主文 1 原告らの訴えのうち,南福祉事務所長が原告3-1に対して平成25年7月23日付けでした生活保護法25条2項に基づく変更決定の取消しを求める部分及び伏見福祉事務所長が原告2-1に対して平成27年3月9日付でした同項に基づく変更決定の取消しを求める部分をいずれも却下する。 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 第1事件 別紙処分一覧表1-1の「処分庁」欄記載の各処分行政庁が「処分の名宛人」欄記載の原告らに対して「処分日1」欄記載の各年月日でした生活保護法25条2項に基づく各変更決定を取り消す。 別紙処分一覧表1-2の「処分庁」欄記載の各処分行政庁が,「処分の名宛人」欄記載の原告らに対して「処分日2」欄記載の各年月日でした生活保護 法25条2項に基づく各変更決定を取り消す。 被告国は,第1事件原告らに対し,それぞれ1万円及びこれに対する平成25年5月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 第2事件別紙処分一覧表2の「処分庁」欄記載の各処分行政庁が「処分の名宛人」 欄記載の原告らに対して「処分日」欄記載の各年月日でした生活保護法25条2項に基づく各変更決定を取り消す。 被告国は,第2事件原告らに対し,それぞれ1万円及びこれに対する平成25年5月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 第3事件 南福祉事務所長が原告3-1に対して平成25年7月23日付けでした 生活保護法25条2項に基づく変更決定を取り消す。 南福祉事務所長が原告3-1に対 支払え。 3 第3事件 南福祉事務所長が原告3-1に対して平成25年7月23日付けでした 生活保護法25条2項に基づく変更決定を取り消す。 南福祉事務所長が原告3-1に対して平成26年3月24日付けでした生活保護法25条2項に基づく変更決定を取り消す。 被告国は,原告3-1に対し,1万円及びこれに対する平成25年5月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 第4事件別紙処分一覧表4「処分庁」欄記載の各処分行政庁が「処分の名宛人」欄記載の原告らに対して「処分日」欄記載の各年月日でした生活保護法25条2項に基づく各変更決定を取り消す。 5 第5事件 山科福祉事務所長が原告5-1に対して平成26年3月25日付けでした生活保護法25条2項に基づく変更決定を取り消す。 被告国は,原告5-1に対し,1万円及びこれに対する平成25年5月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,厚生労働大臣が,平成25年5月16日付けで平成25年厚生労働省告示第174号(以下「平成25年告示」という。)を,平成26年3月31日付けで平成26年厚生労働省告示第136号(以下「平成26年告示」という。)を,平成27年3月31日付けで平成27年厚生労働省告示第227号 (以下「平成27年告示」といい,平成25年告示及び平成26年告示と併せて「本件各告示」という。)をそれぞれ発出して,生活保護法による保護の基準(昭和38年4月1日号外厚生省告示第158号。以下「保護基準」という。)における生活扶助の基準(以下「生活扶助基準」という。)を改定し,これに基づき,各処分行政庁が対応する各原告(別紙処分一覧表参照 昭和38年4月1日号外厚生省告示第158号。以下「保護基準」という。)における生活扶助の基準(以下「生活扶助基準」という。)を改定し,これに基づき,各処分行政庁が対応する各原告(別紙処分一覧表参照)を名宛人として 生活保護法25条2項に基づき支給する生活保護費の変更決定処分(以下「本 件各処分」という。)を行ったことについて,原告らが,⑴ 被告京都市に対し,本件各処分は,生活扶助を健康で文化的な最低限度の生活を維持するに足りない水準とするものであり生活保護法3条に違反するなどと主張して,対応する処分行政庁が行った本件各処分の取消しを求めるとともに,⑵ 被告国に対し,平成25年告示による生活保護基準の改定が,原告らの健康で文化的な最低限 度の生活を営む権利を侵害し,国家賠償法上違法であると主張して,それぞれ1万円の損害賠償及びこれに対する平成25年告示の発出日以降民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 関係法令の定め等 ⑴ 生活保護法ア生活保護法は,1条において,同法は,憲法25条に規定する理念に基づき,国が生活に困窮する全ての国民に対し,その困窮の程度に応じ,必要な保護を行い,その最低限度の生活を保障するとともに,その自立を助長することを目的とする旨規定し,3条において,同法により保障される 最低限度の生活は,健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない旨規定する。 イ生活保護法は,8条1項において,保護は,厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者(生活保護法による保護を必要とする者をいう。 以下同じ。)の需要を基とし,そのうち,その者の金銭又は物品で満たすこ とのできない おいて,保護は,厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者(生活保護法による保護を必要とする者をいう。 以下同じ。)の需要を基とし,そのうち,その者の金銭又は物品で満たすこ とのできない不足分を補う程度において行うものとする旨規定し,同条2項において,前項の基準は,要保護者の年齢別,性別,世帯構成別,所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであって,かつ,これを超えないものでなければならない旨規定する。 ウ生活保護法は,11条において,保護の種類の1つとして生活扶助を定 め,12条において,生活扶助は,困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して,衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの(1号)及び移送(2号)の範囲内において行われる旨規定する。 エ生活保護法(平成25年号外法律第104号による改正前のもの。以下,同法24条及び25条につき同じ。)は,25条2項において,保護の実施 機関は,保護の変更を必要とすると認めるときは,速やかに,職権をもってその決定を行い,書面をもって,これを被保護者(現に生活保護法による保護を受けている者をいう。以下同じ。)に通知しなければならず,同法24条2項を準用して,その通知書には理由を付さなければならない旨規定する。 オ生活保護法は,56条において,被保護者は,正当な理由がなければ,既に決定された保護を不利益に変更されることがない旨規定する。 ⑵ 生活扶助基準ア生活扶助基準(別表第1)は,日常生活に必要な基本的かつ経常的な費用についての最低生活費を定めたものであり,基準生活費(第1章)と加 算(第2章)とに大別されている。居宅で生活する者の基準生活費は,食費,被服 第1)は,日常生活に必要な基本的かつ経常的な費用についての最低生活費を定めたものであり,基準生活費(第1章)と加 算(第2章)とに大別されている。居宅で生活する者の基準生活費は,食費,被服費等の個人単位の経費に対応する第1類の額(以下「第1類費」という。)と光熱水費,家具什器類費等の世帯単位の経費に対応する第2類の額(以下「第2類費」という。)に分けられている。基準生活費は,原則として世帯ごとに,当該世帯を構成する個人ごとの第1類費を合算したも のと第2類費とを合計して算出される。 イ第1類費は年齢別に,第2類費は世帯人員別に定められているところ,第1類費及び第2類費を設定するに当たっては,標準世帯(現在は,夫婦子1人の3人世帯)の最低限度の生活に要する費用を具体的金額として設定し,これを一般世帯の消費実態を参考にして第1類費と第2類費に分け た上,第1類費については栄養所要量を参考とした指数を,第2類費につ いては消費支出を参考とした指数をそれぞれ設定し,これらの指数を標準世帯の第1類費及び第2類費に適用して,第1類費の年齢階級別の額及び第2類費の世帯人員別の額を設定している。また,保護基準は,生活様式や物価の違い等を考慮して全国の市町村を1級地-1から3級地-2までの6つの級地に区分した上(別表第9),第1類費及び第2類費に地域差を 設けているが,級地による地域差についても,1級地-1における額を定めた上で,1級地-1を1として一定の比率(指数)により他の級地の額を定めている(以下,生活扶助基準において標準世帯の第1類費及び第2類費を基準として指数により他の年齢階級別及び世帯人員別の額を定める部分及び1級地-1の基準額を基準として指数により他の級地の基準額を 定める部分を「展開部分」とい 標準世帯の第1類費及び第2類費を基準として指数により他の年齢階級別及び世帯人員別の額を定める部分及び1級地-1の基準額を基準として指数により他の級地の基準額を 定める部分を「展開部分」という。)。 なお,京都市(原告らの居住地)は1級地-1に属する。(別表第9。乙1の1) 3 前提事実(当事者間に争いがない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実等) 当事者等ア原告らは,法に基づく生活保護の支給を受けている者であり,本件各処分を受けた当時,いずれも京都市内に居住していた。 イ被告京都市及びその管理に属する福祉事務所である各処分行政庁は,生活保護の実施機関(生活保護法19条)である。 ⑵ 本件各処分に至る経緯ア厚生省(当時)の審議会である中央社会福祉審議会は,昭和58年12月,「生活扶助基準及び加算のあり方について(意見具申)」(以下「昭和58年意見具申」という。)を発表し,当時の生活扶助基準について,一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達しているとの所見を示 すと共に,生活保護において保障すべき最低生活の水準は,一般国民生活 における消費水準との比較における相対的なものとして設定すべきとの所見を示した。 昭和58年意見具申を踏まえ,昭和59年度以降,生活扶助基準の改定方式については,一般国民生活における消費水準との比較において相対的なものとして設定するとの観点から,毎年度の政府経済見通しの民間最終 消費支出(以下,単に「民間最終消費支出」という。)の伸びを基礎として国民の消費水準と均衡した水準の維持・調整を図るという水準均衡方式が導入された。(乙8の2,乙9)イ厚生労働省の審議会である社会保障審議会(厚生労働省設置法7条1項 いう。)の伸びを基礎として国民の消費水準と均衡した水準の維持・調整を図るという水準均衡方式が導入された。(乙8の2,乙9)イ厚生労働省の審議会である社会保障審議会(厚生労働省設置法7条1項に定める厚生労働大臣の諮問機関)は,平成15年7月,その福祉部会内 に,生活保護制度の在り方に関する専門委員会(以下「在り方専門委員会」という。)を設置した(乙13の1)。 在り方専門委員会は,平成16年12月に取りまとめた報告書(以下「平成16年報告書」という。)において,①水準均衡方式を前提とする手法により,勤労3人世帯の生活扶助基準について,低所得世帯の消費支出額 との比較において検証・評価した結果,その水準は基本的に妥当であったが,今後,生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため,全国消費実態調査等を基に5年に一度の頻度で検証を行う必要がある,②現行の生活扶助基準の設定は3人世帯を基軸としており,世帯人員別にみると必ずしも一般低所得世帯 の消費実態を反映したものとなっていないため,多人数世帯における基準の是正,単身世帯における別途の基準の設定,第1類費の年齢別設定の見直しなどを検討する必要がある,との見解を示した(乙5)。 平成16年報告書を踏まえて,平成17年度以降,生活扶助基準について,多人数世帯基準の是正として,①第1類費について,4人世帯の場合 に0.95,5人以上世帯の場合に0.90の逓減率を導入し(3年間で 段階的に実施),②第2類費について,4人以上世帯の基準額を抑制する見直しが行われた(乙8の3)。 ウ平成16年報告書において,生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため,5年 ,4人以上世帯の基準額を抑制する見直しが行われた(乙8の3)。 ウ平成16年報告書において,生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため,5年に1度の頻度で検証を行う必要があるとされたこと等を踏まえ,生活扶助基準 の見直しについて専門的な分析・検討を行うため,平成19年,厚生労働省社会・援護局長の下に,学識経験者等による「生活扶助基準に関する検討会」(以下「生活扶助基準検討会」という。)が置かれた。 生活扶助基準検討会の主な検討項目は,直近である平成16年の全国消費実態調査に基づき,生活扶助基準の全体水準及び級地別基準等について 評価・検証を行うこととされた。(乙15の1)生活扶助基準検討会は,平成19年10月19日から同年11月30日までの間,5回にわたる検討を経て,報告書(以下「平成19年報告書」という。)を取りまとめた。平成19年報告書においては,生活扶助基準の水準について,年間収入階級第1・十分位(調査対象者を収入の低い方 から順番に並べ,世帯数が等しくなるよう10等分した場合における,収入の1番低い層。以下,「第○・五分位」,「第○・十分位」等の表記について,同様である。)における生活扶助相当支出額の水準に比べ,夫婦子1人世帯における生活扶助基準額が「やや高め」,単身世帯における生活扶助基準額が「高め」との評価がされていた。(乙6) エ厚生労働大臣は,平成19年報告書の内容を踏まえつつ,原油価格の高騰が消費に与える影響等を見極めるとして,生活扶助基準について,平成20年度は据え置くこととした。また,平成20年2月以降の生活関連物資を中心とした物価上昇が国民の家計へ大きな影響を与えており,また,「100年に1度」といわれる同年9月以降の世界 準について,平成20年度は据え置くこととした。また,平成20年2月以降の生活関連物資を中心とした物価上昇が国民の家計へ大きな影響を与えており,また,「100年に1度」といわれる同年9月以降の世界的な金融危機が実体経 済に深刻な影響を及ぼしており,国民の将来不安が高まっている状況にあ ると考えられるなどとして,平成21年度も据え置くこととした。さらに,完全失業率が高水準で推移するなど,厳しい経済・雇用状況を踏まえ,国民生活の安心が確保されるべき状況にあることに鑑みるとして,平成22年度から平成24年度においても据え置くこととした。(乙16,81~83) オ平成23年2月,厚生労働省の審議会である社会保障審議会の下に生活保護基準部会が設置され,生活保護基準部会において生活扶助基準に関する検証及び評価が行われた。 生活保護基準部会は,平成25年1月18日,この検証及び評価の結果を取りまとめて社会保障審議会生活保護基準部会報告書(以下「平成25 年報告書」という。)として公表し,平成25年報告書において,生活扶助基準の展開部分が一般低所得世帯の消費実態とかい離している旨を指摘した(以下,平成25年報告書に係る検証及び評価を行った生活保護基準部会を,単に「基準部会」という。)。 厚生労働大臣は,基準部会の検証結果を受けて,一般低所得世帯の消費 実態を生活扶助基準の展開部分に反映させることにより生活扶助基準の展開部分を適正化し生活保護受給世帯間の公平を図るため,生活扶助基準を改定することとした(以下,この改定を「ゆがみ調整」という。)。 (以上につき,甲6,乙7,17,18,20)カまた,厚生労働大臣は,平成20年から平成23年までの物価下落によ り被保護者の可処分所得が実質的に増加していると ゆがみ調整」という。)。 (以上につき,甲6,乙7,17,18,20)カまた,厚生労働大臣は,平成20年から平成23年までの物価下落によ り被保護者の可処分所得が実質的に増加しているとして物価下落率を考慮した生活扶助基準の引下げを行うこととした(以下,この改定を「デフレ調整」という。)。 厚生労働大臣は,デフレ調整における物価下落率を算出するに当たり,総務省が公表している消費者物価指数(以下「総務省CPI」という。)の データを使用した。消費者物価指数は,消費財・サービスの価格における 変化を計測する物価指数であり,一定の数量の消費財・サービスを購入するための費用の変化を指数化することにより算出される。総務省CPIも上記の方法により算出され,具体的には,指数の計算の対象とする品目(以下「指数品目」という。)を選定し,家計調査により家計の消費支出全体に当該品目の支出額が占める割合(以下「支出割合」という。)を算出した上, 指数品目の基準年の価格を100とした場合の比較年の価格を表す指数(以下「品目指数」という。)を,当該品目の支出割合をウエイトとして加重平均(値に重み〔ウエイト〕を付けて行う平均手法)することで算出される。 厚生労働大臣は,デフレ調整における物価下落率を算出するに当たり, 総務省CPIの指数品目から家賃等の生活扶助以外の他の扶助で賄われる品目及び自動車関係費等の生活保護受給世帯において支出することが想定されていない品目を除外したものを指数品目とした(以下,総務省CPIの指数品目からこれらの品目を除外した品目による消費者物価指数を「生活扶助相当CPI」という。)。なお,指数品目については,平成17年と 平成22年にそれぞれ見直しが行われた。 厚生労働大臣は,生活扶助相当CP の品目を除外した品目による消費者物価指数を「生活扶助相当CPI」という。)。なお,指数品目については,平成17年と 平成22年にそれぞれ見直しが行われた。 厚生労働大臣は,生活扶助相当CPIにより,平成20年から平成23年までの期間における物価下落率を算出することとし,その際,平成20年における指数品目(485品目)と平成23年における指数品目(平成22年に新規採用された指数品目のうち32品目を加えた517品目)そ れぞれについて,平成22年の価格を基準に同年の指数を100とした上で品目指数を求め,それらを平成22年の家計調査による支出割合をウエイトとして加重平均する方法によって,平成20年の生活扶助相当CPI及び平成23年の生活扶助相当CPIを算出した(以下,消費者物価指数の計算において,ウエイトとして使用される数量や支出割合の時点を「ウ エイト参照時点」という。)。 その結果,平成20年の生活扶助相当CPIは104.5,平成23年の生活扶助相当CPIは99.5となり,平成20年から平成23年までの下落率は4.78%(99.5÷104.5-1≒-4.78%)となった。 (以上につき乙29~32,弁論の全趣旨)キ以上の経緯を踏まえて,厚生労働大臣は,生活扶助基準の展開部分と一 般低所得世帯の消費実態とのかい離を解消するとともに(ゆがみ調整),平成20年から平成23年までの物価下落率を考慮した4.78%の生活扶助基準の引下げ(デフレ調整)を行うこととしたが,これらの生活扶助基準の改定においては,生活保護受給世帯に対する激変緩和措置として,①改定を平成25年度から3年間かけて段階的に実施し,②改定の影響を一 定程度抑える観点から,増減額の幅が±10%を超えないように調整すると ては,生活保護受給世帯に対する激変緩和措置として,①改定を平成25年度から3年間かけて段階的に実施し,②改定の影響を一 定程度抑える観点から,増減額の幅が±10%を超えないように調整するとともに,ゆがみ調整による増減額の幅を基準部会の検証結果の2分の1とすることとした。これらに基づき,厚生労働大臣は,平成25年5月16日に平成25年告示による生活扶助基準の改定を実施し,平成26年3月31日に平成26年告示による生活扶助基準の改定を実施し,平成27 年3月31日に平成27年告示による生活扶助基準の改定を実施した。 (乙1~4,17,20,32。書証は特記しない限り枝番号を含む。) 本件各処分本件各告示による保護基準の改定(以下「本件扶助基準改定」という。)に基づき,処分行政庁は,以下のとおり,原告らに支給される保護費に係る 保護変更決定(本件各処分)を行った。 ア別紙処分一覧表1-1及び同3-1の「処分庁」欄記載の各処分行政庁は,「処分日1」欄記載の各日に,対応する「処分の名宛人」欄記載の各原告に対し,平成25年8月以降支給分の保護費に係る保護変更決定を行った(以下,これらの処分を「第1次保護変更決定処分」ともいう。)。 イ別紙処分一覧表1-2,同2,同3-2,同5の「処分庁」欄記載の各 処分行政庁は,「処分日」又は「処分日2」欄記載の各日に,対応する「処分の名宛人」欄記載の各原告に対し,平成26年4月以降支給分の保護費に係る保護変更決定を行った(以下,これらの処分を「第2次保護変更決定処分」ともいう。)。 ウ別紙処分一覧表4の「処分庁」欄記載の各処分行政庁は,「処分日」欄 記載の各日に,対応する「処分の名宛人」欄記載の各原告に対し,平成27年4月以降支給分の保護費 決定処分」ともいう。)。 ウ別紙処分一覧表4の「処分庁」欄記載の各処分行政庁は,「処分日」欄 記載の各日に,対応する「処分の名宛人」欄記載の各原告に対し,平成27年4月以降支給分の保護費に係る保護変更決定を行った(以下,これらの処分を「第3次保護変更決定処分」ともいう。)。 本件訴え提起までの経過ア第1事件関係 別紙処分一覧表1-1「処分の名宛人」欄記載の各原告は,自らを名宛人とする第1次保護変更決定処分に係る各処分日からいずれも3か月以内である「審査請求日1」欄記載の各日に,京都府知事に対して,当該処分に係る審査請求をし,京都府知事は,「裁決日1」欄記載の各日に,当該審査請求をそれぞれ棄却する裁決をした。 上記各原告は,自らを名宛人とする上記各裁決の結果を知った日から1か月以内である「再審査請求日1」欄記載の各日に,厚生労働大臣に対して再審査請求をし,再審査請求が係属中の平成26年12月25日に,本件訴え(第1事件)を提起した。 別紙処分一覧表1-2「処分の名宛人」欄記載の各原告は,自らを名 宛人とする第2次保護変更決定処分に係る各処分日からいずれも3か月以内である「審査請求日2」欄記載の各日に,京都府知事に対して,当該処分に係る審査請求をし,京都府知事は,「裁決日2」欄記載の各日に,当該審査請求をそれぞれ棄却する裁決をした。 上記各原告は,自らを名宛人とする上記各裁決があったことを知った 日から6か月以内である平成26年12月25日に,本件訴え(第1事 件)を提起した。 イ第2事件別紙処分一覧表2「処分の名宛人」欄記載の各原告らは,自らを名宛人とする第2次保護変更決定処分に係る各処分日からいずれも 件訴え(第1事 件)を提起した。 イ第2事件別紙処分一覧表2「処分の名宛人」欄記載の各原告らは,自らを名宛人とする第2次保護変更決定処分に係る各処分日からいずれも3か月以内である「審査請求日」欄記載の各日に,京都府知事に対して,当該処分に係 る審査請求をし,京都府知事は,「裁決日」欄記載の各日に,当該審査請求をそれぞれ棄却する裁決をした。 上記各原告は,自らを名宛人とする上記各裁決があったことを知った日から6か月以内である平成27年1月15日に,本件訴え(第2事件)を提起した。 ウ第3事件 原告3-1は,自らを名宛人とする第1次保護変更決定処分に係る処分日から3か月以内である別紙処分一覧表3-1「審査請求日1」欄記載の日に,京都府知事に対して,当該処分に係る審査請求をし,京都府知事は,「裁決日1」欄記載の日に,当該審査請求を棄却する裁決をした。 原告3-1は,上記裁決の結果を知った日から1か月以内である「再審査請求日1」欄記載の日に,厚生労働大臣に対して再審査請求をし,厚生労働大臣は,平成25年12月19日に再審査請求を棄却する裁決をした。 原告3-1は,上記裁決日から1年以上が経過した平成27年4月9 日に,本件訴え(第3事件)を提起した。 また,原告3-1は,自らを名宛人とする第2次保護変更決定処分に係る処分日から3か月以内である別紙処分一覧表3-2「審査請求日2」欄記載の日に,京都府知事に対して,同処分に係る審査請求をし,京都府知事は,「裁決日2」欄記載の日に,当該審査請求を棄却する裁決をし た。 原告3-1は,上記裁決の結果を知った日から1か月以内である「再審査請求日2」欄記載の日に,厚生労働大臣に ,「裁決日2」欄記載の日に,当該審査請求を棄却する裁決をし た。 原告3-1は,上記裁決の結果を知った日から1か月以内である「再審査請求日2」欄記載の日に,厚生労働大臣に対して再審査請求をし,再審査請求が係属中の平成27年4月9日に,本件訴え(第3事件)を提起した。 エ第4事件 別紙処分一覧表4「処分の名宛人」欄記載の各原告(ただし,原告2-1を除く。)は,自らを名宛人とする第3次保護変更決定処分に係る各処分日からいずれも3か月以内である「審査請求日」欄記載の各日に,京都府知事に対して,当該処分に係る審査請求をし,京都府知事は,「裁決日」欄記載の各日に,当該審査請求をそれぞれ棄却する裁決をした。 上記各原告は,自らを名宛人とする上記各裁決があったことを知った日から6か月以内である平成27年12月28日に,本件訴え(第4事件)を提起した。 また,原告2-1は,平成27年3月9日に自らを名宛人とする第3次保護変更決定処分を受け,その頃に同処分があったことを知ったが,審査 請求を行うことなく,同処分があったことを知った日から6か月以上が経過した平成27年12月28日に,本件訴え(第4事件)を提起した。 オ第5事件原告5-1は,自らを名宛人とする第2次保護変更決定処分に係る処分日から3か月以内である別紙処分一覧表5「審査請求日」欄記載の日に, 京都府知事に対して,同処分に係る審査請求をし,京都府知事は,「裁決日」欄記載の日に,当該審査請求を棄却する裁決をした。 原告5-1は,上記裁決の結果を知った日から1か月以内である「再審査請求日」欄記載の日に,厚生労働大臣に対して再審査請求をし,厚生労働大臣は,「再審査請求裁決日」欄記載の日に再審査請求を棄却する裁 原告5-1は,上記裁決の結果を知った日から1か月以内である「再審査請求日」欄記載の日に,厚生労働大臣に対して再審査請求をし,厚生労働大臣は,「再審査請求裁決日」欄記載の日に再審査請求を棄却する裁決 をした。 原告5-1は,上記再審査請求に係る裁決があったことを知った日から6か月以内である平成29年2月28日に,本件訴え(第5事件)を提起した。 第3 争点 1 本件各処分の根拠となった本件扶助基準改定が生活保護法1条,8条に違反 するか(争点1) 2 平成25年告示による生活扶助基準改定の国家賠償法上の違法性の有無及び原告らの損害額(争点2)第4 争点に関する当事者の主張 1 本件各処分の根拠となった本件扶助基準改定が生活保護法1条,8条に違反 するか(争点1)(原告らの主張) 厚生労働大臣による生活扶助基準改定の違法性判断の枠組み厚生労働大臣による生活保護基準の設定ないし改定は,生活保護法8条1項の委任に基づく委任命令であり,かつ,同条2項による規律を受けている ことから,本件扶助基準改定に違法があるかどうかは,本件扶助基準改定が同法8条1項及び2項の委任の範囲内かどうかという観点から判断すべきである。そして,当該委任命令としての設定ないし改定行為が違法か否かは,委任した法律の趣旨目的や国民の権利義務の重大性や制限の程度等を考慮し,当該法律が行政府に与えた裁量の濫用・逸脱があるかどうかという観点から 判断すべきである。 生活保護法8条2項は,保護の基準を「最低限度の生活の需要を満たすのに十分なもの」でなければならないとした上で,そのための考慮要素を「要保護者の年齢別,性別,世帯構成別,所在地域別,その他保護の種類に応じて必要な事情」と具体的に列挙することに 生活の需要を満たすのに十分なもの」でなければならないとした上で,そのための考慮要素を「要保護者の年齢別,性別,世帯構成別,所在地域別,その他保護の種類に応じて必要な事情」と具体的に列挙することにより,厚生労働大臣による生活保 護基準の設定や改定に関する裁量の範囲を制限しているものであって,生活 保護法の趣旨目的,立法過程の議論,関係法令の規定などを踏まえると,生活扶助基準の改定について厚生労働大臣に広範な裁量はなく,以下のような制約があると解すべきである。 ア生活保護基準の引下げは原則として許されないこと(制度後退禁止原則による制約) 憲法25条が生存権を国民の権利として規定していることからすれば,憲法上,国は健康で文化的な水準の生活を国民に保障しなければならないというべきである。 生活保護法は,このような憲法25条の理念を受けて,3条において,「この法律により保障される最低限度の生活は,健康で文化的な生活水 準を維持することができるものでなければならない」と規定し,健康で文化的な生活水準を維持することを国に義務付けるとともに,8条2項において,生活扶助基準が「最低限度の生活の需要を満たすに十分なもの(中略)でなければならない」と規定し,健康で文化的な最低限度の生活の需要が確実に満たされるように保障される生活水準の下限を画し ている。 また,不利益変更の禁止を定める生活保護法56条は,保護基準の改定について規律するものではないが,生活保護利用者の立場から見れば具体化されていた生活保護費の減額が,実施機関の個別判断によるものか,厚生労働大臣の定める基準の変更によるものかで,現実の生活面で 受ける不利益に差異はないことに照らせば,保護基準の改定に際しても,法56条の法意を勘案し,国か 実施機関の個別判断によるものか,厚生労働大臣の定める基準の変更によるものかで,現実の生活面で 受ける不利益に差異はないことに照らせば,保護基準の改定に際しても,法56条の法意を勘案し,国からの「正当な理由」の主張立証があって初めて不利益変更(保護基準の引下げ)が許容されるというべきである。 上記解釈は,経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約(昭和54年条約第6号。以下「社会権規約」という。)2条1項,9条,11 条の解釈からも導かれる。 すなわち,社会権規約2条1項は,規約の各締結国に対し「立法措置その他の全ての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成する」ために行動する義務を課しており,同9条が社会保障についての全ての者の権利を保障し,同11条1項は,相当な生活水準と生活条件の不断の改善についての全ての者の権利を保障 している。また,社会権規約の解釈として一般的通用力を有すると解されている経済的,社会的及び文化的権利に関する委員会の一般的意見(以下「一般的意見」という。)も,その3において,不可欠な食料等の最低限の部分を充足することを即時的に行われるべき最低限の中核的義務として位置付けるとともに,その19において,財政上社会保障に対して 優先的な財源の配分を求め,社会保障に関する後退的な措置は禁じられているとの強い推定が働くとしている。これらの規定等からは,締結国のとった措置によって社会保障に関する権利の実現がそれ以前よりも後退することは許されないという「制度後退禁止原則」が導かれるというべきである。 以上によれば,いったん「最低限度の生活の需要」を満たすために必要として設定された生活保護基準を引き下げることは原則として許されず,厚生労働 退禁止原則」が導かれるというべきである。 以上によれば,いったん「最低限度の生活の需要」を満たすために必要として設定された生活保護基準を引き下げることは原則として許されず,厚生労働大臣が生活扶助基準の引下げを行う場合には,国において,具体的な必要性及び相当性(許容性)を主張立証しない限り,裁量権の逸脱,濫用が認められ,生活保護法1条,3条,8条2項及び56条並 びに社会権規約2条1項,9条及び11条に違反して違法となると解すべきである。 イ要保護者の生活状況に関する法定考慮事項を考慮せず,財政事情等の生活外的要素を考慮することは許されないこと生活保護法8条1項は,生活保護基準の設定ないし改定を厚生労働大臣 に委任する一方で,「保護は,(中略)要保護者の需要を基とし,(中略)行 うものとする。」として,保護を実施する際の基礎は,要保護者の需要に置かれるべきであって,国の財政事情や国民感情等を基礎とすべきではないことを規定している。 そして,同法8条2項は同1項を受け「前項の基準は,要保護者の年齢別,性別,世帯構成別,所在地域別その他の保護の種類に応じて必要な事 情を考慮した(中略)ものでなければならない」と定め,同法9条は,「保護は,要保護者の年齢別,性別,健康状態等その個人または世帯の実際の必要の相違を考慮して,有効かつ適切に行うものとする」と規定し,義務的な考慮事項を定めているから,これらの事項を考慮することなく設定された保護基準は,生活保護法8条及び9条に反して違法となる。 また,上記義務的考慮事項は,いずれも要保護者の生活上の需要を調査把握するための要保護者の生活上の属性にかかわる事項であり,「国の財政事情」や「国民感情」等が挙げられていないことからすれば,生活保 また,上記義務的考慮事項は,いずれも要保護者の生活上の需要を調査把握するための要保護者の生活上の属性にかかわる事項であり,「国の財政事情」や「国民感情」等が挙げられていないことからすれば,生活保護法8条及び9条は,国の財政事情,国民感情,政権与党の公約等の「生活外的要素」を考慮することを禁じているというべきであるし,仮に禁止まで はしていないとしても,考慮する際の優先順位や重要度は,上記条文が考慮することを明示している義務的考慮事項と比べれば劣後すべきことは当然である。 本件扶助基準改定が,水準均衡方式によらず,かつ,専門家による検証を経ずに行われたことによる違法 ア生活保護法8条2項が規定する「最低限度の生活」を保護基準において具体化するに当たっては,まずは「高度の専門技術的な考察」をし,次いで「それに基づいた政策的判断」をすることが要請される(最高裁平成22年(行ツ)第392号,同年(行ヒ)第416号同24年2月28日第三小法廷判決・民集66巻3号1240頁,最高裁平成22年(行ヒ)第 367号同24年4月2日第二小法廷判決・民集66巻6号2367頁参 照)。 本件における判断過程審査の対象は,①「本件生活扶助基準の改定に見合う要保護者の需要の変動があるか否か」及び②「本件生活保護基準改定後の生活扶助基準の内容が生活保護受給者の健康で文化的な生活水準を維持するに足りるものであるか否か」であり,これらを判断するにあたって, まず行われるべき「高度の専門技術的な考察」について,「統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性」の有無が審査されなければならない。 イ生活保護基準の改定方式である水準均衡方式は,昭和58年意見具申が「現在の生活扶助基準は,一般国民の 客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性」の有無が審査されなければならない。 イ生活保護基準の改定方式である水準均衡方式は,昭和58年意見具申が「現在の生活扶助基準は,一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準 に達しているとの所見」を示したのを受け,その均衡を維持しようとするものであって,昭和58年意見具申以来,生活保護基準の改定は,生活扶助基準と一般国民の消費水準との調整を図る水準均衡方式により行われており,一度も物価指数を用いた改定は行われていなかった。このことに照らせば,水準均衡方式自体が,処分基準に準じる確立した行政慣行になっ ていたというべきである。 また,水準均衡方式は,生活扶助基準が一般国民の消費実態と均衡しているか否かを定期的に検証することを予定しており,昭和58年意見具申以来,生活保護基準の改定は,専門家からなる審議会の検討結果を踏まえて行われてきたこと,在り方専門委員会による平成16年意見書において も「5年に一度の頻度で検証を行う必要」があり,「検証に際しては(中略)調査方法及び評価方法についても専門家の知見を踏まえることが妥当」とされたこと,「学識経験者による定期的な生活保護基準の専門的かつ客観的な評価・検証を行うこと」を目的として,社会保障審議会の下に常設部会として基準部会が設置されたことなどに照らせば,生活保護基準の改定に 当たっては,基準部会等の専門家からなる審議会の検討を踏まえることが 確立した行政慣行となっていたといえる。 そうすると,水準均衡方式によらない本件扶助基準改定は,それ自体が確立した行政慣行に反するというべきである。少なくとも,水準均衡方式と異なる方法で生活扶助基準を改定しようとする場合には,社会保障,統計 すると,水準均衡方式によらない本件扶助基準改定は,それ自体が確立した行政慣行に反するというべきである。少なくとも,水準均衡方式と異なる方法で生活扶助基準を改定しようとする場合には,社会保障,統計,物価等に詳しい専門家の意見や基準部会による検討結果に依拠して行 うことが処分基準に準じる確立した行政慣行になっていたというべきである。 ウそして,在り方専門委員会では生活扶助基準の改定に当たって物価指数を用いることは,水準均衡方式から逸脱する内容になるので相当慎重にされたいとの指摘がされ,また,基準部会においても,生活扶助基準改定に 当たり消費者物価指数を勘案することもあり得る旨の厚生労働省の報告書案について,消費者物価指数については何も議論していないことを明確にするよう求めると共に,消費品目によって物価指数が異なるにも関わらず,全国一律の物価指数によって生活扶助基準を改定することには非常に慎重であるべきだというような意見が出されていた。 さらに,ゆがみ調整については,基準部会の意見を基に改定を行っているものの,その内容を直接反映せず,調整率を一律に2分の1に変更することについては,基準部会において何の議論もされなかった。 エそれにもかかわらず,厚生労働大臣は,専門家により構成される審議会における検討結果に依拠することなく,①デフレ調整や②ゆがみ調整の「一 律2分の1計算」を中核的な内容とする本件扶助基準改定を行ったものであるから,本件扶助基準改定は,水準均衡方式によらず,専門家からなる審議会の検討を踏まえるという確立した行政慣行を逸脱して行われたものであり,かつ,高度に専門技術的な考察を経ておらず,専門的知見との整合性を欠くものであって,厚生労働大臣の裁量権の範囲を逸脱し,又はこ れを濫用したものと 立した行政慣行を逸脱して行われたものであり,かつ,高度に専門技術的な考察を経ておらず,専門的知見との整合性を欠くものであって,厚生労働大臣の裁量権の範囲を逸脱し,又はこ れを濫用したものとして違法である。 デフレ調整を行ったことの違法アデフレ調整を行う必要がなかったこと 厚生労働大臣は,生活扶助相当CPIを用いた計算により, 平成20年から平成23年にかけて4.78%の物価下落があったことをもって,当該期間の生活保護世帯の可処分所得が相対的・実質的に4.78%増 加したものと判断した。 しかし,水準均衡方式は,生活扶助基準の改定につき,民間最終消費支出(物価水準の変動の影響が反映された名目値)の伸びを基礎とし,国民の消費動向や社会経済情勢を総合的に勘案するものである。そうすると,水準均衡方式の下では,生活扶助基準の改定において毎年度の物 価変動の影響が反映された名目値の民間最終消費支出の伸び率(一般国民の消費実態を示す数値)との均衡が検証されているのであるから,生活扶助基準の改定に毎年度の物価変動が当然に反映されていることになる。したがって,平成20年度から平成24年度までの間においても,水準均衡方式による生活扶助基準の改定において既に物価変動が反映さ れており,重ねてデフレ調整を行う必要はなかったというべきである。 もっとも,平成20年度から平成24年度までの間,民間最終消費支出の変動に伴う生活扶助基準の改定は行われていないが,厚生労働大臣は,この間の物価動向も参考にした上で,その他の社会経済情勢を総合的に勘案しつつ,結果として改定をしないとの判断をしたものであって, 生活扶助基準を改定しないという判断の中で,既に物価変動は反映されているから,重ねてデフレ調 で,その他の社会経済情勢を総合的に勘案しつつ,結果として改定をしないとの判断をしたものであって, 生活扶助基準を改定しないという判断の中で,既に物価変動は反映されているから,重ねてデフレ調整を行う必要はなかったというべきである。 イ厚生労働大臣が前提とした物価下落率算出方法が不合理であること平成20年を比較の起点(期首)としたことの不合理性a 厚生労働大臣は,デフレ調整における物価下落率の算出において, 下落率算出の期首を平成20年とした。 b しかしながら,直近で生活扶助基準が改定されたのは,老齢加算の廃止に伴う引下げが行われた平成16年であるから,デフレ調整における物価下落率の算出の期首は同年とされるべきである。他方,平成20年は,原油価格の高騰によってごく一時的に食料品等の物価が上昇した時期であり,期首を同年とした場合に物価下落率が大きくなる ことは明らかである。これらのことからすると,期首を平成20年とする合理的な理由はない。 c したがって,期首を平成20年とした厚生労働大臣の判断には,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用した違法がある。 ウエイト参照時点を平成22年としたことの不合理性 a 厚生労働大臣は,デフレ調整の物価下落率の算出に当たり,品目指数を加重平均する際のウエイト参照時点を,期首である平成20年ではなく,平成22年とした。 ウエイト参照時点を期首と期末の間である平成22年とした場合の平成20年の生活扶助相当CPIは,パーシェ式(比較する期間の 期末の支出や数量等をウエイトとして使用する算式)による計算結果と一致するものであるのに対して,平成23年の生活扶助相当CPIは,ラスパイレス式(比較する期間の期首の支出や数量等をウエイトとして使用する 支出や数量等をウエイトとして使用する算式)による計算結果と一致するものであるのに対して,平成23年の生活扶助相当CPIは,ラスパイレス式(比較する期間の期首の支出や数量等をウエイトとして使用する算式)による計算結果と一致するものである。 しかしながら,パーシェ式は加重調和平均であるのに対してラスパ イレス式は加重相加平均であり,両者は平均の性質を異にするものである上,この2つの式により計算された指数を比較する方法を採ると,これらの計算式により生ずるバイアス(指数の変動率が過大評価されること)も混交することになるから,このような手法は統計学的にはあり得ないものである。 b 前記のとおり,平成20年の生活扶助相当CPIは,パーシェ式に よる計算結果と一致するところ,一般に,パーシェ式は,下降バイアスがあり,真の物価より下落率が大きくなる傾向がある。 すなわち,期末の支出等をウエイトとして使用するパーシェ式で消費者物価指数を計算した場合には,価格変動の影響を受けた後の支出割合をウエイトとして使用するため,ある財の価格が低下した場合に は,その財に対する購入数量が上昇しその財の価格低下が物価指数に与える影響がより大きくなる。特に,指数品目として,短期間に価格が大幅に低下し,かつ数量が大幅に増加するIT関連財のような財が存するときには,下方バイアス(指数の下落率が過大評価されること)が大きいという特徴がある。また,その種の財については,実際の価 格が据え置かれたとしても,品質調整(ある財の価格が品質の変化など物価変動以外の要因により変化した場合にその価格差を除去する調整)により,性能・品質の向上に応じてその価格が下落することになる。現在,パーシェ式は,物価指数を取り扱う上で国際的にはほ 品質の変化など物価変動以外の要因により変化した場合にその価格差を除去する調整)により,性能・品質の向上に応じてその価格が下落することになる。現在,パーシェ式は,物価指数を取り扱う上で国際的にはほとんど用いられていない手法であって,CPIの指数算式として国際的に 推奨されているラスパイレス式を用いないことは,国際的な基準から逸脱するものである。 とりわけ,平成17年から平成22年までの間には,パソコン類については品質調整の影響により価格低下と購入量の増加が生じ,テレビについては価格低下と地上波によるテレビジョン放送のアナログ方 式からデジタル方式への移行(以下「地デジ化」という。)による実際の購入台数の増加が生じていた。このような状況下で,前記のような下方バイアスが生ずるパーシェ式により消費者物価指数を計算した場合には,その計算結果は生活保護受給者の生活実態からかけ離れたものとなる。 c 被告らは,厚生労働大臣が採用した計算方法は,ロウ指数に依拠し たものであり,ロウ指数においては,比較する期間の途中の時点をウエイト参照時点とすることも可能であるとされていると主張する。 しかしながら,そもそもロウ指数においては,一般に,比較する期間より前の時点をウエイト参照時点とすることが前提とされているから,平成20年と平成23年の間の平成22年をウエイト参照時点と する計算方法をロウ指数として説明することはできない。この点を措いても,ロウ指数は,指数に関する議論が未成熟でウエイト参照時点の選択についての厳密な方法が確立されない段階のものであって,その後,経済学者等においてウエイト参照時点に関する議論が精緻化し,現在では,ラスパイレス式,パーシェ式などが提唱されており,指数 の議論はこれらの式による が確立されない段階のものであって,その後,経済学者等においてウエイト参照時点に関する議論が精緻化し,現在では,ラスパイレス式,パーシェ式などが提唱されており,指数 の議論はこれらの式による指数に集約されている。そうすると,ウエイト参照時点を厳密に特定しない指数は淘汰されているというべきであり,ロウ指数であることを根拠にウエイト参照時点を平成22年とすることが合理的であるということはできない。 d これらのことからすると,ウエイト参照時点を平成22年とするこ とは不合理であり,このような手法により物価下落率の算出してデフレ調整を行った厚生労働大臣の判断には,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用した違法がある。 異なる品目数により算出した指数を比較したこと(指数の接続を行っていないこと)の不合理性 a デフレ調整の物価下落率の算出に用いられた生活扶助相当CPIは,期首である平成20年の生活扶助相当CPIにおける指数品目が485品目であるのに対し,期末である平成23年の生活扶助相当CPIにおける指数品目は517品目であって,品目が同一でない(前提事実カ)。 b しかし,国際的には,基準時と各比較時の対象とする品目は完全に 同一で対応していなければならないとされており,比較する期間の途中で指数品目を改定するような場合には,比較年の指数に合わせて基準年の指数を換算し接続するという方法(以下「指数の接続」という。)を採らなければならない。ところが,生活扶助相当CPIにおいては,上記のとおり,期首と期末で指数品目が異なる上,指数の接続も行わ れていないから,生活扶助相当CPIは,国際基準に合致しない信用性の乏しいものである。 c 以上によれば,指数の接続をすることなく指数品目数が異なる生活 で指数品目が異なる上,指数の接続も行わ れていないから,生活扶助相当CPIは,国際基準に合致しない信用性の乏しいものである。 c 以上によれば,指数の接続をすることなく指数品目数が異なる生活扶助相当CPIを参照して物価下落率を算出した厚生労働大臣の判断には,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用した違法がある。 生活扶助相当CPIにおける指数品目の選定の不合理性生活扶助相当CPIは,総務省CPIの指数品目から生活保護受給世帯が支出しない自動車関係費等の品目を除外している。そのため,生活保護受給世帯は電化製品をほとんど購入しないにもかかわらず,物価下落の主因となっている電化製品の支出割合が相対的に大きくなるなど, 生活保護受給世帯の生活実態と異なる指数が算出されており,不合理である。現に,ノート型パソコン・テレビを計算の基礎となる品目から除いただけでも,生活扶助相当CPIの下落率は,4.78%から2.21%にまで下がる。 したがって,生活扶助相当CPIにおける指数品目の選定に関する厚 生労働大臣の判断には,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用した違法がある。 家計調査に基づく一般世帯の支出割合をウエイトとして使用したことの不合理性a 消費者物価指数の動向は,品目によって全く異なり,どのような品 目にどれだけの割合で支出するかという消費実態も所得階層によって 全く異なるから,生活保護受給世帯の可処分所得が物価動向により実質的に増加しているか否かを判断するためには,生活保護受給世帯の支出割合をウエイトとして使用して計算すべきである。 したがって,デフレ調整を行う上で物価指数を検討する際には,厚生労働省が「非保護世帯の生活実態を明らかにすることによって,生 活保護 支出割合をウエイトとして使用して計算すべきである。 したがって,デフレ調整を行う上で物価指数を検討する際には,厚生労働省が「非保護世帯の生活実態を明らかにすることによって,生 活保護基準の改定等生活保護制度の企画運営のために必要な基礎資料を得るとともに,厚生労働行政の企画運営に必要な基礎資料を得ること」を目的として実施している調査である「社会保障生計調査」に基づく支出割合をウエイトとして用いるべきである。仮に,総務省による家計調査を用いるとしても,一般世帯(2人以上世帯)の消費構造 ではなく,生活保護利用世帯に近接した第1・十分位の消費構造における支出割合を用いるべきであった。 b それにもかかわらず,厚生労働大臣は,生活扶助相当CPIを算出するに当たって,総務省が行う家計調査の結果における一般世帯(2人以上の世帯)の品目別消費支出割合をウエイトとして使用した。そ の結果,実際の生活保護受給世帯は,一般世帯に比して「食料」の支出割合が高く,「教養娯楽」の支出割合が低いにもかかわらず,生活扶助相当CPIにおいては「食料」の支出割合が実態よりも低く,電化製品を含む「教養娯楽」の支出割合が実態よりも高いものとして計算されることとなった。そして,食料は物価下落率が低く,電化製品は 物価下落率が高かったため,生活扶助相当CPIの下落率が実態よりも大きな数値となってしまった。平成20年と平成23年の総務省CPIの変化率は-2.35%にとどまるところ,経験則からして,同一期間における生活保護世帯の物価指数の下落率がその2倍以上になるとは考え難い。 c 以上によれば,生活扶助相当CPIの算出に当たり,家計調査に基 づく一般世帯の支出割合をウエイトとして用いた厚生労働大臣の判断には,その 2倍以上になるとは考え難い。 c 以上によれば,生活扶助相当CPIの算出に当たり,家計調査に基 づく一般世帯の支出割合をウエイトとして用いた厚生労働大臣の判断には,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用した違法がある。 ⑷ ゆがみ調整を行ったことの違法ア第1・十分位の世帯を比較対象としたことゆがみ調整を行うに当たり,基準部会は,年間収入階級第1・十分位 の消費実態と生活保護基準を比較して,生活扶助基準と一般低所得者世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かの検証を行っている。 しかしながら,水準均衡方式は,生活保護受給世帯の消費水準を一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準であるとし,その均衡を維持 することを目的とした検証形式であり,第1・十分位と生活扶助基準を比較することは想定されていない。 そもそも,生活保護基準以下の生活を余儀なくされている「漏給層(生活保護制度の利用資格のある者のうち現に利用していない者)」が大量に存在する現状においては,低所得層の消費支出が生活保護水準以下と なるのは当然のことであり,それにもかかわらず,最下位層の消費水準との比較を根拠に生活保護基準を引き下げることを許せば,保護基準を際限なく引き下げていくことにつながり,合理性がないことは明らかである。 被告は,基準部会が生活扶助基準の検証に当たり第1・十分位の世帯 を比較対象とした合理性を基礎づける事情として,① これまでの検証においても,生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態が比較対象とされてきたこと,② 第1・十分位の世帯の消費水準が平均的な世帯(第3・五分位)の消費水準に照らして相当程度に達していること,③ 国民の過半数が必要であると考えている必需的 帯の消費実態が比較対象とされてきたこと,② 第1・十分位の世帯の消費水準が平均的な世帯(第3・五分位)の消費水準に照らして相当程度に達していること,③ 国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費財 (平均的世帯における普及率が70%を超える品目)の第1・十分位に 属する世帯における普及状況が中位所得階層と比べておおむね遜色ないこと等を主張する。 しかしながら,①については,昭和39年から昭和58年までの期間に採用された格差縮小方式における比較対象は,一般勤労者世帯の消費水準であり,昭和59年から採用されている水準均衡方式における比較 対象は一般国民生活における消費水準であって,従前の検証が第1・十分位の世帯を比較対象として行われてきた事実はない。また,②については,夫婦子1人世帯の第1・十分位の消費水準は,第3・五分位の7割に達しているが,単身世帯(60歳以上)については,その割合が5割(第1・五分位でみると約6割)にとどまっており,第1・十分位の 世帯の消費水準が平均的な世帯の消費水準に照らして相当程度に達しているということはできない。さらに,③については,厚生労働省社会・援護局保護課が平成22年に実施した「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」によれば,第1・十分位の世帯の普及率が第3・五分位の普及率の9割未満である項目が全体の3分の2に及び,特に文化や教養 に関わる項目及び社会生活に関わる項目において第3・五分位の世帯との格差が顕著であることが明らかであり,第1・十分位に属する世帯における必需的な耐久消費財の普及状況が,中位所得階層と比べて遜色ないものであるということはできない。 以上のとおり,ゆがみ調整に当たって,基準部会が,年間収入階級第 1・十分位(下位10% おける必需的な耐久消費財の普及状況が,中位所得階層と比べて遜色ないものであるということはできない。 以上のとおり,ゆがみ調整に当たって,基準部会が,年間収入階級第 1・十分位(下位10%の低所得層)の消費実態と生活保護基準を比較したことには理由がなく,第1・五分位等のもっと上の階層を比較対象とすべきであったというべきである。 したがって,第1・十分位の世帯を比較対象とした基準部会の検証内容に基づいてゆがみ調整を行った厚生労働大臣の判断は,「統計等の客 観的な数値等との合理的関連性」を欠き,その裁量の範囲を逸脱し,又 はこれを濫用するものとして違法である。 イ比較対象から生活保護受給世帯が除外されていないこと仮に,第1・十分位の世帯と比較すること自体は不合理でないとしても,基準部会の生活扶助基準の検証過程においては,比較対象であった第1・十分位の世帯から生活保護受給世帯が除外されておらず,いわば 対照群の中に比較群が含まれることになってしまっており,データの比較可能性を欠くことになって不合理である。そうであるからこそ,平成19年に生活扶助基準検討会が公表した平成19年報告書及び平成29年に生活保護基準部会が公表した「社会保障審議会生活保護基準部会報告書」(以下「平成29年報告書」という。)では生活保護受給世帯が比 較対象から除外されているのである。 そうすると,基準部会の生活扶助基準の検証において第1・十分位の世帯から生活保護受給世帯が除外されていないことは合理性を欠くから,厚生労働大臣がこのような基準部会の検証結果に基づいてゆがみ調整を行ったことは,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものと して違法である。 ⑸ ゆがみ調整とデフレ調整を重複して行ったことの違法 がこのような基準部会の検証結果に基づいてゆがみ調整を行ったことは,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものと して違法である。 ⑸ ゆがみ調整とデフレ調整を重複して行ったことの違法ア基準部会は,平成25年報告書を取りまとめる検証において,被保護者世帯間の相対比較のみならず,生活扶助基準の絶対的水準の検証をも目的としていたものであり,その結果を用いたゆがみ調整は,絶対的水準をも 調整するものであった。それにもかかわらず,ゆがみ調整とデフレ調整を併せてすることは,生活扶助基準を重複して引き下げるものである。 すなわち,ゆがみ調整は,個別の世帯の消費実態の違いを,年齢,世帯人員及び級地という観点から生活扶助基準に反映させることを目的とするものであった。これに対して,デフレ調整は,年齢,世帯人員及び級地の 違いを考慮せずにされたものであるところ,年齢,世帯人員及び級地によっ て個別の世帯の消費実態は大きく異なり,その差異は物価指数に大きな影響を及ぼすものである。しかるに,厚生労働大臣は,デフレ調整前の生活扶助基準に基づいてゆがみ調整による改定率を算出したにもかかわらず,この改定率とデフレ調整による改定率を乗じており,ゆがみ調整における年齢階級別,世帯人員別及び級地別の改定率を無意味にしたものである。 また,ゆがみ調整においては一般低所得世帯の消費実態との均衡が考慮されているところ,その消費実態のデータにはデフレの影響が当然に含まれているから,ゆがみ調整とデフレ調整を併せてすることは,物価を二重に評価することになる。 イこのようにデフレ調整はゆがみ調整の趣旨・目的を没却するものであり, デフレ調整とゆがみ調整は相互に矛盾するものであって,ゆがみ調整とデフレ調整を重複して行った厚 することになる。 イこのようにデフレ調整はゆがみ調整の趣旨・目的を没却するものであり, デフレ調整とゆがみ調整は相互に矛盾するものであって,ゆがみ調整とデフレ調整を重複して行った厚生労働大臣の判断は,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものとして違法である。 ⑹ ゆがみ調整の増額の幅を基準部会報告書の検証結果(乖離率)の2分の1としたことの違法 ア厚生労働大臣は,本件扶助基準改定に際し,ゆがみ調整において激変緩和措置を講ずるためであるとして,基準部会が検証結果として示した増減額の幅を一律2分の1に縮小する調整をし,基準部会の検証結果を全て生活扶助基準に反映させることをしなかった。 イゆがみ調整の目的は,年齢階層別,世帯人員別,級地別(地域別)に, 生活扶助基準額と一般低所得世帯の消費実態の乖離を指数化して分析し,その乖離(ゆがみ)を是正することにあった。換言すれば,水準均衡方式における一般低所得世帯との水準均衡をさらにその体系(展開)にまで応用し,完全な水準均衡として正そうとしたものともいえる。 このようなゆがみ調整の是正を一律2分の1にとどめ,半分を是正され ないままとした処理は,平成25年報告書が目指したゆがみ調整の趣旨を 没却するものである。 ウ被告らは,2分の1処理により激変緩和措置を講ずる必要があった旨主張するが,① 本件各告示による生活扶助基準の改定に際しては,ゆがみ調整による減額幅の縮小とは別に,引下幅を最大10%とする下限規制が設けられ,これによって生活扶助基準の引下げによる激変緩和が図られて いるから,激変緩和のためにゆがみ調整による増減額の幅を基準部会の検証結果の2分の1とすることに合理性はない。② また,生活保護利用世帯の大半は て生活扶助基準の引下げによる激変緩和が図られて いるから,激変緩和のためにゆがみ調整による増減額の幅を基準部会の検証結果の2分の1とすることに合理性はない。② また,生活保護利用世帯の大半は,ゆがみ調整の場面では増額が見込まれた単身中高齢世帯であるところ,それらの世帯の増額幅を検証結果の2分の1にとどめる一方で,全体からみると少数であるゆがみ調整により減額される世帯の減額幅を検 証結果の2分の1とするのは,全体としてみると,減額に与える影響より増額に与える影響の方が大きいこととなるから,激変緩和措置として不合理である。厚生労働大臣としては,減額についてのみ検証結果の2分の1とし,増額については検証結果をそのまま反映させるべきであった。 エ以上のことからすれば,厚生労働大臣がゆがみ調整の増額の幅を基準部 会の検証結果の2分の1としたことは,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものとして違法である。 ⑺ 考慮すべきでない事項(政権与党の政権公約の実現)を考慮したことによる違法当時の政権与党であった自由民主党(以下「自民党」という。)は,本件各 告示の直近の衆議院議員の選挙において,生活保護水準を10%引き下げることを政権公約としており,当時のA厚生労働大臣(以下「A大臣」という。)は,平成25年報告書が発表される以前から,自民党の政権公約による制約をある程度は受けている旨の発言をしていた。また,ゆがみ調整における「一律2分の1計算」については,本件訴訟においては激変緩和措置であると説 明されているが,厚生労働省が「平成25年度予算案の概要」を発表した際 にはそもそも公表されておらず,北海道新聞の記者が行った情報公開請求に対しても「国民の間に誤解や憶測を招き,不当に国民に混乱を生じさせるお 労働省が「平成25年度予算案の概要」を発表した際 にはそもそも公表されておらず,北海道新聞の記者が行った情報公開請求に対しても「国民の間に誤解や憶測を招き,不当に国民に混乱を生じさせるおそれがある」との理由で不開示決定がされ,その審査請求を経てようやく開示されるに至ったものであり,激変緩和措置との説明は信用できない。 これらのことからすれば,本件各告示による生活扶助基準の改定は,自民 党の政権公約の実現という,本来考慮してはならない事項を考慮したものというべきであり,本件各告示による生活扶助基準の改定は,厚生労働大臣の裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用するものとして違法である。 (被告らの主張)⑴ 厚生労働大臣による生活扶助基準改定の違法性判断の枠組み ア保護基準の改定については,厚生労働大臣に,専門技術的かつ政策的な見地からの広範な裁量が認められている。すなわち,生活保護法3条,8条の規定する「最低限度の生活」は抽象的かつ相対的な概念であって,その具体的内容は,その時々における経済的・社会的条件や一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断されるべきものであり,これを保護 基準において具体化するに当たっては,高度かつ複雑で非定型的な専門技術的考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするから,厚生労働大臣には専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められる。そして,厚生労働大臣の保護基準の改定の判断は,異質かつ多次元的な諸利益を評価して比較衡量するという優れて専門技術的かつ政策的なものであるから,そ の裁量の幅は広範なものというべきである。 イこれに対し,原告らは,厚生労働大臣の裁量権が憲法25条等による制度後退禁止原則により制約される旨主張する。 しかしながら,憲法25条は, の裁量の幅は広範なものというべきである。 イこれに対し,原告らは,厚生労働大臣の裁量権が憲法25条等による制度後退禁止原則により制約される旨主張する。 しかしながら,憲法25条は,国民に具体的権利として健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障したものではなく,「健康で文化的な 最低限度の生活」は,極めて抽象的・相対的な概念であり,その具体的 内容は,多数の不確定要素を総合して初めて決定できるものであるから,その時々における多数の不確定要素に応じて変化し得るものであり,保護基準の引下げは当然にあり得るものである。また,保護基準は最低限度の生活の需要を満たしつつ,これを超えないものでなければならず,これを超えれば違法となることからしても,一度設定された水準が,そ の後の社会情勢の変化等によって削減されることも当然想定されているところである。さらに,憲法25条2項は,社会福祉,社会保障等の向上及び増進に「努めなければならない」と規定しているにとどまるのであり,社会福祉等の水準を後退させることが原則として禁止されていると解する根拠とはならない。 また,社会権規約2条1項は,社会権規約の規定する権利が,国の社会政策により保護されるに値するものであることを確認し,その権利の実現に向けて積極的に社会保障政策を推進すべき政治的責任を負うことを宣明したものであって,個人に対し,即時に具体的権利を付与すべきことを定めたものではない。そして,一般的意見は,法的拘束力を有す るものではないから,以上のような解釈を左右するものではない。 また,原告らは,生活保護法8条2項及び9条において考慮事項が法定されており,厚生労働大臣は,前記各規定に定められた事項を考慮しなければならず,前記各規定に定められ 解釈を左右するものではない。 また,原告らは,生活保護法8条2項及び9条において考慮事項が法定されており,厚生労働大臣は,前記各規定に定められた事項を考慮しなければならず,前記各規定に定められた以外の事項を考慮してはならない旨主張するが,前記アのとおり,保護基準の改定については,厚生 労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの広範な裁量が認められており,様々な要素を考慮することが許されるものであって,保護基準の改定に当たり厚生労働大臣が前記各規定に定められた事項以外の事項を考慮することも許される。 本件扶助基準改定が水準均衡方式によらず,かつ,専門家による検証を経 ずに行われたことによる違法がないこと 原告らは,①保護基準の改定を水準均衡方式によって行うこと,又は,②保護基準の設定については,専門家によって構成された審議会の検討を踏まえて行われることが,処分基準に準じる確立した行政慣行として要請されていたなどと主張する。 しかしながら,厚生労働大臣や厚生労働省の職員自体が保護基準の改定に ついての専門的知見を当然有している上,保護基準の改定に際し,厚生労働大臣が社会保障審議会等の第三者の意見を聴くことが法令上の要件として定められているものではない。 また,基準部会の役割は,飽くまで当時の生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか等の定期的な検証を行うことに とどまり,この検証結果を踏まえてどのような保護基準の改定を行うかという厚生労働大臣の政策判断を拘束するものではない。厚生労働大臣が,合目的的裁量の行使として,基準部会の検証結果を考慮した上で,更に基準部会における検証結果以外の合理的な経済指標などを総合的に勘案することは否定されていないというべきであるか ない。厚生労働大臣が,合目的的裁量の行使として,基準部会の検証結果を考慮した上で,更に基準部会における検証結果以外の合理的な経済指標などを総合的に勘案することは否定されていないというべきであるから,原告らの上記主張は,失当である。 デフレ調整を行ったことが違法でないことアデフレ調整を行う必要性があったこと平成16年報告書では,生活扶助基準は基本的に妥当と評価され,平成16年から平成19年までの間は総務省CPIがおおむね横ばいであったが,その後,平成19年報告書では,生活扶助基準の水準が一般 低所得世帯と比べて高いとされたため,本来,翌年以降に生活扶助基準の見直しが行われるべきであった。 しかし,平成20年度予算編成時には原油価格が高騰しており,その消費に与える影響等を見極める必要があったため,同年度は生活扶助基準を据え置くこととされ,平成21年度予算編成時においても,平成2 0年2月以降の物価上昇が家計に大きな影響を与えるとともに,同年9 月以降の世界金融危機の影響が深刻であったため,平成21年度以降,本来行うべき生活扶助基準の見直しが据え置かれてきた。 他方,平成21年以降,賃金,物価及び家計消費がいずれも継続的に下落するデフレ傾向が続き,消費者物価指数がマイナスとなっていた。 そのような状況下で生活扶助基準額が据え置かれているということは, 実質的には生活扶助基準の引上げがされているのと同視することができ,これにより生活保護受給世帯の可処分所得も実質的に増加している状況にあったことから,一般世帯の消費実態との均衡を図るため,物価動向を勘案した生活扶助基準の見直しが必要不可欠であった。 原告らは,厚生労働大臣は,平成20年度から平成24年度までの間 状況にあったことから,一般世帯の消費実態との均衡を図るため,物価動向を勘案した生活扶助基準の見直しが必要不可欠であった。 原告らは,厚生労働大臣は,平成20年度から平成24年度までの間 においても,水準均衡方式の下で民間最終消費支出の動向を基礎としつつ,物価動向を含む当時の社会経済情勢等を総合的に勘案して生活扶助基準を据え置くという判断をしたのであり,前記期間における物価変動の影響は生活扶助基準に反映されているから,更にデフレ調整を行うことは物価下落を二重に考慮することになるなどと主張する。 しかしながら,厚生労働大臣が前記期間において生活扶助基準を据え置いたのは,消費の動向や物価変動を基礎としたものではなく,平成20年度は,原油価格の高騰等が消費に与える影響等を見極めるために据え置かれたものであるなど,前記期間においては,消費の動向や物価変動を生活扶助基準の水準に反映させる趣旨の改定は行われなかった。し たがって,デフレ調整を行うことが物価下落を二重に考慮することになるということはできない。 イ厚生労働大臣が判断の前提とした物価下落算出方法が不合理でないこと期首を平成20年としたことについてa 前記アのとおり,平成19年報告書において生活扶助基準の水準が 一般低所得世帯と比べて高いとされたことを踏まえ,本来であれば平 成20年以降に生活扶助基準の見直しが行われるべきであった。 しかし,平成20年度予算編成時には原油価格が高騰しており,その消費に与える影響等を見極める必要があったため,同年度は生活扶助基準を据え置くこととされ,また,平成21年度予算編成時においても,平成20年2月以降の物価上昇が家計に大きな影響を与えると ともに,同年9月以降の世界金融危機の影響が深刻であった 度は生活扶助基準を据え置くこととされ,また,平成21年度予算編成時においても,平成20年2月以降の物価上昇が家計に大きな影響を与えると ともに,同年9月以降の世界金融危機の影響が深刻であったため,平成21年度以降,本来行うべき生活扶助基準の見直しが据え置かれてきた。 b このような経緯からすれば,デフレ調整の期首を,本来,生活扶助基準の見直しが行われるべき平成20年とすることには十分に合理的 な理由がある。 なお,原告らは,平成16年を期首として物価下落率を計算すべきであると主張するが,このことに理由がないことは既に述べたとおりである上,同年を期首とした場合には,平成23年までの生活扶助相当CPIの下落率は6.4%となり,かえって,生活保護受給世帯に 不利な結果となることからも妥当ではない。 ウエイト参照時点を平成22年としたことについてa 生活扶助相当CPIは,物価の長期的な推移を見ることが目的ではなく,デフレ傾向が続く中で生活扶助基準が据え置かれたことによって生じた生活扶助基準の実質的な引上げの程度を見ることが目的で あって,問題となる期間も短く,その間の消費構造の変化による影響は小さいと考えられる。そうすると,平成20年から平成23年までの物価下落率を算出するに当たっては,長期的な比較も予定している総務省CPIの場合と異なり,消費構造の変化による物価指数への影響を最小限に抑えるべく,ウエイトとして使用する支出割合を固定す るのが最も目的に適っているし,直近の消費構造を反映するために, 平成22年をウエイト参照時点としたことには十分な合理性がある。 b 原告らは,ウエイト参照時点について,ラスパイレス式の算定方式に則って期首である平成20年とするか,少なくと ために, 平成22年をウエイト参照時点としたことには十分な合理性がある。 b 原告らは,ウエイト参照時点について,ラスパイレス式の算定方式に則って期首である平成20年とするか,少なくとも,期首である平成20年以前にすべきであったと主張する。 しかしながら,消費者物価指数を導くために用いられる算出方法に は様々なものがあって,学術的に正解となる唯一の算出方式というものは存在せず,政策目的に照らして,合理的な方法を採用することは当然に許されるというべきである。 総務省は,総務省CPIの算出において期首の数値をウエイトとして使用するラスパイレス式を採用しているが,これは,ラスパイレス 式が速報性やコスト面に優れているなどの特徴を有していることによるものであり,ラスパイレス式以外の算式が誤っているということではない。むしろ,ラスパイレス式の場合,期首以降に物価が上昇したときに,それに伴って消費量が減少するという事象を捕捉できないために上方バイアスが生ずるとされるなどの算出上の欠点もあるので あって,この方式以外が許容されないとするのは相当でない。 生活扶助相当CPIの計算方法は,消費者物価指数の計算の関係で広く用いられるとされるロウ指数の考え方に依拠するものである。このロウ指数の考え方によれば,比較する期間のいずれの時点をウエイト参照時点としても誤りではなく,現に物価指数の計算方法として比 較する期間の途中をウエイト参照時点とする「中間年指数」という考え方も認められている。ラスパイレス式とパーシェ式はウエイト参照時点をどの時点とするかに違いがあるにすぎず,いずれもロウ指数の考え方の枠内で説明可能な計算方式となる。 そうすると,平成20年(期首)でも平成23年(期末)でもなく, 平成22年を ト参照時点をどの時点とするかに違いがあるにすぎず,いずれもロウ指数の考え方の枠内で説明可能な計算方式となる。 そうすると,平成20年(期首)でも平成23年(期末)でもなく, 平成22年をウエイト参照時点とすることが特異なものであるとはい えない。 c 前述のとおり,物価の算出において,実務的,学術的に正解となる唯一の算出方式というものは存在しないものであるところ,消費者物価指数を取り扱う上では,過去の研究に基づき国際的な取り決めの中で集約がなされ,国際労働機関等が編纂した「消費者物価指数マニュ アル」において,一定の妥当性があると認められた指数算式が提示されている。各国の物価指数作成当局は,通常,消費者物価指数マニュアルに掲載された指数算式から,データの入手可能性等を考慮して公式統計の指数計算を選択しており,消費者物価指数マニュアルに掲載されていること自体が国際的にも妥当性が認められた算式であるかど うかの基準といえる。 ロウ指数は,消費者物価指数マニュアルに掲載のある算出方法であり,生活扶助相当CPIは,その考え方に沿って物価を計算していると評価できるから,その計算方法が不合理であるということはできない。 d また,平成20年から平成23年までの物価下落率の算出方法をあえて分析的にみると,ウエイト参照時点が平成22年であるから,①平成20年の生活扶助相当CPIは,パーシェ式によって算出したものと,②平成23年の生活扶助相当CPIは,ラスパイレス式によって算出したものと整理することができるところ,原告らは,この点を 捉えて,平成22年をウエイト参照時点とすることは,異なる計算原理を用いることになり不当であると主張している。 しかしながら,これは,それぞれの計算過程をあえて分析的に整 原告らは,この点を 捉えて,平成22年をウエイト参照時点とすることは,異なる計算原理を用いることになり不当であると主張している。 しかしながら,これは,それぞれの計算過程をあえて分析的に整理したものにすぎず,平成20年から平成22年までと平成22年から平成23年までとで異なる算式を用いて生活扶助相当CPIを算出し た上でこれらを総合して変化率を測定したものではない。また,ラス パイレス式とパーシェ式はウエイト参照時点をどの時点とするかに違いがあるにすぎず,いずれもロウ指数の考え方の枠内で説明可能な計算方式であるから,平成20年から平成23年までの物価下落率の算出方法が2つの方式を組み合わせているとみる余地があるとしても,その点に問題があるものでもない。 異なる品目数により算出した指数を比較することについてa 期首である平成20年の生活扶助相当CPIにおける指数品目が485品目であったところ,平成22年の総務省CPIの指数品目の改定により生活扶助相当CPIの指数品目に32品目が新たに加えられ,期末である平成23年の生活扶助相当CPIにおける指数品目は51 7品目となった。このことについて,原告らは,指数品目が同一でないとして不合理であると主張する。 b しかしながら,物価指数の作成実務において,一部の品目の価格が観察できないこと(欠価格)はしばしば発生する。その対応方法の一つとして,欠価格となった品目を計算上除外して物価指数を作成する ことも通常行われており,その場合,欠価格となった品目の価格動向については,「他の全ての品目の価格動向」と同じと仮定したことになる。上記のとおり,欠価格となった品目は32品目であるところ,支出ウエイトにして約3%に過ぎず,その影響は限定的と った品目の価格動向については,「他の全ての品目の価格動向」と同じと仮定したことになる。上記のとおり,欠価格となった品目は32品目であるところ,支出ウエイトにして約3%に過ぎず,その影響は限定的と考えられることからすれば,上記欠価格の処理は,実務上相当なものと評価できる。 このような欠価格の処理をすることは,「買い物かごの内容を変える」ことを意味するものではなく,平成20年を基準とする平成23年の生活扶助相当CPIは,固定された同じ買い物かご(517品目)を購入するために必要な全費用の変化を表したロウ指数となるのであり,原告の主張は失当である。 c 総務省CPIにおいては,指数品目が5年に1度は見直されるので あり,その見直しの年をまたいで長期的な数値の比較がされている以上,期首と期末とで品目数がずれてしまうという事象は総務省CPIの計算においても不可避的に生じ得る問題である。このような場合,総務省CPIでは指数の接続を行っているが,指数を接続したとしても,平成17年に定められた品目で計算された物価指数が平成22年 に定められた品目で計算された物価指数となるものではなく,指数の接続によって品目数のずれが解消されるものでもない。 指数品目の選定の在り方が合理的であること生活扶助相当CPIは,総務省CPIの指数品目から生活保護受給世帯が支出しない品目を控除したものを指数品目としているところ,原告 らは,これにより,生活保護受給世帯は電化製品をほとんど購入しないにもかかわらず,物価下落の主因となっている電化製品の支出割合が相対的に大きくなり,生活保護受給世帯の生活実態と異なる指数が算出されていると主張する。 しかしながら,いかなる品目を指数品目とするかは,価 かわらず,物価下落の主因となっている電化製品の支出割合が相対的に大きくなり,生活保護受給世帯の生活実態と異なる指数が算出されていると主張する。 しかしながら,いかなる品目を指数品目とするかは,価格の変化を把 握する目的に応じて異なり得るところ,デフレ傾向が続く中で生活扶助基準が据え置かれていたことによって生じた生活扶助基準の実質的引上げの程度(生活保護受給世帯における可処分所得の実質的増加の程度)を把握するというデフレ調整の目的に照らせば,対象品目を生活保護受給者が支出することが予定される品目に限定し,生活扶助以外の扶助に より賄われる品目を除外することが合理的である。そして,特定の品目の支出割合を除外したことにより,残りの品目全ての支出割合はその比率に応じて等しく増加することになるが,物価が下落した品目のみならず,物価が上昇した品目も等しく支出割合が相対的に増加するのであるのであって,恣意的に特定の品目についての支出割合を増加させたもの ではない。仮に,原告らの主張するとおり,生活扶助相当CPIにおい て生活保護受給世帯が支出しない品目を控除したために電化製品の支出割合が相対的に大きくなり,生活扶助相当CPIの下落率が大きくなったとしても,それは,生活保護受給世帯において支出することが想定される品目の物価下落が,指数品目全体の物価下落よりも相対的に大きかったということの結果にすぎない。 なお,厚生労働省の調査によっても,生活保護受給世帯の電化製品の普及率は,パソコンが4割,ビデオレコーダーは7割,電子レンジや洗濯機は約9割,カラーテレビや冷蔵庫は約10割(ほぼ全世帯)となっており,生活保護受給世帯においても電化製品を購入して生活を営んでいることは明らかである。そうであるにもかかわらず,物価下 レンジや洗濯機は約9割,カラーテレビや冷蔵庫は約10割(ほぼ全世帯)となっており,生活保護受給世帯においても電化製品を購入して生活を営んでいることは明らかである。そうであるにもかかわらず,物価下落幅が大 きいという理由で電化製品を算出品目から除外して生活扶助相当CPIの下落率を算定することは,かえって恣意的な算定方法というべきである。 家計調査に基づく一般世帯の支出割合をウエイトとして使用したことが不合理でないこと 原告らは,デフレ調整における物価下落率の算出に当たっては,社会保障生計調査に基づく生活保護受給世帯の支出割合をウエイトとして使用すべきであり,家計調査に基づく一般世帯の支出割合をウエイトとして使用したことが違法である旨主張する。 しかしながら,保護基準の改定に当たり,複数の統計資料がある中で どの資料を用いるかに関する判断も,高度の専門技術的考察に基づく政策判断であるから,統計資料の使用方法が違法であるか否かは,当該資料を用いた判断過程自体に過誤,欠落等があると認められるかにより判断されるべきである。 そして,総務省統計局が実施している家計調査は,調査対象世帯の選 定が居住地域等により偏らないように配慮されている上,詳細な品目別 の支出額が調査の対象となっており,統計資料としての精度が高いなどの特徴を有するものである。これに対し,社会保障生計調査の目的は,世帯を構成する人員の数やその年齢,居住地域等によって様々である生活保護受給世帯の消費等の実例を把握することであるため,調査対象については,実際の生活保護受給世帯の各世帯類型,人員,都市部及び地 方などの分布を踏まえた抽出等はされておらず,サンプルとして抽出される世帯について,世帯類型,人員,地域等に偏りが生 調査対象については,実際の生活保護受給世帯の各世帯類型,人員,都市部及び地 方などの分布を踏まえた抽出等はされておらず,サンプルとして抽出される世帯について,世帯類型,人員,地域等に偏りが生ずることは避けられず,調査結果は,生活保護受給世帯の全体像及び実態を示すものにはならない。また,社会保障生計調査は,個別品目の消費支出の割合等を正確かつ詳細に調査するものではなく,この調査結果により大まかな 支出割合しか把握することができない。 以上のことからすれば,物価下落率の算出に当たり,家計調査に基づく一般世帯の支出割合をウエイトとして使用し,社会保障生計調査に基づく生活保護受給世帯の支出割合をウエイトとして使用しなかった厚生労働大臣の判断に過誤,欠落等があったということはできない。 ゆがみ調整を行ったことが違法でないことア第1・十分位の世帯を比較対象としたことの合理性基準部会の検証は,比較対象となる一般低所得世帯を第1・十分位の世帯とした上,年齢階級別,世帯人員別及び級地別に生活扶助基準額を指数化したもの(以下「生活扶助基準額による指数」という。)と一般低 所得世帯の年齢階級別,世帯人員別及び級地別の生活扶助相当支出額(消費支出額から家賃,医療等の生活扶助に相当しないものを除いたもの。 以下同じ。)を指数化したもの(以下「消費実態による指数」という。)を比較検証したものであり,その結果,年齢階級別,世帯人員別及び級地別のいずれにおいても,生活扶助基準額による指数と消費実態による 指数との間にかい離がみられたことから,厚生労働大臣は,このような 検証の結果を踏まえてゆがみ調整を行った。 そして,基準部会による検証では,①これまでの検証に倣い,生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の れたことから,厚生労働大臣は,このような 検証の結果を踏まえてゆがみ調整を行った。 そして,基準部会による検証では,①これまでの検証に倣い,生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが現実的であること,②第1・十分位の世帯の平均消費水準は中位所得階層の約6割に達していること,③第1・十分位に属する世帯における物品等の 普及状況は中位層と比べておおむね遜色がないことなどを踏まえて,第1・十分位の世帯を比較対象としている。 基準部会による検証は,生活扶助基準の展開部分に一般低所得世帯の消費実態を反映させることにより生活扶助基準の展開部分を適正化し生活保護受給者間の公平を図ることを目的としているから,その手掛かり とする一般低所得世帯は,生活保護受給世帯と消費構造が近い世帯とするのが相当であり,このような観点からすると,上記①から③の理由を考慮し,生活保護受給世帯に近い消費構造を有するものとして第1・十分位の世帯を比較対象としたことは合理的である。 イ最下層である第1・十分位の世帯を対象としたことについて 原告らは,生活保護を受給することができるのに受給していない者が多数存在しているから,最下層である第1・十分位の世帯の消費水準との比較を根拠に保護基準を引き下げてしまうと,際限のない引下げを招くこととなると主張する。 しかしながら,基準部会の検証は,生活扶助基準額と第1・十分位 の世帯の消費支出額との高低を比較するものではなく,あくまで第1・十分位の世帯の消費支出額に基づいて生活扶助基準の展開部分の適正化を図るものであるから,基準部会の検証により生活扶助基準額の絶対的水準が検証されるものでない以上,第1・十分位の世帯を比較対象とする基準部会の検証が生活扶助基準の いて生活扶助基準の展開部分の適正化を図るものであるから,基準部会の検証により生活扶助基準額の絶対的水準が検証されるものでない以上,第1・十分位の世帯を比較対象とする基準部会の検証が生活扶助基準の際限のない引下げにつながるという ことはできない。 ウ比較対象から生活保護受給世帯が控除されていないことについて原告らは,比較対象である第1・十分位に生活保護受給世帯が含まれていることが不合理であると主張する。 しかしながら,前述のとおり,ゆがみ調整は,基準部会の検証によって認められた生活扶助基準の展開部分と一般低所得世帯の消費実態とのかい 離を是正し,生活扶助基準額を一般低所得世帯の消費実態を適切に反映したものとすることにより,世帯構成などが異なる生活保護受給世帯間における実質的な給付水準の均衡を図ることを目的とするものであり,基準部会の検証は,このような観点から,第1・十分位の世帯の消費実態を指数化したもの(消費実態による指数)と,それらの各世帯が実際に当時の生 活扶助基準により生活保護を受給した場合の生活扶助基準額を指数化したもの(生活扶助基準額による指数)を比較したものである。 このように,第1・十分位の世帯の消費実態と比較している対象は,当時の生活扶助基準額を指数化したものであり,実際の生活保護受給世帯の消費実態を比較対象としたものではないから,比較群と対照群とに同じ属 性の集団が含まれているというような問題が生ずるものではなく,生活保護受給世帯が比較対象の第1・十分位に含まれていることが不合理であるということはできない。 エ基準部会の検証の結果に基づいてゆがみ調整を行った厚生労働大臣の判断に違法がないこと 上記アないしウに述べたほか,基準部会の検証の方法等に過誤,欠落 であるということはできない。 エ基準部会の検証の結果に基づいてゆがみ調整を行った厚生労働大臣の判断に違法がないこと 上記アないしウに述べたほか,基準部会の検証の方法等に過誤,欠落等をうかがわせる事情はないから,基準部会の検証の結果に基づいてゆがみ調整を行った厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用した違法はない。 ゆがみ調整とデフレ調整を重複して行ったことが違法でないこと ゆがみ調整は,基準部会における検証により,生活扶助基準の展開部分と 一般低所得世帯の消費実態との間にかい離が認められ,そのかい離が,世帯構成,年齢,地域分布等によって不均衡となっていたことから,それを調整する必要があるとして行われたものである。このように,ゆがみ調整は,生活保護受給者間の相対的な水準調整を行うためのものであり,保護基準の絶対水準の調整を意図したものではないから,その趣旨は保護基準の絶対水準 の調整を目的としたデフレ調整とは全く重複しない。 ゆがみ調整の増額の幅を基準部会の検証結果の2分の1としたことの合理性ア厚生労働大臣は,①平成25年報告書において「生活扶助基準の見直しを検討する際には,現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世 帯,とりわけ貧困の世代間連鎖を防止する観点から,子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある」などと指摘されており,基準部会の検証結果をそのまま生活扶助基準の改定に反映させた場合には子どものいる世帯への影響が大きくなること,②生活扶助基準の展開部分の検証方法として基準部会が採用した手法が唯一のものということはできず,また,特定 のサンプル世帯に限定して分析する際にサンプル世帯が極めて少数になるといった統計上の限界も認められたこと, 分の検証方法として基準部会が採用した手法が唯一のものということはできず,また,特定 のサンプル世帯に限定して分析する際にサンプル世帯が極めて少数になるといった統計上の限界も認められたこと,③次の生活保護基準部会の定期的な検証において更なる評価,検証が予定されていたことから,基準部会の検証結果により得られた較差を生活扶助基準に完全に反映させるべきではないと判断した。 他方,ゆがみ調整を生活扶助基準に反映させるに当たり,個々人の改定結果が減額となるか増額となるかは,年齢,世帯人員及び級地別の3要素について指数を全て乗じた結果により初めて明らかになるものであり,変化額を各要素に分解することは困難であった。また,個別の指数ごとに減額幅については2分の1とし,増額幅についてはそのまま反映させると いったように部分的に反映させる程度を変えることは理論的にはあり得る ものの,ゆがみを公平に解消させる観点等からは適当ではないと考えられた。 そこで,厚生労働大臣は,基準部会の検証結果を生活保護受給世帯の全てにできるだけ公平に反映しつつ,生活保護受給世帯への影響を一定程度に抑えるため(激変緩和),基準部会の検証結果を反映させる比率を,増 額・減額とも2分の1に抑えることとしたものである。このような判断は,厚生労働大臣に委ねられた合目的的裁量の範囲内というべきである。 イ原告らは,本件各告示による生活扶助基準の改定に際しては,ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行ったことによる最低生活費の減額の幅を10%を下限とする激変緩和措置を講じているから,ゆがみ調整の増減額の幅を 基準部会の検証結果の2分の1とすることは不要である旨主張する。 しかしながら,ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行ったことによる最低生活費の減 置を講じているから,ゆがみ調整の増減額の幅を 基準部会の検証結果の2分の1とすることは不要である旨主張する。 しかしながら,ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行ったことによる最低生活費の減額の幅を10%を下限とする措置は,ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行うことによって最低生活費が大幅に減額となる世帯の負担軽減を目的としたものであり,前記のゆがみ調整の増減額の幅を基準部会の検 証結果の2分の1とする措置とは目的や観点を異にするものである。 厚生労働大臣が考慮すべきでない事項(政権与党の政権公約の実現)を考慮したものではないことア原告らは,本件各告示による生活扶助基準の引下げには政治的意図が強く働いており,本来考慮してはならない事項を考慮したものであるから, 厚生労働大臣の裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用する違法がある旨主張する。 イしかしながら,本件各告示による生活扶助基準の見直しは,基準部会の検証結果に基づいて生活扶助基準における生活保護受給者間の較差を是正するとともに,デフレ傾向が続いてきた中で適切な生活扶助基準を再考す る必要が生じたことから行われたものであるし,生活扶助基準の見直しの 必要性は,平成19年報告書の段階から明らかにされていて,原油価格の高騰や金融危機の影響等からその見直しが見送られてきたにすぎない。また,A大臣は,生活保護基準部会等による報告を踏まえた検討をしなければならないことを前提とし,10%引下げという自民党の政権公約に盲従するものではないことを明言していたのである。 ウ以上のとおり,本件各告示による生活扶助基準の改定は,その必要性に応じて適切に行われたものであって,政治的意図に基づくものでないことは明らかである。したがって,厚生労 していたのである。 ウ以上のとおり,本件各告示による生活扶助基準の改定は,その必要性に応じて適切に行われたものであって,政治的意図に基づくものでないことは明らかである。したがって,厚生労働大臣が考慮すべきでない事項(政権公約)を考慮して生活扶助基準の改定を行ったとの原告らの主張は,失当である。 2 本件扶助基準改定に係る国家賠償法上の違法性の有無及び損害額(争点2)(原告らの主張)⑴ 前記1(原告らの主張)のとおり,厚生労働大臣は,生存権という国民の生活の根幹に関わる基本的な権利が関係する生活扶助基準の引下げにおいて,国の財政事情や国民感情を勘案し,政権与党の政権公約の実現という考 慮すべきでない事項を考慮してゆがみ調整及びデフレ調整を行ったものであり,デフレ調整においては,生活保護基準部会での議論を経ないまま,そもそも必要のない調整を行った上に,統計等の客観的数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性を欠いている生活扶助相当CPIを用いた上,ゆがみ調整については,第1・十分位の世帯を比較対象とし,生活保護受給世 帯を除くことなく第1・十分位の世帯と生活扶助基準を比較するという不合理な手法を採用し,さらに,生活保護基準部会での議論を経ないまま,調整幅を一律2分の1にするなど,その裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用して本件扶助基準改定をした。 厚生労働大臣の上記行為は,生活扶助基準の改定に当たって財政事情等の 生活外的要素を考慮しない職務上の義務及び統計等の客観的数値等との合理 的関連性や専門的知見との整合性を図るべき職務上の義務に反するものであり,原告らに対する関係で国家賠償法上違法というべきである。 原告らは,上記のとおり違法な本件扶助基準改定により,健康で文化的な最 連性や専門的知見との整合性を図るべき職務上の義務に反するものであり,原告らに対する関係で国家賠償法上違法というべきである。 原告らは,上記のとおり違法な本件扶助基準改定により,健康で文化的な最低限度の生活に到底満たない生活水準を強いられ,食事や入浴回数を減らし,衣服の購入も満足にできなくなり,電気・ガス・水道代を節約するため にエアコンの使用も控えなければならず,他者との交流までも控えざるを得ない状態となった。これにより原告らが被った精神的苦痛を慰謝するための金額は,原告ら1人当たり1万円を下らない。 よって,原告らは,被告国に対し,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求権を有する。 (被告国の主張)前記1(被告らの主張)のとおり,本件扶助基準改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用はなく,本件扶助基準改定は法3条又は8条2項の規定に違反するものではないから,厚生労働大臣の上記判断に職務上の義務違反はない。 第5 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実に加え,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 本件扶助基準改定に至る経緯等 ア水準均衡方式が導入されるまでの経緯等 生活扶助基準の改定方式については変遷があり,①昭和23年度ないし昭和35年度は「マーケットバスケット方式」(最低生活を営むために必要な飲食物費や衣類,家具什器,入浴料といった個々の品目を一つ一つ積み上げて最低生活費を算出する方式),②昭和36年度ないし昭和3 9年度は「エンゲル方式」(栄養審議会の答申に基づく栄養所要量を満た し得る食品を理論的に積み上げて計算し,別に低所得世帯の実態調査から,この飲食物費を支出している世帯のエンゲル 9年度は「エンゲル方式」(栄養審議会の答申に基づく栄養所要量を満た し得る食品を理論的に積み上げて計算し,別に低所得世帯の実態調査から,この飲食物費を支出している世帯のエンゲル係数の理論値を求め,これから逆算して総生活費を算出する方式),③昭和40年度ないし昭和58年度は「格差縮小方式」(民間最終消費支出の伸び率以上に生活扶助基準を引き上げ,結果的に一般国民と被保護世帯との消費水準の格差を 縮小させようとする方式)がそれぞれ採用された(乙8の2,10)。 格差縮小方式が採用されたことに伴い,被保護世帯の消費支出が一般国民の消費支出の60%を超えたことを受けて,厚生省(当時)の審議会である中央社会福祉審議会は,昭和58年12月23日,「生活扶助基準及び加算のあり方について(意見具申)」(以下「昭和58年意見具申」 という。)を作成した。昭和58年意見具申の内容は,概略,以下のとおりであった。(乙9)a 生活扶助基準の評価(a) 生活保護において保障すべき最低生活の水準は,一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであることは,既 に認められているところである。 (b) 総理府(現在の内閣府)作成の家計調査を所得階層別に詳細に分析検討した結果,現在の生活扶助基準は,一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達しているとの所見を得た。 しかし,国民の生活水準は,今後も向上すると見込まれるので,生 活保護受給世帯及び低所得世帯の生活実態を常時把握しておくことはもちろんのこと,生活扶助基準の妥当性についての検証を定期的に行う必要がある。 b 生活扶助基準改定方式(a) 生活保護において保障すべき最低 得世帯の生活実態を常時把握しておくことはもちろんのこと,生活扶助基準の妥当性についての検証を定期的に行う必要がある。 b 生活扶助基準改定方式(a) 生活保護において保障すべき最低生活の水準は,一般国民生活に おける消費水準との比較における相対的なものとして設定すべきもの であり,生活扶助基準の改定に当たっては,当該年度に想定される一般国民の消費動向を踏まえると同時に,前年度までの一般国民の消費水準との調整が図られるよう適切な措置を採ることが必要である。 (b) 当該年度に予想される国民の消費動向に対応する見地から,政府経済見通しの民間最終消費支出の伸びに準拠することが妥当である。 なお,賃金や物価は,そのままでは消費水準を示すものではないので,その伸びは,参考資料にとどめるべきである。 昭和58年意見具申を受け,昭和59年4月以降,生活扶助基準の改定方式については,毎年度の政府経済見通しの民間最終消費支出の伸び率を基礎とし,国民の消費動向や社会経済情勢を総合的に勘案して,前 年度までの一般国民の消費水準との調整を図る水準均衡方式が導入された。 イ在り方専門委員会における生活扶助基準の検証 平成15年,経済活動が低迷し,賃金,物価及び家計消費がいずれも下落するデフレ状況が続いていたなどの社会経済情勢の下,財務省の審 議会である財務制度等審議会の建議において生活扶助基準・加算の引下げ・廃止等が必要であるなどとされ,社会保障審議会も,同年6月16日,「今後の社会保障改革の方向性に関する意見」において,生活保護については,他の社会保障制度との関係等にも留意しつつ,今後その在り方についてより専門的に検討していく必要がある旨を指摘した(乙13 日,「今後の社会保障改革の方向性に関する意見」において,生活保護については,他の社会保障制度との関係等にも留意しつつ,今後その在り方についてより専門的に検討していく必要がある旨を指摘した(乙13 の2)。 内閣は,平成15年6月27日,「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」を閣議決定し,その中で,生活保護においても,物価,賃金動向,社会経済情勢の変化,年金制度改革などとの関係を踏まえ,老齢加算等の扶助基準など制度,運営の両面にわたる見直しが必要であ るなどとした(乙13の2)。 上記及びのような状況を踏まえ,平成15年7月,保護基準の在り方等の生活保護制度全般について議論するため,社会保障審議会福祉部会の下に「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」(在り方専門委員会)が設置された。 在り方専門委員会は,同年8月から同年12月に至るまで合計6回に わたり開催され,保護基準の在り方等を始めとする生活保護制度全般について,検証が行われた(以下「平成15年検証」という。)。 (以上につき,乙13の1,44) 在り方専門委員会は,平成15年12月16日,生活扶助基準の考え方を示すものとして,「生活保護制度の在り方についての中間取りまとめ」 (以下「平成15年中間取りまとめ」という。)を公表した。平成15年中間取りまとめには,生活扶助基準の改定方式の在り方について,概要,以下の内容が記載されていた。(乙14)a 生活保護において保障すべき最低生活の水準は,一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであり,具体的には, 第1・十分位の世帯の消費水準に着目することが適当である。 b 生活扶助 いて保障すべき最低生活の水準は,一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであり,具体的には, 第1・十分位の世帯の消費水準に着目することが適当である。 b 生活扶助基準の改定方式について,水準均衡方式が概ね妥当であると認められてきたが,最近の経済情勢はこの方式を採用した当時と異なることから,例えば5年間に一度の頻度で,生活扶助基準の水準について定期的に検証を行うことが必要である。 c 定期的な検証を行うまでの毎年の改定については,近年,民間最終消費支出の伸びの見通しがプラス,実績がマイナスとなるなど安定しておらず,また,実績の確定も遅いため,これによる被保護世帯への影響が懸念されることから,改定の指標の在り方についても検討が必要である。この場合,国民にとって分かりやすいものとすることが必 要なので,例えば,年金の改定と同じように消費者物価指数の伸びも 改定の指標の一つとして用いることなども考えられる。 在り方専門委員会は,平成15年中間取りまとめを公表した後も,生活扶助基準の検証を行い,平成16年12月15日,「生活保護制度の在り方に関する専門委員会報告書」(平成16年報告書)を公表した。平成16年報告書には,概要,以下の内容が記載されていた。(乙5) a 生活保護制度の見直しの方向性について平成16年報告書は,平成15年中間取りまとめ以降引き続き行った保護基準の妥当性の検証・評価及び自立支援等生活保護の制度・運用の在り方に関する検討を踏まえ,その改善の方向を示したものである。 b 保護基準の在り方について(a) 生活扶助基準の評価・検証等について① 評価・検証水準均 ,その改善の方向を示したものである。 b 保護基準の在り方について(a) 生活扶助基準の評価・検証等について① 評価・検証水準均衡方式により,勤労3人世帯の生活扶助基準について,一般低所得世帯の消費支出額との比較において検証・評価した結果, その水準は基本的に妥当であったが,今後,生活扶助基準と一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか否かを定期的に見極めるため,全国消費実態調査等を基に5年に一度の頻度で検証を行う必要がある。 これらの検証に際しては,地域別,世帯類型別等に分けるととも に,調査方法及び評価手法についても専門家の知見を踏まえることが妥当である。 ② 設定及び算定方法現行の生活扶助基準の設定は3人世帯を基軸としており,また,算定については,世帯人員数分を単純に足しあげて算定される第1 類費(個人消費部分)と,世帯規模の経済性(いわゆるスケールメ リット)を考慮して世帯人員数に応じて設定されている第2類費(世帯共同消費部分)とを合算する仕組みが採用されているため,世帯人員別にみると,必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていない。このため,特に次の点について改善が図られるよう,設定及び算定方法について見直しを検討する必要がある。 【多人数世帯基準の是正】多人数世帯になるほど生活扶助基準額は割高になるとの指摘がされているが,これは,世帯人数が増すにつれ第1類費の比重が高くなるためである。このため,平成15年中間取りまとめにおいて指摘した第2類費の構成割合及び多人数世帯の換算率に関す る見直し等について検討 が,これは,世帯人数が増すにつれ第1類費の比重が高くなるためである。このため,平成15年中間取りまとめにおいて指摘した第2類費の構成割合及び多人数世帯の換算率に関す る見直し等について検討する必要がある。 【単身世帯基準の設定】平成15年中間取りまとめで指摘したとおり,単身世帯の生活扶助基準についても,必ずしも一般低所得世帯の消費実態を反映したものとなっていない。また,被保護世帯の7割は単身世帯が 占めていること,近年,高齢化の進展や扶養意識の変化に伴って高齢単身世帯の増加が顕著となっており,今後もさらにその傾向が進むと見込まれる。これらの事情に鑑み,単身世帯については,一般低所得世帯との均衡を踏まえて別途の生活扶助基準を設定することについて検討することが必要である。 (b) 級地について現行級地制度については,昭和62年度から最大格差22.5%,6区分制とされているが,現在の一般世帯の生活扶助相当消費支出額をみると,地域差が縮小する傾向が認められたところである。このため,市町村合併の動向にも配慮しつつ,級地制度全般について見直し を検討することが必要である。 (c) その他前記(a)①の定期的な評価を行う際には,今回行われた基準の見直しに係る事情についても評価の対象とし,専門家による委員会等において詳細な分析や検証を行い,被保護世帯の生活への影響等も十分調査の上,必要な見直しを検討することが求められる。 ウ生活扶助基準に関する検討会による検証等 内閣は,平成18年7月,「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」を閣議決定した。上記閣議決定では,生活保護(扶助)の見直しに ウ生活扶助基準に関する検討会による検証等 内閣は,平成18年7月,「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」を閣議決定した。上記閣議決定では,生活保護(扶助)の見直しに関して以下のとおりの指摘があった。(乙15の2)a 以下の内容について,早急に見直しに着手し,可能な限り平成19 年度に実施し,間に合わないものについても平成20年度には確実に実施する。 (a) 生活扶助基準について,低所得世帯の消費実態等を踏まえた見直しを行う。 (b) 級地の見直しを行う。 b 現行の生活保護制度は抜本的改革が迫られており,早急に総合的な検討に着手し,改革を実施する。 平成16年報告書及び上記の閣議決定を受けて,平成19年,厚生労働省社会・援護局長の下部組織として,学識経験者5名を委員とする「生活扶助基準に関する検討会」(生活扶助基準検討会)が設置された。 なお,生活扶助基準検討会は,国家行政組織法に基づく審議会等に当たるものではなく,厚生労働省社会・援護局長が行政運営上の参考に資するため,有識者の参集を求め意見聴取を行った会議体である。 生活扶助基準検討会は,同年10月19日から同年11月30日にかけて5回にわたり開催され,直近(平成16年)の全国消費実態調査の 特別集計結果等に基づき,① 生活扶助基準の水準の妥当性(生活保護 を受給していない低所得世帯における消費実態との均衡が適切に図られているかどうか),② 生活扶助基準の体系の妥当性(第1類費及び第2類費の合算によって算出される基準額が消費実態を反映しているかどうか),③ 地域差の妥当性(現行の級地制度による基準額の格差が地域間における生活水準の差を反映してい の体系の妥当性(第1類費及び第2類費の合算によって算出される基準額が消費実態を反映しているかどうか),③ 地域差の妥当性(現行の級地制度による基準額の格差が地域間における生活水準の差を反映しているかどうか)等について,評価及び 検証を行った(以下,この検証を「平成19年検証」という。)。(乙6,15の1) 生活扶助基準検討会は,平成19年11月30日,平成19年検証の結果に基づき,「生活扶助基準に関する検討会報告書」(平成19年報告書)を作成し,公表した。平成19年報告書の内容は,概略,以下のと おりであった。(乙6,15の1)a 生活扶助基準の水準について① 生活扶助基準の設定に当たっては,水準均衡方式が採用されていることから,その水準は,国民の消費実態との関係,あるいは本人の過去の消費水準との関係で相対的に決まるものとされている。し たがって,生活扶助基準の水準に関する評価・検証に当たっては,これらの点を総合的にみて妥当な水準となっているかという観点から行うことが必要である。 なお,生活扶助基準額は,これまで第1・十分位の消費水準と比較することが適当とされてきたところ,① 第1・十分位の消費水 準は,平均的な世帯の消費水準に照らして相当程度に達していること,② 第1・十分位に属する世帯における必需的な耐久消費財の普及状況は,平均的な世帯と比べて大きな差はなく,また,必需的な消費品目の購入頻度は,平均的な世帯と比較しても概ね遜色ない状況にあることから,今回,これを変更する理由は特段ないと考え る(ただし,単身世帯〔60歳以上〕については,第1・十分位の 消費水準は,第3・五分位の5割〔第1・五分位の約6割〕にとどまっている点に留意する必要がある。 理由は特段ないと考え る(ただし,単身世帯〔60歳以上〕については,第1・十分位の 消費水準は,第3・五分位の5割〔第1・五分位の約6割〕にとどまっている点に留意する必要がある。)。なお,これまでの給付水準との比較も考慮する必要がある。 ② 勤労3人世帯の平均の生活扶助基準額は,世帯当たり15万0408円であり,これは,第1・十分位における該当世帯の生活扶助 相当支出額(消費支出額から生活扶助に相当しないものを除いたもの。以下同じ。)が世帯当たり14万8781円であったのに対し,やや高めとなっている。 単身世帯(60歳以上)の平均の生活扶助基準額は,世帯当たり7万1209円であり,これは,第1・十分位における該当世帯の 生活扶助相当支出額が世帯当たり6万2831円であったのに対し,高めとなっている。 b 生活扶助基準の体系について生活扶助基準の体系に関する評価及び検証は,世帯構成等が異なる生活保護受給者間において実質的な給付水準の均衡が図られる体系 としていくべきとの観点から行い,その上で必要な見直しを行っていくことが必要である。上記の観点から,生活扶助基準の世帯人員別及び年齢階級別の基準額が消費実態を反映しているかを検討する。 ① 世帯人員別の基準額の水準第1・五分位における世帯人員別の生活扶助基準額及び生活扶助 相当支出額を比較検討すると,仮に世帯人員が1人の世帯の生活扶助基準額及び生活扶助相当支出額をそれぞれ1とした場合,4人世帯の生活扶助基準額は2.27(生活扶助相当支出額は1.99),5人世帯の生活扶助基準額は2.54(生活扶助相当支出額は2. 14)となっており,世帯人員4人以上の多人数世帯の方が世帯人 員1人 の生活扶助基準額は2.27(生活扶助相当支出額は1.99),5人世帯の生活扶助基準額は2.54(生活扶助相当支出額は2. 14)となっており,世帯人員4人以上の多人数世帯の方が世帯人 員1人の世帯に比して有利(生活扶助基準額が生活扶助相当支出額 より高い)になっている実態がみられる。 ② 年齢階級別の基準額の水準単身世帯の第1ないし第3・五分位における年齢階級別の生活扶助相当支出額及び生活扶助相当支出額を比較検討すると,仮に60歳代の生活扶助基準額及び生活扶助相当支出額をそれぞれ1とし た場合,20歳ないし39歳の生活扶助基準額は1.05(生活扶助相当支出額は1.09),40歳ないし59歳の生活扶助基準額は1.03(生活扶助相当支出額は1.08)となっている一方,70歳以上の生活扶助基準額は0.95(生活扶助相当支出額は0. 88)となっており,60歳未満では生活扶助基準額より生活扶助 相当支出額の方が高く,70歳以上では生活扶助基準額より生活扶助相当支出額の方が低くなるなど,消費実態からかい離している。 c 生活扶助基準の地域差について現行の級地制度における地域差を設定した当時(昭和59年)の消費実態と直近(平成16年)の消費実態を比較すると,地域差が縮小 している傾向がみられる。 生活扶助基準検討会の委員5名は,平成19年12月11日,「『生活扶助基準に関する検討会報告書』が正しく読まれるために」と題する書面を連名で作成し,同書面中で,平成19年報告書における「これまでの給付水準との比較も考慮する必要がある」旨の記載について,生活扶 助基準額の引き下げについては慎重であるべきとの考えを意図したものであるが,こうした政策判 平成19年報告書における「これまでの給付水準との比較も考慮する必要がある」旨の記載について,生活扶 助基準額の引き下げについては慎重であるべきとの考えを意図したものであるが,こうした政策判断は生活扶助基準検討会の目的の範囲を超えており,今後,行政当局あるいは政治の場において,総合的に判断されるべきものであるとの見解を述べた(甲8)。 エ生活扶助基準の据置き等 平成17年度から平成19年度までの生活扶助基準の据置き 厚生労働大臣は,平成17年度から平成19年度までについては,当該年度の政府経済見通しにおける民間最終消費支出の伸び率を基礎とし,前年度までの一般国民の消費水準との調整を行った結果,生活扶助基準と消費実態との間に齟齬は生じていないと判断し,生活扶助基準を据え置いた(乙11,16,76~78)。 平成19年報告書以降の生活扶助基準の据置き厚生労働大臣は,平成19年報告書において,夫婦子一人(標準世帯)及び単身高齢世帯(60歳以上)の生活扶助基準が第1・十分位における生活扶助相当支出額よりも高めとなっているなどの結果が示されたことから,生活扶助基準を消費実態に適合させる方向で見直すことを検討 したものの,平成19年報告書を基礎としつつ,原油価格の高騰が消費に与える影響等を見極めるため,平成20年度は生活扶助基準を据え置くこととし,平成21年度についても,平成20年2月以降の生活関連物資を中心とした物価上昇の家計への影響が大きいことや,同年9月のいわゆるリーマンショックに端を発した世界的な金融危機が実体経済へ 深刻な影響を及ぼしており,国民の将来不安が高まっている状況にあることなどの社会経済情勢に鑑み,引き続き生活扶助基準を 9月のいわゆるリーマンショックに端を発した世界的な金融危機が実体経済へ 深刻な影響を及ぼしており,国民の将来不安が高まっている状況にあることなどの社会経済情勢に鑑み,引き続き生活扶助基準を据え置くこととした。 その後も,厚生労働大臣は,平成22年度においては,完全失業率が高水準で推移するなどの厳しい経済・雇用状況を踏まえ,国民生活の安 心が確保されるべき状況にあることに鑑み,また,平成23年度及び平成24年度においても,経済,雇用情勢等を総合的に勘案して,引き続き生活扶助基準を据え置くこととした。 (以上につき,乙11,16,79~83) 他方で,① 一般勤労世帯の賃金(事業者規模5人以上の調査産業計 の1人平均月間現金給与総額)の前年比は,平成17年が0.6%,平 成18年が0.3%,平成19年が-1.0%,平成20年が-0.3%,平成21年が-3.9%,平成22年が0.5%,平成23年が-0. 2%,平成24年が-0.7%と減少傾向にあり,② 消費者物価上昇率の前年比は,平成17年が-0.3%,平成18年が0.3%,平成19年が0.0%,平成20年が1.4%,平成21年が-1.4%, 平成22年が-0.7%,平成23年が-0.3%,平成24年が0. 0%と,平成21年から平成23年まで3年連続で前年比マイナス(3年間で-2.4%)となっており,③ 全国勤労者世帯家計収支のうち家計消費支出(名目値)の前年比も,平成17年が-0.6%,平成18年が-2.8%,平成19年が1.0%,平成20年が0.5%,平 成21年が-1.8%,平成22年が-0.2%,平成23年が-3. 0%,平成24年が1.6%と,平成21年から平成23年まで3年連続で前年比マイナス(3年間 .0%,平成20年が0.5%,平 成21年が-1.8%,平成22年が-0.2%,平成23年が-3. 0%,平成24年が1.6%と,平成21年から平成23年まで3年連続で前年比マイナス(3年間で-5.0%)となるなど,平成20年以降,賃金,物価及び家計消費がいずれも下落するデフレ傾向が継続していた。 また,完全失業率は,平成17年が4.4%,平成18年が4.1%,平成19年が3.8%,平成20年が4.0%,平成21年が5.1%,平成22年が5.0%,平成23年が4.6%,平成24年が4.3%となっており,厳しい経済・雇用情勢等を反映して,生活保護受給者数は平成23年7月に過去最高の205万人に達し,その後も引き続き増 加しており,これに伴って生活保護費負担金は年々増加して平成23年度には約3.5兆円に上っていた。 このような状況を受けて,生活困窮者対策及び生活保護制度の見直しの必要性が指摘され,平成24年8月に成立した社会保障制度改革推進法附則2条1号には,生活扶助,医療扶助等の給付水準の適正化等の必 要な見直しを早急に行うことが明記されるに至った。 (以上につき,乙12,13の2)オ基準部会による検証等 平成23年2月,厚生労働省の審議会である社会保障審議会の下に生活保護基準部会が設置され,生活扶助基準に関する検証及び評価が行われた。生活保護基準部会は,5年に1度の頻度で実施される全国消費実 態調査の特別集計データ等を用いて,定期的な保護基準の専門的かつ客観的な評価・検証を行うことを目的として,社会保障審議会運営規則2条に基づき,常設部会として設置されたものであり,B大学教授Cを部会長,D大学名誉教授Eを部会長代理,その他に6名の社会保障等の専門家を委員 価・検証を行うことを目的として,社会保障審議会運営規則2条に基づき,常設部会として設置されたものであり,B大学教授Cを部会長,D大学名誉教授Eを部会長代理,その他に6名の社会保障等の専門家を委員とする審議会である。 基準部会では,同年4月19日以降,月1回程度の頻度で会合を持ち,保護基準について評価・検証を行った(以下,この検証内容を「平成25年検証」という。)。(甲3,乙7,23,25) 基準部会では,平成21年の全国消費実態調査に基づいて生活扶助基準の在り方が検討されたが,後述するとおり(後記参照),生活扶助基 準の水準が一般低所得世帯の消費水準と均衡しているかを検証することはせず,生活扶助基準の展開部分の適正化を図るという観点から,年齢階級別,世帯人員別及び級地別の生活扶助基準額と消費実態とのかい離を検証することとし,具体的には,年齢階級別,世帯人員別及び級地別の一般低所得世帯の生活扶助相当支出額を,それぞれ0~2歳,単身世 帯,1級地-1の額を1として指数化し(消費実態による指数),年齢階級別,世帯人員別及び級地別の生活扶助基準額を指数化したもの(生活扶助基準額による指数)と比較した。その際,比較対象となる一般低所得世帯は,第1・十分位の世帯とすることとされたが,比較対象となる第1・十分位の世帯から,生活保護受給世帯は除外されなかった。また, 消費実態による指数と生活扶助基準額による指数の作成に当たっては, 前記のとおり,基準部会の検証が,生活扶助基準額自体の妥当性を検証することを直接の目的とするものではなく,生活扶助基準の展開部分の適正化を図ることを目的とするものであることから,第1・十分位のサンプル世帯が全て生活保護を受給した場合の生活扶助基準額の平均と当該サンプル を直接の目的とするものではなく,生活扶助基準の展開部分の適正化を図ることを目的とするものであることから,第1・十分位のサンプル世帯が全て生活保護を受給した場合の生活扶助基準額の平均と当該サンプル世帯の生活扶助相当支出額の平均とが同額になるように指数 が作成された。 平成25年1月16日に開催された第12回基準部会において,上記の手法による検証結果がまとまり,厚生労働省社会・援護局保護課から「生活保護基準部会報告書(案)」(平成25年報告書の原案)が示された。同報告書案には,「厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検 討する際には,本報告書の評価・検証の結果を考慮した上で,他に合理的説明が可能な経済指標などがあれば,それらについても根拠を明確にして改定されたい。」,「全ての要素については分析・説明に至らなかったが,合理的説明がつく要素については,それを勘案することは一つの考え方である。」との記載があった。 厚生労働省社会・援護局保護課の担当者は,平成25年報告書(原案)における上記の記載内容について,基準部会の委員からの質問に対し,年齢階級別,世帯人員別及び級地別による生活扶助基準の見直しを行っても,第1・十分位との間に一定の差が存在するため,合理的説明が可能であれば消費に影響を及ぼす因子を考慮することは1つの方向性とし てあり得るところであり,その場合,政府が発表する経済指標等を加味することは正当化できるであろうという趣旨であり,当該指標について例を挙げるとすれば,消費者物価指数や賃金の動向が考えられる旨の説明をした。これに対して,基準部会の委員からは,保護基準の改定に当たって,物価指数を考慮することは非常に慎重に考えなくてはいけない, 基準部会では,年齢,世帯人員,級地 動向が考えられる旨の説明をした。これに対して,基準部会の委員からは,保護基準の改定に当たって,物価指数を考慮することは非常に慎重に考えなくてはいけない, 基準部会では,年齢,世帯人員,級地という3要素しか議論しておらず, 消費者物価指数や賃金の動向については何も議論していないことを明確にしてもらいたいなどの意見が出され,これを受けて,平成25年報告書においては,「厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には,本報告書の評価・検証の結果を考慮し,その上で他に合理的説明が可能な経済指標などを総合的に勘案する場合は,それらの根拠につい ても明確に示されたい。」と修正された。(甲94の1~3,甲95,乙26,74) 基準部会は,平成25年1月18日,基準部会における検証結果を取りまとめた平成25年報告書を公表した。平成25年報告書の内容は,概略,以下のとおりであった。(甲3,乙7) a 基準部会の役割と検証概要(a) 基準部会の役割基準部会は,年齢階級別,世帯人員別,級地別に,生活扶助基準額と消費実態のかい離を詳細に分析し,様々な世帯構成に展開するための指数について検証を行った。 (b) 検証方針と検証概要平成25年検証においては,生活扶助基準と対比する一般低所得世帯として,第1・十分位を設定した。 その上で,様々な世帯構成の基準額を算出する際に基本となる年齢,世帯人員及び地域別の基準額が第1・十分位の消費実態を十分反映し ているかについて,より詳細な検証を行うことにした。その際,仮に第1・十分位の全ての世帯が生活保護を受給した場合の1世帯当たりの平均受給額が不変となるようにして,体系(年齢,世帯 十分反映し ているかについて,より詳細な検証を行うことにした。その際,仮に第1・十分位の全ての世帯が生活保護を受給した場合の1世帯当たりの平均受給額が不変となるようにして,体系(年齢,世帯人員)及び級地の基準額の水準への影響を評価する方法を採用した。 b 検証に使用した統計データ 今回の検証では国民の消費実態を世帯構成別に細かく分析する必要が あるため,平成21年全国消費実態調査(以下「全消調査」という。)の個票データを用いた。 今回の検証は,様々な世帯構成に対する基準の展開の妥当性を指数によって把握しようとするものである。この指数は,第1・十分位の世帯の生活扶助相当支出を用いて算出した。第1・十分位の世帯を用いた理 由は以下のとおりである。 (a) 指数を全方位の所得階層(全世帯)又は中位所得階層(第3・五分位)等から算出することも可能だが,これまでの検証に倣い,生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが現実的であると判断したこと (b) 第1・十分位の平均消費水準は,中位の所得階層の約6割に達していること(c) 国民の過半数が必要であると考えている必需的な耐久消費財について,第1・十分位に属する世帯における普及状況は,中位所得階層と比べて概ね遜色なく充足されている状況にあること (d) 全所得階層における年間収入総額に占める第1・十分位の年間収入総額の構成割合はやや減少傾向であるものの,高所得階層を除くその他の十分位の傾向をみても等しく減少しており,特に第1・十分位が減少しているわけではないこと(e) OECDの国際基準によれば,等価可処分所得(世帯の可処分所得に ついて,ス その他の十分位の傾向をみても等しく減少しており,特に第1・十分位が減少しているわけではないこと(e) OECDの国際基準によれば,等価可処分所得(世帯の可処分所得に ついて,スケールメリットを考慮して世帯人員数の平方根で除したもの)の中央値(全データの真中の値)の半分に満たない世帯は相対的貧困層であるとされる。今回の検証に用いた平成21年全消調査での等価可処分所得の中央値は約270万円であるが,第1・十分位の等価可処分所得の平均は92万円,最大では135万円となっている。これは,第1・ 十分位に属する世帯の大分部分はOECDの基準では相対的貧困線以下 にあることを示していること(f) 分散分析等の統計的手法により検証したところ,各十分位間のうち,第1・十分位と第2・十分位の間において消費が大きく変化しており,他の十分位の世帯に比べて消費の動向が大きく異なると考えられることc 検証手法 (a) 生活扶助基準の体系(年齢・世帯人員)① 年齢階級別の基準額の水準年齢階級別に設定されている生活扶助基準の第1類費について,異なる年齢階級間の比率(指数)が,消費実態と比べてどれほどのかい離があるかを検証した。 分析に際しては,スケールメリットが最大に働く場合(単純に世帯年収に着目)と最少に働く場合(1人当たりの世帯年収に着目)のそれぞれの想定に応じた2種類の第1・十分位を設定し,それぞれを用いて算出された指数の平均値を採用した。 ② 世帯人員別の基準額の水準 平成25年検証では,第1類費相当支出及び第2類費相当支出ごとに,各世帯人員別の平均消費水準を指数化し(単身世帯を1とする。),現行 ② 世帯人員別の基準額の水準 平成25年検証では,第1類費相当支出及び第2類費相当支出ごとに,各世帯人員別の平均消費水準を指数化し(単身世帯を1とする。),現行の基準額を同様に指数化したものと比較した。なお,第1類費相当支出のスケールメリットについては,①で求められた年齢階級に応じた消費の指数を用いて世帯人員全員が実際の年齢にかかわらず,平 均並みの消費をする状態に補正することにより年齢の影響を除去し,世帯人員による影響のみを評価できるようにした。 (b) 生活扶助基準の地域差平成25年検証では,世帯人員別の検証と同様に,平成19年報告書の考え方を用いて集計データより平均値を求め,各級地別に1人当たり 生活扶助相当の平均消費水準を指数化したもの(1級地-1を1とする。) と,現行の基準額を同様に指数化したものとを比較した。なお,指数化に当たっては,第1類費相当支出部分については世帯人員体系の検証と同様に年齢の影響を除去するとともに,(a)②の過程で求められる世帯人員に応じた消費の指数で第1類費相当支出及び第2類費相当支出の合計の消費を調整することにより世帯人員数による消費水準の相違の影響を 除去し,地域差による影響のみを評価できるようにした。 d 検証結果と留意事項(a) 検証結果① 年齢階級別(第1類費)の基準額の水準0~2歳の生活扶助相当支出額を1としたときの各年齢階級別の生 活扶助基準額の指数(括弧内は生活扶助相当支出額の指数)は,0~2歳が0.69(1.00),3~5歳が0.86(1.03),6~11歳が1.12(1.06),12~19歳が1.37(1.10),20~40歳が1.31 括弧内は生活扶助相当支出額の指数)は,0~2歳が0.69(1.00),3~5歳が0.86(1.03),6~11歳が1.12(1.06),12~19歳が1.37(1.10),20~40歳が1.31(1.12),41~59歳が1.26(1. 23),60~69歳が1.19(1.28),70歳以上が1.06 (1.08)となっており,各年齢階級間の指数にかい離が認められる。 ② 世帯人員別(第1類費及び第2類費)の基準額の水準第1類費の場合,単身世帯の生活扶助相当支出額を1としたときの各世帯人員別の生活扶助基準額の指数(括弧内は生活扶助相当支出額 の指数)は,単身世帯が0.88(1.00),2人世帯が1.76(1. 54),3人世帯が2.63(2.01),4人世帯が3.34(2. 34),5人世帯が3.95(2.64)となっており,世帯人員が増えるにつれて,生活扶助基準額と生活扶助相当支出額(消費実態)とのかい離が拡大する傾向が認められた。 第2類費の場合,単身世帯の生活扶助相当支出額を1としたときの 各世帯人員別の生活扶助基準額の指数(括弧内は生活扶助相当支出額の指数)は,単身世帯が1.06(1.00),2人世帯が1.18(1. 34),3人世帯が1.31(1.67),4人世帯が1.35(1. 75),5人世帯が1.36(1.93)となっており,同様に,世帯人員が増えるにつれて,生活扶助基準額と生活扶助相当支出額(消費 実態)とのかい離が拡大する傾向が認められた。 ③ 級地別の基準額の水準1級地-1の生活扶助相当支出額を1としたときの各級地別の生活扶助基準額の指数(括弧内は生活扶助相当支出額の指数)は,1級地-1が1.02(1.00),1級 ③ 級地別の基準額の水準1級地-1の生活扶助相当支出額を1としたときの各級地別の生活扶助基準額の指数(括弧内は生活扶助相当支出額の指数)は,1級地-1が1.02(1.00),1級地-2が0.97(0.96),2 級地-1が0.93(0.90),2級地-2が0.88(0.90),3級地-1が0.84(0.87),3級地-2が0.79(0.84)となっており,生活扶助基準額の地域差より生活扶助相当支出額(消費実態)の地域差の方が小さくなっている。 ④ 年齢・世帯人員・地域の影響を考慮した場合の水準 上記①ないし③の検証結果を生活扶助基準額に反映させた場合の各世帯への影響は,年齢,世帯人数及び居住地域の組合せによって様々であり,検証結果を完全に生活扶助基準に反映させた場合の生活扶助基準額と現行の生活扶助基準額を比較した結果を平均値でみると,(a)夫婦と18歳未満の子1人世帯では-8.5%。(b)夫婦と1 8歳未満の子2人世帯では-14.2%,(c)60歳以上の単身世帯では+4.5%,(d)共に60歳以上の高齢夫婦世帯では+1.6%,(e)20歳~50歳代の若年単身世帯では-1.7%,(f)母親と18歳未満の子1人の母子世帯では-5.2%となった。 (b) 検証結果に関する留意事項 ① 全所得階層における年間収入総額に占める各所得五分位及び十分位 の年間収入総額の構成割合の推移をみると,中位所得階層である第3・五分位の占める割合及び第1・十分位の占める割合が共に減少傾向にあり,その動向に留意しつつ,これまで生活扶助基準の検証の際に参照されてきた一般低所得世帯の消費実態については,なお今後の検証が必要である。特に,第1・十分位の者にとっては,全所得階層にお 少傾向にあり,その動向に留意しつつ,これまで生活扶助基準の検証の際に参照されてきた一般低所得世帯の消費実態については,なお今後の検証が必要である。特に,第1・十分位の者にとっては,全所得階層にお ける年間収入総額に占める当該分位の年間収入総額の構成割合にわずかな減少があっても,その影響は相対的に大きいと考えられることに留意すべきである。また,現実には,第1・十分位の階層には保護基準以下の所得水準で生活している者も含まれることが想定される点についても留意が必要である。 ② 今後,生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には,現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯,特に貧困の世代間連鎖を防止する観点から,子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある。 カ生活扶助基準の見直しに至る経緯 内閣は,平成25年1月29日,平成25年度の政府予算案を閣議決定した(乙49)。 厚生労働省は,平成25年2月19日,全国厚生労働関係部局長会議を実施した。その際,平成25年度の政府予算案について配布された資料には,概略,以下の記載があった。(甲9) a 生活扶助基準の見直しの考え方と影響額① 基準部会における検証結果を踏まえた年齢・世帯人員・地域差による影響の調整,② 前回見直し(平成20年)以降の物価の動向(-4.78%)を考慮し,3年程度かけて生活扶助基準を見直す。これにより,①について約90億円,②について,本体分約510億円, 加算分約70億円(①及び②の合計約670億円),6.5%程度の財 政効果が生じる。 b 個々の世帯に着目した見直しの概要デフレ調整については,受給者全員に影響するが, 0億円(①及び②の合計約670億円),6.5%程度の財 政効果が生じる。 b 個々の世帯に着目した見直しの概要デフレ調整については,受給者全員に影響するが,デフレ調整及びゆがみ調整による生活扶助基準額の変化をみると,該当世帯の25%が5%~10%の減額となり(このうち9%~10%の減額となる世 帯は2%),該当世帯の71%が0%~5%の減額となり,該当世帯の3%が0%~2%の増額となる。 c 生活扶助に係る物価の動向について生活扶助は,食費や水道光熱費といった基礎的な日常生活費を賄うものであり,生活扶助に係る物価の動向については,生活扶助に相当 する消費品目のCPI(物価指数)をみる必要がある。具体的には,品目別の消費者物価指数のうち,① 家賃,教育費及び医療費等の生活扶助以外の他扶助で賄われる品目,② 自動車関係費及びNHK受信料等の原則生活保護受給世帯には生じない品目を除いた品目を用いて,生活扶助相当CPIを算出した。これに基づき算出した生活扶助 相当CPIを用いて,平成20年(104.5)ないし平成23年(99.5)の生活扶助相当CPIの変化率を算定すると,-4.78%であった。 d 生活扶助基準の検証結果平成25年検証では,平成21年全消調査等のデータを用いて,生 活扶助基準額と第1・十分位の世帯の消費実態について,年齢階級間,世帯人員間,級地間の相対関係について指数によって比較を行い,そのかい離について検証を行った。 これによると,年齢階級別でみると現行基準の想定している相対的な指数と消費実態による指数の間にかい離が認められ,同様に世帯人 員別に指数の状態をみても,現行基準と消費実態 た。 これによると,年齢階級別でみると現行基準の想定している相対的な指数と消費実態による指数の間にかい離が認められ,同様に世帯人 員別に指数の状態をみても,現行基準と消費実態の間に世帯人員が増 えるにつれてかい離が拡大する傾向が認められた。また,級地別についても比較対照したところ,現行基準が想定している地域差より消費実態の地域差の方が小さくなっていることが認められた。 なお,平成25年報告書では,厚生労働省において生活扶助基準の見直しを検討する際には,平成25年報告書の評価・検証の結果を考 慮し,その上で他に合理的説明が可能な経済指標等を総合的に勘案する場合は,それらの根拠についても明確に示すよう指摘された。 e 生活扶助基準等の見直し今回の生活扶助基準等の見直しでは,平成25年検証結果に基づき,ゆがみ調整を行うとともに,近年デフレ傾向が続いているにもかかわ らず,生活扶助基準額が据え置かれてきたことを踏まえ,平成19年検証の結果を考慮して,平成20年の基準が定められたことから,それ以降の物価動向を勘案することとした。今回の見直しはこうした合理的な考え方に基づく適正化を図るものである。また,各種加算についても同様に物価動向を勘案することとしている。 なお,激変緩和の観点から見直しの影響を一定程度に抑えるため,現行基準から増減幅が±10%を超えないように調整することとし,さらに3年間の経過措置を設け,見直しを段階的に行うこととする。 f 生活扶助基準の見直しに伴う他制度への影響今回の生活扶助基準の見直しに伴う他制度への影響については,そ れぞれの趣旨や目的・実態を十分考慮しながら,できる限りその影 f 生活扶助基準の見直しに伴う他制度への影響今回の生活扶助基準の見直しに伴う他制度への影響については,そ れぞれの趣旨や目的・実態を十分考慮しながら,できる限りその影響が及ばないよう,政府全体として対応する。 内閣は,平成25年2月28日,前記の政府予算案を国会に提出した(乙49)。 厚生労働省は,平成25年3月11日,社会・援護局関係主管課長会 議を実施し,上記と同旨の資料を配布した(乙17)。 平成25年5月15日,前記の政府案のとおり平成25年度政府予算案が成立した(乙49)。 厚生労働事務次官は,平成25年5月16日,都道府県知事,指定都市市長,中核市市長に対し,上記と同旨の資料を添付した上で,「生活扶助基準の見直しに伴い他制度に生じる影響について」と題する通知を 発出した(甲4,乙20)。 厚生労働省は,平成25年5月20日,生活保護関係全国係長会議を開催し,上記と同旨の資料を配布した(乙18)。 ⑵ 本件扶助基準改定の実施前記⑴の経緯を経て,厚生労働大臣は,① 平成19年報告書において生 活扶助基準の基準額が一般低所得世帯の消費実態と比較して高いなどの検証結果が示されていたが,当時の社会経済情勢等から生活扶助基準が据え置かれる状況が続き,その間においても,賃金,物価及び家計消費はいずれも下落するデフレ状況が継続していたため,生活保護受給世帯の可処分所得が実質的に増加したと評価することができるとして,生活扶助相当CPIを用い て平成20年と平成23年の物価下落率を算定する手法により,平成20年以降の物価下落率-4.78%を生活扶助基準に反映させる生活扶助基準の改定を行うこと きるとして,生活扶助相当CPIを用い て平成20年と平成23年の物価下落率を算定する手法により,平成20年以降の物価下落率-4.78%を生活扶助基準に反映させる生活扶助基準の改定を行うこととし(デフレ調整),② また,生活保護受給世帯間の公平を図るため,一般低所得世帯の消費実態を生活扶助基準の展開部分に反映させる必要があるとして,基準部会による平成25年検証の結果に基づき,年齢 階級別,世帯人員別及び級地別の区分ごとに改定率(激変緩和措置として平成25年検証の結果の反映比率を2分の1にしたもの)を算出し,その改定率をデフレ調整後の生活扶助基準額に乗じることとし(ゆがみ調整),さらに,③ ゆがみ調整による生活扶助基準の引下げの激変緩和措置として,上記②のとおり,基準部会による検証結果を生活扶助基準に反映する比率を増額方 向と減額方向共に2分の1とした上,ゆがみ調整及びデフレ調整による生活 扶助基準の引下げの激変緩和措置として,現行の生活扶助基準からの増減額の幅が±10%を超えないように調整し,かつ,生活扶助基準の引下げを平成25年度から3年間かけて段階的に実施することとして,平成25年5月16日付け,平成26年3月31日付け,平成27年3月31日付けの各告示により,本件扶助基準改定を実施した。 2 デフレ調整における下落幅の算出方法等について前記前提事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,デフレ調整における下落幅の算出方法等について,以下の事実が認められる。 ⑴ 消費者物価指数についてア消費者物価指数の算出方法 消費者物価指数は,消費者が購入する商品やサービスの価格の平均的な変化を表すものであり,①同種の商品を品目としてグループ分けした上,家計の消費支出の支出額が ア消費者物価指数の算出方法 消費者物価指数は,消費者が購入する商品やサービスの価格の平均的な変化を表すものであり,①同種の商品を品目としてグループ分けした上,家計の消費支出の支出額が高い品目を指数品目として選定し,他の品目の値動きは選定された品目で代表されるものとする,②消費支出の中で当該品目の支出割合を算出する,③個々の指数品目の価格を当該品目の支出割 合で加重平均するという過程で算出される。 イ各物価指数の算式とその特徴(甲244,250,乙28,57,89,91,92)物価指数とは,ある基準となる時点の物価(財・サービスの価格を総合的・平均的にみたもの)を100(又は1)として,その時点から比較する 時点までの物価の変動を指数値で示したものである。物価指数の代表的な指数等は以下のとおりである。 ロウ指数ロウ指数は,一般的な指数算式の一つであり,比較される時点間において,「買い物かご」といわれる一定量の数量を購入するために要する全 費用の割合の変化として指数を定義することで得られる。ラスパイレス 指数やパーシェ指数等はロウ指数の特殊ケースとして位置付けられる。 価格をp,数量をq,i を品目,I を品目の集合,基準時点(物価算定の基準となる時点であり,原則として,価格が指数計算の分母として使われる「価格参照時点」及び指数が100に設定される「指数参照時点」を指す。以下同じ。)を0,比較時点をt,ウエイト参照時点(当該指数 計算に用いる品目のウエイトを参照する時点を指す。以下同じ。)をbとした場合,ロウ指数(P)は次のように定義される。 Σi∈IPitqibP=Σi∈IP 参照する時点を指す。以下同じ。)をbとした場合,ロウ指数(P)は次のように定義される。 Σi∈IPitqibP=Σi∈IPi0qib なお,指数が価格参照時点(0)より後に計算されるならば,ウエイト参照時点(b)は価格参照時点(0)と比較時点(t)の間のどの時点でもよいとされている。 ラスパイレス指数ラスパイレス指数は,基準時点(期首)のウエイトを用いた算術平均 指数である。上記の数式において,b=0とした場合,すなわち,ウエイト参照時点を基準時点(価格参照時点)とした場合,ラスパイレス指数が得られる。ラスパイレス指数は,総務省CPI等において採用されている。ラスパイレス指数の算定には,比較時点において数量情報を調査する必要がないため,速報性に優れるとされている。また,ラスパ イレス指数には,物価上昇率を過大評価する上方バイアスがあるとされている。 パーシェ指数パーシェ指数は,比較時点(期末)のウエイトを用いた調和平均指数である。上記の数式において,b=tとした場合,すなわち,ウエイ ト参照時点を比較時点とした場合,パーシェ指数が得られる。連鎖方式 のパーシェ指数は,内閣府のGDPデフレーター等において採用されている。パーシェ指数の算定には,経済の変化に応じて常に最新のウエイトが反映されるが,そのための調査コストが大きいとされている。また,パーシェ指数には,物価下落率を過大評価する下方バイアスがあるとされている。 フィッシャー指数フィッシャー指数は,ラスパイレス指数とパーシェ指数を幾何平均した指数であり, 指数には,物価下落率を過大評価する下方バイアスがあるとされている。 フィッシャー指数フィッシャー指数は,ラスパイレス指数とパーシェ指数を幾何平均した指数であり,財務省の貿易価格指数等に採用されている。 固定基準年方式・連鎖方式について固定基準年方式は,ある年にウエイトを固定して,物価の変化をみる 方法であり,総務省CPIでは,固定基準年方式のラスパイレス指数が採用されており,ウエイトは5年ごとに更新されている。 一方,基準時点と比較時点のウエイトの差が大きいほど,各種の指数算式から得られる物価指数と正しい物価指数との間のかい離(バイアス)が大きくなるため,物価指数の算定には,基準時点を毎年更新すること により比較時点とウエイトの差を小さくする連鎖方式が採用されることがある。例えば,内閣府のGDPデフレーターにおいては,連鎖方式のパーシェ指数が採用されている。 ウ変化率等についてある時点の指数をA,それより前の時点の指数をBとした場合,それら 二時点間の変化率を次の計算式によって求めることができる。 A-B A変化率(%)= ×100= -1 × 100 B B また,各項目のウエイトを加味して,各項目の動きが物価全体の変化率に対して,どう影響しているかを示す寄与度については,次の計算式によって求めることができる。全品目の寄与度の合計は,総合指数の変化率となる。 (当期の項目α の指数)-(項目α の指数) 計算式によって求めることができる。全品目の寄与度の合計は,総合指数の変化率となる。 (当期の項目α の指数)-(項目α の指数) ×ウエイト ×ウエイト項目αの寄与度= ×100前期の総合指数×ウエイト 総務省CPIについて(ないしにつき,乙27~32,36,61,62,89) ア総務省CPIの概要総務省CPIは,全国の世帯が購入する財及びサービスの価格変動を総合的に測定し,物価の変動を時系列的に測定するものであり,具体的には,基準時点における家計の消費構造(品目及びウエイト)を一定の指数(100)に固定し,これに要する費用が物価の変動によってどう変化するか を指数値で示すものである。総務省CPIの算定にはラスパイレス指数が用いられており,これによって算定された数値に100を乗じたものが総務省CPIである。 イ総務省CPIの品目及びウエイト 総務省CPIの指数品目は,家計調査に基づき,世帯の消費支出上, 一定の割合を占める重要なものを選択し,決定される。平成22年の総務省CPIの品目は,合計588品目であった。 これらの品目は,10大費目(食料,住居,光熱・水道,家具・家事用品,被服及び履物,保健医療,交通・通信,教育,教養娯楽,諸雑費)に分類され,それぞれの費目内においてさらに中分類に分類され(例え ば,費目が「食料」の場合,「穀類」,「魚介類」,「肉類」等に分類するこ とができる。),中分類からさらに小分類に分類される(例えば,中分類が「穀類」の場合,「 類に分類され(例え ば,費目が「食料」の場合,「穀類」,「魚介類」,「肉類」等に分類するこ とができる。),中分類からさらに小分類に分類される(例えば,中分類が「穀類」の場合,「米類」,「パン」等に分類することができる。)。なお,10大費目のうち「教養娯楽」の費目の中には,中分類として,「教養娯楽用耐久財」があり,「教養娯楽用耐久財」の中には,小分類として,「テレビ」,「パソコン(デスクトップ型)」,「パソコン(ノート型)」,「カメ ラ」等の品目がある。 総務省CPIの作成に当たっては,各品目について,その品目を代表すると考えられる銘柄(スペック)を基本銘柄として指定し,毎月,原則としてこの基本銘柄に該当する商品の価格を調査している。 総務省CPIの計算に用いるウエイトは,原則として,家計調査にお ける品目ごとの消費支出金額の割合に応じて算定されている。ウエイトは,1万分比で表されており,平成22年の総務省CPIの10大分類のウエイトをみると,食料が2525,住居が2122,光熱・水道が704,家具・家事用品が345,被服及び履物が405,保健医療が428,交通・通信1421,教育が334,教養娯楽が1145,諸 雑費が569である(なお,端数処理の関係で,これらのウエイトを単純に合計しても1万にはならない。)。 総務省CPIにおいて採用される品目及びウエイトは,国民の消費構造の変化を反映させるために,西暦年の末尾が0と5の年を基準年として,5年ごとに見直しが行われており(以下「指数基準改定」という。), 平成25年改定の前の指数基準改定は平成22年に行われており,さらにその前の指数基準改定は平成17年に行われている。 ウ総務省CPIの推移(乙11)平成22年の総務省CPIを ), 平成25年改定の前の指数基準改定は平成22年に行われており,さらにその前の指数基準改定は平成17年に行われている。 ウ総務省CPIの推移(乙11)平成22年の総務省CPIを100とした場合における,総務省CPIの推移は,次のとおりであり,平成20年から平成23年にかけての総務 省CPI(総合)の変化率は,-2.35%(=(99.7÷102.1 -1)×100)であった。 総合食料光熱・水道教養娯楽平成16年 100.797.793.7108.8平成17年 100.496.894.4107.9平成18年 100.797.397.8106.3平成19年 100.797.698.6104.9平成20年 102.1100.1104.5104.3平成21年 100.7100.3100.2101.7平成22年 100.0100.0100.0100.0平成23年99.799.6103.396.0生活扶助相当CPIについてア生活扶助相当CPIとは,生活扶助に相当する品目を対象とする消費者物価指数であり,具体的には,総務省CPIの指数品目から,非生活扶助相当品目(家賃等の生活扶助以外の他の扶助で賄われる品目及び自動車関 係費,NHK受信料,大学授業料,幼稚園保育料等の生活保護受給世帯において支出することが想定されていない品目)を除いた生活扶助相当品目について,品目ごとに総務省CPIのウエイトを乗じた数値を,総務省CPIのウエイトの合計値で除して算出したものである。 イ平成22年に指数基準改定が行われたことに伴い,生活扶助相当CPI の指数品目も,平成20年 省CPIのウエイトを乗じた数値を,総務省CPIのウエイトの合計値で除して算出したものである。 イ平成22年に指数基準改定が行われたことに伴い,生活扶助相当CPI の指数品目も,平成20年の指数費目が485品目であったのに対し,平成23年の指数品目は32品目が追加されて517品目となった。 基準時点及びウエイト参照時点についてア総務省CPIでは,家計調査による支出割合をウエイトとして使用しており,平成22年の指数基準改定によりウエイトとして使用する支出割合 も見直されたが,生活扶助相当CPIでは,平成20年及び平成23年のいずれにおいてもウエイト参照時点が平成22年とされており,いずれに おいても同年の家計調査による支出割合がウエイトとして使用された。 イ 10大費目ごとの平成22年基準改定時の総務省CPIのウエイト(前記イ)並びに平成20年及び平成23年の生活扶助相当CPIのウエイトを表にすると,以下のとおりである。 食料平成22年総務省CPIのウエイト平成20年生活扶助相当CPIのウエイト平成23年生活扶助相当CPIのウエイト食料252524152498住居2122 光熱・水道 家具・家事用品 被服及び履物 保健医療 交通・通信1421 教育 教養娯楽114510241091諸雑費 合計1000061896393(端数処理の関係で,各費目の 教養娯楽114510241091諸雑費 合計1000061896393(端数処理の関係で,各費目のウエイトを単純に合計しても「合計」欄の 額とは一致しない。)調査ができなくなった品目の一般的な処理方法及び指数の接続についてアある品目がある調査市町村において一時的に出回りが途切れるなど,比較時点の価格が調査できなくなった場合には,その品目の指数及びウエイトを除外して計算する。 比較時点において価格が調査できなくなった品目の価格変動は,類似した品目の集まりである「類」レベル(上記イにおける中分類や小分類)の同一のグループの他の財の価格比で代替されることとなる。 イ総務省CPIにおいては,指数基準改定が行われる場合,過去に遡って指数基準改定の前後の指数の比較が可能となるように,過去の指数を指数 基準改定に合わせて換算し,指数基準改定前の指数を指数基準改定が行われた年の指数で除した結果を100倍するという方法(例えば,平成17年の指数を100として同年の指数品目による平成22年の指数が99. 6である場合,同年の指数を100とする平成17年の指数品目による指数は,100/99.6を乗ずることで求められる。以下「指数の接続」 という。)が採用されている。 ウ平成20年の生活扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIの比較においては,平成22年の指数基準改定により指数品目が異なることになったが,指数の接続は行われなかった。 生活扶助相当CPIの変化率の算定 前記ア及びイを前提に,指数の接続をすることなく生活扶助相当CPIの変化率を算定する 品目が異なることになったが,指数の接続は行われなかった。 生活扶助相当CPIの変化率の算定 前記ア及びイを前提に,指数の接続をすることなく生活扶助相当CPIの変化率を算定すると,平成20年の生活扶助相当CPIが104.5,平成23年の生活扶助相当CPIが99.5となり,平成20年から平成23年までの生活扶助相当CPIの変化率は,以下の計算式のとおり,-4.78%となる。 (99.5-104.5)÷104.5×100=-4.78% 3 争点1(本件扶助基準改定が生活保護法1条,8条に違反するか)についての判断 厚生労働大臣による生活扶助基準改定の違法性判断の枠組み(争点1)について ア厚生労働大臣の裁量権について 生活保護法3条によれば,同法により保障される最低限度の生活は,健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならないところ,同法8条2項によれば,保護基準は,要保護者の年齢別,性別,世帯構成別,所在地域別その他保護の種類に応じて必要な事情を考慮した最低限度の生活の需要を満たすに十分なものであるのみならず, これを超えないものでなければならない。そうすると,仮に,保護基準における生活扶助基準が前記の最低限度の生活の需要を超えているというのであれば,これに応じて生活扶助基準を改定することは,同項の規定に沿うところであるということができる。もっとも,これらの規定にいう最低限度の生活は,抽象的かつ相対的な概念であって,その具体的 な内容は,その時々における経済的・社会的条件,一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり,これを保護基準において具体化するに当たっては,国の財政事情を無視する な内容は,その時々における経済的・社会的条件,一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであり,これを保護基準において具体化するに当たっては,国の財政事情を無視することができず,また,多方面にわたる複雑多様な,しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものである(最高裁昭 和51年(行ツ)第30号同57年7月7日大法廷判決・民集36巻7号1235頁参照)。したがって,保護基準のうち生活扶助基準の改定を行うに際し,このような改定を行う必要があるか否か,また,改定後の生活扶助基準の内容が健康で文化的な生活水準を維持することができるものであるか否かを判断するに当たっては,厚生労働大臣に上記のよ うな専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるものというべきである。 また,生活扶助基準の改定は,被保護者の生活に多大な影響を及ぼすものである場合も少なくないから,厚生労働大臣は,生活扶助基準を改定するに当たっては,その改定の必要性を踏まえつつ,生活扶助基準の 改定による被保護者の生活への影響についても可及的に配慮するため, その改定の具体的な方法等について,激変緩和措置の要否等を含め,前記のような専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権を有しているというべきである。 そして,生活扶助基準の改定の前提となる最低限度の生活の需要に係る評価及びゆがみ調整やデフレ調整による生活扶助基準の改定に伴う被 保護者の生活への可及的な配慮は,前記及びのような専門技術的な考察に基づいた政策的判断であるものの,生活扶助基準の展開部分の不均衡の有無やその程度及び物価下落による生活保護受給者の可処分所得の実質的な増加の有無やその程度は,各種の統計 のような専門技術的な考察に基づいた政策的判断であるものの,生活扶助基準の展開部分の不均衡の有無やその程度及び物価下落による生活保護受給者の可処分所得の実質的な増加の有無やその程度は,各種の統計資料や専門家の作成した資料等に基づいてある程度客観的に推認し得るものであり,それまで も各種の統計や専門家の作成した資料等に基づいて生活扶助基準と一般国民の消費実態との比較検討がされてきた経緯があること,本件各告示による生活扶助基準の引下げに際してもこうした資料に基づいて検討が行われていることなどに鑑みると,ゆがみ調整及びデフレ調整による生活扶助基準の改定は,① ゆがみ調整及びデフレ調整による生活扶助基 準の改定をした厚生労働大臣の判断に,最低限度の生活の具体化に係る判断の過程及び手続における過誤,欠落の有無等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合,あるいは,② ゆがみ調整及びデフレ調整による生活扶助基準の改定に際し激変緩和等の措置を採るか否かについての方針及びこれを採る場合において現に選択 した措置が相当であるとした同大臣の判断に,被保護者の生活への影響等の観点からみて裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があると認められる場合に,生活保護法3条,8条2項に違反し,違法となるものというべきである(最高裁平成22年(行ツ)第392号,同年(行ヒ)第416号同24年2月28日第三小法廷判決・民集66巻3号1240頁, 最高裁平成22年(行ヒ)第367号同24年4月2日第二小法廷判決・民集66巻6号2367頁参照)。 イ原告らの主張について上記の点につき,原告らは,保護基準の引下げに関する厚生労働大臣の裁量権の範囲は極めて限定的なものと解すべきであり,一旦設定さ れた 6号2367頁参照)。 イ原告らの主張について上記の点につき,原告らは,保護基準の引下げに関する厚生労働大臣の裁量権の範囲は極めて限定的なものと解すべきであり,一旦設定さ れた生活扶助基準を引き下げることは原則として許されず(制度後退禁止原則),国において具体的な必要性及び相当性を主張立証しない限り,生活扶助基準の引下げは裁量権の逸脱,濫用となる旨主張する。 しかしながら,憲法25条1項は,全ての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として 宣言したにとどまり,国が個々の国民に対して具体的・現実的に前記のような義務を有することを規定したものではない上,同条にいう「健康で文化的な最低限度の生活」は,抽象的かつ相対的な概念であって,その具体的内容は,その時々における文化の発達の程度,経済的・社会的条件,一般的な国民生活の状況等との相関関係において 判断決定されるべきものであるから(前掲最高裁昭和57年7月7日大法廷判決参照),憲法25条は,社会経済情勢等の変化により,同条が定める「健康で文化的な最低限度の生活」の具体的な水準が後退することがあり得ることも予定しているというべきである。そうすると,憲法25条が生活保護法に基づき定められた生活扶助基準の引下 げを行うことを一律に禁止しているということはできない。 そして,生活保護法は,前記のような憲法25条を受けて定められたものであり,生活保護法3条の規定する「健康で文化的な生活水準」や同法8条の規定する「最低限度の生活」も,その時々における文化の発達の程度,経済的・社会的条件,一般的な国民生活の状況等との相関関 係において判断決定されるべきものであって,社会経済情勢の変化等に よ 最低限度の生活」も,その時々における文化の発達の程度,経済的・社会的条件,一般的な国民生活の状況等との相関関 係において判断決定されるべきものであって,社会経済情勢の変化等に よって変動し得るものと解されるから,これらの規定が生活保護制度を後退させることを禁止する趣旨と解することもできない。 これらに加えて,前記アのとおり,厚生労働大臣が保護基準を設定ないし改定するに当たっては,国の財政事情を含めた多方面にわたる複雑多様な,しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を 必要とすることから,厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるものであることをも勘案すると,原告らが主張するように保護基準の引下げを行う場合には厚生労働大臣の裁量権の範囲が限定されると解することはできないというべきである。 なお,原告らは,社会権規約の各規定の解釈及び一般的意見からも制 度後退禁止の原則が導かれるとも主張する。しかしながら,社会権規約9条は,「この規約の締約国は,社会保険その他の社会保障についてのすべての者の権利を認める。」と規定するところ,これは,締約国において,社会保障についての権利が国の社会的政策により保護されるに値するものであることを確認し,上記権利の実現に向けて積極的に社会保 障政策を推進すべき政治的責任を負うことを宣明したものであって,個人に対し即時に具体的権利を付与すべきことを定めたものではない。このことは,社会権規約2条1項が,締約国において「立法措置その他のすべての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成する」ことを求めていることからも明らかである。し たがって,社会権規約を根拠に,生活扶助基準の改定に係る厚生労働大 ての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成する」ことを求めていることからも明らかである。し たがって,社会権規約を根拠に,生活扶助基準の改定に係る厚生労働大臣の裁量権が制約されるということはできないし,生活扶助基準の引下げが原則として禁止されるということもできない(最高裁昭和60年(行ツ)第92号平成元年3月2日第一小法廷判決・集民156号271頁参照)。また,一般的意見が締約国に対して法的拘束力を有すると 解すべき根拠はない。したがって,社会権規約の各規定及び一般的意見 を根拠として,生活扶助基準の改定に係る厚生労働大臣の裁量権が制約されるということはできない。 以上によれば,原告らの上記主張は,採用することができない。 原告らは,また,生活扶助基準を改定するに当たっては,生活保護法8条2項所定の事項(要保護者の生活上の属性に関わる事項)を考慮す ることが義務付けられており,他方,国の財政事情,国民感情,政権与党の公約等,同法8条2項及び9条に定められた事項以外の要素(生活外的要素」を考慮することは許されない旨主張する。 しかしながら,前記アのとおり,生活保護法8条2項における最低限度の生活を保護基準において具体化するに当たっては,高度の専門技 術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものであることから,生活扶助基準の改定を行うに当たり,厚生労働大臣には専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められるものと解すべきところ,上記の政策的判断においては,要保護者の生活上の属性に関わる事項だけではなく,国の財政事情,経済情勢,他の政策との関係等,多方面にわ たる諸事情を広く考慮する必要があると解される。 した 記の政策的判断においては,要保護者の生活上の属性に関わる事項だけではなく,国の財政事情,経済情勢,他の政策との関係等,多方面にわ たる諸事情を広く考慮する必要があると解される。 したがって,厚生労働大臣が生活扶助基準の改定に際して裁量権を行使するに当たり,生活保護法8条2項所定の事項を考慮することが義務付けられるということはできず,他方,同項及び9条に定められた事項以外の事項(原告らのいう「生活外的要素」)を考慮することが許され ないということもできない。 したがって,原告らの上記主張は,採用することができない。 水準均衡方式によらず,かつ,専門家による検証を経ずに行われたこと(争点1)についてア原告らは,生活扶助基準の改定に際して水準均衡方式によることが処分 基準に準じる確立した行政慣行になっており,水準均衡方式によらなかっ たこと自体がこの行政慣行に違反すると主張する。 そこで検討するに,確かに,① 水準均衡方式が導入された昭和59年以降,本件生活扶助基準の改定までは物価指数を用いた改定は行われていなかったこと,② 基準部会においても物価指数を用いた生活扶助基準の改定については議論されておらず,基準部会の委員からは,全国一律の物 価指数によって生活扶助基準を改定することには非常に慎重であるべきであるなどの意見が出されたこと(前記1オ)が認められる。 しかしながら,前記1⑴アのとおり,生活扶助基準の改定方式には変遷があり,昭和58年以降に水準均衡方式が導入される以前にも,マーケットバスケット方式,エンゲル方式,格差縮小方式と,それぞれ,その当時 における一般国民及び保護世帯の消費実態,社会経済の諸情勢等を踏まえて合理的と考えられる方式が採用されて 以前にも,マーケットバスケット方式,エンゲル方式,格差縮小方式と,それぞれ,その当時 における一般国民及び保護世帯の消費実態,社会経済の諸情勢等を踏まえて合理的と考えられる方式が採用されてきたものであるところ,昭和58年意見具申を受けて導入された水準均衡方式も,国民の生活水準が今後も向上するとの見通しを背景に,その当時における社会経済情勢の下で合理性のある生活扶助基準の改定方式として採用されてきたものであって,水 準均衡方式が,将来にわたり,社会経済の諸情勢の変化等にかかわらず準拠すべき唯一の改定方式として導入・採用されたというような事情は見当たらない。このことに加えて,物価は,昭和59年以降,生活扶助の母子加算や障害者加算等の各種加算の改定等において用いられてきた経済指標であり(乙95),生活扶助基準の改定においてこれを考慮することが不 合理であるとはいえない。 これらに照らすと,上記①及び②の事実を考慮しても,物価指数を用いない水準均衡方式を採用することが確立した行政慣行になっていたとまで認めることはできず,他に,同事実を認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告の上記主張は,採用することができない。 イ原告らは,また,水準均衡方式を採用せずに生活扶助基準を改定しようとする場合には,専門家による審議会や基準部会による検討結果に依拠して行うことが処分基準に準じる確立した行政慣行になっており,本件扶助基準の改定がこの行政慣行に反する旨主張する。 そこで検討するに,証拠(甲98,99)によれば,生活保護法の立法 過程において,保護基準の設定及び改定に当たり,特別の審議会を関与させるべきである旨の意見が述べられたことは認められるものの,結局,同意見は採用されず,保護基準 9)によれば,生活保護法の立法 過程において,保護基準の設定及び改定に当たり,特別の審議会を関与させるべきである旨の意見が述べられたことは認められるものの,結局,同意見は採用されず,保護基準の設定及び改定に当たり,専門家による審議会等への諮問を経ることが法令上の要件とはされなかったものである。なお,厚生労働省設置法は,厚生労働省には社会保障審議会を置くものとし つつ,社会保障審議会は厚生労働大臣の諮問に応じて調査審議することなどをつかさどる審議会と規定するにとどまるから(同法7条1項1号),厚生労働大臣は必要に応じて社会保障審議会に諮問すれば足り,厚生労働大臣が保護基準を改定するに当たり社会保障審議会への諮問が法令上義務付けられているものではないというべきである。そして,他に,厚生労働 大臣が保護基準を改定するに当たって社会保障審議会等の専門家の検討を経ることを義務付ける法令上の根拠は見当たらず,その他,水準均衡方式を採用せずに生活扶助基準を改定しようとする場合には専門家による審議会等への諮問を経ることが確立した行政慣行になっていたことを認めるに足りる証拠もない。 また,基準部会の意見は,生活扶助基準の改定に当たっての一つの考慮要素として位置付けられるものにすぎず,厚生労働大臣が基準部会の意見ないし検討結果に法的に拘束されると解すべき根拠はなく,そのような行政慣行が確立していたとも認められない。 さらに,在り方専門委員会の議論状況をまとめた平成15年中間取りま とめをみると,生活扶助基準の改定について,「改定の指標の在り方につ いても検討が必要である。この場合,国民にとって分かりやすいものとすることが必要なので,例えば,年金の改定と同じように消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つと ,「改定の指標の在り方につ いても検討が必要である。この場合,国民にとって分かりやすいものとすることが必要なので,例えば,年金の改定と同じように消費者物価指数の伸びも改定の指標の一つとして用いることなども考えられる」旨の指摘がされており(前記1(1)イ(エ)c),基準部会の検証結果を取りまとめた平成25年報告書には,生活扶助基準を改定する際の指標について,「他に 合理的説明が可能な経済指標等を総合的に勘案する場合は,それらの根拠についても明確に示されたい」旨の指摘がある(認定事実(1)オ)ところ,平成15年中間取りまとめ及び平成25年報告書のいずれにおいても,水準均衡方式によらず物価指数を考慮するに当たっては専門家による審議会等への諮問が必要であるなどといった記載はない。そうすると,在 り方専門委員会や基準部会における議論状況に照らしてみても,水準均衡方式を採用せずに生活扶助基準を改定しようとする場合には専門家による審議会や基準部会による検討結果に依拠して行うことが確立した慣行になっていたとは認められないというべきである。 ウ以上によれば,厚生労働大臣が,水準均衡方式によらず,また,専門家 による審議会や基準部会における検討結果に依拠することなく本件扶助基準改定を行ったことをもって直ちに,確立した行政慣行に違反したものとして裁量権の逸脱又はその濫用があるということはできない。 したがって,原告らの上記主張は,いずれも採用することができない。 デフレ調整を行ったこと(争点1)について アデフレ調整を行う必要性等について デフレ調整の必要性に関する厚生労働大臣の判断についてa 前記前提事実及び前記1に認定した事実(以下,単に「認定事実」という。)によれば,① 生活扶助 アデフレ調整を行う必要性等について デフレ調整の必要性に関する厚生労働大臣の判断についてa 前記前提事実及び前記1に認定した事実(以下,単に「認定事実」という。)によれば,① 生活扶助基準の水準の妥当性等につき平成19年検証が行われ,検証の結果作成された平成19年報告書 では,夫婦子一人(標準世帯)及び単身高齢世帯(60歳以上)の 生活扶助基準が第1・十分位における生活扶助相当支出額よりも高めであるとの結果が示されたこと(認定事実ウ),② 厚生労働大臣は,原油価格の高騰等が消費に与える影響等を見極める必要があるとして平成20年度は生活扶助基準を据え置き,消費等の動向を基礎とした改定を行わず,平成21年度も,生活関連物資を中心 とした物価上昇や,リーマンショックに端を発した世界金融危機が実体経済へ深刻な影響を及ぼしていることなどに配慮して生活扶助基準を据え置き,さらに,平成22年度~平成24年度についても,その時々の経済,雇用情勢等を総合的に勘案して,いずれの年度においても生活扶助基準を据え置いたこと(認定事実エ),③ 他方で,物価指数である総務省CPI(総合)は,平成20年から平成24年までほぼ一貫して下落したほか,賃金及び家計消費も,平成20年から平成21年にかけて大きく下落し,平成23年頃まではいずれも下落するデフレ傾向が継続したこと(認定事実エ,前記2ウ)が認められる。 b これらの事実に照らせば,平成19年当時,生活扶助基準の水準は一般低所得世帯の消費実態と比較して高いという検証結果が得られており,生活扶助基準の引下げも検討されたが,経済・雇用情勢等に配慮してこれを据え置いていたところ,平成20年以降,消費,物価,賃金等がいずれも下落するデフレ状況が継続した結 という検証結果が得られており,生活扶助基準の引下げも検討されたが,経済・雇用情勢等に配慮してこれを据え置いていたところ,平成20年以降,消費,物価,賃金等がいずれも下落するデフレ状況が継続した結果, 生活保護受給世帯の可処分所得が相対的,実質的に増加した(基準額が実質的に引き上げられた)と評価できる状況にあったということができ,そのような状況下で一般国民との間の不均衡を是正(調整)するためにデフレ調整を行う必要があるとした厚生労働大臣の判断が不合理であるということはできない。 原告らの主張について 上記に対し,原告らは,水準均衡方式の下では,生活扶助基準の改定において,毎年度の物価変動の影響が反映された名目値の民間最終消費支出の伸び率との均衡が検証されているのであり,平成20年度から平成24年度までの間,生活扶助基準が据え置かれているのは,その間の物価動向を参考にした上で,その他の社会経済情勢 等を総合的に勘案しつつ,結果として,生活扶助基準を改定しないとの判断をしたものであるから,その判断の中で既に物価変動が反映されており,重ねてデフレ調整を行う必要なかった旨主張する。 そこで検討するに,確かに,平成20年度から平成24年度までの間,生活扶助基準が据え置かれているところ,その理由として,原 油価格の高騰(平成20年度),生活関連物資を中心とした物価上昇の家計への影響(平成21年度),経済,雇用情勢等(平成22年度から平成24年度まで)といった物価等に関する事情も挙げられている(認定事実⑴エ)。 しかしながら,厚生労働大臣は,平成17年度から平成19年度ま での間も生活扶助基準を据え置いているところ,この間における据置きは,当該年度の民間最終消費支出の伸び率を基礎とし,前 エ)。 しかしながら,厚生労働大臣は,平成17年度から平成19年度ま での間も生活扶助基準を据え置いているところ,この間における据置きは,当該年度の民間最終消費支出の伸び率を基礎とし,前年度までの一般国民の消費水準との調整を行った結果,生活扶助基準の水準が妥当であるとの判断がされたことによるものである(認定事実⑴エ)。これに対し,平成20年度から平成24年度までの間に おける据置きは,生活扶助基準の水準が妥当性を欠くとの平成19年検証の結果を前提とした上で,これを是正するための改定を直ちに行うべきか否かについての参考指標として物価を含む経済状況をも勘案し,最終的に生活扶助基準を据え置くこととしたものであり,その結果,生活扶助基準の水準が妥当性を欠くという状態は是 正されないままとなったものということができる。そうすると,平 成20年度から平成24年度までの間においては,生活扶助基準の水準が妥当であるとしてこれを据え置くとの判断がされたものではないから,平成20年以降の物価変動が生活扶助基準の水準の妥当性判断に反映済みであるいうことはできず,平成20年以降の物価変動その他の経済状況は,本件扶助基準改定においてデフレ調整が 行われるまで生活扶助基準に反映されていなかったものというべきである。したがって,平成20年から平成23年までの物価下落率を生活扶助基準に反映させるデフレ調整が,物価を二重に計算することになるとはいえない。 よって,原告らの上記主張は,採用することができない。 小括以上によれば,平成19年報告書及び平成20年度以降の生活扶助基準の改定状況等を踏まえてデフレ調整の必要があるとした厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤,欠落があったということはできず 小括以上によれば,平成19年報告書及び平成20年度以降の生活扶助基準の改定状況等を踏まえてデフレ調整の必要があるとした厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤,欠落があったということはできず,その判断が違法であるということはできない。 イ厚生労働大臣が判断の前提とした物価下落算出方法について平成20年を期首としたことについてa 平成20年を期首とする厚生労働大臣の判断について(a) 認定事実カc及び⑵のとおり,厚生労働大臣は,生活扶助相当CPIを用いて物価下落率を算定する期間を平成20年から 平成23年としており,平成20年を期首としたことが認められる。 (b) 前記⑴に判示したところに照らせば,デフレ調整を行う際の物価下落率の算出方法については,対象期間をどのように設定するかを含め,厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的な見地からの裁 量権があると解すべきである。 そして,認定事実エのとおり,厚生労働大臣は,平成17年度から平成24年度までの間にわたって生活扶助基準を据え置いているが,平成17年度から平成19年度までは,当該年度の民間最終消費支出の伸び率を基礎とし,前年度までの一般国民の消費水準との調整を行った結果として水準が据え置かれてきたもので あるところ(認定事実エ),このような判断は,平成16年報告書においては,勤労3人世帯の生活扶助基準の水準は基本的に妥当であるとされており(認定事実⑴イb①),同年の時点で生活扶助基準を改定する必要は指摘されていなかったことや,平成16年から平成19年までの総務省CPI(総合)は,10 0.7,100.4,100.7,100.7とほぼ横ばい状態であったこと(前記2ウ)などに照らし,不 指摘されていなかったことや,平成16年から平成19年までの総務省CPI(総合)は,10 0.7,100.4,100.7,100.7とほぼ横ばい状態であったこと(前記2ウ)などに照らし,不合理とはいえない。他方で,平成20年度から平成24年度までは,総務省CPI(総合)はほぼ一貫して下落したほか(前記2ウ),賃金及び家計消費も,平成20年から平成21年にかけて大きく下落 し,平成23年頃まではいずれも下落するデフレ傾向が継続したこと(認定事実エ),それにもかかわらず,この間のいずれの年度においても,当時の消費等の動向を基礎として行われるべき改定が行われず,平成20年以降の消費や物価の経済状況については,デフレ調整が行われるまで,生活扶助基準の水準に反映さ れる趣旨の改定が行われてこなかったことが認められる。 このように,デフレ調整は,平成20年以降,デフレ傾向にあったにもかかわらず,消費等の動向を基礎とした改定が行われなかったことにより,生活保護受給世帯の可処分所得が相対的,実質的に増加した(基準額が実質的に引き上げられた)と評価でき る状況にあったため,一般国民との間の不均衡を是正するために 行われたものであることに照らせば,物価下落率を算定する始点を平成20年とすることについては,デフレ調整の目的に照らして,相応の合理的な理由があるということができる。 b 原告らの主張について(a) 原告らは,直近で生活扶助基準の改定がされたのは平成16年 であるからデフレ調整における物価下落率の期首は同年とされるべきであると主張する。 しかしながら,デフレ調整は,物価下落により生活保護受給世帯の可処分所得の実質的な増加があったと評価できることを理由とするものであると おける物価下落率の期首は同年とされるべきであると主張する。 しかしながら,デフレ調整は,物価下落により生活保護受給世帯の可処分所得の実質的な増加があったと評価できることを理由とするものであるところ,上記a(b)に説示したとおり,平成17年 度から平成19年度までは,物価下落による生活扶助基準の改定を要するような事態は生じておらず,生活扶助基準の水準は基本的に妥当であると判断されて据え置かれてきたことに照らせば,デフレ調整において物価下落率を算出する期間の期首を平成16年とすべきであるということはできない。 (b) 原告らは,また,平成20年が原油価格の高騰等により大きく物価が上がった年であることを捉えて,物価の下落幅が大きくなるように意図的かつ恣意的に平成20年が始点として選択されたものであるから違法であるとも主張する。 しかしながら,上記a(b)に説示したところに照らせば,平成2 0年を始点とすることについては,デフレ調整に至る経緯等(平成20年度以降に消費等の動向を基礎とした改定が行われなかったこと等)に照らし,相応の合理的な理由があると認められ,物価の下落幅が大きくなるように意図的かつ恣意的に平成20年が始点として選択されたとは認められない。 (c) したがって,原告らの上記主張は,採用することができない。 c 小括以上によれば,厚生労働大臣が,平成20年を期首として物価下落率を算定したことについて,その過程及び手続に過誤,欠落があったということはできず,その判断が違法であるとはいえない。 ウエイト参照時点を平成22年としたことについて a ウエイト参照時点を平成22年とした厚生労働大臣の判断について(a) 前記2アによれば 違法であるとはいえない。 ウエイト参照時点を平成22年としたことについて a ウエイト参照時点を平成22年とした厚生労働大臣の判断について(a) 前記2アによれば,厚生労働大臣は,平成20年及び平成23年の各生活扶助相当CPIの算定に際し,平成22年をウエイト参照時点として設定したことが認められる。 (b) 前記⑴に判示したところに照らせば,デフレ調整を行うに当 たっての物価下落率の算出方法は,ウエイト参照時点をいつと設定するかを含め,厚生労働大臣の専門技術的かつ政策的な見地からの裁量に委ねられていると解される。 そして,総務省CPIにおいて採用される指数品目及びウエイトは5年ごとに見直しが行われており,本件扶助基準改定前には 平成22年に指数基準改定が行われ,それ以前には平成17年に指数基準改定が行われているところ(前記2イ),国民の消費構造は時の経過により変化するものであるから,ウエイト参照時点が物価指数を算出する時点から離れれば離れるほど,現実の国民の消費構造とかい離することになり,各指数のバイアスによる 影響も大きくなると考えられる。仮に,平成17年の支出割合をウエイトとして使用した場合には,平成20年については3年前の,平成23年については6年も前の時点の消費構造(ウエイト)を基礎として生活扶助CPIを算出することになり,その間の国民の消費構造の変化による物価指数への影響が避けられな い。このことからすると,平成20年及び平成23年の生活扶助 相当CPIを算出するに際し,平成17年の支出割合ではなく,平成20年及び平成23年により近接した平成22年の支出割合をウエイトとして使用することが不合理なものいうことはできない。 助 相当CPIを算出するに際し,平成17年の支出割合ではなく,平成20年及び平成23年により近接した平成22年の支出割合をウエイトとして使用することが不合理なものいうことはできない。 b 原告らの主張について (a) 原告らは,平成22年をウエイト参照時点とすると,平成20年の生活扶助相当CPIはパーシェ式と同一の計算結果となり,平成23年の生活扶助相当CPIはラスパイレス式と同一の計算結果となるところ,パーシェ式では下方バイアスが,ラスパイレス式では上方バイアスがそれぞれ生ずるから,性質の異なる2つ の計算式に基づく指数を比較することは統計学的に誤りであり,国際的な基準から逸脱するものである旨主張する。 そこで検討するに,前記2ア並びに「消費者物価指数マニュアル理論と実践」(甲156,乙57,89,91。以下「CPIマニュアル」という。)及びF大学教授G作成の意見書(乙8 8。以下「G意見書」という。)等によれば,平成22年を基準時点及びウエイト参照時点とした場合,比較時点を平成20年とする同年の生活扶助相当CPIの計算式は,Σi∈IPi20qi P20CPI= Σi∈IPi22qi と定義することができ,比較時点を平成23年とする同年の生活扶助相当CPIの計算式は,Σi∈IPi23qi P23CPI= Σi∈IPi22qi と定義することができる。 これらの指数の平成20年から平成23年までの変化率を算定する場合(前記2⑴ウ参照) Σi∈IPi22qi と定義することができる。 これらの指数の平成20年から平成23年までの変化率を算定する場合(前記2⑴ウ参照),その計算式(以下「本件計算式」という。)は,Σi∈IPi23qi P23CPI=Σi∈IPi22qi Σi∈IPi20qi P20CPI= Σi∈IPi22qi となるところ,これを約分すると(品目が異なる点についてはここでは捨象する。),Σi∈IPi23qi P= Σi∈IPi20qi となる。 上記計算式は,平成20年を基準時点,平成23年を比較時点とし,平成22年をウエイト参照時点とした場合のロウ指数の算式と一致する(前記2⑴イ参照。なお,平成20年の生活扶助 相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIとで品目数が異なることについては,後記で検討する。)。 そうすると,本件計算式は,ロウ指数によるものと最終的に同一の計算式で算定されたものであるといえる。そして,ロウ指数は,CPIマニュアルにおいて,消費者物価指数として広く使用 される指数とされ,比較される時点間において一定量の数量を購 入するために要する全費用の割合の変化として定義される指数であるところ,このCPIマニュアルは,ILO,国際金融基金( される指数とされ,比較される時点間において一定量の数量を購 入するために要する全費用の割合の変化として定義される指数であるところ,このCPIマニュアルは,ILO,国際金融基金(IMF)等の6国際機関の共同責任の下で作成された消費者物価指数に関するマニュアルであり,消費者物価指数の作成に関する詳細で包括的な情報及び解説が収められているものであって, 指数に関する記載は最近の10年間における指数理論や方法に関する新しい研究の蓄積に基づいているものである(甲156,乙57)。これらのことからすれば,ロウ指数は,十分な理論的根拠を有する指数であるということができる。また,CPIマニュアルにおいて,「買い物かごは,比較される2時点のいずれかで購 入される数量に限られる必要はなく,実際いつの時点でもよい」「b(注:ウエイト参照時点)は0とtの間(注:比較される2時点)の1つを含むいつの時点でもよい」(甲156〔4頁〕)とされているように,比較される2時点の中間にウエイト参照時点を設定することは,ロウ指数の一つの在り方として理論上許容さ れているというべきである。 確かに,平成22年を指数・価格参照時点及びウエイト参照時点とした場合の平成20年(期首)及び平成23年(期末)の各生活扶助相当CPIの算出方法を分析的に考察すれば,平成20年の生活扶助相当CPIはパーシェ指数を用いた計算結果と同一 になり,平成23年の生活扶助相当CPIはラスパイレス指数を用いた計算結果と同一になる。しかし,ラスパイレス式とパーシェ式は,いずれも一定の数量を購入するために要する全費用の割合の変化を測定するものであり,両者の差異は,ウエイトとして使用する数値が期首のものか期末のものかの違いにすぎず,い ずれの パーシェ式は,いずれも一定の数量を購入するために要する全費用の割合の変化を測定するものであり,両者の差異は,ウエイトとして使用する数値が期首のものか期末のものかの違いにすぎず,い ずれの式による指数もロウ指数に包摂されるものである(甲15 6,乙57)。上記のとおり,ロウ指数は,ウエイト参照時点が期首と期末の間の時点とする場合も含むものであり,その場合,ロウ指数による消費者物価指数の算出において,ラスパイレス式による指数とパーシェ式の指数を比較することになるのであって,ラスパイレス式による指数とパーシェ式による指数に異なる バイアスが生ずるとしても,全体としてロウ指数を用いた算出方法の中でそれらを比較することが,統計学的に誤りであるということはできない。 (b) 原告らは,また,総務省統計局が用いているラスパイレス式が公式の計算方法であり,消費者の家計を対象とした物価指数(消 費者物価指数)の算定において期首をウエイト参照時点とするラスパイレス指数以外の物価指数が用いられている実例はないなどとして,比較する期間の途中である平成22年をウエイト参照時点とする生活扶助相当CPIの算定方法は合理性を欠く旨主張する。 しかしながら,物価指数の算出に際しては,比較する期間の期首の支出割合をウエイトとして使用するラスパイレス式以外にも,期末の支出割合をウエイトとして使用するパーシェ式,ラスパイレス式による指数とパーシェ式による指数を幾何平均するフィッシャー式など,様々な指数が考案されており,総務省CP Iにはラスパイレス式が利用されているが,参考指数として中間年バスケット方式も採用されているほか,内閣府のGDPデフレーターには,従前パーシェ式が利用され,現在でもこれに準ずる算式に CP Iにはラスパイレス式が利用されているが,参考指数として中間年バスケット方式も採用されているほか,内閣府のGDPデフレーターには,従前パーシェ式が利用され,現在でもこれに準ずる算式による指数(連鎖方式のパーシェ指数)が用いられており,貿易価格指数にはフィッシャー式が利用されているなど,利用目 的等に応じて様々な計算方法が採用されている。そして,ラスパ イレス式においては価格上昇が過大評価され上方バイアスが生じ,逆にパーシェ式においては価格上昇が過小評価され下方バイアスが生ずるなど(前記2イ),各方式にはそれぞれ長所,短所が存在し,実務的,学術的に正解となる唯一の方式というものは存在しない。これらのことに照らすと,物価指数の計算において 期首をウエイト参照時点とするラスパイレス式以外の式を用いることが直ちに不合理であるということはできず,その計算方法の選択は,厚生労働大臣の専門技術的かつ政策的な見地からの裁量に委ねられているというべきである。 よって,原告らの上記主張は,採用することができない。 (c) 原告らは,また,ウエイト参照時点を平成22年としたことから,平成20年(期首)の生活扶助相当CPIはパーシェ式による計算結果に一致するところ,パーシェ式による場合は下方バイアスが生ずるため価格低下の影響がより大きくなり,平成17年から平成22年までの間に生じたパソコン類の品質調整やテレビの 価格低下及び地デジ化による購入台数の増加が物価の下落率を増加させる要因となっており,不合理である旨主張する。 しかしながら,デフレ調整において用いられた物価下落率の算出方法がロウ指数で説明できるものであること,ロウ指数は理論的根拠を有する指数であると認められること,ロウ指数において は 張する。 しかしながら,デフレ調整において用いられた物価下落率の算出方法がロウ指数で説明できるものであること,ロウ指数は理論的根拠を有する指数であると認められること,ロウ指数において は,ウエイト参照時点を期首と期末の間の時点とすることも想定されており,その場合にはパーシェ式による指数とラスパイレス式による指数を比較することになることは,上記に説示したとおりである。そうすると,平成22年をウエイト参照時点とすることにより,平成20年の生活扶助相当CPIがパーシェ式によ る指数と同一になり下方バイアスが生ずることを根拠として,ウ エイト参照時点を平成22年とすることが不合理であるということはできない。仮に,平成17年から平成22年までの間に生じたパソコン類の品質調整やテレビの価格低下及び地デジ化による購入台数の増加のため物価下落率が大きくなったという事実があったとしても,そのことをもって直ちに,ウエイト参照時点を 平成22年とすることが不合理であるとはいえない。 (d) なお,H大学教授I作成の意見書(甲153。以下「Iデフレ意見書」という。)には,平成22年をウエイト参照時点として平成20年の生活扶助相当CPIを算出することは,① 基準時は比較時よりも過去の時点でなければならないとする国際規準に違 反する,② 平成22年の指数値を100としており,本来基準時とすべき平成20年の指数値を100としていないから,基準時の指数値は100であるという国際規準に反する旨の記載がある。 しかし,上記①については,基準時(価格参照時点ないしウエイ ト参照時点)が比較時点よりも過去の時点でなければならないという国際規準が存在することを認めるに足りる証拠はなく しかし,上記①については,基準時(価格参照時点ないしウエイ ト参照時点)が比較時点よりも過去の時点でなければならないという国際規準が存在することを認めるに足りる証拠はなく,かえって,消費者物価指数の国際的なルールを定めたCPIマニュアルによれば,ウエイト参照時点につき,比較時点のウエイトを使用するパーシェ指数や,ウエイト参照時点を任意に設定するこ とができるロウ指数なども認められている(甲156〔4~5頁〕)。 また,上記②については,基準時の指数値は100でなければならないという国際的な基準が存在することを認めるに足りる証拠はなく,かえって,CPIマニュアルにおいては,指数を100 とする時点(指数参照時点)について,「指数系列は,当該指数の 数値によって単に割ることによって,指数の変化率を変えることなく,別の参照時点に変えることができる。」とされており(甲156〔292頁〕),指数を100とする時点(指数参照時点)を置き換える方法が説明されている。 (e) したがって,原告らの上記主張及びIデフレ意見書の上記記載 は,いずれも採用することができない。 c 小括以上によれば,デフレ調整における物価下落率の算出に当たり平成22年をウエイト参照時点とした厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤,欠落があったということはできず,その判断に裁量権の範囲 の逸脱又はその濫用があるとはいえない。 異なる品目数により算出した指数を比較したこと及び指数の接続を行わなかったことについてa 品目数が異なることについて(a) 品目数の設定について 前記2イによれば,デフレ調整における平成20年の生活扶助相当CPIの指数品目 接続を行わなかったことについてa 品目数が異なることについて(a) 品目数の設定について 前記2イによれば,デフレ調整における平成20年の生活扶助相当CPIの指数品目は485品目であったが,平成23年の生活扶助相当CPIの指数品目は517品目となっており,計算の基礎とされた品目数が異なることが認められる。 (b)原告らの主張について 原告らは,消費者物価指数の算出においては基準時と比較時の指数品目は完全に同一で対応していなければならないから,平成20年の生活扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIとで計算の基礎とされた品目数が異なることは,消費者物価指数の算出方法に反して違法であると主張する。 そこで検討するに,前記⑴に判示したところに照らせば,デフレ調整を行うに当たっての物価下落率の算出方法は,厚生労働大臣の専門技術的かつ政策的な見地からの裁量に委ねられていると解される。 前記2イ及び同イのとおり,総務省CPIでは,新たな 財及びサービスの出現等による消費構造の変化を反映させるため,5年に1度,指数品目とウエイトを見直し,価格・指数参照時点及びウエイト参照時点が改定されているところ(指数基準改定),平成20年の生活扶助相当CPIの指数品目(485品目)と平成23年の生活扶助相当CPIの指数品目(517品 目)との間に齟齬が生じたのは,平成22年に総務省CPIの指数基準改定が行われて32品目が追加されたことに伴うものであって,指数品目が異なることは合理的な理由に基づくものということができる。なお,基礎となる指数品目を完全に同一にするため,平成23年の生活扶助相当CPIを算出するに当たり,平 成22年に追加された 指数品目が異なることは合理的な理由に基づくものということができる。なお,基礎となる指数品目を完全に同一にするため,平成23年の生活扶助相当CPIを算出するに当たり,平 成22年に追加された32品目を除外して計算することも考えられるが,そのようにして計算した場合の物価下落率は4.88%と算出され(乙69),デフレ調整において基礎とされた物価下落率4.78%よりも大きくなる。 また,一般に,消費者物価指数の算出に当たり,一部の品目の価 格が観察できないという状況(欠価格の問題)が発生することは想定されており,CPIマニュアルにおいても,上記のような問題が生じ得ることを前提に,その処理方法の例が示されているし(乙89),総務省統計局の「消費者物価指数の解説」においても,「一時的に出回りが途切れるなど,比較時価格がやむを得ず 『欠』となった場合は,その品目の指数(比較時価格が『欠』に なっているので計算できない。)及びウエイトは除外して計算する」とされている(乙90)。このように,一部の品目の価格が観察できない状況(欠価格)の下においても,物価指数を作成することは可能であるとされていることに照らせば,消費者物価指数の算出において基準時と比較時の指数品目は完全に同一で対応し ていなければならないと解することはできない。 さらに,消費者物価指数の算出方法(前記2⑴ア)からすれば,消費者物価指数は,指数品目の価格変動が他の品目の価格変動を表すものとした上で,その支出割合で加重平均することにより全ての商品の平均的な価格変化を指数化したものということができ るところ,平成23年の生活扶助相当CPIで基礎とされた指数品目のうち平成20年の生活扶助相当CPIで基礎とされなかっ ことにより全ての商品の平均的な価格変化を指数化したものということができ るところ,平成23年の生活扶助相当CPIで基礎とされた指数品目のうち平成20年の生活扶助相当CPIで基礎とされなかった32品目は,いずれも平成20年当時にも存在していたものであって,当該品目の価格変動が同年当時に存在した指数品目の価格変動に代表されるものとすることも不合理であるとまではいえ ない。加えて,平成23年の生活扶助相当CPIにおいてウエイトとして追加された指数品目は32品目の支出割合は,合計で全体の約3%(204/6393)にすぎず,指数品目数の差異が平成20年及び平成23年の生活扶助相当CPIの変動率に及ぼす影響は軽微であると考えられる。 これらを併せ考慮すれば,平成23年の生活扶助相当CPIを算出するに当たり,平成20年の生活扶助相当CPIで指数品目とされなかった32品目についても,同年の生活扶助相当CPIと同一の価格変化をしたものとして,これらを指数品目に含めて平成23年の生活扶助相当CPIを算出することが,理論的に誤り であるとはいえず,また,著しく合理性を欠くということもできない。 したがって,原告らの上記主張は,採用することができない。 (c) Iデフレ意見書(甲153)の記載についてIデフレ意見書(甲153)には,消費者物価指数を作成する際 の国際基準として,① 固定買い物かご方式(マーケットバスケット)方式によって消費者物価指数を作成しなければならず,② そのことによる必然的結果として,基準時と比較時において対象とする品目は完全に同一でなければならないものであって,デフレ調整における物価下落率算出方法はこの国際基準に違反す る旨の記載がある。しかしながら,上 的結果として,基準時と比較時において対象とする品目は完全に同一でなければならないものであって,デフレ調整における物価下落率算出方法はこの国際基準に違反す る旨の記載がある。しかしながら,上記に説示したとおり,厚生労働大臣が採用した算出方法は,平成20年の生活扶助相当CPIで指数品目とされなかった32品目についても,同年の生活扶助相当CPIと同一の価格変化をしたものとして,これらを指数品目に含めて平成23年の生活扶助相当CPIを算出したものと 評価することができるところ,このような処理をすることは,固定買い物かご方式(マーケットバスケット)と理論的に矛盾するものではない。また,上記のとおり,総務省CPIやCPIマニュアルにおいて,物価変動を比較する2つの時点において品目数が異なる場合(欠価格)があることが想定されていることなど に照らせば,基準時と比較時において,対象とする品目が完全に同一でなければならないという国際的基準があるとは認められない。 したがって,Iデフレ意見書(甲153)の上記記載は,採用することができない。 b 指数の接続を行わなかったことについて 原告らは,総務省CPIでは,基準年と比較年の間で指数品目の組合せが変化した場合には,比較年の指数に合わせて基準年の指数を換算し接続するという方法(指数の接続)が採られているところ,平成20年の生活扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIとで指数品目が異なるにもかかわらず,指数の接続を行わずに両 者を比較していることが不合理である旨主張し,Iデフレ意見書も同旨の指摘がある(甲153〔17頁〕)。 しかしながら,総務省CPIにおける指数の接続は,指数基準改定前後の指数の比較を可能に 較していることが不合理である旨主張し,Iデフレ意見書も同旨の指摘がある(甲153〔17頁〕)。 しかしながら,総務省CPIにおける指数の接続は,指数基準改定前後の指数の比較を可能にするために,指数基準改定が行われる前の指数を指数基準改定が行われた年の指数で除した結果を100倍 するというものであり(前記2イ),指数基準改定前後において指数品目が異なることとなった場合にその内容や支出割合等に応じて指数品目の違いを是正するものではない。そうすると,平成22年の指数基準改定により平成20年の生活扶助相当CPIと平成23年の生活扶助相当CPIとで指数品目が異なることとなった場合, これを是正するために指数の接続を行うべきであるということはできず,指数の接続を行わなかったことをもって,物価指数の算出方法として著しく不合理であるとまではいえない。 c 小括以上によれば,指数品目が異なる平成20年の生活扶助相当CPI と平成23年の生活扶助相当CPIとを比較して物価下落率を算出したことにつき,厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤,欠落があったということはできず,その判断が違法であるとはいえない。 生活扶助相当CPIにおける指数品目の選定について a 指数品目の選定について (a) 前記2アのとおり,デフレ調整における物価下落率を算定するに当たって用いられた生活扶助相当CPIは,総務省CPIの指数品目から,非生活扶助相当品目(家賃等の生活扶助以外の他の扶助で賄われる品目及び自動車関係費,NHK受信料,大学授業料,幼稚園保育料等の生活保護受給世帯において支出すること が想定されていない品目)を除外した生活扶助相当品目を基礎として算出されたものである。 (b) 前記⑴ 関係費,NHK受信料,大学授業料,幼稚園保育料等の生活保護受給世帯において支出すること が想定されていない品目)を除外した生活扶助相当品目を基礎として算出されたものである。 (b) 前記⑴に判示したところに照らせば,デフレ調整を行う際の物価下落率の算出方法については,当該物価指数を算出する基礎となる指数品目の選定を含め,厚生労働大臣に専門技術的かつ政策 的な見地からの裁量権があると解される。 そして,デフレ調整が,生活保護受給世帯における可処分所得の実質的な増加の程度を把握し,それを生活扶助基準に反映させることを目的とするものであることからすれば,物価下落率を算出するに当たり,採用する物価指数(生活扶助相当CPI)が対象 とする指数品目を,総務省CPIの指数品目のうち生活保護受給世帯が支出することが想定される品目に限定し,かつ,そこから生活扶助以外の扶助により賄われる品目を除外することは,その目的に沿う合理的なものということができる。 b 原告らの主張について 原告らは,総務省CPIの指数品目から非生活扶助相当品目を除外して生活扶助相当CPIを算出している結果,生活保護受給世帯は電化製品をほとんど購入しないにもかかわらず,物価下落の主因となっているパソコン,テレビ等の電化製品のウエイトが相対的に大きくなり,生活保護受給世帯の生活実態と異なる指数が算出され,不合 理であると主張する。 しかしながら,上記のとおり,デフレ調整における物価下落率の算定に際して対象品目から非生活扶助相当品目を除外することには合理性が認められるのであるから,合理的な指数品目の選択が行われた結果,ウエイトに占める除外されなかった品目の支出割合が相対的に大きくなり,それらの品目のうち一部の物価下落率が大き 除外することには合理性が認められるのであるから,合理的な指数品目の選択が行われた結果,ウエイトに占める除外されなかった品目の支出割合が相対的に大きくなり,それらの品目のうち一部の物価下落率が大きかっ たため,総務省CPIに比べて生活扶助相当CPIの方が下落率が大きくなったとしても,そのことをもって厚生労働大臣による指数品目の選定が不合理であるなどということはできない。 なお,原告らの主張は,物価下落の主因となっているテレビ,パソコン等を対象品目から除外すべきであるとの趣旨とも解されるが, テレビ,パソコン等は,生活保護受給世帯が生活扶助により購入することがあり得る品目であって,およそ生活扶助により支出することが想定されていない非生活扶助相当品目(医療費,NHK受診料等)とは明らかに性質を異にする。また,生活保護受給世帯のうちほとんどの世帯がテレビを所有しており,4割近い世帯がパソコンを所有し, 5割近い世帯がカメラを所有していること(乙38)などに照らすと,平成20年から平成22年にかけて,テレビの価格が下落したり,パソコンやカメラの品質が向上したりしたことにより,生活保護受給世帯の消費が全く影響を受けなかったということはできない。さらに,仮に,生活保護受給世帯の消費実態や価格の下落幅,物価下落 率の算定に与える影響等を考慮してテレビ,パソコン等を対象品目から除外するとすれば,他の品目についても同様の考慮を行う必要がないかを検討する必要があるが,例えば嗜好性の高いたばこを除外すべきか否かなど,除外品目に関する基準の設定について困難な問題が生じ,かえって客観性を欠く恣意的な取扱いと評価されかねないもので あって,相当でないというべきである。 したがって,原告らの上記主張は,採用するこ の設定について困難な問題が生じ,かえって客観性を欠く恣意的な取扱いと評価されかねないもので あって,相当でないというべきである。 したがって,原告らの上記主張は,採用することができない。 c 小括以上によれば,デフレ調整における物価下落率の算定に当たり,生活扶助相当CPIの指数品目として生活扶助相当品目のみを選定し た厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤,欠落があったということはできず,その判断が違法であるとはいえない。 家計調査に基づく一般世帯の支出割合をウエイトとして使用したことについてa 生活扶助相当CPIの計算に用いたウエイトの資料について 前記2アによれば,厚生労働大臣は,生活扶助相当CPIの計算にウエイトとして使用する支出割合につき,社会保障生計調査による支出割合を使用せず,総務省CPIにおいて使用されている家計調査による支出割合を使用したことが認められる。 b 家計調査及び社会保障生計調査について 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (a) 家計調査について(乙84,85)家計調査は,総務省統計局が実施する基幹統計調査(国勢調査など重要な統計調査である基幹統計の作成を目的とする調査をいう。 統計法2条4項,6項)であり,国民生活における家計収支の実態 を把握し,国の経済政策・社会政策の立案のための基礎資料を提供することを目的とするものである。家計調査は,一部の世帯を除き全国の一般世帯を調査対象とする標本調査であり,具体的には,特性に応じて全国の市町村を168のグループに分け,その中から1市町村ずつ抽出し,抽出された市町村から選定された約9000世 帯を 全国の一般世帯を調査対象とする標本調査であり,具体的には,特性に応じて全国の市町村を168のグループに分け,その中から1市町村ずつ抽出し,抽出された市町村から選定された約9000世 帯を対象に調査票を配布し,それを回収,集計する方法により行わ れている。上記調査票においては,支出品目ごとに支出数量及び金額等を記載すること(例えば,「アジ(生),430グラム,330円,豚肉,400グラム,626円」などと記載すること)が求められている。したがって,大分類(「食費」等)や中分類(「魚介類」等)の他に,小分類(「サバ」等)の支出数量や支出金額まで明らか になる。 (b) 社会保障生計調査について(乙86)社会保障生計調査は,厚生労働省が実施する一般統計調査(行政機関が行う統計調査のうち基幹統計調査以外のもの。統計法2条7項)であり,生活保護受給世帯の生活実態を明らかにすることに よって,保護基準の改定等,生活保護制度の企画運営のために必要な基礎資料を得るとともに,厚生労働行政の企画運営に必要な基礎資料を得ることを目的とするものである。社会保障生計調査は,全国の生活保護受給世帯を対象として全国を地域別に10ブロックに分け,ブロックごとに都道府県・指定都市・中核市のうち1ない し3か所を調査対象自治体として選定し,そこから1110世帯を抽出している。社会保障生計調査では,生活保護受給世帯から収支の状況を記載した家計簿の提出を求めるなどの方法により,生活保護受給世帯の家計収支の状況,消費品目の種類及び購入数量等を調査しているが,個別品目の消費支出の割合等を詳細に記載させるた めの措置が講じられていないため,大分類や中分類の支出金額が明らかになるにとどまり,小分類の支 ,消費品目の種類及び購入数量等を調査しているが,個別品目の消費支出の割合等を詳細に記載させるた めの措置が講じられていないため,大分類や中分類の支出金額が明らかになるにとどまり,小分類の支出金額までは明らかにならない。 c 家計調査による支出割合を使用した厚生労働大臣の判断について前記2⑴に判示したところに照らせば,デフレ調整を行う際の物価下落率の算出方法については,ウエイトとして使用する支出割合を求 めるに際してどの資料を用いるかといった選択を含め,厚生労働大臣 の専門技術的かつ政策的な判断に委ねられていると解される。 そして,家計調査は,総務省統計局が実施する基幹統計調査であり,全国の一般世帯を対象とする標本調査であって,全国の世帯の消費実態が正確に反映されるよう,統計理論に基づきサンプル世帯に偏りが生じないように全国の市町村を特性に応じて細かくグルー プ分けをした上で実施されており,個別品目(小分類)の支出数量や支出金額まで明らかになるものであるから,その調査目的,調査対象,調査方法等に照らし,支出品目に係るウエイト(品目ごとの消費支出の割合)を把握するのに適した客観的かつ信頼性の高い統計資料ということができ,家計調査に基づく支出割合を総務省CP Iのウエイトとして用いることには合理性がある。このことに照らすと,指数品目を生活扶助相当品目に限定した生活扶助相当CPIを算出するに当たっても,家計調査による支出割合をウエイトとして使用することが不合理であるとはいえない。 d 原告らの主張について (a) 上記に対し,原告らは,一般世帯と生活保護受給世帯とでは消費実態が大きく異なるから,生活保護受給世帯を含む一般世帯を対象とする家計調査による支出割合ではなく 原告らの主張について (a) 上記に対し,原告らは,一般世帯と生活保護受給世帯とでは消費実態が大きく異なるから,生活保護受給世帯を含む一般世帯を対象とする家計調査による支出割合ではなく,生活保護受給世帯のみを対象とする社会保障生計調査のウエイトを用いるべきであり,家計調査による支出割合をウエイトとして使用した厚生労働 大臣の判断は不合理であると主張する。 しかしながら,社会保障生計調査は,生活保護受給世帯の消費実態を明らかにすることなどを目的とし,全国の生活保護受給世帯を対象とするものではあるが,全国を地域別に10ブロックに分け,ブロックごとに自治体を選定し,その中から調査世帯を抽 出するというものであって,統計理論に基づいて調査世帯を選定 する家計調査と異なり,調査世帯の選定における偏りやサンプル数の少なさから,調査の精度に一定の限界がある。また,家計調査では,個別品目(小分類)ごとの支出額まで明らかになるのに対し,社会保障生計調査では,せいぜい中分類までの支出金額が明らかになるにとどまる。 これらに照らせば,物価下落率を正確に算定するという観点から,客観的かつ信頼性の高い統計資料である家計調査に基づく支出割合の方が,生活保護受給世帯のみを対象にしているとはいえその精度に一定の限界がある社会保障生計調査に基づく支出割合よりも,生活扶助相当CPIを算出するために用いるウエイトと してより適切であると評価することが明らかに合理性を欠くものとはいえない。 (b) 原告らは,また,生活保護受給世帯の消費実態は平均的な一般世帯とは相当異なるから,仮に家計調査を資料として用いるのであれば,第1・五分位の世帯の支出割合をウエイトとして使用す (b) 原告らは,また,生活保護受給世帯の消費実態は平均的な一般世帯とは相当異なるから,仮に家計調査を資料として用いるのであれば,第1・五分位の世帯の支出割合をウエイトとして使用す べきであるなどと主張する。 しかしながら,家計調査による支出割合をウエイトの資料として参照するに当たり,生活保護受給世帯を含む一般世帯の支出割合をそのままウエイトとして用いる方法のほか,特定の所得階層に限定して算出した支出割合をウエイトとして用いる方法も選択 肢として考慮する余地があるとしても,様々な所得階層のうち第1・五分位の世帯の支出割合が生活保護受給世帯の消費実態を最も正確に反映していることを認めるに足りる証拠はないから,厚生労働大臣が第1・五分位の世帯の支出割合をウエイトとして用いなかったことが明らかに不合理であるということはできない。 e 小括 以上によれば,生活扶助相当CPIの算出に当たり,家計調査による支出割合をウエイトとして使用した厚生労働大臣の判断の過程に過誤,欠落があったということはできず,その判断が違法であるとはいえない。 ゆがみ調整を行ったこと(争点1)について ア認定事実によれば,(a) 基準部会は,生活扶助基準の展開部分の適正化を図るため,生活扶助基準の展開部分と一般低所得世帯の消費実態とのかい離を検証するという目的の下,比較対象とする一般低所得世帯を第1・十分位の世帯(生活保護受給世帯を含む)とした上,平成21年の全国消費実態調査に基づき,いずれも第1・十分位の世帯について,年齢階 級別,世帯人員別及び級地別の生活扶助基準額を指数化したもの(生活扶助基準額による指数)と,年齢階級別,世帯人員別及び級地別の生活扶助相当支出額を指数化したもの(消費 の世帯について,年齢階 級別,世帯人員別及び級地別の生活扶助基準額を指数化したもの(生活扶助基準額による指数)と,年齢階級別,世帯人員別及び級地別の生活扶助相当支出額を指数化したもの(消費実態による指数)とを比較検証し(平成25年検証),その結果,① 年齢階級別では,各年齢階級間の指数にかい離がみられること,② 世帯人員別では,世帯人員が増えるにつれて かい離が拡大する傾向があること,③ 級地別では,生活扶助基準額の地域差より消費実態の地域差の方が小さくなっていることなどを内容とする平成25年報告書を作成したこと(認定事実⑴オ),(b) 厚生労働大臣は,平成25年検証の結果を踏まえてゆがみ調整を行ったこと(認定事実⑵)の各事実が認められる。 イゆがみ調整を行う必要性について平成19年報告書において,世帯構成などが異なる生活保護受給者において実質的な給付水準の均衡が図られる体系としていくべきであるとの指摘がされ(認定事実⑴ウ),これを受けて行われた平成25年検証の結果,生活扶助基準の展開部分が一般低所得世帯の消費実態とかい離してお り,生活保護受給世帯間に不均衡が生じているとの報告がされたこと(認 定事実⑴オ)などに照らせば,平成25年当時,一般低所得世帯の消費実態を生活扶助基準の展開部分に反映させることにより生活扶助基準の展開部分を適正化し生活保護受給世帯間の衡平を図るため生活扶助基準を改定すること(ゆがみ調整)につき必要性があったと認められる。 ウ第1・十分位の世帯を比較対象とした理由の合理性について 上記アに説示したとおり,基準部会による検証の目的は,生活扶助基準の展開部分の適正化を図るため,生活扶助基準の展開部分と一般低所得世帯の消費実態とのかい離を検証 とした理由の合理性について 上記アに説示したとおり,基準部会による検証の目的は,生活扶助基準の展開部分の適正化を図るため,生活扶助基準の展開部分と一般低所得世帯の消費実態とのかい離を検証するというものであるから,比較対象となる一般低所得世帯は,最低限度の生活水準にある世帯とすることが検証の目的に沿うものである。 そして,被告らは,比較対象とする一般低所得世帯を第1・十分位の世帯とした理由として,① 指数を全方位の所得階層(全世帯)又は中位所得階層(第3・五分位)等から算出することも可能だが,これまでの検証に倣い,生活保護受給世帯と隣接した一般低所得世帯の消費実態を用いることが現実的であると判断したこと,② 第1・十 分位の平均消費水準は,中位の所得階層の約6割に達していること,③ 必需的な耐久消費財について,第1・十分位に属する世帯における普及状況は,中位所得階層と比べて概ね遜色なく充足されている状況にあることなどを挙げ,基準部会も同旨の理由を挙げている(認定事実⑴オb)。 そこで,上記理由の合理性について検討する。 a 上記①の理由に対し,原告らは,格差縮小方式における比較対象は「一般勤労者世帯の消費水準」であり,昭和59年以降採用されてきた水準均衡方式における比較対象は「一般国民生活における消費水準」であって,従前の生活扶助基準の検証が第1・十分位の世 帯を対象として行われてきたという事実はないと主張する。 しかし,生活保護基準の改定については,昭和59年以降,生活保護において保障すべき最低生活の水準は,一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるとの見地から水準均衡方式が採用されたが,その後,平成15年中間取りまとめにおいては,水準均 護において保障すべき最低生活の水準は,一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであるとの見地から水準均衡方式が採用されたが,その後,平成15年中間取りまとめにおいては,水準均衡方式を前提としつつ,「具体的には,第1・十分 位の世帯の消費水準に着目することが適当である」とし,第1・十分位の世帯を比較対象として生活扶助基準の評価・検証を実施していること(認定事実(1)イ(エ)a),平成19年検証においても,水準均衡方式を前提としつつ,第1・十分位の世帯を比較対象として生活扶助基準の水準の評価・検証が実施されたこと(認定事実(1)ウ (ウ)a)などに照らせば,基準部会による平成25年検証以前から,第1・十分位の世帯を比較対象として,生活扶助基準の検証が行われてきたということができる。そうすると,上記①の理由が不合理なものであるとはいえず,原告らの上記主張は,採用することができない。 b 上記②の理由についてみるに,第1・十分位の世帯の生活扶助相当支出額と平均的な所得階層である第3・五分位の世帯の生活扶助相当支出額を比較すると,20歳~59歳の単身有業世帯で68%,60歳以上の単身世帯で64%,60歳以上の夫婦世帯で62%,夫婦と18歳未満の子1人の有業世帯で66%,夫婦と18 歳未満の子2人の有業世帯で71%であるとの統計資料が存在し(甲108の3),この統計結果によれば,第1・十分位の世帯の平均消費水準は中位所得階層の約6割に達しているとの評価には合理性がある。 c 上記③の理由についてみるに,厚生労働省社会・援護局保護課が 平成22年に実施した「家庭の生活実態及び生活意識に関する調 査」(以下「平成22年調査」という。)等の統計資料によれば,冷蔵庫,炊飯器,テレ に,厚生労働省社会・援護局保護課が 平成22年に実施した「家庭の生活実態及び生活意識に関する調 査」(以下「平成22年調査」という。)等の統計資料によれば,冷蔵庫,炊飯器,テレビ等一般市民の過半数が必要と考えている消費財について,第1・十分位の世帯の普及率の平均的な所得階層である第3・五分位の世帯の普及率に対する割合は概ね9割程度となっており(甲73,108の4,乙38),この統計結果によれば, 第1・十分位の世帯における必需的な耐久消費財の普及状況は中位所得階層と比べておおむね遜色がないと評価することができる。 これに対し,原告らは,平成22年調査によれば,必需的な耐久消費財の普及率について,第1・十分位と第3・五分位を比較すると,第3・五分位では完全に普及している項目でも,第1・十分位 では完全に普及していない項目が数多くあるとされているから,上記②の理由は,平成22年調査と整合せず不合理であると主張する。 確かに,平成22年調査によれば,第1・十分位と第3・五分位とを比較した場合,原告らが必需的と主張する耐久消費財(冷蔵 庫,エアコン,携帯電話,自動車等の合計12項目)の普及率には差がみられるが,このうち自動車を除く項目では,第1・十分位の普及率は,第3・五分位の普及率のおよそ9割ないしそれ以上に達している(甲73)。そうすると,必需的な耐久消費財に係る第1・十分位の普及率が,中位所得階層と比べ,概ね遜色なく充足されて いるとの基準部会の評価が,平成22年調査と整合しないということはできない。原告らの上記主張は,採用することができない。 d その他,被告らが比較対象とする一般低所得世帯を第1・十分位の世帯とした理由として挙げる上記①~③について,その内容が不合 とはできない。原告らの上記主張は,採用することができない。 d その他,被告らが比較対象とする一般低所得世帯を第1・十分位の世帯とした理由として挙げる上記①~③について,その内容が不合理である評価すべき事情は見当たらない。 そして,上記に説示したとおり,比較対象となる一般低所得世帯は,最低限度の生活水準にある世帯とすることが平成25年検証の目的に沿うものであるところ,上記②及び③は,消費水準,保有財産及び可処分所得の点において第1・十分位の世帯が最低限度の生活水準にある世帯であることを示すものであり,第1・十分位の 世帯が上記の比較対象として適性を有することを基礎付けるものといえる。また,上記のとおり,平成25年検証以前から,第1・十分位の世帯を比較対象として生活扶助基準の検証が行われてきたこととの整合性(上記①)も認められる。 これらに照らせば,基準部会が平成25年検証において比較対象を 第1・十分位の世帯としたことが不合理であるということはできない。 原告らの主張について原告らは,第1・十分位という最下位層の消費水準との比較を根拠に保護基準の引下げを許容すれば,保護基準の際限ない引下げにつながる 可能性があり,不合理である旨主張する。 しかしながら,平成25年検証ないしこれに基づくゆがみ調整は,一般低所得世帯の消費実態を生活扶助基準の展開部分に反映させることにより生活扶助基準の展開部分を適正化しようとするものであり,生活保護受給世帯間の公平を図ることを目的としたものであって,第1・十分 位の世帯の消費水準と生活扶助基準額の水準とを比較することにより生活扶助基準額の調整(引下げ)を図ることを目的とするものではない。 世帯間の公平を図ることを目的としたものであって,第1・十分 位の世帯の消費水準と生活扶助基準額の水準とを比較することにより生活扶助基準額の調整(引下げ)を図ることを目的とするものではない。 このことは,平成25年検証に基づいてゆがみ調整を行ったとしても,必ずしも生活扶助基準の引下げにつながるわけではないこと(高齢者世帯等,ゆがみ調整によって生活扶助基準額が増額となる世帯も存在す る。認定事実(1)オd④)からも明らかである。 したがって,原告らの上記主張は,採用することができない。 エ比較対象から生活保護受給世帯が除外されていないことについて原告らは,平成25年検証が比較対象とした第1・十分位の世帯から生活保護受給世帯が除外されていないことについて,比較する集団(実験群・生活保護受給世帯)と比較される集団(対照群・一般低所得者世帯) のいずれにも同一の集団(生活保護受給世帯)を含めている点で統計学上問題がある旨主張する。 しかし,平成25年検証は,生活扶助基準の展開部分の適正化を図るという観点から,生活扶助基準の展開部分と一般低所得世帯の消費実態とのかい離を検証することを目的とし,第1・十分位の世帯について,生活扶 助基準額による指数と生活扶助相当支出額による指数(消費実態による指数)とを比較したものであって,第1・十分位の世帯の消費水準と実際の生活保護受給世帯の消費水準とを比較したものではないから,第1・十分位の世帯から生活保護受給世帯が除外されていなかったとしても,原告らが主張するような統計学上の問題は生じず,不合理であるとはいえない。 オ小括以上によれば,基準部会による平成25年検証内容に不合理な点はないというべきところ,平成25年 が主張するような統計学上の問題は生じず,不合理であるとはいえない。 オ小括以上によれば,基準部会による平成25年検証内容に不合理な点はないというべきところ,平成25年検証の結果を踏まえてゆがみ調整を行った厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤,欠落があるということはできないから,ゆがみ調整を行った厚生労働大臣の判断が違法であるとはいえ ない。 ゆがみ調整とデフレ調整を重複して行ったこと(争点1)についてアゆがみ調整とデフレ調整を同一の機会に行った厚生労働大臣の判断について前記⑴に判示したところに照らせば,ゆがみ調整及びデフレ調整を行 うか否か及びその時期を含め,生活扶助基準の改定については,厚生労働 大臣の専門技術的かつ政策的な見地からの裁量に委ねられていると解される。 そして,ゆがみ調整は,一般低所得世帯(第1・十分位)の消費実態を生活扶助基準の展開部分に反映させることにより,生活保護受給世帯間の衡平を図ろうとするものであり(認定事実),他方,デフレ調整は,平 成20年以降,デフレ傾向が継続していたにもかかわらず生活扶助基準が据え置かれていたことにより,生活保護受給世帯の可処分所得が相対的,実質的に増加したと評価することができる状態にあったことから,物価下落率等の数値を参照して生活扶助基準の水準の適正化を図ろうとするものである(認定事実)。このように,ゆがみ調整とデフレ調整がその目的 及び手法を異にするものであることに照らせば,ゆがみ調整とデフレ調整を同一の機会に実施した厚生労働大臣の判断が不合理であるということはできない。 イ原告らの主張について原告らは,ゆがみ調整とデフレ調整を同時に行うことにより,ゆがみ 整とデフレ調整を同一の機会に実施した厚生労働大臣の判断が不合理であるということはできない。 イ原告らの主張について原告らは,ゆがみ調整とデフレ調整を同時に行うことにより,ゆがみ 調整における年齢別,世帯人員別及び級地別の改定率が無意味になり,ゆがみ調整の趣旨を没却する旨主張する。 しかし,上記アに説示したとおり,ゆがみ調整は,一般低所得世帯(第1・十分位)の消費実態を生活扶助基準の展開部分に反映させて生活保護受給世帯間の衡平を図ろうとするものであって,生活扶助基 準額の水準の調整を図ろうとするデフレ調整とはその目的,手法を異にしており,ゆがみ調整による生活扶助基準の改定内容は,同時にデフレ調整を行うかどうかによって影響を受けるものではないから,ゆがみ調整とデフレ調整を併せて実施しても,ゆがみ調整の趣旨が没却されるなどということはできない。 原告らは,また,消費支出と消費者物価指数は相互に影響し合うものであるから,ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行うことは,物価の二重評価となり許されない旨主張する。 しかし,上記アに説示したとおり,ゆがみ調整は,一般低所得世帯(第1・十分位)の消費実態を生活扶助基準の展開部分に反映させて 生活保護受給世帯間の衡平を図ろうとするものであり,一定期間における物価変動や経時的な消費動向の変化を反映して行われるものではないから,ゆがみ調整とデフレ調整を併せて行ったとしても,物価の二重評価になるなどということはできない。 ウ小括 以上によれば,ゆがみ調整とデフレ調整を同一の機会に行った厚生労働大臣の判断の過程に過誤,欠落があったということはできず,その判断が違法であるとはいえない。 ゆがみ調整の増額の 以上によれば,ゆがみ調整とデフレ調整を同一の機会に行った厚生労働大臣の判断の過程に過誤,欠落があったということはできず,その判断が違法であるとはいえない。 ゆがみ調整の増額の幅を基準部会の検証結果の2分の1としたこと(争点 )について アゆがみ調整による増減額幅についての厚生労働大臣の判断について 認定事実⑵によれば,厚生労働大臣は,ゆがみ調整による生活扶助基準改定の激変緩和措置として,基準部会による平成25年検証の結果を生活扶助基準に反映する比率を増額方向と減額方向共に2分の1としたことが認められる。 前記⑴に判示したところに照らせば,生活扶助基準の改定に当たり激変緩和措置を実施するか否か及びその内容を含め,生活扶助基準の改定については,厚生労働大臣の専門技術的かつ政策的な見地からの裁量に委ねられていると解される。 そして,平成25年報告書において,ゆがみ調整に係る平成25年検 証の結果を完全に生活扶助基準に反映させた場合の生活扶助基準額と, 現行(本件扶助基準改定前)の生活扶助基準額を比較した結果を平均値でみると,例えば,60歳以上の単身世帯では+4.5%,共に60歳以上の高齢夫婦世帯では+1.6%と増額になる世帯がある反面,夫婦と18歳未満の子1人世帯では-8.5%,夫婦と18歳未満の子2人世帯では-14.2%となるなど(認定事実⑴オd④),子どもの いる世帯の減額幅が大きくなる結果が示されていたところ,同報告書では,留意点として,「生活扶助基準の見直しを具体的に検討する際には,現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯,特に貧困の世代間連鎖を防止する観点から,子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある」こと等が指摘されており(認定 しを具体的に検討する際には,現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯,特に貧困の世代間連鎖を防止する観点から,子どものいる世帯への影響にも配慮する必要がある」こと等が指摘されており(認定事実⑴オd⒝②), これらを踏まえると,ゆがみ調整による激変緩和措置として,平成25年検証の結果(かい離率)をそのまま生活扶助基準の改定に反映させることなく,ゆがみ調整の幅を2分の1とする判断が合理性を欠くものということはできない。 イ原告らの主張について 原告らは,本件各告示による生活扶助基準の改定に際しては,ゆがみ調整による減額幅の縮小とは別に,引下幅を最大10%とする下限規制が設けられ,これによって生活扶助基準の引下げによる激変緩和が図られているから,激変緩和のためにゆがみ調整による増減額の幅を2分の1とすることに合理性はないなどと主張する。 しかし,上記アに判示したところに照らせば,子どものいる世帯においてゆがみ調整による減額の影響が大きいことや,現在生活保護を受給している世帯及び一般低所得世帯,特に子どものいる世帯への影響に配慮する必要があるとの平成25年報告書の指摘を踏まえて,引下幅を最大10%とする下限規制に該当しない場合であっても,激変 緩和措置としてゆがみ調整の幅を2分の1とする判断が不合理であるとはいえない。 原告らは,また,ゆがみ調整により増額されるのは,生活保護受給世帯の大半を占める単身中高齢世帯である一方,ゆがみ調整により減額されるは全体からみると少数であるから,ゆがみ調整による増減額の 幅を2分の1にした場合には,全体としてみると,減額の影響よりも増額の影響の方が大きく,緩和措置としては不合理であって,厚生労働大臣としては,減額幅についてのみ2 ら,ゆがみ調整による増減額の 幅を2分の1にした場合には,全体としてみると,減額の影響よりも増額の影響の方が大きく,緩和措置としては不合理であって,厚生労働大臣としては,減額幅についてのみ2分の1とし,増額幅についてはそのまま反映させるべきであった激変緩和措置であれば,減額幅を2分の1にすればよく,増額幅まで2分の1にする必要はない旨主張 する。 しかし,ゆがみ調整は,一般低所得世帯の消費実態を生活扶助基準の展開部分に反映させて生活保護受給世帯間の衡平を図ることを目的とするものであることに照らせば,平成25年検証の結果を部分的に生活扶助基準に反映させる場合には,増額方向と減額方向共に一律の割合でこ れを反映させることが合理的であって,原告らが主張するように,増額幅を検証結果のとおりに反映させ,減額幅のみを2分の1にとどめるとすることは,ゆがみ調整の目的に沿わず,相当でないというべきである。 したがって,原告らの上記主張は,いずれも採用することができな い。 ウ小括以上によれば,ゆがみ調整の激変緩和措置として,平成25年検証の結果を2分の1にして生活扶助基準に反映させた厚生労働大臣の判断の過程に過誤,欠落等があるということはできず,その判断が違法であるとは いえない。 考慮すべきでない事項を考慮したことによる裁量権の逸脱又は濫用の有無(争点1)について原告らは,本件各告示による生活扶助基準の改定は,生活保護水準を10%引き下げる旨の自民党の政権公約の実現という,本来考慮してはならない事項を考慮したものであるから,厚生労働大臣の裁量権の範囲を逸脱し, 又はこれを濫用したものとして違法であると主張する。 しかしながら,前記に判示 権公約の実現という,本来考慮してはならない事項を考慮したものであるから,厚生労働大臣の裁量権の範囲を逸脱し, 又はこれを濫用したものとして違法であると主張する。 しかしながら,前記に判示したとおり,生活保護法8条2項における最低限度の生活を保護基準において具体化するに当たっては,高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするものであることから,生活扶助基準の改定を行うに当たり,厚生労働大臣には専門技術的かつ政策的 な見地からの裁量権が認められるものと解すべきところ,上記の政策的判断においては,国の財政事情,経済情勢,他の政策との関係,国民感情等,多方面にわたる諸事情を広く考慮する必要があると解される。そして,生活保護費の削減を内容とする自民党の政権公約は,国の財政事情や国民感情を踏まえたものと認められるところ(弁論の全趣旨),厚生労働大臣が,生活扶 助基準を改定するに当たり,これらの事情を考慮することができることは,上記のとおりである。 他方,平成25年当時,生活扶助基準について,デフレ調整を行う必要があったこと(前記⑶ア)及びゆがみ調整を行う必要があったこと(前記⑷イ)が認められる。 そうすると,本件扶助基準改定は,これらの必要性に基づいて行われたものということができ,その際に,生活保護費の削減を内容とする自民党の政権公約の実現という事項が考慮されたとしても,そのことをもって,本件生活扶助基準改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできない。 したがって,原告らの上記主張は,採用することができない。 4 争点2(平成25年告示の発出について,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求権が成立するか)に対する判断以上のとお たがって,原告らの上記主張は,採用することができない。 4 争点2(平成25年告示の発出について,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求権が成立するか)に対する判断以上のとおり,本件扶助基準改定に違法はなく,これを前提とする本件各処分も適法であるから,厚生労働大臣が本件扶助基準改定を行ったことが国家賠償法1条1項の適用上違法となるということはできない。 第6 結語以上の次第で,原告らの訴えのうち,南福祉事務所長が原告3-1に対して平成25年7月23日付けでした生活保護法25条2項に基づく変更決定の取消しを求める部分及び伏見福祉事務所長が原告2-1に対して平成27年3月9日付でした生活保護法25条2項に基づく変更決定の取消しを求める部分は, 不適法であるからこれらをいずれも却下し,原告らのその余の請求は,理由がないから,これらをいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 京都地方裁判所第3民事部 裁判長裁判官増森珠美 裁判官向健志 裁判官糸賀紀衣
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