- 1 -主文被告人を懲役1年6月に処する。 未決勾留日数中90日をその刑に算入する。 この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,常習として, 平成19年8月25日午後3時55分ころ,大阪府(略)13番15号のA(),,「。」当時58歳方前路上において同人方に現在していた同人に対し死ね「早よ死ね「殺すぞ」などと怒号し,同人の生命,身体に危害を加えるか。」。 も知れない気勢を示して脅迫した。 同日午後6時30分ころ,前記A方前路上において,同人方に現在していた,「,。 ,,,同人に対しなめとんかこらおんどりゃ出てこいこらーボケこらー,。 ,。 ,馬鹿親父やきやりあげたるから来い殺すぞほんまに人をなめとったら,。 ,,,。」痛い目に遭わしたろかおんどりゃ来いやりあげたるからボケこらなどと怒号し,同人の生命,身体に危害を加えるかも知れない気勢を示して脅迫した。 同月28日午後8時30分ころ,大阪府(略)13番15号の当時の被告人,()方前路上において軽四輪自動車を運転して帰宅途中であったB当時50歳に対し「出て来い,こら,ボケ,早よ死ねお前みたいなん。人の邪魔ばかり,しやがって。馬鹿一族やろ,お前。クソ馬鹿息子,出て来いこら「やかま。」しいこら,何をゆっとんじゃこら。おんどりゃー,殺されたいんかこらー。ばかー,ばか息子,早よ死ねこらー「死んでまえ,お前みたいな人間」など。」。 と怒号し,同人の生命,身体に危害を加えるかも知れない気勢を示して脅迫した。 - 2 - 同年9月2日午後5時25分ころ,当時の前記被告人方前路上において,外出するため通行中のC など。」。 と怒号し,同人の生命,身体に危害を加えるかも知れない気勢を示して脅迫した。 - 2 - 同年9月2日午後5時25分ころ,当時の前記被告人方前路上において,外出するため通行中のC(当時67歳)に対し「馬鹿だろうが,お前。人が人,の嫌がらせやるように生きて生きていってんのか,馬鹿。嫌がらせばかりしやがって。アホはお前じゃが。死ねこらホンマに,出てきてみ,やりあげたるから,馬鹿野郎」などと怒号し,同人の生命,身体に危害を加えるかも知れな。 い気勢を示して脅迫した。 (補足説明)第1 争点 弁護人は,被告人は,①判示の日時場所において,判示のような言動に及んでいない,②判示の相手方らも被告人と同様の言動をしており,被告人の言動により相手方らが畏怖するような客観的状況にはなく,本件は単なる近隣トラブルの域を出るものではないし,被告人が女性であることからすると,被告人の行為は脅迫に該当しない,③脅迫の常習性もないなどとして,被告人は無罪である旨を主張する。 第2事実の認定 前提事実( )被告人,A(判示1,2)及びC(判示4)は,大阪府(略)13番15 号に居住し,B(判示3)は,同13番19号に居住していた。 ( )Aが任意提出したマイクロカセットテープ(以下「本件録音テープ」とい う)から再録音したCD-Rには,女性の声で,次のような発言が録音されてい。 る。 ア「A面の録音内容」の41分53秒ころから43分09秒ころまで「なめとんかこら,おんどりゃ「出て来いこらー,ボケ,こらー,馬鹿親父。 。」やきやりあげたるから来い,こらー。馬鹿「殺すぞ,ほんまに。人をなめとっ。」,,。 ,。 ,。」たら痛い目に遭わしたろかおんどりゃ来いやりあげたるからボケこら「馬鹿か,お前は」。 イ「 から来い,こらー。馬鹿「殺すぞ,ほんまに。人をなめとっ。」,,。 ,。 ,。」たら痛い目に遭わしたろかおんどりゃ来いやりあげたるからボケこら「馬鹿か,お前は」。 イ「A面の録音内容」の43分21秒ころから44分25秒ころまで- 3 -「,,,。 。」出て来いこらボケ早よ死ねお前みたいなん人の邪魔ばかりしやがって「馬鹿一族やろ,お前。クソ馬鹿息子,出て来いこら。やかましいこら,何をゆっとんじゃこら。人が会社行くとき邪魔しやがった。おんどりゃー,殺されたいんかこらー。お前が近所迷惑じゃ。ばかー,ばか息子,早よ死ねこらー「死んでま。」え,お前みたいな人間」。 ウ「A面の録音内容」の44分59秒ころから45分32秒ころまで「,。 ,馬鹿だろうがお前人が人の嫌がらせやるように生きて生きていってんのか馬鹿。嫌がらせばかりしやがって。アホはお前じゃが。死ねこらホンマに,出てきてみ,やりあげたるから,馬鹿野郎」。 ( )Aが任意提出したノート(以下「本件ノート」という)には,次のよう 。 な記載がある。 ア8月25日の欄「8/25土曜日PM3:55死ね,気違い人間じゃない速よ死ね殺すぞ「PM5:30~6:00鍋の底をたたく缶のふたのようなものでたた」いて騒音をだす我が自宅の壁をたたく又,ばりぞう言を言う今日は長く続いた「テープ-800~860から録音してます」。」イ8月28日の欄「8/28火曜日(AM)6:30一つとなりのBさんの車がとおるをまってばりぞうごんの数々をあびせる」ウ9月2日の欄「9/2日曜日900~905テープ隣のCさんにたいして死ね,バカの暴言を吐く」。 本件録音テープ及び本件ノートと本件との関連性( )Aは, ぞうごんの数々をあびせる」ウ9月2日の欄「9/2日曜日900~905テープ隣のCさんにたいして死ね,バカの暴言を吐く」。 本件録音テープ及び本件ノートと本件との関連性( )Aは,当公判廷において,被告人の発言を本件録音テープに録音したり本 件ノートに記載したりした状況について,次のとおり証言した。 アAは,約5年前に,被告人方の隣に転居してきたが,それから1年くら- 4 -いすると,被告人が,A方の壁を叩いたり,Aに罵声を浴びせたりするようになった。被告人は,Aが自宅にいたときやAと顔を合わせたときに「馬鹿野郎「死,。」ね「お前ら人間とちゃう」などと怒鳴った。Aは,当初は被告人に対し「何。」。 ,言ってんねん。気違いはお前や。お前おかしいのとちゃうか」などと言い返して。 いたが,話し合いにならず,言っても無駄だったことから,しばらくすると言い返さないようになった。その後も,被告人は,少なくとも数日おきに,Aを怒鳴っていた。 イAは,被告人から断続的に怒鳴られていたことについて,警察に相談したものの,証拠がないと言われたため,ノートの記載とテープの録音を始めた。Aは,平成19年7月30日以降,被告人に怒鳴られたときには,遅くともその日のうちに,日付けとその内容を記載するようになった。また,Aは,同年8月8日,カセットレコーダーを購入し,被告人から怒鳴られたときには録音をするようにした。 ノートは,A方の4畳半の居間のテーブル上に置いてあり,被告人から罵声を浴びせられたときには,付近の時計を確認した上で,言われた言葉と時刻をなるべく正確に記載するようにしていた。カセットレコーダーは,被告人の家に一番近い場所であった台所に置いて録音をした。 ウノートに記載をし始めた後も,被告人は,2,3日に1度から毎日の 言葉と時刻をなるべく正確に記載するようにしていた。カセットレコーダーは,被告人の家に一番近い場所であった台所に置いて録音をした。 ウノートに記載をし始めた後も,被告人は,2,3日に1度から毎日の割合で,Aに罵詈雑言を浴びせていた。 エ被告人を挑発して怒らせて事件にしてもらおうと考えたことはない。被告人の言動に耐えられず,早く解決してもらおうと思って,ノートに記載するなどした。自宅の壁を叩く音がしたときには,被告人が叩いているのだろうと思って,被告人が叩いたと記載したが,何も物音がしないのに被告人が壁を叩いたなどと記載したことはない。 ( )Aが被告人から暴言を浴びせ続けられたことについて警察に相談をして, 証拠を保全する目的で本件録音テープや本件ノートを準備したという点について- 5 -は,その証言内容自体が詳細であるし,被告人が平成19年8月13日の段階で既に常習脅迫の被疑者として内偵捜査を受けており(弁10,その前の段階でAら)が警察に相談していたと認められることと符合する。また,Aが被告人から一方的に罵声を浴びせられるようになった状況として説明するところも,合理的である。 したがって,Aが本件録音テープを準備した理由として証言するところは,十分信用することができる。 次に,本件録音テープの声が被告人のものであることについては,BやCも認めている。加えて,被告人は,当公判廷において,弁護人の質問に対し「私は,A,がカセットレコーダーのスイッチを押して録音するところを見たことがある。その音声は,私の声かもしれないが,いつ言ったのか覚えていない『やりあげたるか。 ら』というのは,はっきり話をつけましょうかという意味に過ぎないが,相手には伝わらなかったと思う」旨を供述し(第8回被告人28~29頁,本件録音テ。 )ープの声が 覚えていない『やりあげたるか。 ら』というのは,はっきり話をつけましょうかという意味に過ぎないが,相手には伝わらなかったと思う」旨を供述し(第8回被告人28~29頁,本件録音テ。 )ープの声が被告人自らのものであることを曖昧ながらも認めた。なお,被告人は,検察官の質問に対しては「Aが私の声を録音しようとしたことは知らない。録音,された声が私の声かどうかも分からない」旨を供述したが(第9回被告人9頁,。 )。 ,供述内容を変遷させたことについて合理的な説明はされていない被告人としては本件録音テープに録音されている声が他人の声であれば,そのことを強く示唆するはずであるが,そのような供述は,捜査及び公判段階を通じて一切していない。したがって,本件録音テープの声が被告人のものであることは明らかである。 なお,本件録音テープの中には,スイッチの切断音と思われるものも録音されている。しかし,上記1( )に指摘した限りにおいては,そのような切断音は録音さ れておらず,その部分について,Aが意図的に被告人を挑発して被告人の発言だけを録音したとは認められない。 さらに,本件ノートの記載をみると,被告人の行動について,7月30日の欄には,鍋底を叩いて騒音を出したり,サーチライトを照らしたりする旨の記載があるほか,8月7日,8日,9日,15日,18日,21日,24日の各欄にも,鍋底- 6 -を叩いて威嚇された,気違いと連呼されたなどの記載がある。これらは,Aが,断続的に被告人から脅迫を受け,かつ,その内容をノートに記載していた旨の上記証言とよく符合するといえる。本件ノートには,日付けや時刻を特定するとともに,被告人の行動や発言をできるだけ客観的に記載しようという部分が多々あり,その体裁からは,Aが事実を誇張して記載したとは認められない。 ( ) いえる。本件ノートには,日付けや時刻を特定するとともに,被告人の行動や発言をできるだけ客観的に記載しようという部分が多々あり,その体裁からは,Aが事実を誇張して記載したとは認められない。 ( )そうすると,本件録音テープ及び本件ノートは,本件の事実認定や関係者 の証言ないし供述の信用性を判断するに当たり中心となるべき証拠といえる。 Aの証言( )Aは,当公判廷において,判示1,2の状況について,次のとおり証言し た。 平成19年8月25日,Aは,仕事が休みで自宅にいた。同日午後3時55分ころ,Aは,居間でテレビを見ていたところ,台所を通して,被告人の「はよ死ね。 殺すぞ」などという罵声が聞こえてきた。Aは,家の中におり,被告人がA方の。 中にまで押し入ろうという様子はなかったが,言葉で危害を加えられると思った。 このときの被告人の罵声は,本件ノートに記載したが,カセットレコーダーのボタンを押し間違えたため,本件録音テープに録音することはできなかった。 同日午後5時30分ころから午後6時ころまでの間,Aは,自宅にいたところ,鍋の底を叩く音を聞いた。同日午後6時30分ころ,Aは,A方の壁を叩く音や,罵詈雑言を聞いた。Aは,このときの罵詈雑言については,カセットレコーダーで録音した。このときの録音内容は,上記1( )アのとおりである。 判示1,2のとき,被告人はAを名指ししていたわけではないが,Aは,日常的に言われていたので,このときもAに向けて言っていたのだと思った。 ( )Aの上記証言は,相当具体的かつ詳細で,本件ノートの記載や本件録音テ ープの録音内容ともよく符合するものである。加えて,Aは,被告人から殴る蹴るの暴行を受けたことはなく,刃物を持ち出されて脅されたこともない旨を供述しており(第3回証人A32頁,被告人からされた ープの録音内容ともよく符合するものである。加えて,Aは,被告人から殴る蹴るの暴行を受けたことはなく,刃物を持ち出されて脅されたこともない旨を供述しており(第3回証人A32頁,被告人からされたことをできるだけ正確に証言しよ)- 7 -うとする姿勢が見られる。これに対し,弁護人は,Aが被告人に対する嫌がらせを否定したり,被告人からの発言を誇張したりしており,その証言に信用性はない旨を主張する。確かに,被告人とAは長らくの間にわたって諍いがあったと認められるから,その信用性は慎重に判断する必要がある。しかし,平成19年8月25日のことについては,Aの証言は本件録音テープの録音内容や本件ノートの記載とよく符合している。 したがって,A証言は基本的に信用することができ,特に平成19年8月25日の出来事に関する部分については,信用性が高いというべきである。 Bの証言( )Bは,当公判廷において,被告人とトラブルになった経緯や判示3の状況 について,次のとおり証言した。 アBは,平成19年8月15日,被告人方前の道路を自動車で通行しようとした際,被告人がスクーターを停車させていたため,それを少しよけてもらった,。 ,,「。 上ゆっくり通過していたすると被告人がゆっくり行って嫌がらせするなお前のばばあも嫌がらせするな。警察呼ぶぞ」などと,大声で言った。Bは「警。 ,察呼ばなあかんのはこっちや」などと切り返したものの,被告人も「殺すぞ」。 ,。 と大声で言った。被告人が被告人方に入っていったので,Bは,車を降りて被告人方の前まで行き,2回くらい「出て来んかい,こらー」などと怒鳴り返した。B。 は,会社に着いた後,危険ではないかと思い,自宅に電話をかけて,母や妻に上記のやり取りを話した。 Bは,その後も3日に2回くらい まで行き,2回くらい「出て来んかい,こらー」などと怒鳴り返した。B。 は,会社に着いた後,危険ではないかと思い,自宅に電話をかけて,母や妻に上記のやり取りを話した。 Bは,その後も3日に2回くらいの割合で,朝の出勤時に被告人方前を通過する際に,被告人から「死ね。殺すぞ。精神病院行け」などと言われたほか,同月,。 25日の帰宅時にも,被告人から怒鳴られた。 イBは,同月28日午後8時30分ころ,自動車で被告人方の前を通り過ぎようとしたとき,被告人から「家族揃って精神病院へ行け。馬鹿息子。馬鹿○,○。死ね」などと,大声で怒鳴られ続けた。Bは,自宅の駐車場に自動車を停車。 - 8 -させたが,被告人が怒鳴り続けていたため,被告人に向かって「近所迷惑やぞ。 ,引っ込んでおれ」と大声で言い返した。このときのBと被告人との距離は約35。 mであった。しかし,被告人は,怒鳴り続けており,Bは「アホ」と言って家,。 に入った。このとき,Bは,大声で酷いことを言うこと自体が怖いと感じた。このときに被告人から言われたことを本件録音テープやその反訳文で確認したところ,上記1( )イのとおりであった。 ウなお,Bの父親は昭和58年ころに死亡したが,自宅に表札には「B○○」と,父親の名前が記載されている。 ( )Bの上記証言のうち,特に8月28日当日のことに関する部分ついては, 本件ノートの記載や本件録音テープの録音内容ともよく符合するものである。この点について,Aは「8月28日の朝は,被告人がBに怒鳴った内容をノートに記,,。 ,。 載したが録音はしなかったその日の夜に被告人がBに怒鳴る様子を録音した私の家の前の道路を自動車で通行するのは,Bくらいであるし,長年接しているので,Bの自動車が通過するのは音で分かった。この日は,Bが被 録音はしなかったその日の夜に被告人がBに怒鳴る様子を録音した私の家の前の道路を自動車で通行するのは,Bくらいであるし,長年接しているので,Bの自動車が通過するのは音で分かった。この日は,Bが被告人に言い返す声も聞こえた。このとき録音したのは,上記1( )イの部分である」旨を証言する 。 ところ,B証言の上記部分については,これともよく符合するものである。BとAが結託して,被告人を陥れるために虚偽供述をしたり虚偽証拠を作出したりしたなどとは,被告人の供述を含めた全証拠を検討しても,全くうかがわれないから,B及びAの証言や本件録音テープの録音内容が符合することは,それらの信用性を相互に高め合う関係にあるといえる。 また,Bの証言内容は,相当具体的かつ詳細である上「被告人から直接の危害,を加えられたことはないし,被告人が近隣住民に危害を加えたという話を聞いたこともない」旨を証言しており,被告人からされたことをできるだけ正確に証言し。 ようとする姿勢が見られる。被告人は「死ね,早く,馬鹿○○は」などとも怒,。 ,,号しているがBの亡父である○○の氏名が表札に記載されていたことに照らすとこれもBに向かってされたものであると認められる。弁護人は,Bが誇張した証言- 9 -をしている旨を主張するが,平成19年8月28日のことに関する限りでは,Bの証言は本件録音テープの録音内容や本件ノートの記載によく符合している。 なお,Bの上記証言のうち,平成19年8月15日のトラブルの件については,Bが被告人方のインターホンを鳴らして「出て来い。殺すぞ」と言った旨の捜,。 査報告書が存在する(弁4。しかし,この捜査報告書は,被告人が警察官に電話)で申告した内容を記載したものに過ぎず,これに反するというだけでBの証言を虚偽であるとはいい難い。 そ った旨の捜,。 査報告書が存在する(弁4。しかし,この捜査報告書は,被告人が警察官に電話)で申告した内容を記載したものに過ぎず,これに反するというだけでBの証言を虚偽であるとはいい難い。 そうすると,Bの上記証言は基本的に信用することができ,特に平成19年8月28日の出来事に関する部分については,信用性が高いというべきである。 Cの証言( )Cは,当公判廷において,被告人とトラブルになった経緯や判示4の状況 について,次のとおり証言した。 ,,,「。 。 アCは数年前から断続的に被告人からやりあげたるクソババア馬鹿たれ。早うあの世へ行け」などと罵声を浴びせられていた。Cは,2,3年。 前までは,被告人に対し「その言葉,そっくり返すわ」などと言い返していた,。 が,被告人の形相が変わって怖くなったため,言い返さないようになった。Cは,被告人と顔を合わさないようにするため,裏口から出入りしていた。 イCは,平成19年9月2日午後5時20分ないし25分ころ,自らの娘と会うために,自宅を出た。このとき,Cは,待合せの時間が迫っていたため,玄関から出たすると被告人が被告人方前路上に立っておりCに向かって出。 ,,,,「てくるな。クソババア」などと言った。Cは,恐ろしかったので振り向かずに早。 足で待合せ場所に向かったが,被告人は,Cを怒鳴り続けた。このときに被告人から言われたことを本件録音テープやその反訳文で確認したところ,上記1( )ウの とおりであった。 ウCは,被告人から罵声を浴びせられ続けて,次第に危害を加えられるのではないかと思うようになり,恐ろしかった。 - 10 -( )Cの上記証言のうち,平成19年9月2日午後5時25分ころのことに関 する部分ついては,本件ノートの記載や本 第に危害を加えられるのではないかと思うようになり,恐ろしかった。 - 10 -( )Cの上記証言のうち,平成19年9月2日午後5時25分ころのことに関 する部分ついては,本件ノートの記載や本件録音テープの録音内容ともよく符合するものである。この点について,Aは「私の家の前をCが通ったとき,被告人の,怒鳴り声が聞こえたので,録音した。時刻は3時から6時の間だったと思う。その,。 ,。」とき録音したのは上記1( )ウの部分であるまた本件ノートにも記載した 旨を証言するところ,C証言の上記部分については,これともよく符合するものである。CとAが結託して,被告人を陥れるために虚偽供述をしたり虚偽証拠を作出したりしたなどとは,被告人供述を含めた全証拠を検討しても,全くうかがわれないから,C及びAの証言や本件録音テープの録音内容が符合することは,それらの信用性を相互に高め合う関係にあるといえる。 また,Cの証言内容は,相当具体的かつ詳細である上「被告人から殴られる蹴,られるというような暴力を受けたことはなく,刃物を持ち出されたこともない」。 旨を証言しており,被告人からされたことをできるだけ正確に証言しようとする姿勢が見られる。 なお,Cと被告人との間に,本件以前にトラブルがあったか否かは必ずしも明確ではない。しかし,本件録音テープやこれを補充する本件ノートによると,本件当日は被告人が一方的に怒号していたとしか認められない。また,被告人が作成していたというノート(弁12,13)を検討しても,平成19年9月2日に,被告人がCから嫌がらせや挑発を受けたなどという記載は見当たらない。 そうすると,Cの上記証言は基本的に信用することができ,特に平成19年9月2日の出来事に関する部分については,信用性が高いというべきである。 被告人 せや挑発を受けたなどという記載は見当たらない。 そうすると,Cの上記証言は基本的に信用することができ,特に平成19年9月2日の出来事に関する部分については,信用性が高いというべきである。 被告人の供述被告人は,当公判廷において「判示1のころには,帰宅していたかどうか覚え,ていない。判示2のころは,帰宅しており,外に出ていたことはない。判示3のころは,帰宅していたかどうか覚えていないが,帰宅していたとしても外には出てい。 ,,。」。 ない判示4のころは日曜日であったので外には出ていない旨を供述する- 11 -しかし,被告人は,上記のとおり,いったんは本件録音テープに録音された声が被告人自身のものであることを認めながらその次の公判期日の際には一転して私,,「には分からない」などと供述を変遷させている。被告人は,本件の中心となるべ。 き客観的証拠についてまで,自らの弁解内容を変遷させており,本件犯行を否認する被告人の供述は,総じて信用性が低いといわざるを得ない。 結論 以上に認定説示したところによると,被告人が,判示1ないし4の日時場所において,A,B及びCに対し,判示のような怒号をしたことは明らかである。 第3常習脅迫罪の成否 脅迫行為の該当性( )まず,被告人のA,B及びCに対する発言は「殺すぞ」とか「殺され ,。 ,たいんか」とか「死ね」などというもので,明らかに生命や身体に危害を加え。 ,。 ることを内容とするものである「やりあげたる」という発言も「死ね」とか。 。 ,。 「痛い目に遭わしたろか」という発言と同時期に怒号されたものであることに照。 らすと,少なくとも,身体に危害を加えられるのではないかと連想させるものといえる。また,判示2ないし4における被告人の発言の録音内容からも明らか 」という発言と同時期に怒号されたものであることに照。 らすと,少なくとも,身体に危害を加えられるのではないかと連想させるものといえる。また,判示2ないし4における被告人の発言の録音内容からも明らかなとおり,それらの発言の態様は,執拗かつ強烈な怒号をし続けるというものであり,それら発言の相手方を畏怖させるに十分なものといえる。被告人が,凶器を所持したり暴力を振ったりしていなかったこと,生命・身体に危害を加える具体的な方法までは明示していなかったことは事実であるが,発言の内容や態様に照らすと,それらの事実は脅迫の該当性を否定する事情とはならないというべきである。 現に,A及びCは,被告人の上記発言に対抗することもできなかったし,Bも,被告人に対して反論を試みたものの,被告人と同程度の発言まではできずに,自宅に入ったものである。 なお,被告人の夫は「Cが被告人と怒鳴り合いの喧嘩をするのを見たことがあ,る。被告人が,Aから暴言を言われたなどと,泣きながら電話をしてきたこともあ- 12 -った。被告人がB方前を通ったときに,強く窓を閉められたこともあった」旨を。 証言し,被告人の子も「被告人とCが言い争いになっているところを見た」旨,。 を証言する。しかし,これらの証言を前提としても,少なくとも判示のころに,CやAが被告人に怒鳴ったり暴言を吐いたりしたとは認め難い。 ,,,,そうすると被告人の判示1ないし4の各発言がそれらの相手方であるABCに対する脅迫に該当することは明らかというべきである。 ,,,,,( )これに対し弁護人はABCも被告人に同様の言動をしていたから ,。 被告人が判示のような発言をしたとしても脅迫行為には該当しない旨を主張するしかし,本件録音テープを複製したCD-Rを再生してみても,被告 人はABCも被告人に同様の言動をしていたから ,。 被告人が判示のような発言をしたとしても脅迫行為には該当しない旨を主張するしかし,本件録音テープを複製したCD-Rを再生してみても,被告人がある程度の時間にわたって執拗かつ強烈な怒号をし続けていたことは明らかである。被告人,。 の上記各発言はそれだけで脅迫行為に該当するほど執拗かつ強烈な怒号といえるBが被告人に多少言い返していたことは認められるが,被告人がほぼ一方的に怒号し続けていたことは明らかであり,被告人との間で互角な言い争いをしていたとは認められない。また,判示の被告人の発言態様に照らすと,単なる口喧嘩や近隣トラブルの域を超えて脅迫行為に該当し,これは,被告人が女性であることをふまえ。 。 ても変わらないことは明らかというべきである弁護人の上記主張は採用できない 脅迫行為の常習性被告人が,判示のような短期間に立て続けに,複数の者に対して強烈な脅迫行為を繰り返していたことだけをとってみても,被告人に脅迫行為の常習性が認められることは明らかである。 第4 結論 以上の次第で,被告人が判示のとおりの常習脅迫罪の刑責を負うことは明らかである。 (量刑の事情)本件は,判示の暴力行為等処罰に関する法律違反(常習脅迫)の事案である。 被告人が本件犯行を否認しているため,本件の詳細な原因は不明であるが,少な- 13 -くとも判示のころには,被告人がほぼ一方的に被害者らに怒号していたもので,被害者らに落ち度があったとは認められないから,本件犯行に至る経緯に酌むべきものがあったとは到底いえない。被告人は,自宅内にいる被害者に向かって,あるいは,被告人方付近の道路を通行した被害者に向かって「死ね「殺すぞ「やり,。」。」あげたる」などと被害者らの生命,身体に危害を加えかねないよ い。被告人は,自宅内にいる被害者に向かって,あるいは,被告人方付近の道路を通行した被害者に向かって「死ね「殺すぞ「やり,。」。」あげたる」などと被害者らの生命,身体に危害を加えかねないような言葉を執拗。 に怒鳴り続けており,犯行態様は著しく悪質である。被害者らは,もっとも心安らぐべき自宅での平穏な生活を乱されたり,帰宅や出かける際に脅迫されて畏怖させられたりしたもので,その結果は深刻である。被害者らは,被告人は罪を認めてほ,。 しいとか被告人の身柄拘束によって得られた平穏な生活を守りたいと述べているしかるに,被告人は,自らの脅迫行為が録音されていたにもかかわらず,不合理な弁解に終始しており,真摯に事実と向き合おうという姿勢が希薄である。そうすると,本件の犯情は悪く,被告人の刑事責任をゆるがせにすることはできない。 他方,被告人が公判請求されるのは,今回が初めてであること,夫や子供がいること,看護師として職務復帰する希望を持っていることなど,被告人のために酌むべき事情もある。また,不幸中の幸いではあるが,被告人の本件脅迫行為により,転居を余儀なくされたり,心身に不調を来したりした被害者はいない。 そこで,これらの事情を考慮し,被告人に対しては主文の刑を量定した上,今回に限り,その刑の執行を猶予するのが相当と判断した。 よって,主文のとおり判決する。 〔求刑懲役1年6月〕平成20年11月11日大阪地方裁判所第11刑事部裁判官千賀卓郎
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