平成14年(ワ)第111号売買代金請求事件 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨 1 主位的請求被告は,原告に対し,13億9679万7551円及びこれに対する平成11年8月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 予備的請求被告は,原告に対し,13億9679万7551円及び内金2億2007万6085円に対する平成14年12月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告が,その所有する那覇空港旧国内線第1ターミナルビルに関し,被告に対して,①主位的に,被告との間で売買予約契約が成立し,原告がその予約完結権を行使した旨主張して,当該売買契約に基づく代金の支払を求め,②予備的に,仮に被告との売買契約が成立していないとしても,被告においては,同ビルを買い取る意思がなかったのであれば,早期に買取りを拒絶すべき信義則上の義務があるにもかかわらず,その義務に反して買取りを拒絶する態度を明らかにしなかった過失があるとして,契約締結上の過失に基づく損害賠償を求めるものである。 1 当事者間に争いのない事実(1) 当事者ア原告(契約書等において「NATCO」と表示されることもある。)は,沖縄県に民間航空用の旅客ターミナルビルを建設,運営するために,昭和31年11月21日に設立された会社である。 原告は,昭和32年2月18日,当時の琉球政府から那覇空港における商業空港ターミナル事業及び附帯施設を運営する免許を付与され,その後,沖縄の本土復帰に伴い制定された沖縄の復帰に伴う特別 会社である。 原告は,昭和32年2月18日,当時の琉球政府から那覇空港における商業空港ターミナル事業及び附帯施設を運営する免許を付与され,その後,沖縄の本土復帰に伴い制定された沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律等の関係法令により,那覇空港におけるターミナル事業及びその附帯施設を運営するために必要な法令上の承認を受けた者とみなされ,昭和49年6月6日,大阪航空局長から那覇空港における構内営業の承認を受け,平成11年5月25日に大阪航空局長から営業の承認を取り消されるまでの間,旧国内線第1ターミナルビル(昭和50年4月14日供用開始。現在,別紙物件目録1ないし4の建物で構成されている。以下「旧第1ビル」という。),旧国内線第2ターミナルビル(昭和34年5月9日供用開始。以下「旧第2ビル」という。)及び国際線ターミナルビル(昭和61年7月2日供用開始。以下「国際線ビル」という。)を各所有・管理し,貸室業,物品販売業,駐車場業等を営んできた。 イ被告(契約書等において「NABCO」と表示されることもある。)は,那覇空港の本格ターミナルとなる新ターミナルビルを建設し,これを管理,運営するために,平成4年12月1日に設立された会社であり,那覇空港内に国内線新旅客ターミナルビル(以下「新ターミナルビル」という。)を所有,管理し,平成11年5月26日の新ターミナルビル供用開始以降,同ビルにおいて貸室業,物品販売業,駐車場業等を営んでいる。 (2) 新ターミナルビル完成までの交渉経過ア原告は,旧第1ビル(暫定ビル)の建設に先立って,昭和48年8月14日,運輸省航空局飛行場部,日本航空株式会社(以下「JAL」という。)及び全日本空輸株式会社(以下「ANA」という。)との間で,那覇空港における本格ターミナル及び暫定ターミナルの建設,管 年8月14日,運輸省航空局飛行場部,日本航空株式会社(以下「JAL」という。)及び全日本空輸株式会社(以下「ANA」という。)との間で,那覇空港における本格ターミナル及び暫定ターミナルの建設,管理・運営等に関する基本事項として,①地方公共団体,地元経済界,航空会社が各3分の1ずつ出資して,新会社を設立し,同会社が本格ターミナルの建設・管理・運営に当たる,②暫定ターミナルビルは,原告が建設し,その管理・運営を行う,③本格ターミナルの運営が開始された場合,暫定ターミナルビルは,JAL及びANAに残存価格で売却するか,新会社に承継することなどを合意し,確認書を作成した。 イ原告と沖縄県は,平成4年1月27日,分散・狭隘化している那覇空港ターミナルビルの整理統合(新ターミナルビルの建設)を図るために,「那覇空港新ターミナルビルの整備に関する覚書」(以下「覚書」という。)を,また,同年10月5日,同覚書の細目として「那覇空港新ターミナルビルの整備に関する覚書の細目協議書」(以下「細目協議書」という。)を順次作成した。しかし,国際線ビルについては,覚書の4項で,原告から新会社へ「無償譲渡を原則として」引き継ぐものとされていたのに対し,旧第1ビルについては,覚書及び細目協議書において,何らの取決めもなされなかった。 そして,同年12月1日,原告を筆頭株主とし,沖縄県,那覇市及び航空会社等を株主として,被告が設立された。 ウ(ア) 原告は,被告に対し,平成6年9月26日,「那覇空港ターミナル㈱の継続発展に係る要望書」(以下「平成6年要望書」という。)を送付し,旧第1ビルを新ターミナルビルの供用開始時に被告に対し帳簿価格で有償譲渡したい旨の申入れをした。 (イ) これに対し,被告は,原告に対し,平成6年12月21日付「『那覇空港タ 。)を送付し,旧第1ビルを新ターミナルビルの供用開始時に被告に対し帳簿価格で有償譲渡したい旨の申入れをした。 (イ) これに対し,被告は,原告に対し,平成6年12月21日付「『那覇空港ターミナル株式会社の継続発展に係る要望書』に対する回答について」(以下「平成6年回答書」という。)と題する書面を送付し,第1ビルの有償譲渡の件について「有効な跡利用計画などについて,運輸省,県,利用者等関係者各位の理解及び協力を得ることが必要不可欠であると思われます。従いまして,今後貴社とともに関係機関への協力方についての働きかけを行うとともに,問題の解決に向けて緊密な協力関係の下に対応をしていくことと致したいと存じます。」との回答をした。 エ平成8年9月11日に開催された被告の第28回取締役会において,第1号議案(施設設置申請,構内営業承認申請等の諸申請手続を速やかに行うことを内容としたもの)が原案どおり承認可決された直後,当時被告の代表取締役であったAは,緊急動議として,旧第1ビルの有償買取りのみの承認を求める議案を提出した。しかし,結局,前記第1号議案の附帯意見として「原告の要望事項については三者協議(沖縄県,原告,被告)を含むあらゆる場で,互譲の精神で合意が図れるよう,精力的に取り組むこと。特に,三者協議の場で,旧第1ビルを有償譲渡する方向で臨むこと。これを社の方針として確認する」旨の修正動議が改めて提案され,これが可決された。 オ(ア) 原告は,被告に対し,平成8年10月3日付け「現国内線第1ターミナルビル買取要望書」(以下「買取要望書」という。)を送付し,下記条件を付して,旧第1ビルを被告において買い取るよう申し入れた。 記a 価格引渡日の直前の決算時の帳簿価額b 要望書」という。)を送付し,下記条件を付して,旧第1ビルを被告において買い取るよう申し入れた。 記a 価格引渡日の直前の決算時の帳簿価額b 対価の決済方法契約締結時と同時に新ターミナルビルの供用開始予定日を期日とする約束手形による支払c 引渡日新ターミナルビル供用開始後3か月以内(イ) これに対して,被告は,A,専務取締役B,同Cの連名で,次の内容を含む記載をした平成8年10月15日付け「貴社よりの『現国内線第一ターミナルビル買取要望』について」と題する文書(以下「要望回答書」という。)を原告に送付した。 「社長以下,常勤役員は責任を自覚し被告役職員が主体性を持って三者協議を含むあらゆる場で,誠意を持って早期解決をめざして調整をし,所定の手続きを踏まえ,現国内線第1ビルを有償で譲り受けることをお約束申し上げます。 尚,譲り受け条件等は検証のうえ買取要望書記載の条件に基づき,其の他細部については,別途協議致します。」(3) 新ターミナルビルの完成とその後の推移ア新ターミナルビルは,平成11年3月に完成し,同年5月26日に供用開始となった。 イ新ターミナルビルが完成した直後,沖縄県がF知事名で運輸省航空局長宛に出した平成11年4月8日付け文書の中には,国際線ビルについては,協議が整うまでの当分の間,NATCO(原告)が管理運営することもやむを得ず,空港施設の一元管理という覚書の考え方とは相容れない変則的な状況になるのも,現実的対応策としてはやむを得ないと考えている旨の記載があった。 ウ原告は,平成11年6月9日付「旧国内線第一ターミナルビルの有償譲渡契約締結について」と題する書面を沖縄県知事宛に提出し,旧第1ビルの有償譲渡契約の締結期日が到来 と考えている旨の記載があった。 ウ原告は,平成11年6月9日付「旧国内線第一ターミナルビルの有償譲渡契約締結について」と題する書面を沖縄県知事宛に提出し,旧第1ビルの有償譲渡契約の締結期日が到来したことに伴い,原告との契約締結実現につき被告に指導するように要請する旨の文書を提出した。そこで,沖縄県,原告及び被告による三者協議が平成12年2月から開かれた。ここでは,旧第1ビルの有償買取りが中心的な検討課題の一つとされ,沖縄県による一括した解決案が改めて示されたが,原告は受入れを拒んだ。 エ原告は,平成12年8月9日,沖縄県に対し,問題の円満解決を図るための和解案として,国を被告として当時係属中であった訴訟(営業承認拒否処分取消請求事件)を取り下げることを条件に,旧第1ビル,旧第2ビル及び国際線ビルの平成11年度末の簿価合計22億2200万円に,先に沖縄県から提案された営業補償7億2000万円を加えた29億4200万円の支払を要求した。 オこれに対し,沖縄県は,平成12年9月21日,原告及び被告を交えた三者協議を改めて提案し,同年10月25日の第2回三者協議では,被告,原告及び国が検討すべき事項とともに総額25億円の支払を提案した。ところが,同年11月24日開催の第3回三者協議において,沖縄県から,原告が所有する被告の株式譲渡と国際線ビル及び新ターミナルビルへの原告の入店拒否という事項が追加された「第3回三者協議資料」が提案され,その後三者間で種々検討されたが,結局,旧第1ビルの問題を含め,その他の問題についても解決できなかった。 カその後,大阪航空局が,平成13年12月に,原告が所有する旧第2ビル用地の買取りに伴い,物件移転と取壊し費用等についての補償を提案してきたので,原告はこの提案を受け,同月27日,建物等除去補償契約を大阪航空 大阪航空局が,平成13年12月に,原告が所有する旧第2ビル用地の買取りに伴い,物件移転と取壊し費用等についての補償を提案してきたので,原告はこの提案を受け,同月27日,建物等除去補償契約を大阪航空局長と締結した。その結果,旧第2ビルに係る問題は,旧第1ビル等とは分離して解決された。 さらに,国際線ビルについては,平成15年10月,原告と被告との間で,他の事項とは切り離して,個別に売買契約が締結され,引渡しまで完了した。 2 争点及び争点に関する当事者の主張(1) 原告と被告との間の旧第1ビルに関する売買契約の成否(主位的請求)(原告の主張)ア売買予約契約の成立原告の買取要望書及びこれに対する被告の要望回答書により,原告と被告との間に,平成8年10月15日ころ,旧第1ビルについて,売買契約締結のため関係者との調整に必要な期間の満了日を不確定期限として,被告が原告から旧第1ビルを引渡日の直前決算時の帳簿価額で買い受ける旨の売買予約契約が成立した。 すなわち,原告は,平成8年9月11日の被告の第28回取締役会における旧第1ビルを有償譲受けする方向で臨むという決議に基づき,約20日後の同年10月3日に,被告に対し,買取要望書により,売買の対象たる目的物,価額,対価の決済方法及び目的物の引渡日等,売買契約の具体的な内容を設定した上で,旧第1ビルの買取りを申し入れ,売買契約の予約を申し込んだ。この申入れは,売買契約に必要な要件事実が具備されており,売買契約の申込みとして,あるいは少なくとも売買予約契約の申込みとして,十分法的に評価され得るものである。 他方,被告は,買取要望書を受けて常勤役員会,取締役会を開催したところ,原告の買取要望書について,代表取締役であるAから新ターミナルビルの建設着工まで ,十分法的に評価され得るものである。 他方,被告は,買取要望書を受けて常勤役員会,取締役会を開催したところ,原告の買取要望書について,代表取締役であるAから新ターミナルビルの建設着工までに旧第1ビルの売買契約を締結して問題解決したい旨の意見表明がされ,これについて議論を行った上で,原告に対し,要望回答書を送付した。被告は,その中で,「要望書記載の条件に基づき」「旧第1ターミナルビルを有償で譲り受けることをお約束申し上げます」として,原告の買取要望書による旧第1ビルの買取り申込みに対して,買取要望書に提示された内容で確定的に買い取る旨約束して,これを承諾している。被告の要望回答書は,原告の買取要望書に記載された売買条件に基づく旧第1ビルの有償譲渡について,何ら異議を留めずして同一内容の条件で確定的に買受けを承諾した文書であり,被告が主張する留保部分は,いずれも有償譲受けに附随する細部についての協議の必要性とそのための時間的余裕を求めるものにすぎず,買受けの承諾の否定又は留保を意味するものではない。 なお,旧第一ビルの有償譲渡という場合の「有償」は,旧第1ビルの帳簿上の残存価格を意味している。このことは,平成6年9月26日に原告が被告に旧第1ビルの買取りを要望した際にも旧第1ビルを帳簿価額で有償で譲渡したいと明記していること,平成8年6月18日に沖縄県から提案された解決案の中でも,旧第1ビルを基本的に残存帳簿価額の範囲内で被告に譲渡することが予定されていたこと,そもそも旧第1ビル有償譲渡のもともとの根拠となる確認書自体にも,新会社による旧第1ビルの残存価額での買取りないし承継が約束されていたことから明らかである。 また,原告と被告との間の売買予約契約において,原告が被告に対して買取りを猶予した不確定期限である「原告との早 第1ビルの残存価額での買取りないし承継が約束されていたことから明らかである。 また,原告と被告との間の売買予約契約において,原告が被告に対して買取りを猶予した不確定期限である「原告との早期売買契約締結のため関係者との調整に必要な期間の満了日」とは,買取要望書に記載された売買内容のうち,対価である売買代金の決済方法が「契約と同時に新ターミナルビル供用開始予定日を期日とする約束手形による支払」とされており,また,売買予約契約締結に際し,被告が買取要望書記載の内容に一切異議も留保も述べていないことを考えると,新ターミナルビル供用開始予定日より以前を予定していたものと解されるが,遅くとも,新ターミナルビル供用開始日である平成11年5月26日には,上記不確定期限が到来したことは明らかである。このことは,確認書における,暫定ビル(旧第1ビル)について「本格ターミナルビルが新会社により運営開始の際」は新会社が承継するとの趣旨にも一致する。 イ予約完結権の行使及び売買契約の成立原告は,被告に対し,遅くとも不確定期限が到来した平成11年5月26日以後の日である同年8月2日,旧第1ビルについて,売買予約契約の予約完結権を行使した。すなわち,原告代表者は,同日午後2時ころ,沖縄電力本社会長室において,当時の被告代表者Dと面談し,同人に確認書,買取要望書及び要望回答書を提示して,旧第1ビルの買取りを履行してもらいたい旨明確に意思表示した。 その結果,原告と被告との間では,被告が原告から旧第1ビルを買い受ける旨の売買契約が確定的に成立したから,被告は,売買代金として,新ターミナルビル供用開始直前の原告決算時における旧第1ビルの帳簿価額13億9679万7511円の支払義務がある。 (被告の主張)ア本件において,原告と被告 ,被告は,売買代金として,新ターミナルビル供用開始直前の原告決算時における旧第1ビルの帳簿価額13億9679万7511円の支払義務がある。 (被告の主張)ア本件において,原告と被告との間に旧第1ビルの売買予約契約が成立したとはいえない。すなわち,原告が売買予約契約成立の拠り所とする要望回答書は,形式面から見ても,被告の正式な文書の体裁をとっておらず,作成主体が代表取締役及び専務取締役2名の計3名であり,会社を代表する者だけの意思表示とはなっていないことや,そこで押印に使用されている印鑑は会社の代表者印ではなく私印であることなどから,被告の正式な法的効力を発生させるための意思表示文書ということはできない。また,内容面,実質面を見ても,数多くの留保が付けられており,その留保の中には「総合的な検討が必要」,「各面の協力の基」,「合意形成に努力」,「ある程度時間をかける必要があります」,「早期解決をめざして調整をし」,「所定の手続きを踏まえ」,「検証のうえ」などといった,今後検討しなければならないことが数多く存在することを示す表現が使われていることなどからしても,同書面の提出をもって,被告が旧第1ビル買取りを受諾したとすることはできない。要望回答書は,単に代表取締役及び専務取締役2名が今後の問題解決に臨む姿勢表明を行ったものにすぎない。 イ仮に,要望回答書が被告の意思を表明した文書であると評価されるものであるとしても,原告が主張するような売買契約が成立したとみることはできない。本件は,旧第1ビルという巨大な不動産を,十数億円という高額な値段で売買契約を締結しようとするものであるから,仮にその契約を締結させようとするならば,正式な売買契約書を作成するのが,慣行上も社会常識上も当然のことである。 そうであるならば,売買契約の う高額な値段で売買契約を締結しようとするものであるから,仮にその契約を締結させようとするならば,正式な売買契約書を作成するのが,慣行上も社会常識上も当然のことである。 そうであるならば,売買契約の成立時期は,正式な売買契約書の作成時と考えるべきであり,そのような売買契約書の作成がされていない本件では,未だ契約の成立はないというべきである。 ウ売買予約契約上の予約完結権行使に関する原告の主張は否認する。新ターミナルビルが供用開始された後,被告が,原告から旧第1ビルの売買契約成立を理由として代金支払を求められたことはない。 (2) 契約締結上の過失責任の存否(予備的請求)(原告の主張)ア被告の責任(ア) 仮に,旧第1ビルに関する売買契約の成立が認められないとしても,次のとおり,被告は,上記売買契約の準備段階において,旧第1ビルの売買契約が確実に成立するであろうとの期待を原告に抱かせ,そして,被告は正当な理由なく原告の期待を裏切って,売買契約の締結に至らなかったものである。被告は,旧第1ビルを買い取る意思がなかったのであれば,早期に買取りを明確に拒絶するべき信義則上の義務があったにもかかわらず,その義務に違反して買取りを拒絶する態度を明らかにしなかった過失がある。 (イ) すなわち,原告は,平成6年ころから,被告に対し,同年9月26日付け平成6年要望書を提出するなど,旧第1ビルの処理について,確認書の趣旨,内容に従い,覚書及び細目協議書に規定された内容に基づいて,新ターミナルビルの供用開始時に旧第1ビルを残存帳簿価額で有償譲渡したい旨の申入れをしてきた。これに対して被告は,平成6年回答書等により,関係機関への協力を働きかけるとともに,問題解決に向けて緊密な協力関係をもとに対応していきたい旨を回答するなど 価額で有償譲渡したい旨の申入れをしてきた。これに対して被告は,平成6年回答書等により,関係機関への協力を働きかけるとともに,問題解決に向けて緊密な協力関係をもとに対応していきたい旨を回答するなどして,原告からの上記要望に対して極めて好意的,かつ積極的に対応する趣旨の回答をし,その後も一貫して同様の態度を取ってきており,覚書や細目協議書に旧第1ビルの有償譲渡に関する規定がないから既に解決済みであるなどとして,原告の旧第1ビルの有償譲渡申入れの件を拒否するようなことは一度もなかった。 そこで,原告は,前記平成6年要望書や平成6年回答書等を踏まえて,平成8年2月26日,覚書及び細目協議書に基づいて,旧第1ビルの有償譲渡の件を含む「営業譲渡契約書(案)」(以下「譲渡契約書案」という。)をもって,被告に対し,旧第1ビルの残存帳簿価額での有償譲渡を受け入れるよう要求した。これに対し,被告は,旧第1ビル有償譲渡の件を含む譲渡契約書案の受入れを拒絶する旨の回答,意思表明等を一切しなかった。そして,被告は,沖縄県の呼び掛けで開催された三者協議の場において,被告取締役会の了承を得た上で,旧第1ビル有償譲渡の件を含む沖縄県の提示した「那覇空港新ターミナルビルの整備に関する三者協議確認書(案)ーNATCO要望事項に対する解決案ー」(以下「一括解決案」という。)に対する回答として,平成8年7月3日,「『那覇空港新ターミナルビルの整備に関する三者協議確認書(案)』について」と題する文書を提示し,旧第1ビルの有償譲渡の負担は被告が負うべき事項である旨明確に回答し,しかもその中で,譲渡価額について,一括解決案提示の「第三者鑑定」については問題があるので,「第三者による譲渡価額の検証」方式に修正する必要があると述べている。 その後も,被告では し,しかもその中で,譲渡価額について,一括解決案提示の「第三者鑑定」については問題があるので,「第三者による譲渡価額の検証」方式に修正する必要があると述べている。 その後も,被告では,平成8年9月11日の第28回取締役会で,当時代表取締役であったAから提案された,旧第1ビルを被告が有償で譲り受けることを会社の方針とすることが出席取締役全員によって異議なく承認可決されている。これを受けて,原告が,被告に対して,買取要望書をもって,旧第1ビルの買取りを要望したところ,被告は,原告に対し,同月15日付け要望回答書をもって,原告の上記買取りの申込みについて「総合的な検討が必要であり,各面の協力の基,合意形成に努力する必要があり,所定の手続を踏まえ」としながらも,「現国内線第一ビルを有償で譲り受けることをお約束申し上げます」と回答するなど,旧第1ビル買取りの調整に必要な期限が到来すれば,買取要望書記載の約定により旧第1ビルを譲り受けることを確定的に約束する旨承諾してきた。そして,その後も現在まで,原告は,被告から一度も旧第1ビル買取りを断念する旨の通知を受けたことはなかった。 したがって,仮に原告と被告との間で,旧第1ビルの売買契約ないし売買予約契約が成立していなかったとしても,原告としては,被告のこれまでの対応からして,確認書の趣旨・内容に従い,当然に被告が旧第1ビルを買い取るものと信頼していた。また,上記のような客観的事情から見ても,そう考えるのが当然といえるものであった。 (ウ) このように,原告と被告は,旧第1ビルの取引について,被告所定の手続を経て売買契約を締結するための契約準備段階に入り,一般市民間における関係とは異なる信義則の支配する緊密な関係に立ったのであるから,相互に相手方の人格,財産を害しな ルの取引について,被告所定の手続を経て売買契約を締結するための契約準備段階に入り,一般市民間における関係とは異なる信義則の支配する緊密な関係に立ったのであるから,相互に相手方の人格,財産を害しない信義則上の義務を負い,被告はこの義務に違反したというべきである。被告のした回答(要望回答書)によって,売買代金,代金支払期日とその方法,引渡日等,売買契約の重要な要素,内容について合意に達した段階に至った本件においては,仮に売買契約ないし売買予約契約の成立が認められないとしても,被告には売買契約が締結できるように細部事項について誠意を持って誠実に交渉をなすべき義務があったことは明らかである。それにもかかわらず,被告は,かかる義務に違反し,旧第1ビルを買い取る意思がなかったにもかかわらず,買取りを拒絶する態度を明らかにしなかったのであるから,被告は契約締結の一方当事者である原告の信頼及び期待を裏切ったものといわざるを得ず,この点に過失がある。 イ原告の損害(ア) 原告は,被告の前記アの義務違反行為により,新ターミナルビル供用開始後も,被告が旧第1ビルを既に買い取ったか,あるいは近い将来被告が当然買い取ってくれるものと考え,旧第1ビルを解体撤去することができず,また他に処分することもできずに,旧第1ビルを維持管理してきた。これによって原告が被った損害は,契約が成立すると信頼したことによる損害だけで,次のとおり計2億2007万6085円にのぼる。 a 土地使用料 1億2430万1825円b 固定資産税 7794万5930円c 保守管理費用 1782万8330円計 2億2007万6085円(イ) また,通常,契約締結上の過失行為によって賠償すべき損害の範囲 万5930円c 保守管理費用 1782万8330円計 2億2007万6085円(イ) また,通常,契約締結上の過失行為によって賠償すべき損害の範囲は,契約が成立すると信頼したことによる損害にとどまるが,本件の場合は,使用目的のある物件の売買契約とは趣を異にし,旧第1ビルの用途は当然廃止されることが前提となっており,また,用途が廃止される日時も新ターミナルビルの供用開始日であることが決まっており,それ以降は原告にとって何らの価値のない無用の建物となる。それ故,本件では,上記(ア)の信頼利益だけでなく,新ターミナルビル供用開始日における旧第1ビルの残存帳簿価額(13億9679万7551円)も損害と認めるべきである。 (ウ) したがって,原告が被告の契約締結上の過失により被った損害は,合計16億1687万3636円であるが,本件では,その一部である13億9679万7551円の支払を求める。 (被告の主張)ア被告には,原告が主張するような,旧第1ビルを買取る意思がないのであれば早期に買取りを拒絶しなければならないといった信義則上の義務は存在しない。 一般に,契約や取引の申入れに対して,応じる・応じないの意思表示を行う法的義務がないことは明らかであり,意思表示を行わなかったからといって損害賠償責任を負うことはあり得ない。本件で問題となり得る,いわゆる契約締結上又は契約準備段階での過失の理論は,契約の交渉過程が一定の段階に達し,契約の締結を拒否することが信義則に反すると認められるような場合には,契約締結を拒否した者は相手方に損害賠償をしなければならないとするものである。しかし,本件では,被告において,契約締結を拒否することが信義則に反すると認められるような状態には一 れるような場合には,契約締結を拒否した者は相手方に損害賠償をしなければならないとするものである。しかし,本件では,被告において,契約締結を拒否することが信義則に反すると認められるような状態には一度もなっていない。逆に,被告は,被告にとってほとんどメリットのない旧第1ビルの有償譲渡という原告の申入れを真摯に検討し,旧第1ビルの有償補償を含む沖縄県の提示した一括解決案に賛成するという形で,条件次第により有償で買い取る旨の意思表明をしているのであり,信義誠実の原則に悖ることもない。よって,被告は,契約締結上の過失責任を負わない。 イ(ア) 原告が被告に対し平成6年9月に旧第1ビルの有償譲渡の件を含む平成6年要望書を提出し,それに対し,被告が平成6年回答書により回答を行ったことは原告が主張するとおりであるが,当時の被告の取締役の過半数及び代表取締役は,原告の推薦した者であり,しかも,当時の被告の取締役のうち7名(常勤取締役2名を含む)は,原告の役員又は従業員であった。このような状況の下において,被告が原告の要望に対し異を唱えたり拒否したりすることは非常に困難で,実質的にはあり得ないことであり,原告は,そのような状況であることを十分認識しながら,平成6年要望書を提出しているのである。それにもかかわらず,被告は,平成6年回答書において,旧第1ビルの有償譲渡について明確な返答を避け,問題解決に向けて努力する旨の回答しか行っていない。このことは,旧第1ビルの有償譲渡を受けることが,被告にとって非常に重大な問題であり,安易に承諾できるものではないことを,原告推薦に係る被告の役員自身も認識していたことの現れである。 (イ) また,平成8年2月26日に原告から被告に示された譲渡契約書案についても,当時,被告はこれを受ける意向があったわけではな 原告推薦に係る被告の役員自身も認識していたことの現れである。 (イ) また,平成8年2月26日に原告から被告に示された譲渡契約書案についても,当時,被告はこれを受ける意向があったわけではない。前記(ア)のとおり,被告においては原告の推薦する取締役が多数就任していたが,他方,沖縄県や航空会社の推薦により就任していた役員は,原告の申入れを無条件に受け入れるべきでなく,拒否すべきであるとの意見であった。また,旧第1ビルは利用価値のない物件であり,原告の申入れを受け入れて有償取得した場合,株主代表訴訟の提起や商法上の特別背任罪の成立など商法上重大な問題が生じ得る旨指摘した顧問弁護士の意見書も提出され,そのことは,被告の取締役のみならず,原告側でも代表者を始め多くの役員が知悉していた。 (ウ) さらに,旧第1ビルの有償譲渡も重要な協議事項の一つとしていた三者協議において,沖縄県は被告が単独で旧第1ビルの有償取得を行うことに強く反対し,結局,同協議は整わなかったが,その際,沖縄県は,原告と被告との間で勝手な合意をしないようにとの通知を行っている。 沖縄県が示した旧第1ビルの有償譲渡を含む一括解決案も,「有償譲渡,営業補償,入店確保についての合意の前提として,覚書及び細目協議書に規定されたNABCOの資本構成,代表権及び取締役員数の過半数確保については,NABCOが第三セクターにふさわしい使命を達成できるよう見直しを行うこと」,すなわち被告の資本構成の見直しを行うことが前提とされており,旧第1ビルの有償譲渡を他の問題(特に被告の資本構成)と切り離して単独で提案したものではない。そして,被告としても,それらの点が全体として沖縄県と原告との間でも合意されることを条件に,旧第1ビルの有償譲渡に応じる旨を表明したにすぎないのであ 本構成)と切り離して単独で提案したものではない。そして,被告としても,それらの点が全体として沖縄県と原告との間でも合意されることを条件に,旧第1ビルの有償譲渡に応じる旨を表明したにすぎないのである。 そもそも,三者協議が開催されることになった理由は,原告が旧第1ビルの有償譲渡を含む営業譲渡契約の締結の申入れをし,被告の取締役の過半数を原告の推薦者が占めていたため,被告が安易にこの申入れに応じる危険を感じた沖縄県が,覚書等の当事者として間に入って協議を行うことにしたからである。三者協議が開催されていること自体,少なくとも被告の25%の株主である沖縄県が,原告の申入れを被告がそのまま受け入れることに反対したことの証左であり,原告としても,その要求が簡単には受け入れられる状況にないことを認識していたというべきである。 (エ) 前記(ア)のとおり,被告の取締役の過半数が原告の推薦する者で占められていたため,被告の株主であった沖縄県,那覇市及び航空会社各社は,その状態を維持していたのでは,数の力で押し切られて,被告が原告の要望を受け入れてしまうのではないかとの危機感を持った。その対策として行われたのが前記の三者協議であるが,なお,被告が単独で原告と契約を締結してしまう可能性も否定できない状態であった。そこで,平成9年6月の被告株主総会において取締役を選任する際,沖縄県,那覇市及び航空会社各社(これらの株主の株式割合は合計で51%)は,原告が提案した取締役ではなく,沖縄県が提案した取締役構成,すなわち沖縄県の推薦者が過半数を占める取締役構成案を,原告の反対を押し切って可決させた。さらに,株主総会直後に行われた取締役会において,代表取締役についても,沖縄県らが推薦する者を選任した。かかる事実によっても,原告は,その要望する譲渡 役構成案を,原告の反対を押し切って可決させた。さらに,株主総会直後に行われた取締役会において,代表取締役についても,沖縄県らが推薦する者を選任した。かかる事実によっても,原告は,その要望する譲渡契約書案が被告の過半数の株主の反対する事柄であることを十分すぎるほど認識していたといえる。 (オ) したがって,以上のような状況の中で,原告が,旧第1ビルの有償譲渡が無条件に実行されると信頼し確信することはあり得ない。 第3 当裁判所の判断 1 本件の事実経過等前記第2の1の当事者間に争いのない事実,証拠(各項末尾掲記のほか,甲54,55,58,61,74,乙15,証人A,同B,原告代表者)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の各事実が認められる。 (1) 原告の設立等原告は,沖縄県に民間航空用の旅客ターミナルビルを建設,運営するため,昭和31年11月21日に設立され,昭和32年2月18日,当時の琉球政府から那覇空港における商業空港ターミナル事業及び附帯施設を運営する免許を付与されて,昭和34年5月9日に供用開始された旧第2ビルを管理・運営し,同ビルにおいて貸室業,倉庫業,物品販売業等のターミナル事業を営んでいた(甲1,2)。 (2) 確認書の作成那覇空港は,沖縄の日本復帰前は旧第2ビルのみで需要に対応していたが,復帰と同時に本土及び外国との交流が盛んに行われるようになり,出入域者の増大等航空需要の著しい増加に伴いターミナル施設が狭隘化し,また,昭和50年開催の沖縄国際海洋博覧会に対応するため,新たなターミナルビルの設置が必要となった。 そこで,原告は,昭和48年8月14日,運輸省航空局飛行場部,JAL及びANAとの間で,那覇空港における本格ターミナル及び暫定ターミナルの建設・管理・運営等に関する基本事項に 必要となった。 そこで,原告は,昭和48年8月14日,運輸省航空局飛行場部,JAL及びANAとの間で,那覇空港における本格ターミナル及び暫定ターミナルの建設・管理・運営等に関する基本事項について合意し,確認書を作成した。その要旨は,①那覇空港における本格ターミナルビル(新ターミナルビル)の建設,管理及び運営は,運輸省の基本方針(地方公共団体,地元経済界及び航空会社の三者がそれぞれ3分の1ずつを出資することを原則とする。)に従って設立される新会社が行う,②新ターミナルビルが建設されるまでの間,原告において暫定ターミナルビルを建設し,その管理及び運営に当たる,③新ターミナルビルが新会社によりその運営を開始され,暫定ターミナルビルの暫定使用期間が終了した後は,同ビルは航空会社に残存価格で売却するか,新会社に承継される,④賃借料,協力金,償還条件については,原告とJAL及びANAとの間で十分協議するというものであった(甲11,乙1)。 (3) 旧第1ビルの建設等原告は,確認書における合意等に基づいて,昭和50年に暫定ターミナルとして旧第1ビルを建設し,同年4月14日にその供用を開始してこれを管理・運営するようになり,その後数度にわたって旧第1ビルの増築,改築を行った。また,原告は,更に昭和61年6月までに国際線ビルを新築し,同年7月2日には同ビルの供用も開始して,これを管理・運営し,空港ターミナルビル事業を営んでいた(甲4の1~4,甲6)。 (4) 覚書及び細目協議書前記(2)の確認書の作成以降,沖縄県と原告(当時の代表取締役は,Aであった。)との間で,同確認書に基づく新ターミナルビルの建設,運営等に関して継続的に協議が行われていたが,新ターミナルビルについても,主体的にその建設,運営に関与していきたいとする 表取締役は,Aであった。)との間で,同確認書に基づく新ターミナルビルの建設,運営等に関して継続的に協議が行われていたが,新ターミナルビルについても,主体的にその建設,運営に関与していきたいとする原告の意向と,沖縄県等も主体的に関与して公共性の高いものにしたいという沖縄県の意向とが対立し,なかなか合意に至らなかった。結局,原告と沖縄県は,平成4年1月27日に覚書を,同年10月5日に細目協議書を取り交わし,要旨次のような内容で合意した。 ア新ターミナルビルの事業主体については,これまでの原告の事業実績に留意しつつ,公共性のより一層の確保の観点から,沖縄県,原告及び航空会社等の参画の下に,新たに第三セクター方式による株式会社を設立する。 イ新会社の資本構成は,沖縄県25%,那覇市3.2%,航空会社22. 8%,原告41%,金融機関等財界8%とする。 ただし,航空会社の出資枠については,新ターミナルビルの供用開始までに,更に調整して定めるものとする。 ウ原告と沖縄県は,新会社が公共性及び健全性の確保,航空利用者への利便性の向上等に立脚した経営理念のもとに組織体制等を確立するとともに,旅客ターミナルビル,駐車場等の一元的な管理運営が図られるようにする。 エ原告は,新ターミナルビルの供用開始と同時に国際線旅客ターミナルビル(国際線ビル)等,新会社の一元的な管理運営に必要な関係施設を,無償譲渡を原則として,新会社に引き継ぐものとする。 オ新会社の適正かつ効率的な管理運営を確保するため,原告に従事する職員のうち,原則としてターミナルビルの施設及び管理部門に従事する職員を新会社へ引き継ぐものとする。この場合において,沖縄県と原告は関係雇用の安定的な継承に努めるものとする。 カ新会社の健全な経営が確保され としてターミナルビルの施設及び管理部門に従事する職員を新会社へ引き継ぐものとする。この場合において,沖縄県と原告は関係雇用の安定的な継承に努めるものとする。 カ新会社の健全な経営が確保されることを前提に,沖縄県と原告は,新ターミナルビルにおける原告の営業について,その継続,発展が図られるように努めるものとする。なお,原告が賃貸しているテナント事業者の営業についても,現在の規模を基本として,新ターミナルビルにおける営業を保証するものとする。 キ新会社の事業経営を適切かつ健全に運営するため,新会社の代表取締役には原告が推薦する者を充てるものとし,さらに,沖縄県,航空会社,原告等から新会社へ常勤役員等必要な職員の派遣を行うこととする。 なお,新会社の常勤役員は,原告の常勤役員を兼ねることができないものとする。ただし,新会社への原告の施設等の引継ぎのため,新ターミナルビルが供用開始されるまでの間,原告の代表取締役及び新会社の必要とする常勤役員等の兼務については,この限りではない。 (甲7,8)。 (5) 被告の設立覚書及び細目協議書に基づき,原告が筆頭株主となり,沖縄県,那覇市,航空会社等が共同出資して,平成4年12月1日,被告が設立された(甲9)。 (6) 要望書及び回答書原告は,被告に対し,平成6年要望書を送付して,国際線ビルの譲渡(前記(4)エ),駐車場等の一元的な管理運営(同ウ),原告職員の被告への承継(同オ),新ターミナルビルにおける原告の営業の保証(同カ)など確認書における合意事項に関する原告の要望とともに,旧第1ビルを新ターミナルビルの供用開始時に帳簿価額で有償譲渡したいとの要望を申し入れた。 これに対し,被告は,原告に対し,平成6年回答書を送付し,旧第1ビルに関する原告の上記申入れ ともに,旧第1ビルを新ターミナルビルの供用開始時に帳簿価額で有償譲渡したいとの要望を申し入れた。 これに対し,被告は,原告に対し,平成6年回答書を送付し,旧第1ビルに関する原告の上記申入れについて,「現国内線第1ターミナルビルの有償譲渡の件については,有効な跡利用計画などについて,運輸省,県及び利用者等の関係者各位の理解及び協力を得ることが,必要不可欠であると思われます。従いまして,今後貴社とともに関係機関へ協力についての働きかけを行うとともに,問題の解決に向けて緊密な協力関係のもとに対応をしていくことと致したいと存じます。」と回答した(甲14,28)。 (7) その後の原告と被告との交渉,協議等の状況アその後も,原告は,被告に対し,平成7年8月25日付け「NABCOとNATCO間の協定の締結に係る交渉について」を送付し,覚書及び細目協議書に基づいて,新たな協定書を締結するための協議を申し入れ,引き続き,同年9月11日付け「第1回交渉議題について」と題する書面を送付して,①旧第1ビル及び国際線ビルを原告の帳簿価額で有償譲渡すること,②旧第1ビル等における原告の営業(貸室業)が終了することに伴う補償として,物品販売における原告の営業利益(年間2億4000万円)を最低10年分補償すること,③新ターミナルビルにおける原告の営業規模として,旧第1ビル等における原告の従来の規模を確保するとともに,これを上回る規模の確保についても,優先配慮に努めることなど,原告に対する補償,協力の要望をし,これを内容とする営業譲渡契約の締結についての協議を申し入れた(甲43,44)。 イこれを受けて,平成7年9月12日,原告及び被告の各常勤取締役らが出席して会議が開催されたが,同会議において,被告は,原告に対し,原告の上記要望事項が, 協議を申し入れた(甲43,44)。 イこれを受けて,平成7年9月12日,原告及び被告の各常勤取締役らが出席して会議が開催されたが,同会議において,被告は,原告に対し,原告の上記要望事項が,いずれも被告にとって重要な経営判断を要する事項なので,常勤役員会で充分にかつ慎重に検討を重ね,必要に応じて関係者との調整も踏まえて,その結果を取締役会等の機関に諮った上で決定し,回答したい旨を答えた(甲45)。 ウ上記イの会議後,平成7年9月28日に開催された被告の第20回取締役会において(なお,同取締役会には現在の原告代表者も監査役として出席していた。),Bは,原告からの要望事項の申入れと被告の今後の対応について,当該要望事項がいずれも被告の経営の基本に関わる重要事項であるとの認識の下,次のような基本的姿勢で臨みたい旨を述べた。 (ア) 要望事項は,誠意をもって慎重に検討する。 (イ) 要望内容を分析し,可能なものは協力的姿勢をもって臨む。 (ウ) 法律的な問題については,弁護士の意見を徴して対応する。 (エ) 被告が独自に判断できる事項についても,被告の経営が成り立つことを基本として対応する。 (オ) 要望事項の内容の性質,重要度に応じて,所定の手続を経て意思決定をして対応する。 (カ) 要望事項については,早めに処理するよう努力するが,ことの性質によっては時間をかけて対応する。 (キ) 原告との会議の対応については,社長以下常勤役員で対応することとする。ただし,原告側の交渉メンバーである常勤役員を除く。 また,引き続き行われた質疑の際,Bは,原告の要望事項がいずれも重要な経営判断を要するものであるので,その重要度に応じて,取締役会,株主総会等のしかるべき機関に上程し,所定の手 員を除く。 また,引き続き行われた質疑の際,Bは,原告の要望事項がいずれも重要な経営判断を要するものであるので,その重要度に応じて,取締役会,株主総会等のしかるべき機関に上程し,所定の手続を経て決議をしたいことや,審議の過程で実質的に覚書の基本に関わる事項が生じる場合もあるので,そのときには覚書の当事者として沖縄県にも立ち会ってもらい協議したい旨を述べた。また,出席取締役の中からは,原告との今後の交渉の対応に当たっては,交渉の場において被告の方針を決定することがないよう慎重に臨んでほしいとの意見が出され,これに対し,議長であるAは,取締役会の審議を踏まえて責任をもって対応したい旨を述べた(乙5)。 (8) 譲渡契約書案の提示,三者協議の開催等ア原告は,平成8年2月26日,被告に対し,前記(7)アの協議申入れの際に提示した,①旧第1ビル及び国際線ビルの有償譲渡,②原告の営業(貸室業)の終了に伴う補償,③新ターミナルビルにおける原告の営業の保証など,被告に対する補償,協力に関しての要望事項を内容とする譲渡契約書案を提出した。 しかし,当該譲渡契約書案について,平成8年4月11日に被告の顧問弁護士らから提出された意見書においては,①旧第1ビルは用途廃止されることが既定の方針であって,被告にとって,これを有償で譲り受ける必要がないこと,②国際線ビルは特段の事情のない限り無償譲渡されることになっているから,これを有償で譲り受けることは本件覚書に反することなど,原告の提示した譲渡契約書案の内容につき個別的な意見が述べられるとともに,③譲渡契約書案の内容全体として,原告の利益を図ったものであり,被告にとって不利益となる事項が多く,これを締結することにより被告が大きな損害を受けることが予想され,これに賛成することによって取締役と 譲渡契約書案の内容全体として,原告の利益を図ったものであり,被告にとって不利益となる事項が多く,これを締結することにより被告が大きな損害を受けることが予想され,これに賛成することによって取締役として刑事上,民事上の責任追及が問題となり得ること,④そのため,被告の取締役として,被告の健全経営等を考慮して慎重に検討,判断する必要があることなどの意見が述べられた。 他方,原告から上記のような譲渡契約書案が提示されたことを知った沖縄県は,覚書及び細目協議書を締結した当事者として,原告及び被告に対し,これらの問題についての話合い,解決を目的として,沖縄県も含めた三者による協議(三者協議)の開催を提案した。(乙6,7)イ平成8年4月23日,沖縄県の呼びかけによる第1回の三者協議が開催され,その後も週1回の頻度で同協議が続けられたところ,同年6月18日開催の第8回三者協議において,沖縄県から,一括解決案「那覇空港新ターミナルビルの整備に関する三者協議確認書(案)」が示された。その内容は,①旧第1ビル及び国際線ビルの残存帳簿価額を上限とする有償譲渡,②ターミナル事業の引継ぎに伴う損失補償として年額2億4000万円の3年分の支払のほか,③被告の資本構成及び取締役構成の見直しも含むものであった。また,被告の資本構成及び取締役構成の見直しの点について,沖縄県が平成8年6月26日に作成した「那覇空港新ターミナルビルの整備に関する三者協議確認書の細目協議書案」の内容は,次のようなものであった。 (ア) 被告の資本構成については,地方公共団体30%,航空会社30%,地元経済界40%を目途に,原告の被告に対する出資比率の見直しを行うこととする。ただし,目途とする出資枠の引受けが困難な場合は,株主以外の者への割当てを考慮する。 (イ) 被告 会社30%,地元経済界40%を目途に,原告の被告に対する出資比率の見直しを行うこととする。ただし,目途とする出資枠の引受けが困難な場合は,株主以外の者への割当てを考慮する。 (イ) 被告の代表権については,当分の間,沖縄県から推薦する取締役を代表取締役とし,知事又は副知事をもって充てる。 (ウ) 被告の取締役員数については,資本構成に応じて推薦するものとする。(甲39,59,68,71,乙8,9)ウ被告は,沖縄県の提示した前記イの一括解決案を受け入れる姿勢を示したものの,原告は,同案の受入れを拒否した。そのため,沖縄県は,協議進展の可能性がないと判断して三者協議の継続を断念し,平成8年7月19日,原告及び被告に対し,「那覇空港新ターミナルビルの整備に関する三者協議の結果について(通知)」を送付して,沖縄県の提案した一括解決案及びその細目協議書案が三者間で合意に至らなかったものの,覚書締結の当事者である沖縄県の合意を欠いて,原告と被告との間で本件覚書の趣旨に悖る協議,合意をすることは,商法上の責任を問われる可能性があるので,そのようなことをしないよう通知した(甲42,49,乙10)。 (9) 被告の第28回取締役会ア沖縄県は,自己の提示した一括解決案が合意に至らなかったものの,新ターミナルビルの建設着工がこれ以上遅れることは,沖縄県の振興施策や那覇空港新ターミナル地域整備事業の円滑な遂行にも支障が生じかねないほか,当時,運輸省が上記要望事項も含めて原告・被告間の諸問題等が解決されない限り,被告に対し新ターミナルビルの建設許可を出しにくいとの意向を示していたことなどから,平成8年8月7日,運輸省に対し,被告を事業主体とする新ターミナルビルの早期着工に向けて,空港管理規則上の承認等の諸手続を進めてほしい ナルビルの建設許可を出しにくいとの意向を示していたことなどから,平成8年8月7日,運輸省に対し,被告を事業主体とする新ターミナルビルの早期着工に向けて,空港管理規則上の承認等の諸手続を進めてほしい旨働きかけるとともに,同月9日,被告に対し,新ターミナルビル着工のための空港管理規則上の申請手続を速やかに進めるよう要請した(甲33,34)。 イ上記沖縄県の要請を受けて,被告では,平成8年9月11日,第28回取締役会を開催し(なお,同取締役会には,現在の原告代表者も監査役として出席していた。),第1号議案「空港管理規則等の諸申請手続について」が全員異議なく原案どおり承認可決され,原告との諸問題の調整,解決とは別途に,新ターミナルビルの着工に向けて,施設設置申請,構内営業承認申請及び国内財産一時使用申請など空港管理規則等に基づく諸申請手続に速やかに着手,実行することとされた。ところが,当該議案の決議後,議長であるAから,原告は,上記決議により原告に対する補償問題等が蔑ろにされるのではないかとの懸念から,強い不満を表明している一方,旧第1ビル及び国際線ビルの買取りについては,基本的に沖縄県の提案を受け入れる意向を示しているとして,旧第1ビルの買取りについて,当該取締役会で承認してもらいたい旨の緊急動議が提出された。その際,出席した他の取締役らから,当該提案に対して,「一番大きな問題である旧第1ビルの買取について取締役会で確認しておくとの議長の提案には賛成である。」,「原告が大変な立場にあることは容易に想像でき,申請業務の進捗のためにも原告の不信感を払拭しておくべきであり,議長の提案もやむを得ない。」などと,旧第1ビルの買取りに賛同する旨の意見が述べられる一方で,「旧第1ビルの問題は,他の問題(国際線ビル,営業補償等)とワンセットであり, 感を払拭しておくべきであり,議長の提案もやむを得ない。」などと,旧第1ビルの買取りに賛同する旨の意見が述べられる一方で,「旧第1ビルの問題は,他の問題(国際線ビル,営業補償等)とワンセットであり,旧第1ビルの問題だけを別個に,このような動議として出されたことの理解に苦しみ,驚きと疑問を持つ。」,「沖縄県の提示した一括解決案との関係もあるし,一括解決案における他の条件と切り離して旧第1ビルの買取りのみを決定した場合,旧第1ビルの帳簿価額約15億円のみが被告の経営負担となり,取締役会の責任としてどのように対応するのか懸念がある。」など,旧第1ビルの有償譲渡を他の問題と切り離して決定することに否定的な意見や,それを決定することにより生じ得る取締役としての責任に懸念を表明する意見も述べられた。 その結果,休憩を経て議事再開後,Aは,「先ほどの動議を撤回させていただき,次のとおり提案します。」と述べ,改めて前記第1号議案(空港管理規則等の諸申請手続について)の附帯意見として,「原告の要望事項については三者協議(沖縄県,原告,被告)を含むあらゆる場で,互譲の精神で合意が図れるよう,精力的に取り組むこと。特に,三者協議の場で,旧第1ビルを有償譲渡する方向で臨むこと。これを社の方針として確認する。」との修正動議を提案し,同動議は出席取締役の全員異議なく採択され,承認可決された。(甲15)(10) 買取要望書及び要望回答書ア原告は,被告に対し,平成8年10月3日,前記第2の1(2)オ(ア)のとおり,旧第1ビルの有償譲渡に関して,買取要望書を送付した。 買取要望書の送付を受けて,被告では,同月7日,A以下,B,Cら計5名の常勤役員が出席して,第102回常勤役員会が開催され,原告の買取要望書について意見交換が行われた。同役員 を送付した。 買取要望書の送付を受けて,被告では,同月7日,A以下,B,Cら計5名の常勤役員が出席して,第102回常勤役員会が開催され,原告の買取要望書について意見交換が行われた。同役員会における意見交換の結果,旧第1ビルの買取り問題については,第28回取締役会において,第1号議案の附帯意見として,有償譲渡する方向で臨むことが取締役会の基本方針として確認されているが,跡利用計画及び国の承認との関係もあることから,被告が主体性を持って,三者協議の場を含むあらゆる場で,これらを踏まえつつ誠意を持って早期解決をめざして協議していく必要があり,しばらく時間を頂きたいという趣旨の意見を,執行部の意見として取締役会で表明することとなった。 そして,同月8日に開催された被告の第29回取締役会において,原告から旧第1ビルに関し,買取要望書が提示されたことが報告された上,Aから,執行部の意見として,上記意見が述べられるとともに,これに付加して「できれば着工時までに解決していくために全力を傾注していきたい。」との意見が出された。 これに対して出席取締役らからは,「要望事項の解決について誠意をもって積極的に対応していくことは間違いないが,着工までの解決には疑問である。第一ビルの買取りについては,運輸省の承認が必要であり,このことは跡利用計画の策定と計画についてのコンセンサス作りが求められることになり,これらの見通しが必要である。着工前に解決するとなると運輸省の承認が後になり,できるものもできなくなる懸念もあることから,関係者の意見を徴しながら進める必要があるのではないか。」,「第一ビルの買取りについては,問題を円満に解決するために,総合的な検討が必要と考える。例えば,財源対策,経営採算の確保のための財務計画の見直しも必要であり,県提起の条 必要があるのではないか。」,「第一ビルの買取りについては,問題を円満に解決するために,総合的な検討が必要と考える。例えば,財源対策,経営採算の確保のための財務計画の見直しも必要であり,県提起の条件整理,その他NATCO,航空会社等との調整を図り,各面の合意形成に努力する必要がある。また,空港管理規則上の国の承認を得るための調整も必要であるとの問題意識も持っており,従って,早期解決に努力することは当然であるが,円満解決を図るためには,ある程度時間をかける必要がある。」などの意見が出されたほか,「種々,問題が山積しているようであり,常勤役員としても一つずつ解決していかなければいけないことからも,着工時までという表現は取り下げた方がよいのではないか。」といった意見が出された。これらの意見を踏まえて,Aは,着工時までの解決を一つの目標として掲げる趣旨であったが,それが不適切であるとの指摘があるので取り下げる旨発言した。 (甲16,69,70)イそこで,被告においては,前記アの第102回常勤役員会及び第29回取締役会における意見交換等を受けて,Aが原案を起案した後,Bが直ちに買取りに同意する内容にならないよう原案に修正を加えて以下の文面の要望回答書本文が作成され,A,B及びCの3名が連名によりこれに記名し,かつ各自個人名の印章を押印して要望回答書が作成され,平成8年10月15日付けで,原告に対して送付された。 「平成8年9月11日開催の被告の第28回取締役会に於いて,現国内線第1ターミナルビルの譲り受けについては,第1号議案の附帯意見として有償譲渡する旨,取締役会の基本方針として取締役の総意を基に確認されておりますことを鑑み,両者の共存共栄,円満解決に向け,当社として総合的な検討が必要であり,又,早期解決に向け各面の協力の基 として有償譲渡する旨,取締役会の基本方針として取締役の総意を基に確認されておりますことを鑑み,両者の共存共栄,円満解決に向け,当社として総合的な検討が必要であり,又,早期解決に向け各面の協力の基,合意形成に努力する必要性があります。 従って,早期解決に努力することは当然でありますが,円満解決を図る為には,ある程度時間をかける必要があります。社長以下,常勤役員は責任を自覚し被告役職員が主体性を持って三者協議を含むあらゆる場で,誠意を持って早期解決をめざして調整をし,所定の手続きを踏まえ,現国内線第1ビルを有償で譲り受けることをお約束申し上げます。 尚,譲り受け条件等は検証のうえ要望書記載の条件に基づき,其の他細部については,別途協議致します。」(甲17)(11) その後の経緯ア交渉の継続旧第1ビルに関する買取要望書及び要望回答書のやりとりが行われた後も,平成9年1月ころから平成10年5月ころまで,原告と被告との間で,両者の常勤役員らが出席する会議が重ねられ,旧第1ビル等における原告の営業が終了することによる補償の問題,新ターミナルビルにおける原告の営業保証の問題等のほか,旧第1ビルの有償譲渡の問題についても話し合いが継続された。また,沖縄県の提案により,再度,沖縄県,原告及び被告の三者協議が開催され,これらの問題についての話し合いが重ねられたが,合意には至らなかった(甲18)。 イ平成9年6月の被告株主総会被告の取締役は,覚書,細目協議書等を根拠として,被告の設立以来,その過半数が原告の推薦者で構成されていた。しかし,取締役会における旧第1ビルの有償譲渡に関する検討状況や,買取要望書,要望回答書など原告と被告との間における旧第1ビルを巡る交渉状況等に鑑み,沖縄県や航空会社 が原告の推薦者で構成されていた。しかし,取締役会における旧第1ビルの有償譲渡に関する検討状況や,買取要望書,要望回答書など原告と被告との間における旧第1ビルを巡る交渉状況等に鑑み,沖縄県や航空会社等原告以外の被告株主らは,原告の推薦する者が被告の取締役の過半数を占めていたのでは,被告が,被告の経営にとって有益であるか否かを問わず,原告の要望事項をそのまま受け入れる方向での判断をするおそれがあるとの懸念を抱き,平成9年6月の被告株主総会において,原告の反対を押し切って,沖縄県の提案した取締役選任案を可決し,その結果,沖縄県の推薦する者が取締役の過半数を占めることになった。さらに,原告を除く前記被告株主らの推薦を受けた取締役らは,その直後に開催された被告取締役会において,沖縄県の推薦するEを代表取締役として選任し,Aは被告の代表取締役を退任した。 ウ新ターミナルビルの供用開始等被告は,第28回取締役会決議に基づき,平成8年9月19日,運輸省大阪航空局長に対し,那覇空港構内での営業承認申請を行い,同年11月20日,承認を受けた。 新ターミナルビルは,平成11年3月25日に完成し,同年5月25日,大阪航空局長から那覇空港における原告の構内営業の承認が取り消され,同月26日,新ターミナルビルの供用が開始され,同ビルにおいて,被告が構内営業を開始した。 原告は,新ターミナルビルの供用開始後も,第2の1(3)のとおり,被告や沖縄県に対し,旧第1ビルの有償譲渡に関する契約を締結するよう働きかけを行うなどの提案,要望を提出し,かかる提案,要望を受けて,平成12年2月から同年3月までの間及び同年9月から平成13年2月までの間,三者協議が断続的に開催された。この三者協議の場において,沖縄県から,旧第1ビル,国内線ビル等 し,かかる提案,要望を受けて,平成12年2月から同年3月までの間及び同年9月から平成13年2月までの間,三者協議が断続的に開催された。この三者協議の場において,沖縄県から,旧第1ビル,国内線ビル等の有償譲渡や旧第1ビル等における原告の営業終了に伴う補償などの諸問題を一括して解決する案として,原告への25億円の支払が提示されたが,当該提案は,平成8年当時に沖縄県が提案した一括解決案と同様に,原告の所有する被告株式の譲渡に関する事項,新ターミナルビル及び国際線ビルへの原告の入居に関する事項も盛り込まれ,これらの事項について原告に新たな譲歩を求める内容であったため,原告と被告との間で合意に至ることはなかった。(甲10,20~25,62,63) 2 争点(1)(原告と被告との間の旧第1ビルに関する売買契約の成否)について(1) 原告は,前記第2の2(1)(原告の主張)のとおり,原告の被告に対する買取要望書及びこれに対する被告の回答である要望回答書により,原告と被告との間に,売買予約契約が成立した旨主張する。 (2)アそこで,まず,原告が合意の根拠として主張する両書面がやりとりされるに至った経緯,状況等についてみると,前記1(9)アのとおり,当時,運輸省が旧第1ビルの買取り問題など原告と被告との間の諸問題が解決されない限り,被告に対して新ターミナルビルの建設許可を出しにくいとの意向を示していたなどの事情もあって,被告及び沖縄県としては,新ターミナルビルの着工及び供用開始に向けた手続を進めるために,関係者との調整や,財源の問題なども含めて,旧第1ビル等における原告の営業が終了することに伴う補償,新ターミナルビルにおける原告の営業の保証などとともに,旧第1ビルに関する補償についても,可能な限り原告の意向を酌んだ形での解決に向けて検討を進 1ビル等における原告の営業が終了することに伴う補償,新ターミナルビルにおける原告の営業の保証などとともに,旧第1ビルに関する補償についても,可能な限り原告の意向を酌んだ形での解決に向けて検討を進めていたことは確かである。 イしかしながら,前記1(6)ないし(8)のとおり,①平成6年要望書により,旧第1ビルの有償譲渡に関して,原告から被告に対して初めて具体的な買取り申入れが行われたのに対し,被告は,原告に対し,平成6年回答書により,跡利用計画や運輸省や県など関係各位の理解や協力を得ることが,旧第1ビルの有償譲渡の問題を解決するために必要不可欠である旨明示して回答していること,②平成7年に,旧第1ビルの有償譲渡の問題等を解決するための協定書(営業譲渡契約書)を締結したい旨,原告から被告に対して申入れがされた際に,原告及び被告の各常勤取締役らが出席して開催された会議において,被告は,原告に対し,旧第1ビルの買取りを含む原告の要望事項がいずれも被告にとって重要な経営判断を要する事項なので,常勤役員会における充分かつ慎重な検討を行い,関係者との調整を踏まえて,取締役会等のしかるべき機関に諮った上で決定し,回答したい旨の返答を行い,さらに,同会議後に開催された被告の取締役会において,被告代表者であるAは,旧第1ビルの譲渡問題が被告の経営判断として重要な問題であり,その決定に当たっては,関係者との協議,常勤役員会,取締役会等での審議,検討を充分に行った上でする必要があり,かつ,沖縄県の意向も無視することができない旨明言していること,③平成8年2月に原告から旧第1ビルの有償譲渡の件を含む譲渡契約書案が提示され,被告においてその譲渡契約書案の検討を行った際にも,旧第1ビルは用途廃止されることが予定されており,被告として有償で譲り受ける必要性に 原告から旧第1ビルの有償譲渡の件を含む譲渡契約書案が提示され,被告においてその譲渡契約書案の検討を行った際にも,旧第1ビルは用途廃止されることが予定されており,被告として有償で譲り受ける必要性に乏しく,旧第1ビルの有償譲渡を含む原告の上記譲渡契約書案を無条件に受け入れることは,被告の取締役としての責任追及も問題となりかねないと警告する顧問弁護士の意見書が,被告取締役会に提出され,報告されていることなども認められるところである。 これらの事実に照らせば,旧第1ビルの有償譲渡に関する問題は,平成8年10月に買取要望書により原告から旧第1ビル買取りの申入れがされるまでの間に,既に2年間以上にもわたって,原告と被告との間で継続的に交渉が行われていたものの,旧第1ビルが被告の経営にとって必要性に乏しい施設であり,跡利用計画も具体的に定まっていなかったことなどもあって,沖縄県を始めとする関係者との調整の問題も含め,旧第1ビルを原告の帳簿価額で買い取るという原告の要望事項を,被告がそのまま受け入れることは困難な状況であり,買取交渉の具体的進捗が見られないという状況にあったことは明らかである。 ウまた,上記のような状況の中で,前記1(9)イのとおり,被告が原告の買取要望書の送付を受ける直前である平成8年9月に開催された被告の第28回取締役会において,Aから旧第1ビルの買取りについて,取締役会において承認してもらいたい旨の緊急動議が提出されたものの,沖縄県の提示した一括解決案における他の条件と切り離して旧第1ビルの買取りのみを決めた場合,15億円にも上る売買代金が被告の経営負担となることや,そのことによる取締役としての責任が問題となり得るとの懸念が述べられるなど,これに対して否定的な意見も提出され,結局,Aからの「旧第1ビルの買取り」 円にも上る売買代金が被告の経営負担となることや,そのことによる取締役としての責任が問題となり得るとの懸念が述べられるなど,これに対して否定的な意見も提出され,結局,Aからの「旧第1ビルの買取り」を内容とする緊急動議は撤回され,空港管理規則等の諸申請手続に関する議案の附帯意見として,原告の要望事項については三者協議(沖縄県,原告,被告)を含むあらゆる場で,互譲の精神で合意が図れるよう,精力的に取り組み,特に,三者協議の場で,旧第1ビルを有償譲渡する方向で臨むことを社の方針として確認する旨の決議がなされるに止まっている。かかる決議の経緯,状況等に照らせば,上記修正動議が取締役会で附帯意見として承認されたことをもって,旧第1ビルの有償譲渡について,被告取締役会がその買取りを承認したものと認めることはできない。 エさらに,原告から買取要望書の送付を受けて開催された被告の第102回常勤役員会の議事の状況をみても,前記1(10)アで認定したとおり,旧第1ビルの有償譲渡の問題について,跡利用計画や国の承認との関係もあるため誠意をもって早期解決を目指して協議していきたいので,時間的猶予をもらいたい旨の執行部意見が取りまとめられたにすぎず,買取要望書に記載された条件での譲受けの可否自体や譲り受けるとした場合の諸条件など旧第1ビル買取りについての具体的な議論,検討がなされたような形跡は,窺えない。また,その翌日に開催された被告の第29回取締役会においても,Aが,上記執行部意見に付加して,着工時までに解決したい旨発言したことに対しても,出席取締役から慎重な意見が出され,Aが当該発言を撤回したこと以外に,買取要望書に記載された条件で旧第1ビルを原告から買い取ることについて,これを承認する,あるいは他の条件による取得なら承認するといった,買取りの具体 意見が出され,Aが当該発言を撤回したこと以外に,買取要望書に記載された条件で旧第1ビルを原告から買い取ることについて,これを承認する,あるいは他の条件による取得なら承認するといった,買取りの具体的な条件などについて議論,検討が行われた形跡は窺えないし,旧第1ビルを有償で譲り受けることを前提として,買取りの諸条件について,A,あるいは常勤役員会の決議に一任するといった決議が行われた事実も認めることはできない。このような被告の第102回常勤役員会及び第29回取締役会の状況に照らせば,原告から買取要望書が送付された後に開催された被告の取締役会において,旧第1ビルの有償譲渡について,買取要望書記載の条件による買取りを具体的に承認する旨の決議があったとは到底いえない。 (3) そして,何より,被告が旧第1ビルの買取りを承諾したと原告が主張する要望回答書(甲17)自体をみても,「当社として総合的な検討が必要であり」,「早期解決に向け各面の協力の基,合意形成に努力する必要があり」,「円満解決を図る為には,ある程度時間をかける必要があり」,「三者協議を含むあらゆる場で,誠意を持って早期解決を目指して調整をし,所定の手続を踏まえ」といった各文言は,前記1認定の旧第1ビル買取りに関する原告と被告との間の交渉の経緯や進捗状況等にも符合するものであって,この点,原告が主張するように被告が原告の買取要望書に記載された売買条件に基づく旧第1ビルの有償譲受けを何らの異議を留めることなく確定的に承諾したものと解することは,およそ困難であるといわざるを得ない。 加えて,当該要望回答書が常勤取締役3名の連名による文書であることや,代表取締役名下の押印に代表者印が使用されていないことなど,その書面の体裁自体も会社が懸案の重要事項について承諾の意思内容を表示記載する文書 該要望回答書が常勤取締役3名の連名による文書であることや,代表取締役名下の押印に代表者印が使用されていないことなど,その書面の体裁自体も会社が懸案の重要事項について承諾の意思内容を表示記載する文書としては,不自然なものである。 (4) 以上検討したとおり,旧第1ビルの買取り問題に関する原被告間の交渉経緯,状況及びこれに対する被告役員らの認識,被告取締役会等の議事の状況,要望回答書の作成及び送付に当たっての状況,買取要望書を受領した後の経緯,状況,書面の内容,体裁等に照らせば,要望回答書は,署名したA以下3名の常勤役員らが,今後旧第1ビルの有償譲渡問題にどのように対応していくかの私的な意見を表明した程度の文書と評価せざるを得ず,旧第1ビル買取りの申込みに対する被告の買取りの意思表示(承諾)が表明された文書とは到底認めることができないというべきである。 (5) なお,本件で問題となっている旧第1ビルの有償譲渡は,原告と被告間での解決すべき問題の一つとして話し合いが続けられてきた重要な問題であり,しかも,原告が申し入れた旧第1ビルの譲渡価額は10億円を超える高額であり,被告の経営に与える影響や被告の取締役の責任追及の問題など種々の問題を含む懸案事項であったにもかかわらず,売買予約契約書その他旧第1ビルの売買予約に関する正式な合意文書が一切作成されていないことも看過することはできない。 また,旧第1ビルに関する買取要望書及び要望回答書のやりとりの後,原告と被告との間で,あるいは沖縄県も交えた三者で,同ビルの有償譲渡に関する協議が継続実施されることになったものの,沖縄県が,原告と被告に対し,沖縄県の合意を欠いて覚書の趣旨に悖る合意等をしないように通知するなど,旧第1ビルの譲渡等の事項を原告と被告の2社のみで合意することに強い難色を されることになったものの,沖縄県が,原告と被告に対し,沖縄県の合意を欠いて覚書の趣旨に悖る合意等をしないように通知するなど,旧第1ビルの譲渡等の事項を原告と被告の2社のみで合意することに強い難色を示し,さらに,原告の前記要望事項を被告が無条件に受け入れてしまうことを懸念した沖縄県を始めとする被告株主らによって,被告取締役会の構成が原告の影響力を薄めるべく刷新されたという,その後の状況に鑑みると,原告が主張するように買取要望書及び要望回答書によって既に売買の予約が成立しているとは到底解されず,むしろ,旧第1ビルに関する原告と被告間の問題は依然として未解決のまま継続協議の状態となっていたと考える方が自然である。 (6) 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告と被告との間に旧第1ビルに関する売買契約が成立したとの争点(1)に関する原告の主張は,理由がないこととなる。 3 争点(2)(契約締結上の過失責任の存否)について(1) 原告は,前記第2の2(2)(原告の主張)のとおり,仮に,原告と被告との間で旧第1ビルの売買予約契約が成立してなかったとしても,原告と被告は,旧第1ビルの取引について,被告の所定の手続を経て売買契約を締結するための契約準備段階に入ったものであり,原告としては,被告の従前の対応からすれば,確認書の趣旨,内容に従って旧第1ビルを買い取るものと信頼していたのに,売買契約の締結に向けた細部事項について交渉もせず,また,旧第1ビルの買取りを拒絶する態度も明らかにしなかったから,契約締結上の過失責任を負う旨主張する。 (2) この点,前記1(2),(6)ないし(10)のとおり,①昭和48年当時に原告,沖縄県らにより作成された確認書において,被告は当事者となっていないものの,旧第1ビルなど原告が建設,管理 。 (2) この点,前記1(2),(6)ないし(10)のとおり,①昭和48年当時に原告,沖縄県らにより作成された確認書において,被告は当事者となっていないものの,旧第1ビルなど原告が建設,管理運営する暫定ビルについて,暫定使用期間が終了した後(本格ターミナルビルである新ターミナルビルが新会社である被告により運営が開始された後)は,JAL,ANAに残存価格で売却するか,新会社が承継するものとされていたこと,②平成6年当時,被告は,原告の旧第1ビルの有償譲渡の申入れに対して,跡利用計画や関係者等の調整が必要であるとしながらも,有償譲渡について前向きな姿勢で対応していること,③平成7年当時,原告から被告に対して新たな協定書の締結に向けた申入れがあった際,被告は,原告に対し,旧第1ビルの有償譲渡問題について,常勤役員会で慎重かつ充分に検討を重ね,関係者との調整も踏まえて,その結果を取締役会等の機関に諮った上で決定し,回答したい旨の返答をしていること,④平成8年当時,原告が被告に対して旧第1ビルの有償譲渡の解決案を含む譲渡契約書案を提出し,これを契機として開催されることとなった三者協議において,沖縄県から提案のあった旧第1ビルの有償譲渡問題を含む一括解決案について,被告は,これを受け入れるとの意向を示していたこと,⑤被告の第28回取締役会において,議案「空港管理規則等の諸申請手続について」の附帯意見として,原告の要望事項については三者協議(沖縄県,原告,被告)を含むあらゆる場で,互譲の精神で合意が図れるよう,精力的に取り組み,特に,三者協議の場で,旧第1ビルを有償譲渡する方向で臨むことを社の方針として確認する」旨の決議が,承認可決されていること,⑥原告から被告に対して買取要望書をもって行われた旧第1ビルの有償譲渡の申入れに対し,被告は,A以 旧第1ビルを有償譲渡する方向で臨むことを社の方針として確認する」旨の決議が,承認可決されていること,⑥原告から被告に対して買取要望書をもって行われた旧第1ビルの有償譲渡の申入れに対し,被告は,A以下常勤役員3名の連名により,原告に対し,旧第1ビルの買取要望を受け入れるかのような内容を記載した要望回答書を送付していることなどが認められる。 このように,原告は,平成6年ころから,被告に対して,旧第1ビルの有償譲渡,買取りについての申入れを継続的に行ってきており,これに対して,被告が旧第1ビルの跡利用計画の問題や,関係者との調整の必要性など一定の留保をしつつ,旧第1ビルの有償譲渡を受け入れるとの明確な意思も表明していない反面,これを明確に拒否する旨の意思も表明していなかったことは事実である。 (3) しかしながら,他方,本件においては,原被告間における旧第1ビルの買取問題に関し,次のような事実関係も認められる。 ア被告は,旧第1ビルの有償譲渡の問題について,新ターミナルビルの着工,供用開始に向けた手続を進捗させるために,可能な限り原告の意向を酌んだ内容での解決に向けて,前向きな検討を進めていたものの,他方で,旧第1ビルの跡利用計画の問題,沖縄県その他の関係者との調整の必要性が存したのみならず,旧第1ビルの有償譲渡問題が被告の経営判断として重要な問題とされ,原告の要望どおりにこれを取得することには顧問弁護士や取締役らから否定的な意見が述べられるなどしていたこともあって,被告の取締役にとっては,原告の帳簿価額による旧第1ビルの有償取得という原告の要望は,そのまま受け入れることができない困難な問題,懸案事項として認識されていた。しかも,旧第1ビルの有償譲渡問題を含めた原告の要望事項を包括的に解決するために沖縄県から三者協議の場にお いう原告の要望は,そのまま受け入れることができない困難な問題,懸案事項として認識されていた。しかも,旧第1ビルの有償譲渡問題を含めた原告の要望事項を包括的に解決するために沖縄県から三者協議の場において提案された一括解決案は,旧第1ビルの有償譲渡とともに,被告の資本構成,代表権,取締役員数についても併せて取り上げ,これらの事項について原告に譲歩を求めるものであり,このような沖縄県の意向もあって,旧第1ビルの有償譲渡の問題は,被告の資本構成の変更など他の問題と切り離して解決することが困難な状況にあった。のみならず,被告の取締役会などにおいても,旧第1ビルの有償譲渡問題を,他の問題と切り離して個別解決することに疑問を呈する意見も出されていたのである。 したがって,被告にとっては,旧第1ビルを有償で取得すること自体,被告の経営判断,株主である沖縄県の意向などとの関係でおよそ困難な状況にあったといえる。それにもかかわらず,前記1(6)ないし(11)の認定事実からすると,被告としては,旧第1ビルの有償譲渡問題について,他の要望事項など諸問題の解決も含めて,可能な限り原告の要望を酌む方向での解決を模索していたとも認められるのであり,かかる被告の対応は,原告側からみても決して非難し得るようなものではないといわざるを得ない。 イそして,前記1(4),(5),(9),(10)のとおり,被告については,原告がその株式の41%を保有しており,平成9年6月の株主総会において沖縄県の推薦を受けた者が取締役の過半数に就任するまでは,原告の推薦する取締役が過半数を占め,代表取締役も原告の推薦する者が就任していたこと,平成8年9月11日の被告の第28回取締役会が開催された当時,現在の原告の代表者が被告の監査役を務め,かつ,原告の代表取締役を務めたこと 半数を占め,代表取締役も原告の推薦する者が就任していたこと,平成8年9月11日の被告の第28回取締役会が開催された当時,現在の原告の代表者が被告の監査役を務め,かつ,原告の代表取締役を務めたことのあるAが買取要望書と要望回答書のやりとりが行われた当時の被告の代表取締役を務めるなど(ちなみに,証人Aの証言によると,Aは,被告が設立された平成4年12月から平成7年6月まで原告と被告の双方の代表取締役を兼任していたことが認められる。),原告の役員あるいは従業員の経験を有する者が,被告の代表取締役,常勤取締役,取締役ないし監査役に就任して,被告の常勤役員会,取締役会に出席するなどしていたことなどが認められるのであり,原告と被告との間においては,相互の情報交流が緊密であり,かつ,実質的には被告にとって原告は親会社にも類するような親密,かつ,特殊な関係があったということができる。したがって,被告としては,原告からの旧第1ビルの買取り要請等について,取締役会ないし会社全体として,原告の意向に反して拒絶の意思表明をすることは極めて困難な状況にあったというべきである。 ウそれにもかかわらず,被告が旧第1ビルを買取要望書記載の条件で買い取ることを確定的に承諾したと原告が主張する要望回答書の作成状況をみても,前記1(10)イ認定のとおり,その成案については,取締役会の審議,検討,承認などを全く経ることなく,Aが原案を作成して,Bが修正を加え,ほか1名の常勤役員の連名により作成された上,原告に送付されたものにすぎないのであり,その文面に鑑みても,被告において,旧第1ビルの有償譲受けに関し即時・確定的に承諾の意思表明をするのを何とか回避しようと苦慮していることは,容易に窺い得るところである(同様のことは,前記1(9)イの被告の第28回取締役会の議事内 て,旧第1ビルの有償譲受けに関し即時・確定的に承諾の意思表明をするのを何とか回避しようと苦慮していることは,容易に窺い得るところである(同様のことは,前記1(9)イの被告の第28回取締役会の議事内容でも見受けられる。)。 また,前記1(11)のとおり,上記のような買取要望書及び要望回答書のやり取りがされた後も,旧第1ビルを含む原告の要望事項についての解決に向けて,沖縄県の主催する三者協議の場が断続的に開催されたりするなど,旧第1ビルの有償譲渡問題について,合意に至ることが困難な事項として継続的に話し合いが続けられていたことに鑑みると,原告側経営陣としても,被告における旧第1ビルを巡る検討状況,旧第1ビルの買取りについての合意に至ることが困難なことやその理由などについて,充分に認識していたものといえる。 (4) したがって,本件において,被告が原告に対し旧第1ビルの買取りを明確に拒絶しなかったことが信義則に違反する違法なものであると評価することは到底できず,また,被告の行動により原告が旧第1ビルの売買の契約が成立するものと信頼するに至ったと認めることもできないというべきである。 (5) そうすると,いずれにしても,争点(2)に関する被告が契約締結上の過失責任を負う旨の原告の主張は失当といわざるを得ず,これを採用することはできない。 4 結論以上の次第で,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないこととなる。 よって,主文のとおり判決する。 那覇地方裁判所民事第1部裁判長裁判官西井和徒裁判官松本明敏裁判官岩崎慎 裁判長 裁判官 西井和徒 裁判官 松本明敏 裁判官 岩崎慎
▼ クリックして全文を表示