地部分の使用料相当損害金17万0990円を加えてもわずか177万1150円であり,この他に賃借権を取得することができた利益があるとしても,解決金として支払われた1200万円との隔たりは到底解消されるものではなく,本件和解契約によって直接i町が取得した財産的利益から見ると,解決金1200万円はあまりにも高額であると言わざるを得ない。 この点,i町は,解決金の額を,別訴係争土地部分に存する町民センター部分及びその付属設備を収去し,町民センターを修復する費用を基礎として算出しているが,i町は別件訴訟の第一審で,丙’のi町に対する別訴係争土地部分に存する町民センター部分及びその付属設備の収去請求を棄却した判決を得たにもかかわらず,その控訴審で,丙’との紛争をいかに解決するかの見通しも立たないまま,訴えの取下げの効果を認識しつつ丙’の訴えの取下げに同意し,しかも,この同意をした時点では特に訴えの取下げに同意せざるを得ない事情があったわけではないというのであるから,i町の行動は不可解であるし,軽率である。そして,一審判決の効果を自らほごにした上で,収去を前提とする解決金の算定を行っているのであり,i町のこれら一連の行動は不合理である。 また,本件和解契約の内容を見ると,解決金額の他にも,別訴係争土地部分の土地使用料相当損害金の支払や交換土地の交換比率について譲歩の余地があり,賃借料の交渉の余地もあると 一連の行動は不合理である。 また,本件和解契約の内容を見ると,解決金額の他にも,別訴係争土地部分の土地使用料相当損害金の支払や交換土地の交換比率について譲歩の余地があり,賃借料の交渉の余地もあると思われるところ,本件和解契約を締結するにあたってこれらの譲歩について検討した事実が全く認められず,最初から町民センターの取壊修復費用のみを検討していることも,検討が不十分であるとのそしりを免れない。 この点につき,丁は一発の和解案提示で片をつけたいという意味で1200万円の解決金を提示したと述べ,土地の交換比率については,従前から町が示している鑑定書の比率に基づかねばならなかったと述べている。 確かに,丙’がなかなかi町との交渉に応じなかった経緯が認められることから,最初から丙’が納得するような和解案を提示したかったとの考えは全く理解できなくはないが,だからといって町民センターの取壊し及び修復にかかる費用とほぼ同額の解決金を提示する必要性が肯定されるわけではなく,i町は他の譲歩の道については全く模索していないのであるから,1200万円の解決金が,一回の和解案提示で紛争を解決するための解決金額として最も妥当か否かは検討されていないと認められる。また,土地の交換比率についても,従前からi町が一貫して鑑定書に基づいた土地の交換比率を主張していた事実は認められるが,和解の交渉の場において,これに固執し,交換比率について全く譲歩が許されないと考えなければならない理由は見当たらない。 以上のように,本件和解契約に基づいて支出された解決金の額及びその決定の経緯には不可解な点や不合理な点が多くあり,検討が不十分であったと認められる。 エしかし,前記イのような事実経過に鑑みれば,i町が丙’に対して強い態度で交渉に臨むことが非常に困難であり,かつ,同人に対して 不可解な点や不合理な点が多くあり,検討が不十分であったと認められる。 エしかし,前記イのような事実経過に鑑みれば,i町が丙’に対して強い態度で交渉に臨むことが非常に困難であり,かつ,同人に対して最初に提示する和解案が同人の納得を得られなければその後の交渉が全くできなくなるおそれが強かったことが認められ,i町としては最初から高額な解決金を提示せざるを得なかったことが認められる。また,1200万円の額の算定方法も,町民センターの取壊修復という最悪の事態を想定してなされたものであって,全く理由がないわけではない。 そして,丙’が町民センターの駐車場予定地であった丙所有地にバリケードを置いて町民の利用を排除し,進入路も塞がれて迂回しなければ町民センターに入ることができず,町民センターを駐車場等を含めて全体として完成させるためには,前記バリケードを撤去し,進入路と駐車場を確保することが是非とも必要であり,これらの問題が解決するか否かは丙’がi町との交渉に応じるか否かに全てかかっていたという状況があったところ,かたくなにi町との交渉を拒み,土地は遊ばせておいても妥協はしないと述べていた丙’の態度を軟化させる必要性があったこと,本件公金の支出は,前記の全ての問題を一括して解決するための解決金であって,単純にi町が取得した財産的利益の対価としての性質を有するものではないことをも考慮すると,別訴係争土地部分や使用料相当損害金の額を大幅に超える,1200万円の解決金を支払ったとしても,いまだ被告が明らかに裁量権を濫用し,もしくは逸脱して行使したとまではいえないと解すべきである。 以上の次第であるから,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求には理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61 いと解すべきである。 以上の次第であるから,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求には理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 岡山地方裁判所第2民事部裁判長裁判官小野木等裁判官政岡克俊裁判官内山真理子物件目録 所在岡山県真庭郡i町m番地他種類公民館(○○会館)構造鉄筋コンクリート造4階建床面積延べ5163.8平方メートル 所在岡山県真庭郡i町地番m番1地目雑種地地積1342平方メートル 所在岡山県真庭郡i町地番n番地目雑種地地積565平方メートルのうち240.51平方メートル及び87.90平方メートル(別紙「町民センター駐車場」の②-3及び②-4部分) 所在岡山県真庭郡i町地番o番1地目雑種地地積711平方メートルのうち67079平方メートル別. (紙「町民センター駐車場」の③-2部分)

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