平成15年9月24日判決言渡平成13年(行ウ)第234号確認請求却下処分取消等請求事件判決原告 A被告社会保険庁長官 主文 1 東京都知事(大森社会保険事務所長)が原告に対し、平成11年6月22日付けでした被保険者の資格取得の確認請求を却下する処分(社会保険審査会の平成13年5月31日付け裁決により一部取り消された後のもの)のうち、確認請求期間を昭和46年8月1日から昭和55年10月31日までの間とする部分を取り消す。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、これを50分し、その1を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求東京都知事(大森社会保険事務所長)が原告に対し、平成11年6月22日付けでした被保険者の資格取得の確認請求を却下する処分(社会保険審査会の平成13年5月31日付け裁決により一部取り消された後のもの)を取り消す。 第2 事案の概要本件は、大栄電機株式会社に勤務していたとする原告が、東京都知事(大森社会保険事務所長)に対し、厚生年金保険の被保険者の資格取得の確認を求めたところ、確認にかかる事実がないとして却下された(なお、裁決により、一部期間における資格取得が認められている。)として、その処分(裁決により取り消された部分を除く。)の取消しを求めた事案である。 1 争いのない事実等(なお、証拠により認定した事実については、末尾に括弧書きで証拠を掲示した。)(1) 当事者等原告(昭和10年11月21日生まれ)は、少なくとも、昭和45年12月1日から昭和46年7月31日まで により認定した事実については、末尾に括弧書きで証拠を掲示した。)(1) 当事者等原告(昭和10年11月21日生まれ)は、少なくとも、昭和45年12月1日から昭和46年7月31日までの間(以下「本件認定期間」という。)、大栄電機株式会社(本店所在地は、東京都大田区ab丁目c番地。 なお、昭和47年2月8日に本店所在地は東京都大田区de丁目f番地g号に移転している。甲5。以下「大栄電機」という。)の、当時、東京都大田区hi丁目j番k号に所在していた事務所(以下「本社事務所」という。)に勤務していたものである(但し、その余の期間についても勤務していたか否かについては、後記のとおり争いがある。)。 大栄電機には、本社事務所のほか、福岡県田川市l区mn番地に、昭和45年12月25日以降適用事業所であった九州工場(以下「九州工場」という。)があった(甲6、乙7、8)。 (2) 本件訴訟に至る経緯等ア原告は、平成11年6月22日付けで、東京都知事(大森社会保険事務所長。以下「都知事」という。)に対し、昭和45年10月1日から昭和55年10月31日までの間(以下「本件通算請求期間」という。)、大栄電機に勤務したとして、厚生年金保険の被保険者の資格の取得及び喪失の確認請求(以下「本件請求」という。)を行った。 イ都知事は、平成11年6月22日付けで、本件請求に対し、請求にかかる事実がないとして、これを却下する旨の処分(以下「本件処分」という。)をした。 ウ原告は、本件処分を不服として、平成11年7月12日付けで東京都社会保険審査官(以下「審査官」という。)に対して審査請求をしたが、審査官は、同年10月21日、審査請求を棄却する旨の決定をした。 エ原告は、この決定を不服として、平成11 12日付けで東京都社会保険審査官(以下「審査官」という。)に対して審査請求をしたが、審査官は、同年10月21日、審査請求を棄却する旨の決定をした。 エ原告は、この決定を不服として、平成11年12月7日付けで社会保険審査会(以下「審査会」という。)に対し、再審査請求をした。 審査会は、平成13年5月31日、「昭和45年12月1日(資格取得)から昭和46年8月1日(資格喪失)までの間、厚生年金保険の被保険者であったことを確認する。その余の部分を棄却する。」旨の裁決(以下「本件裁決」という。)をした。 オ被告は審査会の本件裁決を受け、平成13年6月21日付けで、原告は大栄電機において昭和45年12月1日に厚生年金保険の被保険者の資格を取得し、昭和46年8月1日に資格を喪失した旨を確認し、その範囲で本件処分を取り消す旨の処分を行った。 カ原告は、平成13年8月28日、本訴を提起した。 (3) 法令の規定等ア厚生年金保険の被保険者の資格昭和60年法律第34号による改正前の厚生年金保険法(以下「旧法」という。)9条は、厚生年金保険の適用事業所に使用される者は、厚生年金保険の被保険者とする旨規定している。 また、同法6条1項1号に掲げる事業の事業所又は事務所であって、常時5人以上の従業員を使用するものは、厚生年金保険の適用事業所となるとされている(旧法6条1項)。 そして、同法9条の規定による厚生年金保険の被保険者の資格は、適用事業所に使用されるに至った日又はその使用される事業所若しくは事務所が適用事業所となった日に取得され(旧法13条)、その事業所又は事務所に使用されなくなった日の翌日に被保険者の資格を喪失するものとされている(旧法14条)。 被保険者の資格 所若しくは事務所が適用事業所となった日に取得され(旧法13条)、その事業所又は事務所に使用されなくなった日の翌日に被保険者の資格を喪失するものとされている(旧法14条)。 被保険者の資格の取得及び喪失等は、都道府県知事の確認によってその効力を生ずる(旧法18条1項)。被保険者の資格の取得等の確認は、適用事業所の事業主等の都道府県知事への届出(旧法27条)又は被保険者若しくは被保険者であった者による確認の請求(旧法31条1項)により行われ、この確認の請求は、厚生年金保険の被保険者又は被保険者であった者は、いつでも請求できるとされている(旧法31条1項)。 なお、都道府県知事は、確認の請求にかかる期間において、確認すべき事実がないと認めるときには、その請求を却下しなければならない(旧法31条2項)。 イ届出(旧法27条)による被保険者の資格の取得等の確認(旧法18条1項)及び保険料の納付適用事業所の事業主等は、被保険者の資格の取得等被保険者に関する事項を社会保険事務所に届け出ることとされており(旧法27条)、被保険者の資格の取得等が確認されたときは、その旨事業主に通知される(旧法29条1項)。 他方、社会保険事務所は、資格の取得等の事項を記録した被保険者に関する原簿を備えなければならず(旧法28条)、厚生年金保険等の保険料は、この原簿に基づいて計算され、事業主は、その使用する被保険者及び自己の負担する保険料を納付する義務を負う(旧法28条、82条2項)。 ウなお、本件処分は、当時の厚生年金保険法31条に基づいて都知事が行ったものであるが、同条は、平成12年5月12日法律第59号により改正され、被保険者の確認請求の相手方は社会保険庁長官となり、同年5月31日法律第96号附則49条により、 31条に基づいて都知事が行ったものであるが、同条は、平成12年5月12日法律第59号により改正され、被保険者の確認請求の相手方は社会保険庁長官となり、同年5月31日法律第96号附則49条により、従前の都知事の処分は被告が行ったものとみなされることとなった。 2 争点本件の主要な争点は、(1) 原告の勤務の有無(原告は、昭和45年10月1日から同年11月30日まで、及び、昭和46年8月1日から昭和55年10月31日まで、大栄電機に勤務していたか否か)(2) 本社事務所は適用事業所か(本社事務所は、昭和46年8月1日から昭和55年10月31日まで適用事業所であったか否か)の各点である。 3 当事者の主張本件各争点に関する当事者の主張は次のとおりである。 (1) 争点(1)(原告の勤務の有無)についてア原告の主張(ア) 勤務の事実原告は、本件通算請求期間、大栄電機の本社事業所に勤務し、この期間中、厚生年金保険に加入して、毎月の給与から厚生年金保険料を天引きされていた。 すなわち、大栄電機は、昭和45年10月1日から昭和46年7月31日までの間は、大森社会保険事務所に対して、同年8月1日から昭和55年10月31日までの間は、直方社会保険事務所に対して、それぞれ、原告が厚生年金保険の被保険者であることの届出を行い、原告の給与から天引きした厚生年金保険料及びこれと同額の会社負担分とを併せて納付していたものである。 (イ) 厚生年金保険料の給与天引き本件処分は、社会保険事務所の管理する被保険者名簿に原告の氏名の記載がないことからなされたものであるが、原告は大栄電機に勤務して給与から社会保険料を控除されていたのであり、名簿への原告の氏名の不記載は、大栄 は、社会保険事務所の管理する被保険者名簿に原告の氏名の記載がないことからなされたものであるが、原告は大栄電機に勤務して給与から社会保険料を控除されていたのであり、名簿への原告の氏名の不記載は、大栄電機又は社会保険事務所の故意又は過失に基づくものであるところ、かかる不利益を原告に帰することは許されないものというべきである。すなわち、原告は社会保険料を控除されており、これが社会保険事務所に納付されていないことを疑うことはできず、特に、大栄電機は当時700人以上の従業員を擁する大企業であり、業績も非常に良かったのであるから、社員が社会保険料を天引きされていながら厚生年金保険に加入していないなどと考える余地は全くなく、この意味で、原告には過失はなかった。他方で、国は、源泉徴収制度を定め厚生年金保険への加入手続、脱退手続、保険料納付の義務を適用事業所の使用者に負わせて国の便宜を図っているが、被保険者である従業員個人には加入手続・脱退手続等を行う権限すら与えておらず、国がその事務処理を委託した適用事業所の使用者のみがこれを行うこととされており、この制度の下では、国ではなく適用事業所に故意又は過失があった場合でも、国が適用事業所の故意又は過失について責任を負うべきである。 また、所得税徴収と同様に、厚生年金保険料についても、給与からの天引きの時点で原告の厚生年金保険料の納付義務は既に履行されたものというべきである。よって、国は既に厚生年金保険料を徴収しているのであるから、原告が被保険者であったことを否定することは許されない。 イ被告の主張(ア) 勤務事実の不存在旧法は、厚生年金保険の適用事業所に使用される者について、厚生年金保険の被保険者の資格を認めるものであるところ、昭和45年10月1日から同年11月3 張(ア) 勤務事実の不存在旧法は、厚生年金保険の適用事業所に使用される者について、厚生年金保険の被保険者の資格を認めるものであるところ、昭和45年10月1日から同年11月30日までの期間(以下「本件期間1」という。)及び昭和46年8月1日から昭和55年10月31日までの期間(以下「本件期間2」といい、本件期間1と併せて「本件請求期間」という。)において、原告が大栄電機に使用されていたことを認め得る証拠はなく、したがって、原告には厚生年金保険の被保険者の資格は認められないものというべきである。また、大栄電機が原告について被保険者資格取得等の届出を提出していなかった場合には、被告において、原告の被保険者資格を確認しえるものでもない。 すなわち、本社事務所においては昭和45年11月27日及び昭和46年9月14日に調査(以下、前者の調査を「第1回調査」、後者の調査を「第2回調査」といい、両者併せて「本件各調査」という。)が行われている。調査においては、被保険者名簿、労働者名簿、出勤簿若しくはタイムカード、賃金台帳、源泉徴収簿、就業規則等を調査資料とし、取得の届出漏れはないか、取得年月日が雇入れ年月日と相違していないか、偽装取得又は逆選択取得はないか、被保険者氏名及び生年月日に誤りはないかなどを確認している。そして、大栄電機からは、第1回調査の結果、昭和45年11月30日に5名の資格取得届と5名の資格喪失届が提出されて原簿に記載されており、また、第2回調査の結果、昭和46年9月16日に4名の資格喪失届が提出されて資格喪失日である同年8月1日をもって本社事務所は適用事業所ではなくなっている。このことは、本件各調査において、適正に被保険者資格取得及び喪失の届出を提出するよう指導がなされていることを意味 出されて資格喪失日である同年8月1日をもって本社事務所は適用事業所ではなくなっている。このことは、本件各調査において、適正に被保険者資格取得及び喪失の届出を提出するよう指導がなされていることを意味する。しかし、原告は原簿には記載されてはいないのである。 また、大栄電機の代表取締役B(以下「B」という。)は大森社会保険事務所において厚生年金保険の適用を受けていた従業員29名を、後に直方社会保険事務所に移管したと述べるが、実際に移管されているのはBのみであることなどからして、Bの供述を信用することはできない。 さらに、資格取得届に記載のある被保険者ごとに健康保険被保険者証が作成され、事業主を介して被保険者に交付されるはずであるところ、原告は健康保険被保険者証を受け取っていないのであるから、このこと自体が、届出による確認が行われていなかったことの証左となるものである。当時37歳から47歳であったとする原告が、10年間もの期間において、健康への懸念がなく、健康保険被保険者証を手元に置こうともしないというのは到底信じ難いところである。原告は大栄電機以前に勤務していた適用事業所の事業主であった者であり、被保険者等の資格取得の確認の有無について健康保険被保険者証等の交付等の有無を通じて把握することができることを理解していたものなのである。 また、厚生年金保険の保険料は、原簿に基づいて計算され、原簿の記載に従って算定された保険料額による保険料納付告知を行い、事業主において納付する義務を負うものであるところ、事業主においては、保険料の納付の際に、いずれの者の保険料を納付しているかについて確認を行うことが通常であって、本件においては大栄電機からは何らの疑義の申出もなかったのであり、長期間にわたり、原簿に原告の記載がないこ 険料の納付の際に、いずれの者の保険料を納付しているかについて確認を行うことが通常であって、本件においては大栄電機からは何らの疑義の申出もなかったのであり、長期間にわたり、原簿に原告の記載がないことに気付かないなどということは通常考え難い。 この他、毎年、標準報酬の定時決定の際に賃金台帳等の確認が行われ、知事が原簿の記載に誤りがないかを確認している。すなわち、標準報酬の定時決定は、毎年8月1日前3か月間の報酬月額を基礎として行われるものであり、被保険者の報酬月額は、適用事業所の事業主が知事に報酬額として届出を行い、原簿に記載されたところに従い算定されるものであるところ、知事は適正な標準報酬月額の決定及び円滑な事務処理を図るため、標準報酬の決定に際し、全適用事業所に対し、社会保険事務所に来所の上、賃金台帳及び源泉所得税領収証書等の提示を求め、原簿の記載に誤りがないかの確認を行っている。原告について賃金台帳に記載がされていたのであれば、調査の結果、原簿にも記載されていたはずである。 (イ) 厚生年金保険料の給与天引き本件では、原告の勤務の事実と本社事務所が適用事業所に当たるかが争われているのであり、原告や国の過失の有無等は本来的に無関係である。 なお、旧法は、被保険者が不利益を被ることがないよう、自ら確認の請求ができるものとして事業主の未届等から被保険者を救済することを予定している上に、被保険者資格取得等の届出及び保険料納付等を事業者が行うという制度は被保険者の便宜にも資する制度であるから、国の過失云々をいって原簿に記載のない原告を被保険者としようとする原告の主張は失当である。 また、給与天引きだけでは国に対する納付がなされたとみることはできない(所得税に関しても、天引きのみで納税者が納税 て原簿に記載のない原告を被保険者としようとする原告の主張は失当である。 また、給与天引きだけでは国に対する納付がなされたとみることはできない(所得税に関しても、天引きのみで納税者が納税義務を免れることにはなっていない。)から、仮に天引きがあったとしても、原告が被保険者とならない以上は、この点に関する原告の主張も失当である。 なお、厚生年金保険の保険料の徴収は、原簿に基づいて行われ、本件請求期間において原告について保険料は徴収されていないと認められるところ、厚生年金保険の保険料を徴収する権利は、2年を経過すると時効により消滅するとされており(旧法92条1項)、保険料を徴収する権利が時効によって消滅したときは、当該保険料にかかる被保険者であった期間に基づく保険給付は行わないとされている(旧法75条1項)。したがって、本件請求期間において、厚生年金保険の被保険者の資格が確認されたとしても、保険給付(新厚生年金保険法32条)を計算する際の基礎とはならないのであって、本件請求を行う実際上の意義は認められないことを付言する。 (2) 争点(2)(本社事務所は適用事業所か)についてア原告の主張本社事務所には常時5名以上の従業員がおり、同事務所は厚生年金保険の適用事業所であった。 本社事務所についてなされた第2回調査は誤りであったとしかいいようがない。本社事務所には、当時、少なくとも7名以上の本社社員が在籍しており、給与の現金支給が行われていたから、給与台帳等を調べれば、このことが明らかになっていたはずである。更に、事務所内を見回しただけでも、7名以上の社員が在籍していることは一目瞭然であった。被告の故意又は重過失により本社事務所が適用事業所であることが見逃され、原告の権利が奪われたものであ はずである。更に、事務所内を見回しただけでも、7名以上の社員が在籍していることは一目瞭然であった。被告の故意又は重過失により本社事務所が適用事業所であることが見逃され、原告の権利が奪われたものである。 イ被告の主張本社事務所については、昭和44年3月1日、被保険者の資格の取得等の届出が提出されたが、昭和46年8月1日、被保険者が全員資格を喪失したとの届出が提出され、同日以降、被保険者の資格の取得等の届出はなされていない。そして、適用事業所と認められるためには、常時5人以上の従業員を使用するものであることが必要であるから、本社事務所は、昭和46年8月1日をもって、適用事業所ではなくなったものであり、また、同日以降、適用事業所であることを認め得る事実も認められない。したがって、本件期間2については、本社事務所が適用事業所と認められないため、原告の厚生年金保険の被保険者の資格の取得は認められない。 仮に、事務所内に勤務している者が相当数いたとしても、旧法12条(臨時使用者等の除外)の規定に照らすと、その者が厚生年金保険の被保険者であるとは限らず、被保険者資格の有無は、労働者名簿、出勤簿、賃金台帳等により確認されるものである。 なお、大栄電機には九州工場があり、九州工場は、昭和45年12月25日から昭和62年4月2日までの間、適用事業所であったと認められるが、原告の主張からしても、原告は九州工場において使用されていたものではない以上、この点は、本件請求において考慮されるべきものではない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(原告の勤務の有無)について(1) 原告は、本件請求期間、大栄電機に勤務していた旨主張し、被告は、厚生年金保険の被保険者の原簿は企業の労働者名簿その他の帳簿等を調査した結果 断 1 争点(1)(原告の勤務の有無)について(1) 原告は、本件請求期間、大栄電機に勤務していた旨主張し、被告は、厚生年金保険の被保険者の原簿は企業の労働者名簿その他の帳簿等を調査した結果に従って適正に作成されているところ、この原簿に原告の氏名が記載されていないことからして、原告にはこの期間の勤務の事実はなかった旨主張しているので、まず、この点について判断する。 (2) 確かに、本社事務所においては昭和45年11月27日に第1回調査が、昭和46年9月14日に第2回調査がそれぞれ行われ、大栄電機からは、第1回調査の結果、昭和45年11月30日に5名の資格取得届と5名の資格喪失届が提出されて原簿に記載されており、また、第2回調査の結果、昭和46年9月16日に4名の資格喪失届が提出されて資格喪失日である同年8月1日をもって本社事務所は適用事業所ではなくなった旨の届出がなされている(乙9)ところ、調査においては、一般に、被保険者名簿、労働者名簿、出勤簿若しくはタイムカード、賃金台帳、源泉徴収簿、就業規則等を調査資料とし、取得の届出漏れはないか、取得年月日が雇入れ年月日と相違していないか、偽装取得又は逆選択取得はないか、被保険者氏名及び生年月日に誤りはないかなどが確認される(乙12)ことから、社会保険事務所の原簿に原告の氏名の記載がないということは、当該調査時点において、原告が大栄電機の本社事務所の労働者名簿等に記載がなかったことを推認させる事情である。 (3) しかしながら、本件においては、証拠(甲2ないし6、10、11、13、乙4、6、9、12、13、原告本人)によれば、原告は、昭和53年度に大栄電機から999万5000円の給与の支給を受けていること(なお、昭和54年分の給与所得の源泉徴収票である甲14号証は、写しである上、 6、9、12、13、原告本人)によれば、原告は、昭和53年度に大栄電機から999万5000円の給与の支給を受けていること(なお、昭和54年分の給与所得の源泉徴収票である甲14号証は、写しである上、その記載の体裁が昭和53年分の給与所得の源泉徴収票である甲13号証と極めて酷似するものであることからして、偽造の疑いが強く、これをもって、原告が昭和54年度に大栄電機から給与の支給を受けていたことを認定することはできないものといわざるを得ない。)、大栄電機の代表取締役であったBも、正確な期間は不明なるも昭和45年ころから10年前後、原告が大栄電機に勤務していた旨の陳述書を提出していること、原告は、大栄電機の営業部長名義の名刺を所持しており、その名刺上の勤務地の住所は、登記簿上昭和50年10月14日に登記された大栄電機の支店である東京都品川区op丁目g番r号となっていること、原告は大栄電機に勤務していた社員等として、B、Bの妻のC、D、Eという女性、F、G、Hという男性、Iという男性、Jという者、Kという者、Lという者を記憶していること、このうち、Bは大栄電機の代表取締役であり、かつ、昭和44年3月1日から昭和46年8月1日まで本社事務所で、昭和46年9月27日から昭和62年4月1日まで九州工場で、厚生年金保険の被保険者として登録されており、G2(原告のいうGと同一人物であると考えられる。)は昭和44年3月1日から同年10月31日まで本社事務所で、昭和47年3月11日から同年9月9日まで及び昭和52年10月21日から昭和55年11月11日まで九州工場で、厚生年金保険の被保険者として登録されており、E2(原告のいうEという女性と同一人物であると考えられる。)は昭和45年2月10日から昭和46年8月1日まで本社事務所で、厚生年金保険の被保険者と 場で、厚生年金保険の被保険者として登録されており、E2(原告のいうEという女性と同一人物であると考えられる。)は昭和45年2月10日から昭和46年8月1日まで本社事務所で、厚生年金保険の被保険者として登録されており、Fは、昭和45年5月21日から昭和46年8月1日まで本社事務所で、厚生年金保険の被保険者として登録されており、Dは、昭和50年9月1日から昭和51年3月2日まで九州工場で、厚生年金保険の被保険者として登録されており、J2(原告のいうJという者と同一人物であると考えられる。)は昭和48年1月5日から昭和50年11月11日まで九州工場で、厚生年金保険の被保険者として登録されており、K2(原告のいうKという者と同一人物であると考えられる。)は昭和47年2月25日から昭和50年8月31日まで九州工場で、厚生年金保険の被保険者として登録されていたこと、Bは、同人名義の報告書(甲4)において、本社事務所に勤務していた10人前後の従業員について、九州工場と格別に手続をすることは煩雑であるため、昭和46年ころのある時点から、便宜、九州工場に厚生年金保険の被保険者としての登録をするようになったと記載していること、Bは、第2回調査の結果、本社事務所における従業員4名の厚生年金保険の被保険者の資格喪失を届け出た後、自身については、昭和46年9月27日に九州工場において厚生年金保険の被保険者としての登録をしていること、本社事務所は、昭和47年2月8日に東京都大田区hi丁目j番k号から当時の本店所在地の東京都大田区de丁目f番地g号に移転し、さらに、昭和50年以降ころに東京都品川区op-q-rに移転しているが、原告は、これら本社事務所の形状やそこでの仕事の内容などについても一応了知していることがそれぞれ認められる。 (4) 以上の事実 に、昭和50年以降ころに東京都品川区op-q-rに移転しているが、原告は、これら本社事務所の形状やそこでの仕事の内容などについても一応了知していることがそれぞれ認められる。 (4) 以上の事実によれば、原告は、本件各調査時点においては大栄電機の本社事務所の労働者名簿等には記載がなく、したがって、社会保険事務所の厚生年金保険の被保険者の原簿には記載されることがなかったものの、原告は、一貫して大栄電機に勤務していた旨を主張ないし供述している上に、本件期間2の当初の昭和46年8月1日ころに大栄電機に勤務していた者を何名か記憶しているところ、原告が大栄電機に勤務していなかったにもかかわらず、これらの者の氏名を知っていた特段の事情は認められないこと、大栄電機営業部長としての原告の名刺が存在し、また、昭和53年には大栄電機から給与の支給を受けていたことなどは、原告の主張ないし供述の裏付けとなり得るものであり、これらに照らしてみると、原告は、少なくとも本件期間2においては本社事務所に勤務していたものと認めることができる。この点については、審査会の本件裁決が本件認定期間及び本件期間2のうち少なくとも昭和54年までについては原告が大栄電機に勤務していたことを認定しているところとも符合するものである。そして、かかる事態に陥った原因としては、第2回調査の後は本社事務所はBにより従業員全員の被保険者資格喪失の届出がなされたために以後の調査や標準報酬の定時決定の際の賃金台帳等の確認などが適用事業所である九州工場のみで行われ、他方で、原告は、本社事務所に勤務していたものの、九州工場で新たに資格登録することをBが失念するなどしたために、社会保険事務所としても原告を把握することができなくなった可能性(但し、この場合には、第2回調査以前の段階、すなわち、本件裁 ものの、九州工場で新たに資格登録することをBが失念するなどしたために、社会保険事務所としても原告を把握することができなくなった可能性(但し、この場合には、第2回調査以前の段階、すなわち、本件裁決が認定した原告の勤務日であり、本訴においても当事者間に争いのない昭和46年7月31日までの本件認定期間についても、原告が本社事務所に勤務してはいなかった疑いが生じることとならざるを得ないことは確かである。)や、大栄電機側の何らかの過誤により原告の氏名が労働者名簿等から落ちていたなどの可能性などが考えられ、これらの可能性を排除するに足りる証拠はない。そうすると、原告の氏名が原簿に記載されなくとも社会保険事務所側に何らの過失はなくやむを得なかったといった事態も想定できるから、本件各調査や標準報酬の定時決定の際に賃金台帳等の確認が行われていたはずであるから、原告の勤務の事実が認められないとする被告の主張には理由がないものといわざるを得ない。なお、本件においては、直接に原告の勤務の事実が認定されれば足りるものであり、資格の認定のためには原簿への記載の有無を問う必要はないものである。 (5) この点、被告は、甲13号証(源泉徴収票)記載の社会保険料の金額は給与の額を考慮すると通常ではあり得ない過誤を含んだ数字であって、これも偽造の疑いがあり信用できない旨主張するが、給与の額と賞与の額とを考慮すると、必ずしも誤った数字であるとは言い切れないものといわざるを得ない。また、前記のように甲14号証(源泉徴収票の写し)が偽造の疑いが強く、さらに、これらの書証の入手経路について原告が大栄電機から直接原告が交付を受けたと供述していること(原告本人)からすると、甲13号証(源泉徴収票)自体の信憑性にもやや疑念がないわけではないが、その体裁には何ら疑わしい 経路について原告が大栄電機から直接原告が交付を受けたと供述していること(原告本人)からすると、甲13号証(源泉徴収票)自体の信憑性にもやや疑念がないわけではないが、その体裁には何ら疑わしい点がなく、記載内容についても特段不合理な点がない以上は、こちらについては偽造その他の理由により信用性に疑問を差し挟むことはできないものといわざるを得ない。なお、昭和53年の源泉徴収票上の大栄電機の住所地は東京都大田区de丁目f番地g号のままであるが、これは、前記のとおり本社事務所が東京都品川区に移転した後も、登記簿上の本店所在地はdのままであったことから、かかる住所地が記載されているものと解される。 また、被告は、原告が健康保険被保険者証の交付を受けていないにもかかわらず、10年もの期間にわたってこれに疑義を差し挟むことなく生活していたのは不自然である旨主張するところ、確かにこのような長期間、健康保険被保険者証がないことを原告が何ら疑わなかったというのには不自然な点があるといえなくもないが、健康であったため、必要性を感じなかったとする原告の供述を虚偽と断ずることはできず、また、原告が前記のように当時の同僚の氏名を覚えていることや給与の支給を受けていることに照らすと、かかる不自然な点だけで原告の勤務の事実を否定することは困難であるものといわざるを得ない。 さらに、被告は、原告の勤務場所や勤務内容、同僚に関する情報などは具体性や一貫性に欠ける旨主張するが、前記認定のとおり、原告は一応これらの事実について了知していたものと認められるのであり、時間の経過とともに詳細な記憶が薄れ、具体的な供述ができなかったとしても無理からぬところというほかはない。 (6) 他方で、本件期間1については、前記認定事実によっても、原告が本社事務所に勤 間の経過とともに詳細な記憶が薄れ、具体的な供述ができなかったとしても無理からぬところというほかはない。 (6) 他方で、本件期間1については、前記認定事実によっても、原告が本社事務所に勤務していたことを認めるに足らない(原告本人の供述も、大栄電機への入社時期を明確にするに足りるものではない。)。 この点、原告は、給与から社会保険料が天引きされていたことを考慮すれば、被告は、原告の勤務の事実を否認することは許されない旨主張するが、かかる主張の論理的な当否は別にしても、そもそも、給与からの天引きの事実自体が認められない以上は、前提自体を欠き失当であるといわざるを得ない。 (7) 以上の次第で、原告は、本件期間2に限り、大栄電機の本社事務所に勤務していたことが認められる。 2 争点(2)(本社事務所は適用事業所か)について(1) 原告は、本社事務所は、昭和46年8月1日から昭和55年10月31日まで、常時5人以上の従業員がおり、適用事業所であった旨主張し、被告は、第2回調査の結果、大栄電機からは、昭和46年8月1日をもって本社事務所において厚生年金保険の被保険者がいなくなった旨の届出を受けているから、本社事務所は本件期間2において適用事業所ではなくなった旨主張するので、以下、検討する。 (2) 原告は、本件期間2の当初の昭和46年8月1日ころの段階での本社事務所の従業員数は13人ないし14人程度であり、大栄電機はこの後拡大の一途をたどり、従業員の数は増える一方であった旨供述し(甲11、原告本人)、Bも10人前後の従業員がいた旨の陳述書を提出する(甲4)。 そして、証拠(甲7、8)によれば、大栄電機の本社事務所には、昭和50年の段階で27人が勤務しており、他方で、九州工場には数百人が勤務していたことが認 員がいた旨の陳述書を提出する(甲4)。 そして、証拠(甲7、8)によれば、大栄電機の本社事務所には、昭和50年の段階で27人が勤務しており、他方で、九州工場には数百人が勤務していたことが認められる。 そうすると、大栄電機の会社の規模や拡大経緯等に照らすと、原告やBの供述もあながち不合理とはいえず、本件期間2において本社事務所に常時5人以上の従業員がいたものと推認するのが相当である。 なお、本社事務所の従業員の大半は、Bによって当初から便宜的に九州工場で被保険者資格の登録を受けていた可能性が高い(前記のとおり、第2回調査の結果、直ちに九州工場で登録したのはB本人のみであるが、証拠(乙13)によれば、本社事務所と九州工場の双方で資格登録がされた従業員がいることが認められ、これとBの陳述書(甲4)を照らし合わせると、少なくとも、本社事務所では資格登録しなかった本社事務所の従業員について、当初から九州工場で資格登録をしていた事実を推認することができる。)が、本社事務所に5人以上の従業員がいれば、そのうち何人かを便宜的な取扱いとして同一会社の他の適用事業所で被保険者の資格登録をしたとしても、本社事務所の適用事業所たる性質は失われることがないというべきである。なぜなら、旧法が適用事務所を常時5人以上の従業員がいる事業所又は事務所に限定した趣旨は、あまりに少ない従業員しかいない事業所又は事務所についてまで厚生年金保険の手続を履践しなければならないとすると、事業主にとって煩雑にすぎるからであると解され、他方で、各別の事業所又は事務所に5人以上の従業員がいるのであれば、一方の事業所又は事務所の従業員の一部を他の事業所又は事務所に便宜的に移籍させたとしても、それはあくまで手続上の便宜的な取扱いにすぎず、当該従業員が当該事業所 所に5人以上の従業員がいるのであれば、一方の事業所又は事務所の従業員の一部を他の事業所又は事務所に便宜的に移籍させたとしても、それはあくまで手続上の便宜的な取扱いにすぎず、当該従業員が当該事業所又は事務所で勤務する実態までも失わしめるものではない上に、残る従業員については本来資格取得が認められていたにもかかわらず、事業主の便宜的な取扱いのために資格を取得できないとするいわれはなく、また、かように解しても、事業主は本来両事業所又は事務所の全従業員について資格登録をすべきであった以上、その負担が不当に加重されるようなことにもならないからである。 (3) 以上によれば、本件期間2において、本社事務所は適用事業所であったものと認められる。 第4 結論以上の次第で、その余の点について判断するまでもなく、原告の本訴請求は判示の限度で理由があるからこれを認容し、その余は失当であるから棄却することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、64条を適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部裁判長裁判官鶴岡稔彦裁判官加藤晴子裁判官菊池章は、転官のため署名押印することができない。 裁判長裁判官鶴岡稔彦・
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