昭和49(ラ)691 新聞之新聞社団交拒否

裁判年月日・裁判所
昭和50年9月25日 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主   文 本件抗告を棄却する。 抗告費用は抗告人の負担とする。        理   由 一、本件抗告の趣旨及びその理由は別紙(一)に記載したとおりであり、相手方の 主張は別紙(二)に記載したとおり

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主文 本件抗告を棄却する。 抗告費用は抗告人の負担とする。 理由 一、本件抗告の趣旨及びその理由は別紙(一)に記載したとおりであり、相手方の主張は別紙(二)に記載したとおりである。 二、当裁判所の判断(1) 被保全権利の存否抗告人は、憲法二八条及び労働組合法七条二号により、労働者は使用者が正当な理由なく団体交渉の申入れを拒否した場合は使用者に対し具体的団体交渉請求権を取得するものというべきところ、相手方は正当な理由なく抗告人らの団体交渉の申入れを拒否しているものであるから、抗告人は具体的団体交渉請求権を取得した、と主張(申請の理由の要旨4)する。 憲法二八条は、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」と規定し、ここにいう「勤労者が団体交渉をする権利」とは、労働者が労働組合その他の自主的な団体を通じて労働条件その他労働者の経済的地位の向上について使用者と対等の立場に立つて交渉する権利であるが、この団体交渉権は、団結権及び争議権とあわせていわゆる労働三権として同法条により保障された労働者の基本権であることから、国と労働者との関係において国がこれら権利を不当に侵害してはならないという意味において労働者の単なる自由権として保障したにすぎないものではなく、使用者に対する関係においても尊重されるべきことが労使間の公の秩序であるとしてこれを保障したものと解される。したがつて、労働者の団体交渉権を不当に侵害する行為は、それ自体違法であり、損害賠償責任を生ぜしめるほか、法律行為においてはその効力を否定するにいたらしめるというべきである。しかしだからといつてこのことから直ちに憲法二八条の規定は、これによつて労使間の団体交渉に関する具体的な権利義務を設定したものであると解することはでき 効力を否定するにいたらしめるというべきである。しかしだからといつてこのことから直ちに憲法二八条の規定は、これによつて労使間の団体交渉に関する具体的な権利義務を設定したものであると解することはできない。 けだし、労働組合法は、使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むことを不当労働行為として禁止し(七条二号)、この不当労働行為に対しては、労働委員会が使用者に対し団体交渉に応ずべきことを命ずることによりその救済が与えられ(二七条)、この救済命令を履行しない使用者に対しては刑罰又は過料の制裁が課せられる(二八条、三二条)ものとしているから同法七条二号の規定は、これより使用者は団体交渉を不当に拒否をしてはならないという公法上の義務を負うものとしているとはいうことができても抗告人が主張するような団体交渉権という私法上の権利を直接規定している実定法が存在しないのみならず、仮りにそのような権利を認め団体交渉の不当な拒否に対して、労働委員会による救済とは別途に、直接に裁判上の本案請求又は仮処分申請により団体交渉の拒否禁止又は応諾を求めうるものとしても、憲法上保障される私権としての団体交渉権の権利性を現行法上どう把握し、いわゆる団体交渉請求権なるものに対応すべき使用者の債務の給付内容をどのように特定するか、そして団体交渉の履行を法律上強制することの能否並びにその履行を裁判上強制してみたところではたして実効性を確保しうるかなど多くの困難な実践的解釈上の問題を生じ、到底憲法二八条ないし労働組合法七条が現行法上私法的な団体交渉請求権なるものを認めているとは解し難い。したがつて、相手方が抗告人との団体交渉を不当に拒否していると仮定してみても、そのことから労働組合法七条二号に基づく行政救済申立権が発生すること以上に、これにより なるものを認めているとは解し難い。したがつて、相手方が抗告人との団体交渉を不当に拒否していると仮定してみても、そのことから労働組合法七条二号に基づく行政救済申立権が発生すること以上に、これにより使用者に対し交渉に誠意をもつて応ずべき旨の作為を求める私法上の債権、すなわち具体的団体交渉請求権を取得したものとして直ちに相手方が抗告人に対して団体交渉に応ずべき私法上の義務が発生する筋合いではないといわなければならない。 以上説示したところにより抗告人の本件仮処分申請は、その被保全権利が存在しないものであるから、そのほかの申請の理由について判断するまでもなく、不適法として却下を免がれない。 (2) すると、抗告人の本件仮処分の申請を却下した原決定は相当であつて、本件抗告は理由がない。 よつて、本件抗告を棄却し、抗告費用は抗告人に負担させることとして、主文のように決定する。 (裁判官菅野啓蔵舘忠彦安井章)別紙(一)抗告の趣旨一、原決定を取消す。 二、相手方は、左記事項に関し、抗告人および抗告人が委任する者と誠実に団体交渉をせよ。 記(一) 七月からの賃上げの件(二) 業務上疾病に対する処置(三) 有給休暇に関する件(四) 祝祭日を休日にする件(五) 唯一交渉権等労使関係に関する件三、手続費用は相手方の負担とする。 抗告の理由原決定の不当性について第一、一、東京地裁民事第六部は一一月二五日、全国専門新聞労働組合協議会新聞之新聞社労働組合による団交応諾仮処分申請(昭和四九年(ヨ)第二三四〇号)を却下する旨の決定を行つたが、この決定は、中小・零細企業下でしかも少数派として出発せざるを得ない労働組合の団結権、団体交渉権の行使、就中、ワンマン経営で、長年にわたつて労働者に低賃金、劣悪な労働条件、無権利状態を強い、しかも前近代 決定は、中小・零細企業下でしかも少数派として出発せざるを得ない労働組合の団結権、団体交渉権の行使、就中、ワンマン経営で、長年にわたつて労働者に低賃金、劣悪な労働条件、無権利状態を強い、しかも前近代的な労務管理を敷いている新聞之新聞社における当該組合の団結権、団体交渉権の行使の実態を無視した不当な決定である。 二、憲法及び労働組合法で保障されている労働者の団結権、及び労働組合の団体交渉権は、大規模な組合であれ新聞之新聞社のような少人数の組合であれ等しく保障されなければならない。いやむしろ、中小・零細企業における労働者にあつては、労働条件が極めて悪く、しかも経営者がワンマン経営者で近代的労使関係確立の認識にとぼしく専制的労働者支配を貫徹している場合、特にそれらのことは保障されなければならないはずである。しかし同決定は、組合の団体交渉申入等の諸行為が「信義則に反している」という理由で、結果的に労働組合の団結権、団体交渉権を否定しているといわなければならない。 三、そればかりでなく、同決定は、新聞之新聞社労働組合(以下「組合」という)が去る七月二三日に新聞之新聞社(以下「会社」という)に提出した労働者にとつて極めて切実な労働条件の改善要求に関して現在に至るまで四ケ月余、実質的な団体交渉が一切行われていないという厳然たる事実に対して何の判断も行つていない。なるほど組合の度重なる団体交渉申入に対して、会社は八月一日、組合から委任を受けた上部団体である専門紙労協の代表者を排除した形で一時間という一方的時間制限の下で「団体交渉」を一回行つている。しかしそれは社長の「組合員全員の人数、氏名を明らかにしろ。それが出来ないのならば話し合いは出来ない」という発言に端的に示されるように、要求項目について労使間で真摯に話し合う態度ではなかつた(疎甲第一、第三の五 長の「組合員全員の人数、氏名を明らかにしろ。それが出来ないのならば話し合いは出来ない」という発言に端的に示されるように、要求項目について労使間で真摯に話し合う態度ではなかつた(疎甲第一、第三の五、第三の六、第一八、第一九各号証)。そして、それ以降、団体交渉申入れに対してすら何ら回答してきていない。 四、会社側はこの間労働条件の改善を全く行わず、依然として労働者を劣悪な労働条件の下に放置しているばかりでなく、“組合潰し”を画策して数々の不当労働行為を行つている。すなわち、七月以降、非組合員のみを対象に昇給を行い、組合員には昇給を全く行わないという不当措置をとり、組合員へ「警告書(疎乙第一~八、一〇、一一各号証)」という形での処分恫喝を度々行い、組合員の実家又は組合員の住むアパートの大家へ悪質な誹謗中傷文書を送付し、職場内では不断に職制を動員して組合員乃至組合活動に対するさまざまなデマ・中傷を流布する等の不当労働行為を平然と行つている。 同裁判所の決定は、これらの事実をことごとく無視し、会社側の一方的、独断的主張を決定の根拠としており、事実誤認極めて不当な決定である。 第二、一、原審が仮処分申請を却下した主な理由は、(1)組合及び上部団体である専門紙労協代表等支援の労働者が組合結成通告の際以降になした言動(特に、七月二三日、八月一日、八月八日、八月二九日、九月一三日の言動)は、行き過ぎの感を免れず、穏当さを欠くこと、(2)組合が組合員の人数、氏名を明らかにしないこと、(3)団体交渉の場に出席しようとする専門紙労協に所属する者の氏名等を明らかにしようとしないこと、をもつて「信義則に反する」というものである。 二、しかし、以上三点の却下理由は、いずれも、前述した通り小・零細企業下でしかも少数派として出発せざるを得ない組合と、それに対して、近代 ようとしないこと、をもつて「信義則に反する」というものである。 二、しかし、以上三点の却下理由は、いずれも、前述した通り小・零細企業下でしかも少数派として出発せざるを得ない組合と、それに対して、近代的労使関係についての認識が乏しく、直截的に組合潰しを図つているワンマン経営者という労使関係の実態、或いは組合結成当初から組合及び専門紙労協代表の団体交渉申入れに対して、ただ「帰れ帰れ。オマエ達とは会わない」、「出ていけ」と怒鳴るばかりで、話し合いに応ぜず、すぐに職制を動員し、或いは警察官を導入して、最近に至つては組合員の面会すら拒否するというような社長の対応、更にはそのような会社の対応に規定されて、必然的に組合の権利を防衛するために、相対的に実力を行使せざるを得ない(組合・支援労働者を含めた社内立入等)労使対立の状況についての認識を欠いたものと云わなければならない。 第三、会社における労使関係、及び労働条件の実態一、会社の概要、及び会社における労使関係、労働条件の実態については、「報告書」(疎甲第一号証及び第一九号証)で述べられている通りであるが、同決定は、組合結成から現在に至るまでの諸経過の最大の背景であるこれらについて何ら判断していないので、ここで改めてその要点だけを述べたい。 二、会社は、大正一三年設立以降、新聞、出版、印刷、放送、広告等マスコミ業界の情報提供を業務としてきた。資本金は現在一〇〇万円、東京本社の他に名古屋、大阪に支社、札幌、福岡に支局を置き、従業員は全社で三九名で、企業規模はいわゆる“小・零細”に属する。 現社長Aは、先代社長(会社設立者)の長男であり、昭和三六年前の先代社長死亡後、同社代表取締役社長の地位にある。A社長は小・零細企業によくみられるように「ワンマン経営者」であり、同社の実権は全て社長に集中している。 三、 会社設立者)の長男であり、昭和三六年前の先代社長死亡後、同社代表取締役社長の地位にある。A社長は小・零細企業によくみられるように「ワンマン経営者」であり、同社の実権は全て社長に集中している。 三、同社は、ワンマン経営者としての社長の性格や、戦後まもなく労働組合が結成されたこと(昭和二三年に会社側の切り崩しにより崩壊したと伝えられる)に対する経験から、労働組合の結成に対し極度の危機感をもち、全従業員の前で社長及び重役が「この会社に労働組合があつてはならない」と公言してはばからなかつた。 このような前近代的労働者に対する管理思想は、今年七月二三日組合結成を通告して以降、いささかも改善されることなく、むしろ急速に激化していつたのであつた。 四、このような会社の性格は、賃金を含む労働条件にストレートに反映している。 就業規則さえ労働者の前に一度として明示しない中で、労働者は低賃金、劣悪な労働条件、無権利状態が有無をいわせず強いられてきたし、現在もなおそうである。 賃金に関しては、中小・零細企業における世間並相場と比べ若年層で二~三万円、中高年層では三~五万円の格差がある。例えば三六才勤続八年の男子従業員(編集取材記者)の今年七月時点での手当を含む総支給額はわずか八万円である。 しかも、賃金明細は一切明らかにされておらず(従つて、どの程度が基本給か手当か、その額は一切明らかにされず、会社はただ「総支給額に基本給も手当も含まれている」とのみ説明している)ほとんどの部分が社長個人の判断で幾らでも自由裁量ができる「能率給」という名の査定部分で占められている。このように賃金体系と呼べるような体系は一切存在せず、労働者は低賃金であることも相俟つて、何とか社長の気に入られるように働かねば生活を維持していけない、という卑屈な態度を強いられてきている。 一方、その に賃金体系と呼べるような体系は一切存在せず、労働者は低賃金であることも相俟つて、何とか社長の気に入られるように働かねば生活を維持していけない、という卑屈な態度を強いられてきている。 一方、その他労働条件をみると、会社側がこの間欠員(同社にあつては、劣悪な労働条件のために労働者の流動が激しく、労働者がどんどん辞めている)を補充することを極力避け、少ない労働力で生産性を維持、拡大しようとしている結果、労働強化がますます進行している。勤務時間は一応午前九時から午后五時まで(月曜日~土曜日)となつているが、連日新聞の発送業務を行うため全従業員が三〇分~一時間の残業を強制的にやらされるし、印刷工場労働者は、これとは別に週三~四回、一~三時間の残業をやらなければならない。しかもその残業手当たるや(印刷工場及び内勤労働者については、所定の残業代を支払つているものの)編集、取材記者には三〇分五〇円という明確な労基法違反の支払いをしている。また、編集、取材記者は本来の業務の他、集金、新規読者開拓等の営業も兼務させられている。 また、会社の労務管理の好例を示すものとして年次有給休暇がある。年次有給休暇は形式的には二〇日とされているが、その中には国民の祝祭日、八月に限り認められている土曜日休暇が含まれており、実質的にはわずか四~五日に過ぎない。それも病気等止むを得ない事情がない限り請求できないのが実情である。また原審での社長の上申書(疎乙第九号証)でも明らかにされているが、B(現組合員)が当然の権利として生理休暇をとつた事に関し、社長は「私の知る限り、当社では始めての権利行使であつた」と述べているように、一応形式的には制度として認められている諸権利にしてもその行使が極めて因難である事例が多い。 以上述べたように、会社にあつては、“より安い労働力で、より めての権利行使であつた」と述べているように、一応形式的には制度として認められている諸権利にしてもその行使が極めて因難である事例が多い。 以上述べたように、会社にあつては、“より安い労働力で、より高い生産性を”という経営方針の下で労働者の使い棄て、労働強化が進行している結果、低賃金、劣悪な労働条件が当り前のこととして通用しているのであり、そのことに比例して社長の前近代的労務管理、専制的職場支配によつて労働者が社長に異議申立をすることが因難となつているのである。 第四、組合の人数、氏名を明らかにしなかつたことについて一、かかる劣悪な労働条件を改善するよう社長に要求していくためには労働者は自ら団結し、労働組合を結成していくしかないが、会社のような社長の専制的支配が職場末端まで貫徹している小零細企業においては、労働組合の結成そのものも一程度秘密裡に進めなければならないのは当然だし、少なくともいわゆる「正常な労使関係」「団体交渉によつて労働条件等の問題を解決していくという労使間のルール」が確立されるまでは上部団体の指導、或いは上部団体、地域の労働者等の支援を受けてゆくのも極く一般的に認められていることである。 二、会社に働く労働者は、自分たちの労働条件が劣悪であり、そのことを改善するよう社長に求めていくことがいかに困難であるかを誰よりもよく知つている。「賃金は安いし、生活が苦しいが、しかし社長に歯向かつたら、職場にいられなくなる。だから“見ざる、聞かざる、言わざる”が一番いいのだ」という労働者の会社における「処生術」は、長年職場にいる労働者が肌身で体験してきた結果の「知恵」である。だからこそ、会社における労働組合は、職場の少数派として出発せざるを得なかつたし、組合結成後、会社が組合員の人数、氏名を明示するよう要求してきたときも、それが組合潰し してきた結果の「知恵」である。だからこそ、会社における労働組合は、職場の少数派として出発せざるを得なかつたし、組合結成後、会社が組合員の人数、氏名を明示するよう要求してきたときも、それが組合潰しに直結することが明らかであつたので、組織防衛上拒否したのである。労使の力関係が会社側の圧倒的優位にあるとき、組合がその組織の全貎を明示するのを拒否するのは当然認められるべき正当な権利であり、執行委員の氏名を明らかにすれば足りると考える。 具体的にいえば、組合結成時、正式には組合員は二名(C、B)であつたが、結成直後一名(D)が正式加盟し、他に数名組合参加の意思表示をしていた者があつたが、それらを明らかにすることは、即会社からの切り崩し工作がかかることが明白であつたので、執行委二名のみを明らかにした。 しかし、その後組合に正式参加した一名については、すでにその氏名を組合ニユース(組合の情宣機関紙)でも明らかにしており、又執行委員にも選出されたので、今回は貴裁判所にその氏名を明らかにすることは差しつかえない。現在組合員として明らかにできる氏名については以上の三名のみである。 三、会社は「組合は従業員約四〇名中、CとBの二名のみであつていまだ社団的性格を有している団体としての組合が結成されているものということはできないから、団体交渉請求権を有しない」と決めつけているが、これは労働法の知識を欠いた珍説である。 組合は、現在の少数派にとどまることを固定化するつもりはもちろんなく、組合結成後一貫して非組合員に対して組合に参加するよう呼びかけている(なお、組合員対象者は、二〇名である)。しかし、現在的に例え少数派(三名)だとしても、憲法及び労働組合法に認められている労働組合であることは明白である。すなわち、複数の組合員を有し、組合規約を有し、上部団体にも 対象者は、二〇名である)。しかし、現在的に例え少数派(三名)だとしても、憲法及び労働組合法に認められている労働組合であることは明白である。すなわち、複数の組合員を有し、組合規約を有し、上部団体にも加盟し、継続的に会社と交渉し、その経済的地位の向上をはかることを目的としているのであつて労働組合法でいう「労働組合」であるのは、疑う余地がない。 付言すれば、組合は現在、東京都地方労働委員会に組合資格審査を請求中であり、近く正式に社団性を有する「労働組合」として認められる予定である。 第五、専門紙労協の活動実態、団交に出席しようとする専門紙労協の氏名等の不明確について一、小・零細企業下において、「正常な労使関係」、すなわち「団体交渉によつて労働条件等の問題を解決していく労使間のルール」が経営者の前近代的体質の故に未だ確立されていない場合、しかも経営者が組合活動についてまで不当に介入してくる場合、組合がその上部団体から直接きめ細かい指導を受ける必要性については、前述した通りである。そればかりでなく、組合が未だ少数派で会社の職場支配が圧倒的に強く、しかも組合員自身、組合活動に未習熟である場合は、その必要性は不可避ですらある。 二、いうまでもなく労働組合法第六条は、団体交渉に関し「労働組合の代表者又は労働組合の委任を受けた者は、労働組合又は組合員のために使用者又はその団体と労働協約の締結その他の事項に関して交渉する権限を有する。」と明記している。 組合は、昭和四九年七月二二日、組合結成大会を開き、同時に専門紙労協に加盟し、団体交渉権の委任を行つている。そのことは、組合と上部団体の同意があれば担保されるものである。ところが、会社は、委任された上部団体である専門紙労協を「外部勢力」などと称し、「外部勢力と会う義務はない」と面会すら拒否してはばからない ことは、組合と上部団体の同意があれば担保されるものである。ところが、会社は、委任された上部団体である専門紙労協を「外部勢力」などと称し、「外部勢力と会う義務はない」と面会すら拒否してはばからない。原審の審理において会社は、「名前、住所、所属単組を明らかにしなければ、何処の誰ともわからず、上部団体といわれても信用できない」旨述べているが、少くともこの間会社側が専ら主張してきたのは「とにかく外部勢力(乃至、上部団体)とは会わない。労組法が何と規定していようとそんなことは知つたことじやない。我が社としては会う必要を認めない」という一点張りであつた事に注目しなければならない。団体交渉であろうと、その予備折衝であろうと、単なる面会であろうととにかく上部団体とは会わないという会社側の姿勢は、疑いもなく団交拒否の不当労働行為である。 三、もし仮に「専門紙労協代表の名前を明らかにしない」ということが会社の拒否理由であるとしても、組合及び専門紙労協は、再三にわたり文書で或いは口頭で専門紙労協議長名及び団体交渉に参加しようとする代表者名を明らかにしているのである。(疎甲第四、第一三、第一六号証)会社は、原審の審理において上申書等で「名前、住所、所属単組を明らかにしていない」と述べているが、団体交渉権を委任されて出席しようとする専門紙労協の代表は「専門紙労協代表」として団体交渉に出席するのであつて、「○○単組のダレソレ」として団体交渉に出席するわけではない。「専門紙労協代表のダレソレ」で足りるはずである。団体交渉申入れの際、その場にいた専門紙労協議長の氏名を明らかにし、しかも団体交渉に参加しようとする代表の氏名も明らかにしているのに対し、なお「正体不明の団体」の如き決めつけを行い、団体交渉の出席はおろか、その事務(予備)折衝をも拒否し、面会することすら らかにし、しかも団体交渉に参加しようとする代表の氏名も明らかにしているのに対し、なお「正体不明の団体」の如き決めつけを行い、団体交渉の出席はおろか、その事務(予備)折衝をも拒否し、面会することすら拒否している会社の態度こそ不当といわなければならない。 なお、組合及び専門紙労協は、この間会社への団体交渉申入れの際その場にいた専門紙労協に所属する労働者全員の氏名(議長及び団交へ出席しようとする代表者を除く)について、会社が様々な手を使つて弾圧を加えてくることが容易に予測されたので、明らかにしないできたが、今後会社が正常な団体交渉を開く場合、その団体交渉に参加する専門紙労協員の氏名を明らかにする用意があることを述べておきたい。 四、一方、会社は専門紙労協について、憶測とまた聞きによつて「事務所もなく、外野的な主張を打ち出しているため、企業内組合からも従業員からも支持を得られず、過激な行動に終始しているとみられる」とか「暴力集団、獣の集団」とか極めて一方的な決めつけを行つているが、これは極めて独断である。 五、専門紙労協は、昭和三五年いわゆる業界紙・誌の労働組合の協議会として発足した。本協議会の脱退加入は組合単位に行われ、業界紙誌の中小・零細企業としての制約もあつて、加盟単組の流動化が他の協議会乃至連合会に比べやや激しいが、現在三二単組一二一〇名を組織している。事務所は、東京都中央区<以下略>に置いている。(原審に提出した専門紙労協規約ー疎甲第一五号証ーにおいては「東京都中央区<以下略>日本橋新聞労働組合連合会内」となつているが、これは同規約を規約成立後改正しないまま現在に至つたため、事務所所在地をそのままにして記してあるためである)同疎甲第一六号証でいう「幹事会」は総会につぐ議決機関で、総会で選出され、次の総会に至る期間の諸活動の執行機 立後改正しないまま現在に至つたため、事務所所在地をそのままにして記してあるためである)同疎甲第一六号証でいう「幹事会」は総会につぐ議決機関で、総会で選出され、次の総会に至る期間の諸活動の執行機関である。慣例として週一回幹事会を開き、各単組の活動状況等について検討し、指導方針を打出している。機関紙・誌としては、「労協ニユース」(不定期)と、「斗争ニユース」(月に一回程度)がある。 現在幹事組合は八単組で日本食糧新聞労働組合、東西貿易通信労働組合、表面処理ジヤーナル労働組合、化学経済研究所労働組合、日本教育新聞労働組合、重化学工業通信社労働組合、大阪薬品新聞労働組合である。 六、専門紙誌ーいわゆる業界紙誌は、そのほとんど中小・零細企業であり、同時に中小・零細企業の常として労働者は低賃金、劣悪な労働条件、無権利状態に陥まれており、一方経営者は前近代的労務体制をとり、労働組合の結成・出現に対しては文字通りストレートな反発を示し、露骨な手段で組合潰しをはかるケースが多い。 このため、専門紙誌内の労働争議は、その多くが労働者の最も基本的かつ切実な権利の要求(低賃金からの突破、労働基準法さえ無視する労働条件の改善、団体交渉の確立等の要求)をめぐる争いとしてあり、経営者にあつては、労働者が組合を結成し、労働者にとつて最も基本的な要求である賃金の引上げ等労働条件の改善を要求するや、要求の内容そのものよりも、労働者が労働組合を作つたということ自体に激怒し、団体交渉を拒否し、労使の話し合いのパイプを切り、あげく解雇や偽装倒産や経営逃亡等労働者の生存権を奪う攻撃をかけてくるものが少なくない。 専門紙労協は、このような経営者の労働者に対する不当な攻撃を守り、専門紙という中小・零細企業の労働者の基本的権利の獲得に全力をあげてきたし、現在専門紙労協に組織されている てくるものが少なくない。 専門紙労協は、このような経営者の労働者に対する不当な攻撃を守り、専門紙という中小・零細企業の労働者の基本的権利の獲得に全力をあげてきたし、現在専門紙労協に組織されている労働組合はその権利をさらに拡大しつつある。それは、現在の資本主義が持つひとつの矛盾である中小・零細企業労働者の使い棄て、切り棄てに対する斗いである。 専門紙における労働組合は、企業規模の上からも、大企業における労働組合に比べ組織人数が少なく、また経営者が前近代的労務管理によつて職場末端まで専制的支配を貫徹しているケースが少なくないことから労働者の中に労働組合的意識が薄いため少数派組合にとどまつている労働組合も存在する。 このようなことから専門紙労協では、少くとも翼下の労働者が組合を作り、団体交渉を要求し、団体交渉が実現し、正常な労使交渉のルールが確立するまでは、当該組合の委任を受けたうえで、労使の交渉に参加している。このことは、中小・零細企業での労働組合の結成、組合活動の展開という困難性からみて当然のことと考える。 七、しかるに会社が、専門紙労協を暴力分子ときめつけ団体交渉の当事者能力を認めないことは極めて悪質な不当労働行為である。 別紙(二)相手方の主張一、原決定は抗告人の相手方に対する団交請求権の行使は信義則に反し許されないとした。その事実認定や判断は正当である。 しかしながらかゝる事実認定をまつまでもなく、団交応諾の仮処分は許されないのであり、その理由については既に答弁書において陳述した。 この点下級審においても否定説が実務の主流として既に定着しつゝあるのであつて、(ジユリスト五三五号一七一頁。日通商事事件の東京地裁鬼頭判事の判例評釈)、最近も東京地裁では団交応諾仮処分申請を却下している(昭和四九年一二月九日決定。民事一九部。株 に定着しつゝあるのであつて、(ジユリスト五三五号一七一頁。日通商事事件の東京地裁鬼頭判事の判例評釈)、最近も東京地裁では団交応諾仮処分申請を却下している(昭和四九年一二月九日決定。民事一九部。株式会社寿建築研究所事件)。 貴高裁においては、正面からこの問題について判断すればよいのであつて、抗告人の申請している証人調べは一切不要であることを重ねて強く主張する。 二、以上の次第であるから、抗告人が主張しているような労働条件の実態がどうであるとか、不当労働行為があるとかいうようなことについては、本来反論を必要としないが、事実に反した主張をしているので誤解をとくという意味において簡明に反論する。 (1) 相手方に戦後まもなく労働組合ができたが会社側の切りくずしで崩壊したという抗告人の主張は、何の根拠もないいゝがかりである(このためか抗告人も「…… と伝えられる」と記載してごまかしている)。組合がストをやつて自滅したのである。 (2) 社長、重役が「会社に労働組合があつてはならない」と公言したとの抗告人の主張は否認。単に重役といい、その日時、場所、機会ものべず、裁判所に対して相手方会社を不当に悪く印象づけようとしている。 (3) 就業規則については、社員として入社するさい詳細に説明し、特に有給休暇については、相手方が小人数で経営する小企業で、業界紙として週五日、日刊新聞を発行し、紙面全部を記事で埋めることが大変な努力を要すること、余裕のある人員をかかえては経営は到底なりたゝない生長性の低い事業であること、従つて特別な配慮のもとに休暇のやりくりをしてゆかなければならない実情にあることをこんこんと説明し、その諒解を得た上、入社せしめてきた。 なお就業規則は総務部に常時備付けてあることはいうまでもない。 (4) 賃金については大企業の場合に比して低いの ければならない実情にあることをこんこんと説明し、その諒解を得た上、入社せしめてきた。 なお就業規則は総務部に常時備付けてあることはいうまでもない。 (4) 賃金については大企業の場合に比して低いのは事実であるが、相手方のような零細企業では大同小異である。 何の根拠もない感覚だけでの比較論をしてみても何の意味もない。 三六才勤続八年の男子従業員(編集取材記者)の場合を例にして総支給額がわづか八万円と主張しているが、これはおそらく組合員のDのことを指しているものと思われる。しかしDは昭和四九年七月時点で勤続六年余であり、七月中の総支給額は一〇八、四二七円であつた(七月一〇日奨励金一八〇〇円、通勤手当二五六〇円、七月二六日給与八七〇〇〇円、七月末千葉県出張日当四二〇〇円、奨励金一二八六七円)。 (5) 欠員補充をさけているというが、定員もなく、何をもつて欠員というのかも不明。 四九年度中の工場関係を除く入退社では退社八名、入社七名で差引一名だけ減となつている。 零細な業界紙の世界では、比較的従業員の定着性が低いと思われるが、工場関係の常備工をみれば、最も新しい人で勤続五年以上、定着性は高い方である。 (6) 残業を強制した事実はない。 相手方では、新聞発行に関するすべての作業、つまり取材、原稿執筆、出稿、整理、文選、大組み、紙型、鉛版、印刷そして発送作業を経て中央郵便局持込みにいたる全工程を消化して一日を終るが、印刷の刷出し時間が標準時間の午后三時三〇分にはじまれば、五時に作業は終了、残業は不要となる。しかし定刻刷出しがまもれないことが往々にしてあり、この場合は手すきの人が午后五時すぎまで自発的に帯封貼りを手伝つている。この場合印刷工場の者や内勤者については正規の残業手当を支払つている。ただ外勤の編集取材記者は多くの時間を社外ですごす関 てあり、この場合は手すきの人が午后五時すぎまで自発的に帯封貼りを手伝つている。この場合印刷工場の者や内勤者については正規の残業手当を支払つている。ただ外勤の編集取材記者は多くの時間を社外ですごす関係上、その勤務形態については通常の労働時間を労働したものとみなして残業制をとつていない。その代り内勤者とちがつて一種の歩合給である奨励金制度をとつている。 たまたま記者で帰社していた者が帯封貼りを自発的に手伝つた場合、全く無償というのも気の毒なので三〇分五〇円(詳言すれば五分でも一〇分でもとにかく手伝えば五〇円、三〇分以上手伝えば一〇〇円)を払うことにしている。 編集取材記者は本来の業務のほか、集金、新規読者開拓の仕事もしているが、それは入社したときからの条件であり、これを諒解して記者となつたものである。 (7) 昭和四九年七月以降非組合員のみ昇給したと主張しているが、七月には定期昇給があり(組合員三名も勿論昇給)、九月の臨時手直し昇給では組合員のDは昇給しているが、組合員のC、B二名のほか他にも業務能率のよくない者は昇給していない。 (8) 組合員の実家やアパートの大家に誹謗中傷文書を送付したというが、従業員の有志が相手方の名を使用してやつたことをあとできき、調査したところ誹謗中傷の内容のものではないということだし、会社としては不問にふしてきた。アパートの大家というが、Cの身元保証人となつている人である。 三、上部団体だという専門紙労協の者が従来団交を要求しながらとつてきた行動がどんなものであつたかは、既に疎乙号証で具体的に明らかにした。原審決定もまた相手方の主張を正しく認定している。 相手方は従来専門紙労協の議長名を団交申入書のなかに記載していたものの、それ以外の者の氏名は決して明らかにしなかつつた。団交出席者だけは氏名を明らかにしたという 相手方の主張を正しく認定している。 相手方は従来専門紙労協の議長名を団交申入書のなかに記載していたものの、それ以外の者の氏名は決して明らかにしなかつつた。団交出席者だけは氏名を明らかにしたという抗告人の主張は虚言である。むしろ、氏名を明らかにするように求めても、「いう必要はない。」「おめえ労働組合法を知らねえのか。」という調子だつたのであり、相手方代表者に対して名刺を出した者すらいない。団交申入書などでは「上部団体」とか(疎甲七号証)「専門紙労協の出席者何名」(疎甲一三号証)とか「上部団体(団交を委任された者)何名」(疎乙二五号の一、二五号証の五)とか記載し、決して最後まで氏名すら明らかにしなかつた。 相手方からみれば業界紙のなかには同業者もいるし、同業者の従業員のなかにも専門紙労協に加入している者がいるやも知れず、団交の結果どんな相手方の内部事情や秘密が同業者や購読先にもれてゆくやもしれず、かくては相手方が不測の損害をうける可能性もあり、どこの誰かも分らぬ者と団交して相手方の社内事情をうかつに公開することをおそれたのは至極当り前のことである。 四、抗告人は年末一時金などについて昭和四九年一二月二四日東京都地方労働委員会にあつせん申請を行い(疎乙第三三号証)、同五〇年一月一三日都労委立会のうえ団交の予備接渉としての団交を行つた。その結果団交の条件について交渉が成立し、確認事項について都労委あつせん員より文書を受領し、双方確認した(疎乙第三四号証)。 これに基づいて一月二二日神保町<以下略>四階会議室で団交を開き、更に次回団交についてもそのときとりきめて一月二九日に同会議室で団交を開催したところ、専門紙労協のオルグと称するEがおくれて出席してから、組合側が机をたゝいてどなり始め、ビル管理者側からもつと静かにするように数度注意があつたに きとりきめて一月二九日に同会議室で団交を開催したところ、専門紙労協のオルグと称するEがおくれて出席してから、組合側が机をたゝいてどなり始め、ビル管理者側からもつと静かにするように数度注意があつたにかゝわらず、態度をあらためず、平穏な団交をしないのなら中止するよりほかないとした相手方代表者の体に手をかけ、強引に椅子におし込むように坐らせ、フアイルをわしづかみにして破棄し、ネクタイ止めを破壊し、ピケをはつて出入口扉前で退出を阻止し、その際打撲傷をうけた上、体調に変調を来した相手方代表者は救急車で救出されるという事態が発生し(疎乙第三五号証)、上部団体と称する専門紙労協の暴力性がまたまた明白となり、原決定の認定の正しさも実証されるにいたつた(疎乙第三七号証)。 かような身体の安全も保証されないような団交に対しては之を拒否する正当理由があることは言うまでもなく、その後抗告人は相手方が平穏な団交保証を求めても(疎乙第三六号証)之に応じない状況である。

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