平成14(ネ)710 貸金請求控訴

裁判年月日・裁判所
平成15年1月30日 福岡高等裁判所
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判決文本文4,160 文字)

主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 2 被控訴人の請求を棄却する。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,被控訴人がBに対して,平成11年9月10日から平成12年9月22日までの間に合計8回にわたり,貸し付けた合計393万円(本件貸金)について,控訴人の連帯保証を受けたと主張して,控訴人に対し,上記貸金と遅延損害金の支払を求めている事案の控訴審である。 2 前提事実及び争点(当事者の主張)は,原判決の「第2 事案の概要」欄の「1及び2」記載のとおりであるから,これを引用する。 本件の争点は,平成12年9月22日,控訴人が本件貸金について,連帯保証したかどうかであり,被控訴人は,(1)連帯保証契約に関わったBが連帯保証をする権限を控訴人から与えられていた,(2)仮に,(1)が認められないとしても表見代理(民法109条,110条)が成立すると主張している。 第3 当裁判所の判断 1 証拠(甲1ないし20,乙1の1及び2,乙2,乙3,原審における被控訴人本人及び控訴人代表者,当審における控訴人代表者)及び弁論の全趣旨によれば,本件の事実経過として,以下の事実が認められる。 (1) 控訴人代表者のAは,風俗関連業の経営等を目的として,平成10年1月28日に控訴人を設立した。そして,控訴人は,当初a市b町のc○○○号室を,次いで同年2月から同町のdビル○○○号室を,更に同年9月から同市e丁目の2階建の建物をそれぞれ賃借して「C」という名称でSMクラブを営業していた。なお,2階建の建物は,同年11月競売によりDが所有権を取得したことから,控訴人は,同月以降Dから同建物を賃借したが,その際Bがこれを連帯 れぞれ賃借して「C」という名称でSMクラブを営業していた。なお,2階建の建物は,同年11月競売によりDが所有権を取得したことから,控訴人は,同月以降Dから同建物を賃借したが,その際Bがこれを連帯保証した。 (2) ところで,控訴人代表者のAは,風俗営業に詳しいという程ではなく,その経験のあるBを雇用し,「C」の店長として(店舗責任者でママと呼ばれていた。),Bに対し,接客従業員の面接,技術指導,衣類の仕入れ,売上と出金の管理,金銭出納簿等の帳簿の記入等控訴人の営業や経理を任せていた。Aは,週に1,2回店に顔を出して帳簿を確認し,売上金を受領するほか,電話でBに必要な指示をしていた。また,会社運営上の最終的な決定をし,運営資金の調達も行った。(なお,BとAが内縁関係にあったとの確たる証拠はない。)(3) ところが,平成11年2月27日早朝,「C」の建物で火災が発生し,同建物が全焼した。控訴人は,平成10年12月3日,エイアイユー保険会社との間で,什器備品を対象として保険金額1900万円の火災保険契約を締結していたが,出火原因を疑われ保険金の支払を巡って同会社と訴訟に発展し(福岡地方裁判所久留米支部平成11年(ワ)第238号保険金請求事件,原告が本件控訴人で,被告が同会社),事件は現在控訴審に係属中であり,保険金はいまだ下りていない。 (4) そのため,控訴人は,火災後Dとの上記建物の賃貸借契約を解除し,平成11年4月ごろ,新たにa市f町の部屋を賃借した上,B名義で風俗営業の許可を取って,「E」の名称でSMクラブの営業を再開した。「E」でも,Bが店長として,「C」の場合と同様,営業一切を切り盛りしていた。 また,Aは,知り合いのFに保証人になってもらい,他から控訴人として資金を借り受けたりした。(なお,甲10ないし14号証には,Aは火災 Bが店長として,「C」の場合と同様,営業一切を切り盛りしていた。 また,Aは,知り合いのFに保証人になってもらい,他から控訴人として資金を借り受けたりした。(なお,甲10ないし14号証には,Aは火災後「C」の経営を休業し,Bが「E」を開業した旨の部分があるが,採用し難い。)(5) 被控訴人は,農業関係の肥料・ホルモン剤・健康食品等を製造販売している会社の代表取締役である。Bは,Eの顧客である被控訴人から,控訴人の裁判費用や店の什器備品の仕入れ費用等に使用する名目で,平成11年9月10日から平成12年9月22日にかけて,8回にわたり合計393万円を借り受けた。そして,最後に借り受けた平成12年9月22日には,被控訴人方で,Bにおいて,本件貸金について控訴人が連帯保証する旨及び火災保険金の入金があったら支払う旨の念書(甲9)を作成した上,持参していた控訴人の実印を控訴人名下に押印するとともに,自分の署名押印をして,念書を被控訴人に渡した。なお,Aは,日頃控訴人の実印等をバッグの中に入れて持ち歩いており,店舗内に置いたままにしておくことはなかった。 (6) Aは,脳梗塞で倒れ,平成12年3月22日から同年5月6日まで聖マリア病院に,同月8日から同年7月28日まで筑紫南ヶ丘病院に入院した。 その後,AはBとの間で,店の経営から手を引く方向で話を進めるうち,営業一切を切り盛りしていた店長のBが,平成13年1月ごろ所在が分からなくなり,結局,控訴人は,店の経営を止めるに至った。 2 そこで,以上の事実関係に基づいて検討する。Bは,控訴人では店長として,接客従業員の面接,技術指導,衣類の仕入れ,帳簿の記入のほか,売上及び出金の管理等,控訴人の営業や経理を任されて取り仕切っており,最終的な決定はAがしていたとはいえ,これらの事項に関しては商法43条所定 従業員の面接,技術指導,衣類の仕入れ,帳簿の記入のほか,売上及び出金の管理等,控訴人の営業や経理を任されて取り仕切っており,最終的な決定はAがしていたとはいえ,これらの事項に関しては商法43条所定の控訴人の商業使用人として部分的包括代理権を有していたと認めるのが相当である。このことは,別件の前記保険金請求事件における原告代理人の準備書面(甲16)の主張によっても裏付けられるところである。そして,店長として店舗を運営するからには,衣類の仕入れや備品の購入の必要から日常の資金調達が必要になるはずである。しかも,Aが入院していた期間中,店舗の運営に支障が生じた形跡がないことからすると,Bは,少なくとも日常業務に必要な資金調達についての権限をも授与されていたものと推認される。これに反し,控訴人代表者のAは,Bに独自の決定権限を授与したことはなかった旨供述するが,採用することができない。 ところで,本件貸金は,Bが被控訴人から控訴人の裁判費用や会社の運営資金等に使用する名目で借り受けたものであるところ,本件において,Bが借り入れた金員を現実に会社の運営資金等として使用したことを客観的に裏付ける証拠はない。Bは,短期間に数十万円の金員の借受を繰り返したり,188万円もの金額を借り入れるなど,日常業務に必要な資金調達の範囲内であるかどうか疑問の余地があることからすると,Bが本件貸金を会社の運営資金等として現実に使用したと認定するには証拠が不充分であるといわざるを得ない。したがって,Bにおいては,控訴人の商業使用人(店長)として,その授与されていた権限に基づいて,「E」の店舗運営のために被控訴人から本件貸金を借り受けたと認定することも相当でない。そして,Bが控訴人の日常業務に必要な資金調達についての権限を授与されていたとしても,そのことから,一 に基づいて,「E」の店舗運営のために被控訴人から本件貸金を借り受けたと認定することも相当でない。そして,Bが控訴人の日常業務に必要な資金調達についての権限を授与されていたとしても,そのことから,一般的にBが個人名で調達した資金について,控訴人名で連帯保証することの権限まで与えられていたとはいえない。また,Bが控訴人の実印を所持していたからといって,Bの個人名による本件貸金につき,控訴人の連帯保証をする権限が授与されていたと認定するのは,やはり証拠が不充分であるといわざるを得ない。 そこで,進んで,民法110条の表見代理の成否について検討する。前記認定のとおり,Bは店長であり,営業や経理を任され,控訴人の用に供する日常の資金調達の権限を授与されていたと考えられるから,基本代理権の存在は肯定することができる。そして,前記認定の事実及び説示に照らすと,Bから借入の申込みを受けた被控訴人が,本件貸金を控訴人の運営資金等として貸し付けたと信じたことには相当の理由があるというべきである。確かに,Bには,日常の資金調達の権限は授与されていたが,B個人名で資金調達する際,控訴人に代わって連帯保証することまでの権限が与えられていたものではない。しかしながら,Bは,店長として,日常業務を取り仕切っていたのであり,かつ,被控訴人に対し,本件貸金の連帯保証をする際,Aから預かったという控訴人の実印を使用して念書(甲9)を作成したのであるから(この点に関し,控訴人代表者のAは,これに覚えがない旨供述するが,Aが日頃控訴人の実印をバッグの中に入れて店舗内に置いたままにすることがなかったことに照らし,Bが控訴人の実印を盗用したものとは容易に考え難い。),Bが控訴人の日常業務に必要な資金調達の権限を授与されており,本件貸金の借用名目が会社の運営資金等であったこ にすることがなかったことに照らし,Bが控訴人の実印を盗用したものとは容易に考え難い。),Bが控訴人の日常業務に必要な資金調達の権限を授与されており,本件貸金の借用名目が会社の運営資金等であったことに照らすと,被控訴人がBにつき本件貸金について控訴人の連帯保証をする権限を有すると信じたことは無理からぬところがあり,控訴人に確認しなかったことに過失があるということもできない。 3 結語よって,被控訴人の本件請求は,原判決が認容した限度で理由があるから,本件控訴は理由がない。 福岡高等裁判所第1民事部裁判長裁判官宮良允通裁判官藤本久俊裁判官野島秀夫

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